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日本における片頭痛治療パターン、急性期治療薬の過剰処方の可能性

 長岡技術科学大学の勝木 将人氏らは、日本における18歳以上の成人片頭痛患者に対する治療パターンを明らかにするため、メディカルビッグデータREZULTのデータベースを用いて、検討を行った。Cureus誌2024年12月18日号の報告。 REZULTデータベースの従業員ベースのレセプトデータを用いて、次の2つの要素について検討を行った。1つ目の要素(研究1)は、2020年に片頭痛と診断された患者における急性期治療薬の過剰処方率を評価するための横断的分析として実施した。過剰処方の定義は、トリプタンとNSAIDs、複数の薬剤の併用が90日以内に30錠以上または同一期間におけるNSAIDs単独で45錠以上とした。2つ目の要素(研究2)は、2010年7月〜2022年4月、初回片頭痛診断から2年以上にわたり患者フォローアップを行った縦断的分析として実施した。処方された錠数は、90日ごとに記録した。 主な結果は以下のとおり。・研究1では、2020年に評価された330万705例のうち、6万6,428例(2.01%)が片頭痛と診断された。・このうち、急性期治療薬が処方されていた患者は4万1,209例であった。・過剰処方は、NSAIDs単独群で9,280例(22.52%)、トリプタン併用群で2,118例(5.14%)に観察された。・さらに、6,412例(15.56%)において予防治療が行われていた。・研究2では、2年超のフォローアップを実施した684万618例のうち、29万6,164例(4.33%)に片頭痛の持続が認められた。・過剰処方率は、NSAIDs単独群で23.20%(6万8,704例)、トリプタン併用群で3.97%(1万1,755例)であり、1回以上の予防治療薬処方率は16.51%(4万8,886例)であった。・治療パターンは、地域の貧困指数、頭痛専門医の分布など社会経済的因子の影響が認められた。 著者らは「日本における片頭痛の実臨床データの評価により、予防薬処方の不十分、急性期治療薬の過剰処方が中程度〜高頻度に確認された」と結論付けている。

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ストレスを抱えた外科医が手術した患者には合併症が少ない?

 手術を受けるときには、執刀医をチェックしてみてほしい。ストレスを感じている様子が見られるのであれば、それは、手術を受ける人にとって良いサインである可能性のあることが、新たな研究から明らかになった。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJake Awtry氏らによるこの研究では、生理的なストレスレベルが高い外科医が執刀した患者の方が、手術に関連する主要な合併症を発症しにくいことが示されたという。詳細は、「JAMA Surgery」に1月15日掲載された。 この研究結果についてAwtry氏らは、「経験豊富な外科医のストレスは患者のアウトカムに関連していることを示した結果であり、外科治療の改善に向けた今後の取り組みにおいて注目されるべきものかもしれない」と結論付けている。 この研究でAwtry氏らは、フランスのリヨンにある4つの大学病院で2020年11月から2021年12月にかけて行われた793件の手術を調べた。これらの手術は、消化器外科、整形外科、婦人科、泌尿器科、心臓外科、胸部外科、内分泌外科の7つの専門領域の14の外科部門で実施されたものだった。手術を執刀したのは38人の外科指導医(平均年齢46歳、男性78.9%)で、そのうちの57.9%が教授または准教授であった。外科医は手術中の心拍数の変化を追跡するためのデバイスを装着して手術を実施した。この心拍数のデータから、交感神経の活動(ストレス時や緊張時に活発化)と副交感神経の活動(リラックス時に活発化)のバランスを、低周波数(LF)と高周波数(HF)の比(LF:HF比)で定量化した。 その結果、手術開始から5分の間にLF:HF比が増加、すなわちストレス増大の兆候が認められた場合には、患者が主要な合併症を起こす可能性が有意に低下することが示された(調整オッズ比0.63、95%信頼区間0.41〜0.98、P=0.04)。ただし、死亡リスクの低下(同0.18、0.03〜1.03、P=0.05)や集中治療室(ICU)での滞在期間短縮(同0.34、0.11〜1.01、P=0.05)との関連は統計学的に有意ではなかった。 これらの結果は、外科医のストレスが手術時間の延長や巧緻性の低下、潜在的に有害な事象に関連することを示した過去の研究結果とは相反するものだ。Awtry氏らは、「過度のストレスや認知的負荷は外科手術の成績に悪影響を及ぼす可能性があるが、必要なレベルの経験や対応力がある外科医の場合、適度なストレスがより良い成績をもたらす可能性がある」と結論付けている。 英エディンバラ大学行動科学部長のSteven Yule氏らは、付随論評の中で、エリートアスリートはプレッシャーの下でも集中し、成功することができるが、優秀な外科医にも同様の特徴があるようだとの見方を示している。同氏らは、「この研究結果は、要求度の高い職務ではストレスは有害であるという従来の見方を覆すものであり、適度なストレスはパフォーマンスを向上させるという数十年にわたるスポーツ心理学の研究結果に極めて近いものだ」と述べている。 さらにYule氏らは、外科医が目の前の手術に集中するためには、試合前にロッカールームで実践されているようなストレス管理法が有効な可能性があるとの見方を示し、「このようなプロスポーツのパフォーマンス向上テクニックを手術室でも応用することで、これまでにないレベルでのアウトカムの向上が期待でき、強靭な外科文化の醸成につながる可能性がある」と述べている。

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COVID-19は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症リスクを高めるようだ。新型コロナウイルス感染者は、ME/CFSを発症するリスクが5倍近く高くなることが、新たな研究で示された。研究グループは、このことからME/CFSの新規症例がパンデミック前の15倍に増加している理由を説明できる可能性があるとの見方を示している。米ベイトマンホーンセンターのSuzanne Vernon氏らによるこの研究結果は、「Journal of General Internal Medicine」に1月13日掲載された。Vernon氏らは、「われわれの研究結果は、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの発症率と発症リスクが大幅に増加することのエビデンスとなるものだ」と結論付けている。 米疾病対策センター(CDC)によると、ME/CFSの患者は慢性的な倦怠感に悩まされており、用事を済ませる、学校行事に参加する、仕事をこなす、シャワーを浴びるなどの日常的な活動を行った後には倦怠感が増幅するという。また、睡眠障害やめまい、記憶や思考能力の低下などの症状に悩まされることもある。これらの症状の多くは、COVID-19罹患後症状(long COVID)にも見られることから、研究グループは、両者の間に関連性があるのではないかと考えた。研究グループによると、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)やロスリバーウイルスのようなウイルスによる感染症罹患者の11%も、ME/CFSの診断基準を満たすという。 今回の研究は、COVID-19の健康への長期的な影響に関するプロジェクトRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)の一環として、RECOVERの成人を対象とした縦断観察研究RECOVER-Adultのデータを用い、新型コロナウイルス感染者1万1,785人と非感染者1,439人を対象に、ME/CFSの罹患率と有病率を調査した。対象者は、新型コロナウイルス感染後のME/CFSの有無に基づき、ME/CFSの診断基準を満たす者、診断基準を満たさないがME/CFS様の症状がある者、ME/CFSの症状を報告しない者の3群に分類された。 新型コロナウイルス感染者のうち、531人(4.5%)がME/CFSの診断基準を満たし、4,692人(39.8%)がME/CFS様の症状を持ち、6,562人(55.7%)はME/CFSの症状を有していなかった。非感染者では、それぞれ9人(0.6%)、232人(16.1%)、1,198人(83.3%)であった。ME/CFSの100人年当たりの罹患率は新型コロナウイルス感染者で2.66件(95%信頼区間2.63〜2.70)であったのに対し、非感染者では0.93件(同0.91〜10.95)であった。ハザード比(HR)は4.93(同3.62〜6.71)であり、新型コロナウイルス感染がME/CFSの発生リスクを大幅に増加させることが示された。新型コロナウイルス感染者において最もよく報告されたME/CFSの症状は労作後の倦怠感で、全感染者の24.0%(2,830人)に認められた。さらに、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの診断基準を満たした参加者の大多数(88.7%、471/531人)は、RECOVER研究で定義されるlong COVIDの基準も満たしていた。 研究グループは、「さらなる研究で、一部の新型コロナウイルス感染者が他の患者よりも感染後にME/CFSを発症しやすい理由を解明する必要がある」と結論付けている。

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糖尿病治療薬のメトホルミンに皮膚がん予防効果

 糖尿病治療で処方される頻度の高い、メトホルミンという経口血糖降下薬に、皮膚がんの発症予防効果があることを示唆するデータが報告された。米ブラウン大学のTiffany Libby氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Drugs in Dermatology」に11月26日掲載された。皮膚がんの中で最も一般的な、基底細胞がん(BCC)と扁平上皮がん(SCC)という非黒色腫(メラノーマ)皮膚がんの発症リスクが有意に低下する可能性があるという。Libby氏は、「われわれの研究結果はメトホルミンが、これら非メラノーマ皮膚がんに対する予防薬となり得ることを示すエビデンスと言える」と述べている。 メトホルミンが非メラノーマ皮膚がんの発症を抑制するのではないかとする研究結果は、本研究以前にも報告されていたが、それらの研究は、がんの種類別の解析がなされていない、人種/民族の差が考慮されていないなどの限界点があり、不明点が多く残されていた。Libby氏は、米国立衛生研究所(NIH)が疾患の個別化治療を確立するために行っている「All of Us研究」のデータベースを用いて、メトホルミンの非メラノーマ皮膚がんリスクに対する影響を検討した。 All of Us研究のデータベースには、BCC患者8,047人、SCC患者4,111人が含まれていた。この患者群と、年齢、性別、人種/民族がマッチする対照群を1対4の割合(BCCに対して3万2,188人、SCCに対して1万6,444人)で設定し、メトホルミン処方の有無を比較した。なお、BCCまたはSCCの診断の2年以上前にメトホルミンが1回以上処方されていたケースを「処方あり」と定義した。 メトホルミンの処方率は、BCC群は6.45%、SCC群が9.00%であったのに対して、BCCの対照群は13.08%、SCCの対照群は13.23%だった。単変量解析により、メトホルミンの処方はBCC(オッズ比〔OR〕0.46〔95%信頼区間0.42~0.50〕)、SCC(OR0.65〔同0.58~0.73〕)が少ないことと有意に関連しており、交絡因子を調整した多変量解析でもその関連が有意だった(BCCはOR0.33〔0.29~0.36〕、SCCはOR0.45〔0.40~0.51〕)。ただし、人種/民族別に解析すると、アフリカ系米国人はSCCに関する単変量解析の結果が非有意だった(OR0.61〔0.28~1.22〕)。 研究チームによると、メトホルミンはがん細胞へのエネルギーや栄養素の供給を抑えるように働き、がんの成長や増殖能力を阻害する可能性があるという。また、がん細胞に対する免疫反応を高めたり、炎症を軽減したり、皮膚がんに新たな血管が伸びるのを防ぐようにも働くと考えられるとのことだ。著者らは、「われわれの研究結果に基づけば、メトホルミンによるがん予防の可能性を検討するために、さらなる研究を行うべきではないか」と結論付けている。 米国がん協会(ACS)によると、米国内で毎年、約540万件のBCCまたはSCCが診断されており、そのうち約8割をBCCが占めるという。ただし、非メラノーマ皮膚がんに分類されるこれらの皮膚がんは、一般的に死亡リスクは高くない。ACSのデータでは、非メラノーマ皮膚がんによる死亡者数は年間2,000~8,000人の範囲にとどまっている。

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適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。 Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。 認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。 Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。 文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。 検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。 Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。 また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。

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運動による記憶力向上は少なくとも8週間続く

 運動することで記憶力が向上し、運動しない場合との有意差は少なくとも8週間維持されるとする研究結果が報告された。北海道教育大学岩見沢校スポーツ文化専攻の森田憲輝氏らが、学生対象クロスオーバー試験で明らかにしたもので、詳細は「Journal of Science and Medicine in Sport」に11月4日掲載された。 記憶は、数秒から数十秒ほど保持される短期記憶と、数時間から場合によっては生涯にわたって保持される長期記憶に分類される。後者の長期記憶の中でも、本人が意識的に思い出すことができ、言葉などで表現することのできる記憶は「陳述記憶」と呼ばれ、この陳述記憶がより長期間保持されるほど、学業や就業において有利になると考えられている。 これまでの研究で、運動に陳述記憶の保持効果があることが示されているが、その効果の持続時間は、最長で1週間と報告されている。ただし、検証が十分行われていないだけで、実際には効果がそれよりも長期間維持される可能性もある。これを背景として森田氏らは、追跡期間11カ月に及ぶ研究を実施した。 研究デザインは、15個の単語を覚える前に自転車エルゴメーターを使い中強度(心拍数が最大値の50%になる強度)で20分間の負荷を加える条件と、安静状態で覚えるという条件(対照条件)を、試行順序をランダム化した上で参加者全員に課すというクロスオーバー法。単語を覚える作業の終了直後、24時間後、4週間後、6週間後、8週間後、および11カ月後に、単語をいくつ覚えているかをテストした。研究参加者は同大学から募集された51人で、追跡期間中の脱落者を除き44人(平均年齢19.7±0.8歳、男性29人)が解析対象とされた(11カ月時点ではさらに3人が脱落)。 記憶作業終了直後のテストでは、運動条件で覚えていた単語が12.9±1.9個、対照条件では12.7±2.3個で有意差はなかった。また、24時間後にも両条件ともに約83%の単語を記憶しており、有意差はなかった。それ以降は時間の経過とともに記憶している単語の数が少なくなっていき、4週間後は運動条件の方が覚えている単語が多いという有意水準未満の差(P=0.14)が観察された。そして6週間後には、覚えている単語の数に1.52個(95%信頼区間0.43~2.61)、8週間後には1.17個(同0.11~2.22)の有意な差が生じていて、いずれも運動条件の方が多かった。しかし11カ月後には再び有意差がなくなっていた。 著者らは、本研究の対象が認知機能正常の若年者のみであり、得られた結果をそのまま一般人口に外挿できるわけではないことなどを留意点として挙げた上で、「1回の運動で記憶維持効果が少なくとも8週間維持されることが示された。この結果は、運動が長期記憶を強化する効果的な介入法であり、学業や職業上のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があることを示唆している。ただし、1年近く経過した時点では有意差が見られなかったことから、時間の経過に伴う効果の変動を理解するための研究が必要とされる」と総括している。 なお、運動が記憶力を向上させるメカニズムについては「いまだ詳細が不明」としつつ、先行研究に基づく考察として、「運動によってドーパミンなどの神経伝達物質や脳由来神経栄養因子の産生が増加することが関与しているのではないか」と述べられている。

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犬を強く愛している飼い主ほど健康になれる?

 犬と暮らす人の中でも、犬への愛着が強い人ほど身体活動量が高くなっていることが明らかになった。国立環境研究所の谷口優氏と東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏による論文が、「PLOS One」に11月27日掲載された。同氏らは、「犬と暮らすことで得られる健康効果を説明する要因として、犬への愛着の強さが鍵を握っているのではないか」と述べている。 近年、犬の飼い主は健康状態が良好な人が多いとする研究結果が複数報告されてきている。谷口氏らも既に、犬と暮らす高齢者は身体機能が高いことや、フレイル(虚弱)や死亡に至るリスクが低いことを報告している。また、犬と暮らす高齢者の中でも、散歩などの運動習慣がある人において認知症の発症リスクが低くなることも報告している。しかし、なぜ犬と暮らす人の中で、運動習慣に差が生じるのかについては不明であった。 今回の研究は、一般社団法人ペットフード協会が2023年に実施したインターネット調査のデータを用いて行われた。この調査には日本各地に居住している20~79歳の犬猫飼育者1,683人が回答。このうち犬を飼っている1,041人を解析対象とした。 対象者の主な特徴は、平均年齢が52.5歳、女性57.5%、既婚者71.1%、戸建ての持ち家居住者70.0%、独居者10.4%で、平均年収は500~600万円であった。また犬の散歩の頻度は、1日2回以上が25.1%、1日1回から2回が3.8%、週3回から7回が45.8%、週3回未満が25.3%だった。国際標準化身体活動質問票で評価した中高強度身体活動量の平均値は、41.4METs時/週であった。 飼い犬への愛情の強さの評価には、既存の質問票(the CENSHARE Pet Attachment Survey)を用いた。この質問票は、「ペットとの遊びや運動に時間を使うか?」、「ペットはあなたの気分の変化に気づくか?」、「ペットを家族だと思うか?」などの六つの質問から成り、最大スコア24点で回答を評価し、点数が高いほど愛着が強いと判定する。本研究の対象者の平均値は18.8点だった。 犬への愛着の強さと散歩の頻度および身体活動量との関連性について、重要な交絡因子(年齢、性別、婚姻状況、同居家族、収入、自宅の形態)の影響を統計学的に調整した結果、犬への愛着が強いほど散歩の頻度が高いことが明らかになった(B=0.04、P<0.01)。そして、犬への愛着が強いほど、中高強度身体活動量が高いことも認められた(B=1.43、P<0.01)。 著者らは本研究を、「犬に対する愛着の強さと身体活動量の関連を明らかにした初の研究」と位置づけている。研究の限界点として、横断研究であるため愛着と身体活動量の因果関係は不明であることなどを考察した上で、「犬への愛着の強さが、日々の世話を通じて飼い主の運動習慣につながり、その結果、飼い主に健康障害が発生するリスクが低下すると考える」と総括。他方、「単に犬と暮らすだけでは、健康上のメリットを得られない可能性があることも示された」と付け加えている。

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ATTR心アミロイドーシス患者においてCRISPR-Cas9を用いた生体内遺伝子編集治療であるnex-zは単回投与にて血清TTR値を持続的に減少させた(解説:原田和昌氏)

 ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)がアミロイド線維として各種組織に沈着することで引き起こされる疾患であり、非遺伝性で加齢に伴うATTRwtアミロイドーシスと遺伝子異常に由来するATTRvアミロイドーシスに分けられる。ATTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)は心筋症や心不全が進行し、診断後は中央値2~6年で死に至る。治療薬としてTTR安定化薬のタファミジスが承認されており、siRNA静脈注射剤のパチシラン(3週に1回)は患者のQOLを維持し、皮下注射製剤のブトリシラン(3ヵ月に1回)は全死亡を低下させたことから、適応追加承認を申請中である。しかし、これらの治療でも長期間かけて疾患は徐々に進行する。 より完全なTTRのノックダウンを期待して、CRISPR-Cas9による生体内遺伝子編集治療が考案された。これは、肝臓に集積するようデザインされた脂質ナノ粒子、TTRに対するシングルガイドRNA(crRNA-tracrRNAキメラ)、化膿性レンサ球菌のCas9 mRNAからなる。動物実験でnex-z(NTLA-2001)は1回の静脈内投与にて血清TTR値を95%以上低下させ、効果は持続的であった。 英国のFontana氏らはATTR-CM患者に固定用量のnex-zを1回静脈注射し、安全性と薬力学、血清TTR値を評価する第I相オープンラベル試験を行った。副次エンドポイントはNT-proBNP値、高感度心筋トロポニンT値、6分間歩行距離、NYHA心機能分類の変化であった。心不全既往または併存のATTR-CM患者36例を対象とし、追跡期間は18ヵ月であった。NYHA III群が50%、ATTRv心アミロイドーシスが31%であった。血清TTR値は急速に低下し28日で89%、12ヵ月で90%減少した。有害事象は34件で、注入反応5例、AST上昇が2例、重篤な有害事象14例(39%)はすべてATTR-CMの症状であった。副次エンドポイントのNT-proBNP値、高感度心筋トロポニンT値に変化なく、6分間歩行距離は12ヵ月で5m延長したが有意ではなかった。92%の患者のNYHA心機能分類が改善ないしは変化なしであった。 CRISPR-Cas9システムを用いることで、容易にノックアウトやノックインといったゲノム編集を行うことができるようになった。本試験のnex-zはATTR-CMに対する生体内遺伝子編集治療であるが、すでにβサラセミア、鎌状赤血球症に対する遺伝子編集治療も試みられている。ATTR-CMのトランスサイレチンはほとんど肝臓で作られているためあまり問題にならないが、類似した他の配列を切断してしまうオフターゲット効果などへの懸念や、応用範囲が広いだけに倫理的な問題も想定されるため、今後の動向に注視する必要がある。

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第229回 高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府

<先週の動き>1.高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府2.医療存続のためJA県厚生連に19億円支援、経営改革が課題/新潟県3.東京女子医大元理事長を再逮捕 不正支出1.7億円、還流の疑い/警視庁4.若手医師の過労死、甲南医療センターの院長ら不起訴処分に/神戸地検5.維新の会、医療費4兆円削減と社保料6万円減を提案/国会6.28億円の診療報酬不正請求発覚、訪問看護で虚偽記録横行/サンウェルズ1.高額療養費制度の自己負担の引き上げ案、政府が修正を検討/政府政府は、高額な医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」の見直し案について、修正を検討している。政府案では、2025年8月から3段階に分けて自己負担の上限額を引き上げる方針だったが、長期治療を必要とするがん患者などから「受診抑制につながる」との懸念が相次ぎ、負担軽減に向け、見直し案の修正が求められていた。高額療養費制度は、医療費が一定額を超えた場合に、患者の自己負担額に上限を設ける仕組み。政府の見直し案では、70歳未満の年収約370~770万円の層で、1ヵ月の自己負担限度額が現行の8万100円から最終的に13万8,600円に引き上げられる予定だった。さらに、12ヵ月以内に3回以上限度額を超えた場合、4回目以降は負担を軽減する「多数回該当」制度についても、上限額が4万4,400円から7万6,800円に引き上げられることになっていた。この見直し案に対し、全国がん患者団体連合会などの患者団体が強く反発し、12ヵ月以内に6回以上限度額を超えた場合、7回目以降の負担を現行水準に据え置く案を提案。政府はこれを参考に、長期治療を受ける患者の負担増を抑える方向で修正を検討している。また、患者団体からの意見聴取が行われなかったことも問題視され、国会では見直し案の凍結や再検討を求める声が上がった。これを受け、石破 茂首相は「患者の理解を得ることが必要」とし、福岡 資麿厚生労働大臣が患者団体との意見交換を行う方針を示した。野党側も見直し案に強く反対し、立憲民主党は高額療養費の負担引き上げを凍結する修正案を国会に提出予定。新型コロナウイルスワクチンの基金や予備費を財源に充当できると主張している。一方、政府は「制度の持続可能性を確保するために負担増は必要」との立場を維持しており、今後の調整が注目される。全国保険医団体連合会の調査では、がん患者の約半数が自己負担増による「治療の中断」を検討し、6割以上が「治療回数の削減を余儀なくされる」と回答。生活面では、8割以上が「食費や生活費を削る」とし、子供の教育への影響も懸念されている。政府は今後、長期治療を受ける患者の負担軽減を含めた修正案をまとめるが、財源確保の問題もあり、与野党の調整は難航する可能性が高い。高額療養費制度の持続性と患者負担のバランスをどう取るか、引き続き議論が続く見通し。参考1)「治療諦めろというのか」子育て中のがん患者 高額療養費見直し案に(毎日新聞)2)高額療養費引き上げ凍結を 立民、財源はコロナ基金(日経新聞)3)高額療養費の負担増なぜ見直し? 政府・与党、患者に配慮(同)4)高額療養費、負担引き上げで「治療断念」検討も がん患者ら調査(朝日新聞)5)子どもを持つがん患者さんに高額療養費アンケート 記者会見で中間報告(保団連)2.医療存続のためJA県厚生連に19億円支援、経営改革が課題/新潟県新潟県内で11病院を運営するJA県厚生連が経営危機に直面し、2025年度中にも運転資金が枯渇する恐れがあることを受け、県と病院所在の6市が総額19億円の財政支援を行う方針を決定した。6日に県庁で開かれた会合で、新潟県は国の交付金を活用しながら10億円程度を負担し、6市は約9億円を拠出することを表明。これにより、当面の資金不足は回避される見込みとなった。県厚生連は、人口減少に伴う患者数の減少が影響し、2023年度決算で35億9,000万円の赤字を計上。2024年度は職員の賞与削減など緊急対策を実施しているが、12月時点で45億6,000万円の赤字が見込まれている。病院運営に必要な運転資金は月額90億円に上るため、早急な財政支援が求められていた。会合では、県の花角 英世知事が「持続可能な経営には抜本的な改革が必要」と述べ、病院再編を含めた地域医療の効率化を求めた。6市を代表して糸魚川市の米田 徹市長は、「県として3ヵ年の財政支援を継続して欲しい」と要望し、国に対しても診療報酬制度の見直しを求める姿勢を示した。県厚生連の塚田 芳久理事長は「さらなる経営改革を進め、県民に安心できる医療を提供しながら安定経営の確保に努める」と表明。年度内に2025年度から3年間の経営計画を策定し、経営改善を図る方針という。しかし、長期的な経営安定には根本的な改革と継続的な財政支援が不可欠であり、今後の動向が注目されている。参考1)県厚生連へ19億円支援 県と6市方針 病院運営危機受け(読売新聞)2)JA県厚生連に19億円 25年度分 県と6市が支援表明(毎日新聞)3)新潟県、病院経営危機のJA県厚生連への支援を10億円規模で調整 2025年度の運転資金枯渇は回避できる見通し(新潟日報)3.東京女子医大元理事長を再逮捕 不正支出1.7億円、還流の疑い/警視庁東京女子医科大学の建設工事を巡る背任事件で、警視庁は3日、元理事長の岩本 絹子容疑者(78)を再逮捕した。岩本容疑者は2020年から翌年にかけて、足立区に新設された大学付属病院「足立医療センター」の建設工事に関連し、「建築アドバイザー報酬」名目で約1億7,000万円を大学から1級建築士の男性に支払わせ、損害を与えた疑いが持たれている。うち約5,000万円が岩本容疑者に還流されていたとみられる。岩本容疑者は1月、新校舎建設を巡る背任容疑で逮捕されていた。警視庁の調べによると、同様の手口で1億1,700万円の不正支出が行われ、そのうち約3,700万円が還流されたとされる。これにより、架空の「建築アドバイザー報酬」による大学の損害は総額3億円超に上る可能性がある。捜査関係者によると、建築士の男性は大学から受け取った資金の一部について元女子医大職員を通じて岩本容疑者に現金で渡していた。元職員の女性は岩本容疑者の直轄部署に所属しており、容疑者の指示の下、資金移動を担っていたとみられる。大学側が承認した建設に関係する稟議書によると、建築士への支払いは施工費(約264億円)の0.7%に相当し、理事会で承認されていた。しかし、実際には業務実態が乏しく、大学関係者からは「理事会での異議申し立てが困難な状況だった」との証言も出ている。さらに、内部文書の解析から、理事長自らが申請者兼承認者となっていたことも判明し、不正の組織的な側面が浮かび上がっている。警視庁は、還流資金がブランド品購入など私的な用途に充てられた可能性もあるとみており、資金の流れや関係者の役割について捜査を進めている。岩本容疑者の認否は明らかにされていないが、背任の疑いは一層強まっている。参考1)本日2/3(月)元理事長の再逮捕について(女子医大)2)東京女子医大元理事長、背任容疑で再逮捕…業務実態ない男性への報酬で1・7億円の損害与えた疑い(読売新聞)3)東京女子医大の女帝再逮捕 内部文書で明らかになった“デタラメやりたい放題”の仕組み「女子医大には元理事長の手足となって動いた人間たちがたくさんいる」(文春オンライン)4.若手医師の過労死、甲南医療センターの院長ら不起訴処分に/神戸地検2022年に神戸市の甲南医療センターで勤務していた専攻医・高島 晨伍さん(当時26歳)が長時間労働を苦に自殺した問題で、神戸地検は4日、労働基準法違反の疑いで書類送検されていた病院運営法人「甲南会」と院長ら2人を不起訴処分とした。検察は不起訴の理由を明らかにしていない。西宮労働基準監督署の調査では、高島さんの亡くなる直前の1ヵ月間の時間外労働が113時間を超えていたと認定されていた。高島さんの母は「非常に残念。この結果が若手医師の労働環境改善を阻むものであってはならない」とコメント。病院側は「事実に基づく捜査を経ての判断」と述べるにとどまった。この問題は、医師の働き方改革とも密接に関係し、2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が導入され、基本的には年間960時間(月80時間)が上限とされた。しかし、研修医や特定の医療機関では、最大で年間1,860時間(月155時間)までの時間外労働が認められており、現場の実態との乖離が指摘されている。また、医療現場では「自己研鑽」として学会準備や研究活動が労働時間に含まれず、事実上の無償労働が横行しているとの批判もある。厚生労働省の通達では「上司の指示がある場合は労働」とされるが、実際には上司の関与が曖昧なケースも多く、勤務時間の過少申告につながる恐れがあると指摘されている。さらに、病院側は「宿日直許可制度」を利用し、夜間の長時間勤務を労働時間に含めない運用を行っている。この制度の適用件数は2020年の144件から2023年には5,000件を超え、病院経営の抜け道として使われているのが実情である。若手医師の過重労働は、医療の安全性や医師不足の深刻化にも影響を及ぼす。すでに「地域医療の維持よりも働きやすさを求め、美容医療などに転職する若手医師が増えている」との指摘もあり、医療界全体のモラルハザードが懸念さている。医師の長時間労働は、単なる労働問題ではなく、患者の安全にも直結する。自己犠牲を前提とした医療制度の見直しが急務となっている。参考1)甲南医療センター若手医師の過労自死 労基法違反疑いの院長ら不起訴処分 神戸地検(神戸新聞)2)若手医師の過労死、労基法違反疑いの病院運営法人や院長ら不起訴 神戸地検、理由明かさず(産経新聞)3)医師不足に拍車をかける「偽りの働き方改革」(東洋経済オンライン)5.維新の会、医療費4兆円削減と社保料6万円減を提案/国会日本維新の会は2月7日、政府の2025年度予算案への賛成条件として、医療費の年間約4兆円削減と国民1人当たりの社会保険料を約6万円引き下げる改革案を提示した。これにより、高校授業料無償化と並び、社会保障制度の見直しを求める構え。自民・公明両党は慎重な対応をみせており、今後の協議の行方が注目されている。維新の青柳 仁士政調会長は、自民・公明両党の政調会長との会談で、医療費削減策として「市販薬と類似する医薬品(OTC類似薬)の保険適用除外」「医療費窓口負担の見直し」「高額療養費の自己負担限度額の判定基準再検討」などを提案。さらに、社会保険加入が義務付けられる「年収106万円・130万円の壁」問題への対応も要請した。維新は、これらの改革を2025年度から実施すれば、年間4兆円の医療費削減が可能であり、国民の社会保険料負担を1人当たり年間6万円減らせると主張している。とくに、OTC類似薬の保険適用除外については、湿布や風邪薬など、処方薬として購入すれば1~3割の自己負担で済むが、全額自己負担とすることで約3,450億円の医療費削減が見込まれると試算。さらに、窓口負担割合の見直しでは、所得に加え、預貯金や株式などの金融資産を考慮する仕組みを導入し、資産の多い高齢者の負担を増やすことを提案した。また、電子カルテと個人の健康情報を統合する「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」の普及促進も掲げ、医療コストの効率化を狙う。一方、維新は医療費削減策だけでなく、社会保険料負担軽減のための年収の壁問題にも言及。現在、51人以上の企業に勤めるパート労働者は年収106万円を超えると社会保険加入が義務付けられ、130万円を超えると企業規模に関係なく加入が求められる。この制度が労働時間の抑制を生み、人手不足を助長しているとの指摘もあり、維新は政府に対策を求めた。自民党は、まずは高校授業料無償化の議論を優先し、維新の予算案への賛成を取り付けたい考えだが、維新は「高校無償化と社会保険料引き下げの両方が必要条件」と主張し、交渉は難航する可能性がある。自民・公明両党は改革案の具体的な影響を精査するとして回答を留保しており、維新の提案が実現するかは不透明だ。政府は社会保障費の増大に対応するため、医薬品の公定価格(薬価)引き下げによる財源捻出を続けている。しかし、薬価改定による削減効果は限界に達しつつあり、新たな医療費抑制策が求められる状況。維新の提案がこの課題にどう影響を与えるのか、今後の国会審議に注目が集まる。参考1)維新が医療費4兆円削減、社会保険料は6万円引き下げ提案 新年度予算案賛成の条件に(産経新聞)2)「市販品類似薬を保険外に」維新、社保改革で具体案 自公に提案、予算賛成の条件(日経新聞)3)高額療養費の「自己負担の上限引き上げ」見直しへ…政府・与党、がん患者らに反発広がり(読売新聞)4)少数与党国会、厚労省提出法案の「熟議」を注視(MEDIFAX)6.28億円の診療報酬不正請求発覚 訪問看護で虚偽記録横行/サンウェルズパーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」を運営する東証プライム上場のサンウェルズ(金沢市)が、全国のほぼ全施設で診療報酬の不正請求を行っていたことが、7日に公表された特別調査委員会の報告書で明らかになった。調査の結果、不正請求額は総額28億4,700万円に上ると試算されている。報告書によると、サンウェルズは全国14都道府県で約40ヵ所の「PDハウス」を運営。訪問看護事業において、実際には数分しか訪問していないにもかかわらず、30分間訪問したと虚偽の記録を作成し、診療報酬を請求するなどの不正が横行していた。また、実際には1人で訪問しているにもかかわらず、2人で訪問したと装い、加算報酬を請求するケースも確認された。さらに、特定の入居者に対し、必要がないにもかかわらず毎日3回の訪問を行い、過剰な請求を行っていたことも判明。現場の職員の間では「訪問回数を減らせばペナルティーが科される」という認識が広まり、不正が慣例化していた可能性が高い。経営陣はこうした問題について複数回の内部通報を受けていたものの、実態把握に動かなかったとされる。サンウェルズは当初、不正の疑惑を全面否定していたが、昨年9月の報道を受けて特別調査委員会を設置。今回の調査結果を受け、「多大なご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。再発防止策を速やかに策定し、信頼回復に努める」と謝罪のコメントを発表した。一方で、同社の経営陣にはインサイダー取引の疑惑も浮上している。昨年7月、サンウェルズは不正の指摘を受けながらも、東証プライム市場へ移行し、野村證券を主幹事とする株式の売り出しを実施。社長の苗代 亮達氏は個人で34億円の売却益を得ていた。市場関係者からは「不正を認識したまま株式を売却した可能性がある」として、金融商品取引法違反の疑いも指摘されている。今回の不正請求問題は、サンウェルズだけでなく、業界全体にも波紋を広げる可能性がある。ホスピス型老人ホームの需要が高まる中で、制度の見直しや行政のチェック体制の強化が求められている。参考1)特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ(サンウェルズ社)2)約28億4,700万円の不正請求と調査委が試算…金沢市に本社の「サンウェルズ」の訪問看護事業めぐり(石川テレビ)3)老人ホームのサンウェルズ、ほぼ全施設で不正請求 調査委が報告書(毎日新聞)4)ほぼ全施設で不正請求 PDハウス運営サンウェルズ 調査委報告書 過剰訪問看護で28億円(中日新聞)5)東証プライム上場サンウェルズが老人ホームほぼ全てで介護報酬不正請求!社長の「インサイダー取引」疑惑に発展か(ダイヤモンドオンライン)

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2月10日 フットケアの日【今日は何の日?】

【2月10日 フットケアの日】〔由来〕糖尿病や末梢動脈疾患による足病変の患者が増加していることから、足病変の予防・早期発見・早期治療の啓発を目的に、「フ(2)ット(10)=足」と読む日付の語呂合わせから日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックが共同で制定した。関連コンテンツ新規開業の落とし穴(後編) ドクター・ショッピングのあげく、足専門の重装備クリニックで不正請求を体験して実感した開業のダークサイド【ざわつく水曜日】患者さんの自己流運動へのチェックも大事【患者説明用スライド】人工股関節置換術前の検査【日常診療アップグレード】バスケットボールでよくある傷害は足首の捻挫歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会

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事例017 注射時のリドカインテープの査定【斬らレセプト シーズン4】

解説右上肢拘縮に対して、A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス注用)を使用した神経ブロック注射を行いました。患者から痛みを軽減してほしいとの申し出があったため、その前処置として注射予定部位にリドカインテープ(以下「同テープ」)を使用したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用されて査定となりました。同テープは穿刺・刺入部位の疼痛軽減に有効であるため、痛みに過敏な患者に対して時々使用していました。小さく切ったものを使用していたために、薬材料にて請求するまでもないとされていました。今回は、刺入点が複数にわたるために1枚を切り分けて複数個所に使用したものでした。しかしながら、添付文書をみると神経ブロックへの適用はありません。また、神経ブロックの項には前処置などは神経ブロック料に含まれると記載されています。したがって、レセプト内容からみて使用目的はわかるが、算定要件には合致していないとD事由が適用されたものと推測ができます。疼痛緩和を強く求める患者に対して、査定になることを理由に自費を請求すると混合診療に該当してしまいます。医師にはこれらに留意しての使用をお願いしました。

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英語で「膝蓋骨」、医療者or患者向けの2つの表現を解説【患者と医療者で!使い分け★英単語】第4回

画像を拡大する医学用語紹介:膝蓋骨 patella「膝蓋骨(しつがいこつ)」はpatellaといいますが、膝蓋骨について説明する際、患者さんにpatellaと言って通じなかった場合、何と言い換えればいいでしょうか?講師紹介

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免疫チェックポイント阻害薬関連の1型糖尿病、生存率との関連~日本人2万例を解析

 免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病(ICI-T1DM)の発現割合、危険因子、生存率への影響について、奈良県立医科大学の紙谷 史夏氏らが後ろ向き大規模コホートで調査した結果、ICI-T1DMは0.48%に発現し、他の免疫関連有害事象(irAE)と同様、ICI-T1DM発現が高い生存率に関連していることが示唆された。Journal of Diabetes Investigation誌2025年2月号に掲載。 本研究は、わが国の診療報酬請求データベースの1つであるDeSCデータベースを用いた後ろ向き大規模コホート研究で、2014~22年にICIを投与された2万1,121例が登録された。ICI-T1DM発現の危険因子とその特徴をロジスティック回帰分析で評価し、ICI初回投与の翌日以降の新たなirAEの発現をアウトカムとした。  主な結果は以下のとおり。・ICI投与開始後、2万1,121例中102例(0.48%)にICI-T1DMが認められた。・PD-(L)1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用は、PD-1阻害薬単独と比較してICI-T1DMのリスクが高かった(オッズ比[OR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.21~4.58、p=0.01)。・過去に糖尿病(OR:1.59、95%CI:1.03~2.46、p=0.04)または甲状腺機能低下症(OR:2.48、95%CI:1.39~4.43、p<0.01)と診断された患者はICI-T1DMリスクが高かった。・Kaplan-Meier解析では、ICI-T1DM患者はそうでない患者よりも生存率が高かった(log-lank検定p<0.01)。・多変量Cox回帰分析では、ICI-T1DM発現は低い死亡率と関連していた(ハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.99、p=0.04)。

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CKDを伴う関節リウマチにおけるJAK阻害薬の安全性・有効性

 虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らが慢性腎臓病(CKD)を伴う関節リウマチ(RA)患者におけるJAK阻害薬の有効性・安全性を評価し、腎機能が低下した患者における薬剤継続率を明らかにした。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者については、帯状疱疹や深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考慮する必要があることも示唆した。Rheumatology誌2025年1月25日号掲載の報告。 研究者らは、2013~22年にJAK阻害薬を新規処方されたRA患者216例について、多施設共同観察研究を実施。腎機能に応じたJAK阻害薬の減量ならびに禁忌については添付文書に従い、患者を腎機能とJAK阻害薬の各薬剤で分類した。主要評価項目は24ヵ月間の薬剤継続率で、副次評価項目は関節リウマチの疾患活動性評価の指標の1つであるDAS28-CRPの変化、プレドニゾロン投与量、およびJAK阻害薬の中止理由だった。 主な結果は以下のとおり。・eGFR(mL/分/1.73m2)を60以上、30~60、30未満に分類した。・eGFR分類ごとの24ヵ月薬剤継続率は、全JAK阻害薬では46.0%、44.1%、47.1%で、トファシチニブは55.9%、53.3%、66.7%だった。また、バリシチニブ*は64.2%、42.0%で、ペフィシチニブは36.4%、44.1%、40.0%であった。・腎機能が低下したグループでも、薬剤継続率は維持された(調整ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.81~1.62、p=0.45)。・JAK阻害薬開始後6ヵ月で、患者のDAS28-CRPは低下し、プレドニゾロンの投与量も減少した。・帯状疱疹とDVTの発生率はeGFR30未満のグループで高かったものの、統計学的に有意ではなかった。・eGFR30未満は、JAK阻害薬の無効または感染による中止の危険因子ではなかった。*バリシチニブはeGFR30未満への投与は禁忌 同グループは2024年に生物学的製剤についてもCKD合併RA患者に対する安全性・有効性を報告している1)。今回のJAK阻害薬の報告とあわせて、メトトレキサートや非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限されるCKD合併RA患者に対して、生物学的製剤、JAK阻害薬いずれもの安全性・有効性を示したことになる。

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スタチンと認知症リスクに関するメタ分析、最も顕著な予防作用が示された薬剤は

 世界の認知症患者数は、5,500万例に達するといわれており、2050年までに3倍に増加すると推定されている。心血管系への効果を期待し広く用いられているスタチンには、神経保護作用があるとされているが、認知症リスクに対する影響については、相反する結果が報告されている。ブラジル・アマゾナス連邦大学のFernando Luiz Westphal Filho氏らは、スタチンと認知症リスクとの関連を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年1月16日号の報告。 PRISMAガイドラインに基づきシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。関連する研究を、PubMed、Embase、Cochraneより検索した。性別、スタチンの種類、糖尿病の有無によるサブグループ解析を実施し、認知症、アルツハイマー病、脳血管認知症リスクを評価した。 主な内容は以下のとおり。・55件の研究、700万例超の観察研究をメタ解析に含めた。・スタチン使用は、非使用と比較し、認知症リスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.82〜0.91、p<0.001)。・アルツハイマー病(HR:0.82、95%CI:0.74〜0.90、p<0.001)および脳血管認知症(HR:0.89、95%CI:0.77〜1.02、p=0.093)のリスク低下も認められた。・サブグループ解析では、2型糖尿病患者、3年以上スタチンを使用している患者、最大の保護作用が認められたアジア人集団において、認知症リスクが有意に低下していることが明らかとなった。【2型糖尿病患者】HR:0.87、95%CI:0.85〜0.89、p<0.001【3年以上スタチンを使用している患者】HR:0.37、95%CI:0.30〜0.46、p<0.001【最大の保護作用が認められたアジア人集団】HR:0.84、95%CI:0.80〜0.88・すべての原因による認知症に対し最も顕著な予防作用を示したスタチンは、ロスバスタチン(HR:0.72、95%CI:0.60〜0.88)であった。 著者らは「認知症予防に対するスタチンの神経保護作用の可能性が示唆された。観察研究の限界はあるものの、大規模データセットおよび詳細なサブグループ解析により、結果の信頼性は高まった。これらの結果を確認し、臨床ガイドラインを啓発するためにも、今後のランダム化臨床試験が求められる」としている。

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MSI-H/dMMR進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブvs.ニボルマブ単剤の中間解析/Lancet

 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の転移を有する大腸がん患者において、ニボルマブ単剤療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、治療ラインを問わず無増悪生存期間が有意に優れ、安全性プロファイルは管理可能で新たな安全性シグナルの発現はないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 CheckMate 8HW試験は、(1)1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法と化学療法との比較、および(2)すべての治療ラインにおけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法とニボルマブ単剤療法との比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に日本を含む23ヵ国128病院で患者を登録した(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。(1)の結果はすでに発表済みで、本論では(2)の中間解析の結果が報告されている。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんと診断され、各施設の検査でMSI-HまたはdMMR(あるいはこれら両方)の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、ニボルマブ単剤療法、化学療法(±標的治療)を受ける群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 (2)の主要評価項目は、中央判定でもMSI-H/dMMRであった患者におけるすべての治療ラインの無増悪生存とし、盲検下独立中央判定によって評価した。奏効率も良好 (2)の2つの治療群に707例を登録し、ニボルマブ+イピリムマブ群に354例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:52~70]、女性192例[54%]、未治療例202例[57%])、ニボルマブ群に353例(63歳[51~70]、163例[46%]、201例[57%])を割り付けた。それぞれ296例(84%)および286例(81%)が、中央判定でもMSI-H/dMMRであり、主要評価項目の評価の対象となった。データカットオフ日(2024年8月28日)の時点における追跡期間中央値は47.0ヵ月(IQR:38.4~53.2)だった。 中央判定でMSI-H/dMMRであった集団では、ニボルマブ群と比較してニボルマブ+イピリムマブ群は、無増悪生存期間が有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0003)。無増悪生存期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が未到達(95%CI:53.8~推定不能)、ニボルマブ群は39.3ヵ月(22.1~推定不能)であった。また、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月時の推定無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群がそれぞれ76%、71%、68%、ニボルマブ群は63%、56%、51%だった。 盲検下独立中央判定による奏効率(完全奏効+部分奏効)は、ニボルマブ群が58%であったのに対しニボルマブ+イピリムマブ群は71%と有意に優れた(p=0.0011)。奏効期間中央値は両群とも未到達で、奏効までの期間中央値は両群とも2.8ヵ月だった。Grade3/4の治療関連有害事象は22%で 併用療法の安全性プロファイルは管理可能で、新たな安全性シグナルの発現は認めなかった。全Gradeの治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で352例中285例(81%)、ニボルマブ群で351例中249例(71%)に、Grade3または4の治療関連有害事象はそれぞれ78例(22%)および50例(14%)に発現した。最も頻度の高い治療関連有害事象はそう痒(ニボルマブ+イピリムマブ群26%、ニボルマブ群18%)で、投与中止に至った治療関連有害事象の頻度(14%、6%)も併用群で高かった。 最も頻度の高いGrade3または4の免疫介在性有害事象は、下痢または大腸炎(ニボルマブ+イピリムマブ群3%、ニボルマブ群2%)、下垂体炎(3%、1%)、副腎機能不全(3%、<1%)であった。治療関連死は3例に認め、ニボルマブ+イピリムマブ群で2例(それぞれ心筋炎および肺臓炎による死亡)、ニボルマブ群で1例(肺臓炎)であった。 著者は、「これらの結果は、1次治療において化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法で優れた無増悪生存期間を示した結果と併せて、この免疫療法薬の2剤併用療法が転移を有するMSI-H/dMMR大腸がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を示唆する」としている。

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リファンピシン耐性/キノロン感受性結核に有効な経口レジメンは?/NEJM

 リファンピシン耐性でフルオロキノロン感受性の結核患者の治療において、3つの経口レジメン(BCLLfxZ、BLMZ、BDLLfxZ)の短期投与が標準治療に対し非劣性で、Grade3以上の有害事象の頻度はレジメン間で同程度であることが、フランス・ソルボンヌ大学のLorenzo Guglielmetti氏らが実施した「endTB試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月30日号に掲載された。7ヵ国の第III相対照比較非劣性試験 endTB試験は、7ヵ国(ジョージア、インド、カザフスタン、レソト、パキスタン、ペルー、南アフリカ共和国)の12施設で実施した第III相非盲検対照比較非劣性試験であり、2017年2月~2021年10月の期間に参加者のスクリーニングと無作為化を行った(Unitaidの助成を受けた)。 年齢15歳以上のリファンピシン耐性でフルオロキノロン感受性の結核患者を、ベダキリン(B)、デラマニド(D)、リネゾリド(L)、レボフロキサシン(Lfx)またはモキシフロキサシン(M)、クロファジミン(C)、ピラジナミド(Z)から成る5つの併用レジメン(BLMZ、BCLLfxZ、BDLLfxZ、DCLLfxZ、DCMZ)または標準治療レジメン(WHOガイドラインに準拠)の6つの治療群に無作為に割り付けた。5つの併用レジメンは9ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは73週目の良好なアウトカムとし、不良なアウトカムがなく、65~73週における連続2回の喀痰培養陰性または良好な細菌学的、臨床的、X線画像上の変化と定義した。不良なアウトカムには、死亡(死因は問わない)、5つの併用レジメンのうち1剤または標準治療レジメンのうち2剤の置き換えまたは追加、リファンピシン耐性結核に対する新たな治療の開始などが含まれた。非劣性マージンは-12%ポイントとした。per-protocol集団ではDCMZ群の非劣性確認できず 754例を無作為化し、このうち699例が修正ITT解析、562例がper-protocol解析の対象となった。修正ITT集団の内訳は、BLMZ群118例(年齢中央値31歳、女性34.7%)、BCLLfxZ群115例(38歳、32.2%)、BDLLfxZ群122例(32歳、45.1%)、DCLLfxZ群118例(30歳、32.2%)、DCMZ群107例(32歳、42.1%)、標準治療群119例(31歳、40.3%)であった。 修正ITT解析では、良好なアウトカムの全体の達成率は84.5%(591/699例)で、標準治療群では80.7%(96/119例)であった。修正ITT集団で非劣性が確認された新規レジメンは次の4つで、標準治療群とのリスク差はBCLLfxZ群で9.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:0.9~18.7)、BLMZ群で8.3%ポイント(-0.8~17.4)、BDLLfxZ群で4.6%ポイント(-4.9~14.1)、DCMZ群で2.5%ポイント(-7.5~12.5)であった。DCLLfxZ群では非劣性が示されなかった。 per-protocol集団における良好なアウトカムの全体の達成率は95.9%であった。標準治療群とのリスク差はDCMZ群を除いて同程度で、DCMZ群では非劣性を確認できなかった。重篤な有害事象の頻度も同程度 Grade3以上の有害事象は全体の59.2%(441/745例)で発現し、6つのレジメンで54.8~62.7%の範囲であった。重篤な有害事象は、全体の15.2%(113例)に認め、6つのレジメンで13.1~16.7%の範囲と同程度だった。また、とくに注目すべき有害事象のうちGrade3以上の肝毒性イベント(ALTまたはAST上昇)は、全体で11.7%(87例)、標準治療群では7.1%(9例)にみられた。 著者は、「これらの結果は、リファンピシン耐性結核の成人および小児患者の治療における効果的で簡便な経口薬治療に関して、明るい展望をもたらすものである」としている。

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腰痛の軽減方法、最も効果的なのは生活習慣の是正かも

 腰痛を改善するには、従来の治療法を試すよりも不健康な生活習慣を見直す方が大きな改善効果を見込める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。腰痛持ちの患者のうち、生活習慣指導を受けた患者は標準的なケアを受けた患者に比べて、腰痛により日常生活が障害される程度が軽減し、生活の質(QOL)が向上したという。シドニー大学(オーストラリア)のChristopher Williams氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月10日掲載された。 Williams氏は、「腰痛を治すには、腰以外の部分にも焦点を当てる必要がある。われわれの体は機械ではなく、複雑な生態系(エコシステム)のようなもので、多くの要因が相互に影響し合うことで、どのように機能し感じるかが決まる。腰痛もそれと同じだ」と話す。 この研究では、活動制限を伴う慢性腰痛を持ち、1つ以上の生活習慣リスク(過体重、不適切な食生活、身体活動不足、喫煙)を有する346人(平均年齢50.2歳、女性55%)を対象に、研究グループが考案した健康的な生活習慣プログラム(Healthy Lifestyle Program;HeLP)の腰痛軽減効果が、ガイドラインに則った標準的なケアとの比較で検討された。HeLPは、ガイドラインに基づくケアに加え、健康的な生活習慣についての教育(冊子やウェブポータルへのアクセス)やサポート(理学療法士や栄養士とのセッション、電話での健康指導)などを提供する包括的なプログラムである。 試験参加者は、HeLPを受ける群(介入群、174人)と、ガイドラインに基づく理学療法ケアを受ける群(対照群、172人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、介入開始から26週間後の腰痛による生活機能障害の程度とし、Roland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)を用いて評価した。RMDQスコアは0〜24点で算出され、高スコアほど障害が大きいことを意味する。また、副次評価項目は、体重、痛みの強度、QOL、喫煙状況とした。 ベースライン時のRMDQスコアは、介入群で14.7点、対照群で14.0点であった。しかし26週間後の評価では、介入群のスコアが対照群に比べて有意に改善し、両群のスコアの平均差は−1.3点(95%信頼区間〔CI〕−2.5〜−0.2、P=0.03)であった。HeLPの効果は、プログラムを忠実に守った参加者においてより顕著に現れた。また、介入群では対照群に比べて、体重減少が大きく(平均差−1.6kg、95%CI −3.2~−0.0、P=0.049)、QOL(SF Health Surveyの下位尺度である身体機能の評価スコア)の改善がより大きかった(同1.8点、0.1~3.4、P=0.04)。 こうした結果を受けてWilliams氏は、「腰痛がなかなか治らない人は、脊椎に何が起こっているかのみに焦点を当てるのではなく、さまざまな健康要因を考慮した総合的なケアを受けるべきだ」と述べ、「われわれはこのメッセージを積極的に広めるべきだ」と付言している。 研究グループは、この研究が腰痛に関する将来の診療ガイドラインに影響を与えることを期待していると述べている。また、Williams氏は、「腰痛を治療する臨床医は、患者の日常生活に対するサポートを日々の診療の中にどのように取り入れるかを考えるべきだ。その方法に『正しい』や『間違っている』はないが、最も大切にすべきことは、患者が、『自分の意見が尊重されている』、『意思決定に参加している』と感じることだ」と話している。

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あなたのプロテインは安全? 重金属汚染の可能性

 米国のプロテイン・サプリメント市場規模は、2023年に97億ドル(1ドル155円換算で約1兆5000億円)を突破した。しかし、広く消費される市販のプロテインパウダーは、あなたが思っているほど健康的ではないかもしれない。 米国の非営利組織Clean Label Project(CLP)は最新の調査結果の中で、「ポピュラーなプロテインパウダー(特に植物性の製品、オーガニック製品、チョコレート風味の製品)には、高レベルの鉛とカドミウムが含まれている可能性がある」と報告した。鉛には人体に安全な濃度はなく、カドミウムは発がん性物質であることが知られている。 今回の調査では、市場シェアの83%を占めるトップブランド70社の160製品を検査した(ブランド名は非公開)。これらの製品について、重金属やビスフェノールA(BPA)のような内分泌かく乱物質を含む汚染物質258項目、3万5,862件の検査を行った。 その結果、製品全体の47%がカリフォルニア州の厳格な化学物質規制法であるプロポジション65(CA Prop 65)を含む、連邦または州の安全性規制値のいずれか一つを超えていた。さらに対象製品の21%に、CA Prop 65での規制値の2倍以上の鉛が含まれていた。 製品のカテゴリー別の検査結果を比較すると、次のことが明らかになった。・大豆などを原料とする植物性プロテインパウダーは、チーズ製造の副産物である乳清(ホエイ)を原料とする製品と比べ、鉛が約3倍、カドミウムが約5倍多く含まれていた。・オーガニックのプロテインパウダーには、非オーガニック製品に比べて、鉛が3倍、カドミウムが2倍多く含まれていた。・チョコレート味のプロテインパウダーには、バニラ味の製品に比べて、鉛が4倍、カドミウムが110倍も多く含まれていた。 植物は本来、土壌や水から重金属を吸収するが、産業廃棄物や鉱業、特定の農薬や肥料によって汚染された土壌で栽培された場合、重金属含有量がさらに増加する可能性がある。豊富なフラボノイドと抗酸化物質で知られるダークチョコレートも、鉛やカドミウムを含む重金属の濃度が高くなりやすい。 一方で、今回の調査では良いニュースも報告された。2018年に行われた調査では、調査対象製品の5%からBPAとその類似物質のビスフェノールS(BPS)が検出されたが、今回検査された160製品では、これらの物質が検出されたのは、わずか3製品(約1.9%)のみにとどまった。これは、消費者の要望とこの化学物質をめぐる論争に対する業界の対応が反映された結果といえる。 今回の調査では、内分泌かく乱物質で汚染されている製品は少なかったものの、重金属については、植物由来のプロテインパウダーでの汚染レベルが最も高く、乳清ベースの製品の汚染レベルは植物由来のプロテインパウダーよりも一貫して低いことが明らかになった。CLPのエグゼクティブディレクターJaclyn Bowen氏は、今回の調査結果について、「消費者が有害な汚染物質を避けながらプロテインパウダーを選択する際の参考になるかもしれない」と述べた。 また、Bowen氏は、「消費者は健康とパフォーマンスのためにプロテインやサプリメント製品を購入しており、その製品が安全であることを期待している。食品業界はその原材料の安全性について、透明性のある情報を消費者に示す義務がある」とも述べている。

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認知症ケアの方法間の比較:カウンターフレンチと、無農薬の農家レストランと、町の定食屋(解説:岡村毅氏)

 認知症と診断された人をどうやってケアするのがよいか、という実際的な研究である。1番目の群は「医療」で働いている専門家が、本人に合ったケアをコーディネートしてくれる。2番目の群は「地域」で働いている専門家が、いろいろとつないだりアドバイスしてくれる。3番目の群は、通常のケアである。これらを、認知症の行動心理症状(もの忘れ等の中核的な症状ではなく、たとえば、興奮とか妄想とか、介護者が最も困るもの)をメインアウトカムとして比較している。 説明の前に、認知症の医療のことを少し説明しよう。がんなどの古典的な医療提供体制としては、<調子が悪くてかかりつけ医に行く⇒異常があり大病院に紹介⇒大病院で精密検査しがんが見つかる⇒先端的チームによる素晴らしい手術を受ける⇒術後のケアを受ける⇒安定したらかかりつけ医に戻る>といった経過を取る。では認知症ではどうだろうか。かつては大学病院の認知症外来でも、がんなどと同じことが行われていた。<遠方から患者さんがやって来る⇒大学病院で平凡なアルツハイマー型認知症と診断される⇒大学病院に来続ける⇒ゆっくりと進行する⇒ある日通院できなくなり地域の資源を探し始めるがよくわからない>といった経過である。患者さんや家族にとって、大学病院にかかっている安心感がある以外にメリットのない構図である。 珍しい疾患や、診断が難しいもの(たとえば若年性認知症や、さまざまな希少な神経変性疾患)は大学病院等にかかる意味はあるだろう。しかし普通の認知症は、地域の医療機関や、地域の介護専門家と早期から関係をつくって、本人に合ったケアをコーディネートしたり、さまざまな地域資源のつながりの中でケアしたほうがうまくいく。そもそも大学病院等は、地域とは隔絶していることが多く、認知症ケアに関しては無力であることが多い(もちろん例外もあるだろうが)。 本研究は、「医療」に重きを置く、あるいは「地域」に重きを置くケアが、通常のケアよりも優れているのではないか、そしてどちらがより優れているのか、というのを検証している。 結果は、認知症の行動心理症状に関しては残念ながら3群に有意差はなかった。米国の「通常ケア」の実態を知っているわけではないが、ケアシステム間の比較は難しい。先端的なケア(1、2群のこと)のほうが優れていることは専門家なら誰でもわかっている。とはいえ、患者さんが大変な状況になったら、ケアシステムの中の人は、たぶん必死で助けようとするだろう。どのケアシステムにも、とても優れた専門家もいれば、そうでもない人もいる。なので行動心理症状のような「大変な事態」で比較してしまうと、ケアシステム間の差はうまく出なかったのだろう。例えて言うなれば、カウンターフレンチや無農薬の農家レストランは、町の定食屋に比べたら特別な体験を提供できるし、高いお金を取れる。ただし、空腹の人が飛び込んだ場合には、おいしさには3群に差はないだろう。 なお、メインアウトカムではないが、介護者の自己効力感(自分ならできるという感覚、ケアを安全に続けるためには必須の力であり、これがないと、自分がうつになったり、介護対象者を虐待するリスクが上がる)は1、2群が高かった。これは、当たり前ともいえる。介入群では意識の高い専門家が寄り添ってくれたのだから、自己効力感は上がるだろう。 私たちの研究チームでも、認知症の社会医学研究では、認知機能や行動心理症状などでは有意差を得ることが難しい。それは認知症が複雑な状態であり、認知機能や行動心理症状はその一部にすぎず、そして世界との絶え間ない交流という動的状態の中にあるからだ。そして世界もまたきわめて複雑だからである。私たちのチームでは本人・家族のウェルビーイングや自己効力感を使っている。私たちならメインアウトカムを行動心理症状にはしなかっただろう。

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