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コロナワクチンの追加接種の見通し/厚労省

 厚生労働省は、10月29日に事務連絡として全国の自治体に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論と追加接種に関する今後の見通しについて」を発出した。 これは第25回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(10月28日開催)で審議された内容を整理したものである。追加接種の対象者は2回接種完了者全員1)新型コロナワクチンの追加接種についてわが国でも追加接種は必要であり、現時点では2回目の接種を完了してからおおむね8ヵ月以上後から行うこととしつつ、今後のさらなる科学的知見を踏まえ、必要に応じて適宜見直すこと。追加接種の対象者については、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供することが現実的であること。その上で、国内外で得られるワクチンの効果などを踏まえ、特に接種することが望ましい者について検討を進め、国民へ広報などを行うこと。また、追加接種に使用するワクチンについては、1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたは武田/モデルナ社ワクチン)を用いることが考えられるが、引き続き科学的知見を収集し、検討を行うこと。2)今後のスケジュールについて12月から開始を予定している追加接種の実施に向け、現時点で想定される今後のスケジュールは以下のとおり。2021年〔11月中旬〕・ファイザー社ワクチンの追加接種について、対象者などを定める省令改正などを厚生科学審議会に諮問・自治体説明会〔11月中下旬〕・市町村から、接種券(一体型予診票)を順次送付開始・自治体に対し、12月および1月接種分として、ファイザー社ワクチン約412万回を配分(以後、順次、必要量を配分)〔12月1日〕・追加接種の関係省令を施行。以降、市町村において順次ファイザー社ワクチンによる追加接種を開始〔12月下旬以降〕・武田/モデルナ社ワクチンの追加接種について、厚生科学審議会に諮問2022年〔1月〕・自治体などに対し、武田/モデルナ社ワクチンの配分開始(以降、順次、必要量を配分)〔2月〕・武田/モデルナ社ワクチンによる追加接種開始 なお、事務連絡では、上記のスケジュールは現時点で想定されるものであることから、今後の分科会における審議を踏まえ、変更もあり得るとしている。

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ソトロビマブ、高リスクの軽~中等症COVID-19への第III相中間解析/NEJM

 高リスクの軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体ソトロビマブは、疾患進行リスクを軽減することが示された。安全性シグナルは確認されなかった。カナダ・William Osler Health CentreのAnil Gupta氏らが、現在進行中の第III相多施設共同無作為化二重盲検試験「COMET-ICE試験」の、事前規定の中間解析の結果を報告した。COVID-19は、高齢および基礎疾患のある患者で入院・死亡リスクが高い。ソトロビマブは疾患早期に投与することで高リスク患者のCOVID-19の疾患進行を防ぐようデザインされた。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。24時間超入院・29日未満の死亡を比較 研究グループは、米国、カナダ、ブラジル、スペインの4ヵ国37ヵ所で、症状発症から5日以内で、疾患進行リスクが1つ以上認められた、入院前COVID-19患者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはソトロビマブ(500mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ静脈投与した。 有効性の主要アウトカムは、24時間超のあらゆる入院または無作為化後29日以内の死亡だった。 試験は、2020年8月27日に開始され、2021年3月4日まで追跡された。本報告は、事前規定の中間解析の結果である。入院・死亡リスクはソトロビマブ群で8割強低下 中間解析でITT解析の対象とした被験者は583例で、ソトロビマブ群が291例、プラセボ群が292例だった。そのうち、疾患進行により入院または死亡に至ったのは、プラセボ群21例(7%)だったのに対しソトロビマブ群は3例(1%)だった(相対リスクの低下:85%、97.24%信頼区間:44~96、p=0.002)。 プラセボ群のうち5例が、集中治療室(ICU)で治療を受け、うち1例は無作為化後29日までに死亡した。 安全性については、868例(ソトロビマブ群430例、プラセボ群438例)を対象に評価した。報告された有害イベントは、ソトロビマブ群17%、プラセボ群19%、重篤有害イベントはそれぞれ2%と6%で、プラセボ群よりソトロビマブ群で低率だった。

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非弁膜症性心房細動、早期カルディオバージョンで死亡リスク軽減/BMJ

 非弁膜症性心房細動で脳卒中リスク因子が1つ以上ある成人に対し、早期カルディオバージョンの実施率は約15%と低いものの、同実施を受けた患者の死亡リスクは有意に低いことが示された。また、直流カルディオバージョンの実施率は薬物的カルディオバージョンの約2倍に上ったが、主要アウトカムは両者で同等であることも示された。ノルウェー・オスロ大学のMarita Knudsen Pope氏らが、5万例超の患者情報が前向きに収集されていたレジストリデータ「GARFIELD-AF(Global Anticoagulant Registry in the FIELD-AF)」を解析し明らかにした。BMJ誌2021年10月27日号掲載の報告。35ヵ国1,317ヵ所からの5万例超の患者データを解析 GARFIELD-AFレジストリデータには、35ヵ国1,317ヵ所を通じて、6週間以内に非弁膜症性心房細動の診断を受け、1つ以上の脳卒中リスク因子が認められた成人患者5万2,057例のデータが登録されていた。 研究グループは、同レジストリデータを基にベースラインにおけるカルディオバージョンの実施者と非実施者、直流カルディオバージョン実施者と薬物的カルディオバージョン実施者について、それぞれアウトカムを比較する観察試験を行った。 臨床エンドポイントは、全死因死亡、非出血性脳卒中または全身性塞栓症、大出血で、Cox比例ハザードモデルによるオーバーラップ傾向スコア加重法で比較した。ベースラインのリスクと患者選別で補正を行った。カルディオバージョン群の死亡リスク、1年後まで0.74倍、1~2年後は0.77倍 カルディオバージョン実施群と非実施群の比較解析には、4万4,201例が包含された。そのうち、ベースラインでカルディオバージョンを実施した被験者は、6,595例(14.9%)だった。 カルディオバージョン群の傾向スコア加重後の全死因死亡に関するハザード比(HR)は、ベースラインからの1年間のフォローアップ期間中が0.74(95%信頼区間[CI]:0.63~0.86)、1~2年のフォローアップ期間中が0.77(0.64~0.93)だった。 ベースラインでカルディオバージョンを実施した6,595例のうち、299例が登録後48日を超えてから再度カルディオバージョンを受けていた。 直流または薬物的カルディオバージョンの比較解析には、7,175例が包含された。そのうち直流カルディオバージョンを受けたのは4,748例(66.2%)、薬物的カルディオバージョンを受けたのは2,427例(33.8%)だった。フォローアップ1年間の全死因死亡率は、直流カルディオバージョン群が1.36/100患者年(95%CI:1.13~1.64)、薬物的カルディオバージョン群が1.70/100患者年(1.35~2.14)だった。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法における低分子医薬品ozanimodの有用性(解説:上村直実氏)

 選択的スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節薬ozanimodの潰瘍性大腸炎(UC)に対する有用性を検証した第III相臨床試験の結果、中等度から重度UCの寛解導入および寛解維持に有効性を認めたことがNEJM誌に掲載された。選択的S1P受容体調整薬ozanimodはUC患者の大腸粘膜へのリンパ球の浸潤を抑えることで炎症を抑制する効果が期待されている新規の低分子医薬品である。UCは特定疾患に指定されている原因不明の炎症性腸疾患(IBD)であり、現在の患者数は約18万人である。UCに対する薬物治療については、5-ASA製剤、ステロイド製剤、免疫調節薬、生物学的製剤が使用されているが、最近、ステロイドの長期投与に伴う副作用や依存性の懸念が強まり、ステロイドからの離脱や減量を目的として生物学的製剤や低分子医薬品の開発が盛んに行われている。すなわち、抗TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬ウステキヌマブ、インテグリン拮抗薬vedolizumab、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬フィルゴチニブ、今回のozanimodなど新規薬剤の有用性を示す試験結果が報告されて次々と上市されている。今後、さらなる難治性のUCに対しては生物学的製剤と低分子医薬品の併用の有用性と安全性の検証が必要となることも予測される。 ozanimodを含めてUCに対する有用性と安全性を検証する臨床試験の研究デザインは国際間多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験でほぼ一致しているが、最近のアウトカムは、一昔前の下痢や血便回数などの臨床的改善度のみでなく内視鏡を用いた肉眼的な粘膜治癒に加えて生検組織に好中球浸潤を認めないといった厳密なものに代わっている。したがって、試験結果の信憑性は高く、一般診療現場における有用性も十分に期待できるようになっている。 一方、薬剤の効果があればあるほど副作用ないしは安全性に関しては注意が必要となる。UCやリウマチなど自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化はよく知られているが、まれなものとして重篤なウイルス性脳疾患である進行性多巣性白質脳疾患(PML)の発現も報告されている。さらに市販後数年経過して心血管血栓症や死亡リスクの上昇が判明した事案の報告もあり、観察期間が限定されている臨床試験では検証できない長期使用の安全性については市販後に注意深く検証されるべきであり、今後、市販後の長期安全性に関する精緻な検証体制が重要である。

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第82回 わいせつ裁判で逆転有罪の医師、来年上告審弁論へ。性犯罪厳罰化の中、対応模索の医師・医療機関

乳腺外科医事件、二審判決見直しかこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。衆院選はなんとか自民党が単独過半数を維持、自民、公明両党では、国会を安定的に運営できる絶対安定多数も大きく上回りました。そんな中、「第80回『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」で書いた、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督に激似の自民党の甘利 明幹事長が小選挙区で敗北しました。私の予感が少しだけ当たったようです。ということで、先週から今週にかけても、MLBのワールドシリーズ、アトランタ・ブレーブス対ヒューストン・アストロズのゲーム(日本時間11月3日が第6戦です)をテレビ観戦していたのですが、先週は日本のNPBでもビッグニュースがありました。東京ヤクルトスワローズとオリックスバッファローズの各リーグ昨年最下位からの優勝も大ニュースですが、それよりも驚いたのが、新庄 剛志氏の北海道日本ハムファイターズ監督就任と、立浪 和義氏の中日ドラゴンズ監督就任です。新庄氏の監督就任はさすがに誰も予想しなかったのではないでしょうか。一方の立浪氏は、過去のスキャンダルもあり、「監督は未来永劫ない」というのがディープな中日ファンの見立てでした。CS(クライマックスシリーズ)もまだ始まっていないのに、ストーブリーグが盛り上がるのはまだ試合が残っているチームに失礼ではありますが、首脳陣人事やトレード含め、来季の日ハムと中日からは目が離せません。さて、今週は2週ほど前にあったある医療裁判の新しい展開について書いてみたいと思います。手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた乳腺外科の男性医師(45)について、最高裁第2小法廷(三浦 守裁判長)は10月16日までに、検察側、弁護側の意見を聞く上告審弁論を来年の2022年1月21日に開くことを決めました。最高裁の弁論は二審判決を変えるのに必須の手続きです。この決定で、逆転有罪を言い渡した二審の東京高裁判決が見直される可能性が出てきました。乳腺腫瘍摘出手術直後の患者の胸を舐めるなどしたとして起訴この事件と裁判の経過には、医師の誰もが複雑な気持ちを抱いたと思います。改めて事件をおさらいしておきましょう。男性医師は2016年5月、働いていた東京都足立区の医療法人財団健和会・柳原病院で、女性の右胸から乳腺腫瘍を摘出する手術を実施。術後に、病室で女性にわいせつな行為をしたとして起訴されました。男性医師は同年8月に逮捕され、105日間勾留されました。起訴事実は、手術後で抗拒不能状態にあり、ベッドに横たわる女性患者に対して、診察の一環として誤信させ、着衣をめくり左乳房を露出させた上で、その左乳首を舐めるなどのわいせつ行為をした、というものです。公判では全身麻酔手術を終えた女性の被害証言の信用性、女性の術後せん妄の有無および程度、女性の体の付着物から被告のDNA型が検出されたとする鑑定結果の信用性が争われました。2019年2月20日の一審・東京地裁判決は、被害を受けたと証言する女性が「(麻酔の影響で)性的幻想を体験していた可能性がある」と指摘。付着物の鑑定結果については「会話時の唾液の飛沫や触診で付着した可能性が排斥できない」として無罪(求刑懲役3年)と結論づけました。これに対し、2020年7月13日の二審・東京高裁判決は真逆の判決となりました。二審では「術後せん妄」が主な争点となり、弁護側、検察側双方が推薦する精神科医2人が証言。結果、高裁判決は女性の証言について、「具体的かつ詳細であり、特に、わいせつ被害を受けて不快感、屈辱感を感じる一方で、医師が患者に対してそのようなことをするはずがないとも思って、気持ちが揺れ動く様子を極めて生々しく述べている。上司に送ったLINEのメッセージの内容とも符合する。Aの証言は、本件犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と判断。付着物を巡る一審の判断についても、手術室での位置関係などの実験結果などから不合理だったとして、一審判決を破棄し、「被害者の精神的、肉体的苦痛は大きい」として逆転有罪、懲役2年を言い渡しました。なお、男性医師は一貫して無罪を主張してきました。日本医師会、日本医学会が2審判決を非難この二審の逆転判決は、医療関係者に大きな衝撃を与えました。判決直後の2020年7月22日、日本医師会の中川 俊男会長と日本医学会の門田 守人会長は共同記者会見を行い、「控訴審判決は学術的にも問題が多い」と強く非難しました。中川会長は担当看護師の法廷での証言について「カルテ記載がないとの理由で信用できない」とした裁判所の判断を問題視、「医療現場のスタッフは術後の対応に忙殺され、全てをカルテに記載できないことはよくあることだ」と話し、「このように出来事全部をカルテに記載しなければ、裁判所で信用してもらえないとなれば、医療現場に大混乱を来す」と指摘しました。一方、門田会長は「行為に蓋然性がないこと」「せん妄の有無に関する科学的根拠」「検査結果の正確性」の3つの問題点を挙げ、特に「せん妄」については、今回採用されたと思われるせん妄状態に関する検察側の証人の意見に対し、その根拠が果たして科学的なものであるのかと指摘、「推測だとしたら許されるものではない」と話しました。この「せん妄」の高裁判断については、弁護団やいくつかのメディアも問題視しました。検察側証人の医師が証言の冒頭に自ら「せん妄の専門家ではない」と語ったにもかかわらず、判決では、せん妄の専門家である弁護側証人の意見ではなく、検察側証人の医師の意見を採用した上で、女性にせん妄が生じていたことを認めつつも幻覚を見た可能性は否定しているからです。このほか、一審で争われた女性の身体の付着物から被告のDNA型が検出された点の取り扱いについても、多くの疑問が発せられました。証拠鑑定を行った科学捜査研究所が、DNAの増幅曲線や検量図のデータを残していないこと、DNA抽出液を証拠鑑定後に破棄したことなど、その手法に問題が多かったことから、1審判決では「信用性に疑いがある」、「仮に信用性があると認めるとしても、その証明力は十分ではない」とされました。にも関わらず、2審の高裁判決では女性の証言を逆に補強する証拠と位置づけられたのです。なお、この高裁判決から約2ヵ月後の9月、男性医師の息子が列車に飛び込み亡くなるという事故が起こっています。父親の事件や裁判との関連性はわかりませんが、とても痛ましいことです。刑法改正で被害者は性別を問わず、告訴がなくても起訴可能にそもそも性犯罪は、加害者と被害者の2人の間で起こることが多く、目撃者や証拠が通常の事件と比べ少ないと言われています。結果、裁判は加害者、被害者双方の証言や提出証拠に頼らざるを得ず、その信用性が争点となります。近年、米国ハリウッドの#MeToo運動などの影響もあって、裁判所は被害を訴える側の証言を重く見る傾向が強くなっている、という声も聞きます。日本では、欧米各国とも比較して性犯罪に甘いという批判もあり、2017年6月に性犯罪に関する刑法の大幅改正が行われています。この改正では、強姦罪は強制性交等罪に名称が変わり、これまで被害者を女性に限っていたものを、性別を問わないことになりました。さらに、被害者の告訴がなくても起訴することができるようになり(非親告罪化)、監督・保護する立場の人(親など)がわいせつな行為をした場合、暴行や脅迫がなくても処罰されることになりました。また、強制性交等罪(旧強姦罪)の法定刑の下限は懲役3年から5年に引き上げられています。疑念を抱かれないために医師、医療機関はどうすればこうした中、医師や医療機関は、あらぬ誤解を患者や家族などから受けないような対策を、今まで以上にしっかりと取る必要が出てきています。交通事故では、ドライブレコーダーの活用が一般的になってきましたが、診察室や病室に画像レコーダーを設置することはもちろんできません。ゆえに、現状では、医師の診察には必ず看護師を同席させる、わいせつ行為の誤解を受けそうな診察に際しては説明を尽くし同意を取る、といった古典的かつ基本的な対策しかとる術はありません。多くの医療機関が対応を模索している段階ではないでしょうか。ともかくは、来年の上告審弁論後の、最高裁の判断を待ちたいと思います。

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日本人双極I型障害患者に対するルラシドンの長期安全性試験

 日本うつ病センターの樋口 輝彦氏らは、日本人双極I型障害患者に対するルラシドン治療(リチウムまたはバルプロ酸の有無にかかわらず)の長期(52週間)安全性と有用性について評価を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2021年8月2日号の報告。 本研究は、オープンラベルで行われたルラシドンのフレキシブルドーズ試験(20~120mg/日)である。対象は、6週間のルラシドン二重盲検プラセボ対照試験を完了したうつ病エピソードを有する患者(うつ群)および長期試験へのエントリーを同意した躁病、軽躁病、混合性エピソードを有する患者(非うつ群)。有害事象と安全性については、治療に起因する有害事象、バイタルサイン、体重、心電図、臨床検査値、自殺傾向、錐体外路症状を測定した。症状改善効果の測定には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ルラシドンに関連する最も一般的な有害事象は、アカシジア(30.7%)、鼻咽頭炎(26.6%)、悪心(12.1%)、傾眠(12.1%)であった。・脂質に関する最小限の変化が認められ、血糖コントロール対策の実施も行われた。・体重の平均変化は、うつ群で-0.8kg、非うつ群で+1.0kgであった。・MADRS合計スコアは、過去6週間の試験でプラセボを投与されたうつ群において、2.0±14.7ポイントの減少が認められた。・過去6週間の試験でルラシドンを投与されたうつ群では、うつ症状の改善は持続していた。・非うつ群では、YMRS合計スコアの経時的な減少が認められた。・本研究は非盲検試験で、対照群を含んでいなかった。また、52週間の試験を完了した患者の割合は、49.7%であった。 著者らは「日本人双極性障害患者に対するルラシドンの長期治療では、うつ症状の継続的な改善や、躁病、軽躁病、混合性エピソードを有する患者での症状改善が認められた。体重や代謝パラメータの変化は、ほとんど認められなかった」としている。

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HR+進行乳がん、パルボシクリブ後のアベマシクリブの効果/日本治療学会

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行・再発乳がんの1次/2次治療では、内分泌療法との併用によるCDK4/6阻害薬投与が標準治療となっているが、進行後の治療についてはまだ定まっていない。最近、リアルワールドデータがいくつか発表されており、今回、パルボシクリブ投与後に進行したHR+/HER2-進行・再発乳がんに対するアベマシクリブの効果を後方視的に検討した結果を、兵庫県立がんセンターの高尾 信太郎氏が、第59回日本治療学会学術集会(10月21~23日)で発表した。 高尾氏らは、2017年12月~2021年3月、兵庫県立がんセンターにおいてパルボシクリブを含むレジメンで進行後、アベマシクリブが投与されたHR+/HER2-の進行・再発乳がん患者14例について後方視的に検討した。全例での効果のほか、パルボシクリブ使用後すぐにアベマシクリブを投与したsequential投与と、2剤の間に1レジメンでも他の治療が実施されたnon-sequential投与における効果の比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・14例中、sequential投与が8例、non-sequential投与が6例だった。・年齢中央値は65.5歳(範囲:43~76)、Stage IVが5例、再発が9例で、内臓転移は71%の患者に認められた。・前治療については、内分泌療法レジメン数の中央値が2、化学療法施行例の割合は43%、全体のレジメン数の中央値は2.5だった。・内分泌療法薬は3例が変更されておらず、それ以外は変更されていた。・アベマシクリブの全奏効率(ORR)は36%、臨床的有効率(CBR)は64%だった。sequential群とnon-sequential群別にみると、ORRが50%と17%、CBRが88%と50%で、sequential群で優位な傾向を示した。・アベマシクリブの治療成功期間(TTF)については、14例中12例(86%)が6ヵ月以上で、うち4例は現在も投与中である。・パルボシクリブとアベマシクリブのTTFに相関はなく、sequential群、non-sequential群とも相関はなかった。・パルボシクリブ後のアベマシクリブのTTF中央値は10.6ヵ月で、sequential群では10.6ヵ月、non-sequential群では9.0ヵ月だった。・パルボシクリブとアベマシクリブを合わせたTTF中央値は17.2ヵ月で、sequential群では26.8ヵ月、non-sequential群では17.2ヵ月だった。・併用する内分泌療法別にみたTTFは、内分泌療法のパターンでとくに特徴的なものはみられなかった。 高尾氏は、「in vitroでは、パルボシクリブとアベマシクリブのcross-resistanceが報告されている一方で、CDK4/6阻害薬抵抗性獲得のメカニズム、パルボシクリブとアベマシクリブの作用スペクトラムの違いから、パルボシクリブ抵抗性獲得後にアベマシクリブが有効である患者が存在することが示唆されている。今回の検討では、パルボシクリブ後のアベマシクリブ使用、とくにsequentialの使用で非常に良好な成績がみられた。今後さらにリアルワールドテータを集積したい」と述べた。

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閉塞性細気管支炎〔BO:Bronchiolitis obliterans〕

1 疾患概要■ 概念・定義閉塞性細気管支炎(Bronchiolitis obliterans:BO)の用語は、1901年にLangeによって初めて記述されたが、1973年にGosinkらによって瘢痕性の細気管支閉塞を来す病態として疾患概念が確立された。さまざまな病態を背景に、細気管支粘膜下から周辺の線維化・瘢痕化により細気管支内腔が閉塞し、肺野全体に散在性に広がることにより呼吸不全を来す疾患である。■ 疫学閉塞性細気管支炎は、乳幼児から高齢者までの男女に発症する希少疾患である。世界的にも疫学調査研究はなく有病率は不明であるが、わが国における全国調査では、2003年では287例、2011年では477例と報告されている。■ 病因閉塞性細気管支炎の原因として、有毒ガスの吸入、マイコプラズマやウイルス感染、ならびに薬剤との関連が報告されている。また、膠原病や自己免疫疾患への合併の報告が多く、とくに慢性関節リウマチに多い。特殊な例として、肺内で増殖性に広がる神経内分泌細胞の過形成に合併するもの、植物摂取によるもの(アマメシバ)、腫瘍随伴性天疱瘡への合併などその原因は多様である。原因不明の特発性症例の報告はまれであるが存在する。 近年、骨髄移植や心肺移植が盛んになるにつれ閉塞性細気管支炎の合併が報告され、これらの事実から何らかの免疫学的異常を背景に発症するものと考えられる。とくに心肺移植患者の長期予後を左右する重要な因子である。また、造血幹細胞移植においても長期生存移植患者のQOLを著しく悪化させる合併症である。■ 症状1)無症状期病初期には自覚症状や他覚症状がなく、早期の病変をみつけるには、現時点では肺機能検査のみが唯一の手段である。1秒量(FEV1.0)の低下を認めることから、肺移植患者ではFEV1.0とFEF25-75の低下が重症度の指標とされている。2)自覚症状期病変が広がることにより、乾性咳嗽や労作時呼吸困難が出現する。また、気管支喘息のような強制呼気時の連続性副雑音の自覚症状が現れることがある。3)進行期病勢が進むと細気管支閉塞部位より中枢の気管支拡張や繰り返す気道感染、胸腔内圧の上昇による気胸・縦隔気腫などを合併し、呼吸不全が進行する。■ 予後肺病変は不可逆的変化であるため、一般的に予後不良である。しかし、その経過はさまざまであり、(1)急激に発症し、急速に進行するもの、(2)急激に発症し病初期は急速に進行するが、その後安定した状態で肺機能を保つもの、(3)ゆっくりと発症し、慢性の経過で進行していくものがある。肺移植後5年までの閉塞性細気管支炎合併率は50~60%と報告されており、閉塞性細気管支炎発症後の5年生存率は30~40%と不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)自覚症状や身体所見から診断することは困難である。胸部単純X線画像は、ほぼ正常か、わずかに過膨張を示すに過ぎず、CTにおいても病勢が進行しなければ、異常と捉えられる所見は乏しい。高分解能CT(High-resolution CT:HRCT)の吸気相・呼気相での空気捕らえ込み現象(air-trapping)が診断の助けとなる。肺血流シンチにおける多発性陰影欠損を認めることがあり、肺血栓塞栓症との鑑別が問題になる。しかし、同時に肺換気シンチを実施することにより、肺血流シンチと同一部位の多発性陰影欠損を認める。閉塞性細気管支炎の確定診断には組織診断が必要であるが、肺機能が悪く、外科的肺生検に適さない症例も多い。また、病変が斑紋状分布であることや、病変部位を画像で捉える手段がないことから、不十分な標本のサンプリングや切り出しでは、外科的肺生検でも時に組織診断ができないことがあるので注意が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)閉塞性細気管支炎の確立された治療法はなく、治療の目標は、細気管支での炎症を抑制し安定した状態に保つことである。■ 薬物療法骨髄移植や心肺移植、膠原病などの免疫学的背景を有する閉塞性細気管支炎に対しては、ステロイド薬や免疫抑制剤による免疫抑制強化が行われる。呼吸不全に対しては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に準じた治療が選択され、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド薬(ICS)などが、自覚症状に合わせて用いられる。■ 在宅酸素療法労作時の低酸素血症を来たす場合には、慢性呼吸不全に対する保険適用に準じて在宅酸素療法が導入される。■ 手術療法内科的な治療にもかかわらず低酸素血症、高炭酸ガス血症、繰り返す気胸、呼吸機能障害が進行する場合で、年齢が55歳未満(両肺移植)、精神的に安定しており、本人と家族を含め移植医療を支える環境と協力体制が期待できる場合に肺移植の適応を検討する。4 今後の展望閉塞性細気管支炎は希少疾患であるが、骨髄移植や心肺移植をはじめ、移植医療が盛んになるにつれて発症の増加が予想される。また、自己免疫疾患や膠原病への合併症例や特発性症例の診断を確立していく上でも、今後の臨床情報の集積と早期診断・治療・予防に関する前向き研究を期待したい。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 閉塞性細気管支炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業(びまん性肺疾患に関する調査研究班)(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川好規. 日内会誌. 2011;100:772-776.2)Barker AF, et al. N Engl J Med. 2014;370:1820-1828.3)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」編. 難治性びまん性肺疾患診療の手引き.南江堂:2017.公開履歴初回2021年11月2日

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4週に1回の投与で片頭痛発作を予防する「アイモビーグ皮下注70mgペン」【下平博士のDIノート】第85回

4週に1回の投与で片頭痛発作を予防する「アイモビーグ皮下注70mgペン」今回は、ヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体製剤「エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ皮下注70mgペン、製造販売元:アムジェン)」を紹介します。本剤は、4週間に1回の投与で、片頭痛発作の発症を抑制することが期待されています。<効能・効果>本剤は、片頭痛発作の発症抑制の適応で、2021年6月23日に承認され、8月12日に発売されました。片頭痛発作の前兆の有無にかかわらず月に複数回以上発現している、または慢性片頭痛であることを確認したうえで本剤の適用を考慮します。なお、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療などを適切に行っても日常生活に支障を来している患者にのみ投与できます。<用法・用量>通常、成人にはエレヌマブ(遺伝子組換え)として70mgを4週間に1回皮下投与します。なお、本剤投与開始後3ヵ月が経過しても症状の改善が認められない場合や、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合は、本剤の投与中止を考慮します。<安全性>片頭痛患者を対象とした国内第III相試験において、副作用はプラセボ群で3.1%(4/131例)、本剤投与群で8.5%(11/130例)が認められました。主な副作用は、便秘、注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など)、傾眠などでした。なお、重大な副作用として、発疹、血管浮腫およびアナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応と重篤な合併症(腸閉塞、糞塊、腹部膨満およびイレウスなど)を伴う便秘が海外で報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛に関与するとされる神経ペプチドの受容体をブロックすることで、片頭痛発作の発現を予防します。2.発熱、発疹、まぶたや口唇周囲の腫れ、呼吸困難など、アナフィラキシーが疑われる症状が現れた場合は、すぐに報告・受診してください。注射後1週間以上経過してから発現することもあります。3.注射した部位に、赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの症状が現れることがあります。これらの症状が長引く場合は、ご相談ください。4.お薬のせいで眠くなることがあります。車の運転や機械の操作、高所での作業などを行う場合はご注意ください。5.本剤の使用中に、血圧が上昇したり高血圧が悪化したりすることがあります。自宅で血圧計を用いるなど、血圧の変動に注意してください。6.まれに重い便秘症状が現れることがあります。とくに初回投与後は便通の変化に注意し、便秘症状が続く場合には早めにご連絡ください。<Shimo's eyes>片頭痛が起きる成因として、三叉神経から放出された神経ペプチドであるCGRPがCGRP受容体に結合することで、血管が過度に拡張して炎症が波及して片頭痛発作が起こるという説が有力です。予防にはロメリジン、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリン、ベラパミルなどが用いられています。効果を得られない患者も少なくありませんでしたが、抗体医薬品が登場したことにより、片頭痛の治療選択肢が広がりました。本剤は、世界で初めて承認されたカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連の抗体医薬品であり、わが国では2021年4月にガルカネズマブ(商品名:エムガルティ)、同年8月にフレマネズマブ(同:アジョビ)が発売されました。この2剤はCGRPに結合して活性を阻害しますが、本剤はCGRPの受容体に直接作用し、CGRPの結合を防いでシグナル伝達を阻害します。CGRP関連薬剤は4週間に1度(フレマネズマブは4週間に1度あるいは12週間に1度)の皮下投与で予防効果を発揮します。なお、すでに発現している片頭痛発作を緩解する薬剤ではないため、本剤投与中に発作が発現した場合には、必要に応じてトリプタンなどの急性期治療薬を使用します。本剤の注射針カバーは天然ゴム(ラテックス)を含み、アレルギー反応を起こす恐れがあるため、投与に際してはアレルギー歴の確認が必要です。デバイスはオートインジェクターであり、外箱を冷蔵庫から取り出し、30分以上待って室温に戻してから使用します。現状は自己注射が認められておらず、原則として外来受診時の投与となります。主な副作用として、便秘、注射部位反応、傾眠などが報告されています。便秘の既往歴を有する患者および消化管運動低下を伴う薬剤を併用している患者では発現リスクが高くなる恐れがあるので注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 アイモビーグ皮下注70mgペン

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HPVワクチンとCOVID-19ワクチンの優先順位【今、知っておきたいワクチンの話】特別編2

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性者の増加も落ち着き、新しい日常が始まっている。COVID-19ワクチンについても成人の2回接種率が約7割を超える(11月1日現在)とともに、12歳以上のCOVID-19ワクチン接種も進んでいる。そんな環境の中でHPVワクチン接種も引き続き定期接種として行われており、徐々にではあるが増えてきている。そのためか、定期接種の最終年にあたる高校1年生についてCOVID-19ワクチンとHPVワクチンの接種時期が重複した場合のスケジュール調整や両ワクチンのリスクなどについて相談が寄せられているという。今回本稿では、こうしたケースでの被接種者や被接種者の保護者への説明に医療者が知っておきたい事項を本コーナーの監修であり、家庭医として活躍されている中山 久仁子氏にお聞きした。※このインタビューは2021年10月23日に行いました。掲載内容もインタビュー時点の情報です。臨床現場からみた両ワクチンの接種の注意点質問:COVID-19ワクチン、HPVワクチンについて臨床の現場から最近の知見などを教えてください回答:COVID-19ワクチンについては、現在満12歳以上で接種できるようになり、接種が進んでいます。私のいる自治体では10代の接種率も80%を超えました。COVID-19は、若年者の重症化リスクは低く、無症状で経過する場合が多いです。ですから、COVID-19ワクチンはまずは基礎疾患がある方、今後受験・進学などのイベント、集団での活動を予定している方などは接種していただきたいです。また、第5波では小児は家庭内感染の一因にもなっていたため、家族への感染予防という観点からも接種のメリットがあると考えます。未成年者にCOVID-19ワクチンを接種した場合、成人と同様に局所の副反応などがあります。そして、とくに注意したいのが「心筋炎」です。発生する確率は非常に低いですが、10~20歳代の男性に接種した場合、接種後1週間ほどは激しい運動を避けていただき、接種後4日程度の間に発症のリスクが高くなりますので胸痛、動悸、息切れ、浮腫などの症状がないかの観察が必要です。ファイザー社と武田/モデルナ社のワクチンのいずれでも心筋炎は起こりますが、ファイザー社のワクチンの方が発生頻度の報告頻度は少ないですが、直接の比較検討の報告はありません。また、新型コロナ感染による心筋炎のほうが、ワクチン後のリスクよりも高いと報告されています(参考資料:令和3年10月15日厚生科学審議会資料)。海外ではより低年齢の小児への接種が承認されました。今後、日本での接種年齢が12歳未満に引き下げられるかは、臨床試験の結果と感染者数の推移などにより厚生労働省が決定しますので現段階では不明です。ただ、接種するかしないかは、「ワクチンの効果」と「COVID-19に感染したときのデメリット(症状や後遺症など)とワクチン接種でのデメリット(副反応)の比較」を考慮して被接種者に考えていただくことが大切です。被接種者が迷ったとき、不安なときには、かかりつけ医に相談していただき、正確な情報を基に判断してもらうようにしてください。次にHPVワクチンについて、本ワクチンのメインターゲットの子宮頸がんなどのHPV関連がんの発症は、HPVに感染してから時間がかかります。ワクチンによるHPV感染の減少と前がん症状の減少の効果については以前より報告がありましたが、最近子宮頸がんの減少が海外・国内1,2)から報告されています。また、ワクチン接種後の「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。名古屋スタディ3)でも「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではないことが示され、海外でもワクチン接種と機能性身体症状の研究レポート4)などもでており、世界保健機関(WHO)も世界中の最新データを継続的に評価し、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題はみつかっていないと発表しています。わが国ではしばらく積極的勧奨が差し控えられていますが、今後は、HPVワクチンの接種機会が増えてくると思われます。その際、接種時に被接種者の不安や緊張感を減らすことが大切です。接種の際に、緊張させないため十分なコミュニケーションをとり、接種のメリットと起こりうる副反応についてあらかじめ説明して理解してもらい、納得した上で接種することが大切です。HPVワクチンのトピックスとして、9価ワクチン(商品名:シルガード9)が2020年に製造販売承認され、2021年2月24日に発売、使用できるようになりました。定期接種ではありませんが任意接種で使用できます。本ワクチンは世界的に主流となってきています。確認としてHPVワクチンの標準的なスケジュール(図1)と緊急の場合のスケジュール(図2)を示します。図1 HPVワクチン接種の標準スケジュール画像を拡大する図2 HPVワクチン接種 標準的な接種ができない場合のスケジュール画像を拡大する定期接種最終年であれば先にHPVワクチンを接種質問:COVID-19ワクチンとHPVワクチンが重複した場合の優先順位、スケジュールなど教えてください。回答:今問題になっているのは、11月中に高校1年生の女子学生がHPVワクチンの1回目接種をしないと3回目が定期接種の枠から外れてしまうことです。そのためHPVワクチンとCOVID-19ワクチンでは、どちらを先に接種した方がよいかという問題があります。結論から言いますと、定期接種の期間に接種するために「HPVワクチンを優先して接種した方がよい」と言えます。HPVワクチンと新型コロナワクチンの標準的なスケジュールは、4価ではHPVワクチンの初回の接種後にCOVID-19ワクチンを2回接種し、その後2回目のHPVワクチンを接種するスケジュールになります。2価は1回目と2回目の間が1ヵ月のため、1回目と2回目のHPVワクチンを接種してから、2回目の接種後2週間以降にCOVID-19の接種を開始します。期間が短くて標準的な接種ができない場合のモデルスケジュールを図3に示します。2価・4価ともに1回目と2回目の間が1ヵ月のため、HPVワクチンの1回目と2回目を接種して、2回目の接種後2週間以降にCOVID-19の接種を開始します。図3 HPVワクチンを標準的な接種ができない場合のスケジュールとCOVID-19ワクチン画像を拡大するなお、COVID-19ワクチンの接種の際に注意すべき点として、ワクチンを接種するとき前後2週間の間隔を空ける必要があります。これは、副反応などが起きた場合、どのワクチンとの関係があるかの確認のためです。また、COVID-19ワクチンの接種の際にHPVワクチンのスケジュールと情報提供を行うと、今後のスムーズな接種に役立ちます。被接種者に寄り添ったワクチン接種を最後にHPVワクチンの動向として、今後もさまざまなワクチンの効果などに関するエビデンスがでてきますので注目してほしいと思います。厚生労働省も2020年10月と21年1月に各自治体に対し「接種対象者に被接種者である旨のお知らせの送付について」事務連絡を行いました。この事務連絡により、自治体は被接種者に被接種者であることを通知できるようになりました。年間3千人もの方が子宮頸がんで亡くなっていることを考慮しますと、対象者に被接種者であるお知らせが届き、正確な情報が伝わることは大事なことです。同様に文部科学省では、2021年3月に「がん教育推進のための教材」が改訂され、がんの予防にワクチン接種による感染対策が有効であること追加されました。今後は自治体や学校など、地域においてワクチンで病気を予防することの教育や啓発を行っていっていただけると期待しています。HPVワクチンを接種する医療者は、ワクチンの効果と副反応の説明をしっかりと行い、副反応がでた場合には、その対処や必要時に紹介できる体制などをあらかじめ確認しておき、安心して接種できる環境にすることが望まれます。そして、日常診療やインフルエンザワクチンなどで接種対象者が外来などに受診した場合には、その方に必要で接種可能なワクチンについて情報提供することで、ワクチンで予防できる疾患の予防について、本人に伝えていっていただきたいと思います。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト(日本プライマリ・ケア連合学会)ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~(厚生労働省)1)Lei J, et al. N Engl J Med. 2020;14:1340-1348.

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「ランタスXR」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第76回

第76回 「ランタスXR」の名称の由来は?販売名ランタス®XR注 ソロスター®一般名(和名[命名法])インスリン グラルギン(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果インスリン療法が適応となる糖尿病用法及び用量通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射するが、ときに他のインスリン製剤を併用することがある。注射時刻は毎日一定とする。投与量は、患者の症状及び検査所見に応じて増減する。なお、その他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位である。ただし、必要により上記用量を超えて使用することがある。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.低血糖症状を呈している患者2.本剤の成分又は他のインスリン グラルギン製剤に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年11月3日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年2月改訂(第8版)医薬品インタビューフォーム「ランタス®XR注 ソロスター®」2)サノフィe-MR:製品情報

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ドイツで産んでみた(2) 早産で緊急入院【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第7回

困ったときの必殺技「泣き落とし」前回から続いて、ドイツでの双子が生まれた経験から知ることができた、ドイツの医療について書いていきます。妻が双子を妊娠していることがわかり、まずはかかりつけの産婦人科医を決めました。Greifswaldは大学を中心にできている街で、若い人が多かったこともあり、産婦人科の予約を取ることはかなり大変でした。予約が3ヵ月後とか平気で言われたのですが…なんとか受付へ直接乗り込んで、泣き落とすことで割り込み予約をさせてもらいました。(ドイツはお堅いイメージがあるかも知れませんが、経験上、泣き落としはかなり有効です。役所で、試験会場で、何度も何度も泣き落としで窮地を乗り切ってきました)かかりつけの産婦人科医をみつけ、次は定期検診をしてくれるエコー専門医を紹介してもらいました。初期の段階から双胎間輸血症候群が疑われたため、1~2週間に1度の頻度でエコーをしてもらいに通い続けました。毎回1時間以上かけて、丁寧に丁寧に診てくれる先生でした。そして「何かあったら、すぐに大学病院へいけ」と指示されました。病院のご飯の評判は大学の街であるGreifswaldの医療はすべて大学病院を中心として展開されています。お互いの連携も密に取られている印象でした。大学の先生たちは開業医の先生方の性格や診療のクセなどもよく理解していて、いつ受診してもサクサク話が進んでいきました。Greifswald大学病院です。みえている建物全部が病院で、この奥にもさらに病棟が広がっています。デカくて最新の設備が整っていて機能的ですが、建物内は無機質で愛想がありません。大学ではナースもドクターもとても親切でした。しかし、ご飯がちょっと…な感じでした。妻が切迫早産で1週間ほど緊急入院となったことがありました。その際、調理された料理が出るのは昼だけで、朝夕は病棟の片隅にあるビュッフェ(?)のようなコーナーにある、チーズとパンを自由に取ってきて食べるだけでした。ドイツ語が話せないにもかかわらず、妊娠ライフを淡々と過ごしていた妻だったのですが、このときばかりは「ご飯が美味しくないなんて酷すぎる」といって泣いていました…。やむなく、私が毎日米を炊いて、病院に持っていきました。朝5時に起きて米をタッパーに詰めて、お味噌汁を水筒に入れて、毎日勤務前に届けました。帰宅時も病院に寄って、タッパーを回収して、もう一度米を炊いて持っていきました。時にインスタントラーメンを買って届けたりもしました。毎日ヘロヘロになりながら過ごしていました。今にして思えばいい思い出ですけど。次回は出産後のドイツの育児システムについて、書きたいと思います。

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第84回 COVID-19を防ぐ遺伝子変化を見つける国際研究が発足

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して発症した人と接したにもかかわらず感染を免れたそれらの同居家族、とくに、感染者の非感染配偶者(serodiscordant spouse)や感染者と寝床が一緒の非感染者のゲノムやエクソームを解析して感染防御に大いに貢献している遺伝子変化を同定する試みが始まっています1,2)。感染を防ぐ遺伝子変化は他の病原体の研究で少ないながら3つほど見つかっています。1970年代に赤血球のDuffyという抗原の欠如がそれら細胞の三日熱マラリア原虫感染を阻止することが突き止められ、1990年代になってその欠如がGATA転写因子結合領域を妨害してDuffy遺伝子プロモーターの活性を損なわせる遺伝子変異によって引き起こされることが判明しました3)。同じく1990年代にはHIVの共受容体CCR5(別名:CKR5)の欠損がその感染を防ぐことが判明し4-6)、2000年代に入るとFUT2欠損がノロウイルスの胃腸感染を阻止することが明らかになります7)。Duffy遺伝子プロモーターと三日熱マラリア原虫のDuffy結合タンパク質、CCR5とHIVのgp120-gp41二量体の関係と同様にFUT2はノロウイルスのカプシドタンパク質VPgの結合相手です。それら3種の関連のどれをとっても病原体の細胞侵入を図らずも手助けする受容体や共受容体の完全な欠損が感染防御を担うことは単なる偶然ではなさそうであり、SARS-CoV-2感染でも同様の防御の仕組みが存在するらしいことがこれまでの研究で示唆されています。今年6月にmedrxivに発表された全ゲノム関連解析(GWAS)結果8)によるとSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体ACE2の遺伝子近くの変化がSARS-CoV-2感染を防ぐ役割を担い、どうやらその変化はACE2発現を減らすようです。7月に発表されたメタ解析9)ではSARS-CoV-2の感染しやすさと血液型が関連することが確実になりました。血液型O型のSARS-CoV-2感染防御の仕組みはまだはっきりしていませんが、血液型抗原は微生物の受容体や共受容体を担いうることがわかっており、SARS-CoV-2もそうなのかもしれません。血液型O型のSARS-CoV-2感染防御効果は微々たるものです。全世界の10の研究所からのチームが立ち上げた今回の取り組みはSARS-CoV-2感染を強力に防御する希少な遺伝子変化を明らかにすることを目標の一つとしています。そのような遺伝子変化は感染の仕組みの理解を助けることに加えて、CCR5欠損の同定とCCR5遮断薬マラビロック(maraviroc)がすでに証明している通り、SARS-CoV-2感染の予防や治療の開発にも役立つでしょう。マラビロックはHIV感染治療の一画を占める存在となっています。先月中旬にNature Immunology誌に掲載された試験の紹介によるとすでに被験者数は400人を超えており1)、その掲載から2週間と経たない間にロシアやインドなどの600人ほどから試験への参加を自薦する問い合わせがありました2)。試験は少なくとも千人を集めることを目指しており、世界中からの参加を歓迎すると研究者は言っています2)。参考1)Andreakos E,et al. Nat Immunol. 2021 Oct 18:1-6. [Epub ahead of print]2)The search for people who never get COVID / Nature3)Tournamille C,et al. Nat Genet. 1995 Jun;10:224-8. 4)Samson M,et al.Nature.1996 Aug 22;382:722-5.5)Liu R,et al.Cell . 1996 Aug 9;86:367-77.6)Dean M,et al.Science. 1996 Sep 27;273:1856-62.7)Lindesmith L,et al.Nat Med. 2003 May;9:548-53.8)Genome-wide analysis in 756,646 individuals provides first genetic evidence that ACE2 expression influences COVID-19 risk and yields genetic risk scores predictive of severe disease. medRxiv. June 10, 20219)COVID-19 Host Genetics Initiative. Nature 2021 Jul 8. [Epub ahead of print]

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統合失調症における呼吸器系疾患の有病率~メタ解析

 統合失調症患者は、死亡リスクが高く、その主な原因は呼吸器系疾患であるにもかかわらず、有病率などの調査は十分に行われていない。オーストラリア・クイーンズランド大学のShuichi Suetani氏らは、統合失調症患者における呼吸器系疾患の有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年9月11日号の報告。統合失調症患者の呼吸器系疾患の有病率は有意に高かった 2020年4月27日までに公表された統合失調症患者(可能であれば対照群を含む)の呼吸器系疾患について調査した研究を、主要な電子データベースより検索した。分析では、ランダム効果メタ解析を実施した。 統合失調症患者における呼吸器系疾患の有病率を分析した主な結果は以下のとおり。・引用文献1,569件中21件をメタ解析に含めた。対象数は、統合失調症患者61万9,214例、対照群5,215万9,551例であった。・統合失調症患者は、対照群と比較し、COPD(オッズ比[OR]:1.82、95%CI:1.28~2.57)、喘息(OR:1.70、95%CI:1.02~2.83)、肺炎(OR:2.62、95%CI:1.10~6.23)の発症率が有意に高かった。・統合失調症患者の主な呼吸器系疾患の有病率は、以下のとおりであった。 ●COPD:7.7%(95%CI:4.0~14.4) ●喘息:7.5%(95%CI:4.9~11.3) ●肺炎:10.3%(95%CI:5.4~18.6) ●結核:0.3%(95%CI:0.1~0.8)・出版バイアスで調整した後、統合失調症患者のCOPD有病率は、19.9%(95%CI:9.6~36.7)まで増加した。 著者らは「今回調査した呼吸器系疾患の有病率は、一般集団よりも統合失調症患者において有意に高かった。統合失調症患者の死亡リスクを軽減するためにも、呼吸器系疾患の予防やマネジメントの改善に焦点を当てる必要がある」としている。

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デュルバルマブ+tremelimumab、肝がん1次治療として全生存期間を有意に延長(HIMALAYA)/AZ

 アストラゼネカは、2021年10月15日、第III相HIMALAYA試験の結果を発表。局所療法が適さない切除不能な肝細胞がん患者の1次治療として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)に、免疫反応を誘導(プライミング)する高用量のtremelimumab単回投与を追加した併用療法が、ソラフェニブと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間の延長を示したことを明らかにした。 このtremelimumabおよびデュルバルマブの新たな用量と投与スケジュールは、STRIDEレジメン(Single Tremelimumab Regular Interval Durvalumab)と呼ばれる。 イミフィンジ単剤療法は、OSにおいてソラフェニブに対する非劣性を示し、数値上は良好な傾向にあった。さらにソラフェニブと比較して忍容性プロファイルの改善が認められた。 第III相HIMALAYA試験のデータは、今後の医学学会で発表予定。

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HR+/HER2-進行乳がんへのCDK4/6阻害薬+フルベストラントのOS、FDAがプール解析/Lancet Oncol

 CDK4/6阻害薬は、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行・再発乳がんの1次/2次治療における内分泌療法との併用で、米国・食品医薬品局(FDA)に承認されている。今回、FDAのJennifer J. Gao氏らがCDK4/6阻害薬とフルベストラントによる全生存期間(OS)のプール解析を行ったところ、患者全体および調査したほとんどの臨床病理学的サブグループでOSベネフィットが示された。Lancet Oncology誌オンライン版2021年10月14日号に掲載。 この探索的解析では、フルベストラントとCDK4/6阻害薬もしくはプラセボを併用した3つの第III相無作為化試験の患者データを統合した。解析した患者はすべて18歳以上で、ECOG PS 0~1のHR+/HER2-進行・再発乳がんだった。患者全体のほか、ライン別(1次治療と2次治療以降)、臨床病理学的サブグループ別に解析した。 主な結果は以下のとおり。・3試験を統合すると、2013年10月7日~2016年6月10日に1,960例が登録され、うち12例が治療されず、CDK4/6阻害薬に1,296例(66%)、プラセボに652例(33%)が無作為に割り付けられた。・治療を受けた患者(1,948例)において、OSの推定ハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.68~0.88)、追跡期間中央値は43.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:37.8~47.7)で、935例(48%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.1ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。・1次治療の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(2試験、396例)では、OSの推定HRは0.74(95%CI:0.52~1.07)、追跡期間中央値は39.4ヵ月(IQR:37.0~42.2)で、123例(31%)が死亡した。推定OS中央値の差は、CDK4/6阻害薬群のOS中央値が推定不能で(95%CI:50.9~NE)、算出できなかった。・2次治療以降の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(3試験、1,552例)では、OSの推定HRは0.77(95%CI:0.67~0.89)、追跡期間中央値は45.1ヵ月(95%CI:39.2~48.5)で、812例(52%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.0ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。

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介護施設の入居者、乳製品増量で骨折、転倒が減少/BMJ

 高齢者介護施設の入居者では、乳製品を用いてカルシウムとタンパク質の摂取量を増量する栄養学的介入は、転倒や骨折のリスクの抑制に有効で、容易に利用できる方法であることが、オーストラリア・メルボルン大学のSandra Iuliano氏らの調査で示された。死亡率の改善は認められなかった。研究の成果は、BMJ誌2021年10月21日号で報告された。オーストラリアの介護施設のクラスター無作為化試験 本研究は、ビタミンDの摂取量は十分だが、カルシウムの平均摂取量が600mg/日で、タンパク質の摂取量が1g/kg体重/日未満の高齢者介護施設入居者における、乳製品による栄養学的介入の骨折予防効果と安全性の評価を目的とする2年間のクラスター無作為化対照比較試験であり、2013年12月~2016年8月の期間に参加施設と参加者の募集が行われた(Dairy Australiaなどの助成を受けた)。 この試験には、オーストラリアの主に歩行可能な高齢者が居住する60の認定介護施設が参加し、介入群に30施設、対照群に30施設が無作為に割り付けられた。参加者は、7,195例(平均年齢86.0[SD 8.2]歳、女性4,920例[68%])だった。 介入群では、牛乳(250mL)、ヨーグルト(100g)またはチーズ(20g)が増量され、これによりカルシウムの平均摂取量が562(SD 166)mg/日、タンパク質の平均摂取量が12(6)g/日増え、摂取量の合計はそれぞれ1,142(353)mg/日および69(15)g/日(1.1g/kg体重)となった。介入により、乳製品の摂取量が2.0サービングから3.5サービングに増加した。対照群は通常の食事を維持し、カルシウムの摂取量は700(247)mg/日、タンパク質の摂取量は58(14)g/日(0.9g/kg体重)だった。骨折が33%、転倒は11%のリスク低下 56施設(介入群27施設、対照群29施設)のデータが解析に含まれた。参加者は、介入群が3,301例、対照群は3,894例であった。追跡期間中のエネルギー摂取量は両群で差はなく、各群内で有意な変動はなかった。骨折が324件(大腿骨近位部骨折135件)、転倒が4,302件、死亡が1,974件発生した。 2年間で、介入群は対照群に比べ、骨折リスクが33%低下し(121件[3.7%]vs.203件[5.2%]、ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.93、p=0.02)、大腿骨近位部骨折のリスクは46%減少した(42件[1.3%]vs.93件[2.4%]、0.54、0.35~0.83、p=0.005)。また、転倒のリスクは介入群で11%抑制された(1,879件[57%]vs.2,423件[62%]、0.89、0.78~0.98、p=0.04)。 5ヵ月の時点で、全骨折(p=0.002)および大腿骨近位部骨折(p=0.02)のリスクに有意な差がみられ、いずれも介入群で良好であった。また、3ヵ月の時点で、転倒(p=0.04)のリスクに有意差が認められ、介入群で優れた。1件を除き、骨折の原因はすべて転倒であった。 死亡には両群間に差はなかった(900件[27%]vs.1,074件[28%]、HR:1.01、95%CI:0.43~3.08)。予防治療を要した参加者の数は、全骨折が52件、大腿骨近位部骨折が82件、転倒は17件だった。 著者は、「この栄養学的介入は、入居者の好みに合わせて個別に行われ、既存の献立に通常の小売り用の牛乳、ヨーグルト、チーズを組み合わせた給食サービスを活用して行われたが、円滑な運用が可能であった。この介入は、高齢者介護施設における骨折予防のための公衆衛生対策として広く利用でき、より広範な地域社会でも使用できる可能性がある」としている。

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非がん性疼痛へのトラマドール、コデインより死亡リスク高い?/JAMA

 欧米では、非がん性慢性疼痛の治療にトラマドールが使用される機会が増えているが、安全性を他のオピオイドと比較した研究はほとんどないという。英国・オックスフォード大学のJunqing Xie氏らは、トラマドールの新規処方調剤はコデインと比較して、全死因死亡や心血管イベント、骨折のリスクを上昇させることを示した。便秘やせん妄、転倒、オピオイド乱用/依存、睡眠障害には両薬で差はなかった。研究の成果は、JAMA誌2021年10月19日号に掲載された。スペインの後ろ向きコホート研究 研究グループは、外来で使用されるトラマドールとコデインについて、死亡および他の有害なアウトカムの発生状況を比較する目的で、人口ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(IDIAP Jordi Gol Foundationの助成を受けた)。 解析には、System for the Development of Research in Primary Care(SIDIAP)のデータが用いられた。SIDIAPは、スペイン・カタルーニャ地方(人口約600万人)の人口の80%以上を対象とし、匿名化したうえで日常的に収集される医療・調剤の記録が登録されたプライマリケアのデータベースである。 対象は、年齢18歳以上で、1年以上のデータがあり、2007~17年の期間にトラマドールまたはコデインが新規に調剤された患者であった。両薬が同じ日に調剤された患者は除外された。 評価項目は、初回調剤から1年以内の全死因死亡、心血管イベント(脳卒中、不整脈、心筋梗塞、心不全)、骨折(大腿骨近位部、脊椎、その他)、便秘、せん妄、転倒、オピオイド乱用/依存、睡眠障害とされた。解析の対象は、傾向スコアマッチング法で選出された。また、原因別Cox比例ハザード回帰モデルで、絶対発生率差(ARD)とハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)が算出された。若年患者で死亡の、女性で心血管イベントのリスクが高い 109万3,064例が登録され、このうち32万6,921例がトラマドール群、76万2,492例がコデイン群であり、3,651例は両方の薬剤が調剤されていた。傾向スコアマッチング法で選出された36万8,960例(両群18万4,480例ずつ、平均年齢53.1歳、女性57.3%)が解析に含まれた。 トラマドール群はコデイン群に比べ、1年後の全死因死亡(発生率:13.00 vs.5.61/1,000人年、HR:2.31[95%CI:2.08~2.56]、ARD:7.37[95%CI:6.09~8.78]/1,000人年)、心血管イベント(10.03 vs.8.67/1,000人年、1.15[1.05~1.27]、1.36[0.45~2.36]/1,000人年)、骨折(12.26 vs.8.13/1,000人年、1.50[1.37~1.65]、4.10[3.02~5.29]/1,000人年)のリスクが有意に高かった。 便秘(発生率:6.98 vs.6.41/1,000人年)、せん妄(0.21 vs.0.20/1,000人年)、転倒(2.75 vs.2.32/1,000人年)、オピオイド乱用/依存(0.12 vs.0.06/1,000人年)、睡眠障害(2.22 vs.2.08/1,000人年)には両群に差はみられなかった。 トラマドールによる死亡リスクの上昇は、若年患者(18~39歳)が高齢患者(60歳以上)に比べて大きかった(HR:3.14[95%CI:1.82~5.41]vs.2.39[2.20~2.60]、pinteraction<0.001)。心血管イベントのリスク上昇は、女性が男性よりも大きかった(1.32[1.19~1.46]vs.1.03[0.93~1.13]、pinteraction<0.001)。また、併存疾患が最も多い患者(チャールソン併存疾患指数[CCI]≧3点)は最も少ない患者(CCI=0点)に比べ、骨折のリスクの上昇が大きかった(HR:2.20[95%CI:1.57~3.09]vs.1.47[1.35~1.59]、pinteraction=0.004)。 著者は、「未評価の交絡因子が残存している可能性があるため、これらの知見の解釈には注意を要する」としている。

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COVID-19の血栓症は本当の問題なのか?(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染は血管内皮細胞にも起こる。血管内皮細胞障害を介して深部静脈血栓症、脳血栓症などが増える。とくに、最初の武漢からのレポートでは入院例にヘパリンの抗凝固療法を施行していないこともあり、約半数の症例に静脈血栓イベントを認めたと注目された。米国、欧州などでは静脈血栓イベント予防のための低分子ヘパリンがルーチンになっていたが、それでも10~20%の症例に静脈血栓イベントを認めた。また、最近のランダム化比較試験にて静脈血栓の治療量を用いても、予防量投与時と重症化後には重篤な予後イベント発症率に差がないとされた。 本研究では症候性ではあるが外来症例が対象とされた。新型コロナウイルス感染の予後が血栓症により規定されているのであれば、従来確立された抗血栓療法である抗血小板薬アスピリン、抗凝固薬アピキサバンは有効なように思われる。考えられた仮説に対してランダム化比較試験による検証をするのが欧米人の偉いところである。登録された症例はPCR陽性、有症候性の40~80歳の男女であった。コントロール、アスピリン、予防量、治療量のアピキサバンの4群比較試験であった。死亡、血栓症などをエンドポイントとした実臨床ベースのランダム化比較試験であった。当初7,000例の登録を目標としたが、予想よりもイベントが著しく少なかったため、657例が対象になったときにDSMBの勧告により試験は中止となった。登録症例のうち22例が45日以内に肺炎にて入院となった。アスピリンまたはアピキサバンを服用した症例のうち、血栓イベントなどの有効性1次エンドポントを発現したのは3例であった。136例のコントロールでの血栓イベントも1例にすぎなかった。 新型コロナウイルス感染の入院例にて血栓イベントが多かったことは事実であった。しかし、有症候であっても外来通院中の症例の血栓イベントは決して多くはない。新型コロナウイルス感染による血栓イベントのメカニズムの解明には本研究は大きく期待できた。しかし、コントロールの血栓イベントの少なさから考えると、アスピリンとアピキサバンの比較まで行うためには数万人の登録が必要と思われる。有症候であっても外来通院中の症例には必ずしも抗血栓療法は必要ないらしい、くらいが本論文が示した結果と思う。

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第76回 過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書

<先週の動き>1.過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書2.12月開始の3回目ワクチン、接種対象者は限定せず/厚労省3.新型コロナワクチンの接種率、日本は人口の7割に到達4.制度にそぐわないDPC病院に是正か退出を/中医協5.研修医マッチング、昨年に続き6割以上が大学病院外で内定1.過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書政府は、「過労死等防止対策白書」を10月26日に閣議決定した。これは2014年に成立した過労死等防止対策推進法に基づいて国会に毎年報告を行っており、過労死等の概要や政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況を取りまとめたもの。今回の白書によれば、うつ病など精神障害で労災認定された過労自殺者は、発症から6日以内と短期間で亡くなる人が半数に上るとの調査結果が明らかとなっており、より一層の対策を求めている。(参考)コロナ影響の悩み、ストレスチェックで気付きを 厚労省が過労死等防止対策白書を公表(CBnewsマネジメント)過労自殺の半数、うつなど発症から6日以内 厚労省報告(日経新聞)資料 令和3年版過労死等防止対策白書の概要(厚労省)2.12月開始の3回目ワクチン、接種対象者は限定せず/厚労省厚生労働省は、10月28日に厚生科学審議会予防接種を開催し、新型コロナウイルスワクチンの追加接種(3回目)の対応方針をめぐって議論を行った。国内外の感染動向やワクチン効果の持続期間、諸外国の対応状況から、追加接種の必要があるとした。また、追加接種の時期は2回目接種完了からおおむね8ヵ月以上経過後に実施、使用するワクチンは、原則1・2回目に用いたワクチンと同一のものを用いることとされる。3回目接種の実施対象者は、高齢者や重症化リスクのある人に限定せず、2回目接種が完了したすべての人とする方針で一致した。(参考)“3回目接種”12月から順次開始へ 気になる副反応は(NHK)3回目ワクチン接種、対象者を限定せず 2回目終えた全員に、厚科審・分科会(CBnewsマネジメント)資料 新型コロナワクチンの接種について(厚労省)3.新型コロナワクチンの接種率、日本は人口の7割に到達政府は10月26日に、新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を終えた人が、全人口の70.1%である8,879万人に到達したと発表した。アメリカは全人口の57%、フランス68%、イギリス67%、ドイツ66%であり、G7では2位のイタリア(71%)とほぼ肩を並べ、1位のカナダ74%に次ぐトップ水準となった。(参考)新型コロナワクチンについて(内閣府)ワクチン2回接種終えた人、人口の7割超える…海外より高水準(読売新聞)人口7割がワクチン完了 G7でトップ水準(産経新聞)Which countries are on track to reach global COVID-19 vaccination targets?(Our World in Data)4.制度にそぐわないDPC病院に是正か退出を/中医協厚労省は10月27日に中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会を開催し、2022年度診療報酬改定に向けて検討結果の取りまとめを行った。そこでDPC病院において、診療密度や在院日数が平均から外れている病院も認められ、DPC制度にそぐわない可能性があると指摘があったことから、調査報告について、支払い側の委員から「イエローカードを出し、それでも是正がなければレッドカードを出すべきだ」と意見が出された。今後、DPC制度にそぐわない病院をどのように対処するか仕組みの検討がなされるだろう。(参考)DPC外れ値病院、当面は「退出ルール」設定でなく、「診断群分類を分ける」等の対応検討しては―入院医療分科会(Gem Med)DPC外れ値病院へ、「是正なければレッドカードを」中医協・小委で支払側委員(CBnewsマネジメント)資料 第206回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会(厚労省)5.研修医マッチング、昨年に続き6割以上が大学病院外で内定厚労省は10月28日に、2021年度「医師臨床研修マッチング」の結果を発表した。新医師臨床研修制度が2004年4月に導入され、その翌年から大学病院以外の研修病院で研修を受ける医師が半数を超えている。今回、大学病院の内定割合36.7%(前年度38.1%)に対し、大学病院以外の臨床研修病院での内定割合は63.3%(前年度61.9%)と、大学病院以外での研修がさらに浸透してきていることが明らかとなった。(参考)2022年4月からの臨床研修医、都市部6都府県以外での研修が59.2%、大学病院以外での研修が63.3%に―厚労省(Gem Med)医師臨床研修の内定者数が増加 厚労省が2021年度のマッチング結果公表(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 研修医マッチングの結果(医師臨床研修マッチング協議会)資料 2021年度 研修プログラム別マッチング結果(同)

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