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lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。 本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。lecanemabの米国における適応症<適応症> lecanemabの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療であり、lecanemabによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者において開始すること。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータはない。本適応症は、lecanemabの治療により観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されており、臨床的有用性を確認するための検証試験データが本迅速承認の要件となっている。<用法・用量(対象者・投与方法・ARIAのモニタリング)> 治療開始前にAβ病理が確認された患者に対して、10mg/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注。lecanemabによる治療の最初の14週間は、アミロイド関連画像異常(ARIA)についてとくに注意深く患者の様子を観察することが推奨される。投与開始前に、ベースライン時(直近1年以内)の脳MRI、および投与後のMRIによる定期的なモニタリング(5回目、7回目、14回目の投与前)が行われる。<副作用> lecanemabの安全性は、201試験においてlecanemabを少なくとも1回投与された763例で評価されている。lecanemab(10mg/kg)を隔週投与された被験者(161例)の少なくとも5%に報告され、プラセボ投与被験者(245例)より少なくとも2%高い発生率であった。主な副作用は、infusion reaction(lecanemab群:20%、プラセボ群:3%)、頭痛(14%、10%)、ARIA浮腫/滲出液貯留(ARIA-E;10%、1%)、咳(9%、5%)および下痢(8%、5%)だった。lecanemabの投与中止に至った最も多い副作用はinfusion reactionであり、lecanemab群は2%(161例中4例)に対して、プラセボ群は1%(245例中2例)だった。lecanemabの重要な安全情報<重要な安全情報(警告・注意事項)>アミロイド関連画像異常(ARIA) lecanemabはARIAとして、MRIで観察されるARIA-E、あるいはARIA脳表ヘモジデリン沈着(ARIA-H)として微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症を引き起こす可能性がある。ARIAは通常無症候であるが、まれに痙攣、てんかん重積状態など、生命を脅かす重篤な事象が発生することがある。ARIAに関連する症状として、頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害などが報告されている。また、局所的な神経障害が起こることもある。ARIAに関連する症状は、通常、時間の経過とともに消失する。[ARIAのモニタリングと投与管理のガイドライン]・lecanemabによる治療を開始する前に、直近1年以内のMRIを入手すること。5回目、7回目、14回目の投与前にMRIを撮影すること。・ARIA-EおよびARIA-Hを発現した患者における投与の推奨は、臨床症状および画像判定による重症度によって異なる。ARIAの重症度に応じて、lecanemabの投与を継続するか、一時的に中断するか、あるいは中止するかは、臨床的に判断すること。・ARIAの大半はlecanemabによる治療開始後14週間以内にみられることから、この期間はとくに注意深く患者の状態を観察することが推奨される。ARIAを示唆する症状がみられた場合は臨床評価を行い、必要に応じてMRIを実施すること。MRIでARIAが観察された場合、投与を継続する前に慎重な臨床評価を行うこと。・症候性ARIA-E、もしくは無症候でも画像判定によって重度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した経験はない。無症候でも画像判定によって軽度から中等度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した症例に関する経験は限られている。ARIA-Eの再発症例への投与データは限られている。[ARIAの発現率]・201試験において、lecanemab群の3%(5/161例)に症候性ARIAが発現した。ARIAに伴う臨床症状は、観察期間中に80%の患者で消失した。・無症候性ARIAを含めると、ARIAの発現率はlecanemab群の12%(20/161例)、プラセボ群の5%(13/245例)であった。ARIA-Eは、lecanemab群の10%(16/161例)、プラセボ群の1%(2/245)で観察された。ARIA-Hは、lecanemab群の6%(10/161例)、プラセボ群の5%(12/245例)で観察された。プラセボと比較して、lecanemab投与によるARIA-Hのみの発現率の増加は認められなかった。・直径1cmを超える脳内出血は、lecanemab群の1例で報告されたが、プラセボ群では報告されなかった。他の試験では、lecanemabの投与を受けた患者において、致死的事象を含む脳内出血の発生が報告された。[アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)保有ステータスとARIAのリスク]・201試験において、lecanemab群の6%(10/161例)がApoEε4ホモ接合体保有者、24%(39/161例)がヘテロ接合体保有者、70%(112/161例)が非保有者であった。・lecanemab群において、ApoEε4ホモ接合体保有者はヘテロ接合体保有者および非保有者よりも高いARIAの発現率を示した。lecanemabを投与された患者で症候性ARIAを発症した5例のうち4例はApoEε4ホモ接合体保有者であり、うち2例は重度の症状が認められた。lecanemab投与を受けた被験者で、ApoEε4ホモ接合体保有者ではApoEε4ヘテロ接合体保有者や非保有者と比較して症候性ARIAおよびARIAの発現率が高いことが、他の試験でも報告されている。・ARIAの管理に関する推奨事項は、ApoEε4保有者と非保有者で異ならない。・lecanemabによる治療開始を決定する際に、ARIA発症リスクを知らせるためにApoEε4ステータスの検査が考慮される。[画像による所見]・画像による判定では、ARIA-Eの多くは治療初期(最初の7回投与以内)に発現したが、ARIAはいつでも発現し、複数回発現する可能性がある。lecanemab投与によるARIA-Eの画像判定による重症度は、軽度4%(7/161例)、中等度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Eは画像による検出後、12週までに62%、21週までに81%、全体で94%の患者で消失した。lecanemab投与によるARIA-H微小出血の画像判定の重症度は、軽度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Hの患者10例のうち1例は軽度の脳表ヘモジデリン沈着症を有していた。[抗血栓薬との併用と脳内出血の他の危険因子について]・201試験では、ベースラインで抗凝固薬を使用していた被験者を除外した。アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬の使用は許可された。また、臨床試験中に併発事象の処置のため4週間以内の抗凝固薬を使用する場合は、lecanemabの投与を一時的に中断した。・抗血栓薬を使用した被験者はほとんどがアスピリンであり、他の抗血小板薬や抗凝固薬の使用経験は限られており、これらの薬剤の併用時におけるARIAや脳内出血のリスクに関しては結論づけられていない。lecanemab投与中に直径1cmを超える脳内出血が観察された症例が報告されており、lecanemab投与中の抗血栓薬または血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)の投与には注意が必要である。・さらに、脳内出血の危険因子として、201試験においては以下の基準により被験者登録を除外している。直径1cmを超える脳出血の既往、4個を超える微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、血管性浮腫、脳挫傷、動脈瘤、血管奇形、感染病変、多発性ラクナ梗塞または大血管支配領域の脳卒中、重度の小血管疾患または白質疾患。これらの危険因子を持つ患者へのlecanemabの使用を検討する際には注意が必要である。infusion reaction・lecanemabのinfusion reactionは、lecanemab群で20%(32/161例)、プラセボ群で3%(8/245例)に認められ、lecanemab群の多く(88%、28/32例)は最初の投与で発生した。重症度は軽度(56%)または中等度(44%)だった。lecanemab投与患者の2%(4/161例)において、infusion reactionにより投与が中止された。infusion reactionの症状には、発熱、インフルエンザ様症状(悪寒、全身の痛み、ふるえ、関節痛)、吐き気、嘔吐、低血圧、高血圧、酸素欠乏症がある。・初回投与後、一過性のリンパ球数の減少(0.9×109/L未満)がプラセボ群の2%に対して、lecanemab群の38%に認められ、一過性の好中球数の増加(7.9×109/Lを超える)はプラセボ群の1%に対して、lecanemab群の22%で認められた。・infusion reactionが発現した場合には、注入速度を下げ、あるいは注入を中止し、適切な処置を開始する。また次回以降の投与前に、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイドによる予防的投与が検討される場合がある。

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脂質異常症(高脂血症)とは?

脂質異常症(高脂血症)とは?血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します1)。脂質異常症の診断基準2)LDLコレステロールHDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症120~139mg/dL境界域高LDLコレステロール血症40mg/dL未満低HDLコレステロール血症悪玉が多いタイプ善玉が少ないタイプ150mg/dL以上トリグリセライド (空腹時採血)(中性脂肪)175mg/dL以上高トリグリセライド血症中性脂肪が多いタイプ(随時採血)non HDLコレステロール170mg/dL以上高non HDLコレステロール血症(総コレステロール-HDLコレステロール)150~169mg/dL境界域高non HDLコレステロール血症1)厚生労働省 e-ヘルスネット善玉以外が多いタイプ脂質異常症(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html)2)日本動脈硬化学会編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. p22 表2-1より一部改変Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心室細動に対する除細動法が変わる?(解説:高月誠司氏)

 本研究では、院外心停止の難治性心室細動患者に対して救急隊が行う電気ショックの方法を、通常法(パッチ位置は右前上胸部と心尖部)、ベクトル変更法(パッチ位置は左前胸部と背部)、そして2台の除細動器を使って、上記2つの方法のパッチ位置の電極に対して、連続的に放電する2連続法を比較した。難治性というのは通常の電気ショックで心室細動が停止しなかったという意味である。 結果、ベクトル変更法と2連続法は通常法よりも生存退院をそれぞれ1.71倍、2.21倍に増やし、生存者における修正ランキンスケール2以下の割合をそれぞれ1.48倍、2.21倍に増やした。心室細動の停止はそれぞれ1.18倍、1.25倍であり、本試験はCOVID-19のパンデミックにより中途で中止されており、とくに生存退院や修正ランキンスケール2以下の割合は過大評価されている可能性もある。ただしそれでも2連続法は通常法に比べて、明らかな優越性を示したと言っていいだろう。通常のパッチ電極の位置では心臓の後面、左室後壁に電流が届きにくいが、さらに前後面のパッチ電極に連続的に電気ショックを与えることで、除細動率が向上するというのは理にかなっている。 今後救急隊の心肺蘇生用にベクトルを変更して2連続でショックがかけられるような除細動器が開発される可能性がある。

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『金持ち父さん貧乏父さん』の「マイホーム=負債」は本当なのか?【医師のためのお金の話】第64回

『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著、筑摩書房)という書籍をご存じでしょうか。日本では2000年に出版された資産形成をテーマにした本の草分け的な存在です。筆者も当時、本屋さんで平積みされていた本著を手に取ったときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。ロバート・キヨサキ氏はハワイ生まれの日系アメリカ人です。資産形成の手法が非常にわかりやすく説明されているため、この書籍に感銘を受けた人も多いことでしょう。何を隠そう、私もその一人です。何度も読み込み、ロバート・キヨサキ氏の考え方を血肉にしました。本書では、資産について独特の考え方を披露しています。「金持ち父さん」が考える資産とは「ポケットにお金を入れてくれるもの」です。具体的には家賃を生み出す不動産や、配当をくれる株式などです。本書は、「資産形成の基本は、『ポケットにお金を入れてくれるもの』を収集する作業だ」と喝破しています。資産形成とは貯金のことだと思っていた私には衝撃的な内容でした。しかし、今に至ってもどうしても腑に落ちないことがあります。それは、「マイホームは資産ではなく負債だ」という主張です。目からウロコの定義!金持ち父さん的な資産と負債の定義本書は、資産について斬新な提言をしています。一般的な日本人の感覚では、「資産=現金・銀行預金」です。しかし、金持ち父さんは、お金の流れ(キャッシュフロー)に着目した定義付けをしています。資産とは、あなたのポケットにお金を入れてくれるもの負債とは、あなたのポケットからお金を奪っていくもの小学生にでもわかる表現が流石ですね。端的に言うと、「所有しているだけでお金が入ってくるもの」が資産です。一方、収益を生み出すどころか、「お金を支払わなければならないものは資産ではなく負債」です。負債と言われると、フツーの感覚では、「消費者金融などで借りたお金」などをイメージするのではないでしょうか。しかし、金持ち父さんの考えでは、マイホームは負債になります。確かににマイホームを所有しているだけではお金は入ってきませんし、逆に融資返済などの支出があります。金持ち父さんは、私たちに大きな発想の転換を迫りました。「マイホームは負債である」と言われると、ドキッとする人も多いことでしょう。しかし、これは本質を突いた指摘です。利上げでマイホームの負債化が加速する?!2022年12月20日に日銀が「事実上の利上げ」を発表しました。突然の決定だったこともあり、大きなニュースになったのは記憶に新しいでしょう。私たち個人が、利上げで最も影響を受けるのは住宅ローンです。利上げに伴い、住宅ローン金利は上昇すると言われています。あなたのポケットから出ていくお金が増えるわけですから、マイホームの負債化が加速するとも言えます。やはり、マイホームは負債だったのか……。暗鬱な気持ちになった人も多いかもしれません。でもご安心ください。利上げの影響は多岐に渡ります。確かに短期的には支払うべき金利が増加して、不動産価格は一時的に下落するかもしれません。しかし、長期的に見ると、利上げの原因となったインフレ基調が鮮明になるほど、不動産の価値は増加します。短期目線ではあまり良いイメージのない利上げですが、決してマイホームに対して逆風ばかりではありません。むしろデフレを脱却して経済が健全化すれば、不動産価格も相応の評価を受けることでしょう。マイホームは素人ができる最良の不動産投資それでは、資産形成に重要な「ポケットにお金を入れるもの」とは一体何なのでしょうか。金持ち父さんは、具体的に以下のようなものを、ポケットにお金を入れる「資産」として挙げています。不動産株式債券著作権特許権ビジネスこれらはすべて所有しているだけで収入を生み出します。金持ち父さんが主張する資産の定義にすべてマッチしていますね。しかし、ここで再度1つの疑問が浮かびます。収入を生まない不動産であるマイホームは、本当に資産ではないのでしょうか。確かにマイホームは自分が住んでいるだけでは収入を生みません。しかし、もしマイホームがなければ、賃貸不動産に住まなければいけません。そうなると家賃という費用が発生します。考え方を少し変えると、私たちはマイホームによって見えない費用をカットできているのです。マイホームも立派にお金を生み出していることになり、資産と言えるのではないでしょうか。実際に、マイホームを売却すればお金が入ってきます。マイホームを負債と切り捨てるのは、少し考え方がオーバーかもしれません。金持ち父さんがマイホームを負債と言い切っているのは、読者に大胆な発想の転換を促すのが目的と思われます。金持ち父さんの言葉を鵜呑みにして、マイホームを負債と切り捨てるのは少々もったいないと思います。マイホームは素人ができる最良の不動産投資なのですから。

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第143回 アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」FDA迅速承認を聞いて頭をもたげたある疑問、「結局高くつくのでは?」

満を持してエーザイが放つレカネマブは成功するか?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年末年始は愛知県の実家に帰省し、少々ボケてきた91歳の父親のマイナポイント申請と、買い与えたiPhoneの使い方指導を行って来ました。マイナポイントの申請はiPhoneを使ってなんとかできたのですが、超高齢者がスマホを使いこなすのはなかなかハードルが高いなと実感した次第です。最大の障壁はタッチパネルです。スマホに電話がかかってきても、タッチパネルをタップしてうまく受けられないのです。指の爪の部分でタッチしてしまったり、押す部分がズレてしまったり。ある日などは指先を怪我したとかで絆創膏を貼った指でタッチしようとしていました。電話を正しく取れる成功率は4割ほど。ま、認知症にもならず、90歳を超えてスマホを使ってみようという意欲だけは買いますが、この先どこまで使えるようになるか。ちなみに父親は万歩計代りにもなる「フィットネス」アプリ(何も操作しなくても歩いた距離と歩数が記録される)だけはいたく気に入ったようでした。さて、今回は1月6日(現地時間)に米食品医薬品局(FDA)が迅速承認した、エーザイと米国バイオジェン社が共同開発しているアルツハイマー病治療薬・レカネマブ(LEQEMBI)について書いてみたいと思います。2021年6月に米国で承認されたアデュカヌマブについては、本連載でも、「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」、「第63回 同(後編)」、「第91回 年末年始急展開の3事件、『アデュカヌマブ』『三重大汚職』『町立半田病院サイバー攻撃』のその後を読み解く」などで何度か取り上げました。薬価が高額だったことや治験データの不十分さなどから、保険適用が治験参加者に限られることとなり、普及は失敗に終わっています。アデュカヌマブの挫折を乗り越え、満を持してエーザイが放つレカネマブは果たして成功するのでしょうか。18ヵ月の治療で27%の進行抑制レカネマブは、アルツハイマー病(AD)の原因物質とされるアミロイドβプラークに対するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、アミロイドβの脳内への蓄積を抑制する効果があったとされています。今回の迅速承認は、レカネマブがADの特徴である脳内に蓄積したアミロイドβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくものです。なお、昨年NEJM誌に掲載された早期ADを対象とした臨床第III相Clarity AD検証試験の結果1)では、レカネマブ投与は、投与18ヵ月時点における認知機能・全般症状の評価項目について、プラセボに対して悪化抑制を示し(18ヵ月の治療でCDR-SB[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes]において27%の進行抑制など)、一方で有害事象は想定の範囲内だったとのことです。なお迅速承認が下りたその日のうちに、FDAに対し完全承認に向けた申請を行っています。Aβ検査がボトルネックに今回承認された適応症は、早期のアルツハイマー病(AD)の治療です。治療開始前にアミロイドβの病理所見が確認された患者に対し、10mg/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注するとしています。米国では「LEQEMBI(レケンビ)」の商品名で1月23日の週に発売を始めるとのことです。1月7日午後に東京で開かれたエーザイの投資家説明会で内藤 晴夫最高責任者は「MCI(MCI due to AD:アルツハイマー病による軽度認知障害)と軽度ADのうち、実際の医療機関で早期ADとの診断を受け、さらにアミロイドPET検査またはCSF腰椎穿刺検でアミロイドβ陽性と判定された患者が投与対象となる。米国では今後3年間で10万人が対象。2030年までに世界で250万人が対象になる」と述べました。内藤氏は同薬の普及にあたってはアミロイドβ検査がボトルネックになるとの見解を示し、「より簡便な血液検査の開発・普及に期待する」と話していました。年間卸業社購入価格を2万6,500ドル(約350万円)に設定この日の説明会で内藤氏は、米国における価格設定についてその考え方を説明しました。それによれば、レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドルと見積もる一方、年間卸業社購入価格(WAC:Wholesale Acquisition Cost)を2万6,500ドル(約350万円)と1万ドル以上安価に設定したとのことです。内藤氏は「より幅広い当事者様アクセスの促進、経済的負担の軽減、医療システムの持続可能性への貢献を目指しての設定」と話していました。米国の高齢者向け公的保険メディケア加入者の実質的な自己負担額は1日あたり数ドル〜14.5ドルだそうです。QALY(Quality-Adjusted Life Year:質調整生存年)などを使った算出式は複雑過ぎて私にはよく理解できませんでしたが、アデュカヌマブの価格設定においては米国のアルツハイマー病の支援団体から批判が噴出したことから、相当神経を使って価格設定を行ったということは伝わってきました。日本でも「一日も早い申請」を目指す気になる日本での発売時期の見込みについて内藤氏は明言を避けました。ただ、PMDAとの話し合いはすでに進めているとのことで、「一日も早い申請」を目指すとのことでした。仮に日本で承認されたとしても、やはりPET検査や腰椎穿刺検などによる病理所見の確認が大きな障壁になりそうです。また、米国ではADによるMCIと軽度ADが対象ですが、日本でもMCIが保険適用になるかも注目ポイントとなります。日本の保険診療上、MCIは疾患ではなく現状使用できる薬剤はありません(MCIはドネペジルも保険で使えません)。そう考えると、承認後も広く使われる薬になるには、それなりの時間がかかりそうです。患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性さて、アデュカヌマブが米国で承認された1年半前、私はこの連載の「第63回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(後編)」で、「アデュカヌマブが承認されたとしても、医師たちは『どういう患者に使えるか』『アミロイドβの蓄積はどうか』といった診断面ばかりに目が行き、患者対応やケアはこれまで以上に後回しにされる危険性があります。『患者を診ず病気しか診ない』どころか、『患者を診ず検査値しか見ない』というわけです」と書きました。この心配はレカネマブについても当てはまります。患者の症状や行動を見ず、糖尿病のHbA1cのようにアミロイドβの値ばかり気にする医師が増えそうです。そしてさらに、内藤氏の「レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドル」との発言を聞いて、新たな疑問も頭をもたげてきました。ADの罹患期間を長くしてしまい最終的に医療費・介護費は高くつくのではそれは、「ADの進行を遅らせるということは、結果その人のADの罹患期間を長くしてしまい、最終的にその人にかかる医療費は高くついてしまうのではないか」ということです。軽度ADの人のレカネマブ投与中の社会的価値は確かに上がるかもしれませんが、いずれ中等度・重度に移行し、上がった分は結局はチャラになってしまい、罹患期間が長くなることでむしろトータルの医療費・介護費はかさむ結果になると思うのですが、皆さんいかがでしょう。この疑問を、医薬品開発に詳しい知人の記者にぶつけたら、「アミロイドβをターゲットとした治療薬はそもそも根本治療ではないのだから、そうした疑問は昔からある。でも、今できるのはそこしかないので、次のAD治療薬のステージに行くためにもレカネマブ承認の意味はある」と話していました。全体として、投資家含め、医薬品産業畑の人たちはレカネマブ登場に好意的過ぎる印象です。私は父親のボケ抑制のために、せいぜいスマホ訓練を地道に続けようと思いました。参考1)H van Dyck C, et al. N Engl J Med. 2023;388:9-21.

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EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の肺臓炎、リアルワールド解析の結果(OSI-FACT)/Chest

 オシメルチニブは、進行EGFR変異陽性肺がん患者(NSCLC) の1次治療として位置付けられている。一方、オシメルチニブの潜在的合併症である薬物関連肺臓炎(DRP)については、信頼できるリアルワールドデータが不足している。 リアルワールドにおけるオシメルチニブ1次治療のDRP発現頻度、特徴を評価する多施設後ろ向きコホート研究が行われた。その結果が、2022年11月のChest誌で発表されている。 対象は2018年8月〜2019年12月に、1次治療としてオシメルチニブを投与された進行EGFR変異陽性NSCLC患者。主要評価項目は、独立審査委員会で特定された DRP発現率であった。 主な結果は以下のとおり。・18施設から452例の患者が登録された。・全GradeのDRPは80例(18%) 、Grade3以上は21例(4.6%)に認められた。・DRPの患者のうち、46%が一過性無症候性肺陰影(TAPO)であることが確認された。・多変量解析では、DRPの独立した危険因子として喫煙歴が特定された(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.01〜2.89、p=0.046)。・3ヵ月のランドマーク分析によれば、DRPの存在は治療効果の低さと関連していたが、TAPOの存在は治療効果に悪影響を及ぼさなかった。

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高齢者施設での新型コロナ被害を最小限にするために/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月28日に開催された。その中で「高齢者・障がい者施設における被害を最小限にするために」が、舘田 一博氏(東邦大学医学部教授)らのグループより発表された。 このレポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると死亡などのリスクの高い、高齢者・障害者を念頭に大人数が集まるケア施設内などでのクラスター感染を防ぐための対応や具体的な取り組み法として、健康チェック、ワクチン、早期診断と対応、早期治療、予防投与が可能な薬剤、リスク時の対応、保健所や医療機関との連携などが示されている。医療機関外での感染者対応が課題 はじめに「第8波のリスクと高齢者・障がい者施設を守ることの重要性」と題し、これまでわが国では、高齢者・障害者施設において多数のクラスターを経験、多くの命が失われたこと、現在は第8波の入り口であり、年末年始の諸行事により急激な感染者数の増加が生じるリスクが高まることを指摘する。そして、死亡者数が1日270人(2022年12月15日時点)と増加中であり、その多くが高齢者や基礎疾患を有する人で、とくに集団感染が生じやすい高齢者・障害者施設、慢性期医療機関がリスクの中心であり、その被害をいかに減らすかが重要となる。また、今冬はインフルエンザとの同時流行が懸念され、こうした施設内においても、COVID-19とインフルエンザが同時期に流行し両方の感染者が増大したことを想定した備えが必要になると注意を喚起しているほか、ワクチンなどの普及により軽症例や無症候例もあり、すべてが医療機関への入院ではなく感染者の状態に応じて施設内対応が求められる事例が増加しており、感染者や濃厚接触者への感染対策や治療を施設などでも行っていくことが求められるようになっている。高齢者や障害者の命を守ることができる施設対策へ 高齢者・障害者施設で求められる第8波対策は以下の通り。1)健康チェック入所者・職員の毎日の健康チェックが重要。発熱・咳・咽頭痛(違和感)・全身倦怠感などがみられた場合には感染の可能性を考えて迅速に対応。都道府県が実施している職員対象のPCR検査や抗原定性検査キットによる定期的検査を積極的に活用し、感染の早期発見に努めること。2)ワクチン接種オミクロン対応2価ワクチンが利用でき、それ以外の新型コロナワクチンの最終接種から3ヵ月を経過した時点からは次のワクチン接種が受けられる。施設利用者に対しては集団的接種などによる接種機会の確保を図るとともに、職員にも早めの接種を推奨する。また、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能。3)早期診断・早期対応「風邪かな?」と思ったら、コロナやインフルエンザの可能性を考えて検査を実施することが必要。典型例を除き(インフルエンザ流行時の急激な発熱・筋肉痛など)、臨床症状だけで両者を鑑別することは困難。現在では、コロナだけでなく、インフルエンザも同時に診断できる簡易抗原検査キットが利用可能なので、施設ごとに協力医療機関などと連携の上で、検査キットを備えておくことが勧められる。4)コロナと診断された場合の早期治療これまでにコロナに対する治療薬として抗ウイルス経口薬(3種類)と注射薬(1種類)、中和抗体薬(3種類)に加えて、免疫抑制剤(3種類)が承認されている。高齢者や重症化リスクのある人には早期の治療開始が重要。しかし、高齢者・障害者施設においては、医師が常駐していないこともあり、施設特性や得られる医療支援に応じて、無理のない範囲で使用可能な治療薬の検討を行い、感染発生を想定した準備を行うことも重要。5)予防投与が可能な薬剤施設内で感染者が発生し、クラスターのリスクが高まっている場合、あるいは免疫抑制状態が強く重症化リスクが高い入所者において、曝露後に使用できる薬剤としてカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)が承認されている。オミクロン株の流行の中で中和活性の低下が報告されているが、中和活性に加えて感染細胞を排除する作用(エフェクター機能)があることも報告されており、他の薬剤が使用できない場合の投与が承認されている。施設内でのクラスター発生時、感染者周囲の曝露者に対して予防投与を早期に行うことにより発症および重症化を抑制できる可能性がある。施設の特性や得られる医療支援を考慮し、無理のない範囲で、予防投与の進め方に関して担当医師と相談しておくことも重要。6)クラスターのリスクが高まっている場面での感染対策の実際施設内で感染者が発生した場合に、施設内で隔離および治療を行わなければいけない場合も増加している。これまでの経験をもとに感染対策を実施し、他の入所者に感染を広げない対策が必要になる。施設内では人材・感染対策資材も限られており、ゼロリスクを求める対策は困難だが、施設で実施することが可能なリスクを減らす対策を組み合わせて対応することが必要になる。〔高齢者・障害者施設におけるエアロゾル感染対策の考え方〕(1)屋内における密集を避ける(2)換気扇を常時稼働させる(3)人数が増えたら窓を開ける(4)扇風機を外に向かって回す(5)パーティションは必要時に設置する(6)空気清浄機を活用する7)保健所・医療機関との連携の重要性クラスターの発生前から保健所や医療機関との連携が取れるように、日常から備えておくことが重要。とくに医師が常駐していない施設では、感染疑いの入所者・職員が出た場合の検査や治療の実施に関して事前に保健所や医療機関と相談をしておく必要がある。感染者が明らかとなった場合には、保健所・医療機関に速やかに連絡し、必要な治療を開始することが重症化抑制、クラスター対策として効果的。第8波を前に保健所・連携医療機関と対応の実際に関してお互いに確認しておくことをお勧めする。〔高齢者・障害者施設における感染対策のポイント〕・最終ワクチン接種後、3ヵ月を経過したら次の接種が可能(コロナとインフルエンザワクチンの同時接種も可能)・早期発見「かぜ」かな?と思ったら検査を実施(適宜、コロナ・インフルエンザ同時抗原検査を利用)・リスクを減らす対策を可能な限り組み合わせて対応・人との接触時(近距離・直接)はマスク着用と効果的な換気が基本(吸引などの場合はN95マスクを使用)・医療機関・保健所との連携の確認(早めの診断と治療、感染の拡大予防が可能になるよう前もって相談)

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抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。 統合失調症患者3,010例を対象に、ランダム化比較試験(RCT)を実施した。対象患者を、5種類の非定型抗精神病薬(リスペリドン:2~6mg/日、オランザピン:5~20mg/日、クエチアピン:400~750mg/日、アリピプラゾール:10~30mg/日、ziprasidone:80~160mg/日)および2つの定型抗精神病薬(ペルフェナジン:20~60mg/日、ハロペリドール:6~20mg/日)のいずれかにランダムに割り付け、6週間の治療を行った。初期有効性の定義として、2週時点での陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの減少率を用いた。分析には、50%減少のカットオフ値、ロジスティック回帰、ROC解析、ランダムフォレストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・7種類の抗精神病薬治療による2週時点でのPANSS合計スコアの減少率および精神症状の改善は、その後の治療反応を予測可能であった。・とくに、妄想、判断力と洞察力の欠如、思考内容の異常、猜疑心/迫害感が重要な指標である可能性が示唆された。

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HER2+乳がん脳転移例、tucatinib追加でOSを約9ヵ月延長(HER2CLIMB)/JAMA Oncol

 HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者の最大50%が脳転移を有し、予後不良とされている。脳転移症例を含むHER2+MBCに対するトラスツズマブ、カペシタビンへのtucatinib追加投与の有効性を検討したHER2CLIMB試験について、探索的サブグループ解析の最新フォローアップデータを、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年12月1日号に報告した。 今回の探索的サブグループ解析の評価項目は、脳転移症例における全生存期間(OS)およびCNS無増悪生存期間(CNS-PFS)、ベースライン時点で測定可能な頭蓋内病変を有する症例における頭蓋内奏効率(ORR-IC)および頭蓋内奏効期間(DOR-IC)、全症例における脳内新病変の非出現期間など。OSのみ事前に設定されていた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点で、612例中291例(47.5%)が脳転移を有していた。・脳転移症例の年齢中央値は52歳(22~75)、289例(99.3%)が女性だった。・追跡期間中央値29.6ヵ月(0.1~52.9)において、OS中央値はtucatinib併用群21.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:18.1~28.5)vs.プラセボ併用群12.5ヵ月(95%CI:11.2~16.9)となり、9.1ヵ月延長した。・tucatinib併用群ではプラセボ併用群と比較して、CNS-PFS(9.9ヵ月vs.4.2ヵ月)およびORR-IC(47.3% vs.20.0%)においてより高い臨床的有用性を示した。・DOR-ICは、8.6ヵ月(95%CI:5.5~10.3)vs.3.0ヵ月(95%CI:3.0~10.3ヵ月)だった。・全症例における脳内新病変の非出現期間中央値は、tucatinib併用群24.9ヵ月vs.プラセボ併用群13.8ヵ月となり、11.1ヵ月延長した。最初の進行部位となる新たな脳病変の発生または死亡リスクは、tucatinib併用群でプラセボ併用群に対して45.1%減少した(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.85、p=0.006)。 著者らは、tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用は、新たな脳病変の発生リスクを低減しながらOSを改善することが明らかとなり、脳転移症例を含むHER2+MBC患者に対するこの治療選択肢の重要性がさらに支持されることになったとまとめている。

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adagrasib、既治療のKRAS G12C変異陽性大腸がんに有望/NEJM

 治療歴のある転移を有するKRAS G12C変異陽性の大腸がん患者の治療において、経口KRAS G12C阻害薬adagrasibは、単剤療法およびセツキシマブ(抗EGFR抗体)との併用療法のいずれにおいても、抗腫瘍活性が認められ、併用療法では奏効期間が6ヵ月を超えることが、米国・Sloan Kettering記念がんセンターのRona Yaeger氏らが実施した「KRYSTAL-1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年1月5日号に掲載された。米国の非無作為化第I/II相試験 KRYSTAL-1試験は、米国で進行中の非盲検非無作為化第I/II相試験であり、今回はadagrasib単剤療法の第II相試験と、セツキシマブとの併用療法の第Ib相試験の結果が報告された(Mirati Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、転移を有する切除不能の大腸がんで、KRAS G12C変異が陽性であり、治癒が期待できる治療や標準治療がなく、全身状態の指標であるECOG PSスコアが0または1の患者であった。 被験者は、adagrasib単剤療法の第II相試験では、同薬600mgを1日2回経口投与され、併用療法の第Ib相試験では、adagrasib(600mg、1日2回、経口)+セツキシマブ(初回負荷投与量400mg/m2体表面積、以降は250mg/m2を週1回静脈内投与、または500mg/m2を2週ごと)の投与を受けた。 主要評価項目は、単剤療法が担当医判定による客観的奏効(完全奏効、部分奏効)、併用療法は安全性(用量制限毒性を含む)とされた。併用療法は奏効率46%、奏効期間7.6ヵ月 データカットオフ日(2022年6月16日)の時点で、単剤療法群に44例(年齢中央値59歳[範囲:29~79]、女性50%、治療期間中央値5.9ヵ月、全身療法による前治療ライン数中央値3)、併用療法群に32例(60歳[41~74]、53%、7.3ヵ月、3)が登録され、追跡期間中央値はそれぞれ20.1ヵ月および17.5ヵ月であった。 単剤療法群(43例が評価可能)の客観的奏効率は19%(95%信頼区間[CI]:8~33)であり、盲検下の独立中央判定では23%(同:12~39)、最大の解析対象集団(FAS)(44例)における担当医判定では18%(同:8~33)であった。 また、単剤療法群の奏効期間中央値は4.3ヵ月(95%CI:2.3~8.3)、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.6ヵ月(同:4.1~8.3)、全生存期間(OS)中央値は19.8ヵ月(同:12.5~23.0)であった。 併用療法群(28例が評価可能)では、盲検下独立中央判定および担当医判定による客観的奏効率が46%(95%CI:28~66)、奏効期間中央値が7.6ヵ月(同:5.7~評価不能)、PFS中央値が6.9ヵ月(同:5.4~8.1)、OS中央値は13.4ヵ月(同:9.5~20.1)であった。 治療関連有害事象は、単剤療法群が93%、併用療法群は100%で発現し、このうちGrade3/4はそれぞれ34%および16%であった。頻度の高い有害事象は、単剤療法群が下痢(66%)、悪心(57%)、嘔吐(45%)、疲労(45%)であり、併用療法群は悪心(62%)、下痢(56%)、嘔吐(53%)、ざ瘡様皮膚炎(47%)、疲労(47%)であった。 有害事象による減量は、単剤療法群が39%、併用療法群はadagrasibが31%、セツキシマブが3%で認められた。また、有害事象による投与中止は、単剤療法群が0%、併用療法群はadagrasibが0%、セツキシマブが16%でみられた。Grade5の有害事象は、両群とも観察されなかった。 著者は、「これらの結果は、KRASとEGFRの双方の阻害が大腸がんに対する活性を有することを示しており、前臨床研究の知見と一致する。2つの薬剤の併用は相乗的な毒性作用をもたらさず、治療関連有害事象は各薬剤の単剤療法の報告と一致した」としている。

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定量化が困難な冠動脈疾患、機械学習で可能に/Lancet

 冠動脈疾患のバイナリ診断では、疾患の複雑性が保持されず、重症度や死亡リスクを定量化できないため、冠動脈疾患の定量的マーカーの確立が求められている。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のIain S. Forrest氏らは、電子健康記録(EHR)に基づく機械学習を用いて、動脈硬化と死亡リスクを連続スペクトルで非侵襲的に定量化し、過小診断された患者の特定が可能な冠動脈疾患のin-silicoマーカー「ISCAD」を開発した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年12月20日号で報告された。定量的マーカーとしてのISCADを評価するコホート研究 研究グループは、機械学習モデルに基づく確率から導出される冠動脈疾患の定量的マーカーの評価を目的にコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 2つの大規模なバイオバンク(BioMe Biobank、UK Biobank)の参加者9万5,935人のEHRを用いて冠動脈疾患を検出する機械学習モデルを開発・検証し、ISCADスコア(0[確率が最も低い]~1[確率が最も高い])としてその蓋然性を評価した。 さらに、ISCADと臨床アウトカム(冠動脈狭窄、閉塞性冠動脈疾患、多枝冠動脈疾患、全死因死亡、冠動脈疾患の後遺症)の関連について検討した。高ISCAD/未診断者の46%が、ACC/AHAガイドラインを満たした 9万5,935人のうち、3万5,749人がBioMe Biobank(年齢中央値61歳、男性41%、冠動脈疾患診断率14%)、6万186人はUK Biobank(62歳、42%、14%)の参加者であった。 このモデルは、BioMe Biobankの検証セットとホールドアウトセットで、受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)がそれぞれ0.95(95%信頼区間[CI]:0.94~0.95、感度:0.94[95%CI:0.94~0.95]、特異度:0.82[95%CI:0.81~0.83])および0.93(95%CI:0.92~0.93、感度:0.90[0.89~0.90]、特異度:0.88[0.87~0.88])であった。また、UK Biobankの外部テストセットでは、ROC AUCは0.91(95%CI:0.91~0.91、感度:0.84[0.83~0.84]、特異度:0.83[0.82~0.83])だった。 ISCADは、既知のリスク因子、リスク予測式(pooled cohort equations)、多遺伝子リスクスコアから、冠動脈疾患のリスクを把握することができた。閉塞性冠動脈疾患、多枝冠動脈疾患、主要な冠動脈(左冠動脈主幹部、左前下行枝近位部など)の狭窄のリスクを含め、冠動脈狭窄はISCADの四分位数が上昇するに従って定量的に増加した(四分位ごとに12ポイントの増加)。 全死因死亡のハザード比(HR)と有病率は、ISCADの十分位数の上昇に従って段階的に増加した(第1十分位数のHR:1.0[95%CI:1.0~1.0]、有病率:0.2%、第6十分位数のHR:11[3.9~31]、有病率:3.1%、第10十分位数のHR:56[20~158]、有病率:11%)。冠動脈疾患の後遺症としての心筋梗塞の再発にも、同様の傾向が観察された。 高ISCAD(≧0.9)で冠動脈疾患の診断を受けていない26人と、傾向スコアでマッチさせた低ISCAD(≦0.1)で冠動脈疾患の診断を受けていない26人(全体の年齢中央値73歳、男性40%)で検討したところ、高ISCADの未診断者のうち12人(46%)が、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)作業部会による2014年版ガイドラインの冠動脈疾患の臨床的エビデンスを満たした。 著者は、「機械学習に基づく冠動脈疾患の定量的マーカーの導入は、患者の病態と臨床アウトカムの定義に有益で、疾患の検出を最適化し、過小診断を抑制する可能性がある」としている。

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アラーム付き間歇スキャンCGM vs. SMBG-試合前から勝負あり?(解説:住谷哲氏)

 持続グルコース測定器(continuous glucose monitoring:CGM)は大きく分けて3種類ある。現在わが国で使用できる機器も併せて記載すると、(1)リアルタイムCGM(real-time CGM[rtCGM]):そのときの血糖値が常に測定表示されるもの(Dexcom G6、ガーディアン コネクト)、(2)間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM[isCGM]、flash glucose monitoring[FGM]とも呼ばれる):患者がセンサーをスキャンしたときにのみグルコース値が表示されるもの(フリースタイルリブレ)、(3)professional CGM(pCGM):患者はグルコース値を装着中に見ることができず検査終了後に解析するもの(フリースタイルリブレPro)、になる。最も汎用されているのはフリースタイルリブレであるが、欧米ではすでに低血糖・高血糖アラーム付きのフリースタイルリブレ2にほぼ移行しており、他の新規医療機器と同じくわが国は周回遅れの状況である。 現在の糖尿病診療においてCGMの活用は血糖管理に必要不可欠のものとなりつつある。2019年にCGMデータ解釈に関するコンセンサスステートメントが報告されてから、TIR(time in range)やGMI(glucose management indicator)などの指標も次第に普及してきた1)。新規薬剤と同じく、その普及にはCGMの市場を広げたい企業の競争も大きく影響している。現時点ではrtCGMのDexcomとisCGMのAbbottが火花を散らしているが、アラーム付きのrtCGMであるDexcom G6が血糖管理においてはAbbottのフリースタイルリブレを一歩リードしている2)。そこにAbbottが送り込んだのがアラーム付きのフリースタイルリブレ2(本邦未発売)である。本来であればDexcom G6 vs.フリースタイルリブレ2の直接比較試験が望ましいが、本論文FLASH-UKは残念ながらフリースタイルリブレ2 vs.SMBGの比較試験である。その結果は、フリースタイルリブレ2群が24週後のHbA1cの低下度および<70mg/dLの低血糖時間に関してSMBG群に比較して優れていた。これまでのCGMの有効性に関する報告からこの結果は試験前から当然予想されたように筆者には思われるが、きちんとしたRCTで証明した点がNEJM誌に掲載された理由だろう。 2022年4月の診療報酬改定で、フリースタイルリブレがインスリン使用中のすべての糖尿病患者に対して保険診療で使用可能となった。さらに同年12月にはDexcom G6も保険診療上はフリースタイルリブレと同じ扱いとなり、今後は使用患者の増加が予想される。またCGMのデータをApple Watchに代表されるsmart watchで読み取ることも可能となりつつあり、血糖管理のハイテク化はまだまだ続きそうである。

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071)医者の不養生…【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第71回 医者の不養生…(『デルマな日常』より転載)おっはよ~☆ オフの爽やかなデルぽんだよ〜☆当ブログは皮膚科医デルぽんのさりげない日常を日夜漫画にしてお送りする徒然絵日記です☆以後、お見知りおきを!さて本日のデル日は。『医師だけど自分の病気はないがしろになりがち』あるある(たぶん)でーす!どうぞ〜☆デルぽんお肌は弱い方じゃないんだけど、じつは耳の後ろと両膝・肘にあやしい湿疹が長年つづいているよ☆あやしいってどう怪しいかっていうとね。見た目が乾癬(かんせん)そのものだよ…☆ウフフ。※乾癬っていうのは、ガサガサした赤い局面ができる病気だよ☆痒みもあるので、イライラしたときにかいてしまったりしてるんだけど。(※痒みはストレスで悪化しやすいよ☆)これがなかなか、治りません。時々薬は塗ってるんだけど、、、時々だから、治らない…塗り薬っていうのは、治りかけがかんじんで、あっ良くなった〜でやめるとすぐぶり返す。そしてまた塗って良くなって止めてぶり返す。と、そのうち同じランクの薬が効きにくくなる(※長年続けた場合)。という具合に怠け半分にやると全然治らない訳ですが。(デルぽん身を持って知る!)きれいになった頃合いが特に大事で、きっちり塗りきって治しきるのが治療のコツだよ☆っと人には言うくせに自分が出来てないっ!けしからん!とお怒りのアナタ、ごもっともです。だからデルぽん、患者さんの『塗り薬めんど』って気持ち、すごくわかるよ、、、そんなデルぽんから。つい塗るのを忘れがちなアナタに送るオススメな方法はというと。洗面所の超目立つ場所に置いておいて、風呂上がり可及的速やかに塗る。朝は顔洗ったらすぐに塗る。これです。めっちゃ見えるとこにこれみよがしに置いとくのがポイント。忙しかったり余裕がないとなかなか塗れないのが塗り薬のむずかしいところ。出来れば5分でも、軟膏タイムをつくってね。デルぽんも今日からがんばるから!いっしょに塗り薬がんばろっ!!っと何故かいい話風に持って行ったところで今日のデル日はこれにておしまい!でわねー☆ばいちゃー!!※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2016年07月10日 医者の不養生…)

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リフィル処方箋を応需した薬局は約半数、さらなる普及は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第103回

リフィル処方箋は2022年4月に始まりました。まだまだ手探り段階だと思っていましたが、実は意外と(?)普及しつつあるようです。しかし、不安や疑問があるのは私だけではないと思いますので、今回は日本保険薬局協会(NPhA)が行ったアンケートから、現状の普及具合や課題を探っていきましょう。このアンケートは、リフィル処方箋の応需実績と薬局における対応の実態を調査するために、2022年11月に会員薬局を対象として行われました。そして、12月15日にその結果が公表されました(回答4,352件)。NPhAは2004年の設立で、保険薬局の団体といえばNPhA!といった印象が根付いてきたな…と長年この業界にいる身としては嬉しく思います。以前はアンケート結果を会員だけに知らせることが多かったような気がしますが、ホームページで広く公表することは業界内外にとって良いことだと思うのでぜひ続けてほしいですね。手順書の整備ができている薬局は92.4%調査結果について見ていきましょう。まず、「リフィル処方箋応需の手順書整備や従業員への周知などの体制が整っているか?」という問いについて、「はい」と答えた薬局は92.4%でした。NPhAは2022年9月に手順書作成の手引きを公表するなど、業界全体としての底上げをしてきました。結果として90%以上の薬局が手順書を整備できているというのは素晴らしいと思うと同時にホッとしています。このコラムを読んでいる薬剤師は勉強熱心な方が多いと想像しますのですでに整備済みかと思いますが、もしまだであればNPhAの手引きを参考にして作成することをお勧めします。リフィル処方箋に反対の医療機関は32%「薬局が主に応需する医療機関のリフィル処方箋のスタンス」について尋ねたところ、「積極的に活用」「活用」「患者の希望があれば検討」を合わせて70%程度で、「活用に反対」は32%でした。これは、私が思っていたよりも悪くない数字で、希望がある結果ではないでしょうか。まだ様子見の医療機関も多くありますが、薬局の整備が進み、患者さんも希望し、利便性などを評価する声が増えていくことで、反対の声は少なくなってくると思います。問い合わせは少ないが、応需実績のある薬局は42%ちょっと気になったのは、「リフィル処方箋について患者さんから問い合わせがあったか?」という問いです。結果は「ない」が68%で、あまり知られていないようです。患者さんの病態にもよるので、大々的に紹介するのは難しいかもしれませんが、この患者さんならまず問題ないと思った場合は、「こういう制度もありますよ」とアナウンスするなどの地道な活動が必要かもしれません。「2022年4月から10月までにリフィル処方箋を受けたことがありますか?」という問いについて、42%の薬局が「はい」と回答しています。意外と多くてこの結果には驚きです。枚数はまだ少ないかもしれませんが、リフィル処方箋を出す側も受ける側も、1回でも経験したことがあるかどうかは大きな差ですので、リフィル処方箋という選択肢が根付くのに良いペースである気がします。個人的な感想としては、リフィル処方箋に関しては、この1年で想像を超える実績が得られていて、新しい制度導入の成功例になり得るような気配がしています。この調査結果には、薬局における困った事例や業務負担などについても数多くの意見が寄せられていますので、ぜひ皆さんの薬局の今後の対応のためにご一読ください。

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英語で「最悪の場合」は?【1分★医療英語】第62回

第62回 英語で「最悪の場合」は?In the worst case scenario, he would not survive this.(最悪の場合、お亡くなりになることもあり得ます)I understand.(わかりました)《例文1》医師In the worst case scenario, you have to wait three more hours to be tested.(最悪の場合、あと3時間待たなくてはいけません)患者That is unacceptable.(それは困ります)《例文2》医師We have to prepare for the worst case scenario.(最悪の事態に備えておかなくてはいけません)患者Yes we do.(そのとおりです)《解説》“In the worst case scenario”(最悪の場合は)、この表現は医療現場に限らず使えるものですが、医療現場においてはとくにリスクや予後の説明をするときに有用です。治療がいつも上手くいけばよいのですが、残念ながら見通しが良くないこともあります。そのような時に、「最悪の場合」を想定した話をしておくことが非常に大切です。医師にとっても、患者さんや家族にとっても大変なコミュニケーションとなりますが、これも医師と患者間の信頼関係を築くために必要な過程でしょう。伝えにくい内容の前に“In the worst case scenario”を挟むことで、聞き手に心の準備をさせることができますので、そのような場面で使ってみてください。講師紹介

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第145回 家にいながらにしてのコロナ検査と治療の提供を米国が開始

家にいながらにして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の検査からその治療までの一通り全部を済ませるようにする無料の遠隔医療の試験運用を米国国立衛生研究所(NIH)が開始します1,2)。Home Test to Treatと銘打つその取り組みは去年2022年9月に同国政府が初めて表明し3)、検査で陽性だった人に抗ウイルス治療を施して重症化、入院、死亡を防ぐことを目指します。Home Test to Treatは今月中にまずはペンシルバニア州バークス郡の住民最大8千人を募って試験的な運用が始まります。運用指揮者はそれら参加者から集まった情報を使って最適な手順を確立し、より大規模な運用にも堪えうるようにHome Test to Treatの仕様を改善します。米国全域の他の地域もバークス郡に続いてHome Test to Treatに参加していく予定です。参加地域はそういう治療の需要のほど、医療の普及のほど、SARS-CoV-2感染(COVID-19)率予想、社会経済状況に基づいて選定されます。Home Test to Treatは各地の保健担当部門と協力して向こう1年間に米国人10万人ほどの手当てを賄うことを目指します。Home Test to Treatの運用は遠隔医療提供会社eMedが担います。目下のCOVID-19流行下で何百万件もの遠隔医療を取り仕切った経験を持つ同社は使い勝手が良いウェブサイトを準備し、参加者はそのウェブサイトに登録し、症状を報告し、遠隔診療を受け、必要に応じて抗ウイルス治療の配達を申し込み、必要な検査を手配することができます。Home Test to Treatの参加地域から集まった情報は家にいながらの検査や治療の意義、参加者のHome Test to Treatとの関わり方、治療の経過などの解析に使われます。それらの解析はeMedの協力を仰いでマサチューセッツ大学医学部(UMass Chan Medical School)が引き受けます。Home Test to Treatは目下のCOVID-19流行や将来の同様の事態で別け隔てなく救いの手を差し伸べ、人命救出に必要な最良の手順を見つけることを後押しするでしょう。各地域それぞれのチームが改善策を見つけて実行することはそれら地域、州、はては米国全体の求めに応えるよりよい体制作りを可能にします1)。参考1)NIH launches Home Test to Treat, a pilot COVID-19 telehealth program / NIH2)NIH launches pilot COVID telehealth program / Reuters3)Biden Administration Outlines Plan to Get Americans an Updated COVID-19 Vaccine Shot and Manage COVID-19 this Fall / White House

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肺臓炎発症例、オシメルチニブのリチャレンジの実施可能性/Eur J Cancer

 軽症肺臓炎を発症したEGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブのリチャレンジを検証したリアルワールド試験の結果が発表された。 オシメルチニブは、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療の標準だが、治療に影響を及ぼすオシメルチニブの有害事象として、薬剤性肺臓炎が挙げられる。オシメルチニブの適正使用ガイドでは、肺臓炎発症後は全例治療中止が推奨されている。一方、症例報告や後ろ向き試験では、肺臓炎発症後のオシメルチニブリチャレンジの実施可能性や有効性についての報告がある。ただし、リチャレンジの主要評価項目とした多症例の検証はなかった。 和歌山県立医科大学の今地 美帆子氏らは、オシメルチニブの1次治療を受けた患者の多施設共同コホートから、肺臓炎を発症し同剤のリチャレンジを受けた患者を後ろ向きに検討した。主要評価項目は、リチャレンジ後の全Gradeの肺臓炎の発症率、副次評価項目は、オシメルチニブリチャレンジ後の治療効果であった。 主な結果は以下のとおり。・画像データが入手可能であった試験全体の患者452例中、肺臓炎を発症した患者は82例、そのうちオシメルチニブのリチャレンジを受けた患者は33例であった。・上記33例の肺臓炎の内訳はGrade1が26例、2が6例、3が1例であった。・オシメルチニブのリチャレンジ後、15%(33例中5例) が軽度の再発性肺炎を発現した。・上記5例中3例は、初期肺臓炎と再発肺臓炎の画像パターンが類似していた。・オシメルチニブリチャレンジ後の無増悪生存期間中央値は未到達であった。 筆者らはオシメルチニブによる軽症肺臓炎発症患者に対し、オシメルチニブのリチャレンジは治療選択肢となり得る、と述べている。

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パニック症やPTSDに対するデジタル治療の有効性

 これまでの研究で、パニック症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するデジタル治療であるCapnometry Guided Respiratory Intervention(CGRI)の臨床的ベネフィットが報告されている。米国・FreespiraのRobert N. Cuyler氏らは、実臨床におけるCGRIの治療アウトカムの報告を行った。その結果、これまでの研究結果と同様に、CGRIは、有意な症状改善効果と良好なアドヒアランスが期待できる治療介入であることが確認された。結果を踏まえ著者らは、パニック症患者およびPTSD患者に対するCGRIは、短い治療期間で良好なアドヒアランスを示し、臨床的ベネフィットに優れることから、有望な治療オプションとなりうるとしている。Frontiers in Digital Health誌2022年11月17日号の報告。 パニック症患者1,395例およびPTSD患者174例を対象に、CGRI治療前後の自己報告による症状変化、呼吸数および呼気終末CO2レベル、治療脱落率、治療アドヒアランスを評価した。CGRIは、呼吸数および呼気終末CO2レベルを測定するとともに、呼吸の正常化、ストレス、不安、パニック症状に対処する患者の対応力向上を目的として、28日間在宅療法として実施した。また、治療エピソード中、毎週のフォローアップによる初期トレーニングを提供するため、遠隔医療コーチングサポートを行った。遠隔データのアップロードおよびモニタリングにより、個別のコーチングと集計結果分析を簡便化した。主要アウトカムは、治療前後の自己報告によるパニック症重症度尺度(Panic Disorder Severity Scale:PDSS)およびDSM-5のPTSDチェックリスト(PCL-5)のスコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・パニック症患者では、治療前後のPDSS合計スコアが平均50.2%減少していた(p<0.001、d=1.31)。・パニック症患者における治療反応(PDSS合計スコア40%以上の低下)率は、65.3%であった。・PTSD患者では、治療前後のPCL-5合計スコアが41.1%減少していた(p<0.001、d=1.16)。・PTSD患者における治療反応(PCL-5スコア10ポイント以上の低下)率は、72.4%であった。・個人レベルでの治療反応の追加分析では、Reliable Change Indexを用いた治療反応率は、パニック症患者で55.7%、PTSD患者で53.5%であった。・ベースライン時の呼気CO2レベルが正常値または正常値未満の患者では、同等の効果が認められた。・28日間の治療期間全体では、平均アドヒアランス率は、パニック症患者で74.8%、PTSD患者で74.9%であった。・治療脱落率は、パニック症患者で10%、PTSD患者で11%であった。

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アカラブルチニブ、慢性リンパ性白血病の初回治療に承認/AZ

 アストラゼネカは、2022年12月23日、アカラブルチニブ(製品名:カルケンス)が、「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」の適応症で厚生労働省より承認されたと発表した。 今回の承認は、国内第I相試験および、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)を対象とした国際共同第III相試験(ELEVATE-TN試験)の結果に基づくもの。 ELEVATE-TN試験では、アカラブルチニブの単剤投与またはアカラブルチニブとオビヌツズマブの併用投与が、標準化学免疫療法であるクロラムブシルとオビヌツズマブの併用投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することが示された。本試験の中間解析データは、2020年にThe Lancet誌で発表されている。 また、今回の適応拡大の承認では、未治療の日本人CLL患者を対象に含む第I相試験も評価された。この試験では、アカラブルチニブとオビヌツズマブの併用による全奏効率は100%(9/9例)であった。 2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)および2022年欧州血液学会(EHA)年次総会においては、ELEVATE-TN試験の約5年追跡の最新結果が発表された。アカラブルチニブはクロラムブシルとオビヌツズマブ併用投与に対して統計学的に有意なPFSのベネフィットを維持し、安全性および忍容性プロファイルはアカラブルチニブの既知のプロファイルと一貫していることが示されている。

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