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急性増悪の認められない左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、ベルイシグアトは複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院までの期間)のリスクを低下させなかったことが、米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らVICTOR Study Groupによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VICTOR試験」の結果で報告された。ただし、心血管死についてプラセボ群よりベルイシグアト群で少なかったことが観察されている。ベルイシグアトは、急性増悪が認められたHFrEF患者において、心血管死または心不全による入院リスクを軽減するための使用が認められている。VICTOR試験の目的は、急性増悪の認められないHFrEF患者におけるベルイシグアトの有効性を評価することであった。Lancet誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。36ヵ国482施設で経口ベルイシグアトとプラセボを比較 VICTOR試験は36ヵ国482施設で行われ、18歳以上、HFrEF(左室駆出率≦40%)で無作為化前6ヵ月以内に心不全による入院歴がなく、無作為化前3ヵ月以内に外来での利尿薬の静脈内投与を必要としなかった患者を対象とした。 被験者を、経口ベルイシグアト群または適合プラセボ群に、双方向応答システムを用いて無作為に1対1の割合で割り付けた。経口ベルイシグアトの投与量は、導入時1日1回2.5mgとし、無作為化後14(±4)日目に5mg、28(±4)日目に10mgへと漸増された 主要エンドポイントは、心血管死または心不全による入院までの期間の複合とした。重要な副次エンドポイントは、無作為化から心血管死までの期間とした。その他の副次エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院までの期間なども評価した。探索的エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院または予定外の心不全外来受診までの期間などを評価した。有効性のエンドポイントは、ITT集団で評価した。 有害事象の評価は、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された全患者(安全性集団)を対象に行われた。主要エンドポイントの発生に統計学的有意差認められず 2021年11月2日~2023年12月21日に、1万921例がスクリーニングを受け6,105例が無作為化された(ベルイシグアト群3,053例、プラセボ群3,052例)。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~75.0)、女性1,440例(23.6%)、男性4,665例(76.4%)、白人3,934例(64.4%)であり、2,899例(47.5%)には心不全による入院歴がなかった。 追跡期間中央値18.5ヵ月(IQR:13.6~24.7)において、主要エンドポイントのイベントは、ベルイシグアト群549例(18.0%)、プラセボ群584例(19.1%)が報告され、両群間に統計学的有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)。 プロトコールで事前に規定されていたように、主要エンドポイントについて統計学的有意差が示されなかったため、すべての副次エンドポイントおよび探索的エンドポイントについては正式な統計解析を実施せず、名目上の値として報告された。心血管死の発生は、ベルイシグアト群292例(9.6%)、プラセボ群346例(11.3%)であった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。心不全による入院の発生は、ベルイシグアト群348例(11.4%)、プラセボ群362例(11.9%)であった(0.95、0.82~1.10)。 重篤な有害事象は、ベルイシグアト群717/3,049例(23.5%)、プラセボ群751/3,049例(24.6%)に発現した。最も多くみられた有害事象は症候性の低血圧で、ベルイシグアト群345/3,049例(11.3%)、プラセボ群281/3,049例(9.2%)に認められた。全死因死亡は、ベルイシグアト群377/3,049例(12.3%)、プラセボ群440/3,049例(14.4%)が報告された(HR:0.84、95%CI:0.74~0.97)。