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第173回 兵庫で起こった2つの“事件”を考察する(前編) 神戸徳洲会病院カテーテル事故と「脳外科医 竹田くん」

従来保険証の廃止時期の判断を今年秋以降に先送りこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。8月4日、岸田 文雄首相は2024年秋に健康保険証を廃止して「マイナ保険証」に移行することを巡り、廃止時期の判断を今年秋以降に先送りする考えを示しました。そして、2024年秋以降にマイナ保険証を持たないすべての人を対象に、保険診療を受けられる資格確認書を配布する方針も示しました。資格確認書は当初の計画から変わって、最長5年まで利用できるようにするとのことです。いやはや、相変わらず煮え切らない対応ですね。マイナ保険証については、本連載でも何度も取り上げてきました(「第125回 医療DXの要『マイナ保険証』定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」、「第132回 健康保険証のマイナンバーカードへの一体化が正式決定、『懸念』発言続く日医は「医療情報プラットフォーム」が怖い?」)。マイナ保険証によって政府が実現しようとしている医療DXは、岸田政権の肝とも言える政策のはずです。行政のデジタル化が海外に比べ圧倒的に遅れている日本において、マイナ保険証を突破口に、医療分野での DXを一気に進めようとした矢先のトラブル頻発です。しかし、デジタル(マイナ保険証)とアナログ(資格確認書)を混在させた制度ほど、時間とムダが発生するものはありません。それを5年も続けるとは…。どうして「廃止時期は延期しない!なぜならば…」と国民にわかりやすくきちんと説明できないのでしょうか。DX推進より自分の地位が大事だとしたら、国のリーダー失格ですね。さて、今回は7月に兵庫県で起こった2つのある“事件”について書いてみたいと思います。一見、まったく無関係のように見えますが、これからの地域医療を考える上では、なかなか興味深い“事件”です。神戸徳洲会病院、カテーテル事故で3度の立ち入り検査最初の“事件”は、全国規模で大々的に報道された、徳洲会グループの医療法人徳洲会・神戸徳洲会病院におけるカテーテル事故です。神戸市は、同病院でカテーテル治療や検査を受けた患者が死亡するなどとした告発に関連して、7月28日、3度目の立ち入り検査を行いました。ことの発端は、6月30日に神戸市に届いた病院関係者とみられる人物からの告発文でした。神戸新聞等の報道によれば、告発文は、今年1月に赴任した循環器内科の男性医師が心臓病患者や透析患者らにカテーテル手術を行い6人が死亡、別の5人も容体が悪化した、とするものでした。告発文には必要のない手術が施されたり、院内の医療安全担当者へ患者死亡事例が未報告だったりしたことも記されていたそうです。告発された男性医師は今年1月に同病院循環器内科に赴任したばかりで、心臓疾患患者や透析患者らを対象とする造影検査やカテーテル手術に月40件ほど携わっていたとのことです。この告発を受け、神戸市は7月5日に最初の立ち入り検査を行いました。その事実が明らかになったことで、マスコミがこの事件を一斉に報道しました。その後、7月10日に2度目の立ち入り検査が、そして7月28日に3度目の立ち入り検査が行われたというわけです。循環器内科のカテーテル室の業務を実質的に1人で担う神戸徳洲会病院を管轄する保健所が神戸市の設置・運営のため、医療法第25条第1項に基づいて神戸市の立ち入り検査が行われました。立ち入り検査では、医療法に則って安全管理の体制や人員配置の状況などが検査され、必要に応じて行政指導が行われます。報道等によれば、男性医師が循環器内科のカテーテル室の業務を実質的に1人で担っていた可能性があるそうです。神戸市は安全管理体制に問題があったとみて、8月中にも同病院を行政指導する方針とのことです。なお、同病院は当初、マスコミへの取材に対し「医療事故ではない」と答えていました。しかし、7月14日開いた院内の医療安全調査委員会でカテーテル治療が適切だったかを検証した結果、同日開いた記者会見で「死亡した2人の患者については医療事故だった」と認めました。8月4日付のNHKの報道によれば、神戸徳洲会病院は、今年1月と2月に死亡した患者2人について、国の医療事故調査制度に基づき、第三者機関に検証を依頼する方針を固めたとのことです。「脳外科医 竹田くん」との共通点医療事故、医療ミスについては、医療者側が相当悪質と思われるケースであっても、警察が介入するケースは稀で、医療事故調査・支援センター対応の事案になります。2004年に起きた福島県立大野病院事件(帝王切開手術を受けた産婦が死亡したことに対して、手術を執刀した産婦人科医が業務上過失致死罪と異状死の届出義務違反の疑いで福島県警に逮捕された事件。2008年8月福島地方裁判所はこの医師に無罪の判決を下し、検察は控訴断念)の反省を踏まえての対応と言えますが、仮に「必要がないのに手術が施された」のが事実だとすれば、患者や家族にとってはたまったものではありません。この事件が報道されて以降、ネットの世界では、「1人の無謀な医師による度重なる事故」ということで漫画「脳外科医 竹田くん」1)との共通点を指摘する声が上がり、医療関係者の間でも話題となっています。「脳外科医 竹田くん」は「はてなブログ」上で2023年1月から始まった連載漫画で、経験不足ながら自信だけは満々で、次々と重大な医療ミスを起こす竹田くんと、彼を厳しく指導できない部長やミスを隠蔽しようとする院長が登場します。某病院(漫画では仮名の「赤池市民病院」となっています)を舞台としたリアルな内部告発とも受け取れるこの漫画、読んで「他人事ではないな」と思った医師も少なくないのではないでしょうか。300床クラスの中規模病院の急性期機能が転換期に神戸徳洲会病院のカテーテル事故がどういう経緯で起き、原因は何だったかについては、調査結果を待たなければわかりません。ですが、一点私が気になったのは、同病院の病床規模と体制です。果たして、カテーテル手術を安全にできる技量を持った医師が揃っていたのでしょうか。同病院は309床(一般病棟230床、地域包括ケア病棟40床、医療療養型病棟39床)、7対1看護の病院です。急性期病院に見えますが、地域包括ケア病棟、医療療養型病棟もあることから、ガチガチの超急性期病院とはいえません。ホームページを見ると診療科は17科ほどあります。同病院のカテーテル治療の実績がどれくらいあったかはわかりませんが、報道にあったように仮に赴任したばかりの「男性医師が循環器内科のカテーテル室の業務を実質的に1人で担っていた」のが事実だとすれば、この医師の赴任前はほとんど行われておらず、できる医師もいなかった可能性があります。以下、個人的な印象ですが、全国で病院の再編・統合が進み、500床以上の規模の大病院が続々と誕生する中、300床クラスの中規模病院の急性期機能が転換期にあると感じています。とくに地方都市の公立・公的病院がこの規模であることが多く、手術ができる医師集めに四苦八苦しているところが少なくありません。なお、100~200床クラスの病院はよほどの専門病院でない限り、慢性期、回復期、地域包括ケア病棟などに方向転換しています。神戸徳洲会病院のケースは、医師数も今ひとつ、患者数も今ひとつ、症例数も今ひとつ、病床数も今ひとつの中、慢性期や回復期病院に舵を切ることもできず、ダラダラと急性期病院を続けていた中で起こった事故だったと言えるかもしれません。そう言えば、漫画「脳外科医 竹田くん」が働く赤池市民病院のモデルとなったと思しき病院も兵庫県の病院で、病床数は356床です。「脳外科医 竹田くん」には、医局に属さないフリーの医師・竹田くんを採用することに不安を感じている院長に対し、部長が「後継者として育てたい」と語るシーンがあります。医師紹介業者経由などで大学医局に属さない医師を採用するのは、医師不足に悩む病院ではよくある話です。しかし、中途半端な規模の急性期病院にわざわざやってくる、医局人事から離れた外科医の象徴が“竹田くん”だと考えると、なかなか怖い話ではあります。三田市民病院の神戸移転が白紙撤回にさて、7月に兵庫県で起こったもう一つの“事件”を紹介します。それは、7月23日に行われた兵庫県の三田市長選です。政党や団体の支援は受けなかった元銀行員の田村 克也氏(57)が、無所属現職、無所属新人を破って初当選しました。この選挙の最大の争点は三田市民病院の再編・統合問題でした。経営状態の悪化や施設の老朽化などから、三田市民病院と神戸市北区にある済生会兵庫県病院を統合して、神戸市側に新しい病院を建設する計画が進んでいたのですが、「市民病院の神戸移転は白紙撤回」を訴えた田村氏が当選したことで、計画の全面見直しが濃厚となりました。交付税をしこたま使い、済生会のお金も使い、しかも今よりも充実した体制、設備の病院ができるはずだったのに、市民の「病院は三田市内で」という時代遅れとも言えるこだわりが勝ってしまいました。果たして、これは本当に正しい選択だったのでしょうか。元銀行員の田村新市長は市の財政のことをしっかりと考えたのでしょうか。やはり300床規模で経営状況も決して好調とは言えない三田市民病院について、次回は考えてみたいと思います。(この項続く)参考1)脳外科医 竹田くん/はてなブログ

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CVDの1次予防、6ヵ月の菜食は薬物治療に引けを取らない

 一般集団において、肉類を摂取しない菜食生活は心血管代謝リスクを改善することが報告されているが、心血管疾患(CVD)リスクが高い人における効果は結論が出ていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のTian Wang氏らが、CVD高リスク者やCVD患者を対象に菜食生活と主要な心血管代謝リスク因子との関連についてメタ解析を実施した結果、6ヵ月間の菜食生活は、CVD高リスク者では有意なLDL-コレステロール(LDL-C)やHbA1c、体重の改善と関連していたことを発表した。JAMA Network Open誌2023年7月25日号の報告。 研究グループは、Embase、MEDLINE、CINAHL、CENTRALを用いて、菜食生活を行ったCVD患者または2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスクの成人において、LDL-CやHbA1c、収縮期血圧などを測定したランダム化比較試験を検索した。なお、菜食には、乳卵菜食(肉類は食べないが、卵や乳製品は許容)、乳菜食(肉類や卵は食べないが、乳製品は許容)、ヴィーガン(動物由来の食品はすべて食べない)が含まれていた。 主要アウトカムはLDL-C、HbA1c、収縮期血圧の変化(介入前と介入後)の群間差の平均で、副次的アウトカムは体重とエネルギー摂取量の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・1,878例を含む20件の試験が解析に組み込まれた。平均介入期間は25.4週間(範囲:2~24ヵ月)であった。CVD患者を対象とした試験は4件、糖尿病患者を対象とした試験は7件、2つ以上のCVDリスク因子を有する高リスク者を対象とした試験は9件であった。・菜食生活を平均6ヵ月間行うことで、LDL-Cが6.6mg/dL(95%信頼区間[CI]:-10.1~-3.1)、HbA1cが0.24%(95%CI:-0.40~-0.07)、体重が3.4kg(95%CI:-4.9~-2.0)減少した。・菜食と収縮期血圧との関連は有意ではなかった(-0.1mmHg、95%CI:-2.8~2.6)。・GRADE評価によるエビデンスの質は、LDL-CとHbA1cの減少については「中」であった。 これらの結果より、研究グループは「菜食生活は、CVDのリスクが高い人において、標準治療を上回るLDL-C、HbA1c、体重の有意な改善と関連していた。CVD患者における健康的な菜食生活の効果を明らかにするためには、さらなる質の高い試験が必要である」とまとめた。

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慢性片頭痛の診断率~6ヵ国の比較

 米国・アッヴィのAubrey Manack Adams氏らは、世界6ヵ国における慢性片頭痛患者の評価に基づいた詳細調査を実施した。その結果、6ヵ国ともに、片頭痛の過小診断の割合が高いことが示唆された。Cephalalgia誌2023年6月号の報告。 カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国において、Webベースの横断的観察コホート研究を実施した。最初のスクリーニング調査では、代表的なサンプルより一般的な健康管理情報を収集し、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)基準に基づき片頭痛の有病率を特定した。検証済みの片頭痛特有の評価に基づき詳細調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング調査に回答した9万613人中1万4,492人が片頭痛基準を満たしていた。・片頭痛基準を満たした人の平均年齢は、40~42歳であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数の中央値の範囲は2.33~3.33日であり、中等度から重度の片頭痛(頭痛障害度評価尺度:MIDAS基準)の割合は、日本の30%からドイツの52%の範囲であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上であった割合は、フランスの5.4%から日本の9.5%の範囲であった。・片頭痛基準を満たした人の診断率は、半数未満であった。

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進行NSCLC、治療開始前に遺伝子検査結果があるとOS良好

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者において、がん遺伝子検査が推奨されているが、1次治療開始前における遺伝子検査の結果の有無と全生存期間(OS)との関連は明らかになっていない。そこで、米国・ペンシルベニア大学のCharu Aggarwal氏らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC患者を対象に、1次治療開始前における遺伝子パネル検査の結果の有無とOSとの関連を検討した。その結果、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られている患者はOSが良好であり、分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、同様の結果が得られた。本研究結果は、JCO Precision Oncology誌2023年7月27日号で報告された。 転移を有する非扁平上皮NSCLCと新たに診断された患者を対象に、電子カルテを用いた研究を実施した。対象患者を1次治療開始前に、遺伝子パネル検査の結果が得られた患者(検査結果あり群)と結果が得られなかった患者(検査結果なし群)に分け、OSを比較した。また、1次治療開始前における遺伝子パネル検査結果の有無について、組織検体と血漿検体を用いた場合と組織検体のみを用いた場合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者326例中、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られたのは80%(261例)、得られなかったのは20%(65例)であった。検査結果が得られなかった65例のうち、5例は遺伝子パネル検査を受けていなかった。・追跡期間中央値14.2ヵ月において、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(調整ハザード比:0.43、95%信頼区間[CI]:0.30~0.62、p<0.0001)。・分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(p<0.0001、log-rank検定)。・組織検体と血漿検体を用いて遺伝子検査を行った患者は、組織検体のみの患者と比較して、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られる割合が高かった(調整オッズ比:2.06、95%CI:1.09~3.90、p=0.026)。 本研究結果について、著者らは「1次治療を開始する前に、がんゲノムプロファイリングを完了すべきであることを示すものである」とまとめた。

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経口CGRP受容体拮抗薬atogepant、慢性片頭痛の予防に有望/Lancet

 慢性片頭痛の予防治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬atogepantはプラセボと比較して、12週の治療期間における1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(MMD)に関して臨床的に意義のある抑制効果を示すとともに、安全性プロファイルも良好で既知のものと一致することが、スペイン・バルセロナ自治大学のPatricia Pozo-Rosich氏らが実施した「PROGRESS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月26日号で報告された。16の国と地域の無作為化プラセボ対照第III相試験 PROGRESS試験は、日本を含む16の国と地域の142施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月11日~2022年1月20日に参加者の適格性の評価が行われた(Allergan[現AbbVie]の助成を受けた)。 年齢18~80歳で、50歳以前に発症し、1年以上の病歴を有する慢性片頭痛の患者を、atogepant 30mg(1日2回)、同60mg(1日1回)、プラセボを経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正intent-to-treat(mITT)集団における12週の治療期間中の平均MMDの変化量であった。 778例を登録し、このうち773例(安全性評価集団、atogepant 30mg群255例、同60mg群257例、プラセボ群261例)が実際に試験薬の投与を受け、755例(253例、256例、246例)がmITT集団に含まれた。臨床的に意義のある体重減少効果の可能性も 安全性評価集団の平均年齢は42.1歳、88%が女性、59%が白人で、平均罹患期間は21.4(SD 12.2)年、平均MMDは16.0(5.9)日であり、83%に予防薬の使用歴があった。mITT集団におけるベースラインの平均MMDは、30mg群が18.6(SE 5.1)日、60mg群が19.2(5.3)日、プラセボ群は18.9(4.8)日だった。 12週の治療期間におけるmITT集団でのベースラインからのMMDの変化量は、atogepant 30mg群が-7.5(SE 0.4)日、同60mg群が-6.9(0.4)日、プラセボ群が-5.1(0.4)日であった。プラセボ群との最小二乗平均差は、atogepant 30mg群が-2.4(95%信頼区間[CI]:-3.5~-1.3、p<0.0001)、同60mg群が-1.8(-2.9~-0.8、p=0.0009)であり、いずれもatogepant群で有意に優れた。 atogepant群で最も頻度の高い有害事象は、便秘(30mg群10.9%、60mg群10%、プラセボ群3%)と、吐き気(8%、10%、4%)であった。重篤な治療関連有害事象は、30mg群が2%、60mg群が3%、プラセボ群が1%で、投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ5%、3%、4%で発現した。 また、臨床的に有意義な可能性のある体重減少(ベースライン以降の任意の評価時点で7%以上の減少)が、各治療群で観察された(30mg群6%、60mg群6%、プラセボ群2%)。 著者は、「本試験の知見は、atogepantの有益性を慢性片頭痛にも拡大するものである。これにより、慢性片頭痛における初のCGRPを標的とする有効で忍容性が良好な経口予防薬の選択肢が確立された」としている。

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「minor nondisabling acute ischemic stroke」?(解説:後藤信哉氏)

 本記事の解説を依頼されたが、循環器内科医なので「minor nondisabling acute ischemic stroke」を感覚的にイメージできない。自分も高齢になっているので、「ふらつき」「しびれ」などを自覚することがある。もし、受診してMRIを受け、急性期の脳梗塞の小さな所見があれば「minor nondisabling acute ischemic stroke」なのだろうか? t-PAなどの線溶薬と抗血小板薬の出血リスクの差異については臨床的感覚がある。片側の片麻痺などの明確な症候性脳梗塞であればt-PA治療を受けたい。しかし、minor nondisabling acute ischemic strokeならば感覚的にt-PAを受けたくない。ヒトの身体は複雑な調節系なのでt-PAにより線溶を亢進させれば、逆に血栓性が亢進するリスクもある。出血も心配である。しかし、臨床的感覚には科学性がないので、自分と異なる感覚を有している臨床医もいるかもしれない。 本研究はオープンラベルであるがランダム化比較試験である。発症後4.5時間以内の急性脳梗塞であってもminor nondisabling acute ischemic strokeであれば、t-PA治療でなく抗血小板併用療法をしても3ヵ月の神経学的予後には差がなかった。自分の感覚がランダム化比較試験にて検証されてよかった。臨床医の直感を人工知能などとの併用により科学的にできれば、ランダム化比較試験をせずとも科学的な根拠を提供できる時代が来るかもしれないと期待している。

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日薬版お薬手帳リニューアルのドタバタ劇【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第115回

電子お薬手帳はここ最近あまり話題になることはなく、どの電子お薬手帳の事業者と契約するかを悩んだのはもう何年前だろう…という遠い記憶になりつつあります。これは電子お薬手帳が一定の患者さんに継続的に利用され、実際の運用が落ち着いている証拠だろうと感じていましたが、その電子お薬手帳について動きがありました。日本薬剤師会は2023年7月26日の都道府県会長協議会で、電子お薬手帳のスマートフォンアプリ「eお薬手帳3.0」について、公開開始した23年7月3日から19日で約180薬局から申し込みがあったと発表した。また同アプリには、23年内を目標にオンライン服薬指導機能を実装する予定だ。(2023年7月31日付 日経DIオンライン)日本薬剤師会が提供する電子お薬手帳が変更になりました。以前より日本薬剤師会は、NTTドコモ(以下、ドコモ)と電子お薬手帳「おくすり手帳Link」を共同で開発・提供していました。しかし、2022年6月頃にそのおくすり手帳Linkを終了するとの連絡がドコモの決定事項として報告され、一方的にドコモから開発とサービス提供の中止が告げられたことが報じられています。これには日本薬剤師会側はかなりご立腹だったようですが、この一方的な決定は覆ることはなく、新しくファルモの電子お薬手帳「eお薬手帳3.0」が選ばれたことが発表され、7月3日に公開開始されました。約2週間で180件が登録しているというのは、よい数字ではないでしょうか。ドコモは2021年4月にオンライン診療システムを手掛けるメドレーとの資本業務提携を発表しており、同年12月からオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」の共同運営を開始しています。ドコモは、CLINICSの運営に加わったことで「経営資源を一本化した」と報じられています。日本薬剤師会は「基本合意がなされていると思っていた」ということですが、すっかり振られてしまった形になっただけでなく、踏み台にされてしまったようにも感じます。ドコモによる現行の電子お薬手帳は、2024年6月末にすべてのサービスやサポートが終了する予定です。約1年間に薬局や個人でデータ移行してくださいね、という案内が出ていますが、マイナンバーカードを読み込ませるなどの対応が結構大変なので、できたら自動でデータ移行してほしいなと思います。このドコモの電子お薬手帳の契約薬局数は、3,000軒とも5,500軒とも報じられています。現在、全国の薬局数が約6万軒ですから、1割にも満たないのかと意外な気もします。たくさんの業務がある中で、薬剤服用歴管理指導料の加算の要件として問題のない電子お薬手帳を選ぶ際に、日本薬剤師会のお墨付きは強いと感じましたが、実はそうでもないのかもしれません。それではドコモも手を引くかも…という気もします。電子お薬手帳は、電子処方箋やオンライン服薬指導との連携などが期待されていますが、マイナポータルの習熟度やドコモのような大きな企業の動きによってはまた状況が変わるかもしれません。加算の算定要件、というだけで事業者選定を急いだ記憶がありますが、使い勝手や今後の発展について本当は落ち着いて吟味したいところです。現在の情報の中で事業者変更のメリットがあるとすれば、ファルモが提供する「eお薬手帳3.0」のサービス利用料は初期費用1万円、年額費用1万5,000円(ともに税別)で、既存システムの半額程度に設定されているという点でしょうか。そして、もともと電子お薬手帳のサービスを提供している会社なので、おそらくドコモのような急な撤退はないでしょう。ファルモの「eお薬手帳3.0」に期待したいと思います。

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英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?【1分★医療英語】第92回

第92回 英語で「妊娠している可能性はありますか?」は?Is there any possibility that you may be pregnant now?(現在、妊娠している可能性はありますか?)No, I’m not pregnant.(いいえ、妊娠していません)《例文1》Have you ever been pregnant before?(これまでに妊娠したことはありますか?)《例文2》She is expecting.(彼女は妊娠しています)《解説》女性の患者さんに画像検査や処方を行う際、妊娠の可能性について聞く必要がありますが、英語ではどのように聞けばよいでしょうか。こういったときは、“pregnant”(妊娠している)という形容詞を使うと便利です。最もシンプルな表現としては、“Are you pregnant now?”(現在、妊娠していますか?)と聞くことができます。とはいえ、本人に妊娠の自覚がない場合でも妊娠している可能性があるため、“Is there any possibility that you may be pregnant now?”(現在、妊娠している可能性はありますか?)といった丁寧な表現で聞くことが望ましいでしょう。また、妊娠を表す他の単語としては、“expect”(期待する、予期する)という動詞を使って“She is expecting.”という表現を使うこともあります。これは“She is expecting a baby.”を略したもので、「子供を期待している」、つまりは「妊娠している」「出産を控えている」という意味になるのです。講師紹介

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ChatGPTの基本的な使い方【医療者のためのAI活用術】第2回

(1)ChatGPTの登録方法ChatGPTの使用方法は非常にシンプルです。まずは、ウェブサイトにアクセスし、会員登録を行います。登録した後は、チャット上で文章を入力すると、AIからの回答を得ることができます。ChatGPTは多言語に対応しており、日本語で入力すれば日本語で、英語で入力すれば英語で回答が返ってきます。なお、ChatGPTでは入力した情報がAIの学習のために利用される場合があります。自分が入力した情報をAIが学習しないようにしたいという方は、情報の利用に関して「オプトアウト」の設定をしておくことをおすすめします。図1に方法を示しています。Settingsの中のData controlsをクリックし、Chat history & trainingの項目をオフにしておくことでオプトアウトが可能です。(図1)オプトアウトの設定方法(2)無料版と有料版の違いChatGPTは月額20ドル(2023年8月時点)で有料会員になることもできます。無料版と有料版の違いを表1にまとめています。無料版ではGPT-3.5の言語モデルを使用でき、応答速度も標準です。一方、有料版ではGPT-3.5と、より高機能なGPT-4.0の両方のモデルを使用することができるため、無料版よりも質の高い回答を得ることができます。また混雑時でも利用可能で、応答時間も無料版よりも短いのが特徴です。さらに、ChatGPTのプラグインなど最新の機能が出た場合に、有料版のユーザーは優先的に利用できるという特典もあります。無料版でも基本的な機能はすべて利用可能なため、ChatGPTを試したことがないという方は、まずは無料版を試し、使用する頻度が多ければ有料会員になることをおすすめします。(表1)無料版と有料版の料金、機能の違い(3)プロンプトとはChatGPTのチャット画面で入力する、AIに対する指示文のことを「プロンプト」といいます。ChatGPTではこのプロンプトの入力により得られる回答の質が大きく異なります。ChatGPTを使用したことがある方の中には、「使用したものの思ったような回答が得られなかった」という経験がある方がいるかもしれません。またSNS上では、しばしばChatGPTが役に立たなかったという旨の投稿や動画が散見されます。それらの理由の大半はプロンプトが不適切であることや、使い方が間違っていること(例:情報の検索目的で使用している)が原因です。逆に言えば、AIから得たい回答を引き出すための適切なプロンプトの入力は、ChatGPTを活用するための必須のスキルと言えます。このスキルの重要性は最近注目されており、AIから優れた答えを引き出す「プロンプトエンジニア」という専門職も生まれているほどです。(4)深津式プロンプトでは、どのようなプロンプトを使用するのが良いのでしょうか。ChatGPTの登場以降、さまざまなプロンプトのテンプレートがこれまで提案されていますが、最も有名なものの1つが、「深津式プロンプト」と呼ばれるものです。これはnoteという会社のCXO(Chief x officer)を務める深津 貴之氏がChatGPTの活用方法についてYouTube上でレクチャーを行っており、そこで紹介された手法です1)。この方法はすでに広く活用されており、医療分野での応用も可能です。深津氏はプロンプトを入力する際には以下の点が重要であることを述べています。1)役割を明確にする2)入力から出力を作ることを明確にする3)何を出力するかを明確にする4)マークアップ言語(ハッシュタグなど)を用いて、本文でない部分を明確にする5)命令を箇条書きで明快にする6)さまざまなワードで、AIの出力しうる空間を、積極的に狭くしていくつまり、役割を与えたうえで明確な指示を行い、なるべく要求を細かく限定していくことで、求めたい出力を得ることができるのです。深津式プロンプトを用いてプロンプトを作成する場合におすすめしたいのが、以下のようなテンプレートです。#役割あなたは、プロの○○です#命令書例)以下の制約条件から、○○を出力してください。#制約条件例)出力は英語で行ってください。○○○#入力文○○○このように入力することで、ChatGPTが特定の分野のプロフェッショナルとして振る舞い、得たい回答を理想的な形式で出力してくれます。このテンプレートでは、制約条件の部分に箇条書きで要求を追加していくと、より細かく回答の調整をすることができます。また、元となる文章から要約や校正などをしてほしい場合には、#入力文の部分に文章を入力します。このプロンプトは汎用性が高く、英文校正や要約、アイデア出しなどさまざまな場面で活用できるため、ぜひ覚えておいてください。今後の連載ではこの深津式プロンプトを用いた具体的な活用法を紹介していきます。参考1)note. 「あなたの仕事が劇的に変わる!? ChatGPT使いこなし最前線」. (2023年6月24日参照)

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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国試予備校・映像講義選びのポイントは?【医学生お悩み相談ラヂオ】第3回

動画解説第3回は、医学部3年の女性からのお悩み。医師国家試験に向けて大学の講義だけでなく、試験対策専門の予備校や映像講義を受講すべきかどうか、という質問。また、どの予備校、教材を選ぶ基準などがあれば教えてほしいとのこと。現役予備校講師でもあるDrえどの回答は?

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アスピリンは健康な高齢者ではむしろ副作用のリスク増

 低用量アスピリンは脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学のGeoffrey C. Cloud氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年7月26日号に掲載された。高齢者に対してはアスピリン使用の副作用にとくに配慮する必要 この報告は、高齢者における低用量アスピリンの副作用リスクとベネフィットのバランスを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)の2次解析の結果である。参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者で、募集は2010~14年に行われた。追跡期間中央値は4.7(四分位範囲[IQR]:3.6~5.7)年で、本解析は2021年8月~2023年3月に行われた。 本試験における主要評価項目は、無障害生存期間(身体障害および認知症のない生存期間と定義)で、アスピリン群とプラセボ群で差はなかったことがすでに報告されている1)。今回報告された脳卒中および出血性イベントはあらかじめ設定された副次評価項目で、転帰は医療記録のレビューにより評価した。 高齢者における低用量アスピリンの副作用リスクとベネフィットのバランスを検討した主な結果は以下のとおり。・1万9,114例が登録され、女性1万782例(56.4%)、年齢中央値74(IQR:71.6~77.7)歳がアスピリン投与群(毎日100mg・9,525例)とプラセボ群(9,589例)に1対1で割り付けられた。・脳卒中を含む頭蓋内イベントの発生率は低く、追跡期間1,000人年あたり5.8人であった。・虚血性脳卒中は、アスピリン群146例(1.5%)、プラセボ群166例(1.7%)で発生し、両群のリスクに統計学的有意差はなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.71~1.11)。・出血性脳卒中は、アスピリン群49例(0.5%)、プラセボ群は37例(0.4%)で発生し、こちらも有意差は見られなかった(HR:1.33、95%CI:0.87~2.04)。・出血性脳卒中を含む頭蓋内出血の合計は、アスピリン群はプラセボ群より有意に増加していた(108例[1.1%]vs.79例[0.8%]、HR:1.38、95%CI:1.03~1.84)。 研究者らは「低用量アスピリンの連日投与による虚血性脳卒中の有意な減少は認められない一方で、頭蓋内出血は有意に増加していた。これらの所見は、転倒などで頭蓋内出血を発症しやすい高齢者に対しては、アスピリン使用にとくに配慮する必要があることを示すものだ」としている。

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不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている1,2)。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。新型コロナの抗菌薬処方の傾向についてJAMDASを用いて解析 2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。 JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。 本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

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酷暑の夏に常時日傘や帽子を携帯する人は3割弱/アイスタット

 2023年の夏は、7月から全国で最高気温を更新するなど例年以上の暑さをみせている。そのため熱中症による救急搬送の増加や暑さに起因する疾病、死亡が連日報道されている。酷暑の夏、一般の人々は「暑さ」にどのような対策をしているのだろうか。株式会社アイスタットは7月20日に「夏の暑さ対策」に関するアンケートを行った。アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~59歳の300人が対象。調査概要形式:Webアンケート形式調査期間:2023年7月20日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~59歳、有職者)アンケート概要〔夏の暑さ対策、“常に対策”しているものは?〕第1位 エアコンの使用で、冷房設定温度は26℃以上第2位 1日3食の食事を常に食べている第3位 屋内・屋外での何らかの暑さ対策を常に心がけている最下位(第8位) 外出時に携帯用の扇風機や扇子・うちわを常に持ち歩いている〔夏の暑さ対策(8項目)で、「常に対策している」の回答が1つもなかった人の特徴で多かったもの〕「20代・30代」「男性」「既婚」「北海道・東北地方」「今シーズン、夏バテ・嘔吐・頭痛・熱中症の症状を経験していない人」暑さ対策に5割以上の人が冷感グッズやネックバンドを利用せず 質問で「夏の暑さ対策」について8項目を聞いた(単回答、多い順)。(1)冷房設定温度 26℃以上(59.3%)、26℃未満(25.7%)、使用しない(15.0%)(2)1日3食の食事 常に食べる(50.3%)、時と場合により食べる(30.3%)、まったく食べていない(19.3%)(3)屋内外で何らかの暑さ対策 時と場合により心がけている(56.3%)、常に心がけている(32.0%)、まったく心がけていない(11.7%)(4)外出時に500mL以上の水分を摂取 時と場合により摂取している(56.0%)、常に摂取している(29.3%)、まったく摂取していない(14.7%)(5)外出時に帽子・日傘 まったく使用していない(37.0%)、時と場合により使用している(35.0%)、常に使用している(28.0%)(6)暑い日は不要不急の外出を控える 時と場合により控える(63.3%)、まったく控えない(19.7%)、常に控える(17.0%)(7)外出時にクールネックバンドや冷感グッズ、汗拭きシート まったく利用していない(54.3%)、時と場合により利用している(36.3%)、常に利用している(9.3%)(8)外出時に携帯用の扇風機や扇子、うちわ 常に持ち歩いていない(68.7%)、時と場合により持ち歩いている(22.7%)、常に持ち歩いている(8.7%) 質問で「今シーズン、4項目で自分自身に該当するもの」(複数回答)を聞いたところ、「あてはまるものはない」が63.7%、「夏バテの症状が1回以上ある」が24.0%、「暑さが原因と思われる嘔吐・頭痛の症状が1回以上ある」が15.7%、「熱中症と判断されたことがある」が4.3%の順で多かった。また、年代別でみると、「夏バテ」「嘔吐・頭痛」「熱中症」の症状を経験している人は「20代・30代」ほど多い結果だった。 そのほか夏の暑さ対策の質問で「常に」を回答した人の項目を作成し、属性別に解析したところ次のような結果がえられた。・年代別で解析「暑い日は不要不急の外出を控える」を回答した人は「20代・30代」で多く、「冷房設定温度(26℃以上)」「外出時に500mL以上の水分を摂取」を回答した人は「50代」で多かった。それ以外の5個の内容は「40代」で多かった。・「常に」と回答した該当者で解析「熱中症と判断された」を回答した人ほど「常に」実施している内容(項目)が多かった。・対策頻度で解析(「常に」の回答が1つもない人)「20代・30代」「男性」「既婚」「北海道・東北地方」「今シーズン、夏バテ・嘔吐・頭痛・熱中症の症状を経験していない人」ほど多かった。回答属性から暑さ対策へ積極的なのは「女性」「今シーズンすでに熱中症あり」 以下に属性別の集計から読み取れた項目を示す。(1)「エアコンを使用するときの冷房設定温度について」 26℃以上に設定している人は「50代」「女性」「既婚」「近畿地方」「暑さが原因の嘔吐・頭痛が1回以上」で多い傾向。(2)「1日3食(朝、昼、晩)、常に食事をとっているか」 常に食べている人は「40代」「女性」「既婚」「中部地方」「熱中症と診断されたことがある」で多い傾向。(3)「屋内・屋外で常に何らかの暑さ対策を心がけているか」 「40代」「女性」「既婚」「近畿地方」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。(4)「外出するときまたは屋外で、常に500mL以上の水分(ペットボトル1本程度)を摂取しているか」 「50代」「女性」「未婚」「関東地方」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。(5)「外出時または屋外で、常に帽子をかぶったり、日傘を使用しているか」 「40代」「女性」「未婚」「近畿地方」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。(6)「猛暑日・真夏日・暑い日は、常に不要不急の外出を控えているかについて」 「20・30代」「女性」「未婚」「四国・中国・九州地方・沖縄」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。(7)「外出する時または屋外で、常にクールネックバンドや冷感グッズ、汗拭きシートなどを利用しているかについて」 「40代」「女性」「既婚」「関東地方」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。(8)「外出するときまたは屋外で、常に携帯用の扇風機(ハンディファン、首かけ用など)や扇子、うちわを持ち歩いているかについて」 「40代」「女性」「既婚」「関東地方」「熱中症と判断されたことがある」で多い傾向。 以上から、暑さ対策では、「女性」で「熱中症と判断されたことがある」の項目をもった人が常に対策を行っていることが判明した。

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喘息の増悪発生に地域差/AZ

 アストラゼネカ(以下、AZ)は、喘息増悪の発生状況を地域別に検討した「Asthma heatmap研究」を実施し、喘息の増悪発生率に日本国内で地域差があることを初めて明らかにしたと発表した。本研究の結果を基に、地域の実情に即した喘息治療の適正化を目指した活動を実施していくとしている。 日本において、喘息に罹患している患者(小児を含む)は約800万人といわれている。喘息による死亡数は年々減少傾向にあり、2021年では1,038人と報告されている一方で、症状が残存する患者はいまだ残されており、患者の5~10%は従来の治療でコントロールできない重症喘息と推定されている。本研究では、複合アウトカム*で定義した喘息増悪が平均で100人年当たり39.87件生じており、その頻度に地域差があることが示された。都道府県別にみると、複合アウトカムに示された喘息増悪発生率は、最多の地域では最少の地域の6.7倍であった。*複合アウトカムの定義:入院、静注ステロイド、OCS(経口ステロイド:20mg以上/日の処方またはOCS10mg以上/日の増量)のすべて対象:基準日(2018年10月1日以前に喘息と診断され、かつ喘息関連薬を処方された最新の日)以前の1年間に4回以上ICS(吸入ステロイド)またはICS/LABAが処方されたICS継続投与喘息患者2万4,883例方法:保険データベースMedi-Scope(2016年10月1日~2019年12月31日までのデータ)を用いたレトロスペクティブコホート研究。フォローアップ期間(基準日以降の1年間)における地域別の喘息増悪発生率、およびベースライン期間(基準日以前の1年間)における患者背景因子と喘息増悪との関連を解析。 本研究結果から喘息増悪の地域差が明らかになったことを踏まえ、AZは日本呼吸器学会との共催、厚生労働省の後援の下、各地域で医師を対象とし、地域に根差した喘息増悪予防について検討するための講演会を順次実施している。講演会を地域別に行うことで、地域の特性に即した課題が医療関係者に共有され、治療の最適化や地域連携を通じての専門医への紹介等、地域の実情に根差した医療環境がより整うことを期待しているとし、今後、全国においてもオンラインにて全3回の講演会開催を予定している。AZは喘息領域において、適切な増悪予防と症状コントロールによって、患者が健康な人と変わらない生活を送ることを目指し、患者中心の医療へ今後も貢献していくとしている。

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日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

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コロナ異種ワクチンによる追加接種を支持するエビデンス/BMJ

 オミクロン株が優勢な時期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種では、プライマリ接種スケジュール(2回接種)や同種ブースター接種(3回)と比較して、異種ブースター接種(3回)はCOVID-19による入院や死亡の予防効果が優れていたことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年7月24日号に掲載された。3種のワクチンを比較する北欧のコホート研究 本研究は、北欧の4ヵ国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 対象は、初回接種時に年齢18歳以上で、2020年12月27日~2022年12月31日に、プライマリ接種スケジュールとして、AZD1222(アストラゼネカ製)、BNT162b2(1価、ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、あるいはこれらの任意の組み合わせで、少なくとも1回の接種を受けた集団であった。 主要アウトカムは、4ヵ国を合わせたCOVID-19関連入院とCOVID-19による死亡とした。フォローアップはブースター接種後14日目から75日間行い、相対的なワクチンの有効性を75日目の累積発生率を用いて(1-リスク比)として算出した。異種接種戦略を支持する新たなエビデンス 北欧4ヵ国全体で、108万6,418人がAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を、250万5,093人がBNT162b2+mRNA-1273による異種ブースター接種(3回)を受けた。 プライマリ接種(2回)のみと比較して異種ブースター接種は有効性に優れ、COVID-19関連入院の予防に関する有効性はAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が82.7%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.2)、BNT162b2+mRNA-1273は81.5%(78.9~84.2)であり、COVID-19による死亡の予防に関する有効性はそれぞれ95.9%(91.6~100.0)、87.5%(82.5~92.6)であった。 また、同種ブースター接種(BNT162b2またはmRNA-1273の3回接種)も同様に、プライマリ接種のみの場合に比べCOVID-19関連入院(≧76.5%)およびCOVID-19による死亡(≧84.1%)の予防効果の向上と関連が認められた。 異種ブースター接種を同種ブースター接種と比較すると、COVID-19関連入院の予防に関してはAZD1222+BNT162b2またはmRNA-1273が27.2%(95%CI:3.7~50.6)、BNT162b2+mRNA-1273が23.3%(15.8~30.8)で、COVID-19による死亡の予防ではそれぞれ21.7%(−8.3~51.7)、18.4%(−15.7~52.5)であり、小幅ながら異種ブースター接種で良好だった。 著者は、「COVID-19ワクチン接種は現在、異種接種スケジュールへの依存が高くなり、この傾向は今後も続くと考えられるが、本研究の結果はこの戦略を支持する新たなエビデンスを付け加えるものである」としている。

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第158回 コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省

<先週の動き>1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/大阪1.コロナ新規患者報告数、今後も感染拡大の見通し/厚労省厚生労働省は、8月4日に新型コロナウイルス感染症の発生状況(7/24~7/30)を公表した。その結果、5類移行後も11週連続で増加が継続し、直近では全国約5,000の定点医療機関1施設当たり15.91人と前週比1.14倍に増加していた。地域別の新規患者数は、42都府県で前週より増加傾向にあり、沖縄県では7月上旬以降、減少傾向がみられていた(沖縄県、前週比0.78)が、全国の年代別新規患者数は、10歳代を除きすべての年代で前週より増加傾向にある。定点医療機関の報告に基づく過去の推計値と比較すると、全国で感染者が約10万人に上っていた2022年11月中旬と同水準であり、感染症法上の分類が5類に移行したことで、感染者数は8.8倍となっており、とくに西日本で感染が急速に拡大、新規入院者数も増加していることが明らかになっている。新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長の脇田 隆字氏(国立感染症研究所長)は「今後も感染が拡大する」と見通しを公表し、「冷房中でもなるべく換気するように」と発言した。参考1)第124回 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(厚労省)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料等(第116回~)新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況の評価等2)コロナ新規患者報告数、42都府県で増加-厚労省が第30週の発生状況を公表(CB news)3)新型コロナ 感染警戒レベルの基準設定を検討 厚労省(毎日新聞)4)コロナ感染、定点あたり15人超 全国で1日10万人規模か(日経新聞)2.膨らみ続ける社会保障給付費、高齢化とコロナ対策で過去最高額に/厚労省厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、日本の社会保障給付費が2021(令和3)年度に過去最高の138兆7,000億円を記録したことを明らかにした。社会保障給付費の内訳は、年金(55兆8,151億円)、医療(47兆4,205億円)、介護・福祉(35兆5,076億円)。1人当たりの給付費は110万5,500円で、前年度と比べ5万7,400円、5.5%増加していたほか、国内総生産(GDP)比では25.2%と、初めて25%を超えていた。増加の原因として、高齢化による医療費の増加と新型コロナウイルスワクチン接種関連費用などのコロナ対策、子育て世帯への給付金などがあげられている。参考1)令和3(2021)年度 社会保障費用統計の集計結果を公表します(国立社会保障・人口問題研究所)2)社会保障給付費138兆円 コロナ影響で過去最高(産経新聞)3)社会保障給付費138兆円、過去最高 21年度(日経新聞)3.マイナンバーカード一体化続行、健康保険証の来秋廃止は延期に含み-岸田首相/政府岸田文雄総理大臣は、8月4日に記者会見を開き、2024年秋に予定されている健康保険証の廃止は当面は延期せず、マイナンバーカードの問題に対応する施策を続ける考えを示した。しかし、トラブルの総点検の結果によっては廃止を延期する可能性も示した。また、国民の不安を払拭するため、マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人には「資格確認書」を発行する方針を明らかにした。さらに、デジタル化を進めて国民がメリットを実感できるように広報にも力を入れると述べた。岸田首相は、総点検の中間報告を近く公表する予定。ただ、資格確認書を有資格者全員に交付することについては、多額のコストを要するとして効率化の批判が集まっている。参考1)岸田首相、健康保険証の廃止時期など「適切に対応」-延期に含み(CNET)2)岸田首相会見 “健康保険証廃止は当面維持 不安払拭に努力”(NHK)3)資格確認書、有資格者全員交付は多額のコスト 遠のく効率化(産経新聞)4)保険証、来秋廃止を維持 岸田首相「総点検踏まえ判断」(日経新聞)4.診療報酬改定時期が6月に変更、医療機関などの負担軽減を目指す/厚労省厚生労働省は、8月2日に中央社会保険医療協議会の総会を開き、2024年度以降の診療報酬の改定時期を、従来の4月から6月に変更することを提案し、了承された。診療報酬の改定内容が早く決まることで医療機関などが対応しやすくなるよう準備期間が長くなる。これまで改定の時期は4月で医療機関や薬局、システム改修業者は短期間で準備をしなければならず、負担が大きいとして改善を求める声があったため、厚労省では6月に後ろ倒しすることで負担軽減を図る方針。一方、薬価の改定はこれまで通り4月に実施される予定で、24年度以降も引き続き4月となる見込み。診療側の委員からは、診療報酬と薬価の2回の改定を行うことに対する医療現場への負担や影響についての懸念が示された。参考1)中央社会保険医療協議会 総会[第551回]議事次第(厚労省)2)診療報酬改定、来年度から「6月実施」へ 2カ月後ろ倒し(朝日新聞)3)診療報酬改定6月1日施行、24年度から 薬価改定は4月1日施行を維持(CB news)5.不正アクセスで患者情報が4万8千件以上流出/福岡福岡徳洲会病院は、第三者から不正アクセスを受け、データベースに保存されていた患者の個人情報について、最大で約4万8,983件が流出した可能性を明らかにした。病院の発表によると、流出した情報には、病名や検査値も含まれていたが、悪用は確認されていない。不正アクセスは今年4月4日に、職員が業務用のパソコンで外部のホームページを閲覧していた際に、警告画面に記載された電話番号に連絡して指示に従って操作したところ、パソコンが遠隔操作に切り替わり、金銭を要求されたとしている。同病院はただちにシステムを中止し、より高度なセキュリティー水準のシステムに切り替えている。病院は福岡県警や厚生労働省、個人情報保護委員会へ報告し、専門業者に調査を依頼している。対象の患者には個別に謝罪し、専用の相談窓口を設けて対応しているほか、「再発防止に向けて、管理体制の強化に努める」とコメントしている。参考1)不正アクセスによる個人情報流出の可能性についてお知らせとお詫び(福岡徳洲会病院)2)福岡徳洲会病院、患者情報4万8千件流出か データベースに不正アクセス(産経新聞)3)福岡徳洲会病院 個人情報など5万件余が一時閲覧可能な状態に(NHK)4)福岡徳洲会病院で患者などの個人情報5万件が流出か 不正アクセス受け病名や検査の値も(福岡放送)6.市民病院が経営難から来年3月に閉院へ/藤井寺市民病院大阪府藤井寺市は市立藤井寺市民病院(病床数98床)を、令和6年3月31日で閉院する基本方針案を公表し、市民からの意見を募集している。同病院は厚生労働省から再検証要請対象医療機関に挙げられ、総務省の公立病院改革ガイドラインに基づき、改革(経営)プランを策定してきたが、経常損益も5年度で約8億5千万円、6年度も約9億2千万円の赤字が見込まれている。藤井寺市は平成10年頃から施設の更新を検討してきたが、老朽化も進み、建て替えに多額の費用が必要とされ、さらに医師派遣の減少で診療に制限が出ており、赤字が続くことから、市民病院の経営継続は困難と判断され、閉院が避けられないと結論付けられた。市側は市民説明会を開催し、閉院後の小児科の入院診療機能、災害医療などの機能移転に向けて努めるとしている。なお、「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」に対するパブリックコメントの締め切りは8月16日まで。参考1)「市立藤井寺市民病院のあり方に関する基本方針」(案)についてパブリックコメントを実施します(藤井寺市)2)市民病院を来年3月に閉院案公表 大阪・藤井寺市(産経新聞)3)市民病院、経営難で3月に閉院へ 藤井寺市が方針(朝日新聞)

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血栓吸引療法前のワルファリン服用は気になる?(解説:後藤信哉氏)

 血栓溶解療法、冠動脈インターベンション(PCI)などの急性期再灌流療法の普及により、急性心筋梗塞の生命予後、心不全リスクともに劇的に改善した。重要臓器の虚血性障害との意味では脳梗塞と心筋梗塞は類似性が高い。実際に脳を灌流する太い血管の閉塞による血栓を急性期に吸引・除去すれば、脳梗塞の予後も改善できる。 血管が血栓性に閉塞することにより心筋梗塞、脳梗塞は発症する。閉塞を解除すれば臓器への血流が再開する。臓器の虚血性障害は改善される。しかし、再灌流は利点だけではない。虚血臓器に血液が再灌流されると臓器の再灌流障害も起こる。脳組織は脆弱なので再灌流障害が脳出血の原因になるリスクはある。さらに、抗凝固療法を施行すると出血巣が大きくなるリスクがある。 脳卒中予防のためにワルファリンを服用している症例では、再灌流障害による出血リスクが高い可能性も想定される。本研究は後ろ向き研究ではあるが、7日以内にワルファリンを服用している症例でも血栓吸引療法後の脳出血リスクは非服用例と差がないことを示唆した。後ろ向きの観察研究ではあるが、臨床データの公開には価値があることを示した。

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