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日本人高齢者における抗コリン薬使用と認知症リスク~LIFE研究

 抗コリン薬が認知機能障害を引き起こすことを調査した研究は、いくつか報告されている。しかし、日本の超高齢社会において、認知症リスクと抗コリン薬の関連は十分に研究されていない。大阪大学のYuki Okita氏らは、日本の高齢者における抗コリン薬と認知症リスクとの関連を評価するため本研究を実施した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2023年12月号の報告。 2014~20年の日本のレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。対象は、認知症患者6万6,478例および、年齢、性別、市区町村、コホート登録年がマッチした65歳以上の対照群32万8,919例。1次曝露は、コホート登録日からイベント発生日またはそれに一致したインデックス日までに処方された抗コリン薬の累計用量(患者ごとの標準化された1日当たりの抗コリン薬総投与量)であり、各処方の抗コリン薬各種の総用量を加算し、WHOが定義した1日の用量値で除算して割り出した。抗コリン薬の累計曝露に関連する認知症のオッズ比(OR)の算出には、交絡変数で調整した条件付きロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・インデックス日の平均年齢は84.3±6.9歳であり、女性の割合は62.1%であった。・コホート登録日からイベント発生日またはインデックス日までに1種類以上の抗コリン薬が処方された割合は、認知症患者で18.8%、対照群で13.7%であった。・多変量調整モデルでは、抗コリン薬を処方されていた人は、認知症と診断されるORが有意に高かった(調整OR:1.50、95%信頼区間:1.47~1.54)。・完全多変量調整モデルでは、抗コリン作用を有する薬剤の中でも、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、膀胱に対する抗ムスカリン薬の使用で、認知症リスクの有意な増加が確認された。 著者らは「日本の高齢者が使用するいくつかの抗コリン薬は、認知症リスクの増加と関連している」とし、「これらの集団に対して抗コリン薬を使用する際には、ベネフィットと並び、潜在的なリスクを考慮する必要がある」としている。

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第193回 両親の老老介護で思い知る「地域包括ケアシステムって何?」

今回はやや私事で恐縮だが、医療・介護を考える上で見逃せないと思う事態を現在進行形で経験しているので、それについて触れてみたい。80代後半の私の両親は今も健在で、実家で暮らしている。周囲の同世代では両親ともにすでに他界しているケースも少なくない中では、無事生きていること自体がありがたい。しかし、年齢からもわかるように当然ながら完全な健康体ではない。とくに父親は軽度認知障害(MCI)持ちである。現状は物が覚えにくくなり、私や母親が言ったこともすぐ忘れるが、本人も十分自覚があり、「最近の仕事? 物忘れ。ガハハハ」と口にするほどだ。むしろ物忘れには周囲も本人もある程度慣れてきている。そして、かれこれ7~8年前くらいから歩行がかなり遅くなり、リハビリに通っている。一時は周囲が「もう歩けなくなるのでは?」と危惧するほどだったが、リハビリのおかげで持ち直した。とはいえ、やはり周囲と比べれば歩みがかなりゆっくりで、時にシルバーカーを使う。現在の歩行状況はシルバーカーなしでは約5分おき、シルバーカー利用でも約8~9分おきに休憩を取らねばならない。現在1人で出歩くのは、シルバーカーを使いながら自宅近所を散歩する時ぐらいである。ところが父親は元来賑やかな繁華街が好きな人だ。性格的に陰キャ(陰気なキャラクター)で自分から何かのアクションを起こすタイプではないのだが、何となく賑やかなところ、具体的にはガラス越しに繁華街の賑わいが見える飲食店などで食事をしたり、お茶をしたりするのが好きなのである。父親が私や姉を訪ねて東京にふらりと出てくることができた時代は、人通りの多い市中のオープンエアのカフェを利用したがるのが常だった。しかし、前述のような状況なので、現在は繁華街に出かける際には母親の付き添いが必要だ。母親も市街地でのイベントなどを検索し、土日になると父親を繁華街周辺に連れ出し、喜ぶ父親の写真をLINEで送ってくる。そんな母親が先日、珍しく「本心ではイライラして仕方がないが、我慢している」という趣旨の愚痴をこぼしてきた。何かというと、繁華街から戻る最中、父親が5分おきにベンチなどに腰を掛けて休憩を取ることに付き合うのが疲れて仕方がないということなのだ。まだ普通に歩くことができる母親にとっては、一般成人ならば徒歩15分くらいの距離の移動に1時間以上かかることはかなりのストレスだろう。ここは無視してはならぬと思い、仕事の手を止め、必死にLINEでやり取りを続けた。そうした中で母親から出てきたのが、「適当な軽量の車椅子はないものだろうかね?」という話だった。要は折り畳みで軽量の車椅子を父親と外出するときに持ち歩き、父親が休みたいと言い出した時にそれをさっと展開して父親を乗せて母親が介助し、また父親が歩きたいと言えば、その時はまた折りたたむというような使い方ができるものである。そうすれば父親の休みたいという願望と母親のストレス解消の一石二鳥になる。正直、母親が介護疲れで倒れるのは私も望まない。ということで、いつもは物ぐさで知られている自分も動き出した。偶然、身近に使わない車椅子を保有する人がいたので、まずはそれを譲ってもらったが、自走もできるかなりの重量のものだったので、今母親が求めているものとは異なった。なんせ80代半ば過ぎの老老介護で、細腕の母親が申し訳程度の折り畳みができるだけの10kg超の車椅子を扱えるわけがない。そこで年末年始に実家に戻ったついでに、地元の介護ショップを覗いてみることにした。ところがここでまず大きな壁にぶち当たった。東北地方の首都と呼ばれる街だが、インターネット検索で見つかるめぼしい介護用品ショップは10店舗程度。そのうちアクセスが良い百貨店内の店舗2ヵ所に行ってみたが、あるのはシルバーカーか自走式車椅子という左右両翼のような典型的商品のみ。うち1店舗にはかろうじて重量10kgちょうどの軽量折り畳み車椅子が展示してあった。私の感覚では十分軽いと思ったが、後日母親が1人で訪ねて触ってみたところ、本人にとってはまだ重いとのことだった。これよりも約2kg軽いタイプは、カタログ上では見せられたが、あくまで「購入前提の取り寄せになる」という。車椅子の場合、使用する人、介助者双方にとっての使いやすさのバランスが重要であり、実機に触れることなしに購入は考えられない。そこでやむなく私がその車椅子の発売元に連絡を取ったところ、私の地元の県にある2ヵ所の大手介護ショップを挙げ、そこからの依頼があればデモ機を貸し出せるとのこと。一瞬、光明が見えた感じだったが、教えられたショップはともに郊外型ショッピングセンターのように、鉄道駅から徒歩15分以上とアクセスが悪い。父親はもともと車の運転が好きな人だったが、今のような徴候が見え始めた5年ほど前に運転免許証を返納。母親と私は元来ペーパードライバーである。「ショップ最寄り駅からタクシーを使えば?」という声も聞こえてきそうだが、それは首都圏などの感覚。この2件のショップの最寄り駅は、駅前に客待ちタクシーがいない駅なのだ。かといって父親の歩みに合わせて、真冬に老夫婦が1時間以上かけてショップまで歩くのは明らかに無理がある。繁華街と違って休憩できるベンチも途中にはないだろう。結局、母親は車が出せそうな知人に連絡を取った。今回、改めて痛感させられたのが、首都圏とその他の地方都市の差。そして介護サービス・商品のグラデーションの少なさである。父親のような、健康と病気の合間のような状態の人に使いやすいサービス、老老介護を前提にしたサービスはまだまだ少ない。もちろん今は社会全体が超高齢化社会というマインドに移行していく過渡期なのだから、そうなのだろう。しかし、長らく「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム」というフレーズを耳にタコができるほど聞かされてきた身からすると、今回の経験で改めて「地域包括ケアシステムって何?」と思ってしまうのだ。

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第196回 コロナ後遺症の原因と思しきミトコンドリア異常を同定

コロナ後遺症の原因と思しきミトコンドリア異常を同定新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つである疲労の根本原因と思しきミトコンドリア機能低下が被験者46例の試験で示唆されました1)。試験にはlong COVID患者25例と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したものの完全に回復した21例(回復例)が参加しました。心身を急に働かせた後の疲労や痛みの悪化はlong COVIDを特徴づける症状の1つである労作後倦怠感(post-exertional malaise:PEM)と関連します。試験ではPEMを誘発する15分間の自転車こぎ運動を被験者にあえて課しました。long COVID患者は自転車こぎの後に症状の悪化を呈し、筋肉組織を調べたところミトコンドリア異常が認められました。long COVID患者のミトコンドリアは回復例に比べて働きが悪く、エネルギー生成が劣りました。一方、long COVID患者の心臓や肺の機能に異常はなく、それらの異常によって長患いが生じているわけではなさそうです。また、SARS-CoV-2が居続けることがlong COVIDの原因の1つと想定されていますが、今回の研究で調べた筋肉組織にSARS-CoV-2のはびこりは見られませんでした。SARS-CoV-2に特有のヌクレオカプシドタンパク質の筋肉組織での検出はlong COVID患者と回復例で似たり寄ったりで、SARS-CoV-2残存もlong COVIDのPEMの発現や運動能力の原因ではなさそうです。ということはSARS-CoV-2残存以外の何かがlong COVID患者のミトコンドリア異常に寄与しているようであり、そのような異常をもたらす分子経路を今後調べる必要があります。long COVID患者のミトコンドリア異常はほかの研究でも示されています。昨年9月に報告されたlong COVID患者11例の検討結果では今回の報告と同様にミトコンドリア機能の指標の低下が認められました2)。また、ミトコンドリアの量や新生の指標の低下も観察されています。今回の試験の被験者は少なく、別の集団でも同じ結果になるかどうかを調べる必要があります。とはいえlong COVID患者の疲労はれっきとした生理的要因に基づくことはどうやら確からしく、生理作用に基づく適切な治療の研究がいまや可能になったと今回の研究の著者は言っています3)。long COVID患者の運動は許容範囲に抑えるべき自転車こぎ運動をしたlong COVID被験者が疲労の悪化や認知症状などのPEM症状を被ったことが示すように、long COVID患者の運動は有益とは限りません。ウォーキングなどで体調を維持することは好ましいですが、運動のしすぎで病状の悪化を招いては元も子もありません。そうならないように患者は許容範囲の運動量を各自あらかじめ設定し、病状を悪化させない程度の軽い運動を心がけるとよいようです3)。参考1)Appelman B, et al. Nat Commun. 2024;15:17. [Epub ahead of print]2)Colosio M, et al. J Appl Physiol(1985). 2023;135:902-917. 3)Tiredness experienced by Long-COVID patients has a physical cause / Eurekalert

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アルツハイマー病に対する薬物療法~FDA承認薬の手引き

 近年、認知症の有病率は高まっており、患者および介護者のQOLを向上させるためには、認知症の病態生理学および治療法をより深く理解することが、ますます重要となる。神経変性疾患であるアルツハイマー病は、高齢者における健忘性認知症の最も一般的な病態である。アルツハイマー病の病態生理学は、アミロイドベータ(Aβ)プラークの凝集とタウ蛋白の過剰なリン酸化に起因すると考えられる。以前の治療法は、非特異的な方法で脳灌流を増加させることを目的としていた。その後、脳内の神経伝達物質の不均衡を是正することに焦点が当てられてきた。そして、新規治療では、凝集したAβプラークに作用し疾患進行を抑制するように変わってきている。しかし、アルツハイマー病に使用されるすべての薬剤が、米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得しているわけではない。インド理科大学院Ashvin Varadharajan氏らは、研究者および現役の臨床医のために、アルツハイマー病の治療においてFDAが承認している薬剤を分類し、要約を行った。Journal of Neurosciences in Rural Practice誌2023年10~12月号の報告。 主な結果は以下のとおり。・認知症の症状を緩和するための薬剤は、認知症の行動・心理症状(BPSD)と認知機能低下の緩和を目的とした薬剤に分類可能である。・BPSDに対する薬剤には、認知症に伴うアジテーションの治療に対する1日1回投与の抗精神病薬ブレクスピプラゾール、睡眠障害の治療に用いられるオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントが含まれる。・認知機能低下に対する薬剤には、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンなどのグルタミン酸阻害薬が含まれる。・ドネペジルは、最も一般的に使用されている薬剤であり、安価で忍容性が良好で、1日1回経口投与および週1回の経皮吸収投与が可能である。アセチルコリンレベルを増加させ、希突起膠細胞の分化を促進し、Aβ毒性保護効果を示す。しかし、心臓伝導系の副作用が報告されているため、定期的なモニタリングが必要とされる。・リバスチグミンは、1日2回経口投与または1日1回経皮吸収投与が可能である。ドネペジルよりも心臓に対する副作用リスクは低いが、貼付部位の局所反応が問題となる。・ガランタミンは、短期間で認知症症状を改善することに加え、BPSDの発現を遅延させると報告されている。また、複数の代謝経路を有するため、薬物相互作用を最小限に抑えることが可能である。ただし、心臓伝導系の副作用については、注意深くモニタリングする必要がある。・グルタミン酸調整物質であるメマンチンは、認知機能および神経保護の改善に加え、抗パーキンソン病薬や抗うつ薬としても作用することが期待される。即時放出製剤または徐放性経口剤での1日1回投与が可能である。・aducanumab、レカネマブなどの疾患修飾薬は、Aβの負担を軽減する。脳内のAβプラークの原線維構造と結合することで効果を発現する。これらの薬剤は、とくにApoE4遺伝子を有する患者においてアミロイド関連の画像異常を引き起こすリスクがある。aducanumabは4週間に1回、レカネマブは2週間1回の投与である。 著者らは「アルツハイマー病に対する薬剤選択では、薬剤入手の可能性、患者コンプライアンス、コスト、特定の併存疾患、特定の患者におけるリスクとベネフィットのバランスを考慮したうえで、決定する必要がある」とし「治療に対する総合的なアプローチとして、非薬物療法の使用も検討すべきである」としている。

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日本の片頭痛治療におけるフレマネズマブのリアルワールドエビデンス

 抗CGRP抗体であるフレマネズマブのみに焦点を当てたアジアにおけるリアルワールド研究は、これまでほとんど行われていなかった。慶應義塾大学の大谷 星也氏らは、日本のリアルワールドにおけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、本研究を実施した。その結果から、日本人の片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性および安全性が確認され、フレマネズマブ治療により約半数の患者において片頭痛関連症状の改善が認められたことを報告した。BMC Neurology誌2023年11月14日号の報告。 2021年12月~2022年8月に慶應義塾大学病院でフレマネズマブを4回投与した片頭痛患者を対象に、単施設観察的レトロスペクティブ研究を実施した。1ヵ月当たりの片頭痛日数、治療反応率、片頭痛関連症状、注射部位の反応、有害事象の変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は29例、女性の割合は79.3%であった。・1ヵ月当たりの片頭痛日数は、ベースライン時と比較し、4ヵ月時点で5.9日減少した。・50%治療反応率は、4ヵ月時点で55.2%であった。・フレマネズマブ治療により光線過敏症、音過敏症、悪心/嘔吐の重症度改善が認められた患者は、それぞれ57.9%、47.8%、65.0%であった。・最も一般的な有害事象は、注射部位反応であった(55.2%)。

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中年期日本人のBMIや体重変化と認知症リスク

 中年期のBMIや体重変化と認知症発症リスクとの性別特異的相関性に関するエビデンスは、とくにアジア人集団において不足している。高知大学の田代 末和氏らは、40~59歳の日本人を対象にBMIや体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、中年期の肥満は認知症発症のリスク因子であり、中年後期の体重減少は体重増加よりも、そのリスクを高める可能性があることを報告した。Alzheimer's & Dementia(Amsterdam、Netherlands)誌2023年11月23日号の報告。 40~59歳の地域在住日本人3万7,414人を対象にベースライン時(1990年または1993年)およびフォローアップ期間10年間のBMIデータを収集した。体重変化は、ベースライン時と10年間フォローアップ調査の測定結果より算出した。2006~16年の認知症発症を確認するため、介護保険認定を用いた。ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の肥満、10年フォローアップ調査の低体重において、認知症リスクの増加が確認された。・ベースライン後の体重減少は、体重増加よりも高リスクであった。・これらの関係に性差は認められなかった。 著者らは「男女ともに、中年期の肥満は認知症発症リスクを増加させ、その後の体重減少は、リスクを増大させることから、成人期を通じて健全な体重を保つことは、認知症予防につながるであろう」としている。

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脳小血管病発症前のメトホルミン服用、予後を改善/新潟大

 糖尿病治療で多用されているメトホルミンに神経保護作用がある可能性が示唆されている。この可能性に関し、新潟大学脳研究所脳神経内科学分野の秋山 夏葵氏らの研究グループは、国立循環器病研究センターと共同で研究を行った。その結果、メトホルミンによる脳小血管病に対する神経保護効果が明らかとなった。Journal of the Neurological Sciences誌2024年1月号掲載の報告。メトホルミンは血液中の炎症を抑制する 秋山氏らは、2病院において脳卒中発症前に何らかの経口糖尿病治療薬を服用していた血管内治療適応のない虚血性脳卒中の2型糖尿病患者160例の臨床情報、画像データを収集、解析を行った。神経学的重症度の低下は、入院時のNational Institutes of Health Stroke Scaleスコア3以下、良好な機能的転帰は退院時のmodified Rankin Scaleスコア=0~2と定義した。虚血性脳卒中のサブタイプごとに、神経学的重症度と機能的転帰に対するメトホルミンの効果を、複数の交絡因子を調整したロジスティック回帰分析で解析した。 主な結果は以下のとおり。・脳梗塞発症前のメトホルミン治療が、とくに細い血管が障害される脳梗塞(脳小血管病)のタイプの患者において、神経症状の重症度軽減と退院時の症状改善に関係していた。・メトホルミンを内服している患者とそうでない患者を比較すると血液中の炎症を反映する指標(好中球/リンパ球比や炎症性サイトカインIL-6値)が、メトホルミンを内服している患者のほうが低く、炎症が抑えられていた。・脳卒中のサブタイプにおいて、メトホルミンの使用は、小血管病変(SVD)を有する患者においてのみ、神経学的重症度(p=0.037)と機能的転帰(p=0.041)の両方に影響を与えた。 本研究において、メトホルミンはSVD患者の予後改善に有用だった。秋山氏は「脳梗塞発症前の具体的なメトホルミンの投与量や投与期間を検討することが、実際の治療のためには必要。メトホルミンの投与期間と投与量に関する前向き検証研究が今後の課題」と展望を語っている。

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認知症の評価に視覚活用、アイトラッキングシステムとは

 早期認知症発見のためのアイトラッキング技術を用いた「汎用タブレット型アイトラッキング式認知機能評価アプリ」の神経心理検査用プログラム『ミレボ』が2023年10月に日本で初めて医療機器製造販売承認を取得した。発売は24年春を予定している。この医療機器は日本抗加齢協会が主催する第1回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会(2019年開催)で大賞を取った武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学)の技術開発を基盤として同第5回大賞(10月27日開催)を受賞した高村 健太郎氏(株式会社アイ・ブレインサイエンス)らが産業化に成功したもの。 本稿では第5回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会での高村氏のプレゼンテーション、第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーでの武田氏の講演内容を踏まえ、このプログラムの開発経緯や今後の展望について紐解いていく。アイトラッキング式認知機能評価アプリとは 認知症疑い患者に対し従来行われているMMSEや改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)といった認知機能検査では、患者の心理的負担(緊張、焦り、落胆、怒りなど自尊心を傷付け心理的ストレスを招きやすい)、医療者負担(時間的制約、専門スタッフの在籍)、検査者間変動(採点のバラツキ)が課題になっているが、近年、AIを活用した新たな認知症診断技術として、脳波、視線、表情、音声、体動などのデータをAIによって定量化することで鑑別診断や予後予測ができるまで研究が進んでいる。また、現代では認知症の危険因子のなかに回避可能なものが多く存在することが医学的にも解明したこと、アルツハイマー病の根本的治療法が臨床応用されつつあることから、早期認知症患者の早期発見・治療導入のためのスクリーニング方法に注目が集まっている。 そこで、高村・武田両氏らは現場での課題を解決するべく新たなスクリーニング法の開発に着目し、認知症領域に一筋の光をもたらした。それがアイトラッキング式認知機能評価アプリである。両氏によると、認知症検査には▽安価▽特殊な機器が不要▽短時間(3分以内)▽言語依存性が低いなどの条件が求められるが、本アプリは「目の動きを利用した『眺めるだけの認知機能検査』技術。使用方法は簡便で、患者は“画面に表示される質問に沿ってタブレット画面を3分間見るだけ”。データを自動的にスコア化し、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能であり、まさに『短時間・簡易・低コスト』を実現した製品」と高村氏は話した。 さらに、認知症は非専門医による診断も難しい点が臨床課題であったが、臨床的に認知症と診断された被験者およびそれ以外の被験者(認知機能健常者および軽度認知障害[MCI]が疑われる被験者含む)を対象に実施した臨床試験において、主要評価項目である本アプリによる検査スコアとMMSEの総合点において高い相関が認められた。加えて、副次評価項目である検査者に対する使用評価調査において検査者の負担軽減が確認されたことから、認知症を診断できる施設数の増加にも寄与できる可能性がある。このほか、本アプリは多言語対応も可能であることから、将来展望として認知症患者が増加傾向のアジア圏をはじめ、欧米にも日本発の技術を輸出・展開し世界進出を図る予定だという。“技術の産業化”を果たし、ヘルスケア産業・医療界に参入 なお、薬機法に規制されない一般向けアプリとして認知機能評価法『MIRUDAKE』による事業化も進めており、公的機関(高齢者の免許更新時の検査など)、検診サービス(住民健診など)、介護サービス事業(デイサービスでの重点見守りなど)への提供をスタートさせている。 第1回大賞受賞時の宿題であった“技術の産業化”を見事に果たした両氏。アイトラッキング技術をさらに応用して認知症のみならず、本アプリからの情報をAI解析することで高い精度でMCIの発見を行う、ADHDや大うつ病の検査補助、認知症の予防/治療を行うDTxの実用化などさらなるSaMD創出に意欲を示している。認知症領域の現状 国内65歳以上の5人に2人は認知症またはMCIと推算されている。世界規模では開発途上国(とくにアジア圏)での患者数が増加傾向で、2050年には認知症患者数は1億3,150万例になることが予想されている。今秋には国内でもレカネマブの承認が報道されたことで、物忘れ外来の受診患者が増えている病院もあるそうだが、外来での診察時間は1人あたり10~15分程度と限られ、認知機能検査に時間を割くことが厳しく、診断や治療へコストをかけることができないのが現状である。ヘルスケアベンチャー大賞とは アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げたもの。第5回の受賞者は以下のとおり。〇大賞株式会社アイ・ブレインサイエンス「認知症の早期診断を実現する医療機器の実用化」〇学会賞(企業)株式会社AutoPhagyGO 「健康寿命延伸を目指したオートファジー活性評価事業」〇ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞(企業)エピクロノス株式会社「日本人に最適化されたエピゲノム年齢測定によるアンチエイジングの見える化」株式会社TrichoSeeds「男性型脱毛症治療のための毛髪の再生医療」株式会社プリメディカ「日本人腸内細菌叢データベースを活用した腸内環境評価システムの開発」〇アイデア賞(個人)市川 寛氏(同志社大学大学院)「超音波照射による酸化ストレス耐性誘導を介した老化関連疾患予防法の開発」楠 博氏(大阪歯科大学)「オーラルフレイルの新規診断法と治療薬の探索-医科からのアプローチ」

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第192回 レームダック政権で年末にバタバタと決まる重要施策、診療報酬改定率、紙の保険証廃止、レカネマブ薬価

2024年度診療報酬改定率、本体0.88%プラスにこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年の瀬も迫り、大谷 翔平選手のドジャース入団会見と前後するような形で、医療の世界でもいろいろなことがバタバタ、エイヤ!と決まっています。それにしても、大谷選手関連ニュースのコメンテーターとしてテレビ朝日系列の番組などに、楽天・前監督でシニアディレクターの石井 一久氏が出演し、呑気な発言を繰り返していたのには首を傾げてしまいました。今年の自軍での大不祥事(安楽 智大投手の時代錯誤のパワハラ)について、石井氏は公の場で何の発言もしていません。安楽問題からは逃げて、大谷関連のコメントをテレビで喜々として行っている石井氏に対し、SNS上では呆れ声だけでなく、バッシングも巻き起こっているそうです。ジャニーズ問題とも共通しますが、石井氏を使うテレビ局もテレビ局ですね。さて、12月15日、政府は2024年度診療報酬の改定率の方針を決め、最終調整に入りました。岸田 文雄首相、鈴木 俊一財務相、武見 敬三厚労相が協議し、合意したとのことです。医師の技術料や医療従事者の人件費となる「本体」は0.88%の引き上げ、「薬価」は約1%程度の引き下げ、全体の改定率は0.1%程度のマイナス改定になるとのことです。ちなみに診療報酬1%分は約4,800億円に当たり、約9割が保険料と公費などで賄われています。「財務省vs.日本医師会をはじめとする医療関係団体・厚生労働省」の争いが決着2024年度の診療報酬改定率を巡っては、本連載の「第187回」、「第188回」、「第190回」でも取り上げて来たように、財務省と日本医師会などの医療関係団体との間で激しい攻防が繰り広げられてきました。本体0.88%引き上げという数字は、一体どう解釈すればいいのでしょう。今回の「診療報酬改定シリーズ」は、端的に言って「財務省vs.日本医師会をはじめとする医療関係団体・厚生労働省」の争いでした。財務省は医療従事者の賃上げに理解を示しつつも国民の保険料負担を軽減するため本体マイナスが必要だと主張、賃上げの原資として“儲かっている“診療所の利益剰余金を充てるよう求めました。対する日本医師会をはじめとする医療関係団体は賃上げと物価対応のため本体の大幅な引き上げを要求、厚労省もこれに歩調を合わせ、「本体」の1%超の引き上げを求めていました。全体をマイナス1%で財務省の顔を立て、本体プラスで日医の顔も立てる本体の0.88%プラスは、前回2022年度改定の0.43%、前々回2020年度改定の0.55%を大幅に上回る水準です。岸田首相としては、政権が重要施策として掲げる賃上げ実現に配慮しつつ、全体をマイナス1%程度に抑えることで、財務省の顔もなんとか立てた形となりました。まだ正式確定していない段階ですが、日本医師会は12月15日コメントを公表、「医療・介護分野の賃金上昇は他産業に大きく遅れをとってきましたが、令和6年春闘の先鞭となる賃上げの実現、さらには物価高騰への対応の財源を一定程度確保いただいたとのことです。政府・与党はじめ多くの関係者の皆様に実態をご理解いただけたものと実感しており、必ずしも満足するものではありませんが、率直に評価をさせていただきたいと思います」と一定の評価をしています。松本 吉郎会長が会長として臨んだ初めての診療報酬改定だけに、かろうじて1%近い「本体プラス」を“勝ち取った”という意味で、日医としてはこのようなコメントになったのでしょう。「医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者」の賃上げがどこまで実現できるかなお、本体プラス分0.88%のうち、薬剤師や看護師、看護助手などの賃上げ分で0.61%、入院患者の食費の引き上げに0.06%を充てるとしており、賃上げ率は定期昇給分を含めて4%程度になる見通しだそうです。先頃中央社会保険医療審議会で決まった2024年度診療報酬改定の基本方針は、「人材確保・働き方改革等の推進」を重点課題に位置付け、「その際、特に医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者の賃金の平均は全産業平均を下回っており、また、このうち看護補助者については介護職員の平均よりも下回っていることに留意した対応が必要」としました。これからは、中医協での具体的な配分の議論に移ります。せっかく本体プラスとなったのですから、今回の改定が、「医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者」の賃上げが本当に実現できる内容になればと思います。現行の健康保険証の発行を来年秋に終了しマイナ保険証を基本とする仕組みに移行することも正式決定バタバタ決まったと言えば、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」への移行についても、先週、国の方針が決定しました。12月12日、岸田首相は「予定通り、現行の健康保険証の発行を来年秋に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」と表明したのです。この日開かれた第5回マイナンバー情報総点検本部では、総点検対象件数8,208万件のうち99.9%のデータについて本人確認を終了し、残る障害者手帳情報の一部のデータについても12月中に終了できる見通しとなり、総点検完了の目処が立ったと報告されました。総点検では、紐付けの誤りはすでに公表されているものを含め8,351件、割合にして0.01%だったそうです。これらについてはすでに閲覧を停止した上で、各自治体等において紐付け誤りの修正作業を進めていくとのことです。岸田首相は「マイナンバーカードは、デジタル社会における公的基盤。医療分野においても、マイナ保険証は、患者本人の薬剤や診療のデータに基づくより良い医療、なりすまし防止など、患者・医療現場にとって多くのメリットがあり、さらに、電子処方箋や電子カルテの普及・活用にとっても核となる、我が国の医療DXを進める上での基盤だ。まずは一度、国民にマイナ保険証を使っていただき、より質の高い医療などメリットを感じていただけるよう、医療機関や保険者とも連携して、利用促進の取組を積極的に行っていく」とマイナ保険証の活用促進を訴えました。一方、河野 太郎デジタル相はマイナンバー情報総点検本部開催後の記者会見で、「(国民の)不安を払拭するための措置を執るということで、措置(総点検)を執ったので廃止する。イデオロギー的に反対する方は、いつまでたっても不安だ不安だと言うだろう。それでは物事が進まない。きちんとした措置を執ったということで進める」と述べました。「弱腰の岸田首相を河野大臣が説得」との報道も12月12日付の朝日新聞の記事によれば、この紙の保険証廃止の表明については、ギリギリまで調整が続いたそうです。同紙は、「世論の反発を懸念した官邸側が、先送りの方針をデジタル庁に伝えた。報告を受けた河野氏は11日午前、『総理と直接話して説得する』と反発。デジタル庁幹部が官邸を訪れて首相周辺と協議し、具体的な日付を示さずに廃止を明言することで決着した」と書いています。岸田首相は紙の保険証廃止についても弱腰だったとは、情けなくなります。パーティー券収入のキックバック問題等もあり、防衛増税も先送りとなっています。この期に及んで、岸田内閣のもう一つの目玉とも言える医療DXの要、マイナ保険証も先送りとしてしまっては、一体何のために総理大臣をやっているのか、それこそわからなくなってしまいます。マイナンバーカードを保険証として使うマイナ保険証については、本連載でも「第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、『懸念』発言続く日医は『医療情報プラットフォーム』が怖い?」、「第153回 閣議決定、法案提出でマイナ保険証への一本化と日本版CDC創設がいよいよ始動」などで度々書いてきましたが、重複診療の是正など効率的な医療提供の実現のためにも、「イデオロギー的に反対する方」への説明や説得を続けながら、国民や医療機関に役に立つマイナ保険証の普及・定着を粛々と進めてもらいたいと思います。レカネマブの薬価決定も、臨床での効果には未だ疑問符「決まった」と言えば、レカネマブの薬価も決まりました。厚労省は12月13日、中央社会保険医療協議会で、アルツハイマー病の新たな治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ)を公的医療保険の適用対象とすることを決めました。同日、エーザイはレカネマブを12月20日から発売すると発表しました。体重50kgの患者が1年間で26回使用した場合、年間の費用は1人当たり約298万円となる見通しだそうです。先行して承認された米国では、体重75kgを標準として1人当たり年2万6,500ドル(日本円で約380万円)でしたから、まあ同水準ということになります。ただ、日本の場合は高額療養費制度があるので、患者の自己負担そのものは相当低く抑えられます(70歳以上で年収156万〜370万円場合、年間14万4,000円)。レカネマブについては、本連載でも何度も取り上げてきました(「第169回 深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかも?アルツハイマー病治療薬・レカネマブ、米国正式承認のインパクト」など)ので、改めて特段言及することはありません。ただ、米国の神経生物学者のカール・へラップ氏がその著書『アルツハイマー病研究、失敗の構造』(みすず書房、8月刊)で、「レカネマブの効果が対プラセボで27%の悪化抑制」という数字に対して、「統計学的には有意な進行抑制であっても、生物学的にはほとんど実質のない差であることを示すデータといえる」と指摘すると共に、レカネマブ開発の根拠となっている「アミロイドカスケード仮説」について、詳細な検証の結果、「あまりにも不十分であるために、実質的に無価値であることを自ら証明した」と断言していることは付記しておきたいと思います。

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神経細胞死の病因を取り除くアルツハイマー病治療薬「レケンビ点滴静注」【最新!DI情報】第6回

神経細胞死の病因を取り除くアルツハイマー病治療薬「レケンビ点滴静注」今回は、ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体「レカネマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:レケンビ点滴静注200mg/500mg、製造販売元:エーザイ)」を紹介します。本剤は、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを実証した世界初かつ唯一の薬剤で、医療者のみならず患者・介護者からも注目されています。<効能・効果>アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制の適応で、2023年9月25日に製造販売承認を取得しました。本剤は承認を受けた診断方法(例:アミロイドPET、脳脊髄液[CSF]検査または同等の診断法)によりアミロイドβ病理を示唆する所見が確認され、アルツハイマー病と診断された患者のみに使用することができます。<用法・用量>通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注します。<安全性>本剤の使用により、副作用としてアミロイド関連画像異常(ARIA[アリア]が現れることがあります。ARIAの多くは無症状ですが、頻度は低いものの重篤な神経症状(脳症、局所神経症状、痙攣、てんかん重積状態など)が起こることがあります。ARIAには、MRIで脳実質の脳浮腫または滲出液貯留として観察されるARIA-E、微小出血または脳表ヘモジデリン沈着が認められるARIA-Hがあります。アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症患者を対象とした国際共同第III相試験(301試験)において、本剤群で発現した主な副作用は、注入に伴う反応(26.1%)、ARIA-H(16.5%)、ARIA-E(12.6%)、頭痛(1.8%)、過敏症(1.7%)などでした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アルツハイマー型認知症になる前の段階や軽度の認知症の進行を遅らせる薬です。症状の進行を完全に止める、または治癒させるものではありません。2.2週間に1回、約1時間かけて点滴で投与します。3.この薬を使用しているときは、薬の効果や副作用を確認するために、定期的にMRI検査が行われます。4.顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、手足の筋肉が硬直しガクガクと震えるなどの症状が現れた場合は、すぐに医師または薬剤師に相談してください。5.妊婦または妊娠している可能性のある人、授乳中の人は、必ず医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>アルツハイマー病患者の脳では、アミロイドβ(Aβ)が老人斑と呼ばれる水に溶けない線維状の凝集体を形成しています。以前から老人斑が神経細胞の死を引き起こし、認知症を発症すると考えられていました(アミロイド仮説)。しかし、最近、不溶性Aβ凝集体(Aβフィブリル)が神経毒性を引き起こすのではなく、その前段階である可溶性Aβ凝集体(Aβプロトフィブリル)が神経細胞死の原因であることが明らかになりました(オリゴマー仮説)。レカネマブは、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、Aβプロトフィブリルに選択的に結合して脳内から除去することで、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症の進行を抑制します。従来の治療で用いられているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬は認知症の臨床症状を緩和することが狙いでしたが、本剤は神経細胞死の病因を取り除くことで臨床症状の進行抑制が期待できます。アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症を対象とした国際共同第III相試験において、18ヵ月(隔週)の静脈内投与で臨床認知症尺度(CDR-SB)のスコア悪化を、プラセボ群に対して本剤投与群では27.1%抑制しました。また、CDR-SBのベースラインからの変化量は、本剤群とプラセボ群で-0.45の群間差がありました。また、ADAS-Cog14、ADCOMS、日常生活動作評価指標ADCS MCI-ADLを指標とした臨床症状の悪化抑制も認められ、本剤群における悪化抑制率はそれぞれ25.8%、23.5%、36.6%でした。なお、Science誌に2022年7月22日に掲載された記事で、Aβオリゴマーの一種である「Aβ*56」の神経細胞毒性に関する論文の捏造疑惑が報じられ、アミロイド仮説およびオリゴマー仮説への懐疑的な意見が出ていました。しかし、エーザイはAβプロトフィブリルとAβ*56は異なるため、このAβ*56論文の問題と本剤とは「一切関係がない」とするコメントを発表しています。参考エーザイ:米国科学誌Scienceに掲載されたAβ関連論文について 

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アルツハイマー病リスクに対する身体活動の影響~メタ解析

 すべての原因による死亡率や認知症を減少させるために、身体活動(PA)は有用である。しかし、アルツハイマー病リスクに対するPAの影響については、議論の余地が残っている。中国医科大学付属第一医院のXiaoqian Zhang氏らは、アルツハイマー病発症とPAとの根本的な影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌2023年12月号の報告。 2023年6月までに公表された研究をPubmed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、エフェクトサイズ(ハザード比[HR]、95%信頼区間[CI])を算出した。 主な結果は以下のとおり。・29件のプロスペクティブコホート研究(206万8,519例)をメタ解析に含めた。・統合された推定値では、アルツハイマー病リスクの低下に対するPAの良好な効果を示唆していた(HR:0.72、95%CI:0.65~0.80)。・この関連性は、最大交絡因子で調整した後でも、良好であった(HR:0.85、95%CI:0.79~0.91)。・PA強度によるサブグループ解析では、PAとアルツハイマー病との間に逆用量反応関係が認められた。エフェクトサイズは、中程度PA(HR:0.85、95%CI:0.80~0.93)および高度PA(HR:0.56、95%CI:0.45~0.68)で有意だったが、軽度PA(HR:0.94、95%CI:0.77~1.15)では有意な差は認められなかった。・すべての参加者または中年コホートとは無関係に、アルツハイマー病に対するPAの保護作用は、長期フォローアップ(15年以上)よりも短期フォローアップ(15年未満)でより有効であった。・フォローアップ調査に加え、補足的なメタ解析、メタ回帰分析、感度分析においても、推定値の確実性が維持された。 著者らは「PA介入は、アルツハイマー病の発症リスクを減少させるが、フォローアップ期間が15年未満の中程度から高度なPAの場合において、その有効性が示されていることから、アルツハイマー病予防のための修正可能なライフスタイル因子として、条件付きでPAを普及させることが推奨される」としている。

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レカネマブついに発売、押さえておきたい4つのポイント【外来で役立つ!認知症Topics】第12回

レカネマブついに発売:4つのポイントアルツハイマー病の新薬レカネマブについて、12月20日に薬価収載されることが、12月13日の厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で了承された。薬価収載と同日から発売となる。薬剤価格は、患者の体重にもよるが、基本は年間約298万円と決まった。また、最適使用推進ガイドライン1)についても了承された。使用に当たって4つのポイントをここに紹介する。1.治療ができる医療機関実際に治療対象となる患者さんの多くを治療しているクリニックや小さな病院の認知症専門医の多くが、レカネマブで治療できそうにないことは大きな注目点である。なぜなら、まずMRI機器が自施設にあり、ARIA(Amyloid-related imaging abnormalities)の読影ができることが求められるからである。以前に述べたように、ARIAは本剤の投与開始から数ヵ月間、多くは6ヵ月以内に発生する。その間、定期的にMRI画像を撮像することによってARIAの発生を的確に見いださなければならない。なお血管周囲の浮腫であるARIA-Eについては、薬剤の投与をやめると数ヵ月以内にほぼ消失することがわかっている。けれども原則として出血であるARIA-Hについては治らない。それだけに認知症の関連学会では、ARIA読影の講習会なども積極的に実施している。こうしたものを修了していることが治療者の条件に求められる。しかし実際には、ARIAの出現・消失の読影はそう簡単なものではない。事実、脳神経関連の放射線科医といえども読影の責任を負うことについては、慎重な態度を示す人が少なくない。ところで、レカネマブの治療の対象になるには、MMSEが22点以上であること、アミロイドPET陽性であることが求められる。このPET撮像に関しては、1つの医療機関だけではなく協力体制のもとでの実施も可能とされる。なおPETのみならず脳脊髄液の測定によって、アミロイドβの減少を証明することも可能である。2.医療保険、高額療養費制度が適用本剤の発売に当たって、患者数をもとに推計される10年間の市場規模予測がなされた。年度別では、9年度目の2031年が最大となり、投与患者数が3万2,000人で986億円と予測されている。薬剤価格は患者の体重にもよるが、体重50kgの場合、年間約298万円となる。幸いにして、従来の医療保険制度の適用が可能であることも決まり、患者負担は1~3割となる。加えて、医療費が高額になった場合の自己負担に上限を設ける高額療養費制度も利用できる。それだけにこの決定は患者にとって大きな福音である。3.アミロイドPETにも保険が利くこれまでアミロイドPETには保険が利かなかった。市価では30~50万円とされ、普通の患者さんにはなかなか手の届かない検査法であった。今回のレカネマブ発売に備えて、アミロイドPETの保険収載に関する検討もなされた。その結果、13万円台で保険が利く検査法になったと聞く。しかも一般的にはこうした保険関連の変更は、年度初めの4月より執行されるのだが、今回はレカネマブの発売と同時に保険収載になる。4.原則18ヵ月の投与世界規模の本剤の治験では18ヵ月間にわたって月に2回の点滴投与が行われた。これからの承認後の投与においても、月2回、18ヵ月間の原則が順守されるようだ。実際にこの治験に参加した経験として、筆者はactiveドラッグ(本物)が当たった人は、ほぼ皆アミロイドベータが減少したり、消えたりしていることを経験している。けれどもそのことと、臨床的な効果とが相関したという印象は乏しい。いずれにしてもさまざまな面で貴重な薬剤であるだけに、その臨床効果の厳密な測定は不可欠である。6ヵ月以降はクリニックでも治療可に最後に課題について言及したい。多くの課題があるのだが、最大の懸念は、おそらくこうした治療を実施する医療機関は、当面は限られた数になるだろうということである。全国的にみると、100万人もの治療希望者がいる可能性がある。けれども治療をしてくださる医療機関の数を考えた時、実際に治療ができるのは、どれぐらいの人数になるのだろうか、きわめて心細い。しかも18ヵ月間の治療期間にわたって、月2回の点滴を行わなければならない。いかに大病院といえども、すぐにキャパオーバーのパンク状態に陥ってしまうことが目に見えている。ここに対する対策は、今すぐに考えておきたい。本剤が持つ危険性や効果を考えた時、確かに安直な治療はしてはならない。最大の懸念は、やはりARIA、とくにARIA-Hであろう。これについては既述したように、投与開始から6ヵ月以内に、そのほとんどが発生する。だからARIAの発生がほぼ終わると思われる6ヵ月以降は、クリニックや小規模の病院の専門医でも医療機関との連携体制があれば、本治療を行ってもよいということになった。参考1)厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会(第572回)議事次第(令和5年12月13日)

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第190回 レカネマブの投与対象者、合理的な絞り込みに感服

中央社会保険医療協議会(中医協)総会が12月13日に開催され、軽度認知障害、軽度のアルツハイマー病を適応とする抗アミロイドβ抗体レカネマブ(商品名:レケンビ)の薬価が決定した。原価計算方式を用いて算出された薬価は、200mgが4万5,777円、500mgが11万4,443円。適応に従って体重50kgの人に500mg製剤を使用した場合、年間1人当たりの推計薬剤費は298万円となる。この薬価に個人的には特段驚きはなく、想定の範囲内である。メーカー側が公表しているピーク時売上予測は2031年の986億円(投与患者3.2万人)。以前、本連載で投与対象患者数を粗く予測してみたが、まあ当たらずとも遠からずという感じだろうか? もっともこの予測は医療提供体制の変化などによって容易に変わり得る。改めて今回の中医協総会で了承されたレカネマブの最適使用推進ガイドライン(以下、GL)に目を通してみた。目を通す際、とくに注目したのは医師・施設要件である。そもそも、薬剤がどれだけ使われるのかを考える場合、患者要件もさることながら、医師・施設要件のほうが大きなファクターであることは改めて議論をするまでもないだろう。処方を決定するのは医師だからだ。一応、患者要件も念のため目を通してみると、ほぼ目新しいことはないが、1.5テスラ以上のMRI検査が実施可能※という項目はやや目を引く。ちなみに国内のMRI保有施設数は5,000施設強で、1.5テスラ以上のMRI保有施設はその半数強。もちろん大都市圏ならば、ほぼ該当する施設は存在するだろうが、これだけでも診断できる施設、診断を受ける患者は絞られそうである。※金属を含む医療機器(MR装置に対する適合性が確認された製品を除く)を植込み又は留置した患者は不可また、投与施設の条件を見ると、これがなかなかに厳しい。まず、初回投与から6ヵ月までは同一施設での投与とし、その施設に必要な体制を「施設における医師の配置」「検査体制」「チーム体制」に分けて記述している。医師の配置に関する記述を原文通り引用すると「認知症疾患の診断及び治療に精通する医師として、以下のすべてを満たす医師が本剤に関する治療の責任者として常勤で複数名配置されていること」と定められている。「以下のすべて」を要約・箇条書きにすると、こんな感じである。アルツハイマー病の診療に関連する日本神経学会、日本老年医学会、日本精神神経学会、日本脳神経外科学会の専門医医師免許取得後2年の初期研修修了後、10年以上の軽度認知障害の診断、認知症疾患の鑑別診断などの専門医療を主たる業務とした臨床経験を有している画像所見からARIA(アミロイド関連画像異常)の有無を判断したうえで、臨床症状の有無と併せて本剤の投与継続・中断・中止を判断し、かつ必要な対応ができる製造販売業者が提供するARIAに関するMRI読影研修を受講日本認知症学会または日本老年精神医学会が実施するアルツハイマー病の病態、診断、本剤の投与対象患者及び治療に関する研修を受講すでに冒頭の各学会の専門医資格を持ち、かつMCI、認知症診療経験を10年以上有するという時点でかなりの医師がふるい落とされるだろう。しかも複数名の配置が必要なのである。実はこの前段では「認知症疾患医療センター等の、アルツハイマー病の病態、経過と予後、診断、治療を熟知し、ARIAのリスクを含む本剤についての十分な知識を有し、認知症疾患の診断及び治療に精通する医師が…」、後段では「認知症疾患医療センター以外の施設で本剤を使用する場合、認知症疾患医療センターと連携がとれる施設で実施すること」との記述がある。要は認知症に関する超高度医療機関のみに限るということだ。そして、なぜ複数名の医師を配置するのかは、後段の「チーム体制」のところを見ると、おぼろげながら推測ができる。要約すると、「投与対象患者の選定、投与期間中の有効性・安全性の評価、投与継続・中止の判断のために」ということのようだ。ちなみにGLでは有効性について、半年おきにミニメンタルステート検査(MMSE)、臨床的認知症尺度(CDR)を実施したうえでのスコア推移、患者・家族・介護者から自他覚症状の聴取などで評価をし、有効性が期待できないと考えられる場合に投与中止を求めている。もちろんこれ自体はとくに不思議はなく当然のことではあるが、MMSE、CDRのような定性的なものを定量化した評価は、単独の医師での評価よりも複数の医師での評価を突き合せるほうが妥当性は高まることが多い。つまり、より踏み込んだ解釈をするならば、“有効性・安全性は単独の医師ではなく、複数の医師で判断せよ”ということではないだろうか?その意味では前述の基準はある意味妥当とも言えるが、同時に私見ながら「よくもここまで論理的に治療開始対象患者を絞り込んだものだ」とも思ってしまう。治療開始対象患者を“公費負担”と入れ替えても良いかもしれない。ちなみに初回から6ヵ月以降の投与施設では、この「複数名」の記載はなく、縛りがやや緩和される。そして今回、投与期間は原則18ヵ月とされた。治験でこの投与期間しかデータがないことが最大の理由だろうが、既存の承認薬剤を考えれば、この点もかなり厳格に対応したと言えるだろう。もっとも前述のような有効性やARIAなどの有害事象を踏まえた総合的な評価で医師が継続の必要性があると判断した場合は投与継続が可能である。また、ご存じのように中等度以上は治験対象になっておらず、投与開始時は適応がない。ただ、投与開始後に中等症となった場合は一旦投与を中止して再評価を行い、この場合も医師が投与を必要と判断すれば再開は可能だ。ただし、中医協に提出された「保険適用上の留意事項」の案では、投与継続理由を具体的にレセプトに明記しなければならない。この点は世間が注目する高額薬剤だけに医師側もそこそこ以上にハードルの高い作業だろう。このようにして見ると、再度の私見になってしまうが、よくぞここまでと言いたくなるくらい、合理的に患者絞り込みを行ったものだと半ば感心してしまっている。参考厚生労働省:中央社会保険医療協議会 総会(第572回)議事次第

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レカネマブ薬価決定、アルツハイマー病治療薬として12月20日に発売/エーザイ

 エーザイとバイオジェンは12月13日付のプレスリリースにて、アルツハイマー病の新たな治療薬であるヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体のレカネマブ(商品名:レケンビ点滴静注200mg、同500mg)について、薬価基準収載予定日である12月20日より、日本で発売することを発表した。米国に次いで2ヵ国目となる。薬価は200mgが4万5,777円/バイアル、500mgが11万4,443円/バイアル。用法・用量は、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注で、患者が体重50kgの場合、年間約298万円になる。保険適用となり、さらに、治療費が高額になった場合は高額療養費制度も利用できる。 本薬は、2023年9月25日に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果で製造販売承認を取得し、12月13日の中央社会保険医療協議会総会において、薬価基準収載および最適使用推進ガイドラインが了承された1)。エーザイが本剤の製造販売元として販売を行い、エーザイとバイオジェン・ジャパンが共同販促を行う。 本薬の承認は、エーザイが実施した大規模グローバル臨床第III相試験であるClarity AD試験のデータに基づく。主要評価項目の全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBにおいて、18ヵ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制した。副次評価項目として、患者が自立して生活する能力を介護者が評価する指標のADCS MCI-ADLにおいて、プラセボと比較して37%の統計学的に有意なベネフィットが認められた。なお、投与群で最も多かった有害事象(10%以上)は、Infusion reaction、ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)、ARIA-E(浮腫/浸出)、頭痛および転倒であった。本結果は、NEJM誌2023年1月5日号に掲載2)。 本薬の承認条件に従い、一定数の症例データが集積されるまでの間は、投与されたすべての患者を対象に特定使用成績調査(全例調査)が実施される。また両社は、医療関係者に対するアミロイド関連画像異常(ARIA)の管理とモニタリングの推進に向けた研修資材の提供をはじめ、添付文書や最適使用推進ガイドラインに則した適正使用を推進する。 本薬の概要は以下のとおり。製品名:レケンビ点滴静注200mg、レケンビ点滴静注500mg一般名:レカネマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制用法及び用量:通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する。薬価(12月20日収載予定):200mg 4万5,777円/バイアル、500mg 11万4,443円/バイアル

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レビー小体型認知症とアルツハイマー病の鑑別におけるCISの診断精度

 レビー小体型認知症(DLB)の国際診断基準に取り入れられているcingulate island sign(CIS)は、アルツハイマー型認知症(AD)との鑑別診断に用いられる。最近の研究では、DLBにおけるCIS比は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアに応じて変化することが示唆されている。東京慈恵会医科大学の浅原 有揮氏らは、DLBとADを鑑別において、CIS比の診断精度(感度および特異度)がMMSEスコアに応じてどのように変化するかを評価するため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2023年12月15日号の報告。 対象は、18F-FDG PETを実施しMMSEを完了したDLB患者22例、アミロイド陽性AD患者26例。MMSEスコアに応じて、3群に分類した(A群:MMSE24超、B群:MMSEスコア20以上24以下、C群:MMSEスコア20未満)。各群において、DLB患者とAD患者のCIS比を比較し、ROC曲線分析を実施して感度および特異度を算出した。 主な結果は以下のとおり。・B群では、DLB患者のCIS比はAD患者よりも有意に高かったが(p=0.0005)、A群(p=0.5117)およびC群(p=0.8671)では、この関係は認められなかった。・ROC曲線分析では、DLBとADを鑑別するためのCIS比の感度および特異度は、各群において以下のとおりであった。 【A群】感度:66.7%、特異度:77.8% 【B群】感度:91.7%、特異度:100.0% 【C群】感度:75.0%、特異度:66.7% 著者らは「DLBとADの鑑別におけるCIS比の診断精度は、MMSEスコアに応じて変化が認められ、MMSEスコアが20以上24以下の場合で、感度および特異度が高くなることが示唆された」ことを報告した。

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医師が医師に薦める、今年買ってよかったモノ【CareNet.com会員アンケート結果発表】

歴史的な物価上昇が続いた2023年。こんなときだからこそ、良い商品にお金を使っていきたいものではないでしょうか。CareNet.comの会員医師1,000人に、「今年買ってよかったモノ」をお聞きしました。先生方のおススメコメントとともにご紹介します。1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】[掃除機]ルンバ「j9+はゴミの収集も自動(消化器外科、30代)」「勝手に掃除してくれてゴミも収集してくれて、時短になる(内科、60代)」「すごく性能が良く、いつもベッドの下まできれいになっている(消化器外科、30代)」ダイソン「あまり汚れてないと思ったところでもかなり埃が吸えている(内科、30代)」「モップがけもできて大変良い(消化器内科、60代)」「吸引力が違う(精神科、30代)」シャーク「ハンディクリーナー:ごみ捨てが簡単で細かいところまで掃除が行いやすい(整形外科、40代)」「スティック型掃除機:コードレスで置場所もとらない(その他、50代)」その他メーカー「シャープ コードレス掃除機(最上位機種):ダイソンを使っていたが、シャープは音も静かで軽くて、吸引力も変わらなかった(心臓血管外科、50代)」「パナソニック ルーロ:スマホから操作できる(消化器内科、30代)」「エコバックス DEEBOT T20 OMNI:毎日帰るときれいな床が保たれていて最高(神経内科、30代)」[ドラム式洗濯乾燥機/乾燥機]「パナソニック:仕上がりがフワフワと口コミで見て購入したが本当だった。乾燥機つき洗濯機は乾燥がしっかりできるかが問題だが、満足できるレベル(内科、40代)」「東芝:圧倒的に生活が楽になった(臨床研修医、20代)」「アクア:コスパが良い(内科、40代)」「リンナイ 乾太くん:ガス式乾燥機は時短!(整形外科、40代)」[空気清浄機]「Airdog mini portable:車内の換気がすばらしかった(その他、50代)」「シャープ 加湿空気清浄機プラズマクラスター:今年ぜんそくにかかったが空気清浄機で改善した気がする(脳神経外科、30代)」[調理家電]トースター「アラジン:表面がカリッとしてめちゃくちゃ美味しく温まる(耳鼻咽喉科、40代)/立ち上がりが早い(呼吸器内科、60代)」「バルミューダ:パンがおいしく焼ける(血液内科、30代)」オーブンレンジ「バルミューダ:日々楽しい(心臓血管外科、50代)」「パナソニックビストロ:賢すぎる(臨床研修医、20代)」その他「Toffy ホットサンドメーカー:簡単においしいホットサンドが作れる(内科、60代)」「ソーダストリーム:家で気軽に炭酸が飲める(内科、20代)」「デロンギ コーヒーメーカー:おいしい(放射線科、30代)/エスプレッソメーカー:自宅で手軽にカフェラテが飲め、買ってよかった(小児科、30代)」「シャープ ヘルシオホットクック:発酵食品から煮物、煮込み料理まで料理の幅が広がる(皮膚科、40代)」「パナソニック ホームベーカリーSDMDX4:自宅でおいしいパンが焼ける(産婦人科、30代)」[その他]「ソニー 有機ELテレビ(BRAVIA):画像がきれい(泌尿器科、50代)」「パナソニック15V型ハイビジョンポータブル液晶テレビ(プライベート・ビエラ):家じゅう持ち歩けて便利(呼吸器内科、50代)」「ブラウン 電動歯ブラシOral-B:強力に汚れを落としてくれる(内科、40代)」「フィリップス 電動歯ブラシ:時短になる(小児科、30代)」「パナソニック ヘアドライヤーナノケアEH-NA0J:コンパクトなのに速乾・大風量で、熱くなり過ぎず、潤いを保った毛質をkeepできるすぐれもの(脳神経外科、50代)」2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】[パソコン]「MacBook Air:見た目がおしゃれで使い心地が良い(内科、50代)」「MacBook Pro:早い(消化器外科、40代)/おしゃれで高機能(精神科、40代)」「Mac mini:小型で性能が良く、価格も適切(血液内科、70代以上)」「マイクロソフト Surface Go 3:軽くて持ち運びしやすい。スライド作りにもweb講演聞くのにもネット見るのにも、wifi環境があれば使えてとても便利(リハビリテーション科、50代)」「パナソニック Let's note:壊れにくく優秀(小児科、60代)」「NEC LavieA23:Web会議に使用しやすいデスクトップを購入。オールインワン型で非常にコンパクトであり、かなりハイスペック(腎臓内科、40代)」「dynabook:毎日使用するものは高くても最新のものを買うと満足度がとても高い(外科、30代)」[スマートフォン]「iPhone15:写真がきれい(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)/快適(消化器内科、50代)」「iPhone15pro:カメラ、操作性が格段に向上(脳神経外科、60代)/散々な評判に反して、熱くならないし、電池持ちもよいし、ProMotionテクノロジーも想像以上に良い(放射線科、40代)/写真が誰でも超きれいにとれる(内科、60代)」「iPhone15ProMAX:カメラの5倍ズームで写真を撮る楽しみが倍増する(麻酔科、30代)」「iPhone SE3:コスパがよい(消化器内科、40代)」「Xperia:7年ぶりに機種変更したが、スピードも使い勝手も断然良い(精神科、50代」[タブレット]「iPad mini 6:携帯性と性能が良い(消化器内科、60代)」「iPad Pro:使い勝手がよく、作業がはかどる。モチベーションも上がる(小児科、30代)」「Amazon Fire:セールで買ったから安かったし、使い勝手も良い(整形外科、40代)」「Androidのタブレット:ほとんどの作業はこれですんでしまうので、最近Windowsはいらないかなと思うようになった(外科、50代)」[イヤホン・ヘッドホン]「AirPods Pro(第2世代):低音の出がすごい(眼科、70代以上)」「OpenComm骨伝導イヤホン:骨伝導なので耳が痛くならず、周囲の環境にも注意を払える(放射線科、30代)」「オーディオテクニカ 骨伝導イヤホンATHCC500BT:待合室のような静かな環境で聴くのに最適(その他、50代)」「Anker Bluetooth5.0ワイヤレスヘッドホンSoundcoreLifeQ20+:性能が良かった(神経内科、50代)」[その他]「Apple Watch:体を動かすこと、睡眠を取ることを意識するようになった(眼科、50代)/スマホからの離脱ができる(腎臓内科、20代)/生活が便利になった(内科、20代)」「Google Chromecast:テレビでのプレゼンに便利(精神科、40代)」「Amazon Alexa:声だけでライトの点灯消灯、テレビ・エアコン・扇風機のオンオフ、カーテンの開け閉めまでらくちんになった。リモコンがほとんど不要になりサイドテーブルが広く使えるようになった(放射線科、60代)」「GERCEO モバイルバッテリー(GERCEOHP8):複数の充電方法に対応しており、日常でも災害発生時でも役立つ(麻酔科、40代)」「エレコム パッド型iPhone充電器:iPhoneにわざわざケーブルを刺す必要がなく非常に重宝(整形外科、30代)」「EXARM ZETA モニターライト:買ってから目が疲れにくくなった(小児科、40代)」「ロジクールマウス:一度使うとやめられない(放射線科、40代)」「おもいでばこ:写真や動画の保管、整理に非常に便利。ふるさと納税の商品にある(膠原病・リウマチ科、30代)」「RayCue DisplayPortHDMI変換アダプタ:PCからモニタへ接続するDsubケーブルがごつくて邪魔でネジ止めが面倒。PCのモニタ出力からHDMIに変換して通常のHDMIケーブルで自在に接続できる(整形外科、70代以上)」3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】[トヨタ]「シエンタ:多人数で乗ることができて燃費が良い(消化器外科、60代)」「ヤリス クロス:比較的安価で安全装備が充実(糖尿病・代謝・内分泌内科、60代)」「ノア:子連れには最適なファミリーカー(麻酔科、30代)」「プリウスの新車:安全装備が充実(消化器外科、60代)」[日産]「アリア:加速や走行性、静寂性が素晴らしい(内科、60代)」「サクラ:通勤の足に最高です(神経内科、50代)」「セレナ:運転が楽(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」[他メーカー]「スバル レガシィアウトバック:いい車です(整形外科、50代)/とてもいい車です(内科、50代)」「スバル XV:オートクルーズ機能がとても良い。運転の負担が軽減された(臨床研修医、40代)」「マツダ CX8:6~7人乗りのSUV。国産車SUVの中で唯一まともに座れる3列目。インテリアの質感は国産SUVの中でも有数の出来。希少なディーゼルエンジンがある(循環器内科、40代)」「ホンダ フィット:エコカーでしっかりしていて満足(産婦人科、50代)」「メルセデス・ベンツ 新型Cセダン:ISGで電動化された(内科、60代)」「BMW X3:燃費良く静粛(小児科、60代)」「TESLA ModelX:多少値は張るものの優れた性能と唯一性がある(形成外科、30代)」「フォルクスワーゲン Golf GTI:加速の良さ、日常の走行の安定(脳神経外科、50代)」「ポルシェ 911:楽しい(糖尿病・代謝・内分泌内科、50代)」「ロータス エミーラ:ロータス最後の純ガソリンスポーツカー(脳神経外科、50代)」4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】[寝具など]「エマ・スリープ マットレス:睡眠の質が格段に上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、20代)」「コアラマットレス:寝心地がよい(内科、40代)」「トゥルースリーパー プレミアベッドマットレス:A社ポイントで入手したが、畳でも布団より快適(内科、60代)」「DryCool 高密凸凹ウレタンマットレス:反発性強いマットで、睡眠の質が上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」「西川 マットレス:大谷翔平も選んだ寝心地の良さ(循環器内科、40代)」「西川 オーダー枕:肩こりが解消され、毎晩眠ることが楽しみになった(精神科、30代)」「シルクの枕カバー:当直中も枕カバーを付け替えるだけで良い睡眠になる(内科、20代)」「リライブシャツ:途中で目が覚めることなく眠れる(皮膚科、30代)」[その他]「レンジメート:干物もギョーザもステーキも嘘みたいにうまくできる。片付けも楽。忙しい先生方にはうってつけと思う(整形外科、50代)」「ルピシア 茶こしマグモンポット:日々忙しい中でもおいしい紅茶を手軽に味わえる時間が今の癒し。食洗機も使える(精神科、20代)」「タイガー 真空断熱炭酸ボトル(MKB-T048):炭酸、食洗器対応ながらシンプルな構造で、炭酸以外の普段使いにも良い(整形外科、50代)」「松徳硝子 うすはりタンブラー:飲み物が美味しく飲める(皮膚科、20代)」「SHINfilter ステンレスコーヒーフィルター:コーヒーの味の変化に驚かされる(小児科、40代)」「ロールシュライファー 包丁研ぎ:自炊する必要に迫られた時の相棒(ナイフ)の手入れに最適!(総合診療科、60代)」「パナソニック LEDネックライト:薄暗いところでの書類の記載等、細かい作業の際手元だけを照らしてくれるため、周囲に影響が少なく非常に便利(総合診療科、50代)」「SUWADA クラシックつめ切り:ニッパー式だが、切れ味が全然違う(精神科、50代)」「リファ ファインバブル:よく落ちる(内科、50代)」5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ「Kindle Unlimited:好きな漫画がかなり読める、当直の暇つぶしになる(耳鼻咽喉科、40代)」「nosh 冷凍宅配おかず:冷凍食品だが、バランスがいい(臨床研修医、20代)/手軽においしいご飯が食べられる(臨床研修医、20代)」「ワタミの宅食 あっとごはん:子育てを機にはじめたが、とても便利で楽!(眼科、30代)」アンケート概要アンケート名『2023年を総まとめ!今年の漢字と他の医師にも薦めたい今年の購入品をお聞かせください』実施日   2023年11月8日~15日調査方法  インターネット対象    CareNet.com医師会員有効回答数 1,029件

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映画「イン・ハー・シューズ」【なんで読み書きだけできないの?なんで計算できないの?(学習障害)】Part 1

今回のキーワード読字の障害(ディスレクシア)書字の障害算数の障害知的障害発達性言語障害ADHD合理的配慮障害者権利条約話すことは普通にできるのに、読むのがとても苦手なお子さんはいませんか? 読めても書くのがとても苦手なお子さんはいませんか? 計算するのがとても苦手なお子さんはいませんか? このような場合、学校や医療の現場では、学習障害と呼ばれています。これは、発達障害の1つです。今回は、この学習障害をテーマに、ラブコメ映画「イン・ハー・シューズ」を取り上げます。この映画を通して、学習障害の特徴を整理し、その起源に迫ります。それを踏まえて、その本質的な対策を考えてみましょう。学習障害の特徴は?主人公のマギーは、誰もが羨むルックスとスタイルを持ち、人当たりが良い魅力的なキャラクターです。それなのに、あるハンディキャップによって、仕事は長続きしません。まず、彼女のハンディキャップを主に3つ挙げ、学習障害の特徴を整理してみましょう。(1)読むのが苦手マギーがテレビ局のアナウンサーのオーディションに挑むシーン。目の前のプロンプターに流れて表示される文章を読み上げるよう指示されますが、彼女は読むのが遅く、読み間違えも連発していました。1つ目の問題は、読むのが苦手であることです。これは、読字の障害(ディスレクシア)と呼ばれます。流暢に読めず、読み間違いが目立ち、読解力がないなどの特徴があります。(2)書くのが苦手マギーがケンカ別れをしてしまった姉のローズに手紙を書こうとするシーン。宛名だけは書きますが、その先はずっと白紙のままです。そして、書きかけと思われる紙がいくつもくしゃくしゃに丸められて、バッグの中に入れられていました。2つ目は、書くのが苦手であることです。これは、書字の障害と呼ばれます。マギーのように、読むのが苦手であるということは、必然的に書くのも苦手になります。書き間違いが多く、文章構成力がないなどの特徴があります。なお、読むことやこの後の計算することとは違い、書くことについては、速さについての診断基準はありません。一方、読むのが苦手ではなくても、書くのだけ苦手な場合もあります。この場合は、書字の障害のみと診断されます。(3)計算が苦手マギーがアルバイトでジーンズ屋のレジ係をしていた時の回想シーン。彼女は、レジのスキャナーが反応しないことで戸惑うなか、15%引きのクーポン券を差し出した女性客から、「クーポンは15%割引。合計金額から引くだけ。42ドルの15%、すぐに自分で計算できないの!?」と怒鳴られます。そして、その女性の後ろには長い列ができていたのでした。3つ目は、計算が苦手であることです。これは、算数の障害と呼ばれています。スムーズに計算ができず、計算間違いが目立ち、数学的推理力がないため、日常生活で算数の応用ができないなどの特徴があります。このように、マギーは大人になるまで読み書きや計算ができないというハンディキャップによって、自信(自己効力感)をなくしていました。姉から学校に戻って勉強し直すよう勧められても、「バカの学校(学習障害向けの学校)には戻りたくない」とも言っていました。生活するお金がないなか、男をたらし込んでおごらせたり、ケチな盗みを繰り返して、その日暮らしの生活をし、自尊心(自己肯定感)も低くなってしまっているのでした。他の発達障害との関係は?学習障害の特徴は、読むのが苦手、書くのが苦手、計算が苦手であることがわかりました。それでは、他の発達障害との関係はどうなるのでしょうか? ここから、主に3つの発達障害を挙げて、鑑別診断をしてみましょう。(1)知的障害マギーは、ずっと音信不通だと思っていた祖母を頼って訪ねます。そして、祖母の勧めから、近くの老人ホームで食事を運ぶ仕事に就きます。彼女は、読み書きや計算を必要としない仕事なら続けることができています。買物や交通機関の利用など日常生活は普通に送れています。1つ目は、学習障害は知的障害(トータルIQ 75以下)を除外することです。知的障害であれば、書き言葉だけでなく、話し言葉の理解や生活の自立が難しくなってきます。つまり、知的障害であった場合は、学習障害とは診断しません。(2)発達性言語障害マギーは老人ホームで、目の見えない老人から詩の本を読んでくれと何度も頼まれます。実はその老人は元教授で、マギーが学習障害であることを見抜いたのでした。マギーは渋々教授に詩を読みます。詰まりながらも、勧められたとおりゆっくり読みきったあと、教授から詩の意味を聞かれます。すると、彼女は詩の描写にある隠れた意味を言い当てたのでした。マギーは、教授から「Aプラスだ。君は頭がいい」と褒められます。このシーンから、マギーは読み書きがうまくできないものの、抽象的な言葉を使いこなせることがわかります。つまり、彼女の言語理解IQ(言語能力)は少なくとも正常範囲(85以上)、Aプラスと評価された点では110以上であることが推定できます。2つ目は、学習障害は発達性言語障害(言語理解IQ 75以下)と区別することです。もともと発達性言語障害があれば、そもそも話し言葉の理解でさえ難しくなってきます。つまり、その後に学習障害を併発する可能性がとても高くなります。一方、マギーのように、もともと発達性言語障害がない学習障害の場合は、話し言葉の能力を生かすことができます。なお、文部科学省の定義では、発達性言語障害は学習障害に含まれています。国際的な診断基準(ICD-11)や米国精神医学会の診断基準(DSM-5)とは違うことに注意する必要があります。(3)ADHDマギーは、老人ホームの仕事に就く前に、トリマーの見習いをします。しかし、段取りを覚えきれず、動物が動き回るなどのちょっとしたアクシデントですぐにパニックになっていました。3つ目は、学習障害はADHDの合併が最も多いことです。学習障害もADHDも、ワーキングメモリーのIQが低くなることが共通しています。ワーキングメモリーとは、同時に複数の違う記憶を保持するマルチタスクのことです。老人ホームで食事を運ぶだけの仕事なら、マルチタスクではなく自分のペースでできるため、マギーには合っていることがわかります。次のページへ >>

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映画「イン・ハー・シューズ」【なんで読み書きだけできないの?なんで計算できないの?(学習障害)】Part 2

読み書きや計算の能力はいつ生まれたの?学習障害は、知能(IQ)に問題がないのに、読むこと(読字)・書くこと(書字)・計算すること(算数)における学習のどれかまたはすべてに困難がある状態であることがわかりました。それでは、これらの能力はいつ生まれたのでしょうか? ここから、その起源に迫ってみましょう。約20万年前に、現在の私たち人類(ホモサピエンス)が誕生し、言葉を話すようになりました。約8万年前に、人類は石片に格子模様を刻むようになりました。約5万年前に、洞窟の中で壁画を描くようになりました。これが、描く起源です。この詳細については、関連記事1をご覧ください。約2万年前には、獲物の数を数え、その数を動物の骨に縦線として刻むようになりました。これが、数字の起源です。約5千5百年前には、粘土板に当時の数字と動物の絵の形を模式化した絵文字を一緒に刻むようになりました。これが、文字の起源です。こうして、家畜などの数の情報管理が可能になり、より大きな集団(都市)を維持することができるようになりました。その後に、絵文字はどんどん簡素化されていき、アルファベットのような一字で音だけを表す文字(表音文字)と漢字のように一字で意味を表す文字(表語文字)が生まれました。そして、聖書や般若経などのように、話し言葉が文字に変換されるようになりました。これが、読み書きの起源です。7世紀には、インドで0の概念が発見され、物の売買において、数えるだけでなく計算もできるようになりました。これが、計算の起源です。18世紀後半の産業革命以降、読み書きや計算は、職業的により多くの人に必要とされるようになり、学校が増えるととともに広がっていきました。同時に、このころから、読み書きや計算がもともとできない人があぶりだされてしまったのでした。これが、学習障害の起源というわけです。なんで学習障害になるの?約20万年の私たち現世人類(ホモサピエンス)の歴史のなかで、多くの人が読み書きや計算をするようになったのは、たかだか200年ちょっとであり、ごくごく最近のことであることがわかります。読み書き計算をすべての人ができるようになるには、進化の歴史としては短すぎます。つまり、読み書きや計算の能力は、これまで人類が進化の歴史で獲得した別の能力を流用し、文字の音韻化(デコーディング)、音韻の文字化(インコーディング)、数操作(ナンバースキル)の神経ネットワークを、まさに学習によって構築しているわけです。だからこそ、これらの神経ネットワークがもともとうまくつながらない人が一定数いるのです。実際の画像研究では、学習障害の原因は脳の特定の部位の機能障害があることが指摘されています1)。たとえば、子供はよく左右反転した文字(鏡文字)を書きますが、これを書かないようになっていくのは、顔認識をする脳の部位(ビジュアル・ワード・フォームエリア)の発達と関係があることが指摘されています2)。つまり、文字の形を認識するのは、人の顔を認識する脳の部位を流用していることがわかります。また、読むことを繰り返すことで、文字認識の自動化が促進され、文字・文章を速く読むことができるようになります。一方で、そのために、「ヘリプコター」と書いてあっても、「ヘリコプター」と読んでしまい、誤字脱字に気付きにくくもなります2)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「イン・ハー・シューズ」【なんで読み書きだけできないの?なんで計算できないの?(学習障害)】Part 3

学習障害にどうする?学習障害の原因は、脳の機能の障害であり、学習環境ではないことがわかりました。これを踏まえて、学習障害の本質的な対策を大きく3つの時期にわけてみましょう。(1)小学校マギーは、実際に学習障害者向けの特別な学校に行っていました。小学校では、読み書き計算への特別なトレーニングをすることです。日本では、米国のような特別な学校はありませんが、たとえば、週1回2時間の特別支援教室を利用することができます。また、学習障害専門の医療機関で指導を受けることもできます。小学校は、読み書き計算の敏感期であることが考えられるため、この対策を優先的に行うことが必要です。(2)中学校・高校マギーは、自信も自尊心も低くなり、軽はずみな行動(逸脱行動)を繰り返していました。これは、学習障害による二次障害です。しかし、おばあちゃんや教授のサポーティブなかかわりによって、マギーは自信と自尊心を取り戻し、真面目に働くようになりました。中学校・高校では、このような二次障害の予防のために、もはや特別なトレーニングをするのではなく、読み書き計算へのサポートツールを使うことです。たとえば、読字の障害なら読み聞かせの音読機能のアプリを使う、書字の障害ならパソコンを持ち込む、計算の障害なら計算機を使うことです。また、字の書き順が間違っていても、形がほぼ合っていて読めるなら問題なしとすることです。このように、学習の形にこだわらないようにする必要があります。これは、学習条件を合理的に配慮する取り組みで、障害者差別解消法の一環の合理的配慮として推進されています。そもそも小学校で特別なトレーニングをしても限界があるなら、これ以上トレーニングを続けるメリットがなくなります。むしろ「どうせ自分はできないしだめだ」という二次障害のリスクを高めます。そうではなくて、「自分にもできることはあるし、大丈夫だ」という心を育むことがまず必要です。この点では、場合によっては、小学校高学年からこの取り組みを検討することが必要です。(3)成人後マギーは、やがて自分の美的センスを生かして、高齢者向けの服のコーディネートのビジネスを始めます。受付は、おばあちゃんが代わりにやっていました。成人後は、読み書き計算をなるべくしなくて済む仕事を選ぶことです。たとえば、専門職よりも一般職です。事務職よりも営業職です。デスクワークよりもフィールドワークです。ほとんどの能力(機能)の敏感期が20歳までであることを踏まえると、読み書き計算も20歳までであることが推定されます。成人してからの学習の効果があまり期待できないことから、やはり自分に合った、自分にできる仕事を見つけることが必要です。なお、敏感期の詳細については、関連記事2をご覧ください。「イン・ハー・シューズ」とは?マギーの姉は、弁護士という最も読み書き計算を駆使する職に就いていましたが、地味で容姿に自信がありませんでした。姉は、そんなマギーとは真逆なキャラクターですが、唯一同じなのが足のサイズなのでした。2人は反発し合いながらも、最後は仲直りします。そして、マギーは姉の結婚式で詩をゆっくり読み上げます。その中で「私の心を重ねて」(I carry your heart with me.)という言い回しが繰り返されます。「イン・ハー・シューズ」とは、「彼女の立場だったら(彼女の靴を履いたら)」という意味で、まさに「私の心を重ねて(わかり合えれば)」という言い回しに重なります。これは、この2人だけのことではなく、まさに社会としても学習障害を理解し、サポートすることであることをこの映画はほのめかしているように思われます。現代の社会は、ICT(情報通信技術)によって、学習障害へのサポートツールがますます充実してきています。そんななか、「自分だけずるい」「特別扱いだ」という周りのクラスメートの目も気になってきます。これは、「教育の平等」というこれまでの価値観によるものです。そして、個人の学習という内容を優先するか、それとも教育の平等という形式を優先するかという教育理念のぶつかり合いでもあります。この時、何が一番大事なのかを考えることが必要になってきます。それは、なんのために学んでいるのかということです。それは、たとえ障害があってもその子その子が成長するためです。足並みを揃えるためではないです。優劣をつけるためでもないです。この考え方は、先ほど紹介した合理的配慮(障害者差別解消法)が根拠としている障害者権利条約に通じており、グローバルスタンダードになっています。今回の「イン・ハー・シューズ」を通して、まさにその子その子の身になってみたら、持っている能力に寄り添う学びのあり方が必要であることをより理解できるのではないでしょうか?1)医療スタッフのためのLD診療・支援入門 P20:玉井浩(監)、診断と治療社、20222)ヒューマニエンス 40億年のたくらみ「“文字” ヒトを虜にした諸刃の剣」:NHKオンデマンド、2022<< 前のページへ■関連記事ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 1海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1

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