サイト内検索|page:22

検索結果 合計:35608件 表示位置:421 - 440

422.

収監の日が決まりました【Dr. 中島の 新・徒然草】(615)

六百十五の段 収監の日が決まりましたしばらく温暖な日が続いていたと思ったら、急に寒くなりました。出勤時には穏やかでも、帰る時は雪がチラついています。ここまで寒いと散歩もできません。そのせいか、いつの間にか体重が増えてしまいました。さて、先日の脳外科外来。夫婦で通院しておられる50代の患者さんから衝撃の一言が。 ご主人 「先生、収監の日が決まりました。○月○日です」 中島 「ついに来ましたか!」 高等検察庁からの裁判執行関係事項照会書も来ていたので「そろそろかな」と思っていたら、とうとう呼び出されたのです。この裁判執行関係事項照会書というのは、収監予定の患者さんの病名や処方薬に関する問い合わせのこと。受刑者といえども、必要な薬は服用しなくてはなりません。そのために、文書照会されるわけです。この患者さんの場合、すでに何回か照会がありました。だいたい半年に1回くらいの割合でしょうか。 中島 「収監を待っている間に手術をしたんじゃなかったですか?」 奥さん 「全部で3回しました」 中島 「刑務所も仕事が増えるのを嫌うんでしょうね」 この患者さん、がんを含めていろいろな病気が見つかったため、これまでずっと治療をしてきました。病人を抱え込んだら、刑務所のほうも治療や手続きでマンパワーを取られてしまいます。なので、病状が落ち着いてから収監しようと思ったのでしょう。 中島 「早く出てこれるといいですね」 ご主人 「『中』では賢くしておかないといけないんですよ」 「中」で暴れたりして満期までつとめるということになったら大変です。 奥さん 「もう『中』は高齢者が多くてね」 中島 「じゃあ、介護が大変なんじゃないですか?」 奥さん 「もう介護ばっかり。頭がボケてしまって、自分が刑務所にいることもわかってない人までいるくらい」 中島 「刑務官は介護にはタッチしないんですよね」 奥さん 「ええ、だから受刑者が受刑者の世話をするんです。垂れ流しの人もいっぱいいますよ」 やけに事情通なのは、奥さんも服役経験があるからです。 奥さん 「90歳を超えてから釈放される人もいるけど、外に出たらかえって困ったりするからね」 中島 「困ったら、ちょっとした窃盗でまた『中』に戻ったりするんですか?」 奥さん 「そういう人も多いかな。ウチで面倒見ることもあるんだけど」 「ウチ」というのはこのご夫婦が働いている福祉関係の会社のこと。だからご夫婦の来院は、自分自身の治療のこともあるし、他の患者さんの付き添いのこともあったりします。 中島 「行くのは山科(京都刑務所)ですか、堺(大阪刑務所)ですか?」 ご主人 「これまでは山科が多かったですね」 中島 「大丈夫かなあ」 何しろこの寒さ。堺に比べて過酷といわれる山科から、生きて帰れるのか。次に顔を見るときには、いったいどんな状態になっているのでしょうか。犯罪者ではありますが、ご主人はどう見ても普通のオッチャンです。何かの拍子に怒らせたら怖いのかもしれんけど。ずっと通院加療しているうちに、何となく親しくなってしまいました。そうそう。何でまた懲役をくらってしまったのか?これまで何人かの服役経験者に聞いたことがありますが、皆さん答えは同じでした。窃盗か薬物、まれに傷害くらいです。殺人とか放火のような重大犯罪を聞いたことはありません。実際にしていたとしても言うはずないし。答えが決まっているので、最近はこちらも尋ねなくなりました。ということで、いろいろ持病を抱えての刑務所生活。この患者さんが無事に戻ってくることを願うばかりです。最後に1句 雪の降る 収監の朝 山科へ

423.

第45回 「その抗菌薬投与は患者の益になるか?」重度認知症・肺炎診療の常識を問う

高齢化率が世界最高水準の日本において、重度認知症患者の肺炎診療はいわば日常的な光景です。「肺炎だから入院」「とりあえず抗菌薬」というフローは、多くの医療機関で標準的な対応として定着しているでしょう。しかし、NEJM Evidence誌に掲載された論考1)は、この「当たり前」の診療行為に対し、生存期間、QOL、そして患者の快適さという観点から鋭い問いを投げかけています。 本稿では、同誌の“Tomorrow's Trial”(将来行われるべき臨床試験の提案)として発表された記事1)を基に、重度認知症患者に対する肺炎治療の現在地と、われわれが直面している倫理的・臨床的ジレンマについて解説します。抗菌薬は「死」を10日先送りするだけ? この記事で紹介されるのは、87歳の重度認知症女性の症例です。寝たきりで会話ができず、家族の認識もできない状態で、発熱と呼吸器症状を呈して搬送されました。胸部X線で浸潤影を認め、臨床的には細菌性肺炎が疑われます。 ここで日本の臨床現場でもよくある葛藤が生じます。娘は、「母が苦しまず、現状の生活を維持できるなら生きていてほしい」と願っています。しかし、果たして抗菌薬投与はこの願いをかなえるのでしょうか? 残念ながら、重度認知症患者の肺炎に対して、抗菌薬投与が生存期間、QOL、患者の快適さを改善させるかどうかを比較したランダム化比較試験は、現時点では存在しません。 そのため、根拠とできるのは観察研究の結果のみですが、そのデータは衝撃的です。ある研究では、抗菌薬投与群は非投与群に比べて最初の10日間の死亡率の低下傾向が見られるものの(非投与群76%vs.投与群39%)、10日以降の死亡リスクには差がないことが示されています。これは、抗菌薬による治療が「死を約10日間遅らせる」可能性を示す一方、同時に「死にゆくプロセスを延長させているだけ」である可能性も示唆しています。「治療」がもたらす侵襲と不利益 「とりあえず抗菌薬を入れておこう」という判断が、患者にとって無害であれば問題は少ないかもしれません。しかし、重度認知症患者、とくに人生の最終段階に近い深刻なフレイルの患者にとって、抗菌薬治療が大きな負担となりうることも強調されるべきでしょう。 点滴確保による身体的苦痛、不慣れな急性期病院への搬送、環境の変化による混乱、そして知らない医療スタッフに囲まれるストレスは、認知症患者にとって計り知れない苦痛です。さらに、薬剤耐性菌の出現や、致死的になりうるClostridioides difficile感染症のリスク、下痢や腎機能障害といった副作用も無視できません。 また、米国の介護施設における観察研究では、呼吸器感染症が疑われた認知症患者の約70%に抗菌薬が処方されていましたが、実際に臨床的な細菌感染の基準を満たしていたのはそのうちの約33%にすぎなかったという報告もあります。診断の不確実性と「念のための投与」が、過剰医療と患者の負担を招いている現状が浮き彫りになっています。世界の潮流と日本の立ち位置 重度認知症患者の肺炎に対するアプローチには、地域によって大きな差があります。記事では、オランダと米国ミズーリ州の比較が紹介されています。 オランダでは、重度認知症患者の肺炎に対し、23%が抗菌薬なしで管理されていました。これは、治療方針が明示的に「緩和」に向けられており、あえて抗菌薬を差し控えるという選択がなされているためです。一方、ミズーリ州では重症度が高いほど抗菌薬が使用される傾向にあり、非投与率は15%にとどまりました。 日本はおそらく米国ミズーリ州に近い、あるいはそれ以上に「肺炎=治療」の文化が根強いといえるかもしれません。しかし、患者の予後が数ヵ月単位である場合、その治療が「治癒」を目指しているのか、それとも症状緩和を目指しているのか、その境界線は曖昧です。われわれには「答え」が必要である 本記事の著者らは、こうした長年の疑問に決着をつけるため、重度認知症の肺炎患者を対象とした、抗菌薬静注群とプラセボ静注群を比較する二重盲検RCTの実施を提案しています。主要評価項目は30日生存率だけでなく、QOLや患者の快適さといった「患者・家族中心の指標」が含まれる必要があるでしょう。 「肺炎に抗菌薬を使わない(プラセボを使う)」という試験デザインは、一見倫理的に許容されないように感じられるかもしれません。しかし、抗菌薬治療に確実な有益性のエビデンスがなく、むしろ害の可能性がある以上、この比較試験は倫理的に正当化されるものとなるでしょう。 日本の臨床現場において、すぐにオランダのような「あえて治療しない」選択肢を組み込むことはなかなか難しいでしょう。しかし、われわれが漫然と行っている抗菌薬投与が、本当に患者の「快適さ」や「望ましい最期」に寄与しているのか、一度立ち止まって考えるべき時が来ているのかもしれません。 次回の診療で、重度認知症患者の肺炎に直面した際、少し自問してみるのもいいのではないでしょうか。「この点滴は、患者の苦痛を取り除いているのか、それとも死の過程を引き延ばしているだけなのか」と。そんなことを考えてみるだけでも、慣例に流されがちな日々の処方に、「患者の尊厳」という重みを問い直し、静かな一石を投じることになるはずです。 1) Ahmad A, et al. Do Antibiotics Improve Survival, Quality of Life, and Comfort in Patients with Advanced Dementia and Pneumonia? NEJM Evid. 2026;5:EVIDtt2400447.

424.

試験本番で実力を100%出し切るための3ヵ条【研修医ケンスケのM6カレンダー】第10回

試験本番で実力を100%出し切るための3ヵ条さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。改めまして、みなさま新年明けましておめでとうございます。2025年4月に始まったこの連載も、これまでに多くの医学生の方に読んでいただき、非常に嬉しく思います。「最強寒波」だの、「10年に1度」はふと毎年聞いているような気もしますが、今年の国家試験直前期も寒いですね。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。さて、来月にはいよいよ試験本番を控える皆さんに、私から最後のメッセージをお送りします。見直しで確認すべき「2つ」(指差し確認も忘れずに!)皆さんは普段見直しで意識していることはありますか?基本的に医師国家試験は回答する時間が足りなくなる、というケースが少ないため、本番でも見直しが重要です。試験では次の2つを意識して見直しをしてください。1.何を問われているか2.主訴に立ち返る「何を問われているか」は非常に重要です。適切不適切、何個選ぶのか、の基本的なことは当然確認するとして、「この患者に対して〜」「直ちに〜」という言葉に敏感になりましょう。選択肢の中には問い方さえ変えれば正答になるものも含まれています。例えば、尿管結石の対応だから水分摂取励行/結石破砕術にすぐに飛びついてしまったが、実際には「今、目の前の患者に対して『まず』行うべき鎮痛(NSAIDsなど)」を問われていた、というケースは少なくありません。冷静になってみれば解けたというミスは非常にもったいないです。難問や割れ問題で間違えるよりも、こうした「拾えたはずの問題」を落としてしまうほうが、試験中の精神的ダメージははるかに大きくなります。ついては、見直しに余裕があるのなら、自信のない問題だけでなく「絶対合っている」と確信のある問題こそ、「何が問われているか」を再度確認してください。やや似た話ですが、「主訴に立ち返る」ことも同様に確認してください。同じ疾患でも主訴は様々です。甲状腺疾患のように多彩な症状を呈する症例もそうですが、心不全+肺炎のような複合病態においても、この症例では何が主訴であったのか?これを見失ってはいけません。そして、この「主訴に立ち返る」は実臨床でも非常に重要です。鑑別を絞ることはもちろん、治療経過で主訴がどのように変化していくのか意識することは医学的に大切なだけでなく、患者さんにとっても納得のいく治療に繋がります。だからこそ、医師国家試験でもきちんと主訴を把握できているかを問われる問題が多い印象があります。たとえ最終的な病態が特定できなくても、主訴に対する適切な対応を選び取ることができれば、それは一つの正解と言えます。実際、救急外来でもよく見かける話です。休み時間をどう過ごすのか、決めておく(ラウンジって良いですが、結局バタバタするのは私だけでしょうか?笑)2日間ある医師国家試験では開始前、昼休み、午後のブロック間の1日3回、合計で6回休み時間があります。試験会場は慣れた環境ではありません。トイレも混みやすい、他大学の友人にばったり会う、などイレギュラーが溢れています。休み時間の過ごし方に正解はありません。前のブロックの話題で周囲と雑談で盛り上がることもあります。自分は1人で黙々と過ごしたい、この分野だけは見返したい、そんな方もいます。休み時間に何かを見返したいのであれば、「これが出たら確実に得点できる」という得意分野を点検することをお勧めします。なんだかんだ休み時間は落ち着かないもの。集中して新しいことを会得するには向かない時間だと思います。だからこそ、確実に解ける箇所を「鉄壁」にするつもりで、知識にさらなる磨きをかけてください。実際に出題されたら「あれだ!」と飛びつかず「お、休み時間で見ると決めたやつ。ラッキー」と落ち着いて対応できる余裕を持ちましょう。ふと出てきた、新しい情報にビビらない医師国家試験に限った話ではないですが、何かと試験前は様々な噂が飛び交うものです。先月述べたように、各予備校が予想するトピックは一度目を通すことをお勧めしますが、本番前日や数日前であれば、無理に習得しようとしなくて構いません。新しく出題範囲に含まれたもの、トリッキーなトピックなどは目を引きがちですが、全体に占める割合は僅かです。結局、定番をいかに落とさないかが合格にとって最重要だと私は思います。直前であればインプットよりも、今ある知識を「正確にアウトプットできること」に注力しましょう。最後に(皆さんも、いざ出陣!)医学生のみなさんは、実にこれまで数々の試験を乗り越えてきたと思います。学内総合試験/各科試験、医学部入学試験、高校、中学、小学校、幼稚園、数え始めたらキリがないでしょう。緊張しても緊張しなくても、眠ることができてもできなくても、大丈夫。ただ、これまで学習してきたことをしっかりアウトプットしてきてください。どのみち4月以降に当直すれば、眠たい中でも同様に診療しなければならないのですから。講評してやる、くらいの余裕を持ってぜひ戦ってきてください!

425.

アルツハイマー病、発症から診断までは2.2年/新潟大学ら

 アルツハイマー病(AD)では、治療・ケア方針の決定において早期診断が極めて重要となるが、日本における診断までの実際の経過は明らかではなかった。新潟大学の春日 健作氏らは、日本国内の複数施設を対象に、症状出現からAD診断に至るまでの期間とその過程で最も時間を要する段階を明らかにする後ろ向き観察研究を実施した。本試験の結果はAlzheimer's & Dementia誌オンライン版2025年12月25日号に掲載された。 本研究には、2011年4月~2023年3月に「ADによる軽度認知障害(MCI)」または「AD型認知症」と診断された18~79歳の患者138例が含まれた。発症年齢65歳未満を若年発症AD、65歳以上を高齢発症ADと定義し、初診日で1対1にマッチングした上で解析した。 主な結果は以下のとおり。・平均発症年齢±標準偏差は62.8±9.3歳、女性が62%(85例)、69%(95例)がかかりつけ医を有し、62%(86例)が症状出現時点で何らかの併存疾患の治療を受けていた。・症状出現からAD診断までの平均期間は121.8±88.9週(約2.2年)であった。内訳を見ると、最も長かったのは「症状出現から最初の医療機関受診まで」の期間で、77.0±74.4週と全体の大半を占めていた。・一方で、初診から認知症専門医への紹介までは34.9±49.2週、専門医受診から診断確定までは10.5±18.8週と比較的短期間であった。 研究者らは「これらの結果は、日本におけるAD診断遅延の最大のボトルネックが、医療機関受診以前の段階、すなわち患者本人や家族が症状を認知してから受診行動に至るまでの期間にあることを示している。早期診断が新規治療や適切な介入につながる時代において、一般市民や非専門医に対する啓発、初期症状への気付きを促す仕組みづくりが、診断までの時間短縮に不可欠であることが改めて示唆された」とした。

426.

うつ病の死亡リスク調査、抗うつ薬治療の影響は?~メタ解析

 うつ病は早期死亡と関連していることが報告されている。しかし、抗うつ薬治療を含む増悪因子や保護因子にも焦点を当て、うつ病患者における全死亡リスクおよび原因別死亡リスクを包括的に検討したメタ解析はこれまでなかった。中国・香港大学のJoe Kwun Nam Chan氏らは、あらゆる原因および特定の原因によるうつ病、併存疾患を有するうつ病における死亡リスクを明らかにするため、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、推定値を統合した。World Psychiatry誌2025年10月号の報告。 抗うつ薬および電気けいれん療法(ECT)の影響、死亡リスクのその他の潜在的な調整因子を評価した。2025年1月26日までに公表された研究をEMBASE、MEDLINE、PsycINFOデータベースより検索し、ランダム効果モデルを用いて死亡率推定値を統合した。出版バイアス、サブグループ解析、メタ回帰分析、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた研究の質の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・268件の研究(うつ病患者:1,084万2,094例、対照群:28億3,793万3,536例)が抽出された。・うつ病患者の全死亡率は、非うつ病患者/一般集団と比較し、2倍以上であった(相対リスク[RR]:2.10、95%信頼区間[CI]:1.87~2.35、I2=99.9%)。・とくに自殺(RR:9.89、95%CI:7.59~12.88、I2=99.6%)による死亡リスクが高く、自然死(RR:1.63、95%CI:1.51~1.75、I2=99.6%)でも上昇が認められた。・併存疾患をマッチングさせたうつ病患者と非うつ病患者との比較では、うつ病関連死亡リスクの有意な上昇も認められた(RR:1.29、95%CI:1.21~1.37、I2=99.9%)。・精神症状を伴ううつ病と伴わないうつ病(RR:1.61、95%CI:1.45~1.78、I2=6.3%)、治療抵抗性うつ病と非治療抵抗性うつ病(RR:1.27、95%CI:1.16~1.39、I2=85.3%)の間に、死亡リスクの差が認められた。・抗うつ薬の使用は抗うつ薬を使用しない場合と比較し、うつ病患者の全死亡率の有意な低下と関連していた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.93、I2=99.2%)。・ECTの使用はECTを使用しない場合と比較し、全死亡(RR:0.73、95%CI:0.66~0.82、I2=0%)、自然死(RR:0.76、95%CI:0.59~0.97、I2=12.0%)、自殺(RR:0.67、95%CI:0.53~0.85、I2=32.3%)のリスク減少と関連していた。 著者らは「本研究結果は、うつ病における死亡リスクの上昇を裏付け、死亡リスクの上昇を示す臨床的に意義のある患者サブグループを特定し、抗うつ薬治療とECTによる死亡率低下効果を明らかにしている。身体的健康の改善と自殺リスクの軽減、抗うつ薬治療の最適化、精神病性うつ病や治療抵抗性うつ病の早期発見と効果的な介入などを推し進める多角的なアプローチは、依然として拡大しているうつ病における死亡率の格差の縮小に役立つ可能性がある」と結論付けている。

427.

EGFR陽性MET増幅進行NSCLC、savolitinib+オシメルチニブがPFS改善/Lancet

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療後に進行したEGFR変異陽性かつMET増幅を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、savolitinib+オシメルチニブ併用療法はプラチナ製剤ベースの標準併用化学療法と比較して、良好な忍容性プロファイルを維持しながら無増悪生存期間(PFS)を延長したことが示された。中国・上海交通大学のShun Lu氏らSACHI Study Groupが、第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「SACHI試験」の中間解析の結果を報告した。著者は「本レジメンは、バイオマーカーで選択された本集団における経口治療の選択肢となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。階層的方法を用い最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団でPFSを評価 SACHI試験は中国国内の68病院で実施された。適格対象は、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCで、EGFR-TKI無効後にMET増幅が認められた成人患者。研究グループは対象者を、1日1回経口投与のsavolitinib+オシメルチニブ群または静脈投与による化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチン)群に1対1の割合で無作為に割り付けた(両群とも21日サイクル)。双方向ウェブ応答システムを用いて混合ブロックサイズ法を使用した中央無作為化法により割り付け、脳転移の有無、第3世代EGFR-TKIによる治療歴の有無、およびEGFR変異サブタイプに基づく層別化も行った。 主要評価項目は、治験担当医師の評価によるPFS(RECIST v1.1に基づく)。階層的方法を用い、最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団で評価し、有効性が認められた場合にITT集団で評価した。 安全性解析は、試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に行った。 中間解析のデータカットオフ日は、2024年8月30日であった。savolitinib+オシメルチニブ群のPFSが有意に延長、ITT集団でも 2021年10月15日~2024年8月30日に211例が登録され、savolitinib+オシメルチニブ群(106例)または化学療法群(105例)に無作為化された。137/211例(65%)が第3世代EGFR-TKI未治療(savolitinib+オシメルチニブ群69例、化学療法群68例)であった。savolitinib+オシメルチニブ群の年齢中央値は59.4歳(四分位範囲:54.3~65.8)、女性62例(58%)、男性44例(42%)であり、化学療法群はそれぞれ61.9歳(56.3~69.1)、55例(52%)、50例(48%)であった。全被験者がアジア人。 第3世代EGFR-TKI未治療集団における評価で、PFS中央値は、savolitinib+オシメルチニブ群が化学療法群に対して有意に延長した(9.8ヵ月[95%信頼区間[CI]:6.9~12.5]vs.5.4ヵ月[4.2~6.0]、ハザード比[HR]:0.34[95%CI:0.21~0.56]、p<0.0001)。 ITT集団においてもPFSが有意に延長した(8.2ヵ月[95%CI:6.9~11.2]vs.4.5ヵ月[3.0~5.4]、HR:0.34[95%CI:0.23~0.49]、p<0.0001)。 Grade3以上の治療中に発現した有害事象は両群で同程度であり、savolitinib+オシメルチニブ群60/106例(57%)、化学療法群55/96例(57%)であった。

428.

片頭痛へのフレマネズマブ、小児・思春期児にも有益/NEJM

 反復性片頭痛を有する6~17歳の小児・思春期児において、フレマネズマブはプラセボと比較して、片頭痛および頭痛の日数を減少させたことが、米国・シンシナティ小児病院医療センターのAndrew D. Hershey氏らが行った3ヵ月間の海外第III相多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で示された。フレマネズマブ群で最も多くみられた有害事象は、注射部位紅斑であった。フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体で、成人の片頭痛予防について承認されている。小児・思春期児について、無作為化試験のエビデンスが求められていた。結果を踏まえて著者は、「小児・思春期児におけるフレマネズマブの有効性と安全性をさらに調べるため、長期の追跡調査を行う必要がある」とまとめている。NEJM誌2026年1月15日号掲載の報告。プラセボと比較、3ヵ月投与の有効性と安全性を評価 試験は2020年8月20日~2024年3月13日に、9ヵ国89施設で被験者を募り行われた(74施設で少なくとも被験者1例が登録された)。 研究グループは、反復性片頭痛(片頭痛が6ヵ月以上持続かつ月当たりの頭痛日数が14日以下と定義)と診断された6~17歳の患児を、フレマネズマブ(体重45kg未満は120mg、45kg以上は225mgを月1回)皮下投与群または適合プラセボ投与群に無作為に割り付けて3ヵ月投与し、有効性と安全性を評価した。被験者は、急性頭痛の治療に、片頭痛に特異的な治療薬を用いることが許容された。 主要エンドポイントは、月当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化量。重要な副次エンドポイントは、月当たりの中等度以上の頭痛日数の変化量、月当たりの片頭痛日数の50%以上低減などであった。月当たりの平均片頭痛日数減少、-2.5日vs.-1.4日で有意差 237例が無作為化され、234例が全解析集団に包含された。フレマネズマブ群が123例(120mg群36例、225mg群87例)、プラセボ群が111例であった。3ヵ月の二重盲検試験期間を完了したのは、フレマネズマブ群96.7%、プラセボ群94.6%であった。ベースラインの人口統計学的および臨床的特性は両群で類似しており、月当たり平均片頭痛日数(±SD)はフレマネズマブ群7.8±3.1日、プラセボ群7.5±2.8日であった。 主要エンドポイントについて、月当たりの平均片頭痛日数は、フレマネズマブ群(-2.5日、95%信頼区間[CI]:-3.2~-1.7)がプラセボ群(-1.4日、95%CI:-2.2~-0.7)と比べて有意に減少した(群間差:1.1日、p=0.02)。 月当たりの中等度以上の頭痛日数は、フレマネズマブ群(-2.6日)がプラセボ群(-1.5日)と比べて有意に減少した(群間差:1.1日、p=0.02)。また、月当たりの片頭痛日数が50%以上低減した被験者は、フレマネズマブ群47.2%、プラセボ群27.0%であった(群間差:20.1%、p=0.002)。 安全性について、少なくとも1つの有害事象を有したのはフレマネズマブ群68/123例(55.3%)、プラセボ群55/112例(49.1%)であったが、ほとんどが重篤ではなく、軽度~中程度の有害事象であった。 フレマネズマブ群で最も多く見られた有害事象は、注射部位紅斑(9.8%)であった(プラセボ群5.4%)。

429.

食事の飽和脂肪酸を減らすことは心疾患の高リスク者に有益

 心疾患のリスクが高い人は、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことで健康にプラスの効果を得られる可能性のあることが、新たなシステマティックレビューで示された。心疾患リスクの高い人が食事中の飽和脂肪酸の量を減らした場合、心筋梗塞や脳卒中の発症数が減少することが明らかになったという。一方、心疾患のリスクが低い人では、5年間の追跡期間で同様の効果は明確には確認されなかった。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に12月16日掲載された。 このシステマティックレビューでは、合計6万6,337人が参加した17件の臨床試験のデータを分析し、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが心臓の健康やコレステロール値、全死因死亡にどのような影響を与えるのかを調べた。なお、飽和脂肪酸はバターやステーキ、ピザ、アイスクリーム、多くの加工食品や加工肉などに含まれている。米連邦政府の食事ガイドラインでは、飽和脂肪酸は1日の総摂取カロリーの10%未満に抑えることが推奨されている。一方、米国心臓協会(AHA)ではより厳しい基準となる6%未満に抑えることを推奨している。 その結果、ベースラインの心血管リスクが低い人では、飽和脂肪酸の摂取量を減らしても全死因死亡、心血管疾患による死亡、非致死的な心筋梗塞、致死的または非致死的な脳卒中の絶対リスクの減少は、臨床的に重要な閾値(5年で1,000人当たり、致死的なアウトカムが5件、非致死的なアウトカムが10件)を下回っており、ベネフィットはほとんどないことが示された。一方、リスクが高い人では、閾値を上回る絶対リスクの減少が見込まれ、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことで臨床的に意味のあるベネフィットの得られることが示唆された。 また、飽和脂肪酸を脂の多い魚やキャノーラ油に含まれるような多価不飽和脂肪酸に置き換えた人では、「悪玉」とされるLDLコレステロール値が低下し、心疾患のリスクも低下することが示された。 専門家らは、多くの人にとって高コレステロールを防ぐための最善の食事に関するアドバイスは、飽和脂肪を控えることだとしている。本研究には関与していない専門家の1人で、米タフツ大学心血管栄養研究所所長のAlice Lichtenstein氏は、「病気のない人を相手に、まだ発症していない疾患を評価することはできない。しかし、重要なのは予防することだ」と述べている。 飽和脂肪酸の摂取制限を推し進める動きは1960年代に始まり、何十年にもわたって食の選択に影響を与えてきた。ただし、研究者らは、飽和脂肪酸が含まれている全ての食品が同じように健康に影響を及ぼすわけではないと指摘している。例えば、ホットドッグなどの加工肉にはナトリウムも多く含まれており、血圧を上昇させる。一方、牛乳やヨーグルトなど一部の乳製品は、血糖コントロールや体重管理の改善に関連することが示されている。 Lichtenstein氏は、1つの研究結果だけを根拠に栄養に関わる政策を変更すべきではないと注意を促している。同氏は、「より広範なエビデンスがない中で、1件のシステマティックレビューのみが政策に大きな影響を与えるようなことがあってはならない」と話している。

430.

アトピー性皮膚炎治療薬のネモリズマブがかゆみを迅速に軽減

 最近承認された注射型のアトピー性皮膚炎(AD)治療薬ネモリズマブ(商品名Nemluvio)が、悩ましいこの疾患に苦しむ患者に迅速なかゆみの緩和をもたらすことが、新たな研究で示された。スイスの製薬会社であるガルデルマ社の研究者らの報告によると、治療開始からわずか2日でかゆみが軽減した患者の割合は、ネモリズマブを投与された群でプラセボを投与された群の3倍以上に上ることが示された。さらに、ネモリズマブ群では睡眠も改善した。ガルデルマ社治療用皮膚科学プログラム責任者であるChristophe Piketty氏らによるこの研究結果は、「Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology」に12月16日掲載された。 Piketty氏は、「今回の結果は、ネモリズマブがかゆみを迅速に軽減し、結果としてADや結節性痒疹(PN)患者の睡眠改善にもつながるという理解を強化するものだ」とニュースリリースで述べている。ガルデルマ社はネモリズマブの開発企業であり、本研究への資金提供も行っている。 米食品医薬品局(FDA)は2024年に、中等症〜重症のADおよびPNの治療薬としてネモリズマブを承認した。ADは、免疫系の異常によりアレルゲンや刺激物に対する皮膚の防御機能が低下することで発症する。モノクローナル抗体であるネモリズマブは、かゆみやその他のADの症状の原因となるサイトカインのIL-31が受容体に結合するのを阻害し、かゆみのシグナル伝達を遮断する。 この研究では、FDAが承認の根拠とした4件の臨床試験のデータの事後解析を実施し、投与初期(最初の14日間)のかゆみの改善について評価した。解析対象は、AD患者1,728人(ARCADIA1、2試験)とPN患者560人(OLYMPIA1、2試験)であった。対象者は毎日かゆみと睡眠障害の強さを自己報告した。かゆみはpeak pruritus numerical rating scale(PP-NRS)で、睡眠はsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS)で評価し、スコアがベースラインから4点以上低下した場合を改善と見なした。 その結果、投与2日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で10.7%であったのに対し、プラセボ群では2.9%にとどまっていた。同様に、投与2日目に改善が認められたPN患者の割合はそれぞれ17.2%と3.7%であった。SD-NRSに改善が認められた割合についても、AD患者ではネモリズマブ群9.9%、プラセボ群4.6%、PN患者ではそれぞれ13.4%と4.3%であり、ネモリズマブ群で有意な改善が見られた。さらに、投与14日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で25.5%、プラセボ群で8.9%、PN患者の割合は37.0%と10.2%であり、群間差は投与14日目まで拡大していた。 研究グループは、「かゆみは中等症〜重症のADおよびPN患者が最も苦痛に感じる症状であり、かゆみの迅速な改善は重要な治療目標だ」と指摘している。また、「かゆみを迅速に軽減し、疾患の重症度や患者の生活の質(QOL)に臨床的に有意な改善をもたらす治療法は、ADおよびPNの現在の治療選択肢において重要だ」と述べている。

431.

1歳6ヵ月時点の母乳育児がむし歯発症と関連、口腔衛生指導の重要性を示す縦断研究

 乳幼児のう蝕(むし歯)は生活習慣や食事習慣など複数の要因が絡み、授乳との関係はこれまで議論が続いてきた。今回、日本の子ども約6,700人を1歳6ヵ月~3歳6ヵ月まで追跡した縦断研究で、1歳6ヵ月時点で母乳育児を続けていた子どもで、その後のむし歯発症との関連が示された。一方で、母乳育児を継続していても多くの子どもはむし歯を経験しておらず、母乳育児そのものではなく、食事習慣や口腔衛生習慣などのケアが重要である可能性が示唆された。研究は大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学講座の三笠祐介氏、大継將寿氏、仲野和彦氏、同大学口腔生理学講座の加藤隆史氏らによるもので、11月27日付で「Scientific Reports」に掲載された。 乳歯のむし歯は世界で5億人以上の子どもに影響する公衆衛生上の重要な健康課題であり、日本では全体として減少傾向にあるものの、依然として高リスク層への偏在がみられる。むし歯の原因は多因子的だが、母乳栄養とむし歯の関係については研究間で一致した結論が得られていない。1歳以降の授乳をむし歯リスクとする報告がある一方で、1歳6ヵ月までの授乳はむし歯リスクの低下と関連するとの報告や、砂糖摂取こそが主要因であるとする研究もあり、見解は分かれている。また、早期に歯が萌える(はえる)こともむし歯リスクに関与するとされるが、縦断的な検討は限られている。そこで本研究では、日本の中核都市の子どもを対象に、1歳6ヵ月〜3歳6ヵ月のむし歯発症と、1歳6ヵ月時点の授乳状況および萌えている歯の数との関連を縦断的に検討した。 本研究では、大阪府豊中市、豊中市歯科医師会と連携のもと、市の乳幼児健康診査の受診者を対象に調査を行った。2018年4月から2020年3月までの間に、豊中市の3つの保健センターで歯科健診を受けた3歳6ヵ月の子どもを対象とした。1歳6ヵ月時および3歳6ヵ月時に身体計測と歯科健診を行い、萌えている歯の本数やむし歯の有無(dmft指数)を評価した。1歳6ヵ月時には、口腔内細菌の状態を評価するむし歯リスク検査と、授乳状況や食事習慣、就寝時刻などに関する保護者向けアンケートを実施し、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症との関連をロジスティック回帰分析で検討した。 5,161名の子どものうち、3歳6ヵ月時点でむし歯を経験していた子どもは738人(14.3%)であった。内訳は、1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた子どもが50人(1.0%)、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月の間に新たにむし歯を発症した子どもが688人(13.3%)であった。1歳6ヵ月時点ですでにむし歯を有していた50人を除外し、5,111人を対象として、1歳6ヵ月~3歳6ヵ月におけるむし歯発症に関する追加のリスク解析を行った。 出生順位、歯の本数、むし歯リスクの検査結果、食事習慣、授乳・哺乳状況などの潜在的な交絡因子を調整した多変量解析の結果、3歳6ヵ月時点でのむし歯発症は、1歳6ヵ月時に萌えている歯が12本以下であること(オッズ比〔OR〕0.78、95%信頼区間〔CI〕0.63~0.97、P<0.05)と負の関連を示した。一方、17本以上であること(OR 2.06、95%CI 1.12~3.79、P<0.05)、母乳のみで授乳していたこと(OR 2.03、95%CI 1.68~2.46、P<0.001)、および母乳と哺乳瓶の併用(OR 2.45、95%CI 1.36~4.44、P<0.01)は、むし歯発症と有意な正の関連を示した。 著者らは、「本研究は、1歳6ヵ月時点の歯の萌え方や授乳状況が、その後のむし歯発症と関連することを示した。得られた知見から、乳歯が萌え始める早期の段階から歯科受診や適切な口腔ケア、食事習慣に関する指導を行うことで、母乳育児の利点を活かしつつ、将来的なむし歯リスクを低減できる可能性が示唆される」と述べている。 なお、本研究では、歯の本数のみを評価し歯種や萌える順番を評価していない点や、保護者向けアンケートにて夜間授乳や授乳頻度について評価していない点を限界として挙げている。

432.

大動脈弁閉鎖不全症に対してトリロジー経カテーテル大動脈弁を用いたTAVIで予後改善(解説:加藤貴雄氏)

 外科手術リスクが高い症候性の中等度から重度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)患者を対象に、AR専用に設計されたトリロジー経カテーテル大動脈弁を用いたTAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)を実施した研究(ALIGN-AR)である(Makkar RR, et al. Lancet. 2025;406:2757-2771.)。1年半前に短期間成績が報告され(Vahl TP, et al. Lancet. 2024;403:1451-1459.)、今回は1年後の予後を含む形でLancet誌に報告された。 背景として、大動脈弁狭窄症(AS)向けの経カテーテル大動脈弁は、石灰化の少ないARに最適化されておらず、AR専用のプラットフォームを用いたTAVIの安全性、弁機能、転帰を明らかにすることが目的であり、多施設前向き単アーム試験が行われた。システムは、3つの「ロケーター」が本来の弁尖を挟み込むことで、石灰化がなくても正確な位置にしっかりと固定し、また冠動脈へのアプローチがしやすい大きなセル構造である。また、弁周囲からの逆流が少ない特徴がある。 主要評価項目は、術後30日以内の主要有害事象の複合エンドポイント(全死亡、脳卒中、大出血、急性腎障害、主要血管合併症、追加の外科・経皮的処置の必要、新たなペースメーカの植込み、中等度以上のAR)であり、文献に基づく目標30%に対しての非劣性を検討した。また、1年全死亡についても目標25.0%に対して優越性が検討された。30日の有害事象では、24.0%であり非劣性が示され、全死亡1.6%、脳卒中1.7%、出血2.7%、急性腎障害0.7%、主要血管合併症2.4%、追加の外科・経皮的処置の必要3.0%、新たなペースメーカの植込み術21.6%、中等度以上のAR 0.5%の結果であり、1年後の全死亡は7.7%で優越性が示された。心エコーでは、1年後フォローまで左室拡大の改善が見られ症状の改善は2年後まで持続していた。 今回は手術リスクの高い中等症から重症例が入っていたが、2割に新たなペースメーカの植込みが認められ、10%に左脚ブロックを認めたことは、従来のASに対するTAVI治療より高率である。手技の洗練で解決できるか、ARによる心室形態変化のためやむを得ないものなのか、今後も注意深く見守る必要がある。術後の死亡リスク、合併症リスクの高い患者さんに、実行可能な効果的な手段であると考えられる。欧州でCEマークを取得しており、日本への導入およびより長期の成績の発表が待たれる。また、よりリスクの低い患者を対象に、外科的手術と比較するランダム化比較試験「ARTIST」(NCT06608823)が進行中である。

433.

お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第116回

お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?皆さんはお風呂、好きですか? 私は元々そんなに好きではなかったのですが、この年齢になってくると温泉と聞くとテンションが上がります。とくに運動の後に温泉に入ると最高ですよね。緩和ケアでもお風呂はしばしば話題になるのですが、今日はそんなお話です。今日の質問お看取りに対応している施設の方からの問い合わせ。「予後1週間以内が予想される状況の方をお風呂に入れたいが、ダメですよね?」というものでした。元々風呂がすごく好きな方で、「亡くなる前に一度でいいから入浴させたい」と家族から要望があったようです。介護スタッフは不安が強いようですが、こうした場合の対応はどう考えていますか?海外の緩和ケア医や、私の施設に見学に来た海外の医療者と話していると、病院に入浴用のバスタブがあることに驚かれます。海外の医療機関にもシャワーはあるのですが、日本の病院にはバスタブがあり、さらには日常生活動作(ADL)が低下した状態でも入浴できる機械浴の設備まであるのを見ると、非常に驚かれます。在宅医療でも訪問入浴サービスがありますが、よく考えてみたら専用の簡易バスタブを組み立て、専用スタッフが入浴させてくれるってすごいことですよね。ケアの観点から入浴を考えると、やはり入浴できるとできないとでは雲泥の差があります。病状が進行すると入浴できなくなり、清拭中心となることが一般的ですが、一度入浴すれば整容面は格段に改善します。身体症状の強さや患者負担とのバランスですが、やはり可能であれば入浴するというのは、ケアの面からも合理的だと感じます。さて、ここまで話してきて、お看取りが近い病状での入浴について考えてみましょう。私も慢性期病棟や施設スタッフから同様の相談を受けることがあります。スタッフのよくある懸念は、「入浴が負担となって、残された時間が短くなってしまうのではないか?」「入浴中に急変したら、ご家族から責められないか」といったことです。私のスタンスとしては、「『入浴しなかったら病状が変化しない』という保証はないので、入浴がご本人や家族にとって大切ならば、入浴させましょう」とお話しします。そして、「やめておけばよかった」「入浴させたから悪くなった」といった後悔につながらないよう、ご家族を中心に事前の話し合いを行います。実際、終末期の入浴に関する興味深い研究があります1)。私の知り合いの医師が取り組んだものですが、「終末期に入浴しても生存とは関係がなかった」という結果でした。観察研究ですのでこれを根拠に必ず大丈夫とは言えませんが、少なくとも「『終末期の患者に入浴は絶対ダメ』と言わなくてもよいだろう」と背中を押してくれる、臨床的な研究結果です。「入浴させたいけれど、大丈夫?」という質問の背景には、さまざまな不安が存在します。そうした不安の背景を探り、一緒に答えを考えることが良いケアを提供するために重要な姿勢です。今回のTips今回のTips終末期の入浴、周囲との話し合いのうえでチャレンジすることも検討しましょう。1)Oya K, et al. Palliat Med Rep. 2021;2:59-64.

434.

小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025

ガイドライン50点、6,449ページ分の要点がわかる「小児科」66巻12号(2025年12月臨時増刊号)小児診療にかかわる重要なガイドラインについて、作成委員の先生方が、一般小児科医が知っておくべき部分をダイジェスト形式で解説。さらに使用上の注意やガイドライン発表後に得られた知見も併せて紹介します。この1冊で、各領域における最新版のガイドライン情報をアップデート!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025定価9,350円(税込)判型B5判頁数316頁発行2025年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

435.

第299回 日本維新の会、「国保逃れ」の地方議員の中には看護師も、OB橋下徹氏は「身を切る改革が完全に上滑り」とバッサリ

「社会保険料を下げる改革」を最重要政策として前面に押し出してきた日本維新の会で致命的不祥事こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。高市 早苗総理大臣は1月19日、総理大臣官邸で記者会見を行い、1月23日に召集される通常国会の早期に衆議院を解散する意向を正式に表明しました。解散に踏み切る理由については、「前回の衆議院選挙のときには、私、高市 早苗が日本の国家経営を担う可能性すら想定されていませんでした。高市 早苗に国家経営を託していただけるのか。国民の皆様に直接ご判断をいただきたい」と語りました。政党ごとの政策の違いではなく、高市氏が総理大臣に相応しいかどうかを選ぶのだそうです。アイドルの人気選挙でもあるまいに、マスコミの多くは「大義なき解散」「解散権の乱用」といった言葉を使い厳しく批判しています。1月20日付の朝日新聞朝刊は、「複数の官邸関係者によると、首相が解散を決めた最大の理由は、年明けの段階で国民民主党との(連立の)交渉が行き詰まったことにある」と書いています。日本維新の会との連立だけでは政権基盤が脆弱過ぎるため、高市人気が続くうちに解散によって与党の議席数を大幅に増やしておきたい、ということのようです。しかし、年末から年初にかけて日本維新の会において致命的とも言える不祥事が発覚、同党が打ち出すさまざまな改革の真剣さに疑念が生じる事態となり、今の連立与党も決して盤石とは言えないようです。昨夏の参院選以来、支払い能力に応じた応能負担の徹底を図る「社会保険料を下げる改革」を最重要政策として前面に押し出し、「第286回 連立に向けた与野党の最低パフォーマンスのあげく、高市早苗総理大臣の誕生へ 連立参加で維新の社会保障政策案はどこまで実現できる?」でも書いたように、10月20日に交わされた自民党との連立政権合意書で「社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」と大々的にぶち上げてきた日本維新の会にとっての“致命的不祥事”とは、所属地方議員による「国保逃れ」問題です。これは、年金保険料未払い、脱税、生活保護不正受給にも匹敵する大きな問題と言えます。しかし、衆院解散報道や、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙報道に紛れて大手マスコミの扱いも相対的に小さい印象です。ダブル選挙の方針発表は「国保逃れ」問題の批判の矛先をかわすための姑息な戦術と見る向きもあります。一般社団法人理事として役員報酬月1万1,700円を受け取り、その金額を基準に安い社会保険料だけを支払い「国保逃れ」とは、日本維新の会の所属地方議員が国民健康保険料の支払いを逃れるため、負担の低い社会保険の加入対象となる一般社団法人理事に就任していたことが発覚した問題です。2025年12月10日の大阪府議会で、自民党の占部 走馬府議が「維新所属の地方議員が一般社団法人の理事となり、国民健康保険から社会保険に切り替えて保険料負担を不当に減らしているのではないか」と一般質問で問題提起したことが発覚のきっかけとなりました。日本維新の会は報道と追及を受け、所属議員を対象とした実態調査を実施し、年が明けた1月7日に中間報告を発表、兵庫県議の長崎 寛親氏、赤石 理生氏、兵庫県尼崎市議の長崎 久美氏、神戸市議の南野 裕子氏の計4人が、一般社団法人「栄響連盟」の理事として議員報酬より著しく低額な役員報酬(月1万1,700円、社会保険料は最低等級の月額約1万1,500円)を受け取り、その金額を基準に安い社会保険料だけを払っていたことが確認されました。中間報告の報告書では「議員報酬よりも著しく低額な役員報酬を基準とした社会保険料しか支払っておらず、議員報酬を基準とした国民健康保険料よりも低額な保険料となっていた外形的事情からすると、結果として『応能負担』という現行制度の趣旨を逸脱している。これは、国保逃れの脱法行為と捉えられるものであり、国民の納得感は得られない」と結論付けました。関西の地方議員ら6人を除名処分に中間報告から8日後の1月15日、日本維新の会は追加調査の結果も踏まえ、関西の地方議員ら6人を除名処分にしました。除名処分となったのは前述の4議員に加え、大阪市議の松田 昌利氏、元杉並区議の松本 光博氏を加えた6人です。松田氏は栄響連盟と同じスキームと見られる一般社団法人「フリーランスジャパン」に加入していたことが判明したため、松本氏は東京維新の会のLINEグループに「国保料を下げる提案」と投稿、個別に連絡のあった特別党員に対して、自身が設立した合同会社名義で、「国保料負担に苦しんでいる議員の皆様の国保料負担を下げる改革」と題するファイルを送信して勧誘を行っていたことが発覚し、除名となりました。同日、吉村代表は府知事の定例会見で、「一生懸命まじめに働いて国保を納めている方にとって許されないことだ」とし、「代表として深くおわび申し上げる」と陳謝しました。806人中364人が社会保険に加入の謎調査結果の報道等を読んで、私が1つ疑問に思ったのは、特別党員806人に対してアンケートとヒアリングなどを通して行った調査結果の中で、共済組合加入となる首長19人を除いて、社会保険加入者が364人もいた、という事実です。彼らは議員報酬よりも高い報酬を給与や役員報酬から得ていたのでしょうか?議員報酬がありながら社会保険に加入している時点で、「何らかの社会保険料負担逃れをしているのでは」と考えるのは、うがった見方でしょうか?仮に、日本維新の会に限らず、国会議員含め多くの議員が当たり前に行ってきた“脱法行為”ならば、それはそれで党を超えた大問題ということになります。除名処分となった尼崎市議は看護師、夫婦で国保逃れもう1点驚いたのは、除名処分となった尼崎市議の長崎 久美氏が看護師であることです。現役世代の負担軽減を訴え、医療制度改革にも熱心な日本維新の会の議員で、かつ医療職に就いていたことのある人物が国保逃れとは、あきれるしかありません。しかもこの人の夫は同じく除名処分となった兵庫県議の長崎 寛親氏です。国保逃れや社会保険料の脱法的負担軽減は、ほかの保険加入者の負担増につながることを認識しないままに、議員夫婦は「現役世代の負担軽減」を世の中に訴えていたのでしょうか。やれやれですね。なお、朝日新聞等の報道によれば、日本維新の会は15日付で該当議員を除名処分にし、地方議員には議員辞職を求めましたが、1月19日時点では応じていないとのことです。橋下氏、松井氏の歴代代表も強く批判日本維新の会の議員の「国保逃れ」について、同党のOBたちも厳しい批判をしています。12月25日付の「カンテレNEWS」(関西テレビ)の報道によれば、初代代表の橋下 徹氏は国保逃れ問題について、「(維新の)『身を切る改革』というスローガンが完全に上滑りしている。禁止ルールがなければ“全部適法”が今の雰囲気」だと厳しく非難したとのことです。そして、「藤田共同代表の公金による身内企業への発注問題で、藤田さんや吉村さんは『実態があるから適用』とずっと言ってました。禁止ルールがなければ、『全部適法』っていうのが維新の今の雰囲気なのかなと。(今回の国保逃れについても)違法ではないが、禁止ルールがなくてもやっちゃいけないことはダメでしょっていうのが政治家だし、そこを厳しく言ってきたのが維新だと思う」と党幹部の姿勢に苦言を呈しています。橋下氏はまた、党の中間報告が出た直後の1月11日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演、この問題について改めて「維新のカネにまつわる問題の根源は、禁止のルールがなければいい、違法でなければいいんだという意識がはびこっていること」と指摘、「組織の抜本的意識改革が必要」とも語っています。一方、2代目代表の松井 一郎氏は1月8日放送の毎日放送のテレビ番組で、国保逃れ問題について「納税者の感覚と政治・行政がずれていることを正していこうというのが維新の理念なのに、完全に納税者の目線、市民の感覚とずれた」と指摘、対象の議員について「ほんとセコい」「早くバッジを外すべき」と批判したとのことです。日本維新の会としては、衆議院選挙のドタバタに乗じて、国保逃れ問題がうやむやになることを期待しているのかもしれません。しかし、同党がこれからも社会保障改革をうたっていくのであれば、もっと突っ込んだ調査と処分とともに、政治家が国保逃れや社会保険料の脱法的負担軽減ができないような徹底策を打ち出してもらいたいものです。

436.

日本人市中肺炎、β-ラクタムへのマクロライド上乗せの意義は?

 市中肺炎(CAP)の治療では、β-ラクタム系抗菌薬が中心となるが、とくに重症例ではマクロライド系抗菌薬が併用されることがある。ただし、マクロライド系抗菌薬の併用が死亡率の低下に寄与するか、依然として議論が分かれている。本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』では、重症例に対してはマクロライド系抗菌薬の併用が弱く推奨されている一方で、非重症例に対しては併用しないことが弱く推奨されている1)。そこで、中島 啓氏(亀田総合病院 呼吸器内科 主任部長)らの研究グループは、市中肺炎の多施設共同コホート研究の2次解析を実施し、マクロライド系抗菌薬の併用の有無別に院内死亡などを検討した。その結果、β-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法は、β-ラクタム系抗菌薬単剤療法と比較して、院内死亡率および肺炎治癒率に差は認められなかった。本研究結果は、BMC Infectious Diseases誌オンライン版2025年12月29日号で報告された。 研究グループは、Adult Pneumonia Study Group Japan(APSG-J)により実施された多施設共同コホート研究のデータの2次解析を実施した。対象は、2011年9月~2014年9月に国内4施設(江別市立病院、亀田総合病院、近森病院、十善会病院)でCAPと診断された15歳以上の患者3,470例とし、2,784例を解析対象とした。対象を初期治療としてβ-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用する群(併用群)、β-ラクタム系抗菌薬単剤を用いる群(単剤群)の2群に分類して評価した。主要評価項目は観察期間終了時の転帰(院内死亡、肺炎治癒)とし、副次評価項目は抗菌薬投与期間、入院期間とした。解析には、欠測を考慮して多重代入法を用い、傾向スコアマッチングにより患者背景を調整した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は2,784例(併用群306例、単剤群2,478例)であった。・傾向スコアマッチング後(各群298例)、院内死亡率は併用群5.06%、単剤群4.98%であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:0.00%、95%信頼区間[CI]:-3.73~3.71)。・肺炎治癒率は併用群91.79%、単剤群91.69%であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:0.00%、95%CI:-4.48~4.82)。・重症CAP(CURB-65スコア3点以上)のサブグループ解析においても、院内死亡率は併用群12.00%、単剤群13.33%であり、両群間に差はみられなかった(群間差:0.00%、95%CI:-20.00~16.13)。・抗菌薬投与期間(8.97日vs.9.93日[群間差:-0.99、95%CI:-8.20~0.10])および入院期間(17.72日vs.20.30日[群間差:-2.59、95%CI:-6.99~1.45])についても、両群で同様であった。・本コホートにおける非定型病原体の検出率は、Mycoplasma pneumoniae 1.9%、Chlamydia pneumoniae 0.2%、Legionella pneumophila 0.1%と低率であった。 本研究結果について、著者らは観察研究のため未調整の交絡が存在する可能性があること、イベントの発生率が低く検出力不足の可能性があること、施設数が少なく症例数が1施設に偏っていたこと、観察期間が短いことなどを限界として挙げつつ「CAP患者全体および重症例において、併用群と単剤群で院内死亡率および肺炎治癒率が同様であった。そのため、臨床医は有害事象や耐性菌の発現などの潜在的なリスクとベネフィットを慎重に検討すべきである」と結論を述べた。

437.

高齢者におけるCDK4/6阻害薬の毒性、薬剤別に調査

 高齢者におけるCDK4/6阻害薬の安全性は十分に検討されていない。トルコ・Koc大学のBahadir Koylu氏らは、FAERSデータベースの分析を通じて、高齢者におけるCDK4/6阻害薬(アベマシクリブ、パルボシクリブ、ribociclib)に関連する毒性を調査したところ、腎毒性、肺毒性、心毒性、神経認知毒性の発現率が高く、アベマシクリブは腎毒性・肺毒性、パルボシクリブは神経毒性・血栓性/出血性毒性、ribociclibは腎毒性・心毒性との関連が認められた。Breast誌2025年12月29日号に掲載。 この後ろ向き薬物安全性調査は、CDK4/6阻害薬が主に疑われる薬剤として記録された乳がん女性患者4万9,223例(18~100歳)を同定し、4つの年齢層(65歳未満、65~74歳、75~84歳、85歳以上)に層別化した。年齢関連の差異を検出するため、年齢層別多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・アベマシクリブでは、高齢のサブグループで急性腎不全および間質性肺疾患がより頻繁に報告された。消化器系および血液系の有害事象は加齢に伴い報告頻度が減少した。・パルボシクリブでは、認知症、聴覚・前庭障害、水晶体疾患、関節炎、血栓性イベント、中枢神経系出血性合併症のオッズが年齢とともに有意に増加した。・ribociclibでは、高齢のサブグループで急性腎不全、慢性腎臓病、不整脈、虚血性心疾患の報告が増加した。肝臓関連有害事象の報告頻度は加齢とともに減少した。

438.

若者の精神疾患の世界的負担、30年間の変化と今後の予測

 精神疾患は、世界の非致死性疾患負担の主な原因の1つであり、小児、青年、若者の間で有病率が上昇している。中国・Northwest Women's and Children's HospitalのWei Liu氏らは、GBD 2021データを用いて、9つの精神疾患について、1990~2021年の地域、年齢、性別による推定値を分析し、2050年までの負担を予測した。Frontiers in Public Health誌2025年9月16日号の報告。 年齢調整有病率(ASPR)および障害調整生存年数率(ASDR)の平均年変化率(AAPC)および年変化率(APC)を算出した。分解分析、不平等分析、フロンティア分析、比較リスク分析、ベイズ統計を用いた年齢・時代・コホート分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1990年と比較し、2021年の世界の負担は若年層で有意に増加した。【ASPR】AAPC:0.15、95%信頼区間(CI):0.14~0.16【ASDR】AAPC:0.40、95%CI:0.29~0.51・若年層における世界的負担は、2019年以降に急増した。【ASPR】APC:4.74、95%CI:4.55~4.93【ASDR】APC:6.64、95%CI:4.88~8.42・男性は女性よりも負担が大きく、年齢層によって性別特有のパターンに、ばらつきが見られた。・負担は、社会人口統計指数(SDI)により大きく異なり、SDIの高い地域では最も高かった(ASPR:1万2,913.13、95%不確実性区間[UI]:1万1,135.82~1万4,874.98、ASDR:1,750.41、95%UI:1,253.46~2,328.87)。・9つの精神疾患の負担の変化は、世界レベル、地域レベル、国レベルで異なっていた。・分解分析では、有病率と障害調整生存年数(DALY)の変化は、主に人口増加(各々、84.86%、57.92%)に起因しており、SDIの高い地域で最も顕著な改善が見られた。・フロンティア分析では、高所得国・地域では負担軽減の可能性があることが示唆された。・世界的に、不安症、うつ病、特発性発達性知的障害の主なリスク因子として、小児期の性的虐待、いじめ、親密なパートナーによる暴力、鉛曝露が特定された。・2050年までに精神疾患の負担は減少すると予測された(人口10万人当たりASPR:6,120.71、95%CI:3,973.57~8,267.85、人口10万人当たりASDR:844.71、95%CI:529.48~1,159.94)。 著者らは「2050年までに精神疾患の負担は減少すると予測されているものの、世界の精神疾患の負担は増加しており、人口間で大きな格差が認められた。近年の急増傾向により、世界的な予防の強化と公平な医療の拡充が求められている」とまとめている。

439.

zanidatamab、HER2陽性胃がん1次治療の新たな選択肢となるか(HERIZON-GEA-01)

 BeOne(旧:BeiGene)は2026年1月6日にプレスリリースを出し、同社が開発する抗HER2二重特異性抗体zanidatamabとPD-1阻害薬チスレリズマブに化学療法を加えた併用療法が、HER2陽性胃がんの1次治療として有用な結果を示したと発表した。HER2陽性胃がん1次治療は長くトラスツズマブ+化学療法が標準治療だったが、新たな選択肢となる可能性がある。日本も参加するこのHERIZON-GEA-01試験の中間解析結果は、2026年1月8~10日に開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026)でも報告されている。・試験デザイン:国際共同非盲検第III相試験・対象:未治療の進行・転移、HER2陽性胃/胃食道腺がん:914例・試験群:zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ:302例     zanidatamab+化学療法:304例・対照群:トラスツズマブ+化学療法(トラスツズマブ群):308例・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は26ヵ月だった。・PFS中央値は、トラスツズマブ群8.1ヵ月に対し、zanidatamab+化学療法群は12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、p<0.0001)、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群は12.4ヵ月(HR:0.63、p<0.0001)だった。・OS中央値は、トラスツズマブ群19.2ヵ月に対し、zanidatamab+化学療法群24.4ヵ月(中間解析では統計的有意差なし)、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群26.4ヵ月(HR:0.72、p=0.0043)だった。・PFSおよびOSの有益性はPD-L1発現レベルに関係なく、一貫して認められた。なお、登録患者のおよそ3分の1がPD-L1<1%であった。・ORRはzanidatamab+化学療法群が69.6%、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群が70.7%、DOR中央値はzanidatamab+化学療法群が14.32ヵ月、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群が20.7ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAEs)はトラスツズマブ群の59.6%、zanidatamab+化学療法群の59.0%、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群の71.8%で発生した。主な有害事象は下痢、低カリウム血症、貧血などだった。 同社はリリース内のコメントで「HERIZON-GEA-01試験の結果は有望であり、zanidatamab+化学療法+チスレリズマブ群のOS中央値は2年を超え、転移HER2陽性胃がんの治療における大きな進歩を示した。HER2陽性胃がんに対する免疫チェックポイント阻害薬のこれまでの研究とは異なり、チスレリズマブの追加は、PD-L1が1%未満の場合でも有意な活性を示し、このサブグループに対する潜在的な新たな治療選択肢を示唆するとともに、PD-L1が1%以上の患者の選択肢を広げるものだ」とした。

440.

ムコ多糖症II型、新たな酵素補充療法が有望な可能性/NEJM

 ムコ多糖症II型(MPS II、ハンター症候群)は、イズロン酸-2-スルファターゼ活性の欠損によって発生する進行性のX染色体連鎖型のライソゾーム病で、神経系を含む臓器機能障害や早期死亡をもたらす。tividenofusp alfaは、イズロン酸-2-スルファターゼと改変トランスフェリン受容体(TfR)結合Fcドメインから成る、血液脳関門の通過が可能な融合タンパク質で、MPS IIの神経学的および末梢症状の治療を目的に開発が進められている新たな酵素補充療法(ERT)である。米国・University of North Carolina School of MedicineのJoseph Muenzer氏らは、小児男性患者を対象に行った、本薬のヒト初回投与の臨床試験の結果を報告した。NEJM誌2026年1月1日号掲載の報告。国際的な非盲検第I/II相試験 研究グループは、tividenofusp alfaの安全性および中枢神経系、末梢症状に対する効果の評価を目的に、国際的な非盲検第I/II相試験を実施した(Denali Therapeuticsの助成を受けた)。年齢18歳までのMPS IIの男性患者を対象とした。 tividenofusp alfa(週1回、静脈内投与)を24週間投与した後、80週間の安全性に関する延長試験と157週間の非盲検延長試験を行った(全261週)。 47例(用量設定コホート20例、15mg/kg投与コホート27例)を登録した。年齢中央値は5歳(四分位範囲:0.3~13)だった。44例(94%)が神経症状を伴うMPS IIで、3例(6%)は神経症状を伴わないMPS IIであり、15例(32%)がERTを受けた経験があった。注入反応の頻度が高いが管理可能 47例の全例で、3段階の試験期間中に少なくとも1件の有害事象を認め、最も高い重症度は、中等度が68%、重度が28%であった。死亡例の報告はなかった。治療関連の重篤な有害事象は3例(注入反応[infusion-related reaction]2例、貧血1例)に認めたが、これらの患者はすべて治療を継続した。 41例(87%)で、試験期間中に少なくとも1件の注入反応が発現し、最も頻度の高い有害事象であった。中等度が55%、重度が6%だった。注入反応の症状では、発熱、蕁麻疹、嘔吐の頻度が高く、ルーチンに前投薬を行ったにもかかわらず40%以上の参加者に発現した。 注入反応は全般に、担当医の判断による前投薬、注入速度の減速、減量によって管理可能であった。注入反応の発生は時間の経過とともに減少し、グルココルチコイドを含む前投薬も試験の進行に伴い減少した。ヘパラン硫酸値が低下、適応行動、肝臓容積も改善 その他の一般的な有害事象として、上気道感染症(60%)、発熱(55%)、咳嗽(47%)、嘔吐(43%)、下痢(40%)、発疹(40%)、貧血(38%)、新型コロナウイルス感染症(38%)、鼻漏(38%)を認めた。ベースライン時に19%(47例中9例)で貧血がみられたが、貧血を理由に試験を中止した参加者はいなかった。また、尿中総グリコサミノグリカン(GAG)値が悪化することはなく、改善の傾向を示した。 バイオマーカーについては、ベースラインと比較した24週時の脳脊髄液(CSF)中および尿中のヘパラン硫酸が、それぞれ91%および88%減少した。ヘパラン硫酸濃度の低下は153週目まで持続し、適応行動は安定化または改善した。ベースライン時に、24%(21例中5例)で肝臓容積に異常を認めたが、24週時には、これらを含む全例(18例中18例)で正常化または正常を維持していた。 著者は、「MPS II小児男性患者に対する週1回15mg/kgの静脈内投与によるtividenofusp alfa治療では、ERTの既知のリスクである注入反応を含む有害事象が高頻度に発現した」「中央値で2年間の治療により、基質の蓄積および神経細胞損傷の、中枢神経系および末梢のバイオマーカーが減少傾向を示し、臨床エンドポイント改善の可能性が示唆された」としている。

検索結果 合計:35608件 表示位置:421 - 440