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がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。 今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。解析には年齢調整した混合効果モデルが用いられ、Food Swampの指標として、食料品店や野菜などの直売所の数に対するファストフードやコンビニの店舗数の比率を計算しスコア化した。Food SwampとFood Desertのスコアが高ければ(20.0~58.0)、その郡は健康的な食品資源が少ないと判定された。また、肥満と関連する13種類のがん(子宮内膜がん、食道腺がん、胃噴門部がん、肝臓がん、腎がん、多発性骨髄腫、髄膜腫、膵臓がん、大腸がん、胆嚢がん、乳がん、卵巣がん、甲状腺がん)による死亡率を人口10万人あたり71.8以上で「高い」とし、人口10万人あたり71.8未満で「低い」と分類した。 主な結果は以下のとおり。・米国3,142郡のうち、合計3,038郡(96.7%)がこの分析に含まれ、そのうち758郡(25.0%)で肥満関連のがん死亡率が高かった(四分位範囲[IQR]の“最も高い”範囲)。・これらの特定の郡ではほかの郡と比べ、非ヒスパニック系黒人住民の割合が高く(3.26%[IQR:0.47~26.35] vs.1.77%[IQR:0.43~8.48])、65歳以上でもその割合が高かった(15.71%[IQR:13.73~18.00] vs.15.40%[IQR:12.82~18.09])。・また、肥満関連のがん死亡率が高い郡は、低い郡と比較して以下の特徴が挙げられた。 貧困率が高い(19.00%[IQR:14.20~23.70] vs.14.40%[IQR:11.00~18.50]) 肥満率が高い(33.00%[IQR:32.00~35.00] vs.32.10%[IQR:29.30~33.20]) 糖尿病の罹患率が高い(12.50%[IQR:1:1.00~14.20] vs.10.70%[IQR:9.30~12.40])・これらの郡では、Food Desert(7.39%[IQR:4.09~11.65] vs.5.99%[IQR:3.47~9.50])およびFood Swamp(19.86%[IQR:13.91?26.40] vs.18.20%[IQR:13.14~24.00])に居住する人の割合が高かった。・相関分析の結果、Food DesertとFood Swampの両スコアが肥満関連がん死亡率と正の相関関係があり、Food Desertと肥満関連のがん死亡率との間の相関がわずかに高いことが示唆された(Food Desert:ρ=0.12、Food Swamp:ρ=0.08)。しかし、Food DesertとFood Swampの指数スコアはユニークであると決定付けられ、低い係数が与えられた。・Food Swampスコアが高い郡では、肥満関連のがん死亡のオッズが77%増加した(調整オッズ比:1.77、95%信頼区間:1.43~2.19)。また、Food DesertとFood Swampのスコアの3つのレベル(低-中-高)と肥満関連のがん死亡率との間には、正の用量反応関係も観察された。

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統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。 フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は46.7±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・単剤療法と多剤併用療法の両方を実施した患者における非精神疾患による入院リスクは、1.1以上DDD/日の3つの用量カテゴリの多剤併用療法で、同用量カテゴリの単剤療法と比較し、最大13%の有意な低下が観察された。【1.1~1.4未満 DDD/日】aHR:0.91(95%CI:0.87~0.95)【1.4~1.6未満DDD/日】aHR:0.91(95%CI:0.86~0.96)【1.6以上DDD/日】aHR:0.87(95%CI:0.84~0.89)・心血管系による入院リスクは、1.6以上DDD/日の用量カテゴリで、多剤併用療法のほうが有意に低かった(-18%)。【1.6以上DDD/日】aHR:0.82(95%CI:0.72~0.94)・抗精神病薬の未使用と単剤療法、または同未使用と多剤併用療法の比較の結果は、同一の個人での多剤併用療法と単剤療法の比較と同様であった。・多剤併用療法と単剤療法の比較で、非精神疾患または心血管系による入院に有意な差は認められなかった。

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成人肺炎診療ガイドラインを先取りした肺炎の予防戦略/日本呼吸器学会

 肺炎は日本人の死因の5位に位置する主要な疾患である。高齢になるにつれて発生率、死亡率が高くなり、65歳以上の高齢者が死亡者全体の95%以上を占めている。したがって、高齢者肺炎の予防が重要といえる。本邦において、医療関連肺炎(HCAP)では肺炎球菌に加えて口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多かったという報告もあり1)、高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン」と「口腔ケア」が2本柱といえる。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、これに対応して「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、システマティックレビュー(SR)が実施された。ワクチンについては、すでに確立された予防戦略と判断されたことから、2017年版の内容が引用され、「インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種」が推奨された。そこで、第63回日本呼吸器学会学術講演会において丸山 貴也氏(三重県立一志病院 院長)は、肺炎診療ガイドラインの改訂にあたって実施した口腔ケアのSRの結果や、それに基づく委員会での推奨、ワクチンに関する最新の情報について紹介した。成人肺炎診療ガイドラインで口腔ケアのCQ設定 改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQが設定され、人工呼吸器関連肺炎(VAP)/非VAP、クロルヘキシジン使用/不使用に分けてSRが実施された。その結果、非VAPについて、クロルヘキシジン不使用の口腔ケア実施群で、非実施群と比べて肺炎による死亡が有意に減少し、肺炎発症率も有意に低下した。以上の結果などから、推奨は「実施することを弱く推奨する」とする予定と報告された。今回、“弱く”推奨するとなっているのは、認知症や精神疾患などによって口腔ケアの実施が難しい場合が考えられるためであるという。したがって、丸山氏は「口腔ケアにはしっかりとしたエビデンスがあり、原因微生物とストラテジーもはっきりしている。侵襲性も少ないことから、ぜひ実践してほしい」と述べた。成人肺炎診療ガイドラインではワクチン併用接種を引き続き推奨 現行の成人肺炎診療ガイドライン2017では、「高齢者の肺炎予防において、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか」というCQが設定され、併用接種が強く推奨されている2)。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、すでに確立された予防方法として2017年版でのSRの結果を引用しながら、新たなワクチンについても解説するという。 インフルエンザウイルスに感染すると、気道や全身に変化が起こり、肺炎球菌などへの2次感染が生じやすくなる。実際に、本邦においてインフルエンザウイルス感染により入院した患者の合併症として肺炎が最も多く、36.4%を占めていた。また、インフルエンザ関連肺炎の原因微生物として、肺炎球菌が多く、死亡例の80%が肺炎を合併し、インフルエンザ関連肺炎の死亡率は9.5%であった。多変量解析によっても肺炎の発症がインフルエンザウイルス感染の予後規定因子として特定されており3)、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種が重要といえる。 肺炎球菌ワクチンについて、日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会は、2023年3月24日に「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」を公表している。そこでは、65歳以上の健康な高齢者については「定期接種の機会を利用してPPSV23(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)を接種」、ハイリスク者については「PCV13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)またはPCV15接種後1年以内のPPSV23接種を検討(とくに免疫不全者には推奨)」としている4)。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、この内容を追随する予定と報告された。

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大動脈弁狭窄症の死亡率の動向~日本含む高所得国

 カナダ・トロント大学の日尾野 誠氏らが、日本を含む高所得国8ヵ国における2000~20年の大動脈弁狭窄症の死亡率の動向を調査した結果、粗死亡率は8ヵ国とも増加したが、年齢標準化死亡率は3ヵ国(ドイツ、オーストラリア、米国)で減少傾向に転じ、80歳以上では8ヵ国で減少傾向に転じたことがわかった。Heart誌オンライン版2023年5月19日号に掲載。 本研究では、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オーストラリア、米国、カナダにおける2000~20年の大動脈弁狭窄症による死亡率の動向を調べるために、WHOのデータベースを用いて10万人当たり粗死亡率および年齢標準化死亡率、3つのグループ(64歳未満、65~79歳、80歳以上)の年齢層別死亡率を算出した。年間変化率は、結合点回帰を用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中、10万人当たりの粗死亡率は8ヵ国とも増加した(英国:3.47から5.87、ドイツ:2.98から8.93、フランス:3.84から5.52、イタリア:1.97から4.33、日本:1.12から5.49、オーストラリア:2.14から3.38、米国:3.58から4.22、カナダ:2.12から5.00)。・年齢標準化死亡率の結合点回帰では、ドイツで2012年以降(-1.2%、p=0.015)、オーストラリアで2011年以降(-1.9%、p=0.005)、米国で2014年以降(-3.1%、p<0.001)に減少傾向に転じていた。・年齢層別死亡率は、80歳以上ではほかの年齢層とは対照的に8ヵ国とも減少傾向にシフトしていた。

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中等~重度RAへのperesolimab、疾患活動性スコアを改善/NEJM

 中等度~重度の関節リウマチ(RA)患者を対象とした第IIa相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、peresolimabの有効性が示されたことを、米国・イーライリリーのJay Tuttle氏らが報告した。peresolimabは、内因性プログラム細胞死1(PD-1)阻害経路を刺激するようにデザインされたヒト化IgG1モノクローナル抗体である。この経路の刺激は、自己免疫疾患または自己炎症性疾患の新たな治療アプローチとなる可能性がある。今回の結果は、PD-1受容体の刺激がRA治療に有効であることを示唆するエビデンスを提供するものであり、著者は「RAに対するperesolimabの有効性と安全性を検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年5月18日号掲載の報告。peresolimab 700mgの有効性と安全性をプラセボと比較検証 研究グループは、1つ以上の従来型の合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)、あるいは1つ以上の生物学的製剤(bDMARD)または分子標的薬(tsDMARD)による治療で効果不十分、効果低下または許容できない副作用が発現した中等度~重度の活動期RA成人患者を、peresolimab 700mg群、300mg群またはプラセボ群に2対1対1の割合で無作為に割り付け、4週ごとに静脈内投与した。 主要アウトカムは、12週時のC-反応性蛋白(CRP)に基づく28関節の疾患活動性スコア(DAS28-CRP:範囲0~9.4、スコアが高いほど活動性が高いことを示す)のベースラインからの変化量で、主要比較は700mg群とプラセボ群との間の変化量の差とした。副次アウトカムは、12週時の米国リウマチ学会基準(圧痛・腫脹関節数および重要な5項目中3項目以上で改善)で20%改善(ACR20)、50%(ACR50)、70%改善(ACR70)の達成率などであった。有効性解析対象は修正intention-to-treat集団、安全性は安全性解析集団とした。主要評価項目の12週時のDAS28-CRP変化量は達成 2021年1月4日~2022年1月10日に172例がスクリーニングされ、適格基準を満たした98例がperesolimab 700mg群(49例)、peresolimab 300mg群(25例)、またはプラセボ群(24例)に割り付けられ、全例が1回以上治験薬の投与を受けた。 12週時のDAS28-CRPのベースラインからの変化量(最小二乗平均値±標準誤差)は、peresolimab 700mg群-2.09±0.18、プラセボ群-0.99±0.26であり、peresolimab 700mg群で有意に大きかった(群間差:-1.09、95%信頼区間[CI]:-1.73~-0.46、p<0.001)。 副次アウトカムは、ACR20達成率についてはperesolimab 700mg群がプラセボ群より良好であることがみられたが(71% vs.42%)、ACR50達成率(39% vs.21%)、およびACR70達成率(20% vs.17%)については両群で大きな差はなかった。 治療期間における有害事象の発現率は、peresolimab 700mg群29%、peresolimab 300mg群32%、プラセボ群38%で、安全性プロファイルは3群で類似していた。

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白内障手術の有効性・安全性、両眼同時vs.片目ずつ/Lancet

 高齢者の白内障手術において、両眼同時手術(immediate sequential bilateral cataract surgery:ISBCS)は片眼ずつを別の日に行う従来の待機的手術(delayed sequential bilateral cataract surgery:DSBCS)との比較において、有効性は非劣性、安全性は同等であり、費用対効果は優れることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのLindsay Spekreijse氏らによる多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「bilateral cataract surgery in the Netherlands study:BICAT-NL試験」の結果で示された。著者は、「厳格な適格基準を適用すれば、国家のコストは年間2,740万ユーロ(3,450万米ドル)削減できる可能性があり、ISBCSが支持される」とまとめている。高齢化が進む中、将来、白内障治療を確実に受けられるようにするためには、効率性の改善が必要とされていた。Lancet誌オンライン版2023年5月15日号掲載の報告。ISBCSとDSBCSに無作為化、有効性・安全性・費用対効果を検討 研究グループは、オランダの10病院において、単純な両眼の乳化吸引白内障手術が予想され、眼内炎または術後の眼内レンズ度数ずれ(refractive surprise)のリスクが高くない18歳以上の患者を対象に試験を行った。施設および眼軸長で層別化したウェブシステムを用いて、ISBCS群またはDSBCS群のいずれかに1対1の割合で患者を無作為に割り付け、ISBCS群では両眼の手術を同日に、DSBCS群では片眼手術の2週間後にもう片眼の手術を行った。 主要アウトカムは、術後4週時の目標屈折率が1.0ジオプトリー(D)以下の第2眼(2番目に手術した眼)の割合とし、ISBCS vs.DSBCSの非劣性マージンは-5%とした。また、試験に基づく経済評価では、質調整生存年(QALY)当たりの増分社会的費用を主要エンドポイントとした。すべての解析は、修正intention-to-treat(ITT)解析にて行った。費用は、資源使用量と単価を乗じて計算し、2020年のユーロおよび米ドルに換算した。有効性は非劣性、安全性は同等、費用対効果は優れる 2018年9月4日~2020年7月10日の期間に、計865例がISBCS群(427例[49%]、854眼)およびDSBCS群(438例[51%]、876眼)に無作為に割り付けられた。 修正ITT解析において、目標屈折率が1.0 D以下の第2眼の割合は、ISBCS群97%(404/417例)、DSBCS群98%(407/417例)であった。群間差は-1%(90%信頼区間[CI]:-3~1、p=0.526)で、DSBCS群に対するISBCS群の非劣性が示された。 眼内炎は、いずれの群においても認められなかった。有害事象は、不同視を除き両群で同等であった。DSBCS群で第1眼と第2眼の手術の間に不同視が生じたと報告した患者が有意に多かった(13例vs.0例)。 社会的費用は、DSBCS群と比較してISBCS群で403ユーロ(507米ドル)低く、DSBCSに対するISBCSの費用対効果の確率が100%である支払意思額(willingness to pay)の範囲は、2,500~8万ユーロ/QALY(3,145~10万629米ドル/QALY)であった。

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Complex PCIにおけるイメージングガイドPCIの有用性(解説:上田恭敬氏)

 韓国の20施設において、約2年間の心臓死・標的血管関連心筋梗塞・TVRの複合エンドポイントを用いて、イメージングガイドPCIとアンジオガイドPCIの成績を比較した無作為化比較試験の結果である。 Complex PCIとして規定される登録対象病変は、1)側枝径2.5mm以上の分岐部病変、2)CTO病変、3)unprotected LM病変、4)必要ステント長38mm以上と予想される病変、5)2枝以上の主要冠動脈枝のPCIを同時に行うもの、6)3本以上のステント使用が必要な病変、7)ステント内再狭窄病変、8)高度石灰化病変、9)主要冠動脈枝の入口部病変である。 イメージングガイド群1,092例、アンジオガイド群547例と、1,639例の対象患者が2:1に割り付けられている。イメージングガイドとしては、術者の選択によってIVUSまたはOCTが使用可能であったが、実際には74.5%でIVUS、25.5%でOCTが使用されていた。複合エンドポイントは7.7%対12.3%(p=0.008)とイメージングガイド群で有意に低値となった。ステント血栓症や造影剤腎症の発生頻度に群間差はなかった。 Complex PCIに限定せず1,448例のAll-comerの対象患者で、イメージングガイドPCIとアンジオガイドPCIの成績を比較した無作為化比較試験であるULTIMATE試験においても同様に、1年間の心臓死・標的血管関連心筋梗塞・TVRの複合エンドポイントが、2.9%対5.4%(p=0.019)とイメージングガイド群で有意に低値となっている。ULTIMATE試験においては、IVUSで定義されるoptimal PCIが達成された場合とそうでない場合で、イメージングガイド群の中でも同エンドポイントが1.6%対4.4%(p=0.029)と大きな差が生じている。 当然のことではあるが、イメージングをただ使うだけではだめで、イメージングを使って種々の手技を実施してoptimal PCIを達成することによって初めて、PCIの成績向上につながっているといえる。多くの試験ではバルーンによるステントの追加拡張を行うか否かの違いしかないようであるが、ロータブレーターやカッティングバルーン等によるステント留置前の病変プレパレーションや各種テクニックによって、よりoptimalな結果が得られれば、PCIの成績はさらに向上することが期待されるだろう。

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工夫で乗り切る!【Dr. 中島の 新・徒然草】(478)

四百七十八の段 工夫で乗り切る!暑くなったり寒くなったりの不安定な天気が続きます。雨が続くと「もう梅雨か」と思いますが、近畿地方の梅雨入り平均は6月6日。まだ少し早そうです。さて、脳外科外来で最も多い患者さんの訴えの1つ。それは……「最近、テレビに出てきた俳優さんの名前が出てこん」「物忘れがひどい」「1日中、探し物ばっかりしている」そして最後には同じ質問です。「ひょっとして認知症と違うやろか?」認知症になった人が1人で通院できるわけありません。そう言って否定する毎日です。が、こういう患者さんは実際に毎日の生活に困っているのですから、認知症でないにしても何らかの対応が必要ではないか、と最近になって思うようになりました。というのも、私自身が「人の名前が出てこない」「物忘れをする」「探し物をする」ということをやりがちになってきたからです。自分が認知症になったとは思いませんが、こういった症状で困るのは患者さんもお医者さんも同じこと。で、今さら脳を鍛えるよりは、文明の利器を活用するほうが省エネかつ効果的です。そこで人の顔については、名刺アプリの「Eight」を私は使っています。スマホで名刺を撮影すると、そのまま名前や所属を登録してくれる便利モノ。相手も同じアプリを使っていると、名前の肩にEightのマークが表示されるので、すぐにわかります。このアプリにはメモ機能が付いていて、テキストや画像も入力することが可能。私は名刺交換した場所とか、その人の顔写真を入力して活用しています。これを時々見ておくと、次に会った時に瞬時に相手を同定して「〇〇先生、ご無沙汰しております!」と明るく挨拶をすることができるわけですね。また、役所などに提出する書類も、郵送の前にスマホで写真を撮っています。コピーしたりスキャンしたりするより、写真撮影のほうがはるかに簡単。「あの書類はどう書いたかな?」と思った時にはすぐに確認できます。部屋掃除の時に出て来た昔の書類についても、シュレッダーにかける前にスマホで写真撮影。iPhoneの場合はそれぞれの写真ごとに「日付と時刻を調整」という機能を使って、しかるべき年月日を入力すれば、10年前の書類は10年前の位置に収納することが可能です。年々劣化していく脳みそではありますが、毎日を乗り切るためにいろいろな工夫をするのも面白いと思うようになってきました。患者さんへのアドバイスにも生かしたいと思います。最後に1句梅雨空に 顔を忘れぬ 一工夫

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学会発表に必須!英語の“filler”を上手に使いこなす【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第16回

学会発表に必須!英語の“filler”を上手に使いこなすスムーズな英会話を行うために、前回ご紹介した相槌とともに重要なのが“filler”、いわゆる「つなぎ言葉」と言われるものです。よく用いられるfillerの例日本語脳で話していると、ついつい英語の合間に「えーと」「うーん」のような日本語の“filler”を口走ってしまうかもしれません。そうした場合、英語話者の相手に“Eight?”のように聞き返されてしまう可能性もあります。また、英会話にも「適切な沈黙」というのはありますが、基本的には不用意な沈黙を嫌う文化があります。このため、適切な“filler”で沈黙を埋めることはコミュニケーションを円滑に進めるうえで重要です。学会では、質問の回答を少し考える時間が必要で、間ができてしまった場合にこれらの“filler”が有効になります。“Well…”、“Let me see…”などと言って少し間を埋められれば、自然な印象を与えます。なお、私は質疑応答で質問された際には、頻繁に“That’s a great question.”と返しています。そう言っておいて、間をとって頭の中で回答を整理するのです。これも立派な“filler”だと思います。慣れるまで、英語の“filler”を使うのが少し照れくさいかもしれませんが、すぐに慣れるものです。ぜひ多様な表現をマスターしてください。講師紹介

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第46回 コロナ定点報告、注意報・警報発令の値はどうなる?

「5類」移行後、初めての定点報告5月8日にCOVID-19が「5類感染症」に移行してから、初回の定点医療機関あたりの患者数が全国で2.63人だったと報告されました。指定医療機関における1週間あたりのCOVID-19患者数が2.63人だったということです。定点医療機関あたりの患者数は、インフルエンザの場合、1人以上で流行期入り、10人以上で注意報、30人以上で警報というレベルが設定されています。現場でも、30人以上だとかなりインフルエンザが増えてきたなと実感する水準です。今回、インフルエンザの流行は比較的小波に終わりました。定点のニュースが流れた後「結局、以前と比べてどうなの?」と思った人が多かったと思います。ほぼ全数把握をしていた5月第1週の感染者数を定点医療機関あたりの患者数に換算すると、全国で1.80人になるそうです。単純計算で前週比46%増ということですから、ちょっと雲行きが心配になってきますね。地域差大きく、沖縄が最多今回、沖縄の定点医療機関あたりの患者数は6.07人と全国最多でした。沖縄県の主要病院のホームページをみても、院内クラスターが発生しているようで、職員の感染が診療を制限している構図が観察されます。沖縄県の感染者数は、現時点で約58万人です。県民の約4割が感染していますが、全国平均の約3割を上回っています。ある程度集団免疫的な機能が備わっていると思いきや、全国最多の定点医療機関あたりの患者数を記録しているのが現状です。さらに、ここにきて海外からのインバウンド観光客も急増しており、今後の感染動向は予想が難しそうです。確かにCOVID-19はインフルエンザと同じ「5類感染症」に移行しましたが、注意報・警報も同じ扱いでよいのかというと、そうではありません。むしろ、インフルエンザよりも感染性が高いことから、少なくとも「1人-10人-30人」の数値よりはレベルを厳しく設定する必要があるかもしれません。ちなみに、現在の新型コロナ流行を「1人-2人-4人」で色分けすると図のようになります(図、1人以下の都道府県はありません)。東高西低の分布になっていますね。注意報・警報をどのように発令していくかは厚労省で今後検討されるとのことです。図. 現在のCOVID-19流行(参考資料1をもとに筆者作成)参考文献・参考サイト1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について

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他の抗CGRP抗体への切り替えが有効な片頭痛患者の特徴は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介したモノクローナル抗体(mAb)は、片頭痛治療に有効な治療薬として承認されている。特定のmAbで治療反応が得られなかった患者に対し、別のmAbへ切り替えることで、ある程度の有効性が得られることが示唆されている。イタリア・フィレンツェ大学のLuigi Francesco Iannone氏らは、抗CGRP/リガンドmAbで治療反応が得られなかった患者における抗CGRP/受容体mAbへの切り替えによる治療効果、およびその逆における効果を評価した。その結果、特定の抗CGRP mAbで効果が不十分であった場合、他の抗CGRP mAbへの切り替えは臨床上の重要なオプションである可能性が示唆された。Cephalalgia誌2023年4月号の報告。 2019年12月~2022年7月、2種類の抗CGRP mAbによる連続した治療を行った外来片頭痛患者31例より、包括基準を満たした22例(全例女性、慢性片頭痛19例、反復性片頭痛3例)を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。最初の抗CGRP mAbに対し効果不十分であった患者を、同じ患者コホートの3つの変数(片頭痛評価尺度[MIDAS]スコア、1ヵ月当たりの頭痛日数、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用日数)または5つの変数(MIDASスコア、1ヵ月当たりの頭痛日数、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用日数、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用数、Headache Impact Test-6[HIT-6]スコア)を用いて評価した。主要評価項目は、2番目の抗CGRP mAbによる治療3ヵ月後における、1ヵ月当たりの頭痛日数、治療反応率、薬物乱用継続のベースラインからの絶対変化とした。 主な結果は以下のとおり。・3つの変数で効果不十分と判断された患者では、2番目の抗CGRP mAbによる治療3ヵ月後において、1ヵ月当たりの頭痛日数、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用日数、MIDASスコア、HIT-6スコアの持続的な改善が認められた。・30%以上の治療反応が認められた患者は、10例(45.4%)であった。・抗CGRP mAbの切り替えは、リガンドから受容体またはその逆において、差は認められなかった。・5つの変数で効果不十分と判断された患者では、2番目の抗CGRP mAbによる治療3ヵ月後に、HIT-6スコアのみでベースラインからの改善が認められた。1ヵ月当たりの頭痛日数、1ヵ月当たりの鎮痛薬使用日数、MIDASスコアについては、3ヵ月後の減少傾向が観察された。

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脂漏性皮膚炎に1日1回のroflumilast外用薬が有望

 脂漏性皮膚炎による紅斑、鱗屑、そう痒の治療において、1日1回塗布のroflumilastフォーム0.3%(泡[フォーム]を形成する製剤)は、良好な有効性、安全性、および局所忍容性を示した。米国・オハイオ大学のMatthew J. Zirwas氏らが第IIa相二重盲検溶媒対照並行群無作為化試験の結果を報告した。脂漏性皮膚炎に対する局所治療の選択肢は、有効性や安全性の観点から限られている。脂漏性皮膚炎はあらゆる年代にみられ、全世界の有病率は5%以上とされる。roflumilastは選択的ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬であり、抗炎症作用を有する。経口薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されており(本邦未承認)、外用薬は2022年7月に慢性尋常性乾癬への適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。著者は、「今回の結果は、本剤の非ステロイド系外用薬としてのさらなる研究を支持するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、頭皮や顔、体幹に脂漏性皮膚炎症状を有する成人患者において、roflumilastフォーム0.3%の安全性と有効性の評価を目的として本試験を実施した。 本試験は、2019年11月12日~2020年8月21日に、米国とカナダの24施設にて行われた。対象は、脂漏性皮膚炎と診断されて3ヵ月以上、Investigator Global Assessment(IGA)スコア3以上(中等度以上)、症状が頭皮や顔、体幹、間擦部を含む体表面積の20%以下である18歳以上の患者であった。対象患者をroflumilast群(roflumilastフォーム0.3%)または溶媒群(vehicleフォーム)に無作為に割り付け、1日1回8週間塗布した。 主要アウトカムは、8週時のIGAに基づく奏効(IGAスコアが0[消失]または1[ほとんど消失]+ベースラインから2点以上減少で定義)とした。副次アウトカムは、2週・4週時のIGAに基づく奏効、Worst Itch Numeric Rating Scale(WI-NRS)のベースラインからの変化量などであった。安全性と忍容性も評価した。データ解析は、2020年9月~10月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計226例(平均年齢±標準偏差[SD]:44.9±16.8歳、男性116例、女性110例)が、roflumilast群(154例)、溶媒群(72例)へ無作為に割り付けられた。・8週時において、roflumilast群は104例(73.8%)がIGAに基づく奏効を達成したが、溶媒群は27例(40.9%)であった(p<0.001)。・初回評価の2週時におけるIGAに基づく奏効率は、roflumilast群(33.8%)が溶媒群(14.7%)と比べて統計学的有意に高率であった(p=0.003)。・8週時において、WI-NRSのベースラインからの平均減少率(SD)は、roflumilast群59.3%(52.5%)、溶媒群36.6%(42.2%)であった(p<0.001)。・roflumilastの忍容性は良好で、有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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初夏はとくに注意!熱帯夜で死亡リスク増~47都道府県のデータ解析

 高過ぎる気温は死亡リスク上昇につながることが示唆されているが、ほとんどの研究は最高気温や平均気温を使用している。しかし、気温上昇は最高気温より最低気温のほうが速い。今回、筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、最低気温が高い熱帯夜と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、熱帯夜により死亡リスクが有意に増加し、さらに晩夏より初夏の熱帯夜で死亡リスクが高いことがわかった。Environmental Health Perspective誌2023年5月号に掲載。 本研究では、日本の47都道府県における43年間(1973~2015年)のデータから、死因や地域別に熱帯夜の死亡率への影響を推定した。熱帯夜は、1日の最低気温が25℃以上の日またはその都道府県において研究期間中の1日最低気温の95パーセンタイル以上の日と定義し、熱帯夜が発生する季節(4~11月)における都道府県別の熱帯夜と死亡率の関連を推定した。さらに、ランダム効果メタ解析モデルを用いて統合累積関連を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2,472万1,226例の死亡例を解析した。・熱帯夜ではない日に対する熱帯夜の相対死亡リスク(RR)は、最低気温25℃以上で1.09(95%信頼区間:1.08~1.10)、最低気温が95パーセンタイル以上で1.10(同:1.09~1.11)であった。・11の死因(心血管疾患、虚血性心疾患、脳血管疾患、脳出血、脳梗塞、呼吸器疾患、肺炎、COPD、喘息、腎臓病、高齢)による死亡率すべてが熱帯夜と関連していた。・熱帯夜と死亡率との関連の強さは都道府県によって異なっていた。・すべての地域で、晩夏と比べて初夏の熱帯夜の死亡リスクが高かった。 著者らは、この結果について「1日平均気温で説明可能な死亡率以上に、熱帯夜が死亡に影響するというエビデンスを裏付けるもの」としている。

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分娩後異常出血、ドレープによる早期検出と一連の初期治療が有効/NEJM

 分娩後異常出血について、目盛り付き採血ドレープによる早期検出と、子宮マッサージ、オキシトシンやトラネキサム酸投与などによる一連の初期治療により、重度分娩後異常出血や出血による開腹手術または母体死亡の複合リスクの低下に結び付くことが示された。世界保健機関(WHO)のIoannis Gallos氏らが、ケニア、ナイジェリアなど80の病院を対象に行った国際クラスター無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年5月9日号掲載の報告。重度分娩後異常出血、出血による開腹手術や母体死亡の統合リスクを比較 研究グループは、経膣分娩を行った女性を対象に、分娩後異常出血に関する多種の介入を評価した。介入は、分娩後異常出血の早期検出を目的とした目盛り付き採血ドレープと、一連の初期治療(子宮マッサージ、オキシトシン、トラネキサム酸、静脈内輸液、検査、エスカレーション)で、介入群の病院に対しては実施戦略によるサポートを行った。対照群の病院では、通常ケアが行われた。 主要アウトカムは、重度分娩後異常出血(失血量1,000mL超)、出血による開腹手術、出血による母体死亡の複合だった。主要な副次アウトカムは、分娩後異常出血の検出、一連の治療順守だった。主要複合アウトカムの発生率、通常ケア群4.3%に対し介入群1.6% ケニア、ナイジェリア、南アフリカ共和国、タンザニアの2次レベルの病院、合計80ヵ所で、経膣分娩を行った21万132例を対象に試験を行った。 データの得られた病院および被験者において、主要アウトカムのイベント発生は、通常ケア群4.3%に対し、介入群は1.6%だった(リスク比:0.40、95%信頼区間[CI]:0.32~0.50、p

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IPF標準治療へのziritaxestat追加、努力肺活量への影響は?/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)でピルフェニドンまたはニンテダニブの標準治療を受けている患者、あるいは標準治療を受けていない患者において、開発中の新規オートタキシン阻害薬ziritaxestatの追加は、プラセボとの比較で臨床アウトカムを改善しなかったことが、2つの第III相無作為化試験で示された。米国・南カリフォルニア大学のToby M.Maher氏らが26ヵ国で行った「ISABELA 1試験」と「ISABELA 2試験」の結果で、両試験ともにデータ・安全性委員会の判定で早期に終了となった。IPFについては効果的で忍容性良好な治療の開発が待ち望まれている。JAMA誌2023年5月9日号掲載の報告。26ヵ国で約1,300例を対象に試験 2試験はアフリカ、アジア太平洋地域、欧州、中南米、中東および北米の26ヵ国で、IPF患者1,306例(ISABELA 1試験:106施設525例、ISABELA 2試験:121施設781例)を対象に、同一の試験デザインにて行われた。 研究グループは被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、ziritaxestat(経口)600mg、ziritaxestat(経口)200mg、プラセボをいずれも1日1回、試験地域の標準治療(ピルフェニドン、ニンテダニブ、または何も投与せず)に追加して少なくとも52週間投与した。 主要アウトカムは、52週時点の努力肺活量(FVC)の年間減少率だった。主な副次アウトカムは、病勢進行、呼吸器関連の初回入院までの期間、SGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)総スコア(範囲:0~100、高スコアほど健康関連QOLが不良であることを示す)のベースラインからの変化だった。 2018年11月に試験登録が開始され、ISABELA 1試験は2021年4月に、ISABELA 2試験は2021年3月に終了となったため、いずれもフォローアップは早期に完了となった。FVCの年間減少率、両試験いずれの用量でも効果が認められず 試験終了時点で、ISABELA 1試験の被験者数は525例(平均年齢70.0歳[SD 7.2]、男性82.4%)、ISABELA 2試験の被験者数は781例(69.8歳[7.1]、81.2%)だった。独立したデータ・安全性委員会が、ziritaxestatのリスク対効果プロファイルが試験継続を支持しないものであると結論付けたため、両試験は早期に終了した。 両試験において、ziritaxestatはプラセボとの比較で、FVCの年間減少率を改善しなかった。ISABELA 1試験では、FVCの最小二乗平均年間減少率は、ziritaxestat 600mg群が-124.6mL(95%信頼区間[CI]:-178.0~-71.2)に対しプラセボ群は-147.3mL(-199.8~-94.7)であり(群間差:22.7mL、95%CI:-52.3~97.6)、同200mg群では-173.9mL(-225.7~-122.2)であった(プラセボとの群間差:-26.7mL、95%CI:-100.5~47.1)。 ISABELA 2試験でも、FVCの最小二乗平均年間減少率は、ziritaxestat 600mg群が-173.8mL(95%CI:-209.2~-138.4)に対しプラセボ群は-176.6mL(-211.4~-141.8)であり(群間差:2.8mL、95%CI:-46.9~52.4)、同200mg群では-174.9mL(-209.5~-140.2)であった(プラセボとの群間差:1.7mL、95%CI:-47.4~50.8)。 主な副次アウトカムについても、ziritaxestat群のプラセボ群に対するベネフィットは認められなかった。 全死因死亡率が、ISABELA 1試験ではziritaxestat 600mg群8.0%、同200mg群4.6%、プラセボ群6.3%、ISABELA 2試験ではそれぞれ、9.3%、8.5%、4.7%報告された。

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081)どこまで話す? 個人的な話【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第81回 どこまで話す? 個人的な話ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆日頃診察を行っていて、どうしてもある程度は時間がかかってしまうときがあります。たとえば、爪切りやたこ・魚の目の外来処置。患者さんと医師がお互いに楽な姿勢がとれるように、患者さんにはベッド上で横になってもらい、処置を行うことが多いのですが、話し好きな患者さんの場合、この時間がフリートークタイムに発展しがちだったりします(私だけ?)。足にまつわる相談事が話題のこともあれば、診察とはまったく関係のない、患者さん本人の身の上話が始まることも。とある話し上手の患者さんは、積極的にこちらの話を引き出して(?)こられる方で、私がランニングやマラソンをすること、ふだん朝ジョギングをしてから通勤していること、そのジョギングコースについて、など。気付けばどんどんと明かされていく、私個人にまつわる情報たち!?そのうち自宅の位置までも特定されてしまうのではと、ふと我に返るのでした。診察中の会話をより身近に感じてもらうようにと、こちらから自身の個人的な話を例に出して治療の説明を行ったりすることもありますが、今回のような場合だと、「あんまり素直に何もかも答えてしまわないほうがいいのかしら」と思ったりするのでした。ご本人に悪気はないのでしょうけどね。それでは、また。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7【「実践的」臨床研究入門】第32回

検索式で研究デザインを限定する その2前回は、「研究デザイン」を「ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)」に限定するための検索式について説明しました。ただ、われわれのClinical Question(CQ)とResearch Question(RQ)(下記)の「研究デザイン」は「RCT」ではなく「観察研究」です。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかP(対象):非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E(曝露要因):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C(比較対照):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O(アウトカム):1)末期腎不全(透析導入)、2)eGFR低下速度の変化そこで、今回からは「研究デザイン」を「観察研究」に限る方法について解説したいと思います。まずは、PubMedの「Filterサイドバー」(連載第31回参照)の"ARTICLE TYPE"で"Observational Study"のFilterを使用する方法を紹介しましょう。デフォルトでは"Observational Study"は"ARTICLE TYPE"のリストには挙げられていません。したがって、初めに「Filterサイドバー」の下側にある"Additional filters"をクリックし、"ARTICLE TYPE"のリストから"Observational Study"を追加で選択します。それでは、われわれのRQの検索式に、"Observational Study"のFilterを加えてみましょう。PubMed Advanced Search Builderを用いて、これまで改訂してきたP、Eそれぞれの構成要素のブロック(下記)の検索式をANDでつなぎます(連載第27回参照)。PのブロックKidney Disease[mh:noexp] OR “diabetic nephropathy”[tiab] OR Diabetic Nephropathies[mh] OR Renal Insufficiency[mh:noexp] OR Renal Insufficiency, Chronic[mh:noexp] OR "chronic kidney disease*"[tiab] OR "chronic renal disease*"[tiab] OR CKD[tiab] OR predialysis[tiab] OR pre-dialysis[tiab]EのブロックDiet, Protein-restricted[mh] OR "low-protein diet*"[tiab] OR "protein-restricted diet*"[tiab]まずPubMed Advanced Search Builderで #1 AND #2 のResultsでヒットした論文数をクリックします。そして、メイン画面左側の「Filterサイドバー」の"ARTICLE TYPE"から、先ほど追加した"Observational Study"のFilterを選択します。すると、検索結果は表のとおりとなります(本稿執筆2023年5月時点)。表画像を拡大する最終的にヒットした論文の文献情報を確認すると、当たり前ですが、すべての論文で"Observational Study"であるという情報がPublication typeとして与えられています。それゆえ、Publication typeの情報が付与されていない論文は検索から漏れてしまう恐れがあります。そこで、次回は「観察研究」をさらに網羅的に捕捉するための「観察研究フィルター」の検索式を紹介します。

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第162回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体(後編) 「看護師に処方権」「NP国家資格化」の行方は?

ジャニーズの性加害問題報道でNHKが「反省」の弁こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、メディアはG7広島サミットの話題に加え、ジャニーズ事務所の「謝罪」動画、歌舞伎役者の自殺未遂事件など社会部ネタが頻発し、バタバタだった模様です。ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.の少年への性的虐待については、この連載の「第155回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(後編)」でも簡単に触れたのですが、「謝罪」動画公開後の5月17日にNHKで放送された「クローズアップ現代」(クロ現)はなかなか興味深い内容でした。「“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題」と題されたこの回の「クロ現」では、元ジャニーズJr.の男性が実名で登場、自身が受けた性被害の詳細を語っていました。印象的だったのは、桑子 真帆キャスターが、「なぜこの問題を報じてこなかったのか。私たちの取材でもこうした声を複数いただきました。海外メディアによる報道がきっかけで波紋が広がっていること。私たちは重く受けとめています」と反省の弁を述べ、番組の最後に「私たちは、これからも問題に向き合っていきます」と語ったことです。日本で長年に渡って起こっていた性被害事件にもかかわらず、日本のメディアで報道してきたのは週刊文春などごくわずかです。英国BBCのドキュメンタリーが放映されたので渋々動きました、というのではNHKも報道機関としての存在意義が問われても仕方ありません。今回、NHKの顔とも言えるキャスターが番組で反省の弁を述べたというのは、とても大きな意味があることだと思います。逆に言えば、ジャニーズ事務所に忖度し、BBCのドキュメンタリーや今回の「謝罪」動画に関しても、お茶を濁した報道しかしていない民放(「クロ現」ではジャーナリストの松谷 創一郎氏が「民放の人たち、テレビ朝日やフジテレビなんかはとくにそうですけれども」と名指しして批判していました)は、報道機関としては完全に“失格”と言えそうです。人口減少に対する、医療関係団体の希薄過ぎる危機感さて、今回も4月26日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した「将来推計人口」に関連して、日本の医療に及ぼす影響について考察してみます。前回は、一向に進まない地域医療構想や、病院の役割分担の明確化や病床削減などへ取り組みの遅れなど、医療提供体制における問題点について書きました。今回は、急速に進む人口減少が招くであろう医療・介護人材難に対して、日本医師会や日本薬剤師会といった医療関係団体の危機感が希薄過ぎる点について書きます。訪問看護ステーションに配置可能な医薬品の拡大案に「断固反対」と日本薬剤師会会長5月12日付のメディファクス等の報道によれば、日本薬剤師会の山本 信夫会長は5月10日に開かれた三師会の会見で、政府の規制改革推進会議で議論が進められている、訪問看護ステーションに配置可能な医薬品の拡大案について、「配置可能薬を拡大するということについては断固反対という立場だ」と述べたとのことです。この案は、規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループで3月6日、医師の佐々木 淳専門委員(医療法人社団 悠翔会理事長)と弁護士の落合 孝文専門委員が提案したものです。佐々木氏は関東を中心に在宅医療専門のクリニックを複数ヵ所運営する医療法人を経営しています。佐々木氏らが提案したのは、訪問看護ステーションに配置する薬剤の種類を増やし、訪問看護師がある程度自由に使用できるようにするための新しいスキームです。現状では看護師が薬局で薬剤を入手してから患者宅に向かうか、看護師から連絡を受けた薬剤師が薬剤を配達しているのですが、このスキームによって患者への薬剤提供が効率化される、としています。このスキームでは、薬剤師はオンラインで訪問看護ステーションに配置された薬剤を遠隔管理(倉庫室温、ピッキングの適切性、在庫など)し、薬局がステーションに随時医薬品を授与します。一方、ステーションの看護師は、必要に応じて医師の指示内容を薬局と共有、処方箋の写しに基づいてステーションの倉庫から薬剤をピッキング、患者に投薬します。なお、倉庫内に配置する薬剤としては、脱水症状に対する輸液、被覆剤、浣腸液、湿布、緩下剤、ステロイド軟膏、鎮痛剤などを想定しているとのことです。薬剤師の調剤権を著しく侵害することにつながり「極めて問題がある」現状、薬剤師法などで、調剤を行えるのは、医師、歯科医師、獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときを除いて薬剤師に限られています。山本会長は、この改革案は医師の処方権、薬剤師の調剤権を著しく侵害することにつながり「極めて問題がある」と述べたそうです。その上で、在宅医療の提供について、「チームを組んで医療を提供するのが本来の姿。専門職が集まってその患者さんに対してどんな医療が必要か、医師や看護師、薬剤師など各専門職種が議論していくことが大前提だ。それを抜きにして、ただ置けばいいという発想について私どもとしては大変断固反対だ」と述べたとのことです。他の医療・看護・介護拠点が薬局機能を代替して何が悪い?「薬局の遠隔倉庫」案と呼ばれるこの案、患者が薬剤を手に入れるまでの時間が短縮されるだけでなく、調剤をする薬局自体がない地域や、土日や夜間は営業しない薬局しかない地域では、とても便利で現実的な方策に見えます。「薬剤師の調剤権を侵害」「チーム医療が本来の姿」と山本会長は語っています。しかし、そもそも薬局薬剤師が機能しない地域や時間帯があるなら、ほかの医療・看護・介護拠点がその機能を代替して何が悪いというのでしょう。山本会長の発言は、薬剤師のことは考えているが、患者のことは考えていないように感じます。ちなみに、令和4年度の厚生労働白書によれば、2020年度において、無薬局町村は34都道府県で136町村あるそうです。「包括指示」の仕組みを活用、「訪問看護師に一定範囲内の薬剤の処方箋を発行できるようにする」案も規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループは先週、5月15日にも開かれ、佐々木氏は「薬局の遠隔倉庫」案をベースとした、もう一歩踏み込んだ改革案を提案しています。5月16日付のCBnewsマネジメントの報道によれば、佐々木氏は一定の条件下で訪問看護師が処方箋を発行して投薬できる規制緩和策を検討すべきだと提案したとのことです。具体的には、医師に連絡がついたものの処方箋を発行できない場合、看護師は医師の指示に基づいて処方箋を発行できる医師と連絡がつかない場合、看護師は医師の包括的指示に基づいて処方箋を発行できる24時間対応を標榜する薬局がある場合、薬剤師は迅速・確実に患者宅に薬剤を届ける。24時間対応の薬局がなければ訪問看護事業所に薬剤を配備し、看護師がその備蓄から薬剤を使用することができる24時間対応する薬局の有無にかかわらず、訪問看護事業所内への輸液製剤の配備を可能とするなお、佐々木氏は、これらの対象となる薬剤(輸液製剤を含む)の範囲をあらかじめ指定しておくことも提案しています。医師から看護師への「包括指示」の仕組みを活用して、「訪問看護師に一定範囲内の薬剤の処方箋を発行できるようにする」という大胆な提案です。日本薬剤師会が再び激怒しそうですが、働き方改革や人材難を背景に、タスクシフト/タスクシェア推進が叫ばれる中、とても理に適った提案ではないでしょうか。「NPを導入し、国家資格として新たに創設するというのは適切ではない、反対だ」と日本医師会政府の規制改革会議ですが、その議論や提案はいつもラジカルで、旧態依然とした医療関係団体を時折怒らせています。2月13日、規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキング・グループは、医師と看護師のタスクシェア、とくにナース・プラクティショナー(NP)について日本医師会等にヒアリングを実施しました。NPとは、端的に言えば、医師と看護師の中間的な技量を有した医療専門資格です。現行の特定行為研修を修了した看護師ができる医療行為の範囲を超えて、“医師のように”自主的に医療行為が行える新しい国家資格(NP)をつくろうというのがNPの国家資格化のコンセプトです。米国においてNPは医師の指示・監督がなくても診察、診断、治療・処方のオーダーができる資格として確立しています。この回のワーキング・グループに日本医師会から参加した常任理事の釜萢 敏氏は「外国で行われているものを日本に導入すれば必ずうまくいくというものでは決してない。特定行為研修の修了者を増やしていくという方向に大きく踏み出したので、まずそれをしっかり実現することが喫緊の課題。NPという新たな職種を導入し、国家資格として新たに創設するというのは、現状において適切ではない、反対だ」と述べました。日本医師会などが慎重な姿勢を示してきたため業務範囲の拡大は遅々として進まず医療・介護分野のタスクシェア・タスクシフトを巡っては、これまで日本医師会などが慎重な姿勢を示してきました。そのため、実際の医療現場での業務範囲の拡大は遅々として進んでいません。2021年5月の医療法等改正においても、業務範囲が拡大されたのは診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士のみで、“本丸”とも言える看護師には踏み込んでいません(「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」参照)。政府の規制改革推進会議が昨年5月に決めた令和4年度の最終答申には「医療・介護分野のタスクシェア・タスクシフトの推進」は記述されていますが、より本格的な検討は今期の同会議の“宿題”となりました。その後、議論を進めてきた規制改革推進会議は、昨年12月に当面の改革テーマに関する中間答申をまとめました。そこには、医師や看護師が職種を超えて業務を分担する「タスクシェア」の推進が明記され、医師の業務の一部を看護師らに委ねる「タスクシフト」も進めると書かれました。それを踏まえ、看護師らが担える業務の対象拡大を主要テーマとして、医療・介護・感染症対策ワーキング・グループが議論を進めてきた、というのがこれまでの流れです。6月にまとめられる規制改革推進会議の最終答申に注目それにしても、医師や薬剤師がタスクシェア・タスクシフトをこうも毛嫌いする理由はなんでしょう。自分たちの仕事が、「看護師ごときには対応できないほど高度なもの」とでも考えているのでしょうか。あるいは逆に、「意外に簡単で誰にでもできそうであることがバレるのが怖い」のでしょうか。確か、日本医師会は医師増(医学部新設)にも反対していましたから、単に自分たちの既得権を守りたいだけなのかもしれません。前回の冒頭で書いた青森の下北半島ではないですが、現状、医師確保にあえいでいる地域は全国にたくさんあります。人口減が今以上に進めば、無医町村も増えていくでしょう。そんな中、相応の資格を得た訪問看護ステーションなどの看護師が、処方を含む医療行為を自らの判断で行うことができるようになれば、地域医療に一定の安心感を与えるのではないでしょうか。また、老人保健施設や介護医療院は医師でなければ施設長になれませんが、高齢者医療を専門とするNPが施設長になることができれば、貴重な医師人材の節約にもつながります。今年6月にもまとめられる予定の令和5年度の規制改革推進会議の最終答申に、医師から看護師への包括指示の活用や、訪問看護師への処方権付与、NP国家資格化といった、ワーキング・グループで議論されてきた内容がどれくらい盛り込まれることになるか、注目されます。

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認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する意識調査

 認知症に対する薬理学的および非薬理学的介入は進歩しており、将来の認知症予防において、対象を絞ったスクリーニングやライフスタイルの改善に組み込まれていくことが期待される。認知症予防を推進していくうえで、コミュニティの関与を妨げる潜在的な問題を解決することは、認知症予防へのアクセスや実現の可能性を最大化するために重要である。オーストラリア・認知症研究連携センター(DCRC)のNikki-Anne Wilson氏らは、認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する現在の考えおよび問題点を調査した。その結果、認知症のリスク軽減行動やスクリーニングに対する意欲が社会人口統計学的要因と有意に関連していることが明らかとなった。Alzheimer's Research & Therapy誌2023年4月10日号の報告。 対象は、オーストラリア最大の有料データ分析サービス(ORIMA)から提供された18歳以上の成人607人。他の一般的な健康状態と比較した認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する現在の考えおよび問題点を調査するため、54項目の多肢選択式調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・認知症のリスク軽減行動に対する重大な問題は、経済的要因(p=0.009)、モチベーションの低さ(p=0.043)、時間不足(p≦0.0001)であった。・時間不足は、高齢者よりも若年者で高く(p≦0.0001)、女性は男性よりも経済的要因(p=0.019)、モチベーションの低さ(p=0.043)を報告する可能性が高かった。・二項ロジスティック回帰では、認知症検査の各手法を希望する意欲は、性別、年齢、社会経済性により大きな影響を受けることが明らかとなった。 【性別】遺伝子検査(p=0.012)、唾液検査(p=0.038)、修正可能なリスク因子のスクリーニング(p=0.003) 【年齢】認知機能検査(p≦0.0001)、血液検査(p=0.010) 【社会経済性】網膜イメージング(p=0.042)、修正可能なリスク因子のスクリーニング(p=0.019)・回答者の65%以上が、少なくとも1つの非認知症の健康状態のリスク軽減について十分な情報を得ていると感じたのに対し、認知症の場合は30.5%でした。・本調査結果は、認知症発症リスクの高い人を特定するための潜在的な手法へのアクセスや実現可能性に関する知見を示しているだけでなく、生涯にわたる認知症のリスク軽減行動への関与を、より適切に推進、サポートしていく必要性を示唆している。

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進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。 そこで、本試験は複数治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん患者におけるHER3-DXdの予測因子を明らかにすることを目的として現在行われている。データカットオフは2023年2月15日で、今回は3ヵ月奏効率と安全性データが報告された。なお、IHCでのHER3発現状況の登録は、2022年4月21日より削除された。・対象:CDK4/6阻害薬+内分泌療法歴、1ラインの化学療法歴のあるHR+/HER2-またはHER2低発現の進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移を有する乳がん)患者・試験群:HER3-DXd 5.6mg/kg 3週間ごとに静脈内投与(治療前、治療中、治療終了時に腫瘍生検) ・評価項目:[主要評価項目]奏効率[副次評価項目]無増悪生存期間、奏効期間、クリニカルベネフィット率、全生存期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフの時点で85例の患者が試験に参加し、うち56例が評価可能であった。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値56歳(範囲:28~82歳)、全例が女性、HER3+が51.8%、前治療のライン数中央値2(範囲:1~4)、HER3-DXdのサイクル数中央値8(範囲:1~20)であった。・3ヵ月奏効率は、部分奏効が28.6%(16例)、病勢安定が53.6%(30例)、進行が17.8%(10例)であった。・HER3-DXd投与1~2サイクル後に、主にHER3+のCTC数の中央値が減少した。・HER3-のCTC数と治療効果に関連はなく、病勢進行時もHER3-のCTC数の増加はみられなかった。・ベースライン時のHER3+のCTC数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったが、統計学的な有意差は認められなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は100%に生じ、多かったものは疲労89.3%、悪心75.0%、下痢46.4%、脱毛44.6、便秘26.8%であった。Grade3以上のTRAEは48.2%で、疲労14.3%、悪心3.6%、下痢3.6%、便秘5.3%であった。間質性肺疾患は1例(1.8%)報告された。 ICARUS BREAST01試験は現在も進行中であり、さらなる有効性と効果予測因子の解析が行われる予定である。

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