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急性脳梗塞、迅速な血管内治療開始でアウトカム改善/JAMA

 脳主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中(AIS)患者の実臨床治療では、血管内治療開始までの時間の短縮によりアウトカムが改善することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のReza Jahan氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。AISにおける脳主幹動脈閉塞への血管内治療の有益性は時間依存性とされる。一方、治療開始までの時間短縮が、アウトカムや実臨床への一般化可能性に、どの程度の影響を及ぼすかは不明だという。治療の迅速性とアウトカムの関連を評価するコホート研究 研究グループは、AIS患者における血管内治療の迅速性とアウトカムの関連の評価を目的とする後ろ向きコホート研究を行った(米国心臓協会[AHA]/AHA脳卒中部門[ASA]などの助成による)。 2015年1月~2016年12月の期間に、米国の全国レジストリであるGet With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)に登録されたデータを後ろ向きに解析した。対象は、前方循環系の脳主幹動脈閉塞によるAISで、発症から8時間以内に血管内治療を開始した患者であった。 主要アウトカムは、発症(最終確認時刻)から動脈穿刺までの時間(発症-穿刺時間)および病院到着から動脈穿刺までの時間(到着-穿刺時間)と、有効再開通(modified thrombolysis in cerebral infarction[mTICI]スコア:2b~3[閉塞血管領域の50~100%で再灌流])、退院時の歩行状況・全般的な機能障害(modified Rankin scale[mRS])・退院先、症候性頭蓋内出血(sICH)、院内死亡/ホスピス転院率との関連とした。発症-穿刺時間30~270分では、15分短縮ごとに退院時自立歩行が1.14%増加 米国の231施設から6,756例が登録された。平均年齢は69.5(SD 14.8)歳、女性が51.2%(3,460例)で、治療前の米国国立衛生研究所脳卒中尺度(NIHSS)スコア中央値は17点(IQR:12~22)であった。 発症-穿刺時間中央値は230分(IQR:170~305)、到着-穿刺時間中央値は87分(62~116)であった。有効再灌流の達成率は85.9%(5,433/6,324例)だった。 有害事象として、sICHが6.7%(449/6,693例)、院内死亡/ホスピス転院率が19.6%(1,326/6,756例)に認められた。退院時に、自立歩行が36.9%(2,132/5,783例)、機能的自立(mRS:0~2)が23.0%(1,225/5,334例)、機能障害なし(mRS:0~1)が15.9%(847/5,334例)、自宅退院が27.8%(1,876/6,756例)で達成された。 発症-穿刺時間の補正後解析では、時間-アウトカム関連は30~270分が271~480分に比べ急勾配であり、時間が短縮するほどアウトカムが改善した。すなわち、発症-穿刺時間30~270分では、時間が15分短縮するごとに、退院時の自立歩行の達成率が1.14%(95%信頼区間[CI]:0.75~1.53)増加し、院内死亡/ホスピス転院率が0.77%(-1.07~-0.47)低下し、sICHのリスクは0.22%(-0.40~-0.03)減少した。 到着-穿刺時間についても同様に、時間の短縮によりアウトカムの改善が得られた。すなわち、30~270分のウィンドウでは、15分の短縮ごとに、自宅退院の達成率が2.13%(95%CI:0.81~3.44)増加し、院内死亡/ホスピス転院率が1.48%(-2.60~-0.36)低下した。 著者は、「これらの知見は、脳卒中患者における病院到着までの時間、および血管内治療までの時間の短縮に向けた取り組みを支持するものである」としている。

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フレイルな非小細胞肺がんに対する低用量エルロチニブの有効性/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては分子標的薬がスタンダードだが、フレイル患者への実臨床での至適投与量は明らかではない。そのような中、EGFR変異陽性NSCLCのフレイル患者に対する低用量エルロチニブの効果と安全性を評価する多施設第II相TORG1425試験が行われた。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、その最終結果が三井記念病院の青野ひろみ氏により発表された。・対象:化学療法未治療のEGFR変異陽性進行NSCLCのフレイル患者・介入:初回投与エルロチニブ50mg/日、4週後奏効率により変更(PD例は中止、SD例は100または150mg/日に増量、PR/CR例は50mg/日を継続)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(RR)[副次評価項目]増量後のRRおよび疾患制御率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性フレイルの定義・グループ1:年齢20~74歳でPS2以上、Charlson Comorbidity Index(CCI)6以上・グループ2:年齢75~80歳でPS1以上、CCI6以上・グループ3:年齢81歳以上でPS全グレード、CCI全グレード 主な結果は以下のとおり。・2015年1月~2017年4月に21施設から80例が登録され、80例すべてが効果と安全性の評価対象となった。・患者の年齢中央値は80歳、StageIVが63.8%、フレイルグループは3が最も多く46.3%、2が35.0%、1が18.8%であった。・初回投与(50mg/日)のRRは60.0%、増量例を含んだRRは62.5%であった。・初回投与のDCRは90.0%、増量例を含んだDCRは86.3%であった。・PFS中央値は9.29ヵ月、1年PFS率は35.6%であった。・OS中央値は26.15ヵ月、1年OS率は69.5%であった。・エルロチニブの有害事象については新たなものはみられず、治療関連死はなかった。 青野氏は、低用量エルロチニブはフレイルのEGFR陽性NSCLCの治療選択肢になりうると結論付けた。

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掌蹠膿疱症へのグセルクマブ、52週の有効性と安全性を確認

 乾癬治療における新規の生物学的製剤として2018年3月に保険収載された、ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤のグセルクマブ(商品名:トレムフィア皮下注シリンジ)に、同年11月、「既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:PPP)」の効能追加が承認された。この根拠となった日本大学の照井 正氏らの試験結果が論文発表され、有効性エンドポイントの改善が52週間にわたり一貫して示された。昨年の著者らの研究では、PPPの発症に対するIL-23の関与が明らかになり、グセルクマブが安全かつ有用であることが16週時の評価において認められていた。結果を踏まえて著者らは「IL-23p19をターゲットとするグセルクマブは、PPPという困難を伴う疾患に対し、有効で安全な治療選択肢となりうることが示された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年7月3日号掲載の報告。グセルクマブ100mgと200mg群、プラセボ群に割り付け 2015年12月15日~2017年12月12日、日本人PPP患者におけるグセルクマブの有効性と安全性を確認するための第III相無作為化試験を実施。PPPと診断され、スクリーニング前に24週間以上経過し、既存治療に対して効果不十分であった計159例(20歳以上)が登録された。 研究者らは、被験者にグセルクマブ皮下注100mgまたは200mg(0週、4週、12週、その後8週ごと)、およびプラセボ(0週、4週、12週)を投与した。 主要評価項目は、PPPASI(PPP Area and Severity Index)スコア(possible score range:0~72、高スコアほど病変範囲が広く、重症)のベースラインからの変化、PPSI(PPP severity index)スコア(同:0~12、高スコアほど重症)のベースラインからの変化、16週および52週時点のPPPASI-50(PPPASIスコア50%以上の低下)レスポンダーの割合であった。安全性は52週間にわたってモニタリングされた。 グセルクマブの有効性と安全性を確認するための試験の主な結果は以下のとおり。・登録患者159例の診断時の平均年齢±SDは、46.8±11.9歳、女性が126例(79.2%)だった。・登録患者はグセルクマブ100mg群54例、同200mg群52例、プラセボ群53例に割り付けられた。・グセルクマブ両群はプラセボ群と比べて、PPPASIスコアの最小二乗平均において有意な改善(グセルクマブ100mg群:-15.3、200mg群:-11.7、プラセボ群:-7.6)を示し、プラセボ群との差は、100mg群-7.7±1.7(95%信頼区間[CI]:-11.00~-4.38、p<0.001)、200mg群-4.1±1.7(95%CI:-7.47~-0.75、p<0.017)だった。・PPSIスコアの最小二乗平均は、グセルクマブ両群とも有意な改善(100mg群:-2.0±0.5[95%CI:-2.96~-0.95、p<0.001]、200mg群:-1.0±0.5[95%CI:-2.06~-0.03、p=0.04])を示した。・16週時点でのPPPASI-50達成率をプラセボ群18例(34.0%)と比較すると、グセルクマブ100mg群(31例[57.4%]、p=0.02)では有意に高かったが、グセルクマブ200mg群(19例[36.5%]、p=0.78)では有意差が認められなかった。・各有効性のエンドポイントは、52週間にわたって一貫して改善が認められた。・健康関連QOLは、Dermatology Life Quality Indexスコアの低下度で示されたように、グセルクマブ100mg群(-2.6、95%CI:-4.0~-1.2、p<0.001)、グセルクマブ200mg群(-1.6、95%CI:-3.1~-0.2、p=0.03)ともに有意な改善が認められた。・重篤な治療関連有害事象は8例報告されたが、重症感染症の報告はなかった。

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トラスツズマブを用いた術後補助療法は6ヵ月間で十分か?‒PERSEPHONE試験の結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1084

 これまでHER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブを用いた術後補助療法の標準投与期間は12ヵ月とされていたが、心毒性、高額な医療費、また長期の通院等のデメリットが憂慮される。そのため治療期間を短縮するオプションがいくつかの臨床試験で検討されてきたが、コンセンサスは得られていない。以上の背景から、本試験はHER2陽性早期乳がんにおいて12ヵ月のトラスツズマブ治療に対して6ヵ月の治療効果を第3相ランダム化非劣性試験で比較した。 4年無病生存の6ヵ月治療群に対する12ヵ月治療群のハザード比は1.07(90%CI:0.93~1.24、p=0.011)と、事前に設定した非劣性マージンの1.32をクリアした。臨床的心不全は6ヵ月治療群が8%(155/1,994例)で12ヵ月治療群の11%(224/1,968例)と比較して有意に少なく(p=0.00014)、心毒性による早期の治療中止は6ヵ月治療群の3%(61/1,939例)と比較して12ヵ月治療群が8%(146/1,894例)と有意に多く認めた(p<0.0001)。以上の結果より、筆者らは6ヵ月間の術後補助療法はHER2陽性早期乳がんの新たな治療オプションになりうるとしている。 現在までに行われたトラスツズマブの短縮治療を目的とした臨床試験はいずれもnegative studyであったが、本試験は大規模臨床試験で初めて非劣性を示した点でインパクトがある。以下に本試験のポイントを示す。1.59%の症例で腋窩リンパ節転移を認めないなど、以前のトラスツズマブを用いた臨床試験と比較して、より再発リスクが低い早期の患者が含まれていた2.アンスラサイクリン系抗がん剤を用いた例が約90%と多かった。早期乳がんに対しては、今後アンスラサイクリンフリーレジメンの増加が見込まれ、心毒性の軽減が期待されるため、6ヵ月治療による心毒性軽減効果は低いと考えられる3.観察期間の中央値が5.4年と他試験と比較して十分ではない4.そのほかに非劣性マージンの設定の問題(試験に対するコメントを参照) 本試験と同様の臨床試験結果を総合すると、現時点では短縮治療の非劣性を示すエビデンスは十分にそろっていない。しかしどこまで再発リスクを許容するかは患者を交えた臨床現場での判断が必要である。実臨床では再発リスクの少ないHER2陽性早期乳がんまたは心リスクが懸念される患者には、リスクとベネフィットを説明したうえで短縮治療を提示することもオプションとして十分ありうるだろう。

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転移性前立腺がん患者に対してのエンザルタミドは、ファーストラインとしても有効(解説:宮嶋哲氏)-1088

 本研究は、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん患者を対象にアンドロゲン除去療法(ADT)とともに、エンザルタミド追加群と標準治療群(通常の抗アンドロゲン薬追加)の2群において3年全生存率(OS)、無増悪生存期間(PFS)ならびに有害事象を評価項目としたオープンラベルランダム化比較第3相試験(ENZAMET trial)である。 対象となった1,125症例の平均観察期間は34ヵ月、患者年齢中央値は両群ともに69歳であった。症例の約60%がGleason score 8~10であり、平均臓器転移数は3ヵ所で、15~17%の患者でドセタキセル早期導入がなされていた。3年OSはエンザルタミド追加群80%に対し、標準治療群72%でエンザルタミドは有意に死亡リスクを低下させ、3年PFSでもエンザルタミド追加群67%に対し標準治療群37%で、エンザルタミドは有意に再発を低下させた。有害事象により治療困難となった症例はエンザルタミド追加群で多く(33症例)、とくに倦怠感とてんかん発作が著明であった。 去勢抵抗性前立腺がん患者においてアンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミドはOSを延長することが知られ、エンザルタミドはセカンドラインという位置付けだが、内分泌未治療転移性前立腺がん患者においてもADTにエンザルタミドを併用することでOSとPFSに寄与することが示された。以上より、内分泌未治療転移性前立腺がんに対するファーストラインとしてエンザルタミドの有効性が示唆された。

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免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。 本研究では、2016年1月~2018年6月にSACTを受けたすべてのがん患者のデータを同定し、最終サイクル後30日以内に死亡した患者を後ろ向きに収集した。ICIの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(ICI群)と、主に細胞障害性抗がん剤による従来のSACTの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(非ICI群)の2群に分け、死因、臨床的特徴、治療関連因子を比較した。なお、経口抗がん剤および局所動脈/髄腔内注射の投与患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・SACTを受けた1,442例のうち90例が、最終レジメンをICIで治療されていた。・ICIの最終サイクル後30日以内に16.7%(15/90例)が死亡し、ICI以外のレジメンで治療され死亡した1.6%(22/1,352例)より死亡率が高かった。・ICI群の年齢中央値(範囲)は71歳(60~86歳)、男性14例/女性1例、最終サイクル時のECOG PSが0~1が4例、2~4が11例であった。死因は、腫瘍の進行11例、感染症3例、その他(免疫関連肝炎)1例であった。・ICI群は非ICI群と比べて、男女の割合(14/1 vs. 13/9、p=0.028)、PS 2~4の割合(73.3% vs.40.9%、p=0.040)、治療費中央値(821,310円vs.87,610円、p<0.001)が有意に高かった。 龍華氏は、抗がん剤治療後早期死亡を引き起こす主因として、治療関連死および積極的治療適応外の2点を挙げた。また、ICI治療における30日死亡率が高い理由として、細胞障害性抗がん剤に忍容性がない患者にICIが投与されている可能性を指摘した。さらに、医療資源の浪費抑制のために、上記の積極的治療適応外に該当する緩和ケアが有用な患者においては、ICI中止のための適切なガイドラインが必要である、と結論した。 発表後の質疑において、龍華氏は、肺診療ガイドライン2018年版では、PS 3~4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明、PD-L1発現は問わない)へは薬物療法を行わないよう推奨されているが、実臨床では、ICIは免疫関連有害事象が発現しなければ投与できてしまうこと、治療効果が得られず腫瘍増大を来した症例にもPseudo-Progressionであることを期待して4サイクルまで継続しようとするなど、やめ時が難しいという問題を提起した。

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日本人の婚姻状態と不眠症状との関連

 配偶者の有無は、健康に関連する社会経済的要因の1つである。いくつかの研究では、配偶者の有無と不眠症との間に有意な関連が認められることが示唆されている。日本では、未婚者の割合が増加しており、不眠症に大きな影響を及ぼす可能性がある。順天堂大学の川田 裕美氏らは、日本における配偶者の有無と不眠症との関連について調査を行った。European Journal of Public Health誌オンライン版2019年7月6日号の報告。 対象は、2010年の国民生活基礎調査より抽出した30~59歳の3万5,288人。配偶者の有無に応じて5群(独身、家族と同居している夫婦、夫婦のみで生活、未亡人、離婚)に分類を行った。不眠症関連症状(IRS)は、「私は眠れなかった」との回答に基づき収集した。配偶者の有無によるIRSの性別多変量オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、潜在的な交絡因子で調整されたロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・IRSの有症率は、男性で2.5%、女性で2.8%であった。・多変量OR(95%CI)は以下のとおりであった。 ●独身男性:1.15(0.89~1.49) ●離婚した男性:1.69(1.11~1.49) ●夫婦のみで生活している男性:1.01(0.73~2.58) ●独身女性:1.56(1.20~2.03) ●離婚した女性:2.43(1.83~3.22) ●夫婦のみで生活している女性:1.31(1.01~1.71) 著者らは「日本人において離婚した男女、独身女性、夫婦のみで生活している女性では、夫婦以外の家族と同居している人よりもIRSの割合が高かった。この関連性は、失業男性でより明白であった」としている。

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加熱式タバコが“有害性物質90%カット”となぜ言えるのか

 加熱式タバコの一部のパンフレットには、購入者に対し、健康被害が大幅に低下するような“誤解”を与える表現で売り出している製品がある。しかし、これらの広告は規制されていない。これは一体なぜなのか。このからくりについて、2019年6月20日、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで飯田 真美氏(岐阜県総合医療センター 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会長)が解説。原 眞純氏(帝京大学医学部附属溝口病院 副院長/日本動脈硬化学会 禁煙推進部会員)は「タバコと動脈硬化」として、古くも新しい話題について講演した。マイルド・ライトなタバコの小さな細工 タバコ煙は気体と粒子の混合物で、その中には5,300種類以上の化学物質、約70種類の発がん性物質(多環芳香族炭化水素など)が含まれる。燃焼式タバコにはマイルド・ライトなどと毒性の軽さをうたっている製品もあるが、タバコ葉1gに含まれるニコチンなどの実際量は、同系統の製品であればほぼ同じだという。ニコチン・タール量の国際的な測定法では、燃焼するタバコを機械で吸引し、その中のニコチン・タール含有量を測定する。旧来の製品にはフィルター部分に孔がないのに対し、マイルド・ライトなどの表記があるものにはフィルター根元に細かい小さな孔が空いているので、吸入時に外の空気が孔に入り込み、ニコチン・タール量が希釈される。その結果、測定量として小さい数値を箱に記載することができる。あたかもマイルド・ライトな燃焼式タバコを吸って健康を気遣っているようでも、「その人にとって必要なニコチン量が存在し、深く吸う、長く肺にためるなど、知らず知らずのうちに必要量を摂取している」と飯田氏は述べた。加熱式タバコの実際の有害物質含有量 『有害性物質、約90%オフ』と書いてあるパンフレットの詳細を見ると、実は「“有害物質約90~95%オフ”、“9つの有害性物質を紙巻きタバコに比べて大幅に削減”の表現は、本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」などの逃げ道が書かれているという。誇大広告と捉えかねない製品も、こんな一言でうまく規制から逃れているのである。 では、実際の有害物質含有量はどうなのか。同氏が示した加熱式タバコ(IQOS)と紙巻タバコの研究結果1)によると、IQOS1本あたりの有害物質の各成分量は、ホルムアルデヒド74%、アセトアルデヒド22%、ニコチン84%であった。一酸化炭素や二酸化炭素については、加熱式タバコにも少量含まれているが、燃焼していないため非常に少ない割合であった。 2019年5月、FDAは米国において加熱式タバコ(商品名:IQOS、フィリップモリス)の販売を許可。米国ではすでに新型タバコと呼ばれる種々の製品が販売されていたが、電気加熱式タバコ製品の販売許可はこれが初であった。これに対し、動脈硬化学会は「この承認は安全性を担保したものではない」と、前述の結果を踏まえてコメント。飯田氏も「加熱式タバコは、煙以外の何物でもない」と警告した。加熱式タバコでは有害な成分が呼出されている 過去15年間にオリンピックが開催された都市でのタバコ規制をみると、法律、州法、市条例によって全面禁煙が定められている。しかし、2020年にオリンピックを控えた日本において、屋内施設100%完全禁煙に対する整備は発展途上である。原氏は、兵庫県神戸市での受動喫煙防止条例施行前後における急性冠症候群の発生数に関するデータ2)を示し、「条例が施行される前後で発生患者数が年間895例から830例に減少した」と説明。また、「全世界の論文を分析したところ、禁煙に対する法律を規定する範囲(職場~レストラン~居酒屋・バー)が広くなるほど、受動喫煙率が低下し動脈硬化性疾患や呼吸器疾患が最大39%も減少した」とし、「動脈硬化性疾患の予防・治療には、受動喫煙を避けることが必須。正確な情報伝達・啓発が必要 」と訴えた。飯田氏は「自宅では紙巻きタバコ、外では加熱式タバコの両方を使用するデュアルユーザーも多く存在する。加熱式タバコであれば禁煙場所でも吸えると考えるユーザーも多いが、発がん性のある有害な成分が呼出されている」と、目に見えにくいリスクについても説明した。 日本はWHOタバコ規制枠組条約(FCTC)の締結国である。それにもかかわらず、完全禁煙はいまだ達成されていない。両氏はタバコ規制枠組条約に則った、日本での屋内完全禁煙の実現を強く求めた。

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地域全員への抗HIV療法は有効か/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の予防において、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠した抗レトロウイルス療法(ART)の組み合わせは、標準治療に比べ新規HIV感染を有意に抑制するが、地域住民全員を対象とするARTは標準治療と差がないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRichard J. Hayes氏らが行ったHPTN 071(PopART)試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年7月18日号に掲載された。新規HIV感染を抑制するアプローチとして、地域住民全員を対象とする検査と治療は有効な戦略となる可能性が示唆されているが、これまでに行われた試験の結果は一貫していないという。21の地域で3種の介入法を比較する無作為化試験 本研究は、2013~18年の期間に、ザンビアと南アフリカ共和国の21の地域共同体(総人口約100万人)で実施されたコミュニティー無作為化試験である(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]などの助成による)。 21の地域(ザンビア12地域、南アフリカ9地域)は、複合的予防介入と地域住民全員を対象とするARTを行う群(A群)、複合的予防介入と地域のガイドラインに準拠したART(2016年以降は全員が対象)を行う群(B群)、または標準治療群(C群)に無作為に割り付けられた。 予防的介入には、地域の医療従事者によって提供される在宅HIV検査が含まれ、HIV治療への連携やARTアドヒアランスの支援も行われた。 主要アウトカムは、12~36ヵ月の期間における新規HIV感染の発生とし、無作為に抽出された1つの地域当たり約2,000例の成人(18~44歳)コホートで評価を行った。また、24ヵ月時に、HIV陽性の全参加者においてウイルス抑制(HIV RNA<400コピー/mL)を評価した。地域ガイドラインARTで新規感染が30%減少 4万8,301例が登録され、このうち36ヵ月時の最終調査は72%で実施された。ベースライン時に、女性が71%、男性が29%で、40%が25歳未満(18~24歳)であった。HIV陽性者の割合は22%(女性26%、男性12%)であった。ARTはA群33%、B群41%、C群35%で行われていたが、ウイルス抑制が達成されていたHIV陽性者の割合はそれぞれ56%、57%、54%だった。 12~36ヵ月の期間に、3万9,702人年で553件の新規HIV感染が認められ(100人年当たり1.4件、女性1.7件、男性0.8件)、100人年当たりA群が1.5件、B群が1.1件、C群は1.6件であった。C群と比較した新規HIV感染発生の補正率比は、A群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.74~1.18、p=0.51)と有意差はなかったが、B群は0.70(0.55~0.88、p=0.006)であり、新規感染が30%有意に低下した。 24ヵ月時に、ウイルス抑制が達成されたHIV陽性者の割合は、A群71.9%、B群67.5%、C群60.2%であった。C群と比較したウイルス抑制達成の補正率比は、A群が1.16(95%CI:0.99~1.36、p=0.07)、B群は1.08(0.92~1.27、p=0.30)であり、いずれも有意な差はみられなかった。また、24ヵ月時のウイルス抑制の割合は、A、B群とも女性が男性に比べて高く、25歳以上が18~24歳よりも高かった。 36ヵ月時に、ARTを受けているHIV陽性者の割合は、A群が81%、B群は80%と推定された。HIV陽性者のART受療状況は、A群とB群で類似しており、男性が女性に比べて低く、若年者が高齢者よりも低かった。 著者は、「全員が対象のARTが無効であったことは予想外であり、ウイルス抑制のデータとは一致しなかった。この試験では、全員を対象とする検査と治療を含む複合的予防介入によって、住民レベルにおける新規HIV感染の抑制が可能であった」とまとめ、「A群で効果が得られなかった理由はいくつか考えられるが、試験地域の定性的および定量的データと、進行中の系統発生的研究のデータの解析を進めることで、予想外の結果の説明が可能と考えられる」としている。

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PCI技術の爛熟の時代―「不射の射」を目指す(解説:後藤信哉氏)-1086

 PCI日本導入直後のころ、1枝病変を対象に心臓外科のback upの下、POBAをしていた。5%が急性閉塞して緊急バイパスとなった。ステントの導入により解離による急性閉塞から、2週間以内のステント血栓症に合併症がシフトした。頑固なステント血栓症もアスピリンとチクロピジンの抗血小板薬併用療法により制圧された。安全性の改善されたクロピドグレルが標準治療となると、長期に継続する抗血小板療法による出血合併症が血栓イベントよりも大きな時代を迎えた。 PCIをしている先生方には外科的な直感があるのであろう。本邦のSTOPDAPT、 STOPDAPT-2、今回のSMART-CHOICEなどアスピリン早期中止の有用性を示唆する論文が多く発表されている。DAPTの長期継続の有無にかかわらず、総死亡を含む一次エンドポイントの発現率は3%程度にすぎない。また総死亡に占める心血管死亡の比率も半分を割っている。 歴史的に考えると、1)急性期に5%が急性冠閉塞したPOBA時代、2)亜急性期の10%近いステント血栓症を2~3%に低減させたステントと抗血小板薬併用療法の時代が終わり、3)補助的な抗血小板療法が不要となったPCI技術の爛熟の時代に入っている可能性が高い。 筆者は中島 敦の『名人伝』を愛読している。弓の名人を目指して鍛錬する若者が、「君は射の射をして不射の射を知らない」と諭され、修行の後「弓の名人になって」ついに弓を忘れるという物語である。PCIの黎明期に多くのinterventionistが技を極める鍛錬をした。これからは「不射の射」として心血管病の一次予防に注力する必要がある。

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 1

今回のキーワード自己正当化敵意バイアスポジティブバイアス抽象的思考の困難さ反社会的モデル格差罪悪感フリーライダーみなさんは、万引きを見かけたことはありますか? なぜ万引きするのでしょうか? 逆に、私たちはなぜ万引きしないのでしょうか? そもそもなぜ万引きは「ある」のでしょうか? 万引きは遺伝するのでしょうか? そして、万引きをしないためにはどうすれば良いでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「万引き家族」を取り上げます。「万引き」と「家族」というまったく相いれない2つのテーマが絡み合っており、後半にかけて私たちの心を激しく揺さぶります。万引き(窃盗)は、犯罪の検挙人員の割合としては2割程度で多くはないです。しかし、認知件数の割合は6割近くあります。認知されていない暗数を含めると、もっとあるでしょう。つまり、万引きは、犯罪の中で最も多いながら、実際に犯人が捕まることが最も少ないと言えます。この映画を通して、万引きを主とする犯罪(反社会的行動)を精神医学的、進化心理学的、そして行動遺伝学的に掘り下げます。そして、犯罪と遺伝の関係という「不都合な真実」を「なかったこと」にしたいという私たちの心理にあえて迫ります。その「真実」を踏まえてこその対策を一緒に考えてみましょう。なお、スリルを求める病的な万引き(クレプトマニア)や摂食障害に伴う万引き(盗食)については今回割愛します。家族にあるまじき3つの「万引き」とは?ストーリーの舞台は、平屋の古い一軒家。6人の家族が、貧しいながらも、冗談を言い合い、いつも笑いが絶えません。彼らなりに一生懸命に生きて、お互いを気遣っており、家族の温かさが描かれています。しかし、同時に、その家は、周りを高層マンションに囲まれており、今にも崩れそうで、社会から取り残された危うさも暗示されています。実は、彼らには、家族にあるまじき多くのスキャンダルがありました。これらを3つにわけて整理してみましょう。(1)家族が万引きして生計を立てている父親の治は、時々呼ばれるだけの日雇いの建築作業員です。資格も経験もなく、実際はほとんど働いていません。彼の「稼ぎ」は、スーパーや釣り道具屋などでの万引きと車上荒らしです。母親の信代は、クリーニング工場で、パートで働いていましたが、リストラされてからは無職です。それまでは、当たり前のようにクリーニングに出された衣類のポケットの中の金品をくすねていました。祖母の初枝は、月6万円近くの年金を得ています。これが、この家族の唯一の定収入です。初枝も、パチンコ店で、隣の客の玉をくすねたり、不倫した元夫と不倫相手との間にできた息子の家族の家に押しかけ、金品をたかっています。やがて、初枝は急死しますが、治と信代はその遺体を床下に埋めて、年金の「万引き」(不正受給)も始まります。1つ目のスキャンダルは、家族が万引きで生計を立てていることです。そして、家族全員が万引きで得たものを当たり前のように当てにしてます。(2)家族が子どもを「万引き」(誘拐)して育てている治は、近所で、寒い中、罰として外に出されている5歳のじゅりをかわいそうだからとの理由で、家に連れて帰ります。そして、信代は、じゅりの体中にあるやけどの痕を見て、かつての自分と同じく虐待されていることを確信し、帰さずに育てることを決意します。実は、すでにいる11歳の息子の祥太も、数年前に治が車上荒らしをした時に、パチンコ屋の駐車場の車に残されて熱中症になっていたところを、治が助け出し、連れ帰っていたのでした。2つ目のスキャンダルは、家族が子どもを「万引き」(誘拐)して育てていることです。治と信代の間には子どもはいません。積極的ではなかったにしても、治と信代は、祥太とじゅりを誘拐しています。また、治は、かつて初枝がパチンコ店で客の玉を盗んでいるのに気付いてから初枝と仲良くなり、信代とともに初枝の家に転がり込んだのでした。そして、信代と異母姉妹と自称していた亜紀も、実はもともとは家出少女で、初枝に誘われて家に居候するようになったのでした。つまり、この家の6人は、誰一人として血がつながっていないのでした。(3)家族が子どもの社会性を「万引き」(隔絶)している祥太とじゅりは、家の出入りを自由にしています。しかし、祥太は小学校に行っていません。じゅりも幼稚園や保育園に行っていません。ご近所付き合いもありません。もちろん、誘拐がばれてしまう恐れがあるからです。そのため、祥太とじゅりは、実質的にはこの家に閉じ込められていると言えます。その代わりに、治は、祥太に万引きの仕方を教えています。そして、2人の連携プレーで万引きを毎回成功させています。さらに、祥太がじゅりに万引きの仕方を教えるようになります。3つ目のスキャンダルは、家族が子どもの社会性を「万引き」(隔絶)していることです。子どもの教育を受ける権利や社会性を育む権利を奪うこと、そして万引きなどの犯罪(反社会的行動)を教えることは、虐待に当たります(教育ネグレクト、心理的虐待)また、亜紀は、風俗バイトをしています。このバイト自体は、反社会的行動とは言えないです。ただ、このバイトのことを聞いた初枝は、気にも止めずに受け止めています。本来は、自分の体を大切にできて、先行きが見える、より社会性のある仕事をしてほしいと願うのが親心のはずなのにです。「万引き家族」は「万引き」をどう思っているの? ―犯罪心理治、信代、初枝がしている万引き、誘拐、虐待などは、どれも犯罪(反社会的行動)として許されないことです。子どもたちが見ているなら、親としてなおさらです。一体、彼らは「万引き」(反社会的行動)をどう思っているのでしょうか? 彼らのセリフを通して、主に3つの犯罪心理(認知的バイアス)を掘り下げてみましょう。(1)自分は悪くない―自己正当化治は、万引きについて祥太に「お店に置いてあるものはまだ誰のものでもない」「店がつぶれなきゃいい」と説明しています。信代はクリーニング工場で「盗ったんじゃない、拾ったんだ」「忘れるやつが悪い」と思っています。また、信代は、誘拐について「違うよ。別に監禁も身代金も要求していないから」「(虐待していた親は)今頃せーせーしてるんじゃない?」と言っています。治も「保護してやったんだ」と開き直ってもいます。治は祥太に、学校に行かせない理由について「家で勉強できないやつが学校へ行くんだ」と言い聞かせています。1つ目の犯罪心理は、「万引き」する自分は悪くないと思うこと、つまり自己正当化です。これは、反社会的行動の理由付けをして自分は間違っていないと思い込むことです。そうすることで、罪悪感を抱きにくくなります(中和)。(2)相手が悪い―敵意バイアス信代は捕まった時、初枝の死体遺棄について女性刑事に「捨てたんじゃない。拾ったんです。誰かが捨てたのを拾ったんです。捨てた人ってのはほかにいるんじゃないですか?」と答え、暗に初枝を見捨てた息子夫婦のほうが悪いと言い張っています。また、信代は、じゅりを誘拐した理由についてその女性刑事に「憎かったのかもね。母親が」と答えます。2つ目の犯罪心理は、「万引き」される相手が悪いと思うこと、つまり敵意バイアスです。これは、うまくいかないことを相手の悪意によるものだと思い込むことです。そうすることで、自分の反社会的行動の責任を相手(社会)に押し付けることができます。(3)向こう見ず―ポジティブ・バイアス治は、じゅりをあっさり連れて帰ってから半年後に、じゅりが行方不明の事件になっているニュースを見て、「やばいな、やばいよな」と急にオロオロし始めます。大事になっていることを見て、自分の思い付きでしたことのまずさにようやく気付いたのでした。一方、信代は、じゅりを連れて歩く時に初枝から「こういうのはかえって大っぴらにしたほうが疑われないのよ」と言われて、同意します。さらに、信代は、同僚に誘拐がバレていることを知った後も、「大っぴら」にしています。「見つかったらその時はその時だ」「コソコソ生きるなんて性に合わない」という思いなのでした。3つ目の犯罪心理は、「万引き」に向こう見ずであること、つまりポジティブ・バイアスです。これは、後先をあまり考えずに、自分に都合が良くなると思い込むことです。そうすることで、反社会的行動の重大性やそれが明るみになる危険性に目をつむることができます。なぜ「万引き」するの?―犯罪の危険因子このように、「万引き」(反社会的行動)について、自分は悪くない、相手が悪い、向こう見ずという犯罪心理(認知的バイアス)が働いてることがわかりました。それでは、なぜそんな犯罪心理が働くのでしょうか? つまり、そもそもなぜ「万引き」するのでしょうか?治、信代、初枝を通して、犯罪の危険因子を主に3つ探ってみましょう。次のページへ >>

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 2

(1)やってはいけないことの意味がよく分からない-抽象的思考の困難さ治は、祥太から「『スイミー』って話、知ってる?」「『スイミー』ってね、小さい魚がみんなで大きなマグロをやっつける話なんだけど、何でやっつけるか知ってる?」と聞かれます。すると、「そりゃ、おまえ、マグロがおいしいからだろ」「最近、マグロ食ってねえからなあ」と話がすり替わり、両手を魚の口のように広げて、「ぐわー!おー!」と祥太を襲うマネをしています。治は、日常生活の具体的な話はできます。軽い冗談も言えます。しかし、小さい魚たちが協力して大きな魚に勝つ方法を想像できず、その方法について興味も持てません。「スイミー」のストーリーの意図や要旨が理解できず、理解したいとも思っていないようです。1つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことの意味がよく分からない、つまり抽象的思考の困難さです。これは、相手の気持ちを探る洞察、自分の気持ちや行動を振り返る反省、先の見通しを立てる予測が困難になることです。つまり、相手の気持ちも自分の気持ちも将来もあまり読めず、その日暮らしで場当たり的に生きています。実際に、治は、仕事の能力が低いにしても、そもそも真面目にコツコツ働いて、経験を積んだり、貯金をしようとしません。お金があれば、すぐにパチンコにつぎ込みます。なお、お金がなければパチンコをやらないので、ギャンブル依存症というほどではないです。治は、「万引き」をはじめとするやってはいけないこと自体はわかっています。つまり、善悪の判断は表面的にはできます。しかし、「なぜやってはいけないのか?」「やったら相手はどう傷付くのか?」「バレたら自分の将来はどうなるのか?」についてはあまり深く考えることができていないです。つまり、やってはいけないことの意味がよくわかっていないと言えます。よって、あまり考えなく、手っ取り早く金品が手に入ってバレにくいから万引きをしていると言えます。バレてとがめられれば、その瞬間に罪悪感は抱きますが、次の瞬間にはけろっとしています。また、子育てとはこうあるべきという抽象的思考(規範意識)が働かないので、虐待をしているという認識すらないです。このように、抽象的思考の困難さによって、洞察、反省、予測ができないため、自分は悪くない、相手が悪い、向こう見ずという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。また、このワンシーンで、治は11歳の祥太よりも精神的に幼いことが判明します。祥太がもともと賢いことを差し引くと、治の精神年齢(知能)は、高学年の小学生から良くても中学生です。これはIQ(知能指数)に換算すると60~85程度で、治は軽度知的障害から知能境界域(境界知能)に当たります。ちなみに、健常の知能の目安は、IQ 85以上とされています。なお、ここで誤解がないようにしたいのは、知能が低いこと(知的障害)が、犯罪の主要な原因ではないことです。その理由は、知能が低ければ低いほど、日常生活を送るのにも援助が必要になるので、犯罪はできなくなるからです。つまり、犯罪の危険因子は、知能が、犯罪ができるレベル以上であり抽象的思考ができないレベル以下であると言えます。実際に、非行に走る少年たちの多くは、知能が境界域(IQ が70~85)であることが指摘されています。このように、知的レベルから考えると、非行は、高学年の小学生から中学生に多く、幼稚園児から低学年の小学生には少ないのも納得ができます。(2)やってはいけないことをする親がいた-反社会的モデルの存在じゅりが元の家に戻らないという態度を示したことで、信代は「選ばれたのかな…私たち」「でも、こうやって自分で選んだほうが強いんじゃない?」と初枝に語りかけます。「何が?」と聞かれた信代は、「キズナよ、キズナ」と照れながらも、うれしそうに答えます。「キズナ」に対して人一倍敏感なのは、信代自身が親から虐待されていた過去があったからでした。2つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことをする親がいた、つまり反社会的モデルの存在です。これは、親が虐待をすることなどを通して、自分や相手を大切にすることを教えていないばかりか、自分や相手を大切にしないことを教えてしまっていることです。つまり、親が、相手を傷付けても良いという悪い見本になっています。これでは、やって良いことと悪いことの意味がはっきり伝わりません。実際に、信代は、捕まって取り調べの時、「(じゅりが元の家に)戻りたいって言ったんですか?」と戸惑いながら、刑事に尋ねます。さらに、じゅりに一度も「ママ」と言われていなかったことを刑事に指摘されて顔をしかめます。信代は、自分なりにじゅりを大切にしていると自認していました。しかし、それが独りよがりだったかもしれないということに初めて気付かされたのでした。ここで、じゅり自身も虐待のサバイバーとして、流されるままに信代に従っていただけだったこともわかります。また、信代は、ぐうたらな治の世話焼きをしょっちゅうしていますが、最後は、刑事に「自分が全部やりました」と言い、治の罪まで肩代わりしています。信代は、親から大切にされていなかった分、相手をどう大切にして良いか分からず、やり過ぎてしまうなどの独りよがりな面もあります(共依存)。さらに、信代は、祥太から万引きの善悪を聞かれた時、「父ちゃんは、何だって?」と質問を返して、はぐらかします。信代は、治よりも知的レベルが高い分、子どもに万引きを教えるという後ろめたさは多少なりとも抱いています。しかし、祥太を学校に行かせないことを含めて、治のやり方に流されています。このように、もともとの反社会的モデルの存在によって、周りに流されやすく、自分は悪くないという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。(3)やってはいけないことを刺激する社会がある-格差信代は、年下の大卒男性と結婚して寿退社した元同僚が職場の社長にあいさつに来ていたのを見て、「あいつ整形?」「辞める前にデリヘルやってたっしょ」と悪口を言い、隣の同僚となじります。「勝ち組」であるその元同僚がおもしろくないのでした。その後、信代なりに一生懸命に働いていたのに、時給が高い古株であることを理由に、リストラされます。さらに、仲の良かった同僚は、裏切りによりリストラを免れます。信代は、定職と友人を同時に失ったのでした。また、初枝が亜紀を居候させたのは、ある意図があったことが後に明らかになります。実は、亜紀は、初枝の元夫と不倫相手との間にできた息子の長女だったのです。それを知った上で、初枝は亜紀を家出するよう誘ったでした。亜紀は、自分なりに、親が自分よりも優秀な妹を大切にすることへの不満があったからです。しかし、亜紀は自分の家族と初枝との関係を知りません。亜紀の家族は、亜紀と初枝との関係を知りません。初枝にも元夫との間にできた息子がいましたが、その嫁とそりが合わず、別居してからは音信不通になっていたのでした。3つ目の犯罪の危険因子は、やってはいけないことを刺激する社会がある、つまり格差です。これは、同僚、友人、知人などの身近な周りの人たちと比べて、自分が経済的、人間関係的に恵まれていない不満を抱くことです(相対的剥奪)。簡単に言えば、お金とつながりの境遇において、報われない社会への恨みです。実際に、信代は、失業により同僚との経済的格差が生まれます。仲の良かった同僚に裏切られたことにも腹を立てます。治との間に子どもができなかったことについて、直接的な心理描写はないですが、誘拐を容認する心理を生み出しているでしょう。それは、目の前にいたじゅりへの純粋な愛しさではないです。それは、「お前(じゅりの母親)なんかにこの子を返してやるもんか」という、自分を虐げた自分のかつての母親への憎しみです。それをじゅりの母親に重ね合わせた復讐心でもあります。一方、初枝は、元夫の不倫、息子の親不孝から孤独に陥っていました。「治」と「信代」という実は本来の息子と嫁の名前を、治と信代に名乗らせていることも納得がいきます。さらに、初枝が亜紀を隠密に居候させているのは、自分の境遇に不満を持つ初枝なりの、元夫、不倫相手、息子夫婦への復讐なのでした。ちなみに、亜紀の風俗バイトでの源氏名は、妹の名前の「さやか」です。自分が妹の名を風俗店で名乗ることによって、妹をおとしめて仕返ししたいという心理がありそうです。このように、格差によって、社会への復讐心から、相手が悪いという犯罪心理が働きやすくなると言えるでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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万引き家族(前編)【親が万引きするなら子どももするの?(犯罪心理)】Part 3

なぜ「万引き」しないの? ―社会脳祥太は、いつも万引きをする駄菓子屋にじゅりを連れていき、初めて万引きをさせます。その直後、駄菓子屋のおじいさんから呼び止められ、「これやる」とゼリー棒を2本渡されます。そして、「その代わり、妹にはさせるなよ」とたしなめられます。実は、おじいさんはすべてお見通しだったのです。この時初めて、祥太に罪悪感が芽生えます。初枝が亡くなった後、祥太は、治から「これ(初枝を床下に埋めること)は内緒だぞ。ばあちゃんは最初からいなかった。おれたちは5人家族だ」と告げられますが、納得がいきません。その後、治が初枝のへそくり9万円を探し出し、信代と飛び跳ねて大喜びする様子を目の当たりにしていら立ち、祥太は持っていたヘルメットを放り投げます。祥太は、後に児童相談所に保護された時、刑事から「あの人たち(治と信代)ねえ、私たちが家に着いた時、荷物まとめて逃げようとしてるところだったんだよ。あなたを置いて」「本当の家族だったらそういうことしないでしょ」と聞かされます。さらに、祥太は、児童養護施設に入って半年後、治に再会します。その別れ間際、祥太は治に「わざと捕まった」と伝えます。実際は、じゅりの万引きがばれそうになって、その身代わりになるために、わざと自分の万引きを店員たちに見せつけて、注意を引いて逃げて、結果的に捕まったのでした。それなのにです。この時、祥太は、治に決別を悟らせます。子どもが父親を見限る瞬間です。その直後、治は、祥太が乗り込んだバスを必死に追いかけます。まるで、テレビの世界名作劇場のワンシーンです。もはや、どちらが子どもか分からなくなります。そして、独りぼっちになったのは、祥太ではなく、治だったことに気付かされます。祥太は、治が「本当の家族」ではないと見限ったのでした。家族の温かみはまったく表面的であることに気付いたのでした。治は、祥太の将来を考えていません。ただ自分の寂しさを満たしたかっただけなのでした。治は、祥太の幸せよりも自分の幸せを優先していたのでした。ここで考えたいのは、祥太は、治と違って万引きをしなくなりました。なぜでしょうか? もっと言えば、私たちは、なぜ「万引き」(反社会的行動)をしないのでしょうか? その答えを進化心理学的に解き明かしてみましょう。数億年前の太古の昔から、自然界では、動物同士が獲物を奪う奪われるという取り合いの関係(競争)になるのはごく当たり前のことでした。しかし、数百万年前に誕生した私たち人類は、サバンナ(草原)で猛獣に襲われたり飢え死にしないために、家族(血縁)を中心とした村(社会)をつくり、助け合い(協力)の関係を築きました。そして、その社会の中でうまくやっていくためのさまざまな社会的感情を進化させました(社会脳)。その基盤になるのが信頼です。そして、社会に望ましい行動を促すのが誇りです。逆に、社会に望ましくない行動(反社会的行動)を抑えるのが、罪悪感です。つまり、私たちが犯罪をしない理由の答えは、「本当の家族」を中心とする社会に対して罪悪感を抱く社会脳を進化させたからであると言えるでしょう。なぜ「万引き」は「ある」の? ―犯罪の起源私たちが「万引き」(反社会的行動)をしない進化心理学的な理由がわかりました。それでは、そもそもなぜ「万引き」は「ある」のでしょうか? その答えを、もう一度、進化心理学的に考え、犯罪の起源に迫ってみましょう。私たち人類は、原始の時代に長らく、約150人程度の村人たちによる助け合い(協力)をする村を維持して、生存確率を高めました。そこは、限られた資源をわけ合う平等社会です。逆に言えば、私たちは、そもそも不平等(格差)であることを嫌います。しかし、そんな中、協力して得た資源を出し抜いて総横取りする種が現れました。助け合い(協力)よりも、取り合い(競争)の心理が上回った種です(フリーライダー)。フリーライダーとは、周りがお金を払って乗り物に乗っているのに、自分だけただで乗ろうとする種という意味です。なぜなら進化の本来の姿は競争だからです。私たち人類は、信頼による協力とだましによる競争の心理を器用に使いわけて、バランスを取りながら進化してきたのでした。つまり、私たちの心の中には、信頼の心と同時に、常に裏切りの心が潜んでいるわけです。ただし、裏切りの心は必ず出てくるわけではありません。また、裏切り者は増えません。その理由として、裏切りの心理は短期的には効率的であるというメリットはありますが、長期的には秩序のある社会から排除されるというデメリットのほうが大きくなるからです。原始の時代に排除されることは、すなわち死を意味します。原始の時代は常に飢餓と隣合わせであることを考え合わせると、飢餓や戦争などにより社会の秩序が不安定になり(アノミー)、不平等(格差)が広がった時にこそ、この社会への裏切りの心理が高まると言えるでしょう。これが、信代や初枝の復讐心の正体です。つまり、犯罪が「ある」という理由の答えは、不平等な社会に対しては裏切る「反社会脳」を進化させたからであると言えるでしょう。ちなみに、約5千年前に、文字が発明され、法が明記されるようになりました。それ以降、懲罰による犯罪の抑止や更生の考え方が、文化として根付いていったのです。なぜ「万引き」は「ある」の? ―犯罪の起源「万引き」(反社会的行動)の起源が進化心理学的にわかりました。それでは、「万引き」は遺伝するのでしょうか? その答えを、行動遺伝学的に考えてみましょう。双生児研究において、反社会的行動の一致率は二卵生双生児が50%程度であるのに対して、一卵生双生児は80%へと高率になることがわかっています。ここから、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響の強さの相対的な比率が算出されます。なお、厳密には男女差、年齢差、研究機関の差がありますが、わかりやすくするために、青年期の平均男女のおおむねの数値として示します。<< 前のページへ

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帯状疱疹ワクチン、自家造血幹細胞移植後の帯状疱疹予防に有効/JAMA

 帯状疱疹の罹患は健康人においても深刻だが、とくに自家造血幹細胞移植(auHSCT)後の発症頻度が高い合併症として知られており、病的状態と関連している。移植後帯状疱疹の予防のために開発された非生アジュバント添加遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンの第III相臨床試験の結果が報告され、auHSCTを受けた成人患者において本ワクチンの2回接種により、追跡期間中央値21ヵ月時の帯状疱疹の発症率が有意に低下したことが示された。JAMA誌2019年7月9日号掲載の報告。 研究グループは2012年7月13日~2017年2月1日に、28ヵ国167施設にて第III相無作為化観察者盲検試験を実施した。 対象は、18歳以上のauHSCT施行者1,846例で、ワクチン群(922例)とプラセボ群(924例)に1対1の割合で無作為に割り付け、移植後50~70日後に1回目、その1~2ヵ月後に2回目の接種を行った。主要評価項目は、帯状疱疹の発症であった。 主な結果は以下のとおり。・1,846例(1回以上の接種を受けた患者)の患者背景は、平均年齢55歳、女性688例(37%)で、1,735例(94%)が2回の接種を受け、1,366例(74%)が試験を完了した。・追跡期間中央値21ヵ月において、1回以上帯状疱疹を発症した患者が、ワクチン群で49例、プラセボ群で135例確認された(1,000人年当たりの発生率30 vs.94)。発生率比(IRR)は0.32(95%CI:0.22~0.44、p<0.001)であり、ワクチンの有効率は68.2%であった。・副次評価項目において、帯状疱疹後神経痛の有意な減少(ワクチン群1例、プラセボ群9例、IRR:0.1、95%CI:0.00~0.78、p=0.02)、帯状疱疹関連合併症の有意な減少(ワクチン群3例、プラセボ群13例、IRR:0.22、95%CI:0.04~0.81、p=0.02)、および重症帯状疱疹関連痛の持続期間減少(ワクチン群892.0日、プラセボ群6,275.0日、HR:0.62、95%CI:0.42~0.89、p=0.01)が認められた。・注射部位反応の発現率は、ワクチン群86%、プラセボ群10%であった。主な症状は痛みで、ワクチン群の84%(Grade3が11%)に認められた。・自発的に報告された重篤な有害事象、潜在的な免疫介在疾患および基礎疾患の再発は、すべての時点で両群とも類似していた。

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双極I型障害における日照量と自殺企図歴との関連

 多くの国際的な研究において、自殺や自殺企図の頻度には、春または夏にピークを迎えるといった季節的なパターンがあるといわれている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、双極I型障害患者における日照量と自殺企図歴との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年6月号の報告。 日照量は、太陽からの光エネルギーが地表に当たる量とした。北および南半球の広範囲な緯度の32ヵ国50施設より、双極I型障害患者5,536例のデータを収集した。自殺関連データは、51ヵ国310地点より3,365例のデータが利用可能であった。 主な結果は以下のとおり。・自殺企図歴は、1,047例(31.1%)で認められた。・自殺企図歴と冬季/夏季の平均日照量の比率との間に、有意な逆相関が認められた。・この比率は、冬季の日照量が夏季に比べて非常に少ない地球の極に近い地域で最も小さく、年間を通じて日照量の変動が比較的少ない赤道付近の地域で最大となった。・自殺企図に関連する他の因子は、女性、アルコールまたは薬物依存歴、より若年のコホートであった。・国が後押しする宗教を有する国では、この関連性は小さくなった(すべての推定係数:p<0.01)。 著者らは「冬季と夏季の日照量が大きく変化する地域で生活している双極性障害患者は、自殺企図が増加している可能性がある。双極性障害の経過に対する日照量の影響については、さらなる調査が求められる」としている。

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DPP-4阻害薬関連の心血管リスクを他剤と比較~日本人コホート

 わが国の糖尿病患者270万人のコホート研究で、DPP-4阻害薬の単剤治療に関連した、入院を要する心筋梗塞および心不全のリスクは、ビグアナイド(BG)より高く、スルホニル尿素(SU)より低く、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と同等であったことを、医薬品医療機器総合機構の駒嶺 真希氏らが報告した。Pharmacoepidemiology and Drug Safety氏オンライン版2019年7月23日号に掲載。 本研究は、国内の糖尿病患者271万6,000例による全国規模のコホート研究で、2010年4月1日~2014年10月31日に新たに糖尿病治療薬単剤で治療された患者が対象。DPP-4阻害薬投与に関連した入院を要する心筋梗塞、心不全、脳卒中の発生を、BG、SU、α-GIと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)を推定し、傾向スコアによる標準化により交絡を調整した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の使用患者は、DPP-4阻害薬110万5,103例、BG 27万8,280例、SU 27万3,449例、α-GI 21万7,026例を同定した。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞および心不全リスクは、BG使用者より有意に高かった(心筋梗塞のaHR:1.48[95%CI:1.20~1.82]、心不全のaHR:1.46[同:1.31~1.62])が、SU使用者より有意に低かった(心筋梗塞のaHR:0.84[同:0.72~0.98]、心不全のaHR:0.86[同:0.81~0.92])。・DPP-4阻害薬使用者の心筋梗塞リスクはα-GI使用者と同様だった(aHR:0.98[95%CI:0.82~1.17])が、心不全リスクはわずかに高かった(aHR:1.12[同:1.04~1.21])。

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EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性など。その他探索的な評価項目として、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、バイオマーカー分析が設定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で449例が登録され、うち東アジア人は336例(75%)。日本人は41施設から211例が登録された。ラムシルマブ併用群に166例、プラセボ群に170例が割り付けられた。女性は両群で64%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは51%/49%であった。・PFS中央値は、全体集団で併用群19.4ヵ月 vs.プラセボ群12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)、東アジア集団で19.4ヵ月 vs.12.5ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.485~0.833、p=0.0009)と併用群で有意に延長した。・EGFR変異のステータスによる差はなく、全体集団と同様に東アジア集団でも併用群でPFS中央値を延長した:Ex19delを有する患者で19.2ヵ月 vs. 12.4ヵ月(HR:0.629、95%CI:0.430~0.921)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.644、95%CI:0.439~0.945)。・ORRは77% vs.74%と全体集団同様に差がみられなかったが、DoR中央値は16.2ヵ月 vs. 11.1ヵ月と、併用群で延長した(HR:0.646、95%CI:0.481~0.868)。・中間解析時点でのPFS2中央値は33.1ヵ月 vs. 未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.771、95%CI:0.529~1.124)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.824、95%CI:0.491~1.383)。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群50%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.530)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は全体集団で72% vs.54%、東アジア集団で71% vs.49%であった。・東アジア集団において、併用群で多くみられたGrade3以上のTRAEは、高血圧(21% vs. 5%)、ざ瘡様発疹(18% vs. 9%)であった。出血性イベント(55% vs.27%)も併用群で多い傾向がみられたが、Grade3以上は2% vs.1%であった。ILDの発現は少なく、Grade3以上は1% vs.2%で、Grade4の症例は報告されていない。

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敗血症診療規則の導入で死亡低減/JAMA

 米国ニューヨーク州の病院は、プロトコール化された敗血症診療(Rory's Regulations)の実施が義務付けられている。米国・ピッツバーグ大学のJeremy M. Kahn氏らは、この診療規則の有効性に関する調査を行い、導入以降ニューヨーク州は、非導入の他州に比べ敗血症による死亡が減少していることを示した。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。2013年以降、ニューヨーク州の病院は、敗血症管理においてエビデンスに基づくプロトコールの実施とともに、プロトコール順守や臨床アウトカムに関する情報の州政府への報告が義務付けられている。敗血症診療規則導入前後で敗血症入院例のアウトカムを比較 研究グループは、ニューヨーク州の敗血症診療規則と、敗血症による入院患者のアウトカムの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成による)。 解析には2011年1月1日~2015年9月30日の、ニューヨーク州と規則非導入の対照4州(フロリダ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州)の成人敗血症入院患者の退院時のデータを用いた。規則導入前後で複数回測定された時系列データを比較解析した。 2013年のニューヨーク州の敗血症診療規則の導入前(2011年1月1日~2013年3月31日)と導入後(2013年4月1日~2015年9月30日)の敗血症による入院について評価を行った。 主要評価項目は、30日院内死亡率とした。副次評価項目は、集中治療室入室率、中心静脈カテーテル使用率、Clostridium difficile感染率、入院期間であった。敗血症診療規則の導入で入院期間が有意に短縮 最終解析には509施設に入院した敗血症患者101万2,410例が含まれた。平均年齢は69.5(SD 16.4)歳、女性が47.9%であった。敗血症診療規則導入前の入院患者数は、ニューヨーク州が13万9,019例、対照4州は28万9,225例であり、導入後はそれぞれ18万6,767例および39万7,399例であった。 補正前30日院内死亡率は、敗血症診療規則導入前がニューヨーク州26.3%、対照4州22.0%で、導入後はそれぞれ22.0%および19.1%であった。患者および病院の背景因子と、導入前の一時的な傾向や季節性で補正すると、導入後の30日院内死亡率はニューヨーク州が対照4州に比べ有意に低下した(導入前後で複数回測定された時系列データの比較値の同時検定のp=0.02)。 たとえば、敗血症診療規則導入後の第10(最終)四半期(2015年7月~9月)の補正後絶対死亡率は、対照4州と比較したニューヨーク州の予測値よりも3.2%(95%信頼区間[CI]:1.0~5.4)有意に低かった(p=0.004)。 敗血症診療規則導入により、両群間で集中治療室入室率の有意な差は認めなかったが(同時検定のp=0.09)(第10四半期の補正後の両群差:2.8%、95%CI:-1.7~7.2、p=0.22)、ニューヨーク州は対照4州に比べ、入院期間が有意に短縮し(p=0.04)(0.50日、-0.47~1.47、p=0.31)、Clostridium difficile感染率(p<0.001)(-1.8%、-2.6~-1.0%、p<0.001)、中心静脈カテーテル使用率(p=0.02)(4.8%、2.3~7.4、p<0.001)は有意に増加した。 著者は、「ベースラインの死亡率がニューヨーク州と対照4州で異なるため、これらの知見が、この研究には含まれない他州に一般化可能かどうかは不明である」としている。

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認知症発症に生活様式と遺伝的リスクはどう関連?/JAMA

 認識機能障害および認知症のない高齢者において、好ましくない生活様式と高い遺伝的リスクの双方によって認知症リスクは増加し、同じ遺伝的リスクが高い集団であっても、生活様式が好ましい群はリスクが低いことが、英国・エクセター大学のIlianna Lourida氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年7月14日号に掲載された。遺伝的要因により認知症リスクは増加することが知られている。一方、生活様式の改善によってこのリスクをどの程度減弱できるかは明らかになっていない。多遺伝子性リスクと健康的な生活様式で認知症リスクを評価 研究グループは、健康的な生活様式は遺伝的リスクとは無関係に認知症リスクを低減するか評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(英国・UK Biobankの助成による)。 英国の人口ベースのコホートであるUK Biobank(登録期間2006~10年)の参加者のうち、ベースライン時に認識機能障害および認知症のない60歳以上の欧州系の地域住民を対象とし、2016年または2017年まで追跡した。 アルツハイマー病と認知症に関連する一般的な遺伝的バリアントの負荷を表す多遺伝子性リスクスコアを構築し、五分位に基づき遺伝的リスクを3段階に分類した(低リスク:第1[最低]五分位、中リスク:第2~4五分位、高リスク:第5[最高]五分位)。 健康的な生活様式の重み付きスコアは、4つの十分に確立された認知症リスク因子からなる指標(非喫煙、定期的な身体活動、健康的な食事、中等度のアルコール摂取)に基づき3段階に分類した(好ましい:健康的な生活様式因子の数が3または4つ、中間的:同2つ、好ましくない:同0または1つ)。 主要アウトカムは、全原因による認知症の新規発症とし、病院の入院/死亡記録で確認した。遺伝的リスクを問わず、健康的な生活様式は認知症リスクを低減 19万6,383例(平均年齢64.1[SD 2.9]歳、女性52.7%)が解析に含まれた。観察人年は154万5,433人年(フォローアップ期間中央値8.0年[IQR:7.4~8.6])で、この間に1,769例が認知症を発症した。 生活様式は、「好ましい」が68.1%、「中間的」が23.6%、「好ましくない」が8.2%であった。遺伝的リスクは、高リスクが20%、中リスクが60%、低リスクが20%だった。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、1.23%(95%信頼区間[CI]:1.13~1.35)が認知症を発症し、これは低リスク集団の発症率0.63%(0.56~0.71)と比較して有意に高かった(補正後ハザード比[HR]:1.91、1.64~2.23、p<0.001)。また、中リスク集団も、低リスク集団に比べ認知症リスクが有意に高かった(1.37、1.20~1.58、p<0.001)。 生活様式が好ましくない参加者のうち、1.16%(95%CI:1.01~1.34)が認知症を発症し、好ましい集団の発症率0.82%(0.77~0.87)に比べ有意に高かった(補正後HR:1.35、1.15~1.58、p<0.001)。中間的集団も、好ましい集団に比し認知症リスクが有意に高かった(1.17、1.04~1.31、p<0.009)。遺伝的リスクが高い集団では生活様式が好ましい群は認知症リスクが低い 遺伝的リスクが高リスクかつ生活様式が好ましくない参加者のうち、1.78%(95%CI:1.38~2.28)が認知症を発症し、低リスクかつ生活様式が好ましい集団の発症率0.56%(0.48~0.66)に比べ有意に高かった(補正後HR:2.83、2.09~3.83、p<0.001)。また、重み付けされた健康的な生活様式スコアと、多遺伝子性リスクスコアには、有意な相互作用は認めなかった(p=0.99)。これは、生活様式因子と認知症の関連は、遺伝的リスクに基づいて実質的に変化しなかったことを示す。 遺伝的リスクが高い参加者のうち、生活様式が好ましい集団の認知症発症率は1.13%(95%CI:1.01~1.26)であり、好ましくない集団の1.78%(95%CI:1.38~2.28)と比較して有意に低かった(0.68、0.51~0.90、p=0.008)。 著者は、「遺伝的リスクが高い集団では、生活様式が好ましい群は好ましくない群よりも認知症リスクが低いことが示された」とまとめ、「この集団の生活様式が好ましい群における認知症の絶対リスク低減率は0.65%であり、これは生活様式が原因の場合、10年間で遺伝的リスクが高い集団に属する生活様式が好ましくない121例を好ましい生活様式に改善することで、1例の認知症が予防可能であることを意味する」としている。■「アルコールと認知症」関連記事日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

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