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日本人の婚姻状態と不眠症状との関連

 配偶者の有無は、健康に関連する社会経済的要因の1つである。いくつかの研究では、配偶者の有無と不眠症との間に有意な関連が認められることが示唆されている。日本では、未婚者の割合が増加しており、不眠症に大きな影響を及ぼす可能性がある。順天堂大学の川田 裕美氏らは、日本における配偶者の有無と不眠症との関連について調査を行った。European Journal of Public Health誌オンライン版2019年7月6日号の報告。 対象は、2010年の国民生活基礎調査より抽出した30~59歳の3万5,288人。配偶者の有無に応じて5群(独身、家族と同居している夫婦、夫婦のみで生活、未亡人、離婚)に分類を行った。不眠症関連症状(IRS)は、「私は眠れなかった」との回答に基づき収集した。配偶者の有無によるIRSの性別多変量オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、潜在的な交絡因子で調整されたロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・IRSの有症率は、男性で2.5%、女性で2.8%であった。・多変量OR(95%CI)は以下のとおりであった。 ●独身男性:1.15(0.89~1.49) ●離婚した男性:1.69(1.11~1.49) ●夫婦のみで生活している男性:1.01(0.73~2.58) ●独身女性:1.56(1.20~2.03) ●離婚した女性:2.43(1.83~3.22) ●夫婦のみで生活している女性:1.31(1.01~1.71) 著者らは「日本人において離婚した男女、独身女性、夫婦のみで生活している女性では、夫婦以外の家族と同居している人よりもIRSの割合が高かった。この関連性は、失業男性でより明白であった」としている。

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加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。マイルド・ライトなタバコの小さな細工 タバコ煙は気体と粒子の混合物で、その中には5,300種類以上の化学物質、約70種類の発がん性物質(多環芳香族炭化水素など)が含まれる。燃焼式タバコにはマイルド・ライトなどと毒性の軽さをうたっている製品もあるが、タバコ葉1gに含まれるニコチンなどの実際量は、同系統の製品であればほぼ同じだという。ニコチン・タール量の国際的な測定法では、燃焼するタバコを機械で吸引し、その中のニコチン・タール含有量を測定する。旧来の製品にはフィルター部分に孔がないのに対し、マイルド・ライトなどの表記があるものにはフィルター根元に細かい小さな孔が空いているので、吸入時に外の空気が孔に入り込み、ニコチン・タール量が希釈される。その結果、測定量として小さい数値を箱に記載することができる。あたかもマイルド・ライトな燃焼式タバコを吸って健康を気遣っているようでも、「その人にとって必要なニコチン量が存在し、深く吸う、長く肺にためるなど、知らず知らずのうちに必要量を摂取している」と飯田氏は述べた。加熱式タバコの実際の有害物質含有量 『有害性物質、約90%オフ』と書いてあるパンフレットの詳細を見ると、実は「“有害物質約90~95%オフ”、“9つの有害性物質を紙巻きタバコに比べて大幅に削減”の表現は、本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」などの逃げ道が書かれているという。誇大広告と捉えかねない製品も、こんな一言でうまく規制から逃れているのである。 では、実際の有害物質含有量はどうなのか。同氏が示した加熱式タバコ(IQOS)と紙巻タバコの研究結果1)によると、IQOS1本あたりの有害物質の各成分量は、ホルムアルデヒド74%、アセトアルデヒド22%、ニコチン84%であった。一酸化炭素や二酸化炭素については、加熱式タバコにも少量含まれているが、燃焼していないため非常に少ない割合であった。 2019年5月、FDAは米国において加熱式タバコ(商品名:IQOS、フィリップモリス)の販売を許可。米国ではすでに新型タバコと呼ばれる種々の製品が販売されていたが、電気加熱式タバコ製品の販売許可はこれが初であった。これに対し、動脈硬化学会は「この承認は安全性を担保したものではない」と、前述の結果を踏まえてコメント。飯田氏も「加熱式タバコは、煙以外の何物でもない」と警告した。加熱式タバコでは有害な成分が呼出されている 過去15年間にオリンピックが開催された都市でのタバコ規制をみると、法律、州法、市条例によって全面禁煙が定められている。しかし、2020年にオリンピックを控えた日本において、屋内施設100%完全禁煙に対する整備は発展途上である。原氏は、兵庫県神戸市での受動喫煙防止条例施行前後における急性冠症候群の発生数に関するデータ2)を示し、「条例が施行される前後で発生患者数が年間895例から830例に減少した」と説明。また、「全世界の論文を分析したところ、禁煙に対する法律を規定する範囲(職場~レストラン~居酒屋・バー)が広くなるほど、受動喫煙率が低下し動脈硬化性疾患や呼吸器疾患が最大39%も減少した」とし、「動脈硬化性疾患の予防・治療には、受動喫煙を避けることが必須。正確な情報伝達・啓発が必要 」と訴えた。飯田氏は「自宅では紙巻きタバコ、外では加熱式タバコの両方を使用するデュアルユーザーも多く存在する。加熱式タバコであれば禁煙場所でも吸えると考えるユーザーも多いが、発がん性のある有害な成分が呼出されている」と、目に見えにくいリスクについても説明した。 日本はWHOタバコ規制枠組条約(FCTC)の締結国である。それにもかかわらず、完全禁煙はいまだ達成されていない。両氏はタバコ規制枠組条約に則った、日本での屋内完全禁煙の実現を強く求めた。

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地域全員への抗HIV療法は有効か/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防において、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠した抗レトロウイルス療法(ART)の組み合わせは、標準治療に比べ新規HIV感染を有意に抑制するが、地域住民全員を対象とするARTは標準治療と差がないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRichard J. Hayes氏らが行ったHPTN 071(PopART)試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年7月18日号に掲載された。新規HIV感染を抑制するアプローチとして、地域住民全員を対象とする検査と治療は有効な戦略となる可能性が示唆されているが、これまでに行われた試験の結果は一貫していないという。21の地域で3種の介入法を比較する無作為化試験 本研究は、2013~18年の期間に、ザンビアと南アフリカ共和国の21の地域共同体(総人口約100万人)で実施されたコミュニティー無作為化試験である(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]などの助成による)。 21の地域(ザンビア12地域、南アフリカ9地域)は、複合的予防介入と地域住民全員を対象とするARTを行う群(A群)、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠したART(2016年以降は全員が対象)を行う群(B群)、または標準治療群(C群)に無作為に割り付けられた。 予防的介入には、地域の医療従事者によって提供される在宅HIV検査が含まれ、HIV治療への連携やARTアドヒアランスの支援も行われた。 主要アウトカムは、12~36ヵ月の期間における新規HIV感染の発生とし、無作為に抽出された1つの地域当たり約2,000例の成人(18~44歳)コホートで評価を行った。また、24ヵ月時に、HIV陽性の全参加者においてウイルス抑制(HIV RNA<400コピー/mL)を評価した。地域ガイドラインARTで新規感染が30%減少 4万8,301例が登録され、このうち36ヵ月時の最終調査は72%で実施された。ベースライン時に、女性が71%、男性が29%で、40%が25歳未満(18~24歳)であった。HIV陽性者の割合は22%(女性26%、男性12%)であった。ARTはA群33%、B群41%、C群35%で行われていたが、ウイルス抑制が達成されていたHIV陽性者の割合はそれぞれ56%、57%、54%だった。 12~36ヵ月の期間に、3万9,702人年で553件の新規HIV感染が認められ(100人年当たり1.4件、女性1.7件、男性0.8件)、100人年当たりA群が1.5件、B群が1.1件、C群は1.6件であった。C群と比較した新規HIV感染発生の補正率比は、A群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.74~1.18、p=0.51)と有意差はなかったが、B群は0.70(0.55~0.88、p=0.006)であり、新規感染が30%有意に低下した。 24ヵ月時に、ウイルス抑制が達成されたHIV陽性者の割合は、A群71.9%、B群67.5%、C群60.2%であった。C群と比較したウイルス抑制達成の補正率比は、A群が1.16(95%CI:0.99~1.36、p=0.07)、B群は1.08(0.92~1.27、p=0.30)であり、いずれも有意な差はみられなかった。また、24ヵ月時のウイルス抑制の割合は、A、B群とも女性が男性に比べて高く、25歳以上が18~24歳よりも高かった。 36ヵ月時に、ARTを受けているHIV陽性者の割合は、A群が81%、B群は80%と推定された。HIV陽性者のART受療状況は、A群とB群で類似しており、男性が女性に比べて低く、若年者が高齢者よりも低かった。 著者は、「全員が対象のARTが無効であったことは予想外であり、ウイルス抑制のデータとは一致しなかった。この試験では、全員を対象とする検査と治療を含む複合的予防介入によって、住民レベルにおける新規HIV感染の抑制が可能であった」とまとめ、「A群で効果が得られなかった理由はいくつか考えられるが、試験地域の定性的および定量的データと、進行中の系統発生的研究のデータの解析を進めることで、予想外の結果の説明が可能と考えられる」としている。

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PCI技術の爛熟の時代―「不射の射」を目指す(解説:後藤信哉氏)-1086

 PCI日本導入直後のころ、1枝病変を対象に心臓外科のback upの下、POBAをしていた。5%が急性閉塞して緊急バイパスとなった。ステントの導入により解離による急性閉塞から、2週間以内のステント血栓症に合併症がシフトした。頑固なステント血栓症もアスピリンとチクロピジンの抗血小板薬併用療法により制圧された。安全性の改善されたクロピドグレルが標準治療となると、長期に継続する抗血小板療法による出血合併症が血栓イベントよりも大きな時代を迎えた。 PCIをしている先生方には外科的な直感があるのであろう。本邦のSTOPDAPT、 STOPDAPT-2、今回のSMART-CHOICEなどアスピリン早期中止の有用性を示唆する論文が多く発表されている。DAPTの長期継続の有無にかかわらず、総死亡を含む一次エンドポイントの発現率は3%程度にすぎない。また総死亡に占める心血管死亡の比率も半分を割っている。 歴史的に考えると、1)急性期に5%が急性冠閉塞したPOBA時代、2)亜急性期の10%近いステント血栓症を2~3%に低減させたステントと抗血小板薬併用療法の時代が終わり、3)補助的な抗血小板療法が不要となったPCI技術の爛熟の時代に入っている可能性が高い。 筆者は中島 敦の『名人伝』を愛読している。弓の名人を目指して鍛錬する若者が、「君は射の射をして不射の射を知らない」と諭され、修行の後「弓の名人になって」ついに弓を忘れるという物語である。PCIの黎明期に多くのinterventionistが技を極める鍛錬をした。これからは「不射の射」として心血管病の一次予防に注力する必要がある。

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 1

今回のキーワード自己正当化敵意バイアスポジティブバイアス抽象的思考の困難さ反社会的モデル格差罪悪感フリーライダーみなさんは、万引きを見かけたことはありますか? なぜ万引きするのでしょうか? 逆に、私たちはなぜ万引きしないのでしょうか? そもそもなぜ万引きは「ある」のでしょうか? 万引きは遺伝するのでしょうか? そして、万引きをしないためにはどうすれば良いでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「万引き家族」を取り上げます。「万引き」と「家族」というまったく相いれない2つのテーマが絡み合っており、後半にかけて私たちの心を激しく揺さぶります。万引き(窃盗)は、犯罪の検挙人員の割合としては2割程度で多くはないです。しかし、認知件数の割合は6割近くあります。認知されていない暗数を含めると、もっとあるでしょう。つまり、万引きは、犯罪の中で最も多いながら、実際に犯人が捕まることが最も少ないと言えます。この映画を通して、万引きを主とする犯罪(反社会的行動)を精神医学的、進化心理学的、そして行動遺伝学的に掘り下げます。そして、犯罪と遺伝の関係という「不都合な真実」を「なかったこと」にしたいという私たちの心理にあえて迫ります。その「真実」を踏まえてこその対策を一緒に考えてみましょう。なお、スリルを求める病的な万引き(クレプトマニア)や摂食障害に伴う万引き(盗食)については今回割愛します。家族にあるまじき3つの「万引き」とは?ストーリーの舞台は、平屋の古い一軒家。6人の家族が、貧しいながらも、冗談を言い合い、いつも笑いが絶えません。彼らなりに一生懸命に生きて、お互いを気遣っており、家族の温かさが描かれています。しかし、同時に、その家は、周りを高層マンションに囲まれており、今にも崩れそうで、社会から取り残された危うさも暗示されています。実は、彼らには、家族にあるまじき多くのスキャンダルがありました。これらを3つにわけて整理してみましょう。(1)家族が万引きして生計を立てている父親の治は、時々呼ばれるだけの日雇いの建築作業員です。資格も経験もなく、実際はほとんど働いていません。彼の「稼ぎ」は、スーパーや釣り道具屋などでの万引きと車上荒らしです。母親の信代は、クリーニング工場で、パートで働いていましたが、リストラされてからは無職です。それまでは、当たり前のようにクリーニングに出された衣類のポケットの中の金品をくすねていました。祖母の初枝は、月6万円近くの年金を得ています。これが、この家族の唯一の定収入です。初枝も、パチンコ店で、隣の客の玉をくすねたり、不倫した元夫と不倫相手との間にできた息子の家族の家に押しかけ、金品をたかっています。やがて、初枝は急死しますが、治と信代はその遺体を床下に埋めて、年金の「万引き」(不正受給)も始まります。1つ目のスキャンダルは、家族が万引きで生計を立てていることです。そして、家族全員が万引きで得たものを当たり前のように当てにしてます。(2)家族が子どもを「万引き」(誘拐)して育てている治は、近所で、寒い中、罰として外に出されている5歳のじゅりをかわいそうだからとの理由で、家に連れて帰ります。そして、信代は、じゅりの体中にあるやけどの痕を見て、かつての自分と同じく虐待されていることを確信し、帰さずに育てることを決意します。実は、すでにいる11歳の息子の祥太も、数年前に治が車上荒らしをした時に、パチンコ屋の駐車場の車に残されて熱中症になっていたところを、治が助け出し、連れ帰っていたのでした。2つ目のスキャンダルは、家族が子どもを「万引き」(誘拐)して育てていることです。治と信代の間には子どもはいません。積極的ではなかったにしても、治と信代は、祥太とじゅりを誘拐しています。また、治は、かつて初枝がパチンコ店で客の玉を盗んでいるのに気付いてから初枝と仲良くなり、信代とともに初枝の家に転がり込んだのでした。そして、信代と異母姉妹と自称していた亜紀も、実はもともとは家出少女で、初枝に誘われて家に居候するようになったのでした。つまり、この家の6人は、誰一人として血がつながっていないのでした。(3)家族が子どもの社会性を「万引き」(隔絶)している祥太とじゅりは、家の出入りを自由にしています。しかし、祥太は小学校に行っていません。じゅりも幼稚園や保育園に行っていません。ご近所付き合いもありません。もちろん、誘拐がばれてしまう恐れがあるからです。そのため、祥太とじゅりは、実質的にはこの家に閉じ込められていると言えます。その代わりに、治は、祥太に万引きの仕方を教えています。そして、2人の連携プレーで万引きを毎回成功させています。さらに、祥太がじゅりに万引きの仕方を教えるようになります。3つ目のスキャンダルは、家族が子どもの社会性を「万引き」(隔絶)していることです。子どもの教育を受ける権利や社会性を育む権利を奪うこと、そして万引きなどの犯罪(反社会的行動)を教えることは、虐待に当たります(教育ネグレクト、心理的虐待)また、亜紀は、風俗バイトをしています。このバイト自体は、反社会的行動とは言えないです。ただ、このバイトのことを聞いた初枝は、気にも止めずに受け止めています。本来は、自分の体を大切にできて、先行きが見える、より社会性のある仕事をしてほしいと願うのが親心のはずなのにです。「万引き家族」は「万引き」をどう思っているの? ―犯罪心理治、信代、初枝がしている万引き、誘拐、虐待などは、どれも犯罪(反社会的行動)として許されないことです。子どもたちが見ているなら、親としてなおさらです。一体、彼らは「万引き」(反社会的行動)をどう思っているのでしょうか? 彼らのセリフを通して、主に3つの犯罪心理(認知的バイアス)を掘り下げてみましょう。(1)自分は悪くない―自己正当化治は、万引きについて祥太に「お店に置いてあるものはまだ誰のものでもない」「店がつぶれなきゃいい」と説明しています。信代はクリーニング工場で「盗ったんじゃない、拾ったんだ」「忘れるやつが悪い」と思っています。また、信代は、誘拐について「違うよ。別に監禁も身代金も要求していないから」「(虐待していた親は)今頃せーせーしてるんじゃない?」と言っています。治も「保護してやったんだ」と開き直ってもいます。治は祥太に、学校に行かせない理由について「家で勉強できないやつが学校へ行くんだ」と言い聞かせています。1つ目の犯罪心理は、「万引き」する自分は悪くないと思うこと、つまり自己正当化です。これは、反社会的行動の理由付けをして自分は間違っていないと思い込むことです。そうすることで、罪悪感を抱きにくくなります(中和)。(2)相手が悪い―敵意バイアス信代は捕まった時、初枝の死体遺棄について女性刑事に「捨てたんじゃない。拾ったんです。誰かが捨てたのを拾ったんです。捨てた人ってのはほかにいるんじゃないですか?」と答え、暗に初枝を見捨てた息子夫婦のほうが悪いと言い張っています。また、信代は、じゅりを誘拐した理由についてその女性刑事に「憎かったのかもね。母親が」と答えます。2つ目の犯罪心理は、「万引き」される相手が悪いと思うこと、つまり敵意バイアスです。これは、うまくいかないことを相手の悪意によるものだと思い込むことです。そうすることで、自分の反社会的行動の責任を相手(社会)に押し付けることができます。(3)向こう見ず―ポジティブ・バイアス治は、じゅりをあっさり連れて帰ってから半年後に、じゅりが行方不明の事件になっているニュースを見て、「やばいな、やばいよな」と急にオロオロし始めます。大事になっていることを見て、自分の思い付きでしたことのまずさにようやく気付いたのでした。一方、信代は、じゅりを連れて歩く時に初枝から「こういうのはかえって大っぴらにしたほうが疑われないのよ」と言われて、同意します。さらに、信代は、同僚に誘拐がバレていることを知った後も、「大っぴら」にしています。「見つかったらその時はその時だ」「コソコソ生きるなんて性に合わない」という思いなのでした。3つ目の犯罪心理は、「万引き」に向こう見ずであること、つまりポジティブ・バイアスです。これは、後先をあまり考えずに、自分に都合が良くなると思い込むことです。そうすることで、反社会的行動の重大性やそれが明るみになる危険性に目をつむることができます。なぜ「万引き」するの?―犯罪の危険因子このように、「万引き」(反社会的行動)について、自分は悪くない、相手が悪い、向こう見ずという犯罪心理(認知的バイアス)が働いてることがわかりました。それでは、なぜそんな犯罪心理が働くのでしょうか? つまり、そもそもなぜ「万引き」するのでしょうか?治、信代、初枝を通して、犯罪の危険因子を主に3つ探ってみましょう。次のページへ >>

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 2

(1)やってはいけないことの意味がよく分からない-抽象的思考の困難さ治は、祥太から「『スイミー』って話、知ってる?」「『スイミー』ってね、小さい魚がみんなで大きなマグロをやっつける話なんだけど、何でやっつけるか知ってる?」と聞かれます。すると、「そりゃ、おまえ、マグロがおいしいからだろ」「最近、マグロ食ってねえからなあ」と話がすり替わり、両手を魚の口のように広げて、「ぐわー!おー!」と祥太を襲うマネをしています。治は、日常生活の具体的な話はできます。軽い冗談も言えます。しかし、小さい魚たちが協力して大きな魚に勝つ方法を想像できず、その方法について興味も持てません。「スイミー」のストーリーの意図や要旨が理解できず、理解したいとも思っていないようです。1つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことの意味がよく分からない、つまり抽象的思考の困難さです。これは、相手の気持ちを探る洞察、自分の気持ちや行動を振り返る反省、先の見通しを立てる予測が困難になることです。つまり、相手の気持ちも自分の気持ちも将来もあまり読めず、その日暮らしで場当たり的に生きています。実際に、治は、仕事の能力が低いにしても、そもそも真面目にコツコツ働いて、経験を積んだり、貯金をしようとしません。お金があれば、すぐにパチンコにつぎ込みます。なお、お金がなければパチンコをやらないので、ギャンブル依存症というほどではないです。治は、「万引き」をはじめとするやってはいけないこと自体はわかっています。つまり、善悪の判断は表面的にはできます。しかし、「なぜやってはいけないのか?」「やったら相手はどう傷付くのか?」「バレたら自分の将来はどうなるのか?」についてはあまり深く考えることができていないです。つまり、やってはいけないことの意味がよくわかっていないと言えます。よって、あまり考えなく、手っ取り早く金品が手に入ってバレにくいから万引きをしていると言えます。バレてとがめられれば、その瞬間に罪悪感は抱きますが、次の瞬間にはけろっとしています。また、子育てとはこうあるべきという抽象的思考(規範意識)が働かないので、虐待をしているという認識すらないです。このように、抽象的思考の困難さによって、洞察、反省、予測ができないため、自分は悪くない、相手が悪い、向こう見ずという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。また、このワンシーンで、治は11歳の祥太よりも精神的に幼いことが判明します。祥太がもともと賢いことを差し引くと、治の精神年齢(知能)は、高学年の小学生から良くても中学生です。これはIQ(知能指数)に換算すると60~85程度で、治は軽度知的障害から知能境界域(境界知能)に当たります。ちなみに、健常の知能の目安は、IQ 85以上とされています。なお、ここで誤解がないようにしたいのは、知能が低いこと(知的障害)が、犯罪の主要な原因ではないことです。その理由は、知能が低ければ低いほど、日常生活を送るのにも援助が必要になるので、犯罪はできなくなるからです。つまり、犯罪の危険因子は、知能が、犯罪ができるレベル以上であり抽象的思考ができないレベル以下であると言えます。実際に、非行に走る少年たちの多くは、知能が境界域(IQ が70~85)であることが指摘されています。このように、知的レベルから考えると、非行は、高学年の小学生から中学生に多く、幼稚園児から低学年の小学生には少ないのも納得ができます。(2)やってはいけないことをする親がいた-反社会的モデルの存在じゅりが元の家に戻らないという態度を示したことで、信代は「選ばれたのかな…私たち」「でも、こうやって自分で選んだほうが強いんじゃない?」と初枝に語りかけます。「何が?」と聞かれた信代は、「キズナよ、キズナ」と照れながらも、うれしそうに答えます。「キズナ」に対して人一倍敏感なのは、信代自身が親から虐待されていた過去があったからでした。2つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことをする親がいた、つまり反社会的モデルの存在です。これは、親が虐待をすることなどを通して、自分や相手を大切にすることを教えていないばかりか、自分や相手を大切にしないことを教えてしまっていることです。つまり、親が、相手を傷付けても良いという悪い見本になっています。これでは、やって良いことと悪いことの意味がはっきり伝わりません。実際に、信代は、捕まって取り調べの時、「(じゅりが元の家に)戻りたいって言ったんですか?」と戸惑いながら、刑事に尋ねます。さらに、じゅりに一度も「ママ」と言われていなかったことを刑事に指摘されて顔をしかめます。信代は、自分なりにじゅりを大切にしていると自認していました。しかし、それが独りよがりだったかもしれないということに初めて気付かされたのでした。ここで、じゅり自身も虐待のサバイバーとして、流されるままに信代に従っていただけだったこともわかります。また、信代は、ぐうたらな治の世話焼きをしょっちゅうしていますが、最後は、刑事に「自分が全部やりました」と言い、治の罪まで肩代わりしています。信代は、親から大切にされていなかった分、相手をどう大切にして良いか分からず、やり過ぎてしまうなどの独りよがりな面もあります(共依存)。さらに、信代は、祥太から万引きの善悪を聞かれた時、「父ちゃんは、何だって?」と質問を返して、はぐらかします。信代は、治よりも知的レベルが高い分、子どもに万引きを教えるという後ろめたさは多少なりとも抱いています。しかし、祥太を学校に行かせないことを含めて、治のやり方に流されています。このように、もともとの反社会的モデルの存在によって、周りに流されやすく、自分は悪くないという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。(3)やってはいけないことを刺激する社会がある-格差信代は、年下の大卒男性と結婚して寿退社した元同僚が職場の社長にあいさつに来ていたのを見て、「あいつ整形?」「辞める前にデリヘルやってたっしょ」と悪口を言い、隣の同僚となじります。「勝ち組」であるその元同僚がおもしろくないのでした。その後、信代なりに一生懸命に働いていたのに、時給が高い古株であることを理由に、リストラされます。さらに、仲の良かった同僚は、裏切りによりリストラを免れます。信代は、定職と友人を同時に失ったのでした。また、初枝が亜紀を居候させたのは、ある意図があったことが後に明らかになります。実は、亜紀は、初枝の元夫と不倫相手との間にできた息子の長女だったのです。それを知った上で、初枝は亜紀を家出するよう誘ったでした。亜紀は、自分なりに、親が自分よりも優秀な妹を大切にすることへの不満があったからです。しかし、亜紀は自分の家族と初枝との関係を知りません。亜紀の家族は、亜紀と初枝との関係を知りません。初枝にも元夫との間にできた息子がいましたが、その嫁とそりが合わず、別居してからは音信不通になっていたのでした。3つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことを刺激する社会がある、つまり格差です。これは、同僚、友人、知人などの身近な周りの人たちと比べて、自分が経済的、人間関係的に恵まれていない不満を抱くことです(相対的剥奪)。簡単に言えば、お金とつながりの境遇において、報われない社会への恨みです。実際に、信代は、失業により同僚との経済的格差が生まれます。仲の良かった同僚に裏切られたことにも腹を立てます。治との間に子どもができなかったことについて、直接的な心理描写はないですが、誘拐を容認する心理を生み出しているでしょう。それは、目の前にいたじゅりへの純粋な愛しさではないです。それは、「お前(じゅりの母親)なんかにこの子を返してやるもんか」という、自分を虐げた自分のかつての母親への憎しみです。それをじゅりの母親に重ね合わせた復讐心でもあります。一方、初枝は、元夫の不倫、息子の親不孝から孤独に陥っていました。「治」と「信代」という実は本来の息子と嫁の名前を、治と信代に名乗らせていることも納得がいきます。さらに、初枝が亜紀を隠密に居候させているのは、自分の境遇に不満を持つ初枝なりの、元夫、不倫相手、息子夫婦への復讐なのでした。ちなみに、亜紀の風俗バイトでの源氏名は、妹の名前の「さやか」です。自分が妹の名を風俗店で名乗ることによって、妹をおとしめて仕返ししたいという心理がありそうです。このように、格差によって、社会への復讐心から、相手が悪いという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 3

なぜ「万引き」しないの? ―社会脳祥太は、いつも万引きをする駄菓子屋にじゅりを連れていき、初めて万引きをさせます。その直後、駄菓子屋のおじいさんから呼び止められ、「これやる」とゼリー棒を2本渡されます。そして、「その代わり、妹にはさせるなよ」とたしなめられます。実は、おじいさんはすべてお見通しだったのです。この時初めて、祥太に罪悪感が芽生えます。初枝が亡くなった後、祥太は、治から「これ(初枝を床下に埋めること)は内緒だぞ。ばあちゃんは最初からいなかった。おれたちは5人家族だ」と告げられますが、納得がいきません。その後、治が初枝のへそくり9万円を探し出し、信代と飛び跳ねて大喜びする様子を目の当たりにしていら立ち、祥太は持っていたヘルメットを放り投げます。祥太は、後に児童相談所に保護された時、刑事から「あの人たち(治と信代)ねえ、私たちが家に着いた時、荷物まとめて逃げようとしてるところだったんだよ。あなたを置いて」「本当の家族だったらそういうことしないでしょ」と聞かされます。さらに、祥太は、児童養護施設に入って半年後、治に再会します。その別れ間際、祥太は治に「わざと捕まった」と伝えます。実際は、じゅりの万引きがばれそうになって、その身代わりになるために、わざと自分の万引きを店員たちに見せつけて、注意を引いて逃げて、結果的に捕まったのでした。それなのにです。この時、祥太は、治に決別を悟らせます。子どもが父親を見限る瞬間です。その直後、治は、祥太が乗り込んだバスを必死に追いかけます。まるで、テレビの世界名作劇場のワンシーンです。もはや、どちらが子どもか分からなくなります。そして、独りぼっちになったのは、祥太ではなく、治だったことに気付かされます。祥太は、治が「本当の家族」ではないと見限ったのでした。家族の温かみはまったく表面的であることに気付いたのでした。治は、祥太の将来を考えていません。ただ自分の寂しさを満たしたかっただけなのでした。治は、祥太の幸せよりも自分の幸せを優先していたのでした。ここで考えたいのは、祥太は、治と違って万引きをしなくなりました。なぜでしょうか? もっと言えば、私たちは、なぜ「万引き」(反社会的行動)をしないのでしょうか? その答えを進化心理学的に解き明かしてみましょう。数億年前の太古の昔から、自然界では、動物同士が獲物を奪う奪われるという取り合いの関係(競争)になるのはごく当たり前のことでした。しかし、数百万年前に誕生した私たち人類は、サバンナ(草原)で猛獣に襲われたり飢え死にしないために、家族(血縁)を中心とした村(社会)をつくり、助け合い(協力)の関係を築きました。そして、その社会の中でうまくやっていくためのさまざまな社会的感情を進化させました(社会脳)。その基盤になるのが信頼です。そして、社会に望ましい行動を促すのが誇りです。逆に、社会に望ましくない行動(反社会的行動)を抑えるのが、罪悪感です。つまり、私たちが犯罪をしない理由の答えは、「本当の家族」を中心とする社会に対して罪悪感を抱く社会脳を進化させたからであると言えるでしょう。なぜ「万引き」は「ある」の? ―犯罪の起源私たちが「万引き」(反社会的行動)をしない進化心理学的な理由がわかりました。それでは、そもそもなぜ「万引き」は「ある」のでしょうか? その答えを、もう一度、進化心理学的に考え、犯罪の起源に迫ってみましょう。私たち人類は、原始の時代に長らく、約150人程度の村人たちによる助け合い(協力)をする村を維持して、生存確率を高めました。そこは、限られた資源をわけ合う平等社会です。逆に言えば、私たちは、そもそも不平等(格差)であることを嫌います。しかし、そんな中、協力して得た資源を出し抜いて総横取りする種が現れました。助け合い(協力)よりも、取り合い(競争)の心理が上回った種です(フリーライダー)。フリーライダーとは、周りがお金を払って乗り物に乗っているのに、自分だけただで乗ろうとする種という意味です。なぜなら進化の本来の姿は競争だからです。私たち人類は、信頼による協力とだましによる競争の心理を器用に使いわけて、バランスを取りながら進化してきたのでした。つまり、私たちの心の中には、信頼の心と同時に、常に裏切りの心が潜んでいるわけです。ただし、裏切りの心は必ず出てくるわけではありません。また、裏切り者は増えません。その理由として、裏切りの心理は短期的には効率的であるというメリットはありますが、長期的には秩序のある社会から排除されるというデメリットのほうが大きくなるからです。原始の時代に排除されることは、すなわち死を意味します。原始の時代は常に飢餓と隣合わせであることを考え合わせると、飢餓や戦争などにより社会の秩序が不安定になり(アノミー)、不平等(格差)が広がった時にこそ、この社会への裏切りの心理が高まると言えるでしょう。これが、信代や初枝の復讐心の正体です。つまり、犯罪が「ある」という理由の答えは、不平等な社会に対しては裏切る「反社会脳」を進化させたからであると言えるでしょう。ちなみに、約5千年前に、文字が発明され、法が明記されるようになりました。それ以降、懲罰による犯罪の抑止や更生の考え方が、文化として根付いていったのです。なぜ「万引き」は「ある」の? ―犯罪の起源「万引き」(反社会的行動)の起源が進化心理学的にわかりました。それでは、「万引き」は遺伝するのでしょうか? その答えを、行動遺伝学的に考えてみましょう。双生児研究において、反社会的行動の一致率は二卵生双生児が50%程度であるのに対して、一卵生双生児は80%へと高率になることがわかっています。ここから、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響の強さの相対的な比率が算出されます。なお、厳密には男女差、年齢差、研究機関の差がありますが、わかりやすくするために、青年期の平均男女のおおむねの数値として示します。<< 前のページへ

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帯状疱疹ワクチン、自家造血幹細胞移植後の帯状疱疹予防に有効/JAMA

 帯状疱疹の罹患は健康人においても深刻だが、とくに自家造血幹細胞移植(auHSCT)後の発症頻度が高い合併症として知られており、病的状態と関連している。移植後帯状疱疹の予防のために開発された非生アジュバント添加遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンの第III相臨床試験の結果が報告され、auHSCTを受けた成人患者において本ワクチンの2回接種により、追跡期間中央値21ヵ月時の帯状疱疹の発症率が有意に低下したことが示された。JAMA誌2019年7月9日号掲載の報告。 研究グループは2012年7月13日~2017年2月1日に、28ヵ国167施設にて第III相無作為化観察者盲検試験を実施した。 対象は、18歳以上のauHSCT施行者1,846例で、ワクチン群(922例)とプラセボ群(924例)に1対1の割合で無作為に割り付け、移植後50~70日後に1回目、その1~2ヵ月後に2回目の接種を行った。主要評価項目は、帯状疱疹の発症であった。 主な結果は以下のとおり。・1,846例(1回以上の接種を受けた患者)の患者背景は、平均年齢55歳、女性688例(37%)で、1,735例(94%)が2回の接種を受け、1,366例(74%)が試験を完了した。・追跡期間中央値21ヵ月において、1回以上帯状疱疹を発症した患者が、ワクチン群で49例、プラセボ群で135例確認された(1,000人年当たりの発生率30 vs.94)。発生率比(IRR)は0.32(95%CI:0.22~0.44、p<0.001)であり、ワクチンの有効率は68.2%であった。・副次評価項目において、帯状疱疹後神経痛の有意な減少(ワクチン群1例、プラセボ群9例、IRR:0.1、95%CI:0.00~0.78、p=0.02)、帯状疱疹関連合併症の有意な減少(ワクチン群3例、プラセボ群13例、IRR:0.22、95%CI:0.04~0.81、p=0.02)、および重症帯状疱疹関連痛の持続期間減少(ワクチン群892.0日、プラセボ群6,275.0日、HR:0.62、95%CI:0.42~0.89、p=0.01)が認められた。・注射部位反応の発現率は、ワクチン群86%、プラセボ群10%であった。主な症状は痛みで、ワクチン群の84%(Grade3が11%)に認められた。・自発的に報告された重篤な有害事象、潜在的な免疫介在疾患および基礎疾患の再発は、すべての時点で両群とも類似していた。

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双極I型障害における日照量と自殺企図歴との関連

 多くの国際的な研究において、自殺や自殺企図の頻度には、春または夏にピークを迎えるといった季節的なパターンがあるといわれている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、双極I型障害患者における日照量と自殺企図歴との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年6月号の報告。 日照量は、太陽からの光エネルギーが地表に当たる量とした。北および南半球の広範囲な緯度の32ヵ国50施設より、双極I型障害患者5,536例のデータを収集した。自殺関連データは、51ヵ国310地点より3,365例のデータが利用可能であった。 主な結果は以下のとおり。・自殺企図歴は、1,047例(31.1%)で認められた。・自殺企図歴と冬季/夏季の平均日照量の比率との間に、有意な逆相関が認められた。・この比率は、冬季の日照量が夏季に比べて非常に少ない地球の極に近い地域で最も小さく、年間を通じて日照量の変動が比較的少ない赤道付近の地域で最大となった。・自殺企図に関連する他の因子は、女性、アルコールまたは薬物依存歴、より若年のコホートであった。・国が後押しする宗教を有する国では、この関連性は小さくなった(すべての推定係数:p<0.01)。 著者らは「冬季と夏季の日照量が大きく変化する地域で生活している双極性障害患者は、自殺企図が増加している可能性がある。双極性障害の経過に対する日照量の影響については、さらなる調査が求められる」としている。

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DPP-4阻害薬関連の心血管リスクを他剤と比較~日本人コホート

 わが国の糖尿病患者270万人のコホート研究で、DPP-4阻害薬の単剤治療に関連した、入院を要する心筋梗塞および心不全のリスクは、ビグアナイド(BG)より高く、スルホニル尿素(SU)より低く、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と同等であったことを、医薬品医療機器総合機構の駒嶺 真希氏らが報告した。Pharmacoepidemiology and Drug Safety氏オンライン版2019年7月23日号に掲載。 本研究は、国内の糖尿病患者271万6,000例による全国規模のコホート研究で、2010年4月1日~2014年10月31日に新たに糖尿病治療薬単剤で治療された患者が対象。DPP-4阻害薬投与に関連した入院を要する心筋梗塞、心不全、脳卒中の発生を、BG、SU、α-GIと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)を推定し、傾向スコアによる標準化により交絡を調整した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の使用患者は、DPP-4阻害薬110万5,103例、BG 27万8,280例、SU 27万3,449例、α-GI 21万7,026例を同定した。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞および心不全リスクは、BG使用者より有意に高かった(心筋梗塞のaHR:1.48[95%CI:1.20~1.82]、心不全のaHR:1.46[同:1.31~1.62])が、SU使用者より有意に低かった(心筋梗塞のaHR:0.84[同:0.72~0.98]、心不全のaHR:0.86[同:0.81~0.92])。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞リスクはα-GI使用者と同様だった(aHR:0.98[95%CI:0.82~1.17])が、心不全リスクはわずかに高かった(aHR:1.12[同:1.04~1.21])。

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EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性など。その他探索的な評価項目として、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、バイオマーカー分析が設定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で449例が登録され、うち東アジア人は336例(75%)。日本人は41施設から211例が登録された。ラムシルマブ併用群に166例、プラセボ群に170例が割り付けられた。女性は両群で64%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは51%/49%であった。・PFS中央値は、全体集団で併用群19.4ヵ月 vs.プラセボ群12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)、東アジア集団で19.4ヵ月 vs.12.5ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.485~0.833、p=0.0009)と併用群で有意に延長した。・EGFR変異のステータスによる差はなく、全体集団と同様に東アジア集団でも併用群でPFS中央値を延長した:Ex19delを有する患者で19.2ヵ月 vs. 12.4ヵ月(HR:0.629、95%CI:0.430~0.921)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.644、95%CI:0.439~0.945)。・ORRは77% vs.74%と全体集団同様に差がみられなかったが、DoR中央値は16.2ヵ月 vs. 11.1ヵ月と、併用群で延長した(HR:0.646、95%CI:0.481~0.868)。・中間解析時点でのPFS2中央値は33.1ヵ月 vs. 未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.771、95%CI:0.529~1.124)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.824、95%CI:0.491~1.383)。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群50%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.530)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は全体集団で72% vs.54%、東アジア集団で71% vs.49%であった。・東アジア集団において、併用群で多くみられたGrade3以上のTRAEは、高血圧(21% vs. 5%)、ざ瘡様発疹(18% vs. 9%)であった。出血性イベント(55% vs.27%)も併用群で多い傾向がみられたが、Grade3以上は2% vs.1%であった。ILDの発現は少なく、Grade3以上は1% vs.2%で、Grade4の症例は報告されていない。

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敗血症診療規則の導入で死亡低減/JAMA

 米国ニューヨーク州の病院は、プロトコール化された敗血症診療(Rory's Regulations)の実施が義務付けられている。米国・ピッツバーグ大学のJeremy M. Kahn氏らは、この診療規則の有効性に関する調査を行い、導入以降ニューヨーク州は、非導入の他州に比べ敗血症による死亡が減少していることを示した。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。2013年以降、ニューヨーク州の病院は、敗血症管理においてエビデンスに基づくプロトコールの実施とともに、プロトコール順守や臨床アウトカムに関する情報の州政府への報告が義務付けられている。敗血症診療規則導入前後で敗血症入院例のアウトカムを比較 研究グループは、ニューヨーク州の敗血症診療規則と、敗血症による入院患者のアウトカムの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成による)。 解析には2011年1月1日~2015年9月30日の、ニューヨーク州と規則非導入の対照4州(フロリダ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州)の成人敗血症入院患者の退院時のデータを用いた。規則導入前後で複数回測定された時系列データを比較解析した。 2013年のニューヨーク州の敗血症診療規則の導入前(2011年1月1日~2013年3月31日)と導入後(2013年4月1日~2015年9月30日)の敗血症による入院について評価を行った。 主要評価項目は、30日院内死亡率とした。副次評価項目は、集中治療室入室率、中心静脈カテーテル使用率、Clostridium difficile感染率、入院期間であった。敗血症診療規則の導入で入院期間が有意に短縮 最終解析には509施設に入院した敗血症患者101万2,410例が含まれた。平均年齢は69.5(SD 16.4)歳、女性が47.9%であった。敗血症診療規則導入前の入院患者数は、ニューヨーク州が13万9,019例、対照4州は28万9,225例であり、導入後はそれぞれ18万6,767例および39万7,399例であった。 補正前30日院内死亡率は、敗血症診療規則導入前がニューヨーク州26.3%、対照4州22.0%で、導入後はそれぞれ22.0%および19.1%であった。患者および病院の背景因子と、導入前の一時的な傾向や季節性で補正すると、導入後の30日院内死亡率はニューヨーク州が対照4州に比べ有意に低下した(導入前後で複数回測定された時系列データの比較値の同時検定のp=0.02)。 たとえば、敗血症診療規則導入後の第10(最終)四半期(2015年7月~9月)の補正後絶対死亡率は、対照4州と比較したニューヨーク州の予測値よりも3.2%(95%信頼区間[CI]:1.0~5.4)有意に低かった(p=0.004)。 敗血症診療規則導入により、両群間で集中治療室入室率の有意な差は認めなかったが(同時検定のp=0.09)(第10四半期の補正後の両群差:2.8%、95%CI:-1.7~7.2、p=0.22)、ニューヨーク州は対照4州に比べ、入院期間が有意に短縮し(p=0.04)(0.50日、-0.47~1.47、p=0.31)、Clostridium difficile感染率(p<0.001)(-1.8%、-2.6~-1.0%、p<0.001)、中心静脈カテーテル使用率(p=0.02)(4.8%、2.3~7.4、p<0.001)は有意に増加した。 著者は、「ベースラインの死亡率がニューヨーク州と対照4州で異なるため、これらの知見が、この研究には含まれない他州に一般化可能かどうかは不明である」としている。

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認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。多遺伝子性リスクと健康的な生活様式で認知症リスクを評価 研究グループは、健康的な生活様式は遺伝的リスクとは無関係に認知症リスクを低減するか評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(英国・UK Biobankの助成による)。 英国の人口ベースのコホートであるUK Biobank(登録期間2006~10年)の参加者のうち、ベースライン時に認識機能障害および認知症のない60歳以上の欧州系の地域住民を対象とし、2016年または2017年まで追跡した。 アルツハイマー病と認知症に関連する一般的な遺伝的バリアントの負荷を表す多遺伝子性リスクスコアを構築し、五分位に基づき遺伝的リスクを3段階に分類した(低リスク:第1[最低]五分位、中リスク:第2~4五分位、高リスク:第5[最高]五分位)。 健康的な生活様式の重み付きスコアは、4つの十分に確立された認知症リスク因子からなる指標(非喫煙、定期的な身体活動、健康的な食事、中等度のアルコール摂取)に基づき3段階に分類した(好ましい:健康的な生活様式因子の数が3または4つ、中間的:同2つ、好ましくない:同0または1つ)。 主要アウトカムは、全原因による認知症の新規発症とし、病院の入院/死亡記録で確認した。遺伝的リスクを問わず、健康的な生活様式は認知症リスクを低減 19万6,383例(平均年齢64.1[SD 2.9]歳、女性52.7%)が解析に含まれた。観察人年は154万5,433人年(フォローアップ期間中央値8.0年[IQR:7.4~8.6])で、この間に1,769例が認知症を発症した。 生活様式は、「好ましい」が68.1%、「中間的」が23.6%、「好ましくない」が8.2%であった。遺伝的リスクは、高リスクが20%、中リスクが60%、低リスクが20%だった。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、1.23%(95%信頼区間[CI]:1.13~1.35)が認知症を発症し、これは低リスク集団の発症率0.63%(0.56~0.71)と比較して有意に高かった(補正後ハザード比[HR]:1.91、1.64~2.23、p<0.001)。また、中リスク集団も、低リスク集団に比べ認知症リスクが有意に高かった(1.37、1.20~1.58、p<0.001)。 生活様式が好ましくない参加者のうち、1.16%(95%CI:1.01~1.34)が認知症を発症し、好ましい集団の発症率0.82%(0.77~0.87)に比べ有意に高かった(補正後HR:1.35、1.15~1.58、p<0.001)。中間的集団も、好ましい集団に比し認知症リスクが有意に高かった(1.17、1.04~1.31、p<0.009)。遺伝的リスクが高い集団では生活様式が好ましい群は認知症リスクが低い 遺伝的リスクが高リスクかつ生活様式が好ましくない参加者のうち、1.78%(95%CI:1.38~2.28)が認知症を発症し、低リスクかつ生活様式が好ましい集団の発症率0.56%(0.48~0.66)に比べ有意に高かった(補正後HR:2.83、2.09~3.83、p<0.001)。また、重み付けされた健康的な生活様式スコアと、多遺伝子性リスクスコアには、有意な相互作用は認めなかった(p=0.99)。これは、生活様式因子と認知症の関連は、遺伝的リスクに基づいて実質的に変化しなかったことを示す。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、生活様式が好ましい集団の認知症発症率は1.13%(95%CI:1.01~1.26)であり、好ましくない集団の1.78%(95%CI:1.38~2.28)と比較して有意に低かった(0.68、0.51~0.90、p=0.008)。 著者は、「遺伝的リスクが高い集団では、生活様式が好ましい群は好ましくない群よりも認知症リスクが低いことが示された」とまとめ、「この集団の生活様式が好ましい群における認知症の絶対リスク低減率は0.65%であり、これは生活様式が原因の場合、10年間で遺伝的リスクが高い集団に属する生活様式が好ましくない121例を好ましい生活様式に改善することで、1例の認知症が予防可能であることを意味する」としている。■「アルコールと認知症」関連記事日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

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血小板機能を標的としたランダム化比較試験に意味があるか?(解説:後藤信哉氏)-1083

 新薬を開発するためには、過去の標準治療の欠点を挙げる必要がある。正直、クロピドグレルは革新的抗血小板薬であった。効果の不十分性をステント血栓症により実感させる冠動脈ステント例でも十分に有効とされた。頭蓋内出血などの出血合併症も決して多くはない。プラスグレル、チカグレロルと同種の薬剤が開発されたが、安価になったクロピドグレルを転換するインパクトはなかなか出せない。TRITON-TIMI 38試験ではプラスグレルにより優れた抗血栓薬効果を得るためには、出血死も含む重篤な出血の増加が必要なことが示された。試験のプロトコールを工夫したPLATO試験では出血増加を前面に出さずにチカグレロルの効果を示したが、冠動脈疾患以外への適応拡大は困難であった。 脳は心臓よりも出血に敏感である。抗血小板薬効果の増強とともに起こる出血リスク増加は避け難い。十分に有効、安全な標準治療(クロピドグレル)が役に立たない小集団を見つけるために、本研究では血小板機能をエンドポイントとした。筆者は血小板機能を指標とした臨床開発には反対である。血小板には多くの受容体と活性化経路がある。P2Y12 ADP受容体は、多くの受容体の1つにすぎない。VerifyNow P2Y12はP2Y12阻害と相関性があるが、他の受容体刺激によって結果は影響を受ける。 クロピドグレルの欠点としてCYP2C19による代謝と個人ごとの薬効のバラツキを考え、薬効不十分例を抽出する方法としてVerifyNow P2Y12が開発された。アプローチは論理的であるが、生体の複雑性が十分に反映されていない。クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルはP2Y12 ADP受容体阻害薬である。当初からP2Y12 ADP受容体阻害率をきちんと計測する方法を確立すべきであった。

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第10回 下肢の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第10回 下肢の痛み腰・下肢痛と言われるように、腰痛疾患に伴う下肢痛もよく見られます。統計によりますと、日本では約30万人以上の患者さんが、腰・下肢痛、坐骨神経痛、神経根障害などとして診断されています。今回は、この下肢の痛みを取り上げたいと思います。腰椎疾患・血管疾患・末梢神経障害の3分類で考える下肢の痛みは、大きく分けて腰椎疾患由来の痛み、血管疾患由来の痛み、末梢神経障害由来の痛みに分類されます。1)腰椎疾患由来の痛み腰痛疾患に由来する痛みで、一般的には坐骨神経痛と称されます。椎骨や椎間板によって腰神経が圧迫されるために、対応する下肢や臀部に放散するしびれや痛みが生じます。具体的には、脊椎管狭窄症や椎間板へルニアなどの疾患によって、病変部の神経が圧迫されて下肢痛が生じます。下図に示されるように、それぞれの病変部に応じて痛みが感じられます。神経圧迫がなくても、炎症によって責任神経に沿って痛みを感じることがあります。画像を拡大する2)血管疾患由来の痛み血管疾患は、動脈由来と静脈由来とに分類されます。動脈由来では、閉塞性動脈硬化症(ASO)が代表的疾患です。動脈の血流が悪くなりますと、運動時のみに痛みを感じていたのが、次第に安静時にも痛みを感じるようになります。また、下肢に痛みを急激に感じるときには、血栓などによる急性下肢動脈閉塞の可能性も高く、緊急対応が必要になりますので注意しなくてはなりません。静脈由来では、蛇行静脈が見られたり、下肢が腫脹したりする下肢静脈瘤が最も多く認められております。下肢が急に腫れて痛みを感じる場合には、深部静脈血栓症の可能性もありますので、十分に注意する必要があります。3)末梢神経障害由来の痛み下肢の末梢神経が、圧迫されたり、絞扼されたりすると、その神経の支配領域に一致した痛みを伴います。異常感覚性大腿神経痛が代表的疾患ですが、この場合は大腿外側に痛みや痺れが見られます。その他に気を付けなければならない下肢痛としては、複合性局所疼痛症候群(CRPS)があります。この疾患は、外傷後などに遷延する四肢の痛みで、皮膚の異常感覚や色調異常などが見られます。時に、注射穿刺後に生じることもあります。また、帯状疱疹、蜂窩織炎、足底腱膜炎などは、よく見られる疾患です。仙腸関節痛や大腿骨頭壊死などでも下肢痛が見られます。シンスプリントやアキレス腱断裂は、運動後に生じる下肢痛です。長期間にわたって痛みを訴えたり、事故や労災などが関与したりしている場合には、心理社会的な要因が存在することもありますので注意が大切です。次回は陰部・肛門痛について述べます。1)服部政治ほか 日本における慢性疼痛を保有する患者に関する大規模調査. ぺインクリニック25:1541-1551.2004.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.25-263)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S146-147

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がん免疫療法ガイドライン第2版発刊【Oncologyインタビュー】第9回

がん免疫療法ガイドライン第2版が本年(2019年)3月に発刊された。第1版から2年3ヵ月のスピード改訂である。本版制作の実務を担った日本臨床腫瘍学会がん免疫療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ長である九州大学 馬場 英司氏に、第2版の改訂ポイントを聞いた。2年3ヵ月(第1版は16年12月、第2版は19年3月に発刊)という短期間で第2版を発刊されていますが、その背景について教えてください。このガイドラインの対象は主に免疫チェックポイント阻害薬で、それらを適正に使用することを目的にしています。この分野は新しい薬剤が次々に登場し、適応疾患も急速に拡大しています。そのため、早めの改訂を行いました。改訂の準備段階で、web版で出すか冊子として出すかを検討しました。当初は部分的なものを想定していましたが、実際に始めてみると改訂すべきボリュームがかなり多いことがわかり、web版ではなく第2版として冊子にしようということとなりました。第1版からの改訂ポイントはどのようなところでしょうか。全体の構成は第1版と同様です。1つ目が「がん免疫療法の分類と作用機序」、2つ目は「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」、最後に「がん免疫療法の種別エビデンス」という3つの大項目からなっています。まずがん免疫療法の概論、次に副作用の説明、最後に各臓器における免疫療法の使い方という組み立てです。1つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」は、全体的に大きく変わっていませんが、より詳細な記載になっています。2つ目の「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」については、各項目でボリュームが増しています。なかでも「15.心筋炎を含む心血管障害」については、頻度が高くないという理由から、第1版では独立させていませんでしたが、今回は新たな項目として独立させ、より詳細に記載しました。この分野は腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)と呼ばれ、がん治療、あるいはがんそのものによる循環器系の合併症対策として、腫瘍と循環器との連携の重要性についての認識が高まっています。免疫療法においてもこの分野は重要なものとなっています。3つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」で特徴的なことは「19.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形」を加えたことです。このテーマは第2版作成当初から重要性に注目し、準備していました。MSI-H検査が保険診療で使えるようになったのは、この第2版が出る数ヵ月前(2018年12月)であり、タイミング良く載せられたと思います。このような臓器横断的な遺伝子変化を対象とした治療薬は今後もでてきますので、他学会と協力した取り組みも進めています。副作用対策も治療エビデンスも広範囲にわたります。貴学会内だけでなく、他学会のサポートもあったのでしょうか制作に関わっていただいたのは全部で23名です。適応がん種は幅広いので、日本臨床腫瘍学会のがん種横断的な先生方の協力をいただいています。また、他学会からの協力もいただいており、日本免疫学会から玉田耕治先生、日本臨床免疫学会から鳥越俊彦先生に代表として入っていただき、腫瘍循環器学の分野からは向井幹夫先生にご協力いただきました。医療者の方々に有効に活用いただくためのアドバイスをお願いします。免疫チェックポイント阻害薬は非常に期待されている薬剤である一方、従来の抗がん剤とはまったく異なる副作用が発現します。これらの有害事象を上手にマネジメントしないとせっかくの薬が有効活用できません。また循環器や内分泌など、腫瘍専門家に馴染みの少ない分野の有害事象への対応も必要となります。このガイドラインを活用し、さまざまな臓器の有害事象を頭に入れ、対策に役立てていただきたいと思います。そして、ガイドラインの活用と共に、他の専門家とのネットワーク構築などを進めていただければ、期待される薬剤をさらに有効に活用できると思います。

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てんかん患者の日中の眠気と交通事故リスク

 愛知医科大学の松岡 絵美氏らは、てんかん患者における日中の過度な眠気や睡眠障害について、とくに抗てんかん薬に焦点を当て検討を行い、てんかん患者における睡眠関連問題が交通事故リスクと相関するかについて調査を行った。Seizure誌2019年7月号の報告。 てんかん患者325例でエプワース眠気尺度(ESS)を、322例でピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。運転免許証を有するてんかん患者239例が、交通事故に関連する質問に回答した。てんかん患者の交通事故と日中の眠気や睡眠障害は関連が認められなかった てんかん患者の眠気と交通事故に関する調査の主な結果は以下のとおり。・焦点性てんかんにおいて、意識障害、年齢、ラコサミドの投与は、それぞれESSスコアに有意な影響を及ぼすことが示唆された。・バルプロ酸およびラコサミドの投与は、抗てんかん薬以外の睡眠改善薬と同様に、PSQIによる睡眠障害に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・全体の交通事故に対し、年齢とLEVは交通事故発生に影響を及ぼした。・てんかん発作に関連する交通事故に対し、有意な影響を及ぼす唯一の因子は、睡眠改善薬であった。・てんかん発作と関連しない交通事故に対し、有意な影響を及ぼす因子は見当たらなかった。・これら3つの交通事故とESSスコアまたはPSQIスコアとの間に相関は認められなかった。 著者らは「てんかん患者の交通事故と日中の眠気や睡眠障害は関連が認められなかった。さらに、抗てんかん薬は、日中の眠気や交通事故リスクの増加に影響を及ぼしていなかった」としている。

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最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

 乳がん治療について、ステージ分類に加えて腫瘍サブタイプの重要性を強調するエビデンスが報告された。現行の乳がん治療では、これまで各ステージにおける腫瘍サブタイプの寄与は明らかになっていなかったが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJose P. Leone氏らが、Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを解析し、臨床病理学的特徴が良好であるのはホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんであること、しかしながら、ほとんどのステージで全生存(OS)が最も良好だったのはHR+/HER2+乳がんであることを報告した。乳がんの4つの各ステージにおいて、OSは腫瘍サブタイプにより有意に異なっており、多変量モデルにおいても有意なままであったことも明らかにした。American Journal of Clinical Oncology誌2019年7月号掲載の報告。各ステージでの腫瘍サブタイプ別にOSは有意に異なる 研究グループは、各ステージでの腫瘍サブタイプ別によるOSの違いを分析する目的で、SEERプログラムに登録された乳がん患者のうち、2010~13年の間に診断され、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体(HR)ならびにHER2の状態が既知の患者を対象に、患者特性を腫瘍サブタイプ別に比較した。 単変量および多変量解析により、OSに対する各変数の影響を明らかにするとともに、乳がん特異的生存についても解析した。 腫瘍サブタイプ別に患者特性を比較した、主な結果は以下のとおり。・解析対象は16万6,054例で、腫瘍サブタイプの分布はHR+/HER2-が72.5%、HR+/HER2+が10.8%、HR-/HER2+が4.8%、トリプルネガティブ(TN)が12%であった。・HR+/HER2-の患者は、年齢が高く、グレードが低く、ステージは早期であった(すべてp<0.0001)。・OSは、各ステージにおいて、腫瘍サブタイプにより有意に異なっていた(交互作用のp<0.0001)。・StageIで最もOSが高かった腫瘍サブタイプは、HR+/HER2-で、3年OSは97.2%であった。・StageII、StageIII、StageIVで最もOSが高かった腫瘍サブタイプは、HR+/HER2+で、3年OSはそれぞれ94.5%、87.8%、54.8%であった。・SageIVでは、腫瘍サブタイプのTNとHR+/HER2+との間で3年OSに40.1%の差があった。・これらの結果は年齢、人種、グレード、組織型および配偶者の有無について調整した多変量解析によって確認された。

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毎週パクリタキセル療法の末梢神経障害、冷却療法による予防効果/日本乳学会

 乳がんに対する毎週パクリタキセル(PTX)療法に伴う末梢神経障害に対する予防方法として、冷却方法が有用である可能性が報告されている。今回、呉医療センター中国がんセンターの尾崎 慎治氏(4月より県立広島病院)らが無作為化比較第II相試験にて、frozen gloves/socksによる冷却療法を検証したところ、忍容性は良好であり、毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害の予防に有用と考えられた。第27回日本乳学会学術総会にて発表された。毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害は冷却療法群で有意に低かった 本試験では、毎週パクリタキセル療法を4サイクル施行予定の乳がん44症例を、毎週パクリタキセル療法開始時からfrozen gloves/socksによる予防的冷却療法を併用する試験群と、有意な末梢神経障害が発生した時点から冷却療法を併用開始するコントロール群の2群にランダム化した。併用群ではパクリタキセルの投与開始前15分から治療中を含め、治療終了後15分までの90分間、frozen gloves/socksを装着し、治療中に2個目のfrozen gloves/socksに切り替えた。末梢神経障害の評価はパクリタキセル各コースの投与前と4コース終了後に、患者アンケートとしてFACT-NTx subscale日本語版とPNQ(patient neurotoxicity questionnaire)を、また主治医評価としてCTCAE(commonterminology criteria for adverse event)v4.0を用いて評価した。FACT-NTxでは6ポイント以上または10%以上を、PNQではGradeD以上を、CTCAEではGrade2以上を有意な末梢神経障害として評価した。 毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害に対する冷却療法の予防効果を検証した主な結果は以下のとおり。・44症例を冷却療法群とコントロール群に22症例ずつ無作為化された。・冷却療法の忍容性については、22症例中15症例(68%)が良好であり、冷却療法に関連した副作用(凍傷、末梢循環不全、悪寒)は認めなかった。・FACT-NTxにおける有意な末梢神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群: 41% vs.73%、p=0.03)。・PNQにおけるGradeD以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:14% vs.42%、p=0.02)。・CTCAEにおけるGrade2以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:9% vs.54%、p=0.001)。・冷却療法の忍容性不良例や、コース数の増加とともに末梢神経障害が悪化する症例が存在した。

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