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患者からのハラスメント、受けたことのある薬剤師は何割?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第144回

顧客からの暴言・暴力などの迷惑行為(カスタマーハラスメント、以下「カスハラ」)が社会問題になっています。最近、タクシーなどにもカスハラ防止のシールが貼られているのを目にします。今回、薬局薬剤師に対するカスハラの実態が明らかになりました。業務中にカスタマーハラスメントを受けた経験がある薬局薬剤師が約7割に上ることが、東京都薬剤師会が昨年11月に実施したアンケート調査で明らかになった。「過去のハラスメント経験が現在も業務に影響を残している」と回答したのは約3割あった。そのうち出荷調整などの医薬品流通に起因していた事例が一定数あり、薬剤師が休職に追い込まれる事例があることも判明した。都薬は今後の対応策として、ハラスメントの相談窓口の設置やハラスメント防止を啓発するポスターの薬局内掲示などを検討する。(2025年1月15日付 薬事日報)東京都薬剤師会が薬局薬剤師に対して、業務中のカスハラについてアンケートを実施しました。薬剤師489人から回答があり、カスハラを受けたことが「ある」は69.1%、「直接受けた経験はないが見たことはある」は7.2%、「ない」は23.7%という結果でした。カスハラを受けた経験や業務中にそれを見た頻度では、「年に1回程度」が44.5%、「月に1回程度」が26%でした。カスハラの内容としては、「暴言」が圧倒的に多く、次いで「謝罪等の執拗な強要」「金銭などを投げ渡すなどの侮辱」「執拗な電話」などが挙がりました。なかにはSNSを用いたものなどもありました。東京都のみの500人足らずの調査ですので、全国的にはものすごい人数になるのではないかと思います。カスハラについては、2022年4月に「労働施策総合推進法」が改正され、すべての事業所においてパワーハラスメントの雇用管理上の措置が義務化されています。これを踏まえ、東京都では全国に先駆けてカスタマーハラスメントの防止条例が成立し、医療者の在宅業務中におけるハラスメント相談窓口も開設されました。実は、私も薬局勤務中にカスハラにあったことがあるうちの1人です。薬局内で慰め合って終わる軽いものから、10年以上経っているのに思い出して嫌な気持ちになるものまで多々あります。個人的には、面薬局での勤務よりも、大きな病院の門前薬局勤務の際に多かったような気がします。「こちらが悪くないのに、感情をぶつけてくる患者さんに謝ったり対応したりしたくない」という理由で、管理薬剤師になりたくないと言っている後輩もいたくらいです。患者さんは病院でも待たされ、薬局でも待たされ…という状況でお疲れなのかもしれませんが、やはり許せるものではありません。今回、薬剤師に対するカスハラが明らかになったということで、東京都薬剤師会は相談窓口の設置やハラスメント防止を啓発するポスターの薬局内掲示を検討するとしています。多少の抑止力にはなるかもしれません。こういう取り組みは全国に広まるとよいなと思います。

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「ニラ」と思って食べたら“悪心・嘔吐”、何の中毒?【これって「食」中毒?】第8回

今回の症例年齢・性別56歳・女性患者情報2月上旬に自宅の庭で栽培していた「ニラ」だと思って採取した植物の葉を、キャベツと一緒にみじん切りにして、豚の挽肉、摺り下ろしたニンニクやショウガ、調味料と混ぜて餃子にし、フライパンで焼いた。19時頃に食べ始めると、19時30分頃より口腔内が唾液で溢れ、嘔気が生じて、嘔吐を繰り返したため、20時50分に救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数20/分、SpO2 98%(室内気)、血圧122/76 mmHg、心拍数84 bpm(整)、意識レベルJCS 0、瞳孔 左右3.5 mm同大、対光反射 迅速、体温36.6℃であった。発汗、流涎、悪心・嘔吐を認めた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 6.40x103/mm3、Hb 11.8g/dL、Ht 34.6%、Plt 180x103/mm3、生化学検査では、TP 6.4g/dL、GOT(AST) 22IU/L、GPT(ALT) 18IU/L、LDH 284IU/L、CPK 98IU/L、AMY 326IU/L、Glu 106mg/dL、BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.4mEq/L、Cl 106mEq/Lであった。胸腹部CTでは異常所見を認めなかった。問題画像を拡大する

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第248回 自家NK細胞療法を自費で行うクリニックに改善命令、敗血症発症は「生来健康」な成人の衝撃、厚労省は新たなガイダンス作成へ

「生来健康」な成人が「免疫力のアップ」を目的に細胞療法を自費で受け、敗血症にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。キャンプインを目前にして野球が盛り上がってきました。日本のNPBでは複数の有名選手の不倫問題やトレバー・バウアー投手の横浜DeNAベイスターズ復帰が話題となっていますが、MLBでは佐々木 朗希投手(23)のロサンゼルス・ドジャース入団や、イチロー氏の米国野球殿堂入りなど、こちらも話題が盛り沢山です。個人的には中日ドラゴンズからポスティングシステムで MLBを目指していた小笠原 慎之介投手(27)のワシントン・ナショナルズ入りが興味を引きました。日刊スポーツなどの報道によれば、2年総額350万ドル(約5億4,300万円)で、今季年俸が150万ドル(約2億3,300万円)、来季年俸が200万ドル(約3億1,000万円)、中日への譲渡金はわずか70万ドル(約1億900万円)だそうです。同じくポスティングシステムで千葉ロッテマリーンズからドジャースに移籍した佐々木投手は、マイナー契約ながら契約金は今年の国際FAで最高額の6,500万ドル(約10億100万円)で、ロッテへの譲渡金は25%の約2億5,000万円だそうです。小笠原投手、中日で9年間に46勝(昨年は5勝)していますが、随分安く見られたものです。小笠原投手はまだ若く、カーブやチェンジアップを得意とする投手です。昨シーズンのシカゴ・カブス・今永 昇太投手ばりの活躍を期待したいところです。ちなみに、ワシントン・ナショナルズは2004年まではカナダが本拠地のモントリオール・エクスポズでした。現在の球場、ナショナルズ・パークはワシントンD.C.にあり、地下鉄利用でアクセスも良く、ドジャー・スタジアムのようには混まない上に、とても美しい球場です。ワシントンD.C.出張や旅行の折にはぜひ訪れてみて下さい。さて今回は、昨年10月に発生し、年末に厚生労働省が改善命令を出した東京の自由診療クリニックで起きた再生医療による敗血症事例について書いてみたいと思います。1月24日に開かれた厚生労働省の再生医療等評価部会でも、国立感染症研究所からその詳細が報告されましたが、敗血症を発症した2例ともなんと「生来健康」な成人で、「免疫力のアップ、がんの予防」を目的にクリニックを訪れていました。昨年10月にはクリニックなどに対し再生医療の提供を一時停止させる緊急命令この事例が最初の報道されたのは昨年の10月です。がん予防などを目的に都内のクリニックで自分のNK(ナチュラルキラー)細胞を採取、培養後に再び自分の体に戻す細胞療法を受けた人が重大な感染症にかかり入院したとして、厚生労働省は10月25日、クリニックなどに対し再生医療の提供を一時停止させる緊急命令を出しました。10月26日付の朝日新聞などの報道によれば、自由診療による細胞療法を提供していたのは医療法人輝鳳(きほう)会THE K CLINIC(東京都中央区)です。このクリニックで細胞療法を受けた2人が入院治療を要する重大な感染症を発症しました。細胞加工物を製造した同法人の池袋クリニック培養センター(東京都豊島区)において原因とみられる細菌が検査で検出されたとのことです。この事例については、10月24日に輝鳳会から厚労省に報告があり、同省は再生医療安全性確保法に基づいて、クリニックと培養センターに対し「悪性腫瘍の予防に対する自家NK細胞療法」の提供とその細胞加工物の製造の一時停止を命じました。調査の結果2人の細胞加工物の残液から細菌確認、12月に衛生管理体制の再検討や改善計画の提出などを求める改善命令この問題については厚労省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)、国立感染症研究所が調査を進め、12月24日に改めて、THE K CLINICの管理者・橋口 華子氏、池袋クリニックの管理者・甲 陽平氏、池袋クリニック培養センターを管理する輝鳳会(理事長・久藤 しおり氏)に対し、再生医療安全性確保法に基づいた改善命令を出しました。この時公表された調査結果によれば、患者2人がTHE K CLINICで自家NK細胞療法を受けたのは9月30日でした。その帰宅中に2人とも体調不良となり、病院に緊急搬送され、敗血症の診断でICUに入院しました。2人とも健康な成人で、池袋クリニック培養センターにおいて別々(1人は投与4ヵ月前、1人は投与1ヵ月前)に細胞採取(採血)が行われ、培養後にTHE K CLINICで投与を受けました。10月3日、細胞加工物を製造した池袋クリニック培養センターの細胞培養加工施設が、2人に投与した細胞加工物の無菌試験検体が陽性となったことを報告。その後、同検体から好気性グラム陰性桿菌(Pseudoxanthomonas mexicana)が同定されたとのことです。THE K CLINICは当該療法の計画の審査を行う認定再生医療等委員会へ本事例の発生を報告、10月24日に輝鳳会から厚労省に報告 が行われ、10月25日の緊急命令に至ったものです。厚労省、PMDA、国立感染症研究所の調査でも、2人の細胞加工物の残液から細菌(Pseudoxanthomonas mexicana)が確認され、同菌が敗血症発症の原因と考えられるとしました。汚染原因としては、採血時又は無菌試験検体準備時の汚染や、細胞培養過程での交差汚染の可能性が高いとしました。また、培養センターでは、点検整備の記録の作成が行われないなど複数の法令違反があり、無菌試験の一部を目視で行うなど不適切な体制もあったとのことです。同省は改善命令で、衛生管理体制の再検討や、改善計画の提出などを求めました。なお、この培養センターの運営は組織培養用培地の製造・販売等を行うバイオ企業に全面的に任せていたようです。不適切な温度管理下での輸送が汚染された最終投与物内の細菌増殖に影響を与えた可能性もなお、1月27日に開かれた再生医療等評価部会では、国立感染症研究所は上述したような事故の原因に加え、池袋の培養センターからTHE K CLINICへの「不適切な温度管理下での輸送が、汚染された最終投与物内の細菌増殖に影響を与えた可能性は否定できなかった」ともしました。その上で、再発防止に向けて、1.細胞培養加工施設における操作毎の手指衛生を中心とした適切な清潔操 作と環境の清掃や消毒の手順書の作成2.手順に関する定期的な職員の研修・訓練の確実な実施3.迅速かつ信頼できる無菌試験体制の確立4.搬送時の適切な温度管理5.治療後の適切な健康観察6.適切な逸脱管理、時に認定再生医療等委員会への迅速な報告7.各手順における適切な記録と保管の7項目を提言しました。厚労省はこの提言も踏まえ、こうした感染事故等の再発を防止するために、再生医療を提供する医療機関などに向け、通知やガイダンスを発出する方針とのことです。1月28日付の日経バイオテクは、「部会では、CPCにおける清潔操作の徹底や無菌試験の実施法、細胞などの温度管理、問題が発生した際の報告体制などについて、既存のガイダンスに盛り込んだり、新たにガイダンスを作成したりすることが検討された」と書いています。自家NK細胞療法は再生医療等安全性確保法で比較的リスクの低い第3種再生医療等に位置付けそれにしても、「がんにかからない(あるいは再発しないため)ために免疫力をアップさせる」という触れ込みで自家NK細胞療法を自由診療で行う医療機関(主に美容クリニックや、がん免疫療法を看板に掲げるクリニック)がなんと多いことでしょう。今回の場合、「生来健康」だった人が敗血症にかかって死にかけているわけですから、本末転倒と言えます。なお、一部の情報では、敗血症を発症したのは日本人ではなく、中国からわざわざ再生医療を受けに来た人のようです。男女の性別はわかっていません。自家NK細胞療法については、その科学的根拠は確立していないにもかかわらず、自由診療での提供が拡大しているのは、その提供自体は再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)で認められているためです。自家NK細胞療法は、同法で比較的リスクの低い第3種再生医療等に位置付けられており、その高額な治療費や曖昧なエビデンスが批判されることはありましたが、提供禁止までには至っていません。ちなみに、「第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中」で書いたエクソソーム療法も美容クリニックなどの自由診療で広がっています。しかし、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり細胞には当たらないと整理されており、今のところ、再生医療等安全性確保法の対象外です。「第189回」では、エクソソームなどの細胞外小胞は「交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」(再生医療等評価部会・岡野 栄之氏資料より)との意見を紹介しましたが、今回は、第3種再生医療等のカテゴリーにある自家NK細胞療法で、その敗血症が起こってしまったわけです。「再生医療等安全性確保法が厳しいルールを定めていようとも、クリニックが実際にそれを守らなければ、安全性も絵に描いた餅」と週刊新潮今回の敗血症事例の発生で、美容クリニックなどで行われている細胞療法やエクソソーム療法などに対する世間の目が厳しくなる可能性があります。実際、週刊新潮の2025年1月16号は、「『専門家からすると“自殺行為”』 事故多発の再生医療の闇…」と題する記事を掲載、今回のTHE K CLINICで起きた事故を報じるとともに、「安確法(再生医療等安全性確保法)が厳しいルールを定めていようとも、クリニックが実際にそれを守らなければ、当然、安全性も絵に描いた餅に終わってしまう。冒頭で紹介したクリニックはその最たる問題例といえる。(中略)安確法は事実上骨抜きになっているといってよく、一般の患者にとって『本当に安全な再生医療』を見抜くことはほとんど不可能なのである」と書いています。さらに同記事は、再生医療等安全性確保法の対象外のエクソソーム療法や幹細胞培養上清液治療にも言及、「インターネットで検索すると、アンチエイジングや傷ついた組織の修復、育毛、疲労回復に免疫調節作用など、夢のような効果がうたわれている。(中略)現実には『夢のような治療』とは程遠い劣悪な製品が横行し、命の危険にさらされる恐れすら否定できないのが実態」と書くとともに、一般社団法人・再生医療安全推進機構の代表理事を務める香月 信滋氏の「現在の日本で表立って上清液治療やエクソソーム治療を提供している約700ヵ所の医療施設のうち、患者自身の細胞を使用していると明確に公表している施設はほとんどありません。それどころか8割以上が他人の細胞由来か、下手をすれば人間の細胞由来ではない恐れすらあります。また、専門家の調査によって、エクソソームとうたいながらエクソソームが全く含まれていない“謎の液体”が使用されている悪質な例も判明した」とのコメントも紹介しています。確固たるエビデンスもないまま、美容医療やがん予防における自由診療としてマーケットを広げつつある再生医療ですが、厚生労働省には安全性確保のため今まで以上の規制強化とともに、消費者側が悪徳医療機関の“詐欺”に遭わないようにするための何らかの対策も、ぜひ講じてもらいたいと思います。

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ブレクスピプラゾールは統合失調症患者の精神症状だけでなくQOLも改善

 統合失調症治療では、感情的、身体的、社会的、認知機能的な領域にわたる健康的な生活への関与と関連する因子の向上が重要である。カナダ・カルガリー大学のZahinoor Ismail氏らは、統合失調症患者の健康的な生活への関与に対するブレクスピプラゾールの短期的および長期的な影響を評価するため、臨床試験データの事後分析を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2025年1月3日号の報告。 成人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価した臨床試験のデータを分析した。臨床試験には、6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験3件(1,385例)、52週間の非盲検延長試験2件(408例)を含めた。患者の生活への関与は、妥当性が証明されている陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の14のサブセットを用いて測定した(スコア範囲:最高14〜最低98)。平均スコアの変化および治療反応率(臨床的に重要な最小差異推定値5ポイント以上および10ポイント以上)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインから6週目までの患者の生活への関与において、ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)は、プラセボ群と比較し、より大きな改善が認められた(95%信頼区間:−3.57〜−1.58、p<0.001、エフェクトサイズCohen's d:0.28)。【ブレクスピプラゾール群】最小二乗平均差変化:−8.3±0.3(868例)【プラセボ群】最小二乗平均差変化:−5.7±0.4(517例)・これらの改善は、ブレクスピプラゾール1〜4mg/日の58週間投与においても、維持された(399例)。・6週目における治療反応率は、5ポイント以上の改善ではブレクスピプラゾール群71.6%、プラセボ群58.0%(p<0.001)、10ポイント以上の改善ではブレクスピプラゾール群43.5%、プラセボ群32.8%(p<0.001)であった。・58週目(179例)におけるブレクスピプラゾール群の治療反応率は、5ポイント以上の改善で90.5%、10ポイント以上の改善で78.2%であった。 著者らは「統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療は、精神症状の改善だけでなく、重要なアウトカムである患者の生活への関与を改善する可能性を秘めていることが明らかとなった」と結論付けている。

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最初の3歩のビデオ撮影で働き盛りの転倒リスクを機械学習で推定/京都医療センターほか

 70歳までの就業が企業の努力義務となり、生涯現役時代が到来した。その一方で、職場での転倒による労働災害は最も多い労働災害であり、厚生労働省は2015年から「STOP!転倒災害プロジェクト」を展開している。しかし、休業4日以上の死傷者数は、令和3(2021)年度で転倒が最も多く(3.4万人)、平成29(2017)年度と比べ18.9%も増加している(労働者死傷病報告)。保健・医療・福祉分野においてさまざまな転倒リスクアセスメントトツール(AIを含めた)が開発されているが、元となるデータは診療録や看護記録であるため精度に限界があることが指摘されていた。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのVBGA研究グループ(山内 賢氏[慶應義塾大学体育研究所]、パナソニック株式会社)は、フィールド実験に参加した40~69歳の男女190例(平均年齢=54.5±7.7歳、男性48.9%)をトレーニングデータとして、歩き方を撮影し、最初の3歩の3次元動画から歩行特徴量を抽出した。そして、機械学習を用いて転倒リスクを評価するモデルを作成した。 ラボ実験に参加した男女28例(平均年齢=52.3±6.0歳、男性53.6%)をバリデーションデータとして、転倒リスクを予測することができるかを検証した。 研究結果はJournal of Occupational Health誌オンライン版2025年1月10日号に掲載された。 主な結果は以下のとおり。・最初の3歩につき77の歩行特徴が抽出された。・男性では、3つの歩行特徴で転倒リスクを予測することができ、その曲線下面積(AUC)は0.909(95%信頼区間[CI]:0.879~0.939、Excellent[優れている])と判定された。・女性では、5つの歩行特徴から転倒リスクを予測することができ、そのAUCは0.670(95% CI:0.621~0.719、sufficient[十分])と判定された。 これらの結果を受けて坂根氏は、「従来の転倒リスクを推定する研究は高齢者を対象とした研究が多かった。今回は働き盛りの転倒リスクを、最初の3歩のビデオ画像から判定しており、応用範囲は広く、労働災害防止に役立つ可能性がある」と述べている。

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抗インフル薬、非重症者で症状改善が早いのは?~メタ解析

 重症ではないインフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の効果を調査した結果、バロキサビルは高リスク患者の入院リスクを低減し、症状改善までの時間を短縮する可能性があったものの、その他の抗ウイルス薬は患者のアウトカムにほとんどまたはまったく影響を与えないか不確実な影響であったことを、中国・山東大学のYa Gao氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年1月13日号掲載の報告。 インフルエンザは重大な転機に至ることがあり、高リスク者ではとくに抗ウイルス薬が処方されることが多い。しかし、重症でないインフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は依然として不明である。そこで研究グループは、重症ではないインフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価するため、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った。 研究グループは、MEDLINE、Embase、CENTRAL、CINAHL、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govをデータベース開設から2023年9月20日まで検索した。対象は、重症ではないインフルエンザ患者の治療として、直接作用型インフルエンザ抗ウイルス薬をプラセボ、標準治療(各施設のプロトコールに準拠またはプライマリケア医の裁量)、他の抗ウイルス薬と比較したランダム化比較試験であった。ペアのレビュワーが独立して試験をレビューしてデータを抽出し、バイアスリスクを評価した。頻度論に基づく変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析でエビデンスを要約し、GRADEアプローチでエビデンスの確実性を評価した。主要アウトカムは死亡率、入院、集中治療室入室、入院期間、症状緩和までの時間、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・3万4,332例が参加した73件の試験が適格となった。平均年齢の中央値は35.0歳、男性が49.8%であった。・評価された抗ウイルス薬は、バロキサビル、オセルタミビル、ラニナミビル、ザナミビル、ペラミビル、umifenovir、ファビピラビル、アマンタジンであった。・すべての抗ウイルス薬は、標準治療またはプラセボと比較して、低リスク患者と高リスク患者の死亡率にほとんどまたはまったく影響を与えなかった(エビデンスの確実性「高」)。・抗ウイルス薬(ペラミビルとアマンタジンはデータなし)は、低リスク患者の入院にほとんどまたはまったく影響を与えなかった(エビデンスの確実性「高」)。・高リスク患者の入院については、オセルタミビルはほとんどまたはまったく影響を与えず(リスク差[RD]:-0.4%、95%信頼区間[CI]:-1.0~0.4、エビデンスの確実性「高」)、バロキサビルはリスクを低減した可能性があった(RD:-1.6%、95%CI:-2.0~0.4、エビデンスの確実性「低」)。他の抗ウイルス薬は効果がほとんどないか不確実な影響である可能性があった。・バロキサビルは症状持続期間を短縮した可能性が高く(平均差[MD]:-1.02日、95%CI:-1.41~-0.63、エビデンスの確実性「中」)、umifenovirも症状持続期間を短縮した可能性があった(MD:-1.10日、95%CI:-1.57~-0.63、エビデンスの確実性「低」)。オセルタミビルは症状持続期間に重要な影響をもたらさなかった(MD:-0.75日、95%CI:-0.93~-0.57、エビデンスの確実性「中」)。・治療に関連する有害事象については、バロキサビルでは有害事象がほとんどまたはまったくなかった(RD:-3.2%、95%CI:-5.2~-0.6、エビデンスの確実性「高」)。オセルタミビルでは有害事象が増加した可能性が高かった(RD:2.8%、95%CI:1.2~4.8、エビデンスの確実性「中」)。 これらの結果より、研究グループは「この系統的レビューとメタ解析により、バロキサビルは重症でないインフルエンザ患者の治療に関連する有害事象を増加させることなく、高リスク患者の入院リスクを低減し、症状改善までの時間を短縮する可能性があることが判明した。他のすべての抗ウイルス薬は、アウトカムにほとんどまたはまったく影響を与えないか、または不確かな影響しかなかった」とまとめた。

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高齢者救急、緩和ケア開始は入院率を改善するか/JAMA

 生命を脅かす重篤な疾患を呈し救急診療部(ED)を受診した高齢患者に対する、複数要素介入を取り入れた緩和ケア(Primary Palliative Care for Emergency Medicine:PRIM-ER)の開始は、入院率を改善せず、介入後の医療活用状況や短期死亡率にも影響を及ぼさないことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCorita R. Grudzen氏らが実施した「PRIM-ER試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年1月15日号に掲載された。米国の救急診療部のクラスター無作為化試験 PRIM-ER試験は、EDにおける救急医、医療助手、看護師などによる緩和ケアの実践を強化するための複数要素介入の評価を目的とするstepped-wedgeデザインを用いたクラスター無作為化試験であり、2018年5月~2022年12月に米国の29のEDで患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 EDを初めて受診した66歳以上、Gagne comorbidityスコアが6点以上(短期的な死亡リスクが30%以上)のメディケア登録患者9万8,922例を対象とした(高齢者介護施設入居者は除外)。介入前の5万458例と介入後の4万8,464例を比較した。 PRIM-ERは主に次の4つで構成された。(1)エビデンスに基づく集学的な教育、(2)重篤な疾患のコミュニケーションに関するシミュレーションベースのワークショップ、(3)臨床意思決定支援、(4)EDの臨床スタッフに対する評価とフィードバック。 主要アウトカムは入院とした。副次アウトカムとして6ヵ月時の医療活用と生存を評価した。副次アウトカムにも差はない ED初診患者全体の年齢中央値は77歳(四分位範囲[IQR]:71~84)、女性が50%で、黒人が13%、白人が78%であり、Gagne comorbidityスコア中央値は8点(IQR:7~10)だった。 入院率は、介入前が64.4%、介入後は61.3%と差を認めなかった(絶対群間差:-3.1%、95%信頼区間[CI]:-3.7~-2.5、補正後オッズ比[OR]:1.03、95%CI:0.93~1.14)。 介入から6ヵ月時点の医療活用についても改善は得られず、ICU入室率は介入前が7.8%、介入後は6.7%(補正後OR:0.98、95%CI:0.83~1.15)、1回以上のED再診率はそれぞれ34.2%および32.2%(1.00、0.91~1.09)、ホスピス施設利用率は17.7%および17.2%(1.04、0.93~1.16)、在宅医療利用率は42.0%および38.1%(1.01、0.92~1.10)、1回以上の再入院率は41.0%および36.6%(1.01、0.92~1.10)であった。死亡率、死亡例の生存期間にも差はない 6ヵ月以内の死亡率は、介入前が28.1%、介入後は28.7%だった(補正後OR:1.07、95%CI:0.98~1.18)。また、死亡例のED初回受診から死亡までの平均期間は、介入前が17.3(SD 38.8)日、介入後は17.1(37.7)日であった(補正後ハザード比:1.00、95%CI:0.93~1.08)。 著者は、「試験期間中のCOVID-19の世界的な大流行はED治療の状況に大きく影響し、患者の社会人口学的構成や疾患の重症度、入院の可能性などに変化をもたらした。たとえば、多くの在宅医療提供者やホスピス施設がCOVID-19患者の受け入れを拒否したか、人手不足であったか、これら双方であったため、これらのサービスの活用が困難であったり、入院を回避できなかった可能性がある。また、介入後の期間の大部分がCOVID-19大流行の期間中であったため、その後の医療活用の変化がその結果として生じたのか、あるいは介入そのものによるのかを知るのは困難である」と指摘している。

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T-DXd、米国で化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)が、米国食品医薬品局(FDA)より、1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現(膜染色を認めるIHC 0)の転移/再発乳がんに承認されたことを、2025年1月28日、第一三共が発表した。 本適応は2024年10月にFDAより承認申請が受理され、画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定および優先審査のもとで承認された。この承認は、2024年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移/再発乳がん患者を対象とした国際第III相試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもの。※日本における効能・効果は、以下のとおり(2025年1月現在)。◯化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳◯化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳◯がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺◯がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃

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肝硬変と肝性脳症の併発患者で亜鉛低値見られる

 肝硬変と肝性脳症(HE)を併発している患者の多くにおいて、血清中の亜鉛が欠乏しているという研究結果が、「Journal of Family Medicine and Primary Care(JFMPC)」9月号に掲載された。 Rajendra Institute of Medical Sciences Ranchi(インド)のDivakar Kumar氏らは、HEを伴う肝硬変患者150人の血清亜鉛値を測定した。 その結果、HEを伴う肝硬変患者の過半数に亜鉛欠乏症が認められた。血清亜鉛低値とWest Haven CriteriaによるHEのグレードとの間に、統計学的に有意な関連が認められた。肝硬変の各クラス間で、血清亜鉛値にきわめて有意な差が見られた。死亡した患者では、平均血清亜鉛値が有意に低かった(35.56対48.36)。血清亜鉛値と血清アルブミン値との間に、強い正の相関が認められた(r=0.88)。 著者らは、「HEと低アルブミン血症を伴う肝硬変の全患者に対して、亜鉛欠乏症の評価を行うべきである。低亜鉛血症はHEの死亡率と有意に関連しているため、予後マーカーとしても使用できる。HEを伴う肝硬変患者における血清亜鉛値の早期スクリーニングと亜鉛補充によって、HEの悪化を予防できる可能性があるほか、HEの治療に使用できる可能性もある。これは、さらに大規模な研究、特に症例対照研究やランダム化比較試験によって証明できる」と述べている。

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加齢黄斑変性は関節リウマチの発症リスクを高める

 加齢黄斑変性(AMD)患者は関節リウマチ(RA)の発症リスクが高いとする、成均館大学校(韓国)のJe Moon Yoon氏らの研究結果が「Scientific Reports」に9月9日掲載された。 AMDは、加齢、遺伝、喫煙、食生活などのほかに、慢性炎症がリスク因子の一つと考えられている。また近年の研究では、AMDとパーキンソン病やアルツハイマー病リスクとの間に関連があり、慢性炎症や酸化ストレスがその関連の潜在的なメカニズムと想定されている。一方、RAは滑膜の炎症を特徴とする全身性疾患であることから、RAもAMDのリスクと関連している可能性がある。以上を背景としてYoon氏らは、韓国の国民健康保険データを用いて、AMDとRAリスクとの関連を検討した。 2009年に健診を受け、RAと診断されていない50歳超の成人353万7,293人を2019年まで追跡し、多変量補正Cox回帰モデルを用いた解析を行った。RAの発症は、保険請求の診断コードと薬剤の処方で定義した。ベースライン時において、4万1,412人(1.17%)がAMDに罹患しており、このうちの3,014人(7.28%)は視覚障害を有していた。 平均9.9年の追跡期間中に4万3,772人(1.24%)がRAを発症していた。AMD群では4万1,412人中567人がRAを発症し、1,000人年当たりの罹患率は1.43であり、対照群は349万5,881人中4万3,205人がRAを発症し、罹患率は1.25であった。交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病、高血圧、脂質異常症、チャールソン併存疾患指数、収入など)を調整後、AMD群は対照群に比しRA発症リスクが有意に高いことが明らかになった(調整ハザード比〔aHR〕1.11〔95%信頼区間1.02~1.21〕)。 次に、AMD患者をベースライン時の視覚障害の有無で二分して検討。視覚障害を有していなかった群は、3万8,398人中535人がRAを発症し罹患率は1.46であり、前記の交絡因子を調整後に有意なリスク上昇が認められた(aHR1.13〔同1.03~1.21〕)。一方、ベースライン時に視覚障害を有していた群は、3,014人中32人がRAを発症し罹患率は1.14であって、aHR0.90(0.64~1.27)と、有意なリスク上昇は観察されなかった。 なお、年齢や性別、併存疾患の有無で層別化したサブグループ解析では、AMDとRA発症リスクとの関連に有意な交互作用のある因子は特定されなかった。 著者らは、「AMDはRA発症リスクの高さと関連していた。この関連のメカニズムの理解のため、さらなる研究が必要とされる」と総括している。また、視覚障害を有するAMD患者では有意なリスク上昇が認められなかった点について、「視覚障害がある場合にRAが過小診断されている可能性も考えられる」との考察を付け加えている。

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第34回 高齢者の低体温症【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)冬場は常に疑い、深部体温を測定しよう!2)復温を速やかに行いながら初療を徹底しよう!3)原因検索とともに再発予防を行おう!【症例】81歳・男性ある日の朝方、自宅のベッド脇で倒れているところを同居の家族が発見し、呼びかけに対して反応が乏しいため救急要請。救急隊到着時以下のようなバイタルサイン。四肢は冷たく、SpO2、体温は測定できない。●搬送時のバイタルサイン意識100/JCS血圧76/56mmHg脈拍54回/分呼吸18回/分SpO2error体温error既往歴不明内服薬不明冬の救急外来インフルエンザが猛威を振るっています。今年も筆者が勤務する病院では、年末年始の救急外来が大混雑しました。心筋梗塞や脳卒中といった冬季に多発する疾患に加え、火災による一酸化炭素中毒や気道熱傷、さらには餅による窒息など、冬特有の症例も頻発し、現場は多忙を極めていました。さらに近年では、今回の症例のように低体温症の患者も増加しており、どのようなセッティングであっても初療の基本をしっかり把握しておく必要性がますます高まっています。偶発性低体温症(accidental hypothermia)とは低体温症(hypothermia)は、深部体温(直腸温、膀胱温、食道温、肺動脈温など)が35℃以下に低下した状態を指します。なお、事故や不慮の事態に起因する低体温を、低体温療法や低体温麻酔のように意図的に低体温とした場合と区別するために、「偶発性低体温症」と呼びます。水難事故や山岳避難など、環境要因のみが原因と想起される場合には、復温することに全集中すればよいですが、感染症や脳卒中、外傷などをきっかけに動けなくなり、結果として低体温が引き起こされている場合(二次性低体温)には、原因に対する介入を行わなければ改善は期待できません。熱中症と同様に、体温管理とともに原因検索を同時並行で行い対応する必要があるのです。二次性低体温の原因は、体温調節機能の障害、熱喪失の増加に大別され、それぞれ多岐に渡りますが、意識障害の原因検索に準じて行うとよいでしょう(参照:意識障害 その2 意識障害の具体的なアプローチ 10’s rule)。低体温の重症度低体温症の重症度分類としては、Swiss分類(Swiss Staging System)が広く知られています(表1)1)。この分類は、症状をもとに深部体温と重症度を推定できるよう設計されています。表1 偶発性低体温症重症度分類低体温症を確定診断するためには、深部体温の測定が不可欠です。腋窩体温で判断するのではなく、必ず深部体温を測定しましょう。これは熱中症の場合と同様で、体温が著しく低い(または高い)状況では、腋窩体温と深部体温の乖離が大きく、正確性を欠くためです2)。深部体温の測定方法としては、食道温が最も正確とされていますが、現場の実用性を考慮すると、温度センサー付きの尿道バルーンを使用し、膀胱温を尿量と併せて確認・管理する方法が推奨されます。一方で、深部体温の測定が困難な場合もあるでしょう。そのような場合には、意識状態に注目して重症度を推定することが重要です。意識状態が重度であるほど、低体温症の重症度は高くなり、予後が不良であることが明らかになっています3)。ショック+徐脈ショックでは通常、頻脈がみられますが、血圧が低下しているにもかかわらず脈拍が上昇しない、または徐脈である場合には、表2に示すような病態を考慮する必要があります4)。とくに冬など寒冷環境下では、低体温の関与を積極的に疑い、適切に対応しましょう。表2 ショック+徐脈Rescue collapse低体温患者、とくに重症度が高い場合、心臓の易刺激性により心室細動や無脈性心室頻拍が起こりやすいと報告されています。これはアシドーシスなどの影響が考えられますが、刺激や体動なども不整脈を惹起する可能性が示唆されており、この現象を“rescue collapse”と呼びます5)。過度な刺激は避け、愛護的な対応が必要です。実際〇℃以上になれば安全という絶対的な基準はありませんが、不整脈が起こりやすい状態であることを共通認識とし、復温や原因検索を行いながらバイタルサインを安定させることが重要です。「病着後、ある程度復温されない状態では患者を動かさない方がよい」というのは、皆さんの病院でも暗黙のルールになっているのではないでしょうか。これは、前述のrescue collapseを危惧した対応だと思われます。実際、体温が30℃未満ではリスクが高いとされていますが、30℃以上に上昇しても不整脈を完全に防ぐことができるわけではありません。また、根本的な原因に対する適切な介入を行わなければ、事態が改善しないことも多々あります。このため、注意深く観察しながら、精査を進める必要があります。仮にrescue collapseが発生した場合でも、周囲の人などからの目撃があれば蘇生率は比較的高いことが知られているため、慎重に経過を診ながら介入を行うのが現実的な対応といえるでしょう。低体温の治療脳卒中や外傷、低体温など、原因に対する治療も当然重要ですが、何よりも復温を急ぐ必要があります。原因検索を優先するあまり、復温のタイミングを逃してはなりません。 低体温と認識した段階で迅速に介入を開始しましょう。復温方法としては、以下のように3つの方法が挙げられます。1)受動的復温体温喪失を防ぐために、着替えや毛布、温かい飲み物を使用する。2)能動的体外復温ベアーハガーやArctic Sunなどの加温ブランケット、40~44℃の加温輸液を使用する。3)能動的体内復温 膀胱洗浄、血液透析、体外式膜型人工肺(ECMO)などを利用する。多くの症例では、体外復温で十分対応可能です。最も重要なのは、低体温であることを早期に認識し、迅速に介入することです。そのため、ECMOが行えないという理由で搬送を拒否するのではなく、まずは受け入れた上で復温を早期に開始することを徹底すべきです。低体温の予防救急外来で経験する低体温症の多くは、高齢者の自宅で発生した事例です。冒頭の症例のように、倒れているところを発見され、搬送されるケースが後を絶ちません。このような症例は、年々増加しているのではないでしょうか。高齢者、とくにフレイルの患者では死亡率が高いことが知られており6)、夏の熱中症と同様に、低体温への対策が急務です。基礎疾患の管理は当然ですが、暖房の適切な設置や、とくに発生しやすい朝の安否確認など、事前に対策を講じておくことが重要です。1)Paal P, et al. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2016;24:111.2)Niven DJ, et al. Ann Intern Med. 2015;163:768-777.3)Fukuda M, et al. Acute Med Surg. 2022;9:e730.4)坂本 壮. 救急外来ただいま診断中 第2版. 中外医学社. 2024.5)Frei C, et al. Resuscitation. 2019;137:41-48.6)Takauji S, et al. BMC Geriatr. 2021;21:507.

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1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」【最新!DI情報】第31回

1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」今回は、スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「オザニモド(商品名:ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、1日1回服用の新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬であり、既存薬で効果不十分であった患者や利便性の向上を望む患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応として、2024年12月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は、過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[2.8%]、口腔ヘルペス[0.6%])など)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、黄斑浮腫(0.6%)、肝機能障害(4.5%)、徐脈性不整脈(1.7%)、リンパ球減少(10.2%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。本剤投与による心拍数の低下は、漸増期間中に生じる可能性が高いので、循環器を専門とする医師と連携するなど適切な処置が行える管理下で投与を開始する必要があります。また、黄斑浮腫に備えて、眼底検査を含む定期的な眼科学的検査を実施する必要があります。その他の副作用は、頭痛、高血圧、γ-GTP増加、ALT増加(いずれも1%以上)、発疹や蕁麻疹を含む過敏症(1%未満)、上咽頭炎、末梢性浮腫、努力呼気量減少、努力肺活量減少(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。結腸に浸潤するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎を改善すると考えられています。2.過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に使用されます。3.服用開始から徐々に用量を増やしていきますが、心拍数が低下することがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。4.服用中に重篤な眼疾患が現れることがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、主として粘膜にびらんや潰瘍が生じる非特異性炎症疾患です。再燃と寛解を繰り返すことが多く、長期間の医学管理が必要となります。薬物療法には、5-アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが用いられますが、これらの治療薬が無効であった場合には、免疫調整薬やヤヌスキナーゼ阻害薬、抗TNF抗体製剤、抗IL-12/23抗体製剤などが使用されます。しかし、無効例や通院での注射投与が困難な場合のほか、安全性の問題などで治療薬の変更が生じる懸念もあることから、とくに中等症~重症のUC患者に対しては、既存薬と異なる新たな作用機序で、症状や粘膜損傷などの改善効果が高く、難治性に移行させない経口治療薬が求められていました。オザニモドは、1日1回の経口投与で中等症~重症のUCに効果を示します。オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)と5(S1P5)に対して高親和性で結合し、リンパ球の遊走を抑制します。これにより、循環血中のリンパ球数が減少することで、炎症性細胞のさらなる動員や炎症性サイトカインの局所的な放出を防ぎ、腸粘膜が継続的に損傷する状況を改善します。日本人の中等症~重症の活動性UC患者を対象とした国内第II/III相試験(J-True North試験)において、主要評価項目である投与12週時点の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、本剤0.92mg群で61.5%、プラセボ群で32.3%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0006)。同様に、副次評価項目である投与12週時点の臨床的寛解率は、本剤群で24.6%、プラセボ群で1.5%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0002)。

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ストロングスタチンの対象患者【日常診療アップグレード】第22回

ストロングスタチンの対象患者問題52歳男性。高血圧のため通院中である。症状はない。他に特記すべき既往歴や家族歴はない。内服薬はロサルタンを服用している。喫煙なし。バイタルサインは正常で血圧は130/78mmHgである。それ以外の身体所見に異常を認めない。最近の検診結果はHDLコレステロール87mg/dL、LDLコレステロール122mg/dLであった。耐糖能の異常はない。男性と高血圧、2つのリスク因子があるので、ストロングスタチンでの治療を始めることとした。

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患者本人にがん告知する?しない?-医療者間の意見対立【こんなときどうする?高齢者診療】第9回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年12月に扱ったテーマ「医療者間のコンフリクト:医療者間の意見の対立をよりよいゴールに導くコツ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。専門性の違う職種が集まる医療チームで、意見の対立(コンフリクト)は避けられない課題です。 “対立がないことは調和ではなく無関心だ”という言葉が示すように、対立は避けるべき悪ではなく、チームがそのトピックに強い関心を持っていることの現れです。意見の対立を患者へのよりよいケアを提供するチャンスに変える方法を一緒に学んでいきましょう。コンフリクトをチャンスに変えるコンフリクトとは「複数の人が関与し、何らかの意思決定、医療行為が必要な患者の検査・治療・ケアに関する異なる意見・要求の存在、対立とそれにまつわる不和、人間関係の緊張」を指します。この内容は、大きく以下の3つに分類することができます。(1)タスク何をすべきかに関する意見の対立(2)プロセス誰がどのように役割を果たすか、認知や解釈に関する対立※同じ物事に対峙していても、考え方はさまざまであることから生じる(3)エモーション感情の対立や不一致。優越感、劣等感、満足、後悔など以下のケースが3つのコンフリクトのどれにあてはまるか想像してみてください。症例70歳男性 肺がんステージIII 家族は息子1人・娘2人場面カンファレンスメンバー看護師、医師どのような対話がされた?:看護師は「家族が本人への告知を望んでいない」と報告し、家族の意向に沿うべきと提案。一方、医師は「治療方針を決めるために本人に告知すべき」と主張し意見が対立。コンフリクトを解消する3つの鍵このケースでは、告知するか否かというタスクで対立していると考えられます。同時に現状の解釈の相違や背後にある感情的な対立も想定できます。対立要素を想定できたら、ディスカッションしやすいよう関係性を整えましょう。関係性調整のキーポイントは、共通目標・共通知識・相互尊重の3つです。共通目標の再確認医療チームの共通目標は「患者に最善の利益を提供すること」ことのはずです。この患者にとって何が大切か、最善か(Matters Most)をチームで改めて共有し直し、話し合いの土台を作ります。共通知識・認知の整備次に、全員が同じ情報を持っている状態を作ります。加えて情報の解釈がどのようなものであるかの共有も必要です。ある職種だけが知っていてほかの職種は知らない情報がないか、また同じ情報に関して解釈の相違がないかを確認します。職種間での情報格差や解釈の違いの存在に注意を払いましょう。相互尊重の姿勢自分の専門性や個人的な価値観に基づいて意見を押し付けていないか振り返りましょう。他職種の専門性や立場を尊重することで、感情的な緊張を和らげることができます。DESC法でわかりやすく伝える共通目標・共通知識・相互尊重の3つができたら、最後に話し方の型を使います。ここでのお勧めはDESC法。コンフリクト場面以外でもさまざまなタイミングで使える有用な型です。具体的に見ていきましょう。DESC法Describe状況を説明するExpress自分の感情も含めて伝えるSpecify具体的な提案を行うConsequences提案によって想定する結果を示すはじめに現在の状況を説明し(Describe)、次に意見の背景にある不安、焦り、心配などとともに懸念事項を共有します。Expressでは感情も含めて伝えることがポイントです。それらを踏まえて具体的な治療・ケアを提案し(Specify)、最後にそれによって得られる結果を示します(Consequences)。これにより、各人の現状・提案・結果を踏まえたディスカッションがしやすくなります。今回のケースでDESC法を使って医師として発言すると、例えばこのような言い方になります。「患者は肺がんステージIIIですが、ご家族は告知を希望していないとのことです。一方で、患者本人の自分自身の健康・医学的情報の共有や告知などへの希望は十分把握できていません。患者には状況を知る権利があり、治療方針が本人の意思と一致しないことを懸念しています。ご本人に情報共有の希望や共有する際の方法などを確認し、本人が知りたい場合には家族と調整して情報を共有したいと思います。希望しない場合には、希望しない理由や、それでも知っておきたいことなどを確認して、家族の意向に沿って治療を進める方向で考えることを提案します。」いかがでしょうか?最後に、今回のケースを通じて次の問いかけを考えてみてください。自分の現場で同様の対立が起きたら、どのように対応しますか?共通目標・共通知識・相互尊重の3つをどのように実践できますか?DESC法を使うことで、どのように対話を進められるでしょうか?これらをシミュレーションすることで対立をチャンスに変えるヒントが見つかるはずです。ぜひ、一緒に練習していきましょう! よくある意見の対立症例はオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、サロンメンバーが体験したコンフリクト2例をもとにどのような対応が可能かディスカッションしています。また、綿貫聡氏(東京都立多摩総合医療センター救急・総合診療科医長)を迎えた対談動画で、診断エラーを減らす方法の学びもご覧いただけます。

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第251回 細菌との旧交を温めて肥満を予防

細菌との旧交を温めて肥満を予防哺乳類の進化に寄り添ってきた細菌をマウスに週1回注射することで、油や砂糖が多い現代的な食事による体重増加を防ぐことができました1,2)。哺乳類の進化に絶えず付き添ってきた非病原性マイコバクテリア、蠕虫、乳酸菌などの無害な微小生物、いわば「旧友(Old Friends)3)」との接触の減少が、脂肪や炭水化物が多くて繊維質が乏しい西洋式の食事(Western-style diet)が身近となった近代社会の炎症疾患の増加の原因かもしれないと考えられています。その説によると、繊維質を代謝して抗炎症や免疫調整作用を担う共生微生物の減少を西洋式の食事が招いています。西洋式の食事による腸微生物変動は肥満や内臓脂肪増加にしばしば先立って認められ、はては不適切な炎症や免疫代謝疾患を生じやすくなることと関連します。そういうことであれば、西洋式の食事の生理や行動への弊害を「旧友」微生物の助けを得ることで軽減できるかもしれません。牛乳や土壌に含まれるMycobacterium vaccae(M. vaccae)という名称の「旧友」細菌をマウスに接種することで、ストレスによる炎症や不調を防ぎ得ることが先立つ研究で示されています4)。その結果やその後の成果を受け、コロラド大学ボルダー校のLuke Desmond氏らは西洋式の食事が招きうる脳の炎症やその結果としての不安症のいくらかがM. vaccaeで防げるかもしれないと考えて研究を始めました。その結果は、体重増加の抑制という想定外の効果の発見をもたらしました。Desmond氏らは、人間でいえば思春期ほどの雄マウスを2群に分け、一方にはいつもの定番の餌を10週間与え、もう一方にはビッグマックとフライドポテトに相当する高脂肪で高炭水化物(半分は砂糖)の餌を与えました。また、それぞれの群の半数に熱で不活化したM. vaccaeが週1回注射されました。M. vaccae非投与で高脂肪・高炭水化物食のマウスの体重は定番の餌のマウスに比べて予想どおりより増えました。しかしM. vaccae投与の高脂肪・高炭水化物食マウスの体重増加は定番の餌のマウスと変わりなく、どうやらM. vaccaeは高脂肪・高炭水化物食による体重を防ぐ作用があると示唆されました。M. vaccaeは高脂肪・高炭水化物食に伴う内蔵脂肪蓄積も防いでいます。また、先立つ研究と一致してM. vaccaeは不安様行動を抑制する効果も示しました。今後の課題として、M. vaccaeの経口投与でも同じ効果があるかどうかを調べたいと研究チームは考えています2)。また、すでに太ってしまっていてもM. vaccaeが有効かどうかも検討したいと思っています。チームは研究成果の商業化も目指しています。体重増加を防いで健康を増進する微生物成分に取り組むKiogaという新会社が同大学の商業化部門(Venture Partners at CU Boulder)の支援を受けて設立されています。参考1)Desmond LW, et al. Brain Behav Immun. 2024;125:249-267.2)A vaccine against weight gain? It’s on the horizon / University of Colorado Boulder3)Rook GAW, et al. Springer Semin Immunopathol. 2004;25:237-55.4)Amoroso K, et al. Int J Mol Sci. 2021;22:12938.

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自閉スペクトラム症の世界的状況、20歳未満の健康負担のトップ10にランク

 自閉スペクトラム症(ASD)の疫学や健康ニーズに関する高品質の推定は、サービス計画者やリソース配分者にとって必要である。米国・Global Burden of Disease Study 2021 Autism Spectrum Collaboratorsは、疫学データと負担推定方法改善後の世界疾病負担研究(GBD)2021より、ASDの世界的な有病率および健康負担を報告した。The Lancet Psychiatry誌オンライン版2024年12月19日号の報告。 GBD 2021では、PubMed、Embase、PsycINFO、Global Health Data Exchangeより検索し、専門家との協議を含むシステマティック文献レビューにより、ASDの疫学に関するデータを特定した。適格データより有病率を推定するため、ベイズメタ回帰ツール(DisMod-MR 2.1)を用いた。モデル化された有病率および障害の重み付けを用いて、致死的でない健康負担(障害生存年数[YLD])および全体的な健康負担(障害調整生存年数[DALY])を推定した。民族別のデータは入手できなかった。本研究のデザイン、準備、解釈、執筆には、ASDの経験を有する人が関わった。 主な結果は以下のとおり。・2021年のASD推定患者数は、世界で6,180万人(95%不確実性区間:52.1〜72.2)、127人に1人であると推定された。・世界の年齢標準化有病率は、全体で10万人当たり788.3人(663.8〜927.2)、男性で10万人当たり1,064.7人(898.5〜1,245.7)、女性で10万人当たり508.1人(424.6〜604.3)。・ASDのDALY率は、1,150万DALY(7.8〜16.3)を占め、世界で10万人(年齢標準化)当たり147.6DALY(100.2〜208.2)相当であった。・地域レベルでの年齢標準化DALY率は、東南アジア、東アジア、オセアニアの10万人当たり126.5(86.0〜178.0)から高所得地域の204.1(140.7〜284.7)の範囲であった。・DALYは生涯を通じて明らかであり、5歳未満でみられ、年齢の増加に伴い減少した。【5歳未満】10万人当たり169.2DALY(115.0〜237.4)【20歳未満】10万人当たり163.4DALY(110.6〜229.8)【20歳以上】10万人当たり137.7DALY(93.9〜194.5)・ASDは、20歳未満の致死的でない健康負担のトップ10にランク付けされた。 著者らは「20歳未満におけるASDの有病率および致死的でない健康負担の高さは、世界におけるASDの早期発見および支援の重要性を強調している。地理的変動をより正確に把握できるよう、疫学データのカバー範囲をより広範囲にすることから始める必要がある。本結果は、今後の研究活動やASD患者のニーズにより適切に対応する医療サービスの決定指針に役立つ可能性がある」としている。

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ベースアップ評価料の届出様式を大幅に簡素化/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、1月22日に定例会見を開催した。 はじめに松本氏が阪神・淡路大震災から30年を迎え、これまでの医師会の活動を振り返った。この大震災から得た教訓が現在のさまざまな災害対策の基礎となったこと、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の発足とともにチーム運営のためにさまざまな研修や関係政府機関や学会とも連携を進めていることなどを説明し、「南海トラフ地震に備え、医師会では地域の医師会とともに今後も取り組んでいく」と災害対策への展望を語った。 次に今冬のインフルエンザの流行について副会長の釜萢 敏氏(小泉小児科医院 院長)が、流行状況を説明するとともに、現在もインフルエンザの治療薬や検査キットが地域によっては不足していること、代用薬で工夫をしてほしいとお願いしていることを語った。インフルエンザの予防には、基本的な感染対策である「マスク着用、室内の換気、うがい・手指衛生」を励行するとともに、人混みへの注意のほか、高齢者の重症化予防にもワクチン接種の検討をお願いするとともに、医師会としても適切な情報を提供していくと説明を行った。低いクリニックのベースアップ評価料の届出へ追い風 つぎに「ベースアップ評価料の届出様式の大幅な簡素化について」をテーマに担当常任理事の長島 公之氏(長島整形外科 院長)が、今回の届出様式の変更点を説明した。 2024年6月の診療報酬改定で新設された医療関係職種(医師・歯科医師、事務職員除く)の賃上げを目的にした「ベースアップ評価料」は、各地域の厚生局への届出により算定が可能になる点数である。しかし、現状、病院の8割は届出ているものの、クリニックなどではまだ2割程度しか届出がなされていない。その原因として申請書式の煩雑さと作成の負担の大きさが指摘されていたが、医師会と厚生労働省との協議により今回簡素化されたことが説明された。今回変更された事項では、基本的には、直近1ヵ月間の初・再診料などの算定回数を調べるだけで、届出ができるようになった。長島氏は、この届出は職員の原資となる大事なものなので、できるだけ多くの医療機関やクリニックが届出をしてほしいと述べた。 最後に「医師資格証保有者10万人達成について」をテーマに担当常任理事の佐原 博之氏(さはらファミリークリニック 理事長)が、医師資格証(HPKIカード)の発行の現状と展望を説明した。HPKIカードは、2023年の電子処方箋の導入から急激に発行数が伸び、現在10万人が保有している(医師会員では34.5%、医師全体では29.1%)。HPKIカードは、今後「診療情報提供書」や「主治医意見書」、「死亡診断書」などの活用で重要なアイテムとなる。本カードは「医療DXのパスポート」となるので、今後も全医師に向けての普及とともに国にも利活用の働きかけを行っていきたいと展望を語った。

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イサツキシマブの新規システムによる皮下投与、多発性骨髄腫治療で静注に非劣性(IRAKLIA)/サノフィ

 再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)に追加してイサツキシマブ(商品名:サークリサ)をオン・ボディ・デリバリー・システム(OBDS)用いて皮下投与する方法と、同剤を静注する方法を比較した無作為化非盲検第III相IRAKLIA試験において、複合主要評価項目である客観的奏効率(ORR)などを達成し、皮下投与の静注に対する非劣性が示された。 IRAKLIA試験は、再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、Pdレジメンにイサツキシマブの固定用量をOBDSで皮下投与を追加する集団と、体重換算用量を静注追加する集団を比較した無作為化非盲検ピボタル第III相試験。 試験には世界252施設から531例が登録され、皮下投与群と静注群に無作為に割り付けられ、皮下投与群にはイサツキシマブの固定用量を、静注群には体重換算用量が投与された。結果、主な副次評価項目であるVGPR(very good partial response)以上の奏効率、注入に伴う反応の発現率および第2サイクルにおけるトラフ濃度を達成した。 なお、皮下投与は、Enable Injections社のenFuseハンズフリーOBDSを用いて行われた。この装置は、自動薬物送達技術を用いて、格納式の注射針から大容量薬剤の皮下投与を可能にしている。

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CVDを伴う肥満者、死亡リスクが高い人は?

 現在、体重変化と心血管疾患(CVD)リスクの関連性についての研究が進んでいるが、肥満とCVDとの関連を報告した報告は乏しい。そこで今回、英国・アングリア・ラスキン大学のJufen Zhang氏らは、CVDを併存する肥満者の大幅な体重増加がCVDによる死亡および全死亡リスクを高めることを明らかにした。 今回、UKバイオバンクのデータベースを用いた大規模な人口ベースの前向きコホート研究が行われ、ベースラインと追跡調査時の体重測定間の絶対間隔変化スコアを計算した。主要評価項目は体重変化とCVD死亡、脳血管疾患、虚血性心疾患、全死亡の関連で、Cox回帰分析より推定ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象者8,297例のうち、43.1%は女性であった。・平均年齢±SDは56.6±7.2歳だった。・追跡期間の中央値は13.9年(IQR:13.1~14.6)年だった。・参加者の52.7%は安定した体重変化(体重減少または増加が5kg未満)、14.2%は大幅な体重減少(10kg以上)、5.1%は大幅な体重増加(10kg以上)がみられた。・体重が安定していた群と比較して、大幅な体重増加がみられた群のみがCVD死亡および全死亡のリスク増加と関連し、完全調整HRはCVD死亡で3.05(95%CI:1.40~6.67)、全死亡で1.93(同:1.15~3.26)であった。 研究者らは、体重減少または体重増加と死亡率の関連性の正確なメカニズムを理解するには、さらなる研究が必要としている。

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「別れた後が地獄」職場内恋愛経験者は約半数!/医師1,000人アンケート

 医師は、結婚したい職業ランキングで上位の常連となっている。では、医師の結婚・恋愛事情は、どのようになっているのだろうか。CareNet.comでは、20~40代の医師1,003人を対象に、結婚・恋愛事情に関するアンケートを実施した(2024年12月25~31日実施)。本アンケートでは、パートナーの有無や出会いのきっかけ・取り組み、パートナーの方の職業、職場内恋愛の経験について聞いた。また、職場内恋愛のエピソードも募集した。特定のパートナーがいる割合は約85% 「配偶者を含む特定のパートナー(結婚/恋愛)の有無」を聞いたところ、「いる」と回答した割合は全体で84.7%であり、男性87.5%、女性73.6%であった。年代別にみると、20代68.3%、30代83.9%、40代90.1%であり、年代が上がるほど「いる」と回答した割合が高い傾向にあった。出会いのきっかけは職場や学校が多い 次に「パートナーとの出会いのきっかけ」を聞いた。その結果「職場の同僚」が最も多く、34.7%であった。次点で「学校(大学・高校)」が多く20.9%であった。「マッチングアプリ・婚活サイト」の割合は6.9%であり、20代では20.2%にのぼった。少数ながら「患者」という回答も得られた(0.2%)。 「パートナーの職業(交際当初)」については、約70%を医療者が占めた。内訳は「看護師」が27.3%、「医師」が26.2%、「薬剤師」が4.1%、「その他の医療者」が11.9%であった。男性では「看護師」が多く(33.1%)、女性では「医師」が多かった(52.7%)。 特定のパートナーはいないと回答した方の「パートナー探しの取り組み」について聞いたところ、約半数(46.5%)が「パートナーは求めていない」と回答した。パートナー探しの取り組みとして多かったものは「友人・知人に紹介を求める」「合コン・イベント・飲み会へ参加する」「マッチングアプリ・婚活サイトを利用する」であった。職場内恋愛経験者は約半数 また、「職場内恋愛の経験」についても聞いた。その結果、「ある」と回答した割合は47.8%にのぼった。男性50.1%、女性38.3%であり、男性のほうが職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。年代別にみると、20代29.3%、30代45.0%、40代55.6%であり、年代が上がるほど職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。 「職場内恋愛のエピソード(自身の経験以外でも可)」を募集したところ、「職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる」といったポジティブなコメントも得られたが、「別れた後が地獄」などの職場内恋愛の難しさ・気まずさに関するコメントも得られた。そのほか、「看護師長に出禁を食らっていた」「医師がモテるというのは幻想」など、さまざまなコメントが寄せられた。【ポジティブな意見・エピソード】・仕事内容(忙しいこと)を理解してくれて助かる(40代男性、放射線科)・職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる(20代女性、臨床研修医)・看護師である妻と同じ寮に住んでおり、インフルエンザに罹患したときにいろいろと世話をしてくれて恋に落ちた(30代男性、腫瘍科)【バレる/バレない】・秘密にしてたのに、コロナで濃厚接触者になりバレてしまった(30代男性、精神科)・研修医の頃、同期の研修医がこっそりと病棟看護師さんと付き合っていたが、周りには全員知れ渡っていた。院内でのゴシップは隠せないことを研修医のころに学んだ(30代男性、泌尿器科)・結婚するまでばれなかった(30代男性、血液内科)・指導が厳しいことで有名な先生が特定の研修医にのみ優しい、当直によく一緒に入っているなど噂があり、「あの先生に限って」とみんな笑っていたが、臨床研修終了後に入籍していて驚いた(40代女性、内科)【職場内恋愛の難しさ・気まずさ】・お互いのシフトを完全に把握しているため、閉塞感・圧迫感がすごかった。不安になることも多々あった(20代男性、腎臓内科)・部内恋愛をしたことがあるが、別れた後が地獄だったので二度としないと誓った(20代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)・医局内で付き合ってる人が、ケンカや別れた時に正直、周りの人は空気が悪く、迷惑だと思う(40代女性、整形外科)・自分の周囲だと離婚率が高いので、その後が地獄。大抵は女性側が離れていくが、男性側も居心地は当然悪くなる(40代女性、内科)・同期の職員が付き合っていたが、別れた後の気まずさで片方は退職してしまった(30代男性、血液内科)【医師と看護師の関係】・看護師さんを一生懸命口説き落とした人がいる(30代男性、血液内科)・看護師さんから積極的に誘われる(30代男性、精神科)・看護師と医師で付き合っている人は多かった(30代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)【不倫】・不倫バレ、職場追放の話を複数聞いて、自分では絶対しないと心に誓った(40代男性、総合診療科)・不倫している医師と看護師が忘年会で喧嘩を始め、なかなかの修羅場であった(40代男性、放射線科)・結婚しているにもかかわらず、いろんな若い女医さんに手を出している医師がいた。最終的には奥さんにばれて慰謝料を請求されたうえで離婚していた(30代女性、呼吸器内科)【交際や出会いのきっかけ】・行きつけの居酒屋が一緒で仲良くなり結婚した(30代男性、形成外科)・当直と夜勤が被ったのがきっかけ(40代男性、小児科)・院長の紹介(40代男性、耳鼻咽喉科)・研修医の同期同士で結婚した(40代男性、麻酔科)・受付のお姉さんに手を出してそのまま結婚した人がいた(30代女性、放射線科)・病院見学に来た学生と研修医が交際し、結婚(30代男性、放射線科)・医師同士での結婚は学生時代から付き合っていたパターンが多い(30代女性、精神科)・真面目に働いていると職場以外で出会う機会がない(40代男性、小児科)【その他のエピソード】・今まで朝早く来ていた人が来なくなって、気が付いたら看護師さんと2人でゆっくり出てくるようになって、当直も同じ日に合わせていた。その後、別の病院に同時に異動したがすぐに別れた(30代男性、呼吸器外科)・自分と別れた恋人が、1年後に後輩から届いた年賀状で結婚していて、驚いたと同時に複雑な感情となった(40代男性、精神科)・後輩女性医師は出入りしている担当MRと結婚し、夫は主夫となり、妻は専門医を取った(40代女性、外科)・同級生に各フロアに友達を作っていた猛者がいたが、看護師長に出禁を食らっていた(40代男性、呼吸器内科)・何もなさすぎて残念ながら書くことがない。巷で言われるような医師がモテるというのは幻想(20代男性、放射線科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg005085_index.html

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