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肥満体型の若い女性の健康状態は良好か

 体型と健康状態に相関はあるのだろうか。このテーマについて、オーストラリア・クイーンズランド大学公衆衛生学部オーストラリア女性少女健康研究センターのAnnette J. Dobson氏らの研究グループは、若年女性に多くみられる健康状態の年齢別有病率とBMIカテゴリーとの関連性が世代間で異なるかどうかを検討するため、18~30歳の女性の体重と身長を解析した。その結果、低体重・過体重の女性では、健康状態が良好ではないことが判明した。この結果は、Obesity誌オンライン版2025年5月13日号に掲載された。低体重でも過体重でも健康状態に影響 研究グループは、1973~78年と1989~95年生まれの参加者で、それぞれ1996年と2013年に募集された“Australian Longitudinal Study on Women's Health”からのデータを基に、18~23、22~27、25~30歳の各年齢で体重と身長を報告した女性を対象とした。評価項目は、自己評価による健康状態、一般的な疾患の有病率、月経症状、妊娠合併症。オッズ比(OR)は、反復測定を考慮した一般化推定方程式を用いたロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・自己評価による健康状態が「普通」または「不良」の場合、低体重域の女性(OR:1.51、95%信頼区間[CI]:1.30~1.74)または過体重域の女性(OR:1.47、95%CI:1.34~1.60)でORが高かった。 ・標準体重の女性と比較して、肥満の女性(OR:3.04、95%CI:2.76~3.35)で最もORが高く、より最近のコホートでもORが高かった(OR:1.50、95%CI:1.38~1.63)。 ・上記と同じパターンがすべての評価項目でみられた。 以上の結果から研究グループは、「BMIの増加による健康への影響は、近年においても軽減されていない。この結果は、若い女性に正常なBMIの利点を広めるために利用できる」と結論付けている。

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高リスク前立腺がんにおいてテストステロン濃度回復は全生存率と関連

 放射線治療と長期アンドロゲン除去療法(ADT)を受けている高リスク前立腺がん患者において、血清テストステロン(T)濃度が正常レベルまで回復することは、全生存率の有意な改善と関連するという研究結果が、米国臨床腫瘍学会年次泌尿生殖器がんシンポジウム(ASCO GU25、2月13〜15日、米サンフランシスコ/オンライン開催)で報告された。 シェルブルック大学病院センター(カナダ)のAbdenour Nabid氏らは、高リスク前立腺がん患者630人を、骨盤放射線治療に加えて36カ月間のADTを行う群と18カ月間のADTを行う群にランダムに割り付けた(それぞれ310人、320人)。血清T濃度は、ベースライン時とその後も定期的に測定された。T濃度の回復は、各試験実施医療機関で正常範囲とされる範囲内に対象者のT濃度が戻ることと定義した。解析対象として、22年間(追跡期間中央値17.4年間)に測定された、515人の患者の6,587のT濃度データが利用可能であった。 解析の結果、患者の52.4%でT濃度が正常レベルまで回復した。18カ月間のADTコホートでは57.0%、36カ月間のADTコホートでは44.3%であった。T濃度が正常レベルまで回復しなかった患者は、年齢が高く、ステージが進行しており、糖尿病を有していた。T濃度が正常レベルまで戻った患者において、T濃度回復までの時間の中央値は、3.6年であった。10年および15年の全生存率は、T濃度が回復した患者でそれぞれ76%、44%、回復しなかった患者で55%、30%であった。全体的なハザード比を考慮すると、T濃度が回復した患者では死亡リスクが有意に低下した(ハザード比0.54)。 著者らは、「T濃度が回復しない患者での死亡率上昇は、前立腺がんとは無関係な原因によるものである可能性が高い」と述べている。 なお複数人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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飲酒は膵がんに関連するのか~WHOの大規模プール解析

 アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を示すエビデンスは国際的専門家パネルによって限定的、あるいは決定的ではないと考えられている。今回、世界保健機関(WHO)のInternational Agency for Research on Cancer(IARC)のSabine Naudin氏らは、30コホートの前向き研究の大規模コンソーシアムにおいて、アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を検討した。その結果、性別および喫煙状況にかかわらず、アルコール摂取と膵がんリスクにわずかな正の関連が認められた。PLOS Medicine誌2025年5月20日号に掲載。 本研究における集団ベースの個人レベルのデータは、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の4大陸にわたる30のコホートからプールした。1980~2013年に、がんを発症していない249万4,432人(女性62%、ヨーロッパ系84%、飲酒者70%、喫煙歴なし47%)を登録(年齢中央値57歳)、1万67例が膵がんを発症した。喫煙歴、糖尿病の有無、BMI、身長、教育、人種・民族、身体活動で調整した年齢・性別による層別Cox比例ハザードモデルにおいて、アルコール摂取量のカテゴリーと10g/日増加による膵がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・アルコール摂取量は膵がんリスクと正の相関を示し、1日0.1~5g未満と比べた1日30g以上60g未満および1日60g以上でのHR(95%CI)はそれぞれ1.12(1.03~1.21)および1.32(1.18~1.47)であった。・男女別では、女性で1日15g以上、男性で1日30g以上の場合に関連が明らかになった。・アルコール摂取量が10g/日増加すると、膵がんリスクは全体で3%増加し(HR:1.03、95%CI:1.02~1.04、p<0.001)、喫煙経験者では3%増加した(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06、p=0.006)が、性別(異質性:0.274)または喫煙状況(異質性:0.624)による異質性は示されなかった。・地域別では、ヨーロッパ/オーストラリア(10g/日増加によるHR:1.03、95%CI:1.00~1.05、p=0.042)および北米(HR:1.03、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)では関連が認められたが、アジア(HR:1.00、95%CI:0.96~1.03、p=0.800、異質性:0.003)では関連は認められなかった。・アルコールの種類別では、ビール(10g/日増加によるHR:1.02、95%CI:1.00~1.04、p=0.015)とスピリッツ/リキュール(95%CI:1.03~1.06、p<0.001)は膵がんリスクとの正の関連が認められたが、ワイン(HR:1.00、95%CI:0.98~1.03、p=0.827)については認められなかった。 著者らは、「地域やアルコールの種類による関連性の違いは、飲酒習慣の違いを反映している可能性があり、さらなる調査が必要」と考察している。

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フィブラート系薬でCKDリスクは増加、死亡リスクは低下

 フィブラート系薬の服用が腎機能や死亡に及ぼす影響を検討した結果、フィブラート系薬は慢性腎臓病(CKD)発症リスクの増加と関連する一方で、末期腎不全(ESKD)発症および死亡リスクの低下と関連していたことを、米国・Harbor-UCLA Medical Centerの高橋 利奈氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年4月7日号掲載の報告。 フィブラート系薬は血清クレアチニンの急激な上昇を引き起こす可能性があるが、腎アウトカムの評価は追跡期間の短い研究では困難である。さらに、特定の腎アウトカムに関する研究は限られており、それらの結果も一貫していない。 そこで研究グループは、フィブラート系薬の新規処方とCKDやESKDの発症、死亡との関連を調べるため、米国退役軍人省の研究データベース(68万8,382例)を用いた後ろ向きコホート研究で、最大14年間にわたり追跡・分析を行った。人口統計学的因子、主な併存疾患、eGFRを含む臨床検査値、アルブミン尿、服用薬で調整し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルを用いて関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・5万8,773例がフィブラート系薬を新規で服用開始した。全体の平均年齢は59(SD 13)歳で、フィブラート系薬服用患者は男性や喫煙者が多く、併存疾患を有する頻度も高かった。・完全調整モデルでは、フィブラート系薬の服用は、非服用と比較してCKDリスクの上昇と関連していた(ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.24)。・フィブラート系薬の服用は、死亡リスク(HR:0.91、95%CI:0.89~0.93)およびESKDリスク(0.80、0.71~0.92)の低下と関連していた。 これらの結果より、研究グループは「フィブラート系薬が腎アウトカムと生存に及ぼす潜在的な利点を裏付けるにはさらなる研究が必要である」とまとめた。

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肥満者の体重減少、チルゼパチドvs.セマグルチド/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、チルゼパチドはセマグルチドと比較して72週時の体重および胴囲の減少に関して優れていることが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らSURMOUNT-5 Trial Investigatorsによる第IIIb相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURMOUNT-5試験」の結果で示された。チルゼパチドおよびセマグルチドは、肥満の管理に非常に有効な薬剤である。肥満であるが2型糖尿病は有していない成人において、チルゼパチドとセマグルチドの有効性および安全性を直接比較した臨床試験はこれまでなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月11日号掲載の報告。ベースラインから72週時までの体重の変化率を比較 SURMOUNT-5試験は、米国およびプエルトリコの32施設で実施された。対象は、BMI値30以上、またはBMI値27以上かつ肥満関連合併症(高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患)を1つ以上有する18歳以上の成人で、糖尿病と診断されている患者、肥満に対する外科手術の既往または予定のある患者などは除外した。 適格患者をチルゼパチド(10mgまたは15mg)群またはセマグルチド(1.7mgまたは2.4mg)群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回72週間皮下投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重の変化率とした。重要な副次エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重減少が少なくとも10%、15%、20%および25%以上の患者の割合、および胴囲の変化量などとした。体重減少率20.2%vs.13.7%、体重減少25%以上の患者割合31.6%vs.16.1% 2023年4月21日~2024年11月13日に、適格性を評価した948例のうち751例が無作為化され、そのうち750例が少なくとも1回の治験薬投与を受けた。 72週時の体重変化率の最小二乗平均値は、チルゼパチド群-20.2%(95%信頼区間[CI]:-21.4~-19.1)、セマグルチド群-13.7%(-14.9~-12.6)であり、体重に関してチルゼパチドのセマグルチドに対する優越性が示された(推定治療差:-6.5%ポイント、95%CI:-8.1~-4.9、p<0.001)。 72週時の体重がベースラインから少なくとも10%、15%、20%および25%以上減少した患者の割合は、チルゼパチド群がそれぞれ81.6%、64.6%、48.4%、31.6%、セマグルチド群が60.5%、40.1%、27.3%、16.1%であった。 72週時の胴囲の変化量の最小二乗平均値は、チルゼパチド群で-18.4cm(95%CI:-19.6~-17.2)、セマグルチド群で-13.0cm(-14.3~-11.7)であった(p<0.001)。 有害事象は、チルゼパチド群で76.7%、セマグルチド群で79.0%の患者で報告され、両群における主な有害事象は胃腸障害(悪心、便秘、下痢など)であった。重篤な有害事象はそれぞれ4.8%、3.5%に認められた。

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超加工食品の摂取は早期死亡リスクを高める

 超加工食品の摂取量が多いほど早期死亡リスクも高まるようだ。新たな研究で、超加工食品の摂取に起因する早期死亡は、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の割合が高いほど増加することが明らかになった。オスワルド・クルス財団(ブラジル)のEduardo Nilson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Preventive Medicine」に4月28日掲載された。 超加工食品は、飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖など、主に自然食品から抽出された物質で作られており、風味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤などさまざまな添加物が加えられている。具体例は、パッケージ済みの焼き菓子、砂糖が添加されたシリアル、すぐに食べられる、または温めるだけで食べられる製品などが挙げられる。研究の背景情報によると、超加工食品の摂取は心臓病、肥満、糖尿病、一部のがん、うつ病など32種類の健康問題と関連付けられているという。 今回の研究では、まず、過去の研究で用いた超加工食品の摂取とあらゆる原因による死亡(全死亡)との関連に関する10件の研究のうち、基準を満たした7件を選出し、量反応関係メタアナリシスを実施した。対象国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、メキシコ、英国、米国の8カ国で、対象者の総計は23万9,982人であった。国ごとの超加工食品の摂取量は、コロンビア(15.0%)とブラジル(17.4%)では少なめ、チリ(22.8%)とメキシコ(24.9%)では中程度であり、オーストラリア(37.5%)、カナダ(43.7%)、英国(53.4%)、米国(54.5%)では多かった。 解析の結果、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の摂取量が10%増加するごとに全死亡リスクが2.7%上昇することが明らかになった(相対リスク1.027、95%信頼区間1.017〜1.037、P<0.0001)。次に、この相対リスクを用いて、早期死亡のうちどの程度が超加工食品の摂取に起因すると推定されるかを評価するために人口寄与割合(PAF)を計算した。その結果、超加工食品が原因と推定される早期死亡の割合は約4%から約14%に及ぶことが明らかになった。具体的には、最も低かったのがコロンビアの3.9%(7万2,940件)、最も高かったのは英国の13.8%(12万8,743件)、米国の13.7%(90万6,795件)であった。 Nilson氏は、「高所得国では超加工食品の摂取量はすでに高レベルだが、10年以上にわたって高止まりしたままだ。一方、低・中所得国では摂取量が増加し続けていることは懸念される。これは、現時点では高所得国での超加工食品摂取がもたらす健康への負担は他の国より高い一方で、その負担が他の国々でも増加しつつあるということだ」と述べている。 Nilson氏はさらに、「これは、世界的に超加工食品の摂取量を抑制し、地元の新鮮で最小限の加工食品に基づいた伝統的な食生活を促進する政策が喫緊で必要なことを示している」と「American Journal of Preventive Medicine」の発行元であるElsevier社のニュースリリースで強調している。

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若年性認知症リスクとMetSとの関連

 若年性認知症は、社会および医療において大きな負担となっている。メタボリックシンドローム(MetS)は、晩年の認知症の一因であると考えられているが、若年性認知症への影響はよくわかっていない。韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのJeong-Yoon Lee氏らは、MetSおよびその構成要素が、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症を含む若年性認知症リスクを上昇させるかを明らかにするため、本研究を実施した。Neurology誌2025年5月27日号の報告。 The Korean National Insurance Serviceのデータを用いて、全国規模の人口ベースコホート研究を実施した。2009年に国民健康診断を受けた40〜60歳を対象に、2020年12月31日または65歳までのいずれか早いほうまでフォローアップ調査を行った。MetSは、ウエスト周囲径、血圧、空腹時血糖値、トリグリセライド値、HDLコレステロールの測定値を含む、確立されたガイドラインに従って定義した。共変量には、年齢、性別、所得水準、喫煙状況、飲酒量および高血圧、糖尿病、脂質異常症、うつ病などの併存疾患を含めた。主要アウトカムは、65歳未満での認知症診断で定義したすべての原因による若年性認知症の発症率とし、副次的アウトカムに若年性アルツハイマー病、若年性脳血管性認知症を含めた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、多変量Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者数は197万9,509人(平均年齢:49.0歳、男性の割合:51.3%、MetS罹患率:50.7%)。・平均フォローアップ期間7.75年の間に、若年性認知症を発症したのは8.921例(0.45%)であった。・MetSは、すべての原因による若年性認知症リスク24%上昇(調整HR:1.24、95%CI:1.19〜1.30)、若年性アルツハイマー病リスク12.4%上昇(HR:1.12、95%CI:1.03〜1.22)、若年性脳血管性認知症リスク20.9%上昇(HR:1.21、95%CI:1.08〜1.35)との関連が認められた。・有意な交互作用が認められた因子は、より若年(40〜49歳vs.50〜59歳)、女性、飲酒状況、肥満、うつ病であった。 著者らは「MetSおよびその構成要素は、若年性認知症リスク上昇と有意な関連を示した。これらの知見は、MetSに対する介入が、若年性認知症リスクの軽減につながることを示唆している。しかし、本研究は観察研究のため、明確な因果関係の推定は困難であり、請求データへの依存は、誤分類バイアスに影響する可能性がある。今後の縦断的研究や包括的なデータ収集により、これらの関連性を検証し、さらに発展させることが望まれる」と結論付けている。

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MASHによる代償性肝硬変、efruxiferminは線維化を改善せず/NEJM

 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)による代償性肝硬変患者において、efruxiferminは36週時点で線維化の有意な改善を示さなかった。米国・Houston Methodist HospitalのMazen Noureddin氏らが、米国、プエルトリコおよびメキシコの45施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SYMMETRY試験」の結果を報告した。線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アナログであるefruxiferminは、MASHによる線維化ステージ2または3の患者を対象とした第II相試験において線維化の軽減とMASHの消失が認められたが、MASHによる代償性肝硬変(線維化ステージ4)の患者における有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2025年5月9日号掲載の報告。主要アウトカムは36週時のMASH悪化を伴わない線維化ステージの1段階以上改善 SYMMETRY試験の対象は、18~75歳、MASHと一致する肝組織学的所見が認められ、Child-Pughスコアが5または6(Child-Pugh分類A)、線維化ステージ4の代償性肝硬変患者であった。 加えて、2型糖尿病、またはメタボリックシンドロームの構成要素(肥満、脂質異常症、高血圧、空腹時血糖上昇)のうち2つ以上を有していることを要件とした。 研究グループは、適格患者をefruxifermin 28mg群、50mg群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回皮下投与した。 主要アウトカムは、36週時のMASH悪化を伴わない線維化ステージの1段階以上の改善、副次アウトカムは、96週時の同様の改善、ならびに36週および96週時におけるMASHの消失とした。主要アウトカムはITT解析により評価された。36週時の改善、プラセボ群13%、efruxifermin 28mg群18%、50mg群19% 2021年12月21日~2022年12月16日に182例が無作為化され、このうちefruxiferminまたはプラセボの投与を受けた181例がITT解析集団および安全性解析対象集団に含まれた。36週時に154例、96週時に134例で肝生検が行われた。 36週時にMASHの悪化を伴わず線維化が改善した患者の割合は、プラセボ群で13%(8/61例)、efruxifermin 28mg群で18%(10/57例)(層別因子補正後のプラセボ群との差:3%ポイント[95%信頼区間[CI]:-11~17]、p=0.62)、50mg群で19%(12/63例)(プラセボ群との差:4%ポイント、95%CI:-10~18、p=0.52)であった。 96週時にMASHの悪化を伴わず線維化が改善した患者の割合は、それぞれ11%(7/61例)、21%(12/57例)(プラセボ群との差:10%ポイント、95%CI:-4~24)、29%(18/63例)(プラセボ群との差:16%ポイント、95%CI:2~30)であった。 有害事象は、efruxifermin両群で99%、プラセボ群で97%の患者に発現した。efruxifermin群でプラセボ群より発現が多かった有害事象は、主に胃腸障害(下痢、悪心、食欲亢進)であり、ほとんどは軽度または中等度であった。

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降圧薬の心血管リスク低減効果、朝服用vs.就寝前服用/JAMA

 降圧薬の就寝前服用は安全であるが、朝の服用と比較して心血管リスクを有意に低減しなかったことが、カナダ・University of AlbertaのScott R. Garrison氏らが、プライマリケアの外来成人高血圧症患者を対象として実施した無作為化試験で示された。降圧薬を朝ではなく就寝前に服用することが心血管リスクを低減させるかどうかについては、先行研究の大規模臨床試験における知見が一致しておらず不明のままである。また、降圧薬の就寝前服用については、緑内障による視力低下やその他の低血圧症/虚血性の副作用を引き起こす可能性が懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「降圧薬の服用時間は、降圧治療のリスクやベネフィットに影響を与えない。むしろ患者の希望に即して決めるべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月12日号掲載の報告。カナダのプライマリケアで試験、朝服用vs.就寝前服用を評価 研究グループは、降圧薬の朝服用と就寝前服用の、死亡および主要心血管イベント(MACE)に与える影響を、プラグマティックな多施設共同非盲検無作為化・エンドポイント評価者盲検化試験で調べた。被験者は、カナダの5つの州にある436人のプライマリケア臨床医を通じて集めた、少なくとも1種類の1日1回投与の降圧薬の投与を受けている地域在住の成人高血圧症患者であった。募集期間は2017年3月31日~2022年5月26日、最終追跡調査は2023年12月22日であった。 被験者は、すべての1日1回投与の降圧薬を朝に服用する群(朝服用群)もしくは就寝前に服用する群(就寝前服用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、全死因死亡またはMACE(脳卒中、急性冠症候群または心不全による入院/救急外来[ED]受診)の初回発生までの期間であった。あらゆる予定外入院/ED受診、視覚機能、認知機能、転倒および/または骨折に関連した安全性アウトカムも評価した。主要複合アウトカムイベントの発生、安全性に有意差なし 計3,357例が無作為化された(就寝前服用群1,677例、朝服用群1,680例)。被験者は全体で女性56%、年齢中央値67歳であり、併存疾患は糖尿病が18%、冠動脈疾患既往が11%、慢性腎臓病が7%であった。また、単剤治療を受けている被験者が53.7%であり、降圧薬の種類はACE阻害薬36%、ARB 30%、Ca阻害薬29%などであった。 全体として追跡調査期間中央値4.6年において、主要複合アウトカムイベントの発生率は、100患者年当たりで就寝前服用群2.30、朝服用群2.44であった(補正後ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.19、p=0.70)。 100患者年当たりの主要アウトカムの項目別発生率(死亡:就寝前服用群1.11 vs.朝服用群1.28[補正後HR:0.90、95%CI:0.67~1.22、p=0.50]など)、あらゆる予定外入院/ED受診の発生率(23.26 vs.25.15[0.93、0.85~1.02、p=0.10])および安全性について、両群間で差は認められなかった。とくに、転倒の自己申告率(4.9%vs.5.0%、p=0.47)や100患者年当たりの骨折(非脊椎骨折:2.18 vs.2.40[0.92、0.74~1.14、p=0.44]、大腿骨近位部骨折:0.27 vs.0.43[0.65、0.37~1.15、p=0.14])、緑内障の新規診断(0.60 vs.0.54[1.13、0.73~1.74、p=0.58])、18ヵ月間の認知機能低下(26.0%vs.26.5%、p=0.82)について差はみられなかった。

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COVID-19は糖尿病患者の院内死亡率を高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことが知られているが、今回、治療中の糖尿病がCOVID-19による院内死亡率や人工呼吸器使用、血液透析といった腎代替療法の重大なリスク因子である、とする研究結果が報告された。研究は東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科の諏訪内浩紹氏、鈴木亮氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に3月19日掲載された。 COVID-19は多臓器障害を伴い、重症化した場合は、急性呼吸窮迫症候群、急性腎障害、その他の臓器不全を引き起こすことが多い。日本ではCOVID-19による死亡率は比較的低いが、糖尿病患者の場合では死亡リスクの上昇が報告されている。一方で、糖尿病患者におけるCOVID-19の治療と転帰を検討する包括的な研究は依然として限られている。そのような背景から、著者らはCOVID-19が糖尿病患者に及ぼす影響を評価するために、多施設の後ろ向きコホート研究を実施した。本研究では、院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICUへの入院、血液透析(HD)、持続的血液濾過透析(CHDF)、医療リソースの利用状況に関する影響が検討された。 研究には、千葉県内38医療機関の診断群分類包括評価(DPC)データより、2020年2月1日~2021年11月31日までの間にCOVID-19と診断された1万1,601人が含まれた。この中から、18歳未満、妊娠中、糖尿病未治療の症例など計825人が除外され、最終的な解析対象を1万776人(対照群7,679人、糖尿病群3,097人)とした。連続変数とカテゴリ変数の比較には、それぞれスチューデントのt検定とフィッシャーの正確確率検定を使用した。 糖尿病群の患者は対照群の患者よりも平均年齢とBMIが高かった(67.4歳 vs 55.7歳、25.6kg/m2 vs 23.6kg/m2、各P<0.001)。糖尿病の治療に関しては、インスリン使用率は88.4%、経口血糖降下薬は44.2%であり、インスリン療法の割合が高かった。 COVID-19による平均入院日数は、糖尿病群で17.8±15.3日であり、対照群(10.2±8.5日)と比べて有意に延長された(P<0.001)。院内死亡率は、糖尿病群と対照群でそれぞれ、12.9%と3.5%であり、糖尿病群で高くなっていた(オッズ比OR 4.05〔95%信頼区間3.45~4.78〕、P<0.001)。また、年齢別のサブグループ解析を行った結果、50~59歳にORのピークがみられ(同12.8〔3.71~44.1〕、P<0.01)、この年齢層がCOVID-19による院内死亡の強いリスク因子であることが示唆された。 次に、糖尿病がアウトカム(院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDF)に及ぼす影響を検討するため回帰分析を行ったところ、糖尿病群の全てのアウトカムのORは対照群と比較して有意に高かった。また、年齢、性別、BMI、救急車の利用で調整した重回帰分析を行った場合でも、全てのアウトカムのORは有意なままであったことから、糖尿病がこれらのアウトカムの独立した因子であることが示された。 本研究について著者らは、「2020~2021年のDPCデータの解析から、糖尿病はCOVID-19における院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDFの独立したリスク因子であることが示された。院内死亡率に関しては特に18~79歳の糖尿病群で対照群より高く、働き盛りの50~59歳で最もオッズ比が高かったことから、以降の若年世代に対してのワクチン接種勧奨や行動制限は有効だったのではないか」と述べている。 また、本研究の強みとして、レセプトデータをベースとしており、患者の使用している糖尿病治療薬などの臨床情報や、かかった医療費に関しての情報が含まれていた点を挙げており、「本研究はCOVID-19と糖尿病の臨床的特徴を明らかにし、将来の治療の改善に役立つものと考えている」と付け加えた。 本研究の限界点として、今回使用したDPCデータには、入院前の情報、臨床検査値やCOVID-19の重症度分類に関する情報、ワクチン接種に関する情報が含まれていないことを挙げている。

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心血管イベント高リスクのASCVD/FHヘテロ接合体、obicetrapibが有効/NEJM

 最大耐用量の脂質低下療法を受け、心血管イベントのリスクが高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)または家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の患者において、プラセボと比較してCETP阻害薬obicetrapibはLDLコレステロール(LDL-C)値を有意に低下させ、安全性プロファイルは大きな差はないことが、オーストラリア・Monash大学のStephen J. Nicholls氏らBROADWAY Investigatorsが実施した「BROADWAY試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月7日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照比較試験、84日目までのLDL-C値の変化率を評価 BROADWAY試験は、心血管イベントのリスクが高い患者におけるobicetrapibの脂質値に及ぼす効果を評価し、安全性と副作用プロファイルを明らかにすることを目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年12月~2023年8月に、中国、欧州、日本、米国の188施設で患者の無作為化を行った(NewAmsterdam Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上、FHヘテロ接合体またはASCVDの既往歴を有し、最大耐用量の脂質低下療法を受けている患者を対象とした。LDL-C値≧100mg/dLまたは非HDLコレステロール(非HDL-C)値≧130mg/dLの患者、あるいはLDL-C値55~100mg/dLまたは非HDL-C値85~130mg/dLで少なくとも1つの心血管リスク因子を持つ患者を適格とした。エゼチミブ、bempedoic acid(ベムペド酸)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の使用の有無は問わなかった。 これらの患者を、obicetrapib(10mg、1日1回)を経口投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、365日間投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから84日目までのLDL-C値の変化率とした。365日目までの変化率も良好 2,530例(平均年齢65歳、女性34%)を無作為化の対象とし、obicetrapib群に1,686例、プラセボ群に844例を割り付けた。全体のベースラインの平均LDL-C値は98mg/dL、平均HDL-C値は49mg/dL、平均BMIは29であり、糖尿病が38%、ASCVDが89%、FHヘテロ接合体が17%であった。91%がスタチン(70%が高強度スタチン)、27%がエゼチミブ、4%がPCSK9阻害薬の投与を受けていた。 ベースラインから84日目までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は、プラセボ群が2.7%(95%信頼区間[CI]:-0.4~5.8)であったのに対し、obicetrapib群は-29.9%(95%CI:-32.1~-27.8)と有意な差を認めた(群間差:-32.6%ポイント[95%CI:-35.8~-29.5]、p<0.001)。84日目の平均(±SD)LDL-C値は、obicetrapib群が62.8(±37.3)mg/dL、プラセボ群は92.3(±35.1)mg/dLであった。 また、84日目にLDL-C値<40mg/dLを達成した患者の割合は、obicetrapib群27.9%、プラセボ群1.1%、<55mg/dL達成率はそれぞれ51.0%および8.0%、<70mg/dL達成率は68.4%および27.5%だった。 ベースラインから4つの評価時点までのLDL-C値の最小二乗平均変化率(副次エンドポイント)は、30日目(群間差:-36.6%ポイント[95%CI:-39.1~-34.2])、180日目(-32.7%ポイント[-36.0~-29.4])、270日目(-30.2%ポイント[-33.6~-26.8])、365日目(-24.0%ポイント[-27.9~-20.1])のいずれにおいてもobicetrapib群で良好であった(すべてp<0.001)。 また、ベースラインから84、180、365日目までのアポリポ蛋白B、非HDL-C値、HDL-C値の最小二乗平均変化率もobicetrapib群で優れた(すべてp<0.001)。有害事象は両群とも約6割、重症度などにも差はない 試験期間中の有害事象は、obicetrapib群で59.7%、プラセボ群で60.8%に発現した。有害事象の重症度、試験レジメンとの関連、投与中止の理由に関して両群間に明確な差を認めず、頻度の高い有害事象(COVID-19、高血圧症、上気道感染症、上咽頭炎、関節痛、尿路感染症など)の発現率も両群で同程度だった。 心血管イベント(冠動脈心疾患死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術)はobicetrapib群で4.2%、プラセボ群で5.2%に発生した。血圧には、両群ともベースラインからの明らかな変化はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、心血管イベントのリスクが高い患者において、obicetrapibが脂質低下療法の補助薬として有用である可能性を示唆する」「本薬が、ASCVDの予防に有用な治療薬となるかについては、さらなる臨床試験で検討する必要がある」としている。

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若年層での脳梗塞、意外な疾患がリスクに?

 片頭痛、静脈血栓、腎臓病や肝臓病、がんなどは、一般に脳梗塞リスクを高めるとは考えられていない。しかし、一般的な心臓の構造的異常を有する50歳未満の人においては、このような因子が脳梗塞リスクを2倍以上に高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。ヘルシンキ大学病院(フィンランド)脳卒中ユニットの責任者であるJukka Putaala氏らによるこの研究の詳細は、「Stroke」に4月17日掲載された。 Putaala氏は、「われわれは、これまで脳梗塞のリスク因子と見なされていなかった因子(以下、非伝統的リスク因子)、特に片頭痛がもたらす影響に驚かされた。片頭痛は、若年成人の脳卒中発症の主なリスク因子の1つであると思われる」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。 この研究では、原因不明の脳梗塞である潜因性脳梗塞(cryptogenic ischemic stroke;CIS)を発症して間もない患者を対象に、修正可能な伝統的リスク因子、非伝統的リスク因子、および女性特有のリスク因子の影響の大きさと、それらと若年発症型CISとの関連を検討した。対象は、ヨーロッパの19施設の18〜49歳のCIS患者523人(平均年齢41歳、女性47.3%)と対照523人とした。CIS患者の37.5%には、卵円孔開存(PFO)が認められた。PFOは、胎児期に右心房と左心房の間にある壁(心房中隔)に開いていた孔(卵円孔)が出生後も閉じずに残存している状態を指す。解析は、臨床的に意義のあるPFO(心房中隔瘤または大きな右左シャントを伴う場合と定義)の有無で層別化して行った。 伝統的なリスク因子としては、高血圧、糖尿病、高コレステロール、喫煙、心血管疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、肥満、不健康な食事、運動不足、大量飲酒、ストレス、うつ病の12項目、非伝統的なリスク因子としては、慢性的な他臓器不全(炎症性腸疾患、慢性腎臓病、慢性肝炎、自己免疫疾患、血液疾患/血栓傾向)、静脈血栓症の既往、悪性腫瘍の既往、前兆を伴う片頭痛、違法薬物の現在の使用の10項目、女性特有のリスク因子としては、妊娠糖尿病の既往、妊娠高血圧の既往、妊娠合併症の既往など5項目が検討された。 PFOのないCIS患者では、対照群に比べて、リスク因子が1つ増えるごとにCISリスクが有意に上昇していた。CIS発症リスクは、伝統的なリスク因子で約40%(オッズ比1.417、95%信頼区間1.282〜1.568)、非伝統的なリスク因子で約70%(同1.702、1.338〜2.164)、女性特有のリスク因子で約70%(同1.700、1.107〜2.611)高かった。一方、PFOのあるCIS患者では、非伝統的なリスク因子についてのみ有意なリスク上昇が見られ、リスク因子が1つ増えるごとのCISの発症リスクは165%(同2.656、2.036〜3.464)上昇していた。 さらに、人口寄与危険割合(PAR)を算出して、当該リスクがなければどの程度のCISを防げたかを推定したところ、PFOがないCISでは、伝統的リスク因子が64.7%、非伝統的リスク因子が26.5%、女性特有のリスク因子が18.9%のCIS発症に寄与していると推定された。一方、PFOがあるCISでは、それぞれ33.8%、49.4%、21.8%がCIS発症に寄与していると推定された。CISの最も強い寄与因子は前兆を伴う片頭痛であり、PFOありのCISの45.8%、PFOなしのCISの22.7%は前兆を伴う片頭痛により説明されると推定された。前兆を伴う片頭痛の影響は、特に女性で顕著であった。 Putaala氏は、「これらの結果は、医療専門家が、より個別化されたリスク評価と管理の方法を考えるべきであることを示している。また、若い女性には、片頭痛の既往歴やその他の非伝統的なリスク因子の有無について確認するべきだ」と述べている。

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第267回 GLP-1薬は体重減少効果以外の仕組みのがん予防効果を有するらしい

GLP-1薬は体重減少効果以外の仕組みのがん予防効果を有するらしい先週11~14日のスペインでの欧州肥満学会で取り上げられたイスラエルの研究者の発表によると、GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は体重減少がもたらす以上のがん予防効果を有するようです1,2)。GLP-1薬と肥満手術はどちらも糖尿病や肥満の治療として確立としています。肥満手術は糖尿病や肥満と関連するいわゆる肥満関連がん(ORC)を生じ難くすることが長期の試験やメタ解析で裏付けられており、発生率の32~45%の低下をもたらします。一方、肥満治療薬(肥満薬)のがん予防効果のほどはよくわかっていませんが、2型糖尿病、肥満、それらの合併症を制しうるGLP-1薬も肥満手術と同様にORCを生じ難くするかもしれません。実際、米国の2型糖尿病患者およそ165万例の最長15年間の経過を解析したレトロスペクティブ試験でGLP-1薬とORCの発生率低下の関連が示されています。GLP-1薬投与群は調べた13種のORCうち10種(食道、大腸、子宮内膜、胆嚢、腎臓、肝臓、卵巣、膵臓のがん、髄膜腫、多発性骨髄腫)の発生率がインスリン投与群に比べて低くて済んでいました3)。同試験の著者はいくつかの課題の1つとして、GLP-1薬とがんの発生率の関連を肥満手術と比べる必要があると述べていました。イスラエルの人口の半数超が加入している保健組合Clalitの研究者らはまさにその課題に取り組み、GLP-1薬と肥満手術のORCを減らす効果を同組合の患者の電子カルテを使って比較しました。比較されたのは24歳以上で、肥満かつ糖尿病の患者の第一世代GLP-1薬開始後と肥満手術後のORCの発生率です。2010~18年にGLP-1薬を開始した群と肥満手術を受けた群の患者はどちらも同数の3,178例で、性別、年齢、BMIが一致するように1対1の割合で選定されました。2023年12月までの追跡期間中央値7.5年のあいだに298例にORCが生じました。最も多かったのは閉経後乳がんで77例に生じました。その次に多かったのは大腸がんで49例、3番目に多かった子宮がんは45例に生じました。肥満手術群のほうが体重はより減ったものの、ORCの発生率は肥満手術群とGLP-1薬投与群で似たりよったりで、それぞれ1,000人年当たり5.76と5.64でした。肥満手術群のBMI低下は31%で、GLP-1薬のBMI低下14%を2倍以上上回りました。そのような体重減少の効果を差し引くと、GLP-1薬の体重減少以外の作用によるORC発生率低下は肥満手術に比べて41%高いと推定されました。GLP-1薬がORCを防ぐ効果は炎症の抑制などのいくつかの仕組みによるのかもしれません。より用を成し、より体重を減らす新世代のGLP-1薬のORC予防効果はさらに高いと期待できそうですが、無作為化試験やより大人数の観察試験でORCの予防効果をさらに検証し、その効果の仕組みの理解に取り組む必要があります。また、新世代のGLP-1薬がORC以外のがんを増やさないことの確認が必要と研究リーダーの1人Dror Dicker氏は言っています2)。幸い、10試験の7万例超を調べた最近のメタ解析では、2型糖尿病患者のGLP-1薬使用のがん全般の発生率はプラセボに比べて高くないことが示されています4,5)。 参考 1) Wolff Sagy Y, et al. eClinicalMedicine. 2025 May 11. [Epub ahead of print] 2) GLP-1 receptor agonists show anti-cancer benefits beyond weight loss / Eurekalert 3) Wang L, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2421305. 4) Lee MMY, et al. Diabetes Care. 2025;48:846-859. 5) expert reaction to conference poster about GLP-1 obesity drugs (compared with bariatric surgery) and obesity-related cancer / Science Media Centre

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術前PD-1阻害薬療法、広範なdMMR固形腫瘍で手術を回避/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の局所進行直腸腫瘍では、免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前補助療法により高率に手術の必要性がなくなったとの報告があり、これを腫瘍部位を問わずにあらゆる早期dMMR固形腫瘍に適用可能ではないかとの仮説が提唱されている。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAndrea Cercek氏らは、根治手術が可能な早期dMMR固形腫瘍患者において、PD-1阻害薬dostarlimabを用いた術前補助療法が、高い割合で当該臓器の温存をもたらすことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月27日号に掲載された。米国の2つのコホートの第II相試験 研究グループは、早期dMMR固形腫瘍の非手術的管理の根拠を検証する目的で、治癒切除可能な広範な部位の早期MMR固形腫瘍におけるdostarlimabによる術前補助療法の有効性と安全性を評価する第II相試験を行った(Swim Across Americaなどの助成を受けた)。 米国の3施設でスクリーニングを受け、新たに診断されたI、II、III期の固形腫瘍で、治癒を目的とする手術が可能であり、免疫組織化学染色でMLH1、MSH2、MSH6、PMS2の発現がないdMMRの患者を対象とした。 これらの患者に対し、術前補助療法としてdostarlimab(500mg)を3週ごとに6ヵ月間(9サイクル)静脈内投与し、2つのコホート(コホート1:dMMR局所進行直腸がん、コホート2:直腸以外のdMMR固形腫瘍)で評価を行った。臨床的完全奏効が得られた患者は非手術的管理による治療の継続を選択することができ、残存病変を有する患者は切除術を受けることとした。 コホート1の主要エンドポイントとして、手術を受けなかった患者または手術を受け病理学的完全奏効を達成した患者におけるdostarlimab療法(±化学放射線療法)終了から12ヵ月の時点での持続的な臨床的完全奏効を評価し、コホート2では探索的解析を行った。解析には、2019年12月~2025年4月に得たデータを使用した。治療終了患者の臨床的完全奏効は82%、80%で手術回避 117例を解析の対象とした。コホート1が50例(年齢中央値51.0歳[範囲:26~78]、女性56%)、同2が67例(67.0歳[28~87]、43%)であった。103例が治療を終了した(コホート1:49例、コホート2:54例)。コホート2の主な腫瘍の部位は、結腸(33例)、胃(15例)、尿路上皮(7例)、食道(3例)、胃食道接合部(3例)などであった。 コホート1では、治療を終了した49例のすべてが臨床的完全奏効を達成し、全例が非手術的管理による治療継続を選択した。12ヵ月の時点で、37例が持続的な臨床的完全奏効を維持しており、有効性の基準を満たした。 コホート2では、治療を終了した54例中35例(65%)が臨床的完全奏効を得て、このうち33例(61%)が非手術的管理による治療継続を選択した。残りの2例(胃がん1例、尿路上皮がん1例)は手術を選択し、いずれも切除検体にがんの証拠は認めなかった。 両コホートを合わせた治療終了患者103例では、84例(82%[95%信頼区間[CI]:72~88])で臨床的完全奏効が得られ、このうち82例(80%[70~87])が手術を受けなかった。また、原発腫瘍が治療中または治療後に進行したり、切除不能となった患者はなく、死亡例の報告もなかった。 全117例における2年時の無再発生存率は92%(95%CI:86~99)で、再発までの期間中央値は20.0ヵ月(範囲:0~60.8)であった。コホート1の50例では、それぞれ96%および30.2ヵ月、同2の67例では、85%および14.9ヵ月だった。全体で再発は5例のみで、1例は原発腫瘍(直腸)の再増殖であったが、残りの4例はリンパ節に限局した再発であった。有害事象発現率は65%、可逆性のGrade1、2が60% dostarlimabの投与を少なくとも1回受けた患者の65%に有害事象が発現した。60%は可逆性のGrade1または2の有害事象であった。最も頻度の高いGrade1または2の有害事象は、疲労感(全体の23%)、皮疹または皮膚炎(同21%)、そう痒(同19%)であった。Grade3の有害事象として、糖尿病、肺感染症、甲状腺機能低下症、脳炎、好中球減少症を各1例に認めた。Grade4の発熱性好中球減少症が1例にみられた。 著者は、「免疫チェックポイント阻害薬の効果は、腫瘍の原発部位よりもdMMRの表現型に主に依存していると思われた」「今後の大きな課題は、腫瘍反応を監視する最良の方法を確立することである」「本研究は、早期dMMR固形腫瘍の従来の治療パラダイムに変更をもたらし、多くの患者において手術や他の治療の必要性をなくすための基礎を提示するものである」としている。

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高血圧診断後の降圧薬開始、1ヵ月以内vs.1ヵ月以降

 未治療の成人高血圧患者において、診断後1ヵ月以内に降圧薬単剤療法を開始すると、それ以降に開始した場合と比較して、診断後6~30ヵ月までの血圧コントロールが良好であった。一方で、1ヵ月以内に単剤での降圧薬療法を開始したとしても、30%超の患者では血圧コントロールは不十分であることも示された。米国医師会のRobert B Barrett氏らによる後ろ向きコホート研究の結果が、Hypertension誌オンライン版2025年4月21日号に掲載された。 診断および治療歴のない高血圧患者1万5,422例(平均年齢:56.0±14.8歳、18歳未満および85歳以上は除外、2019年1月~2023年1月に初回診断)が、5つの医療機関の後ろ向きコホートより抽出された。診断後最大42ヵ月までの期間において、血圧コントロール状況(<140/<90mmHg)およびコントロール不良時における降圧薬単剤療法の開始状況を経時的に評価した。初診時の血圧に対する降圧薬単剤療法開始のオッズを、人種、性別、および糖尿病の有無で層別化し、ロジスティック回帰モデルにより推定した。経時的な血圧コントロール達成状況については、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は全体で24ヵ月であった。・降圧薬単剤療法は、診断後1ヵ月で患者の約44%、6ヵ月で75%、1年で82%、2年で90%に実施されていた。・診断後1ヵ月以内に降圧薬単剤療法を開始した患者とそれ以降に開始した患者の人口統計学的・臨床的特徴は、平均年齢53.3歳vs.58.2歳、男性が45.9% vs.43.5%、ベースラインの平均血圧は154.4(±12.5)/88.5(±11.5)mmHg vs.152.5(±12.5)/85.5(±11.8)mmHg、平均BMIはともに31.5kg/m2、糖尿病ありが19.5% vs.23.8%であった。・診断後1ヵ月以内に降圧薬単剤療法を開始した患者では、それ以降に開始した患者と比較し、診断後6ヵ月時点で有意に高いコントロール率を示し(57.4% vs.47.5%、p<0.001)、30ヵ月まで維持されていた(66.8% vs.62.0%、p<0.001)。・42ヵ月間の追跡期間中の血圧コントロール率は、診断後1ヵ月以内に降圧薬単剤療法を開始した患者では、それ以降に開始した患者と比較して19%高く(HR:1.19、95%信頼区間[CI]:1.13~1.25)、年齢、人種、性別、初回SBPで調整後も維持された(HR:1.21、95%CI:1.15~1.27)。・高血圧診断後1ヵ月以内の降圧薬単剤療法開始によるベネフィットは、多変量補正後もコントロール閾値<130/<80mmHgで認められた(HR:1.14、95%CI:1.07~1.21)。

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obicetrapib/エゼチミブ配合剤、LDL-コレステロール低下に有効/Lancet

 obicetrapibとエゼチミブの固定用量配合剤(FDC)は、最大耐用量の脂質低下療法を受けている動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)既往または高リスク患者のLDL-コレステロール(LDL-C)値を、各単独投与あるいはプラセボと比較して有意に低下させたことが示された。米国・Cleveland ClinicのAshish Sarraju氏らが、米国の48施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「TANDEM試験」の結果を報告した。著者は、「この経口・配合剤単剤療法は、ASCVD既往または高リスク患者におけるLDL-C管理を改善する可能性がある」とまとめている。obicetrapibはコレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬で、非ASCVD患者を対象とした小規模な第II相試験で、単独投与またはエゼチミブとの併用投与でLDL-C値を低下させることが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年5月7日号掲載の報告。obicetrapib/エゼチミブ配合剤、各単独、プラセボのLDL-C低下効果を比較 研究グループは、ASCVD またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症の既往を有する、またはASCVD の複数のリスク因子を有する患者で、エゼチミブを除く最大耐用量の脂質低下療法を安定的に受けているにもかかわらず空腹時LDL-C値が1.8mmol/L(70mg/dL)以上、あるいはスタチン不耐の18歳以上の患者を、obicetrapib10mg+エゼチミブ10mg併用群(FDC群)、obicetrapib10mg群、エゼチミブ10mg群、またはプラセボ群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回84日間経口投与した。 主要エンドポイントは、ITT集団におけるLDL-C値のベースラインから84日目までの変化率で、FDC群とプラセボ群、エゼチミブ群およびobicetrapib群、ならびにobicetrapib群とプラセボ群の4つを比較した。obicetrapib/エゼチミブ配合剤、プラセボと比較しLDL-C値が48.6%低下 2024年3月4日~7月3日に407例が無作為化された(FDC群102例、obicetrapib群102例、エゼチミブ群101例、プラセボ群102例)。患者背景は、年齢中央値が68.0歳(四分位範囲:62.0~73.0)、女性が177例(43%)で、ベースラインの平均LDL-C値はFDC群2.5mmol/L、obicetrapib群2.6mmol/L、エゼチミブ群2.5mmol/L、プラセボ群2.4mmol/Lであった。 84日時点でのLDL-C低下率のFDC群と各群との差(最小二乗平均差)は、プラセボ群で-48.6%(95%信頼区間:-58.3~-38.9)、エゼチミブ群で-27.9%(-37.5~-18.4)、obicetrapib群で-16.8%(-26.4~-7.1)であり、obicetrapib群とプラセボ群との差は-31.9%(22.1~41.6)であった。 有害事象の発現率は、FDC群51%(52/102例)、obicetrapib群54%(55/102例)、エゼチミブ群53%(54/101例)で3群は同程度で、プラセボ群が37%(38/102例)と最も低かった。 重篤な有害事象は、FDC群で3例(3%)、obicetrapib群で6例(6%)、エゼチミブ群で7例(7%)、プラセボ群で4例(4%)に発現した。 死亡は、FDC群1例(1%)、obicetrapib群1例(1%)、エゼチミブ群1例(1%)に認められ、プラセボ群では死亡例の報告はなかった。

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入院させてほしい【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第6回

入院させてほしいPointプライマリ・ケアの適切な介入により入院を防ぐことができる状態をACSCsという。ACSCsによる入院の割合は、プライマリ・ケアの効果を測る指標の1つとされている。病診連携、多職種連携でACSCsによる入院を減らそう!受け手側は、紹介側の事情も理解して、診療にあたろう!症例80歳女性。体がだるい、入院させてほしい…とA病院ERを受診。肝硬変、肝細胞がん、2型糖尿病、パーキンソン病などでA病院消化器内科、内分泌内科、神経内科を受診していたが、3科への通院が困難となってきたため、2週間前にB診療所に紹介となっていた。採血検査でカリウム7.1mEq/Lと高値を認めたこともあり、幸いバイタルサインや心電図に異常はなかったが、指導医・本人・家族と相談のうえ、入院となった。内服薬を確認すると、消化器内科からの処方が診療所からも継続されていたが、内容としてはスピロノラクトンとカリウム製剤が処方されており、そこにここ数日毎日のバナナ摂取が重なったことによるもののようだった。おさえておきたい基本のアプローチプライマリ・ケアの適切な介入により入院を防ぐことができる状態をAmbulatory Care Sensitive Conditions(ACSCs)という。ACSCsは以下のように大きく3つに分類される。1:悪化や再燃を防ぐことのできる慢性疾患(chronic ACSCs)2:早期介入により重症化を防ぐことのできる急性期疾患(acute ACSCs)3:予防接種等の処置により発症自体を防ぐことのできる疾患(vaccine preventable ACSCs)2010年度におけるイギリスからの報告によると、chronic ACSCsにおいて最も入院が多かった疾患はCOPD、acute ACSCsで多かった疾患は尿路感染症、vaccine preventable ACSCsで多かった疾患は肺炎であった1)。実際に、高齢者がプライマリ・ケア医に継続的に診てもらっていると不必要な入院が減るのではないかとBarkerらは、イギリスの高齢者23万472例の一次・二次診療データに基づき、プライマリ・ケアの継続性とACSCsでの入院数との関連を評価した。ケアが継続的であると、高齢者において糖尿病、喘息、狭心症、てんかんを含むACSCsによる入院数が少なかったという研究結果が2017年に発表された。継続的なケアが、患者-医師間の信頼関係を促進し、健康問題と適切なケアのよりよい理解につながる可能性がある。かかりつけ医がいないと救急車利用も増えてしまう。ホラ、あの○○先生がかかりつけ医だと、多すぎず少なすぎず、タイミングも重症度も的確な紹介がされてきているでしょ?(あなたの地域の素晴らしいかかりつけ医の先生の顔を思い出してみましょう)。またFreudらは、ドイツの地域拠点病院における入院患者のなかで、ACSCsと判断された104事例をとりあげ、紹介元の家庭医にこの入院は防ぎえたかというテーマでインタビューを行うという質的研究を行った。この研究を通じてプライマリ・ケアの実践現場や政策への提案として、意見を提示している(表)。地域のリソースと救急サービスのリンクの重要性、入院となった責任はプライマリ・ケアだけでなく、病院なども含めたすべてのセクターにあるという合意形成の重要性、医療者への異文化コミュニケーションスキル教育の重要性など、ERの第一線で働く方への提言も盛り込まれており、ぜひ一読いただきたい。ACSCsは高齢者や小児に多く、これらの提言はドイツだけでなく、世界でも高齢者の割合がトップの日本にも意味のある提言であり、これらを意識した医師の活躍が、限られた医療資源を有効に活用するためにも重要であると思われる。表 プライマリ・ケア実践現場と政策への提言<プライマリ・ケア実践チームへの提言>患者の社会的背景、服薬アドヒアランス、セルフマネジメント能力などを評価し、ACSCsによる入院のリスクの高い患者を同定すること処方を定期的に見直すこと(何をなぜ使用しているのか?)。アドヒアランス向上のために、読みやすい内服スケジュールとし、治療プランを患者・介護者と共有すること入院のリスクの高い患者は定期的に症状や治療アドヒアランスの電話などを行ってモニタリングすること患者および介護者にセルフマネジメントについて教育すること(症状悪化時の対応ができるように、助けとなるプライマリ・ケア資源をタイミングよく利用できるようになるなど)患者に必要なソーシャルサポートシステム(家族・友人・ご近所など)や地域リソースを探索することヘルステクノロジーシステムの導入(モニタリングのためのリコールシステム、地域のリソースや救急サービスのリンク、プライマリ・ケアと病院や時間外ケアとのカルテ情報の共有など)各部署とのコミュニケーションを強化する(かかりつけ医と時間外対応してくれる外部医師間、入退院支援、診断が不確定な場合に相談しやすい環境づくりなど)<政策・マネジメントへの提言>入院となった責任はプライマリ・ケア、セカンダリ・ケア、病院、地域、患者といったすべてのセクターにあるという合意を形成すべきであるACSCsによる入院はケアの質の低さを反映するものでなく、地理的条件や複雑な要因が関係していることを検討しなければならないACSCsに関するデータ集積でエキスパートオピニオンではなく、エビデンスデータに基づいた改善がなされるであろう医療者教育において異文化コミュニケーションスキル教育が重視されるだろう落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls紹介側(かかりつけ医)を、責めない!前に挙げた症例のような患者を診た際には、「なぜスピロノラクトンとカリウム製剤が処方されているんだ!」とついつい、かかりつけ医を責めたくなってしまうだろう! 忙しいなかで、そう思いたくなるのも無理はない。でも、「なんで○○した?」、「なんで△△なんだ?」、「なんで□□になるんだよ」などと「なんで(why)」で質問攻めにすると、ホラあなたの後輩は泣きだしたでしょ? 立場が違う人が安易に相手を責めてはいけない。後医は名医なんだから。前医を責めるのは医師である前に人間として未熟なことを露呈するだけなのである。まずは紹介側の事情をくみ取るように努力しよう。この症例でも、病院から紹介になったばかりで、関係性もあまりできていないなかでの高カリウム血症であった。元々継続的に診療していたら、血清カリウム値の推移や、腎機能、食事の状況など把握して、カリウム製剤や利尿薬を調節できたかもしれない。また紹介医を責めると後々コミュニケーションが取りにくくなってしまい、地域のケアの向上からは遠ざかってしまう。自分が紹介側になった気持ちになって、診療しよう。Pointかかりつけ医の事情を理解し、診療しよう!起きうるリスクを想定しよう!さらにかかりつけ医の視点で考えていきたい。この方の場合はまだフォロー歴が短いこともあって困難だったが、前医からの採血データの推移の情報や、食事摂取量や内容の変化でカリウム値の推移も予測可能だったかもしれない。糖尿病におけるsick dayの説明は患者にされていると思うが、リスクを想定し、かつ対処できるよう行動しよう。いつもより体調不良があるけど、なかなかすぐには受診してもらえないときには、電話を入れたり、家族への説明をしたり、デイケア利用中の患者なら、デイケア職員への声掛けも有効だろう! そうすることで不要な入院も避けられるし、患者家族からの信頼感アップも間違いなし!!「ERでは関係ない」と思わないで、患者の生活背景を聞き出し、患者のサポートシステム(デイケア・デイサービスなど)への連絡もできるようになると、かっこいい。かかりつけ医のみならず、施設職員への情報提供書も書ける視野の広い医師になろう。Point「かかりつけ医の先生とデイケアにも、今回の受診経過と注意点のお手紙を書いておきますね!」かかりつけ医だけに頑張らせない!入院のリスクの高い患者は、身体的問題だけでなく、心理的・社会的問題も併存している場合も少なくない。そんな場合は、かかりつけ医のみでできることは限られている。患者に必要なソーシャルサポートシステムや地域リソースを患者や家族に教えてあげて、かかりつけ医に情報提供し、多職種を巻き込んでもらうようにしよう! これまでのかかりつけ医と家族の二人三脚の頑張りにねぎらいの言葉をかけつつ(頑張っているかかりつけ医と家族を褒め倒そう!)、多くの地域のリソースを勧めることで、家族の負担も減り、ケアの質もあがるのだ。「そんな助けがあるって知らなかった」という家族がなんと多いことか。医師中心のヒエラルキー的コミュニケーションでなく、患者を中心とした風通しのよい多職種チームが形成できるように、お互いを尊重したコミュニケーション能力が必要だ! 図のようにご家族はじめこれだけの多職種の協力で患者の在宅生活が成り立っているのだ。図 永平寺町における在宅生活を支えるサービス画像を拡大するPoint多職種チームでよりよいケアを提供しよう!ワンポイントレッスン医療者における異文化コミュニケーションについてERはまさに迅速で的確な診断・治療という医療が求められる。患者を中心とした多職種(みなさんはどれだけの職種が浮かぶだろうか?)のなかで、医師が当然医療におけるエキスパートだ。しかし、病気の悪化、怪我・事故は患者の生活の現場で起きている。生活に目を向けることで、診断につながることは多い。ERも忙しいだろうが、「患者さんの生活を普段支えている人たち、これから支えてくれるようになる人たちは誰だろう?」なんて想像してほしい。ERから帰宅した後の生活をどう支えていけばよいかまで考えられれば、あなたは超一流!職能や権限の異なる職種間では誤解や利害対立も生じやすいので、患者を支える多職種が風通しのよい関係を築くことが大事だ。医療者における異文化コミュニケーション、つまり多職種連携、チーム医療は、無駄なER受診を減らすためにも他人ごとではないのだ。病気や怪我さえ治せば、ハイ終わり…なんて考えだけではまだまだだ。もし多職種カンファレンスに参加する機会があれば、積極的に参加して自ら視野を広げよう。ACSCsへの適切な介入とは? ─少しでも防げる入院を減らすために─入院を防ぐためには、単一のアプローチではなかなか成果が出にくく、複数の組み合わせたアプローチが有効といわれている2)。具体的には、患者ニーズ評価、投薬調整、患者教育、タイムリーな外来予約の手配などだ。たとえば投薬調整に関しては、Mayo Clinic Care Transitions programにおいても、皆さんご存じの“STOP/STARTS criteria”を活用している。なかでもオピオイドと抗コリン薬が再入院のリスクとして高く、重点的に介入されている3)。複数の介入となると、なかなか忙しくて一期一会であるERで自分1人で頑張ろうと思っても、入院回避という結果を出すまでは難しいかもしれない。そこで先にもあげたように多職種連携・Team Based Approachが必要だ4)。それらの連携にはMSW(medical social worker)さんに一役買ってもらおう。たとえば、ERから患者が帰宅するとき、患者と地域の資源(図)をつないでもらおう! MSWと連絡とったことのないあなた、この機会に連絡先を確認しておこうね!ACSCsでの心不全の場合は、専門医やかかりつけ医といった医師間の連携はじめ、緩和ケアチームや急性期ケアチーム、栄養士、薬剤師、心臓リハビリ、そして生活の現場を支える職種(地域サポートチーム、社会サービス)との協働も必要になってくる。またACSCsにはCOPDなども多く、具体的な介入も提言されている。有症状の慢性肺疾患には、散歩などの毎日の有酸素トレーニング30分、椅子からの立ち上がりや階段昇降、水筒を使っての上肢の運動などのレジスタンストレーニングなどが有効とされている。家でのトレーニングが、病院などでの介入よりも有効との報告もある。「家の力」ってすごいよね。理学療法士なども介入してくれるとより安心! 禁煙できていない人には、禁煙アドバイスをすることも忘れずに。ERで対応してくれたあなたの一言は、患者に強く響くかもしれない。もちろん禁煙外来につなぐのも一手だ! ニコチン補充療法は1.82倍、バレニクリンは2.88倍、プラセボ群より有効だ5)。勉強するための推奨文献Barker I, et al. BMJ. 2017:84:356-364.Freud T, et al. Ann Fam Med. 2013;11:363-370.藤沼康樹. 高齢者のAmbulatory care-sensitive conditionsと家庭医. 2013岡田唯男 編. 予防医療のすべて 中山書店. 2018.参考 1) Bardsley M, et al. BMJ Open. 2013;3:e002007. 2) Kripalani S, et al. Ann Rev Med. 2014;65:471-485. 3) Takahashi PY, et al. Mayo Clin Proc. 2020;95:2253-2262. 4) Tingley J, et al. Heart Failure Clin. 2015;11:371-378. 5) Kwoh EJ, Mayo Clin Proc. 2018;93:1131-1138. 執筆

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インフル・コロナ混合ワクチン、50歳以上への免疫原性・安全性確認/JAMA

 インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の混合ワクチン「mRNA-1083」の免疫原性と安全性を、50歳以上の成人を対象に評価した第III相無作為化観察者盲検試験の結果が報告された。開発中のmRNA-1083は、推奨されるインフルエンザワクチン(高用量、標準用量)およびCOVID-19ワクチンと比較して非劣性基準を満たし、4種すべてのインフルエンザ株(50~64歳)、SARS-CoV-2(全年齢)に対して高い免疫応答を誘導したことが実証され、許容可能な忍容性および安全性プロファイルが示された。米国・ModernaのAmanda K. Rudman Spergel氏らが報告した。JAMA誌オンライン版2025年5月7日号掲載の報告。4価ワクチン+COVID-19併用接種群と比較 試験は、2023年10月19日~11月21日に米国146施設で50歳以上の成人を登録して行われた。データ抽出は2024年4月9日に完了した。 被験者は年齢で2コホート(65歳以上、50~64歳)に分けられ、mRNA-1083+プラセボを接種する群、承認済みの季節性インフルエンザ4価ワクチン(65歳以上:高用量4価不活化インフルエンザワクチン[HD-IIV4]、50~64歳:標準用量IIV4[SD-IIV4])とCOVID-19ワクチン(全年齢:mRNA-1273)を併用接種する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 本試験の主要目的は、29日時点におけるmRNA-1083接種後の体液性免疫応答の対照ワクチンに対する非劣性の検証、mRNA-1083の反応原性および安全性の評価であった。副次目的は、29日時点におけるmRNA-1083接種後の体液性免疫応答の対照ワクチンに対する優越性の検証などであった。mRNA-1083の免疫原性の非劣性、高い免疫応答の誘導を確認 全体で8,015例がワクチンを接種された(65歳以上4,017例、50~64歳3,998例)。年齢中央値は65歳以上のコホート70歳、50~64歳のコホート58歳、女性はそれぞれ54.2%と58.8%、黒人またはアフリカ系は18.4%と26.7%、ヒスパニックまたはラテン系は13.9%と19.3%であった。 mRNA-1083の免疫原性は、すべてのワクチン適合インフルエンザ株およびSARS-CoV-2株に対して非劣性が検証された。すなわち、幾何平均抗体価比の97.5%信頼区間(CI)下限値は0.667を上回り、セロコンバージョン/血清反応率の差の97.5%CI下限値は-10%超であった。 mRNA-1083は、4種すべてのインフルエンザ株に対してSD-IIV4(50~64歳に接種)よりも高い免疫応答を誘導し、3種のインフルエンザ株(A/H1N1、A/H3N2、B/ビクトリア)に対してHD-IIV4(65歳以上に接種)よりも高い免疫応答を誘導した。また、SARS-CoV-2(全年齢にmRNA-1273を接種)に関しても高い免疫応答を誘導した。 mRNA-1083接種後の依頼に基づく非自発的に報告された副反応は、両年齢コホートにおいて対照ワクチン群と比較し、頻度および重症度ともに数値的には高かった。頻度は、65歳以上ではmRNA-1083接種群83.5%、HD-IIV4+mRNA-1273接種群78.1%であり、50~64歳ではmRNA-1083接種群85.2%、SD-IIV4+mRNA-1273接種群81.8%であった。重症度は大半がGrade1または2であり短期間に消失した。以上から、安全性に関する懸念は認められなかった。

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β遮断薬やスタチンなど、頻用薬がパーキンソン病発症を抑制?

 痛みや高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療薬として、アスピリン、イブプロフェン、スタチン系薬剤、β遮断薬などを使用している人では、パーキンソン病(PD)の発症が遅くなる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。特に、PDの症状が現れる以前からβ遮断薬を使用していた人では、使用していなかった人に比べてPDの発症年齢(age at onset;AAO)が平均で10年遅かったという。米シダーズ・サイナイ医療センターで神経学副部長兼運動障害部門長を務めるMichele Tagliati氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology」に3月6日掲載された。 PDは進行性の運動障害であり、ドパミンという神経伝達物質を作る脳の神経細胞が減ることで発症する。主な症状は、静止時の手足の震え(静止時振戦)、筋強剛、バランス障害(姿勢反射障害)、動作緩慢などである。 この研究では、PD患者の初診時の医療記録を後ろ向きにレビューし、降圧薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スタチン系薬剤、糖尿病治療薬、β2刺激薬による治療歴、喫煙歴、およびPDの家族歴とPDのAAOとの関連を検討した。対象は、2010年10月から2021年12月の間にシダーズ・サイナイ医療センターで初めて診察を受けた1,201人(初診時の平均年齢69.8歳、男性63.5%、PDの平均AAO 63.7歳)の患者とした。 アテノロールやビスプロロールなどのβ遮断薬使用者のうち、PDの発症前からβ遮断薬を使用していた人でのAAOは72.3歳であったのに対し、β遮断薬非使用者でのAAOは62.7歳であり、発症前からのβ遮断薬使用者ではAAOが平均9.6年有意に遅いことが明らかになった。同様に、その他の薬剤でもPDの発症前からの使用者ではAAOが、スタチン系薬剤で平均9.3年、NSAIDsで平均8.6年、カルシウムチャネル拮抗薬で平均8.4年、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で平均6.9年、利尿薬で平均7.2年、β刺激薬で平均5.3年、糖尿病治療薬で平均5.2年遅かった。一方で、喫煙者やPDの家族歴を持つ人は、PDの症状が早く現れる傾向があることも示された。例えば、喫煙者は非喫煙者に比べてAAOが平均4.8年早かった。 Tagliati氏は、「われわれが検討した薬剤には、炎症抑制効果などの共通する特徴があり、それによりPDに対する効果も説明できる可能性がある」とシダーズ・サイナイのニュースリリースで話している。 さらにTagliati氏は、「さらなる研究で患者をより長期にわたり観察する必要はあるが、今回の研究結果は、対象とした薬剤が細胞のストレス反応や脳の炎症を抑制することで、PDの発症遅延に重要な役割を果たしている可能性が示唆された」と述べている。

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