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2025年肺がん、押さえておきたいグローバルの3トピック【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第10回

第10回:2025年肺がん、押さえておきたいグローバルの3トピックパーソナリティ日本鋼管病院 田中 希宇人 氏ゲスト聖マリアンナ医科大学 古屋 直樹 氏※番組冒頭に1分ほどDoctors'PicksのCMが流れます関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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倦怠感で汎血球減少、疾患名と治療方針は?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

倦怠感で汎血球減少、疾患名と治療方針は?57歳の女性。 全身倦怠感を主訴に近医を受診し、汎血球減少のため紹介となった。白血球 1,200/μL (桿状核球 0.0%、分葉核球 15.0%、好酸球 0.5%、好塩基球 0.0%、単球 1.5%、リンパ球 83.0%)、Hb 6.5g/dL、血小板 1.2万/μL、LDH 155U/L、網状赤血球数 15,000/μL。骨髄生検の画像を示す(図)。図

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第296回 脳の水はけをよくする手術がアルツハイマー病患者に有効

脳の水はけをよくする手術がアルツハイマー病患者に有効脳全域の水流を生み出す細道が10年以上前に見つかり、以来、その謎めいた水路がアルツハイマー病などの神経変性疾患に寄与しているかどうかが検討されるようになりました。今や時代は進み、その流れを改善する方法が実際にヒトで試験されるに至っています。米国・サンディエゴでの先月11月中旬のSociety for Neuroscience(SfN)学会では、脳の水流を改善する薬やその他の手段の手始めの検討の有望な成果をいくつかのチームが発表しています。動物やヒトの脳から有毒なタンパク質を除去しうることや、神経変性疾患を模すマウスの症状を回復するなどの効果が得られています1)。とくに中国での取り組みは随分と先を行っており、アルツハイマー病の特徴のタンパク質を洗い流すのを後押しする手術をヒトに施した成果がこの10月初めに報告されました。その成功の宣言を心配する向きがある一方で歓迎もされました。その有望な成果に触発された米国の外科医のチームは、よりしっかりとした臨床試験を計画しており、早ければ来年早々にアルツハイマー病患者の組み入れを始めるつもりです。手術の試みはとても信じられないとワシントン大学の神経科学者Jeffrey Iliff氏はScience誌に話しています。しかし、13年前には知る由もなかった脳の水路が見つかったように、手術は効かないといういわれはないと同氏は言っています。さかのぼること13年ほど前の2012年に、他でもないIliff氏とその同僚が脳の細胞のアストロサイトによって形成される脳の水路一帯を初めて報告しました2)。Iliff氏らはそれをグリンパティック経路と名付けました。グリンパティック経路は脳の血管の周りに形成され、収縮と弛緩を繰り返すことで脳脊髄液(CSF)を押し出します。そうして血管に沿って流れていく間に脳の奥深くからの老廃物が回収され、髄膜リンパ管を経由して首のリンパ節に至り、やがては血流に排出されます。グリンパティック経路の活動は就寝中に最も盛んで、不眠、外傷性脳損傷(TBI)、脳血管疾患で妨げられます。そのような何らかの要因で脳の洗浄が滞ることと認知症を生じやすくなることの関連が調べられるようになっており、たとえばIliff氏らがmedRxiv誌に最近掲載した研究成果では、ヒトのグリンパティック経路がアルツハイマー病を特徴づける2つのタンパク質、ベータアミロイドとタウを睡眠中に脳の外に排出することが示されています3)。中国で開発された脳を洗い流す外科処置はリンパ浮腫の一般的な治療手段に似たもので、dcLVA(deep cervical lymphovenous anastomosis)と呼ばれます。dcLVAは首のリンパ節やリンパ管を頸静脈に繋いで脳の排水の向上を目指します。2020年に中国の形成外科医のQingping Xie氏がアルツハイマー病患者にdcLVAを初めて施しました。今やXie氏はその治療を中国やその他の国に向けて宣伝しています。他にも熱心な研究者は多いらしく、最近の報告によると今年7月1日時点で30弱の臨床試験の登録があり、アルツハイマー病患者およそ1,300例が組み入れられたか組み入れ予定となっています4)。先に触れたとおり、この10月初めには中国の鄭州大学のJianping Ye氏らが最もまとまった症例数のdcLVA手術の成績を報告しました。同国の軽~中等度のアルツハイマー病患者41例にdcLVAが施され、脳の排水の指標とされたAβやタウの血液やCSFの値の改善が3ヵ月時点の検査でおよそ3例に2例以上にみられました5)。また、病院での3ヵ月時点の認知機能検査で18例中9例のアルツハイマー病は進行が止まってむしろ回復傾向にありました。Ye氏らの報告には批判の声もあり、その中には中国の神経外科医からのものも含まれます。アルツハイマー病を脳のリンパ浮腫の一種とみなすYe氏らの考えを疑う研究者もいます。グリンパティック経路の不調の多くはアストロサイトの内側を発端としており1)、詰まりを取り除けば済むという話ではなさそうだからです。一方、Ye氏らの試験がだいぶ拙いとは知りつつもその有望な成績に見入ってしまった研究者もいます。米国のエール大学の形成外科医のBohdan Pomahac氏はdcLVAをさらに突っ込んで研究すべく、ワシントン大学のチームと組んで動物実験を行っています。すべてうまくいって今月の資金集めが済んだら、慎重に選定した初期アルツハイマー病患者にdcLVAを施す臨床試験をPomahac氏は開始するつもりです1)。手術ではなく薬で脳の水はけをよくする試みも研究されており、家の配管を定期的に掃除するように脳のグリンパティック経路を定期的または日常的に手入れする手段がやがては実現するかもしれません。参考1)Brain’s ‘plumbing’ inspires new Alzheimer’s strategies-and controversial surgeries / Science 2)Iliff JJ, et al. Sci Transl Med. 2012;4:147ra111.3)Dagum P, et al. The glymphatic system clears amyloid beta and tau from brain to plasma in humans. medRxiv. 2025 Oct 16.4)Lahmar T, et al. J Prev Alzheimers Dis. 2026;13:100335.5)Ma X, et al. J Alzheimers Dis Rep. 2025;9:25424823251384244.

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終末期がん患者の反跳性離脱症状を発見して処方再開を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第70回

 今回は、終末期がん患者における薬剤性の反跳性離脱症状を早期に発見し、処方再開を提案した症例を紹介します。がん患者では、疼痛管理や不眠に対して複数の薬剤が併用されることがありますが、全身状態の悪化に伴い服用が困難になることがあります。服用困難という理由だけで急に中止するのではなく、離脱症状のリスクを総合的に評価し、適切な漸減・代替薬への切り替えを検討することが重要です。患者情報79歳、男性(施設入居)基礎疾患小細胞肺がん(T2aN3M1c、StageIV ED)、頸髄損傷後遺症、神経因性膀胱、狭心症(時期不明)治療経過2025年6月に小細胞肺がんと診断され、7月より薬物治療(カルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ)を開始した。しかし発熱性好中球減少症・敗血症性ショックにより再入院。8月に家族へ病状を説明した後、緩和ケアへ移行する方針となり、施設へ転院・入居となった。社会・生活環境ほぼ寝たきり状態、自宅受け入れ困難のため施設入居ADLほぼ寝たきり状態処方内容1.ベザフィブラート錠50mg 1錠 分1 朝食後2.アジルサルタンOD錠20mg 1錠 分1 朝食後3.エチゾラム錠0.5mg 1錠 分1 就寝前4.クロピドグレル錠75mg 1錠 分1 朝食後5.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後6レンボレキサント錠5mg 1錠 分1 就寝前7.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠 3錠 分3 毎食後8.ドキサゾシン錠1mg 1錠 分1 就寝前9.トラゾドン錠25mg 2錠 分1 就寝前10.プレガバリンOD錠75mg 1錠 分1 就寝前11.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後12.ロスバスタチン錠2.5mg 1錠 分1 夕食後13.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント施設に入居して約1ヵ月後、誤嚥リスクと覚醒(意識)レベルの低下により全内服薬が一時中止となりました。食事摂取量は0~5割とムラがあり、尿路感染症に対してST合剤内服を開始しました。その後、患者さんは右足先の疼痛を訴え、アセトアミノフェン坐剤を開始しても効果が不十分な状態となりました。傾眠傾向にはあるものの、夜間の入眠困難もありました。問題点の評価患者さんの状態から、プレガバリン(半減期約6時間)とトラゾドン(半減期約6時間)の中断により、反跳性離脱症状が出現した可能性があると考えました。プレガバリンは電位依存性Caチャネルのα2δサブユニットに結合し、神経伝達物質の放出を抑制する薬剤であり、突然の中止により不眠、悪心、疼痛の増悪などの離脱症状が出現することが報告されています。トラゾドンについても、抗うつ薬の中止後症候群として不安、不眠、自律神経症状(悪心・嘔吐)が出現することがあります。また、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の中断による除痛効果の喪失と、プレガバリンの中断による中枢性GABA様調節の急変が、疼痛と自律神経症状の悪化に関与している可能性もあります。頸髄損傷後遺症を有する本患者にとって、プレガバリンは神経障害性疼痛の管理に有効かつ重要な薬剤と推察しました。医師への提案と経過診察へ同行した際に、医師に以下の内容を伝えました。【現状報告】全内服薬中止後に右足先の疼痛が持続し、アセトアミノフェン坐剤では十分な除痛効果が得られていない。夜間の入眠困難が続いている。傾眠傾向はあるものの睡眠の質が低下している。【懸念事項】プレガバリンとトラゾドンの急な中止により反跳性離脱症状が出現している可能性がある。プレガバリンは神経障害性疼痛の管理に有効であり、頸髄損傷後遺症を有する患者にとって重要な薬剤である。プレガバリンの中止により中枢性GABA様調節の急変が自律神経症状の悪化に寄与している可能性がある。その上で、プレガバリン75mg 1錠とトラゾドン25mg 1錠を就寝前に再開することを提案しました。就寝前の1回投与にすることで服薬負担を最小限にしつつ、離脱症状の軽減と疼痛・睡眠の改善を図ることができるためです。また、疼痛と睡眠状態のモニタリングを継続し、効果判定を行うことも提案しました。医師に提案を採用いただき、プレガバリン75mg 1錠とトラゾドン25mg 1錠を就寝前に再開することになりました。再開後、疼痛は軽減傾向を示し、アセトアミノフェン坐剤の使用頻度も減少しました。睡眠状態も改善し、夜間の入眠が得られるようになりました。覚醒(意識)レベルについても徐々に軽快しました。振り返りと終末期がん患者での注意点本症例では、疼痛の増悪が単に疾患の進行によるものではなく、プレガバリンの離脱による反跳性の症状である可能性を考慮しました。このような薬剤性の症状を見逃さないためには、処方歴の確認と薬剤の薬理作用・半減期の理解が不可欠です。さらに、症状の原因を多角的に評価することが重要になるため、医師や施設スタッフとの密な連携により、症状の経時的変化を把握して適切なタイミングで処方調整を提案することが求められます。終末期がん患者における薬物療法の最適化では、不要な薬剤を中止することも重要ですが、必要な薬剤を適切に継続・再開することも同様に重要です。本症例では、離脱症状のリスクを評価し、患者さんのQOL維持のために必要な薬剤の再開を提案することで、服薬負担を最小限にしつつ離脱症状を回避することができました。薬剤師として、薬剤の薬理作用と離脱症状のリスクを理解し、患者さんの症状変化を注意深く観察することで、終末期患者の苦痛緩和に貢献できます。参考文献1)厚生労働省医薬食品局:医薬品・医療機器等安全性情報No.308(2013年12月)2)トラゾドン添付文書情報

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治療抵抗性うつ病の認知機能維持に最適な薬物治療戦略は?

 高齢者における治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療戦略が認知機能にどのような影響を及ぼすかは、これまで明らかになっていなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のHanadi A. Oughli氏らは、高齢の治療抵抗性うつ病に対する薬物療法が認知機能に及ぼす影響を評価した。The Lancet Healthy Longevity誌2025年10月号の報告。 OPTIMUM試験の事前に規定された2次解析を行った。OPTIMUM試験は、さまざまな薬物療法の増強または切り替え戦略を比較した実践的なランダム化有効性比較試験であり、60歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に実施された試験である。対象患者は、5つの大学医療センター(米国:4施設、カナダ:1施設)から募集された。ステップ1では、治療抵抗性うつ病患者391例をアリピプラゾール増強群(1日最大15mgまで)、bupropion増強群(1日最大450mgまで)、bupropion切り替え群(1日最大450mgまで)に1:1:1の割合でランダムに割り付け分析した。ステップ2では、ステップ1の適応外患者またはこのステップ1で寛解に達しなかった患者182例をリチウム増強群(目標血漿中濃度:0.4~0.8mEq/L)またはノルトリプチリンへの切り替え群(目標血漿中濃度:80~120ng/mL)に1:1でランダムに割り付け分析した。各ステップは10週間継続した。ステップ1またはステップ2の完了後、12ヵ月間のフォローアップ調査を行った。主要アウトカムは、ステップ1およびステップ2終了時の認知機能とし、米国国立衛生研究所(NIH)ツールボックス認知バッテリーの一部であるNIHツールボックス流動性認知複合スコアを用いて評価し、ITT集団において解析した。ITT集団とプロトコール適合集団の両方において実施された探索的事後解析では、流動性認知複合スコアを構成する個々の認知課題の変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・OPTIMUM試験には、2017年2月22日~2019年12月31日に742例が登録された。・ステップ1では、対象患者619例(83%)をアリピプラゾール増強群(211例)、bupropion増強群(206例)、bupropion切り替え群(202例)にランダムに割り付け、それぞれ128例、136例、127例の認知機能に関するデータを分析した。・ステップ2では、対象患者248例をリチウム増強群(127例)またはノルトリプチリン切り替え群(121例)にランダムに割り付け、それぞれ89例、93例の認知機能に関するデータを分析した。・流動性認知複合スコアは、10週間にわたり薬物治療間で有意な差は認められなかった。・ステップ1では、フランカー抑制制御および注意検査において時間×群間交互作用が観察された(F[2,266]=3.97、p=0.020)。また、対比分析では、アリピプラゾール増強群はbupropion増強群と比較し、抑制制御の上昇と関連していることが示唆された(t=−2.82、p=0.0052)。・ステップ2では、フランカー抑制制御および注意検査において時間×群間交互作用が観察され(F[1,176]=5.20、p=0.024)、ノルトリプチリン切り替え群で抑制制御の有意な上昇が認められたのに対し(最小二乗平均の変化:+2.0、t=2.33、p=0.021)、リチウム増強群では上昇が認められなかった(-0.7、t=-0.89、p=0.37)。・治療中のうつ症状の変化は認知機能の変化と相関していなかった。・ステップ1では、bupropion増強群で転倒率が最も高かったのに対し、ステップ2ではリチウム増強群とノルトリプチリン切り替え群で転倒率は同程度であった。・重篤な有害事象の発生率は、ステップ1の3群(0.07~0.12)とステップ2の2群(0.09~0.10)で同程度であった。 著者らは「全体として、全般認知機能は薬物治療間で差が認められなかった。アリピプラゾール増強群とノルトリプチリン切り替え群は、bupropion増強群またはリチウム増強群と比較し、抑制制御において若干の優位性がある可能性が示唆された」としている。

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非小細胞肺がん、アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用における予防的抗凝固療法に関する合同ステートメント/日本臨床腫瘍学会ほか

 日本臨床腫瘍学会、日本腫瘍循環器学会、日本循環器学会、日本肺学会、日本治療学会、日本血栓止血学会、日本静脈学会は2025年12月8日、非小細胞肺がん(NSCLC)のアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法における予防的抗凝固療法の適正使用に関する合同ステートメントを発表した。 EGFR遺伝子変異陽性の切除不能進行・再発NSCLCに対する新たな治療戦略として二重特異性モノクローナル抗体であるアミバンタマブと第3世代EGFR-TKIラゼルチニブの併用療法が臨床導入された。アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法では、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症が高頻度であることが国内外の臨床試験により報告されている。このためVTE発症予防を目的として、併用療法開始後4ヵ月間にわたる直接経口抗凝固薬アピキサバンの投与が2025年3月27日付で厚生労働省保険局医療課により承認された。 しかし、本邦における診療ガイドラインでは外来化学療法時の抗がん薬によるVTE発症の予防目的で施行される抗凝固療法において推奨する抗凝固薬に関する記載がなく、同時にアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法治療中のNSCLC患者に対するアピキサバンの臨床的経験は限られているのが現状である。そこで、今回承認された新たながん治療法を安全かつ適正に導入するために、患者の安全性を最優先に考慮する必要があることから本ステートメントが発出された。ステートメント 「EGFR変異陽性の進行・再発NSCLCに対してアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法を施行する患者において、静脈血栓塞栓症予防を目的としてアピキサバン2.5mgを1日2回、4ヵ月間投与する。活動性悪性腫瘍症例に対しアピキサバンによる予防的抗凝固療法を施行するにあたり日本人では血中濃度が高くなることが知られているが、アピキサバン2.5mg1日2回投与の出血リスクについては安全性が確認されていない。そこで出血(ISTH基準の大出血*)などの重篤な合併症を生じるリスクを理解した上で、使用薬の特性、投与方法、薬剤相互作用を考慮した慎重な対応が必要である。そして、これらの治療は抗凝固療法に精通した腫瘍循環器医(循環器医)等と連携の取れる体制の下で実施されることが望ましい。」*:ISTH基準の大出血:実質的な障害をもたらす出血(脳出血、消化管出血、関節内出血など)、失明に至る眼内出血、2単位以上の輸血を要する出血

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CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。8件の無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、糖尿病の有無およびUACR(200mg/g以上、200mg/g未満)で層別化した臨床試験の参加者において、SGLT2阻害薬の使用が有効性や安全性のアウトカムに及ぼす相対的および絶対的な影響の評価を目的にメタ解析を行った。 対象は、腎疾患での使用の適応を有するSGLT2阻害薬について検討し、腎アウトカムの経過やベースラインのアルブミン尿のデータを記録した8件の無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムとして、SGLT2阻害薬の使用が臨床的な有効性と安全性に及ぼす影響を評価した。糖尿病の有無にかかわらず、有効性のアウトカムが改善 SGLT2阻害薬とプラセボを比較した試験の参加者5万8,816例(平均年齢64[SD 10]歳、女性35%、糖尿病4万8,946例、非糖尿病9,870例)を解析の対象とした。 プラセボ群と比較してSGLT2阻害薬群では、次の4つの有効性のアウトカムが糖尿病の有無を問わず改善した(非糖尿病患者の総死亡を除く)。(1)腎疾患進行率が低下(糖尿病患者:SGLT2阻害薬群33件/1,000人年vs.プラセボ群48件/1,000人年、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.60~0.70]、非糖尿病患者:32件vs.46件、0.74[0.63~0.85])(2)急性腎障害(AKI)の発生率が低下(糖尿病患者:14件vs.18件、0.77[0.69~0.87]、非糖尿病患者:13件vs.18件、0.72[0.56~0.92])(3)総入院の発生率が低下(糖尿病患者:202件vs.231件、0.90[0.87~0.92]、非糖尿病患者:203件vs.237件、0.89[0.83~0.95])(4)総死亡の発生率が低下(糖尿病患者:42件vs.47件、0.86[0.80~0.91]、非糖尿病患者:42件vs.48件、0.91[0.78~1.05])アルブミン尿による層別化は不要 このようなSGLT2阻害薬の糖尿病の有無別のHRは、さらにUACR 200mg/g以上とUACR 200mg/g未満に分けて検討した場合も同様に良好であった。 たとえば、UACR 200mg/g以上で絶対リスクが高い場合でも、このサブグループでは腎疾患進行(糖尿病患者のHR:0.65[95%CI:0.59~0.71]、非糖尿病患者のHR:0.71[95%CI:0.60~0.84])に対するSGLT2阻害薬の絶対的便益が明らかに大きいと推定された。また、UACR 200mg/g未満の患者では、他の有効性のアウトカム、とくに入院(0.91[0.88~0.94]、0.89[0.82~0.98])に関して明らかな絶対的便益を認めた。 さらに、非心不全の患者集団や、推定糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2未満の患者の解析でも、このSGLT2阻害薬の絶対的便益が保持されていた。 著者は、「これらのデータは、CKD患者におけるSGLT2阻害薬の使用に関するガイドラインの推奨から、アルブミン尿の値による患者の層別化を削除することを支持し、より広範な使用の根拠となるものである」としている。

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個別化プレハビリテーションで手術アウトカムが改善

 大きな手術を控えている場合、手術そのものや術後のリハビリテーション(以下、リハビリ)に備えてエネルギーを温存する必要があると考える人は少なくないだろう。こうした考えは十分理解できるものだが、実際には、術前から開始するリハビリであるプレハビリテーションに参加した方が良い状態につながることが、米スタンフォード大学麻酔科学・周術期医学・疼痛医学教授のBrice Gaudilliere氏らが実施した臨床試験で明らかにされた。同試験では、マンツーマンでのプレハビリテーションが最も効果的であることが示されたという。詳細は、「JAMA Surgery」に11月12日掲載された。 この臨床試験では、待機的大手術を控えた患者58人(年齢中央値57歳、女性57%)を、個別化したプレハビリテーションを受ける群と標準的なプレハビリテーションを受ける群(対照群)にランダムに割り付けて、術前の身体機能、認知機能、免疫機能、および術後の合併症を比較した。対照群には運動指導、栄養やストレス軽減に関する助言、アプリによる認知トレーニングが提供された。一方、個別化プレハビリテーション群は、リモートで理学療法士と医師が1回ずつマンツーマンで実施する週2回のコーチングを受けた。プレハビリテーション群が受けた助言の内容は対照群と類似していたが、例えば、患者の自宅のキッチンにある食材の写真や動画を見た上で栄養に関するアドバイスや健康的なレシピを提供するなど、個々の患者の能力や進捗に合わせて個別化された。 最終的に両群とも27人が試験を完了した。プレハビリテーション群では、手術前の身体的および精神的な状態を測定する全ての検査で有意な改善が見られた。また、術後の回復につながる免疫システムにも変化が認められ、特定の免疫細胞の過剰反応が起きにくくなり、手術前の基礎的な炎症レベルも低下していた。さらに、術後に重大な合併症が発生した患者の数も、対照群では11人であったのに対し、プレハビリテーション群では4人にとどまっていた。 Gaudilliere氏は、「これまでの研究から、手術後に感染症を起こしやすい人は、手術前から自然免疫応答が過剰で、過度の炎症状態にあることが明らかになっていた」と話す。過剰に活性化した免疫細胞は、逆説的に病原体への免疫反応を低下させてしまうことがあるという。同氏は、「プレハビリテーションとは、手術という大きな負担に備えて、身体的な回復力だけでなく免疫機能や神経認知機能、さらには心理的側面を整えるためのトレーニングのようなものと捉えることができる」とニュースリリースの中で説明している。 研究グループによると、正しい食生活と運動、十分な睡眠といった身体的および精神的な健康状態を向上させる生活習慣は、大手術が人体に与える大きな負荷に耐える助けになる。共著者の1人であるスタンフォード大学外科准教授のCindy Kin氏は、「全くトレーニングをせずにマラソンをする人はいない」とニュースリリースの中で話す。しかし、「現実には、手術前に大きな生活習慣の改善を行う患者は多くない」と研究グループは指摘している。Gaudilliere氏は、「医師から推奨されているにもかかわらず、実際にこうしたプレハビリテーションプログラムに参加して遵守してもらうのは極めて難しい」と言う。 研究グループは、次の課題は個別化されたプレハビリテーションが最も効果的な患者の特徴を明らかにすることであるとの見解を示している。その結果が明らかになるまでは、手術を控えた患者はどんなことでも良いので栄養、運動、睡眠を改善する小さな行動変容に取り組むと良いとKin氏は助言している。

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WHOが結核の症例数や死亡者数の最新データを公表

 世界保健機関(WHO)が11月12日に公表した最新データによると、2024年の世界での結核の推定発症者数は2023年の1080万人から1%減の1070万人、結核による推定死亡者数は2023年の127万人から3%減の123万人といずれも減少した一方、新規診断数は2023年の820万件から微増して830万件であったという。2024年の新規診断数は推定発症者数の78%に当たり、いまだに多くの人が結核の診断を受けていないことが浮き彫りとなった。WHOは、診断、予防、治療において着実な進歩が見られる一方で、資金調達と医療への公平なアクセスにおける問題は残っており、これまでに得られた結核対策の成果が失われる恐れがあると指摘している。 結核は結核菌により引き起こされる感染症で、好発部位は肺である。結核の感染経路は、活動性結核の人の咳やくしゃみにより放出された菌を吸い込むことによる空気感染や飛沫感染である。世界人口の約4分の1が結核菌を保有しているが、実際に発病するのはごくわずかである。結核は、未治療で放置すると致命的になる可能性があり、依然として世界中で死亡原因の上位を占めている。 この報告書は、184のWHO加盟国・地域から報告されたデータに基づくもの。WHOは、新規診断数の増加は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に減少した診断数の回復を反映している可能性があるとの見方を示している。 一部の国や地域では、政治的関与や投資による結核対策の成果が着実に現れている。2015年から2024年の間に、WHOアフリカ地域では結核発症率が28%、死亡者数は46%減少した。ヨーロッパ地域ではさらに大きな改善が見られ、発症率は39%、死亡者数は49%減少した。同期間中に、100カ国以上が結核発症率を20%以上、65カ国が結核による死亡者数を35%以上減少させた。 ただし、結核を世界的に終息させるには、依然として高負荷国での取り組みを加速させる必要がある。2024年には、世界での結核発症者の87%が30カ国に集中しており、特に上位8カ国(インド、インドネシア、フィリピン、中国、パキスタン、ナイジェリア、コンゴ共和国、バングラデシュ)だけで67%を占めている。 その他、結核の迅速検査実施率は、2023年の48%から2024年には54%に増加したことや、薬剤感受性結核の治療の成功率は88%と依然として非常に高いこと、薬剤耐性結核を発症する人は減少傾向にあり、治療成功率も2023年の68%から2024年には71%に改善したことなど、結核治療の向上も確認された。 このような進歩が確認されたものの、WHOは、世界全体の結核終息戦略の進捗状況は目標達成にはほど遠い状況だと警鐘を鳴らす。大きな障害となっているのは、2020年以降停滞している結核対策への国際的な資金であり、2024年時点で、予防、診断、治療に使うことができた資金はわずか59億米ドル(1ドル157円換算で9263億円)に過ぎず、2027年までに設定された目標額である年間220億米ドル(約3兆4540億円)の4分の1強にとどまっている。WHOは、米国における最近の予算削減により結核対策の進展はさらに遅れる可能性があるとの懸念を示している。

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低用量アスピリン処方が2型糖尿病患者の初回イベントリスク低下と関連――AHA

 動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往のない成人2型糖尿病患者に対する低用量アスピリン(LDA)の処方が、心筋梗塞や脳卒中、全死亡リスクの低下と関連しているとする、米ピッツバーグ大学医療センターのAleesha Kainat氏らの研究結果が、米国心臓協会(AHA)年次学術集会(AHA Scientific Sessions 2025、11月7~10日、ニューオーリンズ)で発表された。追跡期間に占めるLDA処方期間の割合が高いほど、より大きなリスク低下が認められるという。 AHA発行のリリースの中でKainat氏は、「これまでのところ、ASCVD一次予防でのLDAの有用性は証明されていない。しかし、2型糖尿病はASCVDのリスク因子である。本研究では、2型糖尿病を有し、かつASCVDリスクが中等度以上に高い集団における、一次予防としてのLDA投与の意義を検討した」と、研究背景を述べている。 この研究は、ピッツバーグ大学関連の医療機関(35以上の病院、400以上の診療所)の患者データを用いて行われた。AHAおよび米国心臓病学会(ACC)によるASCVDリスク評価スコアにより、向こう10年間でのASCVDリスクが中等度から高度と判定された、成人2型糖尿病患者1万1,681人(平均年齢61.6歳、女性46.2%)を解析対象とした。出血ハイリスク患者は除外されている。 約8年間の医療記録に基づき、LDA処方の有無、およびLDA処方期間の長さ(8年間のうち30%未満にLDAが処方されていた群、同30~70%の群、70%超の群)と、10年にわたる追跡期間中の心筋梗塞、脳卒中、および全死亡の発生率との関連を検討した。解析に際しては、傾向スコアマッチングにより背景因子を一致させた。なお、対象全体の88.6%にLDAが処方され、53.2%にスタチンが処方されていた。 解析の結果、LDAが処方されていない患者を基準として、LDAが処方されていた患者は心筋梗塞の累積発生率が低く(61.2%対42.4%)、脳卒中(24.8%対14.5%)や全死亡(50.7%対33%)も同様に、LDAが処方されていた患者の発生率の方が低かった。また、LDA処方によるそれらイベントの発生率低下は、LDA処方期間が最も長い群で最も顕著に見られた。サブグループ解析からは、LDA処方とイベント発生率低下の関連はHbA1cにかかわりなく観察されたが、HbA1cが良好な群でより顕著な関連が認められた。 Kainat氏は、「この結果にわれわれは少なからず驚いた。ASCVD既往がなくLDAが処方されていた2型糖尿病患者は、10年間の追跡期間中の心筋梗塞、脳卒中、および全死亡リスクが大きく抑制されており、LDAが長期間継続的に処方されていた患者でその影響が顕著だった」と述べている。ただし、「出血ハイリスク者を解析から除外しており、出血イベントの発生率を比較していないことは、結果解釈上の大きな限界点である」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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朝食後の歯みがきが高血圧リスク低下と関連/鹿児島大

 高血圧は生活習慣に大きく左右される疾患であり、予防には日常行動の改善が重要とされる。今回、地域住民を対象とした横断研究で、朝食後に歯を磨く習慣が高血圧の有病率低下と独立して関連することが示された。研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学の手塚綾乃氏、窪薗琢郎氏らによるもので、詳細は10月9日付で「Scientific Reports」に掲載された。 高血圧は心血管疾患(CVD)の最大の危険因子であり、その予防には血圧管理が不可欠である。しかし、日本では依然として十分な管理が行われておらず、生活習慣の改善余地が大きい。近年、歯周病をはじめとする口腔内の健康がCVDと関連することが報告されており、歯周治療により血管機能や動脈硬化マーカーが改善することも示されている。さらに、歯みがき頻度の低さがCVDリスクに関連するとの報告もあるが、歯みがきのタイミングと高血圧との関係は明らかでない。そこで本研究では、地域住民を対象に、歯みがき習慣と高血圧との関連を検討した。 本研究では、鹿児島大学と垂水市による共同研究「垂水研究」の横断データを用い、垂水市在住の40歳以上の住民1,024人を対象とした。歯みがき習慣を調べるため、参加者には起床時、朝食前後、昼食後、夕食前後、就寝前の各タイミングにおける歯みがきの有無と頻度を質問票で回答してもらった。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬使用者と定義した。群間比較にはt検定とカイ二乗検定を用い、歯数の比較にはウィルコクソンの順位和検定を用いた。高血圧を従属変数、歯みがき習慣を独立変数として、単変量および多変量ロジスティック回帰解析(モデル1:年齢・性別で調整、モデル2:BMIや喫煙歴・薬物使用・総エネルギー摂取量などの生活習慣で追加調整)を実施した。 最終的な解析対象には940人(男性361人、平均年齢67歳)が含まれた。このうち、529人(56.3%)が高血圧群、411人(43.7%)が非高血圧群に分類された。 全体の歯みがき実施率は、起床時33%、朝食前8%、朝食後69%、昼食後48%、夕食前4%、夕食後42%、就寝前51%であった。歯を1日3回以上磨く参加者は合計476人(51%)であった。高血圧群は非高血圧群に比べ、朝食後(P<0.001)・昼食後(P<0.001)・就寝前(P=0.022)の歯みがき頻度が低く、また1日3回以上磨く頻度の高い参加者も少なかった(P<0.001)。単変量ロジスティック回帰解析では、朝食後(オッズ比[OR]0.577、95%信頼区間[CI]0.433~0.768、P<0.001)、昼食後(OR 0.571、95%CI 0.441~0.741、P<0.001)、就寝前(OR 0.737、95%CI 0.569~0.955、P=0.021)の歯みがき、さらに1日3回以上の歯みがき頻度(OR 0.554、95%CI 0.427~0.719、P<0.001)が、いずれも高血圧リスクの低下と有意に関連していた。 次に多変量ロジスティック回帰解析を実施した。年齢・性別のみ調整したモデル1では、朝食後の歯みがき(OR 0.604、95%CI 0.444~0.823、P=0.001)および1日3回以上の歯みがき(OR 0.735、95%CI 0.554~0.973、P=0.032)が、高血圧リスクの低下と有意に関連していた。さらに、追加調整したモデル2では、朝食後の歯みがきのみが独立して高血圧リスクの低下と関連していた(OR 0.688、95%CI 0.496~0.954、P=0.025)。 著者らは、本研究が横断研究であることや、任意参加であったため選択バイアスの可能性などの限界に言及しつつ、「歯みがき習慣、特に朝食後の歯みがきは、高血圧リスクの低下と独立して関連しており、日常的な口腔ケアが循環器疾患予防の一助になる可能性がある」と述べている。

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成人期発症の再発型ネフローゼ症候群に対する抗CD20抗体の治療効果(解説:浦信行氏)

 成人におけるネフローゼ症候群の頻度は膜性腎症(MN)が多いが、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)や巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)も少なくない。これらはステロイド療法に効果を示す一方で、頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)やステロイド減量で再燃するステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)を呈することが多い。その結果、ステロイド使用期間が長期化し、骨脆弱性や感染症などの合併症を来しやすい。 CD20はB細胞の表面に存在するタンパク質で、B細胞の活性化や増殖に関与する細胞表面マーカーである。この病態に対する治療的アプローチとして、タイプI抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)の治療効果が検討されるようになった。現在まで活動性ループス腎炎(LN)やMNで有効性が検討されている。活動性LNは全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重症病態の1つであり、LN患者の約20%が15年以内に末期腎不全に至る。しかし、LNの臨床試験においてその評価は無効・有効とする報告が相半ばする。MNに関してはシクロスポリンとの比較試験(MENTOR試験)が報告されており、RTXは有意に寛解率が高値であったが、それでも部分寛解も含めて60%にとどまる。 このたびは、成人におけるFRNSとSDNSを対象とした、わが国での多施設共同研究の結果がJAMA誌オンライン版として2025年11月5日号に掲載され、その概要が11月21日配信のジャーナル四天王に掲載された。RTX群36例と対照群36例の小規模試験で、投与のタイミングは1、2、25週の3回である。解析対象は66例にとどまり、組織診断では両群のMCNS+FSGSが各々93%と94%と多数を占めたが、49週での無再発率はRTX群で87.4%と良好な結果を示した。副作用は開始後30~120分の輸液反応が主体で、RTXによる直接の作用とは考え難いが、劇症肝炎や無顆粒球症などの重篤な副作用の報告があり、慎重な経過観察が望まれる。今後必要な検討はより多数例で長期の試験であるが、望ましい投与のタイミングや投与量の検討も治療効果を高めるため必須である。

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第272回 改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省

<先週の動き> 1.改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省 2.OTC類似薬と低価値医療について、保険給付の選別が本格化/政府 3.出産無償化へ正常分娩を保険適用、全国一律「分娩基本単価」導入へ/厚労省 4.高齢者の応能負担強化、「通い放題」外来特例にメス/政府 5.美容医療に国がメス 改正医療法で安全管理と情報公開を義務化/厚労省 6.訪問看護付高齢者住宅の過剰請求、2026年度改定でどこまで是正できるか/厚労省 1.改正医療法が成立、来年度から病床削減・医師偏在・医療DXが同時始動へ/厚労省医師偏在対策、病床削減支援、医療DXの推進などを柱とする改正医療法が、2025年12月5日の参議院本会議で可決・成立した。2026年4月以降、順次施行される。今回の改正は、2024年末に厚生労働省がまとめた医師偏在対策と、2040年を見据えた地域医療構想の再設計、さらに電子カルテの全国共有を軸とする医療DXを同時に動かす「構造改革法」と位置付けられる。最大の注目点の1つが「病床削減への公的支援の明文化」である。都道府県は、医療機関が経営安定のため緊急に病床数を削減する場合、支援事業を実施でき、国が予算の範囲内で費用を補助する。2025年度補正予算では約3,490億円の「病床数適正化緊急支援基金」を創設し、稼働病床1床当たり410万円、非稼働病床では205万円を支給する。これまでの補助分と合わせ、最大約11万床の削減が想定され、削減後は基準病床数も原則引き下げられる。実質的に国主導での病床整理が本格化する。医師偏在対策も制度として動き出す。都道府県は「重点医師偏在対策支援区域」を設定し、当該地域で勤務する医師に対して保険料財源による手当を支給できる。その一方で、外来医師が過剰な都市部では、無床診療所の新規開業に事前届け出制を導入し、在宅医療や救急など不足機能の提供を要請できる。したがわない場合は勧告・公表、さらには保険医療機関指定期間の短縮も行われ得る。都市部での開業自由は、制度的に大きく制約される局面に入る。そして、医療DXでは、2030年末までに電子カルテ普及率100%を目標に明記された。電子カルテ情報共有サービスの全国展開、感染症発生届の電子提出、NDB(全国レセプト・健診データ)の仮名化データ提供などが法的に後押しされる。今後は医療機関にとって、電子カルテ未導入のままでは制度対応が困難になる。さらに、地域医療構想は「病床中心」から「入院・外来・在宅・介護の一体設計」へ刷新される。高齢者救急、地域急性期、在宅連携、急性期拠点、専門機能といった医療機関機能の報告制度が新設され、2040年を見据えた再編の基盤となる。加えて、美容医療への規制整備も盛り込まれ、安全管理措置の報告義務や管理者要件(一定期間の保険診療従事歴)などが導入される。自由診療偏重への歯止めが制度として明確になった。今回の改正は、病床・開業・人材・DX・自由診療までを横断的に再設計する点に本質がある。医療機関、勤務医、開業医すべてにとって、経営・キャリア・診療体制の前提条件が同時に変わる転換点となる。 参考 1)医療法等の一部を改正する法律案の概要(厚労省) 2)医師の偏在対策へ 改正医療法など参院本会議で可決・成立(NHK) 3)医師の偏在是正、開業抑制へ DX推進や手当増も、改正医療法(東京新聞) 4)都市部の診療所、26年度から開業抑制 改正医療法が成立(日経新聞) 5)改正医療法が成立 病床削減支援盛り込み 美容医療は規制整備へ(毎日新聞) 6)病床削減の支援事業盛り込む、改正医療法成立 医療機関機能の報告制度を創設(CB news) 2.OTC類似薬と低価値医療について、保険給付の選別が本格化/政府政府は社会保障改革の柱として、「OTC類似薬」の患者負担見直しを2025年内に結論付け、2026年度予算・制度改正へ反映させる方針を明確化した。高市 早苗首相は経済財政諮問会議で、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映を含む応能負担の徹底、高額療養費制度の見直しを年末までに整理するよう財務相・厚労相に指示した。狙いは現役世代の保険料負担軽減と医療費抑制である。一方、自由民主党と日本維新の会の協議は難航している。維新はOTC類似薬の「保険適用除外」による最大1兆円の医療費削減を主張してきたが、自民・厚生労働省は必要な受診抑制や患者負担増への懸念から慎重姿勢を崩していない。現在は「保険適用を維持した上で、特別料金として定率上乗せする案」と「原則、自費化し配慮対象のみ保険適用とする案」が併存し、党内でも意見が割れている。これに対し、全国保険医団体連合会はOTC類似薬の保険適用継続を求める21万筆の署名を提出し、患者団体・医療団体の反対姿勢も鮮明化した。同時期に厚労省は「低価値医療」対策にも着手し、風邪への抗菌薬投与や腰痛への一部鎮痛薬など、科学的有効性に乏しい診療行為を2028年度診療報酬改定で抑制・保険除外も視野に入れる方針を示した。OTC類似薬の問題は、単なる薬剤負担の見直しにとどまらず、「保険給付の選別」と「低価値医療排除」を同時に進める医療費構造改革の試金石となりつつある。 参考 1)社会保障分野における今後の対応について(経済財政諮問会議) 2)高市首相 「OTC類似薬」含む薬剤自己負担など年末までに結論を(NHK) 3)風邪に抗菌薬・腰痛に一部鎮痛薬、効果乏しい「低価値医療」は年1,000億円以上…医療保険の対象除外化も検討(読売新聞) 4)「OTC類似薬」足踏みの自維協議 保険適用除外、維新内で意見分裂(朝日新聞) 5)OTC類似薬の保険適用「継続を」21万筆署名提出-保団連(CB news) 3.出産無償化へ正常分娩を保険適用、全国一律「分娩基本単価」導入へ/厚労省厚生労働省は、12月4日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、正常分娩を公的医療保険の対象とし、全国一律の「分娩基本単価」を設定して自己負担をゼロにする案を提示した。現在の出産育児一時金(50万円)は廃止し、分娩費を現物給付で賄う方向で、導入は2027年度以降とされる。正常分娩はこれまで自由診療で、24年度の平均費用は約52万円と物価高もあり上昇傾向となっており、東京都と熊本県では20万円超の地域差もある。出産育児一時金の引き上げに合わせて費用も上昇するという「いたちごっこ」や、費用が一時金を下回る場合に差額が妊婦側に渡る仕組みへの公平性の疑問も指摘されてきた。新制度では、標準的な出産費用をカバーする全国一律の基本単価を設定し、「基本単価×分娩件数」を産科医療機関の収入とする包括払いが想定されている。安全な分娩のための手厚い人員・設備体制や、ハイリスク妊婦の積極受け入れには加算評価を行う方向である。その一方で、帝王切開など異常分娩や妊娠合併症への対応は従来通り3割負担の保険診療を継続し、「お祝い膳」やエステ、写真撮影などアメニティは保険外で原則自己負担とする。産科側からは、基本単価が不十分だとクリニックの撤退が進み、周産期医療体制が崩壊しかねないとの懸念が強く、日本産婦人科医会などは慎重な検討を要請している。他方で、包括払いにより年間収入の予見可能性が高まることや、サービス内容の「見える化」により妊婦が納得して施設を選択できる利点もある。厚労省は施設の準備状況を踏まえ、現行の一時金制度と新制度を一定期間併存させつつ段階的に移行する案も示しており、少子化対策と産科医療提供体制の両立をどう図るかが、今後の焦点となる。 参考 1)医療保険制度における出産に対する支援の強化について(厚労省) 2)出産無償化へ「分娩費用」を全額公的保険で、全国一律の「公定価格」定める案提示…実施は27年度以降の見通し(読売新聞) 3)出産無償化へ、分娩費用を全国一律に 厚労省案「お祝い膳」など対象外 業界、収益悪化を懸念(日経新聞) 4)分娩費に「基本単価」設定 厚労省案 手厚い人員体制などへの評価検討(CB news) 5)産科医療機関を維持できる水準の「正常分娩1件当たりの基本単価」を設定、妊産婦の自己負担はゼロへ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 4.高齢者の応能負担強化、「通い放題」外来特例にメス/政府12月5日に開かれた経済財政諮問会議で、2026年度予算編成方針として、医療・介護費の「応能負担」の徹底と、現役世代の保険料率の上昇を止め引き下げを目指す方針が示された。民間議員からは、物価高・賃上げを診療報酬などに適切に反映しつつ、高齢者を中心に金融所得や資産も踏まえた負担を求めるべきとし、OTC類似薬を含む薬剤自己負担、高額療養費制度、介護利用者負担の見直しを年末までに結論付けるよう求めた。厚生労働省はこれと並行して、高額療養費制度の具体的な見直し案を調整中である。70歳以上の外来医療費を抑える「外来特例」については、月額上限(現行1万8,000円など)の引き上げや対象年齢引き上げを検討し、現役世代に存在しない実質「通い放題」状態を是正する。その一方で、がん・難病など長期療養患者向けの「多数回該当」は、上限引き上げ案への強い反発を受け、上限額据え置きとする方向で一致しつつあり、月単位で上限に届かない患者にも対応するため、新たに年間の負担上限を設ける案も示された。所得区分も細分化し、高所得高齢者には2~3割負担を拡大する一方、低所得層の負担増は避けるとされる。さらに、後期高齢者医療制度から、株式配当など金融所得を保険料算定に反映させるため、法定調書とマイナンバーを用いた情報基盤整備が進められている。これら一連の改革は、2026年度診療報酬改定での賃上げ対応とセットで、高齢者負担の精緻化と給付の重点化を通じ、現役世代の保険料負担を抑制することが狙いであり、医療現場には高齢患者の受診行動や窓口負担の変化を踏まえた説明と支援体制の整備が求められる。 参考 1)社会保障改革の新たなステージに向けて(経済財政諮問会議) 2)医療・介護費「応能負担の徹底を」 諮問会議の民間議員(日経新聞) 3)70歳以上の負担上限引き上げ 高額療養費見直し 厚労省調整(時事通信) 4)長期治療患者の軽減策を維持 高額療養費見直し案判明、厚労省(東京新聞) 5)高額療養費制度 「多数回該当」の上限額据え置きで調整 厚労省(NHK) 5.美容医療に国がメス 改正医療法で安全管理と情報公開を義務化/厚労省若手医師が、初期研修後すぐに美容医療へ進む「直美(ちょくび)」問題が国会で相次いで取り上げられ、上野 賢一郎厚生労働大臣は「多くの医師が特定の診療科を選択するのは好ましくない」と述べ、医師偏在や医療安全の観点から懸念を示した。形成外科や救急科、麻酔科などの十分な臨床経験を経ずに美容医療に従事する若手医師が増えることで、合併症対応や重篤事例への対処能力が不足している点が問題視されている。こうした状況を受け、2025年12月に成立した改正医療法では、美容医療に対する規制整備が盛り込まれた。具体的には、美容医療を実施する医療機関に対し、専門医資格の有無、安全管理体制、合併症対応の体制などを都道府県へ定期的に報告・公表させる制度を新設し、行政が実態を把握できる仕組みを整える。背景には、美容医療を巡る深刻な被害の急増がある。国民生活センターへの相談はこの10年で約5倍に増え、2024年度は1万737件と過去最多、合併症や後遺症の相談も約900件に達した。レーザー脱毛による熱傷、脂肪吸引後の高熱・感染症、充填剤による慢性炎症や敗血症など、生命に関わる事例も多い。美容医療は原則自由診療であり、後遺症や合併症の治療も保険適用外となるケースが多く、患者は長期にわたる高額な自己負担を強いられている。その一方で、施術を行った美容クリニックが合併症対応を十分に行えず、救急搬送先が見つからない事例も相次いでいる。こうした中、春山記念病院(東京都)のように、美容医療の合併症に特化した救急外来を設置し、提携クリニックが治療費を負担する新たな連携モデルも生まれている。厚生労働省は、安全管理報告の義務化や合併症対応指針の整備を進めており、今後、美容医療は「自由診療だから自由」という扱いから、安全性と責任を強く問われる分野へと転換点を迎えている。 参考 1)改正医療法が成立 病床削減支援盛り込み 美容医療は規制整備へ(毎日新聞) 2)若手医師が美容医療に直接進む「直美(ちょくび)」、国会で質疑 厚労相「好ましくない」(産経新聞) 3)美容医療、被害相談が急増 後遺症など不十分な対応多く(日経新聞) 6.訪問看護付高齢者住宅の過剰請求、2026年度改定でどこまで是正できるか/厚労省訪問看護ステーション併設のホスピス型住宅を巡り、診療報酬の見直しが本格化している。日本在宅医療連合学会が行なった調査結果では、ホスピス型住宅で訪問診療を行う医師の4割が「訪問看護指示書に虚偽病名や頻回訪問の記載を求められた経験あり」と回答し、こうした要請を断った結果、主治医変更などの圧力を受けた医師は6割に及んだ。外部の訪問看護ステーション利用を原則認めない住宅も9割近くに達し、「同一建物・高頻度訪問」に診療報酬が集中する現在の仕組みの歪みが露呈している。厚生労働省は、2026年度の診療報酬改定に向けて、高齢者住宅入居者への訪問看護について医療保険点数を細分化し、同一建物内の多数利用・短時間の頻回訪問に対する評価を引き下げる方針を11月12日の中央社会保険医療協議会(中医協)で示した。介護保険ですでに導入されている「同一建物減算」を参考に、利用者数や訪問回数に応じた段階的減算や、1日複数回訪問の新たな評価区分創設が検討されている。また、頻回訪問を医療保険で認める条件として、訪問看護指示書に主治医の医学的判断と必要性を明記させる案も中医協で議論されている。医師側への影響は小さくない。第1にホスピス型住宅への訪問診療を収益の柱としてきた在宅クリニックでは、併設訪問看護の報酬が縮小すれば、全体の経営モデルの見直しを迫られる。住宅側から「点数を落とさないように」と指示書への記載を求められる場面は今後さらにグレーゾーン化し、監査リスクも高まる。虚偽病名や過剰指示への関与は、事業者だけでなく医師自身も問われかねない。一方で、診療報酬側に明確なルールが入ることで、「指示書を書かされている」医師の立場はむしろ守られる可能性もある。頻回訪問が必要な末期がんや難病患者については、医学的根拠を添えて指示を出せば正当に評価される一方、「全員一律1日3回」といった運用は点数上もメリットを失い、事業者のインセンティブは弱まる。結果として、患者の症状に応じた訪問頻度の再設計が求められるだろう。ホスピス型住宅は本来、自宅療養が困難な終末期患者の受け皿として一定の役割を果たしてきた。その社会的ニーズを認めつつ、「営利目的の頻回訪問」と「必要な24時間体制」を診療報酬でどう切り分けるかが次改定の焦点となる。医師には、自らの訪問看護指示がどのような点数体系に乗っているのかを理解し、不適切な請求に巻き込まれない距離感と、必要な患者には十分な看護支援を確保する姿勢の両立が求められている。 参考 1)中央社会保険医療協議会資料 在宅その3(厚労省) 2)ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査結果(速報)(日本在宅医療連合学会) 3)ホスピス型住宅における訪問看護と訪問診療の連携に関する実態調査報告(同) 4)ホスピス住宅、医師に不適切要求 虚偽の病名や過剰な訪問回数(共同通信) 5)過剰な訪問看護の是正へ診療報酬下げ 厚労省、一部事業所が高収益で(日経新聞) 6)ホスピス型住宅への訪問看護指示書、4割の医師が不適切な記載を要求された経験あり(日経メディカル) 7)今、話題のホスピス型住宅を現場の医師はどう見ているか(同)

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事例37 タケキャブの査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では継続して投与していたPPI、ボノプラザン(商品名:タケキャブOD錠)20mgがB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を適用されて査定になりました。傷病名には、「胃潰瘍」と「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」があります。添付文書と照らし合わせても投与は妥当ではないかと考えられます。ただし「胃潰瘍」が傷病名欄上位に表示されていたため、審査機関におけるAIによるレセプト振分にてこちらを主病と判断され、査定対象に分類された可能性もあるのではないかと考えました。医師と相談して、「当初、十二指腸吻合部に潰瘍を認めPPI処方。胸やけ症状が持続。2025年1月の上部消化管内視鏡検査にて、潰瘍は改善傾向にあったが、LA Grade(改訂版 ロサンゼルス分類)Bの逆流性食道炎を認め、維持療法が必要な難治性と判断し、PPIを継続処方している」と理由を添えて再審査申請を行ったところ、復活しました。傷病名に「胃潰瘍」と併存の「逆流性食道炎」の場合は、それぞれに対するPPIの処方限度日数が異なるため(事例内「要約」参照)、8週間を超える場合には「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」と表記されているかを確認するようにアラートを表示させて、査定対策としています。

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英語で「水ぼうそう」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第41回

医学用語紹介:水痘(みずぼうそう) varicella子供のころに多くの人が経験する「水ぼうそう」。日本語でも、専門用語としては「水痘」という別の言葉が使われます。この「水痘」に当たる英語の専門用語はvaricellaですが、このままでは患者さんや心配している家族に伝わりにくいでしょう。このよくある疾患について、誰にでもわかりやすく伝えるには何と言えばよいでしょうか?講師紹介

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育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―

女性医師は仕事と子育てを両立できる?インタビューから構造的問題を分析!出産後、多くの女性が仕事と家庭のトレード・オフの問題に直面します。常勤を続ける者、離職する者、復帰を選ぶ者/選ばない者……。彼女たちの育児とキャリアに影響を与えたものは、一体何でしょうか?本書では、「女性医師」に焦点を当て、26名の当事者にインタビューを行いました。「女性医師」という専門的な職種ながら、彼女たちがぶつかる問題は、現代の日本で働く女性ならば誰しもに共通するものです。ハイキャリアな「医師」という仕事を選んだ女性でさえ、時には意にそぐわずキャリアを諦めることもある。その事実の裏にこそ、個人の「努力」だけでは埋められない構造的な問題が横たわっています。働く女性だけでなく、働く男性や家族、部下を持つ管理職や人事にまで読んでいただきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―定価2,178円(税込)判型四六判頁数240頁発行2025年11月著者内藤 眞弓ご購入はこちらご購入はこちら

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若年女性の4人に1人が低体重:運動習慣が与える影響はBMIで異なる

 日本では若年女性(18~29歳)の約20〜25%が低体重(BMI:18.5未満)で、将来的な健康リスクを抱え、社会問題となっている。「やせ=美」という社会的/文化的理想(やせ理想)の内在化が強く、これが「健康ではなく、見た目のためのやせ志向」を助長している可能性がある。順天堂大学・室伏 由佳氏らは、運動習慣が身体満足度に与える影響を、「やせ理想の内在化」と「自尊心」を通じて評価し、とくに低体重女性と標準体重女性(BMI:18.5~25未満)でその違いを検討することを目的とした研究を行った。本研究結果は、BMC Public Health誌2025年11月20日号に発表された。 2023年5月、日本全国のオンラインモニターを通じ、18~29歳の女性を対象に調査を行った。最終解析には低体重400例(平均BMI:17.4)と標準体重189例(平均BMI:20.6)の計589例が含まれた。「運動習慣」は、日本の国民健康・栄養調査の定義に倣い、「過去1年以上、週2回以上、1回30分以上の運動を実施」で判定した。また、主観的な身体満足度、外見に対する社会文化的態度、自尊心も評価した。 主な結果は以下のとおり。・両群とも約50%の参加者が定期的な運動習慣(平均週2.5日)があると報告した。低体重群では、運動習慣が「やせ理想の内在化」を軽減させ、「自尊心」を向上させることで身体満足度が向上していた。・一方、標準体重群では、運動習慣が「やせ理想の内在化」を軽減させ、身体満足度を向上させたものの、「自尊心」には有意な影響を与えなかった。 研究者らは「両群ともに、運動習慣の有無に大きな差はなかったが、運動の心理的効果(身体満足度への影響)は、低体重群と標準体重群で異なった。この結果は、BMIによって運動習慣が身体満足度に影響を与える経路が異なり、若年女性の身体満足度向上のためには、BMIに応じて異なるアプローチが必要であることを示唆している。低体重女性に対しては、運動習慣を通じて『やせ理想の内在化』を軽減させ、『自尊心』を向上させることが重要である。一方、標準体重女性に対しては、運動習慣とは別に直接『自尊心』を向上させる介入がより効果的である可能性がある。近年の研究では、身体活動が不十分で食事摂取量が少ない若年女性は、肥満者と同様の代謝プロファイルを示し、将来的に糖尿病発症リスクが高まることが明らかになっている。本研究は、日本の若年女性における低体重問題に対処するための多面的アプローチの一環として、運動習慣の役割を明確にした点で意義がある」とした。

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HR+/HER2-進行乳がん1~2次治療、パルボシクリブvs.ribociclib vs.アベマシクリブ

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次および2次治療として、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法は標準治療となっている。パルボシクリブ、ribociclib、アベマシクリブの3種類のCDK4/6阻害薬について、内分泌療法との併用におけるリアルワールドでの生存ベネフィットを比較した多施設共同後ろ向きPOLiCDK試験の結果を、ポーランド・Military Institute of Medicine-National Research InstituteのRenata Duchnowska氏がBreast誌オンライン版2025年11月24日号で報告した。 POLiCDK試験では、2017年9月~2025年1月にポーランドの16施設において、1次または2次治療として内分泌療法との併用でパルボシクリブ、ribociclib、またはアベマシクリブによる治療を受けたHR+/HER2-進行乳がん患者の、無増悪生存期間(PFS)、PFS2(CDK4/6阻害薬開始から後続治療後の病勢進行/死亡までの期間として定義)、および全生存期間(OS)を比較した。内分泌療法感受性/抵抗性により層別化し、ベースライン特性の不均衡を調整するため逆確率重み付け法(IPTW)を用いて解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2,063例(パルボシクリブ701例、ribociclib 968例、アベマシクリブ394例)のうち、1,583例(76.7%)が1次治療、480例(23.3%)が2次治療でCDK4/6阻害薬の投与を受けた。・927例(44.9%)がde novo症例、819例(39.7%)が内分泌療法歴なし、158例(8.9%)がprimary resistant、808例(39.2%)がsecondary resistantであった。・追跡期間中央値は、パルボシクリブ群35.9ヵ月vs.ribociclib群24.1ヵ月vs.アベマシクリブ群21.4ヵ月であった。・1次治療としてCDK4/6阻害薬とアロマターゼ阻害薬の併用療法を受けた患者において、PFS中央値はパルボシクリブ群30.3ヵ月vs.ribociclib群36.6ヵ月vs.アベマシクリブ群33.4ヵ月、PFS2中央値は45.0ヵ月vs.43.0ヵ月vs.39.3ヵ月、OS中央値は46.8ヵ月vs.64.7ヵ月vs.NRであり、3つの評価項目(PFS、PFS2、OS)すべてにおいて、薬剤間で有意な差は認められなかった。内分泌療法歴のない症例でも同様だったが、secondary resistantの症例ではアベマシクリブとribociclibがパルボシクリブよりも良好な転帰を示した。・1次治療としてCDK4/6阻害薬とフルベストラントの併用療法を受けた患者において、PFS中央値は、パルボシクリブ群14.4ヵ月vs.ribociclib群26.1ヵ月vs.アベマシクリブ群15.8ヵ月、PFS2中央値は19.8ヵ月vs.35.7ヵ月vs.24.1カ月、OS中央値は27.7ヵ月vs.39.7ヵ月vs.34.5ヵ月であり、ribociclibは3つの評価項目すべてでパルボシクリブと比較し良好な転帰を示した。内分泌療法歴のない症例でも同様だったが、secondary resistantの症例では3剤間の差はみられなかった。・2次治療においては、3剤間の差はみられなかった。・調整ハザード比においても同様の傾向が示されたが、いずれか1剤の一貫した優越性は示されなかった。 著者らは、HR+/HER2-進行乳がんにおけるCDK4/6阻害薬と内分泌療法による併用療法の転帰と関連する主要な因子として、内分泌療法感受性/抵抗性および内分泌療法の種類が挙げられるとまとめている。

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10人に1人が糖尿病疑い、男性は3割が肥満/国民健康・栄養調査2024

 厚生労働省は2025年12月2日、「令和6年国民健康・栄養調査」の結果概要を発表した。この調査は、健康増進法に基づき毎年実施され、2024年10〜11月に日本全国から無作為に選ばれた約1万世帯が、身体・栄養摂取状況、生活習慣についての調査に回答した。結果の要点は以下のとおり。【糖尿病】推計有病者は約1,100万人、治療中は約7割にとどまる・HbA1c値と自己申告に基づく推計によると、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,100万人と推計され、1997年以降、一貫して増加している。一方、「糖尿病の可能性を否定できない者」は約700万人で、こちらは2007年をピークに減少傾向を示した。・20歳以上の「糖尿病が強く疑われる者」の割合は12.9%(男性17.7%、女性9.3%)、「糖尿病の可能性を否定できない者」は男女とも8.2%であった。「糖尿病を指摘された経験がある者」のうち現在治療を受けている者の割合は67.4%と3分の2にとどまり、とくに30〜40代において相対的に未治療率が高かった。【体格】若年女性のやせと高齢者の低栄養傾向が並存・20歳以上で適正体重を維持している者(BMI:18.5以上25未満、65歳以上は20超25未満)は60.7%で、20〜60代男性では肥満者(25以上)が34.0%、40〜60代女性では20.2%であった。・一方、20〜30代女性のやせ(18.5未満)は16.6%と依然として高い割合を示し、さらに65歳以上の低栄養傾向(20以下)は19.5%と、高齢者の栄養リスクも顕著であり、若年層のやせと高齢者の栄養不良が同時に進む様相が明確になった。【食習慣】減塩・野菜・果物の摂取は依然として目標未達・主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を「1日2回以上、ほぼ毎日」摂っている者は52.8%で、男女とも20代が最も低かった。・食塩摂取量は依然として多く、平均9.6g/日(男性10.5g、女性8.9g)で、「健康日本21」が掲げる目標値7gを大きく上回った。・野菜摂取量は平均258.7g/日(男性268.6g、女性250.3g)で目標値の350gに届かず、果物は平均78.1gと、こちらも目標値200gの半分以下だった。【身体活動・睡眠】運動習慣は約3割、歩数は目標をほぼ達成・「運動習慣のある者」(30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続)は34.6%(男性38.5%、女性31.5%)、男女とも30~40代でとくに低かった。・歩数の全国平均は7,071歩/日(男性7,763歩、女性6,495歩、年齢調整値7,231歩)で、年齢調整後の目標値7,100歩をおおむね達成した。一方、65歳以上では男女とも平均歩数が大きく減少した。・睡眠では、「睡眠で休養がとれている」と回答した者が79.6%、睡眠時間が適正範囲(成人6〜9時間、60歳以上6〜8時間)なのは56.0%であった。【喫煙・飲酒】加熱式タバコが4割超、60代男性は2割が問題量の飲酒・「習慣的に喫煙している者」は14.8%(男性24.5%、女性6.5%)で、うち加熱式タバコの割合が男性41.4%、女性44.2%に達し、紙巻タバコとの併用者も一定数存在した。・生活習慣病のリスクを高める量の飲酒(純アルコール摂取量が男性40g/日以上、女性20g/日以上)をしている者の割合は全体で11.4%(男性13.9%、女性9.3%)。とくに60代の男性(21.6%)と50代の女性(18.4%)で割合が高かった。

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宅配DASH食+カウンセリングで血圧は改善するか/JAMA

 米国・ハーバード大学医学大学院のStephen P. Juraschek氏らは、「高血圧予防のための食事療法(DASH)」の効果を再現する食料品購入戦略を評価した臨床試験「GoFresh試験」において、宅配によるDASH食に準じた食料品の提供と栄養士カウンセリングを組み合わせたプログラムは、同等の給付金の供与と比較して、黒人住民の血圧およびLDLコレステロール(LDL-C)値を改善したが、介入終了後これらの効果は維持されないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月9日号で発表された。ボストン市の黒人を対象とした無作為化比較試験 GoFresh試験は、米国マサチューセッツ州ボストンで実施された研究者主導型の無作為化並行群間比較試験であり、2022年8月~2025年3月に参加者を募集した(米国心臓協会[AHA]の高血圧予防に関する健康公平性研究ネットワークの助成を受けた)。 年齢18歳以上、アフリカ系米国人または黒人と自認し、収縮期血圧(SBP)が120~<150mmHg、拡張期血圧(DBP)が<100mmHgで、ボストン市の都市部の食料品店が少ない地域に居住し、高血圧治療を受けていない集団を対象とした。 これらの参加者を、費用を重視せずに、オンラインで注文したDASH食に準じた低塩食料品を週1回、12週間宅配で受け取り、栄養士によるカウンセリングを受ける群(DASH群)、または4週ごとに500ドルの給付金を3回受け取り、自分の判断で食料品を購入する群(自己管理群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、3ヵ月後の時点における平均診察室SBP(少なくとも2回の受診時における3回の測定に基づく)の変化量の両群間の差とした。主要アウトカムのSBPほかDBP、LDL-C、尿中ナトリウムも改善 180例(平均年齢46.1[SD 13.3]歳、女性102例[56.7%]、自己申告による黒人100%)を登録し、DASH群に90例、自己管理群に90例を割り付けた。ベースラインの平均SBPは130.0(SD 6.7)mmHg、平均DBPは79.8(同:8.1)mmHgだった。3ヵ月後の主解析では、175例(97.2%、DASH群86例、自己管理群89例)が対象となった。 3ヵ月時の平均SBPの変化量は、自己管理群が-2.3mmHg(95%信頼区間[CI]:-4.1~-0.4)であったのに対し、DASH群は-5.7mmHg(-7.4~-3.9)であり、群間差は-3.4mmHg(-5.9~-0.8)とDASH群で降圧効果が有意に優れた(p=0.009)。 副次アウトカムのうち、平均DBP(3ヵ月時の変化量の群間差:-2.4mmHg、95%CI:-4.2~-0.5)およびLDL-C値(-8.0mg/dL、-13.7~-2.3)は、DASH群で改善効果が良好であったが、BMI値(-0.04、-0.37~0.28)およびHbA1c(-0.01%、-0.07~0.05)に対するDASH食の効果は認めなかった。また、尿中ナトリウム値は、DASH群で低下の幅が大きかった(3ヵ月時の変化量の群間差:-545mg/24時間[95%CI:-1,041~-50])。介入終了6ヵ月後には効果が消失 一方、3ヵ月時(介入期間終了)から6ヵ月時までの3ヵ月間で、平均SBP(6ヵ月時の変化量の群間差:3.5mmHg、95%CI:0.9~6.0)および平均DBP(2.4mmHg、0.7~4.1)は、いずれもDASH群で大きく上昇し、DASH食の効果はほぼ消失していた。この間のLDL-C値(3.3mg/dL、-1.9~8.5)も、DASH群で増加の幅が大きかった。 有害事象はまれだった。胃腸障害が1件発現したが介入とは関連がなく、慢性腎臓病患者における高カリウム血症の発生は認められなかった。3ヵ月時にDASH群で腹部膨満感と頻尿が増加したが、水分摂取量の変化は少なく、全体的な体調の改善を報告した参加者が多かった。 著者は、「これらの知見は、心血管代謝の健康を改善するための食料品の注文戦略の立案に有益と考えられる」「DASH食の降圧効果およびLDL-C低下効果を長期的に維持するには、健康的な食料品への継続的なアクセスと栄養カウンセリングが必要であろう」としている。

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