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きつい運動の前の減量は受傷発生を減少させる

 社会的に一番きつい運動をしているのは軍隊や警察などのグループである。こうしたグループに入隊する前の減量は、入隊後のけがや事故などに影響を与えるのであろうか。このテーマについて、米国陸軍環境医研究所軍事能力部門のVy T. Nguyen氏らの研究グループは、入隊前の体重減少と過酷な基礎戦闘訓練(BCT)中の筋骨格系損傷(MSKI)発生率との関連性を調査した。その結果、入隊のために減量した訓練生はMSKIの発生率が低いことが判明した。この結果はObesity誌オンライン版2025年7月30日号に公開された。運動前に減量するとけがを減少させる可能性 研究グループは、3,168人の訓練生から自己申告による体重減少を収集し、電子カルテを用いて追跡調査を行った。すべてのMSKIおよび地域特有のMSKIの診断を行い、Cox回帰モデルで性別とCOVID-19パンデミックの有無で層別化し、年齢、身長、過去最高BMI、人種・民族、喫煙歴、過去の身体活動、および受傷歴で調整した。 主な結果は以下のとおり。・入隊のために減量したと報告した訓練生は829人(26.16%)。・平均減量数は9.06(標準偏差[SD]:8.62)kgで、最も一般的な減量方法は運動(83.72%)だった。・入隊のために減量した訓練生は、減量しなかった訓練生と比較し、BCT期間中の全身MSKI発生率(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99)および下肢MSKI発生率(HR:0.84、95%CI:0.72~0.98)が低かった。・減量率(平均:1.27kg/週[SD:1.06])は、MSKI全体または部位別発生率とは関連が認められなかった。

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既治療の進展型小細胞肺がん、I-DXdの奏効率48.2%(IDeate-Lung01)/WCLC2025

 既治療の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)患者を対象に、抗B7-H3(CD276)抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd;DS-7300)の有用性を検討する国際共同第II相試験「IDeate-Lung01試験」。本試験において、I-DXdは有望な治療効果と忍容性が示された。世界肺がん学会(WCLC2025)において、韓国・Samsung Medical CenterのMyung-Ju Ahn氏が本試験の主解析の結果を報告した。試験デザイン:国際共同第II相試験(パート1:用量最適化パート、パート2:用量拡張パート)対象:プラチナ製剤を含む化学療法による治療歴を有し、治療歴が3ライン以下のED-SCLC患者183例<用量最適化パート>試験群1:I-DXd 8mg/kgを3週ごと(46例)試験群2:I-DXd 12mg/kgを3週ごと(42例)<用量拡大パート>試験群:I-DXd 12mg/kgを3週ごと(95例)評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)、安全性など 今回は、I-DXd 12mg/kgを投与された137例の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は63歳、男性の割合は90%、PS1の割合は77.4%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ38.0%、40.1%であった。治療ライン数が1/2/3の割合は23.4%/54.7%/21.9%であり、抗PD-L1/PD-1抗体による治療歴を有する割合は81.0%であった。・データカットオフ時点(2025年3月3日)のBICRによるORRは48.2%(CR 3例、PR 63例)、DCRは87.6%であった。治療ライン数1、2以上の集団のORRはそれぞれ56.3%、45.7%であり、DCRはそれぞれ96.9%、84.8%であった。・ORRに関するサブグループ解析では、化学療法無治療期間(CTFI)、治療ライン数、脳転移の有無、肝転移の有無などのほとんどのサブグループで一貫した効果がみられた。ただし、CTFIが30日以下(化学療法抵抗性)の集団では、ORRが11.1%と低かった。・BICRによるTTR中央値は1.4ヵ月、DOR中央値は5.3ヵ月であった。・BICRによるPFS中央値は4.9ヵ月であった。3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のPFS率は68.0%、35.3%、19.3%であった。・OS中央値は10.3ヵ月であった。3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のOS率は89.1%、77.4%、59.1%であった。・治療期間中央値は4.8ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は36.5%に発現し、治療中止に至ったTRAEの発現割合は9.5%であった。TRAEとしてのILD/肺臓炎は12.4%に発現した(Grade1/2が11例、Grade3が4例、Grade5が2例)。 本試験結果について、Ahn氏は「I-DXd 12mg/kgは既治療のED-SCLC患者において高い有効性を示した。CTFIが30日以下、脳転移ありなどの臨床試験では通常除外されることの多い患者集団も含まれていた点を考えると、特筆すべき結果といえる」とまとめた。なお、既治療のED-SCLC患者を対象として、I-DXdと化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)を比較する国際共同第III相試験「IDeate-Lung02試験」が進行中である。

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心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF>40%なら不要?/NEJM

 心筋梗塞で侵襲的治療を受け退院した左室駆出率(LVEF)40%超の患者において、β遮断薬の投与は全死因死亡、再梗塞、または心不全による入院の発生に影響を与えないことが示された。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIのBorja Ibanez氏らREBOOT-CNIC Investigatorsが、研究者主導の「Treatment with Beta-Blockers after Myocardial Infarction without Reduced Ejection Fraction trial:REBOOT試験」の結果を報告した。駆出率が保持された心筋梗塞後のβ遮断薬の使用に関する現行ガイドラインの推奨事項は、再灌流療法、侵襲的治療、完全血行再建術、および現代的な薬物療法が標準治療となる前に実施された試験に基づいている。研究グループは、β遮断薬の役割について再検討する必要があるとして本検討を行った。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。退院前LVEF>40%の患者をβ遮断薬投与vs.非投与に無作為化 REBOOT試験は、スペインとイタリアの109施設で実施された、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded End-Point)デザインの試験である。 研究グループは、急性心筋梗塞(ST上昇の有無を問わず)で入院中に侵襲的治療(最終的な治療戦略にかかわらず冠動脈造影により定義)を受け、かつ退院前のLVEFが40%超の患者を、退院時または退院後14日以内にβ遮断薬投与群または非投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 β遮断薬投与群では担当医師がβ遮断薬の種類と用量を決定し、また、すべての患者が標準治療を受けた。 主要アウトカムは、全死因死亡、再梗塞、または心不全による入院の複合であった。副次アウトカムは主要アウトカムの個別のイベント、心臓死など。ITT解析で評価した。 2018年10月~2024年4月に計8,505例が無作為化され(β遮断薬投与群4,243例、非投与群4,262例)、同意撤回などを除く8,438例(それぞれ4,207例、4,231例)がITT解析対象集団に組み込まれた。β遮断薬投与は、全死因死亡、再梗塞または心不全による入院の発生に影響を与えず 追跡期間中央値3.7年において、主要アウトカムのイベントはβ遮断薬投与群で316例(1,000患者年当たり22.5件)、非投与群で307例(21.7件)に発生した(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.89~1.22、p=0.63)。 全死因死亡は、β遮断薬投与群161例、非投与群153例(1,000患者年当たり11.2件vs.10.5件、HR:1.06[95%CI:0.85~1.33])、再梗塞はそれぞれ143例、143例(10.2件vs.10.1件、1.01[0.80~1.27])で、心不全による入院はそれぞれ39例、44例(2.7件vs.3.0件、0.89[0.58~1.38])であった。 事前に規定したサブグループ解析の結果、女性ならびにST上昇型心筋梗塞では非投与群のほうが予後良好であることが示唆された。 安全性アウトカムについては、群間差は認められなかった。

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冠動脈疾患2次予防、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet

 冠動脈疾患(CAD)の2次予防において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、大出血のリスク増加を伴うことなく、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)の発生低下をもたらすことが、スイス・University of Italian SwitzerlandのMarco Valgimigli氏らによるシステマティックレビューとメタ解析で示された。CAD既往患者には、無期限のアスピリン単剤療法が推奨されているが、本検討の結果を受けて著者は、「CAD患者における2次予防は、アスピリンよりクロピドグレルを優先して使用することが支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。CAD2次予防としてのクロピドグレルvs.アスピリン単剤療法を比較した無作為化試験をメタ解析 研究グループは、PubMed、Scopus、Web of Science、Embaseを用いて、データベース公開から2025年4月12日までに発表された、CADと確認された患者(かつ抗血小板薬2剤併用療法を中止、または開始していない患者)を対象に、クロピドグレル単剤療法とアスピリン単剤療法を比較した無作為化試験を系統的に検索し、無作為化後に導入期として抗血小板薬2剤併用療法を行った試験を組み入れ、個別の患者データのメタ解析を行った。 主要解析では、試験間のベースラインハザード差を調整するためのランダム切片と、治療効果の差を調整するためのランダムスロープを含む、セミパラメトリック共有対数正規フレイルティモデル(1段階解析)を用いた。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合(MACCE)。安全性の主要アウトカムは大出血(BARC出血基準タイプ3または5、あるいは試験固有の定義)であった。MACCEリスク、クロピドグレル単剤療法がアスピリン単剤療法より有意に低い 検索で特定された1万1,754報のスクリーニングに基づき54件の研究が精査され、このうち適格と認められた7件の無作為化試験(ASCET、CADET、CAPRIE、HOST-EXAM、STOPDAPT-2、STOPDAPT-3、SMART-CHOICE 3)が解析に組み込まれた。 解析対象は計2万8,982例(クロピドグレル単剤療法群1万4,507例、アスピリン単剤療法群1万4,475例)で、追跡期間中央値は2.3年(四分位範囲:1.1~4.0)であった。 5.5年時点で、MACCEの発現頻度はクロピドグレル群(929件[2.61/100患者年])がアスピリン群(1,062件[2.99])より低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.0082)。 死亡および大出血の発現頻度は、クロピドグレル群(256件[0.71/100患者年])とアスピリン群(279件[0.77])で差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.74~1.21、p=0.64)。

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豚の肺を脳死者に移植、世界初の試み

 中国の医師らが、遺伝子改変した豚の左肺を脳死と判定された男性に移植し、216時間(9日間)機能したことを確認したとする研究成果を報告した。豚の肺を人間に移植するのは初の試みである。科学者らはこの種の移植に希望を見出しているものの、専門家は、肺移植を必要とする人にとって異種移植が選択肢となるまでには何年もかかる可能性があると見ている。広州医科大学第一附属医院(中国)のJianxing He氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に8月25日掲載された。 この異種移植を受けたのは、脳出血で脳死と診断された39歳の男性。CNNの報道によると、今回の手術は男性の家族の同意を得て実施されたという。ドナーとされた豚は、高度に管理された無菌環境で飼育されていた。研究グループは、移植後に拒絶反応が生じるリスクを抑制するために、CRISPR-Cas9というゲノム編集技術を用いて、ドナー肺の6種類の遺伝子を改変した。具体的には、ヒトの免疫反応の活性化に関与する3種類の遺伝子(GGTA1、B4GALNT2、CMAH)をノックアウトするとともに、拒絶反応の抑制に寄与する3種類のヒト遺伝子(CD55、CD46、TBM)を導入した。また、感染や拒絶反応が生じるリスクを低減するために、患者にさまざまな免疫抑制薬を投与した。 移植直後の肺に拒絶反応の兆候は見られなかった。しかし、移植の24時間後には広範囲に浮腫が生じた。これは、虚血再灌流障害による原発性移植臓器機能不全に一致する所見であった。移植後9日目には部分的に回復の兆候が見られたものの、医師らは男性の体が臓器を拒絶し始めていることを確認した。この時点で、家族の要請によりこの実験は中止された。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「この研究は、豚からヒトへの肺移植が実現可能である可能性があることを示している。ただし、拒絶反応と感染に関する課題は依然として大きい」と記している。 臓器不足は依然として重大な問題である。2024年秋に収集された政府のデータによると、米国では、10万3,000人以上が臓器移植を待っている状態である。それにもかかわらず、 2024年に実施された移植件数は4万8,000件に満たず、毎日、13人の移植待機患者が死亡している。 豚の心臓弁のヒトへの移植はすでに数十年前から実用化されている。最近では、遺伝子を改変した豚の腎臓や心臓の移植についても進歩が見られるとCNNは報じている。しかし、肺は常に細菌やウイルスにさらされているため、特有の課題を抱えている。専門家は、「肺は体の免疫防御の中心であるが、移植技術が大きく前進しても、肺をいかにして守るかは依然として課題である」と指摘している。その一方で、豚の臓器を用いることで、利用可能な臓器と患者のニーズとのギャップを埋めることができるかもしれないとする意見もある。研究グループも、異種移植には「変革の可能性」があると記している。 この研究をレビューした米ノースウェスタン・メディスンの胸部外科部長であるAnkit Bharat氏は、CNNとのインタビューに対し、「この研究から得ることはあるだろうが、私自身は、本研究結果を踏まえて、今後、より大規模な臨床試験が実施されるようになるとは思えない」と慎重な姿勢を示している。 同じく本研究をレビューした米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスの移植外科医であるAdam Griesemer氏も、「9日間のために肺移植手術を受ける人はいないだろう」と述べ、さらなる研究が必要であることに同意を示している。 研究グループは、豚の肺を「足場」として使い、幹細胞療法を用いてヒトの細胞と置換する新たな選択肢も模索しているという。このアプローチは、将来的に臓器の拒絶反応を軽減する可能性がある。ただし現状では、ほとんどの専門家は豚の肺移植はまだ実験段階だとの見方を示している。

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不正アクセス防止のためにパスワードの変更をご検討ください

近年、インターネット上で第三者が利用者のIDやパスワードを不正に入手し、さまざまなWebサービスにログインを試みる事例が広く報告されております。こうした不正アクセスの試みは現在もインターネット全体で広く継続的に発生しています。不正ログインを防ぐためにも、より安全なパスワードへの見直しをご検討いただけますようお願いいたします。<より安全なパスワードのポイント>ほかのサービス・サイトの「使い回し」は避ける以下のような「推測されやすい文字列」は避ける- 誕生日や電話番号- 単純な英単語- 数字のみの羅列- 名前と誕生日の組み合わせ10文字以上の長めのパスワードを設定するケアネットのパスワード変更画面では、入力したパスワードの安全性が表示されますので、設定時のご参考にしてください。会員の皆さまにはお手数をおかけいたしますが、安心・安全にサービスをご利用いただくため、ご協力いただきますようお願い申し上げます。

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継続のコツ ~英会話編~【Dr. 中島の 新・徒然草】(597)

五百九十七の段 継続のコツ ~英会話編~晴れた日は洗濯日和!私もすっかり主夫気分で、オンライン英会話のフィリピン人講師との家事談義がはずみます。彼女たちも、自宅からのオンラインレッスンの合間に、皿洗いをしたり洗濯をしたり。ある講師にはサッカーをやっている11歳の息子がいて、1日に3回も着替えるのだそうです。大量の洗濯物で毎日大変なのだとか。「それ、息子さんが活発で健康だということじゃないですか。そんなに幸せなことはありませんよ」と言うと、いたく納得しておられました。さて、今回は英会話勉強継続のコツです。世の中にはいろいろな英会話勉強法があります。私自身、画期的英語勉強法を考えてはケアネットで何度も語ってきました。が、ここに来てついに真実を見いだしたわけです。勉強法よりも継続法のほうが重要!どう勉強するかよりも、どう続けるかのほうが大切ではなかろうか。そう思うに至りました。どんな勉強法でも続けさえすれば、必ずモノになるはず。大切なのは無理なく続けることだ!そう思ってたどり着いた継続のコツを以下に披露いたします。●とにかくオンライン英会話のレッスン予約を入れる私の場合、外来診察のある日は、疲労困憊して英語の勉強はできたものじゃありません。しかし、それ以外の日は勢いで予約を入れておき、後で辻褄を合わせるようにしています。●英会話の話題を決めるレッスンはいつも自由会話にしているので、話題を決めなくてはなりません。日本で大きな事件のニュースがあれば、それについて話をします。フィリピンのニュースなら、自然災害、政治家の汚職、近隣国とのトラブルあたりがメイン。やはりフィリピン関係の話は、講師の食いつきがいいですね。時には「台湾有事の時に、フィリピンがやるべきことって何があると思う?」というシリアスな質問を講師から浴びせられます。言われるまで気付きませんでしたが、台湾はフィリピンのすぐ近く。すかさず「紛争の飛び火に備えて国土防衛に専念すべきでしょうね。あと、米軍が介入した時には、同盟国として後方支援が必要になると思います」と答えるわけですが、そんな簡単な文章でも英語となるとうまく言えません。たとえば「専念する」というのが難しい。concentrateとかfocusくらいかな。●話題に沿った英語表現を準備する私は「こういう話をしよう」と思ったら、必要そうな英語表現をあらかじめ調べています。そんな時に頼りになるのがChatGPT!英語表現を尋ねると、いくつかの候補を示してくれます。その中に知らない単語が入っている場合は「~という単語は知らないので、別の表現をお願いします」と頼み、余計な負担はパス。とにかく、自分の知っている範囲の単語で表現することが大切だと思います。●1つのトピックを使い回す私はA講師とのレッスンを終えて復習したら、同じ話題で次の日にB講師と話しています。さらに反省を重ねて、その次の日のC講師とのレッスンも同じ話題。そうすると、少しずつはスピーキングが上達している気がします。●講師を選ぶ講師にもいろいろな人がいて、自分との相性もさまざま。私の場合、自分のスピーキング能力を改善したいので、以下のことを重視しています。★オンライン環境が良好。音声の遅延があったらスムーズな会話はできません。★厳格な講師より優しい講師。お医者さんと一緒かも。★こちらの下手な英語を忍耐強く聴いてくれる人。★一方的に喋らない人。聴くだけになると、こちらの練習になりません。そうやって頑張った結果、1~7月の間は月平均9回だったオンライン英会話レッスンが、8月には24回になりました。頭の中で思ったことが、以前よりもテンポよく口をついて出て来る気がします。それもこれも継続するシステムができたからに他なりません。ついでに、フィリピン人講師あるある。★皆、例外なく明るい。★後ろからコケコッコーとニワトリの鳴き声が聞こえてくる。★講師紹介の写真は思いっきり加工されており、もはや別人。オンライン英会話は月額8,000円程度なので、毎日やれば1回25分のレッスンが250円前後で済みます。 英会話上達もさることながら、私にとっては日々機嫌よく過ごすための趣味だといっても過言ではありません。読者の皆さまの参考になれば幸いです。最後に1句 日本晴れ 英語と洗濯 やったるで!

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ほんまにえらいこっちゃ?win ratioで探る医学研究【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第88回

えらいこっちゃ!と医学研究「えらいこっちゃ!」大阪のオバちゃんが、こう叫んでいたら、みなさん何を想像しますか?火事かと思えば、電車に乗り遅れそうなときも、スーパー特売で卵が98円やったときも、財布を落としたときも、隣のおばちゃんの噂話でも、なんでもかんでも同じ声量で「えらいこっちゃ!」。これは大阪の文化です。医学研究、とりわけ循環器領域の臨床試験で用いられる複合エンドポイント(composite endpoint)には、実はこの「えらいこっちゃ!」に通じる大阪のオバちゃん的な問題が潜んでいます。臨床試験では、何を指標として評価するのかというエンドポイントを明確に定める必要があります。かつては、「死亡」が最も適切なエンドポイントとされていました。しかし、死亡というイベントは多くは発生しないために、イベント数を増やし統計学的検出力を高める目的で、「死亡または心不全入院」などの複合エンドポイントが広く用いられています。人が亡くなる「死亡」は、もちろん究極の「えらいこっちゃ!」です。一方で、入院が必要になる「心不全入院」は確かに困るけれども、まだ命はあります。それなのに研究上は、どちらも「イベントが起きた」として、ひとまとめに扱うのです。それを同じ1件のイベントにしてしまうのは、オバちゃんの「卵が安い」と「財布なくした」が同じトーンで叫ばれるのに似ています。当然ながら、事象の深刻度は大きく異なります。つまり、複合エンドポイントを用いた研究結果には「えらいこっちゃの度合い」が混ざってしまいます。「イベントが減りました!」と書いてあっても、よく見ると「入院がちょっと減っただけで、死亡は変わらず」なんてこともありえます。これでは、本当に深刻な問題がどれくらい減ったのか、わかりにくくなります。有意差が「何によって」もたらされたのか、死亡なのか、入院なのか。その解釈を誤れば、治療の真価を見誤ることになりかねません。研究者たちは、その不公平を補う工夫をいろいろ考えました。その「えらいこっちゃの重み」を考慮する新しい解析方法の1つとして、「win ratio(ウィン・レシオ)」という解析方法が登場しています。紹介しましょう。win ratioを用いた解析の実際win ratioは、複合エンドポイントを構成する事象に優先順位を付け、治療効果を測る統計手法です。複数の評価項目がある場合に、それぞれの項目に優先順位を付けます。介入群(新薬を用いるグループ)と対照群(従来の標準的な治療法を受けるグループ)の患者を比較し、死亡または心不全入院に与える影響を検討する臨床研究を想定します。死亡を心不全入院よりも重大で優先順位の高い項目として設定します。仮に、介入群500例、対照群500例の計1,000例で実施した研究の場合に、背景データのリスク因子などの情報に応じて介入群と対照群の患者をマッチングさせます。マッチングした500組で、(1)から(5)の順番に勝負を判定していきます。(1)介入群で「死亡」が早く発生:介入群が「負け」(2)対照群で「死亡」が早く発生:介入群が「勝ち」(3)介入群で「心不全入院」が早く発生:介入群が「負け」(4)対照群で「心不全入院」が早く発生:介入群が「勝ち」(5)上記のどれでもない:引き分けここで大切なことは、死亡の優先順位が高いので、(1)か(2)で決着がつけば、(3)以下の勝敗判定は行わないことです。すべてのマッチングに対して、この5つの判定ができれば介入群の勝数と負数を算出できます。勝数÷負数=win ratioとなります。win ratioが1を超える場合は、介入群に有利な転帰が多いことを示唆することになります。各事象の重みを考えない、複合エンドポイントの従来の解析法を当てはめれば以下となります。(1)介入群で「死亡または心不全入院」が早く発生:介入群が「負け」(2)対照群で「死亡または心不全入院」が早く発生:介入群が「勝ち」(3)上記のどれでもない:引き分けたとえば、介入群のAさんと対照群のBさんがマッチングされ勝負したとします。研究開始早々にAさんに心不全が発生し、その後にBさんに死亡という事象が発生しました。従来の解析法では、「死亡または心不全入院」が1つイベントですから、先にイベントを起こしたAさんが負け、つまり介入群の「負け」としてカウントされます。win ratioを用いた考え方では、心不全入院よりも死亡を優先して先に検討しますので、対照群のBさんに先にイベントが発生した、つまり介入群の「勝ち」としてカウントされます。このように微妙に判断が覆るのです。要約すれば、まずは最も重大な事象で「どちらが勝ちか」を判定する。そこで差がなければ、次に軽い事象で比較する。まるで階段を下りるように、優先順位を付けて判定していくのです。こうして得られる勝敗の総和が、治療の有効性を映し出すのです。臨床試験での応用例win ratioは心不全領域を中心に臨床試験で応用されています。代表例としてEMPULSE試験があります1)。この試験では、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、新規発症もしくは慢性心不全の急性増悪により入院した急性心不全患者における主要複合エンドポイント(治療開始から90日時点での死亡、心不全イベント、QOL改善などによって構成)のリスクを有意に低下させたと報告しています。解析においてwin ratioが適用され、その手法の実用性が示されています。win ratioについて、さらに詳しく知りたい方には、Stuart J. Pocock先生が、理論的基盤を解説した原著論文「The win ratio: a new approach to the analysis of composite endpoints in clinical trials based on clinical priorities.」を一読くだされば勉強になります2)。同じくPocock先生の、Eur Heart J誌に掲載された論文「The win ratio in cardiology trials: lessons learnt, new developments, and wise future use.」に各種の実例を踏まえて、この解析手法について深い考察があり興味深いです3)。大阪のオバちゃんは偉いね大阪のオバちゃんを小ばかにしたような書き出しの文章ですが、結局のところ、科学の世界でも大阪のオバちゃんの声が響いているのかもしれません。「ほんまにえらいこっちゃなんか? それとも、大したことない“えらいこっちゃ”なんか?」この問いかけこそが、臨床試験を正しく理解する第一歩なのです。こういった真面目な統計学的な文章を読むと脳が疲れます。ここでも大阪のオバちゃんが助けてくれます。「にいちゃん、アメちゃんなめるか!」参考1)Voors AA, et al. The SGLT2 inhibitor empagliflozin in patients hospitalized for acute heart failure: a multinational randomized trial. Nat Med. 2022;28:568-574.2)Pocock SJ, et al. The win ratio: a new approach to the analysis of composite endpoints in clinical trials based on clinical priorities. Eur Heart J. 2012;33:176-182.3)Pocock SJ, et al. The win ratio in cardiology trials: lessons learnt, new developments, and wise future use. Eur Heart J. 2024;45:4684-4699.

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大脳皮質基底核変性症〔CBD:corticobasal degeneration〕

1 疾患概要■ 定義大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)は、進行性に運動症状および皮質症状を呈するまれな神経変性疾患である。病理学的には4リピートタウ(4R tau)の異常蓄積を特徴とするタウオパチーに分類され、進行性核上性麻痺(PSP)と並ぶ代表的な非アルツハイマー型タウオパチーである。1968年にRebeizらが初めて報告し、当初は“corticodentatonigral degeneration with neuronal achromasia”と呼ばれたが、1989年にGibbらにより現在の病理診断名であるCBDの呼称が確立された。臨床的には非対称性のパーキンソニズムと皮質徴候を呈するが、この臨床像はCBD以外の病理を背景にすることも多く、臨床診断名としては「大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome:CBS)」が用いられる。■ 疫学CBDは稀少疾患であり、わが国での有病率は10万人当たり約9人程度と報告されている。発症年齢は70歳代が中心で、性差については明確な傾向は認められていない。リスク因子としては、同じ4リピートが蓄積するタウオパチーであるPSPと共通するものとしてMAPT遺伝子やMOBP遺伝子が疾患感受性遺伝子として同定されているほか、CBDに特異的なものとしてInc-KIF13B-1遺伝子やSOS1遺伝子などCBDに特異的な遺伝的要因も報告されている。環境要因に関しては明らかになっていない。■ 病因CBDはタウ蛋白異常蓄積を主体とする神経変性疾患である。4R tauが神経細胞やグリア細胞に異常沈着し、神経原線維変化やアストロサイトの変性を引き起こす。とくにCBDに特徴的なのはアストロサイトの変化で、astrocytic plaqueの形成が診断上重要な所見とされる。神経細胞では神経原線維変化は少なく、プレタングル(神経原線維変化が起こる前の段階の状態)が主体である。病変分布は前頭葉・頭頂葉皮質に目立ち、しばしば左右非対称性を示す点が特徴である。クライオ電子顕微鏡にて、タウ蛋白は4層の折り畳み構造をしていることが判明した。■ 症状CBDは多彩な臨床症状を呈するが、典型例では左右非対称性の運動緩慢、固縮、ジストニア、ミオクローヌスなどの錐体外路徴候に加え、失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候などの大脳皮質徴候を示す。症状が一側から始まり、徐々に対側にも及ぶ点がCBDの重要な特徴である。認知機能障害や言語障害、行動異常も出現し得る。また、嚥下障害、構音障害など球症状も進行に伴って出現する。進行はパーキンソン病より速く、レボドパへの反応性は乏しい(表)。表 大脳皮質基底核変性症と進行性核上性麻痺の比較画像を拡大する■ 分類CBDの臨床病型は多彩であり、最も頻度の高いのはCBSであるが、全体の約40%にとどまる。その他の主要な臨床型として、PSP様症候群(Progressive Supranuclear Palsy Syndrome:PSPS)前頭葉性行動・空間症候群(frontal behavioral-spatial syndrome:FBS)非流暢/失文法型原発性進行性失語(Nonfluent/Agrammatic variant of Primary Progressive Aphasia:naPPA)アルツハイマー病様認知症が知られている。ただし、アルツハイマー病様認知症は、アルツハイマー病との鑑別が難しいため、Armstrongらによる臨床診断基準には含まれていない。また、まれに後部皮質萎縮症やレビー小体型認知症に類似した臨床像を呈する例もある。■ 予後CBDは進行性の神経変性疾患であり、発症から平均10年程度で高度機能障害に至る。多くの症例では、運動症状と認知機能障害が並行して進行し、日常生活動作は急速に低下する。レボドパなど抗パーキンソン病薬は無効あるいは効果が一時的であり、根本的治療法は存在しない。2 診断CBDの臨床診断は困難である。2013年にArmstrongらによる臨床診断基準が作成され、CBSのみならずFBS、naPPA、PSPSなど多様な臨床表現型を対象としている。ただし感度・特異度はいまだ十分でなく、臨床診断のみで確定することは難しい。画像検査では左右非対称の前頭葉・頭頂葉萎縮を認めることがあり、頭部MRIが有用である。脳血流SPECTやFDG-PETが補助的に用いられる。近年では脳脊髄液(CSF)や血液バイオマーカー、タウPETを用いた研究が進められているが、確立した診断法はまだ存在しない。最終的な確定診断は、病理診断に依存する。鑑別すべき疾患としてはPSP、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、自己免疫性パーキンソニズム(IgLON5抗体関連疾患など)がある。とくにPSPとの鑑別は臨床的に最も問題となる。CBDは難病法に基づく指定難病(指定難病7)に指定されており、厚生労働省が定める診断基準を満たした場合に医療費助成が受けられる。3 治療現在、CBDに対する根本的治療は存在しない。治療は対症的であり、薬物療法とリハビリテーションが中心となる。運動症状に対してはレボドパを試みるが、効果は限定的で持続しないことが多い。ジストニアやミオクローヌスに対しては抗てんかん薬や筋弛緩薬が用いられることがある。非流暢性失語や行動障害には言語療法、作業療法、心理社会的介入が重要である。嚥下障害が進行すれば栄養管理や誤嚥予防が不可欠となる。根本的治療としては、タウを標的とした分子標的薬の開発が進行している。抗タウ抗体(tilavonemab、gosuranemab)はPSPで第II相試験が行われたが有効性を示せなかったため、現在はタウの中間ドメインを標的とする抗体や、タウ蓄積を抑制する低分子医薬品の臨床試験が進められている。また、RNA干渉や遺伝子治療など革新的治療法も研究段階にある。CBD単独を対象とした臨床試験はあまり行われていない。4 今後の展望CBDは病理学的に定義される疾患であるため、臨床的に早期診断することはきわめて難しい。したがって、画像や体液バイオマーカーの確立が喫緊の課題である。近年の研究では、血漿やCSFにおけるリン酸化タウ(p-tau)や神経フィラメント軽鎖(NfL)が候補とされ、タウPETによる分布解析も進められている。また、わが国におけるJ-VAC研究により、CBS症例から病理診断を予測する臨床特徴の抽出が試みられており、PSPとの鑑別に一定の知見が得られている。さらにタウを標的とした疾患修飾療法の開発が進んでおり、将来的にはCBDの進行抑制が可能になることが期待される。そのためにも、早期の症例登録と臨床試験参加が重要である。5 主たる診療科脳神経内科、リハビリテーション科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 大脳皮質基底核変性症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金事業 神経変性疾患領域の基盤的調査研究班 『CBD診療マニュアル2022』(医療従事者向けのまとまった情報)Aiba I, et al. Brain Commun. 2023;5:fcad296.公開履歴初回2025年9月11日

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死前喘鳴に対する薬物療法【非専門医のための緩和ケアTips】第107回

死前喘鳴に対する薬物療法死亡直前期の症状の1つである「死前喘鳴」は終末期(とくに死の数時間〜数日前)に見られる呼吸音で、咽頭や気道に貯留した分泌物が振動して生じる「ゼーゼー」という呼吸音です。亡くなる方の40%前後で生じるとされていますので、見たことがある方も多いかもしれません。患者自身に苦痛はないとされますが、周囲の家族にとっては苦しそうに見え、不安や苦悩の原因になります。家族を安心させるために薬剤による治療を行うことが多いですが、供給状況の変化により、手に入りにくいケースも出ています。今回の質問亡くなりそうな患者さんで死前喘鳴を経験することがあります。以前はハイスコを使っていたのですが、発売中止になったと聞きました。これからはどのような対応をするのが良いのでしょうか?ご質問ありがとうございます。抗コリン薬ハイスコ(一般名:スコポラミン臭化水素酸塩水和物)は、「採算が合わない」として製造元が製造発売停止を発表し、経過措置を経て2024年3月に完全に販売が停止しています。さて、ご質問に対して直接的に回答させていただくと、「気道分泌が亢進していることによる喘鳴に対しては、ブスコパン(一般名:ブチルスコポラミン臭化物)の投与が一般的」となります。ハイスコ販売中止の発表以後、どのように対応するかというのは緩和ケア専門家の中で話題になりました。研究においてハイスコとブスコパンの有効率にはあまり差がないことが明らかになっており、実臨床でもブスコパンで代替している医師が多いと思います。亡くなる直前の患者さんの様子は、家族にとって非常に印象深いものです。場合によっては何年も「あの時、苦しそうだったなあ」という思いを抱いて過ごすこともありえます。そういった観点から、何らかの薬物療法を試してみることは、患者の症状緩和はもちろん、家族にとっても重要だと思います。死前喘鳴における「意識はない状態で、苦しそうに見える症状は本当のところ苦しいのか」という問題にはいろいろ意見があり、まだ答えはありません。ただ、「おそらく、ご本人は、苦しさはわからない状況だと思います」というように、ご家族に説明している方が多いのではないでしょうか。また、こういった家族のつらさを和らげるという観点からは、薬物療法以外の対応も重要です。体位を調整したり、口腔ケアを提供したりすることや、苦痛を気に掛け、家族の心配に誠実に対応しようとする姿勢を見せることが大切です。患者だけでなく家族にとっても大切な時間を心穏やかに過ごせるように、支援できると良いですね。今回のTips今回のTips死前喘鳴、ブスコパンのほかに薬物以外のケアも検討しよう。

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第27回 なぜ経済界トップは辞任したのか?新浪氏報道から考える、日本と世界「大麻をめぐる断絶」

経済同友会代表幹事という日本経済の中枢を担う一人、サントリーホールディングスの新浪 剛史氏が会長職を辞任したというニュースは、多くの人に衝撃を与えました1)。警察の捜査を受けたと報じられる一方、本人は記者会見で「法を犯しておらず潔白だ」と強く主張しています。ではなぜ、潔白を訴えながらも、日本を代表する企業のトップは辞任という道を選ばざるを得なかったのでしょうか。この一件は、単なる個人のスキャンダルでは片付けられません。日本の厳格な法律と、大麻に対する世界の常識との間に生じた「巨大なズレ」を浮き彫りにしているかもしれません。また、私たち日本人が「大麻」という言葉に抱く漠然としたイメージと、科学的な実像がいかにかけ離れているかをも示唆しているようにも感じます。本記事では、この騒動の深層を探るとともに、科学の光を当て、医療、社会、法律の各側面から、この複雑な問題の核心に迫ります。事件の深層 ― 「知らなかった」では済まされない世界の現実今回の騒動の発端は、新浪氏が今年4月にアメリカで購入したサプリメントにあります。氏が訪れたニューヨーク州では2021年に嗜好用大麻が合法化され、今や街の至る所で大麻製品を販売する店を目にします。アルコールやタバコのように、大麻成分を含むクッキーやオイル、チョコレートやサプリメントなどが合法的に、そしてごく普通に流通しています。新浪氏は「時差ボケが多い」ため、健康管理の相談をしていた知人から強く勧められ、現地では合法であるという認識のもと、このサプリメントを購入したと説明しています。ここで重要になるのが、大麻に含まれる2つの主要な成分、「THC」と「CBD」の違いです。THC(テトラヒドロカンナビノール)いわゆる「ハイ」になる精神活性作用を持つ主要成分です。日本では麻薬及び向精神薬取締法で厳しく規制されており、これを含む製品の所持や使用は違法となります。THCには多幸感をもたらす作用がある一方、不安や恐怖感、短期的な記憶障害や幻覚作用などを引き起こすこともあります。CBD(カンナビジオール)THCのような精神作用はなく、リラックス効果や抗炎症作用、不安や緊張感を和らげる作用などが注目されています。ただし、臨床的に確立されたエビデンスはなく、愛好家にはエビデンスを過大解釈されている側面は否めません。「時差ボケ」を改善するというエビデンスも確立していません。日本では、大麻草の成熟した茎や種子から抽出され、THCを含まないCBD製品は合法的に販売・使用が可能です。新浪氏自身は「CBDサプリメントを購入した」という認識だったと述べていますが、問題はここに潜んでいます。アメリカで合法的に販売されているCBD製品の中には、日本の法律では違法となるTHCが含まれているケースが少なくありません。厚生労働省も、海外製のCBD製品に規制対象のTHCが混入している例があるとして注意を呼びかけています2)。まさにこの「合法」と「違法」の境界線こそが、今回の問題の核心です。潔白を訴えても辞任、なぜ? 日本社会の厳しい目記者会見での新浪氏の説明や報道によると、警察が氏の自宅を家宅捜索したものの違法な製品は見つからず、尿検査でも薬物成分は検出されなかったとされています。また、福岡で逮捕された知人の弟から自身にサプリメントが送られようとしていた事実も知らなかったと主張しています。法的には有罪が確定したわけでもなく、本人は潔白を強く訴えている。にもかかわらず、なぜ辞任に至ったのでしょうか。その理由は、サントリーホールディングス側の判断にありました。会社側は「国内での合法性に疑いを持たれるようなサプリメントを購入したことは不注意であり、役職に堪えない」と判断し、新浪氏も会社の判断に従った、と説明されています。これは、法的な有罪・無罪とは別の次元にある、日本社会や企業における「コンプライアンス」と「社会的信用」の厳しさを物語っているのかもしれません。とくにサントリーは人々の生活に密着した商品を扱う大企業です。そのトップが、たとえ海外で合法であったとしても、日本で違法と見なされかねない製品に関わったという「疑惑」が生じたこと自体が、企業のブランドイメージを著しく損なうリスクとなります。結果的に違法でなかったとしても、「違法薬物の疑いで警察の捜査を受けた」という事実だけで、社会的・経済的な制裁が下されてしまう。これが、日本社会の現実です。科学は「大麻」をどう見ているのか?この一件を機に、私たちは「大麻」そのものについて、科学的な視点からも冷静に見つめ直す必要があるでしょう。世界中で医療大麻が注目される理由は、THCやCBDといった「カンナビノイド」が、私たちの体内にもともと存在する「エンドカンナビノイド・システム(ECS)」に作用するためです3)。ECSは、痛み、食欲、免疫、感情、記憶など、体の恒常性を維持する重要な役割を担っています。この作用を利用し、既存の薬では効果が不十分なさまざまな疾患への応用が進んでいます4)。がん治療の副作用緩和抗がん剤による悪心や嘔吐、食欲不振を和らげる効果。アメリカではTHCを主成分とする医薬品(ドロナビノールなど)がFDAに承認されています。難治性てんかんとくに小児の難治性てんかんにCBDが効果を示し、多くの国で医薬品として承認されています。その他多発性硬化症の痙縮、神経性の痛み、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、幅広い疾患への有効性が研究・報告されています。このように、科学の視点で見れば、大麻はさまざまな病気の患者を救う可能性を秘めた「薬」としての側面を持っています。「酒・タバコより安全」は本当か? リスクの科学的比較「大麻は酒やタバコより安全」という言説を耳にすることもあります。リスクという側面から、これは本当なのでしょうか。単純な比較はできませんが、科学的なデータはいくつかの客観的な視点を提供してくれます。依存性生涯使用者のうち依存症に至る割合は、タバコ(ニコチン)が約68%、アルコールが約23%に対し、大麻は約9%と報告されており、比較的低いとされます5)。しかし、ゼロではなく、使用頻度や期間が長くなるほど「大麻使用障害」のリスクは高まります。致死量アルコールのように急性中毒で直接死亡するリスクは、大麻には報告されていません6)。長期的な健康への影響精神への影響大麻の長期使用、とくに若年層からの使用は、統合失調症などの精神疾患のリスクを高める可能性が複数の研究で示されています。とくに高THC濃度の製品を頻繁に使用する場合、そのリスクは増大すると考えられています7)。また、うつ病や双極性障害との関連も指摘されていますが、研究結果は一貫していません。身体への影響煙を吸う方法は、タバコと同様に咳や痰などの呼吸器症状と関連します。心血管系への影響(心筋梗塞や脳卒中など)も議論されていますが、結論は出ていません8)。一方で、運転能力への影響は明確で、使用後の数時間は自動車事故のリスクが有意に高まることが示されています6)。国際的な専門家の中には、依存性や社会への害を総合的に評価すると、アルコールやタバコの有害性は、大麻よりも大きいと結論付けている人もいます。しかし、これは大麻が「安全」だという意味ではなく、それぞれ異なる種類のリスクを持っていると理解するべきでしょう。世界の潮流と日本のこれからかつて大麻は、より危険な薬物への「入り口」になるという「ゲートウェイ・ドラッグ理論」が主流でした。しかし近年の研究では、もともと薬物全般に手を出しやすい遺伝的・環境的な素因がある人が複数の薬物を使用する傾向がある、という「共通脆弱性モデル」のほうが有力だと考えられています9)。アメリカでは多くの州で合法化が進みましたが、社会的なコンセンサスは得られていません。賛成派は莫大な税収や犯罪組織の弱体化を主張する一方、反対派は若者の使用増加や公衆衛生への悪影響を懸念しています。合法化による長期的な影響はまだ評価の途上にあり、世界もまた「答え」を探している最中です。ただし、新浪氏の問題は、決して他人事ではないと思います。今後、海外で生活したり、旅行したりする日本人が、意図せず同様の事態に陥る可能性は誰にでもあります。また、この一件は、私たちに大きな問いを投げかけています。世界が大きく変わる中で、日本は「違法だからダメ」という思考停止に陥ってはいないでしょうか。もちろん、法律を遵守することは大前提。しかし同時に、大麻が持つ医療的な可能性、アルコールやタバコと比較した際のリスクの性質、そして世界の潮流といった科学的・社会的な事実から目を背けるべきではありません。今回の騒動をきっかけに、私たち一人ひとりが固定観念を一度リセットし、科学に基づいた冷静な知識を持つこと。そして社会全体で、この複雑な問題について、感情論ではなく建設的な議論を始めていくこと。それこそが、日本が世界の「ズレ」から取り残されないために、今まさに求められていることなのかもしれません。 1) NHK. サントリーHD 新浪会長が辞任 サプリメント購入めぐる捜査受け. 2025年9月2日 2) 厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部. CBDオイル等のCBD関連製品の輸入について. 3) Testai FD, et al. Use of Marijuana: Effect on Brain Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Stroke. 2022;53:e176-e187. 4) Page RL 2nd, et al. Medical Marijuana, Recreational Cannabis, and Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2020;142:e131-e152. 5) Lopez-Quintero C, et al. Probability and predictors of transition from first use to dependence on nicotine, alcohol, cannabis, and cocaine: results of the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Drug Alcohol Depend. 2011;115:120-130. 6) Gorelick DA. Cannabis-Related Disorders and Toxic Effects. N Engl J Med. 2023;389:2267-2275. 7) Hines LA, et al. Association of High-Potency Cannabis Use With Mental Health and Substance Use in Adolescence. JAMA Psychiatry. 2020;77:1044-1051. 8) Rezkalla SH, et al. A Review of Cardiovascular Effects of Marijuana Use. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2025;45:2-7. 9) Vanyukov MM, et al. Common liability to addiction and “gateway hypothesis”: theoretical, empirical and evolutionary perspective. Drug Alcohol Depend. 2012;123 Suppl 1:S3-17.

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砂糖の取り過ぎは認知症リスクと関連するか

 過剰な糖質の摂取は、認知症リスクの上昇と関連しているといわれているが、これまでの研究ではサンプル数が少なく、糖質の総量に着目しているため、特定の糖質サブタイプに関する調査は限られていた。中国・西安交通大学のYue Che氏らは、糖質の摂取量およびサブタイプと認知症リスクとの関係を評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年7月31日号の報告。 英国バイオバンク参加者のうち、24時間食事回想法を1回以上実施した17万2,516人を対象に分析を行った。糖質の総量およびサブタイプ(遊離糖、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、その他の糖類)について、Cox比例ハザードモデルを用いて、認知症リスクに関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。性別による層別化分析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・糖類の総量(HR:1.292、95%CI:1.148〜1.453)、遊離糖の量(HR:1.254、95%CI:1.117〜1.408)が多い場合、認知症リスク上昇との関連が認められた。・乳製品以外の外因性糖類(HR:1.321、95%CI:1.175〜1.486)、ショ糖(HR:1.291、95%CI:1.147〜1.452)においても、認知症リスクとの正の相関が認められた。・これらの関連性は、女性において顕著であり、糖類の総量および遊離糖、ブドウ糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量の増加は、それぞれ独立して認知症リスク上昇との関連が認められた。一方、男性では有意な関連は認められなかった。 著者らは「糖類の総量および遊離糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量が多いと、とくに女性では認知症リスクが上昇することが示唆された」としている。

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高齢やフレイルのCLL患者、アカラブルチニブ単剤で高い奏効率(CLL-Frail)/Blood

 80歳以上の高齢やフレイルの慢性リンパ性白血病(CLL)患者を対象とした前向きのCLL-Frail試験の結果、アカラブルチニブ単剤治療により高い奏効率とフレイルの改善が認められた。また、予期しない安全性シグナルはみられず、重篤な有害事象はほとんどが感染症であったという。ドイツ・ケルン大学のFlorian Simon氏らがBlood誌オンライン版2025年9月4日号に報告した。 CLL-Frail試験は、German CLL Study Groupによる医師主導国際多施設共同第II相試験である。本試験の対象は、ECOG PSが3以下で、80歳以上および/またはフレイルスケールスコアによりフレイルとみなされたCLL患者で、1ラインまで前治療が認められた。主要評価項目は6サイクル治療後の全奏効率(ORR)で、ORR≦65%とする帰無仮説を検証した。 主な結果は以下のとおり。・登録された53例中34例が治療継続中で、早期中止の最も多かった理由は有害事象(10例)で5例が死亡した。年齢中央値は81歳、47.2%がフレイルであった。・3サイクル以上治療を受けた46例のORRは93.5%(95%信頼区間:82.1~98.6)であり、主要評価項目を達成した(p<0.001)。・追跡期間中央値19ヵ月で、推定12ヵ月無増悪生存率および全生存率はそれぞれ93.3%、95.7%であった。・53.5%の患者がフレイルの改善を自己申告した。・全例に有害事象が認められ、重篤な有害事象(CTCAE 3以上)が63.5%で発現したが、重篤な出血イベントは認められず、心房細動はまれ(CTCAE 2/3が2例)であった。死亡した5例中4例は治療中または治療後28日以内に死亡し、うち3例は感染症/COVID-19が原因だった。 著者らは、「慎重な患者選択と意思決定の共有が不可欠ではあるが、この試験における高い奏効率とフレイルの改善は、これまで十分な治療効果が認められていなかったこの年齢層でのアカラブルチニブによるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害の顕著な有効性と実行可能性を強調している」と結論した。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がOS改善(FLAURA2)/WCLC2025

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」が実施されている。世界肺がん学会(WCLC2025)において、本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果がDavid Planchard氏(フランス・Institut Gustave Roussy/パリ・サクレー大学)によって報告され、併用群でOSの有意な改善が認められた。すでに主解析の結果、併用群で無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことが報告されており(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79)1)、OSも第2回中間解析の結果から併用群が良好な傾向が示されていた。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約4割が脳転移を有していた(併用群42%、単独群40%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群61%/38%、単独群60%/38%であった。・データカットオフ時点(2025年6月12日)のOS中央値は、併用群47.5ヵ月、単独群37.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ80%、63%、49%であり、単独群がそれぞれ72%、51%、41%であった。・OSに関するサブグループ解析では、ほとんどのサブグループで併用群が良好な傾向にあったが、中国人を除くアジア人のサブグループのHRは1.00(95%CI:0.71~1.40)であった。・治療期間中央値は、併用群がプラチナ製剤2.8ヵ月、ペメトレキセド8.3ヵ月、オシメルチニブ30.5ヵ月であった。単独群のオシメルチニブによる治療期間中央値は21.2ヵ月であった。・進行後に後治療を受けた割合は、併用群69%、単独群77%であった。後治療を受けた患者のうち、化学療法を用いた割合は、併用群74%、単独群75%であった。・Grade3以上の有害事象は併用群70%、単独群34%に発現したが、主解析時から2年超の追跡期間を経ても、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群12%、単独群7%に発現した。 本試験結果について、Planchard氏は「オシメルチニブ+化学療法はOSを有意に改善したことから、EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることが確認された」とまとめた。

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降圧薬で腸管血管性浮腫の報告、重大な副作用を改訂/厚労省

 2025年9月9日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬で重大な副作用が改められた。 今回、ACE阻害薬、ARB、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)および直接的レニン阻害薬の腸管血管性浮腫について評価した。その結果、「血管性浮腫の一種である腸管血管性浮腫についても、潜在的なリスクである可能性があること」「国内外副作用症例において、腸管血管性浮腫に関連する報告が認められていない薬剤もあるものの、複数の薬剤において腸管血管性浮腫との因果関係が否定できない症例が認められていること」「医薬品医療機器総合機構で実施したVigiBaseを用いた不均衡分析において、複数のACE阻害薬およびARBで『腸管血管性浮腫』に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かったこと」を踏まえ、改訂に至った。◆例:アジルサルタンの場合[重大な副作用]血管浮腫顔面、口唇、舌、咽・喉頭等の腫脹を症状とする血管性浮腫があらわれることがある。↓血管性浮腫顔面、口唇、舌、咽・喉頭等の腫脹を症状とする血管性浮腫があらわれることがある。また、腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等を伴う腸管血管性浮腫があらわれることがある。 対象医薬品は以下のとおり。<ACE阻害薬>アラセプリル(商品名:セタプリル錠)イミダプリル塩酸塩(同:タナトリル錠)デラプリル塩酸塩(同:アデカット錠)トランドラプリル(同:オドリック錠)ペリンドプリルエルブミン(同:コバシル錠)<ARB>アジルサルタン(同:アジルバ錠)イルベサルタン(同:アバプロ錠)オルメサルタン メドキソミル(同:オルメテック錠)カンデサルタン シレキセチル(同:ブロプレス錠)バルサルタン(同:ディオバン錠)アジルサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:ザクラス配合錠)イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:アイミクス配合錠)イルベサルタン・トリクロルメチアジド(同:イルトラ配合錠)オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン(同:レザルタス配合錠)カンデサルタン シレキセチル・アムロジピンベシル酸塩(同:ユニシア配合錠)カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド(同:エカード配合錠)テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:ミカムロ配合錠)テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド(同:ミカトリオ配合錠)テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:ミコンビ配合錠)バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:エックスフォージ配合錠)バルサルタン・シルニジピン(同:アテディオ配合錠)バルサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:コディオ配合錠)ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド(同:プレミネント配合錠)<ARNI>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(同:エンレスト錠)<直接的レニン阻害薬>アリスキレンフマル酸塩(同:ラジレス錠) このほか、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール ほか)、サラゾスルファピリジン(同:アザルフィジン、サラゾピリン ほか)アダリムマブ(同:ヒュミラ ほか)、イピリムマブ(同:ヤーボイ)・ニボルマブ(同:オプジーボ)、メロペネム水和物(同:メロペン)に対しても、それぞれ重大な副作用などが追加された。

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ベルイシグアト、急性増悪のないHFrEFのイベント抑制効果は?/Lancet

 急性増悪の認められない左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、ベルイシグアトは複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院までの期間)のリスクを低下させなかったことが、米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らVICTOR Study Groupによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VICTOR試験」の結果で報告された。ただし、心血管死についてプラセボ群よりベルイシグアト群で少なかったことが観察されている。ベルイシグアトは、急性増悪が認められたHFrEF患者において、心血管死または心不全による入院リスクを軽減するための使用が認められている。VICTOR試験の目的は、急性増悪の認められないHFrEF患者におけるベルイシグアトの有効性を評価することであった。Lancet誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。36ヵ国482施設で経口ベルイシグアトとプラセボを比較 VICTOR試験は36ヵ国482施設で行われ、18歳以上、HFrEF(左室駆出率≦40%)で無作為化前6ヵ月以内に心不全による入院歴がなく、無作為化前3ヵ月以内に外来での利尿薬の静脈内投与を必要としなかった患者を対象とした。 被験者を、経口ベルイシグアト群または適合プラセボ群に、双方向応答システムを用いて無作為に1対1の割合で割り付けた。経口ベルイシグアトの投与量は、導入時1日1回2.5mgとし、無作為化後14(±4)日目に5mg、28(±4)日目に10mgへと漸増された 主要エンドポイントは、心血管死または心不全による入院までの期間の複合とした。重要な副次エンドポイントは、無作為化から心血管死までの期間とした。その他の副次エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院までの期間なども評価した。探索的エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院または予定外の心不全外来受診までの期間などを評価した。有効性のエンドポイントは、ITT集団で評価した。 有害事象の評価は、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された全患者(安全性集団)を対象に行われた。主要エンドポイントの発生に統計学的有意差認められず 2021年11月2日~2023年12月21日に、1万921例がスクリーニングを受け6,105例が無作為化された(ベルイシグアト群3,053例、プラセボ群3,052例)。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~75.0)、女性1,440例(23.6%)、男性4,665例(76.4%)、白人3,934例(64.4%)であり、2,899例(47.5%)には心不全による入院歴がなかった。 追跡期間中央値18.5ヵ月(IQR:13.6~24.7)において、主要エンドポイントのイベントは、ベルイシグアト群549例(18.0%)、プラセボ群584例(19.1%)が報告され、両群間に統計学的有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)。 プロトコールで事前に規定されていたように、主要エンドポイントについて統計学的有意差が示されなかったため、すべての副次エンドポイントおよび探索的エンドポイントについては正式な統計解析を実施せず、名目上の値として報告された。心血管死の発生は、ベルイシグアト群292例(9.6%)、プラセボ群346例(11.3%)であった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。心不全による入院の発生は、ベルイシグアト群348例(11.4%)、プラセボ群362例(11.9%)であった(0.95、0.82~1.10)。 重篤な有害事象は、ベルイシグアト群717/3,049例(23.5%)、プラセボ群751/3,049例(24.6%)に発現した。最も多くみられた有害事象は症候性の低血圧で、ベルイシグアト群345/3,049例(11.3%)、プラセボ群281/3,049例(9.2%)に認められた。全死因死亡は、ベルイシグアト群377/3,049例(12.3%)、プラセボ群440/3,049例(14.4%)が報告された(HR:0.84、95%CI:0.74~0.97)。

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他者を手助けする活動で認知機能の低下速度が緩やかに

 年齢を重ねても脳の健康を維持したい人は、定期的に地域や近所でボランティア活動を行うか、友人や家族を手助けすると良いようだ。そうした他者を手助けする活動を定期的に行っている人では、その活動が公式か非公式かにかかわらず、加齢に伴う認知機能の低下速度が緩やかであることが、新たな研究で示された。米テキサス大学(UT)オースティン校人間発達・家族科学分野のSae Hwang Han氏らによるこの研究の詳細は、「Social Science & Medicine」10月号に掲載された。Han氏は、「組織的なものであれ個人的なものであれ、日常的に他者を手助けすることは認知機能に永続的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 この研究では、1998年から2020年の間にU.S. Health and Retirement Study(全米健康と退職研究)に参加した米国の51歳以上の成人3万1,303人のデータを用いて、他者を手助けする役割の変化やその活動時間の増減が認知機能にどのように影響するのかを検討した。他者を手助けする役割は、公式なボランティア活動と、家族や友人を手助けする個人的な援助に分けて検討した。個人的な援助の例は、友人の医療機関受診の予約を取ることや、ベビーシッターをすることなどである。 その結果、公式なボランティア活動か個人的な援助かを問わず、他者を助ける活動を始めた人では、そうした活動をしていない人に比べて認知機能が高く、加齢に伴う認知機能の低下がより緩やかであることが明らかになった。また、他者を手助けする活動を継続的に行うことは認知機能に累積的なベネフィットをもたらし、時間が経つほどその効果が大きくなることも示された。さらに、認知機能へのベネフィットを得るためには、そうした活動を行う時間が1週間に2~4時間程度と中程度の活動量で十分であることも示された。 Han氏は、「私にとって印象的だったのは、他者を手助けすることでもたらされる認知機能へのメリットが短期的なものではなく、そうした活動を継続することで経時的に蓄積されるという点だ。こうしたメリットは、公式なボランティア活動と非公式な援助の両方で認められた」とUTのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「それだけでなく、わずか2~4時間程度の関与でも、一貫して大きなベネフィットにつながっていた」と付け加えている。 Han氏はまた、「個人的な手助けは非公式であり社会的に認知されないため、健康に対する効果が小さいと思われがちだ。しかし、そうした行為でも公式なボランティア活動に匹敵する認知機能の向上が見られたことは、嬉しい驚きだった」と語っている。 研究グループは、毎年のように他者を手助けする活動を行うことが習慣になっている人の間では、より大きなベネフィットを期待できるのではないかとみている。Han氏は、「一方で、他者を手助けする活動を完全にやめてしまうことは、認知機能の低下と関連していることが示された。これは、高齢者が可能な限り何らかの形でそうした活動に関わり続けることの大切さを示しており、そのためには適切なサポートや配慮が必要なことを示している」と述べている。 研究グループは、他者を手助けする活動によりもたらされるベネフィットは、社会的つながりの強化か、あるいは毎日の生活の中で抱えるストレスの軽減によりもたらされる可能性が高いと見ている。こうした活動は、時間の経過とともに人の認知機能を蝕むとされる孤立感や孤独感を軽減することができる可能性があるという。

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AIチャットボットによるてんかん教育介入の効果、「えぴろぼ」の実用性と今後の課題

 てんかんを正しく理解し、偏見なく接する社会をつくるには、患者本人だけでなく周囲の人々の知識と意識の向上が欠かせない。こうした中、患者やその支援者にてんかんに関する情報や心理的サポートを提供する新しい試みとして、人工知能(AI)を活用したチャットボット「えぴろぼ」が登場した。今回、「えぴろぼ」の利用によって、てんかん患者に対する態度の改善や疾患知識の向上が認められたとする研究結果が報告された。研究は、国立精神・神経医療研究センター病院てんかん診療部の倉持泉氏らによるもので、詳細は「Epilepsia Open」に7月28日掲載された。 近年、AIやデジタルヘルスの進展により、チャットボットを活用した医療支援が注目されている。てんかん患者の多くは、自身の疾患に関する知識が不十分で、治療への関与や生活の質(QoL)にも影響を及ぼしている。また、スティグマや心理的負担から、教育プログラムへの参加率も低いのが現状である。こうした課題を受けて、埼玉医科大学、埼玉大学、国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームは、患者や支援者が場所や時間を問わず情報にアクセスできる新たな教育支援ツールとして、AIチャットボット「えぴろぼ」を開発した。本研究では、「えぴろぼ」がてんかんに関する知識や意識の改善にどのように寄与するかを検討した。 本研究は2つのフェーズで構成されていた。最初に、チャットボットの内容を洗練させるための予備的な試験フェーズを実施し、その後、本介入フェーズに移行した。本フェーズでは、スマートフォンアプリを通じて「えぴろぼ」を利用するために176名(てんかん患者13名、現在支援者として関わっている者69名、将来支援者となる可能性がある者28名、その他66名)が登録した。調査では、チャットボット使用前後での、てんかんに関する知識や偏見・スティグマ、患者自身のセルフスティグマ(内在化されたスティグマ)を評価した。経時的な変化の分析には、対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。 登録した176名のうち、82名(てんかん患者9名、患者家族25名、支援者25名、医療従事者12名、その他11名)が介入前後の調査を完了した。参加者の平均年齢は41.8歳であり、ほとんどの参加者がてんかんについてある程度の知識をもっていた。約半数の参加者はてんかん発作を目撃した経験があると回答していたが、発作への対応について自信があると回答した者は半数に満たなかった。 「えぴろぼ」による介入は、てんかん患者に対する職場での平等に関する意識に有意な改善をもたらし(P<0.001)、てんかん治療に関する知識の向上にもつながった(P=0.022)。QOLやてんかんに関する一般的な知識については、統計的に有意ではなかったものの改善傾向を示した。一方で、てんかん患者(n=9)では、てんかんに関連するセルフスティグマのわずかな増加が観察された(P=0.31)。 本研究について著者らは、「今回の結果は、『えぴろぼ』がてんかんに関する教育や心理的支援において、広く活用できるデジタルツールとしての可能性を示している。その一方で、患者自身のセルフスティグマへの対応は今後の課題として残されている」と述べた。 なお、介入によりセルフスティグマが増加した理由について、著者らは評価期間が約1カ月と短いこと、また対象に含まれるてんかん患者が少数であることを限界として指摘した上で、「教育介入によって知識が増えた結果、むしろ自身が置かれた社会的立場や偏見を意識するようになり、結果として一時的にセルフスティグマが強まった可能性が考えられる」と言及している。

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腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第11回

Q11 腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?腎盂腎炎を疑って泌尿器科にコンサルトすることがありますが、CT検査で腎周囲の脂肪織濃度の上昇がないと、尿検査が陽性でも腎盂腎炎ではない、と言われます。実際はどうなのでしょうか。

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副作用編:手足症候群(抗がん剤治療中の皮膚障害対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第4回

今回は化学療法中の「手足症候群」についてです。手足症候群はとくにマルチキナーゼ阻害薬などで発症する副作用の1つです。患者さん自身には病状の深刻さがわかりづらく、気付いたときには重症化しているケースもたびたび見受けられます。足底部の手足症候群が増悪すると歩行困難となり、治療機関が遠方の場合は自宅近くのクリニックへ来院するケースもあります。今回は、手足症候群で受診された際に有用な鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】72歳、男性主訴歩行困難病歴局所進行大腸がん(StageIV)に対する緩和的化学療法を実施中。数日前から歩行時に足裏の痛みを感じていた。今朝から足底部に発赤と水疱を自覚。疼痛で歩行困難となり、かかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、呼吸器症状、腹部症状なし。食事摂取問題なし。両足足底部に発赤および水疱を認める。手掌も発赤あり。内服抗がん剤フルキンチニブ5mg/日(Day18)画像を拡大するステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤治療中の手足症候群のほとんどが使用中の抗がん剤によるものですが、感染症なども念頭におく必要があります。他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)手足症候群の原因が本当に抗がん剤かどうか確認服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(主に感染:蜂窩織炎や真菌感染など)との鑑別。手足症候群以外の症状やバイタルの変動を確認。鑑別疾患とポイント画像を拡大する手足症候群の原因となる医薬品と頻度画像を拡大する(2)CTCAEを用いた重症度評価外来受診時のGrade判定の目安としては、初期症状である手足がチクチクするといった軽度の疼痛のような感覚異常はGrade1、明確な痛みを伴う場合はGrade2、歩行困難などの日常生活に支障を来す場合はGrade3となります。機能障害の程度の判定は、ボタンがかけられない、痛くて水仕事ができない、歩行ができないなどを指標とします。CTCAE v5.0 手掌・足底発赤知覚不全症候群画像を拡大するステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。来院時はすでに歩行困難であり、CTCAEで評価すると重症度はGrade3に相当しました。両手・両足に症状が出現しており、フルキンチニブによる手足症候群の診断となりました。発熱の有無や他の副作用の有無も聴取したうえで、抗がん剤の内服中止と自宅での安静としました。このケースではストロンゲストのステロイド軟膏を処方し、疼痛に対してはアセトアミノフェンを処方したうえで、治療機関への連絡(抗がん剤の再開時期や副作用報告)を説明して帰宅としました。症状と対応画像を拡大する内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談を受けた場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。手足症候群を生じるような内服抗がん剤の場合、自己判断で抗がん剤を減量すると副作用の過小評価につながる可能性があるため、判断に迷う場合は治療機関へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただけますと助かります。1)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群2)中外製薬:手足症候群 Hand-foot Syndrome Atlas3)有害事象共通用語基準 v5.0 日本語訳JCOG版

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