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SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。escitalopramとプラセボを投与し8週間追跡研究グループは、2009年7月~2010年6月にかけて、40~62歳の閉経期の女性、205人(アフリカ系アメリカ人95人、白人102人、その他8人)について調査を行った。被験者の平均年齢は53歳だった。同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはescitalopram 10~20mg/日を、もう一方にはプラセボを8週間投与し追跡した。主要評価項目は、服用後4週と8週時点の、ほてりの頻度と程度で、被験者の日記に基づき評価を行った。副次評価項目は、ほてりの程度、臨床改善指数(基線から50%以上ほてりの頻度が減少と定義)とした。ほてりの頻度減少幅、escitalopram群4.6回に対しプラセボ群が3.2回試験開始時点での、被験者のほてりの回数は、1日平均9.78回(標準偏差5.60)だった。8週後、1日のほてりの頻度の減少幅は、プラセボ群が平均3.20回(95%信頼区間:2.24~4.15)だったのに対し、escitalopram群では平均4.60回(同:3.74~5.47)で、両群の平均差は1.41回(同:0.13~2.69)だった(p<0.001)。8週時点で、ほてりの頻度が半分以下に減ったと答えた人の割合は、プラセボ群が36%に対し、escitalopram群では50%だった(p=0.009)。ほてりの程度の軽減幅に関する平均スコアも、プラセボ群が-0.30(95%信頼区間:-0.42~-0.17)に対し、escitalopram群では-0.52(同:-0.64~-0.40)だった(p

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外科医の魅力を伝えたい - 医学生・若手医師へのメッセージ -

2010年12月16日(木)、ホテルニューオータニ東京において、『きみが外科医になる日』(講談社)の出版を記念し、出版記念メディアセミナー及び出版を祝う会が開催されました。この会は「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(以下CENS)」が主催したもの。当日は会の趣旨に賛同された多くの医師・医療関係者が集まり、大盛況のまま幕を閉じました。この会の場で、CENSの役員より医学生や若手医師の方への熱いメッセージが寄せられました。いずれも日本の外科領域を牽引する名医の先生方です。ご自身の経験も含め、外科医の魅力を存分に語っていただきました。外科という領域を超えて、プロフェッショナリズムの真髄に触れることができます。是非この機会にご覧ください。副理事長 北島 政樹氏国際医療福祉大学 学長 理事 跡見 裕氏杏林大学 学長 理事 兼松 隆之氏長崎大学大学院移植・消化器外科 教授理事 小栁 仁氏東京女子医科大学 名誉教授理事 北野 正剛氏大分大学医学部第一外科 教授理事 門田 守人氏日本医学会 副会長大阪大学 理事 副学長理事 山口 俊晴氏研有明病院 副院長消化器外科 部長監事 里見 進氏日本外科学会 理事長東北大学 病院長評議員 和田 則仁氏慶應義塾大学医学部一般・消化器外科 助教ケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています関連リンクNPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページ

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部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」

1959年7月8日神奈川県横須賀市生まれ。84年群馬大学医学部卒業。専門分野は放射線腫瘍学・肺がんの放射線治療。99年群馬大学医学部放射線科講師、05年東海大学医学部放射線治療科学准教授、08年神奈川県立がんセンター放射線腫瘍科部長就任。日本医学放射線学会・放射線科専門医、日本放射線腫瘍学会・放射線腫瘍学認定医、日本がん治療認定医機構・がん治療認定医等。日本放射線腫瘍学会(評議員)、米国放射線腫瘍学会、日本医学放射線学会、日本肺学会(評議員)、世界肺学会、日本治療学会など。放射線治療医の魅力放射線治療を専門とするがん専門医のことを、私たちは放射線腫瘍医と言っていますが、ここではわかりやすく放射線治療医という言い方をします。私が卒業した群馬大学医学部は、放射線治療がとても盛んで、講義も臨床実習も内科や外科と同じコマ数があり、おかげでびっしりと放射線治療について学ぶことができました。また、私がいた群馬県内の病院では、放射線科だけで50床あり、そこで全身の状態を内科的診療で診ながら放射線治療ができるという理想的な環境にありました。放射線治療が対象とするがんは広範囲です。がん診療では通常、消化器、呼吸器など診療科ごとに特定の臓器への関与に限られます。しかし、放射線治療は、脳腫瘍から骨、皮膚、その他すべての臓器と横断的に関われるというのが、私にとって一番の魅力でした。医療手技についても幅広く習得できました。日常臨床で、頭頸部の診察なら喉頭ファイバー、肺の診察なら気管支ファイバー、消化器であれば消化管の内視鏡検査、婦人科であれば内診をやりますから、このような手技的にも幅広く経験できるのです。放射線治療では、人の身体全体を診ることにより新たな知識を得ることができます。たとえば、放射線治療は、喉頭がん、子宮頸がんの早期には非常に高い治療効果があるので、同じ扁平上皮がんの肺がんでも治療効果は高いはずだ、などの考え方ができるようになります。このように、医師としての深い知識を横断的に得ることができたのも大きな魅力だといえます。幅広い放射線治療の可能性がんにおける放射線治療の活用方法は幅広いものです。まず、がんの根治を目的とする根治照射、延命を図るための姑息照射、そして骨転移・脳転移などの症状を和らげる緩和照射まで適応可能です。それに加え最近では、一方向からの放射線の線量を変えたり、精度高く照射部位を絞ったり、重粒子線などを用いることによる治療のバリエーション拡大で、個々の患者さんに合った治療選択ができるようになりました。放射線治療の特長として考えられるのは、まず身体への侵襲の少なさです。放射線治療は一般に身体外からの照射ですので、手術と異なりメスを入れずにすみます。また、放射線治療は局所療法ですので、抗がん剤とは異なり全身性の副作用が少ないのです。そのため、全身状態が悪い人や高血圧・心臓疾患などの合併症を患っている方、高齢者にも適応しやすいというメリットがあります。もう一つの特長は、臓器の機能保持が可能だということです。同じ局所療法でも手術とは異なり、放射線療法では臓器を残し機能を温存することができます。たとえば、声門部がんでの喉頭部摘出などは、患者さんのQOLに関わる大変重要な問題ですが、放射線治療が適応できれば喉頭部を残すことができます。臓器を残せるというメリットは非常に大きいといえます。放射線治療が有用ながんの代表は,早期の頭頸部がんです。その他子宮頸部などの扁平上皮がんには非常に高い効果があります。また、進行がんにも適応が確立しつつあり、遠隔転移がない肺、食道、頭頸部の進行がんでは抗がん剤と併用する化学放射線療法が積極的に行われています。さらに、術後の照射にも使用が拡大しています。乳がん乳房温存手術後の放射線照射により、術後の顕微鏡的な残存腫瘍を根絶するというものです。この治療により再発リスクが約3分の1に減少することが明らかになっています。放射線治療の新しい分野である重粒子線治療についても具体的な有用性が明らかになっています。骨肉腫や悪性黒色腫などの難治性腫瘍や穏やかな脊索腫などで高い効果を上げています。今までX線の放射線では治らなかったがんが治癒できるということは画期的なことです。何よりも患者さんにとって非常に大きな朗報だといえるでしょう。重粒子線治療ができる施設は千葉県の重粒子医科学センター病院など日本全国で現在3つしかありませんが、今後増えていくでしょう。日本における放射線治療の現状と問題点放射線治療医が足りないことが大きな問題です。放射線治療に興味を持ってもらうためには、まず大学教育の改革が大切だと思います。今まで、多くの大学では放射線科講座がひとつあるだけで、そこで画像診断、核医学、放射線治療もすべて教えるという状況でした。そのため日本放射線腫瘍学会では、治療科と診療科の講座を別々にしてくださいという要望を各大学に出しています。その結果、いくつかの医学部では診断と治療が独立する方向で、放射線治療の講座ができつつあります。学会でも学生教育が最重要課題と考え、放射線治療の魅力を知っていただくために、夏に学生や研修医を対象としたセミナーを継続して開いています。国でも、がんプロフェッショナル養成プランにより放射線療法に関する腫瘍専門医師の養成を推進しています。臨床の現場では各臓器別のキャンサーボードに、内科系、外科系、病理、画像診断、そして放射線治療医が集まり患者さんの治療方針について検討するのが理想です。各臓器のスペシャリストの先生方と同じ土俵で討論するには知識が必要ですが、放射線治療医の特性も上手く生かせると思います。各スペシャリストと我々の違うところは、我々はがんについて広く知っているという強みです。また、現在は一臓器だけでなく、様々ながんを合併して発症している患者さんも少なくありません。たとえば、頭頸部と食道部に合併しているがんでは、放射線治療により両方治療できるのも大きな利点です。このように、放射線治療医としての特性や放射線治療のメリットを生かしながら、スペシャリストの先生方に積極的に関わっていくという姿勢が必要であると思います。そして、がん治療に関わっている先生方には放射線治療についてもっと知っていただけたらと思います。我々からのアプローチ不足もありますが、これも大きな問題です。たとえば、新規患者さんが来られた場合、放射線治療ができるかどうかを放射線治療医に相談していただければと思います。大きな腫瘍だから抗がん剤でないとダメ……など先入観や知識不足から、放射線治療の適応があるにもかかわらず治療選択肢に入らないことも少なくないと思います。がんが進行してから我々に相談されることもありますが、それでは患者さんにとって最良の治療ができなくなってしまうことが多々あります。放射線治療の適応については、独自に判断せず、是非治療を始める前に一度近くの放射線治療医の意見を聞いて欲しいと思います。現状では放射線治療医の常勤がいないこともありますが、せめて電話での問い合わせをしていただくとか、こちらに患者さんに来ていただいてお話を聞くという方法でも構わないと思います。新設予定の神奈川県立がんセンターの重粒子治療施設平成26年度にオープンする予定の重粒子治療施設ができれば、日本で5ヵ所目の施設となります。神奈川がんセンターの中にできるこの施設は、病院との併設型です。各診療科でがんの各臓器の専門医がいるところにできるので、包括的なサポートが可能になります。この施設はよりたくさんの患者さんに治療を提供できるように、臨床に特化した施設にしようというのが我々のポリシーです。さらに、一般的なX線治療にも高精度治療装置が導入されます。そこに一つのモダニティとして重粒子線治療が入ります。ですから構想的にいえば、放射線腫瘍センターに来られた患者さんに、重粒子線治療を含めた最も適した放射線治療を提供できるように準備していきたいと思っています。設備には大変な金額がかかりますが、それでも重粒子線でなければ治らない患者さんもいます。このセンターができれば、県内だけでなく東京都南部及び西部からの通院が可能な位置にあることから、全身状態が悪くない患者さんについては外来で治療を行う"外来通院型"の重粒子線治療を目指しています。これは現役で仕事をされているような患者さんにとっては大変な朗報だと思います。放射線治療医を目指す皆さんへ前述の通り、放射線治療医はすべてのがんを診ることができます。また、自分がやりたいスタイルを選ぶことができます。たとえば、ベッドを持たず外来診療だけを行っている施設もあります。このような施設では夜中に入院患者さんの治療で呼び出されるということはありません。これは家庭があってお子さんのいる女性医師にとっては、とても魅力的だと思います。逆に、以前私が働いていた病院のように、ベッド数を多く持ち患者さんの全身を診ながら放射線治療を行う、内科的な意味合いも兼ねた放射線治療医という形もあります。放射線治療科といっても機能の幅が広いので、自分がどのような医師になりたいか、あるいは自分のライフスタイルやポリシーに合った施設を選ぶことができるのです。最近の放射線治療では、物理的に精度の高いロボットのような機械を用いて治療することがあります。若い医師の中には、自分の手を使わずにロボットでがん治療するという、物理学的な興味から入ってくる方も多いですね。一方、外科的な部分もありますので、外科医もやりたいけどがんを全体的に診たいという人も入ってきます。生物学的、物理学的研究なども、広く学べる。がん治療のチームに入ったならばどのポジションもできるのが放射線治療医なのです。質問と回答を公開中!

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部長 中山優子 先生の答え

晩期後遺症重粒子線の晩期後遺症として組織壊死、ろうこう形成があるようです。理論的にないといわれたこれらの後遺症の頻度はどれくらいですか。質問01から03までは,これから建設予定施設にいる私には経験がなくお答えできない質問です.そこで,今までに5000名以上の重粒子線治療を手がけた放射線医学総合研究所(放医研)・重粒子医科学センター長の鎌田正先生に伺いました.「重粒子線治療を開始した初期のころ線量増加試験を各臓器で実施しています。その中で高線量を広い範囲に照射した症例において瘻こう形成などの強い副作用を認めています。その経験から各臓器において線量や照射範囲に制限を設けるとともに照射技術に改善を加えた結果、最近ではそのような副作用は殆ど認められなくなっています。」現在,重篤な副作用はほとんど見られていないとのことです.放医研では,1994年に炭素線を用いて重粒子線治療が開始されました。それ以来,種々の疾患について適切な照射技術や線量分割法を開発するための臨床試験が行われ、2003年10 月には「高度先進医療(いまの先進医療)」としての承認が得られて今日に至っています.日本では,放医研,兵庫県立粒子線医療センター,群馬大学重粒子医学研究センターの3施設で重粒子線治療を行っています.悪性リンパ腫に重粒子線治療は効果ありますでしょうか?抗ガン剤治療や通常の放射線治療でなかなか効果が得られない悪性リンパ腫に、重粒子線治療は適応ありますでしょうか?同じく,鎌田正先生のコメントです.「悪性リンパ腫は全身疾患として考える必要があり、また通常の放射線や化学療法が良く効くことから、重粒子線治療の適応としていませんでした。そのためにこれまでまったく重粒子線での治療の経験がありません。従って他治療に効果を認めない悪性リンパ腫についてもその効果は不明です。仮に行うとすれば局所にとどまるものであれば臨床試験の対象となる可能性はあると思います。」局所進展型膵局所進展型の膵頭部に対し、重粒子線の効果と合併症をお聞きします。膵頭部は消化管がすぐ近くにあるので、照射後の消化管に対する合併症が心配となります。どんな合併症がいつ頃出現するのか、またやせた人は合併症が多いと聞きますが、どのくらい増えるのか、をご教示下さい。また定位放射線治療と比べ、重粒子線の効果はどのくらいあるのでしょうか。極論でいえばCRを目指せますか?。膵体部、尾部ではどうでしょう。よろしくお願いします。同じく,鎌田正先生のコメントです.「切除非適応の局所進行膵について現在、化学療法を同時に併用した重粒子線治療の線量増加試験を実施しています。まだ試験中ですので詳細を示すことはできませんが、十二指腸を含む消化管への副作用の頻度は少なく、安全に線量増加試験を継続しています。治療効果も同様ですが、線量増加とともにCRとなる症例も経験されています。」重粒子線治療の受け入れ態勢について重粒子線治療は紙面でもテレビでもとりあげられており、患者さまにも希望される方が増えてきている印象です。しかし、実際は適応症例を絞っていたり、順番待ちが長いという噂も多いです。とくに他県の患者を紹介しても、結局治療が受け入れられないという場合は、さっさと地元でX線照射をしていた方が時間的に有利かと思われます。もっと受け入れ態勢の情報や、適応症例を情報公開するなどできないでしょうか?確かに,重粒子線治療をインターネットなどで調べ,希望する患者が増えてきています.先日も,局所進行非小細胞の放射線治療目的で受診された方で,放射線治療を勧めたところ,重粒子線治療希望なので待ってくれ,と言われました.「縦隔リンパ節転移があるので重粒子線治療の適応はないです」とお話し,通常の放射線治療を施行しました.重粒子線治療の適応については,放医研や兵庫県立粒子線医療センターのホームページに詳しく掲載されています.しっかりと情報公開されています.放射線治療医にまず紹介し,そこで判断してもらうのもいいと思います.肺に対するトモセラピーについて勤務している病院でトモセラピーが使用できるようになりました。放射線治療医の勧めもあり、I期の非小細胞肺に対してトモセラピーでのSRTも数例施行していだだきましたが、重篤な放射線肺炎を一例経験しました。肺に対するトモセラピーのSRTには、通常のリニアックを使用したSRTや重粒子線治療に比べてエビデンスは少ないようです。肺に対するトモセラピーが放射線肺炎を起こしやすいということはあるのでしょうか。末梢型の早期肺で手術が内科的非適応の場合や手術拒否の場合に,SRTや重粒子線治療が行われています.SRTでは三次元的に多方向から病変に照射するため1回線量を増やすことができます.最近,日本で行われた臨床試験(JCOG0403)では1回線量12Gyを4回,総線量48Gyを用いています.重粒子線治療では,分割回数を少しづつ減らしていき,現在は1回照射法を臨床試験で行っています.いずれにしても,従来の放射線治療よりも抗腫瘍効果が高く,良好な治療成績が報告されています.ご質問の重篤な放射線肺臓炎についてですが,既存肺に間質性肺炎があるときには,重篤な放射線肺臓炎が生じることがあります.また,腫瘍サイズが大きいときも結果的に照射される正常肺の体積が大きくなりますので,注意が必要となります.トモセラピーの場合には,少線量が照射される正常肺の体積が大きくなる可能性がありますが,治療装置の違いよりも,既存肺の状態や腫瘍の大きさなどの影響が大きいと思われます.放射線腫瘍医を目指すには?医学部に通う者です。放射線医学見学会に参加したことがきっかけで、放射線腫瘍医に興味を持ちました。キャリア形成についてお聞きしたいのですが、放射線腫瘍医になるには、どのような施設で研修を受けていくべきでしょうか?また、学生のうちに勉強しておいた方がよいことがあれば教えていただければと思います。宜しくお願いします。放射線治療は,全身のすべてのがんが対象となります.それらを診断するための基礎知識・手段として,画像診断や内視鏡検査などの診察手技を習得することが必要です.また,対象の多くは高齢者ですから,一般的な内科の知識も必要となります.がん患者のお話に耳を傾けることも大切です.また,放射線腫瘍医だけではがん治療はできません.外科医や内科医とよいチームを組み,最適な診療を提供していきます.したがって,極端にいえば,どのような施設で研修を受けても勉強になると思います.学生のうちに勉強しておいた方がよいことですが,何でも役に立ちますので,自由に勉強をしたらどうでしょうか.私が医学生だった頃には,第一種放射線取扱主任者の試験を,記憶力のいい若いうちに受けておくようにいわれたことがあります.まじめな同級生は受験して合格していました.彼女は内科医になりましたが,役に立っているかな.教育について先生の記事、大変勉強になりました。ありがとうございます。神奈川県立がんセンターさんでは、教育部門にも力を入れているとのことですが、ホームページを見てもその辺の情報が掲載されていませんでしたので、差し支えなければ、具体的な取り組みをご紹介いただけないでしょうか?(特長的なもの1例だけでも参考になります。)特に専門医向けの教育だけでなく、看護師向けの教育も行っているということに大変興味を持っております。宜しくお願いします。放射線治療には看護師の存在が欠かせません.私たちの施設は,これから放射線治療装置の増設や重粒子線治療施設の新設など,より放射線治療症例は増える予定です.これに伴い,看護師の担う業務内容の拡大が求められます.たとえば,放射線治療中の口内炎や皮膚炎などが通常の反応か否かなど,放射線治療室担当の看護師が判断できれば,日常診療の効率化の上で,大きな力になります.また,看護師にとってもやりがいが出ることでしょう.まずは,看護師が放射線治療のことを知り,興味を持つことが大切です.そこで,神奈川県立がんセンターでは,2010年度は看護局と協力して看護職員研修として「がん放射線治療の現場を知ろう!」を実施しました.すでに病棟に勤務している看護師に希望を募り,勤務の合間に放射線治療の講義の後,現場をみてもらいました.「放射線治療の基本から一連の流れがわかり,患者への説明も行いやすくなったと感じました」「病棟側からの視点だった放射線治療を広い視野で理解することができました」などの感想があり,今後も続ける予定です.総括この度の東日本大震災で被災された方々に心からお見舞いを申し上げます.そして,さらに福島原発の放射線による被害も加わり,近隣の方々はもちろんのこと,日本中の人々が大きな不安を持っていることと思います.がん治療の手段として放射線治療を用いている私たちには,患者さんや他科の診療科医師から沢山の質問がありました.がん治療に使われている放射線と放射能との違い,子供を家から出さない方がいいか,水道水を煮沸すれば放射能はなくなるのか,などです.目に見えない放射線への不安に対して,わかりやすい言葉で説明をする大切さをひしひしと感じました.部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」

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あらゆるNSAID処方時に心血管リスクへの考慮が必要

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の心血管系に対する安全性について、可能な限りのデータを集めて行われたネットワーク・メタ解析の結果、エビデンスを示すデータはほとんどなかったとの報告が、スウェーデン・ベルン大学社会・予防医学研究所のSven Trelle氏らにより示された。2004年にrofecoxibが心血管イベントリスク増大から販売中止となって以後、選択的COX-2阻害薬そしてNSAID全体へと心血管リスクについての懸念が広がったこと、最近ではリスク・ベネフィットが不十分として米国FDAがetoricoxibを承認しなかったなどの動きを受けて本解析を行ったというTrelle氏は、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告より。NSAIDに関する大規模無作為化試験31試験のデータを解析 試験は、最終更新2009年7月の可能な限り入手できたデータを集めて行われた。収集先は、文献データベース、会報、登録臨床試験、FDAのWEBサイト、関連論文の文献リスト、Science Citation Indexからの引用関連論文報告で、セレコキシブ(商品名:セレコックス)とlumiracoxibの製造元からは追記データが提供された。 解析対象となったのは、NSAID同士またはNSAIDとプラセボを比較検証した大規模な無作為化試験すべてで、2人の研究者各々によって試験適格についての判定が行われた。 主要転帰は心筋梗塞、副次転帰は脳卒中、心血管系疾患による死亡、全死因死亡などで、2人の研究者各々によってデータ抽出が行われた。 31試験、患者11万6,429例、追跡11万5,000人・年が適格となり解析が行われた。患者は、ナプロキセン(商品名:ナイキサン)、イブプロフェン(同:ブルフェン)、ジクロフェナク(同:ボルタレンなど)、セレコキシブ、etoricoxib、rofecoxib、lumiracoxibまたはプラセボに割り付けられていた。NSAIDの心血管系に対する安全を示すエビデンスはほとんどない プラセボとの比較で心筋梗塞との関連性が最も高かったのはrofecoxib(対プラセボ比:2.12、95%信頼区間:1.26~3.56)であり、次いでlumiracoxib(同:2.00、0.71~6.21)であった。 脳卒中についてプラセボとの比較で関連性が最も高かったのはイブプロフェン(同:3.36、1.00~11.6)であり、次いでジクロフェナク(同:2.86、1.09~8.36)であった。 心血管系疾患による死亡についてプラセボとの比較で関連性が最も高かったのはetoricoxib(同:4.07、1.23~15.7)であり、次いでジクロフェナク(同:3.98、1.48~12.7)であった。 Trelle氏は「確定ではないが、調査を行ったNSAIDについて心血管系に対する安全を示すエビデンスはほとんどなかった。ナプロキセンの有害性は最も少ないようであった」と結論し、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。

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臨床試験報告のバイアス発生には、試験研究者の認識不足が原因

臨床試験のアウトカム報告におけるバイアス発生頻度は高く、理由として試験研究者の認識不足が原因であることが、イギリス・リバプール大学医療統計・保健評価センターのRMD Smyth氏らによる調査研究で明らかにされた。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載より。プロトコルとのアウトカム報告の矛盾特定と試験報告者のインタビューで調査調査は、試験プロトコルとその後に公表された試験報告を比較し、アウトカム報告の矛盾を特定することを目的とした。より広範囲の研究報告および未公表アウトカムの問題も調査するため各試験研究者への電話インタビューも行われた。調査対象者は試験のチーフ研究者もしくは試験リーダーや共著者で、二つのソースから選定された。一つはCochraneソースで、Cochrane libraryの三つの刊行号(2006年issue4、2007年issue1、issue2)において一つ以上の試験が解析されたシステマティックレビューでバイアス発生が推察された2002年以降公表の論文関係者だった。もう一つはPubMedソースで、2007年8月~2008年7月に無作為抽出しインデックス化された試験報告であった。対象となった国は、オーストラリア、カナダ、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカで、不完全なアウトカム報告の発生頻度、研究者がどうしてそのような報告をしたのかについてを主要評価項目に解析が行われた。解析しても報告せず、一方で事前特定アウトカムを解析していないことも解析が行われたのは、268試験(Cochrane:183試験、PubMed:85試験)だった。インタビューには当初161人が要請に応じてくれ、130人(81%)が実際に応じてくれた。しかし「その後の接触に失敗」「プロトコルのコピーを入手できなかった」のどちらかもしくは両方の理由で、最終的にインタビューが行われたのは59/161人(37%)だった。16人が最初の報告時に解析アウトカムの報告に失敗していた。17試験のアウトカムデータはその後の解析が行われていなかった。5試験は事前特定した試験全体にわたるアウトカムの評価を行っていなかった。ほとんどすべての試験で事前特定したアウトカムの解析は行われていたが、報告はされていなかったことも認められ(15/16試験、94%)、バイアス発生につながっていた。事前特定したアウトカムを評価していた試験の約4分の1は、解析がされていなかった(4/17試験、24%)。主要な所見の“傾向”は試験研究者の決定に影響を及ぼすが、集められたすべてのデータの解析はされていなかった。PubMedで無作為に選ばれた21試験のうち14試験(67%)では、有効性または有害事象のアウトカムについていずれかもしくはどちらも報告がされていなかった。また4分の1以上の試験(6/21試験、29%)にバイアスがあることが認められた。Smyth氏は、「不完全なアウトカム報告は高率に起きている。多くの試験研究者がすべてのアウトカムを報告しないこと、プロトコルの変更を報告しないことがエビデンスベースに与える影響について気づいていないようであった。特に臨床設定でのアウトカムの選択に注意するというコンセンサスの欠如が明白で、試験設計、実施、分析、報告に影響を及ぼしている」と結論している。

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妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。妊娠高血圧腎症の入院患者における重篤なアウトカムの予測モデル研究グループは、入院後48時間以内の妊娠高血圧腎症女性患者における死亡あるいは生命を脅かす合併症のリスクの同定を目的としたfullPIERSモデルを開発、検証するプロスペクティブな多施設共同試験を行った。対象は、妊娠高血圧腎症で三次産科施設に入院した女性あるいは入院後に妊娠高血圧腎症を発症した女性であった。対象としたアウトカムは妊産婦死亡あるいは妊娠高血圧腎症の重篤な合併症であった。これらの有害なアウトカムを予測するために、段階的変数減少重回帰(stepwise backward elimination regression)モデルを用いて、定期的に報告された変数の解析を行った。モデルのパフォーマンスは受信者動作特性(ROC)の曲線下面積(AUC)で評価し、過適合(overfitting)の評価には標準的なブートストラップ法を用いた。直接的な患者ケアの変更が可能に妊娠高血圧腎症患者2,023例のうち261例が、入院後に有害なアウトカムを発現した[入院後48時間以内の発現は106例(5%)]。有害な妊産婦アウトカムの予測因子として、妊娠期間、胸痛/呼吸困難、酸素飽和度、血小板数、クレアチニン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値が確認された。fullPIERSモデルは、入院後48時間以内の有害な妊産婦アウトカムの予測に有用であった(AUC ROC:0.88、95%信頼区間:0.84~0.92)。過適合は認めず、パフォーマンスは7日目まで良好であった(AUC ROC>0.7)。著者は、「fullPIERSモデルは、有害なアウトカムのリスクが高い妊娠高血圧腎症患者を、合併症発現前の7日間において同定し、その結果として分娩のタイミングやケアの場所を変えるなどの直接的な患者ケアの変更が可能となった」と結論し、「臨床試験のデザインの改善や、妊娠高血圧腎症関連の生物医学的研究に多くの情報もたらすことも可能にした」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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肺結核症にビタミンD補助薬は有効か?

肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリーのAdrian R Martineau氏らの検討で明らかとなった。抗生物質が普及する以前は、ビタミンDが結核症の治療に用いられており、その代謝産物はin vitroで抗マイコバクテリア免疫を誘導することが知られている。これまでに、ビタミンDが喀痰培養菌に及ぼす影響を評価した臨床試験はないという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載の報告。ビタミンD補助薬の喀痰培養陰転時間を評価する無作為化プラセボ対照試験研究グループは、ロンドン市在住の喀痰塗抹陽性肺結核症患者に対するビタミンD補助薬の効果を検討する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。146例が、ビタミンD3 2.5mgあるいはプラセボをそれぞれ4回(ベースライン、標準的な抗生物質治療開始後14、28、42日)投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、抗生物質治療開始から喀痰培養陰転までの期間とした。ビタミンD受容体であるTaqIおよびFokIの遺伝子多型解析を行い、ビタミンD受容体遺伝子型がビタミンD3に対する反応に及ぼす効果を評価するために相互作用解析を実施した。喀痰培養陰転時間に差はなし126例(ビタミンD群62例、プラセボ群64例)で主要評価項目の解析が可能であった。喀痰培養陰転までの期間の中央値は、ビタミンD群が36.0日、プラセボ群は43.5日であり、両群間に有意な差は認めなかった(補正ハザード比:1.39、95%信頼区間:0.90~2.16、p=0.14)。TaqI遺伝子型ではビタミンD補助薬が喀痰培養陰転時間に影響を及ぼしており(相互作用p=0.03)、TaqI tt遺伝子型で陰転時間の短縮効果が認められた(補正ハザード比:8.09、95%信頼区間:1.36~48.01、p=0.02)。FokI遺伝子型ではビタミンD補助薬の効果は認めなかった(相互作用p=0.85)。56日目における平均血清25-hydroxyvitamin D濃度は、ビタミンD群が101.4nmol/L、プラセボ群は22.8nmol/Lと有意な差が認められた(両群の差の95%信頼区間:68.6~88.2、p<0.0001)。著者は、「肺結核症に対する集中治療を受けている患者にビタミンD3 2.5mgを補助的に4回投与すると、血清25-hydroxyvitamin D濃度が増加した。全体としてビタミンDは喀痰培養陰転時間を短縮しなかったが、ビタミンD受容体TaqI遺伝子多型がtt遺伝子型の患者では有意な短縮効果が認められた」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その1

2歳未満の急性中耳炎について、即時に抗菌薬治療を行うべきか、それとも経過観察をすべきか、国によって勧告は異なっている。米国ピッツバーク大学小児科部門のAlejandro Hoberman氏らは、無作為化プラセボ対照試験の結果、生後6~23ヵ月の2歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)の10日間投与は、症状消失期間の短縮など短期的ベネフィットをもたらすと報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。7日間の症状スコア、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低い試験は、発症48時間以内で両親によるAOM-SOS(Acute Otitis Media Severity of Symptoms)スコア評価が3以上、中耳滲出液が認められ、中等度、鼓膜隆起、耳痛を伴う腫脹があるなど厳密な診断基準で急性中耳炎と診断された生後6~23ヵ月児291例を無作為に、10日間アモキシシリン-クラブラン酸を投与される群(144例)もしくはプラセボ投与群(147例)に割り付け、症状についての反応と臨床的失敗率を評価した。結果、初期症状の消失は、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の小児については、投与2日で35%に、4日までに61%、7日までに80%に認められた。一方プラセボ投与群では、初期症状の消失は2日で28%、4日で54%、7日で74%に認められるという結果であった(全体の比較のP=0.14)。症状の持続的な消失も同様の傾向が認められた。アモキシシリン-クラブラン酸投与群の小児については、投与2日で20%に、4日までに41%、7日までに67%に認められる一方、プラセボ投与群では、同14%、36%、53%であった(全体の比較のP=0.04)。治療7日間の症状スコアの平均値は、プラセボ群よりもアモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低かった(P=0.02)。厳密な基準で診断された患児への短期的ベネフィットは大きい臨床的な失敗(耳鏡検査で急性感染症の徴候の持続していることを確認)率も、プラセボ群と比べてアモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低かった。具体的には、4~5日もしくはそれ以前の受診時の失敗率は4%対23%(P<0.001)、10~12日もしくはそれ以前の受診時の失敗率は16%対51%(P<0.001)であった。有害事象については、乳様突起炎がプラセボ群で1例認められた。また、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が、下痢、おむつ皮膚炎が多くみられた。鼻咽頭の非感受性肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeの保菌率については、両群とも有意な変化は認められなかった。これら結果を受けてHoberman氏は、「重症度に関係なく、アモキシシリン-クラブラン酸の10日間投与は、相当な短期的ベネフィットをもたらす」と結論。その上で、「このベネフィットについては、有害事象だけでなく耐性菌出現のことも重視し、治療は厳密な基準で診断された患児に限定して行うことが強調される」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その2

急性中耳炎児への抗菌薬治療の有効性については、なお議論が続いている。フィンランド・トゥルク大学病院小児科部門のPaula A. Tahtinen氏らは、二重盲検無作為化試験の結果、3歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)投与は、プラセボと比べて有害事象は多いがベネフィットがあると報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。8日間の治療失敗62%低下、レスキュー治療の必要性81%低下試験は二重盲検無作為化試験で、(1)耳鏡検査で中耳滲出液が認められ隆起や可動性の喪失・制限など二つ以上の鼓膜所見があり、(2)鼓膜に紅斑など一つ以上の急性炎症性徴候が認められ、(3)発熱、耳痛など小児が急性症状を呈する、といった厳密な基準で急性中耳炎と診断された生後6~35ヵ月児319例を対象とした。被験児は、無作為に、7日間アモキシシリン-クラブラン酸を投与される群(161例)もしくはプラセボ投与群(158例)に割り付けられ、治療開始から終了までの8日間における治療失敗までの期間を主要転帰に評価が行われた。治療失敗の定義は、有害事象を含む小児の病態全般と耳鏡検査下での急性中耳炎の徴候とした。結果、治療失敗は、アモキシシリン-クラブラン酸投与群は18.6%であったが、プラセボ群は44.9%に認められた(P

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日本精神神経学会など「プライマリ・ケアおよび精神医療の専門性の認識に関する調査:国際比較研究」アンケートを実施

日本精神神経学会アンチスティグマ委員会が世界精神医学会と協力し、「精神科および精神科医に対するスティグマ‐国際比較研究」を実施中。アンケートに協力できるプライマリ・ケア医を募集している。この調査は、精神科医療と精神科医に対してプライマリ・ケア医が、どんな認識、思いを持っているかを調査するもの。精神疾患については、根拠のない情報が多く流れているが、プライマリ・ケア医との協働で精神疾患の診療にあたるため、それら偏見を評価し、正していく目的で実施される。以下、日本精神神経学会アンチスティグマ委員会より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プライマリ・ケアと精神医療の専門性は、世界的に、十分な認識が得られていないようです。世界家庭医療学会(WONCA)、世界精神医学会などと協力して、日本精神神経学会で、この問題に関するアンケートを行っています。調査のデータに基づいて、プライマリ・ケアと精神医療の専門性への認識を改善することが目的です。回答所要時間は、20分程度です。Webアンケートはこちらから(日本語版が用意されています)http://www.unipark.de/uc/Stigma_Psychiatrists/ご協力よろしくお願い致します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・※スティグマとは、本来烙印あるいは聖痕という意味であるが、今日では差別によって社会的不利益を被っている人達に課せられた烙印といった意味で用いられることが多いとこのこと。

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60歳以上帯状疱疹、ワクチン接種で発症リスクは55%低減

60歳以上の高齢者への帯状疱疹ワクチンの接種で、同発症リスクは55%低減することが明らかになった。米国医療保険医学グループSouthern California Kaiser PermanenteのHung Fu Tseng氏らが、7万5,000人超の帯状疱疹ワクチン接種集団と、22万人超の非接種集団について行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。帯状疱疹ワクチンの有効性について、日常診療現場レベルでの追跡試験はこれまでほとんど行われていないという。地域在住の30万人超について、1.5~1.7年追跡研究グループは、地域在住の免疫適格性60歳以上で、医療保険Kaiser Permanente Southern Californiaプランの加入者のうち、2007年1月1日~2009年12月31日にかけて帯状疱疹ワクチンの摂取を受けた7万5,761人と、その対照群として、同摂取を受けなかった年齢をマッチングした22万7,283人について追跡した。主要評価項目は帯状疱疹の発症率。被験者の平均年齢は、69.6歳だった。追跡期間の平均値は、ワクチン群が1.72年、対照群が1.56年であった。ワクチン接種群の帯状疱疹リスクは0.45倍、帯状疱疹による入院リスクは0.35倍に試験期間中、帯状疱疹を発症したのは5,434人だった。そのうちワクチン群は828人(延べ追跡期間13万415人・年)、対照群は4,606人(延べ追跡期間35万5,659人・年)であった。それぞれの発症率について比較すると、対照群13.0/1,000人・年(95%信頼区間:12.6~13.3)に対し、ワクチン群は6.4人/1000人・年(同:5.9~6.8)と、ワクチン群の発症リスクは半分以下になっていた(補正後ハザード比:0.45、同:0.42~0.48)。ワクチン接種による発症リスクの低減は、試験対象のすべての年齢層でみられ、また糖尿病などの慢性疾患を持つ人でも同様に認められた。ワクチン接種群の対照群に対する、眼部帯状疱疹発症に関するハザード比は0.37(同:0.23~0.61)、帯状疱疹による入院に関するハザード比は0.35(同:0.24~0.51)と摂取群で低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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カンデサルタン vs. ロサルタンの心不全患者死亡リスク

心不全患者に対する、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のカンデサルタン(商品名:ブロプレス)投与は、同じくARBのロサルタン(商品名:ニューロタン)投与と比べ、死亡リスクが0.7倍と低いことが示された。これまでの研究結果から左室駆出率が低下した心不全患者へのARB投与は、死亡・入院リスクを低減することは知られているものの、ARB同士で、その効果を直接比較した試験はこれが初めてという。スウェーデン、ストックホルムSouth Hospital循環器部門のMaria Eklind-Cervenka氏らが、5,000人超の心不全患者について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。カンデサルタンまたはロサルタン服用の5,139人を追跡研究グループは、2000~2009年に、スウェーデンの心不全患者レジストリ「Swedish Heart Failure Registry」に登録された3万254人のうち、カンデサルタンまたはロサルタンを服用する5,139人について追跡した。カンデサルタンを服用していたのは2,639人、ロサルタンを服用していたのは2,500人だった。被験者の平均年齢は74歳(SD 11)で、うち39%が女性だった。2009年12月14日まで追跡し、両群の1年・5年の総死亡率について比較した。死亡リスク、カンデサルタン群がロサルタン群の0.7倍1年生存率は、カンデサルタン群が90%(95%信頼区間:89~91)に対しロサルタン群が83%(同:81~84)、5年生存率はカンデサルタン群61%(同:54~68)に対しロサルタン群が44%(同:41~48)であった(ログランク検定P<0.001)。プロペンシティ・スコア補正後の多変量解析の結果、ロサルタン群のカンデサルタン群に対する死亡ハザード比は1.43(同:1.23~1.65、P<0.001)であった。逆に、カンデサルタン群のロサルタン群に対する同ハザード比は0.70だった。結果は、層別解析でも変わらなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。ルーチンのプライマリ・ケア・データを用いた前向きコホート試験研究グループは、心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデルを開発し、その妥当性を検証、評価するためのプロスペクティブなコホート試験を実施した。解析には、イングランドとウェールズの一般医(GP)563名からルーチンに登録されたQResearchデータベースのプライマリ・ケア・データを用いた。対象は、1994年1月1日~2010年4月30日までに登録された30~84歳の患者で、心血管疾患の既往歴がなく、スタチンの処方歴がない例とした(導出コホート:234万3,759例、検証コホート:126万7,159例 )。生涯リスクの推算に用いた因子は、喫煙状況、人種、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、BMI、冠動脈心疾患の家族歴(60歳未満で発症した一親等内の親族の有無)、Townsend貧困スコア、治療中の高血圧、関節リウマチ、慢性腎疾患、2型糖尿病、心房細動であった。生涯リスクに基づく介入が有益か否かは、さらなる検討を要する検証コホート126万7,159例のデータセットの解析では、生涯リスクが50パーセンタイルの場合の心血管疾患の生涯リスクは31%であり、75パーセンタイルの場合は39%、90パーセンタイルでは50%、95パーセンタイルでは57%であった。検証コホートにおいて生涯リスクモデルあるいは10年リスクモデルのいずれかでリスクが最上位の10%に相当すると判定された例のうち、双方のモデルのどちらもが高リスクと判定した例は14.5%(1万8,385例)にすぎなかった。10年リスクモデルで高リスクと判定された例に比べ、生涯リスクモデルで高リスクと判定された患者は、より若く、少数民族に属する例が多く、冠動脈心疾患の家族歴を有する傾向が強かった。著者は、「新たなQRISKの生涯リスクスコアを用いれば、QRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定が可能になる」と結論する一方で、「より若い年代でのライフスタイルへの介入は有益な可能性があるが、65歳未満ではその恩恵は小さく、薬物による介入には薬物そのもののリスクが伴う。今後、生涯リスクスコアに基づく介入の費用効果や、このアプローチが許容可能か否かにつき、詳細な検討を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ビタミンB類、ω-3脂肪酸は、心血管疾患を予防しない:SU. FOL. OM3試験

 虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者における心血管疾患の予防では、ビタミンB類やオメガ(ω)-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されないことが、フランス・パリ第13大学衛生医学研究所(INSERM)のPilar Galan氏らが実施した「SU. FOL. OM3」試験で示された。心血管疾患の発症は、ビタミンB類(葉酸、ビタミンB6)やω-3多価不飽和脂肪酸の摂取あるいはその血漿濃度と逆相関を示すことが観察試験で報告されている。しかし、無作為化試験ではビタミンB類の血管疾患に対する有意な作用は確認できず、ω-3多価不飽和脂肪酸の臨床試験では相反する結果が得られているという。BMJ誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月29日号)掲載の報告。サプリメント摂取による2次予防効果を評価するプラセボ対照試験 研究グループは、虚血性心疾患あるいは虚血性脳卒中の既往歴を有する患者に対するサプリメントとしてのビタミンB類およびω-3脂肪酸の、心血管イベント予防効果を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。 フランスの257施設417名の循環器、神経科などの医師のネットワークを介して、45~80歳の心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性脳卒中の既往歴を有する患者2,501例が登録された。 これらの患者が、5-メチルテトラヒドロ葉酸(560μg)、ビタミンB6(3mg)、ビタミンB12(20μg)を含むサプリメントを毎日摂取する群(622例)、ω-3脂肪酸(600mg中にエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を2対1の割合で含有)を含むサプリメントを毎日摂取する群(633例)、双方を摂取する群(620例)、プラセボ群(626例)に無作為に割り付けられた。 摂取期間中央値は4.7年であった。主要評価項目は主な心血管イベントであり、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡の複合エンドポイントと定義した。いずれのサプリも、主要評価項目にプラセボ群との差を認めず ビタミンB類群は、血漿ホモシステイン濃度がプラセボ群に比べ19%低下したが、重篤な血管イベントの発症頻度には差を認めなかった(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.66~1.23、p=0.50)。 ω-3脂肪酸群は、血漿ω-3脂肪酸濃度がプラセボ群に比し37%増加したが、重篤な血管イベントの発症頻度は同等であった(ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.79~1.47、p=0.64)。 著者は、「虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者の心血管疾患の予防において、ビタミンB類やω-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されない」と結論し、「特に、初回イベントの急性期が経過した後にサプリメントを開始する際、これらは使用すべきでない」としている。

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薬局、薬剤師を処方せん薬以外の問い合わせ先として利用したい人は3割

株式会社ネグジット総研と株式会社QLifeは17日、2社共同で薬局における疾患啓発と相談機能に関する薬剤師と患者のギャップについて実施した調査結果を発表した。調査対象は、QLife が運営する病院口コミサイト(http://www.qlife.jp/)に登録している患者(定期的に通院している一般生活者)500名と、薬局に勤務する薬剤師200名。計700名に、薬局に対する患者側の認識と薬剤師の取り組み状況について、Web上でアンケートを行った。それによると9割以上の薬剤師は受診勧奨を取り組むべき活動であると考えているが、患者側は処方せん薬以外の問い合わせ窓口として利用したいと考えていると回答した人は3割程度と大きな開きがあることが確認できたという。また、受診勧奨はについては8割の薬剤師が経験し、9割以上が取り組むべき活動であると考えているとのこと。その取り組み要因として「患者サービス」と「薬剤師としての職能発揮」の 2つがあることがわかった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/1859.html

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ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況:34ヵ国106施設の調査から

 ヨーロッパにおけるClostridium difficileの分離株は、北米で多いとされるPCRリボタイプ027よりも014/020、001、078、018、106の頻度が高く、重篤な病態のアウトカムと関連するPCRリボタイプとして018や056が重要なことが、オランダ感染症制御センターのMartijn P Bauer氏らによる調査で明らかとなった。2003年初め、カナダとアメリカでC. Difficile感染の増加と病態の重篤化が報告され、その一因としてPCRリボタイプ027に属するフルオロキノロン系抗菌薬抵抗性株の蔓延が指摘されている。ヨーロッパでは、2005年にイギリスから初めて027の報告がなされ、直後にオランダでも発見されたが、C. Difficileの院内感染の実態はほとんどわかっていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。C. Difficilee感染の現況を把握し、診断能向上、サーベイランスの確立を目指す研究グループは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況を把握し、診断能の向上およびサーベイランスの確立を目的とした調査を実施した。ヨーロッパ34ヵ国106検査施設を結ぶネットワークを創設した。2008年11月、人口規模に応じて選定された各国1~6施設において、C. Difficile感染が疑われる患者、あるいは入院後3日以上経過してから下痢を発症した患者の糞便検査を行った。糞便サンプル中にC. Difficileトキシンが検出された場合にC. Difficile感染と診断した。詳細な臨床データや糞便サンプルからの分離株は、各施設の最初の10例から収集し、3ヵ月後に臨床データのフォローアップを行った。死亡例の40%にC. Difficile感染が関与C. Difficile感染の発生率は、1施設10,000人・年当たりの加重平均値が4.1、範囲は0.0~36.3であり、施設間のばらつきがみられた。詳細な情報が得られた509例のうち389例で分離株の微生物学的特性が確認され、65のPCRリボタイプが同定された。そのうち最も多かったのはPCRリボタイプ014/020の61例(16%)で、次いで001が37例(9%)、078が31例(8%)の順であった。高頻度かつ予後不良とされるPCRリボタイプ027は19例(5%)と少なかった。ほとんどが、高齢、併存疾患、直近の抗生物質の使用歴などのリスク・プロファイルが事前に同定されている患者であった。3ヵ月後のフォローアップの時点で、22%(101/455例)が死亡しており、そのうち40%(40例)においてC. Difficile感染が何らかの形で関与していた。交絡因子を補正後に「重篤な病態(complicated disease、C. Difficile感染がICU入院や死亡に寄与あるいは直接の原因である場合、もしくは結腸切除術導入の理由である場合)」のアウトカムと有意な関連を示した因子として、65歳以上(補正オッズ比:3.26、95%信頼区間:1.08~9.78、p=0.026)、PCRリボタイプ018感染(同:6.19、同:1.28~29.81、p=0.023)、同056感染(同:13.01、同:1.14~148.26、p=0.039)が確認された。著者は、「ヨーロッパでは027以外のPCRリボタイプのC. Difficileの院内感染の頻度が高かった。これらのデータは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の検出とそのコントロールには、多数の国によるサーベイランスが重要であることを浮き彫りにするものである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。アスピリン治療が平均4年以上の無作為化試験が対象研究グループは、血管イベントの予防効果に関してアスピリンと対照を比較した無作為化試験の、試験期間中および試験後のがん死について調査を行った。平均治療期間が4年以上にわたるアスピリン常用(毎日服用)例とアスピリン非服用例を比較した無作為化試験の個々の患者データを用い、予定治療期間との関連において消化器がんまたは非消化器がんによる死亡のリスクに及ぼすアスピリンの効果を評価した。イギリスの3つの大規模試験では、死亡診断書およびがんレジストリーから、個々の患者の試験終了後の長期フォローアップ・データが得られ、これを用いて20年がん死リスクの評価を行った。日本のJPAD試験を含む8試験、約2万5,500例の解析で、がん死リスクが21%低下適格基準を満たした8つの試験(BDAT、UK-TIA、ETDRS、SAPAT、TPT、JPAD、POPADAD、AAA試験に参加した2万5,570例、がん死674例)では、アスピリン群でがん死が有意に低下していた[オッズ比:0.79(95%信頼区間:0.68~0.92)、p=0.003]。SAPAT試験を除く7試験(2万3,535例、がん死657例)から得られた個々の患者データの解析では、明確なアスピリンのベネフィットはフォローアップ期間が5年を経過した後に認められた[全がんのハザード比:0.66(95%信頼区間:0.50~0.87)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.46(95%信頼区間:0.27~0.77)、p=0.003]。20年間にがんで死亡するリスク(3試験の1万2,659例、死亡1,634例)はアスピリン群が対照群に比べて有意に低く[全固形がんのハザード比:0.80(95%信頼区間:0.72~0.88)、p<0.0001、消化器がんのハザード比:0.65(同:0.54~0.78)、p<0.0001]、ベネフィットは治療期間が長くなるに従って増大した[治療期間≧7.5年における全固形がんのハザード比:0.69(95%信頼区間:0.54~0.88)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.41(同:0.26~0.66)、p=0.0001]。死亡リスクの抑制効果が現れるまでの治療期間は、食道がん、膵がん、脳腫瘍、肺がんが約5年であったが、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんではさらに長期間を要した。肺がんと食道がんではベネフィットは腺がんに限られ、全体の20年がん死リスクの抑制効果は腺がんで最も大きかった[ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.56~0.77)、p<0.0001]。ベネフィットはアスピリンの用量(75mg超)、性別、喫煙状況とは関連しなかったが、無作為割り付け時の年齢が高いほど改善され、20年がん死の絶対リスクの低下率は55歳未満が1.41%、55~64歳が4.53%、65歳以上は7.08%に達しており、全体では3.49%であった。著者は、「低用量アスピリンの毎日服用により、試験期間中および終了後において、いくつかの主要ながんによる死亡が抑制された。ベネフィットは治療期間が長くなるほど増大し、個々の試験を通じて一貫していた」と結論し、「これらの知見は、アスピリンの使用ガイドラインや、発がんおよび薬剤に対するがんの感受性のメカニズムの解明において重要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児期てんかん発症者の長期死亡率は一般集団の3倍

小児期にてんかんを発症した人の死亡率は、一般集団死亡率と比べて3倍高く、てんかんに関連した死亡リスクが55%を占めることが明らかになった。フィンランド・トゥルク大学病院小児神経科部門のMatti Sillanpaa氏らによる住民ベースのコホート研究の結果による。これまで、小児期にてんかんを診断された患児の長期死亡率を前向きに追跡した研究はほとんど行われていなかった。NEJM誌2010年12月23日号掲載より。フィンランドの小児245例を40年間追跡Sillanpaa氏らは、小児期にてんかんと診断されたフィンランド居住の患者の長期死亡率を調査した。被験者は、1964年に診断された245例(16歳未満)で、40年間追跡し、発作の転帰と死亡率(原因不明の突然死も含む)を評価した。評価は、集団剖検率が非常に高く、ほぼ全例において特異的診断が可能だった。遠隔症候性てんかん例の死亡率は37%結果、追跡40年間での死亡は60例(24%)で、死亡率は一般集団の予測される年齢・性補正後死亡率の3倍であった。死亡60例のうち、てんかん関連の死亡は33例(55%)を占めた。内訳は、原因不明の突然死が18例(30%)、発作確定例・ほぼ確定例が9例(15%)、不慮の溺死例6例(10%)だった。5年終末期寛解(例:死亡・最終追跡調査時に5年以上発作がなかった)を得られなかった被験者は107例いた。そのうち死亡は51例(48%)だった。また遠隔症候性てんかん例(例:事故などで脳が重大な神経障害・損傷を負い、いったん脳が安定後、自発的におきる発作例)においても、特発性・潜因性てんかん例と比べて死亡リスクの増大が認められた(37%対12%、P<0.001)。なお14歳未満の特発性・潜因性てんかん被験者で、原因不明の突然死例はなかった。(武藤まき:医療ライター)

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