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インターネットは高齢介護者の孤独感の緩和に役立つ

 高齢者における孤独感の問題は、世界的な課題として浮上しつつある。特に、家族などの介護をしている人は、介護という責任重大な仕事の性質上、孤独感がいっそう強まりやすい傾向がある。こうした人の孤独感は、インターネットの使用により緩和され得ることが、新たな研究から明らかになった。インターネットを通じて他者や社会とのつながりを保つことは、高齢介護者の孤独感やそれが健康に及ぼす悪影響の軽減に役立つ可能性が示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)ローリー・マイヤーズ看護学部のXiang Qi氏らによるこの研究結果は、「JMIR Aging」に11月27日掲載された。 本研究の背景情報によると、高齢介護者の約15%が孤独を感じており、認知症患者の介護者は、他の介護者に比べて孤独感を経験する可能性が1.62倍高いという。Qi氏は、「介護は、介護対象者を持ち上げたり手伝ったりすることに起因する慢性的なストレスや不安、痛みなどが心身に大きな負担をかける。実際、多くの介護者は、他人のニーズに気を取られ過ぎて、自分の健康をおろそかにしている」と指摘している。 今回の研究では、2019年から2020年にかけて、カリフォルニア州健康面接調査で収集された65歳以上のインフォーマルな介護者3,957人(平均年齢72.46歳、女性58.6%)のデータを用いて、介護の健康への影響やインターネットの使用頻度と孤独感との関連などが検討された。対象者の孤独感は、UCLA孤独感尺度3項目版により評価された。また、介護が介護者の健康に及ぼす影響については、「介護に伴う責任が原因で身体的または精神的な健康問題を抱えていますか?」という質問により評価した。さらに、インターネットの使用頻度は4段階(1日数回未満の使用、1日数回使用、1日何回も使用、ほぼ常に使用)で評価された。 その結果、475人の対象者(12.0%)が、介護により身体的または精神的な健康問題を抱えていることを報告した。解析の結果、介護関連の健康問題を経験した介護者は、経験しなかった介護者と比較して孤独感のレベルが有意に高かった。一方、インターネットの使用頻度が高いほど、孤独感のレベルは低かった。さらに、インターネットの使用は、介護関連の健康への影響と孤独感との関連を有意に緩和することも示された。 研究グループは、「これらの結果は、テクノロジーが若者の間に孤立を生み出しているという広く共有されている認識に反するものだ」と指摘している。Qi氏は、「インターネットを使って友人や家族、他の介護者とつながることは、実際に介護の精神的負担を軽くしてくれる。家から出られないときでも、人々や情報とつながることができる橋のようなものだと考えてほしい」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 ただし、この研究では、介護者がオンラインで何をしていたかまでは把握されていなかった。Qi氏は、今後の研究でこの点を調査する予定だと話している。同氏は、「インターネットでの活動内容が重要な可能性がある。例えば、オンラインゲームは介護者がリラックスして過ごすのに役立つかもしれないが、バーチャルサポートグループへの参加や友人とのビデオチャットなど、他者と交流する活動の方が孤独感を軽減する効果が大きいだろう。私の直感では、社会的な交流やサポートを受ける活動は受動的な活動よりも孤独感を軽減する効果が高い。それを裏付ける研究が必要だ」と述べている。 今回の結果を踏まえて研究グループは、高齢の介護者に対し、他の人と連絡を取り合ったり、サポートを見つけたり、新しいスキルを学んだり、健康問題に関する信頼できる情報にアクセスしたりするために役立つツールとしてインターネットを活用することを奨励している。

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HPVワクチン、導入からの17年間で集団レベルでの高い有効性と集団免疫を確認

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが初めて導入された2006年から17年が経過した2023年までの調査を解析した結果、性交渉の経験がある若年女性においても、1回でも接種していれば、集団レベルでの高い有効性と明確な集団免疫が認められることが、「JAMA Pediatrics」に9月29日掲載された研究で明らかにされた。 米シンシナティ小児病院医療センターのAislinn DeSieghardt氏らは、2006年から2023年までに実施された6回の横断的な調査のデータを用いて、性交渉経験のある13〜26歳の若年女性2,335人(平均年齢18.9歳)を対象に、ワクチンの有効性および集団免疫について評価した。これら6回の調査は、2006〜2007年、2009〜2010年、2013〜2014年、2016〜2017年、2018〜2021年、および2021〜2023年に実施された。16および/または18型の感染を2価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18型のうち1種類以上の感染を4価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18・31・33・45・52・58型の1種類以上の感染を9価ワクチンのタイプの感染とそれぞれ見なし、接種者(1回以上接種)を未接種者と比較することでワクチンの有効性と集団免疫を評価した。各調査回の参加者の背景の違いは、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いて調整した。 2,335人の参加者のうち1,195人(51.2%)に性感染症の既往があり、1,843人(78.9%)は、これまで性的パートナーとして経験した男性の数が2人以上だった。2006年から2023年にかけて、ワクチン接種率は371人中0人から402人中330人(82.1%)に増加した。接種者における傾向スコアで調整した各タイプのHPV陽性率は、2価ワクチンでは2006年の27.7%から2023年の0.4%へ、4価ワクチンでは35.4%から2.1%へ、9価ワクチンでは48.6%から11.8%へ、それぞれ減少した。同様に、未接種者における陽性率も、25.8%から7.3%、25.3%から6.1%、42.7%から31.1%にそれぞれ減少した。ロジスティック回帰モデルにより、2価および4価ワクチンのタイプの感染を起こす調整オッズ比(aOR)を推定したところ、全体では0.03(95%信頼区間〔CI〕0.01〜0.07)および0.06(同0.03〜0.10)、接種者では0.01(同<0.01〜0.05)および0.04(同0.02〜0.08)、未接種者では0.23(同0.08〜0.63)および0.19(同0.07〜0.52)と、いずれも有意な低下が見られたが、低下の幅は接種者の方が大きかった。9価のタイプの感染では全体(aOR 0.22、95%CI 0.16〜0.31)および接種者(同0.14、0.09〜0.21)において有意な低下が見られた。 論文の共著者の一人である米アルバート・アインシュタイン医科大学のJessica A. Kahn氏は、「今回の結果から、性交渉経験があり、かつ3回接種を完了していない若年女性においても、HPVワクチンは感染を予防できる力があると思われ、究極的にはこの世界から子宮頸がんを撲滅できるのではないかと考えている」と述べている。 なお、一人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報、2人の著者が関連特許を保有していることを明らかにしている。

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歯のエナメル質を修復・再生するバイオジェルを開発

 歯科治療は近い将来、より楽で痛みの少ないものになるかもしれない。歯を守る硬い表層であるエナメル質を修復・再生できる革新的なジェルの開発に関する研究結果が報告された。エナメル質は、いったん失われると自然には再生しないため、この新素材は、歯の長期的な保護や損傷時の修復方法を大きく変える可能性を秘めている。米国では、歯のエナメル質を強化するミネラルであるフッ化物(フッ素)の経口摂取が議論を呼んでいることから、この研究成果は注目を集めている。英ノッティンガム大学のAbshar Hasan氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月4日掲載された。 エナメル質の喪失は、虫歯(う歯)の主要な原因である。歯に付着したプラークや、酸性の食品、糖分・でんぷん質を多く含む食品や飲料が歯に長時間残存したり、長年の咀嚼により歯が摩耗したりすることで、エナメル質は失われる。 Hasan氏らは、人工タンパク質であるエラスチン様リコンビナマー(Elastin-Like Recombinamer;ELR)を基盤とした、調整可能で耐久性の高い超分子マトリックス(ジェル)を開発した。ELRは、歯の発生過程でエナメル質形成初期に不可欠な成分であるアメロジェニンの構造と機能を模倣した人工タンパク質で、カルシウムイオンの存在下で線維状マトリックスを形成し、エナメル質のナノ結晶の成長を促す。また、乾燥によりELR分子の秩序化と線維化が進み、さらにカルシウムイオンとの相互作用によってマトリックスが安定化する。 研究グループは、抜去したヒトの大臼歯32本にこのジェルを塗布して、その効果を検証した。その結果、塗布されたジェルは、歯の構造内の穴や隙間を埋め、周囲のカルシウムイオンやリン酸イオンを引き寄せる強固なマトリックスを形成し、元のエナメル質の結晶構造に沿って結晶を成長させる「エピタキシャル成長」を誘導することが示された。これにより、失われたエナメル質の構造と力学特性が再生されることが確認された。また、再生されたエナメル質は、歯磨きや咀嚼、酸を産生する食品への曝露において、天然の健康なエナメル質と同等の性能を示すことも確認された。 論文の筆頭著者であるHasan氏は、「このジェルを脱灰またはエロージョン(酸蝕症)の生じたエナメル質、あるいは露出した象牙質に塗布すると、結晶が統合され秩序立った形で成長し、健康な天然エナメル質の構造が回復される」とノッティンガム大学のニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、このジェルは、最大で約10μmの薄いエナメル質の欠損層を修復できる。また、虫歯の修復にとどまらず、エナメル質の下にある敏感な層である象牙質にこのジェルを直接塗布してエナメル様の層を形成することも可能であるという。これにより、知覚過敏の軽減や、歯科修復物の耐久性向上が期待されると研究グループは述べている。 論文の上席著者であるノッティンガム大学生体医工学・バイオマテリアル学教授のAlvaro Mata氏は、「臨床医と患者の双方を念頭に設計されたこの技術に、われわれは非常に興奮している。この技術は、安全で簡便かつ迅速に適用でき、スケールアップも可能だ」と述べている。研究グループは、スタートアップ企業Mintech-Bioを立ち上げ、最短で来年にも最初の製品を市場に投入したい考えであることを明らかにしている。

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新しい糖尿病治療薬、高コストも合併症リスクは従来薬と変わらず

 2型糖尿病の治療では、血糖コントロールと合併症予防のために経口薬が用いられる。比較的新しく登場したSGLT2阻害薬は近年広く使われるようになったが、最新の日本の大規模データを用いた研究で、初期治療においてSGLT2阻害薬は従来のビグアナイド系薬剤(メトホルミン塩酸塩やブホルミン塩酸塩)と比べて、心血管イベントや糖尿病合併症の抑制効果に明確な差がないことが示された。一方で、薬剤費は約50%高く、臨床現場での薬剤選択や医療費の観点から重要な知見となる。研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は11月6日付で「PLOS One」に掲載された。 世界では2型糖尿病が急増しており、合併症である心血管・脳血管イベントが死亡と医療費の大部分を占める。このため、初期治療でどの薬を選ぶかは臨床的にも経済的にも重要となる。従来は安価で安全性が高いメトホルミンが第一選択とされてきたが、近年はSGLT2阻害薬が心血管死や心不全、腎機能悪化を減らすことが示され、早期使用が推奨されつつある。ただ、実臨床研究では両者の効果差は一貫せず、日本からのデータは特に乏しい。過去の国内研究では高価な薬剤を初期に用いても合併症は減らず医療費のみ増える可能性が示唆されたが、ビグアナイド系薬剤とSGLT2阻害薬の直接比較は行われていない。そこで本研究は、日本人2型糖尿病患者を対象に、主要心血管イベントを含む長期アウトカムと薬剤の費用差を後ろ向きに検証した。 本研究では、登録者数250万人以上を有する静岡国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用いて解析を行った。解析対象は、ビグアナイド系薬剤またはSGLT2阻害薬のいずれかを初期治療として開始した患者とした。開始後12か月間はもう一方の薬を使用せず、他の血糖降下薬の併用は許容した。追跡は治療開始時点から開始し、12か月以内に比較薬を使用した患者は除外された。人口統計、臨床、検査、生活習慣の変数に基づき1対1の傾向スコアマッチングを行った後、Cause-specific Coxモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。また、1日あたりの薬剤費も比較した。主要アウトカムは、開始日から脳血管イベント、心血管イベント、または全死亡を含む複合エンドポイントの初発までの期間とした。副次アウトカムは、開始日から糖尿病関連合併症(糖尿病性腎症、腎不全、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢神経障害)の初発までの期間と設定した。 傾向スコアマッチング後のコホートは、ビグアナイド単剤群623名とSGLT2阻害薬群623名で構成され、追跡期間の中央値は2.9年(最長7.2年)であった。追跡期間中に主要アウトカムのイベントを起こしたのは、ビグアナイド単剤群44名(7.1%)、SGLT2阻害薬群35名(5.6%)であり、治療群間で統計的な有意差は認められなかった(log-rank検定、P=0.314)。さらに、Cox比例ハザードモデルによる解析では、ビグアナイド単剤群とSGLT2阻害薬群のHRは0.80(95%信頼区間〔CI〕 0.51~1.24)であり、リスクはほぼ同等であることが示された。 糖尿病合併症は、ビグアナイド単剤群で86名(13.8%)、SGLT2阻害薬群で78名(12.5%)に発症し、こちらも治療群間で有意な差は認められなかった(Gray検定、P=0.343)。HRは0.88(95%CI 0.70~1.13)であり、ほぼ同等のリスクを示した。 1日あたりの薬剤費の中央値を比較したところ、ビグアナイド治療は124.7円、SGLT2阻害薬治療では184.0円であり、ウィルコクソン順位和検定の結果、この差は統計的に有意であることが示された(P<0.001)。 著者らは、「今回得られた知見は、SGLT2阻害薬を初回の血糖降下薬としてルーチンに使用することの臨床的および経済的意義に疑問を投げかける。今回の費用差は個々の患者レベルでは小さく見えるかもしれないが、長期にわたり多くの患者が服用する場合には、総医療費として財政に大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

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拡張型心筋症患者に対する早期心リハの有用性、傾向スコアマッチングを用いた全国規模解析

 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は、心臓の筋肉が弱まり、心臓が拡張して十分に血液を送り出せなくなる病気で、心不全の主要な原因の一つとされる。このDCM患者に対し、入院早期から心臓リハビリテーション(心リハ)を開始すると、90日死亡率が有意に低下することが、日本の全国入院データベースを用いた研究で明らかになった。解析では、早期に心リハを始めた患者群では早期から心リハを受けなかった群と比べて90日以内の死亡リスクが低く、退院時の日常生活動作(ADL)もやや高値であったという。研究は大阪大学/奈良県立医科大学の安福祐一氏らによるもので、詳細は10月24日付で「Scientific Reports」に掲載された。 DCMは、心筋の収縮低下と左室拡張を特徴とし、一部の患者は慢性心不全や急性増悪を繰り返す進行性心筋疾患である。心リハは、機能回復や再入院予防を目的として行われる運動療法や生活指導などを含んだ包括的な治療プログラムであり、急性心不全患者への早期導入も行われている。しかし、DCM患者に対する早期心リハの有効性を検証した報告は限られており、十分なエビデンスは得られていない。本研究では、日本の全国入院データベースを用い、症候性心不全を呈するDCM患者における早期心リハ開始と90日以内の死亡率との関連について検討した。 本研究では、2010年7月1日から2020年3月31日までのDPCデータベースから、DCMおよび心不全(NYHA心機能分類II~IV度)と診断された患者を解析対象とした。患者は入院後3日以内に心リハを開始したかどうかに基づき、早期心リハ群と遅延または非心リハ群に分類した。主要評価項目は入院後90日以内の死亡率とし、副次評価項目は退院時のADLスコアと在院日数とした。欠測値は多重代入法を用いて統計的に補完し、患者背景や2015年度病床機能報告から取得した入院施設の医療機能の違い等を調整するため1対1の傾向スコアマッチングを行った。 本研究では、早期心リハ群3,130名および遅延または非心リハ群2万7,166名の計3万296名を適格患者と判定した。遅延または非心リハ群のうち7,340名(27%)が入院後3日目以降に心リハを受けていた。1対1の傾向スコアマッチングを行った結果、最終的に各群3,129名(計6,258名)が解析対象となった。 多重代入および傾向スコアマッチングの結果、入院後90日以内の死亡率は遅延または非心リハ群に比べて早期心リハ群で有意に低かった(オッズ比:0.70、95%信頼区間〔CI〕:0.53~0.93、P値=0.01)。また、早期心リハ群では退院時ADLスコアも若干高かった(平均差〔Average Treatment Effect on the Treated;ATT〕:0.43、95%CI:0.08~0.78、P値=0.02)が、在院日数には有意な差は認められなかった(ATT:−2.1日、95%CI:−4.7~0.5日、P値=0.11)。 著者らは、「今回の研究の意義は、これまで世界的にもエビデンスが乏しかったDCM患者に対する早期心リハの短期予後(90日以内の死亡率)に対する効果を明らかにした点にある。今後は、本研究で得られた結果の背景にある生理学的メカニズムや、特に有効であった心リハの具体的なプログラム、個々の患者属性の違いにより生じる心リハの効果の異質性等を解明し、より個別化された効果的な心リハプログラムを開発する必要がある」と述べた。 なお本研究の限界点として、DPCデータベースに含まれる指標の制約により、心エコーや生理学的検査等の交絡因子の調整が制限されたこと、心リハの具体的なプログラムの差異による影響の違いについて検討していないこと、詳細な身体・精神機能や入院中の有害事象に対する早期心リハの影響について検討していないこと等が挙げられる。

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PCOS妊婦へのミオイノシトールの投与は妊娠合併症率を改善せず(解説:前田裕斗氏)

 本研究は、オランダの13施設で464例の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)妊婦を対象とし、ミオイノシトールの妊娠糖尿病・早産・妊娠高血圧腎症の予防効果を確かめた二重盲検プラセボ対照RCTである。ミオイノシトールにはインスリン抵抗性改善を通した血管内皮機能不全や炎症の予防効果があることから、PCOS妊婦においてリスクが上昇する3つの妊娠合併症をアウトカムとしている。先行するRCTでは妊娠糖尿病の予防効果が示されていたが、サンプルサイズが200例程度と小さく、また妊娠糖尿病の有病率が約50%と高いこと、患者への薬の盲検化がされていなかったことなどを背景として、この試験が行われた。 結果の詳細は別記事に譲るが、3つの合併症の合計発生率はミオイノシトール群で25.0%、プラセボ群で26.8%と有意な低下を認めなかった。本研究にも薬剤内服の遵守率が80%以上の割合がミオイノシトール群で38.9%、プラセボ群で30.7%と低いなどの限界はあるが、先行研究と比較し、サンプルサイズや二重盲検であることなど信頼性の高い研究であるといえるだろう。 本研究結果からは、全PCOS妊婦を対象としたミオイノシトールの内服は勧められないといえる。一方、この研究では妊娠8~16週から内服を開始しており、妊娠前からの内服効果は検証されていない。日本の臨床現場では不妊治療の場でサプリメントとしてよく勧められており、妊娠前からの内服効果を確かめる研究は行いやすいだろう。ぜひ本邦発のエビデンスを出したい領域であるといえる。

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鼻に歯が生えていた2例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第297回

鼻に歯が生えていた2例さまざまな場所に歯が生えるものですが、過去に脳内に歯が生えた事例を紹介しました。今度は鼻の中です。脳に比べるとインパクトは少ないかもしれませんが、おどろき医学論文マニアとして、紹介しなければなりません。Bergamaschi IP, et al. Intranasal Ectopic Tooth in Adult and Pediatric Patients: A Report of Two Cases. Case Rep Surg. 2019 Sep 17;2019:8351825.「先生、鼻の中に“歯”があると言われたんですけど……」。外来でこんな訴えが飛び出したら、皆さんどうされるでしょうか。「抜けた歯が鼻腔に入ったのかな? いや、でもなんで歯が鼻に?」と一瞬フリーズしたくなりますが、世の中には“鼻から歯が生える”患者さんが存在します。今回は、ブラジルの口腔外科チームが報告した「鼻腔内異所性歯」の成人例と小児例、2症例を扱った論文をご紹介します。1例目は、32歳の女性です。主訴はズバリ「鼻の中に歯がある」というものでした。この患者さんによると、この状態は痛みを引き起こし、とくに寒い日には鼻血が出るとのことでした。詳しく病歴を聴取すると、6歳のときに顔面外傷を負い、上顎前歯部に損傷を受けたことが判明しました。つまり、26年もの間、歯が鼻の中に存在していたことになります。臨床診察で鼻尖部を持ち上げてみると、なんと右鼻孔内に上顎中切歯の歯冠が観察されました。6歳といえば、ちょうど前歯の永久歯が萌出する時期であり、Nollaの発育段階では7(歯冠完成、歯根の3分の1発育)に相当します。この時期に外傷を受けたことで、本来口腔内に萌出するはずだった歯が、上方に変位して鼻腔内に迷い込んでしまったと考えられます。ここで疑問が生じます。なぜ26年間も放置されていたのでしょうか。論文によると、これは「専門家からの誤った情報提供」が原因だったとのことです。つまり、症状(痛みや鼻出血)に対する対症療法のみが行われ、その原因である鼻腔内の歯が長年見過ごされていたということです。2例目は、左側の片側性口唇口蓋裂を有する8歳の女児です。この子供は、左側鼻閉を主訴に紹介されてきました。原因は、肉芽組織に囲まれた鼻腔内の硬い組織塊でした。口腔内診察とCT検査の結果、この白色塊は左側側切歯の異所性萌出であることが判明しました。口腔内では左側側切歯が欠損しており、塊の透過性は他の歯と一致していました。興味深いことに、CT検査では、この形成異常歯の上部は軟組織内に埋入しており、骨性支持がない状態でした。母親によると、この白色塊は腸骨骨移植による口鼻瘻孔閉鎖術の3ヵ月後に出現したとのことです。口唇口蓋裂自体が多因子性の病因を持つため、異所性萌出に対する遺伝的素因も否定できませんが、手術操作による歯胚の変位も原因として考えられます。両症例とも、治療は全身麻酔下での歯の外科的摘出でした。「鼻から歯を抜く」という、一見すると大手術のように思える処置ですが、実際の手技は比較的シンプルで、無事に済んだそうです。

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第295回 3次救急で停電が当たり前、ベネズエラの悲惨な医療実態

INDEX米国の攻撃で死者100人、ベネズエラの医療体制とは無償以前に医療が成り立っていない3次救急でも停電やCT稼働停止が日常茶飯事!米国の攻撃で死者100人、ベネズエラの医療体制とは「健康は基本的な社会的権利であり、生命権の一部として国家がこれを保障する責任を負う。すべての者は健康保護の権利を有する」「健康への権利を保障するため、国家は全国的な公衆衛生システムを創設・指導・管理し、社会保障制度と統合し、無償性、普遍性、完全性、公平性、社会的統合および連帯の原則に従って運営する」これはある国の憲法の条文である。もちろん日本ではないことくらいは多くの人が気付くだろうと思う。どこのものかといえば、新年早々、大統領が拘束された南米・ベネズエラの憲法第83条、第84条である。憲法という理念・概念を示す最高法規にここまで医療について明記している国は珍しいのではないだろうか?ベネズエラは1500年代からスペインの植民地となり、1800年代に独立。1900年代から昨今まで、政治上は典型的な左右両派闘争と複数回のクーデターを経験してきた。1999年からはクーデターを経て大統領に就任したウゴ・チャベス氏の下、反米・社会主義路線の独裁体制へと移行。2013年にチャベス氏が死去すると、その腹心で今回アメリカが麻薬密輸容疑などで拘束したニコラス・マドゥロ氏が後を継いだ。このチャベス政権以降のベネズエラは野党などの反対勢力や市民デモなどを徹底的に弾圧し、議会を機能不全にした。マドゥロ氏は過去3度の大統領選挙で当選しているが、いずれも不正の疑いが強く指摘されている。また、同国は原油の推定埋蔵量世界1位という極めて恵まれた環境にありながら、チャベス氏の大統領就任以降は極端な社会主義政策に基づき企業を国有化し、その乱脈経営により、国内では物不足とインフレが常態化している。この結果、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ベネズエラからの国外難民・避難民は2025年5月時点で790万人以上との推計値を公表している。これはベネズエラの総人口の約4分の1にあたる。無償以前に医療が成り立っていないさてそのベネズエラは、冒頭で紹介した憲法条文からもわかる通り、社会主義国家に典型的な教育と医療は「無償」である。公式には国民・在住者IDと呼ばれるカードを医療機関で提示すれば、無償で医療を受けられる建前だ。ちなみに国内の医療機関数は、2001年の同国保健省の公表(かなり古いデータだが)によると、病院が214カ所、診療所が4,605カ所である。これらの国公立と私立の区分に関する正確なデータはないが、国内医療機関の5~10%が私立であるとの報告もある。また、ベネズエラ医師連盟(同国の医師会に相当)によると、2024年時点での国内の医師数は約8万人。もっともこれはチャベス政権以降の政治的混乱で4万2,000人ほどの医師が国外に脱出した結果だという。ここから試算すると、ベネズエラの人口1,000人当たりの医師数は2.81人であり、経済協力開発機構(OECD)がHealth Statistics 20231)で公表している加盟国平均の3.7人よりは少ないものの、同統計で示された日本(2.6人)やアメリカ(2.7人)をわずかに上回る。ただ、このデータは各種報道と公式人口から単純計算したものであり、世界保健機関(WHO)が公表した2017年時点のデータでは1.66人となっている。公式に公表されるデータが乏しく信用性が低いのは独裁国家の常だが、後者を信用するならば、医療アクセスはかなり悲惨な状況にあると言える。そして前述のように物不足とインフレが常態化している以上、こうした医療機関が十分に機能しているはずもない。実際、現地で活動する医師や学生によるNGO「Medicos por la Salud」(Doctors for health)が公表している「Encuesta Nacional de Hospitales(全国病院調査)」2)を見ると、その惨憺たる状況が浮かび上がってくる。ベネズエラ国内の主要な公的40病院からデータを収集した同調査の2024年中間(1~7月)報告を参照してみる。3次救急でも停電やCT稼働停止が日常茶飯事!調査対象はベネズエラ保健省がタイプIII、あるいはタイプIVと分類する病院。前者は州レベルの人口をカバーし、病床数は一般的に150〜300床程度。後者は人口100万人以上の広域エリアをカバーする300床以上の病院だ。日本で例えるならば、大学附属病院や都道府県で病床数が多い基幹病院に相当する。調査によると対象病院の各サービスが常時稼働できている割合は、ICUが73%、小児ICUが75%、臨床検査室が43%、X線撮影装置が31%、CT・MRIが12%、超音波装置が21%である。ICUですら約3割が常時稼働できていない状態であり、検査関連は惨憺たる結果だ。というか、これら検査が稼働していない状況でICUが機能できるわけもないだろう。つまるところICUの常時稼働は取りあえずマンパワーの配置だけはできている、という程度ではないだろうか?報告書によると、検査関連機器が稼働していない主な要因は、故障した機器の修理・更新費用が国から支払われていないためとしている。もし病院のCTが稼働していない場合、患者はCTが稼働している民間医療機関で撮影を行わねばならず、その費用が約90ドルであると記述している。もはやこの段階で憲法が保障する無償医療が崩壊している。ベネズエラの公務員月給は、基本給に加えてインフレによる通貨暴落に対応するためのボーナスや食糧配給クーポンなどを合わせ、米ドル連動の「包括的最低収入」という仕組みで月額160ドルが支払われる。ちなみに公務員の基本給自体は月額4ドル程度にすぎない。ここから民間医療機関でのCT撮影費用を捻出することが患者にとってどれほど大きな負担かは容易に想像がつくだろう。さらに、入院患者に1日3回の食事を提供できている病院はわずか35%であり、さらに患者の医学的ニーズに合った食事を提供できているケースは19%にとどまる。小児科の入院機能を有する病院の48%では「粉ミルクがない」と回答している。病院を支える水と電力の供給も驚くほど不安定である。毎日問題なく給水が続いている割合は、ICUで28%、手術室で30%。断続的な供給と回答している病院のうち4~5割は水道ではなく病院の貯水タンクでしのいでいるという状態だ。調査対象病院の43%が停電を経験しており、週当たりの停電発生日数は「3日未満」が68%、「3~5日」が17%、「6~7日」が16%、平均停電時間は126分である。もしかしたら「約7割は問題ないじゃないか?」と思う人もいるかもしれないが、調査対象病院は、日本で言えば停電など年1回でもあってはならない3次救急病院クラスである。実際、調査対象病院からの回答では、停電の影響で患者が死亡した事例は129例もある。加えて、手術に必要な縫合糸、鎮痛薬、生理食塩水、医師の手術ガウンなどの物品提供を患者へ求めた経験のある病院は91%に達し、手術で別途料金支払いを求めた経験のある病院は54%に上る。求めた別途料金は「100~300ドル」が最多の43%、次いで「300ドル以上」が28%である。ここでも無償医療は有名無実化している。すべての社会主義国家がこうだと言うつもりは毛頭ないが、少なくとも原油に恵まれ、反米・社会主義を掲げる独裁国家・ベネズエラの医療の実態は、違憲だけではとどまらない、もはやホラーな状態である。(表)ベネズエラの憲法と起こっている現実問題画像を拡大するもっとも、紛争や安全保障も取材領域とする私個人の意見を言わせてもらえば、チャベス政権以降のベネズエラの独裁体制には従来からかなり批判的だが、一方で今回のアメリカによる軍事作戦は明確に国際法に反する主権侵害行為とも考えている。そのため今回の事態に対しては一言では言い表せないモヤモヤしたものを感じている。ただ、もはや時計の針を巻き戻すことはできないことを考えれば、こうしたベネズエラの医療が今後少しでも改善することを願ってやまない。 参考 1) OECD:Health at a Glance 2023 2) Mid Year Report 2024

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診療科別2025年下半期注目論文5選(循環器内科編)

Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Patients at 7 YearsLeon MB, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]<PARTNER 3試験>:TAVI vs.外科的弁置換、低手術リスクの大動脈弁狭窄症の7年追跡結果重症の大動脈弁狭窄症を持つ低手術リスク患者に対して、従来の外科手術とカテーテルを使ったTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を比較した研究。TAVIは手術と同等の安全性と有効性を示し、回復が早く入院期間も短いことが確認されました。長期的にも弁の機能や耐久性に差はなく、低リスク患者においてTAVIが有力な選択肢となることを示しました。TAVIの適応拡大が加速するものと思われます。Antithrombotic Therapy after Successful Catheter Ablation for Atrial FibrillationVerma A, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<OCEAN試験>:アブレーション後の抗血栓薬は減弱化するか心房細動カテーテルアブレーションの成功から1年以上経過し、再発なしの患者を対象に、DOACであるリバーロキサバンと低用量アスピリンを比較しています。3年間の追跡の結果、脳梗塞や無症候性の新規虚血性病変の発生率は両群で同等で、リバーロキサバン群は出血リスクが高い傾向でした。アブレーション成功例では術後に抗凝固薬から抗血小板薬へ切り替える選択肢の妥当性を示し、現行ガイドラインの見直しにつながる可能性があります。Aficamten or Metoprolol Monotherapy for Obstructive Hypertrophic CardiomyopathyGarcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2025;393:949-960.<MAPLE-HCM試験>:症候性の閉塞性肥大型心筋症に新薬aficamten登場有症候の閉塞性肥大型心筋症患者を対象に、aficamten(心筋ミオシン阻害薬)とβ遮断薬メトプロロールとを比較しています。aficamten群では、運動能力や息切れなど生活の質が改善し、心臓の負担も軽減されました。重篤な有害事象の発現に差はなく、安全性も良好でした。臨床的には1次治療として使用する新たな戦略の可能性を示し、今後ガイドラインへの影響も予想されます。Evolocumab in Patients without a Previous Myocardial Infarction or StrokeBohula EA, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<VESALIUS-CV試験>:PCSK9阻害薬エボロクマブによる1次予防の可能性心筋梗塞や脳卒中の既往がない動脈硬化や糖尿病のある患者を対象に、標準的な脂質治療に加えてPCSK9阻害薬であるエボロクマブとプラセボを比較。エボロクマブは重篤な心血管イベントの発生を統計学的有意に減少させました。一方、安全性に関しては懸念される問題はとくにありませんでした。これまで2次予防を対象としていたPCSK9阻害薬が、1次予防への選択拡大の可能性という臨床的意義を持ちます。Nationwide Trends in Coronary Revascularization in Japan, 2017 to 2023: From Decline to PlateauKohsaka S, et al. J Am Coll Cardiol. 2025;86:2391-2394.<J-PCIレジストリ・JCVSDデータ解析>:日本のPCI・CABG数の動向、エビデンスが必ずしも迅速に実臨床へ反映されず2017~23年の日本における安定冠動脈疾患に対する冠血行再建(PCI・CABG)の全国的動向をJ-PCIおよびJCVSDデータから解析。2017年以降減少傾向でしたが、2020年第3四半期から減少傾向が頭打ちに。この転換点は、エビデンスに基づく医療への移行よりも、臨床的慣性とCOVID-19後の診療回復が作用したと考えられます。エビデンス(ISCHEMIA試験)やガイドライン改訂が必ずしも迅速に実臨床へ反映されないことを示唆しています。

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1月9日 風邪の日【今日は何の日?】

【1月9日 風邪の日】〔由来〕寛政7(1795)年の旧暦の今日、第4代横綱で63連勝の記録を持つ谷風 梶之助が風邪で亡くなったことに由来して制定。インフルエンザや風邪が流行する季節でもあることから、医療機関や教育機関で風邪などへの予防啓発で周知されている。関連コンテンツ今冬のインフルエンザ診療のポイント【診療よろず相談TV】急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A【患者説明用スライド】風邪や咳症状に対する日本での市販薬使用状況は?「風邪のときのスープ」に効果はある?風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

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腰痛時の日常動作、症状を悪化させるのか?

 腰痛患者を対象に、身体活動の短期的および長期的な影響を調査した結果、持ち上げる、曲げる、押す/引く、ねじる、しゃがむなどの一部の日常動作は短期的な腰痛増悪と関連していたものの、長期的な機能障害とは関連しなかったことを、米国・Veterans Affairs(VA) Puget Sound Health Care SystemのPradeep Suri氏らが明らかにした。 身体活動は、腰痛に対して有害な影響と有益な影響の両方を有すると考えられている。研究グループは、10種類の一般的な動作について、短期的(24時間以内)な腰痛増悪リスクと長期的(累積的)な機能障害との関連をそれぞれ評価するため、前向きコホート研究の中にケースクロスオーバー解析を組み込んだ研究を実施した。 対象は、2021年3月25日~2023年9月21日に退役軍人省の外来診療所を腰痛のために受診した成人であった。参加者は1年間追跡調査された。 主な結果は以下のとおり。・合計416例(平均年齢47.5[SD 10.9]歳、男性75%)が本研究に参加した。参加者は1年間の追跡期間中に9,757回の調査に回答した。・腰痛増悪の平均発生回数は8.6回/年であった。・押す/引く、曲げる、ねじる、重いもの(約4.5kg以上)を持ち上げる、しゃがむ動作をする時間が長いほど短期的な腰痛増悪リスクが高かった。1時間増加当たりのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -押す/引く OR:1.06、95%CI:1.03~1.09 -曲げる OR:1.06、95%CI:1.03~1.08 -ねじる OR:1.06、95%CI:1.03~1.08 -持ち上げる OR:1.05、95%CI:1.03~1.07 -しゃがむ OR:1.05、95%CI:1.03~1.08・座位時間が1時間長くなるほど、短期的な腰痛増悪リスクの低下と関連していた(OR:0.96、95%CI:0.94~0.98)。・立つ、歩く、登る、這う動作の時間の増加と、短期的な腰痛増悪との関連は認められなかった。・研究開始から8週間の各動作に費やした平均時間は、1年間の追跡調査における長期的な機能障害とは関連していなかった。 これらの結果より、研究グループは「10種類の一般的な動作の一部は腰痛の短期的な増悪と関連したが、1年間の追跡調査における機能障害との有意な関連は認められなかった。これらの知見は、腰痛患者がこれらの活動を行うことができること、そしてこれらの活動が長期的な転帰の悪化と関連していないことを裏付けている」とまとめた。

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呼吸器系ウイルス検査陽性の市中肺炎、抗菌薬0~2日間vs.5~7日間

 米国胸部学会(ATS)が2025年に発表した最新の市中肺炎(CAP)ガイドラインでは、呼吸器系ウイルス検査陽性となった入院CAP患者全例に対して、抗菌薬を投与することを条件付きで推奨している1)。しかし米国感染症学会(IDSA)は非重症患者に対するこの推奨に同意せず、非重症患者では重複感染の可能性を検討するために多少の時間をかけることによるリスクはほとんどなく、抗菌薬を開始するかおよびいつ開始するかについては臨床医の裁量の余地があるとしている2)。米国・ペンシルベニア大学のBrett Biebelberg氏らはこれらの患者集団における抗菌薬投与の頻度・期間と転帰を評価する目的で、大規模な多施設共同の傾向スコア重み付け解析を実施。結果をClinical Infectious Diseases誌オンライン版2025年12月11日号で報告した。 本研究では、2015年6月~2024年12月に5つの病院において、来院後48時間以内に肺炎が疑われる臨床所見を認め、かつ呼吸器系ウイルス検査陽性の入院患者を後ろ向きに特定。臨床データを用いて、0~2日間の抗菌薬投与を受けた患者と5~7日間の抗菌薬投与を受けた患者について、傾向スコア法により全体およびウイルスごとの転帰を比較した。 主な結果は以下のとおり。・呼吸器系ウイルス検査陽性でCAP疑いの入院患者6,779例のうち、3,269例が0~2日間、1,560例が5~7日間の抗菌薬投与を受けた。・平均年齢は67.5歳(SD 17.6)、46.9%が女性で、検出ウイルスはSARS-CoV-2ウイルスが60.3%、インフルエンザ(AもしくはB)ウイルスが17.4%、RSウイルスが9.2%、ライノウイルスが7.3%などであった。・プロカルシトニン値>0.25μg/Lなど除外基準に該当した患者を除く2,614例(抗菌薬投与0~2日間:1,720例、同5~7日間:894例)を解析対象とした。・抗菌薬投与0~2日間の患者と5~7日間の患者の間で、入院期間(11.7日vs.11.1日、オッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.97~1.15)、48時間後のICU入院率(28.3%vs.28.2%、OR:1.01、95%CI:0.86~1.18)、院内死亡率(9.5%vs.9.8%、OR:0.97、95%CI:0.74~1.27)、30日間の病院不在日数(16.9日vs.17.0日、OR:0.99、95%CI:0.95~1.03)における有意差は認められなかった。・結果は、SARS-CoV-2以外のウイルスおよびインフルエンザウイルスのみに限定した場合、抗菌薬の投与期間を0日間と5~7日間で比較した場合、入院時に肺炎のICD-10コードを有する患者に限定した場合も一貫していた。 著者らは今回の結果について、呼吸器系ウイルス検査陽性のCAP疑い患者の多くにおいて抗菌薬は有益でない可能性を示唆するものとしている。

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日本人末期がん患者のせん妄、その発生率と薬理学的介入の現状

 末期がん患者では、疼痛やせん妄の発生が少なくない。しかし、疼痛管理のために投与されるオピオイドは、患者のせん妄を悪化させる可能性がある。名古屋市立大学病院の長谷川 貴昭氏らは、がん性疼痛とせん妄を有する末期がん患者において、実際の症状経過とオピオイドおよび抗精神病薬を含む薬理学的介入との関連を調査するため、多施設共同プロスペクティブ観察研究の2次解析を実施した。Palliative Medicine Reports誌2025年10月24日号の報告。 対象は、日本のホスピスまたは緩和ケア病棟に入院している成人患者のうち、Palliative Performance Scale(PPS)が20点以下に低下した時点(1日目、死亡直前)で、がん性疼痛(Integrated Palliative care Outcome Scale[IPOS]の疼痛スコア2以上)およびせん妄を有していた患者。薬理学的治療戦略、疼痛レベル(IPOSに基づく)、せん妄症状(Memorial Delirium Assessment Scale[MDAS]の9項目に基づく)を測定した。 主な結果は以下のとおり。・1,896例のうち、PPSが20点以下に低下した1日目に適格性の評価を受けた患者は1,396例で、そのうちの137例が解析対象の包含基準を満たした。・興奮性せん妄(多動性または混合性)が認められた患者は86例(63%)で、生存期間中央値は3日であった。・薬理学的治療戦略については、オピオイドの開始/用量漸増が32例(23%)に、抗精神病薬の定期投与が94例(69%)に行われていた。・オピオイドの開始/用量漸増と抗精神病薬投与の両方が行われていた患者は25例(18%)であった。・患者全体の約55%は、2日目に持続性がん性疼痛(IPOSの疼痛スコア2以上)が認められた。・興奮性せん妄が認められた患者のうち、2日目にも興奮症状が継続した患者の割合は79%であった。 著者らは「専門的な緩和ケアにもかかわらず、人生最後の数日間に生じるがん性疼痛とせん妄の複合的な苦痛は、依然として複雑かつ難治性であることが明らかとなった」とまとめている。

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再発・難治性多発性骨髄腫へのiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾンの第II相試験(ICON)/Lancet Haematol

 2~4ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫に対するiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾン(IberCd)の現在進行中の前向き単群第II相非盲検試験(ICON試験)において、追跡期間25.4ヵ月で無増悪生存期間(PFS)中央値が17.6ヵ月と良好であったことを、オランダ・アムステルダム自由大学のCharlotte L. B. M. Korst氏らが報告した。Lancet Haematology誌2026年1月号に掲載。 iberdomideは、経口セレブロンE3リガーゼモジュレーターであり、レナリドミドやポマリドミドとは薬理学的に異なりセレブロンとの親和性が高いため、直接的な抗腫瘍効果と免疫刺激効果をもたらすことが示されている。本試験は、オランダの8施設で実施され、対象は2~4ラインの治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫(レナリドミド耐性)患者(18歳以上、WHO PS 0~2)で、経口iberdomide(28日サイクルの1~21日目に1.6mg/日)、経口低用量シクロホスファミド(1~28日目に50mg/日)、経口デキサメタゾン(週1回40mg、75歳超は20mg)を進行するまで投与された。また、全例に血栓予防としてアスピリンもしくはcarbasalate calciumを連日経口投与した。静脈血栓塞栓症の既往がある患者には、低分子量ヘパリンのみ皮下注射した。主要評価項目はPFSで、治療開始した全例で有効性と安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月17日~2023年7月7日に、61例が登録されIberCd治療を受けた(女性29例、男性32例)。前治療ライン数の中央値は3(範囲:2~5)で、52例(85%)がtriple-class exposed、27例(44%)がtriple-class refractoryであった。50例が中止(うち39例は進行)したが、全例を主要解析対象集団に含めた。・中央値25.4ヵ月(四分位範囲:19.7~31.6)の追跡期間後、PFS中央値は17.6ヵ月(片側95%信頼区間:16.6~19.9)であった。・全例において、Grade3~4の有害事象で最も頻度が高かったのは好中球減少症(56%)および感染症(34%)であった。重篤な治療関連有害事象は25例(41%)で報告され、感染症が最も頻度が高かった。治療関連死はCOVID-19による1例だった。 著者らは「IberCdは再発・難治性多発性骨髄腫に対する有効な経口剤のみの併用レジメンで、臨床的に意義のある有効性を示した。本レジメンは2~4ラインの治療歴を有する患者にとって有用な治療選択肢となり、既存治療と比較して良好な結果を示した」としている。

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ASCVD合併2型DMのCVアウトカム、チルゼパチドvs.デュラグルチド/NEJM

 2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者の治療において、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイントに関し、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が認められた。オーストラリア・Monash UniversityのStephen J. Nicholls氏らSURPASS-CVOT Investigatorsが、30ヵ国640施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照非劣性試験の結果を報告した。チルゼパチドはGLP-1受容体およびGIP受容体のデュアルアゴニストで、血糖コントロールと体重において好ましい効果をもたらすが、心血管アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌2025年12月18・25日号掲載の報告。主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合 研究グループは、40歳以上、HbA1c値7.0~10.5%、BMI値25以上で、ASCVDを有する2型糖尿病患者を、チルゼパチド群(2.5mgから開始、4週ごとに増量し最大用量15mg)、またはデュラグルチド群(1.5mg)に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回皮下投与した。 主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合であった。チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性マージンは95.3%信頼区間(CI)の上限が1.05未満とし、上限が1.00未満の場合はチルゼパチドのデュラグルチドに対する優越性を検証するとした。ハザード比は0.92、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性を確認 2020年5月29日~2022年6月27日に1万3,299例が無作為化された。その後に適格基準を満たさないことが判明した134例を除外し、1万3,165例(チルゼパチド群6,586例、デュラグルチド群6,579例)を修正ITT集団として有効性の解析を行った。 患者背景は、年齢64.1±8.8歳、女性29.0%、HbA1c値8.4±0.9%、BMI値32.6±5.5、糖尿病罹病期間14.7±8.8年であった。 追跡期間中央値4.0年において、主要エンドポイントのイベントはチルゼパチド群で801例(12.2%)、デュラグルチド群で862例(13.1%)に発生した。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のハザード比は0.92(95.3%CI:0.83~1.01)であり、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が示された(非劣性のp=0.003、優越性のp=0.09)。 有害事象の発現割合は両群で同程度であったが、消化器系の有害事象はチルゼパチド群(42.5%)がデュラグルチド群(35.9%)より多かった。

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高リスク頭頸部がん、術後化学放射線療法へのニボルマブ追加でDFS改善/Lancet

 切除後の再発高リスク局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-SCCHN)に対し、術後シスプラチン+放射線療法にニボルマブを追加することにより、中等度の毒性が増加するものの無病生存期間(DFS)が有意に改善された。スイス・ローザンヌ大学のJean Bourhis氏らが、欧州6ヵ国82施設で実施された、フランスの頭頸部がん放射線治療グループ(GORTEC)主導の無作為化非盲検第III相試験「GORTEC 2018-01 NIVOPOST-OP試験」の結果を報告した。シスプラチン+放射線療法は、高リスクLA-SCCHNに対する術後補助療法の標準治療であるが、ニボルマブ追加の有効性と安全性は不明であった。著者は、「ニボルマブ+シスプラチン+放射線療法は、新たな標準治療として提案可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月22日号掲載報告。病理学的再発高リスク因子を有するLA-SCCHN患者が対象 NIVOPOST-OP試験の対象は、年齢が19~74歳、ECOG PSが0~1、肉眼的完全切除が施行された口腔、中咽頭、喉頭または下咽頭の扁平上皮がんで、病理学的再発高リスク因子(リンパ節被膜外浸潤、顕微鏡的切除断端陽性[R1または切除マージン1mm以下]、節外浸潤のない4個以上の頸部リンパ節転移、複数の神経周囲浸潤)を1つ以上有している患者であった。 研究グループは、欧州6ヵ国(フランス、スペイン、ポーランド、ベルギー、ギリシャ、スイス)の82施設で登録された適格患者を、シスプラチン+放射線療法群(66Gyを33分割、シスプラチン100mg/m2を3週ごとに3サイクル、標準治療群)、またはニボルマブ+シスプラチン+放射線療法群(ニボルマブ240mg単回静脈内投与→シスプラチン+放射線療法+ニボルマブ360mgを3週ごと3サイクル→ニボルマブ480mgを4週ごと6サイクル、ニボルマブ追加群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団における治験担当医師評価によるDFSであった。ハザード比(HR、期待値)を0.65、第1種の過誤を両側0.05、検出力を90%として例数設計を行った(680例で230イベント)。ニボルマブ追加群でDFSイベントが有意に減少 2018年10月15日~2024年7月3日に680例が無作為化されたが、必要イベント数に達した時点(データカットオフ日2024年4月30日で252例のイベントが発生)でDFSの最終解析を行った。すなわち、解析対象(ITT集団)はデータカットオフ日までに無作為化された666例(標準治療群334例、ニボルマブ追加群332例)で、追跡期間中央値は30.3ヵ月であった。 DFSのイベントは、標準治療群で140例、ニボルマブ追加群で112例に認められた。再発または死亡のHRは0.76(95%信頼区間:0.60~0.98、層別log-rank検定のp=0.034)であり、ニボルマブ追加群はPD-L1の発現状況にかかわらず、標準治療群と比較しDFSが有意に改善した。 安全性は、1回以上治療を受けた標準治療群の306例、ニボルマブ追加群の312例を解析対象とした。Grade4の治療関連有害事象の発現率は、それぞれ5%(16/306例)および10%(30/312例)であり、ニボルマブ追加群で増加した。治療に関連した死亡は各群2例に発現した。

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15分で判定可能なC型肝炎ウイルス迅速PCR検査を開発

 米ノースウェスタン大学が開発した迅速検査のおかげで、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかを15分以内に判定できるようになった。この検査により、医師は診察中に感染症を診断し、その場で治療を開始できるようになる。ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部グローバルヘルス研究所・グローバル感染症および新興感染症センターのClaudia Hawkins氏らが開発したこの検査に関する詳細は、「The Journal of Infectious Diseases」に12月10日掲載された。 Hawkins氏は、「この検査は、診断を劇的に改善し、治療の普及を加速させ、より多くの人に対するより早期の治癒を可能にすることで、米国および世界のHCV治療に革命をもたらす可能性がある」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「遅延を減らし、検査に至るまでの流れを簡素化することで、未治療のHCVによる壊滅的な肝臓関連の合併症から何百万人もの命を救う可能性がある」と付け加えている。 C型肝炎は、世界中で推定5000万人に影響を与え、主に肝臓の瘢痕化と肝臓がんにより、毎年24万2,000人が死亡している。研究グループは背景情報の中で、C型肝炎は8~12週間の投薬で治癒できるが、治療率は依然として低いと述べている。 通常、活動性のHCV感染の有無を調べる検査では、血液サンプルを検査機関に送る必要がある。検査機関から医師のもとに結果が届くまでには、数日から数週間かかることもあるという。 今回、開発された検査は、DASH(Diagnostic Analyzer for Specific Hybridization〔特異的ハイブリダイゼーション診断解析装置〕)迅速PCRシステムと呼ばれるもので、装置に血液サンプルを入れるだけでPCR検査の結果が得られる。この装置は当初、鼻腔スワブで採取したサンプルから新型コロナウイルスを検出するために開発された。 現状で利用可能なHCVの迅速検査は、米食品医薬品局(FDA)が2024年6月に承認したXpert HCV検査である。この検査は、結果が出るまでに40~60分かかる。一方、Hawkins氏らが開発した検査の所要時間は15分であり、Xpert HCV検査よりも最大で75%速く結果が判明するという。 この検査の臨床での有用性を確認するために、米ジョンズ・ホプキンス大学の共同研究者らは、97個の血漿サンプルを用いて独自の評価を行った。その結果、本検査は既存の検査法との比較において、陽性一致率および陰性一致率がともに100%であった。 論文の上席著者であるノースウェスタン大学マコーミック工学部のSally McFall氏は、「患者の診察中にポイントオブケアで実施できる診断検査を開発することができた。これにより、HCV撲滅に向けた取り組みを支援するための即日診断と治療が可能になる」と述べている。 研究グループは、この検査は世界保健機関(WHO)が掲げる「2030年までにHCVを根絶する」という目標の達成において、重要な役割を果たす可能性があるとの期待を示している。

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sFlt-1/PlGF検査を含むリスク評価により、満期の妊娠高血圧腎症リスクを低下(解説:前田裕斗氏)

 本研究は妊娠35~36週で妊娠高血圧腎症を伴わず、胎児に致命的な異常のない単胎妊娠8,136例を対象とした介入試験である。Fetal Medicine Foundationの提供する妊娠高血圧腎症発症のリスク評価により分娩時期を定め、陣痛発来のない場合に計画分娩とすることで妊娠高血圧腎症の発症率低下を目的とした。結果、介入群の発症率は3.9%、対照群は5.6%であり、30%の有意な減少を認めた。新生児合併症や帝王切開率の増加は認めなかった。 本研究に用いるリスク評価はsFlt-1/PlGF比の測定を含む。日本においては高リスク群以外に保険適用のない検査ということもあり、全妊娠を対象とするのは現実的ではない。そのため、日本において本研究を適用するためには妊娠初期・中期で妊娠高血圧症候群の高リスク群を抽出する2段階スクリーニングとする必要がある。もしくは検査の外注・検体搬送などのハードルはあるが、産婦人科医の少ない地域や離島に居住する妊婦を対象とするのも理にかなっているといえるだろう。ただし、費用面からも上記のような要件での保険適用が認められることが前提となる。今後、sFlt-1/PlGF検査自体の価格が下がることにも期待したい。

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症状を教えて!【Dr. 中島の 新・徒然草】(613)

六百十三の段 症状を教えて!皆さま、年末年始はどのようにお過ごしだったでしょうか?今回は驚異の9連休。例年より長く休めました。私自身はとくに遠出をすることもなく、食べたのは餅ばかり。そのせいか、ずいぶん太ってしまいました。さて、先日お見えになった外来患者さん。高齢の女性です。最近、手術のためにしばらく循環器内科に入院していたのだとか。中島「おっ、何の手術をしたのですか?」患者「心臓の手術やけど」中島「ということは……」患者「わからへん」いやいやいや。手術の名前くらい覚えておきましょうよ。念のためカルテで確認してみました。中島「心房細動に対するアブレーション手術ですね」患者「そうやったかな」中島「それで調子良くなりましたか?」患者「血圧計で測ったら不整脈のランプがつくから、もう調べるのをやめてん」それ、本末転倒じゃないですか。そう思って脈を触ってみたらレギュラーでした。中島「ちゃんと不整脈は治っていますよ」患者「そうなん?」中島「体調はどうですか。いつも『しんどい、しんどい』と言ってたけど」患者「血圧計で調べたら、血圧が……」こちらが知りたいのはご本人の症状です。中島「血圧は見たらわかりますがな」患者「……」中島「私が知りたいのは、しんどいのが治ったのか、治ってないのか、です。それは自分自身しかわからないでしょ!」ここで横からご主人のコメントが……ご主人「手術の後は『しんどい、しんどい』と言わなくなったなあ」患者「今年のお節料理は買って済まそうと思ってたけど、手術の後には自分で作る元気が出てきて……」中島「それですよ、それ! 不整脈が治ったら元気が出てきたわけでしょ」いわゆる atrial kick が復活して倦怠感がなくなったのかも……知らんけど。患者「脳トレを頑張っているから」何でピント外れの答えばかりが返ってくるのか。いやいや、これは倦怠感が改善して、脳トレをする元気が出てきたと解釈すべきかも。中島「循環器内科の主治医の顔を見たら『手術をしたら元気になりました』って言うんですよ。血圧計がどうとか脳トレがどうとか余計なことを言わずにね。お願いします!」患者「わかりました、そない言います」中島「ちょっと練習してみましょか、今ここで」患者「はい、脳トレを頑張っています」アカン、これ。何もわかってもらえていない。なので、ご主人に念を押しておきました。ご主人「アブレーションしたら調子が良くなったって言ったらいいんですね」中島「そうです。そう言ったらね、主治医の先生も喜んでくれるから」それにしても何で新年早々、脳外科外来でアブレーションの話をしているのか、自分でもわからなくなってきました。まあ、高齢患者さんというのは、皆さんこんな感じかもしれませんね。ということで本年最初の1句手術して お節を作った 大成功!

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望ましい死亡診断とは【非専門医のための緩和ケアTips】第115回

望ましい死亡診断とは死亡診断、医師にとって、とくに終末期医療に関わる医師にとって避けて通れない仕事ですが、皆さんは死亡診断時に気を付けていることはありますか? 今回は緩和ケア医として定期的に考えたくなる、死亡診断に関する話題です。今日の質問死亡診断の際、病室に時計がなかったので、自分のスマホの時刻で死亡時刻を確認しました。ご家族からとくに何かを言われたわけではないのですが、自分でも少し違和感を抱いてしまいました。死亡診断の際の行動について、何らかの指針はあるのでしょうか?緩和ケアにおける死亡診断は、それまで積み重ねてきたケアの集大成のような瞬間ですので、大切にしている方も多いと思います。一方、研修医や若手医師であればまだしも、ある程度経験を積んでくるとほかの医師の診療を見ることもなくなるため、私自身、「皆はどうしているのだろう?」と思うときがあります。若手の医師を指導しているときに受けた死亡診断に関連した質問を思い起こしてみました。死亡診断の際、モニターの電源は切るのか診察はどの程度行うのか。服の上から聴診をしてもよいかご家族にどのような声掛けをするとよいか自分が主治医でない患者を看取る際には、どのような点に注意すればいいのかこうしてみると、一つひとつは小さなことですが、患者さんとご家族にとって大切な瞬間における適切な立ち居振る舞いとは、こうした小さなことの積み重ねです。医学部における卒前教育でも、初期研修でも、こうしたことを細かく教えてもらう機会も多くないでしょう。結果として、それぞれの医師の工夫やスタイルが出やすい分野です。今回のご質問にある「死亡診断の指針」ですが、専門家の意見に基づいて作成された死亡診断のガイドブックが存在します1)。とくに在宅におけるお看取りの際の注意点がわかりやすくコンパクトにまとまっています。死亡診断時に「本人と家族へ会釈をし、生きている人と同じように接する」「事務的に見えないように配慮する」といった態度面にも言及されています。私自身としては、死亡診断はそれまでの患者・家族と医療者の関係性や文脈の中で行われるものであり、多くの人が抵抗感を抱くような立ち居振る舞いでなければ、それぞれの医師のスタイルで行えばよいと思っています。「必ずこうしなければならない」ことはそうないですし、質問にあるように「スマホで時刻を確認するのは非常識」とも言い切れないと思います。ただ、後から自身の態度を振り返ることは大切ですし、違和感があったのであれば、「次は腕時計をしていこう」と改善していくことが大切です。忘れてほしくないのは、看取りの瞬間の中心にあるのは患者自身とその家族なので、医師が変に目立ったり、印象付けようと頑張ったりする必要はない、ということです。まあ、これも私の死亡診断の考え方なので、皆さんもそれぞれ考えていただけたらと思います。今回のTips今回のTips日々振り返りをしながら、より良い死亡診断を模索しましょう。1)えんじぇる班. 地域の多職種でつくった『死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについてのガイドブック』;2014.

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