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出張血管内治療方式では血栓回収術を開始するまでの時間が大幅に短縮された(解説:高梨成彦氏)

 急性期脳梗塞患者を1次脳卒中センターから血栓回収術が可能な施設へ搬送する群(transfer group)と、治療チームを1次脳卒中センターに空輸する群(flying team group)において、治療に要する時間と機能予後を比較した試験である。2つの医療システムを比較するには地域の特性に影響されることが免れないが、同一地域で1週間ごとにシステムを変えることでこれを可能にしている。 結果としてflying team groupにおいて治療方針の決定から穿刺までの時間が短く(58分 vs.148分)、また発症から再開通までの時間も短く(243分 vs.340分)、いずれも大きな差がついた。再開通率と合併症率には差がなかった。また事後解析の結果であることに留意する必要があるが、機能予後改善効果はflying team groupで高かった。flying team groupにおいて治療開始までの時間が短いことが予後の改善につながっている可能性があり、治療医が出張して血栓回収を行う方式の有効性が示唆される。 報告の本旨からは外れるが、flying team groupは試験期間中に治療を担当した医師の人数が少なく済んでおり(5 vs.19)、オンコール当番医の負荷を減らす効果もあるかもしれない。 本邦でも包括的脳卒中センター、血栓回収脳卒中センター、1次脳卒中センターの整備が進められている。各センターの間で連携する方法を構築するに当たって、今回の結果は考慮する必要があるだろう。

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2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」【下平博士のDIノート】第99回

2種のIL-17を直接阻害する乾癬治療薬「ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター」提供:ユーシービージャパン(2022年4月現在)今回は、ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤「ビメキズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター、製造販売元:ユーシービージャパン)」を紹介します。本剤は、乾癬の症状の原因となる炎症性サイトカインIL-17AとIL-17Fを選択的かつ直接的に阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年1月20日に承認され、同年4月20日から発売されています。なお、次のいずれかを満たす患者に投与されます。光線療法を含む既存の全身療法(生物製剤を除く)で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者。難治性の皮疹または膿疱を有する患者。<用法・用量>通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射します。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射可能です。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、口腔カンジダ症(13.2%)、鼻咽頭炎(5.1%)、毛包炎(1.7%)、上気道感染(1.5%)、中咽頭カンジダ症(1.2%)、咽頭炎・結膜炎(1.1%)などでした。また、重大な副作用として、重篤な感染症、好中球数減少(各0.5%)、炎症性腸疾患(0.1%未満)、重篤な過敏症反応(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の症状の原因となる炎症性物質の働きを抑えることで皮膚の炎症などの症状を改善します。2.薬の使用により感染症にかかりやすくなる場合があるので、発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合には、医師にご連絡ください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.口腔内や舌の痛み、白い苔のようなものが付着する、味覚がおかしく感じるなどの症状が現れた場合には、医師にお申し出ください。5.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選びましょう。高温や長時間の入浴によりかゆみが増すことがあるので、温度はぬるめにして長い入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売され乾癬に適応を持つ生物学的製剤は、本剤と同様にIL-17Aの作用を阻害するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)、イキセキズマブ(同:トルツ)およびブロダルマブ(ルミセフ)、IL-23阻害薬のグセルクマブ(トレムフィア)、リサンキズマブ(スキリージ)、ウステキヌマブ(ステラーラ)、チルドラキズマブ(イルミア)、TNF阻害薬のアダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)およびセルトリズマブ ペゴル(シムジア)などがあります。本剤の特徴は、IL-17Aに加えてIL-17Fにも結合することです。乾癬の病態において、IL-17AとIL-17Fはそれぞれ独立して炎症を増幅すると考えられているため、両方を直接阻害することで、強力な炎症抑制効果が期待できます。また、16週以降の投与間隔は8週間隔、患者さんの状態に応じて16週以降も4週間隔を選択することができます。安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。投与に際しての安全上の留意点については、日本皮膚科学会「乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2018年版)」「ビメキズマブ使用上の注意」等で参照できると思います。本剤には2種類の剤形(シリンジ、オートインジェクター)が存在しますが、2022年6月時点においては医療機関で投与が行われます。薬局では感染症や口腔カンジダ症の兆候がないか聞き取り、必要に応じて生活上のアドバイスを伝えるなど、治療中の患者さんをフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/ビンゼレックス皮下注160mgオートインジェクター2)UCB Japan 医療関係者向けサイト

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ブリッツァー それはドイツ路上の殺し屋【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第14回

アウトバーンのイメージが強いせいか、「ドイツでは自動車はスピード出しまくってる」イメージがありました。しかし、ドイツでは実際、一般道を走る自動車は法定速度をキッチリ守っています。かなりスピード出す人もいなくはないですが、日本に比べるとレアでした。その理由は「ブリッツァー」と呼ばれるオービスが至る所に仕掛けられているからです。これがブリッツァーです。今写真で観ただけでも動悸がします…。こいつらは人間でないため、何の融通も効きません。10km/hのオーバーで赤い目が光ります。そして後日、自宅に罰金とポイント減点の通知が届きます。光った瞬間は恐怖です。今思い出してもゾワっとします。目の前に赤い線のようなものがピカッと光ります(このような「閃光」をドイツ語で“Blitz”と言うので、こいつらは「ブリッツァー」と呼ばれています)。初めてやられたときは何が起こったかはわからなかったのですが、尋常じゃないことが起きたことは理解できました。ドイツでの交通違反の代償スピード違反での罰金は日本円で15,000円くらいだったと思います。実は車を購入して最初の1ヵ月で、4回ブリッツァーを光らせてしまいました。罰金も大変痛かったのですが、減点を食らったことが本当に辛かったです。マイナス8点で免停だったので、このペースだと2ヵ月で免停になってしまう…。車無くして生活が成り立たない田舎でしたので、それはそれはショックが大きかったです。もうドイツで暮らしていく自信がなくなって、日本に帰ろうと思ったこともありました。そんなある日、病棟で患者さんに採血するときの雑談でその悩みを打ち明けたら、隣のベッドのおじさんが、オービスが設置されている場所を示した地図が掲載されてあるサイトを教えてくれました。その後、車で出かける際に必ずそのサイトを確認してから出かけるようにして、以降は一度もBlitzされることはありませんでした。日本から遊びに来た友人も、数人レンタカーでBlitzされています。ドイツで車に乗る際は、制限速度にくれぐれも注意してください。ブッ飛ばしていいのはアウトバーンだけです!

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英語で「軟膏」は?【1分★医療英語】第31回

第31回 英語で「軟膏」は?My skin rash really bothers me.(発疹に悩まされています)Apply this ointment to the affected area.(患部にこの軟膏を塗ってください)《例文1》How do I use the ophthalmic ointment?(眼軟膏はどのように使えばいいですか?)《例文2》This topical ointment is used for a skin infection.(この外用軟膏は皮膚感染症に使われます)《解説》“Topical agents”(外用薬)の中で、“cream” “lotion” “gel”は日本語でもカタカナでそのまま使われていますが、軟膏は“ointment”(オイントメント)と表現します。塗るという動詞は“apply”を使います。“ointment”には英語特有の破裂音である“t”が2回出てくるので、発音も練習してみてください。さらに、眼軟膏“ophthalmic ointment”となると、さらに発音難易度がアップします。「アフサルミック・オイントメント」と、破裂音の連発に加えて“th”や“l”が発音しにくく、しかもその“thal”の部分にアクセントが来ます。ただ、患者さんに対しては“eye ointment”と言えばよいのでご安心ください。「患部」は“affected area”、つまり「影響を受けた部位」と表現します。こちらもよく使う表現なので、覚えておくと役立ちます。講師紹介

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第115回 COVID-19入院患者の生存が関節リウマチ薬で改善

関節リウマチの治療でよく知られる免疫調節薬2つ・J&J社のTNF 阻害薬・インフリキシマブ(infliximab)やBristol Myers Squibb社のCTLA-4活性化薬・アバタセプト(abatacept)が米国国立衛生研究所(NIH)主催のプラセボ対照無作為化試験(ACTIV-1 IM試験)でどちらも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の死亡を減らしました1)。COVID-19患者の免疫系は炎症を誘発するタンパク質を悪くすると過剰に解き放ち、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、その他の死に至りうる合併症を招くことがあります。ACTIV-1 IM試験はそういう過度の免疫を抑制しうる薬剤で中等~重度COVID-19入院成人の回復が改善するかどうかや死亡を減らせるかどうかを調べることを目的として実施されました。NIHの舵取りのもとでCOVID-19治療/ワクチンの開発促進を目指す産官学の提携(ACTIV) の一環として2020年10月に始まった2)ACTIV-1 IM試験の被験者はいつもの治療に加えて免疫調節薬幾つかの1つまたはプラセボを投与する群に割り振られました。ほとんどの被験者にはいつもの治療としてステロイド・デキサメタゾンやギリアド社の抗ウイルス薬・レムデシビル(remdesivir)が投与されました。デキサメタゾンはおよそ85%、レムデシビルは約90%の被験者に投与されています。退院を指標とする回復までの期間が主要転帰(プライマリーエンドポイント)で、両剤ともその改善傾向をもたらしたものの残念ながらプラセボとの差は有意ではありませんでした。しかしながらより深刻で究極の転帰・死亡率の低下を両剤のどちらももたらしました。インフリキシマブ投与群518人の死亡率は10%、プラセボ群519人の死亡率は約15%(14.5%)であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群より率にして約41%(40.5%)少なくて済んでいました。アバタセプトも同様で、その投与群509人の死亡率は11%、プラセボ群513人の死亡率は15%であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群に比べて率にして約37%(37.4%)少なくて済んでいました。もう1つの試験薬cenicriviroc(セニクリビロック)は残念ながら無効で、同剤投与群への被験者組み入れは去年9月に打ち切りとなっています。cenicrivirocはAbbVie社の開発段階のCCR2/CCR5阻害薬です。インフリキシマブやアバタセプトと同様にCOVID-19入院患者の死亡を減らすことが試験で示されているEli Lilly社の免疫調節薬・バリシチニブ(baricitinib)は重度以上のCOVID-19患者に使用すべき治療選択肢の一つとすることが世界保健機関(WHO)のガイドラインですでに強く推奨されています3)。レムデシビルやデキサメタゾンなどのいつもの治療に加えて投与することで死亡率のかなりの低下が見込めるインフリキシマブやアバタセプトもCOVID-19入院患者の治療選択肢に仲間入りしうるとACTIV-1 IM試験のリーダーWilliam Powderly氏は言っています1)。参考1)Immune modulator drugs improved survival for people hospitalized with COVID-19 / NIH2)NIH Begins Large Clinical Trial to Test Immune Modulators for Treatment of COVID-19 / NIH3)Agarwal A,et al.. BMJ. 2020 Sep 4;370:m3379

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コロナワクチン3回接種者は感染しても他人にうつしにくい!?

 新型コロナウイルスのブレークスルー感染が新型コロナの蔓延に大きく寄与する可能性があるかどうかについてのデータは限られている。そこで、韓国・ウルサン大学のJiwon Jung氏らは新型コロナワクチンの3回接種を終えた完全接種者(ブレークスルー感染群)と1~2回接種の部分的接種/未接種者(非ブレークスルー感染群)の新型コロナの他人へ感染を広げる(2次感染)割合やウイルス排出動態に関するコホート研究を実施した。その結果、 初期のゲノムウイルス量はワクチン接種者とワクチン未接種者の間で類似していたが、完全接種者のブレークスルー感染群では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示された。JAMA Network Open誌2022年5月2日号掲載の報告。ブレークスルー感染群のほうが2次感染率は有意に少ない 本研究は 2次感染率に関する試験とウイルス排出動態試を実施するために、2020年3月1日~2021年11月6日の期間に入院または3次医療機関への受診で新型コロナと診断された医療従事者、入院患者、および介護者の疫学データを分析した。そのために新型コロナウイルスのゲノムRNAをPCRで測定し、2021年7月20日~8月20日に韓国・ソウル市にある施設で分離されたデルタ変異株に感染した新型コロナ軽症例の唾液サンプルのウイルス培養を毎日行った。  コロナワクチンの3回接種を終えたブレークスルー感染群と部分的接種/未接種者の新型コロナの他人へ感染を広げる割合やウイルス排出動態に関する研究を実施した主な結果は以下のとおり。・新型コロナ感染者173例(年齢中央値[IQR]:47歳 [32~59歳]、女性:100例[58%])が2次感染率の試験に含まれた。彼らに感染歴はなく、50例(29%)がブレークスルー感染だった。 ・院内での2次感染率は、ブレークスルー感染群のほうが非ブレークスルー感染群よりも有意に少なかった(43例中3例[7%]vs. 110例中29例[26%]、p=0.008)。・ウイルス排出動態試験では、デルタ変異体に感染した45例(年齢中央値:37歳[IQR:25~49歳]、女性14例[31%])が含まれ、そのうち6例(13%)は完全接種、 39例(87%)は部分的接種/未接種だった。・初期ゲノムウイルス量は2群間で同等だったものの、細胞培養での生存ウイルスは完全接種者(症状発症後4日間)のものと比較して、部分的接種者(同8日間)とワクチン未接種者(同10日間)のもので著しく長い期間検出された。 研究者らは「本研究データは、新型コロナワクチンでもブレークスルー感染の可能性があるにせよワクチン接種はウイルス蔓延を制御するのに非常に有用であるという重要な証拠を提供する」としている。

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F1CDx 、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。 下線部が今回の追加適応・活性型EGFR遺伝子変異非小細胞肺がん:アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物・EGFRエクソン20 T790M 変異:オシメルチニブメシル酸塩・ALK融合遺伝子:アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ・ROS1融合遺伝子:エヌトレクチニブ・METエクソン14スキッピング変異:カプマチニブ塩酸塩水和物・BRAF V600Eおよび V600K変異:悪性黒色腫 ダブラフェニブメシル酸塩、トラメチニブジメチルスルホキシド付加物、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、ビニメチニブ・HER2遺伝子増幅陽性乳がん:トラスツズマブ・KRAS/NRAS野生型結腸・直腸がん:セツキシマブ、パニツムマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性結腸・直腸がん:ニボルマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん:ペムブロリズマブ・腫瘍遺伝子変異量高スコア固形がん:ペムブロリズマブ・NTRK1/2/3融合遺伝子固形がん:エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ硫酸塩・BRCA1/2遺伝子変異卵巣がん:オラパリブ・BRCA1/2遺伝子変異 前立腺がん:オラパリブ・FGFR2融合遺伝子 胆道がん:ペミガチニブ

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世界の健康維持に必要な人的資源、医師は640万人不足か/Lancet

 2019年の世界の医師密度は人口1万人当たり約17人、看護師・助産師の密度は約39人と、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC:すべての人が適切な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)の達成に要する、健康のための人的資源(HRH)としては不十分で、医師は640万人、看護師・助産師は3,060万人が足りておらず、今後、世界の多くの地域で保健人材の拡充を進める必要があることが、米国・ワシントン大学のAnnie Haakenstad氏らGBD 2019 Human Resources for Health Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年5月23日号で報告された。GBD研究の一環の系統的解析 研究グループは、比較可能で標準化されたデータ源を用いて世界のHRH密度を推定し、HRHの中核となる最小限の保健人材とUHCの有効なカバレッジの遂行能力との関係を評価する目的で、「世界の疾病負担(GBD)研究」の一環として系統的な解析を行った(Bill & Melinda Gates財団の助成を受けた)。 国際労働機関(ILO)とGlobal Health Data Exchangeのデータベースを用いて、労働力調査から1,404ヵ国年のデータと、国勢調査から69ヵ国年のデータが特定され、医療関連の雇用に関する詳細なマイクロデータが収集された。また、世界保健機関(WHO)のNational Health Workforce Accountsから2,950ヵ国年のデータが同定された。 すべての職業コーディングシステムのデータを、国際標準職業分類1988(ISCO-88)にマッピングすることで、全時系列で医療従事者の16項目のカテゴリーについて、その密度の推定が可能となった。 204の国と地域のうち196(GBDの7つの広域圏と21の地域を網羅)の1990~2019年のデータを用い、時空間ガウス過程回帰(ST-GPR)を適用することで、1990~2019年のすべての国と地域のHRH密度がモデル化された。 また、UHCの有効カバレッジインデックスと、持続可能な開発目標(SDG)の指針3.c.1のHRHにかかわる保健人材の4つのカテゴリー(医師、看護師・助産師、歯科医師等[歯科医、歯科衛生士等(dental assistants)]、薬剤師等[薬剤師、pharmaceutical assistants])の密度との関係が、確率的フロンティアメタ回帰(SFM)でモデル化された。 UHCの有効カバレッジインデックスに関して、特定の目標の達成(100のうち80)に要する保健人材の最小限の密度の閾値が同定され、これらの最小閾値に関して国ごとの保健人材の不足分が定量化された。過小評価の可能性を考慮 2019年に、世界には1億400万人(95%不確実性区間[UI]:8,350万~1億2,800万)の保健人材が存在し、このうち医師が1,280万人(970万~1,660万)、看護師・助産師が2,980万人(2,330万~3,770万)、歯科医師等が460万人(360万~600万)、薬剤師等は520万人(400万~670万)であった。 2019年の世界の医師密度は、人口1万人当たり平均16.7人(95%UI:12.6~21.6)で、看護師・助産師は1万人当たり38.6人(30.1~48.8)であった。日本は人口1万人当たり、それぞれ23.5人(17.8~30.1)および119.2人(94.7~148.8)で、高所得国(それぞれ33.4人[26.9~41.0]および114.9人[94.7~137.7])の中では医師密度が低かった。 GBDの7つの広域圏のうち、サハラ以南のアフリカ(人口1万人当たりの医師密度2.9人[95%UI:2.1~4.0]、看護師・助産師密度18.3人[13.6~24.0])、南アジア(6.5人[4.8~8.5]、9.7人[7.3~12.8])、北アフリカ/中東(10.8人[8.0~14.3]、25.8人[19.6~33.5])でHRH密度が低かった。 UHC有効カバレッジインデックスの100のうち80の目標を達成するのに要する最小限の保健人材は、人口1万人当たり、医師が20.7人、看護師・助産師が70.6人、歯科医師等が8.2人、薬剤師等は9.4人であった。2019年に、この最小限の閾値の達成に不足していた保健人材数は各国の合計で、医師が640万人、看護師・助産師が3,060万人、歯科医師等が330万人、薬剤師等は290万人だった。 著者は、「中核となる保健人材の最小限の閾値は、人的資源を最も効率的にUHCの達成に結び付ける保健システムを基準としているため、実際のHRHの不足は推定よりも大きい可能性がある。この過小評価の可能性を考慮すると、UHCの有効カバレッジを向上させるには、多くの地域で保健人材の拡充を進める必要がある」としている。

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メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。4ヵ国の医師主導型無作為化第III相試験 MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~74歳、過去1年以内に診断されたT1~T3/N0~N3/M0(T1aN0とT1bN0を除く)の乳がんで、切除術後に標準的な術後補助療法を受けており、空腹時血糖値≦126mg/dLの患者であった。被験者は、メトホルミン(850mg、1日2回)またはプラセボを5年間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体[ER]またはプロゲステロン受容体[PgR]、あるいはこれら双方が陽性)例における無浸潤疾患生存とされた。無浸潤疾患生存は、無作為化の時点から、局所、領域、遠隔での浸潤性病変の再発、新規の原発性浸潤性病変(乳房または乳房以外)、死亡(乳がん、乳がん以外のがん、不明な原因)のうち、最も早く発現したイベントまでの期間と定義された。 また、8つの副次アウトカムのうち、3つ(全生存、遠隔無再発生存、乳がん無再発期間)の評価が行われた。中間解析で、ER/PgR陰性例での無益性を確認 3,649例(平均年齢52.4歳、女性3,643例[99.8%])が登録され、全例が解析に含まれた。2回目の中間解析で、ER/PgR陰性例における無益性が示されたため、主解析はER/PgR陽性例(2,533例)で行われた。ER/PgR陽性例の追跡期間中央値は96.2ヵ月(範囲:0.2~121)であった。 無浸潤疾患生存のイベントは、ER/PgR陽性例のうち465例で発現した。イベント発生率は、100人年当たりメトホルミン群が2.78と、プラセボ群の2.74と比較して有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.84~1.21、p=0.93)。また、死亡の発生率は、100人年当たりメトホルミン群が1.46、プラセボ群は1.32であり、全生存率にも両群間に差はなかった(1.10、0.86~1.41、p=0.47)。 一方、ER/PgR陰性例の追跡期間中央値94.1ヵ月の時点における無浸潤疾患生存イベントの発生率は、100人年当たりメトホルミン群が3.58、プラセボ群は3.60であった(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30、p=0.92)。全生存率にも差はなかった(0.89、0.64~1.23、p=0.46)。 また、ER/PgR陽性例における遠隔無再発生存率(HR:0.99、95%CI:0.80~1.23、p=0.94)、乳がん無再発期間(0.98、0.80~1.20、p=0.87)にも統計学的に有意な差はみられなかった。 なお、探索的解析では、ERBB2(以前はHER2またはHER2/neuと呼ばれた)陽性例で、無浸潤疾患生存率(HR:0.64、95%CI:0.43~0.95、p=0.03)および全生存率(0.54、0.30~0.98、p=0.04)が、メトホルミン群で有意に良好であった。 Grade3以上の非血液毒性が、メトホルミン群で高頻度に認められた(21.5% vs.17.5%、p=0.003)。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、高血圧(2.4% vs.1.9%)、月経不順(1.5% vs.1.4%)、下痢(1.9% vs.0.8%)であった。 著者は、「これらの知見を糖尿病患者へ外挿する際は、糖尿病と非糖尿病で代謝状態(たとえば、血糖コントロール、インスリン抵抗性、肥満)が異なるため注意を要する。また、メトホルミンは2型糖尿病に有効であるため、今回の結果は、乳がん患者における糖尿病治療薬としてのメトホルミンの使用には影響を与えないと考えられる」としている。

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統合失調症に対する抗精神病薬の治療継続の意義~メタ解析

 統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられており、急性期症状の軽減に有効であるとされている。2012年に公表された現在のレビューのオリジナルバージョンでは、統合失調症または統合失調症様障害の患者に対する抗精神病薬の再発予防効果について、ランダム化試験のエビデンスに基づき検討が行われた。イタリア・ASST Spedali CiviliのAnna Ceraso氏らは、寛解とリカバリー率、社会的機能やQOLの変化に着目したいくつかの新たな調査結果に焦点を当て、レビューの更新を行った。その結果、統合失調症患者に対する抗精神病薬による維持療法は、再発および再入院を予防するだけでなく、患者のQOLや機能、持続的な寛解にもベネフィットをもたらすことが示唆された。著者らは、抗精神病薬によるこれらの肯定的な効果は、副作用を背景として比較検討する必要があると報告している。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年5月12日号の報告。 レビューの更新には、1959~2017年に公表された75件のランダム化比較試験(RCT)より、9,145例を含めた。 主な結果は以下のとおり。・バイアスの潜在的ないくつかの原因により全体的な質は制限されたが、統合失調症の維持療法に対する抗精神病薬の有効性は、一連の感度分析に対して明確かつ堅牢であった。・抗精神病薬は、プラセボと比較し、1年後の再発予防(薬物療法:24%、プラセボ:61%、30 RCT、4,249例、RR=0.38、95%CI:0.32~0.45)および入院率減少(薬物療法:7%、プラセボ:18%、21 RCT、3,558件、RR=0.43、95%CI:0.32~0.57)に有効であった。・抗精神病薬治療患者では、QOL(7 RCT、1,573例、SMD=-0.32、95%CI:-0.57~-0.07)および社会的機能(15 RCT、3,588例、SMD=-0.43、95%CI:-0.53~-0.34)も良好であった。・少数の研究データに基づくものの、維持療法は症状寛解達成率(薬物療法:53%、プラセボ:31%、7 RCT、867例、RR=1.73、95%CI:1.20~2.48)を高め、その効果を6ヵ月間維持(薬物療法:36%、プラセボ:26%、8 RCT、1,807例、RR=1.67、95%CI:1.28~2.19)することが示唆された。・リカバリー率に関するデータはなかった。・抗精神病薬治療患者では、運動障害(薬物療法:14%、プラセボ:8%、29 RCT、5,276例、RR=1.52、95%CI:1.25~1.85)や体重増加(薬物療法:9%、プラセボ:6%、19 RCT、4,767例、RR=1.69、95%CI:1.21~2.35、NNTH=25、95%CI:20~50)などの副作用が認められる割合が高かった。

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第103回 「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院

<先週の動き>1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査7.コロナ感染拡大で特定健診、受診率が初めて減少/厚労省1.「モデルナアーム」女性の発症率は男性の5.3倍/自衛隊中央病院モデルナ製の新型コロナウイルスワクチン接種後に少し遅れて現れる腕の腫れや痛みについて、大規模調査により女性が男性よりも約5.3倍発症しやすいとわかった。また、30~60代では30歳未満の1~2倍発症しやすいという。自衛隊中央病院の東野 俊英皮膚科医長らの研究グループが2日発表した。論文はJAMAダーマトロジー誌オンライン版に掲載。同研究グループは2021年に開設された自衛隊東京大規模接種センターで、2回目の接種を受けた約5,900人を調査した。1回目の接種から6日目以降に、接種した部分に腫れや痛みなどがあったかを尋ねたところ、女性では約22%が、男性では約5%がモデルナアームを発症していた。接種を避ける必要があると思われる重い症状の報告はなかった。若い人のほうが発症しにくいという特徴はアレルギーの分類の一つ「IV型アレルギー」と似ており、発症メカニズムの解明や今後のワクチン開発につながる結果かもしれない。(参考)「モデルナアーム」の女性、男性の5倍 自衛隊調査(日経新聞)接種後に痛む「モデルナアーム」女性の発症率、男性の5.3倍と推計(毎日新聞)2.コロナ後遺症、1年後も1~3割に何らかの症状/アドバイザリーボード新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、診断から1年後も倦怠感や呼吸困難、睡眠障害など何らかの症状が残ることがわかった。厚労省の2つの研究班による調査結果が1日、「アドバイザリーボード」の会合で報告された。なお、オミクロン型の変異ウイルス流行以前の調査で、最近の傾向とは異なる可能性がある。日本呼吸器学会などの研究グループは、2020年9月~21年9月に入院した中等症以上のCOVID-19患者約1,000人を調査。患者の14%が退院から1年後も何らかの症状を訴えており、睡眠障害が10%、筋力低下が9%、息苦しさが6%に残っていた。慶応大学のグループは、20年1月~21年2月に入院した軽症以上のCOVID-19患者1,000人余りを調べた結果、診断から1年後に患者の3割超が症状を訴えた。疲労感が13%、呼吸困難が9%、筋力低下や集中力低下が8%だった。後遺症は41~64歳で多かった。後遺症については東京都も、都立・公社病院が受け付けた直近の電話相談の分析結果を公表している。オミクロン株流行期の1~4月に陽性となった2,039例の症状では、咳が最多の38.6%、倦怠感が34.0%であり、デルタ株以前(昨年3~10月の電話相談)の3,857例における咳22.2%、倦怠感26.0%から大きく増加した。このほか、栃木県などもコロナ後遺症の実態調査に着手したことを明らかにしている。(参考)コロナ後遺症、1年後も患者の1割超に 厚労省研究班(日経新聞)オミクロン、せき・倦怠感増 新型コロナ、都が後遺症分析―専門医「長期化の傾向」(時事通信)栃木県がコロナ後遺症の実態調査 1000人抽出、693医療機関も(下野新聞)3.宿日直許可未申請の病院は6割以上、1割は申請も許可下りず厚労省は、3日に社会保障審議会医療部会をオンラインで開催した。2024年4月から医師の時間外労働時間の上限規制が導入されるため、厚労省が病院を対象に施行に向けた準備状況(院内の医師の労働時間の把握体制や特例水準の指定取得の意向等)についての調査結果について議論した。年960時間を超える医師がいる529病院のうち宿日直許可を得ているのは、168病院(32%)で、残りの病院の244病院(44%)は宿日直許可を申請予定であり、ほかには申請したが許可が得られなかったと回答した医療機関が40病院あった。現時点で厚労省が時間外・休日労働時間を把握できている病院が4割程度のため、今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価は困難であるとされたが、今後、全国の医療機関に対して業務改善に向けた取り組みが求められる。(参考)宿日直許可、6割の病院が未申請 約1割が申請後に取得できず(CB news)医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査 調査結果(厚労省)資料 労働基準法の宿日直許可のポイント(同)4.DPC病院、参加数・病床数ともに増加、感染症対策の要件新設1日、厚労省は中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、2022年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況を公開した。前回の改定以降、DPC病院として新たに14病院が参加、5病院が退出し、2022年4月1日時点では1,764病院となった。また、DPC準備病院は新たに30病院が参加し、同時点では259病院。DPC算定病床総数は約48万床と前年度より約2,000床増加した。またDPC病院の医療提供体制への取り組みを評価する機能評価係数IIの見直しが行われ、6つの係数(保険診療、効率性、複雑性、カバー率、救急医療、地域医療)を基本的評価軸としている。今回の改定では新型コロナウイルス感染症対策に係る要件を新設するなど一部の見直しが行われ、各医療機関の診療実績に対して報酬に反映される方向となっている。(参考)DPC対象1,764病院に、「14増5減」4月時点(CB news)2022年度機能評価係数II内訳、自院と他院との比較が重要だが、「コロナ特例」の影響にも留意を—中医協(2)(Gem Med)資料 令和4年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況(厚労省)5.進まぬ病床再編、積み立て基金2,779億円の執行率は約4割政府が2日、「行政事業レビュー」に提出した資料で、病床再編基金の執行が4割にすぎないことが明らかになった。厚労省が地域医療構想の実現に向け、自主的な病床削減や病院統合による病床廃止を支援する目的で2014~20年度に積み立てた累計2,779億円の病床再編基金のうち、執行されたのは1,221億円(43.9%)だった。都道府県でもばらつきがあり、最も執行率が高い熊本県は83.4%、最低の愛知県は12.0%だった。厚労省は「地域関係者との協議に時間がかかり、新型コロナウイルス対応で協議が困難な事例もあった」としている。(参考)病床再編基金、執行率4割 行政事業レビューで公表(日経新聞)新たな病床機能の再編支援について(厚労省)行政事業レビュー(政府の行政改革)6.医療・福祉従事者増加、女性の労働力率も総じて上昇/2020年国勢調査総務省は、2020年に実施された国勢調査の結果、労働力率は男性が72.4%、女性が54.2%と、2015年に比べて共に上昇しており、女性の労働力率はすべての年齢階級で上昇していることを明らかにした。また「医療、福祉」に従事する者の割合は+1.0ポイントと最も上昇しており、産業別の割合では「製造業」(15.9%)、「卸売業、小売業」(15.8%)、「医療、福祉」(13.5%)の順だった。今後も医療・介護ニーズの増加に伴い、医療機関や福祉介護施設での就業者増加が見込まれる。また、出産や育児のため、30代を中心に働く女性が減る「M字カーブ現象」の解消が進んでいる。35~39歳で働く女性の比率は78.2%と、5年前に比べて5.2ポイント上昇していた。(参考)「医療、福祉」従事者の割合が上昇 総務省が国勢調査の就業状態集計結果概要を公表(CB news)30代女性「M字カーブ」解消進む 2020年労働力率上昇(日経新聞)資料 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計 結果の要約(総務省)7.特定健診の受診率、制度開始以来初めての減少/厚労省厚労省は、2020年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。その結果、特定健康診査の対象者約5,420万人のうち実施率は53.4%(受診者約2,890万人)と、2019年度と比較して2.2ポイント低下したことが明らかとなった。また、2020年度の特定保健指導の対象者は約522万人だったが、終了した者は22.7%(約119万人)と、2019年度と比較して0.5ポイント低下した。一方、メタボリックシンドロームの該当者および予備群は推計947万人で、前年度から28万人増えた。新型コロナウイルスの感染拡大などにより受診を控えた影響や、コロナ下の自粛生活で運動不足になった可能性がみられる。(参考)メタボ健診、初めて受診率が下がる コロナ禍影響で20年度は53%(朝日新聞)メタボ健診の受診率初低下、受診者100万人減…巣ごもりで「予備軍」は増加(読売新聞)資料 特定健診・特定保健指導の実施状況について(2020年度)(厚労省)

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有害事象報告のための可視化への動きが始まった(解説:折笠秀樹氏)

 臨床試験の有害事象はおよそ、群ごとに各事象の頻度と割合を示しているだけです。最後の表で示されていることが多いので、しっかり見ている人は少ないかもしれません。もっと注目してもらおうと、可視化(Visualization)への動きが高まっています。 英国の大学に所属する統計家を主に、コンセンサス会議が行われました。28種類の可視化を検討して、その中で10個を推奨することになったようです。 その多くはよく知られたものでした。棒グラフ、帯グラフ、折れ線グラフ、散布図、ドット・プロット、カプラン・マイヤープロットはよく見掛けます。それ以外にバイオリン・プロットとカーネル密度プロットが推奨されましたが、最近医学雑誌で見掛けたことがあります。統計ソフトのStata、R、SASなどでも描けるようになったみたいです。 カプラン・マイヤープロットというと、100%から下がるタイプしかありませんでした。がん治療の生命予後ならこれでよかったわけですが、循環器の心臓死なら、むしろ0%から上がっていく方式のほうが見やすいわけです。こうした持ち上がり型プロットが登場したのは、20年ほど前ではなかったでしょうか。統計ソフトもこれに対応するようになってきました。 可視化への動きは医学論文だけとは限りません。テレビや新聞などのマスメディアにおいても、視聴者や読者へ訴えかける手段として可視化には力を入れています。どういった解析法がよいかだけを考えるのが統計家の役目のように考えられてきましたが、この可視化についても統計家はもっと関与していくべきかもしれません。可視化に関する著書もたくさん出版されるようになってきました。最後に、可視化のカタログというサイトがあります(https://datavizcatalogue.com)。ぜひ見ておいてください。

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「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回

第40回 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??漫画・イラスト:かたぎりもとこ「知人の医師に売ることにしたので、御社に依頼する必要がなくなりました」私たちが医業承継サービスを提供していると、一定の頻度で、こうした一言を売り手側の先生から言われます。しかし一方で、少し時間が経つと、「知人との話が破談したので、相手探しを再開してほしい」という展開になることも、また多くあります。この連載でも繰り返しお伝えしているように、医業承継は専門性が高く、難易度の高い取り組みです。多くの方は「相手探しだけが難しく、これをクリアすれば後は引き継ぐだけ」と考えていますが、実際には相手探しに加え、「引き継ぐまでに要するタスク」が膨大にあり、豊富な知識を要するため、ここにも多くの壁があるのです。具体的には、下記のようなものが「壁」となります。「譲渡額の根拠」を買い手に説明する「譲渡する資産」について買い手と合意する「引き継ぎ期間」を買い手と合意する「スタッフに譲渡を告知するタイミング」を決める「不動産オーナー」に承継について説明し、合意を得る「最終契約書」を作成し、買い手と合意を得るたとえば、スタッフに告知するタイミングを間違えると、スタッフ側の不安が募り、最終契約書の締結前に多くのスタッフが退職意向を示した結果、スタッフの雇用継続を前提としていた買い手側が辞退する、ということにつながります。医業承継は相手探しだけが難しいわけでなく、引き継ぎ完了までには多くの壁があり、それらを専門家不在で進めることは高いリスクが伴います。

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第50回 クラメール連関係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第50回 クラメール連関係数とは?クラメール連関係数(Cramer's coefficient of association)は2つのカテゴリーデータの相関関係を把握する解析手法です。下の表1のクロス集計表は、医師の所属する施設形態とある疾患の治療薬の処方との関係をみたものです。表1 薬剤処方と医師所属機関のクロス集計表回答割合をみると、A薬剤は「一般病院勤務医」、B薬剤は「開業医」、C薬剤は「大学病院勤務医」が他の所属施設形態を上回り、医師の所属施設の経営形態で医師が処方する薬剤が異なることがわかります。これより「医師の所属施設の経営形態と処方薬剤とは関連がある」と言えます。ただし、関連性はわかったものの、クロス集計表からは関連性の強さまではわかりません。このようなとき、クロス集計表の関連性、すなわち「カテゴリーデータである2項目間の関連性の強さを明らかにする解析手法」が「クラメール連関係数」です。クラメール連関係数は0~1の値で、値が大きいほど関連性は強くなる■関連性の強さの度合いクラメール連関係数はいくつ以上あれば関連性があるという統計学的基準はありません。クロス集計表をみる限り関連性があるように思えても、クラメール連関係数の値は大きい値を示さないことを考慮して、一般的に基準は表2のように設定されています。表2 クラメール連関係数の関連性の強さ■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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縫合のgolden time【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q18

縫合のgolden timeQ18症例自宅近くの夜間診療所で当直バイト中のこと。とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、受診3時間前に自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。深さ3~4mm程度、長さ20mm程度で、明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのも気が引ける…。初期研修ぶりだけど、自分で縫ってみるか。19時間以内1)なら大丈夫と習った気がするけど、単純な創閉鎖は受傷何時間以内なら可能だったかな?

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コロナ罹患後症状を大規模調査、成人の2割以上が発症/CDC

 米国疾病対策センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(post-COVID、いわゆる後遺症)についての約200万人の大規模調査によると、急性肺塞栓症や呼吸器症状の発症リスクが2倍となり、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上発症しているという。研究結果は、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年5月27日号に掲載されている。 本調査は、米国50州の18歳以上のCerner Real-World Dataに登録された電子健康記録(EHR)データを用いて、2020年3月~2021年11月の期間、過去にCOVID-19の診断を受けた、または検査で陽性となった群(症例群:35万3,164例)におけるコロナ罹患後によく見られる26の対象症状の発生率と、コロナ既往歴がない群(対照群:164万776例)における対象症状の発生率について、後ろ向きコホート研究で比較評価した。解析では、18~64歳(症例群:25万4,345例、対照群:105万1,588例)と65歳以上(症例群:9万8,819例、対照群:58万9,188例)に層別化した。 主な結果は以下のとおり。・全年齢層の症例群38.2%、対照群16.0%が、少なくとも1つの対象症状を経験した(18~64歳:症例群35.4%、対照群14.6%。65歳以上:症例群45.4%、対照群18.5%)。・症例群と対照群のリスク差は、18~64歳では20.8%ポイント、65歳以上では26.9%ポイントであった。・全年齢層で最も多い罹患状況は、呼吸器症状と筋骨格系疼痛だった。リスク比が最も高い対象症状は、急性肺塞栓症(18~64歳:2.1、65歳以上:2.2)、呼吸器症状(両年齢層:2.1)であった。・65歳以上では、26の対象症状すべてにおいて対照群より症例群が、リスク比が高かった。一方、18~64歳では、22の対象症状で対照群より症例群が、リスク比が高かった。・心不整脈のリスク比は、65歳以上(1.5)よりも、18~64歳(1.7)が有意に高かった。・筋骨格系疼痛のリスク比は、65歳以上(1.4)よりも、18~64歳(1.6)が有意に高かった。・65歳以上では、味覚・嗅覚障害などの神経学的症状や、気分障害、不安、物質関連障害などの精神症状のリスク比が、18~64歳と比べて有意に高かった。 本研究により、コロナ既感染者の成人では、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナの既往に起因すると考えられる症状を経験していることが示された。若年者に比べ高齢者のほうがリスクが高く、感染から1年後まで持続することが報告されている神経学的症状などは、脳卒中や神経認知障害のリスクがすでに高い高齢者に対して、追加支援などが必要になる可能性があるため、とくに懸念されるとしている。研究グループは、コロナ罹患後症状のリスク上昇に関連する病態生理学的メカニズムを理解するため、今後もさらなる調査が必要だとしている。

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セムブリックスは新規作用機序の慢性骨髄性白血病治療薬/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマは2022年5月25日、前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病に対する治療薬、セムブリックス錠20mg、同40mg(一般名:アシミニブ塩酸塩)を発売したことを発表した。 慢性骨髄性白血病(CML)は、分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の登場により、通院での治療が可能な慢性疾患になったとも言われている。しかし、TKI治療を受けている患者の約半数が、現在のTKI治療に抵抗性となる、または副作用により使用が継続出来なくなる不耐容などの理由により、治療変更を余儀なくされていた。セムブリックスはSTAMP阻害作用という従来のTKIとは異なる作用機序 今回発売されたセムブリックスは、ABLミリストイルポケットを特異的に標的とするSTAMP阻害作用という、従来のTKIとは異なる作用機序を有している。2剤以上のTKI治療歴のあるCML患者の抵抗性に対処し、白血病細胞の過剰産生とも関連するBCR-ABL1遺伝子の変異を克服できる可能性があるともされている。 ノバルティス ファーマはセムブリックスの発売により、これまでのTKI治療では効果が十分に得られていない、また副作用により日常生活に支障を来すような患者に新しい治療選択肢を提供することが可能になった、としている。セムブリックス錠製品概要・製品名:セムブリックス錠(20mg、同40mg)・一般名:アシミニブ塩酸塩・効能・効果:前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病・用法・用量:通常、成人にはアシミニブとして1回40mgを1日2回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。・承認取得日:2022年3月28日・発売日:2022年5月25日・薬価:セムブリックス錠20mg(20mg 1錠)5,564.50円、セムブリックス錠40mg(40mg 1錠)10,618.30円・製造販売元:ノバルティス ファーマ株式会社

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妊娠糖尿病、インスリン使用で周産期合併症が増加/BMJ

 妊娠糖尿病の妊婦は正常血糖値妊婦と比較して、インスリンを使用していない場合は、帝王切開による分娩や早産児・巨大児が多く、インスリンを使用している場合は、母親のアウトカムに差はないものの、新生児の在胎不当過大や黄疸、呼吸窮迫症候群などの周産期合併症の割合が有意に高いことが、中国・中南大学のWenrui Ye氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月25日号で報告された。妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムの関連をメタ解析で評価 研究グループは、妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムとの関連を、最小限の交絡因子を調整したうえで評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年11月1日の期間に、医学データベース(Web of Science、PubMed、Medline、Cochrane Database of Systematic Reviews)に登録された文献が検索された。 対象は、非妊娠糖尿病(対照群)と妊娠糖尿病(曝露群)が厳格に定義され、妊娠糖尿病と妊娠のさまざまな有害アウトカムの明確な診断基準を有するコホート研究および臨床試験の対照群とした。 これらの基準を満たした研究が、インスリンの使用状況に基づき次の3つのサブグループに分けられた。(1)インスリン非使用(疾患の経過中にインスリンを使用したことがない)、(2)インスリン使用(個別の割合で、妊婦がインスリン治療を受けている)、(3)インスリン使用の報告がない。 妊娠糖尿病や妊娠有害アウトカムに影響を及ぼす可能性のある因子(国の発展状況[先進国、開発途上国]、バイアスのリスク[低、中、高]、診断基準[WHO〔1999年版〕、Carpenter-Coustan基準、国際糖尿病・妊娠学会〔IADPSG〕、その他]、スクリーニング法[universal one step、universal glucose challenge test、リスク因子に基づく選択的スクリーニング])について、事前に計画されたサブグループ解析が行われた。 インスリンの投与を受けた患者の割合に基づきメタ回帰モデルが適用された。器械分娩や肩甲難産などには差がない 156件(インスリン非使用35件[22.4%]、インスリン使用63件[40.4%]、報告なし58件[37.2%])の研究に参加した750万6,061例の妊婦が解析に含まれた。133件(85.3%)が母親のアウトカムを、151件(96.8%)は新生児のアウトカムを報告していた。 アジアの研究が39.5%、欧州が25.5%、北米は15.4%で、84件(53.8%)が先進国で行われた研究であった。Newcastle-Ottawa尺度によるバイアスのリスクは、50件(32.1%)が低または中、106件(67.9%)は高だった。 インスリン非使用研究では、交絡因子を調整すると、非妊娠糖尿病妊婦に比べ妊娠糖尿病の妊婦で有意にオッズ比(OR)が高かったのは、次の5つの項目であった。母親のアウトカムでは、帝王切開による分娩(OR:1.16、95%信頼区間[CI]:1.03~1.32)、新生児のアウトカムでは、早産児(在胎期間<37週)(1.51、1.26~1.80)、分娩から1分後のApgarスコア低値(<7点)(1.43、1.01~2.03)、巨大児(出生時体重≧4,000g)(1.70、1.23~2.36)、在胎不当過大児(出生時体重が在胎期間の標準の90パーセンタイル以上)(1.57、1.25~1.97)。 また、インスリン使用研究では、交絡因子を調整すると、妊娠糖尿病の女性で有意にORが高かったのは次の4項目で、いずれも新生児のアウトカムであった。在胎不当過大児(OR:1.61、95%CI:1.09~2.37)、呼吸窮迫症候群(1.57、1.19~2.08)、黄疸(1.28、1.02~1.62)、新生児集中治療室入室(2.29、1.59~3.31)。 一方、器械分娩、肩甲難産、分娩後出血、死産、新生児死亡、分娩から5分後のApgarスコア低値、低出生時体重、在胎不当過小児については、交絡因子を調整しても、妊娠糖尿病の有無で明確な差は認められなかった。 サブグループ解析では、先進国よりも開発途上国において、妊娠糖尿病妊婦で巨大児が多く(インスリン使用研究のp<0.001、インスリン非使用研究のp=0.001)、インスリン使用研究ではBMIで調整すると巨大児(p=0.02)と在胎不当過大児(p<0.001)が有意に多かった。また、インスリン使用の報告がなかった研究では、選択的スクリーニングを受けた妊婦において、妊娠糖尿病妊婦で帝王切開による分娩(p<0.001)と新生児集中治療室入室(p<0.001)が有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、妊娠糖尿病に関連する妊娠有害アウトカムの、より包括的な理解に寄与すると考えられる。今後の研究では、より完全な予後因子で調整することを常に心がける必要がある」としている。

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RSウイルスによる死亡率、生後6ヵ月未満で高い/Lancet

 2019年に、5歳未満(生後0~60ヵ月)の小児における呼吸器合胞体(RS)ウイルス(RSV)への罹患とこれによる死亡の負担は、とくに生後6ヵ月未満の乳幼児および低~中所得国の小児において世界的に大きく、生後0~60ヵ月の小児では50件の死亡のうち1件が、28日~6ヵ月の乳幼児では28件の死亡のうち1件がRSVに起因しており、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡1件につき、市中では約3件のRSV関連死が発生していると推定されることが、英国・エディンバラ大学のYou Li氏らが実施したRESCEU研究で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。最新データを加え、系統的な解析で罹患率と死亡率を更新 研究グループは、生後0~60ヵ月の小児におけるRSV関連の急性下気道感染症の罹患率と死亡率を、2019年の時点での世界、地域、国のレベルで更新することを目的に、最新のデータを加えて系統的に解析を行った(欧州連合革新的医薬品イニシアチブの欧州RSウイルスコンソーシアム[RESCEU]による助成を受けた)。 医学データベース(MEDLINE、Embase、Global Health、CINAHL、Web of Science、LILACS、OpenGrey、CNKI、Wanfang、ChongqingVIP)を用いて、2017年1月1日~2020年12月31日に発表された論文をあらためて検索して新たなデータを収集し、これまでの世界的なRSV疾病負担のデータセットを拡張した。また、このデータセットには、Respiratory Virus Global Epidemiology Network(RSV GEN)の共同研究者による未発表データも含まれた。 対象は、次の3つのデータを報告している研究とした。(1)1次感染としてRSVによる市中の急性下気道感染症または入院を要する急性下気道感染症に罹患した生後0~60ヵ月の小児のデータ、(2)院内の症例死亡率(CFR)を除き少なくとも連続12ヵ月間のデータ、またはRSVの季節性が明確に定義されている地域(温暖な地域など)のデータ、(3)急性下気道感染症の発生率、入院率、急性下気道感染症による入院者におけるRSV陽性割合、または院内CFRのデータ。 リスク因子に基づくモデルを用いて、国レベルでのRSV関連の急性下気道感染症の罹患率が推定された。また、RSVによる総死亡数を推定するために、RSVによる市中死亡率の最新データを組み込んだ新たなモデルが開発された。新データ164件を加えた解析、院内死亡の97%以上が低~中所得国 以前のレビューに含まれた317件の研究に、新たに適格基準を満たした113件と未発表51件の研究の164件を加えた合計481件のデータが解析に含まれた。 RSV関連の急性下気道感染症の罹患率が最も高い年齢は、低所得国~低中所得国が生後0~3ヵ月であったのに対し、高中所得国~高所得国は生後3~6ヵ月であった。 2019年の生後0~60ヵ月の小児における世界的な推定値として、RSV関連の急性下気道感染症のエピソードが3,300万件(不確実性範囲[UR]:2,540万~4,460万)、RSV関連の急性下気道感染症による入院が360万件(290万~460万)、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡が2万6,300件(1万5,100~4万9,100)、RSVに起因する全死亡は10万1,400件(8万4,500~12万5,200)との結果が得られた。 生後0~6ヵ月の乳幼児では、RSV関連の急性下気道感染症エピソードが660万件(UR:460万~970万)、RSV関連の急性下気道感染症による入院が140万件(100万~200万)、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡が1万3,300件(6,800~2万8,100)、RSVに起因する全死亡は4万5,700件(3万8,400~5万5,900)と推定された。 生後0~60ヵ月の小児の死亡の2.0%(UR:1.6~2.4)(50件に1件)、生後28日~6ヵ月の乳幼児の死亡の3.6%(3.0~4.4)(28件に1件)が、RSVに起因していた。また、いずれの年齢層の小児における、RSV関連の急性下気道感染症エピソードの95%以上、およびRSVに起因する院内死亡の97%以上が、低~中所得国で発生していた。 著者は、「RSVによる院内死亡と全死亡の推定値に基づくと、生後0~60ヵ月の小児のRSV関連の院内死亡率は26%にすぎず、したがって、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡1件につき、市中では3件の死亡が発生していると推定される」とし、「多くのRSV予防薬の開発が予定されている現状において、これらの年齢層を絞った推定値は、製品の導入、優先順位の決定、評価に重要な基本的情報をもたらす。生後6ヵ月未満の乳幼児にRSV予防薬を投与すると、RSV負担の頂値が、より高い年齢に移行する可能性があるが、この意味を理解するにはさらなるエビデンスが必要とされる」と指摘している。

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母親の育児ストレスと子供のADHDとの関連~日本の出生コホート研究

 注意欠如多動症(ADHD)は幼児期に発症し、その後、生涯にわたり影響を及ぼす疾患であるが、早期診断や介入により、臨床アウトカムの最適化を図ることができる。長期的または過度な育児ストレスは、ADHDなどの発達障害に先行してみられる乳児の行動の差異に影響している可能性があることから、幼少期の定期的評価には潜在的な価値があると考えられる。東京都医学総合研究所の遠藤 香織氏らは、母親の育児ストレスが子供のADHDリスクのマーカーとして利用可能かを明らかにするため、出産後1~36ヵ月間の母親の育児ストレスとその子供の青年期初期におけるADHDとの関連について、定期的に収集した自己報告を用いて調査を行った。その結果、出産後9~10ヵ月、18ヵ月、36ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連が認められ、自己報告による育児ストレスのデータはADHDリスクの初期指標として有用である可能性が示唆された。このことから著者らは、ADHDの早期発見と介入を促進するためにも、幼少期の健康診断、育児ストレスの評価、家族のニーズに合わせた支援を行う必要があることを報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月28日号の報告。 子供の成長プロセスに関する調査「東京ティーンコホート」の人口ベース出生コホート研究から子供2,638人(女児:1,253人)のサンプルを抽出し、その母親には、母子健康手帳を用いた出産後1~36ヵ月間における育児ストレス5回の記録を求めた。9年後、「子供の強さと困難さアンケート(SDQ)」の多動性/不注意のサブスケールを用いて、12歳時点でのADHD症状を評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産後36ヵ月間で、育児ストレスを報告していた母親は、約7.5%であった。・12歳時点でADHD症状のカットオフ値を超えていた子供は、6.2%であった。・1ヵ月および3~4ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連は認められなかった。・12歳時点での子供のADHD症状と有意な関連が認められた育児ストレスの時期は、9~10ヵ月(未調整OR:1.42、p=0.047、95%CI:1.00~2.00)、18ヵ月(同:1.57、p=0.007、95%CI:1.13~2.19)、36ヵ月(同:1.67、p=0.002、95%CI:1.20~2.31)であった。・これらの関連には、子供の性別、月齢、世帯収入で調整した後でも、変化は認められなかった。

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