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コロナ・インフル同時流行の際の注意点/日本感染症学会

 今冬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に加え、季節性インフルエンザの同時流行が危惧されている。発熱や倦怠感など症状を同じくするものもあり、外来などでの鑑別で混乱を来すことが予想されている。そこで、日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、10月20日に同学会のホームページで「この冬のCOVID-19とインフルエンザ同時流行の際の注意点」を発表した。 本稿では、緊急避難的な措置の一例として「COVID-19、インフルエンザ同時流行となった場合の外来診療フローチャート」を示すとともに、外来診療フローチャートについて6つのポイントを説明している。1)COVID-19(コロナ)・インフルエンザ(インフル)同時流行に備える体制の必要性・オーストラリアや東アジアの疫学情報から今冬のコロナ・インフルの同時流行の可能性を示唆。最悪の事態を想定し、対策を講じる必要。・とくにオーストラリアでは、インフルの流行が2ヵ月前倒しで生じた。・インフルの流行が起きなくても、相当に大きなコロナ第8波が来る可能性を想定。・冬季は他の呼吸器感染症の流行もみられやすい時期であり、必要な場面での適切なマスク着用、3密回避・換気対策を引き続き継続するよう依頼。2)ワクチン接種のお願い・コロナ・インフルの同時流行に備えて、両ワクチンの速やかな接種を依頼。・両ワクチンの同時接種も可能であることを周知。・コロナワクチンとしてオミクロンBA.1、オミクロンBA.4、5対応の2種類(2価ワクチン)が利用可能。従来のワクチンに比べて2価ワクチンの高い有効性が推定されている。3)診療体制の基本:重症化リスクに応じた対応・コロナ、インフルの診療の原則は対面診療。・外来診療のひっ迫が想定される場合、医療機関への受診は重症化リスクの高い人(高齢者、基礎疾患を有する人、妊婦、小学生以下の小児)を優先。・重症化リスクが低い人は、新型コロナ検査キットによる自己検査を推奨し自宅療養へ誘導。4)診断検査の基本:コロナ・インフル同時簡易抗原検査の利用・医療機関では、コロナ・インフル同時簡易抗原検査(コンボキット)を有効に活用。・コンボキットによる判定が難しい場合に備え、コロナ遺伝子検査も実施できるように準備。・流行到来前に、市販の新型コロナ検査キットを購入しておくよう説明。5)健康フォローアップセンターへの登録と相談・自己検査でコロナ陽性となった人は、健康フォローアップセンターへの登録を指導。・症状の悪化や不安を感じる場合には、健康フォローアップセンターに連絡し、医療機関の受診を相談。6)電話・オンライン診療の活用と注意点・電話・オンライン診療では、対面診療に比べて得られる情報は限定されることに注意。・電話・オンライン診療で判断に迷う場合、重症化を否定できない場合には受診をお願いする。・電話・オンライン診療で、対症療法としての解熱剤、鎮咳剤に加えて、インフルの可能性が高いと判断する場合には抗インフル薬の処方も可能。・インフルの診断は、コロナ自己検査陰性、地域でのインフル流行状況、インフル感染者との接触歴、急激な発熱・筋肉痛などの臨床症状を参考に実施。 なお、学会では、「COVID-19・インフルエンザが同時流行していない状況では、対面診察の上、早期診断・早期治療することが基本」と注意を促している。

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発症6h以降の脳底動脈閉塞、血栓除去術で脳出血が増加か/NEJM

 脳底動脈閉塞に起因する脳梗塞の症状発現から6~24時間が経過した患者では、血栓除去術は内科的治療と比較して、90日時の機能状態が良好な患者の割合が高かったが、手技に伴う合併症と関連し、脳出血を増加させたことが、中国・首都医科大学宣武医院のTudor G. Jovin氏らが実施した「BAOCHE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年10月13日号に掲載された。中国の無作為化対照比較試験 BAOCHE試験は、中国の医師主導非盲検無作為化対照比較試験であり、アウトカムの評価は盲検下に行われた(中国科学技術部の助成を受けた)。参加者は、2016年8月~2021年6月の期間に登録された。 対象は、年齢18~80歳、脳底動脈閉塞に起因する脳梗塞で、症状発現から6~24時間が経過し、修正Rankin尺度(mRS、0[まったく症状がない]~6[死亡]点)のスコアが0または1点、米国国立衛生研究所(NIH)脳卒中評価尺度(NIHSS、0~42点、点数が高いほど神経学的症状の重症度が重い)のスコアが10点以上の患者であった。 被験者は、血栓除去術+標準的な内科的治療または標準的な内科的治療単独(対照)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、当初、90日の時点におけるmRSスコア0~4点であったが、良好な機能状態(mRSスコア0~3点)に変更された。安全性の主要アウトカムは、24時間時点の症候性頭蓋内出血および90日死亡率であった。当初の主要アウトカムには差がない 217例が登録され、血栓除去術群に110例、対照群に107例が割り付けられた。全体の年齢中央値は65歳、女性が27%で、無作為化の時点での症状発現後の経過時間中央値は663分、NIHSSスコア中央値は20点だった。アルテプラーゼの静脈内投与が、血栓除去術群の14%、対照群の21%で行われた。事前に規定された中間解析で、血栓除去術群の優越性が確認されたため、その時点で参加者の登録が中止された。 90日時における良好な機能状態の達成率は、血栓除去術群が46%(110例中51例)と、対照群の24%(107例中26例)に比べ有意に優れた(補正後率比:1.81、95%信頼区間[CI]:1.26~2.60、p<0.001)。当初の主要アウトカムであるmRSスコア0~4点の達成率は、それぞれ55%および43%だった(1.21、0.95~1.54)。 90日時のmRSスコア0~2点の達成率は、血栓除去術群が39%、対照群は14%であった(補正後率比:2.75、95%CI:1.65~4.56)。また、EQ-5D-3Lの質問票(-0.149~1.00点、点数が高いほどQOLが良好)で評価した患者報告による健康状態も、血栓除去術群のほうが良好であった(0.78点vs.0.46点[中央値]、平均群間差:0.24点[95%CI:0.10~0.39])。 血栓除去術群における再灌流成功率は88%であった。24時間の時点での脳底動脈開存率は、血栓除去術群が92%、対照群は19%だった。 24時間時点で症候性頭蓋内出血は、血栓除去術群が6%(102例中6例)、対照群は1%(88例中1例)で発現した(補正後率比:5.18、95%CI:0.64~42.18)。90日死亡率は、それぞれ31%および42%だった(0.75、0.54~1.04)。また、血栓除去術群では、手技に伴う合併症が11%で認められた。 著者は、「プロトコルのデザイン時には入手できなかった他の試験のデータに基づき、試験中にプロトコルが修正され、とくに主要アウトカムが変更されたことは、この試験の限界である」としている。

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第120回 同時感染拡大に向け救急医療の相談機能強化を要請/消防庁

<先週の動き>1.同時感染拡大に向け救急医療の相談機能強化を要請/消防庁2.高齢者保険料引き上げを検討へ/全世代型社会保障構築会議3.今冬の同時感染に向け、インフル検査キットのOTC化に懸念/日医・厚労省4.女性ではセクハラが精神疾患の主因/過労死防止白書5.医療事務のニチイ学館、ソラストの2社が“談合で処分/公正取引委員会1.同時感染拡大に向け救急医療の相談機能強化を要請/消防庁総務省消防庁は、10月18日に、今後の新型コロナウイルス感染症の感染拡大と季節性インフルエンザとの同時流行によって、救急需要が急増する事態に向けて、外来・入院の機能強化を救急医療機関に呼び掛けるよう各都道府県に求めた。特に今年の夏、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、多くの地域で救急需要が増加し、119番通報が集中したことにより、一時的に119番通報がつながりにくい時間が発生したこともあったため、今冬までに救急安心センター事業(♯7119)、子ども医療電話相談事業(#8000)、救急相談アプリを拡充するなど体勢を備え、住民に対し、医療機関の受診や救急車の要請に迷う場合にこれらの活用を改めて周知徹底することを求めている。(参考)救急医療の機能強化要請、同時拡大を想定 総務省消防庁が都道府県に(CB news)今後の新型コロナウイルス感染症の再拡大及び季節性インフルエンザとの同時流行等による救急需要の増大に備えた救急安心センター事業(♯7119)の全国展開に向けた取組について(消防庁)2.高齢者の保険料引き上げを検討へ/全世代型社会保障構築会議政府は75歳以上の後期高齢者医療制度(後期制度)の医療保険料の引き上げについて全世代型社会保障構築会議で検討に入った。2025年までにすべての団塊の世代が後期高齢者となる中で、制度的な対応が急務であり、負担能力に応じて、すべての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みの強化が必要であるとした。具体的には高齢者の保険料賦課限度額や高齢者医療制度への支援金の在り方、被用者保険者間の格差是正の方策などについて見直しを求め、さらに医療費の伸びを適正化するため、給付の効率化を含め、より実効的な取組みについて検討を求めている。(参考)全世代型会議、高齢者保険料上げ提起 健保危機救うか(日経新聞)基礎資料集(全世代型社会保障構築会議)3.今冬の同時感染に向け、インフル検査キットのOTC化に懸念/日医・厚労省日本医師会の中川会長は10月19日の記者会見において、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時感染に向け体勢整備は必要としつつも、季節性インフルの検査キットをOTC化には反対の意見を出した。一方、規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループの会合では、検査キットのOTC化を改めて求める意見が出されたが、厚生労働省は一般の人が検体を正しく採取することが難しく、検査の実施タイミングにも専門的な判断を伴うとして賛同しなかった。現状、インフルエンザの検査キットは法令で「医療用」とされているため、販売先は医療機関に限られ、一般の人は買うことができない。一方、厚生労働省は今冬の感染拡大に向け、同時流行に備えて、コロナの抗原検査キットと解熱鎮痛剤の購入を呼び掛けることを決めており、インフルエンザウイルスとコロナウイルスを同時に調べられる抗原検査キットの製造をメーカーに対し求めており、3,800万回分を確保している。(参考)インフル検査キットOTC化を改めて主張 規制改革WG、厚労省は慎重姿勢(CB news)インフル検査キット「OTC化適切でない」日医会長 規制改革会議は重要課題に(同)検査キットと解熱剤購入呼び掛け=コロナ、インフル同時流行対策-厚労省(時事通信)コロナとインフル、同時検査OKのキット3,800万回分確保…鼻の粘液使い15分で判定(読売新聞)4.女性ではセクハラが精神疾患の主因/過労死防止白書10月21日に、政府は過労死等防止対策推進法に基づき、国会に報告を行う法定白書「過労死等防止対策白書」を閣議決定した、令和3年版で6回目。この中で、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は減少傾向であったが、令和2年の週労働時間80時間以上の雇用者数は、「医療,福祉」では、令和2年3~6月、9~11月で前年同月を上回っていた。過労死などの認定件数について、近年は脳・心臓疾患は減少傾向だが、精神障害は過去10年で6割増と増加傾向にあり、精神疾患の発症要因を性別にみると、男性では長時間労働(32%)、仕事内容・量の変化(25%)であったのに対し、女性ではセクハラ(22%)、悲惨な事故や災害の体験や目撃(22%)が多かった。(参考)令和3年版過労死等防止対策白書精神障害の労災、10年で6割増 セクハラが原因多く(日経新聞)男性は「長時間労働」、女性は「セクハラ」が精神疾患の主因に…過労死防止白書(読売新聞)5.医療事務のニチイ学館、ソラストの2社が“談合”で処分/公正取引委員会公正取引委員会は10月17日に、愛知県と岐阜県の20の公立病院や大学病院が発注した受付や診療報酬請求などの医療事務の委託の入札で、業界大手のニチイ学館およびソラストの2社が平成27年以降に談合を繰り返したとして、独占禁止法違反を認定したと発表した。2社は談合によって医療事務の受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。受注総額は約87億円であり、ほぼすべての入札で2社以外の入札はなかった。公正取引委員会はニチイ学館に対して1億2千万円余りの課徴金の納付を命じたが、自ら違反行為を申告したソラストについては、課徴金の対象にはならない。今後、2社に対して、競争入札に参画できないように期間を区切って排除措置命令が下される見込み。(参考)愛知県又は岐阜県に所在する病院が発注する医事業務の入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について(公正取引委員会)ニチイ学館に排除措置命令 医療事務巡り談合、公取委(日経新聞)医療事務めぐる談合を認定 ニチイ学館に課徴金1億2千万円 公取委(朝日新聞)

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1人より2人〜DPNPに対する併用療法という選択肢〜(解説:永井聡氏)

 糖尿病患者の4人に1人に合併しうる糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)は、QOLに大きな影響を及ぼし、海外の多くのガイドライン1)では、アミトリプチリン(A)、デュロキセチン(D)、プレガバリン(P)、ガバペンチン(G)が第一選択となっており、日本においても同様である2)。これらの推奨は、システマティックレビューからのエビデンスの強さでなされ、単剤としてデュロキセチンが中等度の推奨、アミトリプチリンおよびプレガバリンが低い推奨とされている。ただし、最適な薬剤あるいは併用すべきかについてのある程度の規模の比較試験は行われていなかった。 そのような背景の中、DPNPに対する単剤および併用療法の有効性について、多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験、OPTION-DMが報告され、検討されたどの治療方針でも鎮痛効果は同等であり、併用療法の鎮痛効果は単剤療法を継続した患者より大きいことが示された。 本試験で用いられた薬剤の最大投与量は、アミトリプチリン75mg、デュロキセチン120mg、プレガバリン600mgであるが、単剤での投与量は6週の時点で各群のおよそ半数の患者において、アミトリプチリンが56mg、デュロキセチンが76mg、プレガバリンが397mgで投与されており、デュロキセチンは本邦のDPNPに対する最大投与量を超え、プレガバリンでも標準投与量である300mgを超えていたことから、短期間に投与量の積極的な増量を行うことが重要であることが再確認されている。それでも多くは併用療法へ移行していて、「十分に第一選択薬を投与した」のでは十分とはいえず、「第一選択薬の併用療法」を行うことでさらなる鎮痛効果が期待できる、という新たなエビデンスが登場したことは、臨床的にインパクトのある報告である。 ただし、本試験の結果を実臨床に活用するにはいくつか注意する点がある。どの組み合わせでも「効果は同等」という結果であるが、実際にはどうだろうか。副作用の点からは、プレガバリンではめまい、デュロキセチンでは悪心、アミトリプチリンでは口渇が多く、患者背景上副作用が起きやすい選択は避けるほうが無難であろう。投与量の点からは、本邦でのデュロキセチンの投与上限は60mgであることに注意が必要である。また、プレガバリンは300mg上限のプラセボ対照試験において有効性を証明しえない報告も多かった3)ことから「十二分に」増量することが改めて重要な薬剤であるが確認された。薬価の点ではアミトリプチリンが有利であるが、抗コリン作用のため高用量単剤での高齢者への投与は慎重に考えたい。 本試験の結果の解釈で注意する点も挙げておきたい。DPNPでは1年以内に半数が自然軽減するという報告もある4)。DPNPのプラセボ対照試験におけるプラセボ効果は一般的に高いことから本試験における単剤の奏効率が約40%、併用療法さらに14〜19%に「鎮痛効果を認めた」中には「自然軽減」や「プラセボ効果」も含まれている。また、二重盲検ではあるが医療者には投与量がマスクされておらず患者に「投与量の増量」が認知されプラセボ効果を生じる可能性がある。 それでも、これまでは効果が「不十分」であれば第一選択薬を他剤に切り替えたり、エビデンスや長期的安全性も不足している第二選択薬であるオピオイドを投与したりしていたことを考えると、本試験の「第一選択薬を併用する」新しい治療の「選択肢」は「糖尿病のない人と同じQOL」を目指す糖尿病の合併症治療を考える上で貴重なエビデンス、といえるのではないかと思う。

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僧帽弁狭窄症と日本酒造りの奇妙な共通点【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第53回

第53回 僧帽弁狭窄症と日本酒造りの奇妙な共通点今の大学生はとても可哀そうで、大学祭といっても酒類の提供は禁止です。成人年齢は18歳に引き下げられても、20歳未満の飲酒は禁止のままで、それも厳密な運用がなされています。自分は両親が酒に寛大であったこともあり、成人年齢前から酒に接する機会がありました。それが普通なのが昭和でした。そのお陰か、お酒が大好きです。日本酒・ワイン・焼酎・ビールなどを友として毎晩のように盃を重ねています。手取川に代表される石川県産の日本酒は「命の水」ともいえる味わいです。日本酒の製造過程は非常に複雑です。日本酒に限らず酒の醸造では、酵母の働きで糖分をアルコールと二酸化炭素に変えるアルコール発酵が必須です。米はデンプンであり、発酵に必要な糖分を含みません。カビの一種である麹が、米のデンプンをブドウ糖に変える糖化を行います。糖化とアルコール発酵を同時に行う並行複発酵は、とても高度な日本酒の醸造法です。さらに精緻であるのは、乳酸菌の関与です。乳酸菌は日本酒の種となる酒母になくてはならない存在です。酒造りで一番怖いのは、酒樽の中で雑菌が増殖する腐造です。近年でも、酒蔵が腐造により倒産・廃業に追い込まれています。アルコールには殺菌作用がありますから、アルコール発酵が進む前の醸造の初期段階で汚染の可能性が高まります。酒母の中で乳酸菌が増殖し乳酸を産生します。日本酒醸造は、米ヨーグルト造りの過程を含むのです。乳酸の酸性が微生物による汚染を防ぎます。通常の環境では雑菌よりも弱い酵母ですが、酵母は酸性の環境に強く、乳酸の存在下でもアルコール発酵を継続できる特徴をもちます。日本酒造りの過程で、酵母を守り腐造を防ぎながら、最後には自らの作り出した乳酸の殺菌作用で消えて去っていく、それが乳酸菌です。心臓弁膜症は、文字通り弁の機能が低下することによって引き起こされる病気です。心臓弁膜症の中でも僧帽弁狭窄症(mitral stenosis, MS)は、圧倒的多数がリウマチ熱に起因します。リウマチ熱は幼少期のA群溶連菌の咽頭感染が原因です。遺伝的に心臓弁膜の表面組織と溶連菌細胞の抗原に類似性を持つ者では、溶連菌に対して獲得した免疫反応が自己の弁膜組織に対して攻撃を引き起こします。このため慢性炎症が持続し、僧帽弁交連部の癒着と弁尖の石灰化が進みMSに至ります。先進国では、感染症であるリウマチ熱自体がとても稀な疾患になったため、MSの新規発生も激減しました。小生が医師になった30年以上前にはMSは珍しくない疾患でしたが、今では本当に稀な疾患になりました。大学病院でも年に1例遭遇するかどうかという頻度です。MSという疾患への対応を通じて心臓外科の手術技法や器具が発展しました。全身に血液を送る一番重要なポンプである左心室は、僧帽弁と大動脈弁に接続します。弁膜症は弁が開かなくなる狭窄症と、閉じなくなる閉鎖不全症に大別されます。つまり左心系の弁膜症としては、僧帽弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症・大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症の4つに大別されます。少し専門的な話になりますが、僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁閉鎖不全症は左心室に容量負荷が生じます。大動脈弁狭窄症では左心室に圧負荷が生じます。これらの負荷によって左心室は障害され心筋はダメージを受けます。一方で僧帽弁狭窄症(MS)は特殊です。MSでは、左心房から左心室へ血液が流入しにくく、なかなか血液を押し出すことのできない左心房の圧が上昇します。これが肺うっ血をまねき、息切れなどの心不全症状が出現します。左心房が拡大し心房細動という不整脈を引き起こすこともあります。左心房には負荷が生じますが、左心室には全く負荷がないことがポイントです。MSの患者は、症状が重篤であっても左心室機能そのものは、障害されることなく温存されているのです。ボストンのCutlerは1923年に12歳男児の左心室から小さな穴をあけそこから器具で僧帽弁を切開することで僧帽弁狭窄症を手術しています。1948年にフィラデルフィアのBaileyは同様の手術をMSに試みています。余命6ヵ月と言われた24歳女性が生存退院し、その後に出産し育てあげたそうです。この非直視下僧帽弁交連切開術(CMC)は心臓手術の黎明期に盛んに施行されました。左心室機能が保持されているというMS固有の病態が、未成熟な手術手技や不十分な心筋保護であっても患者生存を可能にしたのです。MS患者は、現代からみれば無茶な手術を受けても、僧帽弁の開放が改善するメリットを享受して生き延びることができたのです。このMS患者への手術を重ねる中で、人工心肺や人工弁、心停止中の心筋保護技術が洗練されていきました。そのプロセスを通じて、左心室負荷や心筋ダメージを伴う他の種類の重症弁膜症への心臓外科手術法が確立していったのです。日本酒醸造の話と心臓弁膜症の話には共通の伏線があります。去り際の美学です。日本酒の醸造過程で、酵母を守り腐造を防ぐ役目を果たして、酒樽から消え去っていく乳酸菌。心臓外科の進化の過程で、人工心肺や人工弁、心筋保護法の確立の礎となる役目を果たして、罹患する者が激減し消え去ろうとしている僧帽弁狭窄症。両者ともに、見事な去り際です。満開に咲き誇った桜がはらはらと舞い散る様子は、どこか寂しく儚くもあり、美しくもあります。滅びの美学ともいえます。酒造りと心臓病を同一レベルで比喩し語ることは不遜かもしれません。お許しください。今日もコロナ対策としてアルコールによる体内からの消毒に励みます。膝のうえに猫を乗せ撫でながら日本酒を片手に酔っぱらう、そんな平和が続くことを願うばかりです。

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動脈硬化症の身体所見【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q38

動脈硬化症の身体所見Q38動脈硬化症を評価する手段として、検査の他に身体所見もいくつか報告がみられている。発表されたのは1973年であるが、2000年頃から本邦でも全国的に認知され始めた、視診でとれる動脈硬化症を示唆する身体所見は?

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コロナでIF急上昇の感染症系ジャーナルを狙うべしッ!!【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第3話

さて、昨年華々しく始まった本連載「ちょっくら症例報告を書いてみよう」ですが、作者多忙のため2回ほど掲載されたところで止まってしまいました。しかし、この度『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博・集英社)の連載が再開されるという吉報が届きましたので、本連載も急遽再開することとなりました!「冨樫先生が頑張ってるのに、オレだけ休んでられるかよ…」『HUNTER×HUNTER』連載再開のニュースは、私にそんな気持ちを奮い起こしてくださいました。冨樫先生、ありがとうございます。再び冨樫先生が休載するまでは、感謝の正拳突きを一旦中止して、本連載「ちょっくら症例報告を書いてみよう」を書かせていただきたい所存です。会員の皆さま、どうぞよろしくお願い申し上げます。感染症が今熱いッさて、本連載では「症例報告を書こう」をテーマに掲げておりましたが(ていうか2回しか書いてないけど)、今回からはよりフォーカスして「感染症の症例報告を書こう」をテーマにしたいと思います。なぜなら、私が感染症医だから…そして今、感染症領域が熱いからですッ!新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は世界を激変させました。そして、それは医学誌の世界も例外ではありません。2020年の1年だけでCOVID-19に関する論文は10万本を超えており、PubMedに掲載された論文の約6%を占めたと言います。当然ながら、たくさんの論文が書かれると、たくさんの論文が引用されます。COVID-19流行によりコロナ論文が大量に生まれたことで、メジャー雑誌、そして感染症関連雑誌は大幅にインパクト・ファクターを上げました。COVID-19が登場した2019~20年にかけて、80%以上の医学誌がインパクト・ファクターを上げたと言われていますが、“NEJM,Lancet,JAMA”などのメジャー・ジャーナルはインパクト・ファクター100超えという異常な状況となっています。また、感染症系のジャーナルも軒並みインパクト・ファクターを伸ばしており、“Clinical Infectious Diseases”(9→21)、“Journal of Travel Medicine”(8.4→39)、“Emerging Infectious Diseases”(6.8→16)、“International Journal of Infectious Diseases”(3.8→12)と大変なことになっています。私のように、EIDとかIJIDにせっせと投稿していたような者としては、自分が持っていた株が値上がりして「億り人」になったような気持ちになります。COVID-19関連で最も引用された論文はLancet誌の41例のケースシリーズです。グーグルスカラー・カウンターによると実に「47,681回」も引用されています。「たったの41例かよ…オレなんかCOVID-19を1,000例以上診てるぜ…!?」とついつい言いたくなりますが、最初に書いたもん勝ちの世界なのであります。COVID-19関連では症例報告でもたくさん引用されることがあります。例えば、卑近な例で言いますと、私がコレスポした「世界最初のガンマ株の症例報告」は155回引用されていますし、アメリカで最初のCOVID-19症例の報告はなんと6,635回です! 症例報告界では最強クラスと言っていいでしょう。とはいっても、私はCOVID-19の症例報告を書こうと言いたいわけではありません。むしろ非コロナの感染症が狙い目なのです。非コロナの症例報告で高IFの医学誌を狙う今はCOVID-19で急激にインパクト・ファクターを伸ばしているこれらの感染症系ジャーナルですが、急に掲載が難しくなっているわけではありません。特にCOVID-19以外の感染症については、競争率が激しくなっているわけではないためハードルは上がりようがありません。実際に私もCOVID-19流行前後で非コロナ感染症の症例報告を複数投稿していますが、特に難化したような印象は持っていません。つまり…今だと非コロナ感染症の症例報告でもインパクト・ファクターの高い医学誌を狙えるのですッ!ということでぜひ感染症系の雑誌(表)に症例報告を書くことをお勧めします。表 感染症領域の医学誌のインパクト・ファクターの変化と筆者による一言メモ画像を拡大する「最近、症例報告が2つEIDってマイナーな雑誌に載っちゃってさ…鼠咬症と納豆菌菌血症って超マニアックな症例ばっかなんだけど…どうせオレなんて誰も見向きもしないマイナーな症例を報告してるだけの永遠の小物だからさ…。え…? インパクト・ファクター…? いやいや、大したことないよ…いやいや、たったの16だって!」とか言ってみたくないですか?そう、今ならインパクト・ファクター10超えのジャーナルに症例報告を載せまくることができるのですッ!このタイミングを見逃すなッ!ということで、次回は、感染症の症例報告ならではの「微生物検査の活用の仕方」についてご紹介します。冨樫先生が休載していなければ、また2週間後にお会いしましょう!1)Else H. Nature. 2020;588:553. 2)Huang C.et al. Lancet. 2020;395:497-506.3)Fujino T,et al. Emerg Infect Dis. 2021;27:1243-1245.4)Tanaka I,et al. Emerg Infect Dis. 2022;28:1718-1719. 5)Kawashima A,et al. Emerg Infect Dis. 2022;28:886-888.

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事例010 ダーモスコピー(電算コード不使用)での査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、「D282-4 ダーモスコピー」が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用されて査定となりました。検査の通則には、複数月で1回の検査は前回実施日を記入するとあります。ダーモスコピーは4ヵ月に1回を認められた検査のため、前回実施日からみると3ヵ月しか経過していません。しかし、ダーモスコピーの留意事項には、「新たに他の病変で検査を行う場合であって、医学的な必要性から4月に2回以上算定する」と記載されています。「診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄にその理由を記載することとし、この場合であっても1月に1回を限度とすること」と記載場所も指定されています。「新たに他の病変」には、同一疾病の部位が異なる場合も含むと解されています。レセプト表記上は何らの問題はみつかりません。ここで、ダーモスコピーには理由を記載するための電算処理システム用コードが定められていることを思い出しました。データを調べてみると、やはり単なるコメントコードで入力されていました。実施日付と一度に入力を試みたようです。現在は電子的な審査が行われています。電算処理ルールから外れる場合は、返戻もしくは査定と判断されます。正しいコードを入力して再審査請求を行い、復活しています。2022年度の改定から告示・通知にかかるコメントは、電算処理システム用コードを使用することになりました(一部除外あり)。レセプトチェックシステムにて電算処理システムコードが使用されていない場合、アラートが表示されるように設定して査定対策としました。

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かかりつけ医も知っておきたい、コロナ罹患後症状診療の手引き第2版/厚労省

 厚生労働省は、2022年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1.1版)」を改訂し、第2版を10月14日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 主な改訂箇所としては、・第1章の「3.罹患後症状の特徴」について国内外の最新知見を追加・第3~11章の「2.科学的知見」について国内外の最新知見を追加・代表的な症状やキーワードの索引、参考文献全般の見直しなどが行われた。 同手引きの編集委員会では、「はじめに」で「現在、罹患後症状に悩む患者さんの診療や相談にあたる、かかりつけ医などやその他医療従事者、行政機関の方々に、本書を活用いただき、罹患後症状に悩む患者さんの症状の改善に役立ててほしい」と抱負を述べている。1年後に多い残存症状は、疲労感・倦怠感、呼吸困難、筋力低下/集中力低下 主な改訂内容を抜粋して以下に示す。【1章 罹患後症状】「3 罹患後症状の特徴」について、タイトルを「罹患後症状の頻度、持続時間」から変更し、(罹患者における研究)で国内外の知見を追加。・海外の知見 18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12ヵ月時点で多くみられた罹患後症状であった。中国、デンマークなどからの研究報告を記載。・国内の知見 COVID-19と診断され入院歴のある患者1,066例の追跡調査について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月で検討されている。男性679例(63.7%)、女性387例(36.3%)。 診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12ヵ月後に5%以上残存していた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下/集中力低下(8%)など。 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は、酸素需要のなかった患者と比べ3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 入院中に気管内挿管、人工呼吸器管理を要した患者は、挿管が不要であった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3ヵ月時点で男性に43.5%、女性に51.2%、診断後6ヵ月時点で男性に38.0%、女性に44.8%、診断後12ヵ月時点で男性に32.1%、女性に34.5%と、いずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。(非罹患者と比較した研究) COVID-19非罹患者との比較をした2つの大規模コホート研究の報告。英国の後ろ向きマッチングコホート研究。合計62の症状が12週間後のSARS-CoV-2感染と有意に関連していて、修正ハザード比で大きい順に嗅覚障害(6.49)、脱毛(3.99)、くしゃみ(2.77)、射精障害(2.63)、性欲低下(2.36)のほか、オランダの大規模マッチングコホート研究を記載。(罹患後症状とCOVID-19ワクチン接種に関する研究)(A)COVID-19ワクチン接種がCOVID-19感染時の罹患後症状のリスクを減らすかどうか(B)すでに罹患後症状を認める被験者にCOVID-19ワクチン接種を行うことでどのような影響が出るのか、の2点に分け論じられている。(A)低レベルのエビデンス(ケースコントロール研究、コホート研究のみでの結果)では、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種が、その後の罹患後症状のリスクを減少させる可能性が示唆されている。(B)罹患後症状がすでにある人へのCOVID-19ワクチン接種の影響については、症状の変化を示すデータと示さないデータがあり、一定した見解が得られていない。「5 今後の課題」 オミクロン株症例では4.5%が罹患後症状を経験し、デルタ株流行時の症例では10.8%が罹患後症状を経験したと報告されており、オミクロン株流行時の症例では罹患後症状の頻度は低下していることが示唆されている。揃いつつある各診療領域の知見 以下に各章の「2.科学的知見」の改訂点を抜粋して示す。【3章 呼吸器症状へのアプローチ】 罹患後症状として、呼吸困難は20〜30%に認め、呼吸器系では最も頻度の高い症状であった。年齢、性別、罹患時期などをマッチさせた未感染の対照群と比較しても、呼吸困難は胸痛や全身倦怠感などとともに、両者を区別しうる中核的な症状だった。【4章 循環器症状へのアプローチ】 イタリアからの研究報告では、わずか13%しか症状の完全回復を認めておらず、全身倦怠感が53%、呼吸困難が43.4%、胸痛が21.7%。このほか、イギリス、ドイツの報告を記載。【5章 嗅覚・味覚症状へのアプローチ】 フランス公衆衛生局の報告によると、BA.1系統流行期と比較し、BA.5系統流行期では再び嗅覚・味覚障害の発生頻度が増加し、嗅覚障害、味覚障害がそれぞれ8%、9%から17%に倍増した。【6章 神経症状へのアプローチ】 中国武漢の研究では、発症から6ヵ月経過しても、63%に疲労感・倦怠感や筋力低下を認めた。また、発症から6週間以上持続する神経症状を有していた自宅療養者では、疲労感・倦怠感(85%)、brain fog(81%)、頭痛(68%)、しびれ感や感覚障害(60%)、味覚障害(59%)、嗅覚障害(55%)、筋痛(55%)を認めたと報告されている。【7章 精神症状へのアプローチ】 罹患後症状が長期間(約1年以上)にわたり持続することにより、二次的に不安障害やうつ病を発症するリスクが高まるという報告も出始めている。【8章 “痛み”へのアプローチ】 下記の2つの図を追加。 「図8-1 COVID-19罹患後疼痛(筋痛、関節痛、胸痛)の経時的変化」 「図8-2 COVID-19罹患後疼痛の発生部位」 COVID-19罹患後に身体の痛みを有していたものは75%で、そのうち罹患前に痛みがなかったにも関わらず新規発症したケースは約50%と報告されている。罹患後、新規発症した痛みの部位は、広範性(20.8%)、頸部(14.3%)、頭痛、腰部、肩周辺(各11.7%)などが報告され、全身に及ぶ広範性の痛みが最も多い。 【9章 皮膚症状へのアプローチ】「参考 COVID-19と帯状疱疹[HZ]の関連について」を追加。ブラジルでは2017〜19年のCOVID-19流行前の同じ間隔と比較して、COVID-19流行時(2020年3〜8月)のHZ患者数は35.4%増加した。一方、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究では、2020年のCOVID-19の拡大はHZ発症率に影響を与えなかったと報告。    【10章 小児へのアプローチ】 研究結果をまとめると、(1)小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、特に複数の症状を有する場合が多い、(2)年少児は年長児と比べて少ない、(3)症状の内訳は、嗅覚障害を除くと対照群との間に大きな違いはない、(4)対照群においてもメンタルヘルスに関わる症状を含め、多くの訴えが認められる、(5)症例群と対照群との間に罹患後症状の有病率の有意差を認めない、(6)小児においてもまれに成人にみられるような循環器系・呼吸器系などの重篤な病態を起こす可能性があるといえる。【11章 罹患後症状に対するリハビリテーション】 2022年9月にWHOより公表された"COVID-19の臨床管理のためのガイドライン"の最新版(第5版)では、罹患後症状に対するリハビリテーションの項が新たに追加され、関連する疾患におけるエビデンスやエキスパートオピニオンに基づいて、呼吸障害や疲労感・倦怠感をはじめとするさまざまな症状別に推奨されるリハビリテーションアプローチが紹介されている。 なお、本手引きは2022年9月の情報を基に作成されており、最新の情報については、厚生労働省などのホームページなどから情報を得るように注意を喚起している。

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6つの食習慣と肝細胞がんリスクの関連:メンデルランダム化研究

 飲酒経験などの食習慣と肝細胞がん(HCC)リスクとの間に、潜在的な因果関係があることが報告された。Hepatology Communications誌2022年8月号掲載の報告。 食生活はHCCと関連があると報告されているが、因果関係があるかどうかは依然として不明である。中国・香港中文大学のYunyang Deng氏らは、東アジア人の集団においてメンデルランダム化※を用いた、食生活とHCCリスクの潜在的な因果関係の探索を目的とした研究を実施した。※メンデルランダム化(MR)は、因果関係を推論するための研究デザインとして導入された。MR研究の多くは、遺伝的に予測される曝露とアウトカムとの関連を評価するために、曝露と有意に関連する遺伝子変異を操作変数(IV)として使用している。遺伝子変異は親から子へランダムに遺伝するため、潜在的な交絡因子や逆の因果関係による影響を受けにくいとされ、MRに基づく研究デザインは、無作為化比較試験(RCT)では調査できない多くの曝露を調査することが可能である。 本研究はバイオバンク・ジャパンのデータを用いて実施され、2003~18年にかけて20~89歳までの20万人を超える参加者が募集された。そのうち、飲酒経験(16万5,084人)、アルコール摂取(5万8,610人)、コーヒー摂取(15万2,634人)、茶の摂取(15万2,653人)、牛乳の摂取(15万2,965人)およびヨーグルト摂取(15万2,097人)という6つの食習慣に関する要約レベルのゲノムワイド関連解析データが用いられた。また、HCC(1,866症例、対照19万5,745人)のデータも入手した。曝露と関連する一塩基多型(SNP)(p<5×10-8)を操作変数(IV)として選択し、飲酒経験、アルコール摂取、コーヒー摂取について、5つ、2つ、6つのSNPが同定された。茶、牛乳、ヨーグルトの摂取については、1つのSNPが用いられた。オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、逆分散加重(SNPが2つ以上のIVの場合)またはWald比(SNPが1つのIVの場合)により算出された。 主な結果は以下のとおり。・飲酒経験(OR:1.11、95%CI:1.05~1.18、p<0.001)およびアルコール摂取(OR:1.57、95%CI:1.32~1.86、p<0.001)はHCCリスクと正の相関があった。逆に、コーヒー摂取はHCCリスクと逆相関していた(OR:0.69、95%CI:0.53~0.90、p=0.007)。・茶、牛乳、ヨーグルトの摂取についても同様の逆相関が認められ、OR(95%CI)はそれぞれ0.11(0.05~0.26)、0.18(0.09~0.34)、0.18(0.09~0.34)であった(すべてp<0.001)。 6つの食習慣とHCCリスクとの間には、潜在的な因果関係が認められた。著者らは、食習慣がHCCに与える影響に関するエビデンスの提供は、臨床診療に役立つものであると述べている。

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双極性障害の精神症状と転帰への影響~システマティックレビュー

 双極性障害(BD)患者の半数以上に認められる精神症状は、疾患経過、転帰、治療に対して悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、さまざまな研究が行われているにもかかわらず、精神症状がBDに及ぼす影響は解明されておらず、システマティックレビューはほとんど行われていなかった。インド・Postgraduate Institute of Medical Education and ResearchのSubho Chakrabarti氏らは、BD患者の精神症状の程度とBDのさまざまな側面への影響を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、精神症状は、BD患者において一般的に認められるが、それが疾患経過や治療転帰に悪影響を及ぼすとは限らないことを報告した。World Journal of Psychiatry誌2022年9月19日号の報告。 本研究は、PRISMAガイドラインに従い実施された。1940~2021年までに公表されたBD患者の精神症状に関する研究を、6つの英語データベースより電子文献検索および手動検索により収集した。関連するMeSH用語を組み合わせて検索を行った。対象研究は、スクリーニング後に選択し、全文レビューを行った。研究の方法論的質およびバイアスリスクの評価には、標準的なツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・本システマティックレビューには、339件の研究が含まれた。・半数~3分の2のBD患者は生涯に精神症状が認められ、半数弱では現在精神症状が認められた。・BDのいずれのステージにおいても、幻覚よりも妄想の頻度が高かった。・BD患者の3分の1は、とくに躁病エピソード中に、第1級の精神症状または気分に合致しない精神症状が認められた。・精神症状の発生率は、双極II型障害よりも双極I型障害で多く、双極性うつ病よりも躁病または混合エピソードで多かった。・BD患者の精神症状は、それほど重篤ではなかったが、精神病性BD患者の重症度は一貫して高かった。・精神疾患は、主に洞察力低下、興奮、不安、敵意の増加と関連していたが、精神医学的併存疾患との関連は認められなかった。・精神疾患は、入院率および入院期間、うつ病への転換、気分に合致しない症状を伴う転帰不良の増加と関連が認められた。・対照的に、精神疾患がラピッドサイクラー、罹病期間の長さ、自殺リスクの増大につながる可能性は低かった。・疾患経過や他の転帰のパラメータに対する精神疾患の重大な影響は確認されなかった。

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脳底動脈閉塞の予後改善、発症12時間以内の血栓除去術vs.薬物療法/NEJM

 中国人の脳底動脈閉塞患者において、脳梗塞発症後12時間以内の静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術は、静脈内血栓溶解療法を含む最善の内科的治療と比較して90日時点の機能予後を改善したが、手技に関連する合併症および脳内出血と関連することが、中国科学技術大学のChunrong Tao氏らが中国の36施設で実施した医師主導の評価者盲検無作為化比較試験の結果、示された。脳底動脈閉塞による脳梗塞に対する血管内血栓除去術の有効性とリスクを検討した臨床試験のデータは限られていた。NEJM誌2022年10月13日号掲載の報告。発症後12時間以内の症例で、90日後のmRSスコア0~3達成を比較 研究グループは、18歳以上で発症後推定12時間以内の脳底動脈閉塞による中等症~重症急性期虚血性脳卒中患者(NIHSSスコアが10以上[スコア範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い])を、内科的治療+血管内血栓除去術を行う血管内治療群と内科的治療のみを行う対照群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 内科的治療は、ガイドラインに従って静脈内血栓溶解療法、抗血小板薬、抗凝固療法、またはこれらの併用療法とした。血管内治療は、ステント型血栓回収デバイス、血栓吸引、バルーン血管形成術、ステント留置、静脈内血栓溶解療法(アルテプラーゼまたはウロキナーゼ)、またはこれらの組み合わせが用いられ、治療チームの裁量に任された。 主要評価項目は、90日時点の修正Rankinスケールスコア(mRS)(範囲:0~6、0は障害なし、6は死亡)が0~3の良好な機能的アウトカム。副次評価項目は、90日時点のmRSが0~2の優れた機能的アウトカム、mRSスコアの分布、QOLなどとした。また、安全性の評価項目は、24~72時間後の症候性頭蓋内出血、90日死亡率、手技に関連する合併症などであった。良好な機能的アウトカム達成、血管内治療群46%、対照群23% 2021年2月21日~2022年1月3日の期間に507例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たし同意が得られた340例(intention-to-treat集団)が、血管内治療群(226例)と対照群(114例)に割り付けられた。静脈内血栓溶解療法は血管内治療群で31%、対照群で34%に実施された。 90日後の良好な機能的アウトカムは、血管内治療群104例(46%)、対照群26例(23%)で認められた(補正後率比:2.06、95%信頼区間[CI]:1.46~2.91、p<0.001)。症候性頭蓋内出血は、血管内治療群では12例(5%)に発生したが、対照群では発生しなかった。 副次評価項目については、概して主要評価項目と同様の結果であった。 安全性に関して、90日死亡率は、血管内治療群で37%、対照群で55%であった(補正後リスク比:0.66、95%CI:0.52~0.82)。手技に関連する合併症は、血管内治療群の14%に発生し、動脈穿孔による死亡1例が報告された。

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コロナ罹患後症状、120万人のプール解析/JAMA

 2020年および2021年に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した症候性患者において、Long COVID(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の罹患後症状、いわゆる後遺症)の主要な症状クラスター(身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労、認知に関する問題、持続する呼吸器症状)のいずれかを有する割合は全体で6.2%と推定され、女性および入院を要したSARS-CoV-2初感染者で高いことが、米国・ワシントン大学のSarah Wulf Hanson氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Disease)Long COVID Collaboratorsの解析で明らかとなった。2021年10月、世界保健機関(WHO)は、SARS-CoV-2感染から3ヵ月経過後も認められる、少なくとも2ヵ月以上持続し他の診断では説明がつかない症状として、「post COVID-19 condition」の定義を発表。しばしば「Long COVID」と呼ばれるこれらの症状について、これまでの研究では個々の症状や症状数に関する報告が最も多く、症状の持続期間や重症度、重複症状に関する報告は少なかった。JAMA誌オンライン版2022年10月10日号掲載の報告。2020年3月~2022年1月の症候性SARS-CoV-2感染者約120万人のデータを解析 研究グループは世界疾病負担研究の一環として、54件の研究および米国の2つの医療記録データベースを用い、2020年3月~2022年1月における症候性SARS-CoV-2感染者のデータを収集し、ベイジアンメタ回帰分析およびプール解析を行った。 54件の研究は、公表された研究が44件、オーストリア・フェロー諸島・ドイツ・イラン・イタリア・オランダ・ロシア・スウェーデン・スイス・米国で実施された共同コホート研究が10件で、医療記録データベースも合わせると、計22ヵ国から約120万人のデータが収集された。内訳は、公表された研究44件で入院例1万501例および非入院例4万2,891例、共同コホート研究10件でそれぞれ1万526例および1,906例、医療記録データベースでそれぞれ25万928例および84万6,046例。 主要評価項目は、SARS-CoV-2感染3ヵ月後における自己報告によるLong COVIDの有病率(主要な3つの症状クラスター[身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労、認知に関する問題、持続する呼吸器症状]のうち少なくとも1つを有する割合)とし、20歳以上と20歳未満に分け入院・非入院別ならびに男女別に推計した。そのほか、Long COVID症状クラスターの持続期間や相対的な重症度についても評価した。感染3ヵ月後のLong COVID有病率は全体で6.2%、20歳以上の女性では10.6% 解析に含まれた各研究・コホートの平均年齢の範囲は4~66歳、男性の割合は26~88%であった。 モデルを用いた解析でCOVID-19以前の健康状態を調整した結果、SARS-CoV-2感染3ヵ月後における症候性SARS-CoV-2感染者のLong COVID有病率は、全体で6.2%(95%不確定区間[UI]:2.4~13.3%)であった。 症状クラスター別では、身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労が3.2%(95%UI:0.6~10.0%)、持続する呼吸器症状が3.7%(0.9~9.6%)、認知に関する問題が2.2%(0.3~7.6%)であった。Long COVID症例における各症状クラスターの割合は、それぞれ51.0%(95%UI:16.9~92.4%)、60.4%(18.9~89.1%)および35.4%(9.4~75.1%)と推定された。 SARS-CoV-2感染3ヵ月後のLong COVID有病率は、20歳以上の女性では10.6%(95%UI:4.3~22.2%)であり、20歳以上の男性での5.4%(2.2~11.7%)と比べて高率であった。20歳未満では男女とも2.8%(95%UI:0.9~7.0%)と推定された。 Long COVIDの症状クラスターの推定平均持続期間は、入院例で9.0ヵ月(95%UI:7.0~12.0)、非入院例では4.0ヵ月(3.6~4.6)であった。 SARS-CoV-2感染3ヵ月後にLong COVID症状を有していた人のうち、推定15.1%(95%UI:10.3~21.1)は12ヵ月後も症状が持続していた。

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腎除神経術〜6ヵ月追跡で無効、3年追跡で有効の不思議(解説:桑島巌氏)

 治療抵抗性高血圧に対する治療法としてカテーテル腎除神経術が提唱され、いくつかの臨床研究で有効性の検証が行われてきたが、その代表的な研究として米国のSYMPLICITY HTNシリーズと欧州、オーストラリアのSPYRAL HTN-ON MED研究シリーズがある。いずれもラジオ波による焼灼であるが、他に超音波で焼灼するRADIAN-HTN SOLO研究もある。これらの試験では、焼灼方法の違いのほかに、治療抵抗性の定義の違いや対照の置き方などの違いがある。 2014年に発表されたSYMPLICITY HTN-3研究では、治療6ヵ月の成績では診察室血圧、24時間血圧ともにシャム治療群との間の降圧度の差を認めることができなかった。SYMPLICITY HTN-3試験の参入基準は3剤以上の降圧薬を服用していてもなお、診察室収縮期血圧160mmHg以上、24時間血圧135mmHgの治療抵抗性の高血圧症例である。本論文は観察期間をさらに延長して長期的有効性と有害事象について検討したものである。当初、参入資格を満たした535例を腎除神経治療群364例(68%)、シャム対照群171例(32%)にランダム化されたが、試験開始後6ヵ月の時点でシャム治療群に割り当てられた症例の中で、なお、治療抵抗性の基準を満たす例は腎除神経治療に切り替えてクロスオーバ群として腎除神経群に追加解析した。 36ヵ月間追跡できたのは腎除神経群219例、クロスオーバ群63例、非クロスオーバ群33例であった。 結論として、36ヵ月という長期での観察では、診察室血圧、24時間血圧ともにシャム治療群に比べて有意な降圧効果を示したという。 そこで問題となるのが、6ヵ月ではなぜシャム治療群と有意差が付かなくて、長期延長すると有意な差が付いたかである。 その理由として、(1)6ヵ月以降はシャム手術群でのプラセボ効果が薄まった可能性、(2)6ヵ月時点でシャム治療群に割り付けられた治療抵抗性群が、6ヵ月以降クロスオーバー群として腎除神経術を受けたことが影響した可能性。(3)その際、データ欠損値を補完(imputation)したことが影響した可能性。 しかし、治療抵抗性の高血圧が36ヵ月間持続することで心血管合併症発症あるいは進展に影響がなかったとは考えにくく、その点両群のバックグラウンドに差異が生じた可能性も否定できない。 現実的に個々の症例に対応する場合、6ヵ月間のフォローで降圧が得られなかった症例をそのまま経過観察というわけにはいかず、減塩指導の強化や薬剤追加などの対応が行われるであろう。この点、大規模臨床試験の統計結果とreal world にギャップがある。 百歩譲って、腎除神経術が有効であるとすれば、どのような症例が無効でどのような症例が有効であったかの分析結果が知りたいところである。 ただし、本研究で用いられた電極カテーテルは古典的なFlexカテーテル(メドトロニクス製)であり、術者がカテーテルをらせん状に回転させて腎動脈を焼灼するものであり、術者の技量が結果を左右する。その後メドトロニクス社は、4電極付きのSymplicity Spyral カテーテルを開発、これを用いたSPYRAL HTN-ON MEDが進行中である。36ヵ月の探索研究(proof of concept study)の結果ではシャム治療群に比べて有意に降圧効果が大きかったことが報告されているが、本年度秋のAHAでは最終結果が発表される予定だという。

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2歳児の陰茎が絞扼されていたまさかの原因【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第220回

2歳児の陰茎が絞扼されていたまさかの原因pixabayより使用知り合いの小児科医に原稿を見てもらったところ、この連載の日本語タイトルだけで疾患を当ててしまいました。小児の陰茎絞扼の原因として絶対に押さえておかないといけない疾患ですね。アレですよ、アレ。Baarimah A, et al.Penile Hair Tourniquet Syndrome (PHTS): A Case Report of a Two-Year-Old Boy.Case Rep Urol. 2022;2022:8030934.2歳の男児が3日前から陰茎の腫脹と痛みを訴えていました。近くの小児科医は抗菌薬入りの軟膏と鎮痛剤を処方しましたが、症状は改善しませんでした。次第に尿閉が悪化していたことから、母親と共に救急外来を受診しました。陰茎は浮腫と圧痛がひどく、壊死には至っていないものの、変色が進んでいました。陰茎の基部に、ひどく絞扼されている部位があったそうです。拡大したところ、どうやら髪の毛が巻き付いているのでは…という結論に至りました。紛れもない、「ヘアーターニケット」です。これを読んでいる医師の皆さんは、ヘアーターニケットについてはもうご存じかと思いますが、一応確認しておきましょう。髪の毛や糸が、指先、場合によっては陰茎に巻き付いて、血行を阻害する状態のことです。濡れた髪の毛が体の一部に巻き付いて、乾くことでそれがギュっと引き締まって、このような病態になります。最初は、リンパと静脈の逆流が影響を受け、陰茎遠位部の浮腫と腫脹を引き起こします。これが進行し、最終的には動脈流に影響を及ぼし、陰茎の患部の虚血、最悪の場合、壊死、切断に至ります。陰茎切断はマジ勘弁です。この2歳児のヘアーターニケットの原因となっていた毛髪は、顕微鏡下で切断されました。8Frのカテーテルが通され、尿道が無事であることが確認されました。やれやれ、一安心です。この症例もそうでしたが、一般的にヘアーターニケットの原因となるのは母親の毛髪です。陰茎のヘアーターニケットの場合、赤ちゃんのおむつに毛髪が入り込んで、中で陰茎に巻き付いてしまうことが原因とされています1)。とくに子育て世代の読者の皆さんは、おむつの中に長い髪の毛を落とさないよう、注意が必要です。1)Rawls WF, et al. Case report: penile strangulation secondary to hair tourniquet. Frontiers in Pediatrics. 2020;8(8):477.

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ESMO2022 レポート 乳がん

レポーター紹介今年度のESMOでは、現在の臨床を変えたり、今後の方向性に大きな影響を与えたりする重要な演題が発表されました。その中で、今回、進行乳がんではTROPiCS-02試験のOSの結果、MONARCH-3試験の中間解析でのOSの結果、経口SERDのランダム化比較試験の結果、周術期乳がんではDATA試験の結果を取り上げます。TROPiCS-02試験:sacituzumab govitecanがOSを改善sacituzumab govitecanは、抗Trop-2抗体とSN-38の抗体薬物複合体です。ランダム化比較第III相試験であるASCENT試験1)では、転移・再発ホルモン受容体(HR)陰性HER2陰性乳がん(トリプルネガティブ乳がん:TNBC)に対して2治療以内の化学療法歴がある症例が対象となりました。この結果、sacituzumab govitecanは、医師選択治療と比較して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の改善を示したため、すでにTNBCに対してFDAから承認されています。今回のTROPiCS-02試験(ClinicalTrials.gov、ID:NCT03901339)は、内分泌療法抵抗性のHR陽性HER2陰性進行乳がん患者において、sacituzumab govitecan(SG群)(n=272)と医師選択治療(TPC群)(n=271)を比較したランダム化比較第III相試験です。タキサン、内分泌療法、およびCDK4/6阻害薬、ならびに転移乳がんに対して2~4種類の化学療法レジメンを受けた患者が適格でした。TPC群の治療選択肢は、カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、またはエリブリンでした。2022年のASCO年次集会では、追跡期間中央値10.2でのPFSの最終解析結果が報告されており、SG群は、TPC群よりもPFSの中央値が良好で、それぞれSG群5.5ヵ月に対してTPC群は4.0ヵ月でした(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83、p=0.0003)2)。6ヵ月PFS割合はそれぞれ46%対30%、12ヵ月PFS割合はそれぞれ21%対7%と、いずれもSG群で良好な結果でした。OSについては第1回中間解析で、immatureな状況で、統計学的な有意差は認めませんでした。有害事象は、SG群で好中球減少症が51%、下痢9%といった結果でしたが、治療中断に至る重篤な有害事象はSG群で6%、TPC群で4%と大きな差を認めませんでした。今回、半年と経たず、2回目の中間解析結果として、OSのupdate結果が公表されました。今回のESMOでの発表は、追跡期間の中央値が12.5ヵ月時点で、OSはSG群で有意に良好でした。OSの中央値は、SG群で14.4ヵ月、TPC群で11.2ヵ月でした(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。また、12ヵ月のOS割合はそれぞれ61%と47%でした。奏効割合はSG群で21%に対してTPC群は14%(p=0.035)と、有意にSG群が良好でした。sacituzumab govitecanは、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対して、他の抗がん剤と比較してPFSに加えてOSの改善を示した数少ない薬となりました。これにより、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対しても標準治療の一つとして位置付けられることになります。現在、日本においてもギリアド・サイエンシズによる企業治験が実施中ですので、日本での承認が待たれます。また、一部はHER2低発現のHR陽性HER2陰性乳がんで、トラスツズマブデルクステカン(Destiny Breast 04試験3))と症例対象が重なっています。今後、両剤の位置付けについても、検討が進められると考えられます。MONARCH3試験:第2回中間解析では統計学的有意差は検証されなかったがアベマシクリブ群で良好な結果サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬であるアベマシクリブは、プラセボ対照ランダム化比較第III相試験であるMONARCH3試験で、主要評価項目である無増悪生存期間の有意な改善をもとに、HR陽性HER2陰性閉経後進行乳がん患者に対する初回内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)と組み合わせて承認されています4)。本試験における副次的評価項目であるOSについて、2回目の中間解析結果が公表されました。既にEMAの添付文書に記載されている結果が、明確に発表されたことになります。2回目の中間解析結果は追跡期間の中央値は5.8年時点で解析されました。全体集団(ITT集団)では、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値は67.1ヵ月に対して、プラセボ+NSAIは54.5ヵ月でした(ハザード比:0.754、95%CI:0.584~0.974、p=0.0301)。中間解析の事前設定されたp値は下回らず、統計学的な有意差は検証されていません。一方で、内臓転移あり患者のサブグループ(n=263)でも、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値が65.1ヵ月であったのに対し、プラセボ+NSAIは48.8ヵ月であり(HR:0.708。95%CI:0.508~0.985、p=0.0392)、予後不良と考えられる内臓転移ありのサブグループでも全体集団のアベマシクリブによるOS改善傾向は維持されていました。まだOSにまで差があるとは言えないものの、最終解析が期待される結果でした。最終OS解析結果は来年発表される予定であり、現時点で臨床でのCDK4/6阻害薬の使い分けは決定的な差がない状況です。ただし、2022年ASCO年次集会で発表され、OSに統計学的有意差を認めなかったPALOMA-2試験の最終OS結果とは、今回の結果は異なっています。サブグループ解析も、内臓転移症例のような予後不良症例においてアベマシクリブの上乗せ効果が際立っており、これまでのPFSやMONARCH2のOS結果の特徴が維持されています。Adjuvantの様々なCDK4/6阻害薬の結果を含め、これまで同等と考えられていたパルボシクリブとアベマシクリブの薬剤の違いについて、より深い考察が求められます。acelERA BC試験とAMEERA-3試験:経口SERD単剤のPhase2試験が複数negative選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)は、フルベストラントが実臨床で用いられますが、筋注製剤であることが一つのハードルとなっています。また、AI治療中に出現し、AI耐性に関わるESR1遺伝子変異に対する耐性克服としても、経口SERDが期待され、その開発が進んでいます。先行しているelacestrantは、オープンラベルランダム化比較第III相試験において、医師選択の内分泌療法よりもelacestrantによるPFS改善が既に検証されています5)。一方で、複数の製薬企業が経口SERDの開発を進めており、今回は2つの経口SERD単剤のオープンラベルランダム化第II相試験の結果が報告されました。acelERA BC試験では、1-2ラインの治療歴を有するエストロゲン受容体陽性HER2陰性の局所進行または転移乳がんにおいて、経口SERDのgiredestrantが、医師選択の内分泌療法単剤(TPC群)と比較されました。この結果、giredestrantはPFSの有意な改善を示すことはできませんでした。追跡期間中央値は7.89ヵ月で、PFS-INV中央値はgiredestrant群5.6ヵ月、TPC群5.4ヵ月でハザード比は0.81(95%信頼区間:0.60~1.10、p=0.1757)で有意差はありません。6ヵ月PFS率はそれぞれ46.8%、39.6%でgiredestrant群において良好な傾向でした。ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFS中央値はgiredestrant群(51例)5.3ヵ月、TPC群(29例)3.5ヵ月で(ハザード比は0.60 95%CI; 0.35-1.03、p=0.0610)で、全集団よりもgiredestrant群で良好な傾向でしたが、有意差を認めませんでした。AMEERA-3試験では、閉経後女性あるいはLHRHアゴニストの投与を受けている閉経前女性または男性のER陽性HER2陰性進行乳がんで、進行乳がんに対する2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法あるいは1ライン以下の標的治療による前治療歴を有し、ECOG PS 0-1の患者を対象に、amcenestrantと医師選択内分泌療法の有効性と安全性が比較されました。この結果、PFS中央値はamcenestrant 群3.6ヵ月、医師選択内分泌療法群3.7ヵ月(ハザード比 1.051, 95%CI 0.789-1.4、p=0.6437)と、有意差を認めませんでした。さらに、ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFSはamcenestrant群においてTPC群よりも良好な傾向で、中央値はそれぞれ3.7ヵ月対2.0ヵ月でハザード比は0.9(95%CI; 0.565-1.435、p=0.6437)でしたが、有意差を認めませんでした。以上をまとめると下記の表のようになります。画像を拡大する経口SERDの開発は、現在よりフロントラインで、初回治療の第III相試験が多数行われていますが、今回の結果で若干の暗雲が立ち込めています。ESR1遺伝子変異症例における経口SERDの有効性は、一貫してありそうと感じられました。ただし、今後も、既存のAIを始めとした内分泌療法やフルベストラントよりも本当に有効なのか、現在行われている第III相比較試験の結果が待たれます。(AMEERA-5試験は既にnegative trialであると発表されています)DATA試験の最終解析結果:一部の症例でExtended ANAの恩恵を受ける可能性DATA試験(ClinicalTrials.gov:NCT00301457)は、オランダで行われたタモキシフェンによる術後内分泌療法2〜3年投与後に再発がなかったHR陽性閉経後乳がん患者における追加AI治療の至適投与期間を調べるべく計画されたオープンラベルランダム化比較第III相試験です。患者は、アナストロゾール3年間の治療またはアナストロゾール6年間の治療のいずれかに無作為に割り付けられました。6年群の827人の患者と3年群の833人の患者が登録されました。この研究の主要評価項目はadapted DFS(aDFS)で、無作為化後3年後以降のDFSとして定義されました。10年aDFS割合はそれぞれ6年治療群69.1%および3年治療群66.0%(HR:0.86、95%CI:0.72~1.01、p=0.073)と、有意差は認めませんでした。同様に、10年型adapted OS(aOS)割合は、6年治療群で80.9%、3年治療群で79.2%(HR:0.93、95%CI:0.75~1.16、p=0.53)と、こちらも有意差を認めませんでした。サブグループ分析において、6年治療群が良い傾向を示したサブグループとして、腫瘍がER陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性の患者 (HR:0.77、95%CI:0.63~0.93、p=0.018)、リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)といった因子が挙げられました。しかし、これらのサブグループのいずれにおいても、10年間のaOS率に有意な改善は認めませんでした。リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)DATA試験は以前のフォローアップ中央値5年時点の報告ではDFSの有意差が認められなかった6)ところ、今回の最終報告においてもDFSはnegative resultでした。これまで、5年の内分泌療法に対して、AIの5年以降投与(7-8年または10年)の有効性を検討した試験は、AERAS、MA17、NSABP-B33、NSABP-B42、DATA、GIM4、などの大規模ランダム化比較試験が存在します。乳がん学会診療ガイドライン2022年版では、これらの統合解析がなされているように、5年内分泌療法対5年以降にAI投与(extended AI)がなされた場合となると、5年以上の投与によるDFSは改善傾向が認められます。ただし、OSの改善が示されたランダム化比較試験はGIM4のみであり、統合解析でもextended AIは有意ではありませんでした。今回のDATA試験はnegative trialであった一方で、DFSでextended AI群で良好であるというこれまでと一貫した結果であったことから、上記の統合解析も大きな変化がないであろうと想定されます。さらに、extended AIによる骨粗鬆症の悪化や心血管イベントの増加など、有害事象も増えることが分かってきている現状から、ベースラインの再発リスクの見積もり、アロマターゼ阻害薬の忍容性、有害事象の追加といった要素をもとに、総合的にextended AIは検討されるべきと考えられます。一方で、近年は5年以上のアロマターゼ阻害薬投与の有効性を推定する指標が検討されてきました。FFPE検体を用いてRT- PCRから計算するBreast Cancer Index(BCI)、腫瘍径、グレード、年齢、リンパ節転移の個数から再発リスクを算出し、閉経後症例の5年目以降の内分泌療法の追加効果を予測するCTS5などが、晩期再発のリスク見積もりに有用であるとされています7)。日本ではBCIは使用しづらいですが、こういった指標も参考にしつつ、extended AIを検討するべきと考えられます。1)Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.2)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022 Aug 26. [Epub ahead of print]3)Modi S, et al. N Engl J Med.2022;387:9-20.4)Goetz MP,et al. J Clin Oncol. 2017;35:3638-3646.5)Bidard FC,et al.J Clin Oncol. 2022;40:3246-3256.6)Tjan-Heijnen VCG, et. al. Lancet Oncol.2017;18:1502-1511.7)Andre F,et al. J Clin Oncol 2022; 40:1816-1837.

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第131回 姑息な手より急がば回れ、塩野義コロナ薬が第II/III相で良好な成績

過去の本連載で取り上げた興和による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する抗寄生虫薬イベルメクチン(商品名:ストロメクトール)の第III相試験の記者会見があった9月最終週、実は新型コロナに関してポジティブなニュースがあった。本連載で何度も辛口で触れてきた塩野義製薬の新型コロナ3CLプロテアーゼ阻害薬エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)の第II/III相試験の第III相パートで、プラセボに比べて有意な症状改善が認められたという発表である。第一報に触れた時は「ようやくか」という印象だった。ちなみにこうした反応をすると、SNS上では手の平返しと言われるらしい。だが、私が従来からこの薬に辛口だったのは、承認前の塩野義製薬幹部による政治家へのロビー活動、希少疾患治療薬向けの条件付き早期承認制度の拡大解釈的利用、はたまた主要評価項目が未達の第IIb相パートのサブ解析を多用したアピールなど、あまりにもフライングが多過ぎるからである。なので、第II相パートで結果が出ないなら、その結果を踏まえて試験設定を見直し、それで良好な結果が出たら正々堂々と承認申請すれば良いという立場である。さて、塩野義製薬による第III相パート結果の速報直後、私はいつ会見が開催されるのかと手ぐすねを引いて待っていたが、あれだけ外部にアピールを続けていた同社にしては珍しく記者会見はなし。しかし、先日同社が株主・投資家向けに開催したR&D説明会で速報時よりも詳細なデータが公表されていたことを知った。まず、VeroE6T細胞を使ったin vitroの50%効果濃度(EC50[μM])を見ると、従来株が0.37、アルファ株が0.46、デルタ株が0.41で、オミクロン株関連はBA.1が0.29、BA.4が0.22、BA.5が0.40となっている。in vitroとはいえ抗ウイルス活性は悪くない印象である。また、第III相パートは、緊急承認制度の申請時に提出したデータの教訓を生かし、主要評価項目を「オミクロン株感染時に特徴的な5症状(鼻水/鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさ/発熱、けん怠感・疲労感)の消失(発症前の状態に戻る)までの時間」とし、主要解析対象集団は新型コロナ発症から無作為割付けまでが72時間未満の被験者としている。試験は申請用量のエンシトレルビル1日125mg(2~5日目の用量、1日目は375mg)と倍量の250mg(同1日目は750mg)、プラセボの各約600例の3群比較。実際の主要解析対象集団は各群とも340例前後である。ちなみにこの試験の被験者は重症化リスク因子の有無に関係ないことはよく知られているが、各群の平均年齢は35歳前後で、ワクチン接種率は92~93%であり、今の日本で発熱外来の受診者のバックグラウンドを十分に反映しているだろう。最終的な主要評価項目の中央値は、125mg群が167.9時間、 250mg群が171.2時間、プラセボ群が192.2時間。プラセボ群に比べ、125mg群は5症状消失までの時間を24時間強、有意に短縮(p=0.0407)。ただ、発症から120時間以内の集団での解析を行うと有意差は認められないという。つまり発症から3日以内に服用しないと効果が認められないとも言える。また、副次評価項目である投与4日目(3日間連続投与後)のベースラインからのウイルスRNAの平均変化量(log10[copies/mL])は125mg群が-2.737、250mg群が-2.690、プラセボ群が-1.235。対数評価なので、125mg群ではベースラインから300分の1に低下、プラセボは10分の1に低下したことになり、これもプラセボ比では有意な差となっている(p

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母親の産後うつ病と子供のADHDとの関係~メタ解析

 産後うつ病(PPD)は、出産後、女性のメンタルヘルスや気分に重大な影響を及ぼす。これまでの研究によると、家族にとっての不運な出来事や母親の精神症状の出産後のレベルが、子供の注意欠如多動症(ADHD)と関連していることが示唆されている。ギリシャ・アテネ大学のVasileia Christaki氏らは、母親の産後うつ病と子供のADHDリスクとの関連を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、母親の産後うつ病と子供のADHDとの関連が明らかとなったが、同時にさまざまな地理学的地域におけるさらなる研究が必要であることも示唆された。Journal of Affective Disorders誌2022年12月1日号の報告。産後うつ病と子供のADHDリスク増加との関連が認められた 2021年2月28日までに公表された英語の研究をPsycINFO、PubMed、Google Scholar、Embaseより検索した。分析には、変量効果メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。研究デザイン、地理学的地域、調整レベル、研究の設定によりサブグループ解析を実施した。 産後うつ病と子供のADHDリスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・2003~19年に公表されたコホート研究9件とケースコントロール試験2件のうち、8件をメタ解析に含めた。・全体として、母親の産後うつ病と子供のADHDリスク増加との関連が認められた(プールされた相対リスク[RR]:1.69、95%信頼区間[CI]:1.27~2.26)。・サブグループ解析では、コホート研究、多変量解析実施研究、レジストリベース調査において有意な関連が認められた。・有意な出版バイアスが認められた(Egger's test:p=0.035)。・開発途上国での研究は、過小評価されている可能性が示唆された。・本研究のデータは自己報告に依存しており、減少バイアスにより適格研究の妥当性が限界として挙げられる。

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経口コロナ薬2剤、オミクロン下での有効性/Lancet

 香港では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株亜系統BA.2.2が流行している時期に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者へのモルヌピラビルまたはニルマトレルビル+リトナビルの早期投与が、死亡および入院中の疾患進行のリスクを低下したことが、さらにニルマトレルビル+リトナビルは入院リスクも低下したことが、中国・香港大学のCarlos K. H. Wong氏らによる後ろ向き症例対照研究で明らかとなった。SARS-CoV-2オミクロン株に対する経口抗ウイルス薬のリアルワールドでの有効性については、ほとんど示されていなかった。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。高リスクCOVID-19外来患者を対象に、経口抗ウイルス薬2種の有効性を調査 研究グループは、香港病院管理局(Hong Kong Hospital Authority)のデータを用い、香港でオミクロン株亜系統BA.2.2が主流であった2022年2月26日~6月26日の期間に、SARS-CoV-2感染が確認された18歳以上のCOVID-19非入院患者を特定した。解析対象は、重症化リスク(糖尿病、BMI≧30、60歳以上、免疫抑制状態、基礎疾患あり、ワクチン未接種)を有する軽症患者で、発症後5日以内に外来でモルヌピラビル(800mg 1日2回5日間)またはニルマトレルビル+リトナビル(ニルマトレルビル300mg[推定糸球体濾過量30~59mL/分/1.73m2の場合は150mg]+リトナビル100mg 1日2回5日間)の投与が開始された患者であった。老人ホーム入居者、ニルマトレルビル+リトナビルの投与禁忌に該当する患者は、除外された。 対照群は、入院前にSARS-CoV-2感染が確認され、観察期間中に外来で経口抗ウイルス薬の投与を受けなかった患者のうち、年齢、性別、SARS-CoV-2感染診断日、チャールソン併存疾患指数、ワクチン接種回数に関して傾向スコアがマッチする患者を、1対10の割合で選択した。 主要評価項目は、全死因死亡、COVID-19関連入院、入院中の疾患進行(院内死亡、侵襲的人工呼吸、集中治療室[ICU]入室)。経口抗ウイルス薬投与群と各対照群との比較は、Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定し評価した。いずれも全死因死亡、入院後の疾患進行リスクを低下 COVID-19非入院患者107万4,856例のうち、地域の医療機関で2種類の新規経口抗ウイルス薬のいずれかが開始された患者は1万1,847例(モルヌピラビル群5,383例、ニルマトレルビル+リトナビル群6,464例)で、このうち適格基準を満たし傾向スコアをマッチさせた解析対象集団は、モルヌピラビル群4,983例と対照群4万9,234例、ならびにニルマトレルビル+リトナビル群5,542例と対照群5万4,672例であった。 追跡期間中央値はモルヌピラビル群103日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群99日であり、モルヌピラビル群はニルマトレルビル+リトナビル群より高齢者が多く(>60歳:4,418例[88.7%]vs.4,758例[85.9%])、ワクチン完全接種率が低い(800例[16.1%]vs.1,850例[33.4%])傾向があった。 モルヌピラビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)および入院中の疾患進行(0.57、0.43~0.76)のリスクが低下したが、COVID-19関連入院のリスクは両群で同等であった(0.98、0.89~1.06)。 一方、ニルマトレルビル+リトナビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.34、95%CI:0.22~0.52)、COVID-19関連入院(0.76、0.67~0.86)、および入院中の疾患進行(0.57、0.38~0.87)のリスクが低下した。 高齢患者においては、経口抗ウイルス薬の早期投与に関連した死亡/入院のリスク低下が一貫して確認された。

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アロプリノール、痛風歴ない虚血性心疾患患者も改善させる?/Lancet

 痛風の既往がない60歳以上の虚血性心疾患患者において、アロプリノールは標準治療と比較し、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合アウトカムに差はないことが、英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが実施した「ALL-HEAT試験」の結果、示された。アロプリノールは痛風の治療に用いられる高尿酸血症治療薬であるが、これまでの研究でいくつかの心血管パラメーターに関して好ましい効果があることが示唆されていた。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。痛風既往のない虚血性心疾患患者約6,000例を対象に無作為化試験 ALL-HEAT試験は、イングランドおよびスコットランドの地域の医療センター18施設で実施された多施設共同前向き無作為化非盲検試験である。2014年2月7日~2017年10月2日の期間に、プライマリケア診療所424施設において、60歳以上で痛風の既往がない虚血性心疾患患者5,937例を登録し、アロプリノール群と標準治療群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 アロプリノール群では、eGFRが30~59mL/分/1.73m2の患者には100mg/日を2週間、その後は300mg/日、eGFRが60mL/分/1.73m2以上の患者には100mg/日を2週間、300mg/日を2週間、その後は600mg/日(300mgを1日2回)を投与した。 なお、当初は中等度または重度の腎機能障害(eGFR:60mL/分/1.73m2未満)患者は除外されたが、2016年4月4日にプロトコールが修正され、中等度腎機能障害(eGFR:30~59mL/分/1.73m2)患者は組み入れ可能となった。 主要評価項目は非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合で、修正intention-to-treat集団(無作為化後に除外基準のいずれかを満たすことが判明した患者を除外)を対象に解析が行われ、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定し、アロプリノール群の標準治療群に対する優越性を検証した。安全性解析対象集団は、標準治療群は修正intention-to-treat集団、アロプリノール群はアロプリノールを少なくとも1回服用した患者とした。非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合に有意差なし 無作為化された5,937例のうち216例が除外され、修正intention-to-treat集団は5,721例であった(アロプリノール群2,853例、標準治療群2,868例)。患者背景は年齢(平均±標準偏差)72.0±6.8歳、男性4,321例(75.5%)、白人5,676例(99.2%)で、平均追跡期間は4.8年であった。 主要評価項目の複合心血管イベントは、アロプリノール群で314例(11.0%、100人年当たり2.47件)、標準治療群で325例(11.3%、100人年当たり2.37件)に発生した。HRは1.04(95%信頼区間[CI]:0.89~1.21、p=0.65)であり、両群間に有意差は認められなかった。副次評価項目である全死因死亡は、アロプリノール群288例(10.1%)、標準治療群303例(10.6%)であった(HR:1.02、95%CI:0.87~1.20、p=0.77)。

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