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化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによる非扁平上皮NSCLC1次治療の成績(ONO-4538-52/TASUKI-52)/Ann Oncol

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用を評価する国際無作為化二重盲検第III相試験ONO-4538-52/TASUKI-52試験の結果がAnnals of Oncology誌に発表された。TASUKI-52試験のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 TASUKI-52試験の主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2019年7月に、日本、韓国、台湾から550例が登録され、ニボルマブ群とプラセボ群に無作為に割り付られた。・追跡期間中央値13.7ヵ月であった。・IRRC評価のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月に対し、プラセボ群8.1ヵ月と、ニボルマブ群で有意に長かった(ハザード比:0.56、96.4%信頼区間:0.43~0.71、p<0.0001)。・サブグループ解析では、PD-L1発現レベルを問わず、ニボルマブ群でPFS良好であった。・IRRC評価のORRは、ニボルマブ群で61.5%、プラセボ群で50.5%であった。・OS中央値は両群とも未到達であった。・治療関連有害事象の発現率は、全Grade、Grade3/4ともに両群で同等であった。

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tirzepatide、強力な血糖コントロール改善と減量効果/Lancet

 tirzepatideは、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体のデュアルアゴニストである。米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らは、「SURPASS-1試験」において、本薬はプラセボと比較して低血糖リスクを増加させずに血糖コントロールと体重の顕著な改善効果をもたらし、安全性プロファイルもGLP-1受容体作動薬と類似することを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年6月25日号で報告された。3用量を評価する第III相無作為化プラセボ対照試験 本研究は、4ヵ国(インド、日本、メキシコ、米国)の52施設で行われた第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2019年6月~2020年10月の期間に参加者の登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、食事療法と運動療法だけではコントロール不良な2型糖尿病で、注射薬による治療を受けておらず、スクリーニング時に糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が≧7.0%(53mmol/mol)~≦9.5%(80mmol/mol)で、BMI≧23、過去3ヵ月間の体重が安定している患者であった。 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mgまたはプラセボを週1回皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は40週だった。 主要エンドポイントは、ベースラインから40週までのHbA1c値の平均変化量とした。 478例(平均年齢54.1歳、女性48%、平均罹患期間4.7年、平均HbA1c値7.9%[63mmol/mol]、平均BMI 31.9)が登録され、tirzepatide 5mg群に121例、同10mg群に121例、同15mg群に121例、プラセボ群には115例が割り付けられた。66例(14%)が試験薬の投与を中止し、50例(10%)は試験を中止した。HbA1c値:1.87~2.07%低下、15%以上の体重減少:13~27% 40週の時点で、tirzepatideのすべての用量群はプラセボ群に比べ、HbA1c値、空腹時血糖値、体重のベースラインからの変化量と、HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)およびHbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合が優れた。 平均HbA1c値は、5mg群ではベースラインから1.87%(20mmol/mol)低下し、10mg群で1.89%(21mmol/mol)、15mg群で2.07%(23mmol/mol)低下したのに対し、プラセボ群は0.04%(0.4mmol/mol)増加しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-1.91%(-21mmol/mol)、10mg群が-1.93%(-21mmol/mol)、15mg群は-2.11%(-23mmol/mol)であった(いずれもp<0.0001)。 空腹時血糖値は、5mg群ではベースラインから43.6mg/dL低下し、10mg群で45.9mg/dL、15mg群で49.3mg/dL低下したが、プラセボ群は12.9mg/dL上昇しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-56.5mg/dL(-3mmol/L)、10mg群が-58.8mg/dL(-3mmol/L)、15mg群は-62.1mg/dL(-3mmol/L)であった(いずれもp<0.0001)。 HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が87~92%、プラセボ群は19%であり(プラセボ群との比較で、すべての用量がp<0.0001)、HbA1c目標値≦6.5%(≦48mmol/mol)の達成割合は、それぞれ81~86%および10%であった(すべての用量でp<0.0001)。また、HbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が31~52%、プラセボ群は1%だった(すべての用量でp<0.0001)。 tirzepatide群では、体重がベースラインから用量依存性に7.0~9.5kg減少したのに対し、プラセボ群では0.7kg減少した(すべての用量でp<0.0001)。15%以上の体重減少は、tirzepatide群では13~27%で達成されたが、プラセボ群は0%だった。 tirzepatide群で頻度の高い有害事象として、軽度~中等度の一過性の消化器イベント(悪心[tirzepatide群12~18% vs.プラセボ群6%]、下痢[12~14% vs.8%]、嘔吐[2~6% vs.2%])が認められた。臨床的に重大な低血糖(<54mg/dL[<3mmol/L])および重症低血糖は、tirzepatide群では報告されなかった。プラセボ群で1例が心筋梗塞で死亡した。 著者は、「本薬は、ほぼ正常値範囲に達する強力な血糖降下作用と、これまでに報告がないほど確固とした減量効果を示した」とまとめ、「2型糖尿病の単剤療法の選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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タゼメトスタット、EZH2変異陽性の濾胞性リンパ腫に国内承認/エーザイ

 エーザイは、2021年6月23日、EZH2阻害薬タゼメトスタット(製品名:タズベリク)について、再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)の効能効果で日本における製造販売承認を取得したと発表。 本承認は、同社が国内で実施した多施設共同非盲検単群臨床第II相試験(206試験)およびEpizyme社が海外で実施した臨床試験の結果などに基づいたもの。EZH2阻害薬タゼメトスタットの奏効率は76.5% 206試験では、前治療後に再発・増悪したEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(FL)患者などが登録された。同試験でのFL17例の独立判定によるEZH2阻害薬タゼメトスタットの奏効率(ORR)は76.5%。事前に設定した閾値ORRを統計学的に有意に上回り、主要評価項目を達成した。また、発現率25%以上の有害事象は、味覚異常(52.9%)、上咽頭炎(35.3%)、リンパ球減少症(29.4%)および血中クレアチンホスホキナーゼ増加(29.4%)であった。 FLは非ホジキンリンパ腫の10~20%を占め、一般的に進展が緩徐で、化学療法の感受性は良好である。しかし、再発を繰り返すため、治癒が困難な疾患であることから、新たな治療戦略が求められている。FLの中で、EZH2遺伝子変異を有する症例は7~27%で、日本では約600~2,400例と推定される。 EZH2阻害薬タゼメトスタットのコンパニオン診断薬としてロシュ・ダイアグノスティックスの「コバス EZH2 変異検出キット」が承認されている。また、投与全患者を対象とした特定使用成績調査(全例調査)が行われる。

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【寄稿】新型コロナワクチンの現状と展望/氏家無限

1 国内で使用可能な新型コロナウイルスワクチン現在、日本政府が特例承認している新型コロナワクチンは、(1)ファイザー社およびビオンテック社が開発したmRNAワクチン(コミナティ)(2021年2月14日特例承認)、(2)モデルナ社が開発し、武田薬品工業が国内で製造するmRNAワクチン(2021年5月21日特例承認)、(3)アストラゼネカ社およびオックスフォード大学が開発したウイルスベクターワクチン(バキスゼブリア)(2021年5月21日特例承認)の3種類である。厚生労働省によると、日本政府が各企業と契約を締結し、2021年に使用できる見込みのワクチンの接種回数は、それぞれ(1)1億9,400万回、(2)5,000万回、(3)1億2,000万回分で合計3億6,400万回分(1億8,200万人分)となるが、2021年6月時点では(3)アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンは使用されていないため、実際の流通は2億4400万回分(1億2200万人分)と見込まれている。国内企業における新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発に関しては、塩野義製薬が組換えタンパクワクチンを、第一三共がmRNAワクチンを、アンジェスがDNAワクチンを、KMバイオロジクスが不活化ワクチンを、それぞれ臨床試験を開始しているが、2021年7月時点において、最終臨床試験に進んでいる企業はない。2  新型コロナワクチンの接種体制国内では、予防接種法に基づき臨時接種として、新型コロナワクチンの接種が2021年2月17日から2022年2月28日まで実施されている。臨時接種とは定期接種と異なり新たな流行が生じた際に臨時で実施する予防接種プログラムであり、天然痘の再流行や新型インフルエンザの流行などを想定して規定されてきた。今回の流行に合わせて、2020年秋の国会にて、予防接種法が改正され、定期接種と同様に地域の住民に対して各市区町村が主体となり予防接種を実施し、すべての費用を国が負担すること、定期接種同様の制度を用いて有害事象の報告を収集し、健康被害救済に対応することなどが規定された。接種順位は[1]医療従事者など(約470万人)、[2]高齢者(約3,600万人)、[3]基礎疾患を有するもの(約1,030万人)、[4]高齢者施設などの従事者(約200万人)の順番に接種を行うことが想定されており、医療従事者に対しては5月中旬までに560万人分以上、高齢者などの接種用として7月下旬までに4,900万人分以上のワクチンが分配される見込みとなっている。加えて、2,500万人分のモデルナワクチンを職域接種に1,650万人分、自治体の大規模接種などに850万人分を配分する方針を示し、7月末までにすべての医療従事者および高齢者に2回の接種を終えることを目標としている。政府の公表データによると、7月6日までにのべ5,264万回の接種が実施され、約1,912万人が2回の接種を完了した。3 mRNAワクチン上述のように、2021年7月時点で、わが国で使用されているのは、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンである。これは、ウイルスのスパイク蛋白質を生成する遺伝子情報(RNA)を脂質の膜で覆うことで体内の細胞へ送り込むことが可能とし、細胞内でウイルスの一部であるスパイク蛋白質が生成することで被接種者の免疫を誘導する、世界で初めて実用化された新たな手法のワクチンである。ウイルスの一部であるスパイク蛋白質が生成されるが、ウイルス自体ではないため感染は起こらない。また、遺伝子情報であるmRNAは細胞の核内に入らず自然に分解されるため、人の遺伝子に組み込まれることはない。ファイザーおよびモデルナによる新型コロナワクチンは、同様の有効性が報告されているが、両者ともに従来の新型コロナウイルスに対して、およそ95%の発症予防効果を認め、非常に高い有効性が確認されている1)。加えて、入院予防、重症化予防、死亡抑制、感染予防でも同様に高い効果が確認されている2)。変異体ウイルスに対して、中和抗体価が低下することが知られているが、現時点で2回の接種完了による重症化予防や死亡抑制効果は高い効果が維持されており3)、半年以上に渡って中和活性が持続4)することも確認されている。安全性については5)、一般的なワクチンと比較すると接種部位の痛みなどの局所反応は70~80%、倦怠感や頭痛などの全身反応も50%弱にみられるなど、有害事象の発現率は高く、重篤な症状は少ないものの中等度の症状の割合は高い傾向にある。一般に1回目より2回目の接種後に有害事象を多く認めるが、症状は数日以内に軽快することがほとんどである。ワクチン接種による副反応の多くは接種から1週間以内に生じ、長期間、安全性を評価したデータは限定的であるが、デング熱などで認められる既存の免疫により感染時に病態が悪化する抗体依存性増強も報告されていない。mRNAワクチンの開発段階で、妊婦や授乳婦における臨床試験データはないが、胎児や乳児への直接的な影響はないと考えられており、妊婦での被接種者からの有害事象報告においても妊娠に特異的な有害事象の増加は認めていない6)。一方で、妊婦が新型コロナウイルスに感染した際には重症化のリスクが高くなることが知られており、感染のリスクに応じて予防接種を受けておくことの意義は高い7)。また、自然経過においても妊娠に関連した問題が生じやすいことから、紛れ込みを避けるため、妊娠初期の接種を避けるとの考え方もある。授乳婦では母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体が移行することから、母乳を通じて乳児での一定の予防効果が期待されている8)。上述のようにmRNAワクチンは弱毒生ワクチンのように病原体の感染性はないため、免疫不全者でも接種は禁忌とはならない。免疫不全者を含む基礎疾患がある者では、感染時の重症化のリスクが高くなるため、接種を積極的に検討する。免疫抑制薬を使用している場合、病態に応じて用量の調整や接種のタイミングを薬剤投与前に合わせることで、免疫原性を高めるなどの工夫も考えられる。mRNAワクチンの接種を行うことが禁忌となるのは、急性疾患の罹患者、37.5℃以上の明らかな発熱者、ワクチンに含まれる成分に対するアナフィラキシー反応の既往がある者などである。mRNAワクチン接種後のアレルギー反応は比較的多く報告されてきたが、ブライトン分類に基づきアナフィラキシー反応と規定される報告は日本国内においても6月27日までの報告で100万回接種当たり1~7件とまれである。集団接種であることから、事前にアナフィラキシー反応が生じた際の対応を、接種会場の規模や立地などに応じて、事前に取り決めておくことが重要である。また、過去に重篤なアレルギー反応や迷走神経反射の既往がある場合には、接種後の経過観察期間を15分から30分に延長する必要がある。この他、まれではあるがmRNAワクチンで報告されている有害事象として、心筋炎および心膜炎が知られている。米国における2021年6月時点での評価では、30歳未満での報告頻度は100万回接種当たり40.6件とされ、12~39歳と若年者に、女性よりも男性に、1回目よりも2回目の接種後に報告が多い。より長期間の継続的評価が必要であるが、症状のほとんどは軽症で、多くが自然軽快すること、実際に新型コロナウイルスに罹患した際にはさらに多くの心筋炎や心膜炎を認め、より重症化しやすいことなどから、予防接種後の心筋炎および心膜炎のリスク増加などのリスクよりも、ワクチンを接種することによる利益が明らかに高いと評価されている。4  ワクチン接種進展への課題世界保健機関(WHO)は現在4つの影響が懸念される変異株を指定しており、今後も新たな変異株が生じることにより、感染性や重症度が高まったり、ワクチンの有効性が低下したりすることが危惧されている。ワクチンの予防接種で獲得された免疫がどの程度の期間維持され、発症予防効果がいつまで持続するのかについては、まだ不明なことも多い。そのため、変異株に合わせた追加接種ワクチンの開発や異なる種類のワクチンによる接種を組み合わせる方法の有効性などが評価されている。英国のワクチン諮問委員会は、重症化のリスク高い70歳以上の高齢者や免疫不全者などにおいては、すでに2回の新型コロナワクチンを接種済みであっても、インフルエンザワクチンと同様に、9月以降に追加接種を推奨した。一方で、米国での諮問委員会での検討では、世界的供給も考慮し、現時点で追加接種を推奨する根拠に乏しいと評価されている。新型コロナウイルスの新たな変異株の出現や獲得された免疫による有効性の持続期間の評価と併せて、追加接種の必要性が今後も議論されていくと考えられる。また、生後6ヵ月以上の乳幼児を対象とした、小児での新型コロナワクチンの開発が進められている。一般に若年者では高齢者と比較して発症率や重症化リスクが低いことから、接種率が低い傾向がみられるが、小児においてもインフルエンザと比較して、より高い疾病負荷が確認されており、加えて、無症候性病原体保有者でも周囲に感染を拡大するリスクがあることなどから、社会全体として小児や若年者での予防接種を推進し、より強固な集団免疫を形成する必要性について、さらなる議論が必要である。5 おわりに世界的な新型コロンワクチンの進展により、予防接種対策が進んでいる国では高齢者を中心とした発症および重症化予防効果が認められている。一方で、マスク着用義務の撤廃やイベントの再開など、社会的活動の再開や感染対策の緩和感染力の高い変異体デルタ型の拡大に伴い、再び感染者の増加が認められている。世界ではこれまでに1.8億人以上で感染と、約400万人の関連死亡が確認されている。この新型コロナウイルス感染症のパンデミックを抑制し、社会活動を再開していくためには、できるだけ早期の予防接種完了が必要不可欠である。本稿が読者の基本的な理解促進とワクチン接種進展の一助となれば幸いである。引用文献1)Polack F, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.2)Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.3)Julia Stowe J, et al. Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant.PHE.2021.(Preprint)4)Doria-Rose N, et al. N Engl J Med. 2021;384:2259-2261.5)Polack F, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.6)Shimabukuro T, et al. N Engl J Med. 2021;384:2273-2282.7)Riley LE. N Engl J Med. 2021;384:2342-2343.8)Hall S. Nature. 2021;594:492-494.関連サイト厚生労働省 新型コロナウイルス感染症についてCareNet.com COVID-19関連情報まとめ診療よろず相談TV 第62回「知っておくべきCOVID-19ワクチン」

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「医師の入っている医療保険」は最適か?【医師のためのお金の話】第46回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。最近、家族がとある病気で入院して手術を受けました。幸い経過は良好なのですが、加入している医療保険がまったく使えないことに気付いてがくぜんとしました。加入している保険は、今回の治療に要した医療費をほとんどカバーできなかったのです。どうしてこのようなことが起こったのでしょうか? 十分な保険金が支払われなかった原因を調べてみると、どうやら加入している医療保険が時代遅れなものになっていたようです。入院期間短縮の影響が医療保険を直撃今回の家族の治療においては、ひと昔前の治療と比べて大きな差異がありました。それは入院期間の短縮化です。2013年に加入していたこの医療保険の条件は下記のようなものでした。生命共済契約時期:2013年月額保険料:4,000円入院(疾病):9,000円通院(疾病):0円手術:0円今回は4日間の入院で手術も含めた医療費の自己負担額は約20万円でした。差額ベッド代等が含まれており、高額療養費制度の適用にもなりません。医療保険では3万6,000円しか補填されず、残念ながら医療保険はあまり役に立ちませんでした。周知のように、昨今はどの疾患においても、入院期間を極力短くして外来での治療をメインにすることが主流となっています。このような医療体制の変化は、医療保険にも大きな影響を及ぼしています。かつての医療保険では、入院期間が保険金の算出基準に大きなウエイトを占めていました。つまり、入院期間が長ければ、より多くの保険金が支払われたのです。ところが、最近では入院期間が短縮化される傾向のため、入院期間で保険金が決まっていた従来の医療保険では、必要とされる医療費を賄えないのです。これでは何のために医療保険を掛けているのかわからないですね。保険商品も進化しているこのような医療体制の変化に合わせて、生命保険会社も新たな保険商品を開発しています。売れ筋は、日帰り入院であってもまとまった保険金を一時支給するタイプのようです。たとえば、私が見直しを検討している三井住友海上あいおい生命の「&LIFE 新医療保険A(エース)プレミア」の場合、仮に2013年当時の年齢で加入していたとすると、下記のような条件になります。月額保険料:7,872円入院(疾病):一律12万5,000円(6日目以降は5,000円/日)通院(抗ガン剤治療):10万円/月手術(入院):5万円ガン診断給付特約:100万円今回の入院であれば入院給付と手術給付で計17万5,000円が支払われることになり、医療費の9割が賄えた計算になります。2013年に加入した医療保険と比べると圧倒的に有利ですね。生命共済は一般的な生命保険会社よりも保険料が安価でそこに引かれたのですが、見直しを怠っていました。従来の医療保険は、日帰り入院手術では十分な保険金が支払われず、消費者の納得が得られません。入院期間短縮の流れに合わせて、保険会社も消費者のニーズに応える医療保険を開発しています。そして、この傾向はがん保険においてとくに顕著です。がんでも入院短期化の流れは同様ですし、高額の治療薬や長く続く外来診療など、治療に多額のお金が必要となるケースが多くなります。このような消費者のニーズに応じて、数十~数百万円の一時金を支給するがん保険が増えています。入院期間の短縮化という医療者にとって当然の事実が、医療保険の商品性にまで影響を与えているとは、医師でありながら考えが及んでいませんでした。ああ、もう少し目端が利けばよかったのになあ…。私に限らず、医師は自分や家族が入っている保険の内容について構っている人は少ない印象です。昔の保険はすべてお宝ではない予定利率の高かった時代の終身保険には、高い利率で運用できる「お宝保険」が多いというのは周知の事実です。このため、保険商品は昔に契約したもののほうが優れていると思っている人も多いかもしれません。しかし、医療保険に関しては、そうとは言い切れません。入院期間短縮化や治療方法の進化は、医療保険にも大きな影響を与えています。昔に加入した医療保険は見直したほうが良い場合が多いでしょう。キーワードは「一時金の大きさ」です。病は突然やってきますが、その際に必要なのは治療に向き合い、その間の生活を維持するためのまとまったお金です。もちろん一時金が大きい保険は保険料も高くなりますが、医師の仕事は自分の時間と引き換えに成り立っています。治療に専念すれば収入が減ったり途絶えたりするかもしれません。とくに傷病手当金のない国民健康保険に入っている開業医はリスクが高いでしょう。そのようなときに、大きな一時金を受け取れる医療保険が大きな助けになってくれることでしょう。

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研修認定薬剤師制度の電子化で“シール”廃止に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第71回

日本薬剤師研修センターの「研修認定薬剤師」を取得している方、もしくは取得を目指している方は多いのではないでしょうか。研修認定薬剤師の総数は、2021年6月30日時点で11万1,490名(新規認定者3万5,926名、更新認定者7万5,564名)です。薬剤師免許の取得者は約30万人ですので、この研修認定薬剤師制度は広く普及していることがわかります。今までは、認定を取得するには薬剤師研修手帳への記載およびシール貼付が必須でしたが、今年の9月から新しい仕組みがスタートします。「薬剤師研修・認定電子システム(略称:PECS)」というシステムで、これにより研修受講管理や認定申請などすべての手続きが電子化され、研修受講シールや薬剤師研修手帳は廃止となります。「あんなに大事だったシールと手帳が廃止!?」とびっくりされている方もいるのではないでしょうか。では何がどう変わるのか、具体的にどうしたらいいのかを紹介します。まず登録についてです。日本薬剤師研修センターのホームページの案内には、研修会の受講時ではなく、7月末までに登録を済ませてほしい記載されています。登録には薬剤師名簿登録番号と登録年月日が必要ですが、薬剤師免許証さえ手元にあれば、あとは住所やメールアドレスなどを入力するだけです。私も登録してきましたが、5分ほどで完了しました。このシステムが稼働すると、PECSに登録していない薬剤師は研修認定単位の交付を受けられなくなります。このコラムを読んでいる方でまだ登録を済ませていない方は、とにかく登録だけは済ませたほうがよいと思います。なお、現在薬剤師研修支援システムに登録している方も、改めてPECS登録が必要です。QRコードをかざして研修履歴をシステムに保存現行の運用では、研修会場でその実施機関から研修受講シールをもらうか、自身で研修受講シールを申請して郵送してもらい、そのシールを自分で手帳に貼って郵送するといった作業が必要でした。これ、結構手間がかかりましたよね。手帳やシールの紛失というリスクもありました。これからは個人のQRコードを読み取り機にかざすことで、研修履歴がシステム内に保存されます。ただし、インターネットを利用した研修の場合は、「研修実施機関の定める方法で受講する」とありますので、まったく別の運用になりそうです。登録しているプロバイダーがある方はそちらもきちんと確認しましょう。受講の申し込みやレポート提出、履歴管理、認定申請もシステム内で行うことができます。不正防止策徹底とともに研修の種類拡大これまで認定薬剤師制度は、「シール転売」など信頼を失墜させた事件もあったため、不正防止が重大な課題の1つでした。この電子化によりシールそのものが廃止となるため、転売を根絶することができます。また、受け付けだけ済ませてシールをもらったらすぐに退室して受講しないという不正を防ぐため、QRコードの提示も研修の前と後の2回行う必要があるという念の入れようです。そして、単なる電子化ではなく、研修の種類が増えるという変更もあります。現行の単位認定の対象になっている集合研修やグループ研修などに加え、新しいシステム稼働後は学会発表や学術雑誌に論文が掲載された場合なども単位認定の対象になります。管理の効率化だけでなく、信頼性向上、さらに生涯学習の幅を広げるとは、日本薬剤師研修センターもやるな!という感じです。ただし、これからは、後になってシールの発行をお願いするなどの融通は利かなくなると予想されますので、計画的に受講して、しっかりと自己管理しましょう。

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コウノドリ(その2)【なんで子どもがほしいの? 逆になんでほしくないの?(生殖心理)】Part 1

今回のキーワード特別養子縁組子育てへの欲求子宮全摘出血縁への欲求不育症親アイデンティティ親性生活史戦略その1では、ドラマ「コウノドリ」を通して、不妊の心理を精神医学的に解き明かしました。不妊治療がやめられない原因として、がんばり過ぎる(過剰適応)、とらわれる(強迫)、のめり込む(嗜癖)という独特の不妊の心理があることが分かりました。そして、この心理のそれぞれのリスクは、燃え尽きる(破綻)、頭が硬くなる(べき思考)、元を取りたいと思う(負け追い)であることも分かりましたそれでは、そもそも私たちはなぜそんなに子どもが欲しいのでしょうか? 逆に考えれば、なぜ子どもが欲しくないのでしょうか? または、なぜ子どもを多く欲しくないのでしょうか? これらの答えを探るために、今回は、引き続きこのドラマを通して、生殖にまつわる心理(生殖心理)を進化心理学的に掘り下げます。そして、これからの生殖のあり方を一緒に探っていきましょう。そもそもなんで子どもが欲しいの?それでは、そもそもなぜそんなに子どもが欲しいのでしょうか? まず、その理由を大きく3つ挙げてみましょう。(1)子育てをしたいから-子育てへの欲求鴻鳥とチームのスタッフたちは、中学生の妊婦から生まれてくる赤ちゃんのために、特別養子縁組(実子扱いになる養子縁組)を検討するエピソードがあります(シーズン1第5話)。彼らと育ての親を希望する夫婦が面会するシーンで、その夫婦は、「不妊治療を6年したけど、授からなかった。体も精神的にももうボロボロで」「子どもをあきらめよう。夫婦2人で生きて行こうと話していた時に、つぐみの会(特別養子縁組をサポートするNPO法人)を知ったんです」「嬉しかった。産めなくても、私たちでも親になることができるんだって」「うまく言えないけど、血は繋がらなくても、赤ちゃんて授かりものだと思うんです」と申し出るのです。子どもが欲しい1つ目の理由は、子育てをしたいから、つまり子育てへの欲求です。それは、自分の子を育てられないなら、せめて他人の子であっても子育てをしたいという思いです。(2)血を繋げたいから-血縁への欲求鴻鳥の親しい同僚である助産師の小松は、子宮腺筋症と卵巣チョコレート嚢胞を発症したため、子宮を全摘出するエピソードがあります(シーズン2第7話)。彼女は、当初、心を許せる子持ちの女性の同僚に「お母さんになる人生と、お母さんにならない人生。何が違うのかな?」と聞き、手術をためらいます。手術後、その同僚に「本音言うとさ、やっぱり怖かったんだよね、手術する時。あーこれで私は本当に一人で生きて行くことになるかと思ったら、寂しさよりも怖さが先に来てさ」「親や兄弟や夫も子どもいない私にとって、子宮は私にとって最後の頼りだったんだ」と打ち明けるのです。子どもが欲しい2つ目の理由は、血を繋げたいから、つまり血縁への欲求です。もともと血の繋がった家族がいない小松なら、なおさらでしょう。(3)親になりたいから-親アイデンティティへの欲求その1の記事でご紹介した不育症の夫婦の会話のシーン(シーズン2第9話)。その妻は、「最初に妊娠したときに、すっごく嬉しくてすぐに(母子手帳を)取りに行っちゃって」と語ります。その後、「修ちゃん(夫)にも申し訳なくて。自分の子どもを抱かせてあげられないのが辛い。ごめんね」と涙します。彼女は、結婚後、専業主婦になり、妊娠するのを心待ちにしていたのでした。子どもが欲しい3つ目の理由は、親になりたいから、つまり親アイデンティティへの欲求です。確かに、母子手帳を早く手に入れたいと気持ちがはやるのはよく分かります。しかし、これだけ意気込むということは、裏を返せば、ほかにやること、やりたいことがないように見えます。また、夫の子どもを生むのが、彼女の務めのような言い方をしています。彼女は、妊娠・出産・子育てを生活のすべてにしようとしています。つまり、それが、彼女の役割であり、アイデンティティになっています。逆に言えば、妊娠しないことは、当てにしていた生活が何も始まらないため、彼女のアイデンティティが定まらなくなっています(アイデンティティ拡散)。なんで子どもが欲しい気持ちは「ある」の?子どもが欲しい3つの理由は、子育てへの欲求、血縁への欲求、そして親アイデンティティへの欲求であることが分かりました。それでは、そもそもなぜ子どもが欲しい気持ち(生殖心理)は「ある」のでしょうか? その3つの欲求の起源を、それぞれ進化心理学的に掘り下げてみましょう。(1)子育てへの欲求の起源-哺乳10数億年前に太古の原始生物が誕生してから、自分の遺伝子を残すように行動する種が進化の歴史の中で現在までに生き残りました。逆に言えば、遺伝子を残すように行動しない種は、その遺伝子が残らないわけなので、そもそも現在に存在しないです。この生殖は、食べることや安全を守るなどの生存と並ぶ動物の根源的な行動です。約2億年前に哺乳類が誕生してから、その母親は子どもに自分の乳を与えて育てるというメカニズム(哺乳)を進化させました。1つ目の子育てへの欲求の起源は、哺乳です。子どもを育てたいという生殖心理は、生存の心理と同じく、それ自体が遺伝的に組み込まれた喜び(報酬)と言えるでしょう。(2)血縁への欲求の起源-社会脳700万年前に人類が誕生し、300万年前に草原に出たことで、父親も、猛獣や自然の脅威から体を張って自分の子どもを守るようになり、母親と子どもと一緒に生活するようになりました。これが、家族の起源です。さらに、その血縁で集まった部族をつくり、協力して子どもたちを守るようになりました(社会脳)。こうして、次世代の担い手として子どもを集団で育てることで、部族社会を維持しました。2つ目の血縁への欲求の起源は、社会脳です。血を繋げたいという生殖心理も、生殖の適応度だけでなく、集団の適応度を上げるために、それ自体が遺伝的に組み込まれた喜び(社会的報酬)と言えるでしょう。(3)親アイデンティティへの欲求の起源-概念化20万年前に現生人類が誕生してから、言葉を話すように進化しました。そして、10万年前には貝の首飾りを信頼の証にするなどシンボルを使うようになりました(概念化)。こうして、社会集団の中で、親であるという役割や肩書き(社会的立場)にも意味を見いだすようになりました。そして、自分の生殖に物語性を見いだすようになりました。3つ目の親アイデンティティへの欲求の起源は、概念化です。つまり、親という存在になりたいという生殖心理も、生殖の適応度だけでなく、集団の適応度を上げるために、それ自体が遺伝的に、そして文化的に組み込まれた喜び(社会的報酬)と言えるでしょう。次のページへ >>

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コウノドリ(その2)【なんで子どもがほしいの? 逆になんでほしくないの?(生殖心理)】Part 2

なんで子どもを(多く)欲しくないの?生殖心理の3つの起源は、哺乳(子育てへの欲求の起源)、社会脳(血縁への欲求の起源)、概念化(親アイデンティティへの欲求の起源)であることが分かりました。つまり、子どもが欲しいと思う気持ちは、そもそも「ある」ものです。だからこそ、多くの夫婦は子どもができない場合、不妊治療を受けるのです。しかし、一方で少子化(低出生率)は深刻なほどに進んでいます。ちょうど、高齢出産による子宮破裂で死産となるエピソード(シーズン1第6話)が、その原因のヒントになります。死産を踏まえて、先輩の男性医師が「やっぱ子どもは早くつくっとくべきだよなあ」と悪気なく漏らします。すると、鴻鳥の後輩女医の下屋が「女には、産みたくても産めない時があるんです。出産や子育てにはお金がかかりますし、社会に出てキャリアを積もうと思ったら、あっという間に30過ぎちゃいます」と切実に訴えるのです。確かに、少子化の大きな原因として、晩産化・晩婚化が挙げられるでしょう。ただし、一方で、結婚しても最初から子どもが欲しくないという夫婦も一定数います。実際に、子どもがいない女性への意識調査では、来世も自分の子どもが欲しくないと回答した女性は約7%いました。また、子どもはいても一人っ子で良いという夫婦が増えています。実際に、合計特殊出生率は、1945年の戦後しばらくまで4.00台後半でしたが、2020年には1.36にまで下がり続けています。つまり、かつては子どもを4、5人生むのが当たり前だったのに、現代は、1、2人生むのが多数派です。子どもが欲しい気持ちは進化心理学的に「ある」はずなのに、なぜ子どもを(多く)欲しくないのでしょうか? ここから、現代の少子化の心理的な要因を大きく3つ挙げて、文化心理学的にも踏み込んでみましょう。(1)子育てのイメージができないから-親性の低下子どもがいない女性への意識調査の中で、子どもを持たなかった理由として、「タイミングを逃した」と回答した女性が34%、「病気による体の事情」は29%いました。晩婚化・晩産化や病気によって、子どもが欲しくても叶わなかったという事情はよく分かります。しかし、「育てる自信がないから」と回答した女性は25%いました。これはなぜでしょうか?子どもを(多く)欲しくない1つ目の原因は、子どもを(多く)持つイメージができないからです。これは、親性の低下によるものです。親性とは、子育てへの自信ややりがいです。ちなみに、思春期の子どもの親性を計る尺度(親性準備尺度)として、自分の親への肯定的なイメージ、幼少期に年下の子のお世話やペット飼育、児童期に後輩への世話役(ボーイスカウト・ガールスカウト)、思春期に乳幼児にお世話をすることなどが挙げられます。合計特殊出生率が4.00以上であった原始の時代から戦後しばらくの時代までは、上の子たちが年の離れた下の子たちの面倒を見ることが当たり前でした。つまり、子どもの時に、ある程度の責任を負わされる子育てをすでにしていました。こうして、親性は家庭内で自然に育まれていました。しかし、現代は、すでに家庭内で子どもが1人か2人で、年があまり離れていなければ、上の子が下の子の面倒を見るチャンスはないでしょう。また、昨今のコンプライアンスの問題から、年が離れているからといって、上の子が下の子の面倒を見る責任を親が負わせるのは、ためらわれます。住宅環境のコンプライアンスから、ペットを飼うことも大変です。海外と比較しても、日本の学校制度は、集団主義的な文化から、同年齢同学年による教育が徹底しているため、地域でも異年齢のグループができにくく、年下の子への世話役のチャンスはありません。結果的に、子どもの時に子育てのイメージができず、親性は自然と育まれなくなっています。少子化が、さらなる少子化を招いているとも言えます。実際に、生涯未婚の研究(2015)において、一人っ子の男性は兄弟姉妹がいる男性に比べて約13%生涯未婚率が高く、一人っ子の女性は兄弟姉妹がいる女性比べて約5%生涯未婚率が高いという結果が出ました。この結果は、少子化が単に生涯未婚だけでなく、親性に影響を与えている可能性も示唆します。また、親が子育てに不満を持ち、愚痴っぽい場合、子育てをするロールモデルが存在しないため、その子どもが大人になっても、子育てをするイメージはできにくいでしょう。ちょうど、親が不仲であったために、結婚生活を送るロールモデルが存在せず、その子どもが大人になっても、結婚をうまく続けるイメージができず、結婚をためらう非婚の心理に似ています。(2)子育てで自分のやりたいことができなくなるから-生存の充実化子どもがいない女性への意識調査の中で、子どもがいなくて良かったと感じることとして、「自分のために使える時間が多い」と回答した女性が81%、「自分のしたいことを優先できる」は71%いました。子どもを(多く)欲しくない2つ目の原因は、子どもが(多く)いると自分のやりたいことができなくなるからです。これは、ライフスタイル(生存)の充実化によるものです。原始の時代から戦後しばらくの時代までは、仕事以外の活動は、子作りと子育てくらいしかやることがありませんでした。つまり、生きている間に生存と生殖にそれぞれ注ぐエネルギー(コスト)の配分のバランスがとれていました(生活史戦略)。しかし、高度経済成長期を過ぎた1970年代から世の中は物質的には豊かになったことで、生活の余裕ができて、個人の生き方の選択が増えました。ドラマの下屋のように女性も仕事を持ちキャリアを積む、自分の趣味を持ち旅行などレジャーを楽しむなどなど、子育てよりもやりたいことが増えてしまいました。ちなみに、これは、日本に限らず、すべての先進国に当てはまることで、実際に多くの先進国で少子化が起こっています。とくに日本では、自分のライフスタイルの充実を目指すあまりに、子作り・子育てはおろか、結婚までも目が向かなくなってしまいました。これは、生存と生殖のバランスが大きく崩れている状況です(トレードオフ)。これも、非婚の心理に通じます。(3)子育てにお金がかかり過ぎるから-生殖の高コスト化子どもがいない女性への意識調査の中で、子どもがいなくて良かったと感じることとして、「経済的な余裕が生まれる」と回答した女性が64%いました。子どもを(多く)欲しくない3つ目の原因は、子どもが(多く)いるとお金がかかり過ぎるからです。これは、子育て(生殖)の高コスト化によるものです。原始の時代から戦後しばらくの時代までは、子育てにはお金があまりかかりませんでした。むしろ、家業のための児童労働がまかり通っていたため、子どもは一家の大切な労働力(生産財)として必要でした。しかし、現代は、児童労働は禁止された上に、子どもの将来(生存競争や生殖競争)がより有利になるように、親は投資(消費財)として教育にお金をかけるようになりました。とくに著しいのが、日本をはじめとする東アジアです。なぜなら、この地域では、集団主義(権威主義)が根強く、親が世間体を気にして、子どもの価値を高めることに全力を注ぐからです。もちろん、不妊治療にもお金がかかります。また、核家族化によって、祖父母や上の子どもからのサポートが得られず、いわゆるワンオペ育児になりがちであるという点で、労力(コスト)がかかり過ぎる面もあります。先ほど触れた生活史戦略としても、生存にかけるコストがすでに増えているため、生殖にかけるコストは限られます。しかし、生殖にもかけるコストが増えることも見込まれるため、結果的に、産む子どもの数を極限まで減らすという選択をとらざるを得なくなるというわけです。ちなみに、生物の生活史戦略において、その個体の子どものサイズが小さい場合は多産・多死型になる一方、サイズが大きい場合は、かけられるエネルギー(コスト)が限られているため、そして相対的に縄張りが狭くなるため(子ども同士の生存競争が激しくなるため)、必然的に少産・少死型になります。つまり、人類の少子化は、生物進化の必然とも言えるでしょう。これらの3つの心理的な要因は、子どもを(多く)欲しがらないだけでなく、(なかなか)結婚したがらない、つまり晩婚化・晩産化、さらには非婚の要因にもなっている可能性が考えられます。なお、非婚の心理については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ■関連記事私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】

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第68回 3回目接種に温度差

Pfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2の2回接種が済んで2週間か4週後の人の血清は世界で優勢になりつつあるデルタ変異株(B.1.617.2株)を確かに阻止する1)ものの、最近発表されたイスラエルの状況2)でも示されているように接種が済んでから半年後の感染や発症の予防効果に陰りが認められます。そこで両社はBNT162b2の3回目接種の試験を実施しており、そのさしあたりのデータで非変異SARS-CoV-2やベータ変異株を阻止する抗体反応の上昇が確認されています。3回目接種後の抗体反応は2回接種後を5~10倍上回りました3)。BNT162b2の3回目接種はデルタ変異株への抗体反応も同様に引き上げるとPfizer/BioNTechは予想しており、米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)などに3回目接種が間もなく認可申請されます4)。世界に先駆けてSARS-CoV-2ワクチン接種を始めたイスラエルは3回目接種の導入も早く、総人口930万人の6割超の約570万人が少なくとも1回目接種を済ませている同国はPfizer/BioNTechの申請を待つことなくすでに3回目接種の提供を開始しています5)。ただし、3回目接種の対象は2回目接種済みの全員ではなく免疫系が損なわれている成人に限られます。他の国と同様にデルタ変異株が優勢になりつつあるイスラエルでは一桁台だった1日の新たな感染数がここ1ヵ月で450人ほどに増えており、7月7日時点で46人が重症で入院しています6)。Reutersのニュース5)によるとそれら重症者の約半数はワクチン接種済みであり、ほとんどはリスク因子を有していました。限定的とはいえ3回目接種を早速開始したイスラエルとは対照的に米国は3回目接種をいまのところ不要と考えています。米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAの先週8日の発表7)によると目当ての回数を接種済みの人は重症化や死亡を免れています。デルタやその他の変異株による重症化や死亡も例外ではなく防げており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院や死亡しているのは今やほぼすべてワクチン非接種の人です(第67回参照)。ワクチンがまだの人は自分や周りの人を守るために接種することをCDCやFDAは改めて要請しています。世界保健機関(WHO)も米国と同様に追加接種はいまだ検討中であっていまのところ支持していません8)。予防効果の維持に追加接種が必要かどうかは不明であり、その判断には更なる情報が必要と考えています。米国もWHOと同様に追加接種について引き続き検討し、いざ必要になったときのための準備をしておくとCDCやFDAは言っています。WHOや米国とは裏腹にPfizer/BioNTechの腹は決まっています。発症予防効果が時を経るにつれて落ちていくことや変異株がこれからも新たに発生し続けるであろうことなどを踏まえると 2回目接種が済んでから半年~1年以内に3回目接種をして高水準の予防効果を維持する必要があるだろうとしており3)、Pfizerは追加接種について米国時間の月曜日12日にFDAと話し合う約束を取り付けています9)。Pfizer/BioNTechは3回目接種の先も見据え、デルタ変異株のスパイクタンパク質を標的とするmRNAワクチンの開発も進めています。その臨床試験は来月8月に始まる予定であり、投与用のmRNAはすでに製造済みです3)。参考1)Liu J,et al.Nature. 2021 Jun 10. [Epub ahead of print]2)Decline in Vaccine Effectiveness Against Infection and Symptomatic Illness3)Pfizer and BioNTech Provide Update on Booster Program in Light of the Delta-Variant / Pfizer/BioNTech4)Pfizer, BioNTech to seek authorization for COVID booster shot as Delta variant spreads / Reuters5)Israel offers third shot of Pfizer COVID-19 vaccine to adults at risk / Reuters6)Clarification Regarding the Number of Critical Cases / gov.il7)Joint CDC and FDA Statement on Vaccine Boosters /CDC8)Question open on need for COVID booster shot, data awaited, WHO says / Reuters9)Pfizer, U.S. health officials to discuss COVID boosters on Monday -company / Reuters

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小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬~ネットワークメタ解析

 小児および青年期のうつ病は、教育や仕事の成果、対人関係、身体的健康、メンタルヘルス、ウェルビーイングなどに重大な影響を及ぼす。また、うつ病は自殺念慮、自殺企図、自殺との関連がある。中等度~重度のうつ病には抗うつ薬が使用されるが、現在さまざまな新規抗うつ薬が使用されている。ニュージーランド・オークランド大学のSarah E. Hetrick氏らは、抑うつ症状、機能、自殺に関連するアウトカム、有害事象の観点から、小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬の有効性および安全性を比較するため、ネットワークメタ解析を実施し、年齢、治療期間、ベースライン時の重症度、製薬業界からの資金提供が臨床医によるうつ病評価(CDRS-R)および自殺関連アウトカムに及ぼす影響を調査した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2021年5月24日号の報告。 2020年3月までに公表された文献をCochrane Common Mental Disorders Specialised Register、Cochrane Library、Ovid Embase、MEDLINE、PsycINFOより検索した。うつ病と診断された6~18歳の男女を対象に、新規抗うつ薬の有効性を他剤またはプラセボと比較したランダム化比較試験を含めた。新規抗うつ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン阻害薬、四環系抗うつ薬を含めた。独立した2人のレビュアーが、タイトル、アブストラクト、フルテキストよりスクリーニングし、データ抽出およびバイアスリスク評価を行った。評価アウトカムは、うつ症状の重症度(臨床医による評価)、うつ症状の治療反応または寛解、うつ症状の重症度(自己評価)、機能、自殺関連アウトカム、全体的な有害事象とした。2値データはオッズ比(OR)、連続データは平均差(MD)として分析した。ランダム効果ネットワークメタ解析は、多変量メタ解析を用いて、頻度論的フレームワークで実行した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。結果の解釈や説明を標準化するため、informative statementsを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、26件の研究を含めた。・2つの主要アウトカム(臨床医面談によるうつ病の臨床診断、自殺)のデータは十分ではなかったため、副次的アウトカムのみで結果は構成された。・ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、CDRS-Rスケールにおけるうつ症状の「小さく、重要でない」軽減(範囲:17~113)が認められた。 【エビデンスの確実性:高】 ●パロキセチン(MD:-1.43、95%CI:-3.90~1.04) ●vilazodone(MD:-0.84、95%CI:-3.03~1.35) ●desvenlafaxine(MD:-0.07、95%CI:-3.51~3.36) 【エビデンスの確実性:中】 ●セルトラリン(MD:-3.51、95%CI:-6.99~-0.04) ●fluoxetine(MD:-2.84、95%CI:-4.12~-1.56) ●エスシタロプラム(MD:-2.62、95%CI:-5.29~0.04) 【エビデンスの確実性:低】 ●デュロキセチン(MD:-2.70、95%CI:-5.03~-0.37) ●ボルチオキセチン(MD:0.60、95%CI:-2.52~3.72) 【エビデンスの確実性:非常に低】 ●その他の抗うつ薬・うつ症状の軽減効果において、ほとんどの抗うつ薬の間に「小さく、重要でない」違いが認められた(エビデンスの確実性:中~高)。他のアウトカムにおいても同様であった。・ほとんどの研究において、自傷行為または自殺リスクは、研究の除外基準であった。・含まれているほとんどの研究において、自殺関連アウトカムの割合は低く、すべての比較で95%信頼区間は広くなっていた。・自殺関連アウトカムに対する効果については、プラセボと比較し、エビデンスの確実性は非常に低かった。 ●ミルタザピン(OR:0.50、95%CI:0.03~8.04) ●デュロキセチン(OR:1.15、95%CI:0.72~1.82) ●vilazodone(OR:1.01、95%CI:0.68~1.48)●desvenlafaxine(OR:0.94、95%CI:0.59~1.52)●citalopram(OR:1.72、95%CI:0.76~3.87)●ボルチオキセチン(OR:1.58、95%CI:0.29~8.60)・エスシタロプラム(OR:0.89、95%CI:0.43~1.84)は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」低下させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:低)。・以下の薬剤は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された。 ●fluoxetine(OR:1.27、95%CI:0.87~1.86) ●パロキセチン(OR:1.81、95%CI:0.85~3.86) ●セルトラリン(OR:3.03、95%CI:0.60~15.22) ●ベンラファキシン(OR:13.84、95%CI:1.79~106.90)・ベンラファキシンは、desvenlafaxine(OR:0.07、95%CI:0.01~0.56)およびエスシタロプラム(OR:0.06、95%CI:0.01~0.56)と比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:中)。・抗うつ薬間のその他の比較においては、エビデンスの確実性は非常に低かった。・全体として、ランダム化比較試験の方法論的欠如により、新規抗うつ薬の有効性および安全性に関する調査結果を解釈することは困難であった。 著者らは「ほとんどの新規抗うつ薬は、プラセボと比較し、うつ症状を軽減する可能性が示唆された。また、抗うつ薬間でのわずかな違いも認められた。しかし、本結果は、抗うつ薬の平均的な効果を反映しているため、うつ病は不均一な状態であることを考慮すると、患者ごとに治療反応が大きく異なる可能性がある。したがって、ガイドラインやその他の推奨事項を作成する際、新規抗うつ薬の使用が、状況により一部の患者に正当化される可能性があるかを検討する必要がある」としている。 さらに「自殺リスクを有する可能性のある小児および青年は、試験から除外されるため、その効果については明らかにならなかった。小児および青年への抗うつ薬使用を検討する際には、患者およびその家族と相談する必要がある。そして、新規抗うつ薬間の効果や自殺関連アウトカムの違いを考えると、治療効果および自殺関連アウトカムを注意深くモニタリングすることが重要であろう。さらに、ガイドラインの推奨事項に従い、心理療法、とくに認知行動療法を考慮することが求められる」としている。

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2種のmRNAワクチン、ウイルス量や罹患期間への効果も/NEJM

 COVID-19に対して承認された2回接種のmRNAワクチン2種(BNT162b2[Pfizer-BioNTech]とmRNA-1273[Moderna])の、リアルワールドにおける生産年齢成人への接種の有効性を調べた結果が報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが、医療現場の第一線従事者3,975例への接種について調べた前向きコホート試験の結果で、2回接種後14日以上経過した場合の有効率は91%、1回接種後14日以上経過した場合でも81%と、いずれも高い有効性が示されたという。承認されたmRNAワクチン2種のリアルワールドにおける有効性に関する情報は限定的であったが、試験の結果を踏まえて著者は、「リアルワールドの生産年齢成人において、承認済みワクチンは、SARS-CoV-2感染の予防において非常に有効で、またワクチンを接種したにもかかわらず感染症を呈した同成人の、ウイルスRNA負荷、発熱症状リスクおよび罹患期間を軽減した」と述べている。NEJM誌オンライン版6月30日号掲載の報告。 医療従事者、消防士、エッセンシャルワーカーなどを対象に試験 研究グループは2020年12月14日~2021年4月10日にかけて、医療従事者、消防士・警察官などのファーストレスポンダー、およびその他のエッセンシャルワーカーや第一線従事者3,975例を対象に試験を行った。被験者は、毎週、中鼻甲介スワブの採取により、定量的・定性的リアルタイムPCR検査を受けた。 ワクチン有効率は、100%×(1-ワクチン接種者の非接種者に対するSARS-CoV-2感染に関するハザード比)で算出。ワクチン接種の傾向や試験の実施場所、職業、地域のウイルス流行性などで補正を行った。感染者のウイルスRNA量もワクチン1回接種者で40%減 SARS-CoV-2が検出されたのは204例(全被験者の5%)で、そのうち完全ワクチン接種者(2回目接種から14日以上経過)は5例、不完全ワクチン接種者(1回目接種から14日以上経過、2回目接種から14日未満)が11例、非ワクチン接種者は156例だった。なお、1回目接種から14日未満だった32例については除外した。 補正後ワクチン有効率は、完全ワクチン接種者で91%(95%信頼区間[CI]:76~97)、不完全ワクチン接種者でも81%(64~90)だった。 SARS-CoV-2感染者において、平均ウイルスRNA量は、完全・不完全ワクチン接種者で非ワクチン接種者に比べ、40%少なかった(95%CI:16~57)。また、発熱症状リスクも58%低く(相対リスク:0.42、95%CI:0.18~0.98)、罹患期間も短く、病状が悪く寝ていた期間は平均2.3日(95%CI:0.8~3.7)短かった。

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日本のワクチン忌避者は11%、若年女性は高齢男性の3倍に

 2021年6月25日、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、日本初の新型コロナワクチン忌避に関する大規模オンライン調査の結果を発表した。 この調査は、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンター大久保 亮氏、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター吉岡 貴史氏、大阪市立大学大学院公衆衛生学大藤 さとこ氏、聖路加国際病院松尾 貴公氏、大阪国際がん研究センター田淵 貴大氏らの合同研究チームが行ったもので、結果はVaccines誌2021年6月号に掲載された。 研究チームは、2021年2月8〜26日に日本全国の2万6,000人を対象にワクチン接種の意向に関するオンライン調査を実施した(有効回答数は2万3,142人)。 「新型コロナワクチン接種を接種したいか」という設問に対する「接種したい」「様子を見てから接種したい」「接種したくない」の3つの選択肢の中から、「接種したくない」を選択した回答者を「ワクチン忌避者」と定義づけた。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン忌避者の割合は11.3%だった。年齢・性別で層別化すると、若年(15~39歳)女性の15.6%から高齢(65~79歳)男性の4.8%まで、大きなばらつきがあった。・ワクチン忌避の理由として最も多かったのは、「副反応への懸念」(74%)だった。・日本のワクチン忌避者の割合は、海外での調査で明らかになったものとほぼ同等で、若年者の割合は高齢者の2倍以上だった。・若年・女性のほかにワクチン忌避者の割合が高くなる背景としては、一人暮らし、年間100万円未満の低所得、中学卒業および短大・専門学校卒業の教育歴、政府ないしコロナ政策への不信感、重度の気分の落ち込みがある、が挙がった。 研究チームは、今回ワクチン忌避者の割合が高くなる背景が判明しており、これらの層にワクチンの適切な情報を確実に届けられるよう、措置を講じる必要があるとしている。

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高n-3系+低n-6系脂肪酸食、片頭痛の頻度と痛みを軽減/BMJ

 片頭痛の成人患者の食事療法において、高n-3系脂肪酸食と高n-3系+低n-6系脂肪酸食は、これらの脂肪酸が米国の平均量の食事と比較して、頭痛の病因に関与する生理活性メディエータに変化をもたらし、頭痛の頻度と重症度を軽減するが、QOLには影響を及ぼさないことが、米国・国立老化研究所(NIA)のChristopher E. Ramsden氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年7月1日号で報告された。3群で17-HDHAとHIT-6を評価する無作為化対照比較試験 研究グループは、片頭痛の成人患者において、高n-3系脂肪酸±低n-6系脂肪酸食による食事介入は、頭痛の病因に関与する循環血中の脂質メディエータを変化させ、痛みを軽減するかを検証する目的で、修正二重盲検無作為化対照比較試験を実施した(米国国立補完統合衛生センター[NCCIH]などの助成による)。本試験は、2014年7月~2018年5月の期間に、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校で行われた。 対象は、毎月5~20日間、片頭痛が発現し、前兆の有無を問わず国際頭痛分類(2004年版)の片頭痛の基準を満たす成人患者であった。 被験者は、n-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)+ドコサヘキサエン酸(DHA)と、n-6系脂肪酸であるリノール酸の含有量に基づく2種の食事介入群、および対照群の3群に無作為に割り付けられた。無作為化の際に、栄養士は割り付けられた食事について参加者に説明する必要があるため、割り付け情報をマスクされなかった。 介入群の1つは、EPA+DHAの量を1.5g/日に増量し、リノール酸をエネルギーの7.2%(米国の平均的な量)に保持した食事(H3食)で、もう1つは、EPA+DHAの量を1.5g/日に増量し、リノール酸をエネルギーの1.8%以下に減量した食事(H3-L6食)であった。対照食は、EPA+DHAの量を150mg/日未満(米国の平均的な量)、リノール酸をエネルギーの7.2%に保持した食事とした。すべての参加者は、1日の食事エネルギーの3分の2に相当する食事を摂取し、通常治療を継続した。 主要エンドポイントは、16週の時点における血中の抗侵害受容性メディエータである17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)および頭痛インパクトテスト(HIT-6、頭痛がQOLに及ぼす影響を評価する6項目の質問票)とされた。頭痛の頻度は電子日誌で毎日評価した。頭痛発現日数は、H3-L6食群でより少ない 182例(intention-to-treat集団、平均年齢38歳、女性88%)が登録され、このうち67%が慢性片頭痛の基準を満たした。H3食群に61例、H3-L6食群に61例、対照食群に60例が割り付けられた。 循環血中の17-HDHA値(log ng/mL)は、対照食群に比べH3食群およびH3-L6食群で上昇した(ベースラインで補正した対照食群との平均差[95%信頼区間[CI]]:H3食群0.7[0.4~1.1、p<0.001]、H3-L6食群0.6[0.2~0.9、p=0.001])。また、HIT-6スコアには、対照食群と比較してH3食群およびH3-L6食群で統計学的に有意な差は認められなかった(-1.5[-4.2~1.2、p=0.27]、-1.6[-4.2~1.0、p=0.23])。 対照食群と比較した1日の総頭痛発現時間(ベースラインで補正した対照食群との平均差[95%CI]:H3食群-1.3[-2.1~-0.5、p=0.001]、H3-L6食群-1.7[-2.5~-0.9、p<0.001])、1日の中等度~重度の頭痛発現時間(-0.7[-1.1~-0.3、p<0.001]、-0.8[-1.2~-0.4、p<0.001])、1ヵ月の頭痛発現日数(-2.0[-3.3~-0.7、p=0.003]、-4.0[-5.2~-2.7、p<0.001])はいずれも、H3食群およびH3-L6食群で短縮した。 1ヵ月の頭痛発現日数は、H3食群よりもH3-L6食群で2日減少しており(ベースラインで補正した平均差[95%CI]:-2.0[-3.2~-0.8、p=0.001])、食事中のリノール酸の量を少なくすれば、頭痛に関してさらなる利益が得られることが示唆された。 一方、H3食群とH3-L6食群では、血漿、血清、赤血球、免疫細胞中のn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸、および侵害受容性オキシリピン誘導体のいくつかが変化したが、古典的な頭痛メディエータであるカルシトニン遺伝子関連ペプチドやプロスタグランジンE2には影響がなかった。 著者は、「本研究は、ヒトでは食事を変えることで痛みの治療が可能との生物学的に妥当な証拠をもたらした。これらの知見は、n-3系およびn-6系脂肪酸と、侵害受容に関連する因果メカニズムの存在を示唆し、ヒトの慢性疼痛の管理における新たなアプローチへの道を開くものである」と指摘している。

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化学療法・ニボルマブ(オプジーボ)併用が胃がんと食道がんに対する標準治療となるか(解説:上村直実氏)

 今年5月のコメント1382で抗PD-L1阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が進行食道がんに対する1次治療に使用される可能性を記述したが、今回、HER2陰性の進行胃がんと食道胃接合部がんに対する1次治療の有用性がLancet誌にて報告された。日本を含む国際共同CheckMate試験の結果、1次治療として化学療法単独群と比較してオプジーボ・化学療法併用群が生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示されている。 通常、外科的切除不能な胃がんや食道腺がんに対する化学療法において抗PD-L1阻害薬は複数の化学療法が無効であった場合の3次治療として使用されている。すなわち、国内においてオプジーボは9つのがん種で承認されているが、胃がんや食道がんなどに対する適応は「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行がん」に限定されているのが現状である。 一方、最近の臨床試験では、複数の治療歴を有する切除不能進行がん・再発胃がん・食道胃接合部がんにおいてオプジーボはプラセボと比較して有意なOSの延長を認め、アジアの臨床研究においては化学療法との併用が1次治療として有望な抗腫瘍効果を示したところに今回の研究結果である。 今回の無作為化対照比較試験の研究対象はアジアを含む29ヵ国でリクルートされた未治療の切除不能進行胃がん・食道胃接合部がん1,581例であり、PD-L1 の発現率にかかわらず化学療法単独群に比べてオプジーボと化学療法の併用群は主要評価項目のOSとPFSともに有意な延長を示している。この研究結果を基に米国食品医薬品局(FDA)はPD-L1発現率にかかわらず、進行または転移のある胃がん、食道胃接合部がんおよび食道腺がんの1次治療薬として承認した。作用機序の異なる抗がん剤とオプジーボの併用療法が進行胃がん・食道腺がんに対する新たな標準治療となりうる画期的な結果と期待される一方、医療費の高騰や未知の有害事象の出現など課題も多く、さらなる注意深い観察が必要と思われる。 最後に、前回のコメントでも述べたように、日本における上部消化管がん診療は欧米とは大きく異なって早期発見による死亡率低下に注力しており、内視鏡検査により小さな早期がんを発見し、内視鏡的切除術(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)により根治することも可能となっていることを知っておく必要がある。

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第62回 ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か

<先週の動き>1.ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か2.今年4月の診療報酬がコロナ前を上回り、回復のきざし3.新制度による専門医資格、今秋から広告可能に4.来年度の社会保障費、高齢化で自然増6,600億円見込み5.外来化学療法や日帰り手術など、高度医療の状況報告へ6.20年度の医薬品回収は前年までの2倍超、今後の影響は?1.ファイザーがデルタ株ワクチン開発、8月にも治験開始か新型コロナワクチンBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)を開発した米国・ファイザーとドイツ・BioNTechは、世界的に感染が広がる新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」に特化したワクチンの開発を進めていることを、8日付のプレスリリースで明らかにした。臨床試験は早ければ8月に開始予定という。また、デルタ株に対しては、従来型ワクチンの2回接種でもある程度の抗体ができるほか、3回目の追加接種によって、さらに抗体価を高めることが可能との見方も示した。3回目接種については、すでに治験で良好な結果が出ており、8月にも米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する見込み。一方、今回の発表について、FDAとCDCは共同声明を発表し、現在使われているワクチンについて「接種を完了した人はデルタ株を含めた変異ウイルスに対しても重症化や死亡から守られている。現時点で、接種を完了した人に追加の接種は必要ない」としている。追加の接種に関しては、今後の科学的な知見に基づいて必要性が判断される。(参考)米ファイザー、デルタ株ワクチン開発 8月治験開始(時事ドットコム)ファイザー 変異ウイルス対応の新ワクチン 8月にも臨床試験へ(NHK)2.今年4月の診療報酬がコロナ前を上回り、回復のきざし厚労省は、新型コロナウイルス感染症による医療機関の収入の変化を、7日に開催した中央社会保険医療協議会の総会において報告した。今年4月分の診療報酬は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年同月比で、レセプト件数は-3.8%であるものの、総点数は+2.0%であった。受診患者数は増えない中も、さまざまな感染拡大防止策による診療報酬の加算によるものと考えられる。(参考)4月診療分総点数がコロナ前上回る、小児科診療所もプラス 厚労省、件数は依然戻らず(CBnewsマネジメント)資料 中央社会保険医療協議会 総会-コロナ・感染症対応(その1)(厚労省)3.新制度による専門医資格、今秋から広告可能に厚労省は8日、日本専門医機構による新専門医制度について、今秋からの認定開始に合わせて、基本領域19の専門医資格を広告可能とすることを「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で承認した。現行のルールでは、同機構の規模等が基準を満たしていないため、専門医の資格名を広告することができなかった。一方、より専門性の高いサブスペシャルティ領域の専門医については、機構内で認定の範囲が定まっていないため、今後議論を重ねていくこととなる。(参考)専門医資格、基本領域は今秋から広告可能 サブスぺ領域は保留に(CBnewsマネジメント)資料 専門医に関する広告について(厚労省)第18回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(同)4.来年度の社会保障費、高齢化で自然増6,600億円見込み政府は、2022年度予算の概算要求基準で、高齢化に伴う社会保障費の自然増として6,600億円程度を見込んでいることが、6日に開催された経済諮問会議にて明らかとなった。2022年度の予算の全体像で示された社会保障改革は、将来の医療需要に沿った病床機能分化・地域連携の推進や、包括払いの在り方の検討、オンライン診療の適正かつ幅広い活用など診療報酬の見直しを求めている。今後は、全世代型社会保障に向けた実施状況の検証や、持続可能な社会保障の総合的な検討を行っていく。(参考)社会保障費自然増6600億円 高齢化進展でー22年度概算要求基準(時事ドットコム)各省庁からの予算要求、100兆円突破の見通し…団塊世代「後期高齢者」で社会保障膨らむ(読売新聞)令和3年第10回経済財政諮問会議(内閣府)5.外来化学療法や日帰り手術など、高度医療の状況報告へ厚労省は、7日に「外来機能報告等に関するワーキンググループ」を初開催し、今後、人口減少や高齢化などにより地域ごとに「担い手の減少」や「需要の質・量の変化」が進むことを含めて、地域において外来機能の明確化・連携を進めていくため、2022年度から病院に対して、外来化学療法や日帰り手術などの高度な「医療資源を重点的に活用する外来」の実施状況を報告させることを明らかにした。また、200床以上の一般病床がある病院には、紹介状なしで受診した外来患者から定額負担の徴収を義務付け、かかりつけ医との連携を進める方向で、今後、さらに検討を進めていく。(参考)外来医療、基幹病院を明確化 厚労省 22年度から(日経新聞)外来医療の拠点機関を位置付けへ、厚労省 一般200床以上なら定額負担徴収を義務化(CBnewsマネジメント)資料 外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(厚労省)第1回外来機能報告等に関するワーキンググループ(同)6.20年度の医薬品回収は前年までの2倍超、今後の影響は?9日、厚労省は「医薬品・医療機器等の回収報告の状況について」を公表し、2020年度の医薬品の回収件数は341件で、前年までと比較して2倍以上に急増したことを明らかにした。同日に開催された薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会での報告。過去10年間、医薬品回収は200件を上回ることがなかったが、今年度は後発医薬品メーカーの製造体制を巡る問題をきっかけに、他メーカーも余波を受け、今年度に入っても状況は改善していない。この影響はしばらく続くと思われる。(参考)資料 医薬品・医療機器等の回収報告の状況について(厚労省)令和3年度 第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会(同)

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「売れなければ閉じればいい…」、閉院にいくらかかるかご存じですか?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第21回

第21回 「売れなければ閉じればいい…」、閉院にいくらかかるかご存じですか?漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所承継の相談を受けていると「まあ、売れなければ閉じますよ」とおっしゃる方がいます。ですが、実際のところ閉院というのは、そんなに簡単にできるものではありません。私たちも「閉院しようと思ったが、費用や労力がかかるので承継に切り替えたい」という逆の立場の方から相談を受けることがあります。閉院作業の何が大変なのでしょうか。まずは、今の患者さんを他院へ引き継ぐことです。通い慣れた患者さんを、それぞれの状況に見合った医療機関に紹介するのは手間暇のかかる仕事です。患者のレセプトは5年間保管する必要があり、その管理方法も決めなければなりません。テナントで開業していた場合、不動産の契約次第ですが、多くの場合は退去時に内装を原状復帰する必要があります。医療機器を廃棄するにも費用がかかりますし、とくにテナントをスケルトンに戻すのには300~600万円程度といった多額の費用を要するため、注意が必要です。医業承継と閉院で、かかる費用を比較してみましょう。<医業承継の場合>(1)譲渡金:2,000万円(仮)(2)医業承継の仲介手数料:▲520万円(3)テナントのスケルトン費用:▲0円(そのまま買い手が利用)(4)その他諸経費:▲50万円 ※テナント仲介契約費など 計:1,430万円<閉院する場合>(1)テナントのスケルトン費用:▲300万円(2)その他諸経費:▲100万円 ※医療機器廃棄費など 計:▲400万円上記のとおり、金銭的なメリットは医業承継が勝ることがわかります。閉院を検討する際にも医業承継などその他の方法と、労力、費用、得られる対価などを比較し、そのうえで判断することをお勧めします。

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第39回 四分位範囲と四分位偏差とは?【統計のそこが知りたい!】

第39回 四分位範囲と四分位偏差とは?今回は、四分位範囲と四分位偏差について解説します。データを小さいほうから並べたとき、最小値から4分の1にある点を第1四分位点、中央にある点を中央値、最大値から4分の1にある点を第3四分位点と言います。第3四分位点と第1四分位点との差を四分位範囲と言い、四分位範囲の半分の値を四分位偏差と言います。標準偏差と同じく集団のバラツキをみる指標です。四分位範囲や四分位偏差が大きければ、「データのバラツキが大きい」といえます。極端に大きな値または小さな値(外れ値)があるとき、標準偏差はその影響を受けますが、四分位範囲や四分位偏差はデータの中央50%で決まるので影響を受けにくいのです。■四分位偏差(Quartile deviation)の求め方下表のデータを利用して、データA、Bそれぞれの四分位偏差を求めてみましょう。四分位偏差を求めるには、まず四分位範囲(Interquartile range)を求めなければなりません。結果、データAの四分位偏差は1.00、データBの四分位偏差も1.00となり、データAにある極端に大きな値(外れ値)の“100”というデータの影響を受けていないことがわかります。■四分位範囲・四分位偏差に関する留意点上記の例をみると、標準偏差に大きな差がありますが、四分位偏差は同じになりました。これは四分位範囲・四分位偏差という指標が標準偏差よりも大きな値または小さな値(外れ値)の影響を受けにくいからです。繰り返しになりますが、四分位範囲・四分位偏差が大きければ、データのバラツキが大きいといえます。ただし、四分位範囲・四分位偏差によるデータのバラツキは中央値周りのものを表す値であり、分散・標準偏差によるデータのバラツキは平均値周りのバラツキを表す値です。単純にデータのバラツキといっても、両者では意味合いが違うということを覚えておきましょう。【豆知識】第1四分位点のことを「下ヒンジ」、第3四分位点のことを「上ヒンジ」ともいいます。なぜ「ヒンジ」かというと、ヒンジはそもそも蝶番のことで、箱ひげ図が蝶番のようにみえるからとも言われています。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション3 データのバラツキを調べる標準偏差セクション5 標準誤差(SE)とは

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すべては次のステップのため!業務の合間を縫って行う地道過ぎる書類作業【臨床留学通信 from NY】第23回

第23回:すべては次のステップのため!業務の合間を縫って行う地道過ぎる書類作業今回も、フェローシップの応募について、引き続き自身の経験をご紹介します。必要な書類を揃えたら、ERASというウェブサイトに書類をひたすらアップロードしていきます。手続きにおいてやらなければならないことは、レジデンシーのマッチングと同様です。CV(履歴書)は形式が決まっており、各々の項目を地道に埋めていくのですが、ある程度は自分で作ったフォーマットのCVからのコピー&ペーストで作成していくことができます。PS(Personal Statement)は、基本的な骨格となるPSを作成した後、希望する病院ごとに自分でアップロードします。一方、推薦状はなかなか大変で、こちらが見ることができないように推薦状を書いた人がアップロードしなければならず、煩雑な作業なのでどうしても遅れがちになるので、毎週のようにリマインドをしなければいけません。期日までに書類が万全に揃えられるまでは、神経を尖らせる必要があります。また、マッチングの応募には医学部時代の実習内容とその成績などが書かれたMSPE (medical student performance evaluation)を出身大学に依頼し、医学部長のサインが入った書類を取り寄せる必要があり、1ヵ月ほど余裕をみて行う必要があります。ちなみに、レジデントの時は大学側にアップロードをしてもらう必要がありましたが、フェローシップの際は自身でもアップロードできるようです。プログラム側は、そのプログラムに応募した志願者の書類のみ閲覧できる仕組みで、一斉に閲覧できるようになる期日までにすべての書類をERASにアップロードしなければなりません。そのプログラムの数は、cardiologyでは全米で約240あり、このうちJ1 visaを受け付けているのが約190でした。自分のレベルがどの程度か、というのは蓋を開けてみないとわからない(余裕だろうと油断して少なく応募したらまったく呼ばれず、慌てて追加応募しようとしても時すでに遅し、ということもあり得る)のと、私の場合は卒後年数が10年を超えているので、高い確率でスクリーニングで落とされるだろうという危惧があったため、結果的に190すべてに申し込み、その費用として40万円近く掛かりました。Column画像を拡大するこちらの写真はMount Sinai Beth IsraelのInternal medicineの卒業パーティです。苦楽を共にした仲間たちと祝い、労い合いました。振り返ると、最後の1年は予想もしなかったコロナ治療に忙殺されるなどなかなか大変な3年でしたが、その分、実りも多かったです。3年間の集大成として、卒業前に共同筆頭著者/責任著者として執筆した論文がJournal of American College of Cardiology誌に1本の論文がアクセプトされました。Onlineになったらまたご報告します。

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ASCO2021 レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のASCOは、昨年に引き続き完全Webでの開催であり、肺がん領域については周術期での重要な発表がいくつかあったものの、進行期については真新しい話題は乏しい印象であった。本稿では、その中からIMpower010試験、IMPACT(WJOG6410L)試験、CheckMate9LA試験、amivantamab+lazertinib併用療法Phase I試験、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)Phase I試験、JCOG1210/TORG1528試験について解説したい。IMpower010試験完全切除後の非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてシスプラチン+ペメトレキセド/ゲムシタビン/ドセタキセル/ビノレルビンを最大4サイクル実施した後に、経過観察群と、アテゾリズマブ1,200mg/body 16サイクルを比較する第III相試験の結果が、Heather A. Wakelee先生から報告された。本試験では、完全切除後の非小細胞肺がん、病理病期StageIB~IIIA、1,280例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。本試験はヒエラルキカルに3つの主要評価項目、順にPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期における無病生存期間、II~IIIA期全体での無病生存期間、IB~IIIA期、最後に全生存期間の解析が実施されるプロトコールとなっている。今回報告されたのは、無病生存期間の第1回中間解析の結果である。最初の解析対象となるPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期においては、ハザード比が0.66、95%信頼区間0.50~0.88、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群で未到達、経過観察群で35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示されている。次の対象となるII~IIIA期全体での無病生存期間においても、ハザード比が0.79、95%信頼区間0.64~0.96、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群42.3ヵ月、経過観察群35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示された。一方、IB~IIIA期においては、ハザード比が0.81、95%信頼区間0.67~0.99、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群未到達、経過観察群37.2ヵ月という結果であり、今回の中間解析では統計学的な優越性は示されなかった。この結果に基づき、全生存期間の解析は現時点では公式なものではないが、両群で明らかな差はないという結果が報告されている。有害事象に関しては、アテゾリズマブで従来報告されていた内容と大きな違いは認められなかった。周術期治療においては、免疫チェックポイント阻害剤を用いた術前、術後、さらには術前+術後の臨床試験が実施されている。その中でも、今回のIMpower010試験が、術後療法についてはいち早く報告された。PD-L1 TC≧1%のII~IIIA期の集団において、無病生存期間で明確な利益が示されているだけでなく、今後観察期間が延長された段階での無病生存期間の中間解析、さらには、全生存期間の結果を期待したい。IMPACT(WJOG6410L)試験WJOGで実施された、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのシスプラチン+ビノレルビン療法と試験治療としてのゲフィチニブを比較する第III相試験の結果を多田先生が報告された。本試験では、完全切除後に病理病期でII期もしくはIII期と診断されたEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん、230例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおける、EGFR-TKIを用いたPhase III試験としては、アストラゼネカ社が主導したADAURA試験、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験がすでに報告されている。ADAURA試験では第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブが、ADJUVANT試験ではIMPACT試験同様にゲフィチニブが、EGFR-TKIとして用いられている。とくにADAURA試験では、無病生存期間においてオシメルチニブの明らかな優越性が示されたものの、進行肺がんでのEGFR-TKIの治療成績を踏まえて、全生存期間ではその差が解消されてしまうのではないか等の見解が示され議論を呼んでいる。一方、ゲフィチニブを用いたAJUVANT試験においては、ゲフィチニブのシスプラチン+ビノレルビンに対する、無病生存期間での優越性がハザード比0.60、95%信頼区間0.42~0.87で示されている。中国で行われたADJUVANT試験に比べても、いち早く立案されたIMPACT試験の結果は、日本国内だけでなく、世界的にも注目を集めていた。今回、残念ながら主要評価項目である無病生存期間、今後追跡される予定である副次評価項目の全生存期間いずれにおいても、試験治療であるゲフィチニブの優越性は示されないという結果であり、驚きをもって迎えられている。無病生存期間については、ハザード比0.92(p値0.63)、期間中央値はゲフィチニブで35.9ヵ月、シスプラチン+ビノレルビン療法で25.0ヵ月であり、全生存期間については、ハザード比1.03(p値0.89)、期間中央値は両群とも未到達という結果であった。同様のデザインで実施されたADJUVANT試験では、4年時点で両群ともに無病生存がほぼゼロとなっていたのに比べ、IMPACT試験の無病生存曲線は、5年目以降、約30%のところで平坦になり3人に1人で根治が得られていることが示唆されている。さらに、ADJUVANT試験においては、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンの無病生存期間中央値が18.0ヵ月、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月であったのに対し、IMPACT試験では標準治療群でも25.0ヵ月、試験治療群では35.9ヵ月と明らかに異なる結果であった。ADAURA試験においては、プラチナ併用療法による術後療法を実施していない患者も含む解析での標準治療群の無病生存期間中央値は20.4ヵ月(II~IIIA期)であり、プラチナ併用療法による術後療法を実施された患者集団での無病生存期間中央値は22.1ヵ月(ただしこちらはIB期含む)という結果であった。これらの試験結果より、IMPACT試験において、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンによる無病生存期間が最も良好であることが、主要評価項目を達成できなかった1つの要因となっていると考えられる。さらに、試験治療群についても、ゲフィチニブに比べオシメルチニブの有効性が高いことが示唆される。IMPACT試験は、残念ながら主要評価項目を達成できなかったものの、今後もフォローアップの結果が得られ、また、実臨床にも応用される可能性のあるEGFR-TKIによる術後療法について、考察を深めるために必須の情報をもたらした重要な試験と評価でき、追加解析の結果含め期待したい。CheckMate9LA試験CheckMate9LA試験は、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのプラチナ併用療法(腺がんプラチナ+ペメトレキセド、扁平上皮がんカルボプラチン+パクリタキセル、いずれも3週おき4サイクル、ペメトレキセドは維持療法あり)、試験治療としてのプラチナ併用療法(3週おき2サイクル)にニボルマブ(Nivo、360mg/body、3週おき)、イピリムマブ(Ipi、1mg/kg、6週おき)を追加し、Nivo+Ipiについては増悪もしくは2年までの維持療法実施を比較する第III相試験であり、Martin Reck先生が報告された。本試験では、EGFR陰性、ALK陰性、PS 0~1のIV期もしくは再発の非小細胞肺がん、719例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。2020年のASCOでの初回報告から、追跡期間を延長し最短でも2年の追跡がされたデータセットでのアップデート報告である。進行非小細胞肺がんにおいては、プラチナ併用療法に対するNivo+Ipiの優越性を示したCheckMate227試験の結果も併せて、日本においてもNivo+Ipi、Nivo+Ipi+プラチナ併用療法が承認され、実臨床で実施可能な状態となっている。今回、CheckMate227試験は、4年のフォローアップ結果がポスター発表されており、PD-L1 TPS≧1%、<1%のそれぞれの群における4年の全生存割合が29%、24%であり、長期生存につながることが示されている。CheckMate9LA試験の2年フォローアップ結果では、全生存期間については、ハザード比0.72、95%信頼区間が0.61~0.86、全生存期間中央値はNivo+Ipi+プラチナ併用療法群で15.8ヵ月、プラチナ併用療法群で11.0ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.67、95%信頼区間が0.56~0.79、無増悪生存期間中央値は試験治療群で6.7ヵ月、標準治療群で5.3ヵ月であった。2年の全生存割合については、全体集団、PD-L1 TPS≧1%、≦1%においてそれぞれ、38%、41%、37%、2年の無増悪生存割合についても同様の順番で、20%、20%、20%であった。この結果は、PD-L1の発現状況によらず維持されており、従来指摘されているPD-1とCTLA-4の双方を阻害する併用療法の特徴が再現されている。有害事象に関しては、すべてのGrade3/4について試験治療群48%、標準治療群で38%、いずれかの治療の中止に関連したすべての有害事象が試験治療群で22%、標準治療群で8%、治療関連死が両群ともそれぞれ2例であった。昨年の報告時と比べ、有害事象の頻度はほとんど変動しておらず、Nivo+Ipi併用療法に懸念されている有害事象も、多くは1年以内に発生していることが示唆された。フォローアップ期間が延長されるたびに、いわゆるTail plateauと呼ばれる生存曲線後半がフラットになっているかが注目され、今回のCheckMate9LA試験では従来に比べ曲線がフラットになっていない印象があることが話題になっている。ただ、生存曲線の後半の部分は、打ち切り症例の影響を受けやすく、最も信頼できない部分でもあり、他の免疫チェックポイント阻害剤の試験と同様に、5年などの長期の結果を待たなければならない。CheckMate9LAについては、プラチナ併用療法が含まれていないものの、同様の併用療法であるCheckMate227試験の4年のデータが、ある程度長期の成績を占うものとして参考になると考えられる。amivantamab+lazertinib近年、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者を対象とした、次世代の治療について期待の持てる結果が報告されている。オシメルチニブ耐性後の患者に対して、amivantamabとlazertinibの併用療法を検討するCHRYSALIS Phase I試験について有効性に関するアップデートと、バイオマーカー解析の結果が報告された。amivantamabはEGFRとMETを標的としたBispecific抗体であり、EGFRやMETそのものに対する効果だけでなく、免疫細胞を介在した効果(immune cell-directing activity)も期待されている薬剤である。lazertinibはオシメルチニブ同様第3世代EGFR-TKIに位置付けられる薬剤である。今回の報告では、EGFR経路の耐性機序、METに関連する耐性機序を有することがバイオマーカー解析の結果判明した集団と、それらの耐性機序が明らかではない集団での有効性が示された。EGFRやMETに何らかのオシメルチニブ耐性機序が出現していた集団での奏効割合は47%、他の耐性機序が報告されている患者集団での奏効割合が29%であった。全体集団での奏効割合は36%、無増悪生存期間中央値が4.9ヵ月であった。今回有害事象に関する追加データは乏しかったものの、amivantamabには従来EGFR抗体として特徴的な皮疹等の有害事象に加え、比較的高い割合の患者で注入に伴う反応が報告されており、適切な支持療法の併用が求められる。今回の結果から、従来示されているように多様な耐性機序が混在するオシメルチニブ治療後の患者集団においても一定の効果が期待されるものの、可能な限り耐性機序を明らかにすることにより、より高い有効性を追求することができることも明らかになった。patritumab deruxtecan(HER3-DXd)オシメルチニブを中心としたEGFR-TKI耐性化後の治療薬として注目されているもうひとつのカテゴリーが、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)である。複数のADCが開発中であるが、その中でも注目を集めている薬剤がpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)である。HER3に対する完全ヒト化モノクローナル抗体であるpatritumabに、トラスツズマブ デルクステカンでも用いられているトポイソメラーゼ阻害剤をペイロードとして付加したADCである。今回は、Phase I試験のうち、用量漸増パートと、拡大コホートの結果が報告された。オシメルチニブだけでなくさまざまなEGFR-TKI耐性化後の患者が登録され、有効性については前治療によらず39%の奏効割合が報告され、無増悪生存期間中央値も8.2ヵ月と、オシメルチニブ後の治療薬として期待される結果であった。耐性機序別にみても、オシメルチニブ等EGFR-TKIに対する多様な耐性に対応できることが示されている。また、今回は、脳転移を有する患者に関するサブグループ解析も報告されたが、脳転移を有する集団においても同様の有効性が示されていた。HER3を標的としたADCであることから、HER3の発現状況によって有効性に違いがあるのではと従来指摘されていたが、今回の報告では、H-scoreで評価したHER3の発現の強度によらず効果が示されていることが示された。Grade3以上の有害事象としては、血小板減少、好中球減少、倦怠感、貧血等が報告されており、有害事象による治療中止は10%前後であった。トラスツズマブ デルクステカンで注目されている肺障害についても、今回、全体集団で出現割合が5%とされており、注意は要するものの大きな懸念は示されなかった。今後単剤での開発だけでなく、オシメルチニブとの併用療法等の開発も検討されており、期待したい。JCOG1210/TORG1528試験JCOG肺がん内科グループ、TORGのインターグループ試験として実施された、71歳以上の高齢、進展型小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのカルボプラチン+エトポシド(CE療法、カルボプラチンAUC5、エトポシド80mg/m2)、試験治療としてのカルボプラチン+イリノテカン(CI療法、カルボプラチンAUC4、イリノテカン50mg/m2)を比較する第II/III相試験の結果を、研究事務局の下川先生が報告された。本試験では、71歳以上の進展型小細胞肺がん、258例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。高齢者進展型小細胞肺がんにおいては、JCOG9702試験の結果に基づき、日常診療で幅広くCE療法が実施されている。本試験は、JCOG9511試験において、シスプラチンの併用療法薬としてエトポシドに対する優越性を示したイリノテカンを、高齢者においても検討することを目的に実施されている。残念ながら主要評価項目である全生存期間、副次評価項目である無増悪生存期間いずれにおいても、試験治療であるCI療法の優越性は示されず、CE療法が変わらず標準治療とされるという結論であった。全生存期間については、ハザード比0.848、95%信頼区間が0.650~1.105、全生存期間中央値はCE療法で12.0ヵ月、CI療法で13.2ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.851、95%信頼区間が0.664~1.090、無増悪生存期間中央値はCE療法で4.4ヵ月、CI療法で4.9ヵ月であった。有害事象(Grade3以上)に関しては、CE療法、CI療法それぞれについて、白血球減少59.2%、16.1%、好中球減少87.2%、46.0%、貧血28.0%、12.9%、血小板減少27.2%、12.9%、発熱性好中球減少症11.2%、9.7%であった。残念ながら高齢者進展型小細胞肺がんにおいて、新たなプラチナ併用療法の有効性が示されることはなかったものの、アテゾリズマブ、デュルバルマブ等免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の登場で使用頻度の増えたCE療法について、高齢者も含め国内多施設臨床試験での有効性、安全性のデータが得られ、今後の追加解析の結果が待たれる。さいごに昨年に続くVirtual meetingであり、発表者、司会者、聴講者ともに、Webでの学会運営への習熟が明らかなASCOであった。おそらく今後も、Webでのライブ配信は継続されるのではないかと思われるが、来年こそはシカゴで開催したいという参加者の熱意が感じられた。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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認知症またはMCIの高齢者に対するVR介入~メタ解析

 バーチャルリアリティ(VR)介入は、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患の患者にとって、革新的かつ効果的なリハビリテーションツールとして期待されている。中国・南京医科大学のShizhe Zhu氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における認知機能や運動機能に対するVR介入の有効性を評価するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年5月5日号の報告。 2020年4月までに公表された関連文献を、7つのデータベースよりシステマティックに検索した。60歳以上のMCIまたは認知症の患者を対象としてVR介入の検討を行ったランダム化比較試験を含めた。主要アウトカムは、全体的な認知機能、包括的な認知機能、注意、実行機能、記憶、視空間認知能力を含む認知機能とした。副次的アウトカムは、全体的な運動機能、バランス、歩行を含む運動能力とした。不均一性の潜在的な因子を特定するため、研究の特徴に基づいてサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析には、11研究、359例が含まれた。・主要アウトカムの解析では、以下の認知機能に対するVR介入の有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●全体的な認知機能:g=0.45、95%信頼区間(CI):0.31~0.59、p<0.001 ●注意/実行機能:g=0.49、95%CI:0.26~0.72、p<0.001 ●記憶:g=0.57、95%CI:0.29~0.85、p<0.001 ●包括的な認知機能:g=0.32、95%CI:0.06~0.58、p=0.02・副次的アウトカムの解析では、全体的な運動機能に対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:小)。 ●全体的な運動機能:g=0.28、95%CI:0.05~0.51、p=0.018・バランスのエフェクトサイズに対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●バランス:g=0.43、95%CI:0.06~0.80、p=0.02・視空間認知能力と歩行のエフェクトサイズには、統計学的に有意な影響は認められなかった。・サブグループ解析では、VRのイマージョンタイプと診断名において不均一性が検出された。 著者らは「VR介入は、MCIまたは認知症高齢者の認知機能および運動機能を改善するために有用な非薬理学的アプローチであることが示唆された。とくに、注意/実行機能、記憶、全体的な認知機能、バランスに対する有意な効果が認められた。一方、視空間認知能力や歩行パフォーマンスに対する効果は認められなかった」としている。

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