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抗菌薬に耐性示すも、臨床上効いているのはなぜ?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第20回

Q20-1 尿路感染症の第1選択薬にアンピシリン・スルバクタムはOK?尿路感染症には基本的にアンピシリン・スルバクタムを第1選択薬として使っていますが、その選択は細菌学上も正しいのでしょうか?Q20-2 抗菌薬に耐性示すも、臨床上効いているのはなぜ?尿培養でESBL産生菌が検出され、現在使っている抗菌薬に耐性が示されても臨床上効いているのはなぜでしょうか?

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CQ & 図解で学ぶ 生殖医療の基礎講座

いまさら聞けない生殖・内分泌の基本を学び直す「産婦人科の実際」74巻12号(2025年11月臨時増刊号)生殖医療は、産婦人科の4分野のなかで最も理解が難しい分野とも言われています。ホルモン療法の複雑さ、卵胞のダイナミックな変化、受精後の胚の発達過程の理解など多岐にわたる知識が求められるためです。本誌では、一般的な教科書では網羅しきれない生殖医療の基本から実践的な治療戦略まで、実臨床で“本当に役に立つ”知識を凝縮しました。排卵や胚着床に関する初学者向けの入門的な解説コラム「Mini Tutorial」も収載。臨床現場で迷ったとき、困ったときにすぐに手に取りたくなる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するCQ & 図解で学ぶ 生殖医療の基礎講座定価9,350円(税込)判型B5判頁数336頁発行2025年12月企画堀江 昭史、村上 幸祐、松村 謙臣ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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GLP-1受容体作動薬、乾癬患者の死亡および心血管系・精神系リスクを低減/BJD

 糖尿病または肥満を有する乾癬患者において、GLP-1受容体作動薬による治療は、ほかの抗糖尿病薬または抗肥満薬による治療と比較し、心血管系および精神疾患系の合併症リスク、ならびに全死因死亡リスクを低減し、そのリスク低減効果は乾癬のないコホートと比較して高いことが明らかになった。ドイツ・リューベック大学のHenning Olbrich氏らは、米国のリアルワールドデータを用いた大規模コホート研究結果を、British Journal of Dermatology誌2026年1月号に報告した。 本研究は後ろ向きの人口ベースコホート研究であり、米国・TriNetXのリアルワールドデータを使用し、2年間の追跡期間中にGLP-1受容体作動薬による糖尿病または肥満治療を受けた乾癬患者を、ほかの全身性抗糖尿病薬または抗肥満薬により治療した患者と比較した。関連するリスク因子について1:1の傾向スコアマッチングを行った後、各コホートに3,048例の参加者が組み入れられた。主要評価項目には、心血管代謝系・精神疾患系・自己免疫系の合併症リスクのほか、全死因死亡、薬剤による潜在的有害事象が含まれた。非乾癬患者のコホートを使用して解析を繰り返し、(1)異なる(より最近の)追跡期間、(2)膿疱性乾癬患者を除外した2つの感度分析を通じて結果を検証した。 主な結果は以下のとおり。・GLP-1受容体作動薬で治療した乾癬患者(女性:60.4%、平均年齢:56.94[SD 12.02]歳)と、ほかの抗糖尿病薬および抗肥満薬で治療した乾癬患者(女性:61.9%、平均年齢56.42[14.16]歳)のマッチドコホートにおける比較の結果、GLP-1受容体作動薬による治療は全死因死亡リスク(ハザード比[HR]:0.219、95%信頼区間[CI]:0.123~0.391、p<0.001)および主要心血管イベントリスク(HR:0.561、95%CI:0.442~0.714、p<0.001)の有意な低下と関連していた。・さらに、アルコール(HR:0.346、95%CI:0.174~0.685、p=0.009)および薬物乱用(HR:0.510、95%CI:0.350~0.743、p=0.002)リスク低下との関連が認められた。・GLP-1受容体作動薬コホートにおける典型的な薬物有害事象の頻度は高くなかった。・乾癬患者のコホートでは、乾癬のない肥満や糖尿病患者のコホートと比較しリスクの減少がより顕著であった。 著者らは今回の結果を受けて、「医師は、乾癬患者が肥満または糖尿病を併発している場合、GLP-1受容体作動薬の使用を検討すべき」としている。

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PPI長期使用は本当に胃がんリスクを高めるのか/BMJ

 2023年に発表された3つのメタ解析では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により胃がんのリスクが約2倍に増加することが示されているが、解析の対象となった文献にはいくつかの方法論的な限界(因果の逆転[プロトパシック バイアス]、症例分類法の違い[方法論的異質性]、Helicobacter pylori[H. pylori]菌感染などの交絡因子の調整不能など)があるため、この結論は不確実とされる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOnyinyechi Duru氏らは、これらの限界を考慮したうえで、無作為化試験の実施は現実的でないためさまざまなバイアスの防止策を講じた観察研究「NordGETS研究」を行い、PPIの長期使用は胃腺がんのリスク増加とは関連しない可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年1月21日号に掲載された。北欧5ヵ国の人口ベースの症例対照研究 NordGETS研究は、1994~2020年に、北欧5ヵ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)の各国で前向きに収集されたレジストリデータを用いた人口ベースの症例対照研究(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 噴門部を除く胃腺がん患者1例に対し、背景因子をマッチさせた対照を10例ずつ5ヵ国の全人口から無作為に抽出した。胃噴門部の腺がんは、PPIの適応症である胃食道逆流症による交絡を回避するために除外した。 曝露は長期(1年超)のPPIの使用とし、診断日(症例)と登録日(対照)の前の12ヵ月間のアウトカムは解析から除外した。PPI使用に関する知見の妥当性と特異性を評価するために、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の長期(1年超)使用の解析も行った。 主要アウトカムは、胃(非噴門部)腺がんであった。マッチング変数の調整とともに、多変量ロジスティック回帰分析により、国、H. pylori菌治療、消化性潰瘍、喫煙関連疾患、アルコール関連疾患、肥満または2型糖尿病、メトホルミン・非ステロイド性抗炎症薬・スタチンによる薬物療法を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。H2RAの長期使用も関連がない 胃(非噴門部)腺がん群に1万7,232例(年齢中央値74歳[四分位範囲:65~81]、女性42.4%)および対照群に17万2,297例(74歳[65~81]、42.4%)を登録した。PPIの長期使用は、胃(非噴門部)腺がん群で1,766例(10.2%)、対照群で1万6,312例(9.5%)であった。 最長で26年に及ぶ調査期間中に、PPIの長期使用は胃(非噴門部)腺がんの発症と関連しなかった(補正後OR:1.01、95%CI:0.96~1.07)。粗オッズ比は上昇していたが(1.16、1.10~1.23)、交絡因子(とくにH. pylori菌関連の変量)で調整すると関連性は消失した。 また、H2RAの長期使用も、胃(非噴門部)腺がんのリスク上昇とは関連がなかった(補正後OR:1.03、95%CI:0.86~1.23)。長期使用の利益と不利益を慎重に検討すべき 偽陽性をもたらすエラーの発生源として、(1)胃腺がん診断直前のPPI使用の包含、(2)PPIの短期使用、(3)噴門部腺がん、(4)H. pylori菌関連の変数の調整不足を特定した。 著者は、「本研究の結果は、PPIの長期使用が胃腺がんのリスク増加と関連するとの仮説を支持しない」「バイアスの防止に用いたさまざまな手順のすべてが、潜在的な誤った関連性の発生を防ぐために不可欠であった」「これらの知見は、胃食道逆流症などの適応症の治療でPPIの長期使用を要する患者に安心感をもたらすが、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢や骨粗鬆症、ビタミン・電解質吸収不良などの重篤な病態のリスク増加の可能性が指摘されているため、長期使用の利益と不利益を慎重に検討し、PPI継続の必要性を定期的に再評価する必要があると考えられる」としている。

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小児の上腕骨内側上顆転位骨折、手術的固定術はベネフィット示さず/Lancet

 上腕骨内側上顆転位骨折は、小児の骨折で最も議論の余地のある損傷の1つだが、裏付けとなるエビデンスが乏しいにもかかわらず、手術的固定術を行う傾向が強い状況であるという。英国・リバプール大学のDaniel C. Perry氏らは「SCIENCE試験」において、転位した骨片の位置を回復させる手術的固定術は非手術的治療と比較して、臨床的有益性をもたらさず費用対効果も優れないうえに、これらの小児を回避可能な外科的リスクにさらす可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年1月20日号で報告された。3ヵ国の無作為化優越性試験 SCIENCE試験は、3ヵ国(英国、オーストラリア、ニュージーランド)の59施設で実施した実践的な多施設共同無作為化優越性試験(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。2019年6月~2023年9月に参加者を登録した。 年齢7~15歳の転位を伴う内側上顆骨折の患者を対象とした。被験者を、手術的固定術を受ける群または非手術的治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 手術的固定術は、全身麻酔下に切開、解剖学的整復、骨片の固定を行った。非手術的治療は、ギプス、副木、スリングを用いて肘を約90度の屈曲位に固定した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での上肢機能の回復とし、ITT集団において小児用PROMIS(Patient Report Outcomes Measurement System)上肢スコア(13.7~57.3点、高点数ほど上肢機能が良好)で評価した。手術的固定術は術中・術後合併症と追加手術が多い 334例(平均年齢11.7[SD 2.3]歳、女児170例[51%])を登録し、手術群に168例、非手術群に166例を割り付けた。194例(58%)はスポーツによる骨折で、体操(55例[16%])とフットボール/サッカー(37例[11%])による損傷が多かった。主要アウトカムのデータは285例(85%)から得られた。 12ヵ月時のPROMIS上肢スコアは、手術群が54.3(SD 5.7)点、非手術群は53.1(SD 7.8)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(平均治療群間差:1.57点、95%信頼区間[CI]:-0.01~3.14、p=0.052)。また、この治療効果の推定値は臨床的に意義のある差(4点)を下回っていた。 追加手術(計画手術、合併症関連手術)は、手術群で24例、非手術群で3例に行われた。手術的固定術を受けた150例のうち、13例(9%)に14件の術中合併症が、7例(5%)に術後合併症が発生し、それぞれ手術を要した。さらに、17例(11%)ではスクリューやワイヤの除去手術がルーチンに行われた。 非手術的治療を受けた184例では、4例(2%)に5件の合併症が発生し、このうち3件(2%)で追加手術を要した。費用は手術群で2,435ポンド高額 英国の国民保健サービス(NHS)および福祉サービス(Personal Social Services)の評価法で算出した患者1例当たりの平均費用は、手術群で2,435ポンド(95%CI:1,812~3,057)高く、患者1人当たりの質調整生存年(QALY)の群間差は平均-0.008(95%CI:-0.039~0.024)であった。 また、1QALY当たり2万ポンドまたは3万ポンドの支払い意思額閾値において、手術的固定術で費用対効果が優れる確率は0%だった。 著者は、「非手術的治療では、後日手術が必要となるリスクがごくわずかに残るが、これは手術的固定術における2次的手術の実施率と比較して低い」「これらの知見は、小児の上腕骨内側上顆転位骨折では非手術的治療を標準的な管理戦略へと転換し、手術的固定術は例外的な状況に限定すべきであることを示唆する」「このエビデンスは、今後のガイドラインに反映すべきであり、治療選択肢に関する臨床医と患児、家族との話し合いに有益と考えられる」としている。

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うつ病から双極症への転換リスク比較、SSRI vs.SNRI

 抗うつ薬、とくに選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の使用に伴う単極性うつ病から双極症への診断転換リスクの潜在的比較については、依然として議論が続いている。韓国・翰林大学校Ka Hee Yoo氏らは、SSRIおよびSNRIの使用と診断転換リスクとの関連性を調査した。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2025年12月14日号の報告。 国際標準規格であるObservational Medical Outcomes Partnership-Common Data Model(OMOP-CDM)韓国版を用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象コホートは、SNRI使用患者で構成され、比較コホートはSSRI使用患者で構成した。主要アウトカムは、抗うつ薬投与開始6ヵ月以上経過後における双極症の新規診断とした。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコア調整後、SSRI使用患者とSNRI使用患者との間で診断転換リスクに有意な差は認められなかった。・分散ネットワーク解析では、1:1傾向スコアマッチング(ハザード比[HR]:1.28、95%信頼区間[CI]:0.90〜1.82、I2=24.1%)および1:2傾向スコアマッチング(HR:1.16、95%CI:0.88〜1.53、I2=0%)のいずれにおいても、SNRI使用患者はSSRI使用患者と比較し、診断転換リスク上昇に有意な関連が認められなかった。 著者らは「本研究では、SSRI使用患者とSNRI使用患者との間で双極症への診断転換リスクに有意差は認められなかった」としている。

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睡眠データから130種類の疾患リスクを予測可能か

 眠っている間に体はさまざまな「メッセージ」を発しており、それを読み取ることで将来の重大な病気のリスクを予測できる可能性のあることが、新たな研究で示された。「SleepFM」と呼ばれる人工知能(AI)を用いた実験的な睡眠基盤モデルは、ポリソムノグラフィー(PSG)データを用いて、約130種類の疾患・健康状態の将来のリスクを予測できるという。米スタンフォード大学医学部生物医学データサイエンス分野のJames Zou氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月6日掲載された。研究グループは、「SleepFMは、がん、妊娠合併症、心疾患、精神疾患など、非常に幅広い疾患の予測において高い性能を示した。また、全死亡リスクの予測も可能だった」と述べている。 PSGは睡眠解析で用いられる検査であり、睡眠中の人の脳波(EEG)、心電図(ECG)、心拍、眼球運動などを測定する。PSGは、多様な生理学的信号を取得できる一方で、標準化や汎用性の確保、また複数の生理学的信号を統合する難しさから十分に活用されてこなかった。 今回、この課題を克服するために研究グループは、PSGを構成する生理学的信号のうちの1つを意図的に隠し、隠された信号と整合する情報を残りの信号から推測するように訓練するleave-one-out contrastive learningと呼ばれる新たな学習方法を開発した。SleepFMは、睡眠センターでPSG検査を受けた約6万5,000人の合計58万5,000時間以上に及ぶ睡眠データを用いて訓練された。睡眠データは5秒単位に分割されている。これは、ChatGPTなどの大規模言語モデルの学習に用いられる「単語」に相当する単位である。Zou氏は、「SleepFMは、本質的には『睡眠の言語』を学習していると言える」とニュースリリースで述べている。また同氏は、「この研究における技術的進歩の一つは、全ての異なるデータ様式を調和させ、それらが一緒になって同じ言語を学習できるようにする方法を見つけ出したことだ」と説明している。 モデルの調整後、研究グループはまず、睡眠段階(レム睡眠、ノンレム睡眠など)の分類や睡眠時無呼吸の重症度診断を実施した。その結果、SleepFMは、現行の最先端モデルと同等以上の性能を示した。そこで、2〜96歳の患者3万5,052人を最長で25年間追跡したスタンフォード睡眠医学センターの長期データを用いて、睡眠データと健康リスクとの関連を解析した。予測性能の評価には、C統計量と呼ばれる指標が用いられた。C統計量は、0.8以上であれば高い予測精度を持つとされる。 電子カルテ内に記録されていた1,000以上の疾患カテゴリーを解析した結果、130種類の疾患・健康アウトカムについては、PSGデータから妥当な精度で予測可能であることが判明した。特に予測精度が高かった疾患は、パーキンソン病(C統計量0.89)、認知症(同0.85)、高血圧性心疾患(同0.84)、心筋梗塞(同0.81)、前立腺がん(同0.89)、乳がん(同0.87)、死亡(同0.84)であった。 こうした結果を受けてZou氏は、「これほど多様な疾患について、モデルが有用な予測を行えることは、私たちにとっても嬉しい驚きだった」と述べている。 研究グループは、「本研究では、心疾患の予測においては心臓の信号が、精神疾患の予測においては脳信号がより重要な要素であった。その一方で、最も正確な予測を達成したのは、全てのデータ様式を組み合わせた場合であった」と指摘。論文の責任著者の1人であるスタンフォード大学クレイグ・レイノルズ睡眠医学教授のEmmanuel Mignot氏は、「疾患予測において最も多くの情報が得られたのは、異なるチャネルを対比させたときだった。例えば、脳は眠っているように見えるのに、心臓は起きているように見えるなどの同期の乱れは、健康上の問題を示唆している可能性がある」と述べている。 研究グループは現在、ウェアラブルデバイスなどの他のデバイスからのデータを追加することで、SleepFMの予測性能をさらに高める方法を模索している。また、SleepFMが実際にどのような特徴に注目して予測を行っているのかを解明する研究も進めている。

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開胸手術は不要に? 世界初の低侵襲冠動脈バイパス術が登場

 動脈の詰まりによって起こる心疾患に苦しむ人に対する開胸手術は、近い将来、過去のものになるかもしれない。心疾患の長い既往歴を持つ67歳の男性に対して、胸壁を切開せずに行う世界初の低侵襲冠動脈バイパス術のVECTOR法(Ventriculo-coronary transcatheter outward navigation and reentry)が実施され、成功裡に終えたことが明らかにされた。手術から6カ月が経過しても、男性には動脈の詰まりに起因する心臓の問題は一切認められなかったという。米エモリー大学医学部のAdam Greenbaum氏らによるこの症例報告は、「Circulation: Cardiovascular Interventions」に1月6日掲載された。 Greenbaum氏は、「この患者は多くの治療歴があり、血管疾患やその他の複雑な要因を抱えていたため、開胸手術は選択肢になかった。このような症例において低侵襲な代替手段があることは、極めて重要だ」とニュースリリースで述べている。 冠動脈バイパス術とは、血流が著しく阻害された動脈を迂回し、心臓に血液と酸素を届ける新たな通路を作る手術である。これまで、最も低侵襲とされる冠動脈バイパス術でさえ、肋骨の間から胸部を切開し、筋肉を押し分け、骨を切除して手術部位に到達する必要がある。 これに対し、VECTOR法は、脚の血管(大腿動脈)からガイドカテーテルを挿入し、大動脈を経由して左冠動脈主幹部まで到達させる。また、大腿静脈からもガイドカテーテルを挿入して右心室に到達させ、スネア(ワイヤーなどを引っ掛けて回収する輪状のワイヤー)を配置する。その後、大腿動脈側のガイドカテーテルを介してガイドワイヤーを挿入し、左冠動脈主幹部から心筋中隔へ導き、中隔枝を介して右心室にワイヤーを貫通させる。次いで、右心室内に配置したスネアを操作してガイドワイヤーの先端を捕捉し、そのままワイヤーを大腿静脈側から体外へ引き出す。こうして大動脈から静脈までの連続したガイドワイヤーレールが形成され、これを足場として、治療用ガイドワイヤーやデバイスを、逆行性に左冠動脈主幹部内へ送達することが可能になる。 VECTOR法は、人に使用される以前は動物を用いた一連の前臨床試験で実証されていた。今回、VECTOR法が実施された男性は、カルシウムの蓄積により人工心臓弁の交換が必要な状態だった。しかし、左冠動脈の開口部が弁に非常に近接していたため、通常の経カテーテル大動脈弁置換術を行うと血流が遮断される可能性が高かった。Greenbaum氏は、「そこでわれわれは、冠動脈の開口部を危険域の外に移動させてしまえばよいのではないかと考えた」と振り返る。 研究グループは、VECTOR法が広く臨床で使われるようになるには、今後さらに多くのヒトを対象とした試験が必要だと述べている。報告書の筆頭著者である米エモリー大学心臓病学分野のChristopher Bruce氏は、「この成果を得るには、従来の枠にとらわれない発想が必要だったが、われわれは、非常に実用的な解決策を開発したと考えている」と話している。同氏は、「構想から動物実験、そして臨床応用へと、このプロジェクトが比較的短期間で実現したのを見るのは、極めて感慨深いことだった」と付け加えている。 なお、VECTOR法に関する研究は、米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)の支援を受けて実施された。

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一部の犬は立ち聞きから物の名前を学習する

 犬のしつけの基本の一つは、「おすわり」「ふせ」「待て」などの特定の言葉を理解し、それに反応できるように教えることだ。しかし、とりわけ賢い一部の犬は、人間同士の会話に「聞き耳を立てて」学習できることが、新たな研究で明らかにされた。こうした犬は、「Gifted Word Learners(GWL;語彙学習能力に優れた犬)」と呼ばれている。エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)のShany Dror氏らによるこの研究結果は、「Science」に1月8日掲載された。 研究グループによると、これらの犬が単語を学習する能力は、生後1歳半前後の幼児が他の人の会話を聞いて新しい言葉を覚える能力とよく似ているという。Dror氏は、「われわれの研究結果は、立ち聞きした話から単語を学ぶことを可能にする社会的・認知的プロセスが、人間に特有のものではないことを示している。適切な条件下では、一部の犬は幼児と似た行動を示すのだ」と述べている。 この研究では、GWLに該当する10匹の犬を対象に、2つの状況で実験が行われた。1つ目の状況では、飼い主が犬に新しいおもちゃを見せ、犬と1分間やり取りをしながらそのおもちゃの名前を提示した。その後は、名前を言わずに3分間遊んでから、犬に自由に遊ばせた(20分未満)。この手順を1日に2回、休息日を挟みながら合計4日間行った。2つ目の状況では、飼い主は、犬には一切話しかけることなく、別の人とおもちゃの名前を含む会話を1分間行い、それを犬が見ているようにした。その後は1つ目の状況と同じ遊びを行わせた。それぞれの状況でおもちゃは2種類使用し、犬が1つのおもちゃの名前を耳にする時間は合計8分間だった。その後、12日目に、犬が学習したおもちゃの名前を理解しているかを確認するテストを行った。具体的には、別室におもちゃを置き、「テディを持ってきて」のように指示を出し、正確に持って来ることができるかがテストされた。その結果、犬は、直接教えられた場合とほぼ同程度に、立ち聞きした会話からもおもちゃの名前を学習していたことが示された。 第2の実験では、さらに興味深い結果が得られた。この実験では、飼い主がおもちゃを犬に1分間見せた後、それをバケツの中に入れ、犬に見えないようにした上でバケツと犬の目を交互に見ながら「これは○○、これがほしい?」と話しかけた。この課題は、犬が自分の目の前にないものの名前を覚えなければならないという点でより難易度が高かったが、多くの犬が正しくおもちゃの名前を学習し、指示されると適切な物を持って来ることに成功した。 論文の上席著者であるエトヴェシュ・ロラーンド大学のClaudia Fugazza氏は、「これらの結果は、GWL犬が新しい物体の名前を学習する際に、複数の異なるメカニズムを柔軟に使えることを示唆している」と述べている。研究グループは、この研究結果は、立ち聞きから学習する能力が、人間の言語に固有のものではなく、種を超えて共有されているメカニズムに依存している可能性があることを示唆しているとの見方を示している。 Dror氏らによると、GWL犬は極めてまれであるという。2021年の先行研究で同氏らは、おもちゃの名前を覚えている犬を世界中で探したが、見つかったのはわずか6匹だったという。「これらの犬は、人類が言語を発達させることを可能にした認知能力の一部を探るための、極めて貴重なモデルだ。しかし、全ての犬がこのように学習できると言っているわけではない。むしろそれができる犬はまれだ」と述べている。 なお、本研究は、「ジーニアス・ドッグ・チャレンジ(Genius Dog Challenge)」と呼ばれる研究プロジェクトの一環として実施された。このプロジェクトは、GWL犬の特異な能力を理解することを目的としている。

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第298回 戦後最短の衆院選、今回の各党の医療・社会保障政策は?~自民・維新・中道編

INDEX自民党日本維新の会中道改革連合年明け早々から衆議院解散の報道が流れ始めたが、実際に高市 早苗首相が2026年1月23日の通常国会冒頭で解散を行ったことで、すでに衆議院議員総選挙に突入している。そこでいつものごとく、各党の医療・社会保障政策を取り上げ、独断と偏見に基づく寸評を加えたいと思う。今回は与党の自民党と日本維新の会、さらに公明党と立憲民主党が合流した最大野党の中道改革連合を取り上げる。自民党まずは与党で比較第1党の自民党。主な政策として5つの柱とそれに続く中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。その中から医療・社会保障政策(年金を除く)を要約して列挙すると、以下のようになる。詳細は以下のとおり1. 強い経済で、笑顔あふれる暮らしを<危機管理投資・成長投資>予防・健康づくり分野を成長産業として育成し、健康経営の拡大や女性の健康、生活習慣病、認知症などの研究開発を促進仕事と介護の両立支援のため、公的保険外の介護サービスの振興や、企業における支援を促進<経済安全保障>医薬品を「特定重要物資」と位置付け、サプライチェーンの強靱化や国内生産能力の強化<デジタル>マイナンバーカードを健康保険証として利用し、運転免許証などとの一体化を推進社会保険や税、介護、死亡・相続などの行政手続きを「スマホで60秒」で完結させるデジタル化・ワンストップサービス化一人ひとりの暮らしに応じたサービス提供のため、医療、こども・子育てなどの分野でのデータ連携を支援2.地方が日本経済のエンジンに<地域未来戦略>離島・半島における医療・介護の振興策を講じる3.わが国を守る責任。国際秩序を担う日本外交<科学技術>ゲノムデータ・創薬基盤の充実、医薬品・医療機器の開発、国際協力を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(誰もが適切な医療を負担可能な費用で受けられる状態)の達成創薬力を抜本的に強化するため、産学官の研究力を向上させ、とくに感染症に備えた国産ワクチン・治療薬・診断薬の生産体制を強化バイオ医薬品(抗体医薬品、再生医療等製品など)の生産体制整備や創薬ベンチャーへの支援を推進健康医療を含む最先端分野での研究開発から社会実装までを支援4.すべての世代の安心と次世代への責任<こども・子育て>妊娠前から出産、子育て期まで切れ目のない支援を行い、病児保育の充実旧優生保護法による被害者の救済と、疾病や障害者への偏見・差別根絶<社会保障(最重点項目)>医療・介護・福祉分野の賃上げ:物価上昇に対応し、幅広い職種での確実な賃上げのため、報酬の引き上げ等を実施持続可能な医療体制:2040年を見据えた「地域医療構想」により、医療機関の連携・再編・集約化の推進歯科・リハビリ・薬局:生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)、リハビリの充実、かかりつけ薬剤師・薬局の普及を推進医療・介護DX:全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテの普及により、安全で効率的なサービスを実現予防・健康寿命:「攻めの予防医療」により健康寿命を延ばし、がん、循環器病、難病、移植医療、依存症対策などを推進介護提供体制:訪問介護を含む受け皿整備と人材確保を進め、介護離職を防ぐとともに、認知症対策やフレイル(虚弱)対策を推進正常分娩費用の負担を実質ゼロにすることで、妊婦の経済的負担軽減薬の安定供給:革新的な創薬環境の整備と、後発医薬品(ジェネリック)の安定供給を確保社会保険料負担の軽減:中・低所得者の負担軽減のため、「給付付き税額控除」の検討を含む社会保障と税の一体改革を議論<教育>特別支援教育の充実に向け、発達障害のあるこども達に対する早期からの支援や医療的ケア看護職員の配置促進<文化・スポーツ>生涯にわたるスポーツの継続を支援し、生涯健康を土台に人材の能力を最大限発揮させることで、人材一人ひとりの生産性向上と社会保障費抑制を図り、経済成長を支える<女性活躍>「女性の健康総合センター」を司令塔に診療拠点の整備や研究、人材育成等の取組みを全国展開、女性の生涯にわたる健康支援を強化<防災・減災、国土強靭化>マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化の全国展開<災害復興>地震・津波被災地域での心のケアやこどもの支援等の中長期的な取組み<生活の安全>熱中症対策実行計画に基づく熱中症対策の強化。花粉症の総合的な対策の推進<外国人政策>税・社会保険料の未納や制度悪用を根絶。出入国在留管理庁と関係機関との税・国民健康保険料等のマイナンバー等による情報連携を行い、上陸審査・在留審査等に反映。医療費未払情報報告システムの登録基準額を20万円以上から1万円以上に引き下げるとともに対象を中長期在留者へ拡大することを検討。<多様性・共生社会>医療保険者とかかりつけ医が協働する「社会的処方」の推進 石破 茂政権時代の参議院議員通常選挙(以下、参院選)時や高市首相が自民党総裁選時に掲げた政策と比較して、私が注目した変化は「2040年を見据えた『地域医療構想』により、医療機関の連携・再編」という点である。この点、以前の表現ではあくまで「病床数の適正化」だったが、今回は「医療機関の再編」と一歩踏み込んでいる。もちろん病床数の適正化の先に究極的には医療機関の再編があるのは事実。そして今回の診療報酬の個別改定項目(短冊)を見ても、急性期医療の絞り込みに向けた“出血大サービス”となっていることと併せれば、与党として自民党が本気を出してきたと言えるかもしれない。また、これまでになかった政策と言えば、<経済安全保障>の項目の医薬品を「特定重要物資」への位置付け、<デジタル>の項目にある「スマホで60秒」サービス、<多様性・共生社会>にある「社会的処方」、である。このうち「社会的処方」については、すでに2020年の政府方針「骨太方針2020」にも謳われたことだが、かかりつけ医の位置付けが現状ではまだまだ曖昧な中で、どのような仕組みを想定しているかは不明である。日本維新の会昨年の参院選時には予想もされていなかった日本維新の会(以下、維新)の与党入り。OTC類似薬の給付の大幅見直しなど、与党入りしてからは良くも悪くも存在感を発揮している同党だが、今回の衆議院選にあたり発表した「維新八策2026」では、社会保障政策の大項目の元、中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。以下、要約の上で列挙する。詳細は以下のとおり社会保障政策<社会保険料を下げる改革>国民医療費を年間4兆円以上削減し、現役世代1人あたりの社会保険料を年間6万円引き下げ高齢者の医療費窓口負担を9割引から7割引(現役世代と同じ)へ引き上げ金融所得を含めた総合的な所得把握に基づく負担区分を設定女性や高齢者の就業促進、第3号被保険者制度見直し等により社会保障制度を就業促進型へ転換生産年齢人口の定義を見直し中央社会保険医療協議会に医薬品・医療機器メーカーを追加し、創薬支援を強化。企業届出価格承認制度の導入等により薬価算定制度を見直し費用対効果に基づく医療行為や薬剤の保険適用見直しを進め、限られた医療財源を重症患者や革新的医療に重点配分後発医薬品の使用原則化、タスクシフト、地域フォーミュラリ導入等により医療費削減不要となる約11万床を削減し、1兆円以上の医療費削減(感染症対応病床は確保)2030年までに電子カルテ普及率100%を達成エビデンスが乏しい無価値医療(低価値医療)の保険適用を見直し医療介護産業を需要者側の視点で改革し、市場原理導入や合理化で生産性向上を実現AIやビッグデータを活用した全国統一レセプトチェックで医療費適正化と医療の質向上を同時実現オンライン診療の診療報酬点数の対面診療と同等化定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者の保険料を値引きする保険料割引制度を導入診療報酬点数の決定で医療サービスの需給バランスを通じた調整メカニズムを導入< 医療・介護提供体制>開業医(かかりつけ医))が診察・健康管理・入院判断に積極的に関与する体制構築医療DXを推進し、在宅医療・在宅介護の質・量を高め、地域包括ケアシステムを構築介護現場の待遇・職場環境を改善し、ロボット・テクノロジー導入で負担軽減介護サービスの地方分権と規制改革を行い、待機高齢者問題等の介護施設不足を解決老人ホームと保育所を一体化させた複合施設の設置基準を自治体が決定できる権限移譲日本版DBS制度(こども性暴力防止法に基づく制度)の介護人材への適用検討など、介護現場のハラスメント対策を立法化尊厳死(平穏死)について幅広い議論・検討を推進悪質な渡航移植対策として無許可あっせん業の罰則強化と国際的枠組み構築<予防・健康づくり>一次予防・健康増進を図り、早期予防・早期介入により健康寿命を延ばし、介護費用抑制と両立自立支援型介護を推進し、がん検診・特定検診の受診率向上により健康寿命を延伸受動喫煙防止の徹底認知症患者支援・理解啓発を推進し、iPS細胞による再生医療等の研究を支援慢性疾患について先進的な取り組みの全国展開や標準化による発症・再発・重症化予防対策の推進アレルギー疾患の医療相談、治療体制を全国で整備検体の自己採取と血液マーカー検査など新しい検診制度を導入HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置<医療産業>IoT、AI、ビッグデータ、5G通信により医療・健康分野の産業化・高度化を推進混合診療を解禁・推進医療法人などの経営・資金調達規制を大幅に緩和医療品販売の過度な対面販売規制を見直し<感染症対策>十分な経済的補償を前提に医療機関などへ実効力ある要請・命令ができる法整備新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、地方が地域事情に応じて機動的に感染症対応できる体制を確立首都圏と関西圏に「日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)」を各1ヵ所所整備有事に都道府県の枠を超えた情報・医療資源の共有化など相互補助できる体制を構築感染症法改正等により国民が検査・医療を受ける権利を明確化有事の指揮命令系統等に関し、危機対応ガバナンス確立のための法改正・憲法議論を積極的に行う国産ワクチン・治療薬の研究開発・生産体制を抜本に強化 大部分は昨年の参院選時に発表された「維新八策2025」を維持したものである。ただ、今回は以前よりも新たな政策が追加された。追加項目は、「混合診療の解禁・推進」「医療法人の資金調達に関する規制緩和」「医薬品の対面販売規制」「診療報酬点数の決定への医療サービスの需給バランスによる調整メカニズム導入」「HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置」である。これらはHPVワクチンの件を除くと、政府の経済への介入を抑え、自由競争によって経済の効率化や発展を実現すべきという「新自由主義」に一番近いとされる維新らしい政策とも言える。また、社会保険料の負担軽減や医療費抑制につながる政策で維新側が明確な数字を示すのに対し、自民党側が概念的な政策提示である点でも新自由主義的な維新の性格をよく表していると言えるだろう。中道改革連合今回、おそらく有権者を最も驚かせたのが、野党第1党の立憲民主党と昨秋まで与党だった公明党による新党「中道改革連合(以下、中道)」が発足したことだろう。正直、私個人もまったく予想外だった。中道の今回の候補者の中には医師が8人おり、自民党の9人に次ぐ人数。多くは旧立憲民主党の議員だが、旧2党で見ると、どちらかというと以前与党にいた旧公明党のほうが医療政策に明るいと思われがちだ。今回、医療以外の安全保障や原発問題などで公明党寄りに政策修正したと言われる中道だが、医療・社会保障関連政策はどのようになったのか?今回、中道は大項目となる第1~5の柱を立て、その中で中項目(<>)、さらに小項目(・)となる具体的な政策を記述している。以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり第1の柱:一人ひとりの幸福を実現する、持続的な経済成長への政策転換<家計の安心へ>社会保険料負担で手取りが減る「130万円のガケ」を解消<賃上げと中小企業・産業の活性化>社会保険料の事業主負担軽減や奨学金代理返還の支援医療・介護・保育・物流・建設・交通等の処遇改善に向け、公定価格と労務費の適正化を推進し、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーの所得の抜本的引き上げを実現第2の柱:現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築<ベーシック・サービス従事者の処遇改善>医療・介護・保育・障がい福祉従事者などの給与の全産業平均への引き上げ<健康、安心の医療・年金>予防・検診強化で健康寿命を延ばし、重複検査是正・医療DXで医療費を抑制、社会保険料上昇を抑制がんの原因となる感染症など、リスクに応じた検診を実現し、企業検診率向上を目指す高額療養費の自己負担限度額の引き上げを見直し経営困難な医療機関を支援(次期診療報酬改定でのプラス改定など)。医師確保のための基金拡充かかりつけ医の制度導入を目指し、かかりつけ医を中心とした新たな地域医療構想の実現移動困難な高齢者のためにオンライン診療・モニタリング等で地域医療体制を整備職場・地域で心のケアを必要とする人を早期発見し、治療体制を強化薬価の中間年改定を廃止保証人のいない単身者が必要な医療を受けられるよう、実効性のある「ガイドライン」の普及とフォローアップを図る<高齢者、介護支援、障がい福祉>介護の相談体制・家族支援を強化し、事業所のDX化で安心できるケア体制を整備「介護離職ゼロ」に向けた取り組み(介護休業の通算期間の延長、介護休業中の賃金補償の拡充)を強化訪問介護の基本報酬を引き上げ介護事業所の情報通信技術(ICT)化を進め、業務効率化・情報共有で介護従事者などの負担軽減とサービスの質・生産性向上を目指す介護記録の電子化・介護センサー導入で介護施設・在宅介護の人手不足をサポート第3の柱 選択肢と可能性を広げる包摂社会の実現<こども・子育て>妊婦健診や出産費用の無償化と産後ケアの充実ヤングケアラーを早期に発見し、教育や医療、就労など横断的に支援 この中で「130万円のガケ」は、従来から国民民主党が唱える「103万円の壁」と違って初めて聞いた人もいるかもしれない。これは給与所得者に扶養されている配偶者に健康保険料や年金保険料の負担が生じ始める年収である。念のため説明すると103万円は所得税負担がかかり始める年収である。要は「103万円の壁」の引き上げを軸に若年層に支持を広げた国民民主党にあやかった政策なのかもしれない。そして意外に思うかもしれないが、実は中道が掲げたこれらの政策は、与党の中でも穏健なほうになる(あくまで維新との比較だが)自民党の社会保障政策と類似点は少なくない。とくにICT、DX関連はかなり類似が多い。パッと見て与党と明らかに違う政策として目につくのは、かかりつけ医の制度導入と薬価の中間年改定廃止である。ちなみに薬価の中間年改定廃止は従来から国民民主党が唱えている政策でもある。また、中道がここで述べているかかりつけ医の制度導入とは、現在の「かかりつけ医機能報告制度」とかかりつけ医機能を評価する診療報酬ということではなく、いわばヨーロッパなどで行われている家庭医制度のようなものだろう。いずれにせよ、全体的には穏健、悪く言えば、非常に概念的な政策で、私見を言えば、「なかなか埋没感がある」と思ってしまう。さて次回はそのほかの野党を一斉に取り上げる。

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日本人高齢者の緊急入院で死亡率が高いのは? インフルvs.コロナvs.RSV

 50歳以上(平均年齢81.4歳)を対象とした前向きコホート研究において、急性呼吸器症状による緊急入院では、RSウイルス(RSV)陽性者がSARS-CoV-2やインフルエンザA/B陽性者と比較して、30日全死亡率が高かった。このことからRSV感染症は、高齢者の看過できない死亡リスク因子であることが示唆された。本研究結果は、森本 剛氏(兵庫医科大学)らによって、Clinical Microbiology and Infection誌オンライン版2026年1月10日号で報告された。 研究グループは、日本の3施設(島根県立中央病院、洛和会音羽病院、奈良市立病院)において、急性呼吸器症状または徴候を呈して緊急入院した50歳以上の成人を対象に、前向きコホート研究「EVERY study」を実施した。登録期間は2023年7月1日~2024年12月31日とした。入院後24時間以内に採取された鼻咽頭ぬぐい液を用いて、FilmArray呼吸器パネル2.1による多項目遺伝子検査を行い、RSV、SARS-CoV-2、インフルエンザA/Bの陽性割合と臨床転帰(30日全死亡、下気道疾患[LRTI]、modified LRTI[画像所見を組み込んだ定義])を検討した。また、ワクチン接種歴(COVID-19[新型コロナウイルス感染症]ワクチンとRSVワクチンは過去に1回以上接種で接種あり、インフルエンザワクチンは当該シーズンに1回以上接種で接種ありとした)も調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった3,067例(平均年齢81.4歳、男性55.3%)において、各ウイルスの陽性割合は、インフルエンザA/Bが2.3%、SARS-CoV-2が18.0%、RSVが1.6%であった。・解析対象(3,067例)のワクチン接種割合は、インフルエンザワクチン37.9%、COVID-19ワクチン62.3%、RSVワクチン0%であった。・抗ウイルス薬の投与割合は、インフルエンザA/B群62.3%、SARS-CoV-2群71.8%、RSV群0%であった。・30日全死亡率は、インフルエンザA/B群が2.9%であったのに対し、SARS-CoV-2群8.4%、RSV群14.3%であった。・インフルエンザA/B群を対照とした場合の30日全死亡の調整オッズ比は、SARS-CoV-2群が2.9(95%信頼区間[CI]:0.83~17.9)、RSV群が5.2(95%CI:1.2~36.7)であり、RSV群が高かった。・入院時のLRTIの割合は、インフルエンザA/B群88.4%、SARS-CoV-2群82.8%、RSV群87.8%であった。modified LRTIは、それぞれ95.7%、93.1%、93.9%といずれも高率であった。 本研究結果について、著者らは「急性呼吸器症状で緊急入院する高齢者において、RSVはインフルエンザやCOVID-19よりも高い死亡率に関連するリスク因子であった」と結論付けている。また「RSV陽性者の高い死亡率の背景には、抗ウイルス薬の使用機会がないことやワクチン未接種が影響している可能性がある」と考察し、日常診療におけるRSVの認識向上とともに、ワクチン接種を含む予防の重要性を強調している。

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IgA腎症における蛋白尿0.3g/日未満達成は腎予後とどう関連するか?

 第III相PROTECT試験において、IgA腎症に対するエンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬sparsentanは、イルベサルタンと比較して蛋白尿を有意に減少させ、腎機能の維持に有効であることが報告されている。今回、PROTECT試験の事後解析の結果、割り付けられた治療薬にかかわらず蛋白尿0.3g/日未満の達成が推定糸球体濾過量(eGFR)低下抑制および腎不全イベント減少と関連することを、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らによって報告された。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月22日号掲載の報告。 PROTECT試験は18ヵ国134施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照第III相試験で、参加者はsparsentan群またはイルベサルタン群に1対1に割り付けられた。本事後解析では、当初の治療薬の割り当てにかかわらず、36週時または110週時までのいずれかの時点で蛋白尿0.3g/日未満を達成した患者(CR群)と、CRを達成しなかった患者(非CR群)の腎機能を比較した。CRステータス別に評価したエンドポイントは、蛋白尿、eGFR、血圧の変化、eGFR低下率、腎不全の複合エンドポイント(eGFRの40%の低下、末期腎不全、全死因死亡)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象404例のうち、43例(11%)が36週時までにCRを達成し、85例(21%)が110週時までにCRを達成した。・CR群は非CR群と比較して、蛋白尿の減少がより大きく、より急速であった。・CR群ではeGFRの絶対変化量が小さく、eGFRの低下速度も緩やかだった。・腎不全の複合エンドポイントが発生した割合は、CR群のほうが非CR群よりも低かった(1%vs.14%)。・CR群では低血圧(低血圧、起立性低血圧、収縮期血圧低下)に関連する試験治療下における有害事象(TEAE)の発現率が高く、高血圧に関連するTEAEの発現率は低かった。・治療の中止は非CR群のほうが多かった。 これらの結果より、研究グループは「PROTECT試験において36週時または110週時までにCRを達成した参加者は、CRを達成していない参加者と比較して、eGFRの維持率が高く、腎不全イベントが少なく、安全性プロファイルは同等であった。これらのデータは、蛋白尿を0.3g/日未満に維持するという推奨を裏付けるものであり、腎機能維持との関連性を強調している」とまとめた。

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統合失調症患者における遺伝と性差との関係

 親が統合失調症の場合、世代を超えてメンタルヘルスリスクに影響を及ぼすが、性別による伝播パターンは、依然として十分に定量化されていない。中国・北京大学のZhi Sheng氏らは、中国における統合失調症患者の子供における、親が報告した伝播率と家族性のリスク因子を調査した。The Lancet Regional Health誌2025年12月号の報告。 統合失調症患者2万7,315例とその子供3万5,772例を対象に横断研究を実施した。子供の精神疾患の診断は、親が報告し、その後、医療管理システムを通じて確認した。年齢と性別で標準化した伝播率は、2020年の中国国勢調査を参照した。ロバストポアソン回帰分析により、調整伝播率比(aRR)を算出した。多変量ロジスティックモデルを用いて、若年子孫のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・親が報告した子供における伝播率は2.68%(95%信頼区間[CI]:2.52〜2.85)であり、統合失調症スペクトラム障害(1.42%)が大部分を占めた。・人口統計学的標準化後の標準化率は2.53%(95%CI:2.01〜3.05)であった。・親の疾患発症後に妊娠した場合では、子供のリスクが86.0%増加することが示された。・リスク上昇と有意な関連が認められた因子は、第1子(aRR:1.67)、低所得世帯(aRR:1.43)、男児(aRR:1.14)であった。・親の年齢の影響も性別特異性が認められた。・未成年(17歳未満)の子供を対象としたサブグループ解析では、母子間での影響は、親の発症後の出産(オッズ比[OR]:2.48、p<0.001)、世帯収入の低さ(OR:2.32、p<0.001)、出生前の抗精神病薬の使用(OR:1.69、p<0.001)と関連が認められた。・父子間での影響は、父親のみによる養育(OR:2.15、p<0.001)、世帯収入の低さ(OR:1.97、p<0.001)、男児(OR:1.79、p=0.001)と関連していた。・両親による養育は、母子および父子の統合失調症群の両方において、強力な保護効果であることが示唆された(OR:0.75、95%CI:0.51〜1.10)。 著者らは「本研究の結果は、家族集積、性別によって異なる周産期曝露、そして養育環境の間に重要な相互作用があることを浮き彫りにした。政策の優先事項としては、性別に基づいた遺伝カウンセリング、出生前の薬物モニタリング、そして養育の不平等を解消するための家族支援プログラムを統合する必要がある」としている。

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DM合併冠動脈疾患、Abluminus DES+シロリムスステントの有用性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける糖尿病合併患者において、血管壁側(abluminal)およびバルーン表面をコーティングしたシロリムス溶出ステント(Abluminus DES+SES)は、XIENCE耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(XIENCE EES)と比較し、12ヵ月時の虚血による再度の標的病変血行再建術および標的病変不全の発生率が高く、非劣性は認められなかった。ブラジル・Heart Institute of University of Sao PauloのAlexandre Abizaid氏らが、16ヵ国74施設で実施した無作為化非盲検比較試験「ABILITY Diabetes Global試験」の結果を報告した。著者は、「糖尿病合併患者における治療成績の最適化が依然として課題であることが浮き彫りとなり、この患者集団における虚血リスクを低減するためステント設計および補助的薬物療法のさらなる革新が必要である」とまとめている。Lancet誌2026年1月17日号掲載の報告。Abluminus DES+SESのXIENCE EESに対する非劣性を評価 研究グループは、慢性冠症候群または非ST上昇型急性冠症候群で少なくとも1つの新規冠動脈病変に対しPCIを施行する1型または2型糖尿病の成人(18歳以上)患者を、Abluminus DES+SES群またはXIENCE EES群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 Abluminus DES+SES群では、薬剤移行を促進するためにバルーン拡張時間を45秒以上とすることが推奨された。また、全例に、臨床ガイドラインおよび現地の標準治療に基づいて2剤併用抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、per-protocol集団における12ヵ月時点の虚血による再度の標的病変血行再建術(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)(心血管死、標的血管心筋梗塞、またはID-TLRの複合エンドポイントと定義)の2つで、非劣性マージンはそれぞれ2.8%および3.0%とした。いずれも累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。複合主要エンドポイントのID-TLRとTLFの発生、非劣性基準を満たさず 2020年6月12日~2022年9月9日に、3,032例がAbluminus DES+SES群(1,514例)またはXIENCE EES群(1,518例)に無作為に割り付けられた。3,032例中2,931例(96.7%)が死亡までまたは24ヵ月間の追跡調査を完了した。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲:60~74)で、879例(29.0%)が女性、2,153例(71.0%)が男性であった。 per-protocol集団における12ヵ月時のID-TLRは、Abluminus DES+SES群で1,421例中67例(Kaplan-Meier推定値:4.8%、95%CI:3.9~6.2)、XIENCE EES群で1,446例中30例(2.1%、1.6~3.2)に認められ、絶対リスク群間差は2.7%(95%CI:1.3~4.1)で非劣性基準を満たさなかった(非劣性のp=0.44)。 また、TLFはAbluminus DES+SES群で137例(Kaplan-Meier推定値:9.7%、95%CI:8.4~11.5)およびXIENCE EES群で89例(6.2%、5.3~7.8)に認められ、絶対リスク群間差は3.5%(95%CI:1.5~5.5)であり(非劣性のp=0.68)、いずれの主要エンドポイントも絶対リスク群間差の95%CIの下限が0を上回った。 TLFを個別にみると、標的血管心筋梗塞は、Abluminus DES+SES群のほうが発生率は高かったが(Kaplan-Meier推定値:5.2%[95%CI:4.1~6.5]vs.3.1%[2.4~4.3])、心血管死(2.9%[2.1~3.9]vs.2.1%[1.5~3.0])および全死因死亡(3.7%[2.8~4.8]vs.3.3%[2.5~4.4])に有意差は認められなかった。 結果は、24ヵ月時点でもITT集団において一貫性が認められたが、12ヵ月から24ヵ月までのランドマーク解析では、両群間に有意差は認められなかった。

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不安定な外果骨折、ギプス固定は手術に非劣性/BMJ

 初回X線検査で足関節窩が整合しており安定とみられたものの、外旋ストレステストでは不安定と判定されたWeber分類タイプBの足関節外果単独骨折の治療において、ギプス固定は手術に対して非劣性であることが認められ、概してギプス固定は手術と比較し治療関連有害事象が少ないことが示された。フィンランド・オウル大学病院のTero Kortekangas氏らが、同大学病院の外傷専門センターで実施した実用的無作為化非劣性試験「SUPER-FIN試験」の結果を報告した。足関節骨折の約3分の2は外果骨折(Weber B)である。最近の臨床試験やガイドラインでは、特定の患者に対し保存治療を支持するケースが増えているが、不安定なWeber B外果骨折に対しては主たる治療として手術が行われる状況が続いていた。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。6週間ギプス固定と、手術+6週間ギプス固定で、2年時のOMASを比較 研究グループは、2012年12月~2019年3月に来院した、足関節外果(腓骨)単独骨折(Weber B)を認め静止X線で足関節窩が整合していることが確認された、16歳以上の全患者840例を対象に試験を行った。外旋ストレステストを実施し、ストレス陽性(内側クリアスペースが5mm以上の場合を不安定と定義)が確認され適格基準を満たした126例を、6週間のギプス固定群または開放整復とプレート固定による手術と6週間のギプス固定を行う手術群に、1対1の割合で無作為に割り付け2年間追跡した(最終追跡調査は2021年7月7日)。 主要アウトカムは、2年時のOlerud-Molander Ankle Score(OMAS、0~100点、高スコアほどアウトカムが良好で症状が少ないことを示す)で、非劣性マージンは-8点と規定した。副次アウトカムは、足関節機能、疼痛、健康関連QOL、足関節可動域およびX線所見で、治療関連有害事象も評価した。ギプス固定の非劣性が認められた 無作為化された患者126例のうち2年間の追跡調査を完遂した121例(96%)を主要解析対象集団とした。 2年時のOMAS(平均±SD)は、ギプス固定群89±17点、手術群87±16点で、平均群間差は1.3点(95%信頼区間:-4.8~7.3)であった。副次アウトカムはいずれも、統計学的に有意な群間差は認められなかった。 各群で1例に骨癒合不全のX線所見が認められた。また、手術群では、浅部創傷感染が1例、創傷治癒遅延が1例に認められ、9例が金属器具除去処置を受け、うち2例に術後感染(深部1例、浅部1例)が発生した。

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重度の慢性便秘に対する手術は「最終手段」

 米国消化器病学会(AGA)が発表した新しいガイドラインにおいて、重度の慢性便秘患者に対する外科的手術は最終手段とすべきことが明示された。治療に反応しない難治性便秘の患者に対しては、結腸の一部または全てを切除する結腸切除術を検討することがある。しかし、ガイドラインの著者らは、結腸切除術は重大な健康リスクを伴い、必ずしも症状の改善につながるわけではないとしている。米マサチューセッツ総合病院(ボストン)消化器運動研究室ディレクターのKyle Staller氏らがまとめたこのガイドラインは、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に1月7日掲載された。 Staller氏は、「慢性便秘に何年も苦しんできた人にとって、手術は永続的な解決策に聞こえることがある。特に、多くの薬が効かなかった場合にはなおさらだ」と話す。同氏はさらに、「検査で、結腸の動きが極端に遅く、他の治療で何も効果が得られない場合に手術が検討されることがある。しかし、手術はほとんどの患者には適しておらず、事実上リスクを伴い、手術後も腹部膨満感、腹痛、排便コントロール困難などの症状が続く人もいる」と述べている。 米国では約8~12%の人が慢性便秘に苦しんでいると推定されている。Staller氏は、「多くの人は、生涯のどこかの時点で便秘を経験するが、食事の見直し、食物繊維や水分の摂取、市販の下剤の使用といった簡単な対策で改善する。難治性便秘はそれとは別物であり、時間をかけて処方薬やバイオフィードバック、骨盤底筋療法を試しても改善しない状態を指す」と説明している。一方、結腸切除術は、腸閉塞、持続性の腹痛、腹部膨満感、便秘の再発、下剤への継続的依存など、高い合併症率と関連しているという。 新ガイドラインでは、手術を検討する前に踏むべき複数のステップが示されている。例えば、まずは慢性便秘の原因から薬剤の副作用、神経疾患、精神的問題を除外すべきことが述べられている。オピオイド系鎮痛薬や抗精神病薬、鉄剤は便秘を引き起こすことが知られている。また、膀胱疾患、アレルギー、気分障害の治療に使われる抗コリン薬も、腸の不随意運動に関与する神経伝達物質の働きを阻害するため、便秘と関連している。さらに、パーキンソン病や多発性硬化症といった神経疾患、摂食障害や抑うつ・不安などの精神的な問題も便秘リスクに影響する。 精神的な問題が便秘に関与することもあるため、術前の心理評価も意思決定プロセスの重要な一部として推奨されている。また、米食品医薬品局(FDA)の承認薬や市販薬に加え、便秘への有効性が示されている適応外使用薬も全て試すべきだとされている。さらに、大腸通過時間検査や排便造影検査など、結腸機能に加えて腸管全体の活動を評価する検査の実施を推奨している。その上で、最終手段として、一時的人工肛門(ストーマ)の使用を推奨している。これは可逆的で、恒久的な結腸切除が有益かどうかを判断する材料になる。 以上のように、ガイドラインは、手術には慎重な個別判断が必要であることを強調している。Staller氏は、「最良の結果は、十分な準備と共有された意思決定から生まれる。手術が本当に必要な場合でも、現実的な期待を持ち、消化器内科医、外科医、精神医療専門家が連携することで最善の結果が得られる」と述べている。 Staller氏は、慢性便秘のリスクを下げるためにできることとして、1)便秘を悪化させる薬剤について、定期的に医師と見直すこと、2)食事を極端に制限するのではなく規則正しく摂取すること、3)腸の運動を促すために身体的に活発に過ごすこと、4)便意のあるときは我慢せずに排泄すること、5)症状が続く場合は自己判断で治療を強化せず、医療機関を受診すること、を挙げている。また、正常な排便習慣には個人差があり、毎日排便する必要はないことも付け加えている。さらに同氏は、「何より重要なのは、便秘はしばしば長期的な管理を要する慢性疾患であると理解することだ。それがフラストレーションを防ぎ、症状が重症化・難治化するリスクを減らすことにつながる」と述べている。

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緑内障点眼薬の治療継続率、製品間で大きな差

 自覚症状に乏しく進行が緩やかな緑内障では、点眼治療を長期にわたって継続することが困難であることが大きな課題とされてきた。今回、日本の大規模医療保険レセプトデータを用いた解析により、同じ薬剤クラスであっても、緑内障点眼薬の治療継続率は製品によって大きく異なることが示された。研究は東京大学大学院薬学系研究科育薬学教室の壁矢健司氏、佐藤宏樹氏らによるもので、詳細は11月28日付で「BMC Ophthalmology」に掲載された。 緑内障は日本における不可逆的な失明の主因であり、QOL低下など医療費に反映されない社会的負担も大きい。治療の基本は点眼薬による眼圧下降で、作用機序の異なる多様な薬剤が用いられている。一方、緑内障は自覚症状に乏しく進行が緩徐なため、点眼治療の継続率は低い。近年、製剤や容器の改良などにより、治療継続性は同一薬剤クラス内でも製品によって異なる可能性が示唆されてきた。しかし、個々の製品レベルで継続率を体系的に評価した研究はなく、臨床での製品選択を支える情報は乏しい。このような背景を踏まえ、本研究は、日本の医療保険レセプトデータを用い、緑内障点眼薬の実臨床における治療継続性を製品別・製剤特性別・患者背景別に明らかにすることを目的とした。 本研究では、株式会社JMDCが提供する、日本の0~74歳を対象とした医療保険レセプトデータ(2005年1月~2024年6月)を後ろ向きに解析した。外来で緑内障点眼薬を処方された患者のうち、原則として単一製品を継続使用した症例を抽出した。直前の処方の推定されるカバー終了日から観察終了日までに90日以上空いた場合を治療中断と定義し、最長5年間の年次治療継続率を算出した。継続率は製品、薬剤クラス、投与回数、年齢、性別ごとに評価し、多変量ロジスティック回帰分析で関連因子を検討した。感度分析や薬剤変更・併用を含む追加解析も行った。 データ精査後、7万3,027人の調剤記録が抽出され、解析に用いられた。対象患者の大半は男性で、年齢層では50代が最も多かった。全患者における治療継続率は、1年時点で57.5%(2万6,170/4万5,544人)で、その後徐々に低下し、5年時点では23.8%(2,060/8,667人)となっていた。 年齢、性別、薬剤クラス、1日の点眼回数を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析では、女性(回帰係数〔B〕=0.210)、60代(B=0.247)、および点眼回数が少ないこと(点眼回数が1回増えるごとにB=−0.660)が、いずれも治療継続率の高さと有意に関連していた(すべてP<0.001)。 最も多く処方された薬剤クラスはプロスタノイド受容体作動薬で、次いでβ遮断薬であり、両クラスで全処方の約80%を占めていた。薬剤クラス別の解析では、プロスタノイド受容体作動薬およびβ遮断薬との配合剤において、他の薬剤クラスと比べて相対的に高い治療継続率が示された。さらに、同一の薬剤クラス内であっても、製品ごとに1年および5年時点の継続率には大きなばらつきが認められた。 一方、薬剤変更や複数点眼を許容したサブ解析では、全体的な継続率が主要解析よりも14~19%ポイント高かった。炭酸脱水酵素阻害薬を含む治療や、1日2~3回投与の治療レジメンにおいて、単剤・固定条件下の解析と比べて継続率が特に高かった。 著者らは、「今回、国内の緑内障点眼薬の製品別治療継続率を初めて網羅的に解析した。解析の結果、製品ごとの継続率は同じ薬剤クラスでも40%ポイント以上の差があることがわかった。これは点眼容器や製剤の違いが使いやすさに影響し、治療を続けるかどうかの決定に関与していることを示唆している。これらの知見は、臨床現場で製品を選択する際に、使いやすさを慎重に考慮することの重要性を強調するものである」と述べている。 本研究の限界として、解析対象には緑内障患者の多くを占める75歳以上の高齢者は含まれていない為、結果の一般化には注意が必要である点や、本研究における治療継続率はレセプト上の処方継続を指標としたものであり、実際の点眼実施状況(服薬コンプライアンス)を直接評価したものではない点などを挙げている。

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コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析についてのコメント(解説:栗原宏氏)

特徴・ワクチン接種に関して「どの階層」が「どんな理由で」ためらったかを明らかにし、経時的な変化と実際の接種行動を調査している。・自己申告ではなく、本当に接種したかまでNHSワクチン記録で追跡している。 本調査は、イギリスの一般住民を対象とした大規模COVID-19モニタリングプログラムに参加した成人113万人を対象として、COVIDワクチンに対する態度(ためらいや拒否など)とその後実際にワクチンを接種したかどうかをNHSワクチン記録と照合して分析したコホート研究である。 この研究のポイントは、ワクチン接種への考え方が変化しやすい群と拒否や不信が強く接種に至りにくい群を、理由・属性と併せて定量的に示した点にある。 多変量ロジスティック回帰の結果では、接種を躊躇する傾向が強いのは、若年層(18~24歳)、女性、白人以外の民族(とくに黒人)、社会経済的な不利、低学歴、失業・非労働人口、COVID既感染、うつ病・不安症、喫煙者であった。最終的に接種しなかったことと関連した要因として・学歴が低い・失業・非労働人口・COVID既感染歴・喫煙者・うつ病、不安症などの精神疾患(自己申告)が挙げられている。未接種の理由としては、・ワクチン全般に反対・COVIDの影響が誇張されていると認識している・ワクチン開発者を信頼していない・COVIDは自分にとってリスクではないと感じているといった回答と強く結びついていた。 COVIDワクチンへの躊躇の多くは「効果」「安全性」「長期的影響」に関する具体的な懸念に由来しており、これらは時間経過、情報提供によって解消されやすい。これに対して、「ワクチン全般への拒否感」「COVIDそのものへのリスク認識の低さ」「政府・専門科・情報への不信」を背景にした人たちは最後まで接種しない傾向が強い。 本研究よりも小規模な調査が日本国内でも実施されており、ほぼ同様に若年層や女性、低学歴・低所得・既感染・不信感の強い層では接種に躊躇する傾向が報告されている。イギリスでの調査ではあるが、日本においても属性による経時的な考えの変化があると推測される。ワクチン接種を推奨するに当たり、一律の情報提供では不十分で、理由・属性ごとに「変わりやすさ」が異なることを踏まえた対応が求められる。

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自損事故の15S【Dr. 中島の 新・徒然草】(616)

六百十六の段 自損事故の15Sなにしろ寒い!大阪でも、時に雪がチラホラ。さすがに滅多に積もることはありません。道が白くなることがあったとしても、年に1~2回くらい。とはいえ、雪国では受験や選挙にも大きく影響しそうですね。さて、先日のニュース。2026年1月22日の夕方の出来事。内閣府の公用車が赤信号の交差点に進入し、自身を含めて6台の車が巻き込まれる事故が起こってしまいました。この事故で1人死亡、8人が重軽傷とのことです。現場には目立ったブレーキ痕がなかったのだとか。このことから、公用車の運転手が交差点進入時に意識を失っていた可能性が述べられています。これ、ありそうな話ですね。運転中に意識を失って事故を起こすというもの。昔、ある学会で「自損事故の6S」という発表がありました。つまり、自損事故を見たら原因となるものを6つ考えよ、というものです。その原因の頭文字をとって6Sとされていました。Sake酒Sleep居眠りSugar低血糖Syncope失神Suicide自殺企図Seizureけいれん発作なるほど、なるほど。いかにも原因となりそうなものばかり。ただ、酒をSakeとするのは、ちょっとカッコ悪いので、似た意味のSpiritとしておきましょう。その発表を聴いた後、私は自損事故に遭遇するたびに、この6Sを当てはめてきました。ところが、この6Sに収まりきらない事故に出くわすこともあります。たとえば運転中に脳卒中を起こしたとか、違法薬物を使っていたとか。こういった新たな原因を6Sに加えていくと、増えていく一方です。いつのまにか13Sになってしまったので、覚えておくのも大変。でも、せっかくなのでここに披露しましょう。Stroke脳卒中Sedative鎮静薬Stimulant覚醒剤Surface路面凍結Status無免許運転Speedスピード違反Structure車両の故障さきほどの6Sと合わせて13Sになります。ちょうど不吉な数の13なので納まりがいいと思っていたら、心疾患の存在を忘れていました。しかしながら、突然発症の心疾患名をSで始めようと思うとかなり苦しい。STEMIST上昇型心筋梗塞Stanford classification : 大動脈解離13Sのつもりが15Sになってしまった!本事件を振り返ると、さすがに公用車の運転手なので飲酒や無免許はないと思いますが、内因性の原因だけでも7つは考えられます。運転手本人も、けがをして入院したとのこと。いずれ事故の原因が突き止められてほしいものです。それにしても、失神や脳卒中はよくある疾患なので、運転中に発症しても不思議ではありません。医師としては、そういった緊急事態に、自動的に減速したり停止したりする車が開発されてほしいと願っています。最後に1句 大寒の 事故見て思う 原因を

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