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チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の両方を活性化するインクレチン関連薬であり、血糖値の低下と体重減少をもたらすが、心血管系への効果については議論が続いている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNils Kruger氏らは、2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者では、標準治療にシタグリプチンを併用した場合と比較して、チルゼパチドの併用は主要心血管イベント(MACE)の発生を有意に抑制し、入院を要する感染症や感染症関連死のリスクも低いことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月5日号で報告された。無作為化試験を基準としたコホート研究 研究グループは、糖尿病の標準治療へのチルゼパチド追加が実臨床にもたらすMACE抑制効果を評価する目的で、無作為化試験の基準とされるデザインとデータ、解析法を用いた人口ベースのコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 解析には、米国の2つの全国的な保険請求データベースに、2022年5月~2025年5月に登録されたデータを用いた。対象は、年齢40歳以上、2型糖尿病とASCVDを有し、BMI値≧25で、心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈・頸動脈・末梢動脈疾患、または血行再建術の既往がある患者であった。 チルゼパチドの投与を開始した群(3万5,353例)と、プラセボの代替として心血管アウトカムが中立的な比較薬であるシタグリプチンの投与を開始した群(1万7,618例)について解析した。 主要評価項目は、MACE(心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合)およびその個別の構成要素とした。安全性の評価項目は、入院を要する感染症および感染症関連死などであった。心筋梗塞のリスク低下が全体を牽引 傾向スコアによるoverlap weightingで、均衡のとれた各群7,442例ずつを選出した。両群とも、平均年齢は69.8歳、女性が3,783例(50.8%)であった。また各群で、スタチンの投与を受けている患者が85.2%、SGLT-2阻害薬が21.1%、インスリンが18.1%であった。 1年の時点におけるMACEの重み付け1年リスクは、シタグリプチン群が4.4%(95%信頼区間[CI]:3.8~4.9)であったのに対し、チルゼパチド群は2.9%(95%CI:2.5~3.4)と低い値を示した。1年後のリスク差は-1.4%(95%CI:-2.1~-0.7)、治療必要数(NNT)は70であり、MACEのハザード比(HR)は0.68(95%CI:0.58~0.80)であった。2つの累積発生率曲線は3ヵ月以内に分岐し、観察期間を通じて乖離した状態で推移した。 MACEの個別の構成要素については、チルゼパチド群で心筋梗塞のリスクが低く(HR:0.67、95%CI:0.52~0.87、NNT=130)、虚血性脳卒中(HR:0.91、95%CI:0.64~1.28、NNT=2,500)では意義のある差を認めなかった。全死因死亡は、チルゼパチド群でリスクが低かった(HR:0.55、95%CI:0.42~0.72、NNT=122)。心保護効果を確認 入院を要する感染症(HR:0.64、95%CI:0.55~0.75、NNT=48)および感染症関連死(HR:0.40、95%CI:0.26~0.61、NNT=200)は、いずれもチルゼパチド群でリスクが低かった。 また、チルゼパチド群は、感染症全般(HR:0.83、95%CI:0.78~0.87、NNT=19)、尿路感染症(HR:0.83、95%CI:0.76~0.91、NNT=55)のリスクがわずかに低かったが、消化器系の有害事象(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27、推定不能)には差がなかった。 著者は、これらの結果を踏まえ、「チルゼパチドは、実臨床において心保護効果と関連していることが示された」としている。また、「意義のある体重減少が生じる前に心血管イベントの発生率曲線が早期に分岐し始めたことは、体重減少以外のメディエーターが関与している可能性を示唆し、代謝上の有益性とは独立に作用する全身性および血管性の炎症の改善を反映している可能性がある」「感染症関連イベントの減少は、観察された有益性には、より広範な非アテローム動脈硬化性の生物学的メカニズムが寄与している可能性を示唆する」「これらの実臨床の試験に基づくエビデンスは、共有意思決定に有益な情報を提供すると考えられる」と指摘している。