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高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。米国の40施設のクラスター無作為化試験 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。転倒の発生率も低下 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

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mRNAコロナワクチンによる心筋炎・心膜炎、「重大な副反応」に追加/厚労省

 厚生労働省は12月3日、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンに対し『重大な副反応』の項に「心筋炎」と「心膜炎」を追記するよう、使用上の注意の改訂指示を発出した。対象製剤はファイザー社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ)とモデルナ社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:(COVID-19ワクチンモデルナ筋注)。 今年7月の時点で重要な基本的注意に追記されていたが、その後の解析で各2回接種後の若年男性(10~20代)で頻度が高いことが示唆された。 このほか、『その他の注意』の項に注射部位反応に関する記載が新設され、「海外において、皮膚充填剤との関連性は不明であるが、皮膚充填剤注入歴のある被接種者において、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、皮膚充填剤注入部位周辺の腫脹(特に顔面腫脹)が報告されている」旨が追記された。

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第80回 オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省

<先週の動き>1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD1.オミクロン株を懸念、3回目接種の間隔見直し検討へ/厚労省政府は新型コロナウイルスの新しい変異型オミクロン株の世界的な急拡大に対応するため、来年1月以降から本格的に取り組む予定であった3回目のワクチン接種について、諸外国と同様に2回目接種との間隔の短縮を検討している。12月2日に開かれた全国知事会と日本医師会のオンライン会合では、3回目接種の時期を「前倒しする必要がある」との意見で一致している。3回目の接種をめぐっては、ファイザー製ワクチン以外に、モデルナ製ワクチンの在庫も活用する方向で検討に入っており、早期の開始に向け、準備が進められる。(参考)オミクロン株2例目 政府 ワクチン3回目接種の間隔見直しも検討(NHK)首相、3回目接種前倒し表明へ モデルナ在庫を活用(日経新聞)3回目接種「前倒しする必要がある」…全国知事会と日本医師会が意見交換(読売新聞)2.医師の残業、年間上限導入で2024年から原則年960時間に厚生労働省は、11月30日に労働政策審議会分科会を開催し、医師の働き方改革に関する検討会報告書と医師の働き方改革の推進に関する検討会中間とりまとめを踏まえた医療法の改正に伴い、2024年4月から上限規制を適用することとなった。地域医療を担う医療機関などで特例水準(連携B、B、C-1、C-2)の医療機関で、長時間労働を避けられない場合は、医師労働時間短縮計画作成ガイドラインに基づいて医師労働時間短縮計画の立案と実施をもとに、都道府県の許可を受けた医療機関のみ年1,860時間とする省令案について了承した。なお、都道府県から指定を受けるためには、2021年10月~2022年9月末までに各医療機関が「医師労働時間短縮計画」を策定し、2022年度中に第三者機関による評価を受けたうえで、2023年度に都道府県に申請することが必要となる。(参考)医師残業、年1860時間 上限定める省令案了承(中日新聞)資料 医師の時間外労働の上限水準を超える時間外労働時間を設定する医療機関について(山形県)資料 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案等の概要(厚労省)資料 医師の時間外労働規制について(同)3.地域医療構想の実現に向け、重点支援区域で準備が進む/厚労省厚労省は3日に「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を開催し、地域医療構想の取り組み・検討状況について調査し、その結果について討論した。再検証対象の436医療機関において、2025年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは340医療機関(全体の78%)だった。また、再検証の実施について合意済みまたは合意結果に基づいて措置済みの175医療機関において、2022年7月までに病床機能あるいは病床数を変更する予定と回答したのは150医療機関でほとんどを占めた。具体的には、医療機能(病床機能、診療科など)の集約化のために、医療機関の統合、地域医療連携推進法人の設立、在宅療養支援病院の指定など役割の明確化・変更など実施状況が共有され、今後も重点支援区域の設定を通じて国による助言や集中的な支援を行うこととした。なお、重点支援区域には、宮城県仙南区域、石巻・登米・気仙沼区域のほか、滋賀県(湖北区域)、山口県(柳井区域、萩区域)、北海道(南空知区域、南檜山区域)、岡山県(県南東部区域)、新潟県(県央区域)、佐賀県(中部区域)、兵庫県(阪神区域)、熊本県(天草区域)、山形県(置賜区域)、岐阜県(東濃区域)、新潟県(上越区域、佐渡区域)、広島県(尾三区域)の12道県17区域が含まれている。(参考)資料 地域医療構想に関する地域の検討・取組状況等について(厚労省)再検証対象の公立・公的175医療機関が合意済み 重点支援区域に新潟「上越」「佐渡」、広島「尾三」(CBnewsマネジメント)4.がん診療連携拠点病院の指定要件を改定へ/厚労省厚労省は11月30日にがん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループを開き、要件の見直しについて検討を行った。がん対策基本法に基づき閣議決定されている「がん対策推進基本計画」により、全国どこでも質の高い医療を提供することができるよう、がん診療の均てん化を目指して整備を進めてきたが、この整備指針の要件や、要件を満たせなくなった施設への対応などについて議論を行った。今後、2022年6~7月までに議論を重ね、整備指針を改定する見込み。(参考)資料 がん診療連携拠点病院等における指定要件の見直しについて(厚労省)2022年夏にがん連携拠点病院の指定要件見直し、高度型の意義、診療実績・体制要件等を議論―がん拠点病院指定要件WG(Gem Med)がん診療拠点病院、指定要件見直しの議論開始 厚労省WG、「望ましい」要件など論点(CBnewsマネジメント)5.新型コロナ後遺症についても診療の手引きを作成/厚労省厚労省は1日に新型コロナウイルス感染症について、「罹患後症状のマネジメント」を公表した。感染者数が減少する一方で、新型コロナウイルス感染からは回復したにもかかわらず“後遺症”と呼ばれるような症状に悩む患者が存在する。今回、診療の手引きの別冊として、回復後の経過を診るかかりつけ医がどのタイミングで専門医の受診を勧めるべきかなどについて書かれている。なお、新型コロナウイルス感染症の後遺症の頻度については、海外における45の報告から出された系統的レビューで、COVID-19の診断・発症・入院後2ヵ月あるいは退院・回復後1ヵ月を経過した患者のうち、72.5%が何らかの症状を訴えたと報告されている。倦怠感、関節痛、筋肉痛といった全身症状のほか、咳、喀痰、息切れなどの呼吸器症状、あるいは集中力低下、記憶障害、不眠、抑うつなどの精神・神経症状のほか、嗅覚障害・味覚障害などが含まれており、もっとも多いのは倦怠感(40%)だった。(参考)新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(厚労省)新型コロナ後遺症 初の医療関係者向け手引きを公表 厚生労働省(NHK)「コロナ後遺症」に初めての手引き 「患者の支援を」厚労省が公表(朝日新聞)6.コロナ経口薬molnupiravir、日本でも承認申請へ/MSD米メルク日本法人のMSDは、厚労省に新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬として抗ウイルス薬molnupiravir(モルヌピラビル)の製造販売承認を申請した。今回は特例承認の適用を求めており、今月中に厚労省の専門家部会で審議される見込み。軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の入院していない成人患者を対象としてモルヌピラビルを投与した第III相MOVe-OUT試験の中間解析の結果、無作為割り付けから29日目までに入院または死亡した患者はモルヌピラビル群では7.3%(28/385例)、プラセボ群では14.1%(53/377例)と有意差を認めた(p=0.0012)。29日目までにモルヌピラビル群では死亡は認めず、プラセボ群では8例の患者が死亡した。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として経口の抗ウイルス薬モルヌピラビルの製造販売承認申請 特例承認の適用を希望した申請(MSD)米製薬大手メルク 新型コロナの飲み薬 日本での使用 承認申請(NHK)コロナ飲み薬「モルヌピラビル」、オミクロン株にも有効な可能性…今月中に特例承認へ(読売新聞)コロナ飲み薬の承認を申請 米メルクのモルヌピラビル(産経新聞)

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

第71回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨 徹哉氏が解説する。

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臓器間癒着や切除部の表現~腹腔鏡下S状結腸切除術~【誰も教えてくれない手術記録 】第9回

第9回 臓器間癒着や切除部の表現~腹腔鏡下S状結腸切除術~こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。本連載ではこれまで、オペレコの作成手順や活用方法を中心に紹介してきましたが、今回からはもう少し踏み込んだ内容として、実際のオペレコ※を題材に、おぺなか流のこだわりポイントについてご紹介します! 今回は、腹腔鏡下S状結腸切除術のオペレコから、臓器間の癒着と切除部位の表現方法について解説します。オペレコを描く楽しさや重要性がさらに伝わるとうれしいです。※個人情報保護の観点から、オペレコは本連載用に描き下ろしています。《術式解説》腹腔鏡下S状結腸切除術は、S状結腸がんに対する標準的な術式です。S状結腸がんを中心にその前後の腸管と周囲のリンパ節を一塊りに切除します。切除した腸管は臍の小開腹創から摘出します。切除後の再建は、腸管同士を自動吻合器で吻合します。例:腹腔鏡下S状結腸切除術のオペレコ(完成図)大まかな手術の流れがひと目でわかるオペレコになっているでしょうか? イラストの細部に注目し、こだわりポイントをいくつか紹介したいと思います。こだわり1:臓器や組織間のつながり(癒着)は線の密度で表現する腹腔内臓器は、腹膜などにより固定されています。がんの手術では、そのような固定や臓器間の癒着を適切に外し、標的臓器を摘出できる状態にしなければなりません。とくに癒着の程度は、がんの進行度や症例ごとにさまざまで、たとえば腹部手術の既往があれば想定以上に癒着していることもありえます。僕は、癒着やがんの浸潤など、臓器間のつながりを、線の密度に差をつけて描いています。癒着が強い部分は密に、弱い部分は疎に線を描き込むと、強弱が生まれわかりやすくなります。参考:臓器間癒着の表現部分を拡大こだわり2:剥離や切除の範囲を矢印などで図示同じ手術でも、臓器や病変部の状態によって剥離や切除の範囲が異なるので、その範囲をイラストに矢印などを用いて図示するとわかりやすいです。正確に手術内容を記載するためにも重要なポイントですね。参考:矢印で図示した部分を拡大僕流のこだわりポイントを紹介しましたが、いかがでしたか? オペレコの描き方は人それぞれですが、目指すところは一緒で「手術内容がわかりやすく伝わる」ことです。今後も僕の専門である消化器外科分野の手術を中心に、“伝わるオペレコ”のポイントをお伝えしていきたいと思います。次回もお楽しみに!

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精神神経疾患や発達障害に対する音楽療法の有効性

 音楽療法は、身体的、感情的、精神的な健康を維持・回復・促進するために用いられる。オーストリア・AIHTAのLucia Gassner氏らは、自閉スペクトラム症(ASD)、認知症、うつ病、不眠症、統合失調症に対する音楽療法の有効性を評価した。European Journal of Public Health誌オンライン版2021年10月1日号の報告。 システマティックレビューおよび医療技術評価レポートの検索により、139件の文献が抽出された。コクランレビューが利用可能な5疾患の診断グループに焦点を当てた。第2検索は4つのデータベースを用いて実施した。独立した2人のレビュアーが、研究の選択、データ抽出、方法論的質の評価を行った。バイアスリスクが中~低の試験のみを選択した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たしたランダム化比較試験は10件(1,248例)であった。・統合失調症では、バイアスリスクが中~低の研究がなかった。コクランの著者らは、統合失調症のQOL、社会的機能、全体的症状および精神症状の改善が認められたが、全体的な機能の改善は認められなかったとしていた。・ASDでは、行動、社会的コミュニケーション、脳内ネットワーク、親子関係の改善が認められた。・うつ病では、気分の高揚の改善が認められた。・不眠症では、睡眠の質、ストレス、不安、総睡眠時間、疾患重症度、心理的QOLの改善が認められた。・認知症では、気分症状、神経精神医学的行動、無気力、コミュニケーション、身体機能の改善が認められた。また、重症の場合では、行動および心理的症状の改善、軽度アルツハイマー病では、記憶力と言語の流暢さの改善が認められた。認知機能の改善が認められた研究は、4件中1件であった。・認知症に対する音楽療法では、能動的(演奏する)および受動的(聴く)方法が用いられたが、ASDとうつ病で用いられたのは能動的方法のみであった。また、不眠症では受動的方法のみが用いられた。 著者らは「精神神経疾患や発達障害に対する音楽療法は、身体的および心理社会的な健康の改善に役立つことが示唆された。これらの効果の長期的な影響を評価するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。ブースター接種後にほぼすべてのがん患者で高い抗体価 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。 がん患者のブースター接種後の体液性応答を調査した主な結果は以下のとおり。・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だったがん患者で、ほぼすべてのがん患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

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VHL病の腎細胞がんにbelzutifanが有効/NEJM

 フォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)病はVHL遺伝子の生殖細胞系列の病的変異に起因するまれな常染色体性優性の遺伝性疾患で、良性または悪性の新生物と関連し、低酸素誘導因子2α(HIF-2α)の恒常的な活性化などにより生涯に患者の約70%が腎細胞がんを発症するという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏らは、VHL病患者の腎細胞がん治療における第2世代分子標的薬のHIF-2α阻害薬belzutifan(MK-6482)の有用性について検討した(MK-6482-004試験)。その結果、本薬の有害事象は主にGrad1または2であり、VHL病関連の腎細胞がんだけでなく膵病変や網膜・中枢神経系の血管芽腫にも抗腫瘍活性を有することが示された。研究の成果は、NEJM誌2021年11月25日号に掲載された。4ヵ国11施設の非盲検単群第II相試験 本研究は、VHL病患者の腎細胞がんの治療におけるbelzutifanの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検単群第II相試験であり、2018年5月~2019年3月の期間に4ヵ国(米国、デンマーク、フランス、英国)の11施設で患者の登録が行われた(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、生殖細胞系列のVHL遺伝子異常に基づいてVHL病と診断され、少なくとも1個の測定可能な腎細胞がん(CTまたはMRIで最長腫瘍径≧10mm)を有し、パフォーマンスステータス(PS、ECOG基準)が0または1の患者であった。 被験者は、belzutifan 120mg(40mg錠を3錠、1日1回、経口)の投与を受け、許容できない有害事象の発現または病勢が進行するまで継続された。 主要エンドポイントは、VHL病関連腎細胞がん患者における客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とされ、固形がん治療効果判定基準(RECIST ver. 1.1)に基づき、独立画像審査委員会による中央判定が行われた。腎細胞がん以外のがんを有する患者(網膜と中枢神経系の血管芽腫、膵病変[重度の嚢胞腺腫、神経内分泌腫瘍]など)における奏効と安全性の評価も実施された。客観的奏効率49%、2年無増悪生存率96% 61例が登録された。年齢中央値は41歳(範囲:19~66)、男性が32例(52%)で、50例(82%)はPS 0であった。膵病変が61例(100%)、中枢神経系の血管芽腫が50例(82%)、網膜血管芽腫が12例(20%)で認められた。59例(97%)が、1つ以上の腫瘍減量手技(例:腎部分切除術、開頭手術、凍結融解壊死治療)を受けていた。 追跡期間中央値は21.8ヵ月(範囲:20.2~30.1)、投与期間中央値は21.7ヵ月(1.9~30.1)であり、データカットオフ日の時点で54例(89%)がbelzutifanの投与を継続していた。 客観的奏効が得られた腎細胞がん患者は30例で、客観的奏効率は49%(95%信頼区間[CI]:36~62)であった。いずれも部分奏効で、完全奏効を達成した患者はいなかった。30例(49%)が安定と判定された。また、奏効までの期間中央値は8.2ヵ月(範囲:2.7~19.1)で、奏効期間中央値には未到達だった。 56例(92%)で全標的病変径の合計の縮小が認められた。ほとんどの患者で、治療開始前には腫瘍の増大が進んでいたが、治療開始後はこれらの患者で最大腫瘍径の縮小が観察された。24ヵ月時の無増悪生存率は96%(95%CI:87~99)だった。 膵病変を有する61例中47例(77%)で奏効が確認され、このうち6例(10%)は完全奏効であった。中枢神経系血管芽腫では、50例中15例(30%)で奏効が得られ、3例(6%)は完全奏効だった。また、ベースラインで網膜血管芽腫が見られた12例で評価が可能であった16眼では、すべて(100%)が改善と判定された。 最も頻度の高い有害事象は貧血(90%)および疲労(66%)であった。7例が治療を中止し、このうち4例は患者の自発的な中止、1例は治療関連有害事象(Grade1のめまい)による中止、1例は担当医の評価で病勢進行と判定されたことによる中止であり、1例は死亡した(フェンタニルの急性毒性)。有害事象は全般にGrade1または2であり、Grade3は20例(33%)で報告された。 著者は、「VHL病患者は、罹患臓器に生涯にわたって腫瘍が発生するリスクがあり、ほとんどの患者は生涯に数回の手術を受けており、これに伴い合併症が発生する。有効な全身療法が確立されれば、外科的な負担が軽減される可能性があり、臓器に限局したVHL病関連の新生物の管理における新たなアプローチとなるだろう」としている。

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ファイザー製ワクチン2回目後、90日から徐々に感染増加/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製、21日間隔で2回接種)は、2回目接種から数ヵ月後には重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の防止効果が低下し始め、2回目接種から90日以降はブレークスルー感染リスクが徐々に増加することが、イスラエル・Leumit Health ServicesのAriel Israel氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年11月25日号で報告された。イスラエルの後ろ向きのtest negative design研究 研究グループは、BNT162b2ワクチンの2回目接種後の経過期間とCOVID-19の罹患リスクとの関連を評価することを目的に、test negative designを用いた後ろ向き症例対照研究を行った(イスラエル・Leumit Health Servicesなどの助成を受けた)。 解析には、イスラエルの大規模な国立医療機関であるLeumit Health Servicesの電子健康記録(electronic health records)が用いられた。対象は、年齢18歳以上、2021年5月15日~9月17日の期間に逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)による検査を受け、ワクチンの2回目接種後少なくとも3週間が経過し、3回目の接種は受けておらず、COVID-19の既往歴がない集団とされた。 解析では、2回目接種からRT-PCR検査までの期間が90日未満の集団を参照として、30日ごとに90~119日、120~149日、150~179日、180日以上の集団に分けた。また、全年齢層のほか、3つの年齢層(60歳以上、40~59歳、18~39歳)に分けて解析が行われた。 主要アウトカムは、RT-PCR検査で検出されたSARS-CoV-2感染とされた。SARS-CoV-2陽性例と対照(陰性例)を、検査を受けた週、年齢層、人口統計学的集団(超正統派ユダヤ教徒、アラブ系住民、一般人口)でマッチさせた。条件付きロジスティック回帰を用いて、年齢、性、社会経済的状況、併発疾患で補正し、感染リスクの補正後オッズ比(OR)を算出した。ブレークスルー感染率:接種後90日未満1.3%から180日以上は15.5%に上昇 研究期間中に8万3,057例(平均年齢43.97[SD 16.89]歳、女性4万3,554例[52.4%])がSARS-CoV-2感染を検出するRT-PCR検査を受け、7,973例(9.6%)が陽性であった。2回目接種からRT-PCR検査までの期間中央値は164日(IQR:138~185)であった。マッチング後のコホートは、陽性例が6,320例、陰性例は3万1,600例だった。 マッチング前の集団における2回目接種後の経過期間(日数)中央値は、3つの年齢層のいずれにおいても、RT-PCR検査陽性例が陰性例よりも有意に長かった。すなわち、60歳以上では、陽性例が192日、陰性例は173日(p<0.001、標準化平均差[SMD]:0.61)、40~59歳ではそれぞれ185日および166日(p<0.001、SMD:0.62)、18~39歳では174日および164日(p<0.001、SMD:0.62)であった。 マッチング前の集団における2回目接種後のSARS-CoV-2陽性率(ブレークスルー感染の割合)は、接種後の経過期間が長くなるほど有意に高くなり、21~89日(参照集団)の1.3%に対し、90~119日が2.4%(OR:1.91、95%信頼区間[CI]:1.39~2.67)、120~149日が4.6%(3.67、2.75~4.98)、150~179日が10.3%(8.82、6.67~11.90)、180日以上は15.5%(14.10、10.68~19.01)と、経時的に上昇した。また、2回目接種から180日以上が経過すると、3つの年齢層のすべてでSARS-CoV-2陽性率が有意に上昇していた(p<0.01)。 マッチング後の集団における2回目接種から90日以上経過後の、参照集団(90日未満)と比較した感染の補正後ORは、90~119日が2.37(95%CI:1.67~3.36)、120~149日が2.66(1.94~3.66)、150~179日が2.82(2.07~3.84)、180日以上は2.82(2.07~3.85)であった(30日間隔ごとのp<0.001)。 著者は、「これらの知見の解釈は、観察研究デザインの制約を受けるが、3回目のワクチン接種の検討が必要であることを示唆する」としている。

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もはや「新型コロナ辞典」【Dr.倉原の“俺の本棚”】第48回

【第48回】もはや「新型コロナ辞典」新型コロナ系の本はたくさん刊行されています。しかし、おそらくこの書評を執筆している2021年11月1日時点で最高傑作と私が考えているのは、神戸市立医療センター中央市民病院のこのマニュアルです。フルカラーでむちゃくちゃ見やすいんですが、この本には、新型コロナのすべてが載っています。「この世のすべてをそこに置いてきた」と言ったのは、ゴールド・D・ロジャーという稀代の大海賊ですが、コロナのすべてを置いてきちゃったパネェ本が、コレです。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹/監修. メディカ出版. 2021年10月発売当時ニュースにもなっていたのでご存じの人も多いと思いますが、神戸市立医療センター中央市民病院では、院内クラスターが出たことがあります。逆境に耐えて前に進むしかありませんでした。冒頭にある「第1種・2種感染症指定病院として自信満々であった自分たちの感染症対策が今回の新型コロナウイルス感染症には役に立たなかったことを潔く認める」という言葉、重みと覚悟を感じます。軽症から重症まで、院内が一致団結して多職種で新型コロナの対応に当たりました。一般的な新型コロナに対する感染対策だけでなく、入院時スクリーニングの是非、外来のチェックリスト、産科フローチャート、重症化した場合の酸素療法や人工呼吸器のマニュアル、多職種カンファレンス、家族への説明、面会の基準、精神科リエゾン、退院支援。何もかもが余すことなく記載されています。逆に何が書いていないのか、見つかりません。何より、新型コロナに立ち向かう1人ひとりのプロたちの矜持がビンビン伝わってくる内容で、世界に誇ることができる日本のマニュアルに仕上がっています。第6波、第7波がやってくるのかどうかわかりません。新たな新興感染症だっていつやってくるかわかりません。それに備えて、これは病院に1冊は置いてもらいたい「新型コロナ辞典」です。『神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル』木原 康樹 /監修.出版社名メディカ出版定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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第86回 “外交官”のオミクロン株感染から学ぶ、入国禁止以外にできる水際対策とは

一体、私たちはギリシャ文字のアルファベットをいくつ覚えなければならないのだろう。そしてこれまでの各方面の努力が水泡に帰するのだろうか? 南アフリカ(以下、南ア)が起源と考えられている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新たな変異株・オミクロン株の登場に世界が震撼している。ちょうど先週末から今週初めまである地方都市に滞在していたので、夜の飲食店の暖簾をくぐったが、カウンターだけの店内ではオジサンだらけ(もちろん自分も含めてである)。そこでもほかの客が時々「オミクロン」と口にしていて、ややうんざりしてしまった。もっとも私自身は何もオミクロン株を軽視しているわけではない。むしろこれまでよりも厄介なのではないかとすら思っている。すでに広く知られているように、オミクロン株は新型コロナウイルスの野生株と比べ、スパイクタンパク質部分に30ヵ所以上の変異を有し、この数はこれまでの変異株の中で最多。このうち約半分が受容体結合部位(RBD)に関する変異で、常識的に考えれば、この数の多さだけで感染やワクチン接種によりできた抗体の抗原認識能力は低下すると考えられる。しかも細胞へのウイルスの侵入を容易にし、感染性の増強に関わる変異も有するので極めて厄介と言わざるを得ない。起源と言われる南アでは昨年5月下旬から9月初旬にかけての第1波、昨年11月下旬から今年2月上旬にかけての第2波、そして今年5月中旬から9月下旬まで続いた第3波を経験し、11月中旬から第4波とみられる感染流行を見せている。この第4波では各国で猛威を振るい日本の第5波を引き起こしたデルタ株からオミクロン株への置き換わりが進み、感染流行の主流株になりつつあるという。その意味でオミクロン株はデルタ株より感染力は増している可能性があり、実際一部の事例の報告からその可能性がうかがい知れる。たとえば、香港では入国後に検疫用隔離ホテルに滞在していた南ア渡航歴がある人でオミクロン株感染が判明し、同じホテルでこの感染者の真向いの部屋に滞在していたカナダからの帰国者でも感染が発覚。その後の調査から同じフロアの廊下などの環境中からもオミクロン株が検出されている。このような経緯もあり、日本政府は11月27日から水際対策の強化を目的に南アとそれに隣接するナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、エスワティニ(旧スワジランド)、レソトの計6ヵ国からの入国者に国指定の宿泊施設で10 日間の待機を義務付け、翌28日にはこの対象国にザンビア、マラウイ、モザンビークを加えた。もっともアフリカの事情を考えた場合、この対策は不十分だと思い、私個人はそのことをTwitterでツイートもしていた。何かというと、アフリカ大陸は1880年代から第一次世界大戦期までの「アフリカ分割」と称されるヨーロッパ列強による植民地支配により、各国とも人流において、当時の支配者だったいわゆる旧宗主国とのつながりが深い。たとえば当初の水際対策強化の対象だった6ヵ国の場合はそうした事情でイギリスが旧宗主国であり、追加された3ヵ国のうちモザンビークはポルトガル、残り2ヵ国もやはりイギリスがそれである。つまりこれらの対象国からの流入阻止を考えた場合、ヨーロッパからの入国にも一定の制限を設けなければ理屈に合わない。また、前述の9ヵ国から日本への直行便はないため、これらの国からの来日はアフリカ大陸でも世界各地への旅客機の本数が多いエジプト、エチオピア、ケニア、あるいは中東のアラブ首長国連邦やカタール、アジア圏内の韓国、中国、タイ、シンガポール各国を経由する。つまりこのルートも厳重警戒を払わねばならない。結局のところ水際対策を強化するならば、ほぼ全世界からの入国に対して対策強化をしなければならないのだ。その意味で11月30日午前0時から全世界からの外国人の入国を1ヵ月停止し、オミクロン株が確認されている各国からの日本人帰国者を厳重な隔離施設で待機させるとした首相官邸の決定は、かなりの英断だったと個人的には評価している。ただ、最終的に撤回はされたものの、国土交通省を通じて日本に到着する国際線を運航する各航空会社に新規予約を止めるよう要請していた件は、不安に駆られ帰国を急ぎたい日本人をさらに不安に陥れるという意味で愚策だったことは確かだ。また、日本の在留資格を有する外国人が、日本入国直前14日以内に前述の9ヵ国にアンゴラを加えた10ヵ国に滞在歴がある場合、特段の事情がない限り再入国を原則拒否する決定もやり過ぎの感がある。在留資格を持つということは日本に一定の生活基盤があることを意味し、そうした人たちを追い返すのは人道上問題だからだ。さて、それだけの対策を取っていても、日本では11月28日に入国したナミビア滞在歴のある30代男性、29日にペルーから入国した20代男性の合計2人のオミクロン株感染者が確認された。ナミビアからの入国者に関しては外交官で、モデルナ製ワクチンを2回接種済みだったと報じられている。正直、ブレークスルー感染という事実以上に、私は日本で確認された1例目が外交官だったことに衝撃を受けている。表現が適切と言い難いかもしれないが、外交官と言えば、どこの国であっても社会の上流層だ。ナミビアの人口当たりのワクチン接種完了率は、「Our World in Data」によると12月1日時点で11.39%で、この外交官はまさに国民の10人に1人の恩恵にあずかった人である。そのナミビアは国連が算出した所得分布の不平等さ、つまり経済格差を表す「ジニ係数」は世界2位。ワクチンを接種できる外交官が感染する社会・衛生状況ならば、下流層はどうなっているのだろうか? いわんや、ジニ係数で世界1位、アフリカ大陸内での国別人口ランキング5位、人口密度はナミビアの16倍でオミクロン株の起源国と言われる南アの実際の状況はいかばかりかと想像してしまう。さらに12月2日午前段階で日本も含め世界の27ヵ国・地域でオミクロン株の感染者が確認されているが、そのうちの1つ、ベルギーで確認されている事例はアフリカ大陸内で国別人口第2位(約1億39万人)のエジプトへの渡航歴を有する人であり、お隣の韓国で確認された事例はアフリカで最大の人口(約2億96万人)を有するナイジェリアに渡航した韓国人だったと報じられている。これらも渡航目的が業務であれ観光であれ、この時期と社会環境で渡航できる以上、衛生面にも配慮が可能なある程度の裕福な層の人だろう。そうした人たちがこの巨大な人口を有する国で感染してしまうのである。これらを総合すると、アフリカでのオミクロン株の蔓延は数字で判明している以上のものなのではないかと考えられる。もっとも現状でのせめてもの救いは、各国で判明しているオミクロン株の感染者の多くが無症候か軽症であるということ。ただ、いまだに新型コロナに対抗する手段が十分とは言えない状況では、軽症であれ感染者が増加するのは看過できない事態である。水際対策では完全に流入を防ぎきれるものではないことは確かだが、メリハリをつけながらも当面は厳重な体制を敷くほうが合理的ではないだろうか。一方、懸念されるワクチンの効果減弱だが、理論上はワクチンの効果が低下すると予想されているが、そうした中でイスラエルからファイザー製ワクチンのブースター接種完了者で検討したオミクロン株に対する有効率が、感染予防で90%、重症化予防で93%と報道されている。数字だけを見れば安心してしまうが、そもそも国内で4例しかオミクロン株の感染者がいないイスラエルで、南アのデータなども参考にして算出したともいわれているが、根拠が不明確で額面通りに受け取るのは難しい。とくに日本の場合はブースター接種が医療従事者で始まったばかりで、参考にするには状況が違いすぎる。また、ここで浮かび上がってきた課題がある。それはワクチン接種率の低い発展途上国で新たな変異株が登場したという現実だ。今回警戒されているアフリカ南部10ヵ国のワクチン接種完了率は、Our World in Dataによると、最高でレソトの26.51%、最低はマラウイの3.06%である。こうした接種率の低い国が存在すれば、そこで感染が激増し、変異株を生むことになる。そうなればワクチン接種と変異株登場のイタチごっこが続くだけだ。日本や先進国は自国の接種率向上やブースター接種推進を急ぐだけでなく、こうした国々へのワクチン供与などで協調支援に動くべき段階に来ているとも言えるだろう。

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肉の消費とメンタルヘルス

 肉の消費や制限がうつ病や不安症に及ぼす影響を明らかにするため、米国・サザンインディアナ大学のUrska Dobersek氏らは、これらの定量的な関連を評価した。Critical Reviews in Food Science and Nutrition誌オンライン版2021年10月6日号の報告。 2020年6月、5つのオンラインデータベースを検索し、肉の摂取を制限している人と消費している人を明確に区分し、うつ病および不安症の有病率を調査した初期研究を抽出した。バイアス補正(Hedges's gエフェクトサイズ)を用いて、肉消費群と肉制限群の間の影響の大きさを計算した(高スコアおよび正のスコアが肉消費群にとって良好な結果であったことを示す)。 主な結果は以下のとおり。・20研究より、肉消費群15万7,778人と肉制限群1万3,259人を含む17万1,802人が選択基準を満たした。・肉消費群は、肉制限群と比較し、うつ病リスク低下(g=0.216、95%CI:0.14~0.30、p<0.001)および不安症リスク低下(g=0.17、95%CI:0.03~0.31、p=0.02)との関連が認められた。・肉消費群は、ビーガンと比較し、うつ病リスク(g=0.26、95%CI:0.01~0.51、p=0.041)および不安症リスク(g=0.15、95%CI:-0.40~0.69、p=0.598)が低かった。・性別による影響は認められなかった。・研究の質については、研究間の不均一性が、うつ病に関して58%、不安症に関して76%認められた。・さらに、研究がより厳格であるほど、肉の消費と良好なメンタルヘルスとの一貫した関連が認められた。・これらの関連性に関して、因果関係および時間的推論は考慮されていない。

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クイズ形式で慢性骨髄性白血病を知るプロジェクト/ノバルティスファーマ

 ノバルティス ファーマは、一般向けに慢性骨髄性白血病(CML)に対する正しい理解を促進するプロジェクト「C.M.L.PROJECT~ちゃんと・学んで・リンクする~」を展開しており、その一環として11月25日に啓発イベントを開催した。 プロジェクトの目玉は、テレビ番組やYouTubeで人気のQuizKnockのこうちゃん氏が考案した「CMLを知るためのクイズ」で、この日のイベントもクイズ王として有名な伊沢 拓司氏と俳優の鈴木 福氏がクイズに挑戦する、という形式だった。 出題されたクイズは7問で徐々に難易度が上がっていき、「10代がかかるがんの中で、白血病が占める割合は何位か。1)1位 2)2位 3)3位」(正解は1位)、「CMLの発症年代として比較的多いのは次のうちどれか。1)10代 2)30代 3)50代」(正解は50代)等の問題に出演者が挑戦した。 回答とあわせ、国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科 の南 陽介氏による解説があり、南氏は「比較的若い人にも多いがんであり、長く治療を続けることが必要」といった疾患の基本知識を共有した。最も反響を呼んだのは「CMLと診断された人の中で、診断後自ら仕事を辞めた人の割合は何%?」という問題で、「6割」「3割」といった回答が出る中で、正解の「1割」が発表されると「そんなに少ないの!」と驚きの声が上がった。 南氏は「白血病というと『不治の病』『助からない』といったイメージがあるが、白血病には急性・慢性、リンパ性・骨髄性と2因子の組み合わせの4種類があり、その中でCMLは分子標的薬の登場で多くの患者さんが長い予後を得られるようになっている」と説明。「それでも、長年に渡る治療が必要となる疾患であることは変わりなく、周囲の理解がないために仕事を失ったり偏見にあったりなど、苦しむ患者さんは多い。社会全体の理解とサポートが必要」とした。 クイズを作成したこうちゃん氏は「クイズをつくるにあたって患者会の方と話すなど、自分自身もとても勉強になった。正しい医療情報を得ることが大切な時代なので、クイズによって少しでも面白く、学ぶきっかけとして欲しい」と語った。関連サイト「C.M.L.PROJECTサイト」

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乳児・遅発型のポンペ病の標準治療となるか?/サノフィ

 サノフィ株式会社は、ポンペ病治療剤アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)(商品名:ネクスビアザイム)点滴静注用100mgを、11月26日に発売した。 アバルグルコシダーゼアルファは、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病(IOPD)および遅発型ポンペ病(LOPD)の新たな標準治療となる可能性がある。世界で5万人の患者が推定されているポンペ病 ポンペ病は進行性の筋疾患で、運動機能や呼吸機能の低下を来す希少疾患。ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼす。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定されて、わが国では、指定難病研究班により実施された全国疫学調査において、患者数は134人と報告されている。 ネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届け、グリコーゲンの分解を促すことで、本症がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)を標準治療薬であるマイオザイム(アルグルコシダーゼアルファ)よりも改善させる目的で開発された。 わが国では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は、2021年8月に承認、英国の医薬品・医療製品規制庁は、本剤を有望な革新的医薬品に指定している。 2021年9月のわが国での製造販売承認取得では、ピボタル第III相二重盲検比較試験のCOMET試験と第II相Mini-COMET試験の肯定的な結果が審査された。前者では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファとの比較で検討した。後者では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。 その結果、前者の試験では、アルグルコシダーゼアルファに比べネクスビアザイムは、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された(p=0.0074;95%CI,-0.13,4.99)。 また、後者の試験では、6ヵ月時点では、アルグルコシダーゼアルファの治療時に悪化または効果不良がみられた患者において、有効性の評価項目である粗大運動能力尺度-88、簡易運動機能検査、ポンペPaediatric Evaluation of Disability Inventory、左室心筋重量のZスコアおよび眼瞼の位置に改善または安定化がみられた。 いずれの試験でも重篤または重度の治療と関連する有害事象は認められなかった。アバルグルコシダーゼアルファの概要一般名:アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)販売名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg効能または効果:ポンペ病用法および用量:通常、アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。国内製造販売承認取得日:2021年9月27日薬価収載日:2021年11月25日発売日:2021年11月26日製造販売会社:サノフィ株式会社

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接種勧奨再開のHPVワクチン、男性にも高い有効性

 副反応の報道により、2013年から個別接種の積極的勧奨が中止されていたHPVワクチンについて、国内外から有効性と安全性を認める報告が集積し、ついに2022年4月から積極的勧奨が再開される見通しだ。定期接種として無料で接種できるのは13~16歳の女子だが、同ワクチンが若年男性の感染症およびウイルス起因のがん予防に有効であるという報告が、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版11月12日号に掲載された。 米国マウントサイナイ医科大のStephen E Goldstone氏らによる本研究は、4価のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを用いた、16~26歳の男性1,803例を対象とした無作為化プラセボ対照試験。10年間の追跡調査で、HPV6または11に関連した外性器疣贅、HPV6、11、16、18に関連した性器病変および肛門異形成の発生率を評価した。 3年間の基礎試験は18ヵ国71施設で実施された。対象は異性愛者の男性(16~23歳)または男性と性交渉を持つ男性(=MSM、16~26歳)で、スクリーニング時にHPV以外の性感染症への感染を示唆する肛門性疣贅や性器病変がある、またはそのような所見の既往歴がある例は除外された。参加者は4価HPVワクチンまたはプラセボのいずれかを、1日目、2ヵ月目、6ヵ月目の計3回接種した(両群比1対1)。 続く7年間の長期フォローアップ試験は、16ヵ国46施設で行われた。基礎試験の期間中に4価HPVワクチンを1回以上接種した参加者が登録可能とされた(早期群)。プラセボ群は、基本試験の終了時に4価HPVワクチンの3回接種を行い、1回以上接種した時点で長期フォローアップの対象となった(キャッチアップ群)。 有効性に関する主要評価項目は以下のとおり。・全被験者におけるHPV6または11に関連した外性器疣贅の発生率・HPV6、11、16、18に関連した性器病変の発生率・MSM例におけるHPV6、11、16、18に関連した肛門上皮内新生物(肛門疣贅と扁平病変を含む)または肛門がんの発生率 早期群のper-protocol集団における主要な効果分析は、1)3回のワクチン接種を受けた、2)1日目に血清陰性、1日目から7ヵ月目まで分析対象となるHPV型のPCR検査陰性、3)ワクチン効果の評価に影響を与えるプロトコル違反がない、4)長期フォローアップ中に1回以上の診察を受けた参加者を対象とした。 キャッチアップ群における有効性は修正intention-to-treat集団で評価され、1)1回以上ワクチン接種を受けた、2)ワクチン接種前の基本試験1日目から最終フォローアップ診察日までのPCR検査陰性、3)長期フォローアップ中に1回以上の診察を受けた参加者を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・2010年8月10日~2017年4月3日の間に1,803例が登録され、うち936例(異性愛:827例、MSM:109例)が早期群に、867例(異性愛:739例、MSM:128例)がキャッチアップ群に組み入れられた。・早期群はワクチン3回目接種後に中央値9.5(範囲:0.1~11.5)年、キャッチアップ群は3回目接種後に中央値4.7(0.0~6.6)年のフォローアップ調査を受けた。・「長期フォローアップ中の早期群」と「基本試験中のプラセボ群」を比較した1万人年当たりの発生率は以下のとおり。●外性器疣贅:0.0(95%CI:0.0~8.7)対137.3(83.9~212.1)●外性器病変:0.0(0.0~7.7)対140.4(89.0~210.7)●MSMの肛門上皮内新生物または肛門がん:20.5(0.5~114.4)対906.2(553.5~1,399.5)・キャッチアップ群の「ワクチン接種前の基本調査中」と「ワクチン接種後のフォローアップ中」を比較したの1万人年当たりの発生率は以下のとおり。●外性器疣贅:149.6(101.6~212.3)対0(0.0~13.5)●MSMの肛門上皮内新生物または肛門がん:886.0(583.9~1289.1)対101.3(32.9~236.3)・フォローアップ中のキャッチアップ群において、外性器病変の新規報告例はなかった。・ワクチンに関連した重篤な有害事象は報告されなかった。 著者らは「4価のHPVワクチンは、HPV6、11、16、18に関連する肛門性器疾患に対する持続的な保護を提供する。この結果は、キャッチアップ接種を含む男性への4価HPVワクチン接種を支持するものである」としている。 国内におけるHPVワクチンの承認状況は、女性対象は2価(商品名:サーバリックス)、4価(ガーダシル)、9価(シルガード9)が承認済みだが、男性対象は4価のみで公費助成は対象外、適応は肛門がん(扁平上皮がん)およびその前駆病変、尖圭コンジローマとなる。海外では男性に対しても接種勧奨や公費助成の対象とする国も多い。

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非がん性疼痛に対するオピオイド処方、注射薬物使用との関連は?/BMJ

 非がん性疼痛に対し慢性的にオピオイド薬の処方を受けている人において、注射薬物の使用(injection drug use:IDU)を始める割合は全体ではまれであるが(5年以内で3~4%)、オピオイド未使用者と比較すると約8倍であった。カナダ・ブリティッシュコロンビア疾病管理センターのJames Wilton氏らが、カナダの行政データを用いた大規模後ろ向きコホート研究の解析結果を報告した。オピオイド処方と違法薬物または注射薬物の使用開始との関連性については、これまで観察研究などが数件あるが、大規模な追跡研究はほとんどなかった。著者は、「今回の研究で得られた知見は、IDUの開始やそれに伴う2次的な害を防止する戦略や政策に役立つと考えられるが、長期処方オピオイド治療の不適切な減量や中止の理由にしてはならない」とまとめている。BMJ誌2021年11月18日号掲載の報告。約170万人のデータから、オピオイド使用者を特定、注射薬物開始との関連を解析 研究グループは、British Columbia Hepatitis Testers Cohortとして知られている大規模な行政データ、Integrated Data and Evaluative Analytics(IDEAs)を用いてデータを解析した。IDEAsのコホートには、1992~2015年にブリティッシュコロンビア州でC型肝炎ウイルスまたはHIVの検査を受けた約170万人が含まれ、これらのデータは、医療機関の受診、入院、救急受診、がんの診断、死亡、および薬局での調剤のデータと連携している。 解析対象は、ベースライン時に物質使用歴(アルコールを除く)のない11~65歳の人で、2000~15年における非がん性疼痛に対する処方オピオイド使用の全エピソードを特定した。エピソードは、オピオイド処方の開始から終了までを、薬剤が提供されない期間が前後6ヵ月間ある場合と定義し、エピソード内の処方日数やその日数の割合によってエピソードを分類した(急性:エピソード期間<90日、一過性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日未満および/または処方日数の割合が50%未満、慢性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日以上および/または処方日数の割合が50%以上)。社会経済的変数に基づき、慢性、一過性、急性、およびオピオイド未使用者を1対1対1対1の割合でマッチングした。 IDU開始は、1年以内に、(1)注射薬物の使用に関連する問題(オピオイド、コカイン、アンフェタミンまたはベンゾジアゼピンに対する依存に関する診断コードなど)のエビデンスがある、(2)注射関連感染症の可能性の診断、の2つが認められた場合と定義し、特異性が高く妥当性のある管理アルゴリズムによって特定した。 オピオイド使用分類(慢性、一過性、急性、未使用)とIDU開始との関連性は、逆確率治療重み付け(IPTW)法によるCoxモデルを用いて評価した。解析対象は約6万人、慢性的なオピオイド処方は注射薬物使用のリスクが高い マッチングコホートには計5万9,804例(オピオイド使用分類それぞれ1万4,951例)が組み込まれた。追跡調査期間中央値5.8年において、1,149例でIDU開始が認められた。IDU開始の5年累積確率は、オピオイド使用分類が慢性(4.0%)で最も高く、次いで一過性(1.3%)、急性(0.7%)、オピオイド未使用(0.4%)の順であった。IDU開始リスクは、オピオイド使用分類が未使用に対して、慢性の場合、8.4倍上昇した(95%信頼区間[CI]:6.4~10.9)。 慢性疼痛歴のある人に限定した感度分析では、オピオイド使用分類が慢性の場合、IDU開始のリスクは主解析結果より低下したが(5年以内で3.4%)、相対リスクは低下しなかった(ハザード比:9.7、95%CI:6.5~14.5)。 IDU開始は、オピオイド投与量が多いほど、また、年齢が若いほど、高頻度であった。

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ナトリウムとカリウムの摂取量、心血管リスクと用量反応的に関連/NEJM

 ナトリウム摂取量の増加ならびにカリウム摂取量の低下は、用量反応的に心血管リスクの増加と関連していることが、2回以上の24時間尿検体の測定値を用いた解析で明らかとなった。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYuan Ma氏らが、前向きコホート研究6件のメタ解析結果を報告した。ナトリウム摂取量と心血管疾患との関連については、ナトリウム摂取量の評価が不正確であるなどの理由で議論の的となっているが、24時間尿中排泄量を複数回評価することは、正確な方法と考えられる。今回の結果を踏まえて著者は、「これらの知見は、現在よりナトリウム摂取量を減らし、カリウム摂取量を増やすことを支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年11月13日号掲載の報告。6つのコホートの個人データを組み合わせて、心血管リスクを評価 研究グループは、一般健康成人を対象にした6件の前向きコホート研究「HPFS」「NHS」「NHS II」「PREVEND」「TOHP I」「TOHP II」の、参加者個々のデータを用い、ナトリウムおよびカリウム摂取量と心血管リスクの関連性を検討した。解析対象は、ベースライン時に2回以上24時間尿検体中のナトリウムおよびカリウム排泄量が測定されている個人である(2回の24時間尿採取を行った期間をベースラインと定義)。 主要評価項目は、心血管イベント(冠動脈血行再建、致死的/非致死的心筋梗塞、および致死的/非致死的脳卒中の複合)で、尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量、ならびにナトリウム/カリウム比と心血管イベントリスクとの関連を、各研究について同一の方法を用いて解析した後、ランダム効果メタ解析を用いて各研究の結果を統合した。ナトリウム摂取量の増加は心血管リスク上昇と関連 解析対象は計1万709例で、平均(±SD)年齢は51.5±12.6歳、女性が54.2%であった。 追跡調査期間中央値8.8年において、571件の心血管イベントが確認された(発生頻度5.9/1,000人年)。24時間尿中ナトリウム排泄量中央値は3,270mgであった(10~90パーセンタイル値:2,099~4,899)。 交絡要因を調整後、ナトリウム排泄量の増加、カリウム排泄量の低下、およびナトリウム/カリウム比高値は、いずれも心血管リスクの増加と関連していた(いずれもp≦0.005)。各値の第1四分位群(最低群)に対する第4四分位群(最高群)のハザード比(HR)は、ナトリウム排泄量に関しては1.60(95%信頼区間[CI]:1.19~2.14)、カリウム排泄量は0.69(0.51~0.91)、ナトリウム/カリウム比は1.62(1.25~2.10)であった。 また、1日ナトリウム排泄量の1,000mg増加は心血管リスクの18%増加(HR:1.18、95%CI:1.08~1.29)、1日カリウム排泄量の1,000mg増加は心血管リスクの18%低下(0.82、0.72~0.94)と関連していた。

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