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血清PSAとMRIによる前立腺がんスクリーニングで、標的生検によって得られるメリット(解説:宮嶋哲氏)

 前立腺がんスクリーニングにおける問題は、overdiagnosisであり、対策型検診における最も適切なアルゴリズムは確定していない。 本研究(GOTEBORG-2 trial)では、50〜60歳の男性3万7,887例を対象に血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングを施行した。血清PSA値が3ng/mL以上の被験者には前立腺MRIを行い、以下の要領で無作為に割り付けた。1/3の被験者を対照群としてMRIで前立腺がんが疑われる病変に対する標的生検と系統的生検を行い、残りの2/3の被験者は実験群として前立腺がんが疑われる病変にMRI標的生検のみを施行した。主要評価項目はGleason score3+3以下の臨床的に有意でない前立腺がん(insignificant cancer)の検出とし、副次評価項目はGleason score3+4以上の臨床的に意義のある前立腺がんの検出、ならびに安全性と定義した。 1万7,980例(47%)が本試験に参加し、insignificant cancerは実験群1万1,986例中66例(0.6%)で検出されたのに対して、対照群では5,994例中72例(1.2%)で検出された(相対リスク[RR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.33~0.64、p<0.001)。実験群の対照群に対する臨床的に意義のある前立腺がんを検出する相対リスクは0.81(95%CI:0.60〜1.10)であり、系統的生検によって発見された臨床的に意義のある前立腺がんは対照群で10例であったが、全症例が中リスクで、そのほとんどが低腫瘍量でありactive surveillanceとなった。重篤な有害事象は両群においてまれであった。 以上から、PSA高値に伴う前立腺がんスクリーニングと早期発見において、MRIを用いた標的生検のみによって系統的生検を回避することで、少数の患者で中リスク前立腺がんの発見が遅れるという点はあるものの、overdiagnosisのリスクは半減することが確認された。 血清PSAの普及によって、前立腺がんの早期発見と治療への早期介入が現実となったが、一方でoverdiagnosisによって患者の生命に影響を与えないinsignificant cancerが発見され、不必要な治療介入によって患者の意思とは裏腹な過剰医療の危険性は以前から指摘されていた。近年、MRI-超音波融合画像ガイド下生検が普及し、より確実な前立腺がんの診断が可能となりつつある。そのような社会的背景にマッチした研究といえる。

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検査中は「PHS対応は看護師」で業務効率化【今日から始める「医師の働き方改革」】第14回

第14回 検査中は「PHS対応は看護師」で業務効率化自分や組織が「当たり前」としてきたことに対し、少し違った見方をしてみることで変化が起こります。今回はJA新潟厚生連 糸魚川総合病院(以下、糸魚川総合病院)の内視鏡チームでの取り組みから、「当たり前」を変えた事例を紹介します。糸魚川総合病院は、新潟県糸魚川市に位置する総合病院で、病床数261床、21の診療科、外来延べ患者数は年間約14万人、総スタッフ数は400名以上と、地域の医療・健康を支える拠点病院です。全国の地方病院の例に漏れず、医師をはじめとした医療スタッフの確保が長年の大きな課題となっていました。2008年に副院長として赴任し、2021年より病院長を務める山岸 文範氏が看護師不足に大きな危機感を感じていたことから、「新潟県一働きやすい病院をつくろう」と、働き方改革をスタートさせました。いくつかの部門のチームがモデルケースとして働き方改革に取り組みました。私たちが伴走したのは「内視鏡チーム」です。複数の部門に在籍するスタッフの混成チームで、医師2名、病棟看護師3名、内視鏡看護師2名、外来看護師1名の計8人の構成です。業務の効率化に取り組んだ糸魚川総合病院・内視鏡チームのメンバー私たちが働き方改革を支援する際には、スタート時のキックオフ会議を行い、ここで「働き方改革後にありたい姿」を話し合ってもらいます。内視鏡チームの場合もこれを行い、出てきた意見を取りまとめました。結果、「皆が笑顔で生き生きと時間を大切にして助け合うチーム」「安心・安全で患者さんに寄り添った医療が提供できるチーム」という2つの「ありたい姿」が決まり、取り組みを進めました。次に、取り組むべき具体的な課題を話し合いました。複数のスタッフから出たのは「患者さんとスタッフのために、内視鏡検査の待ち時間を減らしたい」というものでした。待ち時間の延びる一因として挙げられたのは、検査中に医師の院内PHSに頻繁に問い合わせの電話が入り、その対応で一時手が止まることがありました。チームは、これまで「仕方がない」と当然視されてきたこの点を見直そうと話し合いを続けました。結果、医師が集中できるよう、「検査中は看護師がPHSを預かる」という新たなルールを決めました。とはいえ、急に開始しては混乱するため、時間帯を決め、院内に周知しました。さらに、リアルタイムでなくてもよい場合は電話ではなく院内の掲示板を使うことにしました。院内連絡に看護師が一次対応することで、医師は集中力を切らすことなく、検査を終わらせることができ、待ち時間の短縮につながりました。看護師がPHSを預かることで医師が検査に集中できる環境をつくった〈解説〉この取り組みがうまくいったのには、いくつかのポイントがあります。1)事前にしっかりと院内に周知する2)最初は時間帯を区切って実施する3)成果が出るまでしっかりと続ける1)事前の院内周知は非常に重要です。あるチームの課題解決のために別の部門の業務が滞ると、組織全体の働き方改革の流れが止まってしまいます。「この取り組みは、医師だけ、自分のチームだけがラクになるのではなく、患者さんのため、ひいては組織全体のためになる」と十分に説明し、納得してもらう必要があります。電話は緊急性の高い連絡が多い医療機関に必須の連絡手段ですが、リアルタイムでなくてもよいコミュニケーションにも使われる機会が多く、お互いの時間を奪います。どういうときは電話にして、どういうときは掲示板など他の手段を使うのか、チームや組織内での話し合いが重要です。2)看護師のPHS対応を、終日ではなく検査中に限って実施したこともポイントです。1日中となると、滞る業務やコミュニケーションミスが発生する可能性があるため、最初は範囲を絞り、様子を見ながら対象者や時間帯を拡充するとよいでしょう。試験的に行うことで、大きな問題点に早く気付くことができます。3)施策がスタートすると、これまでと異なる行動によって戸惑うスタッフが必ず出ます。とくに職位の高いベテランスタッフが否定的な意見を出すと、他のスタッフも不安になります。こうしたときは早めに振り返りを行い、それぞれの不安や感想を口に出して検証を重ねます。他のスタッフの捉え方を知り、変化に気が付くことが重要です。今回のように効率化に取り組むのであれば、実施前後の検査時間を調べ、変化が出ているかを検証することが必要でしょう。内視鏡チームのメンバーからは、取り組みの実施後、「職種が違うメンバーと感覚の違いを感じた。タスクシフトで他職種の業務が増えることもあった。うまくWIN-WINな状態にするのが大変だと思った」という感想が寄せられました。タスクシフティングは有効な施策ですが、単にスタッフ間の仕事の付け替えでは、病院全体で考えたときの業務量は減っていません。内視鏡チームでは、次のステップとして、一定期間PHSの通話内容を調べ、分類し、通話相手が自己解決できる支援をするなど、さらなる情報連携を図ることを目指しています。

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第142回 これらのデータを並べて「コロナとインフルが同レベル」と言える?

「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症化率や死亡率は、インフルエンザと同等以下」最近、そんな言説をよく耳にする。まあ、一般人からの言説ならば、「またテキトーなことを言っている」で済むのだが、最近SNS上などを見ていると、そうした言説を発信する人の一部には医療従事者もそこそこ交じっている。彼らが根拠としているのが、昨年12月21日に開催された第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに厚生労働省が提出した資料や11月に財務省が公表した資料である。この件について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードはすでにインフルエンザと新型コロナの比較は困難との結論を出している。それはそうだろう。少なくとも両者の比較に使うにしてはデータの「野良」度合いが過ぎる。本サイトの読者に対しては釈迦に説法ではあるが、今回敢えてこの件について触れてみようと思う。まず、そもそも両資料に提示された重症化率、致死率を算定する分母が両者では違い過ぎると言わざるを得ない。インフルエンザの場合は、「NDB(National DateBase、レセプト情報・特定健診等情報データベース)における2017年9月から2020年8月までに診断または抗インフル薬を処方された患者のうち、28日以内に死亡または重症化(死亡)した割合」とある。ここで注意しなければならないのは、インフルエンザでは約3人に1人との報告がある無症候(不顕性)感染者はほぼ含まれていない可能性が高いことである。一方の新型コロナも無症候感染は存在する。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き」では20~40%と記載されている。どちらの無症候感染者がどの程度、感染者として拾い上げられているかのデータはもちろんない(というか、この点で信頼性の高いデータが存在し得るとは考えにくい)。ただ、コロナ禍前に一般市民のインフルエンザに対する警戒度が現在の新型コロナ並みに高かったと考える人は一般人でも稀だろう。これに対して現在の新型コロナは市中の検査所があふれ、ドラッグストアで抗原検査キットが容易に入手できる状況である。これらを念頭に論理的に考えるなら、新型コロナに関する感染者報告のほうが無症候感染者をより多く拾い上げているだろうと考えられる。つまりより厳格な調査をするならば、インフルエンザのほうが重症化率、致死率を算定する感染者の分母が拡大し、結果としてこれら重症化率、致死率はより小さな値になる可能性が濃厚である。一方、ワクチン接種をめぐる状況は次のようになる。インフルエンザの場合は、▽65歳以上▽60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される▽60~64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な場合、のいずれかに該当すれば予防接種法に基づく定期接種の対象となる。この定期接種対象者でのワクチン接種率は近年50%前後と報告されている。ちなみにワクチンの有効率に関しては、流行の程度や流行株とワクチン株のマッチングによってさまざまな報告があるが、重症化(入院)予防の有効率で見れば、ざっくりいうと50%強である。これに対して新型コロナワクチンは、予防接種法の臨時接種の特例として現在は生後6ヵ月以上が対象となっている。現時点での接種率は総人口あたりで基礎免疫の2回接種完了で80.4%、追加接種の3回接種完了で67.8%、オミクロン株対応2価ワクチンで37.5%である。現時点で2価ワクチンの有効性に関する報告は、まだ十分な数があるとは言えないが、国立感染症研究所の報告では、BA.4-5発症予防の有効率は69%である。このワクチンの有効率とそれが重症化率、致死率に及ぼす影響を考えると、謎解きはかなり複雑になる。季節性インフルエンザの場合、その名の通り主な流行は秋から初春にかけての半年間であり、おおむねこの期間中はワクチンの有効性は保持できると考えられている。これに対して新型コロナは流行が通年。ワクチンの効果はインフルエンザと同じように半年程度であり、前述の国立感染症研究所の研究結果(これとてまだプリミティブなものだが)を見てもわかる通り、接種回数と最終接種からの経過期間によって効果は異なる。重症化予防効果は時間を経ても比較的維持されていると言われてはいるものの、これまでのデータなどを見れば、やはり最終接種から時間が経過するとともに減衰しているのは事実である。このように「第〇波での重症化率、致死率」というデータには、未接種から4~5回接種まで、かつ最終接種日からの経過時間においてさまざまなバリエーションが混在しているため、とてもではないが今のオミクロン株の重症化率、致死率とシンプルに解釈することは無理がある。しかも、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究報告では、ワクチン未接種あるいは未感染者のオミクロン株による重症化・死亡リスクはデルタ株の0.72倍、武漢株の0.94倍との報告もある。この報告に依拠すれば現在のオミクロン株の重症化率自体が比較的高い日本のワクチン接種率でマスクされたものと考えねばならない。加えてこれら数字には、最近医療現場からとみに聞こえてくる新型コロナ経過観察期間終了後の高齢者での基礎疾患の急速な悪化による死亡、罹患後症状、オミクロン株BA.5の感染力の強さによる医療現場や高齢者施設でのクラスター頻発は一切考慮されていない。にもかかわらず、インフルエンザと新型コロナはもはや同レベルなどと一部の医療従事者が口にするのは、もはや妄言が過ぎるのではと思うのだが。

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社会的苦痛って何だろう【非専門医のための緩和ケアTips】第43回

第43回 社会的苦痛って何だろう緩和ケアについては、医師でもあまり聞き慣れない言葉や分野が出てくるかと思います。今日のテーマ「社会的苦痛」というのも、わかりにくい例の1つではないでしょうか。今日の質問緩和ケアについて勉強していると必ず出てくる「社会的苦痛」という単語。医療者としては具体的に何をすればよいのでしょうか?「社会的苦痛」、少なくとも私の年代の医学部教育では出てこなかった用語です。しかし、緩和ケアを実践していく中では非常に大切な概念なのです。イメージしやすいよう具体的な例を見ていきましょう。――80歳で骨転移を伴う肺がん患者さん。骨転移部の痛みを訴えます。医師のあなたは外来で診察、評価して鎮痛薬を処方します。腎機能などをチェックした上で、NSAIDsや症状によってはオピオイドも必要になるでしょう。こういった身体症状に対する症状の緩和はイメージしやすいですよね。でも、この患者さんが置かれた状況に対して、薬剤の処方だけで十分な支援が提供できているでしょうか?聞けばこの患者さん、年の近い高齢の奥さんと二人暮らしだそうです。もともと家の中では伝い歩きで生活していましたが、痛みが強くなって排泄のたびに手助けが必要となり、奥さんの負担が急激に重くなっています。ご本人たちは自宅で過ごしたいと考えていますが、介護の負担がさらに大きくなるようなら、在宅療養は諦めざるを得ないでしょう…。こうした状況は、皆さんも日常的に目にするでしょう。このような、「疾患によって引き起こされる、生活や社会活動に対する影響」を「社会的苦痛」と呼んでいます。医師としては介護保険の活用や見直しを勧め、今後の病状変化や介護負担の予測をケアマネジャーと共有することが重要です。今回のような高齢者の場合、社会的苦痛の議論は要介護状態に対する支援や介護者の負担軽減が中心になります。一方、若年者の場合、たとえばまだ幼いお子さんがいる終末期がん患者さんであれば、家事・育児支援やお子さんとのコミュニケーション支援が必要でしょう。一家の稼ぎ手であれば休職や退職による家計の困窮状態を避ける支援が必要です。家計だけでなく、社会とのつながりを保つ意味でも、患者さんの就労支援はとても重視されるようになっています。このように解きほぐしていくと、社会的苦痛に対して医師が担う役割を認識しやすくなります。患者さんごとの状況に合わせ、病気の見通しや注意点を共有することで、さまざまな支援の可能性が見出せます。具体的なケアプラン作成などは介護職が対応してくれるでしょうが、専門職と情報を共有し、しっかり連携することが大切です。「社会的苦痛」の概念を知ると、多職種で取り組むことの必然性も理解できるでしょう。今回のTips今回のTips「社会的苦痛」の概念を理解することで、緩和ケアの実践の幅が広がります。

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うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。 EGUIDEプロジェクトメンバーは、修正Delphi法を用いて、IFSを決定した。本IFSは、EGUIDEプロジェクトメンバーが所属する施設において2016~20年に治療を受け、退院したうつ病患者の治療に基づき開発された。また、入院時と退院時のIFSスコアの比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者428例(57施設)。・その内訳は、軽度うつ病患者22例、中等度/重度うつ病患者331例、精神病性うつ病患者75例であった。・重症度別の平均IFSスコアは、中等度/重度うつ病患者において入院時よりも退院時のほうが統計学的に有意に高かった。 【軽度うつ病】入院時:36.1±34.2 vs.退院時:41.6±36.9(p=0.49) 【中等度/重度うつ病】入院時:50.2±33.6 vs.退院時:55.7±32.6(p=0.0021) 【精神病性うつ病】入院時:47.4±32.9 vs.退院時:52.9±36.0(p=0.23)

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mRNA-4157/V940・ペムブロリズマブ併用で悪性黒色腫患者に対する主要評価項目達成/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)は2022年12月13日付のプレスリリースで、完全切除後の再発リスクが高いStageIII/IVの悪性黒色腫患者において、研究中の個別化mRNAがんワクチンであるmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を併用した場合、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクが統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示したと発表した。mRNA-4157/V940とペムブロリズマブ併用で再発/死亡リスクが44%減少 mRNA-4157/V940は、患者のがんの遺伝子変異に基づいて設計された、最大34の腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)をコードするmRNAベースの個別化がんワクチンである。 無作為化非盲検第IIIb相試験であるKEYNOTE-942試験において、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157を合計9回投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目は無再発生存期間(RFS)で、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間と安全性である。 mRNA-4157/V940を評価する試験対象者の主な選択基準は以下のとおり。 ・リンパ節に転移し、再発のリスクが高い切除可能な皮膚悪性黒色腫患者 ・ペムブロリズマブの初回投与前13週間以内に完全切除された患者 ・試験登録時(手術後)に無病であり、局所再発または遠隔転移がなく、脳転移の臨床的証拠がない患者 ・シークエンスに適したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)の腫瘍サンプルを提出できる患者 ・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status 0または1 ・スクリーニング時に臓器および骨髄機能が正常な患者 主要評価項目であるRFSについて、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブを併用したアジュバント治療では、ペムブロリズマブ単独と比較して再発または死亡のリスクが44%減少し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.31~1.08、片側検定のp=0.0266)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療関連の重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では14.4%、ペムブロリズマブ単独群では10.0%で発生した。 ModernaとMerckは、規制当局と結果について協議し、2023年に悪性黒色腫を対象とする第III相試験を開始し、他の腫瘍タイプにも拡大する予定であるとした。また、両社は、2022年10月に、MerckがmRNA-4157/V940を共同で開発し商品化するオプションを行使したことを発表した。

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フォシーガ、左室駆出率にかかわらず慢性心不全の治療薬として使用可能に/添文改訂

 アストラゼネカと小野薬品工業は1月10日付のプレスリリースで、「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」について、日本における電子化された添付文書(電子添文)を改訂したことを発表した。 主な変更点は以下のとおり。・「効能又は効果に関連する注意」の項の慢性心不全における「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」の記載を削除・「臨床成績」の項に、左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果を追記 これらは、上記のDELIVER試験の結果に基づき変更された。今回の電子添文の改訂により、フォシーガは左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用可能となった。なお、日本で承認されている効能又は効果は、「2型糖尿病」「1型糖尿病」「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」および「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」である。

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開発中の経口レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビルに非劣性/NEJM

 重症化リスクの高い軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、VV116(重水素化レムデシビル臭化水素酸塩)の経口投与は、経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル+リトナビル(商品名:パキロビッドパック)と比較して、持続的な臨床的回復までの期間に関して非劣性であり、安全性は良好であることが、中国・Shanghai Institute of VirologyのZhujun Cao氏らが実施した第III相無作為化観察者盲検比較試験の結果、報告された。VV116は、レムデシビルの経口抗ウイルス薬の1つとして中国で開発が進められている。これまで小規模試験で、陽性確定後5日以内の投与は通常ケアと比較してウイルス排出期間が短縮したことが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年12月28日号掲載の報告。VV116の有効性、持続的な臨床的回復までの期間を検証 研究グループは、SARS-CoV-2のB.1.1.529(オミクロン)変異株流行期の2022年4月4日~5月2日に、重症化リスクの高い軽症~中等症の症状を有するCOVID-19成人患者を、VV116群またはニルマトレルビル+リトナビル群に無作為に割り付け、それぞれ5日間経口投与した。 主要エンドポイントは、無作為化から持続的な臨床的回復までの期間(観察期間28日目まで)とし、持続的な臨床的回復とは、COVID-19に関連する全症状が2日間連続して軽減(11項目の症状のスコア[各項目のスコア範囲は0~3でスコアが高いほど重症であることを示す]の合計スコア[11項目の合計スコアの範囲は0~33]が0または1)、と定義した。また、非劣性マージンは、ハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)の下限を0.8とした(HRが>1の場合、VV116のほうがニルマトレルビル+リトナビルより持続的な臨床的回復までの期間が短いことを示す)。持続的な臨床的回復までの期間、VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日 計822例が無作為化され、771例がVV116(384例)またはニルマトレルビル+リトナビル(387例)の投与を受けた。患者背景は、年齢中央値が53歳、女性が50.2%で、ほとんど(92.1%)が軽症COVID-19であり、ワクチン接種済み(ブースター接種含む)が4分の3を占めていた。主な重症化リスクは、60歳以上(37.7%)、高血圧を含む心血管疾患(35.1%)、肥満(BMI≧25)(32.9%)、喫煙(12.5%)、および糖尿病(10.1%)などであった。 主要解析(データカットオフ日:2022年5月13日)で、持続的な臨床的回復までの期間に関して、ニルマトレルビル+リトナビルに対するVV116の非劣性が検証された(HR:1.17、95%CI:1.01~1.35)。最終解析(データカットオフ日:2022年8月18日)においても同様の結果が得られた(中央値:VV116群4日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群5日、HR:1.17、95%CI:1.02~1.36)。 最終解析において、持続的な症状消失までの期間(11項目のCOVID-19関連症状の各スコアが2日連続で0)、および無作為化からSARS-CoV-2検査が初めて陰性になるまでの期間は、両群間で差は認められなかった。28日までに死亡または重症COVID-19に進行した患者は、両群とも報告されなかった。 有害事象の発現率は、VV116群67.4%、ニルマトレルビル+リトナビル群77.3%であり、VV116群が低値であった。Grade3または4の有害事象の発現率も同様であった(2.6% vs.5.7%)。 なお、著者は、二重盲検試験ではなかったこと、オミクロン変異株亜種に感染した中国人が組み込まれていたこと、連続2日間の症状消失後に症状が再燃する可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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エネルギー消費量が高い歩き方/BMJ

 歩行障害がなく1日平均歩数が約5,000歩の成人において、1日の歩数の約22~34%を、より高エネルギーで低効率な歩き方(『ティーバッグ氏』の歩き方)に変えて歩く(約12~19分間)ことで、1日のエネルギー消費量は100kcal増加した。成人では、このような歩き方で1日約11分間歩くことは、1週間に強強度の身体活動を75分間したことに相当するという。米国・アリゾナ州立大学のGleen A. Gaesser氏らが、英国のコメディグループ「モンティ・パイソン」によるコント『バカ歩き省(Ministry of Silly Walks)』(1970年に英国で放映されたコメディ番組で演じられたスケッチ)にインスピレーションを受け、同コントに登場する「バカ歩き」のエネルギー消費量を定量化する目的で行った実験的研究の結果を報告した。同コントのキャラクター『ティーバッグ氏』と『ピューティー氏』の非効率的な歩き方は、通常の歩き方と比較して3~7倍動きが激しいことが示されていたが、それらのエネルギー消費量は調査されていなかった。著者は、「1970年代初めに非効率的な動作を促進する取り組みが行われていたら、われわれは現在、もっと健康的な社会で生活していたかもしれない」とまとめている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「PHYSICAL」掲載の報告。通常の歩き方と、『ティーバッグ氏』『ピューティー氏』の歩き方を比較 研究グループは、米国の歩行障害がない22~71歳の健康成人13例(女性6例/男性7例、平均[±標準偏差]年齢34.2±16.1歳、身長174.2±12.6cm、体重78.2±22.5kg、BMI 25.6±6.0、すべて非喫煙者)を対象に、代謝測定システム(Carefusion、米国製)を装着して屋内の30mコースを5分間、3回歩いてもらった。 1回目は普段の歩き方かつ通常の速さで、2回目は『ピューティー氏』の歩き方、3回目は『ティーバッグ氏』の歩き方とした。参加者にはあらかじめ『バカ歩き省』の動画を見せ、『ティーバッグ氏』と『ピューティー氏』の歩き方をできるだけ正確に再現するように指示した。 主要評価項目は、酸素摂取量(VO2:mL O2/kg/分)とエネルギー消費量(EE:kcal/kg/分:1kcal=4.18kJ)である。5分間の歩行距離から平均歩行速度も算出した。『ティーバッグ氏』の歩き方で、エネルギー消費量が約2.5倍増加 『ティーバッグ氏』の歩き方は、通常の歩き方と比較してVO2とEEが約2.5倍上昇した(それぞれ27.9±4.8 vs.11.3±1.9mL O2/kg/分、0.14±0.03 vs.0.06±0.01kcal/kg/分)(p<0.001)。しかし、『ピューティー氏』の歩き方では差はなかった(12.3±1.8mL/kg/分、0.06±0.01kcal/kg/分)。 『ティーバッグ氏』の歩き方では、通常の歩き方と比較して1分ごとにEEが男性で平均8.0kcal(範囲:5.5~12.0)、女性で5.2kcal(3.9~6.2)増加し、強強度の身体活動(>6METs)として認められた。

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オミクロン株XBB.1の細胞侵入効率と免疫回避能

 2022年1月、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB系統がインドで初めて検出され、アジアと欧州で増加している。XBB系統は主に5つの亜系統(XBB.1~5)が派生し、ほとんどがXBB.1である。ドイツ・German Primate CenterのPrerna Arora氏らは、XBB.1系統の宿主細胞への侵入と抗体による中和を回避する能力を初めて評価した。その結果、ワクチンを4回接種した人や3回接種後にBA.5に感染した人においてもXBB.1の中和回避能が非常に高いことがわかった。また、この高い中和回避能は、細胞侵入効率の若干の低下と引き換えにもたらされた可能性が示唆された。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月5日号に掲載。 著者らはまず、XBB.1の宿主細胞への侵入効率を祖先株のB.1、現在優勢なBA.5と比較した。BA.5の侵入効率はB.1と比べ、Vero細胞(アフリカミドリザル腎細胞)では2.2倍、293T細胞(ヒト腎細胞)で5.3倍高かったが、Calu-3細胞(ヒト肺細胞)では1.9倍低かった。XBB.1の侵入効率は、すべての細胞株でBA.5と比べて1.7~3.9倍低下し、Calu-3細胞ではB.1と比べて3.4倍低下した。一方、293T細胞およびVero細胞ではXBB.1はB.1と同様だった。 次に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防や治療に臨床使用されている(使用中止となったものも含む)もしくは開発中のモノクローナル抗体(14種類)およびモノクローナル抗体カクテル(4種類)について、XBB.1に対する中和能力を調べた。調査したすべてのモノクローナル抗体およびモノクローナル抗体カクテルがB.1を効果的に中和したが、XBB.1についてはソトロビマブとS2H97が中和できたものの、その中和能力はB.1に対する中和能力と比べて10分の1以下だった。 最後に、ワクチン接種またはワクチン接種+感染によって誘導された抗体のXBB.1の中和能力を評価した。ワクチン3回接種者の血清の中和能力は、B.1、BA.5に対しては高かったが、XBB.1にはほとんどなかった。また、ワクチン3回接種後BA.5流行中に感染した人の血清の中和能力は、B.1には高く、BA.5には中程度、XBB.1には低かった。ワクチン3回接種後に1価ワクチン(B.1)または2価ワクチン(B.1とBA.5)のいずれかを接種した人の血清においても同様だった。 これらの結果から、著者らは「ほとんどの抗体がXBB.1を中和しないことからCOVID-19治療には新たな抗体が必要であり、XBB系統の発生率が高い地域では他の治療法を検討すべき」としている。

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年始の風景【Dr. 中島の 新・徒然草】(459)

四百五十九の段 年始の風景毎年のように繰り返される年始の風景。その1ある日、帰宅したら郵便受けに入りきらないほどの封書が入っています。「なんじゃ、こら?」と思ったら、ふるさと納税の寄付金受領証明書の束でした。いつも夫婦で年末にまとめて注文するので、各地から来る証明書も同時になったわけです。毎年のように、計画的に注文しようと思っているのですが、なかなかうまくいきません。その2寄付金受領証明書に混ざって、年賀状もチラホラ見られました。「本年をもって年始のご挨拶を失礼させていただきます」という文言が結構多く見られます。こちらから出すのは差し支えなかろう、と思って住所録はそのままにしました。ショックだったのは、20年以上前に脳腫瘍の手術をした患児のご両親からの葉書。「〇月〇日に旅立ちました」とあったのです。今はすっかり社会人になっていると聞いていたので驚きました。若い人が亡くなるのは特別に悲しいですね。その3最近、寝床に就く前に必ず風呂に入るようにしています。不思議なことに、風呂に入ってから寝ると朝までぐっすり。風呂を省略すると、夜中にトイレに起きてしまいます。それも2~3回。でも、風呂に入るとトイレに行かない。一体どういうメカニズムになっているのでしょうか。その4大阪では年末年始からコロナが猛威を振るい始めました。なので、毎週のカンファレンスを中止にしたりしています。ところが、寒い地方ではもう第8波がピークアウトしているみたいですね。関西でもそのうち患者数が減るのでしょうか。とにかく今を凌ぐことだけを考えて、診療を続けたいと思います。ということで、例年どおりバタバタした1月を迎えました。今年こそは効率よく仕事を片付け、余裕を持った日々を送りたいものだと思います。読者の皆様、本年もよろしくお願いいたします。最後に1句賀状見て 思いを馳せる 過ぎた日々

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ここで差が付く!単位・参考文献の表記統一【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第7回

ここで差が付く!単位・参考文献の表記統一1)単位の大文字/小文字、半角/全角、スペースに注意する2)参考文献の表記を統一する3)スライド作成後に全体を通して確認するこれまで、文字の大きさやフォント、色使いを統一することについて述べてきましたが、油断しているとバラバラになってしまいがちなのが、単位と参考文献の表記です。これらがバラバラになっていると読みにくいスライドになり、聴衆に発表内容に集中してもらえません。なお、学会によって使用する単位や参考文献の記載方法については指定がある場合があるので、まずは学会の規定を確認しておきましょう。単位がバラバラになっている悪いスライドの例を〈図1〉に示します。Lの大文字・小文字や半角と全角のスラッシュが入り交ざっており、また文字と単位のスペースの間もバラバラです。〈図1〉症例報告の場合には、血液検査結果などで単位の記載が多くなるため、単位が間違っていないか、大文字/小文字が統一されているかどうか、半角になっているかなどを注意深く確認します。また、一般的に数字と単位の間は半角スペースを空けるのが通例となっているため、「2.5 mg/dL」のように記載しましょう。ただし、%は半角を空けず「10%」のように記載します。ちなみに、日本とアメリカで血液検査の単位が違うものがいくつかあり、下に例を示しています。日本語では10,000ごと(4桁)で単位が変わりますが、英語では1,000ごと(3桁、thousand、million)で単位が変わるため混同しないようにしましょう。●CRP 15 mg/dL(日本)→ 150 mg/L(米国)●白血球2万4000/μL(日本)→ 24 x 103/μL(米国)●血小板38万/μL(日本)→ 380 x 103/μL(米国)参考文献は、IntroductionやDiscussionで使用することが多いと思います。各スライドに番号で記載し最後にReferenceのスライドで詳細を提示するパターンと、各スライドに短く挿入するパターンの大きく2つがありますが、学会の指定や個人・上司・医局の好みに合わせましょう。各スライドに挿入した場合の悪い例を〈図2〉に示します。〈図2〉記載方法、文字のフォントや大きさがバラバラで見づらいスライドになっています。本文と同様、フォントと文字の大きさをそろえるようにしましょう。参考文献の記載方法は、たとえば「筆頭著者名 et al. ジャーナル名,巻,号,ページ,出版年」といった形式でまとめます(例:Harada K, et al. Clin Infect Dis. 73, 2, e321-e326, 2021)。全体を通して表記方法を統一することが何より大事です。また、PubMedで文献を検索したときに「Cite」のボタンをクリックすると簡単に参考文献の情報をコピーできます〈図3〉。引用する形式も選ぶことができ、「AMA」や「MLA」などがおすすめです。〈図3〉画像を拡大するスライドを作成している最中は単位や参考文献の統一まで気を配ることが難しいかもしれません。一通りスライド作成を終えた後、スライド全体で統一されているかどうかを確認することをお勧めします。講師紹介

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第27回 後方支援病院もクラスター、行く当てのない新型コロナ高齢者

診療情報がない高齢者を診るそろそろ新型コロナ第8波もピークアウトかなと感じておりますが、どうでしょうか。場末の勤務医の私なんぞに先見の明はないですし、「ピークアウトや!」と言った翌週が感染大爆発なんてことも当然ありうるわけで、現場感をアテにしてはいけません。それにしても、第8波の新型コロナ入院例は過去最高年齢を記録しております。100歳超えはザラで、基本は90歳前後です。第8波に限ったことではありませんが、結構現場で困っているのが、「入院患者さんの診療情報がない」ということです。新型コロナクラスターが発生した高齢者施設では、たとえば連携医が週1回しか来ない、また陽性者が多数発生したため書類作成が追い付かないなどの理由があって、診療情報をコロナ病棟に提供できる状況にないことがあります。そのため、なぜアスピリンを内服しているのか、なぜ血清クレアチニンが2を超えているのか、なぜ腹部に手術痕があるのか、などがわからないまま治療に入る新型コロナ患者さんが存在します。家族に電話すると、だいたいその理由がわかりますが。キーパーソンが高齢者施設の施設長になっているのに、施設長が新型コロナ陽性で対応できないということもありました。診療情報だけでなくアドバンス・ケア・プランニング(ACP)も最初からやらないといけないということも、なかなか業務負荷が大きいです。90歳を超えているのに、「亡くなるなんて考えたこともありませんでした」と言われるとビックリしますよね。施設に帰れない年末年始は施設クラスターの嵐でした。1月10日時点で入院している患者さんのうち、新型コロナの療養が終わりつつあるものの、ADLが落ちて施設に帰れなくなった高齢者が全体の3分の1くらいを占めます。大阪府の緊急確保病床を伴うフェーズ5ということで、当院は最大稼働病床60床で運用しています。その代わり、非コロナの一般病床の病床数を減らしている状況です。そのため、新型コロナの療養期間が終わって施設に帰れない場合、自院の一般病床に転出させるか、療養型病床に転院するかの2択しかありません。新型コロナの診療のために一般病床をつぶしている状況なので、必然的に後者を選択することになりますが、ここで問題が生じます。アフターコロナとしての受け皿である療養型病院で結構クラスターが発生してしまっていて、転院を断られてしまうのです。これは厳しい。どこにも転院できないとなると、ADLの落ちた高齢者を、コロナ病棟で診続けることになります。となると、次の新型コロナの患者さんが入院できなくなります。完全な目詰まり状態です。波が過ぎるのを待つ以外に方策はないのが現状なので、そろそろピークアウトしてくれないと困るというのが現場の意見です。

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非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。喘息診療実践ガイドラインで2028年までに喘息死を0に 東田氏は、「均質な医療を提供することで、2028年までに喘息死を半減させる。できれば0にしたい」と語った。そのために「喘息の科学的知見に基づく情報提供をしたい」「非専門医の日常診療に役に立つガイドラインを作りたい」との思いから、喘息診療実践ガイドラインを作成したという。喘息診療実践ガイドラインは、新薬の登場などに合わせて、可能な限り毎年改訂を行う予定とのことである。喘息診療実践ガイドライン2022の問診チェックリスト活用を 従来のガイドラインでは、「喘息診断の目安」が記載されているものの、「診断基準」は明記されていない。また、喘息の診断には呼吸機能検査が必要とされているが、日常診療の場では難しい。そこで、喘息診療実践ガイドライン2022では、臨床現場で実際に活用できる診断アルゴリズムを作成している。ここで、重要となるのが「問診」である。東田氏らは、4千人超の喘息患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果を基に、喘息患者の特徴を抽出した「問診チェックリスト」を作成し、喘息診療実践ガイドライン2022上に掲載している(p4、表2-1)。チェックリストは、大項目(喘鳴、咳嗽、喀痰などの喘息を疑う症状)と小項目(症状8項目、背景7項目の計15項目)からなり、「大項目+小項目(いずれか1つ)があれば喘息を疑う」とされている。 問診の結果、喘息を疑った場合には、「まず中用量のICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(中用量ICS/LABA)を最低3日以上使ってほしい」という。「中用量ICS/LABAによる治療に反応し、治療開始前から喘鳴がある場合は喘息と診断して良い」とのことである。反応しない場合は、「他疾患も疑う必要があるため、迷わず専門医に紹介してほしい」と語った。喘息診療実践ガイドライン2022には喘息治療のフローを掲載 喘息診療実践ガイドライン2022の喘息治療のフローに基づくと、日常診療では診断もかねて基本的には中用量ICS/LABAで治療を開始し、それでも症状が残ってしまう場合には、症状に応じて次のステップを考える。咳・痰が続く、呼吸困難が残る、喫煙歴がある場合などは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)がある場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を追加する。LAMAを追加する場合は、「1デバイスで3成分を吸入できるICS/LABA/LAMAの3成分配合剤が登場しているため、こちらを使用してほしい」とのことだ。 また、治療効果が不十分の場合には、吸入薬をきちんと吸えていない可能性があるという。そのため、「まず、うまく吸えているかを確認してほしい。吸入指導の動画も用意しているので活用してほしい」と述べた。各種吸入デバイスの吸入指導用動画や「ホー吸入」という薬の通り道を広く保つ吸入法が、日本喘息学会HPに掲載されているので活用されたい。喘息診療実践ガイドライン2022に医療連携の可能な病院リスト 喘息治療においては、専門医との病診連携を積極的に活用してほしいという。たとえば、「中用量ICS/LABAにLAMAまたはLTRAを追加しても効果が得られない場合」「重症喘息に該当する喘息患者に遭遇した場合」「治療のステップダウンを検討しているが、呼吸機能検査ができない場合」などは検査を行う必要があるため、「専門医で治療導入や呼吸機能検査を実施し、その後はかかりつけ医の先生に診療いただくという病診連携も可能だ」と専門医との病診連携の重要性を強調した。専門医への紹介を考慮すべきタイミングについての詳細や専門医紹介時のひな型、医療連携の可能な病院のリストが喘息診療実践ガイドライン2022上に記載されているので活用されたい(p68~p71)。COVID-19流行期こそ喘息コントロールが重要 注目を集める喘息と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、「喘息をきちんとコントロールできていれば、COVID-19感染リスクが高いわけではないので、必要以上に怖がることはない。ただし、喘息のコントロールが悪いと、気道に炎症が起こり感染しやすくなってしまうので、喘息をコントロールすることが最も重要である」と喘息コントロールの重要性を強調した。『喘息診療実践ガイドライン2022』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:本文72頁発行:2022年7月作成:一般社団法人日本喘息学会発行:協和企画

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交代勤務や夜勤と将来の認知症リスク~メタ解析

 交代勤務や夜勤が認知症リスクと関連しているかについては、相反するエビデンスが報告されている。中国・First Clinical Medical College of Shaanxi University of Traditional Chinese MedicineのZhen-Zhi Wang氏らは、交代勤務や夜勤と認知症との潜在的な関連性を明らかにするため、関連文献をシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。その結果、夜勤は認知症のリスク因子である可能性が示唆された。Frontiers in Neurology誌2022年11月7日号の報告。 交代勤務や夜勤と認知症との関連を調査するため、2022年1月1日までに公表された文献をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。独立した2人の研究者により、検索した文献、抽出データの適格性がレビューされた。PRISMAガイドラインに従ってシステマティック評価およびメタ解析を実施した。メタ解析には、Stata 16.0を用いた。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、4つの研究(10万3,104例)を含めた。・プールされた結果では、夜勤者は夜勤がない者と比較し、認知症リスクが12%高かった(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.03~1.23、p=0.094)。・一方、交代勤務は認知症リスクとの有意な関連は認められなかった(HR:1.09、95%CI:0.83~1.43、p=0.546)。しかし、交代勤務と認知症リスクの関連は加齢とともに増加する可能性があり、50歳以上の交代勤務者では認知症リスクとの相関が認められた(HR:1.31、95%CI:1.03~1.68、p=0.030)。・これらの結果をさらに確認するためには、客観的な指標を用いたプロスペクティブ研究が必要とされる。

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“適切な水分補給”、その意義は?

 適切な水分補給をしている人は、慢性疾患発症リスクが低く、長生きであったことを米国国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所のNatalia I. Dmitrieva氏らが明らかにした。eBioMedicine誌2023年1月2日掲載の報告。 マウスでは、水分補給を制限することで、生存期間の短縮や退行性変化の促進がみられることが報告されている1)。そこで、著者らの研究グループは、適切な水分補給が老化を遅らせるという仮説を立て、45~66歳の成人を対象にその仮説を検証した。 本研究は、血清ナトリウム値135~146mmol/Lで、血清ナトリウム値に影響を及ぼす高血糖(血漿グルコース値140mg/dL超)や高脂血症、肥満(BMI 35kg/m2超)がない米国在住の45~66歳の成人1万1,255人を対象とし、25年間追跡した。水分不足は、血清ナトリウム値を上昇させる要因となることが知られていることから、水分補給の指標として血清ナトリウム値を用いた。また、加齢の相対的な速度の推定には、年齢と相関のあるバイオマーカーから算出した生物学的年齢を用いた。評価項目は、血清ナトリウム値と慢性疾患発症、早期死亡、生物学的年齢の関連などとした。 主な結果は以下のとおり。・血清ナトリウム値142mmol/L超は、慢性疾患の発症リスクが39%上昇した(ハザード比[HR]:1.39、95%信頼区間[CI]:1.18~1.63)。・血清ナトリウム値144mmol/L超は、早期死亡のリスクが21%上昇した(HR:1.21、95%CI:1.02~1.45)。・血清ナトリウム値142mmol/L超は、生物学的年齢が実年齢を上回るオッズが50%高く(オッズ比:1.50、95%CI:1.14~1.96)、生物学的年齢が実年齢を上回る人は、慢性疾患発症(HR:1.70、95%CI:1.50~1.93)および早期死亡(HR:1.59、95%CI:1.39~1.83)のリスクが上昇した。 著者らは、「中年では血清ナトリウム値が142mmol/Lを超えると老化(生物学的年齢高値)、慢性疾患発症、早期死亡のリスクが上昇することが明らかになった」とした一方、「水分補給の不足と老化の関係を証明するためには、介入試験が必要である」とも述べている。

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TN乳がんへの術前CBDCA+PTXにアテゾリズマブ追加でpCR改善/第II相試験

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法として、アントラサイクリンを含まないカルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)にアテゾリズマブの追加を評価する無作為化第II相試験において、病理学的完全奏効(pCR)率の有意な増加が示された。米国・ワシントン大学のFoluso O. Ademuyiwa氏らが、NPJ Breast Cancer誌2022年12月30日号に報告。 これまで、転移を有するPD-L1陽性TNBCを対象としたIMpassion130試験ではnab-PTXへのアテゾリズマブ追加による無増悪生存期間と全生存期間の改善、また早期TNBCを対象としたIMpassion031試験ではアテゾリズマブとアントラサイクリンおよびタキサンをベースとした術前化学療法によるpCR改善が報告されている。 本試験では、StageII/IIIのTNBC 67例(年齢中央値:52歳、範囲:25~78歳)をArm A(CBDCA+PTX)22例、Arm B(CBDCA+PTX+アテゾリズマブ)45例に無作為に割り付け、アテゾリズマブ追加でpCR率および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合が増加するかどうかを、修正ITT集団(評価可能で1回以上併用療法を受けた全患者)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・修正ITT集団において、pCR率はArm Aで18.8%(95%信頼区間[CI]:4.0~45.6)、Arm Bで55.6%(同:40.0~70.4)だった(群差の推定値:36.8%、95%CI:8.5~56.6、p=0.018)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、Arm Aで62.5%、Arm Bで57.8%に発現した。・TILの割合は、ベースラインから第1サイクルまで、Arm A(平均±SD:0.6%±21.0%)およびArm B(同:5.7%±15.8%)ともわずかに増加した。・TILの割合の中央値は、pCR例(24.8%)で非pCR例(14.2%)より高かった(p=0.02)。 本試験において、術前化学療法のみよりアテゾリズマブ追加でpCR率が有意に高かった。著者らは「非アントラサイクリンベースの化学療法+免疫療法は、早期TNBC治療の代替オプションとなる可能性がある」としている。

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正しいがんの原因への認識、ワクチン拒否・代替医療・陰謀論支持者で低調/BMJ

 がんの原因に対する認識傾向について、スペイン・Catalan Institute of OncologyのSonia Paytubi氏らが、約1,500人を対象に行ったオンライン横断調査の結果、ほぼ半数が「何もかもががんの原因になるように思える」と感じていることが明らかになった。著者は、「大量の情報が、事実に基づく原因と根拠のない原因を見分けることを困難にしていることが浮き彫りになった」と述べている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン拒否者、代替医療や陰謀論を支持する人々では、それぞれの対照群と比べ、根拠のないがんの原因を支持する傾向が高く、事実に基づくがんの原因を支持する傾向は低かった。著者は、「これらの結果は、誤ったデジタル情報と誤った健康認識が関連していることを示すものであり、予防可能ながん率を示している可能性もある」と述べている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「DON’T BELIEVE THE HYPE(誇大宣伝を信じるな)」掲載の報告。ネット上フォーラムやがん予防ウェブサイトからデータ収集 研究グループは、インターネット上のフォーラム「ForoCoches」(スペイン語)、「Reddit」(英語)、「4Chan」(英語)、「HispaChan」(スペイン語)、およびがん予防に関するスペイン語ウェブサイト(mejorsincancer.org)から、2022年1~3月にかけてデータを収集し、ワクチン懐疑論や陰謀論への公言とがん予防に対する態度について、横断研究を行った。 Cancer Awareness Measure(CAM)とCancer Awareness Measure Mythical Causes Scale(CAM-MYCS)を用いて、がんに対する考え(cancer beliefs)を評価した。事実に基づくがんの原因に関する認識度、CAMスコア中央値63.6% 回答者1,494人のうち、COVID-19ワクチン非接種者は209人、従来医療よりも代替医療を好む人は112人、天動説またはレプティリアン(ヒト型爬虫類の異星人)陰謀説の信者は62人だった。 事実に基づくがんの原因に関する認識度は、根拠のない原因への認識度より高かった(CAMスコア中央値:63.6% vs.41.7%)。最も支持されていた根拠のないがんの原因は、食品添加物や人工甘味料の摂取、ストレス、遺伝子組み替え食品の摂取だった。 ワクチン非接種者、代替医療支持者、陰謀論支持者の3群の、事実に基づくがんの原因の特定率中央値は54.5%だった。一方、3群の対照群では63.6%だった(それぞれ、p=0.13、p=0.04、p=0.003)。根拠のないがんの原因の特定率中央値は、ワクチン非接種者群が25.0%、代替医療支持者群が16.7%、陰謀論支持者群が16.7%だったのに対し、各対照群は中央値41.7%と高率だった(いずれも、補正後p<0.001)。 「何もかもががんの原因になるように思える」に同意した人の割合は、全体では673人(45.0%)だった。同割合は、ワクチン非接種者群は44.0%、陰謀論支持者群は41.9%、代替医療支持者群は35.7%で、各対照群(45.2%、45.7%、45.8%)と有意差はなかった。

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モルヌピラビル、ワクチン接種済み患者の入院・死亡への効果は?/Lancet

 SARS-CoV-2の経口抗ウイルス薬モルヌピラビルは、地域で暮らす高リスクのワクチン接種済み成人集団における、COVID-19関連の入院または死亡の発生を減少しなかった。英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らが、約2万6,000例を対象とした非盲検プラットフォームアダプティブ無作為化対照試験「PANORAMIC試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月22日号掲載の報告。28日以内の原因を問わない入院または死亡を比較 PANORAMIC試験は2021年12月8日~2022年4月27日に、50歳以上、または18歳以上で関連併存疾患のある体調不良で在宅療養5日以内のCOVID-19確定患者を適格対象として行われた。被験者を無作為に2群に分け、一方にはモルヌピラビル(800mg、1日2回、5日間)+通常ケアを、もう一方の群には通常ケアのみを行った。 無作為化はウェブベースシステムを用いて行い、年齢(50歳超、50歳未満)と、SARS-CoV-2ワクチン接種の有無による層別化も行った。 COVID-19アウトカムは、無作為化後28日間、患者自身が記録したオンライン日誌で追跡された。主要アウトカムは、無作為化から28日以内の原因を問わない入院または死亡。解析は、無作為化を受けた適格全被験者を包含したベイズモデルを用いて行われた。入院・死亡率はモルヌピラビル投与群、通常ケアのみ群ともに1% 2万6,411例が無作為化を受けた(モルヌピラビル+通常ケア群1万2,821例、通常ケアのみ群1万2,962例、その他の治療628例)。主要解析には、モルヌピラビル+通常ケア群1万2,529例、通常ケアのみ群1万2,525例が包含された。 被験者の平均年齢は56.6歳(SD 12.6)、SARS-CoV-2ワクチンの3回以上接種者は94%(2万5,708例中2万4,290例)だった。 入院または死亡が記録されたのは、モルヌピラビル+通常ケア群105例(1%)、通常ケアのみ群98例(1%)だった(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%ベイズ信用区間[CrI]:0.81~1.41、優越性の確率:0.33)。サブグループ間で治療相互作用のエビデンスはみられなかった。 重篤な有害事象は、モルヌピラビル+通常ケア群で50例(0.4%)、通常ケアのみ群で45例(0.3%)が記録されたが、モルヌピラビルに関連すると判定された有害事象はなかった。

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