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京都府立医科大学 呼吸器内科学【大学医局紹介~がん診療編】

髙山 浩一 氏(教授)山田 忠明 氏(准教授)河内 勇人 氏(助教)髙橋 祐希 氏(後期専攻医)講座の基本情報医師の育成方針入局してくる若い先生方には必ずや自己実現を果たしていただきたいです。視野を広く持ち、目指す方向として常に5つの分野を意識するよう求めています。それは、臨床、研究、教育、行政、ビジネスです。目指す道が見つかるまで医局は寄り添い、その道がはっきり見えたら後押しをします。そのために、大学病院では臨床だけでなく、基礎研究にも、学生教育にも携わる機会を提供し、国内外への留学も推奨しています。いろいろな立場に自分の身を置くことで、おのずと自分が何者かを知ることになります。変化を恐れてはいけません。変わり続けることは最も重要な能力であり、それは誰にでも備わっています。地域のがん診療における医局の役割京都府立医科大学附属病院が掲げる理念は「世界トップレベルの医療を地域へ」です。すなわち、レベルの高い医療の実践と、それを地域へ伝える人材の育成が当院の使命とも言えます。当科では抗がん薬物による標準治療を実施するだけでなく、新薬の治験を含む多くの臨床試験に取り組み、新たなエビデンスの創出を目指します。当院で知識と技術を身に付けたがん診療のプロを広く地域の病院へ送り出すことが医局の役割です。力を入れている治療/研究テーマ呼吸器内科では急性期から慢性期の疾患まで多岐にわたるため、幅広い知識が必要になります。当科では、とくにがん診療において、臨床・トランスレーショナル・基礎研究のすべての分野において積極的に取り組んでいます。なかでも、分子標的薬や免疫療法に関する薬剤耐性のメカニズムの解明と、その克服を目指した研究に注力しています。これまでに得られた基礎研究の成果の一部は、治験という形で実際の患者さんに還元されており、臨床現場への直接的な貢献にもつながっています。今後も、当科ならではの独自の視点から生まれる基礎・トランスレーショナル研究を推進し、その成果を臨床応用へとつなげていくことに力を尽くしてまいります。医学生/初期研修医へのメッセージ当科には多様なキャリアを持つ仲間が集い、活気ある雰囲気の中でがん診療と研究に取り組んでいます。臨床での疑問を自ら学び、解決し、現場に還元したいと感じたときは、ぜひ一度、当科の扉を叩いてみてください。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力呼吸器領域におけるがん診療は、新規治療戦略・薬剤の開発が刻一刻と進化しており、最前線の知識と判断力が求められる奥深い分野です。当医局では、若手医師が早期から臨床・研究に主体的に関われる機会を大切にしています。上級医との距離も近いので、困ったときはすぐに相談できる安心感がある中で、やりがいと責任感を持って診療や研究に携わっています。全国規模の臨床研究や企業治験にも多数参画しており、標準治療に対する理解だけでなく、「日々の診療がこれからの治療を創る」という視点でも取り組めるのが魅力です。医局の雰囲気、魅力最近は若手の先生の入局者が多く、活気のある雰囲気はアピールポイントの1つです。医師としてキャリアを歩むうえで、日常診療や研究の面だけでなく、キャリアプラン・プライベートとの両立などいろいろな悩みに直面すると思いますが、同世代の仲間がいることは大きな支えになります。多彩なバックグラウンドを持った医局員が在籍しており、それぞれロールモデルになって後輩を導いてくれています。マンパワーが充実しているからこそ、誰かが新しい事へと挑戦する機会や困ったときに支え合える環境が作りやすいのだと、日々実感しています。これまでの経歴京都で生まれ育ち、2021年に金沢大学を卒業後、京都の宇治徳洲会病院で初期研修を行いました。大学在学中に呼吸器内科に興味を持ち始めましたが、まずは一般的な内科管理や救急対応を学ぶために、市中の急性期病院で研修することに決めました。初期研修修了後は京都府立医科大学呼吸器内科に入局し、引き続き初期研修を行った宇治徳洲会病院で呼吸器内科専攻医として2年勤務し、本年度より京都府立医科大学附属病院で勤務しています。同医局を選んだ理由大学在学中に初めて見た気管支鏡検査に惹かれたのをきっかけに呼吸器内科に興味を持ちました。患者さんと親身に向き合える診療科を志望していましたが、その中でも呼吸器内科は、急性期から慢性期、良性疾患から悪性疾患まで幅広く対応できる点に魅力を感じました。教授をはじめとするスタッフ方の雰囲気も温かく、大好きな京都に拠点を持ちつつ多くの関連病院と連携している点も入局の決め手でした。普段は和気藹々と、時に緊張感をもって取り組める環境です。ぜひ一度、雰囲気を味わいに来てください!京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学住所〒602-8566 京都府京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465問い合わせ先respir@koto.kpu-m.ac.jp医局ホームページ京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本臨床腫瘍学会日本アレルギー学会日本呼吸器内視鏡学会日本遺伝性腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)関西圏を中心に東京や北海道の病院とも連携しています。(2)がんセンター、気管支鏡研修施設、健診施設での研修も可能です。(3)女性医師にとっても働きやすい病院が多いです。専攻医募集中!興味のある先生はぜひご一読ください専攻医募集ページSNSでも医局の活動や最新情報を発信していますので、ぜひフォローしてください!公式Instagram公式Facebook

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ガイドラインはどう考慮される?【医療訴訟の争点】第12回

症例昨今では各分野において診療ガイドラインが作成され、臨床現場で頻用されている。本稿では、診療ガイドラインに準拠した治療の適否が争われた東京地裁令和4年3月10日判決を紹介する。<登場人物>患者53歳・女性(平成18年時点)原告患者の相続人被告総合病院事案の概要は以下の通りである。平成18年(2006年)11月13日胸部圧迫感や全身倦怠感を主訴として被告の関連病院を受診。血液検査にて肝機能障害が認められたため、被告病院の消化器内科を紹介。11月14日被告病院消化器内科外来を受診。腹部CT検査にて、総胆管内に直径5mmの結石があることおよび胆のう内にも小結石があることが確認され、総胆管結石と診断。11月15日被告病院に入院。午後3時30分内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)を受け、総胆管から2個の結石を排石。胆汁排出のため、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)も実施され、カテーテルが留置された(EPBD及びENBDをあわせて本件手術という)。本件手術の終了直前(午後5時前)に本件患者がカテーテルを自己抜去したため、胆汁排出のためのドレナージは奏功しなかった。午後6時20分頃嘔吐(黄色のもの中等量。血液も少量混入)午後7時40分頃腹満感及び嘔気の訴え午後8時10分頃腹痛の訴え11月16日午前0時10分頃腹痛の訴え午前0時30分頃腹痛の訴え午前0時50分頃嘔吐(緑黄色のもの中等量)、その後も嘔気、腹痛の訴えが続く。午前中触診の結果、腹部の上部及び両側部に圧痛及び筋性防御。本件患者は医師に対し、前日より痛みが良くなっているかもしれない旨を回答した。血液検査の結果、WBC:1万6,620/μL、CRP:2.03mg/dL、血中アミラーゼ(AMY):1,120IU/L。腹部CT検査の結果、肝臓及び脾臓の周囲に少量の腹水、胆のう周囲から肝門部及びファーター乳頭の周囲を中心とした後腹膜腔に気腫が確認。他方、腹腔内に造影剤が流出貯留している所見はなし。担当医は、消化器内科の上司及び外科医に手術の必要性についてコンサルトした結果、ファーター乳頭近くの胆管の小穿孔は否定できないとしながらも術後急性膵炎と診断し、経過観察を行うこととした。午後血液検査の結果、WBC:1万6,880/μL、CRP:9.45mg/dL、AMY:1,205IU/L。午後4時頃背中から腹部にかけて、どちらも痛い旨の訴え午後8時45分頃右側腹部痛、腰痛の訴え11月17日午前腹痛の訴え続く血液検査の結果、WBC:2万760/μL、CRP:21.81mg/dL、AMY:1,420IU/L。腹部CTの結果、腹水の増加及び胸水が確認され、膵臓の腫大は著明ではないが、炎症は後腎傍腔まで波及していた。触診の結果、腹部全体に圧痛、筋性防御及び腸蠕動音の減弱。午後0時58分頃「重症急性膵炎(+胆汁性腹膜炎疑い)」の傷病名で大学病院救急センターに搬送。腹部CTの結果、腹腔内及び後腹膜腔内の気腫(free air)、両側胸水並びに腹水が認められた。午後7時頃内視鏡下の上部消化管造影検査において、十二指腸内に明らかな損傷部位を同定できず、管腔内に胆汁が認められた上、ファーター乳頭近傍のわずかな造影の漏れや正中近くのわずかな溜りが認められた。午後9時頃ERCP後の下部胆道穿孔、穿孔性腹膜炎との術前診断にて、胆のう摘出術、チューブ挿入術及び洗浄ドレナージ術を実施。平成19年1月9日同大学病院にて、回盲部上行結腸切除及び人工肛門(小腸瘻)を造設。2月2日被告病院に転院。平成20年5月17日退院。その後、急性白血病を発症し、平成21年10月16日、原発不明がんの死因により死亡。実際の裁判結果本件の裁判では、11月16日正午までの時点で開腹手術実施する義務があったか、または被告病院での実施が困難である場合には同時刻までに転医させる義務があったか等が争われ、被告病院の医師が、本件患者が急性膵炎であると診断したこと及び経過観察としたことの判断の適否が問題となった。裁判所は、被告病院の医師が急性膵炎と判断したことについて、以下の点を指摘し、「術後急性膵炎と診断したことが不合理であったとは言えない」とした。EPBDを含む内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後の偶発症では急性膵炎が最も多いとされていることERCPなどの後に一時的ではない強い腹痛が発生した場合、膵炎であることの頻度が高いとされていること(『ERCP後膵炎ガイドライン2015』)急性膵炎の診断では血中の膵酵素上昇の確認が重要であり、多くの場合、血中アミラーゼの上昇により診断可能とされていること(『ERCP後膵炎ガイドライン2015』)本件では11月16日午前の血中アミラーゼの数値が基準値を超えていたこと次に、被告病院の医師が経過観察としたことについて、裁判所は、以下の点を指摘し、「本件患者について、経過観察を行うこととしたことも不合理であったとはいえない」とした。『急性膵炎診療ガイドライン2010』によれば、重症急性膵炎(壊死性膵炎)に対する早期手術は推奨されないとされていたこと本件患者は、本件手術後、複数回にわたって嘔吐や強い腹痛、腹部膨満を訴えていたものの、11月16日に医師に対して同月15日より痛みが良くなっているかもしれない旨を伝えていたこと11月16日の腹部CT検査の結果、腹水及び気腫が認められたものの、腹水は少量に留まり、気腫も後腹膜腔に限局していたことその上で、裁判所は、「11月16日正午頃の時点で、原告らが主張する注意義務が発生したとは認められない。医師が、本件患者について、術後急性膵炎と診断して経過観察を行うこととしたことが不合理であったとはいえず、医師に注意義務違反があったとは認められない」と結論付けた。なお、本件では、原告(患者側)は、協力医の意見書を提出しており、その意見書には、急性膵炎であれば、触診時、膵臓がある上腹部に圧痛等の腹膜刺激症状が現れ、ほかの箇所の腹部触診では、腹膜刺激症状が現れないので、上腹部に腹膜刺激症状が限局しているという判断になると記載され、WBC及びCRPの値がやや上昇していたことや腹部CTで少量ではあるが気腫(free air)及び腹水が認められたことから、急性汎発性腹膜炎を発症している状態と診断して緊急開腹手術を実施すべきであったと記載されていた。このため、かかる意見書に従えば、急性膵炎と診断して経過観察した医師には注意義務違反があるということとなる。しかし、裁判所は、かかる意見について、腹膜刺激症状の指摘は「急性膵炎患者の腹痛部位は上腹部、腹部全体の順に多く、圧痛部位は腹部全体、上腹部、右上腹部の順に多い旨の『ERCP後膵炎ガイドライン2015』及び『急性膵炎診療ガイドライン』の記載と合致せず、採用することができない」とし、ガイドラインの記載に反することを理由に、意見書記載の意見を採用しなかった。注意ポイント解説本件は、ERCP後の診断を急性膵炎としたこと、経過観察としたことの判断の適否が問題となった事案である。急性膵炎と診断したことについて、裁判所は、『ERCP後膵炎ガイドライン2015』の記述(「ERCPなどの後に一時的ではない強い腹痛が発生した場合、膵炎であることの頻度が高いとされていること」「急性膵炎の診断では血中の膵酵素上昇の確認が重要であり、多くの場合、血中アミラーゼの上昇により診断可能とされていること」)を踏まえて、医師が急性膵炎であると診断したことが不合理とは言えないと判断している。これは、一般にガイドラインは作成時点の医学的知見を集約したものである上、当該ガイドラインのクリニカルクエスチョンには記述の根拠たる関連論文の出典の記載もあるため、医学的な裏付けもある証明力の高いものとして判断されたものと考えられる。そして、このような理由から、ガイドラインの記載に反する患者側協力医意見書は採用されなかったものと考えられる。また、急性膵炎であるとの判断が不合理ではないとした場合の対応についても、ガイドラインの記載(「重症急性膵炎[壊死性膵炎]に対する早期手術は推奨されない」)を参考とした判断がなされている。本判決のこれらの判断は、過失(注意義務違反)の有無に関し、ガイドラインの考慮のされ方がうかがえるものとして参考となる。ただし、ガイドラインはさまざまな分野において各種のものが存在するが、どのような位置付けで作成されているのか(診療の参考に留まるのかなど)については、ガイドラインごとに異なる。また、ガイドラインの中のクエスチョンごとに推奨度や文献・論文等の裏付けの程度も異なる。また、そもそも患者ごとに症状が異なり、ガイドラインに記載されている症状がそのまま当該患者に当てはまるとは限らない点には注意が必要である。ガイドラインの記載どおりに対応していれば過失(注意義務違反)が否定されるとは限らないことに留意する必要がある。医療者の視点診療ガイドラインは、私たち医療者にとって日常診療の重要な指針ですが、その活用には臨床的判断が不可欠です。本症例はガイドラインが医療訴訟の判断基準となりうることを示していますが、ここから学ぶべき点は多いと思います。私たち臨床医が常に認識すべきは、ガイドラインは「標準的な患者」を想定して作成されており、個々の患者さんの状態がそれに合致するとは限らないということです。推奨度や根拠レベルにも差があり、すべてが同等の重みを持つわけではありません。ガイドラインに準拠した診療を行いながらも、患者さんの臨床所見の変化に注意を払い、当初の診断や治療方針を常に再評価する姿勢が重要です。臨床経過が予想と異なる場合には、ガイドラインに縛られ過ぎず、柔軟に方針を変更する判断力も求められます。また、複数の診療科での連携・相談を行うなど、チーム医療の視点からのアプローチも大切です。ガイドラインを「参考にする」という本来の位置付けを正しく理解し、それを踏まえた上で個々の患者さんに最適な医療を提供することが、私たち医療者の責務だと考えます。Take home messageガイドラインは作成時点の医学的知見を集約したものであるから、過失(注意義務違反)の有無を判断する基準(医療水準)となりうる。ただし、ケースバイケースの判断となるため、ガイドラインの記載どおりに対応していれば過失(注意義務違反)が否定されるとは限らないことに留意する必要がある。キーワードERCP、急性膵炎、ガイドライン診療ガイドラインは、一般に、医学的知見を集約したものであることからすれば、医療水準の認定に当たって、その記載内容の趣旨及び示されている推奨度等を勘案して考慮される。このため、推奨度が低いものについては、その記載と異なる対応をしても過失(注意義務違反)とされない可能性がある(逆に言えば、その記載どおりの対応をしていても過失[注意義務違反]がないとはならない可能性がある)。他方で、推奨度が高いものについては、その記載内容がそのまま医療水準となり、その記載に沿った対応をしていれば過失(注意義務違反)とならない可能性が高くなる(逆に言えば、その記載どおりの対応をしていない場合に過失[注意義務違反]があるとされる可能性が高くなる)。(1)推奨度がどういうものであるか、(2)ガイドラインの想定としている患者の状態、(3)実際に診療をしている患者の状態との違い(ガイドラインの記載をそのまま適用して診療にあたってよい症例か否か)を踏まえて対応する必要がある。

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全医師が遭遇しうる薬剤性肺障害、診断・治療の手引き改訂/日本呼吸器学会

 がん薬物療法の領域は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場し、目覚ましい進歩を遂げている。しかし、これらのなかには薬剤性肺障害を惹起することが知られる薬剤もあり、薬剤性肺障害が注目を集めている。そのような背景から、2025年4月に『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第3版2025』が発刊された。本手引きは、2018年以来の改訂となる。本手引きの改訂のポイントについて、花岡 正幸氏(信州大学病院長/信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室 教授)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。いま薬剤性肺障害が注目される理由 花岡氏は、「いまほど薬剤性肺障害が注目を集めているときはない」と述べ、注目される理由として以下の5点を挙げた。(1)症例数の増加ICIなどの新規薬剤の登場に伴って薬剤性肺障害の報告が増加している。(2)人種差国際比較により、日本人で薬剤性肺障害の発症率が高い薬剤が存在する。(3)予後不良な病理組織パターン重症化するびまん性肺胞傷害(DAD)を呈する場合がある。(4)多様な病型非常に多くの臨床病型が存在し、肺胞・間質領域病変だけでなく気道病変、血管病変、胸膜病変も存在する。(5)新たな病態ICIによる免疫関連有害事象(irAE)など、新規薬剤の登場に伴う新たな病態が出現している。改訂のポイント8点 本手引きでは、改訂のポイントとして8点が挙げられている(p.viii)。これらについて、花岡氏が解説した。(1)診断・検査の詳説 今回の改訂において「図II-1 薬剤性肺障害の診断手順」が追加された(p.13)。薬剤性肺障害の疑いがあった場合には、(1)しっかりと問診を行って、原因となる薬剤の使用歴を調査し、(2)諸検査を行って他の原因疾患(呼吸器感染症、心不全、原病の悪化など)を否定し、(3)原因となる薬剤での既報を調べ、(4)原因となる薬剤の中止で改善するかを確認し、(5)再投与試験によって再発するか確認するといった流れで診断を実施することが記載されている。 肺障害の発症予測や重症化予測に応用可能なバイオマーカーの確立は喫緊の課題であり、さまざまな検討が行われている。そのなかから国内で報告されている3つのバイオマーカー候補分子(stratifin、lysophosphatidylcholine[LPC]、HMGB1)について、概説している。(2)最新の画像所見の紹介 薬剤性肺障害の画像所見が「表II-3 薬剤性肺障害の一般的なCT所見」にまとめられた(p.21)。薬剤性肺障害の代表的な画像パターンは、以下の5つに分類される。・DADパターン・OP(器質化肺炎)パターン・HP(過敏性肺炎)パターン・NSIP(非特異性間質性肺炎)パターン・AEP(急性好酸球性肺炎)パターン なお、今回の改訂において、特定の薬剤の肺障害としてALK阻害薬、ADCに関する画像所見が追加された。(3)薬物療法の例の追加 薬物療法のフローについて「図III-2 薬剤性肺障害の薬物療法の例」が追加された(p.50)。重症度別にフローを分けており、すべての症例でまず被疑薬を中止するが、無症状・軽症の場合は中止により改善がみられれば経過観察とする。被疑薬の中止による改善がみられない場合や中等症の場合は、経口プレドニゾロン(0.5~1.0mg/kg/日)を投与する。これで改善がみられる場合はプレドニゾロンを漸減し、2~3ヵ月以内に中止する。経口プレドニゾロンで改善がみられない場合や重症・DADパターンでは、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000mg/日×3日)を行い、経口プレドニゾロンに切り替える。改善がみられる場合は漸減し、改善がみられない場合はステロイドパルスを繰り返すか、免疫抑制薬の追加を行う(ただし、免疫抑制薬に薬剤性肺障害に対する保険適用はないことに注意)。(4)予後不良因子の追加 薬剤性肺障害の予後を規定する要因として報告されているものを以下のとおり列挙し、解説している。・背景因子(高齢、喫煙歴、喫煙指数高値、既存の間質性肺炎、喘息の既往[ICIの場合]など)・発症様式(低酸症血症、PS2~4など)・胸部画像所見(DADパターンなど)・血清マーカー(KL-6、SP-D、stratifinなど)・気管支肺胞洗浄液(BALF)所見(剥離性の反応性II型肺上皮細胞)・ICIによる肺障害と抗腫瘍効果 ICIについては、irAEがみられた集団で抗腫瘍効果が高いこと、ニボルマブによる肺障害が生じた症例のうち、腫瘍周囲の浸潤影を呈した症例は抗腫瘍効果が高かったという報告があることなどが記されている。(5)患者指導の項目の追加 薬剤の投与中に新たな症状が出現した場合は速やかに医療機関や主治医に報告するよう指導すること、とくに抗悪性腫瘍薬や関節リウマチ治療薬を使用する場合には、既存の間質性肺疾患の合併の有無を十分に検討することなどが記載された。また、抗悪性腫瘍薬の多くは医薬品副作用被害救済制度の対象外である点も周知すべきことが示された。(6)抗悪性腫瘍薬による肺障害を詳説 とくに薬剤性肺障害の頻度が高いチロシンキナーゼ阻害薬、ICI、抗体製剤(とくにADC)について詳説している。(7)irAEについて解説 ICIによって生じた間質性肺炎では、BALF中のリンパ球の増加や制御性Tリンパ球の減少、抗炎症性単球の減少、炎症性サイトカインを産生するリンパ球・単球の増加など、正常分画とは異なる所見がみられることが報告されている。このようにirAEに特異的な所見がみられる場合もあることから、irAEの発症機序について解説している。(8)医療連携の章の追加 本手引きについて、花岡氏は「非専門の先生や診療所の先生にも使いやすい手引きとなることを目指して作成した」と述べる。そこで今回の改訂で「第VI章 医療連携」を新設し、非呼吸器専門医が薬剤性肺障害を疑った際に実施すべき検査について、「図VI-1 薬剤性肺障害を疑うときの検査」にまとめている(p.123)。また、専門医への紹介タイミングや、かかりつけ医・非呼吸器専門医と呼吸器専門医のそれぞれの役割について「図VI-2 かかりつけ医と専門医の診療連携」で簡潔に示している(p.124)。すべての薬剤が肺障害を引き起こす可能性 花岡氏は、薬剤性肺障害の定義(薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害のなかで、薬剤と関連があるもの)を紹介し、そのなかで「薬剤性肺障害の『薬剤』には、医師が処方したものだけでなく、一般用医薬品、生薬、健康食品、サプリメント、非合法薬などすべてが含まれることが、きわめて重要である」と述べた。それを踏まえて、薬剤性肺障害の診療の要点として「多種多様な薬剤を扱う臨床医にとって、薬剤性肺障害は必ず鑑別しなければならない。すべての薬剤は肺障害を引き起こす可能性があることを念頭において、まず疑うことが重要であると考えている」とまとめた。

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BRAF V600E変異mCRC、エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6は新たな1次治療に(BREAKWATER)/ASCO2025

 BREAKWATERは、BRAF V600E変異転移大腸がん(mCRC)における、1次治療としてのエンコラフェニブ+セツキシマブ+化学療法と標準治療を比較評価する試験である。2025年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、主要評価項目の1つである奏効率(ORR)の主解析結果、全生存期間(OS)の中間解析結果の報告が行われ、ORRはEC+mFOLFOX6群が有意に高く(60.9%vs.40.0%)、OSのハザード比(HR)も0.47と大きな差が付いたことに注目が集まっていた。これまでの本試験の報告に基づき、本レジメンはBRAF V600E変異mCRCに対し、米国食品医薬品局(FDA)から1次治療を含む早期承認を取得している。 2025年5月30日に始まった米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)では、Vall d'Hebron University Hospital(スペイン・バルセロナ)のElena Elez氏が、本試験の無増悪生存期間(PFS)の主解析結果およびOS、安全性などの更新データを報告した。この内容は2025年5月30日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC患者637例・試験群:エンコラフェニブ300mg1日1回経口投与、セツキシマブ500mg/m2、mFOLFOX6を2週間ごと投与(EC+mFOLFOX6群:236例)・対照群:医師選択による化学療法±ベバシズマブ(標準治療群:243例)※当初はEC群を含めた試験デザインだったものを2群にプロトコール変更・評価項目:[主要評価項目]PFS、ORR[副次評価項目]OS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2025年1月6日)におけるPFS中央値はEC+mFOLFOX6群12.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.2~15.9)、標準治療群7.1ヵ月(95%CI:6.8~8.5)、HRは0.53(95%CI:0.407~0.677)と、EC+mFOLFOX6群が有意に延長した。・更新されたOS中央値はEC+mFOLFOX6群30.3ヵ月(95%CI:21.7~未到達)、標準治療群15.1ヵ月(95%CI:13.7~17.7)、HRは0.49(95%CI:0.375~0.632)と、こちらもEC+mFOLFOX6群が有意に延長した。・ORRはEC+mFOLFOX6群65.7%、標準治療群37.4%だった。・治療関連有害事象は、Grade3/4がEC+mFOLFOX6群で76.3%、標準治療群で58.5%に発生した。Grade5は標準治療群の1例だった。頻度の高いものは悪心、貧血、下痢だった。 Elez氏は「本試験は二重の主要評価項目を達成した。EC+mFOLFOX6群は標準治療群と比較して臨床的に意味のある、かつ統計学的に有意なPFSおよびOSの改善を示し、毒性は管理できる範囲内だった。EC+mFOLFOX6は、BRAF V600E変異mCRCの1次治療における新たな標準治療となるだろう」とまとめた。  現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「今回のOSのアップデートに注目していたが、HRが0.49と非常に良い結果だった。予後不良の代表的例であるBRAF変異においてOSが30ヵ月を超える時代が来たことは感慨深い。BRAF V600E変異mCRCの2次治療にはEC+ビニメチニブの3剤併用療法があるが、本レジメンはビニメチニブを使わず、後治療に残しておけることにも意味がある。日本において本レジメンの承認はこれからだが、いずれの薬剤もすでに臨床で使われているものであり、明日からの実臨床を変える結果だと感じた」とコメントした。

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コーヒーは片頭痛予防に有効なのか?

 片頭痛は、不十分な薬物療法、不安、睡眠障害、うつ病、ストレスなど、さまざまなリスク因子の影響を受ける慢性的な神経疾患である。コーヒーは多様な生理活性作用が報告されており、急性片頭痛の症状緩和に役立つといわれているが、長期にわたる摂取を中止した場合、予期せぬ片頭痛の誘発につながる可能性がある。片頭痛患者の一部は、カフェインを潜在的な誘発因子として捉えているが、カフェインの片頭痛予防効果はいくつかの研究で示唆されている。コーヒーとその成分が片頭痛に及ぼす複雑な生理学的・薬理学的メカニズムは、依然として十分に解明されていない。中国・Shulan (Anji) HospitalのAyin Chen氏らは、コーヒーとその成分が片頭痛発症リスクに及ぼす影響を明らかにする目的で、メンデルランダム化(MR)解析を用いた調査を実施した。Neurological Research誌オンライン版2025年4月20日号の報告。 交絡因子およびバイアスリスクを低減するため、遺伝子変異を曝露量の代理指標としたMR解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー摂取と片頭痛リスクの間に、有意な逆相関が認められた。この結果は、コーヒーが頭痛障害を予防する可能性があるという過去の疫学研究と一致している。・MR解析では、7-メチルキサンチンが片頭痛のリスク低下と関連していたのに対し、カフェ酸硫酸塩はリスク上昇と関連していた。・感度分析では、トリゴネリンを除くすべての成分について一塩基多型選択に異質性は認められず、MR-Egger法およびMR-PRESSO検定の両方で水平多面発現性や外れ値は認められなかった。 著者らは、「本結果により、コーヒーおよびその成分が片頭痛リスクに及ぼす影響が明らかとなり、有益な食事に関する推奨事項が提供される」とし、「コーヒーの保護効果は、アデノシン受容体拮抗作用と密接に関連している可能性があり、根底にあるメカニズムの解明には、さらなる研究が求められる」とまとめている。

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コントロール不良の軽症喘息、albuterol/ブデソニド配合薬の頓用が有効/NEJM

 軽症喘息に対する治療を受けているが、喘息がコントロールされていない患者において、albuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)単独の頓用と比較してalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用は、重度の喘息増悪のリスクが低く、経口ステロイド薬(OCS)の年間総投与量も少なく、有害事象の発現は同程度であることが、米国・North Carolina Clinical ResearchのCraig LaForce氏らBATURA Investigatorsが実施した「BATURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月19日号に掲載された。遠隔受診の分散型無作為化第IIIb相試験 BATURA試験は、軽症喘息に推奨される薬剤による治療を受けているが喘息のコントロールが不良な患者における固定用量のalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化イベント主導型・分散型第IIIb相比較試験であり、2022年9月~2024年8月に米国の54施設で参加者を登録した(Bond Avillion 2 DevelopmentとAstraZenecaの助成を受けた)。本試験は、Science 37の遠隔診療プラットフォームを用い、すべての受診を遠隔で行った。 年齢12歳以上で、短時間作用型β2刺激薬(SABA)単独またはSABA+低用量吸入ステロイド薬あるいはロイコトリエン受容体拮抗薬の併用療法による軽症喘息の治療を受けているが、喘息のコントロールが不良な患者を対象とした。 これらの参加者を、albuterol(180μg)/ブデソニド(160μg)配合薬(それぞれ1吸入当たり90μg+80μgを2吸入)またはalbuterol単独(180μg、1吸入当たり90μgを2吸入)の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付け、最長で52週間投与した。 主要エンドポイントは、on-treatment efficacy集団(無作為化された治療の中止前、維持療法の強化前に収集した治療期間中のデータを解析)における重度の喘息増悪の初回発生とし、time-to-event解析を行った。重度の喘息増悪は、症状の悪化によるOCSの3日間以上の使用、OCSを要する喘息による救急診療部または緊急治療のための受診、喘息による入院、死亡とし、治験責任医師によって確認された記録がある場合と定義した。 主な副次エンドポイントはITT集団(on-treatment efficacy集団のようなイベント[治療の中止や強化]を問わず、すべてのデータを解析)における重度の喘息増悪の初回発生とし、副次エンドポイントは重度の喘息増悪の年間発生率と、OCSへの曝露とした。年齢18歳以上でも、2集団でリスクが低下 解析対象は2,421例(平均[±SD]年齢42.7±14.5歳、女性68.3%)で、albuterol/ブデソニド群1,209例、albuterol単独群1,212例であった。全体の97.2%が18歳以上で、ベースラインで74.4%がSABA単独を使用していた。事前に規定された中間解析で、本試験は有効中止となった。 重度の喘息増悪は、on-treatment efficacy集団ではalbuterol/ブデソニド群の5.1%、albuterol単独群の9.1%(ハザード比[HR]:0.53[95%信頼区間[CI]:0.39~0.73]、p<0.001)に、ITT集団ではそれぞれ5.3%および9.4%(0.54[0.40~0.73]、p<0.001)に発生し、いずれにおいても配合薬群で有意に優れた。 また、年齢18歳以上に限定しても、2つの集団の双方で重度の喘息増悪のリスクがalbuterol/ブデソニド群で有意に低かった(on-treatment efficacy集団:6.0%vs.10.7%[HR:0.54、95%CI:0.40~0.72、p<0.001]、ITT集団:6.2%vs.11.2%[0.54、0.41~0.72、p<0.001])。 さらに、年齢12歳以上のon-treatment efficacy集団における重度の喘息増悪の年間発生率(0.15vs.0.32、率比:0.47[95%CI:0.34~0.64]、p<0.001)およびOCSの年間総投与量の平均値(23.2vs.61.9mg/年、相対的群間差:-62.5%、p<0.001)は、いずれもalbuterol/ブデソニド群で低い値を示した。約60%がソーシャルメディア広告で試験に参加 頻度の高い有害事象として、上気道感染症(albuterol/ブデソニド群5.4%、albuterol単独群6.0%)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(5.2%、5.5%)、上咽頭炎(3.7%、2.6%)を認めた。 重篤な有害事象は、albuterol/ブデソニド群で3.1%、albuterol単独群で3.1%に発現し、投与中止に至った有害事象はそれぞれ1.2%、2.7%、治療関連有害事象は4.1%、4.0%にみられた。治療期間中に2つの群で1例ずつが死亡したが、いずれも試験薬および喘息との関連はないと判定された。 著者は、「分散型試験デザインは患者と研究者の双方にとってさまざまな利点があるが、患者が費用負担を避けることによる試験中止のリスクがあり、本試験では参加者の約19%が追跡不能となった」「特筆すべきは、参加者の約60%がソーシャルメディアの広告を通じて募集に応じており、近隣の診療所や地元で募集した参加者のほうが試験参加を維持しやすい可能性があるため、これも試験中止率の上昇につながった可能性がある」「青少年の参加が少なく、今回の知見のこの年齢層への一般化可能性には限界がある」としている。

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抗ANGPTL4抗体、新たな脂質低下療法の可能性/Lancet

 完全ヒト化抗アンジオポエチン関連タンパク質4(ANGPTL4)抗体MAR001は、循環血中のトリグリセライドおよびレムナントコレステロールを安全かつ効果的に低下させ、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクを低減する有望な脂質低下療法となる可能性があることが、米国・Marea TherapeuticsのBeryl B. Cummings氏らが実施した「MAR001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月15日号で報告された。単回と複数回投与の安全性を評価する2つの試験 研究グループは、MAR001によるANGPTL4の阻害の包括的な安全性の評価を目的に、ヒトで初めての無作為化プラセボ対照単回増量投与第I相試験(2017年11月~2019年9月)および二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験(2013年11月~2024年7月)を行った(Marea Therapeuticsの助成を受けた)。 第I相試験(全56人)は3つのパートから成り、パート1A(健康な成人)では年齢18~65歳、体重50kg以上、BMI値18~30の32人を登録し、MAR001 15mg、50mg、150mg、450mgを単回皮下注射する群に各6人およびプラセボ群に8人、パート1B(高BMI)では体重70kg以上、BMI値30~40の12人をMAR001 450mg群に9人およびプラセボ群に3人、パート1C(高トリグリセライド)では体重59kg以上、空腹時トリグリセライド値200~500mg/dLの12人をMAR001 450mg群に8人およびプラセボ群に4人をそれぞれ割り付けた。 主要目的は、MAR001単回皮下注射から141日後までの安全性と忍容性の評価と、健康な試験参加者における薬物動態の評価とした。 第Ib/IIa相試験は、高トリグリセライド血症で2型糖尿病の既往のある成人、またはスクリーニング時のHOMA-IR値が2.2以上で腹部肥満(ウエスト周囲長が女性88cm以上[アジア系は80cm以上]、男性102cm以上[同90cm以上]と定義)のある成人を対象とし、オーストラリアの2施設で55人を登録し、MAR001 150mg群に10人、同300mg群に9人、同450mgに17人、プラセボ群に19人を割り付け、2週ごとに7回投与した。 主要目的は、代謝機能障害を有する参加者におけるMAR001複数回投与の安全性と忍容性の評価であった。投与終了から12週間の追跡調査を行った。有害事象の多くはGrade1/2、重篤なものはない 2つの試験の結果、MAR001は安全で、全般に良好な忍容性を示した。第Ib/IIa相試験の全体で、有害事象は85%に発現し、このうちGrade1が40%、Grade2が44%であった。とくに注目すべき有害事象は27%、投与中止に至った有害事象は2%、試験薬関連の可能性がある有害事象は38%に認めた。一方、重篤な有害事象および死亡に関連した有害事象はみられなかった。 また、試験薬関連の全身性の炎症バイオマーカー値の上昇や、MRIで評価した腸間膜リンパ節の大きさや炎症の変化は観察されなかった。 MAR001 450mgの投与による、プラセボで補正した12週目におけるトリグリセライド値の平均減少率は52.7%(90%信頼区間[CI]:-77.0~-28.3)であり、レムナントコレステロールの平均減少率は52.5%(-76.1~-28.9)であった。 著者は、「これらの臨床所見は、ANGPTL4の阻害により安全かつ効果的にトリグリセライドとレムナントコレステロールが減少し、ASCVDリスクが大幅に低下するというヒトの遺伝的予測と一致する」「これらの結果は、ASCVDリスクを低下させる新たな脂質低下療法として、また心血管リスクが残存する高リスク者に対する標的治療として、MAR001の研究開発の継続を支持するものである」としている。

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突然の心停止の最大のリスクは生活習慣

 生活習慣や環境関連のリスク因子をコントロールすることで、突然の心停止(SCA)の約3分の2を予防できる可能性があるという研究結果が、「Canadian Journal of Cardiology」に4月28日掲載された。復旦大学(中国)のRenjie Chen氏らの研究によるもの。論文の上席著者である同氏は、「リスク因子に対処することで、多くのSCAを予防し得るという結論に驚いている」と語っている。 SCAは致死率が高く、かつ予測が困難なため、世界的に主要な死亡原因の一つとなっている。SCAのリスク因子に関するこれまでの研究の多くは仮説主導型という研究手法で行われていて、この手法では事前に定義された仮説に含まれていない因子の発見が難しい。これを背景にChen氏らは、英国で行われている住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを利用し、エクスポソームワイド関連研究(EWAS)やメンデルランダム化(MR)解析という、仮説に依存せずリスク因子を探索する手法による研究を行った。 UKバイオバンク参加者50万2,094人を平均13.8年追跡したところ、3,147人がSCAを発症していた。食事・運動・喫煙・飲酒習慣、抑うつや孤独、環境汚染への曝露、雇用状況・暮らし向き、体重・血圧など、修正可能な125の潜在的リスク因子を、SCA発症者と非発症者で比較したところ、SCAリスクと関連の強い56の因子が浮かび上がった。そのうち25の因子は、集団寄与危険割合(その因子を除外すればSCAを防ぐことのできる割合)が10~17.4%の範囲にあり、これには、喫煙、運動、テレビ視聴時間、肥満、睡眠、握力、教育歴などの変更可能な因子が含まれていた。 また、特にリスクの高い因子を除外することで、SCAの発生を40%予防できると予測された。それには生活習慣の改善が最も強く寄与し(40%のうち13%)、次いで身体的因子(9%)、社会経済的因子(8%)、心理社会的因子(5%)、環境因子(5%)が寄与していた。また、リスクがそれほど高くない因子も含めて、より徹底的な対処を行った場合、最大で63%のSCAを予防できると考えられた。この予測においても最も寄与するのは生活習慣の改善であり、18%の減少が見込まれた。 Chen氏は、「われわれの知る限りこの研究は、医学的な手段を用いずに修正可能なリスク因子とSCA発生率との関連性を包括的に調査した、初の研究である」と述べている。また論文の筆頭著者である同大学のHuihuan Luo氏は、「本研究により、SCAと有意な関連のあるさまざまな修正可能因子が見つかり、生活習慣の改善がSCA予防に最も効果的であることが分かった」と総括している。 少し意外なデータも見つかった。それは、パソコン操作時間(不健康とされる座位行動に該当する)が、SCAに対して保護的に働くような関連が見られたことだ。研究者らによると、これはパソコンの操作がSCA予防につながるというのではなく、パソコンユーザーには教育歴が長い人が多い傾向があり、教育歴の長さは一般に健康に対する保護因子として働くためではないかという。

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尿検査で腎臓がん手術後の再発を検出

 尿中グリコサミノグリカンプロファイル(GAGome)は遠隔転移のない淡明細胞型腎細胞がん(M0ccRCC)の手術後の再発に高い感度を示すことが確認されたとする研究結果が、欧州泌尿器科学会議(EAU 25、3月21〜24日、スペイン・マドリード開催)で発表された。 ルンド大学(スウェーデン)のSaeed Dabestani氏らは、Leibovichスコアが5以上のM0ccRCC患者を対象に多施設共同前向きコホート研究を実施し、手術後の再発検出におけるGAGomeの有用性を評価した。スクリーニングを受けた393人の患者のうち、134人が適格基準を満たした。対象者は、手術後の標準的な画像検査により最長18カ月まで放射線学的再発の評価を受け、尿中GAGomeも3カ月ごとに測定された。 中央値15カ月にわたる追跡期間中に、15.7%の患者でがんの再発が確認された。放射線学的再発に対するGAGomeスコアの感度は90%、特異度は51%、ROC曲線下面積(AUC)は0.73であり、陽性的中率は26%、陰性的中率は97%であった。リードタイム(GAGomeスコアで最初に陽性と判定されてから放射線学的再発までの時間差)の中央値は4.2カ月であった。GAGomeスコアの10ポイント増加ごとの再発のハザード比は1.62であった。GAGomeスコアと放射線学的再発との間には線形の相関が見られ、最後の追跡調査時に確認された再発率とGAGomeスコアに基づき予測された再発率の一致度は良好であった。 Dabestani氏は、「がんの再発を正確に示す尿検査があれば、リスクレベルをより適切に評価し、必要な画像検査の頻度を減らすことができる。今回の結果に基づけば、患者に必要とされる画像検査の頻度は、安全に半分に減らせる可能性がある」と述べている。

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センサー搭載のマスクが呼気から慢性腎臓病を検出

 特殊な呼気センサーを搭載した改良型医療用マスクにより、マスク着用者が慢性腎臓病(CKD)であるか否かを正確に判定できる可能性があるようだ。研究では、アンモニアやエタノールなどのCKDに関連する代謝物を検知するセンサー搭載のこのマスクにより、CKD患者と非CKD患者を正確に区別できたという。ローマ・トル・ヴェルガータ大学(イタリア)のAnnalisa Noce氏らによるこの研究の詳細は、「ACS Sensors」に5月7日掲載された。 米国でのCKD患者数はおよそ3500万人と推定されているが、CKDに気が付いていない潜在的な患者も含めると、それ以上に上るとみられている。腎臓は、血液を濾過して余分な水分や老廃物を尿として排泄する役割を担っている。しかし、腎機能が低下すると、老廃物が十分に排出されずに体内に蓄積する。 CKDは主に尿検査と血液検査により診断されるが、研究グループは、CKD患者の呼気中にアンモニアなどのCKDに関連する化学物質が含まれていることに着目し、アンモニアとその他のCKD関連代謝物を同時に検出できる特殊なセンサーの開発を試みた。 まず、揮発性化合物に敏感な分子であるポルフィリンで修飾した導電性ポリマーで銀製の電極をコーティングし、感度を高めた。次に、このコーティングされた電極を使い捨ての医療用マスクの層の間に配置し、ワイヤーでデバイスと電子読み取り装置を接続した。これにより、マスク着用者の呼気に含まれる特定のガスがポリマーと反応した際に生じる電気抵抗の変化を検出できるようにした。初期実験では、アンモニア、エタノール、プロパノール、アセトンなどのCKD関連代謝物に対するこのセンサーの高い感度が確認された。 このセンサー搭載マスクの性能を、18〜80歳の101人(CKD患者53人、健常者48人)を対象に評価した。CKD患者のステージは2〜5だった。その結果、このマスクのCKDに対する真陽性率(CKD患者を正しくCKDと判定した割合)は93.3%、真陰性率(非CKD患者を正しくCKDではないと判定した割合)は86.7%であることが示された。また、センサーにより測定された結果がCKDのステージの推定にも有用な可能性も示唆された。 研究グループは、これらの結果は、このセンサー搭載マスクがCKD患者に対する簡単で非侵襲的かつ費用対効果の高いモニタリング方法になり得ることを示していると述べている。Noce氏と論文の共著者であるローマ・トル・ヴェルガータ大学のSergio Bernardini氏は、「この技術の導入により、CKDの進行の変化をタイムリーに特定しやすくなり、疾患管理の向上が期待される」と話している。

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第264回 あの3医学誌を“腐敗”呼ばわり、トランプ氏より危険な人物

トランプ大統領の影で大暴れする人物各種報道で話題になっているように、米・ハーバード大学とトランプ政権の攻防はエスカレートする一方だ。きっかけはトランプ政権が同大学の「“反ユダヤ主義的な差別”への取り組みが不十分」だと非難し、「応じなければ助成金や政府との契約を見直す」と発表。この要求を同大学が拒否したため、政権側は約23億ドル分(4月15日時点)の助成金と契約を凍結すると明言した。これに対し、同大学は凍結取り消しを求めて4月21日にマサチューセッツ州連邦地裁へ提訴。しかし、政権側は同大学に対し5月2日に免税措置を取り消し、22日に留学生受け入れ資格の停止、27日には推定1億ドル(日本円で約144億円)とも言われる政府との全契約打ち切り公言など、相次ぐ報復に踏み切った。ちなみに留学生受け入れ資格の停止についても同大学は即座に提訴し、マサチューセッツ州連邦地裁は翌23日に政府による措置の一時差し止め決定を下した。人によって評価は分かれるかもしれないが、私個人のトランプ大統領のこの間の言動に対する評価は「常軌を逸している」の一言に尽きる。まるで漫画「ドラえもん」に登場するガキ大将・剛田 武、通称ジャイアン並みの傍若無人ぶりである。そして世界中がトランプ大統領の言動に視線が集まる中、もう1人の主役が“大暴れ中”である。トランプ政権の保健福祉省長官であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(以下、ケネディ氏)である。米国の3医学誌を腐敗呼ばわりケネディ氏は以前から極端なワクチン懐疑主義を唱え、コロナ禍中はその治療薬として一部で妄信的とも言える“期待”が語られた抗寄生虫薬のイベルメクチン支持者だったことでも知られる。このためケネディ氏の保健福祉省長官への就任には根強い反対論があり、上院での採決では身内の共和党も造反し、賛成51票・反対48票でかろうじて長官人事が承認された経緯がある。さてそのケネディ氏は5月27日、ポットキャストでLancet、New England Journal of Medicine、JAMAの3誌を「製薬企業が資金提供した研究ばかりが掲載され、腐敗している」と批判。「国立衛生研究所(NIH)の研究者にこれらの雑誌で論文を発表するのを止めさせる」とまで語った。もっともご存じの人も多いと思うが、ケネディ氏の主張は100%間違っているわけではない。これら医学誌に製薬企業の資金提供による論文が数多く掲載されていることは事実であり、またコロナ禍中には査読の甘さゆえに信頼性の低いデータに基づく論文が撤回されたこともある。とはいえ、世界各国の研究者がこの3誌に論文投稿する価値は十分あり、同時に各国の多くの研究者たちが愛読している雑誌である。少なくともNIH関係者が投稿を止めねばならないほど腐敗があると認める人は、この世界では極めて少数派だろう。それをケネディ氏の一存で止めさせようというのだから、相当なトンデモである。しかも、ケネディ氏はこれに代わる新たな医学誌の創刊をぶち上げたらしいが、医学誌1つの創刊と発行継続に、どれだけの資金と人員が必要かについては無頓着のようである。トランプ政権が各種予算を驚くような勢いで削減している中で、そのような費用の支出を政権として承認するかどうかは甚だ疑問である。ここぞとばかりに、ワクチンスケジュール削除また、同日には健常な子どもと妊婦に対する新型コロナワクチン接種を米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨するワクチン接種スケジュールから削除したと自身のSNSを通じて発表している。CDCの推奨ワクチンについては、外部専門家で構成されるACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)が年数回開催する公開会議で、データに基づき厳格な審議と投票が行われる。その結果にパブリックコメントも踏まえた勧告案をCDCに提出し、CDC所長による承認を経て正式決定と公表がなされる。今回こうしたプロセスは一切経ていない。もはやここまでいくと「リーダーシップ」のふりをした「ディクテイターシップ(独裁制)」である。米国小児科学会(AAP)はさっそく声明を発表。ケネディ氏の“決定”は「独立した医療専門家を無視し、子どもたちを危険にさらすもの」「保険福祉省が収集したデータをAAPが分析した結果、2024~25年の呼吸器ウイルス流行期に1万1,199人の子どもが新型コロナで入院し、うち7,746人が5歳未満だったことが判明した」「健康な妊婦を除外するという決定は、65~74歳の高齢者と妊婦が新型コロナによる入院率が同程度にもかかわらず、もはや生後6ヵ月未満の乳児が保護を受けられなくなることを意味する」などと述べ、反発を強めている。また、米国産婦人科学会(ACOG)も「妊娠中の新型コロナ感染は悲惨であるとともに、重大な障害につながる可能性があり、家族にとって壊滅的な結果をもたらす可能性があることは明らか。新型コロナワクチンは妊娠中に安全であり、ワクチン接種は患者と出生後の乳児を守ることができる」との声明を発表した。さらに保健福祉省は28日、バイデン政権期に決定していたモデルナ社による高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)のmRNAワクチン開発への助成を打ち切ると発表。同省は打ち切りについて、「連邦政府の投資継続に必要な科学的基準や安全性の期待を満たしていない」との見解を示したと報じられている。あくまで省として決定と伝わっているが、長官であるケネディ氏が「新型コロナのmRNAワクチンにはマイクロチップが含まれている」という陰謀説の出元と言われるだけに、同氏の関与をどうしても疑ってしまう。やりたい放題、いつまで続く?極めつきは5月22日に発表された「MAHA(Make America Healthy Again=米国を再び健康にする)委員会」の報告書だ。これは2月13日付でMAHA委員会を設置し、同委員会にアメリカ国民を不健康にしている原因究明とその解消策提言をするよう求めた大統領令に基づくもの。委員長はケネディ氏である。その内容を細かく取り上げるときりがないが、大雑把に要約すると「アメリカの子どもの慢性疾患は深刻で、その原因は加工食品や化学物質、薬の過剰投与、ワクチンの過剰接種が原因の可能性がある」というもの。トランプ政権入りする以前からのケネディ氏の主張そのままである。冒頭で触れたハーバード大学の留学生追放やすでに報じられている科学関連予算の大幅削減にこうしたケネディ色がトッピングされたら、4年後のアメリカはどうなってしまうのだろうか? 正直、嫌な予感しかないのだが…。

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疫学・自然経過―その2【脂肪肝のミカタ】第3回

疫学・自然経過―その2Q. 肝臓だけではない、イベント数の実態は?代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は肝臓だけの病気と考えるべきではない。肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントよりも、心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患患者のほうが多いとされる(図2)。(図2) 虎の門病院で組織学的にMASLDと診断された552例における各種イベント発生頻度画像を拡大する肝外悪性疾患では、男性で大腸がん、女性で乳がんのリスクが増加することが示されており、健康診断や人間ドック等による、年齢に応じた悪性疾患のスクリーニングの重要性も啓発していく必要がある1-4)。また、心血管系リスク症例の絞り込みも重要な課題である。動脈硬化性疾患予防ガイドラインで、動脈硬化性心血管疾患の発症予測モデルとして採用されているスコアなどの活用も検討されるべきである5)。MASLDは背景にメタボリックシンドロームが存在するため、肝臓の線維化の状態に寄らず、常に心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患にも注意を払う必要がある。とくに、肝臓の線維化が進行していない症例では、心血管や肝臓以外の悪性疾患のイベントのほうが目立ち、肝臓の線維化進行例では肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントのほうが目立つ6)。すなわち、イベントの頻度は相対的に考えるべきといえる(図3)。(図3)MASLDからの各種イベントの実態画像を拡大する1)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.2)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-542.3)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.4)Akuta N, et al. BMC Gastroenterol. 2021;21:434.5)日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022.6)Vuppalanchi R,et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18:373-392.

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整形外科の薬物療法・保存療法

薬物療法、保存療法を実診療に即して解説「ニュースタンダード整形外科の臨床」第3巻整形外科の実臨床に真に役立つテキストシリーズ。整形外科の外来において日常的に診察する痛み、しびれ、関節リウマチ、外傷に対する薬物療法、保存療法を実診療に即して解説。従来の薬剤、注射法、ギプス、包帯固定、副子、装具、理学療法、作業療法に加え、新しく登場した鎮痛薬や抗RA薬、近年注目されているハイドロリリース、多血小板血漿(PRP)療法、脂肪由来幹細胞(ASC)療法、運動器カテーテル治療・動注治療なども詳述。臨床に役立つ動画多数収載。以前からある鎮痛薬や慢性疼痛・神経障害性疼痛に対する新しい鎮痛薬についてもわかりやすく解説関節リウマチに対する新旧治療薬を網羅ジェネラリストでも知っておいた方がよい、腱鞘内注射法や関節内注射法、さらに新しい治療法のハイドロリリースや多血小板血漿法なども動画やエコーを多数使って解説ギプス固定法の基本やテーピング、徒手整復・矯正などを動画や写真を使ってわかりやすく解説というように、ジェネラリストや非専門医にとっても役立つ知識を多数収載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する整形外科の薬物療法・保存療法定価12,100円(税込)判型B5判頁数410頁発行2025年5月専門編集・編集委員井尻 慎一郎(井尻整形外科)編集委員田中 栄(東京大学)松本 守雄(慶應義塾大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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抗精神病薬の過剰治療はどう変化しているのか

 抗精神病薬による過剰治療は、副作用の観点から重要な懸念事項である。これまでの研究では、抗精神病薬の多剤併用や過剰な高用量投与に焦点が当てられてきた。オランダ・フローニンゲン大学のStijn Crutzen氏らは、潜在的な過剰治療、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬の総投与量、主観的な副作用の負担について、経時的な変化をマッピングし、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を調査するため、長期ケアを受けている患者を対象とした自然主義的コホート研究のデータを解析した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 自然主義的縦断的コホート研究であるPHAMOUS調査のデータ(2013~21年)を用いた。潜在的な過剰治療の定義は、リスペリドン換算5mg超の抗精神病薬投与量、または高い主観的な副作用の負担を伴う抗精神病薬の多剤併用とした。潜在的な過剰治療、多剤併用、総投与量、主観的な副作用の負担における傾向を調査し、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を評価するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・全体で、5,107例における1万5,717件の観察データを用いた。・対象患者の3分の1に過剰治療の可能性があり、経時的な変化は認められなかった。・抗精神病薬の多剤併用の頻度は増加していたが、リスペリドン換算5mg超の投与量の頻度は減少しており、主観的な副作用の負担は軽減していた。・抗精神病薬の高用量投与および多剤併用は、主観的な副作用の負担の増加と関連が認められた。 著者らは、「抗精神病薬による過剰治療の可能性がある患者は、治療変更の必要性の評価のため再調査すべきである」とし、「患者が本当に過剰治療されているかどうかの評価には、患者の病歴、再発回数、患者の希望、全体的な機能、抗精神病薬治療の減少を試みた治療歴、過去の疾患重症度を考慮する必要がある」とまとめている。

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ASCO2025スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 5月30日~6月3日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO 2025(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO 2025のスタートにあわせ、5,000を超える演題の中から、複数のエキスパートが専門分野の注目演題をピックアップした特設サイトをオープンした。 「ASCO2025特設サイト」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」のカテゴリに分け、エキスパートのコメントとともに、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを掲載している。 エキスパートが選定した、がん種別の注目演題の一部は以下のとおり。このほかにも多くのユーザーが注目すべき演題を紹介している。今年は各がん種のOral演題を一覧にし、ASCO視聴サイトの該当演題やエキスパートのコメント、まとめ記事へのリンクを掲載した「演題スケジュール」も作成したため、視聴の参考にしていただきたい。【肺がん】山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)によるまとめ【消化器がん 食道・上部消化器がん中心】山本 駿氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科)によるまとめ【消化器がん 下部消化器がん中心】中村 将人氏(相澤病院 がん集学治療センター)によるまとめ【乳がん】下井 辰徳氏(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)によるまとめ【泌尿器がん】竹村 弘司氏(虎の門病院 臨床腫瘍科)によるまとめ――――――――――Doctors’Picks ASCO2025 特設サイト―――――――――― 学会終了後は、聴講レポートやまとめ記事なども続々とアップしていく予定。

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肺サルコイドーシスの1次治療、メトトレキサートvs. prednisone/NEJM

 未治療の肺サルコイドーシス患者おいて、メトトレキサートはprednisoneに対して、ベースラインから24週時までの%FVC(努力肺活量[FVC]の予測値に対する実測値の割合)の変化量に関して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス医療センターのVivienne Kahlmann氏らが同国17施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「PREDMETH試験」の結果を報告した。prednisoneは現在、肺サルコイドーシスの第1選択治療薬として推奨されているが、多くの副作用を伴うことがある。一方、第2選択治療薬として推奨されているメトトレキサートは、prednisoneより副作用は少ないが、作用発現が遅いとされている。肺サルコイドーシスの1次治療として、メトトレキサートの有効性および副作用プロファイルをprednisoneと比較したデータが必要とされていた。著者は、「副作用プロファイルの違いは、医療従事者と患者による治療選択に関する共同意思決定に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。ベースラインから24週時の%FVC変化量を比較 研究グループは、未治療の肺サルコイドーシス患者を、事前に規定された治療スケジュールに従い、prednisone群またはメトトレキサート群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主な適格基準は、米国胸部学会、欧州呼吸器学会(ERS)および世界サルコイドーシス肉芽腫性疾患学会の定義にしたがって肺サルコイドーシスと診断され、治療開始の肺適応があること(現在のERSガイドラインの推奨に従い、中等度以上の症状があり健康悪化や死亡のリスクを有するもの)、%FVC<90%、%DLco<70%、過去12ヵ月以内に%FVCが5%以上低下または%DLcoが10%以上低下、治験責任医師評価による実質的な肺異常所見ありであった。 prednisoneは1日40mg経口投与から開始して、4週ごとに減量し16週時には維持量1日10mgとした。メトトレキサートは週15mg経口投与から開始して、4週ごとに5mgずつ増量し最大投与量は週25mgとした。 主要エンドポイントは、24週時における%FVCのベースラインからの平均変化量であった。無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた患者を解析対象集団として、反復測定混合モデルを用いて解析し、非劣性マージンは群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-5%ポイントとした。メトトレキサートはprednisoneに対して非劣性 2020年7月17日~2024年2月22日に138例が登録され、無作為化された(prednisone群70例、メトトレキサート群68例)。有効性解析対象集団には、prednisone群68例、メトトレキサート群67例、計135例が含まれた。 %FVCのベースラインから24週時までの変化量(調整前平均値)は、prednisone群6.75%ポイント(95%CI:4.50~8.99)、メトトレキサート群6.11%ポイント(3.72~8.50)であった。24週時の変化量の補正後群間差(最小二乗平均値)は、-1.17%ポイント(95%CI:-4.27~1.93)であり、メトトレキサートのprednisoneに対する非劣性が示された。 有害事象の発現割合は、prednisone群96%、メトトレキサート群94%と同程度で、主な有害事象はprednisone群が体重増加、不眠症、食欲増進、メトトレキサート群が悪心、疲労、および肝機能検査値異常であった。

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重症大動脈弁狭窄症、supra-annularの自己拡張弁は非劣性を示せず/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、ACURATE neo2は既存の市販弁と比較し、主要複合エンドポイント(1年時の全死因死亡、脳卒中、再入院)に関して非劣性基準を満たさなかった。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのRaj R. Makkar氏らACURATE IDE study investigatorsが、米国とカナダの71施設で実施した無作為化非劣性試験「ACURATE IDE試験」の結果を報告した。ACURATE neo2は、オープンセル構造でsupra-annularタイプの自己拡張型経カテーテル大動脈弁であり、50ヵ国以上で販売されているが、これまで無作為化試験による評価は実施されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年5月21日号掲載の報告。ACURATE neo2をSAPIEN 3もしくはEvolut(対照)と比較検証 研究グループは、症候性の重症大動脈弁狭窄症で、手術リスクのレベルにかかわらずハートチームによりTAVRの適応と判断された患者を、ACURATE neo2群または対照群(SAPIEN 3[SAPIEN 3、SAPIEN 3 Ultra]、Evolut[Evolut R、Evolut PRO、Evolut PRO+、Evolut FX])に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、疑似乱数生成器を用いコンピュータで作成された置換ブロック法を用いて行われた。実施施設および対照弁の種類で層別化も行った。 すべてのデバイスは、製造メーカーの指示に従って留置された。 主要エンドポイントは、1年時の全死因死亡、脳卒中および再入院の複合とし、ベイズ法を用いて非劣性を検証した。主要解析はITT集団を対象とし、非劣性マージンは8.0%とした。1年時の主要複合エンドポイントおよび各イベント、ACURATE neo2群で発生率が高い 2019年6月10日~2023年4月19日に1,500例が無作為化された(ACURATE neo2群752例、対照群748例)。患者の年齢中央値は79歳(四分位範囲:74~83)で、女性が778例(51.9%)、男性が721例(48.1%)であった。 1年時の主要複合エンドポイントの事後確率中央値は、ACURATE neo2群16.2%(95%ベイズ信用区間[Crl]:13.4~19.1)、対照群9.5%(7.5~11.9)で、群間差は6.6%(3.0~10.2)、群間差の事後確率は>0.999であった。群間差の95%ベイズCrlは事前に規定した非劣性マージン8.0%を超え、非劣性は示されなかった。 Kaplan-Meier法による解析では、1年時の複合エンドポイントの発生率は、ACURATE neo2群14.8%(95%信頼区間[CI]:12.5~17.6)、対照群9.1%(7.2~11.4)であり、ACURATE neo2群が有意に高かった(ハザード比[HR]:1.71、95%CI:1.26~2.33、p=0.0005)。 1年時の全死因死亡は、ACURATE neo2群で752例中36例、対照群で748例中28例であり(HR:1.30、95%CI:0.80~2.14)、脳卒中はそれぞれ41例、25例(1.68、1.02~2.75)、再入院は38例、25例(1.57、0.95~2.61)に発生した。 1年時の心血管疾患による死亡(ACURATE neo2群3.7%vs.対照群1.8%、p=0.024)および心筋梗塞(2.4%vs.0.7%、p=0.0092)の発生率はACURATE neo2群で高く、1年時の人工弁大動脈弁逆流(中心弁および弁周囲弁)の発生率もACURATE neo2群で有意に高かった(軽度逆流42.5%vs.24.8%、p<0.0001、中等度逆流4.4%vs.1.8%、p=0.0070、重度逆流0.5%vs.0%、p=0.12)。

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世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

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