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日本におけるオミクロン期のコロナワクチンの有効性は?/長崎大

 長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの多施設共同研究チームは、2021年7月1日より、日本国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果のサーベイランス「VERSUS(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2)」を実施している。オミクロン株BA.1/BA.2の流行期における新型コロナmRNAワクチンの効果についてVERSUSのデータを基に評価したところ、初回シリーズの接種により緩やかな予防効果が得られ、さらに、有症状感染を防ぐにはブースター接種がより効果的であったことが明らかとなった。本結果は、Expert Review of Vaccines誌オンライン版2023年3月8日号に掲載された。 本研究では、2022年1月1日~6月26日のオミクロン株BA.1/BA.2の流行期に、11県の医療機関14施設に、COVID-19の徴候または症状(発熱[37.5℃以上]、咳嗽、疲労、息切れ、筋肉痛、咽頭痛、鼻づまり、頭痛、下痢、味覚障害、嗅覚障害)があって受診した7,931例(16歳以上)が登録された。ワクチン効果を多施設共同test-negative case-control研究で評価した。初回シリーズ(1次接種)とブースター接種ともにmRNAワクチンのファイザーの1価ワクチン(BNT162b2)もしくはモデルナの1価ワクチン(mRNA-1273)について評価し、それ以外の新型コロナワクチン接種者は試験結果から除外した。 主な結果は以下のとおり。・サーベイランスに登録された7,931例のうち、検査陽性3,055例、検査陰性4,876例を解析対象とした。年齢中央値39歳(四分位範囲:27~53)、男性3,810例(48.0%)、基礎疾患のある人が1,628例(20.5%)、COVID-19罹患歴がある人が142例(1.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種13.8%、1次接種60.1%、ブースター接種20.1%であった。65歳以上では、未接種5.8%、1次接種49.7%、ブースター接種34.8%であった。検査陽性者の割合は、未接種52.7%、1次接種42.2%、ブースター接種20.3%であった。・未接種と比較した1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で35.6%(95%信頼区間[CI]:19.0~48.8)、91~180日で32.3%(20.7~42.2)、180日超で33.6%(18.5~45.8)であった。・未接種と比較したブースター接種の効果は、16~64歳では、ブースター接種完了から90日以内で68.7%(95%CI:60.6~75.1)、91~180日で59.1%(37.5~73.3)であった。・65歳以上では、未接種と比較した1次接種の効果は31.2%(95%CI:-44.0~67.1)、ブースター接種では76.5%(46.7~89.7)に上昇した。・1次接種、ブースター接種ともに、mRNA-1273のほうがBNT162b2よりも効果が高かったが有意差はなかった。・1次接種(接種から180日超)と比較したブースター接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種から90日以内で52.9%(95%CI:41.0~62.5)、91~180日で38.5%(6.9~59.3)であった。・65歳以上では、1次接種と比較したブースター接種の効果は65.9%(95%CI:35.7~81.9)であった。 本結果について著者は、デルタ株流行期での日本における1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で91.8%(95%CI:80.3~96.6)、91~180日で86.4%(56.9~95.7)、65歳以上では90.3%(73.6~96.4)と非常に高かったが、オミクロン株流行時には1次接種の有効性はかなり低下しており、有症状感染を防ぐにはブースター接種が必要だと指摘している。

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日本人の認知症タイプ別死亡リスクと死因

 近年の認知症に対する医療および長期ケアの環境変化は、疾患の予後を改善している可能性がある。そのため、認知症の予後に関する情報は、更新する必要があると考えられる。そこで、医薬基盤・健康・栄養研究所の小野 玲氏らは、日本における認知症のサブタイプ別の死亡率、死因、予後関連因子を調査するため、クリニックベースのコホート研究を実施した。その結果、日本における認知症サブタイプ別の死亡リスクや死因の重要な違いが明らかとなった。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年2月6日号の報告。 国立長寿医療研究センターの予防老年学研究部におけるもの忘れ外来受診者の予後調査研究(NCGG-STORIES)で収集した患者の臨床および予後データを分析した。2010年7月~2018年9月に当センターもの忘れ外来を受診した患者またはその近親者を対象に、郵便調査で死亡状況の確認を行った。対象患者3,229例を6つの認知機能タイプ(認知機能正常[NC]、軽度認知障害[MCI]、アルツハイマー病[AD]、血管性認知症、レビー小体型認知症[DLB]、前頭側頭型認知症)に分類した。認知機能タイプ別の死亡率を比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・NC群と比較し、すべての認知症サブタイプおよびMCI群の死亡率は高かった(ハザードリスク:2.61~5.20)。・最も多かった死因は肺炎であり、次いでがんであった。・MCI、AD、DLB群における予後因子は、高齢、男性、認知機能低下であり、アポリポ蛋白Eℇ4対立遺伝子との関連は認められなかった。・本調査により、認知症のサブタイプ別に死亡リスクと死因の違いが認められたことから、今後の高度な認知症ケア計画や政策立案に役立つことが望まれる。

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ペムブロリズマブの去勢抵抗性前立腺がんおよびEGFR陽性非小細胞がんの第III相試験/MSD

 Merck社は2023年2月28日、第III相試験KEYNOTE-641およびKEYNOTE-789の最新情報を公開。転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびアンドロゲン除去療法(ADT)との併用を評価する第III相KEYNOTE-641試験については、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき中止する。中間解析において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびADTの併用療法では、プラセボ+エンザルタミドおよびADTと比較して、2つの主要評価項目である画像上の無増悪生存期間(rPFS)または全生存期間(OS)の改善が確認されず、OSについては事前に設定した無益性の境界(futility boundary)を超えた。 また、オシメルチニブを含むEGFR‐TK治療後に進行した転移を有するEGFR変異陽性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の治療においてペムブロリズマブとペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法の併用療法を評価する第III相KEYNOTE-789試験について、2つの主要評価項目のうちOSを達成しなかったことを発表した。同試験の最終解析で、ペムブロリズマブ+ペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法を受けた患者では、ペメトレキセドおよびプラチナ製剤による化学療法のみを受けた患者と比較してOSの改善がみられたが、事前に設定した統計学的有意性の基準を満たさなかった。もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)について、この前に実施した中間解析でペムブロリズマブ群では化学療法単独群と比較して改善がみられたが、統計学的有意性の基準を満たさなかった。 KEYNOTE-641試験およびKEYNOTE-789試験においてペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでの試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されなかった。

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高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

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医師以外の医療従事者による厳格降圧、地域住民のCVDを低減/Lancet

 高血圧患者における心血管疾患の予防では、医師以外の地域医療従事者による厳格降圧治療は標準降圧治療と比較して、降圧効果が高く、心血管疾患や死亡の抑制に有効であることが、米国・Tulane University School of Public Health and Tropical MedicineのJiang He氏らが実施した「CRHCP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月2日号で報告された。中国の326村落でクラスター無作為化試験 CRHCPは、中国の非盲検エンドポイント盲検化クラスター無作為化試験であり、2018年5月~11月にクラスターとして326の村落が登録された(中国科学技術部などの助成を受けた)。 対象は、年齢40歳以上、未治療の場合は収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHgの患者、心血管疾患のリスクが高い場合や、降圧治療を受けている場合は、収縮期血圧≧130mmHg、拡張期血圧≧80mmHgの患者であった。 326の村落は、非医師の地域医療従事者が厳格降圧治療を行う群(163村落)、または標準降圧治療を行う群(163村落)に無作為に割り付けられた。 厳格降圧群では、訓練を受けた非医師の地域医療従事者が、プライマリケア医の指導の下で、収縮期血圧<130mmHg、拡張期血圧<80mmHgの達成を目標に、簡略な段階的治療プロトコルに従って降圧治療を開始し、薬剤の用量を漸増した。また、降圧薬を割引または無料で提供したり、生活様式の改善や家庭での血圧測定、服薬アドヒアランスなどについて指導を行った。 標準降圧群では、非医師の地域医療従事者は標準的な血圧測定の訓練を受けたが、プロトコルに基づく血圧管理の訓練は受けず、非医師の地域医療従事者またはプライマリケア医が標準治療を行った。 有効性の主要アウトカムは、36ヵ月の時点における心筋梗塞、脳卒中、入院を要する心不全、心血管疾患による死亡の複合とされた。重篤な有害事象は少ないが、低血圧の発生が増加 3万3,995例が登録され、厳格降圧群が1万7,407例、標準降圧群は1万6,588例であった。ベースラインの全体の平均年齢は63.0歳で、61.3%が女性であり、20.9%が自己申告による心血管疾患の既往歴を有しており、57.6%が降圧薬の投与を受けていた。 厳格降圧群では、収縮期血圧がベースラインの平均157.0mmHgから36ヵ月後には126.1mmHgへ低下し、拡張期血圧は87.9mmHgから73.1mmHgへと低下した。また、標準降圧群では、それぞれ155.4mmHgから147.6mmHgへ、87.2mmHgから82.3mmHgへと低下した。 36ヵ月の時点における降圧の正味の群間差は、収縮期血圧が-23.1mmHg(95%信頼区間[CI]:-24.4~-21.9)、拡張期血圧は-9.9mmHg(95%CI:-10.6~-9.3)であり、いずれも厳格降圧群で降圧効果が有意に優れた(いずれも、p<0.0001)。使用された降圧薬の種類の数は、平均で厳格降圧群が3.1種、標準降圧群は1.1種だった。 主要アウトカムの年間発生率は、厳格降圧群が1.62%と、標準降圧群の2.40%に比べて有意に低かった(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.61~0.73、p<0.0001)。サブグループ解析では、主要アウトカムのリスク低下は年齢や性別、学歴、ベースラインの降圧薬使用の有無、心血管疾患リスクの高さにかかわらず、一貫して厳格降圧群で優れた。 副次アウトカムも厳格降圧群で良好であり、心筋梗塞(厳格降圧群0.2%/年vs.標準降圧群0.3%/年、HR:0.77[95%CI:0.60~0.98]、p=0.037)、脳卒中(1.3% vs.1.9%、0.66[0.60~0.73]、p<0.0001)、心不全(0.1% vs.0.2%、0.58[0.42~0.81]、p=0.0016)、心血管疾患による死亡(0.4% vs.0.6%、0.70[0.58~0.83]、p<0.0001)、全死因死亡(1.4% vs.1.6%、0.85[0.76~0.95]、p=0.0037)の発生率は、いずれも厳格降圧群で低かった。 重篤な有害事象は、厳格降圧群が21.1%、標準降圧群は24.1%で発生した(リスク比:0.88[95%CI:0.84~0.91]、p<0.0001)。低血圧の発生率は、厳格降圧群が標準降圧群に比べて高かった(1.75% vs.0.89%、1.96[1.62~2.39]、p<0.0001)。 著者は、「この医師以外の地域医療従事者の主導による戦略は、中国の農村部などの医療資源が乏しい環境において血圧関連の心血管疾患や全死因死亡を減少させるために、その規模の拡大が可能と考えられる」としている。

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CAD患者のLDL-C 50~70mg/dL目標の治療 、高強度スタチンに非劣性/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)患者の治療において、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を50~70mg/dLとする目標達成に向けた治療(treat-to-target)は高強度スタチン療法に対し、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合に関して非劣性であり、これら4つの構成要素の個々の発生率には差がないことが、韓国・延世大学のSung-Jin Hong氏らが実施したLODESTAR試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年3月6日号に掲載された。韓国の無作為化非劣性試験 LODESTAR試験は、韓国の12施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(Samjin Pharmaceuticalなどの助成を受けた)。 CAD(安定虚血性心疾患または急性冠症候群[不安定狭心症、急性心筋梗塞])患者が、LDL-C値50~70mg/dLを目標とするtreat-to-target治療を受ける群、またはロスバスタチン20mgあるいはアトルバスタチン40mgによる高強度スタチン療法を受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合であり、非劣性マージンは3.0%とされた。treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンス 4,400例(平均年齢65.1[SD 9.9]歳、女性27.9%)が登録され、2つの群に2,200例ずつが割り付けられた。4,341例(98.7%)が3年の追跡を完了した。ベースラインの平均LDL-C値は、treat-to-target群が86(SD 33)mg/dL、高強度スタチン群は87(SD 31)mg/dLであった。 高強度スタチン療法は、treat-to-target群では1年目に患者の53%、2年目に55%、3年目に56%が受けており、高強度スタチン群ではそれぞれ93%、91%、89%が受けていた。 試験期間中の平均LDL-C値は、treat-to-target群が69.1(SD 17.8)mg/dL、高強度スタチン群は68.4(SD 20.1)mg/dLであり、両群間に有意な差はなかった(p=0.21)。 3年時の主要エンドポイントの発生率は、treat-to-target群が8.1%(177例)、高強度スタチン群は8.7%(190例)で、絶対群間差は-0.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1)であり、treat-to-target群の高強度スタチン群に対する非劣性が示された。 死亡(treat-to-target群2.5% vs.高強度スタチン群2.5%、絶対群間差:<0.1%[95%CI:-0.9~0.9]、p=0.99)、心筋梗塞(1.6% vs.1.2%、0.4[-0.3~1.1]、p=0.23)、脳卒中(0.8% vs.1.3%、-0.5[-1.1~0.1]、p=0.13)、冠動脈血行再建術(5.2% vs.5.3%、-0.1[-1.4~1.2]、p=0.89)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、スタチン治療における薬物反応の個人差を考慮した個別化治療を可能にする、treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンスをもたらすものである」としている。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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貯まったポイントは商品券と交換がダントツ/医師1,000人アンケート

 日常生活で当たり前となったポイント付与と使用。最近では、ポイントを目当てに活動する「ポイ活」という言葉もうまれ、さまざまな情報交換がウェブサイトなどで行われている。 この「ポイ活」について、医師がどの程度の頻度で、どの分野で行い、貯めたポイントを何と変換しているのか、今回会員医師1,000人にアンケート調査を行った。アンケートは、2月22日にCareNet.comのWEBアンケートにて全年代、全診療科に対して実施した。20~50代までの医師は「ポイ活」に積極的 質問1で「普段のポイ活の頻度」(単回答)について聞いたところ、「毎日」が719人(71.9%)、「数日おき程度」が160人(16%)、「週1回程度」が53人(5.3%)、「月数回程度」と「(ポイ活)やっていない」が同数で34人(3.4%)だった。 質問2で「どのような分野のポイ活をしているか」(複数回答)について聞いたところ、「医療系サイト」が791人(79.1%)と一番多く、次いで「IT系」が395人(39.6%)、「通信系」が318人(31.8%)の順で多かった。会員医師の間では、ウェブサイトでの買い物や携帯キャリアなどでのポイ活がほぼ横並びで、診療知識の習得などで視聴する医療系サイトは仕事に直結するために視聴が習慣化していた。 質問3で「どこの医療サイトでポイ活をしているか」(複数回答)について聞いたところ、「CareNet.com」が936人(93.6%)、「m3」が861人(86.1%)とほぼ並んでいた。また、「MedPeer」が610人(61%)、「日経メディカル」が601人(60.1%)という回答だった。 質問4で「医療系サイトを友人などに紹介したことがあるか」(単回答)について聞いたところ、「ない」が573人(57.3%)、「ある」が383人(38.3%)という結果となり、ウェブサイトの視聴勧奨には消極的な姿勢がうかがえた。 質問5で「貯まったポイントの使いみち」(複数回答)について聞いたところ、「商品券」が875人(87.5%)とダントツで多く、次いで「現金相当やマイレージ充当」が190人(19.0%)、「医書や電子書籍」が83人(8.3%)と続いた。 年齢別の「ポイ活の頻度」をみると、20~50代で「毎日」行っている会員医師が多く、高齢になるほど「やっていない」という回答が多かった。「ポイ活の分野」では、年齢にかかわりなく「医療系サイト」、「IT系」が均等に回答を得ていた。「貯まったポイントの使いみち」では、全年齢で「商品券」が多く、20~50代の方では「現金やマイレージ充当」も多かった。 「ポイ活」にまつわるエピソードについて、ポジティブなエピソードでは、「時間はかかるが、年間でみるとお得」(30代・麻酔科)や「ポイント集めの苦労からお金の大事さを再認識」(30代・内科)、「手軽に寄附できた」(30代・産婦人科)などが寄せられた。その一方で、ネガティブなエピソードでは、「ポイ活に熱中しすぎると診療がおろそかになる」(40代・神経内科)、「ポイントを貯めるために無駄使いしがち」(30代・循環器・心臓血管外科)などが寄せられた。参考医師は貯めたポイントを何に使っている?

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2歳までの下気道感染、成人期の呼吸器疾患死リスク約2倍/Lancet

 幼児期に下気道感染症に罹患すると、肺の発達が阻害され、成人後の肺機能の低下や慢性呼吸器疾患の発症リスクが高まるといわれている。そのため、幼児期の下気道感染症の罹患は、呼吸器疾患による成人早期の死亡を引き起こすのではないか、という仮説も存在する。しかし、生涯を通じたデータが存在しないことから、この仮説は検証されていなかった。そこで、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJames Peter Allinson氏らは、1946年の出生コホートを前向きに追跡した。その結果、2歳未満での下気道感染があると、26~73歳の間に呼吸器疾患によって死亡するリスクが、約2倍となることが示された。Lancet誌オンライン版2023年3月7日号の報告。 1946年3月にイングランド、ウェールズ、スコットランドで出生した5,362例を前向きに追跡した。26歳まで生存し、適格基準(2歳未満での下気道感染や、20~25歳時の喫煙歴に関するデータが得られているなど)を満たした3,589例について、2歳未満での下気道感染の有無別に、26歳時点をベースラインとして生存分析を実施した。また、研究対象コホート内の死亡とイングランド・ウェールズの死亡を比較し、試験期間中の超過死亡を推定した。 主な結果は以下のとおり。・26歳時点からの追跡期間は最大47.9年であった。・追跡の対象となった3,589例のうち、2019年末時点で生存が確認されたのは2,733例であった(死亡:674例、移住:182例)。・2歳未満での下気道感染のある群(913例)は、下気道感染のない群(2,676例)と比べて呼吸器疾患による死亡リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.93、95%信頼区間[CI]:1.10~3.37、p=0.021)。・2歳未満での下気道感染の回数別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1回感染群(596例)が1.51(0.75~3.02、p=0.25)、2回感染群(162例)が2.53(0.97~6.56、p=0.057)、3回以上感染群(155例)が2.87(1.18~7.02、p=0.020)であった。・2歳未満での初回の下気道感染の年齢別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、1歳未満群(648例)が2.12(1.16~3.88、p=0.015)、1歳以上2歳未満群(256例)が1.52(0.59~3.94、p=0.39)であった。・2歳未満での初回の下気道感染時の治療別にみると、下気道感染のない群(2,676例)と比べたHR(95%CI、p値)は、未治療または外来治療群(856例)が1.79(1.00~3.19、p=0.051)、入院治療群(52例)が4.35(1.31~14.5、p=0.017)であった。・2歳未満での下気道感染は、1972~2019年のイングランド・ウェールズの呼吸器疾患による死亡の20.4%(95%CI:3.8~29.8)に関連していると推定され、これはイングランド・ウェールズにおける17万9,188例(95%CI:3万3,806~26万1,519)の超過死亡に相当した。 著者らは、「2歳までに下気道感染のある人は、呼吸器疾患による成人期の早期死亡のリスクが約2倍であり、2歳未満での下気道感染は成人期の呼吸器疾患による死亡の5分の1に関連していることが示唆された。幼児期の下気道感染と慢性閉塞性肺疾患などの成人呼吸器疾患の発症や予後との間には、特異な関連があると考えられる。成人呼吸器疾患の発症や子供の健康格差の発生を避けるためには、生涯にわたる予防戦略が必要である」とまとめた。

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PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。 2021年までの文献を、Web of Science、PubMed、Google Scholar、Excerpta Medica Database(EMBASE)、Springer、ScienceDirect、Wiley Online Library、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Chinese Biomedical Literature Database (CBM)、WANFANG Data、CQVIP、Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)よりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・ドパミンD2受容体遺伝子の27の遺伝子変異が収集され、それらのうち選択基準を満たした7つをメタ解析に含めた。・メタ解析では、rs1800497(TaqIA)多型がPTSDのリスク増加と有意に関連していることが示唆された(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.08~2.04、Z=2.46、p=0.014])。・人種によるサブグループ解析では、アジア人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.39、95%CI:1.08~1.79、Z=2.60、p=0.009])と白人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.87、95%CI:1.02~3.41、Z=2.04、p=0.042])において、PTSDリスクの有意な増加が観察された。・うつ病とドパミンD2受容体遺伝子の関連については、rs1799978(ホモ接合型の比較GG vs.AA[OR:0.60、95%CI:0.37~0.97、Z=2.08、p=0.038])とrs2075652(ホモ接合型の比較AA vs.GG[OR:1.82、95%CI:1.32~2.50、Z=3.67、p<0.001])多型の間に有意な関連の強固性が検出された。・累積メタ解析では、PTSDおよびうつ病の関連の強固性に、継続的な傾向が認められた。・PTSDおよびうつ病のリスク因子としてドパミンD2受容体遺伝子の変異を用いるためには、適切に設計された大規模ケースコントロール研究でさらに検証する必要がある。

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新薬追加のWeb版「GIST診療ガイドライン」、診療経験少ない非専門医にも

 日本治療学会は稀少腫瘍研究会の協力のもと、「GIST診療ガイドライン2022年4月改訂 第4版」を発刊し、2023年3月4日、本学会ホームページにWeb版を公開した。GIST(Gastrointestinal stromal tumor、消化管間質腫瘍)は、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1~2人と消化器系の稀少がんであるため、患者の診療経験が少ない臨床医も多い。そのため、本ガイドライン(GL)に目を通し、いざという時のために備えていただきたい。そこで、今回、本GL改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一氏(兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長)に、本書の目的やおさえておく内容について話を聞いた。 なお、昨年発売された書籍では紹介できなかったHSP90阻害薬ピミテスピブ(商品名:ジェセリ錠40mg)について、Web版ではCQ(Clinical Question)の追加や関連箇所のアップデートがなされているので本編の後半に紹介する。診断・治療の迷いを払ってくれるアルゴリズム・参考図表 本GLはGIST診療にかかわる非専門医、医療者、患者・家族のために作成された。そのため、診療方針をわかりやすく示し、適切な医療の実践を通して患者の予後を改善することを目的に、MindsのGL作成マニュアル2014と2017に準拠し作成された。たとえば、今回改訂されたアルゴリズムを見ると、参考にすべきCQ/BQ(Background Question)が色付きタブで示されているので、推奨の強さやエビデンスの強さをすぐに確認することができる。また、診断や治療を8つのアルゴリズムで示しているので、診療の全体像をつかみやすいのも特徴である。<アルゴリズム> -本ガイドラインの概要より1)消化管粘膜下腫瘍の診断・治療の概略2)紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断3)類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断4)切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針5)限局性GISTの外科治療6)限局性GISTの術後治療7)GISTの薬物治療(一次治療)8)イマチニブ耐性GISTの治療 廣田氏は、今回大きく改訂された項目として、アルゴリズム2、3、5を挙げた。病理の『アルゴリズム2:紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断』『アルゴリズム3:類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断』はもともと1つのアルゴリズムであったが、KIT陰性GISTについて現場での勘違いが多いことを踏まえて2つに分け、後者には診断時に重要となるDOG1抗体の判定を追加した。同氏は「GISTには腫瘍の原因となる遺伝子異常が解明されているものが多く、どんな遺伝子型なのか(p.15参考図表1)を見極めて診断・治療できるような工夫が本書にはなされている」と説明した。さらに、「“本当の多発なのか播腫性転移なのか”も重要になるため、多発GISTの鑑別を示す参考図表2(p.15)もぜひチェックいただきたい」とコメントした。GLは診療領域ごとに区分も、実臨床では連携強化を求む GISTを診断するためには、画像診断によるスクリーニングと病理診断による確定が非常に重要で、GIST治療では内科医・外科医を中心に病理医や放射線科医も連携を取って集約的な治療が必要になるが、多くの病院ではこれらの連携がネックにもなっている。「内科医が粘膜下腫瘍を疑い、放射線科医・病理医がそれをしっかり診断する。その後、外科的切除が必要かどうか、内科医と外科医の連携が患者の将来を左右するため、切除前にまずはしっかり立ち止まることが重要」と強調した。大型GISTなどの場合でとくに確認すべきは『アルゴリズム5:限局性GISTの外科治療』だと同氏は話す。これは黒川 幸典氏(大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻 准教授)の発表論文1)によるエビデンスなどが、外科CQ5に対する推奨文である「イマチニブによる術前補助療法を行うことを弱く推奨する(推奨の弱さ:弱い、エビデンスの強さ:弱)」に対し大きな影響を与えた、とも述べた。GIST治療薬ピミテスピブ、Web版に追補 2023年2月に改訂、3月に公開されたWeb版は書籍版から改良が加えられ、英語版も公開の準備がされている。Web版では、「内科CQ13:レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブは有用か―レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブの使用を強く推奨する(推奨の強さ:強い、エビデンスの強さ:中」が追加されたほか、『アルゴリズム8:イマチニブ耐性GISTの治療』や内科治療領域の総論内の転移・再発GISTの項目にピミテスピブの四次治療としての位置付けを追加。「内科CQ8:レゴラフェニブ耐性・不応の転移・再発GISTに対して、イマチニブまたはスニチニブの再投与は有用か」の解説に、イマチニブやスニチニブの再投与は推奨されるも再投与の前にピミテスピブの投与が推奨される旨、などが変更されている。 最後に同氏は「GISTはエビデンスの少ない疾患であることから、システマティックレビューのみならず、専門家間でコンセンサスが得られている事象が加味されていること、本書が成人GIST症例に重きを置いているため、病態が異なる若年・小児例では内容を十分に確認する必要があることに注意して欲しい」とコメントした。

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第139回 医師国家試験合格発表、合格率は91.6%とほぼ例年並み/厚労省

<先週の動き>1.医師国家試験合格発表、合格率は91.6%とほぼ例年並み/厚労省2.後期高齢者の医療保険、法案改正に向け、衆議院で審議入り/衆院3.がん5年後生存率66.2%、改善傾向続く/国立がん研究センター4.医療DXの推進に向けパブリックコメントを実施/政府・厚労省5.光熱費・物価高のため入院基本料の引き上げを要求/日病6.電子処方箋の導入に向けQ&Aを公表/厚労省1.医師国家試験合格発表、合格率は91.6%とほぼ例年並み/厚労省厚生労働省は、3月16日に令和5年2月4~5日に実施した第117回医師国家試験の合格者を発表した。今回は受験者数1万293人のうち、合格者は9,432人(合格率:91.6%)となり、合格率は前年の91.7%とほぼ同率だった。男女別の合格率は女性93.0%と男性の91.0%を上回り、合格者の34.6%は女性だった。なお、今年度初めて医学部の卒業生を送り出した国際医療福祉大学は、124人が合格し、合格率は99.2%、うち15人はベトナム、モンゴル、インドネシア、カンボジア、ミャンマーからの留学生だった。(参考)第117回医師国家試験の合格発表について(厚労省)医師国家試験2023、順天堂大100%合格…学校別合格率(ReseMom)医師国家試験、合格率91.6% 6年連続で合格者9千人超(CB news)医師国試合格発表、9432人の新医師が誕生(日経メディカル)医師国家試験に留学生15人が合格 学校別合格率は99.2%(国際医療福祉大学)2.後期高齢者の医療保険、法案改正に向け、衆議院で審議入り/衆院今年の4月から出産育児一時金(1児につき42万円)が50万円に引き上げられるため、75歳以上の後期高齢者にも負担を求める健康保険法などの改正案が3月16日、衆議院本会議で審議入りした。岸田 文雄首相は「給付と負担のバランスを確保しつつ、すべての世代が能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う仕組みを構築することが重要」として、社会保障の持続可能性を高めたいと強調した。現在、年3千億円規模の出産育児一時金の大半を現役世代の医療保険料でまかなっている。来年の2024年度からは、7%分を後期高齢者が負担する内容となっている。これに合わせて、後期高齢者のうち、年金収入が年間153万円を超える人の約4割の保険料の上限額が、2024年度から段階的に引き上げられる。また、かかりつけ医機能報告制度について、都道府県が医療機関の機能を公表する仕組みを新たに設ける。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要(厚労省)後期高齢者保険料上限引き上げ 健康保険法改正案 衆院審議入り(NHK)75歳以上の4割、保険料増 医療保険法案審議入り 負担増に懸念も(朝日新聞)3.がん5年後生存率66.2%、改善傾向続く/国立がん研究センター国立がん研究センターは、3月15日に全国のがん診療連携拠点病院など447施設の「院内がん登録」のデータを集計し、院内がん登録全国集計報告書を公表した。これによると、2014~15年にがんと診断された人の5年後の生存率は66.2%、2010年の10年生存率は53.3%となった。今回よりがんが原因で亡くなった人だけを推定して算出する「ネット・サバイバル」を採用したため、前回までの集計とは単純比較はできないが、徐々に改善している傾向をみせている。(参考)院内がん登録2010年10年生存率、2014-2015年5年生存率報告書(国立がん研究センター)がん5年後生存率66.2% 14~15年に診断の94万人集計(毎日新聞)がん10年生存率53.3%「改善傾向変わらない」…新たにネット・サバイバルで算出(読売新聞)がん10年後生存率53.3%種類・ステージ別の詳細算出方法が変更(NHK)4.医療DXの推進に向けパブリックコメントを実施/政府・厚労省政府は2022年6月7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」において、「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」および「診療報酬改定DX」の取組を進めるため、10月12日に総理大臣を本部長とする医療DX推進本部を設置して議論を重ねてきた。3月8日に医療DX推進本部幹事会を開催し、「医療DXの推進に関する工程表骨子案」について議論を行い、3月8日から「医療DXの推進に関する工程表(骨子案)」についてパブリックコメントの募集を開始した。締め切りは4月6日まで。集められた意見をもとに「医療DXの推進に関する工程表」を作成し、各省庁で取組を推進していく。(参考)医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について(政府・厚労省)「医療DX推進の工程表」(誰が何をいつまでに実現するのか)の作成に向け、広く国民から意見募集(GemMed)5.光熱費・物価高のため入院基本料の引き上げを要求/日病日本病院会の相澤 孝夫会長は、3月14日に厚生労働省を訪れ、加藤 勝信厚生労働大臣に「入院基本料の引き上げに関する要望書」を手渡した。昨年から電力、ガス料金が相次いで値上げされたことによって、病院の経営が大きな影響を受けているとして、安定的な病院経営による安定的な医療提供体制を確保するために、入院基本料の引き上げを求めた。要望書によると、医業利益の比較について、4年続けて赤字病院割合が60%を超え、2020年度の79.1%が最も高く、2021年度は72.5%であり、緊急包括支援事業などコロナ関連の補助金を除くと、経常利益の赤字病院割合は2020年度が30.8%から65.9%に、2021年度は19.9%から55.9%へと大幅に増加していた。また、100床あたりの経常利益は2020、21年度で黒字となったが、コロナ関連の補助金を除くと赤字となる。(参考)入院基本料の引き上げに関する要望書(日病)光熱水費高騰などで病院経営は危機的な状況、本来のあるべき姿として「入院基本料の引き上げ」を要請-日病・相澤会長(GemMed)6.電子処方箋の導入に向けQ&Aを公表/厚労省厚生労働省は、令和5年1月26日から開始された電子処方箋について、3月18日に令和4年度第4回オンライン説明会を行うとともに、電子処方箋導入後の着実な運用を確保するため、医療機関・薬局向けの確認事項として、電子処方箋に関する「運用開始におけるよくあるご質問・ご意見について」を掲載し、解説や対応例を公開している。厚労省は導入に関する質問に対しては、問い合わせフォームやコールセンターを用意しており、FAQやチャットボット(24時間365日対応)でも対応する。また、社会保険診療報酬支払基金も電子処方箋ポータルサイトを開設し、電子処方箋の導入事例を紹介している。(参考)電子処方箋(厚労省)電子処方箋よくあるご質問・ご意見に対する解説・対応例(同)電子処方箋の導入事例記事サイト(社会保険診療報酬支払基金)

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IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」【下平博士のDIノート】第117回

IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「トラロキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:アドトラーザ皮下注150mgシリンジ、製造販売元:レオファーマ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎の増悪に関与するIL-13を特異的に中和するモノクローナル抗体であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者の新たな治療選択肢となることが期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間受けても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。本剤による治療反応は、通常使い始めてから16週までには効果が得られるため、16週までに効果が得られない場合は投与の中止を検討します。<安全性>全身療法が適用となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、5%以上の頻度で認められた副作用は、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹など)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎の増悪に関与し、過剰に発現しているインターロイキン-13(IL-13)を特異的に中和するモノクローナル抗体です。2.この薬を投与中も、症状に応じて保湿外用薬などを併用する必要があります。3.寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下などが生じた場合は、すぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は、末梢での炎症を誘導する2型サイトカインであるIL-13を選択的に阻害することで、中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に効果を発揮する生物学的製剤です。IL-13は皮膚の炎症反応の増幅、皮膚バリアの破壊、病原体の持続性増強、痒みシグナルの伝達増強などに作用し、IL-13の発現量とADの重症度が相関するとされています。そのため、IL-13を阻害することによって、皮膚のバリア機能を回復させ、炎症や痒み、皮膚肥厚を軽減することが期待されています。現在、ADの薬物療法としては、ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬(商品名:プロトピックほか)が中心的な治療薬として位置付けられています。近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有するデルゴシチニブ外用薬(同:コレクチム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害作用を有するジファミラスト外用薬(同:モイゼルト)も発売されました。さらに、これらの外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:デュピクセント)、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:ミチーガ)、JAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)などが発売され、治療選択肢が広がっています。本剤は、医療施設において皮下に注射され、原則として本剤投与時もADの病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。IL-13を阻害することにより2型免疫応答を減弱させ、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる恐れがあるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行います。また、本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないため避けます。臨床効果としては、16週目にEASI75(eczema area and severity index[皮膚炎の重症度指標]が75%改善)を達成した割合は、ステロイド外用薬+プラセボ群では35.7%でしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では56.0%でした。また、32週目のEASI-75達成率は92.5%でした。16週時までのステロイド外用薬の累積使用量はステロイド外用薬+プラセボ群では193.5gでしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では134.9gでした。初期投与期間での主な有害事象はウィルス性上気道感染、結膜炎、頭痛などですが、アナフィラキシーなど重篤な過敏症の可能性があるので十分注意する必要があります。投与は大腿部や腹部、上腕部に行い、腹部へ投与する場合はへその周りを外し、同一箇所へ繰り返しの注射は避けます。遮光のため本剤は外箱に入れたまま、30℃を超えない場所で保存し、14日間以内に使用します。使用しなかった場合は廃棄します。本剤は、海外ではEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度~重度のAD療薬として使用されています(2022年8月現在)。参考1)Silverberg JI. et al. Br J Dermatol. 2021;184:450-463.2)レオファーマ社内資料:アトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相TCS併用投与試験(ECZTRA3試験)

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循環器の世界的な権威に推薦状を書いてもらうまで【臨床留学通信 from NY】第45回

第45回:循環器の世界的な権威に推薦状を書いてもらうまで前回まではマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接から、そこのポジションをゲットするに至るまでをご説明いたしました。今回はそのなかでも重要な推薦状についてご説明いたします。推薦状は、多くのレジデントまたはフェローの出願で必要になるのが4通。現在の施設のボス(レジデント、フェローであればプログラムディレクターと呼ばれる人)から1通、臨床的なレターを2通、研究のレターを1通、というのが一般的です。とくに私のように米国経験がない状態でレジデントに入る際は、レターをもらうのが大変です。海軍病院など含めた米国経験がないと、月単位で米国での病院実習をしてレターをもらうのが通例です。しかし、私はそのような時間があまり取れなかったので、東京海上日動メディカルサービス主催のNプログラムのような仕組みは合理的でした。いざ米国に来れば、いろいろなレターをもらう機会があります。私の場合は日本の専門医等の臨床的な能力にアドバンテージがあるため、今回はまずプログラムディレクターに臨床的なレターを書いてもらいました。プログラムディレクター以外には、カテ室のトップの先生から、日本での経験を鑑みてカテーテルの経験に問題がないことを示してもらい、あと2通は、研究レターを2人の大御所から書いてもらうことにしました。1人は世界的に有名な循環器内科医のGregg Stones先生で、先日のACC(American College of Cardiology)でCOAPT trial(機能性MR[僧帽弁閉鎖不全症]に対するMitraClipの有効性を調べた論文)の筆頭著者です1)。ひょんなことから渡米直後より面倒を見ていただき、EXCEL trialという左主幹部病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)vs.冠動脈バイパス術(CABG)のサブ解析でご指導もいただきました2,3)。現時点でも数個のプロジェクトのご指導をいただいています。もう1人は同じく世界的に有名な循環器内科医のDeepak Bhatt先生で、Roxana Mehran先生の研究室にいた時に書いた論文4)の共著者で、2年半前の循環器フェローの面接の時期に親身になって相談に乗っていただきました。そしてCirculation誌の姉妹誌に1件の論文が掲載されたこともあり5)、推薦状を書いていただきました。現在この方はMount Sinaiにいるのですが、それまではBrigham and Women’s Hospitalに在籍されていたため、MGHの方々にコネクションがあり、採用に至ったのだと思います。このようなResearch Giantとの研究はもちろん、繋がりを今後も大切にして米国での展開をしていきたいと思います。Column画像を拡大する2023 ACC/WCC @ニューオーリンズの写真です。Moderated Posterで発表した演題は先ほどのDeepak Bhatt先生に共著者に入っていただき、JACC Advances誌に同時発表となりました6)。ニューヨークからの便が5時間遅れて、あやうく空港泊かと思いましたが、なんとかニューオーリンズに着いての発表でした。参考1)Stone GW, et al. N Engl J Med. 2023 Mar 5. [Epub ahead of print]2)Stone GW, et al. N Engl J Med. 2019;381:1820-1830.3)Kuno T, et al. J Invasive Cardiol. 2021;33:E619-E627.4)Kuno T, et al. J Thromb Thrombolysis. 2021;52:419-428.5)Kuno T, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2022;15:e011990.6)Kuno T, et al. JACC Adv. 2023 Mar 13. [Epub ahead of print]

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英語で「声が途切れ途切れです」は?【1分★医療英語】第72回

第72回 英語で「声が途切れ途切れです」は?Your voice is breaking up.(あなたの声が途切れ途切れです)Sorry. Let me fix my microphone.(ごめんね。マイクを直させて)《例文1》You are breaking up a bit.(あなたの音声がちょっと途切れ途切れです)《例文2》Your voice is breaking up a lot and I can’t hear you well.(あなたの声がかなり途切れ途切れで、よく聞こえません)《解説》“break up”は恋愛のシーンで恋人同士が別れてしまったときに使うフレーズとして記憶している人も多いかもしれません。その場合には、“We recently broke up.”(私たちは最近別れてしまった)なんていうふうに用いられます。しかし、ここではそういう意味ではなく、「音声が途切れ途切れである」ことを示すために用いられています。新型コロナのパンデミック以降、リモート会議が増えた人も多いでしょう。そんな折に、電波が悪くて相手の声が聞き取りにくい、なんていうシーンにも頻繁に遭遇します。そんなときによく用いる表現がこの“Your voice is breaking up.”です。このように表現することで、相手の音声が割れてしまっていることを伝えることができます。また、単に“You are breaking up.”と言うだけでも同じ意味で用いることができます。加えて、その後に“a lot”や“a bit”などを付けることにより、「ひどく」「ちょっと」というような音声の途切れ方の程度を示すこともできます。これらの表現は、リモート会議だけでなく、電話中などにも使うことができ、比較的登場頻度の高い表現です。これがうまく伝えられないと、話し相手はどんどん話を続けてしまい、コミュニケーションエラーのもとになります。“break up”、ぜひマスターしてくださいね。講師紹介

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3月20日 未病の日【今日は何の日?】

【3月20日 未病の日】〔由来〕季節の変わり目の3月20日は体調を崩しやすく、「未(3)病(20)」と読む語呂合わせにもなっていることから、日頃の生活習慣に目を向けてもらいたいとの願いにより、株式会社ブルックスホールディングスが2017年に制定。関連コンテンツ生活習慣の改善(1)禁煙【一目でわかる診療ビフォーアフター】生活習慣の改善(2)飲酒1【一目でわかる診療ビフォーアフター】低血糖予防の簡単なルールを患者さんに!【患者指導画集 Part2】認知症発症を抑える食材、新たな候補はビフィズス菌?内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

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アンチエイジング、未来の児を想像する力なり

第23回日本抗加齢医学会総会が2023年6月9日(金)~11日(日)の3日間、東京国際フォーラムにて開催される。今回のテーマは『老若男女の抗加齢 from womb to tomb(子宮から墓まで)』。大会長である大須賀 穣氏(東京大学大学院医学系研究科産婦人科学 教授)はこのテーマにどんなメッセージを込めたのか、話を聞いた。児の将来を見据えアンチエイジングを目指す産婦人科とは、女性患者さんの健康について広く長くお付き合いする診療科です。妊娠・出産のみならず、若年期の月経、更年期や更年期以降のホルモンに関することなど、あらゆる問題に耳を傾けるため、女性の家庭医という側面も持ち合わせています。そのため、産婦人科は抗加齢医学(アンチエイジング)に密接に関わり、診療の一部として学ぶのは当然のことだとも言えるでしょう。近年では胎児期またはそれ以前の環境がエピゲノムの変化や胎児(次世代)の健康に影響するという科学的知見も得られているため、女性や母体をケアすると同時に次世代を管理する役割が産婦人科医の中でも一層強まってきているのではないでしょうか。また、母体のやせや高齢出産の増加も合併症の増加の一つの要因になっていることは言うまでもありません。今、母になろうとしている女性の体重や血圧、血糖管理などは次世代が健康長寿になるかどうかを決める要素となるため非常に重要なんです。たとえば、内科医の皆さまには、妊娠前の健康状態が非常に重要であることを念頭に置き、若い女性を診察する場合には、妊娠する可能性を視野に入れ、やせが認められる場合には適正体重になるよう指導していただきたいのです。妊娠前の健康がご本人と未来の児のためであるということをどうかご理解ください。そして、食事から摂取用量が不足するビタミンや葉酸はサプリメントで取ることが望ましいため、その点もご指導いただきたいです。このような社会を皆で考えるべく、本大会では会長企画プログラム「妊娠出産の記憶とエイジング」「エイジングと妊娠出産」「生殖器のエイジングケア」などを予定しています。お腹にいるときからアンチエイジングを考慮する必要性、現状を科学的データよりご理解いただきたいと考えおります。今回、海外からは世界妊娠高血圧学会(ISSHP)の会長を務めるProf. Laura Magee氏(英・キングス・カレッジ・ロンドン)をお招きし、妊娠高血圧症候群と母親の将来リスクに関するご講演もお願いしています。大会長の一押しシンポジウムこのほか、招聘講演では大月 敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授/東京大学高齢社会総合研究機構メンバー)に高齢者に住みやすい町づくりやアンチエイジングに役立つ建築物に関するお話をしていただきます。教育講演では堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)による、アンチエイジングの視点から食に関する「選食の時代」を、田中 孝氏(田中消化器科内科クリニック 理事長)による「開業医が進めるアンチエイジング医療」の講演などを予定しています。一般演題には200を超える応募が寄せられ、盛り上がる予感です。事前参加の登録受付期間は4月21日(金)までですので、ご興味がある方はぜひご登録をお願いいたします。参考第23回日本抗加齢医学会総会

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