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第34回 10代のSNS利用増、認知テストのスコア低下と関連か?米国大規模調査が示す懸念と対策の必要性

「若者のSNS利用は良いこと? 悪いこと?」この問題をめぐる議論は、世界中の教育者の間で熱を帯びていると言っていいでしょう。SNSが心に悪影響を与えるという研究があれば、「測れるほどの影響はない」という反論も出ます。そんな混沌とした状況が、子供たちや家庭を守るための明確なルール作りを遅らせてきた側面は否めません。そんな中、JAMA誌に掲載された最新の研究は、私たちに新たな視点を与えてくれます1,2)。今回の記事では、思春期初期のSNS利用時間の増加が、10代の認知能力にどのような影響を与えているのかについて明らかにしたこの研究について解説していきます。SNS利用時間の追跡、10代の利用パターン今回ご紹介する研究は、アメリカで行われている大規模な追跡調査「Adolescent Brain Cognitive Development (ABCD) Study」のデータをもとにしています。研究チームは、6,554人の子供たちを9歳から13歳まで追跡しました。そして、彼らが3年間にわたって、具体的に「ソーシャルメディア(SNS)」にどれくらいの時間を費やしているか、その利用パターンの違いを分析したのです。その結果、子供たちのSNS利用には、大きく分けて3つの異なるグループがあることがわかりました。まず、過半数の子供たち(57.6%)は、「ほとんど、あるいはまったく使わない」グループに属していました。彼らのSNS利用時間は非常に少なく、13歳時点でも1日の平均利用時間はおよそ18分にとどまりました。次に大きなグループ(36.6%)は、「低い頻度で(徐々に)増加する」パターンを示しました。9歳時点では利用時間が少なかったものの、年齢とともに増え、13歳時点では1日の平均利用時間がおよそ78分に達していました。少数派ながら見過ごせないグループ(5.8%)は、「高頻度で(急激に)増加する」経過をたどりました。彼らの利用時間も最初は少なかったのですが、その後急激に増加し、13歳時点では1日の平均利用時間が3時間以上と、他のグループに比べて突出して長くなっていました。ここで重要なのは、これらの時間はあくまで「SNS」の利用時間であり、ゲーム、動画視聴、学習目的でのコンピュータ利用など、他のスクリーンタイムは含まれていないという点です。SNS利用と脳のパフォーマンス次に研究チームは、これらの異なるSNS利用パターンが、13歳時点での認知能力とどのように関連しているかを調べました。認知能力の測定には、米国国立衛生研究所が開発した標準化されたテストが用いられました。そして、分析に当たっては、研究開始時点(9歳)での認知スコアを考慮に入れることで、もともとあった能力差が結果に影響するのを最小限に抑えました。その結果、一貫した傾向が見られました。「ほとんど、あるいはまったく使わない」グループと比較して、「低頻度で増加する」グループと「高頻度で急増する」グループの両方が、13歳時点でいくつかの重要な認知テストにおいて低いスコアを示したのです。具体的には、以下の項目で有意な差が見られました。読解認識文章を読む能力に関連絵画語彙言語知識を測る絵画シーケンス記憶出来事を覚える能力を測る総合スコア全体的な認知能力を示すさらに、これらの差には「量反応関係」のような傾向が見られました。つまり、「高頻度で急増する」グループは、「低頻度で増加する」グループよりも、基準となる「ほとんど使わない」グループとのスコア差が大きい傾向があったのです。ただし、この結果を解釈するには注意も必要です。統計的には意味のある差(偶然とは考えにくい差)でしたが、標準化されたスコアで見ると、実際の点差は比較的小さかったのです。また、3つのグループすべての平均スコアは、年齢相応の「平均的な範囲」内に収まっていました。では、この「小さな差」は重要ではないのでしょうか? 必ずしもそうとは言えません。集団レベルで見ればわずかな認知能力の平均的な違いでも、実社会では大きな影響をもたらす可能性があるからです。たとえば、平均的に課題を終えるのに時間がかかるようになったり、数学や読解のような積み重ねが必要な科目で遅れが出やすくなったり、学業への意欲そのものが低下したりするかもしれません。とくに、今回の研究で影響が見られたのが、語彙力や読解力といった、学習や経験を通じて獲得される能力(結晶性知能と呼ばれる)であったことは、この懸念を裏付けているようにみえます。なぜ関連が? 考えられる理由この研究は、SNS利用時間の増加と認知スコアの低さの間に「関連がある」ことを示しましたが、SNSが認知スコア低下の「原因である」と証明したわけではありません。しかし、研究者たちは、その関連性を説明できるいくつかの有力なメカニズムを挙げています。一つは「置き換え仮説」です。SNSの画面をスクロールしている時間は、本来であれば宿題、読書、趣味、あるいは学校での活動など、認知能力の発達にとってより有益な活動に使われたかもしれない時間です。SNSがこれらの活動時間を奪ってしまうことが、とくに言語知識系のスコア低下につながっているのではないかと考えられます。もう一つの重要な要因は「睡眠」です。思春期は脳が劇的に発達する時期であり、質の高い睡眠は学習、記憶の定着、感情のコントロールに不可欠です。しかし、SNSプラットフォームは、絶え間ない通知、アルゴリズムによって無限に続くフィード、刺激的なコンテンツなどで、若者の就寝時間を遅らせ、夜中の睡眠を妨害することが知られています。慢性的な睡眠不足が、注意力や学習能力に直接的な悪影響を与えている可能性があります。もちろん、逆の関係性も考えられます。つまり、もともと認知能力があまり高くない若者が、退屈しのぎや、アルゴリズムに惹きつけられやすいといった理由で、SNSにより多くの時間を費やすようになる可能性です。原因と結果の関係をはっきりさせるには、さらなる研究が必要でしょう。政策を動かすのに「十分な証拠」と言えるのか?このように、まだ解明されていない点や研究上の限界はあるものの、今回の研究結果は、既存の証拠と合わせて考えれば、社会的な対策の導入を正当化するのに「十分な証拠」なのかもしれません。エビデンス自体の強固さに疑問がついたとしても、政策決定は、証拠の確かさだけでなく、問題の緊急性、対策を講じること・講じないことの利益と不利益、実現可能性などを総合的に考慮して判断しなければならないからです。SNSには、社会的なつながりを育んだり、疎外された若者を支援したりといった潜在的な利点もあるでしょう。しかし、利益追求を第一とするプラットフォーム企業が、本質的に子供の利益を最優先する動機を持っているわけではないとも指摘されています。そして、今回の研究で示唆された発達上のコストを考えれば、行動を起こさないことのリスクは大きいとも論じられています。実際、かつて鉛への曝露に関する研究が、比較的小さな認知能力への影響を示唆しただけでも、大きな政策変更や公衆衛生上の対策につながった例もあります。それならば、今回観察された認知能力の差も、政策立案者が真剣に受け止めるべきなのかもしれません。年齢制限、より安全性を考慮したプラットフォーム設計基準、企業への説明責任の強化といった規制措置が、今こそ必要なのかもしれません。さらなる研究が待たれる一方、今回の研究は、思春期初期という脳の発達にとって極めて重要な時期におけるSNS利用が、無視できない認知的コストを伴う可能性を強く示唆しています。若者の健全な発達をデジタル時代にどう守っていくか。今こそアクションを検討すべき重要な問いだと言えるでしょう。 参考文献 1) Nagata JM, et al. Social Media Use Trajectories and Cognitive Performance in Adolescents. JAMA. 2025 Oct 13. [Epub ahead of print] 2) Madigan S, et al. Developmental Costs of Youth Social Media Require Policy Action. JAMA. 2025 Oct 13. [Epub ahead of print]

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帯状疱疹後神経痛、発症しやすい人の特徴

 帯状疱疹を発症すると、帯状疱疹の皮疹や水疱消失後に帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)と呼ばれる合併症を伴う場合があり、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているという報告もある1)。今回、中国・Henan Provincial People's HospitalのJing Wang氏らは、PHNの独立した危険因子となる患者背景を明らかにした。Frontiers in Immunology誌2025年10月1日号掲載の報告。 本研究は、PHN高リスク患者の早期発見と予防戦略の最適化支援を目的として、PHNの独立した危険因子を特定するため、PubMed、Embase、Cochrane Libraryを検索。メタ解析にて人口統計学的特徴、臨床症状、治療計画、合併症、ウイルス学的因子などの評価を包括的に分析し、結果の堅牢性を検証するための感度分析も実施した。なお、研究間の異質性はI2統計量とコクランのQ検定を用いて評価し、閾値は低異質性(I2<30%)、中等度の異質性(I2=30~60%)、高異質性(I2>60%)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・本システマティックレビューにて36件(前向き研究15件、症例対照研究5件、後ろ向き研究13件、システマティックレビュー3件)が特定され、そのうち24件をメタ解析した。・PHNの独立した危険因子として、以下のものが主に特定された。 ●60歳以上:オッズ比(OR) 1.16(95%信頼区間[CI]:1.15~1.17、高異質性) ●喫煙やアルコール摂取などの生活歴:OR 1.13(95%CI:1.07~1.20、高異質性) ●免疫抑制薬による治療:OR 1.94(95%CI:0.16~23.44、異質性なし) ●糖尿病:OR 1.29(95%CI:1.05~1.60、高異質性) ●慢性閉塞性肺疾患:OR 1.70(95%CI:1.23~2.35、異質性あり) ●高血圧症:OR 1.82(95%CI:1.28~2.58、異質性なし) ●悪性腫瘍:OR 1.99(95%CI:1.07~3.70、異質性なし) ●慢性腎臓病:OR 1.08(95%CI:0.99~1.17、異質性なし)・このほか、重度の発疹、前駆症状としての疼痛、アルコール乱用、検出ウイルス量の高さなども危険因子の可能性を示していた。・一方、性差および社会経済的地位はPHNの発症と有意な関連を示さず、十分なエビデンスが認められなかった(I2>50%、p>0.05)。 研究者らは「帯状疱疹の重症度が急性疼痛の強さとともにPHNの重要な危険因子であり、また、上記の危険因子以外にも新型コロナウイルスが潜在的な危険因子となる可能性があるため、さらなる調査が必要である」としている。

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日本食はうつ病予防に有効なのか?

 老年期うつ病は、高齢化社会においてますます重要な公衆衛生問題となっている。日本は世界有数の平均寿命と健康寿命の長さを誇るにもかかわらず、日本食と老年期うつ病との具体的な関連性に特化したプロスペクティブコホート研究はこれまで行われていなかった。北海道大学のHo Chen氏らは、日本食と老年期うつ病との関連性を検証し、この関連性が食事の質の向上に起因する身体的健康状態の改善にとどまらないかどうかを評価するため、本研究を実施した。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌2025年9月号の報告。 本研究では、1996〜2005年に65歳となる愛知県・日進市の住民を対象とした、年齢別プロスペクティブコホート研究である「the New Integrated Suburban Seniority Investigation(NISSIN)プロジェクト」のデータを利用した。高齢者1,620人(男性:827人、女性:793人)を対象に、70歳時点での老年期うつ病の発症状況を評価した。老年期うつ病の評価には、老年期うつ病尺度15項目質問票を用いた。日本食の順守状況は、修正版日本食インデックス(JDI)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・70歳時点で老年期うつ病を発症した高齢者は合計135例であった。・主要な交絡因子を調整した後、日本食の順守が最も高かった群では、順守が最も低かった群と比較し、老年期うつ病の発症リスクが有意に低かった(調整オッズ比[aOR]:0.525、95%信頼区間[CI]:0.286〜0.962)。・また、JDIの各ポイントも老年期うつ病リスクの低下との関連が認められた(aOR:0.900、95%CI:0.816〜0.992)。・食事項目別の解析では、魚介類(p=0.024)、緑黄色野菜(p=0.003)、大豆由来製品(p=0.001)が老年期うつ病リスクの低下と有意に関連していることが示唆された。 著者らは「日本食、とくに緑黄色野菜、大豆由来製品、魚介類を多く含む食生活を順守することは、老年期うつ病の予防につながる可能性がある」と結論付けている。

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亜鉛欠乏がCKD患者のAKIリスクを37%上昇、死亡リスクは約2倍に

 慢性腎臓病(CKD)患者における亜鉛欠乏が、急性腎障害(AKI)発症および死亡の独立したリスク因子であることが、台湾・Chi Mei Medical CenterのYi-Chen Lai氏らによる大規模リアルワールドデータ解析で明らかになった。Frontiers in Nutrition誌2025年9月25日号掲載の報告。 AKIはCKD患者にしばしば合併し、重症化すると生命予後を著しく悪化させるが、既知のリスク因子の多くは高齢や糖尿病などで修正が難しい。一方、動物実験では亜鉛補充が腎障害を抑制する可能性が示唆されているものの、ヒトを対象とした大規模研究は乏しい。そこで研究グループは、CKD患者を対象に、ベースラインの亜鉛欠乏がAKI発症や腎機能悪化リスクにどのように関連するかを検討するため、大規模後ろ向き解析を実施した。 TriNetX Analytics Network Platformを用いて、CKDの既往歴を有し、2010年1月~2023年12月に血清亜鉛検査を受けた18歳以上の患者を特定した。患者を亜鉛欠乏群(70μg/dL未満)と対照群(70~120μg/dL)に分類し、傾向スコアマッチングを行った。マッチングは年齢、性別、併存疾患、臨床検査値、使用薬剤などの背景因子を調整して1:1で実施した。主要評価項目は追跡12ヵ月時の新規AKI発症とし、副次評価項目は全死因死亡、末期腎不全(ESRD)、集中治療室(ICU)入院、主要心血管イベント(MACE)の発生として、各ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・両群はそれぞれ5,619例で、平均年齢は亜鉛欠乏群64.0±15.7歳、対照群63.8±15.4歳。女性はそれぞれ56.6%および56.3%であった。・追跡12ヵ月時点で、亜鉛欠乏群では対照群と比べてAKI発症、ESRD進行、死亡などのリスクが有意に高かった。 -AKI発症 19.3%vs.14.9%、HR:1.37、95%CI:1.25~1.50、p<0.001 -ESRD進行 1.9%vs.1.4%、HR:1.40、95%CI:1.04~1.88、p=0.025 -死亡 9.0%vs.4.8%、HR:1.95、95%CI:1.68~2.26、p<0.001 -ICU入院 8.7%vs.5.8%、HR:1.56、95%CI:1.35~1.79、p<0.001 -MACE発症 25.0%vs.23.5%、HR:1.10、95%CI:1.02~1.19、p=0.012・亜鉛欠乏によるAKIおよびESRDのリスク上昇は、12ヵ月時点よりも6ヵ月時点でより顕著であり、早期から影響が及ぶ可能性が示唆された。・栄養失調の患者を除外しても、亜鉛欠乏群ではAKI、死亡、ICU入院のリスクが有意に高かった。・サブグループ解析では、年齢・性別・糖尿病・高血圧・肥満・貧血の有無にかかわらず一貫してAKIリスクが上昇した。・多変量Cox回帰分析でも、亜鉛欠乏(HR:1.44)は新規AKI発症の独立予測因子として確認された。このリスク上昇幅は、心不全(HR:1.51)や貧血(HR:1.57)などの既知の主要なAKIリスク因子に匹敵するものであり、亜鉛欠乏が修正可能なリスク因子である可能性が示唆された。

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過体重/肥満へのセマグルチド、心血管リスク低下は体重減少に依存せず/Lancet

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJohn Deanfield氏らは、41ヵ国804施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「SELECT試験」の事前に規定されたサブ解析において、セマグルチドの心血管アウトカムに対する有益性はベースラインにおける肥満指標および体重減少に依存せず、ウエスト周囲長との関連もわずかであったことを明らかにした。SELECT試験では、心血管疾患既往で過体重または肥満であるが糖尿病の既往のない患者において、セマグルチドが主要有害心血管イベント(MACE)を減少させることが示されていた。著者は、「本解析の結果は、セマグルチドの肥満低減以外の何らかのメカニズムによる有益性を示唆するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月22日掲載の報告。SELECT試験の事前規定のサブ解析 SELECT試験の対象は、BMI値27以上の心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、症候性末梢動脈疾患)の既往を有する45歳以上の患者であり、スクリーニング時のHbA1c値が6.5%以上、1型または2型糖尿病の既往、末期腎不全、スクリーニング前60日以内の心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院・一過性脳虚血発作の既往、またはNYHA心機能分類IVの心不全の患者は除外した。 適格患者を、セマグルチド群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与した。投与量は0.24mgの週1回投与より開始して4週ごとに漸増し、17週目より目標用量の2.4mgとした。 肥満指標として体重(無作為化時、20週時までは4週ごと、その後は治療終了まで13週間ごと)、およびウエスト周囲長(無作為化時、20週時、その後は治療終了まで年1回)を測定した。 主要エンドポイントは、初発のMACE(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)までの期間であり、本解析では、20週以降のMACE発生リスクを最初の20週間における肥満指標の変化に基づき患者間で評価するとともに、104週間の肥満指標の変化に基づく試験期間中の全MACEを患者間で評価した。体重減少量とは独立、ウエスト周囲長減少量がわずかに影響 SELECT試験に登録された計1万7,604例において、セマグルチドはプラセボと比較しMACE発生率を有意に減少させ、ベースラインの体重、ウエスト周囲長、BMI値およびウエスト周囲長身長比の各項目の全カテゴリーで一貫した有益性が認められた。 各治療群内では、ベースラインの肥満指標が低いほどMACEリスクが低かった。セマグルチド群内では、ベースライン体重が5kg低いごとにMACEリスクが4%低下(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.94~0.99、p=0.001)、ウエスト周囲長が5cm短いごとにリスクが4%低下(0.96、0.93~0.99、p=0.004)した。一方、プラセボ群では、ベースラインのウエスト周囲長が5cm短いごとにMACEリスクが4%低下(0.96、0.94~0.99、p=0.007)したが、体重との関連はみられなかった(0.99、0.97~1.01、p=0.28)。 セマグルチド群では、20週時の体重減少量とその後のMACEリスクとの間に線形傾向は認められなかったが、20週時のウエスト周囲長減少量はその後のMACEリスクの低下と関連しており、104週時のウエスト周囲長減少量は試験期間中のMACEリスク低下と関連した。 セマグルチド群において、後期のMACEリスク低下の33%は早期のウエスト周囲長の変化を介したものであることが推定された(ウエスト周囲長を時間依存共変量とした補正後のHR:0.86、95%CI:0.77~0.97)。

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胎児~2歳の砂糖摂取制限と成人期の心血管リスクの関係/BMJ

 英国における受胎後1,000日間(胎児~2歳)にわたる砂糖配給制への曝露は、成人期の心血管リスク低下および心機能指標のわずかな改善と関連しており、胎児期~生後早期の砂糖摂取制限が心血管への長期的な有益性をもたらす可能性があることが、中国・香港科技大学のJiazhen Zheng氏らによる自然実験研究で示された。受胎後1,000日間は、栄養が生涯にわたる心代謝リスクを形成する重要な時期であるが、多くの乳幼児は母体の食事、人工乳、離乳食を通じて添加糖類を過剰に摂取している。胎児期~生後早期の砂糖摂取制限の成人期の心血管リスクに対する影響について、エビデンスは限られており間接的なものであった。BMJ誌2025年10月22日号掲載の報告。UK Biobankの約6万3,000人について、砂糖配給制への曝露の有無で解析 研究グループは、UK Biobank(2006~10年に40~70歳の一般住民を募集)の参加者のうち、1951年10月~1956年3月生まれの6万3,433人(心血管疾患・心不全・心房細動の既往、多胎妊娠、養子縁組、英国外出生者を除く)のデータを解析した。1953年の砂糖配給制終了時点における出生日に基づくと、砂糖配給制を受けた(砂糖配給)群は4万63人、受けなかった(非配給)群は2万3,370人であった。さらに砂糖配給群を砂糖配給制への曝露期間に基づいて分類し、主要解析では「子宮内のみ」と「子宮内+1~2年」に分けた。 主要アウトカムは、心血管疾患、心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中および心血管疾患死で、リンクされた各種登録、医療記録を用いて特定した。砂糖配給制と主要アウトカムとの関連について、人口統計学的・社会経済的要因、生活習慣、親の健康状態、遺伝的要因および地理的要因を調整したCox回帰モデルおよびパラメトリックハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。砂糖配給制への曝露期間が長いほど、成人期の心血管リスクが低下 砂糖配給制への曝露期間が長いほど、成人期の心血管リスクは漸減した。非配給群と比較し子宮内+1~2年曝露群ではHRが、心血管疾患は0.80(95%信頼区間[CI]:0.73~0.90)、心筋梗塞は0.75(95%CI:0.63~0.90)、心不全は0.74(0.59~0.95)、心房細動は0.76(0.66~0.92)、脳卒中は0.69(0.53~0.89)、心血管疾患死は0.73(0.54~0.98)であった。 糖尿病および高血圧の新規発症は、砂糖配給制が心血管疾患に及ぼす影響のそれぞれ23.9%と19.9%を占め、両者を合わせた場合の影響は31.1%を占めると見なされたのに対し、出生体重の影響はわずか2.2%であった。 さらに、砂糖配給制への曝露は、左室1回拍出量係数(0.73mL/m2、95%CI:0.05~1.41)および駆出率(0.84%、95%CI:0.40~1.28)の軽度上昇とも関連していた。

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世界最高齢者の長生きの秘密とは?

 マリア・ブラニャス・モレラ(Maria Branyas Morera)さんは、2024年8月19日に117歳で亡くなった当時、世界最高齢者であった。彼女は一つの情熱的な願いを抱いてこの世を去った。バルセロナ大学(スペイン)医学部遺伝学科長のManel Esteller氏は、「ブラニャスさんはわれわれに、『私を研究してください。そうすれば他の人を助けることができます』と言った。彼女のその希望は現実となった」と話す。Esteller氏らがブラニャスさんについて包括的な分析を行った結果、ブラニャスさんには、健康的なライフスタイル、微生物叢内の有益なバクテリア、長寿に関連する遺伝子など多くの利点があったことが判明した。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に9月24日掲載された。 Esteller氏は、「健康的な老化は、何か一つの大きな特徴が関与するのではなく、むしろ、多くの小さな要因が相乗的に作用する、非常に個人差のあるプロセスであることが分かった。不健康な老化ではなく、健康的な老化につながる特徴をこれほど明確に示すことができたことは、将来、老若男女を問わず全ての人にとって有益になると思われる」と述べている。 ブラニャスさんは、1907年3月4日に米サンフランシスコで生まれ、8歳のときにスペインに移住した。彼女は2つの世界大戦、スペイン内戦、そして、スペイン風邪と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2つのパンデミックを生き延びた。事実、ブラニャスさんは113歳のときにCOVID-19に罹患したが、完全回復した。 研究グループは、ブラニャスさんの健康と長寿は、彼女のライフスタイルによるところが大きいと話す。彼女は地中海式ダイエットを実践し、脂肪や加工糖を過剰に摂取しないよう気を付けていたし、タバコやアルコールも一切摂取しなかった。高齢で歩行が困難になるまでは、定期的にウォーキングも行っていた。 血液サンプルの解析からは、極端に短いテロメアや炎症傾向の強い免疫系、高齢化したBリンパ球の集団など、明確な老化の兆候が見られた。一方で、ゲノム解析の結果、ブラニャスさんには他のヨーロッパ人には見られないまれな遺伝子変異が存在することが明らかになった。これらの変異は、免疫機能、認知機能、心機能、神経保護、脂質代謝などの経路に関与しており、これがブラニャスさんの高コレステロール、心臓病、がん、認知症などのリスクを低下させた可能性がある。 また、ブラニャスさんの腸内細菌叢には、抗炎症作用を持つ有益なビフィズス菌が豊富に含まれていたことも判明した。炎症は老化を促進する要因の一つである。研究グループによると、ブラニャスさんは、食生活の一環としてヨーグルトを多く摂取していたという。さらに、エピジェネティック解析によって測定されたブラニャスさんの生物学的年齢は実年齢よりも大幅に若いことも明らかになった。 Esteller氏は、「われわれの研究結果は、多くの高齢者がより長く、より健康的な生活を送る上で有益となり得る要因を特定するのに役立つ。例えば、健康長寿に関連する特定の遺伝子が判明したことから、これらが医薬品開発の新たなターゲットとなる可能性がある」と述べている。 ただし、本研究には関与していない米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のImmaculata De Vivo氏は、「1人の人間の人生から確かな結論を導き出すのはほぼ不可能だ。大規模でよく管理された集団研究とは対照的に、個々の症例の結果を解釈する際には、常に注意することが重要だ」と述べ、慎重な解釈を求めている。同氏は、「遺伝子やライフスタイルは健康に役立つかもしれないが、病気の原因は一般的に絶対的なものではなく確率の問題だ」と指摘し、ブラニャスさんと同程度に長生きするには、ある程度の幸運も必要なことをほのめかしている。

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心室頻拍に定位放射線治療が有効か

 標的となる部分に放射線を当てて治療する定位放射線治療(以下、放射線治療)が、危険性の高い不整脈の一種である心室頻拍に対する安全性の高い治療法になり得ることが、新たな研究で示された。米セントルイス・ワシントン大学医学部放射線腫瘍科のShannon Jiang氏らによると、放射線治療の効果は、標準的な治療法だが複雑な手術であるカテーテルアブレーションと同等であったという。また、放射線治療は、カテーテルアブレーションと比べて死亡や重篤な副作用が少ないことも示された。詳細は、「International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics」に9月29日掲載されるとともに、米国放射線腫瘍学会(ASTRO 2025、9月29日~10月1日、米サンフランシスコ)でも発表された。 心室頻拍は、2つの心室から異常に速い心拍が発生する疾患だ。米国心臓協会(AHA)によると、発作時には心拍数が急上昇し、めまい、息切れ、失神、胸痛などが起こり、重症の場合には心停止を引き起こすこともある。Jiang氏らによると、進行した心室頻拍の患者は多くの場合、副作用の強い心臓の薬を大量に使用する。それでも効果が得られない場合には、足の静脈からカテーテルを心臓まで通し、異常な心拍の原因となっている心臓の組織を焼灼するカテーテルアブレーションが標準的な治療法となる。こうした中、近年、新たな治療選択肢として注目されているのが放射線治療だ。Jiang氏らによると、これは放射線を集中照射して異常なリズムを引き起こしている心臓の組織を破壊する治療法で、麻酔も不要であるという。 今回の研究では、リスクが高く、薬物治療による効果も得られない心室頻拍の患者43人の記録を分析した。カテーテルアブレーションを受けたことがない患者は4人のみだった。43人のうち、22人は放射線治療を1回だけ受け、残る21人は再度カテーテルアブレーションを受けた。その結果、どちらの治療も心臓リズムのコントロールに有効であることが示された。心室性ショックやVT(心室頻拍)ストーム(心室頻拍が短期間に繰り返し発生する状態)が起こるまでの期間中央値は、放射線治療で8.2カ月、カテーテルアブレーションで9.7カ月であり、両群間に有意な差はなかった。 しかし、治療から31日以内に死亡した5人のうち4人はカテーテルアブレーションを受けた患者で、1人はカテーテルアブレーションの施行中に死亡した。いずれの死亡も治療に関連する副作用によるものだった。一方、放射線治療を受けた患者では、3年間の追跡期間中に治療関連死の報告はなかった。また、治療後1年以内に副作用が原因で入院が必要になった患者は、カテーテルアブレーション群の38%に対して放射線治療群では9%にとどまっていた。治療後、合併症が起こるまでの期間中央値は、カテーテルアブレーション群6日間、放射線治療群10カ月で、カテーテルアブレーション群の方がより早く合併症が起きていたことも分かった。全生存期間も放射線治療群では長い傾向にあり、中央値は放射線治療群で28カ月、カテーテルアブレーション群で12カ月だった。ただし、症例数が少なかったため、この差は統計的に有意ではなかった。治療から1年後の全生存率は放射線治療群73%、カテーテルアブレーション群58%で、3年後では両群とも45%だった。 こうした結果を受けてJiang氏は、「われわれの研究は、特に治療後早期において放射線治療の方が安全性が高い可能性を示唆している。カテーテルアブレーションでは施術後早期に有害事象の発生がピークに達し、それらが死亡につながっていたが、放射線治療ではそのようなピークは認められなかった。このことが、安全性の差につながったようだ」と言う。 Jiang氏は、「この結果は有望ではあるが、心室頻拍に対する放射線治療の有効性を証明するには研究の規模が不十分である」と説明している。現在、放射線治療の有効性の確定的な証拠を得るための大規模な国際共同臨床試験への患者登録が進められているという。

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ダイエット飲料と加糖飲料はどちらもMASLDリスク

 人工甘味料を用いた低糖・無糖飲料と加糖飲料は、どちらも代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)のリスクを高めることを示唆するデータが、欧州消化器病週間(UEG Week 2025、10月4~7日、ドイツ・ベルリン)で発表された。蘇州大学附属第一医院(中国)のLihe Liu氏らの研究によるもので、人工甘味料を用いた飲料や加糖飲料を水に置き換えることでMASLDリスクが低下する可能性も報告されている。 Liu氏は、「加糖飲料は長い間、厳しい監視の目にさらされてきたが、その代替品として広まった人工甘味料を用いた飲料は、健康的な『ダイエット飲料』と見なされることが多かった。しかしわれわれの研究結果は、それらの飲料を無害であるとする一般的な認識に疑問を投げかけ、肝臓の健康への影響を再考する必要性を強調している」と述べている。 MASLDは肝臓に脂肪が蓄積することで発症し、時間の経過とともに肝障害を引き起こしてくる。研究者によるとMASLDは最も一般的な慢性肝疾患であり、世界中で30%以上の人々が罹患しているという。 Liu氏らの研究では、英国の一般住民対象大規模疫学研究であるUKバイオバンクの参加者12万3,788人を解析対象とした。24時間思い出し法による食事調査が複数回行われ、各種飲料の摂取量が把握された。 中央値10.3年の追跡期間中に、1,178人がMASLDを発症し、108人が肝臓関連の疾患で死亡していた。解析の結果、人工甘味料入り飲料を毎日約250mL以上飲んでいると、MASLDのリスクが60%増加することが分かった(ハザード比〔HR〕1.599)。また加糖飲料を同量飲んでいる場合には、50%近くのリスク上昇が認められた(HR1.469)。Liu氏は、「1日1缶程度という少量の低糖または無糖の甘味飲料を摂取している場合でも、MASLDのリスクが高まることが示された」と話している。 一方、人工甘味料入り飲料の代わりに水を飲んだ場合、MASLDのリスクが15.2%低下すると推算された。同様に、加糖飲料の代わりに水を飲んだ場合は、リスクが12.8%低下すると予想された。 Liu氏によると、加糖飲料は血糖値の急上昇を引き起こし、体重を増加させ、尿酸値を上昇させる可能性があり、これらは全て肝臓への過剰な脂肪の蓄積に関連してくるという。一方の人工甘味料入り飲料は、腸内細菌叢を変化させ、甘いものへの欲求を刺激し、またインスリン分泌を刺激する可能性があり、それらを介して肝臓の健康に悪影響を及ぼし得るとのことだ。そして同氏は、「最善の方法は、加糖飲料と人工甘味料入り飲料の双方を制限して水に置き換えることだ」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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ついに始まる! 50人未満の職場にストレスチェック義務化【実践!産業医のしごと】

はじめに2025年(令和7年)5月の労働安全衛生法の改正で、ついにストレスチェックの実施義務が50人未満の事業場にも広がることになりました。施行は公布後3年以内とされているため、遅くとも2028年(令和10年)までには小規模事業場でも対応が必要になる見込みです。これから産業医として、どんな準備をすればよいのでしょうか。検討会で議論されたメリットとデメリットを整理しながら、実務のポイントを見ていきましょう。制度拡大で期待できること産業医が選任されていない事業場では、原則として外部委託を推奨する方針が示されていますが、外部機関の活用が広がってきたことで、小規模事業場でもプライバシーを守りながらストレスチェックを実施できる環境が整いつつあります。検討会でも「外部機関の活用により、対応可能な環境は一定程度整備されてきている」と評価されました。さらに、厚生労働省は「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成のためのワーキンググループを設置し、外部委託先を選ぶ際のチェックリストや、少人数職場での匿名性確保の方法など、現場で使える具体的なノウハウの標準化を進めています。もう1つ心強いのが、地域産業保健センターや産業保健総合支援センターの支援体制が強化されることです。労働者50人未満の事業場は、高ストレス者への面接指導を地域産業保健センターで無料利用できます。施行に向けて受け皿がさらに拡充される見込みで、地域による偏在も緩和される方向です。気を付けなければならない課題一方で、小規模ならではの難しさもあります。少人数の職場では、どうしても個人が特定されやすく、検討会でも「産業医不在の事業場では外部委託が原則」とされました。委託先の選び方が適切かどうか、そして外部に任せても事業者が主体性を失わないようにすることが課題として指摘されています。また、費用の問題も現実的な課題です。外部委託の費用や面接指導の増加に伴うコスト負担について、ワーキンググループでは50人未満の事業場の状況を踏まえ、「円滑な施行に向けて国において十分な支援策を講じる必要」があるとされています。また、報告義務の軽減なども検討されています。さらに、小規模事業場では配置転換などの事後措置が難しいという特性があります。「高ストレス」と判定された労働者に対して、大企業のように部署異動や業務変更で対応することが困難なケースが多いため、事業場の実情に応じた配慮の具体例や、トラブル事例の対応方法の整理が求められています。産業医が準備すべき実務のポイント50人未満の事業場には産業医選任義務がありませんが、関連会社や分散事業所を持つ企業では、本部の産業医に支援依頼が来ることも十分に考えられます。まず基本となるのは、実施規程から結果通知、面接指導の申し出、就業上の措置まで、一連の流れをルール化しておくことです。外部委託を利用する場合は、委託先の守秘体制やアクセス管理、再委託の管理体制をしっかり確認しましょう。少人数の集団では集計を10人以上の単位で行うなど、匿名性を保つための基準設定も重要です。厚生労働省の「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」が活用できます。面接指導の受け皿づくりも早めに検討が必要です。産業医が分散事業所に対応するのか、あるいは地域産業保健センターとの連携体制を構築するのか、事前に方針を決めておきましょう。また、受検率や高ストレス率、面接実施率などの指標を共有し、職場環境改善のPDCAサイクルにつなげていくことが、一次予防としての実効性を高めるカギとなります。まとめ今回の法改正は「すべての事業場で一次予防を底上げする」ことを目指し、50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。施行は公布後3年以内と十分な準備期間が確保されているため、焦る必要はありません。今から計画的に進めていきましょう。参考1)厚生労働省:「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」(2021年2月改訂)

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英語の学会発表、練習にChatGPTをフル活用【タイパ時代のAI英語革命】第11回

英語の学会発表、練習にChatGPTをフル活用前回の記事では、国際学会での発表に向けた英語原稿の作成方法を解説しました。質の高い原稿が完成したら、次はいよいよ「発表練習」です。どんなに素晴らしい内容でも、聞き手に伝わらなければ意味がありません。伝わる英語を話すためには、「正しい発音」と「正しい抑揚」で話すことが重要です。そして、この練習にもChatGPTを活用することができます。今回は、作成した原稿を効果的に読み込み、自信を持って発表に臨むためのChatGPT活用法をご紹介します。Read Aloudで音声を読み上げるChatGPTは、単に文章を生成するだけでなく、生成した英文を音声で読み上げる「Read Aloud」機能を備えています(第4回参照、PCのブラウザ版ではこの機能がない場合もあり、その場合はスマホアプリかブラウザの拡張機能を使います)。この機能を活用すれば、ネイティブスピーカーの自然な発音とイントネーションを直接耳で確認しながら、発表練習を進めることができます。AIに原稿全体を読み上げてもらうことで、耳で聞いて不自然に感じる箇所や、リズムが悪い部分を発見しやすくなります。また、この機能を活用した「シャドーイング」は、英語のリスニング力とスピーキング力を同時に高める非常に効果的な練習法です。シャドーイングとは、聞こえてきた英文に合わせて、少し遅れて影(シャドー)のように自分も声に出して発音するトレーニング方法のことで、自然な発音を練習することができます。Read Aloudで読み上げるのは、ChatGPTが作成した文章だけなので、読み上げたい文章をChatGPTに出力させる必要があります。そのためのプロンプトがこちらです。プロンプト例Copy this, and read very slowly and clearly “[読み上げたい文章を入力]”.その後、図1のようにスピーカーのマークをタップすると、その文章をそのまま読み上げてくれます。実際のRead Aloudが話すスピードはネイティブスピーカーに近いため速いと感じるかもしれません。残念ながら、現時点ではこのスピードをうまく調整するのは難しいのですが、たとえば「Please add “...” at the end of each word.」という指示を追加するとしゃべる速度をやや遅くすることが可能です。図1スマートフォンの録音機能を活用するChatGPTの「Read Aloud」機能で生成された音声は、その場での確認に非常に便利ですが、オフラインや移動中に繰り返し聞きたい場合もあるでしょう。残念ながら、ChatGPTのインターフェースから直接音声をダウンロードする機能は提供されていませんが、スマートフォンの画面録画機能や録音アプリを活用することで、この音声を「保存」し、いつでもどこでも聞き返すことが可能になります。手順1.スマートフォンの画面録画機能(iOSのスクリーンレコーダーやAndroidの画面録画機能など)を起動します。2.ChatGPTの「Read Aloud」機能で音声を再生し、その音声をスマートフォンの画面録画や音声録音機能で記録します。3.録画・録音した音声ファイルは、スマートフォンのギャラリーやファイルアプリに保存されます。保存された音声を繰り返し再生し、シャドーイングやリスニング練習に活用しましょう。とくに、通勤時間やちょっとした空き時間など、場所を選ばずに練習できる点が大きなメリットです。ほかの表現を提案してもらう作成した原稿を声に出して読んでみると、書面では問題なかった文章が、口語としては不自然に感じられることがあります。そのような場合は、ChatGPTに修正案を提案してもらいましょう。口頭発表に適した、より自然でわかりやすい表現にすることが可能です。プロンプト例次の文章を、口頭で発表するのにより適した形に修正したものを3つ提案してください。具体的には、一文を短くし、聴衆が一度で理解しやすいように、より平易な単語や表現を使ってください。文章:「[ここに修正したい文章を入力]」アウトプット例:(修正前)The introduction of ChatGPT represents a significant milestone in the evolution of generative AI. This cutting-edge technology has spread to a variety of fields, including health care and education, influencing practices and methodologies.(修正後)ChatGPT is a big step forward in generative AI.This new tool is now used in many areas, like health care and education.It is changing the way people work and learn.このように具体的な指示を出すことで、ChatGPTはさまざまなニュアンスの代替案を提示してくれます。最も自然で、自分の口から発しやすい表現を選びましょう。専門用語の発音を確認する医学の学会発表では、専門用語が数多く登場します。これら英語の専門用語の発音に自信がない場合、一般的な辞書やChatGPTの音声読み上げ機能だけでは、実際の使われ方や微妙なニュアンスをつかむのが難しいことがあります。そこで活用したいのが「YouGlish」という無料ツールです。YouGlishは、YouTubeの膨大な動画の中から、特定の単語を含む動画を手軽に検索でき、発音が難しい専門用語の正しい発音を確認するのに非常に役立ちます。また、その単語が使われている実際の文脈や関連する背景情報も同時に把握できるのが特徴です。使い方はシンプルで、ウェブサイトにアクセスして検索窓に調べたい単語を入力します。たとえば「paracentesis(腹水穿刺)」と入力すると、米国英語や英国英語など、好みのアクセントを選んだうえで検索することが可能です(図2)。検索結果にはその単語が出てくる動画が字幕付きで表示され、単語が使われる直前のシーンから再生されます。再生速度も細かく調整できるため、発音練習には遅めのスピード設定がお勧めです。さらに、動画の再生中や周辺部分をチェックすることで、関連する医学用語(例:ascites[腹水]、catheter[カテーテル]など)の発音も併せて学べます。専門用語だけでなく、慣れていないフレーズや表現の実際の使われ方やトーンを確認する際にも、大いに役立つツールです。

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ペニシリンが得意・苦手とする細菌【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第3回

ペニシリンが得意・苦手とする細菌前回 、ペニシリンGがカバーできる細菌を挙げてきました(図1)。今回は、逆にペニシリンGが苦手とする細菌はどのようなものがあるかを考えていきましょう。図1 ペニシリンGがカバーする細菌画像を拡大するペニシリンが苦手とする細菌苦手な細菌として、まず挙げられるのが黄色ブドウ球菌です。こちらは前回のとおりです。これまでグラム陽性球菌ばかりを取り上げてきましたが、グラム陰性桿菌の話をほとんどしていません。ペニシリンGはグラム陰性桿菌が苦手なのですが、グラム陰性桿菌の代表選手として、大腸菌が苦手と覚えておきましょう。そして、横隔膜から上の嫌気性菌が得意だとわざわざ言っていたわけですが、横隔膜から下は苦手です。細かい話をすると、ペニシリンGはバクテロイデス属が苦手というわけです。これまでの話をまとめると、図2のようになります。図2 ペニシリンGのスペクトラム画像を拡大するこれで、ペニシリンGが得意とする細菌と苦手とする細菌が一通り揃いました。ここまでの内容は、ぜひフレミング博士のストーリーと絡めて復習していただければと思います。ちなみに、ここさえ乗り越えられれば、この後に続くβラクタム系の話も一気に楽になります。ペニシリンGを使用する代表的な場面と注意点実際にペニシリンGを使う場面としては、肺炎球菌性肺炎、レンサ球菌による感染性心内膜炎、梅毒などが挙げられると思います(図3)。図3 ペニシリンGを使う代表的場面画像を拡大するせっかくなので、ここで肺炎球菌について寄り道したいと思います。まず、肺炎球菌性肺炎の診断ですが、絶対やってはいけないのが「肺炎+肺炎球菌尿中抗原陽性=肺炎球菌性肺炎」という考え方です。なぜかというと、肺炎球菌による単独感染とは限らないからです。たとえば、肺炎の患者さんでは「肺炎球菌+インフルエンザ桿菌」や「肺炎球菌+モラクセラ」などのように、複数の細菌が感染していることも多く見かけます。インフルエンザ桿菌やモラクセラに対してはペニシリンGが効きません。したがって、肺炎球菌尿中抗原が陽性だからというだけで、肺炎患者さんにペニシリンGだけで治療しないようにしましょう。喀痰グラム染色や培養検査の結果を確認していただければと思います。そこで、肺炎球菌を狙って培養検査を提出するわけですが、「思った以上に発育してこない」と悩まれる方もいるのではないでしょうか。「グラム染色では肺炎球菌が確かに見えていたのに、培養検査ではなぜか生えない」なんてことが、結構多くあります。皆さんには思い当たる節がありますか? じつは、肺炎球菌はオートリジンという自己融解酵素を出すのです。そのため、培養検体の容器の中で放っておくと自滅してしまいます。培養検体を検査室に渡さずに放っておくと、死んでしまうのです。そうして、培養で生えなくなってしまうわけです。グラム染色でも、自滅している最中の肺炎球菌の色がグラム陰性、つまり赤く見えてしまうなんて現象が見られます。役に立つ知識かと言われると微妙ですが、面白いと思った方がいれば、検査技師さんをつかまえて話を聞いてみてください。まとめでは、前回と今回の内容をまとめます。ペニシリンは黄色ブドウ球菌を狙って作られた抗菌薬でした。ところが、現在のペニシリンGは耐性化の影響で黄色ブドウ球菌をほとんどカバーできません。一方で、黄色ブドウ球菌を除くグラム陽性球菌であれば、ペニシリンGでカバーできることが多いため、抗菌薬として意外にスペクトラムが広いともいえます。ペニシリンでカバーできて、セフェムでカバーできない「腸球菌とリステリア」もぜひ覚えておいてください。逆にペニシリンが苦手な細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、横隔膜から下の嫌気性菌を覚えていただければと思います。これらの細菌をいかにカバーするかが、ペニシリン系進化の歴史そのものになっていきます。次回は、これまでの知識を下敷きにして、ペニシリン系を一気に俯瞰したいと思います。お楽しみに!

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第287回 高市新首相の所信表明と閣僚指示で気になった2つの言葉、「新たな地域医療構想」と「自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度」

医療界は補正予算での医療機関に対する支援に期待こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。高市政権が誕生しました。新総理大臣は就任直後から、フルスロットルで国内外を飛び回り、タフネス振りをアピールしています。とはいえ60歳を超えた女性です。いつ何時、つまづいたり転んだりして大腿骨頸部などを骨折しないとも限りません。学生時代、カワサキのロードスポーツ、Z400GP(ホンダやヤマハでないところが渋いですね)に乗っていた“走り屋”だそうですが、くれぐれも諸々、飛ばし過ぎには気を付けていただきたいと思います。さて、医療界では、来年の診療報酬改定を待たず、補正予算で医療機関に対する何らかの支援が行われるだろうとの期待が高まっています。しかし、所信表明演説をよく読むと、前回(第286回 連立に向けた与野党の最低パフォーマンスのあげく、高市早苗総理大臣の誕生へ 連立参加で維新の社会保障政策案はどこまで実現できる?)も書いたように、日本維新の会の意向も汲んで、医療界にとってはなかなか厳しい内容も盛り込まれています。ということで、今回も前回に引き続き、高市政権のこれからの医療政策について書いてみたいと思います。国民会議を設置し税と社会保障の一体改革について議論高市早苗首相は10月24日、衆参両院の本会議で就任後初めての所信表明演説を行いました1)。「物価高対策」の中では、「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなしです。診療報酬・介護報酬については、賃上げ・物価高を適切に反映させていきますが、報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しします」と、改定前での対応を約束しました。また、「健康医療安全保障」の中では、「社会保障制度における給付と負担の在り方について、国民的議論が必要」として、「超党派かつ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論してまいります」と述べました。そして、「政党間合意も踏まえ、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルスなどを通じた効率的で質の高い医療の実現などについて、迅速に検討を進めます」と述べるとともに、「こうした社会保障制度改革を進めていく中で、現役世代の保険料負担を抑えます。当面の対応が急がれるテーマについては、早急に議論を進めます」としました。日本維新の会が強く求める現役世代の保険料負担軽減については、所信表明が行われる前日、10月23日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会において、厚生労働省が70歳以上の高齢者が医療機関の窓口で支払う医療費の負担について、現役世代と同じ3割とする対象者の拡大など、医療費負担のあり方が議題として提示され、議論がスタートしています。厚労省からは後期高齢者の給与所得や金融所得が増えていることを示す資料が出されたとのことです。各方面からの抵抗も大きそうですが、一定収入のある高齢者の負担増はほぼ既定路線と言えるでしょう。「新たな(新しい)地域医療構想」という言葉が2度も所信表明で個人的に気になったのは、地域医療構想に言及した部分です。「高齢化に対応した医療体制の再構築も必要です。入院だけでなく、外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想を策定するとともに、地域での協議を促します。加えて、医師の偏在是正に向けた総合的な対策を講じます。あわせて、新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を進めます」と、「新たな(新しい)地域医療構想」という言葉を2度も使っています。それだけ政府が重要視している政策だということでしょう。高市首相は社会保障分野でこれまで目立った実績はありませんが、第3次安倍内閣で総務大臣をしていた2015年には、「新公立病院改革ガイドライン」の策定に関与し、地域医療構想に沿った公立病院の病床機能分化・連携強化を推し進めました。病院経営や病院再編に関しては一定の素養があるとみられます。とは言うものの、「新たな地域医療構想」が盛り込まれた医療法改正案は、以前の回「第265回 “米騒動”で農水相更迭、年金法案修正、医療法改正案成立困難を招いた厚労相の責任は?」で書いたように今年4月に衆院本会議で審議入りしてから棚ざらしとなり、年金法改正案が優先されたこともあって結局継続審議となっています。厚労省は今の臨時国会での成立を目指しているとのことですが、自民、公明、維新の3党合意を踏まえた法案の修正も行わなければなりません。医療法の施行期日は、最も早いもので来年4月を予定しているそうです。仮に臨時国会でも成立せず、来年の通常国会に回した場合、施行スケジュールの大幅な見直しを迫られ、医療提供体制の改革にも大きな影響が出るでしょう。「重要視」している割に医療法改正案を「棚晒し」にしてきた政府と厚労省の本気度が問われるところです。OTC類似薬含めセルフメディケーションは推進の姿勢ところで、21日の内閣発足にあたり、高市首相が18人の閣僚に出した指示書の全容が明らかになっており、上野 賢一郎厚生労働大臣にも9項目に及ぶ指示が飛んでいます。各紙報道等によれば、総理大臣が就任にあたって各大臣にこのような指示書を出すというのは極めて異例のことだそうです。しかもこの指示書、高市サイドからあえてマスコミにリークしたそうで、「なかなかの剛腕ぶり」と書くメディアもありました。上野厚労省への指示書の中にも気になる文言がありました。2つ目の項目の中に、「関係大臣と協力して、データに基づく医療行政のメリハリ強化を進めるとともに、自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度の構築により、医療費を適正化する」と書かれているのです。「自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度」とは、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しやセルフメディケーション推進のことだと考えられます。所信表明では「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」、大臣への指示では「自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度の構築」と表現が微妙に異なるその真意はわかりませんが、OTC類似薬だけではなく広くセルフメディケーションを推進していく意向があるのは間違いないようです。だとすれば、日本医師会とは全面対決となるかもしれません。財務省主計局次長に「診療報酬の地域別単価」の一松氏ところで、財務省は10月21日付で、予算編成を担う主計局の次長に、一松 旬大臣官房審議官(大官房担当)を充てる人事を発令しました。一松氏は次期診療報酬改定も含め社会保障分野を担当するとのことです。一松氏は社会保障に詳しい財務官僚として有名な存在で、主計官の時には2021年度介護報酬改定、2022年度診療報酬改定を担当しました。また、「第209回 これぞ財務省の執念? 財政審・財政制度分科会で財務省が地域別単価導入を再び提言、医師過剰地域での開業制限も」でも書いたように、財務省から出向し奈良県副知事を務めていた時には奈良県(高市首相の地元です)で診療報酬の地域別単価の導入を推し進めようとした人物でもあります。医療関係団体が補正予算対応を喜んでいる間に、政府側は“抵抗勢力”のための布陣をしっかり敷いたという見方もできそうです。これから本格化する次期診療報酬改定に向けての議論、とくに財務省の動きが注目されます。参考1)第219回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説/首相官邸

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高齢者の体重増減、何kg以上が死亡リスクに?

 高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加は、要介護状態の発生および全死因死亡のリスク増加と有意に関連することが、静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らによるしずおか研究(静岡多目的コホート研究事業)で明らかになった。結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月17日号に発表された。 本研究は、静岡県の健康保険および介護保険データを用いた観察研究で、2年連続で健康診断を受けた65~90歳の日本人高齢者11万7,927例を対象とした。研究チームは、1年間の体重変化と要介護状態の発生および全死因死亡との関連を調査した。ベースラインの臨床特性と1年間の体重変化は健康診断データから、要介護状態の発生と全死因死亡は保険データから取得した。追跡期間の平均は、要介護状態の発生について7.3年、全死因死亡について8.0年であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、要介護状態の発生は2万7,719例、全死因死亡は1万7,002例記録された。・解析の結果、1年間の体重変化と両アウトカムにはU字型の関連が観察され、2kg以上の体重減少、または3kg以上の体重増加が有意なリスク増加と関連していた。この関連性は、若年群(75歳未満)と高齢群の両方で一貫しており、ベースラインのBMIに関わらず認められた。さらに、低体重(BMI<19kg/m2)、肥満(BMI≧30kg/m2)、体重減少(2kg以上)、体重増加(3kg以上)を同じモデルに含めた場合、これらの因子はいずれも両アウトカムと独立して関連していた。 研究者らは、「高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加が、要介護状態の発生および全死因死亡と有意に関連することを明らかにした。この結果は、高齢者の健康管理において、たとえ小さくても、意図しない体重変化に注意を払うことの重要性を示唆している。体重変化は健康状態の変化を反映しており、早期介入の契機となる可能性がある。本研究は、高齢者の健康維持における体重管理の重要性を裏付けるエビデンスを提供しており、臨床現場での高齢者の健康評価において体重変化のモニタリングが有用である可能性を示している」とした。

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アルコール消費量と自殺リスクとの関係~メタ解析

 アルコール使用は、個人レベルにおける確立された自殺のリスク因子であるが、これが人口レベルで反映されているかは不明である。アルコールの有害な使用の削減について進捗状況を測る国際的な枠組みで用いられている、人口レベルの総アルコール消費量の指標である1人当たりアルコール消費量(APC)が自殺と関連しているとすれば、自殺予防の取り組みにおいて、アルコールは有用な目標となる可能性がある。カナダ・トロント大学のKatherine Guo氏らは、APCと自殺死亡率の間に関連があるかどうか、また関連がある場合には性別によって違いがあるかどうかを評価するため、メタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2025年9月2日号の報告。 2025年2月24日までに公表されたAPCと自殺の関連を測定した独自の定量的研究をEmbase、Medline、PsycINFO、Web of Scienceより検索した。対象研究は、前後比較デザインを含む縦断的観察研究または横断的生態学的デザインによるオリジナルの定量的研究、関連性の尺度を示した研究とした。最終的に合計304件の研究が特定された。データ抽出は、1人のレビューアーで行い、2人目のレビューアーによりクロスチェックを行った。バイアスリスクは、Risk of Bias in Nonrandomized Studies of Exposure tool、エビデンスの質は、GRADEを用いて評価した。システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMAに従い実施した。APCと自殺死亡率の関連性のプール推定値を算出するため、ランダム効果メタ解析を実施した。性差の有無は、ランダム効果メタ回帰を用いて評価した。主要アウトカムは、1人当たりのアルコール消費量(リットル)として測定したAPCと自殺死亡率との関連とした。 主な結果は以下のとおり。・主要解析には合計13件の研究を含めた。・人口レベルでは、APCが1リットル増加するごとに自殺死亡率が3.59%(95%信頼区間:2.38~4.79)増加することが明らかとなった。・性差を示すエビデンスは、認められなかった。 著者らは「本システマティックレビューおよびメタ解析において、APCの増加は人口レベルでの自殺死亡率の上昇と関連しており、この関連は男女間で同様であった。したがって、APCは包括的な国家自殺予防戦略において検討すべき有用な目標となる可能性がある」と結論付けている。

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免疫性血小板減少症への新治療薬による診療戦略/Sobi Japan

 希少・難治性疾患治療に特化し、ストックホルムに本社を置くバイオ医薬品企業のSwedish Orphan Biovitrum Japan(Sobi Japan)は、アバトロンボパグ(商品名:ドプテレット)が新たな適応として「持続性および慢性免疫性血小板減少症」の追加承認を取得したことに合わせ、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、免疫性血小板減少症(ITP)の診療に関する講演や同社の今後の展望などが説明された。約2万例の患者が推定されるITP はじめに「免疫性血小板減少症について」をテーマに、加藤 亘氏(大阪大学医学部附属病院輸血・細胞療法部 部長)が、本症の概要を説明した。 出血時の止血に重要な役割を担う血小板は、巨核球が血管内に行くことで血小板となり、体内で約7~10日間活動する。正常15~35万/μLの血小板数があり、10万/μL以下で血小板減少症、1万/μL以下では重篤な出血症状を呈する。そして、ITPは血液中の血小板が免疫により減少する疾患である。症状としては、皮膚の紫斑、粘膜出血などの出血症状の繰り返しがあり、健康な人よりもわずかに高い死亡率となる。 また、近年の研究からITPは血小板に対する自己抗体によって起こる自己免疫疾患とされ、「特発性」という言葉から「免疫性」に変更された。 わが国には約2万例の患者が推定され、毎年約3,000例が新規発症しており、その半数は高齢者である。本症は、指定難病であり、小児慢性特定疾患であるが、医療費助成の対象はステージ2以上の比較的重症の患者となっており、特定医療費受給者証所持者数は2023年時点で約1万7,000人となっている。 難病申請データに基づくITPの出血症状としては、紫斑が88.2%、歯肉出血が26.8%、鼻出血が18.1%の順で多く、その症状は血小板減少の程度、年齢と相関する。とくに血小板数1~1.5万/μL、60歳以上では重篤な出血リスクが増大するといわれている1)。 ITPの治療戦略としては、(1)リンパ球による抗血小板自己抗体の産生抑制、(2)破壊される以上に血小板を多く産生する、の2つがあり、治療の流れとしては『成人特発性血小板減少性紫斑病 治療の参照ガイド 2019改訂版』により治療が行われる(わが国独自の治療にピロリ菌除去療法がある)。 治療目標は、血小板を正常に戻すことではなく、重篤な出血を予防することであり、治療薬の副作用による患者QOLの低下を考慮し、過剰な長期投与は避けることとされている。 本症の1次療法としては、副腎皮質ステロイド療法が行われる。次に1次療法で効果がみられない場合、2次療法としてトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)、リツキシマブ、脾臓摘出術などが考慮される。2次療法については大きな優劣はなく、ただ、近年では脾臓摘出術はほぼ行われていない。 わが国でのITP治療薬の使用状況について、2015~21年で比較すると、TPO-RAが35.71%から61.37%へと増加し、リツキシマブも0%から3.3%へと増加したという報告がある2)。 多く使用されているTPO-RAは奏効率は高いものの、長期使用の場合は肝機能障害などの副作用の課題もある。治療の選択では、各治療の特徴を踏まえ、患者の希望・背景に合わせた治療選択が望まれる。 また、現在、解決が必要とされる課題として5つが指摘されている。(1)治療薬の使い分け、併用法(2)完治を目指す治療の開発(3)妊娠中、出産時の血小板数コントロール(4)出血症状、血小板数の改善のみではなく、症例ごとのQOLに配慮した治療・薬剤選択(5)ITP診断の改善(特異的な診断法開発の必要性)約6割のITP患者に投与8日以内で反応あり 今回、アバトロンボパグは新たな適応である「持続性および慢性免疫性血小板減少症」の承認を2025年8月25日に取得した。適応追加に係るわが国での第III相試験は、慢性ITPの患者19例を対象に、26週間の投与期間中に救援療法なしに血小板反応(血小板≧50×109/L)が得られた累積週数を主要評価として行われた。試験対象者の平均年齢は56.0歳で、女性が78.9%だった。 試験の結果、血小板反応(≧50×109/L)について、26週間の投与期間中、臨床的に意義のある累積週数の基準(閾値:8.02週)を達成し、患者の63.2%が8日以内に反応を示した。安全性では、治療に関係する重篤な有害事象はなく、一般的な有害事象として、新型コロナウイルス感染症、上気道感染症、鼻咽頭炎などが報告された。 最後に加藤氏は、「アバトロンボパグは慢性ITPを有する日本人成人患者に対し有効であった。安全性・忍容性も良好で、海外の主要な第III相試験3)および中国の患者の第III相試験4)と同様の血小板反応を日本人でも示した。長期的な有効性と安全性は、現在進行中の延長期で評価をする予定」と展望を述べ、講演を終えた。 同社では、今後新たに5つの希少疾患に対する製品の上市を目指しており、「これらの薬剤を早く日本の患者さんに届けられることを使命とし、希少疾患薬におけるドラッグラグやドラッグロスという問題の解決の一助となるようにしていきたい」と抱負を語っている。

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閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。3種の用量とプラセボを比較 FLOW試験は欧州5ヵ国の28施設で実施され(Desitin Arzneimittelの助成を受けた)、2021年12月~2023年4月に参加者のスクリーニングを行った。 年齢18~75歳、未治療の中等症または重症のOSAと診断され、無呼吸低呼吸指数(AHI)3a(酸素飽和度の3%以上の低下を伴う低呼吸または覚醒[あるいはこれら双方])の発生が15~50回/時で、BMI値が18.5~35の患者298例(最大の解析対象集団[FAS]:平均年齢56.1歳[SD 10.5]、男性220例[74%]、平均BMI値29.1)を登録した。 被験者を、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)に無作為に割り付けた。1~3週目までに各群の目標値に達するように用量を漸増し、目標値到達後は12週間経口投与(1日1回、就寝前の1時間以内)した。 有効性の主要アウトカムは、AHI3aのベースラインから15週目までの相対的変化量とした。AHI4、ODI、ESS総スコアも良好 FASにおける15週の時点でのプラセボ群と比較したAHI3aの補正後平均変化量は、スルチアム100mg群が-16.4%(95%信頼区間:-31.3~-1.4、p=0.032)、同200mg群が-30.2%(-45.4~-15.1、p<0.0001)、同300mg群が-34.6%(-49.1~-20.0、p<0.0001)といずれの群も有意に優れ、有効性には用量依存性を認めた。 ベースラインから15週までのAHI4(酸素飽和度の4%以上の低下を伴う低呼吸)、酸素飽和度低下指数(ODI)、平均酸素飽和度の変化量は、いずれもプラセボ群に比しスルチアム200mg群(それぞれp=0.0006、p=0.0008、p<0.0001)および同300mg群(p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001)で有意に改善した。 ベースラインで主観的な日中の過度の眠気(Epworth sleepiness scale[ESS]総スコア≧11点)を有していた患者(120例)では、15週時のESS総スコアがプラセボ群に比しスルチアム200mg群で有意に改善した(p=0.031)。また、総覚醒指数で評価した睡眠の分断化も、プラセボ群に比べ同200群(p=0.0002)および同300mg群(p<0.0001)で有意に良好だった。知覚異常が用量依存性に発現 試験期間中に発現した有害事象の頻度は、プラセボ群で61%(46/75例)、スルチアム100mg群で73%(54/74例)、同200mg群で84%(62/74例)、同300mg群で91%(68/75例)であり、用量依存的に増加した。いずれかの群において10%超の患者で発現した有害事象として、知覚異常(プラセボ群9%、スルチアム100mg群22%、同200mg群43%、同300mg群57%)、頭痛(8%、7%、16%、15%)、COVID-19(4%、4%、8%、13%)、上咽頭炎(12%、4%、9%、9%)を認めた。全体で知覚異常により15例(5%)が試験薬の投与中止に至ったが、118件の知覚異常イベントのうち98件(83%)は1回のみまたは散発的で、99件(84%)は軽度だった。 有害事象の多くは軽度または中等度であった。重篤な有害事象は11例(プラセボ群2例[3%]、スルチアム100mg群4例[5%]、同200mg群1例[1%]、同300mg群4例[5%])に発現し、このうち3例(100mg群で好中球減少1例および急性骨髄性白血病1例、200mg群で三叉神経障害1例)が治療関連の可能性があると判定された。 著者は、「睡眠中の気道虚脱には複数の病態生理学的機序が関与している可能性があり、OSAは臨床的な表現型の幅が広いため、病態に応じて個別化された治療戦略が求められる」「本研究は、標準治療である持続陽圧呼吸療法(CPAP)が施行できない患者では、スルチアムによる薬物療法が有望な治療選択肢となる可能性を示唆する」「ベネフィット・リスク比は200mg群で最も良好であった。今後、200mgで十分にコントロールできない場合に、300mgを考慮する研究を続ける必要があるだろう」としている。

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アルコール性肝線維化の有病率が過去20年間で2倍以上に

 多量飲酒者において、肝線維化の有病率が過去20年間で2倍以上に増加したというリサーチレターが、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に7月23日掲載された。 米南カリフォルニア大学ケック医科大学院のKalpana Gopalkrishnan氏らは、米国国民健康栄養調査(NHANES)の1999~2020年のデータを用いて、多量飲酒者の間で、進行したアルコール関連肝疾患のリスクが経時的に変化したかどうかを検討した。過去12カ月間のアルコール摂取量が、女性で1日当たり20g以上、男性で30g以上を多量飲酒と定義した。主要評価項目はFibrosis-4(FIB-4)スコアが高いこととし(65歳以下は2.67超、66歳以上は3.25超)、これを肝線維化の代替指標として使用した。 対象者4万4,628人のうち2,474人が多量飲酒者に該当した。解析の結果、多量飲酒者のうち、FIB-4が高い人の割合は経時的に増加し、1999~2004年には1.8%であったが、2013~2020年には4.3%となっていた。一方、多量飲酒をしない人においても、同期間に0.8%から1.4%に増加していた。多量飲酒者の平均年齢は上昇し、女性と貧困層の割合が高かった。平均アルコール摂取量は、いずれの期間でも同程度であった。また、多量飲酒者のメタボリック症候群の有病率は、1999~2004年の26.4%から2013~2020年の37.6%と増加し、多量飲酒をしない人でも32.0%から40.2%に増加していた。 共著者である同大学のBrian P. Lee氏は、「1990年代以降の多量飲酒者の人口統計学的特性および肝疾患との関連について総合的に調査したのは本研究が初めてであるが、今回の知見から、どのような集団がアルコール摂取量を抑えるためにより多くの介入を必要としているかについて、重要な情報が得られた。また、近年における肝疾患の増加傾向を説明できる可能性もある。さらに本研究の結果は、多量飲酒をする米国民の構成が20年前と比べて変化していることを示している」と述べている。

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ロボット支援気管支鏡が肺の奥深くの腫瘍に到達

 最先端のロボット支援気管支鏡が肺の奥深くにある極めて小さな腫瘍にまで到達できることが、チューリッヒ大学病院(スイス)のCarolin Steinack氏らによる臨床試験で示された。Steinack氏らによると、このロボット支援気管支鏡は、特殊なCTスキャナーにより、肺の中の到達が難しい位置に隠れた腫瘍を見つけることができるという。この研究結果は、欧州呼吸器学会議(ERS 2025、9月27日~10月1日、オランダ・アムステルダム)で発表された。 Steinack氏は、「この技術によって、専門医は肺のほぼ全領域にアクセスできるようになった。これは、より多くの患者に生検を実施できること、より高い治療効果が期待できる早期の段階でがんを診断できるようになることを意味している」とERSのニュースリリースの中で述べている。 ERSの呼吸器インターベンション専門家グループ代表で、Golnik大学クリニック(スロベニア)内視鏡部長のAles Rozman氏も、肺がんを治療可能な早期の段階で発見して治療するのにこの技術が役立つ可能性があるとの見方を示している。同氏は、「がんは通常、早期に診断されれば生存率の大幅な向上を望める。しかし、こうした極めて小さな腫瘍は診断が難しい。今回の研究は、ロボット支援技術が肺の奥深くにある小さな腫瘍の多くを診断する助けになることを示している」と付け加えている。 Steinack氏らは今回の臨床試験で、肺の周縁部に異常増殖がある78人の患者に気管支鏡検査を実施した。異常増殖の数は合計で127個だった。肺の周縁部は接続する気道がない場合が多く、通常は容易に到達できない領域である。腫瘍は直径が中央値11mmで、18個(14.2%)は気管支サインが陽性(病変に向かって走行する気管支が明確に認められる)で、35個(27.6%)は均一なすりガラス陰影に分類された。患者の半数(39人)はX線画像を用いた従来型の気管支鏡検査を受け、残る半数(39人)はCTスキャンを用いたロボット支援気管支鏡検査を受けた。 その結果、診断に至った対象者の割合は、ロボット支援気管支鏡群で84.6%(33人)であったのに対し、従来の気管支鏡では23.1%(9人)にとどまった。通常の気管支鏡の方法で生検が成功しなかった人に対してロボット支援気管支鏡を用いると、92.9%(26/28人)で腫瘍への到達と生検に必要な組織の採取に成功した。最終的に68人(53.5%)が肺がんと診断され、そのうち50人は最も早期の治療可能な段階のがんであった。Steinack氏は、「臨床的に従来の気管支鏡が選択肢とはならない患者において、この技術は正確な診断を可能にする」と述べている。 ただし、この技術は安価ではない。この新しいシステムの導入には110万ドル(1ドル150円換算で1億6500万円以上かかり、検査1回当たりの費用は約2,350ドル(同35万2,500円)になるとSteinack氏らは説明している。チューリッヒ大学病院の呼吸器内科医で主任研究者のThomas Gaisl氏は、「こうした腫瘍がある患者を多く診ている医療機関では、この技術により得られるメリットは投資に見合うものだと考えている。ただし、このロボットシステムは従来の気管支鏡が使えない、小さくて到達が難しい病変に限定して使用すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 一方、Rozman氏は、「この装置を導入し、使用するために必要となる莫大な追加コストを正当化するためには、この種のゴールドスタンダードの研究を実施することが極めて重要だ」と指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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乳児期の犬への曝露は小児喘息リスクの低下と関連

 犬を飼っている家庭の乳児は、5歳時の肺機能が高く、喘息を発症しにくい可能性のあることが、新たな研究で示唆された。猫を飼っている家庭の乳児では、このような保護効果は認められなかったという。The Hospital for Sick Children(カナダ)のJacob McCoy氏らによるこの研究結果は、欧州呼吸器学会議(ERS 2025、9月27日〜10月1日、オランダ・アムステルダム)で発表された。 McCoy氏は、「猫アレルゲンと小児喘息の間に関連は認められなかったものの、犬アレルゲンへの曝露は肺機能の改善と喘息リスクの低下と関連していることが示された」とERSのニュースリリースの中で述べている。 この研究でMcCoy氏らは、カナダのCHILDコホート研究のサブコホートに属する乳児1,050人(平均月齢3.94カ月)のデータを用いて、生後3カ月時点のほこり中のアレルゲン濃度と5歳時の喘息、および1秒量(FEV1、息を最大限吸い込んだ後に、できるだけ速く・強く吐き出したときの最初の1秒間の空気の量)との関連、さらに遺伝的リスクがそれらの関連に影響するのかを検討した。ほこりサンプルは対象児の家庭から採取されたもので、1)犬の皮膚や唾液から排出されるタンパク質であるCan f1、2)猫の皮膚や唾液から排出されるタンパク質であるFel d1、3)細菌の表面に存在するタンパク質であるエンドトキシン、の3種類の潜在的なアレルゲンについて評価した。 対象児の6.6%が5歳までに喘息を発症していた。多変量モデルを用いた解析の結果、犬由来のアレルゲンであるCan f1への曝露レベルが高い児では低い児に比べて喘息リスクが48%低いことが示された(オッズ比0.52、95%信頼区間0.25〜0.98)。また、これらの乳児では、FEV1のZスコアも有意に高かった(β=0.23、95%信頼区間0.06〜0.40)。さらに、肺機能に対する保護効果は、喘息やアレルギーの遺伝的リスクが高い乳児でより強く現れることも明らかになった。一方で、猫アレルゲンや細菌アレルゲンの曝露レベルが高い乳児では、このような保護効果は確認されなかった。 McCoy氏は、「なぜこのようなことが起こるのかは明らかになっていない。ただし、犬のアレルゲンに敏感になると、喘息の症状が悪化する可能性があることは分かっている。今回の結果は、犬アレルゲンへの早期の曝露が、鼻腔内のマイクロバイオームを変化させたり免疫系に影響を与えたりすることで、感作を防ぐことができる可能性があることを示唆している」との見方を示している。その上で同氏は、「幼少期の犬アレルゲンへの曝露と喘息に対する予防効果との関連を理解するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。 この研究には関与していない、ERS小児アレルギー・喘息専門家グループの議長であるErol Gaillard氏は、「喘息は、若年者の間で最も一般的な慢性疾患であり、緊急治療のために入院する主な理由の一つでもある。喘息の症状を軽減または抑制できる優れた治療法はあるが、喘息を予防するためにはリスク要因を減らすことも重要だ。この研究結果は、犬を飼っている家庭にとって朗報となる可能性がある。ただし、この関連について、そして犬との生活が長期的には小児の肺の発達にどのような影響を与えるかについて、さらに詳しく知る必要がある」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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