ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況:34ヵ国106施設の調査から

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/01/20

 

 ヨーロッパにおけるClostridium difficileの分離株は、北米で多いとされるPCRリボタイプ027よりも014/020、001、078、018、106の頻度が高く、重篤な病態のアウトカムと関連するPCRリボタイプとして018や056が重要なことが、オランダ感染症制御センターのMartijn P Bauer氏らによる調査で明らかとなった。2003年初め、カナダとアメリカでC. Difficile感染の増加と病態の重篤化が報告され、その一因としてPCRリボタイプ027に属するフルオロキノロン系抗菌薬抵抗性株の蔓延が指摘されている。ヨーロッパでは、2005年にイギリスから初めて027の報告がなされ、直後にオランダでも発見されたが、C. Difficileの院内感染の実態はほとんどわかっていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。

C. Difficilee感染の現況を把握し、診断能向上、サーベイランスの確立を目指す
研究グループは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況を把握し、診断能の向上およびサーベイランスの確立を目的とした調査を実施した。

ヨーロッパ34ヵ国106検査施設を結ぶネットワークを創設した。2008年11月、人口規模に応じて選定された各国1~6施設において、C. Difficile感染が疑われる患者、あるいは入院後3日以上経過してから下痢を発症した患者の糞便検査を行った。

糞便サンプル中にC. Difficileトキシンが検出された場合にC. Difficile感染と診断した。詳細な臨床データや糞便サンプルからの分離株は、各施設の最初の10例から収集し、3ヵ月後に臨床データのフォローアップを行った。

死亡例の40%にC. Difficile感染が関与
C. Difficile感染の発生率は、1施設10,000人・年当たりの加重平均値が4.1、範囲は0.0~36.3であり、施設間のばらつきがみられた。

詳細な情報が得られた509例のうち389例で分離株の微生物学的特性が確認され、65のPCRリボタイプが同定された。そのうち最も多かったのはPCRリボタイプ014/020の61例(16%)で、次いで001が37例(9%)、078が31例(8%)の順であった。高頻度かつ予後不良とされるPCRリボタイプ027は19例(5%)と少なかった。ほとんどが、高齢、併存疾患、直近の抗生物質の使用歴などのリスク・プロファイルが事前に同定されている患者であった。

3ヵ月後のフォローアップの時点で、22%(101/455例)が死亡しており、そのうち40%(40例)においてC. Difficile感染が何らかの形で関与していた。交絡因子を補正後に「重篤な病態(complicated disease、C. Difficile感染がICU入院や死亡に寄与あるいは直接の原因である場合、もしくは結腸切除術導入の理由である場合)」のアウトカムと有意な関連を示した因子として、65歳以上(補正オッズ比:3.26、95%信頼区間:1.08~9.78、p=0.026)、PCRリボタイプ018感染(同:6.19、同:1.28~29.81、p=0.023)、同056感染(同:13.01、同:1.14~148.26、p=0.039)が確認された。

著者は、「ヨーロッパでは027以外のPCRリボタイプのC. Difficileの院内感染の頻度が高かった。これらのデータは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の検出とそのコントロールには、多数の国によるサーベイランスが重要であることを浮き彫りにするものである」と結論している。

(菅野守:医学ライター)