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固形がんの第I相試験、20年間で奏効率2倍に/Lancet

 2000~19年に行われた固形がんに関する第I相臨床試験の奏効率は、治療関連の死亡率を増大することなく2倍近くになっていることが判明した。一方で、同期間の奏効率の改善は、がんの種類、治療薬、試験デザインなどさまざまな要因によるばらつきも認められたという。米国・国立がん研究所(NCI)のDai Chihara氏らが、がん治療評価研究プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program:CTEP)の患者データを分析し明らかにした。Lancet誌2022年8月13日号掲載の報告。治療関連死、Grade3-4毒性、奏効率を評価 研究グループは、2000年1月1日~2019年5月31日に行われたNCIが資金を提供した研究者主導の固形がんに関する第I相臨床試験のCTEPから患者データを集めて分析した。治療関連死(「おそらく」・「十中八九」・「明確に」治療に起因するGrade5の毒性による)、治療中の全死亡(がん種にかかわらずプロトコール治療中の死亡)、Grade3-4の毒性、全奏効の程度(完全奏効および部分奏効)、対象期間中(2000~05年、2006~12年、2013~19年)の完全奏効率、および経時的傾向を評価した。 また、がんの種類別、治療薬別奏効率や、がん種別奏効の経時的傾向についても分析した。 患者のベースライン特性(年齢、性別、全身状態、BMI、アルブミン濃度、ヘモグロビン濃度)および試験登録期間、治療薬、試験デザインと全奏効率との単変量解析を、修正ポアソン回帰モデルに基づくリスク比を用いて評価した。全期間全奏効率は約12%、完全奏効率は約3% 被験者総数1万3,847例、試験薬数261、465件のプロトコールについて解析を行った。そのうち、単剤療法は144件(31%)で併用療法は321件(69%)だった。 全体の治療関連死亡率は、全期間で0.7%(95%信頼区間[CI]:0.5~0.8)だった。治療関連死亡リスクに、全期間で変化はなかった(p=0.52)。試験期間中の治療中の全死亡リスクは、8.0%(95%CI:7.6~8.5)だった。 最も多く認められたGrade3-4有害イベントは血液学的なもので、1万3,847例のうち、Grade3-4の好中球減少症2,336例(16.9%)、リンパ球減少症1,230例(8.9%)、貧血894例(6.5%)、血小板減少症979例(7.1%)が、それぞれ報告された。 全試験の全奏効率は、全期間で12.2%(95%CI:11.5~12.8、1,133/9,325例)、完全奏効率は2.7%(2.4~3.0、249/9,325例)だった。全奏効率は2000~05年の9.6%(95%CI:8.7~10.6)から2013~19年の18.0%(15.7~20.5)に、完全奏効率は同じく2.5%(2.0~3.0)から4.3%(3.2~5.7)にそれぞれ上昇した。 全奏効率は、単剤療法が3.5%(95%CI:2.8~4.2)に対し併用療法が15.8%(15.0~16.8)と高率だった。 試験薬のクラス別全奏効率は、疾患により異なった。また、抗血管新生薬は、膀胱がん、大腸がん、腎臓がん、卵巣がんで高い全奏効率と関連していた。DNA修復阻害薬は、卵巣がん、膵臓がんで高い全奏効率と関連していた。 全奏効率の経時的傾向も疾患により大きく異なり、膀胱がん、乳がん、腎臓がん、皮膚がんは著しく改善したが、膵臓がんと大腸がんでは全奏効率は低いまま変わらなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「第I相臨床試験への参加について、試験前に患者に情報を提供したうえで意思決定を求めることが非常に重要だ」と述べながら、「今回の試験結果は、固形がんの最新の第I相臨床試験の有望なアウトカムをアップデートするものである」とコメントしている。

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ジェネレーションギャップを愚痴ってみた!プチ褒めに疲れました【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第51回

第51回 ジェネレーションギャップを愚痴ってみた!プチ褒めに疲れましたこのコラムの執筆のネタは、自分ひとりで考え出しているわけではありません。ケアネット編集部の方々からのヒントも参考にしております。「最近の若い先生方はパソコンをあまり使わない(スマホで済ませる)などと耳にしますが、中川先生もそのあたりのギャップなど感じることあるでしょうか?」との意見を頂戴しました。うーん、面白いポイントです。ネタとして採用です。このコラムの読者の皆さまは、パソコンでキーボードを叩きながら文章を打ち込むことは可能と思います。今の大学生たちは必ずしもそうではなく、パソコンが苦手な若者が急速に増えています。パソコンが使えない年齢層といえば中高年というのが通り相場で、若い世代はパソコンが得意というイメージを持っている方も多いと思います。スマートフォンやタブレットの普及により、若者のパソコン離れが進んでいます。20年くらい前までは、パソコンを使うといえば WordやExcelといったアプリケーションを使うことと同じでした。その後、インターネットが急速に普及し、電子メールによる情報交換やブラウザを使ってWebから情報を得ることが日常化します。しかし、それはパソコンを用いての作業でした。スマートフォンやタブレットが登場し、世の中が変わったのです。パソコンとキーボードの操作方法を習得してから机に向かってインターネットを楽しむ時代から、スマートフォン片手に簡単な操作でインターネットを楽しむ時代へと移行しました。操作にスキルを必要としないため、インターネットを使い始める年齢層が低下し、常に持ち運びできるデバイスなので、利用時間も格段に長くなりました。極端にいえば、親のスマホが子守り役で、物心がつく前から画面をタッチしていた世代です。パソコンを個人として保有したことがない学生もいます。レポート作成のすべてをスマートフォンで完了させるツワモノも登場します。全文をフリップ入力で打ち込むそうです。キーボードやマウスに慣れ親しんでいない者は、医師になってから研究活動や論文作成で苦労するように感じます。このような人は、フォルダや階層構造という概念の理解が不十分なのです。この考え方はデータ管理の基本となります。スマートフォンも、実際にはフォルダや階層構造を用いています。意識しなくとも直感的に作業が可能であることは利点ですが、理論的思考が訓練されず、作業効率も悪く、不十分なデータ整理に繋がります。ここまで書き進めて、あることに気づきました。自分自身がパソコンとキーボードと共に情報化社会への対応を経験してきた世代の人間で、無意識のうちにスマートフォンやタブレットで成長してきた世代を容認できず、彼らを批判的に感じていることです。一見、パソコンからスマートフォンへの変遷を解説する文章を装いながら、若者を攻撃する嫌なジジイの愚痴を書き連ねてしまいました。反省です。世代間に生ずる知識・関心・考え方などの違いであるジェネレーションギャップは、引き継がれてきた命題です。世代が違えば育ってきた環境はまったく変わります。持っている知識や価値観が違うのは当たり前です。異世代同士はもともとすれ違う運命かもしれません。自分が意識したジェネレーションギャップの実例を紹介します。若い世代は、紙でメモを取らず写真を撮ります。なぜなら、スマートフォンで撮影しておけば瞬間で完了し、見返すのも便利だからです。講義中に映写されたスライドやホワイトボード(黒板ではない)に書かれた解説を撮影する学生も普通にいます。「ノートをちゃんと取れよ!」とイラっとする自分が教壇にいますが、彼らにはまったく悪気はありません。ここでのポイントは、彼らを叱ってはいけないことです。彼らは褒められることを好みます。それも盛大に褒めたたえるのではなく、軽く褒める「プチ褒め」が鍵だそうです。毎日毎日ちょっとずつプチ褒め続けることが新世代の若者の心をつかむコツであるそうです。さらに言わせてもらえば、ジェネレーションギャップを埋めることを諦めない物わかりの良い大人を演じることに少し疲れる自分がいます。今回紹介したジェネレーションギャップは、昭和世代と平成世代の間で起こりがちな事例です。令和世代に突入し、ジェネレーションギャップをめぐる攻防が激化することはあっても、解消することはないでしょう。世代間のギャップはあって当然です。ジェネレーションギャップを楽しむくらいの気持ちが大切なのでしょう。今回は、皆さまに愚痴をこぼしてしまいました。お付き合いいただきありがとうございました。愚痴を聞いてもらう相手は猫だけにするのが得策のようです。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ROS1」【肺がんインタビュー】 第84回

第84回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ROS1」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患【知って得する!?医療略語】第18回

第18回 入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患血管に閉塞病変がなくても腸管虚血が起きることがあるのですか?腸間膜血管の攣縮が原因と推測されている、非閉塞性腸管虚血(NOMI)があります。NOMIは疑わないと診断できない疾患です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NOMI【日本語】非閉塞性腸管虚血【英字】non-occlusive mesenteric ischemia【分野】消化器【診療科】消化器内科・消化器外科【関連】腸管虚血実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。入院患者さんの急変原因は多々ありますが、急変疾患の1つに非閉塞性腸管虚血(NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia)があります。今では教科書にもNOMIの記載を見かけるようになりましたが、私が初めてNOMIの患者を経験した当時は、まだNOMIは教科書にも記載されておらず、私が最初の症例を経験した時点では曖昧な知識しかありませんでした。NOMIの致死率は56~79%と非常に高く、私が経験した3例はすべて院内発症で2例は救命困難でしたが、救命成功例を振り返ると、やはり早期診断と迅速な治療方針の決定が重要な疾患だと考えます。しかし、NOMIは疑わないと診断することが難しいとされ、その発症しやすい患者の背景まで知っておく必要があります。NOMIとはNOMIは腸管虚血の1つで、腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わずに非連続性の腸管血流障害を来たす疾患です。本邦の報告では腸管虚血の15~27%がNOMIであると報告されています。病態は腸間膜収縮、腸間膜血管攣縮、それに続発する末梢腸間膜動脈枝の攣縮により、腸管虚血を来し、そして腸管壊死に至る疾患です。NOMIのリスク因子として以下のようなものが挙げられており、血管内の低灌流が交感神経に反応し、血管攣縮を来し腸管虚血を来すとされています。心疾患(心不全)維持透析高齢糖尿病脱水周術期低拍出量症候群長時間の体外循環膵炎ショック不整脈熱傷出血薬剤(カテコラミン、利尿薬、ジギタリス)の使用NOMIの臨床像について、発症早期は特異的な臨床徴候が認められない例が多いと指摘されています。NOMI発症例の20~30%は腹痛の訴えさえないそうで、私の自験例3例も腹痛の訴えはなく、スタッフからの「不穏になっている」との連絡が発見のきっかけでした。ただ、病室にかけつけたときは呼吸が促拍し、苦悶様の表情で腹部をさすっていたのを今でも記憶しています。自験例3例に共通していたのは、脳卒中急性期治療中の高齢者での発症で、経口摂取を開始して間もない、いずれも食後1~3時間後の発症という共通点がありました。このため脳卒中に伴う高カテコラミン状態が、交感神経優位状態を招き、腸管血管の攣縮を招きやすい状態であった可能性は十分に考えられます。NOMIについて特筆したいのは、病態悪化の速さです。それゆえ、診断に戸惑う時間的猶予はなく、NOMIの臨床像や疑うべき画像所見を知っておかなければ、あっという間に腸管壊死からショックに至ります。ただし、NOMIを保存的に治療しようとすれば、塩酸パパベリンのような強力な血管拡張薬を使用することになりますが、持続静注すると全身の血圧低下を招くため、持続動注する必要あります。このため、腹部血管造影が出来る体制が必要となります。さらに腸管壊死を来す際には、外科手術の選択も視野に入りますが、NOMIが高齢者に発症しやすく、仮に手術できたとしても、広範な腸管切除が余儀なくされ、術後に人工肛門管理となる可能性が高く、術後のQOLの課題もあるため、基礎疾患のある高齢者には外科的介入のハードルは高いと考えます。また手術できても縫合不全の確率が高く、手術や麻酔自体で循環動態を悪化させるリスクもあります。一方で、非常に早期に診断できれば、救命できる例もあります。もし、NOMIを未経験の方については、腹部X線、腹部CT所見も含め、症例報告をご覧になると良いかもしれません。1)日本腹部救急医学会プロジェクト委員会NOMIワーキンググループ. 日腹部救急医会誌. 2015;35:177-185.2)日本循環器学会:2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン3)新関 浩人ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2004;57:71-75.

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第123回  高血圧治療用アプリ保険適用、中医協委員は健康アプリとの線引きの曖昧さやフォローアップの必要性を指摘

日本で2番目に承認されたDTxこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末から月曜にかけては、甲子園の高校野球観戦三昧でした。夏の全国高校野球選手権大会の決勝は仙台育英高校が下関国際高校に勝ち、優勝旗が初めて「白河の関超え」(東北勢の初優勝)をすることになりました。仙台育英は夏の大会決勝進出3度目にしての悲願達成です。個人的に記憶に鮮明なのは、大越 基投手が仙台育英のエースだった1989年の決勝です。大越投手は一人で全6試合を投げ抜き、帝京(東東京)との決勝は延長10回、0-2で敗れました。その大越投手、ダイエー・ホークス(当時)引退後は大学に入学し直して教員の資格を取り、現在は下関国際高校の地元でもある山口県下関市の早鞆(はやとも)高校野球部監督を務めています(2012年に春の選抜大会出場)。大越氏は決勝当日、8月22日の朝日新聞朝刊の「エール 東北人+山口の監督として」に登場、「OB、東北人としては育英を応援したいけど、山口県の監督としては下関に深紅の大優勝旗が来てほしい」と語っていました。同じ山口県内のライバル校を倒し、東北勢の長年の呪縛も解いた母校・仙台育英高校の優勝に、大越氏もほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか。さて、今回は8月3日、中央社会保険医療協議会総会で医療機器として保険適用が決まったCureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について書いてみたいと思います。日本で2番目に承認されたこのデジタル治療薬(Digital Therapeutics:DTx)に対し、中医協委員から使用実態についてのフォローアップの必要性を指摘されるなど、厳しい意見も多数出されました。月1回830点、6ヵ月を限度に算定中医協総会は8月3日、CureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について保険適用を了承しました。診療報酬上は特定保険医療材料としては設定せず、新規技術料で評価されます。同社のニコチン依存症治療アプリも同様の区分で承認されており、これに準じた扱いです。具体的には、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合、アプリによる治療開始時に「禁煙治療補助システム指導管理加算」を準用する形で、140点を1回に限り算定します。また、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合に「血糖自己測定器加算の4(月60回以上測定する場合)」を準用し、月1回に限り830点を算定します。830点の算定については、初回の使用日の月から6ヵ月を限度としており、加えて前回算定日から、平均して7日間のうち5日以上、アプリに血圧値が入力されている場合にのみ算定できるとしています。なお、アプリの使用に当たっては、関連学会の策定するガイドラインおよび適正使用指針の順守を求めています。830点6ヵ月は患者側にとってはなかなか高い点数ですが、皆さんどう思われるでしょう? 6ヵ月間のアプリ使用料は3割負担で約1万5,000円となります。一般的なゲーム課金と比べると、少々高い印象です。同アプリは9月には保険収載される見通しです。中医協の資料によれば、推定適用患者数(ピーク時)は約824万人、このうち市場規模予測(ピーク時)として同アプリの使用患者数は約7万人と見積もられています。国はDTxなどプログラム医療機器の普及・定着に前のめり「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」は、同社が自治医科大学の研究グループと共同開発した治療用アプリで、患者がスマートフォンなどを用いて使用するものです。患者がIoT血圧計で測定した家庭血圧や、生活習慣のログを日々記録すると、アプリはこれらのデータを基に、患者ごとに個別化された治療ガイダンスとして、食事、運動、睡眠などに関する情報を表示します。これにより患者の行動変容を促すことで降圧効果が得られるとしています。同アプリについては、本連載でも、2022年4月26日に薬事承認された直後に「第109回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き(前編)」、「第110回 同(後編)」と2回に渡り取り上げ、国がDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている状況や、DTxの臨床試験の不可解さについて書きました。「アプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるか」前編では、同アプリが薬事承認の了承に当たって、「承認後1年経過するごとに、市販後の有効性に関する情報を収集し、有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構(PMDA)宛てに報告すること」という条件が付けられたことを紹介、「こうしたスマホアプリに順応して素直に行動を変えられる人ならよいが、頑固でアプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という素朴な疑問を投げかけました。続く後編では、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験の結果を読み解き、「主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した『介入群』と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの『対照群』を比較評価した結果、『介入群』の方が有意な改善を示した、とのことですが、『有意な改善』とは言っても、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした」と書きました。さらに、PMDAが公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書には臨床試験の対象患者について、「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と記載されているものの、「『降圧効果を十分に期待できる』をどう判断したかについては書かれていない」と指摘しました。また、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」も、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいことにも言及。DTxの開発は国内外で、糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまな領域で活発化しているものの、大日本住友製薬など、開発に頓挫したケースもあることを紹介しました。中医協、支払側・診療側双方の委員から厳しい指摘この連載で書いたような、DTxの治療効果への疑問や、臨床試験での対象患者選びがブラックボックス化していることなどは、中医協委員も感じていたのかもしれません。総会では中医協委員から厳しい意見が出されました。日経メディカルやミクスオンラインなどの報道によれば、同アプリの保険適用に当たっては、支払側委員から「ニコチン依存症の治療用アプリとは異なり、(高血圧症治療補助アプリ)は健康アプリに近い印象があり、同様のアプリが今後登場してきた際には判断が難しくなるのではないか」、「通常の生活習慣指導と比較したアプリの効果についてはエビデンスがあるものの、他の健康アプリとの比較は行われていない」など、一般向けの健康アプリとの線引きの曖昧さが指摘されました。一方、診療側委員からは、「次回改定時には前例にとらわれず、専門組織からの意見などを受けて、本製品の評価について見直しを行うことも検討する必要がある。一定期間の使用を踏まえたアウトカム評価を導入することも必要ではないか」と使用実態についてのフォローアップが求められました。サワイ、CureAppが開発する肝炎治療用アプリの販売権を獲得健康アプリとの線引きの曖昧さの指摘や、フォローアップをしっかり行うようにとの要請など、なかなかに厳しい船出と言えます。しかし、DTxはこれからも次々と上市される見込みです。後発医薬品大手のサワイグループホールディングスは(サワイGHD)8月2日、CureAppが開発する肝炎の治療用アプリの販売権を獲得したと発表しました。契約一時金に加え、臨床試験の進展に応じCureAppに最大105億円を支払うとのことです。この治療用アプリは肝臓に炎症を引き起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を治療対象にしたものです。医師の代わりに患者に食生活の見直しや運動などを促し、生活習慣の改善をめざすとしています。「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」と同様、医師が患者に処方して使うDTxです。CureAppと東京大学医学部附属病院が共同で2016年10月より単施設における臨床研究を開始、2018年4月からは多施設共同臨床研究を実施し、認知行動療法に基づいた本アプリによる明確な体重減少ならびに肝線維化の改善効果が認められたとしています。今後、これまでの試験データを基に、第III相臨床試験に進む予定とのことです。第III相臨床試験はCureAppとサワイGHDが共同して行い、上市後の販売や営業活動はサワイGHDが担うとしています。NASHの患者は国内に200万人程度、その予備軍は推定1,000万人程度いるとされ、病気が進行すると肝硬変や肝がんを引きおこすおそれがあります。確立された薬物療法がなく、運動療法や食事療法などの生活改善が中心になっており、その一翼を同アプリが担うとしています。ただ、認知行動療法で体重減少を目指す点は理解できますが、その療法と肝線維化との関連性がどうなっているのか、プレスリリースや報道などでは今ひとつわかりません。それこそ、普通の一般向け減量アプリとの差別化はどうなるのでしょう。第III相臨床試験では、そのあたりもきちんと実証し、公表して欲しいと思います。

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アルツハイマー病およびMCIに対する治療薬aducanumabとリチウムの有効性比較~ネットワークメタ解析

 2021年、米国FDAはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)を有する患者に対する治療薬としてaducanumabの迅速承認を行ったが、そのコストは高く、患者1人当たり年間約2万8,000ドルを要する。一方、リチウムは年間約40ドルと非常に安価であり、MCIおよびアルツハイマー病にみられる認知機能低下に効果があると報告されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬とは対照的に、aducanumabやリチウムにはdisease-modifying drugとしての可能性が示唆されている。東京医科大学の寺尾 樹氏らは、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するaducanumabとリチウムの効果を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2022年8月9日号の報告。MCI治療薬aducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性評価 2022年1月までに公表されたMCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、CINHAL、ClinicalTrials.govより検索した。直接的および間接的な効果を推定するため、頻度論的固定効果ネットワークメタ解析を用いた。主要アウトカムは、ミニメンタルステート検査(MMSE)で測定した認知機能スコアの変化とした。 MCI治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価した主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析では、リチウムはaducanumabよりも、主要アウトカムに対する有効性が有意に高いことが示唆された。・本研究では、さまざまな制限があったものの、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するリチウム治療は、MCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabよりも費用対効果に優れる治療法である可能性が示唆された。

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オミクロン株感染者の半数以上が自覚していない

 米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡の人口の多い都市部で、オミクロン株流行時に抗体陽転が確認された人を対象としたコホート研究において、感染者の半数以上が感染を認識していないこと、また、医療従事者は非医療従事者より認識者の割合が高いが全体としては低いことが示唆された。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのSandy Y. Joung氏らが、JAMA Network Open誌2022年8月17日号に報告。 本研究は、ロサンゼルス郡のCOVID-19血清学的縦断研究に登録された大学病院の医療従事者と患者の記録を分析したもので、参加者は2回以上の抗ヌクレオカプシドIgG(IgG-N)抗体の測定を1ヵ月以上の間隔で行った。1回目はデルタ株流行終了(2021年9月15日)以降、2回目はオミクロン株流行開始(2021年12月15日)以降で、2022年5月4日までにオミクロン株流行時に感染が確認された成人を対象とした。新型コロナウイルス感染の認識は、自己申告の健康情報、医療記録、COVID-19検査データのレビューで確認した。 主な結果は以下のとおり。・血清学的にオミクロン株感染が確認された210人(年齢中央値[範囲]:51[23~84]歳、女性:65%)のうち、44%(92人)が感染を認識しており、56%(118人)が認識していなかった。・認識していない人のうち10%(12人/118人)が何らかの症状があったが、その原因は風邪や新型コロナウイルス以外の感染症であると回答した。・人口統計学的および臨床的特徴を考慮した多変量解析では、医療従事者は非医療従事者よりもオミクロン株感染を認識している可能性が高かった(調整オッズ比:2.46、95%信頼区間:1.30~4.65)。 これらの結果から、著者らは「オミクロン株感染の認識率の低さが地域社会における急速な伝播の要因である可能性が示唆される」と考察している。

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CABG後の静脈グラフト不全リスク、DAPTで回避できるか/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者の抗血小板療法において、アスピリンにチカグレロルを加えた抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はアスピリン単剤療法と比較して、静脈グラフト不全のリスクが有意に低い一方で、臨床的に重要な出血のリスクは有意に高く、チカグレロル単剤とアスピリン単剤の比較ではこのような差はないことが、オーストリア・ウィーン医科大学のSigrid Sandner氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年8月9日号に掲載された。4つの無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、CABG術後の抗血小板療法による静脈グラフト不全のリスクの抑制効果を、チカグレロルDAPTまたはチカグレロル単剤療法と、アスピリン単剤療法で比較する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(研究費は、米国Weill Cornell Medicine心臓胸部外科の内部資金による)。 2022年6月1日の時点で、医学関連データベース(MEDLINE、Embase、Cochrane Library)に登録された文献(記述言語は問わない)が検索された。対象は、伏在静脈グラフト不全に対する抗血小板療法の効果を、チカグレロルDAPTまたはチカグレロル単剤療法と、アスピリン単剤療法で比較した無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムは、伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全であった。グラフト不全は、個々の試験プロトコルで規定されたフォローアップ時に、侵襲的血管造影またはCT血管造影で評価された伏在静脈グラフトの50%以上の閉塞または狭窄と定義された。副次アウトカムは、患者当たりの伏在静脈グラフト不全およびBARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準でタイプ2、3、5の出血とされた。 4つの無作為化臨床試験(TAP-CABG[2016年]、DACAB[2018年]、TARGET[2022年]、POPular CABG[2020年])に参加した1,316例(1,668個の伏在静脈グラフト)が解析の対象となった。グラフト不全:11.2% vs.20%、タイプ2、3、5出血:22.1% vs.8.7% 主解析には、チカグレロル単剤について検討したTARGET試験と、DACAB試験の1群を除く871例が含まれ、このうち435例(527個の伏在静脈グラフト、年齢中央値67歳[IQR:60~72]、女性65例[14.9%]、治療期間中央値365日[IQR:307~365])がチカグレロルDAPT(すべてチカグレロル+アスピリン)群、436例(537個、66歳[61~73]、63例[14.5%]、364日[315~365])はアスピリン単剤群であった。 伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全の発生率は、チカグレロルDAPT群が11.2%(54/481グラフト)と、アスピリン単剤群の20.0%(99/494グラフト)に比べ有意に低かった(群間差:-8.7%[95%信頼区間[CI]:-13.5~-3.9]、オッズ比[OR]:0.51[95%CI:0.35~0.74]、p<0.001)。 また、患者当たりのグラフト不全の発生率は、チカグレロルDAPT群が13.2%(52/394例)、アスピリン単剤群は23.0%(92/400例)であり、チカグレロルDAPT群で有意に優れた(群間差:-9.7%[95%CI:-14.9~-4.4]、OR:0.51[95%CI:0.35~0.74]、p<0.001)。 これに対し、BARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベントの発生率は、チカグレロルDAPT群が22.1%(96/452例)と、アスピリン単剤群の8.7%(38/436例)に比し有意に高かった(群間差:13.3%[95%CI:8.6~18.0]、OR:2.98[95%CI:1.99~4.47]、p<0.001)が、タイプ3、5の出血イベントの発生率には差がなかった(1.8%[8/435例]vs.1.8%[8/436例]、群間差:0%[95%CI:-1.8~1.8]、OR:1.00[95%CI:0.37~2.69]、p=0.99)。 一方、チカグレロル単剤とアスピリン単剤の比較(DACAB試験とTARGET試験)では、伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全(19.3%[71/368グラフト]vs.21.7%[83/383グラフト]、群間差:-2.6%[95%CI:-9.1~3.9]、OR:0.86[95%CI:0.58~1.27]、p=0.44)、患者当たりのグラフト不全(25.2%[64/254例]vs.29.3%[75/256例]、-4.1%[95%CI:-11.9~3.7]、0.81[95%CI:0.55~1.20]、p=0.30)、およびBARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベント(8.9%[26/293例]vs.7.3%[21/289例]、1.7%[-2.8~6.1]、1.25[0.69~2.29]、p=0.46)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「チカグレロルDAPTはアスピリン単剤に比べ、BARC出血基準タイプ2~5のリスクが有意に高く(22.3% vs.8.7%、p<0.001)、有意差はないものの全死因死亡のリスクが上昇する傾向がみられた(2.1% vs.0.9%、p=0.17)。今回の解析結果からは、CABG術後に、アスピリンにチカグレロルを追加するか否かを決める際には、グラフト不全、虚血性イベント、出血に関する個別の患者のリスクを、慎重に検討する必要がある」としている。

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進展型小細胞肺がんの1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法(KEYNOTE-604)/WCLC2022

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が良好な成績を示した。試験結果は、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRudin氏により世界肺学会(WCLC2022)で発表された。 ES-SCLCの1次治療におけるエトポシド+カルボプラチン(EP)とペムブロリズマブの併用はプラセボとの併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することがKEYNOTE-604試験の結果で示されている(HR:0.75)。WCLC2022では、35サイクルを完遂した患者における3.5年の追跡結果が、全生存期間(OS)を含め発表された。・対象:未治療のStage IVのSCLC・試験薬群:ペムブロリズマブ+EP 3週ごと4サイクル →ペムブロリズマブ 3週ごと31サイクル(n=228)・対照群:プラセボ+EP 3週ごと4サイクル →プラセボ 3週ごと31サイクル(n=225)・評価項目[複合主要評価項目]盲検化独立中央委員会(BICR)評価のPFSとOS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・無作為割付けからデータカットオフまでの期間は43.3ヵ月であった。 ・ITT集団のOS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群9.7ヵ月であった (HR: 0.76、95%CI:0.63〜0.93)・ITT集団のPFSはペムブロリズマブ群4.8ヵ月、プラセボ群4.30ヵ月であった (HR:0.70、95%CI:0.57〜0.85)。 ・ORRはペムブロリズマブ群 70.6%、プラセボ群61.8%であった。・DoRはペムブロリズマブ群 4.2ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月であった。・全有害事象(AE)はペムブロリズマブ群の100%、プラセボ群の99%で発現した。・免疫関連有害事象はベムプロ群の27.4%、プラセボ群の12.1%で発現した。 およそ3.5年の追跡の結果、ペムブロリズマブ+EPはES-SCLCに対し、OSとPFSに関して臨床的に意味のある改善を維持した。

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脳梗塞の血栓除去前のtirofiban投与、機能障害の改善認めず/JAMA

 脳主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中で血管内血栓除去術を受けた患者では、血栓除去術前の血小板糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanの投与はプラセボと比較して、90日時の機能障害の重症度に有意な差はなく、症候性頭蓋内出血の頻度にも差を認めないことが、中国・人民解放軍第三軍医大学のQingwu Yang氏らが実施した「RESCUE BT試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年8月9日号で報告された。中国の医師主導無作為化プラセボ対照比較試験 RESCUE BT試験は、脳主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中の治療における、血管内血栓除去術前のtirofiban静注の有効性と有害事象の評価を目的とする医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年10月~2021年10月の期間に、中国の55ヵ所の病院で参加者の登録が行われた(中国・Lunan Pharmaceutical Groupなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上(上限は設けず)、最終健常確認から24時間以内の急性期虚血性脳卒中で、NIHSS(0~42点、点数が高いほど神経障害が重度)スコアが30点以下、ASPECTS(0~10点、点数が高いほど梗塞巣が小さい可能性を示唆)が6点以上であり、CT血管造影またはMR血管造影、デジタル差分血管造影により頭蓋内内頸動脈または中大脳動脈(M1、M2)の閉塞が認められる患者であった。 被験者は、tirofibanまたはプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬は、10μg/kgのボーラス投与後、0.15μg/kg/分で最長24時間持続的に静脈内注入された。全例が血管内治療を受けた。 主要アウトカムは、術後90日の時点における機能障害の程度とされ、修正Rankin尺度(0[まったく症候がない]~6[死亡]点)で評価された。安全性の主要アウトカムは、48時間以内の症候性頭蓋内出血の発生で、Heidelberg出血分類に準拠して評価が行われた。画像評価による症候性頭蓋内出血は有意に高率 948例(年齢中央値67歳[IQR:57~74]、女性391例[41.2%])が無作為化の対象となり、全例が試験を完了した。463例がtirofiban群、485例がプラセボ群に割り付けられた。 最終健常確認から無作為化までの時間中央値は、tirofiban群が405分、プラセボ群は397分で、病院到着から試験薬の静脈内投与開始までの時間中央値はそれぞれ121分および116分、動脈穿刺から再灌流の達成または手技終了までの時間中央値は67分および70分だった。 90日時のmRSスコア中央値は、tirofiban群が3点(IQR:1~4)、プラセボ群も3点(IQR:1~4)であり、補正後共通オッズ比(OR)は1.08(95%信頼区間[CI]:0.86~1.36)と、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.50)。 また、臨床的有効性に関する6つの副次アウトカム(90日時のmRS 0~1点の達成または発病前のスコアへの回復、NIHSSスコアのベースラインからの変化、90日時のQOL[EQ-5D-5Lスコア]など)は、いずれも両群間に有意差はみられなかった。 48時間以内の症候性頭蓋内出血についても両群間に有意な差はなく、発生率はtirofiban群が9.7%(45/462例)、プラセボ群は6.4%(31/483例)であった(群間差:3.3%[95%CI:-0.2~6.8]、補正後OR:1.56[95%CI:0.97~2.56]、p=0.07)。 一方、画像評価による症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で発生率が有意に高かった(34.9%[161/462例]vs.28.0%[135/483例]、群間差:6.9%[95%CI:1.0~12.8]、補正後OR:1.40[95%CI:1.06~1.86]、p=0.02)。90日死亡率には有意差がなかった(18.1% vs.16.9%、1.2%[-3.6~6.1]、1.09[0.77~1.55]、p=0.63)。 著者は、「tirofibanは、血管内治療のアウトカムを改善しないことが示された」とまとめ、「本試験におけるプラセボ群の実質的な再灌流達成率は90.5%(tirofiban群は92.2%、p=0.38)と高く、これはステント型血栓除去デバイスに関する5つの無作為化試験のメタ解析での達成率(71%)を上回る。この差は、この間の血管内治療技術の進歩を反映していると考えられ、結果として、tirofiban投与によるさらなる改善の余地は限られたものであった」と考察している。

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5~11歳へのBNT162b2ワクチンのオミクロン株に対する有効性(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、新型コロナウイルスのオミクロン変異株流行中における5~11歳へのBNT162b2(ファイザー製)ワクチンの2回接種の有効性を報告しており、過去の報告との差異は、2回接種後のCOVID-19関連入院予防効果がより高い可能性が示唆されたことである。 本研究では、シンガポールで5~11歳の25万5,936例を解析対象としており、完全接種(2回接種後7日以上)の小児ではワクチンによるSARS-CoV-2感染の有効率は36.8%(95%CI:35.3~38.2)、COVID-19関連入院の予防が82.7%(95%CI:74.8~88.2)だった。また、ワクチン接種後の重篤な有害事象は0.005%が保健科学庁に報告されたと発表している。 5~11歳へのBNT162b2ワクチンの有効性に関するこれまでの報告を振り返ってみると、米国での1,185例の症例患者と1,627例を対照患者として組み入れたtest-negativeデザインのstudyで、5~11歳の小児の入院予防効果は68%(95%CI:42~82)(Price AM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1899-1909.)、イスラエルからの報告では、2回接種後7~21日目で感染予防効果が51%、症候性COVID-19の予防効果は48%(Cohen-Stavi CJ, et al. N Engl J Med. 2022;387:227-236.)、イタリアの296万5,918人の5~11歳を対象にしたレトロスペクティブ分析では、2回接種群でワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染に対して29.4%(95%CI:28.5~30.2)、重症COVID-19に対して41.1%(95%CI:22.2~55.4)(Sacco C, et al. Lancet. 2022;400:97-103.)などがある。成人同様に、オミクロン株が流行株に変化して以降、感染予防効果は低下している。しかし、今回の論文を合わせて考えると、重症化予防効果やCOVID-19関連の入院予防効果はオミクロン株でも期待ができそうである。 さて、5~11歳の小児への新型コロナワクチン接種について2022年8月中旬時点で再考してみる。今回も接種によるメリットとデメリットについて論じる。 メリットとしては、(1)感染予防効果、(2)重症化やCOVID-19関連入院の予防効果、(3)小児多系統炎症性症候群などの重症合併症の予防効果、(4)集団免疫効果などがある。デメリットとしては、副反応などが考えられる。 過去に論じた内容(CLEAR!ジャーナル四天王「オミクロン株流行時期における5~11歳児に対するBNT162b2ワクチンの有効性」)から変化することは、メリットは、本論文を参考にすると、(2)のCOVID-19関連入院を防ぐ効果がより期待できるだろう。しかし、今回の論文の内容以上に臨床現場で変わった重要なポイントとして、オミクロン株流行以降は、小児の感染者が増加しただけではなく、クループ症候群や熱性けいれん患者も増加し、脳症や心筋炎などの重症例も報告されるようになっていることがある。また、入院を要しない患者でも、発熱の頻度は高く、咽頭痛、嘔吐の報告が多く(日本小児科学会.「データべースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」の中間報告:第3報 オミクロン株流行に伴う小児 COVID-19症例の臨床症状・重症度の変化)、当地域でもご家族から病院や保健所への相談が増加していることがある。 オミクロン株が流行している本邦としては、小児でも重症例や入院を要する症例、場合によっては死亡例が報告されるようになった。そして、新型コロナワクチンは、これらのリスクを低下させることが示されており、5~11歳では副反応の報告も低いことからワクチン接種のメリットのほうが大きいだろう。 また、小児の感染経路もデルタ株以前とは変化してきている。感染対策のために、感染経路を調査することがあるが、第7波では、学童や小学校でクラスターとなり、小児が家庭に持ち込む事案が増えているような感覚がある。データベースを参考にすると、小児が感染した経路は、兄弟や両親や祖父母を含めた家族が最多ではあるが、学校関係者や幼稚園・保育園関係者からの症例も多いように感じられる(日本小児科学会.「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」に基づく早期公開情報)。 (4)の集団免疫効果について、小児に対する新型コロナワクチンでは、高齢者や成人を守るための集団免疫効果は期待するべきではない、という議論もあったが、集団免疫効果は成人を含めた社会集団にのみ当てはまることではなく、小児のコミュニティにおいても成立する。新型コロナワクチンの予防接種を受けている子供が増えることで、集団内でCOVID-19が流行するリスクは減らすことができるだろう。メリットとして挙げた(1)の感染予防効果は低くなっているとはいえ、小児の所属する集団で皆がある程度感染予防効果を身に付けることで、(4)の集団免疫効果もある程度は期待できるのではないかと考える。 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会から2022年8月10日付で「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」が示されており、本文では「日本小児科学会は、5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」としている。 本論文を含めた知見や、昨今の本邦の状況を鑑みても、5~11歳の新型コロナワクチンは私も接種は推奨されると考える。そして、「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」は、ワクチンに関するメリットとデメリットについて現時点で判明している知見を丁寧にまとめており、これらの資料も参考に、ご両親は子供やかかりつけ医師と新型コロナワクチン接種の是非について相談していただければと考える。

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認知症者のお金の問題【コロナ時代の認知症診療】第18回

認知症患者の凍結資産は200兆円!?最近のアンケートによれば、息子が実家に帰って、老親に会う回数は、年間1~2回程度だそうだ。私事ながら、母は80歳の頃に認知症を発病し、87歳で亡くなった。一人暮らしであった母が80歳の頃だと、私はこれに比べると多く、ふた月に1回程度は実家に行っていた。最初に「おかしいな」と思ったのは、母親の歯ブラシの毛先の曲がりである。何ヵ月使ったのか知らないが、全体が左右に倒れている事だった。この頃からお金に関するトラブルや誤解も出てきた。当時、知人から聞いた話がある。認知症の母を施設に預けて数ヵ月が経過。2人で当座の生活費を引き出すために銀行に立ち寄った。そこで彼は母親に、キャッシュカードを出して、お金を引き出すように言った。ところが、母が暗証番号を覚えていない。そこでATMを離れ、女性行員に、「実は50万円ほど出したいのですが」と言った。彼女は奥へ下がり、しばらくして管理職らしい男性行員とともに戻ってきた。男性行員は、認知症の母親名義の預金を引き出すには家庭裁判所に申請して成年後見人をつけてもらわねばならないと述べた。長時間を費やして説明したが、わかってもらえず、結局複雑な手続きをすることになった。この後から後述するような苦難の歴史が始まった。こうした問題は認知症者の増加とともに全国に広まっているようだ。例えば、最近のある経済新聞に「認知症患者の凍結資産は200兆円!!」と見出しがあった。実に国家予算の2倍である。成年後見制度の難しささて平成12年成立の成年後見制度だが、認知症、知的障害、精神障害等により、判断能力がないため、財産管理や福祉サービスの契約が1人ではできない人を裁判所が守ってくれる制度だ。ところが、そのデメリットも大きいと診察の場で家族から投げかけられる機会が増えた。要約するならば、1)親族が後見人に立候補しても選任されるとは限らない。2)親族は本人の財産に手をだせない。3)成年後見人等への報酬は本人の財産から支払う必要がある(専門職だとひと月に2万円以上)。4)本人の意思に反して成年後見人等が行動することもある。5)本人は、医師、弁護士、公務員などの資格を失う。よく聞くのは、本人が居住しなくなった不動産を売却するにも家庭裁判所の許可が必要だということだ。実は、よほど正当な理由がないとこれは難しいそうだ。以上はすでに認知症になっている方の問題である。一方で軽度認知障害や認知症が心配なだけという人やその家族の問題もある。成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つがある。任意後見という字面から、自分が後見人になれて、自分の意志で親の通帳からお金の出し入れができるのではないかと思い込みがちである。ここがよくある誤解だ。これは、今はとくに問題がないが、判断能力、意思能力があるうちに、やってもらいたいことについて、あらかじめ取り決め(公正証書を締結)をして、近い将来に備えるものである。これには3つのタイプがあるが、多いのは将来型だと思われる。このタイプでは認知能力が低下してきたと思われたら、任意後見監督人選任申し立てをする。すると家庭裁判所は、任意後見監督人を選任し、任意後見が開始されるのである。申し立てた人は、実際には受任者に過ぎない。だから聞くところでは、この人が後見人になれる確率は20%くらい。本人の財産額が少なく、家族間の対立がない時などに限られるようだ。さて仮に任意後見人になれたとしてもその先がまた厳しい。というのは、もし任意後見人になると、法定後見人以上にその財産管理がなされる。加えて、任意後見制度を使うと法定後見に誘導されやすいとも言われる。こうしたことを知ると、もし今自分がその立場なら、任意後見には関わりたくないと思ってしまう。医師は資産問題の相談相手になれるのか?ところで高齢者が資産問題を相談する相手は、銀行、法律家、そして医者なのだそうだ(なぜ医者かと疑問ながら)。このごろでは、後見制度に関するセミナーが盛んである。主催は、この銀行や法律系が多い。ところが、その説明をよく聞いてみると問題も感じる。一言でいえば、のれんの力で不都合な説明を隠し、高齢者をその気にさせているのではないかとすら思える。遺産問題など本来は子供たちに相談するのが先決だろう。ところがそれ以前に、こうしたセミナーに参加して、その考えをしっかり受け入れている高齢者は少なくないようだ。医師が本当に資産問題の相談相手と思われているならば、この種の相談ごとは近い将来に増えるかもしれない。とくに軽度認知障害やそれ以前の人、あるいはそのお子さん達からである。けれどもわれわれの多くにとっては、これは専門外の領域である。こうした分野で経験深い人にどうしたらいいかと尋ねてみた。要は、「親子の絆さえしっかりしていれば、制度に頼る必要はない。親子で真剣に向き合って話し合い完結させるべきだ」と彼は述べた。私のクリニックでは最近、認知症になった人の遺産相続に関わる裁判沙汰が多い。これらに関わる時、もし早い時期にそうした話し合いが行われていたら、骨肉の争いはなかったろうにと、思う。

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薬局の零売「処方箋なしで買える」「病院に行くより安い」はNG【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第95回

医療用医薬品には「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」がありますが、処方箋医薬品以外の医療用医薬品とは名ばかりで、実際に処方箋なしで販売している薬局は多くはないでしょう。薬剤師になったばかりの頃は「なんで処方箋なしで売らないんだろう?」「処方元との関係が悪くなるから?」と疑問に思ったものです。最近では、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売を積極的に行っている薬局が増え、「処方箋応需以外の売り上げが得られるノウハウを伝授します!」などのコンサルティング活動も目にするようになってきました。これらに関して、薬局における処方箋医薬品以外の医療用医薬品の処方箋なしの販売(いわゆる零売)の方法や不適切な表現を周知する通知が厚生労働省から2022年8月5日に出されました。結論から言ってしまうと、今回の通知によって大きくルールが変わったわけではなく、実質的にやってはいけないということを強調する内容となっています。この通知の冒頭には、「薬局医薬品通知の趣旨を逸脱した不適切な販売方法が散見される」と記載されていて、不適切な販売方法や表現に対しては都道府県から指導するという注意喚起だと思われます。では、不適切な表現とはどういったものなのでしょうか。通知には、以下のような例が挙げられています。「処方箋がなくても買える」「病院や診療所に行かなくても買える」「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」「時間の節約になる」 「医療用医薬品をいつでも購入できる」 「病院にかかるより値段が安くて済む」思わず薬局に入ってしまいそうな魅力的なフレーズですが、このようなキャッチーな広告が目に余って規制の必要性を感じたのでしょう。この通知の背景として、ある医師団体からクレームがあったという噂を耳にしますが、「法律上は可能だけれど、実質的に販売してはいけない」というのは、患者さんの理解も得られにくく、医療へのアクセスが悪くなるのでどうなのかなとも思います。処方薬と同様にお薬手帳の活用、フォローアップも求められるでは、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、どのようなときに販売可能なのか確認してみましょう。通知には、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は「処方箋医薬品と同様に、医療用医薬品として薬剤師などに使用されることを目的とする」「処方箋に基づく薬剤師による交付が原則である」「医療において用いられることが前提である」と、積極的に行うものではないという記載があちこちに散りばめられています。それでも処方箋なしで販売する場合は、まず同様の効能効果を有する一般用医薬品を販売するか、その在庫がない場合は他薬局を紹介するなど、一般用医薬品の使用を勧めます。さらにそれでも処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売せざるを得ない場合に、受診勧奨を行ったうえで、使用者本人に必要最低限の数量を販売し、販売記録を作成します。今回の通知では、お薬手帳の活用、薬剤使用期間中のフォローアップ、販売手順書の作成も求められています。処方箋による交付と同じように対応しなければならないということですね。今回の通知でいわゆる零売は少し落ち着くのではないかと思いますが、日本薬剤師会より出された2022年版の政策提言には、「医療用一般用共用医薬品(仮称)類型の創設」という項目がありました。医師と薬剤師の両者で患者対応を行う一般用医薬品の新たな類型ですが、そちらの議論もひと悶着あるだろうことは容易に想像できます。

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英語で「息苦しさはありますか」は?【1分★医療英語】第42回

第42回 英語で「息苦しさはありますか」は?I have a lot of phlegm in throat and cough.(痰や咳がよく出ます)Do you have a fever or trouble breathing?(熱や息苦しさはありますか?)《例文》医師Please call our office or emergency room immediately if you experience trouble breathing.(もし呼吸苦が出てきた場合は、私の[クリニック]オフィスまたは救急外来にすぐ連絡してくださいね)患者Okay, thank you very much for today.(分かりました、今日はありがとうございました)《解説》今回は患者さんとの会話でよく使われる「~に問題があります(~がよくできません)」ですが、これは簡単な表現の“have trouble ~ing”で表すことができます。“have trouble breathing”(呼吸が苦しい)以外にも、“have trouble seeing at night”(夜になるとよく見えない)、“have trouble falling asleep”(よく寝付けない)などシチュエーションに合わせてさまざまな言い方が可能で、かつ文法も簡単で使い勝手が良く、とても便利です。ややカジュアルなので、口語表現として使われることが多いです。「呼吸苦」のその他の表現もお伝えしましょう。非医療者、医療者間どちらでも通じる表現として“shortness of breath”がよく使われます。“Do you have shortness of breath?”(呼吸苦がありますか?)と口語的に使うこともあれば、カルテ上に略語として“SOB (Shortness Of Breath)”と記載されることも多いです。正式な医療用語としては“dyspnea”となりますが、医療者以外には通じません。カルテやレポートなどのフォーマルな際に使われることが多い印象です。“have trouble ~ing”と「呼吸苦」のさまざまな表現方法をマスターしてください。講師紹介

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第126回 リバウンド患者へのPaxlovid2回目投与の試験をFDAがPfizerに命じた

ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)服用後の新型コロナウイルス感染(COVID-19)再発(リバウンド)への同剤2回目投与の試験実施を米国FDAがPfizer(ファイザー)に命じました1-3)。そのリバウンドは先月末に米国のバイデン大統領に生じたことで注目を集めました。バイデン大統領は先月21日にCOVID-19検査で陽性となり、パキロビッドパック服用の甲斐あってその翌週26日に陰性となりました。しかしその4日後の7月30日土曜日の朝に抗原検査で再び陽性4)となって2回目の隔離に身を置き、今月6日に晴れて陰性となってリバウンドを脱しています5)。米国の感染症対策の医学顧問Anthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もバイデン大統領と同様にパキロビッドパック治療後のCOVID-19リバウンドを被っています。入院や死亡を減らすことが分かってからパキロビッドパックは高リスクCOVID-19患者への引く手あまたな薬となってMerck & Co(メルク)のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を大きく引き離しました。しかし頼みの綱の薬であるパキロビッドパック治療後の感染や症状の再発がこの春ぐらいから結構な数の患者に認められるようになります。そのようなCOVID-19リバウンドが広く報じられたことや医師がすでに裁量でパキロビッドパックの2回目を処方し始めていることを受けて米国FDAは5月からファイザーと同剤の再投与を検討する臨床試験について協議を始め6)、今回ファイザーにその試験の実施を命じました。ファイザーはパキロビッドパック治療後のCOVID-19リバウンド患者への同剤5日間再投与のプラセボ対照試験を実施し、その結果を来年2023年9月末までに米国FDAに提出する必要があります。試験の仕様は今月中に固まる予定であり、詳細が決まったら公表するとファイザーの広報担当者は言っています2)。ファイザーによるとパキロビッドパックの臨床試験でのリバウンド発生率はおよそ2%ですが、米国・オハイオ州ケースウエスタンリザーブ大学の研究者Rong Xu氏等が最近発表した解析ではもっと多くに生じています。Xu氏等のその調査結果によると、米国全域の9千万人超の電子カルテから同定したパキロビッドパック服用患者11,270人の1ヵ月以内のCOVID-19リバウンド発生率は約5%(5.40%)でした7)。メルクのラゲブリオ服用患者にもリバウンドは生じており、1ヵ月以内のその発生率は約9%(8.59%)です。ラゲブリオでのリバウンド発生率は一見パキロビッドパックより高めですが、ラゲブリオ投与患者はより高齢で持病がより多く、補正解析ではパキロビッドパックと有意差はありませんでした。ラゲブリオとパキロビッドパックのどちらでも発生率に有意差なく認められていることからリバウンドは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が体内に居続けていること(persistent viral infection)と関連するのかもしれないと著者は推定しています。もちろんリバウンドは未治療の患者にも生じます。ACTIV-2/A5401試験のプラセボ投与患者568人を調べた今月初めの報告では外来の未治療COVID-19患者のおよそ8人に1人(12%)にウイルスリバウンド(SARS-CoV-2 RNAが0.5 log10以上上昇)が認められています8)。また4人に1人以上(27%)は最初の症状改善後の症状のリバウンドを被っていました。SARS-CoV-2 RNA上昇と症状のリバウンドの併発は稀でした。COVID-19リバウンドの仕組みの研究やその予防のための投与手段が必要であり7)、FDAから要請を受けてファイザーが新たに実施する試験はそれらの検討に役立つでしょう。参考1)EUA 105 Pfizer Paxlovid LOA 08052022 / FDA 2)Pfizer to Test Second Paxlovid Course in Patients With Covid Rebound / Bloomberg3)FDA asks Pfizer to test second Paxlovid course in patients with COVID rebound / Reuters4)physician to the president / The White House5)Press Briefing by Press Secretary Karine Jean-Pierre / The White House6)Emergency Use Authorization (EUA) for PAXLOVID Center for Drug Evaluation and Research Review Memorandum / FDA7)COVID-19 rebound after Paxlovid and Molnupiravir during January-June 2022. medRxiv. June 22, 2022.8)Viral and Symptom Rebound in Untreated COVID-19 Infection. medRxiv. August 02, 2022

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コロナvs.インフル、年齢別死亡リスクを比較/奈良医大

 新型コロナウイルスのオミクロン株は、デルタ株と比較して重症化リスクが低下したとされ、季節性インフルエンザとの臨床経過を比較することへの関心が高まっている。奈良県立医科大学は、8月4日のプレスリリースで、同大学の野田 龍也氏らによる、日本における季節性インフルエンザとオミクロン株流行期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による人口1,000万人当たりの年間死亡者数について、複数の公開データベースを用いて年齢別に比較した研究を発表した。その結果、70歳以上の高齢者ではCOVID-19による年間死者数が有意に多かったのに対して、20~69歳では、COVID-19の年間死亡者数のほうがインフルエンザのよりも多いものの、その差が小さかったという結果が得られたという。なお本研究は、日本臨床疫学会発行のAnnals of Clinical Epidemiology誌オンライン版2022年8月3日号に早期公開された。インフルエンザと新型コロナの死亡者数の差は69歳以下では大きくない 本研究では、オミクロン株が主流となった2022年1月5日~7月5日の26週間、および高齢者のワクチン接種が80%を超えた2022年3月30日~7月5日の14週間におけるCOVID-19関連の年齢別死亡者数を、厚生労働省の公開データベースから特定されている。COVID-19関連の累計死亡者数は、26週間で1万3,756例だった。COVID-19の第6波の流行期の死亡者数を基に、その流行期と同水準の死亡者数が1年間にわたり発生するという想定で年間死亡者数が推計されている。 一方、新型コロナパンデミック以前は、国内での季節性インフルエンザによる毎年の累積推計受診者数は約1,200万人であったが、新型コロナ流行以降は受診者数が大きく減少している。そのため本研究での季節性インフルエンザ関連の年齢別死亡者数は、新型コロナパンデミック以前の2017年9月1日~2019年8月31日の期間、厚生労働省が構築しているレセプト情報・特定健診等情報データベースから、COVID-19による1,000万人当たりの年齢別年間死亡者数と比較対象となる数値が算出されている。同期間でのインフルエンザ関連の累計死亡者数は2万2,876例だった。 季節性インフルエンザと新型コロナの年間死亡者数について比較した主な結果は以下のとおり。・COVID-19の26週間における分析では、1,000万人当たりの年齢別年間死亡者数をCOVID-19とインフルエンザで年齢別に比較すると、最小値は共に10~19歳で11例vs.15例(死亡者数の差:-5、95%信頼区間[CI]:-16~7)、最大値は共に80歳以上で1万7,192例vs.7,531例(同:9,661、95%CI:9,285~1万36)となった。・COVID-19の26週間における分析では、1,000万人あたりの年齢別年間死亡者数0~9歳ではCOVID-19のほうがインフルエンザよりも30例少なく、10~29歳ではその差が不確実だった。30~69歳では、COVID-19による死者数のほうが20~439例多くなり、70歳以上では1,951~9,661例多くなっていた。・高齢者のコロナワクチン3回目接種率が高かった2022年3月30日以降14週間における分析でも、おおむね26週間の分析と類似の結果が得られた。 研究チームは本結果について、インフルエンザ関連の死亡者数は、レセプトの特性上、院外死亡のケースが計上されない可能性があるが、COVID-19では院外死亡例も多くが把握されやすいといった理由から、COVID-19の年間死亡者数が多めに算出されやすいとしている。しかしその想定下でも、新型コロナとインフルエンザの年間死亡者数の差は、69歳以下では大きいものではなく、70歳以上で有意に大きかったため、高齢者を優先した感染対策が重要となることが示唆されている。

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低血圧+低BMI+非HDL-C低値で認知症リスク4倍

 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の3要素が組み合わさるほど認知症リスクが増大することを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのMelina Ghe den Brok氏らが報告した。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値はそれぞれ認知症のリスク因子として知られているが、これらが相加的なリスク因子であるかどうかは不明であった。Neurology誌オンライン版2022年8月2日号掲載。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値は認知症リスクが大幅に高い 本調査は、認知症予防を目的とした介入試験であるPrevention of Dementia by Intensive Vascular Care(preDIVA)試験の拡張フォローアップの事後解析として行われた。対象は、オランダの総合診療施設に登録されている70~78歳の非認知症の地域住民であった。ベースラインの低収縮期血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を、Cox回帰分析を用いて評価した。 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を分析した主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.3年(四分位範囲[IQR]:7.0~10.9年)の間で、2,789例中308例(11.0%)が認知症を発症し、793例(28.4%)が死亡した。・低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の各リスク因子の最低五分位の人では、認知症の発症リスクが高かった。・リスク因子を有さない人と比較して、リスク因子を1つのみ有する人の調整ハザード比(aHR)は1.18(95%信頼区間[CI]:0.93~1.51)、2つ有する人のaHRは1.28(95%CI:0.85~1.93)、3つすべて有する人のaHRは4.02(95%CI:2.04~7.93)であった。・これらの結果は、リスク因子の特定の組み合わせによるものではなかった。 著者らは、「3つのリスク因子を有する人では、認知症の発症リスクは大幅に高かった。これは、個々のリスク因子の独立した影響ではなく、複数のリスク因子が包括的に関与する現象の可能性がある」と述べている。

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アテゾリズマブによるNSCLCアジュバントのOS中間解析(IMpower010)/WCLC2022

 完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)におけるアテゾリズマブの術後補助療法を評価した第III相非盲検試験IMpower010の全生存期間(OS)の中間解析が発表された。PD-L1≧1%のStage II〜IIIA集団において、アテゾリズマブはBSCよりも良好な傾向を示した。IMpower010のOS中間解析はPD-L1≧1%でアテゾリズマブが良好 中間解析でアテゾリズマブの術後補助療法はStage II~IIIAの無病生存期間(DFS)を有意に改善に改善した。しかし、前回の中間分析の時点ではOSは未達成であった。世界肺学会(WCLC2022)では、OSと安全性の評価がスペイン・Vall d’Hebron大学病院のE.Felip氏から発表された。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStage IB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクルまたは1年・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団、(2)Stage II~IIIA全集団、(3)ITT(Stage IB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% Stage II~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS IMpower010のOS中間解析の主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は45.3ヵ月であった(データカットオフ2022年4月18日)。・PD-L1 TC≧1%のStage II~IIIA集団におけるOS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群とも未到達、36ヵ月OSはそれぞれ82.1%と78.9%であった(HR:0.71、95%CI:0.49~1.03)・全無作為化集団(Stage II〜IIIA)のOS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群とも未到達(HR:0.95、95%CI:0.74〜1.24)であった。・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でアテゾリズマブが良好であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L1≧50%のHRは0.43(95%CI:0.49~10.78)、1~49%のHRは0.95(95%CI:0.59~1.54)、PD-L1<1%のHRは1.36(95%CI:0.93~1.99)であった。・追跡期間を追加しても安全性プロファイルに変化はなかった。

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不安症・強迫症・PTSDの薬物治療ガイドライン(WFSBP)第3版:強迫症・PTSD編

 ドイツ・University Medical Center GottingenのBorwin Bandelow氏らは、2002年に発行(2008年改訂)された、世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)タスクフォースによる不安症・強迫症・PTSDの薬物治療のためのガイドライン第3版に関する報告を行った。本論文(パート2)では、強迫症およびPTSDの治療について、認知行動療法(CBT)と薬理学的治療が効果的であると報告している。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 22ヵ国を代表する34人の国際的専門家で構成されたコンセンサスパネルにより、治療の有効性および受容性に基づき推奨事項が作成された。第3版では、薬物治療に限らず心理療法やその他の非薬理学的介入についても、薬物治療の標準的な評価と同様の厳格な方法を適用し、評価を行った。 主な内容は以下のとおり。・本論文(パート2)には、小児、青年、成人を対象とした公開済みのランダム化比較試験(RCT)(強迫症:291件、PTSD:234件)に基づき、強迫症およびPTSD治療に関する推奨事項を含めた。・パート1(https://www.carenet.com/news/general/carenet/54902)には、不安症治療に関する推奨事項が含まれている。・強迫症治療の第1選択は、SSRIとCBTが推奨される。・オンラインCBTにおいても、アクティブコントロールより優れた結果が得られていた。・第2選択薬として、クロミプラミンを含むいくつかの薬剤が使用可能である。・治療抵抗性強迫症では、SSRI治療に抗精神病薬や他の薬剤による増強療法を行うなど、いくつかの選択肢がある。・反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法や深部脳刺激(DBS)療法などを含む他の非薬理学的治療についても評価された。・PTSD治療では、SSRIおよびSNRIであるベンラファキシンが第1選択薬として推奨される。・最も優れたエビデンスを有する心理療法はCBTである。・治療抵抗性PTSDでは、SSRI治療に抗精神病薬による増強療法を行うことが、選択肢の1つとなりうる可能性が示唆されている。

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