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アルツハイマー型認知症の薬はうたかたの夢か(解説:岡村毅氏)-1030

 私たちの世代はアルツハイマー型認知症の薬の恩恵にはあずかれない。いつかは実現するかもしれないし、そう願うが、現実を見つめよう。 本論文は、アルツハイマー型認知症について広く信じられているアミロイド仮説(「アルツハイマー型認知症のセントラルドグマ」)に基づくものだ。つまりアミロイドをつくる酵素(BACE)を阻害する物質が、治療薬となるのではという考え方であった。しかし、本欄でも過去に紹介したように、すでに認知症になっている人に対して行われた研究では効果は見られなかった(「認知症の薬はいったいいつできるのか? バプティスト史観から」)。 すでに認知症になってからでは遅いのだ、発症する前(症状はないがアミロイドは増えている段階)ではきっと効果があるはずだ、というのが今回の論文の考え方である。しかし、結果はまったく効果がないというものであった。 これまでの連載を見返してみたところ、ダメでした、ばかり書いてきたようだ。セロトニン受容体拮抗薬(「新薬が出ない世界で(1)」)、アミロイド抗体(「新薬が出ない世界で(2)」)、タウ凝集阻害剤(「新しい戦略に基づく認知症新薬開発ものがたり」)が敗北してきた。最近もエーザイによる期待の新薬が失敗であったことが報じられたばかりである(2019年3月22日付 日本経済新聞 電子版)。 とはいえ、実はここまでは専門家には常識であろう。ではここからどう考えるのか? 1つはサイエンスとしての認知症学である。アルツハイマー型認知症では、事実としてアミロイドがたまっている。また死後脳の研究や、アミロイドイメージングの研究では症状の進行と、アミロイドの広がり(Braakステージ)が関連している。であれば、アルツハイマー型認知症の病理とアミロイドが関連していると考えるのが自然である(アミロイド仮説)。そして創薬は目と鼻の先だと誰もが思った。しかしアミロイドに介入することが、効果を上げない。専門家が密かに持っていた恐ろしい疑念―アミロイドは原因ではなく結果ではないか―があらわになりつつある。 今や悲観論が基調であるが、精神科医としてはバランス思考を心掛けたいものである。巨大製薬企業が文字通り命(社運)を懸けて行った根本治療薬の創薬は、まったく利益を生まない純粋な社会貢献となり、確実に私たちを次のステージへと導いたと考えよう。私たちは無理だが未来の世代が恩恵にあずかれるように、創薬に携わる人々を支援したいものだ。 もう1つは人文の学としての認知症学である。長寿の実現により高齢期は伸長し、認知症とともに生きることが普通になった。もしも90歳で認知機能がゆっくり低下していくことが病気であり不幸ならば、私たちは長生きしてみんな不幸になるわけだ(そんな世界は正しくないよね?)。そもそも幸福とは何か、しばし立ち止まって考える時期であろう。

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モチベーションに頼るな【Dr. 中島の 新・徒然草】(269)

ニ百六十九の段 モチベーションに頼るな私ども大阪医療センターでは、月末月初にレセプトの病名つけを行っています。とくに初期研修医の病名漏れが多く、その病名つけを何人かの医師で手分けしてやらなくてはなりません。先日、新しく病名つけメンバーになった医師から不平が出ました。「いきなり30枚ものレセプトを渡されて『翌日昼までにやってくれ』とは何事か!」「そんなもの、できるはずがない」そういったお怒りです。ごもっとも。確かに出張などで不在なら無理なのは当然です。でも、そうでなければやるしかありません。不平不満を言っても、その仕事が消えるわけではないからです。もちろん、誰かが肩代わりしてくれたりもしません。終わるまでひたすら自分がやるのみです。さて、このような辛い仕事もこなすコツがあります。「なんで俺が!」と思わないことです。「まだ、こんなに残っているのか」と思ってもいけません。淡々と取り掛かり、淡々と進めましょう。そして、「よっしゃ、やるぞ!」とモチベーションを上げるのも賛成できません。何かの作業を始めるのに、いちいちヤル気を出してどうする!正しくは、肩の力を抜いて始めることです。ノーモーションでいきなり始めたほうが良い結果を生みます。いちいちモチベーションなんかに頼ってはダメですね。たぶん、仕事でも勉強でも掃除でもなんでもそうです。唐突に始めるのがコツ。そして何も考えずにレセプトの山から1枚とり、淡々と病名をつけていれば、そのうち終わります。片付いたらこう言いましょう。「なんだ、これだけか。大したことねえな!」って。最後に1句モチベーション? いちいち頼るな すぐかかれ

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第21回 関節リウマチとMTXにまつわるお役立ちエビデンス集【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 関節リウマチの罹患率は人口の1%とも言われ、とくに女性の患者は男性の2~3倍と多く、いずれの年代でも発症しうる疾患です1)。関節リウマチ治療の第1選択薬は言わずと知れたメトトレキサート(MTX)で、関節破壊の進行を抑制するために重要かつ有名な薬剤です。今回はそのMTXに関連するエビデンスをあらためて紹介します。有効性についてMTXの有効性については、関節リウマチ患者732例においてMTX単独投与の効果をプラセボと比較したコクランのシステマティックレビュー2)など、すでに十分なエビデンスがあります。これは1997年に発表されたレビューの2014年改訂版で、レビューに含まれているのは1980〜90年代の試験です。以前の治療や併用薬としてNSAIDsや他の抗リウマチ薬を使用している場合もありますが、有効性については、ほとんどの主要評価項目で有意な改善を認めています。ACR50(圧痛関節数、膨張関節数、患者による疼痛評価、患者による全般活動性評価、などの評価で必須項目を含む50%以上の改善)を達成したのは100人当たりプラセボ8例、MTX23例で、健康関連QOLのNNT(Number Needed to Treat:必要治療数)=9、X線写真における関節破壊の進行評価のNNT=13と、MTXの有意な効果が示されています。一方で、3~12ヵ月の評価では、プラセボと比較して100人当たり9例に、多くの有害事象による中止が報告されています。葉酸との併用について葉酸またはフォリン酸(ロイコボリン)を摂取することで、MTXによる悪心、腹痛、肝機能異常などが低減し、口内炎も減る傾向にあることが示唆されています3)。こちらもコクランに掲載された、MTXと葉酸またはプラセボ併用を比較した6つの二重盲検ランダム化比較試験、計624例を含むシステマティックレビューです。葉酸またはフォリン酸併用群では、24~52週のフォローアップで、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、腹痛)の絶対リスク減少率-9.0%、相対リスク減少率-26.0%、NNT=11と、プラセボ群よりも有意に減少しています。同じ期間の口内炎の発生については、絶対リスク減少率-6.2%、相対リスク減少率-27.8%で、統計的有意差はないものの減少傾向にありました。また、肝毒性(トランスアミナーゼ上昇)の発生率は、8〜52週間のフォローアップ期間において、絶対リスク減少率-16.0%、相対リスク減少率-76.9%、NNT=6と、葉酸を併用する多くのメリットが示されています。なお、葉酸併用によるMTXの効果の有意な減弱はありませんでした。関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン 2016年改訂版においても、MTXを継続している患者では、必要に応じて葉酸を併用することが推奨されています4)。投与間隔については、MTX服用の24~48時間後が一般的です。同ガイドラインによれば、そのベストな投与間隔について明確なエビデンスはないとされていますが、少なくともその時間を空ければMTXの効果に影響はないだろうとのことです。なお、ロイコボリンレスキュー療法の研究では、MTX服用後42~48時間を過ぎてしまうとMTXの毒性が発現しやすくなることが報告されています5)。感染症リスクについてMTXは免疫抑制作用を有する薬剤ですので、肺炎、発熱、口内炎など感染兆候に注意を払うことも大切です。2015年にLancetに掲載されたネットワークメタ解析で、慢性関節リウマチ患者において、MTX使用時と生物学的製剤使用時の重篤感染症(死亡例、入院例、静脈注射の抗菌薬使用例)発現リスクについて検討されています6)。結果としては、生物学的製剤はDMARDsに比べて重篤感染症リスクが約30%高く、とくにMTX使用歴がある患者および標準〜高用量の生物学的製剤使用患者ではリスクが高いという傾向にありました。年間1,000人当たりの重篤感染症発生人数は、DMARDs服用群で20例、標準量の生物学的製剤使用群で26例、高用量の生物学的薬剤使用群で37例、生物学的製剤との併用群で75例です。MTX使用歴がない患者では、感染症リスクの有意な増加はありませんでした。近年では多くの生物学的製剤が発売されているので、MTXとの併用時や易感染性疾患罹患時の感染兆候モニタリングは意識しておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 関節リウマチ2)Lopez-Olivo MA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;6:CD000957.3)Shea B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;5:CD000951.4)関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版5)Cohen IJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:7-10.6)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.

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心房細動アブレーションに対するエドキサバン継続 vs.ワルファリン継続(ELIMINATE-AF)【Dr.河田pick up】

 エドキサバンはFXa(活性化血液凝固第X因子)を選択的に阻害することにより、心房細動患者において脳梗塞を予防する。心房細動アブレーションを受ける患者に対するエドキサバンの継続療法に関しては、これまで試験が行われていない。 ELIMINATE-AF試験は、多国籍、多施設共同、オープンラベルの無作為化並行群間比較試験。カテーテルアブレーションを受ける心房細動患者における、ワルファリンと比較したエドキサバン(1日1回60mg、減量投与が必要な患者には30mg)の安全性と有効性を評価するために行われた。ドイツのStefan H. Hohnloser氏、チェコのJosef Kautzner氏らヨーロッパのグループによる、European Heart Journal誌オンライン版4月11日号への報告。プライマリーエンドポイントは全死亡、脳卒中、大出血イベント 患者は2:1の割合でエドキサバン群とワルファリン群に無作為に割り付けられた。プライマリーエンドポイントは、アブレーション終了から治療終了まで(90日)の、全死亡、脳卒中、国際血栓止血学会が定めた大出血の最初の発生までの期間とされた。ヨーロッパ、アジア、カナダの11ヵ国の58施設から全体で632例が組み入れられ、614例が無作為化された。553例が割り当てられた薬剤を投与され、アブレーションを受けた。そのうち177例は、無症候性の脳梗塞を評価するために頭部MRIを受けている。プロトコールを遵守して最終的な解析(パー・プロトコール解析)を受けたのは417例(エドキサバン316例、ワルファリン101例)であった。 アブレーション前の抗凝固療法は、ガイドラインに準じて21~28日間行われた。また、アブレーション前に経食道エコーが行われ心内血栓が見つかった場合、手技は中止された。内因性のXa因子の阻害を保つため、最後のエドキサバン投与からアブレーションまでの時間は最大で18時間とした。プライマリーエンドポイントの発生はエドキサバン群2.7%、ワルファリン群1.7% プライマリーエンドポイント(大出血のみ発生)は、エドキサバン群で0.3%(1例)、ワルファリン群で2.0%(2例)であった(ハザード比:0.16、95%信頼区間:0.02~1.73)。アブレーションを受けた患者において(アブレーション患者を含む修正intention-to-treat[ITT]解析集団)、プライマリーエンドポイントは、アブレーション開始から治療終了時までの間にエドキサバン群で2.7%(10例)、ワルファリン群で1.7%(3例)に発生した。虚血性脳梗塞、脳出血による脳梗塞が1例ずつ発生し、ともにエドキサバン群であった。微小脳梗塞はエドキサバン群で13.8%(16例)、ワルファリン群で9.6%(5例)に認められた(名目上のp=0.62)。 全期間を通しての大出血イベントはエドキサバン群(1日1回60mg)2.5%であり、これはRE-CIRCUIT試験におけるダビガトラン(1日2回150mg)での1.6%、とAXAFA試験におけるアピキサバン(1日2回5mg)での3.1%と同様であったとしている。 また、ワルファリン群とエドキサバン群の間で大出血に統計学的な有意差は認められなかったが、臨床経過中に認められた非大出血はエドキサバン群で多い傾向にあり、これらのほとんどが術後48時間以内に起こったものであった。エドキサバンとワルファリン、プライマリーエンドポイントで有意差は認められず 結論として筆者らは、心房細動アブレーションを受ける患者においてエドキサバンの継続はワルファリンの継続の代替となりうるとしている。また、これまでの研究結果と同様、DOAC投与群で術後のMRIで無症候性の微小脳梗塞が高頻度で認められていたことも重要であろう。

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「働き方改革」一歩前進へ-ロボット麻酔システム-

 2019年4月16日、福井大学医学部の重見 研司氏(麻酔・蘇生学教授)、ならびに松木 悠佳氏(同、助教)とその共同研究者らは、全身麻酔の3要素である鎮静・鎮痛・筋弛緩薬をすべて自動的に制御する日本初のシステムについて厚生労働省で記者発表した。本会見には共同研究者の長田 理氏(国立国際医療研究センター麻酔科診療科長)、荻野 芳弘氏(日本光電工業株式会社 呼吸器・麻酔器事業本部専門部長)も同席し、実用化に向けた取り組みについて報告した。なぜ麻酔システムを開発したのか 近年、全身麻酔が必要な手術件数は全国的に年々増加傾向にある。他方で、医師の「働き方改革」が叫ばれているが、医師偏在など問題解決の糸口は未だ見えていない。これに対し、労働時間の削減とともに質の担保が不可欠と考える重見氏は、「血圧測定や人工呼吸は看護師による手助けを要する。しかし、容態安定時や、繰り返しになるような単純作業は、機械の助けを借りることで“ついうっかり”がなくなり、安全面にも貢献する」と述べ、「機械補助によって麻酔科医の業務負担が劇的に軽減される。働き方改革と医療の質のバランスをとるための技術が必要」と、開発の経緯を語った。機械化のメリットとは ロボット麻酔システムは、“ロボット”と銘打っているが、実は、制御用のソフトウェアのことを指す。このシステムは、脳波を用いて薬剤を自動調節するため、医療ビッグデータやAIに頼らずとも、麻酔薬を至適濃度に保つことができる。 このシステムは、1)バイタルサインを測定し、催眠レベルの数値、筋弛緩状態を出力するモニター、2)制御用コンピューター、3)麻酔薬3種を静脈に注入するシリンジポンプの3つで構成されている。また、重見氏によると「麻酔科医の生産性・患者QOL・医療経済性の向上、患者安全への寄与、さらには、“診断”を加味して“加療”するシステム」という点が特徴だという。 期待できる業務として、鎮痛・鎮静・筋弛緩薬の初回投与および投与調節、脳波による鎮静度評価、筋弛緩薬の投与調節があり、本システムは婦人科の腹腔鏡手術、甲状腺、腹部などの脳波モニターに影響を及ぼさない術野での使用が可能である。松木氏は「これらを活用することで、麻酔科医の時間的余裕が生まれ、容態急変時など患者の全身状態の看視に注力ができる」と、麻酔科医と患者の両者における有用性について語った。実用化までの道のり これまで、2017年より2つの予備研究を実施し100例近くのデータ収集を行うことで、自動制御に関するアルゴリズム改善に役立ててきた。今年3月より臨床研究法に則り、特定臨床研究として、ロボット麻酔システムを使用し、全身麻酔時に使用する静脈麻酔薬の自動投与調節の有効性と安全性の検討に関する対象無作為化並行群間比較試験を開始。目標症例数は福井大学と国立国際医療研究センターを併せて60例とし、2019年9月までを予定。現時点ですでに21例が登録を終えている。今後、治験などを経てシステム運用のための講習会の企画や2022年の発売を目指す。■関連記事ソーシャルロボットによる高齢者の認知機能検査の信頼性と受容性

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オリゴ転移へのSABR、OSを1年以上延長/Lancet

 原発腫瘍のコントロールが良好で転移病巣が少数(1~5ヵ所)の患者に対し、体幹部定位放射線治療(SABR)は、全生存期間(OS)を有意に延長させることが示された。一方で、SABR治療関連死の発生は3/66例(4.5%)であった。英国・London Health Sciences CentreのDavid A. Palma氏らが、99例を対象に行った第II相の非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「第III相試験を行い、OSへの確固たるベネフィットが示されるのかを確認し、SABRの恩恵が得られる最大転移病巣数を明らかにする必要がある」と述べている。カナダ、オランダ、スコットランドなど10ヵ所の病院で試験 研究グループは2012年2月10日~2016年8月30日にかけて、カナダ、オランダ、スコットランド、オーストラリアの10ヵ所の病院を通じて、原発腫瘍のコントロールが良好で、転移が1~5ヵ所の少数転移患者99例を対象に試験を行った。被験者は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアが0~1、余命が6ヵ月以上を適格とした。 転移数1~3 vs.4~5で層別化後、被験者を無作為に1対2に分け、一方には標準的緩和ケアを(対照群、33例)、もう一方には標準的ケア+SABRを全転移部位に対して行った(SABR群、66例)。無作為化はコンピュータ生成無作為化リストを用いて9群に割り付けを行った。患者および担当医ともに治療割り付けはマスキングされなかった。 主要エンドポイントは、OS。無作為化第II相スクリーニングデザインを用いて、両側検定を行い、α水準を0.20(p<0.20で肯定的試験を意味する)に設定した。OS中央値、SABR群41ヵ月、対照群は28ヵ月 被験者99例のうち途中で試験を中断したのは、対照群2例(6%)、SABR群2例(3%)だった。追跡期間中央値は、対照群25ヵ月(四分位範囲[IQR]:19~54)、SABR群26ヵ月(IQR:23~37)だった。 OS中央値は、対照群28ヵ月(95%信頼区間[CI]:19~33)に対し、SABR群41ヵ月(95%CI:26~未到達)だった(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.3~1.10、p=0.090)。 Grade2以上の有害事象発現率は、対照群9%に対し、SABR群29%で、絶対増大値は20%(95%CI:5~34)だった(p=0.026)。 治療関連死は、SABR群4.5%(3例)に対し、対照群では発生が報告されなかった。

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職場の健康プログラム、社員の健康や医療費減に効果なし?/JAMA

 職場における栄養・運動指導といった健康プログラムは、定期的な運動や体重管理を促す効果はあるものの、血圧やコレステロールなどの検査測定値や医療費の削減には効果がないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのZirui Song氏らが、米国内160ヵ所の職場を対象に、クラスター無作為化比較試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月16日号で発表した。企業は、社員の健康改善や医療費削減のために職場健康プログラムへの投資を増やしているが、それらプログラムの効果に関する実証エビデンスはほとんどないという。栄養摂取や運動、ストレス解消について8回講義 研究グループは、2015年1月~2016年6月にかけて米国内160ヵ所の職場を対象に試験を行った。2016年6月30日までの医療費請求データと雇用データを集め、2016年7月1日~8月31日に質問票や検査測定値を収集した。 試験対象の職場から無作為に20ヵ所(4,037例)を抽出して介入群とし、各職場の登録栄養士が、栄養摂取、身体活動、ストレス解消やその他の関連するトピックスについて8回の講義を行った。残りの140ヵ所の職場は対照群とし、何も行わなかった。 評価は、4領域について行った。(1)自己申告による健康・行動に関するサーベイ(29アウトカム)および、(2)スクリーニングによる臨床検査測定値(10アウトカム)の2領域については、介入群20ヵ所と対照群から無作為に抽出した対照群主要20ヵ所について比較した。(3)医療費と医療サービス利用状況(38アウトカム)および、(4)欠勤率、就労期間、パフォーマンス評価(就労成果)などの雇用アウトカム(3アウトカム)については、介入群20ヵ所と対照群140ヵ所を比較した。欠勤率や仕事のパフォーマンスにも効果なし 総被験者数は3万2,974例で、平均年齢38.6歳、女性45.9%だった。サーベイとスクリーニングへの参加率は、介入群がそれぞれ36.2%、44.6%、対照群主要20ヵ所は34.4%、43.0%だった。 18ヵ月時点で、自己申告による健康関連アウトカムのうち、定期的に運動を行っている、と回答した割合は、対照群61.9%に対し、介入群は69.8%と有意に高率だった(補正後群間差:8.3ポイント、95%信頼区間[CI]:3.9~12.8、p=0.03)。積極的に体重管理を行っている割合も、対照群54.7%に対し、介入群が69.2%と高率だった(同:13.6ポイント、7.1~20.2、p=0.02)。 しかし、そのほかの、自己申告による健康・行動に関する27項目(自己申告の健康、睡眠の質、食物選択など)、臨床検査測定値10項目(コレステロール、血圧、BMIなど)、医療・薬剤費や医療サービス利用状況の38項目、雇用アウトカム3項目(欠勤率、就労期間、就労成果)についてはいずれも、介入による有意な効果は認められなかった。 著者は、「データが不完全なアウトカムがあり限定的ではあるが、今回の結果は、短期的な健康プログラムが提供できる費用対効果の予測を加減することになるだろう」とまとめている。

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境界性パーソナリティ障害に対する集団精神療法のメタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)治療ガイドラインでは、必須とはいかないまでも、患者ケアの重要な要素として精神療法を推奨している。米国・Rawson-Neal Psychiatric HospitalのStephanie P. B. McLaughlin氏らは、BPDに対する集団精神療法と通常治療(TAU)を比較したランダム化比較試験のメタ解析を行った。Psychotherapy誌オンライン版2019年3月14日号の報告。 グループおよび患者の特性、バイアス変数リスク、TAU比較条件の治療要素(精神療法が含まれるかどうかなど)に基づくアウトカムの違いを調査するため、モデレーター分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は、24件(1,595例)であった。・集団精神療法は、BPD症状の軽減に大きな効果を示し(g=0.72、95%CI:0.41~1.04、p<0.001)、自殺念慮/自殺未遂行為に中程度の効果を示した(g=0.46、95%CI:0.22~0.71、p<0.001)。・両アウトカムともに不均一性が高く(それぞれ、I2:76%、70%)、治療ストラクチャ-とBPD症状、理論的手法と自殺念慮/自殺未遂行為の間に関連性が見いだされた。・また、グループの規模とBPD症状および自殺念慮/自殺未遂行為との間にも関連性が認められた。・副次的アウトカム(不安、うつ病、メンタルヘルス)に対する集団精神療法の効果は、小~中程度であった。 著者らは「不均一性についてはさらなる説明が必要であるとしながらも、BPDに対する集団精神療法は、TAUと比較し、より大幅な症状改善が期待できる」としている。■関連記事境界性パーソナリティ障害治療の現状境界性パーソナリティ障害の長期臨床経過に関するメタ解析境界性パーソナリティ障害発症、親子関係が影響

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完全磁気浮上遠心ポンプLVAD HeartMate 3 米国臨床試験最終報告(MOMENTUM 3 Trial)(解説:許俊鋭 氏)-1029

背景 2018年4月にNEJM誌に「Two-Year Outcomes with a Magnetically Levitated Cardiac Pump in Heart Failure」が掲載され、軸流ポンプLVAD(HeartMate II)に対する完全磁気浮上遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)の2年の非劣性臨床試験(MOMENTUM 3)の結果が報告された。後遺症が残る脳卒中回避2年生存率(79.5% vs.60.2%、p<0.001)およびLVADポンプ機能不全に対する再手術(1.6% vs.17.0%、p<0.001)において、HeartMate 3群はHeartMate II群に比べて非劣性かつ優越性があることが示された。本論文はAbbott社から資金提供を受けているMOMENTUM 3臨床試験の最終分析結果報告である。方法 LVADの使用目的(心臓移植へのブリッジまたはDestination Therapy)に関係なく、進行性心不全患者をHeartMate 3またはHeartMate IIのいずれかの群に前向き無作為に割り付けた。複合主要評価項目は、後遺症が残る脳卒中回避2年生存率またはポンプ機能不全による再手術(LVAD交換または摘出)回避2年生存率であり、主な副次的評価項目は2年後までのポンプ交換頻度である。結果 1,028人の患者(HeartMate 3群:516人、HeartMate II群:512人)が登録され、主要評価項目達成はHeartMate II群332人(64.8%)、HeartMate 3群397人(76.9%)であり、HeartMate 3群で優位であった(p<0.001)。また副次的評価項目である2年後までのポンプ交換はHeartMate 3群12人(2.3%)、HeartMate II群57人(11.3%)であり、HeartMate 3群で少なかった(p<0.001)。さらにHeartMate 3群ではHeartMate II群よりも、すべての脳卒中・大出血・消化管出血の患者1人当たりの年間発生数が少なかった。結論 2年間の進行性心不全患者に対するLVAD治療では、HeartMate 3群ではHeartMate II群よりもポンプ交換の必要性が少ないことと関連して、後遺症が残る脳卒中またはポンプ機能不全による再手術(LVAD交換または摘出)回避生存率において優れていた。コメント 本論文の結果は、HeartMate 3群ではHeartMate II群に比較して、2年間で患者10人当たりポンプ血栓合併症2.2回、出血合併症6.8回(消化管出血3.6回)を回避できたことになり、その結果、HeartMate 3群の2年間の再入院期間も短かった。また、HeartMate 3群では出血性・虚血性脳卒中および後遺症を残す脳卒中の頻度も低く、さらに消化管出血を含む出血合併症頻度も低かった。しかしながら、ドライブライン感染、遠隔期右心不全は両群で合併頻度に差はなく、今後の解決すべき課題である。一方、HeartMate 3群では以前にねじれによる送血グラフト閉塞のためにポンプ流量の低下が見られたが、送血グラフトをコネクターに固定することでねじれを防止することが可能となった。 2015年にHeartMate 3が欧州でCE Markを取得し、ドイツでは速やかにHeartMate 3がHeartMate IIに取って代わり急速な普及を見た。米国におけるHeartMate 3の普及は欧州には遅れていたが、MOMENTUM 3臨床試験の進行とともにHeartMate 3の優位性が次々に報告され、2018年10月にHeartMate 3はFDA承認を取得した。J-MACS RegistryとINTERMACS Registryの比較で日本におけるHeartMate IIの臨床成績は米国より優れていると考えられるが、HeartMate 3の速やかな臨床導入により日本のLVAD治療成績がさらに向上するものと期待される。また、米国におけるDTの治療成績も向上しており、日本にも早期のDT臨床導入を推進すべきである。

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025)たまにしか来ない患者さんの法則【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第25回 たまにしか来ない患者さんの法則しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆半年ぶり、1年ぶりなど、“ごくたまにしか受診しない患者さん”っていますよね。そんな患者さんが決まって口にするセリフがあります。それは「できるだけたくさんほしい」「なるべく来なくていいように」の2つ。みんな、そろいもそろって同じセリフを口にし、数本の軟膏をありがたがって持ち帰ります。真面目に塗ったら1ヵ月と持たない量ですが、それはそれは大事に(?)塗っているようで、またしばらく来なくなります。患者さんとしては、同じ病気だから同じ薬だろうし、症状が気になるときだけ塗ればいいやと思っているのかもしれませんが、皮膚科医としてはそうもいきません。デルぽんのところでは、急性期なら1~2週間、慢性期で落ち着いたら4週間をめどに再診をとるようにしています。もちろん、痒みに対する頓用など“時々”の外用で十分な場合もありますが、ちびちび塗ってたまにしか来ないコンプライアンスの悪い患者さんは、総じてコントロールが悪くなりがちです。塗るときの適切な量を指導する、再診を促すなどの努力はしていますが、こうした患者さんにまめに来てもらうのは、なかなか難しい…。まだまだ皮膚科医としての修練が足りない? と感じるデルぽんです。よい方法があったらぜひ教えていただきたい!それでは、また~☆

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第16回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-3【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──3家族の到着後、医師・訪問看護師、施設の職員とあなたは、家族とよく相談して、近隣の救急病院に救急搬送することにしました。その晩、帰宅したあなたは、SIRSと敗血症について調べてみました。「サーズ、サーズっと。あら?SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome;重症急性呼吸器症候群)とは違うのね?」教科書を読むと、細菌毒素などにより様々なサイトカインや血管拡張物質が放出されて末梢血管抵抗が低下し、相対的に循環血液量が減少することで血圧が低下、臓器への低灌流や臓器障害を来すことが書かれていました。臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は重症敗血症(severe sepsis)」と呼ばれ、適切な補液を行っても改善しない血圧低下があること、血圧を維持するためにドパミンやノルアドレナリンなどの昇圧薬を必要とする場合には「敗血症性ショック(septic shock)」といわれること、さらに循環動態を安定化させるための初期治療(Early Goal Directed Therapy; EGDT)について学びました。「すぐに点滴を始めたのは、このためだったのね」敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)と新しい敗血症の定義つい最近、敗血症診療ガイドラインが新しくなったのをご存知ですか?新しいガイドラインでは敗血症の定義は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と変更されました。敗血症の病態について、「感染症による全身性炎症反応症候群」という考え方から、「感染症による臓器障害」に視点が移されたわけです(図2)。本文の「経過3」には「臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は『重症敗血症』と呼れ・・・」とありますが、この以前の重症敗血症が今回の敗血症になりました。また、敗血症性ショックの診断基準は、「適切な輸液にもかかわらず血圧を維持するために循環作動薬を必要とし、『かつ血清乳酸値>2mmol/Lを認める』」となりました。そこで何か感じませんか?そうなんです、敗血症の定義からSIRSがなくなったんです。SIRSは体温・脈拍数・呼吸数・白血球数から診断できますね。新しい敗血症はバイタルサインからその徴候に気付くことができるのでしょうか・・・。敗血症の診断「感染症によって臓器障害が引き起こされた状態」が新しい敗血症の定義でしたね。そこで、どうしたら臓器障害がわかるんだろうという疑問が出てきます。臓器障害は「SOFA(sequential organ failure assessment)スコア」によって判断します(表4)。感染症があり、SOFAスコアが以前と比べて2点以上上昇していた場合に臓器障害があると判断して、敗血症と診断します。この表をみるとすぐに点数を付けるのは難しいな・・・と思いますよね。そこで、救急外来などではqSOFA(quick SOFA)を使用します(表5)。意識の変容・呼吸数(≧22回/分)・収縮期血圧(≦100mmHg)の3項目のうち2項目以上を満たすときに敗血症を疑います。ガイドラインが新しくなったといっても、やはりバイタルサインによって敗血症かどうか疑うことができますね。敗血症が疑われたら、その次にSOFAスコアを評価して、敗血症と診断するわけです。具体的な診断の流れを図に示します(図3)。スライドを拡大するスライドを拡大するEGDT(Early Goal Directed Therapy)についてEGDTは、中心静脈圧・平均動脈圧などを指標にしながら、補液・循環作動薬などを使用して、尿量・血中乳酸値などを早期に改善しようとする治療法ですが、近年の臨床試験ではEGDTを遵守しても有益性は見いだせなかったという結果が得られました。ただ、敗血症性ショックに対する初期治療の一つは補液であることにかわりはありません。時の流れでガイドラインが変わっても患者さんを診るときにバイタルサインが重要なことは変わっていないようですね。エピローグ救急搬送先の病院で細菌学的検査、抗菌薬の投与、およびドブタミン、ノルアドレナリンによる治療が行われました。敗血症性ショックでした。約3週間が経ち、退院後にあなたが訪問すると、その91歳の女性は以前と同じようにベッドの上に寝ていました。以前と同じように寝たきりの状態で、以前と同じように職員の介助で何とか食事をしていました。本人の家族(長男)に新しく処方された薬について説明する機会がありました。ベッドサイドで長男と話をしていると、普段無表情な本人が、長男が来ているところを見て少しニコッと微笑んだように見えました。五感を駆使して、患者さんの状態を感じとる今回のポイントは、敗血症とSIRSの概念を知り、急を要する発熱を見極めることができるようになることでした。それともう1つ、今回のあなたは五感を駆使して患者さんの状態を知ろうとしました。ぐったりしているところや呼吸の状態を"視て"、呼吸が速い様子(息づかい)を耳で"聴き"ながら、手や手首を"触れて"体温や脈の状態を確認しました(味覚と嗅覚が入っていないなんて言わないでくださいね)。緊急度を素早く察知する手段のひとつですから、バイタルサインと併せて患者さんを注意して観察するとよいと思います。

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VT/VFに対するランジオロールの試験結果が発表/日本循環器学会

 短時間作用型β1選択的遮断薬ランジオロール(商品名:オノアクト)に対し、2019年3月に「生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合:心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」の効能が追加承認された。 その根拠となった後期第II相/第III相試験[J-LandII study]の結果が、第83回日本循環器学会学術集会(2019年3月29~31日)で発表された。発表者は、東京女子医科大学循環器内科、志賀剛氏。ランジオロールの投与量は10μg/kg/分以下が90% J-LandII studyは、III群抗不整脈薬を使用しているにも関わらず血行動態が不安定な心室頻拍(VT)/心室細動(VF)を呈する患者を対象に、ランジオロールの有効性と安全性を検討した多施設共同非盲検非対称試験である。主要評価項目には、有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率が設定された。 対象患者を電気ショックなどにより洞調律復帰した後、ランジオロール 1μg/kg/分にて静脈内持続投与を開始し、用量設定期間(0~1時間)は10μg/kg/分まで、有効性評価期間(1~49時間)は40μg/kg/分まで増量可能とした。ランジオロールの平均投与量は、用量設定期間4.3±1.7μg/kg/分、必須投与期間(0-49時間) 8.5±5.2μg/kg/分であった。また、必須投与期間終了時(49時間)におけるランジオロールの投与量は、10μg/kg/分未満が18例(62%)、10μg/kg/分が8例(28%)、10μg/kg/分以上が3例(10%)だった。 39の登録症例のうち、安全性解析対象には29例、有効性解析対象には27例が用いられた。ランジオロール投与によるVT/VFの非再発率は約80% ランジオロールの主要評価項目である「有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率」は、78%であった。演者の志賀氏は、VT/VFの非再発率は「当初45~65%と予測していたが、約80%という数字は予想をはるかに上回る素晴らしい成績だ」と強調した。なお、試験開始前の閾値有効率は20%に設定されていた。 本試験において有害事象は、29例中21例(72.4%)、副作用は10例(34%)に認められた。主な副作用は低血圧6例(21%)であったが、いずれもランジオロールの減量または中止により回復したという。

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小児におけるリスペリドン使用関連有害事象

 リスペリドンは、小児の行動障害によく使用されるが、この集団における薬剤関連有害事象の定義は、あいまいである。米国・ヴァンダービルト大学のKazeem A. Oshikoya氏らは、リスペリドン治療を受けた小児における有害事象発生率およびリスク因子について検討を行った。Drugs-Real World Outcomes誌オンライン版2019年3月27日号の報告。 ジェネラリストおよび小児科専門医が所属する学術医療センターで、4週間以上のリスペリドン治療を受けた18歳以下の患者を対象とした。非特定化された電子健康記録よりデータを収集した。有害事象は、患者または親/保護者からの報告および、医師による発見もしくは研究室でのフォロー中に検出された、リスペリドンに起因する害のあるあらゆるイベントと定義した。有害事象と臨床変数との関連は、単変量および多変量解析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、371例(年齢中央値:7.8歳[四分位範囲:5.9~10.2]、男児:271例[73.0%])であった。・最も一般的な診断は、注意欠如多動症(160例[43.1%])と自閉症(102例[27.5%])であった。・リスペリドンのターゲット症状は、攻撃性(166例[44.7%])および問題行動(114例[30.7%])であった。・有害事象は、110例(29.6%)で156件認められた。・そのうち、最も一般的な有害事象は、体重増加(32件[20.5%])および錐体外路症状(23件、14.7%)であった。・攻撃性、過敏性、自傷行為は、有害事象と正の相関が認められ、鎮痛薬と抗菌薬の併用と負の相関が認められた。・多変量解析では、この関連性は、自傷行為(調整オッズ比:3.1、95%CI:1.7~5.4)および抗菌薬の併用(調整オッズ比:0.2、95%CI:0.1~0.9)において有意なままであった。 著者らは「1ヵ月以上のリスペリドン治療により、小児の3人に1人が1つ以上の有害事象を経験した。自傷行為を有する小児では、とくに注意が必要である」としている。■関連記事小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析自閉スペクトラム症とADHDを有する小児における不安障害と気分障害第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索

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EGFR陽性MET増幅NSCLCに対するオシメルチニブとsavolitinib併用(TATTON)/AACR2019

 MET増幅は、EGRF変異陽性進行NSCLCのEGFR-TKIの獲得耐性の1つとして注目されている。savolitinibは高い親和性を持つ経口MET-TKIとして開発中の薬剤である。進行NSCLCを対象にした第Ib相オープンラベル多施設共同試験TATTONの中間解析として、EGFR変異陽性MET増幅患者に対するオシメルチニブとsavolitinibの併用治療の結果米国がん研究会議年次集会(AACR2019)で報告された。 オシメルチニブとsavolitinib併用のコホートは2つ。コホート1では第1世代または第2世代EGFR-TKI治療での進行患者が、コホート2では第3世代EGFR-TKI治療での進行患者がそれぞれ登録された。対象患者にはオシメルチニブ80mg/日とsavolitinib600mg/日が投与された。[コホート1]・46例が登録され、患者の年齢中央値は59歳、女性67%、アジア人80%であった。・頻度の高い(20%以上)有害事象(AE)は、悪心、下痢、疲労、食欲減退28%、発熱であった。Grade3以上のAE発現は43%であった。・客観的奏効率(ORR)は52%(すべてPR)。奏効持続期間(DoR)は7.1ヵ月であった。[コホート2]・48例の患者が登録され、患者の年齢中央値は59歳、男性56%、アジア人77%であった。・頻度の高い(20%以上)AEは、悪心、嘔吐、下痢、疲労、食欲不振、発熱。Grade3以上のAE発現は23%であった。・ORR)は28%(すべてPR)。奏効持続期間(DoR)は9.7ヵ月であった。■参考AACR 2019. Abstract(CT032)AACR 2019. Abstract(CT033)■関連記事EGFR-TKI耐性のNSCLCにおけるオシメルチニブ+savolitinibの成績:TATTON/WCLC2017

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日本人の悪性黒色腫4,594例を解析、その特徴が判明

 筑波大学医学医療系皮膚科長・准教授・病院教授の藤澤 康弘氏を含む日本皮膚悪性腫瘍学会・Japanese Melanoma Study(JMS)の研究グループらは、日本人患者4,594例の悪性黒色腫による臨床的特徴や予後因子を分析した成果を、Cancer Medicine誌オンライン版2019年4月1日号で発表した。各ステージの5年疾患特異的生存率は白人種と同等の傾向がみられること、あらゆるステージで病型と生存率に関連性はみられないが、末端黒子型黒色腫(ALM)がStageIIIAでは予後不良と関連することなどが明らかになったという。著者は「このようなまれな浸潤性が強い悪性黒色腫をターゲットとした臨床試験の実施を提案する」と述べている。悪性黒色腫の発症率は、白人種と比べアジア人種では低いことが知られているが、これまでアジア人種に関する大規模なフォローアップデータはほとんどなく、本研究は著者の言葉を借りれば「われわれの知る限り、アジア最大規模の研究成果」として注目される。 本研究は、日本人の悪性黒色腫患者の臨床的特徴を調べ、予後因子の評価を目的とし、詳細な患者情報をJMSのデータベースから集めて行われた。また、米国がん合同委員会(AJCC)の第7版TNM分類を用いて解析を行い、浸潤性の悪性黒色腫患者における臨床的および組織学的パラメータの疾患特異的生存率への影響をKaplan-Meier法とCox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・合計4,594例が解析に含まれた。・平均年齢64.1歳、女性54.1%、家族歴あり2.1%、ほかの悪性腫瘍あり7.9%だった。・原発巣は下肢が最も多く(41.7%)、続いて上肢(20.2%)だった。また、全悪性黒色腫のうち44.7%が手(hands)と足(feet)で占められた。・病型は、ALMが最も多く(40.4%)、表在拡大型黒色腫(SSM、20.5%)、結節型黒色腫(NM、10.0%)、粘膜部黒色腫(9.5%)、悪性黒子型黒色腫(LMM、8.1%)と続いた。・非ヒスパニック系白人種ではALMは1.5%、白人種では最も多いSSMが20.5%にとどまるなど、日本人と西欧諸国の集団では多くの点で違いがあることが明白になった。・各ステージの5年疾患特異的生存率は、IA=98.0%、IB=93.9%、IIA=94.8%、IIB=82.4%、IIC=71.8%、IIIA=75.0%、IIIB=61.3%、IIIC=41.7%、IV=17.7%であった。・多変量解析の結果、すべてのステージで病型と生存率は関連しないことが示されたが、StageIIIAではALMが予後不良の独立因子であった。

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SGLT1/2阻害薬sotagliflozin、1型糖尿病の転帰改善/BMJ

 sotagliflozinは、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)1とSGLT2を、ともに阻害する経口薬。イタリア・Humanitas University Gradenigo HospitalのGiovanni Musso氏らは、1型糖尿病患者において、この新規SGLT1/2阻害薬のメタ解析を行い、血糖値および非血糖値関連のアウトカムの改善をもたらし、低血糖や重症低血糖の発現を抑制することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2019年4月9日号に掲載された。1型糖尿病患者では、血糖目標値(HbA1c<7%)の達成率は30%にすぎず、インスリンによる低血糖や体重増加がみられ、とくに重症低血糖は至適な血糖コントロールを妨げる主要な因子とされる。sotagliflozinは、グルコースの腸管吸収だけでなく腎臓での再吸収を阻害する。この作用機序により、食後の血糖変動が抑制され、最終的にボーラスインスリン追加の補正の必要性や、低血糖リスクを低下させる可能性があるという。6つの無作為化プラセボ対照比較試験の参加者3,238例の解析 研究グループは、1型糖尿病に対するsotagliflozinの無作為化対照比較試験のメタ解析を行った(研究助成は受けていない)。 医学データベース、国際学会抄録、海外および国内の臨床試験、米国・欧州・日本の規制当局ウェブサイトなどを検索して、2019年1月10日までに公表された論文を選出した。年齢18歳以上の1型糖尿病患者を対象に、実薬またはプラセボ対照でのsotagliflozinの効果を評価した無作為化対照比較試験を解析に含めた。 3人のレビュアーが、試験参加者の背景因子、関心アウトカム、バイアスのリスクのデータを抽出した。主要アウトカムは、変量効果モデルを用いて統合した。 6つの無作為化プラセボ対照比較試験(3,238例、試験期間4~52週)が解析の対象となった。主な有害事象はケトアシドーシス、リスク最小化は可能 sotagliflozinはプラセボに比べ、HbA1c(加重平均の差:-0.34%、95%信頼区間[CI]:-0.41~-0.27、p<0.001)、空腹時血糖値(-16.98mg/dL、-22.1~-11.9[1mg/dL=0.0555mmol/L])、食後2時間血糖値(-39.2mg/dL、-50.4~-28.1)を有意に低下させ、1日の総インスリン量(-8.99%、-10.93~-7.05)、基礎インスリン量(-8.03%、-10.14~-5.93)、追加インスリン量(-9.14%、-12.17~-6.12)をいずれも有意に低下させた。 また、sotagliflozinにより、目標血糖範囲内時間の割合(加重平均の差:9.73%、95%CI:6.66~12.81)や他の持続血糖モニタリングのパラメータが改善し、非血糖値関連アウトカムでは体重(-3.54%、-3.98~-3.09)、収縮期血圧(-3.85mmHg、-4.76~-2.93)、アルブミン尿(アルブミン/クレアチニン比:-14.57mg/g、-26.87~-2.28)が低下した。さらに、低血糖(加重平均の差:-9.09イベント/人年、95%CI:-13.82~-4.36)の発生が抑制され、重症低血糖(相対リスク[RR]:0.69、95%CI:0.49~0.98)のリスクも低下した。 一方、ケトアシドーシス(RR:3.93、95%CI:1.94~7.96)、生殖器感染症(3.12、2.14~4.54)、下痢(1.50、1.08~2.10)、体液量減少イベント(2.19、1.10~4.36)のリスクが増加したが、尿路感染症(0.97、0.71~1.33)のリスクは増加しなかった。初回HbA1c値と基礎インスリン量の調整が、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクと関連した。また、用量については、400mg/日は200mg/日に比べ、血糖値関連および非血糖値関連のほとんどのアウトカムをより改善し、有害事象のリスクは増加しなかった。 エビデンスの質は、ほとんどのアウトカムに関して高~中程度であったが、主要有害心血管イベントおよび全死因死亡に関しては低かった。また、相対的に短期間の試験が、長期アウトカムの評価の妨げとなっていた。 著者は、「主な有害事象は糖尿病性ケトアシドーシスであったが、そのリスクは適切な患者選択および基礎インスリン量を漸減することで最小化が可能と考えられる」としている。

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女性化乳房のPPIによる発症リスクを調査

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)による女性化乳房の症例報告は多いが、大規模な疫学研究はなかった。今回、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のBonnie He氏らが大規模な後ろ向きコホート研究を実施し、男性患者におけるPPIによる女性化乳房リスクを調べた。その結果、PPI使用による女性化乳房発症リスクはアモキシシリン使用に比べ、50歳超で1.5倍であった。Pharmacotherapy誌オンライン版2019年3月13日号に掲載。女性化乳房は新規PPI使用患者22万791例のうち389例 著者らは、米国のPharMetrics Plus健康診断データベースを使用して、2006~16年の新規PPI使用患者および新規アモキシシリン使用患者の後ろ向きコホート研究を実施した。女性化乳房の診断は、国際疾病分類(ICD-9、ICD-10)のコードで同定した。90日以内に女性化乳房の2つのコードがあり、最初のコードがイベントコードである患者を女性化乳房症例とした。ハザード比(HR)は、アルコール性肝硬変、甲状腺機能亢進症、精巣がん、クラインフェルター症候群、肥満のほか、ケトコナゾール・リスペリドン・スピロノラクトン・アンドロゲン除去療法の使用を調整し算出した。また、2回のPPI処方の曝露での感度分析も行われた。 PPIによる女性化乳房リスクを調べた主な結果は以下のとおり。・新規PPI使用患者では、22万791例のうち389例が女性化乳房と診断され、新規アモキシシリン使用患者では、83万7,740人のうち996例が女性化乳房と診断された。・女性化乳房発症をアモキシシリン使用と比較したPPI使用の粗HR は1.70であった(95%信頼区間[CI]:1.461~1.976)。・感度分析における調整HRは1.299(95%CI:1.146~1.473)であった。・調整HRは、50歳以上の患者では1.4795(95%CI:1.2431~1.7609)、50歳以下の患者では1.324(95%CI:1.1133~1.5745)であった。

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コレステロール過剰摂取、卵の食べ過ぎは心血管疾患および全死因死亡を増やす?(解説:島田俊夫氏)-1028

 コレステロールの取り過ぎは体に悪い? これまでの欧米においては概して虚血性心疾患による死亡率がわが国と比較し圧倒的に多いことから、欧米からのエビデンスに基づき悪玉コレステロール高値は心血管疾患のリスク因子だとの考えが定着していた1,2)。もちろん家族性高コレステロール血症はとりわけハイリスクであるが、このような症例を一般化する解釈の根拠は必ずしも十分とは言えない。一方で高齢者の高コレステロール血症はむしろ健康状態が良いことが多く、スタチンを使用して下げている症例を時々みかけるが、個人的にはいらんお世話をしているのではと懸念している。コレステロールは細胞膜に不可欠な構成成分であり、卵から孵化する動物はヨークサックのコレステロールにより孵化までの期間の栄養を供給されており、バランスの取れた栄養食と考えられてきた。コレステロールの70~80%は体内で合成され、20~30%程度が食事由来と考えられている。2019年3月19日にJAMA誌に掲載された、米国・ノースウェスタン大学Victor W. Zhong氏らがLifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを統合のうえで解析し、食事由来コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患発症、全死因死亡リスク上昇に有意に関連していると報告した。いまだ議論の多い問題に一石を投じた論文であり論評に値すると考え、私見をコメントする。論文要約 1985年3月25日~2016年8月31日の期間に集められた米国の6つの前向きコホート研究の個々のデータを統合のうえで解析を行った。自己申告食事摂取に関するデータは標準的プロトコールを用いて調整のうえ、食事由来コレステロール(mg/日)または卵摂取量(個/日)を算出した。 主要評価項目は人口統計学的、社会経済的および行動的要因を調整のうえで、CVD発症と全死因死亡に関する全追跡調査期間のハザード比および絶対リスク差(ARD)により、コホートを層別化した原因別ハザードモデルおよび標準比例ハザードモデルを用いて解析された。 2万9,615例を解析対象とした。ベースライン時の研究対象者の平均年齢は51.6±13.5歳、男性1万3,299例(44.9%)、女性9,204例(31.1%)であった。 1日当たりの食事由来コレステロール摂取が300mg増えるとCVD発症(補正後HR:1.17[95%CI:1.09~1.26]、補正後ARD:3.24%[95%CI:1.39~5.08])および全死因死亡(補正後HR:1.18[95%CI:1.10~1.26]、補正後ARD:4.43%[95%CI:2.51~6.36])のリスク上昇と有意相関を認めた。 卵の1日当たりの摂取量が半個増えるか、または週に卵の摂取が3~4個増えた場合にも同様に有意な関連を認めた(CVD発症に関しては補正後HR:1.06[95%CI:1.03~1.10]、補正後ARD:1.11%[95%CI:0.32~1.89]、全死因死亡に関しては補正後HR:1.08[95%CI:1.04~1.11]、補正後ARD: 1.93[95%CI:1.10~2.76])。 しかし、食事由来コレステロール摂取量補正後は、卵摂取量とCVD発症(補正後HR:0.99[95%CI:0.93~1.05]、補正後ARD:-0.47[95%CI:-1.83~0.88])および全死因死亡(補正後HR:1.03[95%CI:0.97~1.09]、補正後ARD:0.71%[95%CI: -0.85~2.28])との間に、有意な関連を認めなかった。筆者コメント 本論文はあくまで前向きコホート研究であり、因果関係を証明するための研究デザインでないためにエビデンスレベルは必ずしも強固とはいえない。しかも、コレステロールを多く含む食材の過剰摂取、とくに卵は言われているほど悪くないとのエビデンスがある中でこのような結論を妄信することは控えたほうがよい3,4)。その一方でコレステロールは細胞膜にとり不可欠の構成要素であり、重要なステロイドホルモン、胆汁酸の原料でもある。食事由来のコレステロールは体内で合成されるコレステロールの1/3に満たない程度であり、本論文の結果をうのみにするのは危ない。とくに高齢者では高コレステロール血症をもはや危険因子(むしろ逆では)として受け止めることに個人的には疑問を感じている。まだ未解決な点も多くあり、本論文の結果を記憶にとどめておくだけでよいと考える。

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家族性アミロイドポリニューロパチー〔FAP: familial amyloid polyneuropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、代表的な遺伝性全身性アミロイドーシスである1,2)。組織の細胞外に沈着したアミロイドは、コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折を生じる。電子顕微鏡で観察すると、直径8~15nmの枝分かれのない線維状の構造物として観察される。現在までに、36種類以上の蛋白質がヒトの体内でアミロイド沈着を形成する蛋白質として同定されている3)。FAPを生じるアミロイド前駆蛋白質として、トランスサイレチン(TTR)、ゲルソリン、アポリポ蛋白質A-Iが知られているが、大部分のFAP患者は、TTRの遺伝子変異によるため、以下はTTRを原因とするFAP(TTR-FAP)に関して概説する。近年、国際アミロイドーシス学会は、TTR-FAPに代わる病名として「遺伝性TTR(ATTRv)アミロイドーシス」の使用を推奨しているが3)、わが国ではFAPの病名が現在も使用される場合が多いため、本稿ではFAPの病名を用いて概説する。本疾患の原因分子であるTTRは、主に肝臓から産生され血中に分泌される血清蛋白質である。その他のTTR産生部位として、脳脈絡叢、眼の網膜色素上皮、膵臓ランゲルハンス島のα細胞が知られている。血中に分泌された本蛋白質は、127個のアミノ酸から構成されるが、豊富なβシート構造を持つことにより、アミロイド線維を形成しやすいと考えられている。TTR遺伝子には150種類以上の変異型が報告されており、その大部分がFAPの病原性変異として同定されてきた。TTRの30番目のアミノ酸であるバリンがメチオニンに変異するVal30Met型が、最も高頻度に認められる1,2)。生体内では、通常TTRは四量体として機能し、四量体の中心部には1分子のサイロキシン(T4)が強く結合し、T4の運搬を担っている。また、TTRはレチノール結合蛋白質との結合を介して、ビタミンAの輸送も担っている。■ 疫学以前はFAP ATTR Val30Metの大きな家系が、ポルトガル、スウェーデン、日本(熊本県と長野県)に限局して存在すると考えられていたが、近年、世界各国からFAP ATTR Val30Met患者の存在が確認されている1,2)。また、明確な家族歴がなく高齢発症のFAP が日本各地から報告されており4)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性ニューロパチー、手根管症候群、腰部脊柱管狭窄症などの非遺伝性末梢神経障害の鑑別疾患として本症を考えることが重要である。スウェーデンでは、FAP ATTR Val30Met遺伝子保因者の3~10%しか発症しないことが知られているが、わが国においても、TTR遺伝子に変異を持ちながら、終生FAPを発症しない症例も存在する。Val30Met以外の変異型TTRによるFAPもわが国から多く報告されている(図1)。わが国の疫学調査の結果では、国内の推定患者数は約600人であるが、的確に診断されていない症例が多く存在する可能性がある。画像を拡大する■ 病因TTRに遺伝子変異が生じると、TTR四量体が不安定化し、単量体へと解離することが、アミロイド形成過程に重要であると、in vitroの研究で示されている。しかし、アミロイドがなぜ特定の部位に沈着するのか、どのように細胞や臓器の機能を障害するのかは、明らかにされていない。アミロイド線維を形成するTTRの一部は断片化されており、アミロイド線維形成への関与が議論されている。■ 症状1)神経症状末梢神経障害は、軸索障害が主体で神経軸索が細胞体より最も遠い両下肢遠位部の症状が初発症状となる場合が多い。また、神経症状は一般に自律神経、感覚(温痛覚低下)、運動(両側末梢優位)の順で症状が出現することが多い。これは、アミロイド沈着により小径無髄線維から大径有髄線維の順に障害が進行するためと考えられている。病初期には、下肢末梢部である足首以下で、温痛覚の低下を認めるが触覚は正常である解離性感覚障害を認める場合が多い。温痛覚障害のため、足の火傷や怪我に患者本人が気付かない場合がある。筋萎縮、筋力低下など運動神経障害は、感覚障害より2~3年遅れて出現する場合が多いが、まれに運動神経障害が主体で感覚障害が軽い症例もある。進行期には、高度の末梢神経障害による四肢の感覚障害と筋力低下や呼吸筋麻痺などを呈する。アミロイド沈着による手根管症候群を呈する場合がある。とくに家族歴が明らかでない症例では、病初期にCIDP、糖尿病性ニューロパチー、腰部脊柱管狭窄症などと誤診されることが多く、注意が必要である。症例によっては、脳髄膜や脳血管のアミロイド沈着による意識障害や脳出血など中枢神経症候を呈する場合がある。2)消化器症状重度の交代性下痢便秘や嘔気などの消化管症状が出現する。末期には持続性の下痢となり、吸収障害や蛋白質の漏出も生じる。3)循環器系障害早期より自律神経障害による起立性低血圧や、アミロイド沈着による房室ブロック、洞不全症候群、心房細動などの不整脈が生じる。心筋へのアミロイド沈着により心不全を生じ、心室の拡張障害が収縮障害に先行すると考えられている。TTR変異型により心症候が主体で、末梢神経障害が目立たないタイプがある。4)眼症状変異型TTRは肝臓のみならず網膜からも産生されており、アミロイド沈着による硝子体混濁はFAP患者に多く認められる。硝子体混濁が本症の初発症状である症例もある。前眼部へのアミロイド沈着による緑内障を来し、進行すると失明の原因となる。また、涙液分泌低下によるドライアイも生じる。5)腎障害アミロイド沈着によるネフローゼ症候群や腎不全を呈するが、症例によりその程度は異なる。病初期には目立たない場合が多い。■ 分類TTR変異型により症候が異なる場合がある。アミロイドポリニューロパチー(末梢神経障害)が主体となるタイプ(Val30Metなど)、心アミロイドーシスにより不整脈や心不全が主体となるタイプ(Ser50Ile、Thr60Alaなど)、脳髄膜・眼アミロイドーシスにより一過性の意識障害や脳出血、白内障や緑内障が強く生じるタイプ(Ala25Thr、Tyr114Cysなど)がある。また、同じATTR Val30Metを持つFAP患者でも、ポルトガルでは若年発症(20~30代で発症)が多く、スウェーデンでは高齢発症(50歳以降)が多い。わが国でも、本疾患の集積地である熊本や長野のFAP患者は若年発症が多いが、他の地域では高齢発症で家族歴が確認できない症例が多く、70歳以降の発症も少なくない。■ 予後未治療の場合は、発症からの平均余命は若年発症のFAP ATTR Val30Metは約10~15年1)、高齢発症のFAP ATTR Val30Metは約7年4)である。進行期には、呼吸筋麻痺、重度の起立性低血圧、心不全、致死的な不整脈、ネフローゼ症候群、腎不全、蛋白漏出性胃腸症、重度の緑内障などを呈する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症の診断基準を表に示す。病初期に各治療法の効果が高いため、早期診断、早期治療が重要である。臨床症候や各種の臨床検査により本症が疑われる場合には、生検によりアミロイド沈着を検索すること、および専門施設に依頼し、免疫組織化学染色や質量分析法でTTRがアミロイドの構成成分であることを確認する必要がある(図2)。生検部位は、侵襲度の比較的低い消化管(胃、十二指腸、直腸)、腹壁脂肪、口唇の唾液腺、皮膚などが選択されるが、病初期にはアミロイド沈着が検出されない場合もある。本症の疑いが強い場合は、繰り返し複数部位からの生検を行うことが重要である。また、前述の部位からアミロイド沈着が確認できない場合は、障害臓器である末梢神経や心筋からの生検も考慮する必要がある。TTRがアミロイド原因蛋白質として同定された場合は、野生型TTRが非遺伝性に生じる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)(野生型TTR[ATTRwt]アミロイドーシス)との鑑別のため、遺伝子検査や血液中TTRの質量分析によりTTR変異の解析を必ず行う(図3)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPに対する治療は、近年、劇的に進歩している。長く実施されてきた肝移植療法に加えて、TTR四量体の安定化剤であるタファミジス(商品名: ビンダケル)が、国内でも2013年9月に希少疾病用医薬品として承認され、現在、本疾患に対し広く使用されている。また、核酸医薬によるTTR gene silencing療法の国際的な臨床試験が終了し、良好な結果が得られている。図4にFAPに対する治療法を研究中のものを含めて示した。画像を拡大する■ 肝移植療法本疾患の病原蛋白質である変異型TTRの95%以上が肝臓で産生されていることから、1990年にスウェーデンで本疾患に対する治療法として肝移植が初めて行われ、その有効性が示されてきた5)。FAP患者の血液中の変異型TTRは、正常肝が移植された後に速やかに検出感度以下まで低下する。しかし、肝移植で本疾患が完全に治癒するわけではなく、末梢神経障害を含めて、症候の大部分は移植後も残存する。また、発症から長期間経過し、病態が進行した症例や、高齢患者、BMIが低値(低栄養状態)であると、移植後の予後が不良であるため、肝移植が実施できない場合も少なくない。そして、症例によっては、肝移植後も症候(とくに心アミロイドーシス)が進行するケースもある。眼の網膜色素上皮細胞や脳脈絡叢からは、肝移植後も継続して変異型TTRが産生され続けているため、眼や脳・脊髄では、肝移植後も変異型TTRによるアミロイドが形成され、症候も悪化する症例が報告されている。他の治療法が開発されたことにより、本症に対する肝移植の実施数は減少傾向にある。■ TTR四量体安定化剤(タファミジス)TTR四量体が不安定となり単量体へと解離することが、TTRのアミロイド形成過程に重要な過程と考えられている。TTR四量体の安定化作用を持つ薬剤が、本症の新たな治療薬として研究開発されてきた。非ステロイド系抗炎症薬の1つであるジフルニサルなどにTTR四量体の安定化作用が確認され、本症の末梢神経障害に対する進行抑制効果が確認された6)。ジフルニサルには、非ステロイド系抗炎症薬が元来持つCOX阻害作用があり、腎障害などの副作用が出現する可能性が想定されたため、COX阻害作用を持たずにTTR四量体のより強い安定化作用を示す新規化合物としてタファミジスが新たに開発された。本薬剤の国際的な臨床治験が実施され、生体内でもTTR四量体を安定する作用が確認されるとともに、末梢神経障害の進行を抑制する効果が確認されている7)。また、心症候に対する効果も報告された8)。わが国では2013年9月に本症による末梢神経障害の進行抑制目的で承認されている。■ 核酸医薬(TTR gene silencing療法)9, 10)Small interfering RNA(siRNA)9) やアンチセンスオリゴ(ASO)10) を用いて、肝臓におけるTTRの発現抑制を目的としたgene silencing療法の開発が行われ、強いTTR発現抑制効果と良好な治療効果が確認されている9, 10)。これらのgene silencing療法では、変異型TTRに加えて、野生型TTRの発現抑制も標的としている。これらの治療法は、今後、本疾患に対する標準的な治療法となることが期待されている。■ その他の研究段階の治療法前述のごとく、肝移植療法の実施やTTR四量体安定化剤の臨床応用、gene silencing療法によるTTR発現抑制法の開発など、本疾患に対する治療法は近年急激に発展しているが、いずれもアミロイド原因蛋白質であるTTRの発現抑制および安定化を標的としており、沈着したアミロイドを除去する治療法は確立していない。さらなる治療法の改善を目指して、図4に示した方法をはじめとした多くの治療法の開発が精力的に行われている。■ 対症療法本症では、心伝導障害の進行は必発であるため、I度房室ブロックの段階でペースメーカーの植え込みを考慮する場合がある。致死的な不整脈が発生する場合には、植込み型除細動器を積極的に検討する必要がある。起立性低血圧に対して、弾性ストッキングや腹帯の使用を考慮する。手根管症候群に対しては、手術療法を考慮する。眼アミロイドーシスによる白内障や緑内障に対しても手術療法が必要となる。そのほかにも、自律神経症状や消化管症状、心不全などに対して内服薬による対症療法を試みるが、十分な効果が得られない場合が少なくない。4 今後の展望肝移植療法がFAPに対して実施され始めて28年以上が経過し、その有効性とともに治療法としての限界や関連する問題点が明らかになってきた。TTR四量体の安定化剤が臨床応用され、広く使用されるにつれて、本症に対する肝移植実施数は減少傾向にある。また、肝臓でのTTR発現抑制を目的とした核酸医薬によるgene silencing療法の臨床治験で良好な結果が得られ、わが国でも承認が待ち望まれる。これらの治療法の長期的な効果に関しては、まだ不明な点が多く残されているため、長期予後に関する調査が必要である。さらに、すでに組織に沈着したアミロイド線維を除去できる根治療法の研究開発が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、循環器内科、眼科、移植外科、消化器内科、腎臓内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報家族性アミロイドポリニューロパチーの診療ガイドライン(日本神経学会)(医療従事者向け診療情報)難病情報センター:全身性アミロイドーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学分野(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)信州大学 医学部第3内科 アミロイドーシス診断支援サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews(Pub Med)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)GeneReviews(日本語版)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)FAP WTR(FAPに対する肝移植に関する国際的レジストリ)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)THAOS(TTRアミロイドーシスの自然経過に関する国際的調査)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)The Registry of Mutations of Amyloid Proteins(TTR変異の国際的レジストリ)(医療従事者向けの研究情報)OMIM(医療従事者向けの診療・研究のレビュー情報)日本アミロイドーシス学会(医療従事者向けの研究情報)国際アミロイドーシス学会(ISA)(医療従事者向けの研究情報)厚生労働省 難治性疾患政策研究事業「アミロイドーシスに関する調査研究」班(医療従事者向けの研究情報)患者会情報道しるべの会 second step あゆみ ブログ(患者のブログ)1)Ando Y, et al. Arch Neurol. 2005;62:1057-1062.2)Ueda M, et al. Transl Neurodegener. 2014;3:19.3)Benson MD, et al. Amyloid. 2019 [Epub ahead of print]4)Koike H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.5)Yamashita T, et al. Neurology. 2012;78:637-643.6)Berk JL, et al. JAMA. 2013;310:2658-2667.7)Coelho T, et al. Neurology. 2012;79:785-982.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med, 2018;379:1007-1016.9)Adams D, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.10)Benson MD, et al. N Engl J Med. 2018;379:22-31.公開履歴初回2013年08月08日更新2019年04月23日

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