サイト内検索|page:22

検索結果 合計:36478件 表示位置:421 - 440

421.

慢性片頭痛、最も有望な治療薬はCGRP標的治療薬か

 慢性片頭痛は治療が難しいことがあるが、慢性片頭痛の成人患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を解析した大規模レビューで、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)またはその受容体を標的とする新しいクラスの治療薬が、最も有効である可能性が示された。CGRP標的治療薬には、eptinezumab(商品名Vyepti)やアトゲパント(商品名Qulipta、アクイプタ)などが含まれる。マクマスター大学(カナダ)Michael G. DeGroote Institute for Pain Research and CareのMalahat Khalili氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に5月5日掲載された。 CGRPは脳や神経系に存在するポリペプチドで、血管拡張作用を持ち、片頭痛時に増加して痛みや炎症に関与すると考えられている。CGRP標的治療薬は、CGRPまたはその受容体を標的とすることで、片頭痛発作を抑制するよう設計されている。 今回の研究でKhalili氏らは、慢性片頭痛の成人患者を対象とした43件のRCT(対象者の総計1万4,725人)のデータを解析して、慢性片頭痛に対する予防薬の効果と忍容性を比較検討した。 その結果、高~中等度の確実性を有するエビデンスにより、eptinezumabは月間片頭痛日数を2.34日、エレヌマブは2.08日、フレマネズマブは1.77日、ガルカネズマブは2.00日、アトゲパントは2.10日、それぞれプラセボと比べて減少させることが示された。これらの薬剤はいずれもCGRP標的治療薬で、注射剤、点滴静注剤、経口薬として使用されており、従来薬と比べて忍容性も良好だった。一方、ボツリヌストキシン(商品名ボトックス)は、月間片頭痛日数をわずかに(1.34日)減少させる可能性があるものの、エビデンスの確実性は低く、有害事象による治療中止リスクの上昇が示された。さらに、リメゲパントは有効ではない可能性が示唆されたほか、トピラマート、バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)、プロプラノロールなどの従来薬については、研究数が少なくバイアスリスクも高かった。 研究グループは、CGRP標的治療薬に関する独立した研究を実施して、特に長期的な安全性や治療継続性について検討する必要があるとの見方を示している。また、新しい治療法が最も有望であるように見える一方で、適切な治療は、患者個々のニーズや希望、費用などによって異なると指摘し、最適な治療法を見つけるには医療従事者と相談することを推奨している。

422.

1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

423.

タイムアウトマーケットに行ってきた!【Dr. 中島の 新・徒然草】(633)

六百三十三の段 タイムアウトマーケットに行ってきた!良い季節になりましたね。最近は花粉に悩まされることもありません。もうすぐ梅雨の入りですが、大阪では6月上旬~中旬になるとのこと。雨の合間を縫って洗濯物を干す必要があります。さて、今回は梅田の「グラングリーン大阪」というビルの地下にある「タイムアウトマーケット」についてお話ししましょう。というのも、梅田北の再開発エリアで学会が開催されることが多くなったからです。タイムアウトマーケットは海外発のフードコート。アジアでは大阪店が最初にオープンしました。ところが、できたばかりなのに閑古鳥が鳴いているなどとYouTubeなどで揶揄されています。その理由は価格設定が強気すぎるからとのこと。オープンからまだそれほどたっていませんが、すでに撤退した店舗もあるようです。果たしてそんなに閑散としているのか?言われるほど無茶苦茶な値段なのか?平日の昼に梅田に行く用事があったので、その帰りに寄ってみました。時刻は14時30分ごろ。普通のフードコートでも客が少ない時間帯です。で、巨大な空間に自分1人かと思ったら、結構な人数が入っていました。少なめではありますが、まったく人がいないわけではありません。気になる値段のほうは、11~15時までのランチの最低が1,500円くらい。高めとはいえ、昨今の価格設定といったらこんなものでしょう。種類は、肉、メキシコ料理、英国料理、カレー、ハンバーガー、うどん、スイーツなど。なんでも、関西の有名レストランがフードコート形式で出店しているのだとか。さすがに1,500円のうどんはちょっと躊躇しますが、カツカレーなら試してみようかなと思います。フードコートのいいところは、席がいくらでも空いているということ。1人でも全然平気なこと。グループで行って、それぞれに好きな物を注文できること、などです。私は2回行って、それぞれカツカレーとハンバーガーを食べてみました。現金は使えないとのことで、使用したのは交通系ICカードです。確かに1,500円の味はしました。また行きたいとも思います。ただ、タイムアウトマーケットに行くのが難しいのは事実。もともと梅田駅周辺の地下は迷路でしたが、再開発で大変なことになっています。それを楽しもうというのであれば悪くありません。が、日差しや雨を避けて行こうとすると難しいです。正しい経路がわかっていれば、距離的には全然大したことはないのですが。また、このタイムアウトマーケットを取り巻くように、食べ物屋がたくさんありました。同じくらいの値段のする鮨とかお好み焼きとか焼き鳥屋とか。そちらのほうもカジュアルな店構えで結構にぎわっていました。これらの店も探検しなくてはいけませんね。そういえば、内科外来で隣の診察室にいる先生が学会を主催していましたが、その会場がグラングリーン大阪でした。ホームページの会長あいさつには「大阪の新名所を楽しんでください」とありましたが、そのとおりだと思います。学会場を探している先生方、この辺りも有力候補ですよ。ということで、大阪での学会に参加したら、ぜひ時間を見つけて再開発エリアに足を運んでみてください。最後に1句 梅雨入りの ダンジョン歩き 汗をかく

424.

第63回 「自宅が病院になる」時代へ ― Hospital at Homeとは何か

高齢化が進む世界で、いま注目を集める医療提供モデルがあります。「Hospital at Home(以下、HaH)」と呼ばれる、自宅にいながら入院相当の急性期医療を受けられる仕組みです。日本ではまだなじみの薄い言葉かもしれませんが、欧米ではすでに一定の実装が進んでいます。私の勤めるマウントサイナイ医科大学にもHaHのチームがあり、救急外来からHaHに入院させることもしばしばです。今回ご紹介するのは、HaHが従来の入院医療と比べて高齢者にとって本当に有効で安全なのかを、ランダム化比較試験11件・計3,301例を統合して検証した系統的レビュー・メタ分析です1)。本稿ではまずHaHの概念を整理し、論文の知見をご紹介したうえで、日本社会への適用可能性について考えてみたいと思います。Hospital at Homeとはどのような仕組みかHaHとは、本来であれば急性期入院が必要な患者さんに対し、医師・看護師・理学療法士などの多職種チームが患者さんのご自宅へ出向き、「病院レベルの治療」を自宅で提供する仕組みです。点滴投与、バイタルサインの遠隔モニタリング、計画的な訪問診療などが組み合わされ、自宅という環境で入院に匹敵する医療が展開されます。入り口は大きく2通りに分かれます。救急外来などから直接ご自宅で治療を開始する「入院回避型(admission avoidance)」と、いったん病院で安定化させた後に早期退院し、自宅で治療を継続する「早期退院型(early discharge)」です。「住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの高齢者の願いに応えつつ、院内感染やせん妄、廃用症候群といった「入院に伴う合併症」を減らすことが期待されています。私の所属する医療機関でも、両パターンの利用があります。メタ分析が明らかにしたこと本研究は、PubMedやCochrane Libraryなど主要なデータベースを2024年4月まで網羅的に検索し、65歳以上(または65歳以上が80%以上を占める集団)を対象とする11件のRCTを統合しました。結果は、なかなか印象的なものでした。在院日数はHaH群で平均およそ2.1日短縮し、総医療費もHaH群で有意に少なく、再入院リスクは18%の低下が示されました。さらに、手段的日常生活動作(IADL)で測る生活機能は、HaH群でわずかながら有意に改善していました。一方で、死亡率や有害事象(転倒・せん妄など)の発生頻度には両群間で差がありませんでした。安全性を損なうことなく、効率と機能予後の双方で利益があった、と読み取れる結果です。ただし、いくつかの限界もあります。再入院や費用に関する研究間のばらつきが大きく、HaHのモデル設計、医療システムの違い、患者選定の基準の違いなどが結果に大きく影響している可能性があります。著者ら自身も、対象研究の大半が西側先進国で行われており、文化や制度の異なる地域での適用可能性は不確かである、と慎重に述べています。日本に活かせるのかそれでは、HaHは日本に活かせるのでしょうか。日本は世界に類を見ない超高齢社会であり、急性期病床の逼迫、医療費の増大、そして「最期は住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの声、いずれも切実な課題です。訪問診療・訪問看護・地域包括ケアという在宅医療の制度的基盤も整いつつあり、HaHを取り入れる素地は決して悪くないと考えられます。一方で、慎重に考えるべき点も少なくありません。HaHは「入院に代わる急性期治療」であり、24時間体制の急変対応、遠隔モニタリング、多職種連携が前提となります。日本の在宅医療は安定期の慢性管理や看取りを中心に発展してきた経緯があり、急性期医療を在宅で提供する人員配置や診療報酬体系は、現状のままでは十分とは言えないでしょう。家族介護者の負担、住環境、地域差といった現場の事情も無視できません。それでもなお、入院に伴う合併症を抑え、機能と尊厳を守りつつ医療資源を効率化できる可能性は、日本の医療にとって大きな示唆を含んでいるとも思います。本論文の知見を踏まえながら、日本の文脈に合った「日本版HaH」の検証研究や制度設計を進めていくこと。それが、これからの日本の医療界に課された大切な宿題と言えそうです。 1) He H, et al. Efficacy and Safety of Hospital-at-Home versus Traditional Hospital Care in Older Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Gerontology. 2026;72:384-396.

425.

軽度認知障害患者は1年でどの程度認知機能が低下するのか?

 中国・黒龍江中医薬大学のMingyang Liu氏らは、軽度認知障害(MCI)患者における認知機能低下の軌跡を調査し、関連するリスク因子を特定するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年4月13日号の報告。 対象は、2021~24年にMCIと診断された高齢患者500例。MCIから認知症への進行に関連するリスク因子を特定するため、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。認知機能低下の年間進行率は、最終スコアとベースラインスコアの差をフォローアップ期間で割って算出し、関連因子の特定には多変量線形回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値36ヵ月(四分位範囲:24~48ヵ月)の間に、78例(15.6%)で認知症への進行を認めた。・SLUMSスコアの年間平均低下率は0.8ポイント/年(95%信頼区間[CI]:0.6~1.0、p<0.001)、MoCAスコアの年間平均低下率は0.7ポイント/年(95%CI:0.5~0.9、p<0.001)であった。・特定の認知領域については、RAVLTスコアの年間平均低下率は1.2ポイント/年(95%CI:0.9~1.5、p<0.001)、CDTスコアの年間平均低下率は0.3ポイント/年(95%CI:0.2~0.4、p=0.002)であった。 著者らは「本研究により、高齢、男性、低学歴、高血圧、ベースライン時のSLUMSスコアの低さが、高齢MCI患者における認知機能低下の加速と関連していることが示唆された。早期のリスク層別化は介入戦略に役立つ可能性があるが、因果関係の推論には限界があるため、今後のプロスペクティブ研究が必要とされる」としている。

426.

ASCO2026スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 5月29日~6月2日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO2026(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国・シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO 2026のスタートに合わせて、7,000を超える演題の中から、複数のエキスパートが専門分野の注目演題をピックアップした特設サイトをオープンした。 「ASCO2026特設サイト」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」のカテゴリに分け、エキスパートのコメントとともに、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを掲載している。 エキスパートが選定した、がん種別の注目演題の一部は以下のとおり。このほかにも多くのユーザーが注目すべき演題を紹介している。【肺がん】山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)によるまとめ水柿 秀紀氏(北海道がんセンター 呼吸器内科)によるまとめ【消化器がん】砂川 優氏(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)によるまとめ中村 将人氏(相澤病院 がん集学治療センター 腫瘍内科)によるまとめ【乳がん】寺田 満雄氏(名古屋市立大学 乳腺外科)によるまとめ【泌尿器がん】三好 康秀氏(足柄上病院 泌尿器科)によるまとめ―――――――――――――――――――Doctors’Picks ASCO2026 特設サイト――――――――――――――――――― 学会終了後は、聴講レポートやまとめ記事なども続々とアップしていく予定である。

427.

爪白癬への外用抗真菌薬、反応不良と関連する因子は/岩手医科大ほか

 外用抗真菌薬は爪白癬に対して広く用いられているが、患者内相関を考慮し、治療反応に関する病変レベルの予測因子が定量化されたデータはほとんどない。岩手医科大学の井上 剛氏らは、爪白癬患者の治療反応とその予測因子について、一般化推定方程式(GEE)を用いた解析を実施した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2026年5月17日号への報告より。 本研究では、2017~21年にルリコナゾール爪外用液5%またはエフィナコナゾール爪外用液10%で治療された爪白癬患者を後ろ向きに検討し、66例について計80病変を特定した。治療効果は、患者IDによりクラスター化し、交換可能な作業相関構造とロバスト(サンドイッチ)標準誤差を適用した病変レベルのGEEを用いて評価した。改善率(連続変数)は線形GEE、完全治癒(あり/なし)はロジスティックGEEを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・母趾の爪の病変は、一貫して治療反応不良と関連しており、低い改善率(β=-0.461、標準誤差[SE]=0.145、p=0.0015)、低い完全治癒のオッズ(オッズ比[OR]:0.07、95%信頼区間[CI]:0.01~0.37、p=0.002)を示した。・ベースラインの爪に厚みがあるほど、完全治癒のオッズが低かったが(OR:0.17、95%CI:0.07~0.42、p<0.001)、改善率と有意な関連はみられなかった(β=-0.089、SE=0.058、p=0.125)。・ルリコナゾール爪外用液5%の使用は、エフィナコナゾール爪外用液10%と比較して、低い改善率(β=-0.310、SE=0.154、p=0.044)および低い完全治癒のオッズ(OR:0.07、95%CI:0.01~0.60、p=0.015)と関連していた。 著者らは、後ろ向きの非無作為化研究であるという本研究の限界について挙げたうえで、「母趾の爪の病変は、局所療法への反応不良の予測因子であることが示され、爪の厚みが増すととくに完全治癒が妨げられる可能性が示唆された」とまとめている。

428.

難治性肺MAC症へのベダキリン、培養陰性化を改善(TMC207NTM3002)/ATS2026

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とする肺MAC症では、多剤併用療法を6ヵ月以上実施しても細菌学的効果が不十分な患者を難治例としている。難治性肺MAC症の治療選択肢は限られている。ジアリルキノリン系抗菌薬であるベダキリンは、多剤耐性結核に対する併用療法の一部として用いられており、MACに対してin vivoでの活性も報告されている。そこで、難治性肺MAC症に対するベダキリンの有効性および安全性を検討することを目的として、国際共同第II/III相無作為化比較試験「TMC207NTM3002試験」が実施された。その結果、24週時点の喀痰培養陰性化率は、対照群と比較してベダキリン群で有意に高かった。米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、森本 耕三氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器センター)が本結果を発表した。試験デザイン:国際共同無作為化非盲検第II/III相試験(日本、韓国、台湾で実施)対象:肺MAC症に対する標準治療を6ヵ月以上実施しても培養陽性が持続する成人肺MAC症患者129例試験群(ベダキリン群):ベダキリン+クラリスロマイシン+エタンブトールを48週間 65例対照群:リファンピシンまたはリファブチン+クラリスロマイシン+エタンブトールを60週間(24週時で培養陰性化未達成の患者はベダキリンにクロスオーバー可) 64例評価項目:[主要評価項目]24週時点の喀痰培養陰性化率(25日以上間隔をあけた喀痰培養で3回連続して陰性)[副次評価項目]喀痰培養陰性化までの期間(陰性化[3回連続の陰性]の時点は1回目の陰性が認められた時点と定義)、薬物動態、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむね均衡がとれていた。年齢中央値はベダキリン群67歳(範囲:44~79)、対照群62歳(同:32~79)、女性の割合はそれぞれ80.0%、84.4%であった。日本からの登録はそれぞれ90.8%、92.2%であった。・ベースラインの原因菌種は、ベダキリン群ではM. avium 83.1%、M. intracellulare 15.4%、M. aviumおよびM. intracellulare 1.5%で、対照群ではそれぞれ70.3%、28.1%、1.6%であった。・24週時点の喀痰培養陰性化率は、ベダキリン群24.6%、対照群4.7%であった。群間差は19.7%ポイントであり、ベダキリン群が有意に高かった(95%信頼区間[CI]:8.3~31.2、p=0.002)。・24週までの喀痰培養陰性化までの期間についても、ベダキリン群は対照群より短かった(p<0.001、層別log-rank検定)。喀痰培養陰性化例における陰性化までの期間中央値は、ベダキリン群43日、対照群66.5日であった。・薬物動態解析において、ベダキリン群は対照群と比較してクラリスロマイシン濃度が高かった。・24週までの試験治療下における有害事象(TEAE)は、ベダキリン群93.8%、対照群76.6%に発現した。治療関連有害事象はそれぞれ32.3%、18.8%に発現した。・ベダキリン、リファンピシンまたはリファブチンの中止に至ったTEAEは、ベダキリン群3.1%、対照群7.8%にみられた。 なお、本結果は24週時点の主要な解析結果であり、24週以降の解析は現在進行中である。

429.

HFmrEF/HFrEFの心血管死・心不全増悪、ジギタリスが有効/JAMA

 左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)または左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者において、ジギタリス配糖体による治療は心血管死または初回心不全増悪イベントの複合アウトカムのリスク低下と関連しており、これは主に心不全増悪イベントのリスク低下が寄与していることを、オランダ・フローニンゲン大学のKevin Damman氏らが3件の大規模臨床試験のメタ解析の結果で示した。著者は、「心不全の治療の程度やジギタリス配糖体の種類など、重要な研究特性に関して統計学的に有意な交互作用は認められず、今回の結果は、HFmrEFまたはHFrEF患者における心不全増悪イベントを減少させるために、追加の薬物療法としてジギタリス配糖体が有用な選択肢であることを示唆している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年5月10日号掲載の報告。DIG試験、DIGIT-HF試験およびDECISION試験のメタ解析 研究グループは、PubMedにて創刊から2026年3月1日までに公表された論文について、ジギタリス配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)および心不全に関連するMeSH(Medical Subject Headings)およびキーワードを用いて検索し、慢性HFmrEFまたはHFrEF患者1,000例超を対象にジギタリス配糖体治療とプラセボを比較した無作為化臨床試験で、英語で発表された論文を特定した。 PRISMAガイドラインに従い2人の研究者がデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias 2ツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主要エンドポイントは、心血管死または初回心不全増悪イベント発生の複合で、副次エンドポイントは、主要エンドポイントの個々の構成要素および全死因死亡であった。固定効果モデルを用い、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 選択基準を満たした研究はDIG試験、DIGIT-HF試験およびDECISION試験の計3件(HFmrEFまたはHFrEF患者9,013例、加重平均年齢64.5歳[加重SD 11.2]、女性22%、男性78%)で、これら3件がメタ解析に組み入れられた。心血管死・心不全増悪リスクを15%、心不全増悪リスクを25%低減 心血管死または初回心不全増悪イベントの複合アウトカムは、ジギタリス配糖体群で4,510例中1,852例(41%)に発生し、プラセボ群では4,503例中2,037例(45%)であった(HR:0.85、95%CI:0.80~0.90、p<0.001)。 初回心不全増悪イベントは、ジギタリス配糖体群で1,183例(26%)、プラセボ群で1,474例(33%)に発生し(HR:0.75、95%CI:0.69~0.81、p<0.001)、心血管死は両群とも1,224例(27%)に認められた(HR:0.99、95%CI:0.92~1.07、p=0.81)。全死因死亡はそれぞれ1,466例(32%)、1,497例(33%)であった(HR:0.97、95%CI:0.90~1.04、p=0.41)。 3件の試験間、ジギタリス配糖体の種類、または背景となる心不全治療の程度で、統計学的に有意な異質性は認められなかった。

430.

複雑性尿路感染症と腎盂腎炎、nacubactam併用で有効かつ安全な治療法は/Lancet

 グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(cUTI)または急性単純性腎盂腎炎(AP)患者において、イミペネム/シラスタチンとの比較により、セフェピム/nacubactamおよびアズトレオナム/nacubactam併用投与の有効性および安全性が確認された。札幌医科大学の高橋 聡氏らが、「Integral-1試験」の結果を報告した。nacubactam(OP0595)は、新たに開発されたジアザビシクロオクタン系β-ラクタマーゼ阻害薬で、セフェピムまたはアズトレオナムとの併用投与により、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌および第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌(ESBL産生菌を含む)に対する強力な活性を示すことが確認されていた。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。nacubactamとセフェピムまたはアズトレオナム併用投与の有効性と安全性をイミペネム/シラスタチンと比較 Integral-1試験は、ブルガリア、中国、チェコ共和国、エストニア、ジョージア、日本、ラトビア、リトアニア、スロバキアの79施設において実施された国際共同第III相無作為化二重盲検実薬対照試験。18歳以上、体重が140kg以下で、少なくとも5日間の注射用抗菌薬による治療が必要とされているcUTIまたはAP患者を対象とした。 研究グループは、対象患者をセフェピム(2g)/nacubactam(1g)群、アズトレオナム(2g)/nacubactam(1g)群、またはイミペネム(1g)/シラスタチン(1g)群に、診断(cUTI、AP)および地理的地域(日本、中国、その他)を層別因子として2対1対1の割合で無作為に割り付け、8時間(±1時間)ごとに60分間(±15分間)かけて、5~10日間、必要に応じて最長14日間、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、微生物学的修正intention-to-treat(mITT)集団(無作為化され試験薬の投与を受け、かつベースラインで適格病原体がイミペネムおよびメロペネムに感受性のあるすべての患者)における、投与終了7日後の治癒判定時点での総合臨床効果とした。総合臨床効果は、臨床的成功(治験責任医師評価による臨床効果が治癒と判定)、および微生物学的成功(試験実施施設と中央検査室での検査結果に基づく細菌学的効果が消失と判定)の達成とした。また、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者において安全性を評価した。 主要エンドポイントの非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-15%ポイント、優越性マージンは0%ポイントと事前に規定された。イミペネム/シラスタチンに対するセフェピム/nacubactam併用群の優越性を確認 2023年5月22日~2024年11月26日に、614例が無作為化され、うち微生物学的mITT集団は431例(セフェピム/nacubactam群214例、アズトレオナム/nacubactam群112例、イミペネム/シラスタチン群105例)であった(男性228例[53%]、女性203例[47%])。 主要エンドポイントを達成した患者の割合は、セフェピム/nacubactam群で82%(176/214例)、アズトレオナム/nacubactam群で72%(81/112例)、イミペネム/シラスタチン群で61%(64/105例)であった。イミペネム/シラスタチン群との差は、セフェピム/nacubactam群で21.3%ポイント(95%CI:10.9~32.0)(非劣性かつ優越性)、アズトレオナム/nacubactam群で11.4%ポイント(95%CI:-1.2~23.7)(非劣性)であった。 試験治療下で発現した有害事象は、セフェピム/nacubactam群で306例中100例(33%)、アズトレオナム/nacubactam群で152例中45例(30%)、イミペネム/シラスタチン群で150例中65例(43%)に報告された。治療に関連する死亡は認められなかった。

431.

夜間の食事でストレスによる腸の不調が悪化

 夜遅い時間帯の食事は、ストレスによる腸の不調を悪化させる可能性があるようだ。午後9時以降の食事量が多い人は、便秘や下痢のリスクが高くなる可能性が、新たな研究で示された。米セントメアリーズ・アンド・セントクレアズ病院のHarika Dadigiri氏らによるこの研究結果は、消化器疾患週間会議(DDW 2026、5月2〜5日、シカゴ)で発表された。 Dadigiri氏は、「何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要だ。また、すでにストレスを抱えているときには、食べるタイミングが腸内環境にとって『二重の負担』となる可能性がある」とニュースリリースで述べている。 この研究では、米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者1万1,000人以上のデータを分析して、慢性ストレス、夜間の食事摂取、および腸の機能の関連を検討した。その結果、コレステロール値、血圧、BMIなどに基づく慢性的な生理学的ストレスが高い人が、1日の摂取カロリーの25%以上を午後9時以降に摂取した場合、ストレスレベルが低く夜遅くに食事をしない人に比べて、便秘や下痢になる可能性が1.7倍高いことが示された。 さらに、研究グループは、腸内環境に関する研究(American Gut Project)に参加した4,000人以上のデータも分析した。その結果、ストレスレベルが高く、夜遅くに食事する習慣がある人は、腸の不調を訴える可能性が2.5倍高いことが明らかになった。また、腸に問題を抱えている人は、腸内細菌の多様性が著しく低かった。これらの結果は、食事のタイミングがストレスによる消化器系の健康への影響を増幅させる可能性があることを示唆していると研究グループは述べている。 研究グループは、本研究結果は、間食を完全にやめるべきだということではなく、自分へのご褒美として何か食べるなら、夕方の早い時間帯にすることを勧めるものだとの見方を示している。Dadigiri氏は、「私はアイスクリーム警察ではない。誰でもアイスクリームを食べてもよいが、食べるなら日中の早い時間帯にするべきだろう。規則正しい食事を維持するなど、小さな習慣を継続することで、食生活の規則性が高まり、長期的には消化機能をサポートするのに役立つかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

432.

電子カルテ情報からAIが小児のADHD診断リスクを予測

 注意欠如・多動症(ADHD)は世界で数百万人もの小児に影響を及ぼしているが、多くは診断を受けないまま何年も過ごしており、早期支援の機会を逃している。こうした中、新たな研究で、人工知能(AI)が電子カルテを分析することで、一般にADHDと診断される時期よりも早い段階で、小児のADHDリスクを高い精度で推定できる可能性が示された。米デューク大学医学部のデータサイエンティストであるElliot Hill氏らによるこの研究は、「Nature Mental Health」に4月27日掲載された。 Hill氏は、「電子カルテの記録は非常に豊富な情報源となる。われわれは、そのデータに隠れたパターンを分析することで、通常よりかなり早い段階で、将来ADHDと診断される可能性のある小児を予測できるかを調べた」と述べている。 Hill氏らは今回、72万人超の患者の電子カルテデータを用いてAIモデルを事前学習させた。その後、14万人超のADHD児および非ADHD児の出生から幼少期までの電子カルテデータを用いて、ADHD診断に先行して現れることが多い、発達、行動、臨床上の特徴の組み合わせを認識できるように追加学習を行い、小児が将来的にADHDと診断されるリスクを推定するモデルを構築した。 その結果、このモデルは、5歳までの電子カルテデータを基に、その後4年以内に小児がADHDと診断されるかを高い精度で予測できることが示された(ROC曲線下面積〔AUC〕0.92)。この予測能は、性別、人種、民族、保険加入状況を問わず一貫していた。 ただし、このAIモデルはADHDの診断を行うためのものではなく、小児科のかかりつけ医による注意深い観察や、ADHD専門医による早期の検査紹介によって恩恵を受ける可能性がある小児を特定するためのものである。論文の上席著者であるデューク大学医学部のMatthew Engelhard氏も、「このモデルはAIによる診断ツールではない。臨床医が時間とリソースを重点的に配分できるよう支援するツールであり、支援を必要とする小児が見落とされたり、答えを得るまで何年も待たされたりしないようにすることが目的である」と強調している。 研究グループは、スクリーニングによるADHDの早期発見は、早期診断、ひいては早期支援につながり、それがADHD児の学業成績、社会生活、健康状態の改善と関係すると指摘している。ただし、こうしたツールを臨床現場で使用するために、さらなる研究が必要であるとの認識も示している。

433.

カテーテル感染を防ぐ最も有用な手段とは【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第28回

Q28 カテーテル感染を防ぐ最も有用な手段とは実際の侵入門戸は、三方活栓なのか、刺入部なのか、点滴自体の汚染なのか、また、カテーテル感染を防ぐために最も有用な手段について教えてください。

435.

無意識に使う「意識◯◯」【脳がととのう 神経内科学講座】第1回

<今回のモヤっとPoint>「意識障害」と「意識消失」の違いは?「意識」と「覚醒」と「反応性」の違いは?はじめに意識という用語は臨床で日常的に使われますが、その守備範囲は広く、実は正確に扱おうとすると意外に難しいものです。たとえば、「意識消失」と「意識障害」は微妙にニュアンスが違いますし、「失神」はさらに意味が異なりますが、これらの正しい使い分けはできているでしょうか? もし間違って使っていると、専門医へのコンサルテーションの際に文脈が間違って伝わってしまい、コミュニケーションエラーの一端となってしまうこともあるでしょう。そこで今回は『意識』に関連した用語を整理していきたいと思います。意味の取り違え注意!―意識消失・意識障害・失神臨床でよく用いられる関連用語として、意識消失、意識障害、失神があります。いずれも「意識が悪い」という状態に関係する用語です。ですが、実際に表現している症候や病態は少しずつ異なります。とくに、文脈を意識して使い分ける必要があります。ここを整理しておくと、病歴聴取やコンサルテーションの精度が高まりますのでぜひ押さえておいてください。まずはそれぞれの違いを整えていきましょう。1)意識消失(loss of consciousness)ここでいう意識消失は、主に「一過性意識消失」、すなわち一時的に意識が失われ、その後回復した病歴上のイベントを指します。つまり、診察上の所見名というよりは、「そのとき何が起きたか」を記述する病歴的な用語といえます。たとえば、失神や一部のてんかん発作などで発生したイベントに対して用いられ、「急に倒れて反応がなくなった」「しばらく意識を失っていた」といった経過を含めて表現するときに適した用語になります。<脳がととのう具体例>「会話中に突然、意識消失して後方に倒れ込み、そのまま痙攣発作を呈しました」「重症の頭部外傷で現在入院3日目ですが、鎮静薬を中止しても意識消失が持続しています」上記のように、意識が悪い状態が遷延している状況については「意識障害が遷延しています」のほうが自然です。2)意識障害(disturbance of consciousness)意識障害は、診察時点で認められる覚醒や認識の障害を含む広い概念です。そのため、これは病歴上の出来事というより、現在の神経学的状態を表す所見名として使うのが自然です。つまり「現在、意識が悪い」という状態をさす時に用いると良いでしょう。もちろん意識障害には、軽い意識混濁から昏睡まで幅があるため、「意識障害」という表現だけでは解像度の低い情報になりがちです。だからこそ、Japan Coma Scale(JCS)や Glasgow Coma Scale(GCS)などの評価尺度を併記すると、具体性が増します。なお、後述しますが、意識障害の評価は行動反応の観察に依存するため、所見を記載する際には反応を妨げうる要因の有無も意識しておく必要があります。<脳がととのう具体例>「路上で倒れているところを発見され搬送された方で、救急隊到着時から現在もJCS 100の意識障害が遷延しています」意識障害には時間軸の情報がないので、このように文脈全体で意識障害がどこから持続しているのか、変化しているのかどうかを加えるとわかりやすいでしょう。3)失神失神は、一過性全脳低灌流によって生じる一過性の意識消失です。具体的には、急速に発症し、持続は短く、自然に、かつ完全に回復するイベントが失神の特徴です。したがって、失神は「意識が悪くなった状態」一般を指す言葉ではなく、推定される原因機序まで含んだ用語となります。つまり、一過性の『全脳低灌流』を前提としているので、まずは循環器疾患や反射性失神などが想起されます。そのため、「失神の精査として、一過性脳虚血発作(TIA)を疑います」という表現にはモヤモヤを感じてください。失神と表現している以上、「急速に発症し、持続は短く、自然にかつ完全に回復するような典型的な病歴」を想定しているはずなので、このような病歴では、TIAやてんかん発作だけを念頭に置くのではなく、まず失神として、起立性低血圧、反射性失神、不整脈などを含めた評価を行う必要があります。典型的には「排尿後に立ち上がった直後に倒れ、短時間で自然に回復した」という経過が、失神を想定するような病歴であり、「失神の精査が必要」と表現してよいでしょう。<脳がととのう具体例>「“意識障害”として紹介されましたが、話を聞くと、排泄後に立ち上がった直後に気分不快を自覚し、そのまま倒れたとのことでした。意識消失は短時間ですぐに覚醒し会話も可能だったようなので、まずは失神として精査したいと思います」「失神の精査として、一過性脳虚血発作(TIA)を疑います」なお、典型的な失神の病歴であれば、ルーチンとして脳画像検査や頸動脈評価を実施する意義は必ずしも高くありません。ただし、頭部外傷の有無に加え、局在神経徴候、複視、構音障害、嚥下障害、失調など、脳幹・小脳病変を示唆する所見がないかは確認しておきましょう。誤用しやすい、意識に関わる用語ところで、『意識』とは単一の機能ではなく、「覚醒していること」「自己や外界を認識していること」、あるいは「疎通が取れること」など複数の側面があります。それこそ臨床では、「呼びかけに反応しない」「会話が成り立たない」「見当識が保たれていない」などのシチュエーションで、しばしば、『意識が悪い』と表現されることがあります。もちろん、そこにはかなりの幅がありますし、反応が乏しいことと意識そのものが障害されていることは必ずしも同義ではありません。仮に、意識が保たれていても、重度の失語症や難聴、あるいは運動出力の障害があれば、十分な疎通は取れないでしょう。また、見かけ上は昏睡のようにみえても、心因性(機能性あるいは解離性の無反応状態など)の病態は、器質的な真の意識障害とはもちろん根本的に異なります。そのため、臨床で『意識が悪い』と表現するときは、どの視点からの意識を捉えているのかに留意する必要があります。そこで、『意識が悪い』という状況をどの視点で捉えるか医学的な表現を次に整えていきましょう。1)意識(consciousness)意識とは、覚醒しており、かつ自己や外界を認識できている状態をさします。すなわち、単に目が開いていることだけで規定されるものではなく、覚醒と認識の両方がある程度保たれていることを含む概念です。臨床的には、刺激に対する反応、注意の向け方、周囲の状況の理解、目的のある行動がみられるかどうかを総合して評価します。2)覚醒(arousal / wakefulness)覚醒とは、意識のうち「起きている」側面をさします。たとえば、自然に開眼しているか、呼びかけや刺激で開眼するか、刺激がなくても覚醒を保てるか、といった点が評価の中心になりますのでJCSで評価しやすいです。昏睡では覚醒そのものが失われており、この点で、“開眼はしているが認識が障害されている状態”とは区別されます。3)反応性(responsiveness)反応性とは、呼びかけや痛み刺激などに対して、行動や生理学的な変化を示す性質をさします。反応性の低下は覚醒や認識の状態を推定する重要な手がかりになりますが、『反応性』と『意識』は同義ではありません。なぜなら、失語や難聴、視覚障害、運動出力障害、鎮静薬の影響などによっても、見かけ上は反応性が低下してみえることがあるからです。そのため、意識障害の判定では、この反応性を妨げる要因がないかを除外する必要があります。4)認識(awareness)認識とは、自己や環境を理解している側面を指します。したがって、目が開いていても、周囲の状況を理解できない、あるいは目的のある反応に乏しい場合には、awareness の障害を考えます。ただし、awarenessは行動所見だけから完全に評価できるとは限りません。臨床では反応の有無や内容から推定せざるを得ないため、失語、運動出力障害、重度の全身状態、機能性の無反応状態などとの鑑別が必要です。すなわち、「反応が乏しい」ことはawareness障害を示唆する所見ではありますが、それ自体で直ちに同義とはいえません。いかがでしたでしょうか?脳神経領域のモヤモヤ、少しは“ととのう”ことができたのであれば嬉しいです。次回は何気なく使う「ピクつき」について解説しますので、少しずつ脳内をスッキリさせていきましょう。1)Laureys S, et al. Lancet Neurology. 2004;3:537-5462)Giacino JT, et al. Neurology. 2018;91:450-460.

436.

第317回 夏到来!今年もクマ被害とダニが媒介するSFTS増加の予感

東京都の奥多摩でツキノワグマに襲われる事件頻発こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。本連載で、ゴールデンウィークの福島・西大巓(にしだいてん)登山で左膝の靭帯を損傷したことを書いたところ、知人から「そもそもクマは大丈夫だったの?」と聞かれました。福島、山形の県境の山にはツキノワグマも多く生息しているので、そうした心配をしてくれたのでしょう。幸いクマの足跡はいくつか見ましたが、遭遇することはありませんでした。とは言え、この日は、白布峠からの登山者は我々のパーティーだけだったこともあり、クマ鈴を付け、クマ笛を頻繁に鳴らすとともに、「ホー、ホー」と時折大声を上げながらの登山になりました。そうしたクマ対策に神経を使った結果、雪渓の安全性に対する注意力が鈍り、踏み抜いてしまったのかもしれません。クマ恐るべしです。そんな反省をしていたところ、先週、東京都の奥多摩で相次いでツキノワグマに襲われる事件が起こりました。5月17日、奥多摩駅から雲取山に連なる人気縦走路・石尾根の途中、三ノ木戸山付近でロシア国籍の男性登山者がクマに襲われました(命に別状なし)。さらに2日後の19日には、東京都と埼玉県の県境、蕎麦粒山近くの仙元峠付近で、クマに襲われたとみられる上半身がない遺体が見つかりました。身元はまだ不明とのことです。私自身、三ノ木戸山も蕎麦粒山も何度も行ったことのある山だけに、さすがに恐ろしくなりました(15年ほど前、三ノ木戸山近辺では木に登っている子グマを見たことがあります)。クマ外傷患者の受傷部位で一番多かったのは顔面で90%、次いで頭部60%クマによる人身被害については、昨年の本連載「第279回 『クマ外傷』の医学書が教えてくれるクマ被害の実態、『顔面、上肢の損傷が多く、挿管と出血性ショックに対する輸血が必要なケースも。全例で予防的抗菌薬を使用するも21.1%で創部感染症が発生』」で詳しく書きました。書籍『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(編著・中永 士師明、新興医学出版社)によれば、クマ外傷患者20人の受傷部位で多かったのは、顔面90%(顔面骨折45%、眼球破裂15%)、次いで頭部60%(頭蓋骨骨折5%、硬膜下血腫5%)だったそうです。こうした知見が集積され、報道もされた結果でしょう、万が一襲われそうになった時の防御姿勢についてマスコミの多くはおおむね次のように報じています。「フードや帽子等で頭部を保護しつつ、うつ伏せになって顔や胸、腹部を守るとともに、手指を組み合わせて後頭部と首の後ろをガードする」。とにかく、「襲われたら頭と顔を守る」のが鉄則というわけです。今年は春から夏への移行が早く、クマの出没も過去最悪のペースで増えているようです。政府も「今年はヤバい」と考えたのか、5月23日付の新聞各紙に注意喚起のための全面広告を掲載、「山菜採りに行くみなさん。クマにご注意ください」というキャッチコピーとともに、「クマに出会わないための6ヶ条」の周知に務めています1)。同日に放送されたNHKの「サタデーウオッチ9」では、この政府の注意喚起にあわせて「緊急報告『クマ出没列島』」と題する特集レポートを放送、都市部での出没が相次ぐ中、東京都についても多摩川沿いにクマの生息範囲が広がる可能性があると報じていました。クマが生息する地域や、出没する可能性のある地域にある医療機関は、クマ外傷の患者が運ばれてきた時の対応(創処置、骨折対応、感染対策等)や必要な医薬品(抗菌薬等)について、改めて確認しておくべきだと思われます。今年もすでに死亡例が出ている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ということで、クマ出没やクマ被害も増えていますが、今年はマダニが媒介するあの感染症も立ち上がりが早く、昨年並みの増加を予感させます。感染症と言えば、ハンタウイルスやエボラ出血熱、そしてはしかが話題となっていますが、ごく身近で発生し、今年もすでに死亡例が出ているダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」も頭に入れておきたいところです。以下、最近の報道からいくつかピックアップしてみます。5月12日付/神奈川新聞「相模原市は11日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』に同市緑区在住の80代女性が感染したと発表した。神奈川県内では昨年7月に松田町在住の女性の感染が確認されており、今年に入ってからは初めて。市保健所によると、女性は4月29日に発熱や関節痛などの症状があり、30日に市内の医療機関を受診。5月9日にSFTSの陽性が確定した。女性は現在も入院中だが、軽快傾向にあるという。女性の行動歴を調べた結果、自宅周辺で畑仕事などをした際にマダニに刺されて感染したとみられ、市保健所は市内を感染地域と推定」。5月12日付/NHKニュース「熊本県内では先月、主にマダニが媒介する感染症に感染した患者が死亡しました。患者の治療にあたる医師は畑や草むらに入る場合などはマダニに刺されないよう対策を徹底するよう呼びかけています。先月、県内ではことし初めて、天草市の90代の女性が、主にマダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』で亡くなりました。これまでにも県内ではSFTSの感染が相次いで確認されていて、去年は11件、ことしに入ってからも今月10日までに2件確認されています」。5月13日付/産経新聞「奈良県は13日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群』(SFTS)に中和保健所管内の60代の男性が感染したと発表した。男性は意識障害を起こして入院中という。感染症法上では4類に位置付けられ、有効な治療法がないため、県はマダニにかまれた際は医療機関での受診を勧めている」。5月14日付/NHKニュース「高松市保健所は、市内の80代の男性が主にマダニが媒介する感染症、SFTS=重症熱性血小板減少症候群に感染し、14日死亡したと発表しました。保健所は、山や草むらで活動する場合は、肌の露出を控え、マダニに刺されないよう注意を呼びかけています。高松市保健所によりますと、今月1日、市内の80代の男性が発熱や全身のけん怠感などの症状を訴えて市内の病院に入院し、治療を受けていましたが、14日死亡しました」。5月19日付/NHKニュース「マダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』の患者が県内でことし初めて確認され、(福岡)県が注意を呼びかけています。SFTSへの感染が確認されたのは、宗像市の70代の男性で、県によりますと、今月14日に発熱や関節痛を訴えて医療機関を受診し、18日、食欲低下や意識がはっきりしないなどの症状で入院しました。粕屋保健福祉事務所から連絡を受けた県が検査したところ、19日、感染が確認されたということです。県内でSFTSへの感染が確認されたのは、ことし初めてです。男性は現在も意識がはっきりしない状態が続いていて、治療を受けているということです」。5月20日付/NHKニュース「京都府内に住む70代の男性が、先月(4月)、重症の場合、死亡することもある感染症のSFTS=『重症熱性血小板減少症候群』に感染したことが分かりました。媒介するマダニに京都市内で刺されたことが原因とみられ、府は草むらに入る際は肌の隠れる衣服を着用するなど、注意を呼びかけています。(中略)京都府によりますと、先月(4月)上旬、府の南部に住む70代の男性が京都市伏見区の竹やぶで作業をしたあと、発熱などの症状を訴え医療機関を受診したところ、SFTSに感染していることが確認されたということです。府によりますと、SFTSの感染場所が京都市内と推定されたのは、今回がはじめてだということです」。農作業などを行う人が発熱や嘔吐、下痢などで運ばれてきたらSFTSを疑う日本で確認されているマダニによる感染症は非常に多くあります。代表的なものが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介脳炎(北海道中心)などです。これらの中でとくに注意が必要なのが、死亡例が多いSFTSです。夏の到来が遅い東北地方では患者の確認はまだのようですが、九州、四国、本州の西日本~関東ではすでに患者が発生しています。ちなみに2025年の報告数は191例で過去最高を記録、2014年の61例と比較すると約3倍だったそうです。本連載でも昨年7月掲載の「第272回 致死率30%!猛威を振るうマダニ感染症SFTS、患者発生は西日本から甲信越へと北上傾向」で詳しく書いたように、温暖化などの影響でSFTSウイルスを持ったマダニの生息域が日本で徐々に北上、シカなどの野生動物からネコ、イヌへの感染も手伝って、ヒトへの感染も増えているというわけです。そう言えば、昨年はSFTSのネコを治療した三重県内の獣医師がその後SFTSで死亡する、ということもありました。国立健康危機管理研究機構は「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」2)や「Q&A」3)を作成し公開していますので、これからの季節、農作業などを行う人が発熱・嘔吐・下痢や、意識障害や失語などの神経症状、下血などの出血症状で運ばれてきたら、SFTSも疑うようにしたいものです。 参考 1) 山菜採りに行くみなさん、クマにご注意ください/政府広報オンライン 2) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」/国立健康危機管理研究機構 3) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」/厚生労働省

437.

ピロリ菌検査・除菌、普及の成果と残された課題/日本消化器病学会

 2013年にHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎への除菌治療が保険適用となってから10年以上が経過し、感染検査と除菌治療は一般化した。H. pylori感染者は急速に減少傾向にあるが、新たな課題も生じているという。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、「ヘリコバクター・ピロリ診療の課題と将来展望」と題したパネルディスカッションが行われ、2024年刊行の「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン(改訂版ガイドライン)」作成委員会委員長の下山 克氏(青森県総合健診センター所長)が基調講演を行った。1)P-CABの普及――除菌率向上の一方で、検査結果への影響に注意 近年のH. pylori除菌では、ボノプラザンに代表されるP-CABが中心的役割を担っている。P-CABは従来のPPIと比べ強力かつ安定した酸分泌抑制作用を持ち、除菌率改善に大きく寄与した。改訂版ガイドラインでも、1次除菌レジメンとして、P-CAB+アモキシシリン+クラリスロマイシンの7日間投与を推奨している。 一方、PPI/P-CAB使用下では菌のウレアーゼ活性が低下し、実際には菌が残っていても尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ検査(RUT)は検査上陰性(偽陰性)となる可能性がある。血清ペプシノゲン(PG)濃度もPPI/P-CABに影響されるため、これらの検査については「PPI/P-CABは2週間の休薬期間を設けた上で検査を行うこと」を推奨している。これ以外の検査法は影響を受けにくく、休薬なしでも実施可能だ。またPPIは便中抗原測定法、核酸増幅法の検査結果に影響を与えにくいとされているものの、P-CABの影響についてはエビデンスがなく、キットごとの検証が必要となる。2)検査キットの問題――ラテックス法の陰性高値に注意 改訂版ガイドラインでは「血清抗H. pylori抗体検査の陽性結果からH. pylori除菌治療を開始できるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)に対し、「血清抗体陽性はH. pylori現感染のみを反映するものではないため、その結果のみで除菌治療を行わないことを推奨する」としている。UBT、便中抗原検査、PCR検査は、現在胃内に菌がいるかどうかを見る“現感染検査”である一方、血清抗H. pylori抗体検査は、患者の免疫反応を見る検査であり、過去の感染歴も反映する。そのため抗体陽性=現感染ではなく、偽陽性が生じやすい。 さらに問題となるのが、血清抗H. pylori抗体検査の中でのEIA法とラテックス法の違いである。従来から用いられてきたEIA法では、感染者と未感染者の分布が比較的明瞭に分かれる。一方、簡便で近年健診領域で広く使われているラテックス法は、EIA法と抗体価の分布が異なるので、EIAと同様の「陰性高値」を設定してはならない。「ラテックス法ではカットオフ以上でも現感染なしのケースが多い」との報告もあり、EIA法と同じ感覚でカットオフを扱うのは危険であることは周知されたい。改訂版ガイドラインでも、検査法ごとの特性を理解し、偽陽性または偽陰性が疑われる場合には、ほかの検査を組み合わせることが必要である、としている。3)薬剤感受性の問題――「Smart Gene」への期待 除菌治療では、クラリスロマイシン(CAM)耐性率の上昇が大きな問題となっている。改訂版ガイドラインでは、1次除菌としてP-CAB+アモキシシリン+CAMによる7日間3剤療法を第一選択としている。しかし、CAM耐性例では除菌失敗率が高い。CQでは除菌治療開始前に薬剤感受性検査を行い、CAM耐性であればメトロニダゾールなどの使用を推奨している。薬剤感受性検査は保険適用であるとされているものの、社会保険診療報酬支払基金の各支部の判断で査定される場合があり、普及を妨げる一因となっていた。しかし、2026年2月に厚労省から「P-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾール」を「CAM耐性ヘリコバクター・ピロリ菌の一次除菌を目的に」処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通達が出ており、この点はクリアされた。 さらに注目されているのが、PCRベース迅速診断機器「Smart Gene」である。Smart GeneではH. pylori感染診断、CAM耐性遺伝子検出を同時に行うことができ、Smart Geneを用いた感受性別除菌により、高い除菌成功率が得られたとの報告が増加している。さらに便検体を用いたSmart Geneも近く発売予定であり、小児や健診領域での応用が期待される。4)ペニシリンアレルギー例――依然エビデンス不足の領域 通常の1次除菌ではアモキシシリンを使用するが、ペニシリンアレルギー症例では使用できない。そのため、P-CAB+CAM+メトロニダゾールなど複数の代替レジメンが試みられている。しかし、まだエビデンスが不足しており、改訂版ガイドラインでもレジメン例は提示したものの、「現時点での推奨提示は困難である」としている。とくに感受性別の除菌データが少なく、今後の前向きランダム化臨床試験が必要だ。5)胃がん検診・人間ドック時――「胃がんなし」でもリスク説明が重要 胃がん検診や人間ドックにおける内視鏡画像・胃X線画像もH. pylori感染の診断に有用である。日本ヘリコバクター学会が会員に対して行ったアンケート(n=258)では、94%の医師が胃がん検診受診者や上部消化管内視鏡受検者に対してH. pylori感染診断を行っており、同時検査が浸透していることが確認できた。 さらに、内視鏡施行医へのアンケート(n=309)では、背景胃粘膜診断の重要性が改めて確認された。回答者の72%が「背景胃粘膜診断を記録する項目が必要」、21%が「胃炎の京都分類まで記載すべき」と、あわせて9割以上がH. pylori関連胃炎診断の重要性を認知していた。また95%が「患者には、胃がんの有無だけでなく、H. pylori関連胃炎の有無について伝えるべき」だと回答した。患者側に多い誤解が「H. pylori感染なし、あるいは除菌済みであれば、胃がんリスクはなくなる」というものだ。実際には、萎縮性胃炎や腸上皮化生を伴う胃粘膜を有する症例を中心に胃がんリスクは残存しており、患者にこの点を周知し、定期的な検診受診を促す必要がある。6)胃がん検診見直し――若年者一律検診は再考の時代 現在、日本における胃がん検診の対象年齢は「50歳以上(当面は40歳以上でも可)」となっている。しかし、H. pylori除菌の普及や感染率の低下とあわせ、日本人の胃がん罹患率は急激に低下している。とくに40歳未満の若年層における胃がん罹患率は10万人当たり0.3~0.4と「万に一つもない」レベルに達している。結果として、職域健診などで行われている若年未感染者への一律バリウム検診は、放射線被曝、偽陽性、不必要な内視鏡精査と費用などの不利益が利益を大きく上回りつつある。今後は、とくに若年世代において、画像検診よりもH. pylori感染診断と除菌へ重点を移すべきだろう。7)英語版ガイドラインへの期待――日本型H. pylori戦略を世界へ 改訂版ガイドラインは英語版も刊行された。H. pylori感染者全員を原則除菌対象とし、若年段階での検査・除菌を推奨する日本独自の胃がん予防戦略は、世界でも有用と考えられる。耐性菌が少ない国・地域や、低・中所得国における除菌治療、胃がん予防を目的とした除菌普及に役立つものとして、英語版ガイドラインの普及に期待したい。 このほか今後の課題としては、偽陽性が疑われるときのもう1つの検査実施の保険適用、3次除菌のレジメン、ボノプラザン+アモキシシリン療法、H. pylori以外の感染菌(Non-Helicobacter pylori Helicobacter[NHPH])胃炎の検討などがある。H. pylori未感染者が増加する現在、胃がん対策は「全員一律」から、「感染歴・背景胃炎・耐性菌を踏まえた個別化医療」へ移行しつつある。改訂版ガイドラインは、その方向性をより明確に示したものであり、今後のさらなるエビデンス蓄積に期待したい。

438.

統合失調症や双極症リスクを低下させる修正可能なリスク因子は?

 統合失調症や双極症は、遺伝的リスク因子と修正可能なリスク因子の影響を受ける、重篤な精神疾患である。脳ケアスコア(BCS)は、身体的、生活習慣、社会情緒的にわたる12の修正可能な因子から構成される検証済みのツールであり、それぞれが脳の健康に関連している。中国・北京大学のYichen Cui氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により定量化されたさまざまな遺伝的リスクレベルにおいて、BCSが統合失調症または双極症のリスクとどのように関連するかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2026年4月13日号の報告。 UKバイオバンクのデータを用いて、BCSおよびPRSスコアを算出し、新規発症の統合失調症および双極症患者を特定した。BCSと統合失調症または双極症リスクとの関連性の評価には、Cox比例ハザードモデルを用いた。この関連性が遺伝的リスクレベルによってどのように変化するかを、交互作用分析および層別分析を用いて評価した。BCSの各ドメインの寄与についても評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・参加者29万9,665例のうち、中央値13.7年のフォローアップ期間中に、統合失調症が331例、双極症が787例で確認された。・PRSが低い群では、BCSが高いほど統合失調症のリスクが有意に低下していた。とくに生活習慣(ハザード比[HR]:0.87、p=0.027)、社会情緒的ドメイン(HR:0.47、p<0.001)においてその傾向が顕著であった。・PRSが高い群では、BCSと統合失調症との全体的な関連性は認められなかった。しかし、社会情緒的ドメインは依然として保護因子として作用していた(HR:0.56、p<0.001)。・双極症に関しては、PRSが低い群では、とくに生活習慣(HR:0.91、p=0.017)および社会情緒的ドメイン(HR:0.44、p<0.001)において、BCSによる保護作用がより強く認められた。・PRSが高い群では、BCSによる保護作用は弱まったものの、社会情緒的ドメインでは依然として有意であった(HR:0.50、p<0.001)。・感度分析においても、これらの結果は支持された。 著者らは「生活習慣と社会情緒的健康の改善は、統合失調症および双極症のリスクを有意に低減することが可能であり、その効果は遺伝的リスクによって左右されることが示された。社会情緒的健康の向上は、あらゆる遺伝的リスクレベルにおいて保護効果をもたらし、重要な予防策となりうる」としている。

439.

HR+/HER2+早期乳がん、de-escalation術前療法でも良好な長期予後(WSG TP-II)/JCO

 HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、術前療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブにパクリタキセルまたは内分泌療法(ET)を併用した第II相WSG TP-II試験の結果、ET併用群でも良好な長期生存アウトカムが得られたことが、ドイツ・Evangelisches Krankenhaus Bethesda KlinikのOleg Gluz氏らにより示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。 本試験は、手術可能なHR+/HER2+乳がん患者を対象に、トラスツズマブ+ペルツズマブの術前療法(12週間)に加え、パクリタキセル(週1回)またはETの併用が、病理学的完全奏効(pCR)や全生存期間(OS)などに及ぼす影響を評価した第II相多施設共同無作為化非盲検試験。なお、術後療法として全例に抗HER2療法が行われるとともに、術前療法でpCRが得られなかった患者では術後化学療法を必須とした(pCR達成例では術後化学療法は任意)。 主要評価項目はpCR、副次評価項目はOS、非浸潤性乳管がんを含む無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、健康関連QOLなどとした。これまでの主要評価項目の解析では、パクリタキセル併用群のpCR率はET併用群よりも優れていることが明らかになっている(56.4% vs.23.7%)。今回は、最終の5年OS解析結果などが報告された。 主な結果は以下のとおり。・207例が2つの試験群に1対1で無作為に割り付けられた。・5年OS率は、ET併用群100%(95%信頼区間[CI]:100.0~100.0)、パクリタキセル併用群97.9%(95%CI:95.0~100.0)であった。・5年EFS率は、ET併用群92.1%(95%CI:86.6~97.9)、パクリタキセル併用群94.8%(95%CI:90.5~99.3)であった。・5年iDFS率は、ET併用群97.7%(95%CI:94.5~100.0)、パクリタキセル併用群79.8%(95%CI:55.6~100.0)であった。 研究グループは「WSG TP-II試験では、HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、忍容性が良好なde-escalationの術前療法を行い、そのpCR達成の有無に応じて術後化学療法を調整するアプローチの安全性および有効性が示唆された」とまとめた。

440.

広範囲脳梗塞でも血栓回収療法は有効か?~6試験メタ解析/Lancet

 広範囲の虚血性変化を呈する脳卒中患者は、従来、血管内血栓回収療法の対象から除外されることが多い。米国・University Hospitals Cleveland Medical CenterのAmrou Sarraj氏らATLAS Investigatorsは系統的レビューとメタ解析による「ATLAS研究」において、発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者では、薬物療法と比較して血管内血栓回収療法は機能的アウトカムを有意に改善し、死亡率の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年5月23日号に掲載された。90日時のmRSスコア分布を2段階メタ解析で評価 ATLAS研究は、医学関連データベースを用いて2018年3月1日~2025年3月1日に発表された文献を検索し行われた。 発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者(Alberta Stroke Program Early CT Score[ASPECTS]5点以下、または推定虚血コア体積50mL以上)を対象に、薬物療法との比較で血管内血栓回収療法の有効性と安全性を評価した試験を選出し、すべての試験から患者レベルの個別データを取得した。 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankinスケール(mRS)スコアの分布とした。変量効果モデルを用いた2段階メタ解析を行い、調整済み統合一般化オッズ比(aGenORs)を算出した。機能的自立、自立歩行も良好 日本の「RESCUE Japan-LIMIT試験」(202例)を含む6つの試験に参加した1,886例(血管内血栓回収療法群944例、薬物療法群942例)を解析の対象とした。ベースラインの全体の年齢中央値は70歳で、女性は43.8%であった。閉塞部位は中大脳動脈が63.0%、内頸動脈が36.9%で、NIHSSスコア中央値は19点、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は360分、ASPECTS中央値は4点、虚血コア体積中央値は82.1mLだった。 90日時のmRSスコア中央値は、血管内血栓回収療法群4点(四分位範囲[IQR]:3~6)、薬物療法群5点(IQR:4~6)であった(aGenOR:1.63、95%信頼区間[CI]:1.42~1.88、p<0.0001)。 また、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点:19.5%vs.7.5%、補正後統合相対リスク[aRR]:2.57[95%CI:1.99~3.31]、p<0.0001)および自立歩行(mRSスコア0~3点:36.5%vs.19.9%、aRR:1.96[95%CI:1.58~2.43]、p<0.0001)、90日以内の全死因死亡(31.1%vs.37.3%、aRR:0.82[95%CI:0.70~0.97]、p=0.022)も、血管内血栓回収療法群で有意に優れた。 36時間以内の症候性頭蓋内出血(1.1%vs.1.0%、補正前統合リスク群間差:-0.17%ポイント[95%CI:-1.01~0.67]、p=0.69)、および24~48時間以内の神経学的悪化(22.0%vs.17.9%、aRR:1.19[95%CI:0.87~1.62]、p=0.27)には、両群間に有意な差を認めなかった。サブグループで一貫した改善効果 血管内血栓回収療法群における機能的アウトカムの改善は、臨床および画像所見上のサブグループ全体で一貫していた。ただし、推定虚血コア体積が150mL以上の患者では、とくに発症後早期(0~6時間)において、点推定値は血管内血栓回収療法を支持していたものの、95%CIが広かったため解釈には限界があると考えられた。 発症後6時間を超えて受診した超広範な虚血性変化(虚血コア体積150mL以上)を有する症例(エビデンスが限定的)を除き、発症後24時間以内に受診した患者では、ASPECTSスコアおよび虚血コア体積にかかわらず、その有益性は持続していた。 著者は、「これらの結果は、従来から血栓回収療法の適応外とされていた広範囲の虚血性病変を有するかなりの数の患者における、血管内血栓回収療法の有効性と安全性を裏付けるものである」としている。 また、「本研究の知見は、ASPECTSスコアや灌流画像上のミスマッチにかかわらず、高齢、脳卒中の重症度が高い、優位半球・劣位半球の脳卒中患者において、血管内血栓回収療法の適用を検討すべきであることを示唆する」と指摘している。

検索結果 合計:36478件 表示位置:421 - 440