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夜勤は2型糖尿病の管理を難しくする

 2型糖尿病患者にとって、夜勤が疾患管理の支障になっていることを示唆する実態が報告された。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のRachel Gibson氏らが、糖尿病を有する医療従事者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Diabetic Medicine」に2月24日掲載された。 この研究により、糖尿病を有する医療従事者(主に看護師と助産師)では、夜勤中には血糖変動の幅が大きくなることが明らかになった。研究者らは、この原因として、夜勤中には健康的な食事を取ることが難しい点を指摘している。論文の筆頭著者であるGibson氏は、「研究参加者が医療従事者であるにもかかわらず、夜間に健康的な食事を取る環境になく、個別の食事指導を受ける機会もない、というのは驚くべきことだ。彼らは、糖尿病管理のために『健康的な食生活を送るように』と医師からアドバイスを受けていることだろう。しかし夜間の食事の選択肢が限られていると、それを実践できないことがある」と述べている。 この研究は英国の医療従事者37人を対象として、10日間にわたり連続血糖測定器と活動量計を装着して勤務してもらうとともに、食事・睡眠日誌をつけてもらった。研究参加者の主な特徴は、平均年齢48.2±7.2歳、女性89.2%で、BMI33.8±5.8、糖尿病罹病期間5.4±4.1年、自己申告によるHbA1c7.2±3.1%、夜勤を含む勤務歴15.6±11.0年。 解析の結果、夜勤日には血糖変動を示す指標の一部が、夜勤明けの休日よりも有意に大きかった(平均絶対血糖変化量〔mean absolute glucose change;MAG〕はP=0.029)。エネルギー摂取量は夜勤日に最高値を示し(2,199±648kcal)、また甘い菓子類からのエネルギー摂取量の割合が、夜勤日は休日よりも高かった(13.4±12.0対7.8±11.8%〔P=0.013〕)。食事の摂取回数は夜勤日が最多であり、休日は最も少なかった(7.0±2.2対3.4±1.6回〔P<0.001〕)。 研究者らによると、夜勤中にも利用可能な自動販売機や24時間営業のカフェでは、一般的に糖分や脂肪分の多い食品が販売されており、健康的な選択肢はほとんどないという。そしてシフト勤務者の多くは、食事を作り保存しておくという時間の確保が難しく、夜勤時にこのような手軽な食品に頼らざるを得ない状況にあるとのことだ。 この研究ではまた、夜勤日には日勤日や休日よりも覚醒時間が長いことも分かった。具体的には、日勤日の覚醒時間が17.1±1.2時間、休日は15.8±1.3時間であるのに対して、夜勤日は22.2±2.4時間だった(P<0.001)。研究者らは、このような覚醒時間の変動も血糖コントロールに影響を与える可能性があるとしている。 Gibson氏は、「われわれの研究結果は、職業がその人の行動や食生活に、いかに大きな影響を及ぼすかを明らかにしている。それにもかかわらず、多くの臨床医は患者の就労状況をあまり把握していない。2型糖尿病を診る医師は、患者の就労状況を考慮して治療にあたるべきではないか」と述べている。

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尿路感染症治療の新しい迅速抗菌薬検査が登場

 新しい迅速尿検査により、尿路感染症(UTI)の治療がより的確で効果的になる可能性が新たな研究で示された。現状の検査では、個々のUTIに効果的な抗菌薬を特定するまでに2~3日かかるが、新しい検査では約6時間で結果が得られるため、検査当日に適切な抗菌薬を処方できる可能性がある。英レディング大学発のスピンアウト企業であるAstratus Limited社のCEOで、同大学薬学部のOliver Hancox氏らによるこの研究は、「JAC-Antimicrobial Resistance」4月号に掲載された。 Hancox氏は、「現行の検査方法では、結果が届く頃には患者がすでに抗菌薬の服用を終えていたり、効果のない薬を処方されていたりすることがあった。検査当日に適切な抗菌薬を医師に伝えることができれば、患者はより早く適切な治療を受けることができる。その結果、耐性菌の発生リスクや、感染症が重篤な敗血症へ進行するリスクを低減できる」とニュースリリースで説明している。 現行の検査では、尿サンプルを一晩培養して細菌を識別可能なレベルまで増殖させる必要がある。一方、新しい検査(Rapid Microcapillary Direct-from-Urine Antibiotic Susceptibility Testing;RMD AST)では、あらかじめ複数の抗菌薬が入った細いチューブ状のカートリッジを使用する。このカートリッジを直接尿サンプルに浸して機器に設置し、光学イメージングにより、それぞれの管の中で細菌が増殖するかどうかを6時間追跡する。細菌の増殖が抑えられればその抗菌薬は有効、増殖すれば無効と判断される。 Hancox氏らは今回、この新しい検査の精度を確認するために、UTIが疑われる患者から採取した352件の尿サンプルの残余を用いて解析した。評価対象の抗菌薬は、UTIの第一選択薬として用いられるアンピシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、トリメトプリム、ニトロフラントイン、シプロフロキサシン、セファレキシン、セフォキシチンの7種類であった。 その結果、細菌と抗菌薬の組み合わせに対するRMD ASTと従来の検査法との一致率は96.95%で(572/590)あることが示された。RMD ASTの結果が得られるまでの時間は、平均5.85時間だった。さらに、尿サンプルに防腐・保存剤として用いられることのあるホウ酸がRMD ASTに及ぼす影響を検討するため、サンプルをホウ酸の有無で分けて直接比較した。その結果、ホウ酸の有無にかかわらず一致率は98.75%であった。 今回の研究には関与していない英サウサンプトン大学のMatthew Inada-Kim氏は、「UTIは抗菌薬が必要となる一般的な疾患であり、最初から適切な治療を行うことは、患者にとって大きなメリットになる。通常の診療の中で採取されている検体をそのまま利用でき、かつ同日に結果が得られる検査は、実臨床における感染症管理を大きく変える可能性がある」と述べている。 Astratus Limited社は、2024年11月に本検査を開発した研究グループにより設立され、現在、この検査の市場投入に向けた取り組みが進められている。本研究は、英国政府の資金提供を受けて実施された。

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キネシオテーピングの効果に疑問符

 トップアスリートが脚や腕、肩に鮮やかな色のテープを貼った状態でスタートラインに立つ姿をよく見かける。このキネシオテープは、筋肉や関節の痛みを和らげ、可動域を広げることを目的として利用される。しかし、南方医科大学リハビリテーション医学院(中国)のXiaoyan Zheng氏らによる新たなレビューによると、キネシオテーピングの効果は限定的であり、得られる作用は主に、テープの効果を信じることに起因するプラセボ効果である可能性があるという。Zheng氏らは、「筋骨格系疾患に対するキネシオテーピングの臨床的な効果については、追跡期間の長さにかかわりなく、現時点のエビデンスは極めて不確実である」と結論付けている。詳細は、「BMJ Evidence Based Medicine」に3月31日掲載された。 研究グループによると、1970年代に登場したキネシオテーピングは、痛みのある関節や筋肉にキネシオテープを貼ることで、皮膚が持ち上げられて神経を刺激し、局所の血行が促進されて、痛みが軽減し機能が改善すると考えられてきた。しかし、近年の臨床試験では一貫した結果が示されていないという。 研究グループは今回、その全体像を把握するため、これまでに報告されているキネシオテーピングに関する128件のシステマティックレビューのデータを統合して解析した。これらのレビューに組み入れられた臨床試験の数は310件で、参加者数は1万5,812人であった。レビューの多くは、キネシオテーピングの脚や足に対する有用性(45%)、あるいは痛みの強さ(89%)に着目したものであった。 その結果、キネシオテーピングは即時的および短期的に痛みの強度を軽減し、また、即時的に機能を改善する可能性が示唆された。しかし、これらのエビデンスの確実性は極めて低かった。中期的な痛み、短期・中期的な機能、および全ての追跡時点における筋力、関節可動域、疾患特異的症状については、ほとんど、あるいは全く効果が認められなかった。 研究グループは、キネシオテーピングが一部の人々にもたらしている作用は、脳が身体にテープが有効であると錯覚させるプラセボ効果によるものである可能性があるとの見解を示している。また、筋肉や関節の障害のタイプが異なるさまざまな集団でキネシオテーピングの効果に違いがある可能性も考えられると研究グループは述べている。 さらに、テープをどの程度の強さで貼れば最大の効果が得られるのかに関しても疑問が残っていると、今回のレビューは指摘している。研究グループは、「これまでのエビデンスでは、テンション(張力)なし、あるいは高いテンション(75%)よりも、低いテンション(25%)の方が痛みの軽減には適している可能性が示唆されている。しかし、臨床では、専門家の約75%が50%以上のテンションでキネシオテーピングを使用しており、そのことが効果に影響している可能性がある」と説明している。 本研究には関与していないDonald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのAmy West氏は、「一般的に、可能な範囲で関節周囲の筋肉を強化することの方が、装具やテープのような身体の外側に装着するものに頼るよりも、関節の安定化には有効だ。こうしたものに依存してしまう可能性があるからだ」と述べ、キネシオテーピングより理学療法の方がより有益である可能性があると指摘している。また、腫れや痛みがある場合には、血行を改善することが示されている着圧ソックスや着圧スリーブの方が効果的な場合もあると同氏は付け加えている。

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縦隔腫瘍・重症筋無力症の手術、主流は「低侵襲」へ――全国データ解析

 胸の中央の空間である縦隔に生じる腫瘍(縦隔腫瘍)の手術は、従来は胸を大きく開く開胸手術が主流だった。近年は胸腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術の導入が進んでいるが、日本全体での実態は十分に明らかでなかった。今回、全国の医療保険データを解析した研究で、縦隔手術の多くが胸腔鏡で行われ、ロボット手術も増加していることが示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学呼吸器外科学の岡田悟氏らによるもので、詳細は2月20日付で「International Journal of Clinical Oncology」に掲載された。 胸腺上皮性腫瘍は発生頻度が低いものの、前縦隔に生じる腫瘍の中で最も多い。標準治療は外科切除であり、近年は胸腔鏡やロボット支援手術など低侵襲手術の導入が進んでいる。また、胸腺摘出術が行われる代表的疾患である重症筋無力症(MG)でも同様の手術手技の変化が報告されている。しかし、日本では縦隔手術の全国的な動向は十分に明らかでない。そこで本研究は、全国の医療保険データベースを用いて過去10年間の縦隔腫瘍手術の推移を解析した。 本研究では、日本の保険診療におけるレセプトデータの95%以上を網羅する厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)の公開集計データを用い、2014~2023年に行われた縦隔手術を解析した。手術は疾患区分(良性腫瘍、悪性腫瘍、MG)と手術アプローチ(開胸、胸腔鏡、ロボット支援手術)で分類し、10万人年当たりの手術率を算出した。10年間の経年推移については、手術件数を線形回帰分析、手術率をポアソン回帰分析で評価した。手術率は男性・女性・男女全体に加えて、10歳ごとの各年代についての解析も実施した。年齢調整は2015年標準人口を用いて行った。 2023年に日本で行われた縦隔手術は全6,214件で、内訳は良性腫瘍54.4%、悪性腫瘍41.6%、MG 4.0%だった。手術アプローチでは、胸腔鏡手術が全体の76.4%を占め、ロボット支援手術は全体の29.4%だった。これは胸腔鏡手術の約4割がロボット支援下で行われていた計算になる。一方で、開胸手術は23.6%にとどまった。手術患者の45.1%は65歳以上だった。 過去10年間で、全縦隔腫瘍手術の件数は有意に増加した(P=0.0001)。この増加は、悪性腫瘍手術、胸腔鏡手術、ロボット支援手術件数の増加によるもので、いずれも有意な上昇を示した(いずれもP<0.0001)。一方、MGに対する拡大胸腺摘出術と開胸手術件数は有意に減少していた(それぞれP=0.0019、P<0.0001)。良性腫瘍手術件数には有意な増減を認めなかった。 手術率では、特に悪性縦隔腫瘍に対する手術率が男女ともに増加しており、相対リスクは男性1.051、女性1.065、全体で1.058だった(いずれもP<0.0001)。年代別の解析では、40歳以上の男女で有意に増加していた(P<0.0024)。 著者らは、「日本では過去10年間で悪性縦隔腫瘍に対する手術が増加しており、手術アプローチは開胸から胸腔鏡やロボットなどの低侵襲手術へと大きく移行している」とまとめている。こうした結果は、今後の医療資源配分や外科医育成などを検討する上で参考となる。 なお、本研究は保険請求データに基づく解析であり、腫瘍の組織型や病期などの臨床情報は把握できず、非手術症例も含まれない。また、MGに対する拡大胸腺摘出術の件数が過小評価されている可能性もある。

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肝硬変患者の肝性脳症リスク、フレイル評価で予測可能か

 肝硬変では、肝臓の機能低下に伴い意識障害や認知機能低下を来す「肝性脳症」が生じ、患者の生活の質や予後に大きく影響することが知られている。今回、肝硬変患者を対象とした研究で、簡便なフレイル評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)が、不顕性および顕性肝性脳症の発症リスクの層別化に有用である可能性が示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は2月26日付で「JGH Open」に掲載された。 不顕性肝性脳症(CHE)は肝硬変患者の約40%に認められ、転倒や事故、死亡リスクの増加などと関連することが知られている。CHEが顕性肝性脳症(OHE)へ進行すると、入院の増加や社会生活への影響など患者や家族に与える負担は大きい。しかしCHEの診断には神経心理検査が必要で、時間や専門人材を要するため臨床現場での実施には限界がある。近年、肝硬変患者ではフレイルが入院や死亡など不良転帰と関連することが報告されている。そこで本研究では、CFSによるフレイル評価が、CHEおよびOHE発症リスクの層別化に有用かを検討した。 本研究は、岐阜大学医学部附属病院に入院した肝硬変患者を対象とした後ろ向き観察研究である。OHEの既往がない18~79歳の患者のうち、2004年3月~2023年12月にCHEの評価を受けた症例を解析対象とした。フレイルはCFSを用いて評価し、CFS5以上をフレイルと定義した。CHEは神経心理学的検査により診断し、OHEはWest Haven基準に基づく臨床評価で判定した。CHEとの関連因子はロジスティック回帰分析で検討した。さらに、死亡を競合リスクとして考慮したFine―Gray競合リスク回帰モデルを用いてOHE発症との関連を解析した。 解析対象は262例で、年齢中央値は65歳(四分位範囲55~74歳)、女性は154例(58.8%)だった。フレイルは25例(9.5%)、CHEは82例(31.3%)に認められた。CHEの有病率は、フレイルあり群でフレイルなし群より有意に高かった(84.0% vs 25.7%、P<0.001)。 追跡期間中央値2.8年の間に、40例(15.3%)がOHEを発症し、20例(7.6%)が死亡した。コホート全体でのOHE累積発症率は1年7%、3年13%、5年20%だった。OHEの発症率はフレイルあり群で高く、1年、3年、5年時点の累積発症率はそれぞれ25%、33%、36%で、フレイルなし群(5%、11%、18%)より有意に高かった(P=0.009)。 年齢や肝機能指標などを調整した多変量解析では、CFSがCHEの存在(オッズ比2.13、95%信頼区間1.41~3.37、P<0.001)およびOHE発症(サブディストリビューションハザード比1.38、95%信頼区間1.02~1.87、P=0.037)の独立した関連因子であることが示された。 本研究の結果から、肝硬変患者ではフレイルを有する場合、CHEの有病率とOHEの発症率が高く、CFSがそれらの独立した関連因子であることが示された。筆者らは、「フレイル評価は肝硬変患者における肝性脳症リスクの層別化に有用である可能性があり、臨床現場でのフレイル評価の重要性を示唆する」と述べている。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究である点や、対象患者の病因分布が一般集団と異なる可能性がある点が挙げられ、結果の一般化には注意が必要である。

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胆石が「肺」にあった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第305回

胆石が「肺」にあった1例右肺下葉に4cmの腫瘤。造影CTでは不均一な濃度の充実性病変で、石灰化あり、胸膜陥入像あり。――さて、この画像を見せられたら、皆さんは何を考えますか? 肺がんや結核などを考えますよね。実は、「胆石」でした。…ふぁっ!?Zhang Q, et al. Gallstone ectopia in the lungs: case report and literature review. Int J Clin Exp Med. 2014 Nov 15;7(11):4530-4533.主人公は57歳の男性です。5ヵ月前に肝内胆管結石に対して結石除去術と肝部分切除術を受けています。術前の胸部X線・CTでは肺に異常なし。ここまでは何も問題ありませんよね。ところが術後4ヵ月頃から、これといったきっかけもなく咳と血痰が出てきました。白い痰が少量、発作的な右胸の痛みもある。ただ、発熱や盗汗といった全身症状はありません。造影胸部CTを撮影してみると、右肺下葉の前肺底区に44mm×40mmの腫瘤が見つかりました。内部に散在する石灰化、辺縁のスピキュラ、胸膜陥入像。かなり悪性っぽい見た目です。縦隔リンパ節腫大や胸水はなし。臨床診断は「過誤腫疑い、肺がんも否定できず」といったところです。手術で開胸してみると、腫瘤は約4cm×4cm、硬くて境界は明瞭。ここまでは想定の範囲内です。ただ、気になる所見がありました。肺の横隔膜面と横隔膜の筋肉が癒着していて、見た目が黒っぽいのです。病理の結果は…、「胆石の肺内迷入」。線維性結合組織の増生に炎症細胞浸潤、多核巨細胞反応を伴っていました。要するに、胆石がお腹から肺に入り込んで、異物反応で肺に肉芽腫を作っていた、というわけです。ちょ、ちょっと待って、どこからどうやって胆石が肺に入るの?仮説はこうです。肝内胆管結石の手術中に、結石が腹腔内にこぼれ落ちる。こぼれた石は横隔膜の下に溜まる。その後、横隔膜の薄いところ(diaphragmatic weakness)をすり抜けて胸腔に入り、最終的に肺の中にたどり着いて、被包化された炎症性腫瘤になる。ふむふむ。この論文では、1975年から2014年までに報告された計15例(本症例含む)のレビューも行っています。え、そんなに既報があるの? レビューによると、胆石手術(または胆石発見)から肺の腫瘤が見つかるまでの期間は平均12.5ヵ月。最長では60ヵ月(5年!)というケースもあったそうです。割とタイムラグがあるので、手術との関連が見落とされやすいようです。印象的なのが、全例右肺に発生しているという点です。肝臓の直上には右横隔膜があるので、こぼれた石は右横隔膜下に集まりやすく、横隔膜を越えたら右肺下葉に到達するのが最短ルートです。大事なポイントは、胆石手術中にこぼれた石をできる限り回収することだそうです。

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ボリコナゾールによる皮膚障害【1分間で学べる感染症】第40回

画像を拡大するTake home messageボリコナゾールによる副作用としては肝障害や幻視が知られているが、皮膚障害も重要である。光線過敏症や重症皮膚副作用に加え、長期使用では皮膚悪性腫瘍のリスクも報告されており、皮膚症状の早期発見と長期モニタリングが重要である。ボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症などの治療において中心的役割を担う抗真菌薬ですが、肝障害、幻視を中心とした眼科的副作用はよく知られています。今回は一歩踏み込んで、もう1つの重要な副作用である「皮膚障害」について学習しましょう。光線過敏症(Photosensitivity)ボリコナゾールの皮膚副作用で最もよく知られているのが光線過敏症です。発症機序は完全には解明されていませんが、投与量や投与期間に関連する可能性が指摘されています。とくに高用量使用、小児、メトトレキサート併用などがリスク因子とされています。発症時期は幅広く、1週間程度の早期から数年後までの報告があります。臨床的には日光曝露部位の紅斑、色素沈着、光線角化症様の病変として現れることがあり、遮光対策や皮膚科的フォローが重要です。重症薬疹(TEN、DRESS)まれではあるものの、TEN(中毒性表皮壊死症)やDRESS症候群などの重症薬疹が報告されています。これらはT細胞を介した免疫学的反応と考えられており、用量とは関連しないとされています。通常は投与開始1~8週間以内に発症しますが、再投与では1~4日で急速に再発することがあるため、注意が必要です。疑われた場合には速やかな薬剤中止と専門的治療が必要となります。皮膚悪性腫瘍(悪性メラノーマ、扁平上皮がん)長期使用において最も重要な副作用として、皮膚悪性腫瘍が挙げられます。とくに扁平上皮がんの発症リスクが高いことが報告されており、悪性メラノーマも重要です。平均発症期間は約3年とされています。リスク因子としては、高用量、長期使用、免疫抑制状態(とくに移植患者)、薬物代謝の個人差などが挙げられます。臨床では、光線角化症から扁平上皮がんへ進展するケースもあるため、長期投与患者では定期的な皮膚診察が推奨されます。ボリコナゾールは重篤な真菌感染症の治療に不可欠な薬剤ですが、皮膚関連副作用は多様であり、とくに長期治療では注意が必要です。投与前には光線過敏症の可能性を患者に説明し、長期使用例では皮膚病変の定期的な観察を行うことが重要です。また、新たな皮疹や皮膚変化を認めた場合には、早期に評価を行い、必要に応じてほかの抗真菌薬への変更も検討することが重要です。1)Voriconazole/UpToDate2)Williams K, et al. Clin Infect Dis. 2014;58:997-1002.3)Levine MT, et al. Clin Transplant. 2016;30:1377-1386.4)Tang H, et al. J Am Acad Dermatol. 2019;80:500-507.e10.

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最初で最大の関門!日本人がアメリカでレジデントになるには?【臨床留学通信 from Boston】第23回

最初で最大の関門!日本人がアメリカでレジデントになるには?今回は、米国のマッチングシステムについてお話しします。日本人が米国で臨床留学に挑戦する際、まず初めに、米国のマッチングシステムに乗ってアプライしなければなりません。米国医科大学協会(AAMC)が運営するElectronic Residency Application Service(ERAS)というウェブサイトに自分の情報を登録するところから始まります。フェローシップは時期をずらして行われますが、レジデンシー(臨床研修)のカリキュラムの多くは、9月にERASでの申し込みを開始し、11~1月に面接、そして3月に結果が出るという仕組みです。その結果を基に、7月から実際に働き始めることになります。最終的には病院から面接に招待されないことには話になりません。いくつかの病院で面接を受けた後、気に入った順にランクを付けていき、National Resident Matching Program(NRMP)というサイトでマッチングを行うプロセスは、日本の研修医システムと同じです。とにもかくにも、日本人が米国臨床留学するうえで最大のハードルは、この「レジデンシーに入り込むこと」にあります。言語の壁はもちろん、“US experience”と呼ばれるアメリカでの経験値も問われます。病院見学ならまだしも、リサーチフェローなどは若いうちから誰もが金銭的に工面できるわけではありません(その点、海軍病院での勤務が経験としてカウントされるのは大きな強みです)。さらに、現地の医師からの強力な推薦状も勝ち取らなければなりません。これらは日本にいるだけでは非常に困難で、USMLE(米国医師国家試験)の高得点はまず絶対条件となります。それに加えて、early careerとはいえ、ある程度の研究業績が大きな手助けとなります。逆に言えば、一度レジデンシーに入ってしまえば、フェローシップに進むのはさほど難しくありません。アメリカで真面目に働き、英語に慣れていけば、ほとんどの場合は希望の道へ進むことができます。さて、私と一緒に研究をしていた日本人医師2人が、この3月に見事にマッチングを勝ち取りました。以前お話しした「Nプログラム」を経由せず、1人は「I6」と呼ばれる胸部外科のプログラム、もう1人は内科のレジデンシープログラムにマッチしました。ここに至るまでには相当な努力が必要であったと思います。2人から報告の連絡が届いたときには、こちらも感無量となりました。まさに“Your success is my success”です。20年の医師人生を振り返れば、全体の折り返し地点に近づいてきましたが(自分ではまだそこまで達していないと思いたいところですが)、「人を残すは一流」を目指して、これからも頑張っていきたいと思います。

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第311回 国際学会への日本人の現地参加が低迷!その課題解決法や意義を権威に聞く

INDEX日本人医師の国際学会参加状況に対する印象何が参加の大きなハードルか若手医師に立ちはだかる資金的ハードル学会参加の時間捻出が難しい?発表論文を読めばいいのでは?オンライン参加の利便性国際学会といえばASCO?コロナ禍を機に全世界的に広がったのがオンライン文化だ。すでに国内外の各種学会もオンラインを併用したハイブリッド開催が標準となりつつあると言ってもいい。もっとも私個人は国内の学会取材は、リアル参加を基本としている。理由は2つある。1つは国内学会の場合、一般演題のオンライン配信はしていないが、個人的に一般演題もネタの宝庫だと考えているからだ。2つ目はやはり“リアル”は私という人間を覚えてもらえるよい機会だからだ。組織の大きな看板を背負っていない私にとって、この点は欠かせない。オンライン取材をする機会もあるが、それだとなかなかこちらを覚えてもらえない。これはコロナ禍が明けてから、とくに実感している。コロナ禍中に複数回オンライン取材をした医師に、その後ようやくリアルの学会で初めてあいさつした際にも、当時の取材内容を改めて話し、ようやく相手は「ああ、あの時の」と思い出してくれた。それだけオンラインには見えない壁があるのだと感じたものだ。一方で、国際学会でオンライン参加が可能になったことは、非常にありがたみを感じている。おかげで何度か日本にいながら国際学会の取材をすることもできた。しかしこの場合、日本の深夜早朝に取材するプログラムがぶち当たり、何回か徹夜をしいられたこともあった。さてそんな中、オンラインも含め「日本の医師・研究者の国際学会参加が減っている」という話を耳にした。実際はどうなのか? 国際学会の参加経験が豊富な吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 副院長/日本治療学会 理事長/日本臨床腫瘍学会 理事長)に話を聞いてみた。―日本の医師・研究者の国際学会参加状況について、吉野先生の印象はいかがでしょう?少なくとも私が知っているがん周辺の国際学会に出向く日本人は減少し、オンライン参加を選択している人が多い印象があります。ただ、実際に米国臨床腫瘍学会(ASCO)の役員などとのビジネス会合でも「日本からの参加者は減っている」「参加する日本人はリピーターで、とくに若い参加者が少ない」と言われています。それゆえ私が持っている印象は、それなりに事実に近いとは思っています。―日本人が国際学会に参加するうえで何が大きなハードルになっているとお考えですか?まずは渡航費の問題です。アメリカは残念ながら日本よりは治安は不安定なので、会場へのアクセスも良く治安も良好な宿泊先は、日本円で1泊7~8万円は珍しくありません。また、現在は世界的物価高ですから、国際学会にフル日程で参加するならば1回の渡航で100万円近い出費を迫られることもあります。こうなると若い医師・研究者はもちろん、年配の医師・研究者でさえも渡航をためらい、所属施設も及び腰になります。一方で、「行く意義」がわかってない人も結構いると思っています。―その「行く意義」を具体的に教えてください学会を“最新のエビデンスを知る場”と考えるならば、オンラインでもよいかとは思います。しかし、リアルの学会では「発表者と対面で話すチャンスがある」ことが極めて重要です。対面で話すと言っても、単に「今日の発表すごかったですね」「いえいえ、どうも」というのではなく、相手が今まさに取り組んでいることを聞けるチャンスがある。端的に言えば、研究はモノによっては計画から発表まで5年を要することもよくあります。学会発表を聞くというのは、悪く言えば5年前の話を聞いているのと同じです。裏を返せば、もし学会の場で発表者に「今、どんな研究をしている?」という話をリアルに聞ければ、5年後の世界のトレンドが予測できます。世界に伍していく研究をするためには、カッティング・エッジ(最先端)の人が今現在行っている研究を知る必要があります。この情報は現地に行かねば得にくいものです。若い人たちにはイメージが湧かないかもしれませんが…。―若手医師にとっては国際学会参加の資金的なハードルは小さくありません私自身は日本治療学会(JSCO)の理事長を拝命していますが、同学会では国際学会への参加を希望する若手会員医師*にトラベルグラント(国際渡航助成金)の応募枠拡充と支給金額の引き上げに取り組んできました。また、JSCOではASCO参加後、3日~1週間程度、アメリカの有名な研究施設・病院をASCOの紹介で訪問し、先方のシニアにホストしてもらってメンター関係を築くフェローシップ・プログラムにも取り組んでいます。3月末からは日本臨床腫瘍学会の理事長にも就任しましたので、こちらでも同様のことを行っていきたいと考えています。こうした活動を通じ、国際学会への参加意義を実感できる若手を養成していきたいですね。また、本音を言えばこうした仕組みを拡充するためにはCOI(利益相反)に抵触しない範囲で、産業界にも手を貸していただきたいです。国際的人材がいることは、学会・産業界の双方にとってWin-Winの関係が築けますから。*応募時で、男性会員は45歳以下、女性会員は50歳以下であること―資金的な課題がクリアできたとしても、がん専門病院以外では若手医師が国際学会参加の時間を作ることが難しい現実もあります。確かにそうでしょう。市中病院に勤務するがん専門医になると、がん以外にも多彩な疾患の診療に従事し、医師数も少ないので国際学会に参加したい医師の代わりが手当てできないことが多いでしょうね。ただ、一定規模以上の病院ならば、病院長などの上層部が若手医師を順番で国際学会に参加させることは病院の将来のためにも重要だと思います。また、参加を希望する医師も何とか頑張って演題を通して参加の大義を作ってほしいものです。こういう話は夢物語のように聞こえるかもしれませんが、できる機運を高めないと、今の医療界に漂う閉塞感は消えないとすら考えています。―最新の研究は国際学会に参加しなくとも、発表された論文を読めばよいという方もいますよね?昔、ハーバード大学のある教授が一部の留学者を指して「あいつらはダメ。日本人はとくにダメだ。私の論文を私の前で読んでいる。それよりもなぜ私に直接聞かない? 論文に書ききれなかった行間の情報は時に論文そのものよりも重要だ」と言っていたと聞いたことがありますが、まったく同感です。論文で理解したと思っている人は真の意味で理解していないことがあります。実際に論文の筆頭著者と話すと、「ここはこう書いたんだけど、実は…」というのはよくあります。論文を書いたことがある人なら納得するのではないでしょうか。論文内で書ききれていない部分を知るためには、執筆者と話すのがベストだと思いますよ。―よくわかります。私たち取材者も諸事情で文字にはできないものの、取材中に聞いた裏話で腹落ちすることはよくあります。もっとも学会に関して言えば、オンラインでも参加可能という利便性の変化も見逃せません。私見を言えば、オンライン参加はどうしてもリアル参加が無理な際の手段というのが基本的な発想です。現在では対面だけでなく、オンライン会議を通じても共同研究に繋がることはあると思いますが、対面で議論したほうが共同研究に繋がりやすいと思いませんか? たとえば日米共同研究を行う場合、オンラインだけですべてが可能というケースはきわめて少ないものです。企業から費用が支出される研究となれば、もはや対面なしに成立はしません。そうした研究では支出金額が億単位もよくあることですよね。それをオンラインで顔を見知っている程度の人に支出するでしょうか? 対面で会い、人となりも理解したうえで成立するものです。やや極端な言い方をすれば、対面なしのオンラインのみは、いつまでもエンドユーザーに留まるだけです。もちろんエンドユーザーとして生きていくならば、それでも構いませんが。世界的に活躍しようと思う医師や研究者にとって、やはり対面は重要です。―たとえば、先生がご専門のがん領域の場合、国際学会となると、やはりASCOが第一候補に挙がるのでしょうね?まさにASCOの場合は、参加者は数万人規模で、明日からの治療に影響を及ぼす発表が行われます。「これだけの結果が出ているならば、明日からこの治療を患者さんに届けなきゃいけない」と思わされる最新の研究が数多く発表されます。いわゆる「プラクティス・チェンジング」、一般用語で言えば「ゲーム・チェンジング」に値するデータが発表されます。その意味では極めてエキサイティングな学会といえます。―それ以外で言うと、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)なども注目すべき学会ですか?ESMOももちろんそうですが、地味ながらも私はASCOが主催するアジア太平洋地域を中心にした国際腫瘍学会議「ASCO Breakthrough」も注目に値すると考えています。ASCO Breakthroughは、リキッドバイオプシーや、今ならば生成AIなど最新のテクノロジー活用に関するエビデンスやそれが今後どのように展開していくか、あるいは胃がんや子宮頸がんなどアジアに特徴的で欧米では研究が進みにくいがんの治療法開発などが議論される場と私は理解しています。また、アジア圏は国ごとの所得格差に基づく治療のアクセス格差があり、その解消に関する議論も行われたりします。私なりにASCOの年次総会との違いを表現すると、先ほど話したようにASCO年次総会は「明日の治療の変革」が主となる発表に対し、ASCO Breakthroughは「未来の臨床がどのように変革されるか」という視点の発表が多いですね。今回は6月末にシンガポールで開催予定ですが、たとえば生成AIに関しては、がん領域の診断・治療への生かし方、生身の医師とAIの最適なフュージョンに関する議論や医師のみとAIを組み合わせた時の診断・治療のアウトカム比較などが発表されると聞いています。それ以外には術後再発を高精度に予測するリキッドバイオプシーのセッションも予定されていて、このセッションは私も注目しています。未来志向の臨床に着目して最先端の研究を目指す医師や研究者にとっては必須の学会だと思っています。参考1)日本治療学会:ASCO学術集会およびASCO Breakthrough発表者ためのTravel Grant Awardに関するご案内(4/15追記)

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HR+/HER2-乳がん、早期および晩期再発の関連因子は

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんのリアルワールドコホートにおいて、早期(5年未満)および晩期(5~10年)再発の関連因子を特定することを目的とした後ろ向き研究の結果、臨床的に低リスクに分類される患者であっても晩期再発が生じる可能性がある一方、早期再発は高い腫瘍量および増殖活性を反映することが示唆された。チリ・Pontificia Universidad Catolica de ChileのBenjamin Walbaum氏らによるBMC Cancer誌オンライン版2026年4月10日号掲載の報告より。. 本研究では、1981~2022年に診断されたStageI~IIIのHR+/HER2-乳がん症例について、後ろ向き解析を実施した。無浸潤疾患生存(iDFS)率がSTEEP 2.0基準に従い評価され、評価変数には転移部位や早期および晩期の浸潤性再発が含まれた。早期再発は診断後6~<60ヵ月に発生した浸潤性再発、晩期再発は≧60~<120ヵ月に発生した浸潤性再発と定義された。 主な結果は以下のとおり。・計4,367例のHR+/HER2-乳がんの女性患者が解析に組み入れられた。・81.2%がStageI/IIであり、41.4%にリンパ節転移が認められた。また、42.0%が術前化学療法を、94.0%が術後内分泌療法を受けていた。・5年および10年iDFS率は、それぞれ85.0%および70.0%であった。・847件の浸潤性イベント(19.4%)のうち、54.3%が早期再発であり、45.7%が晩期再発であった。・晩期再発例と比較して早期再発例では、StageI腫瘍の割合が低く、リンパ節転移の割合と組織学的グレードが高く、Ki-67高値と関連していた。・多変量解析において、より進行した病期が早期再発および晩期再発の双方に関連する唯一の独立した因子であった。また、高齢であることは晩期再発と関連していた。・再発例の70.2%で遠隔転移が認められ、高腫瘍量、グレード3、Ki-67高値と関連していた。また、47.5%で内臓転移が認められた。

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低用量アスピリン併用は統合失調症や双極症治療の切り札となるか

 精神疾患の病態生理学的メカニズムに、炎症が関与している可能性を示唆する膨大なデータが存在する。低用量アスピリンが向精神薬の治療効果を高める可能性が示唆されている。イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのLior Stern氏らは、双極症、統合失調症、統合失調感情障害患者において、向精神薬と低用量アスピリンの併用レジメンの安定性およびその他の治療効果と関連しているかどうかを検討した。Pharmaceuticals誌2026年3月8日号の報告。 本レトロスペクティブ研究では、イスラエルのClalit Health Services' Southern Districtのデータベースより、2017〜19年に治療を行った1,924例の患者データを分析した。低用量アスピリンと向精神薬の併用療法で治療されたLDA群、向精神薬のみで治療された対照群での比較を行った。研究アウトカムは、自殺企図および薬物療法に関連する有害事象(向精神薬の増量、増強、変更)とした。 主な結果は以下のとおり。・LDA群は137例(男性の割合:55%、年齢:63.3±12.3歳)、対照群は1,787例(男性の割合:60%、年齢:47±16.9歳)。・ほぼすべてのアウトカムにおいて、統計学的に有意な差が認められ、LDA群において良好な結果が示された。・LDA群は、薬剤投与量の増加率が低く(40例[29%]vs.726例[40.5%]、p=0.01)、向精神薬の変更および/または追加も少なかった(37例[26.9%]vs.778例[43.5%]、p<0.001)。また、有意差は認められなかったものの、自殺企図率も低かった(0例[0%]vs.16例[0.9%]、p=0.53)。 著者らは「全体として、低用量アスピリン併用療法は、双極症、統合失調症、統合失調感情障害患者において、より良好な臨床転帰と関連していた。向精神薬と低用量アスピリンの併用療法の治療効果を検証するためには、大規模な疫学調査およびプロスペクティブランダム化臨床試験によるフォローアップ調査が求められる」としている。

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タルラタマブが小細胞肺がん2次治療に加わる意義/アムジェン

 2026年3月、タルラタマブ(商品名:イムデトラ)が小細胞肺がん(SCLC)の2次治療に承認された。アムジェンが主催したメディアセミナーでは、関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座の倉田 宝保氏と肺がん患者会のワンステップの長谷川 一男氏が登壇。医師と患者の立場から、新たな展開の意義を語った。小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の導入 SCLCは肺がんの10〜15%を占める。喫煙との関連が高く、病勢進行も速い。進行の速さに加え、喫煙歴のある患者が多いため、咳や痰などの症状がSCLCによるものなのか、その鑑別は容易ではない。発見時には片肺にとどまっている限局性であっても、もう一方の肺に浸潤した進展型となっていることがほとんどだ。 1960年代、SCLCの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。しかし、予後は不良で、1981年当時の生存期間中央値(MST)は、限局型が14ヵ月、進展型では7ヵ月にとどまっていた。その後、同時化学放射線療法(シスプラチン+エトポシド+放射線)により限局型のMSTは27.3ヵ月に、シスプラチン+イリノテカン療法により進展型のMSTは12.8ヵ月に延びるが、それ以降、近年まで成績は向上しなかった。 そのような中、SCLCにも免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が導入された。ICIは腫瘍変異量が多い腫瘍に有効性が高い。喫煙との関連が深いため腫瘍変異量が多いSCLCではICIの効果が期待されていた。 しかし、SCLCにおけるICIの効果は限定的であった。進展型SCLCの1次治療でICIを化学療法に上乗せしても、5年生存率の改善は10〜12%にとどまる。理由の1つにSCLCがCold tumorであることもあげられている。SCLCでは、T細胞受容体およびT細胞ががん細胞を認識するMHCクラスIの発現が低く、PD-L1発現も低い。さらに、腫瘍へのリンパ球浸潤が少ないことが明らかになっている。 十分とは言えなくとも選択肢が増えた1次治療に比べ、2次治療以降はさらに深刻な状況である。日本におけるSCLC2次治療の標準療法であるアムルビシン単剤のMSTは6〜9ヵ月程度にとどまる。そのような状態にもかかわらず、アムルビシン承認以降、約20年にわたって2次治療に新規薬剤は登場しなかった。タルラタマブによる課題の克服と2次治療への導入 こうした課題を背景に、タルラタマブが登場した。タルラタマブはSCLC細胞に高発現するDLL3とT細胞表面のCD3に結合する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。 タルラタマブはDLL3を介してT細胞をがん細胞に近接させ、T細胞を活性化・増殖させるとともに、炎症性サイトカインなどの放出を誘発してがん細胞のアポトーシスをもたらす。「免疫的にColdなtumorをHotに変え、免疫療法を作用させていく薬」と倉田氏は説明した。 タルラタマブの承認根拠となったDeLLphi-301試験では、3次治療以降のSCLC患者を対象に単剤投与が行われた。奏効率(ORR)は41.4%、生存期間中央値(OS)は14.3ヵ月という成績を示した。「3次治療の患者は免疫系が疲弊していて免疫治療が効きにくい状態にある。そういう状態でこれだけの効果を示すことは非常に興味深い」と倉田氏は評価する。 今回、2次治療適応追加の根拠となったのが、タルラタマブ単剤と化学療法を比較したDeLLphi-304試験である。主要評価項目であるOS中央値は、タルラタマブ群の13.6ヵ月に対し、化学療法群では8.3ヵ月。ハザード比は0.60(95%信頼区間:0.47〜0.77)、p<0.001と、タルラタマブによる有意なOS延長が示された。一方、サイトカイン放出症候群(多くはGrade2以下)は半数以上に認められ、発熱、食欲減退、味覚不全などの有害事象が報告されている。 倉田氏は「これからのSCLCの治療に免疫療法は欠かせない。有害事象を管理してタルラタマブを使用するのはわれわれの責務」とし、また「免疫療法はより早い段階での投与が効果を高めることがわかっている。今後タルラタマブの2次治療以前の使用が実現することを強く期待している」と述べた。SCLC患者が直面する現実 長谷川 一男氏らが運営する肺がん患者の会ワンステップでは、2ヵ月に1度「おしゃべり会」を設けている。同会にSCLC患者も参加するが、1〜2回で来られなくなることが多かったという。 疾患自体の厳しさにとどまらず、SCLCの患者・家族が直面する現実は深刻だ。患者の喫煙が発症に関連することから、家族は患者を責め、患者は罪悪感に苛まれる。 2016年の日本肺学会学術集会。プログラムの中に「30年間変わらない小細胞肺がんの治療」と題したセッションが設けられていたという。当時は分子標的薬や免疫療法が非小細胞肺がんの景色を変えていた時期であり、SCLCが取り残されていた現実を表しているといえるだろう。30年変わらなかった治療に光が差し始めた 転機が訪れたのは2019年だった。世界肺がん学会(WCLC2019)の最重要演題が集まるPresidential Symposiumで、SCLCの免疫治療の結果が発表された。「長く止まっていた領域にようやく光が差し始めた瞬間だった」と長谷川氏は当時の興奮を伝える。 その後、SCLCに対してタルラタマブが臨床導入される。長谷川氏によれば、タルラタマブが臨床で使われるようになってから、治療中も仕事を続けているSCLC患者に出会うこともあるという。 SCLC治療に選択肢が増えることは「仕事ができる、家族との時間を守れる」など患者・家族の日常生活にも大きな恩恵をもたらす。「以前は生きられるかどうかで精一杯というのがSCLC患者さんの実情だったが、今はどう生きるかを考える余地が出てきた」と長谷川氏は強調した。 長谷川氏は最後に、「タルラタマブのような新薬が3次治療から2次治療、そして1次治療へと移行していき、SCLC患者の現実をどんどん変えてくれることを願っている」と結んだ。

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プラチナ抵抗性再発卵巣がん、ペムブロリズマブ+週1回パクリタキセルでOS延長/Lancet

 1~2ラインの治療歴を有するプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がん患者において、ペムブロリズマブ+週1回パクリタキセル併用療法(ベバシズマブ併用または非併用)が週1回パクリタキセル単独(ベバシズマブ併用または非併用)と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善することが、国際共同無作為化二重盲検第III相試験「ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96試験」において認められた。イタリア・IRCCSのNicoletta Colombo氏らが、2回の中間解析結果および最終解析結果を報告した。上皮性卵巣がんは再発しやすく、プラチナ製剤併用化学療法に抵抗性となることが多い。著者は、「ペムブロリズマブ+週1回パクリタキセル併用療法(ベバシズマブ併用または非併用)は、プラチナ製剤抵抗性再発卵巣がん患者に対する新たな治療選択肢となることが、第III相の無作為化比較試験で裏付けられた」とまとめている。Lancet誌2026年4月18日号掲載の報告。25ヵ国187施設でPFS・OSを評価 ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96試験は、南北アメリカ、日本を含むアジア、欧州、オセアニアの計25ヵ国187施設(婦人科腫瘍センター)で実施された。 対象は、組織学的に確認された上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんを有し、1~2ラインの全身療法(少なくとも1ラインのプラチナ製剤を含む治療)を受け、プラチナ製剤併用化学療法の最終投与後6ヵ月以内に画像上の病勢進行が認められた18歳以上の患者であった。 研究グループは適格患者を、ペムブロリズマブ+パクリタキセル群またはプラセボ+パクリタキセル群に1対1の割合で無作為に割り付けた。ベバシズマブ投与予定の有無、試験地およびPD-L1発現状況(CPS)で層別化した。 ペムブロリズマブ400mgまたはプラセボを6週間間隔で最大18サイクル静脈内投与し、パクリタキセルは両群とも非盲検下で80mg/m2を1サイクル3週間の1日目、8日目、15日目に静脈内投与した。また、両群とも、治験責任医師の判断により非盲検下でベバシズマブ10mg/kgを2週間間隔で静脈内投与することが許容された。 主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価によるPFS、主要副次評価項目はOSであった。中間解析でPFSが有意に改善、最終解析でOS改善も検証 2021年12月13日~2023年7月3日に、643例が登録されペムブロリズマブ+パクリタキセル群(322例)またはプラセボ+パクリタキセル群(321例)に無作為化された。 第1回中間解析(データカットオフ:2024年4月3日、追跡期間中央値15.6ヵ月[四分位範囲[IQR]:12.4~19.3])において、ペムブロリズマブ+パクリタキセル群はプラセボ+パクリタキセル群と比較し、PD-L1 CPS 1以上集団(中央値8.3ヵ月vs.7.2ヵ月、ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.58~0.89、p=0.0014、有意水準α=0.012)、全患者集団(中央値8.3ヵ月vs.6.4ヵ月、HR:0.70、95%CI:0.58~0.84、p<0.0001、α=0.0023)のいずれにおいてもPFSの有意な延長が認められた。 第2回目中間解析(データカットオフ:2025年3月5日、追跡期間中央値26.6ヵ月[IQR:23.4~30.4])では、PD-L1 CPS 1以上集団においてOSが有意に改善した(中央値18.2ヵ月vs.14.0ヵ月、HR:0.76、95%CI:0.61~0.94、p=0.0053、α=0.0083)。全患者集団のOSについては、HRはペムブロリズマブ+パクリタキセル群が良好な傾向にあったが、統計学的有意差には達しなかった(HR:0.81、95%CI:0.68~0.97、p=0.011、α=0.0084)。 最終解析(データカットオフ:2025年9月5日、追跡期間中央値32.7ヵ月[IQR:29.5~36.4])では、全患者集団においてOSの有意な改善が認められた(中央値17.7ヵ月vs.14.0ヵ月、HR:0.82、95%CI:0.69~0.97、p=0.011、α=0.024)。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ+パクリタキセル群で320例中217例(68%)、プラセボ+パクリタキセル群で318例中176例(55%)に発現した。全Gradeでの主な治療関連有害事象は、貧血、末梢神経障害、脱毛、疲労および悪心であった。治療関連有害事象による死亡は、ペムブロリズマブ+パクリタキセル群で4例(大腸炎、間質性肺疾患、急性骨髄性白血病および腸管穿孔各1例)、プラセボ+パクリタキセル群で5例(心不全1例、腸管穿孔2例、大腸穿孔2例)が報告された。

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腺腫あり高齢者の定期大腸内視鏡検査、優先順位を下げてよい/JAMA

 75歳以上の高齢者において、75歳前に大腸内視鏡検査で腺腫が認められた人は腺腫が認められなかった人と比べ、その後10年間の大腸がん発症および大腸がん死の発生率は高かったものの、その累積リスクは大腸がん以外の要因による死亡リスクよりはるかに低かった。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のSamir Gupta氏らが、同国の退役軍人を対象とした後ろ向きコホート研究の結果で報告した。これまで、腺腫が認められた高齢者の大腸がんのリスクは不明であった。著者は、「高齢者では、他の健康上の懸念事項を優先し、経過観察のための大腸内視鏡検査の優先順位を下げることを検討してよいだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月9日号掲載の報告。65~74歳の大腸内視鏡検査の腺腫有無で、75歳以降の大腸がん発症や死亡リスクを比較 研究グループは、2006年1月1日~2019年12月31日に米国退役軍人省において大腸内視鏡検査を受けた退役軍人を対象に、電子カルテを用いて後ろ向きコホート研究を行った。 解析対象は、65~74歳で大腸内視鏡検査を受けたことのある75歳以上の高齢者であった。追跡調査は、対象者の75歳の誕生日から開始し、大腸がんの新規発症、死亡または2019年12月31日のいずれか早い時点まで継続した。75歳になる前に大腸がんまたは炎症性腸疾患と診断された人、腺腫を伴わない鋸歯状病変の既往者などは除外した。 主要アウトカムは、大腸がん発症、大腸がん死、非大腸がん死、全死因死亡の推定累積発生率で、75歳になる前の直近の大腸内視鏡検査において1つ以上の腺腫が認められた高齢者と認められなかった高齢者で比較した。 大腸がん発症および大腸がん死の発生率の比較にはGray検定を用いた。また、腺腫が認められた高齢者における大腸がんおよび非大腸がん死の発生率は、全死因死亡リスクが増加する5つの退役軍人省フレイル指数カテゴリー(非フレイル0.10以下、プレフレイル0.11~0.20、軽度フレイル0.21~0.30、中等度フレイル0.31~0.40、重度フレイル0.40超)に基づいて層別化した。腺腫ありの大腸がん死累積発生率0.5%、非大腸がん死は約47~48% 解析対象は計9万1,952例(75歳到達前の直近の大腸内視鏡検査時の年齢中央値71歳[四分位範囲[IQR]:69~73]、男性98%)で、このうち腺腫ありが2万5,538例(27.8%)、腺腫なしが6万6,414例(72.2%)であった。 10年間の推定累積発生率は、大腸がん発症については腺腫あり集団1.1%(95%信頼区間[CI]:0.8~1.3)、腺腫なし集団0.7%(95%CI:0.5~0.8)であり(Gray検定のp<0.001)、大腸がん死についてはそれぞれ0.5%(95%CI:0.3~0.7)、0.4%(95%CI:0.3~0.5)であった(Gray検定のp=0.005)。一方、非大腸がん死はそれぞれの集団で48.2~48.4%、46.9~47.0%であり、大腸がん発症率より非大腸がん死の累積発生率が大幅に上回っていた。 また、フレイルのすべてのカテゴリーにおいて、10年時点の腺腫あり集団の大腸がん累積発症率は低く(非フレイル1.7%、他のすべてのカテゴリー1%未満)、非大腸がん死の累積発生率(非フレイル34.2%~重度フレイル82.0%)が大腸がん発症率を大きく上回っていた。

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「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」8年ぶりの全面改訂、非専門医が押さえておきたいポイントは?/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本不整脈心電学会の合同研究班による「2026年改訂版 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」1)が、2026年3月20日にオンライン上で公開された。2018年の前回改訂以来、8年ぶりの全面改訂となる。今回の改訂では、「遺伝学的知見と臨床エビデンスの統合」が基本コンセプトに掲げられ、新たに8つの章が追加されるなど、ページ数が前回の約1.6倍(127ページ)に拡充された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会では、班長を務めた牧山 武氏(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)が本ガイドラインの要点を解説した。目次第1章 総論第2章 先天性QT延長症候群(先天性LQTS)第3章 ブルガダ症候群(BrS)第4章 カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)第5章 QT短縮症候群(SQTS)第6章 早期再分極症候群(ERS)第7章 特発性心室細動(IVF)[新規]第8章 進行性心臓伝導障害(PCCD)第9章 家族性心房細動(AF)[新規]第10章 家族性洞不全症候群(SSS)[新規]第11章 不整脈原性右室心筋症(ARVC)[新規]第12章 ラミン心筋症[新規]第13章 予期せぬ突然死(SUD)/予期せぬ乳幼児突然死(SUDI)[新規]第14章 先天性LQTS、CPVT女性患者の妊娠、出産、産褥期における注意点[新規]第15章 市民・患者への情報提供[新規]付表[新規] 今回の改訂では、不整脈が臨床上重要な位置を占める「原発性心筋症」であるARVC(第11章)、ラミン心筋症(第12章)も遺伝性不整脈スペクトラムの一部として含まれた。本ガイドライン改訂の主なポイント遺伝性不整脈の定義と遺伝学的検査 遺伝性不整脈は、心筋細胞の電気的興奮・刺激伝導に関わる遺伝子、すなわち心筋イオンチャネルおよびその関連蛋白をコードする遺伝子の病的バリアントに起因し、明らかな器質的心疾患を認めない、もしくは軽微であるにもかかわらず、心室・上室不整脈や心臓突然死を来しうる疾患群を指す。本ガイドラインでは、日本医学会が2022年に改訂した「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」2)に沿って、従来使われていた「遺伝子異常」という言葉を「病的バリアント」に統一している。 遺伝学的検査は、診断、治療方針の選択、予後予測、患者および家族の疾患理解・健康管理(スクリーニング)において非常に重要であり、2024年に改訂された「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」で詳細に解説されている3)。遺伝学的解析における次世代シーケンサーの主流化 遺伝学的解析手法は従来のサンガー法から、次世代シーケンサー(NGS)を用いた解析が主流となり、パネル検査では一度に60以上の候補遺伝子を網羅的に解析することが可能となっている。より多くの症例で、従来よりも短期間で病的バリアントを検出することが可能となり、遺伝型に基づいた個別化医療が加速している。新たな遺伝性不整脈疾患 また、この遺伝学的解析技術の向上により、新たな遺伝性不整脈疾患が同定されるようになってきた。「カルモジュリン関連LQTS(CALM-LQTS)」は、先天性LQTSの約0.3%に認められ、まれではあるが、幼少期から致死性不整脈を来す最重症型である。また、新しい疾患概念として、心臓リアノジン受容体遺伝子(RYR2)に関連する「カルシウム放出不全症候群(CRDS)」も初めて収載された。従来、RYR2機能獲得型バリアントにより運動や興奮で心室不整脈が誘発されるCPVTが引き起こされることが知られているが、CRDSは、同じRYR2バリアントに起因するものの、CPVTとは対照的に運動やストレスがない安静時や睡眠中に致死性不整脈を来す疾患である。主要3疾患(LQTS/BrS/CPVT)の診断・治療アップデート 今回の改訂では、主要3疾患(LQTS/BrS/CPVT)の診断基準がアップデートされ、定量的に明確に整理されている。非専門医にとっても「循環器専門医へ紹介すべきタイミング」を判別しやすくなっている。 先天性LQTSでは、繰り返す12誘導心電図でQTc≧500msまたはSchwartzスコア3.5点以上を認める場合が診断基準に用いられる。BrSでは、自然発生または発熱時のタイプ1波形が診断の主軸として定義されている。疫学に関しては、日本の多施設コホート研究による最新データが掲載された4)。LQTS/CPVTの治療に用いるβ遮断薬に関しても、エビデンスが蓄積されている非選択的β遮断薬(ナドロール、プロプラノロール)の使用が推奨されている。CPVTでは、安静時心電図が正常でも「運動・ストレス時の失神」というエピソード自体が重要な鍵となる。 これらの指標に基づいた標準的なフローチャートが整備されたことで、健診や一般外来における疑い例に対するリスク層別化と、専門施設へのスムーズな連携が図られている。治療および生活管理においては、CPVTでは、従来のβ遮断薬に加え、フレカイニド併用療法の有効性が強調される一方、ICD作動がさらなる致死的不整脈(VFストーム)を誘発し得る点にも注意が喚起されており、適切なデバイス適応の検討と除細動器設定の最適化の重要性が明記されている。さらに、難治例に対しては左心臓交感神経切除術(LCSD)の推奨も記載されている。先天性LQTS患者の運動・スポーツ参加の目安 今回の改訂における重要トピックの一つが、生活指導における、先天性LQTS患者および家族と医療関係者の間での「共同意思決定(shared decision making)」の導入である。これまでの「一律の運動禁止」という画一的な管理から脱却し、高強度・競技レベルの運動参加について、適切な予防治療の継続と、AEDの配備や指導者の監視といった安全環境の整備を前提に、病状および患者・家族の意向を踏まえたshared decision makingにより管理方針を決定するフローが明確に示された。ガイドラインでは、運動強度(METs)と学校生活指導管理表の区分を対照させた詳細なフローチャート「先天性LQTS患者の運動または競技スポーツ参加の目安」(図8)が掲載されており、競技スポーツへの復帰についても、専門医によるリスク評価と十分な対話を通じて個別に検討する道筋が立てられている。ライフステージに応じた妊娠・産褥期の管理 女性患者のライフステージに合わせた管理指針として、第14章が新設された。とくにLQT2患者は出産後(産褥期)に心イベントのリスクが著しく高まることが示されており、厳重な注意が必要である。この時期、授乳中であってもβ遮断薬の内服を確実に継続することが強く推奨されており、産科医と循環器医の緊密な連携が致死的不整脈イベントの予防において不可欠であることが強調されている。実臨床において活用しやすい「付表」と市民・患者向けQ&Aの充実 第15章の市民・患者向けQ&Aは、職域健診・学校心臓検診で異常を指摘された際の家族への説明の進め方など、教育現場や一般外来でのコミュニケーションを支援する実用的なツールとして構成されている。また、非専門医や学校医が日常診療で即座に参照できるよう、巻末の付表が新設された。とくに、疾患ごとに「避けるべき薬剤リスト」が最新の知見に基づき整理されたほか、急性期・慢性期治療に用いられる薬剤の具体的な用法・用量が明記されている。 牧山氏は、本ガイドラインについて「『遺伝学的知見と臨床エビデンスの統合』を軸に、臨床現場における診療の標準化を目的として、最新の知見に基づき国内のエキスパートとともに改訂を行った。専門医のみならず、一般内科医、学校医や検診担当医が日常診療で直面する課題解決に役立ててほしい」と展望を述べた。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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ADHD治療薬は将来の精神病リスクを上昇させない

 注意欠如・多動症(ADHD)の子どもに対しては、メチルフェニデートが処方されることが多い。ADHD患者は統合失調症などの精神病(精神病性障害)のリスクが高いことが知られているが、精神病の発症とメチルフェニデートとの長期的な関連は、これまで明確ではなかった。こうした中、新たな大規模研究で、メチルフェニデートは精神病リスクを上昇させず、むしろ小児期の同薬による治療は将来の非感情性精神病性障害に対して予防効果を有する可能性が示唆された。英エディンバラ大学児童・思春期精神医学分野のIan Kelleher氏らによるこの研究は、「JAMA Psychiatry」に3月25日掲載された。 Kelleher氏は、「幼少期のメチルフェニデートによる治療が長期的な精神病リスクの低下と関連していたという事実は、この薬剤が小児期の症状を管理するにとどまらず、重篤な精神疾患に対して長期的な保護効果を持つ可能性を示唆している」とニュースリリースで述べている。 この研究でKelleher氏らは、フィンランドの全国データを用いて、1987年から1997年の間に出生した人を対象に、子どもおよび思春期の若者に対するメチルフェニデートによる治療が将来の非感情性精神病性障害リスクに与える影響を検討した。同期間に出生したのは69万7,289人であった。このうち3,956人(男子80.41%)が、フィンランドでメチルフェニデートが使用されるようになった2003年1月1日以降に、18歳未満でADHDと診断されており、2,728人(68.96%)がメチルフェニデートの処方を1回以上受けていた。 222人(5.7%)が非感情性精神病性障害の診断を受けており、診断時の平均年齢は22.16歳だった。解析の結果、メチルフェニデート(30mg/日)による長期治療と非感情性精神病性障害リスクの間に有意な関連は認められなかった。さらに二次解析では、13歳未満でADHDと診断されメチルフェニデートを処方された人では、成人期における非感情性精神病性障害の発症リスクが低い傾向が示された。思春期にADHDと診断された人では、十分な評価を行うことができなかった。 研究グループは、「これらの結果は、ADHD治療で使われる中枢神経系刺激薬が将来的に精神病リスクを高めるのではないかという、近年の保護者や医師、政策担当者の懸念を和らげる一助となる可能性がある」と述べている。 Kelleher氏はさらに、「ADHDの子どもを成人期まで追跡すると、ごく一部ではあるが一定数が統合失調症などの精神病性障害を発症することが知られている。重要な疑問は、ADHD治療薬がそのリスクを引き起こしているのか、それとも相関関係はあっても因果関係はないのかという点であった。今回の研究結果は、そのリスクを高めている要因が薬剤そのものではないことを示唆している」と話している。 論文の筆頭著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのColm Healy氏は、「小児の脳と、思春期あるいは成人の脳との間には重要な発達上の違いが存在する。そのため、中枢神経系刺激薬の効果が全ての発達段階で同じであると仮定することはできない。成人におけるADHD治療が急増している現状を踏まえると、こうした違いの理解は喫緊の課題である」と述べている。(HealthDay News 2026年3月26日)

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電子カルテ業務がレジデントのバーンアウトに関連

 若手医師の間で、電子カルテ業務の過剰負担がバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクを高めていることが、新たな研究で明らかになった。家庭医療レジデントの約3分の1が、「パジャマタイム」と呼ばれている勤務時間外に3時間以上かけて外来電子健康記録(EHR)の作業を行っており、こうした時間外の作業に費やす時間が長いほど、試験の成績が低く、バーンアウトのリスクが高まり、仕事への満足度は低下する傾向が認められたという。米イェール大学医学部のWendy Barr氏らによるこの研究は、「Academic Medicine」3月号に掲載された。 Barr氏は、「われわれは、EHRの作業に多くの時間を費やしているレジデントは、読書や振り返り、学習にあてる時間が少なくなり、その結果、試験の成績に影響が出るのではないかと考えていたが、関連の強さや明確な用量反応関係が認められたことには驚いた」とニュースリリースで述べている。 この全国規模の研究では、研修2年目以上の家庭医療レジデント9,731人を対象に調査を実施し、勤務時間外のEHR業務と、バーンアウト、仕事への満足度、医療知識との関連を検討した。パジャマタイムは、勤務時間外に外来EHR業務に平均3時間以上を費やす場合を「高パジャマタイム」と定義した。パジャマタイムに行う作業には、検査結果や画像の確認、患者からのメッセージ対応、記録業務の遅れの補完などが含まれる。Barr氏は、「バーンアウトの評価には、2項目の簡易スクリーニングツールを用いた。これは、過去2週間における情緒的消耗と脱人格化(患者に対して冷淡・無関心などの態度をとる状態)の発生頻度を尋ね、いずれかが週1回以上あればバーンアウトと判定した」と説明している。調査は、主にレジデントを対象に行われる到達度評価試験であるIn-Training Examination(ITE)後に米国家庭医療専門医認定委員会により実施され、回答率は99.1%と非常に高かった。 その結果、レジデントの約3分の1(32.3%、3,124人)が、勤務時間外に平均3時間以上を電子カルテ業務に費やしていることが明らかになった。こうした「高パジャマタイム」は、年齢が高めの人、女性、医学分野における過少代表集団に属する人、海外医学部出身者で多く見られた。これらの因子を調整して解析した結果、高パジャマタイムは、バーンアウトのオッズを61%増加させるとともに(オッズ比1.61)、試験の成績が低くなるオッズを28%増加させることが示された(同1.28)。一方で、職業満足度は39%、研修プログラム満足度は38%低い傾向が見られた(オッズ比はそれぞれ0.61、0.62)。 Barr氏は、「外来に出る時間が長いほど、パジャマタイムも増える傾向がある。これはシステム上の問題があることを示している」と指摘している。さらにBarr氏は、こうした書類業務の負担によってバーンアウトが進めば、有望な若手医師が医療現場を離れる可能性があり、米国の医療体制にとって損失になりかねないと警鐘を鳴らす。その上で同氏は、「レジデントの段階でパジャマタイムが長い人は、将来、フルタイムで働き続ける可能性が低くなるだろう。それは医療人材の問題にもつながる。研修プログラムとして、これを測定し、早期に対策を講じるべきだ。これは、単に記録業務や効率の問題ではない。医師が生涯にわたって持続可能な働き方を築けるよう支援することが重要なのだ」と主張している。

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横田基地のハートマン軍曹【Dr. 中島の 新・徒然草】(629)

六百二十九の段 横田基地のハートマン軍曹もう4月も末になり、2026年の3分の1が過ぎました。いつもながら、月日の経つのは早いものですね。さて、タイトルにあるハートマン軍曹。1987年のアメリカ映画「フルメタル・ジャケット」に出てくる鬼教官です。海兵隊に入隊したての新兵を罵倒してしごき倒すので有名なキャラクター。いつしかハートマン軍曹というだけで、鬼教官の代名詞として通じるようになりました。で、ハートマン軍曹のような英語教師について語るのは、経済評論家の上念 司氏。上念氏はテレビやYouTubeで活躍しています。ある日、この上念氏がある番組(「上念さんは英語がペラペラ。ハートマン軍曹のような厳しい英語教師から特訓を受けていた」)で言っていました。「すげえ感じ悪いけど、言っていいっすか? オレ、英語ペラペラなんですよ」と。確かに上念氏が英語で喋っている別の動画ではペラペラです。というか、日本語を喋るのと同じスピードで、まったくつかえることがありません。なんでそんなに英語がうまいのか。その秘密を上念氏は語り始めました。上念氏のいた高校ではミスター・ベイカーというアメリカ人の先生が英語を教えに来ていたそうです。ひょっとすると、交換留学のための特別授業だったのかもしれません。ミスター・ベイカーは近くの横田基地の中にあるmiddle schoolとhigh schoolの社会科の先生。専門が社会科であっても、日本人にとってのアメリカ人は全員が英語の先生でもあります。で、ミスター・ベイカーによる毎週1回90分の英語特訓が始まりました。無茶苦茶厳しかったので、横田基地のハートマン軍曹だと言ってもいい存在だったそうです。その授業の中では、わからない単語が出てきたら2秒以内に手を挙げて「Please explain ナントカ!」と尋ねなくてはなりません。そうするとミスター・ベイカーはその単語の意味を説明してくれます。が、その説明も英語なので、再びわからない単語が出てきて「Please explain ナントカ!」の繰り返し。かくして、1回の授業でわからない単語が40~50ほど出てきます。それを次の授業までに完全に覚えておかなくてはなりません。もし単語を覚えるのをサボったりしたら、ミスター・ベイカーはただ一言、「You, out.」だったとのこと。当初は20人ばかりいた生徒も、3ヵ月後には3人に減ってしまいました。ただ、上念氏はこの鬼教官に高校2年の2学期から高校3年の1学期まで10ヵ月間ほどしごかれたおかげで、交換留学で渡米したときも英語にはまったく困らなかったそうです。番組の最後に上念氏はこう締めくくりました。「あなたに必要なのはハートマン軍曹です」と。そのとおりかもしれませんね。最後に1句 新学期 求められるは 鬼教官

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