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早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。 本研究では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・142例のうち90例(63%)で変異したctDNAが検出され、最も多い変異はTP53であった。・追跡期間中央値17.2ヵ月において、ctDNA検出がDDFSと有意に関連し、ctDNA陽性例ではDDFS中央値が32.5ヵ月であったのに対し、陰性例では未到達であった。・24ヵ月後のDDFS率は、ctDNA陰性例81%に対し、陽性例では56%であった。多変量解析においても、残存腫瘍量、リンパ節転移の数、腫瘍の大きさ、ステージ、悪性度、年齢、人種を含む共変量を調整後、ctDNA検出とDDFSの間に独立した関連が認められ、ctDNA陽性例は陰性例に比べて遠隔再発リスクが3倍高かった。・ctDNA検出はOSの低下にも関連しており、ctDNA陽性例は陰性例に比べ死亡リスクが4.1倍高かった。 SABCS2019のプレスリリースで、本研究のシニアオーサーであるBryan P. Schneider氏(Indiana University)は「この結果は、術前化学療法後にctDNAが検出された早期TNBC患者は再発リスクが高いことを証明している」と述べている。

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保険償還NGSパネル検査をどう臨床応用するか/日本肺学会

 2019年6月にNGS(次世代シーケンサー)パネル検査が保険収載された。12月に行われた第60回日本肺学会学術集会では、収載から半年が経過した現状において、臨床現場で感じる問題点を近畿大学の武田 真幸氏が発表した。問題点1 NGSパネル検査の定義が定まっていない 保険収載されたNGSパネル検査は「NCCオンコパネル」「Foundation One CDx」の2種類で、多数の遺伝子変異を同時に調べて未承認薬につなげる「プロファイル検査」として承認された。一方で、「オンコマインDX」は非小細胞肺がん(NSCLC)の4つの遺伝子変異を調べ、承認薬につなげる「コンパニオン検査」として承認されており、プロファイル検査と比較した場合に、治療開始直後から使える、費用が安価、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)への登録が不要、がん診療連携拠点病院以外でも使えるなど、実施条件が大きく異なる。武田氏は「海外では『オンコマインDX』を遺伝子パネル検査として使っている現状がある。肺がんではコンパニオン検査としてオンコマインを使えるため治療戦略が立てやすいが、肺がん以外での固形がん患者では、遺伝子パネル検査での運用となるため、同じようにはいかない」と話した。問題点2 検査を行うタイミングが標準治療後に限定される 武田氏はNGSパネル検査利用の問題点として、「利用が標準治療後に限定されているが、患者さんの状態によってどこまでを標準治療とするかは大きく異なる。1次治療のみに留まる患者さんも相当数いる中で、パネル検査を使うタイミングの判断が難しい」とした。問題点3 再検査ができない NGSパネル検査が保険適用されるのは1回のみ、分析が失敗に終わった場合でも保険適用で再検査が受けられない点は問題だ、と述べた。問題点4 費用が回収できない場合がある NGSパネル検査は保険収載が2分割で設定されており、最初の患者説明・検体提出時には一部費用しか請求できず、エキスパートパネル・C-CAT 登録を経て、検査結果が戻ってきた時点で初めて残りを請求できる。この間に病状が変わることも多く、死亡したために残りの請求ができなかったケースがすでに出ているという。問題点5 検査結果が出るまで時間がかかる 検体提出から結果が出るまでに時間がかかる点も問題点として挙げた。「Foundation One CDx」、「NCCオンコパネル」とも1ヵ月前後かかる。しかしながら、これは費用回収の問題等が解消されれば受け入れられる範囲の問題だとした。問題点6 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の登録が煩雑 「現場における最大の問題は、国が義務付けているC-CATへの登録だ」と述べ、登録における必要な情報の多さと煩雑さが現場の医師を疲弊させていると強調し、入力自動化などの仕組みの導入を求めた。問題点7 腫瘍の不均一性から検査の失敗が多い 腫瘍には、原発巣と転移巣で腫瘍の遺伝子変異の特徴が異なってくる可能性(空間的不均一性)があり、また抗がん剤等の介入による経時的な経過でも腫瘍の特徴に変化(時間的不均一性)が生じる可能性があるが、「現状のNGSパネル検査は分析の失敗も多い中、1回しか受けられないのは問題」とした。しかし、「来年以降リキッドバイオプシーが承認されれば、空間的不均一性についてはある程度は解決する問題ではないか」との見解を述べた。問題点8 実際に効果的な治療につなげていく出口戦略の欠如 最後に、「遺伝子変異が判明しても、その変異に対応する治療薬が限られ、コストをかけて検査しても、結果がその後の治療につながる確率が低い」ことを挙げた。そして、「検査ばかりが注目されているが、治療につながることが重要。ここが一番の問題点だと認識している」とまとめた。

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電子処方ツール導入によるベンゾジアゼピン処方への影響

 電子処方ツール(e処方)は、処方プロセスの妥当性および医療の質に関して、いくつかのベネフィットが認められている。しかし、デジタル化の好ましくない影響である、対面式の直接的な会話を省く簡便かつ迅速な処方プロセスにより、ベンゾジアゼピン(BZD)などの乱用リスクが高い薬剤の処方を促進してしまう可能性がある。スイス・Regional Hospital of Bellinzona and ValliのRosaria Del Giorno氏らは、5つの指導病院ネットワークにおいて、入院患者に対する新規BZD処方に対するe処方の影響を調査するため、パネルデータ調査を行った。Diagnostics誌2019年11月15日号の報告。 2014年7月~2019年4月までの観察期間中に、入院患者4万3,320例の分析を行った。新規BZD処方に対するe処方の影響を推定するため、固定効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・e処方の導入により、新規BZD処方の有意な増加が認められた(絶対値:1.5%増、相対値:43%増[p<0.001])。・この関連性は、男性(絶対値:2.3%増、相対値:65%増[p<0.001])、女性(絶対値:1.8%増、相対値:58%増[p=0.01])、70歳以上(絶対値:1.6%増、相対値:59%増[p<0.001])でも同様であった。・時間依存独立変数で調整後も、e処方の導入により、同様に有意な影響が認められた。 著者らは「e処方導入は、院内での新規BZD処方の有意な増加と関連が認められた。過剰処方や乱用リスクがある薬剤は、リスクを最小限にするためにも、e処方を慎重に使用する必要がある。これらの相互作用を分析し、質の高いケアを推進していくためには、ほかの環境や国でのさらなる研究が求められる」としている。

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乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。4ヵ国で行われた無作為化同等性試験 本研究は、4ヵ国(米国、カナダ、アイルランド、イスラエル)の154施設が参加した無作為化第III相同等性試験(NSABP B-39/RTOG 0413)であり、2005年3月21日~2013年4月16日の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の女性で、早期(Stage 0/I/II、遠隔転移はないが最大3個の腋窩リンパ節が転移陽性)の乳がん(腫瘍径≦3cm、すべての組織型、多病巣性乳がん)が認められ、腫瘍摘出術後の切除断端が陰性(がん細胞が検出されない)の患者であった。 被験者は、APBIまたは全乳房照射を受ける群に無作為に割り付けられた。APBIは、8日以内に5治療日で、小線源治療(34Gy)または外照射療法(38.5Gy)を行った。全乳房照射は、外照射療法により総線量50Gyを25日に分けて5週間で照射した(腫瘍床への追加照射の有無にかかわらず)。患者、担当医、統計解析者には治療割り付け情報がマスクされた。 主要アウトカムは、初回の浸潤性または非浸潤性IBTRとし、脱落例を除くintention-to-treat集団で解析が行われた。同等性の検定は、相対リスクのマージンの50%増加とし、ハザード比(HR)の90%信頼区間(CI)が0.667~1.5の範囲内の場合に同等と判定した。10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満 4,216例(APBI群2,107例、全乳房照射群2,109例)が登録され、4,125例(2,089例、2,036例)が主要アウトカムの解析に含まれた。追跡期間中央値は10.2年(IQR:7.5~11.5)。 ベースラインの全体の年齢中央値は54歳(IQR:47~64)、2,587例(61%)が閉経後、3,788例(90%)が白人で、3,185例(76%)が浸潤性乳がん、1,031例(24%)が非浸潤性乳管がん(DCIS)であり、浸潤性のうち2,518例(79%)とDCISの908例(88%)がホルモン受容体(ER、PgR)陽性であった。 IBTRの発生率は、APBI群が4%(90/2,089例)、全乳房照射群は3%(71/2,036例)であった。HRは1.22(90%CI:0.94~1.58)であり、APBI群の同等性の判定基準は満たされなかった。10年累積IBTR発生率は、APBI群が4.6%(95%CI:3.7~5.7)、全乳房照射群は3.9%(3.1~5.0)であり、両群間の絶対差はわずか0.7%であった。 10年無再発生存率(APBI群91.8%、全乳房照射群93.4%、HR:1.33、95%CI:1.04~1.69、p=0.02)は全乳房照射群で良好であったが、10年無遠隔病変生存率(96.7%、97.1%、1.31、0.91~1.91、p=0.15)、10年生存率(90.6%、91.3%、1.10、0.90~1.35、p=0.35)、10年無病生存率(78.1%、79.7%、1.12、0.98~1.29、p=0.10)は両群間に差はなかった。乳がんの再発による死亡率は、APBI群が2%(49例)、全乳房照射群も2%(44例)だった。 サブグループ解析(探索的事後解析)では、腫瘍径≦10mmの浸潤性乳がんで、APBI群の10年IBTR発生率が良好な傾向が認められた(APBI群2.0%、全乳房照射群3.9%、HR:0.58、95%CI:0.27~1.22、交互作用のp=0.01)。 APBI群で、最も高い毒性のグレードが1の患者は40%、2は44%、3は10%、全乳房照射群ではそれぞれ31%、59%、7%であり、Grade4/5は10例(<1%)および6例(<1%)で発現した。1つ以上の2次原発がん(APBI群9%[192例]、全乳房照射群10%[200例]、HR:0.93、95%CI:0.76~1.13、p=0.46)の頻度は両群間で類似しており、このうち対側乳がんと同側の乳房肉腫は、APBI群が33%(63例)、全乳房照射群は36%(72例)で認められた(0.83、0.59~1.17、p=0.29)。治療関連死はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、乳房温存手術における腫瘍摘出術後の全乳房照射を支持するものだが、10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満であり、一部の女性ではAPBIが許容可能な代替法となる可能性がある」としている。

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医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

 厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、32万7,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は7万1,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。 「医師・歯科医師・薬剤師統計」は、厚労省が2年おきに実施しており、今回は2018(平成30)年12月31日時点に調査を行ったもの。それによると、全国の医師数は32万7,210人(前回比で7,730人、2.4%増)、歯科医師数は10万4,908人(同375人、0.4%増)、薬剤師数は31万1,289人(同9,966人、3.3%増)であった。都道府県別にみた医師数が最も多いのは徳島県 医師数を男女別にみると、男性医師は25万5,452人(前回比で3,465人、1.4%増)、女性医師は7万1,758人(同4,265人、6.3%増)となっており、女性医師数の躍進が顕著であった。 医師のうち、医療施設従事者は31万1,963人(総数の95.3%)で、前回比で7,204人(2.4%)増加した。平均年齢は49.9歳。このうち、病院は44.8歳で前回調査時から0.3ポイント上昇し、診療所は60.0歳で前回から0.4ポイント上昇して、初めて60歳代となった。 主たる診療科別にみると、前回調査時より従事者が増えたのは、美容外科が最も多く(対前回比で130%)、以下、産科(同112%)、腎臓内科・救急科(同111%)、リハビリテーション科(同109%)などとなっている。一方、従事者が減ったのは、気管食道外科が最も多く(対前回比で94%)、以下、外科(同95%)、肛門外科(同97%)、内科・産婦人科・臨床検査科(同99%)などとなっている。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果においては「臨床研修医」や「不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。 従業地の都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人当たりの医師数は、全国では246.7人で、前回比で6.6人増加した。このうち、医師数が最も多いのは徳島県(329.5人)で、次いで京都府(323.3人)、高知県(316.9人)などとなっている。一方、最も少ないのは埼玉県(169.8人)で、次いで茨城県(187.5人)、千葉県(194.1人)などとなっている。

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カテーテル治療の波はついに三尖弁にも来た(解説:上妻謙氏)-1159

 経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)は、手術ハイリスクの重症僧帽弁閉鎖不全に対する治療としてわが国でも普及してきている。弁膜症を伴う心不全のカテーテル治療は超高齢社会におけるニーズが高い。その中で三尖弁に対するカテーテル治療についてはデバイスの開発が遅れていた。このTRILUMINATE試験は、MitraClipの技術を三尖弁用に改良したTriClipという製品を使用し、十分な薬物治療を受けてもNYHA II度以上の心不全症状のある中等度以上の三尖弁閉鎖不全症(TR)患者をエンロールしたシングルアームスタディである。 エコーにて推定肺動脈圧60mmHgを超える患者は除外された。パフォーマンスゴールは過去の従来療法患者のアウトカムから設定された。安全性のプライマリーエンドポイントは6ヵ月の心血管イベントで心血管死、心筋梗塞、脳卒中、新規発症腎不全、心内膜炎、術後合併症に対する心臓手術の複合エンドポイントである。また有効性のエンドポイントは30日後三尖弁逆流の1グレード以上の減少である。117例がスクリーニングされ、97例がinclusion criteriaに合致し、そのうち85例の患者がこの治療を受けた。初期の手技成功は100%で、退院時にTRが1グレード以上減少したのはコアラボの評価で91%であった。2クリップ要する患者が約半数で、1クリップで済んだのは20%しかなく、複数のクリップを必要とすることが多かった。有効性のプライマリーエンドポイントである30日でのTR 1グレード以上の減少は86%で得られた。パフォーマンスゴールと設定された35%をはるかに超える95%信頼区間のlower limit 77.3%を達成した。安全性の複合エンドポイントの頻度は6ヵ月で4%と低かった。これもパフォーマンスゴールである39%を有意に下回った。 三尖弁は単独で外科手術されることが少なく、カテーテル治療での逆流の改善が得られることは切望されていた。少数例のパイロットスタディではあるが、この技術が期待できるものであることを示したので、有効性検証のランダマイズトライアルが施行されることが期待される。

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第35回 本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第35回:本物?ニセモノ?下壁誘導Q波を見切るエクセレントな方法(前編)一般的に「異常Q波」=必ず「心筋梗塞」…と思われがちですが、100%ではなく、実際には“フェイク”Q波も存在します。今回は、なかでも頻度の高いニサンエフ(II、III、aVF)の下壁誘導で検証してみましょう。心電図を“技巧的”にとることで、霧がはれ、明瞭な視界が広がる体験をDr.ヒロがナビゲートします。2回シリーズの今回は前編で、今までのおさらいを兼ねた“伏線”的な内容です。では始めましょう。症例提示48歳、男性。糖尿病にてDPP-4阻害剤を内服中。泌尿器科より以下のコンサルテーションがあった。『腎がんに対して全身麻酔下で左腎摘除術を予定しています。自覚症状はとくにありませんが、術前心電図にて異常が疑われましたので、ご高診下さい』174cm、78kg(BMI:25.6)。血圧123/72mmHg、脈拍58/分・整。喫煙:15~20本×約30年(現在も喫煙中)。術前検査として記録された心電図を示す(図1)。(図1)術前外来の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図1)の自動診断は「下壁梗塞の可能性:III、aVF」となっている。これはどの所見によるものか?解答はこちら異常Q波解説はこちら今回は泌尿器科手術が予定された男性が題材です。術前検査としての心電図の考え方は過去に扱いましたね。年齢も若く、運動耐容能にも問題なさそうですが、糖尿病で中等度以上の手術リスク(腎摘除術)とくれば、一定の注意を払って眺めるべき心電図でしょう(第12回)。1問目は「自動診断」をいじるDr.ヒロ独特の問題です。あ、“性格悪い”って思わないでくださいね(笑)。さて、心電図(図1)をどう読みますか? 油断すると「心拍数54/分・洞調律…以上」と読んでしまいそうですが、キチンと眺めると「系統的判読」(第1回)での“クルッと”の“ク”のプロセスで引っかかりませんか?。アップデートした「異常Q波」の定義を思い出しましょう。“1ミリとお隣を思い出せ”古い心筋梗塞の“爪痕”を示唆する「異常Q波」は「V1~V3」と「それ以外」の誘導で考える、と第33回で扱いました。「V1~V3」は“存在”重視で、「それ以外」は幅と深さに着目した“1ミリの法則”でしたね。すると、心電図(図1)には、たしかにIII、aVF誘導に明らかな「異常Q波」があります。ただ、もう一つ紹介したDr.ヒロ独自の“お隣ルール”も忘れないで。“サンエフ”と来たら、そう、“ニ”ね。「下壁誘導」は“ニサンエフ”で1セットですから、II誘導も眺めてください。これが隣接誘導群の考え方です。II誘導のQ波は「深さ」が2mmくらいありますが、「幅」はどうでしょうか? もし見にくければ、拡大して眺めてみてください。たとえば2拍目。はじまりがオレンジ太線上にあり、1mmはありそうでしょ?診断基準は「幅≧0.03秒」つまり“1mm弱”で該当するので、これはアウトです。ですから、自動診断はサンエフだけでも、実際にはII、III、aVF誘導すべてに「異常Q波」があるというのが正確な読みになります。これは“偶然”や“こじつけ”じゃないんです。「III・aVF」にQ波があるから「II」もしっかり見るのは“必然”です。それと、慣れてきたらザーッとQ波を見渡す段階で「なんかII誘導、目立つなぁ~」という感性が芽生えてくるとボクは信じています。■心電図診断■洞調律(54/分)異常Q波(II、III、aVF)【問題2】この患者に「下壁梗塞」はあるか? また、それを調べるならどんな画像検査を追加するか?解答はこちら心エコー、心臓MRI、核医学(RI)検査など解説はこちら今回は泌尿器科の症例なので、非専門医の先生がこの心電図を見ると、きっと自動診断に目をやって、こう思うかもしれません。『えっ、心筋梗塞? どこが? IIIにもaVFにもST変化はないのになぁ…。循環器医に聞いてみよう』実はここが次回への“伏線”です。心電図を工夫して詳しく見ることで、ほかの画像検査にも決して劣らない深い洞察ができることについては次回お話ししましょう。多くの病院で比較的手軽に施行可能だという点では「心エコー」、普通はこの“一択”になるでしょうか。より病院規模が大きくなるにつれ、心臓MRIやRI検査、冠動脈CTなどでも精査できそうです。“「とりあえず心エコー」の危うさ”2問目では、この患者さんに「下壁梗塞」が本当にあるかを問うています。状況的には「急性」のものは考えにくいので、普通は「陳旧性」心筋梗塞があるかがポイントになるでしょう。年齢はやや若目ですが、糖尿病や喫煙歴(しかもcurrent smoker)もあるため、始めにすべきは、心筋梗塞の既往確認(問診)です。『◯◯さんは、昔、心筋梗塞になったことがありますか?』でも、ご本人の返事は“No”―このような状況を思い浮かべてください。心臓MRI(CMR)やRI検査は、検査可能な病院のほうが圧倒的に少なく、中小規模の病院であれば「心エコーを入れて終了」となりがちです。でも、心エコー室だっていつでもウェルカムではありませんし、それ以上に“とる人”(検査者)や“見る人”(診断医)の能力に大きく依存するという意味で「不確実性」の高い検査だと言えるかもしれません。コスト(保険点数:880点[平成30年度診療報酬])だってバカになりません。あ、ボクは別に心エコーの“アンチ”ではございませんので悪しからず。ちなみに、この方は下壁の限局性壁運動低下、いわゆるasynergyがあり、にわかに“本物”疑惑が浮上したのです。通常は深く考えず、冠動脈CTやRI、ないしMRIに進むかもしれませんが、ボクの得意ジャンルは「心電図レクチャー」です。こういう時に心電図を使ってどう考えていくのか、次回語ろうと思います。そうそう、前回紹介した“周囲確認法”を覚えていますか? ただ、今回は「ST-T変化」がないので、「いやいや、心筋梗塞はないよ」と思いたいですが…どうなるでしょうか。今年一年、皆さまのお世話になりました。よい新年をお迎えください!Take-home Message異常Q波=100%本物ではなく、フェイクQ波の可能性がある。「おかしな心電図→何でも心エコー」はやめよう!【古都のこと~城南宮~】城南宮(じょうなんぐう)は、伏見区にある「方除(ほうよけ)の大社」です。“鳴くよウグイス”の794年(延暦13年)、長岡京から平安遷都した際に創建されました*。当時から熊野詣の精進所となるなど、高貴な人々が方位の災厄からの無事を祈願した場所だったのだそう。さらに、平安時代後期には、白河上皇や鳥羽上皇が城南宮を取り囲むように離宮を造設して院政の拠点にしたほか、この離宮を中心に雅やかな宴や歌会などの王朝文化が花開いたと言われています。また、1868年(慶応4年)、倒幕をもくろむ薩摩藩の砲撃により鳥羽伏見の戦いの火ぶたが切られたのも、この場所です。また、城南宮は方除け・厄除けもさることながら、「車のお祓い」の神社としても有名で、京都市内でもブルーの“キラキラ”交通安全ステッカーを貼った車はひときわ目を引きます。古くは羅城門への「鳥羽の作り道」にはじまり、高速・幹線道路に姿を変えた今でも、城南宮には常に道行く人々の安全を見守ってきた“実績”があるのです。ほかに昭和の名造園家 中根金作(1917~1995)による「神苑-源氏物語花の庭-」も魅力的で、とくに春と秋はMustスポットだと個人的には思います。2020年の交通安全を祈願しに、愛車とともにお正月にもう一度行こうかなぁ。*:「平安城の南のお宮」の意。

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ワクチンの歴史と概念【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第1回

予防接種の意義予防接種とは、病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種することをいう。その目的は、ワクチンを接種した人が病気に罹患することや、発病、重症化を予防したり、人に感染させてしまうことで社会に病気がまん延してしまうのを防ぐことである。そして最終的には、その感染症の排除・根絶などを目的としている。日本の予防接種の歴史わが国における予防接種は、1849年の種痘接種に始まり、今まで多くの感染症を予防してきた。たとえばジフテリアは1945年には約8万6,000人の患者の届出があり、その10%が亡くなっていたが、近年では患者報告は無くなっている。ポリオや狂犬病も過去の病気になり、2015年にはWHOから麻しん排除国と認定された。一方で、海外から疾患に罹患した人の入国がたびたび報告され、国内での流行を阻止するために、予防接種率を上げておくことが重要であることに変わりはない。また、わが国の予防接種制度の歴史(表1)は、ワクチンの副反応、有害事象(ワクチンと実際には関係のない、ワクチン接種後に起こる負の事象)に影響を受けながら変遷を遂げてきた。表1 日本の予防接種制度の主な歴史画像を拡大する(上部)画像を拡大する(下部)予防接種で防げる病気予防接種で防げる病気を“Vaccine Preventable Diseases(VPD)”という。予防接種には、予防接種法に基づき実施される「定期接種」、「臨時接種」、「新臨時接種」と、予防接種法に基づかない「任意接種」がある(表2)。表2 予防接種の対象疾患画像を拡大する定期接種と任意接種定期接種は、市区町村が主体となって実施する。定期接種には、A類疾病とB類疾病がある。前者は主に集団予防と重篤な疾患の予防のため、本人(保護者)に努力義務があり、国は接種を積極的に勧奨しているワクチン。後者は主に個人予防に重点を置いているワクチンと分類されている。接種費用は、定期接種は公費(一部で自己負担あり)、任意接種は自己負担である。なお、「臨時接種」とは、まん延予防上緊急の必要があるときに実施され、「新臨時接種」は病原性の低い新型インフルエンザが発生したときなどに実施される接種方法である。ワクチンの種類ワクチンは、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドに大別される。また、抗毒素は発病の予防と治療目的に接種する(表3)。表3 ワクチンの種類画像を拡大する年々、海外へ渡航する人とわが国に入国する人が増えており、海外からVPDが持ち込まれる機会が増えている。来年(2020年)には東京オリンピック・パラリンピックの開催もあり、わが国で定期接種として推奨されているワクチンが、諸外国では接種されていない場合やその逆も考えられ、現時点で国内で流行していないVPDが持ち込まれる可能性がある。予防接種は有効な感染予防手段であるため、定期接種や必要な任意接種の接種率をさらに高めておき、日本でVPDが発生することの無いように各々が関心を高めていくことが望まれる。各ワクチンについては、今後の各論を参照いただきたい。講師紹介

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新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。trastuzumab deruxtecan(DS-8201)の有効性を2部構成の単群第II相試験で評価 本研究は、北米、日本を含むアジア、欧州の8ヵ国72施設が参加した2部構成の多施設共同非盲検単群第II相試験であり、2017年10月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上(日本と韓国は20歳以上)の切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療歴のある患者であった。 試験の第1部では、被験者はtrastuzumab deruxtecanの3つの用量(5.4、6.4、7.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、推奨用量による治療の有効性と安全性の評価が行われた。 主要評価項目は、中央判定による奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、主な副次評価項目は病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR、CR+PR+6ヵ月以上持続するSD)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性などであった。trastuzumab deruxtecan投与でDCR 97.3%、CBR 76.1% 第1部では、trastuzumab deruxtecanの第2部での推奨用量が5.4mg/kgと決定された。 5.4mg/kg群(184例)の年齢中央値は55.0歳(範囲:28.0~96.0)で、23.9%が65歳以上であり、97例(52.7%)がホルモン受容体陽性腫瘍であった。前治療レジメン数中央値は6(2~27)で、全例にT-DM1とトラスツズマブの治療歴があり、121例(65.8%)がペルツズマブ、100例(54.3%)がその他の抗HER2療法を受けていた。 治療期間中央値は10.0ヵ月(範囲0.7~20.5)で、追跡期間中央値は11.1ヵ月(範囲0.7~19.9)であり、128例(69.6%)が6ヵ月以上の治療を受けていた。 第2部では、184例中112例で奏効が得られ、奏効率は60.9%(95%信頼区間[CI]:53.4~68.0)であった。内訳はCRが6.0%、PRは54.9%であった。DCRは97.3%、CBRは76.1%だった。 T-DM1投与中または投与後に増悪した180例のうち、奏効が確認されたのは61.1%であった。また、T-DM1投与の直後にtrastuzumab deruxtecanの投与を受けた56例中36例(64%)で奏効が得られた。 奏効期間中央値は14.8ヵ月(95%CI:13.8~16.9)、PFS期間中央値は16.4ヵ月(12.7~未到達)であった。また、6ヵ月の時点での全生存(OS)率の推定値は93.9%(89.3~96.6)、1年OS率は86.2%(79.8~90.7)であり、OS期間中央値には未到達であった。 trastuzumab deruxtecan投与による最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数の減少(基本語として好中球数減少[neutrophil count decreased]と好中球減少[neutropenia]を含む)であり、20.7%(38/184例)に認められた。次いで、貧血が8.7%(16例)、悪心が7.6%(14例)にみられた。発熱性好中球減少は3例で発現した。独立判定委員会により、13.6%(25例)が試験薬関連の間質性肺疾患(Grade1/2:10.9%、Grade3/4:0.5%、Grade5:2.2%)と判定された。 著者は、「間質性肺疾患のリスクを考慮し、肺症状への配慮と注意深いモニタリングが求められる」としている。

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イキセキズマブ、X線陰性体軸性脊椎関節炎に有効/Lancet

 X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎患者の治療において、イキセキズマブはプラセボに比べ、疾患の徴候と症状(ASAS40)を有意に改善することが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが行った「COAST-X試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月5日号に掲載された。イキセキズマブはインターロイキン17A(IL-17A)に高い親和性を有するモノクローナル抗体であり、すでにX線所見を伴う体軸性脊椎関節炎(別名:強直性脊椎炎)における有効性が報告されている。イキセキズマブ2種の投与法とプラセボをASAS40の達成で比較 本研究は、欧州、日本を含むアジア、北米、南米の15ヵ国107施設が参加した52週の二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2016年8月2日~2018年1月29日の期間に患者登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、X線画像で明確な仙腸関節炎所見がみられない活動性の体軸性脊椎関節炎(X線所見を伴わない体軸性脊椎関節炎)で、客観的な炎症の徴候(MRI所見またはC反応性蛋白>5mg/L)があり、2剤以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の効果が不十分またはNSAID不耐の患者であった。 被験者は、イキセキズマブ(80mg)を4週ごと(Q4W)に投与する群、同2週ごと(Q2W)に投与する群、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。16週以降は担当医の裁量で、基礎治療薬の変更や非盲検下でのQ2Wへの切り換え、あるいはこれら双方が許容された。 主要エンドポイントは、16週および52週時の国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)の基準によるASAS40の達成とした。ASAS40は、主要ドメインの4項目(患者による疾患活動性の総合評価、脊椎痛、機能、炎症)のうち3項目以上で、ベースラインから40%以上かつ2単位(0~10点)以上の改善が認められ、さらに残りの1項目でまったく悪化が認められない場合と定義された。治療を切り換えた患者は、ロジスティック回帰分析ではnon-responderとされた。ASAS40達成率は52週時でイキセキズマブQ4W群30%、Q2W群31%、プラセボ群13% 303例が登録され、プラセボ群に105例(平均年齢39.9[SD 12.4]歳、女性58%)、イキセキズマブQ4W群に96例(40.9[14.5]歳、48%)、イキセキズマブQ2W群には102例(40.0[12.0]歳、52%)が割り付けられた。96%が16週の治療を、87%が52週の治療を完遂した。 2つの主要エンドポイントはいずれも満たされた。すなわち、16週時のASAS40達成率は、イキセキズマブQ4W群が35%(34/96例)、イキセキズマブQ2W群が40%(41/102例)、プラセボ群は19%(20/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0094、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0016)。また、52週時のASAS40達成率は、それぞれ30%(29/96例)、31%(32/102例)、13%(14/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0045、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0037)。 強直性脊椎炎疾患活動性スコア(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score:ASDAS)<2.1(低疾患活動性)の達成率も、イキセキズマブによる2つの治療群がプラセボ群に比べ有意に優れた(16週時:Q4W群28%[対プラセボ群p=0.0080]、Q2W群32%[同p=0.0009]、プラセボ群12%、52週時:30%[同p=0.0003]、27%[同p=0.0009]、9%)。 同様に、BASDAI(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)、SF-36 PCS(Medical Outcomes Study 36-item Short-Form Health Survey Physical Component Score)、SPARCC(Spondyloarthritis Research Consortium of Canada)の仙腸関節スコア(16週のみ)も、イキセキズマブ群で有意に良好であった。 イキセキズマブ群で最も頻度の高い治療関連有害事象は鼻咽頭炎(Q4W群19%、Q2W群16%)と注射部位反応(11%、17%)であった。とくに注目すべき治療関連有害事象については、Q4W群で重篤な感染症が1例に認められた。重篤な有害事象は4例(Q4W群2例、Q2W群1例、プラセボ群1例)に、有害事象による治療中止も4例(1例、1例、2例)にみられた。悪性腫瘍および死亡の報告はなかった。また、新たな安全性シグナルは特定されなかった。 著者は、「イキセキズマブは、X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎で、NSAIDの効果が不十分または不耐の患者において、新たな治療選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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PPIで認知症リスクが1.3倍~メタ解析

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と認知症リスクについて、中国・Anhui Medical UniversityのYun Zhang氏らが、調査を行った。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2019年11月21日号の報告。 英語と中国語のデータベースより、2018年12月までの文献を包括的に検索した。プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、変量効果モデルを用いて算出した。サブグループ解析と感度分析も実施した。不均一性の評価には、Cochran's Q検定およびI2検定を用いた。出版バイアス評価には、Begg検定およびEgger検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・6研究、16万6,146例が抽出された。・全体的な結果では、PPI使用による認知症リスクの有意な増加が認められた(HR:1.29、95%CI:1.12~1.49)。・サブグループ解析では、PPI使用と認知症リスクとの有意な関連が、欧州の患者(HR:1.46、95%CI:1.23~1.73)および65歳以上(HR:1.39、95%CI:1.17~1.65)で認められた。・フォローアップ期間5年以上では、プールされたHRは、1.28(95%CI:1.12~1.46)であり、PPI使用患者の認知症リスクが1.28倍に増加していることが示唆された。・地域的な影響については、欧州の患者の全体的なプールHR推定値は、1.46(95%CI:1.23~1.73)であった。・出版バイアスは認められなかった。 著者らは「本結果では、PPI使用が認知症リスクを上昇させることが認められた。これらの調査結果を確認するためにも、高品質なコホート研究が求められる」としている。

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LOXO-292のRET肺がんに対する有効性(LIBRETTO-001)/日本肺学会

 RET融合遺伝子陽性がんは全身のさまざまな臓器で見られる。非小細胞肺がん(NSCLC)においても2%を占めるといわれる。RET融合遺伝子陽性がんでは、半数に脳転移があるとの報告もある。従来のマルチキナーゼ阻害薬によるRET融合遺伝子陽性がん治療では、有効性に限度がみられた。selpercatinib(LOXO-292)は、選択性の高いRET阻害薬であり、幅広いがん種への有効性を示すとともに、CNSへの移行性も良好な薬剤である。 LOXO-292の国際第I/II相試験LIBRETTO-001の結果は本年の世界肺学会(WCLC2019)で発表された。第60回日本肺学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏がそのアンコール発表を行った。 今回の発表は、2017年5月の登録開始から2016年6月までの肺がん初回データをまとめたもの。主要評価項目は客観的奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性。登録されたRET融合遺伝子陽性がんの総数は531例、そのうちNSCLCは253例であった。今回の発表では、前治療としてプラチナベース化学療法を実施した患者184例中の105例が解析対象であった。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は61歳、女性59%、前治療レジメン中央値は3(55%がPD-1/L1阻害薬実施、48%がマルチキナーゼ阻害薬実施)、脳転移は35%に認められた。・ORRは68%(95%信頼区間[CI]:58~76)であった。・CNS奏効率は91%(95%CI:59~100)であった。・DoR中央値は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0)、PFS中央値は18.4ヵ月(95CI:12.9~24.9)であった。・今回の解析対象ではないが、未治療患者のORRは85%(95%CI:69~95)であった。・頻度の高い治療関連有害事象(TRAE)は口喝(27%)、AST上昇(22%)、ALT上昇(21%)。TRAEによる治療中止は1.7%であった。

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肺がん2019 Wrap Up【肺がんインタビュー】 第31回

第31回 肺がん2019 Wrap Up出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2019年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が、一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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陰茎をファスナーに挟んだらどうすればいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第153回

陰茎をファスナーに挟んだらどうすればいい?photoACより使用ファスナーのことを英語ではzipper(ジッパー)あるいはzip fastener(ジップファスナー)といいます。ジッパーはアメリカのグッドリッチ社の登録商標です。一般名である、slide fastener(スライドファスナー)という呼び方も普及しています。ちなみに、チャックというのも海外の会社の商標登録らしいです。ややこしいので、このコラムではファスナーで統一したいと思います。さて、ファスナーを陰茎に挟むというのは、男性ならば誰しも一度は経験したことがあると思いますが、救急受診が必要になるほどの外傷というのは、かなりまれです。どんな勢いでファスナー上げたん!? と聞きたくなっちゃいます。PubMedで検索しても、数えるくらいしか症例報告がヒットしませんが、古いものでは1977年からあるため1,2)、ファスナーは半世紀近くにわたって世の男性を悩ませた天敵であることが想像されます。ファスナーの構造は、1.テープ2.エレメント(務歯)3.スライダー(開閉部分)の3つの部分に大別できます(写真)。テープは布なので、外傷医学的に問題になるのは、エレメントとスライダーの2つです。ここがガッチリかみ合ってしまうことで、陰茎あるいは精巣の皮膚を損傷してしまうのです。画像を拡大する肉を挟んだ後、元に戻せばいいじゃないとおっしゃるご婦人もいらっしゃるかもしれませんが、ガッチリとお肉を挟んでしまったファスナーは、容易には戻りませんのよ。ましてや、男性の局部の皮膚はデリケートなゴム風船のようなもの。いったん嵌まりこんでしまった後、戻そうとすることで外傷を悪化させる可能性があるのです。八方ふさがり、四面楚歌。ではどうすればよいのか。報告として多いのは、シンプルに2と3をぶっ壊す方法です。安全性が高いのは、2.スライダーを下で切断して、上方に噛み合わせを解除することです。そうすれば、スライダーが開放され、パラパラとファスナーが解かれていきます。ただ、下からのアプローチのみでは対処できない場合、上にある3.エレメントをぶっ壊す必要があります。ワイヤーカッターなどを用いることが多いです。フリーで使えるイラストがなかったので、いらすとやのワイヤーカッターっぽいイラストを使って、簡易的に図示します(図)。画像を拡大する日本の長野松代総合病院から、6歳と11歳の小児例が報告されています3)。フリーで閲覧できますが、具体的にどうやって解除できるのか写真付きで報告されているので、是非ご覧ください。このファスナー外傷、包皮が長い小児例の報告が多いのですが、成人男性でもチラホラ報告があるので4,5)、多忙な日々、短時間でお小水を済ませてしまう男性医師の皆さんは、ファスナーを勢いよく閉めないよう、注意してください。そして、私が声を大にして言いたいのは、「社会の窓」にファスナーなんて要らないと思うんです。ボタンでいいじゃん!! なんであんな凶器を社会の窓の入り口に設置するんや!1)Oosterlinck W. Unbloody management of penile zipper injury. Eur Urol. 1981;7(6):365-6. 2)Flowerdew R, et al. Management of penile zipper injury. J Urol. 1977 May;117(5):671.3)Nakagawa T, et al. Penile zipper injury. Med Princ Pract. 2006;15(4):303-304.4)McCann PA. Case report: a novel solution to penile zipper injury--the needle holder. ScientificWorldJournal. 2005 Apr 6;5:298-299.5)Rose G, et al. Ultrasound-guided dorsal penile nerve block performed in a case of zipper entrapment injury. J Clin Ultrasound. 2017 Nov 12;45(9):589-591.

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コララン:新たな作用機序を有する慢性心不全治療薬

2019年11月19日、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネル遮断薬、コララン錠(一般名:イバブラジン塩酸塩)が販売開始となった。現在、日本以外では124の国または地域で承認となっている。患者数の増加が続く「心不全」現在、日本では、諸外国と比較して例をみないスピードで高齢化が進み、「心不全パンデミック」の時代を迎えている。患者数は、2030年に130万人を超えると推計される。心不全は、心臓のポンプ機能が低下して全身に十分量の血液を送り出せないため、その代償として心拍数が上昇することがある。心拍数の上昇は、心臓への負担となるだけでなく、心不全の予後にも悪影響を及ぼすため、既存治療薬を服用しても心拍数が下がらない心不全患者への治療は課題の1つとなっていた。従来とは異なる心拍数のみを減少させるメカニズム心筋細胞や神経細胞には活動電位を発生させるHCNチャネルが存在し、中でも心臓の洞結節(洞房結節)にはHCN4チャネルが発現している。イバブラジンは、このHCN4チャネルを遮断することで、過分極活性化陽イオン電流(If)を抑制し、拡張期脱分極相における活動電位の立ち上がり時間を遅延させることによって、心拍数を特異的に減少させる作用を有している。慢性心不全患者の心血管系死又は心不全悪化による入院を減少させるイバブラジンの承認は、主にSHIFT試験とJ-SHIFT試験の臨床試験結果に基づいている。海外で実施されたSHIFT試験は、最善の既存治療下にある外国人慢性心不全患者(NYHA心機能分類II~IV度、洞調律下での安静時心拍数70回/分以上、左室駆出率が35%以下)を対象に、イバブラジンを追加した群(イバブラジン群)とプラセボを追加した群(プラセボ群)を比較した。主要評価項目である「心血管系死又は心不全悪化による入院の発現割合」は、プラセボ群28.7%に対してイバブラジン群24.5%で、イバブラジン群で有意に低く、ハザード比は0.82、イベント発現リスクは18%の軽減であった。このSHIFT試験の結果を受けて、2016年欧州心臓学会の心不全ガイドラインではイバブラジンの推奨が記載されている。一方、国内で実施されたJ-SHIFT試験は、最善の既存治療下にある日本人慢性心不全患者(NYHA心機能分類II~IV度、洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上、左室駆出率が35%以下)を対象に、イバブラジン群とプラセボ群を比較した。主要評価項目である「心血管系死又は心不全悪化による入院の発現割合」は、プラセボ群29.1%、イバブラジン群20.5%で、ハザード比は0.67であった。心不全治療における今後の展望イバブラジンは上記の試験以外にも、いくつかの試験が実施されており、ACE阻害薬服用の心不全患者における運動耐容能の改善(CARVIVA試験)や入院中の心不全患者における全死亡と再入院の減少(OPTIMIZE試験)などが示唆されている。心拍数のみを減少させる作用機序に加えて、さまざまな試験結果を有するイバブラジンの登場によって、心不全患者のさらなる予後の改善が図られることが期待される。

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青年期双極性障害患者の気分症状~ネットワーク解析

 精神病理学のネットワーク解析では、精神疾患エピソードを引き起こす可能性のある症状間の因果的相互作用を明らかにするため、個々の症状間の関連性が調査されている。米国・カリフォルニア大学のMarc J. Weintraub氏らは、双極性スペクトラム障害またはそのリスクを有する青年の気分症状に関して、ネットワーク解析を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年11月15日号の報告。 対象は、治療が必要な亜症候期のうつ症状または躁症状を呈する青年期双極性障害患者および、そのリスクを有する青年272例。半構造化面接にて評価した症状スコアに基づき、うつ症状と躁症状のネットワークを構築し、ネットワーク内の最も中心的な症状および症状コミュニティを特定した。ネットワークパラメータの信頼性の判定には、ブーストラップ法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつおよび躁の気分症状極内の症状は、相反する気分症状極よりも、相互の関連が認められた。・抑うつ症状コミュニティと3つの躁症状コミュニティを含む4つのコミュニティが特定された。・ネットワーク全体で、他の症状と最も強い相関関係のある症状は、疲労および抑うつ気分であり、次いで多動であった。・うつ症状と躁症状の架け橋となる症状は、気分不安定性および過敏性であった。 著者らは「疲労や多動などの活動エネルギー症状は、抑うつ気分や気分高揚と共に、青年期双極性スペクトラム症の最も顕著な気分症状である。気分不安定性および過敏性は、極性転換の潜在的な兆候である。これら中心的な症状と架け橋となる症状を標的とすることで、双極性障害のより効率的な評価と治療介入につながると考えられる」としている。

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HIV患者のがん治療、免疫モニタリングが有益/JAMA Oncol

 抗ウイルス療法を受ける成人HIV患者のがん治療について、免疫モニタリングの有益性が、がん治療後の死亡率に関する定量化研究により明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKeri L. Calkins氏らによる検討で、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療を受けた場合と比べて、施術後早期のCD4細胞数を有意に減少させること、その数値の低さと死亡率増大は関連することが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、がん治療を受けるHIV患者の免疫低下とがん治療との関連は十分に特徴付けられていないことに着目し、がん治療ガイドラインに反映させうる検討として、がん治療に関連した免疫抑制と過剰死亡率の関連性の定量化を試みた。HIV患者のがん治療とCD4細胞数およびHIV RNA値の関連性、治療後CD4細胞数およびHIV RNA値の推移と全死因死亡との関連を推算した。 検討は観察コホート試験にて、1997年1月1日~2016年3月1日にジョンズ・ホプキンズHIVクリニックの治療を受けていた成人HIV患者で、初発のがんを有し、がん治療のデータを入手できた196例を対象に行われた。 試験では、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療と比べて、(1)忍容性の問題によりHIV RNA値を増大する、(2)CD4細胞数の初期の減少幅が大きい、(3)減少したCD4細胞数の回復に時間がかかる、さらに(4)CD4細胞数の減少は、ベースラインのCD4細胞数、抗ウイルス薬の使用、罹患したがんのリスクとは独立して、高い死亡率と関連するとの仮説を立てて検証した。 被験者は、がん種別の初期治療(化学療法および/または放射線療法vs.手術またはその他の治療)を受けた。主要評価項目は、がん治療後のCD4細胞数の推移、HIV RNA値の推移、全死因死亡率であった。 データ解析は2017年12月1日~2018年4月1日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者196例は、男性135例(68.9%)、年齢中央値50歳であった。・化学療法および/または放射線療法について、ベースラインCD4細胞数が500個/μL超の患者では、治療後の初期細胞数が203個/μL(95%信頼区間[CI]:92~306)減少した。・一方、ベースラインCD4細胞数が350個/μL以下の患者における減少は、45個/μLであった(相互作用推定値:158個/μL[95%CI:31~276])。・化学療法および/または放射線療法は、HIV RNA値に有害な関連は示さなかった。・初期のがん治療後、CD4細胞数100個/μL低下につき、死亡率は27%増大することが示された(ハザード比:1.27、95%CI:1.08~1.53)。

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増える梅毒妊娠症例、現代ならではの背景も

 国立感染症研究所が、今年1月から半年の間に医療機関を通じて報告された女性梅毒患者のデータを分析したところ、約1割が妊娠症例であることがわかった。わが国では、2014年ごろから男女間における梅毒感染報告が増え、それと並行して母子感染による先天梅毒の報告数も増加傾向にある。こうした状況を背景に、梅毒妊娠症例に着目し、国として初めて実態把握を行ったもの。分析を行った感染研感染症疫学センター・主任研究官の山岸 拓也氏は、「かなり憂慮する状況。治療可能疾患であることを患者に伝え、子供への感染リスクをできる限り排除していかなければならない」と話す。早期発見と適切な抗菌薬治療で母子感染を回避 梅毒は、すべての医師が診療から7日以内に届け出を求められている全数報告対象疾患であり、国の感染症発生動向調査によると、2013年以降、20代を中心に女性の梅毒報告数および先天梅毒報告数が増え続けている。 先天梅毒はTreponema pallidumが母子伝播することで発生し、母体が無治療の場合には40%の児が先天梅毒になるとされている。一方、梅毒感染妊婦に対しては、適切に診断され、抗菌薬治療を行うことで先天梅毒の発生を予防することが可能である。したがって、いかに早期発見と適切な治療に至るかが梅毒の母子感染の防止のカギになる。同時に、梅毒の感染経路を明確にすることも肝要である。 感染症発生動向調査では、今年1月1日から梅毒の届け出様式が変更され、妊娠の有無や、直近6ヵ月以内の性風俗産業の従事歴の有無が、新たに項目として追加された。感染研感染症疫学センターの取りまとめによると、この期間に届け出られた女性梅毒症例は1,117例であり、このうち「妊娠あり」とされた症例は106例であった。年齢別では、15-19歳が10例(9%)、20-24歳が38例(36%)、25-29歳が30例(28%)、30-34歳が20例(19%)、35-39歳が7例(7%)、40-44歳が1例(1%)であった。病型別では、早期顕症I期が5例(5%)、早期顕症II期が25例(24%)、無症候が76例(72%)であった。妊娠週数は、19週までが74例(74%)、20週以降が26例(26%)であった(残り6例は不明)。また「妊娠あり」症例のうち、性風俗産業従事歴については、「あり」が5例(8%)、「なし」が56例(92%)であった(残り45例は不明)。性産業従事歴なく男性パートナー由来も多数、その背景は これらの数字から見えてくる傾向がある。山岸氏によると、妊娠症例は性風俗産業従事歴のない20代後半から30代前半の女性が多く、感染源が男性パートナーである可能性が示唆されるということだ。これは、妊婦における感染が、同性間性交渉による感染および性産業従事歴による不特定多数の性交渉による従来の感染経路とは傾向が異なることを示している。 とはいえ、今回の取りまとめでは、「妊娠あり」の106症例のうち、半数近い45例については従事歴が明らかになっていない。山岸氏は、「従事歴なし」の場合は回答できるが、「従事歴あり」の人ほど回答をためらうケースが多いのでないかと指摘する。また、近年の性産業の多様化もあるという。つまり、実態のある店舗で報酬を取りながら性活動を行うのが必ずしも性産業従事者ではないということだ。たとえば、無店舗・派遣型のデリバリーヘルスや、出会い系サイトやSNSを介し、困った時だけ金銭と引き換えに性交渉に及ぶ“個人稼業”の人たちは、どこまで自身をセックスワーカーであると自覚しているだろうか。こうした背景を考えると、「不明」45例の実情が自ずと見えてくる。いずれにせよ、「性産業に対するハードルの低下と裾野の広がりも、梅毒症例増加の背景にあるとみられる」と山岸氏は話す。憂慮する状況に実効力のある対策を 今回の取りまとめでは、7割以上が無症候であったことから、妊婦健診が有効に機能していることが考えられるが、妊娠20週以上に診断された症例も26例(26%)認めた。この中には、未婚や経済的事情などで妊婦健診を受けないまま週数が経過した結果、判明が遅れたケースもあるが、妊娠20週を超えた段階で新たに感染することも考えられるという。つまり、妊娠が安定期に入って性交渉を再開した際、何らかの経緯で男性パートナーが保有する梅毒が感染するケースである。 こうしたことを鑑み、先天梅毒発生リスクに関連した背景要因を有する妊婦診療においては、妊娠中に疑われる症状が見られたら速やかに主治医に相談するよう促したり、妊娠中であっても避妊具を使用し、より一層慎重な性交渉を行うよう患者に指導したりする必要があるという。あるいは、妊娠初期に行われるスクリーニング検査を、妊娠中期および後期に行うことも、発見の機会を増やすために有効かもしれない。 一方、実数としては不明であるものの、これまでの調査で、梅毒感染がわかった段階で妊娠中絶を選択する妊婦もいるという。「適切な診断と治療によって、生まれてくる子どもの重篤な障害を回避できることを妊婦患者に伝え、性急な判断で中絶しないよう医療者が働きかける必要がある」(山岸氏)。 繰り返しになるが、梅毒の母子感染は診断と治療により防ぐことが可能である。冒頭に山岸氏が語ったような「かなり憂慮する状況」のただ中にあるのだとすれば、メディアなどが性産業従事者/利用者にモラルを社会的メッセージとして説くことも大事だが、医療者により実効性のある対策を講じていただきたい。

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