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2日間のオートミール食で悪玉コレステロールが低下

 果物をトッピングするか、ピーナッツバターで風味をつけるかにかかわらず、オートミールを中心とした食事はコレステロール値の低下に役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この試験では、メタボリックシンドロームの人が48時間にわたって厳格なオーツ麦ベースの食事プランを実践したところ、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロール(LDL-C)が約10%低下し、その改善効果は6週間後も確認されたという。ボン大学(ドイツ)栄養・食品科学研究所のMarie-Christine Simon氏らによるこの研究結果は、「Nature Communications」に1月14日掲載された。 メタボリックシンドロームとは、過体重、高血圧、高血糖、脂質異常などの健康問題が組み合わさった状態であり、心臓病や2型糖尿病のリスクを高める。 今回の研究では、メタボリックシンドロームを有する68人の参加者を対象に短期試験と6週間の試験の2つのランダム化比較試験を実施し、オーツ麦を含む食事が脂質代謝や腸内細菌叢に与える影響が検討された。短期間の試験では、34人の参加者のうちの半数が1日300gのオートミールを3食に分けて2日間摂取した。添加できるのは少量の果物や野菜のみで、摂取カロリーは、通常の食事の約半分に制限された。対照群も同様にカロリー制限を行ったが、オートミールは摂取しなかった。2日間の食事介入を完了したのは、オートミール群17人、対照群15人の計32人であった。一方、6週間わたる食事介入では、介入群は通常の食生活を維持したまま3食の食事のうちの1食のみを80gのオートミールに置き換えた。対照群は通常の食生活を維持し、オートミールは摂取しなかった。 その結果、オートミール群ではわずか2日のオートミール食により、LDL-Cが介入前の168.94mg/dLから介入後には151.53mg/dLへと約10%低下した。対照群と比較すると、オートミール群ではLDL-Cが−16.26mg/dL、総コレステロール(TC)が−15.61mg/dL有意に低かった。この効果は、オートミール群が通常食に戻った後も持続し、6週間後でもLDL-Cはベースラインより低い傾向が認められた。一方、6週間にわたって3食のうちの1食のみをオートミールに差し替えた場合では、対照群との間にコレステロール値に有意な差は認められなかった。 さらに、オートミール群では、試験期間にかかわらず、特定の腸内細菌叢が増加したことも確認された。腸内細菌は食物の分解を助け、健康に影響する物質を生成する。今回の研究では、オートミールが細菌によるフェノール化合物の産生を促進することが分かった。論文の筆頭著者である同研究所のLinda Klumpen氏は、「フェノール化合物の1つであるフェルラ酸は、動物実験において正常なコレステロール値の維持に寄与することが示されている」と説明している。 Simon氏は、「オートミール群では、LDL-Cに約10%の低下が認められた。この減少は相当なレベルではあるが、最新の薬剤の効果と完全に同等とは言えない。そのため、この方法はここ数十年、注目されてこなかった」と話す。同氏は、「短期間のオーツ麦ベースの食事を定期的に行うことは、コレステロール値を正常範囲に維持し、糖尿病を予防するための、忍容性の高い方法となり得る」と述べている。 なお、本研究はドイツの複数の研究機関および食品業界団体の資金援助を受けて実施された。

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MASLD患者の心血管疾患入院、糖尿病合併で院内死亡リスク約2倍

 代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者が心血管疾患(CVD)で入院した場合、糖尿病併存例では院内死亡や合併症のリスクが有意に高いことが、日本の大規模レジストリ研究で明らかになった。研究は、宮崎大学医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の小牧聡一氏、松浦祐之介氏らによるもので、2月15日付の「Diabetic Medicine」に掲載された。 MASLDは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に代わる新たな疾患概念として提唱されており、世界で最も頻度の高い慢性肝疾患の一つとされる。CVDとの関連が強いことから心血管リスク評価の重要性が指摘されているが、診断基準を構成する各代謝因子が予後に及ぼす影響については、十分に明らかになっていなかった。糖尿病はMASLDにおける肝関連合併症との関連が知られる一方、CVDで入院したMASLD患者の院内転帰に及ぼす影響については不明な点が多かった。そこで研究グループは、日本全国の心血管入院データを用いて、MASLD患者における糖尿病と院内転帰(死亡・合併症)との関連を検討した。 本研究は、2012年4月から2023年3月までの全国規模の日本循環器疾患レジストリ(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular DiseasesーDiagnosis Procedure Combination:JROADーDPC)のデータを用いた後ろ向き横断研究である。解析対象は、CVDで入院したMASLD患者10,614人。MASLDは、肝脂肪化に加え、少なくとも1つの心代謝リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、関連薬剤の使用、またはBMI23kg/m2以上〔アジア人のBMI基準〕)を有する場合と定義した。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目は主要な心血管系および非心血管系の院内合併症発生とした。統計解析では、糖尿病の有無による患者背景および転帰を比較したうえで、院内死亡との関連を検討するため多変量ロジスティック回帰解析を実施した。 対象患者の年齢中央値は66歳で、66.9%が男性だった。MASLD患者10,614人のうち、4,550人(42.9%)が糖尿病を合併していた。糖尿病非合併患者と比較して、糖尿病合併患者では虚血性心疾患(35.5% vs. 30.8%)、急性冠症候群(18.8% vs. 16.9%)、心不全(27.3% vs. 25.4%)の割合がいずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。 院内死亡率(5.6% vs. 3.3%、P<0.001)および全合併症発生率(23.6% vs. 19.7%、P<0.001)も糖尿病合併群で有意に高く、合併症発生率の差は主として心血管系イベント(16.8% vs. 10.5%、P<0.001)の増加によるものと考えられた。さらに心血管系イベントの内訳では、糖尿病合併例で入院後の心不全や急性冠症候群の発症が多く、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)、人工呼吸管理などの高度治療を要する割合も高かった。 多変量ロジスティック回帰解析の結果、糖尿病は院内死亡の独立した予測因子であることが確認された(オッズ比 1.99、95%信頼区間 1.60~2.47、P<0.001)。さらに、敗血症、大出血、がんも院内死亡の独立した規定因子であった。一方、脂質異常症や虚血性心疾患は死亡リスク低下と関連し、抗血小板薬、スタチン、ACE阻害薬/ARBの使用も死亡率低下と関連していた。 著者らは、CVDで入院したMASLD患者において、糖尿病合併が院内死亡率および合併症発生率の上昇と関連していたと結論づけた。そのうえで、「MASLDの心代謝リスク因子が予後に及ぼす影響を一律に捉えるのではなく、特に糖尿病の有無といった代謝表現型に基づいて層別化して評価することが、より精度の高いリスク評価や個別化医療の推進につながる可能性がある」としている。 なお、本研究の限界として、診断が病名コードに基づくため誤分類の可能性がある点、検査値や治療詳細が含まれていない点、残余交絡の可能性や因果関係を示せない点、非MASLD対照群がない点が挙げられている。

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中等度慢性腎臓病(CKD)の腎機能の経過の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者が必要(解説:浦信行氏)

 糸球体濾過率(GFR)の正確な評価にはイヌリンクリアランスや125I-イオサラメートクリアランスが必要であるが、日常臨床では方法の煩雑さや放射性同位元素の取り扱いなどで現実的にはほぼ困難である。したがって、クレアチニンやシスタチンCを用いた推算値(eGFR)が算出されるが、結果の即時性からクレアチニンによるeGFRが一般的に用いられている。 英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で、正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにした。詳細な報告はCareNet.comの2026年4月2日掲載の解説を参照されたい。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、クレアチニンとシスタチンC各々で評価した値よりは両者を併用した値が、基準値であるイオヘキソールを用いたGFRにより近似していたとの報告である。両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも、評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。この研究の対象は58.1~73.6歳で平均67.1歳である。日常臨床で75歳以上の高齢者では自力で元気に外来通院する症例もいるが、一部に自力歩行に難渋するか不可能な症例も少なからずいる。サルコペニアなどによりクレアチニンでのeGFR計算値が極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

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第56回 406万人の命が「食事」で防げる。世界204ヵ国のデータが突きつける、私たちの食卓への警告

先月、Nature Medicine誌に、食事と心臓病の関係を世界規模で解析した大規模研究が発表されました1)。世界204ヵ国からのデータをもとに、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の死亡・障害負担のうち、食事リスクに起因する割合を包括的に推計したものです。虚血性心疾患は、数十年にわたり世界の死因第1位であり続けています。「心臓病は生活習慣病」とよく言われますが、では実際にどの食習慣がどれほどのインパクトを持っているのか。この研究は、その問いに対してこれまでで最も精緻な答えを示しています。年間406万人の命を奪う「食卓のリスク」研究の結果、2023年に世界で食事リスクに起因する虚血性心疾患の死亡者数は約406万人と推計されました。これは虚血性心疾患による全死亡のかなりの割合を占めています。ただし明るい兆しもあります。1990年から2023年にかけて、食事に起因する虚血性心疾患の年齢調整死亡率は約43.9%低下しました。これは世界的な食生活改善や医療の進歩を反映していると考えられます。しかし、人口増加と高齢化の影響で、絶対的な死亡者数は約41.6%増加しており、問題の深刻さが解消されたわけではありません。「足りないもの」が心臓を蝕むこの研究で特に注目すべきは、心臓病リスクを高める食事要因の顔ぶれです。13の食事要因を個別に評価した結果、最も大きな死亡寄与を示したのは、ナッツ・種子類の摂取不足(10万人当たり9.87人の死亡に寄与)、全粒穀物の摂取不足(同9.22人)、果物の摂取不足(同7.25人)、そして食塩の過剰摂取(同7.15人)でした。つまり、「何を摂りすぎているか」よりも「何が足りていないか」のほうが、実は心臓にとってはより大きな脅威となっているようなのです。加工肉や砂糖入り飲料の過剰摂取ももちろんリスクではありますが、それ以上に、ナッツ、全粒穀物、果物、豆類といった「守るための食材」を日常的に食べていないことが、世界中で多くの命を奪っています。「減塩」だけでは不十分うれしいニュースとして、日本を含むアジア太平洋地域は、この研究で食事関連の虚血性心疾患負担が最も低い地域の一つでした(10万人当たり12.20人の死亡)。これは日本の食文化が持つ優位性を示唆するデータと言えるかもしれません。しかし、安心するのは早計です。日本では食塩の過剰摂取が依然として深刻な問題であり、地域別ランキングでも高い順位を占めています。加えて、全粒穀物やナッツ・種子類の摂取量は欧米と比べて少ない傾向にあります。白米中心の食事は日本の食文化の根幹ですが、精白米は全粒穀物の健康効果を享受できないという点では、改善の余地があるでしょう。これまで日本の循環器疾患対策では「減塩」が柱とされてきましたが、このデータは、それだけでは不十分であることを示唆しています。ナッツや全粒穀物、果物、豆類といった「心臓を守る食材」を意識的に食卓に加えていくことが、今後の日本における心疾患予防の新たな柱となる可能性があります。所得格差が「食の格差」を生むこの研究ではさらに、社会開発指標(SDI)の低い国ほど食事関連の虚血性心疾患負担が重いことも示されました。低所得国では、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、豆類といった保護的な食材へのアクセスが限られているために、心疾患のリスクが高くなっています。一方、高所得国では加工食品や砂糖入り飲料の過剰摂取が問題です。つまり、所得水準によってリスクの顔つきが異なるのです。この知見は、日本国内にも当てはまります。経済的に余裕のない世帯では、安価で高カロリーな加工食品に頼りがちになり、新鮮な果物やナッツ、全粒穀物といった食品の摂取が不足する傾向があることは、国内の研究でも指摘されています。食事による健康格差は、決して遠い国の話ではありません。研究の限界と、それでも揺るがない価値もちろん、この研究にも限界はあります。まず、各国の食事データの質にばらつきがあり、一部の国では推計モデルに依存しています。また、ここで示された食事の影響は、因果関係を保証するものではありません。さらに、各食事要因間の複合的な相互作用(たとえば、全粒穀物の摂取が多い人は全体的に食事の質が高い傾向にある、など)を完全には考慮できていません。しかし、204ヵ国を対象に13の食事要因を網羅的に評価し、33年間の推移を追跡したこの研究の規模と包括性は、他に類を見ません。「食事を変えることで心臓病の相当部分を予防できる」というメッセージは、これらの限界を踏まえてもなお、揺るぎないものです。明日から始められること最後に、この研究が示す教訓。それは、「減らす」ことだけでなく「加える」「替える」ことも大切だということです。食塩を減らす、砂糖を減らす、だけではなく、毎日の食事に一握りのナッツを添える、白米の一部を玄米や雑穀米に替える、果物を意識的に増やす。こうした小さな積み重ねが、10年後、20年後の心臓の健康を大きく左右する可能性があります。世界406万人の死というデータは衝撃的ですが、裏を返せば、それだけの命が「食卓を変えること」で守れる余地があるということ。壮大なデータが教えてくれたのは、毎日の食事の力がいかに大きいかということだったのです。 1) GBD 2023 IHD & Dietary Risk Factors Collaborators. Global, regional and national burden of ischemic heart disease attributable to suboptimal diet, 1990-2023: a Global Burden of Disease study. Nat Med. 2026 Mar 30. [Epub ahead of print]

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リアルワールドにおけるチルゼパチドの減量効果

 減量治療を行っている肥満患者への薬物治療において、チルゼパチドの効果はどのくらいあるのであろうか。このテーマについて米国・Weill Cornell MedicineのSarah R. Barenbaum氏らの研究グループは後ろ向きコホート研究を実施し、チルゼパチド治療を受けた成人の6ヵ月間の減量の転帰を分析した。その結果、チルゼパチドは全群において有意な体重減少をもたらすことがわかった。この結果はObesity誌オンライン版2026年3月28日号で公開された。減量停滞時に治療薬の切り替えを行うと効果が上がる可能性 研究グループは、2022年5月~2023年1月の間にチルゼパチド治療を受けた成人の6ヵ月間の減量転帰を後ろ向きコホート研究として分析した。チルゼパチド開始前に総体重(TBW)が10%以上減少していた患者を「減量済み」と分類し、セマグルチド(週1.7mg以上を1ヵ月以上投与)から切り替えた患者については、切り替え理由を「無効(3ヵ月以上経過後の減量率5%未満)」、「停滞(5%以上の減量後に体重が安定)」、または「その他」に分類した。 主な結果は以下のとおり。・941例のカルテのうち、293例(31.1%)が選択基準を満たした(女性65%、平均年齢52歳、平均BMI値36.1)。・チルゼパチド開始前にすでに減量していた患者133例のTBW減少率は7.2%であったのに対し、減量していなかった患者160例では10.3%だった(p<0.001)。・2型糖尿病の有無で層別化して解析した結果、糖尿病を有しない患者群においても体重減少の差は統計的に有意であった。・無効または停滞を理由にセマグルチドから切り替えを行った61例の患者ではTBWが5.3%減少した。・停滞時に切り替えを行った患者28例では8.1%の減少がみられたのに対し、無効例33例では2.9%の減少にとどまった(p<0.001)。 以上の結果から研究グループは、「チルゼパチドは全群において有意な体重減少をもたらしたが、その効果は減量状況、2型糖尿病の有無、およびセマグルチドへの過去の反応性によって異なる」と結論付けている。

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経口GLP-1受容体作動薬orforglipronの期待と課題―セマグルチドを置き換えるか?(解説:永井聡氏)

 経口GLP-1受容体作動薬であるorforglipronは、もともと中外製薬が開発した中分子化合物で、細胞内でG蛋白依存性シグナルを特異的に活性化する“バイアスリガンド”という新しい機序の非ペプチド製剤である。経口セマグルチドと異なり、胃内で分解されにくく、吸収を助ける添加剤を必要としない。そのため、空腹時の服用や飲水制限といった条件を課さず、日常生活における服薬の自由度が格段に向上することが特徴である。 これまで本剤を用いた2型糖尿病を対象とするRCTは、プラセボとの比較であるACHIEVE-1、ATTAIN-2試験が発表されている。いずれの試験でも体重およびHbA1c値の改善は、週1回セマグルチド注射製剤に匹敵する効果が報告されている。 ACHIEVE-3試験は、日本人を含むメトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、orforglipron(12mg/36mg)と経口セマグルチド(7mg/14mg)を比較したオープンラベル試験である。初の実薬との比較試験であり、本邦での承認用量である経口セマグルチドとの比較である。まさに「知りたかった」試験である。結果は、orforglipronは低用量(12mg)でも経口セマグルチド14mgよりも有意にHbA1c値を改善し、さらに高用量(36mg)では、7割でHbA1c値6.5%以下を達成し、4割が10%以上の減量を達成しており、orforglipronが「勝利」したのである。 では、今後すぐに経口セマグルチドはorforglipronに置き換わるのか? それには次に挙げる課題の解決が必要である。第1に、orforglipronは経口セマグルチドと同じペプチドのGLP-1受容体作動薬ではない。このため長期の安全性や心腎保護のエビデンスについては、orforglipronの心血管アウトカム試験(CVOT)が判明するまでは、経口セマグルチドに軍配が上がる1,2)。第2に、今回は、中等量の経口セマグルチドとの比較でorforglipronが優位だったが、薬剤としての優劣は別である。海外では、より高用量である経口セマグルチド25mgが肥満症に承認されている。高用量の経口セマグルチドでは臨床効果の差が縮まる可能性にも留意する。本試験のorforglipronは高頻度な消化器症状を呈しており、実臨床では治療中止例が多発する可能性がある(もちろん高用量セマグルチドも同様だが)。 そして最後に、何よりも本試験デザインは、発表されているorforglipronのこれまでの臨床試験とは異なる“オープンラベル試験”である。本試験の経口セマグルチドの消化器症状は既存のRCTよりも明らかに低頻度であり、医療者・患者ともに処方内容を知っている。既知の副作用が予測されると副作用が過小報告される可能性がある。では、orforglipronという「新薬」にはどう影響するのか…? もし「強い期待」が医療者にも患者にもあれば、臨床効果も副作用報告も新薬に都合の良いものにならないだろうか。とくに主観的な「副作用報告」や「QOL」には注意を要する。 とはいえ、orforglipronの登場により、他の血糖降下薬、降圧薬や脂質異常症治療薬と「一包化」も可能になり、個々のライフスタイルに合わせた処方が可能となることは喜ばしい。肥満を有する糖尿病へ早期介入が促進され、糖尿病寛解も増えることが期待されるだろう。しかし何事も「期待しすぎ」には注意してほしい…。

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最適な輸液ルート選択の考え方 その壱【ケースで学ぶ輸液オーダー】第2回

最適な輸液ルート選択の考え方 その壱これから集中治療を行う患者さんに対して、「どこから、何のために、どんなルートを確保するのが安全か」ということをあまり考えずに、先輩医師のやり方を見てなんとなく慣習で選んでいたということは少なくないかもしれません。今一度、輸液ルート選択の思考回路を一緒に整理してみましょう。症例肺炎によるI型呼吸不全、敗血症性ショックでICUに入室した患者さんに対応するよう、指導医とともに緊急呼び出しされた初期研修医A君。酸素10L/分(マスク)、両側肘正中皮静脈から18Gを1本ずつ確保、両側とも細胞外液補充液を急速投与中、それでも血圧80/40mmHg、脈拍120/分、呼吸回数30回/分、SpO2 88%、ショックと低酸素血症が持続しています。迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation)を行い、人工呼吸管理となりました。指導医は「あとは頼んだよ」と言って去っていきました。挿管後、患者さんは強い体動を認め、上肢をばたつかせています。ショックの治療と並行して持続的な鎮静・鎮痛が必要です。併存症に糖尿病があり血糖800mg/dL、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)も合併しています。さて、A君は次に何を行うべきでしょうか?考えかたの整理集中治療では、複数の薬剤・輸液を同時並行で安全に投与する必要があります。想定される投与内容は、ショックに対する細胞外液補充液・昇圧薬、人工呼吸中の鎮静薬・鎮痛薬、抗菌薬、維持輸液(将来的に栄養輸液に移行する可能性あり)、インスリンなどです。ここで大切なことが3つあります。1. 流量変動の影響を受けてはいけない薬剤がある例:昇圧薬、鎮静薬・鎮痛薬、インスリン持続投与などこれらは流量が変わると、血圧や鎮静レベル、血糖値が一気に変動するため、急速に注入するラインと同じラインにすべきではありません。2. 配合変化がありうる例:オメプラゾール、セフトリアキソン、アミオダロンなど他剤との混合で沈殿・失活が起こる薬剤があるため、不明な場合は必ず薬剤師に相談しましょう。ちなみに輸血と同一ラインで流せるのは生理食塩液のみです。3. 末梢で理論上可能でも現実的ではないことがある理論上、すべて末梢静脈から投与可能な薬剤でも、必要な薬剤が多すぎて、メイン点滴ルートの側管などを駆使しても現実的にすべて末梢から行えない場合もあります。その場合は、ルートの本数かせぎに複数のルーメンを持つトリプルやクワッドルーメンの中心静脈カテーテル挿入が必要です。中心静脈カテーテル挿入の主な適応は、(1)末梢静脈の確保困難、(2)薬剤の多剤併用、(3)刺激性、腐食性、高浸透圧性の薬剤投与(抗がん剤、昇圧薬、50%ブドウ糖、高カロリー輸液など)、(4)血行動態のモニタリング(スワンガンツカテーテル挿入、中心静脈圧測定などの圧モニター)です。本症例は、(2)多剤併用、(3)昇圧薬投与が該当します。本症例の対応本症例には以下の輸液、薬剤の投与が必要です。ショック:細胞外液補充液、ノルアドレナリン人工呼吸中の鎮静、鎮痛:プロポフォール、フェンタニル敗血症:抗菌薬維持輸液(将来的に中心静脈栄養に移行する可能性あり)インスリン(持続投与)本患者は強い体動を認めているため、現在の両側肘静脈ラインは今にも抜けそうで不安定であり、流量管理が困難かつ薬剤が組織侵襲性のある薬剤を投与すると血管外へ漏出する恐れがあります。以上から、組織侵襲性のある薬剤や一定の流量で投与すべき薬剤を複数かつ安全に投与する目的で、マルチルーメン中心静脈カテーテル挿入が必須です。中心静脈カテーテルの挿入部位はさまざまでそれぞれ長所・短所がありますが、本症例はDICを合併していることから止血の確実性が重要であり、動脈誤穿刺時の圧迫止血の容易さを考えると、内頸静脈または大腿静脈が有利です。ただし、清潔性・感染管理・将来の離床を考えると、右内頸静脈が第1選択となることも多いでしょう。もちろん、超緊急時は理想に固執せずに最も得意な部位から確実に挿入することも許容されます。図1 中心静脈カテーテル各挿入部位の利点、欠点1)画像を拡大する本症例はベテランICUナースによって図2で示す投与経路が組み立てられました。医師が投与経路の組み立てを自ら行うことはまれですが、たとえば昇圧薬、鎮静薬や鎮痛薬、時間をかけて静注する必要のある薬剤にグループ分けするなど、看護師が多くの薬剤を限られたルートからいかに工夫して投与しているか、そのオキテに着目するのは勉強になります。図2 本症例における輸液・薬剤投与経路の実際2)画像を拡大する目的に見合う最適な輸液ルートやカテーテルを選択しましょう。混ぜても大丈夫?注射薬は単独での使用を想定し開発されていますが、臨床現場では輸液バッグやルート内で配合されて投与される場合が多く、配合変化の危険が存在します。配合変化とは、2種類以上の注射薬を混合した際に生じる変化であり、物理的配合変化(例:混濁・沈殿)と化学的配合変化(例:有効成分の力価低下)に分けられます。配合変化による影響としては、力価の低下やルート閉塞、まれではありますが国外において死亡例が報告されています3)。ICUでは複数の静注薬を限られたルートの中で同時投与せざるを得ない状況があります。そのため、最適なルート選択をする上で配合変化の有無の確認は欠かせません。施設によっては配合変化表を作成し、ICUに配置していると思います。ルート選択の際に活用することにより、配合変化の頻度を下げる可能性が報告されており4)、有用なツールです。最後に、ルート管理において注射薬から内服薬への変更や不要な薬剤の中止を検討することも大事な視点になります。安易に継続処方とせず、薬剤の投与方法についても検討するようにしましょう。図3 (左)坂総合病院ICUの配合変化の問い合わせ記録集、(右)坂総合病院救急室の配合変化の有無の一覧表画像を拡大する1)Marino PL. ICUブック第4版. MEDSI;2015.p15-33.2)濱野繁. 10薬剤投与. In:道又元裕. これならわかるICU看護:照林社;2018.p.159.3)セフトリアキソンナトリウム 添付文書4)Kondo M, et al. J Nippon Med Sch. 2022;89:227-232.

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早期アルツハイマー病、経口セマグルチドは進行を抑制せず/Lancet

 2型糖尿病患者などでは、GLP-1受容体作動薬の投与により認知症およびアルツハイマー病のリスクが低下することを示唆する実臨床研究のエビデンスがある。米国・ネバダ大学のJeffrey L. Cummings氏らは、「evoke試験」および「evoke+試験」において、経口セマグルチドは早期の症候性アルツハイマー病の臨床的な進行を遅らせる効果を有さず、安全性や忍容性は他の適応症を対象とした試験の結果と一致することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年3月19日号で報告された。2つの無作為化プラセボ対照試験 evoke試験およびevoke+試験は、40ヵ国566施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2024年9月に参加者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢55~85歳、アミロイド病変が確認されたアルツハイマー病で、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病に起因する軽度認知症を有する患者を対象とした。evoke+試験では、顕著な小血管病変を有する患者も対象に含めた。 被験者を、セマグルチド14mg(可変用量)またはプラセボを1日1回、最長で156週間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、無作為化された全患者における臨床的認知症評価尺度-Sum of Box(CDR-SB)スコアのベースラインから104週までの変化量とした。CDR-SB、ADCS-ADL-MCIスコアの変化量に差はない 3,808例を登録した。このうち1,855例(セマグルチド群928例、プラセボ群927例)がevoke試験、1,953例(976例、977例)がevoke+試験の参加者だった。ベースラインの全体の平均年齢は72.2(SD 7.1)歳、女性が1,998例(52.5%)で、平均CDR-SBスコアは3.7(SD 1.6)点だった。2,746例(72.1%)がMCI、1,034例(27.2%)が軽度のアルツハイマー型認知症であった。evoke+試験では、54例(2.8%)が小血管病変を有していた。 evoke試験およびevoke+試験における、ベースラインから104週までのCDR-SBスコアの平均変化量は、セマグルチド群で2.3(SE 0.1)点および2.2(0.1)点、プラセボ群で2.3(0.1)点および2.1(0.1)点で、推定群間差は、evoke試験が-0.08(95%信頼区間[CI]:-0.35~0.20、p=0.57)、evoke+試験が0.10(95%CI:-0.17~0.38、p=0.46)であり、両試験とも両群間に有意な差を認めなかった。 また、同期間におけるAlzheimer’s disease Cooperative Study Activities of Daily Living-MCI(ADCS-ADL-MCI)スコアの平均変化量の両群間の差は、evoke試験が-0.25(95%CI:-1.22~0.72)、evoke+試験は-0.03(95%CI:-0.97~0.91)と、いずれも有意差を示さなかった。消化器症状と体重減少が多い 試験治療下での有害事象は、両試験を合わせたセマグルチド群では1,896例中1,729例(91.2%)に、プラセボ群では1,902例中1,613例(84.8%)に発現した。セマグルチド群で頻度の高い有害事象は、体重減少(36.5%)、食欲減退(33.1%)、悪心(24.3%)であった。 試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象の割合は、セマグルチド群で16.9%とプラセボ群の8.4%に比べて高く、重篤な有害事象はそれぞれ20.4%および23.8%にみられた。担当医判定による治療関連死は5例に発生し、セマグルチド群で1例(出血性脳卒中)、プラセボ群で4例であった。 著者は、これらの結果と実臨床のエビデンスの乖離の説明として、(1)全原因による認知症ではなく、生物学的に定義されたアルツハイマー病患者を対象としたこと、(2)治療開始時に無症状の2型糖尿病患者集団におけるアルツハイマー病の発症率の低下ではなく、症状のあるアルツハイマー病患者集団における進行遅延を調査したことなどを挙げ、「アルツハイマー病の病変がより軽度で、無症状の患者に、より早期の段階で同様の介入を行うことで、治療効果が期待できる可能性がある」と指摘している。

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年収2,000万円以上の割合は? 地域・診療科による違いは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、1,000万~2,000万円の割合は58.0%、2,000万円以上の割合は24.0%であり、8割超が1,000万円以上であった。最も多い年収帯は2,000万~2,500万円 全体で最も多い年収帯は2,000万~2,500万円(全体の13.7%)で、次点が1,400万~1,600万円(13.3%)であった。2016年に実施した調査結果と比較すると、1,000万円以下、1,000万~2,000万円、2,000万円以上の割合は、2016年がそれぞれ21.2%、58.8%、20.0%であったのに対し、2026年がそれぞれ18.0%、58.0%、24.0%であり、やや年収の上昇傾向がみられたが、大きな変化はなかった。 年代別にみると、46~55歳、56~65歳のうち2,000万円以上と回答した割合は、いずれも35.0%となった。35歳以下で1,000万円以上の割合は75.0%であった。2,000万円以上は男性26.0%、女性8.5% 男女別にみると、昨年度の年収が1,000万円以上と回答した割合は男性が84.4%であったのに対し、女性は63.2%であった。2,000万円以上に絞ると、それぞれ26.0%、8.5%であった。地域別の傾向は? 地域別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり。・北海道・東北(113人):31.0%・関東(298人):24.8%・中部(161人):24.8%・近畿(214人):23.8%・中国(61人):18.0%・四国(34人):11.8%・九州・沖縄(119人):21.0%診療科別の傾向は? 診療科別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。・脳神経外科(37人):40.5%・循環器内科(67人):38.8%・消化器外科(34人):32.4%・精神科(78人):29.5%・消化器内科(53人):28.3%・放射線科(32人):28.1%・整形外科(55人):23.6%・神経内科(30人):23.3%・内科(197人):21.8%・呼吸器内科(34人):20.6%・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):16.1%・小児科(52人):11.5% その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第1回】昨年度の年収

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物質使用障害(SUD)のリスク低減にGLP-1受容体作動薬は有効か(解説:小川大輔氏)

 物質使用障害(SUD:Substance Use Disorder)は、特定の物質の使用を制御できなくなり、健康上の問題や社会生活への支障があっても使用を続けてしまう慢性・再発性の疾患である。アルコール(お酒)やタバコ(ニコチン)のほか、処方薬(睡眠導入剤、鎮痛剤など)、覚醒剤、大麻、コカイン、オピオイドなど、脳に作用するさまざまな物質によって引き起こされる。 今回、GLP-1受容体作動薬と米国退役軍人の糖尿病患者におけるSUDリスクの関係を調査した研究結果が発表された1)。電子カルテのデータを用いて、各種SUDの新規発症と、既存SUD患者の臨床アウトカム(救急外来、入院、死亡、過量摂取、自殺念慮・試み)を調査したところ、GLP-1受容体作動薬の使用は新規および既存のSUDのリスク低減に関連している可能性が報告された。 この研究により、GLP-1受容体作動薬はSUDの予防と治療の両面で有望な役割を果たす可能性が示唆された。しかし、対象が米国退役軍人という特定集団に限定されるため一般化には注意しなければならない。またSGLT2阻害薬を比較薬とした観察研究であるため、今後さらなる臨床試験が必要である。 SUDの治療は、単に物質の使用をやめるだけでなく、心身の健康や社会生活の回復を目指す多角的なアプローチが必要である2)。それはSUDが「意志の弱さ」から生じるものではなく、脳の機能が変化した疾患であるからである。SUDは専門的な治療と継続的なサポートが不可欠な疾患であり、GLP-1受容体作動薬はその治療の一助になるかもしれない。

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働く世代の肥満・肥満症への正しい理解を促す取り組み始動/日本糖尿病協会

 3月4日の「世界肥満デー」に日本糖尿病協会(JADEC)は、都内で「肥満アドボカシー活動」のスタートに関して記者発表会を開催した。このセミナーは、糖尿病発症の重要なリスク因子である肥満を「ダイアベティス(糖尿病)の前段階」と位置付け、厚生労働省などと連携し、就労世代を対象とした全国的な「肥満アドボカシー活動」の開始を表明したもの。同協会では、今回の活動によりダイアベティス予防を社会に広げ、予防の入口から環境を変える取り組みに踏み出す。肥満の放置は社会経済に悪影響 初めに「『肥満の解消』によるダイアベティスの発症予防の取り組み」をテーマに清野 裕氏(JADEC理事長/関西電力病院 総長)が、わが国の糖尿病、肥満症の実態とJADECが行ったアンケート調査の結果などを説明した。 厚生労働省の調査によると糖尿病の受診率は改善している一方で30・40代では、依然として7割以上が治療を受けていない状況を示した。次にJADECが行ったアンケート「医師・一般消費者・肥満者を対象にした肥満に関する意識調査結果」について触れ、一般消費者の7割、肥満者の9割が「肥満は自己責任」と考えていることを報告した。肥満は「治療が必要」という人が全体で7割以上回答している一方で、保険診療で治療する場合では、一定の回答者には心理的抵抗があるという結果だった。また、他の調査結果でも「体重について気軽に医師に話すことができるか」と患者に聞くと、「気軽に話せる」という人は約20%で、医師側もあまり真剣に取り組んでこなかったということを指摘した。 肥満は、自己管理ができていない、意志が弱いなど個人の責任であるという「体重スティグマ」が、学校や職場などで差別的な評価につながる。医療の世界でも、医療者が一定の偏見をもって患者に診療にあたることで、気軽に医療者と話し合って減量に取り組むということができなくなり、治療への妨げともなる。さらに肥満者は、いろいろな疾患を併発しやすく、放置したままになると、社会全体の経済損失につながるといわれ、将来的に50兆円の損失になると予想されている。 そこで、JADECでは、とくに就労者に焦点を当て厚生労働省、経済団体・関係団体と協調し、医学的・社会的な観点から肥満や肥満症に介入し、肥満者がスティグマで診療萎縮することがないように社会啓発活動を今回展開すると経緯を説明した。 「厚生労働省の栄養・食生活の改善に向けた取り組み 」について丹藤 昌治氏(厚生労働省 健康・生活衛生局健康課 課長)が、厚生労働省の取り組みを説明した。現在、第3次の「健康日本21」が2024年より行われている。そのビジョンは「すべての国民が健やかで、心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」であり、豊かに生活できる持続可能な社会を示し、「誰一人取り残さない健康づくりを推進する」と記している。とくに生活習慣の改善の中で「栄養食生活」を行うことで、適正体重を維持するという目標を提示し、バランスの良い食生活、減塩食などの励行により生活習慣病の発症予防とともに循環器疾患や糖尿病対策を行うものである。具体的には毎年9月に「食生活改善普及運動」を実施し、バランスのよい食事を摂ることをインターネットなどでも啓発している。そのほか「スマート・ライフ・プロジェクトにおける適切な栄養・食生活の普及」という、国民や企業への健康づくりの新しい施策も行われ、「健康寿命をのばそう」を合言葉に国民運動となることを目指す取り組みも行われる。肥満・肥満症患者に医療者も理解を 「肥満症の成因と病態」について窪田 直人氏(熊本大学大学院 生命科学研究部 代謝内科学講座 教授)が、肥満症になるメカニズムを説明した。肥満症は生活習慣と遺伝要因の両方の相互作用で成り立っている。とくに20・30代では約7割が遺伝要因であり、その後、環境要因も重なることで肥満が進行する。代謝的に健康な肥満(MHO)と代謝的に不健康な肥満(MUO)を比較すると、脂肪分布、インスリン感受性、アディポカイン分泌などに違いがあることが明らかになってきた。また、MHOはけっして健康ではなく、医療介入の余地があることも最近の研究からわかってきた1)。そのほか、心血管死亡などの合併症を起こさない肥満はどのような肥満かを研究した結果では、収縮期血圧が<130mmHgかつ降圧薬なし、内臓脂肪蓄積がなく、糖尿病ではない肥満者が比較的合併症を起こしにくいということが判明した2)。肥満の概念は、BMIが肥満領域にある人を、どう層別化するかということであり、肥満症(MUHO)であってもMHOであっても全員が健康的生活を基盤に据えるべきであり、MHOでも生活習慣を改善することで代謝的健康を維持・補強することができる。その中には、食事療法や運動療法、行動療法に加えて、場合によっては、薬物療法や外科的な治療の選択肢もあると説明を行った。 「ダイアベティス予防からみた肥満へのアプローチ」について門脇 孝氏(虎の門病院 病院長)が、肥満者の合併症で多いダイアベティスからみた肥満の現状について説明を行った。わが国のダイアベティス患者は1,100万人と推定されており、とくにアジア人は欧米人と比べ、軽度肥満や内臓脂肪蓄積で発症しやすいとされている。以前行われたプレダイアベティスに対する生活習慣介入研究である「虎の門スタディー」では、強力介入群は通常介入群と比較して、約1.8kg体重が減少し、ダイアベティス発症が67%抑制されたという結果がある3)。肥満、肥満症の要因は、先述の説明通り環境と遺伝があるが、自己責任論は大きな誤解と偏見となる。そのような誤解と偏見が「スティグマ」と呼ばれ、社会的偏見による差別へ発展する。肥満のある人と医療スタッフの認知のギャップとそれを埋める必要性に関する調査研究では、多くの肥満者が減量は自己責任と回答する一方で、減量成功の責任は医療スタッフにあると答えている医療スタッフが多かった。また、肥満について患者と医療スタッフの間で話し合わない理由としては、医療スタッフ側に「患者は減量したいという意識に欠ける」「患者が減量できるとは思えない」「患者は減量には関心がない」の回答数が肥満患者の回答数よりも多く、医療スタッフでも社会的偏見があることがわかった。こうした結果からオベシティ・スティグマ(肥満への偏見)に終止符を打つことを目指す合同国際コンセンサスステートメント「肥満への認識」「差別への非難」「肥満患者などへの敬意を持ち、治療を支援すること」などが策定された。また、JADECでは「肥満・肥満症のある人に関するスティグマを解消するアドボカシー活動の提案」として、肥満・肥満症患者が置かれている現状を認識し、正しい診療の認識などを啓発するとしている。わが国では中高年までのダイアベティスでは肥満対策が喫緊の課題となっているほか、肥満のある人の割合は、成人男性で増加しており、肥満の解消はダイアベティスはじめ慢性疾患の発症を予防すると説明を行った。 最後に就労している肥満症患者の声として、患者自身の診療経験や体重減少後の効果が語られ、「肥満は単なる自己責任ではなく、生活や環境、体の状態が影響するものだと身をもって感じた。そして、医療のサポートを受けながら取り組めば体はきちんと応えてくれるということも実感した。今、肥満治療をためらっている方がいれば1人で抱え込まず医師に相談してほしい」と思いを述べた。

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高血圧診断後の生活習慣改善は心血管リスク低下と関連するか

 高血圧患者約2.6万例を対象とした大規模前向きコホート研究において、生活習慣と心血管疾患および2型糖尿病リスクの関連を検討した結果、健康的な生活習慣の実践は、降圧薬使用の有無にかかわらずこれらのリスク低下と関連しており、高血圧診断後であっても生活習慣の改善度が高いほどベネフィットが大きいことが、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのZixin Qiu氏らによって示された。JAMA Network Open誌2026年3月2日号掲載の報告。 一般集団では、健康的な生活習慣の順守により心血管疾患の予防が可能であることが示唆されている。しかし、高血圧患者において健康的な生活習慣の長期的な順守や診断後の変化と心血管疾患の発症リスクとの関連を検討した研究は限られている。そこで研究グループは、2つの大規模前向きコホートのデータを用いて、高血圧診断後の生活習慣および診断前後の生活習慣の変化と、心血管疾患および2型糖尿病の発症リスクとの関連を検討した。 解析には、Nurses' Health Study(NHS、1986~2014年)およびHealth Professionals Follow-Up Study(HPFS、1986~2014年)において新たに高血圧と診断された参加者が含まれた。追跡期間は、心血管疾患についてはNHSで2020年6月30日まで、HPFSで2016年6月30日まで、2型糖尿病については両コホートとも2019年12月31日までとした。 健康的な生活習慣とは、(1)質の高い食事(代替健康食指数[AHEI-2010]の上位5分の2)、(2)非喫煙、(3)中~高強度の身体活動(150分/週以上)、(4)節度あるアルコール摂取(男性30g/日以内、女性15g/日以内)、(5)適正なBMI(18.5~24.9)の5項目と定義した。生活習慣要因は2~4年ごとに再評価され、各項目を満たすごとに1点を加算し、生活習慣スコア(範囲:0[最も不健康]~5[最も健康])として評価した。主要アウトカムは心血管疾患(致死性/非致死性の冠動脈疾患と脳卒中)および2型糖尿病の新規発症とした。 主な結果は以下のとおり。・合計2万5,820例の高血圧新規発症者が解析対象となった(平均年齢60.6歳、女性72.6%)。診断時の生活習慣スコアの中央値は3(四分位範囲[IQR]:2~4)であった。・追跡期間中央値24年(IQR:23~25)で、心血管疾患3,300例、2型糖尿病2,529例の発症を認めた。・生活習慣スコアが最も高い群(5)は最も低い群(0~1)と比較して、心血管疾患発症リスクは約51%低く(調整ハザード比[aHR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.61)、2型糖尿病発症リスクは約79%低かった(aHR:0.21、95%CI:0.14~0.30)。・40歳時点で生活習慣スコアが最も高い群(5)では、最も低い群(0~1)と比較して、平均余命が最大8.2年長いと推定された。・高血圧診断後に生活習慣スコアが低値(0~3)から高値(4~5)に改善した群は、常に低い群と比較して、心血管疾患(aHR:0.88、95%CI:0.79~0.98)および2型糖尿病(aHR:0.56、95%CI:0.48~0.65)の発症リスク低下と関連していた。・逆に、診断後に生活習慣スコアが高値から低値に低下した群では、常に高値を維持した群と比較して、心血管疾患(aHR:1.14、95%CI:1.00~1.30)および2型糖尿病(aHR:1.75、95%CI:1.45~2.10)の発症リスク上昇と関連していた。・生活習慣スコアが1点上昇するごとに、心血管疾患(aHR:0.90、95%CI:0.86~0.95)および2型糖尿病(aHR:0.79、95%CI:0.75~0.83)の発症リスク低下と関連していた。・総合解析では、降圧薬使用の有無にかかわらず、生活習慣スコアが高いほど心血管疾患および2型糖尿病の発症リスクが低いことが示された。 研究グループは「これらの結果は、健康的な生活習慣を取り入れることで、高血圧の自然経過を大きく変える可能性を示唆している」とまとめた。

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中等度CKDの腎機能追跡、クレアチニン・シスタチンC併用eGFRが良好/BMJ

 血清クレアチニンとシスタチンCの両方のバイオマーカーを用いた糸球体濾過量(GFR)の推算式は、それぞれの単一バイオマーカーに基づく推算式より、実測GFRの変化との一致率が高いことが、英国・バーミンガム大学のKatie Scandrett氏らによる前向きコホート研究の結果で明らかになった。慢性腎臓病(CKD)のモニタリングはGFRを用いて行われているが、実測GFRはあまり使用されていない。一方、血清クレアチニン値に基づく推算糸球体濾過量(eGFR)が一般的に使用されているが、不正確な場合があるという課題があった。BMJ誌2026年3月19日号掲載の報告。実測GFRと各種推算式によるeGFRで3年後の変化を比較 研究グループは、2014年4月1日~2017年12月31日にイングランドの6施設(プライマリケア、2次および3次医療施設)において、登録前の少なくとも3ヵ月間、クレアチニンに基づくeGFRが30~59mL/分/1.73m2でステージ3のCKDを有する18歳以上の成人1,229例を登録した。 主要解析では、3年間にわたるGFRモニタリングにおける推定式の精度を評価。実測GFR(基準値)とeGFRの年間変化量の差が±3mL/分/1.73m2/年以内の場合を一致とみなした。副次解析では、疾患進行(実測GFRの25%以上低下、かつ病期分類の悪化)に関するeGFRの検出力を評価した。 基準となる実測GFRはイオヘキソールクリアランス法により測定し、eGFRは血清クレアチニンおよびシスタチンC濃度より慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration:CKD-EPI)および欧州腎機能コンソーシアム(European Kidney Function Consortium:EKFC)の推定式を用いて算出した。実測GFRとの一致率が最も高いのは、クレアチニンとシスタチンCに基づくeGFR 解析対象は、ベースラインおよび3年後の両方で実測GFRおよびeGFRのデータが得られた875例であった。 実測GFRの中央値は、ベースラインの48.1mL/分/1.73m2から、3年後は43.6mL/分/1.73m2に低下した。実測GFR変化量の中央値は、検討したすべての推算式(CKD-EPIcreatinine、CKD-EPIcystatin、CKD-EPIcreatinine-cystatin、CKD-EPI(2021)creatinine、CKD-EPI(2021)creatinine-cystatin、EKFCcreatinine、EKFCcystatin、EKFCcreatinine-cystatin)によるeGFR変化量の中央値を上回った。 eGFR変化量と実測GFRの変化量の一致の程度は良好であった。一致率は72.6~80.2%の範囲であり、2つのバイオマーカーを用いた推算式で実測GFRの変化量との一致率が高かった。一致率は、CKD-EPIcreatinine(73.1%、95%信頼区間:70.1~76.1)との比較において、CKD-EPIcreatinine-cystatin(78.6%、75.8~81.3)、CKD-EPI(2021)creatinine-cystatin(78.1%、75.2~80.8)、EKFCcreatinine-cystatin(80.2%、77.4~82.8)が有意に良好であった(すべてのp<0.001)。 CKDの進行は139例(15.9%)で認められた。すべてのeGFRにおいてCKDの進行に関する感度は低かった(<54.1%)が、特異度は高かった(>90.4%)。 著者らは、「すべての推算式によるeGFRがGFRの経時的低下を過小評価していたことについて、さらなる検討が必要である」としたうえで、「臨床現場において複数マーカーに基づく推算式の活用を拡大することが、疾患モニタリングの改善、ひいては臨床ケアの向上に寄与する可能性がある」とまとめている。

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2つのRCT事後解析からみたカナグリフロジンの尿路感染症発症リスク

 2型糖尿病患者におけるカナグリフロジンの尿路感染症(UTI)発症リスクは尿中白血球エステラーゼ(LE)および亜硝酸塩が異常値であってもプラセボと同程度だったという研究結果が、Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年3月16日号に報告された。 SGLT2阻害薬は心腎系の有益性が確立されているものの、UTIのリスクに対する懸念から、とくに高リスク患者では使用が制限される可能性がある。 大阪大学の土井 洋平氏らは、UTIの診断に有用とされるLEおよび亜硝酸塩1)を指標にカナグリフロジンとUTIとの関連を検証した。 本研究は2型糖尿病患者を対象としたカナグリフロジンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験であるCANVAS試験およびCREDENCE試験の事後解析として行われた2,3)。主要評価項目は初回UTI発症までの時間、副次評価項目は総UTI発症数などである。 主な結果は以下のとおり。・被験者8,614例中、LEの異常は10.7%、亜硝酸塩の異常は3.5%で認められた。・調整後LE陽性率1+、2+、3+の正常群に対するハザード比(HR)はそれぞれ1.72、1.89、2.77と、LE陽性率が高いほど初回UTI発症リスクは増加した。・亜硝酸塩の異常1+、2+のHRは2.28、1.66と、正常群に対して初回UTI発症リスクが上昇していた。・LE陽性率および亜硝酸塩の異常は総UTI発症も増加させた。・全体的にみて、カナグリフロジン投与はプラセボと比べ、初回UTI発症リスク(HR:1.06、95%信頼区間[CI]:0.93~1.21)も総UTI発症リスク(HR:1.01、0.86~1.18)も増加させなかった。・LE正常群におけるカナグリフロジン投与のプラセボに対する初回UTI発症のHRは1.17(95%CI:1.00~1.38)、LE異常群におけるHRは0.94(0.73~1.21)であった(交互作用のp=0.10)。・亜硝酸塩正常群におけるカナグリフロジン投与のプラセボに対する初回UTI発症のHRは1.08(95%CI:0.94~1.24)、異常群のHRは0.92(0.59~1.43)であった(交互作用のp=0.45)。・LEおよび亜硝酸塩の変化による初回UTI発症リスクは、カナグリフロジンとプラセボで差がみられなかった。・副次評価項目である総UTIイベントのリスクについて、カナグリフロジンは、LEおよび亜硝酸塩群のいずれの異常群においてもプラセボよりも増加させなかった(各HR:0.76[95%CI:0.58~0.99]、1.18[0.79~1.76])。 LEおよび亜硝酸塩の異常値はUTIのリスク増加と関連していたものの、カナグリフロジン投与によるリスクの増加は確認されなかった。これらの結果は、膿尿や細菌尿の所見がある2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬の投与を一律に控えるものではない、という考えを支持している、と筆者らは結んでいる。

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BMIでは見えない死亡リスク?新体型指標の可能性~日本人大規模コホート

 体格評価に広く用いられるBMI(体格指数)だが、その限界も指摘されている。近年、体型の丸みや腹囲を反映する指標であるBody Roundness Index(BRI)や、体型形状を考慮したA Body Shape Index(ABSI)が提案されている。今回、日本人約78万人を対象とした大規模研究で、これらの指標が死亡リスク評価に新たな視点をもたらす可能性が示された。研究は、東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座の木村悠哉氏らによるもので、詳細は1月31日付で「Journal of Obesity」に掲載された。 BMIは体脂肪の指標として広く用いられているが、脂肪と筋肉を区別できない点や脂肪分布を反映しない点が課題とされている。同じBMIでも体組成や死亡リスクが異なる可能性があり、近年は腹囲や内臓脂肪を反映した新たな体型指標であるBRIやABSIが提案されている。欧米や糖尿病患者を対象とした研究では、これらの指標がBMIより死亡リスク評価に優れる可能性が示唆されているが、アジア人の一般集団でのエビデンスは限られている。本研究では、日本人を含むアジア集団において、BMI・BRI・ABSIと全死亡との関連を比較し、BMIカテゴリ内でのより詳細なリスク層別化が可能かを検証することを目的とした。 本研究では、全国を代表する日本のレセプトデータベース(2014~2022年)を用いた後ろ向きコホート研究として、健康診断を受診した77万8,812人を解析対象とした。主要評価項目は全死亡とした。3つの身体計測指標は、制限付き三次スプライン曲線から算出したカットオフ値に基づき5群(Q1~Q5)に分類した。人口統計学的因子、生活習慣および併存疾患で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、これらのカテゴリ変数と全死亡との関連を評価した。 参加者の平均(標準偏差)年齢は62.8(9.6)歳で、女性は44万5,250人(57.2%)であった。死亡例ではABSIが生存者より高値であった一方、BMIおよびBRIには明確な差はみられなかった。また、BRIはBMIと強い相関を示したのに対し、ABSIはBMIとほとんど相関が認められなかった。 追跡期間中央値(四分位範囲)4.53(3.28~6.23)年の間に、1万4,690件の死亡が確認された。BMIおよびBRIでは、値が低すぎても高すぎても死亡リスクが上昇する「U字型」の関連がみられた。一方、ABSIでは低値域ではリスク上昇が比較的緩やかで、高値になるほど急激にリスクが増加する「J字型」の関係が示された。 基準カテゴリ(Q3)と比較した死亡リスクの有意差は、BMIではQ1・Q2・Q5の3カテゴリに認められたのに対し、BRIおよびABSIでは基準カテゴリ(Q3)以外のすべて(Q1・Q2・Q4・Q5)で認められた。 著者らは、「本研究はアジア人集団における死亡リスク評価において新たな身体計測指標を考慮することの有用性を示唆している。また、これらの知見は、体組成評価や肥満管理におけるより包括的なアプローチの発展に寄与する可能性がある」と述べている。 なお、本研究の限界として、民族差を検討できない点、死因別死亡が解析できない点、観察期間が比較的短い点、選択バイアスや社会経済的要因を調整できないことによる残余交絡の可能性がある点などを挙げている。

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透析患者でもGLP-1薬開始で心血管イベント・死亡リスク低下と関連

 維持透析を受けている腎不全の2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の新規使用は、他の一般的な血糖降下薬と比較して心血管イベントおよび全死因死亡のリスク低下と関連していたことを、米国・Duke University School of MedicineのBenjamin Catanese氏らが示した。Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年3月12日号掲載の報告。 GLP-1薬は、透析を必要としない慢性腎臓病患者において心血管イベントリスクを低減することが報告されている。しかし、透析に至った腎不全患者におけるGLP-1薬の有益性は依然として不明であり、腎不全患者の心血管アウトカムを改善する治療選択肢は限られている。そこで研究グループは、腎不全と2型糖尿病を併発している患者を対象に、GLP-1薬または他の血糖降下薬を新たに使用開始した場合の心血管アウトカムを比較する観察研究を実施した。 電子カルテ、メディケア請求データ、米国腎臓データシステム(United States Renal Data System、2011~21年)を用いて、維持透析中の2型糖尿病患者におけるGLP-1薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬(SU薬)の新規使用者を特定した。主要解析では61の共変量を用いた傾向スコアマッチングにより、GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者を1対1で比較した。副次解析として、GLP-1薬とSU薬の開始者についても同様に比較した。 主要アウトカムは全死因死亡を含む修正主要心血管イベント(MACE)で、副次アウトカムには主要アウトカムの個々の構成要素と心不全による入院が含まれた。原因別Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・新規使用者は、GLP-1薬3,629例、DPP-4阻害薬2万1,369例、SU薬3万2,296例で、最大2年間追跡された。・GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者3,284組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACE、全死因死亡、心不全による入院のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.87(95%CI:0.78~0.97) 全死因死亡 HR:0.83(95%CI:0.74~0.94) 心不全による入院 HR:0.90(95%CI:0.83~0.99)・GLP-1薬とSU薬の開始者2,792組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACEおよび全死因死亡のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.83(95%CI:0.74~0.93) 全死因死亡 HR:0.80(95%CI:0.69~0.91)

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中年期の健康的な食事は認知機能低下リスクを抑制する?

 今日の食卓に並んでいるものが、高齢になったときの脳の老化に影響を与える可能性があるようだ。中年期に健康的な食事をしている人では高齢期に認知機能が低下するリスクが低いことが、新たな研究で示された。米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院疫学・栄養学分野のKjetil Bjornevik氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月23日掲載された。 Bjornevik氏らは、「野菜や魚を豊富に、ワインは適量を摂取することは、認知機能低下リスクの抑制に寄与していた一方、赤肉や加工肉、フライドポテト、糖分の多い飲料は認知機能の低下に関連していた。この結果は、健康的な食事が将来の脳の健康に有益である可能性を示唆している」と述べている。 今回の研究では、米国の女性看護師と男性医療従事者を対象に、健康状態を生涯にわたって追跡した3件の大規模研究のデータを統合し、合計で15万9,347人(平均年齢44.3歳、女性82.6%)を対象に解析が行われた。Bjornevik氏らは、各参加者の食事内容を調べ、心臓の健康に良いとされるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食、健康的な植物性食品ベースの食事指数(Healthful Plant-Based Diet Index;hPDI)、プラネタリーヘルスダイエット指数(Planetary Health Diet Index;PHDI)、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)など、6種類の健康的な食事法の遵守度をスコア化した。その上で、同スコアと高齢期の自己申告に基づいた主観的な認知機能低下との関係を調べた。 その結果、脳の健康を守る効果が最も高いのはDASH食であることが示された。具体的には、DASH食の遵守度が上位10%の人では下位10%の人と比べて、認知機能低下のリスクが41%低かった(リスク比0.59、95%信頼区間0.57〜0.62)。特に、45~54歳の時点でDASH食の遵守度が高いことは、認知機能低下リスクが低いことと最も強く関連していた。また、血糖値や炎症の抑制を目的とした食事法も認知機能低下のリスクを下げることが示された。 45〜54歳の人で関連が最も強かった点について、今回の研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスの管理栄養士であるStephanie Schiff氏は、「この年代の人は『年をとれば記憶力は衰えるし、頭の回転も鈍くなってぼんやりするものだ。それが老化現象であり、どうすることもできない』と思いがちだ。だからこそ、適切な食事法を守れば、あるいはDASH食に従えば、記憶力や認知機能、注意力、言語能力、実行機能を改善できる可能性があることを示したこのハーバード発の研究結果には心を躍らされる」と付け加えている。 本研究では、DASH食以外の健康的な食事法も認知機能低下のリスクを11~24%低下させることが示された。さらに、野菜、果物、魚、ワイン、紅茶、ドレッシングはいずれも良好な認知機能に関連していた一方、フライドポテト、赤肉や加工肉、卵、甘い飲み物、菓子類は認知機能の悪化に関連していた。 Schiff氏は、DASH食が脳に大きなメリットをもたらすことが示されたことに驚きはなかったと話す。「心臓の健康に良いDASH食に従った食事を摂取することには利点しかない。心臓を健康に保つことは、脳を健康に保つことにつながるからだ」と同氏は言う。 また、DASH食は血圧を下げることを重視しているが、このことが脳の老化に対する有益性の多くを説明している可能性があるとSchiff氏は考察している。高血圧は血管に損傷を与えるが、その中には脳に血液を送る血管も含まれる。「脳に十分な血液が送られなくなると酸素が不足し、脳細胞の損傷をもたらす。その結果、認知機能や記憶力の低下、さらにはアルツハイマー病のリスクが上昇する可能性がある」と同氏は説明している。

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SGLT2阻害薬、腎臓の加齢変化抑制の可能性――老化が速い魚で検証

 糖尿病などの治療に用いられているSGLT2阻害薬(SGLT2-i)という薬に、老化した腎臓を保護するように働く可能性があることが報告された。米MDI生物学研究所のHermann Haller氏らの研究によるもので、詳細は「Kidney International」3月号に掲載された。 この研究では、寿命がわずか4~6カ月のアフリカンターコイズキリフィッシュという小魚が用いられた。この魚は非常に老化が速いため、わずか数週間の研究でヒトの数十年分に相当する加齢現象を観察することができる。研究の結果、SGLT2-iの投与によって、加齢に伴う腎臓の変化が抑えられ、腎臓の健康が維持されることが示された。論文の上席著者であるHaller氏は、「SGLT2-iは糖尿病の有無にかかわらず、心臓や腎臓に対して保護的に作用することが既に知られているが、その作用のメカニズムはこれまで十分明らかにされていなかった」と語っている。 SGLT2-iを投与しない場合、この魚の腎臓には人間の腎臓と非常によく似た加齢変化が観察された。具体的には、腎臓内の毛細血管が少なくなり、ろ過システムがダメージを受け、炎症が強まり、細胞のエネルギー産生に支障が生じた。しかしSGLT2-iを投与した魚では、これらの変化が少なく、血流やろ過機能、エネルギー産生機能も正常に維持されていた。また、炎症抑制や細胞間のコミュニケーション改善といった作用も観察された。Haller氏は、「これまでの研究でSGLT2-iは血糖降下作用を上回るメリットをもたらすことが示されてきているが、それは今回明らかになったさまざまな同薬の機序が、疾患の病態の上流に働きかけるためではないか」と述べている。 SGLT2-i投与の有無による最大の違いの一つは毛細血管に認められた。同薬を投与されていない魚は加齢とともに毛細血管が徐々に失われていき、その結果、腎臓の細胞は酸素を得ることが困難になり、エネルギー産生に支障が生じ始めた。一方で同薬を投与された魚はより多くの毛細血管が維持され、エネルギー産生の改善と炎症抑制に関連する遺伝子の発現が若い個体に近い状態を示した。 論文の筆頭著者であるハノーバー医科大学(ドイツ)のAnastasia Paulmann氏は、「急速に老化する動物モデルを用いた研究の結果、これほど明確なSGLT2-iの影響が現れたことは衝撃的だった。最も驚いたのは、機序が一見単純そうな同薬が、血管やエネルギー代謝、炎症をはじめ、腎臓内で互いに関連して働くさまざまなシステムに影響を及ぼすことだ」と、本研究のインパクトを強調している。 研究者らは、老化の速いこの魚を研究に用いることで、マウスなどを用いるよりも迅速に新しい治療法を検討できるのではないかと考えている。Haller氏らの研究チームでは今後、既にダメージが進行している腎臓の修復にもSGLT2-iが役立つか否かの検討、および治療開始のタイミングの重要性に関する研究を予定している。

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BMIが低下するとがんのリスクも減少するか

 体重の増加は複数のがんの危険因子であるが、非外科的な減量はがんリスクに影響を及ぼすのだろうか。このテーマについて、米国クリーブランド・クリニック量的代謝研究センターのKenda Alkwatli氏らの研究グループは、BMI値30以上の米国人約14万人の健康記録を用いて、BMIの変化が肥満関連がんおよびその他のがんの診断リスクと関連しているかどうかを評価した。Obesity誌2026年オンライン版3月10日号に掲載。BMI値30以上の約14万人の調査から判明 研究では、2000~22年における米国の統合医療システムの電子健康記録から、BMI値30以上の成人14万3,630例を対象に後ろ向き観察研究を実施した。新規がん症例をマッチングした対照群と比較し、ロジスティック回帰モデルを用いて、3年、5年、10年の各期間におけるBMI変化と、肥満関連がんおよびその他のがんの診断リスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・14万3,630例のうち、7,703例の症例群と13万5,927例の対照群が特定された。・BMIの1%低下は、3年(オッズ比[OR]:0.990、95%信頼区間[CI]:0.984~0.996、p<0.001)、5年(OR:0.989、95%CI:0.984~0.995、p<0.001)の期間において、肥満関連がんの発症リスクが低いことと関連した。・他のがん種の多くでも、複数の観察期間において発症リスクが低いこととの関連が認められた。 以上の結果から研究グループは、「実生活における体重減少は、肥満関連がんおよびその他のがんのリスク低下と関連している」と結論付けている。

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PCI後早期のLDL-C値55mg/dL未満達成でMACEリスク激減/日本循環器学会

 欧州心臓病学会(ESC)および欧州動脈硬化学会(EAS)のガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次予防において、非常に高リスクな患者にはLDLコレステロール(LDL-C)55mg/dL未満、きわめて高リスクな場合には40mg/dL未満という目標値を推奨している1)。しかし、日本人患者においてこれほど厳格な管理が実際に予後を改善するかは十分に検証されていなかった。現在、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、二次予防の目標値は、原則100mg/dL未満、ハイリスク者で70mg/dL未満と設定されている2)。 日本人冠動脈疾患(CAD)患者における超低LDL-C目標達成の臨床的意義を検証するため、国内3施設による多施設共同研究が実施された。その結果、PCI後にLDL-C値55mg/dL未満、さらには40mg/dL未満を早期に達成することで、主要心血管イベント(MACE)のリスクが有意に減少することが示された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏が発表した。なお、本結果はAtherosclerosis誌オンライン版2026年3月23日号に掲載された3)。 本試験では、2017年1月~2022年8月の期間にPCIを施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であったCAD患者2,560例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-C測定値を「達成値」と定義し、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心血管死、非致死性自然発症心筋梗塞、脳卒中、および臨床的に誘発された非標的病変への冠血行再建術)の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の2,560例のうち、2ヵ月時点で目標LDL-C値55mg/dL未満を達成していたのは780例(30.4%)、40mg/dL未満を達成していたのは251例(全体の9.8%)であった。・55mg/dL未満の群では、2型糖尿病の合併率や喫煙歴が他の群よりも有意に高かった。主治医がこれらのハイリスク症例に対して、より強力な脂質低下療法を積極的に行った結果、LDL-C値が低下したと考えられる。・LDL-C値55mg/dL未満の達成群では、強力な脂質低下療法が行われており、スタチンが98%、エゼチミブが62%、PCSK9阻害薬が5%で使用されていた。また、達成群の68%がこれら薬剤の併用療法を受けていた。・LDL-C値70mg/dL以上の群(794例、29%)と比較して、55mg/dL未満を達成した群ではMACE発生リスクが有意に減少した(ハザード比[HR]:0.38、95%信頼区間[CI]:0.28~0.51、p<0.001)。・55mg/dL未満達成群の中での比較において、40mg/dL未満に到達した群(251例)は、40~54mg/dL(529例)の群と比較して、MACEリスクがさらに58%減少した(HR:0.42、95%CI:0.19~0.90、p=0.027)。55mg/dL以上の群と比較した場合、40mg/dL未満達成群のHRは0.20(95%CI:0.10~0.41、p=0.001)であった。・サブグループ解析の結果、年齢、性別、糖尿病の有無、慢性冠症候群/急性冠症候群の別にかかわらず、LDL-C値40mg/dL未満の達成による一貫したリスク低減効果が認められた。 本研究の結果について片岡氏は、「日本人においても、PCI後2ヵ月というきわめて早い段階でLDL-C値40mg/dL未満まで強力に低下させる『Strike Early-Strike Strong Lipid-Lowering(早期強力脂質低下)』戦略を実践することが、その後の長期的な心血管予後を劇的に改善する鍵となるだろう」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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