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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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虚血の急性期治療が瘢痕関連VTアブレーション成績に及ぼす影響~TITAN-VT/日本循環器学会

 虚血性心筋症(ICM)に伴う瘢痕組織関連心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーションは、急性心筋梗塞(AMI)発症から5時間以内の早期再灌流により良好な結果をもたらすことが、「TITAN-VT研究」より示唆された。西村 卓郎氏(東京科学大学 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて報告した。 AMIに対する早期再灌流は、梗塞サイズを縮小し、左室機能の保存や生存率の向上に寄与するため、最新の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』ではST上昇型心筋梗塞(STEMI)の発症から90分以内に搬送し、primary PCIを実施することが推奨されている1)。しかし昨今、心筋梗塞から数年後に発症する致死性不整脈である“ICMに伴う瘢痕関連VT”が問題視されている。この瘢痕組織の特徴は急性期虚血治療の影響を受けるが、早期再灌流がVTに対するカテーテルアブレーションの結果に及ぼす影響は依然として不明であった。 そこで同氏らは、虚血の急性期管理と虚血性VTアブレーションの長期転帰との関連を評価するため、多施設共同観察コホート研究を実施。2020~24年に45施設で施行されたICMに伴う瘢痕関連VTアブレーション例を後ろ向きに解析し、多電極カテーテルによる左室心内膜のマッピングにて評価された不整脈基質(瘢痕、遅延電位、伝導ブロックなど)およびVTアブレーションの結果と、虚血の背景(AMI vs.慢性完全閉塞[CTO])、再灌流の有無、実施タイミング(Door-to-Balloon time:DTB、Onset-to-Balloon time:OTB)との関連を検証した。なお、VT再発は持続する単形性心室頻拍、抗頻拍ペーシングやショックなどに対する植込み型除細動器による治療実施と定義付けた。 主な結果は以下のとおり。・対象はICM520例(AMI:392例、CTO:116例)ならびにVTアブレーション術581件*で、平均年齢72歳(範囲:64~77)、男性485例(93%)、平均BMI 23(同:21~26)、平均左室駆出率(LVEF)34%(同:26~42)であった。*複数回の手術経験者は最終手術結果が評価された・VTアブレーションは、AMIもしくはCTOの診断後中央値16年(8~25年)で実施されていた。・使用した3DマッピングシステムはCARTO(60%)、EnSite(35%)、Rhythmia(5%)であった。・追跡期間中、全体の76%にVT再発は認められなかった。・AMI群の392例(75%)では、OTBが5時間未満(p=0.021)およびDTBが90分未満(p=0.031)の早期再灌流は、遅延または再灌流なしと比較し、より良好な結果と関連していた。・不整脈基質としての伝導ブロックはOTBが長い症例ほど高頻度に観察される傾向にあり、再灌流時間が複雑な不整脈基質の形成と関連していることが示唆された。一方で、心表面に対する瘢痕の割合はOTBと強い相関はみられなかった。・心筋虚血診断時の側副血管の有無は、VTアブレーションの結果と関連していなかった(p=0.87)。・CTO群の116例(23%)では、アブレーション前(ベースライン)の12誘導心電図でQ波を有する患者のほうが、より予後良好な結果と関連していた(p=0.014)。 本研究の限界として、日本人のみを対象としていること、マッピングや手術経験などが標準化されていない、冠動脈の解剖学的構造などは評価していない点を挙げるも、同氏は本研究を振り返り「急性心筋梗塞に対する再灌流遅延例では伝導ブロックが増加することで複雑な不整脈基質が形成されていた。よって、VTアブレーション成績は瘢痕量よりも基質構造(とくに伝導ブロック)に依存する。CTOはAMIと異なる基質を持つ可能性がある」とし、「ベースラインのQ波特性はCTOの既往を有する患者のVTアブレーション結果の簡便な予測マーカーとなる可能性がある」と結んだ。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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HR+HER2-転移・再発乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

 日本人の既治療HR+HER2-転移・再発乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有効性・安全性を評価した非盲検第I/II相ブリッジング試験(ASCENT-J02試験)の結果、国際第III相TROPiCS-02試験における結果と同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったことが報告された。国立国際医療センターの下村 昭彦氏が、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で同試験の第II相HR+HER2-転移・再発乳がんコホートの結果を発表した。・対象:CDK4/6阻害薬、内分泌療法およびタキサン系薬剤による治療歴があり、かつ進行・転移病変に対する2ライン以上の全身化学療法歴のある、HR+HER2-乳がん患者(ECOG PS 0/1)42例・方法:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与・評価項目:[主要評価項目]独立判定委員会(IRC)評価による奏効率(ORR)[副次評価項目]治験責任医師評価によるORR、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2024年11月26日のデータカットオフ時点で、16例(38%)が試験治療を継続していた(追跡期間中央値は7.5ヵ月)。・年齢中央値は56歳(範囲:37~79歳)、がん薬物療法歴の中央値は6.0レジメン(同:3.0~11.0)、進行・転移病変に対する全身化学療法歴の中央値は2.0レジメン(同:1.0~3.0)、全例にCDK4/6阻害薬治療歴があった(治療期間は≦12ヵ月が43%)。・主要評価項目であるIRC評価によるORRは16.7%(95%信頼区間[CI]:7.0~31.4、p=0.1214)で、本試験における統計学的基準(p>0.025)は満たさなかったものの、TROPiCS-02試験におけるIRC評価によるORR(21.0%)と同程度であった。・治験責任医師評価によるORRは28.6%(95%CI:15.7~44.6)であった(TROPiCS-02試験では16.2%)。・IRC評価によるTTR中央値は2.8ヵ月(範囲:1.2~3.0)、DOR中央値は未到達(同:2.7~未到達)であった。・IRCによるPFS中央値は4.4ヵ月(95%CI:2.7~8.5)、治験責任医師評価によるPFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.3~7.1)であった(TROPiCS-02試験ではそれぞれ5.5ヵ月[95%CI:4.2~7.0]、4.4ヵ月[95%CI:3.8~5.4])。・OS中央値は13.0ヵ月(95%CI:11.0~未到達)であった(TROPiCS-02試験では14.4ヵ月[95%CI:13.0~15.7]、追跡期間中央値:12.5ヵ月)。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)が83%に認められた。10%以上で発現したのは好中球減少症(71%)と白血球減少症(40%)であった。G-CSF製剤の予防的投与は36%で実施された。 下村氏は、本試験はブリッジング試験としてデザインされたもので、サンプルサイズが少なく、対照群との比較がなく、追跡期間が短いことなどを研究の限界として挙げたうえで、本試験とTROPiCS-02試験の結果は、内分泌療法抵抗性の日本人HR+HER2-転移・再発乳がん患者に対し、化学療法に続くSGの投与を支持するものとまとめている。

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがアジア人でもOS良好(MARIPOSA)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善することが示されている1)。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、本試験のアジア人集団におけるOSなどのアップデート解析結果が、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、アジア人集団においてもオシメルチニブ単剤と比較してOSが良好であることが示された。なお本演題は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2025)のアンコール演題であったが、日本人集団のpost-hoc解析結果が追加された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失またはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群):ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[その他の評価項目]PFS2(2次治療開始後のPFS)、治療中止までの期間、頭蓋内PFS(icPFS)、頭蓋内奏効率(icORR)、頭蓋内奏効期間(icDOR)、症状進行までの期間(TTSP)、安全性など 今回は、アジア人集団(ami+laz群250例、osi群251例)の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値は63歳であった。EGFR遺伝子変異の内訳はexon19欠失が55%、L858Rが45%であり、脳転移を有する割合は44%であった。・追跡期間中央値38.7ヵ月時点におけるOS中央値は、ami+laz群が未到達、osi群38.4ヵ月であり、ami+laz群で延長がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.97、名目上のp=0.026)。3年OS率はami+laz群61%、osi群53%で、42ヵ月OS率はそれぞれ59%、46%であった。・OSのサブグループ解析において、一貫したOSのベネフィットが示された。日本人を対象としたpost-hoc解析においても一貫した傾向がみられた(HR:0.77、95%CI:0.34~1.77)。・病勢進行後に後治療を受けた患者の割合はami+laz群71%、osi群75%であり、いずれも多くが化学療法またはチロシンキナーゼ阻害薬を含む治療を受けていた。・PFS2中央値はami+laz群が未到達、osi群34.2ヵ月であり、ami+laz群が良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、名目上のp=0.007)。・治療中止までの期間中央値はami+laz群27.9ヵ月、osi群23.2ヵ月であり、ami+laz群が長かった(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、名目上のp=0.008)。・icPFS中央値はami+laz群が23.5ヵ月、osi群が23.9ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.57~1.09)。3年icPFS率はami+laz群が36%、osi群が18%であった。・icORRはami+laz群が78%、osi群が79%であった。icDOR中央値はそれぞれ未到達、27.4ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が未到達、osi群が30.8ヵ月であった(HR:0.65、95%CI:0.51~0.84、名目上のp<0.001)。・安全性プロファイルは既報および全体集団と一貫していた。静脈血栓塞栓症(VTE)はami+laz群の34%、osi群の7%で発現したが、追跡期間の延長による意義のある増加はみられなかった。なお、ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは3%であった。肺臓炎の発現割合はいずれの群も2%と低かった。・ami+laz群における注目すべき有害事象の多くは投与初期(0~4ヵ月)に発現しており、長期の観察において安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。このことから、長期的な治療継続が実現可能であることが示唆された。 本結果について、林氏は「アミバンタマブ+ラゼルチニブはオシメルチニブ単剤と比較して、全体集団と同様にアジア人集団でも死亡リスクを有意に低下させ、アジア人集団における新たな標準治療としての位置付けがさらに強固なものとなった」とまとめた。なお、日本人集団のOS解析結果について、同氏は「日本人集団のOS解析結果はpost-hoc解析であり、サンプルサイズやイベント数が少なかった。アジア人は層別化因子であったことを考慮すると、アジア人集団の解析結果のほうがより重要なデータである」と述べた。

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StageIIIのdMMR大腸がん、術後アテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/NEJM

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)のあるStageIII結腸がんの術後補助療法において、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)+mFOLFOX6はmFOLFOX6単独と比較して、無病生存(DFS)率が有意に高く、有害事象は試験薬の既知の安全性プロファイルと一致したことを、米国・Mayo ClinicのFrank A. Sinicrope氏らが「ATOMIC試験」の結果で報告した。StageIII結腸がんは、欧米では標準治療(切除+術後補助療法[フッ化ピリミジン系薬+オキサリプラチン])を行っても約30%が再発するという。研究の成果は、NEJM誌2026年3月26日号に掲載された。米独の無作為化第III相試験 ATOMIC試験は、米国の303施設とドイツの9施設で実施した無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]およびGenentechの助成を受けた)。2017年9月~2023年1月に、年齢18歳以上、完全切除(R0)が成されたStageIII結腸腺がん(N1/2、M0)で、dMMRが確認された患者712例(年齢中央値64歳[四分位範囲:49~72]、女性392例[55.1%])を登録した。 これら患者を、術後10週以内に補助療法として、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと、静脈内投与、12サイクル)+mFOLFOXを6ヵ月間投与した後アテゾリズマブ(13サイクル)単剤を6ヵ月間投与する群(アテゾリズマブ群:355例)、またはmFOLFOXを6ヵ月間投与する群(mFOLFOX単独群:357例)に無作為に割り付けた。 mFOLFOXは両群とも、フルオロウラシル(400mg/m2をボーラス投与後、2,400mg/m2を46時間で持続静注投与)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(400mg/m2)を投与した。 主要評価項目はDFS率(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)、副次評価項目は全生存(OS)および有害事象プロファイルとした。5年OS率には差がない 684例(96.1%)が米国施設登録患者であった。328例(46.1%)が臨床的に低リスク(Tx~3、N1/1c)、384例(53.9%)が高リスク(T4またはN2、あるいはこれら両方)で、150例(21.1%)がLynch症候群であった。 追跡期間中央値40.9ヵ月の時点で、3年DFS率は、mFOLFOX単独群が76.2%(95%信頼区間[CI]:70.9~80.6)であったのに対し、アテゾリズマブ群は86.3%(81.8~89.8)と有意に高かった(ハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.73、層別log-rank検定のp<0.001)。 5年OS率は、アテゾリズマブ群が89.7%(95%CI:85.2~92.9)、mFOLFOX単独群は87.9%(83.1~91.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(層別HR:0.90、95%CI:0.55~1.47)。Grade3/4の有害事象、アテゾリズマブ群84.1%vs.mFOLFOX単独群71.9% Grade3または4の有害事象は、アテゾリズマブ群で頻度が高かった(84.1%vs.71.9%)。とくに非血液毒性(69.4%vs.54.5%)の差が大きく、なかでも疲労(10.1%vs.3.3%)が高頻度にみられた。Grade3または4の血液毒性もアテゾリズマブ群で多く(46.8%vs.38.6%)、なかでも好中球数の減少(43.6%vs.35.9%)の頻度が高かった。 各施設の担当医判定によるGrade3または4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ群で72.5%、mFOLFOX単独群で61.7%に発現した。Grade5(死亡)の有害事象は、それぞれ6例および2例にみられ、このうち治療関連と判定されたのはアテゾリズマブ群の2例(突然死、敗血症)のみだった。 著者らは、「アテゾリズマブの追加により、化学療法の曝露量が減少することはなく、Grade3/4の免疫関連有害事象の発生率が上昇することもなかった」とし、「本試験の参加施設のほとんどが地域密着型の診療施設であり、患者の年齢にも上限を設けなかったため、得られた知見は一般化が可能と考えられる」と指摘している。 なお、本試験の結果は最新のNCCNガイドラインに組み込まれ、StageIIがんT4bN0にもこれらの知見が適用されているという。

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脳卒中後の転倒予防、在宅個別化介入で転倒率低下/BMJ

 脳卒中生存者の転倒率は、一般高齢者の転倒率と比べて2倍以上(73%vs.30%)と報告されており、多くの場合、転倒に伴う外傷や入院に至る。また、脳卒中経験者は転倒を繰り返す反復転倒者となるリスクが高く、転倒の影響は長期的な健康や幸福な生活を深刻に脅かす要因となるが、脳卒中後の転倒を予防する有効な介入法は確立されていない。オーストラリア・シドニー大学のLindy Clemson氏らは「FAST試験」において、在宅での個別化介入が、地域在住の脳卒中経験者の転倒を大幅に予防することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月24日号で報告された。理学療法士と作業療法士が連携して介入 FAST試験は、オーストラリアの3つの州で実施した無作為化第III相試験(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。2019年8月~2023年12月に参加者を登録した。 対象は、年齢50歳超、脳卒中発症から5年以内で、正規のリハビリテーションを終えて退院し、地域社会に復帰しており、補助具の有無を問わず平坦な地面を10m歩行できる患者とした。一方、中等度~重度の受容性失語症の患者、または過去1年間に転倒することなく1.4m/秒以上の歩行速度を示した患者は除外した。 被験者を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。介入群は、6ヵ月間にわたり、(1)習慣形成を目指した機能訓練(運動)、(2)自宅内での転倒の危険低減、(3)目標指向型の地域社会での移動能力の指導を受けた。対照群には通常ケアが提供された。介入は、理学療法士と作業療法士による2人1組のチームが、互いに連携して実施した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での年間平均転倒率であった。転倒による骨折、入院も少ない 370例を登録し、介入群に186例(平均年齢75[SD 10]歳、女性87例[47%]、脳卒中発症後の平均経過期間27[SD 17]ヵ月)、対照群に184例(76[SD 9]歳、82例[45%]、29[SD 17]ヵ月)を割り付けた。 12ヵ月の時点での年間平均転倒率は、対照群が2.7(SD 5.5)回/年であったのに対し、介入群は1.8(SD 3.0)回/年と有意に低かった(発生率比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.94、p=0.02)。これらの転倒の82%について、参加者は立ち上がりへの介助や医学的配慮は必要なかったと報告し、転倒による骨折(2%)および入院(4%)は少なかった。 一方、この間に転倒した参加者の割合(介入群56%[104例]vs.対照群59%[109例]、絶対リスク減少率:0.03[95%CI:-0.07~0.13]、p=0.52)は、両群間に有意な差を認めなかった。地域社会への参加、自己効力感なども改善 12ヵ月の時点における地域社会への参加(Late Life Function and Disability Instrument disability limitation[0~100点]の平均群間差:3%、95%CI:1~6、p=0.02)、自己効力感(Likert尺度[0~6点]の平均群間差:0.6、95%CI:0.2~1.0、p=0.004)、移動能力(fast walking speedの平均群間差:0.13m/秒、95%CI:0.06~0.19、p<0.001、preferred walking speedの平均群間差:0.06m/秒、95%CI:0.02~0.10、p=0.02)、バランス(Step Testの平均群間差:0.06ステップ/秒、95%CI:0.01~0.12、p=0.03)は、いずれも対照群に比べ介入群で有意に良好だった。 著者は、「自己効力感が対照群に比べ介入群で向上したことは、介入の実施における個別対応型のアプローチが、運動への継続的な参加を後押しした可能性を示唆する」「地域在住の脳卒中経験者を対象とし、自宅および地域社会で実施される介入について検証したことで、この介入法が容易に実践可能であることが示された」としている。

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リチウムが高齢の軽度認知障害患者の言語記憶低下を抑制か

 気分障害の治療に用いられるリチウムは、抑うつや不安などに有効であるだけでなく、脳にも利点をもたらすようだ。予備的な臨床試験で、低用量のリチウムの錠剤が、軽度認知障害(MCI)がある高齢者の言語記憶能力の低下を遅らせる可能性が示された。米ピッツバーグ大学精神医学分野のAriel Gildengers氏らが実施したこの試験の詳細は、「JAMA Neurology」に3月2日掲載された。Gildengers氏らは、「今回の臨床試験の結果は決定的なものではないが、より大規模な追加試験を実施する必要性を示すには十分な有望な兆候が得られた」と説明している。 論文の研究背景によると、先行研究では、アルツハイマー病で見られる脳の変性の背景にリチウム不足が関与している可能性が示唆されている。Gildengers氏は、「過去の研究で、長期間リチウムを使用している双極症(双極性障害)の高齢者では、脳の統合性を示すマーカーがより良好な傾向が認められた。そこで新たな疑問として浮かび上がったのが、そうした神経保護作用が気分障害以外にも及ぶのか、また、それを前向き臨床試験で厳密に検証できるのかということだった」と説明する。 今回の臨床試験では、60歳以上の高齢者83人を、2年間にわたって低用量リチウムを使用する群(41人)とプラセボを使用する群(42人)のいずれかにランダムに割り付け、リチウムが脳の機能や構造に与える影響を評価した。参加者は、認知機能検査と脳画像(MRI)検査を受けた。最終的に、実際に治療を受けたリチウム群41人(平均年齢72.93歳、女性56%)とプラセボ群39人(平均年齢71.22歳、女性56%)の80人が解析に含められた。 その結果、言語記憶評価テスト(CVLT-II)のスコアの毎年の低下幅は、リチウム使用群で0.73ポイントだったのに対し、プラセボ群では1.42ポイントであった(1年当たりの差0.69ポイント、95%信頼区間0.01〜1.37、P=0.05)。一方、脳画像検査では、両群ともに、記憶を司る脳領域である海馬の体積と脳皮質体積が時間の経過とともに縮小していたが、有意な群間差は認められなかった。探索的解析では、アルツハイマー病と関連する有害なタンパク質として知られるアミロイドβの脳内蓄積量が多い人では、リチウムによる保護効果がより大きい可能性が示唆された。 論文の筆頭著者であるGildengers氏は、ニュースリリースの中で、「重要なのは、リチウムが失われた記憶を回復させるわけではないという点だ。もし今回の結果が確かなものであれば、リチウムは記憶力の低下を遅らせる働きをしている可能性がある」と述べている。 この臨床試験が開始されたのは2018年である。その当時、アミロイドβを調べる血液検査は存在しなかった。そのため、参加者は臨床症状のみに基づき試験に登録されており、アミロイド陽性だったのは参加者の一部だった。Gildengers氏らは、「このことが、こうした患者群でリチウムのより強い効果を明らかにする同試験の力を弱めた可能性がある」との見方を示している。Gildengers氏は、「もし現時点でこの試験を計画するなら、最初からアミロイドβの状態に基づいて参加者を登録するだろう。実際、次の研究ではそのような方法で実施する予定だ」と話している。 また、今回の臨床試験では低用量のリチウムが高齢者でも安全に使用できることが示された。研究グループは現在、より大規模で決定的な臨床試験の実施に向けて支援を求めている。Gildengers氏は、「今回の臨床試験は、このアプローチが実行可能で安全であり、さらに追究する価値があることを示している。一方で、特にこれほど重要な問題を扱う場合には、慎重に計画された十分な検出力を有する臨床試験が不可欠である理由を改めて認識させられた」と述べている。

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うつ病患者の死亡リスク低下に有効な食事パターンは?

 食事は、うつ病の発症に重要な役割を果たしている。しかし、食習慣がうつ病患者の死亡率に及ぼす影響は、これまで明らかになっていなかった。中国・中南大学のHonghui Yao氏らは、成人うつ病患者における6つの食習慣とすべての原因による死亡率および死因別死亡率との関連性を調査した。European Journal of Nutrition誌2026年2月12日号の報告。 対象は、英国バイオバンクの参加者のうち、うつ病と診断され、診断後24時間食習慣評価を1回以上受けた5,368例(2006~10年に登録)。食事データは、ベースライン時および4回のオンラインフォローアップ調査を通じて収集した。高血圧予防のための食事療法(DASH)、食事性炎症指数(DII)、健康的な食事に関する食品指数2019(HEFI-2019)、健康的な植物性食事指数(hPDI)、地中海式食事スコア(MDS)、世界がん研究基金/米国がん研究財団(WCRF/AICR)食品スコアの6つの食事スコアを算出した。Cox比例ハザード回帰分析を用いて、全死亡率、心血管疾患(CVD)、がんによる死亡率のハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値約4,370日の間に、342例が死亡した。そのうち57例がCVD、159例ががんによる死亡であった。・DASH(HR:0.92、95%CI:0.85~0.99)、HEFI-2019(HR:0.90、95%CI:0.83~0.97)、MDS(HR:0.90、95%CI:0.83~0.97)の各五分位増加は、全死亡率の低下と関連していた。・HEFI-2019はCVDによる死亡率の低下とも有意に関連が認められた(HR:0.79、95%CI:0.64~0.96)。・死亡率の低下は、主に魚の摂取量の増加および非全粒穀物、脂肪、遊離糖、ナトリウムの摂取量の減少と関連していた。 著者らは「うつ病患者において、MDSとHEFI-2019への順守率の高さは、死亡率の低下と関連していた。これらの知見は、健康的な食生活がうつ病患者の長期的な健康を支える役割を果たす可能性を示唆している」と結論付けている。

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変わるドライアイ治療:“自覚症状”に着目した新しい治療選択肢の登場/千寿

 2026年3月、千寿製薬は世界初のTRPV1拮抗作用を持つドライアイ治療薬、モツギバトレプ(商品名:アバレプト懸濁性点眼液0.3%)に関するプレスセミナーを開催した。セミナーではモツギバトレプの開発経緯の紹介の後、堀 裕一氏(東邦大学医療センター大森病院 眼科 教授)が「ドライアイの新たな側面を捉える」というテーマで講演をした。ドライアイの病態とTRPV1 日本国内のドライアイ患者は2,200万人を超えるとされており、現代のライフスタイルや高齢化によって患者数は増加傾向にある。ドライアイは涙液層の安定性の低下と瞬目時の摩擦亢進が相互に悪循環を形成することで炎症が起こり、眼表面障害と眼の乾きや不快感などの症状を引き起こす。これらの症状は患者さんのQOL低下につながることが示唆されており、実際に患者さんの治療に対するニーズは自覚症状に対する早期の改善効果である。 近年、ドライアイの眼痛や不快感など自覚症状に眼表面の感覚神経に発現するいくつかの受容体が関連していることがわかってきており、そのうちの1つであるTRPV1は三叉神経節細胞などを通じて自覚症状の発現と炎症に関与している。モツギバトレプはTRPV1を阻害することでドライアイの不快感などの自覚症状を改善することが期待されている。国内第III相試験の成績 国内第III相比較試験はドライアイの自覚症状とQOLを総合的に評価するDEQSスコアの変化量を主要評価項目として設計された。 主要評価項目ではモツギバトレプ群のプラセボ群に対する優越性が検証された。 副作用の発現状況はモツギバトレプ群で268例中15例、5.6%に発現しており主な副作用は冷感6例(2.2%)、眼部冷感3例(1.1%)、霧視3例(1.1%)であった。 また、モツギバトレプを単剤またはドライアイ治療薬などと併用投与した際の安全性と有効性を評価した国内第III相長期投与試験では、投与1週後という早期から1年にわたって効果を発揮することが示されている。一方、副作用についてはTRPV1は温度感覚に関連する受容体であるため、作用機序に関連すると考えられる温度感覚異常に関しては、「患者さんに対して適切な情報提供を続けていく必要がある」と堀氏は説明した。今後のドライアイ診療はどう変わるか ドライアイ診療は今後、神経を対象とした領域に突入していく。ドライアイの患者さんは自覚症状に悩みながらも病院の受診まで至らないケースも多い。新しい治療選択肢が増えたことを医療従事者から患者さんに伝え、受診を促していくことも重要だと考えられる。また、新規作用機序であるモツギバトレプの登場により、ドライアイの病態生理のさらなる解明につながることが期待されるとして、堀氏は講演を締めくくった。千寿製薬の目指す創薬 千寿製薬は主に眼疾患の治療薬を開発・製造・供給しており、モツギバトレプは“やさしい創薬”というコンセプトで開発されている。モツギバトレプは可能な限り添加物を使用しない開発がなされ、角膜上皮に影響があるとされているベンザルコニウム塩化物を含まない製剤となっている。 堀氏の講演に先立って挨拶をした吉田 周平氏(千寿製薬株式会社 代表取締役社長)は眼科を中心とした医療現場に柔軟な発想と探求心をもって新しい薬の開発に挑み続け、「“見える”の向こうにあるものをカタチづくっていく」と自社の目指す姿を語った。

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幻聴が病気の場所を教えてくれた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第303回

幻聴が病気の場所を教えてくれた1例「私は今、お前の脳内に直接語りかけている……」──誰もが一度はそんな中二病全開の妄想を抱いたことがありますよね?えっ、ないですか?静まり返った教室や一人きりの自室で、自分にだけ特別な能力が備わっていると信じて疑わなかったあの黒歴史。しかし、それが単なる妄想ではなく、現実の出来事だったとしたらどうでしょう。今回は、そんな漫画やアニメのような展開が本当に起こってしまった、驚愕の症例報告をご紹介します。Azuonye IO. A difficult case: Diagnosis made by hallucinatory voices. BMJ. 1997 Dec 20;315(7123):1685-1686.症例は、精神疾患の既往もなく身体的にも健康であった40代前半の女性です。ある日、自宅で一人で本を読んでいたところ、突然頭の中に声が聞こえ始めました。「―――怖がらないでください。こんな風に話しかけられて驚いているでしょうけれど、これが一番簡単な方法だったのです」その声はさらに続き、ロンドンにある特定の病院の放射線科に行くようにと具体的な指示を出しました。「あなたには脳腫瘍があり、治療が必要です」。幻聴の内容は、驚くほど具体的でした。恐怖を感じた女性は精神科を受診しました(ちなみに当時の担当医は本論文の筆頭著者)。幻聴に対して投薬とカウンセリングが開始され、症状は一時的に消失しました。しかし、休暇で海外に滞在中、再び声が聞こえ始めたのです。「―――早く帰国して、脳腫瘍の治療を受けるべきだ」さすがに不安を抑えきれなくなった女性は、帰国後すぐに病院を再受診しました。担当医は、彼女を安心させる目的も兼ねて頭部CT検査をオーダーしました。ところが、検査の結果…、なんと幻聴が指摘したとおり、髄膜腫が発見されたのです。ただちに脳神経外科で腫瘍摘出術が施行されました。そして、彼女が術後に意識を取り戻した直後、あの声が最後にこう語りかけてきたと記録されています。「―――あなたを助けることができて嬉しいです。さようなら」これ以降、幻聴が再び出現することはありませんでした。この信じ難い症例について、明確なメカニズムは現在も解明されていません。

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アメリカの恐ろしすぎる「医療保険」のリアル【臨床留学通信 from Boston】第22回

アメリカの恐ろしすぎる「医療保険」のリアル今回は、アメリカ滞在において常に心配のタネとなる「医療保険」のお話です。最初にお断りしておきますが、医療費の額については完全に正確な数字というよりは、「だいたいの相場観」として捉えていただければ幸いです。まず、家族4人で医療保険を1年間まかなおうとすると、それだけで1万ドル(約160万円)かかるとも言われています。かつては多かった「無給リサーチフェロー」は減りつつありますが、今でも「無給であっても医療保険だけは死守した」という話を聞くほど、保険の有無は死活問題です。ポスドクの給料は概して6~7万ドル程度といわれますが、そこに医療保険が含まれているかどうかで生活水準は雲泥の差です。最初にその交渉はきちんとしたほうがよいでしょう。クリニカル(臨床)で入ると、通常は自施設の病院は完全にカバーされます。しかし、医療保険プランにはTier 1、Tier 2、Tier 3といった階層があり、これが非常に厄介です。通常は、病院を選ぶことがなければTier 1だけカバーする安い保険を選びます。しかし、もし間違えてTier 3の病院に行ったりすると、とんでもない請求が届きます。病院の受付で何度も保険が利くかどうかを確認する必要がありますし、受付も信用できないので、必ず自分で保険のウェブサイトを確認してから行くようにしています。アメリカで入院すると1泊1万ドルという嘘のような請求が来ます。実際、保険のおかげで数十ドルの負担で済んだという話もあれば、旅行保険に入っていて、3日の緊急入院を余儀なくされた人が、3万ドルをなんとかカバーされたという話も聞きます。とにかく、「入院」には戦々恐々とするのがアメリカ生活です。また、外来の仕組みも面倒です。実は、地域や施設によって家族のカバー範囲が大きく異なります。私が以前所属していたニューヨークのMount Sinai、Montefioreは家族分もカバーされるのですが、ボストンのMGHやBIDMCは家族分を月300ドルほど払わなければなりません。しかも、自施設のプライマリケアにかかっても「Copay」という自己負担が40ドルほど発生するなど、ボストンのほうが世知辛い印象です。自分の病院の中の薬局を使ったほうが安く済むので、近くのドラッグストアで薬を電子処方してもらうことはありません。ここでとくに注意したいのが、歯科保険は通常の医療保険とは「まったく別のプラン」だということです。これを知らずに受診し、2人で1,000ドルの請求が来たという恐ろしい話も聞きます。また、クリーニングやX線はカバーされますが、実際の処置になると、保険が利いても「4~5割自己負担」というケースがほとんどです。留学前に日本で歯を完璧にキレイにしてから行ったほうがよいでしょう。そして最もストレスが溜まるのが「外来予約」です。電話をかけても、オペレーターにつながるまでいくつもの自動音声ボタンを押して、たどりついたと思ったら10分以上待たされて、やっとつながったら「セクションが違う」とさらにたらい回しにされ、ようやく予約が取れたと思ったら「最短で8ヵ月後です」ということも…。日本のような快適な医療システムは、持続性の意味で心配になることもありますが、それでも「アメリカでだけは絶対に病気になりたくない」と痛感する次第です。

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急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第24回

Q24 急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?泌尿器科医です。急性前立腺炎における尿道カテーテル留置の適否について、ガイドラインなどの記載はありますか? 他科から相談を受けるものの文献的な裏付けがなくcase-by-case basisで回答しているので。

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第307回 2026年4月より定期接種に加わったワクチンは?

INDEX妊婦の7割、「無料であれば接種をする」イレギュラーな定期接種ワクチン妊婦の7割、「無料であれば接種をする」4月1日から2026年度がスタートした。フリーランスの私にとって3月31日と4月1日は、単なる1日違い以上の意味はないのだが、世の中はそうではない。医療業界もこの日を境にいろいろと変わることがある。その1つがワクチンの定期接種である。2026年4月1日から妊婦に対するRSウイルスワクチン接種が予防接種法に基づくA類疾病として定期接種に加わった。これまでは任意接種だったため、約3~4万円の自己負担が必要だったが、これが原則無料となる。国立成育医療研究センターのグループが2024年7月〜2025年8月に出産した1,279例の女性を対象としたオンライン全国調査では、妊娠中のRSウイルスワクチン接種率は約11.6%(95%信頼区間[CI]:9.8〜13.3%)。同ワクチンを公費負担で接種できる米国や英国の接種率の約30〜50%と比べれば、かなり低い水準である。同調査では未接種者にその理由を尋ねているが、「予防効果を知らなかった」(28.9%)、「ワクチンの存在を知らなかった」(27.3%)、「自費での支払額が高過ぎる」(18.7%)など。このうち77.5%は「無料であれば接種をする」と回答したことも明らかになっている。また、接種した人でも接種費用について「やや高い」または「とても高い」と回答した人は87.2%に上っており、やはり高額なワクチン接種費用は接種率向上の大きなハードルになっていることは確実と言ってよい。今後は少なくとも前出の11.6%よりは接種率が高くなると考えられる。もっともこの調査で未接種であった人の15.0%が、「無料でも受けたくない」と回答していることのほうが大きな問題かもしれない。イレギュラーな定期接種ワクチンそもそも今回のRSウイルスワクチン自体が既存の定期接種ワクチンの中では異質である。接種対象者が単なる健常者ではなく妊婦限定であることに加え、接種した妊婦の体内で産生された抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、出生直後の乳児のRSウイルス感染を防御するというやや分かりにくいものだからだ。少なからぬ人が経験しているだろうが、妊娠期間中の女性は自身だけでなく胎児の健康を慮るあまり、体内に入る薬や食品などには、平時以上に神経質になりがちである。その意味ではVaccines誌に掲載されたサハラ以南で行われた妊婦の新型コロナウイルスワクチンに関する研究1)が興味深い。同研究はアフリカのサハラ以南というやや特殊な地域で行われ、例数も少ないが、妊婦と非妊婦の年齢マッチングを行ったうえでの研究である。それによると妊婦は非妊婦に比べ有意にワクチンを受ける可能性が低いことがわかっている(オッズ比[OR]:0.12、95%信頼区間[CI]:0.06~0.27、p<0.001)。また、学歴が低いほど接種率が有意に高く(OR:0.04、95%CI:0.01~0.18、p<0.001)、一時“流行”した新型コロナワクチンにマイクロチップが含まれているという誤情報を信じる人ほどワクチン接種率が有意に低いという結果だ(OR:3.63、95%CI:1.12~11.79、p=0.032)。一瞬、これを読むと頭が混乱するかもしれないが、ここはやや補足が必要だ。まず、この研究では、いわゆる高学歴は被験者全体の92.6%を占め、低学歴者の割合は極端に低い。このため学歴による有意差は表面的な結果と受け止められる。また、たとえば新型コロナワクチンがDNAに変化を与えるという誤情報を信じる割合は、妊婦が79.6%、非妊婦が76.6%で有意差はない。むしろシンプルに妊婦のほうが非妊婦に比べ、何事も慎重になりやすい、考え過ぎるゆえにワクチンに対しても忌避傾向がみられることを示唆していると解釈したほうがいいだろう。一方、ワクチン接種については従来から医療者による推奨などが接種率に大きな影響を与えることが知られている。米国疾病予防管理センター(CDC)の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」2023年9月29日号に掲載された妊婦に関するワクチン接種に関する調査結果2)では、2022年10月~2023年1月の間に妊娠していたと報告した1,814人の女性でのインフルエンザワクチン接種率は47.2%(95%CI:44.4~50.1)に過ぎなかったが、医師による推奨があり、その場で接種が可能だったケースでの接種率は61.4%(同:58.0~64.7)。これに対し、推奨のみでは22.7%(同:15.0~32.0)、推奨なしでは10.8%(同:7.5~14.9)で、各群間では有意差(p<0.05)が認められたとしている。その意味で新たに定期接種に加わったRSウイルスワクチンの接種率向上については、限られた診療時間内で医療者がどのように妊婦に情報提供できるかにかかっているともいえる。もちろんこの点を医療者側も重々承知しているであろうことは、日本産婦人科医会のホームページ3)にRSウイルスワクチン接種に関する医師・患者向け資材が掲載されていることからもうかがい知れる。同時に私たちメディアにもそうした責任は向けられているのだと、新年度を迎え、心新たにもしている。1)Amiebenomo OM, et al. Vaccines (Basel). 2023;11:484.2)Razzaghi H, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;39:1065-1071.3)日本産婦人科医会:RSウイルスに関するご案内

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日本人の全般性不安症患者が抱える満たされないニーズ判明

 ヴィアトリス製薬の野本 佳介氏らは、臨床試験に参加した日本人の全般性不安症(GAD)患者を対象に、本研究を実施した。疾患認識レベル、過去の医療を求める行動および診断歴、症状と日常生活への影響、診断および臨床評価に対する認識、そして試験参加後の変化を調査した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年2月24日号の報告。 本研究は、ウェブベースの質問票を用いた量的(記述的)研究として、2025年4月23日〜5月25日に実施した。対象患者は、DSM-5に基づきGADと診断され、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬ベンラファキシンのB2411367臨床試験に登録歴のある患者。症状と疾患負担に関する患者の直接的な経験は、自由記述式回答によって収集した。 主な結果は以下のとおり。・98例の回答者のデータを分析した。・試験登録時に最も多く報告されたGADの症状は、過度の不安または心配(99.0%)、易疲労性(86.7%)、睡眠障害(82.7%)であった。・回答者の半数以上(53.1%)が、日常生活で最も影響を受けているのは仕事または勉強であると回答し、集中力の低下、効率の低下、身体的負担を訴えた。・疾患認知度に関しては、回答者の72.4%がGADについて聞いたことがなく、71.4%が不安の原因を性格に起因するものであると回答した。・試験参加前に医療機関を受診していた患者は、11.2%であった。その際、最も多かった診断はうつ病(36.4%)であり、GADと診断された患者は9.1%のみであった。 著者らは「多くのGAD患者は、試験参加前に病名を知らず、日常生活に影響を与える症状を抱えていた。患者の直接の体験談は、彼らの負担についてより深い洞察をもたらした。この調査結果は、臨床試験に参加した日本人GAD患者のアンメットニーズ、そして一般の疾患認知度の低さや臨床現場での認知度の低さを浮き彫りにしている。GADの認知度向上に向けた取り組みは、早期診断の促進と適切な治療へのアクセス拡大に役立つ可能性がある」としている。

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膵がん1次治療、NALIRIFOX療法の日本人における一貫性を確認/日本臨床腫瘍学会

 遠隔転移を有する未治療の膵管腺がん患者に対し、NALIRIFOX療法は、標準治療のゲムシタビン+nab-パクリタキセル(Gem+nab-PTX)療法と比較し、全生存期間(OS)を有意に延長することが国際共同第III相試験であるNAPOLI-3試験において示された。一方、NAPOLI-3試験では日本人データが得られていないため、国内適応に向けたブリッジング試験(S095013-169試験)が行われた。すでに昨年、有効性に関する報告がされているが、今回、全生存期間(OS)を含む最終解析結果が報告され、いずれも日本人患者におけるNALIRIFOX療法の有効性と安全性がNAPOLI-3試験の結果と一貫していることが示された。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国立がん研究センター東病院の佐々木 満仁氏が発表した。・試験デザイン:オープンラベル、単群、多施設共同国内第II相試験(ブリッジング試験)・対象:切除不能な遠隔転移を有する膵管腺がん患者:41例・試験群:ナノリポソーム型イリノテカン50mg/m2+オキサリプラチン60mg/m2+レボホリナート200mg/m2+5-FU 2,400mg/m2、病勢進行または許容できない毒性、試験終了まで継続・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、安全性、薬物動態(PK)、QOLなど・データカットオフ:2025年7月23日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値12.8ヵ月時点の奏効率(ORR)は41.5%(95%信頼区間[CI]:26.3~57.9)で、NAPOLI-3試験の41.8%と一貫していた。・OS中央値は9.9ヵ月(95%CI:7.4~12.9)であり、NAPOLI-3試験のNALIRIFOX群(11.1ヵ月、95%CI:10.0~12.1)よりやや劣る結果だった。・PFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.5~7.4)であった。・病勢コントロール率(DCR)は75.6%(95%CI:59.7~87.6)であり、NAPOLI-3試験の67.6%(95%CI:62.7~72.3)と同等以上の結果であった。・DoR中央値は5.6ヵ月(95%CI:1.8~10.9)、奏効までの期間(TTR)中央値は2.84ヵ月であった。・治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は97.6%(治験薬関連95.1%)であった。Grade3/4のTEAEは78.0%(治験薬関連58.5%)に認められた。・主なTEAE(全Grade、10%以上)は、食欲不振(61.0%)、下痢(56.1%)、悪心(43.9%)、倦怠感(34.1%)などであった。Grade3/4の主なTEAEは、食欲不振(22.0%)、低アルブミン血症(7.3%)、下痢、悪心、倦怠感、低カリウム血症、体重減少(各4.9%)であった。・投与量調節について、減量は61%、投与延期は75.6%に認められたが、投与中止に至った例はなかった。・後続治療を受けた割合は68.3%であり、主な薬剤はゲムシタビン(65.8%)、パクリタキセル(63.4%)であった。・EORTC QLQ-C30によるQOL評価では、治療開始から48週間にわたりベースラインからの大きな悪化は見られず、良好なQOLが維持されていた。 佐々木氏は「日本のブリッジング試験において、NALIRIFOX療法は日本人患者においても管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についてもNAPOLI-3試験の結果と一貫性が確認された」とした。 発表後の質疑応答では「ORRが非常に良好である一方で、OS中央値は9.9ヵ月と、期待していたほど伸びていないように見受けられる。この結果をどう解釈し、Gem+nab-PTX療法とどう使い分けていくべきか」との質問があった。佐々木氏は「主要評価項目がORRに設定された第II相ブリッジング試験であり、サンプルサイズが41例と限られていたため、早期に治療が不応となった数例がOSの結果に大きく影響した可能性がある。ORRが良好なのはNALIRIFOX療法の大きな強みであり、腫瘍縮小を早期に図る必要がある症例にとっては、有力な選択肢になるだろう。承認後に実臨床でのデータを積み上げ、Gem+nab-PTXとの最適な使い分けを検証していきたい」とした。

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進行乳がん1次治療中にESR1変異出現でcamizestrantに切り替え、SERENA-6試験の日本人解析/日本臨床腫瘍学会

 SERENA-6試験は、ER+/HER2-の進行乳がんに対して1次治療のアロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法中、病勢進行する前にctDNA検査でESR1変異が検出された患者において、CDK4/6阻害薬を継続しAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)camizestrantに切り替えることの有用性を検討した国際共同第III相二重盲検試験である。すでに中間解析(データカットオフ:2024年11月28日)で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善(ハザード比[HR]:0.44、p<0.0001)が報告されている。今回、日本人集団の結果(データカットオフ:2025年6月30日)について、名古屋市立大学の岩田 広治氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。 本試験では、1次治療としてAI+CDK4/6阻害薬を6ヵ月以上投与されたER+/HER2-進行乳がん患者に、定期的な画像検査に合わせて2~3ヵ月ごとにctDNA検査を行い、ESR1変異の有無を評価した。ESR1変異出現時に病勢進行が認められない患者を、camizestrant(75mg、1日1回経口投与)+CDK4/6阻害薬(種類・用量を継続)+AIのプラセボ、およびAI+CDK4/6阻害薬+camizestrantのプラセボの2群に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師判定によるPFS、副次評価項目はPFS2と全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・315例中20例が日本人患者であった(camizestrant+CDK4/6阻害薬群:11例、AI+CDK4/6阻害薬群:9例)。患者の背景因子は全体集団ではバランスがとれていたが、日本人集団は少数のためバランスがとれておらず、初回検査でのESR1変異検出例は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が73%とAI+CDK4/6阻害薬群の33%より多く、早期進行例もcamizestrant+CDK4/6阻害薬群で多かった。・PFS中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が9.3ヵ月、HRは0.42(95%信頼区間[CI]:0.08~0.93)で有意な改善がみられた。・PFS2中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が35.5ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、HRは0.38(95%CI:0.10~1.36)で全体集団と同様の傾向であった。・最初の後続治療までの期間(TFST)の中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が20.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が7.7ヵ月、HRは0.30(95%CI:0.09~0.92)で全体集団と同様の傾向であった。2回目の後治療までの期間(TSST)も同様の傾向であった。・化学療法もしくはADC(抗体薬物複合体)フリー生存期間の中央値は、全体集団でcamizestrant+CDK4/6阻害薬群が22.7ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が18.7ヵ月、HRは0.69(95%CI:0.49~0.97)であり、日本人集団でも同様の傾向であった。・全体集団において、camizestrant+CDK4/6阻害薬群では8週以内にESR1変異のアレル頻度が大幅に減少したが、AI+CDK4/6阻害薬群ではほとんどの患者で増加した。・camizestrant+CDK4/6阻害薬群は、日本人患者において良好な忍容性を示し、Grade3以上の有害事象は27.3%で、有害事象プロファイルは全体集団と同様であった。・日本人集団では、camizestrant+CDK4/6阻害薬群での好中球数減少症は全Gradeが27.3%、Grade3以上が18.2%であり、曝露期間を調整した発現割合はcamizestrant+CDK4/6阻害薬群のほうが低かった。・camizestrantによる光視症は全体集団では20.6%に報告されたが、日本人集団では2例のみでどちらもGrade1であった。 これらの結果から、岩田氏は「1次治療の内分泌療法を、CDK4/6阻害薬を継続しながらcamizestrantに切り替えることは、病勢進行を遅らせ、化学療法/ADCフリー生存期間を延長させるだけでなく、ESR1変異のアレル頻度を大幅かつ迅速に減少させることにより、治療上のベネフィットを大幅に高める」とまとめた。

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新生児のフェニルケトン尿症に対応する治療薬発売/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)顆粒分包を2026年3月18日に発売した。 PKUは、まれに起こる先天性代謝異常疾患であり、フェニルアラニン(Phe)と呼ばれる必須アミノ酸を分解できないことが特徴で、神経学的症状やその他の症状を引き起こす。未治療や管理が不十分な状態が続き、Pheが体内に有害なレベルまで蓄積した結果、長年にわたり知的障害、痙攣発作、発達遅延、認知能力低下、行動および感情の問題など、重度かつ不可逆的な障害が生じる。現在、新生児ではスクリーニングで診断が行われており、世界中で約5万8,000人の患者が推定されている。 セピアプテリンは、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)のきわめて重要な補酵素であるBH4の天然前駆体であり、その作用機序により、Phe濃度を効果的に低下させることで、幅広くPKU患者の治療ができることが期待されている。<製品概要>一般名:セピアプテリン販売名:セピエンス顆粒分包 250/1,000mg効能又は効果:フェニルケトン尿症効能又は効果に関連する注意:BH4欠損症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない用法及び用量又は使用方法:通常、セピアプテリンとして、以下の用量(省略)を1日1回食後又は食事とともに経口投与する。なお、忍容性が認められない場合、6ヵ月以上2歳未満では1日7.5mg/kgまで、2歳以上では1日20mg/kgまでの範囲で適宜減量すること。承認日:2025年12月22日発売開始日:2026年3月18日薬価:セピエンス顆粒分包 250mg 1万6,989.4円/包セピエンス顆粒分包 1,000mg 6万7,957.1円/包製造販売元:PTCセラピューティクス株式会社

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無症候性の重症大動脈弁狭窄症、早期手術vs.保存的治療の10年転帰/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、早期手術は保存的治療と比較して、10年時点の手術死亡または心血管死の複合エンドポイントの発生リスクが有意に低いことが、韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らによる多施設共同無作為化非盲検試験「RECOVERY試験」の最終解析の結果で示された。本試験では、最後の患者登録から4年後までの追跡調査における解析で、同複合エンドポイントの発生は保存的治療より早期手術で有意に低いことが示されていたが、長期アウトカムの有益性は依然として不明であった。NEJM誌2026年3月26日号掲載の報告。手術死亡と心血管死の複合エンドポイントを比較 研究グループは、2010年7月~2015年4月に、無症候性の超重症大動脈弁狭窄症(大動脈弁口面積≦0.75cm2で、大動脈弁血流速度≧4.5m/秒または平均圧較差≧50mmHgのいずれか)の患者145例を、早期手術群(73例)または保存的治療群(72例)に無作為に割り付けた。 早期手術群は、無作為化後2ヵ月以内に大動脈弁置換術を行い、保存的治療群では追跡期間中に症状が現れた場合、左室駆出率<50%に低下した場合または大動脈弁最大血流速度が年0.5m/秒超増加した場合に大動脈弁置換術を行うこととされた。 主要エンドポイントは、術中または術後30日以内の死亡(手術死亡)または追跡期間全体(最後の患者登録から10年後まで)の心血管死の複合とした。事前に規定した副次エンドポイントは全死因死亡、臨床的血栓塞栓症、大動脈弁再手術、および心不全による入院であった。早期手術群のイベント発生HRは、10年経過後でも0.10 早期手術群では、73例全例で大動脈弁置換術が成功し、保存的治療へクロスオーバーした4例を除く全例が無作為化後2ヵ月以内の手術であった。早期手術群で手術死亡は認められなかった。保存的治療群では、72例中61例(85%)が主に症状発現のため追跡期間中に大動脈弁置換術を受けた。 全体の追跡期間中央値144ヵ月(四分位範囲:124~160)において、ITT解析の結果、主要評価項目のイベントは早期手術群で2例(3%)、保存的治療群で17例(24%)に心血管死が発生し、ハザード比(HR)は0.10(95%信頼区間[CI]:0.02~0.43、p=0.002)であった。 Kaplan-Meier法を用いて算出した手術死亡または心血管死の累積発生率は、早期手術群では5年時および10年時ともに1%であったのに対し、保存的治療群ではそれぞれ7%および19%であった。 全死因死亡は、早期手術群で11例(15%)、保存的治療群で23例(32%)に認められた(HR:0.42、95%CI:0.21~0.86)。

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