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401.

コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析/Lancet

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMatthew Whitaker氏らは、同国の成人約114万人を対象とした大規模コホート研究において、国民保健サービス(NHS)のCOVID-19ワクチン接種記録データとの連携により、ワクチンの接種率や接種躊躇の要因を分析した。接種躊躇の大半は具体的で対処可能な懸念によるものであり、時間の経過や情報提供の充実によって克服可能であることを明らかにした。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する有効なワクチンが存在したにもかかわらず、パンデミック期間中、英国の一部集団ではワクチン接種を躊躇する傾向が続き、その割合や動機は人口統計学的グループによって異なっていた。著者らは、「今回の知見は、将来のワクチン接種の展開において、ワクチン受容を促進するのに役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月12日号掲載の報告。ワクチン接種を躊躇する理由や、ワクチン接種率を分析 研究グループは、まずベースラインでのワクチン接種躊躇について横断分析を行った後、続いて接種躊躇集団におけるワクチン接種率について縦断分析を実施した。 2020年5月1日~2022年3月31日に、NHSリストを用いて英国の一般診療所の登録患者から無作為に抽出した住民を、SARS-CoV-2ウイルス陽性率および抗スパイク抗体陽性率をモニタリングする「Real-time Assessment of Community Transmission:REACT研究(REACT-1およびREACT-2)」に定期的に招待した。参加者は、人口統計学的情報、併存疾患、行動(喫煙、マスク着用など)、COVID-19既往歴、ワクチン接種状況や接種に対する姿勢を含む詳細な調査に、オンラインまたは郵送で回答した。 COVID-19ワクチンの接種を拒否した、拒否する予定である、または接種するかどうか未定であると回答した参加者を「ワクチン接種躊躇集団」と分類した。自己申告では未接種と回答したものの、NHSの記録では接種済みと確認された参加者は、以降の解析から除外した。 主要アウトカムは、横断分析ではワクチン接種躊躇、縦断分析ではワクチン接種躊躇集団のうち調査後にNHSワクチン接種記録との連携に同意した参加者における調査後のワクチン接種であった。 ワクチン接種躊躇の理由はコンセンサスクラスタリング法を用いて分類し、横断分析および縦断分析ではロジスティック回帰モデルを用いてワクチン接種躊躇およびその後の接種の予測因子となる人口統計学的要因を特定した。ワクチン接種躊躇者の65%はその後にワクチンを接種 REACT研究の全参加者435万4,480人のうち、2021年1月6日~2022年3月31日に調査された18歳以上の成人113万7,927人が解析対象となった。 解析対象集団のうち3万7,982人(3.3%)が調査期間中にワクチン接種躊躇を示した。接種躊躇率は2021年1月の調査では7.9%と高かったが、2022年初頭には1.1%まで低下し、その後2022年2月および3月には再び2.3%に増加した。 ワクチン接種躊躇集団のうちNHSのワクチン接種記録との連携に同意した2万4,229人において、1万5,744人(65.0%)は1回以上のワクチン接種を受けていた。 クラスター分析の結果、ワクチン接種躊躇の理由として、有効性や副作用への懸念、COVID-19のリスクが低いとの認識、ワクチン開発者への不信感、ワクチンや副作用への恐怖など、8つのカテゴリーが特定された。有効性や副作用への懸念に関連する最も一般的な接種躊躇カテゴリーは、調査期間中に大幅に減少し、後のワクチン接種との強い関連性は認められなかった。信頼性の低さ、リスク認識の低さ、一般的なワクチン反対感情に関連する一部の接種躊躇形態はより抵抗性が高く、2022年に再燃し、その後のワクチン接種の可能性の低下と強く関連していた。

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英国NHSの改革プラン、DXなど現場の需要と一致しない?/BMJ

 英国における国民保健サービス(NHS)の改革プランでは、一般診療へのアクセス改善が優先課題とされているが、「NHS 10年プラン」に掲げられている3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は、患者が求めていることや診療所の業務を支えるために必要なものとは一致しない可能性があることを、英国・ケンブリッジ大学のCarol Sinnott氏らが、患者、介護者、総合診療医(GP)、および一般診療所のその他のスタッフを対象とした半構造化インタビューによる質的研究の結果で報告した。著者は、「3つの改革提案が、ケアの継続性を損なったり既存サービスを断片化したりしないよう、主要な関係者と連携した慎重な設計・実施・評価が求められる」とまとめている。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。患者・介護者、GP・スタッフに半構造化インタビューを実施 2023年7~10月に、5人の研究者(保健医療研究者3人、臨床研究者2人)が、英国の地理的に分散した5地域(デボン、メドウェイ、ブラックプール、ルートン、ランカシャー)に居住する患者・介護者、および東部のNHS一般診療所のスタッフ(GP・看護師などの医療専門職、診療所の管理者、事務職員などすべての職種、1診療所当たり4人まで)を募集し、半構造化インタビューガイドを用いて、一般診療所へのアクセスに関してインタビューを実施した。 分析は、継続的比較法(constant comparative method)に基づき、NHS 10年プランで提唱された3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)に沿ってテーマを整理した。3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は一長一短 患者・介護者41人、一般診療所13施設からスタッフ29人(GP 10人、看護師5人、薬剤師1人、ウェルビーイングコーチ1人、診療所の管理者7人、事務職員5人)の計70人が半構造化インタビューを受けた。患者・介護者は、12の民族で構成され、学習障害、視覚障害、移民など多様な個人特性・医療特性を有していた。一般診療所は、9施設が裕福な地域、4施設が貧困地域に位置していた。 NHS 10年プランの3つの改革提案は、参加者にある程度の利益をもたらすが、新たなリスクや不利益も生み出すことが示された。 診療所におけるデジタル化の推進(主にオンライン予約システムや医療情報へのアクセス)は、一部の患者にとっては利便性を高め効率の改善をもたらすが、一方で、GPが対応できる診察予約のキャパシティが根本的に不足しているという問題の解決には寄与せず、新たなかたちの不利益や排除を生み出し、患者が求めている「顔なじみのGPとの人間的なつながりや共感」に対処するものではなかった。 病院から地域で支える医療サービスへの移行(一般診療所がより広い地理的範囲を担当する新たな医療サービスのモデル)は、診察予約の受け入れキャパシティの向上につながるものと参加者は捉えていたが、調整や組織化に関する実務的な課題などの制約に直面した。より広域を網羅する新たなサービス下では、患者がかかりつけの診療所であるにもかかわらず「認識されていない」「知られていない」と感じるなど、患者が重視するGPとの長期的な関係性を損なうリスクがあった。 予防医療の重要性は認識されていたものの、ケアが断片化する傾向や、単一疾患に焦点を当てた過度に単純化されたモデルになりがちで、患者の能動的受診に充てられるべき診療所のキャパシティを浪費してしまう課題があることが指摘された。一般診療所スタッフの業務負担が増大することへの懸念も一貫して示された。

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精神疾患早期介入プログラムで治療を受けた患者のLAI抗精神病薬継続率は?

 精神疾患の早期介入プログラムで治療を受けた患者は、通常治療を受けた患者と比較し、治療成績が良好であり、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用率が20~50%と高くなるといわれている。このプログラムでは通常2~3年間治療が行われ、その後、多くの患者は他の精神保健サービスへ移行し退院する。また、罹病期間がより長期の統合失調症患者を対象とした研究において、経口抗精神病薬への切り替えが一般的に行われている可能性が示唆されている。しかし退院後のフォローは、複数の臨床サービスや医療提供者間での患者記録の移行という課題によって複雑化しているのが現実である。カナダ・ダルハウジー大学のCandice E. Crocker氏らは、精神疾患の早期介入サービス(EIS)から退院した後に、LAI抗精神病薬の使用が継続されるかどうかを調査した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2025年10月16日号の報告。 本レトロスペクティブコホート研究では、精神疾患のEISによる治療を完了した患者を対象に、LAI抗精神病薬による治療の継続または中止の影響を検討した。2016~18年の3年間にわたる、精神疾患のEISを受け退院した患者のレトロスペクティブコホートを作成し、退院時および退院後6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点での、その後2年間の精神保健アウトカムと処方された抗精神病薬についてフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・カナダの3州にある3施設から退院し、完全なフォローアップ調査が実施可能であった85例の患者のうち、60例(71%)が24ヵ月後もLAI抗精神病薬を継続していた。・EIS入院時のコホートにおける患者の平均年齢は22±4.7歳であった。・退院時に最も多く使用されたLAI抗精神病薬はアリピプラゾールであり、LAI抗精神病薬を継続していた患者の多くは24ヵ月後も同一製剤を使用していた。・中止の主な理由は、患者からの希望であった。・LAI抗精神病薬を継続した患者と継続しなかった患者では、再入院の減少という点において臨床転帰に有意差が認められた。 著者らは「精神疾患のEISの利用は、退院後24ヵ月が経過しても、LAI抗精神病薬継続の良好なアドヒアランスと関連していることが示唆された」としている。

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エナジードリンクの過剰摂取は脳卒中リスクを高める?

 エナジードリンクは活力や元気をもたらすかもしれないが、飲み過ぎは深刻な脳卒中リスクを招く可能性があるとして、医師らが警鐘を鳴らしている。「BMJ Case Reports」に12月9日掲載された英ノッティンガム大学病院のMartha Coyle氏とSunil Munshi氏による症例報告によると、毎日8缶のエナジードリンクを飲む習慣があった健康で体力もある50代の男性が、その危険性を、身をもって知ることになった。報告によると、この男性は極めて高い血圧が原因で軽度の脳卒中を起こし、永久的なダメージを受けた。男性の血圧はエナジードリンクを飲む習慣をやめた後、正常に戻ったという。 英国のノッティンガム大学病院NHSトラストで治療を受けたこの男性は、「エナジードリンクを飲むことで、自分にどんな危険が及んでいるのか全く認識できていなかった」と当時を振り返っている。また、「8年たった今でも、左側の手と指、足とつま先にしびれが残っている」と言う。 症例報告によると、この男性は突然の左半身の脱力、しびれ、バランス感覚の低下、歩行障害、嚥下障害、言語障害で病院に搬送された。入院時の血圧は、収縮期血圧(SBP)が254mmHg、拡張期血圧(DBP)が150mmHgで、健康な人の血圧(SBP 120mmHg、DBP 80mmHg以下)を大きく上回っていた。脳画像検査からは、感覚や運動機能に関わる脳の部位である視床で脳卒中が起きていたことが明らかになったという。 搬送後、男性には降圧薬の投与が開始され、収縮期血圧は170mmHgまで低下した。しかし、自宅に戻ると再び血圧が上昇し、医師が薬を増量しても下がらなかった。そこで、いくつかの質問をしたところ、彼は平均で1日8缶のエナジードリンクを飲んでいることを打ち明けた。 医師らによると、男性が飲んでいたエナジードリンクには1缶当たり160mgのカフェインが含まれており、1日のカフェイン摂取量は合計1,200~1,300mgになる。なお、推奨されているカフェインの1日当たりの最大摂取量は400mg以下とされている。男性は、医師からエナジードリンクの摂取をやめるよう強く勧められ、それに従ったところ、血圧は正常に戻り、処方薬も不要になった。 医師らは症例報告の中で、エナジードリンクに潜む危険性を理解している人は少ないことを指摘している。Coyle氏らは、「2018年には英国の大手スーパーマーケットが、肥満や糖尿病、虫歯の対策として16歳未満へのエナジードリンク販売を自主的に禁止した。しかし、虚血性脳卒中や出血性脳卒中を含む心血管疾患のリスクが上昇する可能性については、あまり検討されていない」と述べている。 今回の報告によると、エナジードリンクには高濃度のカフェインが含まれているが、他の成分にも“隠れカフェイン”が含まれている。例えば、ガラナにはコーヒー豆の2倍の濃度のカフェインが含まれているという。また、カフェインと、タウリンやガラナ、高麗人参、グルクロノラクトン、砂糖など他の成分との相互作用が血圧に強い影響を及ぼし、脳卒中リスクを高める可能性があると医師らは指摘している。こうしたことを踏まえて医師らは、「原因不明の高血圧がある患者には、エナジードリンクの摂取について確認すべきだ。生活指導にはエナジードリンクという心血管リスク因子についての話も含める必要がある」と注意を促している。 研究グループは、今回の報告が単一症例のみに基づいたものであることを認めつつも、彼らが抱く懸念には医学的に妥当性があると説明し、「現時点のエビデンスは決定的なものではない。しかし、蓄積されつつある研究文献、脳卒中や心血管疾患に関連する高い疾病負担と死亡率、すでに十分に立証されている糖分の多い飲料による健康被害を考慮すると、エナジードリンクの販売規制強化や広告キャンペーン(その多くが若年層をターゲットとしている)の見直しは、将来の脳血管および心血管の健康に有益である可能性がある」と結論付けている。

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女性の重度冠動脈疾患における治療選択、PCIかCABGか

 動脈の詰まりに対する最適な治療法は、男女で異なる可能性があるようだ。冠動脈疾患(CAD)患者に対しては、細い金網状のチューブを狭窄した動脈内に入れて広げるステント留置術(経皮的冠動脈インターベンション〔PCI〕)が行われることが多い。しかし、重度の慢性CADの女性患者に対しては、冠動脈バイパス術(CABG)を施行する方が、長期的に見て良好なアウトカムにつながり得ることが、新たな研究で示唆された。米ニューヨーク・プレスビテリアン病院および米コロンビア大学アービング医療センターのKevin An氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に11月25日掲載された。 研究グループによると、大規模な臨床試験では、女性の参加者は全体の20〜25%に過ぎず、女性の心疾患の治療に関して「盲点」が生じているという。論文の上席著者である米ワイル・コーネル医科大学のMario Gaudino氏は、「冠動脈の血行再建が必要な場合、男性患者であれば、強固なエビデンスに基づいた治療を受けることができる。しかし、女性患者の場合はそうはいかない。なぜなら女性患者に関するデータが不足しており、男性から得られたデータを流用しているからだ。しかし、女性が『小さな男性』でないことは明らかだ」と話す。 今回の研究では、傾向スコアマッチングにより背景因子を調整した上で、重度の慢性CADを有する女性患者のうち、PCIを受けた群とCABGを受けた群のそれぞれ2,033人ずつ(平均年齢66.5歳)を対象に、長期アウトカムを比較した。対象アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞(MI)、脳卒中、または冠動脈血行再建術の再施行の複合である「主要心脳血管イベント(MACCE)」、MACCEの各構成要素、および心血管疾患(MI、心不全、または脳卒中)による再入院とされた。 中央値5.1年に及ぶ追跡期間中にMACCEを経験した割合は、PCI群で35.8%、CABG群で21.5%であり、リスクはPCI群で有意に高かった(ハザード比1.81、95%信頼区間1.63〜2.01)。また、PCI群ではCABG群と比べて、追跡期間全体を通して全死因死亡リスクが34%、心血管疾患による再入院リスクが40%高かった。 An氏は、「現在、女性がCABGを受ける割合は、男性の約半分にとどまっている。長期的に見ると、女性においてはPCIよりもCABGの方が、より保護的であるように思われる」とニュースリリースの中で述べている。 ただしAn氏らは、治療ガイドラインを変更するには、さらなる研究が必要だとしている。現在、研究グループは重度のCADを有する女性を対象に、PCIとCABGの両治療法を直接比較する新たな臨床試験を進めている。 An氏は、「現時点では、治療方針は個別に判断すべきだ。本研究では、CABGがPCIよりも長期的な保護効果をもたらす可能性が示唆されたが、解剖学的条件、手術リスク、患者本人の希望といった要因が依然として重要だ」と話している。

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ウォーキングや家事がメタボの人の命を救う

 家事や散歩などの軽強度運動が、メタボリックシンドロームなどに該当する人の死亡リスク低下につながっている可能性が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJoseph Sartini氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に1月7日掲載された。 この研究から、心血管・腎・代謝(CKM)症候群に該当する人では軽強度運動に充てる時間が毎日1時間多いことが、14年間での死亡リスクが14~20%低いことと関連していることが明らかになった。CKM症候群とは、過体重、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下などがあって、心筋梗塞や脳卒中、心不全などのリスクが高くなっている状態のこと。米国成人の約9割が、CKM症候群の構成因子を一つ以上持っている。 CKM症候群の構成因子は併存することが多く、併存する場合は互いに悪影響を及ぼしあって心不全などのリスクがより高くなることが知られている。軽度の高血糖や脂質異常などが併存し、動脈硬化が進行しやすい状態であるメタボリックシンドロームも、CKM症候群に含まれる。 一方、軽強度運動とは、Sartini氏によると「息切れせずにできる運動のことであり、ヨガ、軽いウォーキング、ストレッチ、家事などが該当する」という。同氏は、「軽強度運動は軽視されがちだが、CKM症候群の人の心臓の健康改善に役立ち、特に病期(ステージ)が進行している人では潜在的なメリットがより大きい」と話している。 この研究では、2003~2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した成人7,246人のデータを用いて、軽強度運動の実施状況とCKM症候群のステージとの関連が検討された。CKM症候群のステージは0~4に分類される。ステージ0は、健康上のリスク因子がない状態、ステージ1は過体重や糖尿病前症に該当する状態であり、ステージ2はCKM症候群の構成因子が複数併存するか、腎機能低下が進行している状態。ステージ3は、腎機能低下がより進行していて心臓病や脳卒中の高リスク状態で、心臓病や脳卒中などを既に発症後の場合はステージ4に該当する。 NHANESでは、ウェアラブルデバイスにより最大7日間の身体活動が把握されていた。解析の結果、軽強度運動がCKM症候群のステージの低さ、および、中央値14.4年の追跡期間中の死亡リスクの低さと有意に関連していた。例えば、1日の軽強度運動の時間が1時間長いごとに、死亡リスクが14~20%低下するという関連が認められた。 また、CKM症候群のステージが高い人では軽強度運動を行う時間が長いほど、メリットがより大きいことも明らかにされた。具体的には、軽強度運動を1日に90分行っている人と2時間の人を比べた場合(わずか30分の違いでの比較)、ステージ2では死亡リスクに2.2%の差があり、ステージ4では4.2%の差が見られた。 論文の上席著者である同大学院のMichael Fang氏は、「ウォーキングやガーデニングといった軽強度運動が心臓の健康に有益であるというエビデンスが増えているが、心臓病の高リスク者や既に心臓病を発症している人での長期的なメリットについては、これまで検証されていなかった」と、研究背景を説明している。また本研究には関与していない、米ウエストバージニア大学のBarone Gibbs氏も、「軽強度運動は、エネルギーの消費増大、血液循環の改善などを介して健康の維持・増進につながると考えられるが、高強度運動に比べると分かっていないことが多い。生理学的なメカニズムと潜在的なメリットについて、さらなる研究が求められる」と語っている。

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肝腫瘍の「深さ」が手術成績を左右する?ロボット手術が有利となる2.5cmの境界線

 肝臓の腫瘍手術では、腫瘍の大きさや位置が成績を左右することが知られている。なかでも「どれだけ深い場所にあるか」は、手術の難易度に直結する重要な要素だ。今回の研究では、肝腫瘍までの深さに着目し腹腔鏡手術とロボット手術を比較した結果、深さ2.5cmを超える肝部分切除ではロボット手術が有利となる可能性が示された。研究は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学の藤智和氏、高木弘誠氏、藤原俊義氏らによるもので、詳細は11月27日付で「Langenbeck's Archives of Surgery」に掲載された。 ロボット支援下肝切除術(RLR)は普及が進んでいるが、高額なコストや限られた手術枠での運用のために、従来から行われてきた腹腔鏡下肝切除術(LLR)との使い分けの議論が続いている。肝部分切除は比較的難易度が低いとされているが、切除する腫瘍の深さによって手術難度が異なることを経験する。そこで著者らは、肝部分切除において腫瘍の深さが手術難度に関与すると仮定し、肝切離深度(LTD)に着目して、肝部分切除におけるRLRとLLRの手術成績を比較検討した。 本研究は、岡山大学における低侵襲手術トレーニングプログラム(TAKUMI-5)の一環として実施された。解析対象には、2018年1月~2024年12月までに岡山大学病院肝胆膵外科でRLRまたはLLRを受けた患者249名を含めた。LTDが手術成績に及ぼす影響を評価するため、組み入れ基準は単発病変に対する肝部分切除として、RLRまたはLLRを施行した患者とした。前向きに収集したデータベースを用い、患者背景、腫瘍因子、手術因子、術後転帰を解析した。LTDは画像解析ソフトで肝切離面シミュレーションを行い、肝表面から離断最深部までの深さとして計測した。まずRLRとLLRの成績を比較し、次いでLTDと手術時間などの周術期指標との関連を検討した。さらに多変量解析により手術困難の規定因子を同定し、LTDのカットオフ値別に両術式の成績を比較した。 本研究ではRLR 56名、LLR 49名が解析対象となった。RLR群では、手術時間が有意に短く(139分 vs 195分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 50mL、P=0.002)、開腹移行率も低い(0% vs 8.2%、P=0.03)など、手術成績が良好であった。術後転帰は両群間に有意差は認められなかった。 RLR群とLLR群でLTDの中央値に差は認められなかった(RLR 2.6cm、LLR 2.6cm、P=0.77)。LTDは両術式において手術時間と有意に相関しており(RLR:R2=0.07、P=0.042;LLR:R2=0.08、P=0.046)、切離深度が深いほど手術時間が延長する傾向が示された。 次に手術困難(手術時間中央値170分を超える)に関連する予測因子を検討した。多変量解析の結果、LTD(オッズ比〔OR〕 2.0/1cm、P=0.004)およびLLR(OR 6.9、P<0.001)が、手術時間の延長と独立して関連する有意な因子として同定された。 また、LTDを用いたROC解析により、手術時間延長を予測するカットオフ値は2.5cmと算出された(AUC=0.63)。LTDが2.5cm以下の症例ではRLRはLLRに比べて手術時間が短い(137分 vs 176分、P=0.02)以外の差は認めなかったが、2.5cmを超える症例では、RLRはLLRに比べて手術時間の短縮がより顕著で(145分 vs 231分、P<0.001)、出血量も少なく(0mL vs 100mL、P=0.006)、術後の成績を総合的に評価する指標であるtextbook outcome達成率も高かった(77% vs 42%、P=0.01)。 著者らは、「本研究は、肝腫瘍の深さ(肝切離深度)という指標を用いて、肝部分切除における術式選択の目安を示した。とくに深さ2.5cmを超える症例では、ロボット手術が手術時間や出血量、術後成績において優れており、患者さんにとって有益となる可能性が示された。術前画像に基づく合理的な術式選択につながる知見といえる」と述べている。 なお、本研究の限界として、症例数が限られていることや単一施設での後ろ向き研究であること、長期転帰を評価していないことなどを挙げている。

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DVT疑いの患者のDダイマー値はカットオフを年齢によって変えると、余計な下肢エコー検査を減らせるかもしれないという朗報(解説:山下侑吾氏)

オリジナルニュース【JAMA】Age-Adjusted D-Dimer Cutoff Levels to Rule Out Deep Vein Thrombosis 日常臨床でDVT(深部静脈血栓症)を疑った際に、Dダイマー値はよく測定される。しかしながら、Dダイマー値は年齢とともに非特異的に上昇するため、高齢者では多くの人が陽性判定になり、結局下肢エコーを実施することになるという困った問題がある。肺塞栓症では、50歳以上は「年齢×10μg/L」という年齢調整Dダイマーカットオフの有用性がすでに示されていた。一方で、おそらくはDVTでも同じであろうと予想はされつつも、DVTでは前向き臨床試験での検証が不十分という“空白地帯”が残っていた。臨床試験には、エビデンスの大きなピースを埋めるものもあれば、隙間の小さな(しかし重要な)ピースを埋めるものもある。本研究は、治療方針を大きく変化させる新規薬剤や治療法の登場に関するエビデンスではないが、本領域での隙間の空白を埋める意義ある研究と筆者は考える。 本研究により、あまりDVTが疑わしくない患者では、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、年齢を調整せずDダイマー値が500μg/L未満であった症例だけを陰性と判定した場合と比べて、7.4%の患者を新たに陰性と判定することができ、それらの患者では下肢エコー検査にて近位部のDVTが発見されなかった。この結果の意味することは、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、一部の患者では不要な下肢エコー検査をスキップできる可能性があるということである。そして、当然ではあるが、その御利益は75歳以上のより高齢の患者で大きかった。わが国での近年の医療費増大に対する厳しい風向きを考えると、医療経済の観点からも、本研究の結果は意味あることと思われる。 わが国では、素晴らしい国民皆保険制度の下、専門的検査が必要と判断された際には、その実施の敷居は比較的低い医療環境である。これは、患者および医療従事者にとっては専門的検査を念のために行い、検査により当該疾患を否定できれば安心できるというメリットもある。一方で、それは諸刃の剣として、時として不要な検査の増大につながる可能性も否めない。筆者は、所属する病院で、DVTの専門家であるようなふりをしているせいか、DVTと診断された患者に加えて、DVTを疑う患者を外来・病棟に限らず山のようにご相談いただく。これらの患者の中には、あまりDVTが疑わしくない場合も多いが、Dダイマー値を測定すると院内の基準値をちょっとだけ超えて「陽性」と判定されることも多い。陽性と判定されたからには、下肢エコー検査による評価を行わないわけにいかず、エコー検査室に緊急での検査の相談をすることになるが、筆者からの多数の依頼に際してエコー検査部からのひんしゅくを買うことも否めない。本研究は、年齢調整Dダイマーカットオフを用いることにより、下肢エコー検査の必要な依頼数を減らすことができるかもしれないという、筆者にとっては日々の懸念を減らせるこの上ない朗報である。このような既存の検査や治療を最適化させる現場のニーズに応える臨床試験は、高く評価されるべきものと日々思っている。 一方で、本研究は、外来患者に限定したものである。とくに術後を含めた入院患者での最適なDダイマーカットオフは現場でよく問題となる。さらに、本研究は、がん患者は少数しか組み入れられていない。近年はがん患者での血栓症が大きな問題となっているが、がん患者ではDダイマー値が漏れなく高値となるため、がん患者ではどうすべきかという問題もきわめて重要である。筆者を含めて、わが国でも本問題に日々苦悩する臨床医は多く潜んでいると想像するが、われわれに役立つさらなる朗報が聞けることを本当に心から願っている。

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鼻毛を抜くと鼻前庭炎のリスク?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第298回

鼻毛を抜くと鼻前庭炎のリスク?鼻毛処理と疾患リスクに関する論文は少なく、このコラムでは過去に「鼻毛と喘息の関係」を取り上げました。Lipschitz N, et al. Nasal vestibulitis: etiology, risk factors, and clinical characteristics: A retrospective study of 118 cases. Diagn Microbiol Infect Dis. 2017 Oct;89(2):131-134.2008年10月~2015年1月までの約6年間に、イスラエル・Sheba Medical Centerに鼻前庭炎で入院した118入院例(115人)を後ろ向きに解析しています。入院適応は、外来での抗菌薬治療に反応しなかった症例、顔面蜂窩織炎の進行例、鼻前庭膿瘍が見られた例でした。したがって、本研究の対象は軽症例ではなく、いわば「外来治療で治まらなかった症例」の集団です。平均年齢44.33歳(8~96歳)、男性64例・女性51例で性差なし。65歳以上は10.17%のみで、小児は8歳の1例のみでした。糖尿病は12例(10.17%)、免疫抑制状態は3例(慢性骨髄性白血病1例、全身性エリテマトーデス1例、抗リン脂質抗体症候群1例)のみで、これらの患者も合併症なく経過しました。小児例が少ない点について著者らは、鼻ほじりや鼻かみの頻度が高い小児でもっと多くてもよいはずだと考察していますが、明確な説明はついていません。患者が申告した先行する習慣・行為は以下のとおりです。 鼻毛抜き:17例(14.41%) 鼻を強くかむ:11例(9.32%) 鼻ほじり:10例(8.47%) 鼻ピアス:4例(3.39%)感染部位には左右差があり、右側40.68%、左側33.05%、正中26.27%と右側優位でした(p<0.0001)。右利き優位の集団で、右手による鼻ほじりが多いことを反映していると考察されています。問診で「どちらの手でほじりますか」と聞く機会はないかもしれませんが、右側優位という知見は覚えておいてよいでしょう。膿瘍から培養が行われたのは18例で、15例から菌が分離されました。MSSAが13例(81.25%)で、MRSAが1例、Prevotella属1例でした。症状出現から入院までの期間は平均5.28日(1~30日)。入院前に外来で抗菌薬を投与されていたのは39.83%で、最多はアモキシシリン・クラブラン酸(76.6%)でした。当然ながら、入院後は、点滴治療に切り替えています。本研究は対照群を設定しておらず、一般集団における鼻毛抜きの習慣の頻度は不明です。したがって、鼻毛抜きが真のリスク因子であるかどうか、つまり鼻毛を抜く人は抜かない人に比べて鼻前庭炎を発症しやすいのかどうかは、本研究からは結論できません。とはいえ、鼻毛を抜く行為が毛包に微小外傷を生じさせ、それが細菌の侵入門戸となりうるという機序には生物学的妥当性があります。

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第297回 前年比20倍を記録!?2025年に最も流行した国内感染症

INDEX2025年に国内で流行した感染症報告件数が増加した感染症ベスト3今年の流行予測は…2025年に国内で流行した感染症2025年も本連載では数々の感染症を取り上げてきたが、そもそも各種感染症の国内動向はどのようになっているのか、ふと気になった。ということで、2025年の各種感染症発生動向について、2024年と単純に比較しやすい全数報告感染症で比較してみた。比較は国立健康危機管理研究機構(JIHS)が発表する感染症発生動向調査週報(IDWR)速報データ第52週までの累計値である。なお、2025年は第52週の最終日が12月28日、2024年は12月29日だが、全体の傾向を見る点では大きな相違はないだろう。2024年比±5%を「不変」、これを超える増減をそれぞれ「増加」「減少」と勝手に定義してみた。以下はその結果だ。画像を拡大するこのうち2024年の報告件数が10例未満のものは、増減が大きく出やすいため、あえて*を付けた。多くはいわゆる輸入感染症である。ただ、このなかで注目すべきは風疹である。2025年の報告件数は11例で、前年の7例からは単純計算で57.1%増となる。しかし、昨年9月26日、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局は、日本が「適切なサーベイランス制度の下、土着株による風疹感染が3年間確認されないこと、または遺伝子型の解析によりそのことが示唆されること」という風疹の排除認定基準を満たしたとして、正式に風疹排除国と認定した。国内での地道な啓発活動などが実を結んだといえるだろう。報告件数が増加した感染症ベスト3では、*の感染症を除き、2024年と比べ、2025年に報告件数が増加した感染症だが、まず第3位は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の191例で、前年比59.1%増で同感染症の年間報告数として過去最多を記録した。SFTSについては過去の本連載でも触れたとおりである。第2位は前年比488.9%増の麻疹の265例であり、これも過去の本連載で触れた。そして2025年に前年比で最も報告件数が増えた“不名誉”な第1位は百日咳である。2025年の累計報告件数は実に8万9,387例。前年が4,054例なので、増加率は2,104.9%と驚異的な数字である。この原因については、さまざまな指摘があるが、複合的な要因とみられる。もっとも私個人が注目しているのは、IDWR第22週の「注目すべき感染症」に記載された百日咳の疫学動向1)である。これを見ると、第21週までの報告件数の58.7%は10代となっている。ざっくりいえば、2006~15年生まれの年代である。日本では1981年から乳児の百日咳ワクチン接種は、副反応の少ない無細胞ワクチンを含む3種混合ワクチン(DTP)が長らく使用されてきた。これが2012年からは不活化ポリオワクチンが加わった4種混合ワクチン(DPT-IPV)、さらに2024年からはこれにインフルエンザ菌b型(Hib)が加わった5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)に変更されてきた。このことを考慮すると、昨年に百日咳が多発した10代は3種混合ワクチンから4種混合ワクチンへの切り替えがあったやや微妙な年代である。しかし、厚生労働省のワクチン接種実施率を見る限りは、この時期のDTPとDPT-IPV実施率(接種率)の合算値は、それほど低い数字とはいえない。一方でこの年齢層に多かった理由の1つとして、「経年によるワクチンの効果減弱」が考えられる。従来から百日咳ワクチンの経年効果減弱を指摘する報告はある。たとえば、カナダ・オンタリオ州公衆衛生局のグループが行ったケースコントロールスタディ2)によると、百日咳ワクチンの有効率は、接種1年以内は80%、接種後1〜3年は84%で維持されるものの、接種4〜7年後は62%、8年以上経過後は41%まで低下すると報告している。この影響を考えれば、10代が百日咳のボリュームゾーンになることはある意味納得できるのだが、免疫減弱がより進行していると思われる20代以降の報告割合が前出のIDWR第21週までの解析で15.2%に過ぎなかったことと、一見すると整合性がないように映る。ただ、一般的に成人の百日咳は軽症で咳が長期間続いても見過ごされることが多いといわれるため、そもそも受診すらしていない可能性が十分に考えられる。その点ではそれほど矛盾は生じていないといえるだろう。今年の流行予測は…一方で、私たちが気になるのは「今年も百日咳の流行が起こるか否か」だ。ちなみにノースカロライナ大学チャペルヒル校のグループによる研究3)では、百日咳罹患による獲得免疫の持続期間は4~20年と報告されており、これを前提にするならば今年は昨年ほどの流行はないとも考えられる。しかし、現時点で公開されている2026年のIDWR第2週までの百日咳の累積報告件数は336例で、前年同期の163例の2倍超となっている点は何とも不気味ではある。これが2025年からの残り火的なものなのか、それともこれから再び本格流行に転じるかは、現時点で何ともいえない。だが、いずれにせよ警戒しておくに越したことはないだろう。 1) 国立感染症研究所:IDWR 感染症週報2025年第22週 2) Schwartz KL, et al. CMAJ. 2016;188:E399-E406. 3) Wendelboeet AM, et al. Pediatr Infect Dis J. 2005;24(5 Suppl):S58-61.

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高齢者だから一律に減量・ICI単剤ではない!【高齢者がん治療 虎の巻】第6回

<今回のPoint>高齢者にも適応可能な標準治療が増えており、「高齢だから治療しない」という考えはもはや通用しない。免疫チェックポイント阻害薬は、高齢者でも適切に使えば有効性があり、副作用リスクとのバランスを見ながら“使いどころ”を見極めることが重要。ベストサポーティブケアは多職種と共有しながら日常診療に組み込むことで実践的な価値が生まれる。<症例>81歳、男性。嗄声のため耳鼻科を受診したところ胸部CTで左肺に腫瘤を指摘された。精査の結果、肺腺がんStageIVB(骨転移、副腎転移あり)と診断され、本人は積極的な治療を希望している。既往に高血圧、脂質異常症、脊柱管狭窄症があり、Performance Status(PS)は1。82歳の妻と同居しているが、妻は脳梗塞後遺症のため介護が必要である。息子夫婦は車で40分程度の地域で生活している。娘は他県に嫁いでおり、治療のサポートは困難である。遺伝子変異検査ではドライバー変異なしPD-L1 TPS 5%G8:11点(失点項目:年齢、併用薬数、BMI、食事量の減少など)CARGスコア:platinum-doubletを想定 11点[高リスク(陽性項目:年齢、転倒歴、歩行)]多職種カンファレンスで治療方針を決定することになった。「高齢だから治療しない」はもう古い―肺がん治療にエビデンスあり75歳の日本人の平均余命は、男性で12.13年、女性で15.74年とされています1)。一方、切除不能・進行非小細胞肺がんでベストサポーティブケア(BSC)のみが行われた場合、予後は一般に1年未満です。そのため、明らかな命に関わる併存疾患がない場合には、遺伝子変異が陰性であっても、暦年齢のみで治療を見送るのではなく、何らかの積極的治療を検討する必要があります。以下は70歳以上を対象とした主な非小細胞肺がんの臨床試験の要約です。(表1)画像を拡大する免疫チェックポイント阻害薬の有効性と“使いどころ”現在、ドライバー遺伝子変異が陰性の非小細胞肺がんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とした治療が1次治療の主軸となっています。しかしながら、高齢者に対してICIをどのように使用するのかの指針はなく、irAE管理の問題から高齢者には使用しにくいという声もあると聞きます。以下に、ICI関連の高齢者を対象とした臨床試験をまとめます。(表2)画像を拡大するNEJ057試験の結果からは、一部の高齢者ではICI単剤が適切と考えられることが示唆されており、どのような患者がその適応となるかを見極めることが重要です。また、免疫老化の影響から高齢者ではICIの効果が劣る可能性が指摘される一方で、臨床試験の結果からは、高齢者こそICIの恩恵を受ける可能性があるとも考えられます。治療選択にあたっては、PD-L1発現、腫瘍サイズや転移部位といった腫瘍側の因子に加えて、個々の免疫状態を考慮することが重要です。暦年齢にとらわれず、適切な症例選択を行うことで、ICI治療の真の価値を引き出すことが可能になります。高齢者機能評価(GA)の日常診療での有用性筆者らは、根治的治療が困難な75歳以上の非小細胞肺がん患者1,020例を対象に、患者満足度を主要評価項目としたクラスターランダム化第III相比較試験「ENSURE-GA study」を実施しました。本試験は全国78施設に協力いただき、治療開始前にGAを実施し、その結果を患者・家族と共有するとともに多職種チームにより脆弱性を認めた項目に関してできる限り介入をする群(GAM群)と、GAの結果は提供せず通常通りに診療を実施する非介入群(SC群)に施設をランダム化しました。その結果、GAM群では患者満足度が有意に上昇することが明らかとなりました2)。また、本試験では開始前と終了後に参加施設へアンケート調査を実施したところ、試験開始時にGAを日常診療で実施している施設の割合は25%にとどまっていました。ところが、2022年の試験終了時には、GA導入率は56%と大幅に上昇していました。さらに、「GAの実施は日常診療に役立ったか?」という問いに対しては、すべての施設から「役立った」との肯定的な回答が得られています。これらの結果は、GAの実施が患者満足度を向上させるのみならず、医療現場への定着・活用を促す実践的な意義を示しています。今後は、治療適応の見極めにとどまらず、患者の価値観や希望に基づいた支援を継続的に提供するための枠組みとして、GAのさらなる普及が期待されます。冒頭の症例の治療選択肢に正解はないと思います。GA結果を患者と家族に提示しつつ、患者の希望や環境に合わせた治療を、医療者とともに納得して選択した治療内容が正解だと思います。どの治療を選ぶとしても食事量の低下や転倒歴への対応、有害事象を早めに覚知できる体制を構築してから治療を開始することが重要です。日本人肺がん患者におけるG8とCARGスコア:ENSURE-GA試験より第2回ではG8(Geriatric 8)、第5回ではCARGスコア(Cancer and Aging Research Groupスコア)を紹介しましたが、いずれも「日本では妥当性が検証されていない点に注意」と述べました。ENSURE-GA試験では、これらのスクリーニングツールについて日本人肺がん患者における実際の妥当性を検討しています。G8については、国際的なカットオフ値である14点を用いた場合、91.4%(908例中834例)が陽性と判定され、ほとんどの症例が「脆弱性あり」とされました3)。この結果は、「日本人高齢者においては従来の基準は過度に感度が高過ぎる可能性」を示唆しており、日本人に適したカットオフ値の再検討や、肺がん患者に特化した新たなスクリーニングツールの開発の必要性を浮き彫りにしています。現時点では、75歳以上の非小細胞肺がん患者でG8が15点以上の症例は、上位10%の“お元気な”高齢者とみなすことができるため、ほぼperfect healthとして標準的治療を選択するといった活用法が有効です。一方、CARGスコアについては、治療レジメンごとに有害事象との関連を解析しましたが、Grade3以上の有害事象を予測するには十分な鑑別能は確認されませんでした(表3)4)。今後はがん種別・治療内容別に有害事象をより精緻に予測できる新たなスコアリングツールの開発が求められます。(表3)画像を拡大する1)厚生労働省:令和5年簡易生命表の概況2)Soda S, et al. J Clin Oncol. 2023;41:12041.3)中島和寿. 第64回日本肺学会学術集会(2023年). 「高齢肺患者における機能評価の有用性を検討するクラスターランダム化第III相試験 (ENSURE-GA study)」4)ASCO2024:Geriatric assessment in older patients with non-small cell lung cancer: Insights from a cluster-randomized, phase III trial-ENSURE-GA study (NEJ041/CS-Lung001).講師紹介

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025)レポート

レポーター紹介60年に1回の丙午の年を迎えた。2025年は乳がん診療において激動の1年であった。米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で薬物療法の標準治療を変えるエビデンスが、サブタイプ、周術期/転移再発のセッティングを問わず多数発表された。乳がんを専門に診療・研究をしている立場でも、広範なエビデンスのキャッチアップはかなり大変な年であった。ASCO、ESMOでここまで多くのエビデンスが発表されてしまうと、San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)では薬物療法の話題は枯れてしまって、局所療法の話題が中心となるのではないかと思っていた。ところが。蓋を開けてびっくり、今回のSABCSでは新しい標準治療のエビデンスが多数発表された。以下に、厳選した5演題の結果を解説する。なお、SABCS2024からBest of SABCSのサイトで各演題の解説が見られるようになっている。登録が必要であるが無料なので、詳細を知りたい方はアクセスしてみてはいかがだろうか。なお、今回から日本のエキスパートによる日本語の解説も聞けるようである(私は未聴講)。INDEX1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)5.LORETTA試験(DCIS)1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)lidERA試験はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん周術期において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)の有効性を示した初めての試験である。転移乳がんにおいてはelacestrantやイムルネストラントがESR1変異を有するHR+HER2-乳がんにおける有効性を示した。lidERA試験では高リスクStageIを含むStageIIIまでのHR+HER2-早期乳がんを対象として、術後内分泌療法としてgiredestrantと標準的内分泌療法(ET)を比較する試験である。N0は腫瘍径が1cmを超えるかつG3/Ki-67≧20%、ゲノムプロファイリング検査で高リスク、あるいはT4を対象とした。周術期化学療法は許容された。閉経前患者は卵巣機能抑制を併用(タモキシフェン以外)した。12週以内のET±CDK4/6阻害薬は許容された。主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であった。giredestrant群には2,084例、標準治療群には2,086例が割り付けられ、約40%が閉経前であった。StageIIが約50%、StageIIIが約40%、リンパ節転移はN1が約45%、N2以上が30%強と、比較的リスクが高いと考えられる患者が含まれた。それを反映して、約80%の患者で化学療法歴があった。内服期間は5年以上とされた。32ヵ月の観察期間中央値において、iDFSイベントはgiredestrant群で6.7%、標準治療群で9.4%で発生し、ハザード比(HR):0.70(95%信頼区間[CI]:0.57~0.87、p=0.00141)とgiredestrant群で有意に少なかった。休薬はgiredestrant群で多かったが、中止は両群ともに少数であった。有害事象は関節痛、ホットフラッシュなどが主であり両群間の差はほぼみられなかったが、関節痛、高血圧のGrade3以上はgiredestrant群でやや多い傾向がみられた。本試験をもって、高リスクHR+HER2-早期乳がんの術後治療に経口SERDの選択肢が現れた。一方で、本試験では現在高リスク患者に対する標準治療であるアベマシクリブ、ribociclibなどのCDK4/6阻害薬は併用されていない。また、日本においてはS-1も選択肢になりうる。2.75年時点でのiDFS絶対差2.8%は、monarchE試験における2年時点での3.5%とほぼ同等である(Johnston SRD, et al.J Clin Oncol. 2020;38:3987-3998.)。現時点ではET+CDK4/6阻害薬に対するオプションであるが、今後周術期治療における経口SERD+CDK4/6阻害薬のエビデンスの創出が求められる。2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)イムルネストラントは第III相試験での有効性が初めて検証された経口SERDであり、EMBER-3試験の最初の結果が2024年のSABCSで発表された。今回はそのアップデートの結果が発表された。EMBER-3試験ではCDK4/6阻害薬併用を含む術後ET/終了後12ヵ月以内の再発、もしくは転移乳がん(MBC)に対する内分泌療法で病勢進行したHR+HER2-MBCを対象として、イムルネストラント(A)、標準ET(フルベストラントもしくはエキセメスタン)(B)、イムルネストラント+アベマシクリブ(C)、にランダム化された。主要評価項目は、ESR1変異を有する患者におけるA vs.B、全患者におけるA vs.B、全患者におけるC vs.Aを主治医判断における無増悪生存期間(PFS)で評価した。今回のSABCSではそのアップデートされた結果が発表された。まずひとつ目の主要評価項目であるESR1変異を有する患者におけるイムルネストラント単剤と標準ETを比較したPFS中央値は、5.5ヵ月vs.3.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.47~0.82、p=0.0007)と、イムルネストラント群における統計学的有意な改善が維持されていた。全生存期間(OS)の中間解析は50%のイベント発生割合で中央値が34.5ヵ月vs.23.1ヵ月(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)とイムルネストラント群で良好な傾向を認めた。中間解析のため、この時点で定められた有意水準は満たしておらず、統計学的な有意差はまだ認められていない。探索的な評価項目である化学療法導入までの期間は15.6ヵ月vs.10.2ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)と、イムルネストラント群で長い傾向を認めた。 全患者におけるイムルネストラント+アベマシクリブとイムルネストラント単剤の比較では、PFS中央値10.9ヵ月vs.5.5ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)とアベマシクリブ併用群で有意に良好な結果であった。その有効性はCDK4/6阻害薬治療歴のある患者群でも同様であり、またESR1変異の有無、PI3キナーゼ経路の変異の有無によらずアベマシクリブ併用群で良好であった。OS中央値は33%のイベント発生割合でアベマシクリブ併用群は未到達、イムルネストラント群は34.4ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)と若干併用群で良さそうな傾向は認めたものの、有意差は認められなかった。EMBER-3試験の結果を踏まえて、本邦でもイムルネストラントはET中に進行したESR1変異を有する患者に対する標準治療となった。HR+HER2-MBCに対する内分泌療法は経口SERDを含め多くのエビデンスが存在し、またongoingの試験が多数実施されている。オプションが増えることは患者にとって良いことではあるが、それぞれの薬剤に異なるコンパニオン診断が設定されていること、薬剤が上乗せされることによる医学的、また経済的な毒性が増すことなど、実臨床では悩むことが多くなる。エビデンスを整理しそれぞれの患者にとっての最適な、有効かつ無駄のない治療戦略を立てていくことが、臨床医に求められている。3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)サシツズマブ・ゴビテカン(SG)はHR+HER2-ならびにトリプルネガティブ(TN)MBCの3次治療以降でPFSならびにOSを有意に改善した、TROP-2をターゲットとした抗体薬物複合体(ADC)である(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.)。ASCENT-07試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療において、SGを主治医選択化学療法(TPC)と比較した第III相試験である。ASCENT-07試験では転移/切除不能病変に対する化学療法歴のないHR+HER2-MBCのうち、2ライン以上のET歴がある、もしくは1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬治療中6ヵ月以内に増悪、あるいはET+CDK4/6阻害薬の術後治療開始後24ヵ月以内に再発した患者を対象として、SGとTPC(カペシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)を比較した。主要評価項目は盲検化されたPFSとされた。690例の患者が登録され、SG群に456例、TPC群に234例が割り付けられた。年齢の中央値は57~58歳、白人が約半数と、アジア人が40%含まれた。PS 0は60%であった。2ラインのETを受けた患者が約60%、1ラインのETを受けた患者が27%であった。約90%がCDK4/6阻害薬の投与を受けた。周術期にCDK4/6阻害薬を受けた患者は5%未満であり、アンスラサイクリン、ならびにタキサンを受けた患者が約半数であった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.69~1.05、p=0.130)と両群間の差を認めなかった。副次評価項目の主治医評価のPFSは8.4ヵ月vs.6.4ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、p=0.008)とSG群で有意に良好であったが、これはバイアスの可能性がある。副次評価項目のOSは27%のイベント発生割合で中央値は両群ともに未到達(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、p=0.029)とSG群で良好な傾向がみられた。TPC群の61%が後治療としてADCによる治療を受けていた。SGの安全性についてはこれまでの報告と変わらず、最も高頻度に起きる有害事象は好中球減少症であった。本試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療としてのSGの有効性を検証した試験であったが、主要評価項目のPFSにおける優越性は示せなかった。2次治療以降ではPFS、OSともに化学療法に対する優越性が示されているにもかかわらず、本試験で示されなかった理由は現時点では不明である。もう少しイベントが発生した段階でのOSについては慎重に評価する必要があるだろう。4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)HER2CLIMB-05試験はHER2+MBCの1次治療におけるtucatinib(まもなく本邦でも承認が期待されている)の上乗せ効果を検証した第III相プラセボ対照二重盲検化試験である。tucatinibはHER2を対象とした新たなチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で、HER2+MBCの3次治療(Murthy RK, et al. N Engl J Med. 2020;382:597-609.)や2次治療(Hurvitz SA, et al. Ann Oncol. 2025 Nov 17. [Epub ahead of print] )における有効性が示されている。本試験ではHER2+MBCに化学療法の1次治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)およびタキサンの併用療法(THP)を受け、4~8サイクルまでのTHP中に病勢進行しなかった患者を対象として、HPにtucatinib 300mg BIDもしくはプラセボを維持療法として投与した。主要評価項目は主治医判断によるPFS、副次評価項目はOSや盲検化PFS、中枢神経(CNS)-PFSなどとされた。326例がtucatinib群、328例がプラセボ群に割り付けられ、HR+患者では内分泌療法の併用が許容された。PSは0が60%強、HRは陽性が50%程度、脳転移の既往が約12%に認められた。De novo StageIVが約70%であり、再発例は30%にとどまった。主要評価項目の主治医判断によるPFSは中央値が24.9ヵ月vs.16.3ヵ月(HR:0.641、95%CI:0.514~0.799、p<0.0001)とtucatinib群で有意に良好であった。サブグループ解析はいずれもtucatinib群で良好な傾向がみられた。HRステータスごとの解析ではHR-でより差が強まる傾向を認めた。OSはいずれも未到達(HR:0.539、95%CI:0.303~0.957、p=0.0320)とtucatinib群で良好な傾向がみられた。CNS-PFS(脳転移の増悪もしくは死亡をイベントと定義)については全体集団では差がみられなかったものの、登録時に脳転移を有していた患者ではtucatinib群で良好な傾向がみられた。これは過去の試験結果とも共通している。有害事象も既報と大きな違いはないが、tucatinib群で下痢が73%、肝機能障害が30%弱と毒性が強い傾向にあった。とくに、Grade3以上のALT上昇は13.5%に認められており、tucatinib投与の際には注意が必要である。プラセボ対照とはいえ両群間の毒性が明確に異なるため、いわゆるfunctional unblindingが起きて主要評価項目に影響を及ぼした可能性は否定できない。本試験をもって、HER2+MBCに対するTHPによる導入療法の後のHP+tucatinib療法が標準治療の候補となった。一方で、HER2+MBCの1次治療としてはDB-09試験(Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print])の結果からT-DXd+ペルツズマブも今後有力な候補になってくる。HER2+MBCの1次治療はPFSの延長に伴い、治療期間が以前と比べて大幅に延長している。これらの薬剤の使い分けに当たっては、有効性は当然のことながら有害事象の程度、頻度、重篤度も十分に加味して選択する必要がある。5.LORETTA試験(DCIS)最後に日本からのオーラルの演題を紹介する。LORETTA試験は低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)を対象として、非切除かつタモキシフェン(TAM)による治療の有効性を検証した単群検証的試験である。日本臨床試験グループ(JCOG)で実施され、研究事務局は新潟県立がんセンターの神林 智津子先生、発表したのは前JCOG乳がんグループ代表である名古屋市立大学岩田 広治先生である。JCOG1505 LORETTA試験では、浸潤がんを伴わない低リスクDCISと診断された40歳以上の女性を対象として、手術を行わずにTAM 20mg/日を5年間投与する試験である。DCISはコメド壊死を伴わず、核グレードが1~2、ER+かつHER2-であることが低リスクと定義された。3~6ヵ月ごとに評価を実施し、浸潤がんが疑われる、もしくは腫瘍径の増大があれば針生検を実施し、浸潤がんもしくはグレード3 DCISの診断となれば手術が行われた。評価項目は5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合であった。IPICは2.5%を期待値、7%を閾値と設定された。これはすなわち、全登録患者におけるIPICが14%以下であれば仮説が検証されることになる予定であった。344例が登録され、337例が適格とされた。登録患者のうち、核グレード1が70%、ER+は100%、PgR+は97%であった。MRIによる腫瘍径は78%で2cm未満であった。中間解析における主要評価項目の評価で18例のIPIC発生があり、本試験は早期中止となった。IPICは腫瘍径が2cm以上の患者で多い傾向が認められた。副次評価項目の5年OSは98.8%、5年対側乳房無病生存率は97.5%と予後は非常に良好であった。6年同側乳房内浸潤がん無発生生存率は89.7%、6年無手術生存率は76.4%であった。2024年に同様の試験であるCOMET試験(Hwang ES, et al. JAMA. 2025;333:972-980.)で、低グレードDCISに対する非切除療法の安全性が示されている。COMET試験ではガイドライン遵守群の同側浸潤がん5.9%に対してアクティブモニタリング群では4.2%であり、アクティブモニタリングの非劣性が示された。LORETTA試験では主要評価項目は達成できなかったものの、同側浸潤がんの発生は当初の予想より著しく多いわけではなく、また予後は非常に良好であることが示された。非切除を希望する一部の患者にとっては、非切除療法がオプションになりうることを示したとも言えるだろう。

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納豆が心房細動リスクを下げる?~日本人前向き研究

 大豆食品の摂取量が多いと心血管疾患を予防する可能性があることが報告されているが、心房細動予防においては解明されていない。今回、国立循環器病研究センターのParamita Khairan氏らが、都市部の日本人一般集団を対象とした前向きコホート研究で、大豆食品およびその栄養素(イソフラボン、ビタミンK)における心房細動発症率との関連を調査したところ、女性でのみ、納豆およびビタミンKの摂取量が多いと心房細動リスクが低いことが示された。The Journal of Nutrition誌2026年1月号に掲載。 本研究はベースライン調査時に食物摂取頻度質問票を回答した30~90歳の男女5,278人が対象で、心房細動は12誘導心電図検査、健康診断、医療記録、死亡診断書を用いて診断した。多変量調整Cox回帰分析を用いて、大豆食品(納豆、味噌、豆腐)、大豆、イソフラボン、ビタミンKの残差法によるエネルギー調整摂取量の三分位群における心房細動発症率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6万6,487人年(平均12.6年)の追跡期間中、心房細動発症が222例であった。・女性では、納豆摂取量が最も少ない群(T1)と比べ、最も多い群(T3)で心房細動リスクが低かった(HR:0.44、95%CI:0.24~0.80)が、男性では関連は認められなかった(T1に対するT3のHR:0.97、95%CI:0.65~1.43)。・味噌については、男性でのみ中程度の摂取量と低い心房細動リスクが関連していた。・ビタミンK摂取量が最も多い三分位群の女性は、最も少ない三分位群と比較して、心房細動リスクが67%減少した(HR:0.33、95%CI:0.15~0.71)。・男女とも、大豆食品全体、豆腐、大豆、イソフラボンの摂取量と心房細動リスクとの関連は認められなかった。

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高齢者の健康関連QOL低下の最も強い予測因子は?/名古屋大学

 最大12年間にわたり縦断的に収集された日本の地域在住高齢者データを用いて健康関連QOLの長期的な変化パターンとその予測因子を調査した結果、一部の健康関連QOLは一律に低下するのではなく、維持する群と急速に低下する群に分かれ、その分岐を最も強く予測していたのは睡眠の質の悪化であったことを、名古屋大学の大島 涼賀氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2025年12月7日号掲載の報告。 主観的な身体・精神・社会的健康を包括的に評価する健康関連QOLは将来の死亡率や心血管疾患の発症などと関連することが報告されている。そのため、健康関連QOLは高齢者の健康状態を早期に捉えるうえで有用な指標となり得るが、これまでの研究は単一時点の評価が中心であり、時間経過による変化やその要因については十分に明らかにはなっていなかった。そこで研究グループは、2007~18年の「岩木健康増進プロジェクト健診」のデータを解析し、国際的な健康関連QOL指標であるSF-36下位尺度をもとに加齢に伴う身体的・精神的なQOLの変化を分析する縦断研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、2007~18年の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した60歳以上の910人のデータを用いた。女性が588人(64.6%)で、年齢中央値は男女ともに64.0歳であった。・潜在クラス混合モデルで解析した結果、身体的役割機能と精神的役割機能は年齢とともに一律に低下するわけではなく、ベースライン時のスコアが同様に高値であっても維持する群と急速に低下する群に分かれた。・身体的役割機能と精神的役割機能の低下に共通する最も一貫して関連していた予測因子は睡眠の質の悪化であった。・身体的役割機能低下のその他の予測因子は、週1回以上の運動習慣がない、開眼片足立ちテストの成績不良であった。・精神的役割機能低下のその他の予測因子は、抑うつ傾向、過体重/肥満であった。・就寝時刻・入眠時刻・起床時刻などの睡眠習慣は、健康関連QOLと関連しなかった。 研究グループは「われわれの知る限り、本研究は日本の地域在住高齢者を対象とした健康関連QOLの長期的な変化とその予測因子を明らかにした初の報告である。日常生活機能に関連する健康関連QOLを維持するためには、日中の眠気を予防するために睡眠の質を向上させることが重要である」とまとめた。

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アルツハイマー病に伴うアジテーション、最適なブレクスピプラゾールの投与量は?

 アルツハイマー病に伴うアジテーションは、患者の転帰と介護者の負担に重大な影響を及ぼす。ブレクスピプラゾールは有望な治療選択肢と考えられている。しかし、至適用量は依然として不明であった。サウジアラビア・King Faisal UniversityのMahmoud Kandeel氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションの治療におけるブレクスピプラゾールの異なる用量の有効性と安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月8日号の報告。 PRISMAガイドラインに従い、2025年1月までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、Scopusより検索した。ブレクスピプラゾールの異なる用量(0.5~3mg/日)とプラセボを比較した4件のランダム化比較試験(1,451例)を解析に含めた。主要アウトカムは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Clinical Global Impression-Severity Scale(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)スコアの変化と安全性評価とした。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール2mgは、プラセボと比較し、CMAIスコア(平均差[MD]:-5.88、95%信頼区間[CI]:-8.13~-3.63)、CGI-Sスコア(MD:-0.48、95%CI:-0.95~-0.01)の有意な改善が認められた。・複数回投与においてNPI-NHスコアの有意な改善が認められ、高用量(2~3mg)投与で最も効果が高かった(MD:-4.60、95%CI:-7.54~-1.66)。・高用量(2~3mg)では、治療下で発現した有害事象が増加した(リスク比:1.20~1.33)。しかし、重篤な有害事象についてはプラセボと比較して有意な差は認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール2mgによる治療は、良好な安全性プロファイルを維持しながら、最適な治療効果をもたらすことが明らかとなった。これらの知見は、個々の反応と忍容性に基づき、低用量から治療を開始しながら2mgまで慎重に漸増することを支持している」とし「今後の研究では、長期的なアウトカムと実臨床における有効性に焦点を当てるべきである」としている。

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食道がん1次治療、ニボルマブ+CRTの安全性確認、完全奏効率73%(NOBEL)/京都大学ほか

 国内における食道がんの初回標準治療は、病期や全身状態によって手術、化学放射線療法(CRT)、放射線療法が選択される。近年、切除不能例の2次治療におけるニボルマブをはじめ、免疫療法も承認されているが、CRTとの併用に関するエビデンスは限られていた。京都大学をはじめとした国内5施設において、ニボルマブ+CRTの有用性を検討するNOBEL試験によって本併用療法の安全性が確認され、完全奏効率や1年全生存(OS)率においても有望な成績が報告された。京都大学の野村 基雄氏らによる研究結果は、EClinicalMedicine誌2026年1月号に掲載された。 NOBEL試験は、多施設共同単群第II相試験で、未治療のPS 0~1の食道扁平上皮がん患者(20~75歳、切除可能・不能問わず)が登録された。治療はニボルマブ+CRT(シスプラチン+5-FU、50.4Gy照射)、それに続く最長1年間のニボルマブの維持療法であった。  主要評価項目は安全性で、Grade4以上の非血液学的毒性の発生率10%以下、Grade3以上の肺臓炎発生率15%以下と定義された。副次評価項目は完全奏効率、無増悪生存期間(PFS)、OSなどであった。治療前の生検検体において51の免疫関連遺伝子バイオマーカー解析を実施した。  主な結果は以下のとおり。・2019年1月~2021年9月に患者が登録され、ベースライン後の腫瘍評価を受けた41例(年齢中央値65歳、男性36例)が解析対象となった。・Grade3以上の肺臓炎を経験した患者は5%(2/41例)で、既報から想定された頻度よりも低く、主要安全性評価項目を達成した。最も頻度の高い有害事象は食道炎、便秘、リンパ球減少であり、治療関連死亡は認められなかった。・1年OS率は92.7%(95%信頼区間[CI]:79.0~97.6)、1年PFS率は65.4%(95%CI:48.6~77.9)であった。・完全奏効率は73%(30/41例、95%CI:58~84%)であった。とくに切除可能例における完全奏効率は84%、1年OS率は100%に達した。・バイオマーカー解析においては、免疫活性の高いサブタイプでは奏効率が高い傾向が見られたが、サンプルサイズが小さいため、参考データ扱いとなった。 研究者らは「食道がん初回治療において、ニボルマブとCRTの併用は実施可能であり、許容可能な安全性を示した。切除可能、不能例双方における高い完全奏効率は、この併用療法が有望な治療選択肢であることを示唆している。しかし、サンプルサイズが小さく、切除不能例の登録遅れによって試験が早期に終了したこともあり、これらの結果は予備的なものとして、慎重に解釈すべきである。臨床的意義を確立するためには、より大規模な無作為化試験を経て、結果を検証する必要がある」としている。

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自己免疫性溶血性貧血、抗CD19 CAR-T細胞療法が有用/NEJM

 難治性自己免疫性溶血性貧血(AIHA)患者において、CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法(抗CD19 CAR-T細胞療法)は予想された毒性を示し、持続的な寛解をもたらしたことを、中国・Institute of Hematology and Blood Diseases HospitalのRuonan Li氏らが報告した。AIHA患者は持続的な自己反応性B細胞活性により、再発のリスクが高い。難治性AIHAは3ライン以上の治療に対して寛解が得られない、より進行した病態であるが、抗CD19 CAR-T細胞療法はB細胞を著しく減少させて難治性AIHAに対するドラッグフリー寛解を達成する、有用な治療法となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2026年1月15日号掲載報告。適応外使用/第I相の試験参加者のうち、適格患者に抗CD19 CAR-T細胞を投与 研究グループは、適応外使用プログラムまたは第I相試験に参加していた原発性の難治性AIHA患者をスクリーニングし、本検討に登録した。適格基準は、温式、冷式または混合AIHA、もしくはエバンス症候群を含む原発性AIHAと診断され3ライン以上の治療を受けたが長期的な疾患コントロールが得られず、スクリーニングでヘモグロビン値が10g/dL未満、ECOG PSが2以下、肝臓や肺など臓器機能が十分あることであった。 自己の抗CD19 CAR-T細胞を、適応外使用プログラムの患者には1.0×106/kg、第I相試験の患者には0.5×106/kgまたは1.0×106/kgを単回投与した。 検討では、安全性(サイトカイン放出症候群および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群を含む有害事象の発現、特徴、重症度)の評価を第一とし、次いで有効性(完全奏効は、症状消失、ヘモグロビン値の上昇、溶血マーカーの正常化)および薬物動態を評価した。B細胞の再構築および再発の原因は、フローサイトメトリー、シングルセルRNAシーケンシング、およびシングルセルB細胞受容体シーケンシングによって解析された。安全性プロファイルは予想どおり、長期寛解を含む迅速な寛解を達成 2023年9月~2024年10月に、11例が登録され(適応外使用5例、第I相試験6例)、抗CD19 CAR-T細胞が投与された。 追跡期間中央値12.2ヵ月(範囲:7.3~21.9)において、11例全例が完全奏効を示し、完全奏効までの期間中央値は45日(範囲:21~153)、ドラッグフリー寛解期間の中央値は11.5ヵ月(範囲:6.8~21.0)であった。 Grade1または2のサイトカイン放出症候群が9例、Grade1の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群が1例、Grade3の免疫エフェクター細胞関連血液毒性が1例に認められた。7例に計15件の感染症が発生したが、Grade4以上の感染症は認められなかった。 連続検体のマルチオミクス評価では、ドラッグフリー寛解が得られた患者における再構成B細胞集団はナイーブB細胞が優勢で、HLA-DRB5+B細胞、CD4+T細胞、およびB細胞成熟抗原を発現する長寿命形質細胞間のクロストークが、再発特異的B細胞ニッチの形成に寄与していた。

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肥満症治療薬、投与中止後は体重が急増/BMJ

 英国・オックスフォード大学のSam West氏らは、過体重または肥満の成人における体重管理薬(weight management medication:WMM)中止後の体重増加を定量化し比較する目的でシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、WMM中止後は体重が急激に増加し、心代謝マーカーに対する有益な効果が逆転することを明らかにした。また、WMM中止後の体重増加は、行動的体重管理プログラム(BWMP:低エネルギー食と身体活動の増加を支援する肥満管理の基礎)後と比べて速かった。著者は、「より包括的な体重管理アプローチを伴わない短期の薬剤使用には、注意が必要であることを示唆している」とまとめている。きわめて効果的なWMMの開発は肥満治療に変革をもたらしたが、これまでのシステマティックレビューは、BWMPとより低強度の管理プログラムまたは管理なしの場合の体重増加や心代謝マーカーの変化を定量化し比較したものしかなかった。BMJ誌2026年1月7日号掲載の報告。体重管理薬中止後の体重増加に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施 研究グループは、臨床試験登録簿およびデータベース(Medline、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane、Web of Science)を用い、2025年2月までに公表された研究を検索した。 適格研究は、過体重または肥満の成人(18歳以上)を対象とし、WMMを8週以上使用かつ治療中止後4週以上の追跡調査を行っている無作為化比較試験、非無作為化試験または単群試験、前向き・後ろ向き観察研究で、WMMはセマグルチド、チルゼパチド、リラグルチドなどのインクレチン関連薬を含む、現行のまたは過去に体重減少目的で承認された薬剤、もしくは同クラスの効果を有すると考えられる薬剤とした。また、比較試験の場合、比較対照は行動介入、プラセボなどあらゆる非薬物介入とした。 2人の独立した評価者が研究のスクリーニング、データ抽出を行い、無作為化比較試験についてはCochrane Risk of Bias 2ツール、非無作為化試験についてはROBINS-Iツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主要アウトカムは、WMM中止時からの体重増加、副次アウトカムは心代謝マーカーの変化で、混合効果モデル、メタ回帰モデルおよびtime-to-eventモデルを用いて解析した。中止後の体重は月平均0.4kg増、心代謝マーカーは1.4年以内でベースラインに戻る 9,288件の論文をスクリーニングし、このうち37研究(介入群63、参加者9,341例)が解析対象となった。平均治療期間は39週間(範囲:11~176)、平均追跡期間は32週間(範囲:4~104)であった。 体重増加の月平均値は0.4kg(95%信頼区間[CI]:0.3~0.5)であった(無作為化比較試験における混合モデルでは対照群との比較において月平均0.3kg増加[95%CI:0.2~0.4])。すべての心代謝マーカーで、WMM中止後1.4年以内にベースラインレベルに戻ると予測された。 体重増加は、初期の体重減少とは関係せず、WMM中止後のほうがBWMP後より速かった(月平均0.3kg、95%CI:0.22~0.34)。推定値と精度は、いずれの感度解析においても強固であった。

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中年期のうつ病の6つの症状が将来の認知症と関連

 中年期のうつ病は、これまで認知症リスクの増加と関連付けられてきた。しかし、新たな研究で、認知症と関連するのはうつ病全体ではなく、6つの特定の症状から成るクラスターである可能性が示唆された。研究グループは、これら6つの症状に焦点を当てることで、中年期に抑うつ症状に苦しんでいる人が将来、認知症を発症するのを回避できる可能性があると述べている。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のPhilipp Frank氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Psychiatry」に12月15日掲載された。 Frank氏は、「認知症リスクは、うつ病全体ではなく、限られた数の抑うつ症状と関連している。症状レベルでのアプローチにより、認知症が発症する何十年も前から、認知症を発症しやすい人をこれまでよりも明確に把握できるはずだ」と述べている。 この研究では、英国の長期健康研究(Whitehall II研究)に参加した45〜69歳の成人5,811人(ベースライン時の平均年齢55.7歳、女性28.3%)を対象に解析が行われた。参加者の抑うつ症状は、ベースライン時の1997~1999年に30項目から成るGeneral Health Questionnaire(GHQ-30)により評価された。 平均22.6年間の追跡期間中に、586人(10.1%)が認知症を発症していた。GHQ-30の30項目を個別に検討したところ、6つの症状が認知症リスクと有意に関連することが明らかになった。それらは、1)自信を失っている(ハザード比1.51)、2)問題に立ち向かえない(同1.49)、3)他人に対するやさしさや愛情を感じない(同1.44)、4)常に緊張や不安を感じている(同1.34)、5)仕事や作業の進め方に満足できない(同1.33)、6)集中できない(同1.29)、である。一方で、睡眠障害、自殺念慮、抑うつ気分といった他の症状は、認知症リスクと有意な関連を示さなかった。 研究グループは、これらの6つの症状は、社会的関わりの減少や、脳を刺激する経験の減少につながる可能性があり、その結果、損傷や疾患の影響を受けた場合でも脳が正常な思考を維持する能力が低下する可能性があると指摘している。 論文の上席著者であるUCLの社会疫学教授のMika Kivimaki氏は、「うつ病には単一の形があるわけではない。症状は多様で、不安と重なり合うことも多い。われわれは、こうした微妙な症状パターンにより、認知症の発症リスクが高い人を明らかにできることを示した。この知見は、より個別化され、効果的なメンタルヘルス治療へとわれわれを1歩近付ける」と述べている。ただし、研究チームは、これらの結果を確認するためにはさらなる研究が必要だとしている。 英アルツハイマー病協会の研究・イノベーション部門アソシエイトディレクターであるRichard Oakley氏は、認知症とうつ病の関係は複雑だと指摘する。同氏は、「この新たな観察研究が、認知症とうつ病の関連を解きほぐし始めている点は心強い。それでも、うつ病の人の全てが認知症を発症するわけではなく、また、認知症の人の全てがうつ病を発症するわけでもないことを忘れるべきではない」と話している。

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Orforglipronは抗肥満薬として2型糖尿病を合併した肥満症に対して有効である(解説:住谷哲氏)

 GLP-1はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)の1つであるGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。 本試験で用いられたorforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833が2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた薬剤であり、GLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが知られている。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子はバイアスドリガンド(biased ligand)と呼ばれる1)。 本試験はorforglipronの体重減少効果を主要評価項目として、2型糖尿病を合併した肥満患者を対象として実施された。結果は、36mgの投与による72週後の体重変化量は-9.6%であった。これはATTAIN-1で示された2型糖尿病を合併しない肥満患者における体重変化量の-11.2%と比較するとやや小さかった2)。参考までにこれまで報告されているGLP-1受容体作動薬の体重減少効果については、リラグルチド3mgの-6.0%、セマグルチド2.4mgの-9.6%、チルゼパチド15mgの-14.7%、経口セマグルチド14mgの-4.7%、同25mgの-7.3%と比較するとセマグルチド2.4mgとほぼ同等の体重減少効果が認められたことになる。 現在わが国では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドとGIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドが抗肥満薬として承認されているが、いずれも注射薬である。一方で、米国FDAは経口セマグルチド25mgを昨年12月に抗肥満薬として承認して、本年より発売開始予定である。経口セマグルチドはペプチドホルモンであるためバイオアベイラビリティが低く、服薬方法にかなりの制約があるのが難点であるが、orforglipronはその問題点をクリアしている。したがって、服薬アドヒアランスの点ではorforglipronに一日の長があるといえよう。いずれにせよ熾烈な抗肥満薬開発競争は、まだまだ続きそうである。

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