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セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。 本研究では、2014年7月~2024年2月に愛知医科大学病院で血液および尿培養で大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属が検出されたβラクタム系抗菌薬投与患者を後ろ向きに登録した。登録した計123例をCTRX群(CTRXを5日間以上投与)とその他のβ-ラクタム系群(アンピシリン、セファゾリン、CTM、またはセフォタキシムを5日間以上投与)に分け、年齢、チャールソン併存疾患指数、静脈内抗菌薬投与期間、経口抗菌薬への切り替え患者数、アルブミン値、白血球数、C反応性蛋白、体温、ICU入室必要について傾向スコアマッチングした。主要評価項目は、副作用、転帰、30日および90日時点の死亡率だった。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、各群26例が選出された。・30日全死亡率は両群とも3.8%であった。・再感染や腎盂腎炎による再入院は認められなかった。 著者らは「CTRX治療は腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症患者の予後に影響を与えなかった。尿中排泄率が低いという理由で尿路感染症に対するCTRXの使用を避ける必要はない」と考察している。

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慢性期心不全患者への水分制限は不要!?(FRESH-UP)/ACC

 長らく議論されてきた心不全(HF)患者に対する水分制限に関するFRESH-UP試験の結果が、米国心臓学会議(ACC2025、3月29~31日)のScientific Sessionsで発表され、慢性期HF患者への水分制限はメリットが見いだせない可能性が示唆された。本研究は、Nature Medicine誌2025年3月30日号に同時掲載された。 なお、3月28日に発刊された日本循環器学会の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』のCQ3「心不全患者における水分制限を推奨すべきか?」には、“代償期の心不全における1日水分摂取量1~1.5Lを目標とした水分制限を弱く推奨する(エビデンスレベルA[弱]、p.209)”と示された一方で、“FRESH-UP試験やそのほかの研究結果が公表された際には再検討が必要”とされていた。FRESH-UP試験の詳細結果 FRESH-UP試験と呼ばれる本研究は、オランダの医療センター7施設において軽度/中等度HF症状を呈する504例を1日の水分摂取量を1,500mLに制限する群(制限群、250例))と水分摂取に制限を設けない群(非制限群、254例)に割り付けて行われた多施設共同無作為化比較オープンラベル試験。主要評価項目は、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)で評価した3ヵ月後の健康状態で、副次評価項目は口渇による苦痛(Thirst Distress Scale for patients with HF:TDS-HF)や安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は69.2歳、男性は67.3%であった。・対象者の87.1%はNYHA心機能分類IIで、治療におけるループ利尿薬の服用率は51%、ベースライン時点のKCCQ-CSS中央値は77.0であった。・左室駆出率の平均値はいずれの群も約40%で、NT-proBNP値は、制限群が507.4ng/L、非制限群が430.0ng/Lであった。・制限群の1日平均水分摂取量1,480mLに対し非制限群は1,764mLと、制限群は有意に抑制されていた(p<0.001)。・3ヵ月時点のKCCQ-CSSによる健康状態について、ベースラインスコア調整後の平均差は2.17(95%信頼区間[CI]:-0.06~4.39、p=0.06)と、主要評価項目は達成されなかった。・TDS-HFは、制限群で有意に高くなった(18.6 vs.16.9)。・安全性について、6ヵ月時点での死亡率、HF入院、静注利尿薬の必要性、急性腎障害の発生においても、両群間で有意差は認められなかった。 HFに対する水分制限の有益性について、発表者のRoland RJ van Kimmenade氏は「主要評価項目や安全性に関する副次評価項目結果からも明らかなように、水分制限による影響や害を及ぼす兆候が発見されなかった」と述べ「安定しているHF患者では水分制限を必要としない」としている。

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TAVI生体弁比較、SAPIEN 3 vs.Myval/Lancet

 経カテーテル心臓弁(THV)を植え込む低侵襲の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、重症大動脈弁狭窄症および劣化した大動脈生体弁に対するガイドラインに基づいた治療法である。次々と新しいTAVI用THVプラットフォームが上市され臨床現場で使用されているが、その性能に関する短期データは少なく、長期データについては存在していない。デンマーク・オーフス大学病院のChristian Juhl Terkelsen氏らは、「最新のTHVは、現状で最良とされるTHVと比較すべき」として、SAPIEN 3 THVシリーズ(SAPIEN 3またはSAPIEN 3 Ultra、米国・Edwards Lifesciences製)とMyval THVシリーズ(MyvalまたはMyval Octacor、インド・Meril Life Sciences製)を直接比較する多施設共同全患者無作為化非劣性試験「COMPARE-TAVI 1試験」を実施。Myval THVはSAPIEN 3 THVに対して1年時の複合エンドポイント(死亡、脳卒中、中等症/重症の大動脈弁逆流症、または中等症/重症のTHVの血行動態悪化)に関して非劣性であったことを報告した。Lancet誌オンライン版2025年4月2日号掲載の報告。デンマークの3つの大学病院で被験者を募り試験 試験はデンマークの3つの大学病院で、18歳以上、TAVIが予定されており、SAPIEN 3 THVまたはMyval THVによる治療の対象であった患者を適格とし行われた。 被験者は、SAPIEN 3(29mm径)またはSAPIEN 3 Ultra(20mm、23mmまたは26mm径)THVを用いた治療を受けるSAPIEN 3 THV群、MyvalまたはMyval Octacor THV(20~32mm径)を用いた治療を受けるMyval THV群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 TAVI手術は、弁尖切開術を行う場合を除き、試験地の手術手順にて局所麻酔下で行われた。 主要エンドポイントは、Third Valve Academic Research Consortium(VARC-3)基準に基づく1年時点の死亡、脳卒中、中等症/重症の大動脈弁逆流症、または中等症/重症のTHVの血行動態悪化の複合とした。 無作為化された全患者をITT解析に包含し、割り付け治療を受けた全患者をper-protocol解析に包含した。予想イベント発生率は13%で、事前に規定した非劣性マージンは5.3%とした。主要エンドポイントの発生はSAPIEN 3 THV群13%、Myval THV群14% 2020年6月15日~2023年11月3日に1,031例が登録された。なお登録は、特許関連の法的手続きのため2回中断された。 1,031例のうち、517例がSAPIEN 3 THV群に、514例がMyval THV群に無作為化された。被験者の年齢中央値は81.6歳(四分位範囲[IQR]:77.6~85.0)、415例(40%)が女性、616例(60%)が男性であった。STSスコア中央値は2.3%(IQR:1.6~3.7)。1,031例のうち98例(10%)が二尖弁(すべてSievers分類タイプ1)を有し、40例(4%)がvalve-in-valve手術を受け、103例(10%)は急性または亜急性TAVIであった。無作為化から手術までの時間は中央値50分(IQR:31~1,313)。Myval THV群でXLサイズ弁(30.5mm、32mm径)の植え込みを受けたのは、507例のうち10例(2%)。THV径中央値は、SAPIEN 3 THV群(516例)26mm(IQR:23~26)、Myval THV群(514例)26mm(24.5~27.5)であった。 主要エンドポイントの発生は、SAPIEN 3 THV群67/517例(13%)、Myval THV群71/514例(14%)であった(群間リスク差:-0.9%[片側95%信頼区間上限:4.4%]、非劣性のp=0.019)。

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lepodisiran、400mg投与で半年後のLp(a)値を93.9%低下/NEJM

 開発中の長期持続型低分子干渉RNA(siRNA)薬lepodisiranについて、投与後60~180日に血清リポ蛋白(a)(Lp(a))値を低下したことが示された。米国・Cleveland Clinic Coordinating Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らALPACA Trial Investigatorsが、第II相試験である国際多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。Lp(a)値の上昇は、アテローム性心血管疾患と関連する。lepodisiranは、肝臓でのLp(a)の産生を標的とし、第I相試験では、最高試験用量608mgの単回投与が337日間にわたりLp(a)値を90%以上低下したことが示された。今回報告された第II相試験は、Lp(a)高値の集団でのlepodisiranのさらなる安全性を評価するとともに、Lp(a)値低下の大きさと期間を明らかにし、現在進行中の心血管アウトカムを評価する長期の第III相試験の用量と投与間隔の設定を目的として実施された。NEJM誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。5つの用量群で60~180日におけるLp(a)値の低下率を評価 第II相試験は2022年11月11日~2023年4月17日に、アルゼンチン、中国、デンマーク、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ルーマニア、スペインおよび米国の66施設で行われた。対象は、Lp(a)値175nmol/L以上で、スタチン、PCSK9阻害薬、その他のLp(a)値に影響を及ぼすことが知られる脂質異常症治療薬の投与を受けている場合は、スクリーニング前4週間以上にわたり投与量が安定していた40歳以上の成人であった。 研究グループは被験者を、次の5群に1対2対2対2対2の割合で割り付けた。すべてが皮下投与で、(1)ベースラインと180日時にlepodisiran 16mg(16mg群)、(2)同96mg(96mg群)、(3)同400mg(400mg・400mg群)、(4)ベースラインにlepodisiran 400mg、180日時にプラセボ(400mg・プラセボ群)、(5)ベースラインと180日時にプラセボ(プラセボ群)。主要解析では、ベースラインでlepodisiran 400mg投与を受けた(3)と(4)の2つの群のデータをまとめて(400mg統合群)分析した。 主要エンドポイントは、60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの時間平均低下率(lepodisiran群とプラセボ群の差[すなわちプラセボ補正後])であった。400mg投与で60~180日に93.9%ポイント低下、30~360日に88.5~94.8%ポイント低下 計320例が無作為化された。平均年齢は62.7歳、138例(43%)が女性、219例(68%)が心血管イベントの高リスク基準を満たしており、153例(48%)が冠動脈疾患既往、99例(31%)が心筋梗塞既往であった。血清Lp(a)中央値は253.9nmol/L、LDLコレステロール中央値は79.3mg/dL、アポリポ蛋白B値79.0mg/dL、また、併用薬はスタチンが236例(74%)、エゼチミブが105例(33%)、PCSK9阻害薬が19例(6%)であった。 60~180日の血清Lp(a)値のベースラインからの、血清Lp(a)値の時間平均低下率(プラセボ補正後)は、16mg群40.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:-55.8~-20.6)、96mg群75.2%ポイント(-80.4~-68.5)、400mg統合群93.9%ポイント(-95.1~-92.5)であった。 30~360日のベースラインからの同低下率は、16mg群41.2%ポイント(95%CI:-55.4~-22.4)、96mg群77.2%ポイント(-81.8~-71.5)、400mg・400mg群94.8%ポイント(-95.9~-93.4)、400mg・プラセボ群88.5%ポイント(-90.8~-85.6)であった。 重篤な有害事象は35例で報告されたが、試験担当医師がlepodisiranまたはプラセボに関連したと判定した事例はなかった。概して軽度の注射部位反応が用量依存性に報告され、lepodisiranの最高投与量群(400mg・400mg群)の発現率12%(8/69例)が最高であった。

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喘息の検査には時間帯や季節が影響する

 喘息の診断に用いられる気道可逆性検査の精度は、実施する時間帯、季節により異なる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、定期的な喘息検査は午前中に行う方が信頼性の高い結果を得られる可能性があるとしている。英ロイヤル・パプワース病院NHS財団トラストのBen Knox-Brown氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に3月11日掲載された。 典型的な喘息の検査は、2段階のプロセスで行われると研究グループは説明する。まず、患者はチューブを通してできるだけ深く息を吸い、次にできるだけ強く、速く息を吐くように指示される。患者の肺の中を出入りする息は、肺機能を測定する装置であるスパイロメーターにより測定される。次に、患者は即効性の気管支拡張薬を吸入してから、同じ呼吸テストを行う。2回目の結果が1回目よりも良好である場合、つまり気管支拡張薬反応性が認められた場合は、テスト前にすでに気道が狭くなっていたことを意味し、患者が喘息であることが示唆される。 今回の研究でKnox-Brown氏らは、2016年1月1日から2023年12月31日の間に喘息の検査を受けた18歳以上の患者1,620人(平均年齢53.2歳、女性62%)のデータを後ろ向きに解析し、検査が行われた時間帯や季節と喘息の診断との関連を検討した。 その結果、午前8時30分から検査を開始した場合、開始時間が1時間遅くなるごとに、気管支拡張薬反応性を示すオッズが8%ずつ低下することが示唆された(オッズ比0.92、95%信頼区間0.88〜0.97)。検査する時間帯を午前と午後に分けて解析した場合でも同様の傾向が見られ、午後の方が気管支拡張薬反応性を示すオッズが低かった(同0.68、0.54~0.85)。季節別に見ると、秋に検査を受けた場合には冬に受けた場合と比べて気管支拡張薬反応性を示すオッズが33%低かった(同0.67、0.48〜0.92)。 研究グループは、喘息薬の効果が午後よりも午前の方が高いことは知られていたが、これらの結果には驚かされたという。Knox-Brown氏は、「喘息発作のリスクが昼と夜で違うことから、肺機能検査に対する反応にも違いがあると予想していたが、その大きさには驚かされた」と話す。同氏は、「この結果は重要な意味を持つ可能性がある。午前中に検査を行えば、午後に行うよりも患者の薬に対する反応をより確実に知ることができる。これは喘息などの診断を確定する際に重要だ」と英ケンブリッジ大学のニュースリリースの中で述べている。 論文の上席著者である、ケンブリッジ大学のAkhilesh Jha氏は、「この違いの背景には、複数の要因が関与している可能性が高い」と指摘する。同氏は、「われわれの体には体内時計と呼ばれる自然なリズムが備わっている。例えば、1日を通して、体内のさまざまなホルモンのレベルは上下するし、免疫システムの働きも異なる。これらの要因の全てが、人々が肺機能検査にどう反応するかに影響を与える可能性がある」と話す。 Jha氏は、このような体内時計による影響のエビデンスは、医学の他の分野でも認められていると指摘する。同氏は、「例えば、ワクチン接種を午前に受けるか午後に受けるかによって反応が異なることが知られている。われわれの研究結果は、この考えをさらに裏付けるものだ。一般的に行われている喘息の検査結果を解釈する際には、検査実施の時間帯や時期を考慮する必要があるのかもしれない」と述べている。

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医師からのメッセージ、AIが作成しても患者の満足度は高い

 患者は通常、診療所から届いたメッセージの作成者が誰であるかを知らされなければ、それが人工知能(AI)によって書かれたものであっても気にしないことが新たな研究で明らかになった。この研究によると、AIにより書かれたメッセージと医師により書かれたメッセージを見せられた患者は、AIのメッセージを好む傾向にあったが、全体的な満足度はどちらも高かったという。米デューク大学医学部のAnand Chowdhury氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月11日掲載された。 Chowdhury氏は、「どこの医療システムも、AIの使用を開示するかどうか、どのように開示するかという問題に取り組んでいる」と説明し、「透明性を保ちたいと思う一方で、患者を満足させたいという思いもある。もしAIについて開示したら、何を失うことになるのか。われわれはこの研究でそれを評価しようとした」と付け加えている。 この研究では、デューク大学医療システムの1,455人の患者を対象に、医師との電子メールでのやりとりにおけるAI使用について、患者の好みを評価した。メッセージは、1)定期的に使用している薬剤の処方依頼、2)薬剤の副作用に関する質問、3)画像検査でがんの可能性がある所見が見られた場合、を想定して作成された。人間のメッセージは、普段の患者とのコミュニケーションの取り方を反映した現実的な内容のものを医師チームが用意した。AIのメッセージはChatGPTが作成し、研究に参加した医師が回答内容の正確性を確認した。患者は、医師チームまたはAIが作成したメッセージに対する満足度を5段階で評価した。 その結果、患者は医師が作成したメッセージよりもAIが作成したメッセージを好む傾向にあり、満足度を5段階で評価したスコアはAIが作成したメッセージの方が平均0.30ポイント高いことが明らかになった。また、AIが作成したメッセージは有用性の評価でも0.28ポイント、患者に対する共感性の評価でも0.43ポイント高かった。研究グループによると、AIのメッセージは傾向として、医師のメッセージよりも長くて詳細で、より共感的な内容であったという。 しかし、メッセージがAIによるものであることを患者に開示した場合には満足度が低下し、満足度のスコアは、人間によるものであることを開示した場合と比較して0.13ポイント、開示しない場合と比べても0.09ポイント低かった。それでも、メッセージの作成者がAIか医師かに関わりなく、75%以上の患者が受け取ったメッセージに満足していた(AI:85.0%、医師:75.6%)。 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者でデューク大学医学部のJoanna Cavalier氏は、「今回の研究では、AIが関与していることが開示された場合、患者の満足度はわずかに低くなるものの、AIが書いたメッセージの方がやや好まれることが示された」と述べている。 さらに、伝達されるメッセージの内容の深刻度は、それがAIにより作成されたと知らされた際の患者のメッセージに対する好意的な気持ちに影響を与えないことも明らかになった。研究グループは、「われわれは、例えば定期的に使用している薬剤の再処方など、それほど深刻でない内容であれば、患者はAIが作成したメッセージでも受け入れやすいとの仮説を立てていた。しかし、そのような相互作用は見られなかった」と説明している。言い換えれば、患者は、AIが作成した薬剤の再処方に関するメッセージと、画像検査でがんの可能性が示されたことに関するメッセージの双方に、同程度の満足度を示していた。 「こうした結果は、臨床医と電子機器を介してつながることで患者の満足度がより高くなることを示した研究という点で極めて重要だ」とChowdhury氏は言う。同氏は、「未処理のメールで受信トレイが一杯になると、医師はバーンアウト(燃え尽き症候群)の状態になりかねないため、医師の負担を軽減する自動化ツールの利用は非常に魅力的だ。これらの結果は、AIを活用することで医師のバーンアウトを軽減できる可能性があること、また、AIを使用する際に患者に適切な対応を取りながらその使用について伝えることに自信を与えてくれる」と述べている。

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CareNetパス利用規約

[アカウント登録]をクリックすることで、CareNetパス利用規約並びに当社の個人情報保護方針および個人情報保護規定(https://www.carenet.com/info/personal.html 参照)が適用されることに同意するものとします。CareNetパス利用規約CareNetパス利用規約(以下「本規約」といいます)は、株式会社ケアネット(以下「当社」 といいます)が提供する「CareNetパス」サービスおよびこれに関連するサービス(以下「本サービス」といいます)のご利用に際し、適用されます。本サービスのご利用前によくお読み頂き、同意のうえ、ご利用ください。第1条(本規約、本サービスの目的等)1.本規約は、本サービスの提供条件について、当社とサービス利用者との間の権利義務を定めることを目的とします。サービス利用者は、当社所定の登録手続において、本規約に同意するものとします。サービス利用者は、本サービスをご利用いただくことを以って、本規約に同意したものとみなされるものとし、本規約が改訂された場合も同様とします。2.本サービスは、当社およびサービス関連事業者(以下に定義します。当社およびサービス関連事業者を総称して「サービス提供者」といいます)が提供する情報提供サービスを利用する際に要求される認証について、CareNet.com会員IDによる認証連携サービス CareNetパスを通じて、サービス利用者の情報提供サービスへのアクセスの容易性・利便性を高めることを主な目的としています。3.サービス提供者が提供する情報提供サービスに対する責任は、これを提供する事業者が負います。また、これを提供する事業者が定める利用規約その他の条件が適用されることがあります。4.サービス利用者は、CareNetパス利用、ならびに情報提供サービスの利用および解析のため、サービス利用者の登録情報、ユーザー情報がサービス提供者により取得され、利用されることに同意します。これらの情報は、情報提供サービスの提供(サービス利用者が利用する情報提供サービス中に特定の医療関係者にしか提供できない情報が含まれるため、その確認のために使用されます)、情報提供サービスの品質向上、サービス提供者による解析・分析、その他サービス利用者から個別に同意を取得している目的のために利用します。なお、これらの情報が個人情報保護法に定める個人情報に該当する場合、サービス提供者は常に同法およびその下位法令に従い、取り扱いを行うものとします。第2条(定義)本規約において使用する以下の用語は、各々以下に定める意味を有するものとします。(1)「サービス利用者」とは、本サービスを利用する自然人をいい、医療関係者(医師・看護師・薬剤師など)及び医薬関係者をいいます。(2)「ユーザー」とは、当社所定のユーザー登録手続を経て、当社がユーザー登録および本サービスの利用を承認した者をいいます。(3)「CareNet.com会員ID」は、当社の提供するサービスへの利用登録時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時にサービス利用者が設定したメールアドレスまたは会員識別用の固有の文字列をいいます。(4)「メールサービス」とは、本サービスの一環として当社がサービス利用者に対して、電子メールを用いて、サービスの広告、宣伝をお送りすることです。(5)「登録情報」とは、サービス利用者が当社の提供するサービスへの利用登録(更新登録を含む)時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時に、当社に提供を行った氏名、メールアドレス、勤務先、勤務先所在地、診療科、職種等の情報のことです。(6)「ユーザー情報」とは、情報提供サービスの利用状況(ログイン・連携解除日時)、メールサービスの利用履歴、その他ユーザーの本サービスの利用内容、利用履歴のことです。本サービスに関するCookie等の情報を含みます。(7)「MDB」とは、株式会社日本アルトマークの運営する日本全国の医療施設や薬局・薬店およびそこに従事する医療従事者の情報を内容とするメディカルデータベースをいいます(MDBに関するご案内、お問い合わせは下記のWebサイトをご覧ください。https://www.ultmarc.co.jp/mdb/index.html(8)「サービス関連事業者」とは、本サービスの登録・サインインにより提供されるサービスの運営事業者、株式会社日本アルトマーク、MDB会員のことです。第3条(サービス利用者の資格・認証・責任等)1.当社は、ユーザー登録を希望する者が以下の各号のいずれかの事由に該当すると判断した場合に、登録を拒否することがあります。またその理由について一切開示義務を負いません。(1)登録情報につき事実と異なる内容があった場合(2)暴力団、暴力団員、右翼団体、反社会的勢力その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力等」といいます)または関与者(3)過去当社との契約に違反した者またはその関係者(4)過去本サービスの登録抹消を受けた者(5)本サービスの提供が適当でない者と当社が判断した場合2.本サービスはサービス利用者の本人認証のため、CareNet.com登録会員情報にて本人確認手続きを行います。サービス提供内容は、本人認証の状況により変わる場合があります。3.サービス利用者は、CareNet.com会員IDを第三者に知られないようにサービス利用者の責任において十分注意して管理するものとします。またパスワードは、生年月日、電話番号など他人に推測されやすいものを避けて設定し、定期的に変更するものとします。サービス利用者のCareNet.com会員IDおよびパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等によって生じた損害に関する責任はサービス利用者が負うものとし、当社は一切の責任を負いません。4.サービス利用者は、CareNet.com会員IDおよびパスワードについて、以下の各号に掲げる行為を行ってはならないものとします。(1)CareNet.com会員IDおよびパスワードを第三者に利用させ、または貸与、譲渡、名義変更、売買等行うこと(2)他のサービス利用者のIDまたはパスワードを利用する行為その他第三者に成りすます行為を行うこと。サービス利用者のIDおよびパスワードが入力された上で、本サービスのご利用がなされた場合、当社は、本サービスのご利用がサービス利用者ご本人によりなされたものであるとみなします。5.サービス利用者は、本サービスの利用にあたり、以下の各号のいずれかに該当する行為または該当するおそれがある行為をしてはなりません。(1)本規約に違反する行為(2)法令または公序良俗に違反する行為(3)サービス利用者が所属する業界団体の内部規則等に違反する行為(4)複数のユーザー登録を行うこと(5)本サービスのネットワークまたはシステム等に過度な負荷をかける行為、当社のネットワークまたはシステム等に不正にアクセスする、または不正なアクセスを試みる行為その他本サービスの運営を妨害するおそれのある行為(6)第三者に不利益、不快感を与える行為その他不適切な行為(7)前各号の行為を直接または間接に惹起し、または容易にする行為第4条(通知)1.本サービスの利用に関して、当社はサービス利用者に対し、メール等で通知を送信することができます。2.サービス利用者が通知を受け取れないこと等により、当社からの指示や警告を見落とした場合、当社は責任を一切負わないものとします。第5条(登録情報の変更等) 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アスピリンがよい?それともクロピドグレル?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は1986年に循環器内科に入ったので、PCI後に5%の症例が血管解離などにより完全閉塞する時代、解離をステントで解決したが数週後に血栓閉塞する時代、薬剤溶出ステントにより1~2年後でも血栓性閉塞する時代を経験してきた。とくに、ステント開発後、ステント血栓症予防のためにワルファリン、抗血小板薬、線溶薬などを手当たり次第に試した時代を経験している。チクロピジンとアスピリンの併用により、ステント血栓症をほぼ克服できたインパクトは大きかった。チクロピジンの後継薬であるクロピドグレルは、急性冠症候群の1年以内の血栓イベントを低減した。アスピリンとクロピドグレルの併用療法は、PCI後の抗血小板療法の標準治療となった。 抗血小板併用療法により重篤な出血イベントリスクが増える。それでも1剤を減らして単剤にするのは難しい。単剤にした瞬間、血栓イベントが起これば自分の責任のように感じてしまう。やめる薬をアスピリンにするか、クロピドグレルにするかも難しい。クロピドグレルが特許期間内であれば、メーカーは必死でクロピドグレルを残す努力をしたと思う。資本主義の世の中なので、資金のあるほうが広報の力は圧倒的に強い。学術雑誌であってもfairな比較は期待できなかった。 クロピドグレルは特許切れしても広く使用され、真の意味で優れた薬剤であること(メーカーの広報がなくても医師が使用するとの意味)が示された。本研究ではPCI後標準期間の抗血小板併用療法施行後、アスピリンまたはクロピドグレルに割り振った。クロピドグレルの認可承認試験は、アスピリンとの比較における有効性・安全性を検証したCAPRIE試験であった。今回はPCI後、16ヵ月ほどDAPTが施行された後にランダム化した。冠動脈疾患の慢性期の単一抗血小板薬としてクロピドグレルによる死亡、心筋梗塞、脳梗塞がアスピリンよりも少ないことが示された。 筆者は特許中の薬剤を応援することがない。資本主義における、資本力による広報のトリックを完全に見破れる自信もない。しかし、特許切れして、なお有効性・安全性を示す薬は本物と思う。アスピリンは安価で優れた薬であった。筆者はアスピリンについて一冊の本を書いたほどである(後藤 信哉編. 臨床現場におけるアスピリン使用の実際. 南江堂;2006.)。しかし、クロピドグレルも数十年かけて優れた薬であることを示した。今度はクロピドグレルの本を書きたいほどである。

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メンタル不調の休職者、「復職させてもよいのでしょうか?」【実践!産業医のしごと】

メンタル不調の休職者、「復職させてもよいのでしょうか?」Qメンタルヘルス不調で休職中のAさんが復職を希望していますが、面談すると実際には体調が回復していないように見えます。休職期間はまだ十分に残っています。このような場合、復職を認める必要があるでしょうか? また、同様にメンタルヘルス不調で休職中のBさんが、休職期間満了時に復職を希望した場合はどうでしょうか?A1. 復職判断の基本的な考え方復職の可否を判断する際の核心は「治癒」の有無です。裁判例などで使用される「治癒」とは、医療者がイメージする治癒とは異なり、「元の業務を通常程度こなせる健康状態に戻ること」を意味します。一般的な私傷病休職制度では、休職期間内に「治癒」すれば復職可能ですが、期間満了までに「治癒」しなければ自然退職または解雇となります。2. 休職期間途中での復職申請(Aさんのケース)休職中のAさんが期間途中で復職を希望する場合の対応方法を考えてみましょう。通常、復職希望者は主治医による「復職可能」との診断書を提出します。しかし、復職可否の決定権は最終的に会社側にあります。診断書をそのまま受け入れるのではなく、内容を検討し、不明点があれば主治医と面談したり、産業医を通じて状況を確認したりすることも重要です。これらの確認後、確かに「治癒」したと判断できれば復職を認めます。しかし、合理的な疑念が残る場合は慎重に判断すべきです。一方で、不十分な回復のまま復職させることで会社側にも以下のようなリスクが生じます。不完全な業務遂行によって、職場に負担が生じる。回復途上で復職することで、復職した社員に負担が掛かり、症状が再発・悪化する。再休職の必要性が生じる。会社の安全配慮義務違反が問われる。したがって、休職期間途中の復職判断では「治癒」したかを適切に評価し、疑問点がある場合は残りの休職期間を活用して十分な回復を促すことが必要となります。3. 休職期間満了時の復職判断(Bさんのケース)Bさんのように休職期間満了時に復職を希望する場合も、基本的な判断基準は変わりません。主治医との連携や産業医を通じた情報収集、関係者による面談などを通じて「治癒」状態を確認します。ただし、期間中の復職拒否と満了時の復職拒否では、社員への影響が大きく異なります。期間中であれば休職期間が残されていますが、満了時に復職できなければ自然退職または解雇となります。そのため、会社側は休職期間満了時に復職を認めない判断をする場合、期間途中の場合よりも大きなリスクに直面します。過去には、休職期間満了時に従前の職務を支障なく行える状態になくても、「当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できる場合に、短期の復帰準備期間を提供するなどの配慮」を雇用者に求めた判例もあります。この点を考慮し、実務上は「治癒」について若干の疑問が残る場合でも、解雇による紛争を避けるため、復職を認めるケースもあります。4. 結論休職中の社員から復職希望があった場合、会社は「治癒」の有無を慎重に判断する必要があります。Aさんのような休職期間途中のケースでは「治癒」していないと判断されれば復職を認めず、残りの休職期間の取得を促すことは妥当な判断です。一方で、Bさんのような休職期間満了時のケースでは、同じ基準で「治癒」を判断しつつも、復職不可が雇用終了につながる重大性を考慮する必要があります。そのため、完全に「治癒」していなくても、程なく通常業務へ復帰できることが見込める場合は、紛争リスクを勘案して復職を認めるケースもあるでしょう。どちらの場合も、主治医の診断書だけに依存せず、会社として多角的な評価を行い、責任ある判断をすることが重要です。その際、医学的知見と職場環境の両方を理解している立場から、産業医の存在は重要です。難しい判断が求められる場合には、産業医の専門的見解が会社の意思決定を支え、法的リスクの軽減にも寄与します。会社は復職判断の各段階で産業医と緊密に連携し、活用することが望ましいでしょう。

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小児の採血・ルート確保【すぐに使える小児診療のヒント】第1回

小児の採血・ルート確保はじめまして。東京都立小児総合医療センターの吉井 れのと申します。皆さんは、子供の診察はお好きですか? 「子供は何を考えているかわからない」「どう接してよいのか、関係の作り方がわからない」「保護者と話すのが苦手でコワイ」「なんとなくちょっと…」など、苦手意識のある先生もいらっしゃると思いますが、診察しなくてはならない機会が突然訪れるかもしれません。このコラムでは、小児診療のポイントに加えて、保護者や子供との関わり方のコツもお伝えします。ぜひ、診療の場面での子供との出会いを楽しんでいただけると幸いです。今回は、他科や初期研修の先生からよくご相談いただく「小児の採血・ルート確保」について解説します。症例3歳、男児2日前からの発熱と嘔吐を主訴に受診。母親が「しんどそうで全然ご飯が食べられないんです! 先生、点滴してください!」と強く訴える。点滴の適応かどうかを確認そもそもこの子に点滴は必要でしょうか? まずは必要性の評価をしましょう。たとえば、体重減少や飲水の程度を参考にします。体重減少なし、飲水可、活気も保たれている → 点滴不要10%の体重減少があり、飲水不可、ぐったりしている → 点滴必要点滴は侵襲を伴う手技であることを忘れず、保護者の希望があるからといって安易に実施すべきではありません。必ず目の前にいる小児の状況や所見から判断しましょう。採血・ルートの確保小児の採血やルート確保は奥深いものです。患児の年齢や体格、性格、基礎疾患などによって「やりやすさ」は変わります。ここでは、一般的な小児に対する採血・ルート確保の手順についてコツを交えて解説します。成人への手技とは異なる部分がありますが、よくイメージして準備することが成功のカギです。「ポタポタ」採血乳幼児は肘窩の皮下脂肪が厚くて静脈を触知することが難しく、血管が細いことからも、手背の静脈を穿刺することが多いです。手背の静脈トランスイルミネーター(イーエスユー有限責任事業組合ホームページより)利き手ではない手で患児の手背を収めるように把持しつつ、皮膚を牽引して適度な圧をかけて23G注射針で穿刺をします。そして、針から滴る血液を、蓋を開けた採血管に直接採取します。これが、いわゆる「ポタポタ採血」です。点滴が留置できないような末梢の血管でも、血管に針先が当たりさえすれば容易に採血できるため、重宝する手段です。トランスイルミネーター(写真)は、小児の手に握らせると赤色の強い光で静脈を透過させ、細い血管も見えやすくなります。手がぷにぷにとして血管が同定しづらい1~3歳の小児ではとくに有用です。ルート確保採血と異なる点もありますが、ルート確保も基本は同じです。まずは、利き手ではない手で患児の手背を把持します。親指と人差し指で作った「C字」の空間に、患児の手背をはめ込むようなイメージです。親指を手前(できれば患児のMP関節より遠位)にしっかりと固定します。これは、(1)刺入部となる皮膚を張るため、(2)カニュレーションの際に自身の親指が邪魔にならないためです。血管が虚脱しないよう適度なテンションに調整しましょう。トランスイルミネーターを握っている患児の手を把持穿刺の前に消毒をして、留置針と穿刺部位の確認をします。ベベルの向きは正しいか外筒と内筒の差は何mmか(ジェルコ:2mm)選択した血管は留置する長さの分まっすぐに伸びているか穿刺の瞬間はためらわないことが大切です。小児の血管は、ぷちっと貫いたのがわかるくらい弾力があるため、血管にあたるまでゆっくり進めるよりは、スパッと貫くほうがよいでしょう。また、小児は今か今かと「チックンの瞬間」をうかがっています。どんなに押さえていたとしても、痛みを感じた瞬間に手を引いてしまいます。穿刺をためらうと、狙っていた場所と異なる場所を刺してしまったり、針先が当たっただけで抜けてしまい、もう一度刺さなければならなくなったりします。針先が血管に当たって逆血を確認したら、一度心を落ち着けましょう。私は深呼吸しています。針全体を水平近くまでしっかりと寝かせ、ほんの数mm(外筒と内筒の差分)だけ進めます。逆血が来ていることを確認し、人差し指を外筒のツマミに添えて、スッと外筒だけを進めて留置してください。先端が弁に引っかかり外筒が進みにくいことがありますが、内筒を抜いた状態で、外筒を優しく回すと進む場合が多いです。留置針留置後は、固定が終わるまで絶対に手を離さないでください。やっとの思いで取ったルートが、ホッと一息ついた瞬間に抜けてしまうことほど悲しいことはありません。重要なのは「準備」小児の採血・ルート確保は、血管が細く、穿刺できる部位が限られる小児が手技に協力してくれることが少ない一度応じてくれたとしても、失敗して再トライとなると嫌がってしまう(当然!)といった理由から、チャンスが限られます。この1回のチャンスをモノにするために最も大切なことは、センスでもコツでもなく、「準備」です。人員(少なくとも2人)アルコール綿直針(23G)採血スピッツ(ふたを外して準備)、毛細管防水シーツ手袋駆血帯トランスイルミネーター針捨てボックスガーゼ、止血用保護テープ<ルート確保の場合>留置針(24G ジェルコなど)点滴固定テープ(テガダームなど)シリンジ固定用シーネ など小児の採血・ルート確保グッズ利き手ではない手は、患児の手(または足)を把持するのに集中し、一度固定したら離さない気持ちで臨みます。基本的には採血の手技が片手操作となるため、すぐに手が届き操作しやすい場所に物品を準備しておくことが重要となります。いざ血管に針が当たり、逆血が勢いよくポタポタと出ているけれど、スピッツの蓋が外せなくてアタフタ…介助者も小児を抑えるのに必死で手が離せず、「誰か助けて!看護師さ~ん!」なんてことがないように。小児の採血やルート確保が上手な人は、往々にして「準備万端な人」といえるでしょう。今回は、小児の採血・ルート確保について紹介しました。特別な技術を必要とする部分は意外と少ないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。小児診療では、患児や保護者にいかに処置に前向きになってもらうかを諦めない姿勢も重要です。次回は「処置の際の小児・保護者との関わり方」についてお話します。

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第259回 トランプ関税で2026年度診療報酬改定の財源確保に暗雲?国内では消費税率の減税論もくすぶり、医療費削減圧力はさらに増大の予感

米国が中国に課す追加関税は累計145%、中国が米国に課す報復関税は125%こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。米国のトランプ大統領が4月2日に発表した全世界を対象とした相互関税が世界経済を大混乱に陥れています。株や債券で財産を運用している方々は、一喜一憂の毎日ではないでしょうか。原則すべての国に課せられる10%の基本税率は4月5日に、国ごとの上乗せ税率は4月9日にそれぞれ発動しました。日本は24%の税率になりましたが、トランプ大統領は発動からわずか13時間後、相互関税の措置を「報復措置を取っていない国については90日間停止する」と発表しました。相互関税の停止期間中、各国に課す関税率は10%のままで、上乗せ税率を今後どうするかについては国ごとに交渉が進められることになります。というわけで、当面、日本には10%の関税が課せられます。なお、自動車に課せられる追加関税25%(合計27.5%)は4月3日に発動しています。一方、トランプ大統領は「報復措置」をとった中国には追加関税を125%に引き上げると発表、両国の間の関税の応酬はさらに激しさを増しています。4月15日現在、米国が中国に課す追加関税は累計145%、中国が米国に課す報復関税は125%です。もはや何が何やらわかりません。相互関税の税率を決める上で考慮されたという「非関税障壁」とは当初、医薬品には関税がかけられないことになっており、日本の医薬品業界はとりあえず胸をなでおろしたようです。しかし、米国のバイオ産業専門誌などによると、トランプ大統領は先週、「大規模な医薬品関税を近いうちに導入する」と発言、4月14日にも「さほど遠くない」将来、輸入医薬品に関税を課す計画であると改めて表明しています。先はまったく読めません。ちなみに、現在、医薬品に関税はありません。世界貿易機関 (WTO)の前身に当たる関税及び貿易に関する一般協定(GATT)において1994年に決定、その方針が継続しているからです。米国の医薬品は中国など他国からの供給にその多くを依存しています。関税によって輸入を制限し、国内での製造拡大を目指す計画のようです。しかし、ものはおもちゃではなく薬です。製薬工場を作って稼働させることが一朝一夕にできるのでしょうか。仮に医薬品に高い関税がかけられた場合、米国内での薬の供給も心配です。というわけで、とりあえず日本の医療界に直接の影響はないように見えますが、いえいえ、そんなことはありません。気になるのは、相互関税の税率を決める上で考慮されたという「非関税障壁」です。非関税障壁は、関税以外の要因によって貿易の自由な流れを妨げる障壁や制約のことで、「輸出をしやすくするための為替操作」「輸出を促進するための政府の補助金」「不当に安い価格で販売するダンピング」「科学的な根拠に基づかない検疫の基準」などがそれにあたるとされます。今回、米国はそれらを計算し、日本は米国に対して46%の関税を課していることに相当するとしました。ちなみに、4月10日付の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」は「相互関税の税率の算定では、国ごとに米国の貿易赤字額を輸入額で割り、その数値を2で割ったものを用いたようだ。理論的な根拠が不明の非常識な数字」と書いています。米通商代表部、日本の非関税障壁の1つとして「医療機器や医薬品」に言及「理論的な根拠が不明」であることはさておいて、46%の関税を課していることに相当する「非関税障壁」として米国は、コメ、小麦、豚肉、サバ・イワシ、自動車、自動車充電施設などと共に「医療機器や医薬品」を挙げています。トランプ大統領が相互関税の税率を発表する直前の3月31日、米国の通商政策全般を担当する米通商代表部(USTR)が「外国貿易障壁報告書(National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers)」を発表しました。その中で、日本の非関税障壁の1つとして「医療機器や医薬品」に言及しています。同報告書は毎年春に発表されているものですが、4月3日付の日本経済新聞によれば本年版は「日本の関税や非関税障壁について11ページにわたって詳述した。(中略)日本のページは24年から1ページ増えた」とのことです。同報告書は、2018年度の薬価制度改革で新薬創出加算の対象品目が減少したことや、2025年度の薬価の中間年改定がパブリックコメントなしに発表されたことなどを指摘、「米国は、日本の薬価制度やバイオ医薬品および医療機器産業にとって重要な他の政策について、より頻繁で意味のある意見を提供する機会の不足を懸念している。米国は日本が薬価制度に関連するいかなる措置を策定する際にも、米国の利害関係者を含むすべての利害関係者の意見を募集し、考慮すること、および新たな政策や措置の現在および将来について透明なプロセスを遵守することを引き続き要求する」と、米国の製薬企業等の意向をしっかりと汲んで政策決定を行うよう強く要望しています。本連載の「第251回 “タカる”厚生労働省(前編)『課税のような形で製薬企業に拠出義務』の創薬支援基金(仮称)構想、最終的に財源は国費と『任意』の寄付で決着」でも、昨年末に米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)が突然共同声明を出し、「岸田政権は、日本のエコシステムを回復し、ドラッグ・ロスを防止するための重要な第一歩を踏み出した」ものの、石破政権になってからの方針転換で2025年度中間年改定において革新的医薬品の薬価引下げのルールが拡大、「予期せぬ決定により、企業の中には、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と中間年改定の政策を強く批判したことについて書きました。そのPhRMAは、トランプ関税発表直後の4月8日に都内で定例記者会見を開いています。日本経済新聞などの報道によれば、その記者会見において米イーライ・リリー日本法人社長兼PhRMA在日執行委員会委員長のシモーネ・トムセン氏は「医薬品は米国にとって第2位の輸出部門だ。米国の対日貿易赤字680億ドルの一部は日本のネガティブな薬価制度によってもたらされている」と指摘、日米間の貿易を巡る協議に薬価制度改革が議題に上がるよう期待したとのことです。診療報酬財源の捻出法も税率低減のためのカードに使われれば改定の財源確保に多大な影響彼らの言い分にも一理あるでしょう。日本では診療報酬改定の度に薬価が切り下げられ、その財源を診療報酬の引き上げ分に充当してきました。中間年改定もその目的は医療費削減であり、頻繁な制度変更による製薬企業の投資意欲減退、革的新薬の開発意欲減退など、さまざまな問題点が内外の製薬企業等から指摘されています(ちなみに立憲民主党と国民民主党は、今国会に「中間年改定廃止法案」を提出しています)。今後、トランプ関税に対し日本は、赤沢 亮正経済再生大臣と林 芳正官房長官をトップとするタスクフォースが米国と税率軽減に向けた交渉を進めるとしています。当然、非関税障壁とされた薬価改定や薬事規制も議題に挙がるでしょう。仮に薬価改定による診療報酬財源の捻出法も税率低減のためのカードに使われることになれば、来年以降の診療報酬改定の財源確保に大きな影響が出ることになります。くすぶり始めた消費税の引き下げ論一方、物価高やトランプ関税などを背景に、野党のみならず与党においても「消費税減税」の議論が始まりそうな気配です。4月12日付の日本経済新聞朝刊は、「自公、くすぶる消費減税論」という記事を掲載、「夏の参院選をにらみ、与党で消費税の引き下げ論がくすぶっている。物価高対策として食料品を対象として減税する意見が出る」と書いています。消費税は医療費も含む社会保障のための重要な財源です。安易に減税すれば社会保障全体に影響が出ることは必至です。同記事は「税率を下げた場合、代替財源を捻出できないと赤字国債の増発につながる。このため自民党執行部は消費税の減税への慎重論が根強い」と書いていますが、石破 茂首相自身が減税に含みを持たせた発言をしたり否定したりと、相当考えがブレているようです。わずか1ヵ月前、本連載の「第253回 石破首相・高額療養費に対する答弁大炎上で、制度見直しの“見直し”検討へ……。いよいよ始まる医療費大削減に向けたロシアン・ルーレット」、「第254回 またまた厚労省の見通しの甘さ露呈?高額療養費制度、8月予定の患者負担上限額の引き上げも見送り、政省令改正で済むため患者団体の声も聞かず拙速に進めてジ・エンド」で、「医療費大削減に向けたロシアン・ルーレットはますます混迷の度合いを増した」と書きましたが、これまでの要素にトランプ関税、消費税減税も加わったことで、弾倉に込められる弾は1発や2発では済まない状況になってきたようです。

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AIによる個別支援が看護師のバーンアウトを軽減【論文から学ぶ看護の新常識】第11回

AIによる個別支援が看護師のバーンアウトを軽減Gumhee Baek氏らの研究により、人工知能(AI)を活用して個別最適化された介入プログラムが、看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)を有意に軽減する効果をもつことが示された。Worldviews on Evidence-Based Nursing誌2025年2月号に掲載された。看護師のバーンアウトに対するAI支援型個別介入:3群ランダム化比較試験研究チームは、看護師のバーンアウト軽減に対するAI支援型個別介入の有効性を検討することを目的に、韓国の病院に勤務する看護師120名を対象に、単盲検・3群ランダム化比較試験(各群40名)を実施した。AI支援型個別介入群では、2週間のプログラムが2回実施され、次の4つのプログラムのうち1つがモバイルアプリケーションを通して提供された。1)マインドフルネス瞑想、2)アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)、3)ストーリーテリングとリフレクティブ・ライティング、4)笑い療法。介入内容は、人口統計情報、仕事関連の特性、仕事のストレス、ストレス反応、コーピング方法と、バーンアウトの3側面(顧客関連、個人的、仕事関連)に基づいて、AIアルゴリズムによって個別最適化されたプログラムが提供された。対象群1では、同じ4つのプログラムの中から参加者自身が希望するものを選択して実施した。対象群2の参加者には、バーンアウト軽減に関するオンライン情報のみが提供された。主要評価項目は、バーンアウトの3側面(顧客関連、個人的、仕事関連)とし、副次評価項目は、仕事のストレス、ストレス反応、コーピング方法が設定された。主な結果は以下の通り。顧客関連バーンアウト(F=7.725、p=0.001)および個人的バーンアウト(F=10.967、p<0.0001)は、AI支援型個別介入群において有意な軽減が認められた。時間効果および、時間×群の相互作用効果も、顧客関連バーンアウト(時間効果:F=16.773、p<0.0001、相互作用効果:F=5.638、p<0.0001)、個人的バーンアウト(時間効果:F=18.743、p<0.0001、相互作用効果:F=6.875、p<0.0001)において統計的に有意であり、AI支援型個別介入群で有意な効果が認められた。仕事関連バーンアウトについては、群間の有意差は認められなかったが、時間効果には統計的な有意差が認められた(F=12.685、p<0.0001)。ストレス反応は、AI支援型個別介入群および対照群1で有意な軽減が認められ、最も大きな減少を示したのは対照群1であり、次いでAI支援型個別介入群、対照群2の順だった(F=3.07、p=0.017)。AIで個別最適化されたプログラムの提供は、看護師の顧客関連および個人的なバーンアウトの軽減に有効であることが示された。看護師のバーンアウト軽減は、ケアの質の向上にも寄与する可能性がある。今回の研究では、AIを活用し個別最適化された介入が、看護師のバーンアウト、とくに顧客(患者)との関わりや個人的な感情に関わる側面において、有効である可能性が示されました。これは、テクノロジーを活用することで、忙しい看護師一人ひとりのニーズに合わせたメンタルヘルスサポートを提供できる可能性を示唆しており、非常に意義深い結果と言えるでしょう。研究で用いられたプログラム(マインドフルネス瞑想、ACT、ストーリーテリング、笑い療法)は、いずれも心理的なウェルビーイングを高める効果が知られていますが、AIによってパーソナライズされることで、その効果がさらに高まる可能性があります。とくに注目すべきは、対照群1(自身でプログラムを選択した群)でストレス反応の減少が最も大きかった点です。これは、自身のニーズに合わせて主体的にプログラムを選択することが、ストレス軽減に重要な要素であることを示唆しています。AIによる提案と、個人の選択の自由をどのように組み合わせるかが、今後の研究や実用化における重要なポイントとなるでしょう。看護師のバーンアウトは、個人の問題だけでなく、医療機関全体のケアの質や離職率にも影響を与える重要な課題です。今回の研究成果が、AI技術を活用した新たなメンタルヘルスサポートの展開につながり、看護師がより長く、質の高いケアを提供できる社会の実現に貢献することを期待しています。論文はこちらBaek G, et al. Worldviews Evid Based Nurs. 2025;22(1):e70003.

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強制的なランニングがストレスや抑うつ症状に及ぼす影響〜動物実験データ

 High mobility group box 1(HMGB-1)は主に有核細胞の核内に発現しているタンパクで、炎症性刺激時または細胞死に際して核内から細胞外に放出され、それが炎症応答を誘導し、敗血症や免疫疾患などの病態を増悪することが知られている。HMGB-1により媒介される炎症反応は、うつ病の病態生理学的メカニズムにおいて重要な役割を果たすと考えられる。Qian Zhong氏らは、海馬におけるHMGB-1の影響を評価し、うつ病の慢性予測不能軽度ストレス(CUMS)マウスモデルに対する強制的なランニング(FR)の抗うつ作用を調査した。Neuropsychobiology誌オンライン版2025年3月11日号の報告。 本研究では、FRまたは従来の広域スペクトル抗うつ薬であるfluoxetine(FLU)による単独または併用療法の潜在的なベネフィットを評価した。実験は、対照マウス、FR+FLUマウス、CUMS、CUMS+FRマウス、CUMS+FLUマウス、CUMS+FR+FLUマウスにより実施した。うつ病様行動の評価には、尾懸垂試験、強制水泳試験、ショ糖嗜好試験を用いた。実験後、海馬のHMGB-1および関連タンパク質、サイトカインレベルを測定した。 主な結果は以下のとおり。・4週間のFRにより、CUMSマウスにおけるうつ病様行動の有意な軽減が認められた。・また、HMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が明らかとなった。・一方、FLUによるうつ病様行動の改善に対する作用は限定的であったが、海馬のHMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が認められた。・FR+FLU併用は、統計学的に有意な抗うつ作用を示し、HMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が認められた。また、FR単独と比較し、反応速度が向上した。 著者らは「FRは、HMGB-1関連の抗炎症反応の調節に対し潜在的なベネフィットをもたらす可能性がある。うつ病のマネジメントや治療において、身体活動の潜在的な役割が明らかとなった」としている。

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StageII/IIIのHR+HER2-乳がんの術後内分泌療法後、リアルワールドでの再発リスクと治療成績

 術後内分泌療法を受けたStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者における再発リスクをリアルワールドで検討した米国・Sarah Cannon Research InstituteのJoyce O'Shaughnessy氏らの後ろ向き研究の結果、リンパ節転移陰性患者も含め、再発リスクが依然として高いままであることが示された。Breast誌2025年6月号に掲載。 本研究では、ConcertAI Patient360データベース(1995年1月~2021年4月)を用いて、手術を受け術後内分泌療法を受けた18歳以上のStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者を後ろ向きに解析した。再発リスクは、改良されたSTEEP基準による無浸潤疾患生存(iDFS)を用いて評価した。サブ解析で、術後内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)を投与された患者とタモキシフェンを投与された患者のiDFS、遠隔無病生存、全生存を評価した。なお、CDK4/6阻害薬については、アベマシクリブが術後補助療法に承認されたのが2021年10月であり、本解析のデータベースのカットオフ日以後のため、投与された患者はいなかった。 主な結果は以下のとおり。・全解析コホート(3,133例)において、iDFSイベントリスクは5年時点で26.1%であり、10年時点で45.0%に上昇した。・StageIIの患者の5年時点および10年時点のiDFSイベントリスクは22.7%および40.5%、StageIIIの患者では40.4%および62.9%であった。また、リンパ節転移陰性患者では22.1%および36.9%、リンパ節転移陽性患者では28.9%および49.4%であった。 ・サブ解析において、NSAI±卵巣機能抑制療法がタモキシフェン±卵巣機能抑制療法に比べてiDFSの改善が認められ(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.69~0.98、p=0.031)、この傾向は閉経状態に関係なくみられた。 著者らは、「このリアルワールドエビデンス研究は、StageIIまたはIIIのHR+HER2-早期乳がん患者の再発リスクが、標準的な術後補助全身療法にもかかわらず、リンパ節転移陰性患者を含めて容認できないほど高いままであることを示しており、この患者集団に対する新たな治療戦略の開発を正当化する」と結論している。

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65歳未満の市中肺炎、GL推奨の短期治療の実施率~日本人約2万5千例の解析

 肺炎診療ガイドライン2024では、市中肺炎治療において、初期治療が有効な場合には1週間以内の短期抗菌薬治療を実施することが弱く推奨されている1)。しかし、その実施率は高くないことが示された。酒井 幹康氏(名城大学/豊田厚生病院)らの研究グループが、65歳未満の成人市中肺炎における短期治療の実施状況について、大規模レセプトデータベースを用いて検討した結果をJournal of Infection and Chemotherapy誌2025年5月号で報告した。 研究グループは、JMDCのレセプトデータベースを用いて、2013~22年に初めて市中肺炎と診断され、抗菌薬治療を開始した18~64歳の患者のデータを抽出した。主要評価項目は治療期間とし、入院患者と外来患者に分けて解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は2万5,572例であり、年齢中央値は入院患者が51歳、外来患者が44歳であった。・1週間以内の短期抗菌薬治療が実施された割合は、入院患者が32%(1,087/3,367例)、外来患者が70%(1万5,614/2万2,205例)であった。10年間の年次推移の範囲は入院患者が31~35%、外来患者が67~72%であり、大きな変動はなかった。・併存疾患のない患者を対象としたサブグループ解析においても、1週間以内の短期抗菌薬治療が実施された割合は、入院患者が32%(403/1,274例)、外来患者が70%(7,089/1万191例)であり、全体集団と同様であった。 本研究結果について、著者らは「とくに入院患者では、治療期間の最適化を進めるため、抗菌薬による治療期間を再検討する必要性があるだろう」とまとめている。

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フィネレノン、CKD有するHFmrEF/HFpEFに有効~3RCT統合解析(FINE-HEART)/日本循環器学会

 心不全患者のほぼ半数が慢性腎臓病(CKD)を合併している。心不全とCKDは、高血圧、肥満、糖尿病といった共通のリスク因子を持ち、とくに左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者ではその関連がより顕著である。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系の活性化、炎症、内皮機能障害、線維化、酸化ストレスといった共通の病態生理学的経路を有する。したがって、心不全患者、とくにHFpEF患者において、腎保護が治療成功の鍵となっている。 心不全とCKDを合併した約1万9,000例の患者におけるフィネレノンの効果を評価するため、3件の大規模無作為化比較試験(RCT)の統合解析「FINE-HEART試験」が実施され、2024年の欧州心臓病学会で発表された。その結果、心不全とCKDを合併した患者において、原因不明死を含めると、フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させることが示され、腎疾患の進行、全死因死亡、心不全による入院などが有意に減少したことが示された。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、富山大学の絹川 弘一郎氏によりアンコール発表された。 本試験では、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノンの効果を検証した以下の3件のRCTのデータが統合された。・FINEARTS-HF試験:2型糖尿病を含む左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)/HFpEF患者6,001例を対象とした試験。・FIDELIO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者5,662例を対象とした腎アウトカム試験(左室駆出率が低下した心不全[HFrEF]患者は除外)。・FIGARO-DKD試験:糖尿病性腎臓病患者7,328例を対象とした心血管アウトカム試験(HFrEF患者は除外)。 FINE-HEART試験の対象者の90%以上が、心不全、CKD、2型糖尿病の1つ以上を有する高リスクCKM(心血管・腎・代謝)背景を持っていた。本試験の主要評価項目は心血管死であり、副次評価項目は複合心血管イベント、心不全による初回入院、全死因死亡などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・FINE-HEART試験は、1万8,991例(平均年齢67±10歳、女性35%)で構成された。参加者の約90%が、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下および/またはアルブミン尿のいずれかを伴うCKD進行リスクが高かった。・心血管死について、プラセボ群と比較して、フィネレノン群は、原因不明死を除くと、心血管死の有意ではない減少と関連していた(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.01、p=0.076)。ただし、原因不明死を含めると、フィネレノン群は心血管死を12%有意に減少させた(HR:0.88、95%CI:0.79~0.98、p=0.025)。・原因不明死を含めた場合の心血管死に対するフィネレノンの効果は、患者のCKM負担の程度かかわらず一貫していた。また、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬といったベースラインの併用薬の有無にかかわらず、フィネレノンの効果は一貫していた。・フィネレノンは、複合腎アウトカム、心不全による初回入院、心血管死または全死因死亡、心房細動の新規発症を有意に減少させた。・HFmrEF/HFpEF患者7,008例(36.9%)を解析した結果、フィネレノン群ではプラセボ群と比較して、心血管死または心不全による入院が有意に減少した(HR:0.87、95%CI:0.78~0.98、p=0.008)。また、心不全による入院(HR:0.84、95%CI:0.74~0.94、p=0.003)、心房細動の新規発症(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97、p=0.030)を有意に減少させた。・フィネレノンは忍容性が良好であり、プラセボ群より重篤な有害事象の発現率が低かった。MRAの性質上、フィネレノン群で高カリウム血症が多くみられたが、高カリウム血症に関連する死亡は認められなかった。低カリウム血症は少なかった。収縮期血圧低下がよくみられ、血圧への影響は今後さらに検討が必要とされている。急性腎障害の増加は認められなかった。 フィネレノンは、CKMリスクを有する患者に対して、心血管・腎アウトカムを改善し、安全性も高い有望な治療選択肢であることが本試験により示された。絹川氏は「フィネレノンは心血管死を12%有意に減少させた。FIDELIO試験とFIGARO試験では、心血管死は有意に減少しなかったため、これはFINE-HEART試験で新たに得られた知見だ。また、FIDELIO試験とFIGARO試験では、フィネレノンによるeGFRの初期低下が観察されたが、これも今後の検討課題となる」と述べた。(ケアネット 古賀 公子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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急性冠症候群のDCB治療後DAPT、段階的漸減レジメンで十分か/BMJ

 薬剤コーティングバルーン(DCB)による治療を受けた急性冠症候群患者では、有害臨床イベントの発生に関して、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を段階的に減薬(de-escalation)するレジメンは12ヵ月間の標準的なDAPTに対し非劣性であることが、中国・Xijing HospitalのChao Gao氏らREC-CAGEFREE II Investigatorsが実施した「REC-CAGEFREE II試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年3月31日号で報告された。中国の無作為化非劣性試験 REC-CAGEFREE II試験は、DCBを受けた急性冠症候群患者において、抗血小板薬療法の強度を弱めることは可能かの評価を目的とする医師主導型の非盲検評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2021年11月~2023年1月に中国の41病院で患者を登録した(Xijing Hospitalの助成を受けた)。 年齢18~80歳で、パクリタキセルを塗布したバルーンによるDCB治療のみを受けた急性冠症候群患者1,948例(平均年齢59.2歳、男性74.9%)を対象とした。被験者を、DAPTを段階的に減薬する群(975例)、または標準的なDAPTを投与する群(973例)に無作為に割り付けた。 段階的DAPT減薬群では、アスピリン+チカグレロル(1ヵ月)を投与後、チカグレロル単剤(5ヵ月)、引き続きアスピリン単剤(6ヵ月)の投与を行った。標準的DAPT群では、アスピリン+チカグレロルを12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、有害臨床イベント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、BARC type 3または5の出血)とした。絶対リスク群間差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が3.2%未満の場合に非劣性と判定した。出血リスクは低い 全体の30.5%が糖尿病で、8.8%が脳卒中の既往、13.2%が心筋梗塞の既往、32.2%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の既往を有しており、20.6%は出血リスクが高かった。治療を受けた病変の60.9%が小血管で、17.8%にステント内再狭窄を認めた。DCBの直径の平均値は2.72(SD 0.49)mmだった。 12ヵ月の時点で、主要エンドポイントである有害臨床イベントは、段階的DAPT減薬群で87例(8.9%)、標準的DAPT群で84例(8.6%)に発現した。発生率の群間差は0.36%(95%CI:-1.75~2.47)で、95%CI上限値は3.2%未満であり、段階的DAPT減薬群の標準的DAPT群に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.01)。 BARC type 3または5の出血の発生は、段階的DAPT減薬群で少なかった(4例[0.4%]vs.16例[1.6%]、群間差:-1.19%[95%CI:-2.07~-0.31]、p=0.008)。また、患者志向型複合エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術)の発生は、両群で同程度だった(84例[8.6%]vs.74例[7.6%]、1.05%[-1.37~3.47]、p=0.396)。階層的な臨床的重要性を考慮したwin ratioが優れる 全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞、BARC type 3出血、血行再建術、BARC type 2出血というあらかじめ定義された階層的複合エンドポイントについて、win ratio(勝利比)法による階層的な臨床的重要性を考慮すると、標準的DAPT群(勝率10.1%)に比べ段階的DAPT減薬群(14.4%)で勝率が有意に高かった(勝利比:1.43[95%CI:1.12~1.83]、p=0.004)。 著者は、「ITT集団では、標準的DAPT群に比べ段階的DAPT減薬群で、患者志向型複合エンドポイントの発生率が1%高く、BARC type 3または5の出血の発生率が1%低かったことから、虚血リスクと出血リスクにはトレードオフが存在する可能性が示唆される」としている。

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高齢者の不眠症に最も効果的な運動は?

 高齢者の不眠症の改善に最も効果的な運動は、レジスタンストレーニング(筋トレ)であるとする論文が発表された。ただし、筋トレだけでなく、有酸素運動などの有効性も確認されたという。マヒドン大学ラマティボディ病院(タイ)のKittiphon Nagaviroj氏らによる研究の結果であり、詳細は「Family Medicine and Community Health」に3月4日掲載された。 加齢とともに睡眠の質が低下する。高齢者の12~20%が不眠症に悩まされているという報告もある。不眠症はうつ病や不安症、その他の精神疾患と関連のあることが明らかになっており、さらにメタボリックシンドロームや高血圧、心臓病などの身体疾患との関連も示されている。 高齢者の不眠症に対する治療としては、安全性の観点から認知行動療法などの非薬物療法が優先されるが、専門スタッフの不足や時間を要することなどのため、実臨床で行われることは少ない。一方、運動が不眠症改善、および不眠症に併存しやすい前記の疾患のリスク抑制に有効であるとするエビデンスが蓄積されてきている。ただし、運動の種類によって不眠症に対する効果が異なるのか否かという点は、これまで明らかにされていない。そこでNagaviroj氏らは、過去の研究報告のデータを統合した解析によりこの点について検討した。 著者らは、Medline、Embase、CINAHLなどの文献データベースに2022年10月までに収載された論文を対象として、60歳以上の成人における運動と睡眠の質との関連を検討したランダム化比較試験の報告を検索。25件の報告を解析対象として抽出した。 これらの研究の参加者数は合計2,170人で平均年齢70.38±4.56歳、女性71.85±21.86%であり、20件(80%)は一般住民対象、5件(20%)は介護施設居住者を対象として実施されていた。アジアでの研究が過半数(56%)を占め、次いで北米と南米が各16%、欧州が12%だった。運動介入期間は平均14週間で、1回に50分強の運動を週に2~3回行っていた。運動の種類は、有酸素運動(速歩、サイクリング、水泳、ダンス、ガーデニングなど)、レジスタンストレーニング(ウェイトや体重を利用した筋トレ)、バランス運動(つま先立ちなど)、柔軟性運動(ヨガ、ピラティスなど)、およびこれらを組み合わせた複合運動として行われており、運動強度は軽度から中等度とした研究が半数以上だった。 複数の異なる介入研究で得られた結果を統計学的手法により比較可能とする、ネットワークメタ解析の結果、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)の改善効果が最も高い運動はレジスタンストレーニングであり、PSQIが5.75点低下していた(PSQIは低い方が睡眠の質が高いことを意味する)。有酸素運動は3.76点、複合運動は2.54点の低下(改善)を示した。 この結果に基づき著者らは、「睡眠の質の改善には運動の中でも特に、レジスタンストレーニングと有酸素運動が有益である」と結論付けている。

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新型コロナパンデミックが園児の発達に影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、園児の発達をさまざまな面で遅らせているとする研究結果が報告された。パンデミック発生後(2021〜2023年)の園児は、パンデミック発生前(2018〜2020年)の園児と比べて、言語・認知発達、社会的コンピテンス、コミュニケーション能力、一般知識の平均スコアが有意に低いことが明らかになったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院社会福祉学分野のJudith Perrigo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に3月10日掲載された。 この研究でPerrigo氏らは、2010年から2023年にかけて米国の園児47万5,740人(平均年齢6歳、男児51.1%)を対象に反復横断パネル研究を実施し、COVID-19パンデミックが園児の発達に与えた影響を調査した。発達状況は、Early Development Instrument(EDI)により、1)身体的健康およびウェルビーイング、2)社会的コンピテンス、3)感情的成熟度、4)言語・認知発達、5)コミュニケーション能力・一般知識の5領域について評価された。 その結果、2018〜2020年のパンデミック前コホート(11万4,359人)と比較して、2021〜2023年のパンデミック後コホート(8万5,827人)では、言語・認知発達(平均変化−0.45、95%信頼区間−0.48~−0.43)、社会的コンピテンス(同−0.03、−0.06~−0.01)、コミュニケーション能力・一般知識(同−0.18、−0.22~−0.15)が有意に低下していた。その一方で、感情的成熟度は有意に上昇していた(同0.05、0.03~0.07)。身体的健康およびウェルビーイングについては、有意な変化は見られなかった。 Perrigo氏らは、「言語と認知発達、コミュニケーション能力・一般知識の領域については特に影響が深刻だった。これはおそらくCOVID-19の公衆衛生対策によって必要となった学校閉鎖とオンラインでの学習環境が原因と考えられる。こうした措置により、子どもが、仲間や保護者ではない大人と日常的に関わる機会も制限された。このことが、本研究で観察された社会的コンピテンスのわずかな低下の説明になるかもしれない」と述べている。 その一方で、パンデミック中に園児の感情的成熟度は高まっていた。この点について研究グループは、「パンデミック中に、COVID-19による死者数、経済的負担、健康不安、ニュース報道などの大人にとってのストレス要因にさらされることが増えたことが、本研究で認められた感情的成熟度の上昇の原因かもしれない」と述べている。 研究グループは、こうしたネガティブな発達の傾向の多くはパンデミックが発生する前から存在していたが、その一部はパンデミック中に低下のペースが減速した」と指摘。「パンデミック発生後、コミュニケーション能力や一般知識、言語・認知発達、身体的健康の変化率は依然として低下しているものの、パンデミック発生前の期間よりも低下率が緩やかになった」と述べる。その上で、「これらの結果は、既存の課題とパンデミックによってもたらされた新たなストレス要因に幼児が対処するための政策の必要性を強調している」と結論付けている。

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