サイト内検索|page:55

検索結果 合計:2862件 表示位置:1081 - 1100

1081.

認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。 施設に入所している認知症患者80例を対象に、光曝露と休息および活動サイクルとの関係を評価するためアクティビティトラッカー活動量計を8週間使用した。毎年のインフルエンザワクチン接種前と接種4週間後に採血した血液サンプルを用いて、患者の免疫反応を分析した。3つのインフルエンザウイルス株(H3N2、H1N1、IB)に対する抗体濃度は、赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition)アッセイで定量化した。 主な結果は以下のとおり。・個々の光曝露プロファイル(日光を浴びるを含む)を定量化し、照度392.6ルクスを中央値として低光曝露群と高光曝露群に分類した。・両群間で、認知機能障害の重症度、年齢、性別に違いは認められなかった。・高光曝露群は、低光曝露群と比較し、ワクチン接種前の濃度が同等であったにもかかわらず、H3N2ワクチンに対する抗体価が有意に増加し、概日活動の振幅が有意に大きかった(日中の活動量が多く、夜間の活動量が少ない)。・全対象者の75%以上で、3つのインフルエンザウイルス株に対する十分な血清保護応答が確認された。

1082.

老後の一人暮らしと認知症リスク

 米国・イリノイ大学シカゴ校のBenjamin A. Shaw氏らは、老後の一人暮らしと認知症発症との関連性を調査した。これまでの多くの研究では、単一の時点で得られた一人暮らしに関するデータを利用して検証されていたが、著者らは、高齢者の一人暮らしの状況を長期的に測定し、一人暮らしの期間が長いほど認知症発症リスクが高いかどうかを評価した。その結果、老後の一人暮らしは認知症の重大なリスク因子であるが、この影響はすぐに現れるわけではなく、時間とともに上昇する可能性があることが示唆された。The Journals of Gerontology誌オンライン版2022年9月30日号の報告。 分析データは、フォローアップ期間2000~18年の健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study:HRS)より収集した。高齢者1万8,171人のフォローアップデータより得られた7万8,490人時期のデータは、マルチレベルロジスティックモデルを用いて分析した。一人暮らしの定義は、回答時の世帯人数が1である場合とした。累積一人暮らし期間は、世帯人数1がカウントされている期間で算出した。 主な結果は以下のとおり。・男性では、認知症リスクと一人暮らしとの関連は認められず、女性では、逆相関が認められた。・対照的に、累積一人暮らし期間が1期間増加するごとに、男女とも約10%の認知症リスク上昇(男性OR:1.111、女性OR:1.088)が確認された(婚姻状況、年齢、社会活動、社会的支援などいくつかの共変量で調整)。

1084.

レビー小体病の睡眠障害~システマティックレビュー

 レビー小体病(LBD)は、レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病型認知症(PDD)の両方を含む疾患である。LBDでは、睡眠の質の低下、日中の過度な眠気(EDS)、急速眼球運動行動障害(RBD)などの睡眠障害が高頻度で認められるにもかかわらず、他の認知症との比較研究は十分に行われていない。英国・ノーザンブリア大学のGreg J. Elder氏らは、LBDの睡眠障害の特性を調査し、睡眠障害に対する治療研究の効果、将来の研究に必要な具体性および方向性を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、LBD患者は、高頻度に睡眠障害を合併しており、主観的な睡眠の質の低下、EDS、RBDなどが他の認知症患者よりも多く、より重度であることを報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2022年10月号の報告。 2022年6月10日までに英語で公表された研究をPubMed、PSYCArticlesデータベースより検索した。本研究は、PRISMAガイドラインに従って実施された。 主な結果は以下のとおり。・全文レビュー後、70件の研究が含まれた。・主観的な睡眠に焦点を当てた研究が20件、RBD関連が14件、EDS関連が8件、客観的な睡眠に焦点を当てた研究が7件、概日リズム障害関連が1件であった。・治療に関連する18件の研究の大部分は、薬理学的介入であった(12件)。また、非盲検試験は8件あり、研究の質は低~中程度であった。・多くの研究(55件)は、DLB患者のみで構成されていた。・研究の不均一性が大きく、メタ解析には至らなかった。・LBD患者の90%は、1つ以上の睡眠障害を有している可能性が示唆された。・LBD患者は、他の認知症患者と比較し、主観的な睡眠の質の低下、EDS、RBDの頻度が高く、より重度であることが示唆された。

1085.

第17回 COVID-19による出血性ショック脳症症候群で女児が死亡、いまだ低い小児ワクチン接種率

出血性ショック脳症症候群で亡くなった女児10月14~15日に鹿児島県で開催された日本神経感染症学会で、自治医科大学附属病院小児科の若江 惠三氏が発表した症例報告が衝撃的でした。吐血を繰り返しながら脳症で亡くなった8歳の女児のCOVID-19の報告です。子供に多い予後不良の脳症として、出血性ショック脳症症候群(Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome)が挙げられます。COVID-19に特異的な病態ではありませんが、ウイルス感染症などによって免疫応答が過剰になり、サイトカインストーム、播種性血管内凝固(DIC)、ショック、意識障害など、あっという間に多臓器不全に至る致死的な病態です。とはいえ、急性脳症の中でも極めてまれなタイプで、国内で発症する事例は、年間10例あるかないかのようです。出血性ショック脳症症候群はライ症候群との鑑別が重要になりますが、どちらかといえばライ症候群の好発年齢よりも若く、乳幼児に多いとされています。早期に、血性下痢、吐血、DICなどを生じる点が、ライ症候群と異なります。予後は極めて不良で、生存しても重度の神経学的後遺症を残すとされています1)。成人でもこのような事例はちらほら報告されており2)、脳症とウイルス感染症は、まれながら切っても切れない関係にあるようです。日本神経感染症学会の報告について報道したニュース番組では、親御さんのコメントを発表しています。「ワクチンを接種させなかったことを悔やんでいます。子供のワクチン接種を呼びかけてほしい」と悲痛な思いが紹介されていました。世界的に低い小児のワクチン接種率新型コロナワクチンは努力義務に位置付けられながらも、小児では接種率は低いまま推移しています。10月24日公表時点で、12~19歳の2回接種率は74.9%ですが、5~11歳の2回接種率はわずか19.1%です3)。8割の子供が打っていないということを意味しています。地域差もかなり大きく、私の住んでいる大阪に至っては接種率1桁%です4)(うちの子供は接種しましたが…)。海外においても小児のワクチン接種率は低く、アメリカでは多くの州が接種率30%未満です。小児の新型コロナワクチンについては、「軽症が多いのに、そもそも接種させる必要があるのか」という意見がマジョリティのようです。各種学会5)が提言しているように、「メリット(発症予防や重症化予防など)がデメリット(副反応など)を更に大きく上回る」というのがその理由なのですが、これがうまく国民に啓発できていない現状があります。■初回(1回目・2回目)接種に関するエビデンス6)発症予防効果は中等度の有効性、入院予防効果は接種後2ヵ月間で約80%の有効性が報告されている。米国の大規模データベースによる解析で、安全性に関する懸念はないと報告され、日本での副反応疑い報告の状況からも、ワクチンの接種体制に影響を与えるほどの重大な懸念はないとされている。■3回目接種に関するエビデンス6)時間の経過とともに低下した感染予防効果が3回目接種により回復することが、近接した年齢層(12~15歳)で確認され、日本において薬事承認されている。3回目接種による局所および全身反応について、その頻度は、2回目接種と比較して有意な差がなかったことが海外で報告され、日本の薬事審査でも、そのほとんどが軽症または中等症であり大きな懸念はないとされている。インフルエンザの流行や第8波など、これからいろいろな不安因子が待ち受けています。小児ワクチン施策については、明確にリスクコミュニケーションがうまくいっていないので、後で振り返っていただきたいと思います。参考文献・参考サイト1)Pollack CV Jr, et al. Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome. Ann Emerg Med. 1991 Dec;20(12):1366-1370.2)Gnvir M, et al. Encephalopathy in the Setting of COVID-19: A Case Report. Curr Health Sci J. 2021 Apr-Jun; 47(2): 322-326.3)首相官邸 新型コロナワクチンについて 年齢階級別接種実績4)大阪府 ワクチン接種状況等について5)日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」に関するQ&A6)厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A「なぜ小児(5~11歳)の接種に「努力義務」が適用されるようになったのですか。」

1086.

第135回 long COVIDに依存症薬naltrexone低用量が有望

依存症治療薬ナルトレキソン(naltrexone)低用量(LDN)を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(Post COVID-19 Syndrome;PCS)患者52人に試しに2ヵ月分処方したところ調べた7項目のうち6つの改善が認められました1,2)。naltrexoneは50 mg投与でオピオイド(アヘン)遮断作用を担いますが、その10分の1未満の1~4.5 mgの低用量投与は独特の免疫調節活性をどうやら有し、low dose naltrexoneにちなんでLDNと呼ばれ、いつもの用量のnaltrexoneとは区別されています。LDNに特有の作用はオピオイド成長因子受容体(OGF)遮断、Toll様受容体4炎症経路阻害、マクロファージ/マイクログリアの調節、T/B細胞の阻害などによるらしく、数々の病気への効果が小規模試験や症例報告で示唆されています。たとえばいつもの治療が不十分な炎症性腸疾患(IBD)患者47人への投与で寛解を促す効果3)、今では筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれる慢性疲労症候群(CFS)の患者3人への投与でその治療効果4)が示唆されています。また、関節リウマチ(RA)、線維筋痛症、多発性硬化症、疼痛症候群患者へのLDN投与では抗炎症薬が少なくて済むようになりました。アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(UCD)の感染症専門家John Lambert氏はライム病と関連する痛みや疲労の治療にLDNを使っていたことから、COVID-19罹患後症状へのLDNの使用を同僚に勧めました。するとすこぶる評判が良く、それではということで彼はCOVID-19罹患後症状、俗称long COVIDへのLDNのまずは安全性、さらには効果も調べる試験を計画しました2)。試験には52人が参加し、それらのうち38人がLDN服用を始めました。2人は有害事象を生じてLDNを中止し、36人が2ヵ月のLDN服用期間後の問い合わせに回答し、症状や体調の指標7つの変化が検討されました。結果は有望で、それら7つ中6つ(COVID-19症状、体の不自由さ、活力、痛み、集中、睡眠障害)の改善が認められました。気分は改善傾向を示したものの有意レベルではありませんでした。Lambert氏のライム病患者への使用目的と符合し、LDNは痛みに最も有効でした。今回に限らずLDNの慢性痛緩和効果はこれまでのいくつかの試験でも認められています。先立つ試験でも示唆されているとおりLDNはどうやら安全で、LDN服用中止に至る有害事象を生じたのは2人のみで、被験者のほとんど95%(36/38人)は無事にLDNを服用できたようです。今回の試験は対照群がないなどの不備があり、示唆された効果が全部LDNの手柄と判断することはできません。Lambert氏はLDNの効果の確かさを調べる大規模試験を計画しています。Lambert氏の他にもCOVID-19罹患後症状へのLDN の試験があります。米国ミシガン州のサプリメント企業AgelessRx社はCOVID-19罹患後症状患者の疲労の軽減や生活の質の改善を目当てとするLDNとNAD+併用の下調べ試験(pilot study)を実施しています5,6)。医薬品以外のCOVID-19罹患後症状治療の開発も進んでいます。その1つが嗅覚消失を脳刺激装置で治療する取り組みです7,8)。いわずもがな嗅覚消失はCOVID-19の主症状の1つであり、日にち薬で回復することも多いとはいえ一向に回復しないことも少なくありません。嗅覚や味覚の突然の変化を被ったCOVID-19患者およそ千人を調べた試験の最近の結果報告によると、COVID-19診断から少なくとも2年経つ267人のうち嗅覚消失が完全に解消していたのは5人に2人ほど(38%)で、半数超(54%)は部分解消にとどまっており、13人に1人ほど(7.5%)は全く回復していませんでした9)。そういった嗅覚消失患者の嗅覚の回復を目指して開発されている人工嗅覚装置は難聴を治療する人工内耳が脳で処理できる電気信号に音を変えるように匂いの信号を脳に移植された信号受信電極に送ります。それが匂い成分ごとに異なるパターンで脳の嗅球を刺激して匂いを把握できるようになることを目指します。販売に向けた協力体制も発足しており、そう遠くない未来、向こう5~10年に製品の発売が実現するかもしれません8)。参考1)O'Kelly B, et al. Brain Behav Immun Health. 2022;24:100485.2)Addiction drug shows promise lifting long COVID brain fog, fatigue / Reuters3)Lie MRKL, et al. J Transl Med. 2018;16:55.4)Bolton MJ, et al. BMJ Case Rep. 2020;13:e232502.5)AgelessRx Launches Pilot Post-COVID Clinical Trial / AgelessRx6)Pilot Study Into LDN and NAD+ for Treatment of Patients With Post-COVID-19 Syndrome(Clinical Trials.gov)7)Bionic nose could help people smell again / Nature8)WITH THIS BIONIC NOSE, COVID SURVIVORS MAY SMELL THE ROSES AGAIN / IEEE Spectrum9)McWilliams MP, et al. Am J Otolaryngol. 2022;43:103607.

1087.

認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬使用

 抗コリン薬は、コリン作動性を遮断することで主要な治療効果や二次的な作用を発現する薬剤である。認知症患者に対する抗コリン薬の使用は、中枢作用に対しとくに敏感である可能性が示唆されている。また、抗コリン薬は、認知症治療で主に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬の作用にも拮抗するため、注意が必要である。英国・カーディフ大学のAnnabelle Hook氏らは、英国の急性期病院における認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬の使用状況を調査するため、横断的多施設共同研究を実施した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬治療を行っている場合でも、認知症患者に抗コリン薬が使用されており、入院時よりも退院時において抗コリン薬負荷が有意に高いことが明らかとなった。BMC Geriatrics誌2022年10月6日号の報告。 対象は、2019年に英国の急性期病院17施設を受診した認知症患者352例。すべての患者が、外科病棟、内科病棟、高齢者介護病棟のいずれかの入院患者であった。各患者の薬物療法に関する情報は、標準化されたフォームを用いて収集した。抗コリン薬負荷は、エビデンスベースのオンライン計算機により算出した。入院時および退院時の抗コリン薬使用との関連を調査するため、ウィルコクソンの順位検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・入院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は37.8%、3以上の患者は5.68%であった。・退院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は43.2%、3以上の患者は9.1%であった。・入院時から退院時にかけてのスコアの増加は、統計学的に有意であった(p=0.001)。・向精神薬は、退院時に使用される抗コリン薬の中で最も多かった。・コリンエステラーゼ阻害薬使用患者の44.9%に対し、抗コリン薬が使用されていた。

1088.

かかりつけ医も知っておきたい、コロナ罹患後症状診療の手引き第2版/厚労省

 厚生労働省は、2022年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1.1版)」を改訂し、第2版を10月14日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 主な改訂箇所としては、・第1章の「3.罹患後症状の特徴」について国内外の最新知見を追加・第3~11章の「2.科学的知見」について国内外の最新知見を追加・代表的な症状やキーワードの索引、参考文献全般の見直しなどが行われた。 同手引きの編集委員会では、「はじめに」で「現在、罹患後症状に悩む患者さんの診療や相談にあたる、かかりつけ医などやその他医療従事者、行政機関の方々に、本書を活用いただき、罹患後症状に悩む患者さんの症状の改善に役立ててほしい」と抱負を述べている。1年後に多い残存症状は、疲労感・倦怠感、呼吸困難、筋力低下/集中力低下 主な改訂内容を抜粋して以下に示す。【1章 罹患後症状】「3 罹患後症状の特徴」について、タイトルを「罹患後症状の頻度、持続時間」から変更し、(罹患者における研究)で国内外の知見を追加。・海外の知見 18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12ヵ月時点で多くみられた罹患後症状であった。中国、デンマークなどからの研究報告を記載。・国内の知見 COVID-19と診断され入院歴のある患者1,066例の追跡調査について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月で検討されている。男性679例(63.7%)、女性387例(36.3%)。 診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12ヵ月後に5%以上残存していた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下/集中力低下(8%)など。 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は、酸素需要のなかった患者と比べ3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 入院中に気管内挿管、人工呼吸器管理を要した患者は、挿管が不要であった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3ヵ月時点で男性に43.5%、女性に51.2%、診断後6ヵ月時点で男性に38.0%、女性に44.8%、診断後12ヵ月時点で男性に32.1%、女性に34.5%と、いずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。(非罹患者と比較した研究) COVID-19非罹患者との比較をした2つの大規模コホート研究の報告。英国の後ろ向きマッチングコホート研究。合計62の症状が12週間後のSARS-CoV-2感染と有意に関連していて、修正ハザード比で大きい順に嗅覚障害(6.49)、脱毛(3.99)、くしゃみ(2.77)、射精障害(2.63)、性欲低下(2.36)のほか、オランダの大規模マッチングコホート研究を記載。(罹患後症状とCOVID-19ワクチン接種に関する研究)(A)COVID-19ワクチン接種がCOVID-19感染時の罹患後症状のリスクを減らすかどうか(B)すでに罹患後症状を認める被験者にCOVID-19ワクチン接種を行うことでどのような影響が出るのか、の2点に分け論じられている。(A)低レベルのエビデンス(ケースコントロール研究、コホート研究のみでの結果)では、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種が、その後の罹患後症状のリスクを減少させる可能性が示唆されている。(B)罹患後症状がすでにある人へのCOVID-19ワクチン接種の影響については、症状の変化を示すデータと示さないデータがあり、一定した見解が得られていない。「5 今後の課題」 オミクロン株症例では4.5%が罹患後症状を経験し、デルタ株流行時の症例では10.8%が罹患後症状を経験したと報告されており、オミクロン株流行時の症例では罹患後症状の頻度は低下していることが示唆されている。揃いつつある各診療領域の知見 以下に各章の「2.科学的知見」の改訂点を抜粋して示す。【3章 呼吸器症状へのアプローチ】 罹患後症状として、呼吸困難は20〜30%に認め、呼吸器系では最も頻度の高い症状であった。年齢、性別、罹患時期などをマッチさせた未感染の対照群と比較しても、呼吸困難は胸痛や全身倦怠感などとともに、両者を区別しうる中核的な症状だった。【4章 循環器症状へのアプローチ】 イタリアからの研究報告では、わずか13%しか症状の完全回復を認めておらず、全身倦怠感が53%、呼吸困難が43.4%、胸痛が21.7%。このほか、イギリス、ドイツの報告を記載。【5章 嗅覚・味覚症状へのアプローチ】 フランス公衆衛生局の報告によると、BA.1系統流行期と比較し、BA.5系統流行期では再び嗅覚・味覚障害の発生頻度が増加し、嗅覚障害、味覚障害がそれぞれ8%、9%から17%に倍増した。【6章 神経症状へのアプローチ】 中国武漢の研究では、発症から6ヵ月経過しても、63%に疲労感・倦怠感や筋力低下を認めた。また、発症から6週間以上持続する神経症状を有していた自宅療養者では、疲労感・倦怠感(85%)、brain fog(81%)、頭痛(68%)、しびれ感や感覚障害(60%)、味覚障害(59%)、嗅覚障害(55%)、筋痛(55%)を認めたと報告されている。【7章 精神症状へのアプローチ】 罹患後症状が長期間(約1年以上)にわたり持続することにより、二次的に不安障害やうつ病を発症するリスクが高まるという報告も出始めている。【8章 “痛み”へのアプローチ】 下記の2つの図を追加。 「図8-1 COVID-19罹患後疼痛(筋痛、関節痛、胸痛)の経時的変化」 「図8-2 COVID-19罹患後疼痛の発生部位」 COVID-19罹患後に身体の痛みを有していたものは75%で、そのうち罹患前に痛みがなかったにも関わらず新規発症したケースは約50%と報告されている。罹患後、新規発症した痛みの部位は、広範性(20.8%)、頸部(14.3%)、頭痛、腰部、肩周辺(各11.7%)などが報告され、全身に及ぶ広範性の痛みが最も多い。 【9章 皮膚症状へのアプローチ】「参考 COVID-19と帯状疱疹[HZ]の関連について」を追加。ブラジルでは2017〜19年のCOVID-19流行前の同じ間隔と比較して、COVID-19流行時(2020年3〜8月)のHZ患者数は35.4%増加した。一方、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究では、2020年のCOVID-19の拡大はHZ発症率に影響を与えなかったと報告。    【10章 小児へのアプローチ】 研究結果をまとめると、(1)小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、特に複数の症状を有する場合が多い、(2)年少児は年長児と比べて少ない、(3)症状の内訳は、嗅覚障害を除くと対照群との間に大きな違いはない、(4)対照群においてもメンタルヘルスに関わる症状を含め、多くの訴えが認められる、(5)症例群と対照群との間に罹患後症状の有病率の有意差を認めない、(6)小児においてもまれに成人にみられるような循環器系・呼吸器系などの重篤な病態を起こす可能性があるといえる。【11章 罹患後症状に対するリハビリテーション】 2022年9月にWHOより公表された"COVID-19の臨床管理のためのガイドライン"の最新版(第5版)では、罹患後症状に対するリハビリテーションの項が新たに追加され、関連する疾患におけるエビデンスやエキスパートオピニオンに基づいて、呼吸障害や疲労感・倦怠感をはじめとするさまざまな症状別に推奨されるリハビリテーションアプローチが紹介されている。 なお、本手引きは2022年9月の情報を基に作成されており、最新の情報については、厚生労働省などのホームページなどから情報を得るように注意を喚起している。

1090.

後見人制度~外部資料の活用例【コロナ時代の認知症診療】第20回

前回述べたように、後見人制度を使うと、自分の財産の額によって後見人に対して月々の支払いが生じる。このひと月の間に、後見制度を取り消しにしたいという2つの相談が私にクリニックにあった。いずれも資産家のご家族であり、「年間200万円以上のお金が出て行く。しかも自分が勝手に使えないから、好きな旅行にもいけない。どうにかしたい」と実に切実である。弁護士に、解消は可能なのかと尋ねてみたが、法制上かなり難しそうだ。このように後見制度に関わる問題には根深いものが多い。実際、認知症の専門学会も本制度に注目している。2022年11月の老年精神学会/認知症学会の合同大会において、後見人制度への医師の関わりとして「鑑定書作成の実際」が1つのシンポジウムのテーマになっている。介護保険認定調査結果など、外部資料はどう活用するかさて前回では、診断書作成、ランク(3類型)決定で用いることができる資料として診療録など手持ちの内部資料の意味を説明した。そこで今回は、外部資料として介護保険認定調査の結果などを説明する。まず介護保険認定調査(訪問調査)の結果である。1つのポイントは、これが医師の診療録と同様に公文書の扱いになっていることだ。周知のように介護保険の認定は、主に医師の主治医意見書と、この調査結果にもとづいて決定される。ご覧になった方も多いだろうが、この調査の内容は、第1群(身体機能・起居動作)、第2群(生活機能)、第3群(認知機能)、第4群(精神・行動障害)、第5群(社会生活への適応)、特別な医療とある。とくに第5群では、金銭管理や日常の意思決定という項目もある。それだけにこの評価結果を見れば、概要を簡潔に把握できる。ところでこの介護保険調査票の結果は見せてもらえるか? が重要である。都内のある区の介護保険課介護認定係へ確認してみた。調査対象者本人はもちろん、要介護認定の申請者でも開示請求ができる。さらに本人が亡くなった場合は法定相続人でもできるそうだ。もっとも自治体によって取扱いが異なる可能性があることには、ご留意いただきたい。なお公文書扱いではないだろうが、介護保険サービスとしてのデイサービス、デイケア等での看護・介護記録、あるいは家庭への連絡帳などが参考になるかもしれない。というのは、診断書や鑑定書の作成に役立つ他者との関係(ある意味、社会的な振る舞い)や集団の中での行動ぶりや発言内容などがときに記されているからである。また自治体によっては、介護保険主治医意見書の作成のために、当事者の実生活の状況を介護者が主治医に報告するためのシートも用意している。ここにも限られた診療時間内ではうかがい知れない情報が記載されていることがある。親が急死、財産調査の実際とは…さて、このような後見制度を使うべきタイミングを逸することも少なくない。以下は、50歳代女性の質問として聞いたものである。「7年前に母が亡くなった時に今後の遺産相続を考え、父に遺産の詳細を尋ねた。“まだ早い大丈夫”ということで教えてもらえなかった。ところがその父が最近急死した。葬儀の後、遺産の詳細を調べようとしたが、皆目、見当がつかない。どうしたらよいか?」という質問である。今さら、7年前に任意後見制度(前回紹介)など使えばよかったのに、などとは言えない。そこでこうしたことに詳しい知人に、死亡した親の財産調査についての実際を尋ねてみた。まず現金については、取引があったと思われる銀行に以下を持参して出向き、口座の有無を確認することだそうだ。1)口座名義人が亡くなったことが分かる戸籍謄本、2)手続きをする人が相続人だと分かる書類(戸籍謄本など)、3)手続きをする人の実印と印鑑登録証明書(発行より6ヵ月以内の物)。こうして口座が確認できたら、金融機関ごとに相続手続きに入る。次に証券類は? と質問したら、銀行と同様、目星をつけて問い合わせるしかないとのことであった。そのうえで、彼は「とにもかくにも1日も早く」と強調した。加えて、とくに兄弟姉妹がいる場合はかなりの時間と手間を覚悟する必要があると加えた。さて現金や証券と少し性格が異なるのが、不動産である。まず故人となった人宛てに毎年送付される固定資産税納税通知書を探し出すことだという。この通知書が見当たらない場合は、故人ゆかりの地の自治体で名寄帳を照会することになる。もっとも高齢の人なら、登記資料(権利証)を自宅の金庫や貸金庫に保管している場合もあるそうだ。しかし法務局によるこの権利証は、平成20年以降発行されていない。そして12桁のパスワードからなる『登記識別情報』の提供に変更となっている。この登記識別情報は、不動産の権利を表すのではなく、登記の申請人が登記名義人本人だと確かめる確認手段である。また権利証とは異なり、単に新規の不動産の所有者が、登記所に対し申請を行った際通知される情報にすぎない。しかし探し出すための端緒には成り得るかもしれない。いずれにせよ、遺族側は大変面倒なことだがやらねばなるまい。

1091.

アルツハイマー病とレビー小体型認知症を鑑別するための描写機能分析

 アルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)の早期鑑別診断は、治療や疾患管理において非常に重要であるが、依然として困難を極めている。コンピューターベースの描写機能分析がADとDLBの鑑別に役立つと考えられるが、この分野の研究は十分に行われていない。IBM東京基礎研究所の山田 康智氏らは、AD、DLB、認知機能正常(CN)において、描写プロセスを特徴付ける機能の違いを特定し、これらの機能を用いたADとDLBの特定および鑑別の有効性を評価するため、本研究を実施した。その結果、各群においてさまざまなタイプの描写機能に違いがあったことが認められ、これらの機能の組み合わせによりADとDLBの鑑別が促進される可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年9月20日号の報告。 対象は地域在住高齢者123例(AD群:47例、レビー小体病[LBD]群:27例、年齢、性別、教育年数が一致したCN群:49例)。デジタルタブレットとペンを用いて描写データを収集し、描写速度、筆圧、一時停止の観点から描写機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・とくにLBD群において、描写速度および、速度と筆圧のスムーズさの低下が観察された。・AD群とLBD群の両方で、一時停止時間および合計持続時間の増加が観察された。・これらの機能の違いを用いた機械学習モデルにおけるAUCの比率は、AD群vs.CN群で0.80、LBD群vs.CN群で0.88、AD群vs.LBD群で0.77であった。

1092.

基礎疾患がある若年者、コロナワクチン後の抗体陽性率高い/成育医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らによって、免疫抑制状態を含む基礎疾患を有する12~25歳の患者における新型コロナワクチン接種後の安全性と抗体価が調査された。その結果、基礎疾患のある患者であっても、ワクチン2回接種後の抗体陽性率は高く、その抗体価は12~15歳の患者のほうが16~25歳の患者よりも高いことが明らかになった。これまでの新型コロナワクチンに関する調査は主に健康な人を対象としており、基礎疾患を有する小児や青年での安全性や抗体価の情報は限られていた。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2022年9月21日掲載の報告。 本調査の対象は、何らかの基礎疾患のある12~25歳の患者で、2021年7~10月にBNT162b2(ファイザー製ワクチン)を2回接種した429例であった。年齢中央値は15.0歳(四分位範囲:13.0~18.0歳)、12~15歳が241例(56.2%)、16~25歳が188例(43.8%)、男性が204例(47.6%)であった。最も多かった基礎疾患は遺伝/染色体疾患/先天奇形(67例、15.6%)で、内分泌/代謝疾患(55例、12.8%)、神経疾患(47例、11.0%)、肝疾患(43例、10.0%)と続いた。なお、基礎疾患が複数ある場合は、主たる基礎疾患を研究者が1つ選択した。免疫抑制状態の患者は138例(32.2%)であった。 安全性は、接種後1週間以内の副反応を紙媒体もしくはウェブを用いたアンケートによって調査し、接種後1ヵ月以内の入院を要する副反応は電子カルテを用いて調査した。抗体価は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体をワクチン接種2週間~4ヵ月後に測定した。年齢(12~25歳、16~25歳)や免疫不全の有無などで比較検討を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン2回接種後、1週間以内の38℃以上の発熱は、12~15歳では35.7%、16~25歳では28.0%であった。免疫機能が正常な患者では36.2%、免疫抑制状態の患者では24.1%であった。・重篤な副反応で入院を要したのは、1回目接種後は0例、2回目接種後は12~15歳で1例(0.4%)、16~25歳で2例(1.1%)であった。いずれの患者も回復して退院した。・ワクチン2回接種後の抗体陽性率は、抗体価を測定した397例中393例(99.0%)であった。12~15歳では552例中221例(99.5%)、16~25歳では175例中172例(98.3%)、免疫機能が正常な患者では264例中264例(100%)、免疫抑制状態の患者では133例中129例(97.0%)であった。・抗体価の幾何平均抗体価は、12~15歳が1603.3 U/mL(95%信頼区間[CI]:1321.8~1944.7 U/mL)、16~25歳が949.4 U/mL(同:744.2~1211.1 U/mL)であった。免疫機能が正常な患者では2106.8 U/mL(同:1017.5~2314.7 U/mL)、免疫抑制状態の患者では467.9 U/mL(同:324.4~674.8 U/mL)であった。・ステロイドや生物学的製剤などの複数の免疫抑制薬を服用している患者では、より低い抗体価を示す傾向があった。 同氏らは、「BNT162b2は、基礎疾患のある小児や青年において、許容可能な安全性を有しつつ免疫原性を高めた。この集団におけるワクチン接種後のまれな副反応を評価するためにはさらに大規模な調査が必要である」とまとめた。

1093.

第130回 手放しに喜べない?新たな認知症治療薬の良好な臨床成績

長らく続くコロナ禍で医療系学会の取材はこの間ご無沙汰していたが、先日久しぶりに学会に参加した。たまたま開催地が実家から近いこともあり、両親と昼食をとる機会に恵まれた。以下、今回はかなり私事を交えることになるが、お付き合いいただきたい。私の場合、地元で開催された学会の取材に赴く際でも実家に宿泊することはほとんどない。あくまで仕事で来ているという線引きが必要だというのが表向きの理由だが、実のところはある種、鬱陶しいからという事情もある。すでに私が50代になっているとはいえ、80代半ばの両親にとっては子供なので、実家でパソコンを開いて仕事をしていても何かと話しかけられるし、食事の時間になると「○○があるから食え」だの、とくに食べたいものでもないのに勧められるのは正直言うならば厄介なことこの上ない。それでも両親を食事に誘ったのは、近年急速に弱ってきている父親が賑やかなところが好きな人だからだ。実家は地元の繁華街から離れた田園地帯にある。父親本人は常に外出したくて仕方ないのだが、すでに足腰も弱り、その牛歩に毎回付き添うのは母親がくたびれるため、週末ぐらいしか外出できない。加えて父親は軽度認知障害(MCI)の診断を受けている。それでも元が几帳面な性格だったことも手伝ってか、現時点でも買い物では小銭から計算して使いたがるので、まだましなほうかもしれない。とはいえ、緩やかに症状は進行しており、先日は銀行に出かけた際にATM前から母親に「使い方がわからなくなった」と連絡があったという。昼時、待ち合わせ場所の寿司屋近くの路上にいると、人混みの向こうから両親がゆっくりと歩いてきた。視界に入ってきた両親はなかなか近づいてこない。父親のゆっくりとした歩みに母親が合わせざるを得ないからである。それでも数年前から介護保険を使って理学療法士のお世話になってからはかなり改善している。一時は「カタツムリか?」と思うほどの歩みだったのだから。私は路上に立ったまま両親が近くに来るのを待った。ようやく顔が良く見える距離になって私を見つけた父親は、「破顔一笑」とも言える表情を見せた。私も微笑んで見せたが、内心はこの上なく複雑だった。幼少期の記憶の中の父親は口下手で喜怒哀楽に乏しく、私に笑顔を向けてきた記憶がほとんどない。常にむすっとしていて、時に激しく叱られることが私の記憶のデフォルトである。母親がよく話題に出すのは、私が2歳ぐらいの時の父親と私のやり取りだ。父親が私を大声で呼びつけた際に登場した私は頭に座布団を乗せていたという。叱られて叩かれると勘違いしたらしい。やや長くなってしまったが、なぜこうつらつらと書いてしまったかというと、今話題のエーザイ・バイオジェン共同開発のアルツハイマー病(AD)治療薬候補lecanemab(以下、レカネマブ)について、こうしたMCI患者を持つ家族と医療ジャーナリストという職業の狭間で揺れ動く自分がいるからだ。ご存じのようにADに関しては、脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ(Aβ)」が神経細胞を死滅させるというAβ仮説に基づき、過去20年近く新薬開発が進められてきた。Aβ仮説は、Aβ前駆タンパク質から酵素のβセクレターゼ(BACE)の働きで、Aβの一量体(モノマー)が作り出され、そこからモノマーが重合した重合体(オリゴマー)、高分子オリゴマーである可溶性プロトフィブリル、そこから形成されたアミロイド線維である不溶性フィブリルへと進行し、最終的にアミロイド線維から形成されるアミロイドプラークが神経細胞を死滅させADに至るというのが大まかな理論だ。これまでのAβ仮説に基づく新薬開発では、BACE阻害薬と脳内の神経細胞に沈着したAβを排除する抗Aβ抗体が2つの大きな流れだったが、ほとんどが事実上失敗している。唯一飛び抜けていたとも言えるのが、同じエーザイとバイオジェンが共同開発していた抗Aβ抗体のアデュカヌマブ。Aβの生成過程の中でもフィブリルに結合する抗体で第II相試験での成績が良好だったことから期待されたが、2019年3月に独立データモニタリング委員会が主要評価項目を達成できる見通しがないと勧告した結果、進行中の2件の第III相試験が中止された。しかし、勧告後に入手できた症例データを加えて再解析した結果、うち1件では、高用量群でプラセボ群との比較で、臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB:Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の有意な低下が認められた。このためバイオジェンは一転して米食品医薬品局(FDA)に承認を申請。FDA諮問委員会の評決では、ほぼ否定的な評価を下されていたものの、社会的要請の高さなどを理由に新たな無作為化比較試験の追加実施とそのデータ提出を求める条件付き承認となった。もっともこの承認には専門家の中でも批判が多く、米国ではメディケア・メディケイド サービスセンター(CMS)がアデュカヌマブの保険償還対象を特定の臨床試験参加者のみに限定。さらにヨーロッパと日本では現状の臨床試験結果では効果が十分確認されていないとして承認見送りとなった。まさにジェットコースターのようなアップダウンを繰り返して、ほぼ振出しに戻ったのがAD治療薬開発の現状である。もちろんレカネマブの開発が続いていたことは承知していた。しかし、前述のような開発を巡るドタバタを知っている身としては、必死に開発を行っていた人たちには申し訳ないが、期待はせずに横目で見ていたというのが実状である。そんな最中、エーザイがレカネマブの第III相試験「Clarity AD」の主要評価項目で有意差を認め、記者発表するとのニュースリリースを9月28日早朝に発表した。今回はあの抗寄生虫薬イベルメクチンの時と違って、すでに結果がポジティブだったことはわかっている。要はどの程度のポジティブだったかがカギだ。当日、オンラインで記者会見に参加した私はディスプレイに釘付けになった。ちなみにClarity AD の登録症例は1,795例。脳内Aβ病理が確認され、スクリーニングおよびベースラインの認知症ミニメンタルステート検査(MMSE)が 22~30点、論理的記憶検査(WMS-IV LM II:Wechsler Memory Scale-IV logical memory II)の点数が年齢調整済み平均値を少なくとも1標準偏差を下回り、エピソード記憶障害が客観的に示されることが認められるADによるMCIと軽度ADが対象だ。これを2群に分け、レカネマブ10mg/kgの点滴静注を2週に1回とプラセボ点滴静注を2週に1回行い、主要評価項目は、ベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SBの変化を比較したものだ。アデュカヌマブとレカネマブの最大の違いは、レカネマブはフィブリル形成直前の可溶性プロトフィブリルが標的となっていることに加え、アデュカヌマブでは漸増投与が必要だったのに対し、レカネマブは初回から有効用量の投与が可能なことである。公表された結果ではプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は27%、詳細は発表されなかったが副次評価項目すべてでプラセボに対して統計学的有意差が認められたという。また、抗Aβ抗体では付き物の副作用がアミロイド関連画像異常(ARIA)だが、その発現率はARIAのうち脳浮腫をさすARIA-Eが12.5%(症候性2.8%)、脳微小出血をさすARIA-Hが17.0%(同0.7%)。アデュカヌマブが高用量群でプラセボ比でのCDR-SB変化量で見た悪化抑制率は23%(低用量群では14%)で、ARIA発現率がレカネマブの約3倍であることを考えれば、確かに成績は良いと言える。しかも、あくまでエーザイ側の説明に依拠するが、プラセボと比較したCDR-SB変化量の差は治験開始6ヵ月後に発現しているというのだ。私が驚いたのはむしろこの効果発現の早さだ。さてエーザイではこの結果をもって日米欧で2022年度中のフル申請、2023年度中のフル承認を目指すという。「フル」というのはアデュカヌマブの時のような条件付き承認ではないということである。ちなみに米国では、すでにClarity AD以外の試験結果で迅速承認制度の指定を受け、その結果は来年1月上旬までに明らかになる予定だが、この試験結果を追加提出することで、アデュカヌマブのような「失敗」はしないという意味である。CMSはアデュカヌマブの保険償還制限に当たって、同薬のような“条件付きの迅速承認の場合”とこちらも条件を付けている。では、このまま承認に至った際の課題は…やはり投与対象と薬価の問題である。米国でアデュカヌマブが承認された際の年間薬剤費は約600万円となった。前述のCMSの付けた条件が制限となったため、現実にはほとんど売上と言えるほどの数字にはなっていない。抗体医薬品である以上、どんなに頑張ってもレカネマブの年間薬剤費が100万円以下というのは世界のどの国でも考えにくい。たとえば仮に年間100万円としても、現在日本には推定約700万人の認知症患者がいる。日本国内でこのうちの1%強に当たる10万人が処方を受けたとすると、年間薬剤費は1,000億円となる。世界最速とも言える少子高齢化が進み、社会保障費の増大に危機感が募るばかりの昨今の状況を考えれば、簡単に容認できる話ではない。これまでの経緯を考えれば、承認されたあかつきに厚生労働省は最適使用推進ガイドラインなどでかなり投与対象を絞り込んでくるだろう。それに仮に成功しても、その先が相当厄介である。まず、投与開始後にどのような状態を有効・無効と判定するのか。かつて話題になった免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名:オプジーボ)の場合ならば、画像診断での腫瘍縮小効果という指標もあった。では、レカネマブでは1回数十万円もするアミロイドPETでAβ量を定量化するのか? それともある程度ばらつきもあるMMSEで判定するのか?有効基準が決まったとして、投与はいつまで続けるのか? そもそもADは高齢者の病気である。期待余命は長くはなく、悪化抑制効果が最大限得られたとしても患者本人の社会的・経済的生産性の向上が見込めるかと言えば、そこには「?」がつく。とはいえ、MCIの父親を持つ自分にとってみれば、たとえ3割弱の遅延抑制効果とはいえ、老老介護となっている母親の肉体的・精神的負担を考えれば、使える物なら使ってみたいという気持ちもある。約束した寿司屋でうまそうに漬け丼をほおばる父親を見ながら、そんなことばかりを考えていた。寿司屋を出て両親と一緒に牛歩で駅に向かった。とくに何時の新幹線に乗るかは決めていなかった。アーケード街を歩きながら、途中でベンチが見えると父親はそこに腰を掛けて休むと言い出した。母親は私に気を遣って、「私たちはゆっくり行くから、あなたは先に帰りなさい」と促した。私は父親に「またね?」と言ってその場を後にした。父親はまた破顔一笑。そのまま後ろを振り返らずにまっすぐ駅へと向かった。医療経済性、社会保障費の増大、患者家族としての思いがぐるぐる頭を巡りながら、今日この時点でも結論は出ていない。たぶんこの先も容易に結論は出ないだろう。正直、メディアの側にいるというだけで私たちは他人から忌み嫌われることは少なくない。とはいえ、それでも自分で自分の仕事を嫌だと思ったことは、こと私自身に関しては数えられるほど少ない。ただ、この日ばかりは「何も知ならきゃ良かった。本当に因果な商売だな」と自分の仕事が嫌になった数少ない日として、生涯忘れられない日になりそうである。

1094.

片頭痛患者のスマホ使用が痛みの強さや治療に及ぼす影響~多施設横断比較研究

 スマートフォンユーザーは、世界中で飛躍的に増加している。スマートフォン使用中または使用後にみられる症状として、頭痛、睡眠障害、物忘れ、めまい、その他の疾患などが挙げられる。また、片頭痛は身体的衰弱を伴う疾患であり、身体障害の原因として世界で2番目に多い疾患といわれている。パキスタン・Jinnah Medical and Dental CollegeのMehwish Butt氏らは、スマートフォンの使い過ぎが片頭痛患者の障害レベル、痛みの強さ、睡眠の質、全体的なQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、スマートフォンの使い過ぎは、片頭痛患者の痛みを増強させ、薬物治療効果を減弱させる可能性が確認された。このことから著者らは、片頭痛患者は症状悪化を避けるために、スマートフォンの使用を制御することが推奨されるとしている。Brain and Behavior誌オンライン版2022年9月20日号の報告。 スマートフォン依存傾向尺度(Mobile Phone Problematic Use Scale)を用いて、片頭痛患者をスマートフォン使用率の高い群(HMPUG)と低い群(LMPUG)に分類した。各尺度等を用いて、両群における患者の障害レベル(片頭痛評価尺度[MIDAS])、痛みの強さ(VAS)、睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問票[PSQI])、日中の眠気(エプワース眠気尺度)、QOL(24時間片頭痛QOLアンケート)の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者数は400例(女性:263例[65.8%]、男性:137例[34.3%])。・回答者の平均年齢は、27.59±9.79歳であった。・家族の平均人数は、5.98±2.3251人であった。・HMPUGは、LMPUGと比較し、痛みの強さ、睡眠の質の低下、薬物治療効果の減弱が認められた(p<0.05)。・しかし、LMPUGでは、片頭痛の持続時間および治療薬の投与量の増加が報告された(p<0.05)。

1096.

高齢乳がんサバイバー、CRP高値が認知機能障害に関連/JCO

 高齢の乳がんサバイバーと非がん対照者のC反応性蛋白(CRP)値とその後の認知機能を調査した大規模前向き全国コホート研究の結果、サバイバーは対照群と比べて長期にわたりCRPが高く、CRPが高かったサバイバーは認知機能障害を発症する可能性が高かった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJudith E. Carroll氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年9月30日号で報告した。 本研究は、2010年9月~2020年3月、60歳以上で乳がん(Stage0~III)と診断された女性と、がんではない対照者を登録した(認知症、神経障害、他のがんを有する女性は除外)。評価は全身療法前(対照群では登録前)および年1回の来院時に行い、60ヵ月まで追跡した。認知機能は、Functional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)および神経心理学的検査を用いて測定した。各訪問時におけるCRPを自然対数(ln-CRP)に変換し、サバイバーと対照者の差を混合線形効果モデルで検定した。その後の認知機能に対するln-CRPの方向性効果をランダム効果-遅延変動モデルで検証した。すべてのモデルで年齢、人種、研究施設、認知予備能、肥満、併存疾患について調整し、2次解析ではうつ病や不安障害が結果に影響を与えるかどうかを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象となったのはCRP検体と追跡データを有する乳がんサバイバー400人と対照者329人で、平均年齢67.7歳(範囲:60~90歳)だった。サバイバーのうちStageIが60.9%、エストロゲン受容体陽性が87.6%だった。・ベースライン、12ヵ月時点、24ヵ月時点、60ヵ月時点の調整後ln-CRPの平均は、サバイバーが対照群より有意に高かった(すべてp<0.05)。・サバイバーでは、調整後ln-CRPが高いほどその後の来院時の自己報告の認知能力が低かったが、対照者ではそうではなかった(相互作用のp=0.008)。また、その影響はうつ病や不安障害によって変わらなかった。・調整後FACT-Cogスコアは、CRPが3.0mg/Lおよび10.0mg/Lの場合、サバイバーは対照群よりそれぞれ9.5および14.2ポイント低かった。・神経心理学的検査の成績はサバイバーが対照群より悪く、Trails B検査のみCRPとの有意な相互作用がみられた。 今回の高齢の乳がんサバイバーにおけるCRPとその後の認知機能の関連から、慢性炎症が認知機能障害の発症に関与している可能性が示唆される。著者らは「CRP検査はサバイバーのケアにおいて臨床的に有用かもしれない」としている。

1097.

認知症患者の死亡率に対するコリンエステラーゼ阻害薬の影響~システマティックレビュー

 コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は、神経活動だけでなく心血管系への作用も有していることから、死亡率に影響を及ぼす可能性がある。フランス・ソルボンヌ大学のCeline Truong氏らは、ChEIによる治療が認知症患者の死亡率を改善するかを検討した。その結果、認知症患者に対するChEIの長期治療とすべての原因による死亡リスク低下との関連が認められ、そのエビデンスの質は中~高であることが示唆された。著者らは、これらの調査結果は、認知症患者に対するChEI治療の決定に影響を与える可能性があるとしている。Neurology誌オンライン版2022年9月12日号の報告。 2021年11月までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL、ClinicalTrials.gov、ICRTPより検索し、レビュー、ガイドライン、これらに含まれる研究の参考文献をスクリーニングした。あらゆるタイプの認知症患者を対象に、ChEIによる治療とプラセボまたは通常治療との比較を6ヵ月以上実施した、バイアスリスクのより低いランダム化比較試験(RCT)および非RCTを分析に含めた。2人の独立した研究者により、研究の包含およびバイアスリスクを評価し、事前に規定されたフォーマットに従いデータを抽出した。研究者間の不一致事項については、ディスカッションおよびコンセンサスにより解決した。すべての原因による死亡および心血管死に関するデータは、粗死亡率または多変量調整ハザード比(HR)として測定し、ランダム効果モデルを用いてプールした。集積されたデータは、逐次解析(trial sequential analysis:TSA)を用いて評価した。なお、本研究はPRISMAガイドラインに従って実施した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は、24件(7万9,153例)であった(RCT:12件、コホート研究:12件、平均フォローアップ期間:6~120ヵ月、アルツハイマー型認知症:13件、パーキンソン病認知症:1件、血管性認知症:1件、あらゆるタイプの認知症:9件)。・対照患者のプールされたすべての原因による死亡リスクは、100人年当たり15.1人であった。・ChEIによる治療は、すべての原因による死亡リスクの低下と関連が認められた(未調整RR:0.74[95%CI:0.66~0.84]、調整済みHR:0.77[95%信頼区間[CI]:0.70~0.84]、エビデンスの質:中~高)。・本結果は、いくつかの感度分析によりRCT、非RCTにおいて一貫性が認められた。・認知症のタイプ、年齢、各薬剤、認知症の重症度によるサブグループにおいても、差は認められなかった。・心血管死についてのデータは少なかったが(RCT:3件、コホート研究:2件、9,182例、エビデンスの質:低~中)、ChEIで治療された患者でリスクは低かった(未調整RR:0.61[95%CI:0.40~0.93]、調整済みHR:0.47[95%CI:0.32~0.68])。・TSAでは、すべての原因による死亡のアウトカムは確実性が高かったが、心血管死のリスクについてはそうではなかった。

1098.

事例009 エクセグラン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、旅行中のパーキンソン病患者からの受診の求めに応じ、ゾニサミド(一般名)にて処方、エクセグラン錠(商品名)を調剤したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。増減点内容欄には、「ゾニサミドをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には、パーキンソン病の効能・効果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること」と記載がありました。エクセグラン錠の添付文書を確認してみました。「抗てんかん剤」としての効能または効果しか記載はありません。同様にトレリーフの添付文書も確認してみました。用量は異なりますが、一般名は同じゾニサミドでした。こちらはパーキンソン病治療薬として認められています。薬価も大きく異なることから、用量を同じくした処方・調剤であれば、エクセグラン錠にもパーキンソン病の適用があると考えられていたようでした。そして、エクセグラン錠の添付文書「15.その他の注意」の最後には「パーキンソン病患者(承認外効能・効果)」と念押しのような記載がありました。医師も承認外使用であることをご存じではありましたが、点数が小さいとはいえ査定には変わりありません。また、医療安全上の問題にもなりかねないため、処方システムなどでアラートが表示された場合には対応いただくか、アラートに対する医学上必要性のコメントを注記いただくようにお願いをしました。

1099.

糖尿病性末梢神経障害性疼痛治療に新たなエビデンスが報告された(解説:住谷哲氏)

 糖尿病性末梢神経障害DPN(diabetic peripheral neuropathy)は無症状のことが多く、さらに網膜症に対する眼底撮影、腎症に対する尿アルブミンのような客観的診断検査がないため見逃されていることが少なくない。しかしDPNの中でも糖尿病性末梢神経障害性疼痛DPNP(diabetic peripheral neuropathic pain)は疼痛という自覚症状があるため診断は比較的容易である。不眠などにより患者のQOLを著しく低下させる場合もあるので治療が必要となるが、疼痛コントロールに難渋することが少なくない。多くのガイドラインでは三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(以下A)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRIであるデュロキセチン(以下D)、電位依存性カルシウムチャネルα2δリガンドのガバペンチノイドに分類されるプレガバリン(以下P)およびガバペンチン(以下G)の4剤が有効性のある薬剤として推奨されている。疼痛をコントロールするためには十分量の薬剤を投与する必要があるが、実際にはそれぞれの薬剤の持つ特有の副作用で増量が困難となり、中断や他の薬剤の併用を必要とすることが多い。ちなみにわが国での神経障害性疼痛に対する最大投与量は、A 150mg、D 60mg、P 600mgとなっている。GはPと同様の作用機序であるが、添付文書上は抗てんかん薬としての適応のみであり神経障害性疼痛に対する保険適応はない。しかし社会保険診療報酬支払基金では最大投与量2,400mgまで認めているという不思議な状況である1)。 上記のそれぞれの薬剤のDPNPに対する有効性は明らかにされているが、どの薬剤が最も有効なのかを比較検討したhead to headのRCTはない。さらに併用療法についての有効性を検討したRCTにはPとDとの併用療法を検討した小規模のCOMBO-DN試験があるのみである2)。そこで各薬剤の有効性をhead to headで比較すること、および併用療法の有効性を検討することを目的に実施されたのが本試験であり、DPNP治療に新たなエビデンスをもたらした試験であると評価できる。 試験デザインは疼痛に関するRCTでは多用されるクロスオーバーデザインである。1コース16週とし、前半の6週は単剤治療期間、後半の10週が併用治療期間とされた。さらに単なる薬剤の組み合わせではなく、著者らはpathwayと記載しているが、投与順序も検討された。PとGは同様の作用機序なのでPが選ばれた(選択理由として、Gが1日3回投与である、Pと異なり薬物動態が線形でない、およびtitrationに時間を要する、と記載されている)。さらにAとDは両者ともに抗うつ薬であるのでこの組み合わせは除外された。したがって検討されるpathwayはA→P、P→A、D→P、P→Dの4組になる。これを1コース16週間のクロスオーバーデザインで実施すると16×4=64週で試験期間が1年以上となり、試験完遂が困難との判断からP→Dは除外された。その理由は、COMBO-DN試験の結果からP→D、D→Pの疼痛コントロール効果はほぼ同等であり、かつDは1日1回投与でありPと比較して初回投与として適切であると記載されている。このあたりがpragmatic trialとされるゆえんだろう。結果は、A、P、Dのどの薬剤から開始しても単剤での疼痛コントロール効果は同等であること、併用治療によりさらに疼痛コントロール効果が増強されること、どのpathwayでも効果は同等であること、が明らかとなった。さらに疼痛のみならず患者のQOLも同様に改善することが示された。したがって、最初にどの薬剤を投与するか、併用療法としてどの薬剤と組み合わせるかは、主として個々の薬剤による特有の副作用の程度に依存することになる。 DPNPに対しては、単剤を最大耐容量まで増量しても効果が不十分であれば躊躇せずに併用療法に進むことが疼痛コントロールのために有効であることが本試験によって明らかとなった。他の神経障害性疼痛に対しても恐らく同様の有効性が期待されるだろう。しかし腰痛などの神経障害性疼痛以外の疼痛に対しては本試験の結果が適用されないことは言うまでもない。

1100.

燃える闘魂、墜つ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(446)

四百四十六の段 燃える闘魂、墜つ!10月になっても真夏日が続いていますが、皆さん、元気ですかー!……って、燃える闘魂、アントニオ猪木が亡くなってしまいました。なんてこったい。アントニオ猪木といえば、私くらいの世代には好き嫌いを超えた巨大な存在でした。私が小学生の頃、プロレスの試合結果はクラスの中でも大きな話題でした。とくに、ジャイアント馬場やアントニオ猪木が負けたりすると大変です。男子生徒は口角泡を飛ばしてプロレス技を論じ合っていました。時は過ぎ、1976年6月26日に、猪木はモハメド・アリと対戦。当時高校3年生の私は、プロレスとボクシングの異種格闘技をテレビで見るべく、授業が終わったら一目散に家に帰りました。もちろん、ほかの多くの男子生徒もダッシュで帰宅です。誰かが数学教師に「今から猪木とアリが戦うんです!」と説明し、納得してもらったことを思い出します。結果は終始マットに寝て戦った猪木と、それに対して何もできなかったアリとの噛み合わない試合。世紀の凡戦とも呼ばれましたが、それは後から振り返ってのこと。リアルタイムで見ていた人間にとって、これ以上ドキドキしたものはありませんでした。実際、興奮した高齢者がテレビの前で死んだ、というニュースがあったくらいです。その後の全米プロ空手王者、ザ・モンスターマンと猪木の試合も、血湧き肉躍るものでした。ちょうど私が大学1年生の時。下校時刻にクラスメートに出くわし、「伸さん、何しとるんや。今から始まるがな!」と言われて、一緒に石橋の商店街の居酒屋に向かったことを覚えています。店内はザ・モンスターマンと猪木の試合をテレビで見ようという人間で一杯。いよいよ猪木が神輿に乗って登場した時には、テレビの前に陣取っていた若い兄ちゃんが「オレ、猪木のこういうとこが嫌いなんや!」と本気で怒っていました。試合はザ・モンスターマンのパンチやキックに対し、投げ技と関節技で応戦した猪木が勝利!双方とも得意技を出し尽くしての試合で、マスコミにも絶賛されました。私が大学2年生の時、猪木は極真空手の「熊殺し」ウィリー・ウィリアムスと戦い、引き分けています。当時、純粋だった私は、これらすべての異種格闘技戦は真剣勝負だと思っていました。今になって考えてみれば、いろいろと大人の事情なんかもあったことと思います。しかし、事前にいくら打ち合わせをしていても、その時の試合の流れでどんな結果になるかはわかりません。猪木もそんな無謀なことをよくやったな、と思います。そして1986年、愛人との密会を写真週刊誌に撮られてしまった猪木は丸坊主になりました。この時の猪木のセリフ、「男のケジメ」という言葉が、しばらく同僚の間で流行った気がします。さらに1990年の湾岸戦争勃発時。猪木は日本人が人質に取られていたイラクに出向いて、スポーツと平和の祭典と銘打ってプロレスを行い、見事に全員が解放されました。なぜプロレスをすると人質を取り返すことができるのか、それは謎です。でも、結果を出したことには違いありません。猪木の人生はほかにも多くの名言、名セリフに彩られています。「1、2、3、ダーッ!」とか「闘魂注入ビンタ」とか「炎のファイター」とか「元気があれば何でもできる」とか「プロレスはあらゆる格闘技の集大成である」とか「燃える闘魂」とか「国会に卍固め、消費税に延髄斬り」とか「迷わず行けよ、行けばわかるさ」とかとにかく猪木を語り尽くすことはできません。3年ほど前からアミロイドーシスを発症し、闘病生活を送っていたのだそうです。2022年10月1日、ついに亡くなるとともに一つの時代が終わってしまいました。あまりにも偉大なプロレスラー、アントニオ猪木のご冥福をお祈りいたします。最後に1句猪木たち コブラツイスト 秋の雲★この原稿を書くためにエクセルでアントニオ猪木の年表を作っていたら、半日かかってしまいました。

検索結果 合計:2862件 表示位置:1081 - 1100