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051)てごわい手荒れがスッキリ治った理由【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第51回 てごわい手荒れがスッキリ治った理由ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来でも相談が多い手荒れの悩み。「主婦湿疹」とも呼ばれる手湿疹は、手をよく使う人に多く、職業性のものでは医療従事者や美容師、飲食関係などでよく見られます。職場でも、他科の先生や看護師さんから相談されることの多いこの手湿疹。1人、難治性の手湿疹で私の外来に通う看護師さんがいました。手洗いや消毒機会の多い医療従事者の手湿疹、さらにベースでアトピー性皮膚炎を持っていたりすると、なかなか治療にてこずります。そんな彼女の顔を見なくなってしばらくだなぁと思っていたある日、久しぶりに彼女が外来を受診しました。診察室に入ってきた彼女は、軽やかな私服で、心なしか表情も晴れやか。手を見せてもらうと、あんなに手ごわかった湿疹が跡形もなくなり、ツヤツヤの健康な手に変貌していました。あまりにびっくりして、「何か変えましたか?」と聞いてみたところ、「仕事を辞めたので」という返事が。そう、一番の原因は仕事。彼女の晴れやかな表情の理由がわかり、思わず「それな~~!!」と心の中で叫びました(笑)。頑固な主婦湿疹も、手を労わり、休めてあげれば回復する。きっと、アラブの石油王と結婚して手を酷使しない生活に変われば治るのです。とはいえ、皮膚科医としてはそんなに都合がいいことばかり言っていられません。やはり、炊事の際に綿手袋+ゴム手袋をはめて手を保護したり、食器洗浄乾燥機をフル活用したり、仕事であれば保護クリームや保湿剤をうまく使って手を労わってあげるのが一番と思います。手ごわい手湿疹、手を労わることに手を尽くそう(手なだけに)。←うるさいそれでは、また~!

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何でも頼もう【Dr. 中島の 新・徒然草】(382)

三百八十二の段 何でも頼もう先日、脳外科外来に紹介されてきた30代の女性。友人がふざけて両手を引っ張って以来、頭が痛いとのことです。「両手を引っ張ったら頭が痛い。なんじゃ、そりゃ?」普通はそう思うことでしょう。でも、さらに色々尋ねると特徴的な病歴が……(以下、本人特定を避けるために多少の設定変更を加えています)患者「手を引っ張られた翌日から頭が痛くなってきて、吐き気もありました」中島「朝昼晩で調子はどうですか?」患者「晩になると頭が痛くて耐えられないんです」中島「朝起きたときは『治った!』と思うくらい調子いいんですよね」患者「そうなんですよ」これは低髄液圧症のようですね。正式には髄液漏出症と呼ぶらしいですけど。中島「湯船につかったら頭痛がひどくなるとか?」患者「もう長いこと風呂には入っていません」中島「なるほどねえ」患者「も、もちろんシャワーは浴びていますよ!」あわてて付け加えておられました。なぜかこの病気は湯船に浸かると症状が悪化します。中島「調子がいい日に歩き回ったりしたら、後で頭痛がひどくなるとか?」患者「この前、子供と水族館に遊びに行った後でひどい頭痛になりました」中島「髄液漏れですね」患者「髄液漏れ?」中島「おそらく手を引っ張られたことで脳や脊髄を包んでいる髄液が少しずつ漏れ出したんだと思います」言葉だけで説明するのは難しいので頸髄の模型や図を使いました。ついでに軽く頸静脈を圧迫するクエッケンステット試験で頭痛が改善することと、肩関節の挙上によっても一時的に頭痛が改善することも確認しました。手を下に引っ張る肩関節の「下制」で症状が出たのであれば、その逆の「挙上」によって改善するのではないかという単純な発想です。中島「ほとんどの人が自然に治りますよ」患者「ホントですか!」中島「ただし安静にしておくことが大切ですね。家事やなんかは全部御主人にやってもらいましょう」怠惰な生活をすると早く良くなります。コーラとポテトチップスを食べつつ1日中ソファに横になってテレビをみている、とか。患者「主人は単身赴任で居ないんですよ」中島「じゃあ、子育てはお1人で?」患者「いや、両親と一緒に住んでいます」中島「実の御両親ですか?」患者「ええ」そいつはラッキー! 利用できる人は誰でも利用することが大切です。中島「では、食事洗濯掃除は全部お母さんにお願いしましょう」患者「大丈夫かな」中島「平気、平気。治るまでの間だけですよ」実の母親なら遠慮する必要はないですね。中島「お子さんを水族館に連れていくのは、お父さんにお願いしましょう」患者「いいんですか、そんなこと頼んでも?」中島「大丈夫、大丈夫」ちょっと症状が良くなったからといって、調子に乗って遠出をしたりすると悪化してしまうのがこの病気。必敗パターンです。中島「もちろん、お父さんが家事、お母さんが水族館でもいいのですけど」仕事の分担なんて夫婦それぞれ。得意な人が得意なことをやればよろしい。中島「いいですか。この病気を早く治そうと思ったら、頼める人には何でも頼まなくてはなりません。せっかく同居しているのだから、御両親に家事係と水族館係をお願いして、御本人はテレビ監視係に徹してください」患者「わ、わかりました」そういいつつ、患者さんは「大丈夫かな? この先生」という表情です。中島「では1ヵ月後にお会いして、どのくらい良くなったかを確認しましょう」患者「よろしくお願いします」患者さんの生活状況は人によって違うので、個人個人にあったアドバイスが大切ですね。それにしても、ちょっと極端だったかな。でも、こじれさせるよりはあらゆる手段を使って早く治すことが重要だと思います。最後に1句水漏れは 家族総出で 対応だ

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iPadで勉強する【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第3回

先日発売されたiPad proの最新機種を購入しました。でかい方の12.9インチです。予約から3週間ほど待ちましたが、手元に届いたときはテンションが上がりましたね~。しかし、思ったより重量があって、気軽に持ち運べるような感じではなかったです。唯一の趣味である漫画読書に使うには、ちょっと大き過ぎるかな~と感じています。私は、漫画を読みながらご飯を食べるのがすごく好きなのですが…。iPadを食卓に置くと、まあまあ大きくて、それなりの圧迫感が出てしまいます。と言うわけで、このLサイズのiPadは趣味用ではなく、勉強用に使うことにしました。そのせいかどうかわかりませんが、すでにiPadにはうっすらと埃がかぶっています。便利なアプリで医学論文の読み込みに大活躍どうやって勉強に使うかは、(心の中で)ある程度決めてあります。この大画面を生かすには、画面を2分割して2つのアプリを並列に並べる、“split view”が便利だと思います。画像のように英語の論文を読む際に、左に論文、右に“DeepL”を開いて、論文をコピペ・翻訳しながらサクサク読む「英語論文を10倍早く読む方法」というのが、以前ネット上で話題になったことがありました。「いや、やっぱり英語でちゃんと読まないとダメでしょ…」とか最初は言って罪悪感があったりもしましたが、1度やってしまえばすっかり病み付きです。翻訳が怪しい日本語になっていても、大まかに書いていることがわかってから読むと、本当に10倍早く読めている気がします。安流のドイツ語の学習法英語と比べると圧倒的に教材が少ないドイツ語学習で、私は(趣味も兼ねて)ドイツ語で日本の漫画をよく読んでいました。元々日本語で読んで内容を知っている漫画をドイツのAmazonから紙の書籍で購入して、それを何度も読んでいます。1度日本語で読んだことがあるとは言っても、細かいセリフまで覚えているわけではありません。ですから、ドイツ語で読んでいるときは頻回に辞書を引かざるを得なくて、面倒臭くなってしまうことも少なからずありました。そこで、先ほどのsplit viewを用いて、裁断してPDFとして取り込んだ(いわゆる自炊です)ドイツ語の漫画と、電子書籍で購入した日本語の漫画を並べて読むと、それはもうサクサクと学習が進みます。1度読み終えてしまえば、2回目以降は数倍のスピードで読み返すことができます。漫画には実際の会話で使うフレーズが満載なので、即効性抜群の勉強法だと思っています。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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第65回 コロナワクチン巡る突然の供給減で垣間見えた国の不信行為

新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っては、各地の自治体で新規予約を停止する動きが相次いでいる。新規感染者が高止まりしている大阪府の医療機関でも、“寝耳に水”のような状況でワクチン供給量削減の連絡が来た。住民にワクチン接種を行ってきた医療機関は、情報不足と方針転換に戸惑いながら時間と人員を割いてきただけに、大阪府保険医協会は国に対する疑念を示すとともに、国民に対する説明責任を求めている。6月28日、大阪府医師会から「緊急連絡」という書面が大阪市内の新型コロナワクチン個別接種を取り扱う医療機関に届いた。その内容は、「先週、各医療機関から発注があったワクチンに関しては、発注量から1割減をした上で(大阪市医師会から)各医療機関に供給予定」というものであった。さらに6月30日付の「続報」では、「7月5日週の供給量について、おおむね1~3割を減じた数を配送」と通知された。6月29日には、吹田市でも「8月1日以降は当面最大送量を10本/週に減らしての対応」を依頼する旨の書面が、市医師会から市内医療機関に送られていた。医師らからは「国に梯子を外された」と恨み節大阪府保険医協会には、「8月いっぱい予約が詰まっている。急に減らされて困っている」「保健所に問い合わせたらキャンセルの連絡をして欲しいと言われたが、簡単なことでない」「国から梯子を外された感じ」などと怒りや不安の声が寄せられている。また、予約がキャンセルになった人たちが「やっと接種券が来たのに……」とがっかりする姿に心が痛むという声も寄せられているという。この間、河野 太郎・新型コロナワクチン接種推進担当大臣は、連日にわたりワクチン接種を進める“宣伝”を行っていた。東京五輪・パラリンピックの開催を前提に、高齢者接種の7月末完了を掲げ、つい最近では幅広い年齢層への接種開始を大きくアピールしていた。さらに、ワクチン接種回数が多い医療機関に対しては、接種費用を上積みしてまで接種促進に発破を掛け続けていたのだから、先述の医療機関の落胆や不満はもっともだ。ワクチン接種進める一方で、不足を把握していた疑念大阪府保険医協会は、7月1日に発表した声明の中で、「多くの自治体が現役世代に接種券を送付し、職域接種が開始される6月21日以前に、国は“ワクチンが足らない”状況を把握していた可能性がある」と指摘する。具体例の1つとして、以下のような点を挙げる。それは、6 月19日に開催された全国知事会の「9都道府県の緊急事態宣言の解除等を受けた緊急提言」に、「ファイザー社ワクチンの配分が7月以降急減する実情にあり、ワクチン接種を加速する流れに水を差すのではないかと懸念される」との文言があるのだ。全国知事会は国の情報を基にワクチンの供給削減について言及したはずだ。同協会は「国はなぜ早く対策をとらず、“ワクチン接種に突き進め”と号令をかけ続けたのか。ワクチン接種ができると期待していた国民に対して説明責任を果たすべきだ」と批判。そして、「実態を把握せず、医療現場や全国の市町村に丸投げし、不手際に対してその責任を現場に負わせる。こうした政府の姿勢に厳しく抗議するとともに、いのちを守ることより、五輪開催に突進する姿に恐怖すら感じる」と糾弾した。ワクチン接種を待ち望んでいる住民を落胆させたり、地域で頑張っている医師の心を折ったりするようなことはあってはならない。

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日本における婚姻状況と認知機能との関連~富山県認知症高齢者実態調査

 敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、日本における婚姻状況と認知症との関連について検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年5月25日号の報告。 分析には、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた。富山県在住の65歳以上の高齢者より1,171人(サンプリング率:0.5%)をランダムに選択し、分析を行った。対象者の婚姻状況、社会経済的状況、ライフスタイル要因、生活習慣病について評価を行った。各ライフスタイル要因と病歴に対する婚姻状況のオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。認知症に対する婚姻状況のORも、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・認知症の有病率は、既婚者で7.4%、未婚者で20.6%であった。・未婚者は、既婚者よりも、脳卒中歴が有意に高かった。・年齢、性別で調整した認知症に対する婚姻状況のORは、既婚者と比較し、未婚者で1.99(95%信頼区間[CI]:1.24~3.18)であった。・変量で調整した後、認知症のORは、未婚者のほうが高かった(調整OR:1.71、95%CI:1.03~2.85)。 著者らは「日本人高齢者において未婚状態は、社会経済的、ライフスタイル、生活習慣病関連要因で調整した後でも、認知症の独立したリスク因子であった。未婚高齢者は、脳卒中歴を有している割合が高く、認知症リスクの上昇が認められた」としている。

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日本人進行乳がん患者でのアベマシクリブの安全性(MONARCH2、3)/日本乳学会

 ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するアベマシクリブの国際共同第III相試験であるMONARCH2試験(内分泌療法既治療例におけるフルベストラントとの併用)とMONARCH3試験(1次治療における非ステロイド性アロマターゼ阻害薬との併用)で、日本人集団で多く発現した有害事象を詳細に検討した結果について、国立病院機構大阪医療センターの増田 慎三氏が第29回日本乳学会学術総会で発表した。 2つの試験における日本人の割合は、MONARCH2試験では14.2%(669例中95例)、MONARCH3試験では10.8%(493例中53例)であった。アベマシクリブ群でみられた有害事象において、日本人集団では下痢、好中球減少症、ALT上昇、AST上昇が比較的多く観察されている。増田氏らは、実地診療でアベマシクリブを使用する際の毒性管理に有用な情報を見いだすために、これらの有害事象について詳細に検討した。 主な結果は以下のとおり。・日本人集団において、有害事象により減量した患者の割合は、MONARCH2試験(200mgで開始した症例を含む)、3試験の順に54.0%、55.3%、途中休薬は82.5%、60.5%、投与中止は11.1%、5.3%だった。・下痢について、最初の発現までの期間の中央値は、MONARCH2試験(150mg開始症例のみ)、3試験の順に4.0日、6.0日、Grade 2の下痢の発現期間の中央値は9.0日、6.0日、減量した患者の割合は20.0%、16.7%、減量対応を要した期間の中央値は32.0日、39.5日だった。また、サイクルごとのGrade 2以上の下痢の発現をみると、1サイクル目の発現が多く、2サイクル目以降の発現は少なかった。・好中球減少症について、Grade 3発現までの期間の中央値は、MONARCH2試験(150mg開始症例のみ)、3試験ともに29.0日だった。Grade 3以上の発現期間の中央値は、MONARCH2試験、3試験の順に17.0日、12.0日だったが、好中球減少症で減量した患者の割合は14.7%、15.4%と少なかった。なお、発熱性好中球減少症は認めていない。・好中球数のサイクルごとの変化をみると、治療開始後に一定レベル減少するが、2サイクル後にプラトーに達し、観察期間終了後に速やかにベースラインまで回復していた。・ベースラインの好中球数が3.0×103/μL未満の場合、Grade 3以上の好中球減少症の発現頻度はMONARCH2試験(150mg開始症例のみ)、3試験の順に60.0%、41.7%であったのに対し、3.0×103/μL以上の場合は26.1%、11.5%と、3.0×103/μL未満の場合に好中球減少リスクが高いことが示唆された。・ALT上昇については、4割に発現し、Grade 3以上が18.5%、最初の発現までの期間の中央値は、MONARCH2試験(150mg開始症例のみ)、3試験の順に36.0日、48.0日だった。サイクルごとのGrade2以上のALT上昇をみると、最初の2~3サイクルまでの発現が目立つが、6サイクル以降も発現がみられた。・AST上昇についてもALT上昇と同様の傾向であった。 最後に、増田氏は「MONARCH2および3試験における日本人のアベマシクリブの安全性プロファイルは全集団とほぼ一致し、よくみられた有害事象は、下痢、好中球減少症、肝機能障害であった。これらの有害事象は、治療初期に多く発現し、適切な介入と用量調節で概ね管理可能であった」とまとめた。

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COVID-19診療手引きを更新、デルタ株や後遺症などを追記/厚労省

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」について、最新の知見を踏まえて更新した「第5.1版」を作成し、6月5日付で都道府県などに周知した。最新版では、懸念される変異株の概要を更新し、インドで最初に検出された「デルタ株」について、推定される感染性や重篤度、ワクチンへの影響などが詳しく記載された。また、症状の遷延(いわゆる後遺症)について、日本国内の複数の調査(厚生労働科学特別研究事業)の中間集計報告が追記されている。 診療の手引き・第5.1版の主な改訂ポイントは以下のとおり。【病原体・疫学】・変異株について更新、懸念される変異株(VOC)の呼称にギリシャ文字を使用・主要なVOCの概要を更新、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)について追加・国内発生状況を更新 →2021年6月29日までのデータを追記【臨床像】・重症化マーカーTARCについて追加・症状の遷延(いわゆる後遺症)について厚生労働科学特別研究事業の中間集計報告を追加【症例定義・診断・届出】・病原体診断について更新【重症度分類とマネジメント】・ECMO、血液浄化療法について更新・ワクチン接種後に生じる血小板減少症を伴う血栓症(TTS)について追加(参考)・患者急増の際の入院優先度判断の考え方について追加(参考)【薬物療法】・有効性を認めなかった薬剤にカモスタットを追加・ファビピラビルを妊娠する可能性のある婦人に投与する場合の注意喚起を更新・ナファモスタット吸入薬の開発中止について記載・企業治験中のAT-527、GSK3196165IV、GSK4182136、REGN-COV2を追加【院内感染対策】・環境整備について更新【退院基準・解除基準】・期間計算のイメージ図を更新

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再発・難治性多発性骨髄腫、BCMA標的CAR-T細胞療法の奏効率97%/Lancet

 多くの前治療歴のある再発・難治性の多発性骨髄腫に対し、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)の単回投与は、速やかに深くそして持続的な奏効をもたらすことが示された。全奏効率は97%、12ヵ月無増悪生存は77%だった。米国・Sarah Cannon Research InstituteのJesus G. Berdeja氏らが、97例の患者を対象に行った第Ib/II相の単群非盲検試験「CARTITUDE-1試験」の結果で、著者は「cilta-celは、再発・難治性の多発性骨髄腫の実行可能な治療選択肢となりうるだろう」と述べるとともに、今回の試験データは基礎資料の1つとして規制当局へ提出したことを明らかにしている。Lancet誌オンライン版2021年6月24日号掲載の報告。リンパ球除去療法の5~7日後に、cilta-celを単回投与 CARTITUDE-1試験はcilta-celの安全性と臨床的活性を評価することを目的に、2018年7月16日~2019年10月7日に、米国16ヵ所の医療センターで患者を登録して行われた。適格被験者は、多発性骨髄腫でECOG(米国東海岸がん臨床試験グループ)PSが0/1で、3レジメン以上の前治療歴またはプロテアソーム阻害薬と免疫調節薬の両方に抵抗性を示し、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬、抗CD38抗体の服用歴のある18歳以上とした。 被験者は、リンパ球除去療法の5~7日後に、cilta-cel(標的用量:CAR-T細胞0.75×106個/kg)を単回投与した。 主要評価項目は、安全性および第II相試験での推奨用量の確認(第Ib相試験)、全奏効率(第II相試験)だった。副次評価項目は、奏効期間および無増悪生存だった。CAR-T細胞神経毒性は21%で発生、Grade3/4は9% 被験者113例が登録され、97例(第Ib相で29例、第II相で68例)が第II相推奨用量を投与された。 2020年9月1日(臨床的カットオフ日)時点における追跡期間中央値は12.4ヵ月(IQR:10.6~15.2)、97例の前治療歴レジメン数中央値は6だった。 全奏効率は97%(95%信頼区間[CI]:91.2~99.4、94/97例)で、厳格な完全奏効を達成したのは65例(67%)だった。最初の奏効までの期間中央値は1ヵ月(IQR:0.9~1.0)で、奏効は時間の経過とともに深まった。 12ヵ月無増悪生存は77%(95%CI:66.0~84.3)、全生存率は89%(80.2~93.5)だった。 血液学的有害事象の発現頻度は高く、Grade3/4の同イベントとして好中球減少症(95%)、貧血(68%)、白血球減少症(61%)、血小板減少症(60%)、リンパ球減少症(50%)が報告された。 サイトカイン放出症候群の発生率は95%(うちGrade3/4は4%)、発症までの期間中央値は7.0日(IQR:5~8)、発症期間中央値は4.0日(3~6)だった。同発症者のうち1例はGrade5で血球貪食性リンパ組織球症を発症したが、それ以外は全員軽快した。CAR-T細胞神経毒性の発生は21%だった(うちGrade3/4は9%)。本試験における死亡は14例で、うち6例が治療関連有害事象によるもの、5例が病勢進行によるもの、3例が治療とは関連しない有害事象によるものだった。

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世界初、がん治療用ウイルスG47Δテセルパツレブが国内承認/第一三共

 第一三共は、2021年6月11日、東京大学医科学研究所 藤堂具紀氏と共同で開発したがん治療用ウイルスG47Δテセルパツレブ(製品名:デリタクト)について、悪性神経膠腫の治療を目的とした再生医療等製品として国内で条件及び期限付承認に該当する製造販売承認を取得したと発表。 G47Δは、藤堂氏らにより創製された、がん細胞でのみ増殖可能となるよう設計された人為的三重変異を有する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型である。 同剤は、2016年2月に先駆け審査指定を受け、2017年7月に希少疾病用再生医療等製品の指定を受けており、今回の申請は、藤堂氏が実施した膠芽腫患者を対象とした国内第II相臨床試験の結果に基づき行ったもの。今回の承認により、悪性神経膠腫の治療を目的として、世界で初めて承認されたがん治療用ウイルスとなる。

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COVID-19に関連した血栓症の発症メカニズムは従来の血栓症とは異なる?(解説:後藤信哉氏)

 心筋梗塞のような動脈系の血栓症でも、深部静脈血栓症のような静脈系の血栓症でも、ヘパリンは血栓イベント発症予防効果を示してきた。従来、医師が治療に貢献してきた血栓症のうち、出血イベントリスクの欠点はあっても、ヘパリンの増量により制圧できない血栓症はなかったと言っていい。COVID-19の感染に起因する血栓症は従来の血栓症とは様子が異なる。まず、ICUへの入院例として予防的なヘパリン投与を全例受けているのに、高率に症候性の静脈血栓症が起きてしまう。本研究が初めてではないが、予防量より多い治療量のヘパリンを用いても血栓イベントを防げないことが示唆されている。本研究の治療量抗凝固薬としてはヘパリンのみでなく、安定している症例では選択的Xa阻害薬リバーロキサバンも用いられた。ヘパリンに限らず、選択的Xa阻害薬を静脈血栓症の治療量で用いても有効性のエンドポイントには差がなく、出血リスクは増えた。 COVID-19 thrombosisでは、従来の血栓症予防、治療に有効性を示した薬剤のうち、ヘパリンの増量では十分に予防できず、本研究では選択的Xa阻害薬も十分な有効性を発揮できないことが示された。COVID-19 thrombosisの本態は従来の血栓症とは本質的に異なるのかもしれない。 動脈硬化巣破綻などの血管壁の機能異常から起こる動脈血栓症とも、血流のうっ滞などを原因とする従来の静脈血栓症とも異なるメカニズムが、COVID-19 Thrombosisには寄与しているのかもしれない。従来型の抗凝固薬、抗血小板薬は無効というわけではないが、強力に有効ではない。COVID-19 thrombosisの本質に迫る治療標的の設定が必須である。

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「フルイトラン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第59回

第59回 「フルイトラン」の名称の由来は?販売名フルイトラン®錠1mgフルイトラン®錠2mg一般名(和名[命名法])トリクロルメチアジド(JAN)[日局]効能又は効果高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症用法及び用量通常、成人にはトリクロルメチアジドとして1日2~8mg を1~2回に分割経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、高血圧症に用いる場合には少量から投与を開始して徐々に増量すること。また、悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.無尿の患者[本剤の効果が期待できない。]2.急性腎不全の患者3.体液中のナトリウム、カリウムが明らかに減少している患者[低ナトリウム血症、低カ リウム血症等の電解質失調を悪化させるおそれがある。]4.チアジド系薬剤又はその類似化合物(例えばクロルタリドン等のスルホンアミド誘導体)に対する過敏症の既往歴のある患者5.デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)を投与中の患者※本内容は2021年7月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月改訂(第17版)医薬品インタビューフォーム「フルイトラン®錠1mg/錠2mg」2)シオノギ製薬:製品情報一覧

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切り傷の縫合処置(創部確認~局所麻酔~消毒)【漫画でわかる創傷治療のコツ】第3回

第3回 切り傷の縫合処置(創部確認~局所麻酔~消毒)《解説》前回は、擦過傷(擦り傷)についての基礎的な解説をしました。今回は、切創の縫合処置について、基本的なことを何回かに分けて説明していこうと思います。※咬傷などの術後感染が懸念される場合については、また別途解説予定です。けがから8時間以内の切り傷は一次縫合の適応受傷後8時間以内で汚染が少ないと考えられる切創であれば、縫合処置で一次治癒(切り傷がそのままくっついて、傷痕が少なく治る状態)を目指しましょう。その場で縫合を行うかの判断は、創の部位、汚染の有無、基礎疾患などを考慮し、リスクを患者さんにしっかり説明したうえで行います。どうしても迷って決断できない場合や、縫合の手技が難しいと考えた場合は、洗浄と軟膏処置のみ行い、できるだけ早めの形成外科受診を促してください。それでは、実際の処置の流れを説明します。(1)創部の確認まずは、創を簡単に確認しましょう。顔面は、眼瞼や耳介、鼻など特徴的な形態の部位が多く、また口唇の赤唇と白唇といった解剖学的に境界線を有する組織もあるため、ランドマークは先にマーキングしておきましょう。後ほどの処置で、局所麻酔薬による腫脹やエピネフリンによる血管収縮で境界がわからなくなってしまうことがあります。(2)洗浄:必要に応じて局所麻酔と組み合わせる前回取り上げた擦過傷と同様に、洗浄が大切です! 切創の場合、洗浄前に縫合処置の必要性が高そうだと判断できるならば、先に局所麻酔をしておくと、創部を観察しやすくなるのでおすすめです。とくに小児の場合は、表面麻酔をしてから局所浸潤麻酔をすると、麻酔時の痛みも軽減できます。洗浄の方法については、前回の記事も参考にしてください。(3)局所麻酔皮膚表面の外傷に対して主に使用するのは、表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔です(ほかに、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔などがあります)。外来で最も一般的なのは局所浸潤麻酔で、薬剤を皮下や粘膜下に直接注射して浸潤させる方法です。表に、よく使用する局所麻酔薬をまとめました。pKaは作用発現の速さ、分配係数は効果の強さ、蛋白結合率は作用時間の長さと関連しています。たとえば、リドカインだと数分で麻酔が効いてきて、1〜1.5時間(エピネフリン添加であれば2時間)作用が持続しますよ!表:よく使用する局所麻酔薬と各指標なお、麻酔にはリスクが伴うことも念頭に置いておきましょう。薬剤の血中濃度が高くなり過ぎると、中枢神経や心筋のナトリウムチャネル遮断が起こり、中毒症状(めまい、舌のしびれ、耳鳴り、多弁、興奮状態、意識障害、痙攣、昏睡、呼吸停止、循環虚脱)が発現する恐れがあります。麻酔前に同意書を書いていただく際などに、再度リスクについての説明をしておきましょう。禁忌や慎重投与(陰茎、指鼻などの末端部位)でなければ、1%エピネフリン含有リドカインを使うことが多いです。エピネフリンは血管収縮の作用があり止血効果、麻酔薬作用時間の延長効果があります。しかし、動悸頻脈を引き起こすことがあるので注意しましょう。《麻酔時の痛みが出やすいタイミングと対処法》注射薬や洗浄時に皮膚が切れるとき⇒表面麻酔を併用し、30Gなどの細い注射針を使用しましょう。薬剤が浸潤するとき⇒最初は狭い範囲に注射を行い、薬剤をゆっくり注入(slow injection)して、薬が浸潤したところから徐々に広げていきましょう。pH調整(炭酸水素ナトリウム注射液を約10%混ぜるなど)も有効です。極量とは:これを超える量は局所麻酔薬中毒を誘発する危険性が高く、使用してはならない量。極量の半分を超える用量を目安に注意を要します。例)リドカイン1%の極量は5mg/kg(体重50kgの場合25mL) エピネフリン含有リドカイン1%の極量は7mg/kg(同上35mL)(4)その他の麻酔方法:ブロック麻酔指や顔でも、範囲が大きい場合はブロック麻酔を使うと便利です。《指ブロック麻酔》エピネフリンを添加していない麻酔薬を用いることが多いです。指の神経は、漫画にも示した図のように手背側では伸筋腱の両側面の皮下を走行しており、手掌側ではMP関節(指の付け根)の付近で二つに分かれて屈筋腱の両側を走行しています。そのため、指間部で背側2ヵ所、掌側2ヵ所に麻酔薬を注入します。《顔面のブロック麻酔》鼻などはかなり痛みが強い部位なので、顔の神経ブロックを併用すると薬剤の注入時も疼痛が軽減できます。眼窩上神経は三叉神経第1枝の抹消枝であり、眉毛部や前額部の痛みに適応、眼窩下神経は三叉神経第2枝領域であり、下眼瞼や上口唇、鼻腔領域の痛みに適応します。また、オトガイ神経ブロックは、下口唇や頤部の痛みに適応します。切創ではとくに、創部の除痛をしっかり行って洗浄しましょう。砂や小石などの異物はすべて取り除きます。この時に、損傷の深さはどのくらいなのか(たとえば、皮下組織までにとどまっているのか、筋層まで断裂しているのか、腱や神経、主要な血管の損傷がないかなど)を再確認しましょう。(5)消毒、ドレーピング縫合前準備の仕上げとして、縫合する範囲とその周囲を消毒しましょう。顔面にエタノールは、目や粘膜の刺激になるので絶対にやめてくださいね!外来なら、クロルヘキシジン0.05%やポビドンヨードなどが置いてあると思います。ポビドンヨードは術野に色が付いてしまうので、状況によって使い分けてくださいね。今回は、縫合前の準備についてまとめました。次回は、縫合に使用する道具の選択や使い方について解説していく予定です!参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書I 形成外科の基本手技1. 克誠堂出版;2016.2)日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会編. 形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド. 金原出版;2015.3)土肥 修司ほか編. イラストでわかる麻酔科必須テクニック. 羊土社;2019.4)菅又 章 編. PEPARS(ペパーズ)123 実践!よくわかる縫合の基本講座<増大号>. 全日本病院出版会;2017.5)岡崎 睦 編. PEPARS(ペパーズ)127 How to局所麻酔&伝達麻酔. 全日本病院出版会;2017.6)一般社団法人 日本創傷外科学会ホームページ

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ASCO2021 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介食道がん本邦における進行・転移性食道扁平上皮がん1次治療の第1選択は、これまでフルオロウラシル+シスプラチン(FP療法)であった(『食道診療ガイドライン 2017年版』)。20年以上も標準治療が変わらなかったわけであるが、ESMO virtual congress 2020で進行・転移性食道がん(扁平上皮がんが7割強、腺がんが3割弱)のFP療法に対する抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブ(PEM)の有効性を見たランダム化盲検第III相試験KEYNOTE-590がすでに報告されており、全体集団で全生存期間(OS)中央値が12.4ヵ月vs.9.8ヵ月(HR:0.73、p<0.0001)と有効性を検証した。2021年3月には米国で承認となっている(本邦でも2020年11月に一変申請済み)が、今回ニボルマブ(NIVO)についても第III相試験の結果が報告された。CheckMate 648CheckMate 648は、進行・転移性食道扁平上皮がんの1次治療において、通常の化学療法(FP療法)に対する、化学療法+NIVOの併用とイピリムマブ(IPI)+NIVOの有効性を見たランダム化第III相試験である。主要評価項目は腫瘍細胞のPD-L1≧1%の症例におけるOSと無増悪生存期間(PFS)であり、副次評価項目としてその他の有効性が評価された。結果を化学療法+NIVO群vs.化学療法群から見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値15.4ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.54、p<0.0001)、全ランダム化症例でOS中央値13.2ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0021)と、いずれも統計学的有意差をもって化学療法+NIVO群が優れていた。PFSにおいても主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値6.9ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:0.65、p=0.0023)、全ランダム化症例でPFS中央値5.8ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.81、p=0.0355)と、PD-L1≧1%の症例で統計学的有意差を認めたものの、全ランダム化症例では事前に設定した統計学的有意差を示すことができなかった。全奏効率(ORR)はPD-L1≧1%の症例で53% vs.20%、全ランダム化症例で47% vs.27%と、NIVOの併用によるメリットが認められた。次にIPI+NIVO群vs.化学療法群を見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値13.7ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)、全ランダム化症例でOS中央値12.8ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)と、いずれも生存曲線で最初は化学療法群が上を行っている傾向があったが、統計学的有意差をもってIPI+NIVO群が優れていた。PFSにおいては、主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値4.0ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)、全ランダム化症例でPFS中央値2.9ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:1.26)と、統計学的有意差を認めなかった。ORRはPD-L1≧1%の症例で35% vs.20%、全ランダム化症例で28% vs.27%と、IPI+NIVO群が化学療法群より優れていたが、化学療法+NIVO群よりも劣る結果であった。毒性に関しては、これまで他がん種で行われた化学療法+NIVOやIPI+NIVOと大きな違いはなかった。本試験では化学療法+NIVO群、IPI+NIVO群いずれもOSで有意差を示しており、いずれも今後承認が期待される。一方、IPI+NIVO群は、もうひとつの主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例におけるPFSで有効性を検証することができず、また生存曲線で最初は化学療法群の下を行くことを考えると、化学療法+NIVOのほうがより好んで使われることが予測される。KEYNOTE-590の結果と併せて、PEMとNIVO両者が承認された後は、化学療法+PEMまたは化学療法+NIVOが最も使われるレジメンになるであろう。CheckMate 577の追加解析切除可能進行食道・食道胃接合部がんに対して、術前化学放射線療法(CRT)後の手術は、海外では重要な標準治療の1つであり、ランダム化第III相試験であるCheckMate 577は、術後のNIVOの1年間投与が無病生存期間(DFS)を有意に改善(NIVO群vs.プラセボ群で中央値22.4ヵ月vs.11.0ヵ月、HR:0.69、p=0.0003)することをすでに報告している。今回、有効性、安全性、QOLの追加解析が報告された。DFSのサブグループ解析では、年齢、性別、人種、PS、術前ステージ、原発の部位、組織型、リンパ節転移、組織のPD-L1発現、いずれのグループにおいてもNIVOの上乗せ効果が認められ、NIVOによるQOLの低下も認めなかった。食道がんにおける本邦の標準治療は、術前化学療法の後の手術である。本試験は日本人症例の登録が行われているが、この結果を本邦の実臨床に適用していけるかは解釈が分かれるところである。本邦でNIVOが術後補助療法というかたちで承認されれば、本邦の実臨床に適用する臨床試験をぜひ行ってほしい。胃がんHER2陰性の切除不能進行胃がんにおいては、PEMがKEYNOTE-062で1次治療の有効性が検証できなかった一方で、NIVOは全世界で行われたCheckMate 649や東アジアで行われたATTRACTION-4で、有効性(ATTRACTION-4のOSはnegative)が検証できたことがESMO virtual congress 2020ですでに報告されている。CheckMate 649の追加解析CheckMate 649は、HER2陰性の切除不能胃がんの1次治療において化学療法+NIVOと化学療法を比較した(IPI+NIVO群は途中で登録中止)ランダム化第III相試験であり、主要評価項目であるPD-L1 CPS≧5症例のOSとPFS、副次評価項目であるCPS≧1、全ランダム化症例のOSとPFSにおいて、化学療法+NIVO群が化学療法群より優れていることが報告されている。今回、さらなる有効性の解析が報告された。1,581例のランダム化された症例で最低でも12.1ヵ月以上フォローアップされた段階で、NIVO+化学療法群は全ランダム化症例でOS中央値13.8ヵ月vs.11.6ヵ月(HR:0.80、p=0.0002)、PFS中央値7.7ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.77)と改善を認めた。ORRは58% vs.46%と化学療法+NIVO群で良好な結果であり、PD-L1 CPSはOS、PFSが良好な症例の選別に有効であることも示された。さらに、化学療法+NIVO群は臨床症状の悪化までの期間についても有意な改善を認めた(HR:0.77)。米国では化学療法+NIVOが2021年4月16日に、CPSにかかわらずすべての切除不能胃がんの1次治療として承認となっており、本邦でも2020年12月に一変申請がすでに提出されている。承認後は本邦でも切除不能胃がんの第1選択になっていくものと考える。KEYNOTE-811の奏効割合の報告KEYNOTE-811はHER2陽性の切除不能胃腺がんの1次治療において、化学療法+トラスツズマブ(Tmab)+PEMと化学療法+Tmab+プラセボを比較したランダム化第III相試験である。合計692例が登録予定で主要評価項目はOSとPFSであるが、最初の260例が8.5ヵ月以上フォローアップされたところで1回目の中間解析が行われた。有効性の評価対象は264例、安全性の評価対象は433例であった。ORRにおいて化学療法+Tmab+PEM群で74.4%、化学療法+Tmab+プラセボ群で51.9%とPEM併用によって22.7%(p=0.00006)も奏効例の増加が認められ、完全奏効例が11%も認められるなど深い奏効が得られていた。安全性において新たに懸念される事項は認められなかった。この結果をもって米国では化学療法+Tmab+PEMが2021年5月に迅速承認を得たが、本邦で同様の承認が得られるか不明である(本邦には同様の迅速承認制度はなく、また本邦において胃がんは希少疾患ではないため難しいと思われる)。今後OS、PFSなどの主要評価項目の有効性を確認し、正式な承認が得られていくものと考える。大腸がん高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)転移性大腸がんの1次治療において、PEM単剤と通常の化学療法を比較するランダム化第III相試験であるKEYNOTE-177試験では、すでに主要評価項目の1つであるPFSの有意な改善が報告されていて、米国、欧州で1次治療として承認を得ている(本邦では2020年9月に一変申請済み)。今回、最終解析としてもうひとつの主要評価項目であるOSの報告が行われた。KEYNOTE-177試験の生存データの最終解析PEM群200mg/3週間ごととmFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ2週間ごと(化学療法群)を1対1に割り付け、化学療法群は病勢進行(PD)後、PEMのcrossoverがプロトコール治療として認められていた。OSはp値が0.0246を下回ったとき有意と判定されることとなっていた。最終解析ではPEM群と化学療法群でPFS中央値16.5ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.59)であり、化学療法群のうち56例(36.4%)がPEMにcrossoverされ、さらに37例にプロトコール治療外でPD-1/PD-L1抗体が投与されたため、合計60.4%の症例がcrossoverとなった。OS中央値はPEM群と化学療法群で、到達せずvs.36.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0359)とPEM群で良好な結果であったが、事前に設定された統計学的な有意差は検証できなかった。以上より、MSI-H転移性大腸がんの1次治療においてPEMはPFSで統計学的に有意に優れており毒性は軽かった。化学療法群でcrossoverした症例が多く、また、想定していたOSイベント数に到達しない段階での解析であることもあり、統計学的有意差は検証できなかったが、OSにおいても明らかに優れた結果であった。本邦でも、承認後はMSI-H転移性大腸がんの1次治療における標準治療になるであろう。TRUSTY試験転移性大腸がんの3次治療以降の選択肢としてトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ(BEV)の有効性がすでに複数の試験で報告されており、『NCCNガイドライン』にも記載されている。今回、本邦において、2次治療でFTD/TPI+BEVとFOLFIRIまたはS-1+イリノテカン(IRI)+BEVを比較する第II/III相臨床試験が実施された。1次治療においてオキサリプラチン/フルオロピリミジン+BEVまたは抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)を行った症例を対象とし、FTD/TPI+BEV(試験群)とFOLFIRIまたはS-1+IRI+BEV(対照群)に1対1に割り付けを行った。主要評価項目はOSで、非劣性マージンのハザード比を1.33に設定した。副次評価項目はPFS、ORR、病勢制御割合(DCR)などであった。目標症例数は524例であったが、397例を登録した時点の中間解析で中止が勧告され、登録終了となった。試験群と対照群で、OS中央値は14.8ヵ月vs.18.1ヵ月(HR:1.38、p=0.5920)であり非劣性を示すことはできず、むしろ試験群が劣っている傾向であった。PFS中央値は4.5ヵ月vs.6.0ヵ月(HR:1.45)、ORRは3.8% vs.7.1%、DCRは61.2% vs.71.7%であった。次治療の実施率は59.9% vs.52.3%であった。サブグループで見ると、OSにおいてS-1+IRI+BEV例で試験群vs.対照群が13.2ヵ月vs.未到達(HR:2.14)とS-1+IRI+BEVが良好である一方で、FOLFIRI例では16.4ヵ月vs.17.5ヵ月(HR:1.07)であり、レジメンによる大きな差を認めた。転移性大腸がん2次治療としてのFTD/TPI+BEVはフルオロピリミジン+IRI+BEVに対して非劣性を検証できず、今後も2次治療の標準治療はフルオロピリミジン+IRI+BEVである。S-1+IRI+BEV例で対照群が良好であった理由は結論が出ないが、RAS変異症例の割合、前治療の抗EGFR抗体薬の使用割合などに偏りがあり、それらが影響している可能性が考えられる。DESTINY-CRC01試験の最終解析HER2遺伝子増幅を認める大腸がんは、転移性大腸がんの2~3%に存在し、抗HER2療法が有効であることが報告されている。トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、すでにHER2陽性の乳がん・胃がんで標準治療となっているが、大腸がんにおいてもその有効性を見るDESTINY-CRC01が2020 ASCO virtualで報告されており、今回、最終解析の結果が報告された。HER2 IHC3+ or IHC2+/ISH+の症例においては、確定されたORRが45.3%、PFS中央値6.9ヵ月、OS中央値15.5ヵ月と優れた結果であり、前治療の抗HER2治療にかかわらず有効性を認めた。一方、HER2 IHC2+/ISH-、HER2 IHC1+の症例は奏効例が1例もおらず、有効性は認めなかった。毒性ではやはり間質性肺障害の頻度が9.3%と懸念される結果であった。現在、T-DXdの用量を5.4mg/kg Q3Wで6.4mg/kg Q3Wをランダム化比較する第II相試験であるDESTINY-CRC02が進行中である。終わりにこの1~2年の報告で、食道がん、胃がん、MSI-H大腸がんの1次治療で抗PD-1抗体の有効性が検証されたことにより、間もなくこれらの消化管がんの1次治療で抗PD-1抗体を第1選択で使う時代が来るだろう。NIVO、PEM、IPIの有効性の検証が一巡した現在、新たな治療標的に対する分子標的薬やADC製剤の開発や、ウイルス療法、光免疫療法など、まったく新しい発想の治療が消化管がんにおいて積極的に開発されることを期待したい。

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第65回 三重大事件で製薬会社、医療機器メーカーの社員に有罪判決、大学は“どこ吹く風”と後任教授公募へ

小野薬品、日本光電の社員に執行猶予付き有罪判決こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。私が住む町でも、64歳以下の住民にワクチン接種券がやっと届きはじめました。早速予約を試みましたが、7月は既に満員でした。そんな中、各紙報道によると、自治体によっては新規の接種予約を停止するところが出てきているようです。自治体の接種で使用しているファイザー製ワクチンの国からの供給量が、自治体の希望量に追いついていないためです。また、6月30日に菅 義偉首相は、企業・大学などからの申請受付を一時停止していた職域接種について、新規の受付を事実上中止する方針を表明しました。受付を再開すれば、職域接種に用いるモデルナ社製ワクチンが不足すると判断したため、とのことです。「1日100万回!」「7月末までに高齢者接種終了!」と菅首相が大号令をかけ、自治体や企業などにも相当無理をさせた上でのこの状況。政府がワクチン供給の見通しを誤ったことに加え、全国の在庫状況をきちんと把握できていないことが混乱に拍車をかけています。一方、海外では、変異株の増加などを背景に、ブースター効果を期待した3回目の接種を進めている国もあります。感染の再拡大とワクチン接種の遅れで、オリンピックはいよいよ無観客開催が現実になりそうな気配です。さて、今回は再び三重大病院臨床麻酔部の事件を取り上げたいと思います。事件発覚から約10ヵ月が経って、とうとう小野薬品工業(大阪市)の社員、日本光電工業(東京都新宿区)の元社員に有罪判決が下りました。三重大の事件については、この連載でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」「第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の『プロフェッショナル・オートノミー』の脆弱さ」「第45回 製薬企業からの奨学寄付金が賄賂に、三重大元教授再逮捕の衝撃」と何度も取り上げ、元臨床麻酔部教授はじめ、麻酔科医たちのあきれた所業を伝えてきました。社員たちの有罪判決は、元臨床麻酔部教授のお金への執着に翻弄された結果と言えます。彼らは皆、働き盛りの30~40代です。医師にかしずく製薬会社や医療機器メーカーの営業職の就職人気は、今後ガタ落ちするかもしれません。「奨学寄附金」200万円を「賄賂」と認定津地裁は6月29日、三重大病院の臨床麻酔部の54歳の元教授に薬剤を多数発注してもらう見返りに現金200万円を提供したとして、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人に懲役8ヵ月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。社員は三重大を担当する中部営業部長(48歳)と三重営業所の担当MR(44歳)です。検察は営業部長に懲役1年、担当MRに懲役10ヵ月を求刑していましたが、2人とも同罪となりました。判決では、2018年3月に三重大名義の口座に振り込んだ「奨学寄附金」200万円を、「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を多数受注できるようにするための「賄賂」だと認定しました。裁判官は「医師から働きかけがあったとはいえ、利益を優先して奨学寄付の趣旨を歪める形で見返りを期待して現金を供与する犯行に及んだことは、あまりにも軽率」とした上で、「賄賂は比較的多額で公務の適正や社会の信頼を害した結果は重い」と述べました。公判で弁護側は、奨学寄付金200万円の提供は、元教授の主導で行われたとし、「大学と製薬会社の力関係や、大学の奨学寄付金の根本的なひずみが生んだ事件で、すべてを2人の責任にはできない」と反論し、罰金刑か執行猶予付きの判決を求めていました。社員2人が執行猶予付きの有罪判決を受けたことについて、小野薬品は「このような事態を招いてしまったことを厳粛かつ重大に受け止めるとともに深くお詫び申し上げます。今後、できる限り速やかに再発防止策の詳細、および奨学寄付の在り方を決定し、早期の信頼回復に努めます」という主旨のコメントを発表しました。会社を懲戒解雇された日本光電元社員この判決の前日、6月28日の津地裁では、同じく三重大病院の医療機器納入をめぐる汚職事件で、贈賄罪に問われた医療機器メーカー・日本光電の元社員3人の判決もありました。この判決では、元中部支店医療圏営業部長(48歳)に懲役1年、執行猶予3年、元三重営業所長(41歳)と元三重営業所員(37歳)の2人に懲役10ヵ月、執行猶予3年を言い渡しています。3人は2019年8月、自社の生体情報モニター納入で便宜を図ってもらう見返りに、臨床麻酔部の元教授が代表理事を務める団体の口座に現金200万円を振り込んだとのことです。この事件では、元教授が「寄付金を入れないと臨床麻酔部には出入りさせない」などと話し、高額な寄付を求めていたことも明らかになっています。裁判長(小野薬品の事件と同じ裁判長です)は、仲介業者への値引き販売を利用して賄賂の資金を捻出した手口を「手が込んでいて悪質」、「自社の利益を優先した犯行は非難を免れない」と非難しました。3人が罪を認めていることや、会社を懲戒解雇され、社会的制裁を受けていることから、執行猶予付き判決が相当と判断したとのことです。第三者供賄、詐欺罪を問われる元教授の判決は?ランジオロール塩酸塩の不正請求の発覚に端を発したこの事件、張本人である三重大病院臨床麻酔部元教授は、1月6日、愛知、三重の両県警に第三者供賄の疑い(日本光電の生体情報モニター導入の件)で逮捕され、1月27日には、小野薬品のオノアクトに関する詐欺罪の疑いで再逮捕されています。なお、発端となった不正請求事件(実際には使わなかったランジオロール塩酸塩を患者に投与したように電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取った)で、詐欺などの罪に問われた臨床麻酔部元准教(48歳)については、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年とした津地裁判決が5月7日に確定しています。本丸である元教授が第三者供賄、詐欺罪について問われる公判はこれからです。これまでに6人の有罪が確定し、彼らの人生も大きく狂わせたことを考えると、6人よりも重い罪になることも考えられます。三重大は麻酔科の主任教授を公募中ところで、以上の公判が進む中、三重大は6月10日付で臨床医学系講座(麻酔科学分野)教授の公募を開始していました。この公募のお知らせには、臨床医学系講座(麻酔集中治療学分野)の教授の定年退職で、教授を公募するとしています。ただ、今回の事件含め、過去いろいろと問題の多かった臨床麻酔科学のポストは見直す方向のようです。お知らせでは、「三重大学では、麻酔科学分野として、麻酔集中治療学分野と臨床麻酔科学分野があり、後者は、医学部附属病院において全身麻酔を中心に従事する『臨床麻酔部』を組織しています。この臨床麻酔科学分野を麻酔集中治療学分野に統合し、臨床医学系講座(麻酔科学分野)として後任の教授を選考することになりました」と書かれています。さらに、「当該教授には教育研究分野としての『麻酔科学分野』、関連する診療科等としての 『臨床麻酔部』と『麻酔科』を一元的に統括していただき、医学部附属病院における麻酔科長を兼務し、麻酔科専門研修プログラム統括責任者を務めていただきます」となっています。つまり、臨床麻酔部は廃止、麻酔集中治療学の教授に主任教授として全権を与え、研究・教育から病院の麻酔、研修プログラムまで全体を管理してもらう、ということのようです。「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」でも書いたように、15年近くに渡って問題を起こし続けてきたいわくつきの三重大麻酔科に、外部からわざわざ手を挙げてやって来る麻酔科医が果たしているでしょうか。元教授は、医局の運営や若手麻酔科医のリクルート等のためにお金が必要だった、という報道もありました。国立大学医学部の教授は、もはや決して”美味しい”地位、役職ではありません。とは言え、地域の基幹病院でもある三重大病院でとしては、麻酔科をなんとかしなければなりません。事件や事故で再び世間を騒がせ、地域の医療に迷惑をかけないためにも、選考にあたっては、提出論文含め、これまでの論文に不正がなく、麻酔も上手で、人柄よく、お金にきれいな人物が選ばれることを願っています。もっとも、そんな奇特な人物がいればの話ですが…。

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同効薬切り替え時の“痛恨ミス”で禁忌処方カスケードが生じてしまった事例【うまくいく!処方提案プラクティス】第39回

 いつも成功体験を紹介していますが、実際にはすべてのケースがうまくいっているわけではありません。介入が失敗することもあり、事例を振り返っては知識のアップデート不足や提案のタイミングミスなどを反省しています。今回は、その失敗事例を共有いたします。己の過信は禁物です!患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患慢性心不全、心房細動、腎不全、前立腺がん、パーキンソン症候群介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 朝食後4.カルベジロール錠2.5mg 3錠 分1 朝食後5.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後6.ピモベンダン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後8.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後9.レボドパ・ベンセラジド塩酸錠 2.5錠(1-0.5-1) 分3 朝昼夕食後10.セレギリン塩酸塩口腔内崩壊錠2.5mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、前立腺生検と治療調整を目的として入院し、院内採用薬の都合でセレギリンがラサギリンに変更となりました。退院後の処方は訪問診療医が引き継ぎ、変更となっていたラサギリンはセレギリンに戻りました。ここに落とし穴があったのですが、気付かずスルーしてしまいました。【反省ポイント1:MAO阻害薬をスイッチする際の休薬期間】ラサギリンはセレギリンなどのMAO阻害薬とは併用禁忌であり、スイッチの際には少なくとも14日間の休薬期間が必要です。ラサギリンを他のMAO阻害薬と併用した場合、MAO-B選択性が低下し、MAO-A 阻害作用によって脳内のモノアミン濃度が上昇することで、高血圧クリーゼ、セロトニン症候群などの重篤な副作用が発現する恐れがあります。このMAO-B阻害作用は、消失までに14日間2)かかります。同効薬のスイッチだからこそ注意事項をよく確認し、患者さんに最終内服日を確認して医師へ情報提供することが必要でした。直近の新薬であるサフィナミドメシル酸塩も同様の対応が必要です。退院から1週間後に患者さんが転倒し、バイタルは血圧:77/59、脈拍:87で気分不快が出現しました。すぐに医師より昇圧薬のミドドリン塩酸塩4mg/日が処方され、経過観察となりました。私は、低血圧は基礎疾患の心不全や腎不全による循環血漿量の低下などが影響しているのではないかと考え、この時もスイッチの問題点に気付くことはできませんでした。その後の経過ミドドリン塩酸塩4mg/日を開始しても血圧は上がらず、その後8mg/日まで増量となりましたが状態は変わらず、食欲不振なども出現しました。メンタル面を考慮して、医師よりデュロキセチンとスルピリド開始の指示がありました。しかし、服用開始後も食欲不振・気分不快は変わらず、食事摂取もほとんどできなくなったため点滴治療が開始となりました。お気付きでしょうか。なんとここで併用禁忌を見落とすというさらなるミスがありました。【反省ポイント2:併用禁忌】セレギリンとデュロキセチン(SNRI)は併用禁忌です。両剤の併用により、脳内のノルアドレナリンなどのモノアミン濃度が上昇し、高血圧クリーゼやセロトニン症候群など重篤な副作用が発現する恐れがあります3)。SNRIを開始する場合は、ラサギリンのスイッチ時同様に14日間の休薬期間が必要です。今回、セレギリンとラサギリンのスイッチ休薬期間がなかったことから、デュロキセチン併用によるリスクが助長され、おそらくセロトニン症候群やモノアミン濃度上昇による影響が生じた状態になったと考えられます。その翌日、精査加療のため、前立腺生検を行った病院へ入院することになりました。病院薬剤師との引き継ぎ連絡の際に、ラサギリンとセレギリンのスイッチに休薬期間がなかったことが発覚しました。また、状況をお互いに整理していたところ、セレギリンとデュロキセチンは併用禁忌であったことも発覚しました。振り返ってみると、セレギリン→ラサギリン→セレギリンのスイッチがうまくいかなかったことから、セレギリンを一旦中止して状態を確認する必要があったと考えます。なお、スルピリドは原疾患のパーキンソン症候群を悪化させる懸念があるため、食欲不振についても別薬剤の検討をすべきでした。患者さんに苦しい想いをさせてしまい、自身のスキルを過信していたが故の確認不足だったと猛省しています。1)日本医療機能評価機構. 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業. 共有すべき事例 2020年No.32)アジレクト錠インタビューフォーム3)エフピーOD錠インタビューフォーム

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ATG7変異によるオートファジー障害が神経発達障害の原因?/NEJM

 オートファジー(自食作用)は哺乳類細胞における主要な細胞内分解経路であり、その異常は神経変性からがんまで、複雑なヒトの疾患と広く関連しているが、先天性のオートファジー障害はまれだという。英国・ニューカッスル大学のJack J. Collier氏らは、オートファジーに必須のエフェクター酵素で、既知の機能を持つパラログのないオートファジー関連(ATG7)遺伝子が、著しく減少あるいは完全に欠損した状態で生存している神経発達障害の患者を特定した。NEJM誌2021年6月24日号掲載の報告。血縁関係のない5家族の12例で、治療に結び付く知見 研究グループは、血縁関係のない5つの家族の、運動失調と発育遅延がみられる12例を対象に、遺伝学的解析、臨床的解析および神経画像解析を行い、患者由来の線維芽細胞と骨格筋生検標本、マウス胚性線維芽細胞、酵母を用いて病態の発生機序を検討した(英国・ウェルカム・トラスト・ミトコンドリア研究センターなどの助成による)。 ヒトATG7は、古典的な分解型オートファジーに不可欠の蛋白をコードする中心的なオートファジー関連遺伝子であるが、エクソームシークエンス解析により、この遺伝子に有害な劣性変異が見つかった。 5家族の12例は、それぞれ異なるATG7変異を持っており、脳や筋肉、内分泌の複雑な神経発達障害がみられた。また、小脳および脳梁の異常や、さまざまな程度の顔面異形症が認められた。これらの患者は、ATG7蛋白の減少または欠損によって、オートファジーフラックス(autophagic flux)が障害された状態で生存していた。 一方、オートファジーによる異物の隔離は著しく減少していたが、基底レベルのオートファジーが機能している証拠は、ATG7を欠損した線維芽細胞や骨格筋で容易に特定された。また、さまざまなモデル系において、有害なATG7変異で相補すると、野生型ATG7の再導入に比べて、オートファジー機能は低下または欠損した。 著者は、「これらのデータは、ATG7の有害な二対立遺伝子変異によるオートファジーの障害が、神経系、筋肉系、内分泌系の機能低下を伴う神経発達障害の原因であることを示唆する。マウスでは、神経系のオートファジーを選択的に回復させることで、周産期致死が回避可能との報告があり、これを考慮すると、オートファジー障害に起因する疾患を持つ患者においても、同様の神経系オートファジーの回復が、重要な治療戦略となる可能性がある」としている。

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アトピー性皮膚炎、黄色ブドウ球菌自家株を用いた細菌療法で重症度改善

 近年、アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚マイクロバイオーム(微生物叢)に注目した研究が進んでおり、その中でも検出頻度の高い黄色ブドウ球菌(S. aureus)について、繰り返す皮膚炎症状との関連が指摘されるようになっている。 米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のTeruaki Nakatsuji氏らは、成人11例を対象とした無作為化二重盲検試験において、AD患者の皮膚から培養したS. aureus自家株を用いた細菌療法が、S. aureusのコロニー形成を安全に減少し、疾患重症度を改善する可能性が示されたと報告した。著者は、「より大規模な研究が必要だが、S. aureusを減らすというこの個別化アプローチは、抗菌薬、免疫抑制剤、免疫モジュレーションに代わるAD患者の治療法となりうるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年6月16日号掲載の報告。 研究グループは、AD患者各人のS. aureusに特異的な抗菌活性を有するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)を用いて製剤化した個別化外用クリーム(自家抗菌性CoNS[自家CoNS-AM+]クリーム)が、S. aureusのコロニー形成を減じ、疾患重症度を改善するか否かを評価するため、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を単施設にて行った。 被験者は、成人の中等度~重症AD患者11例で、無作為に自家CoNS-AM+クリームを塗布する群(5例)またはプラセボクリームを塗布する群(6例)に割り付けられた。自家CoNS-AM+は、AD患者各人の非病変皮膚から採取したスワブ検体からの分離株で、培養増殖した後、107コロニー形成単位/gの濃度で採取した患者の前腕部に局所的に塗布された。 主要評価項目は、自家CoNS-AM+治療1週間後のS. aureus量で、株ベース法およびDNAベース法で評価した。副次評価項目として、安全性と臨床的アウトカムを評価した。試験は2016年4月~2018年5月に実施、データ解析は2018年5月~2019年7月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者11例のうち男性が4例(36.4%)、女性は7例(63.6%)であった。・自家CoNS-AM+群およびプラセボ群に重篤な有害事象はなかった。・治療終了時点で、病変部のS. aureus株は、自家CoNS-AM+群(log10でみた対ベースライン比中央値:-1.702[95%信頼区間[CI]:-2.882~-0.523])が、プラセボ群(0.671[-0.289~1.613])と比べて99.2%減少した(p=0.01)。・減少は、治療後4日時点でも持続していた(p=0.03)。自家CoNS-AM+群-1.752(95%CI:-3.051~-0.453)、プラセボ群-0.003(-1.083~1.076)。・重要な点は、11日時点で評価した病変部のEczema Area And Severity Indexスコアで、自家CoNS-AM+群(平均変化割合:-48.45[95%CI:-84.34~-12.55])の、プラセボ群(-4.52[-36.25~27.22])に対する有意な改善が認められたことであった(p=0.04)。

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医師のふるさと納税、最も高額な寄付金と返礼品は?/1,000人に聞きました

 2008年から始まった「ふるさと納税」。言葉としては定着しているようだが、実際に医師の間にはどの程度浸透しているのだろうか。今回、医師の1回あたりの最高寄付金額や申込みの多い返礼品についてアンケート調査を行った。その結果、利用率は83%、人気の返礼品は肉類であることが明らかになった。また、1回の寄付金額が100万円以上と回答した医師は14人(利用者の1.7%)だった。一方、ふるさと納税を利用していない17%における大半の理由は“面倒くさい”だったが、「地元の税収を減らしたくない」「趣旨に賛同できない」などの意見も挙げられた。医師によるふるさと納税の平均寄付金額 今回の医師によるふるさと納税の平均寄付金額は50,001~100,000円が最多で、その回答者の多くは肉類(和牛、ブランド牛など)や魚介類(かに、うなぎ、いくら)などを受け取っていた。一般に目を向けると、NTTコム リサーチが昨年9月に全国20歳以上の男女1,122人に行ったふるさと納税の調査1)では、寄付金額は1回あたり5,001~10,000円が最多で、平均寄付回数は10.5回。回答者の6割強が肉類を、5割が魚介・海産物類を選んでいた。寄付金額は違えども肉類は最も人気の返礼品だと言えそうだ。<主な返礼品と1回あたりの平均寄付金額>・肉類(平均:7万5,163円、範囲:1万~65万円)・魚介・海産物類(同:5万9,560円、同:1万2,000~100万円)・家電・電子機器*(同:24万409円、同:2万~300万円)・家具/寝具(同:24万4,651円、同:2万~300万円)・お米(同:10万6,759円、同:1万~20万円)・果物**(同:4万5,628円、同:5,000~30万円)*パソコン、iPad、テレビなど**いちご、メロン、ぶどう、マンゴーなど[ケアネットふるさと納税で人気の返礼品を見る]ふるさと納税で日本の伝統工芸品を入手する医師も ふるさと納税に関しては、泉佐野市をはじめとする複数自治体で、特産物とは無関係なAmazonギフト券などを寄付金額以上の品物として返礼していたことが一時騒然となった。この問題を受け総務省は「2019年6月1日以降の返礼品は“寄付金に占める返礼品割合が3割以下”かつ“地場産品のみとする”」と厳格に定めている。これを機に各自治体は試行錯誤を重ね、各地の特色を生かしたさまざまな返礼品を用意しており、今回のふるさと納税アンケートに回答した医師の中にも日本の伝統工芸品やマニアにはたまらない体験型の商品を受け取っている人がいた。<一例>カッコ内は寄付金額・真珠(30万円)・切子細工(7万円)・マラソン出走権(10万円)・二条城10年入場証(100万円)医師がふるさと納税を始めたタイミング ふるさと納税を行っている医師は全体の8割強を占めているが、臨床研修医の多い20代を除く各世代のおよそ1割が2020年以降に始めていた。たまたまそのタイミングだったのか、はたまたコロナ禍が影響したのかは不明であるが、ふるさと納税に対してコロナが追い風になったことは1つの要因として考えられるのではないだろうか。また、近年ではふるさと納税をお中元やお歳暮として贈答する例も増えている。ただし、返礼品だとわかってしまうため家族間や親しい間柄の贈り物に限定したほうが良さそうだ。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『ふるさと納税、医師はいくら寄付してる?』医師のためのふるさと納税サイト[ケアネットふるさと納税はこちら]

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PTSDの悪夢やフラッシュバックに対するトリヘキシフェニジル治療の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、悪夢やフラッシュバックを特徴とする、外傷性イベント後に発症する可能性のある不安障害である。この悪夢やフラッシュバックの根底にあるPTSDのメカニズムは解明されておらず、抗うつ薬や抗精神病薬を含むいくつかの薬剤が治療に用いられている。そごうPTSD研究所の十河 勝正氏らは、抗コリン薬ブチルスコポラミン臭化物によるケーススタディに続いて、PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について、検討を行った。Brain and Behavior誌2021年6月号の報告。PTSDの悪夢やフラッシュバックの治療、中枢性抗コリン薬の有効性を証明 過去(約2~15年)の精神医学的治療に奏効しなかった難治性のPTSD関連の悪夢やフラッシュバックを有する患者34例を対象に、トリヘキシフェニジルによる治療を行った(オープンラベル試験:22例、単盲検試験:12例)。トリヘキシフェニジルの効果を測定するため、PTSD臨床診断面接尺度(Clinician-Administered PTSD Scale:CAPS)および出来事インパクト尺度改訂版(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)を用いた。 PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について検討した主な結果は以下のとおり。・治療開始2週間以内に、悪夢やフラッシュバックに対する顕著な改善が確認された。・オープンラベル(各々:p<0.001)および単盲検試験(各々:p=0.001)のいずれにおいても、悪夢やフラッシュバックの有意な改善効果が認められた。 ●悪夢の頻度:治療前3.24(週に数回~ほぼ毎日)→治療後0.45(なし~月に1、2回) ●悪夢の重症度:治療前3.45(重度以上)→治療後0.56(なしまたは軽度) ●フラッシュバックの頻度:治療前3.36(週に数回~ほぼ毎日)→治療後0.48(まったくないまたは月に1、2回) ●フラッシュバックの重症度:治療前3.32(重度以上)→治療後0.61(なしまたは軽度)・全体として、CAPSサブスコアの悪夢やフラッシュバックについて、「なし」または「軽度(月に1、2回)」への改善が認められた。 ●悪夢の改善率:88%(34例中30例) ●フラッシュバックの改善率:79%(34例中27例) 著者らは「本研究は、難治性のPTSD関連の悪夢やフラッシュバックの治療におけるトリヘキシフェニジルの潜在的な有効性を証明した最初の研究である。PTSDに対するトリヘキシフェニジルの臨床的ベネフィットをさらに調査するためにも、二重盲検ランダム化比較試験の実施が望まれる」としている。

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