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フェローシップ採用面接、鉄板の質問と留学者向けの質問【臨床留学通信 from NY】第25回

第25回:フェローシップ採用面接、鉄板の質問と留学者向けの質問第24回でも触れましたが、フェローシップになるには、書類が通過し、面接に進むことが何より肝要で、最終的に私は16のプログラムから面接の声が掛かりました。日程は自分のスケジュールとの兼ね合いで、いくつか指定されたものから選ぶのですが、上位希望のところは中盤から後半にかけて、いくつか他所で面接の場数を踏んだ上で臨めるように予定を組みました。自身の経験を振り返ってみても、とく最初の2つほどは、準備して臨んだものの、緊張や不慣れなこともあり、うまく質問に答えられなかったと感じました。ちなみに、面接における鉄板ともいえる質問はこんな項目です。“Tell me about yourself”“Why this subspecialty?”“Why our institution/program?”“What are your strengths and weaknesses?”“What will you bring to our program?”“Why should we take you?”“Where do you see yourself in 5 or 10 years?”“What do you like to do in your spare time?”それに加えて私がよく聞かれたのが、“Why did you come to the US?” “Why did you decide to start training again in the US?”といった質問で、それぞれ答えを用意して臨みました。幸い、内科レジデントとして勤めていたMount Sinai Beth Israel病院には、英語の苦手な日本人用にプライベートレッスンをサポートしてくれる仕組みがあり、私はそれを利用して返答の仕方、言いまわしなどを練習しました。といっても日本の医師ではほとんどない就職活動の面接で、なかなか神経を使う上、いかに自分を売り込むのかについても工夫がいります。最終的に、渡米の目的は「臨床研究が強い米国でそれを推し進めること」としし、「2年以上の滞在で、ある程度の成果を挙げており、cardiology fellowになっても継続したい」こと、「カテーテルインターベンションの経験はあっても、日本とのデバイスの違い等から、新しいことや日米のプラクティスの違いを学びたい」ということを強調して乗り切ることとしました。前回も書きましたが、面接がzoomだったのは私には幸いで、移動による疲れもなく、渡航費用が節約できたのはが最大の利点で、かつPC越しなので、対面ほど緊張緊張することもなく、用意したA4サイズ1枚のカンペを手元に置き、尋ねられたことに対してテンポよく即答できるように対策をしました。Column画像を拡大するこちらの論文はMount Sinai Beth IsraelでレジデントしながらCardiovascular Research FoundationのDr Gregg Stoneにお世話になり、Left main coronary artery diseaseのPCI vs. CABGを調べた有名なEXCEL trialのサブ解析で、Journal of Invasive Cardiologyというカテーテル雑誌に掲載されることになりました。RCTのサブ解析の結果を論文にできるのも、留学ならではだと思います。

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カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子どもが欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 1

今回のキーワード選択的シングルマザー精子バンク社会的不妊毒親ピアサポート生殖心理女系社会「社会間競争」最近、結婚しないで子どもを生む有名人がたびたび話題になっていますね。そんな彼女たちは、選択的シングルマザーと呼ばれています。これは、離婚後や未婚で仕方なくシングルマザーになるのではなく、結婚しないことを最初から自ら選んで子どもを持つ女性を意味します。とくに、海外の先進国では、彼女たちがどんどん増えています。結婚しないで子どもを持つメリットは何でしょうか? 逆に、そのリスクは何でしょうか? 選択的シングルマザーは日本でも増えていくのでしょうか? 少子化への1つの解決策にはならないでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、ラブコメディの映画「カレには言えない私のケイカク」を取り上げます。この映画を通して、これからの生殖のあり方、そして生殖の未来を、生殖戦略という視点で一緒に考えてみましょう。結婚しないで子どもを持つメリットは?主人公はゾーイ。ニューヨークでペットショップを経営する独身女性。彼女は、ずっと理想の男性を追い求めてデートを繰り返してきました。そして、その愛の結晶である子どもを待ち望んでいました。しかし、そんな男性はいつまで経っても現れません。彼女は「いろんな可能性を考えて、最も合理的な結論に至った」と言います。まず、男友達に「(セックスしないで)ただ精子だけちょうだい」と迫ります。しかし、理解されません。そして、産婦人科病院へ行き、精子バンクから提供された精子によって、人工授精に挑むのです。それでは、まず、結婚しないで子どもを持つメリットを大きく3つ挙げてみましょう。(1)結婚というハードルがなくなる産婦人科病院からの帰り道、ゾーイはスタンに出会います。その後、彼の猛烈なアプローチによって、彼女は彼を好きになってしまいます。同時に、人工受精での妊娠が判明してしまい、どうすれば良いかと思い悩むのでした。そして、とうとう彼女は、彼に「(精子バンクから提供された精子で)妊娠してるの」「子どもが欲しかったの。タイムリミットになるのが怖かったの」と打ち明けます。1つ目のメリットは、結婚というハードルがなくなることです。つまり、時間切れにならずに、産みたいときに産めるようになります。結婚しないということは、結婚するための時間と労力(コスト)がかからなくなるということです。もちろん、多くの人は結婚相手に巡り会いたいと思っているでしょう。しかし、そうならない現実もあります。すると、子どもを産みたくても産めなくなります。これは、子どもを身体的に産めない身体的不妊に対して、社会的に産めないという点で社会的不妊と呼ばれています。また、最初から結婚を望まない人もいます。セックスを望まない人もいます。同性愛の人もいます。それでも、子どもが欲しい女性のために、精子バンクがあるのです。なお、現時点で、日本では精子の提供や売買を規制する法律はありません。一方で、日本の精子バンクは、日本産婦人科学会が登録する施設にありますが、その対象は不妊の夫婦に限定されています。よって、独身女性が精子の提供を受けるには、海外の精子バンクから購入する、知人の男性から譲り受ける、SNSを介したボランティアから譲り受けるなどの方法があります。ただし、知人男性から譲り受ける場合、父親を認知しないこと、養育費(養育義務)を請求しないこと、そして子育てへの介入(養育権)を受け付けないことを明確にする必要があります。また、ボランティアから譲り受ける場合、遺伝負因や性感染症などの安全面が不透明であるという問題があります。(2)結婚生活を維持する負担がなくなるゾーイは、友達から「あなたのことを30年知ってるけど、あなたは人を信用しないよね。精子ドナーは完璧な相手ね。だって絶対に裏切らないから」と指摘されます。2つ目のメリットは、結婚生活を維持する負担がなくなることです。実際に、共同生活をすれば、それぞれの生活の仕方の違いから、夫婦げんかに発展することは多々あります。そうならないように、日々話し合いをする必要があります。しかし、共同生活をしないということは、その時間と労力(コスト)がかからなくなるということです。もちろん、最初から結婚していないので、離婚の心配もありません。親権で争う必要もありません。養育費の交渉をする必要もありません。なぜなら、最初から当てにしていないからです。(3)自分の思い通りの子育てができるゾーイは、産婦人科医からシングルママの会という自助グループを紹介され、参加します。そこで、シングルマザーたちに「私たちは、シングルであり、ママであることにプライドがあるの。養子縁組でも、人工授精でも同じよ。子どもを望み、自力で実現したっていう点でね」と説かれます。3つ目のメリットは、自分の思い通りの子育てができることです。これは、夫がいなくて、「自力」で人生設計をして初めて可能になります。この心理は、実際に、「男性は中途半端に育児に関わってほしくない」という選択的シングルマザーの発言から、うかがい知ることができます。そもそも、先ほどにも触れた夫婦げんかの原因で多いのが、子育てへの価値観の違いであるという現実もあります。次のページへ >>

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カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子どもが欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 2

結婚しないで子どもを持つリスクは?結婚しないで子どもを持つメリットは、結婚というハードルがなくなる、結婚生活を維持する負担がなくなる、自分の思い通りの子育てができるということであることが分かりました。それでは、そのリスクは何でしょう? 大きく3つ挙げてみましょう。(1)子育てへのサポートが脆弱になるゾーイとスタンは、すったもんだの末、一緒に暮らすようになります。そして、スタンは、精子バンクによって生まれてきた双子の育児を献身的にするのです。もしも、スタンがいなかったら、ゾーイはいきなり自分だけで双子の育児をすることができるでしょうか?1つ目のリスクは、子育てへのサポートが脆弱になることです。これは、身体的にだけでなく、経済的に、そして心理的にもです。もしも、タイミング悪く、自分が病気を患ったらどうしましょうか? 仕事の収入が不安定になったら、どうしましょうか? そして、子どもに障害が見つかったら、どうしましょうか? これらの起こりうる事態をあらかじめシミュレーションする必要があります。(2)子どもを私物化してしまう産婦人科病院で、ゾーイは、産婦人科医から「あなたとCRM-1014(精子が入った容器に記載された登録番号)の間には素敵な赤ちゃんができますよ」と励まされます。この産婦人科医は、まったく悪気はないのでしょうが、私たちには命がモノ扱いにされているように感じてしまいます。この映画では描かれていませんでしたが、その後に妊娠したゾーイは、スタンとの恋愛を最優先して、黙って中絶する選択肢だってありえるわけです。2つ目のリスクは、子どもを私物化してしまうことです。実際に、精子バンクのホームページでは、精子ドナーの身長、体重、血液型、人種、肌や目の色、髪の色や髪質、IQ、学歴、職業などがすべてカタログ化され、値段が付いています。あたかも商品のようです。これは、生まれる前だけでなく、生まれた後もです。たとえば、子どもに障害が見つかったら、どうなるでしょうか? 実際に、海外では、ある同じドナー精子によって生まれた子どもたち(ドナー兄弟)が、高い確率で自閉症を発症していたため、精子バンクが訴訟を起こされたというケースもあります。これは、「注文したのと違う」「不良品だ」「返品したい」という発想になってしまう危うさがあります。そして、これは、虐待のリスクでもあります。また、自分だけが子育てを独り占めできるということは、その子育てが独りよがりになる危うさがあります。子育てについて夫婦で話し合いをしなくて済むメリットの裏返しのリスクです。これは、毒親になるリスクでもあります。なお、毒親の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。(3)子どものアイデンティティが揺らぐスタンは、生まれてきた双子の育ての父親になりました。この双子は、スタンを実の父親と思うでしょう。しかし、テリング(真実告知)をすれば、どうなるでしょうか? 彼らは、思春期になったら、生みの父親を知りたくなります。そして、分からない場合は、どうなるでしょうか?3つ目は、子どものアイデンティティが揺らぐことです。思春期になると、より抽象的な思考ができるようになります。そして、自分のルーツや自分らしさなど、自分探しをするようになります。アイデンティティの確立です。この時、精子バンクによって生まれた子どもは、「お金で買ったモノから生まれた」というレッテルを払いぬぐうために、精子ドナー探しをするようになります。実際に、精子ドナーの身元を明らかにすることは、子どもの人権(出自を知る権利)として、すでにいくつかの先進国では制度化しており、日本でも制度化しようとする動きがあります。さらに、その子どもが生みの父親を知り、その認知を求めることは現実的にありえます。これは、精子ドナーの死後に、遺産相続のトラブルを引き起こす可能性があるということです。これを回避するためには、精子ドナーを独身主義(非婚)の人に限定する必要があるでしょう。選択的シングルマザーがうまく行くにはどうすればいいの?結婚しないで子ども持つリスクは、子育てへのサポートが脆弱になる、子どもを私物化してしまう、子どものアイデンティティが揺らぐことであることが分かりました。それでは、これらのリスクを踏まえて、選択的シングルマザーがうまく行くにはどうすれば良いでしょうか? 主に3つのサポートが挙げられます。(1)実父母からのサポート1つ目は、実父母からのサポートです。たとえば、近くに住むか同居して、定期的にも臨時的にも子育ての身体的な負担を肩代わりしてもらうことを確約することです。いざというときは、経済的なサポートをしてもらうことです。もともと、日本では里帰り出産や離婚後に出戻りをする文化があるので、実父母からの抵抗は少ないでしょう。これは、子育てのサポートが脆弱になるリスクを減らします。また、結果的に、実父母が子育てに介入することになるので、子どもを私物化してしまうリスクを減らすこともできるでしょう。(2)ピアサポートゾーイが参加したシングルママの会では、自助グループとして、シングルマザーたちだけが、励まし合ったり、時には出産に立ち会うなど、お互いに助け合っています。2つ目は、仲間からのサポート、つまりピアサポートのことです。これは、自分に仲間ができることで、心理的な安心感が得られることです。心理的な面での子育てのサポートが脆弱になるリスクを減らします。海外ではすでに大きな団体がありますが、日本では小規模な交流会などがあるようです。(3)ソーシャルサポート3つ目は、社会制度としてのサポート、つまりソーシャルサポートです。残念ながら、現時点では、海外の先進国に比べて、日本の子育て支援は極めて限られています。とくに、シングルマザーの貧困は社会問題になっています。これが、少子化対策として、海外から遅れを取っている原因であると指摘されています。少子化対策のためにも、子育て支援を拡充することが望まれます。たとえば、妊娠・出産、保育、義務教育、医療など、成人までかかる子育ての費用をほぼ無償にすることです。そして、児童手当は、家計が潤うくらいのインセンティブをつけることです。子育ても1つの労働と考えれば、当然のことと言えます。これは、結果的に、選択的シングルマザーの子育てへのサポートが脆弱になるリスクも減らすでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子どもが欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 3

選択的シングルマザーは日本でも増えていくの!?選択的シングルマザーがうまく行くための対策として、実父母からのサポート、ピアサポート、そしてソーシャルサポートがあることが分かりました。それでは、選択的シングルマザーは、海外の先進国と同じように日本でも増えていくでしょうか?その可能性は高いと思われます。それどころか、子育て支援などの大胆な政策によっては少子化対策へのウルトラCの解決策になる可能性も秘めています。そもそも少子化対策がうまくいっている先進国の多くは、子育て支援が手厚く、婚外子が多い国でもあります。これは、時代の流れ、もっと言えば、進化の流れとも言えそうです。それでは、ここから、その理由を、子育ての起源を踏まえて、進化心理学的に3つの段階に分けて、解き明かしてみましょう。(1)母親が子育てをする10数億年前に太古の原始生物が誕生してから、自分の遺伝子を残すように行動する種が進化の歴史の中で現在までに生き残りました。逆に言えば、遺伝子を残すように行動しない種は、その遺伝子が残らないわけなので、そもそも現在に存在しないです。この生殖は、食べることや安全を守るなどの生存と並ぶ動物の根源的な行動です。約2億年前に哺乳類が誕生してから、その母親は子どもに自分の乳を与えて育てるというメカニズム(哺乳)を進化させました。1つ目の段階は、母親が子育てをすることです。ちなみに、それを動機付けるのが、生殖心理です。この詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)子育てのために結婚する700万年前に人類が誕生し、二足歩行によって手の自由ができたことで、獲った食料を余分に持ち帰ることができるようになりました。そして、男性はその食料を女性にプレゼントして、そのお返しとして、女性がその男性とセックスして、生まれた子どもを育てるように進化しました(性別役割分業)。300万年前に人類が森から草原に出て行ってから、頭が徐々に大きくなっていったことに伴い、生まれるときに母親の産道を通るために、未熟児で生まれるように進化しました(生理的早産)。すると、生まれた赤ちゃんは草原で一定期間寝たきりになります。しかし、動物の生存競争のなかで、獲物として狙われるのは一番小さくて弱い個体、つまり赤ちゃんや子どもです。自然界の頂点にいるライオンでさえ、その子どもは母親が目を離したすきにハイエナなどのほかの動物にあっさり捕食されます。言うまでもなく、人類の赤ちゃんもです。それを防ぐために、父親が、母親と一緒に生活して、子どもを協力して守るようになりました。これが、結婚(一夫一妻型の生殖)の起源であり、家族の起源です。その後、血縁で集まって部族をつくり、より協力行動を進化させていきました。これが、社会(社会脳)の起源です。2つ目の段階は、子育てのために結婚することです。一方、人間に近い種であるチンパンジーやゴリラは違いました。チンパンジーの生態環境は、エサが密集した森の中です。オスとメスが出会いやすく、不特定のオスと不特定のメスが生殖を行う乱婚(多夫多妻型の生殖)になりました。ゴリラの生態環境は、エサが少なく散在した森の中です。オスとメスが出会いにくく、特定の1頭のオスと特定の複数のメスが集まるハーレム(一夫多妻型の生殖)をつくるようになりました。どちらにしても、その子どもたちは森の中で守られていたので、人類ほど夫婦として、そして集団として協力行動が進化しなかったと考えられます。(3)結婚しなくても子育てできる20世紀後半の情報革命から、男女平等(男女共同参画)が高まり、とくに先進国で経済的に自立する女性が増えていきました。そんな女性は、男性の経済的サポートを必要としなくなります。3つ目の段階は、結婚しなくても子育てができることです。もともと私たちには、結婚(協力の約束)をしたから子どもをつくるという考え方が文化的に根付いています。しかし、進化心理学的に考えると、逆です。子どもをつくったから結婚する(子どもを守るために協力する)のです。現代の社会では、結婚という形式に目が行き過ぎて、協力して子育てをするという中身に目が行かなくなっています。言い換えれば、結婚は、そもそも夫婦が協力して子育てをするための手段であり、目的そのものではありません。よって、必ずしも協力する必要がなくなった現代の社会構造では、もはや結婚の意味は薄れていくでしょう。ましてや、結婚していてもしてしなくても、ソーシャルサポートとして子育て支援が充分に得られれば、なおさらです。また、とくに実母(祖母)がその娘の子育てのサポート(孫育て)をするのは、もともと包括的な生殖適応度を上げるように進化した結果と考えられています(おばあさん仮説)。よって、選択的シングルマザーが実母、本人、子どもの3世代による女系家族をつくることは、持続可能な新しい家族の形になるでしょう。これは、カップル文化が強い欧米と比べて、親子文化の強い東アジアでは、とくにです。未来の生殖戦略は?人類の生殖の進化の歴史から、選択的シングルマザーが、これからの社会構造(生態環境)で適応的であることが分かりました。非婚(生涯未婚)が増えている日本では、とくにです。さらに長期的には、選択的シングルマザーは、未来の生殖として多数派になる可能性も秘めています。ただし、これは同時に、人類から父親がいなくなっていき、女系社会になっていくことを意味します。現在の価値観では受け入れにくいかもしれませんが、未来では当たり前になっているかもしれません。そもそも、自然界では、人類のような一夫一妻型の生殖のほうが珍しいので、その可能性は否定できません。ここから、精子バンクの登場を踏まえて、人類の生殖戦略の未来を、チンパンジーやゴリラと比べて、精子レベルで掘り下げてみましょう。(1)チンパンジー-精子間競争チンパンジーの生殖戦略は、乱婚(多夫多妻型)です。よって、生殖適応度が高いのは、より数が多くてより動きが速い精子をつくる妊孕性の高い個体になります。これは、精子間競争です。そのため、精子をよりつくり出すため、チンパンジーの睾丸はかなり大きいです。(2)ゴリラ-個体間競争ゴリラの生殖戦略は、ハーレム形成(一夫多妻型)です。よって、生殖適応度が高いのは、オス同士のケンカで勝つために、より気性が荒くてより大きい体格の個体になります。これは、個体間競争です。そのため、ゴリラのオスとメスの体格差はかなり大きいです。一方で、精子間競争がないので、睾丸はかなり小さいです。ちなみに、チンパンジーは、個体間競争がないため、オスとメスの体格差はほとんどありません。(3)人類-「社会間競争」人類の生殖戦略は、結婚(一夫一妻型)です。よって、生殖適応度が高いのは、男性と女性が協力行動を維持する個体になります。さらに言えば、時として不倫という裏切り行動もすることです。つまり、人類の生殖は、チンパンジーほど相手を特定していないわけではなく、ゴリラほど相手を特定しているわけでもないです。そのため、人間の男女の体格差にしても、睾丸の大きさにしても、ゴリラとチンパンジーの中間になっています。なお、不倫の心理の詳細については、関連記事3をご覧ください人類の生殖において、その結婚相手は、本人の意思以上に、親や親族などの部族集団(社会)の評価によって、ある程度決められてきました。これは、「社会間競争」と言えるでしょう。現代は、本人の意思が尊重されています。しかし、その判断基準はどうでしょうか? 結局、社会で望ましいとされるスペック(要素)が内面化されています。たとえば、男性なら、高身長、高収入です。女性なら、美しさと若さです。ひと言で言えば、「周りに見せて恥ずかしくない」「ちゃんとした」相手です。とくに、世間体を気にする集団主義の根強い日本では、なおさらです。これまで、これらの男性と女性の望みがお互いに叶わなければ、生殖は成り立ちませんでした。ところが、精子バンクの登場によって、女性にとっては、その望みをお金で解決できる時代が来ています。たとえば、金髪、青い目、高身長、高IQ、大学院卒、医師、スーパーモデルなど、精子ドナーのランキングで人気の「アイテム」を課金によって手に入れることができます。これからの人類の生殖戦略は、より望ましい精子ドナーが選ばれる点で、ゴリラ的でしょう。精子レベルのハーレムです。選ばれない精子(男性)は、ハーレムに君臨できなかった多数のオスゴリラです。一方、第一子と第二子の精子ドナーは必ずしも同じく選ばれない点で、その生殖戦略はチンパンジー的でもあるでしょう。精子レベルの乱婚です。さらに、精子ドナーのランキングを、国家が操作したらどうなるでしょうか? 一部の独裁国家などが、国家に従順で優秀な精子ドナーを選抜したり、逆に国家に反逆的な家族や親族がいる精子ドナーを排除することも可能になるわけです。これは、新たな優生思想が強まる可能性もあります。「私のケイカク」とは?この映画「カレには言えない私のケイカク」のもともとのタイトルは「バックアッププラン」です。さらに当初は「プランB」というタイトルで公開が予定されていました。つまり、ゾーイにとってのプランAは理想の男性と結婚して子どもをつくること、そしてプランBは精子バンクを利用して子どもをつくることでした。さらに、その先も想像できます。加齢により身体的不妊になった場合のプランCとして、自分の凍結卵子と精子バンクによる提供精子で体外受精をすることです。そして、凍結卵子のストックがなくなった場合のプランDとして、自分の男兄弟による提供精子と卵子バンクによる提供卵子を使って体外受精をすることです。男兄弟を精子ドナーとするのは、甥っ子(姪っ子)を産むという認識が得られ、血のつながりを意識できるからです。なお、厳密には、ゾーイには男兄弟がいないキャラクターとして設定されています。最後に、出産できなくなった場合のプランEとして、代理出産が考えられます。しかし、現在、代理出産は、人権問題から各国が次々と禁止しているため、現実的ではないでしょう。このように、壮大な生殖戦略が、ゾーイの「私のケイカク」として考えられるわけです。少なくとも、精子バンクの利用は、卵子バンクや体外受精と違って、その手軽さから、良いか悪いかは別にして、規制がしにくい現実があります。かつてある政治家が「女性は子どもを産む機械だ」と発言して厳しく批判されました。精子バンクの発展によって、未来では逆に「男性は種をつくる植物だ」と発想されてしまう危うさもあるでしょう。そんな偏った社会にならないためにも、私たちは、ゾーイとスタンのようにお互いを思いやれる、そして協力し合える社会を築いていくことがますます重要であると言えるのではないでしょうか? そして、そのためにも、私たちは、もっと生殖について話題にして、多くの議論をしていくことが必要なのではないでしょうか? この記事がその判断材料の1つになれば、幸いです。1)生殖医療はヒトを幸せにするのか:小林亜津子、光文社新書、20142)ルポ生殖ビジネス:日比野由利、朝日新聞出版、20153)「選択的シングルマザー」とは?未婚のまま出産を選ぶ女性の生き方:志水なほみ、All About 20th暮らし、2020<< 前のページへ■関連記事八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】コウノドリ(その2)【なんで子どもがほしいの? 逆になんでほしくないの?(生殖心理)】昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 2

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第74回 デルタ株優勢の感染流行にワクチンが苦戦/追加接種に理想的なワクチン

デルタ株優勢の感染流行にワクチンが苦戦新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは重症化や死亡を依然としてよく食い止めていますが、デルタ変異株が優勢の目下の流行下で残念ながらワクチン接種完了者の感染は防ぎきれていないようです1)。米国全域の老人ホーム入居者を調べたところ、PfizerやModernaの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン感染予防効果は今年初め(3~5月)の段階では75%でしたが、デルタ変異株が優勢となったその後の6~7月には53%に下落していました2)。英国でも予防効果の減弱が伺えます。無作為に選んだ30万人超を定期的に検査した結果、アルファ変異株優勢の去年2020年12月から今年2021年5月16日のPfizerワクチンBNT162b2接種完了者のCOVID-19発症予防効果は97%でしたがデルタ変異株優勢の5月17日から8月1日には84%に低下していました1,3)。AstraZenecaワクチンAZD1222(ChAdOx1)接種完了者のCOVID-19発症予防効果も同様で、アルファ変異株優勢のときには97%だったのがデルタ変異株優勢になってからは71%に低下していました。また、ワクチン接種完了にもかかわらずデルタ変異株に感染した人の鼻や喉のウイルス量はワクチン接種完了後でもアルファ変異株に感染した人より多めであり、他の試験でも示唆されているように、ワクチン接種完了者といえどもデルタ変異株に感染すれば他の人に広まりうるようです。ニューヨーク州のデータでもワクチン効果の衰えが示唆されています。米国FDAが取り急ぎ認可したワクチンのSARS-CoV-2感染予防効果は同州でデルタ変異株が他を凌駕するようになった今年5月から7月にはそれ以前の92%から80%に落ち込んでいました4)。ただしデルタ変異株が跋扈する現在でもワクチンの重症化予防は依然として健在です。たとえばニューヨーク州のデータではワクチンはCOVID-19による入院の95%近くを防いでいます4)。イスラエルのデータでは、ワクチンは50歳までの比較的若い人の92%、50歳を超えるより高齢の人の85%の重症化を防いでいます5)。重症化が防げているからこれまで通りで十分とする向きがある一方で軽症のCOVID-19予防効果をワクチン追加接種で底上げする価値はあるとみる専門家もいます。イェール大学の岩崎 明子(Iwasaki Akiko)氏はその一人で、とくに心配な人へのワクチン接種が第一なことは言うまでもないが、もしワクチンの備えに余裕があるなら追加接種は価値があると考えています。ワクチン接種完了にもかかわらず感染した人のウイルス量は年齢を問わず多く、たとえば20歳代でさえ多めです。ゆえに防御免疫を底上げしてウイルスを抑制することは感染の伝播阻止に貢献するでしょう。防御免疫の底上げはCOVID-19感染後の長引く症状(後遺症)の予防にも役立ちそうです。COVID-19後遺症はワクチン接種完了者の感染後にも生じうることが知られています。ワクチン接種完了者の感染後のCOVID-19後遺症の発現率がたとえわずか1%だったとしてもその危険性は無視できるものではなく、COVID-19後遺症を防ぐための手を尽くす必要があると岩崎氏は言っています1)。イスラエルではすでにPfizerのCOVID-19ワクチンの3回目接種が始まっていてその効果の片鱗が伺えるようになっています。同国の人口930万人の約4人に1人を受け持つ医療提供会社Maccabiの先週水曜日の発表によると、60歳を超える人の3回目接種はその1週間後からの感染の86%を防いでいます6)。イスラエル保健省もこの週末に3回目接種の予防効果改善を発表しています7)。追加接種に理想的なワクチン追加接種をするのであれば当面はイスラエルがそうであるように手持ちのワクチンが使われるでしょうが、これからを見据えるならデルタ変異株のみならずコロナウイルス全般に有効なワクチン接種手段が開発できれば理想的です。そういう理想的なワクチンの設計のヒントとなりそうな試験結果が先週のNEJM誌に報告されています8)。目下のCOVID-19流行を引き起こしているサルベコウイルスの一員・SARS-CoV-2とゲノム配列がおよそ80%一致する別のサルベコウイルス・SARS-CoVはより凶悪で、約20年前の2002~03年に8,000人超の感染を招き、それらの10人に1人近い700人超を死に追いやりました。そのSARS-CoV感染(SARS)を切り抜けて生き残り、Pfizer/BioNTechのCOVID-19ワクチンBNT162b2接種を最近済ませた8人の血液を調べたところSARS-CoV中和抗体が向上していました。そして驚くべきことに、既知のヒト感染SARS-CoV-2変異株・アルファ、ベータ、デルタのみならずコウモリやセンザンコウが保有するヒトに感染可能と思しきコロナウイルスの数々も阻止しうる汎サルベコウイルス中和抗体一揃いも備わっていました8)。調べた8人はSARS-CoV感染の後にSARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを接種しました。逆にSARS-CoV-2に対するワクチンをまず接種して次にSARS-CoVに対するワクチンを接種することでも8人と同様に汎サルベコウイルス中和抗体が備わるかどうかを今後調べる必要があります。もしその接種の順番で汎サルベコウイルス中和抗体が備わるならSARS-CoV-2ワクチン接種が完了した人へ追加接種として理想的なのはSARS-CoVへのワクチンとなるかもしれません。参考1)Do Delta ‘breakthroughs’ really mean vaccine protection is waning, and are boosters the answer? / Science2)Effectiveness of Pfizer-BioNTech and Moderna Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Nursing Home Residents Before and During Widespread Circulation of the SARS-CoV-2 B.1.617.2 (Delta) Variant - National Healthcare Safety Network, March 1-August 1. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) August 18, 2021. 3)Impact of Delta on viral burden and vaccine effectiveness against new SARS-CoV-2 infections in the UK / COVID-19 Infection Survey4)New COVID-19 Cases and Hospitalizations Among Adults, by Vaccination Status - New York, May 3-July 25, 2021. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) August 18, 2021. 5)Israeli data: How can efficacy vs. severe disease be strong when 60% of hospitalized are vaccinated? / Covid-19 Data Science6)Third Pfizer dose 86% effective in over 60s, Israeli HMO says / Reuters7)Israel finds COVID-19 vaccine booster significantly lowers infection risk / Reuters8)Tan CW,et al. N Engl J Med. 2021 Aug 18. [Epub ahead of print]

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治療抵抗性うつ病に対する併用療法の有効性と忍容性~メタ解析

 うつ病治療を成功に導くことは困難な場合があり、治療抵抗性うつ病に至るケースは少なくない。治療抵抗性うつ病の治療では、抗うつ薬の増量、他の抗うつ薬の併用、抗うつ薬以外の併用薬の追加、非薬理学的治療の併用が行われる。しかし、これらの相対的な有効性および忍容性は、十分に検討されていなかった。とくに、併用薬であるリチウムと比較した、第2世代抗精神病薬(SGA)およびesketamineの有効性および安全性はよくわかっていない。米国・McLean HospitalのGustavo H Vazquez氏らは、治療抵抗性うつ病に対するSGAおよびesketamine併用療法の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。 ランダム化プラセボ対照試験をレビューした。うつ病エピソードに対し抗うつ薬にSGA、esketamine、リチウムを併用薬として使用した際の、対プラセボのオッズ比(OR)、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)を算出するため、ランダム効果メタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、49件の併用薬とプラセボの比較データが含まれた。・NNTについては、SGAはプラセボよりも有用であった(NNT:11、信頼区間[CI]:9~15)。esketamine(NNT:7、CI:5~10)およびリチウム(NNT:5、CI:4~10)は、より有用であった。・各SGAをみると、アリピプラゾール、オランザピン/fluoxetine、リスペリドン、ziprasidone(各々NNT:10未満)は、クエチアピン(NNT:13)、ブレクスピプラゾール(NNT:16)、cariprazine(NNT:16)よりも有用であった。・有害事象リスクについては、プラセボと比較したSGA全体でのNNHは5(CI:4~6)であった。各SGAのNNHは、3(クエチアピン)~19(ブレクスピプラゾール)の範囲であった。また、esketamineのNNHは5(CI:4~6)、リチウムのNNHは9(CI:5~106)であった。・リスク/ベネフィット比(NNH/NNT)は、以下のとおりであった。 ●リチウム:1.80(CI:1.25~10.60) ●esketamine:0.71(CI:0.60~0.80) ●SGA:0.45(CI:0.17~0.77) 著者らは「いくつかのSGAおよびesketamineは、急性うつ病エピソードに対する抗うつ薬の併用薬として有用であったが、リチウムの有効性および忍容性がやや高かった」としながらも「リチウムの併用療法に関する試験の多くは、主に三環系抗うつ薬が使用されており、ベースライン時の最適化がなされていないことに注意する必要がある」としている。

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コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。VITT有無別の転帰を評価する英国のコホート研究 CAIAC collaboratorsは、VITTの有無を問わず、ワクチン接種後の脳静脈血栓症の特徴を記述し、VITTの存在がより不良な転帰と関連するかを検証する目的で、多施設共同コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19ワクチン接種後に脳静脈血栓症を発症した患者の治療に携わる臨床医に対し、ワクチンの種類や接種から脳静脈血栓症の症状発現までの期間、血液検査の結果にかかわらず、すべての患者のデータを提示するよう要請が行われた。 脳静脈血栓症患者の入院時の臨床的特徴、検査結果(血小板第4因子[PF4]のデータがある場合はこれを含む)、画像所見が収集された。除外基準は設けられなかった。 VITT関連の脳静脈血栓症は、入院期間中の血小板数の最低値が<150×109/L、Dダイマー値が測定されている場合はその最高値が>2,000μg/Lと定義された。 主要アウトカムは、VITTの有無別の、入院終了時に死亡または日常生活動作が他者に依存している患者(修正Rankinスコア3~6点[6点=死亡])の割合とされた。また、VITTの集団では、International Study on Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis(ISCVT)に登録された脳静脈血栓症の大規模コホートとの比較が行われた。主要アウトカム:47% vs.16% 2021年4月1日~5月20日の期間に、英国43施設の共同研究者から脳静脈血栓症99例のデータが寄せられた。このうち4例は、画像で脳静脈血栓症の明確な所見が得られなかったため解析から除外された。残りの95例のうち、70例でVITTが認められ、25例は非VITTであった。 年齢中央値は、VITT群(47歳、IQR:32~55)が非VITT群(57歳、41~62)よりも低かった(p=0.0045)。女性はそれぞれ56%および44%含まれた。ISCVT群は624例で、年齢中央値37歳(VITT群との比較でp=0.0001)、女性が75%(同p=0.0007)を占めた。 ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)ワクチンの1回目接種後に脳静脈血栓症を発症した患者が、VITT群100%(70例)、非VITT群84%(21例、残り4例のうち3例はBNT162b2[Pfizer-BioNTech製]の1回目接種後、1例は同2回目接種後)であり、接種から脳静脈血栓症発症までの期間中央値はそれぞれ9日(IQR:7~12)、11日(6~21)だった。 VITT関連脳静脈血栓症群は非VITT関連脳静脈血栓症に比べ、血栓を形成した頭蓋内静脈数中央値が高く(3[IQR:2~4]vs.2[2~3]、p=0.041)、頭蓋外血栓症の頻度が高かった(44%[31/70例]vs.4%[1/25例]、p=0.0003)。 退院時に修正Rankinスコアが3~6点の患者の割合は、VITT群が47%(33/70例)と、非VITT群の16%(4/25例)に比べて高かった(p=0.0061)。また、VITT群におけるこの有害な転帰の頻度は、非ヘパリン抗凝固療法を受けた集団が受けなかった集団に比べて低く(36%[18/50例]vs.75%[15/20例]、p=0.0031)、直接経口抗凝固薬投与の有無(18%[4/22例]vs.60%[29/48例]、p=0.0016)および静脈内免疫グロブリン投与の有無(40%[22/55例]vs.73%[11/15例]、p=0.022)でも有意な差が認められた。 著者は、「VITT関連脳静脈血栓症は他の脳静脈血栓症に比べ転帰が不良であることが明らかとなったが、VITTはChAdOx1ワクチン接種によるきわめてまれな副反応であり、COVID-19に対するワクチン接種の利益はリスクをはるかに上回る」としている。

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新「内科専門医」と「総合内科専門医」、年代・診療科別の取得予定は?医師1,000人に聞きました

 9月に実施が予定されていた「総合内科専門医」試験は来年度に延期となったが、新「内科専門医」試験は2021年7月に初めて実施され、従来の「認定内科医」試験は6月が最後の試験となった。今後の取得予定について、医師たちはどのように考えているのか? CareNet.comの内科系診療科の会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年度総合内科専門医試験について延期発表前の2021年8月12日~13日実施)。新「内科専門医」は約27%が取得予定と回答 回答者の属性としては、30代が35.6%と最も多く、40代(26.6%)、50代(20.5%)と続いた。既取得の認定医・専門医・指導医資格としては「内科認定医」が最も多く、60%以上が取得していた。総合内科専門医についても約36%の医師が既取得であり、約14%が内科指導医資格を有していた。 今年初めて試験が実施され、機構認定の内科系のサブスぺシャリティ領域専門医の基本領域資格となる新「内科専門医」については、26.6%の医師が取得予定(受験済も含む)と回答。年代別にみると20代は78.7%、30代では29.3%、40代では26.6%が取得予定と回答した。また、20~50代の各年代でそれぞれ10%ほどが「迷っている」と回答している。 母数等が異なるため厳密な比較はできないが、診療科別にみると、血液内科(37.5%)、腎臓内科(36.7%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(35.1%)などで取得予定と答えた医師が多い傾向がみられた。「総合内科専門医」は取得済・取得予定を合わせると半数以上 「総合内科専門医」を取得予定と答えたのは17.0%で、取得済の36.1%と合わせると過半数となった。年代別では、40代(58.1%)、50代(50.2%)で既取得の医師が多かった一方、20代で取得予定と回答したのは17.6%に留まり、新「内科専門医」と比較すると低かった。 診療科別にみると、腎臓内科(46.7%)や呼吸器内科(46.3%)で既取得の医師が多く、取得予定と合わせると6~7割を占める一方、総合診療科(既取得:16.7%、取得予定:23.3%)や膠原病・リウマチ科(既取得:21.4%、取得予定:32.1%)では低い傾向がみられた。J-OSLERへのリアルな悲鳴、制度の複雑さ嘆く声など 新専門医制度に対する疑問や困っている点について自由記述で尋ねた問いに対しては、さまざまな回答が寄せられた。20~30代の医師からは、「J-OSLERにより取得過程の負担が増加している(20代、神経内科)」、「J-OSLERの登録を臨床を行いながら行うのは非常に難しい(30代、神経内科)」など、専攻医登録評価システム(J-OSLER)の煩雑さを指摘する声のほか、「コロナ禍で剖検症例が圧倒的に不足している(20代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」、「試験の延期も対応が中途半端で内科学会に振り回されている(30代、呼吸器内科)」などの声が上がった。また、サブスぺ領域がどうなるのかの正式な発表が遅れていることを指摘する声も多くみられた。 40~60代の医師からは、「正直わけがわからなくなっています(50代、内科)」、「複雑すぎる。提唱している水準は担保されているのか? お金集めだけにもみえる(60代、内科)」といった率直な声のほか、「旧制度、新制度両方に言えるが、職場からは取得して欲しいと頼まれるが、それに対する金銭的なサポートが全くない。専門医更新にもお金がかかる(40代、糖尿病・代謝・内分泌内科)」など、取得のメリットとそのサポート体制の不足を指摘する声が多くみられた。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新「内科専門医」・「総合内科専門医」の取得予定は?-会員1,000人アンケート

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妊娠中のコロナ自宅療養、異常時の対応指針まとめる/日産婦

 新型コロナウイルスに感染して自宅療養中の妊婦が、受け入れ先が見つからずに自宅で早産し、新生児が必要な治療を受けられないまま死亡した千葉県の事案を受け、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、自宅などで療養する妊婦の異常時の対応指針をまとめ、8月23日付で各々の公式ページに掲出した。妊婦に向けては、すぐに救急車を要請すべきケースとして、「息苦しく、短い文章の発声もできない」もしくは「酸素飽和度(SpO2)92%以下」と具体的に指示している。 「自宅や宿泊療養施設(ホテル等)の新型コロナウイルス感染妊婦に関する対応について」と題した対応指針は、妊婦と産科医療機関、行政機関それぞれに向けて出されている。新型コロナを巡っては、全国的に新規感染者数が膨れ上がる中、各地で入院療養のキャパシティの限界に近付きつつある。患者が基礎疾患を有していたり、妊娠中であったりしても同様で、症状に応じて自宅療養や宿泊療養を余儀なくされるのが現状だ。とくに後期(8ヵ月以降、妊娠28週以降)の感染では、わずかながらも重症化しやすいとされている。そうした医療者が直ちに目視できない状況下では、患者自身がどう対応すべきか判断できる具体的な指針がとても重要だ。 指針では、かかりつけの産科医もしくは保健所に連絡するケースとして、▽1時間に2回以上の息苦しさを感じる時▽トイレに行くときなどに息苦しさを感じるようになった時▽心拍数が1分間に110回以上、もしくは呼吸数が1分間に20回以上▽安静にしていても酸素飽和度が93~94%から1時間以内に回復しない時―を挙げている。また、息苦しくなり、短い文章の発声もできなくなった時もしくはSpO2が92%以下になった時にはすぐに救急車を要請するよう指示している。

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第67回 新規感染者のワクチン接種割合は?/ワクチン健康被害で初の救済認定

<先週の動き>1.新規感染者のうち、ワクチン接種済の割合は?/厚労省アドバイザリーボード2.コロナワクチン健康被害で初の救済認定、41例中29例/厚労省3.ブースター接種に向け、モデルナに加えファイザーワクチンも追加確保4.妊婦は重症化リスク高、時期を問わずワクチン接種を推奨/産婦人科学会5.介護保険の主治医意見書の記入の手引きなどが変更に/厚労省6.病院を顧客にした口コミビジネスが暗躍1.新規感染者のうち、ワクチン接種済の割合は?/厚労省アドバイザリーボード18日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、新型コロナウイルス感染患者のワクチン接種状況について報告があった。8月10~12日の期間に報告された全国の新規感染者5万7,293例のうち、ワクチン未接種は4万7,132例(82.3%)であり、1回のみ接種は2,956例(5.2%)、2回接種は1,768例(3.1%)、接種歴不明は5,437例(9.5%)であった。人口10万人当たりの新規感染者数としては、ワクチン未接種では67.6例、1回接種では22.7例、2回接種完了では4.0例と、ワクチン接種を2回完了した人は未接種者の約17分の1の割合であることが明らかとなった。(参考)全国の新規陽性者数等及び高齢者のワクチン接種率(厚労省)「ワクチン2回接種」で感染は未接種者の“約17分の1”厚労省(NHK)2.コロナワクチン健康被害で初の救済認定、41例中29例/厚労省厚生労働省の感染症・予防接種審査分科会は19日、新型コロナウイルスワクチンの接種後に健康被害を訴えた41例中29例について、接種との因果関係が否定できないとして、予防接種法に基づき医療費と医療手当の支給を認めた。新型コロナワクチンによる健康被害に対しての救済認定は初めてのこと。保留となった12例は、再度分科会で審議される。今回、自治体を通じて審査申請した10~80代の男女41例について審議が行われた。認定を受けたのは20~60代の男女29例(うち28例が女性)。内訳は、アナフィラキシー15例、アナフィラキシー様症状8例、急性アレルギー反応6例だった。(参考)接種後の健康被害、初の救済認定 コロナワクチンで29人(共同通信)コロナワクチンの健康被害で初救済 29人、因果関係否定できず(毎日新聞)<Q&A>ワクチン接種後に健康被害 医療手当支給の審査は厳しいの? 時間はかかる?(東京新聞)3.ブースター接種に向け、モデルナに加えファイザーワクチンも追加確保政府は、新型コロナウイルスワクチン接種を2回完了した人に対して、追加の3回目接種を実施するために、モデルナとはすでに来年に5,000万回分の供給を受ける契約を締結している。今回、ファイザー・ビオンテックのワクチンも、1億2,000万回分の追加契約を行い、実施への調整に入ったことを明らかにした。すでにイスラエルではブースター接種が開始されており、今後欧米でも感染対策強化として広がる見込み。一方、アフリカや南米など途上国においてはワクチン供給が遅れているため、接種を受けられない状況が続いている。世界保健機関(WHO)は、ブースター接種開始の延期や自制を求めている。(参考)政府、3回目接種へ調整本格化 ワクチン効果維持図る―WHOは自制求める(時事ドットコム)ファイザーワクチン1億2000万回分追加契約へ 3回目接種に向け(毎日新聞)4.妊婦は重症化リスク高、時期を問わずワクチン接種を推奨/産婦人科学会先日、千葉県柏市で自宅療養をしていた妊娠8ヵ月の30代女性が、早産の疑いにもかかわらず受け入れ先が見つからず、自宅出産の末に新生児が死亡する事例が報道された。日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会は、妊婦に対して、妊娠中、とくに妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、時期を問わずワクチンを接種することを推奨している。関係学会は、自宅療養中の妊婦が適切に医療機関に受診できるように、救急搬送が必要な呼吸状態などの具体的な目安をまとめた声明を公表する方針を固めた。(参考)千葉・柏の新生児早産・死亡問題、当日に9病院が受け入れ断る(東京新聞)コロナ感染の妊婦 搬送などの目安を関係学会が公表へ(NHK)妊産婦のみなさまへ 新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第2報)(日本産婦人科学会)5.介護保険の主治医意見書の記入の手引きなどが変更に/厚労省厚労省は、16日に介護保険の認定のために必要な主治医意見書の記入の手引きを見直し、「認定調査票記入の手引き」「主治医意見書の記入の手引き」「特定疾病にかかる診断基準」の改定内容について、各都道府県などに通知を発出した。これは今年4月1日の厚労省老健局長通知に対応するもの。施設等利用の場合は、医療機関における病床の種別(精神病床等)や障害福祉サービス(グループホーム等)など、調査対象者の状況について記入することや、「傷病に関する意見」では、症状としての安定性について、進行がんなどで、急激な悪化が見込まれる場合は「特記すべき事項」ではなく、「傷病に関する意見」に記載することなどを求めている。(参考)要介護認定の主治医意見書記入の手引きなど見直し 厚労省(CBnewsマネジメント)介護保険最新情報 Vol.1003 令和3年8月16日(厚労省老健局老人保健課)6.病院を顧客にした口コミビジネスが暗躍病院の検索結果で表示される口コミについて、低評価が投稿された医療機関に対して、「高評価の口コミに書き換える」などと営業している一部の業者が問題視された。読売新聞の報道によれば、これまでに400以上の法人(うち医療関係は7割)に対し、口コミを改善させると持ちかけて、実態のない情報の書き込みを行ったことが明らかになった。業者の中には、複数のアカウントを使い分けて口コミ対策をするところもあるという。今後、患者に正しい医療情報の提供を進めていく上で、改善が求められるだろう。なお、厚労省は、医療機関のホームページについて、「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を開催し、医療広告ガイドラインを定めるなど正しい情報提供を行うよう規制強化を行なっている。今回の事例の場合、「誘引性」を伴う可能性があり、広告規制の対象範囲となる可能性が高いだろう。(参考)病院の口コミ、改ざん業者が高評価に書き換え…「評価3.5以下なら大変」と営業攻勢(読売新聞)医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)(厚労省)

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「えっ!こんなに高く売れるの!?」、専任契約前の「見せ値」に注意【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第24回

第24回 「えっ!こんなに高く売れるの!?」、専任契約前の「見せ値」に注意漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継案件を仲介する仕事は、不動産の仲介と似ている部分があります。それは、まず売り手から「専任契約」を獲得するための営業に注力する、という点においてです。専任契約は、医業承継の仲介業者を1社に絞って買い手探しを行うことです。仲介業者にとってはこの専任契約によって他社に先を越される可能性がなくなり、営業的に大きなメリットがあります。一方、売り手から見ると、この専任契約にはメリットとデメリットの双方があります。【メリット】専任契約を結んだ仲介業者が自院の案件に注力する。他社に成約される可能性がなくなって成約率が上がるため、非専任契約の案件よりも優先して取り組む。【デメリット】専任契約中は他社に依頼ができない。専任契約をした仲介業者の力量が低い場合には、承継が失敗に終わるリスクがある。そして、この専任契約を締結するために、多くの仲介業者が行っているのが「最初に設定する売却額を高くする」という手法です。売り手は「そんなに高い値段で売ってくれるのか!」と期待するあまり、仲介業者を選択する際のほかの重要な比較軸を忘れてしまうのです。こうした点も不動産の売買と似ているのではないでしょうか。こうしたいわゆる「見せ値」で専任契約を獲得した仲介業者は、その後に「もう少し売却額を下げましょう」と提案をします。もちろん、相場並みの売却額に設定していたものの相手が見つからないので売却額を下げる、という提案は仲介業者の通常業務の範囲であり、問題はありません。注意すべきは、契約前にあり得ないような高額な売却額を設定しておいて、専任契約を結んだ後から大きく下げる、という悪質なケースです。売り手の方には、ぜひとも「売却額以外」の仲介業者を選ぶ基準を知っていただきたいと思います。私たちは、医業承継の仲介において、最も重要な点は「成約率」だと考えています。適切な価格を提示し、適切な買い手を紹介するからこそ、成約率が向上するのです。専任契約を持ち掛けられた際は、ぜひこうした多角的な視点をもって、業者を比較検討してください。

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アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率

 アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率を評価するため、英国・Castle Craig HospitalのJonathan Chick氏らは、2つの市販後研究を基に評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2021年7月1日号の報告。 START研究(EUPAS5678)およびマルチデータベースレトロスペクティブコホート(MDRC)研究(EUPAS14083)の2つの研究を評価した。START研究は、ナルメフェン治療を開始した外来患者を対象とした18ヵ月の非介入多国間プロスペクティブコホート研究(フォローアップ受診:8回)である。MDRC研究では、ドイツ、スウェーデン、英国の医療データベースより、ベースラインデータおよびフォローアップデータを収集した。両研究ともに、明確な除外基準は設けず、すべての患者を対象とした。高齢者(65歳以上)および重大な精神的および/または身体的併存疾患を有する患者によるサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・START研究では、ナルメフェンによる平均治療期間は10.3±7.3ヵ月(1,348例)、1年以上治療を継続していた割合は49.0%であった。治療中止の主な理由は、治療目標達成と薬剤費の問題であった。・主な副作用は、悪心(4.7%)、めまい(3.2%)、不眠(2.0%)であった。・副作用発現率は、高齢者で18.6%とより高い傾向にあったが(全体集団:12.0%)、他のサブグループでは違いが認められなかった。・MDRC研究では、2,892例を18ヵ月間以上フォローアップしたところ、ナルメフェン治療期間は2~3ヵ月、1年以上のナルメフェン治療率は5%未満であった。 著者らは「高齢者や併存疾患を有する患者を含む幅広い患者を対象とした研究であるにもかかわらず、日常診療におけるナルメフェン治療の安全性および忍容性プロファイルは、臨床研究での評価と一致していた。両試験における治療率の違いは、方法論の違いを反映している可能性があり、フォローアップ受診による心理社会的サポートとの関連が示唆された」としている。

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コロナ禍がもたらすストレスと解消法/アイスタット

 約2年にわたる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、日常生活が失われ、生活のさまざまな面で自粛や我慢をする場面が散見される。また、経済活動の停滞は、収入減少など将来への不安要素となり、精神面に悪影響を及ぼしている。 そうした環境の中、COVID-19が私たちにもたらした精神面への影響はどのくらいあるのだろうか。株式会社アイスタットは、8月4日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~49歳の東京在住の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年8月4日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~49歳/東京)を対象アンケートの概要・約2年に及ぶコロナ禍での「自粛生活」「予防対策」「感染不安」に、何らかのストレスを感じている人は約7割・政府・自治体の対策では、「外出・旅行・帰省の規制・制限」がストレス有無に最も影響・約2年に及ぶコロナ禍で、疲れを感じていると回答した人ほど、ストレスあり・緊急事態宣言の内容を守っている人ほど、ストレスがある傾向・コロナ禍になる前はストレス体質ではなかったが、コロナ禍によりストレスとなった人が26.5%・ストレスがある人とそうでない人の心がけの違いは、「家族・知人・友人・恋人との頻繁な会話」・コロナストレスの要因トップ8は、「コロナ禍による疲れ」「外出・旅行・帰省の規制・制限」「外食・飲み会・宴会の規制・制限」「イライラする」「気力・元気がなくなる」「体質」「仕事面」「将来不安」回答者の7割はストレスを認識 質問1として「約2年に及ぶコロナ禍での「自粛生活」「予防対策」「感染不安」に何らかのストレスを感じているか」(単一回答)を聞いたところ、「やや感じている」が37.7%と最も多く、「非常に感じている」が30.3%、「どちらでもない」が15.3%と続いた。なかでも「非常に/やや」を足し合わせた「ストレスあり」と「どちらでもない/あまり/全く」を足し合わせた「そうでない」のストレス有無に分別すると、「ストレスあり」は68%、「そうでない」は32%で、全体の約7割がストレスを感じていた。「ストレスあり」回答者の属性では、「30代」「女性」「既婚」「有職者」で最も多かった。 質問2として「政府や自治体がお願いしている対策でストレスにつながる内容は何か」(複数回答)を聞いたところ、「外出・旅行・帰省の規制・制限」が56.3%で最も多く、「外食・飲み会・宴会の規制・制限」が43.0%、「マスク着用・検温・消毒」が39.0%と続いた。コロナストレスの有無別にみると、「政府・自治体の対策」を回答した人ほど実際にストレスがある傾向がみられ、一方、「あてはまるものはない」を回答した人は「そうでない」の方が多い結果だった。 質問3として「『自粛生活・予防対策・感染不安』に何らかの疲れを感じているか」(単一回答)を聞いたところ、「やや感じている」が35.0%で最も多く、「非常に感じている」が26.0%、「どちらでもない」が17.3%と続いた。「非常に/やや」を足し合わせた「疲れあり」と「どちらでもない/あまり/全く」を足し合わせた「そうでない」の疲れ有無に分別すると、「疲れあり」は61%、「そうでない」は39%だった。コロナ禍のストレスの一番は「イライラ」 質問4で「4回目の緊急事態宣言の内容を遵守したか」(単一回答)を聞いたところ、「どちらかといえば守っている」が54.3%で最も多く、「完全に守っている」が22.3%、「どちらかといえば守っていない」が12.7%と続いた。「完全に/どちらかといえば」を足し合わせた「守っている」と「そうでない」の遵守有無に分別すると、「守っている」は76.7%、「そうでない」は23.3%で、全体の約8割が守っている結果だった。 質問5で「コロナ禍でストレスとならないように心がけていること」(複数回答)を聞いたところ、「おいしいものを食べる」が36.7%で最も多く、「十分な睡眠をとる」が34.3%、「適度な運動・体を動かす」が33.3%と続いた。コロナストレスの有無別にみると、心がけていることを回答した人ほど実際にストレスがある傾向がみられ、一方、心がけていることは「特になし」と回答した人は、「そうでない」の方が多い結果だった。 質問6で「現在、生活面でコロナ禍により悪影響を受けていることがあるか」(複数回答)を聞いたところ、「収入・金銭の面で」が31.0%で最も多く、「仕事の面で」が28.7%、「家族・家庭・友人・知人・恋人の面で」が26.3%と続いた。コロナストレスの有無別にみると、すべての内容で回答した人ほど実際にストレスがある傾向がみられ、一方、「現在、悪影響はない」を回答した人は「そうでない」の方が多かった。 質問7で「コロナ禍になる前、ストレスを生じやすい体質だったか」(単一回答)を聞いたところ、「どちらかといえばストレスを生じやすい体質だった」が42.7%と最も多く、「どちらかといえばストレスを生じない体質だった」が27.3%、「常にストレスを生じる体質だった」が19.7%と続いた。「常に/どちらかといえば」を足し合わせた「ストレス体質」と「ストレス体質でない」の体質の有無に分別すると、「ストレス体質」は62.3%、「ストレス体質でない」は37.7%で、今回の調査対象者ではストレス体質の方が多い結果だった。 質問8で「コロナ禍が原因で、こころや身体に不調を感じた症状があるか」(複数回答)を聞いたところ、「イライラする」が35.7%で最も多く、「気力・元気がなくなる」が30.0%、「眠れない・眠りが浅い」の23.0%と続いた。コロナストレスの有無別にみると、「不調を感じた症状」に回答した人ほど実際にストレスがある傾向がみられ、一方、「現在、悪影響はない」を回答した人は「そうでない」の方が多かった。

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HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブの上乗せ効果~メタ解析/Lancet Oncol

 HER2陽性早期乳がんに対する補助化学療法へのトラスツズマブ上乗せによる再発率と死亡率への長期的ベネフィットについて、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative group(EBCTCG)が7つの無作為化試験のメタ解析により検討した。その結果、トラスツズマブ上乗せにより、患者および腫瘍の特徴にかかわらず、乳がん再発率を34%、乳がん死亡率を33%減少させたことが示唆された。Lancet Oncology誌2021年8月号に掲載。 本研究は、化学療法+トラスツズマブを化学療法のみと比較した無作為化試験における個々の症例データのメタ解析。リンパ節転移なしまたはありの手術可能な乳がん女性を登録した無作為化試験が含まれる。ベースラインの特徴、最初の遠隔再発と局所再発もしくは2次発がんの日付と部位、死亡の日付と原死因について、各症例のデータを収集した。主要アウトカムは、乳がん再発率、乳がん死亡率、再発なしの死亡率、全死亡率とした。年齢、リンパ節転移の有無、エストロゲン受容体(ER)の状態、試験で層別化し、ITT集団で解析した。トラスツズマブ併用群と化学療法単独群の年間イベント発生率比(RR)とその信頼区間(CI)をlog-rank検定を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした無作為化試験は7件、計1万3,864例で、2000年2月~2005年12月に登録された。・予定治療期間の平均は14.4ヵ月、観察期間中央値は10.7年(四分位範囲:9.5~11.9)だった。・化学療法単独よりトラスツズマブ併用のほうが、乳がんの再発リスク(RR:0.66、95%CI:0.62~0.71、p<0.0001)および乳がん死亡リスク(RR:0.67、95%CI:0.61~0.73、p<0.0001)が低かった。10年での再発率は絶対値で9.0%(95%CI:7.4~10.7、p<0.0001)減少し、乳がん死亡率では6.4%(95%CI:4.9~7.8、p<0.0001)減少、全死亡率では6.5%(95%CI:5.0~8.0、p<0.0001)減少した。再発なしの死亡率は増加しなかった(0.4%、95%CI:-0.3~1.1、p=0.35)。・トラスツズマブ上乗せによる再発率の減少は、無作為化後0~1年で最大であり(RR:0.53、99%CI:0.46〜0.61)、2〜4年(RR:0.73、99%CI:0.62〜0.85)および5~9年(RR:0.80、99%CI:0.64~1.01)ではベネフィットが継続し、10年目以降はほとんどフォローアップされていなかった。また、患者および腫瘍の特徴(ERの状態含む)にかかわらず、同様だった。

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異種ワクチン接種、AZ/ファイザーとファイザー/AZの有効性と安全性/Lancet

 アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製、ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2、Pfizer-BioNTech製、BNT)の異なるワクチンを用いた接種法について、BNT/ChAd接種法はBNT/BNT接種法に対する非劣性基準を満たさなかったが、BNT/ChAdおよびChAd/BNTの2つの異種接種法はいずれもChAd/ChAd接種法と比べて、SARS-CoV-2抗スパイクIgG値が高く、COVID-19疾患および入院に対して有効であることが示された。英国・オックスフォード大学のXinxue Liu氏らが同種vs.異種COVID-19ワクチンプライムブースト接種法の安全性と免疫原性を検討した参加者盲検無作為化非劣性試験「Com-COV試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「ChAd/ChAdと比べてBNT/ChAdの免疫原性は高いことに加えて、今回の試験データは、ChAdおよびBNTを用いた異種プライムブーストワクチン接種を柔軟に行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年8月6日号掲載の報告。4週または12週間隔のChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、BNT/ChAd接種法を比較 Com-COV試験の適格被験者は、併存疾患なし/治療中、SARS-CoV-2感染歴がない(検査で確認)50歳以上で、英国8地点で集められた。適格被験者の大半が一般コホート(28日[4週間]間隔または84日[12週間]間隔)に登録され、4週または12週間隔でChAd/ChAd、ChAd/BNT、BNT/BNT、BNT/ChAdのいずれかを受ける8群に無作為に割り付けられた(1対1対1対1対1対1対1対1)。 適格被験者の最小サブセット(100例)を免疫評価コホートに登録し、追加で血液検査を行い免疫反応を評価。これらの被験者は、無作為に4つのスケジュール群(4週間隔のみ)に割り付けられた(1対1対1対1)。 被験者は接種されたワクチンについてはマスクされたが、接種スケジュールはマスクされなかった。 主要評価項目は、2回目接種後28日時点のSARS-CoV-2抗スパイクIgG値(ELISAで測定)の幾何平均比(GMR)で、ChAd/BNT vs. ChAd/ChAd、BNT/ChAd vs. BNT/BNTを比較した。異種接種法の同種接種法に対する非劣性マージンは、GMRの97.5%信頼区間(CI)下限値が0.63超の場合とした。 主要解析は、ベースラインで血清陰性だった被験者を包含したper-protocol集団で行われた。安全性解析は、試験ワクチンを1回接種した全被験者を対象とした。ChAd/BNT接種はChAd/ChAd接種に対して非劣性 2021年2月11日~2月26日間に、830例の参加者が登録・無作為化された。そのうち本論では、4週間隔で接種を受けた463例の結果が報告された。 被験者の平均年齢は57.8歳(SD 4.7)、212例(46%)が女性、117例(25%)が少数民族であった。 2回目接種後28日時点のSARS-CoV-2抗スパイクIgGのGMRについて、ChAd/BNT接種群(1万2,906ELU/mL)は、ChAd/ChAd接種群(1,392ELU/mL)に対して非劣性であった(GMR:9.2、片側97.5%CI:7.5~∞)。 BNT接種を受けた被験者において、同種接種法(BNT/BNT、1万4,080ELU/mL)に対する異種接種法(BNT/ChAd、7,133ELU/mL)の非劣性は示されなかった(GMR:0.51、片側97.5%CI:0.43~∞)。 すべての接種群で4つの重篤な有害事象が発生したが、いずれも免疫に関連しているとは見なされなかった。

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第XI因子阻害薬abelacimab、術後VTE予防に有効/NEJM

 術後静脈血栓塞栓症の発生に第XI因子は重要であり、人工膝関節全置換術後の第XI因子阻害モノクローナル抗体abelacimabの単回静脈内投与は、術後静脈血栓塞栓症の予防に有効であることが示された。出血リスクは低かった。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のPeter Verhamme氏らANT-005 TKA研究グループが、412例を対象とした非盲検並行群間比較試験の結果を報告した。NEJM誌2021年8月12日号掲載の報告。30mg、75mg、150mg群とエノキサパリン40mgについて評価 研究グループは、人工膝関節全置換術を受ける412例を無作為に4群に割り付け、abelacimabレジメン(30mg、75mg、150mgのいずれか)を術後単回静脈内投与、またはエノキサパリン40mgを1日1回皮下投与した。 主要有効性アウトカムは静脈血栓塞栓症で、手術をした下肢の静脈造影または症候性イベントの客観的確認によって検出した。 主要安全性アウトカムは、術後30日時点までの大出血または臨床的に関連する非大出血の複合とした。75mg・150mgレジメンは、エノキサパリンに対して優越性示す 静脈血栓塞栓症の発生は、abelacimab群では30mg群13/102例(13%)、75 mg群5/99例(5%)、150mg群4/98例(4%)であり、エノキサパリン群では22/101例(22%)であった。 abelacimab 30mgレジメンは、エノキサパリンに対して非劣性であり、同75mgおよび150mgレジメンは、エノキサパリンに対する優越性が示された(p<0.001)。 出血は、abelacimab 30mg群2%、同75mg群2%で発生し、同150mg群およびエノキサパリン群では発生がなかった。

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ネットワークメタ解析・システマティックレビューは語る―スタチンの1次治療は副作用を考慮しても病気予防に利得あり―(解説:島田俊夫氏)

 スタチンは高コレステロール血症の2次治療に広く使われ、有害作用として横紋筋融解症が最もよく知られている。利益・損失をトレードオフの視点から見ると利益が勝るエビデンスが多く、2次治療は素直に受け入れられている。逆に、まったく自覚症状のない1次治療は患者の多くが自分が病になる実感もなく、高リスクに晒されているとの懸念もなく、マスメディアの影響を受けやすい1)。そのうえ、スタチンの1次治療はエビデンスが乏しいこともあり、治療を受ける患者を納得させにくい。 高コレステロール血症に対するスタチンによる1次治療のエビデンスは、既存データを巧みに利用するネットワーク・メタアナリシス(NMA)/システマティックレビュー(SYSR)の利用に注目が集まっている2)。 2021年6月10日にBMJに発表されたTing Cai氏らの論文は、NMA/SYSRに基づく高コレステロール血症の1次治療目的での大規模な無作為化比較試験(RCT)を選択・吟味してNMAを行った報告である。時宜を得た研究で臨床の立場から興味深く、私見を交え解説する。 本研究はRCT62件、約12万例、追跡期間平均3.9年の研究に基づくネットワークメタ解析で心血管疾患の既往のない成人を対象にスタチン群と非投与群を比較検討し、さらに投与量、種類の異なるスタチン治療を比較してRCTを特定した。主要評価項目は一般的有害事象:自己申告による筋症状、臨床的に確認された筋障害、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状、および副次評価項目は有効性指標としての心筋梗塞、脳卒中と心血管疾患死亡とした。 データ解析はペアワイズメタ解析を行い、スタチン群と非投与群の評価項目のオッズ比、95%信頼区間を算出し、1年間治療を受けた患者1万人当たりのイベント数の絶対リスク差を推定した。さらに、スタチンの種類による有害事象を比較するためにネットワークメタ解析を行い、Emaxモデルで有害事象の用量反応性を評価した。 アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンは有害事象との関連は認めたが種類による差はなかった。肝機能障害に関してはアトルバスタチンで用量反応性の関与が認められたが、残りのスタチンに関しての結論は出ていない。副次評価項目はフォレストプロットに示すごとく有意に抑制されている。 スタチンの1次治療に関しては将来、起こりうるイベントの抑制効果を予測することは困難でしかも重要なうえにRCTによる前向き研究で実証するには多くの費用・時間・患者の参加が必要となる。それゆえNMA/SYSRによる手法への期待は大きい。本論文は1次治療における薬物治療の評価法に一石を投じるNMA/SYSRのこれから利用の道しるべになると考える。1次治療においても軽度の副作用はあるが利益が勝るため投与を拒む理由はないと結論している。

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耳内ゴキブリの1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第192回

耳内ゴキブリの1例ぱくたそより使用やべぇ……。タイトルを読んだ時点でやべぇ……。ついに来ましたよ、G論文が!(G=ゴキブリ)Tsunoda K, et al.An Uninvited Guest in the EarAm Fam Physician . 2000 May 1;61(9):2606, 2611.40歳の男性が、突然の耳鳴りと左耳の激しい痛みで病院を受診しました。どうやら、眠っているあいだにこの症状が出たようで、どうやら外耳道に虫が詰まっているようです。どれどれ診せてごらん、と主治医は耳をのぞきこみました。あれ、思ったよりデカイんですけど、なんですかこの虫は。そもそも自分で取らなかったのか?と思われるかもしれませんが、耳内異物が虫の場合、引っ張って取らないのが鉄則です。まずはオリーブオイルなどで殺してしまうのがよいとされています。よくわからなかったので病院に来た患者さん、それは正解です。さて、耳から液体を流し込んで、虫くんを殺しました。さて、どんな虫かなー。ま、タイトルに書いているんですが……、初見ということにして。い、いやあああああーーーーー!!!!ゴキブリーーーーーー!!!!しかし主治医は冷静で、そこで叫ばない。患者さんには「かわいい虫がいましたよ」と伝えて、ゴキブリとは決して言わなかったそうです。論文中にはこんなことが書いています。「これで患者は快適に眠ることができます。え?ゴキブリはどうしたかって?彼はホルマリンで寝てるよ」。オリーブオイルなどで虫を中で殺してから除去するというのが一般的ですが、光で外におびきおよせるという方法もあるそうです。しかし、ゴキブリはバックできません。入ったらもう耳の奥へと突き進むのみです。エビデンスもへったくれもないので、無事に取り出せればそれでよいのですが、もしトゲのある肢が耳内に残存していると、これがあとあと感染を起こすこともあるそうです1)。1)Supiyaphun P, et al. Acute otalgia: a case report of mature termite in the middle ear. Auris Nasus Larynx 2000;27:77-8.

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