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マスタープロトコルという研究プログラムの事前登録のあり方(解説:折笠秀樹氏)

 マスタープロトコルという研究プログラムが、ここ5年くらいで多くみられるようになりました。最初はがん治療においてでした。がん種ごとに治療薬の比較試験を行うのではなく、分子標的マーカーが陽性か陰性かによって、がん種にこだわらず比較試験が行われました。疾患に対して比較試験を行うという従来方式ではなく、バイオマーカー陽性に対して比較試験を行う方式です。そこでは疾患は何でもよいわけです。これがバスケットデザインと呼ばれるマスタープロトコルです。NCI-MATCHの例が挙がっています。 一方、がん種は1つに固定し、その中で数種類のバイオマーカーを取り上げ、バイオマーカーごとに比較試験を組む形の臨床試験です。これをアンブレラデザインと呼んでいます。どのマーカーに反応する治療薬が効果を発揮するかわからないので、どちらかというと探索的目的が強いと思われます。ALCHEMISTの例が挙がっています。 最後のマスタープロトコルの例は、COVID-19で登場したプラットフォームデザインです。COVID-19の治療法開発というプラットフォームを考え、その中でいろんな治療法を評価するプロトコルを次々と増やしていくものです。RECOVERYの例が挙がっています。ホームページもありますが、現時点では5つほどプロジェクトが走っているようです。英国主導で立ち上がったプロジェクトで、国際共同試験が行われています。あのビルゲイツ財団も資金提供しています。COVID-19は残念ながらまだ収束しておりません。いつ強力なウイルスが誕生するとも限りません。抗ウイルス薬のほかにもステロイド薬やモノクローナル抗体薬など、いろんな可能性がこのプラットフォームの中で評価されていくことでしょう。 マスタープロトコルとは、いろんなサブスタディからなる壮大なプログラムです。複数の臨床試験の集合体ともいえます。現在は、マスタープロトコルとして事前登録されていますが、サブスタディごとに事前登録をすべきだというのが結論のようです。私も同感です。RECOVERY試験というのが始まり、日本も加わるべきだと武見参議院議員がテレビ番組で紹介しているのを聞きました。2021年の中ごろだったかと思います。どんな臨床試験かと思い、すぐに調べましたが、まったく理解できませんでした。それも無理はありません。いくつかの臨床試験をまとめたプログラムだったからです。個々の臨床試験、すなわちサブスタディごとに論文も発表されることでしょうから、サブスタディを事前登録すべきというのは当然のことではないでしょうか。

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国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」【下平博士のDIノート】第101回

国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」今回は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「フィネレノン(商品名:ケレンディア錠10mg/20mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、わが国初の2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐMR拮抗薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月2日に発売されています。なお、原則としてACE阻害薬またはARBが投与されている患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはフィネレノンとして20mgを1日1回経口投与します。ただし、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の場合は10mgから投与を開始し、血清カリウム値・eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量します。なお、血清カリウム値が4.8mEq/L以下の場合は、投与量が10mgでもeGFRが前回の測定から30%を超えて低下していない限り20mgに増量します。一方、血清カリウム値が5.5mEq/L超える場合は投与を中止し、中止後に5.0mEq/Lを下回った場合には、10mgから投与を再開することができます。<安全性>2つの国際共同第III相試験(FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKD)では、安全性解析対象6,510例中1,206例(18.5%)において、臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。主な副作用は、高カリウム血症496例(7.6%)、低血圧92例(1.4%)、血中カリウム増加85例(1.3%)、血中クレアチニン増加69例(1.1%)、糸球体ろ過率減少67例(1.0%)などでした。また、重大な副作用として、高カリウム血症(8.8%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と呼ばれ、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者における心臓や腎臓の機能低下を防ぎます。2.血圧が下がることにより、めまいやふらつきが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数あります。服用している薬剤や健康食品、サプリメントがあれば報告してください。4.グレープフルーツやグレープフルーツジュースは、薬の効果を強めてしまう恐れがあるため、摂取を避けてください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合はすぐに相談してください。また、カリウムの摂り過ぎや脱水、便秘には注意してください。6.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>近年、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が心腎保護作用の点から注目されています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)、エプレレノン(同:セララ錠)、エサキセレノン(同:ミネブロ)が発売されています。スピロノラクトンは女性化乳房などの副作用の課題があり、比較的それらの副作用が少ないエプレレノンも、中等度以上の腎機能障害患者(Ccr:50mL/min未満)や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。一方で、エサキセレノンは本剤と同様にステロイド骨格を持たないという特徴がありますが、適応は高血圧症のみとなっています。2つの臨床試験では、CKDステージが軽度~比較的進行した糖尿病性腎症の患者さんに、ACE阻害薬・ARBによる既存の治療を行った上で本剤を投与した結果、主要評価項目である心血管複合エンドポイントの発現リスクは13%、腎複合エンドポイントの発現リスクは18%、プラセボ群に比べ有意に低下させました。こういった結果をもたらした国内で初めてのMR拮抗薬であり、2型糖尿病合併CKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬です。相互作用で注意すべき点として、本剤は主にCYP3A4により代謝されるため、強力なCYP3A4阻害作用を持つ薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を投与中の患者さんには禁忌となっています。また、併用注意の薬剤も多数あるので、併用薬はサプリメント等を含め、細やかに聞き取りましょう。MR拮抗薬といえば血清カリウム値上昇に注意が必要ですが、本剤はACE阻害薬あるいはARBとの併用が原則となっていることから、血清カリウム値のモニタリングが必須となります。対象患者の腎機能について、eGFRが60mL/min/1.73m2未満では投与量に制限があります。また、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の場合は、本剤投与によりeGFRが低下することがあるため、リスクとベネフィットを考慮し投与の適否を慎重に判断することとされています。なお、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(同:フォシーガ)が2021年8月にCKDの適応を取得し、カナグリフロジン(同:カナグル)も、2022年6月に本剤と同じ2型糖尿病を合併するCKDに対する適応を取得しています。参考1)PMDA 添付文書 ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg

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命懸けの断食 ラマダーン【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第15回

一昔前は、ドイツへの移民と言えばトルコからというのが一般的でした。しかし、不安定な中東情勢に対し「難民を断らない」という姿勢を貫いたメルケル政権の影響もあり、現在は中東地域からの移民が大多数になっています。病院で勤務をしていても、中東からきた医師たちが日に日に多くなっていった印象が残っています。言わずとも、中東からきている医師たちはムスリム(ムスリマ)であることがほとんどですので、わりと身近にイスラム教の生活を感じることができました。「酒を飲んだらダメ」とか、「豚肉は食べちゃダメ」などと合わせ、厳しい戒律として有名なのが「ラマダーン」と呼ばれる宗教行事でいわゆる「断食」です。(Mohamed Hassan、Pixabayより出典)ラマダーン中の医療行為は危険!?イスラム暦の9月が「ラマダーンの月」と言われ、約30日間、「日の出ている間は飲食を行わない」と言うルールです。2022年は3月から4月にかけて行われたそうですが、私がドイツにいた頃は最も日照時間の長い6月頃に行われていたと記憶しています。そもそも、このラマダーンは赤道に近い中東地域で行われることを前提としているので、私が勤務していた北ドイツで実行することはかなり厳しいと言わざるを得ませんでした。と言うのもサマータイムで22時に日没して朝4時には日が昇っていましたから、この短い時間の間に1日分のカロリーを摂らなくてはなりません。元来、ラマダーン期間中は心穏やかに過ごし、あまりエネルギーを使わないようにするらしいのですが…ドイツで勤務している場合はそうも言ってられません(断食の例外として妊婦や病人、高齢者や旅人は免除されます)。同僚のムスリム医師は、手術に入っていても夕方になれば明らかに集中力が落ちていましたし、当直にも当たろうものなら日没直前は低血糖で冷や汗をかいているような状態でした。夕方ごろになると、呼びかけても返事が鈍くなっていましたから、だいぶ危ない状態だったと思います。病棟のベテラン・ナースは無理やり押さえつけてブドウ糖をショットするか悩んでいて、それがラマダーンで許されるのかネットで検索していたこともありました。そして、日没とともにドカ食いしていましたが、他人事ながら糖尿病のこととか、ちょっと心配になってしまいます。世界人口の4人に1人はイスラム教徒と言われています。今はまだまだ少数ですが、おそらく近い将来、日本でもイスラム教徒のドクターが増えていくことでしょう。異文化圏からきた同僚達も快適に働ける環境作りができればいいですね。

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英語で「方針を確認しましょう」は?【1分★医療英語】第35回

第35回 英語で「方針を確認しましょう」は?I feel like I missed something critical during the morning round.(朝の回診中に大事なことを聞き逃した気がします)OK, then let’s run the list.(分かりました、それでは全患者の方針を確認しましょう)《例文1》Let’s run the list to make sure that we are on the same page.(方針が一致しているか確認するために、各患者のやるべきことを順番に見ていきましょう)《例文2》Guys, we’ll meet at 3pm and run the list for any problems.(みんな、午後3時に集まって、問題がないか患者リストを確認しよう)《解説》今回紹介するのは“run the list”という、医療の世界での独特の表現です。 知っていれば決して難しくはない表現ですが、知らないと何を言っているのかさっぱり…、かもしれません。ここでいう“the list”とは「全患者のリスト」のことです。たとえば、あなたのその日の受け持ち患者が10人いるとしたら、その10人が掲載されたリストです。“run”は、皆さまご存じの「走る」を意味する動詞ですが、ここでは「リストを確認していく」といった意味になります。イメージとしては、「日々の入院診療の中、忙しい時間の合間に患者リストを上から順番に走り抜けていく」ような感じです。指導医が研修医に対し、あるいは後期研修医が自分の下に付いている初期研修医に対して“Let’s run the list.”と言った場合、患者リストを上から順番に見ながら、各患者の治療方針やto doリストを確認し、抜けがないか、あればそれを付け足していく作業を行います。具体的には…(研修医)「Aさんには、今日は6時間おきに生化学検査をとって、Naをフォローします」(指導医)「あと、尿検査も忘れないでね」といったようなやりとりを順番にしていくのです。忙しい日ほど“run the list”が大切になるので、まさに「走る」感覚でテンポ良く会話していくのがポイントです。米国の臨床現場にいなければなかなか使うことのない表現かもしれませんが、“run”の面白い使い方としてご紹介しました。講師紹介

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第119回 英国のサル痘の症状は先立つ流行と異なる/ウイルス感染者の匂いが蚊を呼ぶ

英国のサル痘といえば西アフリカ帰りの人発端に限られていましたが今やそうではないサル痘が同国や他の幾つかの国の性保健(sexual health)診察で確認されることが急に増えています。今年2022年5月14日から25日の12日間に英国ロンドンで性保健診察されてサル痘が判明した患者54人の症状はこれまでの典型的なサル痘感染とは異なっており1-3)、適切な治療や感染拡大予防のせっかくの機会を診断ミスで逃さないようにするためにもこれまでとは異なりうるという心構えが必要なようです。調べられた54人は全員が男性とセックスする男性(men who have sex with men;MSM)であり、先立つ流行に比べて性器や肛門領域の皮膚に病変が認められることがより多く、発熱や疲労感は逆に少なくて済んでいました。54人の全員に近い94%(51人)が性器や肛門領域に少なくとも1つの皮膚病変を有し、疲労/倦怠感と発熱の発生率はそれぞれ67%(36/54人)と57%(31/54人)でした3)。38℃以上の発熱や疲労を含む英国の目下のサル痘同定の目安4)は見直しが必要だろうと著者は言っています。他の特徴として性感染症(STI)・淋病やクラミジアの併発も多く、4人に1人がそうでした。サル痘は進行過程でヘルペスや梅毒などのよくあるSTIに似通うこともありうるのでそれらと見間違わないように用心する必要があります1)。ペニスや肛門領域の皮膚病変やSTIの併発が多いことから察するに性行為などでの皮膚や粘膜の密着の際にサル痘は伝播するようです。54人の約10人に1人(9%;5/54人)は主に痛みや細菌性蜂窩織炎の治療のために入院を要しました。死亡した患者はいません。サル痘患者が性的にかなり活発なことは本連載の前号で紹介したのと同様に今回の報告でもうかがわれ、性行為に関する質問に答えた52人の9割47人(90%)は発症前の3週間に新たな人との性交渉があり、半数を超える29人はサル痘診断に先立つ12週間に5人を超える性交渉の相手がいました。ジカ/デングウイルス感染は蚊を引き付ける匂いをより作らせるジカ熱やデング熱を引き起こすウイルスは蚊に運ばれてヒトからヒトに移ります。そのためにそれらフラビウイルスは感染者の皮膚の細菌を手入れして蚊がより好む匂いをどうやら放たせるようです5-7)。フラビウイルス感染マウスは甘い香りの揮発性成分アセトフェノン(acetophenone)を非感染マウスに比べておよそ10倍多く放ち、蚊はアセトフェノンで嗅覚が強力に刺激されて引き寄せられると分かりました。デング熱患者がアセトフェノンをより多く放つことも確認されています。アセトフェノンの主な出どころは皮膚の共生細菌であり、フラビウイルスは皮膚の抗菌タンパク質RELMα発現を抑制することでアセトフェノン生成共生細菌を増やし、その結果アセトフェノンが多くなります。RELMαの合成はビタミンA誘導体で増えます。そこでビタミンA誘導体イソトレチノイン(isotretinoin)をマウスに与えたところアセトフェノンが減って蚊に見つかり難くなって感染の伝播を減らすことができました。イソトレチノインでヒトのアセトフェノン生成も減るかどうかを調べることが今後の課題の一つとなっています5)。London School of Hygiene & Tropical Medicineの研究者James Logan氏によると今回の結果は診断を刷新しうる可能性を秘めています6)。デング熱やジカ熱の診断には結果判明までしばらくかかる血液検査が今のところ必要ですが、それら患者が放つアセトフェノンを嗅ぐ装置を使えば血液検査なしですぐに診断が可能になるかもしれません。Logan氏はマラリアを匂いで同定しうるセンサーを開発する会社を興しており、似た技術がジカ熱やデング熱にも通用しうると言っています6)。参考1)Monkeypox symptoms in patients attending London sexual health clinics differ from previous outbreaks, study of May 2022 UK outbreak suggests / Eurekalert2)Monkeypox symptoms differ from previous outbreaks - UK study / Reuters3)Girometti N, et al. Lancet Infect Dis. 2022 July 01. [Epub ahead of print]4)Monkeypox: case definitions /UK Health Security Agency5)Some viruses make you smell tastier to mosquitoes / Eurekalert6)Zika, dengue viruses make victims smell better to mosquitoes / Science7)Zhang H, et al.Cell. 2022 Jun 28;S0092-8674.00641-9. [Epub ahead of print]

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今冬にインフル流行の懸念、ワクチンを強く推奨/日本ワクチン学会

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになった。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されている。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからである。そこで、日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司)は、6月23日に同学会のホームページで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」を公開した。 本見解では、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種を強く推奨し、とくに接種が推奨される方に、確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を早期に準備しておくことが重要と示している。2022-23シーズンのインフルエンザ流行の懸念 2021-22シーズンのわが国のインフルエンザ流行状況と感染者は、報告総数は753人(2020-21シーズンは1,107人)でCOVID-19の流行以前と比べると明らかに流行の規模は小さいものの、2022-23シーズンではインフルエンザに対する感受性者のさらなる増加が危惧されるとともに、海外から日本への渡航制限解除の影響による感染者数の増加が懸念される。 今後、インフルエンザが3シーズンぶりに流行した場合、死亡者や重症者の増大、またCOVID-19と時期を同じくして流行することなどによって、医療負荷の増大が心配されるとしている。 また、オーストラリアにおけるインフルエンザ流行状況(2022年6月5日現在)として、インフルエンザ様疾患の報告例が2022年3月以降、増加が報告され、4月中旬から確認されたインフルエンザの週ごとの報告数は、過去5年間の平均を超えている。また、5〜19歳の年齢層と5歳未満の子どもが最も高い報告率であることも示されている。2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について 学会は「インフルエンザの罹患率や死亡率を低下させるため、生後6ヵ月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」としている。1)日本における2022-23シーズンのインフルエンザHAワクチン インフルエンザHAワクチンは、4価ワクチンであり、2021-22シーズンからA/H3N2株とB/ビクトリア系統株の2株が変更となった。・A型株 A/ビクトリア/1/2020(IVR−217)(H1N1) A/ダーウィン/9/2021(SAN−010)(H3N2)・B型株 B/プーケット/3073/2013(山形系統) B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)2)特に接種が推奨される方・定期接種対象者:65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方、60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方・医療従事者、エッセンシャルワーカー:急性期後や長期療養施設のスタッフを含む医療従事者、薬局スタッフ、その他重要インフラの業務従事者の方・インフルエンザの合併症のリスクが高い方:生後6ヵ月以上5歳未満の乳幼児、神経疾患のある子ども、妊娠中の方、その他特定の基礎疾患を持つ方3)接種回数と接種間隔・13歳以上の方は、原則1回接種。ただし、医師が特に必要と認める場合は、1〜4週の間隔で2回接種。・生後6ヵ月以上13歳未満の小児は2〜4週の間隔で2回接種。ただし、世界保健機関(WHO)は、ワクチン(不活化ワクチンに限る)の用法において、9歳以上の小児および健康成人に対しては「1回注射」が適切である旨、見解を示し、米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)も、9歳以上の者は「1回注射」とする旨を示している。何らかの事情で2回の接種機会が得られない場合でも少なくとも1回は接種し、未接種のまま、インフルエンザシーズンを迎えないことを推奨する。ワクチンの有効性と安全性1)有効性 現行のインフルエンザワクチン製造において、インフルエンザウイルスの流行株とワクチン株の一致率は毎年異なるために、インフルエンザワクチン推定有効率において年次差がみられる。そのため、インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではなく、インフルエンザの発病予防、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされる。(国内における研究報告)・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった・6歳未満の小児を対象とした2013/14〜2017/18シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は41〜63%と報告・3歳未満の小児を対象とした2018/19〜2019/20シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は42〜62%と報告2)安全性 インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の発赤、痛み、腫れなどの局所反応や、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身反応を含む副反応が出現する可能性がある。これらの副反応は、通常、2〜3日以内に消失。また、重い副反応の報告がまれにあるが、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明確ではない。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状などについては、順次評価が行われ公表される。 日本ワクチン学会では、「今冬の国民の感染症対策と医療体制の維持のため、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について、強く推奨いたします」と提言し、「確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を、早期に準備しておくことが重要」と記している。

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大腸がんのFOLFIRI+パニツムマブ、休薬期間で皮膚毒性を軽減(IMPROVE)/ASCO2022

 RAS/BRAF野生型の転移のある大腸がん(mCRC)に対するFOLFIRI+パニツムマブ併用療法において、計画的な休薬期間を入れることで毒性を抑えつつ、継続療法と比較して同等以上の有効性があることが新たな試験で示された。イタリアのFondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのAntonio Avallone氏が第II相IMPROVE試験について、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 抗EGFR抗体薬+FOLFIRIの継続投与は、RAS/BRAF野生型mCRC患者の標準治療の1つだが、薬剤耐性や治療関連毒性によって継続投与が困難な患者が存在する。本試験はFOLFIRIへのセツキシマブの上乗せ効果を検討したCRYSTAL試験の結果に基づき、病状進行の確率を検証するためにデザインされたもので、正式な直接比較は計画されていなかった。・対象:切除不能で前治療歴のあるRAS/BRAF野生型mCRC患者(PS 0~2)。試験群:FOLFIRI/パニツムマブを8サイクル投与後、病勢進行まで休薬。再開後は初回同様に最大8サイクルまで投与。対照群:同レジメンを病勢進行まで継続投与。腫瘍の評価は両群とも8週間ごとに行われた。・評価項目:[主要評価項目]1年後の治療中における無増悪生存期間(PFSOT)[副次評価項目]安全性、QOL、全生存期間(OS)、奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・2018年5月~2021年6月までに137例が登録された(試験群68例/対照群69例)。男性60/59%、年齢中央値66/62歳、PS 0 72/84%、アジュバント治療歴31/22%だった。・追跡期間中央値20ヵ月(IQR:13~29)において、PFSOT中央値は試験群17.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~24.9)/対照群13.2ヵ月(95%CI:9.6~16.8)、1年後のPFS率は60.8%/52.1%だった。・1年後の治療継続率は試験群37%/対照群10%、ORRは57%/66%だった。・主なGrade3/4の有害事象は、皮膚関連が試験群13%対照群25%と差がつき、好中球減少症24/23%、下痢15/13%などは同等だった。 Avallone氏は、「間隔投与によって皮膚毒性を軽減しながら長いPFSを達成することができた。COVID-19感染流行下における新たな治療戦略として期待できる。これらのデータは第III相試験でさらに検討する価値がある」と述べた。

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COVID-19治療の薬物相互作用による有害事象、半数はチェッカーで特定可能

 COVID-19感染流行初期にはドラッグ・リポジショニングと呼ばれる、別の疾患に対して開発・承認された薬剤が投与されてきた。2022年6月末現在、国内ではCOVID-19治療薬として8つの薬剤が承認されているが、世界のCOVID-19患者における薬物相互作用(DDI)に起因する有害事象を特定することを目的としたシステマティック・レビューがJAMA Network Open誌2022年5月号に掲載された。 イタリア・サレルノ大学のValeria Conti氏らによる本研究は、以下の手順で行われた。1)欧州医薬品庁(EMA)とイタリア医薬品庁のウェブサイト、ClinicalTrials.govデータベース、および文献データを参照し、パンデミック時に使用されたすべての医薬品を特定。2)Drugs.com、COVID-19 Drug Interactions、LexiComp、Medscape、およびWebMDの薬物相互作用チェッカーを使用して、1)で特定された各薬剤に関連するDDIの可能性を検索。3)PubMed、Scopus、Cochraneで2020年3月1日~2022年2月28日に発表された論文から、CODID-19患者のDDIに関連する有害事象を検索。4)3)で特定されたDDIが2)のツールを使用することで特定され得たかどうかを評価。 主な結果は以下のとおり。・全体で1297例の患者が登録された、計20の研究が解析に含まれた。46種類の薬剤による56種類のDDIの可能性が特定された。・58種類の薬物の組み合わせによる、575件のDDIが報告された。58種類の薬物組み合わせのうち15(26%)は分析したすべてのツールで特定可能であり、29(50%)は少なくとも1つのツールで特定可能、14(24%)は特定不可能だった。・最も深刻なDDIはアミオダロンとロピナビル・リトナビル、シンバスタチンとロピナビル・リトナビルとの併用によるもので、Medscapeでは禁忌(2[3%])、WebMDでは併用禁止(2[4%])と分類された。・最も一般的な有害事象はQT間隔の延長で、他の有害事象と併発した場合は8例の死亡につながった。

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術後オピオイド、退院後の疼痛への有効性は?/Lancet

 手術後の退院時におけるオピオイドの処方は、オピオイドを使用しない鎮痛レジメンと比較して、退院後の疼痛の強度を軽減しない可能性が高く、嘔吐などの有害事象の有意な増加をもたらすことが、カナダ・マギル大学のJulio F. Fiore Jr氏らの調査で示された。研究の詳細はLancet誌2022年6月18日号に掲載された。退院後の疼痛強度、有害事象をメタ解析で評価 研究グループは、退院時のオピオイド処方が自己申告による疼痛の強度や有害事象にどの程度の影響を及ぼすかを評価する目的で、無作為化臨床試験の系統的レビューとメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年7月8日の期間にデータベース(MEDLINE、Embase、the Cochrane Library、Scopus、AMED、Biosis、CINAHL)に登録された文献が検索された。 対象は、Physiological and Operative Severity Score for the Enumeration of Mortality and Morbidity(POSSUM)の定義(小手術、中手術、大手術、複雑な大手術)に基づく手術手技を受けた後に退院した年齢15歳以上の患者において、オピオイドを用いた鎮痛とこれを使用しない鎮痛を比較した複数回投与の無作為化対照比較試験とされた。 主要アウトカムは、退院後1日目における自己申告による疼痛強度(0~10cmの視覚アナログ尺度[VAS]で標準化)と、30日以内の嘔吐とされた。変量効果によるメタ解析が行われ、エビデンスの確実性が評価された。不満足度、再受診などには影響がない 47件の試験(合計6,607例、女性59%、平均年齢の範囲21~63歳)が解析の対象となり、36件が退院後1日目の疼痛強度の評価を、12件が手術後の嘔吐のリスクの評価を行っていた。25件(53%)は北米、11件(23%)は欧州の試験であり、30件(64%)は待機的な小手術(63%が歯科)、17件(36%)は中手術(47%が整形外科、29%が一般外科)の試験であった。企業による資金提供を受けた試験が10件(21%)含まれた。フォローアップ期間中央値は7日(IQR:4.25~10.0)だった。 オピオイドの処方は非オピオイド鎮痛薬に比べて、退院後1日目の疼痛を軽減しなかった(加重平均差:0.01cm、95%信頼区間[CI]:-0.26~0.27、エビデンスの確実性:中程度)。この95%CI値は、最小重要差(MID:患者が重要と認識する最小のスコアの変化で、VASの10cmのうち1cmの変化に相当)の閾値の範囲内であり、オピオイドが手術後の疼痛緩和に及ぼす効果が臨床的に意義のある可能性はほとんどないと示唆された。1日目以外の手術後の経過日においても、オピオイドによる疼痛緩和効果は認められなかった。 また、オピオイドの処方は、嘔吐のリスクを増大させた(発生率:10.9% vs.1.3%、相対リスク:4.50、95%CI:1.93~10.51、エビデンスの確実性:高い)。さらに、オピオイド処方により、有害事象全体のリスクが有意に増加(相対リスク:1.78、95%CI:1.20~2.66、エビデンスの確実性:低い)するとともに、吐き気(2.37、1.59~3.55、高い)、便秘(1.63、1.04~2.57、高い)、めまい(2.22、1.20~4.08、高い)、眠気(1.57、1.02~2.42、中程度)のリスクも増加した。 一方、オピオイドの処方は、そのほかのアウトカム(疼痛管理の不満足度、患者転帰[有害事象または治療無効による試験中止]、医療の再利用[再受診]、そう痒、頭痛、錯乱、下痢など)には影響しなかった。 著者は、「これらのエビデンスは、待機的な小手術(歯科、手の処置など)や中手術(低侵襲の整形外科手術、一般外科手術など)を中心とする試験に依拠しており、このような外科的処置ではオピオイドを使用しない鎮痛薬の処方を考慮してよいことが示唆される。また、大手術(肺、腸、肝臓の切除など)または複雑な大手術(胸腹部手術、多臓器切除など)を受け、退院時にオピオイドを含まない鎮痛薬が処方された患者について検討した試験はなく、データの多くがバイアスのリスクが高い試験から得られたものであった。これらの限界を考慮すると、この分野の研究の質を向上させ、領域を広げることがきわめて重要である」としている。

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liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に有効か?/Lancet

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療において、CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)は従来の標準治療と比較して、無イベント生存期間を約8ヵ月延長することが、米国・コロラド大学がんセンターのManali Kamdar氏らが進めている「TRANSFORM試験」の中間解析で示された。安全性に関する新たな懸念は認めなかったという。研究の成果は、Lancet誌2022年6月18日号に掲載された。47施設の無作為化第III相試験の中間解析 TRANSFORMは、再発・難治性LBCLの2次治療におけるliso-celの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2018年10月23日~2020年12月8日の期間に、米国、欧州、日本の47施設で参加者のスクリーニングが行われた(CelgeneとBristol-Myers Squibb Companyの助成を受けた)。この試験は進行中で、今回は中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18~75歳、1次治療に抵抗性、またはアンスラサイクリン系薬剤と抗CD20モノクローナル抗体を含む1次治療で初回奏効が得られてから12ヵ月以内に再発したLBCLで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)のスコアが0または1、自家造血幹細胞移植(HSCT)の適応があり、Lugano基準(2014年)でPET陽性の病変を有する患者であった。 被験者は、liso-celの投与群または標準治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。liso-cel群は、リンパ球除去化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド)を3日間受けたのち、総用量100×106 CAR+T細胞を目標に、CD8+とCD4+のCAR+T細胞を2回連続で静脈内投与された。 標準治療群は、救援免疫化学療法として、担当医の裁量でR-DHAP(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+シスプラチン)、R-ICE(リツキシマブ+イホスファミド+エトポシド+カルボプラチン)、R-GDP(リツキシマブ+デキサメタゾン+ゲムシタビン+シスプラチン)のうちいずれか1つを3サイクル施行され、このうち奏効(完全奏効、部分奏効)が得られた患者が、大量化学療法(カルムスチン+エトポシド+シタラビン+メルファラン)を1サイクルと自家HSCTを受けた。 主要エンドポイント、は無イベント生存期間とされた。奏効の評価は、独立の審査委員会がLugano基準(2014年)を用いて行った。完全奏効割合や無増悪生存期間も良好 184例が登録され、liso-cel群に92例(年齢中央値60歳[IQR:53.5~67.5]、女性52%)、標準治療群にも92例(58.0歳[42.0~65.0]、34%)が割り付けられた。多くの患者(160例[87%])が、びまん性LBCL(DLBCL)(DLBCL-NOSまたは濾胞性リンパ腫からの形質転換が117例[64%])あるいは高悪性度B細胞リンパ腫(43例[23%])であり、135例(73%)は1次治療に抵抗性、61例(33%)は65歳以上で、73例(40%)はsAAIPI≧2であった。追跡期間中央値は6.2ヵ月(IQR:4.4~11.5)だった。 無イベント生存期間中央値は、liso-cel群が10.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.1~未到達)と、標準治療群の2.3ヵ月(2.2~4.3)に比べ有意に改善された(層別ハザード比:0.35、95%CI:0.23~0.53、層別Cox比例ハザードモデルの片側検定のp<0.0001)。 完全奏効割合(66% vs.39%、p<0.0001)、無増悪生存期間中央値(14.8ヵ月vs.5.7ヵ月、p=0.0001)、全生存期間中央値(未到達vs.16.4ヵ月、p=0.026)は、いずれもliso-cel群で良好であった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(liso-cel群80%[74/92例]vs.標準治療群51%[46/91例])、貧血(49%[45例]vs.49%[45例])、血小板減少(49%[45例]vs. 64%[58例])、遷延性血球減少(43%[40例]vs.3%[3例])であった。liso-cel群で、とくに注目すべき有害事象として、CAR-T細胞療法関連のGrade3のサイトカイン放出症候群が1%(1例)、神経学的事象が4%(4例)で発現した(Grade4、5は認めなかった)。 試験薬投与下の有害事象(無作為化の日から最終投与後90日までに発現または悪化した有害事象)のうち重篤な事象は、liso-cel群で48%(44例)、標準治療群で48%(44例)に認められた。2次治療におけるliso-celの安全性に関する新たな懸念は確認されなかった。また、治療関連死は、liso-cel群ではみられず、標準治療群では1例(敗血症)で認められた。 著者は、「これらの結果は、早期再発または難治性のLBCL患者における、新たな2次治療の推奨レジメンとして、liso-celを支持するものである」としている。

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日本における統合失調症の人的および経済的負担

 統合失調症においては、患者だけでなくその家族や社会に多大な人的および経済的負担がのしかかり、併存症状の有無によりその負担は大きく影響されるといわれている。住友ファーマの馬塲 健次氏らは、日本における統合失調症の生涯有病率を推定し、併存症状(抑うつ症状、睡眠障害、不安障害)の有無による患者の健康関連QOL、仕事生産性、間接費の評価を行った。その結果、日本人統合失調症患者にみられる併存症状は、QOL、仕事生産性、間接費に大きな影響を及ぼすことが報告された。BMC Psychiatry誌2022年6月18日号の報告。 2019年「国民健康・栄養調査」で収集されたデータを用いて、2次分析を実施した。PHQ-9スコア、自己報告による睡眠障害および不安障害の結果により、統合失調症患者を分類した。生涯有病率の推算は、分子に統合失調症診断患者数、分母に調査回答者数を用いて行った。健康関連QOLの評価には、SF-12v2、EQ-5Dを用いた。仕事生産性と年間間接費は、WPAI(Work Productivity and Activity Impairment)と月給を用いて評価した。多変量解析には、一般化線形モデルを用いた結果の比較を含めた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、統合失調症患者178例(平均年齢:42.7歳、推定生涯有病率:0.59%[95%CI:0.51~0.68])であった。・睡眠障害、より重度な抑うつ症状、不安障害が併存している患者は、これらの併存症状がない患者と比較し、健康関連QOLの低下、より高い欠勤率、プレゼンティズム、総仕事生産性と活動の障害が認められ、間接費も約2倍となっていた。

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第107回 医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?

<先週の動き>1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?千葉市立海浜病院で昨年7月、医師の指示により医師免許を持たない臨床工学技士に皮膚縫合の一部を行わせたことが明らかとなった。同院によれば、問題が起きたのは心臓ペースメーカーの部品交換手術で、当技士はペースメーカーの動作確認のため手術に参加。執刀医は「自分の指導下であれば問題ないと思った」と話している。2022年1月、市に匿名の情報提供があったことから発覚。同院は速やかに事実確認を行い、外部の有識者を交えて医療事故検討委員会での検討を行い、当事者である技士と縫合を指示した執刀医の2人に訓告処分を行った。病院全体で改善と再発防止に向けた取り組みを進めている。医師法は医師資格を持たない者の医療行為を禁じているが、市は「違法行為には当たらない」との認識を示している。なお、患者への身体的な影響はなく、同院は3月に患者本人への説明・謝罪を行っている。(参考)医師免許ない臨床工学技士、手術で皮膚縫合(読売新聞)医師資格ないのに手術の縫合 千葉市立病院で、健康面被害なし(中日新聞)医師以外の医療従事者による業務範囲を超えた医療行為について(市立海浜病院)2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省厚生労働省は、6月30日に第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードを開催した。新規感染者数の今週先週比は1.17と「全国的に上昇傾向に転じた」とされ、今後の短期的な予測では、大都市を中心に感染者数のさらなる増加が見込まれる。年代別で見ても、おおむねすべての年代で微増となっており、療養者数および重症者数は緩やかな増加に転じている。なお、病床使用率は総じて低水準にあり、死亡者数は減少傾向にある。今後、これまでのワクチン接種などによる免疫効果が徐々に下がっていくことや、7月以降は夏休みなどで人との接触機会が増えること、オミクロン株の「BA.5」が国内でも主流になる可能性があることなどから、医療体制への影響も含め注視する必要がある。60歳以上に対する4回目ワクチン接種の加速のほか、基本的な感染対策を徹底することなどが呼びかけられた。(参考)新規感染者数「全国的に上昇傾向に転じた」コロナアドバイザリーボード分析・評価(CB news)新型コロナ“全国で増加 BA.5で感染拡大の懸念も”専門家会合(NHK)第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省厚労省は2020年度の国民健康保険の財政状況を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、医療機関に支払われる保険給付費が減少したため、支出は前年度比3.5%減少して保険料収入を下回った。これにより単年度の実質収支は+2,054億円と過去最大の黒字となった。同時に2020年度の後期高齢者医療制度の財政状況についても公表し、収支は前年度より4,600億円あまり増加し、8,219億円の黒字となっている。(参考)市町村国保でも2020年度はコロナ感染症の影響で大幅黒字、積立金は1兆3257億円に増加―厚労省(Gem Med)後期高齢者医療広域連合、8,200億円超の黒字 20年度 受診控えで保険給付費大幅減、厚労省(CB news)4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検必要とされる量の100倍のモルヒネを誤って処方し、高齢患者をモルヒネ中毒死させたとして、警視庁は、武蔵国分寺公園クリニックの女性医師と調剤にあたった薬剤師を業務上過失致死容疑にて書類送検した。患者は93歳の男性で、昨年2月に呼吸困難のためクリニックの在宅診療を受け、この医師からモルヒネの内服薬を処方された。薬剤師から渡された薬を服用したところ、約1週間後にモルヒネ中毒により死亡した。クリニックによれば、遺族とはすでに示談が成立しており、また事故の詳細については 一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)に詳細な報告書を提出している。(参考)93歳に必要量100倍のモルヒネ処方 容疑の医師と薬剤師書類送検(朝日新聞)モルヒネ中毒で男性死亡 業務上過失致死の疑い 医師ら書類送検(NHK)報道の件について(武蔵国分寺公園クリニック)5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数埼玉県ふじみ野市で、今年1月に患者家族が在宅医療を担当していた医師を射殺した事件で、さいたま地検は1日、容疑者を殺人や殺人未遂などの罪で起訴した。この事件を受け、地元の東入間医師会が在宅医療や訪問介護を行っている事業所を対象に調査した結果、介護従事者への殺意をほのめかす家族に遭遇したり、包丁を向けられるなど危険を感じたことがあるという回答が複数寄せられていたことが判明した。在宅医療や介護の安全を確実に守るため、行政命令の規定や罰則が必要とする意見も上がっている。(参考)在宅医療や介護で「危険感じた」医師ら殺傷事件受け調査 埼玉(NHK)医師殺害の罪、男起訴 埼玉の立てこもりで地検(日経新聞)6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕美容整形クリニックの女性職員が、上司に当たる医師に睡眠薬を飲まされて自宅でわいせつ行為を受けたとして、警視庁捜査1課は準強制性交等とわいせつ目的略取の疑いで「ミッドクリニック」の院長を逮捕した。女性職員が院長と会食した後、院長の自宅に連れこまれ、わいせつ行為を受けたと警視庁に相談して被害が発覚した。被害者の体内からは睡眠薬の成分が検出されている。竹沢容疑者の周辺からは警察に同様の被害相談があり、同課が調べている。(参考)部下に睡眠薬飲ませわいせつ 容疑で美容外科医逮捕(産経新聞)部下に睡眠薬でわいせつ行為か 美容整形クリニック院長を逮捕(NHK)

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ネオアンチゲンT細胞受容体遺伝子治療 転移性膵がんでの有効性(解説:宮嶋哲氏)

 免疫治療など、さまざまな薬物療法が進歩を続ける一方で、膵がんはいまだに悪性腫瘍の中で最も致死率の高いがん種である。わが国においてもがん遺伝子パネル検査が日常診療にも導入され、ゲノム診療が本格化しつつある。膵がんでも遺伝子異常が数多く検出されているものの、BRCA遺伝子変異やマイクロサテライト不安定性の頻度は低く、治療薬に結び付く遺伝子異常はいまだに数少ないのが現状である。 膵がんの免疫治療に対する耐性機序の1つにネオアンチゲン反応性TILの不足が示唆されている。膵がんはKRASにホットスポット変異を含むことが多いため、変異KRASに対する同種異系T細胞受容体(TCR)遺伝子治療の有効性が期待される。本論文では、同種HLA-C*08:02制限KRAS G12Dに反応性を持つTCRを発現するよう設計された自己T細胞で治療施行した転移性膵がん症例について報告されている。 症例は71歳女性、術前補助療法としてFOLFIRINOX 4サイクル施行後、根治手術を施行。病期診断はIIB(ypT3N1M0R)であり、後療法としてFOLFIRINOXと化学放射線併用療法が施行されている。その後、肺右下葉への転移が出現し、同時に腫瘍のゲノム検査を行ったところ、ネオアンチゲンKRAS G12Dを標的としうることが判明した。そこで、FDAならびに当該施設の倫理審査承認後、変異型KRAS G12Dを標的とする同種異系HLA-C*08:02制限TCRを発現する自家末梢血T細胞による治療の導入に至っている。T細胞注入の1ヵ月後に患者の転移性肺病変の退縮が観察され、RECISTでPRと判定されている。T細胞移植6ヵ月後の最新のフォローアップが進行中でありPR率は72%であった。人工T細胞注入後6ヵ月経過後も人工T細胞は循環T細胞の約2.4%を占めており、末梢血での持続性も示されている。本報告は、ゲノム検査から判明したネオアンチゲンを標的とする、まさに個別化医療を難治性膵がんで実現した点が高く評価される。ただし、著者らも述べているように本法を用いた前向き臨床試験が必要と思われるとともに、こうした遺伝子工学技術の普及がわが国においても望まれる。

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異物の評価【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q22

異物の評価Q22症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。外科医のいる二次救急病院に送るのも気が引ける…。初期研修ぶりだけど、自分で縫ってみるか。非滅菌手袋もつけたし、指ブロックのうえ、創部を水道水でしっかり洗ったぞ。洗いながら異物がないことも確認したし、金属やガラス片くらいしかレントゲンで写らないから、これ以上の評価の方法はないよな?

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抗菌縫合糸の使用でSSI発生率低減~日本人大腸がん患者での大規模研究

 外科手術後の閉鎖創におけるトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸と非コーティング糸とを比較した手術部位感染症(SSI)予防効果について、ランダム化比較試験やメタ解析などでその有用性について検討されてはいるが、各種ガイドラインでも条件付き推奨でとどまるものが多い。大阪大学の三吉 範克氏ら大阪大学消化器外科共同研究会大腸疾患分科会は、開腹/腹腔鏡下大腸がん手術における予防効果を評価するため、多施設共同前向き研究を実施。Journal of the American College of Surgeons誌2022年6月号に報告した。抗菌縫合糸の使用はSSIの発生を2.53%減少し有意な効果・対象:大腸がん(CRC)に対する待機的手術を受けた20 歳以上の患者・治療:切開後の腹部筋膜閉鎖にトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸もしくは非コーティング縫合糸を使用・主要評価項目:SSI発生率・副次評価項目:入院期間、外科的合併症の発生率 トリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸の手術部位感染症予防効果を評価した主な結果は以下のとおり。・2016年7月22日~2019年7月16日に国内24施設から2,207例の患者が組み入れられ、適格基準を満たした患者に対し、傾向スコアマッチングの手法を用いて2:1の割合で抗菌縫合糸群に926例、非抗菌縫合糸群に653例が割り付けられた。・ベースライン時点での年齢中央値は両群で68歳、術式は抗菌糸縫合群で腹腔鏡93%/ロボット支援4%/開腹3%、非抗菌縫合糸群で腹腔鏡96%/ロボット支援2%/開腹2%だった。・主要評価項目のSSI発生率は、抗菌縫合糸群で4.21%、非抗菌縫合糸群6.74%だった(p=0.028)。・重篤な有害事象の発生は報告されなかった。・ロジスティック回帰分析により、いくつかの因子がSSI発生に影響することが示された:抗菌縫合糸(オッズ比[OR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.40~0.99、p=0.046)、糖尿病(OR:1.81、95%CI:1.07~3.07、p=0.026)、白血球数(OR:1.14、95%CI:1.01~1.28、p=0.046)、手術時間(OR:1.64、95%CI:1.01~2.67、p=0.046)、術中合併症(OR:6.06、95%CI:1.03~35.75、p=0.047)。・副次評価項目である入院期間と外科的合併症の発生率は、両群間で統計学的な差はみられなかった。・6つの第III相試験を含む4,797例に今回の研究を含めたメタ解析の結果、非抗菌縫合糸と比較したトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸はSSI予防において有意な優越性を示した(OR:0.71、95%CI:0.53~0.95、p=0.0195)。 著者らは、全体のSSI発生率は5.55%であり、SSIが依然として一般的で未解決な課題であることが示唆されたとしたうえで、トリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸の使用はSSIの発生を2.53%減少し、有意な効果を示したと結論付けている。

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2価RSVpreFワクチン、第IIa相チャレンジ試験で有効性を確認/NEJM

 2価の呼吸器多核体ウイルス(RSV)融合前F蛋白ベース(RSVpreF)のワクチンはプラセボと比較して、症候性のRSV感染やウイルス排出の予防効果が高く、安全性に関する明らかな懸念も認めないことが、ドイツ・Pfizer PharmaのBeate Schmoele-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年6月23日号で報告された。ワクチン接種後にウイルスを鼻腔内投与 本研究は、2価RSVpreFワクチンの有効性と安全性の評価を目的に、単施設で行われた探索的なRSVチャレンジ試験(二重盲検無作為化プラセボ対照第IIa相試験)である(米国Pfizerの助成を受けた)。 健康な成人(年齢18~50歳)が対象とされ、2価RSVpreFワクチン(120μg、アジュバントは含有されていない)の単回筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。これらの参加者は、ワクチンまたはプラセボの接種から約28日の時点で、RSV-A Memphis 37bチャレンジウイルスを鼻腔内に投与され、隔離室で12日間の観察を受けた。 ウイルスの投与を受けた参加者は、ウイルス投与から28日後にフォローアップのために受診し、ワクチン注射から6ヵ月後(ウイルス投与から155日目)に最後の受診をした。 プロトコルで事前に規定された主要エンドポイントは、(1)症候性RSV感染(逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]検査でウイルスRNAが少なくとも2日連続で検出)が確定され、3つのカテゴリー(上気道、下気道、全身)のうち2つ以上で重症度を問わない臨床症状が1つ以上みられるか、または1つ以上のカテゴリーでGrade2の臨床症状がみられる、(2)ウイルス投与後1日目から退院までの総症状スコア、(3)RT-qPCR検査で測定された鼻腔洗浄液検体中のRSVウイルス量のウイルス投与後2日目から退院(12日目)までの曲線下面積(AUC)とされた。ワクチン有効率86.7%、重篤・重度の有害事象はない 70例が登録され、ワクチン群に35例(スクリーニング時の年齢中央値24歳[範囲19~47]、女性10例[29%])、プラセボ群にも35例(26歳[20~50]、10例[29%])が割り付けられた。計画どおり、このうち62例(89%、両群31例ずつ)がRSV-A Memphis 37bを鼻腔内に投与され、60例が隔離観察期間を完了した。 チャレンジウイルスの投与を受けた参加者における、症候性RSV感染(ウイルスRNAの2日以上連続の検出で確定)の予防に関するワクチンの有効率は、86.7%(95%信頼区間[CI]:53.8~96.5)であった。症候性感染は、ワクチン群が6%(2/31例)、プラセボ群は48%(15/31例)で発現した。 ウイルス投与後2~12日目までのRT-qPCR検査で測定したRSVウイルス量のAUC(時間×log10コピー/mL)中央値は、ワクチン群が0.0(IQR:0.0~19.0)、プラセボ群は96.7(0.0~675.3)であった。 ワクチン群では症状の発現期間と重症度の双方で防御効果が認められ、総症状スコアの幾何平均の和は、ワクチン群の2.1に対しプラセボ群は10.8だった(比:0.26、95%CI:0.12~0.56)。 一方、RT-qPCR検査またはウイルス培養による有効性のエンドポイントの定義に基づくと、ワクチン群で症候性感染は認められず、プラセボ群で症候性感染が確定されるまでの期間中央値はRT-qPCR検査が3.3日(IQR:2.9~4.8)、ウイルス培養は4.8日(3.8~5.3)であった。また、RT-qPCR検査で定量化可能なウイルスが検出されたワクチン群8例におけるウイルス排出は、症状の有無にかかわらず、ウイルス投与後に初めてウイルスDNAが検出されてから、24時間以内にほぼ限定されていた。 免疫原性の評価では、ワクチンまたはプラセボ注射後約28日の時点でのウイルス投与直前におけるRSV-A中和抗体価のベースラインからの幾何平均上昇倍率は、ワクチン群が20.5倍(95%CI:16.6~25.3)、プラセボ群は1.1倍(0.9~1.3)で、RSV-B中和抗体価の幾何平均上昇倍率はそれぞれ20.3倍(15.6~26.4)および1.0倍(0.9~1.1)であった。 ワクチンまたはプラセボ注射後7日までに、ワクチン群が14%(5/35例)、プラセボ群は6%(2/33人)で局所反応が報告された。ワクチン群の局所反応はすべて軽度であった。最も頻度の高い局所反応は注射部位の痛みだった(ワクチン群5例、プラセボ群1例)。全身性のイベントは、ワクチン群が18例(51%)、プラセボ群は11例(33%)で発現し、疲労/倦怠感の頻度が高かった(ワクチン群14例[40%]、プラセボ群10例[30%])が、いずれも軽度であった。38℃以上の発熱は認めなかった。 注射後28日以内に、ワクチン群が34%(12/35例)、プラセボ群は29%(10/35例)で、合計25件の有害事象が発現した。1件(顎下リンパ節腫脹、ワクチン注射後26日目に発現し53日目に消退)が、ワクチン関連と判定された。ワクチン群で試験中止の原因となった有害事象が2件(検査で新型コロナウイルス感染症が陽性と心電図でQT間隔延長が1件ずつ)認められたが、いずれも試験薬との関連はないと判定された。28日までに、重篤または重度の有害事象の報告はなかった。 著者は、「これらの知見は、今後、第III相試験でRSVpreFワクチンの有効性の評価を行うことを支持するものである」としている。

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スボレキサントからレンボレキサントへの切り替え治療の睡眠障害に対する有効性

 昭和大学 横浜市北部病院の沖野 和麿氏らは、不眠症治療におけるオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントからレンボレキサントへの切り替えの影響について調査を行った。その結果、スボレキサントからレンボレキサントへの切り替えで、入眠障害の改善が認められたことを報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年6月10日号の報告。スボレキサントからレンボレキサントへの切り替えで12週間後の入眠障害に有意な改善 対象は、症状が3ヵ月以上持続し、スボレキサント治療を3ヵ月以上行っている慢性不眠症患者。対象患者をスボレキサント維持群またはスボレキサントからレンボレキサントへの切り替え群の2群に割り付けた。不眠症の4つのサブタイプ(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害)について調査を行った。両群における12週間後の改善効果を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 スボレキサントからレンボレキサントへの切り替えの影響について調査を行った主な結果は以下のとおり。・対象患者は77例(スボレキサント維持群:34例、レンボレキサント切り替え群:43例)であった。・両群間の睡眠障害を比較すると、レンボレキサント切り替え群は、スボレキサント継続群と比較し、12週間後の入眠障害に有意な改善が認められた(オッズ比:0.036、p=0.008、95%CI:0.003~0.415)。・中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に両群間の有意な差は認められなかった。・スボレキサントからレンボレキサントへの切り替えによる重篤な副作用の発現は認められず、安全性および忍容性が確認された。

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オミクロン株BA.4/BA.5、BA.2より免疫逃避しやすい?/NEJM

 現在、米国ではオミクロン株BA.2.12.1、南アフリカではBA.4やBA.5といった、新たな系統への置き換わりが進んでいる。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNicole P. Hachmann氏らが、ワクチン接種者とCOVID-19既感染者において、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定したところ、BA.2.12.1、BA.4、BA.5といった新系統の亜種が、ワクチンと感染による免疫から逃避する可能性があることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、ファイザー製ワクチンを2回接種し、その後ブースター接種した27例と、オミクロン株BA.1またはBA.2に感染した27例において、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株)、およびオミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定し、その中央値が求められた。なお、BA.4とBA.5はスパイク蛋白の配列が同一である。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群において、6ヵ月後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して124U/mLであったが、すべてのオミクロン株亜種に対しては20U/mL未満であった。ブースター接種2週間後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して5,783U/mL、BA.1に対して900U/mL、BA.2に対して829U/mL、新系統のBA.2.12.1に対して410U/mL、BA.4またはBA.5に対して275U/mLとなり、いずれもブースター接種後は中和抗体価が大きく増加した。しかし、WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1やBA.2は6~7分の1に低下している一方で、BA.2.12.1は14分の1、BA.4とBA.5は21分の1に中和抗体価が大幅に低下している。・オミクロン株BA.1またはBA.2の既感染群の中和抗体価は、WA1/2020株に対して1万1,050U/mL、BA.1に対して1,740U/mL、BA.2に対して1,910U/mL、BA.2.12.1に対して1,150U/mL、BA.4またはBA.5に対して590U/mLであった。WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1は6.4の1、BA.2は5.8分の1、BA.2.12.1は9.6分の1、BA.4とBA.5は18.7分の1に低下している。 本研究の結果、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5は、現在日本で主流のBA.2よりも、ワクチン接種と感染による免疫から逃避しやすいことが示された。ワクチン接種や、BA.1やBA.2の感染既往のある集団においても、BA.2.12.1、BA.4、BA.5への感染が増加する可能性が考えられる。

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