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葛根湯~随症治療と病名治療~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第2回

葛根湯~随症治療と病名治療~葛根湯といえば、感冒初期につかう漢方薬として皆さんにも馴染みがあるかと思います。結構使いやすい薬で、古典落語には「葛根湯医者」という言葉もあります。どんな病気にも葛根湯を勧めるやぶ医者がいたという話ですね。「頭が痛い? 葛根湯を用意しますよ。お次は胃が痛い? 葛根湯をどうぞ。お次の患者さんは…」「先生、私は単なる付き添いですが」「付き添い? 退屈しているでしょう、あなたも葛根湯を飲んでいきなさいな」……とまぁ、そんな感じです。では、葛根湯医者が本当にやぶ医者だったのかと言われると、必ずしもそうとは言い切れません。江戸時代や明治時代は病気といえば、感染症か脳卒中です。参考までに、1900年の死因は、1位が肺炎と気管支炎、2位が結核、3位が脳卒中、4位が胃腸炎、5位が老衰です(図1)1)。図1 1900年の死因順位画像を拡大するそれに、江戸時代の平均寿命は30~40歳だと推定されているのです。医者にかかる時は急性期の感染症、とくに感冒が多くなることが容易に想像できるわけです。そうすると、葛根湯で正解という場面も多くなるので、葛根湯医者はあながち間違ったことをしていなかったのではと考えられます。感冒初期に使う漢方薬ここで、感冒初期につかう漢方薬を皆さんには3つ覚えていただきましょう。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯の3つです。たぶん皆さんも聞いたことがあるかと思います。かなり大雑把に言えば、麻黄湯は体が頑丈な方向け、桂枝湯は虚弱な方向けで、葛根湯はその間です(図2)。図2 葛根湯、麻黄湯、桂枝湯が適応となる患者像画像を拡大する頑丈や虚弱がどういうことかは、今後詳しく説明しますが、ここで葛根湯の構成生薬をみてみましょう。葛根湯には葛根、麻黄、大棗(たいそう)、桂皮、生姜(しょうきょう)、芍薬(しゃくやく)、甘草の7つの生薬が含まれています。まだ生薬は覚えなくてもいいですが、7種類ということで、前回紹介した桔梗湯や芍薬甘草湯よりも効きが遅いことは想像できるかと思います。ちょっと遅いのですが、早ければ15分くらいで効いてくるのでよくできた漢方薬です。これらの生薬は、麻黄湯や桂枝湯とオーバーラップしているところが多く、だからこそ体が頑丈な人にも虚弱な人にも幅広く使える薬になっているとご理解ください(図3)。図3 葛根湯の構成生薬画像を拡大する随証治療ところで、葛根湯には葛根が含まれています。マメ科植物のクズの根っこの部分なのですが、これは麻黄湯や桂枝湯には含まれていません。じつは、この葛根が筋肉の凝りに効いてきます。「葛根湯が肩こりに効く」という話を聞いたことのある先生方もいるかと思います。ただし、この「肩こりに効く」というのは誤解が入っています。ちょっとここで、皆さんと一緒に古典を紐解いてみましょう。『傷寒論』という、後漢末期、つまり三国志時代の古典です。太陽病、項背強ばること几几、汗無く悪風するは、葛根湯之を主る。これを意訳すると、感冒初期でうなじが強ばって固くなっていて、汗が出ず寒気を感じている人には葛根湯が第1選択薬だと言っているんですね。そう「肩こり」ではなくて「首のこり」といった方が正確なのです。このように、古典の条文に載っているような症状や所見に準拠して漢方治療を行うことを「随証治療」といいます。一方で、市販のマニュアルは、こういった条文を現代語訳したり、一部を抜粋したりして作られていますが、その結果として「普通感冒の初期には葛根湯を使う」と西洋医学の病名に基づいた治療が行われるようになります。このやり方を「病名治療」といいます。漢方医学をものにしたい場合は、「病名治療」ではなく「随証治療」を学ぶ必要があります。最初は「病名治療」で勉強してもいいとは思いますが、最終的には「随証治療」も学ばないと、うまく効く漢方治療はできません。クイズでは、ここで1つクイズを出してみます。大いに渇し、舌上乾燥して煩し、水数升を飲まんと欲する者は、白虎加人参湯之を主る。これは「のどがカラカラで、水をガブガブ飲みたい人は白虎加人参湯が第1選択薬である」という意味の条文です。この条文には、前置きがあって割愛している箇所があるのですが、そこはご容赦ください。さて、この白虎加人参湯は、西洋医学で言うと何に使えそうか、考えてみてください。解答・解説はこちらたとえば、糖尿病はひどくなると喉が渇きますよね。また、シェーグレン病や熱中症も喉が渇きそうです。実際に、こういった状態を「体の芯に熱を持った状態」と漢方の世界では解釈していて、白虎加人参湯を処方することがあります。詳しい話を知りたい方には、症例報告が出ているのでそちらを見ていただくとして、このエクササイズを通じて「随証治療」と「病名治療」の関係性が何となく見えてきたのではないかなと思います(図4)。図4 随証治療と病名治療の例画像を拡大するまとめ葛根湯は、感冒初期に使える漢方薬で、体が頑丈な方から虚弱な方まで幅広く使えます。ただし、感冒初期に限るため、処方は2~3日分にとどめ、漫然と長期間処方しないほうがいいでしょう。漢方医学では古典の解釈が結構大事で、これをすっ飛ばすと「肩こりに葛根湯」のような誤解につながります。古典に基づいた「随証治療」を行うことが大切で「病名治療」はそのとっかかりに過ぎないことを認識していただくことが、漢方を上達させるコツです。次回は、麻黄湯のお話です。お楽しみに!1)厚生労働省. 心疾患-脳血管疾患死亡統計の概況 人口動態統計特殊報告 年次別にみた死因順位(第1~10位) 総数

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第51回 帯状疱疹ワクチンが認知症を防ぐ? 最新の大規模研究が明かす驚きの研究結果

高齢化が進む現在、認知症は誰にとっても無関係ではない重大な健康課題となっています。2050年までに世界の認知症患者数は1億5,000万人を超えると予測されていますが、いまだに根本的な治療法は確立されていません。そのような中、Nature Communications誌に掲載された最新の研究論文が、大きな注目を集めています1)。研究チームは、米国の医療システム「カイザーパーマネンテ・サザンカリフォルニア」の利用者約6万5,800人を対象に、現在主流となっている「組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス)」の接種状況と、その後の認知症発症率を詳しく追跡調査しました。その結果、2回のワクチン接種を完了した人は、未接種の人と比較して、その後の認知症発症リスクが51%も低いことが明らかになったのです。認知症の予防において、日々の生活習慣の改善に加えて、特定のワクチンがこれほど劇的なリスク低下をもたらすのであれば、画期的と言えるでしょう。なぜ帯状疱疹の予防が「脳」に関係するのか?しかし、そもそもなぜ皮膚の病気が主体となる帯状疱疹のワクチンが、脳の病気である認知症に影響を与えうるのでしょうか。この背景には、帯状疱疹の原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」の特殊な性質が関係していると考えられています。このウイルスは、私たちが子供の頃に「水ぼうそう」として発症した後、体内の神経細胞の中に一生涯潜伏し続けます。そして、加齢や疲労、ストレスなどをきっかけに再び暴れ出し、神経を伝って帯状疱疹を引き起こします。このウイルスが再活性化するプロセスが、実は脳内での微細な炎症や神経細胞のダメージを誘発し、認知症の発症を早める一因になっているのではないかと推測されています。そして今回の研究データも、この仮説を支持するような興味深い傾向を示しています。たとえば認知症リスクの低下はアルツハイマー型認知症だけでなく脳血管性認知症にも共通して見られ、さらには認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)のリスク低下も示唆されています。つまり、ワクチンが特定の認知症に限らず、脳の機能低下全般に対して何らかの保護的な役割を果たしている可能性があるのです。この研究の「追加の価値」これまでにもワクチン接種と認知症リスクの低下を関連づける報告はありましたが、専門家の間では常に一つの大きな疑問が付きまとっていました。それは「自発的にワクチンを打つような人は健康意識が高く、食事や運動にも気を配っているため、もともと認知症になりにくいだけではないか」というバイアスに対する疑問符です。今回の研究が、大きな「追加の価値」を生み出している理由は、このバイアスを慎重な手法で排除した点にあります。研究チームは、帯状疱疹ワクチンを打った人と全く打っていない人を比較するだけでなく、別のワクチン(百日咳や破傷風などを予防するTdapワクチン)を接種したグループとの比較も行いました。分析の結果、帯状疱疹ワクチンの接種者は、別のワクチンを接種した健康意識の高い人たちと比べても、認知症のリスクがさらに27%低いことが判明しました。これにより、個人の健康意識の高さだけでは説明できない、帯状疱疹ワクチン固有の認知症予防効果の可能性がより強固に裏付けられたのです。現状の限界点と私たちが知っておくべきことこのように非常に希望の持てるデータが示されましたが、正しく解釈するためには、研究の「限界点」も知っておく必要があります。まず、これは過去の医療データを振り返って分析した観察研究であり、ワクチンが直接的に認知症を食い止めるメカニズムや因果関係を完全に証明したものではありません。また、認知症は通常、数十年という長い時間をかけて静かに進行する病気ですが、本研究の追跡期間は平均して約3.4年と比較的短いものです。このため、10年後、20年後といった長期的な予防効果が見られるのかについては、さらなる研究が必要です。加えて、医療機関の受診記録に基づいているため、病院を訪れない潜在的な認知症患者のデータが反映されていない点も考慮すべきでしょう。こうした限界はあるものの、今回の研究結果は私たちに前向きなメッセージを届けてくれました。帯状疱疹は50歳を過ぎると発症率が急増し、治癒後も長期間にわたって激しい痛みが続く病気です。この厄介な病気そのものを高率に防ぐというワクチンの本来の目的に揺るぎはありません。それに加えて「将来の脳の健康も守るかもしれない」という副次的メリットがあるのであれば、ワクチン接種を検討するうえでさらに前向きな材料となるのではないでしょうか。参考文献・参考サイト1)Rayens E, et al. Recombinant zoster vaccine is associated with a reduced risk of dementia. Nat Commun. 2026;17:2056.

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心不全患者に季節性血圧変動はどう影響するか

 心不全の患者には予後の改善のためにも血圧を低く保つことが求められる。では、季節により血圧が変動する場合、どのように心不全に影響を与えるのだろうか。この課題に対して、スペインのサン・セシリオ大学病院循環器部門のJesus Gabriel Sanchez-Ramos氏らの研究グループは、スペイン南部で心不全患者の夏季と冬季の血圧値を比較し、これらの変動の臨床的影響を評価した。その結果、心不全患者では夏季に血圧が著しく低下することが判明した。この結果はJournal of Hypertension誌2026年4月1日号に掲載された。夏季は在宅自己血圧測定値が低下する傾向 研究グループは、心不全患者に異なる測定法を用いて夏季と冬季の血圧値を検査・比較し、これらの変動の臨床的影響を評価することを目的に、スペイン南部の施設で検査を実施した。心不全が軽減または改善し、最適な治療を受けている50例の患者を対象に観察的前向き横断研究で実施した。各患者は夏季(6~8月)と冬季(12~2月)に、3日間の在宅自己血圧測定(HBPM)、24時間携帯型血圧測定(ABPM)、診療所での血圧測定により評価され、1年間の追跡調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は64±12歳、76%が男性、平均心拍出率は43%だった。・HBPMでは冬季と比較し、夏季に収縮期血圧(SBP)-7.6mmHg(p<0.001)、拡張期血圧(DBP)-3.2mmHg(p<0.001)、平均血圧(MBP)-4.6mmHg(p<0.001)の低下を示した。・ABPMでは、収縮期血圧(差分-1.5mmHg、p=0.004)、拡張期血圧(差分-2.2mmHg、p=0.001)、心拍数(差分-3bpm、p<0.001)に日中の軽度低下を認めたが、夜間変化はなかった。・診療所の血圧測定では、有意差のない一致した差異が観察された。・夏季には35%が降圧治療を必要としたのに対し、冬季は16%(p=0.006)であり、めまいの傾向がより強かった。・イベントは14%に発生した(夏季~秋季に腎機能悪化2例と失神1例、冬季~春季に心不全増悪3例と非心血管死1例)。 以上の結果から研究グループは、「心不全患者において、夏季は血圧の著しい低下と関連し、これはHBPMによって最もよく検出された。有害事象を予防するためには治療調整と臨床モニタリングが必要である」と結論付けている。

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市中肺炎への抗菌薬、72時間以内の経口剤への切り替えは安全?

 市中肺炎の入院治療において、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えは、入院期間や抗菌薬投与日数の短縮につながることが報告されている。そのため、本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』でも「市中肺炎治療において、症状・検査所見の改善に伴い、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への変更(スイッチ療法)を行うことは推奨されるか」というクリニカルクエスチョンが設定され、推奨は「症状・検査所見の改善が得られればスイッチ療法を行うことを強く推奨する(エビデンスの確実性:B)」となっている1)。 米国・Iowa City Veterans Affairs Health Care SystemのLogan Daniels氏らの研究グループは、実臨床における経口抗菌薬への早期切り替えの実施状況の検討を目的として、米国退役軍人省が運営する124の急性期病院を対象とした調査を実施した。その結果、72時間以内の早期切り替えは約半数の症例で実施されており、切り替えが積極的に行われた施設と積極的ではなかった施設で、転帰に差は認められなかった。このことから、早期切り替えの安全性が改めて示唆された。本報告は、Infection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2026年2月2日号に掲載された。 研究グループは、2018~23年に急性期病院に入院し、入院時に注射用抗菌薬で治療が開始された市中肺炎患者を対象として、後ろ向きコホート研究を実施した。入院後72時間以内に注射用抗菌薬から経口抗菌薬へ切り替えた患者の割合、30日以内の死亡および再入院の複合などを評価した。施設ごとの患者構成の違いを調整するため、各施設における早期切り替えの観察値/期待値(O:E)比を算出した。さらに、このO:E比に基づいて施設を四分位(Q1~Q4)に分類し、30日以内の死亡および再入院の複合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった入院3万1,183件のうち、55.4%(1万7,282件)が72時間以内に経口抗菌薬へ切り替えられた。・早期切り替えが行われた1万7,282件のうち、87.4%(1万5,113件)が3日目までに退院し、12.6%(2,169件)は3日目時点で入院継続中であった。・30日以内の死亡および再入院の複合は、全体で18.1%(5,629件)に認められた。・施設ごとの早期切り替えのO:E比は、Q1群0.78、Q4群1.23であり、施設間で実施状況に差がみられた。・施設ごとの早期切り替え実施の度合い(O:E比の四分位)別にみた場合、30日以内の死亡および再入院の複合に有意差は認められなかった。・3日目まで入院を継続していた患者において、早期切り替えが行われにくい因子として、βラクタム系薬+非定型病原体をカバーする抗菌薬の併用によるエンピリック治療(オッズ比[OR]:0.808、95%信頼区間[CI]:0.725~0.900)、広域抗菌薬によるエンピリック治療(OR:0.657、95%CI:0.594~0.727)、最近の入院(2022年のOR:0.779、95%CI:0.681~0.891、2023年のOR:0.668、95%CI:0.582~0.767)が抽出された。・早期切り替えと関連する因子としては、高齢(OR:1.009、95%CI:1.004~1.013)、フルオロキノロン単独によるエンピリック治療(OR:1.619、95%CI:1.378~1.902)が抽出された。 本研究結果について、著者らは「注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えが積極的に行われた施設でも、転帰の悪化がみられなかったことから、早期切り替えの安全性が示唆された。早期切り替えを推進するために、組織的な取り組みが求められる」とまとめた。

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複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。 本研究では、6つの大規模前向きコホート※の統合データを用いた。対象は上記7がん種の患者で、ベースラインデータは1976~97年に収集した。1週間当たりの余暇時間の中高強度身体活動量をMET・時/週で評価し、診断後少なくとも1年を経過した時点(平均2.8年後)の中高強度身体活動量とがん死亡との関連を解析した。主要アウトカムはがん死亡で、平均追跡期間は10.9年であった。※Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort、Health Professionals Follow-Up Study、NIH-AARP Diet and Health Study、Nurses' Health Study、Nurses' Health Study II、Women's Health Study 主な結果は以下のとおり。・統合解析には、1万7,141例のがん患者が含まれた(平均年齢67歳、女性60%)。多いがん種は膀胱がん(24%)、子宮体がん(22%)、肺がん(18%)であった。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん、卵巣がん患者において、診断後の身体活動レベルが高い群では、身体活動を行っていない群と比較してがん死亡リスクの低下が認められた。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん患者では、推奨量(7.5MET・時/週以上)を下回る身体活動レベルであっても、身体活動を行っていない群と比較して死亡リスクの低下が認められた。・口腔がんおよび直腸がんでは、一部の高い身体活動レベルにおいてがん死亡リスクの低下が示唆された。・腎がんでは、推奨量を満たす群でリスク低下の傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。・診断前後の身体活動の変化を検討した解析では、肺がんおよび直腸がん患者において、診断前後ともに推奨量を満たさなかった群と比較して、診断前は推奨量を満たさなくても診断後に満たした群ではがん死亡リスクが低かった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -肺がん HR:0.58(95%CI:0.47~0.71) -直腸がん HR:0.51(95%CI:0.32~0.83) 研究グループは「本研究は、身体活動量の低下が全身状態の悪化や死期が近いことを反映している逆因果の可能性、アンケートに回答できる健康な患者が対象となっている選択バイアス、喫煙による残余交絡の影響を完全には排除できない」と指摘したうえで、「これらの結果は、がんとともに生きる人々とがんを乗り越えた人々の寿命と全体的な健康のために身体活動を促進することが重要であることを示唆している」とまとめた。

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神経血管老化の予防戦略、農業や園芸が有効な可能性は

 農業または園芸活動は、健康維持や生活習慣病の予防に効果的である可能性のあるシンプルな戦略である。しかし、脳卒中や認知症などの神経血管老化に関連する疾患の発症に対する予防効果は、依然としてよくわかっていなかった。久留米大学の菊池 清志氏らは、定期的な農業または園芸における身体活動(AGPA)の神経血管老化に対する予防効果とその根底にあるメカニズムについて、2つのアプローチを用いて包括的に調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年12月2日号の報告。 男子学生12人(平均年齢:22±1歳)を対象に、管理された条件下で実施した40分間の介入(安静、サイクリング、模擬AGPA)の前後における動脈硬化度、認知機能(フランカーテストおよびストループテスト)、循環血中バイオマーカー(例:プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体、一酸化窒素、脳由来神経栄養因子)を評価する実験研究を行った。また、横断研究を実施し、入院中の高齢者161例(平均年齢:78±5歳、AGPA群:79例、対照群:82例)を登録し、脳卒中の既往、認知機能、MRI所見を評価した。 主な結果は以下のとおり。・実験研究において、模擬AGPAは動脈硬化を減少させ、実行機能を改善し、循環血中のプラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体、一酸化窒素、脳由来神経栄養因子を増加させることが明らかとなった。・脳組織への血流減少および脳卒中の有病率に起因する脳MRIによる大脳白質高信号域は、AGPA群で対照群よりも低く、改訂長谷川式認知症スケールによる認知スコアも高値であった。 著者らは「高齢者における定期的なAGPAは、神経血管老化の遅延マーカーと関連していることが示唆された。AGPAは、一般的な身体活動に関連する効果とAGPAに特異的な効果の両方をもたらす可能性がある。さらに、身体活動単独と同等、あるいはそれ以上の効果が期待できる。したがって、習慣的なAGPAは、神経血管老化の効果的な予防戦略となる可能性がある」と結論付けている。

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高リスク上咽頭がん、camrelizumabの上乗せ・維持療法が有効/BMJ

 導入化学療法後の高リスク上咽頭がん(NPC)患者において、同時化学放射線療法へのPD-1(プログラム細胞死1)阻害薬camrelizumabの上乗せおよび維持療法としてのcamrelizumab投与により、無増悪生存期間(PFS)の延長が認められたことが、中国・中山大学がんセンターのRui You氏らが同国で行った第III相の多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。これまでの2つの第III相試験では、局所進行NPCへの、PD-1阻害薬と導入化学療法+同時化学放射線療法の組み合わせ治療について評価が行われ、1つの試験ではPD-1阻害薬が全過程を通して使用され、もう1つの試験ではPD-1阻害薬は維持療法として用いられていた。BMJ誌2026年2月10日号掲載の報告。主要評価項目はITT集団におけるPFS 研究グループは、高リスクNPC患者における、同時化学放射線療法+camrelizumabおよび維持療法としてのcamrelizumab投与について評価した。 試験は2020年8月~2022年6月21日に、中国の7病院で実施。18~70歳の成人NPC患者のうち、ゲムシタビンとシスプラチンによる導入化学療法を3サイクル受けた後、新たに高リスクと判定された患者(StageIVa、StageII~IIIで病状が安定または進行、あるいはEB[Epstein-Barr]ウイルスDNA検出)を対象とした。 被験者を、放射線療法+シスプラチンベースの同時化学療法を実施する群(標準治療群)または標準治療+3週ごとcamrelizumab(200mg)静脈投与を19サイクル実施する群(放射線療法+2サイクルの同時化学放射線療法への併用+17サイクルの維持療法、camrelizumab群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目はITT集団におけるPFSで、無作為化から再発(局所または遠隔)あるいは全死因死亡までの期間で定義した。副次評価項目は、安全性、全生存期間などとした。36ヵ月PFS率、camrelizumab群83.4%、標準治療群71.3%で有意な差 390例が登録され、camrelizumab群(194例)または標準治療群(196例)に無作為化された。ベースラインでの特性は両群で類似していた。年齢中央値はcamrelizumab群46.0歳(四分位範囲[IQR]:36.8~54.0)、標準治療群45.0歳(35.0~54.0)。集団構成は、女性が107例(27.4%)、男性283例(72.6%)であった。StageIVaの患者の割合は、camrelizumab群73.2%、標準治療群72.4%。また、N3転移はcamrelizumab群41.2%、標準治療群37.8%であった。 追跡期間中央値39.9ヵ月(IQR:36.8~43.4)時点で、PFSはcamrelizumab群が標準治療群よりも有意に改善した(36ヵ月PFS率:83.4%[95%信頼区間[CI]:78.3~88.8]vs.71.3%[65.2~77.9]、層別ハザード比:0.51[95%CI:0.34~0.77]、p=0.001)。 急性および晩期有害事象(Grade3/4)の発現率は、camrelizumab群が50.5%と3.2%、標準治療群が48.7%と3.7%であった。免疫関連有害事象(Grade3/4)は、camrelizumab群19例(10.2%)で報告された。

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持効性注射剤ART、HIV患者の服薬アドヒアランス向上に寄与/NEJM

 服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者において、持効性注射剤カボテグラビル・リルピビリンの月1回投与は、標準的な経口抗レトロウイルス療法(ART)よりもレジメン失敗リスクの低減に関して優れることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAadia I. Rana氏らACTG A5359 LATITUDE Trial Teamによる非盲検無作為化試験の結果で示された。経口薬の服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者における、持効性注射剤ARTの無作為化試験は不足していた。NEJM誌2026年2月26日号掲載の報告。ARTへの順守が不十分なHIV感染者を対象に、持効性注射剤ARTと経口ARTを比較 本試験の対象は、ARTへの順守が不十分(HIV-1 RNA値が持続的に200コピー/mL超または追跡不能)なHIV感染者であった。 被験者は、最長24週間のアドヒアランスサポート、条件付き経済的インセンティブ、および経口ARTによる標準治療を受けた(step1)。step1で、HIV-1 RNA値が200コピー/mL以下であった被験者は、経口導入療法の有無にかかわらず、標準治療を継続する群(標準治療群)または持効性注射剤カボテグラビル・リルピビリンの月1回投与に切り替える群(持効性注射剤ART群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた(step2)。 主要アウトカムはレジメン失敗で、ウイルス学的失敗(HIV-1 RNA測定値が2回連続して200コピー/mL超)またはstep2の期間中における治療中止と定義した。48週までの累積レジメン失敗率、22.8%vs.41.2%で有意な差 2019年3月28日~2024年2月12日に、米国内33施設で適格患者453例がstep1に登録された。年齢中央値は40歳、29%が出生時女性で、63%が黒人だった。14%が注射剤を現在または過去に使用していたことを報告した。 step2にはstep1を完遂した306例が登録され、152例が持効性注射剤ART群に、154例が標準治療群に無作為化された。 追跡期間中央値48週後の事前規定の解析が行われた時点での副次アウトカムにおいて、持効性注射剤ART群の標準治療群に対する優越性が示されたため、step2の無作為化は早期に中止された。 48週までの累積レジメン失敗率は、持効性注射剤ART群22.8%、標準治療群41.2%であった(群間差:-18.4%ポイント、98.4%信頼区間[CI]:-32.4~-4.3、p=0.002)。 有害事象の累積発現率は、持効性注射剤ART群43.5%、標準治療群42.4%であった(群間差:1.1%ポイント、95%CI:-12.7~15.0)。耐性関連変異の発現は、ウイルス学的失敗が確認された各群2例で報告された。

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「肥満症のただしいミカタ川柳」入選作発表/リリー・田辺

 日本イーライリリーと田辺ファーマは、「肥満と肥満症の見方を変え、味方になろう!」を合言葉にマイナビとのコラボレーションで2025年に募集を開始した「肥満症のただしいミカタ川柳」について、3月4日の「世界肥満デー」を前に入選した8作品を発表した。 わが国の肥満人口は2,800万人と推定されている。その中でも「肥満症」は、肥満(BMI25以上)があり、かつ肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を1つ以上有するか、あるいは内臓脂肪蓄積がある場合など関連健康障害の合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されている。治療では、食事療法、運動療法、薬物療法が行われている。その目的は、減量そのものではなく、減量により肥満に関連する健康障害を改善することにあり、合併症の予防や改善を目的としている。 肥満症の発症には、個人の生活習慣のみならず、遺伝やストレス、仕事・生活環境など、さまざまな要因が複合的に関与する。しかし、自分の努力だけでは解決が難しいと言われている中で、本人の努力や生活習慣のみに焦点が当てられ、「自己管理の問題」という誤解や偏見(オベシティ・スティグマ)が存在し、近年、社会的課題となっている。 こうした中、日本イーライリリーと田辺ファーマは、肥満症の正しい理解を促進するため、「その肥満、肥満症かも!」プロジェクトを立ち上げ、肥満症のある人やその周囲の人の肥満症に関する正しい理解を促し、肥満症に対する思い込みや偏見など、さまざまな先入観をなくしていくことで、誰もが生き生きと活躍できる健康的な社会の創造に貢献することを目指し、啓発活動を行っている。肥満症をポジティブな治療へ向かわせる8作【最優秀賞】・肥満症 ミカタ次第で 光差す(増田 正二さん)【優秀賞】・見方変え 味方と治す 肥満症(たけのこキノコさん)・その肥満 「症」がついたら 要治療(もりこさん)【特別賞】・肥満症 知って広がる 理解の輪(Kazuさん)・「治したい」 痩せたいよりも 重みある(あおによしおさん)・脱肥満 コツは恥じずに まず相談(紫月さん)・肥満症 「病」と知って 救われる(風じんさん)・「痩せよう」が 「治そう」になる 診察日(増田 正二さん) 川柳の審査委員長の宮崎 滋 氏(一般社団法人日本肥満症予防協会 理事長)は、「この企画を通して、当事者を含む社会の肥満症に対する理解の輪が広がり、肥満症のある方々が必要な治療にたどりつける環境の構築へとつながることを願っている」と希望を語っている。

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「ピンクノイズ」は睡眠の質を下げる?

 睡眠を促す音として「ピンクノイズ」を聴くことが流行しているが、実はピンクノイズは睡眠中の脳の活動を妨げる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ピンクノイズは広い周波数帯域を含む「ザー」という連続音で、強めの雨音や波の音に似ており、リラックス効果があるとされている。本研究では、ピンクノイズを聴いていた人では夢を見る睡眠段階であるレム睡眠の時間が短くなっていたことが示されたという。米ペンシルベニア大学精神医学睡眠・時間生物学分野のMathias Basner氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に2月2日掲載された。 Basner氏はニュースリリースの中で、「レム睡眠は記憶の定着や感情の調整、脳の発達において重要である。したがって、この結果は、睡眠中にピンクノイズなどの広帯域ノイズを流すことは有害であり、特にレム睡眠の時間が大人よりもはるかに長く、脳がまだ発達段階にある子どもは、その影響を強く受けやすい可能性を示している」と述べている。 人間は睡眠中、深い睡眠(ノンレム睡眠)とレム睡眠を繰り返す。レム睡眠の「レム」は急速眼球運動(rapid eye movement;REM)の略語であり、多くの場合、夢はレム睡眠時に見られる。ノンレム睡眠は、身体の回復や脳内の老廃物の除去に重要である一方、レム睡眠は、記憶の保存や感情の調整といった認知機能において重要な役割を果たしている。このように、ノンレム睡眠とレム睡眠は互いに補完し合うことで、心身ともに回復した状態で目覚める助けとなっている。 今回の研究では、21~41歳の健康な成人25人(平均年齢28.5±5.9歳、男性7人)を対象に、睡眠実験室で連続7晩の睡眠ポリグラフ検査が行われた。いずれの参加者も、睡眠補助としてノイズを利用した経験がなく、睡眠障害の報告もなかった。参加者には航空機や警報音などの騒音下やピンクノイズが流れている中、あるいは耳栓を装着して騒音を遮断した場合など、さまざまな条件下で眠ってもらった。 研究の結果、50dB(中程度の雨音と同程度)のピンクノイズはレム睡眠の時間を18.6分減少させることに関連していることが示された。同様に、騒音への曝露は、ノンレム睡眠の中で最も深い段階である徐波睡眠の時間が一晩当たり23.4分減少することに関連していた。また、50dBのピンクノイズと航空機の騒音が組み合わさると、徐波睡眠とレム睡眠の両方が妨げられ、ノイズのない状態で寝た場合と比べて覚醒している時間が約15分長くなったとBasner氏らは報告している。このような覚醒時間の延長は、騒音のみ、またはピンクノイズのみにさらされた場合では認められなかったという。さらに、参加者自身も、ピンクノイズまたは騒音にさらされると、睡眠が浅く感じられ、目覚める回数が増え、全体的な睡眠の質が悪化したと報告していた。一方、耳栓を使用した場合には、騒音によって引き起こされた徐波睡眠の23.4分の減少のうち16.9分(72%)が回復した。 研究グループは、「これらの結果は、ピンクノイズを搭載した環境音生成マシンや睡眠アプリが広く使われている現状に疑問を投げかけるものだ」と指摘している。Basner氏は、「総合的に見て、この研究結果は特に新生児や幼児に対する広帯域ノイズの使用に警鐘を鳴らすものだ。また、広帯域ノイズによる影響を受けやすい集団や長期間にわたる使用の影響、広帯域ノイズの種類ごとの違い、睡眠に安全な広帯域ノイズレベルについて、さらなる研究が必要であることも示している」と言う。 さらにBasner氏らは、「今回の結果に基づけば、レム睡眠が神経発達において極めて重要な役割を果たす新生児や幼児に対して広帯域ノイズの一般的な使用を控えるべきである可能性が高い。ただし、この結果を確認するため、さらなる研究が必要である」と結論付けている。

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急性単純性虫垂炎、手術か抗菌薬か?APPAC 10年追跡(解説:寺田教彦氏)

 虫垂切除術は、100年以上にわたり虫垂炎における唯一の治療法とされ、現在も虫垂炎の主要な治療法である。一方で、CTで合併症を伴わない急性単純性虫垂炎に限れば、抗菌薬による保存的治療が一定の成績を示す研究が蓄積し、近年のガイドラインでも「特定集団では選択肢になりうる」と整理されるようになった(Podda M, et al. JAMA Surg. 2026 Jan 28. [Epub ahead of print] )。 2026年1月にJAMA誌に掲載された本論文で扱われているAPPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験で、2009年11月から2012年6月に、18歳から60歳までの、CTで合併症がない急性単純性虫垂炎と診断された患者を虫垂切除群と抗菌薬治療群に無作為に割り付けた試験であり、今回は10年追跡解析を報告している。これまでにも5年間の追跡の結果を報告しており(Salminen P, et al. JAMA. 2018;320:1259-1265.)、保存的治療を選択するエビデンスを提供してきたが、今回の10年追跡解析結果により、適切な患者選択を行えば、抗菌薬治療が長期経過でも安全でかつ合理的な選択肢になりうるエビデンスを追加した。 従来、抗菌薬による保存的治療が手術より劣ると懸念されていた点には、(1)保存的治療を選択時は手術を回避できても、その後に手術が必要となるのではないか?(2)手術の遅れにより合併症のリスクが増大するのではないか?(3)虫垂腫瘍の見逃しが起きないか? といった点があっただろう。 本研究結果を基に整理すると、次のようになる。(1)再発と手術回避:抗菌薬治療群の10年間の再発率は37.8%、累積虫垂切除率は44.3%で、再発や虫垂切除は主に2年以内に集中していた。つまり、再発の大半は2年以内に集中しており、半数以上の患者(55.7%)は10年後も手術を回避できていた。(2)安全性:合併症は、腸閉塞や創部感染などを含む合併症発生率が手術群で27.4%、抗菌薬群が8.5%と報告されている。適切な患者選択と経過観察を行えば、再燃がただちに重篤な合併症に直結する懸念は乏しいだろう。(3)腫瘍リスク:抗菌薬群における腫瘍発見率は0.9%(MRI追跡含む)であり、初めから手術を行った群(1.5%)と統計的な差はなかった。発見された腫瘍も低悪性度であり、待機的な手術で完治している。 本結果を日本で適用するに当たり次の2点は検討が必要かもしれない。1点目は、対照群の手術様式とそれに伴う合併症率である。本研究の手術群で合併症発生率が高い理由として、当時行われていた開腹手術に起因したヘルニアや創部感染が関与している可能性がある。現在の日本で行われる腹腔鏡を含めた手術では、合併症率がより低いことが予測され、手術の優位性は本研究より高いかもしれない。2点目は、使用する抗菌薬の種類である。本研究で使用されたertapenemは、広域抗菌薬として知られるカルバペネム系抗菌薬であり、AMRの観点などからは全例での使用は推奨しがたい。また、内服治療で使用されているレボフロキサシンは日本では大腸菌の耐性化が進んでおり、こちらは治療失敗のリスクの点から推奨しにくい場合がある。抗菌薬による治療を選択する場合も、各施設のアンチバイオグラムや患者の全身状態を参考にしながら、日本ではセフメタゾールなどの薬剤が検討されることになるだろう。

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第305回 ホスピス型住宅の最大手、アンビス運営の「医心館」に厚労省と地方厚生局が合同調査を開始、診療報酬大幅見直しで住宅型有料老人ホームは事業モデルの再編迫られる

報告書公表後、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と明言していたアンビスこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いよいよワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まりますね。日本チームのメンバーもさることながら、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、カイル・シュワーバー(フィリーズ)、タリク・スクーバル(タイガース)らが出場する米国チームや、ブラディミール・ゲレーロJr.(フィリーズ)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)らが出場するドミニカ共和国チームも相当な戦力と思われます。問題はテレビ放送がなく、Netflixに入らないと視聴できないこと。調べてみると「広告つきスタンダード」料金で1ヵ月890円です。日本―台湾戦のある金曜から入って、WBC以外の時間はまだ観ていないドラマ、『愛の不時着』『イカゲーム』『全裸監督』『極悪女王』などを観てみようかと考えています。それこそNetflixの思うツボですが。さて今回は、ホスピス型住宅の最大手、アンビス(東京都中央区)が運営する「医心館」について、厚生労働省が2月、健康保険法に基づいて地方厚生局などと合同調査を開始したというニュースを取り上げます。昨年3月の問題発覚後、アンビスの親会社、アンビスホールディングス(東京都中央区、代表取締役CEO柴原 慶一)は、医心館において必要以上の頻回訪問等が行われ診療報酬不正請求があったとの報道に関し、2025年8月に特別調査委員会の報告書を公表し、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と結論付けました。「我々はシロだった」と嘯いていたわけですが、あの自信は一体なんだったのでしょうか。地方厚生局任せではなく厚労省自ら乗り出した理由は「国各地に展開していることや、請求額が多いこと」共同通信は2月21日、「【独自】ホスピス最大手に厚労省合同調査 医心館、訪問看護報酬の不正指摘」と題するニュースを発信しました。「独自」を冠したスクープ記事です。同記事は、「ホスピス型住宅の最大手『医心館』について、入居者への訪問看護で不正・過剰な診療報酬請求が指摘されていたことを受け、厚生労働省が今月、健康保険法に基づき、地方厚生局などと合同調査を始めたことが21日、関係者への取材で分かった」として、「厚労省は今年1月から全国調査を始め、8つの地方厚生局・支局が47都道府県で少なくとも1ヵ所ずつ実施している」とその調査規模を書いています。また、地方厚生局任せではなく厚労省自らも乗り出した理由について、「調査は通常、出先機関の厚生局が行うが、厚労省本省が乗り出して埼玉県内の医心館を対象に関東信越厚生局、県と合同で実施。医心館が全国各地に展開していることや、請求額が多いことが理由とみられる」と分析しています。訪問看護に関する合同調査は、一部の事業者による不正・過剰請求を受け2025年4月に新設された仕組みだそうです。調査は同業のサンウェルズ、ファーストナースなどにも共同通信は、医心館の不正請求について2025年3月23日付の配信記事「【独自】ホスピス最大手で不正か 全国120ヵ所『医心館』」でいち早くスクープ、アンビスホールディングスのグレーな調査結果公表後も、この問題を追ってきたメディアです。調査委員会の報告書公表後、一部メディアの中には、「(アンビス)社内では、独自調査として報道を続けてきた共同通信社に対する訴訟も求める声も高まっているようだ」と、共同通信がまるで完全な”誤報”を放ったかのように書くところもありました。しかし、結果は訴訟どころか厚労省と地方厚生局の合同調査です。いかにアンビスホールディングスの調査委員会の報告書が中途半端で、かつその結果の解釈自体も独善的だったかがわかります。なお、有料老人ホームの経営コンサルティングに長年携わってきたタムラプランニング&オペレーティング社長の田村 明孝氏が、同社のWebサイトに連載しているコラムの2月25日公開分(「アンビス・サンウェルズ・ファーストナース(ヴァティー)などの訪問看護不正事業者に調査の手~緩和ケア(ホスピス)ホーム診療報酬引き下げで経営は窮地に」)などによれば、厚労省の調査はサンウェルズ(金沢市、代表取締役社長・苗代 亮達)、ファーストナース(東京都港区、代表取締役・橋本 真奈歩)などにも入っているとのことです。「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に、厚労省自体も強い不信感「医心館」の不正請求については、本連載でも「第280回 ターミナルケア・ビジネスの危うさ露呈、『医心館』で発覚した『実態ない診療報酬請求』、調査結果の解釈はシロなのかグレーなのか?(前編)」、「第281回 同(後編)」でも取り上げました。グレー、あるいはクロと見られるのに、「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に対し、厚労省自体も強い不信感を抱いていたようで、同省は10月1日、中央社会保険医療協議会の総会で、有料老人ホームなどで訪問看護を過剰に提供する事業者への規制を強化する方針を明らかにしました。また、ホスピス型住宅で不正・過剰請求や入居者の不利益が生じていることに関連して、医療法人社団悠翔会の佐々木 淳理事長と、訪問看護の会社Graceの西村 直之代表取締役が厚労省を訪問、厚労副大臣らに要望書を提出、適正化を訴えるという動きもありました(「第285回 訪問看護と有料老人ホームに規制強化の動き、現場からは『こんなもので本当にホスピス型住宅における過剰なサービス提供にブレーキをかけられるのか』との厳しい声も」参照)。2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがこうした、ホスピス型住宅などにおける訪問看護の不正請求を背景に、2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがかけられることになりました。しばりの主な対象は、末期がん・難病などを対象とした「ホスピス型住宅」「高齢者向け住宅」に併設・隣接する訪問看護ステーションで、同一建物内の入居者に対して頻回に訪問看護を行っているケースです。具体的には、支払い方式が出来高から1日単位で評価する包括払いに変更され、「包括型訪問看護療養費」が導入されます。これまでは、訪問回数を増やすほど報酬が積み上がり、1人当たり月80~90万円に達するケースもありましたが、新制度では1日定額となり、多くの場合、半額程度に収束するとみられています。事業者は包括払いではなく、現行どおりの出来高払いを選択することも可能ですが、出来高払いを選ぶ場合、1回の訪問が20分未満であれば訪問看護基本療養費や各種加算を算定できないなど、短時間・頻回訪問を抑制するルールも導入されます。さらに、同一建物居住者への訪問看護に対して算定する「訪問看護基本療養費(II)」等については、同一建物内の利用者数(2人、3~9人、10~19人、20~49人、50人以上)と、1ヵ月の訪問日数(20日目まで/21日目以降等)によって点数が逓減する仕組みに再編されます。とくに利用者10人以上・高頻度訪問の建物では、21日目以降の評価が低くなるなど、「頻回・大量訪問」の報酬が下がります。住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものがもう限界か末期がん、難病などの患者の受け入れ先として、そのニーズの高まりとともに、やりたい放題の運営で急成長を遂げてきたホスピス型住宅は、事業モデルの根本的な見直しを迫られることになるでしょう。一方で、これまで真面目に運営を行ってきたところも、今改定で大きな打撃を被ることになります。「ホスピス型住宅」に限らず、外部からの訪問看護や訪問介護で成り立ってきた住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものが、もう限界に来ているのかもしれません。前出の田村氏は、連載コラムで「住宅型有料老人ホームは廃止、有料はすべて特定施設に」という提言を行っています。介護保険制度ができて四半世紀、“制度疲労”が激しい有料老人ホームにはこれぐらいの大胆な改革が必要かもしれません。

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カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。ランダム効果ネットワークメタ解析により相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。主要評価項目は、グルコン酸クロルヘキシジン製剤またはポビドンヨード製剤に関連するカテーテル関連血流感染発生率、カテーテル先端コロニー形成率、局所感染率とした。 主な結果は以下のとおり。・16件のRCT(7,803例、カテーテル1万1,985本)が選択基準を満たした。・アルコールベースの製剤は水溶液製剤より一貫して感染率が低く、またイソプロパノールがエタノールより優れていた。・アルコールベースのグルコン酸クロルヘキシジンは、アルコールベースのポビドンヨードより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.70、95%CI:0.45~1.08)、カテーテル先端コロニー形成率(RR:0.42、95%CI:0.37~0.48)、局所感染率(RR:0.40、95%CI:0.23~0.70)が低かった。・高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)は、低濃度グルコン酸クロルヘキシジンより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.31、95%CI:0.19~0.52)およびカテーテル先端コロニー形成率(RR:0.36、95%CI:0.30~0.42)が低かった。・局所的な有害事象はまれであり、アルコールベースの製剤でわずかに多く、グルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードで同程度であった。 著者らは、「これらの結果は、アルコールベースのポビドンヨードと水溶液製剤は、グルコン酸クロルヘキシジンまたはアルコールが使用できない状況に限定すべきであることを示唆する」とまとめている。

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お酢の摂取が多いと肥満予防につながる可能性/藤田医科大

 「酢」の摂取は一般的に健康に良いとされているが、摂取の効果について年齢や性別などでタンパク質やビタミンとどのように関連するのだろうか。このテーマについて、藤田医科大学医学部臨床栄養学の和田 理紗子氏らの研究グループは、酢酸摂取量と年齢・性別との関連を検証した。その結果、酢酸摂取量が多い人は炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向だったことが示唆された。この研究結果はNutrients誌2026年1月19日号に掲載された。お酢の摂取は男性と高齢者で多い傾向 研究グループは、食事記録アプリ「あすけん」で20~69歳の日本人1万2,074人の食事データを収集・分析した。二要因分散分析により、酢酸摂取量に対する年齢、性別、およびそれらの交互作用の影響を評価した。また、多重線形回帰分析により、酢酸摂取量と栄養素摂取量との関連性を検討した。モデル1では年齢と性別を調整し、モデル2ではさらに総エネルギー摂取量を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象は男性3,038人(47.8±11.9歳)、女性9,036人(42.4±11.8歳)だった。・酢酸摂取量は男性および高齢者層で高値を示した(性別:F=11.0、p<0.001/年齢:F=9.1、p<0.001)。・モデル1では、酢酸摂取量はほとんどの栄養素と正の相関を示した。・モデル2では、炭水化物、糖類、でんぷん質、飽和脂肪酸、酪酸と負の関連が認められた(すべてp<0.05)。 この結果から研究グループは、「酢酸摂取量が多い人は、そうでない人と比べ同等のエネルギー摂取量であっても、炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向にあった。これらの結果は、酢酸を含む食事がでんぷん質と飽和脂肪酸の摂取を減少させ、肥満予防に寄与する可能性を示唆している」と結論付けている。

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アルツハイマー病「p-tau217血液検査」が高精度に病理検出、日本人で確認

 アルツハイマー病(AD)の確定診断には、これまで高額なPET検査や身体的負担の大きい脳脊髄液検査が必要であり、より簡便な血液バイオマーカーの活用が期待されている。新潟大学の春日 健作氏らの研究グループは、日本人を対象とした多施設共同研究「J-ADNI」の臨床検体の解析により、血漿中のリン酸化タウ217(p-tau217)が、アミロイド病理の検出および将来のAD発症予測において、きわめて高い精度を持つことを明らかにした。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年2月6日号に掲載。 本研究では、認知機能正常者、軽度認知障害(MCI)、軽度ADからなるJ-ADNI参加者172人の血漿および髄液検体を用いた。血漿中のp-tau217をルミパルス法とSimoa HD-Xで測定し、アミロイド病理の有無を定義する基準として髄液中のAβ42/Aβ40比を用いて、血漿バイオマーカーの診断精度を曲線下面積(AUC)で評価した。また、最長36ヵ月の追跡調査を行い、MCIから認知症への転換予測能を検討した。 主な結果は以下のとおり。・血漿p-tau217およびp-tau217/Aβ42比は、いずれもAβ42/Aβ40比やGFAPよりも有意に高いAUCを示した(DeLong検定、p<0.05)。・アミロイド病理予測の診断精度(AUC)は、Simoa p-tau217では0.978(95%信頼区間[CI]:0.959~0.998)、ルミパルスp-tau217では0.981(95%CI:0.961~1.000)、ルミパルスp-tau217/Aβ42では0.983(95%CI:0.965~1.000)であり、いずれもきわめて高い精度を示した。・Youden指数に基づく単一のカットオフ値により、p-tau217とp-tau217/Aβ42は90%以上の感度と特異度を同時に達成した。また、米国食品医薬品局(FDA)が承認したp-tau217/Aβ42の2つのカットオフ値を用いるモデルも、日本人集団に適用可能であることが確認された。・血漿p-tau217が高値の群は、低値の群と比較して、3年間での認知症への進行リスクが有意に高く(p<0.001)、ルミパルスp-tau217測定では約5倍(調整ハザード比[HR]:4.717)の転換リスクを示した。・血漿p-tau217レベルは、BMI、腎機能(eGFR)、HDL-Cの影響を受けることが判明した。 著者らは、血漿p-tau217が日本の臨床においても、ADの正確な診断や予後予測、さらには抗アミロイドβ抗体療法の適応判断を支援する優れたバイオマーカーになりうると結論付けている。一方で、BMIや腎機能、HDL-Cなどの要因が測定値に影響を与える可能性があるため、実臨床での解釈にはこれらの背景因子を考慮する必要があると指摘している。

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うつ病予防に有効な魚の摂取量は?

 韓国・慶熙大学のEunje Kim氏らは、魚類摂取とうつ病および妊娠関連うつ病のリスクとの関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年12月18日号の報告。 2023年11月まで公表された論文をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。抽出された5,074件の論文のうち、35件の観察研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いて、効果推定値を相対リスク(RR)と対応する95%信頼区間(CI)として統合した。さらに、用量反応解析および層別サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・魚類摂取とうつ病リスクの間に有意な逆相関が認められた(RR:0.79、95%CI:0.73~0.86)。・妊娠関連うつ病についても同様の関連が認められた(RR:0.78、95%CI:0.69~0.89)。・層別解析では、魚類摂取量が68.4g/日以上の研究においてのみ、うつ病リスクが統計的に有意に低下することが示された(RR:0.75、95%CI:0.67~0.84)。・一方、魚類摂取量が少ない研究(68.4g/日未満)では有意な関連は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.69~1.01)。これは、閾値効果の可能性を示唆している。・さらに、用量反応解析では、魚類摂取量が15g/日増加するごとにうつ病リスクが6%低下することが示唆された。 著者らは「魚類摂取がうつ病予防のための調整可能な因子であること、そして68.4g/日以上を閾値とする可能性が示された。本結果は、食事ガイドラインや公衆衛生戦略への示唆となりうるであろう」としている。

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BMJ誌が「事前登録なし」を理由に却下した臨床試験のその後/BMJ

 臨床試験の事前登録は、研究の透明性を高め、出版バイアスや選択的な結果報告を防止するために不可欠な手続きとされる。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、2005年7月、ICMJE加盟誌への論文の掲載資格を得るには、最初の参加者の登録時またはそれ以前に、承認された登録機関(WHO国際臨床試験登録プラットフォームの18の主要登録機関、ClinicalTrials.gov、UMIN臨床試験登録システムなど)に試験を登録することを義務付けているが、実際には順守が不十分な試験が散見されるという。スペイン・カタルーニャ国際大学のDavid Blanco氏らは、ICMJE承認の登録機関への「事前登録なし」を理由に、BMJ誌が却下した試験の多くが後に、高インパクトのジャーナルに「ICMJE勧告への準拠」を主張して(多くの場合、登録不備の開示なしに)掲載されている実態を明らかにした。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。事前登録なしの可能性が低い6つの条件 研究グループは、ICMJEの定義に基づき臨床試験の結果を報告し、編集者により事前登録されていない可能性があると指摘されたBMJ誌投稿論文287件のうち239件(2019~23年)と、同期間に投稿されたすべての臨床試験の無作為抽出リストから選択したICMJE承認の登録機関に事前登録された239件の試験について調査した(筆頭著者は、スペイン・科学・イノベーション省の助成を受けている)。 ICMJE承認の登録機関への事前登録なしの可能性が低い条件として、以下の6つが挙げられた。 (1)より多い症例数(101~500例vs.1~100例、オッズ比[OR]:0.43[95%信頼区間[CI]:0.22~0.84]、p=0.01)、(2)責任著者がオセアニア出身(欧州出身者との比較、OR:0.35[95%CI:0.14~0.82]、p=0.02)、(3)著者数が多い(10人vs.5人、OR:0.71[95%CI:0.59~0.87]、p=0.004)、(4)臨床試験報告に関する統合基準(CONSORT)への言及(あるvs.ない、OR:0.22[95%CI:0.06~0.67]、p=0.03)、(5)より最近の投稿(2021~23年vs.2019~20年、OR:0.63[95%CI:0.42~0.95]、p<0.001)、(6)資金提供の有無(例:非営利の資金提供vs.資金提供なしまたは情報なし、OR:0.20[95%CI:0.09~0.41]、p<0.001)。 一方、責任著者がアジアに拠点を置いている場合では、事前登録なしの可能性が高かった(欧州を拠点とする著者との比較、OR:1.75[95%CI:1.07~2.89]、p=0.03)。事前登録なしの試験の88%がその後に公表 2019~21年に投稿され、ICMJE承認の登録機関に事前登録されていなかった176件の試験のうち、146件(83%)が事後登録を行い(遅延期間中央値193日)、23件(13%)が未登録のままで、7件(4%)はICMJEが承認していない登録機関に登録されていた。 多くの試験(155件[88%])がその後公表された。このうち138件(89%)はインパクトファクターを有するジャーナル(中央値5.39)に掲載され、96件(62%)はICMJE勧告の順守を表明するジャーナルに掲載された。 BMJ誌への初回投稿から公表までの期間中央値は12ヵ月であった。公表時に、登録不備を明示的に開示していたのは約6分の1のみだった。投稿時に事前登録について回答した72人の著者のうち、60人(83%)が誤って順守を主張していた。編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言 本研究の結果は、ICMJEの勧告を標榜するだけでは、事前登録の徹底には不十分であることを示唆している。著者は、「登録慣行と報告の透明性の向上のためには、編集審査の強化、登録基準の明確化、著者の意識改革が必要である」とし、編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言を行っている。 たとえば、ジャーナルが著者に求めるべき必須要件として、(1)登録機関への正確な提出日と承認日、(2)最初の参加者の登録日、(3)登録機関の名称と登録番号、(4)登録情報へのハイパーリンク、(5)ICMJE承認の登録機関への事前登録の有無を挙げ、「出版時には、これらの項目のすべてを、抄録と本文の両方に明記すべきである」としている。

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脂肪性肝疾患の診断基準、心代謝系・女性の飲酒量について決定/日本消化器病学会・日本肝臓学会

 日本消化器病学会と日本肝臓学会は、今年4月発刊予定の「MASLD診療ガイドライン」に先行し、国内で利用する脂肪性肝疾患(SLD)の診断基準を各会員に向けて公表した(2026年2月2日付)。 2023年9月、欧米3学会*が合同で、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へ、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと病名と分類法を変更。これを受け、両学会は2024年8月にNAFLD/NASHに代わる新たな分類法での日本語病名を公表していた。ただしこの時点では、心代謝系危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF)の基準と女性の飲酒量に関しては、わが国におけるメタボリック症候群ないしアルコール性肝障害の基準とは異なる部分があったため、CMRFの基準と女性の飲酒量に関する診断基準は明らかにされていなかった。*欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH) MASLDなどのSLDに関する診断基準は以下のとおり。<心代謝系基準(cardiometabolic risk criteria)>1.肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲>94cm(男)、>80cm(女)2.血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療3.血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服4.中性脂肪≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服5.HDL≦40mg/dL(男)、≦50mg/dL(女)or 脂質異常症治療薬内服<MetALDの飲酒量(エタノール換算)>男:30~60g/日(210~420g/週)女:20~50g/日(140~350g/週) なお、MASLD診療ガイドラインの改訂点は、2026年4月16~18日に福井県と石川県で開催される第112回日本消化器病学会総会のパネルディスカッション16「MASLD診療ガイドライン」で11の演題が用意され、ガイドライン改訂の経緯、治療フローチャートの概念・定義、診断などが具体的に紹介される予定だ。

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減塩食品の普及が国民の心臓や脳を守る

 加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。 一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClemence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。 2023年までに同国で製造されるパンの大半は新しい基準を満たしており、その影響もあり、フランス国民の1日の食塩摂取量は約350mg減少したとのことだ。その結果、心臓関連死は年間約1,186人減少したと推定され、心臓病や脳卒中による入院の減少という変化も現れている。 論文の筆頭著者であるGrave氏は、「この減塩対策は、フランス国民にほとんど気づかれなかった。われわれの研究結果は、そのようなわずかな変化にもかかわらず、このような対策が公衆衛生に大きな影響を与える可能性のあることを示している」と総括。また、「このアプローチは、個人の行動変容に依存しないという点で特に力強い。個人の行動変容を引き起こしてそれを持続させることはしばしば困難だが、この手法であれば、より健康的な食環境が自然に創出される」と解説している。 二つ目の論文は英オックスフォード大学のLauren Bandy氏らによるもので、同国の減塩施策の推進によって、20年間で約10万件の心臓病と2万5,000件の脳卒中を予防できると予測している。同国では2024年までに、さまざまな加工食品に含まれている食塩を削減する数値目標を設定していた。この施策の対象食品には、パン、チーズ、肉、スナックなどの食料品84品目に加え、ハンバーガー、カレー、ピザなどのテイクアウト食品24品目が含まれている。 Bandy氏らの試算によると、この減塩施策が完全に達成された場合、英国民の1日当たりの食塩摂取量は平均6,100mgから4,900mgへと、約18%減少すると考えられ、その結果、前記のように心臓病や脳卒中の発症が大きく減る可能性があるという。論文の筆頭著者である同氏は、「ほかの国と同様に英国でも心血管疾患が主要な死亡原因である。英国の食品会社が塩分削減目標を完全に達成することにより、英国民は食習慣を変える必要もなく、心血管疾患と死亡リスクを大きく抑制でき、医療費を削減できるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「食品業界は減塩に関してまだ多くの進歩を遂げる必要があることも明らかであり、改善の余地は大いにある」と付け加えている。

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