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第141回 令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁

<先週の動き>1.令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁2.新型コロナ、基本的な感染対策は自主的に判断を/厚労省3.がん検診率60%以上を目標に、がん対策基本計画/政府4.経鼻インフルエンザワクチンが国内初承認、2024年度シーズンから供給へ/第一三共5.相澤病院、元職員が患者の個人情報を外部に持ち出し/相澤病院6.美容医療「ハイフ」の健康被害防止へ、施術は医師に限定を/消費者庁1.令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁総務省消防庁は、3月31日に令和4年度の救急出動件数の速報値を発表した。令和4年の救急車の出動件数は前年度に比べて16.7%増の722万9,838件、搬送人数も621万6,909人と過去最高を記録した。同庁によると、高齢者の増加のほか、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、救急要請が増えたのが原因としている。また、同日に救急業務のあり方に関する検討会の報告書を公表し、この中で、マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化のため、システム構築の検討を加速することが盛り込まれた。(参考)「令和4年中の救急出動件数等(速報値)」の公表(消防庁)「令和4年度 救急業務のあり方に関する検討会 報告書」(同)救急車の出動最多722万件 22年、コロナで要請急増(日経新聞)2.新型コロナ、基本的な感染対策は自主的に判断を/厚労省3月31日、加藤勝信厚生労働大臣は新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが5類に移行する前に、移行後の感染症対策について方針の変更を説明した。手洗いや換気は引き続き有効とするが、入場時の検温などの対策は効果やコストなどを踏まえて、自主的に判断を求めるとする基本的な考えを示した。医療機関や介護施設などに対しては、院内や施設内の感染対策について引き続き国が示すとしている。(参考)【事務連絡】新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の基本的な感染対策の考え方について(厚労省)アクリル板設置や検温など事業者判断に 5類移行後の基本的な感染対策で厚生労働省(東京新聞)新型コロナ5類移行後 “入場時検温など自主的に判断” 厚労省(NHK)コロナ対策変更へ、厚労相「マスク着用と同様」主体的な選択を尊重、5類移行で(CB news)3.がん検診率60%以上を目標に、がん対策基本計画/政府政府は、3月28日に2023年度から始まる新たな「第4期がん対策基本計画」を閣議決定した。がんによる死亡率を低下させるため、がん検診の受診率を現行より引き上げ、60%以上に向上させるほか、オンラインによる相談支援や緩和ケアの充実などが盛り込まれた。なお、がん検診の受診率は男性の肺がん検診を除くと、現行の第3期がん対策基本計画でも、50%未満であり、新型コロナウイルス感染症の拡大により頭打ちとなっているがん検診の受診率のさらなる向上を目指す。(参考)第4期がん対策基本計画を閣議決定 政府、デジタル化推進へ(CB news)がん検診率60%に向上目標 政府、4期計画を閣議決定(東京新聞)第4期がん対策推進基本計画案を閣議決定!がん医療の均てん化とともに、希少がんなどでは集約化により「優れたがん医療提供体制」を構築!(Gem Med)がん対策推進基本計画[第4期]<令和5年3月28日閣議決定>(厚労省)4.経鼻インフルエンザワクチンが国内初承認、2024年度シーズンから供給へ/第一三共3月27日、国内初の「経鼻インフルエンザワクチン」が正式に承認されたことを製造メーカーの第一三共が明らかにした。同社によると、2015年にアストラゼネカ社の子会社メディミューン社と提携し、国内での開発・販売契約に基づいて開発を開始。国内における知見の結果、経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」としてこの度承認申請を行い、承認された。季節性インフルエンザの予防に新たな選択肢を提供できるとしている。対象は2歳以上19歳未満の人で、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧する。(参考)第一三共、経鼻インフルワクチンが承認 24年度発売(日経新聞)フルミストが製造販売承認を取得(日経メディカル)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミストR点鼻液」の国内における製造販売承認取得のお知らせ(第一三共)5.相澤病院、元職員が患者の個人情報を外部に持ち出し/相澤病院長野県松本市の相澤病院において、患者の個人情報が不正に持ち出されたことが明らかになり、病院を経営する医療法人は内閣府の個人情報保護委員会に2月に報告、また、松本警察署に事件相談を行い、告訴状を提出した。病院によると、2023年1月、同院に通院中の患者の申し出によって、元職員から患者が他の医療機関での治療の勧誘を受けたことが判明。病院側の聞き取り調査によって、2022年5月に元職員が、後輩職員に業務マニュアルの閲覧を申し出て、業務フォルダからデータをコピーして持ち出したことが明らかとなった。漏洩したデータは透析治療患者ならびに高気圧酸素療法患者の個人情報3,137人分(亡くなった患者を含む)の住所・氏名・生年月日など基本的な識別情報のほか、各種医療情報、家族情報が含まれていた。病院側は、研修内容の見直しと再発防止に努めたいとしている。(参考)患者さん個人情報等の漏えい(不正取得)について[お詫び](相澤病院)長野の相沢病院、元職員が患者らの個人情報3137人分を外部に漏えい(読売新聞)松本市の相澤病院 患者ら3100余の個人情報持ち出されたか(NHK)6.美容医療「ハイフ」の健康被害防止へ、施術は医師に限定を/消費者庁痩身などを目的として、エステサロンで超音波を照射する超音波機器「HIFU(ハイフ)」を使った健康被害が増加していることに対し、消費者庁の消費者安全調査委員会は、ハイフを用いた施術について、施術者を医師に限定すべきだと提言した。委員会によると、ハイフによってやけどやシミが生じた事故は、2015年より8年間で135件が報告され、増加傾向にある。医療問題弁護団はこの提言を受け、4月2日に無料で電話相談を行った。(参考)エステの超音波施術「医師に限定を」 消費者事故調が厚労省に提言(朝日新聞)超音波美容施術で事故相次ぐ 消費者事故調 国に法規制求める(NHK)消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書)エステサロン等でのHIFU)ハイフ)による事故)を公表しました。(消費者庁)【4月2日(日)10時~16時・HIFUホットライン実施】HIFU(高密度焦点式超音波)被害の電話相談を実施します(医療問題弁護団)

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軽度熱傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第1回

はじめまして!聖マリアンナ医科大学病院 救急医学の沼田と申します。主に救急科で勤務しながら、総合診療医、小児救急、集中治療を勉強してきました。最近は緩和ケアを勉強しています。オフ・ザ・ジョブトレーニングでは、外科系救急初期診療を学ぶ「T&Aマイナーエマージェンシーコース」のコアメンバーとして活動しています。このコラムでは、かかりつけ医が診る機会の多い軽症救急疾患の治療を、救急医の視点でわかりやすく解説していきます。初回は熱傷の中でもI、II度の軽度熱傷の治療についてです。熱傷にはさまざまな原因がありますよね。天ぷらを揚げていた、子供が電気ケトルを倒した、カセットコンロが爆発した…など。熱傷の加療の方向性はほぼ同一ですが、医師によって使用する薬剤や被覆材にはばらつきがあると感じています。大まかな治療に関してはAmerican family physicianの「Outpatient burns: prevention and care」と日本熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)」を基に、私の経験も交えながらポイントを解説します1,2)。22歳男性。夜間にカップラーメンを食べようとして、カップに熱湯を入れて移動した際に転倒し、熱湯が両腕にかかり受診。既往歴なし、内服歴なし、アレルギー歴なし、バイタル特記事項なし。右前腕に5cm程度の発赤、左前腕に3cm程度の発赤と水疱が2ヵ所ある。水疱の1つは1cm程度、もう1つは3cm程度で破れている。これは、私が近くに皮膚科がない地方の内科外来で働いていたときに経験した症例です。熱傷の治療は、ステップを踏んで診察をしていくことが重要ですので、今回はこの症例を基にどういう判断や対応を行ったかお話しします。1. すぐに入院が必要かどうかの判断(1)受傷部位私の専門が救急であり、火災などによる熱傷に遭遇することもありますが、その場合に最も警戒するのは気道熱傷です。火災が関連している熱傷では、顔面熱傷がないかどうかを確認し、気道熱傷がある場合は人工呼吸管理を行うため入院が必要です。今回の症例は、両腕に熱湯がかかったことによる熱傷ですので気道熱傷はありません。(2)熱傷面積熱傷の面積によっては病院や熱傷センターなどへの搬送が必要になりますので、熱傷の範囲を把握します。よく使われるのが「9の法則」です。頭部、右上肢、左上肢をそれぞれ9%、体幹部の前面、後面をそれぞれ18%、右下肢、左下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として熱傷面積を推定します。画像を拡大するまた、熱傷面積が小さく、散在しているときは「手掌法」を用います。これは、手のひらの大きさを体表面積の1%と換算して熱傷面積を推定します。患者の入院の必要性を判断するにあたっては、「Artzの基準」がよく用いられます。II度熱傷の面積が15~30%、III度熱傷の面積が2~10%で一般病院での入院加療が必要とされています。逆に言えば、この面積以下であれば外来通院でよいでしょう。今回の症例の熱傷範囲は1~2%程度ですので、外来通院としました。2. 後日専門医への相談が必要かどうかの判断(1)受傷部位受傷部位で専門的な加療が必要かどうか変わってきます。顔面、手指、肛門、陰部の熱傷や、大関節(肩、膝、股関節)を超える熱傷は、美容や機能予後に影響を与えるので、可能であればなるべく早く専門医に診察してもらいましょう。(2)深達度熱傷には、I度、II度、III度があります。I度は発赤のみ、II度(浅達)は水疱を形成して水疱底の真皮が赤色、II度(深達)は水疱を形成して水疱底の真皮が白色、III度は白色皮革様もしくは褐色皮革様で感覚が消失します。III度熱傷は、適切に治療したとしても拘縮して植皮が必要になる可能性が高いため、専門医に紹介するべきです。II度の浅達か深達かの判別は専門医でなくては困難ですが、治療もとくに変わらないので必ずしも判別する必要性はないと考えます。この患者は、右前腕は発赤のみでI度、左前腕は水疱を形成していてII度熱傷となります。3. 治療(1)冷水での洗浄ここからは、症例のような軽症熱傷を通院加療する流れを記載します。どこで受傷したとしてもまず推奨されるのが冷水での洗浄です。実は強いエビデンスはないと言われていますが、熱傷を負った人の治療で「水で洗う vs.水で洗わない」の検証は倫理的に問題があり行えないため、実際の効果を検証することは困難です。どこでも、すぐに、安価にできるので、受傷後なるべく早く10分程度洗ってもらいましょう。ただし、20分以上の冷水での洗浄や氷水の使用は組織障害や低体温を起こすことがあるため控えます。●右腕(I度)右腕のI度熱傷の治療は、基本的には適切な鎮痛薬の内服のみで完了します。しかし、熱傷は時間とともに進行することがあり、今日はI度であったとしても翌日には水疱を形成してII度に進行していることはしばしば経験するので、進行する可能性があることをしっかりと説明しましょう。進行した場合はII度として治療を行います。●左腕(II度)II 度熱傷の場合は、まずは水疱が保たれているかどうかを確認しましょう。水疱内は清潔ですので、破れていなければ基本的には保存的に加療します。American Family physicianでは水疱のサイズが6mmを超える場合は破膜するよう指導されていますが、私は2~3cmでも保存的に加療しています。重要なのは、患者自身が水疱を保護できるかどうかで、難しいようであれば破膜します。保存的に加療する場合は、ガーゼをかぶせて保護し、もし破れてしまった場合は受診するよう指導します。この症例では、3cmの大きいほうの水疱が破れていました。水疱が破けている場合や、水疱を破膜した場合の治療はどうでしょうか? 私はまずリドカイン塩酸塩ゼリー(商品名:キシロカインゼリー)を塗布してから創部を洗浄しています。その後、破れた水疱の膜を残しておくと感染のリスクがあるため除去します。なお、アルコールやポビドンヨード液などによる消毒は組織障害が生じるため、参考文献2つはいずれも推奨していません。私も創部がよほど汚染されていない限り使用はしません。(2)創部の被覆被覆材にはさまざまなものがあります。メディカルオンラインで「創傷・熱傷被覆材(ドレッシング材)」と検索すると、サイズや用途はさまざまですが130個ほど出てきます。これらの有意性に関する報告は限られていますが、元々熱傷にはスルファジアジン銀が使用されており、それに対する非劣性や有意性を示した論文はあるため、どれを選択しても大きくは変わらないと考えます。その中で、私は基本的には白色ワセリン+ガーゼを使用しています。理由はどこの施設でも置いていて、安価で簡便だからです。患者には、ワセリンをたっぷりと塗って、最低1日1回交換するよう指導して帰宅とします。私がインストラクターとして参加しているT&Aマイナーエマージェンシーコースでは、ガーゼ1枚の範囲を覆う場合、約20gの白色ワセリンの使用を推奨しています。画像のとおり「ぷにゅっとする」くらい厚塗りします。画像を拡大する熱傷の範囲に合わせて調節しますが、熱傷の初期は浸出液が多く、頻回にガーゼ交換が必要ですので、私は患者に白色ワセリンを最低100g渡しています。以前、とある外来で、軟膏がすぐになくなったのでガーゼのみを張って、乾燥して創部に引っ付いてしまった患者がいて、剥ぐのに苦労したことがありました。必ず「軟膏なしでガーゼのみを張るのは控えましょう」と伝えてください。ちなみに、白色ワセリンはドラッグストアでも販売しているので、必ずしも病院を受診して受け取る必要はありません。(4)ステロイド軟膏ステロイド軟膏は、有用性を示すエビデンスに乏しく、安易に使用するべきではないという意見がある一方で、局所の炎症兆候に対して推奨する意見もあるのが現状です。American Family physicianでは使用を推奨せず、本邦の熱傷診療ガイドラインでは「専門医が抗炎症効果を期待して使用する際は、ステロイドの副作用に十分注意しながら、受傷早期(2日間程度)に使用することが望ましい」とされているので、非専門医である私は原則使用しません。(5)外来フォロー推奨された通院間隔はなく、あくまで私のプラクティスを紹介させていただきます。I度熱傷であれば通院の必要はなく、鎮痛薬の処方で終診です。しかし、II度へ移行した場合は再診するよう指導しています。II度熱傷は状況により通院間隔が異なります。その見極めは自力で被覆交換ができるかどうかです。自力で被覆交換が可能であれば、患者の症状に合わせて3~7日程度のサイクルで通院してもらいます。自力での被覆交換が難しい場合は1~3日ごとに通院してもらいます。被覆終了のタイミングは、「ガーゼに浸出液が付かなくなったとき」と伝えています。フォロー中に患者からよく訴えられる症状は、疼痛と掻痒感です。疼痛は初期から生じますので、私は初めからNSAIDsかアセトアミノフェンで対応しています。ただし、数日経って急激に痛みが増悪する、創部に熱感が生じる場合は感染した可能性があるため受診するよう指導します。かゆみが出た場合は抗ヒスタミン薬の有効性が示されているため処方します。今回は、軽度熱傷の症例を例に挙げながら、どういう判断や対応を行ったかお話ししました。軽度熱傷はかかりつけ医が診る機会がありますが、美容や機能予後に影響を与えることも多々あるので、重症度や受傷部位によっては専門医へ相談しましょう。これから定期的に非専門医向けの軽症救急処置のコラムを連載いたします。可能な限り根拠に基づきながら、自身の経験を織り交ぜていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします!1)Lanham JS, et al. Am Fam Physician. 2020;101:463-470.2)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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糖尿病治療による心血管/心不全リスクへの効果の違い~メタ解析

 糖尿病治療による心血管および心不全リスクへの効果は試験により大きく異なる。今回、医学研究所北野病院(大阪市)の長谷部 雅士氏らがランダム化心血管アウトカム試験35試験のメタ解析およびメタ回帰分析により、糖尿病治療は主要有害心血管イベント(MACE)をHbA1cに依存して減少させる一方、心不全リスクは体重に依存して減少することがわかった。Cardiovascular Diabetology誌2023年3月19日号に掲載。 本研究では、2023年1月25日までPubMedとEMBASEで2型糖尿病または前糖尿病患者におけるMACEと心不全アウトカムの両方を報告する糖尿病治療(生活習慣改善、薬剤)のすべてのランダム化比較心血管アウトカム試験を検索し、35試験(計25万6,524例)を同定した。ランダム効果メタ解析に続いてメタ回帰分析を行い、各アウトカムに対するHbA1cまたは体重減少の影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、糖尿病治療はMACEを9%減少させた(リスク比[RR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.88~0.94、p<0.001、I2=36.5%)。・メタ回帰分析では、HbA1c減少が1%大きくなるごとに、MACEのRRが14%減少(95%CI:4~24、p=0.010)したが、体重変化はMACEのRRと関連していなかった。・HbA1c減少に関連するMACEリスク減少は、ベースラインの動脈硬化性心血管疾患の有病率が高い試験でより高かった一方、糖尿病治療は心不全リスクに有意な効果を示さなかった(RR:0.95、95%CI:0.87~1.04、p=0.28、I2=75.9%)。・糖尿病治療別の解析では、SGLT2阻害薬による心不全リスク減少が最も大きかった(RR:0.68、95%CI:0.62~0.75、p<0.001、I2=0.0%)。・メタ回帰分析では、HbA1c減少ではなく、体重1kg減少ごとに心不全のRRが7%減少した(95%CI:4~10、p<0.001)が、有意な残存異質性(p<0.001)が認められ、HbA1cや体重減少では説明できないほどSGLT2阻害薬が心不全を減少させていた。 著者らは注目すべきこととして、SGLT2阻害薬がHbA1cや体重の減少を越えて心不全にクラス特異的な効果を示したことを挙げている。

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アナモレリン投与、日本人5,000例のリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会

 グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)は、2021年1月に非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、膵臓がん、大腸がんに伴う悪液質治療として国内で保険承認された。2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)において、室 圭氏 (愛知県がんセンター 副院長/薬物療法部長)が国内の患者約5,000例を対象とした市販後全例調査(PMS)の中間解析結果を発表した。アナモレリンの市販後全例調査の解析で新たな安全性の懸念は認められず 市販後全例調査では、2021年4月21日以降にアナモレリンを投与された全患者が登録された。アナモレリン治療開始後の観察期間は1年であった。1年より前に治療を中止した場合、観察期間の終了日は最終投与日とした。中間解析は2022年7月21日時点のデータに基づいて行われ、対象となったのは4,672例であった。 アナモレリンの市販後全例調査の主な結果は以下のとおり。・安全性の評価対象患者は4,672例で2,960 例(63.4%)が男性、年齢中央値は72歳、1,791例(38.3%)が75歳以上であった。1,955例(41.8%)がPS 2~4、BMIの中央値は18.9kg/m2、2,751例(58.9%)が低BMI(20kg/m2未満)であった。・がん種の内訳はNSCLCが1,282例、胃がん1,140例、膵臓がん1,238例、大腸がん964例だった。・アナモレリンの投与期間中央値は36日、治療期間は1~22日(1,742例、37.3%)、23~43日(850例、18.2%)、44~64日(416例、10.0%)、65~85日(1,48例、31.9%)、86日以上(125例、2.7%)だった。・有害事象は12.6%(587/4,672例)で発生し、Grade3以上は2.8%(131/4,672例)だった。承認時に安全性評価項目としてピックアップされた毒性では、高血糖4.2%(198/4,672例)、肝機能障害1.1%(53/4,672例)、伝導障害0.7%(34/4,672例)の頻度で発生した。・12週間後、体重は平均1.4kg増加、FAACTスコアは4.9ポイント改善した。・食事摂取量について、投与3週間後には57%、12週間後には65.2%の患者が「増加した」と回答した。・12週間後のPSは改善が14.8%(197/4,672例)、維持が67.0%(893/4,672例)だった。 室氏は「市販後全例調査による解析の結果、新たな安全性の懸念は認められず、承認時の臨床試験において報告された体重および食欲の改善が確認された。これらのデータは中間解析の結果であり、さらなるデータの蓄積と解析が必要だ」と述べた。

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初回化学療法反応後の維持療法としてのCDK4/6阻害薬の有用性/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が、有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことを、大阪国際がんセンターの藤澤 文絵氏が第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で発表した。 MBC乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法として、内分泌療法(+カペシタビンあるいはベバシズマブ併用)の有用性が国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR12141)、BOOSTER試験2))で報告されている。しかし、内分泌療法+CDK4/6阻害薬併用維持療法の有効性と安全性に関するデータは十分ではない。そこで、藤澤氏らはMBC患者における初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法+CDK4/6阻害薬の安全性と有効性を調査した。 本研究はパルボシクリブ(2017年12月)およびアベマシクリブ(2018年11月)が承認されてから2021年10月末までに、初回化学療法反応後の維持療法としてCDK4/6阻害薬が投与された症例を対象として、患者の背景、安全性、CDK4/6阻害薬の有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CDK4/6阻害薬を投与された179例のうち、初回化学療法の治療効果がSD以上を得られていた26例を対象に解析が行われた。そのうち、初回化学療法でCR/PR/長期SDを得られた状態を維持したまま内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは12例(安定中切替群)、腫瘍マーカーの上昇または画像検査による若干の病勢進行がみられた後に内分泌療法+CDK4/6阻害薬に変更になったのは14例(増悪傾向切替群)であった。・安定中切替群と増悪傾向切替群の年齢中央値は65歳 vs.61.5歳、閉経後が10例 vs.7例、StageIVがそれぞれ5例、内臓転移あり9例 vs.13例であった。・治療成功期間(TTF)中央値は、全患者で8.6ヵ月(95%信頼区間:3.7~29.9)、安定中切替群で22.1ヵ月(3.6~NA)、増悪傾向切替群で7.2ヵ月(2.5~12.6)であった。・全生存期間(OS)中央値は、全患者で26.7ヵ月(17.8~NA)、安定中切替群で39.3ヵ月(17.8~NA)、増悪傾向切替群で18.3ヵ月(11.8~26.7)であった。・安定傾向切替群と増悪傾向切替群でみられたGrade3/4の有害事象は、好中球減少6例(50.0%) vs.6例(42.9%)、下痢1例(8.3%) vs.0例、AST/ALT上昇1例(8.3%) vs.1例(7.4%)で、安全性プロファイルは以前の報告と同様であった。 これらの結果より、藤澤氏は「MBC患者に対する初回化学療法反応後の維持療法としての内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法は有望な効果が示されたが、有用性を検証するにはさらに多くの症例と前向き臨床試験が必要である」とまとめた。

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ベンゾジアゼピンや気分安定薬の併用率低下に長時間作用型注射剤は寄与するか

 統合失調症は、再発と寛解を繰り返す慢性疾患である。治療には主に抗精神病薬が用いられ、その剤形には経口剤または長時間作用型注射剤(LAI)がある。さまざまな理由で気分安定薬やベンゾジアゼピンが補助療法として頻用されるが、国際的なガイドラインで推奨されることはめったにない。ルーマニア・トランシルバニア大学のAna Aliana Miron氏らは、慢性期統合失調症患者を対象に、抗精神病薬の剤形が気分安定薬やベンゾジアゼピンの併用に及ぼす影響を明らかにするため、観察的横断研究を実施した。その結果、安定期統合失調症患者に対する気分安定薬およびベンゾジアゼピンの長期併用率は、抗精神病薬の剤形とは関係なく高いままであることが示唆された。ただし、第2世代抗精神病薬のLAI(SGA-LAI)治療患者では、経口抗精神病薬治療患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。Brain Sciences誌2023年1月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・対象は、慢性期統合失調症患者315例。・LAI抗精神病薬治療で安定していた患者は77例(24.44%)、経口抗精神病薬治療で安定していた患者は238例(75.56%)であった。・気分安定薬を併用していた患者は84例(26.66%)、ベンゾジアゼピンを併用していた患者は119例(37.77%)であった。・気分安定薬またはベンゾジアゼピンの併用率について、LAIと経口剤の間に有意な差は認められなかった。・抗精神病薬の単剤療法で安定していた患者は、全体で136例(43.17%)であった。・SGA-LAIで治療されていた患者は、経口抗精神病薬で治療されていた患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。

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重症市中肺炎、ヒドロコルチゾンが死亡を抑制/NEJM

 集中治療室(ICU)で治療を受けている重症の市中肺炎患者では、ヒドロコルチゾンの投与はプラセボと比較して、全死因死亡のリスクを有意に低下させ、気管挿管の割合も低いことが、フランス・トゥール大学のPierre-Francois Dequin氏らCRICS-TriGGERSepネットワークが実施した「CAPE COD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年3月21日号で報告された。フランスの無作為化プラセボ対照第III相試験 CAPE COD試験は、フランスの31施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2015年10月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 重症の市中肺炎でICUに入室した年齢18歳以上の患者が、ヒドロコルチゾンの静脈内投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 ヒドロコルチゾンは、200mg/日を4日間または8日間投与した時点で、臨床的改善度に基づき、その後の総投与日数を8日間または14日間と決定し、用量を漸減した。すべての患者が、抗菌薬と支持療法を含む標準治療を受けた。 主要アウトカムは、28日時点で評価した全死因死亡であった。 予定されていた2回目の中間解析の結果に基づき患者の登録が中止された時点で、800例が無作為化の対象となり、このうち795例のデータが解析に含まれた。400例がヒドロコルチゾン群(年齢中央値67歳、男性70.2%)、395例がプラセボ群(67歳、68.6%)であった。ICU内感染、消化管出血の頻度は同程度 28日目までに、死亡の発生はプラセボ群では395例中47例(11.9%、95%信頼区間[CI]:8.7~15.1)であったのに対し、ヒドロコルチゾン群は400例中25例(6.2%、3.9~8.6)と有意に少なかった(絶対群間差:-5.6ポイント、95%CI:-9.6~-1.7、p=0.006)。 90日時点での死亡率は、ヒドロコルチゾン群が9.3%、プラセボ群は14.7%であった(絶対群間差:-5.4ポイント、95%CI:-9.9~-0.8)。また、28日時点でのICU退室率はヒドロコルチゾン群で高かった(ハザード比[HR]:1.33、95%CI:1.16~1.52)。 ベースラインで機械的換気を受けていなかった患者のうち、28日目までに気管挿管が導入されたのは、ヒドロコルチゾン群が222例中40例(18.0%)、プラセボ群は220例中65例(29.5%)であった(HR:0.59、95%CI:0.40~0.86)。 ベースラインで昇圧薬の投与を受けていなかった患者では、28日目までに昇圧薬の投与が開始されたのは、ヒドロコルチゾン群が359例中55例(15.3%)、プラセボ群は344例中86例(25.0%)であった(HR:0.59、95%CI:0.43~0.82)。 ICU内感染(ヒドロコルチゾン群9.8% vs.プラセボ群11.1%[HR:0.87、95%CI:0.57~1.34])と消化管出血(2.2% vs.3.3%[0.68、0.29~1.59])の頻度は両群で同程度であった。一方、ヒドロコルチゾン群では、治療開始から1週間のインスリン1日投与量(35.5 IU/日vs.20.5 IU/日、群間差中央値:8.7 IU/日[95%CI:4.0~13.8])が多かった。 著者は、「先行試験やメタ解析では、グルココルチコイドの薬力学的作用と一致する高血糖の発生率の増加が報告されている。この高血糖の増加は通常、一過性のものだが、今回の試験では確認していない」としている。

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最低価格制限で、飲酒による死亡・入院が減少/Lancet

 スコットランドで販売されるアルコール飲料は、2018年5月1日以降、法律で1単位(純アルコール10mLまたは8g)当たりの最低単位価格(MUP)が0.5ポンドに設定されている。これにより販売量が3%減少したことが先行研究で確認されているが、今回、英国・スコットランド公衆衛生局(Public Health Scotland)のGrant M. A. Wyper氏らは、MUP法の施行により、アルコール摂取に起因する死亡と入院が大幅に減少し、その効果はとくに社会経済的に最も恵まれない層で顕著に高いことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月21日号に掲載された。MUP法施行前後で比較した分割時系列試験 本研究は、アルコール摂取に起因する死亡と入院へのMUP法施行の影響の評価を目的に、スコットランド(人口約550万人)で行われた分割時系列対照比較試験であり、対照として同法が施行されていないイングランドのデータが使用された(スコットランド政府の助成を受けた)。 スコットランドにおける同法施行前(2012年1月1日~2018年4月30日)と施行後32ヵ月間(2018年5月1日~2020年12月31日)のアルコール摂取に起因する死亡と入院のデータを比較し、同時期のイングランドとの比較が行われた。アルコール性肝疾患や依存症による死亡を有意に抑制 スコットランドでは、MUP法施行前と比較して、同法施行後32ヵ月間でアルコール摂取に起因する死亡が13.4%(95%信頼区間[CI]:-18.4~-8.3、p=0.0004)低下し、これは年間平均156件(95%CI:-243~-69)のアルコール摂取による死亡の回避に相当した。 また、MUP法の施行は慢性的な原因に起因する死亡の低下にも寄与しており(-14.9%、95%CI:-20.8~-8.5、p<0.0001)、アルコール性肝疾患による死亡(-11.7%、-16.7~-6.4、p<0.0001)やアルコール依存症による死亡(-23.0%、-36.9~-6.0、p=0.0093)を有意に抑制した。 一方、アルコール摂取に起因する入院は4.1%低下(95%CI:-8.3~0.3、p=0.064)し、アルコール性肝疾患による入院は9.8%低下(-17.5~-1.3、p=0.023)したが、アルコール依存症による入院は7.2%(95%CI:0.3~14.7、p=0.039)増加した。 さらに、MUP法の施行により、アルコール摂取に起因する死亡は、男性(-14.8%)、女性(-12.0%)、35~64歳(-10.0%)、65歳以上(-26.7%)、社会経済的な貧困度を10段階に分けた場合の最も恵まれない上位4群(-17.5~-33.6%)で低下がみられた。また、アルコール摂取に起因する入院は、男性(-6.2%)、35~64歳(-4.8%)、最も貧困度の高い上位4群(-4.5~-6.9%)で低下がみられた。 著者は、「MUP法実施の効果は社会経済的に貧困度が高い層で最も大きく、これは、この施策がアルコール摂取に起因する健康被害において、貧困に基づく不平等に積極的に取り組んでいることを示すものである」としている。

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リブタヨは進行または再発の子宮頸がんに対する初の単剤療法/サノフィ

 サノフィは3月30日付のプレスリリースで、「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸」を効能または効果として、リブタヨ点滴静注350mg(一般名:セミプリマブ、以下「リブタヨ」)の販売を同日より開始したことを発表した。リブタヨ群は化学療法群と比較して死亡リスクが31%低減 子宮頸がんは、世界では女性のがん死因の第4位に当たり、35~44歳での診断が最も多い疾患である。大部分はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を原因とし、約80%を扁平上皮がん(子宮頸部の外部を覆う細胞から発生)、残る患者の多くを腺がん(子宮頸部の内部にある腺細胞から発生)が占めている。進行または再発の子宮頸がんの治療選択肢は限られており、世界で毎年約57万人の女性が子宮頸がんと診断されていることから、新たな治療法の登場が望まれていた。 リブタヨは、T細胞の表面にある免疫チェックポイント受容体PD-1を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。リブタヨは、2次治療の子宮頸がん患者が対象の第III相試験において、全生存期間の改善を単剤投与で初めて立証し、子宮頸がんの2次治療の前向き比較試験においても、全生存期間が改善された初めての薬剤である。 リブタヨの進行性子宮頸がんにおける無作為化試験である国際共同第III相試験(EMPOWER Cervical-1試験)は、再発・転移性の扁平上皮がんまたは腺がんで2次治療の女性患者(年齢中央値:51歳)を対象に実施された。患者は無作為化され、リブタヨ単剤投与群(350mgを3週間ごとに投与)または広く使われている化学療法(イリノテカン、トポテカン、ペメトレキセド、ビノレルビンまたはゲムシタビン※)から治験責任医師が選択する薬剤を投与する群のいずれかに割り付けられた。※ペメトレキセド、ビノレルビン、ゲムシタビンは国内で子宮頸がんの適応はない。 本試験の結果、リブタヨ群(304例)では化学療法群(304例)と比較して、死亡リスクが31%低減し、全生存期間は有意に延長した。全体集団における全生存期間の中央値は、リブタヨ群で12.0ヵ月、化学療法群で8.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p<0.001)。 安全性は、治験薬の投与を1回以上受けた患者を対象に、リブタヨ群300例(投与期間の中央値:15週間、範囲:1~101週間)、化学療法群290例(10週間、1~82週間)で評価した。治験薬との因果関係が否定できない有害事象は、リブタヨ群で56.7%、化学療法群で81.4%に認められた。リブタヨ群における、発現割合5%以上の主な副作用は、疲労(10.7%)、悪心(9.3%)、貧血(7.3%)、無力症(7.3%)、食欲減退(7.3%)、下痢(6.7%)、甲状腺機能低下症(6.0%)、嘔吐(5.7%)、関節痛(5.7%)、発疹(5.0%)およびそう痒症(5.0%)であった。なお、リブタヨの新たな安全性シグナルは認められなかった。 リブタヨは、サノフィとRegeneronとのグローバル提携契約の下で共同開発された製品である。2022年7月1日現在、Regeneronはリブタヨの開発およびマーケティングをグローバルレベルで担っており、日本では、Regeneronに代わってサノフィがリブタヨを販売する。サノフィとRegeneronは、「引き続き子宮頸がんの日本人患者に希望を届けられるよう鋭意努力し、患者とその家族や医療関係者へさらなる貢献をしていく」としている。

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妊娠高血圧腎症予防のための低用量アスピリン投与は今後妊娠28週までの投与が基本となるか(解説:前田裕斗氏)

 妊娠高血圧腎症予防のため、発症ハイリスク妊婦への妊娠初期からの低用量アスピリン投与は、標準的な治療になってきている。アスピリンの妊娠高血圧腎症予防機序はまだ不明な点もあるが、抗炎症作用や酸化ストレスの軽減から胎盤形成の障害を予防する効果があるとされ、そのため胎盤形成が行われる妊娠初期からの投与が望ましいと考えられている。一方、投与終了期間については一定した報告がなく、分娩時出血が増える可能性が報告されていることから36週での投与終了としている国が多い。しかし、アスピリン投与中に早産や妊娠高血圧腎症の進行から早期に分娩を行う必要が生じることもあり、臨床現場ではしばしばアスピリンの中止が分娩直前となり、出血に気を掛けながら分娩に臨むことになる場合がある。 本研究は妊娠高血圧腎症の高リスク患者のうち、妊娠中期のsFlt-1/PIGF比(可溶性fms様チロシンキナーゼ-1/胎盤増殖因子)が正常値、すなわち高リスク患者の中では比較的低リスクの妊婦を対象にアスピリン投与を妊娠28週まで行う介入詳と妊娠36週まで行う対照群に分け、妊娠高血圧腎症による分娩についての非劣性をアウトカムとしたランダム化比較試験を行った。結果は、中間解析までで対照群で常位胎盤早期剥離が介入群と比べ多く発症したことから試験終了となり、その時点での非劣性が示された。また、対照群では少なくとも1回以上の出血性合併症を起こす頻度が有意に高かった。詳しくは「早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA」を参照されたい。 さまざまな副次的な結果が示されているが、最も重要なのは本研究の主目的である妊娠28週までのアスピリン投与が、妊娠36週までの投与に対して早発型妊娠高血圧腎症予防の点で非劣性を示したことだ。常位胎盤早期剥離やその他の合併症を軽減できるかどうかについては本研究ではサンプルサイズの問題などから結論づけることができない。この結果は臨床現場からすれば、早期に分娩となる可能性のある患者で低用量アスピリンを続けなくてもよいという点でありがたいといえる。妊娠高血圧腎症は遅発型もあるが、臨床的に最も問題になるのは今回の研究で扱われた早発型である点も臨床への応用においては都合がよい。 問題点としては、人種が異なるため日本人に適応できるかどうかが不明ということだろう。日本で大きな試験を行うというよりも、ある時点から28週までの投与に切り替えての比較を行う、あるいはすでに蓄積されたデータを後方視的に解析する形になると考えられる。今後日本からの研究にも期待したい。

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第153回 ゾコーバの妊婦投与3例発覚は氷山の一角!求められるフォロー体制

催奇形性の問題から妊婦や妊娠している可能性がある女性には投与禁忌となっている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)。先日、これに関して、妊婦に投与してしまった事例が報じられた。同薬の発売以降、妊婦への投与が発覚したのはこれで3例目。いずれも催奇形性があることが患者に伝えられたうえで投与が行われ、後に妊娠が発覚したという事例である。うち1例については、後に流産したことが報告されているものの、自然流産の可能性も考えられるため、因果関係は不明という。厚生労働省によると3月15日時点でのエンシトレルビルの投与実績は3万7,198例。一般に新型コロナ患者は男女比1:1と言われるが、この薬の催奇形性に対する注意喚起がこれまでもかなり行われていることから考えると、女性での投与事例は多くとも1万人前後ではなかろうか?この前提で行けば3,000人に1人でこうした事例が発生している計算になる。もっともこれまで発覚した3例のように当事者が妊娠を自覚せずに服用し、今も判明していない事例もあると想定すれば、もう少し高い頻度で発生していることになる。しかし、改めてこの問題は一筋縄ではいかないと感じている。企業も行政もかなり最大限の注意喚起は行っているはずだし、実際、女性患者向けのチラシもある。とはいえ、投与直前の妊娠の可能性がある性行為の有無については完全に自己申告に頼らざるを得ない。そしてこの一件で改めて思い起こしたのが、今回の新型コロナ騒動の初期にドラッグ・リポジショニングで有効性が期待された抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のことである。そもそもエンシトレルビルの場合、確認された催奇形性はウサギで臨床曝露量の5.0倍相当以上。その意味であえて言えば、可能性の範囲に留まる。これに対し、ファビピラビルは臨床曝露量以下で、マウス、ラット、ウサギ、サルの4種類で催奇形性が確認されている。もはや可能性の範疇を超えてほぼ確実といっても差し支えない。ファビピラビルについては2020年10月に新型コロナを適応とする承認申請が行われたが、企業側が提出した臨床試験データでは有効性が確認できたとは言い難いとの判断で12月に継続審議となり、そのまま有効性が確認されずに終わっている。もし、あの時点で承認されていたら、当時ではおよそ想像できなかった巨大な規模となった第8波の際に使われていたはずである。その場合、どうなっていただろう。考えるだけでぞっとする。ご存じのように、ファビピラビルに関しては抗インフルエンザ薬としての承認時の催奇形性問題を踏まえ、異例の一般流通なしでの国家備蓄のみとなった。実は当時、この件を取材した際、厚労省関係者に催奇形性に対する警戒が必要とは言え、あまりにもやり過ぎではないかと尋ねたことがある。当時の関係者の反応が私は今でも忘れられない。この人は私の顔をキッと睨み、10秒ほど無言になった後、目線を外して独り言のようにこう言った。「村上さん、現実を知らなすぎるよ」ちなみにファビピラビルの承認時に提出された臨床試験の結果を見ればわかるが、インフルエンザに対する効果は、今回のエンシトレルビルの新型コロナに対する効果と同様にかなり微妙なものだった。今よりも若かった私はムッとして「だったらあの程度の効果なんだし、承認しなきゃいいだけじゃないですか?」と言い放ち、この人は「それに関して私が言えることはないよ」と返してきて、そのまま話が終わってしまった。あれから時が経ち、エンシトレルビルでの「アクシデント」も目にし、この人が言っていた言葉の意味をようやく実感している。そして今から見れば当時のファビピラビル承認後の取り扱いは、ある種の英断だったかもしれないとも思う。もっともエンシトレルビルに関しては、すでに流通もし、新型コロナがかなり強力な感染力を持つ以上、今後は当事者に誰も悪意がない中で最悪のケースが起こるかもしれない。それを防ぐためには今以上の注意喚起が必要だが、加えてこれ以上に今早急に取り組まなければならないことがある。それは不幸にも妊娠に気づかずにエンシトレルビルを投与された妊婦に対するケア体制の構築である。今回判明した妊婦は出産まで相当な不安にさいなまれるはずだ。今後も同様の事例が増えれば、中には不安に押しつぶされそうになった結果、中絶という選択肢を取る女性が出てくるかもしれない。悲劇を増幅させないために、この点は待ったなしで対策せねばならないのではないだろうか?

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

今回のキーワード求愛癒し同調ハンディキャップの原理サイン言語(非言語的コミュニケーション)ミラーリング音楽療法ダンスセラピーみなさんは、歌やダンスが好きですか? あるメロディが耳にこびりついて何度も頭の中を流れていたり、そのリズムが体にしみついて勝手に体が揺れていることはありませんか? なぜ私たちは歌って踊りたくなるのでしょうか? そもそも歌やダンスはいつ生まれたのでしょうか? そして、歌やダンスをもっと世の中に活かせないでしょうか?今回は、インド映画「RRR」を通して、歌とダンスの機能、起源、そして医学的な効果を考えます。さらに、この記事では「ラブソング・ラブダンス仮説」と称して、歌やダンスが人類の心の進化に大きな役割を担った納得の訳を説明します。歌とダンスの機能とは?舞台は英国植民地時代のインド。主人公であるビームとラーマは、ひょんなことから出会い、深い友情を育みます。しかし、彼らにはそれぞれ使命があり、やがて対立しなければならなくなります。それでは、まず3つのシーンを通して、歌とダンスの機能を3つ挙げてみましょう。(1)求愛2人は、英国人女性のジェニーと仲良くなり、英国公邸に招かれます。そこで、ほかの英国人男性から「ワルツ、サルサ、フラメンコ、どのダンスも知らないの?」と馬鹿にされたことで、ラーマは「ナートゥをご存じか?」と言い出し、ラーマとビームはいきなり歌って踊り始めるのです。その歌とダンスは、英国人女性たちを惹きつけ、さらに英国人男性たちも焚きつけます。そして、彼らが全員加わった耐久ダンスバトルに発展するのです。最後は、ビームが勝ち残り、彼はジェニーに気に入られます。1つ目の機能は、求愛(wooing)です。実際に、ミュージシャンやダンサーはモテます。歌やダンスには、性的な魅力を伝える要素があるわけです。(2)癒しビームがジェニーに近づいたのは、実は英国公邸に閉じ込められている幼い村娘のマッリを奪い返すためでした。彼はこっそり彼女を見つけ出しますが、檻があるため連れ出せません。見張りが迫ってくるなか、彼はまた必ず戻ってくると彼女を説得しますが、必死にしがみつかれてしまいます。そこで、彼は子守唄を歌うのです。すると、彼女は落ち着き、自分から手を離したのでした。2つ目の機能は、癒やし(healing)です。たとえば、子守唄を歌いながら優しいリズムをとって揺することで、赤ちゃんを寝かしつけすることができます。ヒーリングミュージックやヒーリングダンスというジャンルもあります。実際の研究では、歌やダンスによって、ストレスホルモン(コルチゾール)が減少することがわかっています。つまり、歌やダンスには、リラックスをもたらす効果もあるわけです。(3)同調ビームは最終的に捕らえられ、民衆の前で、ラーマによってむち打ちの刑に処せられます。しかし、彼はひざまずくことを拒み、瀕死の状態のなか、部族の歌を歌い続けます。すると、それに心を動かされた民衆たちが処刑場になだれ込み、刑は中断されてしまうのです。そして、実はインドの独立の夢を秘めていたラーマは、独立を促すのは、武器ではなくて民衆の一体感であることに気付くのです。3つ目の機能は、同調(tuning)です。これは、もともとオーケストラが演奏前にする音合わせという意味です。たとえば、私たちは調子を合わせて一緒に歌って踊ると心地良くなります。また、軍隊の行進や決まったかけ声で士気を高めることができます。実際の研究では、歌やダンスによって、快感ホルモン(ドパミン)や「脳内麻薬」(エンドルフィン)が分泌されることがわかっています。つまり、歌やダンスには、高揚をもたらす効果もあるわけです。次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 2

歌とダンスの起源は?歌とダンスの機能が、求愛、癒し、同調であることがわかりました。それでは、そもそもこれらはいつ生まれたのでしょうか? ここから歌とダンスの起源を3つの段階に分けて、その答えに迫ってみましょう。なお、歌とダンスを一緒に説明する理由として、歌が聴覚を介しているのに対してダンスは視覚を介していますが、リズムによるコミュニケーションという点では本質的に同じと考えられるからです。(1)注意を引く約4億年前に最古の昆虫が陸上に誕生してから、少なくとも2億5千万年前に当時のキリギリスは音を出すように進化しました1)。そして、それ以降、昆虫だけでなく、両生類、爬虫類、哺乳類などの脊椎動物も、鳴き声によって交尾相手に求愛したり交尾ライバルや天敵を威嚇したり獲物をおびき出すようになりました。こうして、地球は、それまでの風雨や波だけの静かな世界から、色々な動物たちの鳴き声による騒がしい世界へと様変わりしていったのです。約700万年前に、アフリカの森で、二足歩行をする初期の人類が誕生しました。これは、遺跡で発掘された人類の骨格の変化から判明しています。二足歩行のきっかけは、オスが捕まえた獲物を両手で持ち帰り、メスにプレゼントをしたためであったと考えられています。そして、そのお礼としてメスはセックスをして、そのオスとの子供を育てていたと考えられています(プレゼント仮説)。ここで、あるオスがプレゼントを用意していても、同時にほかのオスたちも同じようなプレゼントを用意していたら、どうでしょうか? メスは必ずしもそのオスのプレゼントを受け取ってくれなくなる状況が想定されます。そこで、オスは自分がメスに選ばれるために、唸ったり動き回ったりして目立つようにしたのでしょう。そうしたオスが選ばれ、子孫を残したのでしょう。こうして、その唸りや動きはより洗練され複雑になるように進化していったのでしょう。これが、歌とダンスの起源です。1つ目の段階は、注意を引くことです。その練習のために余分な労力が必要になります。また、メスだけでなく、天敵の注意も引きやすくなります。このようなコストやリスクなどのハンディを背負ってでも、歌やダンスを披露する余裕があるという生存能力の高さをメスに示すことができます。これは、ハンディキャップの原理と呼ばれています2)。やがて、いったんこのメスの選り好みができると、その後は生存能力の高さとは関係なく、歌やダンスがうまいだけで選ばれるようになります。これは、暴走進化説(ランナウェイ)と呼ばれています。この詳細については、関連記事1をご覧ください。人間以外でも、たとえば、カナリアのさえずりやゴクラクチョウの求愛ダンスは有名です。また、ゴリラのドラミングは、威嚇だけでなく、求愛の意味もあることがわかっています。ミュラーテナガザルは、「歌うサル」とも呼ばれ、自己アピールをはじめいくつかのパターンの鳴き声をします。逆に、人間に最も近縁のチンパンジーは、ラブソングや求愛ダンスがみられません。その訳は、彼らの生殖が乱婚型(多夫多妻型)であるため求愛行動を積極的にする必要がないからでしょう。一方、初期の人類も乱婚型であったことが考えられていますが、彼らはオスがプレゼントをしてメスがそれを選ぶというプロセスがまずありました。だからこそ、それに伴ってラブソングやダンスが生まれたと考えられるわけです。そもそも人類のオスがメスにプレゼントをあげるようになった訳は、人類はチンパンジーのようにエサが豊富な場所を縄張りとすることができないくらいチンパンジーよりも弱く、オスとメスが助け合わなければ生き残って子孫を残せないという淘汰圧がかかっていたからであることが考えられます。ちなみに、ゴリラの生殖がハーレム型(一夫多妻型)である原因は、ゴリラの縄張りがチンパンジーと比べてエサが少なく散在していたことでオスとメスが出会いにくかったことが考えられています。ゴリラのドラミングは、あくまでほかのオスを牽制するという要素が大きく、メスに選んでもらうという要素が少なかったため、ドラミングが洗練された求愛ダンスに発展する必要がなかったと考えることができます。なお、人間、チンパンジー、ゴリラのそれぞれの生殖戦略の違いの詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)まねをし合う約300万年前、地殻変動からアフリカの東側の森が草原になるにつれて、木の実や獲物、逃げ隠れできる場所が減っていきました。とくに、赤ん坊は小さく無力であるため、猛獣の格好の餌食にされてしまいます。こうして、人類はもはや母親だけで子育てをするのが難しくなっていきました。そんななか、父親は母親と生活を共にして子育てに参加するようになっていきました。これが、人類の一夫一妻型の生殖の起源であり、家族の起源です。実際に、当時の遺跡から十数人の化石が密集して発掘されています3)。ここで、どうやって女性(母親)は特定の男性(父親)に一緒にいてほしい気持ちを伝えたのでしょうか? おそらく、その方法は、女性が男性の求愛の唸り声や動きをまねすることだったのではないでしょうか? そして、男性はその女性をさらにまねすることで、一緒にいたい気持ちを伝えたのではないでしょうか?2つ目の段階は、まねをし合うことです。つまり、まだ言葉がない当時、初期のラブソングの唸り声や求愛ダンスの動きは、表情や身振り手振りと同じサイン言語(非言語的コミュニケーション)の役割を果たすようになっていったということです。実際に、目の前の相手と同じ仕草や口癖をすると相手から好感を持たれます。これは、ミラーリングと呼ばれています。そして、このミラーリングは、夫婦の間だけでなく、家族を基本とする血縁で集まった部族の間にも広まっていったでしょう。たとえば、同じ唸り声の挨拶を交わしたり同じように足踏みをすることです。これが、同調の起源です。こうして、歌やダンスは、夫婦のつながりだけでなく部族のつながりの維持の機能も担うようになっていったのでしょう。なお、人類が草原で暮らし始めた当初、歌やダンスは、森の中とは違い、とても控えめなものであったことが想定されます。なぜなら、草原で大声で唸ったり激しく動き回ると、猛獣に見つかってしまうからです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 3

(3)リズムを取る約200万年前以降、人類の頭蓋骨は徐々に大きくなっていったことが遺跡から発掘された人骨の調査からわかっています2)。その訳は、部族のメンバーの数が増えていき、その関係を維持するための能力(社会脳)が進化したからでした。この詳細については、関連記事3をご覧ください。人類の頭が大きくなっていくと、必然的に難産になります。その打開策として、人類の出産は早産になるように進化していきました(生理的早産)。しかし、その代償として、人類の赤ちゃんは、ほかの霊長類とは違い、生まれてしばらくは寝たきりになりました。彼らは、チンパンジーやニホンザルの赤ちゃんのように生まれてすぐに母親にしがみついておっぱいをもらうことができません。そこで、人類の赤ちゃんは、おっぱいをもらうために激しく泣くように進化していったのです。赤ちゃんが泣くことは、猛獣を呼び寄せることになり、本来適応的ではありません。実際に、チンパンジーやニホンザルなどの類人猿のほぼすべての赤ちゃんは泣きません。そもそも生まれてすぐに母親にしがみついておっぱいがもらえるので泣く必要もありません。ところが、人類は、部族のメンバーをどんどん増やしていったことで、共同育児が可能になり、赤ちゃんが泣いても、猛獣を追い払って守ることができるようになっていたのです。現代でも、赤ちゃんが泣いても母親が一定時間対応しなければ、赤ちゃんは本能的に泣きやみます。対応しないということは、母親たちは近くにおらず、原始の時代は猛獣を呼び寄せるだけになってしまうからです。ちなみに、これは、夜泣きへの対策である「クライアウト」(cry it out)として、赤ちゃんに添い寝しない欧米では主流のやり方です。ちなみに、赤ちゃんは泣くだけでなく微笑むことによっても母親の関心を引くように進化しました(新生児微笑)。笑いの起源の詳細については、関連記事4をご覧ください。さらに、赤ちゃんが激しく泣く副産物として、息を止める息つぎが進化したと考えられています4)。息つぎによって呼吸をコントロールできるようになり、それまでのように一息で唸り声をあげるだけでなく、息つぎによってリズミカルに唸る、つまりハミングができるようになっていったのです。こうして、母親は赤ちゃんにハミングの子守唄を歌い、赤ちゃんが胎内にいる時に聞こえる母親の心拍数(60回/分)と同じリズムでとんとんと背中を優しく叩いたり揺することができるようになっていったのでしょう。3つ目の段階は、リズムを取ることです。実際に、人間以外でリズムを取る動物は、小鳥、イルカ、ゾウなどに限られています。その訳は、小鳥の雛は、人間の赤ちゃんと同じように親から餌をもらうためによく鳴くからです。それが可能なのは、彼らのすみかが高い木の上にあり、ほかの鳥に狙われるリスクはありつつも、猛獣たちがいる地上からはかなり離れているためです。逆に、大型の鳥の雛は鳴きません。その理由は、そのすみかが、大きくなることでその重みから高い木の上には作れず、必然的に地上に近くなるからであると考えられます。また、イルカについては、海の中にいるため、当然ながら息つぎができます。ゾウは、長い鼻で水を吸い上げることから、息つぎができます。なお、先ほどご紹介した「歌うサル」のミュラーテナガザルは、決まったパターンの鳴き声しかできないことから、息つぎでリズムを取っているかは不明です。実際の研究では、人間にも鳥にも、リズムに関する聴覚性の「ものまね神経」(ミラーニューロン)があることがわかっています4)。なんで歌やダンスがうまいとモテるの?歌とダンスの起源は、注意を引く、まねをし合う、リズムを取ることであることがわかりました。約700万年前に人類が誕生してから約20万年前に人類が言葉を話すようになるまでの約680万年の長い間、歌とダンスは、求愛、癒し、同調のためのサイン言語として、人類の心の進化に大きな役割を担いました。たとえば、歌やダンスのうまさは、結婚相手や部族の地位の主な判断基準の1つになっていたでしょう。だからこそ、歌やダンスがうまい人は、周りとうまくコミュニケーションができるため、異性だけでなく、同性や子供も含めた部族のメンバー全員から愛されるわけです。現代の社会で言語能力(知能)がもてはやされているのと同じかそれ以上に、原始の時代は歌やダンスの能力がもてはやされていたといえるでしょう。だからこそ、現代の私たちが音楽やダンスを好み、とくに男性のミュージシャンやダンサーがモテるのです。この点で、初期の人類の進化の鍵が「プレゼント仮説」であるのなら、その後の進化の鍵はラブソングと求愛ダンスといえるでしょう。これを名付けるなら「ラブソング・ラブダンス仮説」です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 4

歌とダンスの医学的な効果とは?歌とダンスが人類の進化に大きな役割を担っていることを踏まえて、その医学的な効果は何でしょうか? ここから、音楽療法5)とダンスセラピー6)として、以下の表1にまとめてみます。音楽療法やダンスセラピーは、実際にやるのではなく、見たり聞いたりするだけでも、「ものまね神経」(ミラーニューロン)によって効果が期待できるでしょう。また、音楽療法やダンスセラピーに集団療法を組み合わせれば、その同調効果から、自閉スペクトラム症の共感性の改善や不登校の予防も期待できるでしょう。タイトル「RRR」とは?この映画のタイトル「RRR」には、当時のインドの独立運動にまつわるRise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)が表示されていました。ただ実は、単に主演2人と監督の名前がみんなRから始まるからという軽いノリで最初に名付けられていただけとのことです。劇中でも、「fiRe」(ラーマの象徴である火)、「wateR」(ビームの象徴である水)、「stoRRRy」(彼らの物語)などとRを絡めた遊び心が満載でした。これに便乗すれば、この記事で名付けた「ラブソング・ラブダンス仮説」の3つのポイントに絡めて、「attRacting」(注意を引く)、「miRRoRing」(まねをし合う)、「Rhythm」(リズムを取る)と当てはめることもできます。それにしても、あの英国公邸の庭での彼らの歌とダンスのワンシーンが頭の中を繰り返し流れ続け、忘れられません。このことからも、この映画を見た方ならきっと「ラブソング・ラブダンス仮説」を提唱したくなる気持ちをおわかりいただけるのではないでしょうか?♪ナ~トゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナトゥ、ナ~トゥ♪…1)「特集 鳴く動物 話すヒト」P40:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社2)「進化と人間行動」P234、P123:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、20223)「アナザー人類興亡史」P136:金子隆一、技術評論社、20114)「つながりの進化生物学」P111、P245:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20135)「音楽療法 効果・やり方・エビデンスを知る」P22、P72、P73:高橋多喜子、金芳堂、20216)「ダンスセラピー」P70、P137、P206:平井タカネ(監)、ジアース教育新社、2012<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1昼顔【不倫はなぜ「ある」の?どうすれば?】Part 1映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 1

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双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連~ENIGMA研究

 双極性障害を含む重度の精神疾患患者では、とくに肥満が顕著に認められる。双極性障害と肥満のいずれにおいても標的となりうる器官は脳であると考えられるが、双極性障害における脳皮質の変化と肥満との関係については、これまでよくわかっていなかった。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連について調査を行った。その結果、双極性障害患者はBMIが高いほど脳の変化が顕著であることが示唆され、双極性障害とも関連する脳領域において、高BMIには大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。Psychological Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。 ENIGMA-BDワーキンググループに参加している13ヵ国より、双極性障害患者1,231例および対照群1,601例の局所脳皮質厚、局所脳表面積(MRI測定)、BMIのデータを収集した。混合効果モデルを用いて、脳構造に対する双極性障害とBMIの影響を併せてモデル化し、相互作用と媒介をテストした。また、BMIに関連する薬剤の影響についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害およびBMIは、同じ脳領域の多くの構造に相加的に影響を及ぼしていた。・双極性障害およびBMIはともに、皮質厚との負の相関が認められたが、脳表面積との関連は認められなかった。・ほとんどの脳領域において、BMIをコントロールした場合、使用された精神科系薬剤のクラス数は、皮質厚の薄さと関連したままだった。・紡錘状回では、使用された精神科系薬剤の数と皮質厚との間に認められた負の相関の約3分の1が、薬剤数と高BMIとの関連により媒介されていた。・高BMIは、双極性障害と関連する脳領域において、大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。・双極性障害患者は、BMIが高いほど、脳の変化が顕著であることが示唆された。・BMIは、双極性障害の神経解剖学的変化や脳に対する精神科系薬剤の影響をより理解するために重要である。

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DEEPER試験の追加調査でm-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。DEEPER試験では、すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。 2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、DEEPER試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。DEEPER試験の追加調査でRAS/BRAF野生型+左側原発が最も効果的 DEEPER試験は2015年7月〜2019年6月に359例の患者が登録され、179例がセツキシマブ群(C群)、180例がベバシズマブ群(B群)に割り付けられた。対象者はmFOLFOXIRI(5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン 200mg/m2+イリノテカン 150mg/m2+オキサリプラチン 85mg/m2)に加え、セツキシマブ:初回400mg/m2で以降は毎週250mg/m2もしくはベバシズマブ:隔週で5mg/kgを投与された。 DEEPER試験の評価対象患者は321例(年齢中央値65歳、PS0~1:90.5%、原発:左84%/右16%)、C群159例、B群162例であった。主要評価項目のDpRの中央値はC群で57.4%(範囲:-15.0~100%)に対して、B群で46.0%(-0.6〜100%)であり、C群が有意に高かった(p=0.0010)。原発腫瘍の部位別では、左側ではC群60.3% vs.B群46.1%(p=0.0007)、右側では50.0% vs.41.2%(p=0.4663)であり、左側でとくにC群のDpRが高い傾向が示された。しかし、DEEPER試験の副次評価項目評価項目であるETS(Early Tumor Shrinkage)、ORR、R0切除率においては、両レジメン間で有意差はみられなかった。 今回は新たに生存に関するDEEPER試験の結果および追加で調査を行ったBRAF変異の結果などについて発表された。 DEEPER試験における最終登録から3年後の主な解析結果は以下のとおり。・DEEPER試験の321例中167例でBRAFに関する情報が得られ、セツキシマブの効果が期待できないとされるBRAF V600E変異は14例で認められた。・RAS/BRAF野生型が判明した症例は153例、内訳はC群72例、B群81例であった。この症例群をRAS野生型、RAS野生型+左側原発、RAS/BRAF野生型、RAS/BRAF野生型+左側原発と対象を絞り込むにつれ、有効性が高くなった。最も効果的であったRAS/BRAF野生型+左側原発131例では、DpRはC群63.6% vs.B群47.8%、p=0.0003、R0切除率は32.8% vs.20.0%、p=0.096であった。・さらに注目される生存に関する解析ではPFS、OSともにC群がB群より統計学的に有意に良好な傾向であった(PFS中央値:15.3ヵ月 vs.11.7ヵ月、ハザード比(HR):0.68、p=0.036、OS中央値:53.6ヵ月 vs.40.2ヵ月、HR:0.54、p=0.02)。・毒性は許容範囲内であり、Grade3以上の特徴的な有害事象としてはC群ではざ瘡(13.1%)、低マグネシウム血症(4%)、B群では高血圧(33.5%)、蛋白尿(3.4%)などであった。 辻氏は「m-FOLFOXIRI+セツキシマブは、RAS/BRAF野生型かつ左側原発の大腸がんにおける薬物療法の魅力的なオプションとなり得る」とした。また、質疑応答中にDpRを主要評価項目とした理由と聞かれ、「当初はOSを検討していたが、早期に結果を得られ、かつ生存期間の代用マーカーとして注目されていたDpRに着目した。DEEPER試験の結果も両者の関連を示すものだ」と説明した。

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肺がん骨転移へのゾレドロン酸8週ごと投与/日本臨床腫瘍学会

 肺がん骨転移に対するゾレドロン酸8週ごと投与の結果を、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏が発表した。 ゾレドロン酸は、固形がんのがん骨関連事象(SRE)や症状緩和には欠かせない薬剤である。一方、顎骨壊死などの重篤な有害事象の発現リスクも見逃せない。そのため、投与間隔の長短による、有効性と安全性の違いが研究されている。田宮氏が発表した無作為化オープンラベル第II相試験(Hanshin Cancer Group0312)は、添付文書の用法である3〜4週ごとと、8週ごとを比較したもの。対象:骨転移を有しゾレドロン酸の4週ごと投与を2サイクル受けた肺がん患者試験群:ゾレドロン酸8週ごと1年間投与(8wk-ZA群)対照群:同 4週ごと1年間投与(4wk-ZA群)評価項目:[主要評価項目]初回SRE発現までの時間、1年時点のSRE発現割合[副次評価項目]6ヵ月時点のSRE発現割合、疼痛評価スケール、骨代謝マーカーI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)と投与期間の関係、鎮痛薬消費量の変化、毒性、全生存率など 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、4wk-ZA群51例、8wk-ZA群43例であった・初回SRE発現までの時間を見た6ヵ月時点の無イベント率(EFR)は、4wk-ZA群86.3%、8wk-ZA群82.4%であった(p=0.715)。・1年時点の累積SRE発現割合は4wk-ZA群17.6%、8wk-ZA群は23.3%であった(p=0.608)。・疼痛スコア(NRT)のベースラインからの変化は、4wk-ZA群では有意な変化はなかった。8wk-ZAa群では4週時点でベースラインにより改善したが、40週時点では悪化した。・NTxは両群ともベースラインからの有意な変化はなかった。・有害事象の多くは、がん治療に付随するものか、がんの合併症であった。顎骨壊死は4wk-ZA群で1例発現し、8wk-ZA群での発現は認めなかった。 田宮氏は「骨転移のある肺がんにおいて、ゾレドロン酸の8週ごと投与は、標準療法である4週ごと投与に比べ、SREの発現を増やさなかった。転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)治療では、生存の長期化とQOLの改善が続いているため、骨修飾薬の減量レジメンの評価は、効果と安全性を長期間見るべきである」と述べている。

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