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英論文を作成する【タイパ時代のAI英語革命】第19回

論文作成とAIの可能性英語で医学論文を執筆することは、長年、日本人医療従事者にとっての大きな壁でした。上司に何度もチェックを依頼したり、英語の校正サービスを利用したりと、多くの時間や費用をかけてきた方も少なくないでしょう。しかし、近年の生成AIの進化により、英語力に自信がなくても英語論文を執筆できる時代が到来しました。このセクションでは、AIを活用して英語論文を作成するための基本から応用までを、具体的に解説します。書くことにおけるAI活用範囲AIは、文章作成支援において最もその力を発揮します。AIは「書く」作業において、ほかの言語スキル(読む・聞く・話す)以上に人間の負担を代替してくれる超強力なツールです。私自身も、日常業務におけるメールや連絡文のほとんどをAIに支援してもらっています。当面の間、私たちの生活からAIがなくなることは考えにくく、それに伴って医療英語の学習の優先順位は以下のように変化していると考えられます。話す・聞く>>>>読む>>>>書く極論ですが、ただでさえ忙しい医療者としては、「書く」ことはすべてAIに任せて、「話す」「聞く」に自分のスキルアップのリソースを集中するほうが効率的でしょう。論文執筆において、AIは以下のことを可能にします。研究アイデアの言語化支援現在の臨床経験や知識から、研究テーマや仮説を英語で具体的に表現する手助け。文献検索の補助(第7回「ChatGPTでPubMedの英語論文検索!」を参照)リサーチの方向性を整理したり、キーワードを構造化したりすることで、効率的な文献収集を支援。研究設計の支援(本章では割愛)Methods、対象集団、統計解析の計画などの言語化。英語の文章作成支援日本語で作成した草稿を英語に翻訳し、英語文の語調や文法を整える。引用スタイル各ジャーナルが指定する形式(APA、AMA、Vancouverスタイルなど)の自動変換を行う。以上のように、研究のアイデア生成から論文を完成させるまでの、あらゆる場面でAIは力になってくれます。ただし、以下の点には留意が必要です。AI使用に関する倫理的配慮と開示義務AIを論文作成に使用する際には、倫理的な観点から注意が必要です。2023年以降、AIの使用についてガイドラインを設けるジャーナルが急増しました。ジャーナルによってはAIの使用自体を禁止しているところもありますが、多くのジャーナルでは使用を認めつつ、「どのような場面で使用したか」を明記することが求めています。論文投稿前には、必ず各ジャーナルの投稿規定を確認しましょう。では、なぜAI使用の明記が求められるようになったのでしょうか。その背景には以下のような理由があります。・不正防止AIは過去の大量の情報に基づいて文章を生成します。そのため、生成された内容をそのまま用いると、意図せず他者の論文内容と似てしまう、または引用元を誤認するなどのリスクがあります。・責任の所在過去にはChatGPTを共著者として記載した論文が、大きな議論を呼んだこともあります。医学研究では、患者データや治療に関する情報が正確であることが絶対条件です。AIには倫理的責任を持つことができないため、最終的な内容については、人間の著者が責任を負う必要があります。・AIハルシネーション本コラムの第1の回でも詳しく取り上げましたが、AIには常にハルシネーションの問題が付きまといます。ありもしないことを事実のように述べたり、存在しない文献を引用したりといったことが今でも起こっています。以上の理由からAIの使用についてガイドラインが設けられるようになったわけですが、AIの力を借りて論文を執筆する場合は、通常、Manuscriptの最後のセクション(AcknowledgementsやDisclosureなど)に使用内容を明記するのが一般的です。以下は、私が実際の論文で使用した文例です。Generative AI was used solely to assist with grammar correction in the manuscript. No content generation or technical analysis was performed using AI.(生成AIは、本原稿の文法修正支援のみに使用しております。内容の生成や技術的な分析にはAIを使用しておりません)AIを用いて生成した論文内容を人間の修正なく使用することを禁止するジャーナルが多いため、AIのサポートを得つつも、あくまでも全体の構成や内容に関しては人間が作成していることを示す必要があります。このように、AIを適切に活用しつつも倫理性と透明性を確保することが、今後の論文作成においてきわめて重要です。アイデアの言語化に「RTFフレームワーク」を使うこのコラムは「医療英語」がメインテーマではあるのですが、研究論文の執筆において最も困難な工程の1つが「最初の一歩」(研究のテーマ決め)ですので、日本語・英語どちらで執筆するかにかかわらず、一旦こちらにも触れたいと思います。医療現場で多忙な日々を送る医療従事者にとって、頭の中にある漠然としたクリニカル・クエスチョンや仮説を言語化する作業は簡単ではありません。仮説や研究の方向性は頭の中にあっても、それをいきなり論文形式にすることに難しさを感じる方も少なくないでしょう。このようなとき、ChatGPTは研究者の頭の中にある漠然としたアイデアを、論理的かつ構造的に整理してくれます。とくに優れているのは、相手の意図を読み取り、自然な表現に置き換える力です。たとえば、以下のようなプロンプトをChatGPTに入力することで、具体的な研究課題を構成する手助けになります。研究テーマは一例ですので、自分のテーマに応じて適宜変更してください。プロンプト例あなたは医療従事者で、研究テーマを検討しています。「診療の中で、糖尿病患者のHbA1cが有酸素運動によって改善するケースをよく見ています」これを研究したいと考えています。この背景を基に、以下を挙げてください:-学術的に意義がありそうな研究課題(問い)-それを実際に検証できる研究テーマ(観察研究・介入研究など複数のアプローチ)-学術論文に使えそうな英語での研究タイトル案出力は整理されたリスト形式でお願いします。プロンプトを作る際には、ユーザーが誰で(医療従事者)、何を求めていて(研究テーマの整理)、どのように出力してほしいか(リスト形式で)を明確に伝えることで、より精度の高いアウトプットが得られます。このプロンプト手法は英語圏でよく利用されていて「RTFフレームワーク」と呼ばれています。R:Role(役割、あなたは誰か)例1あなたは英語論文を専門とする編集者です。例2あなたは米国で働く内科医です。T:Task(仕事、どんなことをお願いするのか)例1以下の日本語の文章を英語論文のAbstract風に翻訳してください。例2以下の研究テーマの方法を考えてください。F:Format(出力形式、どのように出力してほしいか)例1箇条書きで提示してください。例2300語以内で書いてください。この3つをプロンプト内に含めるだけでアウトプットの精度がぐっと高まるので、論文アイデア生成にかかわらず、AIに依頼するときは常に意識しましょう。次回は、実際にAIを使って文章をどのように英語にし、文章構成と推敲させるのかを詳しく解説します。

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第333回 藍色光で近視予防?

室内光には乏しくて、日光には豊富な波長の藍色光(indigo light)の近視予防効果が、ヒトに似た眼を持つ動物での検討で示されました1-3)。今や世界の28億人ほどが近視を患い、2050年には48億人ほどに増えると予想されています。近視は小児期に眼球の前後が本来の球状を超えて長くなりすぎ、眼の後方で光を感知する網膜の手前に光の焦点が来てしまうことで生じます。そのせいで遠くのものが不鮮明になります。近視はたいてい幼少期に始まって思春期に進行します。眼鏡やコンタクトレンズが必要になるだけならまだしも、高度の近視は網膜剥離、緑内障、黄斑変性などの失明を招きうる事態へとやがて進展する恐れがあります。小児の近視増加の原因解明の取り組みで2つのことが明らかになっています。その1つは屋外でより多くの時間を過ごすことは近視を防ぐらしいということです。もう1つはその逆で、屋内でより長く過ごすとどうやら近視になりやすいようです。屋内光に足りない要素を補うべく、赤色光を小児の眼に当てる治療の効果が無作為化試験で示されています4)。それらの試験で赤色光は眼球の伸長を減らす効果を示していますが、予防効果はないようです。それに、安全性の懸念があります。霊長類に近い小型哺乳類のツパイを使った今回の新たな研究によると、赤色光とは違って藍色の光こそ近視を予防する効果があるようです。ツパイの眼は構造や特徴がヒトに似通います。それに、ヒトと同じように夜間に眠って昼間の視力を必要とします。先立つマウスの検討で、波長360~400nmの紫色光が網膜の光感知タンパク質のOPN5を刺激して近視を防ぎうることが示されています。一方、今回の新たな研究で、ツパイの眼のレンズはヒトと同様に成熟するにつれて波長400nmに満たない光をあまり通さないようになることが判明しました。そこでより長い波長を試したところ、ツパイのOPN5は現代の室内光に乏しく、自然光により豊富な波長419~446nmの藍色光で活性化することが突き止められました。ツパイの室内環境での光に藍色光をより多く含めると、凹レンズ眼鏡(minus-lens wear)が誘導する近視を完全に防げました。藍色光の範囲外の紫や青色の波長の効果は完全ではなく部分的でした。今回の報告の責任著者のシンシナティ大学のRichard Lang氏を一員とするLumenarosは、教室の光を日光により似せる手段に取り組んでいます3)。もし効果があるなら、藍色が豊富な室内光の採用は小児の近視を生じ難くする安全で手広く実行できる手段となりそうです。一方、筆頭著者のアラバマ大学のRafael Grytz氏が設立したElectric Indigoは、もっと直接的な手段に取り組んでいます。それは藍色光を放つ眼鏡の開発5)です。宿題をしているときや朝ごはんを食べているときなどにその眼鏡をかけることで、子供たちの眼に藍色光をしばし届けることがやがて可能になるかもしれません3)。まだヒトに試す段階に至っておらず、臨床試験で効果や安全性を検証する必要があります。参考1)Grytz R, et al. Cell Rep Med.2026 Aug 18. [Epub ahead of print]2)Restoring a missing slice ofsunshine to indoor light may help prevent myopia / Eurekalert3)Could indigo light preventnearsightedness in children? / Science4)Bullimore MA, et al. InvestOphthalmol Vis Sci. 2025;66:39.5)Myopia and Indigo Light: GrytzPushes Boundaries in Vision Research / University of Alabama

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日本の心不全診療、2013年から転帰の改善状況は?(JROADHF)/Eur Heart J

心不全(HF)診療では薬物療法や介入、退院後管理が進歩している一方、実臨床での診療内容の変化と患者転帰への影響は十分に明らかになっていない。米国・マサチューセッツ工科大学の遠山 岳詩氏らは、日本の2つの大規模HFレジストリを比較し、HF診療と転帰の変化を検討した。その結果、ガイドライン推奨治療や患者教育の実施率が増加し、1年死亡およびHF再入院はいずれも低下していた。本結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月8日号に掲載された。本研究は、2013年のJROADHF(1万3,238例)と2019~21年のJROADHF-NEXT(4,016例)を対象に、1:1の傾向スコアマッチングを行い、各コホートの患者転帰を比較した。比較対象は2013年コホートと2019~21年コホートで、診療内容としてレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、心臓リハビリテーション、栄養指導などの実施状況を評価した。主な評価項目は1年死亡およびHF再入院で、転帰改善に関連する因子も解析された。主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後の解析対象は、2013年コホート2,972例、2019~21年コホート2,972例であった。・マッチング後、RAS阻害薬の使用割合は2013年コホート70.9%、2019~21年コホート73.1%、β遮断薬はそれぞれ74.9%、80.8%であり、いずれも2019~21年コホートで高かった。・MRAの使用割合は、2013年コホート54.2%、2019~21年コホート61.1%であった。・非薬物療法・患者教育では、心臓リハビリテーションの実施割合が43.5%から88.8%へ、栄養指導が2.9%から56.1%へ増加していた。・2019~21年コホートでは2013年コホートと比較して、1年死亡率が13.5%から9.9%へ低下し、相対的に26.7%低下した。1年HF再入院率は28.0%から13.4%へ低下し、相対的に52.1%低下した(いずれもp<0.001)。・死亡リスクの低下は、RAS阻害薬(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.64~0.80、p<0.001)およびβ遮断薬(HR:0.85、95%CI:0.75~0.96、p=0.012)による薬物療法と関連していた。・患者教育では、栄養指導が死亡リスク低下と関連していた(HR:0.76、95%CI:0.64~0.89、p=0.001)。・HF再入院は、コホート効果が最も強い予測因子であり、2019~21年コホートでリスクが低かった(subdistribution HR:0.49、95%CI:0.43~0.57、p<0.001)。著者らは、「2013年から2019~21年にかけて、日本のHF患者の長期転帰は改善し、ガイドライン推奨治療は生存ベネフィットと関連していた」とする一方、「HF再入院の大幅な低下は、薬物療法のみならず退院後ケアや医療提供体制の変化を反映した可能性がある。本研究はレジストリに基づく観察研究であり、残余交絡や時代背景の影響を除外できず、因果関係の解釈には注意が必要」とまとめている。

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研修医のメンタルヘルス、医師との結婚で良好か

 医師の婚姻状況はウェルビーイングやキャリア選択と関連する可能性があるが、結婚を含むライフステージと若手医師のウェルビーイングやキャリア選択との関係については、これまで十分に検討されていない。そこで、長崎 一哉氏(藤田医科大学)、西崎 祐史氏(順天堂大学)らの研究グループは、日本の卒後2年目研修医を対象に、婚姻状況と心理的ウェルビーイング、志望診療科との関連を全国横断調査で検討した。その結果、婚姻、とくに配偶者が医師であることは、抑うつ症状の少なさおよび仕事満足度の高さと関連していた一方、診療科選択との明確な関連は認められなかった。本研究結果は、Academic Medicine誌オンライン版2026年7月1日号に掲載された。 本研究では、2023年1月に基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を受験した2年目研修医を対象に、結婚の有無および結婚相手の職業と、抑うつ症状、バーンアウト、仕事満足度などのウェルビーイング指標、ジェンダー役割観、診療科選択との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は卒後2年目研修医2,721人で、平均年齢は27.7歳、女性は879人(32.3%)であった。・全体の既婚率は20.2%で、既婚者のうち結婚相手が医師であった割合は51.2%であった。・未婚、既婚(医師と結婚)、既婚(医師以外と結婚)の3群を比較したところ、既婚(医師と結婚)群では、未婚群と比べて抑うつ症状が少なく(17.7%vs.28.2%)、仕事満足度が高かった。・診療科選択については、結婚状況との有意な関連は認められなかった。・ジェンダー役割観については、女性研修医、とくに医師と結婚している女性研修医で、伝統的な性別役割分担に否定的な傾向が認められた。 本研究結果は、若手医師のメンタルヘルスを考えるうえで、婚姻の有無だけでなく、配偶者の職業などライフステージに関わる背景にも目を向ける意義を示している。また、こうした知見は、若手医師が結婚や家族形成を含めた将来のキャリアを考える際の支援や教育にも有用な情報となりうるほか、ライフイベントとキャリア形成の両立を考えるうえでの一助となる可能性がある。

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敵意・興奮を伴う統合失調症に対するブレクスピプラゾールの有効性

 統合失調症患者は頻繁に敵意や興奮を経験し、それらの症状が機能低下を招くことがある。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症患者の機能に対するブレクスピプラゾールの影響を、敵意および興奮症状との関連において検討するため、同薬剤の短期および長期試験の事後解析を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2026年7月20日号の報告。 短期データは、2011年7月~2014年12月に世界各地で実施された、急性期統合失調症(DSM-IV-TR基準)の成人入院患者を対象としたブレクスピプラゾール錠の6週間ランダム化二重盲検プラセボ対照試験の3件のデータを統合した。長期データは、2011年9月~2016年2月に実施された52週間の非盲検継続試験の2件のデータを統合した。機能評価には、個人的・社会的機能遂行度(PSP)尺度を用いた。ただし、敵意や興奮の影響を直接受けないようにするため、妨害的・攻撃的行動の項目を除外して評価を行った。対象者は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の敵意項目および興奮項目に基づく症状の有無により層別化した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、対象者1,385例中692例(50.0%)に敵意が、784例(56.6%)に興奮が認められた。・6週時点におけるPSPスコアの変化量は、プラセボと比較し、ブレクスピプラゾール2~4mg/日投与群で良好な結果を示した。・PSPスコアの変化量の最小二乗平均差は、敵意あり群で2.82(95%信頼区間[CI]:0.58~5.07、p=0.014)、敵意なし群で3.42(95%CI:1.37~5.48、p=0.001)、興奮あり群で4.05(95%CI:2.01~6.10、p<0.001)と有意な差が認められた。しかし、興奮なし群では最小二乗平均差は2.09(95%CI:-0.18~4.36、p=0.071)であり、有意な差は認められなかった。・解析対象408例におけるPSPスコアは、58週間にわたり改善し安定して推移していた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、敵意や興奮の症状を伴う成人統合失調症患者において、機能の改善をもたらす可能性がある」としている。

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大腸がん検診60%目標、2028年達成は困難か

日本では大腸がん検診の受診率向上が公衆衛生上の課題であり、2028年までに受診率60%を達成する目標が掲げられている。一方で、都道府県や性別による受診率の差が目標達成に及ぼす影響は十分に定量化されていない。そこで、一橋大学のHasan Jamil氏らは、2013~22年の全国データを用いて、2028年に大腸がん検診受診率が60%目標に到達する可能性を都道府県別に予測した。その結果、全国の受診率は2028年時点で60%に届かず、多くの都道府県で目標達成確率が低いと推定された。本研究結果は、International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年7月27日号に掲載された。本研究では、国民生活基礎調査から2013~22年の全47都道府県における40~69歳の大腸がん検診受診率を抽出した。性別で層別化したベイズ線形回帰モデルを、ロジット変換した受診率に適用し、2028年までの都道府県別受診率を予測した。2028年時点で受診率60%以上となる事後確率が80%以上の場合に、目標達成の可能性が高い都道府県と定義した。主な評価項目は、大腸がん検診受診率、2028年までに60%へ到達する確率、受診率の年間変化、目標達成年などとした。主な結果は以下のとおり。・2028年の全国受診率は51.9%(95%信用区間[CrI]:44.9~58.8)と予測され、60%目標を8.1ポイント下回る見込みであった。・47都道府県中40都道府県(85%)では、2028年までに60%目標を達成する事後確率が20%未満であった。・47都道府県中14都道府県では、2028年の受診率が50%未満にとどまると予測された。・男女計で60%目標の達成確率が80%以上であったのは山形県のみで、達成確率は98.8%であった。・男性では、山形県、山梨県、宮城県の3県で達成確率が80%以上であったのに対し、女性では80%以上に達したのは1県のみであった。・男性の達成確率は47都道府県中41都道府県で女性を上回っていた。60%目標の達成確率における男女差の中央値は8.0ポイントであった。・女性は男性と比較して、60%目標の達成時期が中央値で6年遅れると予測された。本研究結果について著者らは、2013~22年の傾向に基づくと、日本における大腸がん検診受診率60%の達成は2042年になると予測され、2028年の目標から10年以上遅れる見込みであるとした。また、女性は男性より達成が遅れるとし、目標達成には都道府県ごと、かつ性別に配慮した介入を加速する必要があるとしている。

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双極性障害の個別化治療の意思決定に、EBI-BDツールが有用/BMJ

 双極性障害は、平均余命の短縮や治療順守率の低さと関連しており、その一因として薬剤の忍容性の低さや患者の意思決定への関与が不十分であることが挙げられるが、共有意思決定の改善に寄与する、エビデンスに基づく意思決定支援ツールは限られているという。スペイン・バルセロナ大学のMichele De Prisco氏らは、U-REACH(living umbrella review, evaluation, analysis, and communication hub)計画の枠組みに基づいて開発されたEBI-BD(evidence based interventions for bipolar disorder)のツールが、双極性障害の個別化治療の意思決定に有益であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月11日号で報告された。プラットフォーム構築のためのリビングアンブレラレビュー 研究グループは、双極性障害における全年齢層および気分(mood)の各段階における治療戦略のエビデンスの確実性を系統的に評価し、共有意思決定を推進するためのオープンアクセス型ウェブプラットフォームを構築する目的で、利用可能なすべてのメタ解析のエビデンスを継続的に統合するリビングアンブレラレビュー(living umbrella review)を実施した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 2024年11月19日の時点で医学データベースに登録された関連文献を検索した。対象は、薬物療法、栄養補助食品療法、心理社会的介入、脳刺激療法、概日リズムに基づく治療に関する無作為化比較試験のネットワークメタ解析またはペアワイズメタ解析を含む系統的レビューであった。77研究の解析結果をウェブ上で公開 77件の研究が選定基準を満たした(ネットワークメタ解析21件、ペアワイズメタ解析56件)。これには、116種の個別の治療法(薬物療法74種、脳刺激療法18種、栄養補助食品療法13種、心理社会的介入8種、概日リズムに基づく治療3種)が、単剤療法、増強療法(施行中の治療レジメンへの追加の介入)、併用療法(2つの異なる介入を同時に開始)として含まれ、さらに5つの対照介入が行われた。 これらの研究は133項目のアウトカム(有効性アウトカム45項目、安全性アウトカム88項目)を評価しており、2,510件のメタ解析が行われた。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)に基づくエビデンスの確実性は、「高」が236件、「中」が827件、「低」が986件、「非常に低」が461件だった。 研究グループは、情報共有ハブとしてEBI-BDプラットフォームを開発し、選好に基づく評価ツール(12の介入と17の安全性アウトカム)を含め、解析結果のすべてを無料で公開している(https://ebibd-database.org)。 今回の解析結果の一部を下記に示す。複数のアウトカム(主要、副次)に関して、プラセボまたは通常治療に比べ優れた有効性を示した介入は、病相によって異なった。 著者は、「U-REACHフレームワークは、複雑なエビデンスを統合するだけでなく、臨床医による実践的な意思決定を推進し、EBI-BDプラットフォームに組み込まれたデジタルツールは、臨床医と患者間のエビデンスに基づく共有意思決定の支援に有用である」「このリビングレビューは、双極性障害の臨床ケアを継続的に改善するための基盤となり、新たなエビデンスが現れた際には迅速に適応することが可能である」としている。・抑うつエピソードに有効な介入 成人:cariprazine、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン(3つのアウトカムに関して有効)、divalproexまたはバルプロ酸、fluoxetine、ラモトリギン、lumateperone、オランザピンとfluoxetineの併用、ケタミン(増強療法)(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:ルラシドン(2つのアウトカムに関して有効)、オランザピンとfluoxetineの併用(3つのアウトカムに関して有効)。・躁病エピソードに有効な介入 成人:アリピプラゾール、アセナピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン(3つのアウトカムに関して有効)、カルバマゼピン、divalproexまたはバルプロ酸、ziprasidone、クエチアピン(増強療法)、リスペリドン(増強療法)(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:アリピプラゾール、アセナピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン(2つのアウトカムに関して有効)。・維持期に有効な介入 成人:集団心理教育(3つのアウトカムに関して有効)、アリピプラゾール(長時間作用型注射薬も含む)、アセナピン、divalproexまたはバルプロ酸、リチウム、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンの長時間作用型注射薬(2つのアウトカムに関して有効)。 小児・青年:有効な介入はない。・複数の病相を通じて有効な介入 成人:divalproexまたはバルプロ酸、オランザピン(増強療法としても)、クエチアピン(増強療法としても)(以上、3つの病相で有効)、cariprazine(2つの病相[抑うつ、躁病]で有効)、認知行動療法(増強療法)、ラモトリギン(以上、2つの病相[抑うつ、維持期]で有効)、アリピプラゾール(増強療法および長時間作用型注射薬としても)、アセナピン、リチウム、パリペリドン、リスペリドン(増強療法および長時間作用型注射薬としても)(以上、2つの病相[躁病、維持期]で有効)。 小児・青年:有効な介入はない。

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閉塞性睡眠時無呼吸、記憶力低下・認知症リスクと関連

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、本人の記憶機能低下や認知症リスクと関連する可能性が示された。モナシュ大学(オーストラリア)のGabriel Abdelmessih氏らは、2,795人の40~70歳の成人を対象とする研究を行い、OSAと、記憶力低下や認知症リスクとの関連性を調査した。その詳細がアルツハイマー病協会発行の「Alzheimer's & Dementia」に6月29日付で掲載された。 研究の結果、OSAを有する参加者は、OSAがない参加者と比べて記憶機能が低下していた。特に、治療を受けていないOSA患者では記憶成績の低下が認められた一方、治療を受けているOSA患者ではOSAがない人との間に有意な差は認められなかった。また、OSAを有する参加者では、認知症リスクを評価するCAIDEスコアも高かった。 OSAは睡眠中に気道が狭くなることで、いびきや呼吸障害を引き起こす病気である。この疾患が認知機能や認知症リスクと関連する可能性は、これまでにも指摘されていた。OSAは脳への酸素の供給を阻害し、睡眠サイクルを乱すことで、脳機能に影響を与える可能性があるためだ。しかし、OSA患者は肥満、高血圧、高コレステロール血症など、認知症のほかのリスク因子を併せ持っていることが多いため、OSA自体が認知機能や記憶力にどの程度影響を及ぼしているのかを把握することが困難であった。 今回の研究では、それらのリスク因子を考慮に入れることで、その疑問の答えに近づいた。年齢、性別、教育歴、OSA治療の影響を調整した解析では、OSAは記憶成績の低下と関連していた。一方、血管・生活習慣などの認知症リスク因子を含む修正版CAIDEリスクスコアを追加調整すると、OSAと記憶機能との関連は有意ではなくなった。また、OSAを有する参加者では、OSAがない参加者と比べてCAIDEリスクスコアが高かった。 研究者らはまた、アルツハイマー病のリスクを高めることが知られている遺伝子であるAPOE ε4アレルを考慮した検討も行った。その結果、OSAのみを有する人、またはOSAとAPOE ε4の両方を有する人では、OSAもAPOE ε4も持たない人と比べてCAIDEスコアが高かった。一方、APOE ε4のみを有する人では、有意な差は認められなかった。 論文の筆頭著者であるAbdelmessih氏は、「OSAはよくある病気で、治療可能であるにもかかわらず、診断されていない患者も少なくない。また、認知症のリスクとの関連はあまり考慮されていない。われわれの研究結果は、中年期にOSAを発見して適切に治療・管理することが、脳の長期的な健康を支える重要な機会となる可能性を示唆している」と述べている。なお、OSAは睡眠検査によって診断され、治療には、減量や生活習慣の改善のほか、持続陽圧呼吸療法(CPAP)やマウスピースなどが用いられる。

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変形性股関節症に対する運動、期待ほどの効果は得られない?

 変形性股関節症による痛みを改善する運動の効果は、医師や理学療法士が期待するほど大きくない可能性がある。新たなエビデンスレビューで、運動により、変形性股関節症の痛みが軽減し、身体機能が改善するものの、患者が日常生活の中で効果を実感できるレベルには達しない可能性が示された。シドニー大学(オーストラリア)のMichelle Hall氏らによるこの研究結果は、7月23日付で「Cochrane Database of Systematic Reviews」に掲載された。 Hall氏は、「運動は変形性股関節症の主要な治療法として推奨されており、今回のレビューはその推奨を覆すものではない。ただしこの結果は、平均的な効果は限定的である可能性を患者に正直に伝える必要があること、また、どのような人がどの種類の運動によって最も恩恵を受けるかを理解するためには、より適切に設計された臨床試験が必要であることを示唆してはいる」と述べている。 研究チームは、53~74歳の1,368人(女性63%)を対象とした18件のランダム化比較試験の結果を統合して解析した。検討された運動プログラムには、筋力トレーニング、有酸素運動、ヨガなどの心身に働きかける運動が含まれており、介入期間には2週間から52週間までの幅があった。 解析の結果、無治療群または通常ケア群と比較して、運動群では痛みが100点満点の評価で約7点低下し(平均差−7.19点、95%信頼区間〔CI〕−10.70~−3.68、9件の研究、中程度の確実性のエビデンス)、身体機能はわずかに改善する可能性が示された(平均差−8.79点、95%CI −12.00~−5.41、9件の研究、中程度の確実性のエビデンス)。ただし、この改善は臨床的に意味があるレベル(痛みで12点以上、関節機能で13点以上の改善)には達していなかった。運動は生活の質(QOL)についてもほとんど、あるいは全く影響を及ぼさない可能性が高く(中程度の確実性のエビデンス)、患者報告による治療の成功についてもほとんど影響しない可能性がある(確実性の低いエビデンス)ことが示された。 研究グループは、対象とした研究では、参加者自身が痛みや身体機能を評価していたため、運動の効果が実際よりも大きく見積もられた可能性があることも指摘している。 それでも研究グループは、運動には痛みの軽減以外にも幅広い健康上のメリットがあり、害を及ぼす可能性は低いと指摘する。その上で、「変形性股関節症に対する運動の現実的な効果を明確にするためには、より大規模で質の高い研究が必要である」と結論付けている。 共著者の1人であるメルボルン大学(オーストラリア)の理学療法研究員であるBelinda Lawford氏は、「現時点では、十分なエビデンスが存在するとは言えない。変形性股関節症の痛みに苦しむ人にとって、運動は重要な治療選択肢の一つとなる場合もある。しかし、患者に誤った期待を抱かせたくはない。今後の研究では、より規模が大きくて質の高い試験を実施し、どの種類の運動が、どのような人に対して効果を発揮するのかを明らかにすることが重要である」と述べている。

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日本人2型糖尿病へのGLP-1薬、MACE・死亡リスクへの影響は?

 日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究において、2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の使用は、心血管イベントにおいてほかの血糖降下薬との有意差は認められなかったが、全死因死亡率はGLP-1薬群で有意に低く、これらの知見は残余交絡を反映している可能性があることを、千葉大学の越坂 理也氏らが示した。研究成果はDiabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年8月11日号で発表された。日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究 本研究は、約190万人規模の日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究である。2型糖尿病患者のうち、2014~21年にGLP-1薬を新規処方された患者をGLP-1薬群、ほかの血糖降下薬を新規開始した患者を対照群とした。評価項目は心血管・脳血管イベント、全死因死亡などとした。解析には説明変数を用いたロジスティック回帰分析を実施し、群間で最近傍法による傾向スコアマッチングを行った。新規薬剤開始からイベント発生までの期間をCox比例ハザードモデルで解析した。全死因死亡率はGLP-1薬群が有意に低い 適格患者46万9,461例のうち、GLP-1薬群2,401例、対照群5万3,946例が抽出された。傾向スコアマッチング後、各群2,147例が解析対象となり、追跡期間の中央値は12ヵ月であった。複合心血管イベント(3-point MACE)の発生率はGLP-1薬群7.08%(152例)、対照群8.20%(176例)であり、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.920、95%信頼区間[CI]:0.740~1.143、p=0.450)。一方、全死因死亡率はGLP-1薬群5.36%(115例)、対照群7.36%(158例)であり、GLP-1薬群で有意に低かった(HR:0.776、95%CI:0.610~0.987、p=0.039)。 これらの結果より、研究グループは「GLP-1薬は3-point MACEとの関連性は認められなかったが、全死因死亡率の低下を示した。これらの結果は、残余交絡の影響を反映している可能性がある」とまとめた。

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第309回 ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省

<先週の動き> 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほか 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省厚生労働省は、医療従事者の処遇改善を支援するベースアップ評価料などについて、医療機関が届け出た施設基準と実際の診療報酬請求の内容に齟齬が生じているケースが散見されるとして、8月診療分以降の請求前に改めて施設基準を確認するよう求めた。対象は外来・在宅ベースアップ評価料I・II、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料I・II、調剤ベースアップ評価料、看護職員処遇改善評価料など。2026年度診療報酬改定では、医療スタッフのさらなる賃上げを目的に、ベースアップ評価料の対象職種拡大や点数引き上げが行われた。外来・在宅ベースアップ評価料Iでは継続的に賃上げに取り組む医療機関をより高く評価し、入院ベースアップ評価料でも従来から賃上げを実施してきた医療機関を手厚く評価する仕組みが導入された。これに伴い、改定前から評価料を算定していた医療機関でも、6月以降に継続算定する場合は6月1日までに改めて施設基準を届け出る必要があった。しかし、6・7月診療分の請求では、届け出で受理された評価項目と実際に請求した評価料の種類や点数が一致しない例が確認された。厚労省は、改定対応が多岐にわたったことを踏まえ、この2ヵ月分については審査支払機関で特段の調整を行っていた。その一方で、8月診療分以降については、4月24日付の事務連絡や施設基準の届け出早見表を参照し、適切に請求するよう強く要請している。病院では、過去の賃上げ実績や入院ベースアップ評価料の選択状況によって、算定点数、入院料減算の有無、提出すべき様式が異なる。厚労省は、特設サイトでも必要書類や手続きを示しており、医療機関に対し自院で受理された施設基準とレセプト請求内容が一致しているか、請求前に改めて確認するよう呼びかけている。 参考 1) ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について(厚労省) 2) 令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について(同) 3) ベア評価料、診療報酬請求の内容に疑義が散見 受理された施設基準「改めて確認を」厚労省(CB news) 4) ベースアップ評価料の施設基準届出と請求との齟齬が頻発、8月分以降の請求に備え改めて自院の施設基準確認し、適切な請求を(Gem Med) 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連全国保険医団体連合会(保団連)は、厚生労働省が進めるOTC類似薬の保険給付見直しについて、患者への配慮措置が限定的で、慢性疾患の治療継続を妨げる恐れがあるとして制度の撤回・見直しを求めた。8月6~13日に実施した緊急調査では9,641人が回答し、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性便秘症、高尿酸血症など慢性疾患で対象薬の処方を受ける患者が約85%を占めた。厚労省は、市販薬と成分などが類似する医療用医薬品77成分、約1,100品目について、通常の窓口負担とは別に追加料金を求める制度を検討している。がんや指定難病患者、長期使用が医学的に必要な場合などは配慮対象とする方針だが、原疾患と関連しない症状や季節性の花粉症などは対象外となるケースが多い。保団連調査では花粉症・アレルギー性鼻炎患者の42.1%がいずれの配慮類型にも該当しなかった。保団連は、アトピー性皮膚炎で症状に応じてステロイド外用薬を変更するケースや、喘息で抗アレルギー薬を断続的に併用する場合など、治療自体は継続していても個々の薬剤が「通年使用」とならず配慮対象から外れる点を問題視。慢性腰痛や関節リウマチなどで使用する湿布薬も長期使用であっても原則対象外となるため、患者負担が大きくなると訴えた。保団連の試算では、制度による医療費削減は年間約900億円、保険料軽減効果は加入者1人当たり年約400円にとどまる一方で、花粉症で内服薬、点眼薬、点鼻薬を併用すれば月約1,500円の負担増になる可能性がある。また、医師が過去の治療歴や処方期間を確認して配慮対象を判定する必要があり、診療・薬局業務の複雑化や患者とのトラブルも懸念される。保団連は「配慮する必要のない患者という線引きに医学的根拠はない」とし、必要な医療へのアクセスを損なわない制度設計を求めている。 参考 1) OTC類似薬の配慮措置に関する疾患、処方薬ごとの影響(保団連) 2) OTC類似薬の保険給付見直し、配慮措置の適用は限定的-保団連が9,641人の患者調査結果公表(日本医事新報) 3) 「働いて身を削り、次は健康を…」花粉症薬など“保険除外”で年数万円の負担増も?現役世代の家計圧迫に医師・患者ら撤回要望(弁護士JPニュース) 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省最大震度7を記録した2026(令和8)年熊本地震の発生から3週間が経過したが、医療・介護施設への影響が続いている。厚生労働省によると、8月18日午前10時時点で熊本県内の18医療機関が断水しており、このうち14施設が八代市に集中している。被災医療機関はピーク時に92施設、断水は88施設に上った。県内ではDMAT15隊、DPAT12隊、災害支援ナース、JMAT、JRATなどが支援を継続している。高齢者施設でも960施設が建物被害や停電、断水、ガス停止などの影響を受けている。厚労省は、被災者への介護保険上の特例も相次いで示している。災害救助法が適用された10市10町1村の被保険者について、要介護・要支援認定の有効期間を市町村判断で最大12ヵ月延長でき、また、介護サービス事業者や介護施設などの指定更新についても、一定の権利の有効期限を2027年1月27日まで延長する特例を設けた。介護サービス利用料については、住宅の全半壊や床上浸水、主たる生計維持者の死亡・失職など一定の被害を受けた場合、市町村判断で自己負担1~3割を猶予・免除できる。すでに支払った利用料についても申請により還付が可能で、11月までの利用分などが対象となる。被保険者証を紛失した場合も氏名や生年月日などの確認でサービス利用を認める。さらに、公費負担医療の新規申請では、災害で申請が遅れた被災者について、医師の診断書に記載された日を受給開始日として取り扱える特例を設けた。厚労省は、被災者が医療・介護サービスや行政上の権利を失わないよう、柔軟な運用を自治体や関係機関に求めている。 参考 1) 熊本地震から3週間、18医療機関で断水(MEDIFAX) 2) 公費負担医療の新規申請、被災者は「診断日」を適用熊本地震で厚労省(同) 3) 令和8年熊本地震で被災した介護保険サービス利用者の利用料(1-3割負担)の猶予・免除、詳細な考え方提示-厚労省(Gem Med) 4) 令和8年熊本地震、要介護認定等の有効期間延長、介護サービス事業者等の指定更新の特例を認める-厚労省(同) 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病全国自治体病院協議会(全自病)がまとめた2025年度病院事業決算状況調査で、有効回答494病院の84%に当たる413病院が経常赤字となり、赤字額は計2,180億円に上った。前年度から赤字病院の割合は5ポイント改善したものの、依然として8割超が赤字で、自治体病院の厳しい経営環境が続いている。医業収益は前年度比3.3%増えた一方で、医業費用も3.0%増加。職員給与費は3.6%、材料費は5.3%増え、物価高と賃上げが収支を圧迫した。病床規模別では200床以上300床未満の病院がすべて経常赤字となった。大規模病院では改善がみられたが、500床以上でも8割超が赤字だった。経常収支の改善には、2025年度補正予算による1床当たり19万5,000円の賃上げ・物価高支援や救急受け入れ実績に応じた加算、国・都道府県の補助金、自治体からの繰入金増加が寄与した。その一方で、医業収支はなお大幅な赤字で、補助金がなければ経営はさらに厳しかったと全自病は推測している。全自病と全国自治体病院開設者協議会は8月19日、厚生労働省と総務省に緊急要望書を提出した。自治体病院は救急や不採算医療など地域医療の「最後の砦」を担う一方で、中東情勢悪化や円安を背景に医療用手袋、カテーテル、燃料などの価格上昇が続くとして、医療物資の安定確保や物価高対策、診療報酬の中間年改定を含む財政措置を要請。2026年度人事院勧告の月給3.51%引き上げが、ベースアップ評価料で想定した賃上げ水準を上回ることも経営悪化要因になると訴えた。地方交付税や特別交付税の拡充、公立病院の再編・統合、建て替え支援の強化も求めた。病院事業債の交付税措置対象となる建築単価上限は1平方メートル85万円に引き上げられたが、資材高騰でなお不足しているという。一方、四病院団体協議会は21日、2027年度税制改正に向け、社会保険診療報酬の消費税非課税制度を見直し、軽減税率やゼロ税率を含む課税取引へ転換するよう厚労省に要望した。仕入れや設備投資時に生じる控除対象外消費税が、病院建て替えや医療DX投資を妨げているとして、還付制度の創設を含む抜本的な制度見直しを要求。高額医療機器の特別償却制度の延長・対象拡大も求めており、病院団体は診療報酬、財政支援、税制の三面から経営基盤の立て直しを政府に迫っている。 参考 1) 自治体病院の8割が経常赤字 25年度、計2,000億円のマイナス続く(日経新聞) 2) 地域医療の砦となる自治体病院を守るため、物価高騰対応、期中の診療報酬改定含めた財政措置等の拡充等を要望-全自病(Gem Med) 3) 診療報酬の中間年改定含む対応を要望、2団体 物価高騰踏まえ 全自病など(CB news) 4) 控除対象外消費税の問題、抜本解決に向け重点要望病院を課税取引に 四病協(同) 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほかイヌを飼っている高齢者は、イヌを飼った経験がない高齢者に比べ、要介護認知症を発症するリスクが48%低い可能性があることが、国立環境研究所、東京都健康長寿医療センター、東京大学などの研究チームによる大規模疫学研究でわかった。研究成果は国際学術誌“International Journal of Environmental Research and Public Health”に掲載された。研究では、自宅で暮らす高齢者1万1,224人を「現在イヌを飼育」「過去に飼育」「飼育経験なし」の3群に分け、7.5年間追跡。要介護認知症の発症や死亡との関連を調べた。逆因果や把握できない交絡因子の影響を抑えるため操作変数解析を用いた結果、現在イヌを飼育している人の要介護認知症発症リスクは、飼育経験がない人と比べて48%低く、オッズ比は0.52だった。イヌとの暮らしには、散歩による身体活動の増加や外出機会の確保、地域住民との交流、精神的健康の維持などが伴うことから、研究チームはこうした健康行動が認知症発症の抑制に寄与している可能性があるとみている。さらに、高齢者のイヌ飼育率が13.4%まで増加すると仮定して予算への影響を試算したところ、イヌの飼育に伴う家計支出を含む社会全体の追加費用は4年間で約4兆6,300億円となる一方で、公的な医療・介護費は約5,920億円削減される可能性が示された。研究チームは今後、イヌそのものの効果に加え、散歩や地域交流などイヌとの生活を通じて生まれる行動に着目し、認知症予防や健康寿命延伸策への活用を検討する。ただし今回の結果は疫学研究に基づくもので、イヌを飼えば認知症を防げると直接証明したものではない。 参考 1) 「イヌを飼育している高齢者」は「飼育したことがない高齢者」に比べ認知症発症リスクが48%低い-長寿医療研究センター(Gem Med) 2) イヌと暮らす高齢者が増えると4年間で約5,920億円の公的支出削減-約1万1,200名の地域在住高齢者を対象とした7.5年間の大規模疫学研究-(東京都健康長寿医療センター) 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県8月13日夜から14日にかけての記録的な千葉豪雨で、県内の病院や高齢者施設に浸水被害が相次ぎ、医療・介護提供体制への影響が長期化している。厚生労働省によると、25の医療施設と66の高齢者施設が被災し、発生から1週間以上経っても全面再開できない施設が残っている。八千代市のセントマーガレット病院では、地下機械室が浸水し、揚水ポンプやボイラーが故障。断水のため46人の透析患者が転院した。給水車を活用して18日から新規の長期入院患者の受け入れを再開したものの、透析センターの復旧は途上にあり、医療機器の滅菌にも通常より手間のかかる対応を強いられている。四街道市の介護老人保健施設でも給水ポンプや送迎車両が被災し、通所リハビリや入浴サービスを休止している。千葉大学医学部附属病院では地下の排水設備が冠水し、医療器具の洗浄装置が使用不能となった。19日には全手術を中止し、その後も手術件数を通常の半分程度に制限している。これを受け、東京科学大学病院は21日から院内の器材洗浄設備を提供。夜間の空き時間を利用してロボット支援手術器具などを洗浄し、1日約40件分の手術器材を処理できる体制を整えた。この支援は千葉大病院の設備復旧まで数週間続く見通し。今回の豪雨では、ハザードマップの浸水想定区域外にある医療機関でも被害が発生した。厚労省は「かつてなかった災害」とし、止水板の設置や地下設備の防水対策など、医療機関の水害対策強化が必要としている。 参考 1) 病院・高齢者施設 再開遠く 千葉豪雨 ボイラー故障透析患者転院(読売新聞) 2) 豪雨被災で手術制限中の千葉大病院へ、東京科学大病院が器材洗浄施設を提供…異例の国立大病院間支援(同) 3) 被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し東京科学大(NHK)

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「Frailだから無理」と諦めない高齢者の放射線治療~がん腫・病期×全身状態でみつける、最適アプローチ【高齢者がん治療 虎の巻】第12回

講師紹介<今回のPoint>有害事象の発生や重症度は、照射部位、照射法、照射野の大きさに依存する高齢者では、放射線治療による有害事象の発生頻度、重症度が高くなる可能性がある線量集中性の高い強度変調放射線治療(IMRT)や定位照射などの高精度放射線治療は、高齢者に対しても有用である放射線治療施行の絶対条件は、照射体位を15分以上保持できることである(照射法により異なる)放射線治療の目的および照射法放射線治療の目的は、根治から緩和まで多岐にわたります。一般的に緩和照射で必要となる線量は根治照射よりも低く、有害事象も軽微なことが多いです(図1)。(図1)放射線治療の目的画像を拡大する従来は、三次元のCT情報に基づき多方向から照射する「三次元原体照射(3DCRT、図2a)」が主に行われていました。しかし、一方向からのビームに強弱をつけられないため、病巣周囲の正常臓器に対する線量低減には限界がありました。一方、強度を変調した線束を用いて多方向から集光的に照射する「強度変調放射線治療(IMRT、図2b)」では、病巣への線量を担保しつつ正常臓器への線量を低減可能です。また「定位照射(図2c)」は、小さな領域に対し細いビームを用いてピンポイントに集中的な照射を行うため、高い局所制御率と低い有害事象頻度が得られます。IMRTや定位照射は「高精度放射線治療」に分類され臨床的な有用性が認められていますが、3DCRT(照射時間:約10~20分)と比較して厳密な位置精度が求められるため、照射時間が長くなる点に注意が必要です(IMRT:約20~30分、定位照射:約30分~1時間)。(図2)照射法画像を拡大する放射線治療を施行する上での絶対条件放射線治療室は漏洩防止のため、迷路構造(図3a)や厚い金属扉(図3b)で遮蔽されており、照射時には寝台が1.0~1.5mの高さまで上昇します(図3c)。そのため、モニターなどで患者の異変や危険を察知してからスタッフが駆け付けるまでに数十秒を要し、万が一の転落時には重症化リスクが高まります。したがって、放射線治療を安全に施行するための絶対条件は「寝台上で一定時間の安静を保持できること」です(基本的には安定性の高い仰臥位で照射しますが、有害事象対策や疼痛・呼吸苦などに配慮してほかの体位を選択することもあります)。(図3)放射線治療室の構造画像を拡大する高齢がん患者における放射線治療の適応標準治療は主に健常成人を対象に確立されています。これまでさまざまながん腫における(化学)放射線治療の有効性を検証した臨床試験のサブグループ解析では、「若年者と比べ高齢者で生存効果が劣る」とする報告1,2)と「同等である」とする報告3,4)があり、一貫した見解は得られていません。そのため、高齢患者に対して標準治療を選択すべきか否かは、個々の症例に応じた検討が必要です。放射線治療の有害事象は、照射部位・照射野の広さ・総線量に依存しますが、糖尿病や動脈硬化、感染症などの併存疾患が存在すると、発生頻度の上昇や重症化を招くおそれがあります5,6)。加えて高齢がん患者では、健常成人と比べ、有害事象の(1)発生頻度が高まる、(2)重症化しやすいという特徴があります。したがって、標準治療に伴うリスクを患者ごとに想定した上で、忍容性を判断しなければなりません。たとえば、直腸がんに対する術前化学放射線療法を検証した臨床試験において、70歳以上の高齢者では若年者と比較して、治療の中断率(4.2% vs.1.4%、p=0.03)およびGrade3~4の非血液毒性発生率(21.1% vs.13.6%、p=0.03)が有意に高く、手術施行率も有意に低い結果でした(95.8% vs.99.0%、p=0.008)7)。また、本邦の多施設試験においても、患者背景から治療強度の減弱を選択した症例の89%で併用化学療法の変更(減量・中止)がなされており、放射線治療の変更(照射野縮小や線量低減など)は少数であったものの、予定された放射線治療自体の完遂率は98%と良好でした8)。一般に放射線治療単独と比べ、化学放射線療法では有害事象が発生しやすくなるため、化学療法を併用することのベネフィットとリスクのバランスを見極めることが重要です。高齢がん患者に対する放射線治療の実際線量集中性に優れた定位照射や粒子線治療について、高齢がん患者に対する有効性を後方視的に検討した報告では、良好な成績が示されています。原発性肺・肝がんを有する高齢者への定位照射では、9割程度の局所制御率を得ながら、Grade3以上の有害事象は0~4.7%程度と報告されており、高い有効性と安全性が示されています9-11)。また転移性脳腫瘍患者を対象に「全脳照射+定位照射」と「定位照射単独」を比較した臨床試験では、全生存に有意差はないものの定位照射単独群のほうが照射3ヵ月後の認知機能低下が有意に少なく、年齢層別解析でも一貫した結果が得られました12)。同様に、高齢の肝細胞がん・食道がん・原発性肺がんに対する粒子線治療でも、低い有害事象頻度と高い局所制御率が報告されています13-15)。さらに後方視的解析ではありますが、高齢膀胱がんに対する根治的放射線治療において3DCRTとIMRTを比較した結果、照射法による全生存や局所再発に有意差はないもののIMRT群で急性期有害事象が有意に減少しました(22% vs.2%、p=0.02)16)。高齢がん患者において3DCRTとIMRTを直接比較したランダム化比較試験は限られているものの、「有害事象が発生しやすく重症化しやすい」という高齢者の特性を踏まえると、正常組織への影響を低減できる高精度放射線治療の有用性は若年者と同様に高いと考えられます。高齢がん患者の治療選択においては、照射時間中の安静保持を含めた忍容性や、選択する治療法の損益など、多角的な視点からアプローチを検討することが望まれます。最後に脆弱性を有する高齢がん患者において、重篤な有害事象の発生により、治療効果が打ち消される治療法の選択は回避しなければなりません。しかし、放射線治療の目的は緩和から根治までと幅が広く、患者への負担および有害事象の発生頻度や重症度は照射部位や照射法、総線量などに依存します。そのため、Frailな高齢がん患者に対して、根治的放射線治療の適応がない場合にも緩和照射を行うことは日常臨床において多く経験します。また、定位照射などを用いた根治照射を安全に施行できることもあります。「Frailだから放射線治療は無理」と考えてしまうと、本来受けるべき放射線治療による恩恵を逃してしまう可能性があります。日常臨床で治療選択に悩まれたら、ぜひ放射線治療医にご相談ください。1)Kish JA, et al. J Geritr Oncol. 2021;12:937-944.2)Stinchcombe TE, et al. Cancer. 2019;125:382-390. 3)Pignon T, et al. Eur J Cancer. 1996;32A:2075-2081.4)Schild SE, et al. J Clin Oncol. 2003;21:3201-3206.5)Darby SC, et al. N Eng J Med. 2013;368:987-998.6)Johnson S, et al. Rep Pract Oncol Radiother. 2026;31:175-185.7)François E, et al. Radiother Oncol. 2014;110:144-149. 8)Murofushi KN, et al. Clin Oncol. 2025;45:103894.9)Cassidy RJ, et al. Clin Lung Cancer. 2017;18:551-558.10)Tamura Y, et al. Cancers (Basel). 2026;18:1809. 11)Watanabe K, et al. Radiat Oncol. 2021;16:39. 12)Brown PD, et al. JAMA. 2016;316:401-409.13)Hata M, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007;69:805-812.14)Ono T, et al. Thorac Cancer. 2020;11:2170-2177.15)Ohnishi K, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2020;106:82-89.16)Lutkenhaus LJ, et al. Radiat Oncol. 2016;11:45.

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「確認が増える=非効率」は本当か?【医師のパフォーマンス向上術】第3回

「確認が増える=非効率」は本当か?「確認項目がまた増えた」「チェックリストの入力に時間がかかる」「昔はもっとシンプルに診療できた」――。医療安全のために新しいルールやプロトコルが導入されるたび、このように感じた経験のある医師は少なくないのではないでしょうか。患者確認、タイムアウト、チェックリスト、記録、申し送り。医療の安全性を高めようとすれば、確認すべき項目は増えていきます。そのため、「安全性を高めれば業務が増え、生産性は下がる」という印象を持ちやすいものです。しかし、本当にそうでしょうか。私は眼科医として白内障手術に携わる一方、MBAで経営学を学んできました。その両方の立場から医療現場を見ていると、医師の生産性を左右するのは、必ずしも医師自身が「速く働けるか」ではありません。むしろ重要なのは、医師が働くプロセスそのものが、どれだけ合理的に設計されているかです。データで検証:標準化で「手術室滞在時間」が7.3分短縮した私たちは以前、国際的な医療機関認証制度である「Joint Commission International(JCI)1)」の認証取得に向けた周術期プロトコルの標準化が、白内障手術の効率性にどのような影響を与えるかを検討しました2)。プロトコルの標準化の過程で重要なのは、単に規則を増やすことではありません。医療のプロセスを明確にし、組織として安全で一定水準の医療を提供できる仕組みを構築することです。当施設でも、JCI認証取得の過程で、患者確認やタイムアウト、記録など、手術前後のプロセスを見直し、標準化を進めました。そこで一つの疑問が生まれます。「安全のために確認事項を増やせば、手術室の効率は低下するのではないか?」これを実際のデータで検証したのが、私たちの研究です。2014年3月~2016年6月に 局所麻酔下で白内障手術を受けた3,127例(JCI認証前:2,581例、認証後:546例)を対象に、手術室滞在時間を比較しました。【研究結果:滞在時間の変化】総手術室滞在時間:40.1分→32.8分(平均7.3分短縮)術前時間:19.8分→13.9分術後時間:3.5分→2.6分実際の手術時間:16.8分→16.2分(有意差なし)結果として、総手術室滞在時間は患者1人当たり平均7.3分短縮しました。大きく変化したのは手術そのものではなく、その前後です。実際の手術時間は単純比較では統計学的な有意差を認めませんでした。つまり、術者が急いで手術をしたから全体が速くなったのではなく、周術期のプロセスが効率化された結果として、患者の手術室滞在時間が短くなったと考えられます。「手術を速くする」だけが生産性向上ではない医師の生産性向上というと、「1時間により多くの患者を診る」「手術そのものを短くする」と考えがちです。しかし、高度に専門化された医療では、医師自身の作業時間だけを短縮することには限界があります。本研究では、白内障手術そのものの平均時間は16~17分程度でした。それに対し、標準化に伴って総手術室滞在時間は平均7.3分短縮しています。論文では、この7.3分は施設における平均白内障手術時間(16.7分)の43.7%に相当し、「3件の手術を行えば、時間の上ではさらに1件の手術を行えるだけの余裕が生まれる計算になる」と考察しています。もちろん、これは実際に手術件数が33%増えたことを示したものではありません。あくまで、短縮された時間を手術時間に換算した考察です。それでも、この数字が示す意味は大きいでしょう。医師の周囲にあるプロセスを改善することにも、大きな生産性向上の余地があるということです。これは外来診療でも同じです。患者が来院してから診察を終えるまでには、受付、問診、検査、診察、追加検査、説明、予約、会計など、多くの工程があります。医師が診察時間を1分短縮することだけを考えるより、検査の順番、患者動線、電子カルテへの情報入力、スタッフ間の情報共有を改善したほうが、診療全体の生産性が大きく向上することがあります。医師の生産性向上とは、必ずしも医師を速く働かせることではないのです。定型業務の「迷い」を減らし、本当に重要な判断に集中する標準化には、もう一つ重要な効果があります。それは、医療従事者がその都度判断しなければならないことを減らすことです。「次に何をするのか」「誰が確認するのか」「どこに記録するのか」が毎回違えば、そのたびに確認やコミュニケーションが必要になります。逆にプロトコルが明確なら、医師やスタッフは次の行動を予測しやすくなります。本研究でも、標準化された記録やタスクが効率向上に重要であり、手術準備や医療スタッフ間のコミュニケーションといった非手術部分の改善が、時間短縮につながった可能性を論じています。医師にとって、この意味は小さくありません。診断、治療方針、手術適応、術中判断、患者への説明など、医師には高い集中力を必要とする仕事があります。一方、「この書類はどこに置くのか」「次の検査は誰に依頼するのか」といった定型的な判断にも、時間と注意力は消費されます。標準化は、単に数分を節約するためのものではありません。定型業務に費やしている医師やスタッフの認知資源を、患者ごとに異なる重要な判断へ戻すための仕組みとも考えられるのです。安全性と生産性は本当にトレードオフなのか?では、効率を高めることで安全性が犠牲になってはいないのでしょうか。本研究では、白内障手術に関連する合併症は、JCI認証前が2.8%(72例)、認証後が3.3%(18例)であり、両群に統計学的な有意差は認めませんでした。したがって、この研究から「標準化によって安全性そのものが向上した」と断定することはできません。しかし少なくとも、手術室利用の効率が改善した一方で、観察された合併症率の有意な増加は認めなかったといえます。安全性と生産性を、単純なトレードオフとして考える必要はないのです。むしろ適切な標準化によって、確認方法や役割が明確になり、ばらつきや手戻りが減れば、以下のような関係も成立し得ます。1.安全のための標準化を行う2.プロセスのばらつきが減る3.コミュニケーションや準備が円滑になる4.安全性を損なわず効率が改善する標準化は「画一的な医療」と同じではない一方、医師には標準化に対する抵抗感もあります。「患者は一人ひとり違うのだから、マニュアル通りにはいかない」――これはもっともな指摘です。しかし、標準化すべきなのは、患者ごとの医学的判断そのものではありません。患者確認の方法、検査の手順、器具の準備、情報共有、記録など、毎回同じように実施できる部分を標準化するのです。そうすることで、むしろ医師は個別化すべき部分に集中できます。たとえば白内障診療でも、患者確認や術前準備は標準化できます。一方、手術適応、眼内レンズの選択、難症例への対応、患者の生活背景や希望を踏まえた意思決定は、医師による個別の判断が必要です。私はこれを、「標準化できるものは標準化し、個別化すべきものに医師の能力を集中する」と考えています。標準化は医師の裁量を奪うものではなく、むしろ医師が裁量を発揮すべき領域を守るためのものなのです。認証そのものではなく、認証に向けた「改善の過程」に意味があるもう一つ、この研究には興味深い点があります。JCI認証日は2015年12月12日でしたが、月ごとの総手術室滞在時間を見ると、その低下は認証の約2ヵ月前、2015年10月頃から始まっていました。著者らは、これはJCI認証取得に向けて標準化が段階的に導入され、医療スタッフの行動が徐々に変化したためではないかと考察しています。つまり、「認証を取得したから突然生産性が上がった」のではありません。認証取得に向けて、現場のプロセスを一つずつ見直し、標準化していった過程そのものが改善を生んだと考えるほうが適切でしょう。これは経営の視点から見ても重要です。認証制度や新しいルールを導入する目的は、「認証を取ること」や「チェック項目を埋めること」ではありません。その過程を利用して、組織の仕事の進め方そのものを見直すことに意味があります。医師個人ではなく「システム」のパフォーマンスを見るMBAで経営学を学ぶと、生産性を個人の努力だけで考えないことの重要性に気づきます。どれほど優秀な医師が速く診療しても、その前後の検査や会計で患者が滞留していれば、医療機関全体の生産性は上がりません。反対に、医師自身の診察時間が変わらなくても、検査、患者動線、情報共有などを改善すれば、患者の待ち時間を減らし、同じ医療資源でより多くの患者に医療を提供できる可能性があります。つまり、「医師個人のパフォーマンス→チームのパフォーマンス→医療システム全体のパフォーマンス」という視点が必要なのです。医師のパフォーマンス向上とは、医師をさらに忙しく働かせることではありません。医師にしかできない仕事に、医師の時間と能力を集中させることです。そのためには、「自分がもっと頑張る」だけでなく、日々行っている診療を一度プロセスとして眺めてみる必要があります。毎回やり方が違う仕事はないか。同じ確認を複数の人が繰り返していないか。医師でなくてもできる仕事を医師が抱えていないか。標準化できるにもかかわらず、毎回ゼロから判断していることはないか。こうした小さな「ばらつき」を減らすことが、安全性と生産性を両立させる第一歩になります。優秀な医師が頑張ることで成り立つ医療から、優秀な医師が能力を最大限発揮できる仕組みへ。プロトコルの標準化は、そのための有力な手段の一つなのです。注釈・参考文献1)Joint Commission International(JCI):米国のThe Joint Commissionを母体とする国際的な医療機関認証制度。患者安全と医療の質向上を重視し、患者確認、医療者間のコミュニケーション、高リスク薬の安全管理、手術部位や患者の確認など、国際患者安全目標(International Patient Safety Goals:IPSGs)に基づく基準を設けている。JCI認証では、現場の運用、職員へのインタビュー、診療記録などを通じて、医療機関が定められた基準を満たしているかが評価される。2)Okumura Y, Inomata T, et al. Shortened cataract surgery by standardisation of the perioperative protocol according to the Joint Commission International accreditation: a retrospective observational study. BMJ Open. 2019;9:e028656.

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時間制限食は肥満や糖尿病患者の食行動に影響するか

 近年、時間制限食(TRE)は減量や心代謝系疾患リスクの改善に寄与するとして注目を集めているが、糖尿病や肥満患者の食欲などにどのような影響を与えるだろうか。このテーマについて、米国・ジョンズ・ホプキンス大学医学部のDaisy Duan氏らの研究グループは、TREと通常の食事パターン(UEP)を比較する試験の事後解析を行い、いずれも緩やかな減量に伴って食行動が改善することが示唆された。Obesity誌オンライン版2026年7月27日号に掲載の報告。TREは食行動に影響を与えるか 研究グループは、肥満かつ糖尿病予備群または食事療法で管理されている2型糖尿病の成人を対象に、10時間のTREと16時間のUEPを比較するTRIM(Time-Restricted Intake of Meals)試験を行った。事後解析でTREが食行動、食欲関連ホルモン、および炎症マーカーに及ぼす影響を検討した。参加者は「3因子食行動質問票(TFEQ:食事制限、脱抑制、空腹感)」に回答し、介入前後に空腹時血液サンプル(レプチン、アディポネクチン、CRP、コルチゾール、sRAGE)を測定した。グレリンは75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)中に測定された。群内および群間差の検討には、ウィルコクソン符号付順位検定およびマン・ホイットニーのU検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・39例(TRE群19例、UEP群20例)を解析対象とした。・平均年齢は60±7歳、BMIは35.2±6.0だった。・減量幅はTRE群で2.7%、UEP群で2.5%と両群で同程度だった。・両群とも食事制限の傾向が高まり、脱抑制と空腹感は低下した。・食行動、食欲関連ホルモン、炎症マーカーにおいて、統計学的に有意な群間差は認められなかった。 研究グループは、これらの結果から「10時間TREと16時間UEPは、いずれも緩やかかつ同程度の減量に伴い、食行動の改善を促進した。臨床的に意義のある差が存在するかどうかの確認には、より大規模な前向き研究が必要である」と結論付けている。

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認知症リスクが下がる2つの運動~日本の前向き研究

 運動は認知症予防に効果があると考えられているが、運動の種類によって認知症リスクとの関連が異なるかどうかは不明である。今回、日本体育大学/筑波大学の永田 康喜氏らが実施した、地域在住高齢者を対象とした前向き観察研究の結果、筋力トレーニング(筋トレ)やゲートボールが、運動していない群と比較して認知症発症リスクが有意に低いことが示された。Geriatrics & Gerontology International誌2026年8月号に掲載。 本研究では、日本の地域在住高齢者5,074人を対象に、2013年6月(プレベースライン)および2017年8月(ベースライン)に郵送調査を実施し、2021年7月まで最長4年間追跡した。認知症の判定は厚生労働省の全国標準化尺度を使用した。17種類の運動への参加状況を調べ、参加者が150人以上存在した5種類の運動(体操、ウォーキング、ゲートボール、ゴルフ、筋トレ)について、非運動群と比較した認知症発症のハザード比(HR)をRobust分散推定量を用いた多変量調整Cox比例ハザードモデルで算出・解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値:4.0年)の間に、5,074人中430人(8.5%)が認知症を発症した。・筋トレ(調整後HR:0.26、95%信頼区間[CI]:0.08~0.81)、ゲートボール(調整後HR:0.68、95%CI:0.46~0.99)では、非運動群と比べ有意な認知症発症リスクの低下が認められた。・体操、ウォーキング、ゴルフでは、有意なリスク低下は認められなかった。 本結果から、著者らは「ゲートボールや筋トレへの取り組みは、高齢者における認知症予防に有用である可能性が示唆される」と結論している。

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東日本大震災15年追跡による心的外傷後ストレス反応の実態/東北大学

 東日本大震災の被災者1,291人を対象としたコホート研究において、発災15年後に14.7%が臨床的に有意な水準の心的外傷後ストレス反応(Posttraumatic Stress Reactions:PTSR)を示し、発災1~2年目にPTSR症状が悪化した群では15年後にPTSRが持続するオッズが約5.3倍高かったことを、東北大学の李 雪氏らが示した。JAMA Network Open誌2026年8月3日号掲載の報告。 長期的なPTSR症状に苦しむ患者を早期に発見して、適切なサポートを届けることは公衆衛生上の大きな課題である。しかし、大規模災害後のPTSRの経過は多様であり、単回の症状評価ではなく症状の変化が長期予後とどう関連するかは十分に解明されていなかった。そこで研究グループは、発災1~2年目の症状変化が15年後のPTSR持続と関連するかを検討するため、前向き縦断コホート研究(2011~25年)を実施した。対象は、東日本大震災で大規模半壊以上の家屋被害認定を受けた宮城県七ヶ浜町の20歳以上の住民のうち、全11回の調査に5回以上回答した1,291人とした。 PTSRは改訂出来事インパクト尺度(IES-R[0~88点、低いほど症状が少ない])で評価し、25点以上を臨床的に有意な水準のPTSRと定義した。発災早期(2011~12年)のIES-Rスコアの推移から、対象者を(1)1年目または2年目に25点未満(早期非持続群)、(2)1年目も2年目も25点以上だが2年目のほうが同等か改善(改善群)、(3)1年目も2年目も25点以上で2年目のほうが悪化(悪化群)の3群に分類した。主要評価項目は15年後のIES-Rスコアが25点以上であることとし、多変量ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象1,291人(女性53.1%、平均年齢53.9±16.6歳)のうち、15年後に臨床的に有意な水準のPTSRを示していた割合は14.7%であった。・IES-Rスコアの上昇は発災早期(1~2年目)に最も頻繁に認められ、15年後のPTSR持続と独立して関連していた。・早期の症状パターンの内訳は、早期非持続群77.9%、改善群8.5%、悪化群13.6%であった。各群で15年後に臨床的に有意な水準のPTSRを示した割合は、それぞれ8.8%、26.4%、41.1%であった。・早期非持続群と比較して、悪化群では15年後に臨床的に有意な水準のPTSRを示すオッズが顕著に高かった。調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -悪化群 aOR:5.31、95%CI:3.85~7.32、p<0.001 -改善群 aOR:2.59、95%CI:1.53~4.40、p<0.001・早期の睡眠障害(aOR:3.24、95%CI:2.17~4.82)および70歳以上(aOR:3.45、95%CI:2.19~5.45)も15年後のPTSR症状持続と独立して関連していた。・1~2年目の症状動態を組み込んだモデル(AUC:0.756)は、ベースライン時の単回評価(AUC:0.608)や2年目の単回評価(AUC:0.726)のみのモデルと比べ、15年後のPTSRを識別する性能が高かった。 研究グループは、本研究は観察研究のため因果推論は不可能であることや、15年間の追跡率が50.4%で対象者の選択バイアスの可能性があることを限界として提示したうえで、「発災1~2年目の症状の推移は、単回の評価よりも15年後のPTSRの長期的な持続を示す有用な予後情報であった。これらの知見は将来のリスクの層別化およびモニタリング戦略に役立つ可能性を示唆している」とまとめた。

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COPD中等度増悪1回でも12年後の死亡・再増悪リスク増

 Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)2026では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪リスク評価において、中等度増悪1回の患者も高リスク(Group E)に分類されることになったが、この変更を支持する予後データは限られている。今回、韓国・The Catholic University of KoreaのJoon Young Choi氏らは、Korean COPD Subgroup Studyのデータを用いて、中等度増悪1回が将来の増悪および長期死亡リスクを同定するか、またGOLD2026の増悪歴に基づくリスク定義がGOLD2025より予後識別能を改善するかを検討した。その結果、中等度増悪1回は、将来の増悪および12年死亡リスクの上昇と独立して関連し、GOLD2026基準はGOLD2025基準より全死亡の判別能が高かった。Chest誌オンライン版2026年7月29日号に掲載。 本研究は、韓国の前向き多施設COPDコホートであるKorean COPD Subgroup Studyのデータを用いた解析である。対象はCOPD患者1,551例で、初年度の増悪歴に基づき、増悪なし、中等度増悪1回、中等度増悪2回以上もしくは重度増悪1回以上に分類した。2年目の将来の増悪は負の二項回帰モデルで評価し、最長12年の全死亡および呼吸器疾患による死亡はCox比例ハザードモデルで評価した。さらに、GOLD2025およびGOLD2026の増悪歴に基づくリスク定義について、時間依存性AUC解析により予後判別能を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象1,551例のうち、初年度に中等度増悪1回を経験した患者は241例(15.5%)、中等度増悪2回以上または重度増悪1回以上を経験した患者は392例(25.3%)であった。増悪なしは918例(59.2%)であった。・中等度増悪1回は、増悪なしと比較して、2年目の中等度~重度増悪リスクの上昇と関連していた(調整発生率比[aIRR]:2.42、95%信頼区間[CI]:1.85~3.17)。・中等度増悪1回は、2年目の重度増悪リスクの上昇とも関連していた(aIRR:2.21、95%CI:1.27~3.85)。・最長12年の追跡において、中等度増悪1回は全死亡リスクの上昇と独立して関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.49、95%CI:1.02~2.15)。・中等度増悪1回は、呼吸器疾患による死亡リスクの上昇とも独立して関連していた(aHR:3.21、95%CI:1.76~5.88)。・GOLD2026基準では、中等度増悪1回の241例を含めて633例(40.8%)が増悪歴に基づく高リスク群に分類される一方、GOLD2025基準で高リスクに該当するのは中等度増悪2回以上または重度増悪1回以上の392例(25.3%)であった。・10年時点の全死亡判別能は、GOLD2026基準がGOLD2025基準を上回った(AUC:0.760 vs.0.734、ΔAUC:0.025、95%CI:0.004~0.046)。 著者らは、「中等度増悪1回は、将来の増悪および死亡リスクが高いCOPD患者を同定する指標であり、GOLD2026でこれらの患者を高リスクに分類することを支持する結果であった」とまとめている。

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非心臓大手術、全静脈麻酔vs.揮発性吸入麻酔/JAMA

 非心臓大手術を受ける高齢患者において、全静脈麻酔(TIVA)は揮発性吸入麻酔と比較し、術後30日時点の在宅日数(days alive and at home;生存し、自宅で過ごした日数)を改善しなかった。英国・Institute of Cancer ResearchのShaman Jhanji氏らVITAL Trial Teamが、「Volatile vs Total Intravenous Anesthesia for Major Non-Cardiac Surgery(VITAL)」試験の結果を報告した。非心臓大手術を受ける高齢者は、術後合併症を呈し医療サービスを利用することが多く、これらに麻酔手技が関係する可能性がある。TIVAと吸入麻酔は意識消失をもたらすが、薬理学的特性、術中の生理学的影響および周術期の安全性プロファイルは顕著に異なる。しかし、回復および安全性に関する両者間の比較は行われていなかった。JAMA誌オンライン版2026年8月12日号掲載の報告。主要評価項目は術後30日時点の在宅日数 VITAL試験は、英国国民保健サービス(NHS)の49施設で実施されたプラグマティックな無作為化非盲検臨床試験である(最終追跡調査:2024年10月)。 研究グループは、全身麻酔下での待機的非心臓大手術が予定されている50歳以上の患者を、外科分野(筋骨格系、腹腔内、胸部、血管、その他)、予想手術時間(2時間未満、2時間以上)、手術の適応(がん、非がん)、および術前のRockwoodの臨床虚弱尺度スコア(健常、脆弱、虚弱)で層別化し、手術当日に維持麻酔としてTIVA(プロポフォール点滴)群または揮発性の吸入麻酔群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けた。その他の周術期ケアは、すべて臨床医の裁量に委ねられた。 主要評価項目は、術後30日時点の在宅日数、副次評価項目は、術後90日時点の在宅日数、30日・90日・6ヵ月時の死亡率、術後3日目のQuality of Recovery-15スコア、術後1日目の患者満足度(Bauer Patient Satisfaction Questionnaire)、術後3日目のせん妄(4 As Test[4AT])、麻酔下での意図しない覚醒、および術後30日以内の主要術後合併症(Clavien-Dindo分類2以上)などであった。主要評価項目、副次評価項目に有意差なし 2022年1月12日~2024年4月10日に2,508例が無作為化された(TIVA群1,254例、吸入麻酔群1,254例)。TIVA群の1例が同意を撤回し解析対象から除外された。 患者背景は、平均年齢67歳(SD 8.9)、男性55%、主な適応はがん(75.4%)で、ほとんどは腹腔内手術(72.1%)であった。 術後30日時点の在宅日数は、TIVA群22.5日(SD 6.8)、吸入麻酔群22.4日(SD 6.6)で、両群間に有意差は認められなかった(発生率比:1.00、95%信頼区間:0.99~1.02、補正後p=0.68)。 90日時点の在宅日数、30日・90日・6ヵ月時の死亡率、および術後3日目のQuality of Recovery-15スコアについても差はなかった。 TIVA群では吸入麻酔群と比較し、術後早期の症状として口渇(74%vs.78%)、嗄声(48%vs.54%)、および悪心・嘔吐(27%vs.36%)の報告率が低かった。 術後3日目にせん妄が認められた患者の割合は両群で同程度であり、ほとんどの患者(87.6%)はせん妄を呈していなかった。 術後30日以内の主要術後合併症は全体で312例(12.4%)に発生したが、両群で有意差はなかった(TIVA群154例、吸入麻酔群158例)。 麻酔下での意図しない覚醒(確実または可能性が高い)は、TIVA群で2例報告された。

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PSMA陽性前立腺がん、177Lu-PSMA-617併用が有用(PSMAddition試験)/Lancet

 PSMA陽性の転移のあるホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、177Lu-PSMA-617(ルテチウム[177Lu]ビピボチドテトラキセタン)を、標準治療のアンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)併用に追加することで、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)が延長した。米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏らPSMAddition Investigatorsが、世界20ヵ国169施設で実施している第III相無作為化非盲検優越性試験「PSMAddition試験」の中間解析結果を報告した。著者は、「有害事象の発生割合は高かったものの、177Lu-PSMA-617と標準治療の併用に関連する新たな安全性の懸念は認められなかったことから、177Lu-PSMA-617の追加はmHSPCに対する新たな治療選択肢となりうる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月6日号掲載の報告。177Lu-PSMA-617+標準治療(ADT+ARPI)vs.標準治療でrPFSを評価 PSMAddition試験の対象は、CT、MRIまたは骨シンチグラフィにより診断されたmHSPCで、1つ以上の遠隔転移病変が中央読影による[68Ga]Ga-PSMA-11 PETスキャンで確認された(PSMA陽性)、未治療または治療歴が最小限の成人患者であった。 治療歴が最小限とは、転移のある前立腺がんに対するADTまたはARPIあるいはそれらの併用の投与期間が45日以内である場合、または局所病変に対し術前補助療法または術後補助療法としてADTを受けたが病勢進行がみられず12ヵ月以上中止している場合とされた。 研究グループは、適格患者をADT+ARPIに177Lu-PSMA-617(7.4GBq[200mCi]±10%を6週間間隔で最大6サイクル静脈内投与)を追加する177Lu-PSMA-617群、またはADT+ARPIのみ(標準治療群)のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。 ADTおよびARPIは、各地域の承認状況に応じて治験責任医師が選択し、添付文書に従って投与された。標準治療群の患者で、盲検下独立中央判定により画像上の病勢進行が確認された場合は、177Lu-PSMA-617群へのクロスオーバーを可とした。 主要評価項目はrPFS(PCWG3 modified RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定)、重要な副次評価項目は全生存期間で、その他の副次評価項目には安全性および忍容性が含まれた。 本報告では、ITT集団(無作為化された全患者)におけるrPFSに関する第2回中間解析の結果が報告された(データカットオフ日:2025年1月13日)。rPFSのハザード比は0.72 2021年6月15日~2023年7月25日に、1,529例がスクリーニングを受け、このうち1,144例が無作為化された(各群572例、年齢中央値:68.0歳[四分位範囲[IQR]:62.0~73.0])。 第2回中間解析(無作為化からデータカットオフまでの追跡期間中央値23.6ヵ月[IQR:20.3~29.2]、rPFSの追跡期間中央値19.6ヵ月[IQR:14.0~24.1])において、画像診断に基づく病勢進行または死亡の発生率は、177Lu-PSMA-617群24%(139/572例)、標準治療群30%(172/572例)であり(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.58~0.90、p=0.0021、rPFSは両群とも中央値に未到達)、第2回中間解析において主要評価項目が達成された(有意水準p=0.0092)。 Grade3以上の有害事象は、177Lu-PSMA-617群で51%(286/564例)、標準治療群で43%(243/565例)に、重篤な有害事象はそれぞれ32%(180/564例)、29%(162/565例)に認められ、177Lu-PSMA-617に関連すると判定された重篤な有害事象は17例(3%)であった。 177Lu-PSMA-617群で最も発現頻度が高かった有害事象は口渇(258例、46%)であったが、いずれもGrade1または2であり重篤な事象はなかった。そのほかの主な有害事象は、疲労、悪心、ほてり、貧血などであった。

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