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日本人統合失調症外来患者における抗精神病薬の多剤併用パターンを調査

 統合失調症治療において抗精神病薬単剤療法が推奨される標準療法であるにもかかわらず、2種類以上の抗精神病薬の併用と定義される多剤併用は、臨床現場で依然として一般的に行われている。佐賀大学の祖川 倫太郎氏らは、日本の統合失調症外来患者における抗精神病薬の多剤併用率とその要因について調査するため、全国横断調査を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2026年2月18日号の報告。 2024年10月21~25日に、医療機関36施設より3,657例の外来患者データを収集した。患者は、抗精神病薬の単剤療法群と多剤併用群に分類され、年齢、性別、薬剤投与頻度、長時間作用型注射剤(LAI)、クロザピン、併用向精神薬の使用状況などの人口統計学的および臨床的特徴を比較した。抗精神病薬の投与量はクロルプロマジン換算量に標準化し、性別および年齢層別に解析した。 主な内容は以下のとおり。・抗精神病薬の多剤併用は、40.8%の患者で認められた。・多変量解析では、抗精神病薬の多剤併用は、男性、高齢、LAIの使用、抗パーキンソン病薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用と有意な関連が認められた。一方、クロザピンの使用とは逆相関が認められた。・クロルプロマジン換算量は、処方された抗精神病薬の数に応じて増加し、40~59歳の患者でピークに達し、その後減少していた。・全体として、第2世代抗精神病薬が優勢であったが、第1世代抗精神病薬の使用は多剤併用に伴い増加が認められた。 著者らは「これらの知見は、性別および年齢に関連した処方パターンを考慮した抗精神病薬のマネジメントが重要であることを示唆している」とまとめている。

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脳卒中・出血リスクの高い心房細動患者、LAAC vs.最善薬物療法/NEJM

 脳卒中および出血リスクの高い心房細動患者において、左心耳閉鎖術(LAAC)は医師主導の最善薬物療法(physician-directed best medical care)に対して、複合エンドポイント(脳卒中、全身性塞栓症、大出血、心血管死または原因不明の死亡)に関して非劣性は示されなかった。ドイツ・Charite University Medicine BerlinのUlf Landmesser氏らCLOSURE-AF Trial Investigatorsが、同国で行ったプラグマティックな多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果で報告した。LAACは、心房細動患者の脳卒中予防において経口抗凝固薬に代わる選択肢であるが、脳卒中および出血リスクの高い患者において、医師主導の最善薬物療法と比較した有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2026年3月18日号掲載の報告。ドイツの42施設で患者を登録して試験 試験は、ドイツの42施設で患者を登録して行われた。研究グループは、脳卒中および出血リスクの高い心房細動患者を、LAACを受ける群または医師主導の最善薬物療法(適格の場合経口抗凝固薬を含む)を受ける群に無作為に割り付け、追跡評価した。 主要エンドポイントは、脳卒中(虚血性または出血性)、全身性塞栓症、大出血または心血管死もしくは原因不明の死亡の複合でtime-to-event解析で評価し、非劣性を検証した。非劣性マージンはハザード比1.3であった。主要エンドポイントの発生、LAAC群155例vs.薬物療法群127例 計912例の成人患者が無作為化された。主要エンドポイントの解析は、LAAC群446例、医師主導の最善薬物療法群(薬物療法群)442例を対象に行われた。これら被験者の平均年齢は77.9±7.1歳、女性が38.6%、平均CHA2DS2-VAScスコア(範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す)は5.2±1.5であり、平均HAS-BLEDスコア(範囲:0~9、高スコアほど出血リスクが高いことを示す)は3.0±0.9であった。 追跡期間の中央値3年(四分位範囲:1.7~4.7)後、主要エンドポイントの初発が報告されたのは、LAAC群155例(100人年当たり16.8)、薬物療法群127例(100人年当たり13.3)であった(RMST[restricted mean survival time]群間差:-0.36年、95%信頼区間:-0.70~-0.01、非劣性のp=0.44)。 重篤な有害事象の発現は、LAAC群368例(82.5%)、薬物療法群342例(77.4%)で報告された。

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ICUでの身体拘束、限定的vs.系統的/JAMA

 侵襲的人工換気を受けるICU入室成人患者に対する手首拘束具の使用について、低頻度(限定的)使用戦略は高頻度(系統的)使用戦略と比べて、14日時点のせん妄または昏睡のない日数を減少させないことが示された。フランス・パリ・シテ大学のRomain Sonneville氏らR2D2-ICU Investigator Study Groupが、非盲検無作為化試験「R2D2-ICU試験」の結果を報告した。先行研究によると、ICU入室患者の約半数が身体拘束を受けているとされる。ICUにおける身体拘束は現実的な安全対策と見なされている一方、身体拘束が患者のストレスや興奮を増大させ、鎮静薬などの使用によってせん妄や昏睡のリスク、ひいては死亡や認知機能低下などのリスクが高まる懸念も指摘されている。しかし、身体拘束の頻度を減らすことが臨床アウトカムを改善できるかについては、これまで明らかにされてこなかった。JAMA誌オンライン版2026年3月17日号掲載の報告。無作為化後14日間のせん妄または昏睡のない生存日数を評価 試験は、2021年1月5日~2024年1月2日にフランスの10ヵ所のICUで行われた。研究グループは、スクリーニング時点で、侵襲的人工換気開始から6時間未満で、かつ少なくとも48時間以上の人工換気の継続が予想される成人患者405例を登録し、身体拘束を限定的に行う手首拘束具の低頻度使用戦略群(重度の興奮状態[Richmond Agitation-Sedation Scale:RASSスコア〈-5:無反応~4:攻撃的〉が3以上]とされ、必要性がある場合にだけ手首拘束具を使用する、201例)、または高頻度使用戦略群(手首拘束具を系統的に装着し毎日評価して使用する、204例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後14日間のせん妄または昏睡のない生存日数。副次アウトカムは、自己抜去の発生率、90日死亡率などであった。 2024年5月17日に追跡を終了し、2025年6月1日~12月15日に統計学的解析が行われた。主要アウトカムの有意差なし、自己抜去発生や90日死亡率も差が認められず 主要アウトカムのデータは396例で得られた。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:56~73)、245例(62%)が男性で、Sequential Organ Failure Assessment:SOFAスコアは7(IQR:4~10)であった。 無作為化後14日間のせん妄または昏睡のない生存日数中央値は、低頻度使用戦略群6.67日(95%信頼区間[CI]:5.69~7.65)、高頻度使用戦略群6.30日(95%CI:5.35~7.24)であった(補正後群間差:0.37日、95%CI:-0.71~1.46、p=0.51)。 自己抜去は、低頻度使用戦略群18例(9.2%)、高頻度使用戦略群17例(8.5%)で発生し、90日死亡率はそれぞれ37.2%、41.0%であった。

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中年期の健康的な食事は認知機能低下リスクを抑制する?

 今日の食卓に並んでいるものが、高齢になったときの脳の老化に影響を与える可能性があるようだ。中年期に健康的な食事をしている人では高齢期に認知機能が低下するリスクが低いことが、新たな研究で示された。米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院疫学・栄養学分野のKjetil Bjornevik氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月23日掲載された。 Bjornevik氏らは、「野菜や魚を豊富に、ワインは適量を摂取することは、認知機能低下リスクの抑制に寄与していた一方、赤肉や加工肉、フライドポテト、糖分の多い飲料は認知機能の低下に関連していた。この結果は、健康的な食事が将来の脳の健康に有益である可能性を示唆している」と述べている。 今回の研究では、米国の女性看護師と男性医療従事者を対象に、健康状態を生涯にわたって追跡した3件の大規模研究のデータを統合し、合計で15万9,347人(平均年齢44.3歳、女性82.6%)を対象に解析が行われた。Bjornevik氏らは、各参加者の食事内容を調べ、心臓の健康に良いとされるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食、健康的な植物性食品ベースの食事指数(Healthful Plant-Based Diet Index;hPDI)、プラネタリーヘルスダイエット指数(Planetary Health Diet Index;PHDI)、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)など、6種類の健康的な食事法の遵守度をスコア化した。その上で、同スコアと高齢期の自己申告に基づいた主観的な認知機能低下との関係を調べた。 その結果、脳の健康を守る効果が最も高いのはDASH食であることが示された。具体的には、DASH食の遵守度が上位10%の人では下位10%の人と比べて、認知機能低下のリスクが41%低かった(リスク比0.59、95%信頼区間0.57〜0.62)。特に、45~54歳の時点でDASH食の遵守度が高いことは、認知機能低下リスクが低いことと最も強く関連していた。また、血糖値や炎症の抑制を目的とした食事法も認知機能低下のリスクを下げることが示された。 45〜54歳の人で関連が最も強かった点について、今回の研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスの管理栄養士であるStephanie Schiff氏は、「この年代の人は『年をとれば記憶力は衰えるし、頭の回転も鈍くなってぼんやりするものだ。それが老化現象であり、どうすることもできない』と思いがちだ。だからこそ、適切な食事法を守れば、あるいはDASH食に従えば、記憶力や認知機能、注意力、言語能力、実行機能を改善できる可能性があることを示したこのハーバード発の研究結果には心を躍らされる」と付け加えている。 本研究では、DASH食以外の健康的な食事法も認知機能低下のリスクを11~24%低下させることが示された。さらに、野菜、果物、魚、ワイン、紅茶、ドレッシングはいずれも良好な認知機能に関連していた一方、フライドポテト、赤肉や加工肉、卵、甘い飲み物、菓子類は認知機能の悪化に関連していた。 Schiff氏は、DASH食が脳に大きなメリットをもたらすことが示されたことに驚きはなかったと話す。「心臓の健康に良いDASH食に従った食事を摂取することには利点しかない。心臓を健康に保つことは、脳を健康に保つことにつながるからだ」と同氏は言う。 また、DASH食は血圧を下げることを重視しているが、このことが脳の老化に対する有益性の多くを説明している可能性があるとSchiff氏は考察している。高血圧は血管に損傷を与えるが、その中には脳に血液を送る血管も含まれる。「脳に十分な血液が送られなくなると酸素が不足し、脳細胞の損傷をもたらす。その結果、認知機能や記憶力の低下、さらにはアルツハイマー病のリスクが上昇する可能性がある」と同氏は説明している。

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貧血を伴わない鉄欠乏は、中等度~重度のアトピー性皮膚炎で高頻度に認められる

 中等度~重度のアトピー性皮膚炎(AD)では、貧血を伴わない鉄欠乏が高頻度に認められるとする研究結果が、「Nutrients」に11月28日掲載された。 ヴロツワフ医科大学(ポーランド)のMalgorzata Ponikowska氏らは、AD患者における鉄代謝の状態を評価し、疾患重症度および生活の質(QOL)との関連を検討した。解析対象は、中等症~重症のAD成人患者86人であった。 解析の結果、ヘモグロビン値は概ね正常であるにもかかわらず、鉄欠乏を示す鉄バイオマーカーの異常が、AD患者に多く認められた。具体的には、患者の45%はトランスフェリン飽和度が低く(Tsat 20%未満)、37%はフェリチン値が低く、26%は血清鉄が低値であった。さらに、高感度C反応性蛋白5mg/L超で定義される炎症性活性化が認められる患者では、血清鉄およびTsatの低下、可溶性トランスフェリン受容体の上昇を特徴とするパターンが認められた。多変量解析において、血清鉄の低下は皮膚疾患に関連したQOL評価(Dermatology Life Quality Index;DLQI)のスコア悪化と独立して関連していた。また、トランスフェリン高値は、湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index;EASI)およびアトピー性皮膚炎重症度評価(SCORing Atopic Dermatitis;SCORAD)で測定した疾患重症度の増大と関連した。 著者らは、「本研究により、鉄代謝の調節異常すなわち鉄欠乏が、ADにおける全身性の特徴として高頻度に認められることが示された。これらの異常は疾患重症度やQOL低下と関連しており、鉄代謝の変化はADの臨床像に関連する修正可能な全身性因子である可能性がある。今後の研究では、鉄欠乏を標的とした介入が患者のアウトカムを改善し得るかどうか検討する必要がある」と述べている。

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SGLT2阻害薬、腎臓の加齢変化抑制の可能性――老化が速い魚で検証

 糖尿病などの治療に用いられているSGLT2阻害薬(SGLT2-i)という薬に、老化した腎臓を保護するように働く可能性があることが報告された。米MDI生物学研究所のHermann Haller氏らの研究によるもので、詳細は「Kidney International」3月号に掲載された。 この研究では、寿命がわずか4~6カ月のアフリカンターコイズキリフィッシュという小魚が用いられた。この魚は非常に老化が速いため、わずか数週間の研究でヒトの数十年分に相当する加齢現象を観察することができる。研究の結果、SGLT2-iの投与によって、加齢に伴う腎臓の変化が抑えられ、腎臓の健康が維持されることが示された。論文の上席著者であるHaller氏は、「SGLT2-iは糖尿病の有無にかかわらず、心臓や腎臓に対して保護的に作用することが既に知られているが、その作用のメカニズムはこれまで十分明らかにされていなかった」と語っている。 SGLT2-iを投与しない場合、この魚の腎臓には人間の腎臓と非常によく似た加齢変化が観察された。具体的には、腎臓内の毛細血管が少なくなり、ろ過システムがダメージを受け、炎症が強まり、細胞のエネルギー産生に支障が生じた。しかしSGLT2-iを投与した魚では、これらの変化が少なく、血流やろ過機能、エネルギー産生機能も正常に維持されていた。また、炎症抑制や細胞間のコミュニケーション改善といった作用も観察された。Haller氏は、「これまでの研究でSGLT2-iは血糖降下作用を上回るメリットをもたらすことが示されてきているが、それは今回明らかになったさまざまな同薬の機序が、疾患の病態の上流に働きかけるためではないか」と述べている。 SGLT2-i投与の有無による最大の違いの一つは毛細血管に認められた。同薬を投与されていない魚は加齢とともに毛細血管が徐々に失われていき、その結果、腎臓の細胞は酸素を得ることが困難になり、エネルギー産生に支障が生じ始めた。一方で同薬を投与された魚はより多くの毛細血管が維持され、エネルギー産生の改善と炎症抑制に関連する遺伝子の発現が若い個体に近い状態を示した。 論文の筆頭著者であるハノーバー医科大学(ドイツ)のAnastasia Paulmann氏は、「急速に老化する動物モデルを用いた研究の結果、これほど明確なSGLT2-iの影響が現れたことは衝撃的だった。最も驚いたのは、機序が一見単純そうな同薬が、血管やエネルギー代謝、炎症をはじめ、腎臓内で互いに関連して働くさまざまなシステムに影響を及ぼすことだ」と、本研究のインパクトを強調している。 研究者らは、老化の速いこの魚を研究に用いることで、マウスなどを用いるよりも迅速に新しい治療法を検討できるのではないかと考えている。Haller氏らの研究チームでは今後、既にダメージが進行している腎臓の修復にもSGLT2-iが役立つか否かの検討、および治療開始のタイミングの重要性に関する研究を予定している。

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専門医が総合診療を使って成長する秘訣――50代からの学び直しのコツを教育のプロに聞く【ReGeneral インタビュー】第6回

専門医が総合診療を使って成長する秘訣――50代からの学び直しのコツを教育のプロに聞く2018年の総合医育成プログラムの立ち上げ時、講師として関わったことをきっかけに、プログラム運営チームリーダーとして関わり続けている菅家 智史氏(福島県立医科大学 総合内科・総合診療学講座)。総合医育成プログラムのほかにも卒前から卒後まで一貫して総合診療教育に携わっている菅家氏に、プログラムの本質と、年齢を重ねてから飛躍する医師の共通点を聞きました。――総合医育成プログラムに関わるようになったきっかけを教えてください2018年に総合医育成プログラムを立ち上げるときに、講師の1人として声をかけていただいたのがきっかけです。その後、2020年以降の対面からオンラインへの移行、2025年には、同期型と非同期型にわけて集合研修時間の短縮といった、ほとんどすべての変遷に関わってきました。経歴としては2012年から福島県立医大におりまして、医学部での講義、初期研修医の教育、ローテート指導、専攻医の教育プログラム責任者など、卒前から卒後まで幅広く教育に携わっています。現場の困りごとに強くなる――臨床に直結する学びの仕組み――医学生・研修医の教育と比較して、総合医育成プログラムの特徴は?一番の違いは、実臨床に即した内容に絞っていることです。 医学部では理論的な講義が多く、専攻医では高度専門的な知識や技術に関する研修が中心となりますが、このプログラムは “現場で困るところ”を確実に扱うこと、未経験の領域でも診療に踏み出せる内容を大切にしています。例えば耳鼻科では、鼻血が止まらない、整形外科なら怪我やねんざ、それから動物にかまれたなど、医学部でもあまり学ばないのに、実臨床で遭遇すると対応に困るようなものを多く扱っています。各領域の講義はプライマリ・ケアの現場のニーズをよく知っている専門医の先生にお願いし、日本プライマリ・ケア連合学会のプロジェクトチームで細かく内容調整して作っています。――未経験の領域でも取り組みやすい工夫とは、具体的にどのようなことをされているのでしょうか医学部卒業後、初めてその領域を学ぶ方を前提に講義を構成しています。言い換えると、専門の方が聞くと“つまらない”くらいのレベル感です。そんなに?と思われるかもしれませんが、それが狙いです。 私たちは、できるだけ総合的な診療に携わってくださる先生方を増やしたい。そのためには、専門の先生からみたら初歩的だと思えることを、安心して学び質問してもらえる環境がとても大切だと考えています。基本的であり実践的な内容を勉強し、質問を正直にぶつけられる。それがこのプログラムの最大の強みだと思っています。――なぜ質問を重視されるのでしょうかわからないことを身につけていただくのが、このプログラムの役割だからです。そして、わからないことは悪いことではありません。どのテーマでも、お1人の困りごとは、ほかの受講生の困りごとでもあります。ですから、オンラインで集まる同期型学習では、講師の先生方には内容を少し削ってでも質疑の時間を確保できるようお願いしています。1テーマ3時間のセッションで60〜70の質問をいただくので、当日答えきれないときには後日テキストなどで回答いただいています。そのくらい、質問に価値を置いています。わからないことを恥ずかしいと思ったら学びは深まりません。毎年、いただいた質問や困っている事柄を伝えてもらうことでプログラムの内容に反映し続けています。だから、恥ずかしいといったことは一切考えずに、どんどん疑問をぶつけてほしいと思います。年齢を味方にする学び方――受講者に共通する伸びる力――受講生に共通する資質はありますか?これまでの受講者平均年齢は50代付近ですが、受講する皆さんの共通は「何か新しいこと、自分が今まで知らなかったことを使ってチャレンジする気持ち」を持っておられることだと思います。自分は総合診療をしてみたい!と飛び込んでみて、うまくいかなくて試行錯誤して、診療に出ておられる方。今もプログラムの中身も使って頑張っていますというような方。ご自身のおかれた状況で、自分ができることやろうと思う方は、プログラムを上手に使っていただけると思います。プログラムの中で、「診療に活用できる道具を増やしましょう」という雰囲気でお伝えすることが多いのですが、各分野の知識も、ノンテクニカルスキルも道具です。道具が増えるとやれることも増えます。プログラムで道具を教えてもらったから使ってみようとチャレンジしていただけると、どんどん患者さんにとってもプラスになる効果が生まれるんじゃないかなと思います。――なるほど。とはいえ、新しいことを学びはじめることに二の足を踏む方も多かったのではないでしょうかそうですね、多くの受講生から、受講前は近くに似た考えの方がおらず、こんなことを考えていていいのかな?という不安があったということを聞いています。周りにそういう人がいないと尻込みしてしまいますよね。でも、この総合育成プログラムには同じような境遇の方が集まります。 一歩踏み出してみると、「似た思いの人がここにいた」「勇気づけられた」 という声がとても多いです。一歩踏み出しさえすれば、仲間がたくさんいます。ということをお伝えしたいですね。――受講者同士の交流も重視していると伺いましたはい、講師・受講生間だけでなく、受講生同士の相互作用を意識してライブ研修を組んでいて、ケーススタディやグループディスカッション、ロールプレイなど、受講生がお互いに学びを得る機会を多く作るよう意図しています。 たとえばロールプレイでは医師役・患者役・観察役を担い、「この言い方がよかった」「こういう話の持っていき方がよかった」といった具体的なフィードバックをし合ってもらいます。グループディスカッションでお互いに状況を知って悩みを相談したり、励ましあったりできて、背中を押してもらったというような感想もいただきます。2025年にライブ研修を6時間から3時間に短縮しましたが、それでも受講生同士の交流の密度や熱量を保つように毎年改善を続けています。専門医が“総合診療”を使いこなすためのマインドセット――受講後、総合診療の実践に移す際のハードルはありますか?どうしても、勉強したことと実践の間には、一歩分のハードルがあります。そこで、スモールステップを意識して講義内容を構成しています。「まずはここから」「これくらいならできる」「さらに踏み込めるときはこれもできる」と段階を示して、まずはひとつやってみようと、初めの一歩を踏み出しやすいようにしています。例えば小児科では、まずワクチン相談を受けてみる。受診した子どもの様子から“危ない/危なくない”の判断ポイントを押さえる。救急外来で帰せるかどうかを判断する。といった最初の段階にだけフォーカスした内容をお願いしています。最初から全部できなくてもまったく問題ありません。修了生の中塚先生が仰っていたように、「総合医育成プログラムで総合診療の地図を手に入れる」と思ってもらうといいかもしれません。――ご自身の専門と、総合診療スキルを両立して、うまく診療をされる方に共通することはありますか?物事を柔軟に捉えていただける方でしょうか。自分が今まで触れてこなかった概念や手法に出会ったときに「そういう考え方もあるよね」と、柔軟に考えられる方は、総合医育成プログラムで学んだことをご自身の診療に上手に活用いただけていると思います。専門診療と総合診療にはマインドセットの違いがある気がしていて、医師は医学で疾患を治療するだけじゃないという考え方を持っていただけると、ご自身の専門と同時に総合診療の道具をとてもうまく使っていただけると思います。――疾患を治療するだけではない、というのは総合診療のキーワードのように感じましたがいかがですかそうですね。疾患を治療するのが医師の仕事なので、当然行うべきものなのですが、ただそれだけではない。疾患を治療するだけだと対応が難しい患者は、社会にたくさんいらっしゃる。 そこで医学だけを道具にしていると、行き詰ってしまいます。そこで医学以外の道具があればできることが増える。それから、総合診療では他科の医師、看護師、そのほか医療者、地域や患者家族など、他の人の力を借りることも必要です。ノンテクニカルスキルコースで学ぶ、こういった道具は医学部でも専門医教育でもあまり扱いません。これらのスキルを身に付けることは、医師自身の働きやすさにもつながると思います。 累計500名の受講生とともに描く、次のステップ――今後の展望を教えてください同期型学習の相互交流や学習の熱量をさらに上げたいと思っています。 また、JPCAの学術大会でアルムナイ(卒業生)の集いを開催することも考えています。2018年の開始から500名ほどに受講いただいていますが、2020年からは完全オンラインで、受講生同士、実際にお会いしていない方がほとんどです。リアルに会う機会が新しい刺激になるのではないかと思っています。それから、プログラム以外に、総合診療を学びたい先生方へ、オーダーメイドの教育やコンサルティング、伴走の仕組みを整えていけたらと考えています。――受講を迷っている方へ、メッセージをお願いしますとにかく、一歩踏み出してください。私たちは全力でサポートします。一歩踏み出していただければ、多分、いや、絶対に、診療の幅を広げるお役に立てるプログラムです。

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第306回 「清潔な国」日本、なぜノロウイルス集団食中毒が起こるのか

INDEXノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生食品管理に対する姿勢、日本は甘い?ノロウイルスによる大規模集団食中毒が発生大阪府熊取町で3月17日に小中学校向けの給食で提供されたパンに混入したノロウイルスを原因とする集団食中毒事件が発生した。最新の報道によると、同町教育委員会が3月24日までに把握した体調不良者は633人。原因であるパンを食べてからノロウイルスの潜伏期間内に発症したとみられるのは、うち302人だったという。2025年の食中毒統計(速報値:2026年3月2日までの報告)1)によると、同年の食中毒報告件数は1,176件、総患者数は2万4,854件。このうち発生件数の39.2%に当たる462件、患者数の74.7%に当たる1万8,566例の原因がノロウイルスである。同統計によれば、食中毒件数とそれによる患者数ともに4年連続で増加し、ノロウイルスによる患者割合が最も多い。ちなみに2025年のノロウイルスによる食中毒で最大規模だったのは、同年2月に兵庫県で発生した仕出し弁当を原因とした2,307例もの患者が発生した事例である。今回の熊取町の事例は、給食パンが原因の食中毒と断定される可能性が高く、302例に限定しても、昨年のワースト5に入る規模だ。これだけノロウイルスによる食中毒が多いのは、ご存じのようにこのウイルスが10~100個というごく少量で感染が成立してしまうことに加え、二枚貝を中心とする食品、感染した調理者を介した食品、接触・飛沫を通じたヒト・ヒト感染という感染経路の多様さ、アルコール消毒が効きにくいエンベロープ(脂質膜)を持たないウイルスであることなどが影響しているといわれる。熊取町のケースは、パン製造業者の従業員の便からノロウイルスが検出されていることから、前出の「感染した調理者を介した食品を通じた感染」に当たると考えられる。そして現状、ノロウイルス感染症には特異的な治療薬もワクチンも存在しない。これもノロウイルスの特性が影響している。そもそもこのウイルスは成熟したヒトの腸管上皮細胞でしか増殖しないため、実験室レベルでの培養がきわめて難しく、結果として動物モデルによるデータも乏しい。これではウイルスの増殖機構の解明、薬剤スクリーニング、ワクチン評価のいずれも入口からつまずいてしまうのだ。ここに22種類もの遺伝子型*があることで汎用ワクチンを開発しにくいという特徴も加わる。*遺伝子群GIIの場合結局のところ最大の対策は、汚染された食品を回避するという意味での“予防”となってしまう。しかし、これも実は一般人にとっては対策が事実上困難である。というのも、報告されているノロウイルス食中毒のほとんどは、仕出し屋を含む飲食店や給食施設から提供された飲食物、あるいは今回の熊取町の事例のような製造事業者が提供する食品・食材であるからだ。食品管理に対する姿勢、日本は甘い?こうなると、ノロウイルスによる食中毒を減らすためには、川上の事業者への規制を強化するしか方法がない。日本ならば、食品衛生法に基づく規制となる。実はこの点、日米欧ではかなり基準が異なり、欧米のほうが基準は厳しい。食品などを取り扱う事業者は、自ら食中毒の原因微生物による汚染や異物混入などのリスク要因を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のリスク要因の除去・低減するため、とくに重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する手法「HACCP(ハサップ)」に基づく衛生管理が求められている。これは米国で開発された国際的な食品衛生管理手法で、日米欧ともに義務付けられている。しかし、法令やそれに基づく実態としての衛生管理は、日本の食品衛生法はかなり曖昧である。たとえば、同法第5条では「食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列及び授受は、清潔で衛生的に行われなければならない」とし、それを受けて通知・ガイドラインで下痢・嘔吐のある従業員を調理に従事させないことや手洗い・消毒の徹底、嘔吐物の適切処理を謳っている。これに対し、EUでは「食品取扱者で疾病・感染の疑いがある者は食品を取り扱ってはならない」旨を事業者の義務として明記している。米国になると、米国食品医薬品局(FDA)の食品規則により、ノロウイルスをはじめ具体的な病原体を明記し、それに伴う症状(ノロウイルスの場合は嘔吐・下痢症状)がある場合は現場からの即時排除とより強力な文言で規定している。また、同規則では該当する病原体の有症状者の復帰基準についても、症状消失後24時間以上(州により48時間)経過とし、さらには、食品施設で誰かが嘔吐または下痢などをした場合のクリーンアップ手順も具体的に定めているほどの念の入れようだ。ちなみにFDAの食品規則は法律ではなく、あくまでモデル規則であるため米国内の各州が採用して初めて法的拘束力を持つものだが、実際にはほぼ全州で採用されているため、事実上の全国標準として法的拘束力を有している。(表)食品衛生規制における日米欧の比較画像を拡大するさらに追加すると、ノロウイルスによる汚染の可能性のある二枚貝の代表格のカキの出荷に対する考え方も日本と欧米では異なる。日本ではスーパーなどの店頭に並ぶカキには「生食用」「加熱用」の2種類があるのはご存じだろう。これは保健所が海域の海水に含まれる大腸菌の量を検査し、生で食べても問題ないとされる海域でとれたカキを生食用、それ以外の海域でとれたカキを加熱用と分類している。これに対し、欧米では同じように大腸菌を指標とした海域検査を行い、海域ごとに出荷可否までも規制している。端的に言えば、日本の加熱用カキに該当するものの一部は、欧米では出荷すら認められない。日本がここまで厳格でないのは、あくまで推測になるが、「従来から日本の法規制などが緩やかな条文による包括規定に行政指導を組み合わせる柔軟運用を軸としているから」だと考えられる。しかしながら、前出のように最近の食中毒統計での件数増加を見る限り、そろそろ欧米型の規制に乗り出すべき時期に差し掛かっているようにも思えるのだが…。参考1)厚生労働省:食中毒統計資料

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ピロリ除菌10年経過後の胃がん発症リスク因子~日本での研究

 Helicobacter pylori除菌療法後10年以上経過した患者における胃がん発症のリスク因子を検討した横浜市立大学の小野寺 翔氏らの症例対照研究の結果、開放型萎縮と重度腸上皮化生が独立したリスク因子であることが明らかになった。Scandinavian Journal of Gastroenterology誌2026年3月号に掲載。 本研究では、除菌療法後10年以上経過してから胃がんと診断され内視鏡的粘膜下層剥離術を受けた患者を胃がん群、除菌療法後10年以上胃がんを発症していない患者を非胃がん群とした。年齢、性別、除菌後の期間について傾向スコアマッチングを実施後、両群の臨床所見および内視鏡所見を比較した。 主な結果は以下のとおり。・胃がん群は105例、非胃がん群は127例で、マッチング後、95組のペアを作成した。・胃がん群では、開放型萎縮(p<0.001)、重度腸上皮化生(p<0.001)、地図状発赤(p=0.002)、黄色腫(p=0.005)が有意に多かった一方、胃潰瘍の既往(p=0.022)、十二指腸潰瘍の既往(p=0.015)、胃底腺ポリープ(p=0.006)は有意に少なかった。・多変量解析により、開放型萎縮(オッズ比[OR]:10.40、95%信頼区間[CI]:4.57~23.80)および重度腸上皮化生(OR:5.15、95%CI:2.06~12.90)が独立したリスク因子として特定された。

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認知症患者に対する抗精神病薬使用が死亡リスクに及ぼす影響は

 神経精神症状は、認知症で頻繁にみられ、機能低下、介護者の負担、死亡率の主要な要因となっている。症状が重症化したり、非薬物療法に反応しなくなったりすると、抗精神病薬を使用することが多いが、いまだに安全性への懸念が残っている。とくに、地域社会で生活する神経精神症状を有する患者において抗精神病薬の使用が生存率に及ぼす影響は依然として明らかになっていない。スペイン・Clinica Josefina ArreguiのKevin O'Hara-Veintimilla氏らは、認知症および神経精神症状を有する高齢者における抗精神病薬使用と全死亡率との関連性を検討するため、以前発表したシステマティックレビューおよびメタ解析の2次解析を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2026年2月10日号の報告。 本解析は、PROSPERO(CRD42024621462)に登録、コクランハンドブックに従って実施、PRISMA 2020ガイドラインに準じて報告された。神経精神症状が記録されている65歳以上の地域在住の認知症患者を対象に、抗精神病薬の使用と全死亡率の調整ハザード比(aHR)を報告した研究を適格な観察研究とした。プール推定値は、固定効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・5件の観察コホート研究より抽出された1万4,183例を対象に解析を行った。・抗精神病薬の使用と全死亡率との間に有意な関連は認められなかった(プールされたaHR:1.06、95%信頼区間[CI]:0.97〜1.16、p=0.21、I2=43%)。・サブグループ解析では、定型抗精神病薬ではaHRが0.79(95%CI:0.62〜1.01)、非定型抗精神病薬ではaHRが1.23(95%CI:0.97〜1.56)であり、クラス間で有意差が認められた(p=0.03)。 著者らは「認知症および神経精神症状を有する地域在住高齢者において、抗精神病薬の使用と全死亡率の間に統計的に有意な関連は認められなかった。しかし、利用可能なエビデンスは限定的で不正確であるため、不確実性が大きかった。そのため、これらの知見は慎重に解釈する必要がある」と結論付けている。

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医師の有料職業紹介事業の課題と提言/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、3月18日に定例の記者会見を開催した。会見では、医師会と四病院団体協議会が合同してまとめた「有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書」の概要と日本医師会ドクターサポートセンターのリニューアルが説明された。 初めに松本氏が、「有料職業紹介事業について、利便性が高く、多くの医療機関が利用している一方で、違約金の高額化、需給のミスマッチなどさまざまな問題点がある。現状の課題を整理するとともに、有料職業紹介事業などの適切な運営のあり方や公的な無料職業紹介事業の利用促進を含め、国や業界に対する提言をほかの団体と連携して今回報告書をまとめた」と報告書作成の経緯を説明した。有料職業紹介から無料職業紹介の活用へ 「有料職業紹介事業の関するワーキンググループ報告書」の概要について、担当常任理事の今村 英仁氏(慈愛会 理事長)が説明した。 2021年度以降、医師・看護師の職業紹介事業に関する手数料は年々増加し、2023年度は約1,061億円となった。東京都病院協会の報告では、医師の平均手数料は335.9万円、看護師は159.8万円となっており、利用する医療機関の大きな負担となっている。 人材紹介サービスを巡る課題やトラブルでは、採用後の早期離職が一番多く、看護・保育・介護職に関しては他分野に比べ、離職率が高い傾向にある。また、手数料率と合わせると、医療など3分野について手数料率は他分野に比べ、高くはないものの離職率が高く、他分野の手数料率は高いが離職率は低い傾向にある。そのほか、早期離職以外にも、求職者のスキルや能力が事前の情報と異なるケースや健康状態に関する情報を伏せて紹介されるケースなどが報告されており、こうしたミスマッチが早期離職の一因となり、高額な手数料に見合わないサービス内容が紹介手数料の高さへの不満、満足度の低さにつながっていると考えられる。こうした問題から本報告書では、四病院団体協議会や日本医師会で看護職、医療職なども対象とした職業紹介事業の実施やすでに病院団体などで実施されている事業を全国展開できるか否かを検討した。 その結果、次のような課題があげられた。1点目は全国版の職業紹介事業とした場合、求職者が都市部の医療機関へ集中し地方の人材流出を加速させる恐れがあること。2点目は就職先として病院が選ばれるとは限らず、病院団体が主体として運営する意義やメリットが必ずしも明確にならないこと。3点目は専門性と経験を持つエージェントの採用育成に費用が発生し、無料低額の事業モデルと両立させることが難しいということ。これらの課題に対しては、高額な紹介手数料への緊急的対応として紹介手数料の上限規制の導入、返戻金制度の義務化と返戻水準の標準化、定着期間に応じた手数料体系の導入が提言される。そのほか、サービスの質向上と法令順守、違反や不適切事例に対する指導監督の強化と情報公開の推進を記している。 求職者に無料職業紹介を活用してもらうために、医療機関が負担する紹介手数料の負担軽減、ハローワークなどの広報強化、医療機関の定着促進に向けた取り組みを記している。とくにハローワークでは、今後、人材確保コーナーの設置や地域医療病院や施設を直接訪問するアウトリーチが本格的に開始される。これにより求人開拓から求人定着まで、継続して支援することが予定されている。同じくインターネットサービスも提供され、とくにスマホ対応や検索機能の利便性向上など、システム改修も予定されている。その一方で、これら取り組みが医療機関や求職医療者に十分知られていない状況であり、医師会、医療団体でも周知に取り組んでいきたいと考えている。 民間の事業者においても医療機関と求職者双方の視点に立ち、丁寧なマッチングを行うと同時に高い公共性、社会性を前提とした運営を行ってもらいたいと考えており、日本医師会やほかの医療団体では、今回のとりまとめを踏まえて、厚生労働大臣に要望書を提出する予定である(なお、本要望書は3月24日に厚生労働大臣に提出された)。全国との連携で求人情報を拡充へ 「日本医師会ドクターサポートセンターのリニューアルについて」をテーマに担当常任理事の松岡 かおり氏(池田病院 理事長・院長)が説明した。 現在、日本医師会ドクターサポートセンターは、「女性医師支援センター事業」と「医師偏在是正にむけた広域マッチング事業」の2つの事業を柱に行っている。今後は、地域ドクターバンクとの業務連携を進め、全国ネットワークの構築を目指す。具体的には、相互間で求人情報を共有し、医師ドクターバンクの登録者で地域ドクターバンクの求人にコーディネートとマッチングを行うとともに、求職者の希望を前提に情報共有を行う。 また、この4月より日本医師会ドクターサポートセンターとしてホームページの新設を行う。ページ構成としては、組織概要、ワークライフサポート、日本医師会ドクターバンク、地域サポート情報、相談窓口などを掲載する。 今後、日本医師会ドクターバンクとしては、次の6項目を目指す。・医師・医療機関共に、手数料、成功報酬ともに無料・コーディネーターと共にすべての医師のドクターライフを考える支援・医師会だからこそ安心のある公平なマッチング・地域を知る地域ドクターバンクとの連携・双方向性のオファー機能・総合的な診療能力の獲得を目指したリカレント教育との連携

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EGFR・TP53変異NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がPFS改善(TOP)/ELCC2026

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、TP53遺伝子変異は高頻度にみられ、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬単剤療法の効果不良と関連することが知られている。そこで、TP53遺伝子変異を併存するEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、オシメルチニブ+化学療法(FLAURA2レジメン)とオシメルチニブ単剤を比較する第III相試験「TOP試験」が中国で実施されている。本試験において、TP53遺伝子変異が併存する集団でも、FLAURA2レジメンが無増悪生存期間(PFS)を改善し、全生存期間(OS)も良好な傾向がみられた。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、Yunpeng Yang氏(中国・中山大学がんセンター)が本試験のPFSの主解析およびOSの中間解析の結果を報告した。試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失/L858R)およびTP53遺伝子変異陽性の非扁平上皮NSCLC成人患者294例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+カルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、146例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、148例)評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約5割が中枢神経系転移を有していた(併用群49.3%、単独群48.0%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群54.8%/45.2%、単独群56.1%/43.9%であった。・データカットオフ時点(2025年11月12日)におけるPFS中央値は併用群34.0ヵ月、単独群15.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.32〜0.60、p<0.001)。・PFSに関するサブグループ解析では、中枢神経系転移の有無やEGFR遺伝子変異の種類などを含むすべてのサブグループで併用群が良好な傾向にあった。・OSは未成熟(成熟度30.6%)であったが、OS中央値は併用群48.4ヵ月、単独群36.5ヵ月であり、併用群で改善の傾向がみられた(HR:0.57、95%CI:0.38~0.88)。・ORRは併用群82.9%、単独群71.6%であった。DOR中央値はそれぞれ32.7ヵ月、15.3ヵ月であった。・オシメルチニブによる治療継続期間中央値は併用群20.3ヵ月、単独群15.4ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群62.4%、単独群14.9%に発現したが、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。 本試験結果について、Yang氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCにおいて、遺伝子変異などの特徴に応じて治療を選択する個別化治療戦略を支持する重要な根拠となる」とまとめた。

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HER2陽性転移乳がん1次治療、pyrotinib上乗せで予後改善/BMJ

 中国・Cancer Hospital Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのFei Ma氏らは、中国の40施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「PHILA試験」の主要評価項目である、治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)の最終解析結果を報告した。未治療のHER2陽性転移乳がんに対するトラスツズマブ+ドセタキセルへのpyrotinib併用は、プラセボ併用と比較してPFSの有意な改善が維持されており、全生存期間(OS)においても改善傾向が認められたという。安全性プロファイルは中間解析結果と一致しており、長期追跡期間中に新たな安全性に対する懸念は認められなかった。著者は、「今回の解析結果は、同患者集団に対する治療戦略として、pyrotinib+トラスツズマブによる抗HER2併用療法の有効性を裏付けるものである」とまとめている。BMJ誌2026年3月16日号掲載の報告。トラスツズマブ+ドセタキセルへのpyrotinibまたはプラセボ併用を比較 PHILA試験の対象は、HER2陽性の再発または転移のある乳がんで、同がんに対する治療歴のない18~75歳の女性患者590例であった。 研究グループは、適格患者をpyrotinib(400mgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、いずれも1サイクルを21日間として1日目にトラスツズマブ(初回は8mg/kg、以降は6mg/kg)およびドセタキセル(75mg/m2)の静脈内投与と併用投与し、病勢進行、許容できない毒性の発現、同意撤回、治験責任医師の判断または死亡まで継続した。 主要評価項目は、治験責任医師評価によるPFS、副次評価項目は独立評価委員会評価によるPFS、OSなどであった。 無作為化された590例(pyrotinib群297例、プラセボ群293例)全例が、少なくとも1回治療を受け、有効性および安全性の解析対象集団に含まれた。pyrotinib併用群はPFSの有意な改善が継続、OSも良好 PFSの最終解析は2024年4月30日をデータカットオフ日として実施された。追跡期間中央値はpyrotinib群35.7ヵ月、プラセボ群34.3ヵ月で、それぞれ91例(31%)および26例(9%)が治療を継続しており、pyrotinib群における治験責任医師評価によるPFSの改善は維持されていた(PFS中央値22.1ヵ月[95%信頼区間[CI]:19.3~27.8]vs.10.5ヵ月[95%CI:9.5~12.4]、ハザード比[HR]:0.44[95%CI:0.36~0.53]、名目上の片側p<0.001)。 また、pyrotinib群で59例(20%)、プラセボ群で87例(30%)の死亡が報告され、OSは両群とも中央値には未到達であったもののpyrotinib群が良好であった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.89、名目上の片側p=0.004)。 安全性プロファイルは、有害事象の種類、頻度、重症度に関して中間解析と一致しており、新たな安全性の懸念は確認されなかった。ドセタキセルの中止後、有害事象の全体的な発現割合は大幅に減少した。 長期解析のデータカットオフ日である2025年5月30日時点(追跡期間中央値は全体で45.5ヵ月)では、pyrotinib群で85例(29%)、プラセボ群で108例(37%)の死亡が確認され、OSはpyrotinib群が良好であった(HR:0.74、95%CI:0.56~0.98、名目上の片側p=0.02)。両群ともOS中央値には未到達で、5年生存率はそれぞれ66%および58.5%であった。

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急性低酸素性呼吸不全、高流量酸素療法vs.標準酸素療法/NEJM

 急性低酸素性呼吸不全において、高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は標準酸素療法と比較して28日死亡率を有意に低下しなかった。フランス・Centre Hospitalier Universitare de PoitiersのJean-Pierre Frat氏らが、同国42ヵ所のICUで実施した無作為化非盲検試験「SOHO試験」の結果を報告した。急性低酸素性呼吸不全患者において、標準的な酸素療法と比較したHFNCの気管挿管および死亡率に関するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2026年3月17日号掲載の報告。主要アウトカムは28日死亡率 研究グループは、急性低酸素性呼吸不全によりICUに入院した18歳以上の成人患者連続症例を、HFNC群または標準酸素療法群に無作為に割り付けた。適格基準は、呼吸数25回/分以上、胸部画像検査での肺浸潤影、10L/分以上の酸素投与下での動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)比200以下で、主な除外基準は動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)>45mmHg、慢性閉塞性肺疾患またはその他の慢性肺疾患の増悪、心原性肺水腫、抜管後または腹部・心臓胸部手術後7日以内の呼吸不全などであった。 HFNC群では、加温加湿器を介して50L/分以上、目標酸素飽和度92~96%で、48時間以上酸素を投与した。標準酸素療法群では、10L/分以上で酸素飽和度92~96%を目標に、48時間以上、回復または挿管まで継続した。 主要アウトカムは、無作為化後28日間の全死因死亡、主な副次アウトカムは無作為化後28日間の気管内挿管、無作為化から挿管までの期間、無作為化から28日間の人工呼吸器非使用日数などであった。28日死亡率は両群とも14.6%、副次アウトカムの28日挿管率は42.4%vs.48.4% 2021年1月~2024年10月に計1,116例が無作為化された。このうち、同意撤回5例を含む計6例を除く1,110例(HFNC群556例、標準酸素療法群554例)が解析に含まれた。 28日死亡率は、HFNC群14.6%(81/556例)、標準酸素療法群14.6%(81/554例)(群間差:-0.05%、95%信頼区間[CI]:-4.21~4.10、p=0.98)であった。 28日までの挿管率は、HFNC群42.4%(236/556例)、標準酸素療法群48.4%(268/554例)(群間差:-5.93%、95%CI:-11.78~-0.08)、無作為化から気管挿管までの期間の中央値はそれぞれ24時間(四分位範囲[IQR]:10~67時間)、23時間(IQR:10~47時間)(絶対群間差:0.4時間、95%CI:-6.8~6.5)、人工呼吸器非使用日数の中央値は28日(IQR:11~28日)、26日(IQR:10~28日)(絶対群間差:2.0日、95%CI:0.0~4.0)であった。 安全性については、自発呼吸中の重篤な有害事象(心停止または気胸)はHFNC群で13例(2.3%)(心停止3例、気胸10例)、標準酸素療法群で6例(1.1%)(それぞれ2例、4例)に発生した。 なお、著者は、COVID-19のパンデミック下でウイルス性肺炎患者の割合が高かったこと、挿管されなかった患者では順守状況のデータが前向きに収集されなかったことなどを研究の限界として挙げ、「今後の研究では、HFNCを対照群として、個別化された非侵襲的アプローチを含む呼吸補助戦略の評価が望まれる」とまとめている。

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呼吸器感染症やアレルギーに対する点鼻ワクチン、動物実験で有望な結果

 注射を何本も打たれるのが嫌でワクチン接種を避けてきた人にとって、希望の持てるニュースがある。米国の主要5大学の科学者たちが、将来的にはインフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、細菌性肺炎、さらには一般的なアレルギーにまで効果を発揮し得る点鼻スプレー型ワクチンの開発に大きな一歩を踏み出したのだ。このワクチンのマウスでの実験に携わった米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授であるBali Pulendran氏は、「これは医療のあり方を一変させる可能性がある」と語っている。この研究の詳細は、「Science」に2月19日掲載された。 現行のワクチンは、病原体の一部をあらかじめ免疫に提示することで、実際の感染に備えさせるものだ。しかし、多くのウイルスは瞬く間に変異してしまうため、追加接種やインフルエンザワクチンのような毎年の接種が必要とされている。Pulendran氏は、「ヒョウが模様を変えるように、ウイルスは表面の抗原を容易に変えてしまう」と説明する。 一方、「GLA-3M-052-LS+OVA」と名付けられた今回のワクチンは、感染時に免疫細胞同士が交わすシグナルを模倣することで体の主要な防御機構を総動員し、より長く続く協調的な免疫反応を引き起こすように設計されている。具体的には、この点鼻ワクチンは、脂質から成る粒子であるリポソームを用いて、免疫を強く刺激するTLR4(Toll様受容体4)およびTLR7/8のリガンドと、モデル抗原である卵白由来のタンパク質、オボアルブミンを組み合わせたもので、鼻腔に投与することで気道や肺の免疫系を直接活性化する。 実験では、マウスの鼻腔にワクチンを滴下投与し、一部のマウスには1週間おきに複数回投与した。その後、呼吸器系ウイルスに曝露させた。その結果、これらのマウスは、新型コロナウイルスやSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス、コウモリ由来のSARS関連コロナウイルスであるSHC014-CoVなどの複数のウイルスだけでなく、黄色ブドウ球菌やアシネトバクター属菌などの細菌、さらにはダニなどのアレルゲンに対しても3カ月以上続く防御効果を示した。一方、未接種のマウスでは著しい体重減少と重症化が認められ、死亡例も多く確認された。 Pulendran氏は、「最初は突拍子もないアイデアに思えた。こんなことが可能だと本気で考えていた人はほとんどいなかったと思う」と話す。しかし、実際に成果は得られた。同氏は、「ワクチンを投与された肺の免疫システムは、ウイルスに対処する準備が万全であり、通常は2週間程度かかるウイルス特異的T細胞や抗体による適応免疫反応をわずか3日で起こすことができるのだ」と述べている。 とはいえ、すぐに現行のワクチン接種をやめられるわけではない。動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるとは限らず、GLA-3M-052-LS+OVAについても、これからヒトを対象にした試験が必要である。しかし、ヒトでも同様の結果が得られれば、将来は毎年必要な複数の注射をこの1本の点鼻ワクチンに置き換えられる可能性がある。また、新たに出現したパンデミックを引き起こし得るウイルスに対して迅速に防御を提供できる可能性もあるという。研究グループは、ヒトでの試験が成功すれば、5〜7年以内に「呼吸器系ウイルスに対するユニバーサルワクチン」が利用可能になる可能性があるとしている。 なお、今回の研究には、スタンフォード大学のほか、エモリー大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校、ユタ州立大学、アリゾナ大学の研究者も参加した。

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冠動脈プラーク、女性は男性より少なくても高リスク

 女性は男性よりも動脈硬化の原因となるプラークの形成が少ない傾向にあるが、それは、必ずしも心臓の健康を守ることにつながるとは限らないようだ。冠動脈にプラークが認められる女性の割合は男性より少なく、量も少ない傾向があるにもかかわらず、心筋梗塞や胸痛による入院などの主要心血管イベント(MACE)のリスクは男性とほぼ同程度であることが明らかになった。米ハーバード大学医学大学院放射線医学分野のBorek Foldyna氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Imaging」に2月23日掲載された。 心疾患や動脈の詰まりは男性に多いというイメージがあるが、米国心臓協会(AHA)の統計によると、米国における心疾患による死亡の47%は女性が占めている。Foldyna氏は、「女性は冠動脈が男性より細いため、少量のプラークでもより大きな影響を受ける可能性がある」と述べている。 今回の研究では、臨床試験(Prospective Multicenter Imaging Study for Evaluation of Chest Pain;PROMISE)参加者4,267人(平均年齢60.4±8.2歳、女性2,199人)のデータを用いて、冠動脈プラークとMACEとの関連が検討された。これらの参加者は、米国とカナダの193の病院で胸痛の治療を受けており、冠動脈CT検査により総プラーク体積とプラーク負荷(血管体積に占めるプラークの割合)が測定されていた。MACEは、死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院を対象とした。 解析の結果、冠動脈にプラークが認められた参加者の割合は、女性で55%、男性で75%であり、両群間に統計学的な有意差が認められた(P<0.001)。しかし、MACEの発生率は、女性で2.3%、男性で3.4%とほぼ同等であった。MACEリスク(ハザード比)が1.0を超える、つまりリスクが上昇に転じるプラーク負荷は女性で20%、男性で28%、ハザード比が1.5になるプラーク負荷はそれぞれ32%と42%であった。 これらの結果から研究グループは、「女性の心臓の健康を守るためには、性別に応じたガイドラインが必要になる可能性がある」と指摘している。また、Foldyna氏は、「プラーク量が中程度に増加しただけでも、女性では不釣り合いにリスクが高まる傾向があり、現在の標準的な高リスクの定義では、女性のリスクを過小評価している可能性がある」と述べている。 本研究には関与していないAHAのボランティア会長を務める、米カッツ女性健康研究所のStacey Rosen氏は、ニュースリリースの中で、「これらの知見は、心血管疾患が男女でいかに異なる形で影響を及ぼすかを認識することの重要性を改めて示すものだ」とコメントしている。 さらにRosen氏は、「女性と男性では、病気の現れ方に生物学的に根本的な違いがあるという認識がようやく広がりつつある。こうした違いは、リスク要因から症状、治療に対する反応に至るまで、あらゆる面に影響を及ぼす」と述べている。

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AI搭載聴診器は英国プライマリケア医による心不全検出率を改善せず(解説:佐田政隆氏)

 高齢化社会を迎え心不全患者は激増すると予測され、心不全パンデミック時代に向けて早期診断、早期介入の必要性が各国で強調されている。 心疾患の検出においては聴診などのphysical examinationが重要であるが、すべての医師が日常診療で十分な理学的所見をとるスキルがあるとは必ずしも言えない。最近は、AIがX線や内視鏡、心電図、超音波診断などの大きな助けになりつつあるが、聴診においてもAI搭載聴診器が開発され、その有用性が報告されている。 本TRICORDER試験では、「AI搭載聴診器を使用することがプライマリケア医の実臨床における心不全検出率を向上するか」が、RCTで検討された。英国の205施設で150万例以上の患者が登録された大規模な研究である。AI聴診器は、15秒間心音をBluetoothで接続した単誘導心電図とともに記録した。 結果としては、intention-to-treat解析では心不全の検出率は有意に改善しなかったが、per-protocol解析ではAI聴診器群で心不全診断率が2.33倍向上した。使えば有効ということであるが、AI聴診器群を配布されていても8割以上がnon usersもしくはlow usersだったという。 聴診の分野でAIが活用されるには、まだまだ利便性の改善が必要と思われる。当面は、BNP、NT-proBNPといった優れたバイオマーカーの活用が有用と考えられるが、保険診療においては家庭医がルーチンに行うことができる検査でないことも事実である。

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ニセ警察からの電話【Dr. 中島の 新・徒然草】(624)

六百二十四の段 ニセ警察からの電話だんだん暖かくなってきましたね。花粉さえなければ最高の季節なんですけど。ChatGPTの厳しい指導のもと、私は毎日6,000歩のウォーキングを続けています。花粉の多い日でも何とかノルマを達成しなくてはなりません。なので、家の中をグルグルと歩いて辻褄を合わせております。さて、先日は外来で患者さん(50代、女性)に驚くべき録音を聞かされました。なんと、ニセ警察からスマホにかかってきた詐欺電話です。早速、診察室で再生してもらいました。 ニセ 「大阪府警ですが静岡県警から捜査協力の要請を受けて○田○子さんにご連絡しております」 患者 「はいはい」 ニセ 「現在静岡県警と合同捜査中の事件に関する内容で、○田さんにお伝えしなくてはならない重要な事項がありますので」 患者 「はい、は~い」 このニセ警察、妙に爽やかです。好青年すぎて逆に違和感しかありません。ホンモノの大阪府警って、もっと馴れ馴れしいオッチャンたちばっかりな気がします。まあ、関西人というのは、私も含めて全体に爽やかさが足りないわけですが。 ニセ 「本人確認書類となる身分証明書をお持ちのうえで、本日ですね、大阪府警の警察本部にお越しいただくことは可能でしょうか」 患者 「はい」 ここでニセ警察にちょっとした戸惑いが感じられました。電話をかけた相手が、まさか大阪に住んでいるとは思っていなかったのかもしれません。詐欺の場合は「そんな遠くは行けません」と言わせておいて、「それではビデオ通話で取り調べを行います」と提案し、ニセの警察手帳や逮捕状を見せて本物と信じ込ませるのが通常の手口なのだとか。さらにやり取りは続きます。 ニセ 「お越しいただくことは可能ですか」 患者 「行きますよ」 ニセ 「何時頃来られますか」 患者 「何時でも」 ニセ 「すぐに来られる、と」 ここで急に患者さんの声が大きくなります。 患者 「どういったご用件ですか」 ニセ 「すぐに来られるということですか」 患者 「どういうご用件ですか。静岡県警の誰ですか!」 「ブチッ」という音とともに電話は切れてしまいました。あまりにも面白いやり取り、そのまま聞き流すのももったいない。そこで診察室でもう一度再生してもらって、自分のスマホで録音しました。自分も詐欺に遭わないためには、何回も聴く必要があります。家に持って帰って、女房にもこの録音を聞かせたところ…… 女房 「この人、何をいきなりキレているわけ?」 中島 「キレてるのかなあ。このくらい平常運転でしょう」 女房 「こんなに怒鳴られたら、ニセ警察もビックリしたと思うわ。いったい何の病気なの?」 中島 「高次脳機能障害やけど」 女房は「やっぱり!」という表情になりました。この患者さんはいつもこんな感じなので、私もすっかり慣れてしまっていました。確かにご本人は「私、腹が立ったら自分でも止められへんねん」と普段から言っています。たまたまこの患者さん、詐欺電話を受けた日にお姉さんが自宅に来ていたとのこと。このお姉さんは以前に警察に勤めていたこともあって、詐欺の手口もよく知っていました。横から「スピーカーにしろ」とか「録音しろ」とか紙に書いて指示されたそうです。さらに、警察からの連絡の場合は電話番号の下4桁が「1234」になるのだとか。言われてみれば、警察署の代表番号は常に「1234」です。詐欺を見破る有力な方法ですが、気が付きませんでした。ただ、最近は詐欺師のやり方も手が込んできて、こちらのディスプレイに表示される番号の下4桁が「1234」となることもあるとのこと。そうなると何が正しいのか、わからなくなってしまいます。が、少なくとも「1234」以外の番号から警察を名乗る電話がかかってきたら、疑ってかかったほうがよさそうですね。詐欺を巡っては、ほかにもいろいろな報道がされています。ニュースによると、最近の警察は「仮想身分捜査」なるものを行っているのだとか。これは捜査員が架空の身分で闇バイトに応募・潜入するもので、2025年には13件実施し、5人を摘発し、7件を未然防止したそうです。「ひょっとして捜査員が紛れ込んでいるかも」と犯罪組織に思わせたら、抑止効果のほうも期待できるかもしれません。ともあれ、読者の皆さんも、ニセ警察からの詐欺電話に引っ掛からないようご注意ください。最後に1句 彼岸過ぎ 詐欺師相手に ブチ切れる

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第54回 愛犬は認知症を防ぐのか? 最新研究が解き明かす「ペットと飼い主の脳」の奥深い関係

皆さんは、犬や猫などのペットを飼っていますか? 私自身、愛犬「チャイ」と毎日を過ごしており、その存在に癒やされたり手を焼いたりしています。もちろん、自分の健康のためにチャイを飼い始めたわけではありませんが、このチャイと一緒に散歩に行ったり、世話をしたりするこの時間は、はたして私の将来の脳の健康、とりわけ認知症の予防に役立っているのでしょうか? そんなことが気になった私は、これを本格的に調査して、論文として報告することにしたわけです。そんなわけで今回は、私が責任著者を務め、今月米国医学誌The American Journal of Medicine誌に発表された最新の論文をもとに、この身近な疑問について解説します1)。この研究は、ペット飼育と認知症発症リスクの関連を調べた過去の複数の研究を統合して分析する「システマティックレビュー」という手法を用いています。犬を飼うだけではダメ? データが示す「飼育」と「行動」の深い関係今回の研究では、認知症を発症していない成人を追跡調査した6つの観察研究を分析しました。その結果、ペットを飼うことが認知症の発症を予防するかどうかについては、対象となった研究によって結果が分かれることが明らかになりました。たとえば、1万人を超える日本の高齢者を対象とした研究では、現在犬を飼っている人は、過去に飼っていた人や一度も飼ったことがない人に比べて、認知症を発症するリスクが顕著に低いことと相関することが示されました。さらに興味深いことに、犬を飼っていて「散歩などで定期的な運動習慣がある人」や、「社会的に孤立していない人」において、その影響がより強く現れることがわかっています。一方で、アメリカの健康・退職者調査を用いた研究では、ペットの世話をすること自体は、認知機能低下の独立した予防因子にはならない可能性が報告されています。これらのデータを統合すると、単に「ペットを所有している」という事実よりも、犬の散歩による身体活動や、ペットを通じた社会とのつながりといった「ペットと関連する行動」が、認知機能の維持において重要である可能性が示唆されます。著者の足元で眠るチャイ(著者撮影)認知機能の低下を緩やかにする「ペットの種類」とはさらに、ペットの種類によっても認知機能への影響が異なる可能性が見えてきました。ヨーロッパで行われた大規模な調査や米国の研究では、犬や猫を飼っていること、とくに犬の散歩を習慣にしていることは、記憶力や実行機能、処理速度といった認知機能の加齢に伴う低下を遅らせることと関連していました。これは、もし因果関係があるとすれば、動物との触れ合いがストレス反応を軽減し、記憶を司る脳の領域(海馬)の機能を保護する可能性や、日々の世話や散歩が自然な身体活動を促し、脳の予備能を高めるためだと考えられます。しかし注意が必要なのは、すべてのペットが良い影響を与えるとは限らない点です。同研究において、鳥の飼育は言語流暢性や遅延再生(記憶力)の悪化と関連していました。また、中国の研究において「家畜・ペット」として一括りにされたグループでは、認知機能障害のリスクが高いという結果も見られています。これは、農村部における家畜の世話が、都市部で飼われる「ペット」とは異なる身体的・環境的負荷をもたらすためと推測されます。私たちの生活にどう活かすべきか?では、私たちはこの研究結果をどう解釈し、日々の生活に活かせばよいのでしょうか。現時点で知っておくべきポイントは以下のとおりです。まず一点目に、「認知症予防のために」と無理にペットを飼うにはデータが不十分であるということです。 今回の研究データは観察研究に基づくものであり、バイアスのリスクが高いものです。また、「認知機能が落ちてきたからペットを飼えなくなった(手放した)」という、逆の因果関係が隠れている可能性が排除できません。このため、医療者が予防目的のみでペット飼育を推奨することは現段階では不適切だと結論付けました。もう一点は、もしそのような効果が本当にあるとしたら、「飼育」自体より「一緒に何をするか」が鍵なのかもしれないということです。すでにペットとの生活を楽しんでおり、安全に世話をする能力がある方にとっては、愛犬との毎日の屋外での散歩や、ペットを通じた近所付き合いを積極的に続けることが、脳の健康を保つための助けになることは間違いないでしょう。私自身、愛犬チャイとの日々の散歩は、単に「犬のお世話」だとしか思っていませんでしたが、今回のデータを見つめ直すと、チャイと一緒に歩くその時間は、私自身の数十年後の脳の健康への投資になっているのかもしれません。そう思うと、少し億劫な雨や雪の日の散歩も、少し足取りが軽くなりそうです。1)Minami K, Fukuzawa F, Kobayashi T, et al. Association Between Pet Ownership and Incident Dementia: A Systematic Review. Am J Med. 2026 Mar 19. [Epub ahead of print]

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