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インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。 世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2009~2020年の北欧4カ国の医療データ、2012~2021年の米国の医療データ、2009~2020年のイスラエルの医療データが用いられた。それらのデータベースから2型糖尿病妊婦を抽出し、児の生後1年までの医療記録を追跡調査した。リスクを評価した薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、DPP-4阻害薬(DPP-4i)、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、SGLT2阻害薬(SGLT2i)の4種。それらの薬剤が、妊娠の90日前から妊娠第1三半期に1回以上処方されていたケースを、曝露された症例とした。比較対照はインスリンのみによって治療されていたケースとした(アクティブコンパレータ)。主要評価項目は、MCMの相対リスクであり、年齢、併存疾患(肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病合併症、多嚢胞性卵巣症候群)、他の処方薬(降圧薬、脂質低下薬)などの交絡因子の影響は調整した。 MCMの標準化有病率は全体で3.7%であった。それに対して2型糖尿病妊婦の児では5.3%であり、SU薬に曝露された児では9.7%、DPP-4i曝露では6.1%、GLP-1RA曝露で8.3%、SGLT2i曝露で7.0%であって、インスリンのみで治療されていた群は7.8%だった。インスリンのみで治療されていた群を基準とした交絡因子調整後のMCM相対リスクは、SU薬曝露で1.18(95%信頼区間0.94~1.48)、DPP-4i曝露0.83(同0.64~1.06)、GLP-1RA曝露0.95(0.72~1.26)、SGLT2i曝露0.98(0.65~1.46)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「インスリン製剤によらない糖尿病治療の普及とともに、妊娠初期の非インスリン製剤への曝露が急速に増加している。われわれの研究結果は、そのような非インスリン製剤への曝露によるMCMリスクの有意な上昇を示しておらず、安心につながるデータが得られた。ただし、より正確なデータが必要であり、他の研究での検証が求められる」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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あなたの睡眠のタイプは?四つの睡眠パターンを特定

 平日は睡眠不足で週末に寝だめしたり、あるいは一晩中寝返りを打って過ごし、朝は頭がはっきりしないといったことがないだろうか。それとも、睡眠時間は十分に確保できているだろうか。米ペンシルベニア州立大学、睡眠・ストレス・健康(STEALTH)研究室のSoomi Lee氏らが、米国の全国調査参加者約3,700人を対象に、およそ10年の間隔を空けた二つの時点のデータを分析したところ、睡眠習慣は四つの異なるパターンに分類できることが明らかになった。この研究結果は、「Psychosomatic Medicine」に2月16日掲載された。 Lee氏は、「睡眠は、毎日繰り返し行う行動である。より良い睡眠習慣は、社会的な関係や仕事のパフォーマンスの向上から、長期的な健康行動や健康的な老化の促進まで、多くの重要な違いを生み出すことにつながる」と話す。 この研究では、Midlife in the United States研究のデータを用いて、研究参加者3,683人から、2004〜2006(T1)年と2013〜2017年(T2)の2回に分けて収集された睡眠習慣と慢性的な健康上の問題に関するデータの分析が行われた。データには、参加者の自己報告による睡眠の規則性や睡眠時間などの睡眠習慣、睡眠に対する満足度、覚醒度、慢性疾患の数や種類などに関する情報が含まれていた。 分析により、睡眠習慣によって対象者を以下の四つの異なるパターンに分類できることが明らかになった。・良い睡眠習慣保持者:二つの時点のいずれでも最適な睡眠習慣を維持している。・週末に睡眠を取り戻す人:睡眠が不規則で、平均睡眠時間は短いが週末や仕事のない日の睡眠時間は長い。・不眠症の人:睡眠時間が短く、日中はひどい疲労感に襲われ、入眠までに時間がかかるなどの不眠症の症状を抱えている。・昼寝の習慣がある人:夜間の睡眠は概ね良好であるが、昼寝をすることが多い。 対象者の半数以上は、不眠症であるか昼寝の習慣を持っていた。また、77%の参加者はT1とT2の間に同じ睡眠習慣を維持しており、特に不眠症か昼寝の習慣を持っている人は、時間の経過とともに睡眠習慣が変わる可能性が最も低かった。さらに、T1とT2の両時点で不眠症だった人では、両時点ともに良い睡眠習慣を維持していた人に比べて、心血管疾患、糖尿病、うつ病、フレイルのリスクが72〜188%高かった。この他、年齢は睡眠に関連しないようであった一方で、高齢者や定年退職者の中には昼寝の習慣を持っている人が多く、さらに、教育歴の低い人や失業者には不眠症の人が多いことも示された。 研究グループは、「この研究は、主に健康な成人を対象としているため、全人口を代表するサンプルではなかった可能性がある。それでも、ほとんどの対象者は最善の睡眠習慣を持っておらず、過半数が不眠症であるか日中に睡魔に襲われて昼寝をする人であった」と話す。 Lee氏は、「われわれが得た結果は、睡眠習慣を変えることは非常に難しいことを示唆している可能性がある。また、睡眠の重要性や睡眠の健康行動に関する理解が広まっていないことを表している可能性もある」と述べている。その上で同氏は、良質な睡眠の健康に関する教育の大切さを強調し、「寝る前にベッドの中で携帯電話を使わない、定期的に運動をする、午後遅くにカフェインを摂取しないなど、睡眠を改善するためにできる睡眠衛生行動がある」と説明している。 研究グループは、「良質な睡眠を促すための介入が大いに必要とされている。介入により睡眠の問題点を明らかにすることで、慢性疾患のリスクや経済的脆弱性などの要因に基づいて介入策のターゲットを絞ることができる可能性がある」と結論付けている。

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エンパグリフロジン、急性心筋梗塞後には?/NEJM

 心不全リスクが高い急性心筋梗塞後の患者に対し、エンパグリフロジンによる治療はプラセボ治療との比較において、入院を要する初回心不全または全死因死亡リスクの有意な低下にはつながらなかった。米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らが、無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究でエンパグリフロジンは、心不全を有する患者、心血管リスクの高い2型糖尿病患者、慢性腎臓病(CKD)患者において心血管アウトカムを改善することが示されていたが、急性心筋梗塞後の患者における安全性および有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年4月6日号掲載の報告。心不全による入院または全死因死亡の複合イベントを対プラセボで評価 本試験はevent-driven二重盲検法にて実施された。急性心筋梗塞を呈し入院中で心不全リスクの高い患者を、入院後14日以内に標準治療に加えてエンパグリフロジン10mg/日またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。なお、両群とも治験責任医師の判断により、非盲検下でエンパグリフロジンまたはほかのSGLT-2阻害薬への切り替えを可とした。 主要エンドポイントは心不全による入院または全死因死亡の複合で、time-to-first-event解析にて評価した。 2020年12月~2023年3月に、22ヵ国451施設で6,610例がスクリーニングを受け、6,522例(エンパグリフロジン群3,260例、プラセボ群3,262例)が無作為化された。 入院から無作為化までの期間中央値は5日(四分位範囲:3~8)。ベースラインにおける両群の患者特性は類似しており、65歳以上(患者の50.0%)、2型糖尿病(31.9%)、三枝冠動脈疾患(31.0%)の患者が多くみられた。約75%が無作為化時にST上昇型心筋梗塞(STEMI)を呈し、89.3%の患者に血行再建術が実施された。 エンパグリフロジン群で684例(21.2%)、プラセボ群で716例(22.2%)が死亡以外の理由で試験薬が中断された。試験期間中に436例(6.7%)が非盲検でSGLT2阻害薬の投与を開始した(エンパグリフロジン群201例[6.2%]、プラセボ群235例[7.2%])。 主要エンドポイントの発生について、6,328例(97.0%)を試験の最後まで追跡し、6,467例(99.2%)のバイタルデータを試験終了時に入手した。追跡期間中央値17.9ヵ月、ハザード比は0.90 追跡期間中央値17.9ヵ月において、心不全による初回入院または全死因死亡は、エンパグリフロジン群267例(8.2%)、プラセボ群298例(9.1%)で報告された。100患者年当たりのイベント数は、それぞれ5.9件と6.6件であった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.76~1.06、p=0.21)。 主要エンドポイントの項目別にみると、心不全による初回入院は、エンパグリフロジン群118例(3.6%)、プラセボ群153例(4.7%)(HR:0.77、95%CI:0.60~0.98)、全死因死亡は、それぞれ169例(5.2%)、178例(5.5%)(0.96、0.78~1.19)であった。 有害事象は両群間で同程度に認められ、エンパグリフロジンの安全性プロファイルは既知のものと同様であった。

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時間制限食で心血管死リスク上昇?

 1日の中で食事を摂取する時間枠を短時間に制限する「時間制限食」によって、死亡リスクが上昇する可能性を示唆するデータが報告された。食事摂取時間枠を8時間未満に限定している人は、心血管死リスクがほぼ2倍に上るという。上海交通大学大学院(中国)のVictor Wenze Zhong氏らが、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI-Lifestyle 2024、3月18~21日、シカゴ)で発表した。 時間制限食は、1日の中で4~12時間程度に制限した時間枠内であれば、カロリーを気にせず食事を取ってよいとする食事スタイル。その手軽さから人気が高まっており、また短期的には心血管代謝マーカーを改善するという報告もある。ただし、死亡というハードエンドポイントで評価した長期的な研究はなされていない。Zhong氏らは、2003~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用してこの点を検討した。 24時間思い出し法による食事調査を2回受けて、2回とも標準的な食事摂取量だった20歳以上の成人2万78人(加重平均年齢48.5±0.3歳、男性50.0%)を中央値8.0年(四分位範囲4.2~11.8)追跡したところ、心血管死840人、がん死643人を含む全死亡2,797人が記録されていた。1日の中で食事摂取の時間枠が12~16時間である群(全体の58.9%)に比べて、8時間未満の群(同2.1%)は心血管死リスクが約9割高かった〔ハザード比(HR)1.91(95%信頼区間1.20~3.03)〕。全死亡リスクやがん死リスクは有意差がなかった。 ベースライン時点で心血管疾患の既往のあるサブグループ(8.2%)で比較した場合、食事摂取時間枠が8時間未満の群は12~16時間の群に比べて、心血管死リスクが2倍を超え〔HR2.07(同1.14~3.78)〕、また時間枠が8~10時間の群も6割以上ハイリスクだった〔HR1.66(1.03~2.67)〕。 研究者らは、「この結果には驚かされた。これまで時間制限食は、血圧や血糖値、コレステロール値などの、心臓の健康状態に関連する指標を改善する可能性が示されていたが、それらの研究とは正反対の結果である」と語っている。またZhong氏は、「食事時間枠を設けることと心血管死のリスク増加との関連性を認識することが極めて重要だ」とし、「われわれの研究結果は、人々に対する食事スタイルの推奨に際しては、より慎重かつ個人の健康状態や最新の科学的エビデンスに一致する、個別化されたアプローチを採用すべきであることを強調している」と付け加えている。 今回の研究では、食事摂取時間枠が12~16時間よりも短い場合、全死亡、心血管死、がん死のいずれについても、死亡リスクの低下は認められなかった。ただしZhong氏は、「この研究は、時間制限食と死亡リスクとの因果関係を証明可能なデザインでは行われていない。時間制限食が健康へ悪影響を及ぼす可能性と、その理由のより深い理解のため、さらなる研究が必要だ」と述べている。 本研究には関与していない米スタンフォード大学のChristopher Gardner氏は、「時間制限食を行っている人々の特徴についての解析が必要ではないか。例えば、体重、遺伝的素因、ストレスなどが、時間制限食を行っている人はそうでない人と異なる可能性がある」と指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)

 慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧は腎不全に至る3大疾患であるが、これらを合併した症例に1年間の電子記録+診療推進者介入が入院を減少させるかを、非盲検クラスター無作為化試験で検討した成績がNEJM誌に報告された。その結果は4月17日公開のジャーナル四天王に詳述されているが、主要アウトカムと副次アウトカムのいずれも通常ケア群に対して有意な効果を示さなかった。 結果は1年という比較的短期間の検討であることが影響した可能性は否定できない。加えて腎機能障害の程度もeGFRで49mL/min程度、HbA1cで7.5%前後、血圧は133/73mmHg前後といずれも比較的コントロールされており、また使用薬剤もRA系阻害薬が68%ほどの症例に使用されており、通常ケア群においても良好な治療がなされていることで差がつきにくかった要素もあると思われる。関与した診療推進者は看護師あるいは薬剤師であった点も介入の限界をうかがわせる。腎機能障害に対する運動療法の効果や栄養摂取バランスの効果も注目されるようになった昨今、介入者がリハビリ職や栄養士であればどうであったか。フレイルやサルコペニア、栄養バランスに介入する試みであれば、違った結果を見られたかもしれない。BMIは33と肥満者が多いが、サルコペニア肥満も機序は異なるが心血管疾患の有意なリスクである。 話は異なるが、腎不全に至る3大疾患としてこの対象を抽出しており、急性腎障害はいずれも10%以上と多いが、アウトカムとしての透析導入は0.6~0.7%と低値にとどまっていた。一方、心血管疾患は20%前後と比較的多く、これら3大疾患は心血管系の重要なリスクであることが改めて確認された。なお、退院後30日以内の再入院が37%と著明な高値であるが、米国とわが国の入院医療の基本的立ち位置の違いが顕著に現れたといえるであろう。

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第207回 消費者がいまだに不安抱える紅麴、医療者による適切な説明は?

小林製薬の紅麹サプリ問題はサプリそのものの服用者だけでなく、紅麹原料を染料に使う食品にまで不安が及んでいるのは周知のことだ。一部の食品会社では消費者からの問い合わせが殺到しているとも聞く。厚生労働省(以下、厚労省)は4月5日付1)で、小林製薬が紅麹原料を直接卸している52社、この当該企業52社などから小林製薬の紅麹原料を入手している173社の計225社について、健康被害の報告はないことを明らかにしている。しかし、やはり消費者の不安は尽きないようで、なぜか私個人にまで知人・友人から問い合わせがくる状況だ。先日はある医療従事者からまで「どう思う?」という連絡をもらった。実はこれらに対して私個人は「現時点ではこれ以上の健康被害が出る可能性は低いのではないか?」と回答している。なぜそう考えるかは過去2回、本連載(第205回、第206回)で触れた3月29日の小林製薬の記者会見で明らかにされた事実関係が「正しい」という前提に立って説明している。ある意味、性善説ではあるが、今はこれしか判断材料がないのが現実である。そこで記者会見で明らかにされた事実関係と、それをベースに私が“可能性が低い”と考える理由について、今回は述べておこうと思う。まず、問題になった紅麹原料について小林製薬が説明した製造過程は、米に水を加えて加熱をし、そこに紅麹菌を加えて培養する。培養終了時点で米、水、紅麹菌の混合物を再加熱し、それを粉砕してから一旦保管。この保管物は培養状態によって有効成分の含有量にバラツキがあるため、保管されたものを複数混合して濃度の均一化を図り、再度、加熱・殺菌し最終段階の紅麹原料が完成する。使う紅麹菌に関しては、親株と言われる菌株からその都度取り分けて培養しているという。この紅麹原料は、▽今回問題になった紅麹コレステヘルプなどに加工・販売(B to C:Business to Consumer)▽食品会社などへの出荷(B to B:Business to Business)、の2つの流通ルートに乗る。小林製薬によると、問題となっている2023年の製造分に関しては、紅麹菌の親株から2度取り分けて別々に培養してから紅麹原料の製造に使用。このうち一方をA株、もう一方をB株と仮定すると、A株からはB to Cが13ロット、B to Bが21ロットの合計34ロット、B株からはB to Bのみ54ロットの紅麹原料がそれぞれ製造され、全ロットのサンプルが残っており、小林製薬側では全サンプルの検査を終了した。この結果、A株のB to Cで4ロット、B to Bで6ロットからプベルル酸と思しき異常な物質が検出されたものの、B株では全サンプルから異常な物質は確認されなかったとしている。これらから、A株で製造された紅麹原料で問題が発生したことは一目瞭然といえる。つまり食品会社などへの販売用だったものはA株由来、B株由来が合計75ロットで、そのうちプベルル酸と思しきものが含まれていたのは6ロットと全体の12分の1未満に過ぎない。さてここで「6ロットもあるのだから健康被害が出る可能性は現時点では低いとは言えないのでは?」という意見もあるだろう。これについては(1)製品の性格上、サプリメントは原料を濃縮するため、有害物質が含まれていた場合はそれらも濃縮される恐れがある/食品用はごく一部を添加するため、含まれる紅麹原料は相対的にサプリメントよりも微量、(2)サプリメントの場合は健康状態の改善を期待して毎日摂取される可能性が高い/一般食品の場合は毎日食べ続ける食品はごく一部、で説明できる。現在、小林製薬から紅麹原料を購入して製品に使っていた食品会社などは、製品の自主回収を進めている。これは厚労省が平成16年に創設した「食品等の自主回収報告制度」に基づくもので、これら企業とその製品は厚労省のHPに一覧が掲載されている。これを見るとわかる通り、主な用途は食品の着色料としてで、毎日必ず摂取する可能性のある食品は少ない。ただし、よく見ると、味噌など食事に毎日使う可能性があるものも含まれている。これについての答えはまさに(1)となる。また、前述の一覧を見るとわかるが、そこには、健康への危険性の程度を示す「CLASS分類」が付記されている。それを見ると、ここに記載された一般食品について、行政側はすべてが「CLASSII(喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合)」あるいは「CLASSIII(喫食により健康被害の可能性が、ほとんど無い場合)」と評価している。これはまさに(1)が理由と考えられる。もちろんこの解釈の仕方には異議もあるかもしれない。だが、順当に考えるならばこうなるのではないだろうか。今回の一件、ともすると紅麹全体が悪のように考えられてしまいがちだが、小林製薬以外で製造されている紅麹では今のところ何も問題は指摘されていない。少なくとも私はこれらの点から「紅麹」という言葉を一括りにして過度に警戒しすぎるのは考えものと思っている。参考1)厚生労働省:小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(令和6年4月5日)

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親を見れば自分の肥満リスクが分かる

 中年期に太ることを心配している人は、両親がその頃にどうだったかを確認してみてほしい。新たな研究で、両親が中年期に肥満だった場合、その子どもも中年期に肥満になる可能性は、両親が正常体重だった場合に比べて6倍高く、また両親のどちらかが中年期に肥満だった場合でも、子どもが中年期に肥満になる可能性は3倍以上高いことが示された。ノルウェー北極大学地域医療学のMari Mikkelsen氏らによるこの研究結果は、欧州肥満学会(ECO 2024、5月12~15日、イタリア・ベネチア)で発表される。 Mikkelsen氏は、「この研究結果は、小児期の肥満と親の体重との間に確立された関連が、子どもが年齢を重ねても消失しないことを示したものだ」と言う。同氏は、「小児期、特に思春期の肥満は早期成人期まで続く傾向があるため、われわれは、中年期になっても肥満の状態が続くのではないかと推測していた」と学会のニュースリリースの中で説明し、「今回の研究により、その推測が正しかったことが分かった。肥満の親を持つ子どもは、親元から独立して長い年月が経過し、中年期になったときに肥満である可能性が極めて高いことが明らかになったのだ」と付け加えた。 この研究でMikkelsen氏らは、ノルウェーの一般住民を対象とした進行中の健康調査プロジェクトであるトロムソ研究に参加した2,068組の親子の健康データを分析した。子どもは、トロムソ研究の第7次調査(2015~2016年)への参加者で、その時点での年齢は40~59歳だった。一方親は、40~59歳の頃に第4次調査(1994~1995年)に参加していた。肥満の基準はBMI 30以上とした。 その結果、親のBMIが子どものBMIに直接影響することが明らかになった。母親と父親のBMIが1標準偏差上昇するごとに子どものBMIはそれぞれ、0.8単位と0.74単位上昇した。また、両親が肥満ではなかった子どもと比べて、母親が中年期に肥満であった場合、子どもが中年期に肥満になるオッズ比は3.44(95%信頼区間2.31〜5.11)、父親が中年期に肥満であった場合、子どもが中年期に肥満になるオッズ比は3.74(同2.54〜5.50)、両親ともに肥満だった場合、子どもが中年期に肥満になるオッズ比は同6.01(同2.85〜12.66)になることも示された。 Mikkelsen氏は、遺伝的要因と環境要因が組み合わさることで、親の体重が子どものその後の体重に影響を及ぼしているのではないかとの見方を示している。同氏は、「遺伝子は、体重の増えやすさに影響するとともに、不健康な食生活など肥満を促す環境への対応の仕方にも影響するため、重要な役割を果たしている」と言う。 またMikkelsen氏は、「同じ屋根の下で一緒に暮らしていると、子どもは親と同じような食生活や運動習慣を身に付ける傾向があり、その結果としてBMIも似てくると推測する研究もある」と付け加えている。その上で、「今後の研究で体重に影響を与える明確な要因を特定し、そのリスクを軽減できるかどうかを調べる必要がある」と話している。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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週どのくらい身体を動かすと良い?[高齢者編]

週どのくらい身体を動かすことが推奨されている?[高齢者]⚫ 歩行またはそれと同等以上(3メッツ以上の強度)の身体活動を1日40分以上(=1日約6,000歩以上)⚫ 有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上⚫ 週2~3日の筋力トレーニング(上記の多要素な運動に含めてもよい)座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意+3メッツ以上の強度の身体活動の例[3]家財道具の片付け、大工仕事、梱包 [3.3]掃き掃除、掃除機がけ[3.5]楽に自転車に乗る、階段を下りる、 軽い荷物運び、モップがけ、風呂掃除、庭の草むしり、車椅子を押す [4]自転車に乗る(通勤など)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)[5.8]子供と遊ぶ(歩く/走る、活発に)多要素な運動の例サーキットトレーニングのような有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動などを組み合わせて実施する運動や、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガ筋力トレーニングの例腕立て伏せやスクワット、マシンやダンベルを使用して行うウエイトトレーニング上記を参考に可能なものから取り組み、今より少しでも多く身体を動かすようにしましょう!出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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新型のリブレ2はスキャン不要で1分ごとに測定/アボットジャパン

 アボットジャパンは、3月28日に糖尿病管理のための持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ2」の新発売に合わせて、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、本機の新しい機能や特徴の説明、血糖変動の可視化がいかに重要か糖尿病専門医の講演、トークセッションなどが行われた。世界で550万人超が利用しているリブレ FreeStyleリブレは、持続グルコース測定技術を用いたデバイスで、60ヵ国以上、550万人以上の人々に使用されている。 本機は上腕の後ろ側に専用センサーを装着し、スマートフォンあるいは専用リーダーをセンサーにかざすと、その画面に測定値が表示されるもの。また、衣服の上からも読み取ることができ、1つのセンサーで最長14日間24時間グルコースプロファイルを記録することができる。 FreeStyleリブレLinkアプリを使用することで、自身のスマートフォンで迅速にセンサーを読み取ることができるほか、糖尿病患者では自身のグルコースデータについてリブレViewを使用することで医師と共有することができる。 本機の保険適用区分は「C150血糖自己測定器加算」に加え、「特定保険医療材料158 関連技術料D231-2皮下連続式グルコース測定(一連)」が追加されたため、目的に応じて保険診療下で患者が使用できることもメリットとなる。 今回新たに追加された機能は、1分ごとに測定されたグルコース値がリアルタイムに表示され、従来のようにスキャンする必要がなくなった(ただしスマートフォンを使用していない人は従来通りスキャンが必要)。そして、スキャンが途切れた場合は過去8時間分のデータが補完される。また、選べるアラート機能として「低グルコース」「高グルコース」「受信圏外」と3つのアラートを使用者のライフスタイルに合わせて選択し、使用することができ、事前にリスク発生に気付くことができる機能が追加された。グルコースグラフで気付く無自覚性低血糖 基調講演として「『FreeStyleリブレ2』活用による先進的な糖尿病診療について」をテーマに西村 理明氏(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)が、グルコース値の変動が可視化されることで起こる診療上のメリットやリブレ2の新しい機能について講演を行った。 わが国には2,000万人の糖尿病患者およびその予備群が推定され、6人に1人が糖尿病に関係する。糖尿病の初期は、目にみえる身体症状が乏しく、じわじわと悪化していく疾患であり、とくに合併症の発症阻止に向け、診療ではHbA1cの目標数値が定められている。 糖尿病にはさまざまな合併症があるが、とくに「し(神経障害)・め(目の網膜症)・じ(腎疾患)」に代表される3つの合併症には注意が必要となる。 糖尿病の治療で目安となるHbA1cは、2~3ヵ月の血糖値の平均値であり、合併症予防のための血糖コントロール目標値として7.0未満(65歳以下)にすることが、糖尿病の診療ガイドに明記され、診療の場ではこの目標値に向けて治療が行われている。ただ、HbA1cは、過去数ヵ月の値の平均値であり、点のデータのため生命予後に重大な影響をもたす無自覚性低血糖などの発見には不向きであるとされている。 そこで、持続グルコース測定器リブレのようにリアルタイムに血糖変動が測定できる機器の活用で、線のデータで血糖変動を追うことで、低血糖などのリスクに対応することができる。リブレで血糖変動を測定すると、健康成人ではグルコースグラフがなめらかでアップダウンがないのに対し、糖尿病患者などではグルコースグラフのアップダウンが大きかったり、ギザギザのグラフになったりと可視化により、血糖変動の動きをみることができる。とくに持続測定で特徴的なことは、HbA1cが同じ値の人でもグルコースグラフを比べると、なめらか型とアップダウン型に分かれることがあり、後者では夜間の無自覚性低血糖に気が付き、対応することができるという。 そして、今回発売のリブレ2では、「スキャンが不要となることで使用者のアドヒアランスがよくなると予想されること、アラート機能で危険察知などができること、リブレViewで家族や主治医と血糖データをリアルタイムで共有することで、遠隔での見守りや医師がより細やかな診療ができることなどのメリットが追加され、かなり血糖変動のデータがよくなることが予想される」と語り、セミナーを終えた。 セミナー後半では、先の講師の西村氏とゲストに原 晋氏(青山学院大学 駅伝部 監督)を迎え、スペシャルトークセッションが行われた。 トークセッションでは、運動や食事が血糖値に与える影響やマラソンのラップタイムを血糖値になぞらえた話題などが話し合われた。最後に原氏が、血糖値を穏やかなグラフにすることを「血糖トレンド大作戦」と命名し、セッションを終えた。 同社は「FreeStyleリブレ2の登場により血糖状態をより詳細に示すことで、患者さんの不安解消の支援をしたい。今後も医療従事者と一緒に、糖尿病と共に生きる方のより豊かで健康的な生活に貢献していきたい」と抱負を語っている。

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早期パーキンソン病へのGLP-1受容体作動薬、進行抑制効果を確認/NEJM

 診断後3年未満のパーキンソン病患者を対象とした糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬リキシセナチド療法について、第II相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験で、プラセボと比較して12ヵ月時点での運動障害の進行を抑制したことが示された。ただし、消化器系の副作用を伴った。フランス・トゥールーズ大学病院のWassilios G. Meissner氏らLIXIPARK Study Groupによる検討結果で、NEJM誌2024年4月4日号で発表された。リキシセナチドは、パーキンソン病のマウスモデルで神経保護特性を示すことが報告されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「より長期かつ大規模な試験により、パーキンソン病患者に対するリキシセナチドの有効性および安全性を確認することが必要である」とまとめている。リキシセナチドを1日1回皮下投与、1年後のMDS-UPDRSパートIIIスコア変化を評価 試験は、パーキンソン病患者の運動障害進行に対するリキシセナチドの有効性を評価するため、パーキンソン病診断後3年未満で、対症薬の服用量が安定しており、運動合併症のない患者を無作為に2群に割り付け、一方にはリキシセナチドを1日1回皮下投与(当初14日間は10μg/日、その後は20μg/日)、もう一方にはプラセボを、それぞれ12ヵ月投与し、2ヵ月休薬した。 主要エンドポイントは、運動障害疾患学会・改訂版パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)のパートIIIスコア(範囲:0~132点、スコアが高いほど運動障害が大きい)のベースラインからの変化量で、12ヵ月時点で試験薬服薬中の患者を対象に評価した。 副次エンドポイントは、6ヵ月、12ヵ月、14ヵ月時点のMDS-UPDRSのその他のサブスコアや、レボドパ換算投与量などだった。スコア変化の群間差は3.08ポイントで有意な差 試験登録のスクリーニングは2018年2月~2020年3月に行われ、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、計156例(各群78例)が登録された時点で組み入れ中止となった。ベースラインの両群の人口統計学的および臨床的特性は類似しており、典型的な早期パーキンソン病の被験者像であった。平均年齢はリキシセナチド群59.5±8.1歳、プラセボ群59.9±8.4歳、男性被験者は同56%、62%、平均診断後期間は1.4±0.8年、1.4±0.7年で、MDS-UPDRSパートIIIスコアは両群とも約15点(14.8±7.3点、15.5±7.8点)だった。 12ヵ月時点で、MDS-UPDRSパートIIIスコアの変化量は、リキシセナチド群では-0.04ポイント(障害の改善を示す)、プラセボ群では3.04ポイント(障害の悪化を示す)だった(群間差:3.08、95%信頼区間[CI]:0.86~5.30、p=0.007)。 2ヵ月の休薬期間後14ヵ月時点で、非服薬状態でのMDS-UPDRSパートIIIスコアの平均値は、リキシセナチド群17.7点(95%CI:15.7~19.7)、プラセボ群20.6(18.5~22.8)だった。 副次エンドポイントに関するその他の結果は、両群で大きな差は認められなかった。 リキシセナチド群の46%で悪心が、13%で嘔吐が報告された。

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「魚と酒」は「肉中心」より高血圧になりやすい!?~日本人男性

 食事パターンと高血圧発症の関連を検討した日本人男性における前向きコホート研究で、「魚介類とアルコール」より「肉類中心」や「乳製品/野菜中心」のほうが高血圧リスクが低かったことを、東北大学/中国・Heze UniversityのLongfei Li氏らが報告した。本研究では食事パターンの特定に、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した「教師なし機械学習法」を用いている。European Journal of Nutrition誌オンライン版2024年2月25日号に掲載。 本研究は、2008年8月~2010年8月に仙台卸商研究に登録された仙台卸商センターに勤務する日本人男性のうち447人の最終データセットを解析に使用した。UMAP(一様多様体近似と投影)による次元の削減とK平均法によるクラスタリングを用いて、食事パターンを導出した。さらに、多変量ロジスティック回帰を用いて、食事パターンと高血圧発症率の関連を評価した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、自己申告による高血圧歴、高血圧治療薬の使用のいずれかに当てはまる場合とした。 主な結果は以下のとおり。・食事パターンは「低タンパク質・低食物繊維・高糖類」「乳製品/野菜中心」「肉類中心」「魚介類とアルコール」の4パターンが特定された。・年齢・BMI・喫煙・学歴・身体活動・脂質異常症・糖尿病などの潜在的交絡因子を調整後、基準とした「魚介類とアルコール」と比較して、「乳製品/野菜中心」(オッズ比[OR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.80、p=0.013)と「肉類中心」(OR:0.37、95%CI:0.16~0.86、p=0.022)で高血圧リスクが低かった。・年齢を一致させたグループ解析でも同様の結果だった。 著者らは「本研究の方法は、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した複雑な食事パターンに対する知見を提供できることから、従来の統計学的方法や主成分分析法(PCA)では見過ごされがちな隠れたパターンを明らかにするのに有用」としている。

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診療ファシリテーターの介入、CKDや高血圧患者の入院は減少せず/NEJM

 腎機能障害をもたらす3疾患(慢性腎臓病[CKD]、2型糖尿病、高血圧)を有する患者のケアに対し、電子健康記録(electronic health record:EHR)に基づくアルゴリズムと、医療従事者を支援する診療ファシリテーターを導入する介入は、通常ケアと比較して、1年の時点での入院の減少に至らないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMiguel A. Vazquez氏らが実施した「ICD-Pieces試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月4日号に掲載された。141のプライマリケア施設の実践的クラスター無作為化試験 ICD-Pieces試験は、米国の4つの大規模な保健システムに参加している141のプライマリケア施設で実施した実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2016年7月~2019年6月に患者を募集した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~85歳のCKD、2型糖尿病、高血圧を有する患者であった。試験参加施設を、介入群または通常ケア群に無作為に割り付けた。介入群には、患者を同定するためのEHRに基づく個別のアルゴリズムと、医療従事者がガイドラインに基づく介入を行えるよう支援する診療ファシリテーターを導入した。 主要アウトカムは、1年後のあらゆる入院であった。副次アウトカムは、救急診療部の受診、再入院、心血管イベント、透析、死亡などとした。副次アウトカムの発生率は同程度 介入群に71施設の5,508例(平均年齢68.1[SD 10.4]歳、男性53.7%)、通常ケア群に70施設の5,492例(68.9[10.3]歳、53.7%)を割り付けた。 1年時の入院率は、介入群が20.7%(95%信頼区間[CI]:19.7~21.8、1,139/5,508例)、通常ケア群は21.1%(20.1~22.2、1,160/5,492例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:0.4ポイント、p=0.58)。 また、救急診療部受診(介入群24.3% vs.通常ケア群22.6%)、初回入院治療後の30日以内の再入院(37.7% vs.37.3%)、心血管イベント(18.5% vs.19.4%)、透析(0.7% vs.0.6%)、全死因死亡(2.3% vs.2.7%)のリスクも両群で同程度であった。有害事象も両群で同程度 有害事象の発生率は両群で同程度だった。最も頻度が高い有害事象は急性腎障害(介入群12.7% vs.通常ケア群11.3%)で、これ以外はいずれもまれであった。 著者は、「医療システム全体にエビデンスに基づくガイドラインを適用してアウトカムを改善するには、臨床意思決定支援などの別の技術が必要となる可能性がある」とし、「このようなツールを、現場での実践(boots on the ground)を行うファシリテーターと組み合わせれば、臨床医と患者がガイドラインに基づく治療を順守できるような支援が可能となるだろう。今後、エビデンスに基づくガイドラインの実践状況を改善し、この患者集団におけるガイドラインの有効性を評価するための研究が必要である」としている。

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小児期の弱視が成人後の肥満、糖尿病リスクなどと関連

 子ども時代に弱視であった人は成人後の視力も良くないことが多いだけでなく、心血管代謝疾患のリスクが高いことを示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所のSiegfried Wagner氏らの研究によるもので、詳細は、「eClinicalMedicine」に3月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「視覚は健康全般の番人としての役割があり、視機能はほかの器官の働きと密接な関係がある」と話している。 視力は出生後に物を見ることで、網膜から脳へつながる神経が刺激されて成長する。視力が急速に成長する幼少期に何かしらの理由で網膜が刺激されない状態では、視力の成長が滞る。また、左右の見え方に少し差がある場合には、脳は良く見えない方の目の情報を無視するような処理をするため、見えにくかった方の目の視力はより育ちにくくなる。子どもに多い斜視も、このような理由で弱視につながりやすい。 Wagner氏らはこの研究のため、英国で現在も進行中の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者12万6,399人のデータを用いた。このうち3,221人が小児期に弱視の治療を受けており、その82.2%(2,647人)は成人後にもどちらか一方の目の視力が十分でない状態だった。データ解析の結果、以下のように、成人後にも視力の低下が持続している人とそうでない人の双方で、健康上の問題との関連が認められた。 まず、横断的な解析では、小児期に弱視で成人後にも視力が低い人は、小児期に弱視でなかった人に比べて、心血管代謝疾患を有している人が多いことが明らかになった。具体的には、肥満〔オッズ比(OR)1.16(95%信頼区間1.05~1.28)〕、高血圧〔OR1.25(同1.13~1.38)〕、糖尿病〔OR1.29(1.04~1.59)〕の有意なオッズ比上昇が観察された。小児期に弱視で成人後には視力の問題がない人では、これら三つの状態の有意なオッズ比上昇は認められなかった。 続いて、受療行動データを用いた縦断的な解析を施行。その結果、小児期に弱視で成人後にも視力が低い人は、小児期に弱視でなかった人に比べて、心筋梗塞〔ハザード比(HR)1.36(1.07~1.72)〕や全死亡〔HR1.45(1.21~1.72)〕のリスクが高いことが明らかになった。さらにこの解析では、小児期に弱視で成人後には視力の問題がない人でも、心筋梗塞のリスク上昇が認められた〔HR1.56(1.03~2.36)〕。 これらの結果の解釈上の注意点としてWagner氏は、「子どもの頃の弱視が成人後の健康問題を引き起こす直接的な原因だと決めつけることはできない」とし、正しい理解を求めている。その一方、視力検査について、「成人後の重篤な疾患のリスクマーカーが、子ども時代から異常値を示すということはあまりないが、視力はそのようなリスクマーカーとして使えるのではないか。さらに、全ての子どもの視力がごく一般的に測定されている」と、その特徴と可能性を指摘。「視力検査を経て弱視と診断された子どもやその保護者には、われわれの研究結果を、小児期から健康的なライフスタイルを保つための動機付けとしてもらいたい」と述べている。

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PREVENT計算式で心血管疾患リスクを推定可能に

 「心血管疾患(CVD)イベントのリスク予測(Predicting Risk of CVD EVENTs;PREVENT)」方程式は、心不全を含むCVDのリスクを正確に推定できることが、「Circulation」に11月10日掲載のmethods paperおよび付随する科学的声明により報告された。この結果は、米国心臓協会の年次学術集会(AHA 2023、11月11~13日、米フィラデルフィア)でも同時発表された。 CVDの絶対リスクを評価する多変量リスク予測方程式の使用は、複数の一次予防ガイドラインにおいて現在推奨されているが、課題も多く存在する。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya S. Khan氏らは、心血管・腎臓・代謝の3つの軸に関連する予測因子や、健康の社会的決定因子も考慮した新たな方程式が必要と考え、CVDの既往のない30~79歳の米国成人を対象としたPREVENT方程式を開発した。 主要アウトカムはCVD〔アテローム動脈硬化性CVD(ASCVD)および心不全(HF)〕で、予測因子は従来のリスク因子である喫煙、収縮期血圧、コレステロール、降圧薬・スタチン使用、糖尿病に加え、推算糸球体濾過量(eGFR)を用いた。モデルの導出は、コホート25件から得た個人レベルの対象者データ328万1,919人を対象とし、外部検証は、追加コホート21件の対象者333万85人を対象とした。モデルの開発では、年齢を尺度として使用し、非CVD死亡を競合リスクとして考慮した上で、男女別に予測因子とCVDとの関連を推定した。モデルの予測能はC統計量で評価し、較正は十分位数による観察リスクと予測リスクの傾きとして算出した。 対象者全体の平均年齢は53歳、女性56%で、平均4.8年間の追跡期間中に21万1,515件のCVD発症が確認された。外部検証の結果、PREVENTモデルはCVDリスク予測において、C統計量の中央値が女性で0.794、男性で0.757を達成した。較正曲線は女性で1.03、男性で0.94だった。ASCVDとHFを個別に予測するモデルにおいても、予測能と較正は同程度だった。選択可能な予測因子として、尿中アルブミン・クレアチニン比、HbA1c、社会的剥奪指数を追加したところ、モデルのCVD予測能はわずかながら有意に向上した(C統計量の差は女性で0.004、男性で0.005)。 Khan氏らは科学的声明の中で、PREVENT方程式の臨床的意義を説明している。この方程式を使用すれば、10年間および30年間におけるCVD(ASCVDとHF の複合)リスクを推定可能になることが重要という。方程式は男女別であり、予測因子としてeGFRを含み、人種を含んでいないことも特徴である。 Khan氏らは「PREVENT方程式は、CVDのリスク予測に心血管・腎臓・代謝に関わる健康因子と社会的因子を含めるための重要な第一歩である」と結論付けている。 なお、複数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]

週どのくらい身体を動かすことが推奨されている?[成人]⚫ 歩行またはそれと同等以上(3メッツ以上の強度)の身体活動を1日60分以上(=1日約8,000歩以上)⚫ 息が弾み汗をかく程度以上(3メッツ以上の強度)の運動を週60分以上⚫ 週2~3日の筋力トレーニング(週60分以上の運動に含めてもよい)+座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意3メッツ以上の強度の身体活動の例[3]家財道具の片付け、大工仕事、梱包 [3.3]掃き掃除、掃除機がけ[3.5]楽に自転車に乗る、階段を下りる、 軽い荷物運び、モップがけ、風呂掃除、庭の草むしり、車椅子を押す [4]自転車に乗る(通勤など)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)[5.8]子供と遊ぶ(歩く/走る、活発に)3メッツ以上の強度の運動の例[3]ボウリング、社交ダンス、ピラティス [3.5]自転車エルゴメーター、ゴルフ[3.8]腕立て伏せ、腹筋運動 [4]卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1[4.5]テニス、水中歩行 [5.0]野球、サーフィン、スクワット[5.3]ゆっくりとした平泳ぎ 、スキー [6.0]ゆっくりとしたジョギング筋力トレーニングの例腕立て伏せやスクワット、マシンやダンベルを使用して行うウェイトトレーニング出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第210回 リンパ節にミニ肝臓を作る治療の臨床試験開始/抗菌薬で心不全治療?

リンパ節にミニ肝臓を作る治療の臨床試験開始末期肝疾患(ESLD)患者の肝臓機能を担うことを目指してリンパ節を肝臓化する治療が第IIa相試験(Ph2a試験)で初めてヒトに施されました1,2)。初めて投与されたのはLyGenesis社のLYG-LIV-001という名称の開発品です。LYG-LIV-001は寄付された肝臓から段階を追って念入りに単離された肝細胞です。1つの肝臓から多ければ75例に移植できる量を製造できます3)。Ph2a試験はESLD患者12例を募っています。今回、その最初の患者の肝臓近くのリンパ節に超音波と内視鏡を使って肝細胞5千万個を含むLYG-LIV-001が投与されました。肝臓近くのリンパ節に投与するのは肝臓の助けを借りるためです。肝臓は再生能を有する唯一の臓器であり、たとえ損傷しても再生のための増殖因子やその他の分子を放ちます。肝臓の近くでLYG-LIV-001はそれらの信号を受け取って肝臓構造を形成します。そうしてLYG-LIV-001はリンパ節に根付き、増殖して肝臓の役割を担うことを目指します。LYG-LIV-001投与患者は1年間観察され、安全性や治療の許容のほどの検討に加えて、ESLDの症状や状態への効果も調べられます。LyGenesis社の臓器再生技術は肝臓にとどまらず、胸腺、腎臓、膵臓などの他の臓器の再生にも応用できそうです。実際、老齢胸腺、末期腎不全(ESRD)、1型糖尿病(T1D)の臓器再生細胞治療の前臨床開発に同社は取り組んでいます。LYG-LIV-001を含むLyGenesis社の開発品は遺伝的加工を含まないのでより短期間でより安く作ることができます。また、遺伝的加工につきものの害の心配もありません。米国で1万例弱が肝臓移植の待機者リストに名を連ねています。多くは移植までに数ヵ月から長ければ数年待たねばなりません。また、移植に至る前に死んでしまう患者も多く、待機者リストの患者の12%ほどが毎年亡くなっています。LYG-LIV-001が有効なことが裏付けられれば肝疾患治療が一新するかもしれません。LyGenesis社の技術の実用化によってわずか数年のうちに肝臓移植の待機者リストが不要になりうると同社の舵を取る最高経営責任者(CEO)Michael Hufford氏は言っています2)。抗菌薬で心不全治療?薬による臓器再生の研究でも進展があり、承認済みの意外な薬2つの心臓再生作用が、大型動物ブタを含む実験で示されました。Meis1とHoxb13と呼ばれる協調する2つの転写因子を省くことで成体の心筋細胞の細胞周期停止が解除され、心筋梗塞マウスの左心室機能が向上することが、米国のテキサス大学南西医療センター(UTSW)のHesham Sadek氏らの先立つ研究で示されています4)。よってMeis1やHoxb13の転写活性阻害による心筋細胞の増加は心臓再生手段として有望です。Sadek氏らのさらなる研究5,6)で見付かったのが、Meis1とHoxb13の転写活性を阻害してどうやら心臓再生を促す米国FDA承認薬2つです。2つともアミノグリコシド系抗菌薬で、1つはパロモマイシン、もう1つはネオマイシンです。Hoxb13はMeis1を介添えし、Meis1を細胞の核内へと運ぶ役割を担います7)。パロモマイシンとネオマイシンはどちらもMeis1に結合します。結合領域はHoxb13と相互作用する部位の近くです。成体のマウスやブタの心筋梗塞(心虚血/再潅流障害)後にそれら2つとも投与したところ心筋細胞が増え、左心室機能が改善し、瘢痕を減らすことができました。Sadek氏らの今回の成果は臨床試験での検討をより現実的なものにしており6)、心筋梗塞後に高頻度で生じる心不全をパロモマイシンとネオマイシンで治療できる日がもしかしたら来るかもしれません8)。参考1)LyGenesis Announces First Patient Dosed in its Phase 2a Clinical Trial of a First-in-Class Regenerative Cell Therapy for Patients with End-Stage Liver Disease / PRNewswire 2)Therapy that turns lymph nodes into livers gets first human trial / (NewScientist)3)This Bag of Cells Could Grow New Livers Inside of People / WIRED4)Nguyen NUN, et al. Nature. 2020;582:271-276.5)Ahmed MS, et al. Nature Cardiovascular Research. 2024;3:372-388.6)Heart Regeneration Induced by FDA-Approved Antibiotics / Genetic Engineering & Biotechnology News7)Helping the heart heal itself / Eurekalert8)Common antibiotics can regenerate heart cells in animals / NewScientist

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糖尿病になりやすい食習慣は?~日本人13万人10年間の調査

 朝食を抜く、早食いをする、間食をするといった食習慣が2型糖尿病の発症と関連することが欧米の研究で示されている。本邦においても食習慣と糖尿病発症の関係が検討されており、朝食を抜く、早食いをするといった食習慣が2型糖尿病の発症と関連するという報告がある1,2)。ただし、これらの研究にはサンプルサイズが小さい、もしくは追跡期間が短いといった限界が存在していた。そこで、京都府立医科大学の豊國 恵麻氏らの研究グループは、日本人約13万例を対象に、追跡期間10年間のコホート研究を実施した。その結果、とくにBMI 25kg/m2未満の集団では、早食いをする、就寝前2時間以内に夕食を食べるといった食習慣が2型糖尿病のリスクとなることが示された。本研究結果は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2024年4月2日号で報告された。 研究グループは、2008~18年に健診を受けた糖尿病罹患歴のない12万8,594例を対象としたコホート研究(パナソニックコホート研究)を実施した。対象者を最長10年間追跡し、食習慣(朝食を抜くことが週に3回以上ある、食べる速度が速い/普通/遅い、夕食後の間食が週に3回以上ある、就寝前2時間以内に夕食を食べることが週に3回以上ある)と2型糖尿病の発症の関係を検討した。また、BMI別(25kg/m2未満/超)に同様の検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中(平均追跡期間:6.4年)に6,729例(5.9%)が2型糖尿病を発症した。・朝食を抜く、早食いをする、夕食後に間食をする、就寝前2時間以内に夕食を食べるといった食習慣は2型糖尿病の発症リスクを有意に上昇させた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -朝食を抜く:1.33、1.24~1.43 -早食いをする(対照:ゆっくり食べる):1.96、1.73~2.21 -普通の速さで食べる(同上):1.39、1.23~1.57 -夕食後に間食をする:1.07、1.003~1.14 -就寝前2時間以内に夕食を食べる:1.08、1.03~1.14・BMI 25kg/m2未満の集団では、早食いをする(HR:1.61、95%CI:1.37~1.90)、就寝前に夕食を食べる(同:1.09、1.02~1.17)といった食習慣が2型糖尿病の発症リスクを有意に上昇させた。・BMI 25kg/m2以上の集団では、早食いをする(HR:1.08、95%CI:0.89~1.30)、就寝前2時間以内に夕食を食べる(同:0.94、0.88~1.01)といった食習慣は2型糖尿病の発症との関連が認められなかった(それぞれp for interaction=0.0007、0.007)。

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メトホルミンのがんリスク低減、がん種別では?~166研究のメタ解析

 メトホルミンは、糖尿病管理のほかにがんリスクを低下させる可能性が報告されている。今回、米国・国立がん研究所(NCI)のLauren O'Connor氏らが、メトホルミン使用とがんリスクの関連を包括的系統的レビューとメタ解析により検討した。その結果、消化器がん、泌尿器がん、血液腫瘍のリスク低下との関連が示唆された。しかしながら、有意な出版バイアスがみられたことから信頼性には限界があるという。Journal of the National Cancer Institute誌2024年4月号に掲載。 本研究では、PubMed/MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Science、Scopusにおける開始から2023年3月7日までの研究の中から、メトホルミンが「使用歴あり」または「使用あり」に分類され、がんの診断をアウトカムとした研究を同定した。論文の質はNational Heart, Lung, and Blood Instituteのガイドラインを用いて評価し、出版バイアスはEgger検定、Begg検定、ファンネルプロットを用いて評価した。統合相対リスク(RR)推定値はランダム効果モデルを用いて算出し、感度分析は1つ抜き交差検証により行った。 主な結果は以下のとおり。・がん罹患情報を有する166研究をメタ解析に含めた。・症例対照研究(RR:0.55、95%信頼区間[CI]:0.30~0.80)および前向きコホート研究(RR:0.65、95%CI:0.37~0.93)において、メトホルミン使用によるがん全体のリスク低下が観察された。・がん種別のリスクについては、消化器がん(RR:0.79、95%CI:0.73~0.85)、泌尿器がん(RR:0.88、95%CI:0.78~0.99)、血液腫瘍(RR:0.87、95%CI:0.75~0.99)のリスク低下と関連していた。・統計学的に有意な出版バイアスがみられた(Egger p<0.001)。 本結果から、著者らは「メトホルミンは多くのがん種のリスク低下と関連している可能性があるが、異質性が高く、出版バイアスの恐れもあるため、これらの結果の信頼性には限界がある」とし、「がん予防におけるメトホルミンの有用性をよりよく理解するためには、非糖尿病集団での追加研究が必要である」とした。

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