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第1回 2024年、時間外労働上限スタート!あなたの職場は対応できる?2024年4月から、勤務医の時間外労働に上限規制が適用される、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートします。しかし、準備期間だったはずの2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、それどころではなかった、という医療機関も多いことでしょう。コロナ対応に多少収束のめどが付きはじめるであろう2022年度にかけ、いよいよ本格的に働き方の見直しに取り組まねば、と考えている医療機関が多いのではないでしょうか。私が所属する株式会社ワーク・ライフバランスは、2006年の創業時からこれまで、1,000組織以上の働き方改革のコンサルティングを実施してきました。その中で見えてきたのは、どんな業界・業種でも基本的な進め方は同じ、ということです。そしてその基本原則となるのは「現場主体」であることです。私たちが現場主体にこだわる理由は、その「持続性」にあります。「誰かにやらされて実施した働き方改革」は、その強制力が弱くなるとあっという間に元に戻ってしまいます。それどころか、強制した経営陣に不信感を抱いて、前の状態よりも職場の雰囲気や働き方が悪化してしまうことすらあります。「現場主体」で無理なく続けるからこそ、常に新しいアイデアが生まれ、現場を良い状態に保つことができるのです。この連載では、厚生労働省が提示する「医師の働き方改革」を、皆さんの現場と皆さん自身でスタートするための手法とコツをお伝えします。医療機関での働き方改革の実践は、2019年から私たちがコンサルタントとしてお手伝いしている長崎大学病院での経験が基になっています。2024年には、時間外労働1,860時間の上限規制が開始されます。医療現場の働き方改革はもはや待ったなしの状態です。トップや経営陣がやってくれるはず、ではなく、まずはあなたができることを見つけて、始めてみませんか?時間外労働の上限が高いC群も、認定申請が煩雑&猶予があるだけ厚生労働省から発表された医師の働き方改革の概要をおさらいしてみましょう。画像を拡大するまず、一般則として、医師の時間外労働の上限は、年間720時間、月100時間未満(休日労働含む)の月を年間6ヵ月までとすると定められています。ただ、医療機関によっては正確な労働時間を把握できていなかったり、外勤時間はカウントしなかったりするところも多く、医師の勤務実態は非常に過酷です。そこで2024年4月からは、全医療機関・診療科をA・B・Cという3つの群に分け、A群は年間960時間の上限、B・C群は年間1,860時間の上限が設定されます。この分類は診療科ごと、都道府県ごとに行われ、地域医療にどのような影響があるのかを検討している段階です。加えて、A群は連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセットが努力義務となり、B・C群はこれらが義務化されます。C群は集中的技能向上水準を満たさなくてはならず、適用を受ける医療機関・医師は限られると考えられます。そして、重要なことは、B群の認定を受けても、10年後の2035年にはA群と同じ年間960時間に収めることが求められます、という点です。B群もいわば「猶予期間」があるだけなのです。高齢化や高度医療が進む日本社会にあって、医療の現場はますます忙しくなるでしょう。この法規制を守りながら患者に適切な医療を提供し、且つ医師・医療者の健康を守る必要があるのです。まずは自分と身近なチームで「できること」から私たちがお手伝いしている長崎大学病院での取り組みは、2015年に長崎大学として働き方改革の取り組みであるワークスタイルイノベーション(WSI)のプロジェクトが発足したことから始まりました。きっかけは「性別関係なく、研究者が活躍できる職場環境づくりをしていきたい」という思いからでした。その後、2015年度の文部科学省の女性研究者支援事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を申請、採択され予算を獲得したことから本格的に取り組みがスタートしました。長崎大学病院のWSIは現在も継続中で、これまでに多くの医師、看護師、管理栄養士などの専門職のみならず、事務職の方にも参加していただきました。医療機関は一般企業以上に部門ごとの差異が大きく、問題や課題感も異なっています。よって「これだけやれば医療機関の働き方が変わる!」といった特効薬はありませんが、各診療科・部門の取り組みを紹介することで、読者の方が「これならできるかも」と思えるものが見つかるのでは、と考えています。本連載では、長崎大学病院での働き方改革の事例を基に、誰でもできることから始められるよう、具体的なツールや手法を紹介していきます。はじめは1人かもしれませんが、そこから職場で仲間を見つけ、チームで取り組んでください。1人では解決できないことも、複数人で知恵を絞れば解決できることがあったり、意見を言いやすくなったりするはずです。チームでの上手な働き方改革の進め方も紹介していきますよ!