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充実した教育プログラムを謳歌、循環器フェローのリアルな1日【臨床留学通信 from NY】第32回

第32回:充実した教育プログラムを謳歌、循環器フェローのリアルな1日今回は、Montefiore Medical Center/Albert Einstein Medical Collegeでの循環器フェローのプログラムについて、1日のルーティンなどを説明します。病院での業務としては、2週間ごとにCCU、カテーテル、心エコー、コンサルト、不整脈などをローテーションで担当します。朝が早いのが米国の特徴で、多くは朝7時半に始業です。当直がなければ夕方5時までの勤務となり、そのあと当直のフェローに申し送り(英語でSign outと言います)をしたら帰宅です。日本と違って、しっかりと時間が決まっているのが良いところですが、逆に5時近くになると、仕事が若干適当になってる人がいるのも事実です。プログラムはフェローに対して教育する義務があり、教育環境がいいかどうかがプログラムの人気を左右します。私が在籍しているプログラムは大学病院であることから、市中病院に比べると、レクチャーの内容がバラエティに富んでいます。レクチャーは平日の毎朝7時半から8時半まで、現在は主にZoomで行われており、その時間帯は多くの業務が免除される仕組みになっています。レクチャーの内容は、心電図、エコー、カテーテル、不整脈の講義、Journal Clubと呼ばれる抄読会、症例検討といった基本的なものだけでなく、心臓移植、心臓CT/MRI、Cardio-Oncology、Cardio-Obstetricsと呼ばれるさまざまな分野の専門家による講義も聴くことができます。教育環境に恵まれた大学病院のプログラムですが、さらに、このプログラム出身のレジデントやフェローは、市中病院のプログラム出身者に比べて一般的に優秀であると考えられることから、その先のアドバンスドフェローや就職活動なども有利になります。そのため、プログラムの競争率が非常に高くなっています。これは日本の大学病院で実施される研修とは少し異なる現象かと思われます。日本でこのような充実したプログラムの実施が難しいのは、アテンディングと呼ばれる指導医について日米で比較すると、そもそも日本の指導医のほうが忙しいこと、そして数が圧倒的に米国のほうが多いことによります。たとえば私が所属する800床と400床の大学病院双方を合わせると、循環器だけでも、合計でおよそ60~70人の指導医がいて、エコーや心臓CT/MRIなどのイメージング、核医学、心臓血管カテーテル、不整脈、心不全といった各分野にそれぞれ担当が分かれています。日本の大学病院のように臨床はせず基礎研究と外来だけ、というような人はほとんどおらず、それぞれが前線で働きます。臨床もローテーションになっており、日本的な言い方をすると、1~2週間ごとに病棟に出るときと出ないときがあり、出ない週は外来のみ、もしくは研究費がある人は研究、となります。研究費が取れるとそれが自身の給与となって時間が確保できます。臨床と研究のバランスがよく、比較的時間にも余裕があるため、やはり米国で指導医として働くのは魅力があると考えます。Column最近共著者で臨んだ心臓移植関連の論文が米国心臓病学会誌に掲載されました1)。このような心臓移植関連の研究ができるのも米国ならではのデータベースの整備ともいえますし、ニューヨークで臨床をする優秀な後輩の活躍を少しだけでも手伝えたのは貴重な経験でした。1)Mikami T, Itagaki S, Fujisaki T, Kuno T, et al. J Am Coll Cardiol. 2022;79:1063-1072.

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頻脈が心筋症を来たす?頻脈誘発性心筋症(TIC)【知って得する!?医療略語】第9回

第9回 頻脈が心筋症を来たす?頻脈誘発性心筋症(TIC)頻脈で心筋症を来たすことってあるのですか?近年、「頻脈誘発性心筋症(TIC)」という用語をよく見かけるようになりましたね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】TIC【日本語】頻脈誘発性心筋症(別訳:頻拍誘発性心筋症)【英字】tachycardia-induced cardiomyopathy【分野】循環器【診療科】循環器内科・心臓血管外科【関連】不整脈誘発性心筋症 AIC(arrhythmia induced cardiomyopathies)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。筆者が研修医時代の話ですが、循環器内科をローテ―ト中、頻脈患者さんの心拍管理が不十分で、指導医から「心不全になる」と厳しく指導されたことがありました。研修医だった私は頻脈が持続した先に起きることを、十分にイメージできていなかったのです。これをきっかけに脈拍管理の重要性を認識していきました。それからしばらく経ちましたが、近年では『頻脈誘発性心筋症(TIC:tachycardia-induced cardiomyopathy)』という用語を見かけるようになりました。TICは、明らかな心臓の基礎疾患がない状態で、長時間の頻脈持続により左室収縮能の低下を来たします。またTICは、頻脈の改善により左室収縮機能が改善を来たす疾患とされます。また類似した用語ですが「不整脈誘発性心筋症(AIC:arrhythmia induced cardiomyopathies) 」も見かけるようになりました。TICは、AICの一病型とされています。筆者は脳卒中患者の診療機会が多かったため、脳卒中に伴う高カテコラミン状態で頻脈になった患者さんや、心房細動に伴う脳塞栓症の患者に多く遭遇してきました。その中で、頻脈を放置した場合に二次的に心不全や血圧低下を来たすことは経験上で学び、脈拍管理の重要性は認識してきました。しかし、「頻脈誘発性心筋症(TIC)」という形で、改めて疾患名がつくことで、認識が一新された気がします。頻脈については、当直中に病棟からコールが鳴る原因の1つかと思います。すでに病状を把握している患者さんは別として、初めて会う頻脈の患者さんを見かけたら、注意が必要かもしれません。目の前の脈拍管理は重要ですが、それ以上に、その頻脈の背景に隠れた疾患や病態の把握が重要で、その原因に応じた対応が必要であることは、申し上げるまでもありません。ですが、条件付きオーダーなどによる一律な頻脈対応は、重要疾患の見逃しに繋がります。直近で私が当直中に頻脈のために呼ばれた患者さんは、急性の消化管出血で頻脈を来たしていました。1)大谷朋仁, 医学のあゆみ. 医歯薬出版. 2021;277:413 - 417.2)日本循環器学会:心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)3)日本循環器学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

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第104回 パワハラ事件に大甘の医療界、旭川医大、大津市民の幕引きの背後に感じた“バーター”の存在

大津市民病院は院長も辞任へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末は野球観戦三昧でした。木曜は神宮球場に行き、中日・高橋 宏斗投手の初勝利を観てきました。金曜朝からは開幕したMLBの試合を観て過ごしました。ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平投手、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ 有投手ともに好投したのですが、ともに勝ち投手にはなれませんでした。気になったのはヒューストン・アストロズとの開幕4連戦、大谷選手のバットが総じて湿っていたことです。……と日曜日にここまで書いていたら、「千葉ロッテマリーンズの佐々木 朗希投手がとんでもない試合をしている」との情報が。その後、ネットの1球速報をチェックしながら、間接的にですが完全試合の瞬間に立ち会いました。それにしても、初完投で19奪三振、28年ぶりの完全試合とはまさにとてつもない偉業です。ニュース映像やYouTubeなどでこの日の投球を見たのですが、2年連続首位打者のオリックス・バッファローズの吉田 正尚選手から面白いように三振を取っていたのが印象的でした。ところで佐々木投手をリードしていたのは市立和歌山高校からドラフト1位で入ったばかりの松川 虎生捕手です。佐々木投手は日曜のテレビのインタビューで「18歳なのか18年目なのかわからない」とコメントしていました。完全試合捕手としては史上最年少かつ、ルーキー選手が務めたのも史上初とのことです。松川捕手の今後の活躍も気になるところです。さて、先週「第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、『パワハラなし』、理事長引責辞任でひとまず幕引き」で書いた大津市民病院ですが、またまた新たな動きがあり、理事長に続いて院長辞任も明らかになりました。「辞任って辞めないこと?責任って何?」と思うような人事地方独立行政法人・市立大津市民病院は4月8日、若林 直樹院長の辞任(4月17日付)を発表しました。あわせて若林氏の「今般の医師の人事案件に関し患者、市民に大変な心配と不安をかけている責任を痛感し、診療体制の刷新を図るため院長職を辞する」とするコメントも出しました。もっとも、若林氏は今後も地方独立行政法人の副理事長職と、同病院の院長代行に留まって病院運営に携わり、診療も続けるとのことです。普通の人が聞いたら「辞任って辞めないこと?責任って何?」と思うような人事です。なお若林氏の院長辞任とあわせて、新しい院長も発表されました。後任は、済生会滋賀県病院(栗東市)の院長補佐で脳神経外科医の日野 明彦氏とのことです。北脇 城前理事長の後任理事長については人選中とのことです。ちなみに日野氏は北脇氏、若林氏と同じく京都府立医大の出身です。結局、同病院の外科や脳神経外科は京大が排除され、府立医大勢で占められることになるのでしょうか。先行きが気になります。旭川医大、新学長、新病院長で再スタート医療界の類似のパワーハラスメント事件ということでは、北の地、北海道・旭川でも新たな動きがありました。旭川医科大学の新学長に4月1日付で西川 祐司前副学長が就任したのです。西川学長は昨年11月、学内の教授らによる投票で選ばれていました。旭川医大の吉田 晃敏前学長の職員へのパワハラや数々の不適切な言動等については、本連載でも「第43回 ドタバタ続きの旭川医大、ワンマン学長の言動を文科省が静観する理由」「第64回 「辞任」ではなく「解任」の可能性も…、老害、旭川医大学長のお粗末な退陣劇」で取り上げてきました。新学長就任がここまで遅れたのは、吉田前学長を解任するか、辞任を認めるかについて、文部科学省で2月まで協議が続いたためです。文科省、解任ではなく辞任を受理吉田前学長をめぐっては、教職員へのパワハラや不適切支出などの問題行為が指摘され、同大の学長選考会議が昨年6月、文部科学相に解任を申し出ていました。一方、解任(クビ)は避けたい吉田氏は辞任届けを文科省に提出していました。各紙の報道によれば、解任申し出を受け文科省は吉田前学長に事情を聴くなどしたものの、問題行為については否定していたとのことです。平行線が続くなか、2月25日に大学が「新体制移行を最優先したい」として解任申し出を取り下げ、3月3日に末松 信介文部科学大臣が吉田前学長の辞任を認めた、という流れです。旭川医大では西川学長が就任した同じ4月1日、吉田前学長と対立して病院長を解任された古川 博之氏が病院長兼副学長として復職しました。古川氏は、吉田前学長が2020年11月に新型コロナのクラスターが発生した市内の病院について「コロナを完全になくすためには、あの病院がなくなるしかない」と発言した学内会議を録音し外部に漏えいしたとして解任されました。古川氏は録音と漏えいを否定しており、患者らが解任撤回を求める署名活動を行っていました。「誰がどう聞いてもパワハラにはならない」と前学長なお、辞任が決まった1週間後の3月8日、吉田前学長は代理人の弘中 惇一郎弁護士(カルロス・ゴーンの弁護を引き受けるも逃げられてしまった弁護士です)とともに記者会見を開いています。各紙報道によれば、会見で吉田前学長は、混乱を招いたことを陳謝する一方、「私自身はまったく特別なことはしていないが、いわゆるクーデターという形になって私が悪いとなった。自分が身を引くのが一番。混乱の責任をとって私が辞任の手続きをとった」「パワハラだと言われて資料を出されても、誰がどう聞いてもパワハラにはならない」と、一連の事件をクーデターだと説明するとともに、パワハラを全面否定したとのことです。「パワハラは認めず」「混乱の責任を取って辞任」大津市民病院、旭川医大のケースで共通しているのは、どちらもパワハラを訴えられた方が「パワハラは認めず」「混乱の責任を取って辞任」している点です。「混乱の責任」とは、わかるようでよくわからない説明です。こうしたことから伺い知れるのは、パワハラの存在証明が法律的に相当難しいだろう、ということです。ただし、「法律的にはセーフだが実社会ではアウト」ということは多々あります。最近話題の芸能界、映画界でのセクハラもその範疇に入る例が多いでしょう。パワハラを起こした本人もその自覚があるからこそ職を辞していると思われますが、「第三者委員会がパワハラ認定しなかった」「文科省が解任しなかった」ことをもって、「自分はシロだった」と“後出し”で言うのはかっこ悪く、虫のいい話です。運営安定化を最優先させるための“バーター”の存在そうした虫のいい話になってしまうのは、パワハラやセクハラに関して、医療界がこれまで甘過ぎる対応をしてきたからではないでしょうか。今回の旭川医大に関する文科省の対応は、大学側からの取り下げを待って辞表を受理するかたちとなっています。一方の大津市民病院は、第三者委員会の「パワハラはなかった」報告書を待って、理事長、院長が退任するかたちとなっています。何となく、大学や病院の運営の安定化を最優先させるための“バーター”の存在が見え隠れします。旭川医大では、「解任にするにはまだ証拠が足りない。それを調べていては学生や病院の患者に迷惑になる。もうここは辞表を受理して辞めてもらう代わりに、新しい体制でスタートしてもらおう」といった文科省の意向が働いたのではないでしょうか。一方の大津市民病院では、「パワハラはなかったことにして罪は問わない代わりに辞めてもらおう。ただ今後も主導権は府立医大に取っていただく」といった大津市の意向があったのではないでしょうか。「悪いものは悪い」こととして厳しく罰し、相応の罰を科すような仕組みが機能しない世界では、同じような事件が再び起こるに違いありません。国と国の間の戦争でも、大学と大学の間のジッツ争いでも、組織内の権力抗争においても、その真理は変わらないと思います。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎へのウパダシチニブ、長期有効性を確認

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者(青少年および成人)に対するJAK阻害薬ウパダシチニブの有効性と安全性について、2つのプラセボ対照試験結果の長期52週時のフォローアップデータ解析の結果を、米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが発表した。ベネフィット・リスクのプロファイルは良好であり、16週時点で認められた有効性は52週時点でも確認されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年3月9日号掲載の報告。 研究グループが、アトピー性皮膚炎患者に対するウパダシチニブの長期(52週)の有効性と安全性を評価するため解析した2つの試験は、いずれも現在進行中の第III相二重盲検プラセボ対照反復無作為化試験「Measure Up 1試験」と「Measure Up 2試験」。それぞれ、151施設および154施設で中等症~重症アトピー性皮膚炎の青少年および成人患者が参加している。今回の解析のためのデータカットオフ日は、それぞれ2020年12月21日と2021年1月15日であった。 主要評価項目は、安全性および有効性で、湿疹面積・重症度指数(EASI)75%改善および試験担当医によるアトピー性皮膚炎の総合評価(vIGA-AD)スコアが2段階以上改善を伴うスコア0(消失)または1(ほぼ消失)への達成などで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析に含まれた被験者は、2試験で計1,609例(平均年齢33.8[SD 15.6]歳、女性727例[45.2%]、男性882例[54.8%])であった。・16週時点の有効性は、52週時点まで持続していた。・52週時点のEASI 75%改善達成率は、15mg用量服用患者群で、Measure Up 1試験被験者82.0%(95%信頼区間[CI]:77.0~86.9)、Measure Up 2試験被験者79.1%(73.9~84.4)、30mg用量服用患者群でそれぞれ84.9%(80.3~89.5)、84.3%(79.6~89.0)であった。・52週時点の2段階以上の改善を伴うvIGA-ADスコア達成率は、スコア0への改善達成率が各試験被験者59.2%(95%CI:52.9~65.5)、52.6%(46.2~59.1)であり、スコア1への改善達成率がそれぞれ62.5%(56.3~68.7)、65.1%(58.9~71.2)であった。・有害事象による治療中止は全体的に低調だったが、30mg用量群でわずかに高率に認められた。両用量とも忍容性は良好で、新たな安全性シグナルはみられなかった。

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高齢者のうつ病治療ガイドラインのポイント~日本うつ病学会

 2020年、日本うつ病学会の気分障害の治療ガイドライン検討委員会は、『高齢者のうつ病治療ガイドライン』を作成した。高齢者のうつ病治療ガイドラインは、世界的な専門家の提言や最新のエビデンスに基づいた作成および改訂が行われている。順天堂大学の馬場 元氏らは、高齢者のうつ病治療ガイドラインのポイントについて、報告を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年3月11日号の報告。高齢者のうつ病治療ガイドラインに各種療法の有用性 高齢者のうつ病治療ガイドラインの主なポイントは以下のとおり。・高齢者うつ病の診断では、双極性障害や身体疾患および脳器質性疾患を原因とするうつ症状、薬物治療による症状、認知症と慎重に鑑別し、高齢者うつ病と認知症との併存を判断することが重要となる。・高齢者うつ病の臨床的特徴や心理社会的背景の十分な理解、患者の状態の評価、これらの因子に基づいた基本的な介入を行う必要がある。・抑うつ症状の軽減には、問題解決療法、回想療法/ライフレビュー療法、行動活性化療法、その他の心理療法が有効である。・高齢者うつ病に対する薬物療法に関しては、新規抗うつ薬または非三環系抗うつ薬を用い、初めに最小有効用量を決定することが推奨されている。・治療抵抗性患者に対しては、抗うつ薬の切り替えおよびアリピプラゾール増強療法が使用可能である。・高齢者うつ病に対し、電気けいれん療法および反復経頭蓋磁気刺激療法が有用であることが確認されている。・運動療法、高照度光療法、食事療法は、ある程度の有用性が認められている。

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朝食にタンパク質で筋力維持、何を食べるのがベスト?

 朝食でのタンパク質摂取量は、筋力を維持するために重要であることが示唆されているが、朝食で取るタンパク質の『質』による影響は不明なままである。そこで、国立長寿医療研究センター研究所フレイル研究部の木下 かほり氏、老化疫学研究部の大塚 礼氏らは、朝食時のタンパク質の質と筋力低下の発生率の関連について縦断的研究を行った。その結果、タンパク質の摂取量とは独立して、朝食のタンパク質の質が高いほど高齢者の筋力低下抑制に関連していることが示唆された。この結果はJournal of the American Medical Directors Association誌2022年1月7日号オンライン版に掲載された。朝食のタンパク質の質と筋力低下との関連を健康な高齢者701例で調査 筋力の低下は、将来の健康障害や死亡を予測する重要な指標であることから、サルコペニアの診断では握力の評価が筋肉量の評価よりも優先されている。本研究は、国立長寿医療研究センターが行っている地域住民対象の長期縦断疫学研究(NILS-LSA)のデータを用いて行われ、ベースライン時点で脳血管疾患、関節炎、パーキンソン病、筋力低下のない60〜83歳の健康な高齢者701例を対象として朝食のタンパク質の質と筋力低下(weakness)との関連を調査した。最大追跡期間は9.2年、最大参加回数は5回だった。 Weaknessは改定アジアサルコペニア診断基準(AWGS*2019)を基に定義(握力は男性:28kg未満・女性:18kg未満)。朝食のタンパク質の質については、3日間の食事記録から計算したタンパク質消化性補正アミノ酸スコア(PDCAAS)を用いて評価を行った。PDCAASはスコアが高いほどタンパク質の質が高いことを示す。参加者は朝食PDCAASの性別三分位で分類された(低グループ、中グループ、高グループの3群)。PDCAASとweaknessとの関連は、一般化推定方程式(GEE:generalized estimating equation)を用いて分析し、性別、フォローアップ期間、およびベースライン時の年齢、握力、BMI、身体活動、認知機能、教育歴、喫煙歴、経済状況、病歴、昼食と夕食のPDCAAS、3食(朝・昼・夕)のエネルギーとタンパク質摂取量で調整した。*AWGS:Asian Working Group for Sarcopenia朝食のタンパク質のPDCAASが高いほどweaknessは発生しない 朝食のタンパク質の質と筋力低下との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・分析された701例のうち男性は53.5%(375例)だった。・平均追跡期間±SDは 6.9±2.1年、参加した追跡調査の平均回数は3.1±1.1回。累積参加者数は3,019例で282例が weaknessになった。・PDCAAS低グループを参照にした場合、中グループおよび高グループでのweakness発生の調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、それぞれ0.71(95%CI:0.43~1.18)および0.50(同:0.29~0.86)だった。・昼食、夕食、1日の総摂取量においても同様にPDCAASを解析したが、朝食のタンパク質のみが有意な関連を示した。・朝食の食品群を比較すると、朝食PDCAASが高いグループほど、豆類、魚介類、牛乳・乳製品、卵を多く摂取しており、低いグループほど砂糖・甘味料、油脂類を多く摂取していた。 研究者らは、「今回の発見は、高齢者の筋力維持、すなわち高齢者のQOL維持のための栄養学的アプローチに対して価値ある識見を提供するかもしれない」としている。

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新型コロナ後遺症、多岐にわたる症状と改善時期/東京感染症対策センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が懸念される中で新規の陽性患者だけでなく、COVID-19の後遺症の報告も医療機関で上がっている。厚生労働省は、2021年12月に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を作成し、全国の医療機関に診療の内容を示したところである。 今回、東京都は、3月24日に開催された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議で「都立・公社病院の外来を受診した後遺症患者の症例分析」を発表した。これは、都の感染症に関する政策立案、危機管理、調査・分析などの感染症対策を行う東京感染症対策センター(東京iCDC)が取りまとめたもの。 分析の結果、症状では「倦怠感」「息切れ」「頭痛」などの症状が多く、出現時期も2週間未満での発症が多かった。 東京都では、HP上で後遺症の症状、体験談、相談窓口などを紹介する「新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット」を作成・公開し、後遺症診療の啓発につとめている。調査の概要・対象:都立・公社病院のコロナ後遺症相談窓口から自院の外来受診につながった症例など、都立・公社病院の外来を受診した後遺症が疑われる患者の症例・期間:令和3年5月10日~令和4年1月28日に受診した症例・症例数:230例 年齢:50代、40代、30代の順 性別:男(60%)、女(40%) 重症度:軽症(54%)、不明(28%)、中等症I(8%)の順COVID-19後遺症の主訴の多くが倦怠感、息切れ、頭痛の3つ 次に調査結果の概要を示す。【1.後遺症の症状】・全症状(複数回答)倦怠感(93人)、息切れ(44人)、頭痛(38人)の順で多く、その他が128人・主症状(単一回答)倦怠感(52人)、息切れ(25人)、頭痛(23人)の順で多く、その他が49人・後遺症の症状の数(症例データ)1つ(35%)、2つ(27%)、3つ(27%)の順・訴える症状の数(相談窓口データ)2つ(34%)、1つ(30%)、3つ(19%)の順 症状は上位3つの主訴が多いが、「その他」も多く、多岐にわたる症状が多い。また、全体の65%が2つ以上の症状を訴えていたことが判明した。【2.後遺症の出現時期と改善状況】・後遺症の出現時期[発症からの期間](n=213)2週間未満(116人)、2週間以上1ヵ月未満(46人)、1ヵ月以上3ヵ月未満(40人)の順・直近受診日における改善状況(n=125)改善(68人)、症状継続(54人)、他院紹介(3人)の順 全体の約54%がCOVID-19発症から2週間未満であり、症状が継続していた。また、改善状況では全体の54%が直近受診日において改善していた。【3.治療・検査】 後遺症の治療法は確立されていないが、都立・公社病院では、症状に応じた検査・薬の処方など、対症療法を行っている。(1)倦怠感(n=52)・検査:血液検査(33人)、胸部X線(17人)、脳・頭部MRI(14人)など・治療:漢方薬(23人)、抗うつ薬(5人)、解熱鎮痛薬(4人)など(2)息切れ(n=25)・検査:胸部X線(20人)、血液検査(14人)、心電図(8人)など・治療:漢方薬(4人)、解熱鎮痛薬(4人)、咳止め薬(4人)など(3)頭痛(n=23)・検査:血液検査(16人)、脳・頭部MRI(9人)、心電図、胸部X線(ともに7人)など・治療:解熱鎮痛薬(9人)、漢方薬(4人)など 改善時期では、倦怠感が発症から1~3ヵ月、3~6ヵ月がほぼ同じ割合で多く、息切れは1~3ヵ月、頭痛は3~6ヵ月の回答が多かった。 東京iCDCは、以上の結果から「時間の経過とともに改善がみられる事例がある一方で、コロナ罹患時よりも重い症状となる事例、症状が長期に遷延し、仕事などを休まざるをえない事例もみられた。コロナ発症時から1~2ヵ月以上症状が継続するなど、後遺症が疑われる場合は、無理な活動は避け、かかりつけの医療機関や相談窓口などへ相談をしてほしい」と結んでいる。

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ウクライナ語を新たに追加、医療通訳サービス活用を/日医

 ウクライナからの避難者やその親族等の支援として、日本医師会では医療通訳サービスに、2022年4月6日より新たにウクライナ語を追加した。同サービスは医師賠償責任保険の付帯サービスとして実施されているもので、ウクライナ語を含む19言語に対応。通訳者を介して話すことができる電話医療通訳とアプリを活用した機械翻訳の2つのサービスからなる。同日開催された日本医師会定例記者会見で、松本 吉郎常任理事が発表した。併せて、新型コロナウイルス感染症の影響や未収金発生状況等について審議結果をまとめた「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」の内容が公開された。特別な設備は不要、電話1本で利用可能 同サービスは当初東京オリンピックの開催に伴う外国人患者増加に向けた施策の一環として開始されたものだが、現在も継続されている。[電話医療通訳サービス概要]対応言語:19言語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・タイ語・ロシア語・タガログ語・フランス語・ヒンディー語・モンゴル語・ネパール語・インドネシア語・ペルシャ語・ミャンマー語・広東語・アラビア語・ウクライナ語)対応時間:毎日8:30~24:00利用対象者:開設者・管理者が日本医師会A1会員である医療機関の医師・職員利用料:A1会員1人当たり年間20回まで無料※ウクライナから避難された患者やその親族における電話医療通訳については、対象言語に関わらず、年間20回の回数制限を除外して対応利用方法:事前登録完了後に通訳直通電話番号を案内→電話1本で利用可能外国人COVID-19患者への対応や未収金の発生防止にも活用を 「令和2年・3年度外国人医療対策委員会報告書」では、新型コロナワクチン接種のための手続きが日本語が十分に使える状況にない来日外国人にとって非常に難易度が高いこと、日本人と比べ自宅療養の比率が高くなる傾向が報告されていること、陽性判明から入院・入所までの手続きにおけるコミュニケーションが十分にとれていないケースも散見されることなどが指摘されている。 また、未収金の発生状況についても、厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」(令和3年3月)よりデータがまとめられている。令和2年10月の1ヵ月間で、外国人患者の受入実績のある2,195病院のうち、363病院(16.5%)が外国人患者による未収金を経験していた。発生件数は平均4.4件、総額は平均37.0万円で、500万円を超える事例が6件あり、最高額は約989万円だった。 松本氏は、ウクライナからの避難民や新型コロナ感染症患者への対応はもちろん、未収金の発生防止対策の1つとしても、円滑なコミュニケーション推進のために医療通訳サービスを活用してほしいと話した。

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HPVワクチン接種者へのスクリーニング、陽性者にはコルポスコピーを/BMJ

 子宮頸がんの予防では、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次スクリーニングは細胞診よりも有効性が高いとされる。オーストラリア・シドニー大学のMegan A. Smith氏らは、これまでに十分な検討が行われていないHPVワクチン接種を受けた女性における子宮頸がんの1次スクリーニング検査の効果を評価し、コルポスコピー検査導入の決定に際しては、基本となるがんのリスクを考慮する必要があり、これに基づいてHPVスクリーニング検査を行えば、その結果がHPV16/18陽性の女性では、細胞診の結果にかかわらず、過去に繰り返しスクリーニング検査を受けている女性であっても、コルポスコピー検査で前がん病変やがんが発見される可能性が高いことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月30日号に掲載された。オーストラリア350万女性の観察研究 研究グループは、オーストラリアのHPVワクチン接種済みの女性において、子宮頸がんの1次スクリーニング検査プログラムの開始から2年間の実態を調査する目的で、観察研究を行った(筆頭著者らはオーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]から給与支援を受けた)。 対象は、2017年12月1日~2019年12月31日の期間にHPVの1次スクリーニング検査を受けた女性であった。 1次スクリーニング検査でHPV16またはHPV18が陽性であった場合、液状処理細胞診でのhigh grade、low grade、陰性、不十分の集団に、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者では液状処理細胞診でhigh gradeの集団に、コルポスコピー検査が行われた。 また、HPV16/18以外の高リスクHPV型陽性者には、液状処理細胞診によるトリアージが行われ、中等度リスク(low grade、陰性)の集団には、12ヵ月間のフォローアップHPV検査が推奨され、期間中に高リスクHPV型(HPV16/18およびHPV16/18以外)が陽性となった時点でコルポスコピー検査が導入された。 主要アウトカムは、初回HPVスクリーニング検査で陽性となり、コルポスコピー検査を受けた女性の割合と、子宮頸部上皮内新生物(CIN)Grade3以上、同Grade2以上およびがんの検出の短期的なリスクとされた。 スクリーニング検査の対象となった25~69歳の女性642万8,677例のうち350万7,281例(54.6%)が、2019年末までに初回HPVスクリーニング検査を受けた。がん検出率:HPV16/18陽性者0.98%、細胞診陰性でも0.32% 定期的にスクリーニング検査を受けた25~69歳の女性304万5,844例では、HPV16/18陽性率は2.0%、HPV16/18以外のHPV型陽性率は6.6%であり、ワクチン接種率が高い25~34歳の女性(76万8,362例)では、それぞれ2.2%および13.3%であった。 コルポスコピー検査を受けた女性の割合は3.5%で、12ヵ月間の再HPV検査を終了していない女性を考慮すると、6.2%に増加すると推定された。 子宮頸がんは、ベースライン時にHPV16/18陽性の女性の0.98%(456/4万6,330例)で検出された。このうち細胞診でhigh gradeの女性は子宮頸がんの検出率が4.4%(330/7,583例)とリスクが最も高く、陰性の女性でも0.32%(89/2万8,003例)と相対的に高いリスクを示し、これはlow gradeの0.26%(26/9,821例)と同程度であった。 ベースラインと12ヵ月後の双方においてHPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの中等度リスクの女性(2万19例)は、重篤な病態のリスクが低かった(CIN Grade3以上:3.4%、がん:0.02%)が、このスクリーニングアルゴリズムでは、コルポスコピー検査を受けた62.0%に当たると推定された。 著者は、「これらの結果は、HPV16/18陽性の女性は子宮頸がんのリスクが高い(0.98%)ため、細胞診の結果にかかわらず、コルポスコピー検査を考慮する必要があることを示唆する」とし、「HPV16/18以外のHPV型が陽性で、細胞診が陰性またはlow gradeの女性では重篤な病態のリスクが低かったが、コルポスコピー検査を受けた女性の多くを占めていたことから、HPV検査を1回ではなく2回繰り返すことで安全に管理できる可能性がある」としている。

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米国の肺がんアジュバント実施率53% ガイドライン準拠に改善の余地(ALCHEMIST)/JAMA Oncol

 米国の早期非小細胞肺がん(NSCLC)ではガイドラインに沿った標準治療をどの程度行っているのか。全米の後ろ向きコホート試験の結果、実施割合には改善の余地があることが明らかになった。 米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは、リンパ節郭清を含めた外科的切除と術後補助化学療法を適切な患者に行うことが早期NSCLCの標準治療となっている。しかし、以前から多くの患者が、そのような治療を受けていないとされる。 そこでNCCNガイドラインに準拠した手術と補助化学療法がどの程度行われているかを、全米の補助療法の大規模スクリーニング試験ALCHEMIST(Adjuvant Lung Cancer Enrichment Maker Identification and Screening Trial)で確認した。 この試験では、リンパ節郭清を含めた外科的切除と術後補助化学療法を標準治療をする、4cm以上の原発腫瘍および/またはリンパ節転移を有するStage IB〜IIIA(AJCC7版)NSCLC患者が登録されている。 主な結果は以下のとおり。・2014年8月18日〜19年4月1日に登録された患者は2,833例であった。・そのうち外科切除を受けた患者は95%、2,699例であった。・適切と見なされるリンパ節郭清を受けた患者は53%に留まった。・術後補助療法を受けた患者についても57%に留まった。・4サイクルのプラチナベースの術後補助療法を受けた患者は44%、シスプラチンベースの術後補助療法を受けた患者は34%であった。・これらの結果は、人種や民族間で変わらなかった。 筆者は「この結果は術後補助療法試験の解釈に影響する。早期NSCLCに対する標準治療の使用を最適化するための努力が必要であることを示唆している」と述べている。

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こういうランダム化比較試験は仕方ない?(解説:後藤信哉氏)

 日本ではランダム化比較試験の多くが薬剤の臨床開発の一環としての治験として行われている。治験でないランダム化比較試験には薬を売るためのseeding trial(種まき試験)が多い。企業の利益と臨床試験が直結するため、規制当局による厳格な規制がなければ資本は何をするかわからない。 経済利益と直結する臨床試験と異なり、本研究は新型コロナウイルスという脅威にさらされた人類の治療法探索の一環として施行された研究である。新型コロナウイルス感染は血栓症のリスクを増やす。血栓イベント予防効果のある抗血小板薬は感染症の予後を改善するかもしれないとの仮説が検証された。 筆者は知らなかったが、世界には肺炎の予後改善を目指したREMAP-CAP試験という各種薬剤の効果を検証する継続的なランダム化比較試験の基盤があるらしい。本研究では新型コロナウイルス肺炎にてICU入院あるいは機械的補助循環・呼吸を要した重症例1,557例を対象とした。試験のendpointは登録後21日以内の機械的補助循環・呼吸を外れた日数とした。日数-1は死亡、日数22は無事退院となる。ランダム化はオープンラベルでアスピリン・P2Y12阻害薬使用ないし不使用である。 重篤な出血は増えるようだが、生存できる可能性は抗血小板薬を使ったほうがよい方向に見えるが統計学的に差異はなかった。1,400例以上集めても差がなかったことが示された。論文の著者はREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsで個人ではない。人類のために能力のあるものが臨床試験にて医療のシステム的改善にチャレンジするとのランダム化比較試験のお手本のような例だと筆者は思う。

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下がり続ける薬剤師国家試験の合格率【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第87回

3月末に薬剤師国家試験の合格発表がありました。最近の合格率はどのくらいなのでしょうか? 厚生労働省は3月24日、2021年度薬剤師国家試験の結果を発表し、合格基準が相対評価に変わった2015年度以降、合格率で過去最低を更新したことを明らかにした。1万4,124人の受験者に対し、合格者は9,607人で、合格率は前回2020年度から▲0.64ポイントの68.02%だった。合格率は年々、低下している傾向にある(中略)合格者のうち6年制新卒者は7,386人で、合格率は前回からの▲0.31ポイントの85.24%。6年制既卒者は2,126人で、▲0.54ポイントの40.75%だった。(2022年3月25日付 RISFAX(一部改変))ここ最近の薬剤師国家試験の合格率は70%くらいを推移しています。新卒者は約85%ですので多少ホッとしましたが、全体で約68%というのはやっぱり低いなという感想です。とくに私立大学では50%以下の大学が10校以上あり、厳しい結果となっています。最近では、厚生労働省や文部科学省が、薬剤師のあり方や教育を検討するための検討会を開催するなど、薬学部の教育カリキュラムにメスが入るのはもはややむなしという状況なのかもしれません。薬局の現場では、合格者は毎年大勢いるのになかなか新人薬剤師が入ってこないなぁ、とぼやいている人もいるかもしれません。合格者9,607人のうち約60%が薬局に勤めると仮定すると、新人薬局薬剤師は6,000人弱という計算になります。一見多そうに見えますが、日本の薬局数は約6万軒ですので、単純計算で10店舗に1人しかいません。新人を獲得することがいかに難しいことなのかがよくわかります。そんな希少な新人薬剤師さんで今このコラムを読んでくれている方もいるかもしれません。今後はさらに新しい通知や施策にも対応していくことが必要になるでしょう。そのために、おおまかでいいので「薬剤師数は33万人」「薬局数は6万軒」という現時点の数字を覚えておくと何かのときに考えるヒントになるかもしれません。数字は人や仕事を助けてくれることがあります。新人薬剤師は実務で覚えることが多くて大変だと思いますが、ご縁があって就職できたわけですので、ぜひ薬剤師業務を楽しみ、各所で新しい風を吹かせてくださいね。

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カムラティ・エンゲルマン病〔CED:Camurati-Engelmann Disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義カムラティ・エンゲルマン病は、進行性骨幹異形成症(progressive diaphyseal dysplasia)とも記載される常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる骨系統疾患である。本症は、1920年Cockayneによって初めて記載され、1922年Camuratiにより遺伝性であることが示唆された。1929年Engelmannにより、筋力低下と著明な骨幹異形成症を示す一例が報告され、本症の名前の由来となっている。現在では、過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、四肢痛を特徴とする疾患としてカムラティ・エンゲルマン病(Camurati-Engelmann病:CED)の表記が広く用いられている。現在までに150例を超える症例報告がある。家系内解析では、表現型に大きな幅があることが知られている。■ 疫学筆者らが、2014年に行ったアンケート調査(国内医療機関[計2,531施設]に送付し、1,470施設から回答を得ることができた)では、16症例が報告された。このうち、13症例が新規だと考えられた。アンケートから推定された新規患者は30症例程度であり、既知の患者と合わせて60名程度のCED患者がいると考えられる。このアンケートでの患者の定義は、発症年齢は大半が幼児期であるが、その症状は幼児期と青年成人期で異なり、幼児期は、筋力低下、易疲労性を主徴とし、青年成人期は、骨幹の疼痛、めまい、難聴を主徴とするものを対象にし、2診断の項目で示すX線画像所見もしくは検査所見を持つものとしている。■ 病因筆者らは、このCEDの3世代にわたる大家系(21名)を見出し、その臨床表現型についての検討を行った。罹患者、非罹患者をX線学的に同定し、家系内連鎖解析を行った。これにより、疾患遺伝子が19番染色体長腕に位置するTGFB1遺伝子であることを突き止めた。しかしながら、この遺伝子にみられる変化は、TGFB1の構造遺伝子部分ではなく、関連蛋白(Latency associated protein:LAP)に存在する。当初の解析では、LAPドメインを不安定化する変異がTGFB1の遊離を促進することで成熟型TGFB1を増加させるものであると考えられていた。その後のシグナルペプチドでの変異やヒンジ以外の部分の変異での解析から、必ずしも成熟型TGFB1の増加必須なのではなく、情報伝達系として亢進する変異であれば、カムラティ・エンゲルマン病の表現型をとることが明らかになっている。■ 症状3主徴は、四肢の骨痛、筋力低下、易疲労感である。これらの3主徴の出現時期には、年齢依存性があることに注意が必要である。1)幼児期この時期の症状は、筋肉痛、筋力低下、歩行異常であり、骨痛を訴えることは少ない。2)思春期思春期前後から、運動後の骨痛や骨の自発痛が始まる。痛みの出現部位は、病変部である長幹骨の骨幹であることが多い。3主徴が整うのは思春期以後であることが多い。3主徴が整うころの体型としては、手足が長く筋肉の付きの悪い痩せ型であることが多く「マルファン様」と記載されることが多い。性別を問わず、思春期が遅れることも比較的よくみられる症状である。妊孕性に異常はみられない。3)成人期成人期以後は、上記の症状に加えて、頭蓋底の骨肥厚、骨硬化による症状が加わっていく。これには、神経孔の狭窄による神経麻痺などがあり、骨肥厚、骨硬化の進行により生じると考えられている。同様の病態生理から顔面神経マヒ、頭痛、うっ血乳頭、めまい、耳鳴、感音性難聴などの症状が生じうる。理由は不明であるが、女性患者の場合、妊娠によって四肢の疼痛が劇的に改善することが知られている。■ 予後妊孕性に問題はなく、生命予後が悪いという報告もない。しかしながら、頑固な耳鳴や日常生活に支障を来すほどの骨の自発痛は、患者を不安に陥れ精神的な不安定さを生じ、予期しない不幸な転帰をむかえることがあるので精神状態のフォローが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)疾患の診断には、上記の症状に加えて、X線画像所見が依然として最も価値があると考えられる。2014年の全国調査では、頭蓋骨側面、四肢長管骨X線画像所見もしくは骨シンチグラム画像所見で診断基準を設定して集計した。1)X線画像所見長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性の骨硬化像(*X線画像所見における頭蓋底の骨硬化像の有無は問わない)2)検査所見骨シンチグラムでの長幹骨骨幹の骨皮質の左右対称性とりこみ3)判定上記2項目のうち1項目を満たすもの図1 典型例頭蓋底の硬化像、頭蓋骨のびまん性の肥厚、長幹骨骨幹を中心とした硬化像。画像を拡大する図2 軽症例頭蓋底の硬化性変化はほとんどみられない。右尺骨近位部大腿骨遠位部の骨硬化、下腿の骨変化。画像を拡大する図3 典型例での99mTc-HMDP骨シンチグラフィー頭蓋底と長幹骨骨幹に左右対称的な取り込みを認める。画像を拡大する図1に典型例、図2に軽症例、図3には骨シンチグラフィーの所見を示す。X線画像所見では、軽症例で内骨膜中心の膜性骨化を示し、骨全体の変形は少ない。重症になるにつれ頭蓋底の骨硬化が進行し、外骨膜性の骨化が加わり骨の変形を来すのが観察できる。古典的には、赤沈の亢進、ALPの上昇の記載があるが、鑑別に用いることが可能なほどの診断的な意味はないと思われる。筆者らが経験した大家系においても、ALP、骨ALP、オステオカルシン、尿中デオキシピリジノリンなど汎用性の高い骨関連マーカーは、病気の存在、病勢と一致しない。また、この疾患の原因遺伝子であるTGFB1の血中濃度も病勢を反映するものではない。現在では、保険診療外ではあるがTGFB1遺伝子解析が可能となっており、機能亢進型の変異を検出することができれば診断を確定できるものと考えられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在までの報告からは、ステロイドの有効性を指摘するものが多い。プレドニンとして平均0.6mg/kg/日から開始し漸減する方法が一般的である。筆者らは、初期の投与期間を限定して、低容量で長期間服用する方法をとっている。しかしながら、投与方法については、一定の見解が得られていない。疼痛に対する効果はみられるものの、一過性であり周期的に繰り返し投与が必要である。最近、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のステロイド治療で使用されるDeflazacortでの治療経験が報告されるようになっており、経過が注目される1999年ビスフォスファネート製剤の有効性が報告されたが、筆者らの症例では効果はなく、2005年には第1世代、第2世代ビスフォスファネート製剤の否定的な追試が発表された。最近、第3世代のビスフォスファネートであるゾレドロンでの治療経験の報告がみられるようになっており経過を注視する必要がある。また、原因遺伝子がTGFB1の機能亢進にあることから、マルファン症候群と同じくロサルタンの応用が報告されるようになった。低血圧を惹起しない小児領域での実用的な量は、0.6~1.4mg/kg/日とされている。これまでの報告では、病態が完成していない思春期前の小児での成績がよく、成人後では改善が認められないとするものが多い。4 今後の展望現在、本疾患は、小児慢性特定疾病ではあるものの、指定難病には指定されていない。また、治療については、新規開発薬剤の適応拡大などが必要である。そのためにも難病政策として小児慢性特定疾病指定と指定難病指定の一元化が望まれるところである。5 主たる診療科整形外科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター カムラティ・エンゲルマン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2022年4月12日

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手術イラストを活用した院内向けレクチャーの一例【誰も教えてくれない手術記録 】第13回

第13回 手術イラストを活用した院内向けレクチャーの一例こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。連載が始まって早くも1年がたちました! 連載を見て手術イラストを描き始めてくださった先生方も、この1年間で相当上達したのではないでしょうか? 自身のイラストのレベルアップが、手術の上達やカンファレンスでの反応で実感できるとすごくうれしいですよね。手術イラストを描き続けていると、日々のオペレコ作成にとどまらず、さまざまな場面で活用できることに気付きます。そんな気付きを与えてくれた1つのきっかけは、「先生のイラストをいつも予習に使っています!」と手術室看護師さんから言われたことでした。手術イラストは、外科医だけでなく幅広い職種への外科教育にも大いに役立つかもしれません。今回は、学生・研修医・メディカルスタッフへの手術イラストを活用した外科教育について、実例を交えて紹介します。(1)病棟看護師へのミニレクチャー画像を拡大する画像を拡大する昨年、病棟看護師の皆さんに向けて、一般的な外科手術についてのミニレクチャーを行いました。病棟看護師さんの中には、「普段から消化器外科の患者さんを担当しているけど、手術は見たことがないし内容もよくわからない」という方もいらっしゃいます。実際の手術動画を見てもらいながら、イラスト資料を使って手術の手順や起こりうる合併症を解説しました。「動画だけだとよくわからないところも、イラストと照らし合わせて理解がかなり深まりました」と大変好評だったようです。(2)学生・研修医の手術の予習画像を拡大する僕がまだ学生のころ、情けないことに予習する余裕がないまま手術に参加してしまい、内容がまったく理解できず、無駄に終わることが多々ありました。そんな僕も今は学生・研修医の指導に多少関わる立場になり、「せっかく手術に入るのだから、少しでも理解を深めてもらおう」と、予習のためのイラスト資料を渡すようにしています。資料では手術のキーポイントや覚えるべき解剖構造を強調し、簡潔にまとめてあります。予習のおかげか、「この血管の名前はわかる?」など、手術中に解剖に関する質問をしてもほとんどの皆さんが答えてくれます。「飽きずに手術に参加できました!」と、こちらもうれしい感想をいただきました。外科に興味のある学生や研修医には、さらなるステップアップとして、参加した手術のイラストを実際に描いてもらうこともあります。資料や教科書のイラストのトレースでも十分勉強になると思いますが、中には自分でオリジナルの手術イラストを描き上げてしまう人もいて驚かされることもしばしばです。ひとりの外科医が積み上げてきた貴重な手術経験を、自身の手でわかりやすくイラスト化する。そしてそれを共有することで、医療者全体の理解を深める。外科医自身がイラストを描くべき理由の1つとも言えそうですね!今後も、外科医の皆さんがイラストを描きたくなるようなトピックを紹介していきたいと思います。次回もお楽しみに!

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英語で「治療方針が一致している」は?【1分★医療英語】第23回

第23回 英語で「治療方針が一致している」は?Do you have a minute to discuss our mutual patients?(お互いに関わる患者たちについて話し合う時間はありますか?)Yes, let’s talk to make sure that we are on the same page.(はい、同じ方針であることを確認するために話しましょう)《例文1》Everyone should be on the same page before we move on.(先に進む前に、皆が共通認識を持っておく必要があります)《例文2》Am I on the same page with you?(私は、あなたと考えが一致していますか?)《例文3》Let’s run the list to be on the same page.(方針を統一するために、[患者の]リストを順番に確認しましょう)《解説》今回覚えていただきたいのは、この“We are on the same page.”(われわれは同じ方針で考えている)という表現です。“be on the same page”というのは、本の「同じページを見ている」という表現に由来しています。「友人と、同じ本の同じページを見ながら話をしている」というシーンを想像してみてください。本の同じページを見て話をしているのであれば、同じ物事について考えている=同じ方向を見ている、といえそうです。反対に、違うページを見ていれば、きっと自分とは異なることを考えるでしょう。このことから派生して、“be on the same page”は「共通認識を持っている」「同じ方針で考えている」という意味になります。今回の会話例は、主治医とコンサルタントが「治療方針にずれがないか」「同じ見解で考えているか」を確認するために話し合おうという場面です。別の表現としては、“think in a similar way”“have the same understanding”というような言い方もできますが、“be on the same page”をさらりと使えれば、より「こなれた英語」になるでしょう。医療者として、現場のコミュニケーションを円滑に進めるために大切な表現ですので、ぜひ身に付けてください。きっと、英語表現の新たな1ページが開けると思います。講師紹介

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第107回 自宅療養COVID-19患者へのまめな自動通知でパルスオキシメーターいらず?

ペンシルベニア大学が実施した無作為化試験の結果によると、自宅療養する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にまめに通知して病状を把握して必要に応じて看護師等が事に当たる遠隔医療体制が整っていればパルスオキシメーターのような新手の装置の導入なしで入院や死亡を十分に防ぐことができるようです1,2)。2020年3月に同大学医学部(Penn Medicine)は自宅療養COVID-19患者を遠隔通信で見守る仕組みを開始しました。COVID Watchという名称のその取り組みでは呼吸困難の有無と体調はどうかを尋ねる文章通知が2週間のあいだ1日に2回自動配信されます。もし患者の呼吸がより困難になっているようであれば24時間対応チームの担当者から連絡があり3)、救急科(ED)に患者をすぐさま届けるか、遠隔での急診を手配するか、自宅での引き続きの様子見が指示されます。そのようにして入院が必要な悪化患者を容易に見つけ出し、あとは家で安全に過ごしてもらうCOVID Watchには開始以来のべ2万8,500人超の患者が参加しており、その効果は死亡率の低下となって現れています。COVID Watchで世話した患者3,448人とそうでない4,337人を比較したところ、30日間の死亡者数は前者ではわずか3人、後者では12人であり、COVID Watchは死亡率の実に68%低下と関連しました4,5)。COVID Watchでは悪化の兆しを患者の呼吸困難の自覚を頼りに読み取りますが、COVID-19患者が知らぬ間に被る低酸素状態をパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度を頼りに把握して悪化を察知するのはさらに良さそうと考える向きもあります1)。COVID-19患者は呼吸困難などの発症に先立って血中酸素レベル低下を呈するとの報告があり、パルスオキシメーターでその低酸素を感知すれば入院が必要な患者をより早期に発見して急を要する治療をより素早く施して患者転帰を更に改善できるかもしれません。一見理にかなうパルスオキシメーターの使用はどうも抗いがたい説得力があるらしく、自宅療養COVID-19患者の遠隔体調把握の取り組みの多くでその使用が取り入れられています。しかしパルスオキシメーターの効果のほどの裏付けは乏しく、無作為化試験での検討はこれまでありませんでした。そこでペンシルバニア大学の研究者は2020年11月29日から去年2021年2月5日に募ったCOVID-19患者2,000人超をいつも通りのCOVID Watch手順のみの群かそれに加えてパルスオキシメーターも使ってもらう群に割り振って入院や死亡の予防効果を比較する無作為化試験を実施しました。その結果、余分な支出をしてパルスオキシメーターを使うひと手間の価値は残念ながら認められませんでした。試験参加から30日間を入院なしで生きながらえた日数平均の比較が試験の主な目的で、パルスオキシメーター使用群でのその日数はいつも通りのCOVID Watch手順群の29.5日とほぼ同じ29.4日であり、有意差はありませんでした。不安の程度も有意差はなく、パルスオキシメーターのおかげで患者はより安心して過ごせたというわけでもありませんでした。試験は体調の遠隔把握の取り組みに上乗せしてパルスオキシメーターを使った場合を検討したものであるという点を踏まえてその結果を解釈する必要があります。COVID Watchのような遠隔での世話を患者が受けられないのであれば自宅でのパルスオキシメーター使用は妥当な手段の一つとなり得るかもしれません。試験主導医師の一人Krisda Chaiyachati氏は次のように言っています2)。「自動配信の通知を利用する原始的な手段で遠隔対応すれば値が張る装置をあえて使わずとも十分に事足りるようです。自動通知を利用すればより少ない看護師の手配で多数のCOVID-19患者の世話が可能であり、そのような仕組みはCOVID-19に限らず他の病気の患者にも役立てられそうです」。他の病気にはたとえば高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患が含まれます3)。参考1)Lee KC,et al. N Engl J Med. 2022 Apr 6. [Epub ahead of print]2)Pulse oximeters did not change outcomes for patients in COVID-19 monitoring program / Eurekalert3)Remote Monitoring of Patients with Covid-19: Design, implementation, and outcomes of the first 3,000 patients in COVID Watch. NEJM Catalyst. July 21, 20204)Delgado MK, et al.. Ann Intern Med. 2022 Feb;175:179-190. 5)Automated texting system saved lives weekly during first COVID surge / Eurekalert

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MET exon14スキッピング肺がんにおけるsavolitinibの有望な結果/ELCC2022

 MET阻害薬savolitinibの非盲検第II相試験の結果が、欧州肺学会議(ELCC2022)で発表された。savolitinibは中国のMET exon14スキッピング変異を有する肺肉腫様がん(PSC)と非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し有望な成績を示した。 PSC(25例)とNSCLC(45例)全体の全生存期間(OS)中央値は12.5ヵ月という成績であった(追跡期間中央値28.4)。18ヵ月OS率は42%、24ヵ月OS率は31%である。 既治療患者(42例)の未治療患者(28例)のサブグループ解析では、OS中央値はそれぞれ19.4ヵ月と10.9ヵ月、18ヵ月OS率は50%と30%であった。疾患別にみると、PSCとNSCLCのOS中央値はそれぞれ10.6ヵ月と17.3ヵ月、18ヵ月OS率は30%と49%であった。また脳転移例(15例)のOS中央値は17.7ヵ月、18ヵ月OS率は50%という結果であった。 有害事象の発生率は、サブグループ間で一貫していた。Grade3以上の治療関連有害事象は46%の患者で報告され、最も多い項目は末梢浮腫(9%)、AST上昇(13%)、ALT上昇(10%)であった。 発表者のスイス・ジュネーブ大学病院のAlfredo Addeo氏は、「データは有望ではあるが、従来のMET阻害薬と同等であり画期的とはいえない。PSCの場合、比較的若い患者集団であることが多く、依然として患者の生存率の改善に役立つ新しい治療法が必要である」と述べている。

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抗精神病薬使用中の患者に対する心電図モニタリングの実践

 急性期および慢性期の精神症状の管理における抗精神病薬の使用は、不整脈による死亡率の増加と関連しているとされるが、心電図(ECG)モニタリングのタイミングや頻度に関するコンセンサスは十分に得られていない。米国・Zucker School of MedicineのLiron Sinvani氏らは、抗精神病薬を使用している成人患者(とくに入院患者)に対するECGモニタリングの現在の実施状況に関して調査を行った。Journal of Psychiatric Practice誌2022年3月3日号の報告。 2010~15年に8施設の医療機関で、入院中に抗精神病薬で治療された成人患者を対象に、マルチサイト・レトロスペクティブ・チャートレビューを実施した。主要アウトカムは、抗精神病薬使用後のECG実施とした。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中に抗精神病薬で治療された入院患者数は2万6,353例(平均年齢:61.4歳、女性の割合:50.1%、白人の割合:64.8%)であった。・平均併存疾患スコアは1.4、入院期間の中央値は8.3日であった。・対象患者のうち、入院中にECGを実施した患者は60.6%(1万5,977例)、抗精神病薬使用後にECGを実施した患者は41.2%であった(1万865例)。・ECGのフォローアップを実施した患者の入院期間(中央値:11.3日)は、実施しなかった患者の入院期間(中央値:7.0日)と比較し長かった。・ECGのフォローアップ実施率が高かった患者の特徴は以下のとおりであった。 ●心不全の既往歴(オッズ比[OR]:1.17、95%信頼区間[CI]:1.06~1.30、p=0.002) ●抗精神病薬の多剤併用(OR:1.3、95%CI:1.24~1.36、p<0.001) ●その他のQT間隔延長リスクを有する薬剤の使用(OR:1.09、95%CI:1.07~1.1、p<0.001) ●リスペリドンの使用(OR:1.12、95%CI:1.004~1.25、p=0.04) ●QTcの延長(10ms増加当たりのOR:1.02、95%CI:1.01~1.04、p=0.003)・入院前に抗精神病薬を使用していた患者では、ECGのフォローアップを実施する可能性が低かった(OR:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)。 著者らは「本研究では、抗精神病薬を使用している入院患者に対するECGモニタリングは、十分に行われていない可能性が示唆された。急性期治療環境におけるECGモニタリングにより、最もベネフィットが示される患者を特定するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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リブレ(血糖測定器)の保険適用拡大で糖尿病学会が見解/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2017年に発表した「間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM):FreeStyle リブレ(以下「リブレ」と略す)に関する見解」の内容を改訂し、4月1日に第4版を公表した。 今回の改訂は、「2022年4月より、リブレの使用に関する保険請求上の「C150-7」の対象者が『入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの』に拡大されたことを踏まえ、現在の医療環境に合わせた」と趣旨を示している。同時に「リブレは、糖尿病の日常の自己管理に有用であるが、必要時には血糖自己測定(SMBG)を行って血糖値を確認する必要がある。本品が有効かつ安全に用いられるよう、適正な使用方法について示す」としている。リブレ(血糖測定器)保険適用拡大の主な内容や改訂点【1.リブレを使用することが考慮される患者像】〔継続使用が考慮される患者像〕(1)インスリン療法でも血糖変動が大きい患者(2)生活が不規則で血糖が不安定な患者(3)スポーツや肉体作業など活動量が多く血糖が動揺しやすい患者(4)低血糖対策の必要度が高い患者、など〔短期的または間歇的に使用する患者像〕(1)インスリンを新規に開始する患者(2)治療内容の変更(薬剤の追加・変更、薬剤用量の増減など)を行う患者(3)食事や運動などが血糖変動に及ぼす影響を理解させて生活習慣改善に向けて教育的指導を行いたい患者(4)手術や歯科処置などで短期間に血糖を改善すべき患者(5)シックデイの場合、など【2.SMBGとの併用】 SMBGとの併用について、「リブレは糖尿病の日常の自己管理に用いることができる機器であるが、必要に応じてSMBGを行って血糖値を確認しなければならない」としている。 また、SMBGを行う場合として、添付文書に記載されている通り、(1)グルコース値が急速(1分間に2mg/dL以上)に変化している場合(2)センサーにより得られた低血糖または低血糖の可能性について確認する場合(3)リブレの測定結果と一致しない症状がある場合、または測定値の正確性に疑問がある場合 などが挙げられている。【3.保険適用】 2022年4月より、「C150-7」の対象者が「入院中の患者以外の患者であって、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っているもの」に拡大されたことで、インスリン注射を行っているすべての患者に適用される。【4.安全性と有効性の担保】 実際の使用では、「機器自体の特性、データ乖離などの解釈、SMBGが必要な状況の指導、食事・運動療法・薬物治療へのフィードバック、など糖尿病治療の専門的な知識が必要である」と明記。また、「リブレはSMBGと相補的に使用することにより糖尿病患者の血糖管理を向上させる有用なツールであり、日本糖尿病学会はリブレの安全かつ有効な利用を今後も推進する」としている。【5.結果の評価方法について】 結果の評価方法について、とくに「 time in range(TIR)の目標値が、国外のCGMデータに基づいて設定されており、日本人糖尿病患者における適切な目標値とは異なっている可能性がある。今後、日本人におけるCGMデータを用いて、適切な目標値を検証していくことが重要」としている。

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子宮頸がん撲滅に向けて:HPVワクチン接種の意義とは

 2022年3月29日、MSD株式会社は子宮頸がん予防に関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、「子宮頸がん予防の重要性ついて」を近藤 一成氏が、「ワクチン接種を検討する方へ伝えるべきポイント」について勝田 友博氏が説明した。若年女性で多い子宮頸がん 主要先進7ヵ国、G7の中で日本は子宮頸がん罹患率が最も高く、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3,000人が死亡している。2019年の1年間であれば、死亡者のうち571人が25~49歳と若年の女性であった。つまり、子宮頸がん予防の遅れが課題となっている。 「子宮頸がんは人生を変えてしまう疾患である」。子宮頸がんが原因で離婚することになった患者、幼い子供がいながら余命宣告をされた患者など多くの患者を診てきた近藤氏は、子宮頸がんをそう評価する。子宮頸がん撲滅のために 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるものであり、HPVは性交経験のある女性のうち約80%が感染しているとされ、誰にでも起こりえるといえる。実際に、HPVに感染していない子宮頸がんはほとんどないといわれている。 子宮頸がんはHPVに感染した後、軽度異形成から中等度、高度異形成、そして上皮内がんへと進行する。がん検診で早期発見できるのは、高度異形成以上であるため、検診率が80%台になっても罹患率の減少は35%程度しか見込めないと近藤氏は指摘する。さらに、細胞診の感度は53~78%であり、一定の割合で偽陰性が生じることや、最近増加傾向にある子宮頚部腺がんは検出が難しい。そのため、子宮頸がんの予防戦略としては1次予防でHPVワクチン、検診は2次予防である、と近藤氏は訴えた。 実際にHPVワクチンの接種率向上によって、スコットランドでは子宮頸がんやその前段階である異形成が減少したと報告されており、スウェーデンやイングランドにおいても同様の報告がなされている。 「このままでは子宮頸がんは日本の風土病になってしまう」、諸外国の状況と日本の現状を比べて近藤氏はそう語った。HPVワクチンの積極的勧奨が再開された今、早期のHPVワクチン接種が望まれる、と述べて近藤氏は講演を終えた。正確な情報をもとに判断する 続いて、「ワクチン接種を検討する方に伝えたい留意点」と題して勝田 友博氏が講演を行った。 HPVワクチンと聞くと真っ先に思い浮かぶのが、接種後の痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動などの身体機能症状である。これらの身体機能症状がHPVワクチンによるものなのではないか、という点を気にしてHPVワクチンを接種しない選択をした方も多くいることが想像できる。 しかし、HPVワクチンと多様な身体機能症状の関連について調査した名古屋Studyでは、月経量の異常だけが接種群において非接種群よりも頻度が増加していた。また、『青少年における疼痛または運動障害を中心とする多様な症状の受領状況に関する全国疫学調査』によると、HPVワクチンの接種歴がなくても接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈するものが一定数存在することが報告されている。 HPVワクチンに関する情報が溢れている昨今、その中から正確な情報をもとに接種希望者には判断をしてもらう必要がある。とくに医療従事者は正確で透明性の高い情報をわかりやすく提供し、判断の助けをする必要がある、と勝田氏は語った。今後のHPVワクチン接種体制 現在、日本国内で2000年度以降に生まれた女性におけるHPVワクチン接種率がかなり低い状況にある。そのため、キャッチアップ接種の必要性があるとされており、対象は1997~2005年生まれの女性となる。 HPVワクチンは接種年齢が遅れるとワクチンの効果が低下するため、接種機会を得たら速やかに接種することを勝田氏は推奨している。 ワクチン接種の重要性も接種する本人、または保護者に伝わらないと意味がない。将来「知らなかった」で後悔しないよう、ワクチン接種するかどうかを、本人や保護者に正確な情報をもとに判断してもらうためにも、国や医療従事者が正確かつ透明性の高い情報をわかりやすく提供することが重要だ、と勝田氏は述べ、講演を締めくくった。

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