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アルツハイマー病およびMCI患者におけるCOVID-19の臨床アウトカム

 アルツハイマー病や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高血圧などの共通のリスク因子を有しているといわれる。高血圧の治療においては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が頻繁に使用される。米国・ベントリー大学のYing Wang氏らは、アルツハイマー病または軽度認知障害(MCI)の患者おけるCOVID-19に対する、ACEI/ARB使用の影響について調査した。その結果、ARB使用はアルツハイマー病およびMCIの患者におけるCOVID-19発症リスクの低下に有意な影響を及ぼしていることが報告された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2022年4月4日号の報告。 対象は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の検査を行った退役軍人。アルツハイマー病またはMCIを有する場合と認知障害を有さない場合におけるCOVID-19アウトカムを比較するため、古典的スコアと傾向スコアの加重ロジスティック回帰分析を実施し、ACEI/ARB使用の影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病と感染率および死亡率の増加との間に、統計学的に有意な関連が認められた。・MCIは、感染のリスク因子であるとは認められなかった。・MCIを有する患者は、臨床アウトカムが不良であった。・ARBの使用により、アルツハイマー病およびMCIの患者におけるCOVID-19発症リスクの有意な低下が認められたが、ACEIでは認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病またはMCIの患者においてCOVID-19の影響を減少させるためには、既存薬による効果を調査することが非常に重要である」としている。

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世界人口の40%超がコロナ感染、感染率の高い地域は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン変異株(B.1.1.529)の急増が始まるまでに世界に衝撃的な影響を及ぼし、2021年11月14日の時点ですでに38億人の感染または再感染を引き起こし、世界人口の43.9%が少なくとも1回の感染を経験しており、累積感染割合は地域によって大きな差が認められることが、米国・ワシントン大学のRyan M. Barber氏らCOVID-19 Cumulative Infection Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年4月8日号に掲載された。バイアスの影響を受けにくい新たな推定法 研究グループは、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日までの期間における、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の1日の感染者数や累積感染者数、1回以上感染した集団の人口比率に関して、バイアスを最小限に抑えた頑健な推定値をもたらす新たな方法を提示する目的で、190の国と地域のデータを用いて統計解析を行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの助成を受けた)。 解析には、ジョンズ・ホプキンズ大学(米国、メリーランド州、ボルチモア市)と、各国の報告のあった症例、入院、死亡のデータベース、ならびに既報のレビューやSeroTracker、政府機関を介して特定された血清有病割合調査のデータが、主に使用された。 これらのデータについて、報告の遅れなどの既知のバイアスが修正され、SARS-CoV-2に起因する超過死亡率の統計モデルを用いて死亡の過少報告の原因が明らかにされ、血清有病割合調査のデータについて抗体感受性の低下やワクチン接種、SARS-CoV-2エスケープ変異株による再感染の補正が行われた。 次いで、感染-検出比(IDR)、感染-入院比(IHR)、感染-死亡比(IFR)の実証的データベースが構築され、各地域の完全な時系列の値を推定するために地域別および1日ごとのIDR、IHR、IFRを予測する統計モデルが開発され、既報の系統的レビューで正当化されている予測因子の検証が行われた。 次に、1日の感染者数の3つの推定値(症例数÷IDR、入院数÷IHR、死亡数÷IFR)を組み合わせることで、バイアスの影響を受けにくい、より確実な毎日の感染者数の推定値が算出された。さらに、この毎日の感染者数を用いて、累積感染者数と1回以上感染した患者の累積人口比率が推定され、累積感染者数と症例、入院、死亡の修正データを用いて、累積IDR、IHR、IFRの事後推定値が算出された。 最終的に、感染から他者への感染性獲得までの期間と、感染している期間を仮定して、1日の感染者数が、地域別および1日ごとのReffective(実効再生産数:新たな1人の感染者が、その後他者に感染させた感染者数)の当該期間の時系列に変換された。感染者数は南アジアで多く、高所得地域で少ない 2020年4月~2021年10月までに、世界の1日のSARS-CoV-2新規感染者数は300万~1,700万人の間で不規則に変動し、2021年4月中旬に最大となり、とくにインドで急増していた。また、COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日の期間に、SARS-CoV-2感染と再感染を合わせた総感染者数は推定で38億人(95%不確定区間[UI]:34億4,000万~40億8,000万)に達し、世界人口のうち33億9,000万人(43.9%[95%UI:39.9~46.9])がSARS-CoV-2に1回以上感染していた。 累積感染者数は、7つの広域圏のうち南アジアが13億4,000万人(95%UI:12億~14億9,000万)と最も多かったが、累積感染率はサハラ以南のアフリカが100人当たり79.3人で最も高かった。また、高所得地域(日本を含む世界の高所得国を合わせた地域)は感染者数(2億3,900万人、95%UI:2億2,600万~2億5,200万)が最も少なく、東南アジア/東アジア(日本は高所得国に分類され、ここには含まれない)/オセアニアを合わせた地域は感染率(100人当たり13.0人[95%UI:8.4~17.7])が最も低かった。 累積感染割合は国や地域によって大きなばらつきがみられ、70%を超えた国が40ヵ国、20%未満が39ヵ国であった。 日本は、感染者数が645万人(不確定区間:508万~802万)、感染率は100人当たり5.0人(不確定区間:4.0~6.3)、感染割合は5.0%(不確定区間:4.0~6.2)だった。 Reffectiveとtotal immunity(特定地域の特定期間の人口における推定値[週平均])には明確な関連はなく、total immunityが80%の場合でもReffectiveの急速な低下の徴候は観察されず、データ上では明らかな集団免疫の閾値は認められなかった。 著者は、「これらの情報は、ワクチン接種の優先順位の決定など目標を絞った感染予防介入を行う際に有用となる可能性がある。また、今回の統計解析法は、新たに得られたデータに基づいて推定値を迅速に更新し、広く伝達することができるため、時宜にかなったCOVID-19の調査や科学研究、施策への対応においてきわめて重要な役割を担いうるだろう」としている。

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新型コロナ第6波の年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率

新型コロナ第6波における年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率010歳未満240.02006810<重症化率>012%210歳未満00010代00020代00030代00000020代00030代0.030040代0.090.05040代0.090.01050代0.500.11050代0.170.02060代70代1~2回接種3回接種0.470.310.9580代90代以上1.942.150.9760代1.7270代3.836.269.7690代以上810%未接種1~2回接種3回接種0.630.220.311.140.6380代7.623.676<致死率>10代未接種42.001.790.976.633.155.959.33協力の得られた石川県・茨城県・広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日における新型コロナウイルス感染者11万9,109人を対象に年代別・ワクチン接種回数別に、3月31日時点の状況での重症化率と致死率を暫定版として算出厚生労働省:第80回(令和4年4月13日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード事務局提出資料「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」より作図Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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コロナ禍の運動不足や孤独対策、どうするか【コロナ時代の認知症診療】第14回

“couch potato”な生活スタイルが高齢者にも?わが国ではCOVID-19(コロナ)が流行り始めた2020年の春頃から、自粛が進んだ。当初から高齢者では運動不足や活動範囲の制限による心身機能低下のへの注意が喚起されてきた。そして世界中での遷延化とともに、高齢者における活動量や身体機能をコロナ前後で比較し、その低下を報告した研究が相次いでいる。そして最近では、こうした研究のレビュー報告もでてきている。それらのレビューは当然ながら、いずれも運動量、活動範囲、消費エネルギーの低下などを報告している。このような低下が、下肢筋力の減少や、運動能力あるいは心肺機能さらにはバランスにまで影響することは、言うまでもない。新しい観点として、座りがちな生活(sedentary lifestyle)が指摘されている。数十年前から有名になったcouch potatoという英語俗語があった。これはカウチ(寝椅子)にくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごす自分の殻にこもった生活スタイルを意味する。このような状態は本来、青年や中年層のライフスタイルと思われたが、最近ではこれが高齢者でもみられるようだ(というよりカウチ青・中年が老年に至ったのか?)。実際、私の外来に来られる高齢患者のご家族がそうした指摘をされる。意外にローテクな方法が効果的な場合も?高齢者の運動不足解消また、階段の昇降段数も減っている。階段の上りの重要性はともかく、下りも大切だ。降ろした足が下のステップに着く際に、踵に重力がかかることで骨粗鬆症防御の役割も果たすのだそうだ。運動量や身体機能が下がっているのは当然としても、知的機能低下や社会交流の減少も同時に進行している。それだけに、この時代において、いかにして運動量やその関連要因の低下がもたらす弊害に対処するかの策が問題になる。多くの医学関連雑誌や行政から、コロナ禍で身体活動量を増やすことだけでなく、メンタルヘルスや社会交流の促しも視野に入れて具体的な提言などもなされている。現実的には、高齢者のITリテラシーを考慮するならローテクであろうか? たとえば週1回の電話利用、あるいは家庭訪問である。運動の分野ではこうした活動によって運動の実践を促し、転倒の危険性を少なくするように推奨されている。またハイテクならWeb利用だが、ノルウェーから自治体主催の包括的ITサービスの実例なども報告されている1,2)。PCやタブレットを用いて双方向性にコミュニケーションができるシステムである。実はこうしたサービスをわが国でもコロナ以前から実践してきた自治体もある3)。この実装のポイントは、面倒な契約などなく、クラウドや通信をひっくるめたインフラ込みの提供にあると思う。具体的には民生委員が関わるような事柄、たとえば見守りとか緊急連絡などに代表される高齢者への包括的なサービスを行ってきたようだ。世界初「孤独担当大臣」を置く英国での孤独対策コロナ禍により、飛沫感染を避けるためディスタンスは当たり前になった。そしてマスク、フェイスシールドを介してのコミュニケーションとなり、会話しながらの食事はもってのほかとなった。筆者は、見知らぬもの同士がすぐに仲良くなれる秘訣は、飲食を共にすることだと思う。その逆で、「孤食の害」はわかっていてもそうならざるを得ないのが現状である。諸悪の根源は「孤独」にあるとも言える。つまり老年心理学の観点に立つなら、「孤独」とは自分が他者から必要とされているとは思えない状態だと筆者は考えるからである。ところで英国は2018年「孤独担当大臣」を世界で初めて設けた。孤独は、肥満や1日15本の喫煙以上に体に悪く、孤独な人は、そうでない人に比べ、天寿を全うできないリスクが1.5倍に上がるとされる。そして孤独で生じる経済的損失は、約4.8兆円(日本の年間予算100兆円強)に達するとされている。そこで全国各地には、孤独対策に取り組む無数の草の根活動的な慈善団体があって、読書、音楽、スポーツなどのグループを作っている。男性の孤独解消に効果が高いと注目されるものに、mens’shed(メンズ・シェッド:男たちの集い処)がある。ここでは主に定年退職した男性が定期的に集まって、大工仕事などを一緒に行う。たとえばテーブルやベンチを作って公園に置いたり、学校に手作りの遊具を寄付したりする。皆で一緒にものを作ることで一体感が生まれ、そこからコミュニティとの絆が生まれる。さらに感謝の言葉もかけられれば、他者から自分は必要とされていると思え、生き甲斐に通じるのだそうだ。それなら確かに孤独解消につながるだろうと思われる。孤独を和らげ、身体活動や社会交流を促すためのポイントとして、屋内は駄目でも、屋外ならいいのではと考えている。というのは、コロナ禍の今でも大勢の人が集まる場所としてはゴルフ場がある。最近は市場空前の大盛況だと聞く。広々としたグリーンなら、少々喋っても構わないということである。地域でのゲートボールやグランドゴルフはこれに準ずるだろう。古典的ながら根強いのが、ラジオ体操である。基本は朝の6時頃に一定の公園など戸外に集い短時間の運動をしてあいさつ程度の言葉を交わすだけだ。けれども往復のウォーキングも加えると、コロナの時代に最低限の運動量は確保される。太極拳や自彊術であっても同様。小規模ながら、注目すべきものに老人会が主催するような公園等の清掃や環境整備が、また小学生の集団登校の見守り等もある。いずれも戸外で、マスクはしても比較的遠慮なくしゃべれる。また社会的な交流ができる。さらには自分のした仕事に対して、感謝や労いの言葉が向けられるところが重要である。お金ではない、こうした報酬が運動量を促すかもしれない。参考1)Sogstad M, et al.Health Serv Insights. 2020 Jun 8;13:1178632920922221.2)Rostad HM,et al.J Med Internet Res. 2021 Aug 16;23:e22316.3)アイラ株式会社プレスリリース

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手術室あるある【Dr. 中島の 新・徒然草】(423)

四百二十三の段 手術室あるあるもうすぐゴールデンウィーク!休みが近づくのは嬉しいものの、花粉症に悩まされる毎日です。今年はとくに花粉が多いのか、くしゃみが止まりません。なので、天気が良くても外出する気がせず、部屋に籠っております。そんな苦しい花粉症ですが、手術室に行くとピタリと止まります。というのも、手術室の空気には塵がほとんどないからです。自宅の部屋の1立方フィートの空気中の微粒子が、だいたい100万個程度のところ、クラス100の手術室だと、浮遊している微粒子は100個以下なので、花粉症対策には最適。さすがに手術室で鼻を垂れたり涙を流したりしている人はおらず、外科医にとっては安息の地であります。ところが、建物が古いせいなんでしょうね。ウチの手術室は室温調整が困難で、「暑い」と「寒い」の2つしか選択肢がありません。そのような場合には手術用下着の下にTシャツを着るなどしたうえで、「寒い」を選びます。とくに顕微鏡手術のときには、術者の座っている位置に天井からの冷風が直接当たるので、寒いことこの上ありません。微小血管吻合用の10-0の糸も、風にあおられて揺ら揺らしています。それでも諸般の事情で寒い方を選んでいるわけです。ところが、いきなり手術室が暑くなることがあります。「おい、やけに暑いぞ。温度下げてくれよ」と文句が出るのですが、「すみません。隣の部屋にカイザーが入ったんです」と、問答無用といわんばかりの返答。カイザーというのは帝王切開の俗称で、生まれてくる赤ん坊のために、あらかじめ室温を上げておくわけです。手術室の掟として、いかなる場合にもカイザーが最優先、というのがあります。なので我々も、熱帯気候の中で黙々と手術せざるを得ません。そんな中、突如「おぎゃあ、おぎゃあ!」という泣き声が聞こえてきます。隣の部屋にいる我々まで、ホッとするというか、嬉しくなるというか。ということで、全国共通の「手術室あるある」を述べさせていただきました。皆さん、花粉と戦いつつ、ゴールデンウィークを楽しみましょう。最後に1句花粉から 避難の先は 酷寒だ

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研修医が辞めない医局の仕組み【今日から始める「医師の働き方改革」】第10回

第10回 研修医が辞めない医局の仕組み春になると新人がやってきます。「最近の若者はよくわからない」という声はいつの時代も聞かれるものですが、育った環境が違えば価値観も変わります。長崎大学の医療教育開発センター 医師育成キャリア支援室室長の松島 加代子氏に、長崎大学の「メンター・メンティー制度」を紹介してもらいながら、ジェネレーションギャップを乗り越える育成のコツをお伝えします。―長崎大学のメンター・メンティー制度について教えてください私は長崎大学病院で研修医と医局をマッチングする役割を担っていますが、すでに10年以上運用している取り組みに「メンター・メンティー制度」があります。研修医一人ひとりにメンターを付け、研修中の相談に幅広く応じてもらっています。メンターは、医局全体から毎年公募しており、毎年多数の応募があります。年齢は20代から50代まで、診療科も幅広く、育児中の医師もいます。事務局が相手を決めるのではなく、研修医から希望を聞いたうえで、なるべくそれに沿うように決めます。研修医にはメンターから提出してもらった「プロフィールシート」を渡します。これには顔写真、年代、診療科、専門、卒業高校・大学、趣味、メッセージが書かれており、研修医はそれを見て指名する、という仕組みです。メンターのプロフィールシートの例同郷の先輩という理由や、選択する診療科を見据えてという視点でメンターを選ぶ研修医もいます。しっかりサポートを行えるよう、1人のメンターが担当する研修医は1人です。メンターに対しても「メンター研修」を実施し、コーチングの手法などを伝えています。研修医には、各科で指導医も付きますが、短い期間ではどうしても技術指導と医局紹介程度しかできません。初期研修はその後の専門を決める大事な期間でもあるので、メンターが研修期間を通してキャリア形成をサポートするようにしています。―研修医からの評判はどうですか良好です。若手のメンターに経験談を聞いたり、育児中のメンターに時間の使い方を聞いたり、将来自分がどのように働きたいかを意識した相談をしているようです。指導医には言いにくいことを相談しているケースもあると聞きます。全メンターから月に1度、メールで状況を共有してもらっています。私も積極的に返信し、時間を割いてメンターを引き受けてくれている方をサポートしています。おかげでこの取り組みは、ほかの大学病院から紹介してほしいとリクエストが来るようになりました。何でも相談できる身近な先輩の存在は、診療科に配属された後も力になっていると思います。毎年マッチングの苦労はありますが、これからも続けたいと思います。〈解説〉医師のキャリアが多様化し、研修医のキャリアの悩みも多様化しています。医局配属後も、専門医資格を取るか、結婚や子育てとキャリアをどう両立するのかなどの折に、メンター制度でできた先輩との絆が役立つことでしょう。上司・部下のような「タテ」の関係や、同期などの「ヨコ」の関係以外に、他科の先輩という「ナナメ」の関係が、固定化しやすい人間関係を打破します。コーチングの用語に「オートクライン」というものがあり、自分が話した言葉を自分で聞くことによって、自分が考えていたことに気付く、といった意味です。意見が否定されたり、笑われたりしない心理的安全性の高い場で話すことで自己理解が深まり、孤独にならずに働き続けることができます。長崎大学のメンター制度を参考に、若手をサポートする仕組みを検討してはいかがでしょうか。

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第106回 医師少数区域の勤務理由トップは「大学医局の人事」、自発性尊重の制度趣旨に逆行か

医師偏在対策として、医師少数区域の勤務経験者を地域医療支援病院の院長要件にした「医師少数区域経験認定医師」制度。医師不足地域での自発的な勤務の推進を柱の1つにしていたが、厚生労働省が3月30日に公表した調査結果によると、医師少数区域の勤務理由のトップは「大学医局の人事異動」だった。勤務地別のトップは岩手県で、厚生労働省が2019年に設定した医師少数三次医療圏のランキングで最下位の県だ。県内にある岩手医科大学の小川 彰理事長が日本私立医科大学協会(医大協)の会長を務めている体面も、自発的な勤務に逆行する結果に影響を及ぼしてはいないだろうか。2018年の通常国会で成立した改正医療法・医師法により、20年4月から医師少数区域などに6ヵ月以上勤務した医師を、厚労相が評価する認定制度が創設された。制度の創設に合わせ、地域医療支援病院の管理者は、同認定医師でなければならないといったインセンティブも付与し、医師偏在解消効果を狙っている。ちなみに、医師少数区域とは、人口10万対医師数に地域住民や医師の年齢構成などを加味した新たな指標を用いて、医師配置が下位3分の1となる地域のことだ。医師少数三次医療圏ワースト1の岩手県が申請医師数ではトップ厚労省が今回初めて行った「医師少数区域経験認定医師に関する調査」では、2020年10月1日から21年3月31日までに、医師少数区域経験認定医師の申請を行った医師数(申請医師数)は60人で、男性が50人、女性が10人だった。年齢別では、30~39歳が31人と半数以上を占め、次いで29歳以下が15人、50~59歳が7人だった。認定に必要な業務を行った勤務地は、岩手県が37人と申請医師数の半数を占めた。次いで香川県が12人、東京都が7人だった。申請医師数を出身地別で見たところ、認定に必要な業務を行った勤務地別の医師数と同様の傾向があり、岩手県が32人と最も多く、次いで香川県が9人、東京都が6人。「出身地」と「認定業務勤務地」が同じ都道府県だった人は、申請医師数の80%に当たる48人だった。岩手県は、厚生労働省が2019年に設定した医師少数三次医療圏のランキングで47位と最下位。一方、東京都は1位で、香川県は15位だった。この新たな医師偏在指標は対人口10万人医師数をベースに、供給では医師の労働時間、需要では受療率などを勘案したもので、人数で表される。東京都は329.0人、香川県は247.8人、岩手県は169.3人だった。勤務理由では「地域医療への貢献のため」は下位医師少数区域などにある病院に勤務した理由(複数回答可)で最も多かったのは「大学医局の人事異動」(28回答)。次いで「一定期間、地域で勤務することを要件とした奨学金貸与の義務履行」(15回答)、「医師少数区域などでの勤務経験を得たかったから」(11回答)などが続いた。一方、「地域医療への貢献のため」は4回答にとどまった。「大学医局の人事異動」に関していえば、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」と下部組織の「医師需給分科会」が2017年12月21日に行った「第2次中間取りまとめ」では、「若手の医師のみが、その意思に反して、強制的に医師の少ない地域に行かされるような仕組みであってはならない」と記されている。また、厚労省医事課の担当者は同日、認定医師に関して「強制的に医師少数区域に行かされるような仕組みにしてはいけない」と説明している。「大学医局の人事異動」は医師の自発的な勤務を尊重する制度の趣旨に反しているのではないか。岩手医科大理事長が医大協会長という体面が「大学医局の人事異動」に影響?とくに前述のランクワースト1の岩手県にある岩手医科大学では、理事長の小川 彰氏が医大協の会長を務めている。小川氏の体面もあり、「大学医局の人事異動」が行われ、自発的な勤務に逆行する結果に影響を及ぼしてはいないだろうか。話を認定医師調査に戻す。認定医師の申請理由(複数回答可)については、「国において、認定医個人などを対象とする経済的インセンティブの創設が検討されているから」(46回答)、「医療法上、地域医療支援病院の管理者になるためには、認定を受けなければならないから」(16回答)、「『医師少数区域経験認定医師』を広告に用いることができるから」(14回答)と現実的な理由が並ぶ。申請医師の従事する診療科名は「内科など複数診療科」(11回答)が最多だった。次いで「消化器内科(胃腸内科)」(7回答)、「循環器内科」・「眼科」(6回答)、「内科」(5回答)が続いた。申請医師の主たる診療科は「内科」(12回答)が最も多く、次いで「消化器内科(胃腸内科)」(8回答)、「循環器内科」・「眼科」(6回答)、「整形外科」(5回答)が続いた。厚労省は今後、同調査を毎年実施していくというが、制度の趣旨に反する結果が出ているようなら、申請医師や大学医学部などに聞き取り調査をする必要があるのではないだろうか。

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睡眠、不安、ビタミンDと周産期うつ病リスク

 周産期うつ病の頻度は高く、死亡率に影響を及ぼす疾患である。米国・サウスカロライナ医科大学のCourtney E. King氏らは、周産期うつ病リスクに影響を及ぼす修正可能な心理学的および生物学的因子を特定するため、検討を行った。その結果、妊娠初期の睡眠、不安および潜在的なビタミンD不足は、周産期うつ病リスクの増加と関連していることが示唆された。Reproductive Sciences誌オンライン版2022年3月29日号の報告。睡眠障害や不安症状、ビタミンD不足とうつ症状スコア 対象は、妊娠中の女性105人。妊娠8~12週および24~28週、産後6~8週および10~12週に、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した。評価尺度として、うつ症状にはエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)、不安症状には全般不安症スコア(GAD)、睡眠障害にはピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。 妊娠中の女性105人にうつ症状、不安症状、睡眠障害の評価と血液検査を実施した主な結果は以下のとおり。・研究期間中にうつ病基準を満たした女性は、105例中35例(33.3%)であった。・妊娠8~12週にPSQIスコア(OR:1.17、95%CI:1.04~1.33)またはGADスコア(OR:1.33、95%CI:1.18~1.48)の上昇が認められた女性は、その後の評価でうつ症状スコアが上昇する可能性が高かった。・ビタミンDレベルが20ng/L以下の女性は、フォローアップ期間中にうつ症状スコアが上昇する可能性が高かったが、統計学的な有意差は認められなかった(OR:2.40、95%CI:0.92~6.27)。・産後の評価への参加率は低かった。・本研究の限界として、うつ症状、不安症状、睡眠障害の評価には、自己報告尺度を用いた点が挙げられる。 著者らは「妊娠中の睡眠や不安の問題を軽減させ、適切なビタミンDレベルを確保することを目的とした介入は、周産期うつ病リスクを減少させるために重要である」としている。

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BRCA1/2遺伝子の病的バリアント、新たに3がん種との関連が明らかに/JAMA Oncol

 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんの発症リスク上昇に関与することが知られている。今回、日本人集団における世界最大規模のがん種横断的ゲノム解析が実施され、BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは上記4がん種のほかに胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることが示唆された。理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢 幸秀氏らによるJAMA Oncology誌オンライン版2022年4月14日号への報告。病的バリアント保持率を各がん種の患者と対照者間で比較 研究グループは、2003年4月~2018年3月にバイオバンク・ジャパンに登録されたデータを用いて、胆道がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮体がん、食道がん、胃がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、腎がんの14がん種における計10万3,261人(患者群6万5,108人、対照群3万8,153人)について、BRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施。データの解析は、2019年8月~2021年10月に行われた。 ゲノム解析はターゲットシークエンス法を用いて、BRCA1/2遺伝子のタンパク質への翻訳に影響が大きいとされる翻訳領域およびその周辺2塩基の合計16,111塩基の配列を調査。病的バリアントと各がん種との関連は、各がん種の患者と対照者との間の病的バリアント保持率を比較することで評価した。 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントと各がん種との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・平均年齢は患者群(診断時)が64.1歳、対照群(登録時)が61.8歳。それぞれ女性が42.3%、46.9%だった。・1,810個の遺伝的バリアントが同定され、さらに、ENIGMAコンソーシアムの手法を用いて、これらの遺伝的バリアントから315個の病的バリアントが同定された。・オッズ比(OR)>4.0(本研究における統計学的基準:p<1×10-4)を満たしたのは、BRCA1遺伝子については、すでに病的バリアントと疾患リスクとの関連が知られている女性乳がん(OR:16.1)、卵巣がん(OR:75.6)、膵がん(OR:12.6)に加えて、胃がん(OR:5.2、95%信頼区間[CI]:2.6~10.5)、胆道がん(OR:17.4、95%CI:5.8~51.9)で関連が認められた。BRCA2遺伝子については、女性乳がん(OR:10.9)、男性乳がん(OR:67.9)、卵巣がん(OR:11.3)、膵がん(OR:10.7)、前立腺がん(OR:4.0)に加えて、胃がん(OR:4.7、95%CI:3.1~7.1)、食道がん(OR:5.6、95%CI:2.9~11.0)で病的バリアントとの関連が認められた。・なお、p<0.05の基準までみると、BRCA1遺伝子については肺がんとリンパ腫、BRCA2遺伝子については子宮頸がん、子宮体がん、肝がん、腎がんと病的バリアントとの関連が認められた。

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18歳未満のCOVID-19関連MIS-C、絶対リスクは?/BMJ

 デンマークの18歳未満の小児/青少年において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の有害疾患の絶対リスクは概して低いが、RT-PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染者の0.05%(32/7万666例)に小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が認められ、さらに感染者における急性期後の一般開業医受診割合がわずかに増加していることから、症状が持続している可能性があることを、南デンマーク大学のHelene Kildegaard氏らが報告した。これまで、小児/青少年のSARS-CoV-2感染による入院、集中治療室(ICU)入室、死亡および免疫介在性合併症の発生率は研究によって異なっていた。なお、本研究では18歳未満におけるBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の有効性についても検討され、デルタ株流行期において感染リスク低減に有効であることが示されている。BMJ誌2022年4月11日号掲載の報告。デンマークの18歳未満の約115万人について調査 研究グループは、デンマークの小児/青少年におけるSARS-CoV-2感染に続発する急性期および急性期後の有害疾患リスクを評価するとともに、BNT162b2ワクチンの有効性を評価する目的で、デンマークの患者、処方、健康保険およびワクチン接種に関する全国登録を用いたコホート研究を実施した。 対象は、2021年10月1日までにSARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けたか、または同日以前にBNT162b2ワクチンの接種を受け、かつ同年10月31日以前に追跡調査を完了した18歳未満のすべての小児/青少年である。 評価項目は、入院(12時間以上)、ICU入室、MIS-C・心筋炎・神経免疫疾患などの重篤な合併症、および検査後6ヵ月までの薬物治療開始と医療機関受診のリスクとした。また、ワクチンの有効性について、ワクチン接種者ならびにマッチングした非接種者の、1回目接種20日後ならびに2回目接種60日後のリスク比を算出し、1-リスク比として評価した。 2021年10月1日時点で、デンマークにおける18歳未満の小児/青少年は115万1,849人であった。心筋炎や脳炎は認められず SARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けた小児/青少年は99万1,682例で、このうち7万4,611例(7.5%)が陽性であった。感染判明後30日以内の入院の絶対リスクは0.49%(361/7万4,350例、95%信頼区間[CI]:0.44~0.54)、ICU入室の絶対リスクは0.01%(10/7万3,187例、0.01~0.03)であった。 また、感染判明後2ヵ月以内のMIS-Cの絶対リスクは0.05%(32/7万666例、95%CI:0.03~0.06)であったが、心筋炎や脳炎は認められず、ギランバレー症候群は5例未満であった。急性期後(感染後1~6ヵ月)においてSARS-CoV-2感染者は、調査期間中にSARS-CoV-2検査を受けた全小児/青少年から抽出した参照コホートと比較し、一般開業医の受診が1.08倍(95%CI:1.06~1.10)増加することが示された。 BNT162b2ワクチンの接種を受けた小児/青少年は全体で27万8,649例であった。デルタ株が優勢な時期において、ワクチン未接種者と比較し接種者のワクチン有効率は、1回目接種20日後(22万9,799例)で62%(95%CI:59~65)、2回目接種60日後(17万5,176例)で93%(92~94)であった。

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モデルナ追加接種用2価ワクチン候補、2倍以上の中和抗体価を確認

 米国・モデルナ社は4月19日付のプレスリリースで、同社初の追加接種用2価ワクチン候補(mRNA-1273.211)が、オミクロン株を含むすべての変異株に対し、同社の承認済みのワクチン(mRNA-1273、商品名:スパイクバックス筋注)と比較して優れた中和抗体価を示したことを発表した。ワクチン効果の優越性は、追加接種の6ヵ月後も維持されたという。なお、mRNA-1273.211の忍容性および安全性は、承認済みのmRNA-1273追加接種(50μg)とほぼ同様であった。本研究は、査読前論文のオンライン・アーカイブである「Research Square」※2022年4月15日号1)にも掲載された。※今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり 本試験は、mRNA-1273.211の単回ブースター投与による反応原性および免疫原性を評価する非盲検第II/III相臨床試験で、少なくとも6ヵ月前にmRNA-1273の2回投与によるプライマリーシリーズを完了した米国の18歳以上の被験者896例を対象に、ワクチン候補mRNA-1273.211を50μg追加接種した群(300例、平均年齢50.7歳)と、100μg追加接種した群(596例、平均年齢53.0歳)を検証した。 主な結果は以下のとおり。・承認済みのmRNA-1273を50μg追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後で幾何平均抗体価(GMT):630.5(95%CI:520.0~764.9)、接種181日後でGMT:145.6(95%CI:118.1~179.5)となり、オミクロン株への強力な中和抗体反応が得られたものの、接種後6ヵ月で効果が減少した。・新たな2価ワクチン候補のmRNA-1273.211を追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後でGMT:1389.8(95%CI:1212.1~1593.4)、接種181日後でGMT:312.9(95%CI:269.5~363.4)となった。・mRNA-1273.211は、既存のmRNA-1273に比べ、中和抗体価が1ヵ月時点での幾何平均比(GMR):2.20(95%CI:1.74~2.79)、および6ヵ月時点でGMR:2.15(95%CI:1.66~2.78)となり、2倍以上増加したことが確認された。・mRNA-1273.211の50μg投与後の副作用の発現率と比較して、100μg投与後の副作用の発現率が高いことが確認されたが、忍容性はおおむね良好で、50μg投与後に非自発的に報告された副反応および自発的に報告された有害事象の発現率は、mRNA-1273の50μg接種と同程度だった。 同社は現在、オミクロン株の特異的な変異に対応した最新の追加接種用2価ワクチン(mRNA-1273.214)も第II/III相臨床試験で評価中。2022年秋の北半球用追加接種ワクチンの選定に向けて、試験の初期データが第2四半期中に得られる予定としている。 追加接種用2価ワクチン候補のmRNA-1273.211は、ベータ株に基づく、9個のスパイク蛋白の変異(うち4つはオミクロン株に存在する変異)に、mRNA-1273.214は、オミクロン株に基づく、32個のスパイク蛋白の変異に、それぞれ対応しているという。(ケアネット 古賀 公子)1)Safety, Immunogenicity and Antibody Persistence of a Bivalent Beta-Containing Booster Vaccine. Research Square. 15 Apr, 2022.

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長生きをしたい人、とりわけ認知症がない状態で長生きをしたい人へ(解説:岡村毅氏)

 老若男女が知りたいことにはっきりと答えてくれる優等生的な論文である。遺伝子は変えようがないが生活習慣は変えられる。どう変えると、認知症がない状態で長生きができるかを調べ、驚きの結果を報告している。 変えうる生活習慣とは、(1)食べ物、(2)知的活動、(3)身体活動、(4)喫煙、(5)飲酒である。単純化して見てみよう。 食べ物は当然マインド食である。MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)食とは、この論文のラストオーサーのラッシュ大学の博士らがシカゴで開発した有名な食事法であるからここでも使われている。野菜や果実や豆腐が推奨される。上位40%が○(丸)となる。 知的活動は読書、美術館、カードゲーム、ボードゲーム、クロスワード、パズル等のことである。こちらも上位40%が○となる。 身体活動はウォーキング、ガーデニング、体操、自転車、水泳である。週150分以上で○となる。1日30分弱でよいのである。 喫煙については、今吸っていなければ○だ。 飲酒は、1日当たり男性は30g以下、女性は15g以下が○だ。缶ビールなら2本あるいは1本である。 男性の場合、65歳の時に○が4個以上つくと、1個以下の人よりも5.7年長生きできる。さらにアルツハイマー型認知症を持っている期間は、○が4個以上だと1.4年、1個以下だと2.1年というわけだ。 女性の場合、65歳の時に○が4個以上つくと、1個以下の人よりも3.1年長生きできる。さらにアルツハイマー型認知症を持っている期間は、○が4個以上だと2.6年、1個以下だと4.1年である。 野菜を食べ、頭を適度に使い、運動を適度にし、酒は控え、タバコは吸わないと、なんと5年前後長生きできるのである。またアルツハイマー型認知症を持たずに1~2年くらい過ごせる。 どうであろうか? 驚いた人はいましたか? まず「そんなこと知ってるよ」「もうやってるよ」という反応が多そうだが、こういう当たり前のことを科学的に検証する論文は、良い論文である。私たちは思い込みや先入観に支配されているのだから、エビデンスをきちんと出すことは理性的になるための第一歩だ。 次にこの論文においても、長生きによって結局認知症になっていることにも注目しよう。人間は(身体疾患で死なずに)長生きすればいつか必ず認知症になる。それはわれわれがいつか死ぬことと同じくらい自明である。認知症になっても失敗だとか思わないこと。認知症の専門家として言わせてもらうと、なることを推奨しているわけでもないし、なったら絶望する必要もない。人生は続く、それだけだ。 マルチステージライフなどといわれて久しい。職業も20年ごとに変わる時代が来るのかもしれない。であれば、生活習慣も変えてもいいのかもしれない。別にいつ変えてもよいのだろうが、保守的にみると20歳ごろに社会人になるとすると、40歳ごろ、そして60~65歳ごろはひとつの区切りかもしれない。これを読んでいる40歳以上の皆さんの多くは、20歳ごろに確立した生活習慣をおそらく続けているのだと思うが、そろそろ変えてはいかがか(もちろん○を増やす方向で)。40歳未満の皆さんは、40歳ごろに変えることを今から計画してはどうだろうか? 人々がそんなふうに考えることができたら、この論文のもくろみは十分に果たされている。

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プレゼンテーションでばれる医師の能力!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第47回

第47回 プレゼンテーションでばれる医師の能力!4月になりました。新人が社会人としての第一歩を踏み出す時期です。病院でも初々しい新卒の医師が、期待と不安でドキドキしながら仲間に加わりました。彼らの姿は何かぎこちなく、白衣を「着ている」というよりは「着させられている」といった様子です。不思議なことに、これが一年も経つと白衣姿も板についてくるのです。「板につく」は、初々しかった新人が必要なスキルを習得し経験を経て、一人前になった姿を評価するときに使う慣用句です。けっして蒲鉾のように板にくっついていること意味する言葉ではありません。料理人の、板前さんにも関係ありません。語源は舞台用語です。歌舞伎などでは、幕が開いた時にすでに人気役者が舞台上にいる場合があります。これを「板付き」というそうです。熟達した役者の調和した存在感と圧巻の演技に観客は引き込まれます。そこから、経験を積んで動作や態度が地位や職業などにしっくり合う様を「板につく」というそうです。研修医も仕事に慣れてくると、不思議と白衣姿も馴染み違和感がなくなってきます。白衣をひるがえしながら階段を駆け上がる姿も様になってきます。上司や先輩から「板についてきたな」と言われたら、やっと認めてもらえたのだと思ってよいでしょう。この言葉の注意点は、「板につく」は褒め言葉ですが、年下に使うべき慣用句で目上の人に使ってはいけないことです。皆さんも、「板につく」を使う場合は、年下限定の褒め言葉としてください。新人の医師が習得すべき課題は、診察の仕方・処方箋の出し方・カルテ記載の仕方・患者対応の仕方に始まり、数多くあります。これらのスキルを身に着けるなかで、外見だけでなく振る舞いも板についてくるのです。この初期研修の過程では上級医からインプットされ、教え込まれることが多いと思います。しかしながら、インプットされるだけでは不十分で、アウトプットを意識していくことが成長の鍵となります。研修医にとって最も重要なアウトプットはプレゼンテーション(プレゼン)です。プレゼンとは、患者の情報を医療従事者の間で確立された医療言語を用いて、あたかも目の前にその患者さんがいるかのように他の医療従事者に伝える技術です。「医師の力量は、プレゼンテーションでわかる」といわれます。その通りです。プレゼンは、診療のあらゆる場面で必要とされます。カンファレンスの場だけではありません。研修医にとっては、回診・コンサルテーション・申し送りなどプレゼンをする場面が多々あります。病院での日常診療だけでなく、学会発表でのプレゼンも重要です。指導者側も、場に即したプレゼンテーションができるようになることは臨床能力アップの早道だと考えますので、研修医にできるだけプレゼンテーションの機会を設けるようにします。毎日の繰り返してのプレゼンは苦痛に感じるかもしれません。研修医の諸君はプレゼンを「させられる」とか「しなければならない」という感覚ではなく、自分の能力を試しながら臨床力が上がるチャンスだと捉えていただきたいです。プレゼンテーションの語源は、ご存じのようにプレゼントつまり贈り物です。聴き手に必要な患者情報を贈り届けることがプレゼンの基本です。しかし、プレゼンの機会それ自体が、成長への糧を、聴き手からプレゼントしてもらっていると考えてほしいものです。プレゼンテーションを行う側が、実は贈り物の受け手であるという状況に似ているのが猫を飼うことです。「猫に小判」とは、猫に小判を与えてもその価値を知らない猫にとっては何の意味もないことから、どんな立派なものでも、価値がわからない者にとっては、値打ちもないものであるという意味のことわざです。自分にとって、「猫に小判」の解釈は少し異なります。猫を飼うことによって、猫は人に言いようのない幸福を与え届けてくれます。猫を飼うことは小判を与えられるかのような価値が付随することを意味します。まさに、「猫に小判」です。それは、招き猫の置物が小判を持っていることからも理解していただけると思います。招き猫が抱える小判の金額は、「千両」「万両」だったものがいつの間にか「百万両」「千万両」となり、ついには「億万両」にまで跳ね上がっているそうです。猫ブームと共に小判もインフレ傾向のようです。またもや、猫自慢の意味不明の話に展開してしまいました。医師として第一歩を踏み出した研修医諸君が、その初心を忘れずに立派な医師に成長してくださることを願っております。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ALK」【肺がんインタビュー】 第80回

第80回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ALK」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは【知って得する!?医療略語】第10回

第10回 熱中症で発症するかも?特発性後天性無汗症AIGAとは汗をかかない病気があるって本当ですか?そうなんです。『無汗症』という疾患があります。実臨床では「不明熱の原因」「熱中症の隠れたリスクの可能性」として指摘されています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】AIGA【日本語】特発性後天性全身性無汗症【英字】acquired idiopathic generalized anhidrosis【分野】脳神経【診療科】皮膚科【関連】特発性分節性無汗症・特発性純粋発汗不全症(IPSF)・自己免疫性自律神経障害薬剤性無汗症・二次性無汗症・乏汗症・神経障害性無汗症実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。不明熱の鑑別疾患リストに無汗症が報告されています。原因不明の微熱で病院を転々とする方で、全身状態は良好、炎症マーカーはすべて陰性、感染徴候はなく膠原病や悪性疾患を疑う所見にも乏しいとき、無汗症は想起されるべき疾患の1つかもしれません。無汗症には先天性と後天性がありますが、『特発性後天性全身性無汗症(AIGA)』は近年、難病指定されています(指定難病163)。無汗症では、気温が高くても汗をかかないため、熱の放散が障害され、体温調節ができずに容易に熱中症の症状を来たすとされています。新型コロナのためマスクをすることが当たり前の今日、マスクで呼気による体温調整が阻害されています。そのため、マスク装着時の体温調整は、非装着時と比較して、より発汗による体温調整に依存している可能性があり、全身性の無汗症の方は、例年以上に体温調節が難しく容易に熱中症を来たす可能性があります。無汗症の中でも、AIGAはステロイドパルスが有効だったとする論文報告が散見され、適切に診断すれば、患者さんのQOLを改善できる可能性があります。無汗症を見逃さないことがより重要になってくるかもしれません。筆者自身の診療シーンを振り返ると、救急外来に熱中症疑いで繰り返し搬送される患者さんの中に、脱水がないのにまったく汗をかいておらず、皮膚が乾燥している方を時々見かけていました。ご本人に聞いても、発汗することなく、急に熱中症の症状を来たしたと訴えていました。そのような患者さんの中に無汗症の方が混在していたのかもしれません。気温が急速に上昇してくるこれからの季節に注意したい疾患です。1)坂野翔子ほか. 日内会誌. 2018;107:p564-570.2)難病医学研究財団/難病情報センター:特発性後天性全身性無汗症 診断・治療指針3)柳下武士. 日皮膚会誌. 2021;131:p35-41.4)中根俊成. 臨床神経. 2019;59:p783-790.

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第106回 新しい公立病院の経営ガイドライン、「リストラ色」薄まるも総務省の本音は再編・統合推進か

市立大津市民病院、京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」「第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、「パワハラなし」、理事長引責辞任でひとまず幕引き」「第104回 パワハラ事件に大甘の医療界、旭川医大、大津市民の幕引きの背後に感じた“バーター”の存在」で伝えてきた市立大津市民病院(30診療科、401床)の大量退職事件に再び動きがありました。4月18日、済生会滋賀県病院(栗東市)の院長補佐だった日野 明彦氏(京都府立医大 脳神経外科学教室出身)が新院長に就任したのですが、その翌日、新たに脳神経内科4人、麻酔科2人、放射線科の非常勤医師1人の計7人が年度内に退職する意向を持っていることが明らかになったのです。これで同病院在籍の京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職見込みとなりました(6人はすでに退職)。病院の診療体制としてはボロボロと言えます。4月25日のびわこ放送等の報道によれば、同日、大津市の佐藤 健司市長は定例会見で病院の設置者として改めて謝罪し、「今後も医師確保を含めた法人運営の後押しを全力で進めていく」と説明したとのことです。また、佐藤市長は、4月15日に滋賀医科大学を訪れて市立大津市民病院の運営立て直しへの協力を求めたことも明らかにしています。大津市には市立大津市民病院のほかに、日本赤十字社・大津赤十字病院(37診療科、684床)という京都大学系の巨大公的病院があり、患者獲得競争を繰り広げてきました。仮に今回の事件をきっかけに、市立大津市民病院の人気が落ち、ジリ貧になっていくとしたら、2病院の再編・統合話が出てくる可能性もゼロではないと思います。総務省が「公立病院経営強化ガイドライン」公表ということで、今回は総務省が3月29日に公表した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(令和4年3月29日 総財準第72号 総務省自治財政局長通知)について書いてみたいと思います。公立病院、公的病院を巡っては、新型コロナ感染症流行拡大前に、厚生労働省から436病院の“リストラ”リストが公表され、全国の公立・公的病院関係者を青ざめさせました(「第23回 実は病院経営に詳しい菅氏。総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと(前編)」参照)。コロナの感染拡大もあって、このリストラ計画は中断したままでした。しかし、今回の新ガイドライン公表と合わせる形で、厚労省も第8次医療計画(2024年度から実施)の策定作業と並行して、公立・公的病院だけでなく民間病院も含めた機能の再検証を行うことを都道府県に求めています。再び各地で再編・統合の議論が活発化するのは必至でしょう。3回目のガイドライン、「改革」の文言がなくなり「経営強化」に公立病院を管轄する総務省が、その経営改革に関するガイドラインを公表するのは2007年12月、2015年3月に続いて3回目です。ガイドライン作成の背景には、全国の公立病院の多くは経営状況が非常に悪く、医療提供体制の維持が極めて厳しい状況にあったことがありました。これまでの2回は「公立病院改革ガイドライン」でしたが、今回は「改革」の文言がなくなり、「公立病院経営強化」とタイトルが微妙に変わっています。新型コロナ感染症対応で、地域の公立病院の必要性が再認識されたことも影響したと考えられます。旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色は薄まる旧ガイドライン(2015年版)は「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」と「再編・ネットワーク化」に力点が置かれていました。それに対し、新ガイドラインは個々の病院の「経営力強化」「機能強化」に力点が置かれています。新ガイドラインは「公立病院経営強化の基本的な考え方」として、「公立病院が直面する様々な課題のほとんどは、医師・看護師等の不足・偏在や人口減少・少子高齢化に伴う医療需要の変化に起因するものである。これらの課題に対応し、持続可能な地域医療提供体制を確保するためには、医師確保等を進めつつ、限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限効率的に活用するという視点を最も重視し、新興感染症の感染拡大時等の対応という視点も持って、公立病院の経営を強化していくことが重要」と述べています。そして、その経営強化のためには、「地域の中で各公立病院が担うべき役割・機能を改めて見直し、明確化・最適化した上で、病院間の連携を強化する『機能分化・連携強化』を進めていくことが必要である。特に、機能分化・連携強化を通じて、中核的医療を行う基幹病院に急性期機能を集約し医師・看護師等を確保するとともに、基幹病院から不採算地区病院をはじめとする基幹病院以外の病院への医師・看護師等の派遣等の連携を強化していくことが重要である。その際、公立病院間の連携のみならず、公的病院、民間病院との連携のほか、かかりつけ医機能を担っている診療所等との連携強化も重要である」と、公民の区別なく地域において「機能分化・連携強化」を進める必要性を説いています。内容的にも新型コロナウイルス感染症対策において地域の公立病院が果たした役割などを勘案し、旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色が薄まった印象です。「都道府県の役割・責任強化」もより強調こうした前提のもと、新ガイドラインは2022~23年度中に「経営強化プラン」を策定することを求めています。すでに「自主的に改革プランを策定している病院」などでも、新ガイドラインで要請されている部分と比べて「不足」があれば、その分を追加策定する必要があるとし、また、すでに「従前の改革プランに基づいて再編やネットワーク化、経営形態見直しに取り組んでいる病院」でも、現在の取り組み状況や成果を検証し、さらなる経営力強化のために新ガイドラインに沿った経営強化プランを策定するよう求めています。旧ガイドラインで初めて盛り込まれた、病院の再編・統合に当たっての「都道府県の役割・責任強化」についても、より強調される内容となりました。「都道府県が、市町村のプラン策定や公立病院の施設の新設・建替等にあたり、地域医療構想との整合性等について積極的に助言すること」や「医療資源が比較的充実した都道府県立病院等が、中小規模の公立病院等との連携・支援を強化していくことが重要」としています。ドラスティックな再編・ネットワーク化の事例も紹介総務省は4月20日、この新ガイドラインの説明会をオンラインで開催、その中で最新の「公立病院の経営状況」を明らかにしています。それによると、853病院全体での2020年度の経常収支は1,251億円の黒字でした。コロナ関連補助金により980億円の赤字だった前年度(857病院)から大きく改善したものの、本業に当たる医業収支ベースでは6,010億円と大幅な赤字でした。また、病床規模別の経常収支は「500床以上」(95病院)が584億円の黒字だったのに対し、「100床未満」(255病院)では1億円の黒字に留まったそうです。コロナ対応をしていた病院でも1億円程度の黒字でしかないということは、コロナ後は再び大きな赤字転落になることを意味します。新ガイドラインの最後には、資料として「平成27年度から令和2年度までの間に実施済み又は実施中の再編・ネットワーク化の事例」が多数掲載されています。公立、公的、民間併せたさまざまな再編(統合、病床削減、病院の診療所化等)のケースは、どれもドラスティックです。地方の病院で働く方は、この資料だけも目を通しておくといいと思います。こうした事例を最後に掲載していることからも、「再編(リストラ)」色が薄まった新ガイドラインですが、「地域の病院の再編・統合に向けて、都道府県は今まで以上に積極介入をして欲しい」というのが総務省の本音と言えるでしょう。参考1)公立病院経営強化ガイドライン/総務省

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不眠症治療に対するプライマリケア患者の好み

 睡眠障害は、プライマリケアにおいて一般的に認められる。主な治療オプションには、不眠症に対する薬物療法および認知行動療法が挙げられる。そして、ベストプラクティス・ガイドラインでは、治療に対する協調的意思決定アプローチが推奨されている。米国・バージニア・コモンウェルス大学のElliottnell Perez氏らは、プライマリケア患者の人口統計学的および臨床的特徴に基づいた不眠症治療に対する好みの違いについて、検討を行った。Clinical Therapeutics誌オンライン版2022年3月28日号の報告。重度の不眠症患者では認知行動療法を好んだ割合が有意に高かった 大学医療センターおよび地域のクリニックより抽出された200例(平均年齢:54.92±12.48歳)を対象に、不眠症、うつ病、不安症、不眠症治療に対する好みについて、簡易アンケートを実施した。不眠症は不眠症重症度質問票、うつ病はPHQ-2、不安症はGAD-2を用いて評価した。群間の不眠症治療に対する好みの有意差を検出するためχ2分析を用いた。 不眠症治療に対する好みについて簡易アンケートを実施した主な結果は以下のとおり。・薬物療法を好んだ患者は46.5%、認知行動療法を好んだ患者は56.0%であった(評価は排他的ではない)。・重度の不眠症患者では、認知行動療法を好んだ割合が有意に高かった(好ましい:15.2%、好ましくない:4.5%、p=0.002)。・不安症状が強い患者では、薬物療法を好んだ割合が高かった(57.3% vs.42.7%、p=0.017)。・うつ病患者の中で、うつ症状の強い患者では、認知行動療法(66.7% vs.33.3%、p=0.012)および薬物療法(56.8% vs.43.2%、p=0.016)を好んだ割合が最も高かった。・治療に対する好みの違いは、認知行動療法において年齢のみで認められた(p=0.008)。・治療を好む割合は、51歳以下の患者で最も高かった(67.2% vs.32.8%)。 著者らは「プライマリケア患者は、不眠症治療に対する認知行動療法および薬物療法を好むことがわかった。また、メンタルヘルスや睡眠の状態が悪化するほど、患者は認知行動療法を好む傾向が示唆された。患者の治療に対する好みを理解することは、意思決定の共有の促進につながり、治療満足度や治療への関与の向上に寄与すると考えられる」としている。

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医師が考える適正年収、満足度の目安は2千万円超え?/1,000人アンケート

 ケアネットでは、3月10日(木)に会員医師1,000人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で、自身の業務内容・仕事量に見合うと思う適正年収について尋ねたところ、実際の年収が2,000万円未満の医師(76%)では、適正年収は「現状より高い金額」が妥当だという回答が過半数を占めた。実年収が2,000万円以上の医師(24%)は、「現状と同額」または「現状より低い金額」という回答が6割以上を占めた。全体の35%が、自身の考える適正年収は2000万円以上と回答した。年収帯2,000~2,500万円が実年収、適正年収ともに最多 今回のアンケートでは、実年収の年収帯で最も多いのが2,000~2,500万円(15%)であるのに対して、自身の考える適正年収で最も回答数が多かった年収帯も2,000~2,500万円(19%)であった。 年代別では、35歳以下では1,000~1,200万円と1,400~1,600万円という回答がともに16%で最も多かったが、36歳以上では各年代とも2,000~2,500万円という回答が最多であった(36~45歳:20%、46~55歳:24%、56~65歳:26%、66歳以上:15%)。若手の医師に顕著な男女差 調査のカテゴリー別で結果の差が大きかったのは「男女別」で、男性医師の考える適正年収のトップは2,000~2,500万円(20%)、次いで同率で1,400~1,600万円と1,800~2,000万円(12%)。一方、女性医師の考える適正年収のトップは800~1,000万円(17%)、次いで1,000~1,200万円(15%)であった。とくに「年代別・男女別」のカテゴリーで、35歳以下の男性のトップは1,400~1,600万円(17%)であるのに対し、同世代の女性では800~1,000万円が最も多く、34%を占めている。しかし、男女別の適正年収のギャップは、年代が上がるごとに差が減少している。 上記のほか、病床数別、勤務先別、診療科別で集計したグラフについても、以下のページで発表している。医師の年収に関するアンケート2022【第4回】適正年収

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初のSTAMP阻害薬アシミニブ、忍容性に期待/ノバルティスファーマ

 ノバルティス ファーマは、前治療薬に抵抗性または不耐用の慢性骨髄性白血病(CML)患者に対するSTAMP阻害薬であるアシミニブ塩酸塩(商品名:セムブリックス、以下アシミニブ)が3月に国内承認を受けたことを受け、4月19日にプレスセミナーを行った。セミナーでは、国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科の南 陽介氏がCMLの治療戦略とアシミニブへの期待について講演を行った。アシミニブは従来の分子標的薬とは作用機序が異なる 2020年の国内のCML罹患数は約2,000人で10年有病数は約1万2,000人。慢性期から移行期、急性期と進行し、できるだけ早期に白血病細胞の増殖を抑えることが肝要となる。かつては予後の厳しい疾患だったが、20年前に登場した分子標的薬(TKI)により劇的に治療成績が向上した。ただ、治療が長期となるケースが多く、治療抵抗性や不耐容が課題となっている。現在CMLに対して承認されたTKIは5剤でアシミニブは6剤目となる。アシミニブは従来のTKIとは阻害の作用機序が異なり、TKIに抵抗性または不耐容であった患者の選択肢として期待される。 今回のアシミニブの承認は、第2世代TKIであるボスチニブとアシミニブを比較した国際共同第III相検証試験(ASCEMBL試験)の結果に基づいたもの。2つ以上のTKIによる前治療歴を有する成人CML患者を対象とした本試験において、主要評価項目である24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率は、アシミニブはボスチニブのほぼ倍(25.48%vs.13.16%、共通リスク差12.2%、95%信頼区間2.19~22.3、p=0.029)となった。Grade3以上の重篤な有害事象はアシミニブ群12.2%、ボスチニブ群21.1%で発生し、治験中止に至った有害事象はアシミニブ群7.1%、ボスチニブ群25%で発生した。最も多く認められた有害事象は、アシミニブ群では血小板減少症(29.5%)および好中球減少症(23.1%)、ボスチニブ群では下痢(71.1%)、悪心(46.1%)などだった。 南氏は「作用機序が異なるアシミニブは、既存TKIで治療効果が低下した患者さんに対しても効果が期待できる。またSTAMP阻害作用はABLキナーゼを選択的に阻害するため、高い忍容性が期待できることも魅力だ」とした。

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カロリー制限ダイエット、摂食時間制限ありvs.なし/NEJM

 肥満患者において、摂食時間を午前8時~午後4時の8時間に制限する時間制限食をカロリー制限に追加しても、1日の摂取カロリー制限と比較し、1年間の体重、体脂肪および代謝リスク因子の減少に関して効果は認められないことが示された。中国・南方医科大学のDeying Liu氏らが無作為化臨床試験の結果を報告した。これまで、体重減少における時間制限食の長期的な有効性および安全性は明らかにされていなかった。NEJM誌2022年4月21日号掲載の報告。摂取カロリー約75%+摂食時間午前8時~午後4時に制限 研究グループは、肥満患者139例を、1日の摂取カロリー制限に加えて摂食時間を午前8時~午後4時の間のみに制限する群(時間制限併用群)と、1日の摂取カロリー制限のみを行う群(カロリー制限群)に、無作為に割り付け、12ヵ月間観察した。 摂取カロリーは、参加者全員、男性で1日1,500~1,800kcal、女性で1日1,200~1,500kcalに制限した。いずれも摂取カロリーの40~55%が炭水化物、15~20%がタンパク質、20~30%が脂質とし、この食事療法はベースラインの参加者の1日摂取カロリーの約75%に相当した。 主要評価項目は、体重のベースラインからの変化における群間差、副次評価項目はウエスト、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化とした。1年後の体重減少に差はなし 無作為化された139例中118例(84.9%)が12ヵ月間の介入を完遂した。 12ヵ月時の体重のベースラインからの平均変化量は、時間制限併用群で-8.0kg(95%信頼区間[CI]:-9.6~-6.4)、カロリー制限群で-6.3kg(-7.8~-4.7)であり、体重の変化量に両群で有意差はなかった(群間差:-1.8kg、95%CI:-4.0~0.4、p=0.11)。 ウエスト、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧および代謝リスク因子の解析結果も、主要評価項目の結果と一致した。 主な有害事象は、疲労、めまい、頭痛、食欲減退、上腹部痛などで、発現頻度は両群で同程度であった。

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