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HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加、PFSの改善みられず(JCOG1919E/AMBITION)/ASCO2026

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんは免疫学的に「cold」な腫瘍とされ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的と位置付けられる。一方、VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境を促進するため、VEGF阻害により免疫抑制状態を解除し、免疫療法への応答を増強できると考えられる。こうした背景のもと、パクリタキセルおよびベバシズマブへのアテゾリズマブの上乗せ効果を検証する第III相JCOG1919E(AMBITION)試験が国内24施設で実施された。その主要解析結果を、愛知県がんセンターの原 文堅氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で報告した。・対象:切除不能な局所進行・再発またはStageIVのHR+/HER2-乳がん患者(≧20歳、ECOG PS 0~2、内分泌療法抵抗性または生命を脅かす内臓転移あり[有症状の転移があり早急な腫瘍縮小により症状緩和が必要な状態]、進行がんに対する化学療法歴なし)・試験群(アテゾリズマブ追加群):28日サイクルでパクリタキセル(90mg/m2、1・8・15日目)+ベバシズマブ(10mg/kg、1・15日目)+アテゾリズマブ(840mg、1・15日目)投与 141例・対照群:28日サイクルでパクリタキセル+ベバシズマブ投与 140例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ:2025年9月15日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はアテゾリズマブ追加群56.0歳vs.対照群57.0歳、PD-L1陽性(IC 1-3)は15.6%vs.16.4%、de novo症例が31.9%vs.34.3%、肝転移が67.4%vs.68.6%、CDK4/6阻害薬併用の内分泌療法歴ありが64.5%vs.62.1%、周術期の化学療法歴ありが42.6%vs.52.1%であった。・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群12.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.3~15.2)、対照群が11.2ヵ月(95%CI:9.6~13.5)で、統計学的な有意差は認められなかった(層別ハザード比[HR]:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)。・PD-L1発現状況別にみた治験責任医師評価によるPFS中央値は、IC 0ではアテゾリズマブ追加群13.6ヵ月vs.対照群11.3ヵ月(層別HR:0.826、95%CI:0.619~1.101)、IC 1-3では9.7ヵ月vs.8.4ヵ月(層別HR:1.018、95%CI:0.537~1.931)。・BICR評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群16.7ヵ月vs.対照群13.8ヵ月であった(層別HR:0.919、95%CI:0.678~1.246、p=0.294)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のサブグループ解析の結果、de novo症例、転移がんへのCDK4/6阻害薬歴なし、周術期化学療法歴なしの患者において、アテゾリズマブ追加群で良好な傾向がみられた。・OS中央値は、アテゾリズマブ追加群が39.1ヵ月、対照群が31.2ヵ月で、アテゾリズマブ追加群で数値上の改善傾向がみられたものの、統計学的な有意差は示されなかった(層別HR:0.804、95%CI:0.584~1.108、p=0.091)。12ヵ月OS率は85.8%vs.84.8%、24ヵ月OS率は71.6%vs.58.5%、36ヵ月OS率は51.2%vs.41.5%であった。・治験責任医師評価によるORRはアテゾリズマブ追加群73.0%vs.対照群71.9%、DOR中央値は12.0ヵ月vs.9.5ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ追加群84.9%vs.対照群78.6%で発現した。アテゾリズマブ追加群では、皮疹(36.0%)、副腎機能不全(11.5%)、甲状腺機能低下症(10.8%)などの免疫関連有害事象が多くみられたが、多くは管理可能であり、既知の安全性プロファイルと一致していた。 原氏は今回の結果について、「HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加はPFSの統計学的に有意な改善を示さなかった。OSでの数値上の改善傾向はみられたものの、アテゾリズマブのルーチンな追加を支持する結果ではない」と結論付けている。なお、バイオマーカー探索のためのトランスレーショナル研究が予定されている。

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バージンオリーブオイルが脳に良い可能性とその理由

 バージンオリーブオイル(VOO)は、腸や脳に良い影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方、一般的により安価で販売されている精製オリーブオイルには、そのような効果が認められないという。ルビーラ・イ・ビルジーリ大学(スペイン)のJiaqi Ni氏らの研究によるもので、詳細は「Microbiome」に1月24日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「全てのオリーブオイルが認知機能に良い影響を与えるわけではない」と述べている。 Ni氏らは、55~75歳で過体重・肥満およびメタボリックシンドロームを有する656人(平均年齢65.0±4.9歳、女性47.9%)の食生活を調査して2年間追跡。ベースライン時と追跡調査時に神経心理学的検査を行い、ベースライン時の食事調査や便検体を用いた腸内細菌叢の検査結果との関連を検討した。食事調査の項目には、オリーブオイルのタイプ別摂取量も含まれていた。 解析の結果、VOOを習慣的に摂取していた人は、追跡期間中に認知機能の維持との関連や、腸内細菌叢の多様性の高さが認められたが、精製オリーブオイルを摂取していた人ではそのような変化は認められなかった。なお、腸内細菌叢の多様性の高さは、腸の健康状態および代謝が良好であることを示唆している。 研究チームでは、VOO摂取によるそれらの変化に、Adlercreutzia属という特定の腸内細菌が関係している可能性を見いだした。Adlercreutziaは、VOO摂取と認知機能の変化との関連を媒介している可能性が示唆された。つまりVOOの脳への有益な影響の一部は、腸内細菌叢を変化させることによるものであると考えられた。 では、なぜVOOは精製オリーブオイルよりも、好ましい影響を及ぼすのだろうか? それは両者の製造方法の違いにあると言える。VOOは、有益な成分を保持できるような機械的手法で製造される。一方、精製オリーブオイルは、不純物を取り除く、保存期間を延ばす、安定した風味を出すといった意図で加工が加えられる。それらの処理によって、オリーブオイルに含まれている、抗酸化物質、ポリフェノール、ビタミンなどの体に良い成分が減ってしまう。 論文の上席著者である同大学のJordi Salas-Salvadó氏は、「今回の研究は、摂取する脂質の『質』が『量』と同じくらい重要であるという考え方を裏付けるものだ。VOOは心臓を保護するだけでなく、加齢に伴う脳機能の低下を防ぐのにも役立つ」と総括。また、「これらの効果をもたらす腸内細菌を特定することが、認知機能を維持するための新たな栄養戦略を確立することにつながる可能性がある」と付け加えている。

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つなぐべきか、つながざるべきか、それが問題だ(解説:山地杏平氏)

 弁膜症の外科手術を行う際には、左主幹部病変であれば50%以上、その他の主要冠動脈であれば70%以上の狭窄を合併している場合、冠動脈バイパス術(CABG)を同時に施行することが推奨されます。また、中等度大動脈弁狭窄症など、本来であれば単独では手術適応とならない弁膜症であっても、CABGが必要な症例では同時手術が検討されることもあります。 開胸するのであれば、冠血行再建も同時に行うという考え方はリーズナブルだと思います。とくに内胸動脈グラフトや、近年良好な成績が報告されている静脈グラフトを用いることで、将来的な冠動脈イベントの抑制が期待されます。 一方で、せっかく作成したグラフトも長期的には閉塞することがあります。グラフトを冠動脈遠位部へ吻合すると、ネイティブ冠動脈近位部の病変が進行し、完全閉塞へ至ることも少なくありません。そのような状況でグラフトが閉塞すると、慢性完全閉塞病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要になったり、場合によってはグラフトそのものへの治療が必要になったりすることもあります。そのため、「どの病変にグラフトをつなぐべきか」という問題は、長期予後を考えるうえできわめて重要です。 このような背景の下、弁膜症手術時に冠動脈病変を認めた場合、冠動脈造影による解剖学的狭窄度に基づいてバイパスを行うべきか、それともangiography-derived fractional flow reserve(FFR)による生理学的評価に基づいてバイパスを行うべきかを検討したFAVOR IV-QVAS試験が、2026年にLancet誌に報告されました。 本試験では、angiography-derived FFRを用いた群において、作成されるグラフト数が減少し、人工心肺時間および大動脈遮断時間が短縮されました。さらに、30日以内の死亡、心筋梗塞、脳卒中、予定外血行再建、透析導入を含む主要複合エンドポイントは、FFR群で7.8%、冠動脈造影群で13.4%と有意に低下しました。 この結果はどちらかというと当たり前かとは感じます。CABGは周術期リスクを伴う一方で、遠隔期の冠動脈イベントを抑制することを目的とした治療です。そのため、短期成績のみを評価した場合には、介入を減らした群のほうが有利な結果を示す可能性があります。本試験の意義を正しく評価するためには、グラフト開存率や5年以上の遠隔期成績に関する今後の解析を待つ必要があります。 PCI領域ではFFRをはじめとする生理学的評価が広く普及しており、FAME試験やFAME 2試験をはじめとする多くの研究によって、解剖学的評価のみに基づく治療戦略よりも優れた臨床成績が示されてきました。現在の日本の保険診療においても、PCI施行前には何らかの虚血評価を行うことが求められています。しかし、重症三枝病変に対してCABGを行う際、「どの冠動脈にグラフトを吻合するべきか」という問題については、依然として議論の余地があります。たとえ病変がFFR陽性であっても、ネイティブ冠動脈の血流が比較的保たれている場合には、グラフト閉塞のリスクが高くなる可能性があります。実際、経験豊富な心臓外科医の中には、「FFR陽性であっても、この程度の狭窄であればグラフトは長期的に開存しにくい」と判断する場合があります。 PCIにおいては「その病変を治療すべきか」が主な論点であるのに対し、CABGでは「その病変にグラフトをつないだ際に長期的に機能するか」という別の視点が加わります。そのため、PCIの適応判断に有用であるFFRを、そのままCABGの吻合部位選択に応用できるかどうかについては、まだわかっていないように思います。FFRは虚血の有無を評価する指標としてきわめて優れていますが、グラフトの長期開存性を規定するのは、むしろ実際の血流需要かもしれません。その意味では、将来的にはFFRだけでなく、冠血流予備能(CFR)や冠血流量そのもの、さらには術中のエコーでのグラフト血流評価など、より「流量」に着目した指標の重要性が明らかになる可能性があるかもしれません。 FAVOR IV-QVAS試験の、長期予後やグラフト開存率に関する追加データ次第では、冠動脈バイパス術においても「狭窄があるからバイパスする」のではなく、「実際に虚血や血流障害を生じている血管のみを治療する」ということになるかもしれません。

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頭皮から脳内にウジ虫が侵入した1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第307回

頭皮から脳内にウジ虫が侵入した1例「異物論文専門医」として毎日PubMedを眺めていて気付いたことがあるのですが、最近、寄生虫が体内を移動した、虫が臓器内に入り込んだ、といった論文が増えています。もしかして、この類の論文はアクセプト率が高いのではないかと愚考しております。異物論文のタイトルの最初に「Fatal」がついていると、これは世にも恐ろしい論文なのだろうと思い、手を震わせながら読んでいます。Togni Filho PHA, et al. Fatal cerebral myiasis secondary to squamous cell carcinoma: case report and scoping review. Rev Inst Med Trop Sao Paulo. 2026;68:e10.「蠅蛆症(ようそしょう、ハエウジ症:myiasis)」をご存じでしょうか。これはハエの幼虫、つまりウジ虫が生きた人間の体に寄生してしまう疾患です。皮膚や創傷に湧く皮膚蝿蛆症が大半ですが、まれに眼・耳・鼻・消化管・泌尿器にまで侵入することがあります。おえっぷ……書いていて気持ち悪くなってきました。今回ご紹介するのは、その中でも世界的にきわめてまれな「脳蝿蛆症」の症例報告です。1939年の初報告以来、世界でわずか20例しか報告されていなかった病態で、今回ブラジルから報告された症例が世界21例目となります。ブラジルのカタンドゥヴァで報告された症例です。78歳男性、独居、既往は高血圧のみ。「食欲がない、吐く、熱が出た」と訴えて家族に連れられて救急外来を受診しました。ところが診察すると、頭皮の左前頭部に7×8cmの潰瘍があったのです。潰瘍底は壊死に陥っており、強烈な悪臭、膿汁が滲み、そ、そ、そ、そしてウジが大量にうごめいていました。いやあああああああ!!!!本人いわく「この傷、1年くらいかけてだんだん大きくなったんだよね」。1年放置していたわけです。いや、ウジが湧いてますよ!頭部CTを撮ってみると、ただの皮膚病変ではありません。前頭骨が溶けてなくなっており、頭蓋内に空気が入り込んでいました。気脳症というやつです。つまりウジは、皮膚から皮下、骨を貫通して、髄膜のすぐそばまで達していたのです。治療チームはまずピンセットでウジを1匹ずつ除去し、生理食塩水で洗浄、ヨードホルムガーゼで覆い、セフトリアキソンを開始しました。ところが第9病日、患者さんの意識レベルが低下。再びCTを撮ると、前頭葉と頭頂葉に脳炎と膿瘍形成を認めました。緊急で開頭デブリードマンを実施し、壊死組織を徹底的に除去。ここで提出した病理組織から、驚きの結果が返ってきます。「中分化型扁平上皮がんの骨浸潤、および急性骨髄炎」つまりこの1年放置されていた頭皮潰瘍は、ただの傷ではなく皮膚がんだったわけです。そして膿の培養からは多剤耐性緑膿菌が検出されました。抗菌薬を強化しましたが、患者さんは意識を取り戻すことなく緩和ケアに移行し、最終的に亡くなられました。今回は扁平上皮がんでしたが、放置された皮膚潰瘍が悪性腫瘍であったというのは、皮膚科・形成外科領域では珍しくありません。大量にウジが湧いているときは、先生方も今回の症例を思い出してください。

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6月5日 ロコモ予防の日【今日は何の日?】

【6月5日 ロコモ予防の日】〔由来〕「ロ(6)コ(5)モ」と「ろ(6)うご(5)」(老後)と読む語呂合わせから、ロコモティブ・シンドロームの認知度を高め、その予防に関する正しい理解を広めることを目的に「ロコモティブ・シンドローム予防推進委員会」が制定。関連コンテンツ医療・介護施設従事者のための転倒・転落事故へのアプローチこれから、ロコモ対策、何をやる(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)7つの“ロコモチェック”(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)初めて治療ゴールを示した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン」変形性膝関節症、膝装具の追加で患者報告アウトカムが改善/BMJ

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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統合失調症に対するブレクスピプラゾール2~4mgの有用性評価:メタ解析

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症治療薬として承認された新規ドーパミンD2パーシャルアゴニストであり、D2、5-HT1A、5-HT2A受容体への作用バランスを取ることで、有効性と忍容性を向上させた薬剤である。パキスタン・イスラマバード大学のSher Bano氏らは、ブレクスピプラゾール2~4mg/日の有効性と安全性に関する最新のエビデンスを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。PCN Reports誌2026年4月12日号の報告。 PubMed、ScienceDirect、Cochrane Libraryより、2011~25年に公表された研究を、特定のキーワードを用いて検索した。適格基準は、DSM-IV、DSM-IV-TR、DSM-5、ICD-10に基づいて統合失調症と診断された患者を対象に、介入としてブレクスピプラゾール2~4mgで治療を行った患者とした。主要有効性エンドポイントは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコアおよび臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアとした。また、治療関連有害事象も有効性評価に用いた。両群間でサブグループ解析を計画した。ランダム化比較試験(RCT)の質は、RoB2ツールを用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・検索により特定された464件の研究のうち、5件(2,182例)を適格と判断した。・ブレクスピプラゾール群では、PANSS総スコア(平均差[MD]:-5.76、95%信頼区間[CI]:-7.69~-3.83、p<0.00001)、陽性症状サブスコア、陰性症状サブスコア、CGI-Sスコアの有意な改善が認められた(MD:-1.35、95%CI:-1.87~-0.84、p<0.00001)。・治療中に発現した有害事象は、プラセボ群と同程度であり、ブレクスピプラゾール群では投与中止のリスクが低かった(リスク比:0.58、95%CI:0.43~0.77、p=0.0002)。・最も多くみられた錐体外路症状はアカシジアであった。 著者らは「ブレクスピプラゾール2~4mgによる統合失調症治療は、PANSSおよびCGI-Sスコアを有意に改善し、治療中止リスクの低下も認められた。これらの結果は、ブレクスピプラゾールが統合失調症の治療において有効かつ忍容性が高いことを裏付けている」としている。

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高尿酸血症リスク、1日6~28gの大豆食品摂取で低下

 大豆食品の摂取と高尿酸血症の発症との関連を評価した、大規模前向きコホート研究の結果、大豆食品の摂取は高尿酸血症リスクと非線形的かつ逆相関の関係にあることが示された。1日当たり6~28gの大豆食品摂取で最も顕著なリスク低減効果が観察された。中国・Minhang District Center for Disease Control and PreventionのXiaoli Xu氏らによるNutrients誌2026年4月24日号掲載の報告。 本研究では、上海市郊外成人コホート・バイオバンク(SSACB)のベースラインおよび追跡調査データを用いて、食事と高尿酸血症発症率(男性:血清尿酸値420μmol/L以上、女性:360μmol/L以上)を評価した。29の食品カテゴリーからなる食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて、過去12ヵ月間の食品摂取量を定量化した。大豆食品は、豆乳・豆腐とその関連製品(豆腐・乾燥豆腐・湯葉など)の2つのカテゴリーについて評価された。大豆食品の摂取量は、報告された各品目の摂取量に(1-水分含有量)を乗じて算出し、参加者を摂取量ごとに3分位に分類のうえ、最も摂取量の少ない第1三分位群(Q1)を対照とした。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定し、3つのノット(10、50、90パーセンタイル)を設けた制限付き3次スプライン(RCS)を用いて用量反応関係を視覚化した。 主な結果は以下のとおり。・4万3,371人の参加者において、22万5,002.40人年に1,456件の新たな高尿酸血症症例が記録された(発生密度:6.47/1,000人年、95%CI:6.14~6.80)。・発生密度は大豆食品摂取量の増加に伴って減少し、1日1g増加するごとにリスクが2%低下した(HR:0.98、95%CI:0.97~0.99、p<0.05)。・Q1と比較して、最も摂取量の多い第3三分位群(Q3)では、完全調整モデルにおいて26%のリスク低下が認められた(HR:0.74、95%CI:0.64~0.86、p<0.05)。・RCS解析では有意な非線形関係が示され(全体のp<0.001、非線形のp=0.0013)、6~28g/日の摂取で最も顕著なリスク低減効果が観察された。

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未治療MCLへのイブルチニブを含む1次治療±ASCT、長期解析結果(TRIANGLE)/Lancet

 18~65歳の未治療マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、標準的な免疫化学療法へイブルチニブを追加した治療に、自家造血幹細胞移植(ASCT)を追加する意義を検討した「TRIANGLE試験」の長期追跡評価(55ヵ月)の結果が、ドイツ・LMU University HospitalのMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkによって報告された。イブルチニブ追加療法群は治療成功生存期間(Failure Free Survival:FFS)のみならず全生存期間(OS)の改善との関連も示された。一方で、イブルチニブ追加療法+ASCT群ではASCT追加のベネフィットは示されず、毒性の増加が認められた。TRIANGLE試験の最初の評価報告(追跡期間中央値31ヵ月)では、標準的な1次免疫化学療法へのイブルチニブ追加はFFSを改善することが示されていたが、さらにASCTを追加すべきかどうかについては議論の余地が残っていた(ジャーナル四天王「未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet」)。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。ASCT+免疫化学療法群、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群、免疫化学療法+イブルチニブ群に無作為化 TRIANGLE試験は、MCLの治療経験がありASCTが実施可能または実施可能施設と連携する欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設(2次または3次医療センター)で実施された第III相の3群無作為化非盲検優越性試験。18~65歳、未治療の病期II~IV期でASCTの適応がある患者を、1対1対1の割合で対照群のA群(ASCT+免疫化学療法群)、試験群のA+I群(ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群)またはI群(免疫化学療法+イブルチニブ群)の3群に無作為に割り付け追跡評価した。無作為化は、コンピュータ生成乱数を用いて行われ、研究グループおよびMCL国際予後指数(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:MIPI)リスク分類で層別化された。 A群の治療は、R-CHOP(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1日目にシクロホスファミド750mg/m2、1日目にドキソルビシン50mg/m2、1日目にビンクリスチン1.4mg/m2[最大2mgまで]、1~5日目にprednisone 100mg経口投与)と、R-DHAPまたはR-DHAOx(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1~4日目にデキサメタゾン40mg静脈内または経口投与、2日目に高用量シタラビン2×2g/m2を12時間ごと3時間かけて静脈内投与、これらに加えて1日目に24時間かけてシスプラチン100mg/m2を静脈内投与[R-DHAP]または1日目にオキサリプラチン130mg/m2を静脈内投与[R-DHAOx])を21日間ごと交互に6サイクル行われ、その後にASCTを行った。 A+I群では、経口イブルチニブ(1日560mg)がR-CHOPサイクルの1~19日目(導入療法)に追加され、またASCT後に2年間投与された(維持療法)。 I群では、A+I群同様にイブルチニブが投与された(導入療法と維持療法)が、ASCTは行われなかった。 すべての治療群で国際ガイドラインに従い、リツキシマブ維持療法が許容された。 主要アウトカムはFFSで、3つのペアワイズ片側log-rank検定により統計学的にモニタリングされた。主要解析は、すべての無作為化された患者(プロトコール逸脱の有無は不問)を包含したITTにて行われた。安全性は無作為化され、いずれかの治療フェーズを開始した患者を対象に評価した。4年FFS率、イブルチニブ追加療法へのASCT上乗せ効果は示されず 2016年7月29日~2020年12月28日に870例が無作為化された(A群288例、A+I群292例、I群290例)。無作為化された患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:52~61)、男性が662例(76%)であり、病期IV期の患者が757/869例(87%)、MIPI低リスク504/870例(58%)、中程度236/870例(27%)であった。 追跡期間中央値54.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:54.4~56.0)後、A+I群のI群に対する優越性は示されなかった。4年FFS率はそれぞれ82%(95%CI:78~87)、81%(76~86)であった(ハザード比[HR]:0.86、片側98.33%CI:0.00~1.27、片側p=0.21)。 一方、A群の4年FFS率は70%(95%CI:65~76)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(HR:0.63、片側98.33%CI:0.00~0.89、片側p=0.0026)。また、初回評価時同様、A群のI群に対する優越性は認められなかった(HR:1.45、片側98.33%CI:0.00~2.02、片側p=0.99)。 4年OS率は、A+I群88%(95%CI:84~92)vs.A群81%(76~85)(HR:0.59、95%CI:0.38~0.92、p=0.0036)、I群90%(87~94)vs.A群81%(76~85)(HR:0.57、95%CI:0.36~0.90、p=0.0019)であり、両イブルチニブ追加療法群ともに、非追加群と有意な差が認められた。イブルチニブを含む導入・維持療法を新たな標準治療とすべき 維持療法または追跡期間中、最も多くみられたGrade3~5の有害事象は血液およびリンパ系障害で、A+I群で127/234例(54%)報告されたのに対して、I群では74/269例(28%)であり、またA群では56/240例(23%)であった。感染症の発現は、A+I群で80/234例(34%)報告されたのに対して、I群では71/269例(26%)、A群では37/240例(15%)であった。 維持療法または追跡期間中、最も多くみられた死亡に至った有害事象は感染症で、A+I群で4/234例(2%)、I群で5/269例(2%)報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「より若いMCL患者に対して、イブルチニブ+R-CHOP+R-DHAP(またはR-DHAOx)による導入療法後、2年間のイブルチニブ維持療法を新たな標準治療として検討すべきである」と述べている。

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開発中の塩基編集治療薬、単回投与でPCSK9およびLDL-Cを低下/NEJM

 LDLコレステロール(LDL-C)を管理する現行の治療モデルの限界を打ち破るために開発中のVERVE-102の第I相試験の結果が、米国・Verve Therapeutics(Eli Lillyの完全子会社)のScott B. Vafai氏らによって報告された。単回投与により、PCSK9およびLDL-C値が用量依存的に持続的かつ顕著に低下したことが示されたという。PCSK9機能喪失型変異を有する人は有さない人よりも、LDL-C値が低く、アテローム動脈硬化性心血管疾患を呈する人が少ないことが知られている。VERVE-102は、肝臓でのPCSK9産生を永続的に抑制するようデザインされた、体内で塩基編集を行う治療薬であり、アデニン塩基編集タンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)と、PCSK9を標的とするガイドRNA(gRNA)から構成され、これらがN-アセチルガラクトサミンを含む脂質ナノ粒子(LNP)に封入されている。NEJM誌オンライン版2026年5月25日号掲載の報告。35例に6用量のいずれかを投与した第I相試験 第I相試験は非盲検の単回投与漸増デザインにて行われた。  研究グループは、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症または早発性冠動脈疾患(PCAD)を有する成人患者に、6用量のVERVE-102(総RNA量の範囲:0.3~1.0mg/kg)のうち、いずれか1用量を静脈内投与した。  本試験の目的は、安全性の評価と血中PCSK9値およびLDL-C値の変化を評価することであった。  35例がVERVE-102の静脈内投与を受けた。内訳は、0.3mg/kgが4例、0.45mg/kgが6例、0.6mg/kgが4例、0.7mg/kgが8例、0.8mg/kgが6例、1.0mg/kgが7例であった。  本報告では、中間解析の結果が報告された。15例で少なくとも1年間、血中のPCSK9値、LDL-C値の低下を確認 平均年齢は52歳(範囲:27~66)、男性が24例(69%)、29例(83%)がヘテロ接合型家族性高コレステロール血症を有し、うち9例がPCADも有していた。PCADのみは6例(17%)。アジア人は6例(17%)で、黒人1例(3%)、白人30例(86%)(参加者自身による複数の人種の申告が可能)であった。ベースラインの平均LDL-C値は129mg/dL。32例(91%)がベースラインでスタチン治療を受けており、うち25例(71%)は強化スタチン療法を受けていた。 全被験者の追跡評価期間中央値は約9ヵ月で、2026年2月27日のデータカットオフ時点で、少なくとも28日間の追跡評価を受けていた(最終試験来院は投与後28日~18ヵ月)。 用量制限毒性は認められなかった。軽度~中等度の注入に伴う反応が7例(すべてGrade1または2で7例)、ALT値の一時的な上昇(正常範囲上限の2倍以上となるも8日目までに2倍未満に低下)が3例(0.7mg/kg群1例、1.0mg/kg群2例)に観察された。また、胃食道逆流症の被験者1例で誤嚥性肺炎が発生した。 血中PCSK9値の用量依存的な低下がみられ、平均低下率は、0.3mg/kg投与群で51%、1.0mg/kg投与群で88%であった。LDL-C値の平均低下率は、0.3mg/kg投与群の9%から1.0mg/kg投与群の62%にわたり、1.0mg/kg群では絶対値で78mg/dLの低下が認められた。  これらの低下は、被験者15例で少なくとも1年間にわたって持続的に認められた。

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小型NSCLC、複雑区域切除の治療成績は?(JCOG0802/WJOG4607L) /ASCO2026

 臨床病期IA期で最大腫瘍径2cm以下の肺野末梢小型非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性検証試験「JCOG0802/WJOG4607L試験」のpost-hoc解析の結果、複雑区域切除は単純区域切除と同様に、肺葉切除と比較して全生存期間(OS)改善傾向を示し、呼吸機能の低下も小さかった。一方、局所領域再発リスクは肺葉切除より高かった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、上垣内 篤氏(広島大学病院 呼吸器外科)が結果を報告した。 JCOG0802/WJOG4607L試験は、臨床病期IA期の肺野末梢小型NSCLC患者(最大腫瘍径2cm以下かつC/T比0.5超)を対象に、OSについて区域切除の肺葉切除に対する非劣性を検証することを目的として実施された。本試験において、区域切除の肺葉切除に対するOSの非劣性が検証されただけでなく、区域切除の優越性も示されたことが報告されている1)。ただし、区域切除のなかでも技術的難度が高い複雑区域切除が、単純区域切除と同様に肺葉切除と比較して、十分な治療効果を示すかは明らかになっていなかった。そこで、区域切除群のうち、両側S6区域、左上区域(S1-3)、舌区域(S4+5)の切除を単純区域切除、その他の区域切除を複雑区域切除と定義して患者を分類し、それぞれの集団を肺葉切除群と比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、肺葉切除群554例、複雑区域切除群318例、単純区域切除群234例であった。・手術時間中央値は、肺葉切除群174分、複雑区域切除群216.5分、単純区域切除群182分であり、複雑区域切除群が最も長かった。出血量中央値はそれぞれ44.5mL、55mL、40mLであった。切除断端距離中央値は、それぞれ4.0cm、2.2cm、2.5cmであり、複雑・単純区域切除群で短かった。・全体集団における5年OS率/10年OS率は、肺葉切除群91.1%/79.8%、複雑区域切除群93.7%/83.5%、単純区域切除群95.3%/83.5%であった。肺葉切除群に対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、複雑区域切除群0.869(0.642~1.176)、単純区域切除群0.858(0.609~1.208)であった。・術後1年時点の1秒量(FEV1)変化率中央値は、肺葉切除群-12.0%、複雑区域切除群-7.9%、単純区域切除群-9.0%であった。肺葉切除群と比較して、複雑区域切除群、単純区域切除群のいずれもFEV1低下が有意に小さかった(それぞれp<0.0001、p=0.0006)。・術後1年時点の努力肺活量(FVC)変化率中央値は、肺葉切除群-10.7%、複雑区域切除群-7.3%、単純区域切除群-7.4%であった。FVCについても、複雑区域切除群、単純区域切除群のいずれも肺葉切除群より低下が有意に小さかった(それぞれp<0.0001、p=0.0001)。・無再発生存期間(RFS)について、5年RFS率/10年RFS率は、肺葉切除群87.9%/78.0%、複雑区域切除群87.4%/76.8%、単純区域切除群88.8%/76.7%であった。肺葉切除群に対するHR(95%CI)は、複雑区域切除群1.034(0.782~1.365)、単純区域切除群1.073(0.790~1.458)であった。・局所領域再発の5年累積発生率/10年累積発生率は、肺葉切除群4.7%/5.7%、複雑区域切除群8.2%/12.3%、単純区域切除群6.9%/10.1%であった。複雑区域切除群(HR:2.124、95%CI:1.327~3.399)、単純区域切除群(同:1.817、1.071~3.083)は肺葉切除群より局所領域再発リスクが高かった。 本解析について、上垣内氏は「肺野末梢小型NSCLCにおいて、複雑区域切除は単純区域切除と同様に、肺葉切除と比較してOSを改善する傾向が示された。複雑区域切除および単純区域切除は、いずれも肺葉切除と比較して呼吸機能の温存に寄与した。一方、局所領域再発リスクが高いことから、複雑区域切除を行う際には、十分な切除マージンを確保するよう細心の注意を払うべきである」とまとめた。

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未治療尿路上皮がんへのEV+ペムブロリズマブ、3.5年の長期解析結果(EV-302/KEYNOTE-A39)/ASCO2026

 EV-302/KEYNOTE-A39試験の結果に基づき、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法は、未治療の局所進行または転移を有する尿路上皮がんに対する標準治療となっている。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で、3.5年時点における同試験のフォローアップ解析結果を発表した。・対象:未治療の局所進行/転移を有する尿路上皮がん患者(GFR≧30mL/分、ECOG PS≦2)・試験群:EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと1日目に静脈内投与) 442例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン(シスプラチン不適格例ではゲムシタビン+カルボプラチン) 444例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・層別因子:シスプラチン適格性、PD-L1発現状況、肝転移の有無 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値42.8ヵ月(データカットオフ:2025年10月6日)時点におけるOS中央値は、試験群33.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~39.8ヵ月)vs.対照群15.9ヵ月(95%CI:13.6~18.3ヵ月)と試験群におけるOSベネフィットが維持されていた(層別ハザード比:0.53、95%CI:0.45~0.63)。・試験群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は39.1%、最も多かったのはプラチナベース化学療法で30.5%を占めた(カルボプラチンベース:16.5%、シスプラチンベース:13.8%)。プラチナベース化学療法開始からのOS中央値は10.9ヵ月、ORRは20.7%であった。・対照群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は68.5%、最も多かったのはPD-(L)1阻害薬で59.7%を占めた(アベルマブ維持療法が30.4%)。・ORRも引き続き試験群で良好であり(試験群67.5%vs.対照群44.2%)、完全奏効(CR)は30.4%vs.14.5%と約2倍の差がみられた。・試験群でCRを達成した133例のうち、45例(試験群全体の10.3%)は初回治療でCRを達成し、88例(同20.1%)は初回治療で部分寛解(PR)達成後、CRに移行した。・試験群におけるCR達成例のベースライン特性をみると、とくに初回治療でのCR達成例は内臓転移が35.6%と少なく(試験群全体:71.9%)、リンパ節転移のみの症例が51.1%と多い傾向がみられた(同:23.3%)。・CR達成例の3.5年OS率は、全体では82.4%、PRからCRへの移行例では83.6%と同等であった。・EVの治療期間中央値は7.1ヵ月で、60.0%が投与中断、43.0%が減量を実施していた。ペムブロリズマブの治療期間中央値は8.5ヵ月であった。・治療期間の延長に伴う、新たな安全性シグナルは認められなかった。累積増加率が最も高かったのは末梢性感覚ニューロパチーで、2年超EV治療を受けた症例の約90%で認められたが、Grade3以上は依然としてまれであった。 Powles氏は、「追跡期間中央値3.5年経過時点において、EV+ペムブロリズマブ併用療法は化学療法と比較して引き続き優れた有効性を示しており、新たな安全性のシグナルは認められなかった」としたうえで、「CR達成例の3分の2はPRから移行しており、アウトカムを最大化するために治療期間が重要であることが示唆された」とまとめている。

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大腸がん術後患者の運動プログラム、費用対効果検証でも有益(CHALLENGE)/ASCO2026

 2025年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたCHALLENGE試験は、大腸がん術後患者に対する構造化運動プログラムが生存期間を延長することを示し、NEJM誌に同時掲載されるなど大きな注目を集めた。 CHALLENGE試験では、StageIIIまたは高リスクStageIIの大腸腺がんで切除術を受け、術後補助化学療法を完了した患者を対象に、標準的な経過観察と健康教育資料の提供のみを受ける群、健康教育資料+3年間の構造化運動プログラム(structured exercise program:SEP)を受ける運動群に1対1の割合で割り付けた。主要評価項目である無病生存期間(DFS)は運動群で有意に改善(ハザード比[HR]:0.72)し、全生存期間(OS)も有意に改善(HR:0.63)した。この結果を受け、SEPはNCCNおよびESMOガイドラインに採用された。 今年の米国臨床腫瘍学会(2026 ASCO Annual Meeting)では、本試験の費用対効果解析の結果が報告された。Odette Cancer Centre (カナダ・トロント)のKelvin K. Chan氏による発表において、3年間のSEPは、生存期間を延長するだけでなく医療費削減にもつながり、高い費用対効果を示すことが報告された。今回の解析結果はJournal of Clinical Oncology誌に同時掲載された。 今回の費用対効果解析は、試験開始前から計画されていた副次解析であり、試験参加者全員 (n=889) から前向きに収集されたデータを使用して実施された。カナダの公的医療保険制度の視点から、運動プログラムと対照群を比較し、増分費用、質調整生存年(QALY)、増分費用効用比(ICER)を算出した。主な費用にはSEPの実施費用、再発または新規原発がんの管理費用、薬剤費、入院費が含まれた。不確実性はブートストラップ解析(1,000サンプル)によって評価した。 主な結果は以下のとおり。・3年間のSEP導入に伴う費用は、患者1人当たり2,917カナダドル(約33.5万円、1カナダドル=115円換算)であった。しかし、再発や新規がんに対する治療費および薬剤費の減少によって相殺され、SEP群の総医療費は3万1,957ドル(約367万円)で、対照群よりも1,589ドル(約18万円)低かった。さらにSEP群は生命年(LY)が0.05年、QALYが0.10増加した。すなわちSEPは費用を削減しながら治療効果を高める「dominant strategy(優越戦略)」と評価された。・ブートストラップ解析では、SEPは53%の反復で「費用を削減しながら効果を高める」優越戦略と判定された。また、1QALY当たり5万ドルを費用対効果の閾値とした場合、80%で費用対効果が認められた。・10年間の長期シナリオ解析では、SEP群のコスト削減額は3,938ドル(約45万円)に拡大した。・労働生産性損失を加味した社会的視点からの解析でも、増分費用効用比(ICUR)は1QALY当たり4,405ドル(約51万円)ときわめて良好な値を示した。 発表後のディスカッションにおいて、Alan P. Venook氏(米国・カリフォルニア大学)は、本試験の臨床的意義を強調した。同氏は、CHALLENGE試験が大きな反響を呼んだ背景には、薬剤ではなく運動介入によって生存利益を示した点にあるとし、SEPによる8年OS改善率7.1%は、FOLFOXによる術後補助化学療法を確立したMOSAIC試験における長期OS改善率8.1%に匹敵すると指摘した。また、「患者は診察室で必ず『自分にできることはあるか』と尋ねる。運動はその問いに対するエビデンスに基づいた回答である」とも述べた。 今回の費用対効果解析により、CHALLENGE試験が示した生存利益に加え、運動介入が医療システムにとっても合理的な投資であることが裏付けられた。多くの新規抗がん薬が高額な医療費を伴うなか、SEPは生存延長と医療費削減を同時に実現し得る介入となる。今後は日本においても、運動療法をどのように日常診療へ実装するか、また保険償還の枠組みをどう整備するかが課題となりそうだ。

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免疫療法の適応とならない転移TN乳がん1次治療のSG、PFS2と後治療までの期間(ASCENT-03)/ASCO2026

 ASCENT-03試験において、PD-(L)1阻害薬の適応とならない転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)が化学療法より無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。今回、PFS2と後治療までの期間を解析した結果、クロスオーバー率が高いにもかかわらずPFS2がSGで長く、最初と2番目の後治療までの期間がどちらもSG群で長かったことがわかった。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:PD-(L)1阻害薬投与対象外で未治療の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1、8日目に10mg/kg点滴静注)279例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)279例、病勢進行後クロスオーバーおよび任意の2次治療可・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間、BICRによる奏効率・奏効期間、安全性、QOL[探索的評価項目]PFS2、最初の後治療までの期間(TFST)、2番目の後治療までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年4月2日)時点で追跡期間中央値は13.2ヵ月であり、SG群では27%、化学療法群では14%が試験治療を継続していた。・PFS2中央値はSG群が18.2ヵ月と化学療法群の14.0ヵ月より長かった(層別HR:0.70、95%CI:0.55~0.90)。・SG群で1次治療を中止した204例のうち2次治療を受けたのは126例で、プラチナ製剤(34%)、タキサン(25%)、アントラサイクリン(11%)、トラスツズマブ デルクステカン(10%)が多かった。化学療法群で1次治療を中止した240例のうち2次治療を受けたのは179例で、主にSG(79%)であった。・TFST中央値はSG群11.2ヵ月、化学療法群7.9ヵ月であり、層別HRは0.61(95%CI:0.50~0.75)、TSST中央値はSG群17.3ヵ月、化学療法群16.6ヵ月であり、層別HRは0.82(95%CI:0.64~1.05)であった。 Tolaney氏は、「これらの結果は、PD-(L)1阻害薬の適応とならない転移TNBC患者の1次治療としてSGの投与をさらに支持するものである」と結んだ。

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FAST試験:迅速抗菌薬感受性試験は菌血症患者の予後を改善するのか(解説:小金丸 博氏)

 グラム陰性菌菌血症に対する迅速抗菌薬感受性試験(迅速AST)の臨床的有用性を検証したランダム化比較試験がJAMA誌オンライン版2026年4月18日号に報告された。本研究の目的は、血液培養陽性後に迅速な表現型感受性試験を導入することで、患者予後が改善するかを明らかにする点にあった。 従来の感受性試験では、菌の同定から感受性結果の判明まで通常1~2日を要する。一方、本研究で用いられた迅速ASTは、陽性血液培養ボトルから直接感受性を測定することで、より早期に抗菌薬選択を最適化することが期待できる。研究は薬剤耐性菌頻度の高いギリシャ、インド、イスラエル、スペインの7施設で実施された。約900例が登録され、迅速AST群と標準AST群に割り付けられた。 主要評価項目にはDOOR(Desirability of Outcome Ranking)が採用された。これは死亡のみではなく、有害事象、再入院、治療失敗、多剤耐性菌獲得などを統合的に評価する新しいアウトカム指標であり、より患者中心の解釈が可能となる。 結果として、迅速AST群は抗菌薬調整までの時間を有意に早めた。とくにカルバペネム耐性菌感染症では、有効抗菌薬投与開始までの時間が大幅に短縮された。しかし、30日死亡率、入院期間、DOORなどの主要臨床アウトカムには統計学的有意差が認められなかった。すなわち、「診断速度の向上」が必ずしも「患者予後の改善」には直結しなかったのである。 本研究の価値は、迅速診断に対する期待に対し、ランダム化比較試験という高いエビデンスレベルの方法で現実的な解答を示した点にある。これまで同分野は、観察研究やbefore-after studyが中心であり、本研究は数少ないランダム化比較試験として重要性が高い。また、薬剤耐性を遺伝子検査ではなく表現型ASTを評価した点も特徴の1つである。遺伝子検査は既知の耐性遺伝子しか検出できない一方、表現型ASTは実際の菌の増殖抑制を評価するため、未知の耐性機序にも対応可能である。 さらに本研究は「迅速診断」のみでは限界があることを示唆した。感染症診療では、source control、集中治療、宿主因子、抗菌薬適正使用支援など多くの要素が転帰に影響する。そのため迅速ASTの価値は、全例への一律導入ではなく、薬剤耐性菌高リスク患者への選択的適用や抗菌薬適正使用支援との統合にあると考えられる。本研究は、感染症診断技術の有効性を実践的に評価した意義のある論文であると考える。

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怒れる患者!【Dr. 中島の 新・徒然草】(634)

六百三十四の段 怒れる患者!暑くなったり涼しくなったり。はたまた季節外れの台風がやって来たり。不安定な状態が続きます。こういうのを季節の変わり目というのでしょうか。雨が降ると頭の痛い患者さんが増えるのも、脳外科外来ならではですね。さて先日のこと。外来にお見えになったのは80歳の女性。息子さんと一緒に、大量の画像データや書類を持って受診されました。主訴はよくあるもの。今かかっている医療機関が気に入らないので変わりたいとのこと。何事も話を聞かないと始まりません。で、この方の何年にもわたる闘病絵巻を聞くことになりました。後で確認したところ、この患者さんだけで1時間もかかっていました。この方の紆余曲折の物語を簡単に述べましょう。ひょんなことから脳腫瘍が発覚したのだそうです。でも場所が難しいためか、いろいろな医療機関に手術を断られたとのこと。確かに持参された画像を見ると、手術の難しそうな所に腫瘍があります。これでは断られるのも無理はないな、と思わされました。が、ついに某病院の先生が手術してくれることになったのです。手術自体は無事に終わったのですが、そこからが問題なのだとか。 患者 「手術した○○先生が、1回も私の病室に来なかったんです」 息子 「もう信じられないですよ!」 親子で興奮しておられます。確かに手術だけして、後を誰も診ていなかったら大問題です。なので確認しました。 中島 「たいていの場合、術者のほかに若い先生が受け持ちとして付いていると思うのですが」 患者 「ああ、若い先生は毎日のように来てくれました」 息子 「でも○○先生はまったく来なかったんですよ」 うーん。ありがちな話ですね。なので私は自分の意見を述べることにしました。 中島 「私の考えを言ってもいいですか?」 親子 「ぜひお願いします」 中島 「確かに○○先生が病室にこまめに顔を出すほうがいいとは思いますが」 患者 「やっぱり中島先生もそう思いますよね。○○先生は一度も来なかったんですよ」 中島 「うまくいった手術ってのはそんなもんですよ」 患者 「何ですって!」 中島 「いやほんとの話、術後はあまりやることがないんですよね」 術後に予想外のことがあったら「大丈夫かなあ」と何度も病室に顔を出すのは当たり前。でも、順調な時はとくに顔を出す必要もありません。もちろん受け持ち医は点滴や検査の指示で忙しいわけですが。さらに付け加えました。 中島 「だいたい手術名人なんて偏屈ばかりですよ」 親子 「はあ?」 中島 「皆さん職人ですからね、もはや人間国宝です」 親子 「人間……国宝?」 中島 「中にはフレンドリーな人もいるかもしれませんが」 親子はびっくりしています。 中島 「それとも、人当たりさえ良かったら手術は失敗でもいいとか?」 親子 「そんなことありません」 中島 「そもそも、ゴルゴ13に愛想を期待したりしないでしょう」 持参された画像を見ると、過不足のない手術がされています。一番難しいところは、あえて残しているものの、腫瘍は亜全摘されていました。 中島 「私が見る限り、すごくうまい手術です。それ以上の何を求めるんですか?」 親子 「……」 それにしても「ゴルゴ13に愛想を期待するな」というのは、われながら名言でした。 中島 「摘出の難しい所はわざと残しておられるので、今後もフォローは必要ですね」 患者 「それ、中島先生にお願いできませんか?」 中島 「してもいいけど、今の先生との縁も切れないようにしてください」 患者 「そのほうがいいですか?」 中島 「もちろん! 再発した時には○○先生に手術してもらうのがベストです」 結局、先方で画像診断するたびに、私のほうでも後日チェックするということで話がつきました。そうすると私の役割は、毎回「○○先生こそが名医です。愛想なんか要りません」と強調することなのでしょうか。この方の心の安寧が得られるのなら、それも悪くないのかもしれません。それにしても、何で患者さんというのは勝手に誤解して勝手に怒るのでしょうかね。ということで最後に1句 梅雨時の 怒れる患者 なだめたり

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】クレナフィン爪外用液10% 7.12gの査定【斬らレセプト シーズン3】不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?【スーパー服薬指導(1)】「デルマクイック爪白癬」は技術や検査時間も不問で誤診も防ぐ

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第64回 気候変動と感染症 ― 私たちが備えるべき新しいリアル

気候変動が地球規模で進むなか、感染症の流行パターンが確実に変わりつつあります。今回ご紹介するNature Medicine誌の論文は、気候変動が感染症に与える影響を、蚊やダニが媒介する「ベクター媒介性」、インフルエンザやRSウイルスなどの「直接伝播性(呼吸器感染症)」、コレラのような「環境媒介性」という3つの病原体グループを軸に整理した最新の総説です1)。本稿では、論文の要点をご紹介したうえで、私たち日本の医療者にとって何を意味するのかを一緒に考えてみたいと思います。なぜ気候は感染症を動かすのか気候変動が感染症に影響を与える経路は、病原体ごとに少しずつ異なります。蚊やダニといったベクターを介する病気では、気温や湿度がベクターの寿命、繁殖、媒介効率を直接左右します。たとえばデングを媒介するネッタイシマカは、気温の上昇に伴い発育速度や吸血頻度が高まります。過去の研究では、温暖化がすでに南北アメリカ・アジアのデング流行を拡大させており、2050年までにデング発生がさらに49~76%増加する可能性が示されています。一方、インフルエンザやRSウイルスのような呼吸器感染症では、湿度と温度がウイルスの生存性、気道粘膜のバリア機能、さらには宿主の免疫応答までを変化させると考えられています。また、コレラなど水系の感染症では、豪雨や洪水が井戸を汚染し、逆に干ばつ時には限られた水源に病原体が濃縮されることで、いずれの極端な気象でも流行リスクを高めうると考えられています。さらに重要なのは、これらの関係が直線的ではなく、ある閾値を超えると急に変化する「非線形」なものであるという点です。「異常気象」がトリガーになる時代近年とくに注目されているのが、気候の平均値の変化だけでなく、極端な気象による急性の影響です。論文では、2022年のパキスタン大洪水後にマラリア症例が前年比4倍に急増したこと、2024年には全世界のデング報告例がエルニーニョと温暖化の相乗効果により1,400万例を超えた(前年は700万例)ことなどが具体例として示されています。気候変動は、長期的な気温上昇だけでなく、突発的なショックを通じて感染症の地図を書き換えているのです。もう一つ見落とせない論点が、人口動態との相関です。世界的に進む高齢化により、コロナウイルスなど高齢者で重症化しやすい感染症の負担は今後さらに大きくなる可能性がある一方、小児が罹る感染症の社会的負担は相対的に縮小する地域もあります。気候変動の影響は決して一律ではなく、地域・病原体・人口構成によって増えたり減ったりする、不均一な現象だ、という著者らの指摘は、政策設計のうえで非常に重要だと感じます。日本にとっての示唆それでは、日本にとってこの研究は何を意味するのでしょうか。日本ではすでにヒトスジシマカが広く生息し、2014年には代々木公園を起点とする国内デング流行を経験しています。記録的猛暑、線状降水帯、巨大台風が常態化するなか、海外からウイルスが持ち込まれれば、これまでとは異なる規模や時期の流行が起こりうるシナリオは、決して絵空事ではありません。世界に先んじて進む高齢化は、呼吸器感染症の重症化負担をさらに重くする可能性もあります。著者らは、廃水サーベイランス、機械学習を用いた早期警戒システム、気候情報を組み込んだ予防的介入(ワクチン展開など)の重要性を訴えています。日本でも、気象データを公衆衛生対策と接続する仕組みづくり、そして急変する状況に対応できる柔軟な医療体制の確保が、これからの大切な課題と言えそうです。「予想外を予想せよ(expect the unexpected)」という著者らの言葉は、私たち日本の医療者にこそ深く響くメッセージではないでしょうか。 1) Baker RE, et al. Climate change and infectious diseases. Nature Medicine. 2026;32:1634-1645.

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1晩2回以上の夜間頻尿、日本人男性40歳以上の3割~2023年全国調査

 夜間に2回以上の排尿はQOLの低下や死亡リスクの増加と関連することが報告されている。今回、山梨大学の吉良 聡氏らが2023年日本における大規模疫学調査(Japan Community Health Survey:JaCS 2023)の参加者において調査した結果、1晩に2回以上と定義される夜間頻尿の有病率は加齢により増加し、男女共に年齢、パフォーマンスステータス(PS)1以上、不眠、高血圧が夜間頻尿と有意に関連していた。International Journal of Urology誌2026年5月号に掲載。 本研究は、下部尿路症状と日常生活に関する48項目の質問票から成る全国規模のオンライン調査であるJaCS 2023のデータを用い、20~99歳の参加者6,210人を対象に評価を行った。夜間頻尿の定義に基づき、参加者を「夜間頻尿群」と「非夜間頻尿群」に分類した。夜間頻尿の有病率を調査し、多変量ロジスティック回帰分析を用いて夜間頻尿に関連する要因を男女別に検討した。さらに60歳未満および60歳以上の参加者についてサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・夜間頻尿の有病率は、男性で27.1%(40歳以上:31.4%、60歳以上:39.8%、80歳以上:58.1%)、女性では17.8%(40歳以上:19.9%、60歳以上:24.7%、80歳以上:38.2%)で、加齢により増加した(傾向のp<0.0001)。・男性では年齢、PS1以上、高血圧、うつ病/不安障害、不眠症、前立腺肥大症、便失禁、週1回以上の飲酒、勃起不全(ED)、女性では年齢、PS1以上、歩行速度の低下、高血圧、不眠症が、夜間頻尿と独立して関連していた。・サブグループ解析では、男性におけるED、女性におけるPS1以上が有意な因子であることが示された。

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