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先進医療技術の普及により1型糖尿病患者の血糖管理が大きく改善

 先進的テクノロジーを用いた医療機器の普及によって、1型糖尿病患者の血糖管理状態が顕著に改善しているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月11日掲載された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、血糖コントロールが良好(HbA1c7%未満)の18歳未満の患者の割合は、2009年は7%であったものが2023年には19%となり、成人患者では同期間に21%から28%に増加したという。 研究者らによると、これらの改善は、持続血糖モニターやインスリンポンプの技術革新によるところが大きいという。Fang氏は、「かつて、1型糖尿病患者の血糖コントロールは困難なことが多かった。こうした顕著な改善は喜ばしい変化だ」と述べている。ただし一方で、1型糖尿病患者の多くが、いまだに十分な血糖コントロールができていないことを、研究者らは指摘している。 米国糖尿病学会(ADA)によると、米国の1型糖尿病患者数は約200万人であり、そのうち30万4,000人は小児や10代の若者で占めている。1型糖尿病は膵臓のインスリン産生細胞が破壊されてしまう自己免疫疾患で、発症後は生存のためにインスリン療法が必須となる。従来のインスリン療法は、指先穿刺による血糖測定とインスリン注射を頻回に行う必要があり、また低血糖対策のための甘い物を常に身に着けておくことが欠かせない。一方、近年になり、持続血糖モニター、および、その測定結果を利用するアルゴリズムに基づき必要なインスリンを自動的に注入するポンプが普及し、安定した血糖値を維持できるようになってきた。 今回報告された研究には、約16万人の成人患者および約2万7,000人の18歳未満の小児・若年患者の医療記録が用いられた。分析の結果、2009~2023年の間に、前述のように血糖管理が良好な患者の割合が顕著に増加していた。その背景として、持続血糖モニターを使用している患者の割合は、小児・若年患者では4%から82%へと20倍以上に増加し、成人患者では5%から57%へと10倍以上に増加していた。また、インスリンポンプを使用している患者の割合は同順に、16%から50%、11%から29%に増加していた。2023年には双方のデバイスを利用している患者が、小児・若年者の47%、成人の22%を占めていた。 ただし、論文の上席著者で同大学院のJung-Im Shin氏は、「このような改善は喜ぶべきことだが、1型糖尿病患者の大半はいまだ最適な血糖コントロールを達成できておらず、改善の余地が残されていることを忘れてはならない」と話している。また、医療格差も認められ、先進的医療機器を利用し良好な血糖コントロールを維持しているのは、白人や民間保険に加入している患者に多いという。例えば18歳未満の患者の中で、良好な血糖コントロールを維持している割合は、白人では21%であるのに対し、ヒスパニック系では17%、黒人では12%にとどまっていた。 なお、研究グループでは今後さらに詳しい調査を続け、心臓病や腎臓病などの糖尿病に多い合併症の罹患率の変化も明らかにすることを計画している。

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慢性冠動脈疾患の抗血小板薬はアスピリン、クロピドグレル?(解説:後藤信哉氏)

 急性心筋梗塞ではアスピリンは死亡率低減効果を示した。慢性期の使用でも心血管死亡・心筋梗塞・脳梗塞発症予防効果が示され標準治療となっていた。クロピドグレルは冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患ではアスピリンに勝る優越性と安全性をCAPRIE試験で示した。冠動脈疾患のみに限局しても、アスピリンよりも有効で安全かもしれないとの仮説はあった。 特許切れして特定メーカーの宣伝がなくなっても、クロピドグレルの使用は拡大した。臨床研究も多数施行されていた。本研究では、慢性冠動脈疾患にてアスピリンとクロピドグレルを比較した7つの試験のメタ解析をした。MACCEは0.86(95%信頼区間:0.77~0.96、p=0.0082)とクロピドグレル群で低く、死亡と重篤な出血では差がなかった。有効性が優れ、安全性に差がなく、価格も安いとなればクロピドグレルの使用が広がることに誰も困らない。 新薬の開発がチャレンジングなのは理解できる。しかし、特許期間を超えて、著しい宣伝がなくなって真の意味での新薬の価値が明確になる時期が遅すぎる。アスピリン、クロピドグレルなど優れた薬の開発者を後になって懸賞する仕組みなども必要かもしれない。

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第260回 2040年に医療・介護業界が直面する「労働供給制約社会」

人口減少がもたらす現実21世紀に入り、わが国の人口は減少期に入り、生産年齢人口(15~64歳)の割合が高い「人口ボーナス期」から、少子高齢化の進展により、生産年齢人口の割合が減少し、子供(年少人口)や高齢者(老年人口)の割合が増え、経済に重荷(オーナス)となる「人口オーナス期」に突入しています。総人口は2020年の約1億2,800万人から2040年には1億1,000万人前後へと減少(約16%減)が見込まれています。その一方で、85歳以上人口は増加を続けるため、医療・介護分野での労働需要が減少せず、医療と介護の複合的なニーズが急速に高まります。図1 わが国の人口推移画像を拡大する未来予測2040 労働供給制約社会がやってくるリクルートワークス研究所の『未来予測2040』によれば、2030年には約340万人、2040年には約1,100万人の労働力不足が生じるとのことです。これは人口減少に伴う“構造的な労働供給不足”であり、一時的な景気変動によるものではなく、永続する課題として顕在化がさらに進みます。図2 労働需給シミュレーション画像を拡大する厚生労働省は、2024年3月から「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開催し、これから迎える2040年のわが国の医療・介護について検討してきました。2040年には、生産年齢人口はほぼすべての地域で減少し、高齢人口は大都市部で増加、過疎地域では減少、地方都市部では高齢人口が増加と減少する地域があることを指摘しています。現在、多くの病院や診療所が、コロナ感染の拡大で変化した患者さんの受療動向の変化によって「患者不足」に直面していますが、これから問題になるのは「スタッフ不足」が深刻になると予想されています。 地方から人口流入がある東京や大阪といった大都市圏では、まだ目立って減少していませんが、すでに地方では人口の流出とともに、出生数の減少により人口減少に拍車がかかっています。このため、地域によっては小中学校や看護学校の閉鎖などが報道されていますが、少子化が止まらない現状が続くため、現状のまま放置すると2040年には高齢者の医療・介護現場が維持できなくなる可能性があります。しかし、今からの取り組み次第では、地域において持続可能となる可能性があります。図3 65歳以上人口が最大となる年画像を拡大する未来予測2040 医療・介護分野への影響厚労省の『未来予測2040』からは、主な業種別ギャップでは、「輸送・運搬業」が約99.8万人不足(24.2%不足)、「建設業」が約65.7万人不足(22.0%)、「製造業」が約112.4万人不足(約13.3%)と軒並み人手が不足しますが、「医療・保健専門職」も約81.6万人不足(約17.5%)、「介護サービス」が約58万人不足(約25.3%)と、同様に人手不足が予想されています。この人手不足に拍車をかけるのが所得問題です、以前から明らかになっていることですが、医療・介護関連職種の所得は、医師や看護師、薬剤師などを除くと平均所得が低いため、都市部では人材獲得競争に負けないため、人件費の高騰が医療・介護施設の経営悪化につながる可能性が高く、この問題を対処するためには、財源となる国からの拠出や医療・介護保険の保険料引き上げが必要となります。21世紀に入り東日本大震災や能登半島地震など、大災害に被災した地域で人口流出のために医療・介護関連職種が足りなくなった自治体では、すでに介護サービスのニーズに応えられなくなっており、それは将来のわが国の縮図となっています。今後、東京や大阪といった大都市でも、75歳以上の後期高齢者は増加し続け、15~64歳の現役世代が減少していくため、従来のように若い力に期待するよりも、定年退職後に働く再雇用などを積極的に行わないと地方だけではなく、医療・介護事業は継続不可能となる可能性が高くなります。このように課題が大きい一方で、医療・介護の現場は社会的に不可欠であり、持続可能性を高めるためのさまざまな方策が議論されています。新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療とは厚労省が解決の方向性として打ち出しているものでは、シニア人材の活用や外国人材と多様な働き手の参入、テクノロジーの導入などが考えられています。とくに定年後の再雇用やセカンドキャリアとして医療・介護に関心を持っている人が入りやすい仕組みを拡充することで、経験豊富な人材が地域を支えられる可能性があります。さらに、外国人材についても2040年には労働力が不足するとの予測がありますが、技能実習研修制度の改善や導入教育システムを整えることで新たな担い手を確保する余地は残されています。また、医療・介護分野でのイノベーションで、AIやロボットの活用は、服薬管理や記録業務、移動支援などの領域で現場負担を軽減できます。今年7月25日に厚労省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会が出した取りまとめをみると、「人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援の方向性」の中に「若い世代が希望ややりがいを持てる業界となるためには、介護のイメージを変えることや、介護現場が変革する要素を示していくことが重要であり、テクノロジーの活用が進んだ職場であることや社会課題(SDGs、災害対応など)に対応する介護という観点をアピールすること、介護実習先での体験などが重要な要素となる。そうしたイメージの変革にあたっては、求職者となる若い世代の目でさまざまな施策を考えることが重要である」という表記もあり、これらを参考して、各地域で対応していく必要が重要と思われます。地域包括ケアの進化高齢化のピークは地域ごとに大きく異なります。都市部では急増、過疎地では減少と二極化するため、地域の実情に応じた医療・介護資源の集約と連携が不可欠です。医師にとって重要なのは「この人材制約下でどう診療体制を維持するか」です。多職種協働をさらに深化させ、看護師・介護職・リハビリ職と役割分担を柔軟に行うことも必要ですし、医師単独で地域のセーフティーネットを守るのではなく、地域社会と連携してその中で、必要な医療や介護を提供して生き残りを探るべき時代になっていると思います。若手が希望を持てる職場環境を作ることも大切で、これは診療科の充実や病院の魅力にも直結します。地域包括ケアの中で、医師や看護師が地域医療や介護のハブとして介護サービスや在宅医療機関との連携を主導することも大切になっていくと思われます。むしろ多様な課題に専門職の一員として協力体制を整えることが、地域社会への貢献につながる可能性が高いのです。危機をチャンスに冒頭に書いたように「労働供給制約社会」は避けられない未来ですが、それは同時に「医療・介護の働き方を根本から見直すチャンス」でもあります。テクノロジー導入、シニアや外国人の活躍、多職種連携といった改革が進めば、患者・家族にとっても、そして、医療従事者にとってもより持続可能で魅力的な医療・介護体制を築くことができます。2040年の未来を悲観するのではなく、新しい地域医療の姿を描く契機として捉えることが求められています。 参考 1) 2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」 検討会の取りまとめ(厚生労働省) 2) 「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」現状と課題・論点について(同) 3) リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」(リクルートワークス研究所)

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第89回 感度と特異度とは?【統計のそこが知りたい!】

第89回 感度と特異度とは?医療診断の分野において、検査の有効性を評価するために用いられる2つの重要な統計的尺度は、「感度」と「特異度」です。これらの指標は、さまざまなテストを用いて病状を正確に診断するために不可欠です。今回は、臨床試験の結果を解釈する際に必要な感度と特異度について解説します。■感度と特異度とは何か?「感度(真陽性率とも呼ばれる)」は、実際に陽性であるものがテストによって正しく陽性と識別される割合を測定します。簡単に言うと、この指標は「すべての病気を持っている人々の中で、何人がテストで正しく陽性と識別されたか」という問いに答えます。「特異度(真陰性率とも呼ばれる)」は、実際に陰性であるものがテストによって正しく陰性と識別される割合を測定します。この指標は「病気を持っていないすべての人々の中で、何人がテストで正しく陰性と識別されたか」という問いに答えます。■感度と特異度の重要性感度と特異度のバランスは、臨床検査など医療テストの有用性を決定する上で重要です。高い感度は、条件を持つ患者のほとんどが識別されることを保証し、診断を見逃すリスクを減らします。高い特異度は、条件を持たない人々が誤って診断されることなく、不要な治療を避けることができます。■臨床設定での応用例特定のがんを検出するために開発された新しいテストを考えてみましょう。テストの感度が高く特異度が低い場合、テストはがんを持つ患者のほとんどを識別できますが、健康な個人を誤ってがんであるとラベル付けする可能性があります。逆に、特異度が高く感度が低いテストは、がんのいくつかのケースを見逃す可能性がありますが、がんでない人々を正確に判断します。■感度と特異度の計算■課題と考慮事項理想的には感度も特異度も高い値が望ましいのですが、実際にはしばしばトレードオフが行われます。感度を高めると特異度が低下することがあり、その逆も同様です。したがって、テストを選択する際には、テストされる病気や見逃された診断、誤診の結果としての影響を考慮に入れます。感度と特異度は、診断テストを評価するための基礎的な概念です。これらの指標を理解することで、臨床試験や日常診断に使用されるテストの信頼性を解釈することができます。感度と特異度を適切に評価することにより、臨床現場においてどのテストを使用し、その結果を患者ケアにおいてどのように解釈するかについて、よりよい情報に基づいた決定を行うことが大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」特別編 カットオフ値とROC解析「統計のそこが知りたい!」第66回 カットオフ値とは?第67回 クラメール連関係数で算出したカットオフ値第68回 ROC解析で算出したカットオフ値

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レビー小体型認知症のMCI期の特徴は?【外来で役立つ!認知症Topics】第33回

レビー小体型認知症のMCI期の特徴は?認知症には70以上もの原因疾患があるが、レビー小体型知症(DLB)はアルツハイマー病(AD)、血管性認知症に次ぎ3番目に多い。ADのMCI(軽度認知障害)の特徴はわかっていても、「MCIレベルのDLBの特徴は?」と問われると、筆者は最近まで「はて?」という状態であった。DLB研究の元祖である小阪 憲治先生の名言に「DLBを知れば知るほど、その幅広さがわかってくる」というものがある。臨床の場でこの病気の患者さんを診ていると、一言でDLBといっても、見られる症候は実にさまざまであり、この言葉はまさに至言である。また、この病気の大脳病理について経験豊かな友人が次のように教えてくれた。「レビー小体病といっても、さまざまな病変分布や病理の程度にグラデーションがあって、検査前の見込みと検査結果はしょっちゅう乖離する。ADのほうがずっと簡単」と。DLBの診断では、激しい寝ぼけ(レム睡眠行動障害)、幻視、パーキンソン症候、そして認知機能などの変動が大きいことが軸である。DLBの権威であるIan G. McKeith氏らによれば、MCIレベルのDLBには3つの表現型がある。まず「精神症状初発型」、次に「せん妄初発型」、さらに認知機能障害パターンから分類される「MCI-LB」タイプである。今回は、この3つについてまとめてみたい。1)精神症状初発型他の認知症性疾患と比べたとき、DLBの初発症状として、老年期になって初発する大うつ病や精神病は、とても際立っている。代表的な症状としては、人の姿が見えるといった幻視、家族を偽物だと思い込むような妄想や誤認がある。また、アパシー(無気力)、不安がある。こうした症状で初発する認知症性疾患は他にまずないため、これらの症状はDLBを疑う大きなヒントになる。レム睡眠行動障害(RBD)も有用な着眼点になるが、抗うつ薬を使うことによってRBDが生じることもあるので、ここは要注意である。また、DLB を疑ううえで、パーキンソン症状の中で、動作緩慢よりも振戦や筋硬直のほうが、より有用である。なお、精神病発症型のDLB発症時では、パーキンソン症候、認知機能の変動、幻視、RBDという典型症候がみられたのは、わずか3.8%にすぎなかったという報告がある1)。この数字が語るのは、目の前の患者さんは「精神疾患に間違いない、まさかDLBとは!」と誰もが思ってしまう落とし穴だろう。2)せん妄初発型認知機能の変動、意識の清明度・覚醒度の変化は、DLBの中核症状である。そのため、せん妄で初発する人も多い。これまで認知機能障害がなかった人で、いきなりせん妄が生じるのはなぜだろうか? まずDLBという病態はせん妄を来しやすい素地を持っているのかもしれないし、あるいは曇りを伴う重篤な意識の変動をせん妄とみている可能性もある。さらにはこれら両者なのかもしれないが、答えはわからない。ところで、せん妄初発のDLBの存在に留意することには別の意義もある。というのは、一般的なせん妄に対する第1選択薬は抗精神病薬とされるが、もしこの型のDLBにこうした薬剤を投与したら、症状が悪化する可能性が高いからである。なお、せん妄や意識変動はDLB患者の介護者の43%が報告するほど多く、4人に1人のDLB患者がせん妄を繰り返し、累積の回数はAD患者のそれの約4倍といわれる。また、DLBが診断される前にみられるせん妄は、ADに比べて6倍近く高い。高齢患者においてせん妄が長引く場合、実は背後にDLBが隠れていると考えるべきとされる。つまり、「病歴にせん妄が多ければDLBを想起!」である。3)MCI-LBMCIの概念は、1990年代のRonald C. Petersen氏による提唱で有名になったが、それは「アルツハイマー病前駆状態では、他の認知機能は保たれているのに記憶のみが障害される」というものであった。このオリジナルの概念に改変がなされ、現在では「記憶障害」対「非記憶の認知機能障害」、障害される認知領域が「単数」対「複数」という基準で4つのMCI亜型に分類されるようになった。Petersen氏の提唱したオリジナルMCIは、ADの予備軍における「記憶障害」+「単数」である。しかし、レビー小体型認知症の前駆状態であるMCI-LBは、「非記憶障害」が基本で、障害領域は「単数」も「複数」もある。とくに最初期には、本人も介護者も記憶障害を訴えないことが珍しくない。つまり記憶障害は比較的軽い一方で、主に注意や遂行機能障害といった前頭葉の機能障害がみられる。また錯視など、視覚認知に障害を認める例もある。いずれにせよ、記憶障害単独型MCIのADコンバートに対して、「非記憶型」のMCI-LBがADになることはまれで、その10倍もDLBになりやすい。4)その他の留意点DLBにおけるRBDの意味RBD(レム睡眠行動障害)はDLB診断において重要である。ある12年間の追跡調査では、RBDを持つ人の73.5%が、 DLBなど神経変性疾患にコンバートしたという報告もある2)。悪夢は周囲の人によって気付かれ、RBD診断の手がかりになるが、鑑別すべきものに睡眠時無呼吸症候群、睡眠中のてんかん発作などがある。確実な診断には、ポリソムノグラフィによる測定が望まれる。どんなタイプのMCIであれ、RBDを伴うときはDLBを想起すべきである。自律神経症状などDLB患者で、初診時に自律神経障害を認めることもまれではない。便秘、立ちくらみ、尿失禁、勃起障害、発汗増加、唾液増加などのどれか1つ以上が、25~50%の患者で見つかる3)。しかし、こうした症状は他のさまざまな疾患でも見られるため、それらがあるからといって必ずしもDLBだと思う必要もない。なお、無嗅覚症もDLBのMCI期によくみられるが、その原因は数多あるため(たとえば新型コロナウイルス感染症など)、診断的価値がとくに高いわけではない。1)Gunawardana CW, et al. The clinical phenotype of psychiatric-onset prodromal dementia with Lewy bodies: a scoping review. J Neurol. 2024;271:606-617.2)Postuma RB, et al. Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. 2019;142:744-759.3)McKeith IG, et al. Research criteria for the diagnosis of prodromal dementia with Lewy bodies. 2020;94:743-755.

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老年医学のトビラ

何となくではなく そろそろちゃんと勉強したい皆さん 5Mでひらく高齢者診療へようこそ目の前には常に高齢の患者さんがいます。老年医学の「トビラ」は、現在の高齢者診療の複雑な問題の象徴です。本書はこのトビラを開く鍵となる「5つのM」に沿って解説しています。5つのMとは、Mobility(身体機能)、Mind(認知機能・精神的側面)、Medications(薬剤)、Multicomplexity(複雑性・多疾患併存)、Matters Most(最も大切なこと)。これを軸に、転倒やせん妄、認知症、うつ病・不眠、薬剤、フレイル、尿失禁・便秘、さらに高齢者の「見えない」「聞こえない」「においがわからない」「食べられない」の訴えにアプローチしていきます。スクリーニング・予防,事前指示、ケアのゴール設定も含めて1冊で勉強できる、これが老年医学入門の「新定番」です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する老年医学のトビラ定価4,840円(税込)判型A5版頁数276頁発行2025年8月監修山田 悠史ご購入はこちらご購入はこちら電子版はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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精神科医が教える 休みベタさんの休み方

本当は疲れているのに、「いつのまにか、休みたくても休めなくなってしまった」、すべての人へサラリーマン時代、社内外や年次を問わず発生するメンタル問題に多数遭遇した著者。解決に向けて付き添う中で目にした産業医の現状に落胆するも、とあるクリニックの精神科医の働き方に感銘を受け、精神科医となった著者が「休みベタさん」に伝えたいヒントが詰まった1冊。今どきの、一見働きやすそうでいて、なかなか働きづらい職場。ついつい頑張りすぎて、心のバランスを崩してしまう人は後を絶たちません。休み方のノウハウをどれだけ知っても、やっぱり休む気になれない。そんな「休みベタさん」の、不安や焦りをなくして、休み上手になるコツを紹介。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する精神科医が教える 休みベタさんの休み方定価1,650円(税込)判型四六判頁数214頁発行2025年8月著者尾林 誉史ご購入はこちらご購入はこちらAmazonでご購入の場合はこちら

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EGFR陽性NSCLCへの術前オシメルチニブ、ctDNAによるMRD解析(NeoADAURA)/WCLC2025

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)における治療選択肢として術前補助療法があるが、EGFR遺伝子変異陽性例では病理学的奏効(MPR)がみられる割合が低い。そこで、術前補助療法としてのオシメルチニブ±化学療法の有用性を検討する国際共同第III相試験「NeoADAURA試験」が実施されており、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤は化学療法と比べてMPRを改善したことが、2025年6月に報告された1)。新たに、事前に規定された探索的解析として循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた分子的残存病変(Molecular Residual Disease:MRD)の解析が実施され、世界肺がん学会(WCLC2025)において、米国・カリフォルニア大学のCollin M. Blakely氏が解析結果を報告した。超高感度ctDNA検出アッセイ(NeXT Personal)は、従来のEGFR遺伝子変異検査に基づくMRD解析よりも感度が高く、オシメルチニブ±化学療法はMRDクリアランス(ctDNAがベースラインから10倍以上低下または非検出と定義)やMRD陰性を達成する患者の割合を改善した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:EGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の切除可能なStageII~IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群1(オシメルチニブ+化学療法群):オシメルチニブ(80mg、1日1回、9週以上)+カルボプラチン(AUC5、3週ごと3サイクル)またはシスプラチン(75mg/m2、3週ごと3サイクル)+ペメトレキセド(500mg/m2、3週ごと3サイクル)→手術→医師選択治療 121例・試験群2(オシメルチニブ単剤群):オシメルチニブ(同上)→手術→医師選択治療 117例・対照群(化学療法群):カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド(いずれの薬剤も同上)→手術→医師選択治療 120例・評価項目:[主要評価項目]MPR[副次評価項目]無イベント生存期間(EFS)など[探索的評価項目]ベースライン時のMRDとEFSの関係、術前のMRDとMPRの関係、術前のMRDクリアランスとMPRの関係など 今回は、MRD解析が行われた集団(189例)の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の血漿サンプルでMRD陽性の割合は、cobas EGFR Mutation Test v2が30%であったのに対し、NeXT Personalが71%であった(以降はNeXT Personalに基づくデータを示す)。・ベースライン時にMRD陽性の集団は、StageIIIの割合が多く、腫瘍径が大きく、リンパ節転移が多かった。・対照群も含めた全群の併合解析において、ベースライン時のMRDの有無別にEFSをみると、MRD陰性の集団はMRD陽性の集団と比べてEFSが良好であった(ハザード比:0.24、95%信頼区間:0.07~0.80)。・ベースライン時にMRD陽性であり、術前のMRD解析でMRDクリアランスを達成した患者の割合は、オシメルチニブ+化学療法群83%、オシメルチニブ単剤群84%、化学療法群58%であった。・MRDクリアランスの有無別にみたMPRは、クリアランス達成の集団が24%、クリアランス未達成の集団が6%であり、クリアランス達成の集団が良好であった(p=0.0378)。・術前のMRD解析でMRD陰性の割合は、オシメルチニブ+化学療法群77%、オシメルチニブ単剤群77%、化学療法群53%であった。・MRDの有無別にみたMPRは、MRD陰性の集団が20%、MRD陽性の集団が9%であった(p=0.0546)。 本試験結果について、Blakely氏は「MPRを補完する指標としてMRDが有用である可能性を示すとともに、EGFR遺伝子変異陽性の切除可能NSCLC患者に対して、オシメルチニブを含むレジメンで術前療法を行うことを支持するものであった」とまとめた。

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主要5クラスの降圧薬、単剤・併用の降圧効果を定量化/Lancet

 オーストラリア・University of New South WalesのNelson Wang氏らは、主要5クラスの降圧薬の降圧効果およびそれらの組み合わせによる降圧効果の定量化を目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析を行った。降圧薬のあらゆる組み合わせについて、期待される降圧効果の強固な推定値を提示し、その降圧効果の程度を低強度・中強度・高強度に分類可能であることを示した。著者は、「得られた知見は、世界中の高血圧治療を受ける人々の、不良な血圧コントロールを改善するための処方決定に役立つ情報となるだろう」と述べている。Lancet誌2025年8月30日号掲載の報告。診察室SBPの低下を定量化、各療法の降圧効果の強度を低・中・高に分類 研究グループは、成人参加者がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬のいずれかまたは組み合わせの投与を受けた無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象に、システマティックレビューとメタ解析を行った。適格基準は、追跡期間は4~26週、降圧薬治療(投与量と種類)が血圧のフォローアップ前4週間以上にわたり固定していること、治療群間の収縮期血圧(SBP)の平均群間差を算出するために診察室血圧が利用できることとした。クロスオーバー期間のウォッシュアウト期間が2週間未満のクロスオーバー試験は除外した。 データベースの公開~2022年12月31日に発表された適格試験を、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Epistemonikosを検索して特定した。さらに検索の更新を行い、2023年1月1日~2025年2月28日に発表された試験を含めた。 主要アウトカムは、プラセボと比較した実薬治療の診察室SBPの低下(ベースラインから最長追跡時点[最短4週]までの平均SBP変化量の差)とした。 降圧効果は、ベースライン血圧(包含試験全体の平均ベースライン血圧154/100mmHg)により標準化し、固定効果メタ解析を用いて平均差と95%信頼区間(CI)を推算した。また、単剤・併用それぞれの薬物療法を、SBPのベースライン値154mmHgからの低下の程度で、低強度(<10mmHg低下)、中強度(10~19mmHg低下)、高強度(≧20mmHg低下)に分類した。あらゆる降圧薬の併用療法の有効性を計算するモデルを開発し、2剤併用または3剤併用の外部試験で検証した。標準用量単剤療法、SBP低下8.7mmHg、79%が低強度 解析には、484試験の10万4,176例が含まれた。平均年齢は54歳(SD 8)、男性5万7,422例(55%)、女性4万6,754例(45%)であり、平均追跡期間は8.6週(SD 5.2)であった。 平均して、標準用量での単剤療法によるSBP低下は8.7mmHg(95%CI:8.2~9.2)であった。クラス別では、ACE阻害薬6.8mmHg、ARB 8.5mmHg、β遮断薬8.9mmHg、Ca拮抗薬9.5mmHg、利尿薬10.8mmHg。複数のメタ解析で薬剤クラスによってかなりの異質性が認められ(I2>50%)、同一クラスでも薬剤間の有効性は異なることが示唆された。 また、単剤療法では用量倍増で、SBPは追加で1.5mmHg(1.2~1.7)低下した。用量反応性はβ遮断薬が最も小さく0.5mmHg、Ca拮抗薬が最も大きく2.6mmHgだった。 さらに、単剤療法ではベースラインSBPが10mmHg低下するごとに、降圧効果は1.3mmHg(95%CI:1.0~1.5)低下したが、薬剤クラス間で差がみられた。 降圧の程度は、標準用量での単剤療法57種のうち45種(79%)が低強度に分類された。標準用量2剤併用療法、SBP低下14.9mmHg、58%が中強度、11%が高強度 平均して、標準用量での2剤併用療法によるSBP低下は14.9mmHg(95%CI:13.1~16.8)であった。併用する両剤の用量倍増で、SBPは追加で2.5mmHg(1.4~3.7)低下した。 降圧の程度は、2剤併用療法の異なる薬剤・用量の組み合わせ189種のうち、110種(58%)が中強度に分類され、21種(11%)が高強度に分類された。 あらゆる併用療法の有効性モデルを外部試験で検証した結果、SBPの予測値と測定値の間に高い相関関係があることが示された(r=0.76、p<0.0001)。

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日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-I、症状はどの程度改善するか

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症状だけでなく抑うつ症状の改善にも大きな可能性を秘めている。しかし、その効果により健康者と同等レベルまで症状が改善するかは不明である。東京家政大学の岡島 義氏らは、日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-Iにより、不眠症状および抑うつ症状が健康者レベルまで改善するかを検証するため、本研究を実施した。BioPsychoSocial Medicine誌2025年7月21日号の報告。 対象は、日本人労働者752例。不眠症およびうつ病尺度のカットオフスコアを用いて、不眠症群、うつ病群、不眠症/うつ病併存群、健康群の4群に分類した。すべての群に対してデジタルCBT-Iを2週間実施し、治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査でスコア変化を比較した。 主な結果は以下のとおり。・治療後から3ヵ月後の追跡調査において、不眠症群および不眠症/うつ病併存群における不眠症状の有意な減少が認められた。【不眠症群】Hedges'g:1.07〜1.52【不眠症/うつ病併存群】Hedges'g:1.17〜1.41・不眠症/うつ病併存群では、抑うつ症状の有意な改善も認められた(g:0.38〜0.70)。・治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査において、不眠症群と健康群の間で不眠症状に有意な差が認められ、不眠症/うつ病併存群と健康群の間でも抑うつ症状に有意な差が認められた。 著者らは「デジタルCBT-Iは、日本人労働者の不眠症状および抑うつ症状を効果的に軽減することが確認されたが、3ヵ月以内に健康者レベルまで改善することはなかった」と結論付けている。

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GLP-1RAが2型糖尿病患者のGERDリスク増大と関連

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が、胃食道逆流症(GERD)のリスク増大と関連していることを示すデータが報告された。GLP-1RAが処方されている患者では、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が処方されている患者に比べて、GERDおよびGERDに伴う合併症の発症が有意に多く認められるという。全南大学校(韓国)のYunha Noh氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。 2型糖尿病および肥満の治療薬であるGLP-1RAは胃排出遅延作用を有しており、これが血糖上昇抑制や食欲低下に部分的に関与していると考えられている。しかし一方でこの作用は、理論的にはGERDのリスクとなり得る。とはいえ、GLP-1RAの処方とGERDとの関連を示す大規模な研究に基づくエビデンスは十分ではないことから、Noh氏らは英国の臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、SGLT2iを実薬対照とするターゲット試験エミュレーション研究を実施し、GERDおよびGERD関連合併症の発症リスクを比較した。 2013~2021年に、GLP-1RAまたはSGLT2iの新規処方が開始されていた18歳以上の成人2型糖尿病患者を2022年3月31日まで追跡し、主要評価項目であるGERDの発症、および副次評価項目であるGERD関連合併症の発症状況を把握。傾向スコアに基づき背景因子を精密層別化(fine stratification)して重み付けした上で、リスク差およびリスク比を算出した。 GLP-1RAが新規処方されていた患者は2万4,708人、SGLT2iが新規処方されていた患者は8万9,096人だった。中央値3.0年の追跡で、SGLT2i群に対するGLP-1RA群のGERD発症リスク比は1.27(95%信頼区間1.14~1.42)であり、リスク差は100人当たり0.7だった。また、GERD関連合併症については、リスク比が1.55(同1.12~2.29)、リスク差は1,000人当たり0.8だった。 著者らは、本研究の限界点として、GERDリスクに影響を及ぼし得る食習慣を含む、ライフスタイル関連因子が把握されていないことなどによる残余交絡が存在する可能性を挙げ、「追試による検証が必要」としている。その上で、「われわれの研究結果は、2型糖尿病患者に対するGLP-1RAの使用はSGLT2iを使用した場合に比較し、GERDの発症とその合併症のリスクを高めることを示唆している」と結論。また、「医師や患者はGLP-1RAがGERDリスクに影響を及ぼし得ることを認識しておくべき」とし、「医師は適切なタイミングで予防および治療介入を行う必要がある」と付け加えている。 なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

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健康的な食事と運動は飲酒による肝臓のダメージを抑制して死亡を減らす

 ビール、ワイン、ウイスキーなどを楽しむなら、健康的な食事と運動を続けた方が良いかもしれない。飲酒は肝臓の障害による死亡リスクを高める一方、健康的な食事と運動によりそのリスクが低下することを示唆するデータが報告された。米インディアナ大学のNaga Chalasani氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Hepatology」に8月26日掲載された。 論文の上席著者である同氏は、「あらゆる飲酒パターンにおいて、質の高い食事や活発な身体活動の習慣が、肝臓関連死亡リスクの低下と関連していることが分かった」と述べている。なお、米国では成人の半数以上(53%)が習慣的に飲酒し、毎年約17万8,000人が大量飲酒により死亡しているという。 この研究では、1984~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の対象となった成人6万334人のデータを用い、2019年末まで死亡を追跡した。飲酒状況や食習慣・身体活動習慣は自己申告により把握した。平均12.2年の追跡期間中に252件の肝臓関連の死亡が記録されていた。 解析の結果、飲酒習慣のある人ではその習慣のない人に比べて、1日の平均飲酒量が多いほど、肝臓関連死亡リスクが高いことが示された(1日1ドリンク〔アルコール換算で約14g〕多いごとの交絡因子調整後の部分分布ハザード比〔aSHR〕が、男性は1.04〔95%信頼区間1.01~1.06〕、女性は1.08〔同1.04~1.12〕)。また、短時間大量飲酒者(男性は2時間で5ドリンク以上、女性は同4ドリンク以上の飲酒)も、男性は約1.5倍、女性は約2.5倍、肝臓関連死亡のリスクが高かった(aSHRが男性は1.52〔1.04~2.29〕、女性は2.52〔1.44~4.41〕)。 一方、飲酒習慣があっても健康的な食習慣の場合(HEIという指標の上位4分の1)、非健康的な食習慣の人(HEIの下位4分の1)に比べて肝臓関連死亡リスクが65~86%低かった(aSHRが非大量飲酒者〔男性は1日4ドリンク以下、女性は3ドリンク以下〕では0.35〔0.13~0.90〕、大量飲酒者〔前記の基準を超過〕では0.14〔0.04~0.82〕)、短時間大量飲酒者では0.16〔0.06~0.46〕)。 同様に、飲酒習慣があっても運動の習慣がある場合(週に中強度の運動を5回以上、または高強度の運動を3回以上)、運動習慣がない人に比べて肝臓関連死亡リスクが36~69%低かった(aSHRが非大量飲酒者では0.52〔0.28~0.94〕、大量飲酒者では0.64〔0.35~0.99〕)、短時間大量飲酒者では0.31〔0.10~0.88〕)。 このほかに、野菜や果物、全粒穀物、魚介類、植物性タンパク質、不飽和脂肪酸を多く含み、固形の脂肪、アルコール、添加糖が少ない食事スタイルは、死亡リスクの低さと関連していることが分かった。また、性別で比較した場合、健康的な食習慣や運動習慣による肝臓関連死亡リスクの抑制は、男性よりも女性でより強く認められた。 Chalasani氏は、「われわれの研究のユニークな点は、米国の一般人口において、習慣的な飲酒量と短時間大量飲酒という異なる二つの飲酒パターンが肝臓関連死亡リスクに及ぼす影響と、健康的な食事と運動によるそのリスクの緩和効果を同時に評価できることだ。これにより、飲酒がもたらす肝臓へのリスクとライフスタイルとの関連について、詳細かつ包括的な把握を可能にしている」と述べている。

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成人の心血管疾患患者は一般的な感染症のワクチンを接種すべき/ACC

 米国心臓病学会(ACC)が、心血管疾患の成人患者における予防接種に関する専門家のコンセンサス声明である「2025 Concise Clinical Guidance: An ACC Expert Consensus Statement on Adult Immunizations as Part of Cardiovascular Care(2025年簡潔版臨床ガイダンス:心血管ケアの一環としての成人予防接種に関するACC専門家コンセンサス声明)」を作成し、「Journal of the American College of Cardiology」に8月26日公表した。声明では、心血管疾患患者が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、インフルエンザ、RSウイルス感染症などの一般的な感染症を予防するワクチンを接種することの重要性が強調されている。 ACCの新ガイドライン作成委員会委員長を務めた米スタンフォード大学医学部のPaul Heidenreich氏は、「心血管疾患患者にとって、呼吸器感染症やその他の重篤な疾患に対するワクチン接種は極めて重要だ。しかし、人々が接種すべきワクチンの種類や頻度、接種することの重要性を十分に理解できるようにするには、いくつかの障壁がある」とACCのニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「本ガイドラインを通して、われわれは、臨床医がこれらの内容について患者と話し合い、標準的な予防・治療計画の一環として患者自身がワクチン接種を管理できるよう支援することを促したいと考えている」と付け加えている。 本声明は、トランプ政権により国のワクチン接種システムの抜本的な再構築が行われている中で発表された。特に新型コロナワクチンに関しては、接種が推奨される人を限定するなど、政権の厳しい監視下に置かれている。 声明によると、心血管疾患患者は呼吸器系ウイルスへの感染による影響を受けやすく、重症化、入院、死亡のリスクが高いという。研究では、ワクチンがこうしたリスクの低減に非常に効果的であることが示されている。しかしACCによれば、プライマリケア医のうち、診察時に患者のワクチン接種状況を評価しているのはわずか30%だという。 ガイドラインでは、以下のことが推奨されている。・心血管疾患患者を含む全ての成人は、心血管イベントや死亡のリスクを減らすために、毎年インフルエンザワクチンを接種すること。・心疾患を患う19歳以上の成人は、肺炎や菌血症、髄膜炎などの予防とそれらの疾患を原因とする入院や死亡を防ぐために、1回接種型の肺炎球菌ワクチンを接種すること。 ・COVID-19の重症化、死亡、心筋梗塞、心筋炎、脳卒中、心房細動、long COVIDのリスクを軽減するために、新型コロナワクチンを接種すること。・心血管疾患のある50~74歳の成人、および75歳以上の全ての成人は、RSウイルス感染症予防のためにRSウイルスワクチンを1回接種すること。・心血管疾患のある成人は帯状疱疹の発症リスクが高い可能性があるため、50歳以上の成人は脳卒中や心筋梗塞を予防するために帯状疱疹ワクチンを2回接種すること。 声明では、心筋炎が新型コロナワクチン接種のまれな副作用として報告されていることに言及しているが、ワクチンにより心筋炎を発症するリスクは、COVID-19罹患により発症するリスクよりも低いことを指摘している。 さらに声明には、「心血管疾患患者が一度に複数のワクチンを接種しても危険はなく、実際には、複数のワクチンを同日に接種することで効率性が向上する可能性がある。ただし、2種類の肺炎球菌ワクチンの接種が必要な人は、同時に接種してはならない」と記述されている。

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慢性疼痛への医療用大麻、患者の期待に応えられていない?

 慢性的な筋肉痛や関節痛に対して医療用大麻を処方された人の多くが1年以内にその使用をやめていたことが、新たな小規模研究で明らかにされた。米ペンシルベニア州で医療用大麻の使用が認められた患者78人のうち約58%が1年以内に治療を中止していたことが示されたという。米トーマス・ジェファーソン大学のAsif Ilyas氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に8月7日掲載された。 このような高い離脱率は、「医療用大麻が、関心を集めて広く採用されているにもかかわらず、多くの慢性疼痛患者の期待に応えられていないことを示している」とIlyas氏は述べている。 この研究でIlyas氏らは、2022年10月から2024年12月の間にフィラデルフィアのロスマン整形外科研究所で治療を受け、筋骨格系の疼痛に対して医療用大麻が処方された患者78人を2年間追跡し、医療用大麻からの離脱率や離脱に影響する因子について検討した。離脱率は、医療用大麻の使用開始から3カ月後と1年後の追跡時に調査された。 その結果、医療用大麻使用開始1年後の離脱率は57.9%であり、44.7%は使用開始から3カ月以内に離脱していたことが明らかになった。また、治療継続群の平均年齢は64.5歳であったのに対し、離脱群の平均年齢は71.5歳と年齢が高く、両群の年齢差は有意であった。この結果から研究グループは、「高齢者は長期的な影響への懸念や、従来の治療法を好む傾向があることから、医療用大麻などの代替療法の使用に慎重になる可能性がある」と推察している。 一方、痛みの原因による群間差は有意ではなかった。ただし、離脱群では腰痛患者の割合がやや高かった。さらに医療用大麻の使用開始前の身体的健康、および精神的健康の評価スコアについて、使用継続群と離脱群の間で有意な差は認められなかった。 こうした結果を受けてIlyas氏らは、患者が医療用大麻の使用を中止した背景には、治療に対する満足度の低さや副作用の忌避、注射や手術などのより実績のある治療法の選択など、さまざまな理由が複雑に絡み合っている可能性が高いと述べている。同氏らは、「これらの結果は、慢性疼痛患者では医療用大麻を用いた治療に対する反応がさまざまであることを示した過去の研究結果と一致している。痛みが著しく緩和したことを報告した患者がいる一方で、十分な治療効果が得られず、早期に治療を中止する患者がいる」と述べている。 本研究の限界点としてIlyas氏らは、患者が使用した大麻製品の種類に関する詳細や、機能や痛みの改善に関するデータを収集していなかったことを挙げている。その上で同氏らは、「本研究結果は、医療用大麻が一部の患者に利益をもたらす可能性がある一方で、疼痛管理や患者満足度に及ぼす長期的な影響や治療遵守に影響する要因をより深く理解するためには、さらなる研究が必要であることを示唆している」と述べている。

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長らく日の目を見なかったアミリンが抗肥満薬として復活した(解説:住谷哲氏)

 アミリン(amylin)、別名膵島アミロイドポリペプチド(islet amyloid polypeptide:IAPP)は、インスリンと同時に膵β細胞から分泌されるホルモンである。アミリンには消化管運動調節作用があり食後の血糖上昇を抑制することから、すでに20年前にアミリンアナログであるpramlintideが商品名SymlinとしてFDAに血糖降下薬として承認されている(日本では未承認)。しかしpramlintideは半減期が短く、1日3回の注射が必要であるためほとんど使用されていない。 アミリンは当初から食欲中枢に作用して食欲を低下させることが知られていた1)。そこでアミリンの分子構造を変化させることで週1回投与を可能にしたcagrilintideが抗肥満薬として開発された。プラセボと比較した第II相試験では、cagrilintide 2.4mgはプラセボと比較して9.7%の体重減少をもたらした2)。さらに本試験の前段階である第Ib相の臨床試験において、cagrilintide 2.4mg+セマグルチド2.4mg(CagriSema)の投与は17.1%の体重減少をもたらすことが報告されている3)。 本論文は2型糖尿病を合併していない肥満患者に対するCagriSemaの体重減少作用をプラセボおよびcagrilintide、セマグルチドそれぞれ単剤と比較した第IIIa相試験の報告である(2型糖尿病合併肥満患者に対する試験はREDEFINE 2として同誌に同時掲載されている)。その結果はCagriSemaの最大投与量2.4mgで53.6%の患者に20%以上の体重減少が認められた。この結果は、CagriSemaがGLP-1受容体作動薬を含めた抗肥満薬のなかでは最も強力であることを示している。有害事象もcagrilintideとセマグルチド単剤と同様に消化器症状が中心であり、CagriSemaによる新たな有害事象は認められなかった。唯一の懸念材料はCagriSema群で2例の死亡があり、そのうち1例が自殺とされている点である。 わが国では現在セマグルチド(商品名:ウゴービ)およびチルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)が抗肥満薬として使用可能である。随時服用可能な経口GLP-1受容体作動薬であるorforglipronも近々抗肥満薬として承認申請予定であり、GIP/GLP-1/Glucagonのトリプルアゴニストであるretatrutideも抗肥満薬として遠からず申請されると思われる。まさに抗肥満薬の百花繚乱時代であるが、専門医としては体重減少の先にある臨床アウトカムの改善を見据えて、適切な薬剤を適切な患者に選択するという基本を忘れてはならない。

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第279回 ワクチン有効性の今、3つの論文から考察

INDEX2023年10月~24年8月に検査した60歳以上の入院予防効果2023年10月~24年4月の18歳以上対象の入院予防効果XBB.1.5対応型の組換えタンパクワクチンによる中和抗体価感染症法上の5類移行後、これまでの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の動向について、前々回は感染者数、入院者数、死亡者数の観点からまとめ、前回は流行ウイルス株とこれに対抗するワクチンの変遷(有効性ではなく規格などの変遷)について紹介した。今回は文字数の関係でワクチンの有効性について比較的大規模に検証された最近のデータを複数紹介し、治療薬についてはさらに次回に譲ることにする。2023年10月~24年8月に検査した60歳以上の入院予防効果オミクロン株系統になってから新型コロナワクチンの感染予防、発症予防効果が低下していると言われているが、今から取り上げる研究を見ると、入院予防効果もやや低下しているのが現実である。PLOS One誌に2025年6月に発表されたカナダ・ケベック州保健研究所のグループによる同州の急性期病院で新型コロナの症状により検査を受けた60歳以上を対象に行われたtest-negative designの症例対照研究1)を参照したい。主要評価項目としてXBB.1.5対応型mRNAワクチンによる入院予防効果とその効果持続性を評価している。PLOS One誌という学術誌にネガティブな評価もあることは承知しているが、この研究の特徴は研究期間中に流行ウイルス系統がXBB系統、JN.1系統、KP.2/3系統と変化し、各期間の入院予防効果も算出している点である。test-positive症例数はXBB系統期(1,321例)、JN.1系統期(1,838例)、KP系統期(1,372例)など計5,532例、test-negative対照は10万8,473例(各系統期は順に1万2,881例、5万3,414例、2万8,595例ほか)。全期間を通じたXBB.1.5ワクチンの入院予防効果の有効率は30%(95%信頼区間[CI]:24~35)、XBB系統優勢期が54%(同:46~62)、JN.1系統優勢期が23%(同:13~32)、KP.2/3系統優勢期が0%(同:-18~15)である。JN.1系統から大きく有効性が低下しているが、これはXBB系統とJN.1系統(KP系統はこの子孫株)で大きくウイルスの系統が異なっていることからほぼ説明できるだろう。ちなみに論文内ではハイブリッド免疫(感染+ワクチン)では、JN系統期であっても有効率は41%と高くなる傾向があることも言及している。ちなみにワクチン接種からの経時的有効性の変化では、接種1〜2ヵ月後が最大(XBB系統期::55%、JN系統期:23%、KP系統期:60%)で、3ヵ月後以降は急速に低下し、4ヵ月以降の有効性はほぼ消失しているという結果だ。ただ、より批判的に見れば、この研究期間ではワクチンに最も適応したXBB系統期が期間中の最初の1~2ヵ月のみで、その後、JN系統期に移行しているため、ワクチン対応ウイルス株が流行株とほぼ一致していた場合の有効性の低下速度も同じくらい早いかは厳密な意味で判定はできないだろう。また、この結果は、純粋に臨床的見地から流行を抑え込もうとした場合、現在の日本の定期接種のような季節性的な対応でワクチン株を選定していては対応しきれない可能性も示唆している。2023年10月~24年4月の18歳以上対象の入院予防効果一方、Lancet eClinicalMedicine誌に掲載されたXBB.1.5対応ファイザー製1価ワクチンの欧州4ヵ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、スペイン)でのリアルワールドデータを用いたJN.1株に対するtest-negative designの症例対照研究2)による入院予防効果を評価した研究も紹介する。前述の研究とやや似たようなセッティングだが、こちらは対象者が18歳以上のSARI(重症急性呼吸器感染症)で入院した患者3万8,094例を対象に、JN.1変異株に感染、またはJN.1優勢期間中の陽性患者(test-positive群)4,776例と陰性患者(test-negative群)3万3,318例で、ワクチン接種の有無(両群のワクチン接種者合計7,847例)を基に入院予防効果の有効率を算出したものだ。その結果、研究期間中の全体の有効率は53.8%(95%CI:38.4~65.4)。接種後の週数別の有効率は2〜4週未満が52.2%、4〜8週未満が48.9%、8〜12週未満が56.9%、12〜16週未満が54.6%、16〜22週未満が59.5%だった。この研究では5ヵ月間にわたり有効性の低下は認められず、前述のカナダの研究とかなり違う。もっとも試験デザインを見ると対象年齢が大きく異なる。ちなみに論文中では年齢別の有効率も示されており、それによると、18~64歳が56.5%、65~79歳が62.5%、80歳以上が48.8%だった。この2つの研究における入院の定義は後者がより厳格であるが、実はこの後者の研究の筆頭著者がファイザー社の社員であることも考慮に入れたほうが良いかもしれない。ただ、有効性の違いはあるにせよ、致死的になりやすい高齢者で一定の入院予防効果は認められるとは言えるだろう。XBB.1.5対応型の組換えタンパクワクチンによる中和抗体価一方、2023年以降のオミクロン株系統での組換えタンパクワクチンの臨床的な有効性を示す信頼性の高そうな研究論文は少なくとも私が検索した限りでは見つけられなかった。結局、世界的に新型コロナワクチン接種の主流はmRNAワクチンになっているため、十分な症例数を集めることができないのが現実なのだろう。XBB系統以降の論文としては、2025年5月に開発元である米・ノババックス社の研究者を筆頭著者としたLancet Infectious Disease誌掲載のXBB.1.5対応型ワクチンの免疫原性を調べた第II/III相単群試験による研究3)がある。この研究は米国国内30施設で、過去3回以上のmRNAワクチン接種経験がある18歳以上の健常成人332人を対象にXBB.1.5対応型ワクチンを追加接種し、別の試験で起源株対応の同ワクチンを接種した人とXBB.1.5株に対する中和抗体価(幾何平均抗体価:GMT)を比較したもの。それによると、XBB.1.5に対する中和抗体GMTは、XBB.1.5株対応ワクチン接種者が905.9で、対照群が156.6。GMT比は5.8倍で優越性が確認されたという結果である。さて、次回はようやく治療薬の現状について触れたい。 1) Carazo S, et al. PLoS One. 2025;20:e0325269. 2) Nguyen JL, et al. EClinicalMedicine. 2024;79:102995. 3) Alves K, et al. Lancet Infect Dis. 2025;25:585-594.

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キャリアに合わせてお金も育てる! 医師のための時短資産形成術【医師のためのお金の話】第96回

医師としてのキャリアは、勤務医、開業医、フリーランスと多様であり、その選択は人生設計や資産形成に大きな影響を与えます。勤務医は比較的安定した収入があるものの、異動によって収入やライフスタイルが変化する可能性があります。開業医は高収入の可能性がある一方で、開業資金や経営リスクと常に向き合う必要があります。フリーランス医師は複数の職場で働くことで収入を得られますが、安定性や社会保障面に不安を感じる人も少なくありません。このように、医師のキャリア選択は資産形成と密接に関係しており、将来を見据えた戦略的なマネープランが必要不可欠です。たとえば、自動積立投資を活用すれば、毎月決まった金額を投資信託や株式に自動的に投資でき、運用の手間を大幅に軽減できます。さらに、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度は、少額から始められるうえに長期的な資産形成に非常に有効です。ロボアドバイザーを使えば、専門知識がなくてもAIが自動で資産配分を行ってくれるため、分散投資を手軽に実践できます。資産形成において最も重要なのは「続けること」であり、仕組み化と習慣化が成功の鍵を握ります。忙しい医師にとっても、資産形成は実現不可能なものではありません。キャリアと資産形成を両立させたいと考える皆さんと考えてみましょう。医師のキャリアパスと資産形成の関係医師のキャリアにはさまざまな選択肢がありますが、大きく分けると勤務医、開業医、フリーランス医師という3つのパターンでしょう。勤務医は安定した給与収入が見込めますが、勤務先の異動や昇進によって収入やライフスタイルが大きく変わる可能性があります。たとえば、大学病院から市中病院への異動や、院内でのポジションの変化など、キャリアの節目ごとに経済状況が変動することも少なくありません。将来的に開業を目指す場合には、開業資金や運転資金の準備が必要となり、資産形成の計画性がより求められます。一方、開業医は自院の経営状況によって収入が大きく左右されます。経営が順調であれば高収入を得られますが、初期投資や運転資金の確保、さらには事業リスクへの備えが欠かせません。経済的な浮き沈みが激しい分、資産を守るためのリスク管理も重要になります。フリーランス医師の場合は、複数の医療機関で働くことで高い収入を得ることができますが、収入の安定性や社会保障面での不安も付きまといます。自分自身で将来の備えをしっかりと行う必要があり、資産形成の意識がより強く求められます。このように、医師のキャリアの選択は、資産形成の方法やリスク許容度に大きな影響を与えます。自分がどのキャリアパスを歩むのか、将来的にどのような働き方を目指すのかを見据えた上で、適切な資産形成の戦略を立てることが大切なのです。忙しい医師のための「時短」資産運用術一方、資産形成の必要性は理解しているけれど、忙しくて手が回らないと感じている医師は多いのではないでしょうか。そんな方にお勧めしたいのが、効率的に資産形成を進めるための「時短」資産運用術です。最も手軽に始められるのが自動積立投資です。証券会社や銀行が提供する自動積立サービスを利用すれば、毎月決まった金額を投資信託や株式に自動的に投資でき、最初に設定してしまえばあとはほとんど手間がかかりません。また、NISAのつみたて投資枠やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、少額から始められ、かつ税制優遇も受けられる制度を活用するのも有効です。忙しい医師にとって、「ほったらかし」で資産を増やす仕組みと言えるでしょう。ちなみに、私の「時短」資産運用術はBuy & Holdです。2009年以来、株式を売却したことがありませんが、すでに運用資産は10億円近くになっています。下落時に買い出動するだけなので、忙しくても最小限の手間で効率的に運用できるのが大きな魅力です。一方、不動産投資はどうでしょうか。不動産投資の敷居が高いのは事実です。私の経験では、学位を取得するのと同じぐらいハードルが高かったです。しかし、不動産投資が軌道に乗ると、自動運転も可能になります。自験例では、鉄板エリアの1棟マンションに始まり、旧帝国大学附属病院前のコンビニ、ミシュラン掲載店、多数の戸建物件のおかげで、数千万円の手残りキャッシュフローを得ています。実労働は年間たった数時間。まさに究極の「時短」資産運用ではないでしょうか。忙しくても続けられる資産管理のコツもちろん一足飛びに、寝ているだけで年間数千万円が入ってくる状態にはなりません。資産形成は「続けること」に意味があります。忙しい医師でも無理なく資産管理を続けるためには、仕組み化と習慣化がポイントです。たとえば、年に一度、確定申告のタイミングで資産状況をチェックする習慣を持つと、無理なく定期的な見直しができます。また、給与天引きや自動積立による「先取り貯蓄」を徹底することで、使いすぎを防ぎ、自然と資産が増えていきます。情報収集も通勤時間や隙間時間を活用すれば、無理なく最新の資産運用情報を得ることができます。さらに、医師同士の資産形成コミュニティや勉強会で情報交換を行うことで、モチベーションを維持しやすくなります。医師のキャリアと資産形成は、両立が難しいようでいて、工夫次第で十分実現可能です。忙しいからこそ「仕組み化」と「習慣化」を意識して、将来の安心と自己実現のために、今日から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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ChatGPTで場面別の英会話を練習する【タイパ時代のAI英語革命】第5回

ChatGPTで場面別の英会話を練習する国際学会への参加、海外の医療機関での研修、あるいは外国人の患者との雑談など、医師が英語を必要とする場面は、医療現場だけに限りません。空港での手続き、レストランでの注文、ホテルでのリクエストといった日常的な場面での円滑なコミュニケーションもまた、海外での経験をより豊かで実りあるものにするために不可欠です。しかし、こうした特定の場面で使われる独特の語彙や表現を、網羅的に学習するのは容易ではありません。旅行英会話集の書籍は画一的な内容で、必ずしも自分の状況に完全に一致するわけではありませんし、分厚い単語帳を最初から覚えていくのも忙しい医師にとって現実的ではありません。そこで活用するべきなのが生成AIです。ユーザーの要求に応じ、個々の「場面」を想定した、自分だけのオーダーメイドの単語・表現集を作成することができます。AIに「場面」を指定して、自分だけの単語帳を作る使い方は非常にシンプルです。自分が英語表現を知りたい「場面」を具体的に指定し、単語やフレーズをリストアップしてもらうだけです。たとえば、「(場面)でよく使われる英単語と英語表現を○個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」などと入力すれば、オリジナルの単語帳や表現リストを作成することができます。プロンプト例1「米国の国際学会に参加します。空港の入国審査でよく使われる英語表現を5個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」回答例回答例画像を拡大するこれらの基本的な表現は、自然と英語が出てくるようになるまで何度も声に出して練習することで身に付きます。簡単な旅行英会話であれば問題なく話せるものの、複雑な内容になるとわからなくなる…という場合は、プロンプトに「難しい」や「日本人になじみのない」などといった表現を加えることで、難易度を調整できます。プロンプト例2「米国のホテルのチェックインでよく使われる英語表現の中で、日本人になじみのない、やや難しい英語表現を5個、日本語訳と一緒にリストアップしてください」回答例回答例画像を拡大する実際の場面を想定してこれらの英語表現に慣れておくことで、現場でスムーズ&スマートに対応できるでしょう。

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フルーツジュースの適度な摂取が糖尿病リスクを減らす/東京科学大

 フルーツジュースは、2型糖尿病とどのように関連するのであろうか。このテーマについて、東京科学大学大学院医歯学総合研究科の河原 智樹氏らの研究グループは、国内13の大学や病院が参加する大規模調査「J-MICC研究」に登録された1万3,769人分のデータを用い、フルーツジュースを飲む頻度と2型糖尿病との関連を調査した。その結果、遺伝的リスクが高い人ほど、適度にフルーツジュースを飲むことで糖尿病にかかりにくくなるという結果が判明した。この研究結果は、British Journal of Nutrition誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。フルーツジュースが糖尿病の予防になる可能性 研究グループは、2型糖尿病の多遺伝子リスクスコア(PRS)に基づいて、フルーツジュースと2型糖尿病の関連性について、異なる遺伝的リスクを有する群において、フルーツジュースが2型糖尿病のリスクに異なる影響を与えるかどうかを検討した。日本人1万3,769人を対象とした横断研究である日本多施設共同コホート研究(J-MICC)のデータを使用した。 主な曝露因子はフルーツジュースの摂取頻度で「飲まない/1日1杯未満または1日1杯以上」と分類した。2型糖尿病のPRSとして、東アジアの集団を用いて開発されたPGS002379を選択した。主要なアウトカムは、参加者が報告した医師の診断に基づく2型糖尿病とした。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病のPRSが高い群では、フルーツジュースの摂取と2型糖尿病の間に有意な逆相関が認められた(1日1杯未満でオッズ比[OR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、1日1杯超でOR:0.54、95%CI:0.30~0.96)。・しかし、この関連はPRSが低い群では認められなかった。・フルーツジュースの摂取は、とくに遺伝的に2型糖尿病の高いリスク群で、2型糖尿病と逆相関していた。

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治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール併用vs.rTMS併用vs.SNRI切り替え

 米国・ハーバード大学のClotilde Guidetti氏らは、治療抵抗性うつ病患者を対象に、アリピプラゾールまたは反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による抗うつ薬の増強とベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替えが生活の質(QOL)に及ぼす影響を比較するため、多施設共同非盲検有効性比較試験であるASCERTAIN-TRD研究の副次解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年8月11日号の報告。 事前に指定した副次解析において、治療抵抗性うつ病患者をアリピプラゾール増強群、rTMS増強群、ベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替え群に1:1:1でランダムに割り付け、8週間の治療を行った。治療抵抗性うつ病の定義は、マサチューセッツ総合病院の抗うつ薬治療反応質問票に基づき、適切な用量および期間の抗うつ薬治療を2回以上実施しても十分な治療反応が得られなかった場合とした。QOL評価は、本研究の主要な副次的評価項目として事前に設定されており、Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire(Q-LES-Q-SF)短縮版を用いて評価した。反復測定を用いた混合効果モデルにより分析した。本研究は、2017年7月13日〜2021年12月22日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン後の1回以上のQ-LES-Q-SF測定を行った治療抵抗性うつ病患者258例において、アリピプラゾール増強群は、切り替え群と比較し、QOLの優位性が認められたが(p=0.002)、rTMS増強群では認められなかった(p=0.326)。・エンドポイントにおけるQ-LES-Q-SFスコアのベースラインからの変化は、アリピプラゾール増強群で10.61±1.0、rTMS増強療法で11.59±1.1、切り替え群で8.68±0.9であった。 著者らは「rTMS群のサンプル数が予想よりも少なかったため、統計学的に有意な差が認められなかった可能性がある」としながらも「治療抵抗性うつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法は、rTMS増強療法と異なり、ベンラファキシン徐放性/デュロキセチンへの切り替えよりもQOLを有意に改善することが示された」と結論付けている。

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