サイト内検索|page:4

検索結果 合計:36478件 表示位置:61 - 80

61.

第302回 骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府

<先週の動き> 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府政府は6月30日に経済財政諮問会議を開き、「骨太の方針2026」原案を示した。2027年度予算編成を見据え、医療・介護提供体制と社会保障負担の見直しが大きな論点となった。医療保険制度では、高齢者の受診行動や所得状況を踏まえた窓口負担の見直しについて、2027(令和9)年度予算編成過程で結論を得る方針が盛り込まれた。ただし、この記載には調整中を示す「P」マークが付いており、今後の与党調整や閣議決定までに文言が変わる可能性がある。高齢者の窓口負担をめぐっては、財政制度等審議会が「70歳以上の患者負担を原則3割とする方向を提言する」という一方で、上野 賢一郎厚労相は一律3割負担には慎重な姿勢を示しており、年末の予算編成に向けて政府・与党内で調整が続く見通し。医療現場にとっては、自己負担増大による受診抑制、慢性疾患の管理、救急受診、未治療や重症化リスクへの影響も含め、制度設計の行方を注視する必要がある。診療報酬については、経済・物価動向が2026年度改定時の見通しから大きく変動し、医療機関などの経営状況に支障が生じた場合、2027(令和9)年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む追加調整を行うと明記された。物価高、人件費上昇、委託費・材料費増が病院経営を圧迫するなか、2026年度改定後も経営実態を踏まえた対応が検討対象となっている点は重要である。その一方で、医療提供体制については、2040年に向けて必要病床数を上回っているとされている一般病床と療養病床で約5万6,000床、基準病床数を超えている精神病床約5万3,000床を対象に病床数の適正化を進め、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとした。地域包括ケアシステムの深化、高齢者救急、在宅医療、中山間・人口減少地域での柔軟なサービス提供も課題に挙げられている。さらに、医師偏在対策を進め、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員削減にも取り組む方針が示された。介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、物価変動に対応しつつ、他職種と遜色のない処遇改善を図るとしており、医療・介護人材確保も引き続き重要課題となる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針 2026 原案 (経済財政諮問会議) 2) 高齢者窓口負担見直し、年末の予算編成で結論出す方針-骨太方針2026原案(医事新報) 3) 「骨太の方針」が大幅なスリム化も、医療政策の記載数は増えた?(日経メディカル) 4) 2027年度介護報酬改定では「他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」骨太の方針原案、病床数適正化や医学部定員削減を明記(同) 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省厚生労働省は、都道府県が2027年度から運用する第8次後期の医師確保計画策定ガイドラインを通知し、重点医師偏在対策支援区域を対象とする「医師偏在是正プラン」の考え方を示した。医師偏在は、地域間・診療科間で長年の課題とされ、地域枠を中心に医師数を増やしてきたものの、ミクロの医師不足解消には十分つながっていない。ガイドラインでは、経済的インセンティブ、地域医療機関の支え合い、医師養成過程を通じた取組みを組み合わせ、医師の勤務・生活環境や柔軟な働き方に配慮しながら、中堅・シニアを含む全世代の医師にアプローチする方針を掲げた。重点区域は、一定の定住人口が見込まれる一方で、必要な医師を確保できず、人口減少より医療機関の減少速度が速い地域などに設定し、優先的・重点的に対策を進める区域とされた。都道府県は厚労省が示す候補区域を参考に、医師偏在指標、可住地面積当たり医師数、へき地尺度、医療機関へのアクセス、診療所医師の高齢化率、住民の受診行動、人口動態などを踏まえ、地域医療対策協議会と保険者協議会で協議した上で、真に重点的な医師確保が必要な区域に限って設定する。支援対象とする医療機関については、重点区域内の全医療機関を一律に対象とするのではなく、とくに支援が必要な医療機関を選定する。選定に当たっては、設立母体にかかわらず、今後策定される新たな地域医療構想や地理的条件を踏まえ、地域医療対策協議会・保険者協議会で合意を得る必要がある。必要医師数は、候補区域を重点区域に設定する場合、原則として候補区域の要件を脱するために必要な人数を基準とする。施策面では、重点区域で診療所を承継・開業する場合の施設・設備整備や一定期間の地域定着支援、中核病院などから重点区域内の医療機関へ医師を派遣する際の費用支援、勤務医の離職防止や新規勤務医確保に向けた土日の代替医師確保支援などが示された。 参考 1) 医師確保計画策定ガイドライン~第8次(後期)~(厚労省) 2) 医師偏在是正プランの考え方を明示 確保計画策定GLで 厚労省通知(CB news) 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府6月30日に内閣府は日本成長戦略会議を開き、取りまとめた「日本成長戦略」について公開した。この中で、医療DX基盤の整備を成長投資の重点分野に位置付け、電子カルテ導入目標を一部前倒しした。電子カルテ未導入の200床以上の病院については、療養病床などが中心の病院を除き、2028年度までに普及率100%を目指す。従来は2030年までにおおむね全医療機関への導入を目指す方針だったが、200床以上の未導入病院では期限が2年前倒しされる形となる。背景には、医療情報の共有、診療の効率化、医療の質向上に加え、創薬・医療機器開発に必要なデータ基盤の整備がある。成長戦略では、クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤について、「大量のデータを必要とする創薬・医療機器の開発の基盤」であり、医療提供体制の効率化・質向上、サイバー攻撃への強靱性確保に不可欠と位置付けている。政府は、従来の院内サーバー管理を中心とするオンプレミス型の医療機関情報システムを、クラウドネイティブ型へ刷新する方針を示した。これにより、サイバーセキュリティ対策の強化と、全国的なデータ連携基盤の構築を図るとしている。2030年までには、電子カルテ普及率を約100%、地域の拠点病院のサイバーセキュリティ対策を100%とし、大病院向けクラウドネイティブ型製品の提供も目指す。具体策として、厚労省などが認証したクラウドネイティブ型電子カルテ製品の普及を促進し、大病院向け製品については一体的・集中的な開発と普及を支援する。また、ネットワークの外部接続点の監視、サーバー等の管理強化など、サイバーセキュリティ対策も強化する。さらに、全国医療情報プラットフォームの拡充やデータ連携基盤の整備、病院DXの推進も盛り込まれた。厚労省の調査では、2023年10月時点の電子カルテ導入率は、400床以上で93.7%、200~399床で79.2%まで進んでいる一方で、200床未満では59.0%にとどまる。今後、200床以上の未導入病院は、電子カルテ導入だけでなく、クラウド移行、標準化、サイバー対策、地域医療情報連携への対応を同時に迫られる。医療機関にとって電子カルテは、単なる院内システムではなく、診療情報共有、医療安全、経営効率化、研究・創薬基盤、BCP対策を支える基幹インフラとして再定義されつつある。 参考 1) 日本成長戦略(内閣府) 2) 電子カルテ導入 200床以上は「28年度100%」2年前倒し 政府目標(CB news) 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省厚生労働省は7月3日、2040年を見据えた新たな地域医療構想策定ガイドラインと、全国の必要病床数の機械的試算を公表した。この中で、2040年の必要病床数は、2025年度比で約10万床少ない106.9万床とされ、人口減少と医療需要の質的変化が病床再編を迫る構図が明確になった。とりわけ急性期病床は66万床から37.4万床へ約4割減少とされる一方で、高齢者救急、退院支援、早期リハビリ、在宅復帰を担う「包括期病床」は41.6万床と大きく位置付けられた。慢性期は28.0万床でおおむね維持される見通しである。背景にあるのは、85歳以上高齢者の増加と生産年齢人口の減少である。ガイドラインでは、2040年に向けて高齢者救急や在宅医療の需要が増える一方で、急性期需要は多くの地域で減少し、医師・看護職員の確保は一層困難になると整理している。従来の地域医療構想は病床機能の分化・連携が中心だったが、今回は入院に加えて外来、在宅、介護連携、人材確保までを含む「地域全体の医療提供体制」の再設計に踏み込む点が大きい。都道府県は2026年度から2027年度前半にかけて医療需要や提供体制をデータ分析し、構想区域の点検・見直しを行う。2028年度までに、急性期拠点機能を担う具体的医療機関名、各病院が2040年に担う医療機関機能、必要病床数、入院・外来・在宅・介護連携・人材確保の取組を地域医療構想として策定する。急性期拠点は人口20~30万人に1施設を目安とし、手術、救急搬送、医師確保、施設老朽化など実績と持続可能性を踏まえて協議される。病院にとっては、今後の議論が「自院の病床数」だけでなく、「地域で何を担う病院か」を問うものとなる。厚労省によると医療機関機能は、高齢者救急・地域急性期、急性期拠点、在宅医療等連携、専門等機能、大学病院本院の医育・広域診療機能に整理される。各医療機関は現在の機能、2040年に担う機能、診療実績を各都道府県に報告し、地域医療構想調整会議での協議を経て、遅くとも2028年度までに2040年の医療機関機能を決定する。高齢者救急では、誤嚥性肺炎や心不全などを受け入れ、早期からリハビリ、栄養、口腔、退院調整を行い、介護施設や在宅とつなぐ力が問われる。ガイドラインも、高齢者救急では入院早期からリハビリテーション、栄養管理、口腔管理を行い、在宅医療や介護との連携を包括的に進める必要性を示している。さらに明記すべきは、地域医療構想と医療計画の関係が変わる点である。これまで地域医療構想は医療計画の記載事項の一つだったが、新たな地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられ、第9次医療計画はその具体的な実行計画となる。2次医療圏も、見直された構想区域と原則一致させる方向であり、今後の診療報酬、医師確保、救急、在宅、介護連携の議論は、この構想と連動して進む。各病院は、地域医療構想調整会議での実績データに基づく協議に備え、自院の救急受入、手術、退院支援、在宅・介護連携、人材確保の実績を可視化し、地域内での役割を早急に整理する必要がある。 参考 1) 地域医療構想策定ガイドライン(厚労省) 2) 地域医療構想でガイドライン公表 40年見据え、都道府県が策定-厚労省(時事通信) 3) 急性期の病床、40年の必要数4割減 厚労省試算(日経新聞) 4) 令和8年度都道府県医師会地域医療構想策定等ガイドライン説明会(日本医師会) 5) 1つの病院が「急性期拠点機能」と「高齢者救急・地域急性期機能」とを同時に持つことは認めない-新地域医療構想GL(1)(Gem Med) 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2025年度の医療分決算見込みを公表した。協会会計と国の特別会計を合わせた合算ベースで、収入は12兆3,406億円、支出は11兆6,611億円となり、単年度収支差は6,795億円の黒字となった。黒字は前年度より209億円増加し、協会けんぽ発足後でも高水準の決算となる。収入増の主因は保険料収入の伸びであり、保険料収入は11兆546億円、前年度比4,057億円増となった。背景には、賃上げによる標準報酬月額の上昇と、被保険者数の増加がある。2025年度の被保険者数は2,604.4万人で前年度比1.8%増、平均標準報酬月額は31.5万円で同1.8%増となった。その一方で、支出も増加している。保険給付費は7兆5,369億円で前年度比2,818億円増、拠出金などは3兆7,829億円で同1,634億円増となった。とくに加入者1人当たり保険給付費は3.5%増加しており、医療の高度化や受診動向の変化が影響している。また、後期高齢者支援金は2兆4,891億円に増加し、団塊の世代がすべて75歳以上となったことによる概算納付額の増加や精算負担の増加が主因とされる。今回の黒字は、賃金上昇と被保険者数増による保険料収入の増加が、医療費や高齢者医療への拠出増を上回った結果である。ただし、支出の伸び率4.2%は収入の伸び率4.1%を上回っており、財政構造が安定化したとみるのは早い。協会けんぽ自身も、2026年度診療報酬改定で本体改定率が3.09%と高い伸びとなり、2026年6月以降の医療費に反映されること、さらに平均保険料率が2026年度から10.0%から9.9%へ引き下げられることを指摘している。医療機関にとっては、協会けんぽの黒字を単純な「財政余力」と捉えるより、保険料収入の伸びに支えられながらも、医療費、後期高齢者支援金、診療報酬改定の影響が重なり、今後の保険者財政が再び厳しくなる可能性を意識すべき局面である。準備金残高は6兆5,457億円、保険給付費などの7.2ヵ月分に相当するが、加入者の平均年齢上昇、医療の高度化、後期高齢者支援金の高止まりには引き続き留意が必要である。 参考 1) 2025(令和7)年度協会けんぽの決算見込みについて(協会けんぽ) 2) 協会けんぽ、昨年度6,795億円の黒字 賃上げで保険料収入増(日経新聞) 3) 協会けんぽ 昨年度決算 6,795億円黒字 賃上げで保険料収入増加(NHK) 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省文部科学省は7月3日、世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大学」に京都大学を認定する方針を発表した。政府の総合科学技術・イノベーション会議などへの諮問を経て、今夏にも正式認定される見通しで、東北大学、東京科学大学に続く3校目となる。初年度となる2026年度の助成額は約200億円が見込まれている。国際卓越研究大学制度は、政府が設置した10兆円規模の大学ファンドの運用益を活用し、最長25年間にわたって年数百億円規模の支援を行う仕組みである。わが国の研究力が国際的に相対的低下を続けるなか、大学の研究環境や若手研究者の育成、国際競争力の強化を図ることが目的とされる。京都大学が高く評価されたのは、従来の「小講座制」から「デパートメント制」への大規模な組織改革である。教授を頂点とする約1,000の小講座・研究室単位の体制は、専門性を深める一方で、閉鎖性や若手研究者の独立性の確保が課題とされてきた。京大はこれを廃止し、学術領域ごとに約20のデパートメントへ再編する計画を示した。2029年4月までの完全移行を目指し、若手・中堅研究者が独立して研究できる環境作り、分野横断型研究の推進、研究支援体制の強化による研究時間の確保を進める。また、京大は研究成果に基づく資金配分の仕組みや、大学院教育の強化も掲げている。今後25年間で年間の博士号取得者を現在の約690~700人から約3倍の2,100人規模に増やすほか、引用回数が上位10%に入る「トップ10%論文」の割合を現状の約2倍に引き上げる目標も盛り込んだ。同大の湊長 博総長は、「世界水準の研究大学を確立し、社会課題の解決やイノベーション創出につなげたい」と考えを示している。その一方で、同じく2回目の公募に申請していた東京大学は、医学部をめぐる不祥事やガバナンス上の課題などを理由に継続審査となった。今回の京大への認定は、単なる大型助成ではなく、大学組織の統治、研究者の自立性、国際競争力を問う改革の一環といえる。医師・医学研究者にとっても、医学部・大学病院を含む研究体制や若手育成のあり方に影響する動きとして注目される。 参考 1) 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)における審査の結果について(概要) 2) 京大を卓越大に認定へ 200億円支援、小講座制を廃止し組織再編(朝日新聞) 3) 世界トップレベル目指す「国際卓越大」に京都大を認定へ、東北大・東京科学大に続く3校目…今年度200億円助成見通し(読売新聞) 4) 京大を「国際卓越研究大学」に認定へ 今年度200億円助成見込み(NHK)

63.

7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソンが制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

64.

無意識に使う「けいれん」【脳がととのう 神経内科学講座】第3回

<今回のモヤっとPoint>けいれんの守備範囲はとても広いけいれん≠てんかんはじめに臨床現場では「けいれんでした、てんかんでしょうか?」というフレーズをしばしば見聞きします。もちろん、けいれんを引き起こす代表疾患にてんかん(epilepsy)がありますが、けいれんしたからといって、てんかんとは限りません。けいれんは症候名であり、てんかんはその原因疾患の一つに過ぎないのです。また、そもそも「けいれん」とはどのような状況をさしているのでしょうか? 実は、けいれんは非常に幅のある用語なので、もしかすると各々のイメージするそれとはちょっとずつズレがあるかもしれません。まさにコミュニケーションエラーになりやすい曖昧な用語といえます。ちなみに筆者のようなてんかん専門医が「けいれん」と表現するときは、主に典型的な強直間代発作をイメージする時が多いのですが、これはみなさんと共通しているでしょうか? もし、ズレを感じているようであればここで整理しておきましょう。けいれんとはけいれんとは、自分の意思とは関係なく、筋肉が勝手に激しく収縮する症状のことです。つまり症候名です。ガクガクと激しい筋収縮を繰り返す症候を「けいれん」と表現します。そして、このけいれんが大脳皮質の過剰興奮によって発生しているものがいわゆる「けいれん発作」であり、英語表記ではconvulsionやconvulsive seizureと呼びます。ERに搬送されてくる「痙攣重積」の正式な用語としては、痙攣性てんかん重積状態(convulsive status epilepticus:CSE)です。ちなみに、明らかなけいれんを伴わないてんかん重積状態を非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)と呼びます。一方で、同じ「けいれん」という症状でも、そのoriginが大脳皮質ではなく、末梢の神経や筋肉に由来して発生することもあり、その場合にはcramp(クランプ)やspasm(スパズム)などと表現します。Crampは有痛性筋痙攣などをさします。これらは中枢神経由来ではないので、不随意運動の範疇として捉えます。Spasmも日本語では「けいれん」なのですが、眼瞼攣縮(blepharospasm)や顔面痙攣(facial spasm)など、より限局的に発生しているときに用いることが多いです。ややこしいのですが、眼瞼攣縮は眼輪筋の不随意収縮により過剰な瞬目や閉瞼をきたす局所性ジストニアで、中枢由来の症候として理解されています。一方、同じ「目の周囲のピクつき」として訴えられることがあるものに「眼瞼ミオキミア(eyelid myokymia)」がありますが、それは下眼瞼にみられる細かく波打つような筋収縮が特徴で、末梢由来の現象です。「けいれん」と「痙攣」、どっちを使うべき?ところで、「けいれん」と「痙攣」、どちらの表記が正しいのでしょうか?答えとしては、どちらも間違いではありません。日本神経学会の用語集には漢字表記で示されています。一方で、日本てんかん学会の用語集はひらがな表記を採用しています。これは、ひらがなのほうがてんかんのある患者に対して伝わりやすく、また歴史的な偏見や漢字の硬さから伝わるイメージを避けるという文脈があります。よって、文脈や状況に応じて使い分けるとよいと思います。けいれん=てんかんではないまず前提として、けいれん≠てんかんです。そもそも、前述のように痙攣とは激しく収縮を繰り返す状態をさす症候名であって、対する「てんかん」は病名になります。具体的には、大脳皮質の過剰興奮により引き起こされる発作を慢性に再発性に繰り返す病態がてんかんです。よって、(発作そのものは急性に出現しますが)あくまでも、てんかんは発作を繰り返す『脳の慢性疾患』なのです。ただし、この大脳皮質の過剰興奮はてんかん以外でも引き起こされます。たとえば、脳出血など脳卒中による脳血管障害、あるいは髄膜炎などの中枢神経系感染症などでの急性病態に随伴して生じる急性症候性発作があります。急性期での一過性の発作なので、慢性に発作を繰り返すてんかんとは根本的に異なります。例えるなら、喘息発作(喘鳴)は咳喘息や薬剤性などの病態で一時的に出現しえますが、喘鳴があれば気管支喘息と診断しないのと同じです。真のけいれんとは国際抗てんかん連盟(ILAE)の発作型分類には「けいれん」という用語はありません。一般臨床で用いること自体は仕方ないとしても、けいれんの意味が曖昧であるため正式な発作用語としては採用されていないのです。では、けいれんに該当するような発作型分類には何があるかというと、強直発作(tonic seizure)間代発作(clonic seizure)ミオクロニー発作(myoclonic seizure)強直間代発作(tonic-clonic seizure)などです。そして、いわゆる大発作はこのうちの強直間代発作をさします。筋が急性に持続的に収縮して体が硬く突っ張るような状態になるものが強直発作です。ガクガクと激しく動くのではなく、一定時間、力が入りっぱなしになるのが特徴です。これに対して、間代発作は、筋の収縮と弛緩が繰り返されるもので、そこには一定のリズムがあり、ガクガクと反復する発作です。(図)けいれんミミック:心因性非てんかん発作とはけいれん発作のミミックに心因性非てんかん発作(Psychogenic nonepileptic seizure:PNES)という心因性の発作があります。PNESとは「てんかん発作に似た突発性の発作症状を示すものの、てんかん性機序では説明できない病態」です。けいれん様の激しい運動症状を呈するため、真のてんかん発作と誤認して対応してしまうこともまれではありません。両者の特徴の違いを表に記載していますが、専門医でも判断に迷うことはしばしばあります。(表)てんかん発作とPNESの違い画像を拡大する一番の鑑別ポイントは持続時間だと考えましょう。ダラダラと長続きするような発作はPNESの可能性が高いです。また、前述のように真の強直間代発作の間代発作ではリズムがありますが、PNESではリズムがなく、非同期性である点がポイントです。発作を目の当たりにした際には、手足の動きのリズムや同期性に着目してみてください。なお、PNESはてんかんの有無とは独立して存在しうるので、てんかんが除外されたからといってPNESとはなりませんし、真のてんかん発作にPNESが合併することもある点には留意しましょう。ところで、PNESという名称については再検討されつつあるんです。PNESという用語は広く用いられてきましたが、「psychogenic」や「non」という表現によって「器質的異常がなければ心因性である」という二元論的な理解につながるおそれや、患者へのネガティブな印象を与えるなど、用語に対する限界が指摘されてきました。そこで近年ではFDS(functional/dissociative seizures)として捉えるようになっており、日本語では「機能性発作」あるいは「解離性発作」などと表現できそうです。とくに、脳神経内科領域ではfunctional neurological disorder(FND、機能性神経障害)の概念が近年では市民権を得ており、FDSもその枠組みとして今後は理解されていくのではないかと思います。今回のスッキリ「けいれん」は診断名ではなく症候名、てんかんとも限らない「けいれん」は脳由来か末梢由来か表現を使い分ける1)日本てんかん学会編. てんかん学用語辞典 改定第2版. 診断と治療社. 2017.2)Hingray C, et al. Epilepsia. 2025;66:4162-4182.

65.

急性感染症患者の鉄欠乏性貧血、鉄剤は投与する?/Blood

 鉄欠乏性貧血に対する静注鉄は速やかな鉄補充が期待できるが、急性感染症患者の場合は、病原体への鉄供給により感染を悪化させる可能性が懸念されている。そこで、米国・Charleston Area Medical CenterのHaris Sohail氏らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症患者を対象に、静注鉄投与と生存、ヘモグロビン(Hb)値の回復などとの関連を検討した。その結果、静注鉄投与は検討したすべての感染症で14日および90日生存率の上昇と、Hb値の良好な回復に関連していた。本研究結果は、Blood誌2026年5月21日号に掲載された。 本研究は、111医療機関の匿名化された電子健康記録を集積したTriNetX Research Networkの2000年1月~2025年6月のデータを用いた後ろ向きコホート研究である。対象は、MRSA菌血症、肺炎、尿路感染症、大腸炎、蜂窩織炎のいずれかと鉄欠乏性貧血を併発し、感染症診断から2日以内に抗菌薬を投与された18歳以上の入院患者とした。診断から7日以内に静注鉄を投与された患者と非投与患者を、感染症ごとに1:1の傾向スコアマッチングを行って比較した。主要評価項目は14日および90日生存率で、副次評価項目は入院期間、輸血実施日数、Hb値の変化などとした。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした患者は33万9,145例であった。傾向スコアマッチング後の各群の患者数は、MRSA菌血症8,433例、肺炎1万9,281例、尿路感染症1万8,613例、大腸炎5,340例、蜂窩織炎8,404例であった。・静注鉄群では、すべての感染症で14日および90日生存率が非投与群より有意に高かった。各感染症の90日生存率は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群、ハザード比[95%信頼区間]を示す)。 MRSA菌血症:88.6%vs.83.8%、0.67(0.62~0.73) 肺炎:84.7%vs.78.1%、0.66(0.63~0.69) 尿路感染症:89.1%vs.85.6%、0.73(0.69~0.78) 大腸炎:89.7%vs.83.8%、0.60(0.53~0.68) 蜂窩織炎:92.2%vs.89.2%、0.70(0.63~0.78)・感染症および鉄欠乏性貧血診断後60~90日までのHb値の上昇幅は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群)。 MRSA菌血症:1.32g/dL vs.1.00g/dL 肺炎:1.25g/dL vs.0.97g/dL 尿路感染症:1.39g/dL vs.1.02g/dL 大腸炎:1.45g/dL vs.0.74g/dL 蜂窩織炎:1.41g/dL vs.0.92g/dL (いずれもp<0.0001)・赤血球輸血を実施した日数は、蜂窩織炎を除くすべての感染症で静注鉄群が有意に少なかった。・入院期間は、MRSA菌血症と尿路感染症では静注鉄群でわずかに長かったが、肺炎、大腸炎、蜂窩織炎では有意差を認めなかった。 本研究結果について著者らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症の入院患者に対する静注鉄投与は、感染症の種類を問わず、生存率の上昇とHb値の良好な回復に関連していたとまとめた。ただし、本研究は後ろ向き観察研究であり、静注鉄による生存改善を示したものではない。感染症の重症度や静注鉄を投与した臨床的理由など、未測定交絡の影響も否定できず、安全性と有効性の確認には前向き研究が必要であるとしている。

66.

“患者・市民の医療情報アクセス向上”のためのコンソーシアム発足

 患者・市民が治療選択や医療用医薬品の適正使用に必要な情報へ適切にアクセスできる環境整備を目指すため、「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」(代表世話人:奥瀬 正紀氏、垣添 忠生氏、片木 美穂氏、武川 篤之氏)が2026年7月1日に正式に発足した。 本コンソーシアムは、患者・市民が必要な医療情報へ適切にアクセスできる社会の実現を目的として設立されたマルチステークホルダーによる連携組織として、がんに限らずさまざまな疾患にわたって、患者団体を中心に、医療関係者、有識者、関係団体などが連携し、疾患啓発、治療選択、適正使用などに関する情報提供の在り方について議論・提言を行っていく。また、広告該当性への懸念から情報提供が過度に萎縮している現状を改善するため、疾患啓発、治療選択肢、適正使用、治験を含む臨床試験などに関する情報は、患者が自らの疾患を理解し、納得して治療を選択するための「教育・学習目的の情報」として位置付けるべきだという考え方に立つ。正確性、中立性、透明性に配慮した情報提供について、「直ちに広告に該当するものではない」という認識を社会全体で整理していくことを目指している。 代表世話人の奥瀬 正紀氏(日本乾癬性疾患協会/YORIAILab)は、「患者・市民が医療情報に適切にアクセスできることは、納得して治療を選択するために不可欠である。本コンソーシアムでの活動を通して必要な人が必要なときに科学的に信頼できる医療情報へアクセスできる社会の実現に貢献したい」とコメント。今後はステークホルダーの声を集め、具体的な提言活動を進める方針である。 コンソーシアムの主な活動内容は以下のとおり。 ・患者・市民の医療情報アクセスに関する課題の整理 ・教育・学習目的の医療情報提供の在り方に関する検討 ・患者団体をはじめとする関係者間の対話と連携の促進 ・社会への情報発信および提言の取りまとめ医療用医薬品の広告規制を巡る構造的課題 本コンソーシアム設立の契機となったのは、がん対策総合機構が2026年2月13日に公表した報告書『患者の知る権利の観点から見た医療用医薬品の情報提供と広告規制の制度・運用』である。同報告書では、日米欧の制度比較を通じて、日本の医療用医薬品情報提供における実態と構造的課題が検証された。報告書や関連する調査では、以下の実態が浮き彫りとなった。・日本では、薬機法に基づく広告規制などの厳格な運用により、患者向け医薬品情報の提供が事実上強く制限され、教育・学習目的の情報提供であっても過度な萎縮が生じている。・商品名を用いた情報提供が難しく、原則として一般名(成分名)での説明が求められるため、患者や家族の理解を妨げ、情報のわかりにくさや混乱につながっている。・患者が必要とする疾患啓発や治療選択肢、治験などの情報に十分にアクセスしにくい状況が、がんや希少疾患をはじめとする多くの疾患領域に共通する社会課題となっている。患者教育・学習目的の適切な医学情報の普及を目指して 2026年3月13日、同報告書の報告会がオンラインで開催され、患者団体や企業など多様な立場から約60名が参加した。報告会では、処方薬において知りたい情報や伝えたい情報が十分に発信されない構造的状況、患者が理解できる仕組みの必要性について活発な意見交換が行われた。 こうした課題認識が広がる中、2026年3月30日に厚生労働省医薬局から通知「治験等に係る情報提供の取扱いについて」が発出された。この通知では、治験などに係る情報提供について、目的や内容、導線設計などの条件を満たせば広告に該当しないことが明確化され、「情報提供=すべて広告ではない」という考え方が具体的に示された。がん対策総合機構などは、この通知を重要な前進と受け止める一方、この考え方は治験情報のみならず、教育・学習目的の一般的な医療情報提供にも適用されるべきであると判断。特定の疾患領域に限らず、患者団体、学会、医療従事者、研究者、企業、行政などが立場を超えて連携し、社会全体で取り組むためのプラットフォームが必要であるとして、コンソーシアムの設立に向けた検討が本格化した。 その後、2026年6月16日には「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」の立ち上げ構想と発足時の体制が公表され、さらなる議論と調整を経て、7月1日の正式発足へと至った。今後は、がんに限らずさまざまな疾患領域にわたって、患者目線に立った環境整備に向けた具体的なアクションを展開していく予定である。<コンソーシアム発起人団体>・有國 美恵子氏(ユーイング肉腫家族の会)・岩瀬 哲氏(NPO法人JORTC)・大井 賢一氏(認定NPO法人がんサポートコミュニティー)・大沢 かおり氏(NPO法人Hope Tree)・奥瀬 正紀氏(一般社団法人日本乾癬性疾患協会、一般社団法人YORIAILab)・垣添 忠生氏(公益財団法人日本対がん協会)・片木 美穂氏(卵巣がん体験者の会スマイリー)・岸田 徹氏(NPO法人がんノート)・後藤 悌氏(認定NPO法人キャンサーネットジャパン)・武川 篤之氏(認定NPO法人日本アレルギー友の会)・中島 弥生氏(認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ)・西舘 澄人氏(NPO法人GISTERS)・橋本 明子氏(NPO法人血液情報広場・つばさ)(五十音順)

67.

転移・再発乳がんへのパルボシクリブ、1次治療vs.2次治療~日本人大規模RWデータで検証

 HR+/HER2-転移・再発乳がん患者において、1次治療として内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が推奨されている。一方で、1次治療の期間は長期にわたるため、CDK4/6阻害薬特有の有害事象や経済毒性は無視できない課題となっている。CDK4/6阻害薬の1次治療使用群と2次治療使用群を比較した第III相無作為化比較試験(SONIA試験)では、2次治療での使用の妥当性が示された。東京医科大学の石川 孝氏らは、パルボシクリブ治療に関する日本における大規模多施設共同前向き観察研究を実施。その結果、SONIA試験の知見をリアルワールドデータで支持する結果が得られ、パルボシクリブを2次治療で導入する治療戦略の妥当性が示された。Breast Cancer Research誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。 本研究では、1次、2次、または3次治療としてパルボシクリブを使用する閉経後HR+/HER2-転移・再発乳がん患者を対象に、その有効性と安全性を検証した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS:パルボシクリブ投与開始から疾患進行または死亡まで)、副次評価項目は、PFS2(1次治療群ではパルボシクリブ投与開始から次治療で病勢進行が認められるまで、2次治療群では前治療のホルモン療法開始からパルボシクリブ投与後病勢進行が認められるまで)および有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2023年1月に593例(1次治療群246例、2次治療群282例、3次治療群65例)が組み入れられた。・年齢中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ68歳、66歳、68歳であった。術前または術後化学療法はそれぞれ25.6%、55.0%、46.2%で実施されていた。内臓転移を有する患者はそれぞれ38.3%、58.9%、58.1%、骨病変のみを有する患者は1.7%、8.1%、4.7%であった。・PFS中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.4~未到達)、18.0ヵ月(95%CI:14.0~22.7)、および12.0ヵ月(95%CI:7.7~17.4)であった。・PFS2中央値は1次治療群、2次治療群でそれぞれ36.9ヵ月(95%CI:27.7~未到達)および57.9ヵ月(95%CI:43.4~65.3)であった。・2次治療群のPFS2中央値が1次治療群を大きく上回った要因として、2次治療群では内分泌療法単独で治療開始後、急速な病勢進行のため化学療法が選択されるなどの理由で、パルボシクリブ療法に移行できなかった症例が除外されているためと考えられた。そのため、SONIA試験のデータを参考に、そのような症例を補正した感度解析を実施した結果、1次治療群と2次治療群のPFS2は近似した。・Grade3以上の好中球減少症が70%で発現し、80%超でパルボシクリブ減量が行われていた。 現在、副次評価項目の1つである全生存期間(OS)の追跡調査が行われており、患者報告アウトカム(PRO)の解析結果と合わせて、今後報告される予定となっている。

68.

survodutide、非糖尿病の肥満成人で顕著な体重減少/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、survodutideの週1回投与はプラセボと比較して、10%以上の体重減少とともに、ウエスト周囲長や糖化ヘモグロビン値、脂質値にも良好な影響を及ぼすことが、アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのCarel W. le Roux氏らSYNCHRONIZE-1 Investigatorsの「SYNCHRONIZE-1試験」において示された。survodutideは、グルカゴン受容体とGLP-1受容体の二重作動薬であり、非糖尿病の肥満成人を対象とした第II相試験で、大幅な体重減少をもたらしたと報告されている。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年6月7日号に掲載された。14ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 SYNCHRONIZE-1試験は、日本を含む14ヵ国116施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。 2023年11月~2026年2月に、年齢18歳以上、BMI値≧30、または≧27かつ糖尿病を除く1つ以上の肥満関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症、心血管疾患、代謝機能障害関連脂肪肝炎[MASH])を有し、少なくとも1回の減量目的の食事療法に失敗した経験があると事前に申告した者を登録した。 被験者725例(平均年齢47.1歳、男性294例[40.6%]、アジア系22.3%)を、survodutide最大3.6mg(241例)、同6.0mg(242例)、プラセボ(242例)を週1回皮下投与する3群に無作為に割り付けた。すべての被験者が、生活習慣の是正のためのカウンセリングを受けた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから76週時の体重の変化率と、5%以上の体重減少であった。体重の平均変化率、survodutide 3.6mg群-12.2%vs.6.0mg群-13.0%vs.プラセボ群-5.4% ベースラインの平均BMI値は37.9、平均体重は108.8kg、平均ウエスト周囲長は115.0cmであった。被験者の94.9%がBMI値≧30で、69.7%が1つ以上の肥満関連合併症を有しており、高血圧(40.1%)、脂質異常症(33.9%)、閉塞性睡眠時無呼吸症(18.3%)の頻度が高かった。 76週時点で、ベースラインからの体重の平均変化率は、survodutide 3.6mg群-12.2%(95%信頼区間[CI]:-13.6~-10.8)、6.0mg群-13.0%(95%CI:-14.4~-11.6)、プラセボ群-5.4%(95%CI:-6.9~-4.0)であった。プラセボ群との平均変化率の差は、survodutide 3.6mg群-6.8%ポイント(95%CI:-8.8~-4.8)、6.0mg群-7.5%ポイント(95%CI:-9.6~-5.5)と、いずれの用量群ともプラセボ群に比べ減量効果が有意に優れた(両比較ともp<0.001)。 この間の体重の平均絶対変化量は、survodutide 3.6mg群-13.1kg(95%CI:-14.7~-11.6)、6.0mg群-14.1kg(95%CI:-15.6~-12.6)、プラセボ群-5.9kg(95%CI:-7.5~-4.4)であった。 また、5%以上の体重減少を達成した被験者の割合は、survodutide 3.6mg群72.6%、6.0mg群71.9%、プラセボ群46.3%であり、プラセボ群との比較のオッズ比はsurvodutide 3.6mg群が3.1(95%CI:2.0~4.7)、6.0mg群は3.0(95%CI:2.0~4.4)と、いずれの用量群とも有意に高かった(両比較ともp<0.001)。 survodutideの2つの用量群で、ウエスト周囲長も有意に改善し、糖化ヘモグロビン値、空腹時血糖値、脂質値、肝機能マーカーにも全般的に良好な影響を認めた。胃腸症状が高頻度、重症低血糖の発現はない 最も頻度の高かった有害事象は胃腸症状であり、survodutide 3.6mg群80.9%、6.0mg群89.7%、プラセボ群47.9%に発現した。これらは、主に吐き気、嘔吐、下痢、便秘であり、重症度は多くが軽度~中等度で、各群の17.8%、20.2%、2.9%で試験薬の投与中止に至った。 重篤な有害事象は、survodutide 3.6mg群8.3%、6.0mg群8.3%、プラセボ群6.2%にみられた。高血糖や抑うつはsurvodutide群で頻度が低かった。重症低血糖や死亡例の報告はなかった。 著者は、「肥満治療薬の減量依存的な効果と非依存的な効果の両方が、肥満関連合併症の改善に寄与している可能性があり、われわれは、一部のアウトカムにおいては、減量達成のメカニズムが、減量の程度と同じくらい重要である可能性があるとの仮説を立てている」「本薬の安全性プロファイルは、GLP-1受容体作動活性を有する他の肥満治療薬と同様と考えられ、治療開始後早期に発現した消化器系の副作用は、緩徐で柔軟な用量漸増と対症療法などの対策で多くが軽減した」としている。

69.

制限輸液/早期昇圧薬は、敗血症性ショックの生存を改善するか/NEJM

 Surviving Sepsis Campaignなどの国際的なガイドラインでは、敗血症による低血圧が確認されてから3時間以内の体重1kg当たり少なくとも30mLの静脈内輸液を弱く推奨しているが、昇圧薬投与の開始時期については具体的な推奨を行っていないという。オーストラリア・モナシュ大学のSandra L. Peake氏らは「ARISE FLUIDS試験」において、敗血症性ショックで救急診療部を受診した成人患者では、輸液量を制限し早期に昇圧薬を投与するアプローチは、輸液量を多くし昇圧薬の投与を遅らせるアプローチと比較して、90日時点での非入院生存日数の増加にはつながらないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。3ヵ国の研究者主導型無作為化試験 ARISE FLUIDS試験は、3ヵ国51施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(Australian National Health and Medical Council Medical Research Future Fundなどの助成を受けた)。2021年10月~2025年11月に、敗血症性ショックで救急診療部に搬送され、臨床的に感染症が疑われ、少なくとも1,000mLの輸液のボーラス投与を行っても収縮期血圧90mmHg未満または平均動脈圧65mmHg未満の成人患者を登録した。 被験者963例を、輸液量を制限し早期に昇圧薬投与を行う群(昇圧薬群481例:年齢中央値68歳、男性58.4%)、または多量の輸液を行い昇圧薬投与を遅らせて開始する群(輸液群482例:69歳、62.7%)に無作為に割り付けた。これらの介入は、救急診療部またはICUで最短6時間、最長24時間行った。 主要アウトカムは、無作為化から90日目の追跡調査までの非入院生存日数とし、初回入院期間中、またはその後の再入院期間中に、患者が急性期病院に入院していなかった日数と定義した。無作為化から90日以内に死亡した患者は、非入院生存日数を0日とした。無作為化前の輸液量は同程度 無作為化前の輸液量中央値は、昇圧薬群で1,500mL(四分位範囲[IQR]:1,000~1,750)、輸液群で1,500mL(IQR:1,000~1,850)であった。昇圧薬群の57例(11.9%)と輸液群の41例(8.5%)で、無作為化前に昇圧薬の投与を開始していた。主な感染部位は両群とも気道および尿路だった。輸液群の3例が主要アウトカムの追跡から脱落した。 無作為化から24時間以内に昇圧薬の投与を受けた患者の割合は、輸液群が67.6%であったのに対し、昇圧薬群は86.5%と、より高率であった(群間差:18.9%ポイント、95%信頼区間[CI]:13.3~24.5)。昇圧薬投与開始までの時間中央値は、輸液群の1.4時間に比べ昇圧薬群は0.4時間と短かった(群間差:-1.0時間、95%CI:-1.2~-0.9)。 また、無作為化から24時間後までの静脈内輸液量は、輸液群が2,248mL(IQR:1,500~3,332)であったのに対し、昇圧薬群は1,140mL(IQR:500~2,120)と少なかった(群間差:-1,108mL、95%CI:-1,395~-850)。非入院生存日数は両群とも76日 90日時点の非入院生存日数は、昇圧薬群76日(IQR:55~83)、輸液群76日(IQR:55~82)と、両群で同程度であった(群間差:0.0日、95%CI:-2.7~2.7、p=1.00)。90日以内に死亡した患者の非入院生存日数を-1日に設定しても、結果は同様だった。 また、90日時点の死亡率も両群で同程度だった(昇圧薬群16.4%vs.輸液群14.4%、相対リスク:1.14[95%CI:0.85~1.54]、ハザード比:1.17[95%CI:0.85~1.62])。 介入に関連した合併症はほとんど認められなかったが、例外として肺水腫がみられた(昇圧薬群3例[0.6%]vs.輸液群24例[5.0%]、相対リスク:0.12[95%CI:0.03~0.39]、p<0.001)。昇圧薬群の1例に、無症候性高血圧に関連した有害事象が発現した。 著者は、「輸液群の肺水腫は、部分的に、報告バイアスによって引き起こされた可能性がある」としている。

70.

日本における統合失調症治療、最新の推奨事項〜エキスパートコンセンサス

 従来の統合失調症薬物治療ガイドラインは、日常診療における臨床的に重要な問題すべてに対して十分に対応できていなかった。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、現在の臨床状況を反映させるため、日本臨床精神神経薬理学会(JSCNP)の2021年専門家コンセンサスを改訂することを目的とし、本研究を実施した。Schizophrenia誌オンライン版2026年6月2日号の報告。 JSCNPおよび日本神経精神薬理学会(JSNP)に所属する精神科専門医154人が、臨床的に関連性の高い21の状況における治療選択肢を9段階リッカート尺度(1=「強く反対」、9=「強く賛成」)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・回答率は44%であった。・主な症状別の推奨される第1選択薬は以下のとおりであった。【陽性症状】リスペリドン、ブレクスピプラゾール、オランザピン、パリペリドン、ブロナンセリン【陰性症状および認知機能低下】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール【うつおよび不安】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン【滅裂思考】ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、オランザピン【興奮および攻撃性】オランザピン、リスペリドン【社会的統合】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン【錐体外路系副作用または糖尿病の高リスク】ブレクスピプラゾール、クエチアピン、アリピプラゾール・遅発性ジスキネジアに対しては減量または薬剤変更を検討する。・再発を繰り返し、患者の要望、アドヒアランス不良の場合には、長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬の導入適応となりうる。・治療抵抗性統合失調症に対してはクロザピンへの切り替えが第1選択となる。・副作用対策として、抗精神病薬の減量および単剤療法への簡略化の両方が最も重要な要因として挙げられた。・第2世代抗精神病薬は、ほとんどの場合第1選択薬または第2選択薬として評価された。一方、第1世代抗精神病薬は、おおむね第3選択薬として評価された。 著者らは「これらの推奨事項は、既存のエビデンスだけでは十分に対応できない臨床的に困難な状況における治療選択と共同意思決定(SDM)のための実践的な指針となる」としている。

71.

筆記動作が認知機能低下の手がかりに?

 筆記動作が、脳の老化の進行を示す手がかりになるかもしれない。新たな研究で、筆記に要する時間やストローク数などの時間的・運動学的特徴が、特に認知負荷の高い書き取り課題において、認知機能の程度と関連することが示された。研究グループは、筆跡解析が高齢者の認知機能低下を早期発見するための低コストの検査になり得るとの見方を示している。エヴォラ大学(ポルトガル)スポーツ健康学部のAna Rita Matias氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Human Neuroscience」に5月20日掲載された。 この研究では、介護施設で暮らす62〜92歳の成人58人を対象に、ストローク数や所要時間などの筆記の運動学的特徴から認知機能障害の有無を見分けられるのかが検討された。参加者のうち38人は、すでに認知機能障害と診断されていた。筆跡の運動学的特徴は複数の課題により評価された。まず、制限時間内に点を打ったり線を引いたりする課題により、ペン操作能力が評価された。さらに、デジタルペンとタブレットを用いて、文章を書き写す課題や、読み上げられた文章を書き取る課題を実施し、筆記速度やペン操作の特徴が解析された。 その結果、線や点を書く単純な課題や文章を書き写す課題では、認知機能障害の有無による有意な差は認められなかった。一方、読み上げられた文章を書き取る課題では、認知機能障害の有無により明確な差が認められ、認知機能障害のある高齢者では、書き始めるまでに時間がかかり、文字の縦方向の大きさが不安定で、筆記に要する時間も長い傾向が認められた。研究グループによると、読み上げられた文章の書き取りでは、脳が、音声を聞き取る、言語を処理する、聞き取った言葉を文字に変換する、手の動きを制御するといった複数の作業を同時に行う必要があるため、これらの機能が低下すると、筆記動作にも乱れが生じるという。 Matias氏は、「書くという行為は、単なる運動活動ではなく、脳の状態を映し出す窓である」と述べている。さらに同氏は、「認知機能障害のある高齢者では、筆記動作のタイミングや構成に特徴的なパターンが見られた。認知負荷の高い課題では、認知機能の低下が、時間の経過の中で筆記動作がどれだけ効率的かつ一貫して組織化されているかに現れることが示された」とニュースリリースで説明している。 こうした知見を踏まえ、Matias氏は、単純な筆記課題と低コストのデジタル機器の活用が、将来的には診療所などの日常的な医療現場で認知機能低下のモニタリングに役立つ可能性があるとしている。

72.

最も老化しにくい睡眠時間は?

 睡眠時間が短いことだけでなく、長すぎることも、多くの臓器の生物学的老化の加速指標と関連していることが報告された。生物学的老化の進行が最も緩やかな傾向は、1日の睡眠時間が6.4~7.8時間の人に見られるという。米コロンビア大学ヴァジェロス医学校のJunhao Wen氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に5月13日掲載された。 この研究では、英国で約50万人の一般住民を対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて、睡眠時間とさまざまな臓器の老化との関連性が検討された。睡眠時間は自己申告により評価された。一方、臓器の老化については、画像検査データ(in vivo imaging:生体内イメージング)、および、血漿中のタンパク質や代謝産物の網羅的なデータを機械学習により解析して、脳や心臓、肺、肝臓などの17の臓器・システムを含む23種類の「生物学的老化時計」を作成して評価した。 この研究手法について、論文の上席著者であるWen氏は、「例えば肝臓では、タンパク質、代謝産物、画像データなど複数の情報に基づく老化時計が構築されている。これらを活用することで、睡眠と老化時計との関連の有無を調べることができる」と解説している。 このような解析の結果、睡眠時間と多くの臓器の老化との間に、U字型の関連があることが明らかになった。一晩の睡眠時間が6時間未満の人や8時間以上の人は、指標上の生物学的老化が全身的に加速している傾向が見られた。最もリスクが低い老化パターンを示したのは、一晩に6.4~7.8時間の睡眠を取っていると報告した人たちだった。 また、睡眠不足は、うつ病、不安症、肥満、2型糖尿病、高血圧、心臓病など、多くの疾患のリスク上昇と関連していた。他方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などの肺疾患、および胃炎や逆流性食道炎などの消化器疾患は、睡眠時間が短すぎる場合と長すぎる場合のいずれにおいても、発症リスクの上昇と関連していることが判明した。 研究者らは、「今回の研究結果は睡眠が脳の健康だけでなく、全身の機能といかに深く結びついているかを浮き彫りにしている」と述べている。またWen氏は、「われわれの研究結果は、睡眠が脳や体全体の臓器の健康維持、代謝バランスや免疫システムの維持などにおいて、重要な役割を果たしているという考え方を裏付けるものだ」と総括。その上で、「今後の研究では、睡眠習慣の改善が、さまざまな臓器における生物学的老化を遅らせるのに役立つかどうかを検証していく」と付け加えている。

73.

便潜血単独法に対してピロリ菌便中抗原の同時併用検査の有用性は(解説:上村直実氏)

 がんの中でも早期発見により死亡率が著明に減少するだけでなく、がんの予防にも連なる有用性が明らかになっている大腸がんと胃がん検診(スクリーニング)が世界中で注目されている。わが国の大腸がん検診は便潜血免疫検査(FIT)、胃がんに対してはバリウム検査と内視鏡検査を用いる従来の検診法が踏襲されている。最近、人間ドックや企業検診でピロリ菌感染の検査や血中ペプシノゲン検査による胃がんリスク検診も導入されつつあるが、検診の精度や費用対効果に関して従来法と比較した研究報告は見当たらない。 日本では検診方法に関する費用対効果を検討した報告は皆無であるが、今回、台湾において大腸がんと胃がん検診でFITとピロリ菌の便中抗原検査を同時に併用する方法(併用法)とFIT単独検査法(FIT単独法)の一生涯の費用対効果についてマルコフモデルを用いた生涯費用対効果分析を行った結果、FIT単独法と比較して併用法の費用削減効果が高く、台湾では生涯にわたる健康状態の改善と医療費の削減を実現する可能性が高いことが2026年6月のJAMA誌に報告された。 日本の医療情勢をみると、最新の医療機器や高額な薬剤の開発による高度な医療が行われるようになり、治癒が困難であった難治性疾患の治療が容易になり、手術不能がん患者の生存期間延長に大きく寄与している。他方、医療費の高騰から、臨床の現場では考えることが少ない医療経済評価を考慮すべき時代が到来しつつあるのも事実である。筆者のような臨床医の知識では、今回取り上げた費用対効果に関する統計学的解析を要する臨床研究を企画・立案すること自体が難しい作業であるが、今後は統計学者と検診事業に精通した臨床の専門家が共同して取り組むべき課題と思われた。 本研究は24万人の台湾人を対象とした臨床研究であるが、台湾と同様にピロリ菌感染率と胃がんの有病率が高く、大腸がんの発生率も上昇している日本でも、FIT時にピロリ菌便中抗原を併用する方法は胃がん死・大腸がん死のリスク減少にとって有用性が高いものと推察され、今後、政策的にも考慮する価値がある検診法と思われる。なお、世界中で若年者の大腸がんが増加している点や、日本人のピロリ菌感染率が急激に低下していること、および高齢者の除菌後胃がんが増加している点を考慮すると、若年者に対して最適な検診方法と思われる。 最後に、日常診療でも検診においても、ピロリ菌感染と胃がんのリスクに関する正確な知識が必要である。個々人のピロリ菌感染動態は、現在ピロリ菌に感染している現感染者、以前に感染があったが現在はピロリ菌陰性になっている既感染者、生来ピロリ菌の感染のない未感染者の3群に分類されるが、胃がんリスクに関しては、現感染者が最も高く、検査の結果、同様に陰性と判断される既感染者と未感染者の胃がんリスクはまったく異なることが重要である。未感染者は生涯にわたってリスクが非常に低いことが明らかになっている一方、既感染者の胃がんリスクはまだまだ高いことを熟知したうえでの対応が重要である。

74.

喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第309回

喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ喀血の原因といえば、結核、肺アスペルギルス症、肺がん、気管支拡張症あたりが定番です。呼吸器内科医なら、喀血と聞いた瞬間に頭の中で鑑別がズラッと並びます。ところが今回の異物論文は、その鑑別リストに絶対載っていない犯人を連れてきました。Abd Alkareem AA, et al. Nasopharyngeal hirudiniasis, a rare cause of masked hemoptysis in an older patient: A case report. J Int Med Res. 2026 Jun;54(6):3000605261453283.患者は、高血圧以外は元気な62歳の男性。タバコは吸いません。2週間前から血を吐くようになり、喉の違和感も続いていました。発熱も、嗄声も、息切れもなし。地元の病院では原因がわからず、専門医に紹介されてきました。高齢男性で2週間も喀血が続けば、たとえ非喫煙者でも、普通は肺がんや結核、心血管系の病気を疑って精査に入ります。実際この論文でも、最初はそうした方向で考えられていました。ところが、診察医が喉を覗いた瞬間、事態は一変します。え? 喉の奥で、何かが動いている。しかも、見えたと思ったらスッと引っ込む。落ち着け…、落ち着けオレ…! そう思ったに違いありません。鼻咽腔内視鏡を入れてみると、上咽頭の壁に、何かがくっついて、もぞもぞ動いていました。もう、嫌な予感しかしません。口蓋垂を持ち上げて視野を確保し、鉗子でそいつをつかんで引っ張り出す。エエイッ!なんと、出てきたのは、体長およそ3cmの、 生きたヒルでした。いやああああ!!! またこのタイプの論文かよおおお!!!!なぜ、ヒルで喀血したのでしょうか。実はヒルの唾液には、ヒルジンという強力な抗凝固物質と、局所麻酔成分が含まれています。だから噛みついても痛くないし、いったん吸血を始めると血が止まりにくくなります。つまり出血の正体はヒルがせっせと分泌していた天然の抗凝固薬だったわけです。実際、ヒルを取り除いた瞬間、出血はピタッと止まりました。患者さんにあらためて話を聞くと、3週間ほど前に、処理していない池の水を飲んでいたとのこと。水と一緒に幼いヒルを飲み込み、上咽頭に定着してしまったようです。2次感染予防に抗菌薬を1週間処方し、2週間後の再診でも再発はありませんでした。よかったよかった。

75.

第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会 会長インタビュー【Oncologyインタビュー】第59回

出演札幌医科大学 医学部産婦人科学講座 教授 齋藤 豪氏2026年7月17日より、第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会が開催される。講演会のテーマは「Shape Tomorrow: Evolving Treatment Paradigm and the Most Effective Strategy 進化する医療の中で、未来を切り拓くベストな治療法を探る」である。会長の札幌医科大学 齋藤 豪氏に学術講演会の見どころについて聞いた。 参考 1) 第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会ホームページ

76.

第320回 高市カラー滲む「骨太の方針2026」、医療財政の理想と現実

INDEX原案提出がずれ込んでいる理由骨太の方針2026での医療関連の内容現実的か試算してみると…近年は6月下旬から7月半ばにかけて「今年もこの時期がやってきた」と個人的には思うようになった。何かというと、政府が毎年策定する経済・財政・社会保障などの政策の基本的な方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(通称・骨太の方針)」が明らかになる時期ということである。今年も6月30日に政府から経済財政諮問会議に原案が示された。ちなみに経済財政諮問会議は2001年に故・橋本 龍太郎首相が主導した中央省庁再編時に内閣設置法に基づき設置された会議体であり、予算編成の主導権を握っていた旧大蔵省(現財務省)の絶大な力を削ぎ、予算編成を政治主導にするために設置されたものだった。しかし、この目論見は簡単には機能せず、政治主導が本格化したのは“変人首相”小泉 純一郎氏の時代である。この時に新たに作られたのが同諮問会議に提出される政治主導の総論的な基本方針、つまり骨太の方針である。原案は諮問会議で議論されたうえで個別項目を担当大臣に下ろし、大臣の指示の下で各省が総論に沿った具体策を立案、さらに同諮問会議に戻し、最終案が閣議決定される。政府(内閣)が総論というハンマーを振り下ろし、各省庁に有無を言わせないのが基本的な仕組みである。この骨太の方針に沿って毎年の予算編成が行われるわけだが、単に予算編成の方針だけでなく、時の内閣が現下の課題にどのような認識を持っているかを知るうえでも重要な手がかりとなる。原案提出がずれ込んでいる理由さて実は、今回の骨太の方針はやや“異例”の事態になっている。というのも過去を振り返ると、政府からの経済財政諮問会議への原案提出は遅くとも6月中旬までに行われ、6月中に閣議決定が行われる。2017年以降の過去10年を振り返ると、原案提出が6月下旬以降にずれ込んだのは2020年しかない。それ以前に遡ると、骨太の方針が策定され始めた2001年から民主党政権に交代するまでの2008年までを見ても原案提出は6月下旬がほとんどだったが、最終的な閣議決定も6月中。民主党政権期は骨太の方針が策定されず、自民党が政権奪還した2013年から2016年の期間も、すべて6月中旬まで原案提出、6月中の閣議決定となっている。冒頭のように今年は6月30日に原案が示され、閣議決定は7月中旬が見込まれている。過去、骨太の方針の閣議決定が7月にずれ込んだのは、2006年と2020年だけである。このうち2020年については、その理由に多くの人が気付くだろう。コロナ禍の影響である。2006年については、骨太の方針を創始者でもある小泉氏の政権下で作られた最後のもので、次期政権に引き継ぐとして財政再建を強く打ち出し、政府・与党内で「歳出・歳入一体改革」の調整が長引いたことが原因とされる。では、今回はなぜか? これは原案を読むと、ある程度その理由がうかがえる。まず、これまで政府の予算編成の最大の方針とも言えたのが、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の単年度黒字化」だったが、今回の原案ではその一時的悪化の容認と複数年度管理へと大きな転換を行っている。また、高市 早苗首相の最大の政策メッセージである「責任ある積極財政」の導入で、成長投資の名の下に複数年度予算や大型投資枠を創設しているのである。要は慣例を破って高市カラーを前面に打ち出したがゆえに、内閣府の事務方が原案作成だけでも相当苦労したと考えられる。これが遅延の最大の理由だろう。骨太の方針2026での医療関連の内容では、肝心の原案の中身だが、医療・社会保障関連政策はどうなったか。2026年度の骨太の方針の大原則を掲げる「第1章 マクロ経済運営の基本的考え方」で言及されている関連内容を以下に抜粋する。「強い経済、持続可能な財政と、質の高い全世代型社会保障とを同時に実現する社会保障改革を強化する。現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくとの方針の下、給付と負担の見直しの検討、安心して必要なサービスを受けることのできる医療・介護提供体制の構築、DXやAI・ロボティクスの活用を通じたサービスの質の向上、攻めの予防医療等に取り組む」ここから察するに、高市政権最大の命題は「現役世代の保険料引き下げ」ということになるだろう。これは自民党が連立を組む日本維新の会(以下、維新)の最大の政策目標でもあり、維新への配慮から考えれば、さもありなんというのが個人的な感想である。もっとも最近では政党の左右を問わず、ほぼ全政党がこの政策を掲げている。そのより詳細な中身は、「第3章 責任ある積極財政に基づく『中長期経済財政計画』」の「1.『強い経済』の構築と『財政の持続可能性』の実現」で「社会保障関係費については、『現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく』との方針の下、国費だけではなく、給付費全体、公費・保険料負担、現役世代の可処分所得などを踏まえ、給付と負担の改革を継続していく」と記述している。そしてまさに同章の本丸とも言える「2.全世代型社会保障の構築」では、現役世代の社会保険料負担の抑制・引下げを目指し、2026年度中に社会保障改革の具体策と工程を策定する旨が記述され、さまざまな取り組みの方向性が記述されている。箇条書きすると以下のようになる。医療・介護・障害福祉分野でのDX・AIなどによる生産性向上と職員配置の柔軟化医療・介護事業者の経営実態の把握と物価・賃金上昇を踏まえた経営安定と処遇改善医療機関などの経営が悪化した場合の診療報酬の追加調整の検討2040年を見据え、病床数の適正化や医療機関の再編・集約化の推進地域包括ケアシステムを深化させ、地域に応じた効率的な医療・介護提供体制を整備医師偏在対策を強化し、地域事情を考慮しながら医学部を定員削減看護職員や介護・福祉人材の確保・定着、潜在人材の活用、勤務環境改善の推進医療・介護施設の老朽化・災害対策を含めた計画的な施設整備を支援医療保険での高齢者の窓口負担見直しについて令和9年度予算編成過程で結論を得る介護保険では、2割負担の対象基準見直しを2026年度中に結論を得る医療・介護保険での金融所得・資産の扱いや、OTC類似薬の保険給付見直しを推進バイオ後続品の普及を踏まえ、先行バイオ医薬品の保険給付の在り方を検討長期処方・リフィル処方箋・地域フォーミュラリ・休薬・減薬を推進し、医療費の適正化を図る。スイッチOTC化を進め、セルフメディケーションを推進電子カルテ・電子処方箋の普及や医療DXを推進し、医療・介護情報の連携・利活用基盤を整備現実的か試算してみると…これらを概観すると、高市政権は、DXなどを通じた生産性向上、医療機関の再編・集約、薬剤費の適正化、高齢者の保険料・医療費負担見直しなどを通じて、現役世代の保険料引き下げを狙っていると考えられる。さてこれが可能だろうか? かなり粗々だが以下のように試算してみたい。まず、2026年度予算ベースでの保険料収入は84.5兆円1)。うち直接家計が負担することになる被保険者負担は44.8兆円である。もっともこの中には、65歳以上が負担する後期高齢者医療制度保険料、介護保険第1号保険料、65~74歳の国民健康保険の保険料が含まれている。直近の2025年度の後期高齢者医療制度保険料は、平均保険料年額が8万6,306円で、2026年1月1日現在の75歳以上の人口2)は2,136万5,000人なので、その総額は約1.8兆円となる。介護保険第1号保険料は、2025年度予算額ベースで約3.0兆円3)。ただし、65~74歳の国民健康保険の保険料は、粗々とはいえ正確な試算がかなり困難だが、この年齢層の人口が約1,500万人、国保保険料納付者の平均保険料年額が約10万円であることから、概算すると1.5兆円になる。これらの総額6.6兆円を被保険者負担の総額44.8兆円から引くと、現役世代の保険料総額は38.2兆円となる。仮にこれを10%引き下げるとなると、3.8兆円の財源が必要になる。さて前出の骨太の方針に列挙された政策で捻出できるだろうか? ちなみに列挙された政策のほとんどは生産性向上策であり、その経済的効果はおよそ推定が不可能である。唯一、試算ができそうなのは、「医療保険での高齢者の窓口負担見直し」である。これを維新がよく唱える「高齢者自己負担率の一律3割」で考えてみよう。厳密な後期高齢者の範囲ではないが、ある研究4)では、70歳以上の自己負担割合を3割に引き上げることによる医療費削減効果は1.3~6.7兆円とされている。ここで幅があるのは、自己負担引き上げによる医療需要の変化を想定したものである。順当に考えるならば、高齢者の一律3割負担で浮いた分をすべて現役世代の保険料10%引き下げに当てるならば、実現は可能かもしれないとなる。しかし、医療需要が抑制されない1.3兆円というシナリオならば、実現不可能である。(表)現役世代の保険料10%引き下げに要する財政試算画像を拡大するだが、ここでもう1つ問題がある。高市政権がいま取り組んでいる食料品の消費税の一時的な撤廃である。これについて、以前の財務省の説明では、年間約5兆円の税収減となる。こうしたことや今回の骨太の方針の原案で述べている物価高・人件費高騰に応じた診療報酬の引き上げなどを実行するとしたら、およそ財源は足らないことになる。しかも、ここでの粗々試算はあくまで現役世代の保険料引き下げを10%としたものであり、それで現役世代が実感を持って引き下げを実感できるかどうかは別物。ちなみに前述の国保保険料の平均年額で言えば、10%の保険料引き下げは年間1万円の減額になるが、おそらくこれで可処分所得が増えたと思う国民はまれだろう。こうして考えてみると、失礼ながら現役世代の保険料引き下げは、かなり砂上の楼閣と言わざるを得ないのだが…。参考1)厚生労働省:給付と負担について2)総務省統計局:人口推計(令和8年6月19日)3)厚生労働省老健局:介護保険制度の概要(令和7年7月)4)医療費適正化の実現に必要なエビデンスに関するレポート(ワーキングペーパー)2025年11月23日作成

77.

日本における小児ADHDに対する薬物療法の現状、最も好まれる薬剤は?

 小児の注意欠如多動症(ADHD)は、日本において増加傾向にある神経発達障害である。ADHDの治療において、薬物療法は重要な治療法の1つであるにもかかわらず、ADHD治療薬の処方実態はこれまで十分に解明されていなかった。北里大学の鈴木 龍太郎氏らは、日本の17歳以下の小児および青年におけるADHD治療薬の処方パターンを調査し、性別、年齢、診療科といった患者背景に基づいて薬剤選択の傾向を分析した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年5月14日号の報告。 本研究は、日本の大規模健康保険請求データベースを用いたレトロスペクティブデータベース研究である。2018年4月~2023年8月のADHD治療薬の処方パターンを分析した。4種類のADHD治療薬(徐放性経口メチルフェニデート[OROS-MPH]、アトモキセチン[ATX]、グアンファシン[GXR]、リスデキサンフェタミン[LDX])のそれぞれについて、患者における処方割合、併用パターン、新規処方割合を、異なる人口統計学的グループおよび診療科別に検討した。処方割合の経時的変化を評価するため、Jonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。精神科と非精神科での診療における単剤療法処方割合の時系列データを比較するために、マン・ホイットニーのU検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・2018~23年にかけて、OROS-MPHの処方割合は64.7%から47.5%へと有意に減少した。・一方、GXRの処方割合は19.3%から46.4%へと有意に増加した。・GXRは、女児および6~12歳の小児に最も多く処方されていた。・新規患者においては、2019年後半以降、GXRの処方割合がOROS-MPHの処方割合を上回り始め、2023年には新規処方の41.3%を占めるようになった。・単剤療法を受けている患者の割合は82.3%から79.6%に減少し、OROS-MPHとGXRの併用療法が最も一般的であった。 著者らは「日本では、GXRのADHD治療薬として使用頻度が増加しており、とくに女児および6~12歳の小児においてその傾向が顕著であった。2019年後半以降、GXRの新規処方数はOROS-MPHを上回っている。この傾向は、GXRが中枢神経刺激薬と同様の流通規制の対象とならないことや、他のADHD治療薬とは異なる独自の薬理作用機序を持つことに起因すると考えられる。治療選択肢が進化し続ける中で、処方慣行の継続的なモニタリングが求められる」としている。

78.

日本におけるがん薬剤費は10年で3倍に、総医療費最大は肺がん

 日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2011~22年にがん診療を受けた約2,320万人を対象とした大規模解析が実施された。その結果、がん診療に伴う医療費は日本の経済成長率を大きく上回るペースで増加しており、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とする新規抗がん薬が医療費増加の主要因であることが明らかになった。京都大学の福山 啓太氏らによる研究はScientific Reports誌オンライン版2026年6月15日号に掲載された。 本後ろ向きコホート研究では、2011年4月~2022年3月に悪性腫瘍と診断された患者をがん種別に分類し、月ごとの保険請求額と適用薬剤を分析した。対象は悪性腫瘍患者約2,320万人(男性:約1,203万人、女性:約1,118万人)で、95%以上の電子レセプトを網羅する全国データを利用し、がん種別、年齢別、薬剤別に医療費を評価した。また、薬価改定を反映した独自のマスターデータを構築し、薬剤価格の経年変化も考慮した。 主な結果は以下のとおり。・患者数では乳がんが最多で、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんが続いた。・総医療費が最も高額だったのは肺がんだった。肺がんの患者数は減少傾向にあるにもかかわらず、診療費は解析期間を通じて増加を続け、2022年には全がん種で最大となった。一方、患者1人当たりの月額医療費では多発性骨髄腫が最も高く、2022年3月時点で約40万9,000円に達した。・研究期間中、がん患者の月当たり人数は612万人から544万人へ約68万人減少したにもかかわらず月額総請求額は5,590億円から7,100億円へ約1,510億円増加しており、1人当たり医療費の増加が認められた。・薬剤費の解析では、ICIの増加が際立った。肺がんではPD-1/PD-L1阻害薬が急速に普及し、分子標的薬やVEGF阻害薬とともに薬剤費増加の主因となっていた。乳がんではHER2標的薬やCDK4/6阻害薬、胃がんではPD-1/PD-L1阻害薬およびVEGF阻害薬、前立腺がんでは新規ホルモン療法薬の使用増加が確認された。・抗がん薬全体の薬剤費は、2011年の月347億円から2022年には1,090億円へと約3.1倍に増加した。なかでもICI関連薬剤は薬価改定により一部価格が引き下げられたものの、新規適応拡大や使用患者数の増加により、総薬剤費は増加を続けた。 同期間における日本の実質GDPは約8.5%の増加にとどまった。これに対し、がん診療費は約1.27倍、抗がん薬剤費は約3.1倍に増加しており、研究者らは「がん診療費の伸びは経済成長を大きく上回っている」と指摘する。一方で研究者らは、「本研究は高額薬剤の使用抑制を提案するものではない。ICIや分子標的薬は臨床試験で有効性が示され、患者予後の改善に大きく寄与している。しかし、公的保険制度の持続可能性を考えると、個々の薬剤の増分費用効果比(ICER)のみでは十分とは言えず、国家経済や医療財政全体を踏まえた新たな評価指標の構築が必要だ」としている。さらに、がん検診による早期発見やワクチンによる予防は、高額な薬物療法を回避できる可能性があり、医療経済の観点からも重要な介入となる可能性が示唆された。

79.

実測GFRおよび推定GFRと、死亡・腎不全との関連/JAMA

 スウェーデンの成人において、実測糸球体濾過量(mGFR)が60mL/分/1.73m2の場合、90mL/分/1.73m2と比較して全死因死亡率および腎不全の発生率が高く、慢性腎臓病(CKD)の定義に用いられる現在の推定GFR(eGFR)の閾値60mL/分/1.73m2が支持されることが示された。また、mGFRと死亡との関連は、血清クレアチニン(cr)値と血清シスタチンC(cys)値に基づき算出したeGFR(すなわちeGFRcr-cys)で最もよく反映されていたが、cr値に基づくeGFRcrは死亡リスクを過小評価し、cys値に基づくeGFRcysは過大評価となることが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。eGFRの低下は死亡および腎・心血管イベントの発生増加と関連しているが、腎機能評価の精度はmGFRよりも低いとみなされている。一方でmGFRとアウトカムの関連も依然として明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2026年6月4日号掲載の報告。死亡・腎不全との関連を、mGFRとeGFRcr・eGFRcys・eGFRcr-cysで比較 研究グループは、2011年1月1日~2021年12月31日に、スウェーデンのストックホルムにおいて専門医の判断によりmGFR検査が施行され、mGFR測定から30日以内に血清クレアチニン値および血清シスタチンC値の測定が行われた18歳以上の成人6,174例を対象とした。 一般的に、mGFR検査の適応となる患者は、薬剤投与量決定のために正確なGFRを必要とする患者(がん化学療法など)、肝硬変患者、腎移植のレシピエントまたは生体腎ドナー、およびeGFRcrとeGFRcysが不一致の患者などで、これらに該当する患者を適格とした。透析を受けている患者、またはmGFRが0mL/分/1.73m2未満もしくは150mL/分/1.73m2超の患者は除外された。 mGFRは、カロリンスカ大学病院臨床化学部門において、イオヘキソール静脈内投与後の単回採血検体を用い、Jacobsson式による血漿クリアランスに基づき算出された。eGFRについては、慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration:CKD-EPI)の2021年式を用いてeGFRcrおよびeGFRcr-cysを、2012年式を用いてeGFRcysを算出した。 主要アウトカムは、全死因死亡および腎代替療法(透析開始または腎移植と定義)を要する腎不全とし、各種GFR値とアウトカムとの関連を、年齢、性別、BMI値、既往歴、治療薬、および尿中アルブミン/クレアチニン比で補正したハザード比(HR)を用いて評価した。mGFRは死亡・腎不全の発生と有意に関連、mGFR評価とほぼ一致したのはeGFRcr-cys 解析対象6,174例の患者背景は、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:43~69)、男性3,686例(60%)、女性2,488例(40%)で、主な併存疾患は高血圧2,765例(45%)、がん1,998例(32%)、糖尿病1,244例(20%)、心不全651例(11%)であった。 追跡期間中央値5.9年(IQR:3.0~8.8)において、1,977例(32%)が死亡し、426例(6.9%)が腎代替療法を要する腎不全に至った。 全死因死亡率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)が90で22.4件に対し、60、45、30および15mL/分/1.73m2ではそれぞれ27.6件、32.5件、37.4件および42.7件、補正後HRはそれぞれ1.21(95%信頼区間[CI]:1.14~1.28)、1.41(95%CI:1.30~1.52)、1.62(95%CI:1.49~1.76)、1.85(95%CI:1.62~2.11)であり、mGFRの低下は全死因死亡の発生率の増加と有意に関連していた。 腎代替療法を要する腎不全についても同様で、mGFRの低下はその発生率の増加と関連しており、発生率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)90の0.4件に対して、60、45、30および15ではそれぞれ1.2件、3.6件、14.9件、72.2件へ増加し、補正後HRはそれぞれ2.85(95%CI:2.06~3.94)、8.77(95%CI:5.81~13.24)、38.5(95%CI:24.69~59.90)、200.3(95%CI:129.1~310.9)であった。 実測・推定GFR値が90mL/分/1.73m2未満の患者において、eGFRcrはmGFRと比較し死亡率との関連性を有意に過小評価していたのに対し(例:実測・推定GFR値60での死亡のハザード比の比[RHR]:0.87、95%CI:0.79~0.95)、eGFRcysはmGFRより死亡率との関連性を有意に過大評価していた(例:実測・推定GFR値60での死亡のRHR:1.17、95%CI:1.08~1.27)が、eGFRcr-cysはmGFRと差がなかった(例:実測・推定GFR値60でのRHR:1.03、95%CI:0.96~1.10など)。

80.

中等度~重度肥満者、週1回GLP-1/グルカゴン二重作動薬mazdutideの減量効果/JAMA

 中等度~重度の肥満を有する中国人成人において、GLP-1/グルカゴン受容体二重作動薬mazdutideの9mg週1回60週間皮下投与により、プラセボと比較して消化器系の有害事象が多かったものの、臨床的に意義のある体重減少が認められたことを、中国・Peking University People’s HospitalのLeili Gao氏らが、同国の27施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GLORY-2試験」の結果で報告した。肥満は世界的な問題であり、中国においても公衆衛生上の大きな課題となっていた。JAMA誌オンライン版2026年6月7日号掲載の報告。2型糖尿病不問の肥満成人対象に、mazdutide 9mgの有効性と安全性をプラセボと比較 GLORY-2試験の対象は、BMI値30以上で、食事療法および運動療法のみによる減量に少なくとも1回失敗し(自己申告)、スクリーニング前3ヵ月間の体重が安定している(自己申告で変動が5%以下)、18歳以上の成人であった。 スクリーニングの3ヵ月以上前に2型糖尿病と診断され、スクリーニング時にHbA1cが7.0~10.0%、空腹時血糖値が11.1mmol/L以下で、スクリーニング前2ヵ月以上食事療法と運動療法のみ、または最大3種類の経口糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬を除く)の安定用量で治療を受けていた場合は、組み入れ可能とした。 研究グループは、適格被験者をmazdutide 9mg群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、食事療法(低カロリー食)および運動療法(150分/週の中強度の運動)の順守に加えて、それぞれ週1回60週間皮下投与した。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから60週時までの体重の変化率、5%以上体重減少を達成した被験者の割合であった。 有効性および安全性の解析は、主要解析集団(試験薬を少なくとも1回投与された、すべての無作為化された被験者)を対象とし、有効性のエンドポイントは、治療レジメン推定(治療順守不問で60週時におけるプラセボに対するmazdutideの平均治療効果を表す)、および有効性推定(試験薬投与を60週間完了した場合のプラセボに対するmazdutideの平均治療効果を表す)の2つの解析が行われた。60週時の体重変化率はmazdutide 9mg群-16.65%、プラセボ群-1.50% 2023年12月~2024年6月に593例がスクリーニングを受け、うち462例が登録・無作為化され、主要解析対象集団には試験薬を投与された461例(mazdutide群307例、プラセボ群154例)が組み入れられた。 461例の背景は、女性295例(64.0%)、平均年齢33.9歳(SD 8.4)、平均体重94.0kg(SD 13.8)、平均BMI値34.3(SD 3.2)で、74例(16.1%)が2型糖尿病を有しており、399例(86.6%)は2型糖尿病以外の体重関連合併症を1つ以上有する被験者であった。 ベースラインから60週時の体重の平均変化率は、治療レジメン推定値でmazdutide群-16.65%(95%信頼区間[CI]:-18.19~-15.12)、プラセボ群-1.50%(95%CI:-3.43~0.43)であり、群間差は-15.15%(95%CI:-17.22~-13.09、p<0.001)であった。 5%以上体重減少を達成した被験者の割合は、治療レジメン推定値でmazdutide群84.3%(95%CI:80.0~88.5)、プラセボ群33.1%(95%CI:25.5~40.6)であり、群間差は51.6%(95%CI:43.0~60.1、p<0.001)であった。 両主要エンドポイントの有効性推定値は、治療レジメン推定値と類似していた。 有害事象はmazdutide群で98.7%、プラセボ群で93.5%に発生した。主な試験治療下における有害事象は、嘔吐(mazdutide群53.1%、プラセボ群1.3%)、悪心(同46.9%、3.2%)、下痢(同39.4%、6.5%)で、ほとんどは軽度~中等度であった。試験中止に至った有害事象は、mazdutide群で2.9%に認められたが、プラセボ群では報告されなかった。

検索結果 合計:36478件 表示位置:61 - 80