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第73回 インフルエンザワクチンが変わる? 米国で世界初の「mRNAインフルワクチン」承認

新型コロナワクチンでおなじみになった「mRNAワクチン」という技術。これをインフルエンザに応用したモデルナのワクチン「mRNA-1010(商品名:mFLUSIVA)」が、この夏、米国で承認されました1)。対象は50歳以上の成人で、米国では2026~27年シーズンからの接種開始が見込まれています。製造期間が「6ヵ月」から「6週間」に皆さまご存じのとおり、従来のインフルエンザワクチンの多くは、鶏の卵の中でウイルスを育てて作られています。この方法では製造に約6ヵ月かかるため、「今年はどの型が流行するか」という予測を、流行の半年も前、2~3月頃には決めてしまわなければなりません。ところがインフルエンザウイルスは絶えず姿を変えるため、秋になってみたら別の型が流行していて、ワクチンとの「ミスマッチ」が起きてしまうことがあります。一方、mRNAワクチンはウイルスの設計図にあたる遺伝情報を合成して作るため、製造は約6週間で済むとされます。流行の直前まで中身を調整できるわけですから、予測が外れるリスクを減らせるのではと期待されているのです。「27%減」は何を意味するのか承認の根拠となった臨床試験には、米国を含む11ヵ国で50歳以上の約4万1,000人が参加しました。半分の方がmRNAワクチンを、残り半分が従来型ワクチンを接種し、約半年間の経過をみたところ、検査で確定したインフルエンザの発症はmRNA群で約2.0%、従来型群で約2.8%。相対的にみてmRNA群が約27%少なかった、という結果です2)。ここで少し立ち止まってみたいのですが、この「27%」は割合の比較であって、「接種した人の27%が発症を免れる」という意味ではありません。100人当たりでいえば、発症が約0.8人減った計算になります。小さな差に見えるかもしれませんが、社会全体でみれば入院や死亡の減少につながりうる差ですし、リスクの高い65歳以上に限った解析でも同程度の効果が確認されています。副反応は、注射部位の痛みや倦怠感、頭痛などが従来型よりやや多かったものの、大半は軽度から中等度で、一時的なものだったと報告されています。まだわからないこと、私たちにできることもちろん、限界もあります。データはまだ1シーズン分だけで、米国で65歳以上の標準とされる「高用量ワクチン」との直接比較は行われていません。免疫能の低下した方やフレイルのある高齢者での効果も、まだ確立していません。そのため65歳以上への承認は条件付きの「迅速承認」で、今後2シーズンかけて約40万人規模の市販後試験で効果が検証される予定です。ソーシャルメディアなどでは「mRNAワクチンは効かない」といった根拠のない主張も聞かれますが、mRNAワクチンが中心だった新型コロナワクチンは、控えめに見積もっても世界で250万人以上の命を救ったと推計されており、データはむしろ逆の結果を示しています3)。日本では、インフルエンザに対するmRNAワクチンはまだ承認されていません。当面は従来型ワクチンでの接種が続きますが、米国では65歳以上は人口の2割弱ながら、インフルエンザ関連死亡の70~85%を占めるとされます。高齢の方にとって毎年の接種が大切であることは、これまでと変わりません。新しい技術の続報を待ちながら、今シーズンもまずは現行のワクチンで備えましょう。1)Rubin R. What to know about the mRNA flu vaccine, newly approved by the FDA. JAMA. 2026 Aug 14. [Epub ahead of print]2)Leroux-Roels I, et al. Efficacy and safety of an mRNA seasonal influenza vaccine in adults. N Engl J Med. 2026;394:1803-1813.3)Ioannidis JPA, et al. Global estimates of lives and life-years saved by COVID-19 vaccination during 2020-2024. JAMA Health Forum. 2025;6\:e252223.

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CKM症候群の突然死リスク、フィネレノンで19%低下(FINE-HEART)

 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンの有効性と安全性を検証した3件の大規模第III相試験の統合解析「FINE-HEART」の事前規定解析の結果、フィネレノンは心血管・腎・代謝(CKM)症候群における突然死リスクの低下と関連していたことが、イタリア・IRCCS Azienda Ospedaliero-Universitaria di BolognaのAlberto Foa氏らによって示された。これまでの研究で、フィネレノンはCKM症候群の心血管系および腎転帰を改善することが報告されているが、突然死に対する影響は明らかではなかった。Journal of the American College of Cardiology誌2026年8月4日号掲載の報告。 FINE-HEART試験に含まれる3件の試験は、FIDELIO-DKD試験(対象:2型糖尿病を伴う慢性腎臓病[CKD]患者)、FIGARO-DKD試験(対象:2型糖尿病を伴うCKD患者)、FINEARTS-HF試験(対象:左室駆出率が軽度低下した心不全[HFmrEF]/左室駆出率が保持された心不全[HFpEF]患者)であり、いずれもフィネレノンまたはプラセボの投与を受ける群に1:1に無作為に割り付けられた。本解析では、多変量Cox回帰モデルを用いて突然死の臨床的予測因子を特定し、フィネレノンの突然死に対する治療効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・中央値2.9年の追跡期間中に、1万8,991例の参加者のうち2,178例が死亡した。心血管死が41%を占め、その中で最も多かったのが突然死(47%)であった。・死亡者に占める突然死の割合は、CKMステージ2/3の患者では13.9%、ステージ4の患者では20.5%であった。ステージ4ではステージ2/3と比較して突然死リスクが約2.7倍高かった(ハザード比[HR]:2.7、95%信頼区間[CI]:1.99~3.67、p<0.001)。・突然死リスクの上昇と独立して関連した因子として、高齢、心不全・心房細動・心筋梗塞の既往、尿アルブミン-クレアチニン比高値、低収縮期血圧、eGFR低下およびHbA1c高値が挙げられた。・突然死はフィネレノン群188例(2.0%)とプラセボ群230例(2.5%)に発生し、フィネレノン群でリスクが19%有意に低下した(HR:0.81、95%CI:0.67~0.98、p=0.034)。 -フィネレノン群:100患者年当たり0.69件 -プラセボ群:100患者年当たり0.85件 -絶対発生率減少:100患者年当たり0.16件 -治療必要数:216・このリスク低減効果は、突然死以外の死亡を競合リスクとして考慮した解析でも一貫して認められた。また、各サブグループ間でも効果は一貫していた。 研究グループは、「これらの知見はCKM症候群患者に対する非ステロイド型MRAの使用を支持するものであり、心血管系および腎臓の保護にとどまらず不整脈による死亡リスクの軽減をもたらす可能性を示している」とまとめた。

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統合失調症患者の体重管理に有効な薬理学的介入は?

 著しい体重増加は、統合失調症患者が抗精神病薬の服用に伴って経験する懸念すべき有害事象である。統合失調症患者における体重増加の高い有病率と、それが心血管・代謝系疾患の罹患に大きく寄与しているという事実から、抗精神病薬誘発性体重増加および関連する併存疾患の管理について、より明確な合意を形成することが求められている。カナダ・トロント大学のNicolette Stogios氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者に対する薬物療法と体重変化との関連を評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2026年7月8日号の報告。 2025年12月5日までに公表された研究を、Ovid MEDLINE、Embase、PsycINFO、CENTRAL、CINAHL、ClinicalTrials.gov、ICTRP Search Portalより検索した。対象は、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者の体重減少を目的としたあらゆる薬物療法を検討したランダム化臨床試験であった。なお、研究期間に関する制限は設けなかった。システマティックレビューおよび頻度論的ランダム効果モデルを用いたネットワークメタ解析を実施した。エビデンスの確実性は、CINeMAツールを用いて評価した。データ解析は、初回実施期間が2025年5~11月で、同年12月に更新した。主要評価項目は、薬物療法とプラセボまたは標準的ケアとの比較における体重変化とした。副次評価項目に、その他の身体計測指標および代謝関連指標を含めた。 主な結果は以下のとおり。・本レビューには、39種類の薬物療法を検討した95件の研究が含まれた(統合サンプルサイズ:5,898例)。・ネットワークメタ解析の結果、プラセボと比較し、最も顕著な体重減少に関連していた薬剤は次のとおりであった。【セマグルチド】平均差[MD]:-10.98kg(95%信頼区間[CI]:-13.33~-8.62)、3研究、確実性:中程度【リラグルチド】MD:-5.43kg(95%CI:-8.54~-2.33)、2研究、確実性:中程度【トピラマート】MD:-3.95kg(95%CI:-5.89~-2.02)、5研究、確実性:中程度【メトホルミン】MD:-3.86kg(95%CI:-5.02~-2.70)、16研究、確実性:中程度【エキセナチド】MD:-2.97kg(95%CI:-5.83~-0.11)、3研究、確実性:中程度・ラメルテオン、ニザチジン、アリピプラゾールといった他の介入も体重減少効果が認められたが、エビデンスの確実性はきわめて低かった。・臨床的に意義のある5%以上の体重変化は、セマグルチドおよびメトホルミンで認められた。・いくつかの薬剤では、他の代謝関連アウトカムに対する有益な効果も確認され、介入間で消化器系の有害事象や試験からの早期離脱に関する重大な懸念は認められなかった。 著者らは「本システマティックレビューおよびネットワークメタ解析により、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者に対する薬物療法において、体重関連アウトカムに大きなばらつきがあることが明らかとなった。セマグルチド、リラグルチド、トピラマート、メトホルミン、エキセナチドは、最も大きな体重減少に関連し、最も確実性の高いエビデンスに裏付けられていた。これらの結果は、抗精神病薬に関連する体重増加を管理する臨床医にとっての指針となるものである」としている。

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がんの既往歴/家族歴のある女性、原発性肺がんリスク高い

 喫煙歴にかかわらず、がんの既往歴や家族歴を有する成人女性では、新規に原発性肺がんを発症するリスクが有意に高まることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)East BayのCarissa A. Villanueva氏らによる大規模後ろ向き研究で明らかになった。JTCVS Open誌2026年8月号に掲載。 本研究は、Kaiser Permanente Northern Californiaの2010年1月1日〜2022年12月31日の電子健康記録データを用いた。研究開始時点で肺がんの既往がない18歳以上の成人女性で、期間中に1年以上の加入歴を有する約280万例を抽出。喫煙状況、人種/民族、年齢、Charlson併存疾患指数、近隣困窮指数で調整したターゲット最大尤度推定法を用い、がん既往歴または家族歴を有する患者における新規原発性肺がんの有病率比(PR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした成人女性280万例が解析に組み入れられた。・何らかのがん既往歴がある女性では、原発性肺がんの有病率が88%増加した(PR:1.88、95%信頼区間[CI]:1.84〜1.92)。・がんの家族歴がある女性においても、原発性肺がんの有病率増加が認められた(PR:1.23、95%CI:1.20〜1.26)。・とくに、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの既往歴がある女性において、その後の原発性肺がん有病率増加と有意な関連が示された。 著者らは、「がんの既往歴および家族歴は、将来の原発性肺がん発症リスク上昇と強い関連を示したことから、今回の対象集団においては、喫煙歴だけでは新規原発性肺がんの臨床的疑いを判断するには不十分であることが示唆される。肺がんスクリーニングツールの適用に関するガイドラインの再評価および拡充が賢明だろう」と提言している。

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待機的心臓手術後のAKI発生、周術期ダパグリフロジン投与で抑制/JAMA

 待機的心臓手術を受ける患者において、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(10mg)の周術期における4回投与(手術日前日~術後2日目まで1日1回経口投与)はプラセボと比較して、術後7日間の急性腎障害(AKI)の発生を減少させたことが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのMaartina J. P. Oosterom-Eijmael氏らMERCURI-2 Study Groupが、同国で行った多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。待機的心臓手術を受ける患者の2~50%でAKI発生が認められるが、これを予防する薬物療法は確立されていない。SGLT2阻害薬は先行研究において、腎保護効果がある可能性やAKI発生の減少が示されていた。JAMA誌オンライン2026年7月30日号掲載の報告。オランダの7施設で無作為化試験、ダパグリフロジン群vs.プラセボ群 研究グループは、待機的心臓手術を受ける患者において、手術前日から開始するダパグリフロジンの投与が、プラセボとの比較において術後7日間のAKI発生を減少させるとの仮説について検証した。 試験はオランダの7施設(大学医療センター2施設、非大学病院5施設)で実施され、対象は待機的心臓手術を受ける18歳以上の成人患者とした。除外基準は1型糖尿病、2型糖尿病でBMI値25未満かつ1日複数回のインスリン注射を施行、ベースラインeGFRが20mL/分/1.73m2未満、糖尿病性ケトアシドーシスの既往、登録時評価の収縮期血圧100mmHg未満、SGLT2阻害薬服用中、SGLT2阻害薬に対する既知/疑いのアレルギーであった。また、妊娠(可能性を含む)・授乳中、妊娠を希望する女性なども除外された。 被験者を、1日1回経口投与のダパグリフロジン(10mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、手術前日(院内で午後3時~午後8時)に投与を開始し、術後2日目まで合計4回投与した(2回目は手術当日の朝、3回目は術後1日目、4回目は術後2日目)。 主要評価項目は、術後7日間におけるAKI発生の群間差とした。AKIは、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO診断基準)に基づき、術後48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL(26.5μmol/L)以上上昇、術後7日以内に血清クレアチニン値が基礎値より1.5倍以上増加、または術後6~12時間の尿量が0.5mL/kg/時未満と定義した。術後7日間のAKI発生率、28%vs.52%で有意差 被験者登録は2023年6月8日~2025年1月27日に行われ、最終追跡調査日は2025年5月16日であった。 784例が登録・無作為化され(各群392例)、778例(99%)が追跡評価を完了した(6例は手術を受けなかった)。ベースラインの両群の患者特性は類似しており、年齢中央値68歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、76%が男性、97%が白人であり、BMI中央値27(IQR:25~30)、eGFR中央値80mL/分/1.73m2(IQR:67~89)であった。 7日間のAKI発生は、ダパグリフロジン群111/392例(28%)、プラセボ群205/392例(52%)であった(相対リスク:0.54、95%信頼区間:0.45~0.65、p<0.001)。 最も多くみられた術後の有害事象は、心房細動および再手術であった。心房細動の発現率はダパグリフロジン群45%(176/392例)、プラセボ群45%(176/392例)であり、再手術率はそれぞれ11%(43/392例)、10%(39/392例)であった。

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HIV-1感染者、1日1回の標準治療から週1回配合剤への切り替えは?/Lancet

 ウイルス学的抑制を維持しているHIV-1感染者において、週1回投与の配合錠イスラトラビル/レナカパビル(ISL/LEN)は1日1回経口投与の標準治療に対して、有効性に関して非劣性であり、忍容性はおおむね良好であることが示された。米国・Cambridge Health AllianceのAmy E. Colson氏らISLEND-2 Study Teamが、日本を含む14ヵ国100施設で実施した第III相の非盲検無作為化実薬対照非劣性試験「ISLEND-2試験」の48週時点の主要解析の結果を報告した。著者は、「本試験の結果と、ISLEND-1試験(1日1回投与の配合錠ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミド[B/F/TAF]と比較)の結果(ジャーナル四天王「HIV-1感染者への週1回配合剤、1日1回薬に非劣性/NEJM」2026年8月6日公開)を併せたデータは、ISL/LENがHIV-1感染者への初となる週1回経口治療薬となりうることを示唆するものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年8月12日号掲載の報告。ISL/LEN切り替え群vs.標準治療継続群を比較 ISLEND-2試験では、ウイルス学的抑制を維持しているHIV-1感染者を対象に、週1回投与の配合錠ISL/LENへの切り替えの有効性と安全性を、1日1回経口投与の標準治療の継続と比較し評価した。 対象は、1日1回経口投与の標準治療で6ヵ月以上ウイルス学的抑制を維持しており、かつウイルス学的失敗歴のない18歳以上の成人HIV-1感染者を適格とした。 被験者は、双方向応答システムを用いて、地理的地域、抗レトロウイルス薬のクラス、CD4陽性T細胞数で層別化したうえで、週1回投与の配合錠ISL(2mg)/LEN(300mg)への切り替え群、または1日1回経口投与の標準治療を継続する群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、両群とも少なくとも96週間投与を受ける計画とされた。また、被験者は96週後に延長フェーズに組み入れられ、ISL/LENの処方を受ける選択肢が与えられた。 主要評価項目は、48週時点のHIV-1 RNA量50コピー/mL以上の被験者割合とした。判定には米国食品医薬品局(FDA)が定義するスナップショットアルゴリズムが用いられ、非劣性マージンは4%ポイントに設定した。無作為化後、割り付け治療薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に評価した。主要評価項目は、ISL/LENが標準治療に対し非劣性 2024年10月8日~2025年4月30日に、727例がスクリーニングされ、647例が適格と判定され、634例が無作為化された。そのうち626例が治療を受けた(ISL/LEN群314例、標準治療群312例)。被験者626例のうち211例(34%)が女性であり、193例(31%)が黒人、119例(19%)がアジア人、123例(20%)がヒスパニックまたはラテン系であった。また、89例(14%)が65歳以上であった。 ベースラインで、552例(88%)が1日1錠の抗レトロウイルス薬を使用しており、478例(76%)のレジメンにはインテグラーゼ鎖転移阻害薬が含まれていた。 48週時点で、HIV-1 RNA量50コピー/mL以上の被験者は、ISL/LEN群1/314例(0.3%)、標準治療群4/312例(1.3%)であり(群間差:-1.0%、95.002%信頼区間:-3.0~1.1)、ISL/LEN群が非劣性基準を満たしたことが示された。 治療関連有害事象(TRAE)の発現は、ISL/LEN群58/314例(18%)、標準治療群1/312例(1%未満)で報告された。 有害事象による試験中止例は、ISL/LEN群2/314例(1%)、標準治療群1/312例(1%未満)であり、Grade3以上の有害事象の発現例は24/314例(8%)と28/312例(9%)、重篤な有害事象の発現例は22/314例(7%)と27/312例(9%)であった。 死亡は3例(ISL/LEN群1例、標準治療群2例)報告されたが、いずれも治療との関連はないと判断された。 なお著者は、「より長期的な安全性のデータは、本報告で示された48週時点のデータ以上に、さらなる有益な知見をもたらすものと思われる」としている。

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テレビ視聴の多さは脳萎縮と関連

 「テレビばかり見ていると脳がだめになる」という母親の小言は、あながち的外れではないようだ。新たな研究で、テレビを頻繁に視聴することは、複数の脳領域の体積の減少や白質高信号体積の増加と関連することが示された。一方、座位で仕事をすることは、白質高信号体積の減少や複数の脳領域の体積が大きいことと関連していた。白質高信号とは、脳小血管病などによる白質の変化を反映するMRI所見で、白質病変とも呼ばれている。米南カリフォルニア大学(USC)人類進化生物学プログラムのNatan Feter氏らによるこの研究結果は、7月10日付で「Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association」に掲載された。 Feter氏は、「われわれはこれまで、人々に座りっぱなしの時間を減らすよう勧めてきた。しかし今回の結果から、専門家はその推奨を、座位時間だけでなく座っている間の活動内容にも広げる必要があると考えるかもしれない。座位中の活動の種類によって、脳の健康への影響が異なる可能性があるからだ」と述べている。 この研究では、心血管と脳の健康を長期間追跡している「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)」研究に参加した1,712人(平均年齢53歳、女性57%)のデータを解析し、座位行動と脳構造との関連を検討した。座位行動として、余暇にテレビを見る頻度と座位で仕事を行う頻度を質問票により評価した。また、脳構造の指標として、前頭葉や後頭葉などの皮質領域、視床・尾状核・被殻・淡蒼球から成る皮質下領域に加え、アルツハイマー病(AD)で早期から変化が現れやすい領域(ADシグネチャー領域)、および白質高信号の体積をMRIで測定した。 年齢や性別、身体活動、BMI、糖尿病、喫煙、飲酒などの共変量を調整して解析した結果、テレビを「頻繁に見る」と回答した人は、「ほとんど/全く見ない」と回答した人と比べて、前頭葉、後頭葉、およびADシグネチャー領域の体積が小さいこと、ならびに白質高信号体積が大きいことと関連していた。一方、「いつも座位で仕事を行う」と回答した人では「座位で仕事をほとんど/全くしない」と答えた人と比べて、白質高信号体積が小さいこと、ならびに頭頂葉、後頭葉、および前頭葉の体積は有意に大きいことと関連していた。男女別に解析したところ、座位での仕事が多いことと前頭葉の皮質体積が大きいこととの関連は男性でのみ認められるなど、座位行動と脳構造の指標との関連には男女差が見られた。 研究グループは、「医師は、患者にもっと体を動かすことを勧めるだけでなく、テレビの視聴時間を減らすことについても助言すべきかもしれない。それ以上に望ましいのは、座位で過ごすのであれば、テレビ視聴の代わりに脳を刺激する活動を取り入れることだろう」と述べている。

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AST・ALTが高くなる季節は?

 MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の評価では、ASTやALTなどの肝機能値が広く用いられている。今回、日本人の2型糖尿病患者約6,000人を対象とした研究で、AST・ALTは晩秋から初冬にかけて高く、夏に低い季節変動を示すことが分かった。さらに、この変動はMASLDスクリーニングの判定に影響する可能性も示された。ALTがスクリーニングの判定境界に近かった患者では、約9人に1人で測定季節によって判定が異なったという。研究は、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の土岐了大氏、国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也氏らによるもので、詳細は6月19日付の「Liver International」に掲載された。 AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、肝細胞障害の指標として用いられてきた。近年ではMASLDの評価で最初に行われる検査として広く活用されており、特に2型糖尿病患者ではその重要性が高まっている。一方、体重や血圧、HbA1cなどでは季節による変動が報告されている。これまでにも集団全体ではAST・ALTが冬に高く夏に低い傾向が報告されていたが、個人レベルでの季節変動や、その臨床的意義は明らかになっていなかった。そこで著者らは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、AST・ALTの季節変動がMASLDの評価や血糖コントロールに及ぼす影響を検討した。 本研究では、全国の糖尿病診療施設で構成される日本糖尿病臨床データマネジメント研究会(JDDM)のレジストリに登録された2型糖尿病患者6,039人を対象とした。重度の肝障害患者を除外した上で、2014~2020年に測定された月ごとのASTおよびALT値を解析し、季節変動を評価した。AST・ALTの季節変動のパターンを評価するとともに、MASLDスクリーニングで用いられる30 IU/Lの閾値を基に、冬季と夏季で判定がどの程度変化するかを検討した。さらに、患者ごとのAST・ALTの季節変動幅を算出し、追跡終了時のHbA1cやHbA1c 7%未満の達成状況との関連を解析した。 解析の結果、AST、ALTはいずれも有意な季節変動を示し、晩秋から初冬にかけて最も高く、夏に最も低かった(P<0.001)。季節によって異常値となる割合も変動し、ASTの異常値の割合は夏の15.0%から秋には17.7%へ、ALTでは20.6%から23.2%へ上昇した。 MASLDスクリーニングで用いられるALT 30 IU/Lの閾値付近(年間平均20~40 IU/L)の患者では、約9人に1人で冬季と夏季の判定が異なった。 また、患者ごとのASTの季節変動幅が大きいほど、追跡終了時のHbA1cは高く、HbA1c 7%未満の目標を達成できない可能性も高かった。季節変動幅を4群に分けて比較すると、変動幅が最も大きい群では最も小さい群よりHbA1cが高く、変動幅の増加に伴ってHbA1cも高くなる傾向が認められた。一方、ALTでも同様の傾向がみられたが、関連はASTほど強くなかった。 著者らは、AST・ALTには再現性のある季節変動があり、特にMASLDスクリーニングの判定境界に近い患者では、測定時期によって判定が変わる可能性があると指摘している。また、季節変動幅が大きい患者ほど血糖コントロールが不良となる傾向がみられたことから、AST・ALTの解釈では季節を考慮することが重要であり、季節変動幅は肝・代謝系の不安定さを示す新たな指標となる可能性があるとしている。 なお、本研究は日本人の2型糖尿病患者を対象とした観察研究であり、食事や運動など生活習慣の影響を十分に評価できていないため、結果を他の集団に一般化することや因果関係の解釈には注意が必要としている。

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よくかめる小学生ほど体力が高い傾向、男子でより顕著

 子どもの口腔機能は、食べることだけでなく全身の発育や健康との関わりも注目されている。今回、日本の小学生約1,200人を対象とした研究で、よくかめる小学生ほど体力が高い傾向があり、その関連は男子でより顕著であることが明らかになった。研究は大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩氏、高阪貴之氏らによるもので、詳細は7月6日付で「Journal of Dentistry」に掲載された。 子どもの体力は、現在の健康状態だけでなく将来の健康にも影響するとされ、体力に関わる要因を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題となっている。一方、咀嚼機能は食物をかみ砕いて栄養を摂取する上で重要な役割を果たすだけでなく、成人や高齢者では身体機能やフレイル、生活の質(QOL)との関連も報告されている。しかし、子どもの咀嚼能力と体力との関連については十分な検討が行われておらず、特に総合的な体力との関連や男女差を調べた研究は限られていた。こうした背景から、著者らは日本の小学生を対象に、総合体力スコアを用いて咀嚼能力と体力との関連を検討し、さらに男女差についても解析した。 研究では、大阪MELON研究(Mastication research in Elementary school student teaching applying LONgitudinal Study)の一環として、大阪市内29校の市立小学校に通う小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)を対象とした。2023年4月~2024年3月に身体測定や歯科検診を実施し、咀嚼能力と体力との関連を調べた。咀嚼能力は、色が変化するガムを1秒に1回のペースで1分間かんでもらい、60回咀嚼後の色の変化を専用アプリで解析して評価した。体力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7項目を測定し、これらを基に総合体力スコアを算出した。さらに、身長や体重の影響を考慮した統計解析を行い、咀嚼能力と総合体力スコアとの関連を検討した。 解析の結果、咀嚼能力は、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げ、および総合体力スコアと有意に関連していた。男女別では、男子で上体起こし、20mシャトルラン、ソフトボール投げ、総合体力スコアとの関連が認められ、女子では20mシャトルランとの関連が認められた。 さらに、身長や体重などを考慮した解析では、全体および男子で咀嚼能力と総合体力スコアとの有意な関連が認められたが、女子では有意な関連はみられなかった。ただし、性別によって関連の強さが異なることを示す統計的な差は認められなかった。著者らは、女子で明確な原因が認められなかった背景として、発達段階や生活習慣など今回評価していない要因が影響した可能性を挙げている。 著者らは、咀嚼能力は口腔機能の指標にとどまらず、学童期の身体的な発達や機能状態とも関連する可能性があると指摘している。今回の研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできないものの、子どもの健全な成長を支える観点から、適切な咀嚼習慣や口腔機能の発達を促すことの重要性が示唆されたとしている。

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「震え」と「振るえ」、どっちを使う?【脳がととのう 神経内科学講座】第4回

<今回のモヤっとPoint>どんな「ふるえ」なら、パーキンソン病を疑うの?震えと振るえ、違いがあるの?はじめに日常診療では「ふるえていた」と報告を受けることがしばしばあります。あまり意識せずに使っているこの「ふるえ」という言葉ですが、医学的には何をさしているのでしょうか? 日本語として「ふるえ」は、国語辞典を引いてみると「ぶるぶると揺れ動くこと」や「身震いすること」といった意味を持っています。たとえば、寒さや恐怖、興奮などによって、自分の意思とは関係なく体の一部または全身が小刻みに揺れ動く現象をさすようですが、皆さんが臨床で使っている「ふるえ」もこれと同じでしょうか? 今回は、この用語の定義や臨床的な意義について整えていきましょう。「振るえ」と「震え」ふるえの漢字表記には「振るえ」と「震え」があります。脳神経内科医の視点で「振るえ」と聞けば、それは「振戦(tremor)」なのだろうと想起します。一方で、「震えていました」と聞けば、それはきっと「シバリングなのかな?」とか「ミオクローヌス」「もしかして痙攣発作?」などと脳裏に浮かびます。ちなみに、前者の振戦を呈する代表的な神経疾患にパーキンソン病があるのはご存じでしょう。もちろん、ふるえがあるからといって、パーキンソン病とは限りません。だからこそ、非専門医の先生にとってふるえの評価は悩みどころの一つではないでしょうか?臨床でのふるえ、まずは「振るえ」と「震え」でどう使い分けるか―このモヤモヤを解決してみましょう。そのためには、言葉の定義やどういった病態を想定しているのかを先に整理できるようになることが不可欠です。その観点では、振戦、ミオクローヌス、シバリングの3つを押さえておきましょう。振戦とは「リズム」と「反復」まず、臨床で大事なことは、ふるえ=すべて振戦ではないという点です。なぜなら、振戦には少なくとも次の3要素が必要だからです。【振戦の3要素】不随意involuntary本人の意図しない律動性rhythmic一定のリズムで(ある程度規則的で)振動性oscillation一定の軸を中心に反復するつまり、単に「体が勝手に動いている」とか「突然ピクっとなる」といった類の動きは、震えているように見えても振戦とは言いません。必要なのは一定のリズムであること、そしてそれが往復する運動として繰り返されていることです。この“リズムが一定”の例えとして、「貧乏ゆすり」が近いものとして挙げられます。一定のリズムで足や膝を揺らしていますよね。ほかのたとえでいえば、あの「高橋名人のボタン連打」のような動きも、一定のサイクルで繰り返される動きですね(ベテラン世代の先生なら共感!?)。逆にリズムが不規則なのは振戦ではありません。イメージとしては、雨が降り出した時に「雨粒が屋根や窓に当たる、パラ、パラパラッ、パ、パラパララ…」のようなものをさし、後述するミオクローヌスなどがこれに該当しえます。―Step1. 振戦かな? まずはリズムがあるかどうかというわけで、ふるえをみたら、まずは「振戦」らしさである「一定のリズム感」があるかどうかをチェックしましょう。不随意運動にはいろんな種類がありますが、非専門医の場合には振戦とミオクローヌスの判断が付けば十分だと思います(下図)。画像を拡大する―Step2. 振戦だと思ったら振戦にはたくさんの鑑別疾患があるのですが、コモンなものでは本態性振戦があり、そのほかには薬剤性、アルコール離脱、小脳性、機能性などもあります*1。よって、家族歴の確認、新規処方された薬剤、アルコール摂取歴などの臨床背景を確認することで、ある程度は振り分けることができます。臨床では、まずは服薬歴と飲酒歴を確認して、問題ないようなら次に、その振戦が静止時に出ているのか、動作時に出ているのかをチェックするとよいでしょう。*1甲状腺機能亢進症、低血糖、カフェイン、β刺激薬、薬剤関連(リチウム、バルプロ酸Na、SSRI/SNRI、ドパミン遮断薬)なども重要な鑑別材料―Step3. その振戦は本当に「静止時」ですか?そして、「振戦かな?」と診察中に感じた際には、静止時振戦かどうかを確認することがとても大事です。なぜなら真の静止時振戦は、パーキンソン病を疑う根拠になるからです*2。*2ただしパーキンソン病を考える前提として、寡動や無動が必須で、そこに静止時振戦または筋強剛を伴うことが重要ですでは、静止時の振戦とはどのようなものか、ポイントは以下の3つです。随意的に賦活されておらず重力に抗して保持されていない完全に支持された身体部位に生じる振戦なんだか、とても難しく感じたかもしれませんが、要は完全に脱力した無意識の状態であることが前提であり、「意図して筋肉を収縮させておらず、重力に抗した姿勢を保ってもいない身体部位に出る振戦」を静止時振戦と呼ぶのです。よく間違えやすいのが、「じっとしていてくださいね」と呼びかけて、安静を指示して確認する方法ですが、これだと完全に本人が静止しているかわかりません。なぜなら、じっとしていようと意識することで余計に力が入ってしまう人がいるからです。なお、注意を逸らしたときに振戦が消失したり、逆にリズムが変化したり、動きに変化があったり、奇妙な変動がある場合には、機能性振戦(心因性)も考えます。―Step4. 注意をそらすとよい本人が意識すればするほど力が入ることがあるため、振戦が「静止時」なのかを確認するには、本人に、ふるえのことを忘れてもらう必要があります。もちろん、「忘れてください」なんて野暮なことは言ってはいけません。その掛け声によりむしろ意識して振るえが止まらなくなったりします。要はほかのことに注意をそらせばよいわけで、「眼球運動」の神経診察がこれに該当します。「しっかり追ってくださいね」と指示しながらゆっくり指先を追視させます。そうすると、本人は手のことを忘れて真面目に追視をするのですが、この際に、無意識に本人の手先に振るえが出現していないかを検者は周辺視野で確認しましょう。このように無意識に、動かしていない身体の部位に出現する振戦を「静止時振戦」と呼びます*3。*3昔は「安静時振戦」とよく呼んでいましたが、現在は、静止時振戦が正しい神経学的な用語です。英語ではresting tremor<脳がととのう具体例>「じっとしていてもふるえているので、静止時振戦と考えます」「MMSEの検査で100から順に7を引く計算をさせているときに、右手がリズミカルにふるえていて、静止時振戦のようでした」不規則なふるえでは、リズムが一定ではない、つまりイレギュラーな不随意運動に該当するものに何があるかというと、代表的な不随意運動の1つとしてミオクローヌスがあります。これは、自分の意思と無関係に瞬発的な筋収縮が生じる症候をさします(第1回:無意識に使う「ピクつき」)*4。*4ミオクローヌスには陰性ミオクローヌスというのがあり、持続している筋活動が一瞬途切れることで生じるもので、後述するアステリクシスがそれに該当しますなおミオクローヌスが不規則に、かつ高頻度で出現していれば、あたかもブルブルと「震えている」ように見えることがあります。実際に「ふるえていました」と報告を受けて診に行くと「ミオクローヌスだった」ということも少なくありません。急性期診療であれば、代謝性脳症や薬剤性のミオクローヌス、蘇生後脳症の症例などで、頻発するミオクローヌスに遭遇することがあるので、文脈を意識すると病態を把握しやすいでしょう。続いて、「震え」という表現がしっくりくる病態には、シバリングやTMA(Transient myoclonic state with asterixis in elderly patients)などがあります。前者は時に振戦様に見えることがありますが、発熱、悪寒戦慄、低体温、敗血症、輸血・輸液反応、薬剤反応などの全身状態と関連して出現するので、臨床的な病歴やバイタルサインが重要でしょう。一方、後者は高齢者で急性に起こる「身震い様の不随意運動」で、内訳としてはミオクローヌスとアステリクシス(固定姿勢保持の障害)です。ベンゾジアゼピンの投与で反応性が良好になることが多いです。今回のスッキリ同じ「ふるえ」でも「振るえ」と「震え」はニュアンスが異なる違いの一つにリズムがあり、「振戦」は一定のリズム静止時振戦はパーキンソン病を疑うけれど、本当に静止時なのか確認が必要

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第329回 夏の「霞が関」人事で気になったこと(前編) 迫井正深氏が医務技監留任、候補だった2人の女性局長の評判は?

厚労事務次官には13年ぶり労働省出身の村山誠氏こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。8月8日に起きた千葉豪雨には驚きました。わずか数時間で街中が水浸しになり、道路が濁流になるとは⋯⋯。気候変動によりもはや亜熱帯と化した日本では豪雨の発生頻度や強度が増しており、どこに住んでいても同様の災害が起こり得ます。自分が住んでいる地域の水害ハザードマップで浸水可能性を確認しておく必要性を改めて感じた次第です。ところで、NHKニュースなどの報道で気になったのは、千葉県庁などで避難して一夜を明かした人々が、配布されたと思しき避難用アルミシートを毛布代わりに体に掛けて寝ていたことです。あのアルミシートは私も何回か使ったことはありますが、保温性・防風性はあるものの、透湿性はゼロのため、体から発散される汗(水分)が逃げず内側がベタベタになります。冬山など寒冷地での防寒対策では効果的ですが、真夏だとかえって衣類が濡れて汗冷えを起こしてしまいます。防災対策としてあの種のシートを用意している自治体は多数あるようですが、季節に応じた適切な使用法を守ってもらいたいものです。さて、恒例の夏の「霞が関」人事が発令されました。なかなか興味深い内容となっています。ということで、今回は医療に関わりの深い、厚生労働省と財務省の気になった人事について書いてみます。厚労省は8月4日付で幹部人事を発令しました。事務次官には職業安定局長の村山 誠氏(1990年労働省)が起用されました。労働省出身者の事務次官就任は、2013年に就任した村木 厚子氏以来13年ぶりです。次官級ポストである厚生労働審議官には保険局長の間 隆一郎氏(90年厚生省)が就きました。事実上の厚生行政のトップとなります。間氏については、昨年7月の本連載「第271回 遅れた厚生労働省幹部人事、『保険局長案、官邸『NG』報道を深読みする」で、「新任の間保険局長は、逆に大きな責任を負うことになります。年金制度改革法の修正で味噌をつけたものの、保険局長として『高額療養費制度の見直し』、『OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し』、『2026年度診療報酬改定』をすべて成功裏に進めることができれば、事務次官の目も出てくるかもしれません」と書きましたが、これらの重要案件を概ね円滑に進めたことで官邸の評価は高まったようです。8月10日付のメディファクスは「国会関係者の中には『村山氏が労働関係の法案を仕上げた後、間氏が次官にスライドするのではないか』との見方もある」と書いています。医系技官の次官級ポスト、医務技監は迫井正深氏留任医療関係者の関心がとくに高かったのが医系技官の次官級ポスト、医務技監の人事です。その医務技監は迫井正深氏(92年厚生省、東大卒)が留任となりました。2017年に医務技監のポストが創設されて以降、4年目に入るのは初めてのことです。各官庁のトップの在任期間は通常2年程度とされています。それだけ迫井氏が重用されているのか、ほかにふさわしい人材がいなかったのか⋯⋯。複数メディアの報道によれば、次の医務技監候補には、保険局医療課長も務めた医政局長の森光 敬子氏(92年厚生省、佐賀医大卒)、健康・生活衛生局長の大坪 寛子氏(08年厚労省、慈恵医大卒)の名前が挙がっていたとのことです。しかし、森光氏は健康・生活衛生局長に、大坪氏は国立保健医療科学院長にそれぞれ異動となりました。次の医務技監のポストを巡っては、文藝春秋7月号に掲載された中央官庁の人事を予想するコラム「霞が関コンフィデンシャル」が医務技監人事について「後任候補が『帯に短し、襷に長し』(省中堅)であるため、異例中の異例となる(迫井氏の)『在任4年目突入』説も流れる事態となっている」と書いており、その予想がまさに的中したわけです。森光氏「大きな弱点が『融通の利かなさ』」、「コネクティングルーム出張」の大坪氏「オーソドックスな役人ではない」と文藝春秋7月号コラム同記事は、保険局医療課長や医政局長などを歴任、迫井氏と同様の技官のエリートコースを歩んできた森光氏については、「大きな弱点が『融通の利かなさ』だ。省内外での説明や折衝に当たって、自らの意見を押し通そうとするきらいがあり、『熱くなると相手の話を聞かなくなる。リーダーの器とは思えない』(省関係者)。政治家への対応にも筋論が目立つため、『首相官邸が登用に難色を示している』(同前)と囁かれている」と手厳しく書いています。一方、対抗馬と目されていた大坪氏については、「第二次安倍、菅政権下で主に首相補佐官として各種政策に腕を鳴らした和泉 洋人氏(昭和51年、旧建設省)や、官房副長官を務め霞が関に睨みを利かせた杉田 和博氏(41年、警察庁)から厚い信頼を得たことで知られる。特に和泉氏とは、出張先のホテルの部屋が扉を隔てて繋がる『コネクティングルーム出張』が国会審議で取り上げられたことがつとに有名だ」とゴシップ中心に紹介、「省内では課長ポストを一度も経験することなく、少子化対策や医政担当の審議官に就き、2023年夏には局長まで昇格した変わり種」「『厚労族』議員や医療関係者とも丁々発止のやりとりを交わすやり手肌だが、『オーソドックスな役人ではない』(省幹部)点が懸念されている」と意味深な評価です。医師や研究者の評判は芳しくない大坪氏大坪氏が「課長ポストを一度も経験することなく」局長になった理由については、和泉氏や杉田氏をはじめとする官邸の何らかの庇護があったからではないかと巷間言われています。一方で、大坪氏と実際に関わった医師や研究者の評判は芳しいものではありません。2019年から2020年にかけて、厚生労働省大臣官房審議官で内閣官房健康・医療戦略室次長でもあった大坪氏は、和泉氏の下でAMEDの予算(調整費)を仕切り、iPS細胞に関する予算を正式なプロセスを踏まずに削ろうとするなど、重要な国のプロジェクトをコントロールしようとしました。この件は、国会でも質問が行われ、「大坪氏問題」として大きな話題になりました。2020年4月13日付の日経バイオテクは、「AMED第1期の通信簿 AMEDの5年を振り返る」の記事で、「第1期の5年間には、AMEDがつまずく事件も起きた。いわゆる『大坪問題』である」として、当時、厚労省の医系技官で内閣官房健康・医療戦略室参事官を務めていた大坪氏が2018年夏に健康・医療戦略室の次長の1人に就任してからのドタバタぶりを詳細に報じています。健康・医療戦略室は、安倍 晋三首相(当時)をトップとする健康・医療戦略推進本部の事務局機能を担う内閣官房の部局であり、次長は和泉首相補佐官が務める健康・医療戦略室長に次ぐポストでした。大坪氏の強引かつ独善的なマネジメント手法が実際にどのようなものだったのかを知ることができるので、以下、少々長いですが同記事から引用します。「大坪次長が就任してから、我々のオートノミー(自立性)は完全に喪失している」と怒りをぶちまけたAMED末松前理事長「AMEDにとって最も痛手だったのは大坪前次長からの『健康・医療戦略室抜きに、各省庁とAMEDは直接接触しないように』という指示だったようだ。一体運営が当たり前になっていたAMEDでは、各省庁出身の関係者が混ざって話し合いをすることによって良いアイデアやシナジー効果が生まれていたが、大坪前次長の指示以降、そうした動きがピタリと止まる。さらに2019年夏には、和泉補佐官と大坪前次長が京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を訪れ、文科省の作業部会が公益財団化を了承していたiPS細胞ストック・プロジェクトについて、山中 伸弥所長に予算削減などの方針を提示している。その後、山中所長が『密室で予算削減を決めないで欲しい』と記者会見で訴えたことで一転して支援の継続が決まったものの、官僚の横やりが表沙汰となり、業界の不信感が高まった。それと前後して、末松(誠)前理事長が始めたAMEDプロパー職員の採用が中止されたり、末松前理事長が海外出張を事実上禁止されたり、講演などの発表資料は事前にチェックを受けることを求められたりするなど、末松前理事長と健康・医療戦略室との間の溝は深まっていく。末松前理事長は2020年1月、AMEDの中長期目標などを審議する日本医療研究開発機構審議会(AMED審議会)で『大坪次長が就任してから、我々のオートノミー(自立性)は完全に喪失している』と怒りをぶちまけるなど、両者の関係は修復不可能なまでに断裂した」。「大坪問題」が起きたにもかかわらず大坪氏は順調に出世、医務技監就任の芽はまだあるこのような「大坪問題」が起きたにもかかわらず、大坪氏は健康・医療戦略室次長退任後も順調に出世し、2023年7月には厚生労働省健康局長(現在の健康・生活衛生局長)に就任しています。今回の人事で大坪氏は国立保健医療科学院長に就任しました。一部にはいわゆる“上がり”という声もあるようです。しかし、2020年8月に第2代医務技監に就いた福島 靖正氏は、国立保健医療科学院長を務めた後に昇格しています。大坪氏の医務技監就任の芽はまだあるわけです。ちなみに、今回医政局長に就任した佐々木 昌弘氏(96年厚生省、秋田大)もポスト迫井氏の候補の1人との報道もあります。来年の医務技監人事が注目されます。「官邸が介入する人事」ということでは、今回の財務省のある人事も関係者を震撼させる内容でした(この項続く)。

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50歳以下の排尿後尿漏れ、座位排尿姿勢が関連~全国調査

 排尿後尿滴下(排尿後尿漏れ)は幅広い年齢層の男性にみられる。今回、そのメカニズムについて、従来の下部尿路症状に関連する因子以外の行動的・機能的因子について、名古屋大学の冨岡 禎史氏らが全国的な疫学調査のサブ解析により検討した。その結果、50歳以下の男性において、座位での排尿姿勢が排尿後尿滴下に独立して関連することが示された。World Journal of Urology誌2026年8月4日号に掲載。 本研究は、日本排尿機能学会が実施した全国的なWebベースの疫学調査のサブ解析で、20~99歳の日本人男性3,122人を対象とした。排尿後尿滴下は質問票を用いて評価し、人口統計、臨床的特徴、生活習慣、排尿姿勢や勃起不全などの下部尿路症状関連変数について解析を行った。対象者全体および50歳以下の男性を対象に、排尿後尿滴下に関連する因子を特定するため多変量ロジスティック回帰分析で検討した。 主な結果は以下のとおり。・全体の15.0%(467人)で排尿後尿滴下が報告された。・50歳以下の男性(1,450人)では、自己申告による前立腺肥大症(2.3%)や過活動膀胱(7.1%)の割合が低いにもかかわらず、12.8%に排尿後尿滴下が認められた。・コホート全体において、勃起不全(調整オッズ比[OR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.04~1.76)およびフレイル(調整OR:1.75、95%CI:1.11~2.75)が、過活動膀胱、尿勢低下、尿線途絶、排尿終了時の腹圧排尿などの下部尿路症状関連因子と共に、排尿後尿滴下と独立して関連していた。・50歳以下の男性では、下部尿路症状関連因子と共に、座位での排尿姿勢が排尿後尿滴下と独立して関連していた(調整OR:1.55、95%CI:1.02~2.36)。 著者らは、「排尿後尿滴下はあらゆる年齢層の男性に影響を与える一般的な多因子性疾患である。下部尿路症状関連因子以外に、年齢層別に解析した結果、50歳以下の男性では座位での排尿姿勢が排尿後尿滴下と関連していることが明らかになったが、年齢との有意な相互作用は認められなかった」とまとめている。

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OSASの根本的要因の「肥満」への治療に期待/リリー・田辺ファーマ

 日本イーライリリーと田辺ファーマは、2026年5月に持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)が「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下"OSAS")」における効能・効果追加の承認を取得したことに寄せて、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の実態と新たな治療選択肢」をテーマに都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、OSASの病態やリスク、チルゼパチドの概要、診療でのアンメットニーズなどが説明された。 両社では今回の追加承認により、OSASの根本的な要因である肥満へアプローチできる治療として期待を寄せるとともに、適正使用の推進に取り組むとしている。わが国のOSAS患者数は約943万人 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群の実態と課題 新たな治療選択肢の登場」をテーマに葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 先任准教授)が、OSASの診療、チルゼパチドの臨床試験結果などを説明した。 OSASは、睡眠中に気道が閉塞することにより、無呼吸や低呼吸が発生する疾患であり、主な症状として「いびき」「無呼吸」「日中の眠気」「起床時の頭痛」などがある。わが国のOSAS患者数は約943万人と推定され、東アジア人では顔面形態の影響からOSASになりやすいといわれている。 発症の機序としては、上気道周囲の軟部組織の脂肪沈着などを介し、舌容積増大に伴う上気道の虚脱と上気道の閉塞が起こるとされる。そして、OSAS患者の80%以上は高度または中等度の上気道虚脱を有しており、そのほとんどは肥満と関連している。 OSASの定義としては、睡眠1時間当たり5回以上の無呼吸または低呼吸イベント(AHI≧5回/時間)がみられる疾患であり、OSASの重症度は無呼吸低呼吸指数(AHI)を用いて、軽症(5≦AHI<15回/時間)、中等症(15≦AHI<30回/時間)、重症(AHI≧30回/時間)で判定される。 OSASでは、高血圧、2型糖尿病、心房細動、心不全、冠動脈疾患、脳卒中、死亡などの心血管系および代謝系の併存疾患のリスク増加にも関与しており、とくに心・脳の血管疾患1)や高血圧と深く関与すると指摘されている。 また、重症OSAS患者では、致死的・非致死的CVDリスクが高くなることが報告されている2)。OSASの最大の危険因子は「肥満」である。肥満が気道閉塞や肺容積減少によりOSASを引き起こす一方で、OSASが睡眠の断片化やホルモン分泌を乱すことで肥満を引き起こすという悪循環が見られる。そのため体重が10%増加すると、中等症以上のOSASを発症するリスクが6倍に増大するとされる一方で、10%の減量によりAHIが26%改善したという報告もある3)。肥満治療がOSASの治療の鍵となるが、生活習慣への介入だけでは、体重減少と維持が不十分な場合があり、他の治療法を検討する必要もある4,5)。チルゼパチドの使用は最適使用推進ガイドラインに沿って 睡眠時無呼吸症候群の診療アルゴリズムによれば、現在中等症以上のOSASの標準治療は持続陽圧呼吸療法(CPAP)となる。また、肥満を併発しているOSASでは、CPAP療法以外の治療法もあわせて検討される。 OSASの治療法には、「OA(マウスピース)療法」「CPAP療法」「手術」「減量」があるが、各々の治療法で利点と課題がある。たとえばCPAP療法では、上気道の開存性の維持やAHIの低下(OSAS症状の改善)という利点がある一方で、アドヒアランス不良などの影響でOSASに対する治療効果が維持できない、CPAP療法に対する忍容性が悪い患者の存在などの課題もある。その他、CPAP療法での治療患者は年々増加している(2022年時点で73万人)、その一方で、未診断・未治療の患者も多数存在する(約943万人)と葛西氏は指摘する。 こうした診療環境の中でGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドがOSAS治療にも適応となった。チルゼパチドは、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進を通じて体重減少に寄与する。この体重減少作用が、「OSASの病態の根本原因の1つにアプローチする治療となる可能性がある」と葛西氏は期待を寄せる。 チルゼパチドによる治療対象は、中等症以上のOSASでBMIが27以上の患者であり、その使用では「最適使用推進ガイドライン」に沿ってさまざまな要件が必要とされる。処方に際しては2つの要件があり、施設要件として循環器内科、呼吸器内科などの標榜診療科、学会認定教育研修施設、専門医の常勤などがある。また、医師要件としては、OSASの診療に5年以上の臨床経験を有していることや日本循環器学会や日本呼吸器学会などの学会の専門医であることが要件とされている。とくに前者の要件のハードルが高く、教育研修施設など大きな医療機関での使用に限定されている。チルゼパチドは無呼吸低呼吸指数の改善と変化率、体重などを有意に低下 次に中等症から重症のOSASを有する日本人を含む国際共同第III相臨床試験(SURMOUNT-OSA試験)について説明した。この試験は、AHIが15以上のOSASを有するBMI30以上(わが国の実施医療機関ではBMI27以上)の患者を対象とし、多施設共同、無作為化、並行群間、プラセボ対照、二重盲検比較試験で行われた。 それぞれ最大耐用量(MTD)のチルゼパチド(10または15mg)を週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討し、投与52週時点のベースラインからのAHIの低下を指標とすることを目的に、次の2つの試験を実施した。 ・GPI1試験は、気道陽圧(positive airway pressure:PAP)療法を使用できないまたは望まない患者234例(うち日本人7例)。 ・GPI2試験は、スクリーニング前に少なくとも3ヵ月連続してPAP療法を実施中であり、試験期間中にPAP療法を継続する予定の患者235例(うち日本人13例)。 方法として二重盲検下でGPI1およびGPI2試験それぞれについて1:1でチルゼパチド(10または15mg)、プラセボ群に対象を無作為に割り付けた。また、チルゼパチドの開始用量を2.5mgとして週1回4週間投与後、MTD(10または15mg)に到達するまで4週間隔で2.5mgずつ増量し52週間投与した。 主要評価項目は、AHIのベースラインから投与52週時点の変化量(件/時)を評価した。その結果、投与52週時点のAHIのベースラインからの変化量について、GPI1試験ではチルゼパチド群(114例)で-25.3、プラセボ群(120例)で-5.3、GPI2試験ではチルゼパチド群(119例)で-29.3、プラセボ群(114例)で-5.5であり、プラセボ群に対し有意に減少した。また、主な副次評価項目である投与52週時点のAHIのベースラインからの変化率について、GPI1試験ではチルゼパチド群で-50.7、プラセボ群で-3.0であり、GPI2試験ではチルゼパチド群で-58.7、プラセボ群で-2.5と、プラセボ群に対し有意に低下した。同じく投与52週時点の体重のベースラインからの変化率について、GPI1試験ではチルゼパチド群で-17.7、プラセボ群で-1.6となり、GPI2試験ではチルゼパチド群で-19.6、プラセボ群で-2.3と、プラセボ群に対し有意に低下した。 安全性については、他のSURMOUNT試験と同等の安全性が示唆され、死亡などの重篤な有害事象はなかった。主な有害事象は下痢、悪心、嘔吐の順で多く、消化器症状が多く報告されていた。 最後に葛西氏は「OSASは、心不全や脳卒中などの重篤な合併症リスクが高く、生命にかかわる治療すべき疾患であり、肥満がOSASの最大の危険因子となる。肥満を合併したOSASでは減量が重要な治療法の1つであり、チルゼパチドは、OSAS治療で重要な治療選択肢として期待できる」と展望を述べ、講演を終えた。

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双極症I型に対するアリピプラゾール月1回投与のベネフィットとリスク

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、双極症I型患者の長期維持療法としてのアリピプラゾール月1回投与製剤400mg(AOM 400)のベネフィット・リスク・プロファイルを、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、Likelihood of Harm to the Patient(LHH)というエビデンスに基づく指標を用いて評価するため、AOM 400の二重盲検ランダム化比較試験の事後解析を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2026年7月1日号の報告。 データは、AOM 400とプラセボの有効性および安全性/忍容性を比較した52週間の二重盲検ランダム化中止試験より抽出した。主要有効性アウトカムは、すべての気分エピソードの再発が認められなかった患者の割合とした。主要安全性/忍容性アウトカムは、治療下で発現した有害事象(TEAE)による投与中止率とした。 主な結果は以下のとおり。・全体として、52週時点でAOM 400群(132例)の73.5%およびプラセボ群(133例)の48.9%において、すべての気分エピソードの再発が認められなかった(NNT:5、95%信頼区間[CI]:3〜8)。・躁病エピソード、混合性エピソード、うつ病エピソードの再発が認められなかった患者におけるNNTは、それぞれ5(95%CI:4〜9)、4(95%CI:3〜7)、および-116(有意差なし)であった。・TEAEによる投与中止率は、プラセボ群(25.6%)と比較し、AOM 400群(17.4%)で低く、NNHは負の値であった。・プラセボ群との比較におけるNNHを1,000と仮定した場合、52週時点におけるすべての気分エピソードの再発なしとすべてのTEAEによる投与中止を比較したLHHは200であった。 著者らは「双極症I型の長期維持療法としてAOM 400のベネフィット・リスク・プロファイルは、プラセボと比較し、良好であることが示唆された」としている。

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プラチナ感受性再発卵巣がんの卓越奏効例、PARP阻害薬中止の影響は/JAMA Oncology

 PARP阻害薬による維持療法を受け、卓越奏効(exceptional response)を示したプラチナ感受性再発卵巣がん(PS-ROC)患者を対象とした国際コホート研究の結果、卓越奏効者ではPARP阻害薬を中止しても無増悪生存期間(PFS)は悪化せず、長期的な骨髄系腫瘍の発症も低頻度であると報告された。本研究はオーストラリア・Prince of Wales Hospital and Royal Hospital for WomenのLucy Haggstrom氏らによるもので、JAMA Oncology誌オンライン版に2026年6月25日付で発表されている。 PARP阻害薬の臨床試験が設計された当時、PS-ROC患者の長期生存は期待できないと考えられていた。そのため、PARP阻害薬の維持療法は、病勢進行または許容できない毒性が現れるまで継続することとされ、それが現在の保険承認にも反映されている。そのような中、一部の患者でPFSが5年以上という卓越奏効が確認されるようになった。いつまでPARP阻害薬を飲み続けるべきか、同薬による骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)などの晩期発症リスクはどの程度か、といった臨床的な疑問が浮上することとなる。そこで、Haggstrom氏らの研究グループは、卓越奏効例の長期予後の結果と遺伝子および表現型の関連を検討した。・研究デザイン:国際共同後方視的コホート研究・対象:PARP阻害薬維持療法で卓越奏効したPS-ROC患者(PARP阻害薬開始から5年以上無増悪)・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、毒性、減量割合など 主な結果は以下のとおり。・2023年1月11日~2025年11月10日の間に、14ヵ国、41施設から320例が登録された。・卓越奏効例の平均年齢は56.4歳、追跡期間中央値は6.8年、PARP阻害薬投与期間中央値は75.0ヵ月であった。・全体集団の7.5年PFS率は88.8%、10年PFS率は78.7%であった。・320例中211例(65.9%)がPARP阻害薬を継続、109例(34.1%)はPARP阻害薬を中止した。・中止例の内訳は、医師の判断34例、毒性22例、患者の希望17例、その他12例、5年経過後の病勢進行2例であった。・病勢進行以外のPARP阻害薬中止例(85例)における10年PFS率は90.1%であった。一方、PARP阻害薬継続患者の10年PFS率は72.5%であった。・有害事象として晩期発症のMDSおよびAMLは5例(1.6%)であった。・卓越奏効例では、BRCA1のRINGドメインおよびBRCA2のDNA結合ドメインにおける異常が多くみられた。 同研究において、PARP阻害薬による卓越奏効例の多くは長期にわたり無増悪状態を維持していた。晩期の骨髄腫瘍発症リスクも限定されている。筆者らはこれらの結果から一部の患者では機能的治癒(functional cure)の可能性が示唆されるとしている。今後、卓越奏効を予測するバイオマーカーや、投与中止のタイミングを検証する前向き研究が求められる。

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心血管疾患既往の2型糖尿病、チルゼパチドでMACEリスク32%低減/BMJ

 チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の両方を活性化するインクレチン関連薬であり、血糖値の低下と体重減少をもたらすが、心血管系への効果については議論が続いている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNils Kruger氏らは、2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者では、標準治療にシタグリプチンを併用した場合と比較して、チルゼパチドの併用は主要心血管イベント(MACE)の発生を有意に抑制し、入院を要する感染症や感染症関連死のリスクも低いことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月5日号で報告された。無作為化試験を基準としたコホート研究 研究グループは、糖尿病の標準治療へのチルゼパチド追加が実臨床にもたらすMACE抑制効果を評価する目的で、無作為化試験の基準とされるデザインとデータ、解析法を用いた人口ベースのコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 解析には、米国の2つの全国的な保険請求データベースに、2022年5月~2025年5月に登録されたデータを用いた。対象は、年齢40歳以上、2型糖尿病とASCVDを有し、BMI値≧25で、心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈・頸動脈・末梢動脈疾患、または血行再建術の既往がある患者であった。 チルゼパチドの投与を開始した群(3万5,353例)と、プラセボの代替として心血管アウトカムが中立的な比較薬であるシタグリプチンの投与を開始した群(1万7,618例)について解析した。 主要評価項目は、MACE(心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合)およびその個別の構成要素とした。安全性の評価項目は、入院を要する感染症および感染症関連死などであった。心筋梗塞のリスク低下が全体を牽引 傾向スコアによるoverlap weightingで、均衡のとれた各群7,442例ずつを選出した。両群とも、平均年齢は69.8歳、女性が3,783例(50.8%)であった。また各群で、スタチンの投与を受けている患者が85.2%、SGLT-2阻害薬が21.1%、インスリンが18.1%であった。 1年の時点におけるMACEの重み付け1年リスクは、シタグリプチン群が4.4%(95%信頼区間[CI]:3.8~4.9)であったのに対し、チルゼパチド群は2.9%(95%CI:2.5~3.4)と低い値を示した。1年後のリスク差は-1.4%(95%CI:-2.1~-0.7)、治療必要数(NNT)は70であり、MACEのハザード比(HR)は0.68(95%CI:0.58~0.80)であった。2つの累積発生率曲線は3ヵ月以内に分岐し、観察期間を通じて乖離した状態で推移した。 MACEの個別の構成要素については、チルゼパチド群で心筋梗塞のリスクが低く(HR:0.67、95%CI:0.52~0.87、NNT=130)、虚血性脳卒中(HR:0.91、95%CI:0.64~1.28、NNT=2,500)では意義のある差を認めなかった。全死因死亡は、チルゼパチド群でリスクが低かった(HR:0.55、95%CI:0.42~0.72、NNT=122)。心保護効果を確認 入院を要する感染症(HR:0.64、95%CI:0.55~0.75、NNT=48)および感染症関連死(HR:0.40、95%CI:0.26~0.61、NNT=200)は、いずれもチルゼパチド群でリスクが低かった。 また、チルゼパチド群は、感染症全般(HR:0.83、95%CI:0.78~0.87、NNT=19)、尿路感染症(HR:0.83、95%CI:0.76~0.91、NNT=55)のリスクがわずかに低かったが、消化器系の有害事象(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27、推定不能)には差がなかった。 著者は、これらの結果を踏まえ、「チルゼパチドは、実臨床において心保護効果と関連していることが示された」としている。また、「意義のある体重減少が生じる前に心血管イベントの発生率曲線が早期に分岐し始めたことは、体重減少以外のメディエーターが関与している可能性を示唆し、代謝上の有益性とは独立に作用する全身性および血管性の炎症の改善を反映している可能性がある」「感染症関連イベントの減少は、観察された有益性には、より広範な非アテローム動脈硬化性の生物学的メカニズムが寄与している可能性を示唆する」「これらの実臨床の試験に基づくエビデンスは、共有意思決定に有益な情報を提供すると考えられる」と指摘している。

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抗アミロイドβ抗体薬、投与前のAPOE遺伝子検査考慮を追記/厚労省

 2026年8月17日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、抗アミロイドβ抗体薬であるドナネマブおよびレカネマブの「警告」および「重要な基本的注意」の項に、アミロイド関連画像異常(ARIA)のリスク管理などを目的とした「投与開始前のAPOE遺伝子検査の実施考慮」などが追加された。 アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症患者を対象とした臨床試験や国内外の症例データにおいて、「アポリポ蛋白E対立遺伝子4(APOEε4)ホモ接合型キャリアの患者でARIA(ARIA-浮腫/滲出液貯留[ARIA-E]およびARIA-脳微小出血・脳表ヘモジデリン沈着症・脳出血[ARIA-H])の発現割合、画像上の重症度、症候性ARIAの発現割合がより高い傾向」にあることが認められている。 そのため、製造販売後調査、国内副作用報告、承認時の臨床試験、海外添付文書、ガイドラインなどを調査し、専門委員の意見も聴取した結果、ApoEε4ホモ接合型キャリアで ARIA の発現割合が高い傾向が認められたこと、また、2026年7月にAPOE遺伝子検査が保険収載されたことから、本剤の投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮し、リスクの高いホモ接合型キャリア等を把握した上で患者および家族・介護者に十分な情報提供と説明を行うとともに、適切なリスク管理体制を築くことが適切と判断された。 対象医薬品および改訂内容は以下のとおり。◯ドナネマブ(遺伝子組換え、商品名:ケサンラ)◯レカネマブ(遺伝子組換え、同:レケンビ)警告 「ApoE ε4ホモ接合型キャリアの患者でARIAの発現割合が高かったことから、本剤の投与開始前に、APOE遺伝子検査の実施を考慮すること」を追記。重要な基本的注意 「ARIAのリスク管理のために、原則として本剤の投与開始前に、APOE遺伝子検査の実施を考慮すること。考慮した結果、投与開始前に検査を実施しなかった場合においても、本剤投与中に必要と考える場合には検査の実施を検討すること。遺伝子検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品を用い、最新のガイドライン等を参考にAPOE遺伝子検査の意義について患者及び家族・介護者に十分に説明し、同意を得ること」を追記。

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OSAに対する舌下神経電気刺激療法、二次的な健康効果も確認

 舌下神経電気刺激療法(HGNS)は、気道陽圧呼吸(PAP)療法を継続できない閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者に対する治療選択肢である。このほど新たな研究で、HGNSを受けた人ではPAP療法を継続できなかった人と比べて、初診から2年以降に糖尿病や高血圧と診断されるリスクが低かったことが示された。米シカゴ大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科のNeil Kondamuri氏らによるこの研究の詳細は、7月16日付で「JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery」に掲載された。Kondamuri氏らは、「HGNSがPAP療法に代わる治療法となり得ることを支持する結果だ」との見解を示している。 Kondamuri氏は、「ぐっすり眠れないことのつらさは、誰もが知っている。OSAは、その深刻さが十分に認識されていない『沈黙の危険』だ。われわれは、毎日のようにPAP装置が苦手で使っていないと話す患者を診ている。この治療法を継続できない患者がこれほど多いのであれば、同程度、またはそれ以上の二次的な健康効果が期待できる別の治療法が必要だ」とニュースリリースで述べている。 OSAでは、気道が閉塞して酸素濃度が低下するたびに目が覚めるため、睡眠の質が低下する。Kondamuri氏らによると、未治療のOSAは心臓や血管に負担をかけるため、さまざまな心血管系の健康問題に関連していることが報告されているという。 PAP療法は、マスクを介して一定の圧力(陽圧)をかけた空気を気道に送り込み、睡眠中に気道が閉塞しないよう開いた状態を維持する治療法である。一方、HGNSでは、舌の動きをコントロールする舌下神経の周囲に電極を巻き付けて電気刺激を与える。この電極は、胸部の皮下に植え込まれた小型デバイスにつながっており、患者が息を吸うたびに舌下神経へ弱い電気刺激を送る。刺激を受けると舌が前方へ引き出され、後方へ落ち込んで気道を塞ぐのを防ぐ。 Kondamuri氏らは今回の研究で、HGNSのためのデバイスを植え込む手術を受けた3,786人のOSA患者(年齢中央値53.0歳、男性67.7%)と、適応基準を満たしていたがHGNSを受けなかった3,396人の患者(対照群、年齢中央値56.0歳、男性71.3%)を対象に、糖尿病や高血圧と診断されるまでの期間について比較した。いずれの患者も、OSAの診断を受けたがPAP療法を継続できていなかった。HGNSの効果は初診から2年以降に現れると仮定して、初診から2年以内と2年以降に分けて解析した。 その結果、ベースライン時に心血管疾患(CVD)がなかったHGNS群では、初診から2年以内に糖尿病と診断されるリスクについては対照群との間に有意差がなかったが、2年以降ではリスクが81%低かった(ハザード比〔HR〕0.19、95%信頼区間〔CI〕0.09~0.38)。また、高血圧と診断されるリスクは、初診から2年以内では対照群より高かったものの(HR 1.70、95%CI 1.26~2.28)、2年以降では51%低かった(HR 0.49、95%CI 0.33~0.73)。 Kondamuri氏は、「これまでの研究から、PAP療法を毎晩5~6時間程度、継続して使用できていない患者では、HGNSで示されたような二次的な健康リスクを予防する効果が得られない可能性が示されている」と指摘している。その上で同氏は、「PAP装置を使用しても十分に休息できたと感じられない場合や他の治療選択肢について知りたい場合には、睡眠医療に精通した耳鼻咽喉科医に相談し、自分の気道の解剖学的特徴や希望に合わせた治療法について検討してほしい」と助言している。 ただし、今回の研究は追跡期間が短いため、HGNSが危険な不整脈や心筋梗塞、心不全などの長期的なリスク低下につながると断定するには十分ではないと、研究グループは指摘している。

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世界で長寿化が進む一方で不健康な期間も拡大

 世界中で人々はこれまでになく長生きするようになったが、延長した人生の多くを健康問題を抱えながら過ごしているようだ。「The Lancet Public Health」8月号に掲載された研究で、平均寿命と健康寿命の差(morbidity gap)は、1990年の8.8年から2023年には10.7年へと約2年拡大したことが示された。 論文の上席著者である米ワシントン大学医学部のChristopher Murray氏は、「この研究結果は、今後の健康増進は、寿命の延長だけでなく、健康な状態で生きる期間を延ばすことによって実現されることを示唆している。健康的な老化の進展は、寿命だけでなく健康寿命によって評価されるべきであり、不健康な状態で過ごす期間(以下、不健康な期間)を減らすためには、予防、長期的な疾患管理、慢性疾患のケアへの投資を拡充する必要がある」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study〔GBD〕2023)のデータを用いて、1990~2023年における204カ国・地域の平均寿命と健康寿命の差の経時的な変化を解析するとともに、この差に寄与する主な疾患やリスク因子についても評価した。 その結果、世界の平均寿命は1990年の64.6歳から2023年には73.8歳へ、健康寿命は55.9歳から63.1歳へと延長した。一方で、平均寿命と健康寿命の差も、1990年の8.8年から2023年の10.7年へと1.9年増加し、不健康な期間も長くなった。世界全体で、平均寿命に占める不健康な期間の割合は、1990年の13.6%から2023年には14.5%へ上昇した。国別では、不健康な期間が最も長かったのは米国で平均14.0年、次いでオーストラリアが13.9年、カナダが13.7年だった。また、1990年から2023年にかけての不健康な期間の拡大は、人生の終末期に集中するのではなく、成人期全体で認められた。さらに、ほぼ全ての国・地域で女性は男性より長生きする一方、不健康な期間も長かった。2023年の不健康な期間は女性が平均12.1年、男性は9.3年だった。 不健康な期間の延長に最も大きく寄与していたのは、腰痛などの筋骨格系疾患で、その次に多かったのはうつ病や不安症などの精神疾患だった。加齢性難聴、転倒や不慮の外傷、その他の非感染性疾患なども主な要因として挙げられた。また、不健康な期間に関連する主なリスク因子は、空腹時の高血糖、高BMI、母子の栄養不良、喫煙であった。 保健指標評価研究所(IHME)のシニアサイエンティフィックライターであるCatherine Bisignano氏は、「世界のほぼ全ての地域で、女性は男性より長生きしているが、その延びた年月の多くを不健康な状態で過ごしている」と指摘する。同氏は、「健康的な老化を実現するためには、障害とともに生きる期間を長引かせる疾患やリスク因子への対策を強化する必要がある。これらに対して予防やより良い長期ケアを早期から行うことは、社会や医療制度、経済に大きな利益をもたらす可能性がある」と述べている。

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