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第71回 コロナ感染対策はデルタ株でも一緒、では一般市民への具体的な伝え方とは?

「過去最高の××××人…」「〇曜日としては過去最高の…」のいずれかのフレーズを最近のニュースで聞くことが多くなっている。言わずもがな、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の発生動向に関するニュースについてだ。多くの医療関係者が現在流行の主流をなすデルタ株の登場で、「局面が変わった」と口にする。確かに基礎研究ではデルタ株の持つ免疫回避は液性免疫だけでなく細胞性免疫にもおよび、さらにウイルスの細胞への接着や膜融合力も強化されているとも報告されている。中国の研究グループが公表した査読前論文では、デルタ株感染者が体内で保持するウイルス量は、従来株感染者たちと比べ1,260倍も多いと報告されている。他人事のような言い方に聞こえてしまうかもしれないが、まさに「恐ろしいまでの最強(最凶)なウイルス」である。そして最近、一般向けメディアでこの件について書いて欲しいと言われて資料を読み返した。すでに内外で報じられているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は、内部向け資料で「デルタ株の基本再生産数は5~9.5人で、従来株の1.5~3.5人より大幅に感染力が増し、水ぼうそうの8.5人と同等」と試算していたことを明らかにしている。まあ、端的に言うならば、この数字だけみればデルタ株の感染力は従来株の3倍程度となる。報道的には、空気感染もする水ぼうそうと同等の感染力という触れ込みは極めてキャッチ―なのだが、こういう時こそ一呼吸置くべきと個人的には思っている。そんなこんなでほかに類似データがないかをもう一度眺め渡してみた。そうした中で改めて目にしたのが厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、「8割おじさん」のあだ名でも知られる京都大学大学院医学研究科の環境衛生学分野教授の西浦 博氏が示していた試算だ。すでに流行株の約80%がデルタ株と見積もられている8月11日現在の東京都での新型コロナ感染の伝播力(感染力)を従来株の流行時と比較している。それによると現在の伝播力は従来株流行時の1.87倍。言い換えれば、デルタ株は従来のウイルスの1.87倍、ざっくり言えば約2倍の感染力となる。こうした2つのデータを同一記事内で引用する場合、当然のことながら3倍と2倍の差は何なんだと、読者の突っ込みが入る可能性がある。この違いは単純にCDCが基本再生産数、すなわち何も対策をせずに免疫を持たない集団で起こる二次感染の規模を示すのに対し、西浦氏の試算はある時点での感染力を示す実効再生産数を使っているからである。いわば西浦氏の数字は、市中でマスクをしている人が行き交い、店舗入口に消毒薬が設置され、多くの人が三密を避け、国民の4割以上がワクチンの1回接種を終えた今現在のデータを用いたものなので、CDCの試算よりも感染力が低く出るのは、このサイトの読者ならとくに不思議とは思わないはずだ。そこまで念頭に置いた瞬間ハッとした。そう、私たちの努力次第ではデルタ株の高い感染力も一定程度は相殺することが可能なのだと。そしてこの相殺の仕方は、すでに政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が6月時点で「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を発表している。改めて以下に列挙する。(1)マスクを鼻にフィットさせたしっかりとした着用を徹底すること。その際には、適切な方法で着用できることを第一とした上で、感染リスクの比較的高い場面では、できればフィルター性能の高い不織布マスクを着用すること。三密のいずれも避けること。特に人と人との距離には気を付けること。(2)マスクをしっかりと着用していても、室内でおしゃべりする時間は可能な限り短くして、大声は避けること。(3)今まで以上に換気には留意すること。(4)出来る限り、テレワークを行うこと。職場においても、(1)~(3)を徹底すること。(5)体調不良時には出勤・登校をせず、必要な場合には近医を受診すること。(6)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、マスクを着用すること。(7)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、大人数の飲み会は控えること。(8)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、帰省先での同窓会や大人数での会食は控えること。とくに目新しいものはない。そもそも感染力が増そうとも、感染経路は変化していないのだから当然である。むしろこれまでのことをより徹底すべしということなのだ。ところが「これまでとやることは変わらない」は多くの人が聞き飽きているフレーズなので、それを聞いただけでうんざりする人も少なくない。「今までと同じことなら、もう知っているからそれ以上わざわざ話を聞く必要はない」ということになる。ところが「もう知っている」という場合、大概自分に都合の良い覚え方をするものなので、これまで繰り返されてきた感染対策を完全に網羅して記憶しているケースは案外少なかったりするものだ。その意味では、デルタ株対策の呼びかけに関しては、やることは従来と同じでも伝え方に変化をつけなければならない時期に来ているようにも思える。デルタ株は従来株では感染が起きなかったシーンでも感染が起きていることは、もはや周知のこと。たとえば職場でちょっとマスク着用に疲れて顎マスクにした時に、隣の同僚と二言三言会話をする、喫煙所・休憩所にいてほっとしてマスクを外している時に他人と会話をするなどが、そうしたシーンに当たる。また、提言にもあるようなマスク着用時の鼻部分のワイヤー密着の甘さも死角だ。今は飲食店をなるべく利用しないほうが良いものの、利用時のオーダーでは大声で人を呼ばず軽く手を挙げるなどの対策も考えられるだろう。要は一般人の生活に根差して、うっかりしそうなシーン、今までやり続けてきたけど面倒になり手を抜き始めたシーンなどを、さりげなくだが具体的に提示して対策の徹底を求める。中身は同じでもこれまでの「三密回避」「マスク着用」「手洗い励行」のような紋切り型の教条的なものからやや目新しさを加えた情報提供で、感染収束の方向に若干でも活路が見いだせないかと考え始めている。

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舌痛症と不安、うつ、ストレスとの関連

 舌痛症は、臨床的に明らかな原因疾患を認めないにもかかわらず、口腔内における重度の熱傷を特徴とする痛みを伴う疾患である。舌痛症の原因の1つとして、メンタルヘルスの状態が影響を及ぼしている可能性が示唆されている。ブラジル・Federal University of CearaのCassia Emanuella Nobrega Malta氏らは、舌痛症と不安、うつ、ストレスとの関連を調査した。General Dentistry誌2021年7・8月号の報告。舌痛症群ではうつ病患者の割合が高かった 60例の患者を舌痛症群、口腔内良性病変群(不安症状を有する対照群)、健康対照群(不安症状のない対照群)の3群に割り当て、ケースコントロール研究を実施した。ビジュアルアナログスケール(VAS)、ベックうつ病評価尺度、Lipp Stress Symptoms Inventory、Xerostomia Inventory-Dutch Version、舌痛症アンケートを用いて評価を行った。統計分析には、Kruskal-Wallis with Dunn post hoc、Pearsonカイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定、多項ロジスティック回帰テストを用いた。 舌痛症と不安、うつ、ストレスとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・ほとんどの患者は、女性であった。・舌痛症群では、他の2群と比較し、以下の患者の割合が高かった。 ●60歳以上の患者(p=0.008) ●VASスコアの高い患者(p<0.001) ●中等度~重度の不安神経症患者(p<0.001) ●うつ病患者(p<0.001)・舌痛症群では、警告期(p=0.003)、抵抗期(p<0.001)、疲はい期(p<0.001)におけるストレス率が高かった。・すべての舌痛症群において、灼熱感と口内乾燥が認められ、口渇感(90%)、味覚の変化(80%)も高率で認められた。これらの報告数は、対照群と比較し有意に多かった(各々、p<0.001)・不安症状は、舌痛症の独立した発症リスクであることが示唆された(123.80倍、p=0.004)。 著者らは「メンタルヘルスの状態は、舌痛症の発症と直接的に関連しており、なかでも不安症状は最も重要な因子であると考えられる」としている。

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肺がん、新PD-1阻害薬cemiplimab+化学療法の第III相試験(EMPOWER-Lung3)が有効中止/Sanofi

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新規PD-1阻害薬cemiplimabとプラチナダブレット化学療法の併用の有用性を検討した第III相EMPOWER-Lung3試験は、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成し、中間解析で有効中止された。 EMPOWER-Lung3試験は、未治療のStage IVまたはStage IIIB/CのNSCLCにおいて、PD-L1発現および組織型(扁平上皮および非扁平上皮)に関係なく、cemiplimab+プラチナダブレット化学療法とプラチナダブレット化学療法単独を比較した無作為化多施設第III相試験。 466例の患者が登録され、cemiplimab 350 mg(n=312)またはプラセボ(n=154)に2対1に無作為に割り付けられた。結果、OS中央値はcemiplimab+化学療法群22ヵ月、化学療法単独群13か月で、cemiplimab+化学療法群で有意に改善した(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.53〜0.93、p=0.014)。cemiplimabの新しい安全性シグナルは特定されなかった。 試験の早期中止の決定は、中間分析中の独立データ監視委員会(IDMC)による推奨に基づいたもの。詳細な有効性と安全性のデータは、今後の医学会議で発表される予定。

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コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。 感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。 こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。 国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。親しき仲にもマスクはあり!方法:2021年5月22日~6月29日に同センター病院に入院したCOVID-19患者のうち、入院時に感染経路が明確であった、意思疎通が困難であった患者を除いた者を対象として、インタビュー調査を実施。結果:有効回答の得られた22例のうち、男性が17例(77%)、女性が5例(23%)、年齢の中央値(四分位範囲)は52.5歳(44~66)、日本人が19名(86%)。22例のうち14例(64%)において既知の感染リスクの高い行動歴(室内飲食、室内ライブ参加、トレーニングジムなど)があった。また、行動歴/接触歴を解析し、既知の感染リスクが高い場面がのべ24あった。そのうちの21(88%)がラーメン店やそば屋など飲食関連であり、22(92%)ではマスクが着用されていなかった。また、感染に関与しうると考えられた患者の考えや信念に関して、「仕事の後であれば職員同士でマスクなしで話しても大丈夫だろう」、「外食が感染のリスクだとは知らなかった」などが挙げられた。 以上から匹田氏らは、「新たな感染経路が明らかになったわけではなく、むしろ感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることがわかった。感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることがわかり、これらが感染拡大を助長する可能性がある」と今後解決すべき課題を示唆した。

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悪性胸膜中皮腫に対するmiRNA製剤を開発/広島大学

 広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室の田原 栄俊氏、 同大学原爆放射線医科学研究所・腫瘍外科の岡田 守人氏らの研究グループは、スリーディマトリックスと共同で、悪性胸膜中皮腫に対して顕著な治療効果の可能性がある核酸医薬の抗がん剤の開発に成功した。 共同開発した抗がん剤「MIRX002」は、天然型マイクロRNAを薬効成分とするもので、 岡田氏による悪性胸膜中皮腫を対象とする医師主導治験(第I相試験)の治験届がPMDAに受理され、治験開始準備が整った。 悪性胸膜中皮腫は、既存の治療法では十分な治療効果が得られず、発症してからの余命が約1年と短い難治性がんの一つだが、悪性胸膜中皮腫モデルマウスを用いた結果では、顕著な腫瘍の縮小と延命効果が見られ、ヒトでも同様の効果が期待されている。今後、患者の募集を広く行い第I相試験治を実施する予定。 同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 「橋渡し研究戦略的推進プログラム」のシーズB(2017−2019年度)、preC(2020年度)として採択され、橋渡し研究支援拠点である北海道大学拠点の支援を受けて実施した。今回開始する医師主導治験は2021年度 AMED 「橋渡し研究プログラム」のシーズCに採択されており、広島大学病院広島臨床研究開発支援センターが治験の支援を担当。橋渡し研究支援拠点である北海道大学拠点が引き続き支援し、AROとしてデータマネジメント業務、統計解析業務を担当する。 治験薬の規格の担保、治験薬製造に係る手順書に基づく原薬および治験薬の製造管理を行い、核酸治験薬の提供はPURMX Therapeutics社が行う。

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免疫不全者へのブースター接種、推奨事由と対象者/CDC

 米国・疾病対策センター(CDC)は免疫不全者を対象としたCOVID-19ワクチンの追加接種(ブースター接種)の承認を受け、8月16日付でサイトの情報を更新した。主な内容は以下のとおり。・中等度から重度の免疫不全状態にある人はCOVID-19に感染しやすく、重症化、長期化するリスクも高いとされる。これらの人にはワクチンの追加接種が有効であり、接種を推奨する。・mRNAワクチン(ファイザー製およびモデルナ製)の2回目の接種から少なくとも28日経ってから追加接種を行うことを推奨する。・現時点では、他の集団に対する追加接種は推奨しない。 中等度から重度の免疫不全者は成人人口の約3%を占めており、ワクチン接種後の抗体価が十分でないケースが報告1)されている。小規模な研究2)では、ワクチン接種完了後に感染するブレークスルー感染における入院患者の大多数を免疫不全者が占め、免疫不全者が家庭内の接触者にウイルスを感染させる可能性が高いことが示唆されている。 免疫不全者の定義は以下のとおり。・腫瘍や血液のがんに対する積極的ながん治療を受けている。・臓器移植を受け、免疫抑制剤を服用している。・過去2年以内に造血幹細胞移植を受けた、または免疫抑制剤を服用している・中等度または重度の原発性免疫不全症(DiGeorge症候群、Wiskott-Aldrich症候群など)。・進行または未治療のHIV感染症患者・大量のコルチコステロイドまたは免疫抑制の可能性のある薬剤を服用1)Science Brief: COVID-19 Vaccines and Vaccination/CDC2)Data and clinical considerations for additional doses in immunocompromised people/CDC

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モデルナ製ワクチン、12~17歳に対する安全性と有効性を確認/NEJM

 mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は、12~17歳の若年者において良好な安全性プロファイルと、若年成人(18~25歳)と同等の免疫反応を示し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であることが認められた。米国・DM Clinical ResearchのKashif Ali氏らが、mRNA-1273ワクチンの第II/III相プラセボ対照比較試験「Teen COVE試験(Teen Coronavirus Efficacy trial)」の中間解析結果を報告した。2021年4月1日~6月11日における米国12~17歳のCOVID-19発生率は、約900/10万人とされるが、若年者におけるmRNA-1273ワクチンの安全性、免疫原性および有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。12~17歳3,732例を対象に、プラセボと比較 研究グループは、健康な12~17歳の若年者3,732例を、mRNA-1273ワクチン群(2,489例)またはプラセボ(生理食塩水)群(1,243例)に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1回100μgを28日間隔で2回接種した。 主要評価項目は、mRNA-1273の安全性ならびに、免疫反応の非劣性(18~25歳の若年成人を対象とした第III相試験との比較)。副次評価項目は、COVID-19発症予防または、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の無症候性感染に対する有効性などとした。安全性は良好、免疫原性は若年成人に対して非劣性 1回目および2回目接種後に高頻度にみられた非自発的な報告による副反応は、mRNA-1273群が注射部位痛(それぞれ93.1%、92.4%)、頭痛(44.6%、70.2%)、疲労(47.9%、67.8%)、プラセボ群が同様に注射部位痛(それぞれ34.8%、30.3%)、頭痛(38.5%、30.2%)、疲労(36.6%、28.9%)であった。mRNA-1273またはプラセボに関連した重篤な有害事象の報告はなかった。 若年成人に対する若年者のSARS-CoV-2疑似ウイルス中和抗体価の幾何平均抗体価比は、1.08(95%信頼区間[CI]:0.94~1.24)、血清反応の絶対差は0.2ポイント(95%CI:-1.8~2.4)であり、非劣性基準を満たした。 2回目接種の14日後におけるCOVID-19発症例は、mRNA-1273群では報告されなかったが、プラセボ群では4例確認された。

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AZ製ワクチンによるVITTの臨床的特徴とは?/NEJM

 ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による死亡率は高く、とくに血小板数が低く頭蓋内出血を起こした患者で最も高いことが、英国のVITT 220例の検証の結果、明らかとなった。英国・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのSue Pavord氏らが、報告した。VITTは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(アストラゼネカ製)に関連した新たな症候群で、この疾患に対する臨床特性や予後に関するデータは不足していた。結果を踏まえて著者は、「治療法は不明なままであるが、予後マーカーの特定が今後の有効な管理に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。VITT(definite/probable)220例について解析 研究グループは2021年3月22日~6月6日に、英国の病院を受診したVITTの疑いのある患者を対象に、前向きコホート研究を実施した。 匿名化された電子フォームを用いてデータを収集し、事前に定義した基準に従ってdefinite/probable VITT症例を特定し、ベースラインの患者特性と臨床病理学的特徴、リスク因子、治療、および予後不良マーカーについて解析した。 評価対象となった患者は294例で、このうち研究グループによってdefinite VITTと判定された患者は170例、probable VITT患者は50例であった。ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡リスク増加の独立因子 definite/probable VITTと判定された220例全例が、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの初回接種後に発症していた。ワクチン接種後発症までの日数は、5~48日(中央値14日)であった。年齢は18~79歳(中央値48歳)で、男女差はなく、特定可能な医学的リスク因子もなかった。 全体の死亡率は22%であった。死亡オッズは、脳静脈洞血栓症の患者で2.7倍(95%信頼区間[CI]:1.4~5.2)、ベースラインの血小板数が50%減少するごとに1.7倍(95%CI:1.3~2.3)、ベースラインのDダイマー値が1万FEU(フィブリノゲン換算量)増加するごとに1.2倍(95%CI:1.0~1.3)、ベースラインのフィブリノゲン値が50%低下するごとに1.7倍(95%CI:1.1~2.5)にそれぞれ増大することが示された。 多変量解析の結果、ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡と独立して関連していることが認められた。観察された死亡率は、血小板数3万/mm3かつ頭蓋内出血を認めた患者では73%であった。 なお、著者は本研究の限界について、「症例確認バイアスが潜在的な弱点として挙げられる。VITTは新しい症候群であり、病態生理が十分に理解されていないため、真のVITTではない症例が含まれている可能性や、入院時の血小板数が基準を満たしておらず見逃されてしまった症例がほかにもある可能性も考えられる」と述べている。

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AZワクチンとRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチンの効果と意義 (解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

対象論文【NEJM】Heterologous ChAdOx1 nCoV-19 and mRNA-1273 Vaccinationハイブリッド・ワクチンの原型-Gam-COVID-Vac(Sputnik V) priming(1回目接種)とbooster(2回目接種)に異なるワクチンを使用する方法は“異種ワクチン混在接種(heterologous prime-boost vaccine)”と呼称されるが、本論評では理解を容易にするため“ハイブリッド・ワクチン接種”と命名する。この特殊な接種に使用されるワクチンの原型は、adenovirus(Ad)-vectored vaccineとして開発されたロシアのGam-COVID-Vac(Sputnik V)である(山口. CareNet 論評-1366)。Gam-COVID-Vacでは、priming時にヒトAd5型を、booster時にはヒトAd26型をベクターとして用いS蛋白に関する遺伝子情報を生体に導入する特殊な方法が採用された。ChAdOx1(AstraZeneca)など同種のAdを用いたワクチンでは1回目のワクチン接種後にベクターであるAdに対する中和抗体が生体内で形成され、2回目ワクチン接種後にはAdに対する中和抗体価がさらに上昇する(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.、Stephenson KE, et al. JAMA. 2021;325:1535-1544.)。そのため、同種Adワクチンでは2回目のワクチン接種時にS蛋白に対する遺伝子情報の生体導入効率が低下、液性/細胞性免疫に対するbooster効果の発現が抑制される。一方、1回目と2回目のワクチン接種時に異なるAdをベクターとして用いるハイブリッドAdワクチンでは2回目のワクチン接種時のS蛋白遺伝子情報の生体への導入効率は同種Adワクチンの場合ほど抑制されず、ハイブリッドAdワクチンの予防効果は同種Adワクチンよりも高いものと考えられる。実際、従来株に対する発症予防効果は、ハイブリッドAdワクチンであるGam-COVID-Vacで91.1%(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681.)、同種AdワクチンであるChAdOx1で51.1%(ワクチンの接種間隔:6週以内)、あるいは、81.3%(ワクチン接種間隔:12週以上)であり(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)、同種Adワクチン接種に比べハイブリッドAdワクチン接種のほうがウイルスに対する予防効果が高いことが示されている。Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチン 以上のような結果を踏まえ、ChAdOx1の使用量が多い欧州諸国(ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど)ではprimingのための1回目接種時にChAdOx1を用い2回目接種時にはより高いbooster効果を得るためにRNAワクチンを用いる方法が模索されている(European Centre for Disease Prevention and Control. 2021年5月18日)。本論評では、Normark氏らの論文ならびにBorobia氏らの論文を基に、ChAdOx1にmRNA-1273(Moderna)、あるいは、ChAdOx1にBNT162b2(Pfizer)を追加するハイブリッド・ワクチン接種時の液性免疫、細胞性免疫の動態について検証する。 Normark氏らは、スウェーデンで分離されたコロナ原株とbeta株(南アフリカ株、B.1.351)における中和抗体価を、ChAdOx1を2回接種する同種ワクチン接種の場合と1回目ChAdOx1(priming)、2回目mRNA-1273(booster)を接種するハイブリッド・ワクチン接種の場合について検討した。ChAdOx1の同種ワクチン接種における原株に対する中和抗体価は2回目接種後に2倍増強、しかしながら、beta株に対する中和抗体価には有意な上昇を認めなかった。一方、ハイブリッド・ワクチン接種では、原株に対する中和抗体価が20倍増強、beta株に対する中和抗体価も原株に対するほどではないものの有意に上昇した。以上の結果は、ChAdOx1の同種ワクチン接種に比べChAdOx1にmRNA-1273を追加するハイブリッド・ワクチン接種のほうが液性免疫の面からはより優れた方法であることを示唆する。delta株(インド株、B.1.617.2)に対する検討はなされていないが、beta株とdelta株の液性免疫回避作用には著明な差が存在しないので(Wall EC, et al. Lancet. 2021;397:2331-2333.)、Normark氏らの結果はdelta株にも当てはまるものと考えてよいだろう。残念なことに、Normark氏らは、ハイブリッド・ワクチン接種におけるT細胞由来の細胞性免疫の動態については解析していない。 Borobia氏らは、primingのための1回目にChAdOx1、boosterのための2回目にBNT162b2を接種するハイブリッド・ワクチンを使用し、液性免疫(RBDに対する特異的IgG抗体、S蛋白に対する特異的IgG抗体、中和抗体)、IFN-γを指標とした細胞性免疫の推移を観察した(CombiVacS Study)。対照群としてChAdOx1を1回接種した症例を設定しているためChAdOx1同種ワクチン接種とChAdOx1とBNT162b2によるハイブリッド・ワクチン接種の差を検出できない、中和抗体もいかなるウイルス株に対するものなのかが判然としない、などの問題点を有する論文であるが、ハイブリッド・ワクチン接種群ではRBD特異的IgG抗体、中和抗体、細胞性免疫の上昇が確認された。文献的にChAdOx1同種ワクチン接種の場合、1回目接種後にT細胞性反応は上昇するが2回目接種後にはさらなる上昇を認めないことが報告されている(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)。それ故、Normark氏らの論文とBorobia氏らの論文を併せ考えると、ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種は、ChAdOx1のみを使用した同種ワクチン接種よりも液性免疫、細胞性免疫の両面で優れているものと考えられる。 現時点では、Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種とRNAワクチンの同種2回接種による予防効果を直接比較・検討した臨床試験は存在しない。それ故、変異株を含めたコロナ感染症に対する臨床的予防効果が両者において差が存在するかどうかに関しては今後の検討課題である。ハイブリッド・ワクチンの医療経済的効果 ワクチンの2回接種に必要な費用は、RNAワクチンに比べChAdOx1では5~10倍安い。PfizerのRNAワクチンは37~39ドル、ModernaのRNAワクチンは30~74ドル、AstraZenecaのChAdOx1は6~8ドルである(So AD, et al. BMJ. 2020;371:m4750.)。すなわち、ChAdOx1を基礎としたハイブリッド・ワクチン接種は、RNAワクチン2回接種に比べワクチン確保に必要な費用を下げるという医療経済的効果を有する。コロナ感染症がいつまで続くかが見通せない現在、また、変異株抑制のために3回目のワクチン接種が必要になる可能性が指摘されている現在(Wu K, et al. medRxiv. 2021 May 6.)、ワクチン確保のために費やされる世界各国の出費はさらに膨大なものになることが予想される。それ故、医学的側面に加え医療経済的側面からも今後のワクチン行政を考えていく必要があるものと論評者らは考えている。

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ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。 重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。 新型コロナウイルス肺炎が注目された当初、ECMO症例の予後改善の一因にヘパリン投与の寄与が示唆された。本試験は治療量のヘパリンへの期待を打ち砕いた。 本研究は比較的軽症の新型コロナウイルス感染症に対する予防量、治療量のヘパリンのランダム化比較試験と同時に発表された。筆者の友人のHugo ten Cate博士が両論文を包括して「Surviving Covid-19 with Heparin?」というeditorialを書いている。Hugo ten Cate博士が指摘するように、重症化した新型コロナウイルス感染では免疫、細胞、など凝固系以外の因子が複雑に関与した血栓になっているのであろう。早期の血栓にはそれなりに有効なヘパリンも複雑系による血栓には無力であるとの彼の考えは、揺らぎの時期とpoint of no returnを超えた時期を有する生命現象の本質を突いていると思う。

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制約と擾乱(じょうらん)【Dr. 中島の 新・徒然草】(388)

三百八十八の段 制約と擾乱(じょうらん)突然、秋になりましたね。ちょっと前まで生命の危険を感じるほど暑かったのに、お盆が来くるのと同時に秋の風が吹き始めました。さて、私は今、Resilient Health Care Society (RHCS) という国際学会に出席しています。この学会は複雑適応系(医療現場もその1つ)における患者安全を論じるところが出発点なのですが、最近はどんどん守備範囲が広がってきました。患者安全だけでなく、医療現場における日常業務や、COVID-19対策にまでテーマが広がっています。逆にキーワードの方は徐々に絞られてきました。つまり「制約と擾乱(じょうらん)」、これに尽きるわけです。通常の医療に限らず、パンデミックも災害も、さらに言えば人生全般において、われわれは制約と擾乱に縛られています。制約とは、端的に言えばマンパワーとか時間とかお金とかのことです。われわれ医療従事者は、しばしば自分たちのキャパを超えるような出来事に直面しますが、それに対して「もっと人がいたらなあ、もっと時間があったらなあ、もっとお金があって最新式の器械が買えたらなあ」と思いつつ、その状況を何とかしなくてはなりません。ある resilience engineering の論文によれば、複雑適応系を構成するいかなるユニットにおいても資源は限られており、ユニット外で起こるイベントをコントロールすることはできず、結果として、そのイベントによってユニットが資源不足に悩まされるのだそうです。たとえば、予定手術を縦に2つ並べているところに、大きな小脳出血症例が運び込まれ、手術室や人のやりくりを手配していたら、今度は救命センターのほうから重症の急性硬膜外血腫が搬入されたという連絡があり、こちらも直ちに手術しなくてはならない、という状況なんかは典型的です。ある人が小脳出血を起こすか否かを予測することはできず、また近所で起こる交通事故もわれわれにはコントロールできません。さらに、小脳出血も急性硬膜外血腫も、病院に搬入されて頭部CTを撮影するまでは診断もつかず、手術の必要性の有無もわかりません。それなら、同時に10人の開頭手術ができる巨大病院を作れば良さそうですが、そんな病院は日本中どこにも存在しません。結局、常に医療資源は有限(制約)で、外で起こることはコントロールできず(擾乱)、それらに何とか折り合いをつけるというのがわれわれに課せられた使命であり、それを議論しているのが RHCS という国際学会です。一昨年まではさまざまな国で開催されてきたのですが、コロナの影響で昨年は中止、今年もオンライン学会になってしまいました。世界中の人が出席するためか、2時間のセッション後に6時間の休憩というペースで3日間続きます。日本からも、私を含む数人が演題を出しました。プレゼンは英語ですが、あらかじめ音声入力をした動画を送っているので最低限のことはできています。でも、質疑応答はどうなる? はたして質問者の英語が理解できるのか、自分の言いたいことを的確に表現できるのか、心配は尽きません。それはそうと、学会初日の他国からのプレゼンテーションを聞いていると、英語圏ではないノルウェーとかブラジルなどからの面白い発表が目立ちます。とくに、博士課程の大学院生たちが「文献調査→データ収集→分析」という手順をキチンと踏んで研究を進めているのに感銘を受けました。そもそも彼らの研究の出発点は、2,000本以上の文献調査であり、現時点で何がわかっていて何がわかっていないのか、それをはっきりさせた上で独自の視点で研究デザインを行い、その後にデータ収集に取り掛かるようです。発表のほうも「このような研究計画の基にデータ収集が終わったところで、分析はこれからになります」という未完成のものではありますが、それでもサマになっていました。さすがに、西洋諸国は何百年もの科学の歴史があります。一方、日本からは臨床医による演題が多く、日々の業務の中から普遍的な理論を導き出す、というのが多くみられる手法です。これはこれでエネルギッシュな発表であり、諸外国の人たちからも高く評価されています。あとは論文化できるか否か、それが問題ですね。以上、色々述べましたが、最終日に控える私の発表がどのような結末を迎えるのか。はたしてうまくいったのか、撃沈されたのか、それを次回は報告いたしましょう。最後に1句年とれど 英語の発表 鬼門なり

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投資、不動産、保険…、「お金オンチ」はココに相談!【医師のためのお金の話】第47回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。「お金」って扱いが難しいですね。何にでも交換できるのでとても便利なのですが、使い方を誤ると大きな災難に見舞われます。お金は健康や家族と並んで人生で最も重要なものの1つであるにもかかわらず、体系立てて教えてもらう機会がありません。きっと皆さんも数学や英語はたくさん勉強してきたでしょうが、学校や塾でお金の授業を受けたことはないのではないでしょうか。お金に関して“ツルツル”の状態で社会人になってしまう人が多いですが、そのまま人生を乗り切れるほど世の中は甘くありません。今回は私の経験から、お金のことは誰に教わればよいのかをお伝えしましょう。なお、以下にご紹介する関係者について開示するべきCOIはありません(笑)。【候補その1】 ファイナンシャル・プランナー(FP)ファイナンシャル・プランナーとは、保険や税金などの幅広い知識でライフプランの設計を行うお金の専門家です。資格取得の試験範囲は下記の6つで、これだけの分野を体系立てて勉強しているのなら安心できそうです。1.ライフプランニングと資金計画2.金融資産運用3.タックスプランニング4.リスク管理5.不動産6.相続・事業承継しかし、私の経験上では、実際のファイナンシャル・プランナーは机上の知識があるだけの残念な人がほとんどでした。実践が伴っていないので、経験の裏付けのない薄っぺらな情報しか得ることができません。お金に関しては生半可な知識ほどアブナイものはありません。私としては、よほど信頼できる人が見つからない限り、ファイナンシャル・プランナーにお金の相談をするのは控えたほうがよいと考えています。【候補その2】 税理士税理士は紛うことなき税金のプロです。日々お金と向き合っているため、とても心強い存在に思えます。開業している方であれば日々お世話になっていることでしょう。しかし、世の中の税理士の90%以上は法人所得税のプロです。彼らの仕事は税法にのっとって法人の税務申告を行い、“おまけ”として節税の相談にも乗っているのです。このため、人生全般に関わるお金の相談ができる存在ではありません。「そうはいっても税理士は難関国家資格の1つではないか」と思う人は、自分の胸に手を当てて考えてみましょう。あなたは医師ですが、健康や長生きのプロでしょうか? 多くの人はおいしいものをおなかいっぱい食べて不健康な生活を送っているはずです(笑)。不動産投資界隈では税理士資格を持った投資家が存在しますが、彼らは不動産投資家として成功している、というよりは、その経験をだしにして他の不動産投資家から税理士業務を請け負っている人が多いのです。ファイナンシャル・プランナーほどではありませんが、税理士も全幅の信頼をもってお金の相談をするのは控えたほうがよいと思います。【候補その3】 不動産や生命保険の営業担当最近でこそ不動産の電話営業は下火になりましたが、医師であれば彼らの流暢なトークを聞いたことのある人は多いと思います。「あれだけ不動産のことをわかっているのであれば、お金の相談もできるのではないか?」、そう思ったアナタは鴨ネギになること間違いなしです(笑)。彼らに営業トークがあることは間違いないですが、実践的な知識はほぼ皆無といってよいでしょう。同様のことは保険の営業担当にもいえます。彼らは営業のプロであって、断じてお金のプロではありません。不動産購入や生命保険加入の直接的な相談以外は、彼らにお金関係の相談をするべきではないでしょう。「身銭を切って実践している人」に師事しよう!ここまでお金に詳しそうな職種の人を検討してきましたが、すべてだめ出ししてしまいました。それではいったい誰に相談すればよいのでしょうか。私が唯一お勧めするのは、「身銭を切って実践している人」に師事することです。確かに知識量ではファイナンシャル・プランナーや税理士も悪くないですが、リアルワールドで身銭を切って実践している人とは、アドバイスの質や有益さが比較になりません。単に教科書を読んだだけでは手術ができないのと同じことです。このような人はなかなか身近にいなさそうですが、よくよく探してみると一学年に1人ぐらいは怪物級の人物が紛れ込んでいるものです。つい先日も大学の同門で、勤務医にもかかわらず株式投資のみで若くして超富裕層に到達している人を発見して驚いたものです。不動産投資に興味がある人なら、大家をしている人たちの勉強会であれば「大家の会」に入会するのも一法です。物件を売りつけることが目的の会は論外ですが、多くは良心的で自主的に活動しています。そのような会は、実践に裏付けられた豊富な経験と知識を持つ人が多いので、メンター探しには最適です。知識をもらうばかりの「クレクレ君」はいけませんが、師事したい気持ちを前面に押し出せば、気持ちよくアドバイスをもらえることが多いです。もちろん、その後に医療関係の質問をされたときには、全力で回答する等の「お返し」は必須でしょう。身銭を切って実践している人にお金の相談をすることは基本中の基本といえます。探してみればあなたの身近にもいるかもしれません。普段と違う視点で探してみましょう。

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コロナ禍で導入されたフェローシップのzoom面接、メリットとデメリットは?【臨床留学通信 from NY】第24回

第24回:コロナ禍で導入されたフェローシップのzoom面接、メリットとデメリットは?前回述べたように、フェローシップの出願作業は、必要な書類を揃え、ERASに自身でアップロードできるものは行い、recommendation letterは推薦人にアップロードしてもらえば完成です。昨年は、コロナの影響で少し遅れて8月12日よりプログラム側がアプライされた書類を見ることができ、そこから候補者のスクリーニングが始まるため、とにもかくにもその期日までに必要な作業を完遂するのが肝要です。遅れての提出も可能ですが、プログラムによっては遅れた書類は受付不可、あるいは届いても目も通してくれない可能性もあります。とにかく1つのプログラムで平均5~7spotのフェローのポジションに対し、800通前後の書類が届くので、プログラム側も米国医学部卒業 vs. 外国人、USMLEの点数、卒後年数、有名大学病院 vs.市中病院などで容赦なくふるいをかけてくるため、なかなか私としては不利な状況が予想されました。しかし、やるべきことを終えた後は連絡をじっと待つのみ。面接に進めば、登録したメールおよびERAS側のメールボックスに複数の日付を指定され、その中から選ぶ形です。とにかく面接に呼ばれないことには始まらず、ひたすら届いたメールをチェックし、ようやく届いても「お断り」メールだったりして、まさに一喜一憂です。コロナ禍にあった昨年はzoom面接のみで移動の必要がなかったので、そこまで厳密に日程調整を考える必要がなく、それこそ呼ばれた端から予定を入れるという感じでした。私の場合、書類を出した190のプログラムのうち16プログラムから面接に呼ばれました(16/190と考えると少ないですが、10以上あれば外国人であってもアンマッチはないとされていたので、多少は安心感をもって臨めました)。なお、内科レジデントのローテーションスケジュールは、主に病棟・外来・選択科に分かれていて、病棟でなければ面接のために休んでもいいとされていました。幸いにも私の面接はいずれも病棟勤務と被らなかったので、比較的容易にスケジュールを組むことができました。もし、病棟勤務だった場合は、誰か変わりを探さなければいけません。日本では、研修医が所用で休んでも回るはずですが、米国の場合は研修医が主に雑務を担っているので、抜けると現場が回らないようになっています。言い方を変えると、指導医であっても仕事の肩代わりをしてくれないということです。昨年はzoomでしたが、例年ならば東海岸から西海岸などに移動しなければならず、なおさら大変だっただろうと思います。移動がないという点で楽だった一方、zoom面接ならではの現象もありました。引く手あまたな有力な候補者であっても、移動しなくて良いためにあえて面接を絞り込まずに受けるため、例年ならば出るキャンセル枠が減ったことです。さらにCardiologyに限って見ると、例年より15%ほど候補者が増えており、上位者以外はかなり厳しい状況でした。Column画像を拡大する3年間の集大成の論文が米国心臓病学会の雑誌であるJournal of American College of Cardiology (Impact factor=24)に共同筆頭著者および責任著者として掲載されました。内科レジデントをしながら2つの論文をJACC誌に出せたのは嬉しいかぎりです。Cardiology fellowとしての生活が先月から始まり、レジデントより忙しくなっていますが、さらに精進していきたいと思います。

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第71回 日本初確認のラムダ株、“後出し”情報公開で募る不信感

新型コロナの新規感染者数が各地で過去最多を更新する中、南米由来のラムダ株が国内で初めて確認されたことがわかったが、公表の経緯が問題視されている。7月20日、ペルーに滞在歴のある30代女性が羽田空港の検疫でコロナ陽性と判明。ちょうど東京五輪が開幕した23日にラムダ株と確認されたが、この時点では公表されなかった。米メディアの報道をきっかけに厚生労働省は8月6日、ようやく感染確認を公表。さらに五輪閉幕後の13日になって、女性が五輪関係者であると報じられた。公表が遅れた理由について、自民党幹部は「政府の中でも情報共有されていなかった。厚労省はラムダ株に対する意識の高さがなかった」と話しているが、五輪中止論が出ないように情報を隠蔽したのではと勘ぐりたくなるタイミングの遅れである。11月中旬には主流の変異株に?デルタ株の場合、4月16日に空港検疫で確認されてから4ヵ月後の8月上旬、首都圏では95%がデルタ株に置き換わった。ラムダ株の場合、7月20日に確認されてから4ヵ月後は11月中旬だ。政府は、東京五輪の閉幕で検疫態勢に余裕ができたとして、1日約2,000人に抑えていた入国者の上限を8月16日から約3,500人に緩和したが、人流増加と感染拡大を助長しないか。菅首相は、10月上旬までに国民の8割がワクチンの2回接種を完了することを目指す考えを示しているが、これまでのコロナ政策の迷走ぶりを考えると、ラムダ株の感染拡大を防げるか心許ない。ところで、2020年8月に初めてラムダ株が報告されたペルーでは、この1年で約20万人が新型コロナによって亡くなっている。死亡率は9%を超え、人口10万人当たりの死亡者数は世界最多という。ラムダ株は、感染力や重症度などわかっていないことが多い。WHO(世界保健機関)は警戒変異ウイルスの分類で、デルタ株やアルファ株などを5月11日にVOC(懸念される変異株)に位置付けているのに対し、ラムダ株は6月14日に1ランク低いVOI(注目すべき変異株)に位置付けている。ちなみに国立感染症研究所は、現段階でラムダ株をVOCにもVOIにも位置付けていない。Sタンパク質452番目のアミノ酸変異の意味海外の科学者らがラムダ株の変異の中で特徴的な点として挙げるのは、スパイクタンパク質(Sタンパク質)の452番目のアミノ酸の変異だ。452番目のロイシンがグルタミンに置き換わったもので、ほかの変異株では見られず、これが細胞に感染する能力を高めると予測している。新型コロナのSタンパク質は、ヒトの肺などの細胞にあるACE2受容体タンパク質に結合して体内に侵入する。452番目のアミノ酸は、双方のタンパク質が直接相互作用する部位にあり、この部位に変異があると中和抗体が結合しにくくなり、ワクチンの有効性が下がる可能性があるという。わかっていない点が多い変異株だけに、世界規模のネットワークで情報を共有し、連携して対策を進めていくことが必要だ。たとえ水際対策で防げなかったとしても、情報の隠蔽は許されない。

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抗CGRP抗体フレマネズマブ治療後の頭痛重症度と期間の変化

 フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたヒト化モノクローナル抗体であり、片頭痛回数の減少が期待できる薬剤である。デンマーク・コペンハーゲン大学のMessoud Ashina氏らは、慢性片頭痛(CM)または反復性片頭痛(EM)患者を対象に、抗CGRP抗体フレマネズマブ治療による頭痛発作の重症度と期間に対する影響を評価した。Headache誌2021年6月号の報告。 3つの12週間ランダム化二重盲検第III相試験(HALO CM、HALO EM、FOCUS)のデータを用いて、探索的事後分析を実施した。3つの試験いずれにおいても、CMまたはEM患者をフレマネズマブ3ヵ月に1回投与群(1ヵ月目:フレマネズマブ675mg、2ヵ月目:プラセボ、3ヵ月目:プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(1ヵ月目[CM]:フレマネズマブ675mg、1ヵ月目[EM]:225mg、2ヵ月目以降:225mg)、プラセボ月1回投与群に1対1対1の割合で割り付けられた。中~重度の頭痛日数の割合、ピーク時の頭痛重症度、毎月の平均頭痛時間(任意の重症度および中等度以上の重症度)、1日当たりの平均頭痛時間(すべての重症度)について、ベースラインからの変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化された2,843例中2,823例(HALO CM:1,121例、HALO EM:865例、FOCUS:837例)を分析に含めた。・3つの試験の各群におけるベースライン時の中~重度の1ヵ月当たりの頭痛日数の平均値は以下のとおりであった。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:13.2±5.5日 ●フレマネズマブ月1回投与群:12.8±5.8日 ●プラセボ月1回投与群:13.3±5.8日 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:7.2±3.1日 ●フレマネズマブ月1回投与群:6.8±2.9日 ●プラセボ月1回投与群:6.9±3.1日 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:12.4±5.8日 ●フレマネズマブ月1回投与群:12.7±5.8日 ●プラセボ月1回投与群:12.8±5.9日・12週間後、中~重度の1ヵ月当たりの頭痛日数は、ベースラインと比較し、最小二乗平均(LSM)の割合の有意な減少が認められた(各々、vs.プラセボ群:p<0.0001)。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-34.5%(95%CI:-39.8~-29.2) ●フレマネズマブ月1回投与群:-36.2%(95%CI:-41.4~-31.0) ●プラセボ月1回投与群:-19.6%(95%CI:-20.0~-14.3) 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-40.7%(95%CI:-47.8~-33.5) ●フレマネズマブ月1回投与群:-43.4%(95%CI:-50.4~-36.3) ●プラセボ月1回投与群:-17.9%(95%CI:-24.9~-11.0) 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-36.5%(95%CI:-41.9~-31.1) ●フレマネズマブ月1回投与群:-38.6%(95%CI:-44.0~-33.3) ●プラセボ月1回投与群:-3.5%(95%CI:-8.9~1.8)・3つの試験の各群におけるベースライン時の中~重度の1ヵ月当たりの頭痛時間の平均値は以下のとおりであった。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:66.4±58.8時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:68.0±53.9時間 ●プラセボ月1回投与群:68.5±57.0時間 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:33.3±25.4時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:31.7±23.7時間 ●プラセボ月1回投与群:31.6±23.2時間 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:59.2±54.7時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:64.3±65.2時間 ●プラセボ月1回投与群:65.9±70.2時間・中~重度の1ヵ月当たりの頭痛時間は、ベースラインと比較し、LSM値の有意な減少が認められた(各々、vs.プラセボ群:p<0.001)。 【HALO CM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-24.4±2.5時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-26.4±2.3時間 ●プラセボ月1回投与群:-14.1±2.5時間 【HALO EM】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-14.5±1.4時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-15.5±1.3時間 ●プラセボ月1回投与群:-8.1±1.3時間 【FOCUS】 ●フレマネズマブ3ヵ月に1回投与群:-16.8±3.0時間 ●フレマネズマブ月1回投与群:-18.3±3.0時間 ●プラセボ月1回投与群:-2.3±3.0時間 著者らは「フレマネズマブの3ヵ月に1回または月1回投与による治療は、CMまたはEM患者の頭痛重症度と期間を有意に減少させることが示唆された。これらの患者の中には、2~4クラスの既存の片頭痛予防に奏効しなかった患者も含まれており、フレマネズマブは、難治性片頭痛患者の治療において期待できる薬剤であると考えられる」としている。

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EGFR EXON20変異の非小細胞肺がんに対するEGFR-MET二重特異性抗体amivantamabの評価(CHRYSALIS)/JCO

 EGFR exon20挿入変異(Exon20ins)を伴う非小細胞肺がん(NSCLC)は、従来のチロシンキナーゼ阻害薬に対して耐性を示す。一方、amivantamabはEGFRとMETの双方の受容体の細胞外ドメインに結合し、TKI結合部位での耐性を回避するEGFR-MET二重特異性抗体である。 韓国のKeunchil Park氏らは、化学療法進行後のEGFR Exon20insを有するNSCLC患者に対する第I相試験初回解析において、amivantamab単剤の有効性と忍容性を報告した。 CHRYSALISは、EGFR Exon20ins NSCLCの集団を含む、非盲検用量漸増・拡大第I相試験である。・対象:プラチナベース化学療法後のEGFR Exon20ins NSCLC患者・介入:第II相推奨用量1,050mgのamivantamab(初回は4週ごと、その後5週目から2週ごと)を投与・主要評価項目:用量制限毒性と全奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・有効性評価集団(n=81)の年齢中央値は62歳、49%がアジア人であった。・前治療ライン数中央値は2であった。・ORRは40%(CR3例)であった。・無増悪生存期間の中央値は8.3ヵ月、奏効期間中央値は11.1ヵ月であった。・頻度の多い有害事象は、皮疹86%(98例)、インフージョンリアクション66%(75例)、爪囲炎45%(51例)であった。

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非入院COVID-19患者へのブデソニド、回復期間を3日短縮/Lancet

 合併症リスクの高い居宅療養の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、ブデソニド吸入薬は回復までの期間を短縮し、優越性は示されなかったが入院または死亡も減少することが示された。英国・オックスフォード大学のLy-Mee Yu氏らが、2,530例を対象に行った無作為化対照非盲検アダプティブプラットフォーム解析「PRINCIPLE試験」の結果で、ブデソニド吸入薬の14日間投与で、回復までの期間は2.94日短縮したという。これまでの有効性試験で、ブデソニド吸入薬のCOVID-19居宅療養者への効果は示されていたが、高リスク患者への効果については明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2021年8月10日号掲載の報告。COVID-19疑いの4,700例を対象に試験、うちSARS-CoV-2感染者について解析 試験は中央試験地からは遠隔の英国のプライマリケア施設で行われた。被験者は、65歳以上または併存疾患のある50歳以上で、COVID-19が疑われ具合の悪い状態が最長14日間続いたが入院はしなかった患者。 被験者4,700例は無作為に3群に割り付けられ、通常の治療(1,988例)、通常の治療とブデソニド吸入(800μgを1日2回14日間、1,073例)、通常の治療とその他の治療(1,639例)をそれぞれ受けた。 主要エンドポイントは複数で、28日以内の自己申告による初回の回復報告と、COVID-19による入院または死亡で、ベイズモデルで解析した。 主要解析集団には、SARS-CoV-2陽性で、試験開始からブデソニド治療群が終了するまで3群に割り付けられた全適格患者を包含し評価が行われた。入院・死亡リスクも低減の可能性示す 試験は2020年4月2日に開始。ブデソニド治療群への割り付けは同年11月27日から、事前規定の回復までの期間の優越性基準が満たされた2021年3月31日まで行われた。主要解析には、2,530例が包含された(ブデソニド治療群787例、通常治療群1,069例、その他治療群974例)。 自己申告による初回回復までの期間推定値は、通常治療群14.7日(95%ベイズ信頼区間[BCI]:12.3~18.0)に対し、ブデソニド治療群11.8日(10.0~14.1)で、推定2.94日(1.19~5.12)短縮した(ハザード比[HR]:1.21[95%BCI:1.08~1.36])。優越性確率は0.999超で、事前に規定した優越性閾値0.99を満たし優越性が示された。 入院・死亡アウトカムについては、推定発生率は通常治療群8.8%(95%BCI:5.5~12.7)に対しブデソニド治療群6.8%(4.1~10.2)だった(推定絶対差:2.0%[95%BCI:-0.2~4.5]、オッズ比[OR]:0.75[95%BCI:0.55~1.03])。優越性確率は0.963で、優越性閾値0.975を満たさなかった。 ブデソニド治療群2例と通常治療群4例で、重篤な有害事象が発生したが、COVID-19とは無関係の入院だった。

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2型DM、tirzepatide vs.インスリン デグルデク漸増投与/Lancet

 2型糖尿病患者で、メトホルミン単独またはSGLT-2阻害薬との併用投与では血糖コントロールが不十分な18歳以上に対し、デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン デグルデク漸増投与に比べ、52週時点のHbA1c値低下や体重減について、優越性が示された。オーストラリア・Vienna Health AssociationのBernhard Ludvik氏らが、1,444例を対象に行った有効性と安全性を評価する第III相無作為化非盲検並行群比較試験「SURPASS-3試験」の結果を報告した。安全性プロファイルは同等だったという。Lancet誌2021年8月14日号掲載の報告。tirzepatideの3用量とインスリン デグルデク漸増投与を比較 試験は13ヵ国、122の医療機関を通じて行われた。適格被験者は、ベースラインHbA1c値7.0~10.5%、BMI値25以上、体重は安定しており、インスリン治療歴なし、スクリーニング時点までにメトホルミン単独投与またはSGLT-2阻害薬との併用投与を3ヵ月以上受けた18歳以上だった。 研究グループは被験者を無作為に4群に分け、tirzepatideの3用量(5mg、10mg、15mg)、または、インスリン デグルデク漸増投与を、週1回いずれも皮下注射投与した。国やHbA1c値、経口血糖降下薬の併用により階層化した。 初回tirzepatide投与量は2.5mgで、設定用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。初回インスリン デグルデク投与量は10U/日で、自己報告による空腹時血糖値が5.0mmol/L(90mg/dL)未満になるまで毎週漸増し、目標達成に向けた治療(T2T)アルゴリズムに従い52週間治療した。 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインから52週までのHbA1c値の平均変化値について、tirzepatide群(10mg、15mg)のインスリン群に対する非劣性だった。主な副次エンドポイントは、tirzepatide群(5mg)の同非劣性と、全tirzepatide群のインスリン群に対するHbA1c値平均変化値と体重平均変化値についての優越性、52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合だった。tirzepatide群のインスリン群に対する推定治療差、HbA1c値-0.59~-1.04% 無作為化を受けた被験者は1,444例、修正ITT集団は1,437例だった。 ベースラインの平均HbA1c値は8.17%(SD 0.91)で、52週時点におけるHbA1c値平均低下値はtirzepatide 5mg群が1.93%(SE 0.05)、10mg群が2.20%(0.05)、15mg群が2.37%(0.05)、インスリン群が1.34%(0.05)であり、非劣性マージン0.3%を達成した。インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は、-0.59~-1.04%だった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合も、tirzepatide群(82~93%)がインスリン群(61%)より高率だった(p<0.0001)。 ベースラインの平均体重は94.3kgで、52週時点で全tirzepatide群が減少(-7.5~-12.9kg)したのに対し、インスリン群では増加(2.3kg)し、インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は-9.8~-15.2kgだった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。 tirzepatide群の最も多く見られた有害事象は、軽度~中等度の消化器イベントだったが、時間経過と共に減少した。tirzepatide群で、吐き気(12~24%)、下痢(15~17%)、食欲不振(6~12%)、嘔吐(6~10%)の発生率がインスリン群に比べ高率だった(インスリン群はそれぞれ、2%、4%、1%、1%)。低血糖(54mg/dL未満)の発生率は、tirzepatide群(5mg、10mg、15mg)がそれぞれ1%、1%、2%だったのに対し、インスリン群では7%だった。 有害事象による治療中断は、tirzepatide群がインスリン群より多かった。試験期間中の死亡は5例報告されたが、研究者によっていずれも試験治療に関連したものではないと判断された。

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ビソプロロール錠0.625mg供給不足に伴う対応/日本心不全学会

 16日、ビソプロロール錠の供給が多くの地域で不足する事態となっていることを受け、日本心不全学会が提言を公表した。本剤は、左室駆出率が低下した心不全の標準治療薬として重要な役割を果たすものであり、供給が安定するまでの間の対応策として以下が提案された。 (1)供給不足に伴いβ遮断薬の投薬を中止することは避ける。(2)ビソプロロール錠0.625mgを処方する場合、できる限り長期処方を避ける。(3)ビソプロロール錠2.5mgの供給がある場合は、用量に応じて0.25錠(0.625mg)あるいは0.5錠(1.25mg)として同用量を継続する。(4)投与継続が困難な場合、以下を参考にカルベジロール錠へ切り替える。 ただし、下記の対比を参考に気管支喘息/肝障害の合併等の有無には注意を要する。・選択性:ビソプロロールはβ1選択性(β1:β2=75:1)、カルベジロールはαβ(β:非選択性)・陰性変力作用:ビソプロロール>カルベジロール※β1選択性および inverse agonism 作用の相違による・陰性変時作用:ビソプロロール>カルベジロール・気管支喘息:ビソプロロールは慎重投与、カルベジロールは禁忌・重度末梢循環障害:ビソプロロールは禁忌、カルベジロールは慎重投与・排泄:ビソプロロールは腎排泄(中等度以上の腎機能障害で血中濃度上昇あり)、カルベジロールは胆汁排泄型(腎機能障害の影響が少ない)・最大用量:ビソプロロールは5mg/日、カルベジロールは20mg/日・用量対比:ビソプロロール0.625mg/日⇔カルベジロール2.5mg/日・半減期(健康成人):ビソプロロールは8.6時間(5mg単回投与)、カルベジロールは7.72時間(20mg単回投与)(5)ビソノテープへの切り替えにおいては、心不全には適応がなく、本態性高血圧および頻脈性心房細動のみの適応であり、心不全治療薬としてそのまま切り替えることは推奨できない。 ただし、適応があり切り替える場合の用量の対比は以下のとおり。・ビソプロロール錠0.625mg/日⇒ビソノテープ1mg/日・ビソプロロール錠1.25mg/日⇒ビソノテープ2mg/日・ビソプロロール錠2.5mg/日⇒ビソノテープ4mg/日・ビソプロロール錠5mg/日⇒ビソノテープ8mg/日 なお、7月には日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会から、エルデカルシトールおよびアルファカルシドール供給不足に伴う骨粗鬆症患者への対応に関して、同様の提言が発出されている。

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AmoyDx 肺マルチ遺伝子PCRパネル、METexon14スキッピング肺がんのコンパニオン診断にも承認/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2021年8月12日、体外診断用医薬品「AmoyDx 肺マルチ遺伝子PCR パネル」に関し、MET遺伝子エクソン14 スキッピング変異陽性に適応する薬剤の判定補助の承認を取得したと発表。 これにより、メルクバイオファーマのテポチニブ(製品名:テプミトコ)の適応判定の補助に本品の使用が可能となる。 今回の承認により、同製品はNSCLCの5種のドライバー遺伝子に対応する本邦初のコンパニオン診断薬となった。 製品の上市に際しては、1パッケージとする統合承認を経て、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E 変異、MET遺伝子エクソン14 スキッピング変異を1回の測定で同時に検出可能となり、10種の抗悪性腫瘍薬の適応判定の補助が可能となる。 同キットは、リアルタイムPCR法を用いることで、感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。

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