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イングランドのプライマリケアにおける前立腺がん診断前の前立腺特異抗原(PSA)検査の受検状況は、患者によって大きく異なることが明らかにされた。複数回受検した患者の中には推奨より頻回であった患者も多く、過剰検査の懸念があり、また記録上症状なしの患者やPSA値が低い患者にもPSA再検査が行われていたという。英国・オックスフォード大学のKiana K. Collins氏らが、イングランドのプライマリケアにおけるPSA検査の利用実態を明らかにする目的で実施したオープンコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「過剰検査のリスクを低減しながら患者への最大限の利益を確保するため、エビデンスに基づく適切なPSA再検査間隔を決定するための研究が喫緊に必要である」とまとめている。BMJ誌2025年10月8日号掲載の報告。プライマリケアでPSA検査を受けている約1,023万6,000例のデータを解析 研究グループは、Clinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumから得られた電子カルテに日常的に収集されているデータを、がん登録(National Cancer Registration and Analysis Service:NCRAS)、病院エピソード統計(Hospital Episodes Statistics:HES)、および国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の死亡登録データをリンクさせ、2000~18年に一般診療所1,442施設に登録され、少なくとも1年の追跡期間があり、研究開始前に前立腺がんの診断を受けておらず、研究期間中に18歳超であった男性患者1,023万5,805例について解析した。 主要評価項目は、年齢標準化PSA検査率を、集団ベースの経時的傾向と年間変化率を用いて解析した。混合効果負の二項回帰モデルにより個々の患者のPSA検査率比を、また、線形混合効果モデルにより個々の患者のPSA再検査間隔の長さに関連する因子を検討した。すべての結果は、地域、貧困状況、年齢、民族、前立腺がんの家族歴、症状の有無およびPSA値別に解析した。複数回PSA検査を受けた患者のうち、70%以上は基準値超過が一度もなし 152万1,116例が少なくとも1回PSA検査を受け、全体で合計383万5,440回のPSA検査が行われた。これらの患者のうち48.4%(73万5,750例)は複数回の検査を受け、72.8%(53万5,990例)は年齢別紹介基準値を超えるPSA値を示すことはなかった。 再検査間隔の中央値は12.6ヵ月(四分位範囲:6.2~27.5)であった。 検査率は、地域、貧困状況、民族、家族歴、年齢、PSA値、症状によって異なっていた。検査を受けた患者では、年齢が高い、白人以外の民族、前立腺がんの家族歴あり、または過去にPSA値上昇があった場合に再検査間隔が短くなった。 地域や貧困状況によって検査率に大きなばらつきがあるにもかかわらず、これらのグループ間で再検査間隔の長さは同程度であった。