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妊婦はCOVID-19で中等症以上になりやすい/成育医研・国際医研

 国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センター 国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンターの共同研究チームの庄司 健介氏のチームは、妊婦の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した研究を発表した。この研究は、国立国際医療研究センターが運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、妊婦におけるCOVID-19患者の特徴に関する大規模な報告は日本初となる。妊婦はCOVID-19で中等症になりやすく、家族内感染も多い 研究は、2020年1月~2021年4月までの間に登録された15歳以上~45歳未満女性のCOVID-19入院例4,006人(うち妊婦は254人、非妊婦は3,752人)を対象に実施。研究の結果、妊娠以外の背景を揃えた患者群(妊婦187人、非妊婦935人)を比較したところ、中等症から重症の患者の割合は妊婦群18人(9.6%)、非妊婦群46人(4.9%)と、妊婦群の方の割合が高いことがわかった。また、妊婦におけるCOVID-19患者254人の患者背景を、軽症群224人、中等症から重症群30人に分けて比較したところ、中等症から重症群に至った患者では何らかの基礎疾患がある、または妊娠中期(14週〜)以降の患者が多いことが判明した。そのほか、妊婦の感染経路は家族からの感染が多いことがわかった。研究の概要【背景・目的】妊婦におけるCOVID-19の疫学的・臨床的な特徴の解明が求められる中で、COVIREGI-JPを利用し、(1)妊婦と非妊婦の新型コロナウイルス感染症の疫学的・臨床的な特徴の比較を行うこと、(2)妊婦における新型コロナウイルス感染症の中等症から重症に関連する要因を探索すること、の2つの目的についての検討を実施。【研究概要・結果】・研究対象2020年1月~2021年4月の間にCOVIREGI-JPに登録された15歳以上~45歳未満の女性のCOVID-19患者。・研究方法COVIREGI-JPに登録されている、対象患者の患者背景、重症度、治療内容などのデータを集計・分析。特に妊婦と非妊婦の患者背景を「傾向スコアマッチング解析」手法を用い揃えた上で、重症度を比較。また、妊婦患者を軽症群と中等症から重症群に分け、多変量解析で中等症から重症に関連する要因を探索した。【研究結果】・期間中に3万7,138人の患者情報が登録され、そのうち研究対象となった15歳以上~45歳未満の女性患者は4,006人。そのうち、妊婦は254人、非妊婦は3,752人。・妊婦は非妊婦に比べ、家庭内での感染が多いことがわかった(妊婦の39.4%、非妊婦の19.8%が家庭内でのCOVID-19の接触あり)。・集中治療室に入院した患者のうち、妊婦は6人(2.4%)、非妊婦は45人(1.2%)、死亡例は妊婦1人(0.4%)、非妊婦は3人(0.1%)だった。目的(1):妊婦と非妊婦の新型コロナウイルス感染症の比較・傾向スコアマッチング解析で、患者背景を揃えた妊婦(187人)と非妊婦(935人)の比較では、中等症-重症の割合が妊婦9.6%、非妊婦4.9%(P=0.0155)と、妊婦の方がより重症化している可能性が示唆された。目的(2):妊婦の新型コロナウイルス感染症中等症-重症に関連する要因の探索・妊婦患者254人を、中等症-重症(30人)と、軽症(224人)に分け、その背景を比較したところ、中等症-重症群の方が軽症群に比べて(1)妊娠中期(14週〜)以降の患者の割合が高い(93.1%vs.71.2%)、何らかの基礎疾患のある患者の割合が高い(16.7%vs.4.9%)ということがわかった。・多変量解析でも、中等症-重症群と、軽症群の比較では、妊娠中期以降と、何らかの基礎疾患の存在のオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ5.295(1.215~23.069、P=0.026)、3.871(1.201~12.477、P=0.023)とそれぞれ有意に中等症-重症と関連していることがわかった。 研究グループでは、「わが国の妊婦COVID-19の入院症例の実態が明らかになった。今後、妊婦に対するワクチンを含む予防や治療について考えていく上で、本研究の結果が重要な役割を果たすことが期待される。また、今回の研究はデルタ株やオミクロン株の流行が始まる前のデータであるため、今後デルタ株やオミクロン株などの変異株が妊婦に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考えられる」と今後の診療での活用を示唆している。 なお、この研究は「デルタ株やオミクロン株がまだわが国に存在しない時期に実施されているため、妊婦に対するこれらの変異株の影響については評価できない」としている。

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小児へのCOVID-19ワクチン接種の考え方/日本小児科学会

 12歳以下の小児への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、わが国でも検討されている中、日本小児科学会(会長:岡明[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表した。 この考え方では、COVID-19の小児流行の現況を説明するとともに、小児へのワクチン接種について重症化予防への期待について記している。感染状況とワクチンに関する知見について 国内の5~11歳のCOVID-19症例の大多数は軽症としながらも、「感染率が同年代人口の1~2%にとどまるなかでも、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されている」と指摘し、「今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増える」と注意を喚起している。 また、2歳未満(0~1歳)と基礎疾患のある小児患者では、重症化リスクが増大することを紹介し、「長期化する流行で行動制限が小児に与える直接的および間接的な影響は大きくなる」と懸念を示している。 小児へのCOVID-19ワクチンの現状について、国内で5~11歳を対象とする接種への承認申請は、現時点でファイザー社製のみであり、同ワクチンは従来のワクチンと比べ含有されるmRNAが1/3の製剤で、使用に際し注意が必要であること、海外のデータから、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されているが、新しい変異ウイルス(オミクロン株など)への有効性を示すデータは十分に得られていないことに注意を喚起している。 そして、米国(2021年11月3日~12月19日)で接種された5~11歳の小児への約870万回のファイザー社製ワクチン接種のデータについて、4万2,504人が自発的な健康状況調査に登録され、その結果2回接種後、局所反応が57.5%、全身反応が40.9%に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められたことを紹介。また、同期間に、米国の予防接種安全性監視システムには、4,249件の副反応疑い報告があり、このうち97.6%(4,149件)が非重篤だったこと、重篤として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)、11件が心筋炎と判断されたが、全員が回復したことも合わせて記している。以上から、5~11歳の小児では16~25歳の人と比べて一般的に接種後の副反応症状の出現頻度は低かったと米国でのデータを説明した。小児へのワクチン接種はメリットがあるが、きめ細かい対応も必要 小児のCOVID-19ワクチン接種について、以下の4項目で考えを伝えている。【ワクチン接種の考え方について】1)子どもをCOVID-19から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者など)へのCOVID-19接種が重要。2)基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待される。基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理などを事前に相談することが望ましいと考える。3)5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があると考えている。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防など)とデメリット(副反応など)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要。4)接種にあたっては、接種対象年齢による製剤(12歳以上用と5~11歳用のワクチンでは、製剤・希釈方法・接種量が異なる)の取り扱いに注意が必要と考える。また、集団接種を実施する場合においても、個別接種に準じて、接種前の問診と診察を丁寧に行い、定期接種ワクチンと同様の方法で実施することが望ましい。

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コロナワクチン有効性、年齢・併存疾患による低下の差は/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるChAdOx1-S(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)とBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)について、2回接種後20週以上の時点で、COVID-19関連の入院および死亡への有効性の低下は、限定的であることが示された。英国保健安全庁(United Kingdom Health Security Agency)のNick Andrews氏らによる調査の結果で、「高齢者と臨床的にリスクのある成人集団では、有効性の低下が大きかった」とまとめている。英国では、2020年12月からワクチン接種を開始。COVID-19の重症化や死亡への高い効果が実臨床データとして示されているが、2回目接種以降は時間経過とともに効果が低下する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を評価 研究グループは、test-negativeデザイン法を用いた症例対照研究で、イングランドにおける症候性COVID-19および関連する入院と死亡へのワクチンの効果を推定した。 ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を、参加者の年齢(16歳以上[全体]、65歳以上[高齢者]、40~64歳、BNT162b2については16~39歳も設定)および併存疾患等で分類し評価し、B.1.1.7(アルファ)変異株とB.1.617.2(デルタ)変異株に分けて有効性の低下を調べた。年齢や併存疾患等で低下に差、入院・死亡に対する有効性は維持 デルタ変異株による症候性COVID-19へのワクチンの有効性は、全体では、2回目接種後の早期の週にピークに達し(ChAdOx1-S群:2~9週目に67.6%、BNT162b2群:1週目92.3%)、その後20週目までにChAdOx1-S群44.3%(95%信頼区間[CI]:43.2~45.4)、BNT162b2群66.3%(65.7~66.9)に低下した。 有効性の低下は、65歳以上が40~64歳よりも大きかった。65歳以上では、ピークはChAdOx1-S群が1週目で62.0%、BNT162b2群は2~9週目で79.6%であったが、20週目までにそれぞれ38.0%、54.9%に低下していた。40~64歳は、ピークはChAdOx1-S群は2~9週目で62.0%、BNT162b2群は1週目87.7%であったが、20週目までにそれぞれ56.7%、69.2%に低下していた。 接種後20週目以降時点で、入院、死亡に対する有効性はいずれもあまり低下していなかった。同評価時点で、入院に対する有効性はChAdOx1-S群80.0%(95%CI:76.8~82.7)、BNT162b2群91.7%(90.2~93.0)であり、死亡に対する有効性はそれぞれ84.8%(76.2~90.3)、91.9%(88.5~94.3)であった。 また、入院に対するワクチンの有効性の低下は、健康な成人と比べて、65歳以上で臨床的にきわめて脆弱な人および40~64歳で基礎疾患を有する人で大きかった。

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認知症者の自動運転車の利用~ケアパートナーからの視点

 自動車の運転をやめさせることは、認知症高齢者の感情や健康に重大な影響を及ぼす可能性があり、このことはケアパートナーである家族にとっても問題となる。自動車の自動運転化は、認知症高齢者やケアパートナーにとって、自動車の運転を停止することやそれに伴う悪影響を緩和するうえで役立つ可能性がある。しかし、ケアパートナーを対象に認知症高齢者の自動運転車利用に対する考えを調査した研究は、これまで行われていなかった。カナダ・トロント大学のShabnam Haghzare氏らは、ケアパートナーの視点から、認知症高齢者における自動運転車の利用について、調査を行った。The Gerontologist誌オンライン版2021年11月19日号の報告。 認知症高齢者20例をこれまで/または現在介護している家族ケアパートナーを対象に、認知症高齢者の自動運転車の利用についての見解を評価するため、混合法研究を実施した。質問票および半構造化面接を用いて、認知症高齢者のケアパートナーにおける自動運転車の利用受け入れ状況と認知症高齢者に対する自動運転車の潜在的な有用性について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・ケアパートナーは、認知症高齢者の自動運転車の利用について、より高い社会参加の促進などのベネフィットを感じていることが示唆された。・しかし、ケアパートナーは、大きな懸念も抱いており、自分の家族の認知症高齢者が自動運転車を利用した場合、その信頼性や安全性が低いことを問題視していた。・主な懸念点は以下のとおりであった。 ●自動運転車が認知症高齢者に対応するように設計されていない点 ●認知症高齢者に特有の懸念ではなく、自動運転車自体に対する懸念点 ●自動運転の利用により認知症状が悪化する可能性 著者らは「本知見は、認知症高齢者でもよりアクセスしやすい便利な自動運転車の設計に役立つ可能性がある」としている。

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若年者の再発VTEへの抗凝固療法、6週が3ヵ月に非劣性/JAMA

 21歳未満の若い誘発性静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、6週の抗凝固療法は3ヵ月の同療法に対して、再発VTEリスクと出血リスクとのトレードオフに基づく非劣性基準を満たしたことが、米国・Johns Hopkins All Children's HospitalのNeil A. Goldenberg氏らによる無作為化試験「Kids-DOTT試験」で示された。VTEに対する抗凝固療法について、21歳未満の患者における至適な治療期間は不明であった。JAMA誌2022年1月11日号掲載の報告。5ヵ国42施設で417例を対象に無作為化試験 試験は、21歳未満の誘発性VTE患者に対する抗凝固療法について、6週投与は従来法の3ヵ月投与に非劣性であるとの仮説を検証するため、2008~21年に、5ヵ国42医療施設で登録された417例を対象に行われた(主要エンドポイントの最終受診評価は2021年1月)。主な除外条件は重度の抗凝固因子欠乏症またはVTE既往で、持続性の抗リン脂質抗体がなく、診断後6週時の再画像診断で血栓が解消または完全な閉塞は認められない患者を無作為化に2群に割り付け、6週(207例)または3ヵ月(210例)の抗凝固療法を行った。 主要有効性および安全性の評価は、治療割付盲検下の1年以内に、発生が中央で判定された症候性の再発VTEと臨床的に問題となる出血イベントであった。 主要解析はper-protocol集団における非劣性の評価で、非劣性の定義には、症候性再発VTEの絶対増加0%と臨床的に問題となる出血イベントの絶対リスク低下4%など、二変量のトレードオフが組み込まれた(二変量非劣性境界曲線の3つのポイント中の1ポイントとした)。主要有効性アウトカム1年累積発生率、6週群0.66%、3ヵ月群0.70% 無作為化された417例において、297例(年齢中央値8.3歳[範囲:0.04~20.9]、女性49%)が、主要per-protocol解析の基準を満たした。Kaplan-Meier法により、主要有効性アウトカムの1年累積発生率は、6週抗凝固療法群0.66%(95%信頼区間[CI]:0~1.95)、3ヵ月抗凝固療法群0.70%(0~2.07)だった。 両群の再発VTEおよび臨床的に問題となる出血イベントの絶対リスク差に基づき、非劣性が実証された。 有害事象の発生は、6週抗凝固療法群26%、3ヵ月抗凝固療法群32%で、最も頻度の高かった有害事象は発熱(それぞれ1.9%、3.4%)であった。

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ファイザー製コロナワクチン、5~11歳への接種を承認/厚労省

 厚生労働省は1月21日、ファイザー製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、用法・用量が異なる「コミナティ筋注 5~11歳用」の製造・販売を特例承認した。オミクロン株が急拡大し、新型コロナの収束の兆しが見えない中、欧米諸国でも小児へのワクチン接種に踏み切る動きがある。国内における接種開始は3月以降になる見通しだ。 ※画像は承認された「コミナティ筋注 5~11歳用」と同製品の海外製造バイアル(提供:ファイザー) 今回承認された「コミナティ筋注 5~11歳用」は、12歳以上に使用されている従来製品との相違点がいくつかあるので注意が必要だ。【形状】5~11歳用:バイアルのキャップ上面がオレンジ色従来製品:バイアルのキャップ上面が紫色【用法・用量】5~11歳用:本剤1.3mLを日局生理食塩液1.3mLで希釈。1 回0.2mLを計2回、通常3週間の間隔で筋肉内に接種。従来製品:本剤0.45mLを日局生理食塩液1.8mLで希釈。初回免疫は1回0.3mLを合計2回、通常3週間の間隔で筋肉内に接種。追加免疫では1回0.3mLを筋肉内に接種。【希釈方法】5~11歳用:希釈後の液は10回接種分(1回0.2mL)を有する。デッドボリュームの少ない注射針または注射筒を使用した場合、10回分を採取可能。従来製品:希釈後の液は6回接種分(1回0.3mL)を有する。デッドボリュームの少ない注射針または注射筒を使用した場合、6回分を採取可能。【接種時期・回数】5~11歳用:原則として、同一の効能・効果をもつ他のワクチンと混同することなく2回接種。従来製品:原則として、同一の効能・効果をもつ他のワクチンと混同することなく2回接種。通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過後に3回目の接種が可能。 今回はファイザー製コロナワクチンに対する承認であり、現段階では、国内でこのほかに承認されているモデルナ製ワクチン(スパイクバックス筋注)は12歳以上、アストラゼネカ製ワクチン(バキスゼブリア筋注)は原則として40歳以上とされている。

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耳からハエが何度も出てくる女の子【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第202回

耳からハエが何度も出てくる女の子pixabayより使用ゴキブリが耳に入ったらどうしたらいいのか、という話は耳鼻咽喉科の研修医レクチャーで聞いたことがあるかもしれませんが、耳からハエが出てきたらどうすればいいでしょうか?今日紹介するのは、耳から何度も死んだハエが出てくるという奇妙な現象です。Sethi S, et al.An unusual case of Munchausen syndrome by proxy.Indian J Psychiatry. 2012 Oct;54(4):389-90.ある日、12歳の女の子が耳鼻咽喉科から精神科に紹介されてきました。どうやら死んだハエが耳の中に入っていたとのことですが、親子に何か違和感があり、精神科に入院することとなりました。まぁこの時点で、ある程度確信はあったのかもしれませんが、入院中にハエが出てくればあの疾患の可能性が高くなるということです。やはり、入院後再び耳の中に死んだハエが出現しました。はて、これは一体どういうことでしょう。鼓膜の中からハエが出てきているのでしょうか。念のため頭部CTを撮影しましたが、体の中にハエがいそうな気配はありません。肉眼で観察しても、鼓膜にも異常はありません。主治医は「母親が子どもの耳にハエを入れた」と確信しました。この症例の診断名は、「代理によるミュンヒハウゼン症候群」です。よくよく見れば、論文のタイトルに答えが書いているんですけどね……。ズコー!代理によるミュンヒハウゼン症候群は、児童虐待とは異なり、子どもを傷付けることが目的ではなく、その行為によって周囲の関心を自分に引き寄せることで、精神的満足を得ようとする疾患です。つまり、「死んだハエが出てくる病気なんて、お母さんタイへンね」、「なぜ死んだハエが出てくるのだろう?」という関心を引き付けることに目的があるわけです。決して、子どもを傷付けようとしているわけではありません。その後、病院のサポートによって(主には母親への介入)、女の子の耳には死んだハエは出現しなくなったそうです。この世の中にある“奇病”と呼ばれるものの中には、もしかすると代理によるミュンヒハウゼン症候群が隠れているのもしれませんね。

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第92回 0号カプセルを飲んだ経験ありますか?模擬モルヌピラビル服用実験

前回取り上げた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の軽症者向けとして世界初の経口薬のモルヌピラビル(商品名・ラゲブリオ)。実はこの添付文書を眺めていた時から私は非常に気になっていたことがあった。それはカプセル剤であるこの薬のサイズがあまりにも大きいことである。大きさは長径が21.7mm、短径7.64mm。つまり0号カプセルと言われるものである。1日2回、1回当たりの服用量は4カプセル服用なので1日の服用合計は8カプセル。ちなみに医薬品医療機器総合機構のデータベースで検索してみると日本国内のカプセル剤は約850品目あり、0号カプセルを使っているのはうち16品目。多くが抗がん剤である。裏を返せば服用しなければ命にかかわるようなもので、つまるところ市販化に当たって極端な言い方をすれば99%薬効に重点が置かれて開発されたものだろうと推察できる。モルヌピラビルの場合、治療薬が少ない新型コロナという社会的ニーズに合わせた速度戦の結果、こうなったのだろう。私自身はこれまでこの0号カプセルを服用したことはおろか目にしたことすらない。こうなると試さないと気が済まない性分だ。幸い知人の薬剤師からAmazonで入手可と聞いて早速注文。翌日届いたそれで模擬モルヌピラビル服用実験をしてみることにした。箱には「セルロースホワイトカプセル」となっていて、取り出した見た目はやや下衆な表現だが「大きな蛆虫」のよう。私の小指の第一関節分くらいはある。箱には「ノンカロリーカプセル」と半ばどうでも良い情報もご丁寧に印字されている。水を用意して1カプセル目を口にする。普段、錠剤を飲む感覚で口に水を含み飲み込む。飲み込む際にカプセルが喉の入口に軽く触れて「うっ」となる。たぶん水の量が少なかったのだろうと思い、2カプセル目は水を口一杯パンパンになるまで注ぎ込んで飲み込む。水を口に注いでいる間に口蓋のあちこちにカプセルがぶつかるのが気持ち悪い。いざ飲み込むと、喉にぶつからずに飲む込むことができた。3カプセル目は2カプセル目と同様。4カプセル目は2~3カプセル目と同様に服用したつもりだったが、飲み込む際に一瞬、また喉の入口に触れてドキッとする。その直後、大量の水が喉に突撃してくるような感じになり飲み込むことができた。しかし、飲み終わると大きなゲップが出てしまい、その後1~2分間は喉元がピクピクとけいれんする。喉には相当の負担だったようだ。そんなこんなをSNSに投稿すると、薬剤師の皆さんから「顔を下に向けて飲むと良いですよ」とアドバイスされる。ということで、夜に一気に4カプセルを口に放り込み、水を口に含んでやや俯いて飲み込んだ。確かに何の苦もなく飲める。ふと考え込んでから、下を向くとカプセルが浮力で口の中の喉に近い部分に浮き上がってくるから飲みやすいのだろうと理解できた。翌日は朝の段階で4カプセルを口に入れ、下を向かずに飲み込んでみる。飲み込むことはできたが、やはり口の中に水を含んでいる最中、4個のカプセルが互いにピンボールゲームのようにあちらこちらにぶつかって何とも気分が悪い。で、それで懲りずに今度は具合のかなり悪い人が飲む想定で、ベッドに横になったまま口に4カプセルを含み、350mlの小さなペットボトルのお茶で流し込もうとしたが、喉にカプセルが直撃して思いっきりむせてしまった。布団はビシャビシャで結局すべてのカプセルを吐き出してしまった。悔しいのでそれを一つ一つもう一度口に入れ、寝たまま服用にもう一度トライ。なんとか飲み込めたもののまるでカプセルが喉に張り付いたかのような違和感があり、その後もお茶をゴクゴク飲んだ。気を取り直して、今度はよくありがちな上半身をベッドから起こした姿勢で4カプセルを下を向かずに飲む。これは普通に椅子に座って4カプセル一気飲みした時と同様の飲み難さ。ということで同じ姿勢のまま再び顔を下向きにして飲み込む。やっぱりこれが一番楽である。結局、2日目の朝だけで16カプセルも飲んでしまい、合わせて大量のお茶も飲んだせいかかなりお腹いっぱいで昼食はパスした。まあ、この点では「ノンカロリー」という商品のキャッチも意味を持ち始めたかもしれない。名付けて「ノンカロリー0号カプセルダイエット」とでも言おうか。ちなみに私だけでは何なので、共通テストを終え、都内の民営自習室に籠って勉強をしている娘を自習室近傍のお店での昼食に誘い、0号カプセルを渡して飲ませてみた。私がカプセルをテーブル上に置いて「実験のつもりで飲んでみな」と言うと、「えっ、何このデカいの。中に毒仕込んだりしてないよね?」との反応。親を何だと思ってるんだ。「今話題のある薬と同じ大きさなんだよね」とだけ教えておく。しばらく怪訝そうに手に持ったカプセルを眺めていた娘が、「それもしかしてさ、あの不気味な赤いカプセルの薬? あのコロナの」とのたまう。おお、勘所が良い。ということで、その辺の種明かしやこれまで父親の私がすでに実験していたことを伝えると、「おお、やってみる」とのこと。ややトンデモなところだけは私に似たようだ。娘が口にカプセルを1個放り込み水を口内に注ぐ。頬を膨らましたまま目を白黒させ、次第に眉間にしわを寄せ始めた。飲み込んだと思いきや、「うー、ダメ。口の中に残っている」と言う。もう一度口に水を含んでトライするもこの時は終始、眉間にしわを寄せたまま、結局飲み込めず。3度目の正直でやっと飲み込めた。もっとも本人によると「もう半分溶け始まっていたのか、口の中でカプセルの変形が始まっていた」とのこと。飲み終わった感想は「この大変さを考えると、やっぱりコロナにかからないにこしたことないね」と。そして「薬の飲みやすさって一番最後に考えられることなんだね」と言う。親バカ半分かもしれないが、子供の感じ方は面白い。余談にはなるが、娘が小学校5年生の時、医薬品に関連したテレビCMで「超品質」(分かる人にはわかってしまうが)というキャッチフレーズが使われ、「これどういう意味?」と聞かれ、説明したことがある。聞いた本人の反応は「人は後ろめたいことほどカッコよく言うんだね」というものだった。さてモルヌピラビルの件に話を戻そう。この0号カプセルを飲み込むのは嚥下機能が低下した高齢者では相当つらいだろうと思う。そして発熱で弱っている人や咳がある人は普通に飲めるだろうか?別にメルクを批判しているわけではない。今は緊急時なのである程度有効性があるものを世に出すのは大きな意味があるし、メルクは賞賛に値する。まあ、その意味では開発側も飲み難さ承知の苦渋の思いで、世に出したのではないだろうか?それでもなお現場で情報提供するMSDの皆さんには、この飲みにくさをどうするべきか、具体的に言えば顔を下向きにするとカプセル剤は飲みやすいというごく単純な情報であっても、よくある吸入薬の動画解説と同じように積極的な情報提供をしてほしいと思う。同じことは実際に患者に接する医療従事者の皆さんにも訴えたい。私がこう言いたいのはこの件で過去のある出来事を思い出したからでもある。今から四半世紀前に私はあるHIV感染者と知り合った。いわゆる非加熱血液製剤により不幸にもHIVに感染させられてしまった被害者だ。その人が私の前に500円玉のような、トローチみたいな粒を差し出し、「かじって飲んでみて下さい」と言った。訳も分からず、とりあえず口に含んでバリバリ歯で噛み砕いた。一言で言えば「不味い」、本来なら大量に口にすることはない化学調味料を一気に口の中一杯に突っ込まれたような感覚だった。私のまずそうな表情を見て取ったのだろうが、その人は顔色一つ変えずこう言った。「それHIVの薬ですよ。私たちは『エイズ野郎』と周囲に蔑まれ、いつもビクビクしながら生きている。少しでも前向きになるために治療をするわけですが、そのためということでこんなもの飲まされているんです。これを飲むたびにヒトとしての存在を否定されているかのようです。わかります?」この時、私が口にしたのはジダノジン(ddI、商品名・ヴァイデックス)だった。新型コロナに対する差別問題は以前ほど耳にしなくなった。とはいえ、テレビに出演する一般人の元感染者のほとんどがモザイクで顔を隠している状況は、減ったとはいえ差別が現存することをうかがわせる。そんな状況下で感染者がこの薬を服用した時どんな思いに至るだろうと考えずにはいられない。飲みやすくするための方法について積極的な情報提供を訴えるのは、ただでさえ感染という現実で苦しんでいる彼らにこれ以上の苦痛を味あわせないためである。同時に今回の1件で改めて考えたのが、新型コロナの法的取扱いに関する議論である。巷では感染症法上の位置付けを5類相当にすべきという声もある。奇しくもケアネットでも医師1,000人へのアンケートを公表している。いずれは5類になるだろうことは多くの医師が認識しているだろうし、このアンケートで最も多かった「今後状況の変化に応じて5類相当に」という回答も直近でと言うよりは「将来的に」という比較的ロングスパンの認識だろうと思う。また、「どのような状況になれば、5類相当に変更すべきと考えますか?」という質問では「経口薬が承認されたら」という回答が最も多いが、それについても今のモルヌピラビルのことを意味しているわけではないだろうとも思う。そもそも今でも新型コロナの治療は従来の感染症とはかけ離れ過ぎた現実がある。モルヌピラビル登場までに適応を取得した5種類の薬剤のうち2種類は抗体医薬品であり、デキサメタゾンを除けば、どれもかなりの高薬価。とりあえず現状は有効性が認められたものは総動員する過渡期で、まだまだ「牛刀で鶏を割く」がごとし。というか田んぼのあぜ道に無理やりレーシングカーを走らせているようなアンバランスさがあると言ってもいいかもしれない…。「葦の髄から天井を覗くな!」とお叱りを受けるかもしれないが、少なくとも私自身はこの0号カプセルで提供するしかなかったモルヌピラビルの現実が、まだまだ新型コロナの5類は無理と暗示しているように思うのだ。

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治療抵抗性うつ病への薬理学的増強戦略~包括レビュー

 治療抵抗性うつ病(TRD)は、治療転帰不良であることは言うまでもないが、最良の薬理学的増強戦略にどの抗うつ薬を用いるべきかに関するエビデンスは十分ではない。イタリア・Azienda Socio Sanitaria Territoriale MonzaのAlice Caldiroli氏らは、TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関するエビデンスを包括的にレビューした。International Journal of Molecular Sciences誌2021年12月2日号の報告。 TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関する利用可能なエビデンスを特定するため、主要な精神医学データベース(PubMed、ISI Web of Knowledge、PsychInfo)より検索を行った。TRDに対する薬理学的増強療法を主なトピックスとし、TRDの明確な定義が記載されている英語論文を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・最も研究されていた薬剤は、アリピプラゾールとリチウムであった。・有効性に関して、最も強力なエビデンスが示された薬剤は、アリピプラゾールであった。・オランザピン、クエチアピン、cariprazine、リスペリドン、ziprasidoneは、良好な結果が認められたが、その程度は低かった。・ブレクスピプラゾール、esketamine点鼻薬については、実臨床でのさらなる研究が求められる。・ケタミン静脈内投与は、短期的な抗うつ効果が認められた。・補助的な治療薬(抗てんかん薬、神経刺激薬、プラミペキソール、ロピニロール、アスピリン、メチラポン、レセルピン、テストステロン、T3/T4、naltrexone、SAM-e、亜鉛)の有効性に関するエビデンスは限られており、その有効性を正確に推定することは困難であった。・ラモトリギン、ピンドロールに関するエビデンスは、否定的なものであった。 著者らは「リチウムに関するデータは多少の議論の余地があるものの、TRD患者に対する効果的な増強療法として、アリピプラゾールとリチウムが有効であることが示唆された。他の薬剤については、信頼できる結論を導き出すことができなかった。これらの結果を明らかにするためには、標準化されたデザイン、用量、治療期間を用いて制御された比較研究が必要であろう」としている。

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18歳未満の新型コロナ感染者、糖尿病発症率が増加/CDC

 米国・CDCの研究で、18歳未満のCOVID-19患者において、SARS-CoV-2感染後30日以降における糖尿病発症率が増加することが示唆された。CDCのCOVID-19 Emergency Response TeamのCatherine E. Barrett氏らが、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年1月14日号に報告した。 COVID-19は糖尿病患者において重症となるリスクが高い。また、欧州ではパンデミック中に小児における1型糖尿病診断の増加および糖尿病診断時の糖尿病ケトアシドーシスの頻度増加と重症度悪化が報告されている。さらに成人においては、SARS-CoV-2感染による長期的な影響として糖尿病が発症する可能性が示唆されている。 CDCでは、SARS-CoV-2感染後30日以降に糖尿病(1型、2型、その他)と新規に診断されるリスクを調べるため、2020年3月1日~2021年2月26日のIQVIAのヘルスケアデータを用いて構築した後ろ向きコホートから、18歳未満のCOVID-19患者の糖尿病発症率を推定し、パンデミック中にCOVID-19と診断されなかったかパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器感染症と診断された患者で年齢・性別が一致した患者の発症率と比較した。さらに、COVID-19に関連する可能性がある外来診察患者を含むデータソース(HealthVerity、2020年3月1日~2021年6月28日)で分析した。 その結果、糖尿病発症率は、COVID-19患者のほうがCOVID-19患者以外(IQVIAでのハザード比[HR]:2.66、95%信頼区間[CI]:1.98~3.56、HealthVerityでのHR:1.31、95%CI:1.20~1.44)およびパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器疾患と診断された患者(IQVIAでのHR:2.16、95%CI:1.64~2.86)より有意に高かった。

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コロナワクチン3種、感染・入院・死亡予防効果の経時変化/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する3種類のワクチン、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、およびAd26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson製)はいずれも、入院および死亡のリスクを低下させる効果は長期間持続していたが、免疫低下とB.1.617.2(デルタ)変異株出現の両方に起因し、感染予防効果の低下がみられた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDan-Yu Lin氏らが、ノースカロライナ州の住民を対象としたサーベイランスデータの解析結果を報告した。米国におけるCOVID-19ワクチンの感染予防効果の持続期間は明らかになっておらず、2021年夏にみられたワクチン接種後の感染増加の原因が、経時的な免疫低下かデルタ変異株の出現か、あるいはその両方かは不明であった。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。住民約1,060万人を対象に3種類のCOVID-19ワクチンの有効性を検証 研究グループは、ノースカロライナ州のCOVID-19サーベイランスシステム(North Carolina COVID-19 Surveillance System)およびワクチンマネジメントシステム(COVID-19 Vaccine Management System)を用い、2020年12月11日~2021年9月8日までの9ヵ月間における、ノースカロライナ州の住民1,060万823人のCOVID-19ワクチン接種とアウトカムのデータを抽出した。 BNT162b2、mRNA-1273およびAd26.COV2.Sの3種類の各ワクチンの有効性について、Cox回帰モデルを用い、COVID-19発症、入院および死亡の現在のリスク低下効果を、ワクチン接種からの経過時間の関数として推定した。3種類とも経時的に感染予防効果は低下したが、入院・死亡の予防効果は持続 mRNAワクチンであるBNT162b2(1回30μg)およびmRNA-1273(1回100μg)の2回接種については、COVID-19に対する有効率は1回目接種2ヵ月後でそれぞれ94.5%(95%信頼区間[CI]:94.1~94.9)および95.9%(95.5~96.2)、7ヵ月後では66.6%(65.2~67.8)および80.3%(79.3~81.2)であった。早期の接種者では、デルタ変異株が優勢となった6月中旬から7月中旬にかけて、BNT162b2およびmRNA-1273ワクチンの有効率がそれぞれ15%ポイント、10%ポイント低下した。 Ad26.COV2.S(5×1010ウイルス粒子)の1回接種では、COVID-19に対する有効率は接種1ヵ月後で74.8%(95%CI:72.5~76.9)であったが、5ヵ月後には59.4%(57.2~61.5)まで低下した。 2種類のmRNAワクチンのほうがAd26.COV2.Sより有効率が高かったものの、3種類のワクチンはすべて、感染予防効果よりも入院および死亡の予防効果が長期にわたり維持されていた。

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ICU入室COVID-19患者にアトルバスタチンは有効か?/BMJ

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、アトルバスタチンによる治療はプラセボと比較し、安全性は確認されたが、静脈/動脈血栓症、体外式膜型人工肺(ECMO)使用および全死亡の複合エンドポイントの有意な減少は認められなかった。イラン・Rajaie Cardiovascular Medical and Research CentreのBehnood Bikdeli氏らINSPIRATION-S試験グループが、同国11施設で実施した2×2要因デザインの無作為化比較試験の結果を報告した。BMJ誌2022年1月7日号掲載の報告。アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例を比較 INSPIRATION-S(Intermediate vs Standard-Dose Prophylactic Anticoagulation in Critically-ill Patients With COVID-19:An Open Label Randomised Controlled Trial [INSPIRATION] -statin)試験は、ICUに入室した18歳以上のCOVID-19患者をアトルバスタチン(20mg 1日1回経口投与)群とプラセボ群に無作為に割り付け、退院状況にかかわらず無作為化後30日間投与し行われた。 有効性の主要評価項目は、30日以内の静脈/動脈血栓症、ECMO使用および全死亡の複合とした。事前に規定した安全性の評価項目は、肝酵素値の基準値上限3倍以上の患者の割合、臨床的に診断された心筋症などであった。有効性および安全性の評価は、治療の割り付けについて盲検化された臨床イベント委員会が行った。 2020年7月29日~2021年4月4日に、605例が無作為化された(アトルバスタチン群303例、プラセボ群302例)。なお、605例中343例は、先行して行われた、予防的抗凝固療法としてのヘパリン(エノキサパリン)の中等量と標準量を比較するINSPIRATION試験にも無作為化されており、262例はINSPIRATION試験終了後に無作為化された。 INSPIRATION-S試験の主要解析対象集団は605例中、適格基準を満たしていなかった14例と試験薬が投与されなかった4例を除く587例(アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例)で、患者背景は年齢中央値57歳(四分位範囲:45~68)、女性256例(44%)であった。静脈/動脈血栓症・ECMO使用・全死亡の複合エンドポイントに両群で有意差なし 主要評価項目のイベントは、アトルバスタチン群で95例(33%)、プラセボ群で108例(36%)に認められた(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.58~1.21)。死亡は、アトルバスタチン群90例(31%)、プラセボ群103例(35%)であった(OR:0.84、95%CI:0.58~1.22)。静脈血栓塞栓症の発現率は、アトルバスタチン群2%(6例)、プラセボ群3%(9例)であった(OR:0.71、95%CI:0.24~2.06)。 心筋症は両群とも確認されなかったが、肝酵素値上昇はアトルバスタチン群で5例(2%)とプラセボ群で6例(2%)に認められた(OR:0.85、95%CI:0.25~2.81)。 なお、著者は「全体のイベント発生率が予想より低値であったため、臨床的に重要な治療効果を排除することはできない」とまとめている。

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進まない追加接種…日医の見解は?

 オミクロン株の急拡大に伴い、首都圏を含む13都県に「まん延防止等重点措置」が決定した中、日本医師会・中川 俊男会長は、3回目の追加接種やエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)への優先的対応、オミクロン株の特徴的な症状などについて、国内の現況や諸外国のデータを踏まえ、記者会見で見解を示した。副反応を懸念か、モデルナ製ワクチンに正しい理解を 中川会長は、伸び悩む3回目接種の実施割合に関して、「ワクチンの供給や配送の問題もあるが、比較的確保できているモデルナ製ワクチンについて、国民の理解が十分でないのも(追加接種が進まない)原因の1つかもしれない」と懸念を表した。 モデルナ製ワクチンは、ファイザー製ワクチンと比較して10~20代男性の心筋炎・心膜炎リスクが高いとの報告がある。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に比較するとその可能性は軽微であり、副反応の多くは軽症で済むことが知られている。 会長は、(1)他年代の男性や女性においてそのようなリスクは見られないこと、(2)1・2回目と種類の異なるワクチンを接種すること(交互接種)も可能で、むしろ中和抗体が高くなることなどを説明し、モデルナ製ワクチンの安全性と有効性に正しい理解を求めた。参考)10代・20代の男性と保護者へのお知らせ~新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について~(厚労省)生活を支えるためには教育現場への優先的対応も不可欠 社会機能を維持するためエッセンシャルワーカーへの追加接種や濃厚接触者の待機期間短縮(10日→6日)など、優先的な対応が呼び掛けられている。政府が示す「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、継続が求められる主な業種が示されているものの、医療・福祉関係者ほか具体的な対象は地方自治体や各事業者に任されている現状だ。 中川会長は、東京都で直近1週間の10代以下の感染者数が前の週の6倍に上っていることを挙げ、「保育・教育現場に感染が広がると、(エッセンシャルワーカーを含む)保護者が業務に従事できなくなる恐れがある」と懸念。教育現場を支える学校の教職員や保育士などもエッセンシャルワーカーに含まれることを明確化するよう要請した。 また、小児のワクチン接種について、「子供から家庭感染に広がる懸念もあり、これまで対象とならなかった11歳以下、とくに重症化リスクがある基礎疾患がある子供達に対しても新型コロナワクチンの接種を進めていく必要がある」と指摘した。現在、ワクチン接種を希望する5~11歳の子供が速やかに接種できるような体制整備が進められている。オミクロン株の「軽症」を甘く考えるべきではない 中川会長はオミクロン株の症状について、海外や国内の症例報告を参考に以下の特徴を説明した。(1)嗅覚障害や味覚障害を訴える割合が少なく、発熱・倦怠感・上気道症状が多い(2)割合として重症化率は低いものの、日本の重症度分類を知っておく必要がある 中等症Iは呼吸困難や肺炎所見を示し、中等症IIは酸素投与が必要な症例、重症は人工呼吸器管理またはICUへの入室が必要な症例とされる。よって、肺炎所見がなければ医学的には軽症に分類されるが、個々人にとっては高熱や全身症状、上気道症状など、つらい症状が多い。  続いて同氏は、高齢者の感染者数が少ないことから、現時点で高齢者の重症化リスクは判断すべきでないとし、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株の2~3分の1との報告もあるが、COVID-19自体の重症化リスクがインフルエンザより二桁高いことを考慮すると、危機感を持つべき感染症であることは変わらないと説明。 その上で、オミクロン株の感染力の強さから、医療従事者への感染などから医療の提供体制を制限せざるを得ない状況も生じているとし、「今後発生する多数の軽症者に対する医療提供体制を整備するなど、これからもCOVID-19の収束を目指して粘り強く邁進していく」とまとめた。

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フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火【Dr. 中島の 新・徒然草】(409)

四百九の段 フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火コロナ第6波は大変なことになっています。いくらオミクロン株が重症化しにくいといっても、感染者数自体が増えてしまったら重症者の絶対数が増え、やはり医療機関は逼迫してしまいます。できるだけ個々の人に予防に努めていただき、何とか第6波を凌ぐしかないですね。「コロナはただの風邪」というためには、第8波や第9波まで待つしかありません。さて、この1週間のニュースで驚かされたのは、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火です。元々はフンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島に分かれていたのが、2009年の噴火で地続きになったので、名前のほうも繋がりました。さすがに長過ぎる名前なので、以下フンガ・トンガ火山と呼ぶことにします。今回は、2022年1月15日に大噴火を起こしました。衛星からの映像を見ると、その噴煙の規模は半径260kmにも及び、これは北海道がすっぽり収まってしまうサイズです。とはいえ、この半径260kmが吹っ飛ばされたというわけではなく、あくまでも噴煙が拡がったというもの。火山から約60kmの距離にあるトンガ王国は、津波や火山灰の被害には遭ったものの、直接破壊されたわけではありません。今回は周囲が海に囲まれた火山だったせいか、火砕流がトンガ王国に到達するということもなかったようです。でも、もし阿蘇山がこの規模で噴火したら、あっという間に火砕流が九州全体を覆ったことでしょう。阿蘇山はわかっているだけでも過去4回、VEI-7以上の破局噴火を起こしました。VEIとは火山爆発指数(Volcanic Explosivity Index)で、数字が大きくなるほど規模が大きくなり、7以上が慣習的に「破局噴火」と呼ばれています。阿蘇山の噴火の中でも、一番最近のAso-4と呼ばれるものは8万8,000年前に起こったもので、VEI-8の規模だったそうです。このときの火砕流は、160km離れた山口県(当時は地続き)にまで達しました。また、日本での直近の破局噴火は、7,300年前に起こったVEI-7の鬼界カルデラの噴火で、その時の火砕流は九州南部まで達して、南九州の縄文人を絶滅させたと言われています。つまりは、火砕流が海を渡ったということになるんですかね。現在の日本でこの規模の噴火が起こったら、大変な被害が出るどころか、国家の存亡にかかわります。だいたい日本では、1万年に1回程度の頻度で破局噴火が起こっていますが、こんなものは予測も予防もできたもんじゃありません。今回のフンガ・トンガ火山の噴火は、VEIで5~7と諸説あります。VEI-7だと観測史上最大の規模ですが、VEI-6だと1991年のピナトゥボ火山(フィリピン)に匹敵する大きさになります。驚くのは日本に到達した津波で、通常と違って「空振(くうしん)」という衝撃波によって引き起こされたのではないかとのこと。というのも、日本への経路の途中にあるサイパン島やミクロネシア領ポンペイ島で大きな潮位の変化がみられなかったことと、小笠原諸島の父島での潮位変化が気象庁の予想よりも2時間も早かったことなどが、いつもの津波と違っているからです。空振による津波は前代未聞なので、気象庁も解釈に困ったことでしょう。さて、誰もがスマホを持つ時代になったので大量の映像がYouTubeにアップされていますが、その中でも印象に残ったものは、救命胴衣をつけて津波をバックに自撮りをしている若者たちです。当然のことながら津波にのみ込まれてしまうのですが、救命胴衣をつけているので平気、波にのまれても自撮り棒は手離しません。津波も舐められたものです。とはいえ、救命胴衣さえつけていれば波の上に浮かぶので大丈夫なわけですね。津波が来そうになったら高いところや遠くに逃げるのもさることながら、救命胴衣をつけることが大切だということがわかりました。発想の転換、恐るべし!ということで、いろいろ考えさせられた火山噴火でした。我々自身の防災の参考にいたしましょう。最後に1句大寒を 異国の火山が 吹き飛ばす

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急性ポルフィリン症〔acute porphyria〕

1 疾患概要■ 概念・定義ポルフィリン症とはヘム合成経路に関与する8つの酵素いずれかの先天異常が病因でヘム合成経路(すなわち、律速酵素である第1番目のデルタアミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS))が亢進し生じる疾患の総称。ポルフィリン代謝異常に基づく症候を呈し、ポルフィリンやその前駆物質が大量に生産され、体内に蓄積し、尿や糞便に多量に排泄される。ポルフィリン症は、病因論的には本経路の異常が生じる主たる臓器の違いにより肝型と骨髄型の2型に大別される(図1)。臨床的には急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症〔ADP〕、急性間欠性ポルフィリン症〔AIP〕、遺伝性コプロポルフィリン症〔HCP〕、多様性ポルフィリン症〔VP〕)および、光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症〔CEP〕、晩発性皮膚ポルフィリン症〔PCT〕、肝性骨髄性ポルフィリン症〔HEP〕、骨髄性プロトポルフィリン症〔EPP〕および、間欠期のHCPとVP)とに分けられる。AIP以外の急性ポルフィリン症は皮膚症状も呈し、皮膚ポルフィリン症でもある。また、EPPの症例で病因遺伝子がフェロキラターゼでは無く、ALAS2遺伝子の機能獲得型変異やALAS2の安定性を制御する蛋白ClpXの遺伝子異常が病因となった症例も近年報告されており、病因遺伝子異常は2種類増えた。図1 ヘム合成経路と異常症画像を拡大する■ 疫学報告は、本症の知見が高まった1966~1985年の間になされたものが大半であり、ここ10年間の報告はむしろ減少している。次第にありふれた疾患として認識されるようになり、報告が減ったと考えられ、実際はこれよりはるかに多い症例があるものと思われる。急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで、ついでHCP、VPと続く。ADPはきわめてまれである。1980~1984年の全国調査ではポルフィリン症の有病率は、人口10万人対0.38人とされているが、その10倍との報告もある。厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班による2009年の調査では、1年間の受療者は35.5人と推定されているが、欧州の発症率(5.2人/100万人)と同等として計算すると648人となることにより、わが国では多くの未診断症例が埋もれている可能性が高いと思われる。■ 病因ヘムは、生体内においては、主に骨髄と肝臓で合成されている。約70~80%のヘムは、骨髄の赤血球系細胞で合成され、グロビンに供給されヘモグロビンを形成する。残りは主に肝臓で合成され、シトクロムP450などのヘム蛋白の配合族として利用されている。ヘム合成経路の律速酵素は、第1番目の酵素であるALASであり、本酵素活性の増減が細胞内ヘム蛋白量を調整している。ALAS酵素活性は、最終産物であるヘムにより、肝臓ではネガティブフィードバックを受けており、ヘムの量は一定に保たれる。ALASの酵素活性は、ヘム合成経路で最も低い(したがって律速酵素たりうる)。ポルフィリン症の病因は、それ以外のヘム合成系酵素の活性が遺伝子異常により低下し、ALAS活性より低くなることで、本経路の異常が生じることである。ウロポルフィリン(UP)、コプロポルフィリン(CP)、プロトポルフィリン(PP)などのポルフィリンの蓄積が光線過敏性皮膚炎の病因であることは確定しているが、後に述べる急性発作(神経系の機能異常が病因)を引き起こす機序は未確定である。上流の基質であるポルフォビリノーゲン(PBG)、およびALAの増加を病因とする神経毒性前駆物質説、ならびに、ヘム蛋白やヘム酵素の機能低下を病因とするヘム欠乏説があり、どちらが主であるかの決定的なデータはいまだみられない。なお、最終産物であるヘムの低下は、ネガティブフィードバック機序を介してALASの酵素活性を増加させ、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況をさらに助長させる。したがって、この酵素活性のバランスに影響を与える何らかの誘因(薬物など)により、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況がわずかに増強されただけで、悪循環の過程を経て、急性に病状の悪化(急性発作)を生じる。誘因としては、外傷、感染症、ストレス、甲状腺ホルモン、妊娠、あるいは飢餓など(狭義の誘因)、バルビタール、サルファ薬などの誘発薬剤、ヘム合成系酵素を直接障害し、ヘム合成能力をヘムの需要量以下に低下させる(発症剤)、セドルミッド、グリセオフルビンなどが挙げられる。薬剤については、下記のウェブサイトに記載されているので参照していただきたい。The American Porphyria Foundation(APF)European Porphyria Network(EPNET)■ 症状1)急性ポルフィリン発作腹部症状、精神症状、神経症状(三徴)。急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ、後にヒステリーを思わせるような精神症状を呈し、最後には四肢麻痺、球麻痺などの神経症状を呈し、死に至ることもある急性発作がみられる。このときみられる腹部症状に対応する器質的な異常は認められず、機能的異常によるものと考えられている。このように、病状の進行に応じて多彩な症候を呈するので、種々の間違った診断の下に治療されるケースが多い。(1)腹部症状:腹痛、嘔気、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満など(2)精神症状:不眠、不安、ヒステリー、恐怖感、興奮、傾眠、昏睡など(3)神経症状:四肢脱力、知覚異常、言語障害、嚥下(飲み込み)障害、呼吸障害など2)光線過敏性皮膚炎HCPおよびVPでは、光線過敏性皮膚炎がみられることもある。3)非発作時(間欠期)無症状■ 予後いったん発症すれば、死亡率は20%を超え、予後不良と考えられていた。これは、診断がつかないまま、バルビタールなどの使用禁忌薬やほかの誘因が重なって、病状が悪化した症例が多いことも原因であり、診断がつき、適切な治療が行われた場合、大半は完全に回復する。繰り返し発症する症例では、発症に対する不安神経症を呈することもあり、発症早期から適切な治療をすることが望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ヘム合成経路の酵素活性の低下は、その酵素による反応部位より上流の基質の増加と最終産物であるヘムの低下を引き起こす。したがって、増加した基質(ALAおよびPBG)や基質の代謝産物であるUPおよびCPなどを測定することにより、酵素異常の部位がわかる。臨床症状、検査値などを含め総合的に診断することが必要だが、検査値で考えると下に示した図2のフローチャートに従って検査を進めることになる。本症では、病因となる遺伝子異常を持っているが、いまだ発症していない人(潜在者)が少なからずみられる。その発症前診断には、上記のような代謝産物の測定および酵素活性の測定では不十分なことがあり、遺伝子診断が必要となることが多い。図2 急性ポルフィリン症診断のフローチャート画像を拡大する■ 検査成績(ポルフィリン関連)血中および尿中のPBG、ALA、ポルフィリンなどの値は、各種ポルフィリン症の病型に応じて異なるが、急性ポルフィリン症に共通する(まれな病型であるADPを除く)所見として尿中PBGの増加がある(定性的に調べる検査であるWatson-Schwartz法で陽性)。また、尿中ポルフィリンも増加し、肉眼的には特有のぶどう酒色(ポルフィリン尿)を呈する(10~30%の症例でみられる)。しかし、ADPやAIPでは、尿中ポルフィリンはあまり増加せず褐色調に留まることが多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性発作の予防誘因を避けるように指導することが大切である。飢餓が誘因となるので、十分な摂食をさせる(ダイエットは禁)。また、医療機関での薬剤投与に注意が必要となる。患者には使用可能薬剤の一覧などの携帯を勧める。月経に伴い急性発作を起こす症例では、LH-RHアナログを用いて、月経を止めることも効果がある。■ 発症時の治療1)グルコースを中心とした補液詳細な機序は不明だが、ALASの酵素活性を抑制し、急性発作を改善させるといわれている。わが国で、最も一般的に行われている治療法。インスリンを併用するとさらに効果が増す。2)ヘム製剤本薬剤はヘム製剤で、細胞内ヘムの上昇を引き起こし、ALASの酵素活性を抑え(ネガティブフィードバックにて)、ヘム合成系の相対的亢進を緩和させる。ポルフィリン症の治療としては、病態に則した治療法であり、欧米では40年来使用されており第一選択療法と位置づけられている。わが国では、2013(平成25)年8月、ヘミン(商品名:ノーモサング)が発売され、使用できるようになった。3)シメチジン作用機序は不明だが、ALAおよびPBGを減少させる効果がある。4)対症療法ポルフィリン症にみられる各種症候に対しては、下記のような対症療法が行われる。ここで大切なことは、使用禁止薬剤(誘因となる薬剤)を絶対に使用しないことである。(1)疼痛、腹痛には、クロルプロマジンおよび麻薬(2)不安、神経症には、クロナゼパム、クロルプロマジン(3)高血圧、頻脈には、ベータ遮断薬(4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)には、補液による電解質の補充■ 発作が頻回に起こるときの発作予防薬ギボシラン(商品名:ギブラーリ):ALAS1を標的としたsiRNA。ALAs1の発現を抑制し、急性発作の発症を予防することを目的とした薬剤。2019年に米国で承認され、わが国でも2021年に承認された。4 今後の展望ヘム製剤やギボシランが治療に使えることとなり、国際標準に追いついたと言える。また、これら治療薬は高額だが、難病指定もなされ医療費補助もあり、治療は円滑に行える。しかし、確定診断の補助となる遺伝子解析が保険収載されておらず、これが認められると診断の精度が高まるので、現在、保険収載を要望中である。5 主たる診療科内科では代謝内科、消化器内科、神経内科。皮膚症状に対しては皮膚科。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ポルフィリン症相談(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポルフィリン代謝障害友の会「さくら友の会」(患者と患者家族の会)1)大門 真.ポルフィリン症.In:矢崎義雄編.内科学.第11版.朝倉書店;2017. p.1815-1820.2)大門 真. ポルフィリン症の診断と分類. In: 岡庭 豊ほか編. year note 内科・外科等編 2010年版. 第19版. メディックメディア; 2009. p.719-729.3)難病情報センター ポルフィリン症(2022年1月17日アクセス)公開履歴初回2013年09月05日更新2022年01月20日

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なぜ症例報告を書くのか?そこに臨床があるから!【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第1話

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、臨床医が症例報告を書くことについて考えてみたいと思います。連載を読まれて、ちょっとでも会員の皆さまが「症例報告」を書くお役に立てましたら幸いです。最初は身近な雑誌に症例報告を!まず、会員の皆さんは症例報告を書いたことがありますか?「いや、オレは臨床一筋のゴリゴリの臨床医だから、論文とかはちょっとねぇ…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、症例報告はそんなに堅苦しいものではありませんし、いわゆる原著論文のような時間や労力もかかりません。論文というと、“New England Journal of Medicine”とか“Lancet”とか“JAMA”とかそんなキラキラした雑誌に載っているものをイメージするかもしれませんが、普通はNEJMに症例報告が載ることはまれです(載らないことはないですが)1)。もちろんNEJMに載ればとてつもなく素晴らしいですが、忙しい臨床医が時間をみつけてNEJMに載るレベルの症例報告を書くのは大変ですし、そもそも症例報告を一度も書いたことのない人がいきなりNEJMに載るのは不可能に近いでしょう。この連載で掲載を目指すのは日本内科学会の英文誌である“Internal Medicine”です。そうです、「オレたちのInternal Medicine」ですッ!読者の皆さまが「お、この症例、ちょっくらInternal Medicineに投稿してみるか」と思ってくだされば、この連載は大成功です。日常のルーチンワークに刺激を与える会員の皆さんの多くは臨床医として日々診療に当たられていると思いますが、ときどき仕事が嫌になりませんか?私も医師17年目になりますが、ときどき「なーんかオレ、いつも同じことやってるな」とマンネリ感にしょぼーんとすることがあります。もちろん医師の仕事はやりがいがありますが、患者さんに同じような説明を毎日していたり、同じ時間に顕微鏡を覗いていたり、どうしてもルーチンワークになってしまうことってありますよね。ルーチンワークが好きな人もいると思いますが(それはそれで才能ですね)、私のような飽きっぽい人間はときどき耐えられなくなって発狂しそうになります。ということで、そんな日々の診療への刺激として症例報告を書いてはどうでしょうか?「あ、これって論文にできるんじゃないかな」と思いながら診療をするだけで、診療にハリが出ます。「そんなこと言われんでもすでに診療にハリ出まくっとるわい」と思われる方も、さらにハリが出て、テカテカになると思います。臨床的な疑問を調べる習慣を身につけることが第一歩「症例報告を書こう!」と言っておきながら何なんですが、症例報告を書くために症例報告を書いてはいけません。もちろん症例報告の数が自分の将来にものすごく直結するようなキャリアを考えている方はそれでもいいんですが、臨床医が長期的に症例報告を書き続けるためには「問題解決型」の症例報告の執筆を身に付けるのが一番ではないかと思います。たとえば…感染症医なので感染症の例を挙げますが、まれな疾患としてCorynebacterium kroppenstedtiiという細菌による肉芽腫性乳腺炎という疾患があります。今から6年前、当時国立国際医療研究センターの総合診療科にいた國松 淳和氏というとんがりまくった臨床医から「なんか肉芽腫性乳腺炎の症例でコリネが生えてるんだけど…これってコンタミ?」という相談がありました。そもそも肉芽腫性乳腺炎という病態も知らなかったのですが、「コリネだったらどうせコンタミっしょ」と思いつつも、まずは基本的な知識について整理をしてみたところ、肉芽腫性乳腺炎はかつては非感染性疾患と考えられていたが、2000年以降、少なくとも一部の症例はCorynebacterium kroppenstedtiiによる感染症であることが明らかになったCorynebacterium kroppenstedtiiは脂質を好む細菌であり、乳腺は脂肪が豊富であることから感染を起こすと考えられている30代の経産婦に多いということが、教科書や文献を調べてわかりました。これがいわゆる「バックグラウンド・クエスチョン」というやつですね。調べればわかる教科書的な疑問です。これによって、治療はどうすれば良いのか(ドレナージしてもらい、ドキシサイクリンを処方しました)などの疑問が解決しました。自分の患者さんに当てはめて考えるしかし、國松氏から紹介された患者さんは女性ではありましたが、経産婦ではありませんでした。「30代の経産婦に多いというCorynebacterium kroppenstedtiiによる肉芽腫性乳腺炎が、なぜこの患者さんに起こってしまったのか?」という疑問が湧きます。文献を調べてみても、経産婦以外にリスクファクターはみつかりませんでした。そうこうしているうちに、もうひとりCorynebacterium kroppenstedtiiによる肉芽腫性乳腺炎の患者さんが紹介されてきました。何とこの方も経産婦ではありませんでした。これまでに知られているリスクファクターのない珍しい感染症の患者さんが2例…これはきっと何か他のリスクファクターがあるはずではないか…。しかし、文献で調べてもみつからない…。こういうときこそ症例報告のチャンスです!ちなみにこの2例では、1例はスルピリドを、もう1例はフルフェナジンを内服していました。どちらも血中のプロラクチンが高くなる薬剤です。薬剤性のプロラクチン濃度上昇によって乳腺が発達し、Corynebacterium kroppenstedtiiが感染しやすい状態になった、というシナリオが導かれました。実際に測定してみると、たしかにプロラクチンが上昇していました。PubMedを調べても同様の報告はなさそうです。これは世界中の臨床医と共有すべき大事な情報と言えそうです。このように、日々経験する症例の中に、過去の文献で明らかになっていない問題に出くわすことが時々あります。こうした疑問を丁寧に吟味して、新規性があるようであれば症例報告をする価値はあります。ということでこの時期、症例報告を書くことにハマっていた私は、サクッと書き上げて意気揚々と投稿しました。が、“Scandinavian Journal of Infectious Diseases”というマニアックな雑誌に蹴られ(ぴえん)、日本感染症学会の英文誌“Journal of Infection and Chemotharapy”にも蹴られ(ぱおん)、最終的に「オレたちのInternal Medicine」に着地しました。やはりオレたちのInternal Medicineッ!そして、今ではこのレポートは20回ほど引用されており2)、それなりに臨床医に役立つ症例報告になったのではないかと自負しています(私のh-indexも押し上げてくれました)。こうした症例報告を書くことで、将来の他の臨床医、ひいては患者さんに恩恵があるかもしれません。「自分が得た知識を共有する」これが症例報告を書く最大の意義です。では、それが自分自身にとって何か役立つと言えるのか?次回は、この点についてお話したいと思います。1)Joseph LG,e tal. N Engl J Med. 2013;368:240-245.2)Kutsuna S,et al. Intern Med. 2015;54:1815-1818.

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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第92回 救済策が仇!? 看護・介護職員の給与引き上げが新たな格差引き起こす皮肉

岸田政権が掲げる「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を受け、看護職員や介護職員の処遇改善のため、2月から給与額が引き上げられる。ただ、対象施設が限定されていたり他職種とのバランスも考えたりしなければならないため、病院経営者からは不安や懸念の声が上がっている。看護職員については、地域で新型コロナウイルス感染症医療など、一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員が対象だ。賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提に、収入を段階的に3%程度引き上げていく。まず2月から収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置として、医療機関に補助金が交付される。これには「看護補助者、理学療法士・作業療法士などのコメディカルの処遇改善に充てることができるよう柔軟な運用」も認められているが、病院経営者にとっては喜んでばかりもいられないようだ。病院の持ち出しで多職種の給与引き上げへ日本病院会の相澤 孝夫会長は1月11日の定例記者会見で、謝意を示す一方で、懸念される不安を漏らした。それは、賃金を引き上げる職種と引き上げない職種が混在すると院内に不平不満が起きるため、コメディカルの中に含まれていない薬剤師や事務スタッフの給与引上げについては病院の持ち出しで行わざるをえず、結果的に経営が厳しい中でのコスト増になる点だ。現在は、新型コロナウイルス感染症対策関連の補助金があるが、コロナが収束すれば補助金も停止され、経営は一層厳しくなることが予想される。そのような中、10月からは診療報酬による看護職員の処遇改善に切り替わる。人件費を一度引き上げると、下げることは難しい。すでに、「10月以降、経営危機に陥るのでないか」との声が会員から多数出ているという。介護職員についても、介護職員処遇改善加算(I・II・III)を取得する事業所を対象に、介護職員の収入を3%(月額9,000円)程度引き上げるための補助金が2月から交付されるが、ほかの職員の処遇改善に充てることが事業所の判断で可能だ。こちらも、10月以降は介護報酬などによる処遇改善に切り替わる。病院介護職員の不足に拍車をかける懸念も人手不足の介護業界には朗報かもしれないが、病院にとっては“悪夢”のようだ。日本慢性期医療協会の武久 洋三会長は、1月13日の定例記者会見で、病院介護職員の危機的状況について述べた。まず、病院に勤務している介護職員は「看護補助者」と呼ばれ、その専門性がないがしろにされていると指摘。介護職員には「介護福祉士」という国家資格を持つ人も含まれているが、専門性が認められない病院に勤務する介護福祉士は、大きく減少している現状を示した。また、介護保険施設に勤務する介護職員には処遇改善加算があるが、病院に勤務すれば加算はなく、給与面でも差別されているという。介護職員にとっては、病院に勤務したいという意欲が大きく削がれるため、医療現場ではすでに介護職員が集まらず、看護師がみなし看護補助者として介護業務にあたっている実情を明かした。武久会長は、「このまま冷遇されるならば、この先、病院に勤務する介護職員はいなくなるだろう。日本の医療はそれでよいのだろうか」と疑問を投げ掛けた。コロナ禍で頑張っている医療機関や医療・介護職種の支援とはいえ、単純な給与引き上げが別の問題を引き起こす事態となることは想定できていなかったのではないか。救済策が新たな格差や不満の温床となるようでは、本末転倒と言わざるを得ない。

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日本でのCOVID-19パンデミック時の認知症患者に対する身体拘束

 COVID-19パンデミックは、世界中の医療スタッフ、とくにCOVID-19陽性患者を受け入れる病院スタッフにとって、これまでにない問題を引き起こしている。日本政府によるCOVID-19に伴う診療抑制などの発表は、院内ケアに対するさまざまな制限をもたらしており、認知症高齢者への身体拘束の増加を含むケアに影響を及ぼしている可能性がある。しかし、COVID-19パンデミック時の身体拘束への影響を経験的に検証した研究は、ほとんどない。京都大学の奥野 琢也氏らは、COVID-19パンデミックによる診療規制の変更が、急性期病院の認知症高齢者の身体拘束に及ぼす影響について評価を行った。PLOS ONE誌2021年11月22日号の報告。 2019年1月6日~2020年7月4日に急性期病院で認知症ケアを受けた65歳以上の高齢者のデータを抽出し、レトロスペクティブ研究を実施した。COVID-19陽性患者を受け入れた病院に入院したかに応じて、患者を2群に分類した。身体拘束における変化を検証するため、記述統計を算出して2週間間隔で傾向を比較し、分割時系列分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・日本政府発表後、COVID-19陽性患者を受け入れた病院では、入院患者1,000人当たりの身体拘束実施率が増加していた。最大実施率は、発表後73~74週時の入院患者1,000人当たり501.4人であった。・COVID-19陽性患者を受け入れた病院では、認知症高齢者に対する身体拘束実施率の有意な増加が認められた(p=0.004)。・パーソナルケアを必要とする認知症高齢者は、COVID-19パンデミック時における身体拘束実施率の有意な増加が認められた。 著者らは「認知症患者に対する身体拘束実施率の増加の根底にある原因やメカニズムを理解することは、今後同じような状況に直面した際の効果的なケアプログラムの設計に役立つであろう」としている。

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