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リアルワールドにおけるフレマネズマブの長期有用性~FRIEND2試験

 イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、高頻度の反復性片頭痛(HFEM:1ヵ月当たりの片頭痛日数8日以上)または慢性片頭痛(CM:1ヵ月当たりの頭痛日数15日以上)患者を対象に、フレマネズマブの長期(24週間)有効性、安全性、忍容性の評価を実施した。その結果、フレマネズマブは、過去に複数の片頭痛の予防的治療に奏効しなかったHFEMおよびCM患者に対し早期かつ持続的な有効性を示し、安全性および忍容性プロファイルも良好であることが確認された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月23日号の報告。 対象は、過去に複数の片頭痛の予防的治療に奏効せず、フレマネズマブ皮下投与(1ヵ月ごとに225mg/3ヵ月ごとに675mg)を24週間以上実施したHFEMまたはCM患者。28の頭痛センター施設で連続登録方式により対象患者を募集し、プロスペクティブコホート・リアルライフ研究を実施した。HFEMおよびCM患者における主要評価項目は、それぞれベースライン時と比較した21~24週目における1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)および1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)とした。副次的評価項目は、ベースライン時と比較した21~24週目における1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、治療反応率(50%以上、75%以上、100%)、NRS(Numerical Rating Scale)、HIT-6(Headache Impact Test-6)、MIDAS(片頭痛評価尺度)スコアの変化とした。すべての評価項目は、4週目にもモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・フレマネズマブを1回以上使用した患者410例を安全性分析対象に含め、24週間以上治療を継続した患者148例を有効性分析対象に含めた。・フレマネズマブ使用後21~24週目では、ベースライン時と比較し、HFEMおよびCM患者のいずれにおいても、MMD、MHD、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、NRS、HIT-6、MIDASスコアの有意な減少が確認された(p<0.001)。・21~24週目における治療反応率は、以下のとおりであった。【HFEM】50%以上:75.0%、75%以上:30.8%、100%:9.6%【CM】50%以上:72.9%、75%以上:44.8%、100%:1.0%・HFEMおよびCM患者のいずれにおいても、4週目からMMD、MHD、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用の変化、NRS、HIT-6、MIDASスコアの有意な減少が認められた(p<0.001)。・4週目における治療反応率は、以下のとおりであった。【HFEM】50%以上:67.6%、75%以上:32.4%、100%:11.8%【CM】50%以上:67.3%、75%以上:40.0%、100%:1.8%・CM患者では、反復性片頭痛(24週目:83.3%、4週目:80.0%)および薬物乱用から非薬物乱用(24週目:75%、4週目:72.4%)への寛解が認められた。・有害事象の発現率は2.4%と稀であり、軽度および一過性であった。・すべての理由における投与中止例は、認められなかった。

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NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

今回のキーワード音の高さ(音高)音の共鳴(音素)言語能力連合学習(条件付け)臨界期相対音感フラッシュカード(瞬間記憶)音楽教育とくに幼い子供のいる皆さんは、習いごとを「いつから」そして「どれだけ」やらせればいいんだろうとお悩みじゃないですか? NHKの「おかあさんといっしょ」を見せてはいるけど、それだけじゃ足りないんじゃないか? 自分が怠けたせいであとあと隠れた才能を開花させられなかったと悔やむんじゃないか? たとえばそれが絶対音感だったり?前編では、「おかあさんといっしょ」をヒントに発語(発声学習)のメカニズムを説明し、その起源に迫りました。今回の後編では、前編を踏まえて、絶対音感という「才能」を例に挙げて、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を一緒に考えてみましょう。絶対音感とは?「おかあさんといっしょ」の番組内では、音楽とともに歌ったり踊ったりして、幼児の音感が養われます。音感とは、まさに音に対する感覚で、音の高低、音色、メロディなどを聞きわける全般的な音楽の能力です。その中で、とくに絶対音感と聞くと、とても神秘的です。ある1つの音を聞くだけで(ほかの音との比較なしで)、瞬時にその音の高さ(音高)がわかり、ドレミの12音のどれかを言い当てることができるわけですから。聞いた曲をすぐに楽譜に書き起こせて便利そうです。この能力のある人は、一般人口の0.01%程度と言われています8)。絶対音感が言語能力である根拠は?絶対音感と聞くと、音楽的才能を連想します。しかし、実はこの正体は言語能力であることがわかっています。その根拠を3つ挙げてみましょう。(1)トレーニング方法1つ目は、絶対音感を身に付けるトレーニング方法です。自然に身に付くことは極めてまれで、特定の和音のパターンを使い、聞こえた音の高さをすぐにドレミの音高名に結びつけることを延々と繰り返します。そうするとやがて、特定の音高を聞くと、もはや抑えようとしても抑えられないくらい、自動的に音高名が頭の中に出てくるようになります。つまり、これは、特定の音高と特定の音高名(音素/言語)を結びつける連合学習(条件付け)であることがわかります8)。この点で、絶対音感は「音感」と表記されていますが、単に音高に限定された感覚であるため、厳密には「絶対音高感」という表記がより適切であると言われています。(2)脳の活動部位2つ目は、絶対音感を司る脳の活動部位です。メロディなどの音楽全般を司る部位が右半球優位であるのに対して、絶対音感を司るのは左半球優位であることがわかっています8)。これは、言語能力と同じです。(3)臨界期3つ目は、絶対音感が身に付けられる臨界期です。その年齢は概ね6歳です。この年齢を過ぎてトレーニングをしてもほぼ身に付かないことがわかっています8)。この年齢は、母語や第2言語の自然学習の臨界期に一致します。つまり、前編で子音や母音である音素(2種類の周波数/共鳴音)の識別能力の臨界期が1歳であると説明しましたが、この音高(1種類の周波数/単音)の識別能力の臨界期は6歳であると言えます。なお、6歳という言語能力に臨界期があるのは、6歳以降は単なる具体的な言葉を覚えるのではなく(それまでの語彙の記憶を固定化させて)、次のステップとしてそれらの言葉を駆使して、より抽象的な思考をすることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからと考えられます。同じように、絶対音感に臨界期があるのは、6歳以降は単なる音高の識別ではなく(それまでの音高識別の能力を固定化させて)、次のステップとしてそれらの音高の組み合わせ(メロディ)をつくり、より創造的な音感を発揮することに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからでしょう。次のページへ >>

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第45回 麻疹の接種歴も抗体価も知らぬ医師

茨城県と東京都で成人麻疹8年前から日本は麻疹排除状態になり、麻疹はどちらかといえば輸入感染症としての側面を持つようになっています。茨城県でインドから持ち込まれた麻疹ウイルスに感染した事例が報告され、これと疫学的リンクがある2例が東京都でも発生したことが報道されました。新幹線のグリーン車で感染したらしいので、学会などで移動が増えているこの時期、医師の皆さんもご注意ください。接種歴を知らない医療従事者私は感染制御チームに所属しているので、麻疹の接種歴や抗体価のデータをどのように管理すればよいか日々試行錯誤しているのですが、医療従事者の中には、自分が麻疹にかかったことがあるかどうか・ワクチンを接種したことがあるかどうか・抗体価は十分あるかどうか、知らない人が結構います。意識が高い人は、印刷したデータをネームプレートに入れています。病院実習のときにワクチン接種歴を聞かれて、不十分と判断された大学では接種をすすめていたでしょう。しかし、それすらも記憶にない医師が結構多くて、びっくりします。家族が妊娠したときに、風疹については少し興味を持ってくれる人が多いようですが、麻疹はあまり興味を持たれません。混合ワクチンを接種している世代が増えてきましたが、私のように中途半端な世代もまだまだ多いと思います(表)。アフターコロナで流行国へ渡航することが増えると、麻疹ワクチンを1回のみで接種している人たちが感染するパターンが増えてくるかもしれません。画像を拡大する表. 麻疹ワクチン接種歴(筆者作成1))麻疹には特異的な治療法がなく、対症療法が中心になります。そのため、できるだけ感染しないようワクチンによる予防が重要になります。麻疹による死亡のほとんどは肺炎か脳炎です。まずは接種歴と抗体価の把握をワクチン接種歴や、麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎の抗体価については、ご自身で把握しておくことが望ましいですが、とくに医局人事で病院を転々とする人は、途中でデータが紛失してしまうこともあるため注意してください。参考文献・参考サイト1)一般社団法人日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集

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急速に進行する認知症(前編)【外来で役立つ!認知症Topics】第5回

急速に進行する認知症(前編)患者さんが認知症だと診断されたら、その次にご家族が期待されるのは治療効果である。つまり進行しないこと、進行が遅いことである。認知症の進行ぶりを客観的に評価するために、私のクリニックでは、定期的にMMSEや改訂長谷川式などの神経心理学的なテストをやっていただく。普通は緩徐に低下していくが、3、4割の人では意外ながらも前回よりも高得点が得られる。それを伝えると本人はにっこりされる。だが家族は怪訝そうな表情で、「家では、やることなすことみな悪化したのに」と述べられる。こうした経験から、とくにMCI(軽度認知障害)レベルでは、臨床経過において認知機能と日々の生活機能(IADL:道具的な日常生活機能)は平行しないと考えるようになった。対応に最も窮するのは、ご家族から、「うちの場合、認知症の進行がとくに速いのではないか?」と言われることだ。こうした場合、当方への批判や不信感がありありと伝わってくる。このとき筆者の胸に浮かぶのは、少なからず経験する急速進行性のアルツハイマー病や、まれながら絶対に見逃せないプリオン病である。そこで過去のカルテを読み返すが、症状や脳画像所見が否定型的だったり、どうも普通とは違うなと思われる過去の記述を発見したりした場合、「やだな」と不吉な思いが走る。確かに急速に進行する認知症(RPD:Rapid Progressive Dementia)という用語に合致しそうなケースはある。RPDの定義の1つに、MMSE得点の年間低下が6点以上というものがある。平均的な低下は2~3点(調査によって1.8点~4.5点と大きな開き)とされるだけに、確かに6点以上だと速いと実感する。急速進行性認知症に多い3タイプRPDにはいくつかタイプがある。まずこれまで4例経験したのが、古典的な狂牛病など致死的なプリオン病である。次に脳炎など炎症性疾患である。さらに、確かにアルツハイマー病など変性疾患なのに、というものである。これは2つに大別され、まず脳血管障害、硬膜下血種や正常圧水頭症などほかの病理が加わってくるもの、次にそうしたものがないのにぐんぐん悪化するものである。さて2022年のNature Reviews Neurology誌でRPDに関するレビューがあった1)。それを参考に概要をまとめた。まずその定義は最初の異常から認知症の診断までが1年以下としたものが多い。認知症一般を扱う病院からの報告で、RPDが認知症全体に占める割合を3.7%としたものがあった。当院の経験でも5%以内かと思う。またRPDの基礎疾患としては、プリオン病、変性疾患、炎症性疾患はそれぞれ3分の1を占めるとされる。そこで以下では、認知症一般を診る医師の立場で、こうしたRPDの鑑別のプロセスを示してみたい。プリオン病プリオン病では、自験例で早いものでは数ヵ月で死に至ったこともあり、まず早期の致死が基本である。当初はアルツハイマー病など普通の認知症と思えても、数ヵ月以内に認知機能も身体症状も急速に悪化する。担当医としては、ここで「おかしい、違うぞ!」と思わなければならない。診断根拠としてほぼ確実なのは、早期から見られるMRIの拡散強調画像における大脳皮質の高信号である。なお教科書的に有名な脳波の周期性同期性放電は中・後期にならないと認められない。そこでプリオン病が疑わしいと思ったら、放射線専門医に、皮質の変化を中心に読影してほしいと紹介状を依頼すべきだろう。炎症性脳炎次に各種の脳炎である。最も多いヘルペス脳炎、帯状疱疹脳炎は定型的な症状をもって急性発症することが多いが、ときにRPDのような認知症の1タイプを思わせるケースもある。炎症性疾患として古典的な神経梅毒は近年増加しているのに、見逃されがちであり、無治療例も多いとされる。さらにあるメタアナリシスでは、ヘルペス脳炎患者の42.6%に認知障害が見られると報告している。自己免疫性脳炎免疫介在性の脳炎は、全脳炎の20%余りにも上るとしたイギリスの報告があるように、RPDの鑑別疾患として重要である。自己免疫性脳炎は、その病態に自己免疫学的な機序が介在する脳炎・脳症である。腫瘍を合併し(腫瘍随伴性)、その遠隔効果、すなわち傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome)として発症するものもある。これは、腫瘍に関連する神経筋障害のうち、免疫介在性の機序によるものをいう。傍腫瘍性免疫介在性は、神経抗原を異所性に発現した腫瘍に対する液性免疫反応(自己抗体)と細胞性免疫反応(細胞傷害性T細胞)が自己の神経組織を傷害すると考えられている。自己抗体には、細胞内抗原を認識する抗体、シナプス受容体、細胞膜表面抗原に対する抗体がある。いずれの自己免疫性脳炎においても、早期の腫瘍検索と腫瘍に対する治療が重要であることに変わりはない。そのほかでは、中枢神経領域の悪性腫瘍、繰り返す低血糖、また重度の甲状腺機能低下症などもRPDになりうることに留意したい。最後に、アルコール性認知症は代謝性のRPDとして最も重要ではないかと思われる。これはいわゆる若年性認知症の1割を占め、栄養の偏りや低栄養を伴うことも多い。筆者の経験でも、飲酒をやめてもこうした変性性認知症を思わせるような急速悪化が続いた印象深い症例がある。参考1)Hermann P, et al. Rapidly progressive dementias - aetiologies, diagnosis and management. Nat Rev Neurol. 2022 Jun;18(6):363-376.

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夜勤と認知症リスク~UK Biobankの縦断的研究

 中国・Jinan University First Affiliated HospitalのYitong Ling氏らは、夜勤労働とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症との関連性を調査し、夜勤労働の影響およびアルツハイマー病に対する遺伝的感受性を評価した。その結果、常に夜勤をしている労働者では、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症リスクが高いことが示唆された。また、アルツハイマー病の発症リスクは、アルツハイマー病の遺伝的リスクスコア(GRS)の違いにかかわらず、常に夜勤をしている労働者で高いことが報告された。Journal of Neurology誌オンライン版2023年4月6日号の報告。 データ抽出には、UK Biobankのデータベースを用いた。対象は24万5,570例、平均フォローアップ期間は13.1年であった。夜勤とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症との関連性を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・すべての原因による認知症を発症した患者は1,248例であった。・最終的な多変量調整済みモデルでは、認知症のリスクは、常に夜勤をしている労働者で最も高く(HR:1.465、95%信頼区間[CI]:1.058~2.028、p=0.022)、次いで不規則なシフト勤務の労働者であった(HR:1.197、95%CI:1.026~1.396、p=0.023)。・アルツハイマー病を発症した患者は474例であった。・最終的な多変量調整済みモデルでは、アルツハイマー病の発症リスクも同様に、常に夜勤をしている労働者で最も高かった(HR:2.031、95%CI:1.269~3.250、p=0.003)。・常に夜勤をしている労働者は、アルツハイマー病のGRSの低・中・高、いずれのグループにおいても、アルツハイマー病の発症リスクの高さと関連していた。

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FDA、AD型認知症に伴う行動障害へのブレクスピプラゾールを承認/大塚

 大塚製薬とH.ルンドベックA/Sは5月11日、同社の抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)のアルツハイマー(AD)型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の治療における効能追加の承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得したことを発表した。今回の承認により、本剤は米国において本適応を有する初めての抗精神病薬となる。なお本剤について、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていた。 ブレクスピプラゾールは、2015年にFDAが「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認し、現在、統合失調症治療薬として約60の国と地域で使用されている。 AD型認知症を有する患者の約半数で、介護者に対する暴言、暴力、錯乱などの行動障害が認められている。行動障害を含む認知症に関連する症状は、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因となっている。 今回の承認は、AD型認知症の可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが5~22点であり、薬物療法を必要とする行動障害のある51~90歳の患者が対象となった「331-12-283試験」と「331-14-213試験」の2つの第III相臨床試験において、良好な結果が得られたことに基づいている。 331-12-283試験では、主要評価項目であるCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、ブレクスピプラゾール2mg/日投与群は、プラセボ投与群に対して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 331-14-213試験では、本剤2mg/日および3mg/日投与群は、主要評価項目であるCMAI総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 本剤の忍容性は全般的に良好であり、投与中止の発生率は低く、ほかの適応症でみられた既知の安全性プロファイルと同様であった。 AD型認知症に伴う行動障害の治療における本剤の開始用量は、1日1回0.5mgを1~7日目に服用することが推奨される。8~14日目までは1日1回1mg、15日目では1日1回2mgに増量する。推奨される目標用量は1日1回2mgである。臨床効果および忍容性に基づいて、少なくとも14日後に1日1回3mgの最大推奨用量まで増量することができる。 本剤の最も一般的な副作用は、頭痛、めまい、尿路感染、鼻咽頭炎、睡眠障害(傾眠・不眠)である。本剤は、同クラスの抗精神病薬と同様に、抗精神病薬による治療を受けた認知症関連の精神症を有する高齢患者の死亡リスクが高いことについて黒枠警告される。

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認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用か

 アルツハイマー病(AD)患者では初期段階から、眼球運動に反映されるように、視空間処理障害が認められる。杏林大学の徳重 真一氏らは、ビジュアルタスク実行中の視線動向パターンを評価することで、認知機能低下の早期発見に役立つかを調査した。その結果、いくつかのタスクを組み合わせて視空間処理能力を可視化することで、高感度かつ特異的に認知機能の低下を早期に検出し、その後の進行の評価に役立つ可能性があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年3月21日号の報告。 AD患者16例(平均年齢:79.1±7.9歳、ミニメンタルステート検査[MMSE]平均スコア:17.7±5.3)および健康対照者16例(平均年齢:79.4±4.6歳、MMSE平均スコア:26.9±2.4)を対象とし、視覚記憶タスク、視覚探索タスクの評価を行った。video-oculographyを用いて衝動性眼球運動(saccade)パラメータ、視線動向パターン、タスク遂行中の瞳孔サイズの変化を記録し、AD患者と健康対照者で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・視覚記憶タスクでは、AD患者は健康対照者と比較し、固定対象領域における記憶数の有意な減少が認められた。・視覚探索タスクでは、AD患者はpop out taskではなくserial search taskでターゲットを検出する際に、有意に長い時間と衝動性眼球運動数の増加が認められた。・両タスクともに、両群間での衝動性眼球運動の頻度と振幅に有意な差は認められなかった。・serial search task実行中の瞳孔サイズの変調は、AD患者で減少した。・視覚記憶タスクおよびserial search taskは、AD患者を高感度で鑑別可能であり、瞳孔サイズの変調や衝動性眼球運動は、高い特異性をもって認知機能低下から正常認知機能を確認するうえで効果的であった。

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第162回 Lillyのアルツハイマー病治療抗体も第III相試験成功 / 英国成人の5人に1人が音嫌悪症

Lillyの抗Aβ抗体もアルツハイマー病患者の認知や所作の衰えを抑制Eli Lilly and Company(以下、Lilly)の抗アミロイドβ(Aβ)抗体donanemabもエーザイのlecanemabと同様に初期アルツハイマー病患者対象の第III相試験で成功を収め、認知や身のこなしの指標であるiADRSの悪化をプラセボに比べて遅らせました1)。今回の発表ではiADRSを含む各転帰の経過のプラセボとの相対的な比較結果がひとまず示され、詳しい結果は再来月7月の学会Alzheimer's Association International Conferenceで報告される見込みです。donanemab投与群の各転帰の絶対的経過や同剤の効果がアルツハイマー病患者自身やその家族が察知できるほどのものであったかどうか2)はその学会報告を受けて検討されるでしょう。安全性はどうだったかというと、発作や出血へと至りうるアミロイド関連画像病変(amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)の懸念が専門家の間で取り沙汰されているようです。ARIAの一種である一過性の脳浮腫(ARIA-E)はdonanemab治療群のほうがプラセボ群より4倍ほど多く、それぞれ24%と6.1%に認められました。小出血や血鉄素沈着を特徴とするARIA-Hも同様にdonanemab群で多く、プラセボ群では13.6%だったのがその2~3倍多い約3例に1例(31.4%)に認められました。LillyによるとARIAのほとんどは軽~中等度で、治療によって解消するか安定化しました。ただし、重度のARIAが1.6%に生じ、うち2例はそのために死亡しました。また、別の1例が重度ARIAの後に亡くなっています。認知症治療を研究する英国の精神科医Robert Howard氏はARIAを重くみており、donanemabはエーザイのlecanemabと同じぐらい危険なようだ(Looks as dangerous as lecanemab)とTwitterに投稿しています3)。lecanemabの試験に携わったソルボンヌ大学の神経科医Nicolas Villain氏の懸念はさらに大きいようで、donanemabのほうがより有害かもしれないと心配しています4)。そのような心配の声が上がる一方で、いわゆるアミロイド仮説を支持する科学者の多くはAβがアルツハイマー病の少なくとも有意な要因であることがdonanemabの今回の第III相試験でさらに確実になったとみるでしょう4)。たとえ害を差し引いた価値がいまひとつだったとしてもアミロイド蓄積を除去あるいは防ぐより有効で安全な手段の発案へと通じると期待できます。英国成人の5人に1人が不快な音をやり過ごせない音嫌悪症英国成人の約5人に1人(18%)は他の人がくちゃくちゃ言わせて物を食べたり鼻をすすったりするなどして生じる特定の不快な音をやり過ごせずに苦しむ音嫌悪症と推定されました5)。不快な音への一般的な反応は「いらつき」ですが、音嫌悪症の人は不快な音の出どころから離れられないと行き詰まってどうしようもなくなって何も手につかなくなります。また、音に過敏すぎることは自分に非があるとして自分を責めます6)。5人に1人もが音嫌悪症と推定されたにもかかわらず、そうと自覚していた人はほとんどおらずたった2.3%のみでした。不快な音で行き詰まってしまう音嫌悪症の人をそれが自分だけではないと今回の結果は安心させるに違いありません7)。音嫌悪症がよくある現象であることを今回の結果は示しました。音嫌悪症がどれほどひどいと体に差し障るかや治療が必要になるかなどを今後の研究で調べる必要があります。参考1)Lilly's Donanemab Significantly Slowed Cognitive and Functional Decline in Phase 3 Study of Early Alzheimer's Disease / PRNewswire2)Alzheimer’s drug donanemab: what promising trial means for treatments / Nature3)Robert Howard氏Twitter投稿4)‘It’s not a miracle drug’: Eli Lilly’s antibody slows Alzheimer’s disease but safety issues linger / Science5)Vitoratou S, et al. PLoS One. March 22, 2023. [Epub ahead of print]6)About a Fifth of Us Are Hypersensitive to Sounds / MedScape7)Nearly one in five UK adults may have misophonia, experiencing significant negative responses to sounds / Eurekalert

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夢で記憶が定着、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要?

 脳は睡眠中に記憶の整理などを行っていることが、近年明らかになっている。また、睡眠中には起床時の記憶が夢に登場することがあるため、夢が記憶の定着に関連しているのではないかといわれている。そこで、米国・ファーマン大学のLauren Hudachek氏らは、学習課題に関連する夢と睡眠後の記憶との関連について、システマティックレビューおよび16試験のメタ解析を実施し、夢と記憶の間には関連があることが明らかになった。また、記憶はレム睡眠よりもノンレム睡眠との関連が大きいことも示唆された。Sleep誌オンライン版2023年4月14日号の報告。 Pubmed、PsycInfo、Google Scholarより、「睡眠前に学習課題を実施し、睡眠後の記憶を検討した研究」「睡眠後の記憶向上と、夢に学習課題の内容がどの程度組み込まれているかを関連付けた研究」を検索した。その結果、16試験(効果数:45)が抽出された。これらについてメタ解析を実施し、学習課題に関係する夢と記憶の向上との関連を検討した。また、睡眠の種類(レム睡眠、ノンレム睡眠)、記憶の種類(陳述記憶[イメージや言語として想起でき、内容を陳述できる記憶]、手続き記憶[技能・習慣などの記憶]、空間記憶[空間や場所に関する認知記憶])別のサブグループ解析を実施した。関連の強さは標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を推定して評価した。 主な結果は以下のとおり。・学習課題に関連する夢と記憶について、有意かつ強い関連が認められた(SMD=0.51、95%CI:0.28~0.74、p<0.001)。・睡眠ポリグラフ検査を用いてレム睡眠中の夢(効果数:12)、ノンレム睡眠中の夢(効果数:10)と記憶の関連を検討した研究について解析した結果、ノンレム睡眠中の夢は記憶と有意な関連が認められたが(SMD=0.75、95%CI:0.23~1.28、p=0.010)、レム睡眠中の夢は記憶と有意な関連は認められなかった(SMD=0.32、95%CI:-0.09~0.74、p=0.116)。・記憶の種類(陳述記憶、手続き記憶、空間記憶)にかかわらず、学習課題に関連する夢と記憶について、有意な関連が認められた(いずれもp<0.05)。 著者らは「本研究により、学習課題に関する夢を見ることが記憶の増強と関連することが示され、夢の内容が記憶の定着の指標となる可能性が示唆された。さらに、夢と記憶の関係は、ノンレム睡眠のほうがレム睡眠と比較して強い可能性も示唆された」とまとめた。

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CGRPモノクローナル抗体に反応しやすい日本人片頭痛患者の特徴

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチドモノクローナル抗体(CGRPmAb)は、頭痛障害が従来の予防的治療オプションに奏効しない片頭痛患者にとって有用な薬剤であると考えられる。しかし、日本国内におけるCGRPmAbの使用実績は2年と短く、治療反応が得られやすい患者とそうでない患者を治療前に判別することは困難である。慶應義塾大学の井原 慶子氏らは、CGRPmAbに奏効した日本人片頭痛患者の臨床的特徴を明らかにするため、リアルワールドデータに基づいた検討を行った。その結果、年齢が高く、過去の予防薬治療失敗の合計回数が少なく、免疫リウマチ性疾患の病歴のない片頭痛患者は、CGRPmAbに対する良好な治療反応が期待できることが示唆された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月9日号の報告。 対象は、2021年8月12日~2022年8月31日に慶應義塾大学病院を受診し、3種類のCGRPmAb(エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ)のいずれかを3ヵ月以上処方された日本人片頭痛患者。痛みの質、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、過去の予防薬治療失敗の回数など、対象患者の基本的な片頭痛の特徴を収集した。治療反応者の定義は、治療3ヵ月後にMMDが50%以上低下した患者とした。治療反応者と非反応者におけるベースライン時の片頭痛の特徴を比較し、ロジスティック回帰分析を用いて、統計学的な有意差を検証した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の患者数は、合計101例(ガルカネズマブ:57例、フレマネズマブ:31例、エレヌマブ:13例)であった。・治療3ヵ月後の治療反応者は55例(54%)であった。・治療反応者と非反応者を比較すると、治療反応者は非反応者よりも年齢が有意に高く(p=0.003)、MHD(p=0.027)および過去の予防薬治療失敗の合計回数(p=0.040)が有意に少なかった。・日本人片頭痛患者におけるCGRPmAb治療反応の正の予測因子は年齢であり、負の予測因子は過去の予防薬治療失敗の合計回数、免疫リウマチ性疾患の病歴であった。

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1

今回のキーワード感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)運動性言語(前頭葉のブローカー野)ミラーリング前適応失語症「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)発達性言語障害声認識(声紋)NHKの「おかあさんといっしょ」は、誰もが知っている幼児向けの音楽番組ですよね。子供は、テレビの前で、出演しているお友達たちと一緒に歌って踊りながら楽しく言葉を覚えています。どうやら歌と言葉は密接に結びついているようです。今回は、このテレビ番組をヒントに、発語(発声学習)のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。どうやって言葉が出てくるの?最初に出てくる言葉(初語)は、1歳前後で、だいたい「まんま」「ぱっぱ」などです。「まんま」のように「ご飯食べたい」や「ママ来て」というさまざまな意味を持つ初語は、文としても成り立つため、一語文とも呼ばれます。そして、2歳で「でんしゃ、きた」「パパ、かいしゃ」などの二語文になっていきます。そして、4歳までには日常的な話し言葉(三語文)になっていきます。それでは、どうやって言葉が出てくるのでしょうか? ここから、発語(発声学習)のメカニズムを2つに分けて考えてみましょう。(1)発音を聞き分ける1つ目のメカニズムは、母音と子音のそれぞれの発音(音素)を聞き分けることです。このプロセスは、ちょうど1歳の初語が出てくるまで行われます。逆に、1歳以降は新しい発音の自然な学習が難しくなります。たとえば、日本語にない英語のLとRの発音は、その学習を1歳以降にしても、自然な聞き分けが難しくなります1)。逆に言えば、1歳になるまでの赤ちゃんは、英語のLとRを潜在的に聞き分ける能力を持っていると言えます。つまり、音素を聞き分ける能力の臨界期は1歳までということになります。臨界期があるのは、1歳以降は、1つ1つの音素を聞き分けるのではなく、すでに学習した音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取ることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからであると考えられます。脳科学的に言えば、これらは感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)の発達です。(2)発音をまねる2つ目のメカニズムは、発音(音素)をまねることです。その前段階が喃語(乳児が発する意味のない声)です。そして、1歳前後になると発音しやすい音素から試すようになります。それが「ま」や「ぱ」なのです。初語が「ママ」であるのは、ママがママと呼ばせようとしたからというよりも、赤ちゃんが発音しやすいからでしょう。実際に、ほとんど言語の幼児語としての親の呼び名は「ママ」「パパ」のように呼びやすいものです。日本語の古語でも、母(はは)は「ぱぱ」「ふぁふぁ」、父(ちち)は「てて」「てぃてぃ」です2)。呼びやすさの観点から、昔の日本人はママを「ぱぱ」と呼んでいたのは納得できます。また、「ママ」のように音素を2回繰り返すのは、その方が赤ちゃんにとってインパクトがあり、また「て・に・を・は」などの機能語と区別できて、学習しやすいからであると考えられます。だからこそ、「手」「目」ではなく「おてて」「おめめ」なのです。よって、幼児期は「ないないするよ」「バイバイね」などの幼児語を周りが好んで使う方が、言葉の学習は進むでしょう。さらには、赤ちゃんが言った言葉を親などが繰り返すこと(ミラーリング)で、赤ちゃんの発音にフィードバックが働きます。こうして、言葉の発音を学んでいくのです。まさに、「学ぶ」の語源の「まねぶ」に通じます。なお、ミラーリングの詳細については、関連記事1をご覧ください。1歳以降は、音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取るだけでなく、それを発することに脳がエネルギーを注ぐようになります。脳科学的に言えば、これは運動性言語(前頭葉のブローカー野)の発達です。こうして、音素を次々と切り替え素早く並べて、言葉にすることができるようになっていくのです。歌と言葉の関係は?「おかあさんといっしょ」では、「みんな~おっどろ~!」とリズムで呼びかけたり、歌のリズムに合わせてしりとりや言葉遊びをしています。このように、とくに発声学習の観点では、歌と言葉は切っても切り離せないようです。それは、なぜでしょうか?この答えは、進化の歴史から、発語は、歌の発声が進化の土台(前適応)になっていると考えられているからです3)。前適応とは、ある機能が進化の過程で別の機能に転用されている場合、もとの機能を指す用語です。たとえば、揚力を生み出す鳥の羽の前適応は、もともと羽毛による保温であったと考えられています3)。また、コイがほかの魚と違って高い音を聞き取ることができるのは、浮くための浮袋が内耳とつながるよう進化したからでした。つまり、コイの聴覚の前適応は浮袋による浮上だったと考えられています。同じように、歌うこと(発声)がまず先にあって、その後に話すこと(発語)が生まれたと考えられます。実際に、脳血管障害による失語症では、話せなくなったけど歌えるという場合があります。これは、言語の領域が左脳で優位であるのに対して、歌唱の領域は右脳を含め広範囲だからです。つまり、脳の機能としても、話すこと(発語)は、歌うこと(発声)をベースとしていることがわかります。このことからも、失語症へのリハビリとして、歌うことが注目されています4)。また、このことから、外国語を話せるようになるためには、まずその外国語の歌を歌うと学習の効果が上がりそうです。なお、歌の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 2

いつ言葉は生まれたの?発語(発声学習)のメカニズムは、発音(音素)を聞き分ける、発音(音素)をまねることであることがわかりました。そして、進化の歴史上、発語は歌うことの後に生まれたことがわかりました。それでは、いつ言葉は生まれたのでしょうか?その答えは、約20万年前(厳密には20万年前から約15万年前までの間)と考えられています。この根拠は、主に3つあります5)。(1)現生人類が誕生した時期1つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生した時期です。遺跡の発掘調査から、現代人と解剖学的にほぼ同じ骨格のサピエンスの化石で最も古い年代は約20万年前であることが定説となっています。なお、モロッコで出土した初期サピエンスの化石の年代が約30万年前であることが2017年に判明しましたが、頭蓋骨の形状が現生サピエンスとはやや異なっていた点で、言葉を持たなかったと推測されています。(2)現生人類がアフリカ内で拡散し始めた時期2つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカ内で拡散し始めた時期です。古代ゲノム学の研究から、サピエンスが誕生地の東アフリカからアフリカの各地に拡散したなかで最も古い時期が、サピエンスの誕生と同じ時期の20万年前であることがわかっています。また、アフリカ内での人種分岐は14万年前~13万年前であることがわかっています。言葉の出現が、高度な道具の発明を可能にして拡散を促進した可能性が示唆されます。逆に、拡散が始まった時点で、まだ言葉(言語併合)が生まれていなかったとしたら、そのまま言葉を持たない文化の部族や人種が存在してもいいことになります。しかし、そのような部族は現存していません。もちろん、そんな部族はすでに絶滅した可能性も考えられます。(3)現生人類に「言語遺伝子」があること3つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)に「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)があることです。実際の臨床では、この遺伝子の変異によって発達性言語障害を引き起こすことがわかっています。これは、全般的な知的能力に問題はないのに、言語能力に限って著しい困難があることです。なお、古代ゲノム学の研究によって、約4万年前までサピエンスと共存していたネアンデルタール人とデニソワ人(この2つの人類亜種の共通の祖先は約80万年前にサピエンスと分岐)も、このFOXP2遺伝子を持っていることが判明し、言葉を話していた可能性が考えられていました。しかし、転写因子の結合に影響を与える置換が違うことが指摘されたことで、この遺伝子の発現の調節がうまくいかず、やはり言葉を話せなかったと推定されるに至っています。彼らは、言葉が生まれなかったことで、高度な道具を発明することができず、約7.5万年前に主たる出アフリカによって急激に増えたサピエンスとの生存競争に負けた(多少の異種交配はありつつも)と考えられています。ちなみに、「言語遺伝子」(FOXP2)の突然変異は、約6千万年前からの哺乳類の進化の過程で3回、そのうち2回は人類が誕生してからであることがわかっています6)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 3

どうやって言葉は生まれたの?言葉が生まれた時期が、約20万年前(~約15万年前)であることがわかりました。それでは、どうやって言葉は生まれたのでしょうか? ここから、発語(発声学習)が生まれた要因を主に2つに分けて迫ってみましょう。なお、厳密に言えば、言葉は、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、発語にフォーカスしています。(1)うまい歌声を出す人類が歌うようになってから、歌の良し悪しによって結婚相手に選ばれるかが決まったのでしょう。つまり、より良い歌声を持つ人が選ばれ子孫を残すという淘汰圧がかかりました。こうして、喉・口・舌などの声道(発声器官)の構造が進化しました。さらに、この進化に連動して、それらを司る脳内の運動性言語(前頭葉のブローカー野)が進化しました。1つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を出すことです。これが結果的に、小鳥のさえずりのように、多様な音素の発声をもたらしたのです。まず、舌や唇の位置取りによって子音が生まれたのでしょう。さらに、声道内の2つの違う音(周波数)の共鳴ができるようになって母音(共鳴音)が生まれたのでしょう。これらの子音と母音の組み合わせが、発語の起源なのです。また、人類は、共鳴音をより安定させるため、つまりより美しい歌声を出すために、進化の過程で声帯にある声帯膜と声帯嚢を消失させたと考えられています7)。これらは、チンパンジーなどの類人猿には存在する器官です。これらが存在することで、声帯の振動が不規則になり、彼らは逆にガラガラ声やかすれ声などのより「汚い」唸り声を大音量で出して、天敵や恋敵を威圧することができます。つまり、類人猿は安定しないけれど大音量の音源(声帯)で声を出すのに対して、人類は大音量ではないけれど安定した音源(声帯)で声を出すように進化したのでした。そもそも、人類は集団で天敵に対抗するようになったため、個人で大声や唸り声を出す必要がなくなっていたのでした。なお、発声学習が人間よりも進化している動物は、オウムやインコなどです。これらの喉には、鳴管という発声器官があり、人間の言葉(音素)をまねて自由自在に「オウム返し」をすることができます。この声まねは、天敵から身を守る擬態の一種と考えられています。(2)うまい歌声を聞き分ける歌う人類が増えるということは、当然ながらその歌を聞き取れる人類も増えます。ということは、歌の良し悪しがわかる人がより良い歌声を持つ人を結婚相手に選ぶでしょう。つまり、「良い声」を聞き分ける「良い耳」を持つ人が子孫を残すという淘汰圧がかかりました(共進化)。共進化とは、1つの機能(生物学的要因)が別の機能に影響を及ぼして共に進化していくことです。こうして、耳(聴覚器官)の構造が進化しました。この進化に連動して、それらを司る脳内の感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)が進化しました。2つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を聞き分けることです。これが結果的に、多様な発音(音素)の識別をもたらしたのです。さらには、声の主を聞き分けることも進化したでしょう。これは、単に声の高さ(音高)によって男性か女性か子供かを聞き分けるだけでなく、母音の発音(共鳴音の音素)によって特定の誰かを聞き分けることです。なぜなら、集団生活をするなか、夜中や洞窟の中などの暗闇で頼りになったのは、顔や姿ではなく、単なる唸り声(音高)でもなく、かけ声(共鳴音の音素)だったと考えられるからです。これが、声認識(声紋)の起源です。たとえば、歌詞のないハミングよりも歌詞のある歌のほうが、声当ての正答率は明らかに高いでしょう。後編では、発声学習のメカニズムと起源を踏まえて、音感について掘り下げます。そして、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を考えます。1)「言語の獲得・進化・変化」P86、P198:遊佐典昭、開拓社、20182)「昔の人は「はは(母)」をどう発音したか?」:2015年3)「こころと言葉」P30:長谷川寿一、東京大学出版会、20084)「歌うことは脳卒中後の失語症からの回復に役立つ可能性」:ケアネットHealthDay news、20235)「言語の獲得・進化・変化」P188、P189、P199:遊佐典昭、開拓社、20186)『「つながり」の進化生物学』P95:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20137)「特集 鳴く動物 話すヒト」P34:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社<< 前のページへ■関連記事アンパンマン【その顔はおっぱい?】映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

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5月4日 ゴーシェ病の日【今日は何の日?】

【5月4日 ゴーシェ病の日】〔由来〕非常にまれな疾患であるゴーシェ病を、多くの人に知ってもらうことを目的に同疾患の啓発活動や患者の早期の診療への活動を行っている「日本ゴーシェ病の会」が制定。同会の活動開始日(2015年)と「ゴ(5)ーシ(4)ェ」と読む語呂合わせからこの日になった。関連コンテンツゴーシェ病【ダイジェスト版】ゴーシェ病【希少疾病ライブラリ】早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

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女性の認知症、出産回数・初産年齢との関連は弱い

 出産回数の多さや初産の年齢の高さが女性の認知症リスクと関連しているとされ、妊娠に伴う生理学的な変化への曝露と説明されてきた。しかし、社会経済学的およびライフスタイルの要因が関連しているとも考えられ、男性でも同様のパターンがみられる可能性がある。デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らは、女性の出産回数の多さや初産の年齢の高さと認知症リスクとの関連性について、男女両方に当てはまるかを検討した。その結果、子供の数や親になる年齢と認知症リスクとの関連性が男女間で同様であることから、社会経済学的およびライフスタイルの要因が認知症リスクと関連している可能性が示唆された。BMC Neurology誌2023年3月1日号の報告。 対象は、1994~2017年にデンマークで40歳以上であった女性(222万2,638人)および男性(214万1,002人)。Cox回帰を用いて、子供の数および初産の年齢と認知症リスクとの関連を男女別に評価した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の認知症発症は女性8万1,413人、男性5万3,568人、診断時の年齢中央値は女性83.3歳、男性80.3歳であった。・子供が2人以上の家庭は、子供1人の家庭と比較し、男女ともに全体的な認知症リスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]範囲:0.82~0.91、p difference men vs.women=0.07)。・子供がいない場合の全体的な認知症リスクとの関連性は、男性と女性で統計学的な差が認められたが、その違いはわずかであった(男性のHR:1.04[95%CI:1.01~1.06]、女性のHR:0.99[95%CI:0.97~1.01]、p=0.002)。・親になる年齢と全体的な認知症リスクとの関連性も男女間で類似していたが、40歳以上の高齢での初産の場合は例外的であった(男性のHR:1.00[95%CI:0.96~1.05]、女性のHR:0.92[95%CI:0.86~0.98]、p=0.01)。・認知症のサブタイプと発症時期によるサブグループ解析では、いくつかの例外を除き、パターンおよび効果の大きさ(effect magnitude)は、男女間で同様であった。・通常の妊娠による生理学的な変化よりも、ライフスタイルや社会経済学的な要因が認知症リスクと関連している可能性が高いことが示唆された。

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ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。 中国・華中農業大学のXuan Xu氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により個人の脳の回復力レベルは特徴付けられるか、ミトコンドリア関連遺伝子座がPRSのパフォーマンスを改善し、アルツハイマー病の予防や診断において信頼性の高い指標となりうるかを調査した。その結果、脳の回復力を特徴付けるPRSの能力が確認され、さらに、いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力の評価におけるPRSのパフォーマンスが向上する可能性が示唆された。Journal of Advanced Research誌オンライン版2023年3月14日号の報告。 探索サンプル1,550件および独立した検証サンプル2,090件を用いて、生物学的および統計学的側面からミトコンドリア関連遺伝子座を含む9種のPRSを構築し、それらをゲノムワイド関連解析(GWAS)から得られた既知のアルツハイマー病リスク遺伝子座と組み合わせた。個人の脳の回復力レベルは、8つの病理学的特徴を用いた線形回帰モデルにより包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRSは、脳の回復力レベルを特徴付けることが確認された(ピアソン相関検定:Pmin=7.96×10-9)。・少数のミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むと、PRSモデルのパフォーマンスを効率的に改善できることが示唆された(P値改善範囲:1.41×10-3~6.09×10-6)。・いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力を評価する際のPRSパフォーマンスが有意に向上する可能性が示唆された。・脳の回復力に重要な役割を果たしている可能性があるミトコンドリアを標的にすることにより、アルツハイマー病の予防や治療の新たな可能性につながることが示唆された。

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ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 イスラエル最大の医療保険組織Clalit Health Services(CHS)のデータベースより、患者データを収集した。各被験者について、調査期間中(2002~19年)の利用可能なすべての25(OH)D値を取得した。認知症の発症率は、25(OH)Dレベルの異なるカットオフ値で比較した。 主な結果は以下のとおり。・本コホート研究の対象は、患者4,278例(女性:2,454例[57%])であった。・フォローアップ開始時の平均年齢は、53±17歳であった。・17年間のフォローアップ期間中に認知症と診断された患者は133例(3%)であった。・完全に調整された多変量解析では、血清25(OH)Dの平均値が75nmol/L未満(ビタミンD欠乏)の患者は、同75nmol/L以上(基準値)の患者と比較し、認知症リスクが約2倍高かった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:1.0~3.2)。・ビタミンDの欠乏(77 vs.81、p=0.05)および不足(77 vs.81、p=0.05)が認められる患者は、基準値の患者と比較し、より若年で認知症と診断された。

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大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

 黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。 なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。 長期的にはPM2.5も黄砂も中国では減少傾向にあることも押さえておこう。一方でPM2.5は地球全体では工業化と共に増えている。 本研究は、これまでの大気汚染と認知症発症の報告のメタアナリシスであり、関連があると結論している。2μg/m3増加当たりのハザード比は全体では1.04(95% CI:0.99~1.09)と一見とても小さい。 しかし環境汚染と健康の研究では大体これくらいである。大気汚染による心血管疾患等で世界では年間700万人近くが死亡しているという報告もある1)。そして、その多くは発展途上国である。 とはいえ、このような研究ではバイアスの問題が難しい。そもそも認知症の診断技術は一貫して上がっており、診断は増えている。また大気汚染区域に住む人は貧困や学歴資本の少ない人が多い可能性があり(日本ではそのような可能性があるのかどうかは知らない)、これら自体が認知症発症リスクである。この論文はバイアスを厳密に評価したところも特徴である。 また認知症発症についても、個別に確認しているもの(Active Case Ascertainment)もあれば、保険データなどを使っているもの(Passive Case Ascertainment)もある。前者は信頼性が高いが、nは少なくなるし、後者はnが大きいが、やや雑なデータと言えよう。筆者によると前者のハザード比である1.42(95%Cl:1.00~2.02)が信頼できるのではと言っている。 いずれにせよ、結論としては、大気汚染は認知症発症とも関連する可能性が高そうである。きれいな空気が頭にも体にもよいというのは、われわれの直感とも一致する。 最後は精神科的な意見で終わっておこう。認知症リスクも増えるのだからクリーンエネルギーにしないといけません、と安易に言ってしまうと、「だからどうした」「それは意識高い系のたわごとだ」「フェイクニュースだ」「自分は石炭産業で食ってるんだ」「先進国はさんざん好き放題やってきて、いまになって上から目線だ」といった反論が来そうである。科学とは別の次元の二項対立は避けつつも、こうやって科学論文にすることに大きな意味がある。残念ながら人々が豊かな生活を夢見て行う古典的工業活動が大気汚染を起こし、大気汚染によってさまざまな病気(呼吸器系や心血管系)が増えているうえに、認知症までも増えるという事実を静かに噛みしめたい。

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特殊詐欺とヒトの心理【外来で役立つ!認知症Topics】第4回

先日、弁護士たちと飲み会をした。その席で、お互いに関係しそうな今日の話題「特殊詐欺」に話が及んだ。「特殊詐欺は不安をあおる心理学作戦に立つ犯行だ。うまくいけば、犯人には濡れ手に粟ながら、このような作戦にはオリジナリティがいる。それだけにネタは限られ、簡単ではない。しかも募集によって、初めて会った悪者同士がチームプレーをせねばならない。それだけに連携ミスにつながりやすい。だから、この種の特殊詐欺から、今流行りの単純な強盗へとシフトする悪者グループが生まれる」とある弁護士が言った。これを受け、私はやられてしまう被害者の心理背景を考えてみた。古典的な詐欺と新手の詐欺の違いとは?オレオレ詐欺などの古典的な特殊詐欺の幕開けは、驚愕とともに恐れや不安といった被害者の基本情緒が揺り動かされることにある。オレオレに限らず、始まりは預貯金、キャッシュカード、架空料金請求など、どれにも共通だろう。逆に、新手とされる国際ロマンス詐欺は恋愛にもうけ話がミックスした、いかにもおいしそうな騙しのストーリー展開である。同じく新手とされる高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺は、「この儲け話には特殊な背景があるから確度が高い」と騙す。また以前からあるのだが、コロナ禍で有名になったものに還付金詐欺がある。これらはどれも時宜を得た話題に儲けを結びつけた話を、いわば理論武装してヒトの欲を誘う。ヒトの情緒形成の初期に芽生える「快」・「不快」さてこれらに共通する心理学的要因を考えてみた。ブリッジェス(K. M. B. Bridges)という学者が提唱した情緒の分化樹形図という有名な説がある。その説では、生まれ、成長していく過程において、情緒はより高度なものへと分化していくと考える。2歳までに基本的な情緒の細分化がみられ、5歳頃には成人と同等の情緒が形成される。具体的には、新生児期の情緒は「興奮」のみだが、その後「快」・「不快」という2大情緒に分化する。そして生後数ヵ月で「不快」から恐れや怒りが分化してくる。すなわち、恐れは「不快」の大本からでた最初期の枝である。そしてこれは本来、危機回避のためにヒトに備わっている本能的な感情だと言われる。一方で「快」からは、早々に得意とか愛情が分化してくる。つまりこれらは、「快」の大本から出た初めの枝である。図1 情緒の分化樹形図画像を拡大する老化しようと認知機能が衰えようと、最初期にできたものは頑強で最後まで残ることは、情緒に限らずヒトの機能の多くに共通である。つまりオレオレ詐欺系は、「不快」から分化してヒトに根本的で強い「恐れ」に対する強烈なパンチから始まる。これはある意味わかりやすい。逆に新手のもうけ話は、「快」から早々に分化した得意とか愛情という、これも根強い原始情緒に結び付いている。たとえば、国際ロマンス詐欺は「快」が分化した愛情を突くものだろう。また高級ブランド詐欺や海外投資の詐欺などは「快」から分化した「得意」の情緒を満たしてくれるものかもしれない。「欲」と「孤独感」という弱点を突く詐欺ところでヒトには52種類の感情があるとされるが、何故かその中に「欲」がない。たとえば愛情や金銭に絡めて「…が欲しい」という情や心の方向性が「欲」だろう。心理学とは無縁そうだが、井原 西鶴は代表作『好色一代男』において「人間は、欲に手足の付いたる物ぞかし」と述べている。確かに、欲はこうした詐欺を考える上でも不可欠な視点である。要するに、オレオレ系に対しては、家族の安全や財産等を失いたくないという守りの欲が働く。また新手詐欺系では、もてる、儲かるなど、「もっともっと」の欲が刺激される。さて高齢者の心理特性の一つは孤独感だと思う。この孤独感は不安や恐れと強く結び付いているだろう。それだけにこの不安や恐れにいきなりパンチが当てられると、大概の高齢者は平常心を失うだろう。また、一見裏腹に見えるかもしれないが、新手詐欺もこの孤独感とのリンクがありそうだ。というのは、愛情や得意というのは、孤独下にあれば、一番得難いものだろう。新手詐欺は、そこに餌を垂らす犯罪だと考えれば、これもまた高打率のだましにつながるのだろう。特殊詐欺の被害者の9割弱が高齢者だとされる。これは認知機能低下の故ではないだろう。むしろこの孤独感が大きな原因だと考える。一方、少なくとも私の経験では、認知症の人はこうした特殊詐欺には引っかからない。というのは、犯人が繰り出す手口は、当事者にとっては難しすぎて、とても彼らの指示に従うことはできないだろう。実際のところ、やられてしまうのは、電話勧誘販売や家庭訪販(自宅を訪問して、商品やサービスなどを勧める商法)とかテレビショッピングという古典的で単純なものである。私が経験した限りでは、こうした状況で気安くサインをしたり、電話で注文したりすることでやられてしまうのである。

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片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは?

 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。 反復性(EM)または慢性(CM)の片頭痛を有する日本人の成人患者および片頭痛を治療する医師を対象に、オンラインによる離散選択実験(DCE)を実施し、自己注射可能なCGRP mAbのAI製剤と非CGRP経口剤の2つについて好ましい仮説的な治療法を選択するよう依頼した。治療法は7つの治療属性で記述され、質問ごとに属性レベルは異なっていた。CGRP mAbの治療プロファイルの相対帰属重要度(RAI)スコアおよび予測選択確率(PCP)を推定するため、ランダム定数ロジットモデルを用いてDCEデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する601人(EMの割合:79.2%、女性の割合:60.1%、平均年齢:40.3歳)および医師219人(平均勤続年数:18.3年)がDCEを完了した。・患者の約半数(50.5%)がCGRP mAbのAI製剤を支持しており、他の患者は同製剤に懐疑的(20.2%)または嫌悪感(29.3%)を示していた。・患者が最も重視した項目は、針の除去(RAI:33.8%)、注射時間の短縮(同:32.1%)、オートインジェクターの形状および皮膚圧迫の必要性(同:23.2%)であった。・多くの医師(87.8%)は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好んでいた。・医師が最も重視した項目は、投与頻度の少なさ(RAI:32.7%)、注射時間の短縮(同:30.4%)、冷蔵庫外での保管期間の延長(同:20.3%)であった。・治療プロファイルは、ガルカネズマブ(PCP:42.8%)が、エレヌマブ(同:28.4%)およびフレマネズマブ(同:28.8%)より、患者に選択される可能性が高かったが、医師の評価では3製剤のプロファイルのPCPは同程度であった。

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