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AIモデルが臓器ドナーの死亡タイミングを予測

 肝臓を提供する人(ドナー)の生命維持装置が外されてから死亡するまでの時間が30~45分を超えると、提供された肝臓が移植を受ける患者(レシピエント)の体内で良好に機能する可能性が低くなるため、移植は却下されることになる。しかし新たな研究で、人工知能(AI)モデルが、臓器が移植可能な状態を保てる時間内にドナーが死亡する可能性を医師よりも正確に予測し、ドナーが時間内に死亡せず、移植に至らなかったケースの割合(無駄な臓器取得率)を60%減らすことができたことが示された。米スタンフォード大学医学部腹部臓器移植外科臨床教授の佐々木一成氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」に11月13日掲載された。 佐々木氏は、「このモデルは、手術の準備を始める前に臓器を使用できるかどうかを判断することで、移植プロセスをより効率的なものにする可能性がある。これにより、臓器移植を必要とするより多くの候補者が移植を受けられるようになるかもしれない」とニュースリリースの中で述べている。 佐々木氏らの説明によると、末期肝疾患患者に最善の治療法は肝移植であるという。多くの場合、ドナー肝臓は心停止を起こしたが生命維持装置によって生存が維持されている人から提供される。これは「心停止後臓器提供(donation after circulatory death;DCD)」と呼ばれている。 しかし、こうしたドナーから適合条件を満たした肝臓が見つかっても、生命維持装置を外した後の生存期間が長かった場合、約半数のケースで移植は中止されることになる。佐々木氏らによると、生命維持装置の停止後、死亡確認までの間、臓器への血液供給は変動する。特に、死に至るまでの時間が30分を超える場合、そのような変動により肝臓が損傷するリスクが高まるという。ドナーになる可能性のある人の約半数は、生命維持装置の停止から30分以内に死亡するため、移植に適したドナーとなるが、残りのケースでは、外科医がバイタルサインや血液検査、神経学的情報に基づき臓器提供が可能かどうかを判断する。 佐々木氏らは、2022年12月1日から2023年6月30日にかけて1,616人のドナーの情報を収集し、外科医が利用できるものと同じ情報を用いてドナーの死亡時刻をより正確に予測するようにAIモデルを訓練した。このAIモデルでは、性別、年齢、体重などの基本情報に加え、バイタルサイン、血液検査の結果、心疾患の既往歴、神経学的評価などを解析に使用した。また、呼吸補助の程度を反映する人工呼吸器設定も予測因子として組み込んだ。 訓練後、このAIモデルの予測精度を過去の398人のドナーのデータで検証し、さらに新たにドナーとなる可能性のある207人でも検証した。その結果、AIモデルはドナーが一定時間内に死亡するかどうかを、外科医の判断や既存のリスク評価ツールよりも正確に予測した。無駄な臓器取得率は、外科医で平均19.5%であったのがAI予測モデルでは7.8%と約60%減少した。一方、ドナーが予想よりも早く死亡したため移植準備が間に合わなかった機会損失率は、外科医で15.5%、AIで16.7%とほぼ同等であった。 佐々木氏は、「われわれは現在、こうした機会損失率を低下させる取り組みを進めている。移植を必要とする患者がそれを受けられるようにすることが、最優先されるべきだからだ」と言う。また同氏は、「われわれはさまざまな機械学習アルゴリズムを競わせることでモデルの改善を続けている。最近、死亡時刻の予測精度を維持しつつ、機会損失率を約10%に抑えられる新しいアルゴリズムを見出した」と付け加えている。研究グループは、このモデルを心臓や肺の移植に応用する方法についても検討を進めている。

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SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、糖尿病関連腎臓病(DKD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全患者などにおいて心・腎アウトカムを改善する明確なエビデンスがある。しかし、腎保護作用に関し、従来、ステージ4 CKD(G4)や尿アルブミン排泄量の少ない患者での有効性は不明瞭であり、推奨度は低かった。この点に注目し、SGLT2阻害薬が腎アウトカムに与える「クラス効果(class effect)」を高精度に評価することを目的とし、オーストラリアのBrendon L. Neuen氏らは、SGLT2阻害薬の大規模臨床研究(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:RCT)を、SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C:国際共同研究)として統合的にメタ解析した(JAMA誌オンライン版2025年11月7日号、ケアネット11月28日掲載)。本解析の結果、SGLT2阻害薬の腎保護作用は、ステージ4のeGFR低下群や低UACR群でも認められ、糖尿病の有無にかかわらず一貫した効果が確認された。この新たな知見は、腎機能の中等度以上低下群や低尿アルブミン群への適応拡大を示唆する。SMART-C研究の主な成績 解析対象は、SGLT2阻害薬のRCT10件、計7万361例(平均年齢64.8±8.7歳)。主要アウトカムはCKD進行(腎不全、eGFRの50%以上低下、腎死)とし、年間eGFR低下率、腎不全単独なども評価。治療効果は、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。その主な結果は、CKD進行リスクを低下させた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。この効果は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)に関係なく一貫して認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合HR:0.61、45~<60の場合HR:0.57、30~<45の場合HR:0.64、<30の場合HR:0.71、傾向p値=0.16)。また、尿中アルブミン排泄(尿アルブミン・クレアチニン比[UACR])別でも効果は一貫しており(UACR<30mg/gでHR:0.58、30~300でHR:0.74、>300でHR:0.57、傾向p値=0.49)、低UACR群でも有効性が確認された。さらに、糖尿病の有無にかかわらず、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。なお、RAS阻害薬の使用率は、各サブグループ間で81~93%であった。また、論文記載のイベント率(SGLT2群25.4 vs.プラセボ群40.3/1,000人年)を基に筆者が算出した治療必要数(NNT)は、中央値3年で約22、高リスク群では16程度と推定された。SMART-C研究のインパクト 従来、SGLT2阻害薬は2型糖尿病やDKDを中心に使用されてきた。本研究の大きな意義は、糖尿病の有無、eGFR、UACRにかかわらず腎保護作用が一貫して認められた点である。現在、日本腎臓学会の「SGLT2阻害薬適正使用の推奨案」では、DKDで第1選択薬としてSGLT2阻害薬が明記されている。開始基準として、DKDではeGFR≧20mL/分/1.73m2での開始を推奨するものの、G5(eGFR<15)での新規開始は不可としている。さらに、DKDでは蛋白尿の有無にかかわらずSGLT2阻害薬は推奨されるが、非糖尿病CKDで蛋白尿陰性の場合は、G2(eGFR≧60)以下では慎重投与となっている(日本腎臓学会誌. 2023;65:1-10.)。一方、SMART-CではG4 CKD(eGFR15~29)でも、低UACR群でも腎保護効果が確認された。この結果は、本邦のガイドラインでは積極的に推奨されないCKD進行例や尿蛋白陰性例でも、SGLT2阻害薬の適応が拡大する可能性を示唆しており、将来的にガイドライン改訂に影響を与えると考えられる。いずれにしても、SMART-Cの成果は、SGLT2阻害薬を「血糖降下薬」から、「心・腎保護の基盤治療薬(foundation therapy)」と位置付ける根拠を提供した。とくに、糖尿病・心不全・CKDなどが複数併存する高リスク患者にとっても有益性が高いことが示され、実臨床/ガイドラインでの採用を裏付けるデータとなった。医療経済の面から、CKD進行イベント率から算出したNNTは約22、高リスク群では16程度と推定され、絶対的ベネフィットは大きい。また、発売10年が経過し、ジェネリック医薬品の登場によりコスト面でのハードルも低下する見込みである。 SMART-C研究には課題もある。この解析研究では、対象の約85%でRAS阻害薬が併用されている。つまり、ここで観察された腎保護効果はRAS阻害薬存在下で得られたものであり、SGLT2阻害薬の単独効果は未検証である。このことから、現時点においてSGLT2阻害薬による腎保護の介入は、RAS阻害薬の併用を前提とすることが望ましい。今後の検討事項としては、初期治療でのSGLT2阻害薬単独の腎保護効果を検証する必要がある。なお、SGLT2阻害薬の腎保護機序は、DKDでは主に糸球体過剰濾過の改善とされるが、それ以外にも諸説が提唱されている(Vallon V. Am J Hypertens. 2024;37:841-852)。かかりつけ医と腎臓専門医の役割 本邦の実臨床においてSMART-Cの結果をどのように導入するか。病態早期(G1~G2、eGFR≧60)やステージG3b(eGFR30~44)の中等症までのDKD/CKD患者でのSGLT2阻害薬導入は、かかりつけ医で可能と考えられる。初期投与後、2~4週でeGFRが一過性に10~20%低下する「initial dip」が観察されるが、これは糸球体過剰濾過腎では病態生理学的に許容範囲と考えられており、中長期的には緩徐なeGFRスロープ低下に移行する。一方、ステージG4(eGFR15~29)のDKD/CKDや複雑な腎病態を呈する症例でのSGLT2阻害薬開始は、腎臓専門医との病診連携が好ましい。この際、かかりつけ医は定期的モニタリングを担うことが望ましい。SGLT2阻害薬導入時の具体的な安全管理として、脱水・低血圧・利尿状況の確認、糖尿病合併例でのシックデイ時の休薬指導・ケトアシドーシス予防、急性腎障害のリスク管理、尿路感染症などへの対応が重要である。高齢者に多い高血圧性腎硬化症では、UACRは低値でeGFRは中等度に低下した虚血腎が病態のベースにある。こうした症例でもSMART-Cのベネフィットが再現できるか、また長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるかは、今後のリアルワールドデータの構築と検証が課題である。

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外来診療のドタバタ【Dr. 中島の 新・徒然草】(610)

六百十の段 外来診療のドタバタようやく年賀状の印刷を発注することができました。12月9日までだと印刷代が25%引きになるということで発奮した結果です。あとは一言メッセージを書いて投函するだけ。その一方で、今年も喪中はがきを多く受け取りました。よくある文面が「母 ○○が○○歳にて永眠いたしました」というもの。昭和の頃はこの○○歳が70代なら普通だと思っていましたが、今は「ちょっと若いかも」と思ってしまいます。2025年の現在、日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳ですが、前回の万博が行われた1970年は男性が69歳、女性が75歳だったので、そう感じるのも無理はないのかもしれません。さて、今回は高次脳機能障害の「あるある」について語りたいと思います。先日の脳外科外来にやって来た40代の男性。頭部外傷による高次脳機能障害があります。そのせいか、働いていると無茶苦茶疲れるのだとか。記憶障害があるため、何でも忘れてしまいがち。だから、職場では彼に何かを頼むときは「紙に書いて渡す」というルールになっているそうです。が、奥さんにそのルールは通じません。「帰りに牛乳とマヨネーズを買ってきて」と簡単に頼んでしまいます。もちろん、彼はすっかり忘れて手ぶらで帰り、夫婦喧嘩になってしまうとのこと。 患者 「買い物リストをラインで送ってくれたときには、忘れずに済むんですけどね」 と彼は私にこぼしました。なるほど、それなら完璧!でも、予想外の落とし穴がありました。 患者 「ラインの後に電話で『卵もお願い!』とか付け加えられたら、卵だけ忘れてしまうんですよ」 ということなのだとか。 中島 「なるほど、そういうときは追加の卵もラインで送ってほしいですよね。できたらリストもアップデートして『牛乳、マヨネーズ、卵』という形で」 患者 「そうそう! でも、いくらそれを言っても嫁は理解しようとしないんです」 奥さん、口頭指示は間違いのもとですよ。似たような話がもう1つあります。こちらはアラフィフの女性患者さん。職場での労災事故で、高次脳機能障害を来してしまったもの。普段しゃべっている分には目立ちませんが、大切なことがいろいろと抜けてしまいます。先日も娘さんと一悶着あったのだとか。久しぶりに実家に帰ってきた娘さん、自分の服が見当たりません。翌日の友人の結婚式に着て行こうと思っていたものです。母親である患者さんにクリーニングを頼んでいたものの、頼まれたほうは、それをクリーニングに出したか否か、そして回収したか否かも覚えていません。ダメ元でクリーニング店に行ってみたら、すでにつぶれてしまって、跡形もありませんでした。結局は、母親が若い頃に着ていた服で間に合わせたのだそうです。 中島 「そんな大事な服を母親に頼むのが間違っていますよ。何かと記憶が抜けてしまうんだから」 と私が言うと、「そうなのよ、先生!」と患者さんに激しく同意されました。 患者 「でもね、あの子も私に頼んだら、クリーニング代を節約できると思ったんじゃないかな」 とも。なるほど、言われてみればそのとおり!これは気が付きませんでした。というわけで外来診療のドタバタ。高次脳機能障害に対しては、ご家族をはじめとした周囲の人たちの理解が大切だ、というお話でした。最後に1句 喪中来て 思い出したり 忘れたり

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12月11日 胃腸の日【今日は何の日?】

【12月11日 胃腸の日】 〔由来〕 「いに(12)いい(11)」(胃にいい)の語呂合わせから日本大衆薬工業協会(現:日本OTC医薬品協会)が2002年に制定。師走に1年間を振り返り、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらうのが目的。胃腸薬の正しい使い方や、胃腸の健康管理の大切さなどをアピールしている。関連コンテンツ 小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】 副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】 2日目のカレーは食中毒のリスク【患者説明用スライド】 コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は? 心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

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第40回 2050年には世界の3人に2人が都市住民に~「住む場所」が健康と寿命を左右する? 最新研究が示す都市の未来

便利だが、空気が悪くストレスがたまる都会。不便だが、自然豊かで空気がきれいな田舎。どちらが健康に良いかという議論は、古くから繰り返されてきました。しかし、世界中で急速な「都市化」が進む今、この問いはより複雑で、かつ切実なものになっています。2025年11月、Nature Medicine誌に掲載された論文1)は、都市での生活が私たちの健康に及ぼす影響について、社会的な不平等や気候変動といった視点を交えながら、多角的な分析を行っています。今回は、この論文を基に、都市という環境が私たちの体にどういった「見えない影響」を与えているのか、そしてこれからの都市生活において私たちが意識すべきことは何なのかを解説していきたいと思います。加速する都市化と、広がる「健康の格差」まず、私たちが直面している数字を見てみましょう。現在、人類の過半数がすでに都市部で暮らしており、その割合は2050年までに世界人口の3分の2に達すると予測されています。とくに、これからの都市化の主役は、高所得国ではなく、低・中所得国の都市です。都市は、創造性やイノベーションの中心地であり、経済的なチャンスや高度な医療サービスへのアクセスを提供する場所です。しかし一方で、都市は深刻な対立や暴力の場にもなりえます。さらに、急速で無秩序な都市の拡大は、非感染性疾患(糖尿病や心臓の病気など)、感染症、けがのリスクを高め、社会的な不平等を拡大させる要因にもなっています。この論文でとくに強調されているのが、都市内における「格差」の問題です。世界中で推定11億2,000万人もの人が、スラム街などの劣悪な環境で暮らしており、同じ都市に住んでいても、住むエリアによって健康状態や寿命に大きな開きがあることがわかっています。これは私の住むニューヨークエリアでも痛いほど感じることです。健康を決めるのは「病院」ではなく「街の構造」私たちは健康について考えるとき、「遺伝子」や「個人の生活習慣(何を食べるか、運動するか)」に目を向けがちです。しかし、この論文では、健康は「物理的環境」や「社会的環境」の複雑な相互作用によっても形作られると指摘されています。これを理解するために、少し深掘りしてみましょう。物理的環境大気汚染、騒音、猛暑、緑地の有無、住宅の質、交通機関の利便性などです。たとえば、歩道や自転車レーンが整備されている地域に住む人は、自然と身体活動量が増えますが、高速道路の近くに住む人は、排気ガスによる喘息や心臓病のリスクが高まります。社会的環境地域の安全性、暴力の有無、社会的孤立、人種差別、そして「ご近所付き合い」(社会的結束)などです。これらは心理的なストレスを通じて、私たちのホルモンバランスや免疫系に影響を与え、病気を引き起こす要因となります。重要なのは、これらの要因がバラバラに存在するのではなく、連鎖しているという点です。たとえば、所得の低い地域(社会的要因)には、工場や交通量の多い道路(物理的要因)が集中しやすく、結果としてそこに住む人々の健康が損なわれるという悪循環が生じています。つまり、健康を守るためには、単に病院を増やすといった介入だけでなく、都市計画そのものを見直す必要があるのです。「気候変動対策」は最強の「予防医療」この論文が提示するもう1つの重要な視点は、都市において気候変動対策が、一石二鳥になるという事実です。気候変動は、熱波による熱中症や洪水のリスクを高め、都市の住民の健康を脅かします。しかし、この対策として行われる政策の多くは、実は私たちの健康を改善することがわかってきました。たとえば、都市内の移動を自動車から徒歩や自転車、公共交通機関にシフトさせる「アクティブ・トランスポート」の推進は、温室効果ガスの排出を減らすだけでなく、大気汚染を改善し、人々の運動不足を解消します。また、街中に木々を植え、緑地を増やす「グリーンインフラ」の整備は、ヒートアイランド現象を緩和して気温を下げるだけでなく、住民のメンタルヘルスを改善し、ストレスを減らす効果も実証されています。論文ではさらに、住宅の断熱性能を高めることも、エネルギー効率を上げてCO2を削減すると同時に、寒さや暑さによる健康被害を防ぐ有効な手段であると述べられています。つまり、地球に優しい街づくりは、そのまま「体に優しい街づくり」になるのです。私たちが知っておくべきこと、できることでは、こうした研究結果を受けて、私たちはどうすればよいのでしょうか。まず、「住環境は健康リスクである」という認識を持つことです。自分が住んでいる場所の空気はきれいか、歩きやすいか、緑はあるか、安全か。引っ越しや住宅選びの際には、部屋の広さや家賃だけでなく、「健康に資する環境か」という視点を持つことが重要なのだと思います。次に、政策への関心です。自転車専用レーンの設置や公園の整備、大気汚染規制といった都市政策は、単なるインフラ整備ではなく、公衆衛生上の介入そのものです。政治的な意思がなければ、こうした健康的で公平な都市は実現できないでしょう。ただし、まだ解明されていないことも数多く残されています。たとえば、どのような政策に最も効果があるのか、特定の地域で成功したモデルは他の都市でも通用するのかといった点です。今後の研究では、都市間のデータを比較し、政策の効果が検証され続ける必要があるでしょう。都市化は避けられない未来です。しかし、その都市が私たちの寿命を縮める場所になるのか、それとも健康で豊かな生活を支える場所になるのかは、これからの都市計画と、それを監視・支持する私たちの意識にかかっているともいえます。人類が今後も健康に生き残り、繁栄するためには、環境に配慮した都市化以外に選択肢はないのかもしれません。 参考文献 1) Diez Roux AV, Bilal U. Advancing equitable and sustainable urban health. Nat Med. 2025;31:3634-3647.

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認知症リスク低減効果が高い糖尿病治療薬は?~メタ解析

 糖尿病治療薬の中には、血糖値を下げるだけでなく認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている薬剤がある一方、認知症の発症・進展は抑制しないという報告もある。今回、国立病院機構京都医療センターの加藤 さやか氏らは、システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスにより、9種類の糖尿病治療薬について2型糖尿病患者の認知症リスクの低減効果があるのかどうか、あるのであればどの薬剤がより効果が高いのかを解析した。その結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスクの低減効果を示し、その効果はこの順に高い可能性が示唆された。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2025年10月22日号に掲載(2026年1月号に掲載予定)。 本研究では、PubMed、Cochrane Library、医中誌Webを開始時から2023年12月31日まで検索し、糖尿病治療薬の認知症への効果を評価した英語または日本語で報告された試験を選定した。 主な結果は以下のとおり。・67試験(408万8,683例)が対象となり、単剤療法と対照群(糖尿病治療薬の使用なし、プラセボ)の比較が3試験、単剤療法と追加療法の比較が1試験、リアルワールドデータベース研究が63試験であった。・解析の結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が、対照群(プラセボ、糖尿病治療薬の使用なし、他の糖尿病治療薬)と比較して認知症リスクが低減し、その効果はこの順で高い可能性が示唆された。・インスリンは認知症リスクの上昇と関連していた。・メトホルミン、SU薬、グリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬は、認知症リスクとの有意な関連は認められなかった。

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日本の精神科外来における頭痛患者の特徴とそのマネジメントの現状

 頭痛は、精神科診療において最も頻繁に訴えられる身体的愁訴の1つであり、しばしば根底にある精神疾患に起因するものと考えられている。1次性頭痛、とくに片頭痛と緊張型頭痛は、精神疾患と併存することが少なくない。しかし、精神科外来診療におけるこれらのエビデンスは依然として限られていた。兵庫県・加古川中央市民病院の大谷 恭平氏らは、日本の総合病院の精神科外来患者における頭痛の特徴とそのマネジメントの現状を明らかにするため、レトロスペクティブに解析を行った。PCN Reports誌2025年10月30日号の報告。 2023年4月〜2024年3月に、600床の地域総合病院を受診したすべての精神科外来患者を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。全対象患者2,525例のうち、頭痛関連の保険診断を受けた360例(14.3%)を特定し、頭痛のラベル、治療科、処方薬に関するデータを抽出した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体について、追加の処方を含む探索的症例集積を行うため、観察期間を2025年3月まで延長した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛関連の保険診断を受けた360例において、頻度の高い病名は、頭痛(203例、56.4%)、片頭痛(92例、25.6%)、緊張型頭痛(46例、12.8%)であった。群発頭痛と薬物乱用性頭痛はそれぞれ1例(0.3%)であった。・頭痛治療は、精神科(153例、42.5%)で最も多く行われており、次いで神経内科(42例、11.7%)、脳神経外科(40例、11.1%)、一般内科(28例、7.8%)、リウマチ科/膠原病科(15例、4.2%)の順であった。・使用された薬剤クラスは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(40例、11.1%)、アセトアミノフェン(38例、10.6%)、トリプタン系薬剤(23例、6.4%)、漢方薬(16例、4.4%)、抗CGRPモノクローナル抗体(6例、1.7%)などであった。・薬剤レベルでは、アセトアミノフェン(38例)が最も多く、次いでロキソプロフェン(33例)、ゾルミトリプタン(14例)、五苓散(8例)、スマトリプタン(6例)、葛根湯(6例)、ジクロフェナク(4例)、バルプロ酸(4例)、ナラトリプタン(3例)の順であった。・2025年3月までの患者7例を対象とした探索的CGRP解析では、6例が女性で、平均年齢は48.4±9.2歳であった。・精神疾患の併存疾患は多様であり、摂食障害、双極症、心的外傷後ストレス障害、社会不安障害を伴う気分変調症、統合失調症、自閉スペクトラム症、神経症性うつ病などが併存疾患として挙げられた。・すべての症例において頭痛の改善が認められた。2例は再発性発作のため、他の抗CGRPモノクローナル抗体への切り替えを必要としたが、その効果は維持された。1例は発疹のため一時的に投与を中止したが、その後、他の抗CGRPモノクローナル抗体を再開した。なお、気分/不安の中期的変化は限定的であった。 著者らは「精神科外来において、1次性頭痛は一般的であり、精神科で頻繁にマネジメントされていることが明らかとなった。抗CGRPモノクローナル抗体は、精神疾患が併存している患者においても頭痛の緩和をもたらすが、精神症状は改善したわけではなく、頭痛に特化したケアと並行してメンタルヘルス介入を行う必要性が示唆された。精神科における専門分野横断的な連携と早期の頭痛評価を強化することが重要であると考えられる」と結論付けている。

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BRAF変異陽性大腸がん、最適な分子標的療法レジメンは?/BMJ

 中国・海軍軍医大学のBao-Dong Qin氏らは、BRAF遺伝子変異を有する切除不能大腸がんに対する分子標的療法ベースのレジメンの有効性と安全性について、システマティックレビューとネットワークメタ解析を行い、1次治療については、2剤併用化学療法+抗EGFR/BRAF療法が最善の生存ベネフィットをもたらすことを、また2次治療以降では、抗EGFR/BRAF療法をベースとしたレジメン(MEK阻害薬あるいはPI3K阻害薬併用あり・なし)が、最も高い有効性および良好な忍容性を有する選択肢であることを示した。BRAF遺伝子変異を有する切除不能大腸がん患者の予後は不良であり、従来療法に対して十分な効果が得られない場合が多い。これまで複数の分子標的レジメンが検討され、抗EGFR/BRAF療法ベースのレジメンの臨床導入後、治療効果は大幅な改善が認められた。しかしながら、BRAF遺伝子変異を有する大腸がんの発生率は比較的低く、レジメンの有効性および安全性の直接比較は限られていた。BMJ誌2025年11月19日号掲載の報告。メタ解析でレジメンの1次治療および2次治療以降のOSを評価 研究グループは、BRAF遺伝子変異を有する切除不能大腸がんの分子標的薬ベースの治療戦略について、レジメン別およびレジメンの直接比較による有効性と安全性を評価するシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 PubMed、Embase、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov(データベース開始~2025年5月31日)および国際学会抄録を検索。BRAF遺伝子変異を有する切除不能大腸がんに対する分子標的療法の有効性と安全性を検討し、少なくとも1つの対象臨床アウトカムを含む臨床試験および多施設共同リアルワールド研究を適格とした。 主要評価項目は、1次治療および2次治療以降の全生存期間(OS)とした。副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、およびGrade3以上の有害事象などであった。 シングルアームメタ解析、ペアワイズメタ解析およびネットワークメタ解析を行い、OSとPFSのハザード比(HR)および95%信用区間(CrI)を統合し、ORRとDCRと有害事象のオッズ比および95%CrIを統合した。順位確率と累積順位曲線下面積(SUCRA)により、ネットワークメタ解析でレジメンの相対的優位性を評価した。1次治療では、2剤併用化学療法+抗EGFR/BRAF療法が最も良好 60試験、BRAF遺伝子変異を有する患者4,633例が対象に含まれた。 統合推定値により、患者は抗EGFR/BRAF療法をベースとしたレジメンからベネフィットを得られる可能性が示唆された。 1次治療では、2剤併用化学療法+抗EGFR/BRAF療法のOSが最も良好で、2剤併用化学療法+抗VEGF療法(HR:0.49、95%CrI:0.36~0.66)、3剤併用化学療法+抗VEGF療法(0.51、0.33~0.80)、抗EGFR/BRAF療法(0.70、0.51~0.96)と比較して有意な有益性を示した。 1次治療のすべての分子標的療法戦略において、化学療法+抗EGFR/BRAF療法のOSが最も優れており(2剤併用化学療法+抗EGFR/BRAF療法のSUCRA=0.94、単剤化学療法+抗EGFR/BRAF療法のSUCRA=0.90)、またPFSも最も優れていた(2剤併用化学療法+抗EGFR/BRAF療法のSUCRA=0.93、単剤化学療法+抗EGFR/BRAF療法のSUCRA=0.92)。2次治療以降では、抗EGFR/BRAF療法±阻害薬が最上位 2次治療以降では、抗EGFR/BRAF療法が阻害薬(MEK阻害薬あるいはPI3K阻害薬)の併用あり・なしにかかわらず、他の代替戦略と比較して有効性が高く、順位確率とSUCRAに基づく試験の順位がエンドポイント全体で最上位であった。 著者は、「今回の試験結果は、BRAF遺伝子変異を有する切除不能大腸がん患者に対する、ライン別の治療方針決定の必要性を強調するとともに、抗EGFR/BRAF療法ベースの治療戦略の役割を明確にし、現行ガイドラインを補完する可能性がある」とまとめている。

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IgA腎症、sibeprenlimabは蛋白尿を有意に減少/NEJM

 IgA腎症患者において、sibeprenlimabはプラセボと比較して蛋白尿を有意に減少させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らVISIONARY Trial Investigators Groupが行った、第III相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「VISIONARY試験」の中間解析の結果で示された。IgA腎症の病態形成には、a proliferation-inducing ligand(APRIL)というサイトカインが深く関わると考えられている。sibeprenlimabはヒト化IgG2モノクローナル抗体で、APRILに選択的に結合して阻害する。第II相のENVISION試験では、sibeprenlimabの4週ごと12ヵ月間の静脈内投与により、蛋白尿の減少と推算糸球体濾過量(eGFR)の安定がみられ血清APRIL値の抑制に伴いガラクトース欠損IgA1値が低下した。安全性プロファイルは許容範囲内であった。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。sibeprenlimab 400mg vs.プラセボ、4週ごと100週間皮下投与を評価 VISIONARY試験は31ヵ国240施設で行われ、IgA腎症患者における腎機能温存能の評価を目的に、支持療法との併用によるsibeprenlimab 400mgの4週ごと皮下投与の有効性と安全性を評価した。 生検でIgA腎症と確認された成人患者を、sibeprenlimab 400mgまたはプラセボを4週ごと100週間にわたり皮下投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 今回の中間解析における主要有効性エンドポイントは、ベースラインと比較した9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比であった。 重要な副次エンドポイント(試験完了時に評価)は、24ヵ月にわたるeGFRスロープ(年率換算)であった。その他の副次エンドポイントは、血清免疫グロブリン値の変化、安全性などだった。また、探索的エンドポイントとして、ガラクトース欠損IgA1値および血清APRIL値の変化、随時尿の尿蛋白/クレアチニン比、血尿、および蛋白尿の寛解などが含まれた。24時間尿蛋白/クレアチニン比、sibeprenlimab群がプラセボ群より51.2%低下 計510例が無作為化された(sibeprenlimab群259例、プラセボ群251例)。事前に規定された中間解析(データカットオフ日:2024年9月4日)には、9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比の評価を完了した試験登録当初の320例(sibeprenlimab群152例、プラセボ群168例)が包含された。 両群のベースライン特性は類似していた。320例のうち男性が62.5%、アジア人が59.1%を占め、97.5%がRA系阻害薬を、40.0%がSGLT2阻害薬をそれぞれ試験前に服用していた。年齢中央値は42歳、平均eGFRは63.4mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比中央値は1.25であった。初回腎生検から無作為化までの期間中央値は1.5年で、おおむねIgA腎症と診断された患者を代表する試験集団であった。 9ヵ月時点で、24時間尿蛋白/クレアチニン比は、sibeprenlimab群では顕著な低下(-50.2%)が認められた一方、プラセボ群では上昇(2.1%)が認められた。24時間尿蛋白/クレアチニン比の補正後幾何最小二乗平均値は、sibeprenlimab群がプラセボ群と比較して51.2%(96.5%信頼区間:42.9~58.2)有意に低かった(p<0.001)。 またsibeprenlimab群では、血清APRIL値が95.8%、病原性ガラクトース欠損IgA1値が67.1%、それぞれベースラインから低下していた。 安全性プロファイルは両群で類似していた。死亡例の報告はなく、治療期間中に報告された重篤な有害事象の発現頻度は、sibeprenlimab群3.5%、プラセボ群4.4%であった。

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ビタミンDの個別化投与で心筋梗塞リスクが半減

 成人の心臓病患者では、血中ビタミンD濃度が最適域に達するように患者ごとに用量を調整して投与すると、そうでない場合に比べて心筋梗塞の発症リスクが5割以上低下することが示された。米インターマウンテン・ヘルスの疫学者Heidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)年次総会(Scientific Sessions 2025、11月7〜10日、米ニューオーリンズ)で発表された。 過去の研究では、血中ビタミンD濃度の低下は心臓の健康状態の悪化につながることが示されている。今回のランダム化比較試験(TARGET-D)では、急性冠症候群の成人患者630人(平均年齢63歳、男性78%)を対象に、血中ビタミンD濃度が最適(40ng/mL超〜80ng/mL以下)になるように、患者ごとに用量を調整してビタミンD投与することで、心筋梗塞の再発、脳卒中、心不全による入院、または死亡を予防できるかどうかを検証した。試験参加者の48%に心筋梗塞の既往歴があった。参加者は、3カ月ごとに血液検査で血中ビタミンD濃度を確認して投与量を調整する治療群か、ビタミンD濃度のモニタリングや用量調整を行わない標準治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。 この研究手法についてMay氏は、「ビタミンDに関するこれまでの臨床試験では、参加者全員に同量のビタミンDを投与し、事前に血中濃度を確認せずにその潜在的な影響を検証していた」と指摘する。その上で、「われわれの取ったアプローチはこうした研究とは異なる。登録時と研究期間を通して各参加者の血中ビタミンD濃度を確認し、必要に応じて投与量を調整することで、血中ビタミンD濃度を40~80ng/mLの範囲に維持した」と説明している。なお、参加者全体の85%、治療群の52%は試験開始時のビタミンD濃度が40ng/mL未満であり、治療群が最適な血中ビタミンD濃度を達成するためには、FDAの1日当たりの推奨量である800IU(20μg)を大幅に上回る5,000IU(125μg)が必要であったという。 平均4.2年間の追跡期間中に、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中、死亡を含む主要心血管イベントが107件発生した(治療群15.7%、標準治療群18.4%)。解析の結果、治療群では標準治療群に比べて、心筋梗塞の発症リスクが52%低いことが示された。一方で、死亡、心不全による入院、脳卒中の発生に関しては、両群間で有意な差は認められなかった。 こうした結果からMay氏は、「心臓病に罹患している人は、自分に必要なビタミンDの量を決めるために、血液検査による血中ビタミンD濃度の測定やその投与量について、医療従事者と相談することを勧める」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、心筋梗塞の既往歴がある人とない人の両方に対するビタミンD補充の有効性を検証するには、さらなる臨床試験が必要だと述べている。  なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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膵管拡張は膵臓がんの警告サイン

 膵臓がんは、進行して致命的となるまで症状が現れにくいことから「サイレントキラー」とも呼ばれる。こうした中、新たな研究で、膵臓がんリスクの高い無症状患者では、膵臓と胆管をつなぐ膵管の拡張が、がんの進行リスクを高める独立したリスク因子であることが示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部医学・腫瘍学教授のMarcia Irene Canto氏らによるこの研究結果は、「Gastro Hep Advances」に9月12日掲載された。Canto氏は、「この知見によりがんが早期発見されれば、生存率の向上につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 膵臓は消化酵素やインスリンなどを産生することで、消化と血糖値の調節に重要な役割を果たしている。膵臓は体の奥深くに位置するため、定期的な健康診断で腫瘍を早期発見することは難しく、診断時にはすでに進行しているケースが多い。膵臓がんの5年生存率は3〜16%とされている。米国がん協会(ACS)によると、膵臓がんは米国のがん全体の約3%、がんによる死亡全体の8%を占めているという。 この研究では、症状はないが、膵臓がんの家族歴を有するか遺伝的に膵臓がんリスクが高い641人を対象に、膵管拡張が膵管内の高度異形成や膵臓がんへの進行リスクと関連するのかが評価された。膵臓がんの家族歴とは、膵臓がんに罹患した第一度近親者(親、兄弟姉妹、子どもなど遺伝子を50%共有している人)が1人以上存在し、膵臓がんを発症した第一度近親者のペアが1組以上存在する家系に属する人の場合を指す。一方、遺伝的リスクとは、遺伝性膵臓がんに関わるATM(ataxia telangiectasia mutated)、やBRCA1、BRCA2などの遺伝子に変異を持っていることと定義された。膵管は、直径が頭部で4mm以上、体部で3mm以上、尾部で2mm以上の場合を膵管拡張と見なし、軽度(頭部4〜5mm、体部3〜4mm、尾部2〜3mm)、中等度〜重度(頭部6mm以上、体部5mm以上、尾部4mm以上)に分類した。 追跡期間中(中央値3.6年)、97人(15%)に腫瘍を伴わない膵管拡張が認められた。このうちの10人(10.3%)では、膵管拡張が確認されてから中央値で2年以内に高度異形成または膵臓がんへの進行が確認された。解析からは、試験開始時に膵管拡張が認められた対象者が高度異形成または膵臓がんに進行する累積リスクは5年後で16%、10年後で26%と推定された。膵管拡張がある高リスク患者では進行リスクが約2.6倍高く、さらに膵嚢胞が3個以上ある場合にはリスクが約9倍に増加することも示された。 Canto氏は、「われわれは、膵管拡張という警告サインを早期に特定することで、より迅速に介入することができた。介入方法は、手術か、より頻繁な画像検査を行うかのいずれかになる」と話す。同氏はまた、膵管拡張は、腎結石や腹痛など他の健康問題を調べるための画像検査時に発見される可能性があると指摘し、「医療提供者は、膵管拡張が早急に対処すべき問題であることを認識する必要がある」と述べている。 またCanto氏は、本研究の次の段階は、膵臓スキャン画像を分析して、がんリスクをより具体的かつ正確に予測できるようAIを訓練することだと語っている。

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日常生活のルーティンの乱れが片頭痛を誘発か

 片頭痛を回避したいなら、退屈な日常生活のルーティンを守る方が良いようだ。新たな研究で、日々のルーティンを大きく乱す予想外の出来事(サプライザル)は、その後12〜24時間以内の片頭痛の発生リスクの上昇に強く関連していることが明らかになった。食べ過ぎや飲み過ぎ、夜更かし、ストレスフルな出来事、予想外のニュース、急激な気分の変化などは、身体に予想外の負荷を与え、片頭痛を引き起こす可能性があるという。米ハーバード大学医学大学院麻酔・救急・疼痛医学分野のDana Turner氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。 今回の研究では、2021年4月から2024年12月にかけて登録された片頭痛患者109人(年齢中央値35歳、女性93.5%)のデータが分析された。研究参加者は、片頭痛の発作と考えられる誘因を日記に記録した。Turner氏らは、参加者ごとに片頭痛の行動・感情・環境的誘因の平均値を算出し、そこから予想外のずれが見られた日を調べた。 その結果、サプライザルの程度が大きい出来事は、その他の要因や個人差を調整した後でも、12時間以内の片頭痛リスクを56%、24時間以内のリスクを88%高めることが示された。 こうした結果を受けてTurner氏らは、「この研究結果は、個人の経験が通常のパターンからどの程度逸脱しているかが、近い将来の片頭痛リスクを予測する指標となり得ることを示している。この研究結果は、片頭痛の治療では、考えられる一連の原因にとどまらず、日常生活の予測不可能で状況依存的な特徴を考慮したパーソン・センタード・アプローチが重要であることを支持している」と結論付けている。 米ノースウェル頭痛センター所長のNoah Rosen氏は、この結果について、「その大部分が私も含めた多くの人々が抱いている片頭痛のイメージ、すなわち刺激の変化に対する過剰な反応として現れることが多いというイメージに一致している」とニュースリリースの中で述べている。また、同氏は「われわれの身体は、適切な量の食事、睡眠、水分補給により恒常性(ホメオスタシス)を維持している。片頭痛はその一部が乱れたときに作動する警報システムのようなものかもしれない」と付け加えている。 このことは、片頭痛患者のうち特定の誘因を特定できている人の割合が70%にとどまる理由かもしれないとRosen氏は言う。片頭痛患者は通常からのずれではなく、特定の要因を見つけようとしているのだ。同氏は、「サプライザルとは、日常の活動から外れていたり、普段とは異なる反応が求められたりすることと言えるだろう。突然のストレスフルな出来事には、トラウマになる経験や喧嘩、予想外の悪いニュース、あるいは良いニュースも含まれる。仕事、学校、家庭での日常の活動が他の出来事によって中断されるような状況もこれに該当する」と説明している。 Turner氏らは今後の研究で、「予想外の出来事を調査するためのより精度の高い方法を探るべきである」と述べている。また、こうした方法が見つかれば、片頭痛患者が発作に備える助けになる可能性があるとの見方を示している。

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ボストンの冬と政府閉鎖の影響【臨床留学通信 from Boston】第18回

ボストンの冬と政府閉鎖の影響11月も下旬になると、ボストンの最低気温は氷点下になります。海辺のため風も冷たく、体感温度はさらに3~5度ほど低く感じられます。10月上旬から軽めのダウンジャケットを出して着ていましたが、もはやしっかりとした厚手のものでないと寒さを凌げません。通勤は車ですが、米国の医療従事者の多くはスクラブで勤務先へ向かいます。スクラブのズボンは生地がペラペラで薄いため、丈の長いダウンコートでないと、足元が寒くて仕方がないのです。さて今回は、米国政府のシャットダウン(政府閉鎖)のお話です。10月1日から11月12日まで続きました。これまでで最長の2018年の35日間という記録を超えて、今回は43日間にも及ぶ過去最長の閉鎖となりました。原因は、民主党がオバマケアの補助延長などを求めたのに対し、共和党が反発して予算が成立しなかったことにあります。これにより政府機能が停止し、米国国立衛生研究所(NIH)などの公的機関が停止しました。身近なところでは国立公園やスミソニアン博物館などが休館となりましたが、影響はそれだけにとどまらず、私の医療現場にも波及してきました。私が勤務するBeth Israel Deaconess Medical Centerでは、年間450件ほどのTAVR(経カテーテル大動脈弁留置術)を行っています。マサチューセッツ州の遠方から来院される患者さんも多いため、手技の必要性やリスク説明などをする外来診療には、頻繁に「テレヘルス(遠隔医療)」を活用していました。しかし、予算不成立の影響で、メディケア(65歳以上の公的医療保険)対象者へのテレヘルス運用が中止となってしまったのです。その結果、患者さんはただ説明を受けるだけのためにボストンまでの来院を余儀なくされ、これまで自宅勤務が可能だったナース・プラクティショナーたちも、対面(インパーソン)での勤務を余儀なくされました。他にも大きな影響を受けたのが飛行機です。管制塔の職員も国家公務員であるため、期間中は人員が削減され、欠航や遅延が相次ぎました。私もTCTの学会からの帰路、デンバー経由の便を利用したのですが、4時間も余計に足止めを食らいました。何かと政府の動向が生活に直結するアメリカ暮らし。8年目になっても、なかなか慣れるものではありません。Column政府のシャットダウン中は「国立公園への立ち入りも禁止されるのでは?」と懸念しましたが、予約していたホテルもキャンセルできず、思い切ってボストンから北へ車を4時間走らせ、メイン州の「アーカディア国立公園」へ行ってきました。現地に着いてみると、受付の職員はおらず、幸いなことに、入場制限もかかっていませんでした。通常なら30ドルほどかかる入場料も徴収されることなく、そのまま入ることができました。岩肌と海が織りなす自然が魅力的な場所で、10月の紅葉もちょうど見頃。有名なメイン州のロブスターも頬張り、2泊3日の充実した旅行となりました。画像を拡大する

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インフル感染時のWBCやCRP、どんな変化を示す?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第17回

Q17 インフル感染時のWBCやCRP、どんな変化を示す?インフルエンザウイルス感染の有無のチェックには迅速検査がありますが、このとき血液検査ではWBC・CRPは一般的にはどのような変化をしているものでしょうか?

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領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

腎臓と泌尿器の専門医が得意分野を紹介「小児診療 Knowledge & Skill」第3巻腎・泌尿器疾患は、尿の生成・輸送を担う腎臓・尿管、蓄尿・排泄を担う膀胱・尿道の2つの領域にわたる。一連のしくみは密接に関わり、腎臓と泌尿器の専門医がともに得意分野を紹介。日本では3歳児検尿と学校検尿の普及により、小児科医が腎疾患の早期発見に寄与している。尿路感染症、夜尿症など身近な疾患から、専門的なネフローゼ症候群、糸球体疾患まで、臨床に活かすセレンディピティ。本書のポイント小児の腎臓病学と泌尿器科学の2つの領域を横断的にまとめたとらえ方が難解な腎・泌尿器疾患を14の章立てによりシステマティックに提示し、外来から専門医につなぐタイミングをコラムでガイド専門的な画像検査所見、病理所見、症例写真を多数紹介DOHaD、先天性腎尿路異常(CAKUT)が影響する小児の腎・泌尿器疾患、出生前から始まる慢性腎臓病(CKD)への予防を見据えた画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数376頁発行2025年11月総編集加藤元博(東京大学 教授)専門編集張田 豊(東京大学 准教授)ご購入はこちらご購入はこちら

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第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」

診療報酬「本体」は引き上げの方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。師走となり、診療報酬改定の議論が白熱してきました。各紙報道によれば、診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は小幅引き下げの見通しの一方、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分は2024年度改定以上の引き上げが見込まれ、全体ではプラス改定となりそうです。12月7日のNHKも、「政権幹部の1人は『高市総理大臣は、引き上げに意欲を見せており、プラス改定になる方向だ』と話すなど、人件費などに充てられる『本体』の引き上げ幅が焦点となる見通しです」と報じています。最大の関心事は病院と診療所それぞれに対する配分引き上げ幅はもちろん重要ですが、医療関係者の最大の関心事は病院と診療所、それぞれに対する配分でしょう。医療経済実態調査や財政審の「秋の建議」など、次期改定を左右する様々な発表が相次ぎ、事態は混沌としています。全国各地の病院の窮状に加え、今年は日本維新の会が自民党との連立政権に加わったことで、診療所院長が主な構成員である日本医師会にとってはいつになく厳しい状況となっています。最近では新聞だけではなくテレビでも、病院経営の苦しさが連日のように報道されています。日本医師会は「財務省の『二項対立による分断』には、絶対に乗ってはいけない」(11月29日に開かれた九州医師会連合会における日本医師会の松本 吉郎会長の発言)と警戒感をあらわにしています。特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字関連する最近の発表をおさらいしましょう。まず、医療経済実態調査です。次期診療報酬の改定に向けた基礎的な資料となるものですが、病院の経営状況の悪さが改めてクローズアップされました。厚生労働省は11月26日、中医協の調査実施小委員会と総会で第25回医療経済実態調査の結果を公表しました。今回の調査は2023~24年度の経営状況が対象となり、1,167の病院(回答率50.2%)、医療法人立と個人立を合わせて2,232の診療所(同54.9%)から回答を得ています。それによると、一般病院の開設主体別では、医療法人(402施設)は2023年度がマイナス1.1%、2024年度がマイナス1.0%でほぼ横ばい、公立(130施設)はマイナス17.1%からマイナス18.5%へ悪化、国立(24施設)はマイナス5.8%からマイナス5.4%、公的(51施設)はマイナス5.5%からマイナス4.1%と若干改善したものの赤字幅は依然大きいままでした。医業損益は、病院全体で67.2%、一般病院で72.7%が赤字でした。経常損益でも病院全体で58.0%、一般病院で63.3%が赤字でした。とくに特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字で、急性期病院の苦境が際立っていました。診療所経営も悪化したものの病院ほどではない一方、診療所ですが、医療法人立の無床診の損益率は2024年度が5.4%と、2023年度の9.3%から悪化しました。医療法人立の無床診の平均損益率は診療科で差が大きく、低かったのは外科(回答49施設)0.4%、精神科(25施設)1.6%、産婦人科(35施設)2.7%、整形外科(143施設)3.1%、内科(581施設)が4.2%、小児科(86施設)4.7%などでした。一方、高い収益を上げたのは耳鼻咽喉科(91施設)の9.5%、眼科(96施設)の8.7%、皮膚科(71施設)の8.1%などでした。なお、個人立の無床診療所は院長等の報酬が費用に含まれないために数値が高く出る傾向がありますが、2024年度は29.1%と、2023年度(32.3%)から低下しました。端的に言えば「病院はとても厳しい、診療所もそこそこ厳しいものの、病院ほどではない」というのが医療経済実態調査の結果ということになります。このままでは「分が悪過ぎる」と考えたのでしょうか? 日本医師会の江澤 和彦常任理事は12月3日の定例記者会見で、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。「病院はすでに瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きている」ことに危機感を示し、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と語り、危機に直面しているのは病院だけではないことを強調しました。財務省は「メリハリ」強調、診療所の診療報酬の適正化を提案医療経済実態調査が公表された6日後の12月2日には、財務省の財政制度等審議会(十倉 雅和会長・住友化学相談役)が、「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)を取りまとめ、片山 さつき財務相に手渡しました。秋の建議では2026年度診療報酬改定について「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッションと言えよう。これを実現するためには、医療機関の経営状況のデータを精緻に分析することが必要である。特に物価・賃金対応については、医療機関の種類・機能ごとの経営状況や費用構造に着目した上で、本来は過去の改定の際に取り組むべきであった適正化・効率化を遂行することも含め、メリハリときめ細やかさを両立させた対応を強く求めるものである」と「メリハリ」という言葉を何度も使って医療機関の種類・機能ごとに差を付けるべきだと主張しました。その上で、「1)赤字経営の診療所が顕著に増加しているという主張もあるが、医療機関の経営状況に関する厚生労働省等のデータによると、物価高騰の中でも、診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準を維持していること、2)他職業との相対比較における開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っていることなどを踏まえ、診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべきである」と、診療報酬の病院への重点配分と診療所の診療報酬の適正化を改めて主張しています。11月に開かれた財政制度等審議会・分科会での主張とほぼ同じで、診療所をターゲットとしている点は変わりません。秋の建議の社会保障関連ではその他、「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築、リフィル処方箋の拡充、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しなど提言しています。「かかりつけ医機能の報酬上の評価」は個々の診療報酬についても言及、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めています。なお、昨年の秋の建議まで、財務省が繰り返し提言してきた「診療報酬の地域別単価の導入」は、今回は盛り込まれませんでした。経団連、健保連、維新も「メリハリ」求めるこうした動きの中、診療報酬の「メリハリ」を求める声は各方面からも高まっています。経団連(日本経済団体連合会)は11月28日、健康保険組合連合会や日本労働組合総連合会(連合)など医療保険関係5団体と共に、上野 賢一郎・厚生労働大臣と面会し、2026年度診療報酬改定に関する共同要請を行いました。要請では、「高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している」状況下での診療報酬改定について、「基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない」と従来の「単純な一律の引上げ」を批判、その上で、「優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」と、病院への重点配分を強く求めています。さらに、12月4日には日本維新の会が社会保障制度改革の推進を求める申し入れを高市 早苗首相に手渡しています。申し入れでは、2026年度診療報酬改定について、「診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け、医科・歯科・調剤の固定的な配分の見直しなど診療報酬体系の抜本的な見直しを行うこと」を求めるとともに、「抜本的見直しの方向性について、中央社会保険医療協議会に任せることなく、年末に政治の意思として決定し、示すこと」を要請しました。「今やらないでいつやる?」と病院団体の関係者は思っているのでは日本医師会は「二項対立による分断」と言いますが、そもそも病院経営と診療所経営の”格差”を形作ってきた一因は日本医師会にもあるのではないでしょうか。年末に診療報酬の改定率が決まった後も、年明けの中央社会保険医療協議会総会で、2026年度診療報酬改定の答申が行われるまで「メリハリ」を巡る戦いは続くでしょう。「今やらないでいつやるんだ」と病院団体の関係者は思っているに違いありません。次期改定で本当の意味での「メリハリ」が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したいと思います。

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「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?【論文から学ぶ看護の新常識】第42回

「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?COVID-19後の看護管理者を対象とした研究により、最も多く見られた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であり、特に「個人の学歴」がそれらの有意な予測因子であることが示された。Majed Mowanes Alruwaili氏の研究で、Journal of Nursing Management誌2024年6月14日号に掲載の報告を紹介する。COVID-19後の時代における看護管理者の心理的プロファイル:看護リーダーシップへの示唆サウジアラビアの看護管理者における抑うつ、不安、ストレス、および心理的苦痛のレベルを調査するために、横断研究を実施した。2023年8月から2024年2月にかけて、アラビア語翻訳版の抑うつ・不安・ストレス尺度(The Depression Anxiety Stress Scales-21:DASS-21)を使用し、オンラインプラットフォームにてデータを収集した。データ分析には重回帰分析を用いた。主な結果は以下の通り。COVID-19後の時代において、看護管理者の間で最も多くみられる問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であった。個人の最終学歴は、不安(B=−1.60、95%信頼区間[CI]:−2.83~−0.38)、ストレス(B=−1.78、95%CI:−3.32~−0.25)、および心理的苦痛(B=−4.83、95%CI:−8.38~1.28)に対する唯一の有意な予測因子であった(いずれもp<0.05)。看護管理者の国籍は、ストレスの結果と相関していた(B=2.48、95%CI:0.35~4.61、p<0.05)。看護管理者は、危機的状況にさらされた場合、ストレスや全般的なメンタルヘルスの問題に苦しむ可能性が極めて高い。管理者の抑うつ、不安、ストレスを軽減するため、適切なタスクの委任を含むさまざまな戦略が検討できる。医療現場の最前線で指揮を執る看護管理者に対する期待と業務負荷は高まっています。今回紹介するのは、サウジアラビアの看護管理者を対象に行われた精神衛生に関する横断研究です。COVID-19パンデミック以降実施されたこの調査において、看護管理者の中で最も頻繁にみられた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」でした。本研究で最も注目すべき発見は、「個人の学歴」が心理的苦痛の有意な予測因子であった点です。これは、修士号保有者ほど、高度な教育課程で培われる批判的思考や問題解決能力、そして広い視野が、パンデミックのような未曾有の危機において、複雑な状況を整理し対処するための強力な「武器」として機能したためと考えられます。逆に言えば、十分な教育的準備なしに管理職の重責を担うことは、精神的リスクを高める可能性があるということです。この知見は、日本の臨床現場のリーダー育成においても重要な意味を持ちます。高度な専門教育を受けた高度実践看護師、そして管理職が学ぶ知識やスキルは、単に業務をこなすためだけのものではなく、組織的な重圧や困難な意思決定に伴うストレスから、自身のメンタルヘルスを守るための「防波堤」にもなります。今後のキャリア支援においても、管理職に任命するだけでなく、その役割に見合った教育の機会を十分に提供することが求められます。最後に、管理者の皆さん!いつもマネジメントお疲れ様です!学びを力に変えて、どうか自身を追い込み過ぎず、無理しすぎないようにしてくださいね。論文はこちらAlruwaili MM. J Nurs Manag. 2024;2024:8428954.

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飲酒が加齢性難聴リスクに影響~日本人1万4千人のデータ

 加齢性難聴における飲酒の影響については結論が出ていない。今回、東北大学の高橋 ひより氏らが東北メディカル・メガバンク計画のコホートデータを用いた横断研究を実施したところ、飲酒と加齢性難聴との間に関連がみられ、その関連は男女によって異なることが示唆された。男性では、過度の飲酒は潜在的な危険因子となるが、女性では、適度な飲酒は保護効果をもたらす可能性があるという。Scientific Reports誌オンライン版2025年12月2日号に掲載。 本研究では、東北メディカル・メガバンク計画のコホートデータ(自己申告式質問票および純音聴力検査閾値:500、1,000、2,000、4,000Hz)を用いて、飲酒量と加齢性難聴の関連を調査した。加齢性難聴は、聞こえが良いほうの耳で閾値が25dBを超える状態と定義した。50~79歳の男性5,219人と女性9,266人を対象に、多重ロジスティック回帰分析を男女別に実施した。 主な結果は以下のとおり。・男性では、1日当たりアルコール摂取量が60~80g(オッズ比[OR]:1.42、95%信頼区間[CI]:1.05~1.94)および80g以上(OR:1.55、95%CI:1.12~2.16)において4,000Hzでの加齢性難聴の発症リスクが高いことと有意に関連していた。・一方、女性では1日当たり10~20gのアルコール摂取が4,000Hzにおける加齢性難聴の発症リスクが低いことと有意に関連していた(OR:0.81、95%CI:0.68~0.96)。・飲酒関連の一塩基多型(SNP)の評価から、アルコールが加齢性難聴に及ぼす影響は遺伝子型によって異なる可能性が示唆された。

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ヌシネルセンの高用量処方はSMA患者のQOLをさらに改善する/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、2025年9月19日に脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤型(28mg製剤、50mg製剤)について、新用量医薬品/剤形追加の承認を取得した。わが国は世界初の両剤型の承認・販売国となり、この承認を受け、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、SMAの疾患概要、治療の変遷、患者のニーズなどに関する講演などが行われた。高用量ヌシネルセンで筋力維持などができる可能性へ 「脊髄性筋萎縮症の治療 スピンラザ高用量投与を迎えて」をテーマに、長年本疾患の研究に携わってきた齋藤 加代子 氏(東京女子医科大学名誉教授/瀬川記念小児神経学クリニック)が、SMAの疾患概要と治療の課題などを解説した。 SMAは、脊髄における前角細胞(運動神経細胞)の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病であり、発症年齢などの区分により0~IV型まで5つの型がある。 わが国の発生率は出生1万人当たり0.51例、有病率は人口10万人当たり1例とされ、8割以上の患者が2歳までに発症しているために新生児マススクリーニングが早期発見のために重要と齋藤氏は指摘する1)。 SMAの治療で使用されるヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)であり、運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。 治療では開始時期により運動機能の改善効果もみられ2)、早期診断と早期治療が重要であり、現在では国の実証事業として新生児のマススクリーニング検査がほぼ全国で行われている。 こうした診療環境の中でSMAの全病型で最も多く報告されたアンメットニーズは「筋力の改善」であり、「呼吸機能と球機能(bulbar function)に関する項目(呼吸機能の改善、嚥下機能の改善など)では、I/II型のほうがIII型よりも重要である可能性が高い」と報告されている3)。また、PK/PDモデルを用いた予測では、脳脊髄液中のヌシネルセン濃度に対しニューロフィラメントの減少をはじめとする用量依存的な治療反応が示唆されていたことから高用量製剤の開発が待たれている。 そこで、高用量製剤の製品化に向け50/28mgの有効性および安全性を検討するため、3部構成のDEVOTE試験が行われた。とくにパートBでは、未治療の乳児型SMA患者(75例)および乳児型以外のSMA患者(25例)について国際共同第III相、二重盲検、並行群間比較試験が行われた。 その結果、乳児型SMA患者におけるフィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査(CHOP INTEND)総スコアについて183日目のベースラインからの変化量の最小二乗(LS)平均値は、50/28mg群15.1(95%信頼区間:12.4~17.8)、マッチングシャム処置群ー11.1(95%信頼区間:ー15.9~ー6.2)であり、LS平均値の差は26.2(95%信頼区間:20.7~31.7、p<0.0001、共分散分析および多重補完法)であったことから、優越性が検証された。 乳児型SMA患者における死亡または永続的換気までの期間について、カプランマイヤー法に基づいた期間の中央値は、50/28mg群では推定できず、12/12mg群で24.7週(95%信頼区間:14.4~NA、名目上のp=0.2775、罹患期間で層別したlog rank検定)だった。 302日目における乳児神経学的検査(HINE)第1項 哺乳/嚥下能力の低下がみられた患者の割合は、50/28mg群で6%(2/35例)、12/12mg群で33%(4/12例)であり、改善がみられた患者の割合は、50/28mg群で26%(9/35例)、12/12mg群で8%(1/12例)だった。 パートCでは日本人を含む乳児型SMA患者(2例)および乳児型以外のSMA患者18歳未満(14例)と18歳以上(24例)について、302日目における拡大Hammersmith運動機能評価スケール(HFMSE)、上肢機能モジュール改訂版(RULM)のベースラインからの変化量について評価がなされ、その結果変化量の平均値(標準誤差)は、HFMSEで1.8点(3.99点)、RULMで1.2点(2.14点)だった。 安全性は、50/28mg群では3/50例(6.0%)、12/12mg群では1/25例(4.0%)に副作用が認められ、貧血や発熱、不快などの発現が報告された一方で、本試験での死亡および投与中止に至った副作用は認められなかった。 齋藤氏はまとめとして、SMAにおいて疾患修飾治療薬3種の臨床試験が成功して実臨床で使える時代となったこと、発症抑制のための新生児マススクリーニングを拡充・推進する方針で実証事業開始されたことに触れ、最後に「ヌシネルセン高用量投与という新たな時代が今始まった」と期待を寄せた。患者の希望は「筋力アップ」 続いて「SMA家族の会」の理事長である大山 有子氏が、患者・患者家族のリアルな声と「SMA患者さん治療ニーズに関する調査結果」をテーマに講演を行った。 自身の子供がSMAI型であり、子供の日常生活を疾患介護の苦労とともに画像・動画で説明し、ヌシネルセンなどの治療薬の乳幼児期における劇的な症状改善の効果を紹介した。 次に家族会とバイオジェンが共同で行った患者・患者家族などへのアンケート内容を説明した。アンケートは、2025年9月3~14日にかけてSMA患者21人、介護者63人(計84人)に行ったもの。・「薬による治療」は96%が受けており、「治療でできるようになったこと」は「座位」、「寝返り」などの回答が多かった。・「リハビリテーション」については、「病院で実施」が69%、「自宅で実施」が76%だった。・「患者がもっとできるようになりたいこと」では、「トイレ」、「移動」などの回答が多く、「そのために必要な機能」について、「筋力」、「体幹」などの回答が多かった。

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