サイト内検索|page:747

検索結果 合計:35207件 表示位置:14921 - 14940

14921.

セマグルチド、NASH治療に有効な可能性/NEJM

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療において、セマグルチドはプラセボに比べ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消散が達成された患者の割合が有意に高いが、肝線維化の改善効果には差がないことが、英国・バーミンガム大学のPhilip N. Newsome氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号で報告された。NASHは、脂肪蓄積と肝細胞損傷、炎症を特徴とする重度の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であり、肝線維化や肝硬変と関連し、肝細胞がんや心血管疾患、慢性腎臓病、死亡のリスク増大をもたらす。また、インスリン抵抗性は2型糖尿病と肥満に共通の特徴で、NASHの主要な病因とされる。2型糖尿病治療薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、肥満および2型糖尿病患者の減量に有効で、血糖コントロールを改善し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値や炎症マーカーを抑制すると報告されているが、NASH治療における安全性や有効性は明らかにされていない。16ヵ国143施設が参加したプラセボ対照無作為化第II相試験 本研究は、セマグルチドが組織学的なNASHの消散に及ぼす効果を評価する目的で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、日本を含む16ヵ国、143施設が参加し、2017年1月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Novo Nordiskの助成による)。 対象は、年齢18~75歳(日本は20~75歳)、生検でNASHが証明され、ステージF1、F2、F3の肝線維化を有し、2型糖尿病の有無は問われず、BMI>25の患者であった。被験者は、3つの用量(0.1、0.2、0.4mg)のセマグルチドまたはそれぞれに対応するプラセボを1日1回皮下投与する群に、各用量群とも3対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72週の時点における肝線維化の悪化のないNASHの消散とした。NASH消散は、NASH Clinical Research Networkの分類で炎症性細胞の軽度残存以下(スコア0~1点)で、かつ肝細胞の風船様腫大がない(スコア0点)場合と定義された。副次エンドポイントは、NASHの悪化がなく、かつ肝線維化の1ステージ以上の改善であった。これらのエンドポイントの解析は、肝線維化がステージF2またはF3の患者に限定して行われ、他の解析は全ステージの患者で実施された。肝酵素や体重減少も用量依存性に改善 320例(肝線維化のステージF2、F3は230例)が登録され、セマグルチド0.1mg群に80例、同0.2mg群に78例、同0.4mg群に82例、プラセボ群には80例が割り付けられた。全体の平均年齢は55歳、61%が女性、62%が2型糖尿病であり、平均体重は98.4kg、平均BMIは35.8であった。肝線維化のステージ別では、F1が90例(28%)、F2が72例(22%)、F3は158例(49%)だった。 72週時において線維化の悪化がなくNASHが消散した患者の割合は、0.1mg群が40%、0.2mg群が36%、0.4mg群が59%で、プラセボ群は17%であった。0.4mg群のプラセボ群に対するオッズ比(OR)は、6.87(95%信頼区間[CI]:2.60~17.63)であり、0.4mg群で有意に優れた(p<0.001)。一方、72週時の肝線維化の1ステージ以上の改善は、0.4mg群では43%、プラセボ群では33%の患者で達成されたが、両群間に有意な差は認められなかった(OR:1.42、95%CI:0.62~3.28、p=0.48)。 ALTおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、いずれもセマグルチドの用量依存性に低下し、72週時のベースライン時に対する測定値の比は、0.4mg群が0.42であったのに対し、プラセボ群は0.81だった(比が小さいほど、低下率が大きい)。また、72週時の体重減少率は用量依存性に増加し、0.4mg群が12.51%、プラセボ群は0.61%であった。セマグルチド群では、2型糖尿病の有無を問わず、糖化ヘモグロビン値の低下率が大きかった。 0.4mg群はプラセボ群に比べ、悪心(42% vs.11%)、便秘(22% vs.12%)、嘔吐(15% vs.2%)の発生率が高かった。悪性新生物は、セマグルチド群で3例(1%)報告されたが、プラセボ群ではみられなかった。全体として、新生物(良性、悪性、詳細不明)の発生率はセマグルチド群で15%、プラセボ群では8%と報告され、特定の臓器での発生のパターンは観察されなかった。 著者は、「NASH消散と用量依存性の体重減少に関して大きな有益性が得られたとはいえ、肝線維化の改善に有意差がなかったという事実は予想外であった。肝線維化の重症度が高い患者が多かったことから、72週という期間では、肝線維化のステージの改善が明確になるまでの時間が十分でなかった可能性がある」としている。

14922.

院外心停止・難治性心室細動、早期ECMO蘇生vs.標準的ACLS/Lancet

 院外心停止(OHCA)および難治性心室細動を呈した患者において、早期の体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた蘇生法は、標準的な二次心肺蘇生法(ACLS)と比べて、生存退院率を有意に改善することが、米国・ミネソタ大学のDemetris Yannopoulos氏らによる第II相の単施設非盲検無作為化試験「ARREST試験」の結果、示された。OHCAや心室細動を呈した患者では、半数以上が初期の標準的なACLSに反応せず難治性心室細動を呈する。研究グループは、より高度な再灌流戦略の適応性、安全性および有効性を確認するため、OHCAと難治性心室細動患者を対象にECMO蘇生法と標準的ACLSを比較する、米国で初となる無作為化試験を行った。Lancet誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。生存退院を主要アウトカムに、単施設無作為化試験 研究グループは、ミネソタ大学医療センターに搬送された18~75歳でOHCAおよび難治性心室細動を呈し、3回の電気ショック後も心拍再開なし、機械的CPR装置(Lund University Cardiac Arrest System:LUCAS)を使用、搬送時間が30分未満の患者を対象に試験を行った。 患者は病院到着時に、ランダムに変化するブロックサイズを有する置換ブロック法で作成された安全なスケジュールを使用して、早期ECMO蘇生法群と標準的ACLS群に無作為に割り付けられた。割り付けの秘匿を達成するため、情報を知るためには表面を削り取る必要があるスクラッチカードが用いられた。 主要アウトカムは、生存退院とし、副次アウトカムは、退院時および退院後3ヵ月・6ヵ月時点の安全性、生存率、機能評価であった。すべての解析は、ITTベースで行われた。本試験では、インフォームド・コンセントによる除外が認められていた。生存退院率、早期ECMO蘇生法群43%、標準的ACLS群7% 2019年8月8日~2020年6月14日に、適格患者36例が搬送され、6例を除外後、30例が標準的ACLS群(15例)または早期ECMO蘇生法群(15例)に無作為化された。早期ECMO蘇生法群の1例が退院前に試験から離脱した。 被験者の平均年齢は59歳(範囲:36~73)、25/30例(83%)が男性であった。 生存退院は、標準的ACLS群1/15例(7%、95%確信区間[Crl]:1.6~30.2)、ECMO蘇生法群6/14例(43%、21.3~67.7)であった(群間リスク差:36.2%[95%Crl:3.7~59.2]、ECMO優越性の事後確率:0.9861)。 ECMO優越性の事後確率が事前規定のモニタリング限界値を上回っていたため、被験者30例の登録後にData Safety Monitoring Boardから全会一致の推奨を受けて、米国国立心肺血液研究所(NHLBI)による初回の事前計画中間解析を行った時点で試験は終了となった。 累積6ヵ月生存率は、標準的ACLS群よりも早期ECMO蘇生法群が有意に優れていた(ハザード比:0.16、95%信頼区間:0.06~0.41、log-rank検定のp<0.0001)。予期せぬ重篤有害事象は観察されなかった。

14923.

新人看護師の燃え尽き症候群が長期アウトカムに及ぼす影響

 看護師や助産師が、燃え尽き症候群を経験することは少なくない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnn Rudman氏らは、看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群エピソードが、卒後10年間の認知機能、抑うつ症状、不眠症に及ぼす長期的な影響について調査を行った。EClinicalMedicine誌2020年10月5日号の報告。看護師キャリア初期の燃え尽き症候群は認知機能低下と睡眠障害と関連 本研究では、看護師を対象とした3つのコホート研究の縦断的観察研究として実施した。26件の看護プログラムより看護学生を募集した。燃え尽き症候群の症状は、卒後3年間は毎年調査し、卒後11~15年の長期調査を1回実施した。フォローアップへの参加に同意した看護師は、2,474人(62%)であった。燃え尽き症候群、認知機能、抑うつ症状、睡眠障害の測定には、それぞれ、Oldenburg Burnout Inventory、本研究特有の方法、うつ病調査票、カロリンスカ眠気尺度を用いた。キャリア初期の燃え尽き症候群と関連する因子は、フォローアップ時の燃え尽き症候群のレベルで調整した後、ロジスティック回帰分析を用いて特定した。 看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群が及ぼす長期的な影響を調査した主な結果は以下のとおり。・卒後3年間で高レベルの燃え尽き症候群を報告した看護師は299人(12.3%)であった。・看護師キャリア初期の高レベルの燃え尽き症候群は、現在の燃え尽き症候群のレベルを考慮すると、10年後の認知機能低下、抑うつ症状、睡眠障害と有意な関連が認められた。・現在の燃え尽き症候群の症状やほかのアウトカム変数で調整した後、キャリア初期に燃え尽き症候群が認められた看護師は、認知機能低下と睡眠障害の頻度が高かったが、抑うつ症状との関連は認められなかった。 著者らは「看護師は、キャリアの早い段階から、慢性的であらがうことのできないストレスによって引き起こされる有害な問題を抱えており、早期より看護教育や新人研修の一部として予防的介入を進めるべきである」としている。

14925.

米国で血圧コントロールが悪化した理由:われわれは何を学ぶべきか?(解説:有馬久富氏)-1321

 米国で継続的に行われている国民健康栄養調査(National Health & Nutrition Examination Survey:NHANES)の成績から、1999/2000年から2017/18年までにおける血圧コントロール状況の経時変化を検討した論文がJAMAに掲載された1)。血圧コントロール良好(血圧140/90mmHg未満)な高血圧者の年齢調整割合は、1999/2000年の32%から2013/14年の54%まで上昇傾向にあったが、2015/16年から減少傾向に転じ、2017/18年には44%まで低下した。論文では、2015/16年から血圧コントロールが悪化した原因として、2014年に米国の高血圧ガイドライン(JNC8)2)が改訂された際に、降圧目標が引き上げられたことを挙げている。また、2015年にSPRINT試験3)の成績が発表され、2017年に米国のACC/AHAガイドライン4)が降圧目標を引き下げたことから、2019年以降の血圧コントロール状況は改善するであろうとも予測している。 米国でみられた一時的な血圧コントロール悪化から、われわれは何を学ぶべきであろうか。JNC8が出版された当時、収縮期血圧130mmHg未満を目標とする厳格降圧の効果を検討した無作為化比較試験の成績は少なく、厳格降圧が脳心血管病を予防する可能性が示唆されていたものの統計学的有意差までは得られていなかった5,6)。一方、一部の観察研究からJカーブ現象(つまり治療中の血圧が低いと脳心血管病が増加する現象)が報告されていたこともあり、JNC8の降圧目標は引き上げられた3)。当時を振り返ってみると、エビデンスレベルの高い無作為化比較試験において厳格降圧が害をもたらす根拠はなかったので、観察研究を根拠に降圧目標を引き上げたのは適切な判断でなかったのかもしれない。ガイドラインの推奨ひとつで、国民の血圧コントロールを悪化させ、脳心血管病を増加させるような事態に陥る可能性があることを考えると、ガイドラインはその時点のエビデンスを包括的かつ公正に評価して作成される必要があると考えられる。私が執筆委員・システマティックレビュー(SR)サポートチームを務めさせていただいた高血圧治療ガイドライン20197)では、SRに基づいて透明性の高い推奨決定がなされた。今後発行されるガイドラインにおいても最新のエビデンスに基づいた公正な推奨を発信してゆくことが大切であると考えられる。文献1)Muntner P, et al. JAMA. 2020;324:1190-1200.2)James PA, et al. JAMA. 2014;311:507-520.3)SPRINT Research Group. N Engl J Med. 2015;373:2103-2116.4)Whelton PK, et al. Hypertension. 2018;71:e13-e115.5)ACCORD Study Group. N Engl J Med. 2010;362:1575-1585.6)SPS3 Study Group. Lancet. 2013;382:507-515.7)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編. 高血圧治療ガイドライン2019. 日本高血圧学会;2019.

14926.

PD-L1高発現NSCLC、ICIへのベバシズマブのadd onを評価する:WJOG@BeStudy【肺がんインタビュー】 第56回

第56回 PD-L1高発現NSCLC、ICIへのベバシズマブのadd onを評価する:WJOG@BeStudy出演:九州がんセンター 呼吸器腫瘍科 瀬戸 貴司氏未治療のPD-L1高発現非小細胞肺がんにおける抗PD-L1抗体アテゾリズマブへのベバシズマブの上乗せ効果を検証した第II相WJOG@BeStudy。治験調整医である九州がんセンター 呼吸器腫瘍科 瀬戸 貴司氏に(ESMO Virtual Congress 2020)での発表を再現いただいた。

14927.

大腸にテントウ虫を認めた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第175回

大腸にテントウ虫を認めた1例Wikipediaより使用基礎疾患のない59歳の男性の下部消化管内視鏡スクリーニング検査中、検査医はビックリしました。なぜって、横行結腸にテントウ虫がいたからです!!!えええええっ!Tahan V, et al.An Unusual Finding of a Ladybug on Screening ColonoscopyACG Case Rep J . 2019 Aug 15;6(8):e00174.ナミテントウですよ。横行結腸にいたのは。 ちょっと待って、口か肛門、どっちから入ったの!?テントウ虫を飲み込んだら普通、消化されますよね。 しかし、下部消化管内視鏡検査をしたら、大腸に虫がいたという報告は実はいくつかあります。 “異物界"で有名なのが「横行結腸のゴキブリ」です1)。これは、ゴキブリの外殻がうまく消化されないことがあって、ゴキブリの形が残ってしまうという現象です。 おええ。よくよく考えると、テントウ虫が肛門から入って、ヨイショヨイショと横行結腸まで来るというのは考えにくいです。となると、やはり上から来たと考えるのが妥当ですよね。例のごとく、著作権の問題があってココに画像を貼れないのが残念ですが、上にあるWikipediaの写真のような、かわいいテントウ虫が横行結腸に転がっていたのです。 ぜひ原文をチェックしてみてください。テントウ虫の生死については書いていませんでしたが、たぶん死んでいたと思います。考察には、処置前に飲んだポリエチレングリコールが、胃や小腸の消化酵素でテントウ虫を消化するのを防いだのかもしれないと書かれていました。「ladybug」をPubMedでタイトル検索すると、わずか18件しか見つからず、 そのうち異物として報告されたのは、これが初めての例になります。1)Kumar AR, et al. An unusual finding during screening colonoscopy: a cockroach! Endoscopy. 2010;42 Suppl 2:E209-10.

14928.

第34回 「静かなマスク会食」前に正しいマスクの着脱法を身に付けよ

第3波とも言われる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者増加で、Go Toトラベルの札幌市、大阪市の除外、東京都では11月28日から3週間の酒類を提供する飲食店の営業時間短縮が決定した。今の局面を考えればやむなしというところだが、これに関連して最近時々報じられる、あるキーワードに強烈な違和感を覚えている。そのキーワードとは「マスク会食」である。提唱者は神奈川県知事の黒岩 祐治氏らしいが、菅 義偉首相もこれに便乗(?)して「静かなマスク会食」を呼びかけ、国が率先して宣伝までしている。そもそも今訴えるべきは、家族やごく親しい少人数の友人など、有体に言えば、万が一互いに感染して死の危険にさらされることがあっても恨みっこなしといえる関係がある者同士での最低限の会食以外は控えて欲しいということではないのか? もっとも好意的に解釈するならば、年末年始にかけて飲食機会の増加が避けられないことを踏まえた苦肉の策なのかもしれない。しかし、かなり実効性に乏しいのは多くの人の目から見て明らかだろう。食事中に会話をする時だけマスクをして、食べる時は外してなどという面倒なことを誰がするだろうか? 多少気を付けたとしても、飲酒で気分が高揚すれば、マスクはそっちのけの飛沫排出しまくりの会話になるのは目に見えている。それでも流行り言葉を使って「『静かなマスク会食』こそニューノーマルだ」としたり顔で言う御仁もいるかもしれない。だが、COVID-19パンデミック収束時、それまでニューノーマルと呼ばれた行動の中で真っ先にすたれるものは何か考えてみるといい。私ならば「マスク着用」を挙げる。同じような答えをする人は多いのではないだろうか? その意味でマスク着用はニューノーマルというより「テンポラリーノーマル」なものと言える。そのうえで今現在の市中でのマスク使用実態を思い起こしてみよう。屋外で誰とも会話しないと考えられる局面ですらマスクを着用している人だらけ。ちょっとコンビニで買い物をするだけの人が店内で会話をするのはせいぜいレジ前ぐらいで、レジカウンター前にはシールドが設置され、店員、客ともに飛沫を吸い込む危険性はほどんどない。だが、その局面でも客も店員も多くはマスクをしている。スポーツジムで壁に向かって設置され、左右に仕切りがあるトレッドミル(ランニングマシン)で走るならば、多少呼吸が荒くなっても他人の飛沫を吸い込む可能性はかなり低いはずだが、ジム側はマスク着用を義務づけている。極端な言い方をすれば限りなく3密に近い電車内でも、会話をせずに咳エチケットを徹底するならマスクは着用しなくとも限りなく感染リスクは低いはずだ。店舗の入口の客に対する呼びかけポスターに「咳エチケットを守りましょう」と「マスクの着用をお願いします」の両方が記載されているものを時々見かけるが、そもそも「咳エチケット」はマスクを着用していない人が突発的な咳やくしゃみの飛沫を他人に吸い込ませないための対策であり、細かいことを言えばこの2つの対策を並立で表記するのは矛盾しているといえる。さらに「静かなマスク会食」を訴えている現内閣閣僚の記者会見開始時のマスク着脱の様子をよく見てみよう。マスクの紐の部分ではなく、マスク正面外側を素手でつまんで外しているのを見かけることは少なくない。しかし、この着脱方法は接触感染予防対策から考えれば完全NGだ。何が言いたいかというと、マスクに関してこれだけメリハリのない使用実態が蔓延している中で、「静かなマスク会食」なるものは極めてハードルが高い行動様式なのである。掛け算の九九すら満足に覚えていない人に微分・積分を計算させるがごときである。医療従事者でも「不適切なマスク着用」や「過剰なマスク着用」に対する懸念を発信している人は一部にはいる。そしてその他の医療従事者や官公庁関係者でも、こうした発信には内心頷いている人も少なくないだろう。だが、こと過剰なマスク着用、つまりマスクをつけなくても良い局面に関しては情報発信量に変化があったという印象はない。その理由は単純に「感染リスクが低い局面が分かっていても、リスクはゼロではないから、断言的な発言で揚げ足を取られたくない」あるいは「一般人にとって感染対策やった感が満載のマスク着用で細かいことを言っても耳を貸してもらえない」と思うからではないだろうか。その気持ちは分からないわけではない。しかし、無症候感染者が一定割合で存在し、かつ症状発現前に感染性のピークがあるCOVID-19に関して、完全な防御は困難である。また、昨今、開発中のワクチンに関しては肯定的なデータも報告も多いが、これとて効果持続期間などを考えたらさらに未知数である。いずれにせよこのウイルスの特性を考慮して限りなくゼロリスクを求めるとするならば、私たちはこの先、生涯にわたってマスク着用を続けなければならなくなる。そんなこんなを考えると、この「静かなマスク会食」というある種、馬鹿馬鹿しい提唱がなされている今こそ、どのような局面ではマスクを着用しなくていいのかという情報発信量も高めていくことが必要なのではないか、メリハリのあるマスクの使用方法を推進することこそが真のニューノーマルなのではないかと個人的には感じている。

14929.

睡眠の質に栄養バランスは関係あるか?

 日本人の成人男性において、不眠症の症状が栄養不足に関連していることが、お茶の水女子大学の松浦 希実氏らの研究によって明らかとなった。Sleep Health誌2020年4月号の報告。 睡眠と食事は健康維持のために欠かせないライフスタイル要因である。睡眠の質が特定の栄養素と食物摂取に関連していることは過去の研究で示唆されているが、栄養の適切性と睡眠の質との関係についてはわかっていない。そこで、日本人成人の睡眠の質(不眠症の症状)と適切な栄養素摂取量の関係について調査した。 2013年に実施された全国人口調査を基に18~69歳の1,997人を対象とした。 不眠症の症状は、アテネ不眠尺度(AIS)を使用して評価され、3つのグループ(なし、軽度、中等度~重度)に分類した。アンケートから食事摂取量を推定し、自己申告による摂取量を「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の2つの指標である推定平均必要量(EAR)およびライフスタイル関連を防ぐための暫定的な食事目標量と比較し、栄養素摂取量の妥当性を評価した。 不眠症の症状と栄養摂取の関係については以下のとおりである。・中等度~重度の不眠症は、男性21.8%、女性25.2%であった。・男性では、総食物繊維、ビタミンC、亜鉛などの不十分な摂取が不眠症の有病率と関連しており、不十分な栄養素の数も不眠症の症状に関連性があることが確認された。

14930.

統合失調症患者に対する筋力トレーニングの効果

 統合失調症スペクトラム障害患者は、下肢の骨格筋力(最大筋力[1RM]、急な動き)が損なわれており、機能的パフォーマンスが低下しているといわれている。ノルウェー科学技術大学のMona Nygard氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者に対する12週間の最大筋力トレーニング(MST)の効果について検討を行った。Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports誌オンライン版2020年10月28日号の報告。 12週間のMSTの効果について、次の3項目について調査を行った。(1)下肢の骨格筋力と機能的パフォーマンスレベルが基準レベルまで回復するか(2)患者の活動性やQOLを向上させるか(3)下肢の骨格筋力や機能的パフォーマンスレベルの改善と症状重症度、1日投与量、罹病期間、患者の活動性レベルとの関連。統合失調症スペクトラム障害の外来患者48例を対象に、トレーニング群(T群)または対照群(C群)にランダムに割り付けた。T群には、レッグプレスMSTを週2回90%1RMで実行した。C群は、2度の入門トレーニングセッションと独立したトレーニングを実施するよう勧めた。レッグプレス1RM、急な動き、一連の機能性テスト、精神の健康管理への積極性評価尺度(Patient Activation Measure-13)、健康関連QOL尺度(SF-36)を調査した。健康な対照者より下肢の骨格筋力と機能的パフォーマンスのベースラインテストを実施した。 主な結果は以下のとおり。・研究を完了した患者は36例(T群:17例、C群19例)であった。・T群では、1RM(28%)および急な動き(20%)に関して健康な対照者と同レベルまでの改善が認められたが(各々p<0.01)、C群では変化が認められなかった。・T群における急な動きの改善は、1日投与量と逆相関が認められた(r=-0.5、p=0.05)。・両群ともに、30秒間立位テストのパフォーマンス向上が認められ(p<0.05)、これは急な動きの改善と関連が認められた(r=0.6、p<0.05)。 著者らは「12週間のMSTは、統合失調症スペクトラム障害患者の下肢の骨格筋力を健康な人と同程度のレベルまで改善し、30秒間立位テストのパフォーマンスの改善が認められた」としている。

14931.

がん治療は4週遅れるごとに死亡率が高まる/BMJ

 がん治療が4週間遅れるだけで、手術、全身療法、放射線療法の適応となる7つのがんで全体の死亡率が上昇する。カナダ・クイーンズ大学のTimothy P. Hanna氏らが、がん治療の遅延と死亡率上昇との関連を定量化する目的で実施したシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。がん治療の遅れは転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、その影響の標準推定値はなく、これまでのメタ解析で治療の遅れと死亡/局所管理との関連が示されていたものの、各報告のばらつきが大きくメタ解析に限界があった。著者は、「世界的にがん治療の遅れは医療制度に問題がある。がん治療開始の遅れを最小限にするシステムに焦点を当てた政策が、集団レベルでの生存転帰を改善できるであろう」とまとめている。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。7種類のがん治療の4週間遅延ごとの全生存期間を評価 研究グループは2000年1月1日~2020年4月10日にMedlineで公表された、7つのがん(膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、子宮頸がん、頭頸部がん)に対する手術、全身療法または放射線療法の根治的、術前および術後適応の研究を解析に組み込んだ。 主要評価項目は、各適応症の4週間遅延ごとの全生存(OS)期間のハザード比(HR)であった。遅延は診断からがんの初回治療まで、または1つの治療の完了から次の治療の開始までで評価した。 主要解析は、主要な予後因子を補正した妥当性の高い研究のみを対象とした。HRは、OSに関する対数線形で推測され、4週間の遅延ごとの影響に換算された。併合効果は、DerSimonian-Laird変量効果モデルを用いて推定した。13の適応症でがん治療の遅延と死亡率上昇に有意な関連 解析には、17の適応症に関する34件の研究が組み込まれた(計127万2,681例)。放射線療法の適応となる5つのがん、または子宮頸がんの手術に関する妥当性の高いデータは確認できなかった。 がん治療の遅延と死亡率上昇との有意な関連性(p<0.05)が、17の適応症のうち13で確認された。 手術に関しては、4週間の遅延ごとの死亡のHRの範囲が1.06~1.08と、がんの種類を問わず一貫していた(例:結腸切除術は1.06[95%信頼区間[CI]:1.01~1.12]、乳がん手術は1.08[95%CI:1.03~1.13])。全身療法の推定値はばらつきがみられた(HRの範囲:1.01~1.28)。放射線療法の推定値は、頭頸部がんの根治的放射線療法のHRが1.09(95%CI:1.05~1.14)、乳房温存手術の術後放射線療法のHRが0.98(95%CI:0.88~1.09)、子宮頸がんの術後放射線療法のHRが1.23(95%CI:1.00~1.50)であった。 合併症または機能状態に関する情報が不足していたため、除外された研究の感度解析でも結果は変わらなかった。

14932.

FFR閾値を順守したPCI実施でアウトカム改善/JAMA

 日常診療で1枝血管の血流予備量比(FFR)測定を受けた冠動脈疾患患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施は実施しない場合と比較し、FFR閾値から虚血性病変と判定された患者で主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低く、非虚血性病変と判定された患者では同イベントの発生率が高いことと有意に関連していた。カナダ・トロント大学のManeesh Sud氏らによる検討の結果で示された。FFRは、冠動脈狭窄が心筋虚血を誘発する可能性を評価し、PCIの適応を判定するために用いられる侵襲的検査である。しかし、PCIの適応に関するFFRの閾値が日常的な介入診療で順守されているか、あるいは閾値の順守が良好な臨床アウトカムと関連しているかはわかっていなかった。著者は、「今回の解析結果は、エビデンスに基づくFFR閾値に従ったPCIの実施を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。虚血性(FFR≦0.80)vs.非虚血性(FFR>0.80)、PCI実施有無のMACE発生を比較 研究グループは、2013年4月1日~2018年3月31日の期間に、カナダ・オンタリオ州で1枝のFFR評価を受けた冠動脈疾患成人患者(ST上昇型心筋梗塞を除く)を対象に、後ろ向き多施設コホート研究を実施した(2019年3月31日まで追跡)。 FFR閾値に基づき2つのコホートに分け(虚血性≦0.80、非虚血性>0.80)、治療選択のバイアスを考慮して傾向スコアのIPTW(逆確率治療重み付け)法を用い、MACE(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、または緊急冠動脈血行再建術)に関してPCIありとPCIなしを比較した。虚血性コホート、PCIありはなしより5年アウトカムが有意に良好 解析対象は全体で9,106例(平均[±SD]年齢65±10.6歳、女性35.3%)であった。虚血性FFRコホートは2,693例で、このうち75.3%がPCIを受け、24.7%は内科的治療のみであった。このコホートでは、PCIありはPCIなしと比較して5年後のMACE発生率およびハザード比(HR)が有意に低かった(31.5% vs.39.1%、HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.94)。 非虚血性FFRコホートは6,413例で、このうち12.6%がPCIを受け、87.4%が内科的治療のみで治療された。このコホートでは、PCIありはPCIなしと比較して5年後のMACE発生率およびハザード比が有意に高かった(33.3% vs.24.4%、HR:1.37、95%CI:1.14~1.65)。

14933.

ほとんどの医療機関が上限額の補助対象、厚労省支援金の活用を/日本医師会

 厚生労働省の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」については、補助の対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。しかし感染防止対策の取り組みを行う医療機関であれば、同省が公表している例示に加え、日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となりうることが、明確となった。11月25日の日本医師会定例記者会見で発表された。消耗品のほか、光熱費や保険料なども補助対象となりうる 「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」1)は、新型コロナウイルス感染症の院内等での感染拡大を防ぐための取り組み(下記に例示)を行う医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション、助産所)を対象として、感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する費用を補助する。感染拡大を防ぐための取り組みの例(例示であり、これに限られるものではない)・共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒などの環境整備・予約診療の拡大、整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知・ 発熱等の症状を有する新型コロナ疑いの患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫など・ 電話等情報通信機器を用いた診療体制等の確保・ 感染防止のための個人防護具等の確保・ 医療従事者の感染拡大防止対策(研修、健康管理等) しかしこれまで、その対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。今回、日本医師会では同省への働きかけを行い、公表されている例示に加え、以下のような経費も対象となりうることが明確となった2)。同事業の補助対象となりうる経費の例:需用費・日常業務に要する消耗品費(固定資産に計上しないもの)・日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒費など) ※直接診療報酬等を請求できるものは除外・喚気のための軽微な改修(修繕費)・水道光熱費、燃料費役務費・電話料、インターネット接続等の通信費・医療施設・設備に係る火災保険、地震保険、不動産保険の保険料・休業補償保険の保険料・受付事務や清掃の人材派遣料で従前からの契約に係るもの委託料・受付事務や清掃の外部委託費で従前からの契約に係るもの使用料および賃借料・既存の診療スペースに係る家賃・既存の医療機器・事務機器のリース料 日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となることから、感染防止対策を行うほとんどすべての保険医療機関で、上限額(無床診療所100万円、有床診療所200万円、病院200万円+5万円×病床数)の補助を受けられるものと考えられるという。登壇した松本 吉郎常任理事は、「真水に近い形で医療現場の支援とすることができると明確になった」とし、改めて同事業の有効活用を呼び掛けた。日医独自の休業補償制度を緊急創設、掛け金には支援事業を活用可能 医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合の休業補償については、国による補償制度3)が11月9日よりすでに募集を開始している。今回、この制度に加え、日本医師会として独自の補償制度4)が創設され、今村 聡副会長がその概要を解説した。掛け金は上述の厚労省補助金の対象となり、実質負担なしで加入することも可能となる。<新型コロナウイルス感染症対応『日本医師会休業補償制度』>支払い要件(3要件すべて満たす必要あり):1)日本医師会会員が開設または管理する医療機関に勤務する医療従事者が、新型コロナウイルスに感染もしくは濃厚接触すること2)医療従事者の新型コロナウイルス感染に伴い、当該医療機関で外部業者による消毒が行われること(消毒料金の多寡は不問)3)医療従事者の新型コロナウイルスの感染および消毒の実施に伴い、休診日を含む連続7日(7営業日ではない)以上閉院もしくは外来を全面閉鎖すること補償金:・100万円(保険期間中に1回のみ)掛け金(1年間):・1施設あたり48,000円加入方法:・日本医師会が開設する申込専用WEBページにアクセスして申込手続を実施 ※申込専用WEBページは12月早々に開設予定・その後、掛金を日本医師会が指定する口座に振込 ※請求書および加入者証は、申込手続き後に登録メールアドレスへ送信される・加入申込みは12月より募集を開始し、1月1日保険始期とする。毎月1日付で中途加入可能(中途加入掛金は月割計算)

14934.

新型コロナ流行時、新生児集中治療が減少/日本の大規模診療データ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時、わが国の新生児集中治療の入室日数および早産の件数が減少傾向にあったことがわかった。国立成育医療研究センターの前田 裕斗氏らの共同研究チームが、メディカル・データ・ビジョンの保有する大規模診療データベースを用いて分析した結果を報告した。Archives of disease in childhood-Fetal and neonatal edition誌オンライン版2020年11月23日号に掲載された。 当初、COVID-19流行により妊婦の心身ストレスが増加し、周産期疾病や新生児集中治療の件数が増えると懸念されていた。しかし、海外ではむしろ極低出生体重児(出生体重 1,500g未満)が減少しているとの報告もあり、日本でも同様の結果を示すかどうか、全国186のDPC病院を対象に分析した。 2020年の第2~9週(1月6日に始まる週から、政府がCOVID-19への基本方針を策定した2月25日から始まる週まで)と2020年の第10~17週(3月2日に始まる週から、政府が緊急事態宣言を全都道府県に拡大した4月16日を含む4月13日に始まる週まで)のNICU(新生児特定集中治療室)、GCU(回復治療室)の各入室日数、および早産(妊娠34~37週および34週以前)を年・月のトレンドを調整し比較することで、 COVID-19流行第1波期間中の変化を分析した。 その結果、NICU入室日数は2020年第2~9週目から2020年第10~17週目で24%減少(95%CI:11~35%)、GCU入室日数は29%減少(同:25~34%)した。病棟の閉鎖や利用控えなども理由として考えられるが、妊娠34週未満の早産は29%(同:0~50%)、34~37週の早産は15%(同:2~26%)減少しており、少なくとも新生児集中治療を要するような新生児の数が減ったことも一因として示唆される。 責任著者である東京大学の宮脇 敦士氏は、「今後、なぜこのような減少が見られたのか、さらなる研究が期待される」と述べている。

14935.

プラスグレル治療におけるde-escalation?(解説:上田恭敬氏)-1319

 韓国の35病院において、PCIを施行したACS患者2,338例を対象として、1ヵ月間の標準療法(プラスグレル10mgとアスピリン100mg)後に、標準療法を続ける群とde-escalation群(プラスグレル5mgとアスピリン100mg)に無作為に割り付けを行い、1年間の予後を比較した試験の結果が報告された。主要エンドポイントは全死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、再血行再建術、脳卒中、BARC grade2以上の出血イベントの複合エンドポイントである。75歳以上、体重60kg未満、あるいは一過性脳虚血発作・脳卒中の既往がある人は除外されている。 結果としては、標準治療群に比してde-escalation群の非劣性が示され、さらに主要エンドポイントを有意に低下させたことが示された(HR:0.70[95%CI:0.52~0.92]、p=0.012)。内訳としては、出血性イベントを有意に低下させた(HR:0.48[0.32~0.73]、p=0.0007)が、虚血性イベントの有意な増加は認めなかった(HR:0.76[0.40~1.45]、p=0.40)。 この論文で議論されているのは、「虚血性イベントのリスクはACS発症あるいはPCI直後には高く次第に低下してくるのに対して、出血性イベントのリスクは同様に継続することから、虚血性イベントのリスクが低下すると考えられる1ヵ月後にde-escalationすることに意義がある」ということである。次に、「de-escalationの方法には、投与量を減らす方法とクロピドグレルのような効果の弱い薬剤へ変更する方法があるが、投与量を減らす方法を検討したのは本試験が初めて」としている。また、本試験が、出血性イベントが多く虚血性イベントが少ない「east Asian population」で行われたことも、このような結果が得られた背景として指摘している。 ここで、日本人として注意すべきことがある。まず、日本におけるプラスグレルの標準投与量は3.75mgであり、この試験の結果は適用できない。そもそも同じ「east Asian population」である韓国と日本で異なった標準投与量が承認されていることに対して疑問がある。韓国が欧米の標準投与量をそのまま採用したのに対して、日本はPRASFIT-ACSという独自の試験によって、プラスグレル3.75mgが従来のクロピドグレル治療よりも虚血性イベントを低下させるが、出血性イベントを増やさないことを確認して、標準投与量として承認している。この結果は、「CYP2C19 loss-of-function alleles」を持つ人が多い「east Asian population」では、そのためにクロピドグレルの効果が不十分となるのに対して、プラスグレルではこの遺伝子多型に依存せずに十分な効果が得られることに起因すると考えられている。すなわち、クロピドグレルの効果を十分に得られていた人においては、同等の効果が得られるようにプラスグレルの投与量が決められているため、出血性イベントが有意に増加しなかったと考えられる。そのため、日本においてプラスグレル3.75mgをクロピドグレルへ変更することは、一部の遺伝子多型の人を効果不十分にするだけで「de-escalation」とは言えない。プラスグレルを3.75mgよりもさらに低用量にすることにメリットがあるかどうかはわからないが、今回報告されている5mgは、同じ「east Asian population」である韓国において、まだ多すぎるのではないだろうか。 話は変わるが、本試験の結果がLancet誌に採択されたのは、国際標準投与量をベースとして減量を検討したことと、1ヵ月以後虚血性イベントのリスクが減るだろうという仮説に沿った結果を示したことが要因と推測する。その点において本試験の結果は、欧米にもある程度適用可能であるからである。もし、プラスグレル3.75mgをベースとした大規模な試験が行われても、その結果がLancet誌に採択されるかどうか、国際的公平性の観点から気になるところである。

14936.

血圧高めの低リスク青壮年者に降圧治療が必要か?(解説:有馬久富氏)-1320

 18~45歳の青壮年者においても、血圧上昇が脳心血管病をわずかに増大させるとする観察研究のメタ解析の結果がBMJ誌に報告された1)。論文の中では古い血圧分類が用いられているが、120/80mmHg未満に対して、120~129/80~84mmHgにおいて1.19倍、130~139/85~89mmHgにおいて1.35倍、140~159/90~99mmHgのI度高血圧において1.92倍、160/100mmHg以上のII~III度高血圧において3.15倍脳心血管病のリスクが上昇していた。しかし、絶対リスクが低いため、1例の脳心血管病を予防するために降圧治療しなくてはならない人数(number needed to treat:NNT)の推定値は、120~129/80~84mmHgにおいて2,672人、130~139/85~89mmHgにおいて1,450人、I度高血圧において552人、II~III度高血圧において236人と、高リスク者を治療する場合に比べて非常に大きかった。つまり、低リスク者において1例の脳心血管病を予防するために必要な医療費(薬剤費)は、高リスク者のそれよりも非常に高額になる(つまり費用対効果が悪い)ことがわかる。 社会全体でみると、高リスク者を優先して治療していく(つまり低リスク者の治療を後回しにする)ことにより、限られた資源(医療費など)の中で効率よく脳心血管病を予防していくことが可能となる2)。一方、個人の立場に立つと、血圧が高めの低リスク者であっても、正常血圧の同年代の方に比べると脳心血管リスクが高いわけであるから、高リスク者と同じように降圧治療を受けたいと考える方も多いであろう。 『高血圧治療ガイドライン2019』3)では、高リスクの高値血圧(130~139/80~89mmHg)において非薬物療法で十分な効果が得られない場合に薬物療法を推奨する一方、低・中等リスクにおける薬物療法は推奨していない。これらの推奨の背景にも、限られた資源の中で効率よく脳心血管病を予防したいという考えがある。 SPRINT試験4)の結果発表後、降圧目標が徐々に引き下げられつつある現在、低リスク者についてどこまで薬物療法の適応を広げるかについては、費用対効果などを考えながら社会全体で議論していく必要があろう。

14937.

EGFR陽性肺がんに対するオシメルチニブのアジュバント:ADAURA study【肺がんインタビュー】 第55回

第55回 EGFR陽性肺がんに対するオシメルチニブのアジュバント:ADAURA study出演:国立がん研究センター東病院 呼吸器外科 坪井 正博氏局所進行EGFR変異陽性非小細胞肺がんに対するオシメルチニブのアジュバント第III相ADAURA study。Co-PI坪井正博氏にESMO2020での発表を再現いただいた。Yi-Long Wu, et al. Osimertinib in Resected EGFR-Mutated Non-Small-Cell Lung Cancer.383:1711-1723.

14938.

約束のネバーランド【Dr. 中島の 新・徒然草】(351)

三百五十一の段 約束のネバーランドだんだん日が短くなってきました。朝、6時頃に家を出るときはまだ暗いです。はたして今年の冬は暖かいのか厳しいのか、気になるところ。さて、90年代半ばの米国在住時代、研究室の同僚アメリカ人からいきなり尋ねられました。同僚「シン、日本のアニメの『ネゾーココ』を知ってるか?」中島「なにそれ、知らんなあ」同僚「日本ではあまり知られていないのかな? 『ネゾーココ』じゃないか!」中島「ああ、『めぞん一刻』か! 知ってる、知ってる」なんとまあ、あの高橋留美子の『めぞん一刻』のことでした。冴えない大学生の五代くんとアパート管理人の音無響子さんの物語はあまりにも有名。それにしても、なんでアメリカ人がそんなマニアックな漫画のことを?同僚「実はコーネル大学で、『ジャパニーズ・アニメーション研究会』に入ってたんだ」中島「ジャパニーズ・アニメーション研究会?」同僚「ああ、週末になると皆で集まってジャパニーズ・アニメーションを鑑賞するわけ」中島「でも言葉はどうすんの。日本語なんかわからんでしょう」同僚「英語吹き替えのあるのとか、英語字幕のあるヤツは沢山あるし、それもなかったら画面にあわせて弁士がスクリプトを読むわけよ」中島「そこまでしてジャパニーズ・アニメーションを見るか。信じられんなあ」同僚「僕は『宇宙戦艦ヤマト』がお気に入りだね」し、渋すぎる。中島「おおヤマトか! じゃあ、どの場面が印象に残っているか言ってみろ」同僚「そりゃあれよ、沖田艦長の『地球か、何もかも懐かしい』だな」中島「あんた……本物だ!」というわけで、彼とはあらゆる漫画の名場面を語り合って盛り上がりました。この時ばかりは、言葉の壁がどこかに吹っ飛んでしまった記憶があります。さて、時は流れて平成から令和。相変わらず日本では名作漫画が生まれています。でも、私にとって必ずしもベストセラーが面白いとは限りません。『ONE PIECE』も『鬼滅の刃』も残念ながら1巻で挫折してしまいました。人間関係と同じで、相性があるんでしょうね。そんな中、ついに出会ったのが『約束のネバーランド』。今まで知らなかったけど、こちらもベストセラー。いわゆるダーク・ファンタジーに分類される恐ろしい物語。でも絵が可愛い。だけど話が怖い。ちょっとだけストーリーを紹介します。時は西暦2045年頃、舞台はグレース=フィールド ハウスという名の孤児院。やさしいママのもとで何一つ不自由なく暮らす38人の子供たち。ただ一つ変わっているのは、毎日学力テストが課せられること。そんな中でノーマン、エマ、レイの3人は満点をとり続けます。ところがこの3人、ひょんなことから孤児院の秘密を知ってしまいました。そこから一気に子供たちに襲いかかる試練、というより災厄!3人をはじめとした孤児院の子供たちは、知恵を振り絞って切り抜けていく。つい物語に感情移入してしまい、毎晩、布団の中で震えながら少しずつ読んでおります。やはり面白いのは主人公のエマ。「AかBか選べ」と言われたら「どっちも選ぶ!」と決してあきらめません。また、自分たち3人だけが助かることをよしとせず、無謀にも孤児院のこどもたち全員を助けようとします。この辺が従来の少年漫画にはあまりみられない新キャラクター。少年ジャンプのスローガンである「友情、努力、勝利」という路線を踏襲しながらも、それ以上に家族愛を謳っているところから考えると、性別を公表していない原作者の白井カイウ氏は女性ではないかと思います。『鬼滅の刃』も作者は女性だろうという噂があるので、これからは女性作者による少年漫画というのが新しい境地を拓いていくのかもしれません。それはさておき、私のジワジワ読書も徐々に中盤から終盤に差し掛かってきました。先に読んだ人によれば、すべての謎が解き明かされ、驚きと感動の最終回を迎えるのだとか。果たしてどんな最終回なのか。あまり期待しすぎると期待を裏切られるかも。でも、ガッカリするのもまた一興。最後に1句寒き夜 布団に隠れて ホラー読む

14939.

間食がなかなかやめられない患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第38回

■外来NGワード「間食をやめなさい!」(できたら苦労しない)「お菓子を買わないようにしなさい!」(わかっているけどできない)「もう一生分のお菓子は食べたでしょ!」(非論理的)■解説 血糖コントロール不良の原因が明らかに間食のし過ぎにもかかわらず、なかなかやめられない患者さんがいます。そういった患者さんに「間食をやめなさい!」「お菓子を買わないようにしなさい!」と一方的に伝えても、行動に移してくれないでしょう。食べることが好きな患者さんは、目の前に食べ物があると、つい手が出てしまいます。そして、一度食べ始めるとなくなるまで食べてしまいます。つまり、そもそもの“食べたくなる刺激”を減らすことが大切なのです。これを「刺激統制法」といいます。しかし、「食べ物を目に付かないところに置きなさい!」と指導したところで、患者さんは自分で置いた場所を覚えています。ただ隠してもらうだけでなく、たとえば戸棚の奥、高い場所、ガムテープ張りの開けにくい箱の中にしまって、「1つまで!」と張り紙をするなど、食べることに困難を加える工夫が必要です。さらに、本当に食べたいのかを自問自答してもらうことも大切です。刺激統制法に認知の再構成を組み合わせることで、間食の機会が減らせるとよいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近、間食はしていますか?患者なるべく控えるようにと思いながら、実際はなかなか…。医師そうですか。では、どんな工夫をされていますか?患者低カロリーの食品を選ぶようにしたり、小袋のお菓子を買うようにしたりしています。医師なるほど。いろいろ工夫されていますね。けど、結局食べちゃう…と。患者そうなんです。あると食べちゃうんですよね。医師ものは考えようですが、空腹感は脂肪が燃え始めている証拠ですよ。患者えっ、そうなんですか?医師はい。なので、少しおなかが空いてきたタイミングがダイエットの分かれ道です。そこで、自問自答してみてください。患者自問自答…?医師たとえば、おなかを少しつまんでみて、「今、本当に食べたいか」を自分に問い掛けるんです。食べたら、つまんだ脂肪は減らずに、さらに増えるんじゃないでしょうか…。患者なるほど、それは効果がありそうです。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「空腹感は脂肪が燃え始めた証拠です。食べる前におなかをつまんでみて、本当に食べたいかどうかを自問自答してみてもいいかもしれませんね」

14940.

第34回 まさかの激高!?ノーベル賞候補者のプライドを刺激した1通の文書

研究目的で生体試料を保管する「バイオバンク」を巡り、医療人の間でバトルが展開されている。一方の当事者は、中村 祐輔氏(がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長)。ノーベル賞の有力候補として名前が挙がった人物だ。そしてもう一方は、木下 賢吾氏(東北大学大学院教授)である。事の発端は、木下氏が東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパンに宛てて送った1通の文書だった。(略)コホートの種類の数だけ同意書が存在するように、DAC(データ利活用委員会)もコホートの数だけ存在すると考えて良い状態であり、例えばToMMo(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)では試料情報分譲審査委員会がDACであり、J-MICC(日本多施設共同コホート研究)では運営委員会、BBJ(東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパン)では試料等利用審査会などがある。そのため、利用者がデータを利用する際には、各コホート・バイオバンクの定める手続きに従ってそれぞれのDACで可否判断を受ける必要があり、大きな利活用推進の一つの足かせになっているつまり木下氏は、自らが所属する東北大学をはじめ、さまざまな大学に設置されているバイオバンクへのデータアクセスには、個々のDACに諮る必要があり、多施設共同の横断的な研究や解析の妨げになっていることを問題提起したようだ。これに対し中村氏は、10月31日付のブログで猛反論を展開した。東京大学医科学研究所にバイオバンク・ジャパンのデータアクセスを批判する文章が私の手元に届いた。2020年の基準で、2002年に計画したバイオバンクのデータアクセス権を批判するなど、アホ以外の何物でもない。2002年、バイオバンク・ジャパン計画を作成したのは私だ。(略)木下君、ユーチューブの前で対談をセットするのではっきりと何が問題なのか、公開で議論をしようではないか!その時に私は合わせて約100報のNature、Nature Genetics、Nature Communication論文を含めた約300論文を持参していく。その実績も含めジックリと東北メディカル・メガバンク機構の実績と展望、東大のバイオバンク・ジャパンの実績と展望を話ししたい。発表した300の論文を利用すれば、その気になれば、産業応用はいくらでもできる。東北メディカル・メガバンク機構には、相関解析ができるほどの症例数が揃っているのかどうかも明確にしてほしい。また、東北大学バンクに参加している人たちから何の審査もなく、自由に利用してもらっていいというインフォームドコンセントを取っているのかどうかも確認したいものだ。事実に基づかない陰口ではなく、事実を示したうえで、バイオバンク・ジャパンのどこに問題があるのか、どこが東北で優れているのか、公開で議論しよう書きぶりからも相当な怒り具合が伝わってくるが、よくよく読んでみると、バイオバンクの利活用のあり方から、なぜか東北大対東大の構図に論点がすり替わっている。中村氏は大阪大学医学部卒だが、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長・教授を務め、東大名誉教授でもあるためか、BBJに思い入れがあるのだろう。ブログの見出しも「受けて立とうバイオバンク・ジャパンへの批判;出てこい東北大学」である。第三者からすると、感情的過ぎて違和感がある。中村氏を知る人は、彼について「批判に対して感情的に反応しやすい性格」と評す。このやりとりを心配した関係者が、両者の仲介を買って出る動きもあり、週刊誌もゴシップ的な関心を寄せているようだ。しかし、こんなことでノーベル賞候補者としての品位が傷ついたら、それこそ「アホ以外の何物でもない」のではないだろうか。

検索結果 合計:35207件 表示位置:14921 - 14940