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機械翻訳で英語の壁を乗り越えよう【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第23回

機械翻訳で英語の壁を乗り越えよう1)「DeepL翻訳」の特性を理解しておく2)パソコンにダウンロードして効率よく使う3)「別の訳語」機能をうまく活用する国際学会の発表で、まずネックになるのが英語です。抄録を作成する時点で英語の壁に突き当たり、諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。そんなときに大きな助けになるのが機械翻訳サービスです。機械翻訳と聞くとGoogle翻訳を思い浮かべる方も多いと思いますが、ここ数年で自然な翻訳ができるとして「DeepL(ディープエル)」の翻訳サービスが広く使われるようになっており、国際学会の発表の場面でも役立ちます。DeepLは、2017年にドイツの会社が開始した機械翻訳サービスです。DeepL翻訳はウェブ上でも利用できますが、DeepLアプリやブラウザの拡張機能としてダウンロードしておくとより便利に使えます。ダウンロード後、翻訳したい文章を選択し、WindowsであればCtrlキーを押しながらCを2連打、MacであればCommandキーを押しながらCを2連打することで簡単に翻訳できます〈図1、図2〉。〈図1〉画像を拡大する〈図2〉画像を拡大する関連する論文の検索をする際、英語の文章を読むのが苦手な方は日本語に訳すことで効率よく情報収集できます。また、英語の文章を書くのが苦手な方は、まずは日本語で文章を書き、DeepL翻訳にかけて英語に直す方法を取るとよいでしょう。このときに必要な注意は、「機械翻訳の結果をうのみにしない」ことです。自分の意図と違う文章になっていたり、文章を丸ごと省略したりしてしまう場合があるので、翻訳後の文章のチェックは入念に行いましょう。とくに、日本語の文章は主語が省略される傾向があるので、翻訳したときに関係のない主語が付いてしまう場合があります。翻訳前の日本語の文章には意識して主語を入れておくのがポイントです。また、翻訳された英文がいまひとつというときは、「別の訳語」機能を活用しましょう。英訳された文章の単語をクリックすると、ほかの訳語候補が表示され、変更したい単語を選択すると文章が書き換えられます〈図3〉。好みの表現を選ぶことができ、便利です。〈図3〉画像を拡大する機械翻訳の使用には賛否両論ありますが、個人的にはこのような便利なツールを使用することで国際学会の発表のハードルが下がり、英語がネックでこれまで挑戦できなかった人が挑戦できるようになるのは喜ばしいことだと思います。機械翻訳の特性を理解したうえで、上手に活用しましょう。講師紹介

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食事の質は片頭痛にも影響

 イラン・Isfahan University of Medical SciencesのArghavan Balali氏らは、食事の質と片頭痛との関連性について、評価を行った。その結果、食事の質の改善は、片頭痛の頻度、重症度、関連する問題などの片頭痛アウトカムの改善と関連している可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2023年8月5日号の報告。 20~50歳の片頭痛患者262例を対象に、横断的研究を実施した。食事の質の評価には、Healthy Eating Index 2015(HEI-2015)およびAlternative Healthy Eating Index 2010(AHEI-2010)を用いた。食事の摂取量の評価には、168項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。片頭痛のアウトカムには、臨床因子(重症度、期間、頻度、片頭痛に関連する問題)および血中一酸化窒素(NO)を含めた。食事の質と片頭痛アウトカムとの関連性は、線形回帰を用いて評価し、βおよび95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・HEI-2015では、関連する交絡因子で調整した後、HEIスコアが最も高い群(第3三分位)と最も低い群(第1三分位)との間において、片頭痛頻度の逆相関が認められた(β:-4.75、95%CI:-6.73~-2.76)。・AHEI-2010では、調整済みモデルにおいて、片頭痛頻度(β:-3.67、95%CI:-5.65~-1.69)および片頭痛に関連する問題(β:-2.74、95%CI:-4.79~-0.68)と逆相関が認められた。・AHEI-2010では、第2三分位と第1三分位との間において、片頭痛重症度の逆相関が認められた(β:-0.56、95%CI:-1.08~-0.05)。・食事の質とNOレベルとの関連は認められなかった(p>0.14)。・本メカニズムの解明には、今後の研究が求められる。

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新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、XBBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。 本研究では、オミクロン株EG.5.1のウイルス学的特性を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から検証した。変異株間の流行拡大能力の比較の指標として、実効再生産数を用いた。実効再生産数とは、特定の状況下において1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均。また、ウイルスの感染性を評価するために、レンチウイルスベースの疑似ウイルスを製作して用いた。ウイルスの中和抗体回避能を調べるために、新型コロナワクチンを2回接種し2週間以上経過してXBBに感染した人の血清(XBB BTI血清)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・中国、韓国、米国、日本、シンガポール、カナダのウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内におけるオミクロン株の実効再生産数を推定した。その結果、各国のデータで共通して、EG.5.1の実効再生産数は、XBB.1.5に比べて1.2倍程度高かった。・一方で、ウイルスの培養細胞における感染性を評価したところ、EG.5.1はXBB.1.5/1.9.2より有意に低い感染価を示した。※XBB.1.5とXBB.1.9.2のスパイクタンパク質は同一。・EG.5.1がXBB系統のブレークスルー感染によって誘導される中和抗体の抗ウイルス効果を回避するかどうかを調べるために、XBB BTI血清を用いて中和アッセイを行った。EG.5.1に対するXBB BTI血清の50%中和力価(NT50)は、親株のXBB.1.5/1.9.2に対するものより有意に(1.4倍)低く、免疫回避しやすいことが示された。・XBB.1.5/1.9.2、XBB.1.16、XBB.1.5/1.9.2+Q52Hに対するXBB BTI血清のNT50値は同等であった。しかし、XBB.1.5/1.9.2+F456Lに対するNT50値は、親株のXBB.1.5/1.9.2よりも有意に(1.9倍)低かった。このことから、EG.5.1のスパイクタンパク質に存在するF456L変異は免疫回避につながる重要な変異であることが示唆された。 研究チームは本結果に関するリリースにて、EG.5.1の流行拡大を回避するために有効な感染対策を講じることが肝要だと述べている。

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第177回 コロナ前に逆戻りする人ほど、医療崩壊を見くびる傾向?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染者報告が増加し続けている。ご存じのように新型コロナの感染拡大状況に関しては、感染症法上の分類が5類に移行してからは、定点報告に切り替わっている。その最初が2023年第19週(5月8〜14日)だが、この時の全国での定点当たりの感染者数は2.63人。その後、この数字はほぼ一貫して右肩上がりの増加を続け、最新の第35週(8月28日~9月3日)には20.50と約10倍にまで達している。しかし、東京都心の様子を見ている限りは、「どこ吹く風?」くらいの雰囲気だ。そうした中で、第35週の定点当たりの報告数が32.54人となり、都道府県別では全国第2位(1位は岩手県の35.24人)の宮城県医師会の会見を報じたテレビニュース映像がインターネット上で流れている。会見した宮城県医師会会長の佐藤 和宏氏の「医療現場は非常にひっ迫。助けられる命も助けられない」「これが医療崩壊。私はこの言葉が好きではないが、実際起こってみるとこれが医療崩壊なんだと思います。今はすでに『第9波』の中にいる」「やはりコロナはまだ終わっていないと思う。今更そんなこと言うなと、楽しくやりたい気持ちも私も十分わかるけど、身を守って、高齢者などの命を守るためには、まずマスクをしてほしい」という発言は、かなりの切迫感がこもっている。この発言、たまたま私は同じ宮城県出身であるため痛いほどわかる側面がある。宮城県と言えば、県庁所在地は杜の都で有名な仙台市で、事実上の東北地方の首都のような扱いでもある。その意味では医療的にも恵まれている部分もある。しかしながら、それは仙台市レベルで見ればであって、宮城県全体で俯瞰すると、やや状況が変わってくる。とくに病床数の多い総合病院の偏在はここでも大きな課題である。実際、私の実家のある町は、市区町村でいう町だが、人口は3万人を超える。にもかかわらず、町内には有床診療所しかない。確かに電車に乗って30分程度で仙台市内に辿り着けるし、車で10分程度も走れば隣接する自治体の総合病院にも行ける。「何も問題はないじゃないか?」と言われるかもしれないが、それは電車や自動車での移動に問題がないことが前提だ。このような医療提供体制で、新型コロナの定点報告数が30人を超えたらどのようになるかは容易に想像がつく。これは実際のデータからも窺い知ることができる。令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告によると、宮城県全体での人口10万人当たりの病床数は病院で1075.9床、一般診療所で61.6床。実は東北6県の中では最低値だ(もちろん多ければいいものではないことは百も承知である)。ちなみに人口約227万人の宮城県にいる日本感染症学会専門医は36人。これを、新型コロナの定点報告数が一時期30人を超えた沖縄県で見てみると、人口10万人当たりの病床数は病院で1267.4床、一般診療所で55.9床。人口約147万人に対する前述の感染症専門医数は26人。これに加え、宮城県の面積が沖縄県の3倍という事情を加味すれば、実のところ宮城県のほうが医療提供体制、感染症診療体制ともに脆弱と言っても過言ではない。さてこの報道に関する反応はざっくり言えば真っ二つである。医療従事者やある程度医療に知見のある人の多くは、この報道を淡々と引用し、注意喚起を促す方向が多いが、医療とはほぼ無縁の一般人では「また補助金目当てか?」「過去のインフルエンザ(以下、インフル)の流行時でこんなに騒いだか?」的な反応が散見される。「インフルで医療崩壊しなかったのにコロナで医療崩壊するのはおかしい」理論は時に医療従事者の一部も使う。確かにインフルの場合、厚生労働省・感染症サーベランス事業により発出される流行発生警報の基準は定点報告数30人が基準で、過去の警報発出時期に各地の医師会から医療崩壊を訴えることはほとんど聞かなかった。しかし、過去から繰り返しこの連載でも触れているように、新型コロナとインフルは大きく異なる。そもそも感染力が異なり、市中より明らかに警戒度・感染防止対策が進んでいるはずの医療機関内でも院内感染が容易に起こるという現実がある。当然ながら、受け入れる医療機関は相当警戒度を高めなければならず、スペック上の病床数や人員数は十分に機能しなくなる。しかも一般人側は、新型コロナに対し未だインフルほどの馴染みはないため、新型コロナ以前はインフルの疑いがあっても受診しなかった人の一部が、今は風邪様症状で受診する傾向がある。こうなれば当然、前述の医療崩壊が現実となる。よく「医療崩壊は日本の医療制度の欠陥が原因」という言説も耳にする。これは一理ありかもしれない。だが、その制度上の欠陥とは、大雨時に常にダムが無調整で放流を続けているかのような医療のフリーアクセスに行きつく。こうした主張をする人は、このフリーアクセスを制限したら、本当に日常の医療提供体制に満足するのだろうか? 私個人は甚だ疑問である。医療知識のない一般人の主張ならば、時と場合によって戯言と流しても良いが、医療従事者の一部がそういう主張をすると、いい加減にしてほしいと思うのは私だけではないだろう。新型コロナの5類移行以後を「ポストコロナ」時代と定義するなら、その時代に入り、いつまでこうした不毛な論争を続けなければならないのだろう。

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9月15日 世界リンパ腫デー【今日は何の日?】

【9月15日 世界リンパ腫デー】〔由来〕世界50ヵ国、75の悪性リンパ腫患者会・関連支援団体で構成されている世界リンパ腫連合が、2004年よりこの日を「世界リンパ腫デー」として制定。安らぎと新たな命の息吹を表すライムグリーン色のリボンをシンボルに、世界的な疾患啓発活動を展開している。関連コンテンツASCO2023 レポート 血液腫瘍濾胞性リンパ腫フォーラム早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJMホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023進行期皮膚T細胞リンパ腫への同種HSCT、PFSを有意に延長/Lancet

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英文要約、書き換えに活用する【医療者のためのAI活用術】第5回

(1)英文要約に使えるプロンプト論文の執筆や学会の抄録作成などをしている際に、指定された文字数を超過していまい、文字数を削らなければならない、という経験をしたことはないでしょうか。そのような場合、ChatGPTに作成した文章を「○○字以内で要約してください」と指示すると、その条件で要約してくれるため重宝します。また、論文を一通り執筆した際にAbstractを作成する場合や、学会発表でスライド内の文字数を削りたい場合などに、文章を要約する機能が有効になります。プロンプトの例は以下のとおりです。#役割あなたはプロの英文編集者です#命令書入力文の要約を行ってください#制約条件出力は英語で行ってください○○ words以内で要約してくださいアカデミックな単語を使用しつつ、わかりやすい表現にしてください#入力文(ここに要約したい文章を入力)図1のような長い文章を100 words以内に要約するように依頼すると、図2のように指定された文字数で出力が返ってきます。出力した結果は入力した文章を元に作成しているため、大きな間違いは起こりにくいと思いますが、本来の意図と異なる内容になる可能性があるため、内容は必ずダブルチェックし、採用するかどうか取捨選択を行いましょう。あまりに見慣れない英語が多く、不自然に感じるという場合には、制約条件のところに「英語が母国語ではない人にとってもわかりやすい表現を使用してください」などというような条件を追加すると文調を調整することができます。なお、入力する言語や出力する言語はそれぞれ英語や日本語に指定することができます。(図1)要約前の文章画像を拡大する(図2)要約後の文章画像を拡大する(2)英文書き換えに使えるプロンプト英語で論文を書いている際に、「本文中の内容をAbstractにも繰り返して記載したい」というような場合、同じ表現を使用すると単調になってしまうことがあります。また、既存の論文の内容を参考にして文章を書きたい場合、引用元の表現を自分の論文に使用すると、剽窃になってしまう恐れがあります。こういった場合、元の文章を同じような意味でほかの言葉に置き換える「パラフレーズ」というテクニックが重要になります。英語が母国語ではない日本人にとっては苦痛な作業ですが、文章生成が得意なChatGPTを有効活用することで、労力を減らすことができます。以下は、パラフレーズに使えるプロンプトの例です。#役割あなたはプロの英文編集者です#命令書入力文のパラフレーズを行ってください#制約条件出力は英語で行ってください同じ意味を保ちつつ、なるべく文章の構造を変えるようにしてくださいアカデミックな単語を使用しつつ、わかりやすい表現にしてください#入力文(ここに書き換えたい文章を入力)書き換えを行った例を図3に示しています。こちらについても、作成後の文章の確認が必要で、とくに専門用語や固有名詞が置き換わってしまう可能性があるため注意しましょう。また、当然ですがこの作業を行えば必ず剽窃を避けることができるというものではなく、最終責任は著者自身にあることを自覚しておく必要があります。ChatGPTを書き換えに使う際のデメリットは、出力された文章がいまひとつだった場合に、ほかの単語や表現の候補を探すのに手間がかかるという点です。英文書き換えについては「QuillBot」のような、ほかのAIツールもあるため、頻繁に活用する方はChatGPT以外のツールを利用することをおすすめします。(図3)英文書き換えの例画像を拡大する

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自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、明らかな精神症状を発現する傾向があり、これらの症状は、統合失調症患者でみられる症状と類似している。獨協医科大学のMomoka Yamada氏らは、ASD、統合失調症、非精神疾患の初診患者における精神症状の違いについて、調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月21日号の報告。 初診患者のデータは、2019年6月~2021年5月の獨協医科大学病院精神科の診療記録よりレトロスペクティブに収集した。分析には、精神症状の簡易評価ツールであるPRIME Screen-Revised(PS-R)の評価データを有する254例を含めた。すべての精神科診断には、DSM-V診断基準が用いられていた。 主な結果は以下のとおり。・混乱や妄想的気分は、ASDで15.6%(7/45例)、統合失調症で41.5%(44/106例)、非精神疾患で1.1%(1/88例)に認められ、知覚異常は、ASDで11.1%(5/45例)、統合失調症で40.6%(43/106例)、非精神疾患で2.3%(2/88例)に認められた。・傾向分析では、これらの精神症状は、非精神疾患<ASD<統合失調症と増加していた。・多変量調整多項ロジスティック回帰分析では、ASDおよび非精神疾患と統合失調症との比較を行った。・より高い年齢、知覚異常の発現は、ASD診断を受けていないことと関連し、男性、混乱や妄想的気分がないこと、知覚症状がないことは、非精神疾患と関連していた。 著者らは、本結果は暫定的なものであるとしながらも、陽性症状を詳細に評価することで、ASDと統合失調症の鑑別が容易になる可能性があるとまとめている。

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EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法 vs.オシメルチニブ(FLAURA2)/WCLC2023

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、オシメルチニブと化学療法の併用は、オシメルチニブ単独と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示した。 世界肺学会(WCLC2023)で、米国・ダナ・ファーバーがん研究所の Pasi A. Janne氏らが発表した、進行期NSCLCにおけるオシメルチニブと化学療法の併用を評価する第III相FLAURA2試験の結果である。・対象:局所進行および転移のある未治療のEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)NSCLC患者557例・試験群:オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごと(オシメルチニブ+化学療法群、279例)・対照群:オシメルチニブ80mg/日(オシメルチニブ群、278例)・評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)など 主な結果は以下のとおり。・治験担当医評価のPFS中央値はオシメルチニブ+化学療法群で25.5ヵ月、オシメルチニブ群で16.7ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.0001)。・盲検下独立中央判定(BICR)のPFS中央値はオシメルチニブ+化学療法群で29.4ヵ月、オシメルチニブ群で19.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.48~0.80、p=0.0002)。1年PFS率は併用群で80%、オシメルチニブ群で67%であった。・中枢神経系(CNS)転移患者の治験担当医評価のPFS中央値は併用療法群で24.9ヵ月、オシメルチニブ群で13.8ヵ月だった(HR:0.47、95%CI:0.33〜0.66)。 ・OS中央値は両群とも未到達であった。・治験担当医評価のORRはオシメルチニブ+化学療法群83%、オシメルチニブ群76%、BICR評価のORRはそれぞれ92%と83%であった。・Grade≧3の有害事象は、オシメルチニブ+化学療法群の64% 、オシメルチニブ群の27%で発現した。 Janne氏は、これらの結果から、オシメルチニブと化学療法の併用は、EGFR変異を有する進行NSCLC患者の新たな治療選択肢となり得る、と結論付けた。

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分岐部病変のPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 複雑な冠動脈分岐部病変を有する患者では、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管造影ガイド下PCIと比較して、2年時点の主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低いことを、デンマーク・オーフス大学病院のNiels R. Holm氏らが、欧州の38施設で実施された多施設共同無作為化非盲検試験「European Trial on Optical Coherence Tomography Optimized Bifurcation Event Reduction(OCTOBER)試験」の結果、報告した。OCTガイド下PCIは、血管造影ガイド下PCIと比較してより良好な臨床アウトカムに関連することが知られているが、冠動脈分岐部を含む病変に対するPCIにおいても同様の結果が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。主要エンドポイントは、2年時の主要有害心血管イベント(MACE) 研究グループは、18歳以上で、安定狭心症、不安定狭心症または非ST上昇型心筋梗塞を有し、PCIの臨床適応があり、冠動脈造影で複雑な分岐部病変(主幹:対照血管径2.75mm以上で狭窄率50%以上、側枝:対照血管径2.5mm以上、側枝入口部から5mm以内の狭窄が50%以上)が特定された患者を、OCTガイド下PCI群または血管造影ガイド下PCI群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、追跡期間中央値2年時点のMACE(心臓死、標的病変の心筋梗塞、または虚血による標的病変の血行再建術の複合)とした。MACE発生率は、OCTガイド下PCIで10.1%、血管造影ガイド下PCIで14.1% 2017年7月~2022年3月に計1,201例(平均±SD年齢66.3±10.2歳、女性21.1%)が登録され、OCTガイド下PCI群に600例、血管造影ガイド下PCI群に601例が割り付けられた。227例(OCTガイド下PCI群111例18.5%、血管造影ガイド下PCI群116例19.3%)が左冠動脈主幹部に病変を有し、231例が他の標的病変も治療された多枝病変であった。 主要エンドポイントの2年時点のMACEイベントは、OCTガイド下PCI群で59例(10.1%)、血管造影ガイド下PCI群で83例(14.1%)が確認され、ハザード比(HR)は0.70(95%信頼区間[CI]:0.50~0.98、p=0.035)であった。 手技関連合併症は、OCTガイド下PCI群41例(6.8%)、血管造影ガイド下PCI群34例(5.7%)に発現した。

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発作性AFのアブレーション、パルスフィールドvs.クライオ/高周波バルーン/NEJM

 発作性心房細動のカテーテル治療において、パルスフィールドアブレーション(PFA)は従来のサーマルアブレーション(高周波またはクライオバルーンアブレーション)に対して、1年時点の治療成功および重篤な有害事象に関して非劣性であることが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y. Reddy氏らが、無作為化単盲検非劣性試験「ADVENT試験」の結果を報告した。カテーテルによる肺静脈隔離術は、発作性心房細動の有効な治療法である。マイクロ秒の高電圧電界を送達するPFAは、心筋以外の組織の損傷を抑えることが可能であるが、従来のサーマルアブレーションと比較したPFAの有効性および安全性はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。治療抵抗性の発作性心房細動患者607例を対象 研究グループは、75歳以下で、1種類以上の抗不整脈薬に抵抗性の発作性心房細動患者を、PFA群または従来のサーマルアブレーション(高周波またはクライオバルーンアブレーション)群に、1対1の割合に無作為化に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、治療成功(以下がないこと:肺静脈隔離の初期手技失敗、3ヵ月のブランキング期間後に30秒以上持続する心房頻脈性不整脈、3ヵ月のブランキング期間後のクラスIまたはIIIの抗不整脈薬または電気的除細動の使用、アミオダロンの使用、再アブレーション)、安全性の主要エンドポイントは、7日以内のデバイスおよび手技関連の重篤な有害事象(左房食道瘻および肺静脈狭窄は発生時期を問わず含む)の複合とした。 2021年3月1日~2022年6月3日に、計706例が登録され、ロールイン症例80例(1施設1~3例)の治療完了後、626例が無作為に割り付けられた。このうち治療前に同意を撤回した患者を除く607例(PFA群305例、サーマルアブレーション群302例)が解析対象集団となった。PFAは、有効性および安全性ともにサーマルアブレーションに対して非劣性 追跡期間1年時点で、主要有効性エンドポイントの達成は、PFA群204例(推定確率73.3%)、サーマルアブレーション群194例(71.3%)で、群間差は2.0ポイント(95%ベイズ信用区間:-5.2~9.2、非劣性の事後確率>0.999)であった。 主要安全性エンドポイントのイベントは、PFA群で6例(推定発現率2.1%)、サーマルアブレーション群で4例(1.5%)に認められ、群間差は0.6ポイント(95%ベイズ信用区間:-1.5~2.8、非劣性の事後確率>0.999)であった。

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経口GLP-1受容体作動薬の画期的な開発への期待(解説:安孫子亜津子氏)

 現在使用されているGLP-1受容体作動薬はペプチド製剤で、注射薬が主体であり、2型糖尿病の治療として使用されている。とくに、週に1回の注射製剤はその簡便性と有効性から使用患者が増加している。2021年には世界初の経口GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが登場し、さらにその使用者層が広がった。ただし、経口セマグルチドは空腹状態の胃から吸収される必要があるため、その内服方法に制約があり、適切な内服ができない場合には効果が減弱する。 このたび、新規経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬であるorforglipronが開発され、第II相臨床試験の結果がLancet誌に発表された。本試験の対象は、18歳以上、BMIが23以上の2型糖尿病患者で、4ヵ国45施設で実施された。プラセボ群、デュラグルチド1.5mg群と、orforglipronは3mg、12mg、24mg、36mg、45mg(1日1回投与)各群に無作為に割り付けられ、36mgと45mgは、それぞれ2つの異なる用量漸増レジメンが試された。 主要有効性アウトカムである、orforglipron各用量群vs.プラセボ群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化は、orforglipron群で-1.2%(3mg群)~-2.1%(45mg群)、プラセボ群-0.4%、デュラグルチド群-1.1%であった。orforglipronの全用量群で、HbA1c低下に関してプラセボ群に対する優越性が認められ、さらにorforglipronの12mg以上の用量群ではデュラグルチド群に対する優越性が認められた。26週時の体重の平均変化は、orforglipronで-3.7kg(3mg群)~-10.1kg(45mg群)、プラセボ群-2.2kg、デュラグルチド群-3.9kgであった。有害事象の発現率は、orforglipron群61.8%~88.9%、プラセボ群61.8%、デュラグルチド群56.0%で、多くは軽度から中等度の胃腸障害であった。 この試験の結果から、新規経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬のorforglipronは12mg以上でデュラグルチドに対して優越性が認められ、そのHbA1c低下効果と体重減少効果が示された。GLP-1製剤全般に一般的に起こりうる胃腸障害には本薬剤も注意を要するが、低血糖を起こしにくく、内服方法に制約がないことが大きな魅力であり、さらに糖尿病を持つ多くの人たちの良好な血糖管理が可能となることが期待される。今後、本薬剤の第III相試験の結果が待たれる。

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若者の不定愁訴【Dr. 中島の 新・徒然草】(494)

四百九十四の段 若者の不定愁訴もう9月も半ばになりました。そろそろエアコンも要らなくなってきましたね。さて、先日のこと。医師会の集まりで、医学部の同級生と隣になりました。私が脳外科だけでなく総合診療科もしていると言うと、ずいぶん同情されました。同級生「どうしても年を取ると総合診療に駆り出されるからな。でも脳外科の先生らにとっては鑑別診断なんかキツイやろ」彼は内科なので、鑑別診断は得意中の得意です。中島「確かにやっててキツイわ、鑑別診断って。いつも思うことやけど、総診というのは内科か救急ベースがいいと思うな」もっとも、あちこちの診療科や医療機関で診断の付かない症例が紹介されてくることが多いので、診断が付かなくても非難されることはありません。それと、脳外科に比べれば元気な患者さんが多いので、よくわからない時は診断に2ヵ月でも3ヵ月でもかけることができます。中島「最近、総診で多いのは若い人の不定愁訴かな」同級生「ホンマか!」中島「息切れとか動悸とか。やたら疲れやすくなって会社を休みがちになるとか」高齢者の愁訴はいつものこと。そもそも私自身、常時どこか体の不調があります。でも、若い人はあまりブツブツ言ったりしません。中島「それで若者の体調不良があったら、この半年くらいで熱が出たりしなかったかって聞くわけよ。そしたら大抵『3ヵ月前に39度の熱が出ました。それ以来です、調子が悪くなったのは』とか返ってくるんで……」同級生「何それ?」中島「コロナ後遺症じゃないのかな。いくら検査が陰性だったとしても否定できないでしょう」COVID-19の検査が感度7割としたら、3割は偽陰性に出てしまいます。中島「以前はコロナ後遺症といったら嗅覚障害や脱毛が多かったけど、今は動悸、息切れ、倦怠感が多いように思うよ」同級生「そう言われれば、そんな気もするなあ」中島「だから、いくら検査が陰性だったとしても『それはコロナ後遺症だから、あまりつらかったら会社を休みましょう』と僕は言うことが多いな」同級生「おっ、いいお医者さんやなあ!」どんな病気でも、体を休めるのは治療の第一歩だと私は思っています。だから、患者さんにも休むことをお勧めすることが多いですね。読者の皆様も、もし若い患者さんが原因不明の体調不良で苦しんでいたら、一度はコロナ後遺症を疑ってみてもいいのではないでしょうか?発熱のようなわかりやすい症状がなくても、知らないうちにコロナにかかっている可能性は十分あるのではないかと思います。ということで最後に1句秋きても まだまだ続く コロナかな

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ディズニーチケット1万円超! エンタメニュースにしてはいけない深刻な理由【医師のためのお金の話】第72回

東京ディズニーリゾートのパークチケットの最高価格が、ついに1万円を超えたというニュースを耳にした人も多いことでしょう。ディズニーフリークにとっては一大事ですが、一般の人にとっては重要性を感じないかもしれません。しかし、私たちは東京ディズニーリゾートのパークチケット値上げを、人ごととして片付けてしまってはいけません。なぜなら、私たちの生活に密接に関わる問題であり、無関心にしてしまうと将来に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。東京ディズニーリゾートなんて興味がないし、そもそも行こうとも思わない。実は私もテーマパーク大嫌い人間ですが、パークチケット値上げは単なるエンタメニュースとして看過してはいけないと感じました。値上げの背景に真剣に向き合う必要があるのです。パークチケットの価格上昇は、私たちの仕事への取り組みや資産形成を考えるうえで、1つの指標になるかもしれません。一見、私たちの生活とは何の関係もない東京ディズニーリゾートの値上げニュース。私たち医師が注目するべき理由を考えてみましょう。東京ディズニーリゾートのチケットが1万円超! なぜ値上げしたのか?東京ディズニーリゾートのパークチケットの最高価格が1万円を超えた背景には、いくつかの要因があります。これらの要因を理解することで、パークチケットの価格変動に対しても理解を深めることができるでしょう。1つ目の要因は、経済状況の変化です。日本では最近、物価上昇の動きが続いており、それに伴って東京ディズニーランドの運営費用も上昇しています。人件費や維持費などが増加しているため、パークチケット価格の値上げが必要とされているのです。2つ目の要因は、需要と供給のバランスの調整です。東京ディズニーランドは国内外から多くの人々が訪れる人気のあるテーマパークです。その人気によって需要が供給を上回ると、とくに祝祭日などで大変な混雑が発生します。せっかく東京ディズニーランドに来ても混雑し過ぎていて全然楽しめない状況が続くと、潜在的な顧客を失う可能性があります。祝祭日などに集中する入園者を平日に振り向けるため、パークチケット価格の調整が必要となっているのです。3つ目の要因は、2022年以降の急激な円安です。東京ディズニーリゾートは、ライセンス料を米国のウォルト・ディズニーにドル建てで払っています。円安になると日本円換算のライセンス料負担が重くなります。このため、パークチケット価格を値上げせざるを得ないのです。チケット価格の高騰は生活必需品の値上げとも関係あり東京ディズニーリゾートのパークチケット価格上昇は、単なるエンタメニュースとは切り捨てられません。値上げの理由が、日本円の通貨価値下落とインフレの影響を受けているからです。円安は日本円の通貨価値が外国通貨に比べて低下することを指します。原油や小麦などの商品価格はドル建てです。このため、円安になると原油や小麦などを原材料に使っている生活必需品の価格も上昇せざるを得ません。いわゆるインフレです。インフレとは、一般的な物価水準が上昇して、お金の価値が低下することを指します。生活必需品の値上げや経済全体のインフレが進む中、東京ディズニーランドも運営コストが上昇しており、その結果としてパークチケット価格が上昇しているのです。つまり、パークチケット価格の上昇と生活必需品の値上げには密接な関係があります。円安やインフレは経済状況に大きな影響を与える要素であり、私たちの生活や経済状況にも直結しています。したがって、パークチケット価格の上昇は人ごとではなく、私たちの生活や人生設計にも深刻な影響を与えることを理解する必要があります。円安やインフレがどのようにチケット価格に影響を及ぼすのかを知ることで、経済的な意思決定をより賢くできるでしょう。日本円の通貨価値下落を認識して資産防衛を考えよう東京ディズニーリゾートのパークチケット価格の上昇を理解するうえで、日本円の通貨価値下落という要素を見逃すことはできません。通貨価値が下落すると、外国からの輸入品が高くなり、海外旅行などにも悪い影響を及ぼします。一方、通貨価値下落は、一部の人にとってはチャンスともいえます。なぜなら、通貨価値の変動によって為替市場で利益をあげることができるからです。また、海外株式などの外貨建て投資などで、通貨変動を利用して資産を増やすことも可能です。円安を利用して海外投資で稼ぐなんてハードルが高いと思う人は、日本株や国内の不動産に目を向けてみましょう。現在の日本株や国内不動産の高騰は、日本円の通貨価値下落の裏返しに過ぎない可能性があります。つまり、日本株や不動産の本質的価値が上昇したのではなく、日本円の通貨価値下落の避難所として日本株や国内不動産が高騰しているかもしれないのです。下層に落ちるのを防ぐには、株式や不動産にも目を向ける必要があるかもしれません。

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ブラック教授選を戦い抜き、ホワイト医局をつくる

2021年に近畿大学医学部教授に着任した大塚 篤司氏。現職を含め計3回挑んだ教授選をテーマにしたコラムをWebで連載し、今年7月には”小説“として書籍『白い巨塔が真っ黒だった件』(幻冬舎)にまとめた。「Web連載のスタート時は医局改革について書くつもりだったのが、教授選について書いた回の反響があまりにも大きくて…。自分としてもきちんと振り返っておこうと本にまとめました」。執筆を終えての思いと、これからの展望について聞いた。理不尽さの前に立ち尽くす、日本の中堅層に読んでほしい――新著では、実力よりも政治力が問われる教授選の実態を、余すところなく描いています。波紋を呼びそうな内容の本書をまとめた原動力は?Web連載が始まると、「こんなところまで書いていいんですか?」と周囲からの反響が大きく、みんなそんなに教授選のことを知りたいのか、と感じました。反響の大きさから、書籍にまとめる話が進んだのですが、スキャンダラスな暴露本にはしたくなくて…。基本的に、連載もそれをベースにまとめた本書も“フィクション”です。主人公である僕の心情はリアルなものですが、ほかの登場人物や設定は架空のものです。物語としてまとめ直すことで、自分の書きたいことを縛りなく、書き切ることができました。僕はこれまで何冊も本を書きましたが、フィクションは初めて。編集の方に「小説の書き方」を手取り足取り教えてもらいました。おかげさまで、すらすら読めるエンタメ小説に仕上がったと思います。――教授選に2回破れ、精神的に追い詰められていく様子が描かれています。そこを乗り越え、3回目に挑まれた理由は?僕が医師になったのは2003年ですが、そのときは医師の働き方の多様性がありませんでした。医局に入るか、民間病院で部長になるか、開業するか、といったくらいの選択肢しかない。僕は研究をしたかったし、チームで仕事をしたかったので医局に入りましたが、入局したら「そのまま教授を目指す」のが既定路線であり、それをなぞってきた感はあります。そして、医局の中でいい経験もつらい経験もする中で、自分の理想とする医局をつくりたい、と思うようになりました。とはいえ、この20年間で医師のキャリアも多様化しました。僕はSNSの医療発信に力を入れており、それを契機に医療者以外の方とのつながりが増え、世界が広がりました。大学以外の場所でもチームで面白い仕事ができることを実感したのです。2回目の教授選の敗戦は精神的にこたえましたが、そのときにはそうした外とのつながりがあったので、「大学にいることにこだわらなくてもいいかな」と考えられました。そんなとき、今のポジションの話が来たのです。情報発信やマーケティングに熱心な大学だと聞いていたので自分と合うのでは、という気持ちがあったのと、「これでダメならもういいや」と割り切って挑むことができました。――本書を一番読んでほしい人は?Web連載は医療者向けのサイトで書いていたので、今回本にすることで一般の方にも届くといいなと思っています。以前の僕のように、硬直した組織の中で閉塞感を抱え、もっと本当はよくできるのに…と、モヤモヤした思いを抱えながら働いている、そんな中堅層の方でしょうか。僕も何度も組織に絶望し、夢を諦めそうになりました。でも、そのときに周囲や家族の助けがあって、いま一歩のところで踏みとどまってきました。不透明な意思決定などの理不尽な目に遭い、希望を失っている人が日本中にいます。そうした状況にいる人に「もう少し頑張れば、光が見える。一緒に頑張ろう」という励ましのメッセージを込めました。2年でここまで進めた医局改革――教授に着任されて2年、医局改革はどのように進めているのでしょうか?わかりやすいところでは、「教授の総回診」を廃止しました。小説『白い巨塔』で一般にも知られるようになった、医局のシンボル的な行事です。以前は教授の診察テクニックを若手が盗む、といった意味があったのだと思いますが、時代は変わり、若手が学べる場は増えました。若手の学びの場としては効率が悪く、患者さんからも「ぞろぞろ来られて、感じが悪い」というマイナスの声が上がるようになりました。もうそういう非効率的なことはやめよう、と決めたのです。病棟全体を把握する必要はあるので、週1回、僕と看護師長と病棟医長の3人で回診し、若手は相談があればそこに来てもらい、なければ自分の仕事をする、というスタイルにしました。――2024年からスタートする「医師の働き方改革」への対応は?皮膚科の特徴として、女性医師の比率がきわめて高いことがあります。僕の教室でも入局者の7~8割が女性で、彼女たちが希望を持ってキャリアを築ける環境づくりが必須です。子供のお迎えに間に合うよう、それまで就業時間後に始めていたカンファレンスを就業時間内に終わるよう改めたり、カンファレンスや勉強会を育児休業中の先生も見られるようにWeb配信して現場復帰をスムーズにしたり、といった工夫をしました。加えて、有給休暇をきちんと取れるように徹底しています。本書でも書いていますが、僕自身、過労とストレスで一度倒れたことがあります。また、スイスへの留学時は夏休みと冬休みをそれぞれ2週間ずつ取れる環境でした。それまで働き詰めだったので「そんなに休んだら成果が出ないだろう」と思っていたのですがそんなことはなく、しっかり休んだほうが、生産性が上がることを実感しました。そうした背景から、教授就任のタイミングで2週間連続して取得できる有給休暇を設定し、まずは自分から取るようにしています。女性の多い医局として、働き方改革の新たなモデルを率先してつくっていかなければと思っています。――医局は医師派遣など人事的な役割も大きいですが、個人の希望やキャリアとのバランスは?医局と人事は切っても切り離せない関係です。医師個人のキャリアや生活の満足度を上げつつ、地域の医療を守らなければなりません。近大は私立なので、国立大学とは地域医療において求められる役割が少し違いますが、それでも近県含め、医療が手薄な地域の方の健康を守る責任があります。本人が望まない人事は基本的にしませんが、まずは医局員とよく話すようにしています。たとえば、親の診療所を継ぐ予定のある人なら「地域の医療も知っておいたほうがいいかもしれないよ」とアドバイスするなど、視野を広げてキャリアを選べるように話し合っています。若手とたくさん話し、彼ら・彼女らの興味を知って、機会があれば外に連れ出したり、人を紹介したりしています。僕自身、大学から出て、外の世界の方とつながって、世界がぐっと広がった実感があります。希望を持ってキラキラした目で入局してきた若手が、狭い病院に閉じ込められ、疲弊してしまうのは避けたい。医師の仕事は忙しく、とくに若手の間は業務に忙殺されがちですが、無駄をなくし、時間を捻出し、外の世界とつなげて閉塞感を感じさせないようにする。そこはマネジメントの力量だと思います。――最近では医局に属さない若手医師も増えていますが、医局の魅力とは?批判的に語られることが多い医局ですが、その持つ力や価値は今でも大きいと思います。若手であれば、ロールモデルがたくさんいるのが良い所でしょう。「こんなキャリアがあるんだ」と参考にできる先輩がたくさんいます。そして、医師は個人でも働けますが、インパクトの大きな研究や、社会を動かす大きいプロジェクトはやはり組織でないとできません。ノーベル経済学賞を受賞した心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマン博士が提唱している「ピーク・エンドの法則」というものを意識しています。これは「人間がいろいろな記憶を振り返ったときに、ピーク時とエンド時の記憶が印象を決める」という理論です。たとえば、ディズニーランドへ行ったとき、チケットが高かったとか行列に長時間並んだ、などのマイナスの経験をしても、アトラクションに乗ったときの楽しさと帰り際のパレードの素晴らしさ、つまりは「ピーク」と「エンド」の記憶が素晴らしいから、みんながまた行こうとするわけです。この理論を知ったとき、とても腑に落ちる感じがしました。医局がワクワクする「ピーク」を感じられる場となり、いつか離れる「エンド」には良い記憶として残ってほしいと思います。「チーム」としての実績を作りたい――今後の目標は?今後は「近畿大学皮膚科がやった仕事」を増やしたい。今はどうしても僕が前に出て、広告塔のようになっている面がありますが、研究でも臨床でも「ああ、近畿大学皮膚科っていい仕事をしてるよね」と認知されることを1つずつ作っていきたい。大学ですからもちろん研究業績ならいいですし、産学連携・ベンチャーなどもありうるでしょう。チームとしての実績を作り、認知されることが目標です。個人的な長期目標は、「老害」にならないこと(笑)。僕もこれまでやってきたことに対する自負があるので、年齢を重ねたとき、若手から批判されたら反発する気持ちは出ると思います。でも、だからといって「オレはすごい、まだまだやれる。批判するヤツは潰す」とやってしまったら、若い力が育たない。社会全体でそれをやって萎縮しているのが、今の日本でしょう。でも、権力を持つと人は簡単に変わってしまう。老害にならないためには、外とつながり続け、価値観をアップデートしていかねばなりません。幸い、周囲にいくつになっても最前線で活躍している方や若手を育てている方など、尊敬できる先輩方がいるので、そうした方たちの背中を見ながら、自分なりの働き方、生き方を追求したい。今回の執筆が大変ながらも楽しかったので、小説もまた書きたいですね。書籍タイトルの入ったオリジナルのネクタイは、高校生の娘さんのデザインによるもの。書籍情報『白い巨塔が真っ黒だった件』『白い巨塔が真っ黒だった件』著者大塚 篤司定価1,650円(税込)発行幻冬舎(2023年7月)(ケアネット 杉崎 真名)

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第62回 皆さんはXBB対応ワクチンを接種しますか?

XBB.1.5対応1価ワクチンの接種が開始Unsplashより使用9月20日からXBB.1.5対応1価ワクチンの接種が始まります。これまで年代別に接種条件が非常にわかりにくかったのですが、「初回接種」(5歳以上は1・2回目、4歳以下は1~3回目接種)を終えた人であれば、ほぼすべての年齢層がこのワクチン接種の対象です1)。マックスで接種している医療従事者は、おそらく次の接種は7回目になるかと思います(写真)。写真. 私の接種歴メディア関係の記事を書いていることもあって、周囲からよく「打ち過ぎじゃない?」と言われます。規定の回数で打ったほうが有効ということがわかっておりますし、そもそも「回数が多い=打ち過ぎ」というのは全然科学的でない気がします。新型コロナワクチンはよく「いたちごっこだ」と批判されますが、インフルエンザワクチンでさえも、流行株を年ごとに狙っているので、これもいたちごっこです。パンデミックは「いたちごっこ上等」で向き合わないといけません。医療従事者に対するワクチン私個人としては、病院職員がワクチン接種を受けることは、要は医療に対するモラルとかマナーの範疇だと捉えています。副反応で苦しい思いをしたので接種したくないというのであればやむを得ないと思いますが、自分自身が感染しても軽症で済むからという無責任な理由を宛てがうのは、ちょっとモヤモヤが残ります。ワクチン未接種で院内の患者さんにスプレッドするのは、避けたいところですね。私は国立病院機構に勤務しているのですが、機構全体のインフルエンザワクチンの接種率を調べた報告があります。2008年度で、87.3%という結果でした2)。インフルエンザワクチンに関するマインドはそこまで変わっていないので、このあたりに収れんするのかなと思っています。ただ、新型コロナワクチンについては、マックスで接種している医療従事者の割合はここまで高くないような印象です(調査したわけではありませんが…)。ケアネットのアンケート調査では、3回以上接種している医師は9割以上いるのですが、その後だんだんと接種しなくなっている人が増えている気がします。今後はおそらくインフルエンザワクチンと同じようなタイミングで年1回接種していくことになるでしょうが、XBB.1.5対応1価ワクチンは、同一ワクチンによるブースターというよりも変異ウイルス用に改変したアップデートワクチンなので、接種しておいたほうがよいと思います。私見です。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナワクチン 令和5年秋開始接種についてのお知らせ(第2報)(2023年9月12日)※初回接種がまだの人も、9月20日以降はXBB.1.5対応ワクチンでの初回接種となります。2)国立病院機構臨床評価指標2009. 独立行政法人国立病院機構本部

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睡眠の質を高めるため、多くの医師がしていることは?/1,000人アンケート

 2024年4月から医師の働き方改革の新制度がスタートするが、長時間労働に端を発する医師の過労問題は改善されていないのが現状である。そのような中、睡眠は健康管理の重要カテゴリーとして医学界を筆頭にさまざまな業界で注目されているが、長時間労働者の象徴とも言える医師は果たして睡眠時間を確保できているのだろうか―。そこで、ケアネットでは多忙を極める医師の睡眠時間の実態を調査するために「睡眠状況、睡眠への意識について」のアンケートを実施。回答結果を診療科別、年代別、病床数別に抽出した。平均睡眠時間/睡眠の質に満足、全体の48% 今回は平均睡眠時間(当直時を除く)や睡眠に対する満足度、気になっていることについてそれぞれ質問した。平均睡眠時間や睡眠の質に満足していると回答した割合が半数以上であった診療科は全9科(血液内科、皮膚科、泌尿器科、精神科/心療内科、神経内科、腎臓内科、総合診療科、耳鼻咽喉科、内科)であった。一方、満足している回答者が少なかったのは、眼科(25%)、産婦人科(30%)、放射線科(31%)と続き、臨床研修医(37%)も満足できていない実態が明らかになった。また、年代別の満足度を見ると70代以上(59%)、40代(50%)、60代(49%)と続いた。1日の平均睡眠時間、6時間が最多 経済協力開発機構(OECD)が33ヵ国を対象に行った「1日の睡眠時間(睡眠に充てる時間)」に関する調査によると、日本人の睡眠時間は7時間22分と33ヵ国平均(8時間28分)と比較しても1時間以上短い。さらに「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者である株式会社プレインスリープ創業者/最高研究顧問の西野 精治氏らが調査した日本人の平均睡眠時間は6時間43分と報告されている。これらを参考に、ここでは「睡眠時間5時間以下を睡眠時間が短い」と定義すると、本アンケート全体では4人に1人が睡眠不足であり、血液内科、総合診療科、麻酔科、小児科などが該当した。ただし、血液内科においては睡眠時間が短くても現状に満足していると回答している人が多く、睡眠時間が長い=満足、につながるわけではないことも言えるのではないだろうか。ちなみに、こちらも年代で見てみると、睡眠への満足度が高かった70代の3割超は5時間睡眠であった。医師が睡眠時に気になっていること 続いて「医師自身が睡眠時において気にしていること」を尋ねたところ、回答者の2/3が睡眠中の悩みを抱えており、最も多かったのは中途覚醒で、50代以上の回答が多かった。そのほか、いびき、入眠障害も年齢層問わず悩みの種として挙げられた。睡眠の質向上のため、マットレスや枕にこだわる 今回のアンケートでは医師が睡眠のためにこだわっている物事、活用している物も聞いてみた。その結果、枕と回答した人が最も多く(397人)、オススメ商品として「テンピュール」「じぶんまくら」を多数が挙げていた。次にマットレス/布団(317人)と回答した人が多く、「エアウィーヴ」「コアラマットレス」「シモンズ」などが選ばれていた。また、睡眠のために、「ヤクルト1000」などの乳酸菌飲料やサプリメントの摂取、就寝時間や食事時間など時間管理を挙げる人も多かった。 なお、厚生労働省は今年3月、睡眠について気になっているけれど対処法がわからずに悩んでいる人、肥満、高血圧、糖尿病などの疾患がある人を含む幅広い人を対象に作成された『良い目覚めは良い眠りから知っているようで知らない睡眠のこと』というパンフレットとともにその解説書を公開しており、患者への生活指導のみならず医師にも役立つツールなので、ぜひ参考にされたい。 このほか、医師の睡眠実態の詳細ほか、以下のアンケ―ト結果では医師が個人の見解でオススメする寝具、意識して取り入れている物の一覧も公開している。『医師の平均睡眠時間、睡眠への満足度は?』<アンケート概要>目的:睡眠が健康管理の重要なカテゴリーとして注目されていることから、多忙な医師の睡眠状況、睡眠に対する意識を調査した。対象:ケアネット会員医師 1,000人調査日:2023年8月24日方法:インターネット

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モデルナのXBB.1.5対応コロナワクチン、追加免疫として承認/厚労省

 厚生労働省は9月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、モデルナの「スパイクバックス筋注」にオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。 本ワクチンは、世界で急速に拡大し新たな懸念となっているEG.5(エリス)やFL.1.5.1、BA.2.86(ピロラ)といった変異に対しても強固なヒト免疫応答を示している。また、米国食品医薬品局(FDA)も9月11日付のリリースにて、モデルナおよびファイザーのXBB.1.5対応1価ワクチンの12歳以上への生物製剤承認一部変更申請の承認、生後6ヵ月~11歳への緊急使用許可を行ったことを発表した。 日本における秋開始接種でのモデルナのXBB.1.5対応ワクチンは、初回免疫への適応はなく追加免疫としてのみ使用できる。接種対象は6歳以上で、用量は年齢別に異なる。なお、先に承認となったファイザーのXBB.1.5対応ワクチンは、初回免疫としても使用可能。 一変承認されたワクチンの概要は以下のとおり。販売名:スパイクバックス筋注一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン(有効成分名:エラソメラン、エラソメラン及びイムエラソメラン、エラソメラン及びダベソメラン又はアンデュソメラン)(下線部追加)効能・効果:SARS-CoV-2による感染症の予防用法・用量:SARS-CoV-2(起源株及びオミクロン株)のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む製剤又はSARS-CoV-2(オミクロン株)のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む製剤(下線部追加)<12歳以上の者>追加免疫として、1回0.5mLを筋肉内に接種する。<6歳以上12歳未満の者>追加免疫として、1回0.25mLを筋肉内に接種する。接種間隔:通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。(注)エラソメラン、イムエラソメラン、ダベソメラン及びアンデュソメランは、それぞれSARS-CoV-2の起源株、オミクロン株BA.1系統、オミクロン株BA.4-5系統及びオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNA。

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家庭料理をターゲットに地域介入、減塩・降圧に効果/BMJ

 家庭内の調理人と家族をターゲットとしたコミュニティベースの減塩教育やモニタリングが、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったことを、中国・疾病予防管理センターのXiaochang Zhang氏らが報告した。中国6省6都市、60コミュニティの788家族を対象に行ったクラスター無作為化比較試験の結果で、著者は、「こうした介入は、食塩の主な摂取源が依然として家庭料理である中国および他国で、広く用いることができるだろう」と述べている。中国の食塩摂取量は推奨制限量の2倍を超えており、摂取が主に加工食品からの西欧諸国とは異なり、中国では76%が家庭料理に由来していることが報告されていたが、これまで家庭料理をターゲットとした介入の無作為化試験によるエビデンスはなかった。BMJ誌2023年8月24日号掲載の報告。1年後の24時間尿中ナトリウム排出量の変化を評価 研究グループは、2018年10月~19年12月にかけて、中国6省6都市から60コミュニティ(各省から10コミュニティずつ)を募集してクラスター無作為化比較試験を行い、家庭料理と家族員を対象にデザインされた減塩介入の効果を評価した。 各コミュニティから18~75歳の成人を26人ずつ(13家族から2人ずつ)集めた。参加条件は、週4日以上家庭料理を食べている家族で、日常的に調理を担当している家庭内の調理人と家族員(家庭内調理人の配偶者または複数の家族員が参加を希望する場合は性別が異なる家族を優先して選定)とした。 介入群の参加者は、減塩支援のための環境整備、減塩に関する6回の教育セッション、7日間の食塩摂取モニタリング(食塩および塩味調味料を計量し記録)などの介入を12ヵ月間にわたり受けた。対照群の参加者は、いずれの介入も受けなかった。 主要アウトカムは、12ヵ月の追跡期間中の、24時間尿中ナトリウム排泄量で測定した食塩摂取量の変化の群間差だった。介入群は収縮期血圧(2.0mmHg)、拡張期血圧(1.1mmHg)も低下 788家族からの1,576人(男性775人[49.2%]、平均年齢55.8歳[SD 10.8])が、ベースライン評価を完了した。その後、30コミュニティの786人が介入群に、30コミュニティの790人が対照群に割り付けられた。試験中に、157人(10%)が追跡不能となり、介入群706人と対照群713人が追跡評価を完了した。 12ヵ月の追跡期間中、24時間尿中ナトリウム排泄量が、介入群では4,368.7(SD 1,880.3)mgから3,977.0(1,688.8)mgへと減少したのに対し、対照群では4,418.7(1,973.7)mgから4,330.9(1,859.8)mgへの減少だった。調整混合線形モデル解析の結果、対照群と比較した介入群の24時間尿中ナトリウム排泄量は、24時間当たり336.8(95%信頼区間[CI]:127.9~545.7)mg減少した(p=0.002)。 収縮期血圧と拡張期血圧についても、それぞれ2.0(95%CI:0.4~3.5)mmHg、1.1(0.1~2.0)mmHg低下した(それぞれp=0.01、p=0.03)。適切な食塩摂取に関する知識や態度、行動についても、介入群で対照群に比べ有意に改善した。

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AF伴う末期心不全、カテーテルアブレーションは?/NEJM

 心房細動を伴う末期心不全患者において、カテーテルアブレーション+薬物療法は薬物療法単独に比べ、あらゆる原因による死亡、左心補助人工心臓(LVAD)の植え込み、緊急心臓移植の複合イベント発生の可能性を低下することが、ドイツ・ルール大学ボーフムのChristian Sohns氏らによる無作為化比較試験の結果で示された。これまで同患者においてカテーテルアブレーションが果たす役割は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。カテーテルアブレーション+薬物療法vs.薬物療法単独の非盲検無作為化比較試験 研究グループは、ドイツの医療センター1施設で、症候性心房細動を伴う末期心不全で、心移植評価のために紹介された患者を対象に、非盲検研究者主導、優越性無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に割り付け、心房細動の治療として、一方にはカテーテルアブレーションとガイドラインに沿った薬物療法を(アブレーション群)、もう一方には薬物療法のみを行った(薬物療法群)。 主要エンドポイントは、あらゆる原因による死亡、LVADの植え込み、緊急心臓移植の複合とした。主要エンドポイント発生リスクはアブレーション群で0.24倍 アブレーション群、薬物療法群ともに97例ずつ割り付けられた。試験は、データ・安全性モニタリング委員会により、有効性を理由に、無作為化後1年で中止となった。 カテーテルアブレーションは、アブレーション群97例中81例(84%)、薬物療法群97例中16例(16%)に行われた。 追跡期間中央値18.0ヵ月(四分位範囲[IQR]:14.6~22.6)において、主要エンドポイントのイベントは、アブレーション群8例(8%)、薬物療法群29例(30%)で発生した(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.11~0.52、p<0.001)。あらゆる原因による死亡は、アブレーション群で6例(6%)、薬物療法群で19例(20%)だった(HR:0.29、95%CI:0.12~0.72)。 処置関連の合併症の発生は、アブレーション群で3件、薬物療法群で1件だった。

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若者の摂食障害や境界性パーソナリティ障害の特徴やリスク因子

 境界性パーソナリティ障害(BPD)と摂食障害は、併発リスクが高いが、両疾患に共通する症状の経過と関連するリスクについては、よくわかっていない。英国・ウォーリック大学のKirsty S. Lee氏らは、若者の地域サンプルにおける症状のジョイントトラジェクトリー、時間的優先順位、リスク因子、人口寄与割合(PAF)について、発達精神病理学的および心理社会学的観点より調査を行った。その結果、若者の摂食障害と境界性パーソナリティ障害の一時性、リスク、スクリーニング、治療に関連するいくつかの新規かつ臨床的に関連性のある所見が特定された。Development and Psychopathology誌オンライン版2023年8月17日号の報告。摂食障害レベルが高いと境界性パーソナリティ障害の特徴が高レベル 14~18歳の若者における境界性パーソナリティ障害の特徴および摂食行動の乱れについて5年間にわたり調査を行った。小児期(10~13歳)に社会人口学的リスク、対人関係リスク、臨床リスクの評価を行った。person-centered approachを用いて、潜在クラス成長分析、ジョイントトラジェクトリーモデル、PAFを調査した。 境界性パーソナリティ障害の特徴および摂食行動の乱れについて調査を行った主な結果は以下のとおり。・摂食障害と境界性パーソナリティ障害の特徴をそれぞれ低、中、高の3段階で評価し、それらを掛け合わせた9つのジョイントトラジェクトリーを作成した。・摂食障害レベルが高い場合、そうでない場合と比較し、境界性パーソナリティ障害の特徴が高レベルであった。・女性およびLGBTQ+の若者は、症状が重症化する可能性が最も高かった。・いじめ行為および臨床的多動性は、境界性パーソナリティ障害の特徴に対する特有のリスクであった。・いじめ被害は、摂食障害および境界性パーソナリティ障害の特徴に対し、最大のPAFを示した。

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