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プラリマリケアでの抗うつ薬治療、再発リスクの評価/NEJM

 抗うつ薬治療を中止できるほど良好な状態であったプライマリケアのうつ病患者において、投薬を中止した患者は継続した患者と比べて、52週までのうつ病再発リスクが高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)Faculty of Brain SciencesのGemma Lewis氏らが両者を比較する無作為化二重盲検試験の結果を報告した。プライマリケアで治療を受けるうつ病患者は、長期間抗うつ薬の投与を受ける可能性があるとされるが、投与を継続または中止した場合の影響に関するデータは限定的であった。NEJM誌2021年9月30日号掲載の報告。52週の無作為化試験で、うつ病再発を評価 研究グループは、英国にある150の一般診療所(GP)で治療を受ける成人患者を対象に試験を行った。全患者が2つ以上のうつエピソード歴があるか、抗うつ薬治療を2年以上受けており、治療中止を考慮可能なほど良好な状態であった。 被験者(citalopram、fluoxetine、セルトラリン、ミルタザピンのいずれかを服用)は1対1の割合で無作為に、現行の抗うつ薬治療を継続する群(継続群)またはマッチさせたプラセボを用いて漸減・中止する群(中止群)に割り付けられた。 主要アウトカムは、52週の試験期間中の初回うつ病再発(time-to-event解析で評価)であった。副次アウトカムは、抑うつ・不安症状、身体的・離脱症状、QOL、抗うつ薬/プラセボ中止までの期間、全般的な気分の評価とした。再発は継続群39%、中止群56%、ハザード比2.06 合計1,466例がスクリーニングを受け、478例が試験に登録された(継続群238例、中止群240例)。被験者の平均年齢は54歳、女性が73%。割り付けられた試験薬のアドヒアランスは、継続群70%、中止群52%であった。 52週までに再発を認めたのは、継続群92/238例(39%)、中止群135/240例(56%)であった(ハザード比:2.06、95%信頼区間:1.56~2.70、p<0.001)。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の傾向が認められた。中止群は継続群と比べて、抑うつ症状(12週時のPHQ-9評価で推定群間差2.2ポイント)、不安症状(12週時のGAD-7評価で同2.4ポイント)、離脱症状(12週時のDESS評価で同1.9ポイント)が多かった。

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HER2 exon20変異肺がんにpoziotinibが有力な成績示す(ZENITH20)/ESMO2021

 EGFRおよびHER2のexon20挿入変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の2〜4%である。しかし、その予後は不良かつ治療も困難で、exon20への非特異的な治療の無増悪生存期間(PFS)は3〜7ヵ月とされる。 そのような中、EGFR-MET二重特異性抗体amivantamab、DZD9008、mobocertinibなど、EGFRおよびHER2のexon20挿入変異陽性NSCLCの新薬開発が進んでいる。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)では、汎HER-TKIであるpoziotinibのマルチコホート試験ZENITH20の一部結果が発表され、HER2 exon20挿入変異への有力な成績が示された。 ZENITH20試験は、7つのコホートからなるマルチコホート試験である。今回のESMO2021では、コホート4のHER2 exon20挿入変異NSCLCの結果が発表されている。・対象:HER2 exon20挿入変異陽性のNSCLC・介入:初回登録poziotinib16mg/日、後続登録poziotinib 8mgx2/日・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、安全性などORR閾値:95%信頼区間の下限が20%以上今回の発表は、初回登録のpoziotinib16mg/日投与例(n=48)の解析 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のORRは43.8%(95%CI:29.5〜58.8)、DCRは75%(CR1例、PR20例、SD15例)であった。・腫瘍縮小は88%の症例に認められた。・DoR中央値は5.4ヵ月であった。・PFS中央値は5.6ヵ月で、6ヵ月PFS率は42%、12ヵ月PFS率は26%であった。・poziotinibの新たな毒性は認められなかった。・治療関連有害事象(TRAE)の発現は100%だが、重篤な事象は10%であった。・頻度が高い(20%以上)TRAEは、下痢、皮疹、胃炎、爪囲炎など、第2世代EGFR-TKIと同様であった。 poziotinibは、未治療のHER2 exon20挿入変異陽性NSCLCにおいて、臨床的に意味のある効果を示した。また、毒性は既存の報告と同様であり、管理可能なものであった、と発表者は述べた。

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中等度リスクの急性冠症候群への早期冠動脈造影CTは有効か/BMJ

 急性胸痛で救急診療部を受診し、急性冠症候群および続発する臨床イベントのリスクが中等度の患者において、早期の冠動脈造影CT検査は、冠動脈への治療的介入全般および1年後の臨床アウトカムに影響を及ぼさず、侵襲的冠動脈造影の施行率は減少させたものの、入院期間はわずかに延長したとの研究結果が、英国・エディンバラ大学のAlasdair J. Gray氏らが実施したRAPID-CTCA試験で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月29日号に掲載された。英国37病院の無作為化対照比較試験 研究グループは、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者への早期冠動脈造影CT検査は、1年後の臨床アウトカムを改善するかの検証を目的に、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。本試験には、英国の37の病院が参加し、2015年3月~2019年6月の期間に参加者が登録された。 対象は、急性冠症候群が疑われるか、急性冠症候群と暫定診断され、冠動脈性心疾患の既往歴を1つ以上有するか、心筋トロポニン上昇、または心電図異常が認められる成人患者であった。被験者は、早期冠動脈造影CT+標準治療を受ける群、または標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の全死因死亡または非致死的心筋梗塞(1型[血栓症に伴う自然発症]および4b型[ステント血栓症に起因])とされた。 1,748例が登録され、造影CT群に877例、標準治療群に871例が割り付けられた。全体の平均年齢は61.6(SD 12.6)歳、64%が男性で、平均GRACEスコアは115点だった(23%が>140点)。34%に冠動脈性心疾患の既往歴があり、57%に心筋トロポニン上昇、61%に心電図異常が認められた。 造影CT群のうち、実際に早期冠動脈造影CT検査を受けたのは767例(87.5%)で、無作為割り付けからCT施行までの時間中央値は4.2時間(IQR:1.6~21.6)であった。CT検査により、23%で正常冠動脈、29%で非閉塞性病変、47%で閉塞性病変が同定された。血行再建術、薬物療法、予防治療の変更にも影響はない 主要エンドポイントは、造影CT群が5.8%(51例)、標準治療群は6.1%(53例)で発生し、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.62~1.35、p=0.65)。 一方、侵襲的冠動脈造影検査の施行率は、造影CT群が54.0%(474例)と、標準治療群の60.8%(530例)に比べて低かった(補正後HR:0.81、95%CI:0.72~0.92、p=0.001)。 また、両群間で、冠動脈血行再建術(補正後HR:1.03、95%CI:0.87~1.21、p=0.76)や入院での急性冠症候群に対する薬物療法(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%CI:0.85~1.32、p=0.63)、退院時の予防治療の変更(補正後OR:1.07、95%CI:0.87~1.32、p=0.52)に差はなかった。 入院期間中央値は、造影CT群が2.2日(IQR:1.1~4.1)と、標準治療群の2.0日(1.0~3.8)に比べ延長した(Hodges-Lehmann推定量で0.21日[95%CI:0.05~0.40、p=0.009]の増加)。 著者は、「これらの知見は、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者において、1年後の臨床イベントを低減する戦略としての早期冠動脈造影CTの日常診療での使用は適切でないことを示唆する」とまとめ、「冠動脈造影CTの患者満足度(補正後OR:1.25、95%CI:1.02~1.53、p=0.03)は高く、これは造影CTが患者の臨床的な病態を迅速に評価し、担当医の診断の確実性を強化したことを反映していると考えられる」としている。

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アテゾリスマブの非小細胞肺がん術後アジュバントが米国で承認/ロシュ

 ロシュは、2021年10月15日、米国食品医薬品局(FDA)が、PD-L1≧1%であるStageII-IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の手術後、プラチナベース化学療法後の補助療法としてアテゾリズマブ(製品名:テセントリク)を承認したと発表した。 IMpower010試験でアテゾリスマブによる補助療法は死亡リスクを34%減少 承認は、第III相IMpower010試験の中間分析の結果に基づいたもの。 IMpower010試験は、外科的切除後のステージIB-IIIA NSCLC(UICC / AJCC第7版)患者を対象に、アテゾリズマブの有効性と安全性を評価する第III相国際多施設非盲検無作為化試験である。 IMpower010試験でアテゾリスマブによる補助療法は、PD-L1≧1%のStage II/IIIAのNSCLCの再発または死亡リスクを34%(ハザード比[HR] :0.66、95%CI:0.50〜0.88)減少させている。毒性は、既報のプロファイルと一致しており、新たな安全性シグナルは特定されなかった。

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第74回 年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応

<先週の動き>1.年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応2.3回目ワクチン、12月からファイザー製で開始/厚労省3.第6波に向け、入院患者受け入れ体制2割増を/厚労省4.コロナ受け入れ病床確保の補助金の検証を/財務省5.コロナ特例診療報酬の廃止で補助金を交付、日医も評価6.行き届かない交付金、医師の働き方改革にも活用を/厚労省1.年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応米国食品医薬品局(FDA)は14日、米・メルクが開発中のCOVID-19経口治療薬モルヌピラビルについて、11月末に諮問委員会の会合を開き、効果や安全性を検証すると発表した。この結果を踏まえて緊急使用許可の可否が判断され、承認されれば、世界初の新型コロナ経口治療薬となる。メルクは承認を前提に、米政府に170万回分を供給する契約を結んでおり、日本政府も年内の特例承認を見据え、在庫を調達する方向で同社側と協議している。また、中外製薬は11日に、「カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)」を用いた抗体カクテル療法について、予防薬および無症状の感染者に対する治療薬として適応拡大申請を行ったことをプレスリリースで公表した。こちらも年内の特例承認を目指す。(参考)コロナ飲み薬、年内にも登場 ウイルス増殖防ぐ―米メルクや塩野義が開発(時事ドットコム)コロナ飲み薬、米FDAが11月末に安全性検証…日本政府は調達する方向で協議中(読売新聞)【速報】コロナ予防と「無症状」にも 抗体カクテルの適用拡大申請(FNNプライムオンライン)2.3回目ワクチン、12月からファイザー製で開始/厚労省堀内 詔子ワクチン担当相は15日、3回目接種に使用する分として来年1月までに412万回分のファイザー・ビオンテック社「コミナティ筋注」を全国に配分することを決定し、都道府県に割り当てる量や配送スケジュールなどを通知した。接種は年内に開始する見込み。岸田 文雄首相は12日の衆参両院代表質問で、3回目のブースター接種も全額公費で負担する方針を示した。(参考)3回目の接種に向け約412万回分の配分決定 堀内ワクチン相(NHK)3回目ワクチン412万回分、11月に自治体へ配送 ファイザー製(毎日新聞)ワクチン3回目接種も全額公費負担へ 感染者は減少、人出は増加(東京新聞)新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)に使用するファイザー社ワクチンの配分(3回目第1クール)について(厚労省)3.第6波に向け、入院患者受け入れ体制2割増を/厚労省政府は15日に新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、今冬に予想される第6波の感染拡大に向けた対策の骨子をまとめた。変異株の感染力が2倍となったことを想定し、今夏ピーク時の1.2倍の患者を受け入れられる入院医療体制の整備を行う。また、感染力が3倍になったときには国民に強い行動制限を求め、一般診療を制限して病床を確保する方針も明らかにした。病床確保に当たっては、現行法の下での国・都道府県知事に与えられた権限を最大限活用する。国立病院機構法・地域医療機能推進機構法に基づく「要求」を始め、大学病院や共済病院などへの要請も含め、国の権限を発動し、公的病院の専用病床をさらに確保する見込み。(参考)冬の感染対策、政府が骨格 入院受け入れ、第5波の1.2倍に(毎日新聞)第6波、感染力2倍想定 首相、「幽霊病床」の改善指示(日経新聞)資料 第79回 新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)4.コロナ受け入れ病床確保の補助金の検証を/財務省11日、財務省は財政制度等審議会の財政制度分科会を開催し、COVID-19患者向け病床確保の補助金を受け取った医療機関の収支状況について検討した。感染拡大によって、2020年の医業収益は前年度に比べ平均で3.6億円減少していたが、新型コロナ関係の補助金によって、黒字幅は6.6億円と前年度の0.2億円より大きく改善した。これについて出席した委員からは、受け入れ実態を調べるために病床利用率のデータ公開を求める意見や、医療の提供体制の見直しを議論すべきといった意見が出された。(参考)コロナ病床確保の病院、補助金で黒字拡大…実際には受け入れ困難なケースも(読売新聞)“コロナ病床確保の医療機関への補助金 検証を” 財務省審議会(NHK)コロナ補助金で病院利益増 20年度平均6億円、財政審「検証必要」(毎日新聞)資料 医療機関に対する新型コロナ関連補助金の『見える化』(財務省)5.コロナ特例診療報酬の廃止で補助金を交付、日医も評価厚労省は、特例で認められていた医療機関における新型コロナウイルス感染防止に対する診療報酬の廃止に伴い、新たな補助金についての通知を都道府県に発出した。対象となる経費は、10月1日~12月末までに新型コロナ感染拡大防止対策に要した賃金、謝金、会議費、旅費や医療材料などの消耗品費、備品購入費など。以前から勤務している人や通常の医療提供に対する人件費は対象外となった。上限額は病院・有床診療所は10万円、無床診療所は8万円。11月1日から厚労省ホームページで電子申請を受け付ける。これについて、日本医師会は医療側の要望が受け入れられたとして評価している。(参考)「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金」のご案内(厚労省)令和3年10月以降の政府の新型コロナウイルス感染症に関する医療機関への支援策に一定の評価(日本医師会)6.行き届かない交付金、医師の働き方改革にも活用を/厚労省厚労省は、11日に医療介護総合確保促進会議を開催し、2020年度における地域医療介護総合確保基金の交付状況を公表した。医療従事者の確保・養成に関する事業や地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設の整備に関する事業には759億円が交付されたが、2020年度にスタートした勤務医の労働時間短縮に向けた体制の整備に関する事業は28億円の交付で、中にはゼロ%の自治体があることが指摘された。医師の働き方改革が実行される2024年度に向けて勤務医の労働時間短縮を進めるために、一層の活用を求める意見が出された。(参考)勤務医の労働時間短縮にも医療介護総合確保基金の活用を、2024年度からの新医療計画等に向け総合確保方針を改正―医療介護総合確保促進会議(Gem Med)医師の労働時間短縮事業、29都道府県が未交付(日経メディカル)資料 第15回医療介護総合確保促進会議(厚労省)

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お蔵入り研究を論文化できる本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第47回

【第47回】お蔵入り研究を論文化できる本珍しい疾患を後ろ向きに20例集めたけど、解析できるどころの症例数ではないし、ケースシリーズにしたらアクセプトされにくいし、「もう論文化ダメポ…」とあきらめてしまって、長年放置している研究はないでしょうか。実は私はそういうテーマが1つあって、10年前に数十例集めたものの、当時は解析の意義が見出せませんでした。残念ながら、そのままお蔵入りになってしまったのです。もうこの蟲毒(こどく)の蓋は一生開けまい、と当時誓ったものです。『労力を無駄にしないための 臨床研究テーマの選び方:論文執筆マニュアルを開く前に読みたい没ネタ回避術』藤岡 一路/著. メディカ出版. 2021年9月発売医学論文の書き方や読み方に関する書籍は増えていますが、この本は最初のテーマ選びに主眼が置かれており、「ダメポ」と思っているテーマでもボツが回避できるという光明を示してくれるものです。もちろん到底論文化できない材料は仕方ないですが、世に送り出せるはずのテーマなのに、切り口がイマイチなだけで、お蔵入りになっているものを掘り起こせる希望が湧いてきます。実はこの書籍を読んだ直後、封印していた先ほどのテーマの蓋を再び開きました。すると、数十例だった先ほどの疾患が100例を超えており、後ろ向きにデータを集めるのは大変でしたが、解析がものすごく信頼性を帯びてきたのです。お陰で1つ論文を仕上げることができました。ありがとうございます(新型コロナの診療が忙しいという理由をつけて、まだ投稿していないんですけど)。この書籍は、筆者自身が経験した多くの論文作成の実例が、「ねころんで読める」シリーズでおなじみの藤井 昌子先生のイラストと共に紹介されており、どうやって論文化したらいいのかな……と悩む若手医師にとってベストな一冊に仕上がっています。当初、タイトルに「スタンフォード式」を冠するか悩まれたようですが、こちらのほうが若手医師に寄り添う感じになっているので、よかったと思います。前向き研究でも後ろ向き研究でも、研究計画書を書いたり、IRB申請書類を書いたりする必要がありますので、事務的な作業に少々時間は掛かりますが、この本を読めばお蔵入り研究を論文化できる打率は必ず上がることでしょう。『労力を無駄にしないための 臨床研究テーマの選び方:論文執筆マニュアルを開く前に読みたい没ネタ回避術』藤岡 一路 /著.出版社名メディカ出版定価本体3,000円+税サイズA5判刊行年2021年

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事例036 絆創膏固定術の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説左ひざを捻挫したとして来院された患者に対して「J001-2 絆創膏固定術」を施して、レセプト請求したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。カルテを確認したところ、膝靭帯の損傷所見が記入されており、画像診断にて骨挫傷と診断し、絆創膏固定術を選択されたことが記載されていました。カルテの傷病名欄には、レセプトと同じ「左膝関節骨挫傷」のみが記載されていました。医師に尋ねると、膝靭帯の損傷は骨挫傷の病名を付けてあれば不要であろうと考えられており、レセプトへの膝靭帯損傷にかかるコメントも不要と考えたようです。絆創膏固定術の算定要件には「足関節捻挫または膝関節靭帯損傷に対して行った場合に算定する」とあります。事例のレセプト記載内容では算定要件である膝関節靭帯損傷の確認ができず、医学的に保険診療の適応がないと判断されて査定となったものでした。いわゆる保険病名とは異なり、診断にてより精緻な病名が判明した場合であっても、保険診療が必要とする病名は必要となります。今回の問題点を医師に説明し、レセプトチェックシステムにも登録して査定対策としました。

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進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは【見落とさない!がんの心毒性】第7回

今回のお話ひと昔前までの放射線治療(RT)では、がん病変に関連した広範囲を対象に照射していたため、ホジキンリンパ腫、乳がん、食道がん、肺がんなど胸部RTが必要ながん腫では心臓縦隔が広範囲に照射されてしまい、急性期および遠隔慢性期に放射線関連心血管合併症(RACD :Radiation Associated Cardiovascular diseases:)を発症していました。しかし、最近は心臓回避技術の向上、いわゆるRTのオーダーメイド治療が進化しRACDの発症頻度は減少しています。ゆえに一昔前と同様の考察でRACDに対峙していては時代遅れです。一方、放射線による組織障害、その結果として生じた心血管障害への対応には案外これまで通りのRACDへの理解が不可欠であり、RACDリスク管理として一般的心血管リスク因子の適正化が重要です。つまるところ、従来から循環器医が注力している診療要素がここでも大事なのは明らかで、結局は、臨床におけるRACDに対する急な理論武装は不要な様に思っています。もちろん、現代のRTに精通し、それによる新規RACDへの探究は極めて重要と考えますが、まずは基本に忠実な診療を施す事、そしてこれは放射線治療医の先生方へのお願いとなりますがRACDスクリーニングへも目を向ける重要性をお届けしたいと思います。そのほかにも、最新RTが不整脈治療に有効となる可能性!? なんていう話題についてもご紹介してみたいと思います。なお、RACDという表記について、別のRIHD(Radiation Induced Heart Disease)の表記も見かけます。この領域において、まだ統一表記になっていないと理解しています。今回は筆者が従来から使用し、また今回2021年第4回日本腫瘍循環器学会でも表記で利用されたRACDを本稿では使用します。RACDの基本の基:平均心臓照射量とのリニアな関係まずは2013年NEJM誌からの報告です。乳がん患者においてRT治療後5年目から冠動脈イベント頻度は高まりはじめ、少なくとも20年間はリスクが続き、平均心臓照射量が多ければ多いほど冠動脈イベントの増加に関連する事が示されました1)(図1)。(図1)心臓への平均照射量に応じた冠動脈イベントの割合1)画像を拡大する「線量依存性」かつ「慢性期発症」というのがRACDの基本の基です。多くはないものの急性発症もある事は申し添えておきます。RACDの発症は近年の技術革新により減少しています。しかし、がん患者、がんサバイバーが更に増加する昨今、そして、高齢化により心疾患を抱えたRT患者の増加も想像にたやすく、今後も臨床においてRACDを診療する機会はなくならないでしょう。別途、胸部以外の部位へのRTでも炎症やほかの機序により心血管障害を起こす可能性もあるのですが2)、混乱を来すのでここでは扱いません。RTの技術革新、New RACDは従来型とは違うのか次にホジキンリンパ腫に対するRTを例に技術革新を紹介します3)。(図2)ホジキンリンパ腫に対するRTの時代ごとの変遷画像を拡大する(A)時代ごとで分かるRT技術革新。拡大放射線療法であるマントル照射(B)以前の治療法(D)(B)に比較しIMRTを用いたinvolved-site RTでは(C)心臓を回避したより限局的治療を可能とし、DIBH(deep inspiration breath-hold、深吸気呼吸停止)法も適用し心臓部位への照射量は軒並み抑えられています3)(図2)を見ると心臓への照射量は劇的に減少しています。強度変調放射線治療(IMRT:intensity-modulated RT)、定位放射線治療(SRT:Stereotactic RT)のほか、粒子線治療といった高精度放射線療法の導入により、オーダーメイド放射線治療ができるようになった近年、一昔前のRTと現在のものとでは、もう同等比較はできません。心臓照射はより回避され、がん病変へのより限局的治療へと進化し、冠動脈、心筋、弁膜など心臓内の各重要部位が回避できるRTに進化を遂げています。この新時代RTいわゆるNew RACDは従来のものとは異なり、より限局的な心血管障害になるでしょうし、患者毎、がん病変毎で個々に異なるRACDの病態を呈する前提で行われていくでしょう。そういう意味で、New RACDとRACDは確実に異なります。問題点は…当の小生もですが、New RACDについて深く語れるほど循環器医がRTの進化に追いついておらず、New RACDの詳細を大して認識できていないという事です。ただし、New RACDの発症形態、特有の予後などまだ不明な点が多いものの、結果として生じた心血管系組織障害に対する臨床的対応はそれほど変わらないとも言えます。 結局、主治医がとるべき臨床的対応は、従来のRACDに対するものとさほど変わらないのではないかと思っています。よく知られているRACD前述した通り、New RACDはより限局的な心血管障害となり、発症形態は従来のRACDとは異なると推察されます。、その臨床的病型について、注意点はこれまでとさほど変わらないとし、まずはRACDの代表的な所をお示しします。RACDとしておさえておきたい病態を(図3)に示しました4),5)。RTにより心室では拘束性障害や収縮性障害をきたします。そのほか、冠動脈硬化、弁膜硬化、刺激伝導障害、自律神経機能障害、心膜疾患、心嚢水貯留、上行大動脈の全周性高度石灰化 (porcelain aorta)などが生じます。(図3)RACDとして挙げられる心臓関連病態4),5)画像を拡大するRACDの多くは遠隔慢性期に発症―RT後にも症例に応じたRACDスクリーニング計画、心血管リスク因子の適正化が重要RACDの特徴は急性期障害もあるものの、問題の多くが治療後遠隔期の慢性期障害となる事です。ゆえに、がん治療病院の管理から離れた後に発症する懸念から、いかにあらかじめの患者教育が大事かということになります。そして、RACDリスクが高い患者にはRT後の定期的なRACDスクリーニングの計画が推奨されます。(表1)にRACDのリスク因子を示しました。中には「心血管疾患リスク因子の保有」とあります。この心血管疾患リスク因子管理がRACDの進行回避において非常に重要なのです。そして、項目にある「コバルト線源」については近年における臨床現場ではあまり一般的治療ではないと聞いています。ただし、過去に治療歴がある患者の場合には注意すべきであり知っておくことは望ましいですよね。(表1)RACDのリスク因子4),7)RACDによる冠動脈病変は周囲組織を含め硬化が強くPCIでもバイパス手術でも成績が不良と言われます6)。これらを改善させるためにもスクリーニングによる早期検出で少しでも安全な治療が可能になる事に期待がもたれます。(図4)にはスクリーニングを含めたRACD管理アルゴリズムを示しました。(図4)RACD管理アルゴリズム5),8)画像を拡大する逆の発想!?心室性不整脈に対するRTの可能性RACDを起こす放射線障害ですが、その組織傷害性を利用したRTによる不整脈源性障害心筋への治療利用が考えられています。phase I/II ENCORE-VT(Electrophysiology-Guided Noninvasive Cardiac Radioablation for Ventricular Tachycardia) trialが行われ、難治性心室性頻拍に対してその有効性と安全性が報告されました9)。今後、そういう治療が主流になって行くのでしょうか、興味津々です。おわりに進化したRTによるRACD、いわゆるNew RACDについて、発症形態や予後など不明な点が多く、われわれはそれを明らかにすべく更なる探求が必要であると思います。しかし、その臨床的対応については、まずは従来のRACD対する対応と大きく変える必要は無いのではないでしょうか。重要なのは、治療後遠隔慢性期の発症形態をとるRACDの発見が遅れないよう、あらかじめ患者教育を施し、RACDリスク因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常などのリスク管理、そしてRACDに対するスクリーニングの計画が検討される事、つまりRT後の患者が放置されない医療的アプローチが肝要であるのだと思います。循環器医も腫瘍科医も現段階ではRT新時代に取り残されているのかもしれませんが、これまでの知識や経験をもってNew RACDへ対応して行くことが先決でしょう。また、そんな状況だからこそ、腫瘍科医や放射線科医、そして循環器医が互いの強みを発揮しながらの協働が必要になってくるわけです。そして、当然、新世代RT特有のNew RACDの側面も今後明らかになってくることにも期待が高まります。最新の情報をアップデートしていきましょう。1)Darby SC, et al. N Engl J Med. 2013;368:987-998.2)Haugnes HS, et al. J Clin Oncol. 2010;28:4649-4657.3)Bergom C, et al. JACC CardioOnc. 2021;3:343-359.4)Desai MY, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;74:905-927.5)志賀太郎編. 医学書院. 2021. 循環器ジャーナル.(II章, がん放射線療法に関連した心血管合併症[RACD])6)Reed GW, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2016;9:e003483.7)Jaworski C, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:2319-2328.8)Ganatra S, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2020;2:655-660.9)Robinson C, et al. Circulation. 2019;139:313-321.講師紹介

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ファイザー製ワクチン、6ヵ月後の抗体価が著明に低下した人は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)は、2回目接種6ヵ月後時点で、とくに「男性」「65歳以上」「免疫抑制状態にある人」で中和抗体価が著しく低下していた。イスラエル・テルアビブ大学のEinav G. Levin氏らが、医療従事者を対象とした6ヵ月間の前向き横断研究の結果を報告した。イスラエルでは、ワクチン接種率と有効性が高いにもかかわらず、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の症候性感染の発生率が増加しており、この増加がBNT162b2ワクチン2回接種後の免疫低下に起因するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。2回目接種後、6ヵ月間、毎月抗体価を測定 研究グループは、ワクチンを接種した医療従事者を対象に、抗スパイクIgG抗体および中和抗体の検査を毎月、6ヵ月間実施した。線形混合モデルを用いて抗体価の動態を評価し、6ヵ月後の抗体価の予測因子を検討した。 本研究には4,868例が参加し、解析対象集団は3,808例であった。中和抗体価は男性、65歳以上、免疫抑制状態にある人で著明に低下 IgG抗体価は一定の割合で減少した。一方、中和抗体価は、最初の3ヵ月間は急激に減少し、その後は比較的ゆっくり減少した、IgG抗体価は中和抗体価と高い相関性を示したが(スピアマン順位相関0.68~0.75)、IgG抗体値と中和抗体価の回帰関係は2回目のワクチン接種後の時間に依存していた。 2回目のワクチン接種から6ヵ月後の中和抗体価は、女性と比較して男性が低く(平均比:0.64、95%信頼区間[CI]:0.55~0.75)、18~44歳と比較して65歳以上が低く(0.58、0.48~0.70)、免疫抑制を伴わない参加者と比較して免疫抑制を伴う参加者で低かった(0.30、0.20~0.46)。 なお、著者は、健康な医療従事者を対象としており一般集団を反映していない可能性があることを、研究の限界として挙げている。

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SSRIの副作用プロファイル~自然主義的横断研究

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、最も一般的に使用されている抗うつ薬である。通常の臨床試験では、SSRIの副作用は過少報告されているといわれている。各SSRIの副作用プロファイルを完全に理解するためには、自然主義的な環境で構造化された手法を用いてシステマティックに評価することが求められる。インド・JDT Islam College of PharmacyのK. Anagha氏らは、自然主義的な治療環境で患者の主観的な症状を測定するために設計された自己評価法を用いて、3種類のSSRI(セルトラリン、エスシタロプラム、fluoxetine)によって誘発される副作用の頻度を調査した。The Primary Care Companion for CNS Disorders誌2021年7月29日号の報告。3種類のSSRIの副作用プロファイルを調査 対象は、3次医療施設の精神科より登録された外来患者。対象条件は、ICD-10基準でうつ病、不安スペクトラム障害、適応障害、心気症、衝動調節障害と診断されSSRI単剤治療を受けた18歳以上の患者とした。評価法には、42項目を含み、米FDAよりリリースされた抗うつ薬の最も一般的な副作用に関する添付文書データを用いて考案した。 自然主義的な治療環境でSSRIの副作用の頻度を調査した主な結果は以下のとおり。・対象患者数は100例、女性の割合は70%であった。・最も一般的な診断は、うつ病であった(49%)。・使用薬剤の割合は、セルトラリンが53%、エスシタロプラムが38%、fluoxetineが8%であった。・患者より報告された一般的な副作用は、腹部膨満感(64%)、傾眠(59%)、記憶障害(51%)、集中力低下(50%)、あくび(47%)、倦怠感(45%)、口渇(45%)、体重増加(45%)、ふらつき(43%)、発汗(38%)であった。・エスシタロプラムでは、頭痛、そう痒症、記憶障害、集中力低下、めまいの発生率が有意に高かった。・セルトラリンでは、食欲不振が有意に多かった。 著者らは「一般的に使用される3種類のSSRIに関する副作用の発生率やパターンが示された。また本結果は、他の同様な研究と比較するためのベースラインデータとなりうるであろう」としている。

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医療クラウドファンディング、コロナ対応スタッフの苦境を救え

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから、クラウドファンディングを利用して医療材料などの資金調達を行う医療施設や大学が増加している。先月3日にREADYFOR主催の記者会見を行った医療法人社団 悠翔会もその1つだが、なぜこのような支援方法を選択したのだろうか。同施設は首都圏や沖縄に拠点を設け在宅診療にあたっている。新型コロナ患者対応においては、かかりつけ医を持たず、なおかつ自宅療養を余儀なくされる患者を保健所紹介のもとで積極的に対応しているが、その責任者である佐々木 淳氏(悠翔会理事長・診療部長)が語る、在宅におけるコロナ対応の現状や自施設スタッフのリスク管理とはー。新型コロナ×在宅医療、突きつけられる現実 在宅専門である同施設が在宅コロナ患者への往診を始めたのは東京都医師会と連携した2021年8月11日のこと。当初は通常の在宅チームのみで各地域の保健所からの依頼により対応していたが、徐々にその業務は逼迫、より多くの対応要請に迅速かつ確実に対応したいと考え8月24日より『コロナ専門往診チーム』が結成され、東京23区におけるコロナ患者の最終セーフティネットの役割を担い稼働した。 同施設の場合、通常診療は医師・看護師・ドライバーが3人1組で約10~13件/日(施設診療の場合は半日で30人ほどの診察が可能)の訪問診療を行っているが、コロナ診療の場合は、「同じ体制でも1日に多くて6件程度と、通常診療の半分しか対応することができない。この診療を支えるためのフォローアップチーム(毎日70~100人の患者に対し、1~3回/日の電話にて状況確認などを行う)や酸素濃縮器の集配チームなどを含め、約20名ものコメディカルを要する非常に負担の大きな仕事」と述べ、「にも関わらず、実際の診療報酬で評価されるのは“往診する医師の業務だけ”なので、施設経営は逼迫する一方だ」と話した。スタッフのリスク管理 また、コロナ診療と通常業務において大きく異なる点はやはり感染対策だが、悠翔会では以下の対策をスタッフのリスク管理として設けている。1)毎日の体調確認を確実に行う2)特定のスタッフを連続勤務させない3)余裕をもって診療ができるよう、十分な診療スタッフ数を確保する4)診療スタッフがコロナ診療に専念できるよう、診療外業務をバックアップチームが担う体制を作る5)感染防御具を毎度、きちんと使い捨てができるよう、潤沢に確保する6)感染防御が確実にできるスタッフだけでチームを組成する これは、往診を目的ではなく手段と捉えて患者に確かな安全・安心を提供し、助けを求めるすべての人に確実に医療が届けられるようにという『患者のニーズが最優先』の観点があっての対策なのだろう。通常業務にコロナ対応、賞与に報償を反映 上記のような対策が必要であればおのずと人員確保による人件費もかさむ。病院施設においては、コロナ禍による受診控えが影響しスタッフへの報酬を減額せざるを得ないところもあったが、本施設での影響を尋ねると、「日常診療における感染防御、クラスターへの対応(大規模PCR検査の実施など)、ワクチン接種、新型コロナ患者への往診対応など、通常の診療業務に多数の業務がアドオンされており、年末の賞与にてそれらへの報償を反映させる予定」と佐々木氏はコメント。このようなスタッフへの感謝の気持ちを添える対応をするためにも、クラウドファンディングの活用が欠かせなかったと言える。クラウドファンディング、地域限定から全国への呼びかけに 本施設のクラウドファンディングは開始1週間で早くも目標金額の1,200万円を達成。この支援費用は在宅中等症患者の命を繋ぐために必要な人件費として充てられるという。達成後も次の目標に向けて募集を行い、10月13日現在、支援者2,296人から約3,360万円の支援が集まっている。これに対し、佐々木氏は「目下のコロナ専門往診チーム体制、フォローアップ体制の更なる強化に加え、新たに計画されている新型コロナ療養施設での活動資金等に充当する」とコメントしている。 この取材時点では在宅診療での使用が認められていなかった抗体カクテル療法についても、9月17日に大阪府で解禁になったのを筆頭に東京都でも9月24日から始まった。もし、今後、第6波が到来して中等症II以上の自宅療養者が増えた場合、在宅診療の業務逼迫も今以上のものになることは想像に難くない。クラウドファンディング活用という先手の行動がきっと雨過天晴になるだろう。 クラウドファンディング(crowdfunding)とは、『群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、インターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募るしくみ』1)のこと。今回のように寄付金を募るタイプのものは寄付型クラウドファンディングとも呼ばれている。そのほか、物を購入して作り手を応援する購入型、ふるさと納税を寄付金に充てるタイプなどがある。 これまでも地域住民、患者やその家族がお世話になっている病院に「寄付」するという行為は存在していたが、それが地域住民版だとしたら、クラウドファンディングは共感を得た全国各地の人から募るという意味で寄付の全国版とも言える。 本プロジェクト「緊急:新型コロナが“災害医療”となった今、第五波を乗り切るご支援を」は10月29日(金)午後11:00まで、支援を募集している。<医療法人社団 悠翔会>・2006年創設・首都圏:17拠点、沖縄:1拠点・医師数:96名(常勤:40名)・在宅患者数:6,400名

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早期妊娠高血圧腎症、分娩時期の延伸にメトホルミンが有用/BMJ

 早期妊娠高血圧腎症を発症した妊婦(妊娠26~32週)への徐放性メトホルミン投与は、妊娠期間を延長できることが、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学のCatherine A. Cluver氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。投与群はプラセボ群と比較して妊娠期間が1週間延長し、出生児の新生児室入室期間を短縮できることが示された。著者は、「今回の試験で早期妊娠高血圧腎症の治療は可能であることが実証されたが、さらなる試験を行う必要はある」とまとめている。BMJ誌2021年9月22日号掲載の報告。南アで180例を対象に二重盲検プラセボ対照無作為化試験 無作為化試験は南アフリカ共和国・ケープタウンの紹介制病院で行われた。妊娠26+0週~31+6週の待機的管理を受けている妊婦180例を無作為に2群に割り付け、徐放性メトホルミン(3g/日を分割投与、90例)またはプラセボ(90例)を分娩時まで投与した。 主要アウトカムは、妊娠期間の延長であった。無作為化から分娩までの期間中央値、メトホルミン群17.7日、プラセボ群10.1日 180例のうち1例は、試験薬を服用する前に分娩した。 無作為化から分娩までの期間中央値は、メトホルミン群17.7日(四分位範囲[IQR]:5.4~29.4日、89例)、プラセボ群10.1日(3.7~24.1、90例)であり、群間差中央値は7.6日(幾何平均比[GMR]:1.39、95%信頼区間[CI]:0.99~1.95、p=0.057)であった。 すべての投与時点で試験薬を服用し続けた被験者において、妊娠期間延長の中央値はメトホルミン群17.5日(IQR:5.4~28.7、76例)、プラセボ群7.9日(3.0~22.2、74例)であり、群間差中央値は9.6日(GMR:1.67、95%CI:1.16~2.42)であった。 全投与量を服用した被験者において、妊娠期間延長の中央値はメトホルミン群16.3日(IQR:4.8~28.8、40例)、プラセボ群4.8日(2.5~15.4、61例)であり、群間差中央値は11.5日(GMR:1.85、95%CI:1.14~2.88)であった。 母体、胎児、新生児複合アウトカム、および血中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)値、PlGF(placental growth factor)値、可溶性エンドグリン(soluble endoglin)値に差はみられなかった。 メトホルミン群で、出生児体重は有意ではないが増加し、新生児室の入室期間は短縮した。試験薬関連の重篤な有害事象は観察されなかったが、メトホルミン群では下痢の発現頻度が高かった。

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無症候性高度頸動脈狭窄症に対するCAS vs.CEAの無作為化比較試験(ACST-2)(解説:中川原譲二氏)

 無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者に対する頸動脈ステント留置術(CAS)あるいは頸動脈内膜剥離術(CEA)はいずれも有効で、長期の脳卒中リスクを低減させる。しかしながら最近の全国規模のレジストリデータによると、いずれも後遺障害を伴う脳卒中や死亡について、1%程度の手技に関連するリスクを引き起こす。両者の長期的な予防効果を比較するためには、大規模な無作為化試験によるエビデンスが求められていた。CAS vs. CEA、多施設無作為化比較試験 ACST-2試験は、インターベンションを要する無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者を対象とした、CASとCEAに関する国際的な多施設無作為化比較試験であり、他の関連するすべての試験に通用する。被験者は、片側性または両側性に高度頸動脈狭窄があり、医師・患者共に頸動脈治療の施行に同意していた場合に適格とされたが、治療法は選択できなかった。被験者は無作為にCAS群またはCEA群に割り付けられ、1ヵ月後、その後は毎年の追跡を平均5年間受けた。術後30日以内に発生したイベントを、手技関連イベントとし、ITT集団を対象にテーブル解析による手技関連ハザードなどの解析を行った。手技非関連脳卒中については、Kaplan-Meier法やlog-rank検定法を用いて解析した。CAS vs. CEA、脳卒中発生リスクに関する長期効果に差はなし 2008年1月15日~2020年12月31日に、130施設の被験者3,625例をCAS群(1,811例)とCEA群(1,814例)に無作為に割り付けた。コンプライアンス、薬物治療はいずれも良好で、平均追跡期間は5年だった。全体で、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡は1%(CAS群15例、CEA群18例)、手技関連の後遺障害を伴わない脳卒中は2%(それぞれ48例、29例)だった。Kaplan-Meier法による5年の手技非関連脳卒中の発生率は、致死的または後遺障害を伴う脳卒中については両群共2.5%、あらゆる脳卒中についてはCAS群5.3%、CEA群4.5%だった(rate ratio[RR]:1.16、95%CI:0.86~1.57、p=0.33)。すべてのCAS群vs. CEA群試験における手技非関連脳卒中の発生に関する一体的RRは、症候性・無症候性の患者で同等だった(全体RR:1.11、95%CI:0.91~1.32、p=0.21)。 適切なCASやCEA後に見られる重篤な合併症は同様に稀であり、致死的または後遺障害を伴う脳卒中に関して、これら2つの頸動脈治療法の長期効果は同等であった。CAS vs. CEA、予防効果の永続性の検証が必要 今回のACST-2試験では、無症候性高度頸動脈狭窄症に対するCAS vs. CEAの無作為化比較試験において、脳卒中発生リスクに関する長期効果は全体としては差はなしとされた。本研究の結果により、わが国においても、CASを第1選択とする介入フローがより加速するものと思われる。しかし、症候性の頸動脈狭窄症を対象とした他の比較試験でも見られたように、CEAは少なくとも後遺障害を伴わない脳卒中の発生に関して、有意差は出なかったが、CASよりも良好な結果となっていた。CEAやCASの予防的効果は、初期の数年間は同等であるが、その永続性(durability)については、ACST-2を含む臨床研究のさらなるフォローアップによって、検証されなければならない。

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なぜ、働き方改革は「現場主体」でないといけないのか?【今日から始める「医師の働き方改革」】第4回

第4回 なぜ、働き方改革は「現場主体」でないといけないのか?私たちは、これまで1,000以上の組織の働き方改革を支援してきました。うまく進む働き方改革は、長崎大学病院での働き方改革も含め、「誰かに言われているからやる」のではなく「現場がやりたいと思うことを実現していく」を主眼に取り組みを進めていることが特徴です。今回は私たちが「現場主体」を重視する、その理由を紹介します。1)人口動態とマネジメント手法の変化表1は、ハーバード大学David E. Bloomが1990年に提唱した「どの国にも人口ボーナス期と人口オーナス期が存在する」という考え方を表しています(表1)。「人口ボーナス期」とは、若者が多数を占め、高齢者人口の割合が低い国の状態を指します。日本では1960年代~90年代半ばまでがこの時期に当たります。働き手が多く、市場にはまだモノが不足していたので1分1秒でも長く働き、隣の会社と同じ製品であっても早く安く大量に作って提供することが求められました。こうした時代、意思決定はトップダウンが合理的で、それに文句なく従う従業員が大勢いる組織が有利でした。賃金は現在より低く、労働時間の労働規制も厳しくなかったので、労働者をたくさん働かせてもしっかり利益が残ったのです。一方、現在の日本は「人口オーナス期」にあります。高齢者人口の割合が高く、若年の労働者が少ない人口構造です。経済成長は停滞し、市場は飽和状態にあります。早く安く大量に生産するやり方ではなく、市場から求められる、吟味された商品しか売れない時代になりました。こうした商品を生み出すにはトップダウンでは限界があり、現場発想をいかに速く商品・サービスに落とし込み、改良を続けるかが勝負を分けます。医療現場において少子高齢化による働き手不足と患者数増加によって、現場マネジメントの難易度は高まっています。男女ともに高学歴化が進み、男性が大半を占めていた医師の世界も今では医学部合格者の3割以上が女性です。結婚・育児にキャリアを阻まれることが少ない男性医師で成り立ってきた医療機関も、女性を含めた多様な人材が活躍できる環境整備を行わなければ経営が成り立たない状況です。このように人口ボーナス期・オーナス期は人口構造だけでなく、組織の勝ち筋、マネジメント手法にも大きな影響を与えます。つまりは、人口オーナス期に合わせた経済成長のルールに従い、現場の裁量を増やし、仕事のやり方を変えることが重要なのです。2)高まる不確実性今は「VUCAの時代」といわれます。VUCAとは「Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性」の頭文字で、「予測不可能な出来事が次々と起こる時代」を指します。2020年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は、まさしくそれを証明したといえるでしょう。これだけ急激な変化が起きると、トップが現場の情報を収集して、意思決定して、現場に展開するだけの十分な時間がありません。現場の意思決定の質を高め、スピーディーに変化する。それを促すための工夫が不可欠です。3)「やらされ感」の排除もうひとつ、職場の変革を現場主体で行うメリット、それは「持続性」です。どんな組織においても、対象者が「やらされている」と感じる取り組みは定着しにくいものです。やらせる人がいなくなったり何らかの理由で強制力がなくなったりした瞬間、元に戻る力が働きます。元に戻るだけならまだしも「忙しい中で無理やりやらされた」という不満が、上司や経営層への不信感や人材流出につながります。チームが集まって「ありたい姿」を作成するこうした理由から、私たちは「現場が主体となった働き方改革」を提唱しています。そのための第一歩が「ありたい姿」の作成です。働き方改革を始める際に、まずは「プロジェクトチーム」をつくる必要があります。日常業務とのつながりを確保するために同じ業務をしているメンバーで、人数は3~10人までがよいでしょう。10人は全員が議論に参加できる限界です。お互いの意見を尊重し、小さな意見も出せるようなメンバー選びも重要です。部門トップが入ると若手が萎縮するのであれば、トップはメンバーに入れないのも一手です。メンバーを選んだら、初回ミーティングのテーマは「働き方改革を行った結果、どうなりたいのか=ありたい姿の設定」です。用意するもの:大きめの付箋、ホワイトボード3~5人程度に分かれるファシリテーター役と付箋に記入する係を決める長崎大学の初回ミーティングの樣子1)問い掛けと意見出しファシリテーターは、次の問い掛けをします。「このチームのいいところはどこですか?」「もったいないな、と感じるところはどこですか?」「もっとよい時間の使い方をするためには、何の時間を増やし、何を減らしたいですか?」1つの問い掛けに対して3分ほど使ってファシリテーターも含めた意見出しを行い、出たそれぞれの意見を記入係が付箋に書き出します。「勤務時間短縮の要素を入れる」といった指定は不要です。チームのメンバーから「もっと早く帰りたい」といった言葉が出れば入れますが、強制や忖度が起きないように気を付けます。2)付箋をまとめる出た付箋を持ち寄り、ホワイトボードに貼り出します。ファシリテーターが内容の近いものをまとめてグルーピングします(KJ法と呼ばれる方法です)。付箋を使うのは意見をフラットに取り扱うためです。職位や年次によらず、どの意見も公平に扱うことが重要です(表2)。3)まとめて文章化する付箋をグループごとに整理し、それをつなげて参加者全員にとって納得感の高い「ありたい姿」を文章にします。チームのいいところは活用し、もったいないところを克服する、その結果○○に割く時間を増やす/○○という成果を出す、といった流れがよいでしょう。「みんなで早く帰る!」といった短い文章ではメンバー間でイメージがブレやすくなるため、「属人化を解消し、助け合うチームになることで、早く帰れる体制をつくる」など、アクションをイメージできる具体的なキーワードが入った文章にします(表3)。できた文章は、忘れないようにどこかに貼り出します。これは「一度決めたら変えられない」ものではなく、達成できたときや違和感が出たときなどに都度見直します。全員の意見を1つにまとめるのは難しいこともあるので、この作業はチームメンバー以外の取りまとめの上手な人や、私たちのような外部サポーターを入れることもお勧めです。このチームの「ありたい姿」を決める話し合いを観察していると、いくつか気付くことがあります。最初はどのチームも「そんなこと、考えたこともない」という沈黙が続きます。「組織のありたい姿なんて、経営者や教授が決めるものでしょう」と戸惑う方もいます。それでも、「どんな意見でもどうぞ」と促し続けると、ぽつりぽつりと意見が出てきます。はじめに出た意見を「なるほど、○○なんですね」としっかりと認めることで、次の意見が出るようになります。少し時間はかかりますが、この「ありたい姿」を決めるプロセスは非常に重要なので、チーム全員の納得感を確認しながらつくりましょう。「働き方改革=早く帰ること」というイメージを持つ方が多くいます。ベテランの方からは「若いうちは必死にやらないと。今さぼってどうする」「自分の時間を削ってきた若いころの努力やキャリアを否定された気になる」と不満や不安の声も上がります。また「医師の働き方改革によって、提供する医療の質が落ちることだけは避けねばならない」というのは、年齢にかかわらず、多くの医療者に共通した意見です。医師の働き方改革は「労働時間を減らす」という単純なものではありません。提供する医療の質を落とさないことは大前提です。あくまでも、提供する医療の質を上げつつ、チームの総労働時間を短縮する、そのための取り組みです。ありたい姿をどう現場に落とし込むのか、その方法は次回以降にご紹介します。

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第79回 与野党の政策を党別分析、ツッコミどころ満載なその政策とは?(後編)

ついに岸田 文雄首相は10月14日の衆議院で解散を行い、19日公示、31日投開票のスケジュールで4年ぶりの衆院選が行われることになった。前回から自民党以外の与野党各党の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を含む医療・社会保障政策を紹介し、独断と偏見ながらその評価をしている。今回は前回紹介した公明党、立憲民主党、国民民主党以外の各政党についてである。野党二番目の議席数、日本共産党実は与党の自民党、公明党、野党第一党の立憲民主党に次いで衆議院で議席を有しているのが日本共産党(12議席)である。その共産党は11日に「総選挙政策 なにより、いのち。ぶれずに、つらぬく」を公表した。まず、新型コロナ対策として(1)ワクチンと一体で大規模検査、(2)医療・保健所への支援、(3)まともな補償、の3本柱を訴えている。ただ、このうちの(1)は「『いつでも、誰でも、無料で』という大規模・頻回・無料のPCR検査実施」、「職場、学校、保育所、幼稚園、家庭などでの自主検査を大規模かつ無料で行えるように国が思い切った補助」とのことで、ややため息が出てしまう。パンデミック当初の検査能力不足に起因した検査抑制は確かに問題だったが、今は検査が不足しているとは必ずしも言えない。また、どんなに検査の自動化やプール方式などの効率化を進めても検査に要するリソースが有限であることを考えれば、現状の検査能力の使い方こそが最重要である。その中で医療従事者や介護従事者、警察・消防などのエッセンシャルワーカーに比較的頻回な定期検査を行うならば、リソースの有効活用にはなるだろうが、いつでも誰でも無料は大衆受けするがかなり非科学的といえる。また、今回の教訓を踏まえた医療などのキャパシティ向上を謳って「感染症病床、救急・救命体制への国の予算を2倍にするとともに、ICU病床への支援を新設して2倍」「保健所予算を2倍にして、保健所数も、職員数も大きく増やす」「国立感染症研究所・地方衛生研究所の予算を拡充し、研究予算を10倍」などの定量目標を掲げているが、正直財源も含め、いずれも現実味を感じない。ボリューミィ政策、日本維新の会野党第3党の日本維新の会。同党は衆院選向けの公約は発表していないが政策提言「維新八策2021」という8領域339項目の政策を公表している。医療・社会保障に関してはこのうち「2.減税と規制改革、日本をダイナミックに飛躍させる成長戦略」「3.『チャレンジのためのセーフティネット』大胆な労働市場・社会保障制度改革」、「4.多様性を支える 教育・ 社会政策、将来世代への徹底投資」に集中的に登場する。まず、成長戦略項目で訴えていることは、(1)ITによる医療・介護の産業化・高度化、(2)診療報酬点数に需給バランスを通じた調整メカニズム導入、(3)混合診療解禁、(4)医療法人などの経営・資金調達方法の大幅に規制緩和、(5)OTC販売時の対面販売規制見直し、であり、端的に言えば医療での規制緩和・市場原理導入ということだ。社会保障制度の項目では、数多くの政策が並んでいるが根幹として医療費の自己負担割合について「年齢で負担割合に差を設けるのではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける仕組みに変更」と訴えている。これについては一見すると合理的に見えるが、ここで考えるべきはまず低所得者と高所得者でどちらのほうが一般的に考えて健康不安があるかという点だ。答えはおおむね低所得者に行くはずだ。生活の基本である衣食住に対するものも含め可処分所得が低いため、健康維持に使えるお金も減るからである。つまり健康不安の少ない高所得者が高い自己負担割合になれば、結果として彼らは過少給付となるので不公平感が否めない。ちなみに後段の項目では「定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者などの保険料を値引きする医療保険に保険料割引制度導入」と訴えているため、高所得者はこの点では得をして前述の過少給付分を補填できるかもしれない。しかし、逆に相対的に健康リスクが高いとみられる低所得者はこの制度では恩恵を受けがたくなり、一部の低所得者と高所得者との間で格差が広がる危険性もある。その一方で「国民健康保険でのスケールメリットを活かせる広域的運営の推進」や「レセプトチェックのルール統一を行い、国民皆保険制度の元で AIやビッグデータを活用することで、医療費の適正化と医療の質の向上を同時に実現」は個人的には一考に値すると感じている。とくに後者のレセプト審査基準が地域によって幅があることは、患者目線に立てばこれまでも内外から疑問視されていた点である。新型コロナ対策についても12本の提言を挙げているが、その多くに新味はない。さらに、「人員配置や設備面で急性期の受け入れ能力がない中小病院が過多になっている現状を精査し、医療提供体制の再編を強力に推進」という点については、やや「???」とも思う。そもそも高齢化が進む日本の将来を見据えた場合、急性期医療以外を担う病院の必要性は高い。もっとも医療機関数や病床数が多めであることは確かだが、ほぼ民間病院だらけの中小病院をどのようにして「再編を強力に推進」するのかと思ってしまう。後述する社民党の政策に出てくる国公立病院の統廃合も含めた機能点検ですらあれだけ揉めたのだから、こうした維新の提言が実現するとは思えないのだが…残る社民党、れいわ新選組、NHK党は…さて前編分も含め、ここまでが現状で衆議院に議席を持つ政党の政策についてだが、参議院に議席を有し、公職選挙法や政党助成法での政党要件を満たし、なおかつ今回の衆議院選に候補者を立てている政党がいくつかある。社民党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で(公職選挙法上の略称・NHK党)の3政党である。この各党についても触れておきたい。これは政治・選挙取材を得意とする私の友人で「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した畠山 理仁(みちよし)氏が実践しているすべての候補の主張に耳を傾け、すべての候補を公平に扱うべきという主張に共鳴しているからだ。まずは社民党。かつては最大野党として衆参両院で最盛期に3分の1以上の議席を占めたこともある旧日本社会党を前身とする社民党は現在、衆参両院で議員各1人にまで凋落している。その社民党の「2021年重点政策」を見ると、社会保障・医療関連でまず触れられているのが、「1.新型コロナ感染症災害からの生活再建」の中の「医療機関、介護・医療従事者を支援。地域医療を守る」の項目。具体的には2019年に厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」が急性期医療機能の観点から424(現在は436)の公立・公的等医療機関について統廃合も含めた機能再検証を求めた件をあげ、新型コロナの病床確保の観点からこの方針の撤回を求めるというもの。確かにこの一件はいきなり該当病院が名指しされたことで当該病院関係者や自治体に大混乱を与えたことは事実だ。しかし、従来から国内の医療機関が極端に急性期医療に軸足を置いてきた結果、超高齢化社会の進行に伴う将来的な慢性疾患対応の増加とミスマッチになっていたこともまた事実である。単純に将来の新興感染症を見越して現行のままの急性期病床配置を維持すれば良いものではない。この政策項目の中では「削減してきた保健所、保健師の数を増やし、公衆衛生の強化に取り組みます」とも訴えているが、それならば新興感染症対策の最前線である保健所の在り方も含めた急性期病床の配置までもう少し踏み込んだ提言があってほしいと思うのは要求のレベルが高すぎるだろうか?「2.格差・貧困の解消」では「75歳以上の高齢者医療費負担2倍化反対」として、今年6月に成立した健康保険法改正により、75歳以上の単身高齢者で年収200万円以上であれば医療費の自己負担額が2割に引き上げられる法改定が成立したが、その撤回を求めている。ただ、この高齢者の自己負担引き上げは長らく議論されてきたもので、実際の引き上げも慎重にかつ段階的に行われている。そもそも少子高齢化と経済低成長の時代に現役世代のみで現在の社会保障制度を支えることが困難なことは社民党も知らぬはずはない。その意味ではこの主張・政策は手垢まみれのポピュリズムとさえ言えるかもしれない。一方、代表である山本 太郎氏の出馬選挙区問題でドタバタが起きた、れいわ新選組(参議院2議席)だが、その新型コロナ対策は他党と比べ医療対策よりも経済対策が中心。その中で「PCR検査最大能力を100万回/日に向上へ」という政策を掲げている。正直、必要な検査数はその時々の流行状況などにもなど左右されるため、数値目標を掲げるのは必ずしも適切ではない。ただ、同党の主張は「医療者はもちろんのこと、バス・タクシードライバー、駅員、保育・介護職等のエッセンシャルワーカーやその家族、濃厚接触者、コロナウイルス感染の疑いのある者が、定期的に優先し、複数回検査できる体制の構築」と具体的に記述している。要は感染の疑いがある者や濃厚接触者といった日常診療でベーシックに必要とされる検査分を前提にエッセンシャルワーカー分を上乗せした数値目標らしい。その意味では一定程度ロジックは成立している。また、こうしたエッセンシャルワーカーに対して1日当たり2万4,000円の危険手当の給付を訴えている。2万4,000円というのは、アフリカの新興国・南スーダンに展開した国連南スーダン共和国ミッション (UNMISS) に、2012年1月から2017年5月まで自衛隊を派遣した際、非常時に小規模な戦闘が起こることも念頭に行う「駆け付け警護」まで実施した際の隊員の1日当たりの「国際平和協力手当」が原点だ。要は最も危険な公務員の任務での手当と同額ということだ。この背景として同党は、こうしたエッセンシャルワーカーが通常人口に比べて新型コロナでの死亡リスクが2倍以上にのぼることを例示している。考え方として悪くはないが、給付が実現しても死亡リスクそのものが低下するわけではないので、その点の対策がなければアンバランスである。さらに基本政策の中では、「障がい者福祉と介護保険の統合路線は見直し」を訴えている。これは障害者総合支援法の第7条の自立支援給付での「介護保険優先原則」の見直しである。同党はこの条文により障害者が充実した重度訪問介護などのサービスを利用できず、65歳以上では利用時の原則一割負担とサービスの幅も狭い介護保険の利用を求められる点を是正すべきとしている。これは障害者議員を擁する同党ならではと言えるかもしれない。で、最後はNHK党(衆参両院で各1議席:衆院の1議席は日本維新の会を除名された丸山穂高氏が入党したことによる)となるが、もともとNHKと対決するシングル・イシューの政党であり、新型コロナ対策や医療・社会保障に関する政策は同党の公式ホームページでは一切見当たらなかった。さて月末の衆議院選の結果はいかなるものになるだろう?

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切り傷の縫合処置(表皮縫合)【漫画でわかる創傷治療のコツ】第7回

第7回 切り傷の縫合処置(表皮縫合)《解説》今回は、仕上げの表皮縫合を説明します。ついにキズモンスターをやっつけるぞ!最後に表皮縫合:目的は段差の修正!真皮縫合が終了した時点で創縁は寄っているため、表皮縫合では少しズレている創縁を揃えるように行います。きつく結紮する必要はありません。針糸は角針、非吸収性のモノフィラメント糸を使うことが多いです。太さは真皮縫合と同じか少し細くてもよいです。真皮縫合と同様に、針は皮膚に直角に刺入しますが、その際しっかり皮膚を外反させる必要があります。持針器を持つ手もクイッとしっかり返しましょう!ここまで説明したのは、一般的によく使われる「単純縫合」についてです。縫合の方法にはほかにも種類があり、緊張のかかり方や角質の厚さ等で選択します。水平マットレス縫合:手掌部など硬い皮膚の縫合に使用垂直マットレス縫合:創縁を確実に合わせたい場合に使用また、3つの創縁を寄せるときに使う「三点縫合法」という方法もあります。知っていると便利です!さて、縫合についての基本は確認できましたか。正しい道具と針糸、少しのコツを知るだけで、キズモンスターの発生をかなりの確率で防ぐことができます! 一緒に頑張りましょう!!参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書I 形成外科の基本手技1. 克誠堂出版;2016.2)菅又 章 編. PEPARS(ペパーズ)123 実践!よくわかる縫合の基本講座<増大号>. 全日本病院出版会;2017.3)上田 晃一 編. PEPARS(ペパーズ)88 コツがわかる!形成外科の基本手技―後期臨床研修医・外科系医師のために―. 全日本病院出版会;2014.4)日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会編. 形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド. 金原出版;2015.

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急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療戦略~ガイドラインのレビュー

 慶應義塾大学の下村 雄太郎氏らは、急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の治療戦略に関する現状を要約するため、ガイドラインおよびアルゴリズムのシステマティックレビューを実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年9月8日号の報告。治療抵抗性統合失調症に対するクロザピンの使用を多くのガイドラインが推奨 急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療に関する臨床ガイドラインおよびアルゴリズムを特定するため、MEDLINEおよびEmbaseを用いて、システマティックに文献検索を行った。治療反応不良(抗精神病薬の増量や切り替えなど)や治療抵抗性を含む抗精神病薬治療戦略の推奨事項に関する情報を収集した。 主な結果は以下のとおり。・2011年以降に公開された、各国の急性期および治療抵抗性統合失調症治療のガイドラインやアルゴリズムを17件特定した。・急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の投与量に関しては、ほとんどのガイドライン(11件中10件)において、低用量または有効最低用量から開始し、漸増することとしていた。・治療反応不良例に対する抗精神病薬治療戦略に関しては、すべてのガイドライン(9件中9件)において、承認用量範囲の最大用量に向かって抗精神病薬の増量が推奨されていた。・例外的な場合に、承認用量範囲を超えた抗精神病薬の増量に肯定的であったガイドラインは5件、否定的であったガイドラインは10件であった。・多くのガイドライン(17件中16件)において、治療反応不良例には、他の抗精神病薬への切り替えを推奨していたが、クロザピン以外の抗精神病薬については、エビデンスが十分でないことが、いくつかのガイドラインにおいて指摘されていた。・すべてのガイドライン(17件中17件)において、2種類の抗精神病薬で治療反応が不十分であった場合に、クロザピンの使用を推奨していた。・4件のガイドラインでは、クロザピンの早期使用を推奨していたが、あくまで第3選択薬としてであった。 著者らは「現在利用可能なガイドラインやアルゴリズムでは、急性期統合失調症治療に対し治療反応が不良な場合には、抗精神病薬の増量や他の抗精神病薬への切り替えが推奨されていた。とくに、治療抵抗性統合失調症に対するクロザピンの使用が推奨されていた」としている。

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IBDの新規経口薬ozanimod、潰瘍性大腸炎の導入・維持療法に有効/NEJM

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)患者に対する導入および維持療法として、新規経口薬として開発中のozanimodはプラセボと比較して、より有効であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のWilliam J. Sandborn氏らによる、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果、示された。ozanimodは、選択的スフィンゴシン-1-リン酸受容体調整薬で、炎症性腸疾患(IBD)の治療薬として開発が進められている。NEJM誌2021年9月30日号掲載の報告。中等症~重症の活動期UC患者を対象にozanimodとプラセボを比較 研究グループは中等症~重症の活動期UC患者を対象に、10週間の導入期間において、コホート1ではozanimod群(ozanimod塩酸塩1mg[ozanimod 0.92mg相当])またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日1回経口投与し、コホート2では非盲検下でozanimod(コホート1と同用量)を投与した。10週時点で、各コホートにおいてozanimodに対し臨床的反応を示した患者をozanimod群またはプラセボ群に再び無作為に割り付け、二重盲検下で52週間まで(維持期間)投与した。 両期間の主要評価項目は、臨床的寛解率として、3項目(直腸出血、排便頻度、内視鏡)のMayoスコアで評価した。主要な副次評価項目は、臨床的反応、内視鏡的改善、組織学的治癒とし、階層的検定を行った。安全性についても評価した。臨床的寛解率は導入期18.4% vs.6.0%、維持期37.0% vs.18.5% 導入期間において、コホート1に645例、コホート2に367例が割り付けられ、計457例が維持期間に再び割り付けられた。 臨床的寛解率は、導入期間でozanimod群18.4%(79/429例)vs.プラセボ群6.0%(13/216例)(p<0.001)、維持期間でそれぞれ37.0%(85/230例)vs.18.5%(42/227例)(p<0.001)であり、両期間においてozanimod群がプラセボ群と比較して有意に高かった。 臨床的反応率も、導入期間(47.8% vs.25.9%、p<0.001)および維持期間(60.0% vs.41.0%、p<0.001)のいずれにおいてもozanimod群がプラセボ群より有意に高率であった。その他のすべての副次評価項目も、両期間においてozanimod群がプラセボ群より有意に改善した。 安全性については、ozanimod群の感染症(あらゆる重症度)発生率がプラセボ群と比較し、導入期間では同程度、維持期間では増加した。重篤な感染症の発生率は、52週の試験期間を通していずれの群も2%未満であった。肝アミノトランスフェラーゼ値の上昇は、ozanimod群で多くみられた。 なお、著者は、日常診療での幅広い患者集団においては結果が異なる可能性があること、長期データが不足していることなどを挙げて結果は限定的だとしている。現在、非盲検延長試験が進行中である。

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コロナ治療でイベルメクチン適応外使用に注意喚起/MSD

 MSDは10月12日、医療関係者向けの情報サイトで「COVID-19に対するイベルメクチンの処方について」と題した文書を掲載。腸管糞線虫症または疥癬の経口治療薬として国内承認されているイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)は、COVID-19の治療薬としては承認されていないため適応外使用となることを注意喚起した。イベルメクチンはコロナ治療薬として承認されていない イベルメクチンを巡っては、同剤を開発した米・メルク社が9月、COVID-19治療薬としての有効性と安全性のエビデンスについて分析した結果をステートメントとして発表。▽前臨床試験では新型コロナウイルス感染症に対する治療効果を示す科学的な根拠は示されていない▽新型コロナウイルス感染症患者に対する臨床上の活性または臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない▽大半の臨床試験において安全性に関するデータが不足している―とし、「規制当局によって承認された添付文書に記載されている用法・用量や適応症以外におけるイベルメクチンの安全性と有効性を支持するデータは、現時点では存在しない」との見解を示した。 さらに世界保健機関(WHO)は、COVID-19に対する治療薬としてイベルメクチンを使用することは、臨床試験以外では推奨されないとする声明を発表している。 日本国内におけるイベルメクチンの製造販売元であるMSDは今回の文書で、「本剤は COVID-19の治療薬として承認されていない」と改めて強調し、COVID-19に対して適応外使用された際の安全性情報の監視を継続するとしている。イベルメクチンの添付文書が改訂、重大な副作用に「意識障害」追記 PMDAは、10月12日付でイベルメクチンの添付文書を一部改訂。重大な副作用として「意識障害」の項を追加し、「昏睡、意識レベルの低下、意識変容状態等の意識障害が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行う」こと、および「意識障害があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明する」旨の記載が加えられた。

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