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健康高齢男性で筋力アップするテストステロン、運動制限を有する人では?

健康な高齢男性では、テストステロン・サプリメントによって筋量・筋力がアップすることが明らかになっている。米国ボストン大学医療センター内分泌・糖尿病・栄養学部門のShehzad Basaria氏らは、これまで検討されていなかった、運動制限を有する高齢男性を対象にテストステロン補充療法の安全性と有効性について試験を行った。結果、心血管有害事象の増大が認められたと報告した。ただし試験規模が小さかったこと、対象者の特性(慢性疾患有病者が多かった)に留意すべきとコメントもしている。NEJM誌2010年7月8日号(オンライン版2010年6月30日号)掲載より。プラセボ対照試験、有害心血管イベント発生率が有意に高く早期中止に試験は、地域居住の65歳以上男性で、運動制限があり、血清総テストステロン値100~350ng(3.5~12.1nmol/L)もしくは血清遊離テストステロン値50pg/mL(173pmol/L)未満の人を対象に、無作為に、プラセボかテストステロンのゲル剤塗布を毎日、6ヵ月間受けるよう割り付け行われた。有害事象は、MedDRAに基づき分類集計された。試験登録は2005年9月~2009年12月まで。プラセボ投与群に比べテストステロン投与群での有害心血管イベント発症率が有意に高値であることが認められたため、試験データ・安全性モニタリング委員会の勧告で、同年末をもって早期中止となった。筋力、運動機能は改善試験終了までに登録されたのは合計209例(平均年齢74歳)だった。被験者(テストステロン群106例、プラセボ群103例)は、基線で、高血圧(同:85%、78%)、糖尿病(24%、27%)、高脂血症(63%、50%)、肥満(45%、49%)を有している人が多かった。試験中、プラセボ群に比べテストステロン群は、心臓・呼吸器・皮膚に関するイベント発生率が高かった。心血管関連の有害イベント発生は、プラセボ群では5例だったが、テストステロン群は23例で起きた。相対リスクは、6ヵ月の治療期間を通じて一定していた。プラセボ群と比べてテストステロン群は、レッグプレスやチェストプレスの筋力、重しを抱えての階段昇降が改善された。(医療ライター:武藤まき)

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角膜再生医療における細胞治療の長期臨床成績

角膜再生医療に関して、患者本人の角膜輪部幹細胞の培養組織を移植する細胞治療の長期臨床成績(最高10年)が報告された。約8割近くで角膜上皮再生の永久修復が確認されたという。角膜の表面を覆う「上皮」は再生と修復を繰り返し透明度を保つが、それに寄与するのが角膜と眼球結膜の間にあるごく狭い角膜輪部の幹細胞である。眼熱傷などを受けるとこの角膜輪部が損傷を受け、角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)が生じる可能性が高く、たとえばドナー提供の角膜移植を行っても角膜輪部が損傷されたままだと再移植が必要になる。本治験報告は、イタリア・San Raffaele Scientific InstituteのPaolo Rama氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年7月8日号(オンライン版2010年6月23日号)に掲載された。角膜損傷患者112例に自家角膜輪部幹細胞治療Rama氏らは、角膜損傷患者112例に対してフィブリン培養の自家角膜輪部幹細胞を用いた治療を行った。患者の大半は、熱傷LSCDを有していた。臨床成績は、Kaplan-Meier法、Kruskal-Wallis法、一変量または多変量ロジスティック回帰分析法で評価された。また、臨床アウトカムは、ホロクローン形成幹細胞の割合によっても評価が行われた。ホロクローン形成幹細胞は、培養細胞中にp63 bright細胞として強く染色される。透明な角膜上皮再生の永久修復76.6%で確認結果、透明な角膜上皮再生の永久修復は、76.6%で確認された。治療失敗は、治療後1年以内に起きていた。一方、最長追跡期間10年の間中、回復した眼球は安定していた(追跡期間平均:2.91±1.99年、中央値:1.93年)。事後解析から、ドナー移植角膜に正常上皮が形成した成功例と、培養細胞中のp63 brightホロクローン形成幹細胞の割合との関連が認められた。p63 bright細胞が、全クローン原性細胞数の3%を超えると、78%で移植が成功していた。一方で3%以下の場合はわずか11%だった。また再生失敗は、最初の眼球損傷の程度や術後の合併症とも関連していた。(医療ライター:武藤まき)

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早期乳がんの放射線治療、温存術中のターゲット単回照射が有用:TARGIT-A試験

早期乳がんの中には、術後数週にわたる外部照射よりも、術中に腫瘍床を標的とする単回照射法が有効な患者が存在することが、イギリスUniversity College London外科研究部門のJayant S Vaidya氏らが実施した無作為化試験(TARGIT-A試験)で明らかとなった。乳がんは乳房のどこにでも発現しうる多中心的ながんであるが、乳房温存術施行後の局所再発の90%は指標とされる四分区内に起こる。それゆえ、術中の腫瘍床に限定した放射線照射が妥当な患者が存在する可能性があるという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月5日号)掲載の報告。従来の術後外部照射と術中ターゲット照射を比較する前向きの非劣性試験TARGIT-A試験の研究グループは、Intrabeam法を用いた新技術である術中ターゲット放射線の単回照射治療と、従来の全乳房に対する外部照射法の有用性を比較するプロスペクティブな無作為化非劣性試験を実施した。登録は2000年3月に開始され、9ヵ国28施設が参加した。対象は、乳房温存術を施行された45歳以上の浸潤性乳管がんの女性であった。これらの患者が、術中ターゲット照射群あるいは全乳房外照射群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者にも担当医にも知らされなかった。術後に所定の因子(小葉がんなど)が発見された場合は、術中ターゲット照射に加え外部照射を併用することとした(15%がこれに相当すると予測した)。主要評価項目は、温存乳房における局所再発率とした。主要評価項目の絶対差2.5%を所定の非劣性限界値とした。局所再発率の絶対差は0.25%、grade 3の放射線毒性は術中照射群が少ない術中ターゲット照射群には1,113例が割り付けられ、評価が可能であった996例のうち術中ターゲット照射のみを施行された患者は854例(86%)、外部照射を追加されたのは142例(14%)であった。外部照射群には1,119例が割り付けられ1,025例が評価可能であった。術後4年の時点で、術中ターゲット照射群の6例、外部照射群の5例が局所再発をきたした。4年時点におけるKaplan-Meier法による温存乳房の局所再発率は、術中ターゲット照射群が1.20%(95%信頼区間:0.53~2.71%)、外部照射群は0.95%(同:0.39~2.31%)であった。両群間の差は0.25%(同:-1.04~1.54)であり、有意差は認めず同等であった(p=0.41)。重篤な毒性の頻度は術中ターゲット照射群が3.3%(37/1,113例)、外部照射群は3.9%(44/1,119例)と両群で同等であり(p=0.44)、合併症の頻度にも差は認めなかった。grade 3(Radiation Therapy Oncology Group)の放射線毒性の頻度は術中ターゲット照射群が0.5%(6/1,113例)と、外部照射群の2.1%(23/1,119例)に比べて有意に低かった(p=0.002)。著者は、「早期乳がんの中には、術後の数週にわたる外部照射に代わり術中ターゲット照射法を用いた手術時の単回放射線照射が有効な患者がいることを考慮すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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脳卒中の90%は、10のリスク因子に起因:INTERSTROKE試験

脳卒中リスクの約90%が10のリスク因子に起因し、降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の世界的負担は実質的に低減しうることが、カナダMcMaster大学地域健康調査研究所のMartin J O’Donnell氏らが実施した症例対照研究で示された。脳卒中は世界第2位の死亡原因であり、ほとんどの地域では成人の後天性身体障害の主要原因である。一方、脳卒中の世界的負担に対して種々のリスク因子がどの程度寄与しているかは不明であり、特に低~中収入国における調査が遅れているという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月18日号)掲載の報告。リスク因子と脳卒中との関連、疾病負担への寄与の程度などを評価INTERSTROKE試験の研究グループは、既知の緊急を要するリスク因子と脳卒中の主なサブタイプの関連を明らかにし、これらのリスク因子が脳卒中の負担にどの程度寄与するかを評価し、さらに脳卒中と心筋梗塞のリスク因子の違いを探索的に検討することを目的に、大規模な標準化症例対照研究を実施した。2007年3月1日~2010年4月23日までに、低~中収入国を中心とする22ヵ国84施設から初回急性脳卒中(症状発現後5日以内、入院後72時間以内)の症例および年齢と性別をマッチさせた脳卒中の既往歴のない対照が登録された。すべての参加者が質問票に回答して身体検査を受け、ほとんどが血液および尿のサンプルを提供した。脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中と個々のリスク因子の関連の指標として、オッズ比(OR)および人口寄与リスク(PAR)を算出した。虚血性脳卒中は10項目すべてが、出血性脳卒中は5項目が有意なリスク因子試験開始からの累積症例数が3,000例[虚血性脳卒中2,337例(78%)、出血性脳卒中663例(22%)]となった時点で、対照3,000人とともに解析を行ったところ、有意差を認めた脳卒中のリスク因子は以下の10項目であった。(1)高血圧の既往歴[OR:2.64、99% 信頼区間(CI):2.26~3.08、PAR:34.6%、99% CI:30.4~39.1](2)喫煙(OR:2.09、99% CI:1.75~2.51、PAR:18.9%、99% CI:15.3~23.1)(3)ウエスト/ヒップ比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.65、99% CI:1.36~1.99、PAR:26.5%、99% CI:18.8~36.0)(4)脳卒中に関連する食事のリスクスコア(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.35、99% CI:1.11~1.64、PAR:18.8%、99% CI:11.2~29.7)(5)規則的な身体活動(OR:0.69、99% CI:0.53~0.90、PAR:28.5%、99% CI:14.5~48.5)(6)糖尿病(OR:1.36、99% CI:1.10~1.68、PAR:5.0%、99% CI:2.6~9.5)(7)アルコール摂取[月に30杯以上飲酒する者あるいは大酒飲み(月に1回以上、5杯以上飲酒する日がある者)のOR:1.51、99% CI:1.18~1.92、PAR:3.8%、99% CI:0.9~14.4](8)社会心理的ストレス(OR:1.30、99% CI:1.06~1.60、PAR:4.6%、99% CI:2.1~9.6)およびうつ病(OR:1.35、99% CI:1.10~1.66、PAR:5.2%、99% CI:2.7~9.8)(9)心臓の原因(OR:2.38、99% CI:1.77~3.20、PAR:6.7%、99% CI:4.8~9.1)(10)アポリポ蛋白B/A1比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.89、99% CI:1.49~2.40、PAR:24.9%、99% CI:15.7~37.1)これらのリスク因子を合わせると、全脳卒中のPARの88.1%(99% CI:82.3~92.2)を占めた。高血圧の定義を「高血圧の既往歴あるいは>160/90mmHg」に変更すると、全体のPARは全脳卒中の90.3%(99%CI:85.3~93.7)に達した。虚血性脳卒中ではこれら10項目がいずれも有意なリスク因子であったのに対し、出血性脳卒中の有意なリスク因子は高血圧、喫煙、ウエスト/ヒップ比、食事、アルコール摂取の5つであった。これらのデータをふまえ、著者は「脳卒中リスクの約90%が、10のリスク因子によって起こることが示唆される。降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の負担は実質的に低減する可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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QLifeがレセプトデータを根拠とした「処方実績」データを提供開始

株式会社QLifeは14日、同社が運営する薬剤検索サイト『QLifeお薬検索』(http://www.qlife.jp/meds/)上で「処方実績の多い疾患」の表示を開始した。これは、「この薬は、どんな疾患の治療目的で使われることが多いか」を具体的根拠データを基に紹介するもの。特に、各疾患(「標準病名」を使用)において処方実績が多い1位、2位、3位までについては具体的に順位が表示される。4位以降の順位は表示されず、「半期前のデータに比べた時の処方増減」のみを「↑」「→」「↓」(矢印)で表示されるようになっている。これまでも同サイトでは、薬剤ごとに「適応疾患のうち主なもの」を案内していた。同社は今後、「実際に使用されている主要疾患の全て」を実績データを基に表示し、より医療現場の実態を反映した情報提供を行うとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/1293.html

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シード・プランニング、「2010年版 製薬企業の生産体制とアウトソーシングの動向調査」を発刊

株式会社シード・プランニングは14日、主要製薬企業各社の生産体制、アウトソーシングの状況等、最近3年間の変化をまとめた「2010年版 製薬企業の生産体制とアウトソーシングの動向調査」を発刊したことを発表した。今回のレポートは2008年版(2008年2月25日刊)の改訂版として出され、掲載企業数は40社から50社に増え、各社の生産体制、アウトソーシング状況等、最近3年間の変化がまとめられている。レポートには、主に「製薬企業各社は2005年4月の新薬事法施行などを受け、生産体制を見直し、再編・分社化を推し進めてきた。アステラス製薬や第一三共は自社工場をすべて分社化し、関連会社の再編も行なっている。また、エーザイがインドに原薬・製剤の生産、研究拠点を設け、武田薬品工業はアイルランドでの原薬生産拠点を一元管理体制にするなど、グローバルな視点で生産体制を最適化させる動きもみられた。また、生産拠点の統廃合に加え、製造をアウトソーシングすることでコストを低減させ、効率的な生産体制の構築を目指す動きに並行して、生産の品質保証・品質管理体制の強化が進められている。」などといったことが書かれている。詳細はプレスリリースへhttp://www.seedplanning.co.jp/press/2010/2010071401.html

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メタボや動脈硬化などの病態解明へ期待 生体内脂質を自動同定するソフトウェア「Lipid Search」販売開始

東京大学大学院医学系研究科田口研究室と三井情報株式会社は14日、共同で大量の質量分析データから生体内脂質分子を一括し自動同定する脂質同定ツール「Lipid Search」の開発に成功したことを発表した。このツールはMKIよりパッケージソフト「Lipid Search」として、脂質解析の研究へ取り組む製薬メーカーや食品メーカー向けに同日より販売を開始した。近年の質量分析技術の発展により、生体内脂質の一斉同時解析が可能となり、豊富な実験データが得られるようになった。この資質同定ツールはm脂質を対象とした大量の質量分析データを直接読込み、試料中に含まれる脂質を一括して同定、解析する。このソフトウェアはWebアプリケーション形式で、以下の4種類のコンポーネントとこれらコンポーネントを操作するWebインタフェースから構成されているという。今回の技術開発を同社らは「核酸や蛋白質だけでは説明できない複雑な生命現象の解明や、メタボリックシンドロームや動脈硬化などの脂質関連疾患の病態解明、病態の進行度や生活改善の指標となるマーカー探索が飛躍的に加速すると期待されている」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.mki.co.jp/service_news/service_news_2010/100714_01.html

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変形性腰椎症を伴う慢性腰痛へのグルコサミン投与、痛みの日常生活への影響を改善せず

変形性腰椎症を伴う慢性腰痛に対しグルコサミンを6ヵ月投与したが、日常生活の痛みの改善に効果は認められなかったことが、ノルウェーのオスロ大学病院のPhilip Wilkens氏らが行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにされた。グルコサミンを服用する腰痛患者は少なくないが、変形性腰椎症を伴う慢性腰痛に対する効果についての研究は、これまでほとんど行われていなかった。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。グルコサミンを6ヵ月投与、RMDQスコアやQOLスコアを比較同氏らは、変形性腰椎症を伴う慢性腰痛で25歳以上の患者、合わせて250人を無作為に2群に分け、一方には経口グルコサミン1,500mg/日を、もう一方にはプラセボを、6ヵ月にわたり投与した。試験開始後、6週間、3ヵ月、6ヵ月、1年後に、その効果について調査を行った。主要アウトカムは、痛みの日常生活に与える影響についての尺度であるRoland Morris Disability Questionnaire(RMDQ)スコアだった。副次アウトカムは、安静時・運動時の痛みのスコアと、生活の質(QOL)の尺度であるEuroQol-5 Dimensions(EQ-5D)スコアだった。6ヵ月、1年後ともに両群で有意差なし試験開始時のRMDQスコアの平均値は、グルコサミン群9.2、プラセボ群9.7と、両群で有意差はなかった(p=0.37)。試験開始6ヵ月後のRMDQスコアの平均値も、グルコサミン群とプラセボ群ともに、5.0(95%信頼区間:4.2~5.8)だった。試験開始1年後も、RMDQスコアの平均値はグルコサミン群が4.8(同:3.9~5.6)、プラセボ群が5.5(同:4.7~6.4)と同等だった。また試験開始6ヵ月後から1年後にかけての変化についても、RMDQスコア(p=0.72)、安静時の腰痛スコア(p=0.91)、運動時の腰痛スコア(p=0.97)、QOLに関するEQ-5Dスコア(p=0.20)のいずれについても、両群で有意差はみられなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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【お知らせ】脳腫瘍啓発セミナー「もっと知りたい脳腫瘍のこと」 参加者募集

 NPO法人キャンサーネットジャパンは、7月25日(日)「もっと知りたい脳腫瘍のこと」と題し脳腫瘍啓発セミナーを開催する。脳腫瘍全般の解説、最新の治療方法、予後や闘病生活などについて、脳腫瘍治療の拠点病院の医師らを中心に、治療の現状と進歩について正しい知識と情報を提供する。医療者の参加も募集中とのこと。 以下キャンサーネットジャパンより。 脳腫瘍の発生頻度は腫瘍全体のわずか3%程度。しかし、発生部位や病態病理も多種多様で最近の脳腫瘍分類では診断名が約150種類とも言われています。神経膠腫、胚細胞腫、頭蓋内悪性リンパ腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、そして転移性脳腫瘍。これらは全て脳腫瘍の病名ですが、どれも初めて聴く患者にとっては俄かに理解が難しい病気です。さらに成人と発育途中の小児の脳腫瘍では、その診断や治療が大きく異なる場合があり、治療には成人とは別の知識と技術を必要とします。このセミナーでは、脳腫瘍全般の解説、最新の治療方法、予後や闘病生活などについて、脳腫瘍治療の拠点病院の医師らを中心に、治療の現状と進歩について正しい知識と情報を提供します。・開催日:2010年7月25日(日) 12:15(開場11:45)-16:20・場所:東京ウィメンズプラザ ホール・参加費:1,000(キャンサーネットジャパン会員は無料)プログラム12:15~12:25セミナー開会挨拶 NPO法人キャンサーネットジャパン 柳澤 昭浩12:25~12:45<基調講演1> 「脳腫瘍総論」講師:国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科 成田 善孝12:45~13:15<基調講演2>「脳腫瘍の手術とは?」講師:東京女子医科大学病院 脳神経外科 村垣 善浩13:30~13:55<基調講演3>「脳腫瘍の化学療法とは?」講師:成田 善孝13:55~14:25<基調講演4>「脳腫瘍の放射線療法とは?」講師:筑波大学附属病院 脳神経外科 山本 哲哉

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制酸薬服用は術後肺炎リスクを増大しない

術後高齢患者への制酸薬服用と肺炎リスク増大には、関連が認められないことが報告された。カナダ・トロント大学のDonald A Redelmeier氏らが行った住民ベースの後ろ向きコホート解析による。BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月21日号)に掲載された。これまでICU患者を対象とした二つの大規模試験で、制酸薬服用患者の肺炎発症率は2~3倍増大すると報告される一方、市中肺炎発症に関する調査では相反する結果が得られていた。制酸薬は世界中で最もポピュラーに処方されており、また処方なしで買い求められることもあり、刊行されているガイドラインでは、リスクについての大規模な調査が必要であると提言していた。手術入院歴の65歳超約59.3万人を分析、21%が制酸薬を服用研究グループは、制酸薬服用と術後肺炎リスク増大との関連を調べるため、1992年4月1日~2008年3月31日の間、カナダの急性期病院に待機的手術のため入院した65歳超の患者59万3,265例を対象とした。主要評価項目は、術後肺炎の記録だった。被験者のうち、制酸薬を服用していた人(ケース群)は約21%で、主としてオメプラゾール(商品名:オメプラールなど)やラニチジン(同:ザンタックなど)を服用していた。服薬群の非服薬群に対する補正後発症リスクは1.02倍術後肺炎を呈した人は全体で6,389例いた。発症頻度は、ケース群(13/1,000例)の方がコントロール群(制酸薬非服用群、10/1,000例)と比べて高かった。ケース群の頻度増大は30%増だった(オッズ比:1.30、95%信頼区間:1.23~1.38、P

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妊娠中の携帯電話基地局からの電磁波曝露、0~4歳小児がんとの関連は認められず

小児早期のがん発病と、母親が妊娠中に携帯電話基地局からの高周波電磁波に曝露されていたこととは関連が認められないことが報告された。イギリスのロンドン大学公衆衛生校のPaul Elliott氏らが行ったケースコントロール試験の結果によるもので、BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月22日号)に掲載された。がん・出産レジストリを用いケースコントロール試験試験は、イギリスのがんレジストリ、出産レジストリのデータを用いて行われた。がんレジストリからは、1999~2001年の間の0~4歳児1,397例を同定しケース群とした。そのケース群1例につき4例ずつ性・生年月日を適合させたコントロール群を、出産レジストリから5,588例抽出した。主要評価項目は、脳腫瘍・中枢神経系がん、白血病・非ホジキンリンパ腫、および全がんの発病率とした。分析では、教育レベル、生活レベル、人口密度、住民構成で補正が行われた。基地局からの距離、出力電力、電力密度の違いとがん発病の関連認められず1996~2001年のイギリス国内の携帯電話基地局は76,890局。その設置データに基づき、基地局から出生時に登録された住所地までの平均距離を算出した結果、ケース群とコントロール群は同程度だった。ケース群1,107(SD:1,131)m、コントロール群は1,073(SD:1,130)mだった(P=0.31)。また、住所地からの距離が700m以内の基地局のトータル出力電力は、それぞれ2.89(SD:5.9)kW、3.00(SD:6.0)kW(P=0.54)、電力密度(面積当たり電力)は、-30.3(SD:21.7)dBm、-29.7(SD:21.5)dBmで(P=0.41)、これらについても両群で同程度だった。分析では、距離、出力電力、電力密度についてそれぞれ3群に階層化し主要評価項目に関するリスクについての検討もされた。そのうち電力密度について(低曝露群:-70~−26.4659 dBm、中等度曝露群:−26.4658~−17.6966 dBm、高曝露群:≧−17.6965 dBm)、低曝露群と比較して、中等度曝露群の全がん発病リスクのオッズ比(補正後)は1.01、高曝露群の同オッズ比は1.02だった(傾向P=0.79)。脳腫瘍・中枢神経系がんのオッズ比は中等度曝露群0.97、高曝露群0.76だった(傾向P=0.33)。白血病・非ホジキンリンパ腫のオッズ比は中等度曝露群1.16、高曝露群1.03だった(傾向P=0.51)。

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主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

東邦大学医療センター大森病院 医学部産科婦人科学講座 主任教授を務める。子宮筋腫治療最前線の場で患者個々の生活環境へ対応することで定評がある。日本産科婦人科内視鏡学会常務理事、日本生殖医学会評議員などその他産科婦人科系で数多くの役員を兼務。分娩施設減少で医療従事者にもしわ寄せ社会的に今、産科医療に大きな問題点があります。それは分娩施設が少なくなっているということです。たとえば東邦大学医療センター大森病院がある大田区では、4カ所の分娩施設しかなく、妊婦はもとより医療従事者にもそのしわ寄せは来ています。分娩施設が少ないため、区内の施設で出産できるのは大田区民の妊婦の約半数です。大田区以外でもこの問題は大きく周産期医療の学会で問題になっています。この周産期医療の問題点は解決する糸口がみつかっていません。分娩施設は少なく、また産科医の不足がさらに問題点を大きくしています。生殖機能ハイリスク症例を受け入れる大きな拠点もできましたが、解決にはいたっていません。当医療センター大森病院でも40歳以上のハイリスク分娩の患者さんが増えています。現在、普通の分娩をする場所が減少しています。年間約1000例の分娩症例のうち20%は高年齢出産です。30代でも以前は高齢出産とされていましたが、今はそれをはるかに超えた年齢の方が多くなっているというのが最近の分娩事情です。これは女性をとりまく社会環境やライフスタイルの変化が大きな理由です。以前と比べ男性と同等に外で働いている女性が多くなったこと、また結婚時期の選択肢が広がっています。おそらく、これからもライフスタイルは変化し続けるでしょう。私たち産科婦人科医療は女性のライフスタイルの変化とともに対応を迫られています。興味のある診療科目から自分の専門領域へ社会的に問題にされやすい産科婦人科ですが、その診療科目を私が選択したのは、生命が生まれるという医療世界の中で唯一喜ばしい診療科目だと思ったからです。人間の生命が誕生する、生殖に大きく関わることに大変興味を持ち、今もなお奥深さを感じています。生殖機能を子どもが産める身体として温存・治療して改善するなど私にとって、治療方法を模索することは研究対象として大変深いものがあります。また私は大学4年生の授業を担当しているのですが、講義をすると産科婦人科の診療科目に対する興味関心を大きく持ってもらえます。そして、お産という太古の時代から何も変わらず人類は生まれてくるということに、この診療科目の深さを感じています。産科では、新しい命が生まれてくるという素晴らしい瞬間に立ち会えるのです。私たちが学生の頃と違い、今はインターネットなど調べる手段がたくさんあり、学生たちは多くの知識を身につけています。しかし、多くの知識が一につながらず苦慮している姿を時々見かけます。広い視野を持った一人の人間として患者さんに接してもらいたいですね。専門領域は知識だけでは極めることができませんから。お産はまだまだわからないことが多い世界でもあります。そこにいろいろな疑問を持って生殖機能に関する産科婦人科という診療科目に接していただきたいです。子宮温存希望患者のために最善を尽くす私のところへ初診に来る患者さんは、子宮筋腫だとすでにわかっている人たちが多く来院します。中でも筋腫からくる症状に常日頃から悩まされているようです。そして、特に最近多いのが、未婚で未妊の方たちです。日本は海外に比べて未婚で出産する人の割合が少なく、このような方々の来院は以前では考えられませんでした。私の場合は、年間350人の手術例のうち150人は子宮筋腫の患者さんです。手術侵襲の少ない方法をとって手術に臨んでいます。多くの患者さんは他の病院で子宮全摘出を言われ、温存を望んで来院しますが、本当に本人にとって温存がよいかどうか判断し、的確に伝えられるように努めています。子宮筋腫は良性であり、手術が絶対的に必要であると判断して勧めることはしません。患者さんそれぞれの症状のつらさや、年齢、将来の妊娠・出産の希望を総合して、自身に判断してもらいます。私は、子宮温存を望む方のためにあらゆる努力をしています。たとえば、子宮を残すためには開腹手術の必要性を説明し、こちらの治療方針に理解をしてもらう努力をしています。全てに最善を尽くし患者さんの理解を得ています。チーム医療で治療方針、一人ひとりの患者さんのために当医局内では、毎週カンファレンスを行っていますが、患者さんにどれだけのエビデンスに基づいた治療方法を提案できるか、意見を出し合い探っていきます。患者さんの困っている症状、お子さんが欲しいかどうか、カルテデータにとらわれずに患者さんの状況を踏まえた治療方針を打ち出すことを、私どものチーム医療で行っています。しかし、診察を決めかねるケースがあれば、毎週のカンファレンス以外でも症例を検討できるよう、チームの体制の強化には万全を尽くしています。東邦大学医療センター大森病院の産科婦人科では、子宮筋腫・卵巣腫瘍・子宮内膜症などに対して内視鏡技術認定医によるチーム医療が行われており全国から患者さんが来院します。まずは患者さんにお会いすることから始まります。病気だけを診る医療ではない診察を心がけているため、私どものチーム医療体制への信頼がここへ集約しているのです。医学はサイエンスですが、サイエンスだけでは治療できない部分が相当あり、患者さんは一人ひとり違う身体を持っているわけです。そこには決まりきった治療はないのです。同じ病気に対して同じ診察・治療の説明をするのではなく、患者さんに合った説明をすべきです。若い医師たちの診察方法をみていると、一つの症状に対して一通りの説明しかできない人が多いように感じます。それでは患者さんのための医療とはいえないでしょう。医師は治療方針をどれだけ患者さんに説明することができるかだと思います。カンファレンスではエビデンスに基づいた治療方針を打ち出すことができるか、一つでも満足してもらえる治療方針を提供することができるか、そういう医療を常に目指しています。これからも臨床・研究の場で産科婦人科を希望する学生が減り人材不足気味でしたが、最近は希望者が少しずつ増えてきましたね。3人に1人いるであろう子宮筋腫という一般的な病気ではありますが、まだ解明できていない部分が大きいのです。生殖の補助医療というのは約20年の歴史で発達してきました。しかし、子宮筋腫がなぜできるのかは未だわかっていません。私たち医師にはやるべきことがまだまだたくさんあります。私はこれからも研究してまいります。自分の診療について悩んでいる方も多いことでしょう。どうしたらよいのか?私は、自分の診療に対して疑問を持って臨むこと、また常に何に対しても興味を抱くことをモットーとしています。新しいことが正しいとも限りませんが、技術は進歩しているわけです。何事にも興味関心を持っておくべきでしょう。そして、自分の治療を振り返ることは必要でしょうね。まず、患者さんの話をよく聞くこと、その上で自分の患者さんへの治療方針を述べることができるように整理して伝えることができるようにしておくと良いですね。患者さんは最近の情報伝達の進歩により知識を多く持っていますから、その知識が正しいかどうかを判断し、間違っている知識だった場合はエビデンスに基づく正しい知識に置き換えられるような対応が必要です。診療の説明をするためには、正常で健康な身体のこと、つまり基礎医学が理解できていないと患者さんに説明はできないですね。病院に勤務すると病気の患者さんしか来院しませんから、健康体のことがわからず説明に困窮する場合もあります。だから、まずは基礎医学をしっかり極めてください。治療に対し理解を得られるような説明をすることができるかによってコミュニケーション能力が問われることでしょう。質問と回答を公開中!

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主任教授 森田峰人先生の答え

子宮内膜症と低用量ピルについて子宮内膜症の治療で低用量ピルを使用することもあるかと思いますが、副作用の発現はどうでしょうか?私自身は内膜症を診るわけではないのですが、患者さんから相談を受けることがあるので、症例数が多いであろう大学病院臨床現場での状況を知りたいです。宜しくお願いします。OC(ピル)はエストロゲン+プロゲストーゲンの配合剤であることはご存じと思います。これらのホルモン依存性に副作用が発生すると考えられます。一般的にエストロゲンとしてエチニルエストラジオールが、プロゲストーゲンとしてノルエチステロン、デソゲストレル、レボノルゲストレルがあり、OCの種類によってこれらの組み合わせや1相性、2相性、3相性が存在します。一般的にエストロゲン依存性の副作用としては、悪心・嘔吐、頭痛、水分貯留、帯下増加などが、プロゲストーゲン依存性の副作用としては、倦怠感、抑うつ感、乳房緊満感などが、アンドロゲン依存性(プロゲストーゲンには男性ホルモン活性があります)の副作用として、体重増加、ニキビ、食欲亢進、性欲亢進、男性化兆候などがあります。これらの副作用発現率は各種プロゲストーゲンの種類により異なるとは思いますが、全体的な副作用発現率として、悪心・嘔吐は1.2~29.2%、頭痛は3.4~15.7%、体重増加は0.8~2.2%、乳房緊満感は0.1~20%等となっており、これらのマイナートラブルは、通常、3か月以内で消失するともいわれています。子宮内膜症患者さんの月経痛改善のための効果ですが、ほとんどの場合効果はあると感じています。しかしながら、OCの各種副作用の発現により、継続しての服用が困難になる場合もあります。そのような場合には、OCの種類を変更することで継続服用が可能になる場合が多々あり、1種類のOCがダメであってもあきらめる必要はありません。子宮頸がんワクチンの効果・副反応について最近、子宮頸がんワクチン接種に関して助成金が出るとか出さないとか、何かと話題になっていますが、そもそもこのワクチン、実際の効果は如何なものなのでしょうか?「日本人には合わない」などおっしゃっている先生もいるようです。また、副反応についても現場の見解を知りたいと思っています。差し支えない範囲で結構ですのでご教授お願いします。現在使われているワクチンはHPVの遺伝子型が16と18に対するものです。日本人の子宮頸がんに関連するHPV遺伝子型が16と18であるものは58.8%(16型44.8%+18型14.0%)と報告されています。海外の報告では16/18が70.7%(16型53.5%+18型17.2%)で、その他31,33,35,51,52,53,56,58,59,68の10の型が31.2%に検出され、その他の型が9.0%であったとなっています。日本人の統計で、このワクチンでHPV16/18型の感染による子宮頸がんの発生を予防できる全体に占める割合は60%弱ということになります。よって、16/18による子宮頸がん発生を100%抑制できるとして、ハイリスクHPV感染者の0.15%ががんになるのを防げる場合の、費用対効果がどうなるのかは現在のところはっきりしていません。さらに大切な事として、日本における子宮頸がん検診率は23%程度であり、この健診率を先進国並みの60~82%に持って行く方法を考える必要があると思います。副反応に関しましては、全てのワクチンに言えることですが、何らかの重篤な合併症が引き起こされる可能性は否定できません。一般的な副反応として、局所の疼痛や発赤は90%程度に認められておりますが、当院での接種に際しては、幸いなことに重篤な副反応には遭遇しておりません。今後、これらの副反応に関しましても日本におけるデータが集積されてくるものと思います。研修について産婦人科医を目指している医学生です。産婦人科医になるにあたり、小児科(NICU)を経験した方が良いと聞きます。また、病院によっては一定期間NICUへ行かせてくれるところもあると聞きます。大森病院さんでも、このように小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりする機会はあるのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、その辺の情報がなかったので教えて頂ければと思います。東邦大学医療センター大森病院でも小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりすることになります。産婦人科のホームページで「入局希望の方へ」を見て頂くと「後期研修プログラム」として1年目に「産科・周産期」と記載してありますが、この期間に3か月間、新生児科(NICU/GCU)の研修を行うことになります。また、後期研修期間中に、「腫瘍」「生殖内分泌」を専門医レベルまで習得してもらうために、2年目「腫瘍」、3年目「生殖内分泌」を主な研修期間としてトータルで3年間での研修計画をたてています。その後に、さらに新生児科での研修を希望される場合には、適時相談により、更に高度な新生児科での研修を行うことも可能です。産科婦人科の専門領域について初期研修中の者です。最近、産婦人科医に興味を持つようになりました。産婦人科の専門領域を大きく分けると、周産期、婦人科腫瘍、生殖医学の3つと教わりましたが、どれを専門にするのか?を決めるのは、通常どの位のタイミングなのでしょうか?また、森田先生はいつ頃、どんな理由で今の専門(婦人科腫瘍でしょうか?)に決めたのでしょうか?場違いな質問でしたら申し訳ありません。宜しくお願いします。後期研修として産婦人科に進んだ場合、まず目指していただくのは産婦人科専門医です。当院でもまずはそれを第1目標にしています。通常、後期研修3年間(初期研修2年とあわせて卒後5年)が終了した時点で専門医の受験資格ができます。それまでは、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」の3本の柱をしっかりと研修し、専門医取得を目指します。通常は、その後に専門性のあるサブスペシャリティの各種指導医や認定医取得、および研究などを行うことになります。自分自身の場合は、卒業が27年前ですので、現在のような初期研修、後期研修制度はなく、卒業して直ちに医局に入局し、2年間の研修医、その後2年間の関連病院での研修の後に、卒後5年目に大学に帰局して研究を始めるとともに、当時、黎明期であった婦人科内視鏡に興味を持ち、臨床では生殖医療や関連する子宮内膜症、子宮筋腫などの診療に携わってきました。自身のおかれている環境によっても、これら専門領域選択に適切な時期や場所が大きく異なる可能性もあります。まずは、興味を持ち、かつ、その領域にすすむ事ができる環境にあるかどうかの見極めは大切なことでないかと思います。また、産婦人科としてのジェネラリストを目指すという道もあります。妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけること妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけていることがありましたらご教授下さい。特に糖尿病専門医との連携方法で気をつけていることや、こうすると上手く行く!といったノウハウをお聞きしたいと思っております。私の病院には糖尿を診れる医師はいないため、いつも他院の先生方との連携になってしまいます。どのように連携するのが良いのか毎日模索している日々です。ご教授お願いします。ご質問いただきました内容に関して、的確にお応えできる回答を持ち合わせておりませんが、他院の先生と連携をとって妊娠糖尿病患者を診ておられるご苦労は大変かと思います。ご存じの対応であるとは思いますが、妊娠糖尿病患者に対しては、食事指導、運動療法からはじまり、妊娠中の運動療法は比較的制限を受けることから、食事療法のみで血糖コントロールが目標に到達しない場合には、迷うことなくインスリン療法を開始する、ということに尽きると思います。男性産婦人科医が気をつけること産婦人科は、女性医師と違って男性医師は色々と気を遣わないといけない科だと思います。先生が男性産婦人科医として気をつけている点を教えてください。産婦人科の診察対象は女性生殖器であることから、最近は、女性医師の診察を希望する患者さんも増加しています。まず、大切なことは、不安を抱いている患者さんに対して、出来るだけその不安を取り除き、適切な診療ができる環境を作り出すことにあります。一言で言い表すのは難しいですが、常に、そのような気持ちで患者さんと接するよう心がけています。また、男性医師は、診察の場面では必ず女性の看護師を同席させることも忘れてはならない事です。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルについて海外に比べた時、日本の産婦人科領域の臨床研究はどの位の位置にいるのでしょうか?また、海外への留学は必要なのでしょうか?僕はまだ医学生なのですが、将来は先生のように研究も臨床もでき、多くの患者さんのライフスタイルにあった治療提案ができるドクターになりたいと思っています。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルは決して諸外国に劣っているとは思いません。しかし、日本人であるが故の不利な点があります。世界で研究に対する評価を得るためには英文論文の執筆は不可欠です。しかしながら、日本ではやはり主に日本語による論文執筆が先になり、英文は後回しになる傾向があるように思えます。もちろん、英文の論文を多数輩出している優れた日本人研究者もたくさんいらっしゃいますが、大変な努力が必要であることは事実です。海外への留学に関する事ですが、この留学は研究留学のことと理解してコメントします。留学には、研究留学と臨床留学がありますが、現在、大多数を占めるのは大学医局からの研究留学です。しかし、研究留学は目的意識を高く持たないと得るものは少ないと思われます。必ずしも留学が必要である理由は存在しないと思います。臨床遺伝について大森病院さんのホームページで、臨床遺伝についての記載がありますがもう少し教えて頂けないでしょうか?今大学病院では、具体的にどんな研究や取り組みが行われているのか?どのような成果を上げているのか興味あります。是非宜しくお願いします。近年、疾患に限らず生命現象ほとんどが遺伝子によって制御されていることが解明され、注目を浴びています。臨床遺伝学は、基礎遺伝学(いわゆる遺伝学)と臨床をつなぐ重要な分野として発展してきています。さらに最近では、生活習慣病などの多因子疾患も、遺伝子が関与している事が判明しています。しかし、遺伝学的検査を行うときに、十分な説明がなされず、施行されたり、結果を適切に判断することが出来ず、誤った説明などがなされ、時に、患者、その家族に誤解を招く場合があります。大森病院には、日本人類遺伝学会、遺伝カウンセリング学会認定の、臨床遺伝専門医が2名(いすれも産婦人科医)がおり、専門医研修施設に認定されています。産婦人科領域、生殖遺伝(挙児希望、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠など)を中心に、火曜日午後、遺伝相談外来として対応しています。また、内科、外科など他科の担当医と協力し、横断的に、遺伝学的検査施行時、結果説明時など患者、その家族と話し合う機会を設けています。窓口は、産婦人科外来となっており、電話にて担当医と受診の予約についてお話しいただけます。妊娠を控えている慢性腎臓病実臨床にて妊娠を控えている慢性腎臓病の患者に対してどのような降圧剤を選択するのがベストか、臨床研究などの結果があれば教えていただければ幸いです.まず、慢性腎臓病合併妊婦では早期に妊娠高血圧症候群をおこして、母児共に予後が悪い事はよく知られております。したがいまして、妊娠前に十分に腎機能検査を行い、GFR 50ml/分以下、血清クレアチニン1.5mg/dl以上、血清尿酸値6.0ng/ml以上、降圧剤投与での血圧160/110mmHg以上、あるいは腎生検にて活動性病変のある者には妊娠を許可すべきではありません。これらの条件をクリアして、血圧の管理を行い、拡張期血圧を90~100mmHgの範囲に、収縮期血圧155~160mmHgを超えない事を目標に、妊娠が成立しても継続して投与が可能な薬剤を選択する事が望まれます。第1選択はヒドララジンもしくはメチルドパになります。また、妊婦に対してはACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬は禁忌であり、妊娠前にこれらの薬剤によりコントロールされている場合には薬剤の変更が必要になります。したがいまして、妊娠を目指して降圧剤を使用する場合にはヒドララジンもしくはメチルドパによる良好なコントロールがその後の管理が行いやすい状況にすると思われます。月経か否か性器出血が主訴の患者さんで性成熟期で子宮がある場合、どれが月経なのか不正性器出血なのか分からないと言われます。まず頚部・内膜の細胞診はとり、経膣エコーを見るかと思いますが、産婦人科として出血が月経かどうかを判断する術はあるでしょうか。産後の不正出血などでも(明らかな遺残ではなく)それが月経なのか何なのか判断に迷うことがあります。お教えいただけないでしょうか。 性器出血の様子だけから判断することは困難です。出血の様子に加え経腟超音波所見は重要で、特に子宮内膜の状態は評価に大きく役立ちます。患者さんのもともとの月経周期や体型なども判断材料になる機会は少なくありません。総合的に評価することとなります。総括たくさんの、また様々な内容のご質問をいただきありがとうございました。産婦人科の3本柱は、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」であり、まだまだ伝えきれないほどの魅力ある診療および研究分野がたくさんあります。少しでも興味を持って、産婦人科の世界に入ってきてくれる人たちが増えてくれることを願っています。主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

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トラネキサム酸が、出血性外傷患者の死亡リスクを低減:2万例の無作為化試験

出血性外傷患者に対して、トラネキサム酸(商品名:トランサミンなど)短期治療を早期に開始すると、安全性を保持しつつ死亡リスクが有意に改善されることが、イギリスLondon School of Hygiene & Tropical MedicineのHaleema Shakur氏らが実施した「CRASH-2試験」(http://www.crash2.lshtm.ac.uk/)の結果から明らかとなった。外傷による院内死亡の約3分の1は出血が原因であり、多臓器不全による死亡にも出血が関与している。トラネキサム酸は、待機的手術を施行された患者の出血を低減させる可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。40ヵ国、2万例の外傷患者のプラセボ対照無作為化試験CRASH-2試験の研究グループは、外傷患者に対する短期的トラネキサム酸治療の早期投与が、死亡、血管閉塞性イベント、輸血の費用に及ぼす効果を評価するためにプラセボ対照無作為化試験を実施した。40ヵ国274施設から重篤な出血あるいはそのリスクを有する2万211例の外傷患者が登録され、8時間以内にトラネキサム酸を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。トラネキサム酸は、10分以上かけて1gを負荷投与したのち、8時間で1gを静注投与することとした。患者および試験関係者(各施設の担当医師、試験運営センターのスタッフ)には、治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は受傷後4週以内の院内死亡とし、死亡原因を出血、血管閉塞(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓)、多臓器不全、頭部外傷、その他のカテゴリーに分けて解析した。全死亡が有意に9%低下、出血による死亡リスクも有意に15%改善トラネキサム酸群に1万96例が、プラセボ群には1万115例が割り付けられ、それぞれ1万60例、1万67例が解析の対象となった。全死亡率は、プラセボ群の16.0%(1,613/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は14.5%(1,463/1万60例)と有意に抑制された(相対リスク:0.91、95%信頼区間:0.85~0.97、p=0.0035)。出血による死亡リスクも、プラセボ群の5.7%(574/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は4.9%(489/1万60例)と有意に低下した(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.76~0.96、p=0.0077)。著者は、「トラネキサム酸は、出血性外傷患者の死亡リスクを安全に低減する。これらの結果に基づき、出血性外傷患者ではトラネキサム酸の使用を考慮すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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HIV患者の併用抗レトロウイルス治療を看護師に任せてよいか?

併用抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV患者の管理を、訓練を受けた看護師が行っても、医師よる治療と同等の効果が得られることが、南アフリカWitwatersrand大学のIan Sanne氏らが行った無作為化試験(CIPRA-SA試験)で示された。併用ARTはAIDS関連疾患や関連死を著明に低減することが示されている。先進国では、耐性検査を含む頻回の検査のサポートのもとで、専門医があらゆる薬剤を駆使してHIV治療を行っている。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国など医療資源が乏しい環境において併用ARTの使用を拡大するには、医師から他のケア提供者へ職務を移行する必要があるという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版6月16日号)掲載の報告。看護師と医師によるART治療を比較する非劣性試験CIPRA-SA試験の研究グループは、HIV患者のART治療の管理を医師が行う場合と、これを看護師が行う場合のアウトカムを比較する無作為化非劣性試験を実施した。南アフリカの二つのプライマリ・ケア施設から、CD4細胞<350個/μL、WHO stage 3/4のHIV陽性患者が登録され、看護師によるART治療群と医師によるART治療群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者にも、データ解析者にも知らされなかった。主要評価項目は、治療失敗に関する複合エンドポイント(治療を制限するイベント、全死亡、ウイルス学的失敗、治療を制限する毒性、受診予約に対するアドヒアランス)とした。治療失敗のハザード比の95%信頼区間上限値が<1.40の場合に、医師の治療に対して看護師による治療は非劣性であるとした。エンドポイントは看護師48%、医師44%、ハザード比1.09、95%信頼区間0.89~1.33医師によるART治療群に408例が、看護師によるART治療群には404例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。治療失敗のエンドポイントは46%(371/812例)に認められ、そのうち看護師群は48%(192/404例)、医師群は44%(179/408例)であった。治療失敗の複合エンドポイントのハザード比は1.09、95%信頼区間は0.89~1.33であり、非劣性の上限以内であった。フォローアップ期間中央値120週における死亡は看護師群が10例、医師群が11例、ウイルス学的失敗はそれぞれ44例、39例、毒性が68例、66例、非受診が70例、63例であり、両群間で同等であった。著者は、「看護師によるART治療は、これを医師が施行した場合に比べ劣ることはなかった。この知見は、ART治療を適切な訓練を受けた看護師へ移行することを支持するものである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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頸動脈狭窄に対する内膜切除 vs. ステント留置、4年転帰有意差認められず:CREST試験

頸動脈アテローム硬化症は、虚血性脳卒中の重大原因である。治療は頸動脈ステント術と頸動脈内膜切除術の二つがあるが、症候性患者を対象とした、両手技を比較するこれまでの無作為化試験の結果は、相反し議論が続いている。米国メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らは、症候性あるいは無症候性の頭蓋外頸動脈狭窄患者を対象に、両手技を比較検討する試験「CREST」を行った。脳卒中・心筋梗塞・死亡の複合をエンドポイントとした結果、両群で有意差は認められなかったという。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年5月26日号)掲載より。2,500例超を中央値2.5年追跡CREST試験は、アメリカ108施設、カナダ9施設から症候性あるいは無症候性頸動脈狭窄患者が登録して行われた無作為化試験で、2000年12月から2008年7月までに2,522例が登録された。被験者は、頸動脈ステント術を受ける群、または頸動脈内膜切除術を受ける群に無作為化され、主要エンドポイントは、周術期の脳卒中・心筋梗塞・全死因死亡と、無作為化後4年以内の同側性脳卒中の複合だった。中央値2.5年追跡の2,502例の、4年推定主要エンドポイント発生率は、ステント群7.2%、内膜切除群6.8%で、両群に有意差は認められなかった(ハザード比:1.11、95%信頼区間:0.81~1.51、P=0.51)。主要エンドポイントに関する治療効果は、症候性であること(P=0.84)や、性差(P=0.34)による違いは認められなかった。周術期において、ステント群は脳卒中が、内膜切除群は心筋梗塞がハイリスク4年推定脳卒中・死亡の発生率は、ステント群6.4%、内膜切除群4.7%だった(ハザード比:1.50、P=0.03)。症候性有無別にみると、症候性グループではステント群8.0%、内膜切除群6.4%でハザード比1.37(P=0.14)、無症候性グループではステント群4.5%、内膜切除群2.7%でハザード比は1.86(P=0.07)だった。周術期の各エンドポイント発生率は、ステント群と内膜切除群とで違いが認められ、死亡は0.7%対0.3%(P=0.18)、脳卒中はステント群で有意に高く(4.1%対2.3%、P=0.01)、心筋梗塞は内膜切除群で有意に高かった(1.1%対2.3%、P=0.03)。周術期以後の同側性脳卒中の発生率は、ステント群2.0%、内膜切除群2.4%でいずれも低かった(P=0.85)。(医療ライター:武藤まき)

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中咽頭がん患者の死亡リスク、HPV腫瘍陽性群は陰性群より58%低い

ヒトパピローマウイルス(HPV)腫瘍陽性は、中咽頭がん患者生存の強い独立した予後因子であることが明らかにされた。HPVに起因する中咽頭扁平上皮がんの生存率は良好だが、HPV腫瘍が有意な独立予後因子であるかどうかはわかっていなかった。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのK. Kian Ang氏らが、ステージIII、IVの中咽頭がん患者を対象にHPV腫瘍と生存率との関連を後ろ向きに分析した結果による。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月7日号)掲載より。放射線療法の違いによる死亡リスクの有意差は認められなかった被験者は、放射線療法に関する加速分割照射法(360例)と通常分割照射法(361例)を比較する無作為化試験「RTOG 0129」の参加者[両群ともシスプラチン(商品名:ブリプラチンなど)併用]で、頭頸部に扁平上皮がんを有していた。そのうち、中咽頭がん患者でHPV腫瘍の状態が判明した323例を、HPV陽性がん(206例、63.8%)とHPV陰性がん(117例)に分類し、比例ハザードモデルを用いて両群間の死亡リスクを比較した。被験者登録は2002年7月から2005年5月に行われ、追跡期間の中央値は4.8年だった。試験全体の3年生存率は、加速分割照射法群(70.3%)と、通常分割照射法群(64.3%)で同等だった(P=0.18)。加速分割照射法群の死亡ハザード比は0.90(95%信頼区間:0.72~1.13)、有意差は認められなかった。グレードの高い急性(P=0.21)あるいは後発性(P=0.18)の毒性の発生率も両群で有意差はみられなかった。4つの因子で患者を、死亡リスク低~高の各群に分類中咽頭がんでHPV腫瘍陽性患者の3年生存率は、同陰性患者より良好だった(82.4%対57.1%、log-rank検定P<0.001)。年齢、人種、腫瘍・リンパ節転移ステージ、喫煙曝露、治療割り付けについて補正後、陽性群の死亡リスクは陰性群より58%低かった(ハザード比:0.42、P<0.001)。また死亡リスクは、喫煙曝露(箱-年)が増えるほど有意に増大した。さらに研究グループは、喫煙曝露の状況も判明していた被験者(266例)のデータを解析することで、「HPV腫瘍の状態(陽性か陰性か)」「喫煙曝露(10箱-年超か以下か)」「腫瘍ステージ(HPV陰性・10箱-年以下の患者でT2–T3かT4か)」「リンパ節転移ステージ(HPV陽性・10箱-年超の患者でN0–N2aかN2b–N3か)」の4つの因子で患者の死亡リスクを、低リスク群、中等度リスク群、ハイリスク群に分類できたことも報告している。(医療ライター:武藤まき)

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ピオグリタゾン対rosiglitazoneのイベントリスク:米国FDA報告

2型糖尿病治療薬のrosiglitazone(国内未承認)は、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)他米国内で販売されているチアゾリジン系薬に比べ、脳卒中リスクを1.27倍、心不全リスクを1.25倍に増加するなど、心血管疾患イベントリスクを増大することが報告された。米国食品医薬品局(FDA)のDavid J. Graham氏らが、約23万人のチアゾリジン系薬の服用者を追跡して明らかにしたもので、JAMA誌オンライン版2010年6月28日号で発表された。被験者の平均年齢は74歳、最長3年間追跡研究グループは、米国の高齢者向け公的医療保険メディケアの被保険者で、2006年7月から2009年6月の間に、メディケアのパートD処方プランでrosiglitazoneまたはピオグリタゾンの服用を開始した22万7,571人について、後ろ向き発端コホート研究を行った。被験者は65歳以上で、平均年齢は74.4歳だった。追跡期間は、服用開始から最長で3年だった。エンドポイントは、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全、原因を問わない死亡と、それらすべてを合わせた複合イベントだった。rosiglitazoneの複合イベント発生は1.68/100人・治療年その結果、追跡期間中にいずれかのエンドポイントが発生したのは、8,667人だった。rosiglitazoneのピオグリタゾンに対するイベント発生に関するハザード比は、脳卒中が1.27(95%信頼区間:1.12~1.45)、心不全が1.25(同:1.16~1.34)、死亡が1.14(同:1.05~1.24)、複合イベントが1.18(同:1.12~1.23)だった。なお、急性心筋梗塞については、1.06(同:0.96~1.18)で両群で有意差はみられなかった。また、複合イベント発生に関するrosiglitazoneの寄与危険度は、1.68/100人・治療年(同:1.27~2.08)だった。有害必要数(NNH)は、60人(同:48~79)への1年間投与だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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術後合併症予防キャンペーンSCIP順守の効果は?

術後合併症の予防を目的として、米国の主な医療機関が参加・展開するキャンペーン「Surgical Care Improvement Project」(SCIP)で定められた予防措置を守ることで、術後合併症リスクは15%減らせることが明らかにされた。ただし順守と術後合併症予防に有意な関連は認められなかったとも報告している。米国オハイオ州のケース・ウエスタン・リザーブ大学のJonah J. Stulberg氏らが、40万人超の患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2010年6月23/30日号で発表した。感染予防措置の3項目順守率、2~6項目順守率をそれぞれ評価同氏らは、SCIPに参加し、予防措置の順守率について「Hospital Compare Web」で、「Premier Inc's Perspective Database」に基づき報告・公開している医療機関398ヵ所で手術を受け、2006年7月1日から2008年3月31日までに退院した40万5,720人について、後ろ向きコホート試験を行った。被験者のうち、白人は69%、黒人は11%で、高齢者向け公的医療保険メディケアの患者が46%、68%が選択的外科手術例だった。SCIPは7つの評価項目(INF-1~INF-7)と、2つの複合評価方法(S-INFコア、S-INF)から成る。複合評価方法「S-INFコア」は、評価項目の中心であるINF-1~INF-3の3項目から構成され、「S-INF」はINF-5を除く6項目から成る。研究グループは、複合評価方法でSCIP項目を順守することの術後感染に対する効果を評価するため、S-INFコア指標について3項目すべてを順守した群と順守しなかった群とで術後感染との関連を調べ、またS-INF指標については2項目以上を順守していた群と順守項目がなかった群とで順守状況と術後感染について調べた。評価に際しては、病院特性(規模、位置、教育病院かなど)を加味している。2項目以上順守の術後感染率0.85倍、中核の3項目順守で0.86倍結果、追跡期間中に発生した術後感染は、3,996件だった。S-INF評価で2項目以上を順守した群の術後感染率は、1,000退院当たり6.8、非順守群は同14.2で、順守群の方が低かった(補正後オッズ比:0.85、95%信頼区間:0.76~0.95)。S-INFコアについても、順守群の術後感染率は1,000退院当たり5.3、非順守群は11.5と順守群が低かったが、統計学的有意差は認められなかった(補正後オッズ比:0.86、同:0.74~1.01)。またSCIPの6項目のうち、順守したか否かで術後感染率の低下につながり他の項目と有意な差がついたという項目はなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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