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<先週の動き> 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府政府は6月30日に経済財政諮問会議を開き、「骨太の方針2026」原案を示した。2027年度予算編成を見据え、医療・介護提供体制と社会保障負担の見直しが大きな論点となった。医療保険制度では、高齢者の受診行動や所得状況を踏まえた窓口負担の見直しについて、2027(令和9)年度予算編成過程で結論を得る方針が盛り込まれた。ただし、この記載には調整中を示す「P」マークが付いており、今後の与党調整や閣議決定までに文言が変わる可能性がある。高齢者の窓口負担をめぐっては、財政制度等審議会が「70歳以上の患者負担を原則3割とする方向を提言する」という一方で、上野 賢一郎厚労相は一律3割負担には慎重な姿勢を示しており、年末の予算編成に向けて政府・与党内で調整が続く見通し。医療現場にとっては、自己負担増大による受診抑制、慢性疾患の管理、救急受診、未治療や重症化リスクへの影響も含め、制度設計の行方を注視する必要がある。診療報酬については、経済・物価動向が2026年度改定時の見通しから大きく変動し、医療機関などの経営状況に支障が生じた場合、2027(令和9)年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む追加調整を行うと明記された。物価高、人件費上昇、委託費・材料費増が病院経営を圧迫するなか、2026年度改定後も経営実態を踏まえた対応が検討対象となっている点は重要である。その一方で、医療提供体制については、2040年に向けて必要病床数を上回っているとされている一般病床と療養病床で約5万6,000床、基準病床数を超えている精神病床約5万3,000床を対象に病床数の適正化を進め、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとした。地域包括ケアシステムの深化、高齢者救急、在宅医療、中山間・人口減少地域での柔軟なサービス提供も課題に挙げられている。さらに、医師偏在対策を進め、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員削減にも取り組む方針が示された。介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、物価変動に対応しつつ、他職種と遜色のない処遇改善を図るとしており、医療・介護人材確保も引き続き重要課題となる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針 2026 原案 (経済財政諮問会議) 2) 高齢者窓口負担見直し、年末の予算編成で結論出す方針-骨太方針2026原案(医事新報) 3) 「骨太の方針」が大幅なスリム化も、医療政策の記載数は増えた?(日経メディカル) 4) 2027年度介護報酬改定では「他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」骨太の方針原案、病床数適正化や医学部定員削減を明記(同) 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省厚生労働省は、都道府県が2027年度から運用する第8次後期の医師確保計画策定ガイドラインを通知し、重点医師偏在対策支援区域を対象とする「医師偏在是正プラン」の考え方を示した。医師偏在は、地域間・診療科間で長年の課題とされ、地域枠を中心に医師数を増やしてきたものの、ミクロの医師不足解消には十分つながっていない。ガイドラインでは、経済的インセンティブ、地域医療機関の支え合い、医師養成過程を通じた取組みを組み合わせ、医師の勤務・生活環境や柔軟な働き方に配慮しながら、中堅・シニアを含む全世代の医師にアプローチする方針を掲げた。重点区域は、一定の定住人口が見込まれる一方で、必要な医師を確保できず、人口減少より医療機関の減少速度が速い地域などに設定し、優先的・重点的に対策を進める区域とされた。都道府県は厚労省が示す候補区域を参考に、医師偏在指標、可住地面積当たり医師数、へき地尺度、医療機関へのアクセス、診療所医師の高齢化率、住民の受診行動、人口動態などを踏まえ、地域医療対策協議会と保険者協議会で協議した上で、真に重点的な医師確保が必要な区域に限って設定する。支援対象とする医療機関については、重点区域内の全医療機関を一律に対象とするのではなく、とくに支援が必要な医療機関を選定する。選定に当たっては、設立母体にかかわらず、今後策定される新たな地域医療構想や地理的条件を踏まえ、地域医療対策協議会・保険者協議会で合意を得る必要がある。必要医師数は、候補区域を重点区域に設定する場合、原則として候補区域の要件を脱するために必要な人数を基準とする。施策面では、重点区域で診療所を承継・開業する場合の施設・設備整備や一定期間の地域定着支援、中核病院などから重点区域内の医療機関へ医師を派遣する際の費用支援、勤務医の離職防止や新規勤務医確保に向けた土日の代替医師確保支援などが示された。 参考 1) 医師確保計画策定ガイドライン~第8次(後期)~(厚労省) 2) 医師偏在是正プランの考え方を明示 確保計画策定GLで 厚労省通知(CB news) 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府6月30日に内閣府は日本成長戦略会議を開き、取りまとめた「日本成長戦略」について公開した。この中で、医療DX基盤の整備を成長投資の重点分野に位置付け、電子カルテ導入目標を一部前倒しした。電子カルテ未導入の200床以上の病院については、療養病床などが中心の病院を除き、2028年度までに普及率100%を目指す。従来は2030年までにおおむね全医療機関への導入を目指す方針だったが、200床以上の未導入病院では期限が2年前倒しされる形となる。背景には、医療情報の共有、診療の効率化、医療の質向上に加え、創薬・医療機器開発に必要なデータ基盤の整備がある。成長戦略では、クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤について、「大量のデータを必要とする創薬・医療機器の開発の基盤」であり、医療提供体制の効率化・質向上、サイバー攻撃への強靱性確保に不可欠と位置付けている。政府は、従来の院内サーバー管理を中心とするオンプレミス型の医療機関情報システムを、クラウドネイティブ型へ刷新する方針を示した。これにより、サイバーセキュリティ対策の強化と、全国的なデータ連携基盤の構築を図るとしている。2030年までには、電子カルテ普及率を約100%、地域の拠点病院のサイバーセキュリティ対策を100%とし、大病院向けクラウドネイティブ型製品の提供も目指す。具体策として、厚労省などが認証したクラウドネイティブ型電子カルテ製品の普及を促進し、大病院向け製品については一体的・集中的な開発と普及を支援する。また、ネットワークの外部接続点の監視、サーバー等の管理強化など、サイバーセキュリティ対策も強化する。さらに、全国医療情報プラットフォームの拡充やデータ連携基盤の整備、病院DXの推進も盛り込まれた。厚労省の調査では、2023年10月時点の電子カルテ導入率は、400床以上で93.7%、200~399床で79.2%まで進んでいる一方で、200床未満では59.0%にとどまる。今後、200床以上の未導入病院は、電子カルテ導入だけでなく、クラウド移行、標準化、サイバー対策、地域医療情報連携への対応を同時に迫られる。医療機関にとって電子カルテは、単なる院内システムではなく、診療情報共有、医療安全、経営効率化、研究・創薬基盤、BCP対策を支える基幹インフラとして再定義されつつある。 参考 1) 日本成長戦略(内閣府) 2) 電子カルテ導入 200床以上は「28年度100%」2年前倒し 政府目標(CB news) 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省厚生労働省は7月3日、2040年を見据えた新たな地域医療構想策定ガイドラインと、全国の必要病床数の機械的試算を公表した。この中で、2040年の必要病床数は、2025年度比で約10万床少ない106.9万床とされ、人口減少と医療需要の質的変化が病床再編を迫る構図が明確になった。とりわけ急性期病床は66万床から37.4万床へ約4割減少とされる一方で、高齢者救急、退院支援、早期リハビリ、在宅復帰を担う「包括期病床」は41.6万床と大きく位置付けられた。慢性期は28.0万床でおおむね維持される見通しである。背景にあるのは、85歳以上高齢者の増加と生産年齢人口の減少である。ガイドラインでは、2040年に向けて高齢者救急や在宅医療の需要が増える一方で、急性期需要は多くの地域で減少し、医師・看護職員の確保は一層困難になると整理している。従来の地域医療構想は病床機能の分化・連携が中心だったが、今回は入院に加えて外来、在宅、介護連携、人材確保までを含む「地域全体の医療提供体制」の再設計に踏み込む点が大きい。都道府県は2026年度から2027年度前半にかけて医療需要や提供体制をデータ分析し、構想区域の点検・見直しを行う。2028年度までに、急性期拠点機能を担う具体的医療機関名、各病院が2040年に担う医療機関機能、必要病床数、入院・外来・在宅・介護連携・人材確保の取組を地域医療構想として策定する。急性期拠点は人口20~30万人に1施設を目安とし、手術、救急搬送、医師確保、施設老朽化など実績と持続可能性を踏まえて協議される。病院にとっては、今後の議論が「自院の病床数」だけでなく、「地域で何を担う病院か」を問うものとなる。厚労省によると医療機関機能は、高齢者救急・地域急性期、急性期拠点、在宅医療等連携、専門等機能、大学病院本院の医育・広域診療機能に整理される。各医療機関は現在の機能、2040年に担う機能、診療実績を各都道府県に報告し、地域医療構想調整会議での協議を経て、遅くとも2028年度までに2040年の医療機関機能を決定する。高齢者救急では、誤嚥性肺炎や心不全などを受け入れ、早期からリハビリ、栄養、口腔、退院調整を行い、介護施設や在宅とつなぐ力が問われる。ガイドラインも、高齢者救急では入院早期からリハビリテーション、栄養管理、口腔管理を行い、在宅医療や介護との連携を包括的に進める必要性を示している。さらに明記すべきは、地域医療構想と医療計画の関係が変わる点である。これまで地域医療構想は医療計画の記載事項の一つだったが、新たな地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられ、第9次医療計画はその具体的な実行計画となる。2次医療圏も、見直された構想区域と原則一致させる方向であり、今後の診療報酬、医師確保、救急、在宅、介護連携の議論は、この構想と連動して進む。各病院は、地域医療構想調整会議での実績データに基づく協議に備え、自院の救急受入、手術、退院支援、在宅・介護連携、人材確保の実績を可視化し、地域内での役割を早急に整理する必要がある。 参考 1) 地域医療構想策定ガイドライン(厚労省) 2) 地域医療構想でガイドライン公表 40年見据え、都道府県が策定-厚労省(時事通信) 3) 急性期の病床、40年の必要数4割減 厚労省試算(日経新聞) 4) 令和8年度都道府県医師会地域医療構想策定等ガイドライン説明会(日本医師会) 5) 1つの病院が「急性期拠点機能」と「高齢者救急・地域急性期機能」とを同時に持つことは認めない-新地域医療構想GL(1)(Gem Med) 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2025年度の医療分決算見込みを公表した。協会会計と国の特別会計を合わせた合算ベースで、収入は12兆3,406億円、支出は11兆6,611億円となり、単年度収支差は6,795億円の黒字となった。黒字は前年度より209億円増加し、協会けんぽ発足後でも高水準の決算となる。収入増の主因は保険料収入の伸びであり、保険料収入は11兆546億円、前年度比4,057億円増となった。背景には、賃上げによる標準報酬月額の上昇と、被保険者数の増加がある。2025年度の被保険者数は2,604.4万人で前年度比1.8%増、平均標準報酬月額は31.5万円で同1.8%増となった。その一方で、支出も増加している。保険給付費は7兆5,369億円で前年度比2,818億円増、拠出金などは3兆7,829億円で同1,634億円増となった。とくに加入者1人当たり保険給付費は3.5%増加しており、医療の高度化や受診動向の変化が影響している。また、後期高齢者支援金は2兆4,891億円に増加し、団塊の世代がすべて75歳以上となったことによる概算納付額の増加や精算負担の増加が主因とされる。今回の黒字は、賃金上昇と被保険者数増による保険料収入の増加が、医療費や高齢者医療への拠出増を上回った結果である。ただし、支出の伸び率4.2%は収入の伸び率4.1%を上回っており、財政構造が安定化したとみるのは早い。協会けんぽ自身も、2026年度診療報酬改定で本体改定率が3.09%と高い伸びとなり、2026年6月以降の医療費に反映されること、さらに平均保険料率が2026年度から10.0%から9.9%へ引き下げられることを指摘している。医療機関にとっては、協会けんぽの黒字を単純な「財政余力」と捉えるより、保険料収入の伸びに支えられながらも、医療費、後期高齢者支援金、診療報酬改定の影響が重なり、今後の保険者財政が再び厳しくなる可能性を意識すべき局面である。準備金残高は6兆5,457億円、保険給付費などの7.2ヵ月分に相当するが、加入者の平均年齢上昇、医療の高度化、後期高齢者支援金の高止まりには引き続き留意が必要である。 参考 1) 2025(令和7)年度協会けんぽの決算見込みについて(協会けんぽ) 2) 協会けんぽ、昨年度6,795億円の黒字 賃上げで保険料収入増(日経新聞) 3) 協会けんぽ 昨年度決算 6,795億円黒字 賃上げで保険料収入増加(NHK) 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省文部科学省は7月3日、世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大学」に京都大学を認定する方針を発表した。政府の総合科学技術・イノベーション会議などへの諮問を経て、今夏にも正式認定される見通しで、東北大学、東京科学大学に続く3校目となる。初年度となる2026年度の助成額は約200億円が見込まれている。国際卓越研究大学制度は、政府が設置した10兆円規模の大学ファンドの運用益を活用し、最長25年間にわたって年数百億円規模の支援を行う仕組みである。わが国の研究力が国際的に相対的低下を続けるなか、大学の研究環境や若手研究者の育成、国際競争力の強化を図ることが目的とされる。京都大学が高く評価されたのは、従来の「小講座制」から「デパートメント制」への大規模な組織改革である。教授を頂点とする約1,000の小講座・研究室単位の体制は、専門性を深める一方で、閉鎖性や若手研究者の独立性の確保が課題とされてきた。京大はこれを廃止し、学術領域ごとに約20のデパートメントへ再編する計画を示した。2029年4月までの完全移行を目指し、若手・中堅研究者が独立して研究できる環境作り、分野横断型研究の推進、研究支援体制の強化による研究時間の確保を進める。また、京大は研究成果に基づく資金配分の仕組みや、大学院教育の強化も掲げている。今後25年間で年間の博士号取得者を現在の約690~700人から約3倍の2,100人規模に増やすほか、引用回数が上位10%に入る「トップ10%論文」の割合を現状の約2倍に引き上げる目標も盛り込んだ。同大の湊長 博総長は、「世界水準の研究大学を確立し、社会課題の解決やイノベーション創出につなげたい」と考えを示している。その一方で、同じく2回目の公募に申請していた東京大学は、医学部をめぐる不祥事やガバナンス上の課題などを理由に継続審査となった。今回の京大への認定は、単なる大型助成ではなく、大学組織の統治、研究者の自立性、国際競争力を問う改革の一環といえる。医師・医学研究者にとっても、医学部・大学病院を含む研究体制や若手育成のあり方に影響する動きとして注目される。 参考 1) 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)における審査の結果について(概要) 2) 京大を卓越大に認定へ 200億円支援、小講座制を廃止し組織再編(朝日新聞) 3) 世界トップレベル目指す「国際卓越大」に京都大を認定へ、東北大・東京科学大に続く3校目…今年度200億円助成見通し(読売新聞) 4) 京大を「国際卓越研究大学」に認定へ 今年度200億円助成見込み(NHK)