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重症急性膵炎〔Severe acute pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念急性膵炎は、膵内で病的に活性化された膵酵素が膵を自己消化する膵の急性炎症である。炎症が膵内にとどまって数日で軽快する軽症例が多いが、一部は炎症が全身に波及して、多臓器障害や血液凝固障害を引き起こす重症急性膵炎となる。急性膵炎から慢性膵炎への移行は10%前後であり、多くの急性膵炎は可逆性で膵に後遺障害は残さない。■ 疫学急性膵炎の2016年における発症頻度は10万人当たり61.8人で、増加傾向にある。男女比は2:1で、発症時の平均年齢は男性で59.9歳、女性で66.5歳である。重症度は、軽症が76.4%、重症が23.6%となる。重症急性膵炎発症時の平均年齢は63.1歳で、男性で60.2歳、女性で69.4歳である。■ 発症機序・成因食べ物を消化する膵酵素は、膵腺房細胞で生成され、食間では消化機能のない不活性型として蓄えられている。摂食により膵酵素の中のトリプシノーゲンが膵管を介して十二指腸内に放出され、エンテロキナーゼの作用により活性型であるトリプシンに転換され、食物を消化する。この膵酵素の活性化が種々の病的要因により膵内で起こり、膵が自己消化されるのが急性膵炎である。膵内外での炎症反応はサイトカインカスケードを活性化し、高サイトカイン血症によるSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を来す。重症例では高度のSIRS反応の結果、炎症メディエーターによる血管内皮細胞の障害から全身末梢血管の透過性が亢進し、組織浮腫と血管内脱水を来す。そして、臓器還流障害から肺や腎臓などの臓器障害が起こり、さらに免疫系や凝固系の障害や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を合併する。また、高度の血管内脱水にともなって全身の末梢血管に血管攣縮を来たし虚血状態を生じ、膵では膵壊死が起こる。発症後期には、膵および膵周囲の壊死部に感染を生じ死亡に至る例がみられる。感染を起こすのは大腸菌などの腸管由来の細菌がほとんどである。健常人では、腸内細菌に対するバリアを備えているが、急性膵炎では腸管壁の透過性が亢進し細菌毒素が腸管粘膜を通過して腸管外へ移行するbacterial transformationが引き起こされる。さらに、全身免疫機能低下が加わり感染を惹起させる。アルコール性と胆石性が2大成因であり、成因が特定できない特発性がそれに次ぐ。男性ではアルコール性(43%)が多く、発症年齢は40~50歳代が多い。女性では胆石性(38%)が多く、発症は60歳以上の高齢者が多くなっている。その他の成因としては、膵腫瘍、手術、内視鏡的膵胆管造影(ERCP)、高脂血症、膵管形成異常、薬剤性などがある。重症急性膵炎の成因は、アルコール性(35%)、胆石性(30%)、特発性(19%)の順である。■ 症状急性膵炎では、ほとんどの例で上腹部を中心とした強い腹痛と圧痛を認める。その他には、嘔気・嘔吐、背部への放散痛、食思不振、発熱などもしばしば認められる。重症急性膵炎では、ショック、呼吸不全、乏尿、脳神経症状、腹部膨隆(イレウス、腹水)、SIRS(高・低体温、頻脈、頻呼吸)などの重要臓器機能不全兆候がみられる。■ 予後2016年の全国調査における急性膵炎患者の死亡率は1.8%であり、軽症例で0.5%、重症例で6.1%であった。重症急性膵炎の死亡率は2011年の調査時の10.1%より約4割減少した。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)急性膵炎の診断は、上腹部痛と圧痛、膵酵素の上昇、および膵の画像所見のうち2項目を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外する診断基準によって行われる(表1)。急性膵炎診療ガイドライン2015に記載されている臨床指標のPancreatitis Bundles 2015(表2)と診療のフローシート(図1)にそって、診断と治療を行う。重症急性膵炎は死亡率が高いので重症例を早期に検出する目的で、急性膵炎診断後、直ちに重症度判定を行い、経時的に重症度判定を繰り返す必要がある。急性膵炎の重症度判定基準(表3)は、9つの予後因子と造影CTによる造影CT Gradeからなり、各1点の予後因子の合計が3点以上か、造影CT Gradeが2以上の場合重症と診断される(図2~4)。それぞれ単独で重症と診断される例より、両者の組み合わせで重症となる例では死亡率が高い。急性膵炎は病理学的には、浮腫性膵炎、出血性膵炎と壊死性膵炎に分類されるが、臨床的には膵および膵周囲の病変は改訂アトランタ分類によって分類される(表4、図5)。発症4週間を経過すると炎症により障害された組織を取り囲む組織の器質化が進み、4週以降は壊死を伴わない液体貯留は仮性嚢胞となるが、壊死を伴う場合には内部に壊死を含む被包化壊死となりWON (wall-off necrosis)と呼ばれる。表1 急性膵炎の診断基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班)1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある3.超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。 ただし、慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める。注:膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼなど)を測定することが望ましい表2 Pancreatitis Bundles 20151.急性膵炎診断時、診断から24時間以内、および、24~48時間の各々の時間帯で、厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する。2.重症急性膵炎では、診断後3時間以内に、適切な施設への転送を検討する。3.急性膵炎では、診断後3時間以内に、病歴、血液検査、画像検査などにより、膵炎の成因を鑑別する。4.胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例、黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例には、早期のERCP+ESの施行を検討する。5.重症急性膵炎の治療を行う施設では、造影可能な重症急性膵炎症例では、初療後3時間以内に、造影CTを行い、膵造影不良域や病変の拡がりなどを検討し、CT Gradeによる重症度判定を行う。6.急性膵炎では、発症後48時間以内は十分な輸液とモニタリングを行い、平均血圧*65mmHg以上、尿量0.5mL/kg/h以上を維持する。7.急性膵炎では、疼痛のコントロールを行う。8.重症急性膵炎では、発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬の予防的投与の可否を検討する。9.腸蠕動がなくても診断後48時間以内に経腸栄養(経空腸が望ましい)を少量から開始する。10.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎沈静化後、胆嚢摘出術を行う。*:平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3図1 急性膵炎の基本的診療方針画像を拡大する表3 急性膵炎の重症判定基準(厚生労働省難治性疾患に関する調査研究班 2008年)画像を拡大する図2 浮腫性膵炎(矢印)のCT所見画像を拡大する図3 造影CT所見における膵造影不良域(矢印)画像を拡大する図4 重症急性膵炎の造影CT所見。腎下極以遠まで炎症の進展を認める画像を拡大する表4 急性膵炎に伴う膵および膵周囲病変の分類(改訂アトランタ分類)画像を拡大する図5 重症急性膵炎の造影CT所見。薄壁被膜で被包化された左側腹部広範に広がる液貯留腔画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 輸液急性膵炎と診断したら入院治療を行い、意識状態・体温・脈拍数・血圧・尿量・呼吸数・酸素飽和度などをモニタリングする。膵外分泌刺激を回避するために絶食とし、初期輸液と十分な除痛を行う。急性膵炎では発症初期より血管内脱水を起こすので、乳酸リンゲル液などの細胞外液による十分な輸液を行う。ショックまたは脱水状態の患者には、短時間の急速輸液(150~600mL/時間)を行うが、過剰輸液にならないように十分に注意する。脱水状態でない患者には、130~150mL/時間の輸液をしながらモニタリングを行う。平均動脈圧(拡張期血圧+(収縮期血圧―拡張期血圧)/3)が65mmHg以上と尿量0.5 mL/kg/時間以上が確保されたら、急速輸液を終了し輸液速度を下げる。■ 薬物療法急性膵炎の疼痛は激しく持続的であり、非麻薬性鎮痛薬であるブプレノルフィン(商品名:レペタン)などにより十分にコントロールする。軽症例では予防的抗菌薬は必要ないが、重症例や壊死性膵炎では発症後72時間以内に予防的に抗菌剤を投与することが推奨されている。ガベキサートメシル酸塩などの蛋白分解酵素阻害薬の経静脈的投与による生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。■ 栄養療法経腸栄養を行うことは腸管からのbacterial transformationを減少させるので、感染予防策として腸管合併症のない重症例では入院後48時間以内に開始することが望ましい。原則としてTreitz靭帯を超えて空腸まで挿入した経腸栄養チューブを用いることが推奨されるが、空腸に経腸栄養チューブが挿入できない場合は十二指腸内や胃内に栄養剤を投与しても良い。腹痛の消失、血中膵酵素値などを指標として経口摂取の開始時期を決める。■ Abdominal compartment syndrome(ACS)の診断と対処腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)が12mmHg以上をIAH(intra-abdominal hypertension)、腹腔内圧が20mmHg以上かつ新たな臓器障害/臓器不全が発生した場合をACS(abdominal compartment syndrome)と診断する。重症急性膵炎の4~6%にACSが発症する。通常膀胱内圧で測定するIAP 12mmHg以上が持続または反復する場合は、内科的治療(消化管内減圧、腹腔内減圧、腹壁コンプライアンス改善、適正輸液と循環管理)を開始して、IAP 15mmHg以下を管理目標とする。IAP>20mmHgかつ新規臓器障害を合併した患者に対して、内科的治療が無効である場合のみ外科的減圧術を考慮する。■ 特殊治療十分な食輸液にもかかわらず、循環動態が安定せず、利尿が得られない重症例やACS合併例に対しては持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)/持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を導入すべきである。しかし、上記以外の重症急性膵炎にルチーンに使用することは推奨されない。膵の支配動脈から動注することにより、膵の炎症の鎮静化や進展防止および感染予防を目的とする蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法は、重症急性膵炎または急性壊死性膵炎の膵感染低下、死亡率低下において有効性を示す報告があるが有用性は確立していない。動注療法は保険適応がないため臨床研究として実施することが望ましい。動注療法の真の有効性と安全性を検証するより質の高いランダム化比較試験(RCT)が必要である。■ 胆石性性膵炎における胆道結石に対する治療急性胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例や胆道通貨障害の遷延を疑う症例では、早期にERCP/内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy:ES)を施行すべきである(図6)。しかし、上記に該当しない症例に対する早期のERCP/ES施行の有用性は否定的である。急性胆石性膵炎の再発予防のため、手術可能な症例では膵炎鎮静化後速やかに、胆嚢摘出術の施行が推奨される。図6 胆石性膵炎の診療方針画像を拡大する■ 膵局所合併症に対するインターベンション治療壊死性膵炎では保全的治療が原則であるが、感染性膵壊死ではドレナージかネクロセクトミーのインターベンション治療を行う。できれば発症4週以降の壊死巣が十分に被包化されたWONの時期に、経皮的(後腹膜経路)もしくは内視鏡的経消化管的ドレナージをまず行い(図7)、改善が得られない場合は内視鏡的または後腹膜的アプローチによるネクロセクトミーを行う。図7 単純X線所見。被包化壊死(WON)と胃内にダブルピッグテイルプラスチックステントを留置画像を拡大する4 今後の展望遅滞ない初期輸液や経腸栄養などの重症化阻止や感染予防のための方策を講じた急性膵炎診療ガイドラインの普及により、急性膵炎特に重症急性膵炎の死亡率は大きく低下した。今後、急性膵炎発症や重症化の機序のさらなる解明、ガイドラインのさらなる普及、後期合併症対策の改良などが期待される。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)Masamune A, et al. Pancreatology. 2020;20:629-636.2)武田和憲、他. 厚生労働科学研究補助金難治性疾患国副事業難治性膵疾患に関する調査研究、平成17年度総括・分担研究報告書. 2006;27-34.3)急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)、金原出版.2015.4)Banks PA, et al. Gut. 2013;62:102-111.公開履歴初回2021年02月11日

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第44回 新型コロナ専門家コメンテーターに疑念残る「製薬マネー」

新型コロナウイルス感染症に関するコメンテーターとして、毎日のようにテレビで見る医療者達。お茶の間ではすでに顔なじみの人物もいるだろう。新型コロナの治療薬やワクチンが話題になる中、その発言は製薬企業の利害得失にも影響を及ぼすはず。両者の関係は実際どうなのだろうか。病院勤務医や東北大学の医学生らが、製薬企業から医療者が受け取った謝金、いわゆる「製薬マネー」を調査したところ、出演番組数ベスト10の新型コロナ関連専門家で、新型コロナ関連の治療薬・ワクチンを開発・販売している製薬企業から受け取っていた謝礼金の合計金額は約2,450万円に上ることがわかった。調査チームはこのほど、日本製薬工業協会(製薬協)に加盟する製薬会社73社による公開データを集計・解析した。2020年上半期にテレビ出演回数上位10位であった専門家11人中(同率10位2人)7人に対し、2017年度に製薬企業から支払われた謝礼金は総額3,557万円であった。新型コロナ関連の治療薬・ワクチンを開発・販売している製薬企業から、これらの専門家に支払われた製薬マネーは、1社当たり平均で223万円。一方、開発・販売していない製薬企業から支払われた製薬マネーは、1社当たり平均139万円だった。11人の専門家のうち、54.5%(11人中6人)が医師として診療を行っており、91%は男性で、新型コロナウイルスに関して学術論文を発表していたのは、わずか1人であった。調査チームは、今回の結果について「テレビ出演の多い専門家の発言が、治療薬やワクチンなどに関してエビデンスに基づく発言であるか、また新型コロナ感染症に立ち向かう現場の声を反映しているかについて疑問が残った」と述べている。現場の医療人が感染の危機と差別にさらされながら、日々新型コロナと戦っているだけに、彼らにはいま一度、医療人として疑念をもたれない身の処し方を求めたい。参考1)Murayama A, et al. Clin Microbiol Infect. 2020 Dec 11. [Epub ahead of print]

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日本人高齢者の認知症リスクと中年期以降の長期的な体重変化~大崎コホート2006

 高齢になるにつれ、体重減少や認知機能障害の頻度が高まるが、日本人高齢者の認知症発症リスクに体重変化が関連しているかは不明である。東北大学の陸 兪凱氏らは、中年期以降の長期的な体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査するため、日本人高齢者のコミュニティーベースコホート研究を実施した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年12月26日号の報告。 2006年に65歳以上の障害のない日本人高齢者を対象としたコホート研究を実施した。対象者は、1994年と2006年に自己報告式質問票を用いて体重データを収集し、体重変化に基づき次のように分類した。安定体重(-1.4~+1.4kg)、体重増加(≧+1.5kg)、体重減少1(-2.4~-1.5kg)、体重減少2(-3.4~-2.5kg)、体重減少3(-4.4~-3.5kg)、体重減少4(-5.4~-4.5kg)、体重減少5(≦-5.5kg)。認知症発症は、公的な介護保険データベースより収集した。対象者のフォローアップ期間は、2007年4月~2012年11月の5.7年間であった。認知症発症に関連する多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3万2,865人年のフォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、564人であった。・安定体重と比較した、体重減少が認められた高齢者の多変量調整HRは、以下のとおりであった。●体重減少1:0.97(95%CI:0.70~1.34)●体重減少2:0.98(95%CI:0.70~1.38)●体重減少3:1.28(95%CI:0.91~1.81)●体重減少4:1.27(95%CI:0.92~1.77)●体重減少5:1.64(95%CI:1.29~2.09) 著者らは「12年間で3.5kg以上の体重減少が認められる日本人高齢者は、認知症発症リスクが高い可能性があることが示唆された」としている。

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中国製COVID-19ワクチン、アジュバント併用で免疫反応増大/Lancet

 中国のバイオテクノロジー企業Clover Biopharmaceuticalsが開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「SCB-2019」について、免疫増強剤(AS03またはCpG/Alum)の配合投与(アジュバントワクチン)により、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する強力な液性免疫および細胞性免疫が認められ、高い中和抗体価も得られたことが示された。西オーストラリア大学のPeter Richmond氏らによる第I相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、著者は、「いずれのアジュバントワクチンとも忍容性は良好であり、さらなる臨床開発に適する」と述べている。SARS-CoV-2ワクチンの開発加速の一手段として、アジュバントワクチンの検討が進められている。著者らは、2つの異なるアジュバントを組み合わせたスパイクタンパク質安定化三量体(S-Trimer)を含有する、タンパク質サブユニットワクチン候補SCB-2019の用量設定とアジュバントの正当性を検証した。Lancet誌オンライン版2021年1月29日号掲載の報告。18~54歳、55~75歳に21日間隔で2回投与 試験はオーストラリアの臨床試験センター1施設を通じ、18~54歳(若年成人)、55~75歳(高齢者)の健康成人ボランティアを登録し、SCB-2019について試験を行った。被験者は、研究資金提供者(Clover Biopharmaceuticalsと感染症流行対策イノベーション連合[CEPI])が作成したリストを使用して、ワクチン群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、SCB-2019(3μg、9μg、30μgのいずれか)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム)の投与を21日間隔で2回受けた。 SCB-2019群については、アジュバントなし(S-Trimerタンパク質単独)またはアジュバントあり(AS03またはCpG/Alum)の3通りで接種した。接種は、割り付けマスキングを維持するため、不透明な注射器を用いて行われた。 各ワクチン投与後7日間、反応性を評価。液性免疫反応はSCB-2019結合IgG抗体とACE2競合阻害IgG抗体をELISA法で測定し、中和抗体は野生株SARS-CoV-2マイクロ中和試験法で測定した。さまざまなSタンパク質ペプチドに対する細胞反応については、フローサイトメトリー細胞内サイトカイン染色法で測定した。SCB-2019+免疫増強剤で、年齢問わず免疫反応 2020年6月19日~9月23日に、151人の健康成人ボランティアが登録された。試験を中止したのは3人(個人的理由2人、治療とは無関係の重篤有害事象[下垂体腺腫]1人)。2回接種後4週間以上追跡を受けた148人が本解析に包含された(データベースロック2020年10月23日)。 ワクチン接種の忍容性は良好で、非自発的に報告されたGrade3の有害事象は2件報告された(9μg AS03アジュバント群と9μg CpG/Alumアジュバント群での疼痛)。ほとんどの局所有害事象は注射部位の軽度の痛みで、局所イベントはSCB-2019+AS03群(44~69%)が、SCB-2019+CpG/Alum群(6~44%)またはSCB-2019単独群(3~13%)よりも発生頻度が高かった。全身性有害事象の発現頻度は、初回接種後では若年成人(38%)が高齢者(17%)に比べ高かったが、2回接種後にはそれぞれ34%と30%で、同レベルに高かった。 SCB-2019+アジュバント群では、若年成人、高齢者ともに結合IgG抗体および中和抗体の高い力価とセロコンバージョン率が得られた。36日時点の抗SCB-2019・IgG幾何平均抗体価(GMT)は、SCB-2019+AS03群1,567~4,452、SCB-2019+CpG/Alum群174~2,440だった。一方で、アジュバントなしのSCB-2019単独群では、免疫反応性の誘発は最小限で、50日目までにセロコンバージョンが認められた被験者は3人のみだった。 SCB-2019+AS03の全用量群と、SCB-2019+CpG/Alum 30μg群の力価は、COVID-19患者からの回復期血清サンプルよりも高かった。また、いずれのアジュバントSCB-2019においても、Tヘルパー1バイアスCD4+ T細胞反応性が誘発された。

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医師がセカンドキャリアを考えるとき、絶対に必要なモノ【医師のためのお金の話】第41回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。皆さんはご自身のキャリアパスについて考えているでしょうか。まったく将来のビジョンがない、という人はおそらくいないと思います。「○○の分野の専門性を極めたい」とか、「卒後○年で開業しよう」と考えている人もいるでしょう。しかし、世の中は流動的で、1週間先のことでさえ正確に予測することは不可能です。そんな中、10~20年先まで見据えたキャリアパスを考えることが難しいのは事実です。だからといって、何も考えずに成り行き任せでその日暮らしをしていると「気付いたら50歳になっていた」ということにもなりかねません…。医師は忙しく、かつ職を失うことはまれなこともあり、成り行き任せの人生を歩む人も多いようです。でも、完全な成り行き任せでは何かを成し遂げることはできません。将来予測が困難な中にあっても、ある程度は自分のキャリアパスについて考えておくことが重要です。確実にやってくる、あなたの「2つの未来」それではキャリアパスを考えるに当たって、何に着目すればよいのでしょうか? 将来のイベントを予測することは難しいものの、確実にやってくることが2つあります。それは 「体力の衰え」と「時間価値の上昇」です。若い頃は体力が有り余っており、また医師としても未熟なため、がむしゃらに自分の専門性を高めることに集中します。もちろん、専門性を極めるのは素晴らしいことですが、体力に任せた働き方をずっと続けることは難しいでしょう。若い方は想像しにくいかもしれませんが、個人差はあれども、50歳くらいになると頭の反応が鈍り、体力的にも厳しくなってくるので、20代の頃と同じようなペースで仕事や研究を続けることは難しくなります。また、20代の頃には無限にあると感じていた時間も、50歳の声が近づけば、人生で残された時間が少ないことに気付きます。時間はとても貴重で、お金で買い戻すことはできません。この頃になると、お金よりも時間のほうが貴重になってくるのです。いくら医師としての専門性に磨きをかけても、いつかは臨床の第一線を退くときがやってきます。それまでに、若手に道を譲った後に取り組むべきことを、ある程度まで想定しておく必要があります。キャリアパスのバッファは資産形成医師が臨床の第一線を退いた後の「第2の人生」として、現時点での主な選択肢は「開業」か「病院の管理職」でしょう。しかし、時代の変化は速く、人口減の時代にみんなが開業できるとも限りません。今回のコロナ禍のような事態が発生し、開業医ビジネスが一気に厳しくなる可能性もあります。また、今後の医師数増加のため、管理職ポストにあぶれてしまう可能性もあります。そう、未来は流動的なのです。一方、確実にやってくる未来は、繰り返しになりますが「体力の衰え」と「時間価値の上昇」です。このように考えると、若い頃からある程度のキャリアパスを考え、想定外の事態に陥っても耐えられるバッファをつくっておく必要があると思います。そして、私の考えるバッファの最有力候補は「十分な資産」です。自分の時間が貴重になる年代にさしかかっても、生活のためにアルバイトを続けなければいけないのはつらいことです。そのような事態を回避するためにも、資産形成は重要です。医師になったからには専門性を極めたいという気持ちは多くの人にあります。しかし、キャリアパスを深く考えずに猪突猛進していると、自分がもう若くないことに気付いたときには手遅れになりかねません。そうならないためにも、若い頃から自己研鑽と資産形成を同時進行して、第一線を退くときに備えておくことをお勧めします。

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「ゾレア」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第38回

第38回 「ゾレア」の名称の由来は?販売名ゾレア皮下注用75mg、ゾレア皮下注用150mgゾレア皮下注75mgシリンジ、ゾレア皮下注150mgシリンジ一般名(和名[命名法])オマリズマブ(遺伝子組換え) (JAN)効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)○季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症又は最重症患者に限る)○特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)用法及び用量<気管支喘息>通常、オマリズマブ(遺伝子組換え)として1回75~600mgを2又は4週間毎に皮下に注射する。1回あたりの投与量並びに投与間隔は、初回投与前血清中総IgE濃度及び体重に基づき、下記の投与量換算表により設定する。<季節性アレルギー性鼻炎>通常、成人及び12歳以上の小児にはオマリズマブ(遺伝子組換え)として1回75~600mgを2又は4週間毎に皮下に注射する。1回あたりの投与量並びに投与間隔は、初回投与前血清中総IgE濃度及び体重に基づき、下記の投与量換算表により設定する。投与量換算表(1回投与量)4週間毎投与画像を拡大する2週間毎投与画像を拡大する投与量換算表では、本剤の臨床推奨用量である0.008mg/kg/[IU/mL]以上(2週間間隔皮下投与時)又は0.016mg/kg/[IU/mL]以上(4週間間隔皮下投与時)となるよう投与量が設定されている。<特発性の慢性蕁麻疹>通常、成人及び12歳以上の小児にはオマリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを4週間毎に皮下に注射する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年2月10日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年12月改訂(第16版)医薬品インタビューフォーム「ゾレア®皮下注用75mg/ゾレア®皮下注用150mg・ゾレア®皮下注75mgシリンジ/ゾレア®皮下注150mgシリンジ」2)ノバルティスファーマ:DR’sNet

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第44回 女子医大プロポフォール事件、阪大・国循論文不正事件に新展開

コロナ禍でも事件は動くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、前回は旭川医大のドタバタについて書きましたが、もっと大きな“老害”舌禍事件がオリンピック・パラリンピック絡みで起きました。報道等によると、森 喜朗氏に引導を渡せる人がいないとのこと。一国民としてはやれやれ、としか言いようがないですね。さて、旭川医科大学で病院長解任が起きた同じ週に、昨年この連載で取り上げたいくつかの事件が新展開を迎えていましたので、今回はそのフォローをしておきたいと思います。女子医大プロポフォール事件、麻酔医2人在宅起訴2014年2月、東京女子医科大学病院に入院中の2歳の男児が術後に死亡した事件で、東京地検は1月26日、ICUで術後管理にあたった麻酔科医2人を業務上過失致死罪で在宅起訴しました。起訴されたのは同病院の中央集中治療部の副運営部長だった61歳の准教授と、同じく後期研修医だった39歳の医師です。起訴状によると2人は、2014年2月18~21日、首の腫瘍を取り除く手術を受け人工呼吸器をつけていた男児に対して鎮静剤プロポフォールを投与した際、心電図に異常がみられるなど容体に変化があったにもかかわらず投与を中止せず、男児を急性循環不全で死亡させた、とされています。この事件については、本連載の「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」で詳しく取り上げました。事故当時、プロポフォールはICUで人工呼吸器をつけた子供への投与は添付文書上「禁忌」でしたが、厚生労働省は「禁忌はあくまで原則」との見解を示しており、警視庁はプロポフォールの投与自体は過失とはせず、安全管理を怠ったことに焦点をあて、昨年10月21日に書類送検に踏み切りました。この時、起訴を求める「厳重処分」の意見も全員に付けられました。事件から7年、やっと公判へ書類送検されたのは麻酔科医6人でしたが、在宅起訴に至ったのは上記の2人で、残りの4人は関与の度合いなどを考慮した結果、起訴猶予となりました。事故が起こったのが2014年2月。遺族は同年5月に業務上過失致死罪に当たるとして被害届を提出、翌2015年2月には麻酔科医ら5人を傷害致死罪で刑事告訴しています。警視庁が書類送検したのは事件から6年以上経った2020年10月で、事件から実に7年を迎えようという2021年1月末に在宅起訴となったわけです。1月26日のNHKニュースは死亡した男児の母親のコメントを報じました。それは次のようなものです。「6人全員を起訴してほしかったという思いはありますが、このうちの2人が起訴されたことは大きな一歩であり、ようやく一筋の光が差してきたように感じます。裁判では、息子の容体を適切に管理しなかった理由を含めて当時何があったのか、真摯に、自分のことばで話してほしい」。これからやっと公判が始まります。東京女子医大病院は最近、コロナ対応で頑張る姿が報道されていますが、特定機能病院の再承認にはまだまだ時間がかかりそうです。大阪大・国循論文不正事件、臨床試験の根拠となった有名論文も不正認定次は大阪大学と国立循環器病研究センターの論文不正事件です。2020年8月に大阪大学医学部附属病院に以前所属し、国循で室長も務めていた医師が2013~16年に発表した肺がん治療などに関する論文5本に捏造や改ざんが認定された問題で、調査委員会は1月30日、別の論文2本にも捏造と改ざんの不正があったと発表しました。大阪大はこのうち1本を根拠に実施していた臨床研究の中止を決めました。この事件については、本連載の「第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?」で詳しく書きました。2010年8月の段階では、捏造・改ざんがあったとされる5本の論文のうち、調査委員会が、社会的影響がとくに大きいと考えたのは、肺がんの手術の際に心不全の治療に用いられる「hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)」 を使うと合併症が抑えられる、とした2013年の論文でした。この後の2015年、同医師はhANPを投与した患者群で肺がんの再発が有意に少ないことをプロスペクティブな検討で発見した論文を筆頭筆者として発表しました1)。一連の研究成果をもとに、がんの転移を防ぐ作用を期待して、大規模な臨床研究(「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第II相比較試験(JANP study)」)がスタートしました。この臨床研究は将来の実用化も目指して、保険診療が一部使える「先進医療」の制度を利用していました。全国10施設で実施され、患者335人が参加。うち160人にhANPが投与されました。既に参加者の募集もhANPの投与も終わり、観察期間中でした。有名論文でも捏造と改ざん今回新たに捏造と改ざんの不正があったと発表されたのは、この2015年の論文と、2017年にOncotarget誌に掲載された論文の計2本。調査委員会の調べでは、動物実験のデータが書き直されており、正しいデータで計算し直すと肺がんの転移や再発を防げる根拠にはならなかったとのことです。調査委員会は筆者の同医師が不正に関与したと指摘し、国立循環器病センターの名誉研究所長も不正には関与していないものの、著者としての責任があるとしました。前回も書きましたが、2015年の、hANPが肺がんの転移や再発が有意に少ないことを明らかにした論文は研究者に与えられるさまざまな賞を受賞しており、2017年にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」の中でも「世界初!心臓からの“メッセージ”で『がん転移予防』」として、JANP studyが始まったことも含め、大きく取り上げています。この論文不正は、2017年12月、大阪大と国循に、同医師が筆頭著者または責任著者として発表した21本の論文に「ねつ造や改ざんが認められる」とする申し立てが届いたことがきっかけで発覚しました。「先進医療」が認められたことで後戻りできず前回のこの連載では、2015年の有名論文は申し立てに入っていないことがナゾだと書きましたが、結局、この論文にも捏造・改ざんがあったわけです。また、30日の調査委員会の記者会見では、2015年の有名論文には2018年8月に大量の訂正が出されていたことも明らかにされました。2月4日付の朝日新聞によると、調査委員長の仲野 徹・阪大教授は「先進医療が関係なかったらあっさり(撤回を)決断できたかもしれない」と話したとのことです。2018年の大量訂正にもかかわらず論文を撤回できなかったのは、厳しい審査を経て臨床試験が先進医療制度を利用できるようになったことが影響した、というわけです。この流れから見えて来るのは、画期的な研究成果を基に、大規模臨床研究が計画され、しかもそれが「先進医療」という仕組みで実施されたことで、簡単には後戻りできなくなってしまった研究者や組織の姿です。hANP投与を受けた160人に重大な健康被害は確認されていないとのことですが、いずれにせよ、臨床研究に対する信頼が大きく損なわれたことは間違いありません。報道等によれば、大阪大学は今後、臨床研究に関わる研究で不正疑惑が出た場合、調査委員会等による確定前でも研究中止等の対応ができるようにする、とのことです。さてもう一つ、三重大病院臨床麻酔部事件でも新展開があったのですが、ちょっと長くなり過ぎたので回を改めたいと思います。参考1)Nojiri T et al, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2015 Mar 31;112;4086-91.

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OTC連用の患者に販売を断った結果【堀美智子のハートに効くラヂオ】第6回

動画解説OTC連用が疑われる患者さんに販売を断ったら来なくなってしまった。しかし数ヵ月後、にこやかな表情で再来局。そこで患者さんが語ってくれた話とは?前回に続き、堀先生の息子・正隆先生のエピソード。

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造血器腫瘍遺伝子パネル検査を開発/大塚製薬・イルミナ

 大塚製薬と次世代シークエンサーの世界トップ企業であるIllumina,Inc.(以下、イルミナ社)は、造血器腫瘍を対象とするがん遺伝子パネル検査を体外診断用検査キットとして開発および商業化する契約を締結したと発表。 今回の契約締結により、大塚製薬は、同社が国内主要施設と共同研究を進めている日本で初めての造血器腫瘍を対象としたがん遺伝子パネル検査を、イルミナ社の医療機NextSeq 550Dxシステムで使用できる体外診断用検査キットとして開発する。本契約により、日本国内のほぼ全ての造血器腫瘍を対象とした「診断」、「治療法選択」、「予後予測」が加速されることが期待される。 ここ数年、固形がんを対象にした遺伝子パネル検査が医療機器として承認および保険適用されているが、血液がんを対象としたものはない。

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日本における緊急事態宣言下のマタニティハラスメントとうつ病との関連

 妊娠への差別として知られるマタニティハラスメントは、先進国において広まったままである。しかし、マタニティハラスメントによるメンタルヘルスへの影響を調査した研究は、十分とはいえない。北里大学の可知 悠子氏らは、日本における妊娠中のマタニティハラスメントとうつ病との関連を調査した。Journal of Occupational Health誌2021年1月号の報告。 日本において一部地域の緊急事態宣言が続く2020年5月22日~31日に妊婦(妊娠確認時に就業していた女性)359人を対象に横断的インターネット調査を実施した。マタニティハラスメントは、国のガイドラインで禁止されている16事項のいずれかを受けた場合と定義した。うつ病の定義は、エジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(EPDS)スコア9以上とした。分析には、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・就業していた妊婦の24.8%は、上司や同僚からマタニティハラスメントを受けていた。・人口統計、妊娠状態、作業状態、COVID-19への恐怖で調整した後、マタニティハラスメントを経験した妊婦では、経験しなかった妊婦と比較し、うつ病を発症する可能性が高かった(オッズ比:2.48、95%信頼区間:1.34~4.60)。・この関連は、COVID-19に伴うテレワークの有無に影響されなかった。 著者らは「就業していた妊婦の約4分の1は、マタニティハラスメントを経験しており、経験しなかった女性よりもうつ病の有病率が高かった。テレワークを通じて、オフィスから物理的に離れたとしても、マタニティハラスメントによるうつ病への影響は減少しなかった。妊婦のメンタルヘルスと雇用を守るために、雇用主は法律を順守し、マタニティハラスメントを防止する措置を講ずる必要がある」としている。

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低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。82ヵ国428病院の前向きコホート研究 研究グループは、全身麻酔または脊髄幹麻酔(neuraxial anaesthesia)下に施行される皮膚の切開を要する手術を受けた原発性の乳がん、大腸がん、胃がんの成人患者を対象に、国際的な多施設共同前向きコホート研究を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]グローバル健康研究ユニットの助成による)。 主要転帰は、術後30日以内の死亡または重度合併症とした。マルチレベルロジスティック回帰により、病院および国別の患者における3段階のネストモデル内の関連性を解析した。病院レベルのインフラストラクチャー効果は、3要因媒介分析で評価した。 2018年4月~2019年1月の期間に、82ヵ国の428病院から1万5,958例(乳がん8,406例[52.7%]、大腸がん6,215例[38.9%]、胃がん1,337例[8.4%])が登録された。高所得国(31ヵ国)が9,106例、高中所得国(23ヵ国)が2,721例、低・低中所得国(28ヵ国)が4,131例であった。低・低中所得国で、胃がん、大腸がん、合併症による死亡率が高い LMICは高所得国に比べ、より進行した病変を持つ患者が多かった。30日死亡率は、胃がんが低・低中所得国(補正後オッズ比[aOR]:3.72、95%信頼区間[CI]:1.70~8.16)で高く、大腸がんは高中所得国(2.06、1.11~3.83)および低・低中所得国(4.59、2.39~8.80)で高かった。乳がんでは死亡率の差は認められなかった。 重度合併症の発現後に死亡した患者の割合は、低・低中所得国(aOR:6.15、95%CI:3.26~11.59)および高中所得国(3.89、2.08~7.29)で高かった。 合併症発現後の術後死亡は、60%が患者要因で、40%は病院または国の要因で説明が可能であった。LMICでは、一貫して利用可能な術後ケア施設がないことが、重度合併症100件当たり7~10件以上という高い死亡率と関連していた。また、がんの病期だけでは、国別の死亡率や術後合併症発現の早期のばらつきは、ほとんど説明がつかなかった。 著者は、「LMICでは、周術期死亡率が過度に高く、これががん生存の劣悪さに寄与している。術後の一般的な合併症の発現後に、回避可能な死亡を防ぐには、LMICの医師の主導により、実践的な周術期介入を緊急に評価する必要がある」としている。

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副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット

 国内でも新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が月内にもはじまる見込みだが、新しいワクチンであることから副反応等を理由に、接種をためらう人も多い。 こうした状況を憂慮した医師を中心に、ワクチンに関するよくある質問に答えるLINEのチャットボットを利用した情報提供がはじまった。 この「コロワくんの相談室」はLINEに友達追加することで、無料で利用できる。 ・ワクチンの接種方法 ・ワクチンの効果 ・ワクチンの仕組み ・ワクチンの副反応という画面のメニューから、自分の知りたい内容を選んでいくと、ボットが事前に用意された回答を提示する。回答の下には関連する厚生労働省サイトや、回答の根拠となる論文誌へのリンクもつけられており、医療従事者が患者に説明する際にも利便性が高そうだ。 このボットは、米国マウントサイナイ医科大学に勤務する内科医、山田 悠史氏の発案でつくられたもの。氏は米国でいち早くワクチンを接種し、自身のSNSを使って日本人向けにワクチンに関する情報を提供してきた。しかし、多くの情報を発信しても質問が絶えず、誤った情報も多く出回っている状況を改善したいとボット開設を思い立ち、日本の医師やエンジニアの協力を得て、発案からわずか2週間で完成させたという。 ワクチン接種が進む米国でも、ワクチンに関する相談窓口となるコールセンターができたものの、多くの問い合わせからパンク状態が続き、副反応を疑った患者が医療機関に押し寄せるなど、混乱が続いているという。山田氏は「医師が発信する正しい情報を多くの人に届けることで日本のワクチン接種が進み、医療現場の負担軽減につながれば」とする。 現在は賛同・協力するメンバーが運営費用を負担している状況で、ボットのリリースとあわせ、クラウドファンディングを使った資金調達も行っている。〈医師サポーター〉代表:山田 悠史(マウントサイナイ医科大学 老年医学・緩和医療科)副代表:高橋 宏瑞(順天堂大学医学部 総合診療科)内科一般担当:原田 洸(岡山大学病院 総合内科・総合診療科)感染症担当:小林 孝照(アイオワ大学 感染症科)呼吸器担当:田中 希宇人(川崎市立川崎病院 呼吸器内科)小児・アレルギー担当:堀向 健太(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科)公衆衛生担当:仁科 有加(OECD 雇用労働社会政策局 医療課)免疫学担当:石原 純(インペリアルカレッジロンドン バイオエンジニアリング専攻 講師/免疫創薬研究室主宰)産婦人科担当:稲葉 可奈子(関東中央病院 産婦人科)監修:紙谷 聡(エモリー大学 小児感染症科/米国立アレルギー感染症研究所主導 ワクチン治療評価部門)<技術開発サポーター>金子 穂積(Sun Asterisk CTOs’)坂元 麻貴子(xenodata lab. CDO)大山 晋輔(Spir CEO)◆LINEボットの利用・クラウドファンディングへの参加は下記より◆https://corowakun-supporters.studio.site/#project

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Dr.安部の皮膚科クイズ 上級編

第1回 皮膚疾患が起こりやすい部位を知っておく第2回 皮膚が黒くなったら第3回 恥ずかしい部位も躊躇せず診る第4回 湿疹を疑うときほど…第5回 あのメジャー疾患が皮膚症状から見つかるなんて第6回 痒さも診断のヒントになる 内科でも遭遇する皮膚症状の特徴・診断・治療をクイズ形式で学ぶDr.安部の皮膚科クイズ。上級編は、専門医も慎重に診断する難問12題。初級・中級で学んだ皮膚を診るコツを駆使して正解を導いてください!第1回 皮膚疾患が起こりやすい部位を知っておく 第1問の所見は、顔面の白いツノ状のデキモノ。第2問は前腕にできた異臭を伴う潰瘍。この2問の所見は、どちらも皮膚科疾患が起こりやすい部位のものです。ではその共通点を挙げられますか?このポイントを押さえて診断に応用力をつけていきましょう。第2回 皮膚が黒くなったら今回は皮膚が黒くなっている所見を2問出題します。第3問の所見は顔面、第4問は踵に小豆大の黒い変色。パッと見は同じに見えるかもしれませんが、それぞれに診断を導くために注目すべきポイントを解説します。第3回 恥ずかしい部位も躊躇せず診る第5問の所見は陰部に生じたドーナツ型の紅斑と水疱。第6問は頬に出現した大量の赤い丘疹。陥りがちな失敗を交えて正しい診断にたどり着くための秘訣を伝授します。第4回 湿疹を疑うときほど…第7問は、男性の口周辺にできた白いデキモノと出血痕。第8問は掻痒を伴う頸部の紅斑。パッと見たときに湿疹を疑うときほど、別の疾患を考慮して診ることの重要性がわかる症例です。第5回 あのメジャー疾患が皮膚症状から見つかるなんて第9問の所見は背部全体に広がる多様な皮疹。第10問は腋窩の黒ずみ。これらの所見は知っていれば一発で診断できるほど有用な情報です。しかもそれが重大な疾患を示唆するとしたら…、知らないでは済まされません!特徴的な所見と診断を必ず押さえておきましょう。第6回 痒さも診断のヒントになる痒みの程度は診断の手がかり。そして痒みが生じるメカニズムを知っていると、診断を絞りやすくもなります。第11問の所見は下腿に大量出現した黒褐色の丘疹。第12問は上腕に手拳大の赤い盛り上がり。一度見たら忘れない印象的な所見を目に焼き付け病態を理解しておきましょう。

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遺伝子ワクチンの単回接種は新型コロナ・パンデミックの克服に有効か?(解説:山口佳寿博氏)-1352

 現在、新型コロナに対する世界のワクチン争奪戦は熾烈を極め、ワクチンが世界全域に満遍なく配布されるかどうかは微妙な問題である。本邦にあってもPfizer社、Moderna社、AstraZeneca社と総計3.14億回分(2回接種として1億5,700万人分で全国民に行き渡る量)のワクチンが契約されているが、各製薬メーカーのワクチン生産能力には限界があり、契約されている全量が滞りなく納入されるという保証はない。それ故、世界全体で新型コロナのパンデミックを乗り切るためにはワクチンの2回接種ではなく1回接種を考慮する必要がある。少なくとも、2回目のワクチン接種を各ワクチンの第3相試験で推奨された時期(Pfizer社のBNT162b2:1回目接種より21日後、Moderna社のmRNA-1273:28日後、AstraZeneca社のChAdOx1:28日後)よりも遅らせて接種することを考える必要がある(cf. 米国CDC 1/21, 2021)。 1回接種に適したワクチンは、アデノウイルス(Ad)のDNA鎖にコロナのS蛋白に関する塩基配列情報を封入し宿主細胞に導入する遺伝子ワクチンである(Ad-vectored vaccine)。以下にその理由を述べる。Adをベクターとしたワクチンを生体に接種すると、生体はAdを異物として認識、それに対する特異抗体を産生する。この抗体産生はAdの種類によらず発現する。その結果、ブースター効果を意図して投与される2回目のワクチン接種時には遺伝子情報を封入したAdが1回目のワクチン投与時に形成された特異抗体の攻撃を受け、その一部は破壊される。そのため、Adをベクターとするワクチンでは2回目のワクチン接種時、遺伝子情報封入Adの一部しか宿主に導入されずブースター効果が不十分で液性/細胞性免疫賦活化が阻害される(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021; 396: 1978.)。それ故、Adをベクターする遺伝子ワクチンは2回目のワクチン接種の意義が薄く、単回接種を基本とするワクチンだと定義すべきだと論評者は考えている。 この原則に則って第II相試験が施行されたのがCanSinoBIO社のヒトAd5型をベクターとするAd5-nCoVであり、ワクチン単回接種1ヵ月後には有意な液性/細胞性免疫が惹起されることが報告された(Zhu FC, et al. Lancet. 2020; 396: 479-488)。同様に、Johnson & Johnson社のヒトAd26型をベクターとするAd26.COV2.Sも単回投与を意識して開発が進められてきた(Sadoff J, et al. N Engl J Med. 2021 Jan 13. [Epub ahead of print])。2021年1月29日、Johnson & Johnson社はAd26.COV2.Sの単回接種に関する第III相試験(ENSEMBLE study)の結果をPress Releaseで公表し、本ワクチンの単回接種1ヵ月後の感染予防有効性は全対象で66%、重症化阻止率は85%に達すると報告した(PRNewswire 1/29, 2021)。Ad26.COV2.Sの第III相試験は、米国、中南米、南アフリカを対象地域として施行されたが(n=43,783)、米国における感染予防有効性が72%であったのに対し、南アフリカでのそれは57%と低値であった。南アフリカでの有効性が低かった理由は、治験が施行された時期の南アフリカでは“免疫回避変異”を有するN501Y(S蛋白の501部位のアミノ酸がN[アスパラギン]からY[チロシン]に置換)変異株の1つである南アフリカ株が流布していたウイルスの95%を占めていたためである(Tegally et al. medRxiv. December 22, 2020. [Epub ahead of print])。にもかかわらず、Ad26.COV2.Sの単回接種後の感染予防有効性は中国Sinovac Biotech社の不活化ワクチン(CoronaVac)の2回接種後の感染予防有効性(50.4%)を凌駕し(The New York Times 2/2, 2021)、かつ、WHOのワクチン有効性に関する最低ラインを満足するものであった。 ENSEMBLE studyによって得られた重要な知見は、Ad26.COV2.Sが免疫回避変異を有する南アフリカ株に対しても臨床的に有用な感染予防効果を示したことである。南アフリカ株は、自然感染後の液性免疫、Monoclonal抗体製剤、ワクチンによる液性免疫効果を減弱させる免疫回避変異を発現しており、このウイルスが世界を席巻するようになると現在開発されているすべてのワクチンの抜本的見直しが必要になる可能性がある。しかしながら、その変異株に対して、Ad26.COV2.Sが低いながらも有効域の感染予防効果を示したことは人類にとって大きな福音である。以上の治験結果をもとに、Johnson & Johnson社は、2021年2月4日、Ad26.COV2.Sの単回接種に関する緊急使用許可を米国FDAに申請した(The New York Times 2/6, 2021)。残念なことに、Adをベクターする先行遺伝子ワクチンであるAstraZeneca社のChAdOx1における単回接種の効果は報告されていない。 基本的には2回接種を原則とするRNAワクチンにおいても単回接種における感染予防有効性が報告されている。Pfizer社のBNT162b2の1回接種後の感染予防有効性は52%(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020; 383: 2603-2615.)、Moderna社のmRNA-1273のそれは50.8%(FDA Briefing Document 12/17, 2020)と報告された。以上のように、少なくとも3種類の遺伝子ワクチン(Ad26.COV2.S、BNT162b2、mRNA-1273)は1回接種でWHOの基準を上回る感染予防効果を発揮することが判明したので、世界的にワクチン量が不足している現在、2回接種ではなく緊急避難的に1回接種を奨励すべきだと論評者は考えている。しかしながら、問題点は、単回接種による生体の液性/細胞性免疫の賦活がどの程度の期間維持されるかの見極めである。Ad26.COV2.Sでは少なくとも単回ワクチン接種後2.5ヵ月目まではウイルスに対する中和抗体形成の中心的役割を担うS蛋白特異的IgG抗体が安定して高値を維持することが判明している(Sadoff J, et al. N Engl J Med. 2021 Jan 13. [Epub ahead of print])。Sadoffらによって報告された図を見る限りもっと長期にIgG抗体価は維持されるように見えるが、確実な経過観察のデータ集積が必要である。

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限局性皮質異形成〔FCD:Focal cortical dysplasia〕

1 疾患概要■ 概念・定義限局性皮質異形成(Focal cortical dysplasia:FCD)は、1971年にTaylorらが“Focal dysplasia of the cerebral cortex in epilepsy”として報告し、その後、難治性てんかんの外科切除病変で認められる特異的な病理像を呈する疾患単位として確立された。FCDは、単なる“限局した皮質の形成異常”ではなく、特徴的な臨床症状と画像を呈し、病理学的に確定診断がなされる独立した1つの疾患単位である。FCDの一部と片側巨脳症は病態が共通しており、病変の大きさは異なるが、連続した疾患として位置付けられている。■ 疫学国内、海外ともに正確な頻度は不明である。日本てんかん外科学会による主要な施設を対象とした2005年から2011年のアンケート調査では、1年間に30件程度の皮質形成異常が登録されていた。海外ではてんかん外科手術例の25%がFCDと報告されている。手術に至っていない例も多いと思われ、国内では数千例と見積もられている。■ 病因後述する病理所見の違いによりI〜III型に分類され、型(タイプ)によって病因は異なる。脳の発生段階による区分では、I型とIII型は神経細胞の移動後の発生異常に分類され、II型は異常な細胞増殖に伴う皮質形成異常に分類される。I型ではCOL4A1、SCN1A、STXBP1などの遺伝子変異が症例として報告されているが、共通の病態は不明であり、病因は多様であると推測される。II型では細胞内の信号伝達を担うmTOR経路の遺伝子変異によるmTOR機能の活性化が主要な病因である1)。III型は併発病変により病因が異なると推測される。■ 症状主要な症状である薬剤抵抗性のてんかん発作は乳幼児期に発症することが多く、約60%の症例は4歳まで、約90%の症例は12歳までに発症する。組織学的な変化が軽度(IA型)の場合は60歳以上での成人発症も報告されている。発症時には強直発作・強直間代発作が比較的多く認められる。年齢が上がると病変部位に応じた焦点起始発作が認められる。群発する症例が多く、重積発作は10%程度に認められる。症状が進行すると、認知機能の障害や片麻痺など局所症状の出現を伴う。■ 予後発作は薬剤抵抗性である。17%の症例は薬剤に反応するが、効果は一時的である。焦点切除術により約半数で発作消失が得られる。FCDのタイプによって発作消失率は異なり、I型では43%、II型では75%である。10年間の長期予後では、手術から1年後の発作消失率は61%、5年後42%、10年後33%である。MRIで病変が検出される方が手術成績は良い。1歳未満の発症、てんかん性スパズムの既往、頻回の発作、長い罹病期間、群発や重積発作は知的障害の併発リスクとなる。国内のてんかん専門施設におけるFCD 77例の調査では、53%に知的障害を認め、発達・知能指数の平均は60であった2)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)FCDの確定診断は病理所見によって行われ、国際抗てんかん連盟(ILAE)により細分類されている(表)3)。表 限局性皮質異形成の 病理組織 診断分類画像を拡大するMRIは術前評価の非侵襲的な基本検査である。I型の大多数でMRIは正常であり、術前の診断は困難である。II型では局所的な皮質の肥厚、脳回異常、T2もしくはFLAIRの高信号、皮質と白質の境界不明瞭化が認められる。IIa型で3割程度、IIb型ではほぼ全例でMRIの異常所見が得られる。IIb型では病巣直下の白質内に脳室周囲から脳表に向けてT2とFLAIRで高信号を呈する線状の所見が認められ、“transmantle sign”と呼ばれる。脳波でI型を診断することは困難である。II型では発作間欠期に病変の解剖学的分布範囲と関連して焦点性の律動性てんかん発射が認められる。脳溝深部に限局するbottom-of-sulcus型では頭皮表面の脳波では異常を検出できないこともある。その他に、局在性の多型性徐波polymorphic delta activity、低振幅性速波、多棘波、二次性両側同期棘徐波が認められる。切除範囲を決める術前検査として、SPECT、FDG-PET、SISCOMが有用である。画像で病変範囲が不明確な場合は、頭蓋内電極の埋め込み術を行い皮質脳波を記録する。鑑別診断として、結節性硬化症、ラスムッセン脳炎、low-grade glioma(神経節膠腫、神経節細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍など)が挙げられる。結節性硬化症は、病変が多発性でありCTで石灰化を伴う。また、FCDに比べグリオーシスが強く、皮質下白質のT2高信号が目立つ。ラスムッセン脳炎は、病変が進行性で、初期に脳回の腫大を認めることがあるが、萎縮性変化が主体である。Low-grade gliomaでは、皮質の肥厚は少なく、病変の高信号は不均一である。FCDでは、脳室に向かって皮質下白質の高信号が減弱するが、low-grade gliomaでは同所見は10%にしかみられない。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発作型に応じ薬剤を選択し、2剤以上の適切な抗てんかん薬を使用しても発作が消失しないときは、発作焦点の皮質切除術を行う。発作焦点が運動野など一次領野にかかっていないことを確認する。発作再発のリスクは焦点の取り残しであり、病変が一次領野から離れ、術後に神経学的脱落症状を来すリスクが低ければ完全切除を目指す。4 今後の展望FCDII型の病因診断として研究レベルで遺伝子解析が行われる。MTOR、PIK3CA、AKT3、TSC1/2などの体細胞モザイク変異とDEPDC5、NPRL2、TSC1/2などの生殖細胞系列変異があり、前者は手術標本の脳組織から、後者は血液からDNAを抽出し、次世代シーケンス技術を用いた変異解析が行われる。FCDII型の主要な病態がmTOR活性の亢進であることが判明し、mTOR阻害剤がてんかん発作の抑制に期待され、医師主導の臨床研究が行われている。5 主たる診療科小児科、神経小児科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)限局性皮質異形成(FCD)研究会(臨床研究を含む一般利用者向けのまとまった情報)てんかん診療ネットワーク(てんかんの診療を行っている施設の検索)1)Nakashima M, et al. Ann Neurol. 2015;78:375-386.2)Kimura N, et al. Brain Dev. 2019;41:77-84.3)Blumcke I, et al. Epilepsia. 2011;52:158-174.公開履歴初回2021年02月09日

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地域連携薬局・専門医療機関連携薬局がいよいよ新設 気になる施設基準は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第62回

2021年1月22日に、「医薬品医療機器等法(薬機法)の法律施行規則の一部を改正する省令」が公布されました。今回の改正の大きな変更点は、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」という認定制度の新設です。以前よりこの制度を設けることは議論されていましたのでご存じの方も多いと思いますが、いよいよ施設基準が示されました。この2つの認定制度は、薬局が乱立して患者さんのかかりつけ化や医療の利用効率化がなかなか進まないなか、薬局の機能や特色をわかりやすく認定することで、患者さん自身が自分に適した薬局を選択できるようにすることが目的です。今回の法改正に当たり、昨年10月から11月までにパブリックコメントを募集し、その結果およびそれぞれの具体的な基準に対する考え方も示したうえで、2つの認定制度の基準が示されました。【地域連携薬局】1.患者さんが座って服薬指導を受けることができるプライバシーに配慮したパーテーションなどで区切られた相談窓口などの設置2.地域包括ケアシステムの構築に資する会議への継続的な参加3.他の医療機関に勤務する医療従事者への報告・連絡実績(過去1年間で月平均30回以上)4.開局時間外の相談応需体制、休日・夜間の調剤応需体制、麻薬の調剤応需体制などの整備5.継続して1年以上勤務している常勤薬剤師の半数以上の配置6.地域包括ケアシステムに関する研修を終了した常勤薬剤師の半数以上の配置7.実務に従事する薬剤師への計画的な地域包括ケアシステムに関する研修の実施8.他の医療機関に対する医薬品の適正使用に関する情報提供の実績9.在宅医療に関する取り組みの月平均2回以上の実績【専門医療機関連携薬局】1.継続して1年以上勤務している常勤薬剤師の半数以上の配置2.がんの専門性の認定(厚労省が掲げる基準に適合した団体に限る)を受けた常勤の薬剤師の配置3.がんの専門医療機関などとの連携体制(一定の実績)4.がんの専門医療機関との間で開催される会議への継続的な参加5.勤務している全薬剤師が、少なくとも1年ごとにがんの専門的な薬学的知見に基づく調剤・指導に関する研修を受講6.がんの専門的な薬学的知見に基づく調剤・指導に関する継続的な研修の実施7.過去1年間において、がんの医薬品の適正使用に関する情報提供の実績地域連携薬局については、入退院時の医療機関などと情報連携したり、在宅医療などで地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応したりできる薬局というイメージです。専門医療機関連携薬局については、薬剤師の薬学的知見における「専門性」が充実している薬局が認定されるということになりそうです。この法改正は、2021年8月1日に施行することが決まっています。2021年4月には報酬改定は予定されていませんが、1年後の2022年4月の報酬改定ではこの法改正が影響する予感がします。機能別薬局はどれほど浸透するのか今後Q&Aや通知などで詳細が補完されてくると思われますが、この新設される2つの認定制度について、私が懸念することが2点あります。1点目は、薬局の機能別の明示化というと、「健康サポート薬局」が思い出されます。しかし、一体どのくらいの方に認知され、活用されているのでしょうか。かかりつけ薬剤師・薬局だって、努力の甲斐あってやっと患者さんに話が通じるようになったのに…と思うのは、私だけではないはずです。この漢字がずらっと並んだ薬局の機能別名称ですが、薬局や薬剤師だけで盛り上がるのではなく、一般の方や医師などの医療者にきちんと認知してもらい、しっかり使ってもらう仕組みが必要なのではないかと思います。2点目は、「認定制度」と聞くと、条件反射のように「取得しなきゃ!」と反応する薬剤師が多いことです。その前向きな反応は私個人としては悪いことではないと思うのですが、要件や今後設定されるであろう点数だけでなく、「何のための地域連携薬局なのか?」「何のための専門医療機関連携薬局なのか?」という点をしっかり考えて、自分の目指す薬局や薬剤師像、患者さんとの接し方を見つめ直してから取得してほしいなと思います。これらの認定を受けるためには過去の実績が必要ということもあり、かなりの覚悟や努力が必要だと思います。自分たちの運営する薬局が、どのようなサービスを展開するのか、どのような薬局を目指していくのかスタッフ間で話し合ってはいかがでしょうか。参考1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について」薬生発0122第6号令和3年1月22日厚生労働省医薬・生活衛生局長

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第46回 COVID-19ワクチンをほとんどが接種済みのイスラエル、高齢者の感染がおよそ半減

【修正のお知らせ:文献2)を見直して一部表現を修正しました。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。文献2)は当初GitHubで公開されており、記事作成後の2月9日にMedRxivに掲載されました。】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)予防ワクチン普及が進むイスラエルでその普及のおかげとみられる高齢者全般の感染減少が認められています1)。イスラエルでは去年12月20日からファイザーの2回投与ワクチンBNT162b2の接種が始まり、まずは高リスク集団への接種が優先されました。優先対象の60歳以上の高齢者は2月6日までに9割近く(89.9%)が1回目、ちょうど8割(80%)は2回目の接種も済ませており、その2月6日までの21日間にそれら高齢者のSARS-CoV-2感染はおよそ半減(49%減少)しました。また、COVID-19入院も4割近く(36%)減少しました2)。ワクチン接種率がまだ半分に満たない45%ほどの59歳未満の年齢層の同時期の感染減少は18%ほどで、COVID-19入院は11%ほど増加していました。イスラエルは1月にロックダウンを実施しているので感染や入院の減少はすべてワクチンのおかげとは言い切れないかもしれません。しかしイスラエルのワイツマン科学研究所(Weizmann Institute)の計算科学者Eran Segal氏は高齢者の感染や入院の減少はワクチンのおかげと考えています1)。というのも、高齢者の感染や入院はワクチン接種率がまだ比較的低い若い人とは対照的により大幅かつ速やかに減少しているからです。それに、1月の早くにワクチン1回目の接種を済ませた高齢者の割合が85%超の都市では60歳を過ぎた高齢者とそれより若い人の減少の差が最も顕著でした1)。また、ワクチン接種が始まる前の去年9月のロックダウンのときには今回のような減少傾向は認められておらず、ワクチンは確かに効き始めているとSegal氏は言っています。ワクチン普及の効果はイスラエルの医療従事者への接種データ解析でも確認されています。その解析はBNT162b2の1回目が接種された医療従事者50万人超を対象とし、第III相試験結果によると予防効果がほとんどあるいは全く期待できない接種後12日までの感染率(PCR検査陽性率)は0.57%でした。一方、接種後13~24日の感染率は12日までの感染率の約半分の0.27%であり、1回目接種後13~24日の感染予防効果はおよそ51%と結論されました3)。英国の医療従事者へのBNT162b2接種の解析でも同様の効果が示されています。ワクチンが接種された約13,000人と非接種の約33,000人が比較され1)、ワクチン接種1回目から12日を経た医療従事者の感染率は非接種医療従事者に比べて53%低く抑えられていました1,4,5)。参考1)Vaccines are curbing COVID: Data from Israel show drop in infections / Nature2)Patterns of COVID-19 pandemic dynamics following deployment of a broad national immunization program. medRxiv. February 09, 20213)The effectiveness of the first dose of BNT162b2 vaccine in reducing SARS-CoV-2 infection 13-24 days after immunization: real-world evidence. medRxiv. January 29, 20214)COVID Vaccines: What we know so far(Tim Spector氏等が設立した健康科学企業ZOEのYouTubeチャンネル)5)Vaccine after effects more likely if you had COVID before(上記オンラインセミナーの予告).

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新型コロナ軽症例に出現、味覚障害以外の口腔病変とは?

 ブラジル・ブラジリア大学のDos Santos氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の口腔徴候と症状の有病率に関するエビデンスの系統的レビューを行い、味覚障害以外の口腔病変について明らかにした。Journal of Dental Research誌2021年2月号掲載の報告。 本レビューはPRISMAチェックリストに基づき、文献は6つのデータベースと灰色文献から検索されたCOVID-19患者の口腔症状と徴候に言及する研究が含まれた。バイアスのリスクはJBI(Joanna Briggs Institute)の評価ツールを用いて評価した。このレビューには33件の横断的研究と7件の症例報告の計40件の研究が含まれていた。 主な結果は以下のとおり。・全19ヵ国の1万228例(男性:4,288例、女性:5,770例、不明:170例)が評価された。・最も一般的な口腔症状として、味覚障害の有病率は45%(95%信頼区間[CI]:34~55、I2=99)だった。・さまざまな味覚障害についてプールされた適格なデータによると、味覚障害の有病率は38%、味覚減退は35%で、味覚消失は24%であった。・COVID-19による味覚障害のオッズ比[OR]は12.68(95%CI:6.41〜25.10、I2=63、p

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KRASG12C変異陽性肺がんにおけるsotorasib、迅速かつ持続的な効果示す/アムジェン

 アムジェンは、2021年1月29日、126例のKRASG12C変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に治験薬sotorasibを評価した臨床試験であるCodeBreaK100の第II相コホートから得られた結果を発表した。この結果は、国際肺学会(IASLC)2020 世界肺会議(WCLC)のPresidential Symposiumで発表され、中央値で1年超の追跡評価期間を有する、NSCLCを対象として完遂した主要な第II相試験の初めての結果である。 Sotorasibの奏効率(ORR)および病勢コントロール率(DCR)は、それぞれ37.1%と80.6%であり、奏効期間の中央値は10ヵ月であった(データカットオフ2020年12月1日、追跡期間中央値12.2ヵ月)。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は6.8ヵ月で、第I相試験の結果と一致している。80%を超える患者が病勢コントロールを達成し、そのうち3例が完全奏効、43例が部分奏効を示した。全奏効例(46例)における最良腫瘍縮小率の中央値は60%、奏効までの期間中央値は1.4ヵ月であった。探索的解析では、PD-L1発現レベルが陰性または低値の患者およびSTK11変異を有する患者を含むさまざまなバイオマーカーのサブグループで、sotorasibによる腫瘍縮小効果が認められた。 Sotorasibのベネフィット・リスクプロファイルは良好であり、治療関連有害事象のほとんどは軽度から中等度(Grade1または2)で、治験薬と関連のある死亡は認められなかった。頻度の高い治療関連有害事象(全グレード)は、下痢(31.0%)、悪心(19.0%)、ALT増加(15.1%)およびAST増加(15.1%)で、投与中止に至った治療関連有害事象の発現は7.1%であった。 KRASG12CはNSCLCにおいて高い頻度で認められるドライバー変異の一つ。米国においては、約13%のNSCLC患者がKRASG12C変異を有し、毎年約25,000名の新規患者がKRASG12C変異を有するNSCLCの診断を受けている。

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