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9月9日 救急の日【今日は何の日?】

【9月9日 救急の日】〔由来〕暦の語呂合わせから救急業務および救急医療に対する国民の正しい理解と認識を深め、救急医療関係者の意識高揚を図ることを目的に1982(昭和57)年に厚生省(現厚生労働省)が制定。この日を含む1週間を「救急医療週間」として消防庁、厚生労働省、都道府県・市町村などの協力のもと、全国各地で各種行事を開催している。関連コンテンツ電話相談って困るんだけど…【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】重症熱中症には“Active Cooling”を!【救急診療の基礎知識】地震で多発するクラッシュ症候群、現場での初期対応は?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】救急診療部のHCVスクリーニング、最適な方法とは/JAMA救急外来におけるアルコール使用障害マネジメントの課題

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第283回 B型肝炎ウイルス(HBV)への免疫と糖尿病を生じ難くなることが関連

B型肝炎ウイルス(HBV)への免疫と糖尿病を生じ難くなることが関連B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンの糖尿病予防効果を示唆する台湾の研究者らの試験結果1)が、まもなく来週開催される欧州糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes:EASD)年次総会で報告されます2,3)。具体的には、HBVワクチンのおかげでHBVへの免疫が備わった人は、糖尿病全般を生じ難いことが示されました。高血糖が続いて心血管疾患、腎不全、失明などの深刻な事態を招く糖尿病の世界の患者数は昨年6億例弱を数え、このままなら2050年までに45%上昇して8億例を優に超える見込みです4)。当然ながら糖尿病治療の経済的な負担は甚大で、総医療費の12%を占めます。肝臓は体内の糖が一定に保たれるようにする糖恒常性維持の多くを担っています。空腹時にはグリコーゲン分解と糖新生により血糖値が下がりすぎないようにし、食後にはグリコーゲン合成によって余分な糖をグリコーゲンに変えて血糖値を抑えます。そのような糖恒常性をHBV感染が害するらしいことが先立つ研究で示唆されています。HBVのタンパク質の1つHBxが糖新生に携わる酵素の発現を増やして糖生成を促進し、糖を落ち着かせる働きを妨げるようです。HBV感染者はそうでない人に比べて糖尿病である割合が高いことを示す試験がいくつかありますし、約5年の追跡試験ではHBV感染と糖尿病を生じやすいことの関連が示されています5)。そういうことならワクチンなどでのHBV感染予防は糖尿病の予防でも一役担ってくれるかもしれません。実際、10年前の2015年に報告された試験では、HBVワクチン接種成功(HBsAb陽性、HBcAbとHBsAgが陰性)と糖尿病が生じ難くなることの関連が示されています6)。その糖尿病予防効果はワクチンがHBV感染を防いで糖代謝に差し障るHBV感染合併症(肝損傷や肝硬変)を減らしたおかげかもしれません。それゆえ、HBVワクチンの糖尿病予防効果がHBV感染予防効果と独立したものであるかどうかはわかっていません。その答えを見出すべく、台湾の台北医学大学のNhu-Quynh Phan氏らは、HBVに感染していない人の糖尿病発現がHBVへの免疫で減るかどうかをTriNetX社のデータベースを用いて検討しました。HBV感染を示す記録(HBsAgかHBcAbが陽性であることやHBVとすでに診断されていること)がなく、糖尿病でもなく、HBVへの免疫(HBV免疫)があるかどうかを調べるHBsAb検査の記録がある成人90万例弱の経過が検討されました。それら90万例弱のうち60万例弱(57万3,785例)はHBsAbが10mIU/mL以上(HBsAb陽性)を示していてHBV免疫を保有しており、残り30万例強(31万8,684例)はHBsAbが10mIU/mL未満(HBsAb陰性)でHBV免疫非保有でした。HBV感染者はすでに省かれているので、HBV免疫保有群はワクチン接種のおかげで免疫が備わり、HBV免疫非保有群はワクチン非接種かワクチンを接種したものの免疫が備わらなかったことを意味します。それら2群を比較したところ、HBV免疫保有群の糖尿病発現率は非保有群に比べて15%低くて済むことが示されました。さらにはHBV免疫がより高いほど糖尿病予防効果も高まることも示されました。HBsAbが100mIU/mL以上および1,000mIU/mL以上であることは、10mIU/mL未満に比べて糖尿病の発現率がそれぞれ19%と43%低いという結果が得られています。年齢、喫煙、糖尿病と関連する肥満や高血圧といった持病などを考慮して偏りが最小限になるようにして比較されましたが、あくまでも観察試験であり、考慮から漏れた交絡因子が結果に影響したかもしれません。たとえばワクチン接種をやり通す人は健康により気をつけていて、そもそも糖尿病になり難いより健康的な生活習慣をしているかもしれません。そのような振る舞いが結果に影響した恐れがあります。HBV免疫が糖尿病を防ぐ仕組みの解明も含めてさらなる試験や研究は必要ですが、HBVワクチンはB型肝炎と糖尿病の両方を防ぐ手立てとなりうるかもしれません。とくにアジア太平洋地域やアフリカなどのHBV感染と糖尿病のどちらもが蔓延している地域では手頃かつ手軽なそれらの予防手段となりうると著者は言っています1)。 参考 1) Phan NQ, et al. Diagnostics. 2025;15:1610. 2) Study suggests link between hepatitis B immunity and lower risk of developing diabetes / Eurekalert 3) Hepatitis B vaccine linked with a lower risk of developing diabetes / NewScientist 4) International Diabetes Federation / IDF Atlas 11th Edition 2025 5) Hong YS, et al. Sci Rep. 2017;7:4606. 6) Huang J, et al. PLoS One. 2015;10:e0139730.

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irAE治療中のNSAIDs多重リスク回避を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第68回

 今回は、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)の治療でステロイド投与中の高齢がん患者に対し、NSAIDsによる多重リスクを評価して段階的中止を提案した事例を紹介します。複数のリスクファクターが併存する患者では、アカデミック・ディテーリング資材を用いたエビデンスに基づくアプローチが効果的な処方調整につながります。患者情報93歳、男性基礎疾患肺がん(ニボルマブ投与歴あり)、急性心不全、狭心症、閉塞性動脈硬化症、脊柱管狭窄症ADL自立、息子・嫁と同居喫煙歴40本/日×40年(現在禁煙)介入前の経過2020年~肺がんに対してニボルマブ投与開始2025年3月irAEでプレドニゾロン40mg/日開始、その後前医指示で中止2025年6月3日irAE再燃でプレドニゾロン40mg/日再開処方内容1.プレドニゾロン錠5mg 8錠 分1 朝食後2.テルミサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後3.クロピドグレル錠75mg 1錠 分1 朝食後4.エソメプラゾールカプセル10mg 2カプセル 分1 朝食後5.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後6.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後7.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 朝食後8.リナクロチド錠0.25mg 2錠 分1 朝食前9.ジクトルテープ75mg 2枚 1日1回貼付本症例のポイント本症例は、93歳という超高齢で複数の基礎疾患を有するがん患者であり、irAE治療のステロイド投与とNSAIDsの併用が引き起こす可能性のある多重リスクに着目しました。患者は肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の副作用であるirAEに対して、プレドニゾロン40mg/日という高用量ステロイドの投与を受けていました。同時に疼痛管理としてNSAIDsであるジクトルテープ2枚を使用していました。一見すると症状は安定していましたが、薬剤師の視点で患者背景を詳細に評価したところ、見過ごされがちな重大なリスクが潜んでいることが判明しました。第1に胃腸障害リスクです。高用量ステロイドとNSAIDsの併用は消化性潰瘍の発生率を相乗的に増加させることが知られており、93歳という高齢に加え、既往歴も有する本患者ではとくにリスクが高い状況でした。第2に心血管リスクです。患者には急性心不全や狭心症の既往があり、さらに閉塞性動脈硬化症も併存していました。NSAIDsは心疾患患者において心血管イベントのリスクを増加させるため、この併用は極めて危険な状態といえました。第3の最も注意すべきは腎臓リスク、いわゆる「Triple whammy」の状況です。NSAIDs、ループ利尿薬(フロセミド)、ARB(テルミサルタン)の3剤併用は急性腎障害の発生率を著しく高めることが報告されており、高齢者ではとくに致命的な合併症につながる可能性がありました。これらの多重リスクは単独では見落とされがちですが、患者の全体像を包括的に評価することで初めて明らかになる重要な安全性の問題です。医師への提案と経過患者の多重リスクを評価し、服薬情報提供書を用いて医師に処方調整を提案しました。現状報告として、irAE治療でプレドニゾロン40mg/日投与中であり、ジクトルテープ2枚使用で疼痛は安定しているものの、複数のリスクファクターが併存していることを伝えました。懸念事項については、アカデミック・ディテーリング※資材を用いて消化性潰瘍リスク(ステロイドとNSAIDsの併用は潰瘍発生率を有意に増加)、心血管リスク(NSAIDsは既存心疾患患者で心血管イベントリスクを増加)、Triple whammyリスク(3剤併用による急性腎障害発生率の増加)について説明しました。※アカデミック・ディテーリング:コマーシャルベースではない、基礎科学と臨床のエビデンスを基に医薬品比較情報を能動的に発信する新たな医薬品情報提供アプローチ 。薬剤師の処方提案力を向上させ、処方の最適化を目指す。提案内容として段階的中止プロトコールを提示し、ジクトルテープ2枚から1枚に減量、2週間の疼痛評価期間を設定、疼痛悪化がないことを確認後に完全中止するという方針を説明しました。将来的な疼痛悪化時のオピオイド導入準備と疼痛モニタリング体制の強化についても提案しました。医師にはエビデンス資料の提示により多重リスクの危険性について理解が得られ、段階的中止プロトコールが採用となり、患者の安全性を優先した方針変更となりました。経過観察では1週間後にジクトルテープ1枚に減量しましたが疼痛悪化はなく、2週間後も疼痛コントロールが良好であることを確認し、3週間後にジクトルテープを完全中止しましたが疼痛の悪化はありませんでした。現在も疼痛コントロールは良好で、多重リスクからの回避を達成しています。参考文献1)日本消化器病学会編. 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版). 南山堂;2020.2)Masclee GMC, et al. Gastroenterology. 2014;147:784-792.3)Lapi F, et al. BMJ. 2013;346:e8525.

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高齢者への不適切処方で全死亡リスク1.3倍、処方漏れで1.8倍

 高齢者に対する薬剤治療においては、ポリファーマシーや処方漏れなどの問題点が指摘されている。イスラエルの研究グループによる長期前向きコホート研究によると、高齢者の80%以上が不適切な処方を受けており、不適切な薬剤を処方された群では死亡リスクが上昇した一方で、必要な薬剤の処方漏れも死亡リスクの上昇と関連していたという。本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年8月11日号に掲載された。 研究者らは、イスラエルの縦断前向きコホート研究の第3回追跡調査(1999~2007年)で収集されたデータを使用し、地域に住む高齢者1,210例(平均年齢72.9歳、女性53%)を対象に、不適切処方と長期死亡率との関連性を評価した。不適切な処方には「不要あるいは有害になり得る薬剤の処方(Potentially Inappropriate Medications:PIM)」と「必要処方の省略(Prescribing Omissions:PPO)」が含まれており、それらの識別には米国の2023年版Beers基準と欧州のSTOPP/START基準(v3)が用いられた。死亡は診断コードで特定され、主要アウトカムは全死亡率と非がん死亡率だった。参加者は死亡または2022年3月まで追跡され、追跡期間の中央値は13年だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の81.2%が1件以上の不適切な処方を受けており、PIMはBeers基準で52.6%、STOPP基準で45.0%、PPOは59.3%だった。・PIMが2件以上の場合、Beers基準では全死亡リスクが1.3倍(HR:1.31、95%CI:1.04~1.69)、STOPP基準では1.25倍(HR:1.25、95%CI:1.00~1.55)増加した。PIMが2件以上の場合、非がん死亡リスクの増加とも関連した(両基準とも1.4倍)。・PPOが1件の場合、非がん死亡リスクは1.3倍になった。PPOが2件以上の場合、全死亡リスクは1.8倍、非がん死亡リスクは2倍となった。男性ではより強い関連性が認められた(相互作用p=0.012)。 著者らは「薬剤の過剰処方と必要な薬剤の不足の両方が、高齢者の死亡リスクを著しく増加させていた。これは定期的な薬剤処方見直しの必要性、性別に応じた薬剤ガイドラインの確立、処方問題の特定と是正のためのシステム改善の重要性を示している」としている。

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DPP-4阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にイメグリミン追加が有効~FAMILIAR試験

 食事療法・運動療法・DPP-4阻害薬投与で血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者に対して、イメグリミンの追加により24週までにHbA1c値が有意に低下したことが、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(FAMILIAR試験)の中間解析で示された。川崎医科大学の加来 浩平氏らがDiabetes, Obesity and Metabolism誌2025年6月号で報告した。 FAMILIAR試験は、国内21施設で実施中の二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、2022年6月22日~2023年8月1日に、推奨される食事療法と運動療法およびDPP-4阻害薬単剤療法を順守しているにもかかわらず血糖コントロールが不十分な成人2型糖尿病患者を、イメグリミン群とプラセボ群に無作為に1:1に割り付けた。24週間の二重盲検期間ではイメグリミン1,000mgまたはプラセボを1日2回経口投与、その後の80週間の非盲検期間では全例にイメグリミン1,000mgを1日2回経口投与した。主要評価項目は、24週目におけるHbA1c値のベースラインからの変化であった。ここでは24週までの中間解析(データカットオフ:2023年12月28日)の結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・117例がイメグリミン群(58例、うち65歳以上が33例)とプラセボ群(54例、うち65歳以上が31例)に無作為に割り付けられた(除外5例)。・24週目のHbA1c値の最小二乗平均のベースラインからの変化は、イメグリミン群で-0.65%(標準誤差[SE]:0.11%)、プラセボ群で0.38%(SE:0.11%)で、群間差は-1.02%(95%信頼区間[CI]:-1.33~-0.72、p<0.001)であった。65歳未満ではイメグリミン群で-0.47%(SE:0.17%)、プラセボ群で0.32%(SE:0.18%)で、群間差は-0.79%(95%CI:-1.29~-0.29、p=0.003)、65歳以上ではイメグリミン群で-0.80%(SE:0.14%)、プラセボ群で0.42%(SE:0.14%)で、群間差は-1.22%(95%CI:-1.61~-0.82、p<0.001)であった。・イメグリミン群で1例に軽度の低血糖が発現したが、安全性プロファイルは良好であった。 今回の結果から著者らは、「イメグリミンは、65歳以上の高齢者を含む、DPP-4阻害薬で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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うつ病治療において有酸素運動と組み合わせるべき最適な治療は

 非薬理学的介入としての有酸素運動は、これまでのうつ病治療における有効な補助療法であるといわれている。しかし、有酸素運動による介入に関する包括的な評価は依然として不十分である。中国・海南師範大学のLei Chen氏らは、うつ病患者における有酸素運動と併用したさまざまな治療介入の有効性をシステマティックに評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年7月25日号の報告。 PICOSフレームワークに基づき、2024年6月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Web of Science、Cochrane Library、Embase、Scopus、CNKI、Wanfang、CBMより検索した。スクリーニングおよびデータ抽出は、独立して実施した。ネットワークメタ解析はStata 15.0およびR 4.4.1、バイアスリスクはCochrane Risk of Biasツール、エビデンスの質はCINeMAを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・RCT合計37件(うつ病患者3,362例)をメタ解析に含めた。・5つの有酸素運動との併用治療(電気痙攣療法[ECT]、反復経頭蓋磁気刺激療法[rTMS]、中国伝統医学[TCM]、選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]治療、認知行動療法[CBT])を評価した。・累積順位曲線下面積(AUC)に基づく結果は、次のとおりであった。【ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)】ECT併用>rTMS併用>TCM併用>SSRI併用>CBT併用>理学療法>運動療法>CBT単独>TCM単独>対照療法【ベックうつ病評価尺度(BDI)】SSRI併用>ECT併用>CBT併用>運動療法>CBT単独>対照療法>理学療法【うつ性自己評価尺度(SDS)】TCM併用>CBT併用>対照療法>CBT単独 著者らは「現在のエビデンスでは、うつ病治療における有酸素運動介入の併用は、単独療法よりも優れていることが示唆されている。なかでも、SSRI併用による有酸素運動介入は、強いRCTエビデンスおよび高品質のエビデンスにより評価されており、最も推奨される併用療法であると考えられる。その他の併用療法については、今後の大規模かつ高品質の試験による検証が求められる」と結論付けている。

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心房細動と動脈硬化、MRIで異なる脳血管病変示す/ESC2025

 心房細動(AF)とアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)は、一般集団と比較して脳血管病変の発生率を高める。今回、AF患者は動脈硬化患者と比較して、非ラクナ型脳梗塞、多発脳梗塞、重度の脳室周囲白質病変の発生頻度が高いことが明らかになった。本研究結果はカナダ・マクマスター大学のTina Stegmann氏らが8月29日~9月1日にスペイン・マドリードで開催されたEuropean Society of Cardiology 2025(ESC2025、欧州心臓病学会)の心房細動のセッションで発表し、European Heart Journal誌オンライン版2025年8月29日号に同時掲載された。 本研究は、AF患者と動脈硬化患者の脳MRIによる血管性脳病変の有病率と分布を比較するため、スイスの心房細動コホート研究(Swiss-AF、AF患者を対象)とCOMPASS MIND研究(COMPASS MRIサブ解析、AFのない動脈硬化患者を対象)を実施。ベースライン時点の臨床データと標準化された脳MRIを使用して、ラクナ梗塞と非ラクナ型脳梗塞、脳室周囲および白質高信号(WMH)、微小出血(CMB)の発生率をグループ間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は3,508例(AF群:1,748例、動脈硬化群:1,760例)であった。・平均年齢±SDはAF群73±8歳、動脈硬化群71±6歳、女性比率はそれぞれ28%と23%であった。・AF群の90%は抗凝固療法が行われ、動脈硬化群の93%は抗血小板療法が行われていた。・AF群は動脈硬化群と比較し、非ラクナ型脳梗塞の発生率が高く(22%vs.10%、p<0.001)、一方で動脈硬化群ではラクナ梗塞の発生率が高かった(21%vs.26%、p=0.001)。・AF患者では脳室周囲白質病変の重症度が高く(49%vs.37%、p<0.001)、CMBは、動脈硬化群でより多く認められた(22%vs.29%、p<0.001)。・多変量解析では、AF群は動脈硬化群と比較して、非ラクナ型脳梗塞のオッズ比(OR)が高く(OR:2.28、95%信頼区間[CI]:1.86~2.81、p<0.001)、ラクナ梗塞では低かった(OR:0.66、95%CI:0.56~0.79、p<0.001)。また、重度の脳室周囲白質病変はOR1.42と高かった(95%CI:1.22~1.67、p<0.001)。 研究者らは「これらの知見は、心血管疾患患者での血管性脳病変の発症における疾患特異的なメカニズムを裏付けている」としている。

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肥満手術、SADI-SはRYGBを凌駕するか/Lancet

 2007年以来、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)に代わる肥満治療として、スリーブ状胃切除術+単吻合十二指腸バイパス術(SADI-S)が提案されている。フランス・Hospices Civils de LyonのMaud Robert氏らSADISLEEVE Collaborative Groupは、2年のフォローアップの結果に基づき、肥満治療ではRYGBよりもSADI-Sの有効性が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で多施設共同非盲検無作為化優越性試験「SADISLEEVE試験」を実施。術後2年の時点で、RYGB群と比較してSADI-S群は優れた体重減少効果を示し、安全性プロファイルは両群とも良好であったことを報告した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。超過体重減少率を比較 本研究では、2018年11月~2021年9月にフランスの22の肥満治療施設で参加者を募集して行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、年齢18~65歳、BMI値40以上、またはBMI値35以上かつ1つ以上の肥満関連合併症(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸、変形性関節症)を併発し、初回手術として、またはスリーブ状胃切除術後の再手術として、SADI-SまたはRYGBが予定されている患者であった。スリーブ状胃切除術以外の減量手術歴、炎症性腸疾患、1型糖尿病、未治療のヘリコバクター・ピロリ感染を有するなどの患者は除外した。 被験者を、SADI-Sを受ける群またはRYGBを受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、2年時点での超過体重減少率(%EWL)とした。%EWLは、([2年後受診時の体重-ベースライン体重]/[ベースライン体重-理想体重])×100の式で算出し、理想体重は各参加者のBMI値が25となる体重と定義した。%EWLが有意に良好、優越性を確認 381例を登録し、190例をSADI-S群、191例をRYGB群に割り付けた。全体の平均年齢は44.4(SD 10.64)歳(範囲:20~65)、265例(70%)が女性で、平均BMI値は46.2(SD 6.4)であった。ベースラインで119例(31%)が2型糖尿病、168例(44%)が高血圧、132例(35%)が脂質異常症、262例(69%)が閉塞性睡眠時無呼吸症候群を有しており、79例(21%)がスリーブ状胃切除術を受けていた。 ITT集団における2年時の平均%EWLは、RYGB群が-68.09(SD 28.70)%であったのに対し、SADI-S群は-76.00(26.65)%と有意に良好であり(平均群間差:-6.71%[95%信頼区間[CI]:-12.64~-0.80]、p=0.026)、SADI-S群の優越性の仮説が確証された。 per-protocol解析でも同様の結果が得られ、%EWLはSADI-S群で有意に優れた(平均%EWL:SADI-S群-76.55[SD 25.95]%vs.RYGB群-67.74[28.48]%、平均群間差:-7.39[95%CI:-13.25~-1.54]、p=0.014)。安全性プロファイルも良好 手術関連の早期(≦30日)合併症は、SADI-S群で10例(6%)、RYGB群で3例(2%)に発現し(p=0.042)、それぞれ4例および3例で早期の再手術を要した。また、手術関連の後期(>30日)合併症は、それぞれ18例(10%)および3例(2%)で発現した(p=0.0009)。平均入院期間は4.8日および2.8日(p<0.001)、30日以内の再入院は3例(2%)および5例(3%)(p=0.49)に発生した。 すべての手術患者を含む安全性評価集団における手術手技に関連した重篤な有害事象の発現件数は、SADI-S群で40件(吻合部縫合不全3件、重症下痢8件など)、RYGB群で35件(ヘルニア5件、重症腹痛5件[2件で診断に腹腔鏡検査を要した]など)であった。 著者は、「両群間で重篤な有害事象や合併症の発現に大きな差はなく、綿密なフォローアップを行えば栄養学的な追加リスクは生じない」「SADI-Sは、初回手術として、およびスリーブ状胃切除術後の再手術の選択肢として考慮することができ、とくにスリーブ状胃切除術を受けた経験がなく、2型糖尿病を有する患者において、より大きな体重減少と良好な代謝転帰をもたらすと考えられる」としている。

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9月20日・21日、産業保健の最新動向を学ぶ!日本産業保健法学会【ご案内】

 2025年9月20日(土)~21日(日)、北里大学(東京・港区)を会場に、日本産業保健法学会第5回学術大会が行われる。全体テーマは、「AIと産業保健法:DX時代の多様化した産業保健と法」。AIのビジネスへの本格的な普及を鑑み、健康診断やストレスチェックシステムの一元化、健康情報の効率的管理・可視化等による業務効率向上などをテーマに、さまざまなシンポジウムが開催される。産業医、産業医志望者にとって、最新の事例や研究にふれるチャンスとなる。 開催概要は以下のとおり。【日時】現地開催日:2025年9月20日(土)・21日(日)オンデマンド配信:2025年10月1日(水)~31日(金)【会場】北里大学 白金キャンパス【開催形式】ハイブリッド開催(現地開催、ライブ配信、オンデマンド配信)(一部、オンライン配信[ライブ&オンデマンド]なしのプログラムあり)【主なプログラム】・メインシンポジウム/デジタルヘルスが産業保健にもたらすパラダイムシフトと法・シンポジウム1/高年齢労働者の安全・健康確保と法・シンポジウム3/職場におけるデジタルヘルスへの期待・課題と法 ~ウェアラブルデバイスの仮想事例から考察する~・シンポジウム4/生成AIは私たちの認知にどのようなインパクトを与えるか ~法政策への示唆を考える~・シンポジウム8/データ活用による健康経営推進と法的課題・模擬裁判/双極性障害からの総合職正社員としての復帰要求と一般職スタッフとしての復帰提案、賃金減額可否・事例検討/どうすればよかったのか? -自殺完遂事例に見る手続的理性と労働者保護のあり方を考える-【参加申し込み】10月27日(月)まで(事前登録制、当日受付なし)【参加登録費】会員:1万円(学生3,000円)非会員:1万2,000円詳細・申し込みはこちら

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厳格な血圧コントロールは心臓の健康だけでなく費用対効果も改善

 厳格な血圧コントロールは心血管疾患のリスクが高い患者の健康だけでなく、医療費の費用対効果にも良い影響をもたらすことが、新たな研究で示された。収縮期血圧(SBP)の目標値を120mmHg未満に設定することは、それよりも高い目標値を設定する場合と比べて、より多くの心筋梗塞や脳卒中、心不全、そのほかの心疾患の予防につながるほか、費用対効果もより優れていることが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のKaren Smith氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月19日掲載された。 論文の筆頭著者であるSmith氏は、「この研究は、心血管リスクが高い患者やその診療に当たっている医師にとって、厳格な血圧目標値の達成に向けて取り組むことにさらなる自信を与えるはずだ」とマス・ジェネラル・ブリガム(MGB)のニュースリリースの中で述べている。また同氏は、「われわれの研究結果は、SBPが120mmHg未満という厳格な目標値が、より多くの心血管イベントを予防し、かつ費用対効果も優れていることを示唆している。さらに、このことは測定値が必ずしも完璧でない場合でも当てはまる」と説明している。 現行の血圧管理のガイドラインでは、SBPが130mmHg以上の場合を高血圧と定義している。米国心臓協会(AHA)によると、正常血圧はSBPが120mmHg未満であり、120~129mmHgの場合は血圧上昇とされている。 Smith氏らはこの研究で、画期的な臨床試験として知られるSystolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT)などの既存の臨床試験や文献のデータ(2013~2018年)を収集・統合した。その上で、そのデータを用いて、50歳以上の心血管疾患のリスクが高い患者がSBPの目標値を、1)120mmHg未満、2)130mmHg未満、3)140mmHg未満に設定した場合の生涯にわたる心臓の健康リスクをシミュレーションした。また、降圧薬による重度の副作用のリスクや、日常的な血圧測定における一般的な誤差も考慮に入れた。 その結果、血圧測定値に誤差が含まれていても、SBPの目標値を120mmHg未満に設定する方が、130mmHg未満に設定する場合よりも多くの心血管疾患を予防できることが示された。一方、降圧の目標値をより厳格に設定することで、処方薬や通院回数が増え、医療費も高くなり、また転倒や腎障害、低血圧、徐脈など治療関連の有害事象の発生頻度も高まることが明らかになった。それでもなお、目標値を120mmHg未満に設定することは、目標値をより高く設定した場合と比べて費用対効果に優れていた。例えば、目標値を120mmHg未満とすることは、質調整生存年(QALY)1年当たり4万2,000ドル(1ドル147円換算で約617万円)のコストと関連していたが、この額は130mmHg未満を目標とした場合と比べてわずか1,300ドル(同約19万円)高いだけであった。 ただしSmith氏は、「降圧薬に伴う有害事象のリスクを考慮すると、厳格な血圧コントロールが全ての患者に適しているとは言えない」と述べ、慎重な解釈を求めている。さらに同氏は、「患者の希望に基づき、患者と医師が協力して適切な治療強度を見極めることが重要だ」と強調している。

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オメガ3脂肪酸が小児の近視抑制に有効?

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸(以下、オメガ3脂肪酸)には、心臓病、認知症、一部のがんのリスク低下など、健康に対するさまざまな潜在的効果のあることが示されているが、小児の近視の発症を防ぐのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。香港中文大学(中国)眼科学分野教授のJason Yam氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Ophthalmology」に8月19日掲載された。 近視は、目の形状により、入射光線が目の奥にある光を感じる視細胞の壁である網膜に到達できないときに発生する。近視の罹患率は世界的に上昇傾向にあり、予防戦略を策定するためには食事などの修正可能なリスク因子を特定する必要がある。これまでの動物実験では、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が、脈絡膜の血流と強膜の低酸素状態を調節することで近視の進行を抑制する可能性のあることが示唆されている。脈絡膜は網膜の外側の血管が豊富な膜のことであり、強膜は眼球の白目の部分のこと。オメガ3脂肪酸は、主に油の多い魚に含まれているが、一部の種子やナッツにも含まれている。 Yam氏らは今回、香港で行われたより大規模な眼科研究からランダムに選ばれた6〜8歳の小児1,005人(平均年齢7.64歳、男児52.1%)を対象に、食事からのオメガ3脂肪酸摂取やその他の食事因子と近視との関連を検討した。対象児の食事内容を妥当性が確認されている食事摂取頻度調査法を用いて評価し、オメガ3脂肪酸の摂取量に基づき対象児を4群に分類した。オートレフラクトメータで測定した調節麻痺下の等価球面度数(SE)と、IOLマスターを用いて測定した眼軸長(AL)により、近視の有無や程度を評価した。ALは黒目の表面から網膜までの長さであり、長くなり過ぎると近視、短くなり過ぎると遠視の状態になる。一方、SEは目の屈折状態を数値で表す指標であり、近視だとマイナスの値、遠視だとプラスの値となる。 対象児のうち276人(27.5%)が近視であった。解析の結果、4群の中でALが最も長いのはオメガ3脂肪酸の摂取量が最も少ない群での23.29mmであり、年齢や性別、BMI、近距離での作業時間、屋外で過ごす時間、親の近視歴を調整後も、最も多い群(23.08mm)との差は有意であった(P=0.01)。また、SEについても同様の傾向が見られ、最も少ない群で−0.13D(ディオプター)、最も多い群で0.23Dであった(P=0.01)。一方、バター、パーム油、赤肉などに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べてALが有意に長く(23.30mm対23.13mm、P=0.05)、飽和脂肪酸が近視リスクを高める可能性のあることも示唆された。その他の栄養素と近視の間に関連は認められなかった。 Yam氏は、「これらの結果は、オメガ3脂肪酸が近視の発症を防ぐ潜在的な食事因子であることを浮き彫りにしている」と結論付けている。同氏らは、オメガ3脂肪酸が目の血流を増加させ、健康な目の発達を促進することで近視を防ぐのではないかと推測している。

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第259回 75歳以上の医療費負担が10月から増加 300万人に影響/厚労省

<先週の動き> 1.75歳以上の医療費負担が10月から増加 300万人に影響/厚労省 2.新型コロナワクチン、接種費用は最大1万5千円で定期接種10月開始へ/厚労省 3.「睡眠障害内科」の標榜科を新設へ議論開始/厚労省 4.美容医療広告に違反横行 GLP-1ダイエット拡大で健康被害の懸念/厚労省 5.江別谷藤病院の給与未払い、釧路にも波及 職員無給で診療継続/北海道 6.県立こども病院で電子カルテ撮影・送信 20代看護師を停職処分/長野県 1.75歳以上の医療費負担が10月から増加 300万人に影響/厚労省10月1日から、75歳以上の後期高齢者の一部で外来医療費の自己負担が実質的に増える。2022年10月以降、「一定以上の所得」がある高齢者は負担割合が1割から2割に引き上げられていたが、急な負担増を抑えるために導入された「配慮措置」(外来での負担増を月3,000円までに抑制)が9月末で終了する。これにより、たとえば5万円の医療費の場合、これまで窓口支払いは8,000円で済んでいたものが、10月からは1万円の2割負担を全額支払うことになる。対象は後期高齢者の約20%、全国で380~390万人とされ、その大半が今回の影響を受ける。財政背景として、後期高齢者医療制度は患者負担以外に公費が5割、現役世代からの支援金が4割を占め、医療費の膨張に伴い現役世代の負担が重くなっている。2023年度の支援金は7兆1,059億円と過去最高を記録し、制度の持続には高齢者の応分負担が避けられない状況。今後、政府は、3割負担の対象拡大や介護保険での負担増も検討しており、今回の配慮措置終了は「改革の試金石」と位置付けられている。医療現場にとっては、患者からの負担増に関する問い合わせが急増することが予想される。厚労省は医療機関に対し、診療報酬請求の円滑化に向けたレセプトコンピュータ改修を呼びかけるとともに、疑問が生じた場合には2026年3月末まで設置される専用コールセンターに問い合わせるよう要請している。とくに高齢患者では、治療継続への不安や通院控えが生じる可能性もあり、疾患の悪化を防ぐためにも医師主導の情報提供と適切なフォローアップが欠かせない。制度改正を背景に、診療現場には医療の質を保ちながら患者の生活を支える視点がいっそう求められている。 参考 1) 75歳以上、来月から医療費負担増 窓口2割の300万人 現役負荷抑制 改革の試金石に(日経新聞) 2) 高齢者の医療費、2割全額負担 10月から軽減措置撤廃(同) 3) 後期2割負担の配慮措置終了で「レセコン改修を」厚労省が呼び掛け 診療報酬請求の円滑化で(CB news) 2.新型コロナワクチン、接種費用は最大1万5千円で定期接種10月開始へ/厚労省厚生労働省は9月5日、新型コロナウイルスワクチンの定期接種に用いる製品を5種類に決定した。対象は65歳以上の高齢者と基礎疾患を有する60~64歳で、実施期間は2025年10月1日~2026年3月末まで。今回使用されるのは、米国ファイザー・米国モデルナ・第一三共のmRNAワクチン、武田薬品工業の組み換えタンパクワクチン、Meiji Seikaファルマの「レプリコン」ワクチン(細胞内でmRNAが複製される新型製剤)の計5製品で、いずれも昨年度に使用実績があるもの。標的はオミクロン株の「LP・8・1」と「XEC」だが、国内流行中の変異株「ニンバス」に対しても効果が期待されるとしている。接種費用は1回当たり約1万5,000円が見込まれているが、国による助成(8,300円/回)は昨年度で終了した。本年度は自治体独自の補助に限られ、自治体によっては自己負担額が増える可能性もある。定期接種の対象外となる人は、原則全額自己負担となる点も留意が必要である。医療現場にとっては、(1)対象者の確認(年齢・基礎疾患の有無)、(2)ワクチンの種類ごとの特徴や接種スケジュールの説明、(3)自己負担に関する事前の情報提供、が求められる。とくに高齢患者からは「どのワクチンを選べばよいか」「費用はいくらかかるか」といった質問が想定されるため、最新情報を把握し、自治体の補助制度と合わせてわかりやすく伝えることが重要である。また、定期接種対象外であっても希望する患者に対しては、全額自己負担となるため、感染リスクや効果・副反応を踏まえた意思決定支援が必要になる。今回の決定は、感染の再拡大が懸念される冬季に向けた備えと位置付けられる。医師には、患者への丁寧な説明と同時に、接種体制やワクチン在庫管理を含む運営面での調整も期待されている。 参考 1) 新型コロナワクチンの接種について(厚労省) 2) コロナ定期接種に5製品 変異株「ニンバス」にも効果期待 10月1日から、厚労省(産経新聞) 3) コロナワクチン定期接種、5製品の使用決定 10月から 厚労省(毎日新聞) 3.「睡眠障害内科」の標榜科を新設へ議論開始/厚労省厚生労働省は9月4日、医道審議会診療科名標榜部会で、医療機関が掲げられる標榜診療科に「睡眠障害」を追加するか検討を開始した。標榜診療科の追加は、2008年の規制緩和以来初めてとなる見通しで、2026年3月ころの取りまとめを予定している。背景には、日本人の睡眠時間が国際的に最短水準であり、5人に1人が十分な休養を取れていないという状況がある。睡眠障害は高血圧、糖尿病、肥満など生活習慣病リスクを高め、事故や労働生産性低下にもつながるとされ、経済損失はGDPの約3%、年15兆円規模との試算もある。現在、睡眠障害の診療は精神科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科など多岐にわたり、患者にとって受診先がわかりにくいことが課題とされてきた。日本睡眠学会は「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」といった標榜を可能にするよう厚労省に要望し、理事長の内村 直尚氏(久留米大学長)は「診療科名が明示されればアクセスが改善し、早期診断・治療を通じて国民の健康増進に寄与できる」と強調した。学会は、標榜追加に必要な「独立性」「国民ニーズ」「わかりやすさ」「知識の普及」の4条件を満たすと説明している。医療側にとっては、新たな標榜が実現すれば患者からの期待が高まり、より明確な診療体制と説明責任が求められる。すでに精神科・内科・耳鼻科などで睡眠障害の診療は行われているが、診療科名として標榜する医療機関の受診者は「専門的な対応」を期待することになる。このため、医師は最新の診断や治療法に関する知識のアップデートが求められる。その一方、地域での診療連携や専門機関との協力体制をどう整えるかが今後の課題となる。 参考 1) 第6回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会[資料](厚労省) 2) 診療科名に「睡眠障害」を加えるか検討開始 厚生労働省の医道審議会部会(産経新聞) 3) 「睡眠障害」を診療科追加へ議論 厚労省部会 5人に1人が眠り不十分(毎日新聞) 4) 不眠大国ニッポン ぐっすり眠れてますか? 9月3日は「睡眠の日」(同) 5) 診療科名「睡眠障害内科」可能に、厚労省部会が初の追加を議論(日経新聞) 4.美容医療広告に違反横行 GLP-1ダイエット拡大で健康被害の懸念/厚労省美容医療を巡る広告トラブルが全国で急増している。とくに糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬」を用いた「GLP-1ダイエット」は、痩せ願望の強い若年女性を中心に広がり、低体重の人がさらに痩せようとする傾向も指摘される。健康被害への懸念が強まるなか、厚生労働省はネット広告の監視を強化している。厚労省によると、2023年度に確認された美容医療関連の広告違反は362サイトで計2,888ヵ所。全体では1,098サイト6,328ヵ所に上り、医療広告分野で最多となった。内容はリスクや副作用の説明が不十分な自由診療の宣伝が目立ち、「必ず痩せる」「満足度99%」など虚偽や誇大表現も横行している。SNSでのビフォーアフター写真や体験談の掲載、有名人利用を強調する手法も規制対象となるが、実際には多くが違反に該当している。実際に都内の30代女性は「痩せる注射」と宣伝された施術を5回受けたが効果はなく、高熱の副作用に苦しんだ。それでも返金は拒否され「だまされた気持ち」と悔しさを語る。国民生活センターへの相談も2023年度は約5,500件に達し、契約トラブルや副作用被害が後を絶たない。厚労省は医療機関に対し、効果には個人差があること、費用や解約条件を丁寧に説明するよう要請。さらにネットパトロールを拡大し、自治体と連携した改善要請や行政指導を強める方針だ。ただ立ち入り検査に消極的な自治体も多く、対応にばらつきが残るのが課題となっている。専門家は「SNSを通じた、偏った情報が女性の健康観に影響を与えている」と警鐘を鳴らし、国には具体的な指導事例の集約と実効性ある取り締まりが求められる。一方で、患者自身も広告を見極める「ヘルスリテラシー」を高めることが不可欠とされ、社会全体での啓発が急務となっている。 参考 1) 美容医療広告のトラブル多発 低体重でも「痩せ願望」強い女性に糖尿病薬のリスク説明不足(産経新聞) 2) 「必ず手術成功」「満足度99%」など違法な医療広告が横行…「違反」1,000サイト超、厚労省確認(読売新聞) 3) “ビフォーアフター写真の加工”“体験談の掲載”はNG!「美容医療広告のルール」を専門家が解説(TOKYO FM) 4) 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書[第5版](厚労省) 5.江別谷藤病院の給与未払い、釧路にも波及 職員無給で診療継続/北海道北海道江別市と釧路市で医療法人社団「藤花会」が運営する江別谷藤病院、釧路谷藤病院など複数の病院で、医師や職員約300人分の給与が7月から2ヵ月連続で支払われていないことが明らかになった。経営悪化が背景にあり、資材や人件費の高騰が要因とされる。未払いは非常勤を除くほぼ全職員に及び、江別谷藤病院ではすでに10人以上が退職届を提出。9月5日からは患者の受け入れを縮小する事態となっている。江別谷藤病院は1969年開設、病床数122床の中核病院で、夜間・休日の当番病院も担う。しかし、給与未払いが続く中、職員は「患者や仲間のため」と無給で診療を継続している。理事長の谷藤 方俊氏は「経営的な問題が原因」と説明し、「できる限り早期に未払い分を全額支給し、法人の再建に取り組む」とコメントした。地元医師会も「説明がないまま混乱している」と困惑を示し、弁護士は「職員は職業倫理から働き続けているが、地域社会全体で解決に踏み込む必要がある」と指摘する。江別市民からも「将来の診療体制が心配」と不安の声が広がる。当初は江別谷藤病院の問題として報じられたが、同法人が運営する釧路谷藤病院にも同様の給与未払いが波及。法人全体の経営危機が浮き彫りとなった。今後、さらなる退職者増や医療体制の縮小が懸念されており、地域医療の持続性が問われている。 参考 1) 北海道の病院で給料2ヵ月未払い 医師や職員など300人分(共同通信) 2) 「無給でも患者のため」給与未払い2カ月連続 江別谷藤病院で異例事態「地域社会全体で踏み込まなくては」(HTBニュース) 3) 江別谷藤病院、釧路谷藤病院などで2か月分の給与未払い 資材や人件費高騰で経営悪化 江別では5日から患者の受け入れ縮小(北海道新聞) 6.県立こども病院で電子カルテ撮影・送信 20代看護師を停職処分/長野県長野県安曇野市の県立こども病院に勤務する20代の女性看護師が、患者の電子カルテ画面をスマートフォンで撮影し、通信アプリ「LINE」で知人に送信していたことが明らかとなり、県立病院機構は9月4日付で停職1ヵ月の懲戒処分を科した。看護師は2025年4月、勤務先についての会話の中で患者一覧画面を撮影。画面には診療科や氏名を含む24人分の情報が表示されていたが、氏名や病棟名は黒塗りにして送信していた。現時点で患者個人が特定される情報漏洩は確認されていない。7月に県へ通報があり、病院側が調査を実施し、8月に本件事実を公表した。本人は「職場の実情を知ってもらい、看護師としての苦労を理解してほしかった」と説明し、深く反省している。この事案を受け、病院機構は監督責任として院長と看護部長を厳重注意処分とした。機構は「再発防止に努め、研修や教育を強化する」と表明し、個人情報保護の徹底を改めて職員に求めている。今回のケースでは患者特定に至る被害は確認されていないものの、電子カルテを私的に撮影し、外部へ送信する行為は重大なリスクを伴い、医療現場全体の信頼を損ねかねない。情報セキュリティの観点からも、スタッフ教育と組織的な管理体制の強化が改めて課題として浮き彫りとなった。 参考 1) 職員による情報漏えい事故が発生しました(長野県立こども病院) 2) 電子カルテの一部を外部に漏洩 県立こども病院の20代看護師を懲戒処分(長野朝日放送) 3) 「看護師としての苦労を分かってもらいたかった」 長野県立こども病院の20代女性看護師が電子カルテを撮影し通信アプリで知人に送信 停職1カ月の処分(長野放送)

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大阪公立大学(OMU) 肝胆膵外科【大学医局紹介~がん診療編】

石沢 武彰 氏(教授)西村 貞德 氏(病院講師)安田 拓斗 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴私たちの医局では、「がんを光らせる」ことで術中ナビゲーションを可能にする研究から出発し、現在では膵液など肝胆膵外科特有の体液を活用した、臨床応用が期待される診断・治療法の開発にも取り組んでいます。さらに、がん微小環境や免疫応答といった分子レベルの解析まで視野を広げ、臨床と基礎の両面から肝胆膵がん治療の革新を目指しています。患者さんの“その先”の未来に貢献するための研究と医療を一体となって進められることが、当医局の大きな魅力です。医局の年齢層は非常に若く、全国の肝胆膵外科の中でも最も若手が多い組織の1つであり、活気と柔軟な発想にあふれた雰囲気の中、若手でも自由に意見を出し合い、主体的に臨床・研究に取り組むことができます。開腹手術からロボット支援手術まで幅広い技術を習得し、将来的には国内外で活躍できる実力を養うことが可能です。海外臨床留学・研究留学にも積極的に取り組んでおり、視野を世界に広げたキャリア形成も後押しします。「外科医としての腕も、研究者としての視野も鍛えたい」——そんな熱い想いを持った仲間を、私たちは心から歓迎します!医局の雰囲気、魅力医局員の年齢層は若手中心で、40歳前後がほぼ上限というフレッシュな雰囲気です。肝臓・胆道・膵臓の各領域で、独自の手術ビデオカンファレンスや症例カンファレンスを月1回開催。成功した工夫や課題となった点を率直に共有し、教授やsupervisorのフィードバックを受けながら全体の底上げを図っています。和気あいあいとしながらも互いに高め合う環境が整っており、若手がのびのびと力を発揮できる医局です。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力当医局では、基礎研究で海外留学の経験を持つ若手3人を中心に、がん研究を力強く推進しています。手術技術の向上はもちろん、「外科医だからこそできる研究」をモットーに、臨床と基礎を往復するテーマに日々挑戦! 月1回のリサーチカンファレンスでは、各自のアイデアをぶつけ合い、時には白熱した議論が展開され、毎回新しい発想が生まれています。年1回の海外学会発表を目標に、イメージング研究をはじめ最先端のテーマに取り組みながら、今最も勢いのある研究環境の1つで、共に切磋琢磨できることが大きな魅力です。一緒に世界へ挑みましょう!同医局を選んだ理由外科専攻医としての2年間、市中病院で消化管や肝胆膵をはじめとする多様な手術に携わる機会をいただき、腹腔内臓器のスペシャリストを目指したいという強い思いを抱くようになりました。さらに肝胆膵領域を含む数多くのがん患者と向き合う中で、手術のみならず集学的治療や最新の研究成果を踏まえた治療にも深く関わりたいと考え、当院肝胆膵外科の医局に入局を決意いたしました。現在は大学院生として、手術・病棟業務に加えて研究活動にも従事し、非常に充実した日々を送っております。現在学んでいること外科医としては、肝胆膵外科手術や術後管理に携わると同時に、ビデオカンファレンスなどを通じて技術の向上を目指しています。また大学院生としては、手術検体由来の培養細胞を用いたin vitro試験や、患者腫瘍をマウスに移植するPatient-derived xenograftsを使用したin vivo実験を行い、臨床に直結するトランスレーショナル・リサーチに取り組んでおります。臨床医としての視点を研究に反映できる貴重な経験を得ていると実感しています。研修医・外科専攻医へのメッセージ当科には、豊富な臨床経験と確かな研究実績(基礎研究を含む)を兼ね備えた医師が数多く在籍しており、臨床と研究の双方を深く学ぶことができる恵まれた環境があります。共に研鑽を積み、高みを目指していきましょう。大阪公立大学大学院医学研究科 肝胆膵外科学住所〒545-8585 大阪府大阪市阿倍野区旭町1-4-3問い合わせ先gr-med-kantansui@omu.ac.jp医局ホームページ大阪公立大学大学院医学研究科 肝胆膵外科学 活動紹介大阪公立大学大学院医学研究科 外科学講座専門医取得実績のある学会日本外科学会日本消化器外科学会日本消化器病学会日本肝胆膵外科学会日本肝臓学会日本内視鏡外科学会研修プログラムの特徴(1)外科専門医取得を見据え、3年間を通じた段階的な研修構成1年目は附属病院の基幹施設で「心・大血管」「呼吸器」「乳腺」「小児」「消化器外科」をローテーションし、幅広く見識を広げながら手術経験を積んでいきます!2〜3年目は38の連携施設で研修を継続し外科専門医に必要な「手術経験350例(うち執刀120例)」をしっかりクリアできる安心のカリキュラム! 3年目以降は自分の希望に合わせてサブスペシャリティを重点的に学べます!(2)将来のキャリア形成支援および多様な背景への対応修了後は、専門医取得・大学院進学・連携病院勤務など、幅広いキャリアパスを用意。さらに、女性医師の復帰支援や、他大学出身者の近畿圏復帰も大歓迎! みんなのバックグラウンドに合わせて柔軟に対応します!詳細はこちら

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事例31 メマンチン塩酸塩錠の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、院外処方箋にて投与した「メマンチン塩酸塩錠」が、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。この通知は「突合点検結果連絡書」にて届きました。同連絡書は、医科と調剤のレセプト内容を照らし合わせて薬剤などが査定対象となる場合に使用されます。「当院に責がある場合には、調剤薬局にて調剤済みの薬剤料を当院の診療報酬から相殺する」との連絡書です。当院に責がないと判断できる場合は、同文書を「処方箋内容不一致連絡書」として異議申し立てを行います。異議申し立てが認められれば、医療機関からの診療報酬の相殺は行われません。そのために、この帳票で連絡があった場合には、必ず査定原因を調べることにしています。最初に「メマンチン塩酸塩錠」の添付文書を調べてみました。添付文書に記載された効能または効果には、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」とあります。レセプト傷病名欄には、「アルツハイマー型認知症」とあり、レセプト内にコメント記載はありませんでした。また、支払基金が公表している査定情報の「一般的取り扱い」にヒントはないかと調べてみました。276番に「メマンチン塩酸塩錠」の記載があり「アルツハイマー型認知症」は認められない病名には該当していませんでした。一見、問題はないようにみえます。同じく277番には、「維持量(有効用量)まで増量しない継続投与は、原則として認められる」とあり、投与も適正と考えられます。もう一度、添付文書をみてみました。効能または効果に「中等度及び高度」の文字があります。レセプト記載は「アルツハイマー型認知症」のみでした。これでは「重症度」の判断がつきません。そのために、「解釈上、補足がない場合は一番軽いものとみなす」という原則が適用され、「中等度及び高度」の状態にはないとみなされ、適応外になったものと推測ができます。医師には「メマンチン塩酸塩錠」の投与時には、病名に「重症度」の記載をお願いしました。今回は、「中度」であったことがわかるカルテ記載を添付して再審査請求を行ったところ復活しています。査定対策として、レセプトチェックシステムに「メマンチン塩酸塩錠」処方時には「重症度」の入力がないと指摘があるように登録しました。

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英語で「MRI」を説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第32回

医学用語紹介:MRI「MRI」は医療現場では頻繁に行われる画像検査です。日本でもMRIと言って患者さんに通じる場合もありますが、ぴんとこない方もいますよね。では、英語の場合、どのように説明すればよいでしょうか?講師紹介

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全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。 本書は高血圧患者(140/90mmHg以上)のほか、高値血圧(130~139/80~90mmHg)、血圧上昇に伴い脳心血管リスクが高まる正常高値血圧以上(120/80mmHg以上)のすべての人を対象に作成され、Clinical Question(CQ)全19項目が設けられた。主な改訂点は(1)降圧目標を合併症などを考慮し全年齢「130/80mmHg」*へ、(2)降圧薬選択におけるβ遮断薬の復活、(3)治療の早期介入と治療ステップ、(4)治療アプリの活用など。各パラグラフで詳細に触れていく。*診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満個別性に配慮し、全年齢で130/80mmHg未満を目指す 日本高血圧学会は2000年から四半世紀にわたってガイドラインを作成し、高血圧の是正問題に力を入れてきた。しかし、高所得国における日本人の高血圧有病率は最も不良であり、昨今の罹患率は2017年の推計値とほぼ同等の4,300万例に上る1)。そこで、今回の改訂では、国民の血圧を下げるために、“理論でなく行動のためのもの、シンプルでわかりやすい、エビデンスに基づくもの”という理念を基に、正常血圧の基準(120/80mmHg未満)や、高血圧の基準(140/90mmHg以上)などの数値は欧米のガイドラインを踏まえて据え置くも、JSH2025作成のために実施されたシステマティック・レビューならびにメタ解析の結果から脳心血管病発症リスクを考慮し、「原則的に収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする」とした(第2部 5.降圧目標[p.67~69]、CQ4、8、9、12、14参照)。 これについて大屋氏は「降圧目標130/80mmHg。これが本改訂で押さえておくべき値である。前版の『高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)』では75歳以上の高齢者、脳血管障害や慢性腎臓病(蛋白尿陰性)を有する患者などは有害事象の発現を考慮して140/90未満と区別していた。しかし、これまでの国内外の研究からも高値血圧(130~139/80~89mmHg)でも心血管疾患の発症や死亡リスクが高いことから、高血圧患者であれば、120/80mmHg以上の血圧を呈するすべての者を血圧管理の対象とする。また、降圧目標も75歳以上の高齢者も含めて、診察室血圧130/80mmHg未満に定めることとした。ただし、大屋氏は「一律に下げるのではなく、副作用や有害事象に注意しながら個別性を考慮しつつ下げる」と注意点も強調している。 JSH2019発刊後も高血圧の定義が140/90mmHg以上であるためか、降圧目標をこの値に設定して治療にあたっている医師が少なくない。「130/80mmHg未満を目標に、血圧レベルや脳心血管病発症の危険因子などのリスクを総合的に評価し、個々に応じた治療計画を設定することが重要」と同氏は繰り返し強調した。苅尾氏も「とくに朝の血圧上昇がさまざまなリスク上昇に影響を及ぼしているにもかかわらず、一番コントロールがついていない。ガイドライン改訂と血圧朝活キャンペーンを掛け合わせ、朝の血圧130未満の達成につなげていく」と言及した。β遮断薬の処方減に危機感 高血圧に対する治療介入は患者を診断した時点が鍵となる。まず治療を行うにあたり、脳心血管病に対する予後規定因子(p.65、表6-1)を基に血圧分類とリスク層別化(同、表6-2)を行い、そのリスク判定を踏まえて、初診時血圧レベル別の高血圧管理計画(p.67、図6-1)から患者個々の血圧コントロールを進めていく。実際の処方薬を決定付けるには、主要降圧薬の積極的適応と禁忌・重要な注意を要する病態(p.95、表8-1)、降圧薬の併用STEPにおけるグループ分類(p.95、表8-2)を参考とする。今回の改訂では積極的適応がより具体的になり、脳血管障害はもちろん、体液貯留や大動脈乖離、胸部大動脈瘤の既往にも注意を払いたい。 そしてもう1つの変更点は、降圧薬のグループ分類が新設されたことである。「治療薬の選択については、β遮断薬を除外した前回の反省点を踏まえ、単剤でも脳心血管病抑制効果が示されている5種類(長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬)を主要降圧薬(グループ1、以下G1降圧薬)に位置付けた(表8-2)」と大屋氏は説明。とくにβ遮断薬の考え方について、「JSH2019では糖尿病惹起作用や高齢者への適応に関してネガティブであったが、それらの懸念は一部の薬剤に限るものであり、有用性と安全性が確立しているビソプロロールとカルベジロールの使用は推奨される。また、耐糖能異常を来す患者への投与について、前版では慎重投与となっていたが重要な注意の下で使用可能な病態とした」とし、「各薬剤の積極的適応、禁忌や注意すべき病態を考慮するために表8-1を参照して処方してほしい。もし積極的適応が表8-1にない場合には、コラム8-1(p.96)のアドバイスを参考にG1降圧薬を選択してもらいたい」ともコメントした。 また、治療を進めていく上では図8-1の降圧薬治療STEPの利用も重要となる。G1降圧薬の単剤投与でも効果不十分であれば2剤併用やG2降圧薬(ARNI、MR拮抗薬)の処方を検討する。さらに降圧目標を達成できない場合にはG1・G2降圧薬から3剤併用を行う必要がある。ただし、それでも効果がみられない場合には、専門医への紹介が考慮される。 なおMR拮抗薬は、治療抵抗性高血圧での追加薬として有用であることから、実地医家の臨床上の疑問に応える形でクエスチョンとしても記されている(p.181、Q10)。薬物療法は診断から1ヵ月以内に 続いて、大屋氏は治療介入のスピードも重要だとし、「今改訂では目標血圧への到達スピード(薬物投与の時期)も押さえてほしい」と話す。たとえば、低・中等リスクなら生活習慣の改善を実施して1ヵ月以内に再評価を行い、改善がなければ改善の強化とともに薬物治療を開始する。一方、高リスクであれば生活習慣の改善とともにただちに薬物療法を開始するなど、降圧のスピードも考慮しながらの管理が必要だという。 ただし、急性腎障害や症候性低血圧、過降圧によるふらつき、高カリウム血症などの電解質異常といった有害事象の出現に注意が必要であること、高齢者のなかでもフレイルや要介護などに該当する患者の対応については、特殊事例として表10-4に降圧指針(p.151)が示されていることには留意したい。利用者や対象者を明確に、血圧管理にアプリの活用も 本書の利用対象者は多岐にわたるため、各利用対象を考慮して3部構成になっている。第1部(国民の血圧管理)は自治体や企業団体や一般市民など、第2部(高血圧患者の管理・治療)は実地医家向け、第3部(特殊な病態および二次性高血圧の管理・治療)は高血圧、循環器、腎臓、内分泌、老年の専門医療に従事する者やその患者・家族など。 新たな追加項目として、第7章 生活習慣の改善に「デジタル技術の活用」が盛り込まれた点も大きい。高血圧治療補助アプリは成人の本態性高血圧症の治療補助として2022年9月1日に保険適用されている。苅尾氏が降圧目標達成に向けた血圧管理アプリの利用について、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針が発刊されているが、その内容が本ガイドラインに組み込まれた(CQ7)。その影響は大きい」ともコメントしている。現在、日本高血圧学会において、製品概要や使用上の注意点を明記した『高血圧治療補助アプリ適正使用指針(第1版)』を公開している。 同学会は一般市民への普及にも努めており、7月25日からはYouTubeなどを利用した動画配信を行い、血圧目標値130/80mmHgの1本化についての啓発を進めている。あわせてフェイク情報の拡散問題の解決にも乗り出しており、大屋氏は「フェイク情報を放置せず、正確な情報提供が必要だ。本学会からの提言として、『高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~』を学会ホームページならびに本書の付録(p.302)として盛り込んでいるので、ぜひご覧いただきたい」と締めくくった。

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HR+/HER2+転移乳がんへのパルボシクリブ+トラスツズマブのOS(PATRICIA)/ESMO Open

 HR+/HER2+転移乳がんに内分泌療法を併用または非併用でパルボシクリブ+トラスツズマブの有効性を検討した第II相PATRICIA試験の結果、最終的な全生存期間(OS)中央値は29.8ヵ月であったことを、スペイン・SOLTI Cancer Research GroupのTomas Pascual氏らが報告した。また、バイオマーカー分析の結果についても報告した。ESMO Open誌2025年9月1日号に掲載。 本試験は、2015年7月~2018年11月に患者を登録し、スペインの17施設で実施された研究者主導の多施設共同非盲検第II相試験である。対象は、トラスツズマブ治療歴があり、2~4レジメンの治療後に病勢進行が認められた閉経後HER2+転移乳がん患者で、ER-症例はコホートA(パルボシクリブ+トラスツズマブ)、ER+症例はコホートB1(追加治療なし)またはコホートB2(レトロゾール)に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師による6ヵ月時点の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はOSと長期PFSであった。 主な結果は以下のとおり。・本試験には71例が登録され、コホートAに15例、B1に28例、B2に28例が登録された。・OS中央値は29.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:20.9~38.0)、4年OS率はコホートAが13.3%、B1が35.7%、B2が32.3%であった。・OSは、PAM50のLuminalタイプが38.0ヵ月で、非Luminalタイプ(26.6ヵ月)より良好であった。・探索的バイオマーカー分析では、Luminal関連遺伝子が長期の生存と関連した一方、Basal -likeおよび増殖関連遺伝子は耐性と関連していた。・Luminal A、Luminal B、化学内分泌(CES)スコア高値では予後は良好であった。 著者らは、「本結果は、HER2+乳がんにおける遺伝子発現プロファイリングの関連を強調し、バイオマーカー主導の患者選択を支持している。また、本試験の長期成績は、HR+/HER2+転移乳がんにおける化学療法以外の可能性を実証するものだ」と結論している。

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男女間におけるレビー小体とアルツハイマーにおける認知機能低下の違い

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのMadeline Wood Alexander氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(LBD)の神経病理および認知機能低下に対する性別や閉経年齢の影響を調査した。Annals of Neurology誌オンライン版2025年7月11日号の報告。  Rush Alzheimer's Disease Centerの3つのコホート(Religious Orders研究、Rush Memory and Aging Project、Minority Aging Research研究)およびNational Alzheimer's Coordinating Centerの神経病理データセットを用いて、分析を行った。LBD(大脳新皮質/辺縁系型vs.非大脳新皮質型)とADの神経病理学的評価には、神経斑(ジストロフィー性神経突起により囲まれているβアミロイド斑)と神経原線維変化を含めた。各データセットにおいて、LBDと性別が神経斑、神経原線維変化、認知機能低下に及ぼす相互の影響を検証した。さらに、Rushデータセットを用いて、女性の自然閉経年齢がLBDと神経斑、神経原線維変化、認知機能低下との関連を変化させるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・Rushデータセットより女性1,277人、男性579人、National Alzheimer's Coordinating Centerデータセットより女性が3,283人、男性3,563人を対象とした。・両データセットにおいて、男性はLBDの可能性が高く、女性は神経斑と神経原線維変化の負荷がより大きかったことが示唆された。・性別は、LBDと神経原線維変化との関連性を変化させたが、神経斑との関連は認められなかった。女性では、男性よりも、LBDと神経原線維変化負荷の増加とのより強い関連が認められた。・併存する病態(神経斑、神経原線維変化、LBDのいずれかが該当する場合)で調整後、男性ではLBD関連の認知機能低下が速く、女性では神経原線維変化関連の低下がより速かったことが示唆された。・女性では、閉経年齢の早さがLBDと神経原線維変化負荷およびエピソード記憶の低下との関連性を悪化させることが示された。 著者らは「性別は、ADおよびLBDの神経病態に影響を及ぼす可能性があり、認知症の予防や介入に対するより精密なアプローチの必要性が示唆された」と結論付けている。

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