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ウクライナ侵攻について思うこと【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第12回

ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、1ヵ月が過ぎようとしています。世界中がウクライナに注目し、遠く離れた日本でも連日報道が続いています。日に日に悪化していく報道内容に心が痛みます。私がドイツで勤務していた“Klinkum Karlsburg”は旧東ドイツの地区にあり、旧ソ連が建てた病院でした(元々は糖尿病の専門病院で、後に心臓センターが付け加えられることとなります)。ドイツの辺境にある病院で、院内の医師の大半はドイツ人ではありませんでした。ちょうど私が勤務していたとき、私と同じくらいのキャリアの心臓外科医がほかに2人いました。仕事の内容も似通って、早い話がまあ、手術の取り合いをしていた三人組だったのですが、残りの2人がウクライナ人とロシア人でした。ウクライナからきたシュリフカは割とお調子者で、人当たりはいいけど都合が悪くなったらすぐいなくなる要領のいいタイプでした。奥さんは身長180cm以上あって、めちゃくちゃ綺麗な人でした。顔も小さくて、「なんでこんな田舎にモデルがいるんだ?」と思っていたら、シュリフカの奥さんとわかって…そのときは衝撃と嫉妬の気持ちで心が溢れかえりそうでした。一方、ロシア人のディーチェはいつも難しい顔をしてて文句ばかり言うやつでしたが、仕事は最後までキッチリやり抜くタイプでした。文句を言いながらですが。こちらは離婚していて10代でできた子供はすでに大学生で、世界中を飛び回っているとのことでした。ウクライナとロシアの微妙な関係よく3人で部屋にこもって病棟の雑務をこなすことが多かったのですが、彼らは時にロシア語でコミュニケーションを取り合っていました。私はロシア語はわからないのですが、彼らが病院(主に上級医達)の悪口を言っていることは何となく伝わりました(ウクライナ語とロシア語はかなり近い言語だそうで、シュリフカはロシア語を普通に話していました)。働き初めの頃にウクライナ人のシュリフカもロシア人と思っていて、「ロシアのどこから来たの?」と聞いたことがありました。シュリフカはオーバーに驚きながら「ヘイ! ケンタ! 俺はウクライナ人だよ!」と言われました。シュリフカが去った後、ポーランド人の同僚から、「今のはだめ。ケンタはもっと東ヨーロッパの勉強をしなさい」と厳しいお叱りを受けました。言っちゃいけないワードでした。ただ、なぜドイツに来たのか? その問いに対する答えは2人とも同じでした。「自国では、医者でも食っていけないから」ロシアもウクライナも自国の経済状況は極めて劣悪で、汚職が横行しているので真面目に生きていくことができないと2人は口をそろえて話していました。日本人の臨床留学は原則的に日本に帰る前提ですが、彼らは文字通り祖国を捨ててやってきます。ドイツ語の勉強のモチベーションも違うし、仕事でちゃんと評価されようと必死なのが伝わりました。ディーチェはドイツ内の他の病院へ移ったのですが、シュリフカは今でもGreifswaldにいて、出世したポジションでやっているそうです。ですが、今回のロシアのウクライナ侵攻に対してシュリフカはかなり怒っていて、メールしたときもかなり強い言葉を使ってロシアを非難していました。連日フェイスブックでもロシアに対するキツいコメントを残していたのですが…。今この原稿を書いている2日前に彼の故郷が空爆を受けたとのニュースが流れ、それから彼の書き込みがなくなってしまいました。メールも既読がつかなくなりました。現在の彼の心中は想像することもできません…。今回のウクライナ侵攻は、私にとって人ごとではない距離で起こった事件です。どう転んでも、もう元通りにはならないんでしょうね…。それでも、1日も早い事態の収束を祈ります。

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過去のものとは言わせない~SU薬の底力~【令和時代の糖尿病診療】第6回

第6回 過去のものとは言わせない~SU薬の底力~最近、新薬に押されてめっきりと処方数が減ったSU薬。低血糖を来しやすい、血糖変動が大きくなるなど罵詈雑言を並べ立てられ、以前はあれほど活躍していたのにもかかわらず、いまや悪者扱いされている。私が研修医のころは、経口薬といえばSU薬(BG薬はあったもののほとんど使われなかった)、注射剤といえばインスリン(それも速効型と中間型の2種類しかない)、加えて経口薬とインスリンの併用などはご法度だった時代である。同じような時代を生きてきた先生方にこのコラムを読んでいただけるか不安だが、今回はSU薬をテーマに熟年パワーを披露してみたい。最近の若手医師はこの薬剤をほとんど使用しなくなり、臨床的な手応えを知らないケースも多いだろう。ぜひ、つまらない記事と思わずに読んでいただきたい。もしかしたら考え方が変わるかもしれない。SU薬は、スルホンアミド系抗菌薬を研究していた際に、実験動物が低血糖を示したことで発見されたというユニークな経緯を持つ。1957年に誕生し、第一~三世代に分けられ、現在使用されているのは第二世代のグリベンクラミドとグリクラジド、第三世代のグリメピリドである。血糖非依存性のインスリン分泌促進薬で、作用機序は膵臓のβ細胞にあるSU受容体と結合してATP依存性K+チャネルを遮断し、細胞膜に脱分極を起こして電位依存性Ca2+チャネルを開口させ、細胞内Ca2+濃度を上昇させてインスリン分泌を促進する。血糖降下作用は強力だが、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬と違い、血糖非依存性のため低血糖には注意が必要で、日本糖尿病学会の治療ガイドには、使用上の注意として(1)高齢者では低血糖のリスクが高いため少量から投与を開始する、(2)腎機能や肝機能障害の進行した患者では低血糖の危険性が増大する、と記載されている。この2点に気を付けていただければ、コストパフォーマンスが最も良好な薬剤かと思われる。まずはこの一例を見ていただきたい。75歳男性。罹病歴29年の2型糖尿病で、併存疾患は高血圧、脂質異常症、高尿酸血症および肺非結核性抗酸菌症。三大合併症は認めていない。α-GI薬から開始し、その後グリニド薬に変更したが、14年前からSU薬+α-GI(グリメピリド1mg+ボグリボース0.9mg/日)に変更。体重も大きな増減なく標準体重を維持し、HbA1cは6%台前半で低血糖症状もなく、経過は良好であった。そこで主治医は、朝食後2時間値70~80mg/dLが時折見られることから無自覚低血糖の可能性も加味し、後期高齢者になったのを機にグリメピリドを1mgから0.5mgに減量したところ、HbA1cがなんと1%も悪化してしまった。症例:血糖コントロール(HbA1c)および体重の推移この患者には肺病変があるのでもともと積極的な運動はできず、HbA1cの季節性変動もない。また、食事量も変わりなく体重変化もないため、SU薬の減量がもっともらしい原因として考えられた。よって、慌てて元の量に戻したケースである。このような症例に出くわすことは、同世代の先生方には十分理解してもらえるだろう。いわゆる「由緒正しき日本人糖尿病」で、非肥満のインスリン分泌が少し低い患者である。これを読んでも、あえてSU薬を使う必要があるのかという反論もあろう。新しい経口糖尿病治療薬は、血糖降下作用のみならず大血管障害などに対し少なくとも非劣性であることが必要だが、最近の薬剤はむしろ大血管障害や腎症に対しても優越性を持つ薬剤が出てきているではないか。さらには、血糖依存性で低血糖が起こりにくく、高齢者にも使用しやすい。確かにそのとおりなのだが、エビデンスでいうとSU薬も負けてはいないのだ。次に説明する。最近の報告も踏まえたSU薬のエビデンス手前みそにはなるが、まずはわれわれの報告1)から紹介させていただく。2型糖尿病患者における経口血糖降下薬の左室心筋重量への影響画像を拡大するネットワークメタ解析を用いて、2型糖尿病患者における左室拡張能を左室心筋重量(LVM)に対する血糖降下薬の効果で評価した結果、SU薬グリクラジドはプラセボと比較してLVMを有意に低下させた唯一の薬剤だった(なお、この時SGLT2阻害薬は文献不足により解析対象外)。左室拡張能の関連因子として、酸化ストレス、炎症性サイトカイン、脂肪毒性、インスリン抵抗性、凝固因子などが挙げられるが、なかでも線溶系活性を制御する凝固因子PAI-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)の血中濃度上昇は、血栓生成の促進、心筋線維化、心筋肥大、動脈硬化の促進および心血管疾患の発症と関連し、2型糖尿病患者では易血栓傾向に傾いていることが知られている。このPAI-1に着目し、2型糖尿病患者におけるSU薬の血中PAI-1濃度への影響をネットワークメタ解析で比較検討したところ、グリクラジドはほかのSU薬に比して血中PAI-1濃度を低下させた2)。これは、ADVANCE研究においてグリクラジドが投与された全治療強化群では心血管疾患の発症が少なかったことや、ACCORD研究においてグリクラジド以外の薬剤が投与された治療強化群での心血管疾患発症抑制効果は見られなかったことなど、大規模試験の結果でも裏付けられる。また、Talip E. Eroglu氏らのReal-Worldデータでは、SU薬単剤またはメトホルミンとの併用療法はメトホルミン単独療法に比べて突然死が少なく、さらにグリメピリドよりグリクラジドのほうが少ないという報告3)や、Tina K. Schramm氏らのnationwide studyでは、SU薬単剤はメトホルミンと比較して死亡リスクや心血管リスクを増加させるが、グリクラジドはほかのSU薬より少ないという報告4)もある。過去のものとは言わせない~SU薬の底力~以上より、SU薬のドラッグエフェクトによる違いについても注目すべきだろう。SU薬は血糖降下作用が強力で安価なため、世界各国では2番目の治療薬として少量から用いられており、わが国でも、やせ型の2型糖尿病患者の2~3剤目として専門医に限らず多く処方されている。結論として、SU薬の使用時は単剤で用いるよりは併用するほうが望ましく、少量で使用することにより安全で確実な効果が発揮できる薬剤だと理解できたかと思う。また、私見ではあるが、高齢者糖尿病が激増している中で、本来ならインスリンが望ましいが、手技的な問題や家庭状況により導入が難しい例、あるいは厳格なコントロールまでは必要ないインスリン分泌の少ない例などは良い適応かと考える。おまけに、とても安価である。決してお払い箱の薬剤ではないことも付け加えさせていただく!1)Ida S, et al. Cardiovasc Diabetol. 2018;17:129.2)Ida S, et al. Journal of Diabetes Research & Clinical Metabolism. 2018;7:1. doi:10.7243/2050-0866-7-1.3)Eroglu TE, et al. Br J Clin Pharmacol. 2021;87:3588-3598.4)Schramm TK, et al. Eur Heart J. 2011;32:1900-1908.

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第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、「パワハラなし」、理事長引責辞任でひとまず幕引き

大量退職の責任を取って理事長は3月末で辞任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京都心では、週末の雨のせいもあって、あっという間に桜が散ってしまいました。私は先週末、少々用事があって京都と東京・浅草を訪れました。どちらの街も、コロナ禍前のように観光客でごった返していました。ひとつ気になったのは、京都、浅草ともに、どう見ても似合っていない着物を纏った多くの若い女性が、慣れない草履を履いてよろよろと街を歩いていたことです。昔は見なかった光景です。どうやら、春休み、レンタル着物で観光するのが流行っているようです。それはそれで風情のあることですが、春とは言ってもまだ風が冷たい中、浴衣に毛が生えたような薄手の着物で歩く女性たちはとても寒そうで、風邪をひくのではないかと心配になってしまいました。さて、今回は、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」で書いた、地方独立行政法人・市立大津市民病院(401床)の医師大量退職に関する続報です。京都大学からの派遣医師の大量退職の原因をつくったとされる北脇 城理事長は混乱の責任を取って3月末で辞任しました。北脇理事長の医師に対するパワハラの有無について調べていた第三者委員会も3月末に報告書をとりまとめ、公表しました。ただ、その報告書は北脇理事長がかなり強引な診療科再編を行おうとしたにもかかわらず、「パワハラはなかった」とするもので、事件の早期の幕引きを狙ったとしか見えない内容でした。外科・消化器外科・乳腺外科、脳神経外科、泌尿器科、計19人が退職意向経緯を簡単におさらいしておきます。大津市民病院では今年2月初旬に外科・消化器外科・乳腺外科の医師9人が3月末~6月末に退職する意向であることが発覚。その後、脳神経外科の全医師5人が4月以降に、さらには泌尿器科の5人も9月末までに退職することが明らかになりました。退職の意向を示したのはいずれも京大医学部から派遣されていた医師です。京都府立医科大学出身の北脇理事長(当時)が各診療科に対して行った再編提案などに納得できなかった京大側の関係医局が医師派遣取り止めを決断した、という構図です。19人もの医師の大量退職は全国メディアでも大きく報道され、大津市議会や滋賀県議会でも診療への影響が問題視されました。その後、代わりの医師確保も難航し、混乱は一向に収束しませんでした。年度末が近づいた3月24日、佐藤 健司・大津市長は記者会見において、北脇理事長が「大きな混乱を招いた責任は大きい」として31日付で辞任すると明らかにしました。同理事長は辞任、4月1日以降、理事長職は空席となっています。なお、退職意向を示した医師のうち4人が北脇理事長らからパワハラがあったと訴えており、事が表沙汰になった後、病院が弁護士2人で構成された第三者委員会を設置し、関係者へのヒアリングなどを進めてきました。その検証結果の報告書が理事長辞任報道の4日後の3月28日に公表された、というわけです。報告書の要旨については、大津市民病院のホームページにも掲載されました。「『パワーハラスメント』に該当するような言動は認められない」報告書は、外科医師からのハラスメントと脳外科医師からのハラスメントを分けて、別々に検証しています。外科医師からのハラスメント申告について報告書は、2021年9月に「理事長が副院長(外科系医師)に対し、外科の業績不振を理由に挙げて、京都府立医科大学から消化管チームを招聘することを決断したとして、副院長ほか複数名の医師が退職することを求めたことが認められる」としています。そしてこの際、「『業績不振』の原因が現外科チームにあることや、現外科チームでは今後改善の見込みがないことについて合理的根拠が示されず、また現外科チームに問題があると考えるのであれば、先に派遣元である京都大学から別のチームに交替してもらうよう打診するという選択肢があったにもかかわらず、先に京都府立医科大学から消化管チームを招聘する話を持ち出した」とし、このことが「外科チームや京都大学側の不信感を招いた。このような話の進め方が、後の混乱につながったものと考えられる」と、北脇理事長の話の進め方の不合理さを指摘しています。一方の脳神経外科医師からのハラスメント申告については、「理事長が脳神経外科の診療部長に対し、脳血管障害の科を新設して外部から医師を招聘することを提案し、それに併せて現脳神経外科チームの人員削減を求めたことが認められる」「理事長から、脳神経外科の『業績不振』について診療部長の責任を問う発言があった」としています。その上で、「新設する科への医師の招聘は、理事長らからまず現脳神経外科チームの派遣元である京都大学に対し人員派遣を要請したものの、断られたため京都府立医科大学からの招聘を念頭に話を進めており、話の進め方に特段問題となる点は見当たらない。ただ、外科の事案で醸成された不信感が、脳神経外科にも派生したと考えられる」としています。報告書は、全体として北脇前理事長の、各診療科の運営等に関する言動がさまざまな混乱をもたらしたこことを認めつつも、「退職を求めるにあたって人格を否定するような言動や、過度に威圧的な言動がなされたとは認められず、『パワーハラスメント』に該当するような言動は認められない」(外科)、「時に表現がきつくなった場面もあったが、人格を否定するような内容はなく、面談全体を通して診療部長の医師としての技量への敬意も表されていることからすると、『パワーハラスメント』とまでは認められない」(脳神経外科)とし、それぞれ、パワーハラスメントの存在がなかったと結論付けています。「内部検証手続きの進め方に不備も規定違反はなし」なお、ハラスメント申告の内部検証手続きの進め方についても、「申告者である副院長からヒアリングを行わなかったことは、音声記録の検証によって足りるとの判断に基づくものではあったが、内部統制推進室が作成して法人内に周知している手続フロー図に反しており、少なくとも当該フロー図と異なる手順で進めることについて副院長に丁寧に説明すべきであった」「申告者においてハラスメントの当事者と認識していた院長を、検証者の人として選んだことは、検証の公平性に疑問を抱かせる点で不適切であった。また、申告者に調査結果を伝える際、ハラスメントに該当しないという結論のみ伝え、理由の説明が一切なかったことも、申告者の納得性の点にもう少し配慮が必要であった」と、全体の手続きの問題点を指摘はしています。しかし、こちらも「内部検証手続において、法令および内部規程の違反は認められない」と結論付けています。なお、同報告書を受けて、大津市民病院は同日、「調査報告においては、第三者委員会から、公平かつ中立な視点に立って、『ハラスメントか否か』ということだけではなく、当院の再建およびより良い地域医療構築のための具体的な提言をいただいております。第三者委員会からのご提言につきましては、重く受けとめ、今後の法人運営に活かしてまいります」「4月1日から外科医師4名が着任することが決まっております。外科以外の診療科におきましても、患者の皆様をはじめ市民の皆様が安心していただける診療体制の確保に引き続き努めてまいります」とのコメントを発表しています。また、佐藤市長は、「市民や患者に不安を招いた法人の責任は極めて重いとの認識に変わりはない。法人と診療科の双方責任者との間で意思疎通を図り、互いが信頼できる関係づくりに注力することを求める」とコメントしています。府立医大のジッツを広げたいという強い意向が働いていた可能性混乱の張本人だった北脇元理事長が辞任し、第三者委員会も「パワハラなし」の調査結果を出したことで、世間的には早期に幕引きを図ったように見えます。できるだけ早く事態を収め、新体制での医師確保を急ぎたかった独立行政法人の出資者である大津市の意向も強く働いたに違いありません。仮にパワハラが存在せず、純粋に経営的な観点からの派遣医局変更だったとすれば、北脇元理事長が辞任する必要はないわけで、そこには「業績不振」を理由にしてまで自身の出身母体である府立医大のジッツを広げたい、という強い意向が働いていた可能性は否定できません。実際、北脇元理事長が就任した2021年春の時点で、府立医大の脳神経外科が大津市民病院をジッツにしようとしていたとの証言もあります。ただ、今回、北脇元理事長を“パワハラ有罪”としてしまっては、府立医大と大津市民病院との関係が悪化し、京大のみならず府立医大からの医師派遣にも支障を来しかねません。その意味で、「パワハラなし」の認定は大津市民病院の医療体制を安定化させるためには不可欠だったと言えるでしょう。新理事長にどこの大学出身者を選ぶか?とは言え、産経新聞等の報道によれば、報告書本体ではジッツ争いに対する苦言ともとれる指摘もなされています。「現外科チームでは今後改善の見込みがないことについて合理的根拠が示されず、先に京都府立医科大学から消化管チームを招聘する話を持ち出した」ことに対して、「理事長、院長が京都府立医大の『医局』の出身者であることと相まって、病院における京都府立医大の勢力を高めるため理不尽に退職を迫っているとの不信感を抱かせた」とし、「理事長の話の進め方は、病院、地域医療の発展のため努力・貢献してきた外科医師の心情に対する配慮が不十分で、京都大学側の不信感を醸成して今日の混乱につながった」と、強く非難しているのです。こうした問題点の指摘を踏まえ、大津市と地方独立行政法人・大津市民病院が次の新理事長にどこの大学出身者を選ぶかが注目されます。再度、府立医大出身者を理事長に招けば、同じような事態が起こる可能性もあります。そうした意味では、歴史的な背景から、京阪神では圧倒的なジッツの多さを誇るとされる府立医大の今後の動きも、気になるところです。

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第2世代抗精神病薬に関連する体重増加と併存疾患

 多くの第2世代抗精神病薬(SGA)は、体重増加や心血管代謝系の副作用の発現と関連している。抗精神病薬関連の体重増加は治療中断と関連しており、再発や入院のリスクを高める可能性がある。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、経口SGAによる治療を開始した統合失調症または双極I型障害で、中程度から重度の体重増加リスクを有する患者における臨床的に有意な体重増加、治療中断、心血管代謝系副作用の発症について評価した。BMC Psychiatry誌2022年2月14日号の報告。 患者レベルのレセプトデータおよび電気カルテデータ(2013年1月~2020年2月のOM1 Real-World Data Cloud)より、中程度から重度の体重増加リスクを有する経口SGAの使用経験のない患者を抽出した。SGAを開始する12ヵ月前と3ヵ月後の両方の時点で1回以上の体重測定を行った患者を対象に、体重の継続的な変化、臨床的に有意な体重増加(ベースラインから7%以上および10%以上の増加)、治療中断(切り替え、中止)、心血管代謝系副作用の発症について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者8,174例および双極I型障害患者9,142例のコホートにおけるフォローアップ期間の中央値は、それぞれ153.4週間および159.4週間であり、ベースライン時の肥満の割合は、それぞれ45.5%、50.7%であった。・SGA治療中の体重増加率は、統合失調症患者で3.3±7.2%、双極I型障害患者で3.7±7.0%であった。体重増加率は、低体重/正常体重の患者で最も高かった(統合失調症患者:4.8±8.1%、双極I型障害患者:5.5±8.7%)。・フォローアップ期間中に治療中断(主に中止)に至った患者は96%以上であった。・臨床的に有意な体重増加と治療中断は、それぞれ治療開始後13週以内、14週以内に認められた(中央値)。・臨床的に有意な体重増加と治療中断が認められた患者の約75%は、フォローアップ期間中にベースライン時の体重に戻らなかった。・ベースライン時に心血管代謝系の異常が認められなかった患者のうち、統合失調症患者の14.7%、双極I型障害患者の11.3%は、SGA治療開始12ヵ月以内に1つ以上の異常が発現していた。発現率は、ベースライン時の過体重/肥満患者、臨床的に有意な体重増加を発現した患者で高かった。 著者らは「統合失調症または双極I型障害患者では、SGA治療初期に体重増加や治療中断が認められることが、リアルワールドデータより示唆された。初期治療薬を切り替えまたは中止した場合でも、治療に伴う体重増加の改善は認められなかった。また、心血管代謝系副作用の発現率は、治療開始12ヵ月以内で増加していた。統合失調症または双極I型障害患者は、心血管代謝系の異常リスクが一般集団よりも高く、SGAに関連する体重増加は、これらのリスクを悪化させる可能性がある」としている。

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FDAがFGFR阻害薬futibatinibを胆管がんの優先審査に指定/大鵬薬品

 大鵬薬品とその米国子会社のTaiho Oncologyは、2022年3月30日、前治療歴を有するFGFR2遺伝子再構成(融合遺伝子を含む)を伴う進行胆管がんを対象とした共有結合型FGFR阻害薬futibatinib(TAS-120)の新薬承認申請を、米国食品医薬品局(FDA)が優先審査指定で受理したと発表。 米国における同剤の申請は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な局所進行・転移肝内胆管がん患者103例を対象とした第IIb相試験であるFOENIX-CCA2試験データに基づくもの。 胆管がん(肝内、肝外含む)は、米国では毎年約8,000例が新たに診断され、全世界では10万人あたり0.3~6人が胆管がんに罹患している。主に65歳以上に多く、治療選択肢は限られており、10~16%に腫瘍特異的に発現しハイブリッド遺伝子を形成するFGFR2遺伝子再構成(融合遺伝子を含む)が認められる。 futibatinibは、FGFR1、2、3、4を不可逆的かつ選択的に阻害する経口チロシンキナーゼ阻害薬である。FGFR1-4のATP結合部位に結合し、シグナル伝達経路を阻害することで腫瘍細胞の増殖を抑制し細胞死を誘導する。胆管がん治療薬として、2018年5月にFDAのオーファンドラッグ指定を、また2021年4月に前治療歴を有するFGFR2遺伝子再構成を伴う進行胆管がんに対するブレイクスルーセラピー指定を受けていた。

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3回目接種後の心筋炎、若年者での発生状況とその転帰/JAMA

 とくに若い男性で、ごく稀ではあるもののmRNAワクチン接種後の心筋炎の発生が報告されている。1回目よりも2回目接種後に多い傾向が報告されているが、3回目接種後の発生率についてのデータは十分でない。イスラエル国防軍医療部隊のLimor Friedensohn氏らは、同軍の新兵における3 回目のワクチン接種と心筋炎リスクとの関連について、解析結果を報告。JAMA誌オンライン版2022年3月17日号にリサーチレターとして掲載された。 2021年8月15日、イスラエル国防軍(IDF)は、ファイザー社のBNT162b2ワクチンによる3回目接種を開始した。本研究では、2021年9月30日までにBNT162b2の3回目接種を受け、2021年10月14日までに心筋炎と診断されたすべての軍人を対象としている。心筋炎が疑われる症例はすべて病院に紹介され、診断は、臨床検査、心電図、心エコー、心臓MRI所見に基づき行われた。すべての診断は、独立した心臓専門医によって再確認されている。集計データをもとに、ワクチン接種後1週間と2週間における心筋炎発症率を算出した。 主な結果は以下の通り。・12万6,029人のIDF隊員がBNT162b2ワクチンによる3回目接種を受けた。・男性の79%、女性の90%が18~24歳だった。・追跡期間中、9例(すべて若い男性)が心筋炎と診断された。1例はCOVID-19後に発生したため除外され、残りの8例は診断時のRT-PCR検査で陰性だった。・4例は接種後1週間以内に、3例は接種後8~10日目、1例は接種後2週間以上経ってから症状が出た(解析からは除外)。・全例で不整脈やうっ血性心不全の兆候はなく、軽症だった。また退院時に心臓に損傷が残っていないことも確認された。・3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり3.17(95%CI:0.64~6.28)および5.55(95%CI:1.44~9.67)だった。・心筋炎の症例はすべて若い男性(18~24歳)であったため、この特定の集団に対する発生率をみると、3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり6.43(95%CI:0.13~12.73)、11.25(95%CI:2.92~19.59) と推定された。 本研究における心筋炎発生率は、同様のイスラエル軍集団における2回目のワクチン接種後1週間に観察された発生率(10万回接種当たり5.07)よりも低かった。一方で18~24歳の男性における心筋炎発生率は、フォローアップ期間や心筋炎の定義が異なるため単純な比較には注意が必要なものの、米国の男性集団で観察された値(10万回接種当たり5.243)よりも高かった。 著者らは、本研究の限界として心筋炎と診断された症例数が少ないこと、主に若い男性が多い集団を対象としていることを挙げたうえで、3回目接種後の心筋炎リスクは2回目接種後と比較して低い可能性が示唆されたとし、この理由については今後の研究が必要としている。

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医学生の燃え尽きとアイデンティティの関連/BMJ

 医学生が経験する不当な扱いは、燃え尽き症候群(burnout)と関連することが指摘されている。米国・イェール大学公衆衛生大学院のBethelehem G. Teshome氏らは、医学生のアイデンティティの複数の側面(性・人種/民族・性的指向)を考慮して、その不当な扱いや差別との関連を検討し、複数の周縁化されたアイデンティティを持つ医学生は、在学中に不当な扱いや差別を受けることが多く、それが燃え尽き症候群と関連する可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2022年3月22日号に掲載された。米国の3万人の学生の後ろ向きコホート研究 研究グループは、学部教育における医学生への不当な扱い、燃え尽き症候群、複数の周縁化されたアイデンティティの関連を評価する目的で、横断的調査と後ろ向きコホート研究を行った(米国国立一般医科学研究所[NIGMS]などの助成を受けた)。 対象は、米国医学校協会(AAMC)の認定を受けた米国の140の医学校を、2016年と2017年に卒業した3万651人であった。 歴史的に周縁化されたアイデンティティの個々の組み合わせに基づいて、自己申告による性、人種/民族、性的指向の違いによるグループ別の検討が行われた。多変量線形回帰モデルを用い、Oldenburg Burnout Inventory for Medical Students(16項目)で評価された燃え尽き症候群の2つのディメンション(疲労、離脱)に関して、不当な扱いと差別を考慮しつつ、固有のアイデンティティを持つグループと燃え尽き症候群との関連が解析された。不当な扱いと差別は、LGBの非白人女性で最も多い 3つの周縁化されたアイデンティティ(女性、非白人、レスビアン/ゲイ/バイセクシュアル[LGB])を持つ学生で、複数の種類の不当な扱いを繰り返し経験したとの回答(299人中88人[29.3%]、p<0.001)および複数の種類の差別を繰り返し経験したとの回答(299人中92人[30.6%]、p<0.001)の割合が最も高かったのに対し、異性愛の白人男性の学生では前者が7.8%、後者は1.8%といずれも最も低かった。 また、疲労は、周縁化されたアイデンティティの数が増えるほど平均スコアが高くなった。さらに、LGBの非白人女性は、異性愛の白人男性と比較した場合の不当な扱いや差別による疲労の平均スコアの差が最も大きかった(補正後平均差:1.96、95%信頼区間[CI]:1.47~2.44)。 不当な扱いや差別は、すべてのアイデンティティ・グループで疲労の程度を高めたが、個々のアイデンティティ・グループと燃え尽き症候群との関連を完全に説明することはできなかった。 一方、離脱の平均スコアは、不当な扱いや差別により、非白人の学生は白人の学生に比べて高く(補正後平均差:0.28、95%CI:0.19~0.37)、LGBの学生は異性愛の学生よりも高かった(0.73、0.52~0.94)。対照的に、女性の学生は、他の周縁化されたアイデンティティの有無にかかわらず、離脱の平均スコアが低かった(例:男性と比較した女性の補正後平均差:-0.76[95%CI:-0.85~-0.68]、異性愛の白人男性と比較した異性愛の非白人女性の補正後平均差:-0.41[-0.54~-0.29]など)。 女性の学生で不当な扱いと差別の補正を行うと、女性の学生における効果が大きくなったことから、負の交絡との関連性が示唆された。 著者は、「これらの知見は、周縁化されたアイデンティティに対する不当な扱いや差別が燃え尽き症候群の発現に一定の影響を及ぼしている可能性を示唆する。また、アイデンティティの一面にのみ注目すると、複数の周縁化されたアイデンティティを持つ学生が学習環境で経験する被害の程度を過小評価する可能性も示された」とまとめている。

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「非心臓手術症例」の静脈血栓予防におけるDOACと低分子ヘパリンの効果のネットワークメタ解析?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は題名を見て奇妙だなと思った。整形外科術後の静脈血栓リスクが高いことは広く知られている。がんの症例の血栓イベントリスクも高いと思う。しかし、本研究では「非心臓手術症例」を対象としている。方法の部分で著者も記載しているように、血栓リスクの高い整形外科手術とそうでない非整形外科手術をあえて研究対象として包括したとしている。血栓リスクの高い症例と低い症例をあえて包括して論じる意味は出血が不可避な「手術」に対するDOACと低分子ヘパリンの有効性と安全性に注目したのであろうか? 結果の実臨床への応用は難しいけれど題名の通りに抗凝固薬のbenefitとharmに関するエビデンスの提供を目指した研究かもしれない。 抗凝固薬なしに比較するとDOAC、低分子ヘパリンでは血栓イベントリスクは低そうだが、出血リスクは相応に高そうとの結果は驚きに値しない。ネットワークメタ解析なので単純なランダム化比較試験とは異なる。血栓イベントがDOAC、低分子ヘパリンで減ることはnetwork certainty of evidenceが高いのでランダム化比較試験の結果と同様「reduced」の用語が使用されている。しかし、出血の増加についてはnetwork certainty of evidenceがmoderateなので「probably increased」と用語の使用に注意が払われている。DOACと低分子ヘパリンの比較もなされている。ネットワークメタ解析になって結果がさらに直感しにくくなった。臨床家でもネットワークメタ解析の基本をしっかり理解する必要があるのかもしれない。

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血管収縮作用を伴わない経口片頭痛発作治療薬「レイボー錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第95回

血管収縮作用を伴わない経口片頭痛発作治療薬「レイボー錠50mg/100mg」今回は、セロトニン(5-HT)1F受容体作動薬「ラスミジタンコハク酸塩錠(商品名:レイボー錠50mg/100mg、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、5-HT1F受容体に選択的に作動する世界初のジタン系薬剤であり、血管収縮作用を伴わないことから、従来の片頭痛発作治療薬が使えなかった患者への効果も期待できます。<効能・効果>本剤は、片頭痛の適応で、2022年1月20日に承認されました。<用法・用量>通常、成人にはラスミジタンとして1回100mgを片頭痛発作時に経口投与します。ただし、患者の状態に応じて1回50mgまたは200mgを投与することができます。頭痛の消失後に再発した場合は、24時間当たりの総投与量が200mgを超えない範囲で再投与可能です。なお、本剤は片頭痛発作時のみに使用し、予防的には使用できません。<安全性>片頭痛患者を対象とした日本人および外国人の臨床試験(併合)において、本剤の服用後48時間以内に発現した副作用は、評価対象4,625例中1,884例(40.7%)に認められました。主な副作用は、浮動性めまい863例(18.7%)、傾眠317例(6.9%)、錯感覚276例(6.0%)、疲労201例(4.4%)、悪心200例(4.3%)、無力症107例(2.3%)、感覚鈍麻96例(2.1%)、筋力低下93例(2.0%)、回転性めまい89例(1.9%)などでした。なお、重大な副作用としてセロトニン症候群(0.1%未満)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、セロトニン受容体に作用して片頭痛を改善します。片頭痛発作が起こり始めたら、我慢せず早めに服用しましょう。発作の予防には使用しないでください。2.服用後にいったん片頭痛が治まり、もし再び痛みが戻ってきた場合、再度このお薬を服用することができます。その場合は、24時間で合計200mgを超えないようにしてください。3.眠気、めまい等が現れることがあるので、本剤服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないようにしてください。4.この薬は苦味を感じることがあるため、噛んだり割ったり砕いたりせず、そのまま服用してください。5.飲酒によって鎮静作用などが強まる可能性があるので、ご注意ください。 <Shimo's eyes>本剤は、血液脳関門を通過し、5-HT1F受容体に選択的に結合する世界初のジタン系薬剤です。中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やグルタミン酸などの放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すと考えられています。現在、片頭痛の急性期治療薬として、軽度~中等度の片頭痛発作に対してはアセトアミノフェン、NSAIDsなどが使用され、中等度以上の片頭痛発作に対してはトリプタン系薬剤などが使用されています。2000年以降、トリプタン系薬剤の登場により画期的に進歩しましたが、トリプタン系薬剤は有効性を示さない症例も認められます。また、トリプタン系薬剤の持つ血管収縮作用により、脳梗塞や心筋梗塞、血管狭窄などがある脳血管疾患の患者には禁忌となっています。これに対し、本剤は血管収縮作用を示さないことから、脳心血管疾患の既往または合併症を有するなどでトリプタン系薬剤が使えなかった片頭痛患者にも使用できます。効果発現は投与30分~1時間後と比較的早期であり、服用24時間後の頭痛消失の持続において、プラセボ群との間に有意差が認められました。また、片頭痛患者を対象とした外国第III相CENTURION試験において、トリプタン系薬剤では効果不十分であった患者集団で服用2時間後に頭痛消失および頭痛改善が認められた割合は、本剤投与群とプラセボ群との間に有意差が認められました。一方で、本剤は中枢神経抑制作用を有することから、とくに高齢者では浮動性めまい、傾眠などによる転倒に注意が必要です。また、本剤を服用中の飲酒は中枢神経抑制作用を強める恐れがあり、なるべく避けるべきでしょう。SSRIやSNRI、三環系抗うつ薬などのセロトニン作動薬やMAO阻害薬などは、セロトニン症候群の発症リスクから併用注意となっています。今後、脳心血管疾患を有する患者には本剤を使用し、中枢神経抑制作用を有する薬剤を使用している患者では、トリプタン系薬剤を考慮するなどの薬剤選択が考えられます。片頭痛は日常生活および社会活動に大きな支障を来す疾患のため、生活習慣の改善を踏まえたサポートを心掛けましょう。参考1)PMDA 添付文書 レイボー錠50mg/レイボー錠100mg

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英語で「痰が出る」は?【1分★医療英語】第22回

第22回 英語で「痰が出る」は?Do you cough up any phlegm?(痰は出ますか?)Yes, I cough up bloody phlegm from time to time.(はい、時々血の混じった痰が出ます)《例文1》His phlegm was green.(彼の痰は緑色でした)《例文2》I do not have any phlegm. I just have dry cough.(痰は絡まないです。乾いた咳が出るだけです)《解説》「喀痰の有無」は発熱や上気道症状で受診した患者の問診で重要で、聞く頻度も高いと思いますが、とっさに英語で表現するのは意外と難しいのではないでしょうか。喀痰は、医学用語では“sputum”(スピュータム)ですが、患者さんには伝わりにくく、一般的には“phlegm”(フレム)を使います。“g”は発音しません。“cough up”は「咳をして何かが上にあがってくること」を意味し、“cough up phlegm”は「咳をして痰を出す」ことになります。よって、喀痰の有無は“Do you cough up any phlegm?”で聞くことができます。なお、医学用語としてカルテや論文に書いたり、プレゼンしたりする場合には、「喀痰を伴う湿性咳嗽」は“productive cough”、「喀痰を伴わない乾性咳嗽」は“nonproductive cough”と表現することも、覚えておくと役に立つでしょう。講師紹介

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ネコの手も借りたい! ニャンとも楽しい臨床論文との付き合い方

本書のコンセプトは、「論文×ネコ」、ネコにまつわるエピソードをもとに、臨床論文との付き合い方を学んでみませんか?論文を執筆し、医学雑誌掲載に至るのは困難な作業です。学会発表も大きな苦労を伴います。それを日本語ではなく、外国語である英語で行うのは偉業ともいうべき作業です。英語の論文を読むことすら、大きなエネルギーを要します。そんな皆さんの“論文”に対する苦手意識を払拭するために生まれたのが本書です。論文の意味をすばやく掴むコツや、論文投稿の際に知っていたほうがよい情報を、ネコにまつわるエピソードにからめ、くすっと笑いながら気軽に読める内容にまとめました。論文への壁を払拭し、論文に慣れ親しみ、そして最終的にはスラスラと論文を書くことができるようになる! という崇高な目標を掲げつつ、基本ゆる~く、時にピリッと、医学論文の読み書きに使える小ネタが満載です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    ネコの手も借りたい! ニャンとも楽しい臨床論文との付き合い方定価3,080円(税込)判型A5判変型頁数190頁発行2022年4月著者中川 義久(滋賀医科大学内科学講座循環器内科教授)

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第106回 非オピオイド鎮痛薬の臨床試験で有望な効果あり

効果は間違いないものの呼吸抑制等の副作用や依存が厄介なオピオイドの代わりとなりうる経口薬が第II相試験2つで有望な急性痛治療効果を示し、承認申請前の大詰めの第III相試験に進むことが決まりました1,2)。第II相試験の1つは外反母趾手術、もう1つは腹部脂肪切除(腹壁形成)手術の患者を募って実施され、米国マサチューセッツ州ボストン拠点バイオテックVertex Pharmaceuticals社の経口薬VX-548高用量の術後痛治療効果がどちらの試験でもプラセボを有意に上回りました。効果は上々で副作用は大したことなく、オピオイドの代わりを見つける試みにはそれら試験の成功で大いに前進したとUniversity College Londonの神経生物学専門家John Wood氏は言っています2)。痛みに携わる神経細胞表面にあり、それら神経細胞に電気信号を放たせるナトリウム(Na)チャネルの研究を背景にVX-548は誕生しました。VX-548はそれらNaチャネルの1つNav1.8を選択的に阻害します。Nav1.8は全身の神経から脊髄への痛み信号の受け渡しに不可欠で、その働き過ぎは痛みをより発生させます。たとえばNav1.8を過活動にする遺伝子変異がある人は傷を負わずとも痛みを被りうることが10年ほど前の研究で判明しています3)。しかしNav1.8や他のNaチャネルNav1.7に限った阻害の鎮痛の実現は困難でした。困難の1つはそれらの構造が心臓、筋肉、脳の機能を担う他のNaチャネルとよく似ていることに端を発します。安全を期すにはそれら臓器の働きに不可欠なNaチャネルにちょっかいを出さすことなく目当てのNaチャネルのみを相手する化合物を仕立てる必要があります。Nav1.8だけを阻害する化合物の実現の困難さはVertex社のこれまでの開発の道のりからも見て取れます。Vertex社にとってVX-548は4度目の正直のようなもので、先立つ3つのNaV1.8阻害薬が臨床開発の道半ばで倒れています。その1つVX-150は3つの第II相試験で好成績を収めたにもかかわらず第III相試験に進んでいません。必要な用量が多すぎて実用には不向きというのがその開発頓挫の一因です。Vertex社はもっと働きが良い化合物を求め、とうとう今回の第II相試験2つの成功に漕ぎ着けました。その1つには外反母趾手術患者274人が参加し、VX-548、プラセボ、オピオイド(ヒドロコドン)含有薬のいずれかの投与群に割り振られ、VX-548高用量投与群の48時間の痛さがプラセボ群に比べて有意に少なく済みました。腹壁形成手術患者303人が参加したもう1つの第II相試験でもVX-548高用量は同様にプラセボに勝りました。VX-548高用量群の痛み減少はヒドロコドン含有薬群も見た目上回りましたが、今回の試験は取るに足る比較ができるほど大規模ではありませんでした2)。VX-548の低用量と中用量の効果は残念ながらプラセボを上回りませんでした。外反母趾手術患者が参加した第II相試験ではVX-548の用量が多いほど有効という傾向はなく、気がかりなことにVX-548中用量の効果はVX-548低用量もプラセボも一見下回っていました1,4)。ともあれVertex社は高用量の効果が認められたことで良しとし、重篤な有害事象は幸いにして生じず中~高用量群の患者の脱落がプラセボやヒドロコドン投与群より少なくて済んだVX-548の急な痛みの治療効果を調べる第III相試験を間もなく今年後半に始めるつもりです。糖尿病性神経障害の痛みや炎症による痛みなどの複雑な事態を含む慢性痛へのVX-548の効果は未知数です。しかし幸先が良いことに神経障害の幾つかや炎症性の痛みでVX-548の標的Nav1.8が重責を担うことがすでに分かっています2)。参考1)Vertex Announces Statistically Significant and Clinically Meaningful Results From Two Phase 2 Proof-of-Concept Studies of VX-548 for the Treatment of Acute Pain / BUSINESS WIRE2)Non-opioid pain pill shows promise in clinical trials / Science3)Gain-of-function Nav1.8 mutations in painful neuropathy. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Nov 204)Vertex claims success with its fourth shot at acute pain / Evaluate

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lecanemabの最新知見をアルツハイマー・パーキンソン病学会で発表/バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは、早期アルツハイマー病(AD)の治療薬として開発中の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabに関する最新の知見を、3月15日から20日までスペイン・バルセロナおよびバーチャルで開催された「第16回アルツハイマー・パーキンソン病学会(International Conference on Alzheimer’s and Parkinson’s Diseases:AD/PDTM 2022)のシンポジウム「ADにおけるAβ標的治療法2」で発表した。lecanemabをaducanumabとgantenerumabの特許を基に作製した抗体と比較 lecanemabに関する最新の知見の主な発表内容は以下の通り。・lecanemabの結合プロファイルを調べた結果では、aducanumabとgantenerumabの特許に記載された配列を基に作製した抗体と比較して、lecanemabはAβに対し最も強力な結合力を示し、プロトフィブリルに対して高い親和性を示した。・早期ADを対象としたlecanemab臨床IIb相試験(201試験)および非盲検長期投与試験(OLE試験)より、lecanemabの最も有効な用量として10mg/kg biweekly投与を決定した。・201試験より、lecanemab投与後18ヵ月後のアミロイドPET SUVrと血漿Aβ42/40比、血漿P-Tau181のベースラインからの変化量に相関が認められた。・早期ADにおけるlecanemabの臨床効果と安全性を最適に検証する臨床第III相Clarity AD試験を設計し、グローバルで1,795例の被験者登録を完了した。主要評価データは2022年の秋に取得が予定されている。・プレクリニカルADを対象とした臨床第III相AHEAD 3-45試験に関して、2022年3月の時点で2,900例以上のスクリーニングが行われ、287例が登録された。 lecanemabは、米国食品医薬品局(FDA)から2021年6月にBreakthrough Therapy、12月にFast Trackの指定を受けている。また、2022年3月、日本においてlecanemabの早期承認取得を目指し、医薬品事前評価相談制度に基づいて独立行政法人医薬医療機器総合機構(PMDA)に対して申請データの提出を開始した。

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REAL-CADサブ解析で日本人の2次予防に最適なLDL-C値が明らかに/日本循環器学会

 LDLコレステロール(LDL-C)値について、“The lower, the better(低ければ低いほど良い)”という考え方があるが、日本人の冠動脈疾患(CAD)患者には必ずしも当てはまらないかもしれない。今回、日本人の安定CAD患者における最適なLDL-C目標値を検討すべく、REAL-CADの新たなサブ解析を行った結果を、第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)で佐久間 理吏氏(獨協医科大学病院 心臓・血管内科/循環器内科)が発表した。REAL-CADサブ解析により“The lower, The better”がアジア人で初めて検証 REAL-CADは、2010年1月31日~2013年3月31日に登録された20~80歳の日本人安定CAD患者の男女1万1,105例を対象に、ピタバスタチンによる積極的脂質低下療法と通常療法を比較したランダム化試験。ピタバスタチン1mg/日を1ヵ月以上服用するrun-in期間後、LDL-C値120mg/dL未満の参加者をピタバスタチン1mg群と4mg群に1:1でランダム化し、6ヵ月後のLDL-C値と5年間の心血管アウトカムを評価した。1次エンドポイントは、心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、緊急入院を要する不安定狭心症のいずれか)の発生。REAL-CAD試験により、ピタバスタチン4mg投与による積極的治療のイベント抑制効果が認められ、アジア人において“The lower, The better”が検証された初のエビデンスとなった。 今回のREAL-CADの新たなサブ解析では、欧米人に比べて日本人の安定CAD患者は心血管リスクが低く、心血管イベント発生率も低いことを踏まえ、LDL-C値をそれ以上下げても心血管イベントの発症に影響しない最適な目標値、すなわち「閾値」の調査が行われた。今回のREAL-CADサブ解析では、人為的な閾値(LDL-C:0mg/dL)を共変量に含めた多変量Coxモデルを用いて、ハザード比(HR)が一定とされるLDL-C値の閾値を40~100mg/dLまで10mg/dL刻みで設定して分析を行い、モデルの適合性を対数尤度で評価した。 REAL-CADサブ解析で“The lower, The better”を検証した主な結果は以下のとおり。・ベースラインの年齢中央値は68.1±8.3歳、男性が82.8%、65歳以上が67.7%を占めた。・平均LDL-C値は、ベースラインで87.8±18.8mg/dL、6ヵ月後で81.1±21.6mg/dL(ベースラインから-6.6±19.1mg/dL)だった。・1次エンドポイント(心血管イベントの複合発生率)では、LDL-Cの閾値を70mg/dLと設定したときモデルの適合度が最も良好であった。このモデルにおいて、LDL-Cが10mg/dL増加した場合の調整HRは1.07(95%信頼区間:1.01~1.13)だった。・上記モデルによって標準化された1次エンドポイントの5年リスクは、LDL-C値が70mg/dLに低下するまでは単調に減少し、それ以下になるとLDL-C値とは無関係に減少することが明らかになった。 日本人の安定CAD患者において、心血管イベントの2次予防のためにスタチンを投与する場合、LDL-Cの閾値は70mg/dLが適切である可能性が示された。佐久間氏は「本結果は、新しい脂質低下戦略を提供するかもしれない」と発表を締めくくった。

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ビレーズトリ、新たな吸入デバイスへの変更承認取得/AZ

 アストラゼネカ株式会社は、2022年3月30日、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療配合剤「ビレーズトリ®エアロスフィア®56吸入/120吸入」(一般名:ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物、以下「ビレーズトリエアロスフィア」)の新たな吸入デバイスの製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 COPD治療薬は吸入製剤が多く、患者が、医師や薬剤師の指示を理解したうえで、正しい手技で吸入することが求められる。ビレーズトリエアロスフィアの新たな吸入デバイスは主に外観を変更しており、有効成分、臨床成績、1回噴霧量および投薬方法に変更はない。 また、吸入デバイスの変更に合わせ、新たに120 吸入製剤も販売を開始する。これにより、1つの吸入器で1ヵ月分の投薬が可能となる。

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日本人高齢者の笑いと認知症リスク

 現在、主な社会的行動である笑いと認知症リスクとの関連を報告したエビデンスは、ほとんどない。大阪大学の王 雨氏らは、日本人高齢者における笑いのさまざまな機会と認知症リスクとの関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2022年3月14日号の報告。 対象は、日本老年学的評価研究の6年間のフォローアップデータを用いて抽出した65歳以上の高齢者1万2,165人。笑いの機会の評価には質問票を用い、認知症の評価には、介護保険制度で標準化された認知症尺度を用いた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。  主な結果は以下のとおり。・笑いの機会の多様性が低い高齢者と比較した、多様性が高い高齢者における認知症発症率の多変量HRは、0.84(95%CI:0.72~0.98、P for trend<0.001)であった。・笑いの機会の高い多様性は、女性において認知症リスクの低下と関連が認められた(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、P for trend<0.001)が、男性全体では認められず、多様性が中程度の場合のみで有意な関連が認められた。・友人との会話、子供や孫とのコミュニケーション、ラジオによる笑いの機会は、認知症リスクの低下と関連していた。 著者らは「個人的および社会的なさまざまな笑いの機会の創出は、認知症リスクの低下につながる可能性がある」としている。

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非重症コロナ入院患者、腹臥位介入で予後は改善するか/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した低酸素血症を伴う非重症患者において、腹臥位の姿勢を増やす多面的介入はこの介入を行わない標準治療と比較して、院内死亡や機械的人工換気の導入、呼吸不全の悪化のリスクを改善せず、72時間の酸素飽和度/吸入酸素濃度比の変化も両群に差はないことが、カナダ・Sinai HealthのMichael Fralick氏らが実施した「COVID-PRONE試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月23日号で報告された。北米15施設の実践的無作為化臨床試験 本研究は、腹臥位の姿勢は非重症COVID-19入院患者において死亡や呼吸不全のリスク低下に有効かの検証を目的とする実践的な無作為化臨床試験であり、2020年5月~2021年5月の期間に、カナダと米国の15施設で患者の登録が行われた(Sinai Health研究基金などの助成を受けた)。 対象は、検査でCOVID-19と確定されたか臨床的にCOVID-19が強く疑われ、酸素補給を要し(吸入酸素濃度50%以下)、口頭による指示で自立的に腹臥位の姿勢をとることが可能な患者であった。 被験者は、腹臥位療法(ベッドでは腹部を下にした姿勢で横になるよう指示)または標準治療(腹臥位の指示はない)を受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 腹臥位療法群の患者は、腹臥位の姿勢を1日に4回(1回につき最長2時間)とるよう推奨され、夜間は腹臥位で就寝するよう勧められた。これを入院中に最長で7日間、退院または酸素補給が不要となるまでのどちらか早いほうの期間行うよう推奨された。また、研究チームのメンバーは、患者に対し登録時に腹臥位の仕方やそれを維持する方法を指導し、3日目と7日目には電話で腹臥位をとるよう励ました。 主要アウトカムは、院内死亡、機械的人工換気(挿管または二相式気道内陽圧)の導入、呼吸不全の悪化(60%以上の吸入酸素濃度を少なくとも24時間必要とする状態)の複合とされた。 本試験は、事前に規定された主要アウトカムの無益性に基づき、2021年5月10日、早期中止となった。腹臥位の順守を向上させる方法の開発が必要 248例が登録され、腹臥位療法群に126例、対照群に122例が割り付けられた。入院から無作為化までの期間中央値は1日で、全体の年齢中央値は56歳(IQR:45~65)、女性は89例(36%)であり、無作為化の時点で222例(90%)が鼻プロングを介して酸素補給を受けていた。 試験開始から72時間までの腹臥位の時間中央値は、腹臥位療法群が6時間(IQR:1.5~12.8)、対照群は0時間(0~2)であった。72時間以内の退院やアウトカムの発生を考慮すると、1日あたりの腹臥位の時間は腹臥位療法群が約2.5時間、対照群は0時間だった。 主要アウトカムの発生割合は、腹臥位療法群が14%(18/126例)、対照群も14%(17/122例)であり、両群間に差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.44~1.92)。 72時間までの酸素飽和度/吸入酸素濃度比の変化量の中央値は、腹臥位療法群が14(IQR:-52~94)、対照群は49(-32~102)であり、両群間に差はなかった(平均群間差:20、IQR:-17~36)。 退院までの期間中央値は、腹臥位療法群が5日(IQR:3~9)、対照群は4日(3~8)であった。また、重篤な有害事象はまれで、それぞれ5例(4%)および3例(2%)で発現した(OR:1.37、95%CI:0.32~6.96)。 著者は、「主要アウトカムの95%CIの幅は広く、有益性や有害性を断定的に除外することはできない。腹臥位を増やすためにさまざまな取り組みを行ったにもかかわらず、腹臥位の順守は不十分であったことから、今後の試験では、覚醒時の腹臥位の順守を向上させる方法の開発を目標とすべきと考えられる」としている。

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オミクロン株への感染で他の変異株への感染を防げるか/NEJM

 新型コロナウイルスにおけるオミクロン株感染後の中和抗体プロファイルについては、ほとんどわかってない。オーストリア・Medical University of InnsbruckのAnnika Rossler氏らは、オミクロンBA.1株に感染した人の回復後の血清サンプルについて6つの変異株に対する中和抗体価を分析し、他の株への感染歴やワクチン接種歴別に検討した。その結果、オミクロンBA.1株にのみ感染したワクチン未接種者は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を予防できない可能性があることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年3月23日号のCORRESPONDENCEに掲載。オミクロン株のみの感染後は他の株に対する中和抗体がほとんど含まれていなかった 本研究は後ろ向き研究で、BA.1株に感染しPCR検査陽性となった日の5〜42日後に血清サンプルを採取。BA.1株に感染する前に、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン接種者(15例)、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン未接種者(18例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン接種者(11例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン未接種者(15例)の4群で検討した。野生株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロンBA.1株に対する中和抗体価を分析した。 オミクロン株感染後の中和抗体価を分析した主な結果は以下のとおり。・オミクロンBA.1株に感染したワクチン接種者と、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株に感染歴のあるワクチン接種者またはワクチン未接種者において、すべての株に対する中和抗体価が高かった。・ワクチン接種者でのオミクロンBA.1株に対する中和抗体価の平均は、他の株に対する中和抗体価の平均より低かったが、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴のあるワクチン未接種者での他の株に対する中和抗体価の平均と同等だった。・オミクロンBA.1株感染前に新型コロナ感染歴のないワクチン未接種者から得られた血清サンプルでは、大部分がオミクロンBA.1株に対する中和抗体で、他の株に対する中和抗体はほとんど含まれていなかった。 著者らは、「本研究にはサンプル数の少なさ、後ろ向き研究といった限界はあるが、オミクロンBA.1株が強力に免疫を回避し、他の株との交差反応性がほとんどないという仮説を支持している。したがって、ワクチン未接種で、以前の株の感染歴がなくオミクロンBA.1株にのみ感染した人は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を十分に予防できない可能性があり、完全に予防するにはワクチン接種が必要」と考察している。

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第95回 「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン 第1版」公表/厚労省

<先週の動き>1.「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン 第1版」公表/厚労省2.急性期充実体制加算取得に「敷地内薬局」はNG、疑義解釈と訂正通知3.不正受給問題で医療法人が負債20億円を抱え破産/金沢市4.社会保障に医療介護分野でもデジタル技術の活用を/内閣府5.サイバー攻撃対策を盛り込んだ医療情報システムGL第5.2版/厚労省1.「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン 第1版」公表/厚労省厚労省は、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において、制度施行に向けて議論が一通り完了したことから、『医師労働時間短縮計画作成ガイドライン 第1版』を1日に公表した。24年4月からすべての医師に時間外労働の上限規制が適用される。医師の時間外・休日労働等の上限については、「36協定上の上限および、36協定によっても超えられない上限をともに、原則年960時間(A水準)・月100時間未満(例外あり)」とした上で、「地域の医療提供体制の確保のために暫定的に認められる水準(連携B・B水準)および集中的に技能を向上させるために必要な水準(C水準)」として、年1,860時間・月100時間未満(例外あり)の上限時間数を設定する。医療機関全体として医師の働き方改革を進めていくことが重要とし、年960時間を超える医師(=A水準超の時間外・休日労働を行う医師)が勤務する医療機関に対して、23年度末までにガイドラインに基づいた医師労働時間短縮計画の作成を努力義務とした。また、連携B・B・C水準の指定を目指す医療機関に対しては、医療機関勤務環境評価センターによる第三者評価を受審する前に、2024年度以降の計画案(取り組み実績と24年度以降の取り組み目標など)の作成を義務付けている。(参考)医師労働時間短縮計画作成ガイドライン及び医療機関の医師の労働時間短縮の取組に関するガイドライン(評価項目と評価基準)の公表について(厚労省)医師の働き方改革推進検討会、2024年度への準備整う C-2水準の審査組織の大枠固まる(日経メディカル)2.急性期充実体制加算取得に「敷地内薬局」はNG、疑義解釈と訂正通知厚労省は、22年度の診療報酬改定の疑義解釈資料(その1)を31日に公表した。医科診療報酬点数表関係257項目、不妊治療に関して90項目、DPCに関して15項目、費用請求に関して28項目など、歯科診療報酬と調剤報酬、訪問看護療養費についても同資料にまとめられている。また、同日に通知された「令和4年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」では、急性期充実体制加算に関する施設基準として、特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がないことが求められることとなった。要は、「急性期充実体制加算をする病院に対して敷地内薬局を設けることを認めない」ということ。今年度の改訂内容だけでなく、追加資料の更新にもしばらくは注視が必要だろう。(参考)急性期充実体制加算の緊急手術・看護必要度II・敷地内薬局NG等の考え方整理―疑義解釈1【2022年度診療報酬改定】(Gem Med)令和4年度診療報酬改定について(厚労省)3.不正受給問題で医療法人が負債20億円を抱え破産/金沢市石川県金沢市で旧藤井病院を経営していた医療法人社団 博洋会が、負債総額約20億円を抱え、先月16日に自己破産を東京地裁に申請し、受理されたことが明らかになった。一般病床40床、回復期リハビリ25床、医療療養40床の計105床を有し、ピーク時の06年9月期には売上高約17億9,000万円を計上していた。当院は20年9月、入院基本料の不正請求などの問題が発覚し、21年2月には東海北陸厚生局から、過去5年にわたって看護師らの勤務実態を偽って診療報酬約1億5,900万円を不正受給していたことを公表された。保険医療機関の指定が取り消されることになっていた今年1月に先立ち、21年8月に竜山会へ病院事業を譲渡していたが、債権者は1,000人を超え、負債総額はおよそ20億円を超える見通し。(参考)(医)社団博洋会~2021年2月に診療報酬不正受給を公表されていた~(東京商工リサーチ)負債総額は“約20億円超”か…金沢市で藤井病院を運営していた医療法人・博洋会が自己破産を申請(石川テレビ)診療報酬不正の医療法人が破産 負債総額20億円以上(北陸放送)4.社会保障に医療介護分野でもデジタル技術の活用を/内閣府社会保障のあり方を見直す「全世代型社会保障構築会議」の第3回が29日に開かれ、本格的に討論が開始された。医療・介護・福祉サービスについては人材の確保・育成のためにデジタル技術の活用や高齢・地域人材の活用を検討するほか、子育て支援や勤労者皆保険の実現のため、パート労働者やフリーランスの社会保障の適用などを取り組む対象に加えた。また、家庭における介護の負担軽減策としては、今後の介護ニーズが急増する首都圏や大都市での対策や介護離職の防止策、ヤングケアラーへの支援策についても論点として取り上げた。(参考)全世代型社会保障会議が「議論の整理」 医療・介護で「ICT活用による人材配置の効率化」を明記(JOINT)全世代型社会保障の当面の論点に係る議論の整理について(全世代型社会保障構築会議)5.サイバー攻撃対策を盛り込んだ医療情報システムGL第5.2版/厚労省厚労省は、30日に「健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」を開催し、外部ネットワークを利用する上で医療機関等が負うべき管理内容を明示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版」が了承された。近年、医療機関等の医療情報システムに対するサイバー攻撃の多様化・巧妙化が進み、診療業務に大きな影響が生じるような被害が増えている。万が一障害が発生しても速やかに回復するためにはバックアップが重要であり、安全対策を行う上での具体的な方法などを記載している。(参考)医療情報システムガイドライン改訂を決定、ランサムウェアなどサイバー攻撃対策強化を―医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)相次ぐ医療機関へのサイバー攻撃でガイドライン見直し 厚労省 バックアップデータでも“トリアージ”が必要(CB news)

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虚血性脳卒中の血管内治療中のアスピリン・未分画ヘパリンの安全性と有効性の検討(MR CLEAN-MED)(解説:中川原譲二氏)

 アスピリンおよび未分画ヘパリンは、虚血性脳卒中の血管内治療において、再灌流とアウトカムを改善するためにしばしば使用される。しかし、その適応に関する抗血栓薬の効果とリスクは明らかではなかった。そこで、虚血性脳卒中患者の血管内治療中に開始した静脈内アスピリンと未分画ヘパリンの両方あるいは片方の安全性と有効性を評価した。オランダ15施設で非盲検無作為化試験を実施 MR CLEAN-MED研究グループは、オランダ15ヵ所の医療センターを通じて、非盲検多施設共同無作為化比較試験を2×3要因デザインにて実施した。登録被験者は、発症から6時間以内で血管内治療が可能だった前方循環系の主幹脳動脈閉塞による虚血性脳卒中の18歳以上の患者とした。適格基準はNIHSSスコアが2以上で、CTまたはMRIで頭蓋内出血患者は除外した。Webベースの無作為化法にてブロック化と登録施設の層別化を行い、被験者を無作為に1対1の割合で周術期静脈内アスピリン(300mgボーラス)投与群またはアスピリン非投与群に割り付け、また1対1対1の割合で未分画ヘパリン中等量(5,000 IUボーラス、その後1,250 IU/時を6時間)投与群、同低量(5,000 IUボーラス、その後500 IU/時を6時間)投与群、未分画ヘパリン非投与群に割り付けた。主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコアとした。安全性に関する主要アウトカムは、症候性頭蓋内出血とした。解析はintention to treatベースで行い、治療効果は、ベースライン予後因子で補正後のオッズ比(OR)または共通(common)ORとした。症候性頭蓋内出血のリスクがアスピリン・未分画ヘパリンで高率 2018年1月22日~2021年1月27日にかけて、被験者数は663例で、同意を得た人または同意前に死亡した628例(95%)を、修正ITT解析の対象とした。2021年2月4日時点で、データの非盲検化と解析の結果、試験運営委員会は新たな被験者の組み入れを停止し、試験は安全性への懸念から中止となった。症候性頭蓋内出血のリスクは、非アスピリン群(7%、23/318例)よりもアスピリン投与への割付群(14%、43/310例)で高率だった(補正後OR:1.95、95%信頼区間[CI]:1.13~3.35)。同様に、非未分画ヘパリン群(7%、22/296例)よりも未分画ヘパリン投与への割付群(13%、44/332例)でリスクが高かった(1.98、1.14~3.46)。有意差は示されなかったが、mRSスコアを悪化させる傾向が、アスピリン群(共通OR:0.91、95%CI:0.69~1.21)と未分画ヘパリン群(0.81、0.61~1.08)のいずれにおいても認められた。 血性脳卒中への血管内治療において、周術期の静脈内アスピリンまたは未分画ヘパリン投与はいずれも、症候性頭蓋内出血リスクを増大し、機能的アウトカムの有益な効果に関するエビデンスはない。虚血性脳卒中の血管内治療手技の再考を促す 虚血性脳卒中の血管内治療において、アスピリンおよび未分画ヘパリンは、治療手技に伴う血栓形成を抑制し、再灌流を促進する薬剤としてしばしば使用されてきた。MR CLEAN-MED研究グループによって実施された本試験において、周術期の静脈内アスピリンまたは未分画ヘパリン投与はいずれも、症候性頭蓋内出血リスクを2倍に増加させ、機能的アウトカム(90日時点のmRSスコア)を悪化させる傾向が認められ、有益な効果に関するエビデンスは確認されなかった。本試験は、試験運営委員会の解析により安全性への懸念から途中中止となったが、試験が継続された場合には、90日時点のmRSスコアを有意に悪化させるといった結果がもたらされた可能性さえある。 虚血性脳卒中に対する血管内治療は、わが国でも標準的治療として普及しつつあるが、本試験の結果は、血管内治療手技中の抗血栓薬の使用方法について注意喚起をもたらし、安全性と有効性の観点から再考を促すものと思われる。

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