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降圧薬の第1選択としての4剤合剤(解説:石川讓治氏)

 心血管イベントを抑制するうえで、高血圧を速やかに改善し、確実に目標血圧レベルまで到達することが重要である。わが国の日常臨床で行われている1剤ずつ増量していく方法では、目標血圧レベルへの到達に時間を要する場合があり、その間の心血管イベントリスク増加が問題になっている。近年、降圧薬の合剤が広く使用されるようになり、降圧薬の第2、第3の選択枝として、ポリファーマシーの改善の目的で臨床応用されている。わが国では3剤合剤も使用可能であるが、その使用法に厳しい制限がされており、臨床の現場で使用するうえで困難を感じる場合も多い。 本研究は、降圧薬の第1選択薬として、それぞれ4分の1量の4剤合剤(イルベサルタン37.5mg+アムロジピン1.25mg+インダパミド0.625mg+ビソプロロール2.5mg)と通常量の単剤(イルベサルタン150mg)の降圧度と忍容性を12ヵ月間評価した研究である。ノンレスポンダーが存在する可能性のあるアンジオテンシンII受容体阻害薬がコントロール群に使用されており、4剤合剤投与群に若干有利な研究デザインになっているようにも思われるが、診察ごとに目標血圧に達するまで降圧薬を追加できるプロトコールになっている(アムロジピンから追加)。当然、コントロール群において追加された降圧薬は多かったが、それにもかかわらず12ヵ月の時点で、4剤合剤群では診察室の自動血圧測定における収縮期血圧で6.9mmHg低値であり、目標血圧への到達率は76%(コントロール群58%)と、有意差(p<0.001)が認められた。以前の2剤合剤、3剤合剤の研究同様に降圧薬の第1選択薬としての合剤の有効性が示された。問題となる副作用に関しては、4剤合剤群においてめまい(dizziness)が多い傾向が認められ(p=0.07)、有意にカリウム値が低く、尿酸、空腹時血糖、クレアチニン値が高値であったが、重篤な副作用は2群間で有意差は認められなかった。 降圧薬の第1選択薬として、合剤を使用することは欧米の高血圧治療ガイドラインではすでに認められており、そのための対象患者や血圧基準が記載されている。しかし、わが国では、降圧薬合剤の添付文書において第1選択薬として使用しないように記載されているものが多い。心血管イベントの抑制のためには降圧薬合剤を第1選択にすることの有効性が副作用による不利益を上回ると考えられているが、万が一の副作用を重要視するわが国の風潮が影響しているのであろうか? 高齢化の進んだわが国において、降圧薬合剤を第1選択とできるようにするためには、より厳格な適応基準が必要であり、薬のリスクに対する患者や社会への説明と理解も必要であろう。また、4剤合剤投与で副作用が起こった場合に実地医師がどのように対応するかといった指針も必要になるものと思われる。

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代用塩(Salt substitute)の摂取と心血管イベントや死亡の減少(解説:石川讓治氏)

 食塩の過剰摂取が高血圧の原因の1つであり、日本高血圧治療ガイドライン2019においてもDASH食などの研究に基づいて食塩6g/日、カリウムやマグネシウムを含む野菜や果物を食べることが推奨されている。しかし、日本人の食塩の摂取量はその2倍近くあり、高血圧患者における食事療法は困難を要する。 本研究は中国のへき地において、高血圧を有し脳卒中既往もしくは年齢60歳以上であった対象者に対して(平均年齢65歳程度、BMI 25弱)、代用塩(75%の塩化ナトリウムと25%の塩化カリウム)を使用した地域と通常の食塩を使用した地域に無作為割り付けし、平均4.74年間追跡し、総死亡、心血管死亡、脳卒中発症、非致死性急性冠症候群発症のすべてのイベントにおいて、代用塩を使用した対象者において通常の塩を使用した対象者よりも有意に少なかったことを報告した。本研究において、割り付け群が研究対象者にオープンにされた効果の影響も否定できないが、降圧効果によって心血管イベントのみならず総死亡まで有意に低下していることは驚きであった。オーストラリアの研究費を用いて中国のへき地で研究が行われてはいるが、塩分摂取量が多いアジア人でイベント抑制効果が認められており、わが国においても代用塩の普及が進む可能性がある。代用物として塩化カリウムが使用されており、高齢化の進むわが国では腎機能低下者における高カリウム血症による突然死の増加が危惧されるが、本研究においては有意な突然死の増加は認められなかった。 スーパーマーケットでは、さまざまな減塩調味料があり代用塩も売られている。味や値段はどうだろうかと興味がわいた。腎機能障害のある人でも摂取しやすくするため塩化カリウムは含まれていないことを大きく記載しているものも認められた。自治医科大学が日本のへき地で行ったJMSコホート研究の対象者は脳卒中発症が心筋梗塞発症より多く、本研究の対象者より肥満者が少なかった。そのため本研究の結果をすぐに日本人に当てはめることは難しいかもしれないが、高齢化が進み、塩分摂取量が多く、肥満度の少ない、わが国においても同様の結果が認められるかどうか今後の研究が待たれる。

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ショパンの死因は結核性心膜炎だった?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第195回

ショパンの死因は結核性心膜炎だった?pixabayより使用現在、ポーランドで第18回ショパン国際ピアノコンクールが開催されています。私も、時間があるときに注目のピアニストの演奏を聴いています。インターネットがなかった頃は、音楽誌の速報を見るしかなかったので、YouTubeすごいなと感心します。さて、ショパンは誰もが知る作曲家で、「別れの曲」や「革命のエチュード」などが有名ですね。そんな彼の死因についての論文です。ちなみに、10月17日が彼の命日です。Witt M, et al.Inheritance vs. infectivity as a mechanism of malady and death of Frederic ChopinJ Appl Genet . 2021 Aug 4. doi: 10.1007/s13353-021-00651-2.タイトルにもう答えが書いているんですが、ショパンは長らく結核を罹患していることはわかっていたものの、直接的な死因についてはよくわかっていませんでした。結核病棟の患者さんをたくさん診ていますが、結核の死亡は多くが呼吸不全です。しかし、ショパンは違ったのかもしれません。実は、2014年にショパンの心臓が肉眼的に解析されたことがあります。すると、どうやら結核性心膜炎を罹患していたことがわかりました。結核において心膜炎の合併はまれなのですが、当時は治療薬などなかったですから、これが急速な病状悪化につながったのではないかと、この論文では論じられています。ただ、ショパンを実際に診察した医師の記録によれば、彼は階段の昇り降りだけで強い呼吸困難感を訴えており、もしかすると在宅酸素療法が必要なくらい慢性呼吸不全がひどかった可能性があります1)。そのため、心膜炎も併発していたが、肺もボロボロだったのではないかと考えられます。一方で、20年間血痰の症状があったという記録もあって、さすがに結核の自然経過には合わないのではないかとする研究者もいます。家族にも同様の症状があったことから、嚢胞線維症だったのでは、という学説もあります2)。まぁ現時点で菌の証明ができていないので、すべて推測に過ぎないんですけど……。ショパンを病理解剖したCruveilhier医師の剖検記録は、第2次世界大戦のパリ戦火によって失われてしまいました。診断書に書かれている「肺結核」「喉頭結核」という言葉のみが、唯一残された病名なのです。1)Hazard J. The adventures of doctor Jean Matuszinski, friend of Frederic Chopin, from Warsaw in 1808 to Paris in 1842. Hist Sci Med. 2005 Apr-June;39(2):161-8.2)Majka L, et al. Cystic fibrosis--a probable cause of Frederic Chopin's suffering and death. J Appl Genet. 2003;44(1):77-84.

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第78回 与野党の政策を党別分析、ツッコミどころ満載なその政策とは?(前編)

10月4日、岸田 文雄自民党総裁が第100代内閣総理大臣に選出され、岸田内閣がスタートした。そしてこの日の夜、首相としての初の記者会見では、衆議院を14日に解散し19日公示、31日投開票の日程で衆議院選挙を行うと方針を明らかにした。見た目は温和な岸田首相の電光石火な行動ぶりにはさすがに驚いた。首相就任から最初の解散までの期間は戦後最短である。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行が沈静化している中で、いわゆる新内閣発足のご祝儀相場と呼ばれる高めの支持率や野党側の候補者調整のもたつきを踏まえた判断とみられる。もっとも報道各社が行った世論調査での岸田内閣の支持率は高いものでも60%に達しない。その意味では電撃解散決定が支持率の足かせになったかもしれない。さてということで、国政最大の山場である衆議院選が間近となった。自民党の衆議院選に向けた政策はまさに前回紹介した岸田首相の政策がかなり反映されるとみられるが、それ以外の各党はどんな政策を掲げるのか? 政治話続きで申し訳ないが、この際各党が今回の選挙で掲げている社会保障・医療関連分野の政策・公約について「私見」を交えて見ていきたい。まずは与党の公明党はっきりいって私個人は国内の全政党の中でこの政党ほどある部分では政策が明確で、一方である部分は不明確な政党もないと思っている。「何言っているんだ?」と思われるかもしれない。端的に言うと、この政党の柱となる政策は従来から「お金を配る」か「無償化」の2つしかない。それ以外は言っちゃ悪いが、多少の流行に合わせて言葉を並べただけである。それでは見ていこう。まず「2021年衆院選・重点政策 『日本再生へ新たな挑戦』 I.子育て・教育を国家戦略に」。ここでは子供の成長に合わせて『結婚』『妊娠』『出産』『幼児教育・保育』『小中学校』『高校等』『大学等』のステージを設定し、各時期の政策が列記してある。少子化対策の一つとも言える「妊娠」「出産」関連では、「不妊治療の保険適用」とあるが、これは菅内閣で道筋が付きつつあり目新しさはない。さらに「不妊治療と仕事の両立支援」「カウンセリング体制の充実」とあるが、具体策の記述はない。また、「出産」に関しては、「出産育児一時金(現行42万円)の50万円への増額をめざす」とあり、十八番のお金配りが登場する。この件、現在では広く知られているように、一時金が上昇するたびに都市部の民間病院ではベーシックな出産費用も上昇するイタチごっこになり、出産予定者への支援として実効性が疑問視されている。「0~2歳児の産後ケアや家事・育児サービスを拡充」との記述もあるが、これは前述の「妊娠」項目での後者2つの政策同様、聞こえの良いメッセージを並べた程度にしか解釈できない。極めつけは「高校3年生まで無償化をめざし子どもの医療費助成を拡大」。過去の老人医療費無償化や現在各自治体で行われている小児医療費無償化を見ても、安易な受診というモラルハザードを招く側面が多いことが知られている。財源云々を抜きにして、手垢がつき過ぎたポピュリズム政策で、あまり感心できない。なお、最近よく報じられる健康状態が悪い家族のケアに時間を取られる子供、いわゆる「ヤングケアラー」問題については「ヤングケアラー等の家事・育児支援」を掲げている。流行りに乗ったとも言えるかもしれないが、むしろ単純なお金配りよりも、こうした点でより具体的な提案をしたほうが良いと思うのだが。一方、新型コロナ対策についても「2021年衆院選・重点政策 『日本再生へ新たな挑戦』 III.感染症に強い日本へ」で言及している。ここでの訴えを要約すると、▽国産ワクチン・治療薬の開発支援とその確保の強化▽非常時の病床確保▽PCR検査などの検査能力拡大となる。ちなみにこの中で「ワクチンの3回目ブースター接種の無料化」との記述もあるが、行政が重視する施策の連続性などを考慮すれば無料化は既定路線であって、わざわざ政策として記述する必要を感じない。言ってしまえば、十八番の無償化路線に沿って並べたに過ぎないとしか思えない。また、これは公明党に限らず各党が言いがちな国産ワクチン・治療薬の実現だが、言うほど簡単なことではなく、むしろ創薬を甘く見過ぎである。具体例として現在、経口治療薬で先行するメルクで解説しよう。メルクは今回の新型コロナパンデミック当初にワクチン、治療薬開発のために買収と業務提携を各1件、治療薬での業務提携1件を行っている。後者の成果として注目されているのが上市間近と言われる、経口薬のmolnupiravirである。これらの提携や買収の費用はすべて公表されているわけではないが、買収では日本円で400億円程度を要している。そのためこれらの提携に支払った総額は1,000億円程度と推定されている。しかし、このうち買収先でのワクチン開発はすでに中止を決定している。言ってしまえば1,000億円の身銭を切って、400億円はドブに捨てたようなもの。つまりそれだけ大胆なアライアンスを実行しなければならない。日本の製薬企業にこれだけの余裕があるはずもなく、国の支援だけでどうにかなる話ではない。危機に際してだけ数億円程度をつぎ込んでもなんともならないことを日本の政治家は知るべきである。一方、病床確保や検査関連では「後遺症の予防策や治療方法の開発促進のために、実態把握と原因究明の調査・研究に取り組む。また、地域で後遺症の相談ができる体制を整備」という点がほかの政党の公約にはない政策である。もっとも前述したように「お金配り」と「無償化」以外はほぼ実績のない政党であるため、どれだけ本気で取り組むかは未知数である。次いで最大野党の立憲民主党同党の前身である民主党は無償化政策など、やはり耳に聞こえの良い政策を盛り込んだ「マニフェスト」と呼ばれる政策集を掲げて2009年に政権を獲得したものの、それら政策の財政的裏付けが脆弱だったことが白日の下にさらされ、政権から滑り落ちたのは周知のこと。もっとも従来から前身の民主党、その後の立憲民主党は野党第一党ということもあってか、公明党よりは政策の記述内容は充実していることが多い。同党は「#政権取ってこれをやる」とのハッシュタグで9月7日以降、10月5日現在Vol.8まで政策を発表している。そのVol.1「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」では、官邸に総理直轄で官房長官をトップとする新型コロナウイルス感染症対策の新たな指令塔「新型コロナウイルス対応調整室(仮称)」を設け、その下で権利と役割を整理するとともに、専門家チームを見直して強化するとしている。これについては記者会見で同党の枝野 幸男代表が次のような趣旨の説明をしている。「私自身の経験(東日本大震災時の官房長官)では、危機管理は日常業務を担っている各省庁がフル回転しないと担えない。医療に関連しては厚生労働省がフル回転をするわけで、その外側に大臣をつくっても結局屋上屋を重ねることに過ぎないことは、この1年間ワクチン対策などで明確にも結果が出ていると思っている。危機管理は省庁をまたがり、具体的実務は各地方自治体にお願いをしていることが多く、(新型コロナ対策では)厚生労働省と総務省との間で明確な調整が必要になる。この調整役割があるのは内閣官房であり、各省庁横並びではなく、調整機能を官邸に置くことが一番効果的であり効率的である」一見して筋は通っている。もっとも各省庁のセクショナリズムを過度に排しようとして、なんでも政治が主導を握ろうとし、事実上省庁を機能不全にしたのは旧民主党政権の「罪」の一つ。過去その渦中にいた枝野代表が「教訓」をベースに、どこまで踏み込めるかは興味のあるところだが。また、Vol.8「子ども・子育て政策への予算配分を強化」では、公明党と似たような「出産育児一時金を引き上げ、出産に関する費用を無償化」を掲げている。出産育児一時金増額の弊害は前述したとおり。「出産に関する費用の無償化」は妊婦検診部分のことだろうが、そもそも出産は医療行為が必要にもかかわらず「疾患ではないから公的医療保険の対象外」という従来の硬直した考え方こそ見直しが必要だと個人的には考えている。そうでなければ前述の一時金を巡るイタチごっこは永遠に解消されないだろう。この点、与野党通じて建設的な議論がないのが不思議なくらいである。現時点で衆院選公約として立憲民主党が公表しているのはこれくらいだが、同党が公表している最新の基本政策の社会保障関連を見ると、「介護職員の待遇改善」や「介護離職ゼロ」など介護関連の訴えが目立つ。待遇改善は岸田新首相が訴える「『成長』と『分配』の好循環」でも掲げられていること。これまたすべての政党に共通したことだが、介護については介護保険創設から20年が経過した中で、この間の人口構成の変化や新たな地域包括ケアの提唱などを踏まえた抜本的な見直しの検討について政治の側からの声が少ないのが気になるところだ。旧・民主党からのもう一方の枝分かれ政党国民民主党は「政策5本柱」を公表している。この中を見ると、コロナ禍収束まで「個人、事業者の社会保険料の猶予・減免措置を延長・拡充」や「中小企業の新規正規雇用の増加にかかる社会保険料事業主負担の半分相当の助成による正規雇用を促進」を提案している。ではその分の財政補填はどうなるのか? 明確な記述はないが、財政面で積極的な国債活用をさりげなく訴えていることからすると、国債発行で切り抜ける意向が透けて見える。こうした政策を実行した際の中長期的コストパフォーマンス推計でも示してくれれば、もう少し評価できるのだが。新型コロナ対策では「政策各論 4. 国民と国土を『危機から守る』」でさらりと触れているが、同党の政策パンフレットで「コロナ三策」としてより詳しい記述がある。このうち具体的に医療にかかわるのは「第一策 検査の拡充」と「第二策 感染拡大の防止」である。第一策では(1)「無料自宅検査」によるセルフケアで家庭内感染を抑制、(2)陰性証明を持ち歩ける 「デジタル健康証明書(仮称)」の活用、(3)国による検査精度管理で陰性に「お墨付き」、の3つを掲げている。(1)はたぶん迅速抗原検査を意味していると思われるが、家庭内から感染者が発生した時のことなのか、平時のことなのか不明である。後者ならばはっきり言って財源をどこから確保するかだけでなく、それをどの頻度で行うのかも問題である。そもそも感染の事前確率がまちまちな国民に一斉定期検査を行うなど不効率極まりない。この時期にまだこんなことを言っているのかとやや呆れてしまう。(3)は精度100%の検査がない以上、お墨付きを与えるのは科学的に間違いであり、もはや滑稽な提案と言わざるを得ない。第二策は10項目あるが、各方面でほぼ言い尽くされてきたことで目新しさはなく、どちらかというと「掛け声」程度のものが多い。その中で(3)の「国立病院・JCHOの患者受入れ拡大と民間病院の受入指示法制化」については、労災病院や日赤病院を入れずに、わざわざ「JCHO(独立行政法人地域医療機能推進機)」を入れたあたりにやや恣意的というか当てこすりを感じてしまう。ご存じのようにJCHOの理事長は、政府新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長である。また昨今、JCHOについてはコロナ対応病床を設置して補助金を獲得しながら、患者受け入れが不十分との指摘が一部メディアで報じられている。そんなこんなを受けて、わざわざJCHOに言及したのではないかとの見方は穿ち過ぎだろうか?一方、(7)の「ワクチンを地域・年代に着目して 戦略的に重点配分」は一考の余地ありと考える。これまでの流行を見ても、概ね東京都をはじめとする首都圏や地域ブロックの首都的な位置づけの大都市圏で感染者が増加し、その周辺に波及するという経過をたどる。その意味ではワクチン接種で大都市部を優先したほうが感染制御には効率的だと考えられる。国がそうしないのは「地方軽視」との批判を回避したいからだろう。その意味では、これまでは多数の接種希望者を集められそうな「職域接種」が大都市部へのワクチン供給を厚くする調整弁になっていたとも言える。ただ、今後の3回目接種や将来的な新興感染症対策も見据えたうえで、地域的な優先順位は真剣に議論して良いと思う。取り敢えずかなり長くなってしまったので、今回はここまでにしてほかの政党の政策については次回に譲りたい。

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ベジタリアンのうつ病リスク~メタ解析

 いくつかの研究において、ベジタリアンはうつ病リスクが高いことが報告されている。しかし、これとはまったく逆の結果も報告されている。ドイツ・ルール大学ボーフムのSebastian Ocklenburg氏らは、これらの不一致性を考慮し、ベジタリアンとうつ病リスクとの間に有意な関連が認められるかを明らかにするため、メタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2021年11月1日号の報告。 主要なデータベースより、ベジタリアンと非ベジタリアン(対照群)のうつ病スコアを報告した研究を検索した。条件付きランダム効果モデルに従ったRによるメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・重複を削除し、適格基準に照らし合わせたところ、13研究、4万9,889例(ベジタリアン:8,057例、対照群:4万1,832例)が分析に含まれた。・ランダム効果メタ解析では、ベジタリアンは、対照群と比較し、うつ病スコアの高さとの有意な関連が認められた。・研究間の異質性は高く、研究地域の地理的なばらつきは少なく、異文化間の比較は限られていた。 著者らは「ベジタリアンは、非ベジタリアンと比較し、うつ病リスクが高いことが示唆された。しかし、公表されている研究は、非常に不均一であり、最終的な結論を導き出すためには、より経験的な研究が求められる。また、より多くの国における実証的研究が望まれる」としている。

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カボザンチニブとアテゾリズマブの併用は去勢抵抗性前立腺がんに有用な可能性(COMIC-021)/ESMO2021

 カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性の前立腺がん(mCRPC)に対して良好な抗腫瘍効果を示すことが、米国・The University of Utah Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 この試験はCOSMIC-021試験で、腎細胞がん、尿路上皮がん、肺がんなどを対象にした第I相b試験でる。今回はそのなかから、mCRPC(コホート6)の解析結果が報告された。・対象:エンザルタミドまたはアビラテロンの治療歴があり、測定可能病変を有するmCRPC 132例・試験群:カボザンチニブ40mg/日内服+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性[探索的評価項目]バイオマーカー検索、独立評価委員会(BIRC)評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数30例の目標で試験開始されたが、2回の登録数拡大により今回の解析時(データカットオフ2021年2月、観察期間中央値15.2ヵ月)では対象が132例となった。・登録症例の年齢中央値は70歳、グリソンスコア8以上が63%、ドセタキセル治療歴ありが25%、内臓転移ありが32%で、骨盤外リンパ節転移ありが60%であった。・主治医判定によるORRは23%(CR2%/PR21%)で、病勢制御率は84%、奏効期間中央値は6.9ヵ月であった。・内臓転移または骨盤外リンパ節転移あり(Vis/L)群101例のORRは、27%であった。これらの奏効率とPD-L1ステータスとの関連性は見い出されなかった。・BIRCによるPFS中央値は全症例で5.7ヵ月、Vis/LN群では6.8ヵ月であった。OS中央値は全症例Vis/LN群ともに18.4ヵ月であった・PSAが50%以上低下した症例割合は、全症例で23%、Vis/LN群では26%であった。・有害事象による用量減量は、カボザンチニブ、アテゾリズマブともに43%で、有害事象による投与中止はカボザンチニブ18%、アテゾリズマブ14%であった。・Grade3/4の主な有害事象は、高血圧、下痢、全身倦怠感が共に6.8%、肺塞栓が8.3%、膵炎6.1%、肝炎5.3%、腸炎3.0%、発疹3.0%などであり、高用量のステロイド剤投与が必要となった症例は17%であった。 mCRPCに対しては、今回のCOMIC-021と同レジメン(カボザンチニブとアテゾリズマブの併用)で、第III相試験CONTACT-02が進行中である。

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COVID-19に有効な治療は?抗体薬4剤を含むメタ解析/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、カシリビマブ/イムデビマブはほぼ確実に入院を減少させ、bamlanivimab/etesevimab、bamlanivimab、ソトロビマブは入院を減少させる可能性があるが、回復期血漿、IVIg、他の抗体および細胞治療は、いかなる意味のあるベネフィットをも与えない可能性がある。カナダ・マックマスター大学のReed Ac Siemieniuk氏らが、COVID-19の試験に関するデータベースを基にリビング・システマティック・レビューとネットワークメタ解析を行い明らかにした。BMJ誌2021年9月23日号掲載の報告。2021年7月21日時点でRCTを対象にネットワークメタ解析 研究グループは、2021年7月21日時点のWHOのCOVID-19データベースと中国のデータベース6件を用い、COVID-19の疑いや可能性が高い患者または確定診断を受けた患者を対象に、抗ウイルス抗体治療、血液製剤、標準治療またはプラセボを比較した無作為化臨床試験を抽出した。 2人のレビュアーが独立して試験の適格性を判断し、重複データを削除後、ベイズ変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析を行った。改訂版コクランバイアスリスクツールv.2.0を用いて各試験のバイアスリスクを評価し、GRADEシステムを用いてエビデンスの確実性(質)を評価した。なお、メタ解析は、無作為化された患者数が100例以上、または治療群当たりのイベント数が20以上の介入を対象とした。カシリビマブ/イムデビマブ、非重症COVID-19患者の入院リスクを低下 2021年7月21日時点で、抗ウイルス抗体治療または細胞治療を評価した無作為化試験47件が特定された。内訳は、回復期血漿21件、免疫グロブリン(IVIg)5件、臍帯間葉系幹細胞治療5件、bamlanivimab 4件、カシリビマブ/イムデビマブ4件、bamlanivimab-etesevimab 2件、control plasma 2件、末梢血非造血濃縮幹細胞治療2件、ソトロビマブ1件、抗SARS-CoV-2 IVIg 1件、血漿交換療法1件、XAV-19ポリクローナル抗体1件、CT-P59モノクローナル抗体1件、INM005ポリクローナル抗体1件。 抗ウイルス抗体治療に割り付けられた非重症患者は、プラセボ群と比較して入院リスクが低下した。オッズ比(OR)ならびにリスク差(RD)は、カシリビマブ/イムデビマブが0.29(95%信頼区間[CI]:0.17~0.47)および-4.2%(エビデンスの質:中)、bamlanivimabが0.24(0.06~0.86)および-4.1%(エビデンスの質:低)、bamlanivimab/etesevimabが0.31(0.11~0.81)および-3.8%(エビデンスの質:低)、ソトロビマブが0.17(0.04~0.57)および-4.8%(エビデンスの質:低)であった。 他のアウトカムに関しては重要な影響はなかった。また、モノクローナル抗体薬の間に顕著な差は確認されなかった。他の介入は、非重症のCOVID-19患者においてすべてのアウトカムについて意味のある影響が認められなかった。 抗ウイルス抗体薬を含め、重症または重篤なCOVID-19患者の転帰に重要な影響を及ぼす介入はなかったが、カシリビマブ/イムデビマブは血清陰性患者の死亡率を低下させる可能性が示唆された。

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人種および遺伝的祖先のデータはeGFR算出に必要か?/NEJM

 推定糸球体濾過量(eGFR)の算出に人種(または遺伝的祖先)を含めず血清クレアチニン値を用いると、系統的な誤分類がもたらされ、血清クレアチニン値の多くの非GFR決定要因を考慮した場合でも影響を取り除くことができない。一方でシスタチンCを用いたGFRの推定は、結果は同様であったものの、現在の人種に基づいた方法の悪影響は解消されることを、米国・カリフォルニア大学のChi-yuan Hsu氏らが、大規模前向き観察研究のデータを解析して示した。eGFRの算定式に人種を含めることは議論の的となっており、人種を用いずに同様の精度が得られる代替算定式が必要とされていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。CRIC研究の黒人458例、非黒人790例のデータを用いて検証 研究グループは、慢性腎臓病(CKD)の成人患者を対象とした大規模前向き観察研究「Chronic Renal Insufficiency Cohort study:CRIC研究」において、尿中125I-iothalamateクリアランスを介したGFRの直接測定を行い、かつベースラインで人種、遺伝的祖先、血清クレアチニン、血清シスタチンC、24時間尿中クレアチニン値のデータが収集されている1,248例について解析した。 1,248例中、458例が黒人または黒人および多人種、790例が非黒人で、遺伝的祖先がアフリカ系の割合は黒人で82.6%、非黒人で0.2%であった。黒人の場合、人種を省略した算定式ではGFRが過小評価される 現在のeGFR算定式を用いた場合、黒人と確認された参加者において人種が省略されたモデルでは、GFRの実測値と推算値の差が中央値3.99mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:2.17~5.62)、eGFRが実測GFRの10%以内の割合(P10)は31%(95%CI:24~39)であり、人種を含めたモデル(GFRの実測値と推算値の差の中央値:1.11mL/分/1.73m2[95%CI:-0.29~2.54]、P10:42%[95%CI:34~50])と比較すると、GFRが過小評価されており、精度が低いことが示された。 人種の代わりに遺伝的祖先のデータを組み込んだ場合でも、eGFR値はほぼ同じであった(差の中央値:1.33mL/分/1.73m2[95%CI:-0.12~2.33]、P10:42%[95%CI:34~50])。 血清クレアチニン値を決定する非GFR要因(体組成や尿中クレアチニンなど)は、参加者が申告した人種や遺伝的祖先によって異なったが、血清クレアチニン値に基づくeGFR算定式から人種(または祖先)を除外することで生じた誤分類は解消されなかった。一方、シスタチンCを用いたeGFRの場合、黒人の参加者において、人種または祖先を組み込まなくても同様の統計的な不偏(差の中央値:0.33mL/分/1.73m2[95%CI:-1.43~1.92])と精度(P10:41%[95%CI:34~49])が得られた。

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術後化療なしのTN乳がん患者、TILとPD-L1で予後を層別化可能/ESMO2021

 早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおいて、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とPD-L1を組み合わせると、術後補助化学療法を受けていないTN乳がん患者の予後を層別化できることが示された。間質TIL(sTIL)が30%以上かつPD-L1陰性の患者は予後が良好であり、補助化学療法を省略できる可能性がある。国立がん研究センター中央病院の矢崎 秀氏らは、補助化学療法を受けていない早期TN乳がん患者の予後と、TILとPD-L1、Tertiary lymphoid structures(TLS)の関連を検討した後ろ向き解析の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 2001~15年に国立がん研究センター中央病院で術後補助化学療法を受けなかったStageI~IIIのTN乳がん患者を特定、sTIL、TLSおよびPD-L1発現状態を手術標本で評価した。sTILとTLSはそれぞれガイドラインと以前の研究に従って評価され、免疫細胞におけるPD-L1の発現状態は、VENTANASP142アッセイによって評価された。 sTIL-highを≧30%、PD-L1陽性(+)をIC≧1と定義し、4つのグループに分類した:sTIL-high/PD-L1(+)、sTIL-high/PD-L1(+)、sTIL-high/PD-L1(-)、sTIL-high/PD-L1(-)。コックス比例ハザードモデルを使用して、sTIL、TLS、およびPD-L1の予後予測因子としての価値を検討した。 主な結果は以下のとおり。・125例が解析対象とされ年齢中央値は68(32~99)歳、69%がT1、85%がリンパ節転移陰性だった。・sTILの中央値は10%(IQR:0~30)であり、35例(28%)はsTILが30%以上だった。・36例(29%)がPD-L1陽性、63例(50%)がTLSを示した。・sTIL-high/PD-L1(+)が28例(22.4%)、sTIL-low/PD-L1(+)が8例(6.4%)、sTIL-high/PD-L1(-)が7例(5.6%)、sTIL-low/PD-L1(-)が82例(65.6%)だった。・多変量解析の結果、sTIL≧30%は無浸潤疾患生存(iDFS)率の改善と有意に関連し(HR: 0.19、95%信頼区間[CI]:0.059~0.62、p=0.006)、PD-L1陽性はiDFSの悪化と有意に関連していた(HR:3.39、95%CI:1.07~10.8、p=0.039)。一方で、TLSとiDFSの間に関連はみられなかった(HR:0.95、95%CI:0.31~2.91、p=0.93)。・sTIL-high/PD-L1(-)の腫瘍の患者は最も予後が良好であり(5年iDFS率:100%)、sTIL-low/PD-L1(+)の腫瘍の患者は予後が最も悪かった(5年iDFS率:28.6%、95%CI:4.1~61.2)。・sTIL-high/PD-L1(+)の腫瘍(5年iDFS率:80.7%、95%CI:56.3~92.3)およびsTIL-low/ PD-L1(-)の腫瘍(5年iDFS率:83.6%、95%CI:72.9~90.4)の患者は中等度の予後だった(p<0.001)。 研究者らは、sTILとPD-L1はそれぞれ予後の改善と悪化に有意に関連しており、それらの組み合わせで、補助化学療法を受けていないTN乳がんの予後を層別化できるとまとめている。症例の5.6%を占めたsTIL-high/PD-L1(-)の早期TN乳がん患者では、補助化学療法なしで良好な予後を示していた。

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心房細動患者に対する心臓手術では左心耳閉鎖も追加すべきである(解説:高月誠司氏)

 心房細動患者には心原性脳梗塞の予防のための抗凝固療法を適切に導入することが大事である。近年経皮的左心耳閉鎖術はワルファリン内服とほぼ同等の臨床効果が報告され、保険適応となった。一方、外科的な左心耳閉鎖術、切除術は単独で行われることは少ないが、よく他の弁膜症や冠動脈疾患の心臓手術に伴い行われる。本LAAOS IIIは既知の心房細動患者が心臓手術を受ける際、左心耳閉鎖術を追加することの意義をランダム化比較試験で検討した。術後通常診療を継続中の脳梗塞や全身性塞栓症が1次エンドポイントである。大動脈クランプ時間、人工心肺時間や術中、術後の出血量は両群間で有意な差を認めなかった。術後閉鎖群と非閉鎖群の3年後の抗凝固率はそれぞれ75.3%、78.2%だったが、1次エンドポイントはそれぞれ4.8%、7.0%で発生し、ハザード比0.67(p=0.001)で有意に左心耳閉鎖群における塞栓症の発生は少なかった。本研究から心臓手術に左心耳閉鎖術を追加することのメリットが証明されたが、左心耳閉鎖して抗凝固薬を中止した群の比較ではなく、抗凝固を中止するかどうかは別の判断が必要となる。本研究における左心耳閉鎖術は多くがcut and sewやステープルを用いた左心耳切除術であった。左心耳は心房性利尿ホルモンの分泌部位として知られ、その切除には心不全を惹起する懸念が以前から示唆されていたが、本研究では術後の心不全の発症率に差はなく、左心耳切除が血行動態に与える影響は少ないと考えられた。

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新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は心血管リスクを軽減 心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。 2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。一方、RAS阻害薬によっても尿アルブミン低減が十分でない症例も少なからずあり、より一層の腎保護効果、尿アルブミン低減効果を期待できる薬物療法が求められている。ステロイド型MRAであるスピロノラクトンやエプレレノンは、降圧効果だけでなく、ACE阻害薬やARBとの併用で一層の尿アルブミン低減効果が示唆されている。しかし、これらのMRAは、高K血症の誘発や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を引き起こすことが問題視されている。とくにエプレレノンは、DKDや中等度以上のCKDでは禁忌である。 最近、新世代の非ステロイド型選択的MRAとしてエサキセレノンやfinerenoneなどが開発され、本稿で紹介するFIGARO-DKDなどの臨床研究が進んでいる、しかし、はたしてこれら新規薬剤がDKDの心・腎保護において真に「新たな一手」となりうるかは現時点で必ずしも明確でない。FIGARO-DKDの概要 Finerenoneは、MR選択性が高い非ステロイド型選択的MRAである。2015年Bakrisらは、finerenoneの初めてのランダム化試験を行い、DKD患者において尿アルブミン低減効果を報告した(Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.)。FIGARO-DKDは、2021年8月に開催された欧州心臓病学会(ESC 2021)において米国・ミシガン大学のPittらにより、2型糖尿病と合併するCKD患者においてfinerenoneの上乗せ効果が発表された。本研究は、欧州、日本、中国、米国など48ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験である。対象は、18歳以上の2型糖尿病患者とDKD患者7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。対象患者は、最大用量のRAS阻害薬(ACE阻害薬あるいはARB)が受容された患者であり、実薬群でfinerenoneの上乗せ効果を観察した。腎機能からは、持続性アルブミン尿が中等度(尿アルブミン/クレアチニン比[ACR]:30~<300)でeGFRが25~90mL/min/1.73m2(ステージ2~4のCKD)、あるいは持続性アルブミン尿が高度(尿ACR:300~5,000)でeGFRが≧60mL/min/1.73m2(ステージ1~2のCKD)の群について解析された。開始時の血清K値は4.8mEq/L以下であった。 主要エンドポイント(EP)は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の心血管複合アウトカムであり、副次EPとして、末期腎不全(ESRD)、eGFRの40%以上の持続的な低下、腎関連死など、腎複合アウトカムである。結果は、主要EPのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)であり、前者で有意に良好であった(HR:0.87、95%CI:0.76~0.98、p=0.03)。その内訳は、心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で有意に低かった。一方、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中には差異はみられなかった。なお、収縮期血圧は、4ヵ月で-3.5mmHg、24ヵ月で-2.6mmHg低下した。副次EPは腎関連で、ESRDへの進展がfinerenone群(0.9%)でプラセボ群(1.3%)に比し有意に低値であった(HR:0.64、95%CI:0.41~0.995)。さらに、尿ACRは、finerenone群でプラセボ群に比し32%低下した(HR:0.68、95%CI:0.65~0.70)。腎複合アウトカムであるeGFRの基礎値からの57%低下と腎関連死の評価においても、finerenone群(2.9%)はプラセボ群(3.8%)より低値であった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.99)。一方、高K血症(5.5mEq/L以上)の発現頻度は、finerenone群はプラセボ群の約2倍であった(10.8% vs.5.3%)。 以上の成績から、RAS阻害薬へのfinerenoneの上乗せ療法は、CKDステージ2~4で中等度のアルブミン尿を呈するDKD患者と、CKDステージ1~2で高度のアルブミン尿を呈するDKD患者の両者において、心血管アウトカムを改善すると結論された。FIGARO-DKDとFIDELIO-DKD FIGARO-DKDに先行し、2020年のNEJM誌に類似の研究FIDELIO-DKDが発表されている。両者の基本的な差異は、(1)主要EP:FIDELIO-DKDは腎複合、FIGARO-DKDは心血管複合、(2)平均eGFR:FIDELIOで44mL/min/1.73m2、FIGAROで68mL/min/1.73m2、(3)追跡期間中央値:FIDELIOで2.6年、FIGAROでは3.4年と、やや長い点である。 FIDELIO-DKDの結果、主要EPは腎複合アウトカムで18%低下、副次EPとして心血管複合アウトカムは14%低下した。このことから、finerenoneの上乗せ療法は、CKDの進展と心血管系イベントを抑制し、心・腎リスクを低下させることが示唆された。ただし、FIDELIO-DKDにおいて高K血症の発現頻度は、finerenone群でプラセボ群(21.7% vs.9.8%)より多く、これはFIGARO-DKDの頻度に比べて約2倍であった。 研究の患者背景や試験デザインに差異はあるものの、2021年のFIGARO-DKDは、2020年のFIDELIO-DKDと同様、finerenoneの心・腎保護作用を追従した結果であった。とくに、腎機能が正常なDKD患者でのFIGARO-DKDにおいて心血管系イベントの抑制効果が再現されたことは、MRAによる早期介入の重要性を示唆するものであり、臨床的意義はある。わが国の新規透析導入の原因疾患の第1位が糖尿病によるDKDであることから、新規非ステロイド型MRA、finerenoneによる薬物治療は一定の光明をもたらす期待がある。MRAの上乗せはDKD治療として生き残れるか? 振り返ると、2010年ごろまでの状況においては、2型糖尿病を合併するCKD患者では、RAS阻害薬とMRAを併用することが標準治療となる可能性が期待されていた。しかし、2015年から普及したSGLT2阻害薬は、DKD治療に劇的なインパクトを与えた。すなわち、2015年から2019年にかけてEMPA-REG OUTCOME、CANVAS、CREDENCE、DECLARE-TIMI 58でSGLT2阻害薬の心血管イベント改善や腎保護が次々に明らかにされた。さらに、2019年から2021年にはEMPEROR-Preserved、Emperor-Reduced、DAPA-HF、DAPA-CKDなどにより、糖尿病CKDに限らず、非糖尿病CKDの心・腎保護のエビデンスも集積されてきた。これらのSGLT2阻害薬の成績は、血糖降下療法に確実な心・腎保護のエビデンスの報告が少なかった時代を経験してきた著者ら腎臓・糖尿内科医にとっては、まさに青天の霹靂なる大きな驚きであった。GLP-1受容体アゴニスト(GLP-1 RA)についても、SUSTAIN、REWIND、LEADERなどで心血管リスクや腎保護が観察され、DKD治療学の根幹が大きく変わろうとしている。欧米のレスポンスは迅速で、「KDIGOガイドライン2020年版」においては、DKDに対する第一選択としてRAS阻害薬と共にメトホルミンとSGLT2阻害薬の併用が推奨されている。 MRAのDKD治療上の位置付けに関しては、「KDIGOガイドライン2020年版」では、DKD治療の難治例に限り使用が推奨されている。確かに、SGLT2阻害薬やGLP-1 RAがなかった時代を時系列で振り返ると、治療抵抗性DKDの腎保護に対してRAS阻害薬とMRAの2剤によるdual blockadeで腎保護を目指すのは、一戦略ではあった。しかし、上述したごとくSGLT2阻害薬とGLP-1 RAの登場と関連する多くの心・腎保護のエビデンス集積から、MRAを上乗せする選択枝に疑問が生じつつある。その最も大きな問題点は、やはり高K血症であろう。MR阻害によるアルドステロン作用の低下が、高K血症を招来させることは自明である。DKDの病態には、普遍的に低レニン性低アルドステロン症(Hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)が存在する。HRHAの病態下では、アルドステロン作用の低下から高K血症を来しやすい。また、DKDによる腎機能低下は、Kクリアランス低下から高K血症を助長する。RAS抑制薬とMRAのdual blockadeが、DKDでは期待するほどのベネフィットはないと考えるのは、腎臓専門医の立場からの著者の独断と偏見ではないであろう。とはいうものの、DKD治療を離れ循環器専門医の立場から考えると、MRAの慢性心不全への心保護のメリットは決して否定されるものではない。 なお、2019年に日本で開発された非ステロイド型選択的MRA・エサキセレノンもRAS阻害薬との併用療法に期待が持たれている。2型糖尿病で微量アルブミン尿(ACR:45~<300)を呈するDKD患者449例を対象にした第III相ランダム化試験(ESAX-DN試験、Ito S, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2020;15:1715-1727.)において、プラセボに比べ尿ACRの低下は認めるものの、5.5mEq/L以上の高K血症出現率は4倍と高頻度であった。本剤の適応症は高血圧症のみであり、現時点でDKDや慢性心不全への適応拡大は未定である。

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ある朝のER【Dr. 中島の 新・徒然草】(395)

三百九十五の段 ある朝のER研修医「抜鈎(ばっこう)器はありませんか?」ERナース「ええ? 無かったんじゃないかな」どうやら、1週間ほど前にステイプラーで頭皮の切創を縫った患者さん、抜鈎のために来院されるみたいです。カルテによれば、縫合の後に「家の近くの医療機関で抜いてもらったらいいですよ」と説明を受けておられました。ところが、この方は「いや、ほかは怖い。ここの病院で抜いてくれ」と希望し、この日の朝7時にERを受診することになっていました。20年ほど前までは、針と糸で切り傷を縫っていましたが、最近はステイプラー(医療用ホッチキス)を使うことが多くなりました。ただ、このステイプラーを抜くのには抜鈎器という特殊な器械を使う必要があります。中島「抜鈎器がなかったらモスキートでもええよ」ERナース「モスキートならあります!」研修医「モスキートでも抜けるんですか?」中島「僕は抜鈎器よりモスキートで抜くほうが好きやけどな」モスキートというのは、長さ10センチほどの止血鉗子です。目的外使用にはなりますが、こっちのほうが遥かに簡単。なぜか通りすがりの私が抜鈎を指導することになってしまいました。中島「やり方は教えるから、先生が抜いてくれ」研修医「はい」そうこうしているうちに患者さんの到着です。中島「まず左手の鑷子(せっし)でステイプラーを掴むんや」研修医「はい」中島「それで右手に持ったモスキートの先端を……」ここで患者さんが一言。患者「ちょっと待ってえな。先生がやってくれへん?」中島「僕がですか?」患者「こっちの若い先生の練習台にされるのは堪忍してよ。俺、怖がりやから」中島「そりゃダメですな」患者「なんでやねん!」出た。関西人の必殺技「なんでやねん!」中島「僕も老眼がひどくなって、細かいものが見えないんですわ。間違えて何を掴むかわからんし」患者「何やて? それも怖いがな」中島「そやから僕が説明して、若い先生が手を動かすのが一番なんですよ」患者「ほんまかいな」ちょっと釈然としない表情ながらも、患者さんは大人しくなりました。中島「モスキートの先端をステイプラーの下に突っ込んで開くんや」研修医「はい」中島「それで左手を上に引っ張ったら簡単に抜けるからな」研修医「抜けました!」患者「全然痛くなかった……」そんなこんなで、なんとかこの場は収まりました。ホッとしながら電カルに向かっていたときです。また、背中のほうから声が聞こえてきました。患者「この痛いのはいつになったら治るねん!」研修医「いや、ですから」患者「いつまで痛い思いをしてたらええんや」どうやら、打撲した肩の痛みがなかなか治らないようです。中島「〇〇さん。60歳の人は痛みがとれるまで60日掛かるんですよ」患者「60日も掛かるんかいな」使い古したギャグなのに、患者さんは本気にしています。中島「先生は何歳やったかな」研修医「25歳です」中島「先生やったら25日で治るで」患者「そういう根拠を言ってもらったらこっちも納得できるんや」ギャグだという事に気付いてもらえない! それに、そもそも根拠じゃなくて目安ですがな。中島「60日経っても痛かったらまた来てください。お大事に」患者「ありがとう、安心したわ」ようやく一件落着。それにしても、大阪では思ったことがそのまま口から出てくる人が多いですね。このような患者さんへの対応の仕方を学ぶのも、研修医の勉強のうちかもしれません。中島「1つだけアドバイスしてもいいかな」研修医「是非、お願いします」中島「先生はさっき左手に長鑷子を持ってたけどな」研修医「ええ」中島「長鑷子は腰が弱いからステイプラーを掴みにくかったやろ」研修医「そうですね」中島「次に機会があったら短い有鈎鑷子を使ってみよか」研修医「わかりました」最後は研修医教育らしい締めくくりができました。ということで爽やかな朝に1句ER いつものやりとり 今日もまた

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ドイツで産んでみた(1) ドイツの産婆システム【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第6回

私事ですが、ドイツで産まれた双子の娘達が、9月に満2歳の誕生日を迎えます。娘たちはドイツ産まれですが、妻がドイツ語に不自由だったために、本当に大変な出産となりました。しかし、移民国家であるドイツでは「ドイツ語の話せない患者」は珍しくないので、みんなに親切にしてもらいながら無事に出産にたどり着くことができました。私は、沢山の人に質問して、ネットで調べて、役所に何度も足を運んで制度を教えてもらって…と、今から思い返しても非常にタフな出来事でした。ドイツの産婆さん“Hebamme”妊娠がわかって、一番力になってくれたのが“Hebamme(ヘバメ)”と言われる職種の方です。いわゆる産婆さんです。ドイツでは産婆さんにかかる費用も保険で賄うことができます。このHebammeさんは、出産前から定期的に家に来てくれて、妊婦の診察をしてくれます。それに加えて、出産前に何を準備すべきなのか、などの指導をしてくれます。ただ、Hebammeさんは保育園並みに競争率が高いです。何ヵ所にも電話をかけて、ようやく見つかって来てくれたのは2児のママで30代前半の若いHebammeさんでした。いつもチャリンコで汗かきながらやってきて、ずっと笑顔で前向きな発言しかしない、明るい人でした。筆者の家族を担当してくれた明るいHebammeさん私の家族を担当してくれたHebammeさんは、出産前後の指導だけでなく、普段の生活のことでも全力でサポートしてくれる、熱い人でした。たとえば、注文したソファに不具合があったときも、代わりに電話で抗議してくれて、あっという間に新品に取り替えてもらったこともありました。妻が、切迫早産で3回、大学病院に緊急入院になったときも、毎回顔を出しに来てくれて、病棟の看護師さん達に「くれぐれも優しく対応してほしい」と言い続けてくれました。また、夜中に緊急で帝王切開になったときも駆けつけてくれたし、本当に力強い味方になってくれました。出産後も、赤ちゃんの洗い方からオシメの替え方まで、つきっきりで指導してくれました。彼女のおかげでドイツでの出産のストレスがどれだけ軽減できたかわかりません。核家族化の進むドイツでは、Hebamme制度は必須のシステムといえます。Hebammeさんには、「何がなんでも妊婦の味方になるんだ」という熱い人が多いそうです。その他、ドイツのシステムに助けられたことが多々ありましたので、次回も思い出しながら書いていきたいと思います。

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第78回 第6波前に、都は「重症度と病床のミスマッチ」の反省生かした体制再構築を

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病床が逼迫する中、東京都が都下すべての医療機関に感染症法に基づく病床確保を求めたところ、目標の7,000床に届かなかったが、そもそも4割は実際に使われていなかったことも報道で指摘された。これに対し、都の入院調整に当たった山口 芳裕氏(杏林大学教授)はテレビ番組で「入院が必要な患者の症状と、用意された病床にミスマッチがあった」と指摘。「6,000床であっても、軽症しか入れない病床や看護師の手立てができない病床では意味がない。一方、4,000床しかなかったとしても、酸素の提供が可能な病床が必要時に使えたならば、第5波で病床不足が起きなかったかもしれない」と述べた。今後、第6波の可能性もある中、この反省が生かされないままでは、再び病床逼迫を招きかねない。圧倒的に不足していたのは、酸素投与が必要な中等症IIおよび重症患者を受け入れる病床で、軽症患者に対する病床は余っていたという。そのため、症状が悪化して酸素投与が必要な患者でも入院できない事態に陥った。東京都では一時(8月16〜22日)、救急要請したコロナ患者の6割が病院に搬送されなかった。このところ、新規感染者数は目に見えて減少している。とはいえ、医療現場では依然として自宅療養者への対応に追われている。第5波の東京都では、病院で適切な医療を受けられないまま自宅などで亡くなった感染者は8月だけで112人に上った(警察庁調べ)。酸素ステーションの実効性に疑問東京都は、8月に酸素ステーション(都民の城)の運用を開始。しかし蓋を開けてみれば、利用率は8月の第5波ピーク時でも3割程度だった。新規感染者が減少している中、最近では受け入れがゼロの日もあるという。この酸素ステーションで受け入れるのは、軽症~中等症Iの患者で、中等症II以上は受け入れていない。さまざまな施設の協力を得て医療者をかき集めた、あくまで一時しのぎであるため、中等症II以上への対応が難しいと見られる。ここにも「ミスマッチ」が起きている。都は第6波に備え、こうした酸素ステーションを都内各所に開設、「酸素・医療提供ステーション」に改称した。軽症者らを対象に抗体カクテル療法などの治療を行うためだが、先の山口氏は「入院が必要なのに、自宅にいて医療に十分アクセスできていない人にこそ手を差し伸べるべきだった」と振り返る。また、「限界まで患者を受け入れている病院と、余力のある病院の差が大きい」とも指摘した。公的病院のコロナ患者受け入れ姿勢に批判の声これに関連して、医療人の間から、公的病院のコロナ患者受け入れ対応に不満の声が聞こえる。都内には、国立病院(独立行政法人を含む)が4病院、地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する5病院、労働者健康安全機構が運営する東京労災病院があり、総病床数は約4,400病床に上る。これらの組織は、公衆衛生危機に対応することが設置根拠法で義務付けられており、さまざまな優遇措置を受けている。しかし、政府の新型コロナ対策分科会会長を務める尾身 茂氏が理事長を務めるJCHOでは、新規感染者数のピーク時に近い8月6日時点で、総病床数が約1,530床であるのに対し、コロナ専用病床は158床(10.3%)で、受け入れ人数は111人だった。これは、コロナ病床の70%、総病床数の4.5%に過ぎない。仮に、JCHOの全病床数から2割程度(306床相当)をコロナ専用に転換すれば、都が新たに設置する「酸素・医療提供ステーション」246床は必要なくなる計算だ。もちろん、ほかの病院への一般患者の転院はそう簡単ではないかもしれないが、現状では公的病院のコロナ対応への必死さが今一つ感じられないのが率直なところである。新規感染者数が減少している今こそ、見直すべきは見直し、仮に第6波が到来しても受け止められる強固な医療体制を再構築するチャンスなのではないかと思う。

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ビタミンB摂取の認知症に対する予防効果~メタ解析

 ホモシステインレベルの上昇は、認知症のリスク因子として確立されているが、ビタミンBを介したホモシステインレベルの低下が認知機能改善につながるかは、よくわかっていない。中国・首都医科大学のZhibin Wang氏らは、ビタミンBの摂取が認知機能低下や認知症発症リスクを減少させるかについて、調査を行った。Nutrition Reviews誌オンライン版2021年8月25日号の報告。ビタミンB摂取で認知症でない人は認知機能低下の遅延が認められた 2020年3月1日までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。ビタミンB摂取による認知機能低下への影響を調査したランダム化臨床試験(RCT)、食事によるビタミンB摂取と認知症発症リスクに関するコホート研究、ビタミンBとホモシステインレベルの違いを比較した横断的研究を含めた。2人のレビュアーが独立してデータを抽出し、研究の質を評価した。不均一性の程度に応じてランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いて、平均差(MD)、ハザード比(HR)、オッズ比(OR)を算出した。 ビタミンBの摂取が認知機能低下や認知症発症リスクを減少させるかについて調査を行った主な結果は以下のとおり。・95件の研究(RCT:25件、コホート研究:20件、横断的研究:50件)より4万6,175例をメタ解析に含めた。・メタ解析では、ビタミンB摂取がミニメンタルステート検査スコアの改善(6,155例、MD:0.14、95%CI:0.04~0.23)、プラセボと比較した認知機能低下の有意な遅延(4,211例、MD:0.16、95%CI:0.05~0.26)が認められた。・ビタミンB介入期間が12ヵ月を超える群では、プラセボと比較し、認知機能低下の減少が認められた(3,814例、MD:0.15、95%CI:0.05~0.26)。この関連は、より短い介入期間では認められなかった(806例、MD:0.18、95%CI:-0.25~0.61)。・認知症でない人では、ビタミンB摂取により、プラセボと比較し、認知機能低下の遅延が認められたが(3,431例、MD:0.15、95%CI:0.04~0.25)、認知症患者では認められなかった(642例、MD:0.20、95%CI:-0.35~0.75)。・葉酸レベルの低さ(B12、B6欠乏ではない)は、認知症リスク(6,654例、OR:1.76、95%CI:1.24~2.50)や認知機能低下(4,336例、OR:1.26、95%CI:1.02~1.55)と有意に関連していた。・ホモシステインレベルの高さは、認知症リスク(1万2,665例、OR:2.09、95%CI:1.60~2.74)や認知機能低下(6,149例、OR:1.19、95%CI:1.05~1.34)と有意に関連していた。・50歳以上の認知症でない人において、葉酸摂取量の多さと認知症リスクの有意な減少との関連が認められた(1万3,529例、HR:0.61、95%CI:0.47~0.78)。一方、B12またはB6摂取量の多さと認知症リスクの低さとの関連は認められなかった。 著者らは「ビタミンB摂取は認知機能低下の遅延と関連していることが示唆された。とくに、早期介入と長期介入でその影響は顕著であった。また、認知症でない高齢者において、食事による葉酸摂取の多さは、認知症リスクの低下と関連していることも示唆された」とし「高齢化社会を迎えている各国では認知症患者が増加していることから、認知症リスクを有する人に対し適切なビタミンB摂取を推進するような公衆衛生対策の導入を検討すべきであろう」としている。

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高齢者がCOVID-19に感染する場所と感染対策/感染研

 国立感染症研究所実地疫学研究センターは、9月29日に同研究所のウェブサイト上で「高齢者の会合等、人が集う場面での新型コロナウイルス感染症に関する感染事例の所見と公民館や体育館等を利用する際の感染対策についての提案」を発表した。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波はピークアウトし、全国的に緊急事態宣言も解除され、今後秋祭りなどの行事がCOVID-19に警戒しながら行われていくことが予想されている。「とくに多くの高齢者は、新型コロナワクチンの接種も進んでいるが、高齢者が集った場合に発生したCOVID-19のクラスター事例を再度振り返り、これまでに得られた知見や必要な対策について考えてみたい」と同研究所は提案の目的を示している。<これまでに得られた主な所見>・高齢者が日常生活で集合して楽しむ場での感染としては、昼カラオケ、フィットネスクラブ、サークル・クラブ活動など、が知られていた。・主に高齢者を対象とした催事場(ショッピングモールでの対面販売など)での数週間程度の比較的長期間のイベントにおいて、アルファ株流行下より、複数のクラスター事例の発生を認めた。・イベントでは、物品の無料体験会、説明会などの場面で、地域の高齢者が連日、時に繰り返し訪れている様子が観察された。・上記のようなイベントでは、地域の高齢者が集まり、参加者(利用者)同士での談笑、飲食を通した憩いの場になっていた。そのプラス面を考慮する必要がある一方で、調査により、感染した高齢者が、他の感染機会を認めなかった場合も多く、対策上の重要性が認められた・利用者のマスクについては、一般に着用が推奨されていたが、とくに飲食時やそれ以外のマスク着用の状況は詳細な情報が得られていない。・説明会などにおける講師や他の大会関係者のマスク着用に関する情報は乏しかった。・とくに扱う対象が食品の場合、試飲や試食などマスクを外す機会があった。・一部密な状態(狭い空間に多数の者がいた状態)があったことが観察され、換気についても不十分であった可能性が見受けられた(CO2センサーなどでの測定情報無し)。・感染者の店舗利用日が共通していない事例があり、利用者間ではなく、感染した従業員が感染伝播に寄与した事例があった可能性が考えられた。<これまでの所見に基づく主な提案:公民館ガイドラインを踏まえて> 高齢者を含む地域住民が集う場としての公民館における新型コロナウイルスへの対応に関しては、公益社団法人全国公民館連合会により作成された、「公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(2020年10月2日)が同会ホームページ上で公開されている。本ガイドラインは、「感染防止のための基本的な考え方」の中で、いわゆる3つの密(密閉、密集、密接)を徹底して避けることの重要性について触れ、リスク評価の項では、接触感染・飛まつ感染それぞれの対策、集客施設としてのリスク評価、地域における感染状況のリスク評価の重要性について言及している。具体的には、イベント・講座などの実施で講じるべき具体的対策、公民館における公演などの開催に際して、公演主催者が講じるべき具体的対策(対人距離を最低1m(出来れば2m)確保する、入館時に検温する、直接手で触れることができる展示物などは展示しない、トイレの管理などの注意点が分かりやすく列挙されている。 以上を踏まえ、同研究所は、「利用者自身が注意すべき事項」「従業員の感染予防が重要であることに関する注意事項」「施設の換気に関する注意点」の3つに大別して注意事項を説明している。◯利用者に対して・屋内で複数の者が集まる機会では密集・密接になる場面を避けることを徹底する。具体的には、良好な換気への対策が十分に行われているイベントに参加することを心がける。マスク着用は必須である。イベント終了後の談笑や長時間の利用を避けることが必要。また、対人距離は最低1m(できるだけ2m)を確保する。座席の配置についても同様。高齢者では耳が聞こえにくい、見にくいなどで距離を保てない状況からどうしても近い距離の接触となりがちではあるが、適切なマスク着用をさらに徹底し、参加は短時間に留めるなどの工夫を行う。・試飲や試食を伴う屋内のイベントへは、できる限り参加を控える。参加する場合、マスクを外す時間を短時間に留め、その間は会話しない。適切なアルコール消毒剤を用いた手指衛生を適切に行う。◯運営者(開催されているイベントがある場合の主催者を含む)・従業員に対して・従業員は施設内感染拡大の要因となり得ることから感染予防ができるように指導を徹底する。・具体的には従来通りの基本として、適切なマスク着用、手指衛生、換気を徹底する。・説明会や講演会の開催にあたっては、運営者・主催者は、屋内で、長時間に渡り、参加者が集まってしまうことを避け、屋外での開催やオンラインを組み入れたイベントとなるように工夫する。換気が十分に実施できる環境の整備を行う。◯換気を十分に実施する具体的方法(林 基哉氏[北海道大学]による補足)・機械換気設備がある場合には、施設使用時には常時運転する。・寒さや暑さに配慮しながら、窓とドアをなるべく常時開放して、部屋の空気がこもらないようにする(暖冷房の利用や着衣に配慮しながら、より換気を確保する)。・扇風機、サーキュレーターなどで、屋内の空気を動かして空気の淀みを少なくする。・とくに換気が十分ではない場合、滞在時間を最小限にすることが望ましい。・二酸化炭素濃度の測定機器(CO2センサー)を利用して、換気の確認を行うことができる。杜撰な感染対策下では再度感染する恐れも 本提案では、最後に2021年9月末現在、新型コロナワクチンの接種が進む中での医療機関や高齢者施設における、いわゆる「ブレークスルー感染事例」やワクチンの有効性について触れ、「『適切なマスクの着用をしない、手指衛生を怠る、換気をきちんと行わない』などの杜撰な感染対策下においては、デルタ株はたやすく人々に感染し、大きな脅威をもたらす」と警鐘を鳴らすとともに、「高齢者を中心とする年齢層の方が集う場をどのように安全に運営するか、は運営者のみならず、利用者である市民も一体となって取り組むべき課題」と問題を提起している。 また、「屋外においても3つのうち1つの密でも発生すると、感染リスクが増大することが観察されている。付設する広場などにおいても、常に警戒を怠らず、十分な間隔をおきながら交流を楽しむことが求められる」とさらなる注意を促している。

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高齢の進行乳がん、実臨床でのパルボシクリブ上乗せ効果は/ESMO2021

 米国のリアルワールドデータから、高齢のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がん(MBC)患者の1次治療で、パルボシクリブ+レトロゾールがレトロゾール単独に比べて無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 HR+/HER2- MBCに対してはパルボシクリブ+内分泌療法が標準治療となっている。しかし、高齢患者を対象としてパルボシクリブ+内分泌療法と内分泌療法単独の効果を比較したデータは少ない。今回、Rugo氏らは、Flatiron Health(ニューヨーク市)の縦断的データベースを用いたMBC患者の後ろ向き解析を実施した。対象は、2015年2月~2018年9月にHR+/HER2- MBCと診断され、1次治療としてパルボシクリブ+レトロゾール(パルボシクリブ併用群)またはレトロゾール(単独群)による治療を開始した65歳以上の女性796例。治療開始から2018年12月または死亡または最終受診の早い時点まで評価した。PFSは、臨床評価またはX線スキャン/組織生検に基づき、パルボシクリブ+レトロゾールまたはレトロゾール単独による治療開始から死亡または病勢進行までの期間とした。安定化逆確率治療重み付けにより患者特性のバランスがとれた、パルボシクリブ併用群450例と単独群335例を比較した。 主な結果は以下のとおり。・両群とも年齢中央値は74.0歳、白人は71%だった。・PFS中央値は、パルボシクリブ併用群が22.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:20.0~30.4)で、単独群(15.8ヵ月、95%CI:12.9~18.9)より有意に長かった(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。・OS中央値は、パルボシクリブ併用群が未到達(NR)で、単独群(43.4ヵ月、95%CI:30.0~NR)より有意に長かった(HR:0.55、95%CI:0.42~0.72、p<0.0001)。・これらの結果は、65~74歳と75歳以上に層別しても同様だった。・腫瘍縮小における最良総合効果は、パルボシクリブ併用群が52.4%で、単独群(22.1%)より有意に高かった(オッズ比:2.0、95%CI:1.4~2.7、p<0.0001)。 Rugo氏は「この結果は、PALOMA試験の高齢患者で示されたパルボシクリブ+レトロゾールの有効性を補足するもの」としている。

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人種項目除外で、より正確な新eGFR算定式を構築/NEJM

 米国タフツ・メディカルセンターのLeseley A. Inker氏ら研究グループが、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出に、血清クレアチニンとシスタチンCを組み込み人種項目を除外した新たなeGFR算定式を構築した。同算定式は、血清クレアチニンまたはシスタチンCのいずれかのみを用いて人種項目を除外した新eGFR算定式よりも、予測がより正確で、黒人と非黒人との差も小さかったという。従来のeGFR算定式は、黒人か否かの項目を含んでいるが、人種は社会的要素で生物学的要素ではなく、人種内の多様性を無視するとして、算定式を精査する必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。23試験を基に新しい算定式を構築、12試験で検証 研究グループは、eGFRの算定に血清クレアチニンを用いた10試験(被験者総数8,254例、黒人31.5%)と、血清クレアチニンとシスタチンCを用いた13試験(同5,352例、黒人39.7%)を基に、人種項目を除外した算定式を構築した。 検証データセットは12試験(同4,050例、黒人14.3%)で、新たな算定式によるeGFRと実測GFRを比較した。 新eGFR算定式と従来eGFR算定式を用いて、米国成人の慢性腎臓病(CKD)の有病率とGFRステージを予想した。従来の人種を含む算定式、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測 検証データセットにおいて、年齢、性別、人種を含む従来の血清クレアチニンを用いたeGFR算定式では、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測していることが認められた(過大予測の中央値:3.7mL/分/1.73m2体表面積、95%信頼区間[CI]:1.8~5.4)。非黒人でも程度は小さいが同様の傾向が認められた(中央値:0.5mL/分/1.73m2体表面積、0.0~0.9)。 また従来のeGFR算定式から黒人であるとの補正項目を除外すると、eGFRは黒人の実測GFRを過小に予測することが認められた(過小予測の中央値:7.1mL/分/1.73m2体表面積、5.9~8.8)。 さらに、年齢、性別を含み人種を除外した新eGFR算定式では、eGFRが実測GFRに比べ、黒人で過小に予測され(中央値:3.6mL/分/1.73m2体表面積、1.8~5.5)、非黒人では過大に予測された(中央値:3.9mL/分/1.73m2体表面積、3.4~4.4)。すべてのGFR算定式で、黒人・非黒人ともに、eGFRの85%以上が実測GFR値の30%内に当てはまった。 血清クレアチニンとシスタチンCを用いて人種を除外した新eGFR算定式は、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式に比べ、より正確で人種間の差も小さかった。 米国成人のCKD有病率についても、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式で、従来eGFR算定式に比べて黒人の予測は上昇し、非黒人では同程度または低下することが認められた。

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AZ製ワクチン第III相試験主要解析結果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)は、高齢者を含む多様な集団においてCOVID-19の発症・重症化を安全・有効に予防することが示された。米国・ロチェスター大学のAnn R. Falsey氏らが、米国、チリ、ペルーにおいて現在進行中の、高齢者を含む3万例超を対象とした第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「AZD1222試験」の結果を報告した。同3ヵ国では、AZD1222の安全性および有効性が明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2021年9月29日号掲載の報告。米国、チリ、ペルーで3万2,451例を対象に試験 試験は、米国、チリ、ペルーで高齢者を含む成人集団を対象に、AZD1222の2回投与の安全性、有効性、免疫原性をプラセボと比較し、AZD1222の2回目投与後15日以降のCOVID-19発症および重症化の予防効果を調べた。 研究グループは被験者3万2,451例を2対1の2群に分け、一方にはAZD1222を(2万1,635例)、もう一方にはプラセボを(1万816例)投与した。完全接種者約1万8,000人中重症者はなし AZD1222群は重篤・医師の診察を要する有害事象や、特定の有害事象の発生率は低く、安全であることが確認された。事象はプラセボ群で観察されたものと類似しており、非自発的な局所および全身性反応は、両群において概して軽度または中等度だった。 ワクチンの推定有効率は、全体で74.0%(95%信頼区間[CI]:65.3~80.5、p<0.001)、65歳以上では83.5%(54.2~94.1)だった。ワクチンの高い有効性は、年齢や職業などの人口統計学的サブグループにおいても一貫して認められた。 完全接種者(AZD1222またはプラセボ2回接種後15日以降)を対象に行ったサブグループ解析では、重症または命に関わるCOVID-19の発症例は、AZD1222群1万7,662例では認められなかった。一方、プラセボ群8,550例では8例(<0.1%)報告された。 SARS-CoV-2感染予防(ヌクレオカプシド抗体セロコンバージョン)の推定有効率は64.3%(95%CI:56.1~71.0、p<0.001)だった。SARS-CoV-2スパイクタンパク質結合と中和抗体は初回投与後に増加し、2回目投与後28日の測定ではさらに増加が認められた。

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