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認知症患者さんのワクチン接種【コロナ時代の認知症診療】第2回

ワクチンによる副反応と予防効果、まず整理しておきたいこと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2回目の緊急事態宣言が終了したものの、リバウンド現象かと、第4波の始まりを危惧する声も出てきた。昨年2月頃から本格化したこのCOVID-19を抑える術は、現時点(2021年4月)では、予防ワクチン投与しかないとも考えられている。しかしワクチンで本当に予防できるのか? 安全なのか? さらには集団免疫を形成する上で有用なのか等と慎重論、反対意見も強い。医療関係のマスコミなどでもいくつかアンケート調査が行われている。直近ではだいぶ接種に前向きな人が増えてきた印象だが、自分自身が予防注射を、受けたい、受けたくない、どちらともいえない、への回答は見事に3分されていると筆者はみてきた。健常者でも、副反応の危険性が怖いのは当然だが、いわゆる基礎疾患ゆえに、高齢者、とくに認知症があればその恐さは倍増する。ワクチンの国内接種は今年の2月に始まり、1ヵ月余りが経過した。厚労省からこの中間集計が報告されている1)。注目すべきは、アナフラキシーショックもさることながら、一般的な副反応がどのようなもので、どの程度かという点であろう。その結果、発熱・だるさは1回目の投与ではさほどでもないが、2回目に注意が必要だとされる。例えば、37.5度以上の発熱は、1回目は3%、2回目では36%になる。だるさは23%から67%に上がる。インフルエンザワクチンでは、発熱3%、だるさ9%に過ぎないとされる。このような高率はCOVID-19 ワクチンでは、1回目で基礎的な免疫ができ、2回目ではより強い免疫反応が働くからと説明される。なおこうした症状は1週間近く続くようだ。ところでワクチンの予防効果については、筆者もこれまで、相当高いと思ってきた。たとえば国民の6割が接種を受けたイスラエルでは、年齢によらず9割以上の発症予防効果があったとされる2)。だがこの効果の正しい理解には注意がいる。と言うのは、「ワクチンを接種すると90%以上が発症しない」ということではない。例えばワクチン群とプラセボ群、各々1,000名に接種した後、プラセボ群で10例が、ワクチン群で1例が発症すれば、効果(有効性)は90%になる。だから90%がどこまでの効力かについては、インフルエンザ予防注射と同じで、接種されても発病する人もままあると考えるべきだろう。それぞれの“理解ストライクゾーン”を探して、伝え方の工夫認知症患者さんのワクチン接種を考える時、最も注意すべきは、副反応の問題だろう。最近ノルウェーで高齢者における23例の死亡が報告され話題になっている3)。けれどもこの報告は、ワクチンが直接死因となったと述べているわけではない。むしろ副反応としてありがちな発熱や悪心・嘔吐がしばらく続くことで、基礎疾患に更なるダメージが加わって死に至らしめるのではと考察している。それだけに、基礎疾患があり衰弱した高齢者や認知症患者では、接種に慎重さが求められる。つまりワクチンは、発症や重症化を防ぐと期待される反面、こうした危険性またアナフラキシーのような直の危険性もあるという認識が不可欠になる。話が複雑になるだけに、高齢者、とくに認知症のある方にとって受ける、受けない、の決断は難しい。もちろん認知症だから意思決定能力がないわけではない。認知症の程度によっては、十分な意思決定能力を有する人もいる。だが筆者が認知症の人の意思決定において最も危惧することがある。と言うのは、認知症の人は話す日時によって、また相手によって、など状況が異なれば、簡単に意見が変わることがある。次の機会は正反対の発言であることも珍しくない。まず周囲の人が、ワクチン接種の意思を問う際には、上記したようなメリットとデメリットを述べる必要がある。けれどもうこうしたCOVID-19の概況が理解できない場合も少なくはない。認知症の人の意思決定に関しては、「意思決定支援ガイドライン」4)があり、基本原則が挙げられている。最重要なのがご本人の意思尊重であることは言うまでもない。また「認知症の程度にかかわらず、本人には意思があり、意思決定能力があることを前提」、また「意思能力は固定的でない、本人の保たれている認知能力等を向上させる働きかけ」がポイントだろう。これを実際的に述べるならば、「難しいから答えられないだろうと諦めてはいけない。話す状況や話し方を変えるなど工夫をして、その人の理解ストライクゾーンにくるまで何度でも説明しようということ」になる。具体的には、コロナウイルスなどと言わないで「特別怖いインフルエンザ」、副反応やアナフラキシーではなく「ワクチンには毒もある」、さらにクラスターではなく「おじいちゃんがかかれば、家族みんながかかる可能性が大きい」などの表現だろうか。なおこうした話がまったく理解できないケースも想定される、こうした方では、これまでのインフルエンザの予防接種歴やこれに関する過去の発言や態度、さらに終末期医療など死生観に関わる意見などが参考になるかもしれない。参考文献・参考情報1)第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和2年度第14回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催), 資料2 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)-健康観察日誌集計の中間報告(2)2)Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 24. [Epub ahead of print]3)Torjesen I.et al. BMJ.2021 Jan 15;372:n149.4)厚生労働省, 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

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COVID-19ワクチン(2021年3月現在)【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第8回

ワクチンの特徴(種類と製法)新型コロナワクチンは2020年12月に相次いで3製剤(Pfizer/BioNTech製、Moderna製、AstraZeneca/Oxford製)が治験を終え、米国および英国をはじめ各国で承認され接種が始まった。その後も複数の新規ワクチンが米国、中国、ロシアなどで順次承認され使用されている。わが国では2021年3月現在、Pfizer/BioNTech製の「コミナティ筋注」(以下、「コミナティ」)のみが承認され、医療従事者から順次接種が始まっている。早ければ4月中旬には地域の高齢者にも接種が始まる見込みである。Moderna製、AstraZeneca/Oxford製はいずれも承認申請済みであるものの現在審査中であり、具体的な承認時期は不明である。以下、コミナティに限定して解説する。コミナティの特徴コミナティはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである。新型コロナウイルスが持つ構造蛋白のうちヒト細胞への侵入のカギとなるのは、スパイク蛋白である。このワクチンは、ウイルス遺伝子からスパイク蛋白の配列部分だけを切り出し、安定化のためにリポ脂質で包んだもの(物質名「トジナメラン」1) )を主成分としている。コロナウイルスは1本鎖プラス鎖RNAウイルスであるため、切り出したウイルス遺伝子がそのままmRNAとして機能する。これを筋肉内に接種すると、ヒト筋細胞はmRNAを読み取って細胞質内でウイルスのスパイク蛋白を大量に生成し、細胞外に放出する。放出されたスパイク蛋白を免疫細胞が認識することで、スパイク蛋白に対する免疫を獲得するという仕組みである2)。mRNAワクチンがヒトで実用化されたのは今回が初めてである。ではなぜ、不活化や弱毒性などの既存製法ではなく、mRNAだったのか? 答えは開発速度にある。不活化や弱毒性その他の既存製法は基本的に、ウイルスそのものを原材料として大量に必要とする。そのためウイルスの適切な培養系の確立が必須となるが、通常は年単位を要する開発作業である。それに対してmRNAは、ウイルスの遺伝子配列さえ既知であれば、遺伝子工学によって迅速に原材料を大量生産できる。実際、Pfizer/BioNTech社は、2020年1月10日に中国保健当局が新型コロナウイルスの全遺伝子配列を発表したその日から開発に着手したとphase 3論文で明言している3)。全世界を覆う未曾有のパンデミックにおいて迅速なワクチン開発は決定的に重要であった。遺伝子工学による新技術がコロナ禍に迅速に希望をもたらしたのである。ウイルス遺伝子を接種することに漠然とした不安があるようだが、杞憂である。分子生物学のセントラルドグマに従い、ワクチンのmRNAがヒトDNAへと逆転写されることはけっして起きない。そもそも一般にウイルス感染のたびにヒト細胞は大量のウイルス遺伝子に晒されるが、レトロウイルスのようなごく一部のウイルスを除いて、ウイルス遺伝子がヒトDNAに直接影響を及ぼすことはないのだ。インフルエンザウイルスに感染しても新型コロナウイルスに感染しても、ヒトDNA自体が変化を受けることはない。よって、ワクチンとして接種した新型コロナウイルス・スパイク蛋白のmRNAが、ヒトDNAに影響を与えることも子孫に継代されることもあり得ないのである。コミナティの効果Phase 3論文で示された効果は、2回目接種完了後7日後以降におけるCOVID発症(発熱などで発症しPCR検査で陽性と確定される患者)が、プラセボ群に比べて95.0%(95%信頼区間90.3-97.6)減少するという驚異的数字であった。発症の減少に伴い、重症COVIDも88.9%(同20.1-99.7)と著しく減少した。世界で最も早く市民への接種が進んだイスラエルにおけるヒストリカルコホート研究4)でも、COVID発症が94%(同87-98)、重症COVIDが92%(同75-100)それぞれ減少した。これらはphase 3とほとんど同等の結果であり、治験内容が裏付けられた。さらに、同研究では無症候性感染に相当するPCR陽性者も90%(同83-94)減少したことも観察され、コミナティが発症のみならず感染自体も予防することが示唆された。一方で、コミナティ接種によって他者への感染伝播を減少するか、すなわち集団免疫の形成に寄与するかは、本稿執筆時点でpeer-reviewed journalに掲載された質の高い研究では示されていない。今後の報告が待たれる。ワクチンの副反応・有害事象懸念された副反応については、治験においては通常のワクチン反応性症状(発熱、倦怠感、接種部位疼痛、腫脹など)しか検出されなかった。これは人体が免疫獲得する際に生ずる自然な炎症反応の現れであり、何ら後遺症を残すことなく1日~数日で自然消失する。ただし、既知のワクチンに比べると頻度は高く、自覚症状も強めのようである。接種翌日には欠勤など、接種しやすくする配慮が望ましいであろう。アナフィラキシーについては、治験では検出されなかったが、市中接種開始後に報告され始めた。米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)に集積された報告の解析によると5)、コミナティは994万接種中47件のアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)が生じ、100万接種あたり4.7件の頻度であった。接種から発症までの時間の中央値は10分であり、94%が女性であった。同じ米国VAERSに報告された既存ワクチンによるアナフィラキシーが100万接種あたり1.31件とされている6)のに比べても、極端に高い数字とは言えない。ただし、女性がほとんどを占めていることには注意を要する。もともとアナフィラキシーは女性に多いと報告されており7)、局所麻酔薬アナフィラキシーでも女性が多かったという報告もある8)。一方で、コミナティではmRNAを包むリポ脂質がポリエチレングリコール(PEG)で構成されているが、PEGはアナフィラキシー原因物質として知られる9)と同時に、多くの化粧品に含まれている。コミナティで女性にアナフィラキシーが多いのは化粧品にPEGが含まれていることと関係があるかもしれないが、現時点で詳細はわかっていない。上記以外には、副反応の可能性がある有害事象の報告は現時点ではなく、極めて安全なワクチンと言ってよい。コミナティは3月上旬時点ですでに世界で1億回以上接種されたと見込まれている。仮に100万接種分の1の極めてまれな頻度で生ずる重篤な副反応があったとしても、1億回接種してそれが1件も発生しない確率は、と、あり得ないほど小さな確率である。すなわち、1億回以上接種されたにもかかわらず新しい副反応報告がない時点で、確率100万分の1のような極めてまれな副反応も観察されていないと言ってよい。ただし、特定の人口集団(特定の年齢、特定の疾患患者など)に限定的な副反応は今後発見される可能性が残っている。たとえば、コミナティではなくAstraZeneca製のウイルスベクターワクチンではあるが、55歳以下の若年世代で接種によって血栓症(播種性血管内凝固症候群および脳静脈洞血栓症)が増える可能性が示唆されている10)。ただし、COVID-19感染そのものによって血栓症リスクが明らかに増大するため、接種による感染予防は接種による血栓症リスクを上回ると欧州医薬品局は判断している。ワクチンの保管と輸送の注意点、留意点mRNAは不安定な物質であるため、長期にはマイナス70℃前後の超低温保存が必要である。ただし2021年3月1日付で添付文書が改訂され、最長14日間までならマイナス20℃前後でも保存可能となった11)。解凍からシリンジ分注までは、冷蔵温度(プラス2~8℃)の場合は5日以内に、直接室温に出す場合は2時間以内に行わねばならない。1バイアルを溶解するとちょうど1.8mLとなり、1人分が0.3mLであることから、死腔の少ないシリンジで適切な手技にて吸引すれば1バイアル6人分採取が可能である。何らかの理由で6人分採取できない場合は残量を破棄する。シリンジに分注後は6時間以内に接種せねばならず、それ以上経過した場合は破棄する。またすべての過程において、十分に遮光し続けねばならない。図も参照いただきたい。図 コミナティの取扱い画像を拡大するmRNAが物質として不安定であることから、輸送時には振動を避けることとされている。オートバイのような輸送手段は不適切とされるが、乗用車の座席で丁寧に輸送する程度なら問題はないようだ。被接種者への説明のポイント筆者が確認している限りでは、コミナティその他新型コロナワクチンを不用意に危険と煽るような報道は幸いほとんど目にしていない。しかし、SNSや口コミでさまざまな否定的意見やデマの類が広まっているようである。医療従事者が、被接種者や患者から不安げに質問されたり、限られた情報だけに基づく否定意見を投げられたりするかもしれない。日頃の医療従事者-被接種者(患者)関係に基づいて、丁寧なコミュニケーションを是非ともお願いしたいところである。コミュニケーションのポイントは、下記のように整理できるだろう。効果として、発症、感染を共に90%以上予防できる、優れたワクチンであること。副反応は、世界で1億人以上が接種した時点で、一過性の発熱や痛みとごくまれなアナフィラキシーしか報告されていない、かなり安全なワクチンでもあること。遺伝子工学の発展のお陰で極めて短期間で開発できたが、治験の手順は一切省略されず丁寧に行われ、さらに市中接種開始後も効果と安全性を検証する研究が多数進行中であること。ウイルス遺伝子を体に注入することは自分や子孫の遺伝子に何ら悪影響はないこと。接種によって他人にも感染させないようになる(いわゆる「集団免疫」が付く)のかはまだわかっていないが、少なくとも接種した本人が極めて高い確率で感染から守られるのは確実であること。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)新型コロナワクチンについては下記の各サイトも是非参照いただきたい。新型コロナウイルス感染症 診療所・病院におけるプライマリ・ケアのための情報サイト(日本プライマリ・ケア連合学会)こどもとおとなのワクチンサイト(日本プライマリ・ケア連合学会)新型コロナワクチンについて(厚生労働省)新型コロナワクチンについて(首相官邸)これでわかる!新型コロナワクチン情報(新型コロナワクチン公共情報タスクフォース)こびナビ(保健医療リテラシー推進社中)コロワくんサポーターズ(コロワくんサポーターズ)また、筆者自身もコロナワクチンの医療従事者向け情報を下記サイトで整理している。併せてご参考になれば幸いである。Vaccipediaワクチペディア プライマリケアのためのワクチンリソース1)コミナティ筋注添付文書.2)Pardi N, et al. Nat Rev Drug Discov. 2018;17:261-279.3)Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.4)Dagan N, et al. N Engl J Med. Published online 2021.doi:10.1056/NEJMoa21017655)Shimabukuro TT, et al. Jama. 2021;325:2020-2021.6)McNeil MM, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;137:868-878.7)Jensen-Jarolim E, et al. Allergy. 2008;63:610-615.8)Fuzier R, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2009;18:595-601.9)Stone Jr. CA, et al. J Allergy Clin Immunol Pr. 2019;7:1533-1540.10)EuropeanMedicalAgency. COVID-19 Vaccine AstraZeneca: benefits still outweigh the risks despite possible link to rare blood clots with low blood platelets. 18 March. Published 2021. (2021年3月1日閲覧)11)ファイザー株式会社. COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』の日本における添付文書改訂について.(2021年3月1日閲覧) 講師紹介

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第55回 透析しながらフィットネス/血栓症をAZ社ワクチン副作用と欧州が判断

透析中の自転車漕ぎ運動で心臓の調子が改善透析患者は年々増えており、2019年の調査では日本人のおよそ1,000人に3人(100万人当たり2,732人)が慢性透析患者でした1)。それら透析頼りの患者の死亡原因で最も多かったのは心不全であり、死亡原因の22.7%を占め、心不全に加えて脳血管障害と心筋梗塞も含む心血管疾患全般は死亡原因の約1/3の32.3%を占めました。慢性疾患患者の心血管疾患予防には運動が良いことが報告されています。血液透析頼りの末期腎疾患(ESRD)患者はとくにじっとしていがちであり、運動で心血管機能や体調の改善が期待できるでしょう。とはいえ透析に出向いて4時間透析を受けて帰宅することを多くの場合週に3回繰り返す患者がその他のことをする時間は非常に限られています2)。ではその長い透析の最中に運動してもらったらいいじゃないかということで実施されて好成績を収めた無作為化試験の結果が国際腎臓学会(ISN)発行のKidney International誌に掲載されました3)。試験は英国の血液透析センター3ヵ所で実施され、130人が参加しました。半数の65人は週3回の透析中に30分間自転車漕ぎ運動をしてもらい、残り半数はいつもの治療を受けました。6ヵ月後のMRI写真を調べたところ自転車漕ぎ運動をした患者の心臓の大きさは正常化しており、心臓の瘢痕が減っていました。血管にも良い影響を及ぼしたらしく大動脈硬化の指標が改善しました。また、自転車漕ぎ運動をした患者の入院はより減り、1人当たりの6ヵ月間の医療費はそうしなかった患者に比べて諸費用・装置導入や人件費(理学療法士の給与)差し引きで1,418ポンド少なくて済みました4)。透析の都度自転車漕ぎ運動をすれば否が応でも運動習慣を身につけることができ、長い透析がより有意義なものになるでしょう2)。透析中の自転車漕ぎ運動は心血管の調子を改善するようであり、果ては生存改善につながるかどうかを今後の試験で調べる必要があると著者は言っています。血栓症をAZ社ワクチンの非常に稀な副作用と欧州が判断~J&Jワクチンでも同様の血栓症が発生血小板減少を伴う普通じゃない血栓症をAstraZeneca社COVID-19ワクチンVaxzevria(AZD1222)の非常に稀な副作用と欧州医薬品庁(EMA)が結論しました5,6)。およそ2,500万人がAstraZenecaワクチン接種済みの欧州地域から主に自主的に3月22日までに報告された脳静脈洞血栓症(CVST)62例と内臓静脈血栓症(splanchnic vein thrombosis)24例を詳しく調べてEMAはその結論に至りました。欧州連合(EU)の薬剤安全性データベースEudraVigilanceに集まったそれら86例のうちおよそ5例に1例(18例)は死亡しています。その約2週間後の4月4日時点でのEudraVigilanceへのCVST報告数は3月22日までより3倍近い169例、内臓静脈血栓症は2倍以上の53例に増えています。とはいえ血小板減少を伴う血栓症は非常に稀であり、AstraZenecaワクチンのCOVID-19予防効果は副作用リスクを上回るとEMAは依然として考えています。先週紹介したヘパリン起因性血小板減少症(HIT)様の免疫反応を原因の一つとEMAは想定しています。心配なことにJ&JのCOVID-19ワクチンでも同様の血栓症が発生してEMAは調査を開始しています7)。また、AstraZenecaワクチンの別の安全性懸念・毛細管漏出症候群の調査も始まっています。毛細管漏出症候群は血管の液漏れを特徴とし、組織を腫らして血圧低下を招きます。参考1)新田孝作ほか. 透析会誌. 53:579~632,2020 2)Cycling study transforms heart health of dialysis patients / Eurekalert 3)Matthew P.M.et al. Kidney International. April 08, 2021. [Epub ahead of print]4)Daniel S. M.et al.Kidney International. April 08, 2021.[Epub ahead of print]5)AstraZeneca’s COVID-19 vaccine: EMA finds possible link to very rare cases of unusual blood clots with low blood platelets / EMA6)Blood Clots a Very Rare Side Effect of AstraZeneca Vaccine: EMA / TheScientists7)Meeting highlights from the Pharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC) 6-9 April 2021 / EMA

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ミドリムシ摂取でコロナ禍の不安疲労が解消する?

 コロナ自粛により自律神経が乱れ、多くの日本国民が不安や疲労に苛まれている。これを打破するために、一躍ブームとなったミドリムシが改めて見直されるかもしれないー。3月17日、『コロナ禍における新たな社会課題「不安疲労」の実態と「腸ツボ」刺激によるアプローチ~多糖成分パラミロン最新研究報告~』(主催:パラミロン研究会)が開催。久保 明氏(東海大学医学部客員教授/内分泌・糖尿病専門医)と内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)らが登壇し、ミドリムシの生成物がいかに現代社会に必要か解説した。ミドリムシが生成するパラミロンとは パラミロンとはユーグレナ(和名:ミドリムシ)だけが生成する細胞内に貯蔵される多糖体で、摂取すると腸に直接作用し、便中から未分解、無傷の状態で検出される成分である。これまでの臨床試験では、身体的・精神的疲労感軽減をはじめ、血糖値の上昇抑制やLDLコレステロールの低下のような代謝機能改善に対する有効性が報告されている。パラミロンの中でもEOD-1株が有用だが、機能性についてはまだ解明途中であり、現在、免疫系や消化器系をはじめとするさまざまな領域の研究者が探求している。コロナ禍、4人に1人が不調を感じている その研究者の1人で、コロナ禍で顕在化した新しいタイプの疲労を『不安疲労』として提唱する久保氏は「不安疲労とは、“なんとなくだるい”という身体的疲労感と“やる気が出ない”、“不安だ”という精神的疲労感が結びついたもの」と解説し、「Twitter上でも長引くコロナ禍で多くの人がこの不安疲労を抱えていることが如実に表れている。実際に本研究会が行った実態調査(n=1,200)でも52.7%が不安疲労を感じることが増えたと回答した」と説明し、「なかでも若い世代の女性は社会的サポートの不足や女性特有の体調変化に悩み、さらには女性ホルモンのエストロゲンの分泌不足により自律神経の機能低下が生じて不安疲労に陥りやすい」とも話した。また、この状態が続くと、うつ病だけではなく、活性酸素とともに動脈硬化の進展など老化を加速させる可能性があるが、「パラミロンを含んだ食品を摂取した群では早期に副交感神経活動が優位になり、身体的・精神的いずれの疲労感も軽減したことから、自律神経の乱れを整えるために姿勢を正したウォーキングなどを行うとともにパラミロン摂取が対策の一助になる」と説明した。パラミロンが腸の感覚受容体を刺激 続いて、内藤氏がパラミロンによる腸管の乱れ解消法について説明した。消化管は脳腸相関で相互に密接に影響し合っているため、ストレスがかかると腹痛が生じ下痢や便秘などの消化・吸収機能に影響が出る。一方、消化管にはさまざまな化学的・物理的刺激を感受するセンサーが備わっており、温度感受性Transient Receptor Potential(TRP)チャネルや甘味を感知する味覚受容体T1R2、嗅覚受容体はその代表例だ。つまり、味は舌の味蕾だけではなく胃や小腸で、匂いは鼻以外に大腸でも感じている。この腸管粘膜にある受容体などのセンサー(腸ツボ)を同氏は整体のつぼ押しに例え“腸ツボ”と称し、「腸管粘膜の細胞に点在する腸ツボを刺激することで神経系・免疫系・内分泌系の細胞が活性化することが解明されてきた。その物理的な刺激を担うのがパラミロンである」と解説した。 今回のコロナ禍の事例として、同氏は大島 忠之氏らの論文1)を紹介。それによると消化器症状の悪化を訴えたのは健康成人で6%程度に対し、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群を罹患している方では40%に上った。この状況を踏まえ、「これらの症状もパラミロンによって腸内細菌叢を改善させることで良い方向に向けることができるのかもしれない」と締めくくった。

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オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。・対象:免疫チェックポイント阻害薬または抗HER2薬によるGrade2〜3の掻痒を有し、局所ステロイドと1つ以上の全身療法に抵抗性の患者・介入:オマリズマブを月1回投与・主要評価項目:paCAEのGrade0〜1への改善 主な結果は以下のとおり。・34例(女性50%、年齢中央値67.5歳)、がん治療関連paCAE(免疫チェックポイント阻害薬71%、抗HER2薬29%)に対するオマリズマブ投与を受けた。・対象は、すべて固形腫瘍(乳房29%、泌尿生殖器29%、肺15%、その他26%)で、64%に蕁麻疹が認められた。 ・オマリズマブの奏効は34例中28例(82%)に認められた。 ・paCAEの支持療法として経口コルチコステロイドを投与された患者の割合は、50%から9%に減少した(P

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成人不眠症に対するレンボレキサントの長期有効性、安全性~第III相臨床試験

 レンボレキサント(LEM)は、成人の不眠症治療薬として日本、米国、カナダで承認されているデュアルオレキシン受容体拮抗薬である。LEMを最大12ヵ月間継続使用した際の有効性および安全性を評価したE2006-G000-303研究(Study 303;SUNRISE-2)の結果を、英国・エーザイのJane Yardley氏らが報告した。Sleep Medicine誌オンライン版2021年2月1日号の報告。 Study 303は、2つの治療期間における12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化二重盲検並行群間第III相臨床試験として実施された。治療期間1(前半6ヵ月間)では、成人不眠症患者949例(完全分析セット)を対象に、プラセボ群、LEM 5mg群、LEM 10mg群にランダムに割り付けた。治療期間2(後半6ヵ月間)では、プラセボ群を再びLEM 5mg群とLEM 10mg群にランダムに割り付け、治療期間1のLEM 5mg群およびLEM 10mg群は、そのまま治療を継続した(LEM 5mg群:251例、LEM 10mg群:226例)。エンドポイントである入眠および睡眠維持は、毎日の電子睡眠日誌のデータより分析した。治療に起因する有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・LEM 5mg群およびLEM 10mg群は、プラセボ群と比較し、すべての睡眠パラメータにおける有意な効果が観察され、その効果は12ヵ月間維持された。・LEM治療中止後、両群ともに不眠症状のリバウンドまたは離脱症状を示す根拠は見当たらなかった。・12ヵ月以上のLEM治療におけるTEAEは、ほとんどが軽度または中等度であった。・主なTEAEは、鼻咽頭炎、傾眠、頭痛であった。 著者らは「LEM 5mgおよび10mgによる治療は、プラセボと比較し、入眠および睡眠維持に有意な効果をもたらし、その効果は12ヵ月間維持された。成人不眠症患者に対するLEM治療は、長期的なベネフィットをもたらす可能性があることが示唆された」としている。

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JAK阻害薬upadacitinib、対アダリムマブの優越性は?/NEJM

 乾癬性関節炎患者の治療において、ウパダシチニブはプラセボおよびアダリムマブと比較して、12週時に米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善(ACR20)を達成した患者の割合が高いが、プラセボに比べ有害事象が高頻度にみられることが、英国・グラスゴー大学のIain B. McInnes氏らが行った「SELECT-PsA 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月1日号に掲載された。ウパダシチニブは、可逆的な経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、関節リウマチの治療薬として承認されている。また、アダリムマブは、腫瘍壊死因子α阻害薬であり、関節リウマチおよび乾癬性関節炎の治療に使用されている。2種の用量を評価する国際的な二重盲検第III相試験 本研究は、非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の効果が不十分な乾癬性関節炎患者におけるウパダシチニブの有用性を、プラセボおよびアダリムマブと比較する24週の二重盲検第III相試験であり、日本を含む45ヵ国281施設が参加し、2017年4月~2019年12月の期間に実施された(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、乾癬性関節炎と診断され、「乾癬性関節炎分類基準(Classification Criteria for Psoriatic Arthritis)」を満たし、過去または現在、尋常性乾癬に罹患している患者であった。 被験者は、ウパダシチニブ15mgまたは30mgを1日1回経口投与する群、プラセボ群、アダリムマブ40mgを隔週で皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、プラセボと比較した12週時のACR20の達成とした。ACR20は、圧痛・腫脹関節数の20%以上の減少、および他の5つの項目(疾患活動性の患者・医師による評価、質問票による身体機能の評価、患者による疼痛評価、高感度C反応性蛋白)のうち少なくとも3つの20%以上の改善と定義された。副次エンドポイントには、アダリムマブとの比較が含まれた。15mg群は、アダリムマブ群に対する優越性はない 1,704例が、少なくとも1回の実薬またはプラセボの投与を受けた。ウパダシチニブ15mg群が429例(平均年齢[SD]51.6±12.2歳、女性55.5%)、同30mg群が423例(49.9±12.4歳、55.8%)、プラセボ群が423例(50.4±12.2歳、49.9%)、アダリムマブ群は429例(51.4±12.0歳、51.7%)であった。 12週の時点で、ACR20を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ15mg群が70.6%、同30mg群が78.5%、プラセボ群が36.2%、アダリムマブ群は65.0%であった。15mg群とプラセボ群の差は34.5ポイント(95%信頼区間[CI]:28.2~40.7、p<0.001)、30mg群とプラセボ群の差は42.3ポイント(36.3~48.3、p<0.001)であり、ウパダシチニブの2つの用量はいずれもプラセボ群に比べ有意に優れた。 また、15mg群とアダリムマブ群の群間差は5.6ポイント(95%CI:-0.6~11.8)、30mg群とアダリムマブ群との群間差は13.5ポイント(7.5~19.4、p<0.001)であった。12週時のACR20達成割合に関して、ウパダシチニブの2つの用量はいずれも、アダリムマブ群に対し非劣性であった。優越性は、30mg群では認められたものの、15mg群ではみられなかった。 24週までの有害事象の発生率は、ウパダシチニブ15mg群が66.9%、同30mg群が72.3%、プラセボ群が59.6%、アダリムマブ群は64.8%であった。重篤な感染症は、それぞれ1.2%、2.6%、0.9%、0.7%に発現し、ウパダシチニブ群で多かった。肝障害は、15mg群が9.1%、30mg群が12.3%でみられたが、Grade3のアミノトランスフェラーゼ上昇の発生は全群で2%以下だった。 著者は、「ウパダシチニブの効果とリスクを明らかにし、その効果を乾癬性関節炎の治療に使用されている他の薬剤と比較するには、より長期で、より大規模な試験が求められる」としている。

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ファイザー社ワクチン6ヵ月後も有効、南ア変異株にも

 米国・Pfizer社は4月1日付のプレスリリースで、同社とBioNTech(ドイツ)が開発した新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)について、第III相臨床試験で観察されたワクチンの有効性に関する最新の分析結果を発表した。それによると、2回目のワクチン接種から6ヵ月後までの有効性は91.3%であり、南アフリカにおいて流行が確認されている変異株B.1.351系統のCOVID-19症例の予防に対しても有効性を示したという。 発表によると、第III相臨床試験には4万6,307例が参加。2回目のワクチン接種後7日から6ヵ月までのCOVID-19罹患状況を調べたところ、927例が確認された。このうち77例がBNT162b2群(ワクチン接種)、850例がプラセボ群(ワクチン未接種)で、ワクチンの有効性は91.3%であった(95%信頼区間[CI]:89.0~93.2)。 また、SARS-CoV-2変異株B.1.351系統が流行している南アフリカの参加者800例では9例のCOVID-19が確認されたが、いずれもプラセボ群であり、ワクチン有効性は100%を示した(95%CI:53.5~100.0)。探索的分析では、9例中6例がB.1.351系統(南アフリカ変異株)であり、本データは、BNT162b2が南アフリカ変異株に対する強い中和抗体応答を誘導したことを実証した従来の試験結果を、引き続き支持するものであった。 2回目の投与から6ヵ月までの試験参加者については、深刻な安全上の懸念は認められなかった。副作用は、一般的に以前に報告された結果と一致していた。ワクチンの安全性については、現在16歳以上の4万4,000例以上の参加者で評価され、1万2,000例以上の予防接種参加者が2回目の接種後少なくとも6ヵ月のフォローアップを受けており、さらなる長期的なフォローアップと分析が進められる見通しだ。

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第50回 今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?

<先週の動き>1.今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?2.医療者・高齢者のワクチン供給に目途、6月末までに3.75歳以上の自己負担2割に引き上げ、衆議院にて審議開始4.新型コロナの影響は周産期医療にも、出生数激減5.相次ぐジェネリック問題、信頼回復に向けた取り組みを1.今日から高齢者ワクチン接種、医師・看護師不足は解消される?65歳以上の高齢者3,600万人を対象とする新型コロナワクチン接種が本日(12日)開始される。政令指定都市と東京都特別区の計43市区を対象とした日本経済新聞の調査によると、6割の自治体が高齢者向けワクチン接種のピーク時に必要な医師・看護師の確保が間に合っていない。全国知事会では、新型コロナウイルス緊急対策本部会議を4日に開催し、厚生労働省に対して緊急提言を行った。離島やへき地での接種に必要な医療従事者の確保に向け、潜在看護師の掘り起こしや各団体に派遣の働きかけ、僻地や離島以外でも医師や看護師の派遣を可能とするなど、国に必要な支援を求めている。看護師不足に対して、厚労省は4月1日付で、へき地の医療機関への看護師派遣を解禁しており、僻地以外への全国的な看護師派遣の解禁についても労働政策審議会へ提案している。(参考)高齢者ワクチン接種、主要都市6割で医師不足の懸念(日経新聞)第4波の到来を受けた今後の新型コロナウイルス感染症対策についての緊急提言(全国知事会)ワクチン接種の特設会場、2割が「看護師不足」…厚労省が派遣解禁を提案(読売新聞)2.医療者・高齢者のワクチン供給に目途、6月末までに新型コロナワクチン接種について、9日の閣議後の記者会見で、河野 太郎規制改革相が、6月末までに1億580万回分のワクチンを供給できる見通しを明らかにした。現在実施している医療従事者480万人と高齢者3,600万人のワクチンは、6月末までに全国に配送を完了し、一部は持病のある患者に対しても供給が可能になる見込み。欧州連合からのワクチン輸出承認を前提としながらも、供給体制は整ってきたことを説明した。未定の自治体もある一般向けの接種開始時期を明確にできるような供給体制が引き続き求められる。(参考)6月中、確保見通し 高齢者のコロナワクチン 河野担当相(朝日新聞)河野氏「高齢者へのワクチン供給にメド」…6月中に4,500万回分確保の見通し(読売新聞)3.75歳以上の自己負担2割に引き上げ、衆議院にて審議開始8日、年収200万円以上の後期高齢者の医療費の窓口負担割合を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案が衆議院本会議にて審議開始された。一方、7日に開催された財務省の財政制度分科会では、悪化した国の財政健全化に向けた意見を取りまとめるため、今後の社会保障費の伸びをどう抑制していくかなどについて議論している。今後、保険料の引き上げなど持続可能な制度設計を行うとみられ、国民の負担感が増す中で、実効性のある対策の検討が望まれる。(参考)医療費2割負担法案が審議入り 首相「能力応じ負担を」衆院本会議(日経新聞)社保費抑制へ議論開始 財制審、75歳以上の急増が課題(同)財政制度分科会(令和3年4月7日開催)資料一覧(財務省)4.新型コロナの影響は周産期医療にも、出生数激減新型コロナ感染拡大の影響が周産期医療に影響を及ぼしていることが明らかとなった。厚労省がまとめた人口動態統計速報によれば、今年1月の出生数は前年同月に比べ、14.6%減の6万3,742人であり、死亡者数は前年に比べ6.2%増の14万844人と、人口7万7,102人の純減となっている。なお、妊娠届の件数は昨年の5月から減少している。東京都でも5年連続で出生数が減少し、歯止めがかからないため、産後ケア事業など子育て支援の充実を急いでいる。(参考)人口動態統計速報(令和3年1月分)1月の出生数急落、14%減 コロナ禍で出産控え加速(朝日新聞)都内の出生数10万人割れ寸前 自治体、育児支援手厚く(日経新聞)5.相次ぐジェネリック問題、信頼回復に向けた取り組みを最近、ジェネリック医薬品の回収や出荷停止が立て続けに発生しており、後発品への信頼性を揺るがす事態が生じている。厚労省の林経済課長は、これまで医療費削減のため、後発品の安定供給に主軸を置いてきたが、質確保への転換が必要としている。調剤薬局では、他社製品への切り替えや、患者側から先発品への変更希望を受けるなどの対応事例が続いている。今後、厚労省は後発品メーカーに対する指導を強化し、供給と品質の改善を求め、信頼回復を働きかけていくことになる。(参考)「日医工から他社へ」8割 都内の薬局、強い不信感(朝日新聞)厚労省・林経済課長「後発医薬品の安心を取り戻すことが振興策」 今夏にも流通改善GL見直しに着手(ミクスOnline)

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この診療所を子供に継いでもらいたい…、がうまくいかない理由【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第15回

第15回 この診療所を子供に継いでもらいたい…、がうまくいかない理由漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継について、相手との関係から主なパターンを整理すると、(1)親子間で承継するパターン(2)従業員へ承継するパターン(3)第三者へ承継するパターンがあります。これまでに多かったのは、親子間の承継です。いわゆる「代替わり」と呼ばれるもので、相続的な要素も強いため、私たちのような事業者が入ることなく行われるケースも多くありました。一方、最近では診療所の8~9割で後継者が不在という調査結果1)があるように、このような親子間承継のケースは減少しつつあります。医師が「子供も医師に」と望み、実際に子供も医師の道を選ぶケースは依然として多いものの、親子間承継に至らないのは下記のような理由があります。(1)親子で診療科が異なり、患者を引き継げない(2)子供が都会で就職しており、診療所のある地元に戻る意思がない(3)子供が研究職のキャリアを希望しており、開業意欲がない(4)診療所の土地建物や設備が古く、子供が承継するメリットを感じないよくあるケースは、親の開業医が「きっと子供が継いでくれるだろう」と期待しつつ、きちんと親子間で話し合わないまま年月が過ぎていき、いざ子供に承継の意思がないことがわかった時には医業承継のタイミングを逃していた、というものです。診療所には「売り時」があります。院長にやる気があり、患者が多くついている時ほど買い手にとって魅力的な案件となり、結果として高い価格で承継できます。院長が高齢になるにつれ、体力的に厳しくなり、患者は減っていくことが一般的です。地方などでは承継がうまくいかず、残った診療所の不動産が子供にとって大きな負担となることもあります。逆に第三者への承継を考えて買い手と交渉が進んでいたものの、最後になって子供の医師から「引き継ぎたい」という意向が出てきて、交渉を中断するケースもあります。こちらも買い手からの信頼を失うことになり、避けたい状況です。こうしたトラブルを防ぐために、医業承継を検討しはじめた段階で、家族・親族やその他の利害関係者と情報共有し、合意形成をしておくことが重要なのです。参考1)日医総研ワーキングペーパー「医業承継の現状と課題」

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第36回 幾何平均値とは?【統計のそこが知りたい!】

第36回 幾何平均値とは?通常、私たちが使う平均値は、「平均年齢」「平均身長」「平均体重」などのように、データをすべて足し合わせ、データの個数(人数)で割って求める平均値です。これを「算術平均値」(Arithmetic average)と言います。では、「幾何平均値」(Geometrical average)とは、どのような平均値なのでしょうか。今回は、幾何平均値について解説します。■幾何平均値(Geometrical average)幾何平均値とは、「変化率の平均値」のことです。たとえば、ある医薬品の年間の処方量が1年後に2倍に伸び、その翌年にさらに前年の3倍に伸びたとします。その場合、1年あたりの平均伸び率のことを幾何平均値といいます。〔ここで算術平均値の計算を用いて、(2+3)÷2=2.5倍とするのは正しくありません!〕データ数がn個あった場合、n個の数値を掛け合わせ、そのn乗根をとることで得られます。ある疾患にとても有用性の高い医薬品Xの処方量が発売1年目から4年目までの処方量の伸長率を調べたところ、表のデータが得られました。処方量伸長率の幾何平均値を求めてみましょう。2年目の伸長率をx1、3年目の伸長率をx2、4年目の伸長率をx3として、前述の計算式に代入すると 以上より、処方量の年間の平均伸び率は2倍ということになります。■幾何平均値に関する留意点年平均2倍ずつ増えるということは、2年目の処方量は発売年からみて2倍、3年目は2×2=4倍、4年目は2×2×2=8倍となることを意味します。処方量を1年目d1、2年目d2、3年目d3、4年目d4とすると、各年の伸長率(x1、x2、x3)および幾何平均値は以下の式で求めることができます。つまり、伸長率の幾何平均値は最終年のデータ(8,000)を発売年のデータ(1,000)で割った値(8)の3乗根でも求めることができます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよ

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第22回 うつ傾向、うつ病【高齢者糖尿病診療のコツ】

第22回 うつ傾向、うつ病Q1 高齢者糖尿病とうつはどのような関係がありますか?糖尿病患者はうつ病や質問紙法で評価されるうつ傾向をきたしやすくなります。42の研究のメタ解析では、糖尿病患者は、約3割がうつ傾向を有し、約1割が面接法でうつ病と診断されます1)。1型、2型を問わず、糖尿病がない人と比べてうつ病の頻度が約2倍多くなっています1)。J-EDIT研究でも、高齢糖尿病患者の約39%は、GDS-15で評価したうつ傾向を有していました2)。うつ病があると糖尿病の発症は1.60倍で、一方、糖尿病があるとうつ病の発症リスクが1.15倍となり両者は双方向の関係があります3)。高齢糖尿病患者にうつ症状やうつ病が多い原因は高血糖、低血糖、糖尿病合併症、糖尿病治療、ADL低下、視力障害、尿失禁などが考えられます。糖尿病患者におけるうつ傾向は血糖コントロール状態と関連します。HbA1cが7.0%以上の糖尿病患者は、CES-Dで評価したうつ状態になりやすく、またうつ状態が再発しやすくなります4)。英国の追跡研究では、HbA1cが1%上昇するごとにうつ傾向のリスクが1.17倍になると報告されています5)。うつは血糖コントロールを悪化させ、さまざまな合併症を引き起こし、さらにうつを悪化させるという悪循環に陥る可能性もあります。一方、低血糖もうつ症状を増加させます。低血糖発作を起こした糖尿病患者はうつ病のリスクが1.73倍となりますが、この傾向は加齢とともに大きくなるとされています6)。J-EDIT研究でも、インスリン治療中でかつ低血糖の頻度が月1回以上あるとGDS-15で評価したうつ症状が多く見られました2)。一方、うつ病は重症低血糖のリスクになることが知られており7)、この両者も悪循環を形成しうることに注意する必要があります。糖尿病の合併症の中では神経障害による疼痛や身体の不安定さがうつ症状を引き起こします8)。また、糖尿病網膜症などによる視力障害、脳卒中、心血管障害などの大血管障害もうつのリスクとなります。糖尿病の治療状況自体もうつのリスクとなり得ます。逆に、社会的支援やボランティアなどの社会活動への参加、運動療法はうつに対し保護的に働きます。また、高齢者では肉親や友人との離別や死亡を意味するライフイベントが増加するとうつ病をきたしやすくなります。その他、女性、過去のうつ病の既往、社会的な孤立、家族関係の不良、介護環境の悪化もうつ傾向やうつ病発症の誘因となります。Q2 高齢者糖尿病にうつ(うつ傾向やうつ病)はどのような影響を及ぼしますか?うつは治療へのアドヒアランスを低下させ、血糖コントロール不良の原因となります。うつは高血糖のみならず、重症低血糖のリスクとなるため、治療に際しては十分な注意が必要です7)。うつがあると細小血管障害・大血管障害、要介護、死亡のリスクが高くなります。うつ傾向を合併した高齢糖尿病患者は、糖尿病もうつ傾向もない人と比べて、大血管症、細小血管症、要介護、死亡をそれぞれ2.4倍、8.6倍、6.9倍、4.9倍起こしやすく、うつ病を合併した場合も同様に糖尿病合併症、要介護、死亡をきたしやすいと報告されています9)。J-EDIT研究ではGDS-15が8点以上の糖尿病患者は年齢、性、HbA1c、収縮期血圧、non-HDL-C、HDL-Cを補正しても、脳卒中を2.56倍起こしやすいという結果が得られています2)。うつ病が脳卒中発症を増加させる機序は、1)視床・下垂体・副腎系の活性化によるコルチゾル増加や交感神経活性亢進、2)内皮細胞機能異常、3)血小板機能亢進、4)炎症マーカー増加などが考えられています。糖尿病患者におけるうつ病は認知症発症のリスクともなります10)。また、うつ病があるとフレイルのリスクは3.7倍、フレイルがあるとうつ病の発症は1.9倍起こりやすい11)ことが知られており、うつ傾向は心理的フレイルと呼ばれることもあります。糖尿病患者でうつ傾向やうつ病がある場合には認知機能障害やフレイルがないかをチェックすることが大切です。Q3 高齢者糖尿病ではどのようにうつを評価しますか?高齢者のうつ病ではうつの気分障害が目立たず、体重減少などの身体症状が前面に出るために、見逃されやすいことに注意する必要があります。うつ傾向は大うつ病とは異なり、一定期間持続する一定数以上のうつ症状を示し、GDS-15(高齢者うつスケール)などの質問票で評価します。一方、うつ病(大うつ病性障害)の診断はDSM-5に基づいて行います。うつ病は抑うつ気分、興味または喜びの喪失のいずれかがあてはまり、著しい体重減少(増加)または食欲低下、不眠または睡眠過多、易疲労感、精神運動制止または焦燥、無価値観・罪悪感、思考力・集中力の減退または決断困難、自殺企図の9項目中で5個以上満たすものを大うつ病と定義されます。スクリーニングツールとしてGDS-5、GDS-15、PHQ-9などが用いられていますが、GDS-5が簡便で使用しやすいと思います。GDS-5はうつ症状の評価に用いられますが、うつ症状と大うつ病の診断は必ずしも一致しないことに注意が必要です。うつ病の診断はDSM-5で行います。診断する際には、まず最初に物事に対してほとんど関心がない、楽しめないなど「興味・喜びの消失」や気分が落ち込む、憂うつになるなどの「抑うつ気分」の質問を行い、さらに食欲、睡眠などの質問をしていくとよいでしょう。不安・焦燥が強い、自殺念慮・企図がある、妄想、躁状態がみられる(既往がある)場合には早急に精神科専門医へのコンサルトが必要です。また、下記の治療で効果が得られない場合も精神科専門医へのコンサルトを行います。Q4 うつを合併した高齢者糖尿病はどのような治療を行いますか?うつ傾向、うつ病の対策では要因となる医学的要因を除去することが大切です。まず、低血糖を避けつつ、血糖をコントロールします。上記のように、低血糖は軽症でもうつ傾向を引き起こし、インスリン注射自体もうつの誘因となり得ます。したがって、2型糖尿病患者では可能な限りインスリンを離脱し、低血糖のリスクの少ない薬剤で治療することが大切です。一方で高血糖を下げることもうつの対策で重要です。軽度のうつ傾向であれば,心理的アプローチで医療スタッフによる傾聴やカウンセリングなどを行います。薬物療法単独と比較し、生活指導や心理療法を併用した方が治療効果は高まることが示されています12)。心理療法では認知行動療法が有効であるとされています。一般的に運動療法はうつ症状に対して有効であるとされ、運動を通して自信を取りもどし、他の人との関わりが増えることが利点です。運動教室やデイケアで運動療法を行うことで軽快するケースもあります。心理的アプローチで改善しない場合や中等度のうつ病の場合は抗うつ薬を使用します。実際に抗うつ薬による治療でうつだけでなく、血糖コントロールも有意に改善するという報告もあります13)。抗うつ薬ではまず、SSRI、SNRI、またはNaSSAが使用されます。SSRI やSNRI では服薬初期に嘔気・嘔吐の副作用が出やすいので,あらかじめそのことをお伝えし,必要であれば制吐薬を併用します。服薬初期に現れる副作用を乗り切れば,その後は問題なく服薬を継続できることが多いと思います。三環系抗うつ薬は不整脈、起立性低血圧、体重増加の関連が指摘されており、高齢者での使用は以前より少なくなっています。抗うつ薬は少量から開始し、忍容性を見ながら増量し、治療効果をみることが原則となります。通常量まで増量し、効果が得られない場合や自殺企図がある場合は精神科専門医への紹介が必要となります。糖尿病性合併症の有痛性神経障害はうつの原因になり得ます。両者は互いに影響を及ぼし、睡眠障害、移動度の低下、転倒、社会生活の制限をきたし、脳卒中、要介護のリスクを高めます(図1)。神経障害とうつを合併した患者では心理的アプローチ、フットケア、転倒予防を行います。また、セロトニン•ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチンはこうした患者に対してよい適応となります。神経障害に対してはカルシウムチャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドのプレガバリンやミロガバリンも使用できますが、高齢者ではふらつき、転倒などに注意する必要があります。画像を拡大する1)Anderson RJ, et al. Diabetes Care 24:1069–1078, 2001.2)荒木 厚, 他.日本老年医学会雑誌52:4-10, 2015.3)Mezuk B, et al. Diabetes Care 31, 2383–2390, 2008.4)Maraldi C, et al. Arch Int Med 167: 1137-1141, 2007.5)Hamer M, et al. Psychol Med 41:1889-1896, 2011.6)Shao W, et al. Curr Med Res Opin 29:1609-1615, 2013.7)Katon WJ, et al. Ann Fam Med 11:245-250, 2013.8)Vileikyte L, et al. Diabetologia 52:1265-1273, 2009.9)Black SA, et al. Diabetes Care 26:2822-2828, 2003.10)Katon W et al. Arch Gen Psychiatry 69: 410–417, 2012.11)Soysal P, et al. Ageing Res Rev 36:78-87, 2017.12)Atlantis E, et al.BMJ Open 4, e004706,2014.13)Baumeister H, et al.Cochrane database Syst. Rev. 12, CD008381,2012.

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非浸潤性乳がん患者、乳がん以外の浸潤性がんリスクが1.6倍

 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。 2003~15年に初めてのがんの診断が原発性のBCISであったチューリッヒ州在住の女性1,082例のデータを調査した。原発性のBCIS患者における浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんのリスクを、成人女性集団の対応リスクと比較するため、標準化罹患比(SIR)を計算した。SIRは全体および患者と腫瘍の特徴ごとに計算した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、その後の浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんの潜在的な危険因子(診断時の年齢、治療など)を調査した。 主な結果は以下のとおり。・BCIS患者は一般集団と比較して、浸潤性乳がんと診断されるリスクが6.85倍(95%CI:5.52~8.41)高かった。また、乳がんを除く浸潤性がんのリスクは1.57倍(同:1.12~2.12)高かった。・SIRは、浸潤性乳がんおよび乳がんを除く浸潤性がんのどちらも、BCIS診断時50歳未満の患者で高かった。・70歳以上でのBCIS診断は、その後の乳がんを除く浸潤性がん診断と有意に関連していた。 これらの結果は、これまで報告されているBCIS患者のがんリスク増加を裏付けている。著者らは、「今後の研究が、BCISに続く浸潤性がんの危険因子を確立し、この集団における集中的なモニタリングの必要性を強調し、遠隔転移を全身療法で予防可能なBCIS患者を区別するのに役立つだろう」としている。

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日本人青年におけるインターネット依存とメンタルヘルスとの関連

 インターネット依存とメンタルヘルスの不調は、青年期の大きな問題である。日本大学の大塚 雄一郎氏らは、インターネット依存とメンタルヘルスの不調が、互いにリスク因子となりうる双方向の関連性を示すかどうかについて、検討を行った。Iranian Journal of Public Health誌2020年11月号の報告。 本縦断的学校ベース調査では、日本の中都市の高等学校8校より1年生1,547人をベースライン対象とし、1年間のフォローアップ調査を行った。インターネット依存は、Youngのインターネット依存尺度日本語版を、メンタルヘルスは、12項目GHQ精神健康調査を用いて評価した。インターネット依存が青年のメンタルヘルスの不調と関連するか、またメンタルヘルスの不調がインターネット依存の発症と関連するかを調査するため、共変量を含む回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1年間におけるインターネット依存の発症率は22.0%、メンタルヘルス不調の発生率は8.8%であった。・重回帰分析では、メンタルヘルスの不調がインターネット依存を促進すること(調整オッズ比:2.17、95%CI:1.45~3.25)、インターネット依存がメンタルヘルスの不調を促すこと(調整オッズ比:2.39、95%CI:1.36~4.20)が示唆された。 著者らは「インターネット依存とメンタルヘルスの不調との間に相関が認められた。青年、その保護者、学校では、インターネットを適切に使用するためのポリシーを作成する必要がある」としている。

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COVID-19、退院後もさまざまな臓器疾患リスクと関連/BMJ

 COVID-19元入院患者は一般集団と比較して、予想される多臓器の機能障害(とくに呼吸器と心血管代謝)のリスクが高いことが、英国国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らによる検討で明らかにされた。同リスクの増大は高齢者に限ったものではなく、また特定の人種・民族に認められるものでもないという。これまでに心血管系・代謝系・腎臓系・肝臓系に影響を与える肺外機能障害と、COVID-19との関連の可能性が指摘されており、最近のエビデンスとして、COVID-19で入院した患者は、退院後に死亡および再入院する割合が高いことが示されているが、多臓器疾患の長期疫学については定量化されていなかった。結果を踏まえて著者は、「post-covid syndromeの診断・治療・予防は、特定の臓器・疾患に限定することなく統合的なアプローチで臨むことが必要であるとともに、リスク因子を確定するための研究が急がれる」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。イングランドCOVID-19元入院患者4万7,780人と適合一般集団を比較 研究グループは、病院から退院したCOVID-19患者の臓器別の機能障害発生率を、適合対照の一般集団と比較し定量化する検討を、後ろ向きコホート研究で行った。 イングランドのNHS病院から2020年8月31日までに生存退院したCOVID-19元入院患者4万7,780人(平均年齢65歳、男性55%)を特定し、イングランド住民約5,000万人より過去10年の電子健康記録で個人的および臨床的特徴について正確にマッチさせた対照と比較検討した。 主要評価項目は、2020年9月30日までの再入院(対照群はあらゆる入院)率、全死因死亡率、呼吸器・心血管・代謝・腎・肝の各疾患診断率であった。それぞれ年齢、性別、人種・民族別の割合も算出した。元入院患者の再入院率は一般集団の4倍、退院後死亡率は8倍 平均追跡期間140日間で、生存退院したCOVID-19元入院患者の約3分の1(1万4,060/4万7,780人)が再入院し、退院後の死亡は10人に1人超(5,875人)であった。それぞれの発生頻度は適合対照群と比べて、再入院率は4倍、死亡率は8倍高かった。 呼吸器疾患(p<0.001)、糖尿病(p<0.001)、心血管疾患(p<0.001)の診断率も、COVID-19元入院患者で有意に上昇した。それぞれ1,000人年当たりの診断例は770(95%信頼区間[CI]:758~783)、127(122~132)、126(121~131)であった。 率比は、70歳以上よりも70歳未満の患者のほうが大きく、白人集団よりも少数人種・民族群で大きかった。最も大きな差がみられたのが、呼吸器疾患についてで、70歳未満10.5(95%CI:9.7~11.4)vs.70歳以上4.6(4.3~4.8)、非白人11.4(9.8~13.3)vs.白人5.2(5.0~5.5)であった。

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開発中のRNAi治療薬、原発性高シュウ酸尿症I型に有効/NEJM

 開発中のRNA干渉(RNAi)治療薬lumasiranは、原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)の進行性腎不全の原因である尿中へのシュウ酸排泄量を減少させ、投与を受けた患者の大多数で、6ヵ月の治療後、同排泄量は正常またはほぼ正常値となっていた。オランダ・アムステルダム大学のSander F. Garrelfs氏らILLUMINATE-A研究グループが、第III相の二重盲検無作為化試験の結果を報告した。PH1は、まれな遺伝性疾患であり、シュウ酸が肝臓で過剰に産生されることで腎結石、腎石灰化症、腎不全および全身性のシュウ酸症を引き起こす。lumasiranは、グリコール酸オキシダーゼを標的とすることで肝臓でのシュウ酸産生を抑制する新たなRNAi治療薬である。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。投与6ヵ月間の24時間尿中シュウ酸排泄量の変化を評価 試験は国際無作為化二重盲検プラセボ対照にて、被験者を2対1の割合でlumasiran(3mg/kg体重)群またはプラセボ群に割り付け、6ヵ月間の投与を行い、その後54ヵ月まで期間を延長し、全被験者にlumasiranを投与した。 投与は当初、月1回を3回、その後は3ヵ月に1回の維持投与が行われた(6ヵ月の治療期間中の投与は、ベースライン、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月および6ヵ月時)。 主要エンドポイントは、ベースラインから6ヵ月までの24時間尿中シュウ酸排泄量のパーセント変化値(3ヵ月から6ヵ月にかけての平均パーセント変化値)であった。副次エンドポイントは、ベースラインから6ヵ月までの血漿中シュウ酸値のパーセント変化値(3ヵ月から6ヵ月にかけての平均パーセント変化値)、6ヵ月時点の24時間尿中シュウ酸排泄量が正常範囲上限値の1.5倍以下であった患者の割合などであった。投与1ヵ月時点で効果、84%が6ヵ月時に正常・ほぼ正常値 2019年1月~5月に、8ヵ国16施設で合計患者39例が無作為化を受けた(lumasiran群26例、プラセボ群13例)。全体の試験登録時の年齢中央値は14歳(範囲:6~60)、ベースラインでの平均24時間尿中シュウ酸排泄量は1.82mmol/24時間/1.73m2であった。 主要エンドポイントの最小二乗平均群間差は-53.5ポイントで(p<0.001)、lumasiran群のパーセント変化値は-65.4%であり、減少効果はほぼ1ヵ月時点でみられた。 階層的に検証したすべての副次エンドポイントについて、有意差が認められた。血漿中シュウ酸値のパーセント変化値の群間差は、-39.5ポイントであった(p<0.001)。 6ヵ月時点の24時間尿中シュウ酸排泄量が正常範囲上限値の1.5倍以下であった患者は、lumasiran群では84%に達し、一方のプラセボ群は0%であった(p<0.001)。 なお、軽度の一過性の注射部位反応が、lumasiran投与を受けた患者の38%で報告された。

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Dr.須藤の輸液大盤解説

第1回 基礎編1 輸液を理解するための基本的生理学第2回 基礎編2 水・Naの生理学/水と塩の問題第3回 基礎編3 避けて通れないADHの話第4回 大盤解説 症例1 フロセミドが処方されていた78歳男性第5回 大盤解説 症例2 脳梗塞で自宅介護されていた72歳女性第6回 大盤解説 症例3 意識障害で救急搬送された38歳女性第7回 大盤解説 症例4 嘔気と低Na血症で紹介された78歳男性第8回 大盤解説 症例5 ストーマがあり慢性下痢の41歳男性 「Dr.須藤のやりなおし輸液塾」から12年。「輸液の名講義」と言えば須藤先生、「須藤先生」と言えば輸液の名講義、と言っても過言でないくらい、輸液講義のエキスパートであることが知られています。その須藤先生が満を持して輸液の新番組!今シリーズでは“大盤”を使って解説します。大盤解説とは将棋盤などを模した大きなパネルを使って戦況・戦局を解説すること。そしてこの番組は「輸液」大盤解説。大盤には、実際の症例の検査数値が時系列に並べられていきます。その状況を見ながら、どのように輸液をセレクトし、治療を進めているのかを須藤先生自らが実況し、解説していきます。すなわち須藤先生の思考の過程をつぶさに見ることができるのです。前半は、輸液に関する基礎を講義します。後半は、実症例を基に大盤解説を行います。ひふみんよろしく、須藤先生の着物姿も見逃せません。第1回 基礎編1 輸液を理解するための基本的生理学 大盤を使用しての実症例を基にした輸液の臨床推論…の前に、輸液を行ううえで、必ず理解しておかなければならない基本的な生理学を確認しましょう。体液の恒常性の保持とは?体液の組成や区分、役割は?浸透圧を一言で定義すると?張度と浸透圧の違いは?輸液したときに体のどこに分布?ぞれぞれの輸液製剤の違いは?など、なんとなくわかっていたつもりになっていたことも、実ははっきりわかっていなかったことに気づかされるかもしれません。それらをすっきりと整理して解説します。第2回 基礎編2 水・Naの生理学/水と塩の問題水とNaの生理学を考えるにあたっては、まずは2つの体液貯留である「浮腫」と「低Na血症」について理解しておくことが重要です。そう「浮腫」はNaの過剰であり、低Naは水が過剰であるということ。そこで、輸液を必要とする「脱水症」とはいったい何なのでしょうか?水が足りないということでしょうか?実はそこでも、Naの欠乏と水の欠乏と分けて考えていくことになります。欠乏したものを補液することが大まかな意味での輸液であると言えるでしょう。今回は簡単な症例で肩慣らしをしてみましょう。Dr.須藤の実症例を基にした解説付きです。第3回 基礎編3 避けて通れないADHの話水とNa代謝異常について解説します。Na代謝異常とは、「量」の異常でしょうか、それとも「濃度」の異常でしょうか。実は、Naの量の異常が、Naバランスの異常、そして、Naの濃度の異常が水バランスの異常です。水とNa代謝異常は、それぞれ過剰・欠乏の2つの座標軸で考えていきましょう。また、低Na血症を理解するには、「ADH:抗利尿ホルモン」を理解しておくことが重要です。きちんと整理して考えてみましょう。次回よりいよいよ大盤解説に入ります。ネクタイ姿の須藤先生は今回まで。ネクタイをよーく見てみると…。何がが見えてくる…。ヒントは「臨床“推”論」。これもDr.須藤のこだわりです!第4回 大盤解説 症例1 フロセミドが処方されていた78歳男性いよいよ大盤解説がスタート!須藤先生が経験した実症例を基に解説します。大盤に患者の検査数値を時系列に提示していきます。その状況を見ながら、どのように輸液をセレクトし、治療を進めているのかを須藤先生自らが実況します。今の患者の状況はどうなのか?そのために必要な輸液・治療は?1例目は施設入所中の78歳男性の症例です。須藤先生の頭の中を覗いてみましょう!第5回 大盤解説 症例2 脳梗塞で自宅介護されていた72歳女性大盤解説の症例2は、陳旧性脳梗塞で自宅で介護の72歳女性です。1週間前から食事がほとんど取れない状態で反応が鈍くなってきたため救急搬送されました。血圧が低下、皮膚ツルゴールも低下し、明らかに体液量が落ちた状態のようです。さあ、Dr.須藤はどのような治療を進めていくのか。第6回 大盤解説 症例3 意識障害で救急搬送された38歳女性大盤解説の症例3は、もともと健康な38歳女性です。1週間前くらいから感冒症状、全身倦怠感などを訴え、意識レベルが低下してきたため救急搬送されました。搬送されてきた時点で、明らかなショック状態です。入院時の検査データから著明なアシドーシス、高血糖、クレアチニン上昇などが見られ、DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)であることが判明しました。さあ、どのように治療していくのか。また、症例のまとめの後には、Dr.須藤がDKAの場合に実際に使用しているDKAフローシートを提示。実際の使用例を基に、解説します。ぜひ、今後の診療に活用してみては?第7回 大盤解説 症例4 嘔気と低Na血症で紹介された78歳男性大盤解説の症例4は糖尿病、高脂血症、高血圧で通院中の78歳男性の症例です。1週間程度前に、膝の痛みを訴え、他院にてデュロキセチンが処方され、服用後から徐々に食欲低下、嘔気を自覚したとのことです。食事もとれなくなり、かかりつけ医が低Na血症を指摘して紹介されました。受診時の検査によって、低Na血症、濃縮尿、細胞外液量の低下が読み取れました。そこから、薬剤性のSIADHも疑われましたが、Dr.須藤はこの判断をある点から否定。さあ、どの数値からこの患者の状態を読み取ったのか。そして、その治療は?一緒に考えていきましょう。また、患者の経過に合わせて、低Na血症の補正「Rule of 6」など、知っておくべきことを補足解説します。第8回 大盤解説 症例5 ストーマがあり慢性下痢の41歳男性大盤解説の症例5はDr.須藤の思い入れの強い症例。クローン病にて、小腸・大腸切除術、人工肛門造設術を受け、慢性下痢の41歳男性です。3週間ほど前から、体調不良、耳下腺炎などで状態が悪化し、受診。受信時のバイタルサインや身体所見から、脱水、アシドーシス、ショックなどが疑われる状態でした。検査データからも腎不全、低Na血症、低K血症、著名なアシドーシスなど、さまざまな状態であることが読み取れました。ここまでの状態で、どう対応できるのか。そもそも輸液で改善できるのか。Dr.須藤の次の一手は!

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