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第18回 もう個人防護具(PPE)を緩和していますか?

新型コロナの致死率は低下新型コロナの致死率は当初よりも低下しました1)。単純計算では、現在0.12%まで低下しています(図1)。季節性インフルエンザと同じレベルじゃないかという議論も出てきていますね。図1. 各波の新型コロナ死亡者数(左軸)と致死率(右軸)(厚生労働省のデータをもとに筆者作成)いつかはこういう楽観フェーズが来るだろうと思っていましたが、新興感染症の過渡期の対応は本当に難しい。とくに、どのように国民に説明していくのかというところで、かなりのコミュ力が問われます。現実的には全然説明が成されていないんですが…。こうなってくると、新型コロナとどのように医療従事者が向き合うかも考える必要が出てきます。ただ、現時点では多くの病院では「フルPPE」対応で新型コロナを診療していると思われます。個人的には、キャップとかもう要らないと思っているのですが、どうでしょう。「過渡期」の感染対策分科会メンバーらの有志による「『感染拡大抑制の取り組み』と『柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行』についての提言」2)では、専用病棟でなくてもよい、個人防護具(PPE)の着用を少し緩和させる、などの策が紹介されています(図2)。これ結構現場に即した感じで、よい資料だと思います。ただ、こういう「少しずつ緩和していこうね」って日本人は苦手なんですよね。実際、病棟ゾーニングもやむなしとしている病院もあるでしょう。たとえば重症病床がメインの病院で、院内クラスターが出ても、それを他の軽症病床に転院させることはできませんので、自施設で患者をコホートせざるを得ません。図2の「ステップ2」のところ、「N95マスクは大事」いうのが強調されていますが、接触感染についてはそこまで重要視していません。確かに、飛沫・エアロゾルによる感染よりも、伝播リスクは低いとされていますが、院内クラスターや施設内クラスターをみていると、どう考えてもこれは接触感染だろうという場面はいまだによく見かけます。ベタベタ触って、その手で目や鼻などの粘膜を触れば、そりゃ感染するだろうとは思います。画像を拡大する図2. 「感染拡大抑制の取り組み」と「柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行」についての提言 医療対応(参考資料2)どこかのモデル病院が、「うちはこうやっていますよ」みたいな啓発をしてくださるとよいかもしれませんね。あるいは学会レベルでのガイドラインをちゃんと出すとか(他力本願)。日本の病院は、周囲の動向を伺いながらおずおずと緩和していくことになるのですが、病院同士がそこまで連携を取っていないと、我流のままで「まだこんなことやってんの」みたいな病院が出てくるかもしれません。参考文献・参考サイト1)Horita N, et al. J Med Virol. 2022 Oct 17. [Epub ahead of print]2)第93回(令和4年8月3日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 「感染拡大抑制の取り組み」と「柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行」についての提言

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老後の一人暮らしと認知症リスク

 米国・イリノイ大学シカゴ校のBenjamin A. Shaw氏らは、老後の一人暮らしと認知症発症との関連性を調査した。これまでの多くの研究では、単一の時点で得られた一人暮らしに関するデータを利用して検証されていたが、著者らは、高齢者の一人暮らしの状況を長期的に測定し、一人暮らしの期間が長いほど認知症発症リスクが高いかどうかを評価した。その結果、老後の一人暮らしは認知症の重大なリスク因子であるが、この影響はすぐに現れるわけではなく、時間とともに上昇する可能性があることが示唆された。The Journals of Gerontology誌オンライン版2022年9月30日号の報告。 分析データは、フォローアップ期間2000~18年の健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study:HRS)より収集した。高齢者1万8,171人のフォローアップデータより得られた7万8,490人時期のデータは、マルチレベルロジスティックモデルを用いて分析した。一人暮らしの定義は、回答時の世帯人数が1である場合とした。累積一人暮らし期間は、世帯人数1がカウントされている期間で算出した。 主な結果は以下のとおり。・男性では、認知症リスクと一人暮らしとの関連は認められず、女性では、逆相関が認められた。・対照的に、累積一人暮らし期間が1期間増加するごとに、男女とも約10%の認知症リスク上昇(男性OR:1.111、女性OR:1.088)が確認された(婚姻状況、年齢、社会活動、社会的支援などいくつかの共変量で調整)。

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ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。(試験デザインは下記関連記事を参照)ニボルマブ+イピリムマブの5年生存率は24% 最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。  PD-L1≧1%の奏効期間(DoR)はニボルマブ+イピリムマブ群の24.5ヵ月に対し、化学療法群では6.7ヵ月、PD-L1≧1%のDoRは19.4ヵ月対4.8ヵ月であった。投与中止後も生存ベネフィットは持続 ニボルマブ+イピリムマブの5年生存患者で、解析時点に投与を中止していた患者は、60%を超えていた(PD-L1≧1%集団66%、PD-L1<1%集団64%)。 治療関連有害事象でニボルマブ+イピリムマブを中止した場合も生存ベネフィットは持続しており、5年OS率は39%にのぼった。

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GRADE試験―比較効果研究(comparative effectiveness research)により示されたGLP-1受容体作動薬の優位性(解説:景山茂氏)

 GRADE試験は著者らが述べているように比較効果研究(comparative effectiveness research)である。糖尿病治療薬については2008年の米国FDAのrecommendation以来、新規に開発される薬物については治験段階から心血管イベントに対する影響が検討されている。これらの成果として、近年はGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の臓器保護効果が検証された。しかし、これらはプラセボを対照とした試験が多く、必ずしも数多くある治療薬の中でどれがよいかを示すものではなく、また、それを目的として行われたわけでもない。 比較効果研究で観察するのは、efficacyではなく、実臨床における効果effectivenessである。そして、対照はプラセボではなく実薬である。GRADE試験はランダム化比較試験 (randomized controlled trial:RCT)であるが、盲検化はされておらず、日常診療に近い形で行われている。また、比較効果研究のスタディ・デザインはRCTに限らず、観察研究やデータベース研究によっても行われる。 さて、GRADE試験は、これまでのプラセボ対照試験で示された成績からある程度推測される結果を示した。本試験は心血管イベントの群間差を把握するようデザインされていないが、GLP-1受容体作動薬の心血管系保護の優位性を示唆している。本試験にSGLT2阻害薬が含まれていないのは残念であるが、これはGRADE試験の計画開始時期によるのかもしれない。 糖尿病治療薬のように数多くの選択肢のある領域においては、何が最善の選択であるかを明確にすることを目的とした比較効果研究が必要であり、この分野の充実が望まれる。

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死にたいときに死ねない人【Dr. 中島の 新・徒然草】(450)

四百五十の段 死にたいときに死ねない人ついに11月になってしまいました。大阪でも気温が10℃を切る日が出てきてストーブの登場。そろそろ年賀状の準備も始めなくてはなりません。さて、こないだ脳外科外来にやって来たのは高齢女性。昔から頭痛があるというので、痛むところに注射を頼まれます。私も言われたところに言われたとおりに注射するのみ。何のヒネリもない1%キシロカインです。とはいえ、頭にブスブスと注射をするわけですから。傍から見ると、いささかシュールな光景なんでしょうね。患者「はあ~ん、気持ちいい。生き返るわ!」中島「生まれ変わりましたか?」患者「そうでもないけどな」だいたい大阪のおばちゃんには忖度というものがありません。中島「もうちょっとオベンチャラを言ってくださいよ」患者「私、生まれ変わった時には人間ちゃうモンになっていると思うんよ」そっちですか!イヌとかネコに生まれ変わるんですかね。患者「でも年は取りたくないわ。お姑さんが毎日そない言うとったけどな」中島「そりゃ、誰でも年は取りたくないでしょ」患者「そう言いながら長生きしはったけど」注射するたびに、どんどんと話が出てきます。患者「とうとう96歳の時に肺炎になって入院してもて」中島「そうなんですか」患者「胸水までたまってもてな」中島「そりゃあ残念でしたね。でも96歳まで元気に生きたのだから……」普通、話の流れからはそうなりますよね。患者「しまいに病気が治って退院しはったんよ」中島「ええっ!」患者「人間、死にたいときに死なれへんもんやな」これ、どうコメントしたらいいのでしょうか。私には難しすぎてわかりません。患者「お舅さんのほうはいつも『長生きしたい、長生きしたい』と言うとったけど」中島「早死にされたんですか」患者「そや。85歳やったかな」中島「それ、十分長生きじゃないですか!」もう無茶苦茶です。この患者さん、3ヵ月に1回、頭に10ヵ所ほど注射すると機嫌よく帰っていきます。1ヵ月ほどは効果があるのですが、後の2ヵ月間は頭痛に苦しめられるとか。寝るときに頭を冷やして、痛みを凌いでいるのだそうです。ちなみにこの方も80代。1人で公共交通機関を使って病院に来れるのだから大したもんです。案外、頭痛が生きる駆動力になっているのでしょうか。ということで最後に1句頭痛持ち 秋の夜長を 耐え忍ぶ

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従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付け【心不全診療Up to Date】第2回

第2回 従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付けKey Pointsエビデンスが確立している心不全薬物治療をしっかり理解しよう!1)生命予後改善薬を導入、増量する努力が十分にされているか?2)うっ血が十分に解除されているか?3)服薬アドヒアランスの良好な維持のための努力が十分にされているか?はじめに心不全はあらゆる疾患の中で最も再入院率が高く1)、入院回数が多いほど予後不良といわれている2)。また5年生存率はがんと同等との報告もあり3)、それらをできる限り抑制するためには、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の実施が極めて重要となる4)。なぜこれから紹介する薬剤がGDMTの一員になることができたのか、その根拠までさかのぼり、現時点での慢性心不全の至適薬物療法についてまとめていきたい。なお、現在あるGDMTに対するエビデンスはすべて収縮能が低下した心不全Heart Failure with reduced Ejection Fraction(HFrEF:LVEF<40%)に対するものであり、本稿では基本的にはHFrEFについてのエビデンスをまとめる。 従来の薬剤治療のエビデンスを整理!第1回で記載したとおり、慢性心不全に対する投薬は大きく2つに分類される。1)生命予後改善のための治療レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)、β遮断薬、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬、ベルイシグアト、イバブラジン2)症状改善のための治療利尿薬、利水剤(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)その他、併存疾患(高血圧、冠動脈疾患、心房細動など)に対する治療やリスクファクター管理なども重要であるが、今回は上記の2つについて詳しく解説していく。1. RAAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)1)ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬≧ARB)【適応】ACE阻害薬のHFrEF患者に対する生命予後および心血管イベント改善効果は、1980年代後半に報告されたCONSENSUSをはじめ、SOLVDなどの大規模臨床試験の結果により、証明されている5,6)。無症候性のHFrEF患者に対しても心不全入院を抑制し、生命予後改善効果があることが証明されており7)、症状の有無に関わらず、すべてのHFrEF患者に投与されるべき薬剤である。ARBについては、ACE阻害薬に対する優位性はない8–11)。ブラジキニンを増加させないため、空咳がなく、ACE阻害薬に忍容性のない症例では、プラセボに対して予後改善効果があることが報告されており12)、そのような症例には適応となる。【目標用量】ATLAS試験で高用量のACE阻害薬の方が低用量より心不全再入院を有意に減らすということが報告され(死亡率は改善しない)13)、ARBについても、HEAAL試験で同様のことが示された14)。では、腎機能障害などの副作用で最大用量にしたくてもできない症例の予後は、最大用量にできた群と比較してどうなのか。高齢化が進み続けている実臨床ではそのような状況に遭遇することが多い。ACE阻害薬についてはそれに対する答えを示した論文があり、その2群間において、死亡率に有意差は認めず、心不全再入院等も有意差を認めなかった15)。つまり、最大”許容”用量を投与すれば、その用量に関係なく心血管イベントに差はないということである。【注意点】ACE阻害薬には腎排泄性のものが多く、慢性腎臓病患者では注意が必要である。ACE阻害薬/ARB投与開始後のクレアチニン値の上昇率が大きければ大きいほど、段階的に末期腎不全・心筋梗塞・心不全といった心腎イベントや死亡のリスクが増加する傾向が認められるという報告もあり、腎機能を意識してフォローすることが重要である16)。なお、ACE阻害薬とARBの併用については、心不全入院抑制効果を報告した研究もあるが9,17)、生存率を改善することなく、腎機能障害などを増加させることが報告されており11,18)、お勧めしない。2)MR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)【適応】スピロノラクトンは、RALES試験にて重症心不全に対する予後改善効果(死亡・心不全入院減少)が示された19)。エプレレノンは、心筋梗塞後の重症心不全に対する予後改善効果が示され20)、またACE阻害薬/ARBとβ遮断薬が85%以上に投与されている比較的軽症の慢性心不全に対しても予後改善効果が認められた21)。以上より、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬を最大許容用量投与するも心不全症状が残るすべてのHFrEF患者に対して投与が推奨されている。【目標用量】上記の結果より、スピロノラクトンは50mg、エプレレノンも50mgが目標用量とされているが、用量依存的な効果があるかについては証明されていない。なお、EMPHASIS-HF試験のプロトコールに、具体的なエプレレノンの投与方法が記載されているので、参照されたい21)。【注意点】高カリウム血症には最大限の注意が必要であり、RALES試験の結果発表後、スピロノラクトンの処方率が急激に増加し、高カリウム血症による合併症および死亡も増加したという報告もあるくらいである22)。血清K値と腎機能は定期的に確認すべきである。ただ近年新たな高カリウム血症改善薬(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)が発売されたこともあり、過度に高カリウム血症を恐れる必要はなく、できる限り予後改善薬を継続する姿勢が重要と考えられる。またRALES試験でスピロノラクトンは女性化乳房あるいは乳房痛が10%の男性に認められ19)、実臨床でも経験されている先生は多いかと思う。その場合は、エプレレノンへ変更するとよい(鉱質コルチコイド受容体に選択性が高いのでそのような副作用はない)。2. β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール)【適応】β遮断薬はWaagsteinらが1975年に著効例7例を報告して以来(その時は誰も信用しなかった)、20年の時を経て、U.S. Carvedilol、MERIT−HF、CIBIS II、COPERNICUSなどの大規模臨床試験の結果が次々と報告され、30~40%の死亡リスク減少率を示し、重症度や症状の有無によらずすべての慢性心不全での有効性が確立された薬剤である23–26)。日本で処方できるエビデンスのある薬剤は、カルベジロールとビソプロロールだけである。カルベジロールとビソプロロールを比較した研究もあるが、死亡率に有意差は認めなかった27)。なお、慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬どちらの先行投与でも差はないとされている28)。【目標用量】用量依存的に予後改善効果があると考えられており、日本人ではカルベジロールであれば20mg29)、ビソプロロールであれば5mgが目標用量とされているが、海外ではカルベジロールであれば、1mg/kgまで増量することが推奨されている。【注意点】うっ血が十分に解除されていない状況で通常量を投与すると心不全の状態がかえって悪化することがあるため、少量から開始すべきである。そして、心不全の増悪や徐脈の出現等に注意しつつ、1~2週間ごとに漸増していく。心不全が悪化すれば、まずは利尿薬で対応する。反応乏しければβ遮断薬を減量し、状態を立て直す。また徐脈などの副作用を認めても、中止するのではなく、少量でも可能な限り投与を継続することが重要である。3. 利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、トルバプタン)、利水剤(五苓散など)【適応】心不全で最も多い症状は臓器うっ血によるものであり、浮腫・呼吸困難などのうっ血症状がある患者が利尿薬投与の適応である。ただ、ループ利尿薬は交感神経やRAS系の活性化を起こすことが分かっており、できる限りループ利尿薬を減らした状態でいかにうっ血コントロールをできるかが重要である。そのような状況で、新たなうっ血改善薬として開発されたのがトルバプタンであり、また近年利水剤と呼ばれる漢方薬(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)もループ利尿薬を減らすための選択肢の1つとして着目されており、心不全への五苓散のうっ血管理に対する有効性を検証する大規模RCTであるGOREISAN-HF試験も現在進行中である。この利水剤については、また別の回で詳しく説明する。【注意点】あくまで予後改善薬を投与した上で使用することが原則。低カリウム血症、低マグネシウム血症、腎機能増悪、脱水には注意が必要である。新規治療薬の位置付け上記の従来治療薬に加えて、近年新たに保険適応となったHFrEF治療薬として、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(Angiotensin receptor-neprilysin inhibitor:ARNI)、SGLT2阻害薬(ダバグリフロジン、エンパグリフロジン)、ベルイシグアト、イバブラジンがある。上記で示した薬物療法をHFrEF基本治療薬とするが、効果が不十分な場合にはACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替える。さらに、心不全悪化および心血管死のリスク軽減を考慮してSGLT2阻害薬を投与する。第1回でも記載した通り、これら4剤を診断後できるだけ早期から忍容性が得られる範囲でしっかり投与する重要性が叫ばれている。服薬アドヒアランスへの介入は極めて重要!最後に、施設全体のガイドライン遵守率を改めて意識する重要性を強調しておきたい。実際、ガイドライン遵守率が患者の予後と関連していることが指摘されている28)。そして何より、処方しても患者がしっかり内服できていないと意味がない。つまり、内服アドヒアランスが良好に維持されるよう、医療従事者がしっかり説明し(この薬がなぜ必要かなど)、サポートをすることが極めて重要である。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムは欧米のガイドラインでもクラスIに位置づけられており、ぜひ皆様には、このGDMTに関する知識をまわりの看護師などに還元し、チーム医療という形でそれが患者へしっかりフィードバックされることを切に願う。1)Jencks SF, et al. N Engl J Med.2009;360:1418-1428.2)Setoguchi S, et al. Am Heart J.2007;154:260-266. 3)Stewart S, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes.2010;3:573-580.4)McDonagh TA, et al.Eur Heart J. 2022;24:4-131.5)CONSENSUS Trial Study Group. N Engl J Med. 1987;316:1429-1435.6)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1991;325:293-302.7)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1992;327:685-691.8)Pitt B, et al.Lancet.2000;355:1582-1587.9)Cohn JN, et al.N Engl J Med.2001;345:1667-1675.10)Dickstein K, et al. Lancet.2002;360:752-760.11)Pfeffer MA, et al.N Engl J Med. 2003;349:1893-1906.12)Granger CB, et al. Lancet.2003;362:772-776.13)Packer M, et al.Circulation.1999;100:2312-2318.14)Konstam MA, et al. Lancet.2009;374:1840-1848.15)Lam PH, et al.Eur J Heart Fail.. 2018;20:359-369.16)Schmidt M, et al. BMJ.2017;356:j791.17)McMurray JJ, et al.Lancet.2003;362:767-771.18)ONTARGET Investigators. N Engl J Med.2008;358:1547-1559.19)Pitt B, et al. N Engl J Med.1999;341:709-717.20)Pitt B, et al. N Engl J Med.2003;348:1309-1321.21)Zannad F, et al. N Engl J Med.2011;364:11-21.22)Juurlink DN, et al. N Engl J Med.2004;351:543-551.23)Packer M, et al.N Engl J Med.1996;334:1349-1355.24)MERIT-HF Study Group. Lancet. 1999;353:2001-2007.25)Dargie HJ, et al. Lancet.1999;353:9-13.26)Packer M, et al.N Engl J Med.2001;344:1651-1658.27)Düngen HD, et al.Eur J Heart Fail.2011;13:670-680.28)Fonarow GC, et al.Circulation.2011;123:1601-10.29)日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」

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11月3日 ホルモンの日【今日は何の日?】

【11月3日 ホルモンの日】イラスト・いわみせいじ氏〔由来〕ホルモンや内分泌疾患に関する正しい知識を社会に広め、早期診断・治療につなげることを目的にアドレナリンを発見した高峰譲吉博士の誕生日にちなみ日本内分泌学会が制定。関連コンテンツDr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 Part1第128回 承認済のホルモン薬でダウン症候群患者の認知機能が改善【バイオの火曜日】手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会5年間のビタミンD補給により自己免疫疾患のリスク低減/BMJ潜在性甲状腺機能低下症併発の急性心筋梗塞患者、ホルモン療法は有効か/JAMA

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第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート

事件発覚から2年2ヵ月、6ヵ月かかった公判を経てやっと結審こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この日曜日も、日本シリーズの第7戦の観戦のために神宮球場に行ってきました。オリックス・バファローズの26年ぶりの優勝(1996年はオリックス・ブルーウェーブ)の瞬間を目の前で見たのですが、中島 聡監督の胴上げに続いて、宮内 義彦オーナーも胴上げされていたのには驚きました。日刊スポーツ等の報道によれば、宮内氏は「冥土の土産と言ったら怒られるが、仰木さんにいい報告ができる。無上のよろこびです」と語っていたそうです。87歳(!)の老人を胴上げしてしまうほどの、オリックスの選手たちの若々しさと力強さ(とくに投手陣)が際立ったシリーズでした。宮内氏は今季でオーナーを退任し1ファンになるそうですが、胴上げで冥土に行かなくて本当に良かったです。さて、今回は診療報酬詐取と汚職の事件発覚から2年2ヵ月余り、三重大医学部付属病院の元臨床麻酔部教授の公判が6ヵ月かけてやっと結審し、検察側が懲役4年を求刑したので改めてこの事件を取り上げます。「悪質性の強い犯行だ」として元教授に懲役4年求刑三重大医学部付属病院の臨床麻酔部の薬剤(ランジオロール塩酸塩、商品名:オノアクト)発注などを巡る2件の汚職事件と診療報酬詐取事件で、第三者供賄と詐欺の罪に問われた同部元教授(56)の公判が10月18日、津地裁で開かれました。検察側は論告求刑で「職務の公正さに対する社会の信頼を大きく毀損した悪質性の強い犯行だ」として、元教授に懲役4年、被告が代表理事を務め賄賂の受け皿となったとされる一般社団法人に追徴金200万円を求刑し結審しました。判決は3ヵ月後の来年1月19日に行われる予定です。起訴状などによると、元教授は薬剤発注と医療機器納入で便宜を図る見返りに、小野薬品工業(大阪市)と日本光電工業(東京都新宿区)に金銭を要求。2019年9月~2020年4月には、電子カルテを改ざんして小野薬品のオノアクトを患者に投与したかのように装い、診療報酬をだまし取ったとされています。一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。ちなみに公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員 2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。度々世間を騒がせてきた“悪名”医局この事件の発端は、2020年9月8日、三重大病院が同病院の臨床麻酔部の医師が、実際には投与していないオノアクトを手術中に投与したかのように電子カルテを改ざんし、診療報酬を不正請求した事案が発覚した、と発表したことでした。その後、診療報酬不正請求や電子カルテ改ざんに加え、臨床麻酔部の元教授と小野薬品、日本光電との間の贈収賄事件も明らかとなって、元教授を含め合計8人の逮捕者が出る大事件となりました。さらに、この事件をきっかけに三重大病院において麻酔科医の大量退職も起き、地域の麻酔科医療を大混乱に落とし入れました。この事件については、本連載でも「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」、「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」、「第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の『プロフェッショナル・オートノミー』の脆弱さ」「第45回 製薬企業からの奨学寄付金が賄賂に、三重大元教授再逮捕の衝撃」、「第65回 三重大事件で製薬会社、医療機器メーカーの社員に有罪判決、大学は“どこ吹く風”と後任教授公募へ」と何度も取り上げ、元教授をはじめ、麻酔科医たちのあきれた所業を伝えてきました。そもそも三重大病院の麻酔科は、これまでも度々世間を騒がせてきた“悪名”高き医局として有名でした。2000年代初めに麻酔科医の大量退職(教授以外)が問題となり、その影響で、2004年に麻酔管理と臨床実習に業務を特化した臨床麻酔部がつくられました。2009年には大学医学部の講座(今回の事件を起こした臨床麻酔学講座)も設けられましたが、2018年には同講座の助教が教授をパワハラで訴えた民事訴訟があり、大学に賠償命令が下されています。今回、元教授が中心となって起こした事件によって、三重大麻酔科の“黒歴史”には新たな1ページが加わったことになります。小野薬品を巡る第三者供賄と診療報酬を巡る詐欺については無罪を主張今回求刑された元教授は、防衛医大の卒業で、国立循環器病研究センターなどを経て2016年4月に三重大病院臨床麻酔部に准教授として赴任しました。2018年4月に同部教授に就任、2年後の2020年3月にカルテ改ざんが発覚、同年9月の三重大病院の発表の後、10月に同病院を退職しています。このカルテ改ざんや贈収賄の発覚などで、2021年1月に元講師、日本光電工業の社員3人とともに逮捕・起訴、さらに小野薬品工業の社員2人とともに再逮捕・起訴されました。そして2月にはカルテ改ざん事件の共犯として、詐欺容疑で再逮捕・起訴されています。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から津地裁で始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、今回やっと結審しました。中日新聞等の報道では、公判で元教授は第三者供賄罪と詐欺罪で無罪を主張。製薬会社からの寄付金に対する見返りや診療報酬不正請求への認識などを争点に、検察側と弁護側は最後まで対立したとのことです。検察側は論告で「薬剤の大量処方を被告と約束したとする小野薬品工業の社内文書は信用できる。大量処方する対価であることを前提に寄付を受け取ったことは明らか。職務の公正さに対する社会の信頼を大きく損なった」と述べたとのことです。一方、弁護側は最終弁論で「小野薬品工業の担当者の証言や社内文書は信用できず、寄付金の対価性や請託は立証されていない」などと述べ、同社を巡る第三者供賄について無罪を主張、診療報酬を巡る詐欺についても無罪を主張したとのことです。診療報酬を巡る詐欺罪については、部下だった同部元准教授による不正請求を、被告が認識していたかどうかが争点となりました。検察側は「薬が使われずに捨てられていたことを認識しており、詐欺の故意が認められる」と述べたとのことです。これに対し弁護側は「元准教授の一連の行為を認識していた立証はなく、詐欺の故意は認められない」と反論しました。なお3つの事件のうち、日本光電の医療機器納入を巡る第三者供賄罪については起訴内容を認めています。報道等によれば、元教授は「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。三重大の麻酔科は公募で岡山大から新教授就任元教授以外は既に有罪が確定しており、いずれのケースでも元教授の主導が認定されています。よって、来年1月に予定される判決は、厳しいものとなる公算が高いでしょう。元教授は現在、大阪市の民間病院で麻酔科医を続けているとの情報もありますが、判決内容によっては医師免許取り消し等の行政処分が下される可能性もあります。一方、三重大の麻酔科ですが、今年4月1日付で新たに賀来 隆治教授(51)が就任しています。元教授の退職後、約1年半にわたって麻酔科教授と三重大病院の麻酔科長が不在でしたが、今後は賀来教授が大学と病院の麻酔科の指揮を執るとのことです。5月26日、三重大病院は退職者が相次いだ麻酔部門について麻酔科医の増員など体制強化を発表し、賀来教授のお披露目も行っています。この席で三重大病院は、4月に行われた組織改編で、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合したことを発表しました。新体制で麻酔科医は8人となり、現在停止されている麻酔専門医を育成する研修プログラムについても2023年度の再開を目指すことも発表しました。5月27日付の毎日新聞等の報道によれば、この席で賀来教授は「県民が安心して手術を受けられる最低限の体制が整ったと考えている。風通しの良い職場環境をつくりたい」と話したとのことです。賀来教授は岡山大学医学部出身、今年3月まで岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 麻酔蘇生学講師を務めており、「第65回 三重大事件で製薬会社、医療機器メーカーの社員に有罪判決、大学は“どこ吹く風”と後任教授公募へ」でも書いた教授公募によって選ばれました。三重大よりも歴史があり、力もありそうな“旧六”(旧制医科大学10校のうち国立大学6校)の岡山大のジッツとなることで麻酔科医の安定確保を目指したい、といった病院幹部の思惑が働いたかもしれません。しかし、元教授が賄賂のお金を「麻酔科医を集めるため」にほとんど使っていた、というのが事実とするなら、麻酔科医の確保がそうそうラクになるとは思えません。また、岡山大という新たなプレーヤーの登場で、医局内のパワーバランスも少々心配です。三重大の麻酔科が新たな“黒歴史”を作らないことを祈るばかりです。

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TSLPを標的とした重症喘息の新たな治療選択肢

 2022年10月24日、アストラゼネカは、都内にて「テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献」をテーマにメディアセミナーを開催した。TSLPは喘息の重症化や呼吸機能低下に関与 現在の重症喘息治療における課題は複雑な炎症経路である。ウイルスやアレルゲン、ハウスダストなど環境因子の刺激により、気道上皮から上皮サイトカインが産生され、その結果、アレルギー性炎症や好酸球性炎症、気道のリモデリングなど、複数の経路から喘息が増悪すると考えられている。 上皮サイトカインのなかでも、炎症カスケードの起点となっているのが胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)である。TSLPは、喘息の重症化や呼吸機能低下だけでなく、気道のリモデリングやステロイド反応性の低下、ウイルス感染に対する過剰な2型炎症にも関与していると考えられている。TSLPを標的とした生物学的製剤がテゼスパイア テゼスパイア皮下注210mgシリンジ(一般名:テゼペルマブ[遺伝子組換え]、以下「テゼスパイア」)はTSLPを標的とした生物学的製剤である。セミナーでは第III相国際共同試験(検証的試験)、NAVIGATOR試験について、昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 相良 博典氏が詳しく説明した。 対象は、コントロール不良な重症喘息(国際的な喘息診療指針Global Initiative for Asthma:GINAに基づく)を有する成人および12歳以上の小児患者1,061例。対象患者を地域および年齢によって層別化した後、テゼスパイア群およびプラセボ群に1:1で無作為に割り付け、52週間投与した。 主要評価項目である年間喘息増悪率はテゼスパイア群で0.93、プラセボ群で2.10であり、テゼスパイアの有効性が示された(プラセボ群に対する比:0.44、95%信頼区間[CI]:0.37~0.53、p<0.001)。また、その他の副次評価項目である血中好酸球数、FeNO、血清総IgE値のベースラインからの変化量について、テゼスパイア投与後、早期から低下する傾向が見られた。 安全性に関して、有害事象の発現率はテゼスパイア群で77.1%(407/528例)、プラセボ群で79.5%(422/531例)であった。主な有害事象(発現率>10%)は、テゼスパイア群(528例)で上咽頭炎が112例(21.2%)、上気道感染が58例(11.0%)、プラセボ群(531例)で上咽頭炎が113例(21.3%)、上気道感染が84例(15.8%)、喘息が56例(10.5%)に認められた。TSLPを阻害することでテゼスパイアは複雑な炎症経路を同時に抑制 テゼスパイアは、これまでの喘息治療薬とは異なる作用機序を有するため、新たな治療選択肢となる。「2型喘息患者では、いまだに増悪を来す患者が多く存在する。TSLPはさまざまな病態と関連しており、増悪・呼吸機能低下だけでなく、ステロイド抵抗性の獲得や粘液産生、気道リモデリング、神経炎症と、多岐にわたって影響を及ぼす。テゼスパイアは炎症の起点となるTSLPを阻害することで、複雑な炎症経路を同時に抑制し、優れた臨床的改善効果をもたらすことが期待される」と相良氏はまとめ、セミナーを終了した。

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futibatinib、既治療の切除不能肝内胆管がんに対しFDAの承認取得/大鵬

 大鵬薬品工業は、2022年10月3日、米国子会社の大鵬オンコロジーが、FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)について、「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がん」の適応で米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。今回の承認は、FOENIX-CCA2試験での全奏効率(ORR)と奏効期間結果に基づくものである。 FOENIX-CCA2試験は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な肝内胆管がん患者103例を対象とした第II相試験である。全身療法治療歴のある患者を対象に、病勢進行または許容できない毒性が認められるまでfutibatinib20mg/日を経口投与した。本試験の主要評価項目は全奏効率である。

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コロナ流行で糖尿病関連死が30%増加、とくに若年で顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、米国における2021年および2022年の糖尿病関連の死亡が、パンデミック以前と比べて30%以上増加したことを、中国・西安交通大学のFan Lv氏らが報告した。糖尿病は新型コロナ感染症の重症化の重大なリスク因子であるとともに、新型コロナウイルス感染は血糖コントロールの悪化につながることが報告されている。同氏らは、パンデミックによって糖尿病患者の治療の提供が混乱したことから、パンデミック中の糖尿病関連の死亡の傾向を調査した。eClinicalMedicine誌9月23日掲載の報告。 調査は、米国人の出生と死亡に関する人口データベース「National Vital Statistics System(NVSS)」を用い、2006年1月1日~2021年12月31日に25歳以上であった死亡者のデータを解析した。糖尿病関連の死亡は、死亡診断書に記載された原死因と関連死因に糖尿病が記録されていた場合とした。超過死亡率は、2006~19年の死亡率より、年齢調整死亡率の観測値と期待値を線形および多項式回帰モデルで比較して推定した。 主な結果は以下のとおり。・2006~21年の間に、25歳以上の糖尿病関連の死亡は424万3,254例あった。その多くは、65歳以上の高齢者グループ(76%)、男性(54%)、非ヒスパニック系白人(71%)であった。・10万例あたりの年齢調整死亡率は、2006年(116.1)から2015年(103.9)にかけて減少し、2019年(106.8)にかけてわずかに増加した後、2020年(144.1)および2021年(148.3)に大きく増加した。・糖尿病関連の死亡の超過死亡率は、2020年が33.3%(95%信頼区間[CI]:30.5~36.2)、2021年が35.3%(同:31.7~39.0%)であった。この超過死亡率の増加は、25~44歳、女性、ヒスパニック系において著しかった。・米国全人口の全死因の超過死亡率は2020年が15.3%(同:13.2~17.4)、2021年が17.8%(同:15.2~20.6)であり、糖尿病関連死の超過死亡率のほうが高かった。・糖尿病関連の超過死亡例の約3分の2が、パンデミック中の新型コロナウイルス感染症に関連していた。

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うつ病リスクに影響を及ぼす身体活動や睡眠時間

 うつ病リスク低下に対し、中程度~高度な身体活動(MVPA)のベネフィットは確立されてきているものの、睡眠、座位行動(SB)、軽度な身体活動(LIPA)に関するエビデンスは十分ではない。これらの行動は、行動学的および生物学的な相互関係を考慮せず検討されることも少なくない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJ. M. Blodgett氏らは、ある行動に費やした時間が、他の行動と比較し、どのようにうつ病リスクと関連しているかを調査した。その結果、あらゆる行動をMVPAに置き換えることで、うつ病リスクが低下することが明らかとなった。著者らは、「たとえ少しでも、MVPAに費やす時間の増加はうつ病の予防や軽減につながり、治療効果にプラスの影響を及ぼす可能性がある」と報告している。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年9月30日号の報告。 対象は、1970 British Cohort Study(英国の1970年出生コホート研究)より抽出した4,738例(2016年時、年齢46歳)。抑うつ状態の評価は、自己報告による受診および抗うつ薬の使用歴に基づき確認した。MVPA、LIPA、SB、睡眠の測定は、大腿部に装着した加速度計を用いて7日間連続で行った。さまざまな運動に費やされた時間構成とうつ病との関連を評価するため、コンポジショナルロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・SB、睡眠、LIPAと比較し、MVPAに費やす時間が長いほど、うつ病リスクの低下が認められた。・時間の再配分をモデル化(たとえば、ある行動の時間を他の行動へ置き換え)した場合、睡眠、SB、LIPAの時間のMVPAへの置き換えは、うつ病リスクの低下との強い相関が認められた。・SB、睡眠、LIPAに費やす時間をこれら3つで再分配しても、うつ病リスクに対する効果は、あまりなかった。・なお、本データは横断的データであるため、因果関係を推測するには至らなかった。・加速度計による測定では、SB時間の内容(テレビの視聴、読書など)までは特定できず、ベッドで過ごした時間と実際の睡眠時間を分離することができなかった。

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コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であってもかなりの負担となっており、全体的な健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが、ドイツ・ウルム大学のRaphael S. Peter氏らが実施した「EPILOC試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月13日号に掲載された。ドイツ南西部住民270万人ベースの研究 EPILOC試験は、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の4つの地域(人口計約270万人)で行われた住民ベースの研究で、2020年10月1日~2021年4月1日にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性と判定された18~65歳の集団が解析の対象となった(バーデン・ビュルテンベルク州Ministry of Science and Artの助成を受けた)。 1万1,710人が解析に含まれた。平均年齢は44.1(SD 13.7)歳、6,881人(58.8%)が女性であった。既存の慢性疾患として、筋骨格系疾患(28.9%)、心血管疾患(17.4%)、神経・感覚障害(16.2%)、呼吸器疾患(12.1%)などがみられた。 SARS-CoV-2による感染症の急性期には、77.5%は医療を必要とせず、19.0%が外来治療を受け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院を要したのは3.6%であった。平均追跡期間は8.5ヵ月だった。 主要アウトカムとして、症状の頻度が感染症の急性期後6~12ヵ月と急性期以前で比較され、症状の重症度とクラスタリング、リスク因子、全体的な健康の回復や労働の作業能力との関連の評価が行われた。胸部症状、嗅覚/味覚障害、不安/抑うつも20%以上で発現 急性期前にはみられず、急性期後6~12ヵ月の時期に発現した症状クラスターでは、疲労(急激な身体的消耗、慢性疲労など、37.2%[4,213/1万1,312人、95%信頼区間[CI]:36.4~38.1])と、神経認知障害(集中困難、記憶障害など、31.3%[3,561/1万1,361人、30.5~32.2])の頻度が高く、いずれも健康回復や労働能力の低下に最も強く寄与していた。 また、胸部症状(呼吸困難、胸痛など、30.2%[95%CI:29.4~31.0])、不安/抑うつ(睡眠障害、抑うつ気分、不安など、21.1%[20.4~21.9])、頭痛/めまい(19.9%[19.2~20.6])も高頻度にみられ、労働能力に影響を及ぼしていたが、性別や年齢別で多少の差が認められた。 嗅覚/味覚障害(嗅覚の変化、味覚の変化)は23.6%(95%CI:22.9~24.4)、筋骨格系の疼痛(筋肉痛、関節痛、四肢痛)は16.8%(16.1~17.5)、上気道症状(咳嗽、咽頭痛、嗄声)は13.9%(13.3~14.6)で発現した。 日常生活を少なくとも中程度に低下させる新たな症状が発現し、健康回復や労働能力を80%以下に低下させたと考えると、post-COVID症候群の全体の推定値は28.5%(3,289/1万1,536人、95%CI:27.7~29.3)であった。一方、これに該当しない参加者は完全に回復したと仮定すると、post-COVID症候群の発生の推定値は6.5%(3,289/5万457人)で、このうち男性は4.6%(1,145/2万4,959人)、女性は8.4%(2,144/2万5,483人)であった。真の値は、これらの推定値の間と考えられる。 著者は、「このようなcovid後の後遺症(post-covid sequelae)の個人的、社会的な負担の大きさを考えると、適切な治療選択肢を確立し、有効なリハビリテーション法を開発するために、その基礎となる生物学的異常と原因を早急に明らかにする必要がある」としている。

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LINEを使った患者報告システムを副作用マネジメントに活かす/日本治療学会

 薬剤の副作用は、医師の評価と患者の捉え方が大きく異なるケースが多いことは以前から報告されていた。PRO(Patient Reported Outcome)とは、医師の評価を経ず、患者自身が副作用を報告するシステムを指し、これを電子的に行うePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが世界各地で開発され、実際の運用や効果測定のための臨床試験が行われている。 慶應義塾大学が開発した乳がん患者を対象としたePROについて、同大外科学教室の林田 哲氏が第60回日本治療学会学術集会(10月20~22日)上で発表した。 このePROはLINEを利用しており、対象となる乳がん患者はシステムから送られてくる症状に関する問いかけに返信し、そのデータがプラットフォームに蓄積され、適切な患者管理や副作用マネジメントに役立てる、というもの。システムへの登録はLINEの「友だち追加」、返信は症状の重さをタップで選択するだけ、と非常に簡便に使えることが特徴だ。「化学療法」「ホルモン療法」「転移・再発」などの治療別に送付頻度や質問内容のパターンが設定されており、事前に医療者が設定する。また、質問は有害事象評価の国際規格であるCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)に基づいており、国際標準に合致したデータとしても利用できる。 この「LINE ePRO」の受容度を見たAQUARIUS試験では、73例の患者が登録され、観察期間中央値435日(84~656日)のあいだに収集されたレポート総数は1万6,417件、1人あたり平均224件だった。年代別に見ると、60歳以上の層でも回答数は若年層と同等かそれ以上であり、LINEの浸透度を背景とした、高い受容度を確認できたという。 AQUARIUS試験を受け、現在進行中のLIBRA試験は、HR+/HER2-の進行再発乳がん患者60例を対象とした前向き試験。アベマシクリブ投与後に、副作用としてとくに頻度が高い下痢に対してePRO報告システムを使用した症状のモニタリングを行ったうえで、がん専門看護師からの助言の有無を比較する試験デザイン。治療期間中の下痢の程度や頻度を抑制可能かどうかの検証を行うことを目的とする。現時点で半数程度の患者登録が終わっており、来年の終了、発表を見込んでいるという。

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脳保護デバイスでTAVRの周術期脳梗塞は解決するか?(解説:上妻謙氏)

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、低侵襲かつ有効な治療のためAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。しかし周術期脳卒中の合併率は、最近の治療技術、デバイスの進歩によってある程度低下してきたものの依然として1~2%で発生している1)。脳卒中の合併率は外科手術と同等であるが、この脳卒中の問題が克服されればASの治療としてTAVRは外科手術に対して圧倒的に安全となる。本論文は北米、欧州、オーストラリアの51施設で行われたtransfemoral TAVR施行時の脳保護デバイス(cerebral embolic protection=CEP)の有効性を検証するメーカースポンサーの前向きランダマイズスタディである2)。3,000例のASを登録して行われたが、2,100例の登録終了時点で中間解析が行われ、脳卒中の合併率がCEP群2.2%、対照群2.4%であったため、サンプルサイズは予定された3,000例と決定された。主要エンドポイントは72時間以内の脳卒中の発生率で、CEP群2%、対照群4%の脳卒中合併率で90%の検出力で計算された。CEP群の94.4%でこのデバイス留置に成功し、デバイスに起因する合併症は1例(0.1%)のみで安全に施行できることが示された。しかし結果としては対照群2.9%に対しCEP群2.3%と残念ながら脳保護デバイスの有効性を証明することはできなかった(p=0.3)。死亡率、TIA、せん妄、急性腎障害も差がなかったが、modified Rankin Scale 2点以上の後遺症を残す脳卒中だけはCEP群0.5%、対照群1.3%と有意に脳保護デバイスを使用した群で少なくなった。サブグループ解析では人工弁のタイプや局所麻酔、前拡張や後拡張の有無などすべての要素でCEPの優位性を示す患者群を同定することができなかった。 このCEPはSentinelと呼ばれる2つのフィルターを備えた6Frのデバイスで、右の橈骨動脈か上腕動脈から挿入し、腕頭動脈と左総頸動脈でフィルターを展開して留置するデバイスで、比較的簡便かつ安全に使用できるためとても期待されていたが、大規模ランダマイズスタディではnegativeな結果となった。しかしこういったフィルターはどうしても血管壁との隙間が空くので、すべてのdebrisをブロックできるわけではなく、大きなdebrisをキャッチできればよいので、大きな脳梗塞が減少したというのは妥当な結果といえる。軽症の脳梗塞を減らすものではなく、重症の脳梗塞を減少させるデバイスと捉えると有用性は高いといえる。NEJM誌は科学的に最初の仮説を立証したものしか優位性を述べることを認めないため、完全に有用性が示されない形での論文となっているが、後遺症を残す脳梗塞というのは患者さん自身にとってはきわめて重要な問題である。少なくとも自分が患者であればこのデバイスを使用してもらいたいと思える結果であった。

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痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

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英語で「性交渉はありますか」は?【1分★医療英語】第52回

第52回 英語で「性交渉はありますか」は?Are you sexually active?(性交渉はありますか?)Yes. With my wife.(はい、妻と性交渉をしています)《例文1》Have you ever been sexually active?(これまでに性交渉の経験はありますか?)《例文2》What types of sexual activity do you have?(どのような性交渉をしますか?)《解説》問診で十分な情報を得るためには性交渉歴の聴取は不可欠ですが、センシティブな内容でもあり、英語で聞くのをためらう方も多いのではないでしょうか。まず、言語以前の問題として、当然ながら患者さんが安心して話すことができるよう、個室などプライバシーが保たれる状況を確保する必要があります。また、導入には“I’m going to ask a few questions about your sexual history. These are routine questions I ask all my patients.”(性交渉について少し質問させてください。これは皆さんにしている質問です)などと前置きをしておくとスムーズです。現在、性交渉を行うパートナーがいる状況を“sexually active”と表現し、性交渉は“sexual activity”と言います。さらに、性交渉がある場合には以下の「5つのP」を加えて問診すると、性感染症などのリスクの評価に有効です。1.Partners(パートナーの性別、人数)2.Practice(性交渉の内容)3.Protection from STIs(コンドームなど、性感染症の予防)4.Past history of STIs (性感染症の既往)5.Prevention of pregnancy(避妊方法)講師紹介

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第136回 ウイルス2種が融合して免疫をかいくぐる

異なる呼吸器ウイルス2種が融合し、免疫をより回避する新たな素質を備えうることが示されました1,2)。2つ以上のウイルスの共感染は呼吸器ウイルス感染の10~30%に認められ、とくに子供ではよくあることですが、それがどういう結末をもたらすのかは定かではありません。共感染したところで経過にどうやら変わりはないという試験結果がある一方で肺炎が増えたという報告もあります。共感染者の細胞内での2つ以上のウイルスの相互作用もよく分かっていませんが、細胞内での直接的な相互作用でウイルスの病原性が変わるかもしれません。たとえば別のウイルスの表面タンパク質を取り込んでそのウイルスもどき(pseudotyping)になるとかウイルスゲノムの再編が起きる可能性があります。ゲノムの再編は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やパンデミックインフルエンザウイルスのような世界的に流行しうる新たなウイルス株の原因となりうる現象です。世界で500万人を超える人が毎年インフルエンザAウイルス(IAV)感染で入院しています。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は5歳までの小児の急な下気道感染症の主因となっています。新たな研究で英国グラスゴー大学の研究者等は一緒に出回ることが多くて重要度が高いそれら2つの呼吸器ウイルスをヒトの肺起源の細胞内に同居させて何が起きるかを調べました。生きた細胞の撮影や顕微鏡で観察したところIAVとRSVの双方からの成分を併せ持つ融合ウイルス粒子(HVP)が確認され、HVPは他の細胞に感染を広げることができました。HVPに抗IAV抗体は歯が立たないらしく、その感染細胞に抗IAV抗体を与えても感染の他の細胞への広がりを防ぐことはできませんでした。HVPはRSVからの糖タンパク質を流用して抗IAV抗体を逃れることができるのです。一方、抗RSV抗体は依然としてHVPと勝負できるらしく、HVPの細胞から細胞への広がりを防ぎました。著者によるとIAVがRSVからの授かりものを使って免疫を回避できるようになるのとは対照的にRSVはIAV糖タンパク質に細胞侵入を手伝わせることはできないようです。“IAVはRSVとの融合によりより重症の感染を招く恐れがある”と今回の研究には携わっていない英国リーズ大学のウイルス学者Stephen Griffin氏は同国のニュースTheGuardianに話しています3,4)。RSVは季節性インフルエンザに比べてより奥の肺に下って行こうとします。よってインフルエンザがRSVと同様に肺へと深入りするとより重症化するおそれがいっそう高まるかもしれません。体外での研究で今回認められたようなウイルス融合の人体での発生はまだ観察されておらず、ウイルス融合が人の健康に影響するのかどうかを今後の研究で調べる必要があります。IAVとRSVが手を取り合うのとは真反対に一方がもう一方を抑えつける関係もどうやら存在します。たとえば、風邪ウイルスとして知られるライノウイルスとSARS-CoV-2が細胞内でそういう排他的関係にあるらしいことが昨年3月の報告で示されています5,6)。その報告によるとライノウイルスはSARS-CoV-2複製を防ぐインターフェロン(IFN)反応を誘発し、ライノウイルスがいる呼吸上皮細胞でSARS-CoV-2は増えることができません。巷にあまねく広まるライノウイルスとSARS-CoV-2の相互作用は計算によると世間全般に及ぶ影響があり、ライノウイルス感染が増えるほどSARS-CoV-2感染は減るらしいと推定されています5)。参考1)Haney J, et al. Nat Microbiol. 2022;7:1879-1890.2)NEW RESEARCH SHEDS LIGHT ON HIDDEN WORLD OF VIRAL COINFECTIONS / University of Glasgow3)Immune system-evading hybrid virus observed for first time / TheGuardian4)Flu/RSV Coinfection Produces Hybrid Virus that Evades Immune Defenses / TheScientist5)Dee K, et al. J Infect Dis. 2021;224:31-38.6)Coronavirus: How the common cold can boot out Covid / BBC

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オミクロン感染7日目、3割が抗原検査陽性

 米国疾病対策予防センター(CDC)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染時の隔離期間について症状の有無にかかわらず5日間を推奨している。また日本では、症状のある人は発症日から7日間隔離、症状がない人は検査陽性となった日から7日間隔離で抗原検査陰性になれば5日間に短縮可能としている。今回、米国・スタンフォード大学のJessica Tsao氏らが、SARS-CoV-2陽性を示した学生スポーツ選手において、診断日から7日目の迅速抗原検査で27%が依然として陽性であったことを報告した。また、症状ありの感染者、オミクロンBA.2変異株感染者で陽性率が高かった。JAMA Network Open誌2022年10月18日号に報告。コロナ隔離後7日目でも27%で抗原検査が陽性 本研究は、オミクロン株が優勢であった2022年1月3日~5月6日、SARS-CoV-2陽性となった全米大学体育協会第一部大学キャンパスの学生スポーツ選手に、隔離期間最終日である診断7日目以降に迅速抗原検査を実施した。 コロナ診断7日目以降に迅速抗原検査を実施した主な結果は以下のとおり。・学生スポーツ選手264人(女性:53%、平均年齢:20.1±1.2歳、範囲:18~25歳)における268件の感染(症状あり:66%、症状なし:34%)で調査した。・7日目に検査した248例のうち67例(27%、95%信頼区間[CI]:21~33%)で抗原検査が陽性のままであった。・症状ありの感染者の7日目の抗原検査陽性率は35%(95%CI:28~43%)で、症状なしの感染者(11%、同:5~18%)より有意に高かった(p<0.001)。・BA.2変異株感染者の7日目の抗原検査陽性率は40%(95%CI:29~51%)で、BA.1変異株感染者(21%、同:15~27%)より有意に高かった(p=0.007)。 今回、学生スポーツ選手の調査において、隔離後7日目でも27%で迅速抗原検査が陽性であったことから、米国CDCが推奨する5日間の隔離期間では、感染拡大を防ぐには不十分である可能性が示唆された。

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妊婦へのコロナワクチン接種をメタ解析、NICU入院や胎児死亡のリスク減

 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による周産期アウトカムへの影響について、有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏ら日米研究グループによりシステマティックレビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種が新生児集中治療室(NICU)入院、子宮内胎児死亡、母親のSARS-CoV-2感染などのリスク低下と関連することや、在胎不当過小(SGA)、Apgarスコア低値、帝王切開分娩、産後出血、絨毛膜羊膜炎などといった分娩前後の有害事象のリスク上昇との関連がないことが示された。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年10月3日号に掲載の報告。 本研究では、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種に関連する新生児アウトカムを調査したすべての前向き研究および観察研究について、2022年4月5日にPubMedとEmbaseデータベースで包括的な文献検索を行い、(1)査読付き雑誌に掲載された研究、(2)妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦と受けなかった妊婦を比較した研究、(3)新生児アウトカムにおいて、早産(妊娠37週未満での出産)、SGA、Apgarスコア低値(出生5分後のApgarスコアが7未満)、NICU入院、子宮内胎児死亡のうち少なくとも1つを報告する研究、という3つの条件を満たすものを対象とした。最終的に9つの研究を抽出し、妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦8万1,349例(ワクチン接種群)と受けていない妊婦25万5,346例(ワクチン非接種群)について検証した。オッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて算出された。 被験者のベースラインは次のとおり。平均年齢は、ワクチン接種群:32~35歳vs.ワクチン非接種群:29.5~33歳。合併症については、妊娠前/妊娠糖尿病は、1,267例(1.6%)vs.3,210例(1.3%)。妊娠前/妊娠高血圧は、1,176例(1.4%)vs.3,632例(1.4%)。肥満は、8,420/4万8,231例(17.5%)vs.2万6,108/11万4,355例(22.8%)。喫煙歴は、4,049/8万35例(5.1%)vs.1万8,930/25万2,990例(7.5%)。ワクチン接種群では、98.2%がmRNAワクチン(ファイザー製:6万1,288例、モデルナ製:1万6,036例、規定なし:2,575例)、1.1%がウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ製:488例、ヤンセン製:425例)、0.7%が明確に記録されていなかった。6つの研究で投与回数が報告されており、5万2,295/6万1,255例(85.4%)が妊娠中にmRNAワクチンを2回投与されていた。 主な結果は以下のとおり。【新生児のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、NICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連していた。NICU入院は、OR:0.88(95%信頼区間[CI]:0.80~0.97)。子宮内胎児死亡は、OR:0.73(95%CI:0.57~0.94)。・そのほかの主要アウトカムは2群間で統計的有意差を示さなかった。早産は、OR:0.89(95%CI:0.76~1.04)。SGAは、OR:0.99(95%CI:0.94~1.04)。Apgarスコア低値のOR:0.94(95%CI:0.87~1.02)。・妊娠初期に1回目のワクチン接種を受けた妊婦と、妊娠中にワクチン接種を受けなかった妊婦の間では、早産(OR:1.81、95%CI:0.94~3.46)、SGA(OR:1.09、95%CI:0.95~1.27)の発生率で有意差はなかった。一方、中期または後期のワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けなかった人と比較して、早産(OR:0.80、95%CI:0.69~0.92)、SGA(OR:0.94、95%CI:0.88~1.00)のリスクの低下と関連していた。【母親のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、追跡期間中の母親のSARS-CoV-2感染リスク(OR:0.46、95%CI:0.22~0.93)の低下と有意に関連した。・妊娠中のワクチン接種は、帝王切開分娩(OR:1.05、95%CI:0.93~1.20)、産後出血(OR:0.95、95%CI:0.83~1.07)、絨毛膜羊膜炎(OR:1.06、95%CI:0.86~1.31)のリスクとは関連がなかった。 本研究により、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、新生児および母親の有害事象のリスク上昇と関連せず、新生児のNICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連し、妊娠中期以降の接種で早産、SGAのリスク低下と関連したことが示され、妊婦に対するワクチン接種の安全性と有効性が裏付けられた。さらに研究チームは、集中治療を必要とするCOVID-19に罹患した妊婦のほとんどがワクチン未接種であり、また、無症状感染であっても、子癇前症や早産などのリスク上昇と関連しているとし、新生児および母親をSARS-CoV-2から保護するため、妊婦のワクチン接種率を高めることが最も重要だと指摘している。

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