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治療選択肢で異なるQOLが治療転帰の満足度に影響:前立腺

前立腺患者の初回治療の転帰に対する満足度は、治療後の健康関連QOLの変化にかかっており、患者だけでなく配偶者やパートナーの治療転帰への満足度にも影響することを、アメリカ・ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの Martin G. Sanda氏らがNEJM誌2008年3月20日号に報告した。術前術後に患者1,201例と配偶者ら625例を調査対象は複数の医療機関から集められた患者1,201例(前立腺に対する根治治療:前立腺切除術、密封小線源療法、外部放射線療法いずれかを受療)と、配偶者・パートナー625例。治療を受ける前と後に報告された転帰を前向きに測定することで、QOL変化に関係する要因を評価し、その要因が治療転帰に対する満足度にどうかかわっているかが判定された。神経温存術で性機能への副作用を緩和密封小線源療法もしくは放射線療法を受けた患者にとって、術後補助ホルモン療法は、複数のQOL領域で、より不良な転帰を伴った。密封小線源療法を受けた患者からは、持続的な排尿刺激と腸機能、性機能症状に加えて、活力やホルモン機能に一時的な障害があると報告。前立腺切除術による性機能への副作用は、神経温存術によって緩和されたこと、前立腺切除術の後で尿失禁が認められたが、前立腺が特に大きい患者では頻尿と尿閉が改善したことも報告されている。処置の関連死は発生しておらず、深刻な有害事象はまれだったが、処置関連の症状が、肥満、前立腺肥大、前立腺特異抗原(PSA)スコア上昇、高齢なほど増悪していた。満足度に関して、黒人患者では全体的な治療転帰の度合に比して低く、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度は、QOL変化と有意な関係がみられた。Sanda氏らは、「それぞれの前立腺治療は、尿機能や腸機能、性機能、ホルモン機能に関係するQOL領域で異なる変化パターンを伴い、その変化は、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度に影響を及ぼしている」とまとめた。(武藤まき:医療ライター)

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遺伝子LRP5異型が骨密度減少と骨折リスク増大に関連

 低密度リポ蛋白質受容体である遺伝子LRP5の突然変異は、骨密度(BMD)の変化に基づく希有な症候群を引き起こすことが知られている。オランダ・エラスムス大学医療センターのJoyce B. J. van Meurs氏らGENOMOS Studyグループは大規模な研究を行い、LRP5異型が骨密度減少と骨折リスク増大に関わることで、骨粗鬆症に関与していることを見いだしたと報告。JAMA誌 2008年3月19日号より。欧米の37,534例について腰椎、大腿骨頸部骨密度と骨折を検証研究は、LRP5遺伝子のうち一般的な異型であるMet 667とVal1330の2種と、類似するLRP6の異型Ile1062Valが、骨密度と骨折リスクに関係するのか、大規模なエビデンスを得るために、ヨーロッパと北アメリカの18研究機関が協力し合計37,534人分のデータを提供する、前向きの多施設共同研究として行われた。データは2004年9月~2007年1月にかけて収集され、2007年2月~5月にかけて分析された。骨密度は二重エネルギーX線吸光光度定量法で評価され、骨折はアンケート、診療記録またはX線撮影の書証で確認された。骨折データは別に利用するため、脊椎骨折のための放射線検査を含む通常の調査方法で確認された。主要評価項目は、腰椎と大腿骨頸部の骨密度およびすべての骨折と脊椎骨折の有病率とした。LRP5の一般的な異型2種とも独立してBMDに影響腰椎BMD減少との関連が認められたのは、Met667群(n=25,052、Met667当たりBMD 20-mg/cm2減少;P=3.3×10の-8乗)、Val1330群(n=24,812、Val1330当たりBMD 14-mg/cm2減少;P=2.6×10の-9乗)。大腿骨頸部BMDについても同様に関連がみられ、Met667(n=25,193、同11mg/cm2減少;P=3.8×10の-5乗)、Val1330(n=25,193、同8mg/cm2減少;P=5.0×10の-6乗)だった。脊椎骨折が認められたのは、Met667群では20,488例中2,001例(オッズ比:1.26、95%信頼区間:1.08~1.47)、Val1330では20,096例中1,988例(同1.12、1.01~1.24)だった。すべての骨折リスクは、Met667群、Val1330群とも増大していた。前者は31,435例中7,876例骨折(同1.14、対立遺伝子当たり95%信頼区間:1.05~1.24)、後者は31,199例中7,802例骨折(同1.06、1.01~1.12)。ハプロタイプ分析によって、Met667とVal1330異型が両方とも独立してBMDに影響を及ぼすことが確認された。年齢、体重、身長、閉経期状態およびホルモン療法の有無で補正しても変わりはない。他方、LRP6異型のIle1062Valは、どのような骨粗鬆症の現象とも関係していなかった。Meurs氏らは「LRP5は、骨粗鬆症に関わる現象について、初めて遺伝子レベルの有意性を示したケースかもしれない。まだ一個の遺伝標識が、あるリスク現象の一部を説明したにすぎないが、骨粗鬆症のリスク変化をいくつか確認できれば、臨床予測を改善し、新薬開発に寄与する可能性もある」と強調している。(朝田哲明:医療ライター)

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深部静脈血栓症発症に関与するSNPを同定

 深部静脈血栓症(DVT)の遺伝的素因を突き止めようと、ライデン大学医療センター(オランダ)臨床疫学部門Irene D. Bezemer氏らは、DVTと関連する一塩基多型(SNP)の同定を試みた。SNPは、DNAの4種類の塩基の並び方が人により部分的に異なっているもので、遺伝子の個人差を示すものとして疾病発症との関わり等の研究に応用されている。JAMA誌2008年3月19日号にて掲載。19,682人分の遺伝子からDVTに強く関連する3つのSNPを同定 Bezemer氏らはSNP同定のため3つの患者対照試験、すなわちLETS(1988~1992年:Leiden Thrombophilia Study)とMEGA-1、MEGA-2(MEGAスタディを分割:1999~2004年:Multiple Environmental and Genetic Assessment of Risk Factors for Venous Thrombosis)を用いた。 まず計19,682人が参加したLETSを検討し、DVTと関連する1,206のSNPを同定。それら1,206のSNPをMEGA-1で検討(患者群1,398例と対照群1,757例)し、LETSとMEGA-1に共通する危険対立遺伝子として18のSNPを同定した。さらにそれらをMEGA-2で検討(患者群1,314例と対照群2,877例)し、9つのSNPを同定。そのうち3つのSNPにDVTとの強い関連が見いだされた[P

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クレーマーに仮処分、患者の妨害行為を禁じる

埼玉県春日部市立病院に入院中の患者家族が医師や看護師などに対して威嚇行為や誹謗中傷を繰り返したとして、同市が医療妨害禁止を求めていた仮処分申請に対して、さいたま地裁越谷支部がこの申請を認めたことがわかった。同市によると、仮処分を受けたのは90歳代の入院患者の息子夫婦。大声で医療スタッフを威嚇したり、「虐待だ」など虚偽の誹謗中傷を繰り返して医療行為を妨害していたという。こうした医療行為に対する妨害に禁止の仮処分が出たのは珍しい。

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アトルバスタチンとピタバスタチンに、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用が確認される(日本循環器学会)

3月28日、注目を集めていたJAPAN-ACSの結果が、木村剛氏(京都大学循環器内科学)により日本循環器学会総会・学術集会Late Breakingにおいて、発表された。JAPAN-ACSは、急性冠症候群(ACS)307例を対象にアトルバスタチン20mg(154例)、または、ピタバスタチン4mg群(153例)に無作為割付し、8~12ヵ月間の投与後、プラーク容積の変化を比較検討した試験である。これまでにも、ストロングスタチンによる積極的な脂質低下療法が、冠動脈疾患既往例の心血管イベントを抑制することや、プラークを退縮させることは発表されていた。そして、アトルバスタチンでは、ESTABLISH試験により、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用も既に確認されている。しかし、その規模が少人数を対象とした試験で、一施設のデータであったことなどから、医師主導の大規模な多施設試験が行われた。JAPAN-ACSでは、8~12ヵ月の投与後いずれの脂質プロファイルにおいても、ピタバスタチン群とアトルバスタチン群で有意な差は認められなかった。一次エンドポイントであるプラーク容積は、ピタバスタチン群で、-16.9(±13.9)、アトルバスタチン群で、-18.1(±14.2)と、両群ともに、プラーク退縮が認められた。また、ピタバスタチンのアトルバスタチンに対する非劣性が認められた。さらに、安全性の面でも、両群間に有意差が認められなかった。JAPAN-ACSで、新たに興味深いデータとなったのは、LDL-Cの減少率と、プラーク退縮の間に相関関係が認められなかった点である。この点に注目し、多変量解析した結果、糖尿病の有無、ベースラインのプラーク容積、ベースラインのRLP-C(レムナント様タンパク)値に相関が認められた。特に、糖尿病例では、非糖尿病例に比べプラーク退縮率が約65%と低かった。今後、JAPAN-ACSの詳細なデータ解析が実施され、様々な報告が行われる予定である。(ケアネット 鈴木 渉)

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ネクサバール、レバチオ、リコモジュリン、新引き上げルール適用

3月26日、中医協の総会は、14成分21品目の薬価収載(4月18日予定)を決定した。08年度改定に伴う新算定ルールの初の対象となる。革新性などを評価するためのルール見直しにより、原価計算方式で算定された8成分のうち、薬剤に革新性がある場合に原価に含まれる営業利益率に上乗せする新ルールが、汎発性血管内血液凝固症(DIC)治療薬「リコモジュリン」、肺動脈性肺高血圧症用薬「レバチオ」、腎細胞がん治療薬「ネクサバール」の3成分に適用された。

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高インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」や「アクテムラ」関節リウマチの効能追加などを承認

3月25日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会は高インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」などの新薬11成分を承認した。高インスリン血性低血糖症治療薬「アログリセムカプセル」のほか、2番目の腎細胞の複数分子標的薬となる「スーテントカプセル」、世界で初めて関節リウマチを効能追加した抗体医薬「アクテムラ」、ムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム」などがある。4月中に承認。なお、「ナグラザイム」は4月中にも緊急薬価収載される。

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禁煙成功率が2倍以上に、喫煙者に対する「肺年齢」の告知

喫煙者にスパイロメトリー検査に基づく「肺年齢」を伝えると、禁煙率が有意に改善されることが、英国Limes Surgery(ハートフォードシャー州ホデスドン)の一般医(GP)Gary Parkes氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。喫煙者の1/4が罹患するとされる慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界的な死因の第4位を占める。英国には150万人のCOPD患者がいると推計されるが、その半数は診断されておらず、発症から診断までの期間は平均20年に及ぶという。BMJ誌2008年3月15日号(オンライン版2008年3月6日号)掲載の報告。肺年齢を告知する群とFEV1の数値を伝える群を比較研究グループは、禁煙の動機付けとして患者にスパイロメトリー検査で推計された肺年齢を告知し、その有効性を評価するための無作為化対照比較試験を行った。肺年齢とは、被験者のスパイロメトリー検査による1秒量(FEV1)と同等の肺機能を示す標準的な健常者の年齢である。ハートフォードシャー州の5つのGP診療所に、35歳以上の喫煙者561名が登録された。すべての参加者に対しスパイロメトリーによる肺機能の評価が行われた。介入群(280例)には肺年齢が告知され、対照群(281例)にはFEV1の数値がそのまま伝えられた。両群に禁煙のアドバイスを行い、国民保険サービス(NHS)の地域禁煙サービスを受けるよう提案した。主要評価項目は12ヵ月後の唾液コチニン検査で確認された禁煙、副次評価項目は1日喫煙本数の変化および新規に診断されたCOPDとした。禁煙成功率:13.6% vs. 6.4%89%が12ヵ月間のフォローアップが可能であった。禁煙成功率は対照群の6.4%に対し、介入群は13.6%と有意な改善効果が認められた(p=0.005)。1名の禁煙成功者を得るのに要する介入人数(NNT)は14名であった。両群とも、肺年齢が低い参加者のほうが正常な者に比べ禁煙率が優れるという傾向は認めなかった。禁煙に要する費用は1人当たり280ポンド(366ユーロ、556ドル)と推計された。COPDの新規診断率は介入群が17%、対照群が14%であり、全体では16%(89/561人)であった。Parkes氏は、「喫煙者に対する肺年齢の告知は禁煙率の改善に有効であるが、そのメカニズムは不明」と結論し、「35歳以上の喫煙者のスクリーニングにより、喫煙率を低下させ、COPDの早期診断率を改善する可能性がある。喫煙の重い健康負担と医療費負担を考慮すれば、この簡便な介入法の経済効果を評価する研究を優先的に進めるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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無作為割り付け、二重盲検化いずれかを欠く試験では「客観的」評価項目が肝要

無作為割り付けが適切になされていない、あるいは二重盲検ではない介入試験では、主観的評価項目に対する介入の効果が強調されていることが明らかになった。University of Bristol(英国)のLesley Wood氏らによる報告がBMJ誌HPで早期公開(2008年3月3日付、本誌3月15日号に収載)された。メタ解析の対象となった試験で検討検討の対象となったのは、予後に対する介入の影響を検討した1,346試験を対象としたメタ解析146件。「適切な無作為割り付けの有無」、「二重盲検化の有無」で試験を分け、介入に対する評価が異なるかを検討した。「適切な無作為割り付け」とは参加者や登録者が事前に割り付け群が分からぬよう行なわれる割り付け、「二重盲検化」とは完全な患者、治療者だけでなく、イベント判定者も治療内容を知り得ない状況とされた。 非無作為、非盲検化で増強するのは「主観的」評価項目への作用「無作為割り付けの適切さ」は804件の試験で検討された。その結果、無作為割り付けが「適切」だった272試験(34%)に比べ「不適切」な試験では介入の効果が相対的に17%、有意に大きかった(評価項目オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.74~0.93)。しかし、評価項目を「主観的」、「客観的」に分けると、不適切な無作為割り付け」により介入の効果が有意に増大していたのは「主観的」評価項目だけだった(オッズ比:0.69、95%信頼区間:0.59~0.82。客観的評価項目オッズ比:0.91、95%信頼区間:0.80~1.03)。「二重盲検の有無」を評価できたのは746試験だった。二重盲検化されていた432試験(58%)に比べ、非二重盲検試験では介入の効果が相対的に7%増強されていたが、有意ではなかった。しかし「主観的」評価項目に限れば、非二重盲検試験では介入により有意にリスクは減少していた(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.61~0.93)。最後に、「適切な無作為割り付けの有無」「二重盲検化の有無」を変数として同じ回帰分析に入れてみた。その結果、総死亡、「客観的」評価項目に対してはいずれも有意な因子ではなかったが、「主観的」評価項目のリスクは「適切ではない無作為割り付け試験」(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.63~0.88)、「非二重盲検化試験」(同0.77、0.65~0.91)のいずれにおいても介入により有意に低下していた。 「客観的」評価項目の採用が重要二重盲検試験でも有害事象により患者の割り付け群が分かる場合は珍しくない。Wood氏らはそれを踏まえ、臨床試験では客観的な評価項目を必ず設ける必要があるとしている。最近増えている複合評価項目では、どれほど客観的な項目が含まれているか確認する必要があるということだろう。オープン試験でイベント判定だけを盲検化するPROBE法を用いた大規模臨床試験ではなおさらである。Wood氏らまた、メタ解析を行う場合、このようなバイアスにも留意して解析対象の試験を選択するよう呼びかけている。たとえば高血圧領域なら、1日3回服用のACE阻害薬の1日服用量を1回で服用させたCAPPP試験、また、長時間Ca拮抗薬の有用性を確認したとされるSyst-EUR研究(プラセボ群は追加薬のACE阻害薬、利尿薬もプラセボ)あたりは、特に薬剤間の比較を行うメタ解析からは除外を検討する余地はあるのではないだろうか。(宇津貴史:医学レポーター)

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副鼻腔炎に抗生物質の使用を正当化する臨床徴候、症状はない

副鼻腔炎はウイルス感染と細菌感染の鑑別が困難なため、プライマリ・ケア医は急性副鼻腔炎に対し抗生物質を過剰に処方しがちだという。スイスBasel大学病院臨床疫学研究所のJim Young氏らは、副鼻腔炎には、抗生物質が有効な症例を同定しうる一般的な徴候や症状はないことを確認、Lancet誌2008年3月15日号で報告した。米国では、受診理由の第3位が上部気道感染症で、その約1/3を急性副鼻腔炎が占め、さらにその80%が抗生物質を処方されている。ヨーロッパでもプライマリ・ケアにおける抗生物質処方の72~92%が急性副鼻腔炎とされる。無作為化試験に登録された症例の個々のデータを再解析研究グループは、抗生物質が有効な副鼻腔炎の一般的な徴候、症状を評価するために、個々の症例のデータに基づいて無作為化試験のメタ解析を実施した。Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embaseを検索し、当該試験を記述した報告のリストを参照することで、副鼻腔炎様の病状を呈する成人患者を対象に抗生物質あるいはプラセボによる治療に無作為に割り付けた試験を同定した。9つの試験に登録された2,547例の個々のデータを確認し、再解析を行った。抗生物質の全体的な治療効果を評価し、1例の治癒を得るのに要する抗生物質治療の回数(NNT)を算出することで一般的な徴候、症状の予測値の検討を行った。ベネフィットはほとんどない、可能なのはwatchful waiting、症状の緩和のみ新たに1例の治癒を得るためには、副鼻腔炎様病状を呈する15例を抗生物質で治療する必要があった。咽頭に膿性分泌物を認める症例では、この徴候のない症例よりも治癒に長い時間を要した。新たに1例の治癒を得るには、咽頭の膿性分泌物を認める8例を抗生物質で治療する必要があった。より高齢の症例、より長期間にわたり症状を訴える症例、より重篤な症状を呈する症例は治癒に長い時間を要したが、これらの症例が他の症例に比べ抗生物質が有効な傾向は認めなかった。Young氏は、これらの知見に基づき「抗生物質治療が明確に正当化される副鼻腔炎患者を同定しうるような一般的な臨床徴候および症状は認めなかった」と結論している。また、同氏は「プライマリ・ケアでは、急性副鼻腔炎様病状の患者に対する抗生物質治療のベネフィットはほとんどない。患者が7~10日以上の長期間にわたって症状を訴える場合でも抗生物質治療は正当化されない。正当化されるのは重篤な合併症を示唆する徴候が見られる場合のみである。小児や免疫抑制状態の患者はこの限りではないが、急性副鼻腔炎様病状の成人患者に保障できるのは、ほとんどの場合watchful waitingあるいは症状の緩和のみである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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「BMI」だけで心血管系リスクの予測は可能:NHEFS

心血管系リスクの評価にあたり「肥満」を評価項目にすれば、必ずしも「コレステロール値」を測定しなくとも心血管系リスクの予測ができる可能性が出てきた。採血のためだけに医療機関を訪れる必要が減るのであれば、患者サイドにとっては朗報だろう。Lancet誌2008年3月15日号でBrigham & Women’s Hospital(米国)のThomas A Gaziano氏らが報告した。「採血なし」のCHDリスク評価の正確性を検討Gaziano氏らが今回検討したのは「採血なしで心血管系リスクをどこまで正確に評価できるか」という点である。そのため、「性別」「年齢」「収縮期血圧」「糖尿病」「喫煙習慣の有無」「高血圧治療の有無」に加え「総コレステロール値」を組み込んだ心血管系リスク予測モデル(コレステロール・モデル)と、「総コレステロール値」を「BMI」で置き換えた「BMIモデル」による心血管系リスク予測の正確性を比較した。検討に用いられたコホートはNHEFS(NHANES I Epidemiologic Follow-up Study)、1971~75年にかけて実施された全国的調査NHANES Iの対象から当時25~74歳だった14,407例を前向きに追跡しているコホートである。今回はNHANES Iの時点で心血管系疾患既往を認めなかった6,186例が対象となった。  コレステロール値を用いなくともリスク予知の正確性は同等21年間の追跡期間中、1,529例に心血管イベントが発生し、うち578例が死亡した。「コレステロール・モデル」と「BMIモデル」のイベント予知正確性に差はなかった。すなわち、リスクモデルの正確性の指標であるc-statisticを比較すると、女性では「コレステロール・モデル:0.829」 vs. 「BMIモデル:0.831」(p=0.116)。男性では「コレステロール・モデル:0.784」 vs. 「BMIモデル:0.783」(p=0.457)だった。ROCカーブも両モデルは、ほぼ同一に重なっていた。WHO(世界保健機関)は心血管系リスク評価からコレステロール値をすでに取り除いているが、その正当性を強く示唆するデータであるとGaziano氏らは述べ、前向きコホート研究のデータを持つ国はすべて、このような検討を行う価値はあるとしている。わが国でも、医療経済的考察を含む検討は興味深いのではないだろうか。(宇津貴史:医学レポーター)

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第6回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナー

2008年3月20、21日に福岡国際会議場において開催された「第6回日本臨床腫瘍学会学術集会」に先立ち、19日にプレスセミナーが開催された。そのなかで、「承認相次ぐ分子標的治療薬-世界標準を見据えて-」についてレポートする。初めに、東京医科大学病院呼吸器外科の坪井正博氏より、非小細胞肺:エルロチニブ<上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤>が紹介された。国内外の臨床成績、ガイドラインの位置づけ、ゲフィチニブとの違いを紹介した。両剤とも、効果の得られやすい症例に使用したほうが良いと考えられ、その効果が期待できる集団として女性、非喫煙者などをあげたが、まだ明確な根拠はないという。エルロチニブは2次、3次治療として期待できる薬剤ではあるが、肺障害のリスクなどもあるため、リスクとベネフィットのバランスを患者さんと相談しながら薬剤選択することが重要とまとめた。続いて、東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科の薄井紀子氏より慢性骨髄性白血病(以下CML):分子標的療法の現状と課題が紹介された。薄井氏は、CMLの病態・治療についての概要、分子標的薬イマチニブ<ABLチロシンキナーゼ阻害剤>の治療成績、耐性の問題を紹介した。続いて新規チロシンキナーゼ阻害剤、ダサチニブ、ニロチニブなどについて、それぞれの特徴を交えて解説した。最後に薄井氏は、イマチニブをきちんと使うことが一番重要であり、イマチニブ耐性・無効例には変異に応じた薬剤を選択する時代になってくるだろう、その治療法はデータに基づき、きちんと選択しなければならないと結んだ。次に、国立がんセンター東病院内科の大津敦氏より、大腸がん:セツキシマブが紹介された。セツキシマブは2008年3月現在、未承認であることを冒頭に述べ、EGFRについて解説した。続いてセツキシマブの作用機序、特徴、海外・国内臨床成績、安全性を紹介し、大腸がん領域において、アバスチン、セツキシマブの登場により、本邦も海外と同じレベルの治療が出来るようになる、とまとめた。まとめとして、研究会有明病院化学療法科の畠清彦氏が、それぞれの講演におけるポイントを紹介し、さらに新規分子標的薬承認に向けて今後わが国において必要とされる対応について述べた。最後のディスカッションにおいては、韓国に比べて日本における申請から承認までの期間が長いこと、治験が中国や韓国に流れていること、分子標的治療薬では医療費が高額となり治療を続けられない患者さんが存在することなど、今後、解決していくべき問題があがった。

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術中麻酔覚醒の防止と麻酔使用量抑制にBISが優位とは限らない

術中覚醒は、患者に長期的・潜在的・心理的影響を与えかねない重篤な合併症である。これを防ぐために、患者の脳波を処理して得られるバイスペクトラル・インデックス(BIS)が開発され、BIS値を60以下に維持すると術中覚醒の発生率が低下することが報告された。ワシントン医科大学麻酔科のMichael S. Avidan氏らは、このBISに基づくプロトコルと、呼気終末麻酔ガス(ETAG)の濃度測定に基づくプロトコルのどちらが優位かを確認する臨床試験を実施。結果がNEJM誌2008年3月13日号にて掲載されている。患者2,000例をBISとETAGに分け術後3回評価研究では患者2,000例を無作為に、BISを指標とする麻酔(BIS目標範囲:40~60)と、ETAGを指標とする麻酔(ETAG目標範囲:0.7~1.3MAC)に割り付け(MAC;最小肺胞内濃度)、手術後に抜管後0~24時間と同24~72時間、同30日の計3回、術中麻酔覚醒について評価された。指標数値が目標範囲内でも術中麻酔覚醒が発生BIS群967例とETAG群974例を評価した結果、術中麻酔覚醒は各群で2例(絶対差0%、95%信頼区間:0.56~0.57%)起こった。そのうち1例は BIS値60超、3例はETAG濃度が0.7MAC未満だった。全患者の時間平均ETAG濃度の平均(±SD)は、BIS群では0.81±0.25 MAC、ETAG群では0.82±0.23 MACだった(P=0.10、BIS群とETAG群間の差の95%信頼区間:0.01~0.04 MAC)。BISモニタリングによって術中麻酔覚醒の発生率が低下すると報告した先行研究の結果は再現されなかった。また、BISプロトコルの使用と、揮発性麻酔ガスの投与量減少との関係も示されなかった。BIS値とETAG濃度が目標範囲内にあっても、術中麻酔覚醒は起こった。このため同氏らは「この研究結果は、標準診療の一環としてBISモニタリングの常用を支持するものではない」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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I期肺の早期再発はDNAメチル化が関与

非小細胞肺(NSCLC)は、最適で早期の外科的治療にもかかわらず、多くの患者が再発性のNSCLCで死亡している。ジョンズ・ホプキンス病院(米国メリーランド州ボルティモア)のMalcolm V. Brock氏らは、遺伝子のメチル化が腫瘍再発に関与しているのではないかと調査し、遺伝子のプロモーター領域のメチル化が関与していることを突き止めた。NEJM誌2008年3月13日号より。167例で7遺伝子のメチル化と腫瘍再発の関係を評価I期のNSCLCで治癒切除を受け、術後40ヵ月以内に再発した51例の患者(症例患者)と、同じくI期のNSCLCで治癒切除を受け、40ヵ月以内に再発しなかった116例(対照群)について、年齢、NSCLCのステージ、性別、手術時期をベースにマッチングを行った。調査では、腫瘍とリンパ節の7つの遺伝子のメチル化が腫瘍再発と関係しているかどうかを検討の対象とした。腫瘍および縦隔リンパ節でのp16とCDH13のメチル化が再発と強い相関多変量解析の結果、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A遺伝子p16、H-カドヘリン遺伝子CDH13、Ras関連ドメインファミリー1遺伝子RASSF1A、大腸腺腫性ポリポーシス遺伝子APC――これら4遺伝子におけるプロモーター領域のメチル化が、腫瘍および組織学的に腫瘍陰性であるリンパ節における腫瘍再発と関連していることが認められた。NSCLCの病期、年齢、性別、人種、喫煙歴、腫瘍の組織学的特徴とは関係ない。腫瘍および縦隔リンパ節のp16とCDH13のプロモーター領域のメチル化は、の再発と強く相関していた。治癒切除を受けた群167例のオッズ比は15.50。これにI期のNSCLCをもつ検証群20例を統合した場合のオッズ比は25.25に上ったと報告している。(武藤まき:医療ライター)

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MRSA院内感染率は全入院患者のスクリーニングでも低下しない

メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)による院内感染を減らすため、医療政策担当者らが、入院する患者全員にユニバーサル・スクリーニング実施を要求していることに対して、スイスのジュネーブ病院・医科大学のStephan Harbarth氏らが、外科患者のMRSA院内感染初期の検出戦略効果を評価する大規模な研究を行い、「ユニバーサル・スクリーニングを行ってもMRSA手術部位感染率やMRSA院内獲得率は有意に変化しない」とスクリーニングに疑問を提示している。JAMA誌2008年3月12日号より。12の外科病棟で患者21754人を対象に実施研究では、2004年7月から2006年5月の間、スイスの教育病院のうち異なる専門領域を含む12の外科病棟で、外科患者計21,754例を対象として、入院時に迅速スクリーニングと標準的な感染症管理対策を行う介入群と、標準的な感染症管理対策だけを行う制御群に分け、両者を交叉法で比較した。各病棟は初めの9ヵ月間、介入群と制御群に割り付けられ、その後9ヵ月間は、割り付ける群を切り替えた。介入期間に介入病棟へ24時間以上入院する患者は、入院前または入院時に迅速な多重ポリメラーゼ連鎖反応検査でスクリーニングされた。介入期間の患者数は10,844例、制御期間は10,910例だった。全病棟で、MRSAキャリアとの接触隔離、専用道具(ガウンや手袋、必要ならマスクも)使用、MRSAキャリアの周術期抗生剤予防処置、コンピュータ化されたMRSA警戒システム、ムピロシン軟膏の鼻腔塗布とクロルヘキシジン身体洗浄による局所無菌化処置から成る5日間の標準感染症管理処置がとられた。主要評価項目は、MRSA院内感染の発生率、MRSA手術部位感染およびMRSA感染の院内獲得率とした。手術部位感染率も院内獲得率も有意な変化なし介入期間中の患者10,844例中10,193例(94%)をスクリーニングした結果、事前に未知のMRSAキャリア337例を含むMRSA陽性患者515例(5.1%)を特定。スクリーニングからMRSAキャリア試験結果通知までに要した時間の中央値は22.5時間(四分位数間領域は12.2~28.2時間)だった。このうち院内でMRSA感染症を発症したのは、介入期間中は93例(患者1,000人日につき1.11)だったが、制御期間中は76例(患者1,000人日につき0.91、調整された罹患率比率1.20、 95%信頼区間:0.85~1.69、P=0.29)だった。手術部位感染率と院内獲得率は有意に変化しなかった。介入区域で感染した患者93例中53例(57%)は、入院時にはMRSAと無縁だったが入院中に発症していた。これらからHarbarth氏らは「入院時に患者全員をスクリーニングする戦略は、標準的な感染症管理対策より有利とは言えない」とし、疑問を呈している。(朝田哲明:医療ライター)

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院外心停止、新しい心肺蘇生法で生存退院率3倍に

 公衆衛生上の重大な問題となっている院外心停止について、救命率を高めるには脳・冠血流量の確保を最優先すべきとの知見が普及しつつある。米国アリゾナ州スコッツデールにあるメイヨー・クリニック救急医療部門のBentley J. Bobrow氏らは、院外心停止患者の生存率が、従来の救急医療(EMS)プロトコルに代わる中断最小化心肺蘇生法(MICR)を用いることで改善するかどうかについて、前向き研究を行った。JAMA誌2008年3月12日号より。MICRと標準EMSそれぞれの生存退院率を比較 この調査は2005年1月1日から2007年11月22日にかけて、アリゾナ州の2つの都市で院外心停止を起こした患者を対象に、生存退院率の向上を確認する前向き研究として行われた。評価は、消防署の救急隊員にMICRの訓練を施す前と後とで実施された。主要評価項目は生存退院率とした。 プロトコル・コンプライアンスに関する二次解析も行われ、アリゾナ州の2つの都市と別の60の消防署で、実際にMICRを受けた患者と標準的な高度救命措置を受けた患者とが比較された。 EMS隊員へのMICRの指導内容は、連続200回の心臓マッサージ、1回の電気ショックとリズム解析、ショック後に再度200回の心臓マッサージ、脈拍チェックまたはリズム解析、エピネフリンの早期投与、気管内挿管はその後、という手順による。MICRを受けた患者の生存退院率は有意に高かった 2都市の患者は886例で、MICR訓練前の生存退院率は1.8%(4/218)だったが、MICR訓練後は5.4%(36/668)まで増加していた(オッズ比:3.0、95%信頼区間:1.1~8.9)。 心停止および心室細動患者は174例で、生存率は、MICR前は4.7%(2/43)だったが、MICR訓練後は17.6%(23/131)まで増加していた(同8.6、1.8~42.0)。 心停止患者2,460例に関するMICRプロトコル・コンプライアンス解析を行った結果、MICRを受けた患者の生存率は9.1%(60/661例)で、受けなかった患者の3.8%(69/1,799例)より有意に高く(オッズ比:2.7、95%信頼区間:1.9~4.1)、心室細動患者でもほぼ同様の結果が確認された[28.4%(40/141例)対11.9%(46/387)、オッズ比:3.4、95%信頼区間:2.0~5.8)。 研究グループは「EMSに代わるプロトコルとしてMICRを実行した後、院外心停止患者の生存退院率が高くなったことは明らか」と結論。無作為試験での検証作業を提案しまとめた。

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単純ヘルペスウイルス感染の仕組み解明、阪大研究グループ

大阪大学の荒瀬尚教授らは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染の仕組みを突き止めた。21日の米科学雑誌cellに掲載。研究によると、感染する際に細胞の表面の免疫抑制にかかわる受容体(レセプター)を利用しているとのこと。HSVの国内の年間患者数は約8万人。症状が治まってもウイルスが神経節に潜伏して再発を繰り返す。今回の研究から新しい治療薬の開発も期待される。アブストラクトはこちらhttp://www.cell.com/content/article/abstract?uid=PIIS0092867408002055

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32歳が「体の曲がり角」!太りやすく、痩せにくくなる?

30代・40代のビジネスパーソン1,268名を対象に行った生活習慣に関するインターネット調査によると、太りやすくなった、痩せにくくなったという「体の曲がり角」を感じた平均年齢は32.4歳だった。しかし、実際に「体の曲がり角」を感じても、4割が食事の量を減らす、又は活動量を増やすことをせず、生活習慣を変えなかったと回答していたという。調査はノボ ノルディスク ファーマ社がまとめたもので、年齢で見ると30―34歳で体の曲がり角を感じたという回答が35%と最も多かった。次いで35―39歳、25―29歳、40―44歳の順。また、体の衰えを感じたのをきっかけに生活習慣を変えた人は61%に達したものの、「運動など日常の活動量を増やした」は23%にとどまり、食事量を減らした人(38%)の方が多かった。食生活、活動量などの生活習慣を変えなかった理由としては「ストレスがあるので変える余裕がない」が最も多く31.6%、次いで「今のところ何も自覚症状がなく差し迫った必要性を感じていない」、「仕事が忙しいので変える余裕がない」だった。一方、仕事量が増えて忙しくなる29歳ごろから、仕事による疲れ、忙しさから活動量が減ったと44.2%の人が回答している。こうした結果から、生活習慣病対策は40歳からではなく、実際には30歳前後から意識して食事の量を減らす、活動量を増やすなどの取り組みが必要になると指摘している。詳細はプレスリリースへhttp://www.novonordisk.co.jp/documents/article_page/document/PR_08_03.asp

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若年男性の自殺率が著明に低下、排気ガス浄化装置付き自動車の普及も寄与か?

最近10年で、イングランド/ウェールズにおける若年男性の自殺率が著明に低下したことが、BMJ誌2008年3月8日号(オンライン版2008年2月14日号)に掲載された英国Bristol大学社会医学のLucy Biddle氏らが行った研究で明らかとなった。20世紀末の自殺の疫学において最も衝撃的な特徴のひとつが、最先進工業国における若年男性の自殺率の増加とされる。イングランド/ウェールズでは、1950年から1998年にかけて45歳以上の男性および全年齢の女性では自殺率が低下したのに対し、45歳未満の男性では倍増していた。ONSの1968~2005年の自殺データを解析研究グループは、1970年代、80年代、90年代前半と増加を続けていた若年男性の自殺率が、最近になって低下しているとの観察記録を検証するために、若年者の自殺傾向について調査する時系列研究を行った。英国国家統計局(ONS)の1968~2005年のイングランド/ウェールズにおける15~34歳の男女の自殺に関するデータの解析を行った。1992年までは毎年の死亡登録データを用いたが、1993年以降は実際の死亡日のデータを使用した。これは、自殺の正式な調査過程では実際の死亡から登録までに何か月も要する可能性があるからである。若年男性の自殺率が2005年には過去30年間で最低に1990年代以降、若年男性の自殺率が着実に低下し、2005年には過去30年間で最低値に達していた。この自殺による死亡率の低下の一因として、1993年に制定された法律による触媒式排気ガス浄化装置が導入された自動車の普及に伴う排気ガス中毒死の低下が考えられたが、首吊りなどの一般的な自殺法の減少がより大きな波及効果を及ぼしたことが示唆された。失業や離婚などの自殺のリスク因子も減少していた。若年男性のアルコール飲用の減少や抗うつ薬処方の増加は、時期的に見て自殺率の低下との関連は認められなかった。(菅野守:医学ライター)

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若年者のSSRI使用を制限しても自殺行動に影響しない

英国では、2003年に18歳未満への選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の投与を禁忌としたが、この規制措置によって若年者の自殺行動に変化は見られないことが、Bristol 大学社会医学のBenedict W Wheeler氏らの調査で明らかとなった。規制当局は規制の理由をSSRIが自殺行動のリスクを増大させる可能性があるためとしているが、抗うつ薬の処方数の低下でうつ病が治療されず自殺死亡率が増加しているとする他国の試験もある。BMJ誌2008年3月8日号(オンライン版2008年2月14日号)掲載の報告。SSRI規制措置が自殺および自傷行為に及ぼす影響を調査研究グループは、2003年に制定された18歳未満のSSRI使用を制限する規制措置が、自殺および非致死的自傷行為に及ぼす影響の調査を目的とした地域相関研究を行った。SSRIの処方傾向は英国全土の12~19歳のデータを用い、自殺死亡率はイングランド/ウェールズの12~17歳を、自傷行為による入院率はイングランドの12~17歳のデータを使用した。自殺が低下、自傷行為が増加したが、規制との関連はない抗うつ薬の処方数は1999年から2003年にかけて倍増したが、2004~2005年の1年で1999年のレベルに低下した。これらの処方数の大きな変化は、自殺あるいは自傷行為の時間的傾向とは関連しなかった。1993~2005年の間に、12~17歳の年間自殺率は毎年、男性で3.9%、女性3.0%ずつ低下していたが、期間中のこの低下率は実質的な変化ではなかった。同様に、1999~2005年の自傷行為による入院率は毎年、男性で1.1%、女性で5.7%ずつ増加したが、規制措置施行後の変化に統計学的なエビデンスは認めなかった。Wheeler氏は、「18歳未満のSSRIの使用を制限した2003年の規制措置により抗うつ薬の処方数が著減したが、これは若年者の自殺行為の変化とは関連しなかった。特にイングランドのデータは、抗うつ薬使用の減少が自殺行為の増加をもたらさないこと示している」と結論し、「これらの知見は、若年者のSSRIへのアクセス低下は、英国の公衆衛生に有害な影響を及ぼしていないことを示唆する」指摘している。(菅野守:医学ライター)

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