サイト内検索|page:21

検索結果 合計:34375件 表示位置:401 - 420

401.

リンパ腫Expertsが語る、診断・治療のTips/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。 7月5日、三好 寛明氏(久留米大学医学部 病理学講座)、丸山 大氏(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)を座長に行われた教育委員会企画セミナーでは、「Expertsに聞く!リンパ腫診断と治療のTips」と題して、低悪性度B細胞リンパ腫(LGBL)の鑑別診断を高田 尚良氏(富山大学学術研究部 医学系病態・病理学講座)、T濾胞ヘルパー細胞(TFH)リンパ腫の診断と変遷について佐藤 啓氏(名古屋大学医学部附属病院 病理部)、悩ましいシチュエーションにおけるFL治療の考え方を宮崎 香奈氏(三重大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)、二重特異性抗体療法の合理的な副作用マネジメントについては蒔田 真一氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)から講演が行われた。CD5陽性/CD23陽性だからといってCLL/SLLとは限らない LGBLは、臨床的には緩やかに進行するB細胞由来のリンパ腫であり、病理組織学的には小〜中型のリンパ腫細胞で構成され低増殖能を呈する腫瘍で定義される。このLGBLは、主に慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、脾臓原発悪性リンパ腫/白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)が含まれる。高田氏は、いくつかの症例について病理所見を提示しながらLGBL鑑別のコツを紹介した。まず、免疫組織化学のパネルとしてCD10、BCL6、cyclinD1、LEF1までは初回時の染色で行い、必要に応じてIRTA1、MNDA、SOX11などを追加することを推奨した。CD5陽性の場合には、CLL/SLLやMZL(稀にFL)も念頭に置き鑑別診断を行うと良い。また、CLL/SLLの診断では、CD5陽性およびCD23陽性であれば必ずしも診断できるわけではなく、鑑別診断ではLEF1、IRTA1、MNDAなどが必要になることがあり、場合によってはIGH::BCL2の転座の確認が必要となる。さらに、LGBL, NOSは、LGBL全体の5%程度であるが、治療選択肢を考慮し、できるだけ亜型分類を行うことが重要であると述べた。nTFHL診断時に病理医が着目する所見は Nodal TFHリンパ腫(nTFHL)はWHO分類第5版において、nTFHL, angioimmunoblastic type(nTFHL-AI)、nTFHL, follicular type、nTFHL-NOSへ名称変更が行われた成熟T細胞リンパ腫の1つである。これら3型に共通する特徴として、臨床像が類似しており、60代以降に多く、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、B症状、胸腹水がみられ、自己免疫疾患様の症状および検査所見を呈し、一般的に予後不良であるなどが挙げられる。免疫染色においては、PD-1、ICOS、CXCL13、BCL6、CD10などのTFHマーカーのうち2〜3個以上が陽性で、濾胞樹状細胞の増生が特徴となる。TFHマーカーの免疫染色で覚えておきたいポイントとして、PD-1、ICOSは「感度は高いが、特異度が低い」、CXCL13、CD10、BCL6は「特異度は高いが、感度が低い」点を挙げている。また、70〜95%の症例で非腫瘍性B細胞にEBER陽性を示すことも重要なポイントである。近年、次世代シークエンサーを用いた解析でも、3型において類似した遺伝子プロファイルが報告されており、ひとくくりにすることが支持される裏付けともなっている。最後に、とくに鑑別の難しいHodgkin/Reed-Sternberg(HRS)-like cellsの出現を伴うnTFHLと古典的ホジキンリンパ腫(CHL)との鑑別では、PD-L1、STAT6、pSTAT6の免疫染色が有用であることも紹介した。免疫細胞療法でFL治療は新たなステージに向かうのか 宮崎氏は、FL治療における悩ましいシチュエーションとして、初発低腫瘍量、初発高腫瘍量、POD24の具体的な3症例を取り上げ、解説を行った。低腫瘍量の初発FLに対する治療は、造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版において、未治療経過観察またはリツキシマブ単剤が推奨されているが、どちらを選択すべきなのか。経過観察は1つの選択肢であるとしながらも、リツキシマブ導入のメリットが大きいと述べている。その理由として、リツキシマブ単剤療法後、15年間の間に次の治療を行っていない患者が48%であり、次の治療の効果を減弱させない点、低腫瘍量であっても無イベント生存期間(EFS)が良好である点などを挙げられた。また、高腫瘍量の初発FLに対する維持療法の必要性に関しては、抗CD20抗体併用化学療法により奏効が得られた場合には、抗CD20抗体維持療法は、無増悪生存期間(PFS)の延長が期待できるとして推奨した。最後に、形質転換が高頻度でみられる予後不良なPOD24患者に対する治療について、さまざまなエビデンスを用いて解説した。CAR-T細胞療法、二重特異性抗体などの免疫細胞療法や新たな化学療法が治療選択肢として導入されつつあり、今後、至適治療が明らかになっていくことが望まれると述べた。二重特異性抗体登場で臨床医に求められるCRSマネジメント B細胞リンパ腫の治療では、CAR-T細胞療法の登場により、これまで治療困難であった殺細胞性抗がん剤に抵抗性を示す患者に対して持続的な奏効が得られるようになった。その一方で、CAR-T細胞療法は認定施設の少なさから多くの患者が容易にアクセスできる治療法ではないことが課題の1つとなっていた。より多くの患者がアクセス可能な免疫療法として、いくつかの抗CD3×CD20二重特異性抗体の開発が進められており、現在、4つの薬剤が承認あるいはまもなく承認される状況にある。また、二重特異性抗体の一次治療導入を検討したランダム化比較試験も進行中であり、B細胞リンパ腫における二重特異性抗体の位置付けは、今後ますます重要になると予想される。二重特異性抗体の使用に際しては、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)のマネジメントが求められる。蒔田氏は「CRSマネジメントは、原則CAR-T細胞療法と同様である。発症のタイミングには個人差があるため、慎重なモニタリングを実施できる体制を構築し、速やかに支持療法を実施できるように整えておく必要がある。また、予防には比較的多量のステロイドが使用されるため、感染症や発熱を伴わないCRSにも注意する必要がある」とまとめた。

402.

非HIVニューモシスチス肺炎、全身性ステロイドの有用性は?

 非HIV患者におけるニューモシスチス肺炎は、死亡率が30~50%と高く予後不良である。HIV患者のニューモシスチス肺炎では、全身性ステロイドが有効とされるが、非HIV患者における有用性は明らかになっていない。そこで、フランス・Hopital Saint-LouisのVirginie Lemiale氏らの研究グループは、非HIVニューモシスチス肺炎に対する早期の全身性ステロイド追加の有用性を検討する無作為化比較試験を実施した。その結果、主要評価項目である28日死亡率に有意な改善はみられなかったものの、90日死亡率や侵襲的機械換気の使用率が低下した。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。 本試験は、フランスの27施設で実施された。対象は、急性呼吸不全を呈する18歳以上の非HIVニューモシスチス肺炎患者で、すでに抗菌薬による治療が開始されており、その治療期間が7日未満であった226例とした。対象患者を、メチルプレドニゾロンを21日間投与する群(ステロイド群:112例)、プラセボを投与する群(プラセボ群:114例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。ステロイド群は、1~5日目はメチルプレドニゾロン30mgを1日2回、6~10日目は30mgを1日1回、11~21日目は20mgを1日1回投与した。主要評価項目は28日死亡率とし、副次評価項目は90日死亡率、侵襲的機械換気の使用、安全性などとした。解析対象はITT集団(ステロイド群107例、プラセボ群111例)とした。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である28日死亡率は、ステロイド群21.5%、プラセボ群32.4%であったが、両群間に有意差はみられなかった(群間差:10.9%、95%信頼区間[CI]:-0.9~22.5、p=0.069)。・90日死亡率は、ステロイド群28.0%、プラセボ群43.2%であり、ステロイド群が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.37~0.93、p=0.022)。・無作為化時点で非挿管であった患者のうち、28日以内に侵襲的機械換気を要したのは、ステロイド群10.1%、プラセボ群26.1%であり、ステロイド群が有意に低かった(HR:0.36、95%CI:0.14~0.90、p=0.020)。・2次感染(ステロイド群23.4%、プラセボ群34.2%)やインスリン需要増加(30.8%、22.5%)などの有害事象の発現率に、両群間で有意差は認められなかった。 著者らは「非HIV患者におけるニューモシスチス肺炎に対する全身性ステロイドの追加により、28日死亡率の有意な改善は得られなかったが、有害事象の増加はみられず、90日死亡率や侵襲的機械換気の使用を低下させたことから、有用性が示唆された。全身性ステロイドの追加によってベネフィットが得られる集団や、最適な治療期間を明らかにするために、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

403.

ミトコンドリアDNA変異の児への伝播、ミトコンドリア置換で低減/NEJM

 ミトコンドリアDNA(mtDNA)に病原性変異を有する女性から生まれた子供は、mtDNA病と総称される一連の臨床症候群の発症リスクがある(母系遺伝)。前核移植(PNT)によるミトコンドリア提供(mitochondrial donation)は、病変を有する女性から採取した受精卵の核ゲノムを、病変のない女性(ドナー)から提供され、核を除去した受精卵に移植する方法である。英国・Newcastle upon Tyne Hospitals NHS Foundation TrustのLouise A. Hyslop氏らは、PNTはヒト胚の成育能力と両立可能であり、PNTと着床前遺伝学的検査(PGT)の統合プログラムは母親の病原性mtDNA変異の子供への伝播を低減することを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年7月16日号に掲載された。PNTの臨床応用と、統合プログラムの有効性を評価 研究グループは、ヒト受精卵で確立されたPNTの手法の臨床応用と、mtDNA病におけるPNTとPGTの統合プログラムの有効性の評価を行った(イングランド国民保健サービス[NHS]などの助成を受けた)。 病原性mtDNA変異を有し、これらの変異が子供に伝播するリスクを低減したいと希望する女性を対象とした。これらの女性のうち、ヘテロプラスミー(mtDNAのコピーの一部に変異がある)の患者にはPGT、ホモプラスミー(mtDNAのコピーのすべてに変異がある)または変異が高度なヘテロプラスミーを有する患者にはPNTを提案した。 PNTでは、mtDNA変異を有する患者の卵子を卵細胞質内精子注入法(ICSI)で受精させ、この受精卵から採取した前核を、除核したドナー受精卵の細胞質へ移植し、培養後に子宮内に移植した。患者の前核を採取後の受精卵の細胞質は、子供のmtDNA変異の値と比較するために解析に使用した。 PNT群(年齢中央値34歳[範囲:22~40])では、25例で採卵が行われ(ドナーも25例[年齢21~37歳]で採卵)、22例がICSIを受けた。PGT群(34歳[25~40])では、39例で採卵が行われ、39例がICSIを受けた。新生児のmtRNA変異が、除核受精卵に比べ大幅に低下 PNT群の8例(36%)とPGT群の16例(41%)で臨床的妊娠を確認した。PNT群では、生児出生の新生児は8人(男児4人、女児4人、1組の一卵性双生児を含む)で、1人は妊娠継続中である。PGT群では、生児出生の新生児は18人(男児9人、女児9人、1組の二卵性双生児を含む)だった。 PNT群の患者から生まれた新生児8人における、パイロシークエンシング法で定量的に測定した患者由来の病原性mtRNA変異の血中ヘテロプラスミーの値は、5人が検出不能で、1人が5%、1人が12%、1人が16%であった。この検出不能の5人のうち3人で次世代シークエンシング法による評価を行ったところ、血中ヘテロプラスミー値はそれぞれ0.06%、0.09%、0.17%だった。 また、患者の核を採取後の受精卵の細胞質と比較して、8人の新生児における患者由来の病原性mtRNA変異の値は、6人では95~100%低下しており、他の2人では77~88%低かった。臨床的な追跡調査が不可欠 PGT群では、新生児18人のうち10人でヘテロプラスミーのデータが得られ、9人が検出不能、1人は7%であった。 PNT群の変異が高度なヘテロプラスミーを有する患者の除核受精卵の解析と、先行研究の知見(除核受精卵の4.5%がヘテロプラスミー30%未満、67.2%が同60%超[症状発現のリスクが高いレベル])を考慮すると、PNT群の患者はPGTから利益を得られない可能性が高いと考えられた。 著者は、「これらの結果は、PGTとPNTを組み合わせたプログラムは多様な病原性mtDNA変異の伝播を減少させる有効な方法であることを示している」「ホモプラスミー変異を有する女性から生まれた新生児におけるヘテロプラスミー値の低さは、楽観的な見通しの根拠となるが、この有効性に関する多くの疑問点が解明されるまでは、ミトコンドリア提供はリスク低減戦略と位置付けるべきで、この方法の安全性と有効性の監視には、ミトコンドリア提供後に生まれた子供の臨床的な追跡調査が不可欠と考えられる」としている。

404.

家畜の糞尿は薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー

 基本的な抗菌薬が効かない細菌が増える中、薬剤耐性の問題は世界的に喫緊の公衆衛生上の脅威となっている。こうした中、家畜の糞尿が、人間の健康を脅かす可能性のある薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー(貯蔵庫)となっていることが、新たな研究で明らかになった。米ミシガン州立大学微生物学教授のJames Tiedje氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月27日掲載された。 農業での抗菌薬の過剰な使用が薬剤耐性菌の拡大を招く一因となっている可能性に対する懸念が広がりつつある。研究の背景情報によると、毎年9万3,000トン以上の抗菌薬が家畜に使用されている。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌への感染例は毎年280万件以上発生しており、3万5,000人以上が死亡している。しかし、薬剤耐性菌の農場から人間への感染経路については不明点が多い。 Tiedje氏は、「いくつかの薬剤耐性遺伝子は、土壌や水、糞尿の中のDNAに広く存在することが知られているが、それらは本当に危険なDNAなのだろうか。われわれはさらに一歩踏み込んで、これらの遺伝子が可動性を持ち、健康を悪化させる有害な細菌に取り込まれるのかどうかについて調べた」と説明している。 Tiedje氏らはこの研究で、14年間にわたって26カ国で採取されたブタやニワトリ、ウシの糞尿サンプル4,017点を対象にメタゲノム解析を実施し、家畜由来の薬剤耐性遺伝子(ARG)とメタゲノム再構築ゲノム(MAG)の包括的なカタログを作成した。 その結果、家畜の糞便中には、既知の2,291のARGサブタイプに加え、潜在的なサブタイプとして新たに3,166が同定され、家畜の糞便がARGの主要なリザーバーとなっていることが示唆された。また、家畜由来のARGに臨床的に重要なARGも多く含まれており、抗菌薬の使用状況がそれに影響を及ぼしている可能性も示された。 これらの結果を基に研究グループは、家畜におけるARGの世界的な分布パターンと臨床的に重要なARGの分布状況を可視化した世界地図を作成した。さらに、ARGの可動性や治療困難度、病原性細菌における現時点での保持状況に基づき、人間の健康に対するリスクの大きさに応じて遺伝子を順位付けする新たなランク付けシステムも開発した。 論文の上席著者である西北農林科技大学(中国)のXun “Shawn” Qian氏は、「本研究結果は、主要な畜産国における標的を絞った薬剤耐性のモニタリングとリスク管理の必要性を強調するものだ。例えば、世界最大の牛肉生産国である米国では、他国と比べてウシの糞尿中のARGの量と多様性が高いことが分かった。同様に、世界最大の豚肉生産国である中国では、ブタの糞尿中の細菌の量や多様性、そして全体的な耐性リスクが他の全ての国を上回っていた」と説明している。 研究グループはまた、この結果によって家畜への抗菌薬使用の制限の有効性を裏付けるエビデンスがさらに増えたと述べている。抗菌薬は、病気の治療よりも成長を速める目的で家畜に使用されることが多いが、それが薬剤耐性が生じる可能性を高める。 一方で、勇気付けられる結果も得られた。農業での抗菌薬使用削減に向けた早期の取り組みが効果を上げている兆しが確認されたのだ。これは抗菌薬の使用を制限する政策が有効であることを示しているが、Tiedje氏はさらなる対策が必要であると主張している。同氏は、「問題は極めて深刻であり、国連は世界中の政府に対して薬剤耐性の問題に対応するための国家行動計画を策定するよう求めている。今回の研究から得られたデータは、各国が自国にとって何が最も重要か、またどこに注力すれば最大の効果が得られるかを判断する一助となるはずだ」と述べている。

405.

乳製品や甘いものを食べて寝ると悪夢を見る?

 寝る前にアイスクリームやチーズなどの乳製品を食べて悪夢を見たことがあるだろうか。1,000人以上を対象に、食生活と睡眠習慣を調査した新たな研究により、乳糖不耐症の症状が重い人は悪夢をより頻繁に見る傾向のあることが明らかになった。モントリオール大学(カナダ)精神医学教授のTore Nielsen氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Psychology」に7月1日掲載された。 この研究は、2015年に実施された食事と夢の関係に関する研究の続編であるという。Nielsen氏は、「以前の研究では、被験者は悪夢の原因を常にチーズのせいにしていた。今回の研究では、その点についてより良い答えが得られたと思う」と話している。 今回の研究では、大学の心理学の授業の一環として実施された詳細なオンライン調査に対する1,082人の回答を用いて、「食べ物は夢に影響を与える」と人々が考える理由についての仮説を検証した。具体的に検討されたのは、特定の食品が夢に直接影響を与えるのか、生理学的症状を介して影響するのか、あるいは睡眠の質の変化を介して影響するのかである。調査は、特定の食べ物が夢に与える影響に関する自己認識に絞った質問のほか、食生活や食物不耐症およびアレルギーに関する質問、性格に関する質問票や睡眠の質の指標(ピッツバーグ睡眠質問表)、および悪夢障害指数で構成されていた。 その結果、調査参加者の40.2%が特定の食品が睡眠に影響すると回答した。内訳は、睡眠を悪化させるが24.7%、睡眠を改善するが20.1%であった。また、5.5%は食品が夢に影響すると回答した。食品が夢に影響するという回答は、悪夢の想起頻度や悪夢障害指数スコアの上昇と関連しており、主にデザートなどの甘いもの(31%)や乳製品(22%)がその原因として挙げられていた。このような食品の影響に関する認識は、食物アレルギーとグルテン不耐症とも関連していた。一方で、睡眠の質の悪化に関する認識は乳糖不耐症と関連し、悪夢障害指数スコアは食物アレルギーおよび乳糖不耐症と強く関連し、さらに乳糖不耐症との関連は胃腸症状の重症度により媒介されていることも示された。 本研究には関与していない米コロンビア大学睡眠・概日リズム研究卓越センター所長のMarie-Pierre St-Onge氏は、「さまざまな夢に関連する睡眠障害の多くは消化器症状に起因している可能性がある」と話す。また、同じく本研究には関与していない、米ボストン大学の神経学者であるPatrick McNamara氏は、「乳糖不耐症の引き金となる食品を摂取すると、ミクロ覚醒と呼ばれる睡眠障害を引き起こす可能性がある」とNBCニュースに対して語っている。このような影響により、悪夢がより強烈なものに感じられる可能性はある。 ただし専門家らは、この研究により乳製品が悪夢を直接引き起こすことが証明されたわけではないと述べ、慎重な解釈を求めている。研究グループは、他の集団を対象にさらなる調査研究を行い、洞察を深めたいとの考えを示している。

406.

クールな人に共通する6つの特徴とは?

 どこの国の人であれ、「クール(イケてる)」と見なされる人には共通の特徴があるようだ。チリや米国などの国際研究グループによる新たな研究で、クールと思われる人には、6つの重要な特徴が共通していることが示された。アドルフォイ・バニェス大学(チリ)マーケティング分野のTodd Pezzuti氏らによるこの研究結果は、「Journal of Experimental Psychology」に6月30日掲載された。 Pezzuti氏は、「中国、韓国、チリ、米国など国を問わず、人々は限界を押し広げ、変化を起こす人を好ましく感じる。誰かを『クール』と形容するとき、それは『クール』という表面的なラベルの意味を超えた、より根本的な価値を表していると言えるだろう」と述べている。 Pezzuti氏らは、2018年から2022年にかけて、オーストラリア、チリ、中国、ドイツ、インド、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ、韓国、スペイン、トルコ、米国からの参加者を含む5,943人を対象に調査を実施した。回答者には、自分の知っている「クールな人」と「かっこ悪い人」、また「善良な人」と「善良でない人」を思い浮かべてもらい、それらの人について、性格と価値観を測定する2つの科学的尺度に基づいて評価してもらった。 その結果、クールと見なされる人は、外向的、快楽主義的、パワフル(力強い)、冒険好き、オープン、自律的の6つの特徴のあることが明らかになった。一方、「善良な人」は、協調的、伝統的、安定志向、温厚、博愛的、誠実、落ち着いている、などの特徴と関連付けられていた。これらの特徴は、年齢、性別、教育歴に関係なく一貫していたことから、「クール」の意味は世界的に共通した価値観や性格特性に基づいて定着していることが示唆された。さらに、有能と見なされる人は、クールな人と善良な人の両方が当てはまる場合が多いことも示された。 Pezzuti氏は、「クールさの特徴はおそらくその人の性格の一部であり、簡単に教えられるものではない。これらの特徴は生得的なものであり、6つの特徴のうちの5つは性格特性だ。性格特性は、比較的安定している傾向がある」と話す。 論文の共著者である米アリゾナ大学マーケティング分野のCaleb Warren氏は、「クールな人はたいていの場合、多少の好感を持たれるが、だからといって必ずしも道徳的に良い人であるとは限らない。クールな人は快楽主義的であったり力を持っていたりなどの、道徳的な意味では必ずしも『良い』とは見なされない特徴も併せ持っていることが多い」と指摘する。 この研究で示された「クール」の特徴に当てはまる実在の人物の例を尋ねられたPezzuti氏は、「私が思い浮かべる人物は、物議を醸す人物ではあるが、イーロン・マスク氏だ」と語った。  本研究結果をレビューした。米コロンビア大学心理学教授のJon Freeman氏は、CNNへの電子メールの中で、「クールさ」には肯定的な意味と否定的な意味の両方がこめられていると語った。同氏は、「現実世界では、クールは肯定的な意味合いを持つことがある一方で、特定の社会的文脈においては否定的な意味合いを持つこともある。好ましいクールさと好ましくないクールさについて検証することは、今後の研究にとって有益な可能性がある。今回の研究のアプローチは、その素晴らしい基礎を提供するものだ」と述べている。 Freeman氏はさらに、「人をクールと形容するのは、複雑な推論を簡潔に表す手段であり、地位、所属、アイデンティティといったシグナルを、瞬時にかつ極めてステレオタイプ化された形で要約する。科学的な観点からは、クールさを研究することは、特にソーシャルメディアやインフルエンサー文化が広まっている現代においては、人が他者の特性を迅速かつ図式的に推論する仕組みが行動や社会のダイナミクスにどのような影響を与えるかを明らかにするため、極めて重要である」と述べている。

407.

第253回 消化器外科医は 4割減見通し、地域別がん医療再編が急務/厚労省

<先週の動き> 1.消化器外科医は4割減見通し、地域別がん医療再編が急務/厚労省 2.AI+医師1人読影が標準に? 自治体がん検診の体制再設計へ/政府 3.日本人の女性の平均寿命87.13歳で40年連続世界一、男性は6位/厚労省 4.専攻医は過去最多だが、地域偏在は解消せず、シーリング制度見直しへ/厚労省 5.来年度改定に向け、診療報酬“物価連動”の仕組み求める声強まる/全自病ほか 6.マイナ保険証、医療DX推進体制整備加算10月から新基準に/中医協 1.消化器外科医は4割減見通し、地域別がん医療再編が急務/厚労省厚生労働省は、がん診療提供体制のあり方に関する検討会で、2040年に向けたがん医療提供体制の提言を取りまとめ、都道府県に対し「手術・放射線・薬物療法ごと」、「技術の難易度ごと」、「地域特性ごと」に集約化と均てん化の検討を求める方針を示した。2040年には、がん患者数が3%増加して105.5万人に達する一方で、消化器外科医は39%減少すると推計され、手術療法の継続が困難になる恐れがある。とくに手術療法は、患者数が5%減少する中で医師数も大幅に減少し、症例の集約による技術維持が必要とされている。その一方で、放射線療法は需要が24%増と見込まれるが、高額な装置の効率的配置が課題となり、需要が少ない地域では装置維持が難しくなる可能性がある。薬物療法は15%増が見込まれ、拠点病院以外でも提供できるよう均てん化が望まれる。さらに、希少がんや小児がん、粒子線治療、高度薬物療法などは都道府県単位での集約化が求められ、がん検診や内分泌療法、緩和ケアは地域医療機関での提供を推進すべきとされた。また、がんゲノム医療の体制整備も進行中で、エキスパートパネル運用の柔軟化やデータベース(C-CAT)の改善が報告された。都道府県と協議会は、地域の実情を踏まえた具体的な体制構築と、住民への丁寧な説明を行い、医療資源の最適化と質の高いがん医療の維持を図る必要がある。厚労省は、今後、各都道府県に正式通知を行い、地域の検討を促進する予定。 参考 1) 第19回がん診療提供体制のあり方に関する検討会[資料](厚労省) 2) がん診療提供体制のあり方に関する検討会 とりまとめ案(同) 3) がん医療体制、集約化を提言 手術や放射線療法、外科医不足で-検討会まとめ・厚労省(時事通信) 4) 学会の消化器外科医40年に4割減、「集約化を」がん手術で 厚労省検討会が取りまとめ(CB news) 5) がん医療の集約化、「地域ごと」「手術・放射線・薬物の療法ごと」「技術の難易度ごと」に各都道府県で検討せよ-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 2.AI+医師1人読影が標準に?自治体がん検診の体制再設計へ/政府政府は、医師不足や読影精度のばらつきへの対応策として、自治体が実施するがん検診におけるAI活用を正式に検討し、2025年度内にも指針を改定する方針を明らかにした。現行の指針では肺がんや乳がん、胃がん検診に原則2人以上の医師による読影が求められているが、今後はAIと医師1人による組み合わせで対応可能とする案が有力視されている。これにより、とくにX線診断医不足の深刻な地方での対応力向上と検診精度の両立が期待される。さらに政府は、がん検診データ、健診情報、医療レセプトなどを統合した包括的データプラットフォームを構築し、AIを用いたリスク層別化や個別介入を推進する。江戸川区や神戸市など先進自治体では、AIによるがんリスク予測と個別化勧奨によって未受診層の受診率や早期発見数を大幅に改善した実績が報告されている。また、2025年6月には、胃内視鏡AI支援の有効性を評価する大規模疫学研究も開始され、北海道・東北の6医療機関で実施。AIを用いた1次読影による負担軽減と発見率向上の可能性が検証されている。加えて厚生労働省は、企業などで実施される職域がん検診の情報を市町村が把握可能とする仕組み整備も進めており、検診データの統合的管理体制を強化する構え。今後は、エビデンスに基づく新規検診項目の全国展開も、モデル事業を経て段階的に行われる見通しである。国はこうした技術・制度両面の改革により、がん検診の質と効率を飛躍的に高め、住民主体のがん対策を再構築しようとしている。 参考 1) 自治体がん検診にAI 政府、指針改定へ(日経新聞) 2) がん検診(行政情報ポータル) 3) 胃カメラがん検診、AI活用で医師の負担軽減なるか 疫学研究開始へ(朝日新聞) 3.日本人の女性の平均寿命87.13歳で40年連続世界一、男性は6位/厚労省厚生労働省が2025年7月に公表した2024年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は女性が87.13歳、男性が81.09歳となり、前年からほぼ横ばいだった。女性は0.01歳減、男性は変化なしで、女性は40年連続で世界1位を維持。男性は前年の5位から6位に後退した。国別では、男性の平均寿命トップはスウェーデン(82.29歳)、次いでスイス、ノルウェー。女性は日本に次いで韓国(86.4歳)、スペイン(86.34歳)が続いた。死因別にみると、2023~24年にかけて心疾患や新型コロナ感染症による死亡は減少した一方、老衰や肺炎による死亡が増加。これにより、平均寿命は全体として伸び悩んだと考えられる。新型コロナによる死亡者数は男女とも2年連続で減少し、2024年の死亡者数は約3万5,865人と推定された(前年比約2,200人減)。また、2024年に生まれた人が将来、がん・心疾患・脳血管疾患で死亡する確率は女性40.29%、男性45.41%でいずれも前年より低下。老衰による死亡は女性で20.75%、男性で8.39%、肺炎による死亡はそれぞれ4.35%、5.89%だった。コロナ禍による影響で2021~22年は平均寿命が縮小傾向となったが、2023年に回復傾向をみせ、2024年は横ばいで推移。厚労省は、長期的には医療水準や健康意識の向上により、平均寿命の延伸は続くとの見方を示している。 参考 1) 令和6年簡易生命表の概況(厚労省) 2) 日本人平均寿命、24年は横ばい 女性は世界1位を維持(日経新聞) 3) 日本人の平均寿命 女性は87.13歳で40年連続1位 男性81.09歳(NHK) 4) 日本人の平均寿命、前年とほぼ同じ 女性は世界首位の87.13歳(朝日新聞) 4.専攻医は過去最多だが、地域偏在は解消せず、シーリング制度見直しへ/厚労省厚生労働省は、7月24日に第2回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会を開き、2025年度の専攻医採用と2026年度の専攻医募集について議論した。この中で、2025年度の専攻医採用数は過去最多の9,762人に達したが、日本専門医機構は、地域・診療科偏在の是正という観点では「シーリング制度と特別地域連携プログラムの効果は限定的」と総括した。大都市圏の抑制は一定成果を見せた一方で、増加分は周辺県に集中し、真の医師少数地域への効果は薄かった。特別地域連携プログラムも採用は41人と低迷している。これを受け、2026年度からの専攻医採用枠(シーリング)は見直される。新たな算定式では、各診療科の全国採用実績と都道府県人口を基に基本枠を算出、小児科は15歳未満人口で補正する。さらに、医師少数地域への指導医派遣実績に応じて、基本枠の最大15%まで加算可能となる。この加算は人年ベースで計算され、派遣の量と質が問われる。ただし、実績に基づく加算と制度上限との乖離が大きく、都道府県別に1~3枠の追加調整が議論されている。一方、日本専門医機構は、医師のキャリアには「若年期に専門性を追求し、高齢期には総合的な診療に従事する」という2面性があるとし、この移行に対応するリカレント教育の必要性を提唱。総合診療や一般内科、救急領域などで“Generalist”として機能する医師と、臓器別・疾患別に特化した“Specialist”との役割と必要数を区分し、中長期的な人材構造の再設計を進めている。今後は「集約化すべき領域」と「均てん化すべき領域」の見極め、ならびにライフステージに応じた教育設計が焦点となる。9月には必要医師数ワーキンググループの中間報告も予定されており、専門医制度の将来像が問われる転換点を迎えている。同機構では、若手時代に専門性を深め、後年には総合的診療へ移行する医師のライフサイクルを見据え、リカレント教育やリスキリングを含む教育体制の整備も進行中である。機構は“Generalist(総合診療医など)”と“Specialist(臓器別専門医)”の必要数を区別して算出する研究も開始し、9月のシンポジウムで中間報告する予定。 参考 1) 令和7年度第2回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省) 2) 令和7年度の専攻医採用と令和8年度の専攻医募集について(日本専門医機構) 3) 2025年専攻医は過去最多も、シーリングの効果は「不十分」(日経メディカル) 4) 医師の「若手時代は専門性を追求し、高齢になると総合的な診療を行う」との特性踏まえたリカレント教育など研究-日本専門医機構・渡辺理事長(Gem Med) 5.来年度改定に向け、診療報酬“物価連動”の仕組み求める声強まる/全自病ほか2026年度診療報酬改定に向け、医療現場から「病院をなおし、支える」視点での抜本的見直しを求める声が相次いでいる。7月23日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)では、日本医師会の江澤 和彦委員が、急激な物価・人件費上昇と過小な診療報酬設定により病院経営が破綻寸前にある現状を訴え、「今の制度では入院患者を抱えたまま倒れる病院も出かねない」と警鐘を鳴らした。とくに包括期(地域包括ケア病棟等)を担う入院医療については、必要なコストを踏まえた入院料の適正化を早急に進める必要があるとの意見が強調された。人員確保が困難な中、医療の質を維持するには、成果(アウトカム)評価の導入や人員基準の柔軟化も不可欠とされている。この背景には、全国自治体病院協議会(全自病)の緊急調査による「85%が経常赤字」「95%が医業赤字」という異常事態がある。補助金が減った2024年度決算では、コロナ前を大きく上回る赤字比率となり、診療報酬の6~10%引き上げが必要とする見解も示された。また、全国知事会も医療機関の経営安定化を重視し、「物価・賃上げを適時に反映できる診療報酬制度の確立」や期中改定を含む財政支援の恒常化を政府に要望。公立病院支援を強化すべきとの意見も相次いだ。一方で、「骨太方針2025」では「病床削減」や「OTC類似薬の保険給付見直し」といった効率化策も盛り込まれており、現場では「拙速な施行は混乱を招く」として丁寧な議論と制度設計を求める声が強まっている。医療の持続性確保のため、制度の根幹からの見直しが焦点となっている。 参考 1) 医療経営「なおし支える報酬改定を」診療側(CB news) 2) 24年度赤字の自治体病院が85% 暫定値 全自病会長「記憶にないくらい高い数字」(同) 3) 2024年度の自治体病院決算は85%が経常赤字、95%が医業赤字の異常事態、診療報酬の大幅引き上げが必要-全自病・望月会長(Gem Med) 4) 2040年を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けた提言(全国知事会) 5) 地域医療の医師の確保目指す「知事の会」が提言取りまとめ 『医師不足に関する』ものと『医療機関の経営安定に向けた』ものの2つ(青森テレビ) 6.マイナ保険証、医療DX推進体制整備加算10月から新基準に/中医協厚生労働省は、7月23日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)で、2024年度に新設された「医療DX推進体制整備加算」について、マイナ保険証利用率の実績要件を段階的に引き上げる見直しを提示し、了承された。2025年10月~2026年2月までは、利用率要件を加算区分に応じて現行より15~20ポイント引き上げ、さらに2026年3~5月までは最大70%まで引き上げる。加算1・4は45→60→70%、加算2・5は30→40→50%、加算3・6は15→25→30%と段階的に強化される。一方で、小児患者の多い医療機関については、小児科特例として要件を3ポイント緩和する措置を継続。6歳未満の外来患者が全体の3割以上を占める医療機関では、たとえば加算3・6の要件が22→27%とされる。子供のマイナ保険証利用率が成人より依然として低いための配慮とされる。また、医療DXの柱である「電子カルテ情報共有サービス」への参加要件については、関連法案の未成立と現場の整備状況を踏まえ、2026年5月末まで経過措置の延長が決定された。これにより、参加体制が未整備でも一時的に加算算定が可能とみなされる。委員からは、診療報酬でDXを推進する方針自体は評価されつつも、「利用率は医療機関の努力だけでは改善できない」、「国による周知や環境整備が不可欠」との指摘が相次いだ。とくに、2025年下期には保険証の有効期限切れによる混乱や、スマートフォンによるマイナ保険証の利用開始も控えており、国民・医療現場双方の負担軽減に向けた準備が急務となっている。今後、2026年度の診療報酬改定に向けては、マイナ保険証・電子処方箋・電子カルテ連携の進捗を踏まえた評価方法の再検討が重要課題となる見通しである。 参考 1) 医療DX 推進体制整備加算等の要件の見直しについて(厚労省) 2) DX加算実績要件見直し-マイナ保険証利用率上げ(薬事日報) 3) 医療DX推進体制整備加算、マイナ保険証利用率基準を2段階で引き上げ、電子カルテ情報共有サービス要件の経過措置延長-中医協総会(Gem Med)

408.

事例28 胃潰瘍などでの狭帯域光強調加算(NBI)の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、「D308 胃・十二指腸ファイバースコピー」時に行った「D308 注4 狭帯域光強調加算」にD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用されて査定になりました。狭帯域光強調加算にかかる診療報酬点数表の算定要件を振り返ってみました。特段の留意事項は記載されていませんでした。支払基金の「審査の一般的な取り扱い」も参照してみました。その事例405に「狭帯域光観察(NBI)は狭帯化された2つの波長の光を照射し(中略)、拡大内視鏡を用いて、病変部の悪性腫瘍の鑑別を目的に行う検査である。本加算は、上記を目的に検査を実施した場合にのみ算定できる」と、悪性腫瘍の鑑別に使われるものと定義されていました。傷病名欄をみると、悪性腫瘍またはその疑いを表す病名が表示されていません。そのために、算定要件に合致しないと判断されて査定となったものと推測ができます。カルテを確認すると、「胃ポリープ」が記載されているだけでした。医師には、悪性腫瘍を鑑別する検査を行った場合は疑いもしくは確定された病名を付与していただけるようにお願いしました。レセプトチェックシステムには、悪性腫瘍またはその疑いの病名がない場合には、アラートを発するように登録して査定対策としています。なお、この加算は、内視鏡検査のうち「D306 食道ファイバースコピー」、「D308 胃・十二指腸ファイバースコピー」および「D313 大腸内視鏡検査 1ファイバースコピーによるもの」ならびに「K803 膀胱悪性腫瘍手術 6 経尿道的手術」のみに設定されていることを申し添えます。

409.

英語で「カテーテル検査」は?患者さんへの説明法も!【患者と医療者で!使い分け★英単語】第27回

医学用語紹介:冠動脈造影検査 coronary angiography「冠動脈造影検査」を表す医学用語はcoronary angiographyで、緊急を要する場面で使うことも多いでしょう。この検査を患者さんに説明するときは、何と言えばいいでしょうか?講師紹介

410.

7月28日 世界(日本)肝炎デー【今日は何の日?】

【7月28日 世界(日本)肝炎デー】〔由来〕世界的レベルでのウイルス性肝炎のまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消や感染予防の推進を図ることを目的に2010年に世界保健機関(WHO)が定め、肝炎に関する啓発活動などの実施を提唱。わが国でもこれに倣い、「日本肝炎デー」を制定し、肝炎の病態や知識、予防、治療に係る正しい理解が進むよう普及・啓発を行うとともに、肝炎ウイルス検査の受診を促進している。関連コンテンツ脂肪性肝疾患の新たな分類とMASLDの概念・診断基準【脂肪肝のミカタ】C型肝炎のフォローアップ【日常診療アップグレード】慢性C型肝炎、ソホスブビル/ダクラタスビルvs.ソホスブビル/ベルパタスビル/Lancet肝線維化を有するMASH、週1回セマグルチドが有効/NEJM慢性B型肝炎への低分子干渉RNA薬xalnesiran、抗原消失率は?/NEJM

411.

肥大型心筋症治療のパラダイムシフト【心不全診療Up to Date 2】第3回

肥大型心筋症治療のパラダイムシフトKey Point肥大型心筋症(HCM)の病態理解は、サルコメア蛋白遺伝子異常による「心筋の過収縮とエネルギー非効率性」を根源とする疾患へと深化している診断には心エコーやMRI、遺伝子検査が有用で、AI解析も注目されているサルコメアを直接制御する初の病態修飾薬、心筋ミオシン阻害薬を深掘りはじめに肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)は、高血圧症や弁膜症などほかの心疾患では説明できない“左室ないし右室心筋の肥厚を呈する最も頻度の高い遺伝性心疾患”である(図1)。(図1)肥大型心筋症の定義画像を拡大する左室流出路閉塞(LVOTO)の有無、心不全症状、致死性不整脈リスクなど、その臨床像は極めて多様性に富む。これまでの治療は対症療法が中心であったが、近年、疾患の根源的病態であるサルコメアの機能異常に直接作用する心筋ミオシン阻害薬(Cardiac Myosin Inhibitor:CMI)が登場し、治療は大きな転換期を迎えている。「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」においてもHCMは独立した項目として扱われ、とくに治療アルゴリズムが大きく更新された。本稿では、この最新ガイドラインの知見を基に、HCMの病態、診断、そしてCMIを中心とした最新治療について概説する。最新治療を理解するための病態生理HCMの病態理解は、単なる「心筋の肥厚」から「サルコメアの機能異常」へと深化している。HCMの多くは、心筋収縮の基本単位であるサルコメアを構成する蛋白(βミオシン重鎖、ミオシン結合蛋白Cなど)の遺伝子変異に起因する1)。これらの変異は、心筋ミオシンのATPase活性を亢進させ、アクチンとミオシンが過剰に架橋(クロスブリッジ)を形成する「心筋の過収縮」状態を引き起こす。この過収縮はATPの過剰消費を招き、心筋のエネルギー効率を著しく低下させる。結果として、心筋は相対的なエネルギー欠乏と弛緩障害に陥り、心筋虚血、線維化、そして代償的な心筋肥厚が進行する。この一連の病態カスケードが、LVOTO、拡張障害、不整脈といった多彩な臨床像の根源となっている。CMIをはじめとする最新治療は、この上流にある「サルコメアの過収縮」を是正することに主眼を置いている。最新の診断方法HCMの診断は、画像検査、バイオマーカー、遺伝学的検査を組み合わせた包括的アプローチで行われる。画像診断:心エコー図検査が基本であり、15mm以上の最大左室壁厚(家族歴があれば13mm以上)が診断の契機となる。LVOTO(安静時・バルサルバ法や運動など生理的誘発時圧較差)、僧帽弁収縮期前方運動(systolic anterior movement:SAM)、拡張機能、左房容積などの評価が必須である。心臓MRI(CMR)は、心エコーで評価困難な心尖部等の形態評価に加え、ガドリニウム遅延造影(LGE)による心筋線維化の検出・定量評価に優れる。LGEの存在とその広がりは突然死リスクの重要な修飾因子であり、リスク層別化に不可欠である2)。バイオマーカー:最新のガイドラインでは、BNP/NT-proBNPが全死亡予測や治療モニタリングに有用(推奨クラスIIa)、高感度トロポニンも予後の推測に有用(推奨クラスIIa)とされている。また、肥大型心筋症の鑑別として、血清・尿中のM蛋白(ALアミロイドーシス診断のため)やα-ガラクトシダーゼ活性(α-GAL、ファブリー病診断のため)の測定も推奨されている(推奨クラスI)。遺伝学的検査:2022年に保険収載され、その重要性は増している。原因遺伝子の同定による確定診断、血縁者に対するカスケードスクリーニング(発症前診断)、そして予後予測への応用が期待される。サルコメア遺伝子変異陽性例は陰性例に比して予後不良であることが報告されており、精密医療の実現に向けた重要な情報となる。AI技術の応用:人工知能(AI)は、HCM診断の各側面でその応用が進んでいる。たとえば心電図解析では、AIが人間の目では捉えきれない微細な波形パターンからHCMを極めて高い精度で検出し、専門医が「正常」と判断した心電図からでもHCMを見つけ出す可能性が指摘されている3,4)。また、AIが心エコー図画像から心筋線維化(LGE)の存在を予測したり、CMR画像からLGEを専門家と同等の精度で自動的に定量化したりすることで、リスク評価を支援することが報告されている5-7)。遺伝子検査の分野では、病的意義が不明な遺伝子バリアント(VUS)の病原性を予測するAIモデルにより、HCMの診断率が向上し、家族スクリーニングや治療判断の補助としての有用性が示されつつある8)。治療治療戦略は、LVOTOの有無と左室駆出率(LVEF)に基づき選択される。(図2)(図2)肥大型心筋症の治療フローチャート画像を拡大する1. 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対する治療LVOTO(安静時または負荷で30mmHg以上)を認める症候性HOCMが薬物治療の主対象となる。薬物療法:LVOTO(安静時または負荷で30mmHg以上)を認める症候性HOCMが薬物治療の主対象となる。第一選択薬として非血管拡張性のβ遮断薬、忍容性がなければ非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬が推奨される(いずれもClass I)。効果不十分な場合、従来Naチャネル遮断薬であるシベンゾリン(保険適用外使用)などが使用されてきた。これに対し、ガイドラインでは新たにマバカムテンがClass Iで推奨された。心筋ミオシン阻害薬心筋ミオシン阻害薬(Cardiac Myosin Inhibitor:CMI)は、心筋収縮の中心的役割を担うサルコメアを標的とした新規治療薬として注目されている。代表的な薬剤には、初の経口選択的CMIであるマバカムテン(商品名:カムザイオス)および次世代CMIとして米国で承認審査中のaficamtenがある9)。CMIは心筋ミオシン重鎖のATPase活性を抑制し、アクチン-ミオシン間の架橋形成を減少させることで濃度依存的に心筋収縮力を低下させる。これにより、心筋過収縮状態のエネルギー効率を改善し、拡張機能の正常化が期待される10,11)。この薬理作用を基盤として、CMIはHCMや、左室駆出率(LVEF)が正常~亢進した心不全(HF with supranormal EF:HFsnEF)など、心筋の過収縮や拡張障害が病態の中核をなす疾患に対する治療薬として注目され、複数のRCTで検証されてきた(表1)。(表1)心筋ミオシン阻害薬を用いた代表的なRCTs画像を拡大するHCMを対象としたRCTでは、CMIが左室流出路圧較差の有意な改善、NT-proBNPの低下、運動耐容能(peak VO2)や症状(NYHAクラス)の改善など、多面的な臨床効果を示している。また近年では、CMI治療中の病態変化を非侵襲的かつ連続的に評価する手法として、AI技術を応用した心電図解析(AI-ECG)の有用性が報告されている。とくに、標準的な12誘導心電図に対して機械学習を用いてHCMの検出や重症度を定量化するAI-ECGスコアは、新たなバイオマーカーとして注目されており、CMI治療のモニタリングツールとしての活用が期待されている12)。さらに、HCMと同様に心筋の過収縮等が関与するHFsnEFにおいても、CMIの応用可能性が検討されている。HFsnEF患者に対して行われたEMBARK-HFpEF試験においては、マバカムテンがNT-proBNP値や心筋トロポニン値の減少と関連し、治療中にLVEFが持続的に低下することは確認されず、安全性に関する一定の知見が得られたと報告されている(表1)。また、NYHAクラスや拡張機能の改善も報告され、次世代CMIであるMYK-224を用いた現在進行中の第II相AURORA-HFpEF試験(NCT06122779)などの結果が待たれている。なお、マバカムテンの使用にあたっては本連載(第2回)でも触れた通り、 日本循環器学会(JCS)からはマバカムテンの適正使用に関するステートメントも発表されており、その導入には厳格な管理体制が求められる。<マバカムテンの適正使用>本剤は心収縮力を低下させるため、適正使用が極めて重要である。対象はNYHA II/III度の症候性HOCM患者で、投与前にLVEFが55%以上であることの確認が必要である。過度のLVEF低下が重大な副作用であり、心エコーでの頻回なモニタリング下で慎重な用量調節が必須とされる。CYP2C19およびCYP3A4で代謝されるため、併用薬にも注意を要する。本剤の管理には、心不全診療ガイドラインのほか、専門医や施設要件を定めた適正使用ステートメントの遵守が求められる。2. 非閉塞性肥大型心筋症(nHCM)に対する治療LVOTOを認めないnHCMの治療はLVEFによって層別化される。LVEF≧50%の場合: β遮断薬やベラパミルなどによる対症療法が中心となる。LVEF<50%(拡張相HCM)の場合: HFrEFの標準治療(ACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)が推奨される。3. 非薬物治療薬物治療抵抗性の症候性HOCMに対しては、外科的中隔心筋切除術(Myectomy)や経カテーテル的中隔アブレーション(ASA)といった中隔縮小術がClass Iで推奨されている。このようにCMIの登場は、HCM治療を対症療法から病態そのものを標的とする新たな時代へと導いた。最新の知見とガイドラインに基づいた適正使用により、個々の患者の予後を最大限に改善していくことが、今後のHCM診療における重要なテーマである。 1) Arbelo E, et al. Eur Heart J. 2023;44:3503-3626. 2) Green JJ, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2021;5:370-377. 3) Ko WY, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:722-733. 4) Desai MY, et al. JACC Clin Electrophysiol. 2025;11:1324-1333. 5) Akita K, et al. Echo Res Pract. 2024;11:23. 6) Fahmy AS, et al. Radiology. 2020;294:52-60. 7) Navidi Z, et al. PLOS Digit Health. 2023;2:e0000159. 8) Ramaker ME, et al. Circ Genom Precis Med. 2024;17:e004464. 9) Chuang C, et al. J Med Chem. 2021;64:14142-14152. 10) Braunwald E, et al. Eur Heart j. 2023;44:4622-4633 11) Hartman JJ, et al. Nat Cardiovasc Res. 2024;3:1003-1016. 12) Siontis KC, et al. JACC Adv. 2023;2:100582.

412.

アトピー性皮膚炎患者、「治療で症状が良くなると思う」と回答したのは3割のみ/リリー

 日本イーライリリーは7月8日、「アトピー性皮膚炎に関する最新事情~中等症以上の患者さんの治療実態を調査結果から読み解く~」と題したメディアセミナーを開催。同社が実施した中等症以上のアトピー性皮膚炎患者1,015例を対象としたインターネット調査結果を中心に、大塚 篤司氏(近畿大学医学部皮膚科学教室)、俳優の岸谷 五朗氏が講演とトークセッションを行った。治療に対する満足度と新しい治療法への認知度の低さが浮き彫りに 2018年にアトピー性皮膚炎に対する治療薬としては10年ぶりに生物学的製剤が発売されて以降、続々と新薬が登場し治療選択肢が増えている。大塚氏は、「これまでステロイド外用薬だけでは治療がうまくいかなかった患者さんに対して、これらの薬剤をうまく活用することでかゆみのない状態・肌がきれいな状態にもっていくことができるようになっている」と話す。 しかし、今回実施されたアンケート調査では、現在のアトピー性皮膚炎の治療薬に対して「満足している・やや満足している」と回答した患者は37%にとどまり、治療をしていくことでアトピー性皮膚炎の症状が良くなると思うかを聞いた質問では「そう思う・ややそう思う」と答えた患者の割合は31%であった。 さらに、インターネットや本などで最後にアトピー性皮膚炎の治療薬を調べた時期を聞いた質問では、「直近5年よりも前/調べたことはない」との回答が58%を占めた。直近5年間に発売されたアトピー性皮膚炎の新しい全身療法(飲み薬や注射薬など)についてよく知っていると思うかとの質問には、「そう思う・ややそう思う」と回答した患者の割合は12%と低かった。「ベッドに手を縛り付けて寝たことも」岸谷五朗氏が語る生活への影響 幼少期にアトピー性皮膚炎を発症し、現在も治療を続けているという岸谷氏は、「物心ついたときから痒みに悩まされており、寝ている間にかいてしまって起きたときに血だらけだったこともある。高校生のころはかいてしまわないようにベッドの上の部分に手を縛り付けて寝ていた」と話し、化粧をしたり汗をかくことも多い舞台俳優という仕事をするうえでずっと悩まされてきたという。今回の調査でも、「アトピー性皮膚炎により仕事や学業に支障を来したことがある(あてはまる・ややあてはまる)」と回答した割合は57%に上り、睡眠について聞いた質問では「月に10日以上、痒みで睡眠途中に起きてしまう」という回答が29%を占めた。 また、「アトピー性皮膚炎により恋愛に消極的になったことがある(あてはまる・ややあてはまる)」と回答した割合は46%で、「アトピー性皮膚炎の症状が気になって、家族や恋人とのスキンシップをためらったことがある(あてはまる・ややあてはまる)」との回答も45%を占めた。岸谷氏は「幼稚園のフォークダンスのときに、自分の手がガサガサで相手の女の子が驚くことがとても苦痛だった」というエピソードを語り、大塚氏も「症状の出ている手が気になると話す患者さんは多く、それにより対人関係に影響が出ていることもあると思う」と話した。 今回の調査で治療に対する満足度が低かったことについて、岸谷氏自身は現在満足しているとしたうえで、外用薬の種類がたくさんあり、持ち歩かなくてはいけないことはストレスになっていると吐露。大塚氏は、「新しい薬剤を上手く使うことで、外用薬がほとんど必要なくなった患者さんもいる」と話し、認知度が低いことでそれらの治療にたどり着かないケースがあり、その点を改善していくことが今後の課題とした。【調査概要】調査主体:日本イーライリリー株式会社実査:株式会社インテージヘルスケア調査手法:インターネット調査調査地域:日本全国実施期間:スクリーニング調査 2025年3月5日~3月13日本調査 2025年3月28日~4月4日解析対象:18~79歳の中等症以上のアトピー性皮膚炎患者(POEMスコア8点以上、直近1年間にアトピー性皮膚炎の治療を目的とした医師からの処方歴あり)有効回答数:1,015例監修:近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授 大塚 篤司氏

413.

再発/難治性多発性骨髄腫のBVd療法、DVd療法よりOS延長(DREAMM-7)/Lancet Oncol

 1ライン以上の治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫患者において、ベランタマブ マホドチン+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(BVd)併用療法はダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DVd)併用療法と比較して、全生存期間(OS)でも有意かつ臨床的に意味のあるベネフィットが得られたことが、第III相DREAMM-7試験の第2回中間解析で示された。ブラジル・Clinica Sao GermanoのVania Hungria氏らがLancet Oncology誌オンライン版2025年7月15日号で報告した。 DREAMM-7試験は、北米・南米・欧州・アジア太平洋地域の20ヵ国142施設で進行中の国際非盲検無作為化第III相試験である。1ライン以上の治療歴のある18歳以上かつECOG PS 0~2の多発性骨髄腫患者を対象に、BVd併用療法の有効性と安全性をDVd併用療法と直接比較している。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、重要な副次評価項目はOS、完全奏効以上の奏効を示した患者における微小残存病変(MRD)陰性率、奏効期間、後続治療におけるPFS(PFS2)、安全性など。本試験の初回解析(第1回中間解析、追跡期間中央値:28.2ヵ月)では、BVdがDVdと比べ、有意かつ臨床的に意味のあるPFSのベネフィットを示した。今回、追跡期間を延長した第2回中間解析におけるOSの結果を報告した。 主な結果は以下のとおり。・2020年5月7日~2021年6月28日に494例をBVd群(243例)とDVd群(251例)に無作為に割り付けた。年齢中央値は64.5歳(四分位範囲:57.0~71.0)であった。・更新されたデータカットオフ(2024年10月7日)および追跡期間中央値(39.4ヵ月、四分位範囲:14.6~42.9)において、BVd群はDVd群に比べて早期の持続的かつ有意なOSのベネフィットがみられた。・OS中央値は、BVd群はNR(95%信頼区間[CI]:NR~NR)、DVd群はNR(95%CI:41.0~NR)であった(ハザード比[HR]:0.58、95%CI:0.43~0.79、p=0.0002)。・完全奏効以上の奏効を示した患者におけるMRD陰性率は、BVd群が25%(95% CI:19.8~31.0)とDVd群の10%(同:6.9~14.8)の2倍以上高く、奏効期間中央値もBVd群は40.8ヵ月(同:30.5~NR)とDVd群の17.8ヵ月(同:13.8~23.6)の2倍以上長かった。・PFS2中央値は、BVd群がNR(95%CI:45.6~NR)に対し、DVdでは33.4ヵ月(95%CI:26.7~44.9)であった(HR:0.59、95%CI:0.45~0.77)。・最も多かったGrade3/4の有害事象は血小板減少症で、BVd群で56%、DVd群で35%に発現した。重篤な有害事象はBVdで53%、DVdで38%に発現した。 著者らは「BVd併用療法により、OS、PFS、MRD陰性率、奏効期間において、有意かつ臨床的に意味のあるベネフィットが示された。BVd併用療法は再発/難治性多発性骨髄腫の新たな標準治療となる可能性がある」と期待している。

414.

手術時、視力低下で困っている外科医の割合は?/医師1,000人アンケート

 医師の日常業務は診察や画像読影、手術など目を酷使する内容ばかりである。また、眼科領域の手術として、2000年代から屈折矯正手術(レーシック、眼内コンタクトレンズ[Implantable Contact Lens:ICL])が日本でも認められるようになり、現時点での医師、とくに眼科医の施術率が気になるところである。そこで今回、医師の眼の健康問題に関するアンケートを実施し、日常診療で困っていることや心がけていること、医師のレーシックやICLをはじめとする眼科手術の施術率などについて、会員医師1,024人(30代以上)にアンケート調査を行った。眼科医は屈折矯正手術を受けていない!? Q1「視力矯正のために使用/実施しているものはありますか」における全体の回答は、眼鏡(76.5%)、コンタクトレンズ(25.0%)、レーシック(1.8%)、ICL(0.9%)、なし(13.1%)という結果となった。これを年代別でみると、30代のコンタクトレンズの使用率が最も高く(50.0%)、レーシックは40代(4.6%)、ICLは30代(1.7%)でやや高い傾向を示した。診療科別で見ると、眼鏡とコンタクトレンズの使用率は眼科医が最も高い一方で、レーシックやICLの施術率は眼科医では0%であることも明らかになった。日々悩まされている眼疾患「近視、老眼、乱視」 続いてQ2「現在、困っている眼疾患や症状」では、近視(49.8%)、老眼(44.9%)、乱視(20.8%)、眼精疲労(17.3%)、遠視(9.3%)と続いた。年代別の結果は、30~40代では近視、50代以降は老眼が最大の悩みになっていた。少数意見ではあるが、白内障や緑内障、飛蚊症など加齢が主原因とされる眼疾患も、70代以上の医師の悩みのタネとなっていた。日常診療で不便を感じるのは… Q3「日々の業務において視力等で支障を感じる場面」については、カルテ入力/文書作成など文字を見るとき(41.4%)が最も多く、次いで論文閲覧(29.7%)、検査・処置(24.2%)と続いた。年代別では、60代の約半数でカルテ入力/文書作成に支障を来し、意外にも、50代に並んで30代でも診察や画像読影で不便を感じている声があった。診療科別で見ると、外科系診療医の約30%が手術の際に支障を来し、なかには、「針先確認(40代、小児科)」「カテーテル操作(40代、放射線科)」という具体的な声が挙げられた。 さらに、日々の診察で感じる目の健康に関する課題については、以下のような声が挙がった。「3-0の糸の端が見えない」(60代、泌尿器科)「画像診断を担当していると眼の衰えが早い」(40代、放射線科)「透視システムを使用する診療科なので、少しでも被爆が少なくなるように手技の効率化が図れないか考えている」(40代、脳神経外科) このほかにもアンケート結果ページでは、「施術を受けた/検討している眼科手術」「自身や家族の眼科手術経験から伝えたいこと」「実際に困ったこと」などの回答結果を公開している。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。視力低下で医師が悩むこと、日常診療への影響

415.

アリピプラゾールLAIの長期結果〜10年間ミラーイメージ研究

 統合失調症などの精神疾患では、再発が頻繁に発生する。長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、入院予防や服薬アドヒアランス、患者アウトカムの改善に有効であるにもかかわらず、依然として十分に活用されているとはいえない。さらに、新規製剤や縦断的研究によるエビデンスは、一般的に長期投与されているにもかかわらず、限られたままである。このようなデータ不足を解消するため、英国・West London NHS TrustのJoshua Barnett氏らは、長時間作用型製剤として入手可能な唯一の第3世代抗精神病薬アリピプラゾールLAIの月1回投与の長期的な有効性および受容性を評価するため10年間のミラーイメージ研究を実施した。Schizophrenia誌2025年6月23日号の報告。 実用的かつ独立した10年間のミラーイメージ研究は、英国ロンドンの大規模都市部メンタルヘルスサービスにおいて実施した。アリピプラゾールLAI投与を開始した成人患者を対象に、5年間の入院率および治療継続率を評価した。治療開始前後5年間の入院頻度と期間、治療中止率およびその理由は電子記録によって記録された。治療完了群と治療中止群、統合失調症患者と非統合失調症患者でのアウトカムの違いを比較する解析を別途実施した。 主な内容は以下のとおり。・本研究には、合計135例(統合失調症患者:63%、非統合失調症患者:37%)が含まれた。・5年後の治療中止率は47%(1年目:23.7%、2年目:13.6%、3年目:7.9%、4年目:7.3%、5年目:5.3%)であった。・5年間のアリピプラゾールLAI治療を完了した患者は53%であり、治療開始前の5年間と比較し、平均入院回数が88.5%減少(1.57回から0.18回へ減少、p<0.001)、平均入院日数が90%減少した(103日から10日へ減少、p<0.0001)。・入院回数中央値は1回から0回、入院日数中央値は68日から0日に減少した(各々、p<0.001)。・対照的に、治療中止群(47%)はアウトカム不良であり、5年間の入院回数の減少率は29.9%であった。・治療中止の主な理由は、コンプライアンス不良、効果不十分であり、忍容性によるものはほとんどなかった。・他のLAIからアリピプラゾールLAIへの切り替え以外で、治療継続を予測する主な臨床的および人口統計学的因子は認められなかった。・アウトカムは、診断にかかわらず一貫していた。・潜在的な交絡因子として、厳格な適格基準による多くの患者の除外、研究期間中の医療政策の変更などが挙げられる。 著者らは「本研究は、アリピプラゾールLAIによる5年間の治療における入院および治療継続を評価した初めての研究である。アリピプラゾールLAIの使用は、入院回数の大幅な減少と関連しており、治療完了群の85%は再入院の必要がなかったのに対し、治療中止群では30%にとどまった。これらの実臨床における知見は、アリピプラゾールLAIの長期的な価値を裏付けており、臨床意思決定におけるLAI導入の障壁を解消するうえで役立つ可能性がある」としている。

416.

乳児ドナー心の手術台上での再灌流・移植に成功/NEJM

 米国・デューク大学のJohn A. Kucera氏らは、小児の心停止ドナー(DCD)の心臓を体外(on table、手術台上)で再灌流しレシピエントへの移植に成功した症例について報告した。DCDと再灌流をドナーの体内で行うnormothermic regional perfusion(NRP)法を組み合わせる方法は、ドナー数を最大30%増加させる可能性があるが、倫理的観点(脳循環温存に関する仮説など)からこの技術の導入は米国および他国でも限られており、DCD心臓の体外蘇生を容易にする方法が求められていた。NEJM誌2025年7月17日号掲載の報告。ドナーは生後1ヵ月、レシピエントは生後3ヵ月の乳児 ドナーは、生後1ヵ月(体重4.2kg、身長53cm)で、自宅にて心停止状態で発見され、救急隊到着までの25分間、心肺蘇生(CPR)を受けていなかった。到着後、アドレナリン投与により自発循環が一時的に回復したが、救急外来到着後に再度心停止を起こし、再度アドレナリンにより蘇生された。これ以前には健康に問題はなかったとされている。経胸壁心エコーでは両心室機能は正常、小さな卵円孔開存以外に解剖学的には正常であった。 レシピエントは、生後3ヵ月(体重3.9kg、身長48cm)の乳児で、ウイルス性心筋炎による拡張型心筋症と診断されていた。生後1ヵ月時に心原性ショックを呈し、静脈-動脈体外式膜型人工肺(VA-ECMO)、バルーン心房中隔裂切開術、動脈管開存のデバイス閉鎖術を受けていた。移植前には、壊死性腸炎、脳室上衣下胚芽層出血、低酸素性虚血性脳症の既往があり、搬送前には潜在性発作がみられた。 ドナーとレシピエントはABO血液型が適合し、共にサイトメガロウイルスIgG陽性およびEBウイルスIgG陽性であった。心摘出後の手術台上での再灌流で心移植に成功 手術室では、ドナーの生命維持治療の中止前に、ヘパリン投与を行うとともに、後方手術台で蘇生回路(小児用人工肺、遠心ポンプ、心臓から排出された血液を回収して再循環させるリザーバー)を準備した。 生命維持治療を中止し、心臓死宣言後に5分間の観察期間をおいたうえで、心臓を摘出し、蘇生回路に接続して動脈カニューレから37℃の血液を10mL/kg注入した。心臓はすぐに洞調律で拍動を開始し、冠動脈の灌流も良好で、心機能は正常と評価された。観察期間終了から心臓摘出まで3分38秒、摘出から再灌流まで1分32秒、蘇生時間は合計5分39秒であった。移植に適格と判断し、del Nido心筋保護液を注入して再度心停止を誘導し、冷却保存した。移植までの冷却保存時間は約2時間19分、冷虚血時間は合計2時間43分であった。 その後、移植手術は合併症なく終了した。レシピエントは、術後1日目の心エコーでは弁機能および両心室機能ともに異常は認められなかった。術後6日目に昇圧薬から離脱、術後7日目に抜管し、術後28日目には集中治療室(ICU)から退室、術後2ヵ月後には経口摂取が安定した状態で退院した。 有害事象は、術後2日目の経腸栄養開始後の腹部膨満(投与中止)、6日目の発熱(血液培養陰性、抗菌薬投与開始)、7日目および30日目の目標経管栄養速度での嘔吐、32日目および40日目の嘔吐であった。 本報告時点(術後3ヵ月)において、最新の心エコー検査でも正常な心機能が維持されており、移植片機能不全や急性細胞性または抗体介在性拒絶反応のいずれも認められていない。

417.

HRR欠損去勢抵抗性前立腺がん、タラゾパリブ+エンザルタミドがOS改善(TALAPRO-2)/Lancet

 相同組換え修復(HRR)遺伝子の欠損を有する転移のある去勢抵抗性前立腺がん患者(mCRPC)において、タラゾパリブ+エンザルタミドの併用療法はエンザルタミド単独療法と比較して、全生存期間(OS)を有意に改善し、HRR欠損mCRPCに対する標準治療としてこの併用療法が支持されることを、フランス・University of Paris-SaclayのKarim Fizazi氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TALAPRO-2試験」のHRR欠損コホートの最終解析結果で報告した。mCRPCは依然として治癒困難であり、とくにHRRに直接的または間接的に関与するDNA損傷修復遺伝子異常を有する患者では進行が速い。TALAPRO-2試験の主要解析では、HRR欠損を有する患者においてタラゾパリブ+エンザルタミド併用療法がエンザルタミド単独療法と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善したことが示されたが、同解析時点ではOSのデータが未成熟であった。Lancet誌オンライン版2025年7月16日号掲載の報告。HRR欠損コホートでタラゾパリブ+エンザルタミドvs.エンザルタミド+プラセボ TALAPRO-2試験のHRR欠損コホートには、26ヵ国142施設から患者が登録された。本試験の対象は、18歳以上(日本は20歳以上)の無症候性または軽度症候性のmCRPCで、アンドロゲン除去療法を継続中かつCRPCに対する延命目的の全身療法歴のない患者であった。HRR遺伝子変異を前向きに評価した後、HRR遺伝子変異の状態(欠損vs.非欠損または不明)ならびに去勢感受性に対する治療歴(ありvs.なし)で層別化し、タラゾパリブ0.5mg+エンザルタミド160mgまたはエンザルタミド+プラセボを1日1回経口投与する群に無作為に1対1で割り付けた(エンザルタミドのみ非盲検下で投与)。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるrPFSであり、重要な副次評価項目はOSであった。いずれもITT集団で評価した。 OSの解析はrPFSが統計学的に有意な改善を示した場合にのみ階層的逐次手順に従って実施され、HRR欠損コホートにおけるOS最終解析時点の有意水準はO’Brien-Fleming型消費関数に基づきp≦0.024(層別化log-rank検定、両側)とされた。OS中央値、タラゾパリブ群45.1ヵ月、対照群31.1ヵ月 2018年12月18日~2022年1月20日に、HRR欠損mCRPC患者399例が無作為化された(タラゾパリブ+エンザルタミド群200例[タラゾパリブ群]、エンザルタミド+プラセボ群、199例[対照群])。 追跡期間中央値44.2ヵ月(四分位範囲:36.0~50.8)において、タラゾパリブ群は対照群と比較しOSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0005)。OS中央値は、タラゾパリブ群45.1ヵ月(95%CI:35.4~未到達)、対照群は31.1ヵ月(27.3~35.4)であった。 サブグループ解析の結果、BRCA1/2変異を有する患者集団(155例[39%])では、OS中央値はタラゾパリブ群未到達、対照群28.5ヵ月(HR:0.50、95%CI:0.32~0.78、p=0.0017)、4年OS率はそれぞれ53%、23%であり、BRCA1/2変異のない患者集団(244例[61%])では、OS中央値はそれぞれ42.4ヵ月、32.6ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.52~1.02、p=0.066)であった。 rPFSもタラゾパリブ群が対照群より優れていた(rPFS中央値:30.7ヵ月vs.12.3ヵ月、HR:0.47、95%CI:0.36~0.61、p<0.0001)。 新たな安全性上の懸念は確認されなかった。タラゾパリブ群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、貧血(86例[43%]vs.9例[5%])、好中球減少症(39例[20%]vs.2例[1%])であった。

418.

糖尿病の新たな食事療法「DASH4D」で血圧も低下

 高血圧予防のための食事スタイルとして歴史のある「DASH」を糖尿病患者向けにアレンジした、「DASH4D(Dietary Approaches to Stop Hypertension for Diabetes)」の有効性が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学のLawrence Appel氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に6月9日掲載された。 Appel氏は、「血圧は、コントロールすべき最も重要な検査値の一つだ。数値が高いほど脳卒中や心臓病のリスクが高まる」と解説。そして、「この研究の参加者の多くは既に複数の降圧薬を服用していたが、それにもかかわらず食事スタイルを変更することで、さらに血圧が低下した」と述べている。 従来のDASHは、果物、野菜、低脂肪乳製品を豊富に摂取し、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量を減らすことで、血圧をコントロールする。一方、新たに開発されたDASH4Dは、DASHの基本を維持しながら炭水化物を減らし、不飽和脂肪酸の摂取を増やすような変化を加え、これにより血圧とともに血糖値の管理にも役立つという。論文の筆頭著者である同大学のScott Pilla氏によると、「DASH食は長年用いられてきており、高血圧の標準的な治療の一部となっている。しかし、DASHを糖尿病患者向けにアレンジするというアプローチは、これまであまり研究されていなかった」とのことだ。 この研究は、収縮期血圧(SBP)が120~159mmHg、拡張期血圧(DBP)が100mmHg未満の成人2型糖尿病患者を無作為に4群(低ナトリウム〔Na〕のDASH4D、高NaのDASH4D、典型的な米国人の低Na食、典型的な米国人の高Na食)に分類して、血圧の変化を比較した。参加者102人のうち85人(83.3%)が5週間の介入期間を脱落せず終了。その平均年齢は66±8.8歳、女性66%で、介入前のSBP/DBPは135±9/75±9mmHgであり、66%の参加者に2剤以上の降圧薬が処方されていた。 介入後、低NaのDASH4D群は典型的な米国人の高Na食群と比較して、SBPが4.6mmHg(95%信頼区間7.2~2.0)、DBPは2.3mmHg(同3.7~0.9)低下していた。過去の研究データを参照すると、糖尿病患者のSBPが5mmHg低下した場合、脳卒中リスクは14%、心不全リスクは8%減少することが予想されるという。なお、降圧薬を用いた治療を行った場合には通常、SBPが10mmHg程度低下するとのことだ。 Pilla氏は、「本研究に続く次のステップは、われわれが得た知見を糖尿病患者に伝え、食事スタイルを通して健康的な変化が起きるようにサポートしていくことだ。多様な文化や食習慣を背景とする多くの人たちが、このDASH4Dを手間やコストをかけずに、日常生活へ取り入れられるようにしていく必要がある」と述べている。

419.

食物繊維の豊富な食事は動脈硬化リスクを抑制する

 野菜、穀物、豆類、その他の高繊維食品を多く摂取することが、腸だけでなく心臓の健康にも役立つことが、新たな研究で明らかになった。食物繊維の少ない食事を摂取している人では、プラークの蓄積によって動脈が狭くなる可能性の高いことが示されたという。ルンド大学(スウェーデン)心臓病学教授のIsabel Goncalves氏らによるこの研究結果は、「Cardiovascular Research」に6月16日掲載された。 Goncalves氏は、「人々の冠動脈CT血管造影法(冠動脈CTA)の画像と食事パターンを照合したところ、食事パターンは冠動脈プラークの存在だけでなく、高リスクとされるプラークの特徴にも関連していることが明らかになった」と同大学のニュースリリースで述べている。 米国心臓協会(AHA)によると、コレステロールと脂肪はプラークの形成に寄与し、プラークが原因で血流が減少したり途絶えたりするアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)につながる。今回の研究では、スウェーデンの心臓と呼吸器に関する大規模研究であるSwedish CArdioPulmonary BioImage Study(SCAPIS)に参加した50〜64歳の2万4,079人のデータを用いて、食事パターンと動脈硬化との関連が検討された。参加者は、2013年から2018年の間にこの研究に登録されており、登録時点で心臓の健康問題を抱えている者はいなかった。参加者の摂取食品に関する調査結果に基づき、抗炎症作用があるとされる食事パターンに基づいた食事指標である食事指数(DI)を算出し、DIが最も高い群(健康的な食事パターン)から最も低い群(不健康な食事パターン)の3群に分類した。また、冠動脈CTAにより冠動脈プラークの評価を行い、動脈硬化の有無や冠動脈カルシウムスコア、狭窄率など冠動脈疾患に関連する6つの指標が評価された。 解析の結果、動脈プラークが認められた割合は、DIが最も低い群で44.3%であったのに対し、DIが最も高い群では36.3%であることが明らかになった。また、50%以上の狭窄が認められた割合は、DIが最も低い群で6.0%、最も高い群で3.7%、石灰化を伴わず(非石灰化)かつ50%以上の狭窄を伴う高リスクプラークが認められたのは、それぞれ1.5%と0.9%であった。 こうした結果を受けてGoncalves氏は、「われわれの研究結果は、食物繊維の少ない不健康な食事パターンが体と代謝に変化をもたらし、それがプラークの形成につながる可能性があることを示唆している」と述べている。 研究グループは、食物繊維は健康的な食生活に大きな役割を果たすものの、心臓の健康を高めるためには、食事の他の要素も考慮する必要があると話す。論文の筆頭著者であるヨーテボリ大学(スウェーデン)のIngrid Larsson氏は、「健康を決定付けるのは、単一の食品ではなく全体的な食事パターンだ。野菜、果物、全粒穀物、食物繊維が豊富な食品、ナッツ類、低脂肪乳製品、オリーブ油などを多く摂取し、赤肉、加工肉、ポテトチップスなどのスナック菓子、甘い飲み物を控えた食生活は、高リスクプラークの少なさと関連している」とニュースリリースの中で述べている。

420.

家族が立ち会えること【非専門医のための緩和ケアTips】第104回

家族が立ち会えることお看取りの際、「家族が間に合うかどうか」という点が議論になる場面はしばしばあります。多くの医療者は「間に合わせてあげたい」と感じると思うのですが、実際は難しいことも多いですよね。今回の質問救急対応中、もう亡くなりそうな状態で搬送されてきた高齢患者さん。心停止時はDNRと決まっていたのですが、家族は到着まで1時間以上かかるとのこと。昇圧薬を使用して介入しましたが、結局、家族の到着を待たず心停止に至りました。私としては何とか会わせてあげたかったのですが、ほかのスタッフからは「昇圧薬を使用するのは過剰だったのでは?」という声もありました。答えの出ない問題だとは思いますが、緩和ケアの専門医としてはどのように考えますか?私も救急の業務をすることがあるので、質問者の方の状況はよくわかります。また、こういった急な死別でなくても、「最期は家族に立ち会わせてあげたい」と考えるスタッフは、緩和ケア領域にも多くいます。この議論を考えるうえで興味深い研究があるので紹介します。オランダの研究で、「家族からみた望ましい死」はどういった要因と関係があったかという調査です。この中に「家族の立ち会い」にも触れられています1)。結論からいえば、「家族の立ち会い」の要素は、家族が「望ましい死と感じたかどうか」に関連しませんでした。では何が関連したかといえば、「家族がお別れを言えた」という要素です。もちろん、これはオランダの調査なので、日本人で同じ調査をしたら結果は異なるかもしれません。ここからは私見になりますが、この結果をみた時に私が考えたのは「最期に立ち会えるかはさまざまな要素に左右されるが、たとえ心停止に間に合わなくても、別れを告げる場を提供することはできる」ということです。ここからはさらに私個人の意見になります。「立ち会わせてあげたい」と思うのは当然の感情ですが、家族が遠方にいたり予想しない経過やタイミングで患者さんが亡くなったりすることは、医療者が頑張って何とかなる問題ではありません。私も実家から離れて暮らしているので、「親の死に目に会えない」ことを心の片隅で覚悟しています。これは私と親の生活、もっといえば人生レベルの選択の結果として発生している状況です。「死に目に会えるか」という、医療以外の要素も大きく関わる問題とその結果を、医療者がすべて背負い込む必要はありません。丁寧にすべき配慮をしていれば、たとえ最期に間に合わなかったとしても自分たちの対応を責める必要もありません。こう言うと、少しドライに感じられるかもしれません。ただ、「死に目に会わせてあげたい」という気持ちが強すぎると、それが果たせなかった時に「残念なお看取りだった」という印象を家族に与えてしまうことがあります。間に合わなくとも、「最期にお別れを言うために、何の支援ができるか」を考えるほうが、つらい状況に直面した家族に対する本質的な支援だと思います。今回のTips今回のTips望ましい死とは何かといった観点から、家族が立ち会えることについて考えてみるのも良いかもしれません。1)Witkamp FE, et al. J Pain Symptom Manage. 2015;49:203-213.

検索結果 合計:34375件 表示位置:401 - 420