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働き盛り世代の心房細動が腎機能低下の加速と関連/京大

 日本の就労世代を対象とした全国規模のコホート研究において、新規に確認された心房細動(AF)は、eGFR低下の加速およびeGFRが30%以上低下するリスクの増加と関連していたことを、京都大学の森 雄一郎氏らが示した。JAMA Network Open誌2026年5月14日号掲載の報告。 AFは心不全や慢性腎臓病(CKD)の合併症としてよく知られているが、就労世代の成人では単独の所見として健康診断で偶然見つかることもある。若年~中年層のAFは将来的な心不全リスク上昇と関連することが知られている一方、その後の腎機能低下と関連するかどうかは明らかになっていない。そこで研究グループは、就労世代におけるAF確認後の腎機能推移を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。 研究では、2015年4月1日~2023年3月31日の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康診断記録(心電図およびeGFR)と保険請求データを用いた。対象は、ベースライン時に洞調律で、AFや心血管疾患、末期腎不全の既往歴のない35~59歳の健康診断受診者であった。その後約1年間の外来受診歴および次回健診時の心電図所見から新たにAFが確認された個人を、確認されなかった個人と1対5で傾向スコアマッチングした。主要アウトカムは線形混合効果モデルを用いて推定したeGFRの年間低下率、副次アウトカムはCox比例ハザードモデルを用いて評価したeGFRの30%以上の低下とした。参加者を、全死因死亡イベント、腎代替療法開始、保険資格喪失、2023年3月31日のうち最も早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。●解析対象は、マッチング後の14万1,060例(新規AF群2万3,510例、非AF群11万7,550例)であった。平均年齢49.8歳、男性81.8%、追跡期間中央値4.73年。●新規AF群では、非AF群と比較してeGFRの年間低下率が有意に大きかった。 ・新規AF群 -1.23mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-1.26~-1.21) ・非AF群 -0.94mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.95~-0.93) ・群間差 -0.29mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.32~-0.26)(p<0.001)●AF確認前のeGFR低下は両群ともに-0.99mL/分/1.73m2/年であり、AF確認後に腎機能低下が加速した可能性が示唆された。●新規AFは、eGFRが30%以上低下するリスク増加と関連していた(ハザード比:2.91、95%CI:2.72~3.11、p<0.001)。●7年時点でのeGFRの30%以上低下の累積発生率は、新規AF群で11.0%(95%CI:10.2~11.7)、非AF群で4.9%(95%CI:4.7~5.2)であった。●女性および糖尿病患者ではAF確認後のeGFR低下がさらに顕著であった。一方、ベースラインの蛋白尿の有無による有意な交互作用は認められず、蛋白尿の有無にかかわらず同様にeGFRが低下していた。●その後の健康診断でもAFが再確認された群は、洞調律へ復帰していた群と比較してeGFR年間低下率が有意に大きかった(-1.55 vs.-1.15mL/分/1.73m2/年、p<0.001)。 研究グループは「これらの結果は、就労世代のAF管理では腎機能も重要であることを示唆している。AFがCKD進行に及ぼす累積的な影響やAF治療による腎保護効果についてはさらなる研究が必要」としている。

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日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。肝がん・胃がんは日本の成功事例 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。乳がん・肺がんでも改善が緩やか 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。一部のがんでは予防を強化する必要性 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

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うつ病予防に最適な年齢別の睡眠時間が判明

 睡眠時間の短縮は、青年期のうつ病と関連していることが報告されている。しかし、明確な用量反応関係や年齢別のリスク閾値に関しては、依然として十分に解明されていない。中国・皖南医科大学第一附属医院のWei Cheng氏らは、この関連性を明らかにするため、代表的なサンプルを用いて、発達段階に応じた最適な睡眠時間を特定することを試みた。Frontiers in Pediatrics誌2026年3月27日号の報告。 対象は、2020~23年の全米児童健康調査(NSCH)の横断データより抽出した6~17歳の青年12万6,407例。保護者による睡眠時間の報告は、制限付き3次スプラインを用いた連続変数およびカテゴリー変数としてモデル化した。現在の抑うつ状態は、保護者による臨床医の診断報告に基づいて定義した。社会人口統計学的因子および健康関連因子で調整した後、調査データに基づくロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・睡眠時間と抑うつリスクの間には、強い非線形逆相関が認められた(p-non-linearity<0.001)。・用量反応曲線は、6~9歳では約10時間、10~13歳男子では約8.5時間、14~17歳では約8.3時間でプラトーに達した。・これらの閾値までの睡眠時間が1時間増加するごとに、抑うつリスクは有意に低下した。・この関連性は、非ADHD児、健康状態の良好な子供、女性において最も強かった(p-interaction<0.05)。・検討した因子(世帯収入、保護者の精神健康状態、子供の健康状態、ADHD診断、保護者の教育レベル)を介した媒介効果は、全体の効果の4%未満であった。 著者らは「抑うつリスクに対する保護効果がプラトーに達する発達段階特有の睡眠閾値が明らかとなった。本結果は、小児集団における年齢別睡眠推奨事項およびメンタルヘルススクリーニング戦略のための実証的な基準値となりうる」としている。

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過体重・高齢の持続性AFの減量、重症度スコア改善につながらず/JAMA

 過体重を呈する持続性心房細動(AF)の高齢患者では、低カロリー食と行動支援プログラムを併用した介入は、安全上の懸念なく有意かつ持続的な体重減少をもたらすが、AF症状の重症度・負担や心臓リモデリング、追加のリズムコントロール介入の必要性には影響を及ぼさないことを、英国・オックスフォード大学のMatteo Sclafani氏らが、「LOSE-AF試験」の結果で示した。過体重はAFの強力なリスク因子であり、欧米の診療ガイドラインでは、肥満とAFを併発するすべての患者に対して減量が推奨されている。一方、既存のエビデンスは比較的若年のAF患者(平均年齢約60歳)に基づくものであり、より高齢の患者では、減量はサルコペニアやフレイルを招く恐れがあるため治療的価値が制限される可能性が示唆されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月20日号で報告された。英国の研究者主導型無作為化試験 LOSE-AF試験は、英国の2施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]などの助成を受けた)。2018年11月~2025年4月に、年齢60~85歳、BMI値27以上で、持続性AFと診断され、直流カルディオバージョン(DCCV)が適応の患者118例(平均年齢68[SD 6]歳、女性33%)を登録した。 被験者を、8ヵ月間の低カロリー食と行動支援プログラムを受ける群(介入群、59例)、または通常治療を受ける群(対照群、59例)に無作為に割り付けた。 ベースラインの平均体重は、介入群103.2(SD 16.2)kg、対照群101.9(16.8)kg、BMI値はそれぞれ34.6(SD 4.8)および34.1(5.4)、平均心拍数は78(SD 17)および76(15)拍/分、CHA2DS2VAScスコア中央値は2(四分位範囲[IQR]:2~3)点および2(1~3)点であった。 また、DCCV治療歴のある患者は、介入群47%および対照群27%、AFアブレーション治療歴のある患者はそれぞれ20%および17%であり、AF罹患期間中央値は9.6(IQR:4.2~54)ヵ月および13.1(5~49)ヵ月であった。 心房細動重症度尺度(AF Severity Scale:AFSS)の平均症状重症度スコア(0~35点、高スコアほど症状が重度)は介入群13.8(SD 5.9)点および対照群12.8(5.9)点、AFSSの平均症状負担スコア(3.25~30点、高スコアほどAF症状の全般的な負担が大きい)は24.4(SD 3.7)点および24.2(4.0)点だった。9.7%の減量、症状重症度に差はない 8ヵ月の時点で、ベースライン補正後平均体重は、介入群が92.6(SD 0.85)kgと対照群99.4(0.85)kgに対し有意に低かった(推定群間差:-6.9kg、95%信頼区間[CI]:-9.2~-4.5、 p<0.001)。体重減少率は、介入群が9.7%、対照群は3.1%であった(p<0.001)。 一方、この体重差にもかかわらず、主要アウトカムである8ヵ月時のAFSSの症状重症度スコア(臨床的に意義のある差は4点とした)のベースライン補正後平均値は、介入群が7.9(SE 0.84)点、対照群は8.9(0.84)点であり、両群間に有意差を認めなかった(群間差:-0.9点、95%CI:-3.3~1.4、p=0.43)。減量は有効な治療戦略ではない 8ヵ月時の身体機能検査(PPTスコア[0~36点、高スコアほど身体機能が良好]:介入群32.6[SE 0.44]点vs.対照群32.6[0.44]点、群間差:0点、95%CI:-1.2~1.2、p=0.99)と、AFSS症状負担スコア(15.8[1.08]点vs.15.0[1.08]点、群間差:0.8点、95%CI:-2.2~3.8、p=0.59)に関して両群間に有意な差はなく、心臓MRIパラメーターや血圧、脂質プロファイルの変化に関しても差を認めなかった。 また、追跡期間中のAF再発率(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.69~1.58、p=0.85)や、再DCCV(HR:0.64、95%CI:0.35~1.16、p=0.14)、再AFアブレーション(HR:1.00、95%CI:0.48~2.10、p>0.99)の施行率も両群で同程度であった。試験への参加に関連した重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「過体重の持続性AF高齢患者では、食事療法による適度な減量は有効な治療戦略ではなかった」としている。 また、「AFSSスコアは、主に心拍の状態に起因する症状の変化を捉えるよう設計されているため、AFの負担の変化とは関連のない、減量によるより広範な症状の改善効果を検出する感度は限定的であった可能性がある」と指摘している。

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabの有効性・安全性(ALIENTO・ARNASAより)/Lancet

 インターロイキン-33(IL-33)とその受容体ST2は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時に生じる好中球性および好酸球性の炎症に関与するとされる。イタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らALIENTO and ARNASA investigatorsは、2つの臨床試験「ALIENTO試験」「ARNASA試験」において、頻回の増悪歴を有するCOPD患者を対象に、2週ごとのastegolimab(ST2を介するIL-33の活性を阻害するヒト抗ST2 IgG2モノクローナル抗体)投与の有用性を評価し、ALIENTO試験ではプラセボと比較して年間増悪発生率が有意に低下し、ARNASA試験でも効果の大きさは同等であったが統計学的有意性は示されなかったことを報告した。Lancet誌2026年5月23日号掲載の報告。第IIb相と第III相の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COPD治療におけるastegolimabの有効性と安全性の評価を目的に、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相ALIENTO試験[24ヵ国191施設]、第III相ARNASA試験[35ヵ国319施設])を行った(GenentechとF. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、ALIENTO試験が年齢40~90歳、ARNASA試験は40~80歳で、COPDと診断され、頻回の増悪歴(中等度または重度の増悪が年2回以上)を有し、試験開始時の診療ガイドラインに基づき最適化された2剤または3剤による吸入維持療法(ICS+LABA、LAMA+LABA、ICS+LAMA+LABA)を受けている患者とした。ベースラインの血中好酸球数は問わなかった。 被験者を、最適化された吸入維持療法に加えて、astegolimab 476mgを2週または4週ごとに皮下投与する群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週間であった。 主要エンドポイントは、52週時点の、1回以上の試験薬の投与を受けた患者における中等度または重度の増悪の年換算発生率とした。重度増悪が減少する可能性も ALIENTO試験では、2021年10月~2024年2月に1,301例(年齢中央値67.0歳[四分位範囲[IQR]:41.0~90.0]、女性44.1%、astegolimabの2週ごと投与群433例、4週ごと投与群437例、プラセボ群431例)を、ARNASA試験では、2023年1月~2024年6月に1,375例(67.0歳[IQR:40.0~81.0]、35.6%、459例、459例、457例)を登録した。 プラセボ群との比較における年間増悪発生率の補正後率比(RR)は、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、p=0.049)と有意に優れたが、4週ごと投与群では0.93(95%CI:0.79~1.10、p=0.38)であり有意ではなかった。 一方、ARNASA試験では、astegolimab 2週ごと投与群のRRは0.85(95%CI:0.72~1.01、p=0.068)とALIENTO試験と同じ値を示したものの統計学的有意差はなく、同4週ごと投与群では0.82(95%CI:0.70~0.98、p=0.024)と有意差を認めた。 また、重度増悪(24時間以上の入院、死亡)の年間発生率の、プラセボ群と比較した補正後RRは、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.71(95%CI:0.49~1.05、p=0.088)、4週ごと投与群で0.78(95%CI:0.53~1.14、p=0.20)であり、ARNASA試験では、それぞれ0.67(95%CI:0.47~0.95、p=0.024)および0.83(95%CI:0.59~1.16、p=0.27)であった。上咽頭炎、上気道感染症が約10%で発現、選択肢が限られた患者で有用か 有害事象の発生率は治療群間で均衡しており、多くの参加者が1つ以上の有害事象を経験した(ALIENTO試験:1,301例中1,093例[84.0%]、ARNASA試験:1,375例中1,176例[85.5%])。試験からの脱落に至った有害事象は、ALIENTO試験で78例(6.0%)、ARNASA試験で59例(4.3%)に発生した。 ALIENTO試験で最も頻度の高かったCOPD以外の有害事象は上咽頭炎(134例[10.3%])であり、ARNASA試験では上気道感染症(146例[10.6%])であった。 死亡は、ALIENTO試験で40例(3.1%)、ARNASA試験で44例(3.2%)に認めた。両試験を通じて、合計3例(0.1%)の死亡が担当医により治療関連と判定された(ALIENTO試験の2週ごと投与群の1例[脳梗塞]、ARNASA試験の2週ごと投与群の2例[COVID-19、COPD])。 著者は、「これら2つの試験の知見を総合すると、症状が重度で臨床的負担が大きく、治療選択肢が限られているCOPD患者では、ST2/IL-33経路を標的とすることが、COPDの増悪の頻度を低減するうえで有用となる可能性が示唆される」としている。 また、「両試験の参加者は合わせて39ヵ国(日本を含む)の2,676例(21%が白人以外の人種)に上り、対象集団が広範にわたることから、さまざまな臨床的、生物学的な特性について検討することで、治療反応を示すサブグループの特定が可能と考えられる」と考察している。

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高リスクER+/HER2-早期乳がん、Prosignaで化学療法省略を判断できるか/ASCO2026

 エストロゲン受容体陽性/HER2陰性(ER+/HER2-)でリンパ節転移陽性例を中心とした早期乳がんに対し、Prosigna(PAM50)による再発リスク(Risk of Recurrence:ROR)スコアを用いることで化学療法の必要性を判断できるかどうかを検討した第III相OPTIMA試験の結果を、英国・NIHR University College London Hospitals Biomedical Research CentreのRobert C. Stein氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。本試験により、RORスコアが低い患者では化学療法を安全に省略できる可能性が示された。 化学療法の上乗せ効果を予測するために複数の多遺伝子アッセイが用いられているが、リンパ節転移陽性例や閉経前症例における最適な患者選択についてはなお議論がある。そこで研究グループは、Prosignaによる治療選択が、標準治療に対して5年時点における浸潤性乳がんのない生存期間(IBCFS)で非劣性を示すかどうかを検討した。 対象は、ER+(IHC>10%)/HER2-の早期乳がんで、腋窩リンパ節転移が0~9個(リンパ節転移陰性の場合は腫瘍径が30mm超)の40歳以上の女性および男性で、標準化学療法の後に内分泌療法を受ける群(C+ET群[内分泌療法後にProsignaも実施])と、Prosignaにより化学療法の要否を判断する群(Prosigna群)に1対1で無作為に割り付けられた。Prosigna群では、RORスコア60超(高リスク)の場合は標準化学療法の後に内分泌療法を実施し、RORスコア60以下(低リスク)の場合は化学療法を省略して内分泌療法のみを実施した。閉経前女性に対する内分泌療法には卵巣機能抑制が含まれた。 患者へのRORスコアは非開示とされ、化学療法が行われる理由(無作為化による割り付けかProsignaの結果に基づくものか)について、施設および患者は盲検化された。 主な結果は以下のとおり。・2017年1月~2025年12月に4,429例がランダム化された。非劣性解析は、事前に規定されたper-protocol集団で実施された(C+ET群の93.0%、Prosigna群の94.6%の患者が該当)。追跡期間中央値は4.0(IQR:2.0~6.0)年であった。・患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値56歳、閉経後62%、閉経前37%、男性1%であった。リンパ節転移状況は、pN0/pN1miが8%、pN1/pN1snが73%、pN2が19%であった。・RORスコア中央値は、C+ET群が50、Prosigna群が49であった。Prosigna群の67.8%がRORスコア60以下と判定され、化学療法を省略可能だった。C+ET群でRORスコア60以下だったのは66.0%であった。・乳がん再発は、C+ET群5.7%(低RORスコア群3.7%)およびProsigna群5.9%(同:4.2%)に生じ、低RORスコア集団では低かった。大半は遠隔転移であった。・全体における5年IBCFS率は、C+ET群91.8%(95%信頼区間[CI]:90.1~93.2)、Prosigna群90.3%(95%CI:88.5~91.8)であり、事前に設定された非劣性マージン3%に対して非劣性が示された(ハザード比[HR]:1.03[90%CI:0.85~1.25]、非劣性のp=0.006)。・低RORスコア集団における5年IBCFS率は、C+ET群の低RORスコア群94.8%(95%CI:93.1~96.1)、Prosigna群の低RORスコア群93.6%(95%CI:91.7~95.0)であり、事前に設定された非劣性マージン3.5%に対して非劣性が示された(HR:1.06[90%CI:0.80~1.40]、非劣性のp=0.003)。・全体における5年無遠隔再発率は、C+ET群94.1%(95%CI:92.7~95.3)、Prosigna群93.3%(95%CI:91.7~94.5)であった(HR:1.04[90%CI:0.83~1.30])。低RORスコア集団ではそれぞれ97.0%(95%CI:95.6~98.0)および96.0%(95%CI:94.5~97.1)であった(HR:1.17[90%CI:0.82~1.66])。・閉経状態、腫瘍径やリンパ節転移状態を含むサブグループ間でも同様の結果が得られた。 Stein氏は、「OPTIMA試験は、ER+/HER2-早期乳がんでRORスコアが60以下の患者では化学療法から得られるベネフィットがあったとしてもごくわずかであることを示した。結果は試験の全集団に適用されるが、卵巣機能抑制を受けた40歳以上の閉経前女性やリンパ節転移の多い患者、StageIIIAの患者において、Prosignaの結果に基づいた化学療法の決定を支援する可能性がある」とまとめた。

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GLP-1Rを介さず肥満を改善?GIPR/GCGR標的薬の可能性

 体重減少にGLP-1受容体(GLP-1R)作動薬は本当に必要なのか――人気の肥満症治療薬の前提となっている考え方の一つに疑問を投げかける、新たな減量アプローチに関する研究成果が報告された。マウスやラットを用いた初期段階のこの研究により、GLP-1Rではなく、GIPおよびグルカゴンの受容体(GIPR/GCGR)を標的とする薬剤でも、GLP-1Rと同等の体重減少効果が得られる可能性が示唆された。米インディアナ大学ブルーミントン校化学科のRichard DiMarchi氏らによるこの研究結果は、「Molecular Metabolism」に4月15日掲載された。 DiMarchi氏はSTAT Newsの取材に対し、「われわれはGLP-1Rの重要性に強くとらわれてきた」と語った。一方、この新アプローチは、GLP-1Rを標的にしていない。同氏は、「われわれは、これを引き算による足し算と呼んでいる。つまり、何かを取り除くことで、より良い結果が得られる可能性があるということだ」と説明している。 複数の受容体を標的とする多重作動薬は、肥満および2型糖尿病治療において高い有効性を示す薬剤クラスとして注目されている。例えばGIPR/GLP-1Rを標的とする二重作動薬であるチルゼパチドは、GLP-1R作動薬のセマグルチドと比較してより大きな体重減少効果を示している。さらに、レタトルチドのようなGIPR/GCGR/GLP-1R三重作動薬では、24%前後の体重減少が報告されている。一方で、GLP-1R作動薬は吐き気や嘔吐などの副作用を伴い、そのため使用可能な用量が制限されることがある。こうした背景から、GLP-1R作動薬を用いずに、GIPRおよびGCGRの活性化のみで肥満を改善できるかが検討されている。 本研究では、GIPR、GCGR、GLP-1Rの選択的作動薬、二重作動薬、および三重作動薬が、食餌誘導性肥満マウス(野生型およびGLP-1R欠損マウス)における体重および血糖制御に与える影響が評価された。 その結果、選択的GIPR作動薬と選択的GCGR作動薬を併用すると、肥満モデルマウスにおいて体重減少と血糖改善が認められた。また、GLP-1R/GIPR/GCGR三重作動薬のレタトルチド投与により、GLP-1R欠損肥満マウスの体重が正常化した。さらに、GIPR/GCGR二重作動薬BWB3054は、GLP-1Rに対する活性は100倍以上低いにもかかわらず、レタトルチドと同等レベルの環状アデノシン一リン酸(cAMP)を産生し、肥満モデルマウスにおいてもレタトルチドと同程度の体重減少効果を示した。 安全性についても検討が行われた。サルを用いた試験では、高用量の新薬を投与しても苦痛の兆候は認められなかった。一方で、チルゼパチドなどの既存の薬剤では、サルでは高用量に対する忍容性が認められなかった。 ただし、動物実験の結果がそのままヒトに当てはまるとは限らない。また、GLP-1R作動薬は、心血管系への有益な効果が知られているが、新たな薬剤が同様の効果を持つか否かについては不明である。 本研究について、米ミシガン栄養肥満研究センターのディレクターであるRandy Seeley氏は、「この研究結果は有用で印象的だ。体重減少の仕組みについての新しい見方を提示している」と述べている。

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CGRP標的片頭痛予防薬、緑内障リスクの低下と関連

 あるクラスの片頭痛予防薬が緑内障の予防にも役立つかもしれない——そんな研究結果が報告された。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)標的治療薬を使用していた人は、他の片頭痛予防薬を使用していた人と比較して、緑内障を発症するリスクが25%低いことが示されたという。米ブラウン大学のChien-Hsiang Weng氏らによるこの研究は、「Neurology」に5月6日掲載された。 CGRPは、脳や神経系に存在するポリペプチドで、血管拡張作用を持つことから通常は血圧の調節に関与している。CGRP標的治療薬は、CGRPまたはその受容体を標的とすることで血管拡張や炎症反応を抑制するよう設計されている。 Weng氏はニュースリリースで、「緑内障は失明の主な原因の一つであり、過去の研究では、片頭痛が緑内障リスクの上昇と関連することが示されている。両疾患はいずれも、脳内の血管が刺激に応じて血流を調節する能力に影響を及ぼす。CGRP標的治療薬は、神経系において血管機能や炎症反応を調節する働きがあるため、緑内障リスクがある人の眼の健康にも有益である可能性が期待されている」と説明している。 片頭痛患者ではCGRPが過剰に産生される傾向があり、それが脳内の神経を刺激して、痛みの信号をより強く長引かせると考えられている。一方で、研究グループによると、CGRPは緑内障の発症にも関与している可能性がある。緑内障は、主として眼圧上昇などにより視神経が障害され、最終的に視力低下や失明につながる疾患だ。CGRPは眼の神経や血管に広く分布しており、動物実験では、CGRPの増加によって眼圧が上昇することが示されている。 今回の研究では、2018年から2024年の間に片頭痛予防薬を処方された7万3,644人を対象に、CGRP標的治療薬と緑内障リスクとの関連が検討された。対象者は、処方された片頭痛予防薬の種類に応じて、CGRP標的治療薬群と非CGRP標的治療薬群に分類された。CGRP標的治療薬には、エレヌマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab、アトゲパント、リメゲパントが含まれた。非CGRP標的治療薬には、バルプロ酸、トピラマート*、flunarizine、カンデサルタン*、リシノプリル*、メトプロロール*、プロプラノロール、ナドロール*、アミトリプチリン*、ベンラファキシン*が含まれた。(* 片頭痛予防薬としては日本国内未承認)。 その結果、非CGRP標的治療薬群と比較して、CGRP標的治療薬群では、最初のCGRP標的治療薬処方から3年以内の緑内障発症リスクが25%低いことが示された(ハザード比0.75、95%信頼区間0.61~0.92)。CGRP標的治療薬群では、非CGRP標的治療薬のトピラマート、バルプロ酸、プロプラノロール、メトプロロール、リシノプリル、アミトリプチリン、ベンラファキシンの各使用者群と比較しても、緑内障リスクの低下が認められた。さらに、CGRP標的治療薬の種類別に解析したところ、非CGRP標的治療薬群と比較して緑内障リスクの低下が認められたのは、モノクローナル抗体製剤型のCGRP標的治療薬(エレヌマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab)使用者のみだった。 Weng氏は、「今回の結果を確認するためにはさらなる研究が必要だが、この知見は、片頭痛と緑内障の両方について理解を深める助けになる可能性がある」と述べている。

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高齢者における大腸ポリープ切除後サーベイランスの検査間隔は?(解説:上村直実氏)

 大腸内視鏡検査(CS)は全大腸を観察して、大腸がん(CRC)の早期発見とポリープの発見・切除によるCRC予防を主たる目的としているが、検査や鎮静に伴うリスクが増加する高齢者に対する有用性に関しては不明な部分もあり、臨床現場で検査の実施に迷うこともある。今回、米国の65~74歳でCSを受けたことのある75歳以上の高齢退役軍人を対象として10年間の後ろ向きコホート研究を行ったところ『過去のCSで腺腫が認められた75歳以上の成人は、腺腫のなかった成人と比較して、その後のCRC発症率、CRCによる死亡率が有意に高いものの両群の差はわずか0.1%(累積死亡率0.4%vs.0.5%)であり、CRC以外の原因による死亡リスク50%弱のほうがはるかに高率であったことから、患者個々の健康状態を重視した対応が必要』との結果が2026年4月のJAMAに報告された。腺腫を切除した高齢者に対する定期的なCSは慎重に判断すべきとされたわけである。 日本の診療現場では便潜血検査(FIT)陽性や腹部症状などにより必要とされたCSで発見されたポリープ・腺腫が内視鏡的に切除されることが多く、その後の経過観察として年齢にかかわらずCRCの早期発見を目的として頻回なサーベイランスが行われている。2020年のGutに報告されたJapan Polyp Study(JPS)の結果を基にして作成された「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」によると、内視鏡的に異常なしとされた『クリーンコロン』が確認された場合には3年ごとのCSが推奨されている。 一方、米国のガイドラインでは、1993年のNEJMに報告された『National Polyp Study』の結果から質の高いCSにより『クリーンコロン』とされた場合は10年に1回のフォローとされているが、最近ではさらに、高齢者に対するCSに関する鎮静のリスクやコストパフォーマンスを考慮した経過観察の必要性やCSの間隔が議論の的になっている。日本でも超高齢者に対するCSによる頻回の経過観察に疑問を持つ担当医も少なくないと思われる。 このような米国と日本の違いは医療保険制度の違いのみでなくスクリーニングに対する考え方の相違に由来している。米国では死亡リスクをアウトカムとするエビデンスが優先するため、CSにより死亡リスクの統計学的な低下を認めた研究結果から臨床現場でも10年に1回のフォローで十分とされているのに対して、日本では内視鏡的切除可能な病変の早期発見を目的とすることが多く、『クリーンコロン』に対して3年後の進行性病変の発見率をアウトカムとしたJPSの研究結果を用いて、実臨床でも切除後は3年後が適切であるとされているのが現状である。しかし、医療費の高騰が問題となりコストパフォーマンスに重点が置かれつつある現在、高齢者の検査間隔は日本でも考慮すべき課題となっている。

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ロキソプロフェン、トラマドール、PPI…、高齢者疼痛管理の見直しポイント【高齢者処方のデザイン】第1回

以下の症例に対する前医での処方箋には「替えるべきポイント」が3つ隠れています。あなたは見抜けますか?【症例】患者78歳・女性変形性膝関節症と慢性腰痛で整形外科に通院中。既往に胃潰瘍(8年前、ピロリ菌除菌後)、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症があり、直近の血液検査でeGFR 48と腎機能低下を認める。前医では疼痛に対してロキソプロフェンが定期処方され、痛みが強い時にはトラマドールを頓用、加えてランソプラゾールが継続されている。また、併存症に対してロサルタン、ロスバスタチン、アレンドロン酸が処方されている。最近、食欲低下と軽度の倦怠感を訴えて来院した。痛みのコントロールは「まあまあ」とのことだが、便秘とふらつきも自覚しているという。トラマドールは1日平均1~2錠程度内服している。診察上、両膝に軽度の腫脹を認めるが、消化器症状や明らかな浮腫は乏しい。【Before:前医の処方箋】A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時 1) Lapi F, et al. BMJ. 2013;346:e8525. 2) Derry S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;5:CD008609. 3) Roth SH, et al. J Pain Res. 2011;4:159-167. 4) Chappell AS, et al. Pain. 2009;146:253-260. 5) Chappell AS, et al. Pain Pract. 2011;11:33-41. 6) Kolasinski SL, et al. Arthritis Rheumatol. 2020;72:220-233. 7) 日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会編. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023. 8) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 講師紹介

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第315回 国内の麻疹流行、2025年と今年で決定的に違うこと

INDEX止まらない麻疹感染、流行地点はどこか推定感染地域に変化ワクチン接種を粘り強く唱えるのみ止まらない麻疹感染、流行地点はどこか麻疹の猛威が止まらない。2026年20週(5月11~17日)までの国内の麻疹患者報告累計(速報値)1)は498例。2025年52週(12月22~28日)までが265例だったので、あまり口にはしたくないが、今年は昨年の2倍以上の患者報告数になることは確実な情勢だ。現時点までの感染報告を見ていると、昨年と比べて特徴的なことがある。昨年の患者報告の地域分布を見ると、首都圏の1都3県からの報告割合は42%だったが、今年は途中経過とはいえ、その割合は72%。ちなみに首都圏外で現時点までの患者報告が最多は鹿児島県の34例となっている。愛知県の26例や大阪府の15例を超える数字にやや驚くが、これは3月に鹿児島市内の高校の卒業式で13例もの集団感染が発生したためである。そして、現在までに最も患者報告が多いのは、やはり東京都の244例で20週までの患者の過半数を占める。その意味で東京都の感染動向は、現在の日本の麻疹流行の縮図であるとも言えることから、これより東京都の詳細な感染動向を見ていきたい。推定感染地域に変化まず今までのところ、最も患者報告が多かったのは17週(4月20~26日)の53例で、同週を境にピークアウトしているようにも見える。ただし、麻疹は基本再生産数が高いため、収束しつつあるとはとても言えないのが実際である。10歳区切りの患者報告では20~29歳の89例がボリュームゾーン。これに次ぐのが30~39歳の54例、10~19歳の51例。これ以外に40代、50代でそれぞれ10例以上の患者報告があり、かつてのような「麻疹は子どもの病気」のイメージは、もはや過去のものとなっている。憂慮すべきは推定感染地域のデータである。2026年20週までの推定感染地域は国内が77.0%と圧倒的多数を占める。不明が17.2%あるものの、国外はわずか3.7%に過ぎない。2025年は国内が64.7%、国外が32.4%であり、仮に2026年の不明をすべて国外に分類したとしても、現在は国内感染の割合が高くなっていることになる。ちなみに、一部の症例の検査により判明している流行ウイルスの遺伝子型は、世界の流行主流となっているアフリカや中東が起源のB3型と南アジアや東南アジアに広く定着しているD8型である。昨年来から続いている麻疹流行のきっかけは、おそらく輸入例だと考えられるが、推定国内感染率が上昇傾向を示している今の状態は極めて不気味だ。ご存じのように、日本は世界保健機関(WHO)が定義する「適切なサーベイランス制度の下、土着性の感染伝播が36ヵ月以上継続して確認されないこと」を満たし、2015年に麻疹排除国の認定を受けて10年以上この状態を維持しつづけてきた。現時点で土着性の判断は極めて難しいと考えられるが、麻疹流行が2年目に入った現在は外形上、土着性が疑われる段階に差し掛かっているとの見方もできなくはない。ちなみに2026年1月にイギリス、スペイン、オーストリアなどが麻疹の排除国認定を喪失したことは記憶に新しい。この排除認定喪失には実際には前段階があり、12ヵ月以上の持続伝播状態を「地域流行の再成立」と位置付ける。今の日本はこの段階か否かという非常に微妙な地点にいる。ワクチン接種を粘り強く唱えるのみさて、前述の東京都の麻疹流行だが、20代、30代患者のワクチン接種歴は過半数が「なし」あるいは「不明」で占められる。もはや麻疹対策とは2回のワクチン接種の一択と言ってもいいことは医療者の中では共通認識だろうが、このことはこの東京都のデータからも明らかである。この件に関連してSNS上では、以前本連載(第310回)で取り上げた新宿区内の小学校での集団感染事例において、2回接種済み者でのブレークスルー感染が多かったことを挙げて、「ワクチンは無効」であるかのような言説も目に付く。しかし、クイーンズランド大学のグループがワクチン2回接種後の免疫獲得失敗症例からの2次感染に関する14研究を使ったシステマティックレビュー2)によると、ワクチン2回接種完了者の実行再生産数は0.063。麻疹の基本再生産数の12~18に比べると無視できると言ってよいほどの低値である。この点からもワクチンは有効と言える。もっとも、われわれ報道関係者も医療者も今は言葉でワクチン接種を粘り強く呼び掛けるしかないという点では、やや手詰まり感はある。少なくともいわゆる反ワクチンと言われる人ではなくとも、ワクチン接種は煩わしいものであり、身近で危険を感じるか、手軽に接種できる機会と経済的なインセンティブ(いわゆる無料接種)でもなければ、ワクチン接種に行こうとはならないのが現実だ。その意味では、東京都が5月18日からスタートさせた「麻疹ワクチンの緊急接種事業」は目を引く。これは72時間以内の麻疹患者と接触し、麻疹罹患歴がなく、さらに麻疹ワクチンの接種歴なし/不明、あるいは1回のみの都民に対し、都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料のワクチン接種を行うものだ。私個人の本音を言えば、何らかの形でもう少し対象を広げてほしいが、予算措置が必要な以上やむを得ない。一方で、東京都のみにとどめてしまうのは効果が限定的である。前述のように現時点の麻疹流行が1都3県に集中している現実を考えれば、埼玉、神奈川、千葉の3県でも必要なことだろう。とくに東京都の場合、昼間の人口が336万人も増加し、その9割以上がこの3県からの流入であることを考えれば、なおのことである。もちろん予算のことはあるが、この3県のトップには英断を期待したい。参考1)国立健康危機管理研究機構:感染症発生動向調査週報(IDWR)2)Tranter I, et al. Emerg Infect Dis. 2024;30:1747-1754.

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患者に最も好まれる第1選択抗精神病薬は?

 初回エピソードの精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択は、臨床医が複数の基準を経験的に評価する必要があるため、非常に困難な課題である。診療記録を用いて開発された精密治療(precision treatment)ルールは、臨床医の治療選択を支援する実用的なアプローチを提供できるが、副作用や患者の嗜好は考慮されていない。イタリア・University of PaviaのKamil Krakowski氏らは、初回エピソードの精神疾患における第1選択抗精神病薬推奨のための、有効性、副作用、患者の嗜好を総合的に考慮した精密治療ルールの開発および検証を行った。Translational Psychiatry誌オンライン版2026年4月11日号の報告。 本研究は、英国・サウスロンドンおよびモーズレイNHSトラストの早期精神病介入サービスから得た電子カルテデータを用い、RECORDおよびTRIPOD + AIガイドラインに準拠して実施された。精密治療ルールは、因果関係に基づく機械学習手法を用いて開発され、臨床的、人口統計学的、症状、物質使用に関する予測因子を用いて、有効性(薬剤変更、入院)および副作用(錐体外路症状、高プロラクチン血症、鎮静、性機能障害、体重増加)を推定した。副作用に関する患者の嗜好は、ランキング法を用いて考慮した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、1,709例(平均年齢:26.7歳、男性の割合:64%)。・アリピプラゾールは、患者の希望に応じて80~98%の患者に推奨された。・観察された治療決定と比較すると、治療ルールに基づく推奨では、高プロラクチン血症が4.7パーセントポイント(pp)、鎮静が15.8pp、性機能障害が4.3pp、体重増加が15.2pp減少すると推定された。・入院と薬剤の効果には変化がなかった。・錐体外路症状は、5.5pp増加すると推定された。 著者らは「本研究は、有効性、副作用、患者の希望を統合した、早期精神疾患に対する初の精密治療ルールを提示するものである。より大規模なデータセット、より多くの予測因子および治療選択肢を用いた、さらなる研究が求められる」としている。

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市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

 肺炎球菌は市中肺炎(CAP)の主要な原因菌である。侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスは、日本を含む多くの国で確立されているものの、肺炎球菌性CAPの血清型分布については、国内データが十分に蓄積されているとはいえない。そこで、日本の成人入院CAP患者を対象に、肺炎球菌性CAPの臨床的特徴、臨床転帰、肺炎球菌血清型の分布を明らかにすることを目的として、多施設共同前向き研究「PNEUMO Japan」が実施されている。本研究の中間解析の結果、肺炎球菌陽性と判定された患者は17.6%であり、CAP患者から検出された計76血清型のうち、89.5%は21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)に含まれる血清型であることが示された。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、柳原 克紀氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野)が結果を報告した。なお本結果は、2026年5月17~21日に開催された第14回国際肺炎・肺炎球菌感染症学会(International Society of Pneumonia and Pneumococcal Diseases:ISPPD-14)のアンコール演題として発表された。 本研究は、日本国内23施設で実施されている多施設共同前向き研究であり、登録は2025年2月に開始され、2026年まで継続予定である。対象は、18歳以上の入院を要するCAP患者とした。肺炎球菌の検出には、無菌・非無菌検体の培養検査、迅速尿中抗原検査(BinaxNOW)、および32血清型を検出可能な血清型特異的尿中抗原検出法(Serotype Specific Urinary Antigen Detection:SSUAD)を用いた。患者背景および臨床転帰の解析対象は、2025年8月22日までに登録されたCAP患者318例、血清型分布の解析対象は、2025年11月18日までに登録されたCAP患者536例の尿検体のうち、SSUADで陽性の66例、計76血清型であった。 主な結果は以下のとおり。・CAP患者318例の平均年齢は71.6歳、女性の割合は43.1%であった。培養検査または迅速尿中抗原検査で肺炎球菌陽性と判定された患者の割合は17.6%(56例)、非肺炎球菌性CAPは82.4%(262例)であった。・肺炎球菌性CAP群は、非肺炎球菌性CAP群より若年であった。平均年齢は肺炎球菌性CAP群68.6歳、非肺炎球菌性CAP群で72.2歳であり(p=0.042)、75歳以上の割合は、それぞれ39.3%、53.8%であった。・CAP患者の20.1%に肺炎球菌ワクチン接種歴があり、5年以内の接種は5.7%であった。接種歴不明の割合が35.5%と高かった。各群の肺炎球菌ワクチン接種歴ありの割合は、肺炎球菌性CAP群32.1%(18例)、非肺炎球菌性CAP群17.6%(46例)であり、5年以内の接種歴ありの割合は、それぞれ7.1%(4例)、5.3%(14例)であった。・全CAP患者318例における院内死亡は2.5%(8例)に認められた(いずれも非肺炎球菌性CAP群の患者)。・入院期間中央値は、肺炎球菌性CAP群が9日であったのに対し、非肺炎球菌性CAP群では12日と長かった(p=0.007)。・SSUADで陽性の66例から検出された76血清型のうち、頻度が高かった血清型は、3型(15.8%)、35B型(11.8%)、19A型(10.5%)、11A型(7.9%)、22F型(6.6%)、23B型(6.6%)であった。・肺炎球菌ワクチンの血清型カバー率は、PCV21が89.5%、PCV20が60.5%であった。PCV21に含まれるがPCV20には含まれない血清型は39.5%を占めた。 本結果の結語として「肺炎球菌性CAPは全CAPの17.6%を占めており、とくに高齢者や慢性疾患を持つ人々の間で、大きな疾病負荷となっていることが示された。PCV21は、本研究で特定された肺炎球菌血清型の89.5%をカバーしており、疾患予防に寄与する可能性が示唆された。これらの知見は、日本の成人の予防接種プログラムにおいて、現行および次世代の肺炎球菌ワクチンの継続的な使用と評価を支持するものである」とまとめた。

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医師確保の新しい選択肢に、「旅当直」サイトオープン

 地方の医療機関にとって、医師確保は長年にわたる大きな経営課題となっている。とくに当直体制の維持は、常勤医の負担軽減や病院機能の継続に直結する一方で、従来の人材紹介や単発アルバイトだけでは、中長期的な関係性づくりにつながりにくいという課題がある。こうした中、Mediative株式会社は、都市部の医師が地方の医療機関で当直勤務を行いながら、その土地の人や文化、地域医療の現場に触れる新しい地域医療体験「旅当直」のポータルサイトを、2026年5月14日に公開した。本稿では特別寄稿として、Mediative代表で医師の畑 拓磨氏が本サービスの特徴を紹介する。医師が旅するように地域を訪れ、当直業務を通じて医療現場を支える仕組み 「旅当直」は、単なる当直求人の掲載サービスではありません。医師が旅するように地域を訪れ、当直業務を通じて医療現場を支えながら、余暇の時間には地域の風景や食、文化、人との出会いを体験することで、「またこの地域に来たい」「もっと関わってみたい」という関係性を育てていく取り組みです。 医療機関にとっては、自院の勤務条件だけでなく、地域そのものの魅力や、そこで働く意義を医師に届けることができます。これまで医師に知ってもらう機会が少なかった地域や病院にとって、「医師に選ばれる入口」をつくる新しい広報・採用戦略ともいえます。 現在、「旅当直」は北海道内3施設、神奈川県横浜市内1施設で導入されています。たとえば函館市の深瀬医院では、継続的に関わる外部医師を「パートナードクター」と位置付け、常勤・非常勤という従来の枠を超えた緩やかな協働関係を構築しています。外部から訪れる医師が新たな知見や刺激をもたらすことで、組織内にも学びが生まれ、患者からも「いろいろな先生に診てもらえる安心感がある」といった声が寄せられています。 また、実際に旅当直を経験した医師からは、「当直バイトは給与や負担で選ぶものだと思っていたが、旅当直に出会って選び方の軸が変わった」「業務後に街を歩いて帰る満足感は、バイト代では換算できない」といった声もあります。医師にとっても、地域医療への関心を持ちながら、移住や長期勤務には踏み出せなかった層が、軽やかに地域と接点を持てる仕組みになっています。人材紹介会社に依存するだけではない、魅力発信と関係性構築を支援 旅当直は、自院には魅力があるにもかかわらず、医師に知ってもらう機会が少ない医療機関にこそ活用してほしいと考えています。人材紹介会社に依存するだけではない、地域医療機関自身の魅力発信と関係性構築を支援する取り組みです。 現在、ポータルサイト公開を記念し、先着10病院限定で掲載料無料キャンペーンを実施しています。すでにポータルサイトが公開され、2週間で合計6件の病院と医師のマッチングが成立しています。マッチングに際し紹介手数料が永続的に0円の本サービスは、掲載を通じて、医師に対して自院や地域の魅力を発信したい医療機関、将来的な常勤医・非常勤医との接点を増やしたい医療法人にとって、初期費用を抑えて取り組みを始められる機会です。 当直を単なる勤務ではなく、医師と地域が出会う入口に変える―。「旅当直」は、地方医療の医師確保における新しい選択肢として、今後さらに全国に展開していきます。

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心血管疾患2次予防、LDL-C 55mg/dL未満の達成後も高Lp(a)は強力な残余リスクに/EAS2026

 欧州心臓病学会(ESC)などのガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防において、LDL-C 55mg/dL未満への厳格な管理を推奨している1)。しかし、依然として残る心血管リスク因子として、遺伝的要因の強いリポ蛋白(a)[Lp(a)]が注目されている。現在、具体的なLp(a)低下療法が確立されていない中、LDL-Cを徹底的に低下させることでLp(a)によるリスクをどこまで軽減できるか、とくに日本人患者における検証は不十分であった。 ギリシャ・アテネで開催された欧州動脈硬化学会(EAS2026)にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏らの研究グループがこの課題に関する多施設共同研究「Lp(a)-JAPAN study」の成果を発表した。なお、本研究はEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年5月24日号に同時掲載された。 本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日の期間に、国内3施設において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であった冠動脈疾患(CAD)患者1,581例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-CおよびLp(a)測定値を基準として、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞、非責任病変への臨床的に誘発された冠血行再建術)の発生率とした。追跡期間の中央値は5.1年であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の1,581例の平均年齢は68.3歳、女性23.6%、Lp(a)値の中央値は12.8mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL以上の患者(1,069例)におけるMACE発生率は21.3%であった。そのリスクはLp(a)レベルの上昇に伴って有意に増加した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で3.9、30〜50mg/dL未満で7.9、50mg/dL以上で11.0、log-rank p<0.001)。・LDL-C 55mg/dL未満を達成した患者(512例)におけるMACE発生率は4.3%と有意に低かった(p<0.001)。しかし、Lp(a)レベルの高値は、MACEの高リスク患者を明確に特定した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で1.4、30〜50mg/dL未満で4.7、50mg/dL以上で7.5、p<0.001)。・5年標準化MACE発生率では、Lp(a) 30mg/dL未満の群の5.0%に対し、Lp(a) 30〜50mg/dL未満の群では17.0%(調整ハザード比[aHR]:3.80、95%信頼区間[CI]:1.78~8.11、p<0.001)、Lp(a) 50mg/dL以上の群では33.4%(aHR:6.90、95%CI:3.53~13.46、p<0.001)と高値を示した。・ROC曲線分析の結果、将来のMACE発生を予測するLp(a)の閾値(カットオフ値)は28.2mg/dL以上であることが判明した(p<0.001)。 研究グループは、ガイドラインが推奨する厳格なLDL-C低下療法がLp(a)に起因する心血管リスクを部分的に軽減するものの、完全に消失させることはできず、Lp(a)が独立した重大な残余リスク因子であることを実証したと結論付けた。  現在海外で進行中の新規Lp(a)低下薬(RNA薬など)の臨床試験では、登録基準となるLp(a)の閾値が一律で高く設定されている(60~80mg/dLに相当)。しかし、本研究で判明した日本人CAD患者におけるリスク閾値(28.2mg/dL)は欧米人より大幅に低い。そのため、欧米人より低いLp(a)レベルでも脆弱性を持つ集団を対象とした新たな臨床試験を行う必要があると論文内で指摘されている。

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糖尿病患者の将来リスクをAI活用で予測/福島医大・日本糖尿病学会ほか

 福島県立医科大学と千葉大学、国立健康危機管理研究機構(JIHS)らの研究グループは、株式会社エフコムとの共同研究により、AIを活用して糖尿病を5つのサブタイプに分類し、将来の合併症・併存症リスク(糖尿病関連腎臓病、透析導入、心血管障害など)を推計するウェブプラットフォーム「福島医大 糖尿病未来予測ナビ」を研究・開発した。このウェブプラットフォームは、2026年5月20日に福島県立医科大学附属病院、日本糖尿病学会、てだこ浦西駅循環器・糖尿病クリニックの各ホームページ上で公開された。 糖尿病患者では、合併症の進行に大きな個人差がある。この研究は、国内最大級のデータベース「J-DREAMS」(日本糖尿病学会運営)を活用し、日本人の病態に最適化された予測モデルの構築を目的に開発され、患者の将来リスクを推計する。 ウェブプラットフォームの主なポイントは以下の3点。1)AIが糖尿病を5つのタイプに分類 日常診療で得られるデータ(年齢、BMI、血糖値など)を解析し、患者を5つのサブタイプ(クラスター)に分類、合併症リスクを可視化する。2)診断時点で将来の「透析リスク」を推計 早期段階のデータから将来の透析導入リスクを推計できる。とくに「重症インスリン抵抗性(SIRD)」は、8年間で透析導入リスクが約4%に達することを特定している。3)日常診療ですぐに活用可能な「ゼロセットアップ」設計 特別な検査を必要とせず、一部データが不足していてもAIが補完する独自技術を搭載。幅広い医療現場での活用が期待される。 研究・開発者の1人である島袋 充⽣氏(福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座 教授)は、「患者と医療者が同じ未来を共有し、ともに歩んでいく。そんな新しい糖尿病医療のスタンダードを、福島から全国へ広げていきたい」と期待を寄せている。

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標的試験エミュレーション、無作為化比較試験との一致度は中程度/BMJ

 現在の標的試験エミュレーションは、対応する無作為化比較試験の再現に関して、一致度は中程度であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCanlong Wang氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果で示された。標的試験エミュレーションが、対象とした無作為化比較試験で観察された効果を、どの程度再現できるかは依然として不明であった。著者は、「ベースラインの特性やアウトカムのエミュレーションの質を向上し、複数の情報源を連結したデータベースを活用するなど、エミュレーションデザインを改善することで、一致度は高めることができる」と述べている。BMJ誌2026年5月19日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で一致度を評価 研究グループは、Medline、EMBASE、Scopus、PsycINFOおよびWeb of Scienceを用い2010年1月1日~2025年10月1日に発表された観察研究を検索した。 適格基準は、薬剤、外科手術または医療機器の使用に関するベンチマークとなる無作為化比較試験(標的試験)の模倣を目的とすることが明示されている英語の論文とした。 2人の研究者がそれぞれ、各エミュレーション研究とそれに対応する無作為化比較試験について、研究領域、対象集団、介入、対照群、およびアウトカムに関するデータを抽出するとともに、エミュレーション研究はROBINS-Iツール、無作為化比較試験はコクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。 21の事前に定義されたエミュレーションデザインの特徴について、エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア間の一致度を、8つの指標(2値指標は標準化差、点推定値、統計学的有意性の完全一致、統計学的有意性の部分一致、連続指標はピアソン相関係数、クラス内相関係数、比率の相対偏差、比率の比)を用いて検討し、研究特性と一致度の関連について、サブグループ解析および回帰分析を実施した。ピアソン相関係数は0.59、標準化差の一致率は79%、比率の比は0.96など エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア107組において、ピアソン相関係数は0.59(95%信頼区間[CI]:0.45~0.70)、標準化差の一致度は79%(85/107組)、比率の比は0.96(95%CI:0.92~1.01、I2=36%)であった。 試験デザインをより忠実にエミュレートしていた63組では、より高い一致性が観察され、ピアソン相関係数は0.83(95%CI:0.73~0.89)、標準化差の一致度は87%(55/63組)であった。 サブグループ解析では、無作為化比較試験のエミュレーションは、静脈血栓塞栓症および主要心血管イベントに関連する特定のアウトカムについて、無作為化比較試験の治療効果を系統的に過小評価する傾向がみられた。一方、呼吸器系のアウトカムについては過大評価する傾向があり、統合した比率の比はそれぞれ0.76(95%CI:0.58~1.00、I2=40%)、0.91(95%CI:0.86~0.96、I2=32%)、1.20(95%CI:1.03~1.40、I2=40%)であった。さらに、請求データに基づくエミュレーションは、治療効果を過小評価する傾向にあった(0.90、95%CI:0.82~0.99、I2=38%)。 単変量回帰分析では、エミュレーション研究と無作為化比較試験の一致度の低さは、ベースラインの対象集団の特性に不均衡があるエミュレーションデザイン、入院中に治療が開始されるデザイン、およびアウトカムエミュレーションの質が低いことと関連していた。

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「トイレでのスマホ」が痔の悪化の一因に

 米国消化器病学会(AGA)は4月29日、現時点で推奨される痔の診断と治療に関するベストプラクティスを公表した。AGAは、痔の診断・治療は消化器内科医が積極的に担うべきだとした上で、症候性の痔に対する第一治療選択肢は、食生活を見直して便通を整え、スマートフォン(以下、スマホ)を見ながらトイレに長居する習慣を改めることだとしている。 最新の「米国人のための食事ガイドライン」では、毎食でのタンパク質摂取や全脂肪乳製品の摂取が重視されているが、消化器専門医らは、高タンパク食、特に赤肉中心の食事に偏るあまり、食物繊維の摂取がおろそかになる傾向を懸念している。肉には食物繊維が含まれていないため、このような食事では食物繊維が不足して便秘を招き、いきみによって痔の悪化を引き起こす可能性があるためだ。便通を整えるためには、十分な食物繊維の摂取が欠かせない。栄養学の専門家は、男性では1日38g、女性では25gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、多くの米国人は必要量の食物繊維を摂取できていないという。 食事と共に、トイレでの行動も重要である。現在、多くの成人がトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし、この「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子になるという。便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるためである。ガイドラインの筆頭著者である米ベイラー医科大学のWaqar Qureshi氏は、「トイレに座る時間は5分以内にすべきだ。5分以内に排便できない場合は、座り続けていきむのではなく、一度立ち上がり、後で再度試みるとよい」とNBCニュースに語った。同氏はさらに、足台を使ったり、本を積み重ねて足を高くしたりして、しゃがむ姿勢に近づけることで、いきみの軽減につながる可能性があると述べた。 治療法については、ヒドロコルチゾンなどの外用ステロイド薬や局所麻酔薬、血管作動薬などの外用薬は、症候性の痔の治療用に検討できるが、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとされている。また、外用ステロイド薬は、長期間使用すると皮膚が薄くなる可能性があるため、一度に2週間以上使用するべきではないとしている。さらに、症状が持続する痔には、輪ゴムで痔核を縛る「ゴム輪結紮療法」や、熱や光を用いて組織を縮小させる凝固療法が必要になることもある。このほか、温水に座って患部を温める「座浴」も症状緩和法としてガイドラインに記載されているが、その有効性を支持するエビデンスは限定的である。 さらに、クローン病や潰瘍性大腸炎の活動期では、炎症が完全寛解するまで痔治療を延期すべきこと、妊娠中の痔は保存的治療が基本であり、侵襲的治療は原則として産後に検討するべきこと、新規患者では可能な限り肛門鏡検査を実施し、痔と類似症状を示す他疾患を除外した上で正確な診断を行う重要性も強調されている。

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