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続・制約と擾乱(じょうらん)【Dr. 中島の 新・徒然草】(389)

三百八十九の段 続・制約と擾乱(じょうらん)前回は Resilient Health Care Society というオンライン国際学会に出席したことを述べました。私が発表したのは、COVID-19パンデミックに対する大阪医療センターおよび総合診療部の対応についてです。もともと忙しい医療現場に、新たに新型コロナウイルス対応が課せられてしまい、マンパワー不足の中でどのようにして通常診療とコロナ診療を両立させたのか、という話をいたしました。前回にも述べたように、医療現場をはじめとした複雑適応系の中の各ユニットは、手持ちの資源が限られているにもかかわらず、そのキャパを超えるイベントは恒常的に外部からもたらされるのだということです。そのような時には、「何で俺たちばかりがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ!」と思うのではなく、「また来ましたね。今度はどう対応しましょうか?」と思うべきなのでしょう。このような場合の普遍的な対処法は、いろいろと提案されています。今回のコロナ対応の経験を通じてとくに大切だと感じたのは、「優先順位をつける」「最善策にこだわらない」「どんどん変化する状況に合わせたルール変更を躊躇(ためら)わない」というところだ、というのが私の発表の趣旨です。英語での発表になりますが、あらかじめパワーポイントに台詞を吹き込んでビデオ化したものを用いるので、さほど苦労することはありませんでした。できるだけ明瞭な発音でゆっくりとしゃべるように心掛けたので、聴いている人が理解に苦しむ、ということもなかったようです。発表自体はおおむね好評だったのですが、問題は質疑応答です。質問はいずれもアメリカ人からだったので、英語自体は聴き取りやすい……はずが、結局、何度も聞き直す羽目になりました。また内容も難しいというか、哲学的というか。「COVID-19パンデミックで、医療現場でも多くのことが変わってしまいましたが、変わらなかったこともあるかと思います。それはどのようなことですか?」ちょっと、それ! 日本語で答えようとしても難しいですよ。その場ではうまく答えられなかったので、後でいろいろと考えてみました。1つは、日々の診療スタイルでしょうか。外来受診した患者さんに発熱があれば、まずはコロナの有無を検査する、という手順が間に挟まるようになりました。単なる発熱でなさそうな場合には、コロナ検査のときに採血や各種培養検体まで採取するというところも違っています。しかし、熱のない患者さんの診療については、これまでと大きな違いはありません。病歴聴取、身体診察、検査、診断、治療という流れは全く同じです。もう1つは職場の人間関係ですね。昨年、コロナの流行が始まった頃は、現場でも対応がわからず大混乱でした。その影響は、どうしても人間関係の悪化という形で出てしまいます。皆で力を合わせてコロナに立ち向かう、という雰囲気になったのはしばらく経ってからです。現在は、いろいろな仕事や手続きがある程度はルーチン化されたので、淡々と業務をこなせるようになりました。それでも思いがけないことが起こるのは、医療現場の常ですが、以前ほどそのことが人間関係に響かなくなったように感じます。変わらなかったというよりも、一旦、混乱した後に元に戻ったというべきでしょう。もちろん、コロナで変わってしまったこともたくさんあります。宴会や飲み会なんかは全くなくなってしまいました。ネットニュースを見ていると、「どうして政府がオリンピックをやっているのに、俺たちが飲み会をしたらアカンねん!」と言っている人もいるようですが、飲み会の自粛は自分の命を守るためです。オリンピックがあろうがなかろうが関係ありません。車を運転するときにシートベルトをするのと同じですね。それはさておき、国際学会では質疑応答の不首尾が心残りです。まだまだ英語の勉強が足りません。今後もオンライン英会話教室でフィリピン人先生を相手に努力を続けたいと思います。最後に1句英語での 質疑応答 沈没す

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先生!その縫合の目的は何ですか?~縫合の歴史と目的~【漫画でわかる創傷治療のコツ】第4回

第4回 先生!その縫合の目的は何ですか?~縫合の歴史と目的~《解説》さて、前回から切り傷の縫合処置について解説していますが、まずは準備段階として、創部確認~局所麻酔~消毒を中心にお話ししました。今回は、実際の縫合処置に入る前のアイスブレイクとして、縫合処置の歴史と目的を確認しておきましょう。そもそも、縫合は何のために行われるのでしょうか? 創面積の縮小が1つの目的ではありますが、組織の欠損が大きくなければ、縫合しなくても適切な軟膏処置などで傷自体は治ります。縫合するということは、組織の一部が血行不良となるので、誤った処置はむしろ創縁の壊死や創離開の原因となり、治癒が遅くなることさえあるのです。では、わざわざ異物である縫合糸を使って縫合する理由は何でしょうか。縫合は、大きく分けると、皮膚表面を縫う縫合と皮下(真皮も含む)を縫う縫合の2つがあります。これらの縫合によって、創傷の一次治癒を達成できるだけでなく、最小の瘢痕形成にとどめられるという利点があります。切り傷によって、本来の生体構造にはない空間(死腔)ができると、そこに浸出液や壊死組織がたまって感染源になってしまいます。感染すると傷の治りが遅れ、一次治癒が阻害されて傷痕が残ります。つまり、適切な縫合処置をすることで、傷の治りが良く(早く)なるだけでなく、傷自体も小さくすることができるのです!次回は、実際の縫合処置を行うために用意する道具(器械、糸、針)について説明します!参考1)McCarthy J.G. Introduction to plastic surgery. Plastic Surgery. Vol 1. Philadelphia: W. B. Saunders Co.;1990.p.42-53.2)小林寛伊. 縫合材料の歴史と問題点. 医科器械学雑誌. 1975;45:627−634.3)日本医療用縫合糸協会ホームページ

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在宅療養COVID-19患者の呼吸困難への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第10回

第10回 在宅療養COVID-19患者の呼吸困難への対応まだまだ収束の兆しが見えない、COVID-19のパンデミック。流行の状況によっては開業医も外来や在宅医療で感染患者の診療が求められます。今回は緩和ケア分野の経験を通じてCOVID-19感染症の診療に活用できる知見を共有したいと思います。今日の質問私の診療エリアでもCOVID-19感染患者が増えた際には、在宅療養者の対応が求められそうです。原疾患の改善を待つ期間、呼吸困難に対してどのような介入ができますか? 自宅療養を支えるための緩和手段があれば教えてもらいたいです。感染者の急増を受け、病院以外の現場でCOVID-19診療に関わる方も増えているのではないでしょうか。地域によっては有症状であっても、在宅療養で経過を見る必要も出ています。適切かつ可能な範囲の治療を在宅で行いながら、重症化した際に基幹病院と連携することが重要であることは言うまでもありません。加えて、不安を抱えながら在宅療養をする患者さんを支えるためには呼吸困難といった身体症状を和らげることが大切です。日本緩和医療学会では今回のパンデミックを受け、「COVID-19患者の呼吸困難への対応に関する手引き(在宅版)」を公開しています。この手引きでは、COVID-19患者の呼吸困難に関して、STEP1酸素投与・その他の対応STEP2オピオイド経口投与(内服できる患者)STEP3オピオイド非経口投与(内服できない患者)STEP4苦痛緩和のための鎮静の4つのステップに分けて対応を記載しています。薬物療法の中心となるのは、モルヒネなどの医療用麻薬です。ご存じのように、医療用麻薬の多くは保険適用外使用となりますので、処方の際は患者・家族への説明が必要です。また、在宅療養という環境下で安全に使用できる体制構築が重要なのは言うまでもありません。在宅医療下では常時のモニタリングはできません。そのような環境下で急性期医療に近い医療を提供することは非常に困難ですが、この手引きは現状の多くの在宅医療環境で運用可能な内容となっています。COVID-19患者の呼吸困難への対応に関するエビデンスはまだ確立されていない状況であり、この手引きはその他の疾患領域での対応を踏まえたエキスパート・オピニオンに基づいたものです。実際にどこまでの対応を在宅で取り組む必要があるかは、地域の感染者数や基幹病院の状況にもよるので、地域の実情に合わせてご活用ください。日本緩和医療学会はCOVID-19に関連した情報発信をする特設サイトを開設しています。皆さまの診療に役立つ内容が多く掲載されているので、ぜひ御覧ください。早く日常が戻ってくることを祈りつつ、今回のコラムを終えたいと思います。今回のTips今回のTipsCOVID-19患者の療養を支えるためにも、緩和ケアの症状緩和スキルを活用しよう!

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第72回 新型コロナ患者の自宅療養、開業医の懸念は?

新型コロナ中等症患者の「原則自宅療養」の方針が批判された政府は、「酸素投与が必要な者、重症化リスクがある者」を入院対象にし、入院の可否は最終的に医師が判断、またこの考えは、感染者急増地域の新たな選択肢として自治体が採否を判断するとした。しかし、基本方針自体は正式には撤回されていない。新型コロナウイルス感染者の激増に伴い、全国の自宅療養者は10万人規模に膨れ上がっている。病床も逼迫する中、政府は開業医に対し、入院できない自宅療養者への支援と協力を要請しているが、現場の医師たちはどう受け止めているのだろうか。6割が中等症患者の自宅療養に反対1日当たりの新規感染者が連日2,000人を超える大阪府。府保険医協会は8月10日、会員約4,000件を対象に、自宅療養者への在宅医療支援要請に関するFAXアンケートを実施し、19日現在で252件の回答を得た。自宅療養を基本とする政府の方針に対し、回答者(複数回答あり)の62%が「中等症を自宅療養とするのは反対」でトップ。次いで「自治体と開業医に責任を丸投げしている」(42.1%)、「現状の状態ではやむを得ない」(33.3%)が続いた。自宅療養者への対応に関しては、66.2%が「対応する」と回答。「条件次第」(8.3%)を含めると74.5%が積極的な対応を検討している。一方、「対応できない」は23.4%だった。具体的な対応内容については、▽電話対応のみ(85件)▽かかりつけ患者のみ対応(軽症111件、中等症17件)▽広く受け入れる(軽症17件、中等症8件)―だった。開業医はコロナ対応に関わっていないとの報道があるが、在宅を含む日常診療や発熱・検査、ワクチン接種など多くの業務を抱えつつも、積極的に関わろうとする医療機関は決して少なくないことが明らかになった。休日・夜間を含めた保健所の対応を要望開業医が自宅療養に対応するにあたっての「必要な条件」について、回答者の92%が「急変時の搬送先確保」を挙げた(複数回答あり)。以下、「入院の判断基準の明確化」(59.5%)、「患家へのパルスオキシメーター配布」(56.7%)、「休日・夜間も含めた保健所の対応」(55.5%)、「感染した際の補償」(53.6%)が続いた。「急変時の搬送先確保」は、「懸念されること」のトップ(95%)にもなっている。2番目は「自身とスタッフの感染」(76.2%)、3番目には「休日・夜間も含めた保健所の対応」(59.5%)が挙げられた。また、保健所との連絡については、7月以降の感染者に関わる報告や問い合わせなどに関して38.5%が「つながらない」「返事がない」と回答。一方で、「概ね問題ない」も37.3%あった。陽性患者を診療した場合の公費負担認定に対しては、「認定が遅い」「返事がない」が26.2%あった。一方、「認定は迅速」は20.2%だった。大規模入院施設の開設を求める意見も中等症患者への対応に関しては、「大規模入院施設を国や自治体が主体で開設し、十分な休業補償をした上で医師や看護師が交代で対応するようにすべき」という意見もあった。国や自治体は、自宅療養者の「急変時の搬送先」を確保した上で、開業医に支援や協力を求めるべきではないだろうか。大阪府保険医協会は今回のアンケート結果を受け、医療機関の自宅療養者への支援にあたっての課題を整理し、現場の実情を踏まえた上で、必要な措置などを講じるよう国や大阪府に要望していくという。自宅療養中の妊婦が早産し、受け入れ先が見つからないまま新生児が死亡した千葉県の事案が大きく報じられ、若年層や中年層の死亡事例も毎日のようにニュースになっている。現状のどこに問題があるのかを早急に洗い出し、喫緊の対応が迫られている。

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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新型コロナの唾液PCR検査、無症候者へは推奨できない?/JAMA

 鼻咽頭スワブによるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR法)は新型コロナウイルス検出のための標準検査として行われているが、唾液を用いたPCR法は鼻咽頭によるPCR法より簡便であることから診断・スクリーニングにおいて魅力的な代替手段である。現に日本国内においても帰省や出張の前に検査を希望する人らが市販の唾液PCR検査キットに依存する傾向にある。しかし、米国・Children’s Hospital Los AngelesのZion Congrave-Wilson氏らが調査した結果によると、唾液を用いたPCR法(以下、唾液PCR法)は、感染初期の数週間に有症状の人の新型コロナウイルスを検出するには感度が高かったものの、無症候性の新型コロナウイルスキャリアの感度はすべての時点で60%未満だった。このことから、同氏らは無症候性感染者の唾液の感度低下を踏まえ、無症候感染者には唾液PCR法を新型コロナのスクリーニングに使用すべきではないと示唆している。JAMA誌オンライン版2021年8月13日号のリサーチレターでの報告。 研究者らは新型コロナウイルス検出のために唾液PCR法の感度が最適な検査タイミングを調査するため、2020年6月17日~2021年2月15日の期間に前向き縦断研究を実施した。2週間以内にRT-PCR法で新型コロナウイルスと判定された家族と濃厚接触した人の便宜的サンプルをChildren’s Hospital Los Angelesとその近隣地域からHEARTS( Household Exposure and Respiratory Virus Transmission and Immunity Study )のサイトを通じて募集した。 鼻咽頭と唾液のRT-PCR法のペアサンプルを、3〜7日ごとに最大4週間にわたって、鼻咽頭の2回の結果が陰性になるまで収集した。唾液PCR法の感度は鼻咽頭での陽性を参照標準として計算した。また、唾液PCR法の感度に関する臨床的特徴は、鼻咽頭陽性ペアのオッズの高さから予測した。 主な結果は以下のとおり。・参加者404例から889組の鼻咽頭スワブと唾液サンプルを得た。そのうち新型コロナウイルスは鼻咽頭で524件(58.9%)、唾液で318件(35.7%)が検出された。・新型コロナウイルスが両方の検体から検出されたのは258組(29.0%)だった。・鼻咽頭で陽性だった256例(63.4%)は、平均年齢が28.2歳(範囲:3.0~84.5歳)で、108例(42.2%)が男性だった。また、93例(36.3%)は感染期間中、無症候のままだった。・有症状の163例のうち126例(77.3%)は重症度分類が軽症だった。・唾液の感度は、感染の最初の週に収集されたサンプルで71.2%(95%信頼区間[CI]:62.6~78.8)で最も高かったのに対し、その後、週を追うごとに低下した。・感染が確認された第1週の検体採取日に新型コロナ関連の症状を呈していた参加者は、無症候性の参加者と比較して唾液PCR法の感度が有意に高かった(88.2%[同:77.6~95.1] .vs 58.2%[同:46.3~69.5]、p<0.001)。・唾液PCR法による感度は、有症状の場合は2週目まで有意に高かった(有症状:83.0%[同:70.6~91.8] .vs 無症候:52.6%[同:42.6~62.5]、p<0.001)。しかし、発症後2週間以上が経過すると症状の有無による違いは観察されず、無症候性の参加者は34.7%(同:27.3~42.7) 、症状出現前の人は57.1%(同:31.7~80.2)、後に症状を有した人は42.9%(同:36.8~49.1)と、有意差はなかった(p=0.26)。・新型コロナ発症後の各日に対し、唾液検出のオッズ比を前日で比較すると0.94(同:0.91~0.96、p<0.001)だった。・検体採取時に新型コロナ関連の有症状者または鼻咽頭でのウイルス量が多かった参加者は、無症候性または鼻咽頭のウイルス量が少ない参加者と比較して、唾液陽性のRT-PCR結果が得られる確率が高く、それぞれのオッズ比は2.8(同:1.6~5.1、p<0.001)および5.2(同:2.9~9.3、p<0.001)だった。

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高リスク尿路上皮がんのニボルマブ術後補助療法をFDAが承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年8月20日、米国食品医薬品局(FDA)が、術前補助化学療法やリンパ節転移の有無、PD-L1の発現レベルにかかわらず、根治切除後の再発リスクが高い尿路上皮がん(UC)患者の術後補助療法として、ニボルマブを承認したと発表。 この承認は、ニボルマブとプラセボを比較した第III相CheckMate-274試験に基づいている。 同試験において、ニボルマブ群は、プラセボ群と比較して、無病生存期間(DFS)中央値を延長した(ニボルマブ群20.8ヵ月 vs.プラセボ群10.8ヵ月、ハザード比:0.70、95% CI:0.57~0.86、p=0.0008)。

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高リスクCOVID-19外来患者への高力価回復期血漿療法の効果は?/NEJM

 高リスクの新型コロナウイルス(COVID-19)外来患者に対する、発症1週間以内の早期高力価回復期血漿療法について、重症化の予防効果は認められなかったことが、米国・ミシガン大学のFrederick K. Korley氏らの研究グループ「SIREN-C3PO Investigators」が、救急診療部門を受診した511例を対象に行った、多施設共同無作為化単盲検試験の結果、示された。COVID-19回復患者の血漿を用いた早期回復期血漿療法は、高リスクCOVID-19患者の疾患進行を防ぐ可能性があるのではと目されていた。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。 15日後の疾患進行をプラセボ投与と比較 研究グループは、救急診療部門を受診した外来患者でCOVID-19症状が認められた511例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはSARS-CoV-2に対する高力価抗体を含む回復期血漿を1単位投与し、もう一方の群にはプラセボを投与した。被験者は、全員が50歳以上、または疾患進行に関するリスク因子が1つ以上認められた。また、発症から7日以内に救急診療部門を訪れ、症状は安定しており外来管理が可能だった。 主要アウトカムは、無作為化15日後の疾患進行で、あらゆる入院、救急/緊急ケアを要する事態、非入院死亡のいずれかと定義した。 副次アウトカムは、最悪の重症度(8段階順序尺度で評価)、無作為化30日以内の非入院日数、全死因死亡だった。疾患進行患者の割合、両群とも30~32%で同等 被験者511例は、回復期血漿群257例、プラセボ群254例に無作為化された。年齢中央値は54歳、発症期間中央値は4日だった。ドナー血漿のSARS-CoV-2中和抗体価の中央値は1:641だった。 疾患進行が認められたのは、回復期血漿群77例(30.0%)、プラセボ群81例(31.9%)だった(リスク差:1.9ポイント、95%信用区間:-6.0~9.8、回復期血漿群の優越性の事後確率:0.68)。 死亡は、回復期血漿群5例、プラセボ群1例が報告された。最悪の重症度、非入院日数は、両群で同等だった。

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塩野義のコロナワクチン、日本人I/II相臨床試験で初回投与後の安全確認

 塩野義製薬は8月24日、同社が開発している新型コロナウイルスワクチン(S-268019)について、アジュバントを変更した新製剤による国内第I/II相臨床試験における全被験者60例への初回投与が8月19日までに完了したことを発表した。初回投与3日後までに生じた副反応は、いずれも軽度~中等度であり、安全性への懸念は確認されていないという。塩野義製薬のコロナワクチンS-268019はバキュロウイルスを用いた発現技術 塩野義製薬のコロナワクチン「S-268019」は、昆虫細胞とバキュロウイルスを組み合わせたタンパク発現技術であるBEVS (Baculovirus Expression Vector System)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンで、2020年12月より第I/II相臨床試験を開始。その後、検討結果や集積された知見を踏まえ、アジュバントを変更した新製剤で2021年7 月末より日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を新たに実施している。本試験では、20~64歳の日本人の男女60例を対象とし、同ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の副反応などの安全性、忍容性および免疫原性の結果から、抗原タンパク量の低減化を含め至適な用量を検討すると共に、それぞれの指標について接種後1年間の追跡評価を実施する予定。 塩野義製薬では、これらの試験で用量を決定後、約3,000例の日本人対象の次相試験に速やかに移行して安全性や有効性をさらに検討し、最終段階の試験を年内にも開始したい考え。

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2002~16年米国の医療費、人種・民族別で格差/JAMA

 2002~16年の米国医療費は、年齢・健康状態調整後も人種・民族で異なり、総医療費は多人種系や白人が最も高かった。また、医療サービス別医療費についても人種・民族で差があり、白人は外来医療費が、黒人は入院や救急医療費が、全体平均に比べいずれも高かった。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L Dieleman氏らが、データベースを基に行った探査的研究で明らかにした。著者は、「さらなる研究で、COVID-19パンデミックに関連する支出などを含む現在の医療費を、人種・民族別に確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2021年8月17日号掲載の報告。4種のデータベースを基に検証 研究グループは、米国内730万件の外来受診歴、入院歴、処方箋記録について「Medical Expenditure Panel Survey」(2002~16年)、「Medicare Current Beneficiary Survey」(2002~12年)を基に調べ、「National Health Interview Survey」(2002、2016年)による医療保険加入人口と推定症例数、「Disease Expenditure project」(1996~2016年)による推定医療費を統合し、米国における2002~16年の人種・民族別医療費の差を推定・検証した。 主要アウトカムは、2002~16年の人種・民族別の米国内医療費で、総額・年齢標準化額を医療サービス別に推定した。また、2016年の主要疾患の人種・民族別医療費も求めた。人種・民族別医療費の差については、利用率と価格・ケアの程度別に検証した。アジア系など、歯科以外の全タイプ医療費が平均を下回る 2016年の本調査対象とした6タイプの医療サービス費は、推定2兆4,000億ドル(95%不確定性区間[UI]:2兆4,000億~2兆4,000億)だった。同年における年齢標準化後の1人当たり推定総医療費は、アメリカ先住民とアラスカ先住民(非ヒスパニック系)が7,649ドル(6,129~8,814)、アジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)4,692ドル(4,068~5,202)、黒人7,361ドル(6,917~7,797)、ヒスパニック系6,025ドル(5,703~6,373)、その他複数人種系(非ヒスパニック系)9,276ドル(8,066~1万601)、白人(非ヒスパニック系)8,141ドル(8,038~8,258)だった。白人が全体医療費の72%を占めた。 集団サイズおよび年齢で調整後、白人は外来医療費が、全体平均に比べ推定15%高かった(95%UI:13~17、p<0.001)。黒人(非ヒスパニック系)は、外来医療費は全体平均より推定26%低く(19~32、p<0.001)、一方で入院費は推定19%(3~32、p=0.02)、救急医療費は推定12%(4~24、p=0.04)、それぞれ高かった。ヒスパニック系は、1人当たりの外来医療費が全体平均より推定33%低く(26~37、p<0.001)、またアジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)は歯科以外の全医療サービス分野で全体平均より医療費が低かった(すべてのp<0.001)。一方で、アメリカ先住民・アラスカ先住民(非ヒスパニック系)とその他の複数人種系(非ヒスパニック系)は、救急医療費が全体平均よりも推定でそれぞれ90%(11~165、p=0.04)、40%(19~63、p=0.006)高かった。 人種・民族別の医療費で有意差が認められた18分野については、すべて利用率の違いと一致していた。こうした格差は、潜在的疾病負荷を補正しても持続していた。

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空手の形から症例プレゼンテーションを極める!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第39回

第39回 空手の形から症例プレゼンテーションを極める!東京オリンピック2020が開催されました。コロナ禍の中での開催で、さまざまな意見がありました。私は、オリンピックから多くの勇気と元気を得ました。開催して良かったと思います。テレビの前に釘付けで応援しました。その中でも今回のオリンピックで初めて行われた空手の「形」は圧巻でした。仮想の敵を想定した攻防を演じ、力強さやスピード、リズム、強弱などから勝敗が決まります。メダルを獲得したトップ選手の迫力と緊迫感に魅了され感動しました。このケアネットの連載企画の1つに「空手家心臓外科医のドイツ見聞録」があります。この連載企画の第2回に詳しく空手の形について紹介されていますので一読ください。この著者の「安 健太先生」とは同じ病院で働いたことから親交があります。この連載企画の内容通りの有能かつユニークな医師です。私と安先生が共に勤務していたのが、奈良県の天理よろづ相談所病院です。この病院は総合内科ローテート形式の研修システムを40年以上前から導入し実践してきたことで知られます。天理の研修医諸君の勉強熱心さは感心するものがあります。早朝から毎日必ず開催されるカンファレンスで彼らは鍛えられ成長します。医師国家試験を通過したばかりのヒヨッコが、2年間の初期研修を終えるころには見違えるように逞しく変身するのです。成長の鍵は、カンファレンスで繰り返される症例プレゼンテーションです。症例プレゼンテーションは単なる発表ではなく医師としての能力を高める作用を内在しています。症例を上手にプレゼンテーションできる者は診療能力も高いです。症例報告を重ねることによって臨床研究の素地が固まっていきます。症例プレゼンテーションは医師の成長過程において重要なステップです。新規入院患者のプレゼンテーションをすべて暗記して行うことが、天理よろづ相談所病院のルールです。記憶して行うことによって、自分が聴き手になった時に頭の中に患者像を立体的にイメージすることが可能になり、患者を把握する能力と診断力が向上します。カンファレンスには一年上級の先輩医師や専攻医たち、さらに指導医も加わって質問が飛び交います。自分の考えを相手に伝えるためには、内容を構成し伝達しなければなりません。毎日プレゼンテーションを繰り返すことによって、聴き手を納得させるコミュニケーション能力が向上します。コミュニケーション能力は医療関係者間での情報伝達だけでなく、患者との関係においても重要です。相手が求める内容を正確に把握し「わかりやすい言葉で話す」ことが主治医力を高めます。空手競技の形には、世界連盟が認定した102種類があるそうです。それぞれの形には流れが定まっており、見えない架空の敵をイメージしながら攻防を演じるのです。ここで大切なことは症例プレゼンテーションにも空手のように定型があることです。病歴呈示から始まり身体所見、血液検査所見、画像所見、プロブレムリスト、アセスメント、プランと進んでいくのが伝統的な症例提示の「型」です。発表者も聞き手も型を知っているからこそ頭に入りやすくなります。病歴の紹介では、「年齢、性別」「主訴」から始まります。聴衆は、病歴のあとは身体所見が続き、そして血液検査、画像検査さらにはプロブレムリストが続くものと予測しています。予測している順序での発表は理解もしやすいです。標準的な症例プレゼンテーションが、このような順番で述べることが定型になっている理由を考えてみましょう。プレゼンテーションの定型は、実際の診療の流れの再現なのです。この定型に沿って聞いていくと、医師は自分が診察室で患者の話を聞き、診察し、検査を行い、判断して治療を行っているときの思考過程を追っているような気持ちになり患者像を思い描きやすいのです。患者を眼の前にした医師の診療の流れの再現のようにプレゼンテーションを行うと医療関係者である聞き手は理解しやすいのです。このコラムを眼にした若手の読者が、立派な症例プレゼンテーションを通じて医師として成長していってくれることを願うばかりです。空手は、自らの鍛錬や相手との組手だけでなく、礼儀作法を通して自我を制御することが本質であるそうです。空手と医学には通じるものがありますね。「押忍!」

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子宮内膜症取扱い規約 第2部 診療編 第3版

子宮内膜症治療のバイブル、11年ぶり待望の大改訂!第2版が刊行された2010年以後、腹腔鏡下手術の技術向上や薬物療法の新たなエビデンス確立により子宮内膜症の治療は大きく変化した。その現状を3部構成で解説する。第1章では子宮内膜症の診断・治療について最新の考え方を、第2章ではフローチャートを用いて治療方針を示した。そして第3章の治療ガイドラインでは、化や産科合併症、妊孕性温存、QOL、代替療法など様々な視点から24のCQを設け、検討している。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    子宮内膜症取扱い規約 第2部 診療編 第3版定価4,950円(税込)判型B5判頁数104頁、図数:6枚・カラー図数:8枚発行2021年8月編集日本産科婦人科学会電子版でご購入の場合はこちら

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「カルデナリン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第66回

第66回 「カルデナリン」の名称の由来は?販売名カルデナリン®錠0.5mg・1mg・2mg・4mgカルデナリン®OD錠0.5mg・1mg・2mg・4mg一般名(和名[命名法])ドキサゾシンメシル酸塩(JAN)効能又は効果高血圧症褐色細胞腫による高血圧症用法及び用量通常、成人にはドキサゾシンとして1日1回0.5mgより投与を始め、効果が不十分な場合は1~2週間の間隔をおいて1~4mgに漸増し、1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は8mgまでとする。ただし、褐色細胞腫による高血圧症に対しては1日最高投与量を16mgまでとする。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年8月25日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年12月改訂(第14版)医薬品インタビューフォーム「カルデナリン®錠0.5mg/錠1mg/錠2mg/錠4mg、カルデナリン®OD錠0.5mg/OD錠1mg/OD錠2mg/OD錠4mg」2)Pfizer for Professionals:製品情報

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第72回 今さら「手紙」で協力求める日医・中川会長、“野戦病院”提言も動かない会員たちにお手上げ?

動き出した“野戦病院”だがこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、大学の山のクラブの先輩が茨城県で営む農園のビニールハウスの修繕(先々週の嵐で倒壊)に、仲間数人で行ってきました。先輩は昨年末に食道がんの手術を受けたばかりで体力的に一人で直せないとSOSを発信、身近な仲間に緊急招集がかかったのです。我々支援隊は万全の感染対策(食事は屋外、宿泊も納屋か持参のテント)をとっての農作業で、まさに“野戦病院”的でしたが、暑さには参りました。あと、奥さんが「ワクチンは怖いので打たない」と話していたことにも…。仲間たちと延々説得を試みて「では、打ちます」となったのですが、若年者でなくてもワクチンを根拠なく忌避する人が身近にいることに改めて驚いた次第です。さて、前回も書いた“野戦病院”ですが、感染拡大が止まらず、自宅療養者も急増する中、どうやら政府も重い腰を上げそうです。西村 康稔経済再生担当大臣は、8月17日に開かれた衆参両院の議院運営委員会で、公明党・佐藤 英道氏の「自宅療養者の不安を解消するため、宿泊療養施設の確保や、いわゆる『野戦病院』の検討も進めるべきではないか」との質問に、「臨時の医療施設として、野戦病院的な、テントやプレハブで早期に作ることは、特例が認められているので、各都道府県と連携して必要なところに必要な支援を進めていきたい」と述べました。翌18日には日本医師会の中川 俊男会長が記者会見で、新型コロナウイルス感染症の中等症患者の入院施設として、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく臨時医療施設の設置を提言しました。中川会長は「民間が所有する大規模イベント会場や体育館など集中的に医療を提供できる場所を確保すべきだ」と話し、経団連と、加盟企業が保有している宿泊研修施設の活用について協議していることも明らかにしました。また同時に、医療従事者を確保するため、地域の医師会や看護協会と連携する考えも示した、とのことです。20日の閣議後の会見で、田村 憲久厚生労働大臣も、「全国的に、必要な自治体では臨時の医療施設の確保を検討してもらわなければならない」と述べました。政府、日医揃ってやっと重い腰を上げた格好ですが、気になることもあります。そうした施設に配置する人員です。会員の医師一人ひとりに協力を求める手紙を送ると日医会長8月18日に日本医師会から配信されたメール(「日医君」だよりNo.661)は、思わず脱力してしまう内容でした。中川会長は8月17日、新型コロナウイルスの爆発的な感染の拡大が全国規模で起きていることを受けて、会員の医師一人ひとりに改めて「協力を求める手紙」を送ることを決めた、というのです。手紙は8月28日から順次郵送を開始するそうです。決めてから10日以上先に発送とはすばらしいスピード感です。ひょっとしたら、手書きなのかもしれません。肝心の手紙の内容も公開されています。現在の日本の状況は緊急事態であり、新型コロナ医療と通常の医療の両立が崩れ始めているとした上で、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込み、同時に、なんとしても医療提供体制を維持しなくてはならないとして、「どうか、新型コロナウイルス感染症患者さんの入院が難しい医療機関におかれましても、今一度、受け入れのご検討をお願いします。診療所におかれましては、どうか、できうる限り、自宅療養、宿泊療養の患者さんの健康観察、電話等による診療や往診を行っていただきますようお願いします」と、病院、診療所の両方にお願いする内容となっています。おいおい今ごろ手紙かよ、医療提供体制の構築に向けて春からきちんと取り組んで来たのではないのかよ……と、思わず口に出して突っ込んでしまいました。そう言えばアベノマスクの時も同じような脱力感を覚えました。8月3日に菅 義偉首相が中川会長と面会、往診や遠隔医療での医師会員の協力を養成した際には確か「特に自宅療養への対応に重点を置いた体制整備を進めている」と答えていたはずでしたが…。医療提供体制の確保に無力の日本医師会臨時医療施設の設置を提言する一方で、そこで働いてもらう医師をはじめとする医療スタッフの確保については、手紙ベースでこれからお願いするのでしょうか。今更ながら、人員含めた地域の医療提供体制の確保において、日本医師会という組織は無力だと再認識できた次第です。彼らは結局、患者や国民は二の次で、診療報酬というパイの確保や補助金を含めた医師へのお金の配分しか考えられないのかもしれません。仮にこれから臨時の医療施設ができても、都道府県医師会、あるいは地区医師会などが動かない限り、「仏作って魂入れず」という事態に陥るでしょう。ワクチン接種遅れ、原因の一つに日医肝いりの「個別接種」日本医師会については、月刊誌『文藝春秋』9月号に、「日本医師会の病巣にメス」と題する興味深い記事が掲載されています。辰濃 哲郎氏と同誌の取材班によるこの記事は、日本でワクチン接種が大幅に遅れた原因の一つが、日本医師会の肝いりで強引に進められた「個別接種」にあることを、詳細な経緯とともにリポートしています。診療所を含めることで、ワクチンの配送や管理、接種登録が煩雑になることや、集団接種への人員が割けないとなど、さまざまな問題点が指摘されていたにもかかわらず敢行された個別接種。同記事は日医が診療所の参画にこだわった理由について、「昨年来、コロナ院内感染を危惧して発熱患者を断る診療所が少なくなかった。(中略)。個別接種は診療所医師がコロナ禍で存在感を発揮するうえで、中川会長の起死回生の策だったと思える」と書いています。結果はどうだったか。手厚い協力金によって接種に参加した医療機関を潤しました。しかし一方で、自治体が進める集団接種の接種人員不足などの問題も引き起こしました。また、ワクチン接種記録の未入力の発生(その結果、在庫量の把握が困難に)や、“かかりつけ”の患者しかワクチン接種を行わない医療機関の存在など、「個別接種」が接種推進の妨げの一因となっていたことは事実でしょう。なお、この記事では、そうした「個別接種」の問題点のほか、日本医師会という組織が昔から抱える根本的な問題(開業医の権益を守るための組織でしかないこと)についても書かれています。興味がある人は、ご一読をお薦めします。医師動員は改正感染症法で対応可能私は、個別接種への取り組みは、地域の医療提供体制見直しを遅らせる一因でもあったと考えています。日医には「会員がワクチン接種に関わることで“やってる感”を出しているうちに、コロナは収まるだろう」という甘い考えがあったのではないでしょうか。“コロナ一本足打法”の菅首相と同じです。そのため、今問題になっている医療提供体制について真剣に議論せず、今ごろになって臨時医療施設を提言しているわけです。それも人員のあてもなく。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長は8月22日のNHK「日曜討論」で、新型コロナの全国的な感染拡大に関し、「コロナに関わっていない医療者がいるが、そういう人にもできる限り(対応を)やってもらいたい。国や自治体から強く要請してほしい」と、これまで治療などに当たってこなかった医療従事者に対する働きかけを強める必要があるとの認識を示しました。働きかけという点では、2月に施行された改正感染症法での対応が考えられます。同法では、感染症のまん延による緊急時に医師らに対して厚労相や都道府県知事が必要な協力を求めることができるとした上で、 正当な理由なく要請に応じない場合は「勧告」、勧告にも従わない場合はその旨を公表することができると規定しています(同法第16条の2)。これまでこの規定に基づく病床確保の要請は奈良県、大阪府、静岡県、茨城県、札幌市でありましたが(「第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…」参照)、病院や医師個人に対する勧告や公表に至った事例はまだありません。と、ここまで書いてきて、大きなニュースが入って来ました。厚生労働省と東京都が8月23日、改正感染症法に基づいて都内の全医療機関に新型コロナウイルス患者の受け入れや医療従事者の派遣を連名で要請したのです。これまで要請してきたのは府県や市でした。国が要請に乗り出すのは初めてです。現在、都内で患者を受け入れているのは約400病院で、残り約250病院はコロナに直接関わっていないそうです。他に約1万3,500の診療所があり、要請はこれら全ての医療機関と医師・看護師の養成機関が対象とのことです。重点医療機関や協力病院にはさらなる患者受け入れや病床増、他の病院には宿泊療養施設や臨時医療施設の運営に関わるよう求め、診療所にも在宅医療や、宿泊療養施設・臨時医療施設への人材供給を求めるとしています。要請への回答期限は8月31日です。果たしてどれだけの病院、診療所が動くのかが注目されます。ロックダウン(都市封鎖)のような強制措置や、個人の行動制限の検討も始まるようです。ここは並行して、感染症法以外での、有事に病床を確保したり、医師を動員したりできる法的仕組みについても、ぜひ議論してもらいたいと思います。手紙や薄っぺらな言葉、実効性の薄い罰則では、今の時代人は動きません。

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初発統合失調症患者における幻聴~10年間の軌跡

 幻聴は、統合失調症の診断において重要な症状であり、非常に頻度が高く、症状悪化に影響を及ぼす精神症状の1つである。しかし、幻聴の長期的な軌跡についてはあまり知られていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、初発統合失調症における幻聴について、10年間のフォローアップ調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月13日号の報告。 対象は、初発統合失調症スペクトラム障害患者496例。幻聴スコアは、0(なし)~5(重度:毎日頻繁に出現)の評価を用いて、ベースライン時および1、2、5、10年後に調査した。幻聴の軌跡の特定には潜在クラス成長分析を用い、予測因子の推定には多項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・幻聴の軌跡は、低減少クラス(77%)、高変動クラス(10%)、高増加クラス(13%)の3つが特定された。・低減少クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが最も低かった(平均スコア:2.1)。幻聴スコアの改善は、最初の1年以内に認められ(1年後の平均スコア:0.5)、その後も維持された(10年後の平均スコア:0)。・高変動クラスでは、最初の2年間で平均幻聴スコアが3.0→1.0へ改善が認められたが、5、10年後には増加に転じていた(平均スコア:2.4)。・高増加クラスでは、ベースライン時の平均幻聴スコアが高く(平均スコア:3.5)、1年後にはわずかな減少が確認されたものの(1年後の平均スコア:3.0)、10年後には増加していた(10年後の平均スコア:4.8)。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、10年後までに幻聴の改善が認められるが、4人に1人は症状の変動がみられ、13%の患者は10年後に重度の幻聴を有していることが明らかとなった」としている。

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百貨店など大型商業施設でのクラスターの共通所見と対策/感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のいわゆるデルタ株の拡大で、百貨店やショッピングセンターなどの大規模商業施設のスタッフ間のクラスター感染が報告されている。生活に密着する施設での発生から今後のさらなる感染拡大が懸念されている。 この状況を受け、国立感染症研究所実地疫学研究センターは、現時点での、クラスターの発生原因に関する共通すると思われる代表的な所見を提示し、共通する対策に関して提案を行った。【代表的な所見】・売り場における従業員の衛生意識は高く、マスク着用はおおむね適切に行われていたが、手指衛生などさらに改善すべき点を認めた・時間帯によって、客が密集した状態になる売り場を認めた・従業員が利用する食堂や休憩所などで密となりがちな環境を一部認めた・店舗による接触者の把握や管理が十分ではなかったと考えられた状況を一部認めた【共通する対策に関する提案】・COVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について、従業員全員がより正しく実践する・従業員による売り場での十分量の適切な濃度のアルコール消毒剤を用いた手指衛生、および従業員や客が高い頻度で触れる箇所の消毒を徹底する・客が密となる場所においては人の流れや(時間当たりの)入場者数の調整をする。その際、売り場では、たとえば混雑時・非混雑時の二酸化炭素濃度を参考に換気を工夫する・従業員が利用する食堂や休憩所などにおいて、密になる環境を作らない工夫と十分な換気、黙食を徹底する・複数店舗でCOVID-19の陽性者が判明した場合は、フロア全体など広めの検査実施を検討する・従業員の健康管理(観察と記録)を強化する・自治体または職域での新型コロナワクチン接種の推進を各店舗の従業員に対して働きかけていただきたい・これまで以上に、保健所との連携(報告や相談)を強化していただきたい 百貨店・ショッピングセンターなどだけでなく、人流の多い市役所などの行政機関、病院などの医療機関、学校などでも参考にできるので一読をお願いしたい。

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teclistamabが再発/難治性多発性骨髄腫に有望/Lancet

 再発または難治性多発性骨髄腫の患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)×CD3二重特異性T細胞誘導抗体teclistamabは、持続的で深い奏効をもたらし、忍容性も良好であることが、米国・Levine Cancer Institute/Atrium HealthのSaad Z. Usmani氏らが実施した「MajesTEC-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月10日号に掲載された。teclistamabにおける 5ヵ国12施設の用量漸増第I相試験 本研究は、再発/難治性多発性骨髄腫の患者におけるteclistamabの安全性、忍容性および暫定的な有効性の評価を目的とする非盲検単群第I相試験であり、2017年6月~2021年3月の期間に、5ヵ国(米国、スペイン、フランス、オランダ、スウェーデン)の12施設で患者のスクリーニングが行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準で多発性骨髄腫と診断され、ECOG PSは0/1、確立された治療で再発または治療抵抗性か不耐であり、プロテアソーム阻害薬と免疫調整薬による治療歴があり、BCMA標的薬による治療歴がない患者であった。 teclistamabは、0.3μg/kgの2週ごとの静脈内投与(1、15、28日の投与で1サイクル)で開始され(0.3~19.2μg/kg)、その後、薬物動態のデータに基づき週1回投与(1、8、15、21日の投与で1サイクル)に変更され(19.2~720μg/kg)、重症サイトカイン放出症候群のリスクを軽減するために、38.4μg/kg以上となるように用量が漸増された。また、患者の利便性の増大と安全性の改善のために、皮下投与(80~3,000μg/kg/週)の検討も行われた。 主要評価項目は、第II相試験の推奨用量を決定することであり、用量制限毒性の評価が行われ(第1部)、推奨用量での有害事象や有効性が検討された(第2部)。teclistamabはBiTEに比べ半減期が長く、間欠投与が可能 157例(年齢中央値63歳[IQR:57~69]、女性46%、高リスクの細胞遺伝学的プロファイル33%、前治療ライン数中央値6[IQR:4~7]、幹細胞移植例85%)が登録され、全例が少なくとも1回のteclistamabの投与を受けた(静脈内投与:84例[2週ごと12例、週1回72例]、週1回皮下投与:73例)。 teclistamabの皮下投与では用量制限毒性は発現しなかった。また、teclistamabの最大耐用量には達しなかった。安全性、有効性、薬物動態、薬力学のデータから、第II相試験の推奨用量は、1,500μg/kgの週1回皮下投与とされた(40例、追跡期間中央値6.1ヵ月[IQR:3.6~8.2])。 第II相試験の推奨用量の投与を受けた40例で最も頻度の高かった試験薬投与後に発現または悪化した有害事象(TEAE)は、サイトカイン放出症候群(28例[70%]、すべてGrade1/2)および好中球減少(26例[65%]、このうち16例[40%]がGrade3/4)であった。 推奨用量の投与を受け、奏効の評価が可能であった40例における全奏効割合(厳格な完全奏効、完全奏効、最良部分奏効、部分奏効)は65%(95%信頼区間[CI]:48~79)で、最良部分奏効以上の割合は58%であった。また、推奨用量では、奏効期間中央値には未到達だった。 奏効例26例のうち22例(85%)は、追跡期間中央値7.1ヵ月(IQR:5.1~9.1)の時点で生存し、治療を継続していた。推奨用量のteclistamabは、目標曝露量以上で維持されており、継続的にT細胞の活性化が認められた。 著者は、「二重特異性IgG4抗体であるteclistamabは、BiTE(bispecific T-cell engager)に比べ半減期が長く、間欠投与が可能である。第II相試験で推奨される投与スケジュールと皮下投与法は、患者と医師の双方にとって利便性が高いと期待される」としている。

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歯周病の予防・治療で良好な血糖コントロールと合併症予防をめざす/日本糖尿病学会

 糖尿病では、合併症として腎障害、網膜症、末梢神経障害などは注意すべき疾患としてよく知られている。しかし、歯周病など口腔疾患はあまり注意喚起されることが多くない。食事療法で大切な入り口となる口腔内疾患と糖尿病の関係について、第64回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:戸邉 一之[富山大学])の教育講演で成瀬 桂子氏(愛知学院大学歯学部内科学講座)が、「糖尿病併存疾患としての歯周病」をテーマに講演を行った。糖尿病と歯周病は双方向の関係 歯周病とは、歯周組織に原発し、歯周組織を破壊する疾患の総称であり、歯肉炎と歯周炎に大別される。歯肉炎は、歯頚部に付着する細菌の塊であるプラーク(歯垢)により引き起こされる。歯肉炎は歯肉組織に限局した炎症であり、可逆性であるが、歯周炎は歯肉に初発した炎症が、セメント質、歯根膜および歯槽骨などの深部歯周組織に波及した慢性炎症である。 歯周病の検査は、口腔内の衛生状態、炎症程度、歯周ポケットの状態が診察され、歯周病の基本的な治療として、「プラークコントロール」「スケーリング」「かみ合い調整」が行われ、さらに進行した場合には歯周外科治療として「組織付着療法」「切除療法」「歯周組織再生療法」などが行われる。こうした治療を行って病変の進行が休止しても歯周ポケットが残存する場合、歯周組織を長期にわたり病状安定化させるために行われるのが、サポーティブペリオドンタルセラピーであり、治療により治癒した場合でも、その状態を長期間維持するためにメインテナンスが行われる。 糖尿病と歯周病の関係は双方向性である。糖尿病患者では1型糖尿病、2型糖尿病にかかわらず歯周病の発症および罹患率が増加していることが確認されている。ドイツにおける報告では、とくに歯周病が進行する群はHbA1c7%以上であった。 「血糖コントロールは歯周病を改善するか」という研究では、歯肉の炎症は改善するが、歯周ポケットの深さは改善しないという結果だった。糖尿病で歯周病が重症化しやすい要因としては、歯肉組織微小血管障害、歯周結合組織の代謝異常、酸化ストレス、免疫機能の低下などがあげられる。逆に、「歯周病があると糖尿病になりやすいか」という研究では久山町研究などから関連性は認められたほか、歯周の炎症改善を介して血糖コントロールも改善する可能性があることが示唆された。年齢、歯間の不衛生、HbA1c7%以上は歯を失うリスク 糖尿病患者に歯周病を合併する問題点として、歯周病が動脈硬化を発症・進展させる可能性を指摘する。動物実験では、歯周病原細菌の投与で動脈硬化が促進した例、および歯周炎の惹起が、動脈に初期炎症を誘導することを説明した。 また、2型糖尿病における歯周病重症度と糖尿病腎症発症頻度の相関については、HbA1c6.5以上ではハザード比で4倍を超えることが台湾の研究で明らかになった。そして、歯周病重症度と死亡率の関係について、歯周病が重症なほど死亡率が高く、重症の歯周病では、虚血性心疾患による死亡とともに糖尿病腎症による死亡も多いことが明らかになった。 「糖尿病合併症の実態とその抑制に関する大規模観察研究(JDCP study)」におけるベースライン時の口腔所見では、歯数が20歯未満になるオッズ比が高い項目として、1型糖尿病では「年齢60歳以上」「歯間清掃用具未使用」「HbA1c7%以上」などが、2型糖尿病では「年齢60歳以上」「歯間清掃用具未使用」「定期歯科検診なし」「糖尿病罹病歴10年以上」「HbA1c 8%以上」などが報告された。以上から重要なこととして「良好な血糖コントロール」「定期的な歯科受診」「歯間清掃用具の使用」が示唆された。 『糖尿病診療ガイドライン2019』やこれまでの知見より、糖尿病と歯周病について(1)定期的な歯科受診と歯間清掃用具の使用を勧める(2)1型・2型糖尿病患者は歯周病発症リスクが高いこと(3)良好な血糖コントロールを目指すことにより歯周組織の炎症の改善が期待できる(4)歯周病治療は、慢性炎症の改善を介して糖尿病合併症の発症・進展を抑制する可能性があること(5)糖尿病患者は全員、歯周病治療を受けるべきであることが提唱された。 最後に、糖尿病患者の医科歯科連携では、「糖尿病連携手帳」を活用し、医師やほかのスタッフが積極的に患者の診療にかかわることを期待して講演を終えた。

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8月開始の認定薬局制度 都で事前申請した薬局は計136軒【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第74回

2021年8月1日より、改正医薬品医療機器等法の認定薬局制度が始まりました。皆さんの薬局ではこの制度について話し合いましたか? 制度開始に先立って、6月や7月から事前申請をしていた薬局もあったようです。東京都福祉保健局薬務課は7月28日の定例会見で、8月から始まる改正医薬品医療機器法の認定薬局制度について、「事前申請」の受け付けが地域連携薬局で132軒、専門医療機関連携薬局で4軒に上ったことを明らかにした。早乙女芳明課長は「正直3ケタは行かないと寂しいと思っていたので、ちょうどいい数字」などと説明。ただ、まだ「様子見」の企業もあることから、「年末にかけてバラバラときてくれたらいい」と述べ、今後の認定薬局数の伸長に期待を寄せた。(2021年7月29日付 RISFAX)東京都の薬局数は約6,000軒で、地域連携薬局に事前申請したのはそのうちの132軒ですから、約2%の薬局が申請したということになります。この報道を見ると、想定どおりの申請があったという感じで担当者もホッとしているようですね。認定を受けた薬局は、薬局機能情報を提供する都のシステム「t-薬局いんふぉ」で検索することができます。要件の概要は本年1月に発表されていましたが、事前申請ができた薬局はその時点で要件を満たしていたか、あと一歩だった薬局なのでしょう。私自身は、制度開始の8月になったら考えるくらいでいいかなと思っていましたが、実際にすでに認定された薬局があると知ると少し焦る気持ちが出てきます。立地から機能で薬局を選ぶ流れができるか?新制度の薬局である「地域連携薬局」は、入退院時に医療機関と情報共有したり、在宅医療で地域の薬局と連携したりしながら地域で一元的・継続的に対応する薬局、「専門医療機関連携薬局」はがんなどの専門的な薬学管理で他医療提供施設と連携して対応する薬局です。それぞれの機能に関する基準を満たしたうえで、都道府県知事の認定を受ける必要があります。患者さんの状況や病態に合わせて患者さん自らが薬局を選択するという点がフォーカスされていますが、立地で選ばれることが多かった薬局業界で、専門的に対応している薬局や地域と連携して頑張っている薬局を押し出していきたいという意図を感じます。当初は「申請要件が難しくて無理…」と思っていましたが、改めて要件を見ると、以前よりも難しいと感じない気がします。無菌調剤の連携や在宅対応など、地域の連携が日常業務としてなじんできているのかもしれません。要件が難しいと思ってあきらめモードになっていた方も、ぜひ改めて確認してみてください。足りないところをピックアップして重点的に取り組み、1年後に申請というスケジュールを立ててもいいのではないでしょうか。ただし、絶対に忘れてはいけないことがあります。本制度の目的は、薬局の特色を明らかにすることで患者さん自らが薬局を選び、より良いサービスを受けられるようにすることであり、薬局の自己満足や今後の診療報酬対策で終わってはいけないという点です。患者さん自身が認定薬局制度を理解して、メリットをはっきりと感じてほしいです。今後調査されると思いますが、具体的な成果や認定薬局を選んだ患者さんのエピソードやレビューを集め、本制度の価値の裏付けになることを願います。

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