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術後せん妄の予防に鎮静薬デクスメデトミジンが有効であり、エビデンスの質は高くないもののコルチコステロイド、メラトニン受容体作動薬、parecoxib、経鼻インスリン、オランザピンにも潜在的な有益性があることが、英国・オックスフォード大学のMatthew Luney氏らの検討で示された。手術後に急激な意識障害や注意力の低下を来す術後せん妄は、認知症発症のリスクを高めるだけでなく、多大な医療コストの要因ともなっており、高齢化社会における重大な課題とされるが、有効な薬物療法は確立されていない。BMJ誌2026年2月12日号掲載の報告。158試験4万1,084例のネットワークメタ解析 研究グループは、高齢者の術後せん妄に有効な薬剤を特定し、罹患率や死亡率への影響を評価する目的で、既報の無作為化対照比較試験の系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]のdoctoral research fellowshipの助成を受けた)。 2024年3月4日の時点で、医学関連データベースに登録された関連文献を検索した。対象は、参加者の年齢が60歳以上で、全身または区域麻酔を要する手術後のせん妄の予防を目的に1つ以上の薬剤を投与し、妥当性の検証が済んでいるせん妄評価ツールをアウトカムの評価に用いた無作為化対照比較試験とした。局所麻酔のみの試験、術前に患者が機械換気を受けていた試験、せん妄の治療介入に関する試験は除外した。ベイズ法に基づくネットワークメタ解析を用いて介入法の比較を行った。 52種類の薬物介入を比較した158件の試験(参加者4万1,084例)を特定した。1件の試験の参加者数中央値は120例(四分位範囲:80~259、範囲:16~7,507)で、単施設試験が135件、多施設共同試験が23件だった。これらの試験の結果はすべて1999~2024年に発表され、87件(55%)は2021~24年に報告されていた。17件の試験を、バイアスのリスクが高いと判定した。術後せん妄は14.5%(5,957例)に発現した。術後の悪心・嘔吐の抑制効果も デクスメデトミジンは、外科領域全体(オッズ比[OR]:0.45、95%信用区間[CrI]:0.36~0.56)、胸部手術を除く各専門領域(非心臓手術のOR:0.41[95%CrI:0.31~0.54]、心臓手術:0.52[0.31~0.82]、大腿骨近位部骨折修復手術:0.35[0.17~0.63]、腹部手術:0.38[0.17~0.81]、整形外科手術:0.35[0.20~0.60]、待機的手術:0.47[0.37~0.59]、緊急手術:0.22[0.08~0.46])のいずれにおいても、プラセボに比べ術後せん妄の予防効果が高く、バイアスのリスクが高い試験を除外した感度分析(OR:0.46、95%CrI:0.36~0.57)でも高い効果を示した。 また、デクスメデトミジンの術後せん妄の予防効果は、手術時の麻酔法を問わず優れた(全身麻酔のOR:0.45[95%CrI:0.35~0.57]、区域麻酔:0.28[0.11~0.64])。 デクスメデトミジンは、低血圧(OR:1.40、95%CrI:1.08~1.81)と徐脈(1.60、1.32~2.00)の頻度が高かった一方で、術後の悪心・嘔吐(0.67、0.49~0.87)を抑制した。重症度軽減はコルチコステロイドのみ バイアスのリスクが高い試験を除外した感度分析で、デクスメデトミジンのほかに優れた術後せん妄予防効果を認めた介入として、コルチコステロイド(OR:0.53、95%CrI:0.31~0.87)、メラトニン受容体作動薬(0.54、0.34~0.85)、parecoxib(0.34、0.16~0.74)、オランザピン(0.27、0.07~0.94)、経鼻インスリン(0.13、0.04~0.34)が挙げられたが、これらの試験のエビデンスの質は中~非常に低いであった。 penehyclidineは、プラセボに比べ術後せん妄を有意に増加させた唯一の介入であった(外科領域全体のOR:6.20、95%CrI:1.19~35.37)。 Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)を用いた評価で、プラセボと比較してせん妄の重症度をわずかとはいえ軽減した薬剤は、コルチコステロイド(平均群間差:-2.42、95%CrI:-4.72~-0.12)のみであった。ほとんどの介入は、入院期間、死亡率、術後合併症、生活の質、術後の認知機能に影響を及ぼさなかった。また、コルチコステロイドにより感染症関連合併症が増加することはなかった(OR:0.97、95%CrI:0.66~1.65)。 著者は、「術後せん妄への介入が、せん妄の重症度、精神的苦痛(患者が重視しているにもかかわらず報告がほとんどない)、生活の質、認知機能、自立度、医療資源の消費量に及ぼす影響を評価し、医療経済分析に資する情報を得るために、厳格に実施される試験が必要なことは明らかである」としている。