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アトピー性皮膚炎は小児の学習・記憶に影響するか?

 米国で行われた横断研究において、アトピー性皮膚炎を有する小児は、学習障害と記憶障害が報告される割合が高いことが示唆された。ただし、その関連性は、主に注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症といった神経発達症を併存する子供に限定されることも示された。米国・メリーランド大学医学校のEmily Z. Ma氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年3月6日号で報告した。先行研究でアトピー性皮膚炎は小児の認知機能障害と関連することが示唆されているが、それらの研究では認知機能の評価を、症状ではなく神経発達の診断で代用している。したがって、アトピー性皮膚炎の小児が、認知機能障害のリスクが高いかは不明であった。著者は、「今回の結果から、アトピー性皮膚炎を有する小児の認知機能障害に関するリスク分類を改善できる可能性があり、アトピー性皮膚炎と神経発達症がある小児では認知機能障害の評価を優先すべきであることが示唆された」と述べている。 研究グループは、米国の小児を対象とした横断研究を実施し、アトピー性皮膚炎と認知機能に関する症状(学習障害や記憶障害)との関連性を評価した。また、その関連性が神経発達症の併存(ADHD、発達遅延、限局性学習症)の有無によって異なるか調べた。対象は知的障害または自閉症を有さない17歳以下の小児とし、US National Health Interview Survey 2021のデータを用いた。 アトピー性皮膚炎の定義は、現在診断されているか、以前に医療の専門家によって医学的に確認されたことがある場合とした。学習や記憶の障害は、小児の保護者の報告に基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・加重合計6,973万2,807例のうち、922万3,013例(13.2%)がアトピー性皮膚炎であった。・アトピー性皮膚炎を有する小児は、アトピー性皮膚炎を有さない小児と比べて学習障害(10.8%[95%信頼区間[CI]:7.8~15.8]vs.5.9%[5.1~6.9]、p<0.001)、記憶障害(11.1%[8.0~15.9]vs.5.8%[4.9~6.9]、p<0.001)がより多くみられる傾向があった。・多変量ロジスティック回帰モデル(社会人口学的要因、喘息、食物アレルギー、季節性アレルギーや花粉症で調整)において、アトピー性皮膚炎を有する場合、学習障害(調整オッズ比[aOR]:1.77、95%CI:1.28~2.45)、記憶障害(1.69、1.19~2.41)がみられる割合が高かった。・神経発達症の有無による層別解析では、アトピー性皮膚炎は、何らかの神経発達症がある小児の記憶障害がみられる割合が2~3倍高く(aOR:2.26、95%CI:1.43~3.57)、ADHD(2.90、1.60~5.24)、限局性学習症(2.04、1.04~4.00)がある小児でも記憶障害がみられる割合が高かった。・一方で、神経発達症のない小児においては、アトピー性皮膚炎は学習障害や記憶障害との関連は認められなかった。

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第206回  ALS女性患者嘱託殺人裁判が改めて問う、積極的安楽死が日本で認められるための条件

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンが始まりました。米国MLBでは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷 翔平選手の元通訳、水谷 一平氏の違法賭博問題はまだ収束の兆しが見えず、大谷選手にも疑惑の目が向けられているようです。セントルイス・カージナルスとの開幕4連戦も打率2割6分9厘、ホームランなしと湿った成績で、賭博問題が少なからず影響している気もしました。私はといえば、金曜日の神宮球場のNPB開幕戦、東京ヤクルトスワローズ対中日ドラゴンズを観戦に行ってきました。昨シーズン、“令和の米騒動”で話題となったドラゴンズの視察です。巨人から移籍した中田翔選手のホームランは見ごたえがあったのですが、若手中心の野手陣の守備がひどく(とくにクリスチャン・ロドリゲス内野手)、今年もAクラス入りは厳しいのではと感じた次第です。さて、今回は、判決から少々時間が経ってしまいましたが、ALSの女性患者に対する嘱託殺人罪や別の殺人罪に問われた医師、大久保 愉一被告(45)の裁判員裁判の判決公判が3月5日にありましたので、判決文の内容を紹介しつつ、この事件について改めて書いてみたいと思います。判決で川上 宏裁判長は、嘱託殺人について、「被告人は、医師でありながら、被害者とのSNS上での短いやり取りのみでその嘱託に応じ、診察や意思確認もろくにできないわずか15分程度の面会で軽々しく殺害に及んでいる。130万円の報酬の受領を持って行動に移していることも併せて考慮すれば、被告人が、真に被害者を思って犯行に及んだとは考え難く、利益を求めた犯行であったといわざるを得ない。(中略)被告人の生命軽視の姿勢は顕著であり、強い避難に値する」として、懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡しました。大久保被告は共犯者である山本 直樹被告(46)とその母と共謀し山本被告の父親を殺害したとする殺人罪にも問われていましたが、この判決で共犯が認められました。なお、大久保被告の弁護側は3月18日、懲役18年とした京都地裁判決を不服として控訴しました。「死を望む女性患者の自己決定権を保障する憲法13条に違反する」と弁護側は主張ALSの女性患者の嘱託殺人については、本連載でも何度か取り上げてきました。事件発覚当初の2020年8月には、「第17回 安楽死? 京都ALS患者嘱託殺人事件をどう考えるか(前編)」、「第18回 同(後編)」で、日本における積極的安楽死の罪の根拠となっている1991年に起きた「東海大学安楽死事件」と 1998年に起きた「川崎協同病院事件」について振り返り、ある有識者の「(この事件は)安楽死議論の対象にもならない」というコメントを紹介しつつ、「果たして本当にそうでしょうか。少なくとも、医療関係者も目を逸らしてきた、積極的安楽死についての議論を再開するきっかけにはなると思うのですが、どうでしょう」と問い掛けました。そして裁判が始まった直後の今年1月には、「第195回 ALS患者嘱託殺人、主犯とされる医師の裁判員裁判始まる、被告は『願いをかなえるためにやった』と証言」において、「嘱託殺人罪の適用を『死を望む女性患者の自己決定権を保障する憲法13条に違反する』とする弁護側の主張が、どこまで通るのかが裁判のポイントになりそうです」と書きました。13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「個人が生存していることが前提」大久保被告が憲法13条に違反することを根拠に無罪を訴えていたことに対し、川上裁判長は、同条に書かれている生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は、「個人が生存していることが前提であると解釈されることなどからすれば、たとえ恐怖や苦痛に直面している状況であったとしても、憲法13条から直ちに『自らの死を援助してくれる医療従事者がいる場合に、その医療従事者が刑事罰から免れるように求める権利』などが導き出されるものではない。したがって、憲法13条違反を直接的な理由・根拠として本件に嘱託殺人罪を適用しないとの結論を採用することはできない」と断じました。患者の症状の判断や、本人や家族等への説明や意思確認など詳細な手順を明示今回の事件、起こった当初は「安楽死議論の対象にもならない」との批判もありましたが、京都地裁判決では、嘱託殺人罪を問わない要件を細かく明示しており、その点では議論が半歩くらいは進んだ、と言えるでしょう。判決では、「死期が間近に迫り、耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいる患者や、本件の被害者のように、現代の医学では病状の進行を止めることができず、迫り来る死や、自立的な意思伝達手段の喪失のおそれに直面して日々恐怖に怯えたり、絶望したりしつつも、身体的な自由がきかないことで自殺することもままならないような患者」の存在について言及、そうした患者からの嘱託についても例外なく嘱託殺人罪を当てはめてしまえば、患者らの嘱託に応えようとする医療従事者は現れず、患者らに耐え難い苦痛や恐怖・絶望を強いることになり酷であるとして、「可罰的違法性がないとして嘱託殺人罪に問うことが相当ではないと評価される事案の存在はあり得る」としました。しかし、そのためには、少なくとも、「(1)上記のような状況下にある患者らに対し、その病状による苦痛等の除去・緩和のために他に取るべき手段がなく、かつ、患者が自らの置かれた状況を正しく認識した上で、自らの命を絶つことを真摯に希望するような場合に、(2)医療従事者が、1)医学的に行うべき治療や検査等を尽くし、他の医師等の意見等も徴して、患者の症状をそれまでの経過等も踏まえて診察し、死期が迫るなど現在の医学では改善不可能な症状があること、それによる苦痛等の除去・緩和のために他に取るべき手段がないことなどを慎重に判断し、2)その診察・判断を基に、患者に対して、患者の現在の症状や予後を含めた今後の見込み、取り得る選択肢の有無等について可能な限り説明を尽くし、それらについての正しい認識に基づいた患者の意思を確認するほか、患者の意思をよく知る近親者や関係者等の意見も参考に、患者の意思の真摯性及びその変更の可能性の有無を慎重に見極めた上で、3)患者自身の依頼を受けて、苦痛の少ない医学的に相当な方法を用い、4)事後検証可能なように、それら一連の過程を記録化することなどが最低限必要であるというべきである」――としました。1991年「東海大学安楽死事件」で横浜地裁判決が示した積極的安楽死が許容されるための4要件「安楽死」については、回復が見込めない患者の死期を医師が薬剤を使用するなどして早める「積極的安楽死」と、終末期の患者の人工呼吸器や人工栄養などを中止する「消極的安楽死」の2つの概念があります。前者の「積極的安楽死」は、現在の日本においては今回の裁判のように、嘱託殺人罪や殺人罪などに問われることになります。積極的安楽死の罪の根拠となっているのは、1991年に起きた「東海大学安楽死事件」と 1998年に起きた「川崎協同病院事件」です。東海大学安楽死事件では、家族の要望を受けて末期がんの患者に塩化カリウムを投与し、患者を死に至らしめた医師が殺人罪に問われました。1995年、横浜地裁は、被告人を有罪(懲役2年執行猶予2年)とする判決を下しました(控訴せず確定)。患者自身による死を望む意思表示がなかったことから、罪名は嘱託殺人罪ではなく、殺人罪になりました。この判決では、医師による積極的安楽死が例外的に許容されるための要件として、1)患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと4)生命の短縮を承諾する患者の意思表示が明示されていることという4つの要件が提示されました。フランスは「死への積極的援助」を導入する法案を発表今回の京都地裁判決は、日本において積極的安楽死が認められる要件をさらに詳細に定めたとも言えるでしょう。「東海大学安楽死事件」の横浜地裁判決で示された積極的安楽死が例外的に認められる4要件に加えて、医療従事者が具体的にどのような手順を踏むべきかをより具体的に示したからです。もっとも、患者の症状の判断や、本人や家族等への説明や意思確認など、相当厳格かつ慎重な手順を踏まなければならず、実際の臨床の現場で実行に移されるかどうかは未知数です。ALS女性患者嘱託殺人裁判の判決が出た1週間後の3月12日、共同通信は「フランスのマクロン大統領は3月11日までに、終末期患者に厳格な条件の下で致死量の薬の投与を認める『死への積極的援助』を導入する法案を発表した」と報じました。自身で死を決断できる能力があり、短期・中期的に死の恐れがある重病に冒され、苦痛を和らげることができない成人に限って安楽死を認めるという法案です。5月から議会で審議するとしています。報道によれば、フランスでは2016年に終末期患者の意識を低下させる鎮静薬投与を医師に認める法律が成立したものの、オランダなどで認められた患者の意思により医師が薬物などで死に導く安楽死や、スイスで認められているような医師が処方した薬物を患者が自ら使用する自殺ほう助はまだ禁じられています。今回の「死への積極的援助」を導入する法案はそうした現状を打破するためのものと言えそうです。オランダ、スイス、そしてフランスなどの安楽死容認に向けての動きが、今後、日本における積極的安楽死の議論にどう影響してくるかが注目されます。

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85歳以上のアルツハイマー病患者の認知機能に関連する因子と脳画像の特徴

 85歳以上の超高齢者のアルツハイマー病における認知機能低下の根底にある病態生理学は、これまで明らかになっていない。総合東京病院 認知症疾患研究センターの羽生 春夫氏らは、超高齢者のアルツハイマー病における認知機能に関連する因子と脳画像の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2024年3月15日号の報告。 対象は、アルツハイマー病の可能性のある連続した外来患者456例(男性:145例、女性:311例、年齢範囲:51~95歳)。対象者は、74歳以下、75~84歳、85歳以上のサブグループに分類した。人口統計学的要因(教育レベル、初診時の罹病罹患、BMI、併存疾患、フレイル、余暇活動など)、画像検査の特徴(内側側頭葉の萎縮、白質病変、梗塞の重症度、脳低灌流の頻度など)の違いをサブグループ間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・85歳以上の群は、若年群と比較し、次の特徴が認められた。 ●罹病期間が長い ●教育レベルが低い ●フレイルがより重症 ●余暇活動が少ない ●認知機能障害の悪化 ●認知機能低下の進行が遅い傾向 ●内側側頭葉の萎縮がより大きい ●重度の白質高信号領域 ●重度の梗塞 ●脳低灌流の頻度が低い・脳画像のサブタイプに関しては、85歳以上の群は、若年群と比較し、大脳辺縁系優位サブタイプの患者が有意に多く、海馬温存サブタイプの患者が少なかった。 著者らは「85歳以上のアルツハイマー病患者は、より若年のアルツハイマー病患者と異なる特徴を示すことが明らかとなった。この結果は、アルツハイマー病の病態を理解し、臨床診断や適切なマネジメント方法を決定するうえで、有用であろう」としている。

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新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

 イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。 対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。 まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。 さらに詳しく認知機能を見てみると、記憶、抽象思考、空間操作が新型コロナウイルスの影響が出やすい領域のようだ。抽象思考とは「高い/低いに対して速い/遅い。では、人間/猿に対して速い/遅いは正しい?」みたいな課題をさせられる。空間操作はロンドン塔ゲームをさせられる。なかなか大変である。また主観的な記憶の障害や、いわゆるブレインフォグを訴えている人は、直後再生、抽象思考、空間記憶に特に低下があるようだ。これらの症状は、「頭が回らない」というような表出がなされることが多いため、納得の結果であろう。 この研究が(あえて?)触れていないことにも触れておく。この研究の枠組みでは分析のしようもないが、認知機能は精神状態の影響を大きく受けることは指摘しておきたい。長期的に症状に苦しんでいる人(例えば息苦しさが続き生活や仕事に支障が出ている)では、当然の反応として抑うつ的になり、結果的に一時的に認知機能が低下している可能性があるだろう。あるいは、未知の感染症が世界を襲い多くの人が死んでいる中で感染した場合には、心的影響が大きく、やはり認知機能への影響が軽微に残っている可能性は十分にあるだろう。 最後に、新型コロナウイルスについて発言するのはとても難しいが、これを読んでいる人には、将来精神科領域で働くことを検討している人もいるだろうから、一人の精神科医にはパンデミックがどのように見えていたのかを記して、精神科医的な思考を体験していただこう(以下は筆者個人の意見であり、いかなる所属組織とも関係ない)。 パンデミックの初期は「人類はまた新しい感染症に遭遇したが、医学の進んだ現代でよかった」と認識していた。一方でそう語ると、『世界が破滅するかもしれない』と興奮している人達とは、会話にならないこともわかっていた。 さらに高齢者施設で感染が広がり、高齢者は面会が禁止され、認知機能低下が進んだ。高齢者施設で働く人への偏見も助長された。この時には「そもそも高齢者施設では毎年インフルエンザで感染対策を繰り返していたのに、一般の人は全く知らなかったんだな」と悲しくなったが、真面目にやれば感染は防げると思いこむクレーマーの人とはわかりあえないだろうとあきらめていた。 さて、現在は明らかに弱毒化しているが、患者さんは元気に歩き回るから、逆に感染コントロールが難しくなっている。引き続き淡々と注意が必要だ。 今後はいつかエボラ出血熱のようなものが、世界的に感染を起こすことがあるだろう。その日まで私が生きていたら、その時こそ本当に恐怖を感じることだろう。 とまあ、こんなふうに見てきた。精神科医になるということは、様々な主観世界を生きる人々と出会い、その世界を冒険することにほかならない。例えば統合失調症の症状に「世界没落体験」というのがあり、世界の終末を主観的には生きている人と話したこともある。このような仕事をしていると、執着が減り、先入観から徐々に自由になり、何が起きても淡々と対応できるようになってくる。あくまで個人的な意見だが、新型コロナウイルス感染症の社会的パニックにおいて、もっとも傷を負わなかったのは精神科医かもしれない。

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降圧薬治療による認知症リスク低下、超高齢やフレイルでも

 降圧薬治療で認知症リスクが低下するというエビデンスはあるが、これが一般集団の高齢者にも一般化できるかは不明である。今回、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らが、一般集団の高齢者において、新たに降圧薬の服用を開始した患者について検討したところ、降圧薬治療と認知症リスクの低下の関連が示唆された。また、この関連は超高齢(85歳以上)やフレイルの患者でも同様であったという。Journal of the American College of Cardiology誌2024年4月2日号に掲載。 本研究はネステッドケースコントロール研究で、2009~12年に降圧薬の服用を開始したイタリア・ロンバルディア州の65歳以上の21万5,547例のコホートで実施した。ケースは、追跡期間中(2019年まで)に認知症またはアルツハイマー病を発症した1万3,812例(年齢:77.5±6.6歳、男性:40%)で、各ケースに対して性、年齢、臨床状態をマッチさせたコントロールを5例ずつ選択した。降圧薬への曝露は、降圧薬服用が追跡期間に占める割合で評価した。また、条件付きロジスティック回帰を用いて降圧薬への曝露に関連する転帰リスクをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・降圧薬への曝露は認知症リスクと逆相関していた。・曝露が非常に少ない患者と比較して、曝露が少ない患者で2%(95%信頼区間:-4〜7%)、中間的な患者で12%(同:6〜17%)、多い患者で24%(同:19〜28%)のリスク低下がみられた。・これは、超高齢(85歳以上)やフレイル(「1年後の死亡リスクが高い」特徴を有する)の患者においても同様であった。

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血管内血栓除去療法は大梗塞の長期予後も改善するか?(解説:内山真一郎氏)

 前回は、不可逆的な虚血コアおよび救命しうる虚血部位(ペナンブラ)と、臨床転帰および血管内血栓除去療法(EVT)の治療効果との関係を検討したPROBEデザインによる国際多施設共同介入試験SELECT2の事後解析の成績を紹介したが、今回はSELECT2試験の長期転帰を解析した結果である。これまでは、どの試験も発症後24時間までの大血管閉塞による大梗塞例にEVTが短期(多くは3ヵ月まで)の転帰改善効果があるというエビデンスであったが、長期にわたる転帰改善効果は検討されていなかった。 今回のSELECT2試験の解析により、EVTは大血管閉塞による大梗塞症例の1年後の転帰を改善する効果のあることが証明されたことになる。大梗塞による重症例は脳損傷が重いので回復にはより長期の時間を要するので、真の効果を検討するにはより長期の転帰まで追跡調査する必要があると考えられるが、EVTは短期のみならず長期の転帰も改善する効果が証明されたといえる。とはいえ、1年後の死亡率は対照群の52%より低いものの、EVT群でも45%であり、重症の大梗塞例の予後は全体として不良であることは否定できない。

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日本における認知症教育による潜在的態度の変化

 東京大学の松本 博成氏らは、成人および高齢者における認知症に対する偏見などの潜在的な態度の測定に関して、その実現可能性と妥当性を評価し、仮想現実(VR)を用いた認知症フレンドリー教育が潜在的な態度に及ぼす影響を評価した。Australasian Journal on Ageing誌オンライン版2024年2月15日号の報告。 ランダム化比較試験のデータを2次分析した。東京在住の20~90歳が、VRの有無にかかわらず、認知症フレンドリー教育に参加した。認知症フレンドリー教育プログラム終了後、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)を用いて、認知症に対するimplicitを測定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者145人中89人(61%)がIRAPを開始し、21人(15%)が完了した。・IRAPの開始/完了と有意な関連が認められた因子は年齢の低さであり、開始率50%の閾値年齢は72.3歳、完了率50%の閾値年齢は44.8歳と推定された。・家族以外の認知症患者と接触経験のある人では、経験のない人と比較し、IRAPスコアが有意に低かった。・VRプログラムに参加したグループは、対照グループと比較し、IRAPスコアが有意に低かった(p=0.09)。 著者らは「IRAPによる認知症に対する潜在的な態度の測定は、70代以上の人では実現が難しいと考えられるが、接触経験の違いが測定の妥当性を裏付けるものであろう」とし、「VRを用いた認知症フレンドリー教育は、認知症に対する偏見などの潜在的な態度を改善するうえで、有用である可能性が示唆された」としている。

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認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。 65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者は3万2,986人(平均年齢:72.6±5.4歳、男性の割合:48.4%)。・フォローアップ期間中の認知症発症率は、2.11/100人年であった。・歯の喪失は、喫煙歴ありおよび現在の喫煙と認知症発症率との関係と有意に関連していた。・喫煙歴ありおよび現在喫煙者は、非喫煙者と比較し、残存歯数が少ないNIEは、HRが1.03(95%CI:1.02~1.05)、媒介比率が18.0%であった。 著者らは「歯の喪失は、喫煙歴や現在の喫煙と高齢者の認知症リスク増加との関連を強く媒介することが示唆された」としている。

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日本人の3つの食事パターン、脳が萎縮しやすいのは?

 日本人における食事パターンと脳容積の変化の関連はほとんど調べられていない。今回、国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らが、老化に関する長期縦断疫学研究プロジェクトで日本人の中高年を前向きに調査したところ、伝統的日本食を摂取する女性は、西洋食を摂取する女性より全灰白質の萎縮が少ないことが示された。一方、男性は食事パターンと脳萎縮との関連は認められなかったという。Nutrition Journal誌2024年3月12日号に掲載。 本研究は、国立長寿医療研究センターの長期縦断疫学研究プロジェクトの第6次調査(2008年7月~2010年7月:ベースライン)から第7次調査(2010年7月~2012年7月:フォローアップ)までの2年間の追跡データを解析したもの。食事摂取量は3日間の食事記録を用いて評価し、全灰白質、全白質、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、島葉の長期的な容積変化(%)をMRI 3D-T1強調画像で評価した。多因子分析と階層的クラスタリングにより、性特異的な食事パターンが明らかになった。食事パターンと年間脳容積変化(%)との関連について、年齢、アポ蛋白E遺伝子型、肥満度、病歴、生活習慣、社会経済的因子、エネルギー摂取量で調整した一般線形モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者1,636人(40.3~89.2歳)において、男性(815人)では「西洋食」「野菜・果物・乳製品の食事」「伝統的日本食」、女性(821人)では「西洋食」「穀物・野菜・果物の食事」「伝統的日本食」のそれぞれ3つの食事パターンに分類された。・伝統的日本食を摂取している女性では、西洋食を摂取している女性より全灰白質の萎縮が少なかった。・全灰白質の年間変化率(%)の多変量調整後のβは-0.145(95%信頼区間:-0.287~-0.002、p=0.047)で、頭頂葉萎縮の減少と相関した。・男性では食事パターンと脳萎縮の関連は認められなかった。 本研究から、全粒穀物、魚介類、野菜、果物、キノコ類、大豆製品、緑茶の摂取量が多い健康的な食事パターンを守ることは、日本人の中高年女性において脳萎縮予防効果をもたらす可能性が示唆されたが、男性ではそうではなかった。著者らはこの結果から、多様な集団における食事パターンと脳の健康の関係において性差の影響が重要としている。

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早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連する脳の変化

 認知症患者の精神神経症状は、介護者の負担につながり、患者の予後を悪化させる。これまで多くの神経画像研究が行われているものの、精神神経症状の病因学は依然として複雑である。東京慈恵会医科大学の亀山 洋氏らは、脳の構造的非対称性が精神神経症状の発現に影響している可能性があると仮説を立て、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年2月23日号の報告。 アルツハイマー病患者における精神神経症状と脳の非対称性との関連を調査した。対象は、軽度のアルツハイマー病患者121例。日本の多施設共同データベースより、人口統計学的データおよびMRIのデータを収集した。脳の非対称性は、左脳と右脳の灰白質体積を比較することで評価した。精神神経症状の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いた。その後、脳の非対称性と精神神経症状との相関関係を包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・攻撃的な精神神経症状は、前頭葉の非対称性と有意な相関を示しており、右側の萎縮が認められた(r=0.235、p=0.009)。・この相関は、多重比較の調整後も統計学的に有意なままであった(p<0.01)。・事後分析において、この関連性はさらに確認された(p<0.05)。・対照的に、感情症状や無関心を含む他の精神神経症状のサブタイプについては、有意な相関が認められなかった。 著者らは「前頭葉の非対称性、とくに右側の相対的な萎縮が、早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連している可能性が示唆された」としている。

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抗精神病薬使用と認知症リスク~40万人超のプロスペクティブコホート研究

 抗精神病薬は、最も汎用されている薬剤の1つであり、認知機能低下を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、認知症リスクに対する抗精神病薬の影響に関する研究は、一貫性がなく、十分とは言えない。中国・青島大学のLi-Yun Ma氏らは、抗精神病薬使用と認知症リスクとの関係を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月15日号の報告。 英国バイオバンク参加者41万5,100例のプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、分析を行った。抗精神病薬およびさまざまなクラスの使用が認知症リスクに及ぼす影響を評価するため、多変量Cox比例ハザードモデルおよび経口抗精神病薬用量反応効果分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ調査後(平均:8.64年)、すべての原因による認知症を発症した参加者は5,235例(1.3%)であった。・主な内訳は、アルツハイマー病2,313例(0.6%)、血管性認知症1,213例(0.3%)であった。・いずれかの抗精神病薬使用により、すべての原因による認知症および血管性認知症のリスクは増加したが、アルツハイマー病リスクの増加は認められなかった。【すべての原因による認知症】ハザード比(HR):1.33、95%信頼関係(CI):1.17~1.51、p<0.001【血管性認知症】HR:1.90、95%CI:1.51~2.40、p<0.001【アルツハイマー病】HR:1.22、95%CI:1.00~1.48、p=0.051・経口抗精神病薬とすべての原因による認知症および血管性認知症のリスクとの累積用量反応関係が認められた(p for trend:p<0.05)。・本研究は、観察研究であり因果関係を示すものではない。・英国バイオバンクのデータは認知症症例数が比較的少なかったことから、抗精神病薬使用は、推定値よりも高い可能性がある。 著者らは「抗精神病薬使用により認知症発症リスクの増加が認められた。経口抗精神病薬と認知症リスクとの間には、用量反応関係が認められており、抗精神病薬の減量に対する医師および患者の意識を高めていく必要がある」としている。

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カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。 2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・データ収集が完了した対象患者は97例。・調整後の平均頭痛日数は、習慣的なカフェイン摂取のない患者20例、カフェイン摂取1~2回/日の患者65例、カフェイン摂取3~4回/日の患者12例で同様であった。【習慣的なカフェイン摂取のない患者】7.1日、95%信頼区間(CI):5.1~9.2【カフェイン摂取1~2回/日の患者】7.4日、95%CI:6.1~8.7【カフェイン摂取3~4回/日の患者】5.9日、95%CI:3.3~8.4・推定値は不正確であったものの、平均頭痛継続時間、痛みの強さにおいても、カフェイン摂取レベルによる差は認められなかった。●平均頭痛継続時間【習慣的なカフェイン摂取のない患者】8.6時間、95%CI:3.8~13.3【カフェイン摂取1~2回/日の患者】8.5時間、95%CI:5.5~11.5【カフェイン摂取3~4回/日の患者】8.8時間、95%CI:2.3~14.9●痛みの強さ【習慣的なカフェイン摂取のない患者】43.8:95%CI、37.0~50.5【カフェイン摂取1~2回/日の患者】43.1:95%CI、38.9~47.4【カフェイン摂取3~4回/日の患者】46.5:95%CI、37.8~55.3 著者らは「本研究では、習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、痛みの強さとの関連は認められなかったことから、発作性片頭痛患者に対するカフェイン摂取制限は推奨されない」としながらも、「通常のカフェイン摂取量から逸脱した場合、片頭痛発作が引き起こされるかどうかを明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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コロナによる認知障害、症状持続期間による違いは?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。イングランドの成人を対象に認知機能のオンライン評価を実施 研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。 感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。起源株感染者は、変異株感染者より認知機能障害の程度が大きい オンライン認知機能評価を開始した14万1,583例のうち、11万2,964例が評価を完了した。重回帰分析の結果、COVID-19症状が4週間未満で消失・回復した患者や12週以上症状が持続するも消失・回復した患者は、非COVID-19群(SARS-CoV-2に非感染または感染が不確定)と比較し、同程度に軽度の全般的認知機能障害を有していた(それぞれ、-0.23 SD[95%信頼区間[CI]:-0.33~-0.13]、-0.24 SD[-0.36~-0.12])。 一方、12週以上症状が持続し、認知機能評価時点においても消失していなかった患者は、非COVID-19群と比較し、認知機能障害の程度が大きかった(-0.42 SD、95%CI:-0.53~-0.31)。 起源株やB.1.1.7変異株が優勢の期間にSARS-CoV-2に感染した患者は、その後の変異株感染者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばB.1.1.7変異株vs.B.1.1.529変異株:-0.17 SD、95%CI:-0.20~-0.13)。また、入院した患者のほうが、入院しなかった患者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばICU入院患者:-0.35 SD、95%CI:-0.49~-0.20)。 解析結果は傾向スコアマッチング解析を実施しても同様だった。症状が持続する患者は非COVID-19群に比べて、記憶、推理、実行機能のタスクで障害が大きく(-0.33~-0.20 SD)、これらのタスクは、記憶力低下、ブレインフォグなどの最近の症状と弱い相関が認められた。 今回の結果を踏まえて著者は、「認知機能障害の長期的な持続の有無および臨床的影響は、依然として不明である」と述べている。

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認知症になる前に頭の中で何が起きているのか(解説:岡村毅氏)

 アルツハイマー型認知症になる前に頭の中で何が起きているのだろうか? もうすぐ新学期だから、医学生・看護学生に話すつもりでわかりやすく説明しよう。 かつてはアルツハイマー型認知症のことは何もわかっていなかったが、亡くなった人の脳を調べることで、重症になればなるほどアミロイドが溜まり、タウが溜まり、脳が小さくなっている(萎縮という)ということがわかっていた。しかし脳は、たとえば肝臓のように、バイオプシーができないため、実際に生きている人の脳の中で何が起きているのかはわからないという大問題があった。診断に関しても、血液検査や画像検査(こういうのをバイオマーカーという)ではわからないので、臨床診断しかなかったのだ。われわれがいつも使ってきたDSM4やICD10はバイオマーカーを用いない臨床診断である。 しかしアミロイドペットによってアミロイドを見える化できるようになったことで、革命的な変化が始まった。第一にバイオマーカーを用いた新たな診断体系が出来上がった。National Institute on Aging-Alzheimer’s Association group(NIA/AA)の診断基準である。新しい「望遠鏡」ができたのだ。第二に脳の画像やバイオマーカーを追っていく大規模研究が世界規模で行われた。これがAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)であり、わが国のADNIはJ-ADNIという。これにより脳内に何が起きているのかが「見えてきた」。第三にバイオマーカーについてさらにわかってきた、アミロイド⇒タウ⇒神経損傷という順番がわかり、がんのTNM分類のようにATN分類が出来上がった。アミロイド(A)タウ(T)神経損傷(N)である。見えるだけではなく「わかってきた」といったところか。 という大きな流れを見てみると、中国で上記のバイオマーカーの進展を調べたというのがこの研究である。やはりアミロイドが先に動いていることがわかる。この論文の価値は十分に認めたうえで記載するが、大局的には「追試」を行ったともいえる。 さて、時代はすでにアミロイドへの先制介入へと移っている。初期のアルツハイマー型認知症に抗体が進展抑制効果を持つことがわかり、今後はプレクリニカル期へと延びていくだろう。この後の未来のシナリオは3つある。 シナリオ1は、アルツハイマー型認知症が完全に予防できるようになり、認知症の人が減るという未来だ。もし認知症が完全に発症予防できるようになれば人間は神に近づいていくともいえよう。シナリオ2は、アルツハイマー型認知症はある程度ゆっくりになるので、逆に患者が増えていくという未来である。共生がより重要になる。シナリオ3は、実はアルツハイマー型認知症以外にも多数の認知症が隠れており(専門家ならよく知っているのだが)、アルツハイマー型認知症の薬剤が社会に広がることで、むしろ他の治らない認知症が増えていくように見えるという未来である。共生は重要だが、予防もまだまだ最先端課題だ。 どのシナリオになりそうかはここでは私はあえて述べない。私のような精神科医ではなく脳神経内科医なら、もっと正確な未来予測もできるかもしれないことも付記しておく。

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認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患【外来で役立つ!認知症Topics】第15回

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まってから、コロナと認知症との関係という新たなテーマが生まれた。まず予防には3密だと喧伝された。その結果、孤独化する高齢者が増えたので、認知症の発症が増加しているという報告が相次いだ。つまり孤独という認知症の危険因子を、コロナが一気に後押ししたという考え方である。そうだろうなとは思いつつ、このエビデンスは乏しかった。それから次第に前向きの疫学研究から、コロナ罹患と認知症発症との関係を報告するものが出てきた。そして最近では、こうしたもののレビューも報告されるようになり、なるほど、こういうことかとポイントが見えてきた。そこで今回は、認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患を中心にまとめてみたい。スペイン風邪と認知症の関連は?まず人畜共通感染症による第1のパンデミックとされる「スペイン風邪(Spanish Flu)」を連想した。というのは、コロナはスペイン風邪をしのぐ人畜共通感染症によるパンデミックをもたらしたからだ。スペイン風邪の原因は、トリインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの遺伝子が混ざり合った新型のウイルス(Influenza A virus subtype H1N1の亜系)だと考えられている。そこで1918年の第1次世界大戦当時に世界的に流行したこのスペイン風邪の認知症への影響はどうだったのかと調べてみた。説得力の強いものに、デンマークで1918年当時妊娠中の母親の胎内にあったヒトに注目し、対象とコントロールで合計28万人余りのデータを用いた研究がある1)。ここでは、該当者が62~92歳に達した期間において、あらゆる認知症性疾患についての発症に注目し、その相対危険度を調査している。その結果、スペイン風邪罹患と認知症発症の間には有意な関係はなかったとされる。この報告のように、どうも積極的に両者の関係を指摘する報告は乏しいようだ。コロナと認知症、追跡期間が長いほど発症率が上昇?さてコロナについて成された近年の報告のレビューが注目された2)。多くの研究結果からは、コロナに罹患することでアルツハイマー病を含むすべての認知症の発症率はおよそ2倍と考えられている。実際、これまでの報告の多くは、60歳以上のヒトにおいては、コロナに罹患することで、亜急性期、慢性期の認知症発症は確かに高まりそうだと報告している。もっとも、コロナ罹患による認知症発症への影響力は、他の呼吸器系のインフルエンザ感染や細菌感染と大差がないとの結論になっている。一方で興味深いのは、追跡期間の違いによる認知症の発症率の相違である。すなわち発症から3ヵ月間もしくは6ヵ月間追跡した研究に比べて、1年間追跡した研究では認知症の発症率が高くなっているのである。このことは、コロナによる認知症の発症は、罹患ののち長期間にわたって続くことを示唆している。また疫学から、なぜコロナが認知症とくにアルツハイマー病に関連するかについてのレビューも興味深い3)。まずコロナへの罹患しやすさについては、加齢が最大にして唯一の危険因子だとされる。そしてその背景として高血圧、糖尿病、心疾患など、いわゆる生活習慣病が考えられている。またこうした要因が、回復を遅くすることも事実である。さらに、最初に述べたような孤独化と普通の生活に戻れないことが高齢者においてうつ病や不安を生じる間接的な要因になることも関係しているだろうとされる。ところで、すでに認知症であった人が、パンデミックによって社会的な交流がなくなったり、ケアが手薄になったりしたことで死亡率が高まった可能性もあることが述べられている。実際、パンデミック時代になってから、コロナ感染の有無にかかわらず、認知症者の死亡率が25%も高まったことを報告したメタアナリシスもある4)。認知症発症の原因として注目される炎症こうしたコロナによる認知機能の低下や認知症発症の原因として最も注目されるのは炎症、とくにこれに関わるサイトカインであろう。このサイトカインとは、ある細胞から他の細胞に情報伝達するための物質である。その中でも有名なのは、インターフェロンやインターロイキンだろう。感染量が多くなるほど、サイトカインも大量に放出されるが、それが著しい場合はサイトカインストーム(免疫暴走)と呼ばれる。サイトカインストームが起こることで大脳組織の炎症が生じる結果、認知機能に障害が生じる。なお近年では、アルツハイマー病の病因仮説として、脳の炎症説は主流の1つとなっている。また別の説として、新型コロナウイルスは、微小血管に障害をもたらし、肺の組織を障害することによって、大脳への酸素の流れに支障を来すことに注目するものがある。さらには、新型コロナウイルスとアミロイドやタウとの関係にも注目するもの、あるいはアルツハイマー病の危険因子とされるAPOE4を介して発症に関係するという考えなどもある。いずれにせよ現時点において新型コロナウイルスと認知症の発症との関係について確立しているわけではない。今後の長期的なフォローアップにより、少しずつ解明が進んでいくと思われる。参考1)Cocoros NM, et al. In utero exposure to the 1918 pandemic influenza in Denmark and risk of dementia. Influenza Other Respir Viruses. 2018;12:314-318.2)Sidharthan C. COVID-19 linked to higher dementia risk in older adults, study finds. News-Medical.Net. 2024 Feb 9.3)Axenhus M, et al. Exploring the Impact of Coronavirus Disease 2019 on Dementia: A Review. touchREVIEWS in Neurology. 2023 Mar 24.4)Axenhus M, et al. The impact of the COVID-19 pandemic on mortality in people with dementia without COVID-19: a systematic review and meta-analysis. BMC Geriatr. 2022;22:878.

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脳の血栓溶解は24時間まで大丈夫?(解説:後藤信哉氏)

 灌流動脈の血栓性閉塞により臓器の虚血性障害が始まる。血液灌流の再開時には再灌流障害も起こるが、酸素化再開により機能を修復できる部分が大きければ血栓溶解療法の適応となる。循環器では心筋梗塞後6時間までが、当初再灌流の有効時間と考えられた。その後、灌流直後に動き始めない冬眠心筋(hibernation myocardium)、気絶心筋(stunned myocardium)など再灌流後長時間経過しても機能回復する心筋がみつかり、再灌流可能時間は発症後12時間、24時間と延びていった。 直感的に、脳の神経機能は心筋より虚血性障害に弱そうにみえる。また、再灌流後の脳出血リスクも心配であった。発症後3時間、6時間と治療可能時間を延ばし、本研究では24時間以内に挑戦した。本研究は4.5~24時間のt-PAの効果を、プラセボと比較したランダム化比較試験である。ランダム化比較試験の結果の解釈としては、4.5~24時間のt-PAは有効性を示せなかったとも解釈できる。 しかし、本研究では結果に対する血管内治療の交絡が大きいと考えるべきである。t-PA投与後血栓溶解までには時間がかかる。血管内治療を行えば速やかに再灌流を達成でき、再灌流を確認できる。本試験では、77%以上の症例が血管内治療を受けている。血栓を溶解すると、体は反応性に血栓性となる。血管内治療をする場合はt-PAをしないほうがよい、というのが循環器内科の到達点である。今後、神経内科領域におけるt-PAの位置付けが循環器と同一になるか?、違う方向に向かうか?、展開を注目したい。

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日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。 日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する1万7,071例のうち、定期的に家事援助を必要とした人の割合は24.8%であった。・片頭痛により人間関係、余暇活動、社会活動に支障を来した人は、それぞれ31.8%、41.6%、18.0%であった。・頭痛が起こる日の間に、社交/レジャー活動の予定を立てることを少なくとも時々心配する人の割合は、26.8%であった。・家族と同居している人(1万3,548例)では、片頭痛により家族活動への参加や家族との楽しみにも影響がみられた。・運転経験のある人(1万921例)のうち、症状により運転が妨げられると報告した人の割合は、43.9%であった。・片頭痛により睡眠が妨げられた人は52.7%、気分が低下した人は70.7%であった。・PHQ-8の閾値を満たした臨床的うつ病の割合は28.6%、GAD-7の閾値を満たした臨床的不安症の割合は22.0%であった。・日常生活に対する片頭痛の影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリの重症度が増加するほど強力であった。 著者らは「日本人片頭痛患者にとって、日常生活、睡眠、メンタルヘルスへの負担は大きいため、臨床現場では、頭痛症状だけでなく、日常生活に及ぼす影響を評価することが重要である」としている。

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日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌2024年3月号の報告。 研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・36万389人年の間に、認知症を発症した人は4,621人であった。・7時間睡眠と比較した各睡眠時間の認知症発症の多変量HRは、J-shaped fashionで次のとおりであった(p for linear<0.001、p for quadratic<0.001)。【3~5時間】HR:1.13(95%CI:0.98~1.30)【6時間】HR:0.93(95%CI:0.85~1.02)【8時間】HR:1.06(95%CI:0.99~1.14)【9時間】HR:1.13(95%CI:1.01~1.27)【10~12時間】HR:1.40(95%CI:1.21~1.63)・睡眠時間の変化については、睡眠時間の変化がなかった人と比較した認知症発症のHRは次のとおりであった。【2時間以上の減少】HR:1.02(95%CI:0.90~1.16)【1時間の減少】HR:0.95(95%CI:0.88~1.03)【1時間の増加】HR:1.00(95%CI:0.91~1.09)【2時間以上の増加】HR:1.37(95%CI:1.20~1.58)・睡眠時間の減少との正の相関は、ベースライン時の睡眠時間が7時間以下の人で観察され、8時間以上の人では観察されなかった(p for interaction=0.007)。

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アルツハイマー病バイオマーカー、異常検出は診断の何年前から?/NEJM

 アルツハイマー病患者では、診断のかなり前から脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーに変化を認めることが知られている。中国・首都医科大学宣武医院のJianping Jia氏らは、孤発性アルツハイマー病の臨床診断を受けた集団の、診断に至る前の20年間におけるバイオマーカーの経時的変化を明らかにするとともに、認知機能が正常な集団と比較してどの時点でバイオマーカーに乖離が生じ、異常値となるかを検討した。研究の成果は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。中国のコホート内症例対照研究 研究グループは、認知機能が正常な状態から孤発性アルツハイマー病と診断されるまでのバイオマーカーの変化の調査を目的に、多施設共同コホート内症例対照研究を行った(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]のKey Projectなどの助成を受けた)。 2000年1月~2020年12月に中国認知機能・加齢研究(China Cognition and Aging Study[COAST])に登録した認知機能が正常な参加者を対象とし、2~3年の間隔でCSF検査、認知機能評価、脳画像検査を実施した。 アルツハイマー病を発症した648例(平均[±SD]年齢61.2±4.1歳、男性50.5%)と、傾向スコアマッチング法で年齢、性別、教育水準をマッチさせた認知機能が正常であった対照群648例(61.3±4.1歳、50.6%)について、CSF中の生化学マーカー濃度、認知機能評価、画像検査の経時的な軌跡を解析し、比較した。診断の6~18年前に、各種バイオマーカー値が乖離 APOEの対立遺伝子ε4の保因者はアルツハイマー病群で多かった(37.2% vs.20.4%)。追跡期間中央値は19.9年(四分位範囲[IQR]:19.5~20.2)だった。 アルツハイマー病群のCSF中のバイオマーカーの値が、認知機能が正常な対照群と乖離した時期は、アミロイドβ(Aβ)42が診断の18年前と最も古く、次いでAβ42/Aβ40比が14年前、181位リン酸化タウが11年前、総タウが10年前、ニューロフィラメント軽鎖が9年前の順であり、両側海馬体積(脳構造MRIで評価)は8年前、認知機能低下(CDR-SBで評価)は6年前であった。変化は当初加速度的、その後は緩やかに アルツハイマー病群における認知障害の進行に伴うCSF中のAβ42、Aβ42/Aβ40比、181位リン酸化タウ、総タウの値の変化は、当初は加速度的に進行したが、その後は、認知機能がさらに低下したにもかかわらず緩やかとなった。 著者は、「孤発性アルツハイマー病と常染色体優性遺伝性アルツハイマー病とでは、バイオマーカーの変化が現れる時期が異なる可能性が示唆された」「バイオマーカーの変化と認知機能の関連を検討したところ、ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが25~27点の範囲で最も急速に変化することがわかった」とし、「参加者は漢民族であったため、これらの結果は他の集団に一般化できない可能性がある」と指摘している。

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「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第252回

「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善Unsplashより使用大うつ病性障害に対する6週間のビデオゲーム介入が、抑うつ気分、訓練意欲、視覚空間(ワーキング)記憶機能の改善につながるかどうかを検討することを目的とした研究を紹介しましょう。選ばれたゲームは、任天堂の「スーパーマリオ オデッセイ」です。いやー、名作ですよね。あのゲームは本当に、色褪せない。RTA(リアルタイムアタック)の動画をよく見ています。まあそんな個人的な話はどうでもよくてですね、このマリオ オデッセイが、うつ病に有効というエビデンスが示されました。Bergmann M, et al. Effects of a video game intervention on symptoms, training motivation, and visuo-spatial memory in depression. Front Psychiatry. 2023 Aug 24;14:1173652.ドイツのボン大学の精神科において、大うつ病性障害(MDD)と診断された18~65歳の入院・通院患者46人を対象に行われた研究です。MDD患者さんを、マリオ オデッセイをプレイする「ビデオゲーム」群(n=14)、コンピュータプログラム「CogPack」を用いて訓練を行う能動的対照群(n=16)、心理療法や薬物療法を含む標準的な臨床治療を受ける通常治療群(n=16)の3群のいずれかにランダムに割り付けました。ちなみに、事前にマリオ オデッセイをプレイしたことがある患者さんは除外されています。いずれのグループも、トレーニングセッションの頻度は週3回、期間は6週間の合計18回で、各セッションは1回45分間でした。45分プレイして、マリオ オデッセイを途中で切られると、それはそれでイラっとしそうですが…。BDI-IIベック抑うつ質問票(BDI-II)で評価すると、マリオ オデッセイをプレイしたMDD患者さんの症状が劇的に改善することが示されました。BDI-IIスコアが「軽度」に該当する患者の割合をみたグラフですが、マリオ オデッセイをプレイした群では、3群の中で唯一統計学的に有意差がついています(図)。図. 各群の抑うつ改善効果(文献より引用)ただし、視空間記憶をテストするBVMT-Rなど、いくつかの試験ではCogPackのほうがよかったりして、一貫してマリオ オデッセイがよいという結論ではありませんでした。どれか1つがよいというよりも、おそらく組み合わせたほうがよいのではないかと考えられます。ゲームって結構バカにされがちですが、これだけの有効性が示されるとなると、そのうちガイドラインにも記載されるんじゃないでしょうか。「ゼルダの伝説」をやっている医師は多いですが、ああいうRPGモノもたぶん有効なんじゃないかと思います。

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