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糖尿病患者の将来リスクをAI活用で予測/福島医大・日本糖尿病学会ほか

 福島県立医科大学と千葉大学、国立健康危機管理研究機構(JIHS)らの研究グループは、株式会社エフコムとの共同研究により、AIを活用して糖尿病を5つのサブタイプに分類し、将来の合併症・併存症リスク(糖尿病関連腎臓病、透析導入、心血管障害など)を推計するウェブプラットフォーム「福島医大 糖尿病未来予測ナビ」を研究・開発した。このウェブプラットフォームは、2026年5月20日に福島県立医科大学附属病院、日本糖尿病学会、てだこ浦西駅循環器・糖尿病クリニックの各ホームページ上で公開された。 糖尿病患者では、合併症の進行に大きな個人差がある。この研究は、国内最大級のデータベース「J-DREAMS」(日本糖尿病学会運営)を活用し、日本人の病態に最適化された予測モデルの構築を目的に開発され、患者の将来リスクを推計する。 ウェブプラットフォームの主なポイントは以下の3点。1)AIが糖尿病を5つのタイプに分類 日常診療で得られるデータ(年齢、BMI、血糖値など)を解析し、患者を5つのサブタイプ(クラスター)に分類、合併症リスクを可視化する。2)診断時点で将来の「透析リスク」を推計 早期段階のデータから将来の透析導入リスクを推計できる。とくに「重症インスリン抵抗性(SIRD)」は、8年間で透析導入リスクが約4%に達することを特定している。3)日常診療ですぐに活用可能な「ゼロセットアップ」設計 特別な検査を必要とせず、一部データが不足していてもAIが補完する独自技術を搭載。幅広い医療現場での活用が期待される。 研究・開発者の1人である島袋 充⽣氏(福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座 教授)は、「患者と医療者が同じ未来を共有し、ともに歩んでいく。そんな新しい糖尿病医療のスタンダードを、福島から全国へ広げていきたい」と期待を寄せている。

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標的試験エミュレーション、無作為化比較試験との一致度は中程度/BMJ

 現在の標的試験エミュレーションは、対応する無作為化比較試験の再現に関して、一致度は中程度であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCanlong Wang氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果で示された。標的試験エミュレーションが、対象とした無作為化比較試験で観察された効果を、どの程度再現できるかは依然として不明であった。著者は、「ベースラインの特性やアウトカムのエミュレーションの質を向上し、複数の情報源を連結したデータベースを活用するなど、エミュレーションデザインを改善することで、一致度は高めることができる」と述べている。BMJ誌2026年5月19日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で一致度を評価 研究グループは、Medline、EMBASE、Scopus、PsycINFOおよびWeb of Scienceを用い2010年1月1日~2025年10月1日に発表された観察研究を検索した。 適格基準は、薬剤、外科手術または医療機器の使用に関するベンチマークとなる無作為化比較試験(標的試験)の模倣を目的とすることが明示されている英語の論文とした。 2人の研究者がそれぞれ、各エミュレーション研究とそれに対応する無作為化比較試験について、研究領域、対象集団、介入、対照群、およびアウトカムに関するデータを抽出するとともに、エミュレーション研究はROBINS-Iツール、無作為化比較試験はコクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。 21の事前に定義されたエミュレーションデザインの特徴について、エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア間の一致度を、8つの指標(2値指標は標準化差、点推定値、統計学的有意性の完全一致、統計学的有意性の部分一致、連続指標はピアソン相関係数、クラス内相関係数、比率の相対偏差、比率の比)を用いて検討し、研究特性と一致度の関連について、サブグループ解析および回帰分析を実施した。ピアソン相関係数は0.59、標準化差の一致率は79%、比率の比は0.96など エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア107組において、ピアソン相関係数は0.59(95%信頼区間[CI]:0.45~0.70)、標準化差の一致度は79%(85/107組)、比率の比は0.96(95%CI:0.92~1.01、I2=36%)であった。 試験デザインをより忠実にエミュレートしていた63組では、より高い一致性が観察され、ピアソン相関係数は0.83(95%CI:0.73~0.89)、標準化差の一致度は87%(55/63組)であった。 サブグループ解析では、無作為化比較試験のエミュレーションは、静脈血栓塞栓症および主要心血管イベントに関連する特定のアウトカムについて、無作為化比較試験の治療効果を系統的に過小評価する傾向がみられた。一方、呼吸器系のアウトカムについては過大評価する傾向があり、統合した比率の比はそれぞれ0.76(95%CI:0.58~1.00、I2=40%)、0.91(95%CI:0.86~0.96、I2=32%)、1.20(95%CI:1.03~1.40、I2=40%)であった。さらに、請求データに基づくエミュレーションは、治療効果を過小評価する傾向にあった(0.90、95%CI:0.82~0.99、I2=38%)。 単変量回帰分析では、エミュレーション研究と無作為化比較試験の一致度の低さは、ベースラインの対象集団の特性に不均衡があるエミュレーションデザイン、入院中に治療が開始されるデザイン、およびアウトカムエミュレーションの質が低いことと関連していた。

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1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

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チルゼパチドが中等症以上のOSASに適応拡大

 厚生労働省薬事審議会・医薬品第一部会は4月24日、日本イーライリリーの肥満症治療薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注)について、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する適応拡大および肥満症に関する効能又は効果の一部変更の承認を了承。5月18日の承認に伴い、チルゼパチドの添付文書が改訂された。本剤の使用に当たっては、最適使用推進ガイドラインを参照されたい。チルゼパチド、肥満症についての一部変更点とOSASへの適応拡大 主な改訂点は以下のとおり。[効能又は効果](下線部分を改訂)◯肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る。※各効能又は効果に関連する注意は添付文書を参照[用法及び用量]◯肥満症通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回15mgを皮下注射する。なお、忍容性が認められない場合には、週1回10~15mgの範囲で投与量を調整することができる。

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介助犬は介護者並みのケアを提供する

 介助犬は私たちが考えている以上に、障害や病気を抱える人の「積極的なケア提供者」として行動しているようだ。人間と介助犬との協働的な相互作用を調査した新たな研究で、介助犬は、飼い主の健康状態を予測したり、移動を補助したり、人間やロボットでは代替できない方法で精神的な支えを提供したりするなど、目に見えないケア活動を行っていることが明らかになった。アールト大学(フィンランド)経営学部のAstrid Huopalainen氏とトゥルク大学(フィンランド)経済学部のSuvi Satama氏によるこの研究の詳細は、「Human Relations」に3月20日掲載された。 この研究では、盲導犬や医療アラート犬などの介助犬13匹とその飼い主との日常生活の様子を、インタビュー、エスノグラフィー(民族誌)に基づく観察(集団や社会の行動様式を直接観察により理解する方法)、写真を通じて分析した。 その結果、人と犬は言葉を使わず、しぐさや動き、反応を通じて互いを読み取り合っていることが示された。例えば、研究参加者の1人は、自宅で履くお気に入りのウールの靴下についてのエピソードを次のように語っている。「昨日帰宅したとき、靴下をどこに置いたのか分からなくて家の中を探しまわっていた。そのあとソファに座ると、犬が隣に来て、靴下を私の手に落とした。まるで、『ほら、これを探してたんでしょ』と言っているかのようだった。私が靴下のことを口にしたわけでもないのに、『これ、もうすぐ必要になるよね』と思ったようだった」。 また、介助犬はケアの担い手としての役割を果たし、人間は自分の判断よりも犬の判断に頼らざるを得ない場合があることも明らかになった。「例えば、糖尿病の人は、犬が血糖値の変化を検知した際、その知らせに頼ることになる。犬の合図に従って血糖値を確認したり、必要な薬を適切なタイミングで使用したりすれば、深刻な事態を回避できる」とSatama氏は述べている。 研究グループは、このような関係性によって、人と犬の従来の関係が、人間が犬の世話をするという一方向的なものではなくなり、その境界が曖昧なものになると指摘する。Satama氏は、「介助犬は人間を支え、人間もまた精一杯、介助犬の世話をする。このようにして、弱さが関係性となり、双方がケアを与え、そして受け取ることになる」と話す。 Satama氏によると、研究中には、介助犬が「勤務時間外」であることを認識し、時には飼い主にいたずらをしたり、自分の判断で物事を進めたりする様子が見られたという。同氏は、「視覚障害のある人とその介助犬の集まりを観察していたときのことだ。犬たちは、飼い主のそばで床に伏せているよう指示されていた。突然、1匹の犬が、別の犬やにおいのする方へこっそり移動し始めたが、その犬の飼い主は、視覚障害のため気付かなかったが、その犬が自分の意思で行動していると感じた」と振り返った。 研究グループは、この研究が、さまざまな組織における動物の多様な役割と、職場での動物の福祉についての議論を巻き起こすことを期待している。また、犬が単に、指示されたことを行うだけではなく、自分で状況を判断し、行動する能力を持ち合わせていると理解することが、より良いケアの実現につながる可能性があるとの見方を示している。 その上で研究グループは、「本研究結果は、犬が主体的に判断し、行動するケアのあり方に光を当てることで議論を広げるものだ。同時に、人と動物の間のケア関係は、『彼らにとっての利益とは何か』『どのように相互の利益を実現できるのか』という観点から、動物の立場を真剣に考える倫理的責任を私たちに問いかけている」と結論付けている。

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1回の大腸内視鏡検査により大腸がんの死亡率は減少するか?(解説:上村直実氏)

世界と日本の大腸がん検診の動向について 世界で毎年200万件の新規症例が発生する大腸がんは3番目に多いがんであり、世界中で早期発見のための検診が盛んに行われている。日本における2024年の大腸がん死亡者数は、男性約2万8,800例、女性約2万5,600例、合計約5万4,400例で、全がん死亡者数の約14%を占めているが、重要なのは検診および大腸内視鏡検査(CS)による早期発見で予防可能な疾患という点である。 検診方法は、主に直接CSを行う米国に対して、日本・欧州・オーストラリアなどでは最初に免疫学的便潜血検査(FIT)を用いる検診が主流である。いずれの方法においても、大腸がん死亡率の減少には検診の受診率が最も重要であることが明らかとなっている。ちなみに、最近大腸がん死亡者数の低下を認めている米国の受診率は70%で、日本の40%を大きく上回っている。大腸内視鏡検査の有用性を示す報告について 大腸がん検診におけるCSの有用性を示した有名な臨床研究は、1993年NEJM誌に報告された米国発の「National Polyp Study」である。この研究は、内視鏡的に発見された腺腫を切除した後の長期追跡調査により大腸がんの発症率および死亡率が著明に低下し、大腸がん予防に対するCSの有用性を示したのみならず、大腸がんのadenoma-carcinoma sequence説を実際に証明したものとされている。日本で2006年から経過観察された日本版の「Japan Polyp Study」では、「腺腫切除による大腸がん予防」および「CSの適切な間隔は3年間が妥当」との結論が2020年のGUT誌と2024年のCGH誌に報告されており、大腸がん予防にCSによるポリープ切除が確立したものとなっている。その他、観察研究によりCSを用いる検診法の有効性が数多く報告されているものの、検診におけるCS勧奨の有用性を検証するための直接的な大規模無作為化比較試験(RCT)はなかった。 一般住民を対象としたCS勧奨群と通常診療群による世界初の大規模RCTは、ノルウェー、ポーランド、スウェーデンで行われたNordICC試験である。このNordICC試験の10年経過観察の結果は2022年にすでにNEJM誌に報告されている(CLEAR!ジャーナル四天王「大腸内視鏡検診が大腸がんおよび関連死亡のリスクに及ぼす影響」筆者解説)。今回は、さらに3年後の追跡調査の結果が2026年5月のLancet誌に報告された。その結果は前回の報告と同様、「1回のCSは大腸がん発生率を減少させたが、死亡率に対する影響は有意なものではなくCSを受けなかった人とほぼ同じ」であり、研究グループには少し期待外れのものだった。大腸がん死亡率に有意な影響を与えない結果となった最大の要因は、「CS勧奨群のうち実際にCSを受けた者が42%と低率であった」と考察されており、ここでも受診率を上げる工夫が課題となっている。日本の実臨床における対処 日本の臨床現場においてCSは有症状者やFIT陽性者に対して施行されているが、筆者の個人的経験では、CSを行った患者が大腸がんで死亡したという話に遭遇したことはほとんどなく、大腸がん死亡の予防には何らかの機会に一度だけでもCSを受けることが最善の方法だと考えている。最善の検診法と思われるCSにはコストやマンパワーの課題があるため、現在考慮すべきはFIT検診の陽性者に対する精密検査であるCS受診率を100%とするための種々の努力であろう。ちなみに企業検診の受診率は70%と高率になっていることから、住民検診のほうも受診率を上げるための制度設計を考慮すべき時代になっていると思われる。一方、臨床現場においては、消化器領域のみではなく循環器や糖尿病などの診療医師にも、血便や貧血などの症状から可能であればFITの実施を習慣とすることも重要である。

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全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」【最新!DI情報】第63回

全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」今回は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体「アニフロルマブ(遺伝子組換え)(商品名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。これまでの点滴静注製剤に加えて皮下注製剤が登場したことで、全身性エリテマトーデス患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療が可能になると期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、1回120mgを1週間ごとに皮下注射します。なお、アニフロルマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤から本剤に切り替える場合、点滴静注の最終投与から約2週間後に本剤の投与を開始します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)、重篤な感染症(2.3%)があります。その他の副作用として、注射部位反応(10%以上)、気管支炎(気管支炎、ウイルス性気管支炎、気管気管支炎)、上気道感染(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、帯状疱疹、過敏症(いずれも1~10%未満)、気道感染(気道感染、ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)(いずれも1%未満)、関節痛(頻度不明)があります。なお、症状を悪化させる恐れがあるため、重篤な感染症の患者および活動性結核の患者には投与できません。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体製剤であり、既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスに用いられる皮下注射薬です。 2.今までに、ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬などによる全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても効果不十分な場合に上乗せして使用されます。 3.医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんや家族が自己注射できます。自己判断で中止や減量をしないでください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、使用する前に医師または薬剤師に告げてください。 <ここがポイント!>全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、免疫系の異常により全身の多臓器に炎症を引き起こす慢性の自己免疫疾患で、厚生労働省の指定難病49に該当します。初期症状として全身倦怠感や発熱が多くみられ、その後、皮膚・粘膜症状、関節症状、腎病変、中枢神経症状などさまざまな症状が現れるため、患者ごとに症状の組み合わせや重症度が大きく異なります。治療の主軸は副腎皮質ステロイドによる免疫抑制および抗炎症であり、重症例ではステロイドパルス療法が選択されます。しかし、ステロイドは長期使用に伴う多くの副作用があり、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤などを併用し、ステロイドの減量を目指す治療が行われます。SLE患者の多くは、I型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が持続的に亢進し、IFN誘導性遺伝子の過剰発現が認められます。アニフロルマブは、I型IFNα受容体サブユニット1に結合するヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体であり、I型IFN受容体を介したシグナル伝達を遮断することで自己抗体産生を抑制し、SLEの症状緩和および進行抑制に寄与すると考えられています。同成分は2021年11月に点滴静注製剤が発売されていますが、4週間ごとに通院し、30分以上かけて点滴投与を行う必要があります。今回承認された皮下注製剤は、週1回の自己注射薬であり、従来の点滴静注製剤に加わる新たな選択肢として、患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療を可能にします。また、通院負担の軽減や治療継続率の向上も期待されます。なお、アニフロルマブ点滴静注製剤から皮下注製剤に切り替える場合、点滴静注製剤の最終投与から約2週間後に皮下注製剤の投与を開始する必要があります。標準治療を実施中の中等症~重症の疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLE患者を対象とした第III相国際共同試験(TULIP SC試験)において、主要評価項目である投与52週時のBICLA達成例(複合的な疾患活動性低下指標)の割合は、本剤120mg皮下投与群で59.4%、プラセボ皮下投与群で43.9%、割合の群間差は15.5%(96.46%信頼区間:1.4~29.6%)であり、プラセボ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されました(p=0.0211、層別Cochran Mantel Haenszel法)。

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第320回 次世代“3G”薬retatrutideが肥満手術に匹敵するほど体重を減らした

Lillyのいわば「一挙三得」の3重アゴニストのretatrutide皮下注射が、第III相試験で肥満手術に匹敵するほどの30%近い体重低下をもたらしました1,2)。昨今の肥満薬の先駆けのNovo Nordiskのウゴービ(セマグルチド)は、糖に応じたインスリン放出を促すホルモンの一種のグルカゴン様ペプチド1(glucagon-like peptide-1:GLP-1)の受容体を活性化します。糖に応じたインスリン放出を助けるホルモンはGLP-1をはじめとしてインクレチンと総称されます。直接対決試験3)でウゴービを上回る体重減少作用を示したLillyの肥満薬ゼップバウンド(チルゼパチド)は、GLP-1受容体に加えてグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)というもう1つのインクレチン受容体も活性化するいわば両取り効果があります。Lillyの次なる肥満薬のretatrutideはそれら2つのインクレチン受容体に加えてさらにグルカゴン(glucagon:GCG)という一味違うホルモンの受容体も活性化します。マウスでの検討結果によると、retatrutideのGCG受容体活性化はエネルギー消費を亢進させることでさらなる体重低下を引き出すようです4)。それら3つのホルモンの英語表記の頭文字がどれもGであることからretatrutideはちまたでは3G薬(triple-G)と呼ばれたりします2)。当のLillyはというと、retatrutideを先に記したとおり3重アゴニスト(triple agonist)と称しています。TRIUMPH-1と銘打つ第III相試験には、BMIが30以上の肥満か、BMIが27以上で体重に関連する疾患がある過体重の成人2,339例が参加しました5)。糖尿病患者は参加していません。retatrutide投与群の体重は用量が多いほど減りました。被験者全員が試験の決まりどおりに治療されたとみなす解析(efficacy estimand)での低用量(4mg)、中用量(9mg)、高用量(12mg)群の80週時点の体重は、ベースラインに比べてそれぞれ19.0%、25.9%、28.3%低くて済んでいました。プラセボ群の体重はほぼ変化なしで、ほんの2.2%減ったのみです。別の解析手段(treatment-regimen estimand)でのretatrutide低用量、中用量、高用量群の体重低下率は若干低めで、それぞれ17.6%、23.7%、25.0%の低下を示しました(プラセボ群は3.9%低下)。ベースラインのBMIが35以上の患者に対する24週間のretatrutide継続投与で体重は一層減り、およそ2年の104週時点で多ければ30%ほどの体重減少に至っています。retatrutideの有害事象はインクレチンのように働く薬の試験で認められるものとおおむね一致しており、胃腸系の悪心、下痢、便秘、嘔吐が多く認められました。先立つ試験で認められた神経有害事象の感覚異常(dysesthesia)は、retatrutide低用量、中用量、高用量群でそれぞれ5.1%、12.3%、12.5%に生じました。プラセボ群ではほとんど生じていません(0.9%)。感覚異常はおおむね軽~中等度で、多くは試験中に解消し、retatrutide投与はたいてい継続しました。80週時点の体重がプラセボ効果差し引きで26%ほども減れば試験名のTRIUMPH-1にふさわしく上出来なようですが、今や肥満薬への期待はどうやら天井知らずで、そうでもないとする向きもあるようです。たとえばBMO Capital Marketsのアナリスト達はretatrutide投与群のプラセボ効果差し引き体重減少を実際の26%ほどより多い27~28.5%と見込んでいました2)。当のアナリスト達は、このまま進めば今年中にretatrutideは米国で承認申請されるとみています。TRIUMPH-1試験のさらなる結果は、来月に米国のニューオーリンズで開催される米国糖尿病協会年次総会で発表されます1,6)。 参考 1) Lilly's triple agonist, retatrutide, delivered powerful weight loss in pivotal Phase 3 obesity trial / PRNewswire 2) Lilly’s triple-G drug helps patients lose roughly a quarter of weight, showcasing competitive profile / FierceBiotech 3) Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36. 4) Coskun T, et al. Cell Metab. 2022;34:1234-1247. 5) ClinicalTrials.gov(TRIUMPH-1試験) 6) What to know about retatrutide: An investigational triple hormone receptor agonist / Eli Lilly

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医師のランチ事情、ベテランは「時短」、若手は「節約」を優先/医師1,000人アンケート

 日々の外来や手術、急患対応などに追われる医師の勤務環境において、「昼食(ランチ)」は貴重な休息とエネルギー補給の時間である。しかし、急な呼び出しや処置の延長など、業務の都合に左右されやすい。今回、CareNet.comでは「医師のランチ事情」と題したアンケートを実施し、勤務日の昼食時間や内容、仕事による中断の頻度、ランチ選びの優先事項などを聞いた。対象はケアネット会員医師1,012人で、20代以上の各年代層から回答を得た。上の世代ほど短時間ランチ、外科系はさらにタイト Q1では「勤務日の昼食休憩(純粋に食事に充てられる時間)」を聞いた。全体では「15分〜30分未満」が36%で最多、次いで「5分〜15分未満」が30%、「30分~1時間未満」が20%と続く。「5分未満」と回答した医師は6%を占めていた。全体の約3分の1の医師が15分以内で昼食を取っていることがわかった。 興味深いのは、年代が上がるにつれて昼食時間がさらに短縮化する傾向が見られる点だ。15分未満(「5分未満」と「5〜15分未満」の合計)で昼食を済ませる割合は、20代で27%にとどまるのに対し、30代では35%、40代では38%、50代では36%、70代以上では38%へと上昇する。20代の若手医師においては「15分〜30分未満」が49%と約半数を占めており、上の世代に比べれば、一定の食事時間を確保できている。 また、診療科系統別では、外科系医師において「5分〜15分未満」が33%、「5分未満」が8%となり、内科系(それぞれ29%、5%)を上回った。診療科の特性が、休憩時間の逼迫、あるいは「早食い」の習慣化につながっている可能性が推察される。過半数の医師が定期的にランチを「中断」、30代は7割 Q2では「昼食中、仕事(呼び出しや相談)で『中断』される頻度」を聞いた。全体では「ほとんどない」が41%である一方、「ほぼ毎日」が7%、「週に2~3回程度」が21%、「週に1回程度」が28%となり、全体の56%と過半数の医師がランチを定期的に中断されていることがわかった。 この中断頻度は、年代や病床数によって差が見られる。「ほぼ毎日」「週に2~3回程度」「週に1回程度」の合計で見ると、年代別では、20代・30代・40代では6割を超える。とくに30代では70%に達した。また、50代では「ほぼ毎日」中断される人が10%であった。病床数別で見ると、20~99床の病院では「ほぼ毎日」「週に2~3回程度」「週に1回程度」の合計が66%、200床以上の大規模病院では65%と高くなっている。定番は「お弁当」と「院内食堂」、過半数が予算500円未満 Q3で「最も頻度が高い昼食内容」を尋ねたところ、最も多かったのは「自作・家族作の弁当」で33%、次いで「院内食堂」が26%、「コンビニ・スーパー・売店で購入」が23%と続いた。年代別では、20代と50代でお弁当の持参率が高く(それぞれ43%、41%)、院内食堂の利用率が低めであった(それぞれ16%、18%)。 予算(Q5)に関しては、「500〜1,000円未満」が37%で最多、次いで「500円未満」が32%、「0円(弁当持参、病院支給・検食など)」が24%となり、1,000円未満で収めている医師が9割を超えた。過半数が昼食の予算を500円未満に抑えていた。若手は「コスト」、ベテラン層は「栄養バランス」を最優先 Q4で「昼食を選ぶ際、最も優先していること」を聞いた。全体では「栄養バランス」が34%で最多、次いで「スピード」が27%、「コスト」が21%となった。 これを年代別で比較すると、明確な意識のグラデーションが見られる。20代では「コスト」を最優先する割合が46%と半数近くに達しているのに対し、年齢が上がるにつれてその割合は低下する。20代の昼食代の予算は0円が32%に上るなど、若手層の強い節約志向がお弁当持参という行動に直結していることが読み取れる。 対照的に、同じくお弁当持参率の高い50代では、昼食代を0円に抑えている割合が29%を占めるものの、優先事項で「コスト」を挙げる人は17%にとどまる。40代以上のベテラン層では「栄養バランス」を重視する割合は上昇し、70代以上では43%と全世代で最も高くなる。ベテラン層におけるお弁当の持参や低予算は、節約志向というよりも、健康への配慮や、自由回答にもみられた「お弁当を作ってくれるパートナーへの感謝」といった要因が背景にあると考えられる。若手のコスト重視と、ベテラン層の健康志向へのシフトが対照的に表れる結果となった。ランチに関する医師たちの本音 Q6の自由回答では、限られた時間の中で食事をやりくりする医師たちの切実な日常やこだわりが語られた。以下に主なコメントを抜粋する。【時間や業務による制約】・食事中呼ばれたときに中断できるもの、後から食べられるものを選んで食べております(50代、呼吸器内科)・研修医時代、15分で食べろと言われて驚いた(50代、精神科)・30代前半はとくに忙しかったので、ポケットに入れておいたカロリーメイトでしたね(60代、耳鼻咽喉科)・たまにカップ麺に湯を注いだ後に呼ばれることがあり、これは本当につらい(40代、臨床研修医)・夕方時間外になってからの昼食も多く、生活リズムが安定しません(50代、整形外科)・患者に指導する資格はないような、ジャンクで偏った食事しか取っていません(60代、内科)・食べようとすると、インスタント・コンビニに限定されるので、食べていない(60代、小児科)【調達手段やコスト、工夫など】・今の病院に勤務するようになり、職員食堂の素晴らしさに感動しています。安くて美味しくて今のところまったく文句ありません(40代、麻酔科)・病院で出してくれて、以前の弁当を買っていた時より体調がいい(30代、精神科)・院内食堂の値段、メニューなどがどんどん改悪されている(60代、内科)・物価高で食費がかさむ(40代、膠原病・リウマチ科)・院内にコンビニが入っているのですが、昨今の昼食が高い。ワンコインでは済まない1,000円弱になってしまった。おにぎりが高い(50代、心療内科)・妻がお弁当を作ってくれるようになって、健康と感じることが多くなった。感謝です(30代、内科)・毎週末、冷凍弁当を作っています(30代、リハビリテーション科)・見栄えが気にならないスープジャーなので、冷ご飯でも残り物でもなんでも入れられます(40代、小児科)・コンビニやデリバリーで無駄なお金を払いたくないので、普段からオートミールなどを医局に置いて支出を減らしている(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師のランチ事情/医師1,000人アンケート

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事例48 令和8年度診療報酬改定後の生活習慣病管理料留意点【斬らレセプト シーズン4】

令和8年度の診療報酬改定の内容が通知されています。本稿では、よく質問のある項目を紹介します。生活習慣病管理料(以下「同管理料」)(I)です。「必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上」行い、結果を患者に説明してカルテに記載することが義務付けられました。採血予定の診察日には空腹で来院されるなどの注意事項をあらかじめ患者に伝えておくことも必要です。同管理料(II)では、同月または同日に算定できる医学管理料が増えました。改定通知をご参照ください。同管理料(I)(II)にかかる共通事項は次のとおりです。1)「糖尿病を主病とする患者に、糖尿病用剤(薬剤名は通知をご参照ください)以外の自己注射用薬剤を投与する場合、在宅自己注射指導管理料が別に算定できる」とされました。2)療養計画書の「患者署名は不要」です。計画書写しのカルテ添付と説明した旨のカルテ記載は今までどおり必要です。3)糖尿病主病の患者の重症化予防に、眼科又は歯科に紹介などの連携を行うと、それぞれ年1回「眼科又は歯科医療機関連携強化加算」が算定できます。診療情報提供書料は別に算定できます。4)外来データ提出が望ましいとされました。届出は年2回とされており、詳細は通知を参照願います。届出後は、実績に応じて3段階の「充実管理加算」いずれかが算定できます。現時点では「望ましい」ですが、次回改定以降には算定要件化を予測しています。5)患者に対して次回の来院日を伝えるとありますが、患者と調整しても受診日が定まらないときは、「受診が必要な時期」を伝えてもよいとされています。カルテに受診予定日または時期の記載は必要です。今改定は、かかりつけ対応される診療所にとってはメリットのある改定と考えられています。改定にかかる漏れや査定を少しでも減らすために、通知などをよく確認されることをおすすめします。本稿は今回で最終回となります。長らくのご愛読ありがとうございました。

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チルゼパチドで減量後の体重維持、継続vs.減量vs.中止/Lancet

 米国・University of Texas McGovern Medical SchoolのDeborah B. Horn氏らは、「SURMOUNT-MAINTAIN試験」の結果から、肥満の成人において減量後にチルゼパチド最大耐量(MTD)を継続投与することにより、体重減少および健康関連指標の改善が維持されることを示した。著者は、「チルゼパチド5mgへの減量は投与中止に代わる有用な選択肢となりうるが、治療反応にはばらつきがある可能性が示唆された。これらの知見は、長期的な肥満管理において継続的な治療が重要であることを裏付けるとともに、患者中心の個別化された肥満治療を行う根拠となるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月12日号掲載の報告。60週間で5%以上体重が減少した参加者を対象に試験 SURMOUNT-MAINTAIN試験は、米国の20施設で実施された第IIIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、60週間の非盲検減量期間と52週間の二重盲検体重維持期間で構成された。 対象は、BMI値30以上、またはBMI値27以上かつ肥満に関連する併存疾患(例:高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患)を少なくとも1つ有し、減量のための食事療法に1回以上失敗している(自己申告)、18歳以上の成人であった。 チルゼパチド週1回皮下投与(2.5mgから投与を開始し、4週間間隔で10mgまたは15mgに達するまで2.5mgずつ増量)を60週間行った後、5%以上体重減少を達成し、少なくともチルゼパチド10mgに対して忍容性が認められた参加者を、チルゼパチド最大耐量(10mgまたは15mg、MTD)群、チルゼパチド5mg群、またはプラセボ群に3対3対2の割合で無作為に割り付け、52週間投与した。 主要エンドポイントは、112週時の体重のベースラインからの変化率で、試験治療の順守または他の肥満治療薬の投与開始の有無にかかわらず、無作為化試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者(mITT集団)を対象とし、レスキュー治療としてのチルゼパチド投与または減量手術等を受けた場合はその前までに観察された最悪値で補完した。チルゼパチドMTD継続投与で減量効果を維持 2023年9月20日~2026年1月20日に441例が登録され、非盲検減量期間に少なくとも1回の試験薬投与を受けた。そのうち60週時に適格基準を満たした378例が無作為化され、372例が二重盲検体重維持期間に少なくとも1回の試験薬投与を受けた(チルゼパチドMTD群139例、チルゼパチド5mg群142例、プラセボ群91例)。345例(91%)が試験を完了した。 参加者の多くは白人(67%)で、女性288例(65%)、男性153例(35%)、平均年齢46.6歳(SD 13.0)、ベースラインの平均値は、体重113.8kg(SD 27.0)、BMI 40.1(SD 8.1)、HbA1c 5.64%(SD 0.4)であった。 112週時の体重のベースラインからの変化率(モデルに基づく推定値)は、チルゼパチドMTD群-21.9%(95%信頼区間[CI]:-23.5~-20.3)、チルゼパチド5mg群-16.6%(95%CI:-18.0~-15.1)に対し、プラセボ群は-9.9%(95%CI:-11.1~-8.8)であった(すべての対プラセボのp<0.0001)。 無作為化時に得られていた体重減少の50%以上の再増加を来し、チルゼパチドのレスキュー投与を受けた参加者は、チルゼパチドMTD群で8%(11/138例)、チルゼパチド5mg群で25%(35/142例)、プラセボ群で67%(60/90例)であった。 チルゼパチド投与群で最も多くみられた有害事象は胃腸障害で、その多くは軽症~中等症であり、主に用量漸増中の発現であった。

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長鎖脂肪酸代謝異常症に初の治療薬、トリヘプタノイン発売/ウルトラジェニクス ジャパン

 ウルトラジェニクス ジャパンは、2026年3月23日付で「医薬品の条件付き承認制度」のもと製造販売承認を取得した長鎖脂肪酸代謝異常症(LC-FAOD)治療薬トリヘプタノイン(商品名:ドジョルビ内用液100%)を、2026年5月21日に発売したことを発表した。トリヘプタノインはLC-FAODに対して国内で初めて承認された治療薬となる。 LC-FAODは、ミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸のエネルギー変換に関与する酵素をコードする遺伝子の両アレルに疾患原因変異を有する、6つの常染色体劣性遺伝性疾患の総称。とくに、心臓、骨格筋、肝臓に影響を及ぼし、主な症状は低ケトン性低血糖、心筋症、筋肉症状で、横紋筋融解症、代謝性アシドーシス、高アンモニア血症などの重篤な合併症を引き起こすことがある。これまで国内で承認された具体的な治療法はなく、長い空腹を避け、脂肪摂取を制限する食事療法や中鎖中性脂肪酸(MCT)の補充、減少した脂肪酸の輸送酵素をサポートするL-カルニチンの投与などが行われていた。 トリヘプタノインは、炭素数7のヘプタン酸3分子がグリセロールで結合した合成中性脂肪で、LC-FAODに対して迅速かつ効率的なエネルギー源となる。経口摂取後に腸管内より吸収・代謝されたヘプタン酸は、長鎖脂肪酸とは異なり直接ミトコンドリア内に拡散移動し、生体エネルギー産生回路であるTCAサイクルの基質であるアセチルCoAとTCAサイクルの中間体であるスクシニルCoAを生成する。その後、速やかにTCAサイクルに入ることで脂肪酸代謝の改善およびエネルギー産生の向上が期待される。2026年3月1日時点で、米国(2020年)、カナダ(2021年)、ブラジル(2021年)、メキシコ(2022年)、クウェート(2025年)で承認されている。<製品概要>商品名:ドジョルビ内用液100%一般名:トリヘプタノイン剤形・含量:1g中にトリヘプタノイン1gを含有する経口液剤効能、効果又は性能:長鎖脂肪酸代謝異常症用法及び用量又は使用方法:通常、以下の計算式を用いて算出した本剤の1日総投与量を4回に分けて経口又は経管投与する。計算式における「DCIに対する本剤の割合」は、10%から開始し、2~3日毎に約5%ずつ増加させる。目標値は25~35%とするが、患者の状態に応じて適宜増減する。1日総投与量(mL)=1日あたりのカロリー摂取量(DCI)(kcal)×DCIに対する本剤の割合/8.3(kcal/mL)薬価:734,770.00円/100%500mL 1瓶承認取得日:2026年3月23日薬価基準収載日:2026年5月20日発売日:2026年5月21日

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40歳以上の一般住民における未診断の肝線維症発症頻度は推定1.6%;ヨーロッパ9ヵ国の国際前向きコホート研究(解説:相澤良夫氏)

 この大規模な前向きコホート研究では、40歳以上の一般住民を対象に未診断の肝線維症の頻度および肝線維症と代謝因子(肥満、2型糖尿病、脂質異常、高血圧)やアルコール摂取との関連性について検討した。肝線維症は主にフィブロスキャン(VCTE)での肝硬度(LSM)上昇(8kPa以上)によりスクリーニングされ、肝臓専門医によって確定診断がなされた。その結果、肝線維症の推定有病率は1.6%(3万199人中477人)で、肝硬度の上昇は肥満、2型糖尿病、過度の飲酒と強く関連し、その93%は脂肪性肝疾患であった。 この結果からヨーロッパ各地では未診断の肝線維症が一般的に認められることが判明した。このような未診断の肝線維症を早期に発見しその要因を解析することにより、それぞれの症例に即した個別化治療介入が可能となるため、このような取り組みは、無症状の慢性肝疾患の肝硬変への進展を防止し、肝硬変に伴う重篤な合併症の発生を阻止するうえできわめて重要と考えられる。 わが国では代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)など、慢性肝疾患の病因別患者数は推計されているが、実際に一般住民を対象としたこのような大規模前向き研究により未診断の肝線維症の頻度やその要因を明らかにした報告は知られていない。 従来、わが国ではHBVやHCVによる慢性ウイルス肝炎が慢性肝疾患の大多数を占めていたが、近年の抗ウイルス療法の急速な進歩により激減し、とくにHCVはわが国から撲滅される日が近いと思われている。代わりに、わが国でもこの論文に示された代謝因子やアルコール過剰摂取に関連した慢性肝疾患の重要性が強調されているが、いまだに無症状のまま経過し肝硬変や肝がんで発見される症例も少なくない。 したがって、わが国においても未診断の肝線維症を早期に診断し、その病因に即した治療を行うことは、肝疾患による重篤な合併症を未然に防止するうえで公衆衛生上の観点からもきわめて重要な課題と考えられる。未診断の肝線維症をいかに効率的に拾い上げ早期に治療できるか、その標準的スクリーニング法についてわが国の実情に即した方策を真剣に検討する必要がある。

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攻めの予防医療、産業医はどう関わる?【実践!産業医のしごと】

産業医の役割を、もう一度「予防」から考える少子高齢化と人手不足が進む中で、従業員の健康は、福利厚生というよりも事業の継続にも関わるテーマになってきました。そこで政府が掲げているのが「攻めの予防医療」です1)。データヘルスや保険者機能の強化、健康経営に取り組む企業への支援、がん検診・歯科健診の推進などを通じて、病気になってから対応するのではなく、リスクを早めにつかみ、受診や重症化予防につなげる考え方です。ただし、企業の現場で考えるなら、内閣官房の有識者資料として古井 祐司先生が示した整理2)が、より実務に近い示唆を与えてくれます。「『攻めの予防医療』:人的資本を基盤に国力を最大化する国家戦略」と題された資料では、攻めの予防医療を単なる医療費抑制策ではなく、健康を人的資本の中核と捉え、ウェルビーイングと企業価値をともに高める枠組みとして位置付けています。この流れは、本来、産業医と非常に相性がよいはずです。産業医の仕事は、もともと予防に軸足があります。健康管理、作業環境管理、作業管理は、いずれも病気や労災が起きる前に手を打つための枠組みです。にもかかわらず、現場では復職判定、不調者対応、健診後措置など、問題が起きた後に呼ばれることが多く、職場の健康課題を早い段階で考える場面には十分に関与できていない状況があります。予防に関わりにくい背景を整理する産業医が予防に関わりにくい背景には、いくつかの構造的な要因があります。まず、産業医に声が掛かるのは、不調者が出た後、休職が発生した後、復職判定が必要になった後であることが少なくありません。そのため、予防の設計よりも「起きた問題への対応」を求められやすいのです。また、健康課題が企業の中で、経営課題や職場づくりの課題として見えにくいこともあります。高血圧、糖尿病、睡眠不足、メンタル不調などは、欠勤、休職、生産性低下につながります。しかし現場では、「本人の健康管理の問題」として受け止められやすく、働き方や受診しやすさ、管理職の関わり方と結び付けて考えられにくい面があります。さらに、保険者が持つ健診・レセプトデータと、企業が持つ労働時間、ストレスチェック、休職・復職などの職場データが分かれていることも、課題を見えにくくしています。これらがつながって、集団としての健康課題が見えてきます。総じて、予防の成果は評価されにくく、企業の意思決定の中に、まだ「予防をどう設計するか」という問いが十分に組み込まれていないのが現状です。産データ連携時代に求められる産業医の関わり方「攻めの予防医療」を進めるうえで、カギになるのは保険者と企業の連携です。保険者と企業が連携し、集団としての健康課題を可視化するうえで、産業医に求められる役割は、大きく3つあります。図1 保険者・企業連携と産業医の関与画像を拡大する1)データから見えてきた課題を読み解く未治療の高血圧が多い、精密検査の受診率が低い、睡眠課題が多いといった結果を、単に本人の意識の問題で終わらせず、年齢構成、勤務形態、長時間労働、受診しにくさ、職場のストレスなど、背景まで含めて解釈することが重要です。2)課題を職場で動く施策に翻訳する受診勧奨や健診後フォローだけでなく、職場環境改善、治療と仕事の両立支援、安全衛生委員会での議題化など、データを職場づくりの題材として扱う視点が求められます。3)経営や意思決定者に届く形で、予防につながる職場施策を提言する攻めの予防医療は、健診で異常が出た人に受診を促すだけではありません。長時間労働、過度な業務負荷、相談しにくい職場風土など、健康リスクを高める要因に早い段階で目を向けることが重要です。産業医には、組織の施策を決定する権限があるわけではありません。だからこそ、課題に医学的な意味付けを行い、経営層や人事などの意思決定者が判断できる形で伝えることが求められます。意思決定者を巻き込み、職場全体の取り組みとして位置付けていく必要があります。働く人のQOLと企業価値を同時に高める仕事を、予防の側から組み立てていく。そこに、これからの産業医の本領があります。攻めの予防医療は、産業医が本来持っている予防の力を、企業の中でより生かしていくための機会だと思います。 参考 1) 社会保障分野における経済・財政一体改革の検討事項等について/厚生労働省 2) 内閣官房 第3回 副大臣等会議 古井祐司氏提出資料

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糖尿病患者の下痢・便秘に有効なビフィズス菌の種類は?

 2型糖尿病患者の下痢・便秘といった消化器症状にプロバイオティクスであるビフィドバクテリウム・ビフィダムG9-1(BBG9-1)が有効であることをマキノ病院の小林 玄樹氏らが明らかにした。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年4月22日号掲載の報告。 研究者らは、下痢または便秘を伴う2型糖尿病患者100例を対象に12週間の非盲検ランダム化比較試験を実施。対照群またはBBG9-1群に1対1に無作為に割り付け、BBG9-1群にはビフィズス菌を1日12mg投与した。主要評価項目は全解析対象者(BBG9-1群43例、対照群51例)の消化器症状評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale:GSRS)の変化。 主な結果は以下のとおり。・BBG9-1摂取群のGSRS全体スコアは、対照群(2.08±0.67~2.06±0.63)と比較して有意に改善した(2.22±0.67~1.83±0.62、群間差-0.34[95%信頼区間:-0.55~-0.14、p=0.001])。・サブグループ解析では、女性、便秘を有する、65歳以上、BMI25kg/m2未満の患者において、GSRS全体スコアの改善がより大きいことが示された。・GSRSサブスケールの中で、BBG9-1は対照群と比較して便秘スコアの平均減少が有意に高かった(-0.79±1.38 vs.-0.13±1.04、p=0.013)。・下痢スコアの平均変化には有意差がなかったものの(-0.42±1.14 vs.-0.06±1.08、p=0.14)、追跡調査による下痢スコアはBBG9-1群で有意に低かった(2.04±1.00 vs.2.58±1.44、p=0.049)。・腸内細菌叢を解析した結果、BBG9-1群でPhocaeicola属の相対存在量が有意に増加した(BBG9-1群:15.98±13.75%から19.56±14.79%、対照群:18.14±14.17%から18.21±13.58%)。・糞便中の短鎖脂肪酸(SCFA)の評価では、BBG9-1投与に関連した有意な変化は認められなかった。・両群間で有害事象の発生率は同程度であった。

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眼底写真を基にした「網膜年齢」が健康状態を知る手がかりに?

 目は心の窓であるだけでなく、その人の健康状態を映し出す窓でもある――そんな研究結果が発表された。この研究によると、網膜の早期老化は、糖尿病や心疾患といった重大な病気の兆候となる可能性があるという。東北大学大学院医学系研究科眼科学分野教授の中澤徹氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に4月8日掲載された。 網膜は、眼球の奥にある光を感知する細胞層である。研究グループによると、網膜は血管や神経の状態を非侵襲的に観察できる部位であることから、眼の画像データを解析して全身の健康状態や疾患リスクを読み解く「オキュロミクス」と呼ばれる新たな研究領域が注目を集めている。 今回の研究で中澤氏らは、健康診断で撮影された疾患のない2万7,214人の眼底写真5万595枚を用いて、「網膜年齢」を推定する人工知能(AI)モデルを開発した。モデルは年齢推定に加え、過去2〜3カ月間の平均的な血糖状態を反映するHbA1cを学習させるマルチタスク学習と、5つのAIモデルの予測結果を組み合わせて最終的な予測を行うアンサンブル学習を組み合わせる設計とした。その後、別の疾患のない成人から得られた7,288枚の眼底写真を用いて年齢予測能を検証した(内部検証)。モデルの性能は平均絶対誤差(実年齢と推定網膜年齢の平均誤差)を用いて評価された。 その結果、内部検証での平均絶対誤差は2.78歳であり、独立した135眼の眼底写真を用いた外部検証での平均誤差は3.39歳、海外の外部集団4,992眼の眼底写真を用いた検証での平均誤差は8.63歳であった。また、5つのモデルの予測のばらつきが中央値より小さい場合には、年齢予測の精度が高くなる傾向が認められた。さらに、全身性疾患を有する8,467人のコホートにおいて、網膜年齢ギャップ(推定網膜年齢と実年齢の差)は、糖尿病、心疾患、脳卒中の既往がある人では有意に大きく、これらの疾患のある人では、網膜が実年齢より「老けて見える」可能性が示唆された。 研究グループは、こうした画像のAI解析は、定期健診の中で病気の早期発見に役立つ可能性があるとしている。中澤氏は、「眼底画像は定期的な健康診断の一環として撮影される非侵襲的な検査であり、新たに何かをする必要はほとんどない。このAIモデルは、臨床現場の通常の診療フローにほぼそのまま組み込めるだろう」とニュースリリースで述べている。 中澤氏はさらに、「現在、1万人以上を対象に3年間追跡するコホート研究を計画しており、網膜年齢に関する指標が将来的な心血管疾患やその他の全身疾患の発症と関連するかを検証する予定である」と述べている。

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T2D合併肥満患者、セマグルチドvs.減量手術

 糖尿病(T2D)と肥満を合併する患者が多いことはよく知られている。こうした患者では、肥満治療薬と減量手術のどちらを利用し、その医療費、臨床転帰はどのようになるだろう。このテーマについて、米国のニューヨーク大学グロスマン医学部公衆衛生学科のKaran R. Chhabra氏らの研究グループは、T2Dと肥満を合併する患者におけるセマグルチドと減量手術の費用と臨床転帰の比較を検討した。その結果、減量手術は3年間の自己負担額が少なく、総医療費は同程度であり、長期的な主要心血管イベント(MACE)発生率も低いことが示された。Obesity誌オンライン版2026年5月6日に掲載。治療効果、コストパフォーマンスで肥満治療法を比較すると 研究グループは、2016~21年のMarketScan保険請求データを用いて、BMIが35以上のT2D患者を抽出した。対象者について、セマグルチド、スリーブ状胃切除術、または胃バイパス術の選択と、3年間の医療費(自己負担額および総医療費)、および臨床転帰(救急外来受診、入院、MACE)との関連性を検討し、解析は、一般化線形モデル、逆確率重み付け(IPTW)、および操作変数法を用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・6,748例の患者(セマグルチド群2,797例、スリーブ状胃切除術群2,300例、胃バイパス術群1,651例)を検討した。・対象者のうち肥満外科手術を受けた患者はBMIが高く、併存疾患も多かった。・IPTW調整解析では、セマグルチド群は3年間の自己負担額が最も高かった(セマグルチド群7,752ドルvs.スリーブ状胃切除術群5,980ドルvs.胃バイパス術群6,591ドル、p<0.001)が、総支出額は各群間で統計学的に有意な差は認められなかった。・セマグルチド群と比較して、胃バイパス術群では救急外来受診回数(ハザード比 [HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.28~1.45)および入院回数(HR:1.25、95%CI:1.13~1.37)が有意に多く、MACEの発生率は有意に低かった(HR:0.71、95%CI:0.59~0.88)。・スリーブ状胃切除術は、長期入院率(HR:0.79、95%CI:0.72~0.86)およびMACE発生率(HR:0.79、95%CI:0.66~0.93)の低下と関連していた。 この結果から研究グループは、「T2Dと肥満を有する患者においては、セマグルチドと比較して、減量手術は3年間の自己負担額が少なく、総医療費は同程度であり、長期的なMACE発生率も低いことが示された」と結論付けている。

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高齢者のレボチロキシンは中止できるか?(解説:田村嘉章氏)

 高齢者では甲状腺機能低下症の有病率が高く、甲状腺ホルモン製剤が投与されている者が多い。近年、高齢者におけるポリファーマシーの弊害が叫ばれるようになり、不要な薬剤の減量や中止が推奨されているが、甲状腺ホルモン薬中止についてのエビデンスは不足しており、判断がつかぬまま薬剤が長期継続されているケースも多い。 オランダで行われた本研究は、60歳以上(中央値70歳)の高齢者でレボチロキシン(LT4)を≦150μg/日で投与中の370例のうち、TSH<10mIU/Lの者に対し、LT4の減量、中止が可能かを1年間にわたり検討したものである。プロトコールでは、6週間以上の間隔を空けてLT4を段階的に減量(初回12.5~50μg、6週・12週後25~38μg、以降25μgずつ)し、TSH、fT4を測定、TSH<10mIU/LかつfT4正常下限以上が保たれていれば減量を継続。保たれていなければ2週間後に再検し、条件を満たしていなければ減量中止としている。この結果、全参加者のうち25.7%が中止に成功し、元の維持量が≦50μg/日の者に限っては63.6%が中止に成功した。 高齢者では加齢に伴い、生理的にTSHが上昇することがある。また、TSHの上昇は一過性であることも多い。とくに海藻類の摂取の多い本邦では、一過性の甲状腺機能低下が含まれている可能性があり、繰り返し検査を行うことが重要である。潜在性甲状腺機能低下症はとくにTSH高値例で心血管疾患リスクとの関連が報告されており、一般成人ではTSH≧10mIU/Lの場合に治療開始を推奨し、<10mIU/Lの場合には症状やTPO抗体、心血管リスクを考慮して個別に判断するとされているが、過剰なLT4補充は心房細動や骨折などのリスク増加と関連するため、これらのリスクの高い高齢者ではとくに過量投与を避けるべきである。 本研究は、補充療法下で安定している高齢の甲状腺機能低下症患者で、とくにLT4の維持量が少ない者では減量・中止を積極的に考慮してよいという重要なメッセージを提供するものである。ただし、論文にあるように、定期的な評価を行いながら漸減していく必要があろう。なお、本研究ではエコー所見と中止の成否との関連は調べられていない。エコー所見が中止成功に関連するとの既報もあるが、日常診療でエコーを全例で行うのは必ずしも容易ではない。維持用量以外にも、中止成功を予測しうる簡便な指標について、さらなる検討が期待される。

40.

GSKの組換えRSVワクチン、重症化リスクの高い18歳以上に対象拡大

 グラクソ・スミスクラインは2026年5月18日、組換えRSウイルスワクチン(商品名:アレックスビー)について、RSウイルス(RSV)による感染症が重症化するリスクの高い18~49歳の成人を対象として、用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 すでに、重症化リスクの高い50~59歳を対象として2024年11月に承認を取得しており、今回の承認により、本邦では重症化リスクの高い18~59歳の成人に使用可能な唯一のRSVワクチンとなる。なお、本剤は母子免疫による新生児・乳児におけるRSV感染症の予防に対する適応はない。 RSVは、とくに基礎疾患のある成人で重症化リスクが高いことが知られている。添付文書上、18歳以上のRSVによる感染症が重症化するリスクが高いと考えられる者とは、以下のような状態の者を指す。・慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病または慢性肝疾患、糖尿病、神経疾患または神経筋疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上を目安とする)、基礎疾患もしくは治療により免疫不全状態であるまたはその状態が疑われる者・上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めた者

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