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052)水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第52回 水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来は繁忙期の夏に入り、水虫の患者さんが増えてきました。汗で蒸れやすく、素足で過ごす人が増えるこの季節、白癬菌にとっては絶好のパラダイス。足白癬を疑った場合、診察室でまずすべきは、直接鏡検で菌体を見つけることです。検査の前に抗真菌薬を使ってしまうと、正しい判断ができなくなってしまうので注意しましょう。それでは、鏡検でばっちり菌体を見つけるために必要な、検体採取のコツをご紹介します!(1)二次的病変や抗真菌薬の外用など、検査の阻害要因がある場合は時間を空ける足白癬では、細菌感染や接触性皮膚炎(かぶれ)などを併発している場合、菌体を見つけにくくなることがあります。前述のように、抗真菌薬を外用している場合も同様です。二次的病変がある場合はまずそちらを治療してから、抗真菌薬を使用している場合は外用を中止し、1~2週間空けてから再検査しましょう。(2)病変部と健常部の境目にある新鮮な鱗屑を狙って、複数箇所から多めに採取水虫の病変部は、外側へどんどん広がるため、輪を描くように丸くなっていると思います。菌体が一番多く存在するのは、まさにその辺縁部分。中心部の古い鱗屑には菌体があまり居ないので、できたての病変部から検体を採取しましょう!慣れてくると、少量の検体採取でも菌体を探り当てることができるようになりますが、顕微鏡をのぞいても菌体が見つけられなかったとき、「これだけ調べて居なかったのだから、陰性!」と胸を張って(?)言えるよう、検体はいつも複数箇所から多めに採取しています。(3)爪白癬の場合、病変部の場所(付け根or先端)で検体の採取方法が変わる表在性または近位部(爪の付け根)を侵すタイプの爪白癬では、爪の表層に菌体が存在するので、白濁部をメスなどで削り取るように採取します。一方、爪全体や遠位部(爪の先端)が白濁・肥厚して真っ白になるタイプの爪白癬は、伸びた爪先をニッパーなどで切り取ってから、爪下の角質を奥のほうからかき出すようにして採取します。爪白癬がまさに進行している爪の下の奥に菌体が多く存在するのです。(4)水疱があれば迷わず水疱蓋を採取する一番確実なのが水疱蓋の採取です。菌体を大量に観察できます! 無鉤セッシなどでちぎり取ってしまうと、周囲の健常な角質までむけてしまうため、眼科剪刀を押し当てるようにして、水疱蓋を刃先でつまんで挟むようにしながら切り取るとよいです。直接鏡検は検体採取が命! 上手に採取し、素早く確実に菌体を見つけましょう☆彡それでは、また~!

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コロナ禍のオンライン会議【Dr. 中島の 新・徒然草】(387)

三百八十七の段 コロナ禍のオンライン会議コロナ禍には悪いことばかりでなく、良いこともあるように思います。その1つがオンライン会議の普及。10年ほど前、東京にある国立病院機構本部に出張することの多い時期がありました。電車でいうと、東急電鉄田園都市線の駒沢大学駅になります。朝、家を出て新大阪から新横浜まで新幹線に乗り、その後に地下鉄ブルーラインと田園都市線を乗り継いで目的地に到着するというのがいつもの経路。品川駅から山手線に乗る方法もあったのですが、混んでいる上に、しばしば人身事故などで電車が止まってしまうので、いつの間にか新横浜で降りるようになりました。帰りは逆のルートですが、朝出て夜に帰る日帰り出張だと、家に帰ったときはヘロヘロでした。大阪などはまだマシなほうで、九州やら北海道から来る人たちはもっと大変だったのではないかと思います。しか~し。オンライン会議であれば、毎回遠くに出かける必要がなく、1日つぶれることもありません。10人くらいの会議はオンラインで簡単にセッティングすることができ、出席率もはるかにいい気がします。また、会議の直前まで仕事や用事をすることができ、会議が終わってからも続きを行うことが可能。最初はとまどっていたアプリの取り扱いも、最近は皆さん慣れてきたのか、マイクの切り替えや質問・コメントもスムーズになってきました。かといって、オンライン会議にも問題がないわけではありません。まず、音や映像の質がいまひとつです。映像のほうは多少見にくくても問題はありませんが、音のほうは質が悪いだけでなく明らかなタイムラグがあり、しばしば2人が同時に発言しそうになります。また、自宅から出席できることもオンライン会議のメリットですが、だからといってパジャマでOKというわけにはいきません。少なくとも、上半身だけはその場にふさわしい服装でなくてはなりません。とはいえ、土日の打ち合わせであっても、なぜか白衣での出席がちらほら見られます。皆さん忙しいんですね。オンライン会議のもう1つの問題が、ペットや子供の乱入。自宅から参加している場合に起こりがちです。私自身は、犬猫の乱入は見たことがありませんが、子供の声が割り込んできたという場面には遭遇したことがあります。自分が喋らない時にはマイクをミュートにしておけばいいのですが、親が話をしている時にかぎって子供も何か言いたくなるのでしょうね。子供の声が被ってくると会議が中断してしまうのですが、そのくらいのことはあると思っておいたほうが良さそうです。一度、演者の御主人が乱入してきて驚かされたことがあります。でも、この業界には色々な人がいるので、むしろ妙に納得させられました。昔の出張の大変さを思えば、オンライン会議の便利さは隔世の感があります。そういえば10年ほど前に、某自動車メーカーの人が、「最近は海外出張が減って、ほとんどがオンライン会議になりました」と言っておられました。時差のことをのぞけば、体力、お金、時間のどれをとってもオンライン会議はメリットが大きいですね。できれば、もう少しだけ音質が良くなってタイムラグのないアプリを手軽に使える日が来てもらいたいものです。最後に1句オンライン 会議のために パジャマ替え

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2024年、時間外労働上限スタート!あなたの職場は対応できる?【今日から始める「医師の働き方改革」】第1回

第1回 2024年、時間外労働上限スタート!あなたの職場は対応できる?2024年4月から、勤務医の時間外労働に上限規制が適用される、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートします。しかし、準備期間だったはずの2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、それどころではなかった、という医療機関も多いことでしょう。コロナ対応に多少収束のめどが付きはじめるであろう2022年度にかけ、いよいよ本格的に働き方の見直しに取り組まねば、と考えている医療機関が多いのではないでしょうか。私が所属する株式会社ワーク・ライフバランスは、2006年の創業時からこれまで、1,000組織以上の働き方改革のコンサルティングを実施してきました。その中で見えてきたのは、どんな業界・業種でも基本的な進め方は同じ、ということです。そしてその基本原則となるのは「現場主体」であることです。私たちが現場主体にこだわる理由は、その「持続性」にあります。「誰かにやらされて実施した働き方改革」は、その強制力が弱くなるとあっという間に元に戻ってしまいます。それどころか、強制した経営陣に不信感を抱いて、前の状態よりも職場の雰囲気や働き方が悪化してしまうことすらあります。「現場主体」で無理なく続けるからこそ、常に新しいアイデアが生まれ、現場を良い状態に保つことができるのです。この連載では、厚生労働省が提示する「医師の働き方改革」を、皆さんの現場と皆さん自身でスタートするための手法とコツをお伝えします。医療機関での働き方改革の実践は、2019年から私たちがコンサルタントとしてお手伝いしている長崎大学病院での経験が基になっています。2024年には、時間外労働1,860時間の上限規制が開始されます。医療現場の働き方改革はもはや待ったなしの状態です。トップや経営陣がやってくれるはず、ではなく、まずはあなたができることを見つけて、始めてみませんか?時間外労働の上限が高いC群も、認定申請が煩雑&猶予があるだけ厚生労働省から発表された医師の働き方改革の概要をおさらいしてみましょう。画像を拡大するまず、一般則として、医師の時間外労働の上限は、年間720時間、月100時間未満(休日労働含む)の月を年間6ヵ月までとすると定められています。ただ、医療機関によっては正確な労働時間を把握できていなかったり、外勤時間はカウントしなかったりするところも多く、医師の勤務実態は非常に過酷です。そこで2024年4月からは、全医療機関・診療科をA・B・Cという3つの群に分け、A群は年間960時間の上限、B・C群は年間1,860時間の上限が設定されます。この分類は診療科ごと、都道府県ごとに行われ、地域医療にどのような影響があるのかを検討している段階です。加えて、A群は連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセットが努力義務となり、B・C群はこれらが義務化されます。C群は集中的技能向上水準を満たさなくてはならず、適用を受ける医療機関・医師は限られると考えられます。そして、重要なことは、B群の認定を受けても、10年後の2035年にはA群と同じ年間960時間に収めることが求められます、という点です。B群もいわば「猶予期間」があるだけなのです。高齢化や高度医療が進む日本社会にあって、医療の現場はますます忙しくなるでしょう。この法規制を守りながら患者に適切な医療を提供し、且つ医師・医療者の健康を守る必要があるのです。まずは自分と身近なチームで「できること」から私たちがお手伝いしている長崎大学病院での取り組みは、2015年に長崎大学として働き方改革の取り組みであるワークスタイルイノベーション(WSI)のプロジェクトが発足したことから始まりました。きっかけは「性別関係なく、研究者が活躍できる職場環境づくりをしていきたい」という思いからでした。その後、2015年度の文部科学省の女性研究者支援事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を申請、採択され予算を獲得したことから本格的に取り組みがスタートしました。長崎大学病院のWSIは現在も継続中で、これまでに多くの医師、看護師、管理栄養士などの専門職のみならず、事務職の方にも参加していただきました。医療機関は一般企業以上に部門ごとの差異が大きく、問題や課題感も異なっています。よって「これだけやれば医療機関の働き方が変わる!」といった特効薬はありませんが、各診療科・部門の取り組みを紹介することで、読者の方が「これならできるかも」と思えるものが見つかるのでは、と考えています。本連載では、長崎大学病院での働き方改革の事例を基に、誰でもできることから始められるよう、具体的なツールや手法を紹介していきます。はじめは1人かもしれませんが、そこから職場で仲間を見つけ、チームで取り組んでください。1人では解決できないことも、複数人で知恵を絞れば解決できることがあったり、意見を言いやすくなったりするはずです。チームでの上手な働き方改革の進め方も紹介していきますよ!

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「患者さんに話が伝わらない」と思ったら、試してほしいこと【非専門医のための緩和ケアTips】第9回

第9回 「患者さんに話が伝わらない」と思ったら、試してほしいこと「時間をとって一生懸命患者さんの話を聞いているのに、どうも患者さんの求めに応えられていない気がする…」。そんなふうに感じる時はないでしょうか。この気付き、緩和ケアの視点から非常に重要なので、今回はそんなお話をしてみます。今日の質問忙しい外来でも、患者さんの話をしっかり聞いたうえで、きちんと指導することを心掛けています。ただ、それだけ指導したにもかかわらず、あまり行動を変えてくれません。それどころか、何か納得してないような雰囲気も感じます。緩和ケアのスキルを使って、何かできることがあるでしょうか?外来でよくある光景ですよね。私も以前、糖尿病のコントロールが不十分な患者さんに食事や運動の重要性を頑張って説明したものの、「はぁ…、そうですよね…」といった反応しか返ってこず、そうした状況に悩んだ時期もありました。「生活習慣病患者の行動変容」という、緩和ケアとはまったく異なる話題に対して、緩和ケア医がアドバイスできることはあるでしょうか? 解決策そのものを提案することは難しいのですが、緩和ケアの実践や教育の場面でよく議論される話題を紹介させてください。ちょっと難しい言葉を使うと「対人援助技法」となるのですが、今回はわかりやすく「自分と患者さんの状態」を意味する言葉である「“モード”に着目しよう!」というライトな表現にしてみます。さて、今回のような臨床現場でよく見る光景ですが、肝心の患者さんは問題解決をしたい「モード」になっているでしょうか?「自分の血糖値をなんとか下げたい!」「血管リスクを低減する具体的な取り組みをアドバイスしてほしい」という糖尿病患者さんには、残念ながらあまりお目にかかりません。一方、以前の私や今回の質問をされた医師はどんな「モード」でしょう? まさしく、問題解決を目指す「モード」ではないでしょうか?「なんとか患者さんの健康を守りたい!」「そのための課題は血糖値が高いことで、解決策は食事と運動療法だから、しっかり指導しよう!」…。こんな気持ちが前面に出ているように感じられます。誤解がないように言っておきますが、これはまったく悪いことではありません。医師が患者の問題解決を目指すことは、ある意味当然のことです。ただ、意識していただきたいのは、自分と患者さんの「モード」が完全にズレている、という点です。忙しい外来でせっかく時間をかけて指導しても、患者さんにとって意味のある行動変容につながらないのでは意味がありません。これは、お互いのモードのズレが大きく、同じ議論の基盤に立ってないからです。あっさりとしたそばを食べたい人にこってりした豚骨ラーメンのおいしさを説いたところで、「よし、それじゃあ豚骨ラーメンを食べに行こう!」とはなりませんよね。自分の「モード」をいったん脇に置いておき、相手の「モード」が今どんな状態なのか、想像してみることが歩み寄りの第一歩になります。緩和ケアはいろいろな職種と協働して取り組みます。そこで医師として働いていて感じるのは、「さまざまな職種の中で、とくに医師は問題解決に思考が向きやすい」ということです。それは医師の持つ強みですが、一方で自分と患者さんの「モード」のギャップが大きくなりがちという弱みも内包しています。「モードに目を向けて」というと、「チーム医療で、時間をたっぷり使える緩和ケアだからできるアプローチでしょう?」と思われるかもしれませんが、外来の限られた時間であっても、医師の意識は患者さんに確実に伝わるものです。「患者さんにわかってもらえない、伝わっていない」と感じたら、一息ついて自分と相手の「モード」に目を向けてみましょう。次回はこのスキルを高める方法もお伝えしたいと思います。今回のTips今回のTips自分と患者さんの「モード」に意識を向けてみよう!

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第70回 医療者が危惧する国産コロナワクチン・治療薬の「条件付き早期承認」

新型コロナウイルスを巡っては、国産のワクチンや治療薬の登場が見えてきた。第一三共が開発中のmRNAワクチン「DS-5670」は、年内にも最終の臨床試験を行い、来年後半の実用化を目指す。塩野義製薬が開発中の治療薬「S-217622」は、年内に100万〜200万人分の提供体制を整える方針だ。いずれも「条件付き早期承認制度」の適用を受け、国に承認を申請する。同制度は、国産薬剤を早期に承認するため治験の条件を緩和するものだが、販売後に評価を行う条件で承認するため、拙速な審査を懸念する声が医療現場から出ている。治療薬も国内外で開発競争が激化政府は、海外製ワクチンに依存している現状を打破し、国産ワクチンの開発を進めるため、今年6月に「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を閣議決定し、薬事承認プロセスの迅速化や戦略的研究費の配分などを打ち出した。その流れに沿って、第一三共は従来数万人規模で行う最終臨床試験を、国内外の数千人規模で実施。接種後の抗体価などをファイザー製やモデルナ製のワクチンと比較する方法で有効性を確認することなどにより、開発に要する期間を短縮する。塩野義の治療薬は、承認されれば軽症者用の経口薬としては国内初。自宅で簡単に服用できる飲み薬のニーズは大きい。感染初期に1日1回、5日間服用することで重症化を防ぎ、発熱などの症状を改善する。7月に臨床試験を開始、第1段階を9月、第2段階を11月に終了する予定だ。国内で承認されている4つの新型コロナ治療薬のうち、軽症者用は「抗体カクテル療法」だけで、入院患者が対象だ。そのため、入院前に重症化を防ぐ治療薬が求められていた。 自宅でこうした薬を飲むことで入院しなくて済めば、医療の逼迫も抑えられる。ちなみに、塩野義以外の新型コロナ治療薬の経口薬候補には、中外製薬の「AT-527」、富士フイルムホールディングスの「アビガン」、MSDの「モルヌピラビル」が最終段階にある。また、米ファイザーも米国で第1段階の治験を進めており、国内外で開発競争は激化している。塩野義は経口治療薬の海外への供給に向け、米国の生物医学先端研究開発局と協議を進めている。拙速承認と市販後評価におけるリスク条件付き早期承認制度について、新型コロナ感染症患者を診ているクリニックの理事長は「早期承認は、国際的には評価が定まっていない方法。抗体価は免疫のパワーを測定する数値だが、それが全てではない。発病予防効果の有無について市販して実際人々に打ってからデータを集めるとなると、海外から売ってくれということにはならないだろう。私も第1選択にはしない」と言う。一方、薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)では、日本を含む30ヵ国の薬事承認担当者でタスクフォースを作り、新たに開発するワクチンに関わる迅速な承認の国際ルールについて協議し、年末をめどに合意する方向にあるという。ある自民党議員は「将来的には日本で作ったワクチンを30ヵ国に売り込むことができる。ワクチンには戦略も重要だ」と話す。接種率が低くても世界3番目のワクチン供与国際社会での影響力を強めるため、米中がワクチン供与でしのぎを削る中、日本は世界3番手の“ワクチン外交”を展開している。主要7ヵ国でワクチン接種率が最も低調であるにもかかわらず、である。それだけに、国産ワクチン・治療薬の開発が国民のためだけではない“思惑”を感じる。前述の理事長は「科学的データに基づき、感染・発病・重症化に対する予防効果がしっかり評価されたワクチンを患者のために選んでいきたい。メーカーには、市場における勝ち負けよりも、患者のためという基本理念に忠実であってほしい」と述べる。

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統合失調症の認知機能障害とストレスや免疫系との関連~機械学習に基づく分析

 統合失調症の認知機能障害には、心理的ストレスと免疫系が関連しているといわれている。中国・電子科技大学のQi Zhang氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて、慢性期統合失調症の認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を調査した。Neuroscience Letters誌オンライン版2021年6月24日号の報告。 慢性期統合失調症患者37例および年齢、性別がマッチした健康対照者35例を対象に、認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を明らかにするため、機械学習アルゴリズムを用いて分析を行った。統合失調症患者の心理的ストレスと免疫系に対する機能不全を反映する生化学的指標として、コルチゾール、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-2、IL-6、IL-8を選択した。 主な結果は以下のとおり。・コルチゾール、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-8における14種類の相互作用に基づいて、以下の機械学習アルゴリズムを用いて分析を行ったところ、コルチゾール×TNF-α×IL-8が慢性期統合失調症を特定するための最大のリスク因子であることが示唆された。 ●デシジョンツリー(精度:93.1%、感度:97.3%、特異性:88.6%) ●ランダムフォレスト(精度:94.4%、感度:91.9%、特異性:97.1%) ●サポートベクターマシン(精度:98.6%、感度:100.0%、特異性:97.1%)・コルチゾール×TNF-α×IL-8とPANSS認知機能サブスコアとの間に正の相関が認められた。・ステップワイズ線形重回帰分析では、PANSS認知機能サブスコアは、罹病期間およびコルチゾール×TNF-α×IL-8と相関していることが示唆された。 著者らは「慢性期統合失調症の認知機能に対し、糖質コルチコイドと免疫との関連が影響を及ぼしていることが示唆された」としている。

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薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブ

 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性について、イタリア・ボローニャ大学のUmberto Pensato氏らは、検討を行った。Neurological Sciences誌オンライン版2021年7月5日号の報告。 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性を評価するため、実生活環境下におけるプロスペクティブ多施設共同試験を実施した。対象は、3クラス以上の薬理学的治療に加え、onabotulinumtoxinAによる治療が奏効しなかった慢性片頭痛患者。 主な結果は以下のとおり。・エレヌマブを使用した患者396例のうち、選択基準を満たした患者は149例(38%)であった。・エレヌマブ治療3ヵ月後における1ヵ月当たりの片頭痛日数が50%以上減少した患者は76例(51%)、75%以上減少した患者は30例(20%)であった。・1ヵ月当たりの鎮痛薬の使用量および頭痛日数は減少が認められた。 ●鎮痛薬の使用量:46.1±35.3→16.8±13.9(p<0.001) ●頭痛日数:25.4±5.4→14.1±8.6(p<0.001)・試験期間を通じて、エレヌマブの有効性の上昇が確認された。・アロディニアは、エレヌマブの有効性を予測する負の因子であった(オッズ比:0.47、p=0.03)。・薬物乱用を伴わない反復性片頭痛における臨床的治療反応率は、64%(96例)であった。・重篤な有害事象は観察されなかった。 著者らは「エレヌマブ治療により、薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛における片頭痛の頻度および鎮痛薬の摂取量の有意な減少が認められた」としている。

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がん悪液質は非小細胞肺がんIO-Chemo治療の予後不良因子か

 がん悪液質は免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法の予後不良因子であることが示されているが、化学免疫療法に関する、その関係の検討は少ない。京都府立医科大学の森本健司氏らは後ろ向き解析により、非小細胞肺がん(NSCLC)において、がん悪液質が化学免疫療法予後の不良因子である可能性を明らかにした。 わが国の12施設で化学免疫療法を受けたNSCLC患者を対象に医療記録を後ろ向きに解析した。がん悪液質の定義は、化学免疫療法開始前6ヵ月以内の、5%以上の全体重減少、BMI20 kg/m2の対象者では2%を超える全体重減少とした。 主な結果は以下のとおり。・対象は2019年1月~11月に登録され、解析対象に適格となった患者は196例であった。・解析対象のうち25.5%(50例)が悪液質診断の基準を満たしていた。・がん悪液質患者では非がん悪液質患者に比べ、PD-L1発現50%以上の頻度が、有意に高かった(48%、p=0.01)・がん悪液質患者の無増悪生存期間は、非がん悪液質の患者に比べ有意に短かった(p=0 .04)・全生存期間(OS)については、がん悪液質患者と非がん悪液質患者間の関係は認めなかった(p=0.14)。

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家庭内濃厚接触者への抗体カクテル療法、予防効果は?/NEJM

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染が確認された家族と接触した感染歴のない家族に対して、カシリビマブとイムデビマブの抗体カクテル「REGEN-COV」皮下投与は、症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)および無症候性のSARS-CoV-2感染を予防することが示された。米国・Regeneron PharmaceuticalsのMeagan P. O'Brien氏らが、接触4日以内の家庭内濃厚接触者第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果を発表した。感染が認められた被験者家族における、症状解消までの期間および高ウイルス量期間を短縮したことも認められたという。REGEN-COVは、高リスクCOVID-19患者の入院または死亡のリスクを著しく低下することが示されていたが、家庭内濃厚接触者に対するSARS-CoV-2感染および感染後のCOVID-19発症を予防するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月4日号掲載の報告。28日までの症候性COVID-19の発症をプラセボ投与と比較 研究グループは、SARS-CoV-2感染の診断を受けた家族と接触後96時間以内の12歳以上の家族を被験者として登録。1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはREGEN-COV(総投与量1,200mg)を、もう一方にはプラセボを、それぞれ単回皮下注で投与した。無作為化時に、被験者についてSARS-CoV-2診断検査の結果と年齢で層別化した。 有効性の主要エンドポイントは、SARS-CoV-2感染歴がない被験者(逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応検査で計測)または免疫がない被験者(血清陰性)における、28日までの症候性COVID-19の発症だった。相対リスクは81.4%低下、症状解消までの期間は約2週間短縮 症候性COVID-19の発症は、REGEN-COV群11/753例(1.5%)、プラセボ群59/752例(7.8%)で認められた(REGEN-COV群の相対リスク低下[1-相対リスク]81.4%、p<0.001)。また、第2~4週においては、同発症はそれぞれ2/753例(0.3%)、27/752例(3.6%)だった(同相対リスク低下92.6%)。 REGEN-COV群では、症候性・無症候性SARS-CoV-2感染全体の予防効果が認められた(相対リスク低下66.4%)。 症候性COVID-19の発症者において、症状解消までの期間中央値は、プラセボ群3.2週間に対しREGEN-COV群は1.2週間と約2週間短く、高ウイルス量(>104コピー/mL)の期間も、それぞれ1.3週間、0.4週間とREGEN-COV群で短かった。なお、REGEN-COVの用量規定毒性は認められなかった。

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心原性ショックの薬物療法、ミルリノンvs.ドブタミン/NEJM

 心原性ショックの薬物療法について、ミルリノンとドブタミンは、院内死亡や蘇生された心停止、心臓移植や機械的循環補助といった複合アウトカムの発生率に有意差はないことが示された。各項目単独の発生率についても、両群で有意差は認められなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca Mathew氏らが、192例を対象に行った無作為化比較試験の結果を発表した。心原性ショックは高い罹患率および死亡率と関連している。変力性サポートは、心原性ショックの中心的な薬物治療だが、現状では臨床における変力性薬剤の選択肢を示すエビデンスはほとんどないという。NEJM誌2021年8月5日号掲載の報告。二重盲検下で無作為化し、ミルリノンまたはドブタミンを投与 研究グループは、心原性ショックの患者を二重盲検下で無作為に2群に割り付け、一方にはミルリノンを、もう一方にはドブタミンを投与した。 主要アウトカムは、院内死亡、蘇生された心停止、心臓移植、機械的循環補助の実施、非致死的心筋梗塞、神経内科医の診断による一過性脳虚血発作または脳梗塞、腎代替療法の開始の複合アウトカムだった。 副次アウトカムは、主要複合アウトカムの各項目などだった。主要アウトカム発生率、両群ともに約半数で有意差なし 被験者総数は192例(各群96例)だった。主要アウトカム発生については、ミルリノン群47例(49%)、ドブタミン群52例(54%)で有意差はなかった(相対リスク[RR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.69~1.19、p=0.47)。 副次アウトカムの発生についても、院内死亡(ミルリノン群37%、ドブタミン群43%、RR:0.85、95%CI:0.60~1.21)、蘇生された心停止(7%、9%、ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.29~2.07)、機械的循環補助の実施(12%、15%、HR:0.78、95%CI:0.36~1.71)、腎代替療法の開始(22%、17%、HR:1.39、95%CI:0.73~2.67)と、群間の有意差はなかった。

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「プラザキサ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第64回

第64回 「プラザキサ」の名称の由来は?販売名プラザキサ®カプセル75mgプラザキサ®カプセル110mg一般名(和名[命名法])ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩 (JAN)効能又は効果非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制用法及び用量通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル) を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。警告内容とその理由警告本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されていないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者3.出血症状のある患者、出血性素因のある患者及び止血障害のある患者[出血を助長するおそれがある。]4.臨床的に問題となる出血リスクのある器質的病変(6ヶ月以内の出血性脳卒中を含む)の患者5.脊椎・硬膜外カテーテルを留置している患者及び抜去後1時間以内の患者[外傷性や頻回の穿刺や術後の硬膜外カテーテルの留置によって脊髄血腫や硬膜外血腫の危険性が増大する。]6.イトラコナゾール(経口剤)を投与中の患者※本内容は2021年8月11日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年4月(第16版)医薬品インタビューフォーム「プラザキサ®カプセル75mg/カプセル110mg」2)ベーリンンガーインゲルハイム:医療用医薬品基本情報

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英語学習は○○が9割!【医療者のための英語学習法】

仕事で使う英語は日常会話よりも簡単!英語学習でよくある勘違いの1つに「ビジネス英語は日常会話よりも難しい」という考え方があります。実際、日常会話を勉強して、その後で仕事で使う英語を学ぼうと考える方が多いですが、この考え方はむしろ“逆”です。仕事で使う英語のほうが日常会話よりも英語学習の入り口としては適しているケースが多く、これは医療者の方にも当てはまります。現在仕事で英語の必要性がある方は、これを「チャンス」と捉え、ぜひ主体的に学習を始めてください。実は攻略しやすい医療英語「仕事の英語が日常会話より簡単」な理由は、医療者が必要とする英語は、ある程度範囲が決まっており、専門ごとに使う医療用語も限られるためです。英語を話す場面もある程度決まっていて、海外学会での発表や外国人の患者への診療などでしょう。診療で使う表現は何度も繰り返して使うため、定型(フレーズ)化しやすいといえます。そして繰り返すことによってそのやりとりが身に染み付いていくのです。また、第二言語習得には「Narrow Reading」の効果が高いといわれています。Narrow Readingとは、テーマの範囲を絞ってリーディング学習を進めることで、同じトピックについてさまざまな文章や記事を読むことを指します。この学習方法は語彙的にも負担が少ないので、理解度向上に寄与するのです。医療者の方も自身の専門分野の英語の論文を読むのであれば、一般的な英語のニュース記事を読むよりもラクに感じることでしょう。自分が関わる仕事の内容は十分な背景知識があるため、すべての単語の意味がわからなくても大体どういうことが書いてあるか予想がつくためです。一方で一般のニュース記事はトピックが広範囲にわたり、背景知識がないトピックは難易度が上がります。つまり、仕事上で英語が必要な医療者の方は、英語学習を始めるよいきっかけと、実践するよい機会をすでに持っているわけです。忙しさをチャンスに変える!しかし、必要性があっても、忙しさを理由に英語学習に十分な時間を費やすことができていない方が多いのではないでしょうか。時間ができたらやろう、と思ったまますでに数年…、という話もよく聞きます。英語学習には2つの選択肢があります。1.忙しいからやらない2.忙しいけどヤル誤解を恐れずに極論すると上記2つに集約されます。「時間ができたら学習する」という方は多いですが、「今後1年間は十分な時間を確保できます」という人はまずいません。また、今は時間がとれると思っていても、その後環境が変わって忙しくなることもあるでしょう。私はビジネスパーソン向けの英会話スクールを19年にわたって運営していますが、感覚的には「英語学習の時間が十分とれる」と思える方は全体の10~30%程度です。さらに言うと、こうした「時間がとれる」という方がきっちり学習するわけでもなく、時間がとれる方は「いつでもできる」と先延ばしにしがちで、結局やらないケースも多いのです(夏休みの宿題を7月中に終えられる人は別でしょうが)。ソニーの元副社長でウォークマンの開発者でもあった大曽根 幸三氏は、「急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め!」という名言を残しています。大曽根氏いわく「暇なやつに仕事を頼んでも後回しにして一向に仕事が終わらない」のだそうです。逆に忙しいビジネスパーソンはスピーディに終わらせる傾向がある、とのこと。英語学習にも同じ傾向があって、忙しい人のほうが限られたスケジュールをやりくりして学習時間をねじ込んできます。「この時間を逃したら他に学習時間はまったくとれない」という危機感から確実に学習する人が多いのです。そもそも「暇だったので英語の勉強をして話せるようになりました~!」という話を、私自身聞いたことがありません。極端なケースを除けば、忙しさは英語学習ができない理由にはならないでしょう。私はこれまでに延べ1,000名以上のさまざまな立場にあるビジネスパーソンの英語学習を指導してきましたが、どう考えても時間のある新卒一年目の方が「忙しくて時間がとれない」と言う一方で、家事と2人の子育てをしながら大学の准教授としてフルタイムで働く女性が1日3時間の英語学習を何ヵ月もこなし続けるのを見て、時間のあるなしは言い訳にならない、と改めて思いました。英語学習はスケジューリングが9割とはいえ、医療者は自分でのスケジューリングに限界があることも多いでしょう。忙しさを前提とした英語学習はどうすればよいのでしょうか?私の考えでは英語学習は「スケジューリングが9割」です。いかに実践可能で現実的な英語学習を計画できるかがポイントです。故に「1日1時間の学習をする」という程度の甘い計画ではダメです。英語学習にはトリガー(きっかけ)が必要なのです。トリガーとは、たとえば下記のようなものです。○時になったら学習をする通勤電車に乗ったら必ず学習をするランチ休憩中に○○分学習をするこのように具体的な時間や条件をきっかけに英語学習を開始するようにすると実現性が高くなります。そして、とにかく学習時間を自分のスケジュールに確実に組み込みさえすれば、後はそのスケジュールをこなすだけです。時間の経過とともに英語力は着実に上がり、1、2年もすれば相当レベルが上がっているはずです。実現可能な学習スケジュールを立てることさえできれば9割は成功したようなものなのです。計画を立てる際はリアルなスケジュールを基に作成してください。希望的感覚に基づいたスケジューリングはすぐに瓦解します。自分の過去の学習経験から「どれくらい集中力が続くのか?」「自宅のリビングで家族がいる中で本当に学習できるのか?」「学習中にSNSは本当に見ないのか?」なども加味して、リアルに実践できる計画を立てましょう。とくに医療者の皆さんは当直や夜勤、急患や急変などの対応もありますので、そういったイレギュラーなスケジュールも想定しておきましょう。また、自分や家族が体調を崩す可能性を考慮したり、医療の勉強時間を確保したりすることも必要でしょう。イレギュラーな事態は、英語学習ができなかったときに非常に役に立つ言い訳になってしまいます。他人からも「それじゃ仕方ないね」と言ってもらえるかもしれません。しかし、それでは誰も幸せになりません。だからイレギュラーなハプニングが起こったときにどうするかの「プランB」までを計画に組み込む必要があります。医療者は一般の方よりも不規則なライフスタイルの方が多く、この問題を解決できずに、英語学習を頓挫した経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。「隙間時間」と「ながら学習」を多用する!まとまった時間がとりにくい、あるいはスケジュールが変動しやすい医療者の場合、「隙間時間」と「ながら学習」をすることで学習時間を補うようにしましょう。隙間時間の学習は意外と効率がよいのです。たとえば単語を暗記する場合、1時間集中してやるよりも、15分ずつ4回に分けて覚えたほうが定着率はよくなります。一説には、「単語は最低12回出合わないと覚えない」といわれていますので、単語を覚えるためには何度も覚えて忘れて、また出合って覚えて…、ということを繰り返します。だから隙間時間で単語と出合う数を増やすことが効果的なのです。これは一度にたくさん学ぶよりも、時間をかけて何度かに分けて学んだほうが、学習効率は上がることを提唱した「エビングハウスの忘却曲線」理論とも適合します。また、英語のリスニング学習は「ながら学習」に向いています。移動時間などを利用してリスニングをし、かつシャドウイングまですればスピーキング力の向上にも直結します。こういった学習計画・スケジュールをこなせたら1年後には飛躍的に英語力が向上します。そのための周到な学習計画をつくることで、英語学習成功の確率は一気に上がります。英語はしっかり取り組めば、日本にいながらでも働きながらでも必ず身に付きますので、ぜひ頑張ってください!※筆者がディレクターを務める、医療従事者向け英語学習プログラム「Medical English Hub(めどはぶ)」では現在2021年9月から始まる1期生を募集しています(8月末締め切り予定)。https://www.oneup.jp/medhub/learning-program/<執筆者>

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第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性

「重症患者や重症化リスクの特に高い方以外の方は自宅で」と菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連休は、諸々危ない東京を離れ、こっそりテントを担いで山に籠ろうと考えていたのですが、台風の接近で渋々断念。秋山に備え、山道具のメンテナンスで時間を潰しました。結構へたった道具も見つかり、それはそれで有意義な時間でした。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、7月30日には緊急事態宣言の対象府県が追加され、8月8日からはまん延防止等重点措置の適用地域に福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の8県が追加されました。これによって、重点措置の適用地域は13道府県となりました。そんな中、8月2日に政府が打ち出した「新型コロナウイルスの感染者は重症患者などを除き自宅療養を基本とする」とした方針が、医療界だけでなく、政治の世界でも大混乱を引き起こしました。菅 義偉首相はこの日の記者会見で「重症患者や重症化リスクの特に高い方には、確実に入院していただけるよう、必要な病床を確保します。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備します。(自宅療養者には)地域の診療所が、往診やオンライン診療などによって、丁寧に状況を把握できるようにします」と語ったわけですが、国民の多くには“患者切り捨て”と聞こえてしまったのです。私自身もニュースで菅首相の発言を聞いていました。重大なことを国民に伝えようとしているのに目は死んだ鯉のようで、事態の深刻さは伝わってきません。どうやら、菅首相は自分が話している言葉の意味を理解していないことが多いようです。8月6日の広島の平和記念式典での挨拶でも、肝心の部分を読み飛ばし、意味不明のことを話していましたし…。「究極の棄民政策だ」と舛添氏それにしても、中等症(肺炎症状が相当深刻な人もいます)を入院させないなんて…。これはもはや真夏のホラー映画です。野党は「患者を放棄する無責任な対応だ」と猛反対、自民党の新型コロナウイルス感染症対策本部とワクチン対策プロジェクトチーム内からも「事前に知らされていなかった」と不満が吹き出し、撤回を求める動きも起こりました。前東京都知事で厚生労働大臣も務めたことがある舛添 要一氏はツイッターで「究極の棄民政策だ」と強く批判しました。混乱が起こった理由の一つは、この方針が全国一律で行われるとみられたことです。2日の菅首相の記者会見を聞き直しても、「全国一律の方針」に聞こえました。その後、あまりの大反対の声に政府は方針を転換、4日の記者会見で菅首相は「東京や首都圏など爆発的な感染拡大が生じている地域であり、全国一律ではない」と強調するに至りました。「重症者以外自宅療養」のトーン弱まる「地域の診療所に往診やオンライン診療でなどで状況把握を行ってもらう」という方針に対しても、医療現場からは「急変した時に、確実に入院させられるか保証がない」「往診はそもそも手間と時間がかかり、対応人数にも限りがある」など、批判が相次ぎました。「重症者以外切り捨てようとしている」という批判に政府も流石に焦ったのか、菅首相は8月3日に行われた医療関係団体との意見交換で、病床確保や自宅・宿泊療養の強化への協力を要請した際、中等症患者については入院対応の方針を示しました。MEDIFAX等の報道によれば菅首相は、「酸素投与が必要な人、糖尿病などの疾患がある人は確実に入院していただき、それ以外の人で症状が悪くなった場合には、必ずすぐに入院できる体制を整備していく」と語ったとのことです。同日には厚生労働省から「現下の感染拡大を踏まえた患者療養の考え方について(要請)」と題する事務連絡が出され、 その中で「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い人に重点化することも可能である」との解釈が示されました。事務連絡も2日後に内容修正、「中等症は原則入院」にさらにこの事務連絡、2日後の8月5日、「中等症も原則入院対象とする」という内容に追加資料で修正するに至りました。上記の事務連絡の3枚目に1枚追加されているパワーポイントの資料がそれです。与党が問題視した対象地域について、当初は「患者が急増している地域」となっていましたが、「東京都をはじめ感染者が急増している地域」と地域名が追加され、全国一律の対応ではないことが強調されました。患者対応の方法についても、「感染者急増地域において可能とする新たな選択肢」という名称になり、「緊急的な対応として自治体の判断で対応を可能とする」となりました。そして肝心の入院については、当初「重症患者や特に重症化リスクの高い者に重点化」としていたものが、修正資料では「入院は重症患者、中等症患者で酸素投与が必要な者、投与が必要でなくても重症化リスクがある者に重点化(最終的には医師の判断)」となり、「医師の判断」も明記されました。つまり、「中等症は原則入院」ということになったのです。ただし、「入院させる必要がある患者以外は自宅療養を基本」の方針は変わっていません。3日の事務連絡そのものは撤回せず、追加資料において事実上の軌道修正を行った格好ですが、政府と厚労省の混乱ぶりがうかがえます。厚労省は「精査不足」で、政府は「調整役不足」与党である自民党、公明党にも知らされず、政府対策分科会の尾身 茂会長にも事前相談がなかったとされるこの方針決定。政府が2日の関係閣僚会議で打ち出した、とのことですが、どういった議論を経て決定し、公表に至ったのかは不透明なままです。報道等によれば、尾身会長に相談しなかったことに関して田村 憲久厚生労働大臣は、「病床のオペレーションの問題なので政府で決めた」と語ったとのことです。厚労省も入って検討したということですが、厚労省の幹部が本当に、中等症含む自宅療養者を往診とオンライン診療でカバーするというような、稚拙かつ現実味のない対応策を提案したのでしょうか。8月6日付の朝日新聞は、「厚労省幹部によると、入院制限は今週後半に公表する予定で東京都と調整していたが、都内の感染拡大を受けて前倒しで発表。資料を精査しきれず、根回しも十分行わない見切り発車だった」と報道しています。また、同日付の日本経済新聞は、政府と与党の連絡不足を指摘、「首相は官房長官を務めていた時期、自民党本部などにしばしば足を運んだ。菅政権ではこのような調整役不足が指摘される」と書いています。厚労省は「精査不足」で、政府は「調整役不足」って、一体この政権、大丈夫なのでしょうか。入院制限、重症者以外自宅療養を打ち出したのは誰かそれにしても気になるのは厚労省の「精査不足」です。在宅医療は医師が患者宅に出向く必要があるため効率が悪く、X線やCTを用いての肺炎の診断もできません。患者数が多い場合は在宅には限界があることや、そもそも地域で在宅医療(や往診)を積極展開している医療機関の数は決して多くはないことを、厚労省の幹部も認識しているはずです。そう考えると、入院制限、重症者以外自宅療養を打ち出したのは、厚労官僚ではなく、菅首相取り巻きの内閣府の官僚ではないか、という推測も成り立ちます。厚労省幹部が在宅での対応の限界を菅首相に進言したにもかかわらず一蹴され、引き下がってしまったのだとしたら、それもまたホラーです。各地の体育館などに“野戦病院”的施設をつくったら?そんな混乱の中、8月5日の尾身会長の厚生労働委委員会での発言は、とても建設的で意味があると感じました。尾身氏は「入院か在宅か、という議論になりつつあるが、今の感染状況の中で国民のニーズに応えるためには一本足打法は駄目だ。一つ目は医療を病院だけでなく、地域全体でさらに強化する。二つ目は、宿泊療養施設の強化。最後に、自宅療養で軽症の人も重症化するリスクがあるから、すぐに医療に結びつけるようなシステム。この3点を総合的にやることが必要だ」と語ったとのことです。「尾身氏は感染症の専門家であり、医療提供体制の専門家ではない」という批判もあるようですが、関係閣僚会議で出された方針よりも、はるかに理にかなっています。中等症、軽症と診断され、自宅で療養するというのはとても不安なものです。自宅療養者が増え過ぎ、保健所や自治体のフォローアップ機関が対応できないなら、症状や重症度を的確に判断できる医療スタッフの下で集団療養してもらうほうが、「安全・安心」ではないでしょうか。仮に宿泊療養施設の確保や、そこでの医療提供が難しいとするなら、ここは割り切って各地の体育館などに即席の“野戦病院”的な療養施設をつくり、必要な医療機器も配置し、そこに地域の開業医をはじめとする医療スタッフたちを持ち回りで常駐させたらどうでしょう。今が有事とするならば、療養環境は後回しにして、より多くの中等症、軽症患者を効率よく診察し、必要に応じて重症病床のある病院に送る(在宅死を招かない)仕組みの構築は待ったなしだと思います。災害時の福祉避難所のイメージ尾身氏の発言を聞いてふと頭に浮かんだのは、東日本大震災の時に取材した、石巻市の福祉避難所「遊学館」です。「遊学館」は、元々はスポーツアリーナ・コンサートホール・室内プール多目的会議室等を有する複合施設だったのですが、震災直後は、介護度が高い高齢者や医療が必要な人が、広い体育館の中で寝かされ、必要な医療・介護サービスを受けていました。当然ながら他の避難所よりも医療・介護スタッフが多く、自宅で療養するよりも「安全・安心」の医療・介護が提供されていました。そもそも、今年1月以降、医療提供体制の不備が批判され始めた時に、最悪の状況に対応するための仕組みを各地で準備しておくべきだったのです。仮にデルタ株の感染拡大が収まったとしても、脅威となる新たな変異株が出現する可能性もあります。ぜひとも、国や医療関係団体は、体育館等を活用した“野戦病院”的療養施設の開設と地域の開業医動員についての検討を進めてほしいと思います。

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「尿路感染症はとりあえずキノロン」の医師へST合剤を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第41回

 今回は、尿路感染症にはフルオロキノロン薬を第1選択と考える医師に対し、代替薬としてST合剤をどのように提案したのか紹介します。フルオロキノロン薬は使いやすい抗菌薬ですが、経口第3世代セフェム系抗菌薬と同様に薬剤耐性に注意が必要です。医師は使用経験が少ない代替薬には抵抗があるものですが、薬剤師が共同でモニタリングする姿勢を示すことで、医師の治療選択肢を増やすことができました。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタンシレキセチル錠4mg 1錠 分1 朝食後3.ラロキシフェン塩酸塩錠60mg 1錠 分1 朝食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント訪問診療に同行した際、施設看護師より、昨日から患者さんに倦怠感・頻尿・濃尿・尿臭があると相談を受けました。医師より、尿路感染症の可能性が高く、抗菌薬治療が必要なので、レボフロキサシン500mgを5日間処方しようと思うがどうかと聞かれました。医師としては、尿路感染症に対しては長年フルオロキノロン薬をほぼ一択で処方しており、治療効果も満足していることから、今回もレボフロキサシンでよいだろうという認識でした。フルオロキノロン薬は組織移行性に優れた広域抗菌薬であり、また1日1回服用と服薬負担も少ない薬剤ですが、薬剤耐性が問題となっています。そこで下記のポイント(1)、(2)を整理して代替薬の提案をすることにしました。なお、βラクタム系の抗菌薬に関しては、医師より菌種のカバーや治療成績から積極的には使用したくないと回答を得ています。(1)フルオロキノロン薬の薬剤耐性と相互作用の懸念近年の報告において、尿路感染症の主要な起炎菌である大腸菌のフルオロキノロン耐性率は40%となっています。薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの目標である「25%以下」を大きく超えており、今後も薬剤耐性対策として適正使用を進め、使用量を減らす必要があります。また、この患者さんは便秘治療で酸化マグネシウムを服用していますが、フルオロキノロン薬との相互作用が問題となります。同時服用ではキレート形成による吸収低下から抗菌効果が減弱する可能性があるため、時間をずらして服用することになりますが、服薬時刻を指定すると施設側の介護負担が増大するため、他剤へ変更するほうがよいと考えました。(2)代替薬としてST合剤を検討ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠)は、腸内細菌科細菌を広くカバーしており、消化管吸収や前立腺などの組織移行性も良好な薬剤です。そのため、尿路感染症においては腎機能低下や妊娠などの問題がなければ第1選択薬となります。ただし、ワルファリンカリウムやフェニトイン、レパグリニド、メトトレキサートなどとの相互作用があり、併用が困難な場合もあるため注意が必要です。幸いこの患者さんは相互作用がある薬剤の服用はなく、腎機能も年齢相応(Scr:0.75mg/dL、推算CCr:47.38mL/min、K値:3.5mEq/L)であることから、治療薬候補として妥当と考えました。処方提案と経過上記のポイント(1)、(2)を医師に伝えてST合剤を提案したところ、使用経験が少ないので不安もあるとのことでしたが、薬剤師と施設スタッフの共同モニタリングを行うことで安心してもらい、スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠 4錠 分2、7日間の処方となりました。医師としては、フルオロキノロン薬の大腸菌の耐性化が全国的に進んでいることに驚かれ、今後の治療選択肢としてST合剤やセファレキシン、セファクロルも考慮するとのことでした。治療開始2日目の夜より患者さんの頻尿や尿臭の訴えが改善し、その後も有害事象はなく経過も順調だったため、7日間でST合剤による治療は終了となりました。薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020. 厚生労働省健康局結核感染症課;2021.高山義弘 著. 高齢者の暮らしを守る 在宅感染症診療. 日本医事新報社;2020.

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うつ病に対する抗うつ薬の治療パターンとアウトカム

 米国において、うつ病は重大な問題となっている。うつ病に対するケアは、非常に多様であり、文書化された報告も限られている。米国・スタンフォード大学のMaurice M. Ohayon氏らは、米国の一般集団におけるうつ病の有病率と治療パターンについて調査するため、縦断的研究を実施した。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。 2002~15年の間に2回のWeb調査を実施した。1回目の調査(W1)は、米国8州の18歳以上の一般集団1万2,218人を対象に実施した。2回目の調査(W2)は、W1で3年後の再調査に同意した1万931人を対象に実施した。W1およびW2に回答した1万931人を分析対象とした。うつ病の診断は、DSM-V基準に従った。 主な結果は以下のとおり。・3年間のうつ病発症率は、3.4%(95%CI:3.1~3.7)であった。・うつ病有病率は、W1で5.1%(95%CI:4.7~5.5)、W2で4.2%(95%CI:3.8~4.6)であった。・部分寛解または完全寛解に達した患者の割合は、以下のとおりであった。 【部分寛解】  ●W1:4.4%(95%CI:4.0~4.8)  ●W2:7.9%(95%CI:7.4~8.4) 【完全寛解】  ●W1:3.9%(95%CI:3.5~4.3)  ●W2:4.4%(95%CI:4.0~4.8)・部分寛解および完全寛解に達した患者を含めたうつ病の有病率は、W1で13.4%、W2で16.5%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、併存疾患を有していた患者の割合は、61.9%であった。・W1でうつ病と診断された患者のうち、W2でも抑うつ症状が報告された患者の割合は、41.8%であった。・W1で部分寛解に達した患者の19.9%および完全寛解に達した患者の5.5%は、W2で寛解に達していなかった。・うつ病患者のうち、抗うつ薬が使用されていた患者の割合は、W1で52.2%、W2で42.9%であった。最も使用されていた薬剤クラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、W1で34.7%、W2で28.3%の患者に使用されていた。・抗うつ薬を処方した医師の内訳は、プライマリケア医45.7%、精神科医31.4%、神経内科医2.5%、その他7.9%であった。・平均治療期間は、36.9ヵ月(SE:2.4)であった。・W1において、抗うつ薬を使用していた患者の3分の1以上が抗うつ薬治療に不満を持っており、W2での抗うつ薬の種類の変更につながっていた。 著者らは「米国におけるうつ病有病率は、13.4~16.5%であった。抗うつ薬が使用されていたうつ病患者は、約半数程度(52%)にとどまっており、多くの患者で治療が不十分であることが示唆された。本研究では、うつ病患者の4人に1人以上は、初期の抗うつ薬治療で寛解が得られておらず、うつ病治療の課題が浮き彫りとなった」としている。

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コロナワクチン接種後の心膜炎、高齢者でも発症か?

 新型コロナワクチンの接種が世界各国で進むなか、副反応症状として心筋炎などの心臓関連の病態も明らかになりつつある。米国・Providence Regional Medical Center EverettのGeorge A. Diaz氏らはワクチン接種後の心筋炎や心膜炎の症例を識別するため、ワクチン接種者のカルテを検証した。その結果、心筋炎は若い患者で主に2回目接種後早期に発症することが明らかになった。一方の心膜炎は初回接種後20日(中央値)または2回目接種後に影響を及ぼし、とくに高齢者で注意が必要なことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月4日号リサーチレターでの報告。 研究者らは、ワクチン接種前(2019年1月~2021年1月)とワクチン接種期間(2021年2~5月)において、初回病院診断(2018年1月~2019年1月以前に診断された患者を除く)の月の平均診断率を比較した。米国内の40病院(ワシントン州、オレゴン州、モンタナ州、カリフォルニア州ロサンゼルス郡)の電子医療記録(EMR)データを基に検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチン接種を1回は受けたことのある200万287例のカルテを利用した。そのうち女性は58.9%で、年齢中央値は57歳(四分位範囲[IQR]:40~70歳)、2回目接種完了者は76.5%だった。・接種者のワクチンの内訳はファイザー製が52.6%、モデルナ製が44.1%、J&J製が3.1%だった。・20例がワクチン関連の心筋炎(10万人あたり1.0、95%信頼区間[95%CI]:0.61~1.54)、37例が心膜炎(10万人あたり1.8、95%CI:1.30~2.55)だった。・心筋炎の発症について、ワクチン接種後の中央値は3.5日(IQR:3.0~10.8日)で、モデルナ製で11例(55%)、ファイザー製では9例(45%)だった。・20例中15例(75%、95%CI:53~89%)は男性、年齢中央値は36歳(IQR:26~48歳)だった。・4例(20%、95%CI:8~42%)は初回接種後に症状を発症し、16例(80%、95%CI:58~92%)は2回目接種後に症状を発症した。・19例(95%、95%CI:76~99%)は入院したものの、中央値2日後(IQR:2〜3日)に全員が退院した。再入院や死亡なかった。・2例は心筋炎発症後に2回目接種を受けたが、どちらも症状の悪化はみられなかった。・フォローアップ期間の中央値は症状発現後23.5日(IQR:4.8~41.3日)で、13例(65%、95%CI:43~82%)は症状の消失を認め、7例(35%、95%CI:18~57%)は症状の改善が得られた。・次に心膜炎については、15例(40.5%、95%CI:26~57%)は初回接種後、22例(59.5%、95%CI:44~74%)は2回目接種後に発症した(モデルナ製:12例[32%]、ファイザー製:23例[62%]、J&J製:2例[5%])。・発症の中央値は、初回接種から20日(IQR:6.0〜41.0日)だった。・27例(73%、95%CI:57~85%)は男性で、年齢中央値は59歳(IQR:46~69歳)だった。・13例(35%、95%CI:22~51%)が入院し、滞在期間の中央値は1日(IQR:1~2日)だった。集中治療室への入室はなかった。・心膜炎の7例は2回目接種を受けたが、死亡者はなかった。・フォローアップ期間の中央値は28日(IQR:7~53日)で、7例(19%、95%CI:9~34%)は症状が消失し、23例(62%、95%CI:46~76%)は改善した。・ワクチン接種前の心筋炎の平均月間症例数は16.9例(95%CI:15.3~18.6)だった。一方で、ワクチン期間中は27.3例(95%CI:22.4~32.9)と増加傾向だった(p<0.001)。また、同期間の心膜炎の平均月間症例数は、ワクチン接種前が49.1例(95%CI:46.4~51.9)、ワクチン期間中は78.8例(95%CI:70.3~87.9)だった(p<0.001)。

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COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版、中和抗体薬を追加/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田一博氏[東邦大学医学部教授])は、8月6日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第8版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回7版からの知見の追加のほか、先日承認された中和抗体薬の項目が追加された。また、デルタ株の猛威に対し「一般市民の皆様へ ~かからないために、かかった時のために~」を日本環境感染学会と連名で公開した。中和抗体薬を新たに追加 第8版では「中和抗体薬」として下記を追加した(一部を抜粋して示す)。【機序】中和抗体薬は単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られたSARS-CoV-2スパイク蛋白の受容体結合ドメインに対する抗体。【海外での臨床報告】中和抗体薬は、発症から時間の経っていない軽症例ではウイルス量の減少や重症化を抑制する効果が示され、また投与時にすでに自己の抗体を有する患者では効果が期待できないことが示されている。重症化リスク因子を1つ以上持つCOVID-19外来患者4,057人を対象としたランダム化比較試験では、カシリビマブ/イムデビマブの単回投与により、プラセボと比較して、COVID-19による入院または全死亡がそれぞれ71.3%、70.4%有意に減少した。また、症状が消失するまでの期間(中央値)は、両投与群ともプラセボ群に比べて4日短かった。【投与方法(用法・用量)】通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)およびイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注。【投与時の注意点】1)SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)高流量酸素または人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)本剤の中和活性が低いSARS-CoV-2変異株に対しては本剤の有効性が期待できない可能性があるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討すること。4)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。5)重症化リスク因子については、その代表的な例として、承認審査での評価資料となった海外第III相試験(COV-2067試験)の組み入れ基準、新型コロナウイルス感染症に係る国内の主要な診療ガイドラインである「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」または特例承認の際に根拠とした米国の緊急使用許可(EUA)において例示されている重症化リスク因子が想定される。外来で聞かれたら答えたい4項目 一般向けとして公開された「私たちからのメッセージ」では、・COVID-19 に関して知っておきたいこと・かからないためにわたしたちは何をすべきなのか・かかってしまった人に・皆さんへのお願いの4項目を示し、解説としてデルタ株の特性、現況の感染状況、医療体制への悪影響、ワクチンの重要性、感染しないために個人ができる対策を記している。また、最後に「皆さんへのお願い」では、ワクチン接種と感染対策の励行、正しい情報の共有、他人への気遣い、ワクチン未接種者への理解を訴えている。

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リスジプラム、I型の脊髄性筋萎縮症に有効/NEJM

 I型脊髄性筋萎縮症(SMA)の乳児において、リスジプラムは歴史的対照と比較して、運動マイルストーンの達成割合が高く、運動機能が改善した乳児の割合も優れることが、米国・ハーバード大学医学大学院のBasil T. Darras氏らが行った「FIREFISH試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。I型SMAは進行性の神経筋疾患で、生後6ヵ月までに発症し、特徴として、支えなしで座位を保持できない、運動神経細胞生存(SMN)蛋白の不足が認められる。リスジプラムは経口投与が可能な低分子薬で、SMN2のメッセンジャーRNA前駆体スプライシングを修飾し、血中の機能性SMN蛋白の増加をもたらすとされる。2部構成の非盲検試験の第2部の結果 本研究は、I型SMA乳児におけるリスジプラムの安全性と有効性の評価を目的とする2部構成の非盲検臨床試験で、第1部は用量設定試験(既報)であり、第2部では第1部で決定された用量の臨床効果と安全性が歴史的対照と比較された(スイスF. Hoffmann-La Rocheの助成による)。この試験には10ヵ国14施設が参加し、今回は第2部の結果が報告された。 対象は、生後28日~3ヵ月に症状が発現し、登録時に生後1~7ヵ月のI型SMAの患児であった。リスジプラムは、生後5ヵ月以上の乳児には0.2mg/kg/日が投与され、5ヵ月未満の乳児は初回用量0.04または0.08mg/kg/日で投与が開始され、1~3ヵ月で0.2mg/kg/日となるように調節された。嚥下が可能な乳児には経口投与が行われ、不可能な乳児には栄養チューブを用いてボーラス投与された。 主要エンドポイントは、投与開始から12ヵ月後に、支えなしで座位を5秒以上保持できることとした。主な副次エンドポイントは、フィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査スコア(CHOP-INTEND:0~64点、点数が高いほど運動機能が良好)が40点以上、CHOP-INTENDスコアのベースラインから4点以上の増加、Hammersmith乳児神経学的検査のセクション2(HINE-2、0~26点、点数が高いほど運動機能が良好)で評価した運動マイルストーン(蹴る、頭部の制御、転がる、座る、這う、立つ、歩く)の改善、恒久的人工呼吸管理のない生存とした。副次エンドポイントは、I型SMA乳児40例の自然経過データの90%信頼区間(CI)の上限値との比較を行った。主要および主な副次エンドポイントがすべて改善 主解析の臨床的カットオフ日(全患児が、12ヵ月の投与期間を終了、試験中止、死亡のいずれかに達する)は2019年11月14日であり、41例が登録された。登録時の年齢中央値は5.3ヵ月(範囲:2.2~6.9)で、54%が女児であった。ベースラインのCHOP-INTENDスコア中央値は22.0点(範囲:8.0~37.0)、HINE-2スコア中央値は1.0点(範囲:0.0~5.0)であった。39例(95%)が嚥下可能だった。 投与開始から12ヵ月後の時点で、支えなしで座位を5秒以上保持できた患児は12例(29%、95%CI:16~46、自然歴データ[5%]との比較でp<0.001)であり、これは本疾患では達成されていないマイルストーン(画期的出来事)であった。 12ヵ月後に、主な副次エンドポイントを達成した乳児の割合を、歴史的対照のCI上限値と比較したところ、CHOP-INTENDスコア40点以上は、56%(23/41例)および17%、CHOP-INTENDスコアのベースラインから4点以上の増加は90%(37/41例)および17%、HINE-2による運動マイルストーンの奏効は78%(32/41例)および12%、恒久的人工呼吸管理のない生存は85%(35/41例)および42%であった(いずれの比較とも、p<0.001)。 48件の重篤な有害事象が報告された。最も頻度の高い重篤な有害事象は、肺炎(13例[32%])、細気管支炎(2例[5%])、筋緊張低下(2例[5%])、呼吸不全(2例[5%])であった。 著者は、「I型SMA乳児におけるリスジプラムの長期的な安全性と有効性を明らかにするには、より長期で大規模な試験が求められる」としている。

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発熱ない尿路感染疑い男性への抗菌薬、7日間vs.14日間/JAMA

 発熱がなく、細菌性尿路感染症(UTI)が疑われる男性の抗菌薬治療では、投与終了から14日以内のUTI症状の消失に関して、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与は14日間投与に対し非劣性であり、UTI症状の再発割合には有意な差がないことが、米国・ミネアポリス退役軍人局保健医療システムのDimitri M. Drekonja氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年7月27日号で報告された。非劣性を検証する米国の無作為化プラセボ対照試験 本研究は、発熱がみられないUTI男性における抗菌薬の7日間投与の14日間投与に対する非劣性の検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2014年4月~2019年12月の期間に米国退役軍人局の2つの医療センターで参加者の登録が行われた(米国退役軍人局Merit Review Programの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の男性で、発熱がなく、症候性UTIへの進展が予測され、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7~14日間投与が予定されている患者であった。これらの薬剤が選択された理由は、米国退役軍人局医療センターにおける男性外来患者のUTI治療の90%を、これらの抗菌薬が占めるとの報告に基づく。 参加者は、担当医によって処方された抗菌薬を7日間投与後に、当該抗菌薬をさらに7日間投与する群、またはプラセボを7日間投与する群に無作為に割り付けられた。抗菌薬およびプラセボは1日2回投与された。 主要アウトカムは、抗菌薬投与終了から14日の時点でのUTI症状の消失とされた。非劣性マージンは10%であった。主解析は、as-treated集団(28回[14日間×1日2回]の投与のうち26回以上を受け、連続2回以上の非投与がない)で行われ、2次解析にはアドヒアランスを問わず無作為化された全患者が含まれた。UTI症状の再発割合:9.9% vs.12.9% 272例(年齢中央値69歳[IQR:62~73])が無作為化の対象となり、全例が試験を完了した。14日間投与群に136例、7日間投与群(プラセボ群)に136例が割り付けられた。主要アウトカムのas-treated解析には254例(93.4%)が含まれた。処方された抗菌薬は、シプロフロキサシンが57%(156/272例)、トリメトプリム/スルファメトキサゾールが43%(116/272例)だった。 症状消失の割合は、7日間投与群が93.1%(122/131例)、14日間投与群は90.2%(111/123例)であり、7日間投与群の14日間投与群に対する非劣性が確認された(群間差:2.9%、片側97.5%信頼区間[CI]:-5.2~∞)。また、2次解析における症状消失の割合は、7日間投与群が91.9%(125/136例)、14日間投与群は90.4%(123/136例)であり、非劣性の基準を満たした(群間差:1.5%、片側97.5%CI:-5.8~∞)。 UTI症状の再発の割合は、7日間投与群が9.9%(13/131例)、14日間投与群は12.9%(15/123例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-3.0%、95%CI:-10.8~6.2、p=0.70)。 有害事象は、7日間投与群が20.6%(28/136例)、14日間投与群は24.3%(33/136例)で発現した。糖尿病を有する患者(64例)で血糖値の異常が、ワルファリン投与を受けている患者(10例)でワルファリン用量への影響がみられた。最も頻度の高い有害事象は下痢だった(7日間投与群9%、14日間投与群9%)。 著者は、「これらの知見は、発熱を伴わないUTIの男性患者における、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与を支持するものである」としている。

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